(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】中性子捕捉療法システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240628BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20240628BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20240628BHJP
H05H 3/06 20060101ALI20240628BHJP
H05H 7/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61N5/10 S
A61N5/10 H
G21K5/02 N
G21K1/00 N
H05H3/06
H05H7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580383
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2022105433
(87)【国際公開番号】W WO2023284780
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110807235.1
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100219117
【氏名又は名称】金 亨泰
(72)【発明者】
【氏名】舒迪▲ゆん▼
(72)【発明者】
【氏名】▲貢▼秋平
【テーマコード(参考)】
2G085
4C082
【Fターム(参考)】
2G085BA14
2G085BA15
2G085BE07
4C082AA01
4C082AC07
4C082AE01
4C082AG13
4C082AR01
4C082AR02
4C082AT04
(57)【要約】
中性子捕捉療法システム(100)は、ビーム転送部(20)と、中性子ビーム発生部(30)が中性子ビームを発生させる過程において発生した反跳中性子との作用による二次放射線及び放射線損傷を低減することができる。中性子捕捉療法システム(100)は、加速器(10)と、ビーム転送部(20)と、中性子ビーム発生部(30)とを含み、加速器(10)は、荷電粒子を加速して荷電粒子ビームを発生させ、ビーム転送部(20)は、加速器により発生した荷電粒子ビームを中性子ビーム発生部(30)に転送し、中性子ビーム発生部(30)は、治療用中性子ビームを発生させ、中性子捕捉療法システム(100)は、ビーム転送部(20)に用いられるビーム転送遮蔽アセンブリ(60)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速器と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子ビームを得て、前記ビーム転送部は、前記加速器により発生した荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させる中性子捕捉療法システムであって、前記ビーム転送部に用いられるビーム転送遮蔽アセンブリを含む、ことを特徴とする中性子捕捉療法システム。
【請求項2】
前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、少なくとも部分的に移動可能又は取り外し可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項3】
前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを加速又は転送する転送管を含み、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記転送管を取り囲む第1遮蔽部材を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項4】
前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを加速又は転送する転送管と、前記転送管に設置され、かつ前記荷電粒子ビームを調整するビーム調整部とを含み、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記転送管に設置された第2遮蔽部材を含み、前記第2遮蔽部材は、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿う前記ビーム調整部の下流側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項5】
前記第2遮蔽部材は、板面が荷電粒子ビームの転送方向に垂直な遮蔽板である、ことを特徴とする請求項4に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項6】
前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿って前記転送管の両側に設置された第3遮蔽部材を含み、前記第2遮蔽部材と第3遮蔽部材は、一体に接続されるとともに、前記ビーム調整部及び前記転送管を少なくとも部分的に取り囲む、ことを特徴とする請求項4に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項7】
前記第3遮蔽部材は、荷電粒子ビームの転送方向に平行であり、かつ前記転送管の両側に設置された遮蔽板である、ことを特徴とする請求項6に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項8】
前記ビーム調整部は、前記荷電粒子ビームの軸を調整するX-Y磁石又は荷電粒子ビームの発散を抑制する四重極磁石又は荷電粒子ビームPの整形に用いられる四方向セプタム磁石又は荷電粒子ビーム走査磁石を含み、前記第2遮蔽部材は、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿って前記磁石の下流側に位置する少なくとも1つの遮蔽板を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項9】
照射室及び荷電粒子ビーム発生室を含み、被照射体は、前記照射室内に前記中性子ビーム照射による治療を受け、前記荷電粒子ビーム発生室は、前記加速器及び少なくとも一部の前記ビーム転送部を収容し、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記荷電粒子ビーム発生室内に設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項10】
前記ビーム転送部は、前記加速器に接続された第1転送部と、前記荷電粒子ビームの進行方向を切り替えるビーム方向切替器と、前記荷電粒子ビームを前記ビーム方向切替器から前記中性子ビーム発生部に転送する第2転送部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生室は、加速器室及びビーム転送室を含み、前記第1転送部は、前記加速器室から前記ビーム転送室まで延び、前記第2転送部は、前記ビーム転送室から前記中性子ビーム発生部まで延び、前記中性子ビーム発生部は、前記ビーム転送室と前記照射室との仕切り壁内に少なくとも部分的に設置され、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記ビーム転送室内に設置される、ことを特徴とする請求項9に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項11】
前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記ビーム方向切替器を取り囲む遮蔽シェルを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項12】
前記ビーム転送部は、ビーム収集器を更に含み、前記ビーム方向切替器は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部又は前記ビーム収集器に選択的に転送し、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記ビーム収集器の端部に設置された第1遮蔽板又は前記ビーム収集器の頂部に設置された遮蔽カバー又は前記ビーム収集器を囲む遮蔽スリーブを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項13】
前記第1転送部及び第2転送部は、前記荷電粒子ビームを加速又は転送する転送管と、前記転送管に設置されるとともに、前記荷電粒子ビームを調整するビーム調整部とを含み、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記第1転送部及び第2転送部の転送管にそれぞれ設置されるとともに、板面が前記荷電粒子ビームの転送方向に垂直な第2遮蔽板を含み、前記第2遮蔽板は、前記荷電粒子ビームの転送方向における前記ビーム調整部の下流側に位置し、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿って前記第1転送部及び第2転送部の両側に設置された第3遮蔽板を更に含み、前記第2遮蔽板における少なくとも一部と、前記第1遮蔽板と、前記第3遮蔽板と、は一体に接続されるとともに、前記加速器室と前記ビーム転送室との仕切り壁と閉構造を形成する、ことを特徴とする請求項12に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項14】
前記ビーム転送部は、転送補助装置を更に含み、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記転送補助装置を少なくとも部分的に取り囲むか又は覆う第4遮蔽部材を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項15】
前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、携帯型遮蔽板を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射システムに関し、特に中性子捕捉療法システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、既にがん治療の主な手段の1つとなった。しかしながら、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与え、また、腫瘍細胞の放射線に対する感受性の度合いが異なるため、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が高くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を低減するために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の構想が、放射線療法に適用され、また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法などの、生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている。このうち、中性子捕捉療法は、上記2つの概念を組み合わせたものであり、例えば、ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素含有薬剤が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線に比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
放射線療法の過程において、様々な放射線が発生し、例えばホウ素中性子捕捉療法の過程において低エネルギーから高エネルギーまでの中性子及び光子が発生し、これらの放射線は、人体の正常組織に対して異なる程度の損傷を与える可能性がある。したがって、放射線療法の分野において、どのように効果的な治療を実現するとともに、外部環境、医療スタッフ又は患者の正常組織への放射線汚染を低減するかは、極めて重要な課題である。
【0005】
したがって、上記問題を解決するために新たな技術手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様に係る中性子捕捉療法システムは、加速器と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子ビームを得て、前記ビーム転送部は、前記加速器により発生した荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記中性子捕捉療法システムは、前記ビーム転送部に用いられるビーム転送遮蔽アセンブリを含む。ビーム転送遮蔽アセンブリは、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部が中性子ビームを発生させる過程において発生した反跳中性子との作用による二次放射及び放射線損傷を低減することができる。
【0007】
好ましくは、前記ビーム転送遮蔽アセンブリの材料は、ホウ素を含有するPEである。
【0008】
好ましくは、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、少なくとも部分的に移動可能又は取り外し可能である。
【0009】
好ましくは、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを加速又は転送する転送管を含み、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記転送管を取り囲む第1遮蔽部材を含む。第1遮蔽部材は、転送管を取り囲む環状遮蔽スリーブであってもよい。
【0010】
好ましくは、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを加速又は転送する転送管と、前記転送管に設置され、かつ前記荷電粒子ビームを調整するビーム調整部とを含み、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記転送管に設置された第2遮蔽部材を含み、前記第2遮蔽部材は、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿う前記ビーム調整部の下流側に位置する。第2遮蔽部材は、板面が荷電粒子ビームの転送方向に垂直な遮蔽板であってもよい。
【0011】
更に、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿って前記転送管の両側に設置された第3遮蔽部材を含み、第3遮蔽部材は、荷電粒子ビームの転送方向に平行であり、かつ転送管の両側に設置された遮蔽板であってもよい。また更に、前記第2遮蔽部材と第3遮蔽部材は、一体に接続されるとともに、前記ビーム調整部及び前記転送管を少なくとも部分的に取り囲み、より効果的な遮蔽効果を発揮する。
【0012】
更に、前記ビーム調整部は、前記荷電粒子ビームの軸を調整するX-Y磁石又は荷電粒子ビームの発散を抑制する四重極磁石又は荷電粒子ビームPの整形に用いられる四方向セプタム磁石又は荷電粒子ビーム走査磁石を含み、前記第2遮蔽部材は、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿って前記磁石の下流側に位置する少なくとも1つの遮蔽板を含む。
【0013】
好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、照射室及び荷電粒子ビーム発生室を含み、被照射体は、前記照射室内に前記中性子ビーム照射による治療を受け、前記荷電粒子ビーム発生室は、前記加速器及び少なくとも一部の前記ビーム転送部を収容し、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記荷電粒子ビーム発生室内に設置される。
【0014】
更に、前記ビーム転送部は、前記加速器に接続された第1転送部と、前記荷電粒子ビームの進行方向を切り替えるビーム方向切替器と、前記荷電粒子ビームを前記ビーム方向切替器から前記中性子ビーム発生部に転送する第2転送部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生室は、加速器室及びビーム転送室を含み、前記第1転送部は、前記加速器室から前記ビーム転送室まで延び、前記第2転送部は、前記ビーム転送室から前記中性子ビーム発生部まで延び、前記中性子ビーム発生部は、前記ビーム転送室と前記照射室との仕切り壁内に少なくとも部分的に設置され、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記ビーム転送室内に設置される。
【0015】
また更に、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記ビーム方向切替器を取り囲む遮蔽シェルを含む。
【0016】
また更に、前記ビーム転送部は、ビーム収集器を更に含み、前記ビーム方向切替器は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部又は前記ビーム収集器に選択的に転送し、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記ビーム収集器の端部に設置された第1遮蔽板又は前記ビーム収集器の頂部に設置された遮蔽カバー又は前記ビーム収集器を囲む遮蔽スリーブを含む。また更に、前記第1転送部及び第2転送部は、前記荷電粒子ビームを加速又は転送する転送管と、前記転送管に設置されるとともに、前記荷電粒子ビームを調整するビーム調整部とを含み、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記第1転送部及び第2転送部の転送管にそれぞれ設置されるとともに、板面が前記荷電粒子ビームの転送方向に垂直な第2遮蔽板を含み、前記第2遮蔽板は、前記荷電粒子ビームの転送方向における前記ビーム調整部の下流側に位置し、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記荷電粒子ビームの転送方向に沿って前記第1転送部及び第2転送部の両側に設置された第3遮蔽板を更に含み、前記第2遮蔽板における少なくとも一部と、前記第1遮蔽板と、前記第3遮蔽板と、は一体に接続されるとともに、前記加速器室と前記ビーム転送室との仕切り壁と閉構造を形成し、閉空間内のビーム転送部全体を遮蔽する。
【0017】
好ましくは、前記ビーム転送部は、転送補助装置を含み、前記転送補助装置は、真空ポンプ、冷却媒体制御機構及びアルゴンガス制御機構を含むが、これらに限定されず、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、前記転送補助装置を少なくとも部分的に取り囲むか又は覆う第4遮蔽部材を含む。
【0018】
好ましくは、前記ビーム転送遮蔽アセンブリは、携帯型遮蔽板を更に含む。
【0019】
本発明の中性子捕捉療法システムにはビーム転送遮蔽アセンブリを設置することにより、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部が中性子ビームを発生させる過程において発生した反跳中性子との作用による二次放射及び放射線損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの構造概略図である。
【
図2】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムのレイアウト図である。
【
図3】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの転送管遮蔽部材の一実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を更に詳細に説明することにより、当業者であれば、明細書の文字を参照して実施することができる。
【0022】
図1に示すように、本実施例に係る中性子捕捉療法システムは、好ましくは、ホウ素中性子捕捉療法システム100であり、ホウ素中性子捕捉療法システム100は、ホウ素中性子捕捉療法を利用してがん治療を行う装置である。ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(B-10)を注射した患者200に対して中性子ビームNを照射して、がん治療を行い、患者200は、ホウ素(B-10)含有薬剤を服用するか又は注射された後、ホウ素含有薬剤が腫瘍細胞Mに選択的に集められ、次にホウ素(B-10)含有薬剤が熱中性子に対して高い捕捉断面を有するという特性を利用して、
10B(n,α)
7Li中性子捕捉及び核分裂反応により、
4He及び
7Liという2種類の重荷電粒子を発生させる。2種類の荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い飛程という特性を有し、α粒子の線エネルギー付与と飛程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、
7Li重荷電粒子の線エネルギー付与と飛程は、175keV/μm、5μmであり、2種類の粒子の総飛程は、約1つの細胞の大きさに相当するため、生体への放射線損傷を細胞レベルに抑え、正常組織にあまりにも大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を局所的に殺すという目的を達成することができる。
【0023】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、加速器10、ビーム転送部20、中性子ビーム発生部30及び治療台40を含む。加速器10は、荷電粒子(例えば、陽子、重陽子など)を加速し、陽子ビームのような荷電粒子ビームPを発生させ、ビーム転送部20は、加速器10により発生した荷電粒子ビームPを中性子ビーム発生部30に転送し、中性子ビーム発生部30は、治療用中性子ビームNを発生させ、かつ治療台40上の患者200に照射する。
【0024】
中性子ビーム発生部30は、ターゲットT、ビーム整形体31及びコリメータ32を含み、加速器10により発生した荷電粒子ビームPは、ビーム転送部20によりターゲットTに照射し、かつターゲットTと作用して中性子を発生させ、発生した中性子は、順にビーム整形体31及びコリメータ32を通過して治療用中性子ビームNを形成し、治療台40上の患者200に照射する。ターゲットTは、好ましくは、金属ターゲットである。必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速荷電粒子のエネルギー及び電流の大きさ、金属ターゲットの物理的・化学的特性などに応じて、適切な核反応を選択し、一般的に検討されている核反応は、7Li(p,n)7Be及び9Be(p,n)9Bであり、これらの2種類の反応は、いずれも吸熱反応である。これらの2種類の核反応は、エネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVであり、ホウ素中性子捕捉療法の理想的な中性子源がkeVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には、エネルギーが閾値よりわずかに高い陽子を金属リチウムターゲットに衝撃させることで、比較的低いエネルギーの中性子を発生させることができ、あまり多くの減速処理を必要とせずに臨床的に使用することができるが、金属リチウム(Li)及び金属ベリリウム(Be)の2種類のターゲットと閾値エネルギーの陽子との作用断面が高くなく、十分な中性子束を発生させるために、一般的に比較的高いエネルギーを持つ陽子を用いて核反応を引き起こす。理想的なターゲットは、中性子収率が高く、発生した中性子のエネルギー分布が熱外中性子エネルギー領域(以下に詳細に説明する)に近く、強い透過性を有する放射線があまり多く発生せず、安全で、安価で、操作しやすく、かつ耐高温などの特性を有するが、実際には全ての要件を満たす核反応を見つけることは不可能である。当業者に周知のように、ターゲットTは、Li、Be以外の金属材料で製造されてもよく、例えば、Ta又はW及びその合金などで形成される。加速器10は、線形加速器、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロンであってもよい。
【0025】
ビーム整形体31は、荷電粒子ビームPがターゲットTと作用して発生した中性子ビームNのビーム品質を調整することができ、コリメータ32は、中性子ビームNを集めることにより、中性子ビームNは、治療過程において高い標的性を有する。ビーム整形体31は、反射体311、減速体312、熱中性子吸収体313、放射線遮蔽体314及びビーム出口315を更に含み、荷電粒子ビームPがターゲットTと作用して発生した中性子のエネルギースペクトルが広いため、治療需要を満たす熱外中性子の以外、他の種類の中性子及び光子の含有量をできるだけ減少させて、操作者又は患者に損傷を与えることを回避する必要があるため、ターゲットTから出た中性子は、減速体312を通して高速中性子のエネルギー(>40keV)が熱外中性子エネルギー領域(0.5eV~40keV)に調整され、かつ熱中性子(<0.5eV)をできるだけ減少させる必要があり、減速体312は、高速中性子との作用断面が大きく、熱外中性子との作用断面が小さい材料で製造され、本実施例において、減速体312は、D2O、AlF3、Fluental(登録商標)、CaF2、Li2CO3、MgF2及びAl2O3のうちの少なくとも1種で製造され、反射体311は、減速体312を取り囲み、かつ減速体312を通過して周囲に拡散した中性子を中性子ビームNに反射して中性子の利用率を向上させ、中性子反射能力が高い材料で製造され、本実施例において、反射体311は、Pb又はNiのうちの少なくとも1種で製造され、減速体312は、後部に熱中性子吸収体313があり、熱中性子との作用断面が大きい材料で製造され、本実施例において、熱中性子吸収体313は、Li-6で製造され、減速体312を通過した熱中性子を吸収して中性子ビームNにおける熱中性子の含有量を減少させ、治療時に浅層正常組織に対して多すぎる線量を与えることを回避し、理解できるように、熱中性子吸収体は、減速体と一体であってもよく、減速体の材料にLi-6が含まれ、放射線遮蔽体314は、ビーム出口315以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽し、放射線遮蔽体314の材料は、光子遮蔽材料と中性子遮蔽材料のうちの少なくとも1種を含み、本実施例において、放射線遮蔽体314の材料は、光子遮蔽材料の鉛(Pb)と中性子遮蔽材料のポリエチレン(PE)を含む。理解できるように、ビーム整形体31は、更に他の構造であってもよく、治療に必要な熱外中性子ビームを得ればよい。コリメータ32は、ビーム出口315の後部に設置され、コリメータ32から出た熱外中性子ビームは、患者200に照射され、浅層正常組織を通した後に熱中性子に減速されて腫瘍細胞Mに到着し、理解できるように、コリメータ32は、除去されてもよく、他の構造であってもよく、中性子ビームは、ビーム出口315から出て患者200に直接的に照射される。本実施例において、患者200とビーム出口315との間に放射線遮蔽装置50が更に設置され、ビーム出口315から出たビームの患者の正常組織に対する放射線を遮蔽し、理解できるように、放射線遮蔽装置50が設置されなくてもよい。
【0026】
ターゲットTは、ビーム転送部20とビーム整形体31との間に設置され、ビーム転送部20は、荷電粒子ビームPを加速又は転送する転送管Cを有し、本実施例において、転送管Cは、荷電粒子ビームPの方向に沿ってビーム整形体31に伸び込み、かつ順に反射体311と減速体312を貫通し、ターゲットTは、減速体312内に設置され、かつ転送管Cの端部に位置して、高い品質の中性子ビームを得る。理解できるように、ターゲットは、他の設置方式を用いてもよく、更に、ターゲットを交換しやすくするか又は荷電粒子ビームをターゲットに均一に作用させるために、加速器又はビーム整形体に対して移動可能であってもよい。
【0027】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、照射室101及び荷電粒子ビーム発生室102を含み、治療台40上の患者200は、照射室101において中性子ビームNの照射による治療を受け、荷電粒子ビーム発生室102は、加速器10及び少なくとも一部のビーム転送部20を収容する。
図2に示すように、ビーム転送部20は、加速器10に接続された第1転送部21と、荷電粒子ビームPの進行方向を切り替えるビーム方向切替器22と、荷電粒子ビームPをビーム方向切替器22から中性子ビーム発生部30に転送し、発生した中性子ビームNを照射室101内の患者200に照射する第2転送部23とを含む。ビーム転送部20は、ビームを必要としない場合にビームを収集するか又は治療前に荷電粒子ビームPの出力を確認するビーム収集器24を更に含んでもよく、ビーム方向切替器22は、荷電粒子ビームPを正規の軌道から外してビーム収集器24に導くことができ、ビーム方向切替器22は、荷電粒子ビームPを中性子ビーム発生部30又は上記ビーム収集器24に選択的に転送する。
【0028】
荷電粒子ビーム発生室102は、加速器室1021及びビーム転送室1022を含んでもよく、第1転送部21は、加速器室1021からビーム転送室1022まで延び、第2転送部23は、ビーム転送室1022から中性子ビーム発生部30まで延び、中性子ビーム発生部30は、ビーム転送室1022と照射室101との仕切り壁W1内に少なくとも部分的に設置される。ビーム収集器24は、ビーム転送室1022内に設置され、理解できるように、他の位置、例えば、コンクリート壁内に設置されてもよい。
【0029】
ビーム方向切替器22は、荷電粒子ビームPの方向を偏向させる偏向電磁石と、荷電粒子ビームPの進行方向を制御する開閉電磁石とを含んでもよい。 第1転送部21及び第2転送部23は、転送管Cで構造され、転送管Cに設置されるとともに荷電粒子ビームPを調整するビーム調整部25を更に含んでもよく、ビーム調整部25は、荷電粒子ビームPの軸を調整するX-Y磁石251、荷電粒子ビームPの発散を抑制する四重極磁石252、荷電粒子ビームPの整形に用いられる四方向セプタム磁石253(図示せず)などを含む。第2転送部23のビーム調整部25は、必要に応じて荷電粒子ビーム走査磁石254を更に含んでもよく、荷電粒子ビーム走査磁石は、荷電粒子ビームPを走査し、荷電粒子ビームPのターゲットTに対する照射を制御し、例えば、荷電粒子ビームPのターゲットTに対する照射位置を制御する。
【0030】
中性子捕捉療法の過程において、特に中性子を発生させるターゲットTの近傍に大量の中性子を発生させるため、中性子の漏れをできるだけ回避する必要がある。一実施例において、少なくとも一部の空間(例えば、ビーム転送室1022、照射室101)を形成するコンクリートは、中性子遮蔽材料が添加されたコンクリートであり、例えば、ホウ素及び重晶石を含有するコンクリートであり、これにより中性子遮蔽空間を形成する。別の実施例において、室内(例えば、ビーム転送室1022、照射室101の天井、床、壁)のコンクリートの表面に中性子遮蔽板(図示せず)が設置され、例えば、ホウ素を含有するPE板が設置されて中性子遮蔽空間を形成する。そして、荷電粒子ビームPとターゲットTの作用により発生した中性子の出射方向は、ほとんど空間に分布し、ビーム整形体31が中性子を「整形する」過程において、大量の反跳中性子が発生し、この部分の反跳中性子は、放射線遮蔽の設計において重点的に考慮する必要がある部分であり、反跳中性子は、ビーム転送室1022のビーム転送部20の周囲に集まり、ビーム転送部20(例えば、転送管C及び転送管Cに設置された磁石)は、材料が一般的に鋼を含有し、中性子による照射を受けた後に半減期の長い放射性同位元素による二次放射が発生するため、ビーム転送部20に用いられるビーム転送遮蔽アセンブリ60を設置して、ビーム転送部20と、中性子ビーム発生部30が中性子ビームを発生させる過程において発生した反跳中性子との作用による二次放射及び放射線損傷を低減する。
【0031】
ビーム転送遮蔽アセンブリ60は、ビーム転送室1022内に設置され、磁石遮蔽部材61及び転送管遮蔽部材62を含む。磁石遮蔽部材61は、転送管Cに設置されるとともに、荷電粒子ビームPの転送方向に沿ってビーム調整部25の下流側に位置し、一実施例において、磁石遮蔽部材61は、板面が荷電粒子ビームPの転送方向に垂直な遮蔽板であり、各磁石に1つの遮蔽板を設置してもよく、各転送管Cの荷電粒子ビームPの転送方向の最下流の磁石の下流側に1つの遮蔽板を設置してもよく、磁石遮蔽部材61の材料は、ホウ素を含有するPEである。本実施例において、第1転送部21のビーム調整部25は、1つのX-Y磁石251と、2つの四重極磁石252とを含み、第2転送部23のビーム調整部25は、2つの四重極磁石252と、1つの荷電粒子ビーム走査磁石254とを含み、磁石遮蔽部材61は、第1転送部21のX-Y磁石251とビーム方向切替器22との間の転送管Cに設置された遮蔽板611、第2転送部23の各2つの磁石の間に設置された遮蔽板612、613、及び第2転送部23の荷電粒子ビーム走査磁石254と中性子ビーム発生部30との間に設置された遮蔽板614を含み、第2転送部23と中性子ビーム転送部30との間の距離が小さいため、より多くの磁石遮蔽部材61が設置されている。
【0032】
転送管遮蔽部材62は、転送管Cを取り囲む環状遮蔽スリーブ621(
図3に示す)であるか又は荷電粒子ビームPの転送方向に平行であり、かつ転送管Cの両側に設置された遮蔽板622、623であり、コストを低減するために、転送管遮蔽部材62の材料は、ホウ素を含有しないPEであってもよい。転送管遮蔽部材62が荷電粒子ビームPの転送方向に平行であり、かつ転送管Cの両側に設置された遮蔽板622、623である場合、転送管遮蔽部材62は、同時に磁石及びビーム転送部20上の他の部品に追加の遮蔽を提供し、一実施例において、少なくとも一部の磁石遮蔽部材61と転送管遮蔽部材62は、一体に接続されるとともに、少なくとも部分的にビーム調整部25及び転送管Cを取り囲み、より高い遮蔽効果を奏する。
【0033】
ビーム転送遮蔽アセンブリ60は、ビーム収集器24の端部に設置された遮蔽板63を更に含み、遮蔽板63は、ビーム収集器24とビーム方向切替器22とが接続された一端とは反対側の端部を少なくとも部分的に取り囲み、遮蔽板63の横断面形状は、略コの字状又は折れ線状であってもよい。転送管遮蔽部材62が荷電粒子ビームPの転送方向に平行であり、かつ転送管Cの両側に設置された遮蔽板622、623である場合、一実施例において、磁石遮蔽部材61における少なくとも一部と、転送管遮蔽部材62と、遮蔽板63と、は一体に接続され、かつ加速器室1021とビーム転送室1022との仕切り壁W2と閉構造を形成し、閉空間内のビーム転送部20全体を遮蔽する。本実施例において、転送管Cの一側に設置された遮蔽板622、ビーム収集器24の端部に設置された遮蔽板63、第2転送部23の荷電粒子ビーム走査磁石254と中性子ビーム発生部30との間に設置された遮蔽板614、転送管Cの他側に設置された遮蔽板623、及び加速器室1021とビーム転送室1022との仕切り壁W2は、順に接続されて閉構造を形成し、第1転送部21のX-Y磁石251とビーム方向切替器22との間に設置された遮蔽板611は、転送管Cの両側に設置された遮蔽板622、623にそれぞれ接続されている。ビーム収集器24の鋼材の含有質量が大きいため、二次放射を更に低減するために、ビーム収集器24の頂部に遮蔽カバー(図示せず)を設置してもよく、ビーム収集器24の外周に遮蔽スリーブ(図示せず)を設置してビーム収集器24を取り囲んでもよい。
【0034】
ビーム方向切替器22は、遮蔽シェル64で取り囲まれてもよく、ビーム方向切替器22と反跳中性子との作用による二次放射の発生を防止し、遮蔽シェル64の材料は、ホウ素を含有するPEであってもよい。
【0035】
ビーム転送遮蔽アセンブリ60は、操作者が携帯して一緒に移動し、操作者がビーム転送室1022に入ってターゲットを交換するなどのための携帯型遮蔽板65(図示せず)を更に含んでもよく、携帯型遮蔽板65は、ビーム転送部20により発生した二次放射が操作者に与える放射線損傷を更に低減することができ、携帯型遮蔽板65の材料は鉛であり、理解できるように、他の光子遮蔽材料であってもよく、中性子遮蔽材料を更に含んでもよい。
【0036】
ビーム転送部20は、転送補助装置を含み、ビーム転送遮蔽アセンブリ60は、転送補助装置を少なくとも部分的に取り囲むか又は覆う補助遮蔽部材66を更に含んでもよく、本実施例において、補助遮蔽部材66は、転送補助装置を取り囲む遮蔽ボックスであり、転送補助装置を覆うか又は取り囲む遮蔽シェル又は遮蔽スリーブであってもよい。転送補助装置は、真空排気用の第1真空ポンプ71及び第2真空ポンプ72と、冷却媒体の開閉及び流量を制御する制御機構73(具体的には、配水タンクである)と、アルゴンガスの開閉及び流量を制御する制御機構74(具体的には、アルゴンガスボックスである)とを含むが、これらに限定されない。補助遮蔽部材66の材料は、ホウ素含有ポリエチレンであってもよく、他の中性子遮蔽材料であってもよく、光子遮蔽材料を含んでもよい。
【0037】
中性子ビーム発生部30は、1つ以上の治療用中性子ビームNを生成するように1つ以上であってもよく、それに応じて、ビーム転送部20は、中性子ビーム発生部30に荷電粒子ビームPを転送する複数の転送部を含むとともに、各転送部に同様のビーム転送遮蔽アセンブリ60を設置してもよい。
【0038】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、準備室、制御室及び治療を補助する他の空間を含んでもよい。
【0039】
理解できるように、本実施例におけるコンクリート、仕切り壁、遮蔽板、遮蔽カバー、遮蔽スリーブ及び遮蔽シェルの材料は、他の中性子遮蔽材料に置換されてもよく、光子遮蔽材料を含んでもよく、アルミニウムが中性子によって活性化された後に発生した放射性同位元素の半減期が短いため、遮蔽板、遮蔽カバー、遮蔽スリーブ及び遮蔽シェルは、アルミニウム型材によって取り付けられてもよく、理解できるように、他の材料であってもよく、遮蔽板、遮蔽カバー、遮蔽スリーブ及び遮蔽シェルは、少なくとも部分的に移動可能又は取り外し可能であり、機器のメンテナンスを容易にする。
【0040】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明して、当業者が本発明を理解することを容易にするが、明らかに、本発明は、具体的な実施形態の範囲に限定されず、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定及び決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】