(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】サポウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20240628BHJP
C12N 15/40 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/866 20060101ALI20240628BHJP
A61K 39/125 20060101ALI20240628BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C12N15/40
C12N15/866 Z
A61K39/125
A61P31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580391
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022035211
(87)【国際公開番号】W WO2023278373
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523237349
【氏名又は名称】ブイエスティー エルエルシー ディービーエー メジン ラボ
【氏名又は名称原語表記】VST LLC DBA MEDGENE LABS
【住所又は居所原語表記】1006 32nd Avenue, Brookings, South Dakota 57006 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ヨン アラン, ジョン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
【Fターム(参考)】
4B064AG32
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C085AA03
4C085BA52
4C085CC05
4C085DD62
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE06
4C085GG04
(57)【要約】
本発明は、下痢性疾患を引き起こす病原体に対する免疫において使用され得る抗原を含む、サポウイルス抗原以外の抗原を含む免疫原性組成物を含む、サポウイルスの免疫原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物を記載する。開示される免疫原性組成物を用いて免疫応答を誘発する方法、及びサポウイルス感染を治療する方法もまた記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サポウイルス由来の免疫原性ポリペプチド及び/又はペプチドを産生するための方法であって、任意選択的に、前記免疫原性ポリペプチド及び/又は前記ペプチドを、1つ以上のアジュバントと混合又は共発現させる、方法。
【請求項2】
前記ポリペプチド及び/又は前記ペプチドの発現を誘導する条件下で、核酸で形質転換された宿主細胞を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫原性ポリペプチド及び/又は前記ペプチドが組換えサブユニットワクチンを含み、このような発現されたポリペプチド及び/又はペプチドがバキュロウイルス/昆虫細胞の技法を用いて生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチド及び/又は前記ペプチドが、配列番号2、配列番号8、配列番号15、配列番号21又はこれらの組み合わせに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サポウイルス由来の免疫原性ポリペプチド及び/又は前記ペプチドをコードする前記核酸が、化学合成によって調製される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記サポウイルス由来の免疫原性ポリペプチド及び/又は前記ペプチドをコードする前記核酸が、プライマーベースの増幅法を用いて生成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プライマーベースの増幅法がPCRである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
i)配列番号2、配列番号8、配列番号15、配列番号21及びこれらの組み合わせの群に示されるアミノ酸からなる群から選択されるポリペプチド、又はii)配列番号2、配列番号8、配列番号15、配列番号21又はこれらの組み合わせに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、免疫原性組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物を投与することを含む、対象において免疫学的応答を誘発する方法。
【請求項10】
アジュバントを投与することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫原性組成物を前記対象に投与することが、局所投与、非経口投与又は粘膜投与を介して行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記投与が複数回の投与によるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
第1の免疫原性組成物及び第2の免疫原性組成物が同じである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1の免疫原性組成物及び第2の免疫原性組成物が異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
治療有効量の請求項8に記載の免疫原性組成物を含む、治療を必要とする対象におけるサポウイルス感染の治療に使用するための薬剤。
【請求項16】
サポウイルスVP1タンパク質をコードする単離された組換え核酸であって、前記コード核酸が、i)配列番号1、配列番号7、配列番号14、配列番号20、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される配列、又はii)配列番号1、配列番号7、配列番号14、配列番号20又はこれらの組み合わせに示される核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸を含む、単離された組換え核酸。
【請求項17】
前記コード核酸がベクターに組み込まれる、請求項16に記載の単離された組換え核酸。
【請求項18】
前記ベクターがバキュロウイルスベクターである、請求項17に記載の単離された組換え核酸。
【請求項19】
前記ベクターが宿主細胞に含まれている、請求項18に記載の単離された組換え核酸。
【請求項20】
前記宿主細胞が昆虫細胞である、請求項19に記載の単離された組換え核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、サポウイルス(Sapovirus)に対する免疫応答を誘発する組成物に関する。特に、本発明は、サポウイルスの免疫原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)に関する。更に、免疫原性組成物は、サポウイルス抗原以外の抗原を含有し得る。本明細書に開示される免疫原性組成物を用いて免疫応答を誘発する方法、及びサポウイルス感染を治療する方法も記載される。
【背景技術】
【0002】
サポウイルス(サッポロ様ウイルスとしても知られている)は、急性胃腸炎の病原体である。サポウイルスは、一本鎖のポジティブセンスゲノムRNAを含む、直径が27~35nmの小型の非エンベロープウイルスのカリシウイルス科のメンバーである。
【0003】
ウイルスの天然宿主はヒト及びブタである。ウイルスは、経口/糞便の接触を介して伝染する。最も一般的な症状には、下痢及び嘔吐が含まれる。サポウイルスは、1977年、札幌市(日本)の児童養護施設で発生した胃腸炎から発見された。
【0004】
1~4日の潜伏期間後、病気の徴候が現れ始める。サポウイルスの症状は、ノロウイルスの症状と非常に類似している。最も一般的な症状は嘔吐及び下痢であるが、更なる症状が生じる場合があり、発熱は非常に稀である。多くの場合、1~4日の潜伏期間の後に症状が出始めるが、無症状のケースもある。症状がなくても、一般的な伝染経路である経口-糞便経路でウイルスを広める可能性はある。
【0005】
サポウイルス感染に関連した胃腸炎を有する対象を治療するための改善された治療法、及び感染の拡大を予防するための方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、特にサブユニットワクチンの一部として、サポウイルス抗原を含む免疫原性組成物を提供する。
【0007】
実施形態において、アジュバントと混合又は共発現され得るサポウイルス由来の免疫原性ポリペプチド及び/又はペプチドを産生するための方法が開示される。免疫原性組成物は、本明細書に記載される1つ以上のポリペプチド及び/又はアジュバントを含み得る。例えば、免疫原性組成物は、下痢性疾患を引き起こす病原体に対する免疫化において使用され得る他の抗原(例えば、ロタウイルス由来の抗原)を含み得る。
【0008】
実施形態では、ポリペプチド発現を誘導する条件下で、本明細書に記載される核酸で形質転換された宿主細胞を培養する工程を含む、ポリペプチドを産生するための方法が開示される。関連する態様において、サポウイルスタンパク質は、組換え技術によって発現され、組換え抗原性サブユニットを含む免疫原性組成物を開発するために使用することができ、このような発現されたポリペプチドは、バキュロウイルス/昆虫細胞の技法を用いて生成される。
【0009】
一態様において、サポウイルス由来タンパク質又はポリペプチドをコードする核酸が化学合成によって(少なくとも部分的に)調製される、核酸を産生するための方法が開示される。関連する態様において、この方法は、プライマーベースの増幅法(例えば、PCR)を使用して核酸を増幅することを含む。関連する態様において、このような反応のためのプライマーには、配列番号3、4、5、6、9、10、11、12、13、22、23、24、25、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
別の態様において、サポウイルス由来ポリペプチド又はその断片を対象に投与することを含む、タンパク質複合体を産生するための方法が開示される。関連する態様において、この方法は、サポウイルス由来ポリペプチドを薬学的に許容される担体又は希釈剤と混和することを含む。更に関連する態様において、組成物は、配列番号2、配列番号8、配列番号15、配列番号21又はこれらの組み合わせに示されるポリペプチドを含み得る。なお更に関連する態様において、サポウイルスポリペプチドはVP1を含む。別の態様において、組成物は、1つ以上のサポウイルスVP1を含有してもよく、1つ以上のVP1は、1つ以上の株に由来する。
【0011】
実施形態では、本開示の組成物を投与することを含む、対象において免疫学的応答を誘発する方法が開示される。関連する態様において、本方法は、アジュバントを投与することを更に含む。更に関連する態様において、本方法は、局所、非経口又は粘膜経路を介して対象に免疫原性組成物を投与することを含む。
【0012】
一態様において、投与は複数回であってもよく、この場合、第1の免疫原性組成物及び第2の免疫原性組成物は同じである。別の態様において、第1の免疫原性組成物及び第2の免疫原性組成物は異なる。
【0013】
一態様において、投与は2回以上行われる。
【0014】
実施形態において、治療有効量の上記免疫原性組成物を含む、治療を必要とする対象におけるサポウイルス感染の治療に使用するための薬剤が開示される。
【0015】
実施形態において、治療有効量の本明細書に記載の免疫原性組成物を投与することを含む、治療を必要とする対象におけるサポウイルス感染を治療するための方法が開示される。
【0016】
関連する態様において、本方法は、1つ以上のサポウイルス抗原を含む治療有効量の第1の免疫原性組成物を粘膜投与すること、及び1つ以上のサポウイルス抗原を含む治療有効量の第2の免疫原性組成物を局所的又は非経口的に投与することを含む。
【0017】
一態様において、複数の治療有効用量の免疫原性組成物が対象に投与される。別の態様において、免疫原性組成物はロタウイルス抗原を含む。
【0018】
実施形態において、サポウイルスVP1タンパク質をコードする単離された組換え核酸であって、コード核酸が、i)配列番号1、配列番号7、配列番号14、配列番号20、及びこれらの組み合わせを含む配列、又はii)配列番号1、配列番号7、配列番号14、配列番号20若しくはこれらの組み合わせに示される核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸を含む、単離された組換え核酸が開示される。
【0019】
一態様において、コード核酸はベクターに組み込まれる。関連する態様において、ベクターはバキュロウイルスベクターである。別の関連する態様において、ベクターは宿主細胞中に含まれる。更に関連する態様において、宿主細胞は昆虫細胞である。
【0020】
開示される本主題のこれら及び他の実施形態は、本開示を考慮して当業者に容易に想起されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】同種コーティング抗原対異種コーティング抗原の比較を示すグラフであり、x軸=血清希釈、y軸=光学密度である。(黒丸:V19030-060920サポウイルスプール平均OD;四角:IAV-S H3ワクチン接種プール平均OD;米印:V19030-060920サポウイルスワクチン非接種対照プール平均OD V19045-120321A;下向き三角:IAV-S H3ワクチン非接種対照プール平均OD)。
【0022】
【
図2】ELISAによるワクチン接種動物対ワクチン非接種動物の血清学的評価を示すグラフである(
図1に記した軸と同じ)(黒丸:860ワクチン接種;四角:861ワクチン接種;米印:862ワクチン接種;下向き三角:863ワクチン接種;上向き三角:864ワクチン接種;左向き三角:865ワクチン接種;白丸:866ワクチン接種;ひし形:867ワクチン非接種;右向き三角:868ワクチン非接種;ばつ印:869ワクチン非接種)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本組成物、方法、及び方法論を説明する前に、本発明は、記載される特定の組成物、方法、及び実験条件に限定されず、このような組成物、方法、及び条件は変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲においてのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の参照を含む。したがって、例えば、「核酸(a nucleic acid)」への言及には、本開示などを読めば当業者には明らかになるであろう、本明細書に記載される種類の1つ以上の核酸及び/又は組成物が含まれる。
【0025】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用することができ、変更及び変形が本開示の趣旨及び範囲内に包含されることが理解されるであろう。
【0026】
本明細書で使用される「約」、「およそ」、「実質的に」及び「大幅に」は、当業者によって理解され、それらが使用される文脈に応じてある程度異なる。用語が使用されている文脈から当業者にとって明確でない用語の使用がある場合、「約」及び「およそ」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%未満を意味し、「実質的に」及び「大幅に」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%超を意味する。実施形態において、組成物は、特定の成分又は成分群「を含有する」、「を含む」又は「から本質的になる」ことがあるが、当業者であれば、後者は、特許請求の範囲が、特許請求される発明の特定の材料又は工程「及び基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定されることを意味すると理解するであろう。
【0027】
本明細書で使用される場合、「サポウイルス」及び「サッポロ様ウイルス」という用語は、ポジティブセンス、一本鎖RNA、非エンベロープウイルスのカリシウイルス科サポウイルス属のメンバーを指す。サポウイルスという用語には、ウイルスの全ての遺伝子群の株が含まれる。現在、サポウイルス株は、カプシド(VP1)配列に基づいて5つの遺伝子群(GI-GV)に分けられている。サポウイルスという用語には、サッポロウイルス、London/29845ウイルス、Manchesterウイルス、Houston/86ウイルス、Houston/90ウイルス、及びParkvilleウイルスの種が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。多数のサポウイルス分離株が部分的に又は完全に配列決定されている。サポウイルスという用語には、出願時に特徴付けられていない分離株も含まれる。
【0028】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指し、産物の最小の長さに限定されるものではない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体などがこの定義に含まれる。全長タンパク質及びその断片の両方が、この定義に包含される。この用語には、ポリペプチドの発現修飾型(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)も含まれる。更に、本開示の目的のために、「ポリペプチド」とは、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対して欠失、付加及び置換(事実上、一般的に保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発のように意図的な場合もあれば、タンパク質を産生する宿主の突然変異やPCR増幅によるエラーのように偶発的な場合もある。
【0029】
「実質的に精製された」とは、概して、物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)を、その物質が存在するサンプルの大部分を占めるように単離することを指す。典型的には、サンプルにおいて、実質的に精製された成分は、サンプルの約50%、約80%~85%、又は約90~95%を占める。目的のポリヌクレオチド及びポリペプチドを精製するための技術は、当該分野で周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び密度に従った沈殿になどがある。
【0030】
「単離された」とは、ポリペプチドに言及する場合、示された分子が、その分子が自然界で見出される生物全体又は細胞全体から分離され、別個のものであるか、又は同じ型の他の生物学的巨大分子が実質的に存在しない状態で存在することを意味する。ポリヌクレオチドに関する「単離された」という用語は、自然界で通常それと関連している配列の全部若しくは一部が欠失した核酸分子;又は自然界に存在するのと同じ配列であるが異種配列がそれに関連しているもの;又は染色体から解離した分子である。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「標識」及び「検出可能な標識」という用語は、検出が可能な分子を指し、例としては、放射性同位体、蛍光剤、化学発光剤、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、発色団、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン又はハプテン)などが挙げられるが、これらに限定されない。「蛍光剤」という用語は、検出可能な範囲で蛍光を示すことができる物質又はその一部を指す。使用され得る標識の特定の例としては、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、アクリジニウムエステル(acradimum ester)、NADPH及びα-β-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0032】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド部分の間の同一性パーセントを指す。2つの核酸配列又は2つのポリペプチド配列は、配列が、規定された長さの分子にわたって、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%~85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、及び少なくとも約95%~98%の配列同一性を示すとき、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で使用される場合、実質的に相同とは、特定の配列に対して完全な同一性を示す配列も指す。一態様において、本明細書に開示される抗原は、天然に存在するサポウイルス配列(すなわち、天然に存在するサポウイルスVP1アミノ酸配列又は当該アミノ酸配列をコードする天然に存在する核酸配列に対して100%の相同性を有するアミノ酸配列)を除外し得る。
【0033】
概して、「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列が、それぞれヌクレオチド-ヌクレオチド間又はアミノ酸-アミノ酸間で正確に対応していることを指す。同一性パーセントは、配列をアラインメントさせ、アラインメントした2つの配列間の正確な一致数を数え、短い方の配列の長さで割り、その結果に100を乗じることによって、2分子間の配列情報の直接比較することによって決定することができる。このような解析の補助には、容易に入手可能なコンピュータプログラム、例えば、ALIGN,Dayhoff,M.O.(Atlas of Protein Sequence and Structure M.O.Dayhoff,ed.,5 Suppl.3:353-358,National biomedical Research Foundation,Washington,D.C.)を使用することができ、これは、Smith and Waterman Advances in Appl.Math.2:482-489,1981の局所相同性アルゴリズムをペプチド解析に適応させたものである。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムは、Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)において入手可能であり、例えば、BESTFIT、FASTA及びGAPプログラムがあり、これらはまた、Smith及びWatermanアルゴリズムに依存している。これらのプログラムは、製造業者によって推奨され、上記で言及したWisconsin Sequence Analysis Packageに記載されているデフォルトパラメータを用いて容易に利用できる。例えば、参照配列に対する特定のヌクレオチド配列の同一性パーセントは、デフォルトスコアリング表及び6ヌクレオチド位置のギャップペナルティを用いるSmith及びWatermanの相同性アルゴリズムを使用して決定され得る。
【0034】
本開示の文脈において同一性パーセントを確立する別の方法は、John F.Collins及びShane S.Sturrokによって開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,CA)によって配布されている、エディンバラ大学が著作権を有するプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、Smith-Watermanアルゴリズムが採用され、デフォルトパラメータがスコアリング表に使用される(例えば、ギャップオープンペナルティは12、ギャップ伸長ペナルティは1、及びギャップは6)。生成されたデータから、「一致」値は「配列同一性」を反映する。配列間の同一性又は類似性のパーセントを計算するための他の適切なプログラムは、当該分野で一般的に公知であり、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いて使用されるBLASTである。例えば、BLASTN及びBLASTPは、以下のデフォルトパラメータを用いて使用することができる:遺伝子コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;分類基準=高評点;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は容易に入手可能である。一態様において、本明細書に開示される抗原は、天然に存在するサポウイルス配列(すなわち、天然に存在するサポウイルスVP1アミノ酸配列又は当該アミノ酸配列をコードする天然に存在する核酸配列に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列)を除外し得る。
【0035】
あるいは、相同性は、相同領域間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、続いて一本鎖特異的ヌクレアーゼでの消化、及び消化された断片のサイズ決定によって決定され得る。実質的に相同であるDNA配列は、例えば、その特定の系について規定されるようなストリンジェントな条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当該分野の技術の範囲内である。
【0036】
核酸分子を記載するために本明細書中で使用される場合、「組換え」とは、ゲノム起源、cDNA起源、ウイルス起源、半合成起源、又は合成起源のポリヌクレオチドであって、その起源又は操作によって、自然界では関連するポリヌクレオチドの全て又は一部と関連しないものを意味する。タンパク質又はポリペプチドに関して使用される「組換え」という用語は、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。概して、以下に更に記載されるように、目的の遺伝子はクローン化され、次いで、形質転換された生物において発現される。宿主生物は外来遺伝子を発現させ、発現条件下でタンパク質を産生する。
【0037】
「形質転換」という用語は、挿入に使用される方法に関係なく、宿主細胞に外因性ポリヌクレオチドを挿入することを指す。例えば、直接取り込み、形質導入又はf-接合が含まれる。外因性ポリヌクレオチドは、非組込みベクター、例えばプラスミドとして維持されてもよく、あるいは宿主ゲノムに組み込まれてもよい。
【0038】
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、及び単細胞体として培養された微生物又は高等真核細胞株を示す他のこのような用語は、組換えベクター又は他の転移DNAのレシピエントとして使用され得るか、又は使用されてきた細胞を指し、トランスフェクトされた元の細胞の元の子孫が含まれる。
【0039】
「コード配列」又は選択されたポリペプチドを「コードする」配列とは、適切な調節配列(又は「制御エレメント」)の制御下に置かれたときに、in vivoでポリペプチドに転写(DNAの場合)及び翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって決定され得る。コード配列には、原核生物又は真核生物のmRNAからのcDNA、ウイルス又は原核生物のDNAからのゲノムDNA配列、更には合成DNA配列が含まれ得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列の3’側に位置し得る。
【0040】
典型的な「制御エレメント」には、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳停止コドンの3’側に位置する)、翻訳開始の最適化のための配列(コード配列の5’側に位置する)、及び翻訳終結配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
「核酸」という用語には、DNA及びRNA、並びに修飾された骨格を含むもの(例えば、ホスホロチオエートなど)などのそれらの類似体、更にペプチド核酸(PNA)などが含まれる。本開示は、(例えば、アンチセンス又はプロービング目的のために)上記の配列に相補的な配列を含む核酸を提供する。
【0042】
「作動可能に連結された」とは、記載された構成要素が通常の機能を果たすように構成された要素の配置を指す。したがって、コード配列に作動可能に連結された所定のプロモーターは、適切な酵素が存在するとき、コード配列の発現を達成し得る。プロモーターは、その発現を指示するように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、未翻訳だが転写された介在配列が、プロモーター配列とコード配列との間に存在してもよく、プロモーター配列はなお、コード配列に「作動可能に連結している」と考えてもよい。
【0043】
「によってコードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を指し、ポリペプチド配列又はその一部は、核酸配列によってコードされるポリペプチド由来の少なくとも3~5個のアミノ酸、少なくとも8~10個のアミノ酸、及び少なくとも15~20個のアミノ酸のアミノ酸配列を含有する。
【0044】
「発現カセット」又は「発現構築物」とは、目的の配列又は遺伝子の発現を指示することができる集合体を指す。発現カセットは、概して、上記のような目的の配列又は遺伝子に(転写を指示するように)作動可能に連結されたプロモーターなどの制御エレメントを含み、ポリアデニル化配列も含むことが多い。実施形態において、本明細書に記載される発現カセットは、プラスミド構築物内に含有され得る。発現カセットの構成要素に加えて、プラスミド構築物はまた、1つ以上の選択可能マーカー、プラスミド構築物が一本鎖DNAとして存在することを可能にするシグナル(例えば、M13複製起点)、少なくとも1つの多重クローニング部位、及び「哺乳動物」複製起点(例えば、SV40又はアデノウイルス複製起点)を含み得る。
【0045】
「精製されたポリヌクレオチド」とは、本質的に含まない、例えば、ポリヌクレオチドが天然に結合しているタンパク質を約50%未満、約70%未満、及び少なくとも約90%未満しか含まない、目的のポリヌクレオチド又はその断片を指す。目的のポリヌクレオチドを精製するための技術は、当該分野で周知であり、例えば、カオトロピック剤を用いたポリヌクレオチドを含む細胞の破壊、並びにイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び密度に従った沈殿によるポリヌクレオチド及びタンパク質の分離が含まれる。
【0046】
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために使用される。外因性DNAが細胞膜内に導入されると、細胞は「トランスフェクト」される。多くのトランスフェクション技術が当該分野で一般に知られている。このような技術は、1つ以上の外因性DNA部分を適切な宿主細胞に導入するために使用され得る。この用語は、遺伝物質の安定な取り込み及び一過性の取り込みの両方を指し、ペプチド又は抗体連結DNAの取り込みも含まれる。
【0047】
「ベクター」とは、核酸配列を標的細胞に導入することができるものである(例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子状担体、及びリポソーム)。代表的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、及び「遺伝子導入ベクター」は、目的の核酸の発現を指示することができ、核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語には、クローニングビヒクル及び発現ビヒクル、並びにウイルスベクターが含まれる。
【0048】
「断片」とは、完全な全長配列及び構造の一部のみからなる分子を意図する。ポリペプチドの断片は、天然ポリペプチドのC末端欠失、N末端欠失、及び/又は内部欠失を含み得る。ポリペプチドの断片は、概して、全長分子の少なくとも約5~10個の連続するアミノ酸残基、全長分子の少なくとも約15~25個の連続するアミノ酸残基、及び全長分子の少なくとも約20~50個以上の連続するアミノ酸残基、又は5個のアミノ酸と全長配列中のアミノ酸の数との間の任意の整数を含むが、但し、それは該断片が所望の生物学的応答を惹起する能力を保持することが条件である。核酸の断片は、核酸の5’-欠失、3’-欠失、及び/又は内部欠失を含み得る。核酸断片は、概して、全長分子の少なくとも約5~1000個の連続したヌクレオチド塩基を含み、全長分子の少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは少なくとも500個の連続したヌクレオチド、又は5個のヌクレオチドと全長配列中のヌクレオチドの数との間の任意の整数を含み得る。このような断片は、ハイブリダイゼーション、増幅、免疫原性断片の産生、又は核酸免疫において有用であり得る。
【0049】
「免疫原性断片」とは、1つ以上のエピトープを含む免疫原の断片を意味し、免疫応答を調節することができる、又は同時投与される抗原に対するアジュバントとして作用することができる。このような断片は、当該分野で周知の任意の数のエピトープマッピング技術を使用して同定することができる。例えば、線状エピトープは、例えば、固体支持体上で多数のペプチド(タンパク質分子の一部に対応するペプチド)を同時に合成し、ペプチドが支持体に結合したまま抗体と反応させることによって決定することができる。このような技術は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第4,708,871号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。同様に、立体構造エピトープは、例えば、X線結晶構造解析及び2次元核磁気共鳴法などでアミノ酸の空間的立体構造を決定することによって容易に同定される。
【0050】
本開示の目的上、免疫原性断片は、通常、少なくとも約2個のアミノ酸長、約5個のアミノ酸長、及び少なくとも約10~約15個のアミノ酸長である。断片の長さに決定的な上限はなく、断片は、タンパク質配列のほぼ完全長、又は2つ以上のエピトープを含む融合タンパク質さえも含み得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、概して、T細胞受容体及び/又は抗体によって認識される抗原上の部位を指す。実施形態において、タンパク質抗原に由来するか、又はその一部としての短いペプチドである。しかし、この用語は、糖ペプチド及び炭水化物エピトープを有するペプチドを含むことも意図されている。単一の抗原分子によっていくつかの異なるエピトープが保持される場合がある。「エピトープ」という用語には、生物全体を認識する応答を刺激するアミノ酸又は炭水化物の修飾配列も含まれる。選択されたエピトープが、感染症を引き起こす病原体のエピトープである場合、有利である。
【0052】
エピトープは、過度の実験なしに、ペプチド又はポリペプチドのアミノ酸及び対応するDNA配列の知識から、また特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷など)及びコドン辞書から生成することができる。タンパク質が応答を刺激するかどうかを決定する際のいくつかのガイドラインには、次のようなものがある:ペプチドの長さ---ペプチドは、MHCクラスI複合体に適合するには約8又は9個のアミノ酸長であり、クラスII MHC複合体に適合するには約13~25個のアミノ酸長である。この長さは、ペプチドがMHC複合体に結合するための最小の長さである。一態様において、細胞がペプチドを切断する可能性があるため、ペプチドはこれらの長さより長くてもよい。ペプチドは、免疫応答を起こすのに十分に高い特異性で種々のクラスI分子又はクラスII分子に結合することを可能にする適切なアンカーモチーフを含有し得る。これは、過度の実験なしに、目的のタンパク質の配列を、MHC分子と関連したペプチドの公開された構造と比較することによって行うことができる。したがって、当業者は、タンパク質配列をタンパク質データベースに列挙された配列と比較することによって、目的のエピトープを確認することができる。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「T細胞エピトープ」という用語は、概して、T細胞応答を誘導し得るペプチド構造の特徴を指し、「B細胞エピトープ」とは、概して、B細胞応答を誘導し得るペプチド構造の特徴を指す。
【0054】
抗原又は組成物に対する「免疫学的応答」とは、対象において、目的の組成物中に存在する抗原に対する体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が発現することである。本開示の目的上、「体液性免疫応答」とは、抗体分子によって媒介される免疫応答を指し、一方、「細胞性免疫応答」とは、Tリンパ球及び/又は他の白血球によって媒介される免疫応答のことである。細胞性免疫の重要な側面の1つには、細胞溶解性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答がある。CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)にコードされ、細胞表面に発現するタンパク質と関連して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊、又はこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導及び促進するのに役立つ。細胞性免疫の別の側面には、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答が含まれる。ヘルパーT細胞は、表面上にMHC分子と関連してペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるように作用する。「細胞性免疫応答」とは、サイトカイン、ケモカイン、並びに活性化T細胞及び/又は他の白血球(CD4+及びCD8+T細胞に由来するものを含む)によって産生される他のこのような分子の産生も指す。
【0055】
細胞性免疫応答を誘発する組成物又はワクチンは、細胞表面でのMHC分子と関連した抗原の提示によって脊椎動物の対象を感作する役割を果たすことができる。細胞媒介性免疫応答は、表面に抗原を提示する細胞に、又はその近くに向けられる。更に、免疫された宿主を将来的に保護できるように、抗原特異的Tリンパ球が生成される可能性がある。
【0056】
特定の抗原が細胞媒介性免疫応答を刺激する能力は、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイ、又は感作された対象における抗原に特異的なTリンパ球のアッセイなど、多くのアッセイによって決定することができる。このようなアッセイは当技術分野でよく知られている。細胞媒介性免疫応答を測定する最近の方法としては、T細胞集団による細胞内サイトカイン若しくはサイトカイン分泌の測定、又はエピトープ特異的T細胞の測定が挙げられる。
【0057】
したがって、本明細書で使用される免疫学的応答は、抗体(例えば、細菌毒素及びウイルスなどの病原体が細胞に侵入し、毒素及び病原体に結合することによって複製するのを阻止し、典型的には細胞を感染及び破壊から保護する中和抗体)の産生を刺激するものであり得る。目的の抗原がCTLの産生を誘発することもある。したがって、免疫学的応答は、次の効果のうちの1つ以上を含み得る:B細胞による抗体の産生;並びに/又は、目的の組成物若しくはワクチン中に存在する抗原又は抗原に特異的に指向するサプレッサーT細胞及び/若しくはメモリー/エフェクターT細胞の活性化。これらの応答は、感染性を中和し、かつ/又は抗体補体若しくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介して、免疫された宿主を保護する役割を果たすことができる。このような応答は、当該分野で周知の標準的なイムノアッセイ及び中和アッセイを使用して決定することができる。哺乳動物の自然免疫系はまた、免疫細胞上のトール様受容体及び類似の受容体分子の活性化を介して、病原性生物の分子的特徴を認識し、応答する。自然免疫系が活性化されると、様々な非適応免疫応答細胞が活性化されて、例えば、様々なサイトカイン、リンホカイン及びケモカインを産生する。自然免疫応答によって活性化される細胞には、単球及び形質細胞の系統の未成熟樹状細胞及び成熟樹状細胞(MDC、PDC)、並びにガンマ、デルタ、アルファ及びベータT細胞及びB細胞などが含まれる。したがって、本開示はまた、免疫応答が自然的応答及び適応的応答の両方を含む免疫応答を企図する。
【0058】
「免疫原性組成物」は、抗原分子を含む組成物であり、組成物を対象に投与することにより、対象において、目的の抗原分子に対する体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が発現する。
【0059】
「免疫原性」タンパク質又はポリペプチドという用語は、上記のような免疫学的応答を誘発するアミノ酸配列を指す。本明細書中で使用される場合、「免疫原性」タンパク質又はポリペプチドには、問題のタンパク質の全長配列(前駆体形態及び成熟形態、それらの類似体、又はそれらの免疫原性断片を含む)が含まれる。
【0060】
「遺伝子導入」又は「遺伝子送達」とは、目的のDNA又はRNAを宿主細胞に確実に挿入するための方法又は系を指す。このような方法は、組み込まれていない転移DNAの一過性の発現、転移レプリコン(例えば、エピソーム)の染色体外複製及び発現、又は転移遺伝物質の宿主細胞のゲノムDNAへの組み込みをもたらす可能性がある。遺伝子送達発現ベクターとしては、細菌プラスミドベクター、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、アルファウイルス、ポックスウイルス及びワクシニアウイルスに由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。免疫化のために使用されるとき、このような遺伝子送達発現ベクターは、ワクチン又はワクチンベクターと呼ばれることがある。
【0061】
本明細書において、「由来する」という用語は、分子の元の供給源を特定するために使用されるが、例えば化学合成又は組換え手段など、分子の作製方法を限定するものではない。
【0062】
概して、ウイルスポリペプチドは、(i)そのウイルスのポリヌクレオチド(ウイルスポリヌクレオチド)のオープンリーディングフレームによってコードされるか、又は(ii)上記のようなそのウイルスのポリペプチドに対して配列同一性を示す場合、ウイルスの特定のポリペプチド(ウイルスポリペプチド)に「由来する」。
【0063】
指定された配列に「由来する」ポリヌクレオチドとは、指定されたヌクレオチド配列の領域に対応する、すなわち、同一又は相補的な、およそ少なくとも約6ヌクレオチド、少なくとも約8ヌクレオチド、少なくとも約10~12ヌクレオチド、及び少なくとも約15~20ヌクレオチドの連続配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。誘導されたポリヌクレオチドは、必ずしも目的のヌクレオチド配列から物理的に誘導される必要はないが、ポリヌクレオチドが誘導される領域における塩基の配列によって提供される情報に基づいて、化学合成、複製、逆転写、又は転写を含むがこれらに限定されない任意の様式で生成され得る。したがって、元のポリヌクレオチドのセンス又はアンチセンス配向のいずれかを表すことがある。
【0064】
サポウイルスポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドは、上記で定義したように、それぞれサポウイルスに由来する分子であり、サポウイルスの種々の分離株のいずれかを含むが、これらに限定されない。この分子は、問題となっている特定の分離株に物理的に由来する必要はなく、合成的又は組換え的に産生され得る。
【0065】
サポウイルス株のゲノムには、2つ又は3つのオープンリーディングフレームが含有されている。2つのオープンリーディングフレームを有するサポウイルス株では、ORF1は、非構造タンパク質及び構造タンパク質の両方を含むポリタンパク質をコードしている。カプシドタンパク質VP1は、サポウイルスポリタンパク質の構成要素としてORF1によってコードされ、マイナー構造タンパク質VP10は、ORF2によってコードされる。3つのオープンリーディングフレームを有するサポウイルス株では、停止コドンがカプシドタンパク質のコード領域に先行する。カプシドタンパク質を含まないポリタンパク質はORF1によってコードされ、カプシドタンパク質VP1はORF2によってコードされ、マイナー構造タンパク質VP10はORF3によってコードされる。
【0066】
3C様プロテアーゼによるサポウイルス株Mc10ポリタンパク質(GenBankアクセッション番号AY237420)の切断により、少なくとも10の異なる産物、p11、p28、p35(NTPase)、p32、p14(VPg)、p70(Pro-Pol)、p60(VP1)が産生される。ポリタンパク質は、NH2--p11-p28-NTPase-p32-VPg-p70(Pro-Pol)-VP1-COOHの順序でポリペプチドを含む。ポリタンパク質のp70(Pro-Pol)領域は残基1056~1720に存在し、ポリタンパク質のVP1領域は残基1721~2278に存在する。前述の番号付けは、サポウイルス株Mc10のポリタンパク質アミノ酸配列に対するものであるが、サポウイルスの他の遺伝子型及び分離株から得られる配列中の対応するアミノ酸位置もまた、本開示に包含されることが意図されることを理解されたい。ORF1によってコードされるポリペプチド、又は完全長ポリタンパク質、VP1、若しくはVP10、並びにその変異体、その免疫原性断片、及びこのようなポリペプチド、変異体、又は免疫原性断片をコードする核酸のうちのいずれか1つを、開示される主題の実施において使用することができる。
【0067】
多くのサポウイルス分離株についての核酸及びタンパク質配列も知られている。代表的なサポウイルス配列は、配列番号1、7、14、及び20に示される。サポウイルス分離株からのORF1及びORF2の配列、並びにそれらのコード化ポリペプチドを含むその他の代表的な配列は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)データベースに掲載されている。例えば、GenBankエントリー:サポウイルスMc10、GenBankアクセッション番号NC--010624;サッポロウイルス、GenBankアクセッション番号U65427;サポウイルスMc10、GenBankアクセッション番号AY237420;サポウイルスSaKaeo-15/Thailand、GenBankアクセッション番号AY646855;サッポロウイルス、GenBankアクセッション番号NC--006269;サポウイルスC12、GenBankアクセッション番号NC_006554;サポウイルスC12、GenBankアクセッション番号AY603425;サポウイルスHu/Dresden/pJG-Sap01/DE、GenBankアクセッション番号AY694184;ヒトカリシウイルスSLV/cruise ship/2000/USA、GenBankアクセッション番号AY289804;ヒトカリシウイルスSLV/Arg39、GenBankアクセッション番号AY289803;ブタ腸管カリシウイルス株LL14、GenBankアクセッション番号AY425671;ブタ腸管カリシウイルス、GenBankアクセッション番号NC_000940;ヒトカリシウイルス株Mc37、GenBankアクセッション番号AY237415;ミンク腸管カリシウイルス株Canada 151A、GenBankアクセッション番号AY144337;ヒトカリシウイルスSLV/Hou7-1181、GenBankアクセッション番号AF435814;ヒトカリシウイルスSLV/Mex14917/2000、GenBankアクセッション番号AF435813;ヒトカリシウイルスSLV/Mex340/1990、GenBankアクセッション番号AF435812;ブタ腸管カリシウイルス、GenBankアクセッション番号AF182760;サッポロウイルス-London/29845、GenBankアクセッション番号U95645;サッポロウイルス-Manchester、GenBankアクセッション番号X86560;サッポロウイルス-Houston/86、GenBankアクセッション番号U95643;サッポロウイルス-Houston/90、GenBankアクセッション番号U95644;及びヒトカリシウイルス株HuCV/Potsdam/2000/DEU、GenBankアクセッション番号AF294739を参照されたい。これらの配列(本出願の出願日までに記載されたもの)は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書で使用される場合、サポウイルスに関して「カプシドタンパク質」又は「カプシドポリペプチド」又は「VP1」という用語は、サポウイルスのカプシドポリペプチドと相同又は同一の配列を含むポリペプチドを指し、それに対して少なくとも約80~99.9%の配列同一性(これらの範囲内の任意の同一性パーセント、例えば、それに対して81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%の配列同一性を含む)を示す配列を含む。カプシドポリペプチドは、サポウイルスの異なる株においてORF1又はORF2のいずれかによってコードされ得る。いくつかの株において、サポウイルスは、2つのオープンリーディングフレームを有する。すなわち、カプシドタンパク質は、ポリタンパク質の一部としてORF1によってコードされ、マイナー構造タンパク質(VP10)は、ORF2によってコードされている。他の株では、サポウイルスは、3つのオープンリーディングフレームを有する。すなわち、停止コドンは、ORF2によってコードされるカプシドタンパク質のコード領域に先行し、マイナー構造タンパク質(VP10)は、ORF3によってコードされている。
【0069】
本明細書で使用される場合、サポウイルスに関して「マイナー構造タンパク質」又は「マイナー構造ポリペプチド」又は「VP10」という用語は、サポウイルスゲノム中のカプシドタンパク質のコード領域に続くオープンリーディングフレーム(株に応じてORF2又はORF3のいずれか)によってコードされるポリペプチドと相同又は同一の配列を含むポリペプチドを指し、それに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(これらの範囲内の任意の同一性パーセント、例えば、それに対して81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99.9%の配列同一性を含む)を示す配列を含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、「サポウイルスポリタンパク質」という用語は、サポウイルスのORF1コードポリタンパク質と相同又は同一の配列を含むポリタンパク質を指し、それに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(これらの範囲内の任意の同一性パーセント、例えば、それに対して81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.9%の配列同一性を含む)を示す配列を含む。
【0071】
「抗原」とは、宿主の免疫系を刺激して体液性及び/又は細胞性の抗原特異的応答を引き起こす1つ以上のエピトープ(線状、立体構造又はその両方)を含有する分子を指す。この用語は、「免疫原」という用語と同じ意味で使用される。通常、B細胞エピトープは、少なくとも約5個のアミノ酸を含むが、3~4個のアミノ酸程度の小さい場合もある。CTLエピトープなどのT細胞エピトープは、少なくとも約7~9個のアミノ酸を含み、ヘルパーT細胞エピトープは、少なくとも約12~20個のアミノ酸を含む。通常、エピトープは、約7~15個のアミノ酸、例えば、9、10、12又は15個のアミノ酸を含む。「抗原」という用語は、サブユニット抗原(すなわち、抗原が自然界で関連している生物全体から分離され、別個に存在する抗原)、並びに死滅、弱毒化又は不活性化された細菌、ウイルス、真菌、寄生虫又は他の微生物の両方を示す。抗イディオタイプ抗体などの抗体又はその断片、及び抗原又は抗原決定基を模倣し得る合成ペプチドミモトープもまた、本明細書中で使用される抗原の定義の下で捕捉される。同様に、遺伝子療法及びDNA免疫化用途などにおいて、in vivoで抗原又は抗原決定基を発現するオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドも、本明細書における抗原の定義に含まれる。
【0072】
「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体調製物及びモノクローナル抗体調製物、並びにハイブリッド抗体、改変抗体、キメラ抗体、及びヒト化抗体を含む調製物、並びにハイブリッド(キメラ)抗体分子及びこのような分子から得られる任意の機能的断片が包含され、このような断片は、親抗体分子の特異的結合特性を保持している。
【0073】
「ハイブリダイズ」及び「ハイブリダイゼーション」という用語は、ワトソンクリック塩基対合を介して複合体を形成するのに十分に相補的であるヌクレオチド配列間の複合体の形成を指す。プライマーが標的(テンプレート)と「ハイブリダイズ」する場合、このような複合体(又はハイブリッド)は、例えば、DNAポリメラーゼがDNA合成を開始するのに必要な初回免疫機能を果たすのに十分安定である。
【0074】
本明細書で使用される場合、「生体サンプル」とは、対象から単離された組織又は液体のサンプルを指し、これには、例えば、血液、血漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚のサンプル、皮膚の外部分泌物、呼吸器、腸管、及び泌尿生殖器管、涙、唾液、乳汁、血液細胞、器官、生検、並びにまた、in vitro細胞培養成分のサンプル(培養培地中での細胞及び組織、例えば組換え細胞及び細胞成分の成長から生じる馴化培地を含むがこれらに限定されない)が含まれるがこれらに限定されない。特に、サポウイルスは、ウイルスに感染した個体からの嘔吐又は下痢などの生体サンプルから得ることができる。
【0075】
「対象」とは、脊索動物亜門のあらゆるメンバーを意味し、これには、ヒト及び他の霊長類(チンパンジー、他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類を含む);ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、シカ及びウマなどの家畜;イヌ及びネコなどの家畜哺乳類;マウス、ラット、モルモットなどのげっ歯類を含む実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ及び他のキジ目の鳥類、アヒル、ガチョウ、野生動物及び狩猟動物などの家禽、野鳥、狩猟鳥を含む鳥類が含まれるが、これらに限定されない。この用語は、特定の年齢を示すものではない。したがって、成体及び新生児の両方の個体が包含されることが意図される。
【0076】
「変異体」、「類似体」及び「ムテイン」という用語は、サポウイルスに対する免疫応答を誘導する抗原活性など、所望の活性を保持する参照分子の生物学的に活性な誘導体を指す。概して、「変異体」及び「類似体」という用語は、修飾により生物学的活性が損なわれず、以下に定義されるように参照分子と「実質的に相同」である限り、天然のポリペプチド配列及び構造を有し、天然の分子に対して1以上のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失を有する化合物を指す。概して、このような類似体のアミノ酸配列は、参照配列に対して高度の配列相同性、例えば、2つの配列をアラインメントさせたとき、50%超、概ね60%~70%超、更により詳細には80%~85%以上、例えば、少なくとも90%~95%以上のアミノ酸配列相同性を有する。多くの場合、類似体は、同じ数のアミノ酸を含むが、本明細書中で説明されるような置換を含む。「ムテイン」という用語は、1つ以上のアミノ酸様分子を有するポリペプチド、例えば限定されるものではないが、アミノ及び/又はイミノ分子のみを含む化合物、アミノ酸の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を1つ以上含むポリペプチド、置換された連結を有するポリペプチド、並びに、天然及び非天然(例えば、合成)両方の環状化、分枝分子などの当技術分野で公知の他の修飾を更に含む。この用語には、1つ以上のN-置換グリシン残基(「ペプトイド」)及び他の合成アミノ酸又はペプチドを含む分子も含まれる。(例えば、米国特許第5,831,005号;同第5,877,278号;及び同第5,977,301号を参照)。実施形態において、類似体又はムテインは、天然分子と少なくとも同じ抗原活性を有する。ポリペプチド類似体及びムテインを作製するための方法は、当該分野で公知であり、以下に更に記載される。
【0077】
上記で説明したように、類似体には、概して、本質的に保存的である置換、すなわち、側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で起こる置換が含まれる。具体的には、アミノ酸は概ね4つのファミリーに分けられる:(1)酸性-アスパラギン酸及びグルタミン酸;(2)塩基性-リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性-アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非荷電極性-グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸として分類されることもある。例えば、ロイシンをイソロイシン若しくはバリンに、アスパラギン酸をグルタミン酸に、スレオニンをセリンに、又は、アミノ酸を構造的に関連するアミノ酸に保存的に置き換えるだけでは、生物学的活性に大きな影響を与えないことは、合理的に予測できる。例えば、目的のポリペプチドは、分子の所望の機能が無傷のままである限り、約5~10個の保存的若しくは非保存的アミノ酸置換、又は更に約15~25個の保存的若しくは非保存的アミノ酸置換、又は5~25個の任意の整数の保存的若しくは非保存的アミノ酸置換を含み得る。当業者は、当該分野で周知のHopp/Woodsプロット及びKyte-Doolittleプロットを参照することによって、変化を許容し得る目的の分子の領域を容易に決定することができる。
【0078】
本明細書で使用される「複数のエピトープ融合抗原」又は「複数のエピトープ融合タンパク質」という用語は、複数のサポウイルス抗原が、自然界には存在しない単一の連続したアミノ酸鎖の一部であるポリペプチドを意図する。サポウイルス抗原は、ペプチド結合によって互いに直接接続されていてもよいし、介在するアミノ酸配列によって分離されていてもよい。融合抗原は、例えば、N末端タンパク質、p11、p28、NTPase、p32、VPg、プロテアーゼ、ポリメラーゼ、VP1、及びVP10などのサポウイルスポリペプチドの配列を含む、ORF1コード化、ORF2コード化、及び/又はORF3コード化ポリペプチド又はその断片を含有し得る。融合抗原には、サポウイルスに対して外因性の配列が含有される場合もある。更に、存在する配列は、サポウイルスの複数の遺伝子型及び/又は分離株からのものである可能性がある。
【0079】
免疫原性組成物の文脈における「治療有効量」とは、抗体産生のため、又はサポウイルス感染の治療若しくは予防のいずれかのために、免疫学的応答を誘導する免疫原(例えば、免疫原性ポリペプチド、融合タンパク質、ポリタンパク質、又は抗原をコードする核酸)の量を意味する。このような応答は、概ね、対象において、組成物に対する抗体媒介性及び/又は分泌性若しくは細胞性免疫応答の発現をもたらす。通常、このような応答には次のような効果が1つ以上含まれるが、これらに限定されるものではない:免疫グロブリンA、D、E、G又はMなどの免疫学的クラスのいずれかからの抗体の産生;Bリンパ球及びTリンパ球の増殖;免疫学的細胞への活性化、成長及び分化シグナルの供給;ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/又は細胞傷害性T細胞及び/又はγ,δ-T細胞集団の拡大。
【0080】
本開示の目的上、アジュバントの「有効量」とは、同時投与された抗原又は抗原をコードする核酸に対する免疫学的応答を増強する量である。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「治療」とは、(i)従来のワクチンのように感染又は再感染を予防すること、(ii)症状を軽減又は除去すること、及び(iii)問題の病原体を実質的又は完全に除去すること、のいずれかを指す。治療は、予防的(感染前)に行われることもあれば、治療的(感染後)に行われることもある。
【0082】
本開示を詳細に記載する前に、本開示の実施は、別段の指示がない限り、ウイルス学、微生物学、分子生物学、組換えDNA技術及び免疫学の従来の方法が使用され、これらの全ては、当該分野における通常の技術の範囲内であることを理解されたい。このような技術については、文献で十分に説明されている。特許請求の範囲に記載された本発明の実施には、本明細書に記載されたものと類似又は同等の多くの方法及び材料を使用することができるが、材料及び方法は本明細書に記載されたものである。
【0083】
本開示には、サポウイルス感染に対して対象を免疫するための組成物及び方法が含まれる。本開示は、サポウイルスの1つ以上の株由来のカプシドタンパク質及び/又は他の免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を含む免疫原性組成物、サポウイルスの1つ以上の株に由来する免疫原性ポリペプチドを含む組成物を提供する。本主題の実施において使用される免疫原性ポリペプチドは、ORF1コード化ポリペプチド、ORF2コード化ポリペプチド、ORF3コード化ポリペプチド、複数のエピトープ融合抗原、及び/又はORF1コード化ポリタンパク質を含む、サポウイルス由来のポリペプチドを含み得る。更に、免疫原性組成物は、1つ以上のアジュバント又はアジュバントをコードする核酸を含んでいてもよく、免疫原性ポリペプチドは、アジュバントと混合又は共発現される。免疫原性組成物はまた、サポウイルス抗原以外の更なる抗原、例えば、下痢性疾患を引き起こす病原体に対する免疫において使用され得る抗原を含み得る。
【0084】
開示された主題の理解を深めるために、免疫原性組成物に使用するための核酸及びポリペプチドの産生、並びにサポウイルス感染の治療又は予防におけるこのような組成物を使用する方法に関して、より詳細な考察が以下に提供される。
構造ポリペプチド、非構造ポリペプチド、及びポリタンパク質
【0085】
本明細書に記載される免疫原性組成物は、サポウイルスの1つ以上の遺伝子型及び/又は分離株に由来する1つ以上のポリペプチドを含み得る。本明細書に開示される主題の実施において使用され得るポリペプチドとしては、構造タンパク質、非構造タンパク質、及びポリタンパク質が挙げられる。このようなポリペプチドは、サポウイルスに対する免疫応答を誘発することができる全長タンパク質又はその変異体若しくは免疫原性断片であり得る。
【0086】
例えば、3C様プロテアーゼによるサポウイルス株Mc10ポリタンパク質(GenBankアクセッション番号 AY237420)の切断により、少なくとも10個の異なる産物、p11、p28、p35(NTPase)、p32、p14(VPg)、p70(Pro-Pol)、p60(VP1)が産生される。最初のタンパク質分解処理により、p66(p28-p35)、p46(p32-p14)、及びp120(p32-p14-p70)断片が産生される。ポリタンパク質は、NH2-p11-p28-NTPase-p32-VPg-p70(Pro-Pol)-VP1-COOHの順序でポリペプチドを含む。ポリタンパク質のp70(Pro-Pol)領域は、残基1056~1720に存在し、ポリタンパク質のVP1領域は、残基1721~2278(GenBankアクセッション番号AY237420に対して番号付けされている)に存在する。
【0087】
いくつかのサポウイルス株及び分離株の核酸配列及びアミノ酸配列(VP1及びVP10構造タンパク質の核酸配列及びアミノ酸配列を含む)、並びにサポウイルスポリタンパク質の様々な領域(p11、p28、NTPase、p32、VPg、p70(Pro-Pol)、VP1遺伝子及びポリペプチドを含む)も決定されている。
【0088】
免疫原性組成物中のポリペプチドは、サポウイルスゲノムの任意の領域によってコードされ得る。複数のポリペプチドが免疫原性組成物に含まれ得る。このような組成物は、広範囲のサポウイルス遺伝子型に対する防御を強化するために、同じサポウイルス分離株由来のポリペプチド、又は異なる株及び分離株(種々のサポウイルス遺伝子型のいずれかを有する分離株を含む)由来のポリペプチドを含み得る。サポウイルスの複数のウイルス株が公知であり、これらの株のいずれかに由来するエピトープを含む複数のポリペプチドを免疫原性組成物に使用することができる。
【0089】
本開示の免疫原性組成物中で使用される抗原は、個々の別個のポリペプチドとして組成物中に存在し得る。概して、本開示の組換えタンパク質は、GST融合タンパク質及び/又はHisタグ付き融合タンパク質として発現される。
マルチエピトープ融合タンパク質
【0090】
本明細書に記載される免疫原性組成物はまた、複数のエピトープ融合タンパク質を含み得る。例えば、国際公開第97/44469号、米国特許第6,632,601号、同第6,630,298号、同第6,514,731号、及び同第6,797,809号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。このような融合タンパク質は、サポウイルスの1つ以上の遺伝子型及び/又は分離株の2つ以上のウイルスポリペプチドに由来する複数のエピトープを含む。複数のエピトープ融合タンパク質は、2つの主要な利点を提供する:第1に、それ自体では不安定であったり発現が不十分であったりするポリペプチドを、問題を克服する適切なハイブリッドパートナーを添加することによって補助することができる;第2に、両方とも抗原的に有用である2つのポリペプチドを産生するためには、1回の発現及び精製を行うだけでよいので、商業的製造が簡略化される。
【0091】
マルチエピトープ融合タンパク質は、サポウイルスポリタンパク質、全長ポリタンパク質、VP1(本明細書においてカプシドタンパク質とも称される)及び/又はVP10(本明細書においてサポウイルスマイナー構造タンパク質とも称される)における種々のドメインのうちの1つ以上;又は1つ以上のサポウイルス分離株に由来する、それらの断片を含有し得る。融合タンパク質中のポリペプチドは、広範なサポウイルス遺伝子型に対する防御を強化するために、同じサポウイルス分離株に由来し得るか、又は異なる株及び分離株(種々のサポウイルス遺伝子型のいずれかを有する分離株を含む)に由来し得る。サポウイルスの複数のウイルス株が知られており、これらの株のいずれかに由来するエピトープを融合タンパク質において使用することができる。
【0092】
ある種の生物は、個体によって異なることがよく知られており、更にウイルスのような特定の生物は、多数の異なる株を持つことがある。例えば、上記で説明したように、サポウイルスには、少なくとも5つの遺伝子群(G1~GV)が含まれている。各株には、サポウイルスの全ての株に存在する相同領域にあるが、ウイルス株ごとにわずかに異なる多数の抗原決定基が含まれている。したがって、複数のエピトープ融合抗原は、それぞれが特定の相同領域を含むが、それぞれが異なる形態の抗原決定基を有する、サポウイルスの異なるウイルス株に由来する複数のポリペプチドを含み得る。概して、抗原決定基は、アミノ酸配列に関して高度の相同性を有し得、この相同性の程度は、アラインメントさせたとき、概ね30%以上、40%以上である。融合タンパク質はまた、エピトープの複数のコピーを含み得、融合タンパク質の1つ以上のポリペプチドは、同じエピトープの正確なコピーを含む配列を含む。更に、ポリペプチドは、融合体を含むワクチン組成物が使用される特定の地理的領域に固有の特定のウイルスクレードに基づいて選択され得る。本発明の融合体が、広範な状況においてサポウイルス感染を治療する有効な手段を提供することは、容易に明らかである。
【0093】
複数のエピトープ融合抗原は、式NH2-A-{-X-L-}n-B-COOH[式中、Xは、サポウイルス抗原又はその断片のアミノ酸配列であり;Lは、任意選択のリンカーアミノ酸配列であり;Aは、任意選択のN末端アミノ酸配列であり;Bは、任意選択のC末端アミノ酸配列であり;nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15である]によって表すことができる。
【0094】
-X-部分が野生型形態においてリーダーペプチド配列を有する場合、これは、複数のエピトープ融合抗原において含まれ得るか、又は省略され得る。いくつかの実施形態において、リーダーペプチドは、ハイブリッドタンパク質のN末端に位置する-X-部分のリーダーペプチドを除いて欠失される、すなわち、X1のリーダーペプチドは保持されるが、X2...Xnのリーダーペプチドは省略される。これは、全てのリーダーペプチドを欠失させ、部分-A-としてX1のリーダーペプチドを使用することと等価である。
【0095】
(--X-L-)の各n例について、リンカーアミノ酸配列-Lは、存在しても存在しなくてもよい。例えば、n=2のとき、ハイブリッドはNH2-X1-L1-X2-L2-COOH、NH2-X1-X2--COOH、NH2-X1-L1-X2--COOH、NH2-X1-X2-L2-COOHなどであり得る。リンカーアミノ酸配列-L-は、典型的には短く、例えば、20個以下のアミノ酸(すなわち、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個)である。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリグリシンリンカー(Gly、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)、及びヒスチジンタグ(Hisn、n=3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)が挙げられる。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者には明らかであろう。有用なリンカーはGSGGGGであり、Gly-SerジペプチドがBamHI制限部位から形成されているので、クローニング及び操作を補助し、(Gly)4テトラペプチドが代表的なポリグリシンリンカーである。更に、プロテアーゼ基質配列も加えることができる(例えば、TEVプロテアーゼ:ENLYFQG)。
【0096】
-A-は、任意選択のN末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短く、例えば40個以下のアミノ酸(すなわち、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)である。例としては、タンパク質輸送を指示するリーダー配列、又はクローニング若しくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグHisn、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上)が挙げられる。他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者には明らかであろう。X1がそれ自体のN末端メチオニンを欠く場合、-A-は、N末端メチオニンを提供するオリゴペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸を有する)である。
【0097】
-B-は任意選択のC末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短く、例えば40個以下のアミノ酸(すなわち、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)である。例としては、タンパク質輸送を指示する配列、クローニング又は精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、Hisn、n=3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)、又はタンパク質の安定性を高める配列が挙げられる。TEVプロテアーゼ基質配列がそれに先行する場合、このようなHisn配列が除去され得ることを含めて、他の適切なC末端アミノ酸配列は、当業者には明らかであろう(例えば、ENLYFQGHisn)。
【0098】
複数のエピトープ融合抗原(個々の-X-部分)内の免疫原性組成物の個々の抗原は、1つ以上の株又は1つ以上のM型に由来し得る。例えば、n=2である場合、X2は、X1と同じ株又は型に由来することも、異なる株又は型に由来することもある。n=3の場合、株は、(i)X1=X2=X3、(ii)X1=X2≠X3、(iii)X1≠X2=X3、(iv)X1≠X2≠X3、又は、(v)X1=X3≠X2、などであり得る。
【0099】
複数のエピトープ融合抗原が使用される場合、融合タンパク質内の個々の抗原(すなわち、個々の-X-部分)は、1つ以上の株に由来し得る。例えば、n=2の場合、X2はX1と同じ株に由来することも、異なる株に由来することもある。n=3の場合、株は、(i)X1=X2=X3、(ii)X1=X2≠X3、(iii)X1≠X2=X3、(iv)X1≠X2≠X3、又は、(v)X1=X3≠X2であり得る。
【0100】
したがって、実施形態では、異なるサポウイルス株由来の抗原決定基が存在し得る。サポウイルス分離株に由来するポリペプチドを含む、本開示における使用のための代表的なマルチエピトープ融合タンパク質を以下で考察する。しかし、サポウイルスゲノムに由来する他のエピトープを含むマルチエピトープ融合タンパク質、又はエピトープの異なる配置を含むマルチエピトープ融合タンパク質もまた、開示されるような免疫原性組成物において使用が見出されることを理解されたい。
【0101】
特定の実施形態において、融合タンパク質は、サポウイルスの1つ以上の分離株からの1つ以上のカプシド及び/又はマイナー構造ポリペプチドを含む。
【0102】
別の実施形態において、融合タンパク質は、1つ以上のサポウイルス株(例えば、VP1Sapporo-VP1London/29845、VP1London/29845-VP1Manchester-VP1Sapporo、VP1Manchester-VP1Parkville-VP1Sapporo-VP1London/29845、VP1Parkville-VP1Houston/90-VP1Houston/86-VP1Manchester-VP1Sapporo)からのVP1ポリペプチドを含む。
【0103】
本明細書中に記載される全ての融合体において、ウイルス領域は、天然に存在する順序である必要はない。更に、領域のそれぞれは、同じ又は異なるサポウイルス分離株に由来し得る。上記の種々の融合体中に存在する種々のサポウイルスポリペプチドは、全長ポリペプチド又はその部分のいずれかであり得る。
【0104】
所望であれば、融合タンパク質又はこれらのタンパク質の個々の成分は、他のアミノ酸配列(例えば、アミノ酸リンカー又はシグナル配列)、並びにタンパク質精製において有用なリガンド(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ及びブドウ球菌プロテインA)も含有し得る。
核酸
【0105】
例えば、ポリペプチド産生において本明細書に開示されるように使用するための核酸は、ORF1、ORF2、又はORF3領域のいずれかを含む、サポウイルスゲノムの種々の領域のいずれかに由来し得る。サポウイルス分離株からの代表的な配列を本明細書に列挙する。したがって、本明細書に開示されるような使用のための核酸には、任意の病原性サポウイルス遺伝子型又は分離株由来の1つ以上の配列に由来するものが含まれる。
【0106】
サポウイルスからの代表的な配列は公知であり、これらには、配列番号1、7、14、及び20が含まれる。代表的なサポウイルス配列は、サッポロウイルス-London/29845、GenBankアクセッション番号U95645、Parkvilleウイルス、GenBankアクセッション番号AF294739;及びサッポロウイルス-Houston/86、GenBankアクセッション番号U95643である。
【0107】
サポウイルスに対する免疫応答を誘発するための核酸免疫において使用され得る、これらの配列のいずれか、並びにその断片及び変異体は、本発明の方法において用途が見出されるであろう。したがって、本開示は、それに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(これらの範囲内の任意の同一性パーセント、例えば、それに対して81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.9%の配列同一性を含む)を示す上記配列の変異体を提供する。本開示はまた、上記配列又はその変異体のいずれかに由来するサポウイルスポリペプチドの免疫原性断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドはまた、天然に存在するポリペプチドのコード配列を含んでいてもよいし、天然に存在しない人工配列であってもよい。
【0108】
ポリヌクレオチドは、サポウイルスゲノム全体に満たないものを含有してもよく、あるいはウイルスゲノムRNA全体の配列を含んでもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、サポウイルスゲノムのORF1、ORF2、及びORF3領域からの1つ以上の配列を含み得る。ポリヌクレオチドはまた、サポウイルスの複数の遺伝子型及び/又は分離株からのウイルスゲノムRNA全体、又は全体より少ないウイルスゲノムRNAを含み得る。
【0109】
実施形態において、ポリヌクレオチドは、サポウイルスの全長ポリタンパク質をコードするORF1配列を含む。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、サポウイルスのORF1配列の1つ以上の部分を含む。
【0110】
別の例では、ポリヌクレオチドは、サポウイルスポリタンパク質の一部をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0111】
実施形態において、ポリヌクレオチドは、サポウイルスの1つ以上のカプシドタンパク質をコードする配列を含む。例えば、ポリヌクレオチドは、サポウイルスの構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、VP10)をコードする1つ以上の配列を含み得る。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、サポウイルスの複数の遺伝子型及び/又は分離株からの少なくとも2つのカプシドタンパク質をコードする配列を含む。
【0112】
実施形態において、ポリヌクレオチドは、サポウイルスの1つ以上の分離株のカプシドタンパク質をコードする1つ以上のサポウイルス配列を含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、サポウイルスの1つ以上の分離株のカプシドタンパク質をコードする1つ以上の配列を含む。
【0113】
実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるマルチエピトープ融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。マルチエピトープ融合タンパク質は、サポウイルスの1つ以上の遺伝子型及び/又は分離株からの配列を含み得る。
【0114】
本開示による核酸は、多くの方法(例えば、化学合成によって、ゲノム又はcDNAライブラリーから、生物自体からなど)で調製することができ、様々な形態(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プローブなど)をとることができる。実施形態では、核酸は、実質的に純粋な形態(すなわち、他の宿主細胞又は非宿主細胞核酸を実質的に含まない)で調製される。
【0115】
例えば、核酸は、ウイルスに感染した細胞からcDNA及び/又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、又はそれを含むことが知られているベクターから遺伝子を誘導することによって得ることができる。例えば、目的のポリヌクレオチドは、例えば、感染した個体からの便又は嘔吐物のサンプル中に存在するウイルスRNA由来のゲノムライブラリーから単離され得る。あるいは、サポウイルス核酸は、感染したヒト若しくは他の哺乳動物から、又は感染した個体から収集された便若しくは嘔吐物のサンプルから単離され得る。LLC-PK細胞では、胆汁酸を含む腸液の存在下でウイルスを増殖させることができる。PCRなどの増幅法を使用して、サポウイルスゲノムRNA又はそれをコードするcDNAのいずれかからポリヌクレオチドを増幅することができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、例えば、自動合成機を使用して、実験室で合成することもできる。ヌクレオチド配列は、所望の特定のアミノ酸配列に適切なコドンを用いて設計することができる。概して、配列を発現させる対象となる宿主に対して好ましいコドンを選択することになる。目的のポリヌクレオチドの完全な配列は、標準的な方法によって調製された重複するオリゴヌクレオチドから構築され、完全なコード配列に構築され得る。ポリヌクレオチドは、RNAであっても、一本鎖又は二本鎖DNAであってもよい。実施形態において、ポリヌクレオチドは、タンパク質及び脂質などの他の成分を含まない状態で単離される。
【0116】
したがって、特定のヌクレオチド配列は、所望の配列を保有するベクターから得ることができるか、又は適切な場合には、当該分野で公知の種々のオリゴヌクレオチド合成技術(例えば、部位特異的変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術)を使用して、完全に若しくは部分的に合成することができる。特に、所望の配列をコードするヌクレオチド配列を得る1つの方法は、従来の自動ポリヌクレオチド合成機において産生された重複する合成オリゴヌクレオチドの相補的セットをアニーリングし、続いて適切なDNAリガーゼを用いてライゲーションし、ライゲーションされたヌクレオチド配列をPCRを介して増幅することによるものである。
免疫原性ポリペプチドの産生
【0117】
本明細書に記載のポリペプチドは、任意の適切な様式(例えば、組換え発現、細胞培養からの精製、化学合成など)で、及び様々な形態(例えば、天然、融合、非グリコシル化、脂質化など)で調製され得る。このようなポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド、組換え的に産生されたポリペプチド、合成的に産生されたポリペプチド、又はこれらの方法の組み合わせによって産生されるポリペプチドを含む。このようなポリペプチドを調製するための手段は、当該分野で十分に理解されている。ポリペプチドは、実質的に純粋な形態(すなわち、他の宿主細胞又は非宿主細胞タンパク質を実質的に含まない状態)で調製される。
【0118】
ポリペプチドは、ペプチド分野の当業者に公知であるいくつかの技術のいずれかによって、化学的に都合よく合成することができる。概して、これらの方法では、成長するペプチド鎖への1つ以上のアミノ酸を順次付加する方法を採用している。通常、第1のアミノ酸のアミノ基又はカルボキシル基のいずれかは、適切な保護基によって保護されている。次いで、保護又は誘導体化されたアミノ酸は、アミド結合の形成を可能にする条件下で、適切に保護された相補的(アミノ又はカルボキシル)基を有する配列中の次のアミノ酸を結合することによって、不活性固体支持体に結合され得るか、又は溶液中で利用され得る。次いで、新たに付加されたアミノ酸残基から保護基が除去され、次いで、次のアミノ酸(適切に保護されている)が付加される。所望のアミノ酸が適切な配列で連結された後、残りの保護基(及び固相合成技術が使用される場合は固体支持体)が順次又は同時に除去されて、最終的なポリペプチドが得られる。この一般的な手順を簡単に変更することで、例えば、保護されたトリペプチドを適切に保護されたジペプチドとカップリング(キラル中心をラセミ化しない条件下で)させ、脱保護後にペンタペプチドを形成することによって、成長する鎖に一度に1つ以上のアミノ酸を付加することができる。
【0119】
典型的な保護基としては、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)ベンジルオキシカルボニル(Cbz);p-トルエンスルホニル(Tx);2,4-ジニトロフェニル;ベンジル(Bzl);ビフェニルイソプロピルオキシカルボキシ-カルボニル、t-アミルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、o-ブロモベンジルオキシカルボニル、シクロヘキシル、イソプロピル、アセチル、o-ニトロフェニルスルホニルなどが挙げられる。典型的な固体支持体は、架橋ポリマー支持体である。これらには、ジビニルベンゼン架橋スチレン系ポリマー、例えば、ジビニルベンゼン-ヒドロキシメチルスチレンコポリマー、ジビニルベンゼン-クロロメチルスチレンコポリマー、及びジビニルベンゼン-ベンズヒドリルアミノポリスチレンコポリマーが含まれ得る。
【0120】
本開示のポリペプチドは、同時複数ペプチド合成法などの他の方法によって化学的に調製することもできる。
【0121】
あるいは、上記の免疫原性ポリペプチド、ポリタンパク質、及びマルチエピトープ融合タンパク質は、組換えによって産生され得る。所望のタンパク質のコード配列が単離又は合成されると、発現のための任意の適切なベクター又はレプリコンにクローニングされ得る。多数のクローニングベクターが当業者に公知であり、適切なクローニングベクターの選択は選択の問題である。細菌、酵母、植物、哺乳動物及び昆虫など、種々の発現系が当該分野で利用可能であり、このような発現系であればどのようなものでも使用できる。任意選択的に、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、無細胞翻訳系において翻訳され得る。このような方法は当技術分野でよく知られている。
【0122】
クローニング用の組換えDNAベクター及びそれらが形質転換できる宿主細胞の例としては、バクテリオファージλ(大腸菌)、pBR322(大腸菌)、pACYC177(大腸菌)、pKT230(グラム陰性菌)、pGV1106(グラム陰性菌)、pLAFR1(グラム陰性菌)、pME290(非大腸菌グラム陰性菌)、pHV14(大腸菌及び枯草菌)、pBD9(バチルス属)、pIJ61(ストレプトミセス属)、pUC6(ストレプトミセス属)、YIp5(サッカロミセス属)、YCp19(サッカロミセス属)及びウシパピローマウイルス(哺乳動物細胞)が挙げられる。
【0123】
昆虫細胞発現系(例えば、バキュロウイルス系)もまた使用することができ、これは、当業者に公知であり、例えば、Summers and Smith,Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)に記載されている。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の材料及び方法は、とりわけ、Invitrogen,San Diego,CAからキット形態で市販されている(「MaxBac」キット)。
【0124】
植物発現系を使用して、免疫原性タンパク質を産生することもできる。概して、このような系では、ウイルスベースのベクターを使用して、植物細胞に異種遺伝子をトランスフェクトする。
【0125】
ウイルス系(例えば、ワクシニアベースの感染/トランスフェクション系)もまた、本明細書中に開示されるような主題での使用が見出されるであろう。この系では、まず、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼをコードするワクシニアウイルス組換え体を用いてin vitroで細胞をトランスフェクトする。このポリメラーゼは、T7プロモーターを有するテンプレートのみを転写するという点で優れた特異性を示す。感染後、細胞を、T7プロモーターによって駆動される目的のDNAでトランスフェクトする。ワクシニアウイルス組換え体から細胞質中で発現されるポリメラーゼは、トランスフェクトされたDNAをRNAに転写し、次いで、宿主の翻訳機構によってタンパク質に翻訳される。本方法では、大量のRNA及びその翻訳産物を高レベルで一過性に細胞質産生する。
【0126】
遺伝子は、所望の免疫原性ポリペプチドをコードするDNA配列が、この発現構築物を含むベクターによって形質転換された宿主細胞においてRNAに転写されるように、プロモーター、リボソーム結合部位(細菌発現の場合)、及び任意選択的にオペレーター(本明細書中で集合的に「制御」エレメントと呼ばれる)の制御下に置くことができる。コード配列は、シグナルペプチド又はリーダー配列を含有しても含有しなくてもよい。本明細書に開示される本主題では、天然に存在するシグナルペプチド又は異種配列の両方を使用することができる。リーダー配列は、翻訳後処理において宿主によって除去され得る。例えば、米国特許第4,431,739号;同第4,425,437号;同第4,338,397号を参照されたく、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このような配列には、tpaリーダー、並びにミツバチメリチンシグナル配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
宿主細胞の成長に関連したタンパク質配列の発現の調節を可能にする他の調節配列も望ましい場合がある。このような調節配列は当業者に公知であり、例としては、調節化合物の存在を含む化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現をオン又はオフにするものが挙げられる。他の種類の調節エレメント、例えばエンハンサー配列もまた、ベクター中に存在し得る。
【0128】
制御配列及び他の調節配列は、ベクターに挿入する前にコード配列にライゲーションされ得る。あるいは、コード配列は、制御配列及び適切な制限部位を既に含む発現ベクターに直接クローニングされ得る。
【0129】
実施形態において、適切な向きで制御配列に結合できるように、すなわち、適切なリーディングフレームを維持するように、コード配列を修飾することが必要な場合がある。免疫原性ポリペプチドの突然変異体又は類似体を産生することも望ましい場合がある。突然変異体又は類似体は、タンパク質をコードする配列の一部の欠失によって、配列の挿入によって、及び/又は配列内の1つ以上のヌクレオチドの置換によって調製され得る。部位特異的変異誘発などのヌクレオチド配列を修飾するための技術は、当業者に周知である。
【0130】
次いで、発現ベクターを使用して適切な宿主細胞を形質転換する。多数の哺乳動物細胞株が当該分野で公知であり、これらには、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞株、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、並びに他のものが含まれるが、これらに限定されない。同様に、細菌宿主(例えば、大腸菌、枯草菌、及び連鎖球菌種)は、本発明の発現構築物との使用が見出される。開示される主題に有用な酵母宿主としては、とりわけ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギレリモンディ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が挙げられる。バキュロウイルス発現ベクターと共に使用するための昆虫細胞としては、とりわけ、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、オートグラファ・カリフォルニア(Autographa californica)、カイコ(Bombyx mori)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ヨトウガヨトウ(Spodoptera frugiperda)、及びトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)が挙げられる。
【0131】
選択された発現系及び宿主に依存して、本明細書中に開示されるようなタンパク質は、目的のタンパク質が発現される条件下で、上記の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を増殖させることによって産生される。適切な成長条件の選択は、当業者の技術範囲内である。その後、化学的、物理的、又は機械的手段を使って細胞を破壊し、細胞を溶解させるが、サポウイルス免疫原性ポリペプチドは実質的に無傷のまま維持される。細胞内タンパク質はまた、免疫原性ポリペプチドの漏出が起こるように、例えば洗浄剤又は有機溶剤を使用して細胞壁又は膜から成分を除去することによって得ることもできる。
【0132】
例えば、本明細書に開示される主題と共に使用するための細胞を破壊する方法には、音波処理又は超音波処理;撹拌;液体又は固体の押出;熱処理;凍結融解;乾燥;爆発的減圧;浸透圧ショック;トリプシン、ノイラミニダーゼ及びリゾチームなどのプロテアーゼを含む溶解酵素による処理;アルカリ処理;並びに胆汁酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton(登録商標)、NP40及びCHAPSなどの洗浄剤及び溶剤の使用が含まれるが、これらに限定されない。細胞を破壊するために使用される特定の技術は、主に選択の問題であり、ポリペプチドが発現される細胞型、培養条件及び使用される任意の前処理に依存する。
【0133】
細胞を破壊した後、細胞破片を、概ね遠心分離によって除去し、そして細胞内で産生されたサポウイルス免疫原性ポリペプチドを、標準的な精製技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、HPLC、免疫吸着技術、アフィニティークロマトグラフィー、免疫沈降などであるが、これらに限定されない)を使用して、更に精製する。
【0134】
例えば、本明細書に開示されるような細胞内サポウイルス免疫原性ポリペプチドを得るための1つの方法には、特異的抗体を使用するイムノアフィニティークロマトグラフィーなどによるアフィニティー精製が含まれる。適切な親和性樹脂の選択は、当業者の範囲内である。アフィニティー精製後、免疫原性ポリペプチドは、当技術分野で周知の従来の技術、例えば上記の技術のいずれかを使用して更に精製することができる。
【0135】
複数のポリペプチド(例えば、1つ以上のウイルス株由来の構造タンパク質及び/若しくは非構造タンパク質、又はポリペプチドアジュバントと組み合わせたウイルスポリペプチド)を同時に産生することが望ましい場合がある。2つ以上の異なるポリペプチドの産生は、例えば、異なるポリペプチドをコードする構築物で宿主細胞を同時トランスフェクトすることによって容易に達成され得る。同時トランスフェクションは、トランス又はシスのいずれかで、すなわち、別々のベクターを使用することによって、又はポリペプチドをコードする単一のベクターを使用することによって達成され得る。単一のベクターが使用される場合、ポリペプチドの発現は、制御エレメントの単一のセットによって駆動され得るか、あるいは、ポリペプチドをコードする配列は、個々の制御エレメントによって調節される個々の発現カセット中のベクター上に存在し得る。
【0136】
本明細書中に記載されるポリペプチドは、固体支持体に結合され得る。本明細書に開示される主題を用いた実施において使用され得る固体支持体には、基質、例えばニトロセルロース(例えば、膜又はマイクロタイターウェルの形態);ポリ塩化ビニル(例えば、シート又はマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズ又はマイクロタイタープレート);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロン膜;活性化ビーズ、磁気応答性ビーズなどが含まれる。
【0137】
典型的には、固体支持体をまず固相成分(例えば、1つ以上のサポウイルス抗原)と、適切な結合条件下で反応させ、成分が支持体に十分に固定化されるようにする。場合によっては、最初に抗原をより結合特性の高いタンパク質にカップリングさせることで、支持体への抗原の固定化を強化することができる。適切なカップリングタンパク質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、及び当業者に周知の他のタンパク質などの高分子が挙げられるが、これらに限定されない。抗原を支持体に結合させるために使用され得る他の分子としては、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーなどが挙げられる。このような分子及びこれらの分子を抗原にカップリングさせる方法は、当業者に周知である。
【0138】
必要であれば、ポリペプチドは、従来の技術を使用して標識することができる。適切な標識としては、発蛍光団、発色団、放射性原子(特に、32P及び125I)、高電子密度試薬、酵素、及び特異的結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。酵素は、典型的には、それらの活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、通常、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を、青色色素に変換する能力によって検出され、分光光度計で定量可能である。「特異的結合パートナー」とは、例えば抗原及びそれに特異的なモノクローナル抗体の場合のように、高い特異性でリガンド分子に結合することができるタンパク質を指す。他の特異的結合パートナーとしては、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジン、IgG及びプロテインA、並びに当該分野で公知の多数の受容体-リガンド対が挙げられる。単一の標識又は標識の組み合わせが、本明細書に開示されるように使用することができる。
【0139】
一旦製剤化されると、本明細書に開示される組成物は、対象に直接投与され得る(例えば、上記のように)、あるいは、代替的に、上記のような方法を使用して、対象に由来する細胞にex vivoで送達され得る。
免疫原性組成物
【0140】
本開示はまた、本明細書に記載される免疫原性ポリペプチド及び/又はポリタンパク質マルチエピトープ融合タンパク質の1つ以上を含む組成物を提供する。異なるポリペプチド、ポリタンパク質、及び複数のエピトープ融合タンパク質は、単一の製剤中で一緒に混合することができる。このような組み合わせの中で、免疫原性組成物の抗原は、1つ以上のポリペプチド、又は複数のエピトープポリペプチド、又はポリタンパク質中に存在し得る。一態様において、免疫原性組成物を含むサポウイルスVP1には、バキュロウイルス発現昆虫宿主細胞からの溶解物が含まれる。関連する態様において、当該溶解物は、種々のレベルの分画を受けるか、又は未分画であり、発現されたタンパク質は、その発現状態(例えば、無傷のHisnタグ)から修飾されているか、又は修飾されていない。
【0141】
免疫原性組成物は、ポリペプチドの混合物を含んでもよく、同様に、同じ又は異なるビヒクルを使用して送達され得る。抗原は、例えば、予防的(すなわち、感染を予防するため)又は治療的(感染を治療するため)免疫原性組成物において、個々に又は組み合わせて投与され得る。免疫原性組成物は、所望の効果を得るために、複数回投与してもよい(例えば、「初回免疫」投与に続いて1回以上の「追加免疫」投与)。同じ組成物を、1回以上の初回免疫工程及び1回以上の追加免疫工程で投与することができる。あるいは、異なる組成物を、初回免疫及び追加免疫に使用することができる。
【0142】
免疫原性組成物は、概して、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの1つ以上の「薬学的に許容される賦形剤又はビヒクル」を含む。更に、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が、このようなビヒクル中に存在し得る。
【0143】
免疫原性組成物は、典型的には、上記の成分に加えて、1つ以上の「薬学的に許容される担体」を含む。これらには、組成物を投与される個体に有害な抗体の産生をそれ自体は誘導しない任意の担体が含まれる。適切な担体は、典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び脂質凝集体(油滴又はリポソームなど)のような、大きく代謝の遅い高分子である。このような担体は、当業者に周知である。組成物はまた、水、生理食塩水、グリセロールなどの希釈剤を含有し得る。更に、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が存在し得る。薬学的に許容される成分の詳細な説明は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20 th ed.,ISBN:0683306472に記載されている。
【0144】
薬学的に許容される塩もまた、本明細書に開示されるような組成物に使用することができ、これらの例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩などの無機塩、並びに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、又は安息香酸塩などの有機酸の塩が挙げられる。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、及び当業者に周知の他のタンパク質である。開示される組成物はまた、液体又は賦形剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、デキストロース、エタノールなど)、並びに物質(例えば、湿潤剤、乳化剤、又はpH緩衝剤)を単独又は組み合わせて含有し得る。抗原はまた、リポソーム及びPLGのような粒子状担体に吸着され得るか、その中に捕捉され得るか、又は他の方法で結合され得る。
【0145】
抗原は、免疫原性を高めるために、担体タンパク質とコンジュゲートさせることができる。これは、糖類又は炭水化物抗原が使用される組成物において特に有用である。
【0146】
担体タンパク質としては、細菌毒素又はトキソイド、例えばジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドが挙げられ得るが、これらに限定されない。CRM197ジフテリアトキソイドを使用することができる。他の担体ポリペプチドとしては、髄膜炎菌外膜タンパク質(欧州特許第0372501(A)号)、合成ペプチド(欧州特許第0378881(A)号及び同第0427347(A)号)、熱ショックタンパク質(国際公開第93/17712号及び同第94/03208号)、百日咳タンパク質(国際公開第98/58668号及び欧州特許第0471177(A)号)、インフルエンザ菌由来のプロテインD(国際公開第00/56360号)、サイトカイン(国際公開第91/01146号)、リンホカイン、ホルモン、成長因子、クロストリジウム・ディフィシル由来の毒素A又はB(国際公開第00/61761号)、鉄取り込みタンパク質(例えば、トランスフェリン(国際公開第01/72337号))などが挙げられる。混合物がセリグラフA及びCの両方からの莢膜糖を含む場合、MenA糖類:MenC糖類の比(w/w)は、1超(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1又はそれ以上)であり得る。異なる糖類は、同じ又は異なる型の担体タンパク質とコンジュゲートさせることができる。必要な場合には任意の適切なリンカーと共に、任意の適切なコンジュゲーション反応を使用することができる。
【0147】
開示されるワクチンを含む免疫原性組成物は、他の免疫調節剤と併せて投与され得る。例えば、本明細書に開示されるワクチンは、アジュバントを含み得る。アジュバントとしては、以下に記載される種類のアジュバントのうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
ミネラル含有組成物
【0148】
本明細書に開示されるアジュバントとしての使用に適したミネラル含有組成物としては、アルミニウム塩及びカルシウム塩などの無機塩が挙げられる。本明細書に開示される塩としては、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩などの無機塩、又は異なる無機化合物の混合物(例えば、リン酸塩と水酸化物アジュバントとの混合物、任意選択的に過剰のリン酸塩を含む)が挙げられ、化合物は任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)をとる。ミネラル含有組成物は、金属塩の粒子として製剤化することもできる(国際公開第00/23105号)。
【0149】
アルミニウム塩は、Al3+の投与量が1回当たり0.2~1.0mgとなるようにワクチンに含めることができる。
【0150】
実施形態において、開示されるように使用するためのアルミニウム系アジュバントは、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO4)2))、又はミョウバン誘導体、例えば、リン酸緩衝液中の抗原をミョウバンと混合し、続いて水酸化アンモニウム又は水酸化ナトリウムなどの塩基で滴定及び沈殿させることによってin-situで形成されるものなどである。
【0151】
本発明のワクチン製剤に使用するための別のアルミニウム系アジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(Al(OH)3)又は結晶性オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)であり、これは、約500m2/gの表面積を有する優れた吸着剤である。あるいは、水酸化アルミニウムアジュバントのヒドロキシル基の一部又は全ての代わりにリン酸基を含有するリン酸アルミニウムアジュバント(AlPO4)又はヒドロキシリン酸アルミニウムが提供される。実施形態において、本明細書で提供されるリン酸アルミニウムアジュバントは、非晶質であり、酸性、塩基性及び中性媒体に可溶性である。
【0152】
実施形態において、本明細書に開示されるアジュバントは、リン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウムの両方を含む。一態様において、アジュバントは、水酸化アルミニウムよりも多い量のリン酸アルミニウムを有し、例えば、リン酸アルミニウム対水酸化アルミニウムの重量比は、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は9:1超である。更により具体的には、ワクチン中のアルミニウム塩は、ワクチン投与1回当たり0.4~1.0mg、又はワクチン投与1回当たり0.4~0.8mg、又はワクチン投与1回当たり0.5~0.7mg、又はワクチン投与1回当たり約0.6mgで存在する。
【0153】
概して、アルミニウム系アジュバント、又はリン酸アルミニウム対水酸化アルミニウムなどの複数のアルミニウム系アジュバントの比は、抗原が所望のpHでアジュバントと反対の電荷を持つように、分子間の静電引力の最適化によって選択される。例えば、リン酸アルミニウムアジュバント(iep=4)は、pH7.4ではリゾチームを吸着するが、アルブミンは吸着しない。アルブミンが標的である場合、水酸化アルミニウムアジュバントが選択される(すなわち、11.4)。あるいは、水酸化アルミニウムをリン酸塩で前処理すると等電点が下がり、より塩基性の高い抗原に好ましいアジュバントになる。
油エマルジョン
【0154】
アジュバントとして使用するのに適した油エマルジョン組成物には、スクアレン-水エマルジョン、例えばMF59(5%スクアレン、0.5%Tween 80(商標)、及び0.5%Span 85(商標)、マイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化)が含まれ得る。国際公開第90/14837号を参照のこと。MF59は、FLUAD(商標)インフルエンザウイルス三価サブユニットワクチンにおけるアジュバントとして使用される。
【0155】
特に、組成物に使用するアジュバントは、サブミクロンの水中油型エマルジョンである。本明細書で使用するためのサブミクロンの水中油型エマルジョンは、任意選択的に様々な量のMTP-PEを含有するスクアレン/水エマルジョン、例えば、4~5%w/vスクアレン、0.25~1.0%w/vTween80(商標)(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、及び/又は0.25~1.0%Span85(商標)(トリオレイン酸ソルビタン)、並びに、任意選択的にN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルアトミニル-L-アラニン-2-(β-2’-ジパルミト-イル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)を含有するサブミクロンの水中油型エマルジョン、例えば、「MF59」として知られるサブミクロンの水中油型エマルジョン(国際公開第90/14837号;米国特許第6299884号及び同第6451325号)であり得る。MF59は、4~5%w/vスクアレン(例えば、4.3%)、0.25~0.5%w/vTween80(商標)、及び0.5%w/vSpan85(商標)を含有し、任意選択的に、様々な量のMTP-PEを含有し、Model 110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,Mass.)のようなマイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化される。例えば、MTP-PEは、約0~500μg/回、0~250μg/回及び0~100μg/回の量で存在し得る。本明細書中で使用される場合、「MF59-0」という用語は、MTP-PEを欠く上記のサブミクロンの水中油型エマルジョンをいい、一方、MF59-MTPという用語は、MTP-PEを含む製剤を示す。例えば、「MF59-100」は、投与1回当たり100μgのMTP-PEを含むなどである。本明細書で使用するための別のサブミクロンの水中油型エマルジョンであるMF69は、4.3%w/vスクアレン、0.25%w/vTween80(商標)、及び0.75%w/vSpan85(商標)、並びに任意選択的にMTP-PEを含有する。更に別のサブミクロンの水中油型エマルジョンは、10%スクアレン、0.4%Tween80(商標)、5%プルロニック(登録商標)-ブロックポリマーL121、及びthr-MDPを含有する、SAFとしても知られるMF75であり、同様にマイクロ流動化してサブミクロンエマルジョンにしたものである。MF75-MTPは、投与1回当たり100~400μgのMTP-PEなどのMTPを含むMF75製剤を示す。
【0156】
サブミクロンの水中油型エマルジョン、それを作製する方法、及び組成物中で使用するための免疫刺激剤(例えば、ムラミルペプチド)は、国際公開第90/14837号並びに米国特許第6,299,884号及び同第6,45/1325号に詳細に記載されている。
【0157】
完全フロイントアジュバント(CFA)及び不完全フロイントアジュバント(IFA)もアジュバントとして使用することができる。
サポニン製剤
【0158】
サポニン製剤もまた、アジュバントとして使用することができる。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根及び花においてさえも見出される、ステロール配糖体及びトリテルペノイド配糖体の異種群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮から単離されたサポニンは、アジュバントとして広く試験されている。サポニンはまた、スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサパリラ)、シュッコンカスミソウ(Gypsophilla paniculata)(ブライドベール)、及びサボンソウ(Saponaria officianalis)(サボンソウ根)から商業的に入手され得る。サポニンアジュバント製剤には、QS21などの精製製剤、並びにISCOMなどの脂質製剤が含まれる。
【0159】
サポニン組成物は、高速薄層クロマトグラフィー(HP-TLC)及び逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて精製されている。これらの技法を使用して、QS7、QS17、QS18、QS21、QH-A、QH-B及びQH-Cを含めた特定の精製画分が同定されている。実施形態において、サポニンはQS21である。QS21の作製方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。サポニン製剤はまた、コレステロールなどのステロールを含み得る(国際公開第96/33739号を参照)。
【0160】
サポニン及びコレステロールの組み合わせを使用して、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる独特の粒子を形成することができる。ISCOMは典型的には、ホスファチジルエタノールアミン又はホスファチジルコリンなどのリン脂質も含む。任意の公知のサポニンをISCOMにおいて使用することができる。実施形態において、ISCOMは、Quil A、QHA、及びQHCのうちの1つ以上を含む。ISCOMは、欧州特許第0109942号、国際公開第96/11711号及び同第96/33739号に更に記載されている。任意選択的に、ISCOMSは、更なる洗浄剤を含まないこともある。国際公開第00/07621号を参照されたい。
細菌誘導体又は微生物誘導体
【0161】
本明細書に開示される使用に適したアジュバントには、以下のような細菌誘導体又は微生物誘導体が含まれる:
【0162】
(1)腸内細菌リポ多糖(LP)の非毒性誘導体
【0163】
このような誘導体には、モノホスホリルリピドA(MPL)及び3-O-脱アシル化MPL(3dMPL)が含まれる。3dMPLは、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドAと4、5又は6アシル化鎖との混合物である。3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドAの1つの「小粒子」形態は、欧州特許第0689454号に開示されている。3dMPLのこのような「小粒子」は、0.22ミクロンの膜を通して無菌濾過できるほど小さい(欧州特許第0689454号を参照)。他の非毒性LPS誘導体には、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC-529)などのモノホスホリルリピドA模倣体が含まれる。
【0164】
(2)リピドA誘導体
【0165】
リピドA誘導体には、OM-174などの大腸菌由来のリピドAの誘導体が含まれる。
【0166】
(3)免疫刺激性オリゴヌクレオチド
【0167】
アジュバントとしての使用に適した免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、CpGモチーフ(非メチル化シトシン、続いてグアノシンが続き、リン酸結合によって連結された配列)を含むヌクレオチド配列が含まれ得る。回文配列又はポリ(dG)配列を含有する細菌の二本鎖RNA又はオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性があることが示されている。
【0168】
CpGは、ホスホロチオエート修飾のようなヌクレオチド修飾/類似体を含み、二本鎖又は一本鎖であり得る。任意選択的に、グアノシンは、類似体(例えば、2’-デオキシ-7-デアザグアノシン)で置き換えることができる。
【0169】
CpG配列は、モチーフGTCGTT又はTTCGTTなどのTLR9に向けられることがある。CpG配列は、CpG-A ODNのように、Th1免疫応答の誘導に特異的であってもよいし、CpG-B ODNのように、B細胞応答の誘導により特異的であってもよい。実施形態において、CpGはCpG-A ODNである。
【0170】
実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識にアクセスできるように構築され得る。任意選択的に、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列をその3’末端で結合して、「イムノマー」を形成し得る。
【0171】
(4)ADPリボシル化毒素及びその無毒化誘導体。
【0172】
細菌性ADP-リボシル化毒素及びその無毒化誘導体は、アジュバントとして使用することができる。実施形態において、タンパク質は、大腸菌(すなわち、大腸菌易熱性エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)、又は百日咳(「PT」)に由来し得る。粘膜アジュバントとしての無毒化ADP-リボシル化毒素の使用は、国際公開第95/17211号に記載されており、非経口アジュバントとしての使用は、国際公開第98/42375号に記載されている。実施形態において、アジュバントは、LT-K63、LT-R72、及びLTR192Gなどの無毒化LT突然変異体である。
生体接着剤及び粘膜接着剤
【0173】
生体接着剤及び粘膜接着剤もまた、アジュバントとして使用することができる。適切な生体接着剤には、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア又は粘膜接着剤、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖及びカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体が含まれる。キトサン及びその誘導体もアジュバントとして使用することができる。例えば、国際公開第99/27960号。
ムラミルペプチド
【0174】
アジュバントとしての使用に適したムラミルペプチドの例としては、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-1-アラニル-d-イソグルタミン(nor-MDP)、及びN-アセチルムラミル-1-アラニル-d-イソグルタミニル-1-アラニン-2-(1’-2’-ジパルミトイル-s-n-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)が挙げられる。
イミダゾキノリン化合物。
【0175】
アジュバントとしての使用に適したイミダゾキノリン化合物の例としては、イミキモド及びその類似体が挙げられる(例えば、米国特許第4689338号、同第5389640号、同第5268376号、同第4929624号、同第5266575号、同第5352784号、同第5494916号、同第5482936号、同第5346905号、同第5395937号、同第5238944号、及び同第5525612号を参照)。
チオセミカルバゾン化合物。
【0176】
チオセミカルバゾン化合物の例、並びにアジュバントとしての使用に全て適した化合物の製剤化、製造、及びスクリーニング方法の例としては、国際公開第04/60308号に記載されているものが挙げられる。チオセミカルバゾンは、サイトカイン(例えば、TNF-α)の産生のためのヒト末梢血単核球を刺激するのに特に有効である。
トリプタントリン化合物。
【0177】
トリプタントリン化合物の例、並びに本明細書に開示されるアジュバントとしての使用に全て適した化合物の製剤化、製造、及びスクリーニング方法の例としては、国際公開第04/64759号に記載されているものが挙げられる。トリプタントリン化合物は、TNF-αなどのサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球を刺激するのに特に有効である。
【0178】
上記で同定されたアジュバントの1つ以上の態様の組み合わせが、本明細書に開示される組成物に適用され得る。例えば、以下のアジュバント組成物を使用することができる:
【0179】
(1)サポニン及び水中油型エマルジョン(国際公開第99/11241号);(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(国際公開第94/00153号を参照);(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL-12(任意選択的に+ステロール)(国際公開第98/57659号);(5)3dMPLと、例えば、QS21及び/又は水中油型エマルジョンとの組み合わせ(欧州特許第0835318号、同第0735898号及び同第0761231号を参照);(6)10%スクアラン、0.4%Tween80(商標)、5%プルロニック(登録商標)-ブロックポリマーL121、及びthr-MDPを含有するSAF(マイクロ流動化してサブミクロンエマルジョンにしたもの、又はボルテックスしてより大きな粒径のエマルジョンにしたもの);(7)2%スクアレンと、0.2%Tween80(商標)と、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、及び細胞壁骨格(CWS)、MPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1つ以上の細菌細胞壁成分と、を含有する、Ribi(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem);(8)1つ以上の無機塩(アルミニウム塩など)+LPSの非毒性誘導体(3dPMLなど);(9)1つ以上の無機塩(アルミニウム塩など)及び1つ以上の免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むヌクレオチド配列など)及び1つ以上の無毒化ADPリボシル化毒素(LT-K63及びLT-R72など)。
更なる抗原
【0180】
本明細書中に開示される組成物は、任意選択的に、サポウイルスタンパク質に由来しない1つ以上の更なるポリペプチド抗原を含み得る。このような抗原には、細菌、ウイルス、又は寄生虫抗原が含まれる。
【0181】
いくつかの実施形態において、サポウイルス抗原は、オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV及びムンプス)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、腸内ウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、並びに水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、化膿性連鎖球菌(A群連鎖球菌)、カタラリス菌、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B型(Hib)、緑膿菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、及び大腸菌などの細菌又はウイルス由来の抗原を含むが、これらに限定されない1つ以上の抗原と組み合わされる。
【0182】
他の実施形態において、サポウイルス抗原は、髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、化膿性連鎖球菌(A群連鎖球菌)、カタラリス菌、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B型(Hib)、緑膿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群連鎖球菌)、大便連鎖球菌、ピロリ菌、肺炎クラミジア、オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV及びムンプス)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、腸内ウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)を含むが、これらに限定されない1つ以上の抗原と組み合わされる。
【0183】
他の実施形態において、サポウイルス抗原は、下痢性疾患を引き起こす病原体から個人を保護するように設計されたワクチンにおいて有用である1つ以上の抗原と組み合わされる。このような抗原としては、ロタウイルス、シゲラ種、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)、コレラ菌、及びカンピロバクター・ジェジュニ抗原が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態において、1つ以上のノロウイルス抗原は、ノーウォークウイルス、スノーマウンテンウイルス、及び/又はハワイウイルスに由来し得、免疫原性組成物においてロタウイルス抗原と組み合わされる。
【0184】
本発明の組成物と共に使用され得る抗原としては、以下に示される以下の抗原のうちの1つ以上、又は以下に示される病原体のうちの1つ以上に由来する抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
細菌抗原
【0185】
本明細書に開示される好適な細菌抗原としては、タンパク質、多糖、リポ多糖、及び外膜小胞が挙げられ、これらは細菌から単離、精製、又は誘導され得る。加えて、細菌抗原は、細菌溶解物及び不活化細菌製剤を含み得る。細菌抗原は、組換え発現によって産生され得る。細菌抗原には、そのライフサイクルの少なくとも1つの段階で細菌の表面に露出する可能性のあるエピトープが含まれる。細菌抗原は、複数の血清型にわたって保存され得る。細菌抗原には、以下に示される細菌の1つ以上に由来する抗原、並びに以下に同定される特異的抗原の例が含まれる。
【0186】
髄膜炎菌:髄膜炎抗原は、A、C、W135、Y、及び/又はBなどの髄膜炎菌血清群から精製又は誘導された、タンパク質(参考文献1~7において同定されているものなど)、糖類(多糖、オリゴ糖、又はリポ多糖を含む)、又は外膜小胞を含み得る。髄膜炎タンパク質抗原は、癒着物、自己輸送体、毒素、鉄獲得タンパク質、及び膜関連タンパク質(例えば、内在性外膜タンパク質)から選択され得る。
【0187】
肺炎連鎖球菌:肺炎連鎖球菌抗原には、肺炎連鎖球菌由来の糖類(多糖又はオリゴ糖を含む)及び/又はタンパク質が含まれ得る。糖抗原は、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、及び33Fから選択され得る。タンパク質抗原は、国際公開第98/18931号、同第98/18930号、米国特許第6699703号、同第6800744号、国際公開第97/43303号、及び同第97/37026号において同定されたタンパク質から選択され得る。肺炎連鎖球菌タンパク質は、ポリヒスチジントライアドファミリー(PhtX)、コリン結合タンパク質ファミリー(CbpX)、CbpXトランケート、LytXファミリー、LytXトランケート、CbpXトランケート-LytXトランケートキメラタンパク質、ニューモリシン(Ply)、PspA、PsaA、Sp128、Sp101、Sp130、Sp125又はSp133から選択され得る。
【0188】
化膿性連鎖球菌(A群連鎖球菌):A群連鎖球菌抗原は、国際公開第02/34771号又は同第2005/032582号において同定されたタンパク質(GAS 40を含む)、GAS Mタンパク質の断片の融合体(国際公開第02/094851号に記載されたものを含む)、フィブロネクチン結合タンパク質(Sfb1)、連鎖球菌ヘム関連タンパク質(Shp)、及びストレプトリシンS(SagA)を含み得る。
【0189】
カタラリス菌:モラクセラ抗原には、国際公開第02/18595号及び同第99/58562号で同定された抗原、外膜タンパク質抗原(HMW-OMP)、C抗原、及び/又はLPSが含まれる。
【0190】
百日咳菌:百日咳抗原には、百日咳菌由来の百日咳ホロ毒素(PT)及び繊維状赤血球凝集素(FHA)が含まれ、任意選択的にペルタクチン及び/又は凝集原2及び3抗原との組み合わせも含まれる。
【0191】
黄色ブドウ球菌:黄色ブドウ球菌抗原には、STAPHVAX(商標)などの、非毒性組換え緑膿菌外毒素Aに任意選択的にコンジュゲートされた黄色ブドウ球菌5型及び8型莢膜多糖、又は表面タンパク質に由来する抗原、インベイシン(ロイコシジン、キナーゼ、ヒアルロニダーゼ)、食細胞による貪食を阻害する表面因子(莢膜、プロテインA)、カロテノイド、カタラーゼ産生、プロテインA、コアグラーゼ、凝固因子、及び/又は真核細胞膜を溶解する(任意選択的に無毒化された)膜損傷毒素(溶血素、ロイコトキシン、ロイコシジン)が含まれる。
【0192】
表皮ブドウ球菌:表皮ブドウ球菌抗原には、粘液関連抗原(SAA)が含まれる。
【0193】
破傷風菌(破傷風):破傷風抗原には、破傷風トキソイド(TT)が含まれ、本開示の組成物と併せて/コンジュゲートさせて担体タンパク質として使用することができる。
【0194】
ジフテリア菌(ジフテリア):ジフテリア抗原には、CRM197などの無毒化されたジフテリア毒素が含まれる。更に、ADPリボシル化を調節、阻害することができる、又はADPリボシル化に関連することができる抗原が、本開示の組成物との組み合わせ/同時投与/コンジュゲーションのために企図される。ジフテリアトキソイドは、担体タンパク質として使用することができる。
【0195】
インフルエンザ菌B型(Hib):Hib抗原には、Hib糖抗原が含まれる。
【0196】
緑膿菌:緑膿菌抗原には、エンドトキシンA、Wzzタンパク質、緑膿菌LPS、より具体的にはPAO1(O5血清型)から単離されたLPS、及び/又は外膜タンパク質F(OprF)を含む外膜タンパク質が含まれる。
【0197】
レジオネラ・ニューモフィラ。細菌抗原は、レジオネラ・ニューモフィラに由来し得る。
【0198】
ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群連鎖球菌):B群連鎖球菌抗原には、国際公開第02/34771号、同第03/093306号、同第04/041157号、又は同第2005/002619号で同定されたタンパク質又は糖抗原(タンパク質GBS 80、GBS 104、GBS 276及びGBS 322を含み、血清型Ia、Ib、Ia/c、II、III、IV、V、VI、VII及びVIIIに由来する糖抗原を含む)が含まれる。
【0199】
淋菌(Neiserria gonorrhoeae):淋菌抗原には、PorBなどのPor(又はポーリン)タンパク質、TbpA及びTbpBなどのトランスフェリン結合タンパク質、混濁タンパク質(Opaなど)、還元修飾可能タンパク質(Rmp)、並びに外膜小胞(OMV)調製物が含まれる(例えば、国際公開第99/24578号、同第99/36544号、同第99/57280号、同第02/079243号を参照)。
【0200】
クラミジア・トラコマチス:クラミジア・トラコマチス抗原には、血清型A、B、Ba及びC(失明の原因であるトラコーマの病原体)、血清型L1、L2及びL3(性病性リンパ肉芽腫に関連する)、並びに血清型D~Kに由来する抗原が含まれる。クラミジア・トラコーマ抗原にはまた、国際公開第00/37494号、同第03/049762号、同第03/068811号、又は同第05/002619号において同定された抗原が含まれ、PepA(CT045)、LCRe(CT089)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、CT398、OmpH-like(CT242)、L7/L12(CT316)、OmcA(CT444)、AtosS(CT467)、CT547、Eno(CT587)、HrtA(CT823)、及びMurG(CT761)が含まれる。
【0201】
梅毒トレポネーマ(梅毒):梅毒抗原にはTmpA抗原が含まれる。
【0202】
軟性下疳菌(軟性下疳の原因):軟性下疳菌抗原には、外膜タンパク質(DsrA)が含まれる。
【0203】
大便連鎖球菌又はフェシウム菌:抗原には、米国特許第6,756,361号に提供される三糖反復又は他の腸球菌由来抗原が含まれる。
【0204】
ピロリ菌:ピロリ菌抗原には、Cag、Vac、Nap、HopX、HopY及び/又はウレアーゼ抗原が含まれる。
【0205】
腐性ブドウ球菌:抗原には、腐性ブドウ球菌抗原の160kDa血球凝集素が含まれる。
【0206】
エンテロコリチカ菌抗原にはLPSが含まれる。
【0207】
大腸菌:大腸菌抗原は、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)、分散接着性大腸菌(DAEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、及び/又は腸管出血性大腸菌(EHEC)に由来し得る。
【0208】
炭疽菌(炭疽):炭疽菌抗原は、任意選択的に無毒化され、A成分(致死因子(LF)及び浮腫因子(EF))から選択することができ、これらの両方は、防御抗原(PA)として公知の共通のB成分を共有し得る。
【0209】
ペスト菌(ペスト):ペスト抗原にはF1莢膜抗原が含まれる。
【0210】
結核菌:結核抗原には、リポタンパク質、LPS、BCG抗原、抗原85B(Ag85B)及び/若しくはESAT-6の融合タンパク質(任意選択的にカチオン性脂質小胞中に製剤化される)、結核菌(Mtb)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ関連抗原、並びに/又はMPT51抗原が含まれる。
【0211】
リケッチア:抗原は、外膜タンパク質A及び/又はB(OmpB)を含む外膜タンパク質を含む。
【0212】
リステリア菌。細菌抗原は、リステリア菌に由来し得る。
【0213】
肺炎クラミジア:抗原には、国際公開第02/02606号で同定されたものが含まれる。
【0214】
コレラ菌:抗原には、プロテイナーゼ抗原、LPS、特にコレラ菌II型のリポ多糖、O1 Inaba O特異的多糖、コレラ菌O139、IEM108ワクチンの抗原、及び/又は閉鎖帯毒素(Zot)が含まれる。
【0215】
チフス菌(腸チフス):抗原には、複合体(Vi、すなわちvax-TyVi)を含む莢膜多糖が含まれる。
【0216】
ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病):抗原には、リポタンパク質(例えば、OspA、OspB、Osp C及びOsp D)、他の表面タンパク質、例えば、OspE関連タンパク質(Erps)、デコリン結合タンパク質(例えば、DbpA)、並びに抗原可変VIタンパク質、例えば、P39及びP13 VlsE抗原変異タンパク質に関連する抗原が含まれる。
【0217】
ジンジバリス菌:抗原には、ジンジバリス菌外膜タンパク質(OMP)が含まれる。
【0218】
クレブシエラ菌:抗原には、OMP Aを含むOMP、又は破傷風トキソイドに任意選択的にコンジュゲートした多糖が含まれる。
【0219】
本開示の更なる細菌抗原は、上記のいずれかの莢膜抗原、多糖抗原又はタンパク質抗原であり得る。更なる細菌抗原には、外膜小胞(OMV)調製物も含まれ得る。更に、抗原には、前述の細菌のいずれかの、生菌、弱毒化された菌、及び/又は精製された菌が含まれる。本開示の抗原は、グラム陰性菌又はグラム陽性菌に由来し得る。本開示の抗原は、好気性細菌又は嫌気性細菌に由来し得る。
【0220】
更に、上記の細菌由来の糖類(多糖、LPS、LOS又はオリゴ糖)のいずれかを、担体タンパク質(例えばCRM197)のような別の薬剤又は抗原とコンジュゲートさせることができる。このようなコンジュゲーションは、米国特許第5360897号に提供されているように、糖類上のカルボニル部分のタンパク質上のアミノ基への還元的アミノ化によって行われる直接コンジュゲーションであり得る。あるいは、糖類は、リンカー(例えば、スクシンアミド又は他の結合)を介してコンジュゲートされ得る。
ウイルス抗原
【0221】
開示された組成物に使用するのに適したウイルス抗原には、精製サブユニット製剤、ウイルスから単離、精製又は誘導され得るウイルスタンパク質、及びウイルス様粒子(VLP)が含まれる。ウイルス抗原は、細胞培養物又は他の基質上で増殖したウイルスに由来し得る。あるいは、ウイルス抗原は、組換え的に発現し得る。ウイルス抗原には、そのライフサイクルの少なくとも1つの段階でウイルスの表面に露出するエピトープが含まれる。ウイルス抗原は、複数の血清型又は分離株で保存され得る。ウイルス抗原には、以下に示す1つ以上のウイルスに由来する抗原、並びに以下に同定される特異的抗原の例が含まれる。
【0222】
オルソミクソウイルス:ウイルス抗原は、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザA、B及びC)に由来し得る。オルソミクソウイルス抗原は、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)、転写酵素成分(PB1、PB2及びPA)のうちの1つ以上を含むウイルスタンパク質のうちの1つ以上から選択され得る。実施形態において、抗原は、HA及びNAを含む。
【0223】
インフルエンザ抗原は、パンデミック間期(毎年)のインフルエンザ株に由来し得る。あるいは、インフルエンザ抗原は、パンデミックを引き起こす可能性のある株(すなわち、現在流行している株における赤血球凝集素と比較して新しい赤血球凝集素を有するインフルエンザ株、又はトリ対象において病原性であり、ヒト集団において水平感染する可能性のあるインフルエンザ株、又はヒトに対して病原性であるインフルエンザ株)に由来し得る。
【0224】
パラミクソウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)及び麻疹ウイルス(麻疹)などのパラミクソウイルス科ウイルスに由来し得る。
【0225】
肺炎ウイルス:ウイルス抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、マウス肺炎ウイルス、及びシチメンチョウ鼻気管炎ウイルスなどの肺炎ウイルスに由来し得る。実施形態において、肺炎ウイルスはRSVである。肺炎ウイルス抗原は、表面タンパク質融合(F)、糖タンパク質(G)及び低分子疎水性タンパク質(SH)、マトリックスタンパク質M及びM2、ヌクレオカプシドタンパク質N、P及びL、並びに非構造タンパク質NS1及びNS2を含む、以下のタンパク質の1つ以上から選択され得る。肺炎ウイルス抗原には、F、G及びMが含まれ得る。肺炎ウイルス抗原はまた、キメラウイルスに製剤化され得るか、又はキメラウイルスに由来し得る。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSV及びPIVの両方の成分を含み得る。
【0226】
パラミクソウイルス:ウイルス抗原は、パラインフルエンザウイルス1~4型(PIV)、ムンプス、センダイウイルス、シミアンウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルス及びニューカッスル病ウイルスなどのパラミクソウイルスに由来し得る。実施形態において、パラミクソウイルスは、PIV又はムンプスである。パラミクソウイルス抗原は、以下のタンパク質、すなわち、血球凝集素-ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1及びF2、核タンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、巨大タンパク質(L)、並びにマトリックスタンパク質(M)のうちの1つ以上から選択され得る。パラミクソウイルスタンパク質は、HN、F1及びF2を含み得る。パラミクソウイルス抗原はまた、キメラウイルス中で製剤化され得るか、又はキメラウイルスに由来し得る。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSV及びPIVの両方の成分を含み得る。市販されているムンプスワクチンには、一価型の弱毒生ムンプスウイルス、又は麻疹及び風疹ワクチン(MMR)と組み合わせたものが含まれる。
【0227】
麻疹ウイルス:ウイルス抗原は、麻疹などの麻疹ウイルスに由来し得る。麻疹ウイルス抗原は、以下のタンパク質、すなわち、血球凝集素(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)、巨大タンパク質(L)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)、及びマトリックス(M)のうちの1つ以上から選択され得る。市販の麻疹ワクチンには、弱毒生麻疹ウイルスが含まれ、典型的にはムンプス及び風疹(MMR)と組み合わせて使用される。
【0228】
ピコルナウイルス:ウイルス抗原は、腸内ウイルス、ライノウイルス、ヘパルナウイルス、カルジオウイルス及びアフトウイルスなどのピコルナウイルスに由来し得る。ポリオウイルスなどの腸内ウイルスに由来する抗原を使用することもできる。
【0229】
腸内ウイルス:ウイルス抗原は、ポリオウイルス1型、2型又は3型、コクサッキーAウイルス1型~22型及び24型、コクサッキーBウイルス1型~6型、エコーウイルス(ECHO)ウイルス1型~9型、11型~27型及び29型~34型、並びに腸内ウイルス68型~71型などの腸内ウイルスに由来し得る。実施形態において、腸内ウイルスはポリオウイルスであり得る。腸内ウイルス抗原は、以下のカプシドタンパク質VP1、VP2、VP3及びVP4のうちの1つ以上を含み得る。市販のポリオワクチンとしては、不活化ポリオワクチン(IPV)及び経口ポリオウイルスワクチン(OPV)が挙げられる。
【0230】
ヘパルナウイルス:ウイルス抗原は、A型肝炎ウイルス(HAV)などのヘパルナウイルスに由来し得る。市販のHAVワクチンとしては、不活化HAVワクチンが挙げられる。
【0231】
トガウイルス:ウイルス抗原は、ルビウイルス、アルファウイルス、又はアルテリウイルスなどのトガウイルスに由来し得る。風疹ウイルスなどのルビウイルス由来の抗原を使用することもできる。トガウイルス抗原は、E1、E2、E3、C、NSP-1、NSPO-2、NSP-3又はNSP-4から選択され得る。トガウイルス抗原にはE1、E2又はE3が含まれる。市販されている風疹ワクチンには、風邪に適応した生ウイルスが含まれており、通常、ムンプス及び麻疹ワクチン(MMR)と組み合わせて使用される。
【0232】
フラビウイルス:ウイルス抗原は、ダニ媒介脳炎(TBE)、デング熱(1型、2型、3型又は4型)、黄熱病、日本脳炎、西ナイル脳炎、セントルイス脳炎、ロシア春夏脳炎、ポワサン脳炎などのフラビウイルスに由来し得る。フラビウイルス抗原は、prM、M、C、E、NS-1、NS-2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、及びNS5から選択され得る。フラビウイルス抗原には、prM、M及びEが含まれ得る。市販のTBEワクチンには、不活化ウイルスワクチンが含まれる。
【0233】
ペスチウイルス:ウイルス抗原は、ウシウイルス性下痢(BVDV)、ブタコレラ(CSFV)又はボーダー病(BDV)などのペスチウイルスに由来し得る。
【0234】
ヘパドナウイルス:ウイルス抗原は、B型肝炎ウイルスなどのヘパドナウイルスに由来し得る。ヘパドナウイルス抗原は、表面抗原(L、M及びS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択され得る。市販のHBVワクチンとしては、表面抗原Sタンパク質を含むサブユニットワクチンが挙げられる。
【0235】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来し得る。HCV抗原は、E1、E2、E1/E2、NS345ポリタンパク質、NS345-コアポリタンパク質、コア、及び/又は非構造領域由来のペプチドのうちの1つ以上から選択され得る。
【0236】
ラブドウイルス:ウイルス抗原は、リッサウイルス(狂犬病ウイルス)及びベシクロウイルス(VSV)などのラブドウイルスに由来し得る。ラブドウイルス抗原は、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、巨大タンパク質(L)、非構造タンパク質(NS)から選択され得る。市販の狂犬病ウイルスワクチンは、ヒト二倍体細胞又はアカゲザル胎児肺細胞上で増殖させた死滅ウイルスを含む。
【0237】
カリシウイルス科;ウイルス抗原は、ノーウォークウイルスなどのカルシウイルス科、及びハワイウイルス及びスノーマウンテンウイルスなどのノーウォーク様ウイルスに由来し得る。
【0238】
コロナウイルス:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、トリ伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、及びブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来し得る。コロナウイルス抗原は、スパイク(S)、エンベロープ(E)、マトリックス(M)、ヌクレオカプシド(N)、及び血球凝集素-エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択され得る。実施形態において、コロナウイルス抗原は、SARSウイルスに由来する。SARSウイルス抗原は、国際公開第04/92360号に記載されている。
【0239】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、オンコウイルス、レンチウイルス、又はスプーマウイルスなどのレトロウイルスに由来し得る。オンコウイルス抗原は、HTLV-1、HTLV-2又はHTLV-5に由来し得る。レンチウイルス抗原は、HIV-1又はHIV-2に由来し得る。レトロウイルス抗原は、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpu、及びvprから選択され得る。HIV抗原は、gag(p24gag及びp55gag)、env(gp160及びgp41)、pol、tat、nef、rev vpu、ミニタンパク質(例えば、p55gag及びgp140v欠失)から選択され得る。HIV抗原は、以下の株、すなわち、HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV-1CM235、HIV-1US4のうちの1つ以上に由来し得る。
【0240】
レオウイルス:ウイルス抗原は、オルトレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、又はコルチウイルスなどのレオウイルスに由来し得る。レオウイルス抗原は、構造タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2、若しくはσ3、又は非構造タンパク質σNS、μNS、若しくはσ1sから選択され得る。レオウイルス抗原は、ロタウイルスに由来し得る。ロタウイルス抗原は、VP1、VP2、VP3、VP4(又は切断産物VP5及びVP8)、NSP 1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4、又はNSP5から選択され得る。ロタウイルス抗原には、VP4(又は切断産物VP5及びVP8)、及びVP7が含まれ得る。例えば、国際公開第2005/021033号、同第2003/072716号、同第2002/11540号、同第2001/12797号、同第01/08495号、同第00/26380号、同第02/036172号を参照されたく、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0241】
パルボウイルス:ウイルス抗原は、パルボウイルスB19などのパルボウイルスに由来し得る。パルボウイルス抗原は、VP-1、VP-2、VP-3、NS-1及びNS-2から選択され得る。実施形態において、パルボウイルス抗原は、カプシドタンパク質VP-2である。
【0242】
デルタ肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDV、特にHDV由来のδ抗原に由来し得る(例えば、米国特許第5378814号を参照)。
【0243】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原は、HEVに由来し得る。
【0244】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原は、HGVに由来し得る。
【0245】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、及びヒトヘルペスウイルス8(HHV8)などのヒトヘルペスウイルスに由来し得る。ヒトヘルペスウイルス抗原は、最初期タンパク質(α)、初期タンパク質(β)、及び後期タンパク質(γ)から選択され得る。HSV抗原は、HSV-1株又はHSV-2株に由来し得る。HSV抗原は、糖タンパク質gB、gC、gD及びgH、融合タンパク質(gB)、又は免疫逃避タンパク質(gC、gE、又はgI)から選択され得る。VZV抗原は、コア、ヌクレオカプシド、テグメント、又はエンベロープタンパク質から選択され得る。弱毒生VZVワクチンは市販されている。EBV抗原は、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスカプシド抗原(VCA)、及び膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択され得る。CMV抗原は、カプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(例えば、gB及びgH)、及びテグメントタンパク質から選択され得る。
【0246】
パポバウイルス:抗原は、パピローマウイルス及びポリオーマウイルスなどのパポバウイルスに由来し得る。パピローマウイルスには、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63及び65が含まれる。実施形態において、HPV抗原は、血清型6、11、16又は18に由来する。HPV抗原には、カプシドタンパク質(L1)及び(L2)、又はE1~E7、又はそれらの融合体が含まれ得る。ポリオーマウイルスには、BKウイルス及びJKウイルスが含まれる。ポリオーマウイルス抗原は、VP1、VP2又はVP3から選択され得る。
【0247】
サーコウイルス:抗原は、ブタサーコウイルス(PCV)1、PCV 2、PCV 3、及びPCV 4などのサーコウイルスに由来し得る。
真菌抗原
【0248】
適切な真菌抗原は、以下に示される真菌のうちの1つ以上に由来し得る。
【0249】
真菌抗原は、有毛表皮糸状菌、オードアン小胞子菌、イヌ小胞子菌、ミクロスポラム・ジストータム(Microsporum distortum)、ミクロスポラム・イクイナム(Microsporum equinum)、石膏状小胞子菌、ミクロスポラム・ナナム(Microsporum nanum)、渦状白癬菌、トリコフィトン・イクイナム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・ガリナエ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・ジプセウム(Trichophyton gypseum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、毛瘡白癬菌、トリコフィトン・キンケアナム(Trichophyton quinckeanum)、紅色白癬菌、トリコフィトン・ショエンレイニ(Trichophyton schoenleini)、トリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ヴェルルコサム(Trichophyton verrucosum)、T.verrucosum var.album、var.discoides、var.ochraceum、紫色白癬菌、及び/又はトリコフィトン・ファヴィフォルメ(Trichophyton faviforme)を含む皮膚糸状菌に由来し得る。
【0250】
真菌病原体は、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowi)、アスペルギルス・フラバタス(Aspergillus flavatus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)、ブラストシゾミセス・キャピタタス(Blastoschizomyces capitatus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・エノラーゼ(Candida enolase)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・クセイ(Candida kusei)、カンジダ・パラクセイ(Candida parakwsei)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、カンジダ・ギリエルモンディー(Candida guilliermondi)、クラドスポリウム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ゲオトリチュム・クラバタム(Geotrichum clavatum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、肺炎桿菌、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ピチウム・インシディオサム(Pythiumn insidiosum)、ピチロスポルム・オバール(Pityrosporum ovale)、サッカロミセス・セレビシエ(Sacharomyces cerevisae)、サッカロミセス・ボウラウディー(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、セドスポリウム・アピオスペラム(Scedosporium apiosperum)、スポトロリクス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、トキソプラズマ原虫、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、マラセジア種(Malassezia spp.)、フォンセセア種(Fonsecaea spp.)、ワンギエラ種(Wangiella spp.)、スポロトリックス種(Sporothrix spp.)、バシジオボラス種(Basidiobolus spp.)、コニジオボラス種(Conidiobolus spp.)、リゾプス種(Rhizopus spp.)、ムコール種(Mucor spp.)、アブシジア種(Absidia spp.)、モルチエレラ種(Mortierella spp.)、カニンガメラ種(Cunninghamella spp.)、サクセネア種(Saksenaea spp.)、アルターナリア種(Alternaria spp.)、カルバラリア種(Curvularia spp.)、ヘルミントスポリウム種(Helminthosporium spp.)、フザリウム種(Fusarium spp.)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、ペニシリウム種(Penicillium spp.)、モノリニア種(Monolinia spp.)、リゾクトニア種(Rhizoctonia spp.)、パエシロミセス種(Paecilomyces spp.)、ピトミセス種(Pithomyces spp.)、及びクラドスポリウム種(Cladosporium spp.)に由来し得る。
【0251】
真菌抗原を産生するための方法は、当該分野で周知である(米国特許第6,333,164号を参照)。一方法において、細胞壁が実質的に除去された、又は少なくとも部分的に除去された真菌細胞から得ることができる不溶性画分から、可溶化画分を抽出及び分離する。該方法は、生存する真菌細胞を得る工程と、細胞壁が実質的に除去された、又は少なくとも部分的に除去された真菌細胞を得る工程と、細胞壁が実質的に除去された、又は少なくとも部分的に除去された真菌細胞を破裂させる工程と、不溶性画分を得る工程と、不溶性画分から可溶化画分を抽出して分離する工程と、を含むことを特徴とする。
呼吸器抗原
【0252】
本明細書に開示される組成物は、呼吸器疾患を引き起こす病原体に由来する1つ以上の抗原を含み得る。例えば、呼吸器抗原は、オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、VZV、及びコロナウイルス(SARS)などの呼吸器ウイルスに由来し得る。呼吸器抗原は、肺炎連鎖球菌、緑膿菌、百日咳菌、結核菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、炭疽菌、及びカタラリス菌などの呼吸器疾患を引き起こす細菌に由来し得る。これらの病原体に由来する特異的抗原の例は、前述のとおりである。
【0253】
本明細書に開示される免疫原性組成物は、様々な形態で調製され得る。例えば、組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかの注射剤として調製され得る。注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に適した固体形態も調製することができる(例えば、凍結乾燥組成物又は噴霧凍結乾燥組成物)。組成物は、局所投与用に、例えば、軟膏、クリーム又は粉末として調製され得る。組成物は、経口投与用に、例えば、錠剤若しくはカプセルとして、又はスプレーとして調製され得る。組成物は、肺投与用に、例えば、吸入器として、微粉末又はスプレーを使用して調製され得る。組成物は、坐剤又は膣坐剤として調製され得る。組成物は、鼻、耳又は眼への投与用に、例えば滴剤として調製され得る。このような医薬組成物の調製は、当該分野の一般的な技術の範囲内である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA,18th edition,1990を参照されたい。
【0254】
組成物は、組み合わされた組成物が患者に投与される直前に再構成されるように設計されたキット形態であり得る。このようなキットは、液体形態の1つ以上のサポウイルス抗原又はこのような抗原をコードする核酸、並びに本明細書に記載されるような更なる抗原及びアジュバントのいずれかを含み得る。
【0255】
開示されるポリペプチド抗原を含む免疫原性組成物は、ワクチン組成物である。このような組成物のpHは6~8、約7である。pHは、緩衝液を使用して維持することができる。組成物は、無菌及び/又は発熱物質を含まなくてもよい。組成物は、対象に対して等張性であり得る。本開示によるワクチンは、予防的又は治療的に使用され得るが、典型的には予防的であり、動物(農耕用動物、狩猟用動物、伴侶動物及び実験用哺乳動物を含む)を治療するために使用することができる。
【0256】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の抗原及び/又は抗原をコードする核酸、並びに必要に応じて任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効な量」とは、その量を単回投与又は連続投与の一部として個体に投与することが治療又は予防に有効であることを意味する。この量は、治療される個体の健康状態及び身体状態、年齢、治療される個体の分類群(例えば、ブタ、ウシなど)、個体の免疫系の抗体合成能、所望の保護度、ワクチンの処方、医療状況に対する治療獣医師の評価、及び他の関連因子に依存して変化する。この量は、日常的な試験を通して決定され得る比較的広い範囲に収まると予想される。
投与
【0257】
本明細書に開示される組成物は、概して、対象に直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、又は組織の間質腔へ)によって、又は経粘膜的に、例えば、直腸、経口(例えば、錠剤、スプレー)、膣、局所、経皮(例えば、国際公開第99/27961号を参照)又は経皮的(例えば、国際公開第02/074244号及び同第02/064162号を参照)、経鼻(例えば、国際公開第03/028760号を参照)、眼、耳、肺又は他の粘膜投与によって達成され得る。免疫原性組成物はまた、皮膚の表面への直接移動によって局所的に投与され得る。局所投与は、いかなるデバイスも利用せずに、又は包帯若しくは包帯様デバイスを利用して、裸の皮膚を免疫原性組成物と接触させることによって達成され得る(例えば、米国特許第6,348,450号を参照)。
【0258】
実施形態において、投与様式は、非経口投与、粘膜投与、又は粘膜免疫及び非経口免疫の組み合わせであり得る。一態様において、投与様式は、1~3週間間隔で合計1~2回のワクチン接種における、非経口投与、粘膜投与、又は粘膜免疫及び非経口免疫の組み合わせである。一態様において、投与経路には、経口送達、筋肉内送達、並びに経口送達と筋肉内送達との組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0259】
抗原(例えば、ピロリ菌抗原)に対する粘膜免疫応答及び全身免疫応答は、粘膜初回免疫に続いて全身の追加免疫を介して増強され得ることが、既に実証されている。実施形態において、サポウイルス感染を治療するための方法は、それを必要とする対象に、1つ以上のサポウイルス抗原を含む第1の免疫原性組成物を粘膜投与し、続いて、1つ以上のサポウイルス抗原を含む治療有効量の第2の免疫原性組成物を非経口投与することを含む。
【0260】
免疫原性組成物は、全身免疫及び/又は粘膜免疫を誘発するために、全身免疫及び/又は粘膜免疫の増強を誘発するために使用することができる。
【0261】
実施形態において、免疫応答は、血清IgG及び/又は腸IgA免疫応答の誘導を特徴とする。
【0262】
上記のように、1つ以上の遺伝子送達ベクター及び/又はポリペプチド抗原が「初回免疫」工程において送達され、その後、1つ以上の第2の遺伝子送達ベクター及び/又はポリペプチド抗原が「追加免疫」工程において送達される、初回-追加免疫法を使用することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載される1つ以上の遺伝子送達ベクター又はポリペプチド抗原による初回免疫及び追加免疫の後に、1つ以上のポリペプチド含有組成物(例えば、サポウイルス抗原を含むポリペプチド)による更なる追加免疫が行われる。
【0263】
同時投与を含む任意の方法において、種々の組成物は、任意の順序で送達され得る。したがって、複数の異なる組成物又は分子の送達を含む実施形態において、核酸は、ポリペプチドの前に全て送達される必要はない。例えば、初回免疫工程は、1つ以上のポリペプチドの送達を含み得、追加免疫は、1つ以上の核酸及び/又は1つ以上のポリペプチドの送達を含む。複数回のポリペプチド投与の後に複数回の核酸投与を行ってもよいし、ポリペプチド及び核酸の投与を任意の順序で行ってもよい。したがって、本明細書に記載の1つ以上の遺伝子送達ベクター及び本明細書に記載の1つ以上のポリペプチドは、任意の順序で、任意の投与経路を介して同時投与され得る。したがって、本明細書に記載のポリヌクレオチド及びポリペプチドの任意の組み合わせを使用して、免疫反応を誘発することができる。
投与計画
【0264】
投与治療は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールに従ってもよい。複数回投与は、初回免疫スケジュール及び/又は追加免疫スケジュールにおいて使用することができる。複数回投与スケジュールにおいて、様々な投与が同じ又は異なる経路、例えば、非経口初回免疫及び粘膜追加免疫、粘膜初回免疫及び非経口追加免疫などによって与えられ得る。
【0265】
実施形態において、投与計画は、中和特性を有する抗体を誘発する抗体応答の活性を高める。中和抗体の試験には、in-vitro中和アッセイを用いることができる。
【0266】
血清抗体レベルとサポウイルスによって引き起こされる疾患からの保護との間には強い相関関係がある。
免疫応答の有効性を判定するための試験
【0267】
療法的治療の有効性を評価する1つの方法には、開示されるような組成物の投与後の感染をモニタリングすることが含まれる。予防的治療の有効性を評価する1つの方法には、組成物の投与後に、開示される組成物中の抗原に対する免疫応答をモニタリングすることが含まれる。
【0268】
本開示の免疫原性組成物の成分タンパク質の免疫原性を評価する別の方法は、タンパク質を組換え発現させ、イムノブロットによって患者の血清又は粘膜分泌物をスクリーニングすることである。タンパク質と患者の血清との反応が陽性であれば、患者がそのタンパク質に対して以前に免疫応答を起こしたことがある、つまりそのタンパク質が免疫原であることを示す。この方法はまた、免疫優性タンパク質及び/又はエピトープを同定するために使用することができる。
【0269】
療法的治療の有効性をチェックする別の方法には、本開示の組成物の投与後の感染をモニタリングすることが含まれる。予防的治療の有効性をチェックする1つの方法には、組成物の投与後に本開示の組成物中の抗原に対する免疫応答を全身的に(IgG1及びIgG2a産生のレベルをモニタリングすることなど)及び粘膜的に(IgA産生のレベルをモニタリングすることなど)モニタリングすることが含まれる。通常、血清特異的抗体応答は、免疫後、抗原投与前に決定されるのに対して、粘膜特異的抗体体応答は、免疫後及び抗原投与後に決定される。
【0270】
本開示の免疫原性組成物は、宿主の前にin vitro及びin vivo動物モデルにおいて評価され得る。特に有用なマウスモデルには、腹腔内免疫の後に腹腔内抗原投与又は鼻腔内抗原投与を行うものがある。
【0271】
本開示の免疫原性組成物の有効性はまた、動物感染モデル、例えば、モルモット又はマウス又はアカゲザルを免疫原性組成物で抗原投与することによって、in vivoで判定することができる。免疫原性組成物は、抗原投与する株と同じ株に由来してもよく、しなくてもよい。実施形態において、免疫原性組成物は、抗原投与する株と同じ株に由来し得る。
【0272】
in vivo有効性モデルには、(i)ヒト株を用いたマウス感染モデル、(ii)マウス適合株(例えば、マウスにおいて特に毒性である株)を用いたマウスモデルであるマウス疾患モデル、及び(iii)ヒト分離株を用いた霊長類モデルが含まれるが、これらに限定されない。NIH及び疾病管理センター(Center for Disease Control、CDC)が支援するヒト抗原投与モデルも利用可能である。
【0273】
免疫応答は、TH1免疫応答及びTH2免疫応答の一方又は両方であり得る。免疫応答は、改善された免疫応答、増強された免疫応答、又は改変された免疫応答であり得る。免疫応答は、全身性免疫応答及び粘膜性免疫応答の一方又は両方であり得る。実施形態において、免疫応答は、増強された全身性応答及び/又は粘膜性応答である。
【0274】
増強された全身性及び/又は粘膜性免疫は、増強されたTH1及び/又はTH2免疫応答に反映される。実施形態において、増強された免疫応答には、IgG1及び/又はIgG2a及び/又はIgAの産生の増加が含まれる。実施形態において、粘膜免疫応答は、TH2免疫応答である。一態様において、粘膜免疫応答には、IgAの産生の増加が含まれる。
【0275】
活性化されたTH2細胞は、抗体産生を増強するため、細胞外感染に応答するのに役立つ。活性化されたTH2細胞は、IL-4、IL-5、IL-6、及びIL-10のうちの1つ以上を分泌し得る。TH2免疫応答により、IgG1、IgE、IgA、及びメモリーB細胞が産生され、将来の防御につながる可能性がある。
【0276】
TH2免疫応答には、TH2免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-10)のうちの1つ以上の増加、又はIgG1、IgE、IgA及びメモリーB細胞の産生の増加のうちの1つ以上が含まれ得る。実施形態において、増強されたTH2免疫応答には、IgG1産生の増加が含まれる。
【0277】
TH1免疫応答には、CTLの増加、TH1免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL-2、IFNγ、及びTNFβ)のうちの1つ以上の増加、活性化マクロファージの増加、NK活性の増加、又はIgG2aの産生の増加のうちの1つ以上が含まれ得る。実施形態において、増強されたTH1免疫応答には、IgG2a産生の増加が含まれる。
【0278】
本開示の免疫原性組成物、特に、本開示の1つ以上の抗原を含む免疫原性組成物は、単独で、又は他の抗原と組み合わせて、任意選択的にTh1及び/又はTh2応答を誘発することができる免疫調節剤と組み合わせて使用することができる。
【0279】
本開示の免疫原性組成物はまた、アルミニウム塩などの無機塩及びCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドなどの1つ以上の免疫調節剤を含み得る。実施形態において、免疫原性組成物は、アルミニウム塩及びCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドの両方を含む。あるいは、免疫原性組成物は、ADPリボシル化毒素(例えば、無毒化されたADPリボシル化毒素)及びCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを含む。一態様において、1つ以上の免疫調節剤はアジュバントを含む。アジュバントは、上で更に論じた、TH1アジュバント及びTH2アジュバントからなる群の1つ以上のものから選択され得る。
【0280】
本組成物の免疫原性組成物は、感染に効果的に対処するために、細胞媒介性免疫応答並びに体液性免疫応答の両方を誘発し得る。この免疫応答は、長く持続する(例えば、中和する)抗体、及び1つ以上の感染性抗原への曝露時に迅速に応答し得る細胞媒介性免疫を誘導し得る。例として、対象の血液サンプル中の中和抗体のエビデンスは、それらの形成がTBE感染におけるウイルス排除にとって決定的に重要であるので、防御のための代理パラメータとみなされる。
薬剤としての免疫原性組成物の使用
【0281】
本開示はまた、薬剤として使用するための組成物を提供する。薬剤は、哺乳動物において免疫応答を惹起することができる場合があり(すなわち、それは免疫原性組成物である)、ワクチンである場合がある。本開示はまた、哺乳動物において免疫応答を惹起するための薬剤の製造における本組成物の使用を提供する。薬剤はワクチンであり得る。実施形態において、ワクチンは、急性胃腸炎を含む胃腸炎などの腸感染を予防及び/又は治療するために使用される。胃腸炎は、水様性の下痢及び/又は腸の蠕動及び/又は運動性(嘔吐)の両方をもたらすイオン及び/又は水の移動の不均衡から生じ得る。
【0282】
本開示は、上記の組成物を使用して免疫応答を誘導又は増加させるための方法を提供する。免疫応答は防御的である場合もあれば、抗体及び/又は細胞媒介性免疫(全身性免疫及び粘膜免疫を含む)を誘導する場合もある。免疫応答には追加免疫応答が含まれる。
【0283】
本開示はまた、本開示の組成物の有効量を投与する工程を含む、哺乳動物において免疫応答を惹起するための方法を提供する。免疫応答は防御的な場合があり、抗体及び/又は細胞媒介性免疫が関与する場合がある。実施形態において、免疫応答には、TH1免疫応答及びTH2免疫応答の一方又は両方が含まれる。本方法は、追加免疫応答を惹起し得る。
キット
【0284】
本開示はまた、本明細書に記載される組成物の1つ以上の容器を含むキットを提供する。組成物は、個々の抗原と同様に、液体形態であってもよいし、凍結乾燥されていてもよい。組成物に適した容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなど、様々な材料から形成され得る。容器は、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって刺通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。
【0285】
キットは、薬学的に許容される緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、又はデキストロース溶液)を含む第2の容器を更に備え得る。また、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、及びシリンジ又は他の送達デバイスなどの他の薬学的に許容される製剤溶液を含む、エンドユーザーにとって有用な他の材料を含有することもある。キットは、アジュバントを含む第3の成分を更に含み得る。
【0286】
キットはまた、免疫を誘導する方法又は感染症を治療する方法のための説明書を含む添付文書を含み得る。添付文書は、未承認の添付文書草案である場合もあれば、食品医薬品局(FDA)又は他の規制機関によって承認された添付文書である場合もある。
【0287】
実施形態において、送達デバイスは、本明細書に開示される免疫原性組成物で予め充填される。
サポウイルス特異的抗体の産生方法
【0288】
本明細書に記載されるサポウイルスポリペプチドは、それぞれサポウイルス抗原に特異的に結合する/選択的であるサポウイルス特異的ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生するために使用することができる。ポリクローナル抗体は、サポウイルスポリペプチドを哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、又はウマ)に投与することによって産生され得る。免疫された動物由来の血清を収集し、例えば、硫酸アンモニウムによる沈殿、続いてアフィニティークロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーによって血漿から抗体を精製する。ポリクローナル抗血清を産生及び処理するための技術は、当該分野で公知である。
【0289】
ポリペプチド中に存在するサポウイルス特異的エピトープに対するモノクローナル抗体もまた、容易に産生され得る。サポウイルスポリペプチドで免疫された哺乳動物(例えば、マウス)由来の正常B細胞を、例えば、HAT感受性マウス骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを産生することができる。サポウイルス特異的抗体を産生するハイブリドーマは、RIA又はELISAを使用して同定することができ、半固体寒天中でのクローニング又は限界希釈によって単離することができる。サポウイルス特異的抗体を産生するクローンを、別のスクリーニングによって単離する。
【0290】
サポウイルスエピトープに対する抗体、すなわちモノクローナル及びポリクローナル血清(ポリクローナル)由来の抗体は、サポウイルスに感染したヒトからの血清サンプルなどのサンプル中のサポウイルス抗原の存在を検出するのに特に有用である。サポウイルス抗原についてのイムノアッセイでは、1つの抗体又はいくつかの抗体を利用できる。サポウイルス抗原についてのイムノアッセイでは、例えば、サポウイルスエピトープに対するモノクローナル抗体、1つのサポウイルスポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体の組み合わせ、異なるサポウイルスポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体、同じサポウイルス抗原に対するポリクローナル抗体、異なるサポウイルス抗原に対するポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体とポリクローナル抗体との組み合わせを使用することができる。イムノアッセイプロトコルは、例えば、標識化抗体などを用いた競合法、直接反応法、サンドイッチ法などに基づくことができる。標識は、例えば、蛍光、化学発光、又は放射性であり得る。
【0291】
ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体は更に、イムノアフィニティーカラムによってサポウイルス粒子又は抗原を単離するために使用することができる。抗体は、その免疫選択的活性を保持するように、例えば吸着又は共有結合によって固体支持体に固定することができる。任意選択的に、抗体の抗原結合部位がアクセス可能な状態を保つように、スペーサー基を含めることができる。次いで、固定化された抗体は、生体サンプル(例えば、血液又は血漿)からのサポウイルス粒子又は抗原を結合するために使用することができる。結合したサポウイルス粒子又は抗原は、例えば、pHの変化によってカラムマトリックスから回収される。
【0292】
回収された抗原は配列決定され、その配列は、分子生物学的手段によって回収された抗原の組換え発現のための構築物を作製するために使用することができる。本明細書で使用される場合、「構築物」とは、遺伝物質を標的組織又は細胞に組み込むために使用することができるベクター上に担持された核酸(DNA又はRNA)の人工的に設計されたセグメントを意味する。
【0293】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0294】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであり、本発明を限定するものではない。
材料及び方法:
【0295】
雌のBalb/cマウス40例を4例ずつ10個のケージにランダムに入れた。マウスを馴化させた。7ケージのマウス(合計28例のマウス)に、Emulsigenシリアル番号PV0080621と混合後、シリアル番号PV1070820のVRx 19030(組換えサポウイルスタンパク質;配列番号2)と共に製剤化された0.2mL用量を皮下にワクチン接種した。残りの3ケージのマウス(合計12例のマウス)は、ワクチン非接種対照として保持した。ワクチン接種マウスを21日目に同じ系列で追加免疫し、35日目に放血させた。全血を血清に分離した。血清を個々のサンプルとして、並びに特定のケージに収容された4例のマウスのそれぞれからのサンプルに比例して作製されたプールとして保持した。これらのプールを1つの個々のサンプルとして処理した。
【0296】
血清を間接ELISAによって2連で試験し、プレートを、炭酸塩コーティング緩衝液で希釈した0.1μgのV19030(組換えサポウイルスタンパク質)又はV19045(組換えIAV-S H3タンパク質)でコーティングした。プレートを1×PBS-Tで3回洗浄した。次いで、抗原プレートを、PBSで希釈した1%ポリビニルアルコールを用いて37℃で1時間ブロッキングした。ブロックを解除した。1:1000で開始する5倍連続希釈を血清について2連で行った。血清を37℃で1時間インキュベートした。プレートを1×PBS-Tで3回洗浄した。ヤギ抗マウスIgG(H+L)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートを1:10000(表1)又は1:17.5000(表2)に希釈し、プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを1×PBS-Tで3回洗浄した。TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質をプレートに添加し、RT(室温)で3分間(表1)又は6.5分間(表2)インキュベートした。プレートを1NのH2SO4(硫酸)で停止させ、450nmでODを読み取った。対照は、ワクチン非接種マウス、並びに1°抗体のみ、2°抗体のみ、及びコーティング抗原のみを利用して実施した。2連のウェルを平均した。
【0297】
【0298】
【0299】
表1及び表2に見られるように、同種抗原に対するワクチン接種マウスの応答は、ワクチン非接種マウスと比較してより高い免疫学的応答を示した。バキュロウイルスプラットフォームで生成された異種タンパク質と比較した場合、ワクチン接種マウスは、バキュロウイルスそのものに起因すると思われる限定的な応答を示した。
【0300】
図1は、サポウイルスタンパク質に対する特異的免疫応答を示す。
図2は、相同タンパク質に対するワクチン接種対ワクチン非接種の応答を示す。
【0301】
本開示において引用される全ての特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】