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特表2024-524337ポリエチレンイミンを含むゴム混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ポリエチレンイミンを含むゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 11/00 20060101AFI20240628BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20240628BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240628BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240628BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20240628BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240628BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C08L11/00
C08L79/02
C08K3/013
C08K3/04
C08K5/548
C08K5/00
C08J3/24 CEQ
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579798
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022067479
(87)【国際公開番号】W WO2023274908
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182922.1
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・オプリソニ
(72)【発明者】
【氏名】アントニア・アルバース
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA04
4F070AA09
4F070AC04
4F070AC13
4F070AC74
4F070AE01
4F070AE08
4F070GA06
4F070GB01
4J002AC09W
4J002CM01X
4J002DA037
4J002DE078
4J002DE108
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002EU179
4J002EV089
4J002EV119
4J002EV149
4J002EV169
4J002EV329
4J002EW169
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD148
4J002FD14X
4J002FD159
4J002GG01
4J002GM01
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、ポリクロロプレンゴム及びポリエチレンイミンをベースとする新規なゴム混合物、それらの製造及び使用、並びにそれにより得ることが可能な加硫物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム混合物であって、少なくとも1種のポリクロロプレンゴム(CR)及び少なくとも1種のポリエチレンイミンを含むことを特徴とする、ゴム混合物。
【請求項2】
ポリエチレンイミンを、0.01~20phr、好ましくは0.05~15phr、特に好ましくは0.5~10phr、極めて特に好ましくは1~8phr、特には2~6phrの量で含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
前記ポリクロロプレンゴムが、2~3の範囲のモル質量分布Mw/Mn、及び4×10~1.3×10g/molの間の平均モル質量(Mw)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
ヒドロキシル基を含む少なくとも1種の酸化物系充填剤を、0.1~250phr、好ましくは1~200phr、特に好ましくは5~180phr、極めて特に好ましくは10~160phrの量で含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のゴム混合物。
【請求項5】
少なくとも1種のカーボンブラックを、0.1~200phr、好ましくは5~150phr、特に好ましくは20~120phrの量で含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のゴム混合物。
【請求項6】
好ましくは金属酸化物の群からの、少なくとも1種の架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のゴム混合物。
【請求項7】
硫黄含有有機シラン、特にはアルコキシシリル基を含む硫黄含有シランの群からの、少なくとも1種の補強性添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のゴム混合物。
【請求項8】
メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、チアゾールスルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、トリルトリアゾール、キサントゲン酸塩、及びチオリン酸塩の群からの、少なくとも1種の加硫促進剤を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のゴム混合物。
【請求項9】
接着系、老化防止剤、熱安定剤、耐光剤、抗酸化剤、特にオゾン亀裂防止剤、難燃剤、加工助剤、衝撃強度向上剤、加硫油、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エクステンダー、有機酸、加硫遅延剤、活性化剤、及び加硫戻り防止剤の群からの、少なくとも1種のゴム助剤を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のゴム混合物。
【請求項10】
ポリエチレンイミンの使用であって、ポリクロロプレンゴムをベースとするゴム混合物のための架橋剤としての使用。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載のゴム混合物を製造するためのプロセスであって、場合によっては少なくとも1種の充填剤、場合によっては少なくとも1種の架橋剤、場合によっては少なくとも1種の加硫促進剤又は加硫遅延剤、場合によっては少なくとも1種の補強性添加剤、及び場合によっては1種又は複数種のゴム助剤の存在下に、少なくとも1種のポリクロロプレンゴム及び少なくとも1種のポリエチレンイミンを、40℃~200℃、特に好ましくは70℃~130℃の範囲の温度で相互混合することを含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項12】
ゴム加硫物であって、請求項1~9のいずれかに記載のゴム混合物を加硫させることによって得ることが可能なゴム加硫物。
【請求項13】
ゴム加硫物を製造するためのプロセスであって、請求項1~9のいずれかに記載の少なくとも1種のゴム混合物を、150℃~240℃、好ましくは180℃~220℃の範囲の温度に加熱することを特徴とする、プロセス。
【請求項14】
請求項12に記載のゴム加硫物を含む成形物品であって、特に工業的ゴム物品、たとえばホース、ケーブル、コンジット、ベルト、形材、コンベヤーベルト、制震要素、ローラーのための被覆及びゴム被覆布、並びにフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンゴム及びポリエチレンイミンをベースとする新規なゴム混合物、それらを製造するためのプロセス、加硫によりゴム加硫物を製造するためのそれらの使用、並びにそれらから得ることが可能な、特に、たとえばホース、ケーブルシース、又はベルトのような工業的な加硫物の形態にある成形物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレンは、多くの分野で使用されている、有用なゴムである。
【0003】
加硫の際にある種の架橋剤を使用してポリクロロプレン(CR)を架橋させ、それにより、その加硫物の性質、たとえば機械的性質又は加硫戻り安定性を改良することは公知である。
【0004】
エチレンチオ尿素(ETU)を架橋剤として使用することが、長年の実施形態であった。しかしながら、いくつかの用途では、エチレンチオ尿素は、欧州化学品庁(European Chemicals Agency=ECHA)により、毒性的に問題のある物質に分類されている。
【0005】
エチレンチオ尿素(ETU)の代替物として、3-メチルチアゾリジン-2-チオン(MTT)もまた、架橋剤として使用されている。その欠点は、ETUに比較して機械的性質での劣化であり、さらには、いくつかのタイプのクロロプレンでは、ムーニースコーチ時間が短くなる。ETUと比較した場合のこの欠点は、加硫温度を、180℃~200℃の値より高くすると、ますます目立つ。
【0006】
(特許文献1)には、実質的にグアニジンを含まないゴム混合物が開示されている。そこでは、急速に架橋するが、毒性的に問題のある二次促進剤のグアニジンが、ポリエチレンイミンに置き換えられている。そこでは、特に天然ゴムにおいて、ポリエチレンイミンが、硫黄、スルフェンアミド、及びメルカプトベンゾチアゾールと併用されている。
【0007】
硫黄加硫促進剤系を用いてゴムを架橋させると、一般的には次のようなメリットが得られる、すなわち、各種の加硫促進剤及びそれらの組合せを使用することによって、たとえば誘導期間(スコーチ時間、これは理想的には、短すぎないようにするべきである)の調節、及び反応速度(これは、高くて、短い完全加硫時間になるようにするのが好ましい)の調節など、加工性及び製品の性質を広い範囲で変化させることが可能となる。誘導時間及び加硫時間を調節する目的で、ゴム混合物にいわゆる二次促進剤を添加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2016/030469号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ポリクロロプレン(CR)及び毒性的に心配のない架橋剤をベースとするゴム混合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ポリクロロプレン(CR)及び架橋剤としてのポリエチレンイミンをベースとするゴム混合物により、上述の欠点が克服されるということが見出された。
【0011】
本発明におけるゴム混合物はさらに、驚くべきことには、加硫温度における変化に関連する、改良された物理的安定性も示す。それに加えて、本発明におけるゴム混合物から製造される加硫物は、オゾン又は酸素のような酸化性物質の影響に関連して、改良されたエージング安定性を特徴としている。
【0012】
従って、本発明は、少なくとも1種のポリクロロプレンゴム(CR)及び少なくとも1種のポリエチレンイミンを含む、ゴム混合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下における単位の「phr」は、そのゴム混合物の中に存在するポリクロロプレンゴムの合計量の100重量部を基準にした、重量部を表している。
【0014】
本発明におけるゴム混合物は、ポリエチレンイミンを、一般的には0.01~20phr、好ましくは0.05~15phr、特に好ましくは0.5~10phr、極めて特に好ましくは1~8phr、特には2~6phrの量で含んでいる。
【0015】
本発明におけるゴム混合物には、少なくとも1種のポリクロロプレンゴム(CR)が含まれる。
【0016】
ポリクロロプレンゴム(CR)及びそれらの製造は、ずっと以前から公知である。それは、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)をベースとするポリマーであって、乳化重合によって得ることができる。
【0017】
本発明におけるゴム混合物には、原理的には、通常使用されているすべてのポリクロロプレンゴムが含まれる。
【0018】
市販されている各種のタイプのポリクロロプレンゴムは、それらの構造及び性質の点で各様である。いわゆる汎用タイプでは、重合の際に使用される調節剤の点で、メルカプタン変性タイプとキサントゲン酸塩変性タイプとに区別される。これら二つのタイプでは、未架橋品と予備架橋品とが存在する。硫黄変性されたCRのタイプも入手可能である。それに加えて、各種のタイプのポリクロロプレンは、特にそれらのムーニー粘度(ML(1+4),100℃)及びそれらの結晶化速度の点で、特徴づけられている。
【0019】
本発明におけるゴム混合物が、メルカプタン変性又はキサントゲン酸塩変性のポリクロロプレンゴムの群からの、少なくとも1種のポリクロロプレンゴムを含んでいるのが好ましい。
【0020】
メルカプタン変性及びキサントゲン酸塩変性のポリクロロプレンゴムは、たとえば、商品名Baypren(登録商標)(Arlanxeoの市販製品)のような、市販製品として入手可能である。
【0021】
メルカプタン変性されたポリクロロプレンゴムは、典型的には、n-ドデシルメルカプタンの存在下にクロロプレンを乳化重合させることにより製造される。キサントゲン酸塩変性されたポリクロロプレンゴムは、典型的には、キサントゲンジスルフィドの存在下にクロロプレンを乳化重合させることにより製造される。
【0022】
本発明におけるゴム混合物が、35~50MU(「ムーニー単位」)の間のムーニー粘度(ML(1+4),100℃)及び[極めて遅い]から[中間]までの結晶化速度を有する少なくとも1種のメルカプタン変性されたポリクロロプレンゴム、並びに/又は90~120MUの間のムーニー粘度及び中間の結晶化速度を有する少なくとも1種のメルカプタン変性されたポリクロロプレンゴムを含んでいるのが好ましい。
【0023】
35~50MUの間のムーニー粘度(ML(1+4),100℃)及び[極めて遅い]から[中間]までの結晶化速度を有し、本発明において好ましいメルカプタン変性されたポリクロロプレンゴムは、たとえば、Baypren(登録商標)110、Baypren(登録商標)112、Baypren(登録商標)210、及びBaypren(登録商標)211の名称の、Arlanxeoの市販製品として入手可能である。90~120MUの間のムーニー粘度及び中間の結晶化速度を有し、同様に本発明において好ましいメルカプタン変性されたポリクロロプレンゴムは、たとえば、Baypren(登録商標)230の名称の、Arlanxeoの市販製品として入手可能である。
【0024】
本発明におけるゴム混合物が、2~3の範囲のモル質量分布(Mw/Mn)、4×10~1.3×10g/molの間の平均モル質量(Mw)、及び35~120MUの間のムーニー粘度を有する、少なくとも1種のメルカプタン変性されたポリクロロプレンゴムを含んでいるのが好ましい。
【0025】
本発明におけるゴム混合物の中に存在するポリクロロプレンは、各種の1,4-trans含量を有していてよい。これが、88%~94%の間であるのが好ましい。
【0026】
本発明におけるゴム混合物には、少なくとも1種のポリエチレンイミンが含まれる。本発明におけるゴム混合物の中に存在するポリエチレンイミン(PEI)が、エチレンイミンのホモポリマー/エチレンイミンと1種又は複数種のコモノマーとのコポリマーであるのが好ましいが、ここで、そのコポリマーの中では、エチレンイミン由来の繰り返し単位の比率が、それぞれの場合においてそのポリマーの合計質量を基準にして、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、極めて特に好ましくは少なくとも98重量%である。「ポリエチレンイミン」という用語にはさらに、たとえば各種の分子量、分岐度、コモノマーなどを有するエチレンイミンのホモポリマー及び/又はコポリマーの混合物も包含される。
【0027】
そのようなホモポリマー又はコポリマーは、典型的には200より大、好ましくは300~3,000,000、特に好ましくは400~800,000、極めて特に好ましくは500~100,000、より好ましくは600~30,000、最も好ましくは700~7000の重量平均分子量を有している。
【0028】
本発明のゴム混合物の中に存在するポリエチレンイミンが、直鎖状又は分岐状の構造を有していてもよく、そして直鎖状のポリエチレンイミンと分岐状のポリエチレンイミンとの混合物を採用することもまた可能である。
【0029】
一つの好ましい実施態様においては、一級のみならず、二級及び三級のアミノ基を有する分岐状の構造を有するポリエチレンイミンが採用される。
【0030】
本発明におけるゴム混合物が、エチレンジアミン-エチレンイミンのコポリマー/ポリエチレンイミンのホモポリマー、たとえば、CAS番号25987-06-8及び9002-98-6に一致するものを含んでいれば好ましい。
【0031】
本発明におけるゴム混合物が、1種又は複数種の充填剤を含んでいてよい。
【0032】
好適な充填剤としては、原理的には、従来技術からこの目的のために公知のすべての充填剤が挙げられるが、活性充填剤又は補強性充填剤が好ましい。
【0033】
本発明のゴム混合物には、一般的には0.1~250phr、好ましくは20~200phr、特に好ましくは25~160phrの少なくとも1種の充填剤が含まれる。
【0034】
本発明のゴム混合物が、少なくとも1種のヒドロキシル基を含む酸化物系(oxidic)充填剤及び/又は少なくとも1種のカーボンブラックを含んでいるのが好ましい。
【0035】
本発明におけるゴム混合物における、ヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤の含量は、一般的には0.1~250phr、好ましくは1~200phr、特に好ましくは5~180phr、極めて特に好ましくは10~160phrである。
【0036】
好適な、ヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤としては、好ましくは、以下の群からのものが挙げられる:
- シリカ、特に沈降シリカ又は熱分解法シリカであって、5~1000m/g、好ましくは20~400m/gの比表面積(BET表面積)及び10~400nmの一次粒径を有するもの(ここでそのシリカは、場合によっては、他の金属酸化物たとえば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物との混合酸化物の形態にある);
- 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルカリ土類金属、たとえば、ケイ酸マグネシウム若しくはケイ酸カルシウムで、20~400m/gのBET表面積及び10~400nmの一次粒径を有するもの;
- 天然のケイ酸塩たとえば、カオリン及びその他の天然産のシリカ、
及びそれらの混合物。
【0037】
本発明におけるゴム混合物の中に存在するシリカの群からの、ヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤は、好ましくは、たとえば、ケイ酸塩の溶液からの沈降法、又はハロゲン化ケイ素の火炎加水分解法によって製造可能なものである。
【0038】
本発明におけるゴム混合物が、少なくとも1種の、20~400m/gの範囲の比表面積(BET)を有するシリカの群からのヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤を、0.1~200phr、好ましくは5~200phr、特に好ましくは10~100phr、極めて特に好ましくは20~80phrの量で含んでいるのが好ましい。
【0039】
BETの数値はすべて、DIN 66131に従って測定した比表面積に関連する。記述されている一次粒径は、走査電子顕微鏡によって求めた数値を指している。
【0040】
本発明のゴム混合物には、少なくとも1種のカーボンブラックが、充填剤としてさらに含まれていてよい。
【0041】
本発明において好ましいのは、ランプブラック、ファーネスブラック又はガスブラック法によって得ることが可能で、20~200m/gの範囲の比表面積(BET)を有するカーボンブラック、たとえば、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、又はGPFカーボンブラックである。本発明のゴム混合物が、20~200m/gの範囲の比表面積(BET)を有する、少なくとも1種のカーボンブラックを含んでいるのが好ましい。
【0042】
本発明のゴム混合物は、一般的には0.1~200phr、好ましくは5~150phr、特に好ましくは20~120phrの、少なくとも1種のカーボンブラックを含んでいる。
【0043】
本発明におけるゴム混合物が、充填剤として、カーボンブラック及びシリカベースの充填剤を含んでいる場合には、それら2種のタイプの充填剤の合計量は、好ましくは10~200phr、特に好ましくは15~160phrである。
【0044】
上記の充填剤に加えて、本発明におけるゴム混合物には、少なくとも1種のさらなる充填剤、たとえばアラミド、セルロース又はナノセルロースから製造された短繊維、及びリグニンをベースとする充填剤が、充填剤として含まれていてよい。
【0045】
本発明におけるゴム混合物における、これら上記のさらなる充填剤の合計比率は、典型的には0.1~160phr、好ましくは0.5~100phr、特に好ましくは1~50phrである。
【0046】
本発明のゴム混合物には、1種又は複数種の補強性添加剤が含まれていてよい。
【0047】
本発明におけるゴム混合物が、硫黄含有有機シランの群からの少なくとも1種の補強性添加剤、特にはアルコキシシリル基を含む硫黄含有シラン、極めて特に好ましくはトリアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シランを含んでいるのが好ましい。
【0048】
本発明におけるゴム混合物が、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、及び3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンチオールの群からの1種又は複数種の硫黄含有シランを含んでいるのが、特に好ましい。
【0049】
本発明におけるゴム混合物は、それぞれの場合において、100%の有効成分として計算し、そしてそのゴム混合物の中に存在している全部の充填剤の100重量部を基準として、一般的に1~20重量部、好ましくは2~15重量部、特に好ましくは2~10重量部の、少なくとも1種の補強性添加剤を含んでいる。
【0050】
計量性及び/又は分散性を改良する目的で、キャリヤーの上に液体の硫黄含有シランを吸収させてもよい(乾燥液体)。それらの乾燥液体の中の硫黄含有シランの含量は、乾燥液体の100重量部あたり、好ましくは30~70重量部の間、好ましくは40~60重量部の間である。
【0051】
一つの好ましい実施態様においては、本発明におけるゴム混合物には、5~200phr、特に好ましくは10~100phr、極めて特に好ましくは20~80phrの、少なくとも1種の、シリカの群からのヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤、及び1.0~20phr、好ましくは5~15phr、特に好ましくは2~10phrの、硫黄含有有機シラン、特に好ましくはアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シラン、極めて特に好ましくはトリアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シランの群からの少なくとも1種の補強性添加剤が含まれている。
【0052】
本発明におけるゴム混合物が、1種又は複数種の架橋剤を含んでいてよい。
【0053】
ポリクロロプレンゴムの加硫では、架橋を促進させ、そして架橋反応の際に生成する塩化水素を中和させることを目的として、金属酸化物が特に採用される。好適な金属酸化物としては、原理的には、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
本発明におけるゴム混合物が、金属酸化物の群からの少なくとも1種の架橋剤、特には酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛を含んでいるのが好ましい。
【0055】
本発明におけるゴム混合物には、一般的には0.1~10phr、好ましくは0.1~8phr、特に好ましくは0.1~5phrの、少なくとも1種の金属酸化物が含まれている。
【0056】
本発明におけるゴム混合物に、1種又は複数種の加硫促進剤又は加硫遅延剤が含まれていてもよい。
【0057】
それらは、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、チアゾールスルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、トリルトリアゾール、キサントゲン酸塩、及びチオリン酸塩の群からの加硫促進剤又は加硫遅延剤である。
【0058】
本発明におけるゴム混合物には、一般的には0~10phr、好ましくは0~8phr、特に好ましくは0~5phrの、少なくとも1種の加硫促進剤又は加硫遅延剤が含まれている。
【0059】
本発明のゴム混合物には、1種又は複数種のゴム助剤がさらに含まれていてよい。
【0060】
好適なゴム助剤としては、たとえば、以下のものが挙げられる:接着系、老化防止剤、熱安定剤、耐光剤、抗酸化剤、特にオゾン亀裂防止剤、難燃剤、加工助剤、衝撃強度向上剤、加硫油、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エクステンダー、有機酸、加硫遅延剤、活性化剤、及び加硫戻り防止剤。
【0061】
それらのゴム助剤は、それら助剤で慣用され、そしてそれから製造される加硫物の最終用途によっても規程される量で、本発明におけるゴム混合物に添加してよい。慣用される量は、たとえば、0.1~30phrである。
【0062】
特に採用される老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノールたとえば2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、エステル基を含む立体障害フェノール、チオエーテルを含む立体障害フェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(BPH)、及びさらには立体障害チオビスフェノール。
【0063】
ゴムの変色がさほど重要でないのならば、たとえば以下のようなアミン系の老化安定剤を採用することも可能である:ジアリール-p-フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PAN)、フェニル-β-ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするもの、たとえば、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)。
【0064】
さらなる老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:ホスファイトたとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)。これらのものは、ほとんどの場合、上述のフェノール性老化防止剤と組み合わせて使用される。
【0065】
オゾン抵抗性は、たとえば以下のような抗酸化剤により改良することができる:N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、エノールエーテル、又は環状アセタール。
【0066】
加工助剤は、ゴム粒子の間で活性を有しているべきであり、混合、可塑化、及び成形の際の摩擦力に抵抗可能であるべきである。本発明におけるゴム混合物の中に存在させ得る加工助剤としては、プラスチックの加工で慣用されるすべての潤滑剤、たとえば以下のものが挙げられる:炭化水素たとえば、オイル、パラフィン及びPEワックス、6~20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、カルボン酸たとえば脂肪酸及びモンタン酸、酸化させたPEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、及びたとえばアルコールのエタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールと酸成分としての長鎖カルボン酸とからのカルボン酸エステル。
【0067】
燃焼の際の、燃焼性を抑制し、発煙を抑制する目的で、本発明におけるゴム混合物の組成には、難燃化剤を含ませてもよい。この目的のために使用される化合物の例としては、以下のものが挙げられる:三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム。
【0068】
架橋させる前に、本発明によるゴム混合物に対してさらなる熱可塑性樹脂を添加してもよいが、それらは、たとえばポリマー性の加工助剤又は耐衝撃性改良剤として機能する。それらの熱可塑性樹脂は、好ましくは、以下のものからなる群より選択される:エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、分岐状若しくは非分岐状のC1~C10アルコールのアルコール成分を有するアクリレート及びメタクリレートをベースとするホモポリマー及びコポリマー、特に好ましいのは、C4~C8アルコール、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノール及び2-エチルヘキサノールの群からの同一又は異なったアルコール基を有するポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル・コポリマー、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル・コポリマー、エチレン-酢酸ビニル・コポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレン・コポリマー、エチレン-プロピレン-ジエン・コポリマー。
【0069】
公知の接着系は、レソルシノール、ホルムアルデヒド、及びシリカをベースとする、いわゆるRFS直接接着系(RFS direct adhesion system)である。これらの直接接着系は、本発明におけるゴム混合物に対して各所望の量で、本発明におけるゴム混合物の中への取込みの際のいかなる時点でも、使用することができる。
【0070】
好適なホルムアルデヒド供与体としては、ヘキサメチレンテトラミンのみならず、メチロールアミン誘導体も挙げられる。可能性のある接着性の改良は、公知のゴム混合物に、合成樹脂を形成することが可能な成分、たとえばフェノール及び/又はアミン及びアルデヒド、又はアルデヒド脱離化合物を添加することによって達成される。ゴムの接着性混合物の中で、樹脂形成成分として広く使用されている化合物としては以下のものが挙げられる:レソルシノール及びヘキサメチレンテトラミン(HEXA)(英国特許第801 928号明細書、仏国特許第1 021 959号明細書)、場合によってはシリカ充填剤との組合せ(独国特許公開第1 078 320号明細書)。
【0071】
以下のものを含む、本発明におけるゴム混合物が好ましい;
- 2~3の範囲内のモル質量分布Mw/Mn、4×10~1.3×10g/molの間平均モル質量(Mw)、及び35~120MUの間のムーニー粘度を有する、少なくとも1種のポリクロロプレンゴム、
- 0.05~15phrの、少なくとも1種のポリエチレンイミン、
- 5~200phrの少なくとも1種のシリカ、特には、5~1000m/g、好ましくは20~400m/gの比表面積(BET)を有し、100~400nmの一次粒径を有するもの、
及び/又は
- 5~150phrの、少なくとも1種のカーボンブラック、特には、20~200m/gの範囲の比表面積(BET)を有するもの。
【0072】
特に好ましいのは、以下のものを含む本発明のゴム混合物である;
- 2~3の範囲内のモル質量分布Mw/Mn、4×10~1.3×10g/molの間平均モル質量(Mw)、及び35~120MUの間のムーニー粘度を有する、少なくとも1種のクロロプレンゴム、
- 0.5~10phrの、少なくとも1種のポリエチレンイミン、
- 10~100phrの少なくとも1種のシリカ、特には、5~1000m/g、好ましくは20~400m/gの比表面積(BET)を有し、100~400nmの一次粒径を有するもの、
及び/又は
- 20~120phrの、少なくとも1種のカーボンブラック、特には、20~200m/gの範囲の比表面積(BET)を有するもの、
- 0.1~5phrの、少なくとも1種の架橋剤、特には、金属酸化物の群からのもの、
- (そのゴム混合物の中に存在するすべての充填剤の100重量部を基準にして)2~10重量部の、少なくとも1種の補強性添加剤、特には、硫黄含有シランの群からのもの。
【0073】
本発明はさらに、本発明におけるゴム混合物を製造するためのプロセスも提供するが、それは、以下のことを特徴としている:少なくとも1種のポリクロロプレンゴムと少なくとも1種のポリエチレンイミンとを、場合によっては少なくとも1種の充填剤、場合によっては少なくとも1種の架橋剤、場合によっては少なくとも1種の加硫促進剤又は加硫遅延剤、場合によっては少なくとも1種の補強性添加剤、そして場合によっては上述のゴム助剤の1種又は複数種の、これらの添加剤についての一般的又は好適とされている量の存在下に、40℃~200℃、特に好ましくは70℃~130℃の範囲の温度で、相互混合することが含まれる。
【0074】
本発明におけるゴム混合物の製造は、公知の混合装置たとえば、ローラー、インターナルミキサー、ダウンストリームローラーミル、及び混合エクストルーダーの中で、1~1000sec-1、好ましくは1~100sec-1の剪断速度で、通常のようにして実施される。
【0075】
ポリエチレンイミンを、その混合プロセスの最後近くで、40℃~100℃の範囲の、より低い温度で、典型的には加硫促進剤又は加硫遅延剤と共に添加するのが好ましい。
【0076】
本発明はさらに、本発明におけるゴム混合物を、150℃~280℃、好ましくは170℃~240℃の溶融温度で加熱することによる、ゴム加硫物を製造するためのプロセスにも関する。
【0077】
本発明におけるゴム加硫物を製造するためのプロセスは、広い圧力範囲、好ましくは1~200barの範囲の圧力で実施することができる。
【0078】
本発明はさらに、本発明におけるゴム混合物を加硫することにより得ることが可能な、ゴム加硫物も提供する。
【0079】
本発明におけるゴム混合物の加硫は、射出成形法によるか、又は塩浴加硫法により、プレスを使用して実施することができる。
【0080】
本発明における加硫物を製造するためのゴム混合物の加熱は、典型的には、マイクロ波の手段によるか、加熱空気によるか、加熱水蒸気によるか、塩浴中か、又はオートクレーブ中で実施される。
【0081】
本発明はさらに、本発明におけるゴム混合物を加硫することにより得ることが可能な、ゴム加硫物も提供する。
【0082】
本発明における加硫物は、広く各種のゴム製品を製造するため、特にはたとえば以下のような工業的ゴム物品を製造するために好適である;ホース、成形物品、ケーブル及びコンジット、ベルト、形材、コンベヤーベルト、制震要素、ローラーのための被覆、並びにゴム被覆布。
【0083】
本発明におけるゴム混合物はさらに、フォームを製造するためにも使用することができる。これには、本発明におけるゴム混合物に対して、化学的又は物理的発泡剤を添加することが含まれる。考えられる化学的発泡剤としては、この目的で公知のすべての物質、たとえば以下のものが挙げられる;アゾジカルボンアミド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、5-フェニルテトラゾール、及びさらには、これらの物質を含む混合物。適切な物理的発泡剤の例としては、二酸化炭素及びハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0084】
本発明はさらに、成形物品、特には以下のような工業的ゴム物品も提供する;ホース、ケーブル、コンジット、ベルト、形材、コンベヤーベルト、制震要素、ローラーのための被覆及びゴム被覆布、並びにさらには本発明におけるゴム加硫物を含むフォーム。
【0085】
以下の例を用いて本発明を説明するが、本発明がそれらに限定されることはない。
【実施例
【0086】
【表1】
【0087】
本発明によるゴム加硫物の製造
表1に示した実施例1のゴム配合物及び参照例の比較例1~比較例3のゴム配合物から、加硫物を製造した。これには、表1において実施例1及び参照例について記述された成分を、そこに記述された量(すべて、100部のゴムあたりの部数(phr)の単位)で、それぞれの場合において、以下に記載の混合プロセスで混合することが含まれる。
【0088】
実施例1でのポリエチレンイミン(RHENOCURE(登録商標)DR/S)を、参照例の比較例2ではエチレンチオ尿素(ETU)(RHENOCURE(登録商標)NPV/C)と、そして参照例の比較例3では3-メチルチアゾリジン-2-チオン(MTT)(RHENOCURE(登録商標)CRV/LG)と置き換えた。参照例の比較例1は、架橋剤を添加せずに実施した。
【0089】
それぞれの場合において、第一の混合ステップで、ポリクロロプレンゴムのBAYPREN(登録商標)211を最初にニーダー(GK 1.5)の中に仕込み、そして添加剤のREGAL(登録商標)SRF/N772、PALMERA(登録商標)A9818、及びVULKANOX(登録商標)4020/LGを、温度約40℃、約40回転/秒で添加した。その混合物を、温度100℃で約3分間混合した。
【0090】
次いで、第二の混合ステップにおいて、そのゴム混合物を、温度制御されたローラーに加え、以下の添加剤を添加して、ゴム混合物の中に組み入れた:ROTSIEGEL酸化亜鉛、RHENOFIT(登録商標)D/A、並びに実施例1ではRHENOCURE(登録商標)DR/S、比較例2ではRHENOCURE(登録商標)NPV/C、そして比較例3ではRHENOCURE(登録商標)CRV。そのローラーの温度は、30℃~50℃の間であった。
【0091】
そのようにして得られたゴム混合物を、次いで、それぞれ180℃及び200℃で、完全加硫させ、そしてロール加工して試験プラックとした。
【0092】
それらの試験プラックを、それに続く、以下で説明する性能試験に使用した。
【0093】
【表2】
【0094】
技術的試験
製造されたゴム混合物及び加硫物を、以下において述べる技術的試験にかけた。そのようにして得られた数値を表2~4に示す。
【0095】
ゴム混合物/加硫物の物性の測定
ムーニー粘度の測定:
その測定は、ASTM D1646に従い、剪断円板式粘度計の手段により測定した。粘度は、ゴム(及びゴム混合物)が、加工に抵抗する力から直接求めることができる。ムーニー剪断円板式粘度計の中で、襞付きの円板が上下共に試験物質で取り囲まれていて、加熱可能なチャンバーの中、約2回転/分の速度で回転される。そのために必要とされる力を、トルクとして測定するが、これがそれぞれの粘度に相当する。その試験片は一般的には、1分間で100℃に予備加熱し、それから4分かけて測定するが、その間温度は一定に保たれる。粘度は、それぞれの試験条件と共に報告する:たとえば、ML(1+4)100℃(ムーニー粘度、ローターサイズL、予備加熱時間及び試験時間(分)、試験温度)。
【0096】
レオメーター(Vulcameter):
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)加硫プロファイル及びそれに伴う分析データは、ASTM D5289-95に従い、MDR 2000 Monsanto レオメーターで測定する。ゴムの95%が架橋された時点を、完全加硫時間として測定する。混合物を、転化率が95%になるまで、180℃で加熱した。200℃では、加硫時間は20分であった。
【0097】
破断時伸び、引張強度、50、100及び300モジュラス:
これらの測定は、DIN 53504(引張試験、ロッドS2、5回測定)に従い実施した。
【0098】
硬度:
DIN 53505に従うショアー硬度(ショアーA)を測定、23℃(3回測定)。
【0099】
反発弾性:
DIN 53512に従い、23℃での反発弾性を測定(3回測定)。
【0100】
圧縮永久歪み(CS):
100℃で72時間処理した後で、圧縮永久歪みを測定。測定は、DIN ISO 815に従い、実施した。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
参照例の比較例1、比較例2及び比較例3、並びに本発明実施例1から加硫物を製造した(それぞれの場合において、加硫温度は180℃及び200℃)。
【0105】
本発明の実施例1で得られた数値を、参照例の比較例1、比較例2及び比較例3での数値と比較すると、架橋速度(90%転化時間を目安として使用)は、180℃及び200℃のいずれでも、PEIを用いた場合の方が、ETU又はMTT(例2及び例3、表2)を用いた場合よりも遅いけれども、究極的には同程度のデルタ-トルク値(ΔS’)が得られ、従って同程度の架橋レベルを示しているということが分かる。それらとは対照的に、架橋剤を追加していない参照例の比較例1は、顕著に低いΔS’値を示し、従って、加硫物の架橋密度がより低いことを示している。
【0106】
全部の加硫物について、引張試験を実施した。ここでもまた、200モジュラス及び300モジュラスで同程度の値であることが、参照例の比較例2及び比較例3と、本発明の実施例1とが同程度の架橋密度であることを示している。さらにここでもまた、比較例1の参照例は、比較例2及び3並びに実施例1よりも、かなり低い架橋度を示している。
【0107】
実施例1の破断時伸び及び引張強度は、比較例2及び3に比較して、良好な値を示している。予想されるように、比較例1での値は、架橋度が低いために、顕著に高いレベルにある。
【0108】
圧縮永久歪みの値(72時間、100℃)は、200℃加熱では、実施例1が、比較例1及び3よりは良好であるが、比較例2にはやや劣る。
【0109】
実施例1が、それらの比較例より顕著に有利であることは、表2に示した物理的性質における変化率から分かるように、加熱温度に対する安定性からも明らかである。この場合、実施例1は、比較例1~3に比べて、顕著に低い変化を示している。
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
予想されるように、ゴム加硫物を、大気中、100℃で7日間保存すると、それらの混合物が、固化する。実施例1の加硫物は、200℃の加硫温度では、物理的性質における変化、特に、モジュラスの値における変化が相対的に小さいこと(表5参照)からも分かるように、3種の比較例に比べて、エージングに対する特に高い安定性を示している。
【国際調査報告】