(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性組成物、並びにその組成物から製造された高分子複合樹脂
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240628BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240628BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20240628BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20240628BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240628BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20240628BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240628BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240628BHJP
H01B 7/295 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K3/26
C08K3/30
C08K3/20
C08K5/103
C08K5/3477
C08K5/54
C08L53/02
H01B7/295
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580385
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2021010526
(87)【国際公開番号】W WO2023277236
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085932
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523092380
【氏名又は名称】エイチディーシー ヒュンダイ エンジニアリング プラスティクス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パク,キュ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ワン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン-ハク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン-ヒョク
【テーマコード(参考)】
4J002
5G315
【Fターム(参考)】
4J002AE054
4J002BB031
4J002BB034
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB121
4J002BB151
4J002BB202
4J002BB212
4J002BD144
4J002BP013
4J002DA039
4J002DA057
4J002DE077
4J002DE139
4J002DE147
4J002DE236
4J002DG056
4J002DH027
4J002DH057
4J002EG039
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4J002EJ039
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4J002EU137
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4J002EW137
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5G315CA03
5G315CB02
5G315CB06
5G315CD02
5G315CD13
5G315CD15
(57)【要約】
本発明は、ケーブル被覆材料で使用できる難燃性高分子複合組成物に関し、より具体的には、多様な有機・無機物質の特別な組み合わせを介して難燃性及び耐熱性に優れ、硬度が低くて柔軟性、耐油性及び加工性に優れるうえ、機械的物性が特に向上したケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性組成物、並びにその組成物から製造された高分子複合樹脂に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂組成物45重量%~70重量%、カルシウム系難燃剤20重量%~35重量%、非ハロゲン系難燃剤1重量%~10重量%、及び架橋補助剤1重量%~10重量%を含む、ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物は、極性ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂が1:9~7:3の重量比で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項3】
前記極性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂に極性単量体がグラフトされた構造であって、前記極性単量体は、全体重量100重量部に対して0.1重量部~5重量部含まれることを特徴とする、請求項2に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項4】
前記極性単量体は、無水マレイン酸、アクリル酸、グリセリルメタクリレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一種以上であることを特徴とする、請求項3に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であることを特徴とする、請求項2に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項6】
前記極性ポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子量が50,000g/mol~500,000g/molであり、溶融流れ指数が1g/10min~10g/10minであり、ショア硬度(Shore D)は60以下であることを特徴とする、請求項2に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項7】
前記カルシウム系難燃剤は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項8】
前記カルシウム系難燃剤は、水分含有量が10重量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項9】
前記非ハロゲン系難燃剤は、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、及び窒素系難燃剤のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項10】
前記リン系難燃剤は、アンモニウムポリホスフェート、ペンタエリトリトール、赤リン、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、アルミニウムジエチルホスフィナート、ピロリン酸ピペラジン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であることを特徴とする、請求項9に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項11】
前記架橋補助剤は、トリアリールシアヌレート、トリアリールイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項12】
スチレン系ブロック共重合体、有機シラン、酸化防止剤、滑剤、及び着色剤の少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項13】
前記スチレン系ブロック共重合体は、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であることを特徴とする、請求項12に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項14】
前記スチレン系ブロック共重合体は1重量%~15重量%含まれ、前記有機シランは0.1重量%~2重量%含まれ、前記酸化防止剤は0.1重量%~7重量%含まれ、前記滑剤は0.1~5重量%含まれ、前記着色剤は0.1~3重量%含まれることを特徴とする、請求項12に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項15】
前記有機シランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり、
前記酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナート)、2,3-ビス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジド、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシフェニル)-プロピオナート]、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを含むリン系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオナートを含む硫黄系酸化防止剤、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり、
前記滑剤は、パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸アルカリ土類金属塩、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエステルポリオール、エルカアミド、オレイン酸アミド、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり、
前記着色剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、顔料、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であることを特徴とする、請求項12に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物で形成されたことを特徴とする、ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合樹脂。
【請求項17】
UL1581VW-1標準を満たす難燃性を有し、使用温度125℃以上の耐熱性を有することを特徴とする、請求項16に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合樹脂。
【請求項18】
請求項12に記載のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物で形成されたことを特徴とする、ケーブル被覆用難燃性高分子複合樹脂。
【請求項19】
請求項16に記載の高分子複合樹脂で形成された絶縁被覆層を1層以上含む、難燃性ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル被覆材料として使用できる難燃性高分子複合組成物に関し、より具体的には、多様な有機・無機物質の特別な組み合わせを介して難燃性及び耐熱性に優れ、硬度が低くて柔軟性及び加工性に優れるうえ、機械的物性が特に向上したケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性組成物、並びにその組成物から製造された高分子複合樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車用電気/電子装置及びエネルギー貯蔵装置(ESS)などの内部配線及び外部配線に用いられる絶縁ワイヤー、ケーブル及びコードは、難燃性、耐熱性、並びに電気的及び機械的特性(例えば、引張性及び耐摩耗性)を有しなければならない。
【0003】
電気自動車用電気/電子装置及びエネルギー貯蔵装置(ESS)の配線物質のために要求される、例えば、難燃性、耐熱性及び機械的特性(例えば、引張性及び耐摩耗性)の基準は、UL、JIS及びASTMなどに規定されている。具体的には、難燃性の場合、難燃性試験方法は、要求される水準(適用される用途)等によって異なる。したがって、事実上、前記配線物質が少なくとも要求される水準による難燃性を有することで十分である 例えば、UL1581(電気ワイヤー、ケーブル及び柔軟性コードに対する参考標準)に規定された垂直火炎試験(VW-1)、又はJIS C3005に規定された水平試験及び傾斜試験(ゴム/プラスチック絶縁ワイヤー試験方法)を通過すると、難燃性があると言及することができる。
【0004】
一般的に、電気自動車用ケーブル被覆物質としては、ポリ塩化ビニルやポリクロロプレン、ポリ塩素化ポリエチレンなどのようにハロゲンを含有するベース樹脂が使用されている。しかし、このようなハロゲンを含有するベース樹脂は、ハロゲン含有量が0.5%以下であり且つ毒性指数が1.5以下である難燃性被覆材料を得難いだけでなく、高温での熱的特性が不良であるという欠点があり、既存のハロゲン系難燃剤のハロゲン含有量に対する有害性環境規制も強化される実情である。そこで、ポリ塩化ビニル複合素材を置き換えた環境調和型非ハロゲン系難燃素材を用いたケーブル被覆物質が多数開発されている。
【0005】
最近では、ポリ塩化ビニルとハロゲン難燃剤を置き換えるために、ポリオレフィン及び水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を投入した難燃性組成物が開発されているが、このような組成物が難燃性能を発現するためには、金属水酸化物を過量で投入しなければならないので、電線の柔軟性や機械的物性が低下するという問題がある。
【0006】
従って、ハロゲン系難燃剤を使用しないため環境に優しいとともに、UL-1581及びJIS C3005に準拠した難燃等級などを満たすために、柔軟でありながら機械物性が高い環境調和型難燃性樹脂組成物が開発される必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、伸び率及び耐熱性が高く、硬度が低くて柔軟であり、難燃性に優れるうえ、機械的物性が向上したが、特に引張強度までもUL3817規格を満たすケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記ケーブル被覆用高分子複合組成物からなり、溶融流れ指数、伸び率及び耐熱性が高く、硬度が低くて柔軟であるので、加工性にも優秀であるうえ、機械的物性、特に引張強度が向上して電気車充電及びエネルギー貯蔵装置(ESS)用ケーブルに適した難燃性高分子複合樹脂及びその樹脂層で被覆されたケーブルを提供することである。
【0009】
本発明の目的は、以上で言及した目的に限定されるものではなく、明示的に言及していなくても、後述する発明の詳細な説明の記載から、通常の知識を有する者が認識することができる発明の目的も当然に含まれ得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物45重量%~70重量%、カルシウム系難燃剤20重量%~35重量%、非ハロゲン系難燃剤1重量%~10重量%、及び架橋補助剤1重量%~10重量%を含む、ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物を提供する。
【0011】
好適な実施例において、前記ポリオレフィン系樹脂組成物は、極性ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂が1:9~7:3の重量比で含まれる。
好適な実施例において、前記極性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂に極性単量体がグラフトされた構造であって、前記極性単量体は、全体重量100重量部に対して0.1重量部~5重量部含まれる。
好適な実施例において、前記極性単量体は、無水マレイン酸、アクリル酸、グリセリルメタクリレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一種以上である。
好適な実施例において、前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種である。
好適な実施例において、前記極性ポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子量が50,000g/mol~500,000g/molであり、溶融流れ指数が1g/10min~10g/10minであり、ショア硬度(Shore D)は60以下である。
【0012】
好適な実施例において、前記カルシウム系難燃剤は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種である。
好適な実施例において、前記カルシウム系難燃剤は、水分含有量が10重量部以下である。
【0013】
好適な実施例において、前記非ハロゲン系難燃剤は、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、及び窒素系難燃剤のいずれかである。
【0014】
好適な実施例において、前記リン系難燃剤は、アンモニウムポリホスフェート、ペンタエリトリトール、赤リン(red phophorus)、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、アルミニウムジエチルホスフィナート、ピロリン酸ピペラジン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種である。
【0015】
好適な実施例において、前記架橋補助剤は、トリアリールシアヌレート、トリアリールイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種である。
【0016】
好適な実施例において、スチレン系ブロック共重合体、有機シラン、酸化防止剤、滑剤、及び着色剤の少なくとも一種をさらに含む。
好適な実施例において、前記スチレン系ブロック共重合体は、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種である。
好適な実施例において、前記スチレン系ブロック共重合体は1重量%~15重量%含まれ、前記有機シランは0.1重量%~2重量%含まれ、前記酸化防止剤は0.1重量%~7重量%含まれ、前記滑剤は0.1~5重量%含まれ、前記着色剤は0.1~3重量%含まれる。
【0017】
好適な実施例において、前記有機シランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり、
前記酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナート)、2,3-ビス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジド、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシフェニル)-プロピオナート]、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを含むリン系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオナートを含む硫黄系酸化防止剤、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり、
前記滑剤は、パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸アルカリ土類金属塩、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエステルポリオール、エルカアミド、オレイン酸アミド、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり、
前記着色剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、顔料、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種である。
【0018】
また、本発明は、上述したいずれかのケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物で形成されたことを特徴とする、ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合樹脂を提供する。
好適な実施例において、前記ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合樹脂は、UL1581VW-1標準を満たす難燃性を有し、使用温度125℃以上の耐熱性を有する。
また、本発明は、上述したケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物で形成されたことを特徴とする、ケーブル被覆用難燃性高分子複合樹脂を提供する。
また、本発明は、上述した高分子複合樹脂で形成された絶縁被覆層を1層以上含む、難燃性ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物によれば、伸び率及び耐熱性が高く、硬度が低いため柔軟であり、押出加工性に優れるうえ、機械的物性、特に引張強度までもUL3817規格を満たすので、電気車充電ケーブル及びエネルギー貯蔵装置(ESS)ケーブルの被覆物質に適した特性を有する。
【0020】
本発明の難燃性高分子複合樹脂及びその樹脂層で被覆されたケーブルは、UL1581VW-1だけでなく、UL3817標準を満たす難燃性及び機械的物性を有する。
【0021】
これらの本発明の技術的効果は、以上で言及した範囲に限定されるものではなく、明示的に言及していなくても、後述する発明の実施のための具体的内容の記載から、通常の知識を有する者が認識することができる発明の効果も当然に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明で使用する用語は、特定の実施例を説明するために使用されたものに過ぎず、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、発明の説明に記載されている特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらの組み合わせの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0024】
「第1」、「第2」などの用語は、様々な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素は、これらの用語によって限定されてはならない。これらの用語は、ある構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名でき、これと同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名できる。
【0025】
他に定義されない限り、技術的又は科学的用語を含めてここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されている用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本発明で明確に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0026】
構成要素を解釈するにあたり、別途の明示的な記載がなくても、誤差範囲を含むものと解釈する。特に、程度の用語「弱」や「実質的に」などが使用される場合、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値又はその数値に近接した意味で使用されるものと解釈されることができる。また、記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、別に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値の含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指し示す場合、特に指摘されない限り、最小値から最大値の含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0027】
時間関係についての説明の場合、例えば、「…後に」、「…に続いて」、「…の次に」、「…の前に」等で時間的先後関係が説明される場合、「直ちに」又は「直接」が使用されない限り、連続的でない場合も含む。
【0028】
以下、添付図面及び好適な実施例を参照して本発明の技術的構成を詳細に説明する。
【0029】
ところが、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、様々な形態で、同じ参照番号は同じ構成要素を示す。
【0030】
本発明の技術的特徴は、多様な有機・無機物質の特別な組み合わせによって難燃性及び耐熱性に優れるうえ、硬度が低いため柔軟性及び押出加工性に優れ、機械的物性、特に引張強度までもUL3817規格を満たして電気車充電ケーブル及びエネルギー貯蔵装置(ESS)用充電ケーブルの被覆物質に適した高耐熱特性を有するケーブル用難燃性高分子複合組成物にある。
【0031】
したがって、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物は、ポリオレフィン系樹脂組成物45重量%~70重量%、カルシウム系難燃剤20重量%~35重量%、非ハロゲン系難燃剤1重量%~10重量%、及び架橋補助剤1重量%~10重量%を含む。必要に応じて、スチレン系ブロック共重合体、有機シラン、酸化防止剤、滑剤及び着色剤の少なくとも一種をさらに含むことができる。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、極性ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂で構成されさえすれば限定されないが、一実施形態として、極性ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン係樹脂が1:9~7:3の重量比で含まれることができる。これは、1:9未満であれば、添加剤との相溶性の不足により物性低下の問題が発生するおそれがあり、7:3を超えれば、極性ポリオレフィン系樹脂内の残留開始剤によって耐熱性低下の問題が発生するおそれがあるためである。
【0033】
極性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂に極性官能基を導入して製造された変性樹脂であって、一実施形態として、ポリオレフィン系樹脂に極性単量体がグラフトされた構造であり得るが、ポリオレフィン系樹脂に極性官能基を含有する極性単量体を反応押出によってグラフト(Grafting)反応させて得ることができる。このような極性ポリオレフィン系樹脂を得るためのグラフト反応には、反応開始剤を添加することができるが、反応開始剤は、有機過酸化物などであってもよい。
【0034】
結果的に、極性ポリオレフィン系樹脂は、主鎖であるポリオレフィン系樹脂、主鎖にグラフトされた極性単量体及び極性単量体に含有された極性官能基を含むものであり得るが、極性単量体は、無水マレイン酸、アクリル酸、グリセリルメタクリレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一種以上であってもよく、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一種以上であってもよい。
【0035】
極性ポリオレフィン系樹脂に含まれる極性単量体のグラフト量は、特に限定されないが、一実施形態として、極性ポリオレフィン系樹脂100重量部を基準として0.1~5重量部であってもよい。これは、0.1重量部未満であれば、ポリオレフィン系樹脂の改質効果が大きくないおそれがあり、5重量部超過であれば、加工性が低下し、黄変するという欠点が発生するおそれがあるためである。
【0036】
一実施形態として、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に含まれる極性ポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子量が50,000g/mol~500,000g/molであり、溶融流れ指数が1g/10min~10g/10min(230℃、2.16kgf)であり、ショア硬度(Shore D)が60以下であってもよい。ショア硬度の下限値は、特に限定されないが、例えば、20以上又は30以上であってもよい。極性ポリオレフィン系樹脂の各物性が上記の数値範囲から外れる場合、最終的に得られる本発明の電気車ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物の溶融流れ指数、ショア硬度(Shore D)、引張強度、伸び率などの物理的物性が要求値から外れるおそれがある。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂は、公知の全てのオレフィン係樹脂が使用できるが、一実施形態として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であってもよい。
【0038】
このような特性を有するポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に45~70重量%の含有量で含まれることができる。これは、ポリオレフィン系樹脂組成物の含有量が45重量%未満であれば、Filler loadingの不足で押出外観及び加工性が低下するおそれがあり、70重量%超過であれば、難燃剤の含有量の不足による高分子複合樹脂の難燃性が低下するおそれがあるためである。
【0039】
カルシウム系難燃剤は、高分子複合組成物の難燃性を向上させるための構成要素である。カルシウム系難燃剤は、難燃性を有するカルシウム系化合物であれば限定されないが、一実施形態として、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一種以上であってもよい。
【0040】
必要に応じて、他の化合物との相溶性を高めるためにカルシウム系難燃剤の表面を改質して使用することもできるが、一実施形態として、カルシウム系難燃剤は、シラン又はステアリン酸でその表面がコーティングされるように改質されたものであってもよい。
【0041】
本発明で使用されるカルシウム系難燃剤は、水分含有量が10重量部以下のものであって、平均粒径1~20μmのものであり得るが、平均粒径は、市販のレーザー回折散乱式粒度分布測定器、例えばマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、電子顕微鏡写真から任意に200個の粒子を抽出し、平均粒径を算出してもよい。
【0042】
このような特性を有するカルシウム系難燃剤は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に20~35重量%の含有量で含まれ得るが、20重量%未満であれば、難燃性が低下するおそれがあり、35重量%超過であれば、押出加工性及び押出外観の品質が低下するおそれがある。
【0043】
非ハロゲン系難燃剤は、難燃性を発揮するための構成要素であって、
図1に示された非ハロゲン系難燃剤のうち、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤及び窒素系難燃剤のいずれかであってもよい。金属水酸化物系難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどを含むことができ、窒素系難燃剤は、メラミン樹脂、メラミンシアヌレートなどを含むことができ、リン系難燃剤は、アンモニウムポリホスフェート、ペンタエリトリトール、赤リン、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、アルミニウムジエチルホスフィナート、ピロリン酸ピペラジン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一種以上であることができる。難燃剤は、シラン系又はチタネート系カップリング剤で表面処理でき、表面処理された難燃剤は、高分子複合樹脂内での分散性を向上させることができる。
【0044】
このような特性を有する非ハロゲン系難燃剤は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に1~10重量%の含有量で含まれることができるが、UL1581VW-1標準を満たすことができる十分な含有量が使用できる。非ハロゲン系難燃剤の含有量が1重量%未満であれば、難燃性高分子複合組成物の難燃性が不十分であり、10重量%超過であれば、柔軟性、伸張性、押出性などの成形加工性が低下するおそれがあり、押出外観の低下だけでなく、電線表面の白化現象が現れるおそれがある。
【0045】
架橋補助剤は、本発明の高分子複合樹脂製造時の架橋特性を向上させ且つ耐熱及び耐油特性を向上させるための構成要素であって、通常、ポリオレフィン系樹脂に使用可能な全ての架橋補助剤が使用できる。一実施形態として、トリアリールシアヌレート、トリアリールイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一種以上であってもよい。
【0046】
架橋補助剤は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に1~10重量%の含有量で含まれ得るが、架橋補助剤の含有量が1重量%未満であれば、組成物の架橋効率が低くなって物性が低下し、10重量%超過であれば、樹脂の外部に溶出して品質の低下だけでなく、照射架橋時の過度な架橋反応による伸び率の低下が引き起こされるおそれがある。
【0047】
スチレン系ブロック共重合体は、一種のゴム成分であって、絶縁材料として含まれ得るが、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり得る。
スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体は、一実施形態として、スチレンの含有量が10重量%~40重量%以内で含まれて形成されたものであってもよく、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体は、一実施形態として、スチレンの含有量が20重量%~50重量%以内で含まれて形成されたものであってもよい。
【0048】
また、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体は、一実施形態として、溶融流れ指数が0.1g/10min~10g/10min(190℃、2.16kg、10分)、ショア硬度(Shore A)が90以下のものであってもよい。スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体は、一実施形態として、溶融流れ指数が0.1g/10min~10g/10min(190℃、2.16kg、10分)、ショア硬度(shore A)が50~80のものであってもよい。
【0049】
このような特性を有するスチレン系ブロック共重合体は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に1重量%~15重量%の含有量で含まれることができるが、これは、1重量%未満であれば、硬度が高くなって柔軟性に問題があり、15重量%超過であれば、引張強度が低くなる問題だけでなく、極性ポリオレフィン系樹脂の縮合反応を阻害して難燃性に問題があるためである。
【0050】
有機シランは、ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に塩基性官能基を導入するための構成要素であって、シリコン原子(Si)を中心に水素原子、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルコキシ基、二重結合が一つ以上含まれた炭素数2~10のアルケニル基が結合された有機化合物であってもよい。
【0051】
したがって、有機シランは、極性オレフィン系樹脂のマレイン酸(maleic acid)と縮合反応をするが、その過程で水が生成されるので、酸素指数40%以上の高難燃性が発現するおそれがある。
【0052】
一実施形態として、有機シランは、ヒドロキシ基及びアルコキシ基の中から選ばれた官能基が一つ以上含まれさえすれば限定されないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた1種以上であってもよい。
【0053】
このような特性を有する有機シランは、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に0.1~2重量%の含有量で含まれることができるが、これは、0.1重量%未満であれば、酸塩基反応の低下により難燃性高分子複合組成物の難燃性が向上しないおそれがあり、2重量%超過であれば、溶融流れ指数の低下により押出加工性が低下するおそれがあるためである。
【0054】
酸化防止剤は、酸化防止及び耐熱特性の向上のための構成要素であって、公知の全ての酸化防止剤を使用することができるが、一実施形態として、フェノール系1次酸化防止剤、リン系2次酸化防止剤、硫黄系2次酸化防止剤、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたものであってもよい。
【0055】
フェノール系1次酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナート)、2,3-ビス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジド、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナート]、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり、リン系2次酸化防止剤は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが含まれることができ、硫黄系2次酸化防止剤は、ジステアリルチオジプロピオナートが含まれることができる。
【0056】
このような特性を有する酸化防止剤は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に0.1~7重量%含まれることができるが、これは、0.1重量%未満であれば、酸化防止及び耐熱特性を向上させる効果を期待することができず、7重量%超過であれば、電線表面の析出による白化現象が発生するおそれがあるためである。
【0057】
滑剤は、加工性を向上させるための構成要素であって、当分野において通常使用される全ての滑剤が使用できるが、一実施形態として、重量平均分子量が100~1,000の範囲である低分子量のパラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸アルカリ土類金属塩、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンポリマー、ポリエステルポリオール、エルカアミド、オレイン酸アミド、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれたいずれか一種であり得る。
【0058】
上述した特性を有する滑剤は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に0.1~5重量%含まれることができるが、これは、0.1重量%未満であれば、加工性を向上させる効果を期待することができず、5重量%超過であれば、混合物の分散低下及び低分子ガス発生による外観不良が発生するおそれがあるためである。
【0059】
着色剤は、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物にカラーを付与する構成要素であって、通常の着色剤をさらに含むことができる。一実施形態として、着色剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、顔料及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるが、本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物に0.1~3重量%含まれ得るが、これは、0.1重量%未満であれば、所望のカラーを実現することができず、3重量%超過であれば、溶融流れ指数、引張強度及び伸び率を減少させる問題が発生するおそれがあるためである。
【0060】
次に、本発明のケーブル被覆用高分子複合樹脂は、上述した成分を含むケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物で形成できる。本発明のケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物からケーブル被覆用高分子複合樹脂を得るために、樹脂を作る公知のあらゆる方法を使用することができるが、一実施形態として、ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物を混合した混合原料を二軸押出機(twin screw extruder)、ニーダー(Kneader)、バンバリーミキサー(Banbery mixer)などに投入して溶融加工して得ることができる。
【0061】
本発明のケーブル被覆用高分子複合樹脂は、UL1581VW-1標準を満たす高難燃性を有し、使用温度125℃以上の耐熱性を有するだけでなく、ショア硬度(Shore A)が75~90と低い方であって柔軟であるため、電気車充電ケーブル及びエネルギー貯蔵装置(ESS)ケーブルの被覆として使用するのに適している。
【0062】
次に、本発明の難燃性ケーブルは、上述した構成の高分子複合樹脂によって形成される絶縁被覆層で導体を被覆させて製造できる。具体的に、銅又はアルミニウムなどの導体上にケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物を溶融加工して製造された高分子複合樹脂で絶縁被覆層を形成することにより製造できるが、高分子複合樹脂で形成された絶縁被覆層を1層以上形成することができる。すなわち、低圧ケーブルを製造する場合には、単層押出機によって1層のみを被覆し、高圧ケーブルを製造する場合には、2層又は3層押出機などによって多層に被覆することができるためである。
【0063】
このように、本発明の高分子複合樹脂は、高難燃性と優れた機械的物性を有するうえ、ケーブル製造のための押出成形過程で押出機内の圧力上昇が少なくて長時間にわたって安定して押出加工することが可能である。
【0064】
実施例1~12
下記表1に示すような組成成分を、提示された含有量で均一に混合して、ケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物1~12を準備した。
【0065】
【0066】
ここで、ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂と極性ポリエチレン/α-オレフィン樹脂が7:3の重量比で含まれたものが使用されたが、極性ポリエチレン/α-オレフィン樹脂は、無水マレイン酸0.5重量%がグラフトされた極性エチレン-α-オレフィンブロック共重合体であって、溶融流れ指数が0.8g/10minである。スチレン系ブロック共重合体は、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体が使用された。使用されたスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体は、溶融流れ指数1g/10min、ショア硬度72の特性を有する。カルシウム系難燃剤として、ステアリン酸でコーティングされた炭酸カルシウム(粒子サイズ:1.5μm)が使用され、有機シランとしてプロピルトリメトキシシランが使用され、非ハロゲン系難燃剤としてはリン系難燃剤であるアルミニウムジエチルホスフィナートが使用された。架橋補助剤としては、トリメチロールプロパントリアクリレートが使用された。滑剤としては、ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体50重量%マスターバッチ(キャリア樹脂:ポリエチレン)が使用され、使用された酸化防止剤は、次の通りである。A:ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナート]、B:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、C:2’,3-ビス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジド、D:ジステアリルチオジプロピオナート
【0067】
実施例13~24
実施例1~12で得られたケーブル被覆用高耐熱性及び難燃性高分子複合組成物1~12を溶融させた後、加工設備を用いて高分子複合樹脂1~12を製造した。ここで、加工設備は30φ二軸押出機(twin screw extruder、L/D40)を使用し、加工温度は100~230℃であった。
【0068】
比較例1~8
下記表2に示している組成成分を提示された含有量で均一に混合して比較例組成物1~8を準備した。
【0069】
【0070】
比較例9~16
比較例1~8で得られた比較例組成物1~8を実施例13と同様にして比較例複合樹脂1~8を製造した。
【0071】
実験例
実施例13~24で製造された高分子複合樹脂1~12、及び比較例9~16で製造された比較例樹脂1~8を対象に試験片を製作し、次の通りに物性を測定し、その結果を表3に示す。
【0072】
1.常温引張強度及び伸び率の評価
IEC60811-501規格に準じて、508mm/minの速度で、実施例及び比較例で得られたそれぞれの試験片に対して常温引張強度及び伸び率を評価した。合格基準は、引張強度が13.79MPa以上であり、伸び率は300%以上である。
【0073】
2.耐熱性(Heat resistance)の評価
KS M 6518規格に準じて、試験片を158℃で168時間加熱した後、引張強度及び伸び率を測定し、UL3817製品規格の基準に基づいて初期値と同一であるときを100%にして20%未満の変化率を有するとき、合格と評価した。
【0074】
3.難燃性の評価
UL1581VW-1規格に準ずるケーブルを製作した後、実施例及び比較例でそれぞれ製作されたケーブルを垂直に立てて15秒接炎(5回反復)した後の残炎から消火時間を評価したが、5回接炎における残炎消火時間を合算して60秒以内であるとき、合格と評価した。
【0075】
4.外観の評価
UL3817規格内の外観関連数値化された評価方法がないが、表面突起や気孔などの外観不良がないとき、合格と評価した。
【0076】
表3から、実施例13~24で得られた高分子複合樹脂1~12はいずれも、UL1581VW-1標準を満足する難燃性を示し、具体的に提示してはいないが、ショア硬度(shore D)が42~44水準と良好であり、耐熱性テストでその変化率が10%以内であって、合格基準である20%未満を顕著に満足するだけでなく、引張強度及び伸び率も要求値を全て満足することが分かる。
【0077】
【0078】
これに対し、比較例樹脂1は、ポリオレフィン系樹脂は含有量未満、カルシウム系難燃剤は含有量以上で含まれた組成物で製造され、難燃性を除けば、残りの全ての基準を満たさないことが分かる。比較例樹脂2は、比較例樹脂1と同様に、ポリオレフィン系樹脂は含有量未満、カルシウム系難燃剤は含有量以上で含まれた組成物で製造されたが、比較例樹脂1よりもポリオレフィン系樹脂の含有量がさらに多く含まれ、カルシウム系難燃剤はさらに少なく含まれることにより、比較例樹脂2は、比較例樹脂1と比較して引張強度及び伸び率が合格基準以下であったが、さらに良い結果を示し、難燃性、耐熱性及び外観は合格であったことが分かる。比較例樹脂3及び4はいずれも、ポリオレフィン系樹脂は含有量内、カルシウム系難燃剤は含有量未満で含まれた組成物で製造され、難燃性が合格基準に達していないが、残りの基準は合格基準を通過した。ただし、比較例樹脂4の場合は、比較例樹脂3と比較して、リン系難燃剤が含まれないため難燃性がより良くなく、有機シランが含まれないため引張強度及び伸び率が劣ることが分かる。比較例樹脂5は、架橋補助剤が含まれないためポリオレフィン系樹脂が好適な含有量で含まれて範囲内にあるが、架橋がうまく行われず、引張強度及び高温での耐熱性を満足しないことが分かる。比較例樹脂6は、カルシウム系難燃剤が含有量範囲未満で含まれた組成物で製造され、耐熱性及び外観において合格基準未満であり、比較例の樹脂7は、カルシウム系難燃剤の含有量が最適範囲よりもさらに多い含有量で含まれた組成物で製造され、耐熱性基準を満たしておらず、比較例樹脂8は、ポリオレフィン系樹脂が最適範囲よりもさらに少なく含まれた組成物で製造され、引張強度が要求値に達していないことが分かる。
【0079】
本発明は、上述した好適な実施例を挙げて説明したが、前記実施例に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲内で、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な変更と修正が可能である。
【国際調査報告】