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特表2024-524362リチウム電池及びその製造方法、充電方法並びに動力車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】リチウム電池及びその製造方法、充電方法並びに動力車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240628BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240628BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240628BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/1395
H01M4/139
H01M4/48
H01M10/0569
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/44 A
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580400
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2022095952
(87)【国際公開番号】W WO2023273760
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110730852.6
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】潘▲儀▼
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼永▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】郭姿珠
(72)【発明者】
【氏名】王良俊
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼▲華▼▲軍▼
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ15
5H029CJ22
5H029HJ02
5H029HJ18
5H030AA01
5H030BB04
5H030FF22
5H030FF43
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050FA04
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA16
5H050GA22
5H050HA02
5H050HA18
(57)【要約】
本願は、リチウム電池及びその製造方法、充電方法並びに動力車両を提供し、リチウム電池は、正極板と、負極板と、正極板と負極板との間に位置するセパレータ及び電解液とを含み、負極板の負極材料層は、リチウムケイ素複合負極活物質を含有し、負極材料層の表面に保護層を有するか又はリチウムケイ素複合負極活物質の表面に保護層を有し、保護層は、ポリマーマトリックス及びリチウム塩を含み、リチウム電池が完全に満充電された状態で、リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつリチウムケイ素複合負極活物質中のリチウム単体のモル比は、15%~95%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池であって、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に位置するセパレータ、及び電解液とを含み、前記負極板の負極材料層は、リチウムケイ素複合負極活物質を含有し、前記負極材料層の表面に保護層を有するか又は前記リチウムケイ素複合負極活物質の表面に保護層を有し、前記保護層は、ポリマーマトリックス及びリチウム塩を含み、
前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウム単体のモル比は、15%~95%である、リチウム電池。
【請求項2】
前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウムケイ素合金Li4.4Siのモル比は、5%~85%である、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスは、ポリエチレンオキシド、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びそれらの誘導体及び共重合体のうちの1種又は複数種を含み、前記リチウム塩は、硝酸リチウム、硫化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化リチウム、リン酸リチウムのうちの1種又は複数種を含む、請求項1又は2に記載のリチウム電池。
【請求項4】
N/P比は、1より小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項5】
前記電解液中の溶媒は、エーテル系溶媒を含み、前記エーテル系溶媒は、非ハロゲン化エーテル系溶媒及びフッ素化エーテル系溶媒のうちの少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項6】
正極に充電されたSOCが第1閾値より低い場合、前記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体を含有せず、前記第1閾値は、15%~95%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項7】
リチウム電池の製造方法であって、
ケイ素系材料、導電剤及び粘着剤を含有する混合ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させ、ロールプレスした後、前記負極集電体にケイ素系材料層を形成するステップと、
グローブボックス内で、リチウム薄膜及び前記ケイ素系材料層を熱間プレス処理することにより、前記リチウム薄膜のリチウム元素が全て前記ケイ素系材料層に移動し、前記ケイ素系材料とその場所で反応して、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する負極材料層を形成し、負極板を得るステップとを含み、さらに、
前記ケイ素系材料層及びリチウム薄膜を熱間プレス処理する前に、前記ケイ素系材料層の表面に保護層を形成するステップ、又は、前記負極材料層を形成した後に、前記負極材料層の表面に保護層を形成するステップであって、前記保護層がポリマーマトリックス及びリチウム塩を含むステップと、
前記負極板を組みこんでリチウム電池を構成するステップとを含み、
前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質がリチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウム単体のモル比が15%~95%である、リチウム電池の製造方法。
【請求項8】
前記ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素系非リチウム合金及び他のケイ素含有化合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム電池の充電方法であって、
前記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する必要がある場合、前記リチウム電池を充電する充電終止電圧V
=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)
という式を満たすように制御するステップを含み、前記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する場合、前記Vで、前記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出せず、かつV<Vであり、
ここで、Vは、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、CAは、前記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、前記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、前記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、前記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である、リチウム電池の充電方法。
【請求項10】
前記リチウム電池の充電電圧が前記Vに達する場合、前記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要があると、前記リチウム電池を前記Vまで充電し続けるステップと、前記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要がないと、前記リチウム電池への充電を停止するステップと、を含み、
前記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する場合、前記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体を含有し、前記リチウム電池の充電終止電圧は、前記Vより大きい、請求項9に記載のリチウム電池の充電方法。
【請求項11】
電池システムは、少なくとも1つの第1電池ユニットを含み、前記第1電池ユニットは、複数の請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム電池及び第1充電制御装置を含む、動力車両。
【請求項12】
前記第1充電制御装置は、前記第1電池ユニットのリチウム電池を充電する前に又は充電する過程において、かつ前記動力車両が第1モードで動作することを知った場合、前記リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、
前記第1充電制御装置は、さらに、前記第1電池ユニットのリチウム電池を充電する前に又は充電する過程において、前記動力車両が第2モードで動作することを知った場合、前記リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、Vは、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、かつV<Vであり、前記Vは、前記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出しないぎりぎりの電圧であり、
前記動力車両の前記第1モードでの航続距離は、前記第2モードでの航続距離より小さい、請求項11に記載の動力車両。
【請求項13】
前記Vは、
=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)
という式を満たし、
ここで、CAは、前記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、前記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、前記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、前記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である、請求項12に記載の動力車両。
【請求項14】
電池システムは、少なくとも1つの第2電池ユニットをさらに含み、前記第2電池ユニットは、複数の第2単電池を含み、前記第2単電池の負極活物質は、黒鉛及び/又はケイ素系材料を含む、請求項11に記載の動力車両。
【請求項15】
動力車両が第1モードで動作するときは、前記第2電池ユニットのみによって前記動力車両に電力を供給し、動力車両が第2モードで動作するときは、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットによって共に前記動力車両に電力を供給するか、又は前記第1電池ユニットのみによって前記動力車両に電力を供給し、
前記第1モードでの航続距離は、前記第2モードでの航続距離より小さい、請求項14に記載の動力車両。
【請求項16】
前記第1電池ユニットを充電する前に又は充電する過程において、前記第1充電制御装置は、前記動力車両が第2モードで動作し、かつ前記第1電池ユニットのみによって前記動力車両に電力を供給することを知った場合、前記第1電池ユニットの各リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、Vは、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧である、請求項15に記載の動力車両。
【請求項17】
前記第1電池ユニットを充電する前に又は充電する過程において、前記第1充電制御装置は、前記動力車両が第2モードで動作し、かつ前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットによって共に前記動力車両に電力を供給することを知った場合、前記第1電池ユニットの各リチウム電池を充電する充電終止電圧をV又はVに制御し、
は、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、前記Vで、前記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出せず、かつV<Vであり、前記Vは、
=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)
という式を満たし、ここで、CAは、前記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、前記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、前記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、前記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である、請求項15に記載の動力車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)
本願は、2021年6月29日に中国国家知識産権局に提出された、出願名称が「リチウム電池及びその製造方法、充電方法並びに動力車両」である中国特許出願第202110730852.6号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、リチウム電池の技術分野に関し、具体的には、リチウム電池及びその製造方法、充電方法並びに動力車両に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池は、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子製品及び新エネルギー自動車などの分野で広く応用されている。現在、商用のリチウム電池は、一般的に黒鉛を負極活物質として用い、かつ電池のサイクル過程において、リチウムイオンが正負極において効果的に脱離することを保証するために、黒鉛を用いる負極の有効容量が一般的に正極のものより大きく(即ち、電池のN/P比が一般的に1より大きい)、これにより、負極にリチウムデンドライトが析出してサイクル性能に影響を与えることを防止するが、電池において負極活物質の体積及び重量の割合が高くなり、リチウムイオン電池のエネルギー密度の向上が制限され、350mAh/gを超えることが困難であり、人々の日増しに増加した航続距離と待機の要求を満たすことができない。
【0004】
金属リチウムは、高い理論比容量(3861mAh/g)及び最も負の電気化学電位(-3.04V、標準水素電極に対する)を有し、次世代の高エネルギー密度電池の負極材料の最適選択であると考えられる。現在、一部の機構は、従来の負極より遥かに低い体積割合を有する金属リチウム、ひいてはCN201911075192.1のようにリチウムフリー負極(Lithium free)を用い、このように高エネルギー密度のリチウム電池を得ることができるが、得られた電池のサイクル性能が低く、高エネルギー密度の金属リチウム電池の商業化プロセスを阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本願は、現在の金属リチウム電池のサイクル性能が低いという問題を解決するために、リチウム電池及びその製造方法、充電方法並びに動力車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、第1態様では、本願に係るリチウム電池は、正極板と、負極板と、前記正極板と負極板との間に位置するセパレータ及び電解液とを含み、前記負極板の負極材料層は、リチウムケイ素複合負極活物質を含有し、前記負極材料層の表面に保護層を有するか又は前記リチウムケイ素複合負極活物質の表面に保護層を有し、前記保護層は、ポリマーマトリックス及びリチウム塩を含み、前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウム単体のモル比は、15%~95%である。
【0007】
本願の第1態様に係るリチウム電池は、上記リチウムケイ素複合負極活物質を含有するため、エネルギー密度が高くなり、サイクル寿命が長くなり、安全性能が高くなる。
【0008】
第2態様では、本願に係るリチウム電池の製造方法は、
ケイ素系材料、導電剤及び粘着剤を含有する混合ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させ、ロールプレスした後、前記負極集電体にケイ素系材料層を形成するステップと、
グローブボックス内で、リチウム薄膜及び前記ケイ素系材料層を熱間プレス処理することにより、前記リチウム薄膜のリチウム元素が全て前記ケイ素系材料層に移動し、前記ケイ素系材料とその場所で反応して、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する負極材料層を形成し、負極板を得るステップであって、
前記ケイ素系材料層及びリチウム薄膜を熱間プレス処理する前に、前記ケイ素系材料層の表面に保護層を形成するか、又は前記負極材料層を形成した後に、前記負極材料層の表面に保護層を形成し、前記保護層がポリマーマトリックス及びリチウム塩を含むステップと、
前記負極板を組み立ててリチウム電池を形成するステップであって、前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質がリチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウム単体のモル比が15%~95%であるステップと、を含む。
【0009】
本願の第2態様に記載の製造方法は、プロセスが簡単であり、制御しやすく、大規模な工業化製造に適する。
【0010】
第3態様では、本願に係る前述のリチウム電池の充電方法は、
前記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する必要がある場合、前記リチウム電池を充電する充電終止電圧VがV=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)という式を満たすように制御するステップを含み、前記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する場合、前記Vで、前記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出せず、かつV<Vであり、
ここで、Vは、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、CAは、前記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、前記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、前記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、前記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である。
【0011】
本願の第3態様に係る該充電方法により、該リチウム電池の長寿命での航続距離をできるだけ長く保証することができる。
【0012】
第4態様では、本願に係る動力車両の電池システムは、少なくとも1つの第1電池ユニットを含み、該第1電池ユニットは、本願の第1態様に記載の複数のリチウム電池及び第1充電制御装置を含む。
【0013】
該第1電池ユニットを有する動力車両は、実際の航続距離の必要に応じて、第1電池ユニットの各リチウム電池を充電する充電終止電圧を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願の実施例に係るリチウム電池の概略構成図である。
図2】本願の実施例に係るリチウム電池の放電曲線である。
図3】本願の実施例に係る動力車両の概略構成図である。
図4】本願の実施例に係る動力車両の別の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、本願の例示的な実施形態であり、なお、当業者にとって、本願の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本願の保護範囲にあると見なされる。
【0016】
以下、本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例における技術手段を詳細に説明する。
【0017】
本願の実施例に係るリチウム電池の負極板は、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する。本願のいくつかの実施形態では、図1に示すように、リチウム電池100は、負極板10と、正極板20と、正極板20と負極板10との間に位置するセパレータ30及び電解液(図示せず)とを含む。一般的に、負極板10は、負極集電体11と、負極集電体11上に設けられた負極材料層12とを含み、負極材料層12は、リチウムケイ素複合負極活物質、好ましい導電剤及び粘着剤などを含有する。同様に、正極板20は、正極集電体21と、正極集電体21上に設けられた正極材料層22とを含み、正極材料層22は、正極活物質、好ましい導電剤及び粘着剤などを含有する。
【0018】
負極材料層12の表面に保護層13(図1を参照)をさらに有するか又は上記リチウムケイ素複合負極活物質の表面に保護層を有し、上記保護層は、ポリマーマトリックス及びリチウム塩を含む。保護層は、リチウムイオン流れを誘導し、リチウムイオンを制御して負極板の表面に均一に堆積し、負極板10の表面のリチウムデンドライトの成長を効果的に抑制して、リチウムデンドライトがセパレータを貫通して電池内部短絡を引き起こすことを回避し、かつ負極と電解液との副反応の発生を低減し、負極のサイクル過程における体積膨張を緩和し、サイクル性能及び安全性能を向上させることができる。
【0019】
保護層は、負極のリチウム析出によるサイクル減衰及び電池内部短絡の問題をよりよく抑制することができる。上記保護層は、電池の電解液にほとんど不溶である。具体的には、ポリマーマトリックスは、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、PEO)、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びそれらの誘導体及び共重合体などのうちの1種又は複数種を含んでもよいが、これらに限定されない。上記リチウム塩は、イオン伝導性を有し、硝酸リチウム(LiNO)、硫化リチウム(LiS)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、フッ化リチウム(LiF)、リン酸リチウム(LiPO)などのうちの1種又は複数種を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前述の保護層には、リチウムイオン輸送経路の増加、力学的性能の向上などのための無機フィラーをさらに含有してもよい。該無機フィラーは、酸化物(例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタンなど)、水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)及び塩のうちの少なくとも1種であってもよい。
【0020】
本願では、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム元素及びケイ素元素を含有する。リチウム電池100が完全に満充電された状態で、リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ上記リチウムケイ素複合負極活物質中の上記リチウム単体のモル比は、15%~95%である。
【0021】
「完全満充電」とは、電池の正極がSOC(State of Charge)100%まで充電されることを意味する。この場合、電池の正極容量が十分に発揮され、電池のエネルギー密度が高く、負極に「析出されたリチウム」があり、この「析出されたリチウム」が活性リチウムであり、負極端で容量を発揮することができる。本願に係る電池の負極について、電池の満充電の場合、正極から放出された活性リチウムイオンが合金型材料の形態で負極に貯蔵されることを許容することに加えて、リチウム単体の形態で負極に直接堆積されることを許容するため、本願で製造された負極材料層においてリチウムケイ素合金材料LiSi(0<x≦4.4)の使用量が少なく、電池のエネルギー密度を顕著に向上させることができる。また、上記保護層を設けることにより、電池の負極の高エネルギー密度状態での「析出されたリチウム」と電解液との副反応を抑制し、リチウムデンドライトを析出してセパレータを貫通するなどのリスクを低減することができる。したがって、本願の実施例のリチウム電池は、高エネルギー密度を有するとともに、高いサイクル性能及び安全性能などを有する。
【0022】
本願の実施形態では、リチウム電池100が完全に満充電されていない場合、例えば、電池の正極に充電されたSOC値が第1閾値より低い場合、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体を含有しない。この場合、該リチウムケイ素複合負極活物質中のリチウムケイ素合金は、一般化学式LiSiで表すことができ、0<x≦4.4である。「第1閾値」は、電池の充電時に負極端にちょうど金属リチウムが析出したときの正極に充電されたSOC臨界値であり、即ち、電池の負極のリチウムケイ素合金が完全にリチウムイオンで満たされ(即ち、リチウムケイ素合金が具体的にLi4.4Siであり、この時、電池の負極がSOC100%まで充電されるとも言える)、正極側のリチウムイオンが全て放出されていないときのSOC値である。
【0023】
電池の正極に充電されたSOCが第1閾値より低い場合、電池にリチウムを析出せず、リチウム電池のエネルギー密度が十分に発揮されず、負極端は、リチウムケイ素合金LiSiの容量のみを発揮し、許容できる体積膨張も相対的に弱く、電解液との副反応が弱い。このように、リチウム電池は、低エネルギー密度(現在の黒鉛を負極として使用する電池のエネルギー密度よりはるかに高い)で複数回の充放電サイクルを行うことができ、即ち、長いサイクル寿命を有する。したがって、本願に係るリチウム電池は、「長いサイクル寿命」と上記「高エネルギー密度」の特性を兼ね備えることができ、かつリチウム電池の電池管理システムを結合してこの2つの特性を自由に選択することにより、動力車両の全寿命サイクルの要求を満たす。
【0024】
本願では、リチウム電池の正極に充電されたSOC100%の状態で、リチウムケイ素複合負極活物質は、割合が調整可能な金属リチウム単体を有し、金属リチウム単体のモル比が15%~95%の範囲内にある。それに応じて、該金属リチウム単体のモル比に応じて、上記第1閾値を対応して制御することができる。好ましくは、第1閾値も15%~95%の範囲内にある。図2に示すリチウム電池の放電曲線を参照する。図2において、リチウムケイ素複合負極活物質を用いたリチウム電池は、放電容量が58mAhであるときに放電変曲点が現れ、該「放電変曲点」とは、電池放電曲線におけるdV/dQの最小値を意味する。この変曲点の前に、電池のエネルギー密度が高く(即ち、電池電圧と電池電気量の積)、リチウムケイ素合金Li4.4Siとリチウム単体の容量が共に発揮され、この変曲点の後に、電池のSOCが低く、負極側でリチウムケイ素合金LiSiの容量のみが発揮され、電池のエネルギー密度が低くなるが、電池のサイクル寿命が長くなる。
【0025】
好ましくは、リチウム電池100が完全に満充電された状態で、上記リチウムケイ素複合負極活物質中の上記リチウムケイ素合金Li4.4Siのモル比は、5%~85%である。いくつかの実施形態では、リチウム電池が完全に満充電された状態で、上記リチウムケイ素複合負極活物質中のリチウムケイ素合金Li4.4Siとリチウム単体のモル比の和は、100%である。換言すれば、リチウム電池が完全に満充電された状態で、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siで構成される。この場合、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム元素及びケイ素元素のみを含有する(即ち、ケイ素単体及び金属リチウムをin-situでプレス加工して形成されてもよい)。
【0026】
一般的に、従来のリチウム電池(黒鉛又はケイ素を負極として用いる)のN/P比が一般的に1より大きいことにより、N/P比が1より小さい場合でのリチウムデンドライトの析出、低いサイクル性能などを防止する。N/P比が1より大きい場合、負極活物質の電池全体における体積比は、大きく、一般的に37%以上であり、例えば、負極において黒鉛を用いる場合、黒鉛の電池全体における体積比は、44%~48%であり、負極活物質がケイ素である場合、その電池における体積比は、37%~44%に達することができる。本願のリチウム電池において、前述の満充電時にリチウム単体及びLi4.4Siを含有するリチウムケイ素複合負極活物質を用いるため、該リチウム電池のN/Pが1より小さく、このように、該負極活物質のリチウム電池における体積比(37%未満、例えば20%以下であってもよい)及び質量比率が小さくてもよく、それにより、電池のエネルギー密度を顕著に向上させ、その航続能力を増加させることができ、かつ、前述の保護層の存在により、負極に「析出されたリチウム」があるときに、リチウム単体と電解液との副反応、及びリチウム単体の無秩序な成長によるセパレータの貫通を抑制し、さらに電池のサイクル能力を高くすることができる。
【0027】
なお、本願におけるリチウム電池100のN/P比が1より小さいとは、具体的には、前述のリチウムケイ素複合負極活物質の容量と正極活物質の容量との比が1より小さいことを意味する。N/P比に対応するリチウムケイ素複合負極活物質の容量とは、負極にリチウムがちょうど吸蔵されてリチウムケイ素合金Li4.4Siの形態を形成し、かつ単体リチウムが析出しない場合(この場合、正極のリチウムイオンがまだ完全に放出されていない)の負極容量を意味し、即ち、上記第1閾値での対応する負極容量である。
【0028】
好ましくは、リチウム電池100において、前述のリチウムケイ素複合負極活物質と正極活物質との体積比は、0.1375~0.825である。正極板20の厚さと負極板10の厚さとの比は、8:1~4:3である。このように、リチウム電池のN/P比が1より小さいことをよりよく保証することができ、電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0029】
リチウム電池100の電解液は、一般的に、溶媒及び第2リチウム塩を含有する。本願の実施形態では、リチウム電池100の電解液の溶媒は、非カーボネート系溶媒である。具体的には、上記電解液の溶媒は、エーテル系溶媒を含み、具体的には、非ハロゲン化エーテル系溶媒及びフッ素化エーテル系溶媒のうちの少なくとも1種を含んでもよい。カーボネート系溶媒と金属リチウム負極との副反応の速度が速く、電池の負極に尖ったリチウムデンドライトを形成して電池のセパレータを貫通しやすく、電池の自然発火を引き起こす。エーテル系溶媒は、金属リチウムとの互換性がよく、金属リチウムとの副反応がカーボネート系溶媒と金属リチウムとの副反応より遥かに低く、サイクル過程における活性リチウムの消費を効果的に抑制するとともに、リチウムイオン堆積の均一性及び緻密性を向上させ、尖ったリチウムデンドライトを形成して電池のセパレータを貫通して安全上のリスクを引き起こすことを回避することができる。
【0030】
好ましくは、非ハロゲン化エーテル系溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどから選択される1種又は複数種であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、フッ素化エーテル系溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ヘキサフルオロイソプロピルエーテル、テトラフルオロエチル-テトラフルオロプロピルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ジフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテルなどから選択される1種又は複数種であってもよいが、これらに限定されない。
【0031】
電解液中の第2リチウム塩は、リチウムビスフルオロスルホンイミド(LiN(SOF))、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CFSON)、リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド(Li(CSON)、ジオキサホウ酸リチウム(LiB(C、LiBOB)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム(LiCSO)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウムLiC(CFSOなどから選択される1種又は複数種であってもよいが、これらに限定されない。
【0032】
好ましくは、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、ケイ素系材料及び金属リチウムをin-situでプレス加工して形成される。ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素系非リチウム合金(例えば、ケイ素ゲルマニウム合金、ケイ素マグネシウム合金、ケイ素銅合金、ケイ素鉄合金など)又は他のケイ素化合物などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記リチウムケイ素複合負極活物質を含有する負極材料層12は、リチウム薄膜(例えば、リチウム箔又は離型フィルムに付着したリチウム薄膜)とケイ素系材料を含有する初期負極材料層とをin-situで熱間プレスして形成される。この場合、リチウム薄膜のリチウム元素は、全て初期負極材料層に転写され、ケイ素系材料とその場所で反応して上記リチウムケイ素複合負極活物質を形成することができる。別のいくつかの実施形態では、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、金属リチウム粉末とケイ素系材料との混合物(湿式ペースト又は乾式粉末であってもよい)をin-situでプレス加工して形成される。この場合、上記負極材料層12について、ケイ素系材料とリチウム粉末との混合ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させ、プレス加工処理した後、上記負極集電体でin-situで反応して、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する負極材料層を形成することができるか、又は、金属リチウム粉末とケイ素系材料との混合物をin-situでプレス加工して形成されたリチウムケイ素複合負極活物質を塗布し、乾燥させ、プレスしてから負極板を製造することができる。
【0034】
表面に保護層を有する負極材料層12を形成する必要がある場合、離型フィルムに付着したリチウム薄膜と、表面に保護層を有するケイ素系材料層(該ケイ素系材料層は、前述の初期負極材料層であり、ケイ素系材料、好ましい粘着剤及び導電剤を含有する)とをin-situで熱間プレスすることができる。本願の他の実施形態では、表面に保護層を有する負極材料層について、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する負極材料層を形成した後、その表面に保護層を形成することもできる。
【0035】
本願では、上記負極集電体11、正極集電体21は、独立して金属単体箔材又は合金箔材から選択される。例示的に、負極集電体11は、具体的には、銅箔であってもよく、正極集電体21は、具体的には、アルミニウム箔であってもよい。正極活物質は、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸コバルトリチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)などのうちの少なくとも1種であってもよい。負極板10及び正極板20における粘着剤及び導電剤として、従来の通常の材料を用いればよい。導電剤として、導電性カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンナノチューブ、炭素繊維、黒鉛及びファーネスブラックなどのうちの1種又は複数種を用いてもよい。粘着剤として、独立してスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びアルギン酸ナトリウムなどのうちの1種又は複数種を用いてもよい。
【0036】
本願の実施例に係るリチウム電池は、上記リチウムケイ素複合負極活物質及び保護層を含有するため、該リチウム電池におけるリチウムケイ素複合負極活物質の割合が低くてもよく、電池のエネルギー密度の向上に有利であり、かつ電池の低いSOC状態で負極にリチウムを析出せず、優れたサイクル寿命を示し、高いSOC状態で電池のエネルギー密度が高く、かつ保護層を設けることによりリチウム析出の副作用が緩和されるため、本願の実施例に係るリチウム電池は、高エネルギー密度、長いサイクル寿命、高い安全性などを兼ね備えることができる。
【0037】
第2態様では、本願の実施例に係る上記リチウム電池の製造方法は、
ケイ素系材料、導電剤及び粘着剤を含有する混合ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させ、ロールプレスした後、上記負極集電体にケイ素系材料層を形成するステップと、
グローブボックス内で、リチウム薄膜及び上記ケイ素系材料層を熱間プレス処理することにより、上記リチウム薄膜のリチウム元素が全て上記ケイ素系材料層に移動し、上記ケイ素系材料とその場所で反応して、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する負極材料層を形成し、負極板を得るステップであって、
上記ケイ素系材料層及びリチウム薄膜を熱間プレス処理する前に、上記ケイ素系材料層の表面に保護層を形成するか、又は上記負極材料層を形成した後に、上記負極材料層の表面に保護層を形成し、上記保護層がポリマーマトリックス及びリチウム塩を含むステップと、
上記負極板を組み立ててリチウム電池を形成するステップであって、上記リチウム電池が完全に満充電された状態で、上記リチウムケイ素複合負極活物質がリチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ上記リチウムケイ素複合負極活物質中の上記リチウム単体のモル比が15%~95%であるステップと、を含む。
【0038】
上記ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素系非リチウム合金(例えば、ケイ素ゲルマニウム合金、ケイ素マグネシウム合金、ケイ素銅合金、ケイ素鉄合金など)又は他のケイ素化合物(例えば、フッ素含有酸化ケイ素、六フッ化ケイ酸リチウム、炭化ケイ素、ホウ化ケイ素)などを含んでもよいが、これらに限定されない。使用されるケイ素系材料がケイ素以外の他の元素(例えば、酸素、フッ素)を含有する場合、それに応じて該リチウムケイ素複合負極活物質もこれらの元素を含有する。例示的に、ケイ素系材料がケイ素単体である場合、電池のSOCが第1閾値より低い場合、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウムケイ素合金LiSiのみを含有し、リチウム電池が完全に満充電された場合、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びLi4.4Siのみで構成される。例示的に、ケイ素系材料がシリコン酸化物である場合、電池のSOCが第1閾値より低い場合、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウムケイ素合金LiSi、LiO、LiSiOなどを含有し、リチウム電池が完全に満充電された場合、上記リチウムケイ素複合負極活物質は、Li4.4Si、リチウム単体、LiO、LiSiOなどを含有する。
【0039】
本願の実施形態では、表面に保護層を有するケイ素系材料層及びリチウム薄膜をin-situで熱間プレスする場合、熱間プレスにより、保護層及びケイ素系材料層は、多孔質構造を呈し、リチウム薄膜のリチウム元素は、ケイ素系材料層に入り、ケイ素系材料とその場所で反応して上記リチウムケイ素複合負極活物質を形成し、最終的に保護層を有する負極材料層を形成し、該負極材料層は、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する。
【0040】
上記ケイ素系材料層と一緒に熱間プレス処理されたリチウム薄膜は、リチウム箔であってもよく、離型フィルムに付着したリチウム薄膜であってもよく、リチウム薄膜がプレス加工設備と直接接触することによるリチウム元素の損失を回避するために、離型フィルムに付着したリチウム薄膜が好ましい。
【0041】
上記保護層は、液相塗布、気相堆積法又は電着法などにより上記負極材料層上に形成されてもよい。
【0042】
「上記負極板を組み立ててリチウム電池を形成する」ステップは、具体的には、正極板、セパレータ及び上記負極板を順に積層して配置し、ベアセルを製造するステップと、上記ベアセルを電池ハウジング内に配置し、電解液を注入し、上記電池ハウジングを密封して、リチウム電池を得るステップとを含む。
【0043】
本願の実施例に係るリチウム電池の製造方法は、プロセスが簡単であり、制御しやすく、高エネルギー密度と長いサイクル寿命を兼ね備えることができるリチウム電池の大規模な工業化製造に適する。
【0044】
第3態様では、本願の実施例に係る上記リチウム電池の充電方法は、
上記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する必要がある場合、上記リチウム電池を充電する充電終止電圧VがV=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)という式を満たすように制御するステップを含み、上記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する場合、上記Vで、上記リチウム電池の負極にリチウム単体をちょうど析出せず、かつV<Vであり、
ここで、Vは、上記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、CAは、上記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、上記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、上記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、上記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、上記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、上記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である。
【0045】
なお、上記Vも、上記リチウム電池の負極にリチウム単体をちょうど析出するまで充電された(即ち、電池正極が上記第1閾値まで充電された)電池電圧である。上記Vは、上記リチウム電池が完全に満充電された(即ち、正極がSOC100%まで充電された)場合の電池電圧、即ち、正極が発揮できる最大容量に対応する終止電圧、又は定格電圧とも呼ばれる。明らかに、上記リチウム電池の電圧がVである場合の容量Cは、上記リチウム電池の電圧がVである場合の容量Cより小さい。
【0046】
上記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する必要がある場合、充電終止電圧がVであるとき、上記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出せず、この場合、リチウム電池が完全に満充電されず、単に低いSOCまで充電され、負極端は、許容できる体積膨張が相対的に弱く、電解液との副反応が弱い。したがって、該リチウム電池は、複数回の充放電サイクルを行うことができ、即ち、長いサイクル寿命を有することができる。リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要がある場合、上記リチウム電池の充電終止電圧がVであるとき、該V電圧で、負極には一般的にリチウムケイ素合金及び一定量のリチウム単体が存在する。
【0047】
したがって、充電終止電圧Vでリチウム電池を充電する(即ち、満充電)回数が増加するにつれて、活性リチウム単体が絶えず消費され、充電終止電圧Vでリチウム電池を充電し続ける場合、リチウム単体がちょうど析出するまで該電池負極を充電するときのVを上記式に従って高くし、このようにVとVとの差が小さくなり、電池の長いサイクル寿命を損なうことなく、電池がVを充電終止電圧とする場合の電池のエネルギー密度を向上させることを保証することができ、さらに、該リチウム電池を使用する動力車両が長い航続距離を示すことができる。例を挙げると、リチウム電池をi回目に充電する充電終止電圧がVである場合、リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する必要があると、リチウム電池をi+1回目に充電する充電終止電圧Vを上記式に従って高くすべきであり、また、該リチウム電池が充電終止電圧Vで充電されない場合、リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する必要があると、上記Vは、そのままである。
【0048】
組み立てられた電池にとって、そのCA、Vは、一定の値である。上記パラメータV、dQ/dV、K、a、b、cは、電池管理システム(Battery Management System、BMS)などのリチウム電池の充電制御装置によって知ることができ、BMSは、電池の充電電流、リアルタイム充電電圧、温度、内部抵抗などの電池の状態情報を監視することができる。これらの情報は、具体的には、BMSの収集モジュールによって収集されて取得され、かつBMSの制御装置に記憶されてもよい。dQ/dVは、単位電圧で充電された電気量を表し、電池のBMSにより知った同じ充電過程における現在の充電容量点データ(充電電流及び充電電圧)と前回の充電容量点データに基づいて計算して取得することができる。
【0049】
は、リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体を析出しないときの基準電圧であり、リチウムケイ素複合負極活物質のリチウム単体を析出しない場合の容量に基づいて標準化して取得することができ、さらに、設計容量が最も高い正極とこの設計容量を10%超える容量のケイ素系負極とを組み合わせた電池(即ち、N/P=1.1の前述のリチウム電池)を充電することにより、その充電容量と充電過程におけるリアルタイム電池電圧の曲線を取得することができ、該曲線に基づいて任意の充電容量でのリアルタイム電池電圧(即ち、電圧基準値)、即ち、Vを取得することができる。各充電容量でのVは、BMSに予め記憶されてもよい。
【0050】
パラメータa、b、cは、経験値であり、無次元である。好ましくは、aの値の範囲は、0.02~1.2であり、bの値の範囲は、-0.008~-0.15であり、cの値の範囲は、0.8~1.5である。パラメータa、b、cは、確立された電池状態情報と対応する校正係数との対応関係に基づいて、電池の現在の状態情報で対応する校正係数を知ることができる。なお、上記式において、a、b、c、Kは、いずれもリチウム電池の同じ充電過程における同じ時点/時間帯に取得される。
【0051】
例を挙げると、リチウム電池は、一般的に、例えば10℃~40℃の間の特定の動作温度範囲を有する。リチウム電池の温度が高く、例えば、閾値温度(例えば、42℃)以上、例えば、45℃である場合、cの値が0.92となることにより、調整後の充電終止電圧Vがより優れ、リチウム析出現象の発生を制限するとともに、リチウム析出前の容量を十分に発揮することができる。例示的に、BMSには、充電過程における電池のリアルタイムセル温度と温度校正係数cとの対応関係が予め記憶されてもよく、該対応関係に基づいて、該リチウム電池のセルの現在の充電温度での温度校正係数を知ることができる。以下の表1Aは、セル温度と温度校正係数との対応関係表である。
【表1A】
【0052】
上記内部抵抗増加率Kは、収集されたリチウム電池のリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗(「初期状態での直流内部抵抗」とも呼ばれる)に対する増加率であり、例えば、リチウム電池の出荷直流内部抵抗をRとし、ある充電時点で収集されたリアルタイム内部抵抗をRとすると、内部抵抗増加率Kは、(R-R)/Rである。同様に、内部抵抗増加率Kと内部抵抗校正係数bとの対応関係は、移動端末に予め記憶されてもよい。例示的に、以下の表1Bは、内部抵抗増加率と内部抵抗校正係数との対応関係表である。
【表1B】
【0053】
同様に、単位容量での電気量微分((dQ/dV)/CA)とその校正係数bとの対応関係は、BMSに予め記憶されてもよい。例示的に、以下の表1Cは、(dQ/dV)/CAとその校正係数bとの対応関係表である。
【表1C】
【0054】
上記リチウム電池の充電方法は、上記リチウム電池の充電電圧がVに達する場合、上記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要があると、上記リチウム電池を上記Vまで充電し続けるステップと、上記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要がない(即ち、長いサイクル寿命特性を維持する)と、上記リチウム電池への充電を停止するステップとを含む。
【0055】
上記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要があるか否かは、充電過程においてユーザにより遠隔で起動されてもよく、充電前にモード選択により設定されてもよい。以下、動力車両の説明においてこれを詳細に説明する。
【0056】
第4態様では、本願の実施例に係る動力車両300の電池システムは、少なくとも1つの第1電池ユニットを含み、上記第1電池ユニットは、本願の第1態様に記載のリチウム電池を複数含む。動力車両の電池システムは、車両駆動部301と通信可能である。例示的に、該動力車両300は、純粋な電気自動車であってもよく、ハイブリッド電気自動車であってもよい。車両駆動部301は、モータであってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、図3に示すように、動力車両300の電池システムは、第1電池ユニット1のみを含む。第1電池ユニット1は、「モジュールなし」電池パックであってもよく、「モジュールあり」電池パックであってもよい。第1電池ユニット1が「モジュールあり」電池パックである場合、複数のリチウム電池100は、直列接続、並列接続又はその組み合わせによりモジュール化された電池パックを形成することができる。図3に示すように、第1電池ユニット1は、複数のリチウム電池100及び第1充電制御装置110を含む。第1充電制御装置110は、各リチウム電池の状態情報、例えば、電圧、電流、内部抵抗、温度などを監視し、各リチウム電池100の充電状況を制御する。第1充電制御装置110は、具体的には、第1電池ユニット1のBMS(Battery Management System、電池管理システム)であってもよく、単独のモジュールとして、第2電池ユニットのBMSに電気的に接続されてもよい(この場合、両者はCANバスを介して接続されてもよい)。
【0058】
動力車両300の電池システムが第1電池ユニット1のみを含む場合、動力車両の実際の航続距離の要求に応じて、該リチウム電池を充電する場合に満充電する又は低いSOCまで充電するように制御することにより、必要な場合の長航続距離の要求を満たすだけでなく、短航続距離の要求での長いサイクル寿命を保証することができる。
【0059】
具体的には、上記第1充電制御装置110は、動力車両が第1モードで動作する場合、上記リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、上記第1充電制御装置は、さらに、動力車両が第2モードで動作する場合、上記リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、かつV<Vであり、上記Vで、上記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出せず、上記リチウム電池は、長いサイクル寿命特性を有し、Vは、上記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、上記第1モードで上記第1電池ユニットによって上記動力車両に提供される航続距離は、上記第2モードで上記第1電池ユニットによって上記動力車両に提供される航続距離より小さい。ここで、上記第1モードを短航続距離モードと呼び、上記第2モードを長航続距離モードと呼ぶことができる。
【0060】
上記第1モードは、動力車両が例えば、日常の中短距離の通勤で使用する頻度が高いモードであり、第2モードは、動作頻度が低く、一般的に、休日に車両を長距離で運転して旅行する場合に起動する必要がある。動力車両が短航続距離モードで動作する必要がある場合、第1電池ユニット1は、動力車両の充電過程において、上記リチウム電池を充電上限電圧まで充電せず、低いSOCまで充電するように制御することにより、電池の負極にリチウム単体を析出しないことを保証することができ、これにより、該第1電池ユニットのリチウム電池がその長いサイクル寿命特性を発揮することに有利である。動力車両が長航続距離モードで動作する必要がある場合、上記リチウム電池を満充電することにより、該第1電池ユニットが高エネルギー密度特性を発揮することを保証する。このように、リチウム電池の「長航続距離モード」でのサイクル寿命は、その「短航続距離モード」でのサイクル寿命より長くないが、「長航続距離モード」の使用頻度が低く、上記保護層を設けることにより、リチウム電池100の高エネルギー密度状態での電解液との副反応が抑制され、リチウムを析出してセパレータを貫通するなどのリスクが低減されるため、該動力車両の第1電池ユニット全体は、複数回の低いSOCサイクル及び複数回の満充電サイクルを有し、必要な場合に車両に長い航続距離を提供することができる。
【0061】
例示的に、動力車両の第1モードでの航続距離は、400~800kmであってもよく、動力車両の第2モードでの航続距離は、800~1200kmであってもよい。また、上記第1モードは、「日常モード」とも呼ばれてもよく、動力車両が最もよく用いるモードである。第2モードは、「休日モード」とも呼ばれてもよく、動力車両がたまに用いるモードである。
【0062】
リチウム電池を充電する過程において、第1充電制御装置110は、動力車両300の第2動作モードを起動する命令を受信していない場合、リチウム電池100を充電するデフォルトの充電終止電圧をVとする。リチウム電池100を充電する過程において又はリチウム電池100を充電する前に、第1充電制御装置110は、動力車両300の第2動作モードを起動する命令を受信する場合、上記リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御する。
【0063】
「動力車両の第2動作モードを起動する命令」は、充電前にモード選択により設定されてもよく、充電過程において遠隔で起動されてもよい。具体的には、該命令は、動力車両のユーザが車両操作パネルのモードボタンを押すことによって送信されてもよく、ユーザが車両と通信可能なスマート端末などを遠隔で操作することによって実現されてもよい(例えば、リチウム電池の充電電圧がVに近い場合、自動車のインテリジェントネットワーク接続システムによりユーザに「長航続距離モードを起動するか否か」などの情報をプッシュする)。
【0064】
本願のいくつかの態様では、リチウム電池をi回目に充電する充電終止電圧がVであれば、リチウム電池をi+1回目に充電する充電終止電圧をVに調整し、上記Vは、
=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)という式を満たし、
ここで、CAは、上記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、上記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、上記リチウム電池のi+1回目の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、上記リチウム電池のi+1回目の充電過程における充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、上記リチウム電池のi+1回目の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、上記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である。
【0065】
本願の前述したように、この場合、Vを調整するのは、主に、VとVとの差を小さくし、リチウム電池の長寿命での航続距離をできるだけ長く保証するためである。
【0066】
他のいくつかの実施形態では、図4に示すように、動力車両300の電池システムは、少なくとも1つの第2電池ユニット2をさらに含み、第2電池ユニット2は、複数の第2単電池200を含み、第2単電池200の負極活物質は、黒鉛及び/又はケイ素系材料を含む。上記ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素基合金及びケイ素炭素複合材料のうちの1種又は複数種を含む。第2単電池200は、従来のリチウム電池であり、金属リチウム(リチウム単体及び/又はリチウムケイ素合金)を負極活物質としないものであり、そのエネルギー密度が本願の第1態様に係るリチウム電池100のエネルギー密度より低い。
【0067】
上記第1電池ユニット1と同様に、第2電池ユニット2は、「モジュールなし」電池パックであってもよく、「モジュールあり」電池パックであってもよく、複数の第2単電池200に加えて、第2単電池200の充電を監視する第2充電制御装置210をさらに含む。同様に、第2充電制御装置210は、具体的には、第2電池ユニット2のBMSであってもよく、第2電池ユニットのBMSに電気的に接続される独立モジュールであってもよい。当然ながら、第2充電制御装置210と上記第1充電制御装置110は、同一の制御装置に統合されてもよい。
【0068】
本願のいくつかの実施形態では、動力車両300が第1モードで動作し、第2電池ユニット2のみによって動力車両300に電力を供給し、動力車両300が第2モードで動作し、第1電池ユニット1及び第2電池ユニット2によって共に動力車両300に電力を供給するか、又は第1電池ユニット1のみによって動力車両300に電力を供給し、上記動力車両の上記第1モードでの航続距離は、上記第2モードでの航続距離より小さい。
【0069】
好ましくは、第1充電制御装置110は、第1電池ユニット1のリチウム電池100を充電する前に又は充電する過程において、動力車両が第2モードで動作することを知った場合、第1電池ユニット1のリチウム電池100を充電する充電終止電圧を上記Vに制御する。即ち、リチウム電池100を充電する場合に満充電することができる。当然ながら、第1充電制御装置110は、第1電池ユニット1のリチウム電池100を充電する前に又は充電する過程において、動力車両が第2モードで動作し、かつ該第2モードで第1電池ユニット1及び第2電池ユニット2によって共に動力車両300に電力を供給することを知った場合、第1電池ユニット1のリチウム電池100を充電する充電終止電圧を上記Vに制御することもできる。しかしながら、この場合、車両の第2モードでの航続距離は、第2電池ユニット2とVまで充電された第1電池ユニット1とが提供可能な航続距離より小さい。
【0070】
動力車両300が特別に長い航続距離を必要としない(例えば、該車両を使用して日常通勤する)場合、低エネルギー密度の第2電池ユニット2のみを使用して該車両に動力を供給することができ、これにより、該車両が許容できる充放電回数が多くなり、耐用年数がより長くなり、該車両がたまに長い航続距離を必要とする場合(例えば、休日に該車両を使用して長距離で旅行する場合)、第1電池ユニット1及び第2電池ユニット2によって共に該車両に動力を供給するか、又は第1電池ユニット1のみによって該車両に動力を供給することができ、これにより、該車両に得られた動力がより十分であり、かつ全体のサイクル寿命を犠牲にすることなく、選択的に長航続距離の目的を達成することができる。したがって、上記動力車両は、異なる航続距離に応じて電池システムの異なる電池ユニットを選択的に使用することにより、動力車両における使用頻度が低い高エネルギー密度の電池ユニットが長いサイクル寿命を示し、電池システム全体が長い耐用年数と長い航続能力を兼ね備えることができる。
【0071】
以下、複数の実施例により本願の実施例をさらに説明する。
【実施例1】
【0072】
(1)正極板の製造
960gの正極活物質三元NCM 622、30gの粘着剤PVDF、5gの導電剤アセチレンブラック、5gの導電剤炭素繊維を2000gの溶媒NMP(窒素メチルピロリドン)に加えた後、真空撹拌機で撹拌し、安定して均一な正極ペーストを形成し、
スリット塗布装置を用いて上記正極ペーストをアルミニウム箔(アルミニウム箔のサイズ:幅160mm、厚さ16μm)の両面に均一に間欠的に塗布し、次に、温度393Kで乾燥させ、ロールプレス機によってプレスした後、アルミニウム箔に厚さ135μmの正極材料層を形成し、正極板を得た。その後、正極板をサイズ48mm×56mmの長方形の極板に裁断し、その幅方向の位置にタブをスポット溶接した。
【0073】
(2)電解液の調製
アルゴンガスで満たされたグローブボックス内(HO含有量≦5ppm、O含有量≦5ppm)で、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、酢酸ジフルオロエチル(DFEA)を体積比DME:TTE:DFEA=30:50:20で混合した後、該混合溶液に60wt%のリチウムビスフルオロスルホンイミドLiN(SOF)を加え、電解液を得た。
【0074】
(3)負極板の製造
a、まず1000gの一酸化ケイ素粉末を2000gの水に加え、次に50gの粘着剤ポリアクリル酸(PAA)及び20gの導電剤アセチレンブラックを加え、均一で安定な負極ペーストが形成されるまで強力に撹拌し、スリット塗布装置を用いて該負極ペーストを銅箔(銅箔のサイズについて、幅160mm、厚さ8μm)の両面に均一に間欠的に塗布し、次に温度393Kで乾燥させ、ロールプレス機によりプレスした後、銅箔に厚さ60μmの一酸化ケイ素負極材料層を形成し、負極板SA1を得た。
【0075】
b、まず200g、分子量60万のPEOを2000gのアセトニトリルに加え、次に16gのナノアルミナ粉末及び10gの無水硝酸リチウム粉末を加え、均一で安定な保護層ペーストが形成されるまで強力に撹拌し、該保護層ペーストを負極板SA1に均一に間欠的に塗布し、負極板SA2を得た。
【0076】
c、グローブボックス内(HO含有量≦5ppm、O含有量≦5ppm)で、上記負極板SA2とPET離型フィルムに被覆されたリチウム薄膜(リチウム薄膜の厚さが15μmである)とを貼り合わせることにより、保護層とリチウム薄膜とを接触させ、熱間プレス機の作用下で、リチウム薄膜上のリチウム元素が全て負極板SA2に移動し、負極板SA3を得て、該負極板SA3の負極材料層は、78μmであり、その中のリチウムケイ素負極活物質は、リチウムケイ素合金及びLiOを含む。負極板SA3をサイズ49mm×57mmの長方形の極板に裁断し、幅方向の位置にタブをスポット溶接して、電池を組み立てるための負電極を得た。
【0077】
(4)電池の組み立て
ステップ(1)で得られた正極板と、ステップ(3)で得られた負極板とを、セパレータとともに交互に積層し、ベアセルを得て、正極板と負極板がセパレータによって隔てられる。該ベアセルをアルミニウムプラスチックフィルムの外装体に置き、ステップ(2)で調製された電解液を注入し、真空密封した後、60℃で48h放置し、60℃で加圧化成し、二次パッケージングし、排気し、グレーディングした後、本実施例1のリチウム電池を得た。
【0078】
実施例1のリチウム電池が完全に満充電された状態で、リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ該リチウムケイ素複合負極活物質中のリチウム単体のモル比が23%であり、リチウムケイ素合金Li4.4Siのモル比が71%である。
【0079】
本願の実施例1のリチウム電池は、以下の方法により充放電サイクル試験を行った。
【0080】
本実施例1のリチウム電池をLAND CT 2001C二次電池性能検出装置に置き、25±1℃の条件で充放電サイクル試験を行った。1回目の従来の低いSOCサイクルのステップは、以下のとおりである。10min放置し、まず充電終止電圧が3.95Vになるまで0.2Cの定電流で充電し、次に0.05Cになるまで定電圧で充電し、10min放置し、そして電圧が3.0Vになるまで定電流で放電し、これは、1回の従来の低いSOCサイクルである。該ステップを繰り返し、従来の低いSOCサイクルを30回行った。高エネルギーサイクルのステップは、以下のとおりである。10min放置し、まず電圧が4.25Vになるまで0.2Cの定電流で充電し、次に0.05Cになるまで定電圧で充電し、10min放置し、そして3.0Vまで定電流で放電し、これは、1回の高エネルギーサイクルである。30回の従来のサイクルごとに、1回の高エネルギーサイクルを行った。高エネルギーサイクルを1回行うたびに、式V=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)を用いて次回の従来の低いSOCサイクルの充電終止電圧を校正した。
【0081】
サイクル過程における電池の放電容量が初回放電容量の80%より低い場合、サイクルを終了し、該サイクル回数nは、該リチウム電池のサイクル寿命である。該サイクル回数nでの容量維持率を記録し、該サイクル回数nでの電池エネルギー密度と初回エネルギー密度との割合を該リチウム電池のエネルギー維持率とする。
【実施例2】
【0082】
リチウム電池は、実施例1と比較して、ステップ(3)において、一酸化ケイ素粉末の代わりに800gのケイ素粉末を用い、PET離型フィルムに被覆されたリチウム薄膜の厚さが12μmであるという点で相違する。
【0083】
実施例2のリチウム電池が完全に満充電された状態で、リチウムケイ素複合負極活物質中のリチウム単体のモル比が24%であり、リチウムケイ素合金Li4.4Siのモル比が76%である。
【0084】
実施例1に係る充放電プロセスに従って実施例2のリチウム電池を充電した。
【実施例3】
【0085】
リチウム電池は、実施例1と比較して、ステップ(3)において、一酸化ケイ素粉末の代わりに800gのケイ素粉末を用い、PET離型フィルムに被覆されたリチウム薄膜の厚さが10μmであるという点で相違する。
【0086】
実施例3のリチウム電池が完全に満充電された状態で、リチウムケイ素複合負極活物質中のリチウム単体のモル比が18%であり、リチウムケイ素合金Li4.4Siのモル比が82%である。
【0087】
実施例1に係る充放電プロセスに従って実施例3のリチウム電池を充電した。
【実施例4】
【0088】
リチウム電池は、実施例3と比較して、その構造が実施例3と同じであるが、実施例3における1回目の従来の低いSOCサイクルの「充電終止電圧が3.95Vになるまで0.2Cの定電流で充電する」ことを、充電終止電圧が4.0Vになることに変更したという点で相違する。
【0089】
本願の実施例の有益な効果を強調するために、以下の比較例を提供する。
(比較例1)
【0090】
リチウム電池は、実施例1と比較して、ステップ(3)において、製造された負極板SA1をそのまま比較例1のリチウム電池を組み立てるための負極板DS1とし、実施例1の負極が金属リチウムを含有せず、ステップ(2)において、電解液の溶媒がエステル系溶媒であり、具体的には、体積比が4:6であるエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶液であるという点で相違する。
【0091】
比較例1で製造されたリチウム電池の充放電サイクル試験方法としては、それぞれ5つのリチウム電池をLAND CT 2001C二次電池性能検出装置に置き、25±1℃の条件で、電池に対して0.2Cで充放電サイクル試験を行った。ステップは、以下のとおりである。10min放置し、まず充電終止電圧が4.2Vになるまで0.2Cの定電流で充電し、次に0.05Cになるまで4.2Vの定電圧で充電し、10min放置した後、3.0Vまで定電流で放電し、これは、1回の充放電サイクルである。
【0092】
以上の充放電ステップを繰り返し、サイクル過程における電池の放電容量が初回放電容量の80%より低い場合、サイクルを終了し、該サイクル回数nは、該リチウム電池のサイクル寿命である。該サイクル回数nでの容量維持率を記録し、該サイクル回数nでの電池エネルギー密度と初回エネルギー密度との割合を該リチウム電池のエネルギー維持率とする。
(比較例2)
【0093】
リチウム電池の製造は、実施例1と比較して、ステップ(3)において、負極板SA1に保護層を形成せず、負極板SA1とPET離型フィルムに被覆されたリチウム薄膜とを熱圧着し、得られた負極板DS2を組み立てて比較例2のリチウム電池を得るという点で相違する。
【0094】
本願の実施例の技術手段による有益な効果を強力に裏付けるために、電池に対してエネルギー密度(電池の体積及び放電エネルギーの試験)及びサイクル寿命の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【表2】
【0095】
表2から分かるように、本願の実施例に係るリチウム電池は、高エネルギー密度及び長いサイクル寿命の特性を同時に備える。
【0096】
上述した実施例は、本願のいくつかの例示的な実施形態を示すものに過ぎず、その説明は具体的で詳細であるが、本願の特許請求の範囲を限定するものと理解してはならない。なお、当業者であれば、本願の構想から逸脱することなく、さらにいくつかの変形及び改良を行うことができ、これらはいずれも本願の保護範囲に属する。したがって、本願の保護範囲は、添付された特許請求の範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池であって、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に位置するセパレータ、及び電解液とを含み、前記負極板の負極材料層は、リチウムケイ素複合負極活物質を含有し、前記負極材料層の表面に保護層を有するか又は前記リチウムケイ素複合負極活物質の表面に保護層を有し、前記保護層は、ポリマーマトリックス及びリチウム塩を含み、
前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウム単体のモル比は、15%~95%である、リチウム電池。
【請求項2】
前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウムケイ素合金Li4.4Siのモル比は、5%~85%である、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスは、ポリエチレンオキシド、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びそれらの誘導体及び共重合体のうちの1種又は複数種を含み、前記リチウム塩は、硝酸リチウム、硫化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化リチウム、リン酸リチウムのうちの1種又は複数種を含む、請求項に記載のリチウム電池。
【請求項4】
N/P比は、1より小さい、請求項に記載のリチウム電池。
【請求項5】
前記電解液中の溶媒は、エーテル系溶媒を含み、前記エーテル系溶媒は、非ハロゲン化エーテル系溶媒及びフッ素化エーテル系溶媒のうちの少なくとも1種を含む、請求項に記載のリチウム電池。
【請求項6】
正極に充電されたSOCが第1閾値より低い場合、前記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体を含有せず、前記第1閾値は、15%~95%である、請求項に記載のリチウム電池。
【請求項7】
リチウム電池の製造方法であって、
ケイ素系材料、導電剤及び粘着剤を含有する混合ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させ、ロールプレスした後、前記負極集電体にケイ素系材料層を形成するステップと、
リチウム薄膜及び前記ケイ素系材料層を熱間プレス処理することにより、前記リチウム薄膜のリチウム元素が全て前記ケイ素系材料層に移動し、前記ケイ素系材料とその場所で反応して、リチウムケイ素複合負極活物質を含有する負極材料層を形成し、負極板を得るステップとを含み、さらに、
前記ケイ素系材料層及びリチウム薄膜を熱間プレス処理する前に、前記ケイ素系材料層の表面に保護層を形成するステップ、又は、前記負極材料層を形成した後に、前記負極材料層の表面に保護層を形成するステップであって、前記保護層がポリマーマトリックス及びリチウム塩を含むステップと、
前記負極板を組みこんでリチウム電池を構成するステップとを含み、
前記リチウム電池が完全に満充電された状態で、前記リチウムケイ素複合負極活物質がリチウム単体及びリチウムケイ素合金Li4.4Siを含有し、かつ前記リチウムケイ素複合負極活物質中の前記リチウム単体のモル比が15%~95%である、リチウム電池の製造方法。
【請求項8】
前記ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素系非リチウム合金及び他のケイ素含有化合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム電池の充電方法であって、
前記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する必要がある場合、前記リチウム電池を充電する充電終止電圧V
=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)
という式を満たすように制御するステップを含み、前記リチウム電池が長いサイクル寿命特性を発揮する場合、前記Vで、前記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出せず、かつV<Vであり、
ここで、Vは、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、CAは、前記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、前記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、前記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、前記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である、リチウム電池の充電方法。
【請求項10】
前記リチウム電池の充電電圧が前記Vに達する場合、前記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要があると、前記リチウム電池を前記Vまで充電し続けるステップと、前記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する必要がないと、前記リチウム電池への充電を停止するステップと、を含み、
前記リチウム電池が高エネルギー密度特性を発揮する場合、前記リチウムケイ素複合負極活物質は、リチウム単体を含有し、前記リチウム電池の充電終止電圧は、前記Vより大きい、請求項9に記載のリチウム電池の充電方法。
【請求項11】
電池システムは、少なくとも1つの第1電池ユニットを含み、前記第1電池ユニットは、複数の請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム電池及び第1充電制御装置を含む、動力車両。
【請求項12】
前記第1充電制御装置は、前記第1電池ユニットのリチウム電池を充電する前に又は充電する過程において、かつ前記動力車両が第1モードで動作することを知った場合、前記リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、
前記第1充電制御装置は、さらに、前記第1電池ユニットのリチウム電池を充電する前に又は充電する過程において、前記動力車両が第2モードで動作することを知った場合、前記リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、Vは、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、かつV<Vであり、前記Vは、前記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出しないぎりぎりの電圧であり、
前記動力車両の前記第1モードでの航続距離は、前記第2モードでの航続距離より小さい、請求項11に記載の動力車両。
【請求項13】
前記Vは、
=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)
という式を満たし、
ここで、CAは、前記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、前記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、前記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、前記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である、請求項12に記載の動力車両。
【請求項14】
電池システムは、少なくとも1つの第2電池ユニットをさらに含み、前記第2電池ユニットは、複数の第2単電池を含み、前記第2単電池の負極活物質は、黒鉛及び/又はケイ素系材料を含む、請求項11に記載の動力車両。
【請求項15】
動力車両が第1モードで動作するときは、前記第2電池ユニットのみによって前記動力車両に電力を供給し、動力車両が第2モードで動作するときは、前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットによって共に前記動力車両に電力を供給するか、又は前記第1電池ユニットのみによって前記動力車両に電力を供給し、
前記第1モードでの航続距離は、前記第2モードでの航続距離より小さい、請求項14に記載の動力車両。
【請求項16】
前記第1電池ユニットを充電する前に又は充電する過程において、前記第1充電制御装置は、前記動力車両が第2モードで動作し、かつ前記第1電池ユニットのみによって前記動力車両に電力を供給することを知った場合、前記第1電池ユニットの各リチウム電池を充電する充電終止電圧をVに制御し、Vは、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧である、請求項15に記載の動力車両。
【請求項17】
前記第1電池ユニットを充電する前に又は充電する過程において、前記第1充電制御装置は、前記動力車両が第2モードで動作し、かつ前記第1電池ユニット及び前記第2電池ユニットによって共に前記動力車両に電力を供給することを知った場合、前記第1電池ユニットの各リチウム電池を充電する充電終止電圧をV又はVに制御し、
は、前記リチウム電池が許容できる充電上限電圧であり、前記Vで、前記リチウム電池の負極にリチウム単体を析出せず、かつV<Vであり、前記Vは、
=cV+a×c×K+b×c×(dQ/dV)/(3.6×CA)
という式を満たし、ここで、CAは、前記リチウム電池が0.33Cで放電するときの公称容量であり、Vは、前記リチウム電池のリアルタイム充電容量で負極にリチウム単体が析出しないときの基準電圧であり、Kは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイム直流内部抵抗の出荷直流内部抵抗に対する内部抵抗増加率であり、dQ/dVは、前記リチウム電池の充電電気量の充電電圧に対するリアルタイム微分値であり、cは、前記リチウム電池の充電過程におけるリアルタイムセル温度の校正係数であり、aは、前記Kの校正係数であり、bは、(dQ/dV)/CAの校正係数である、請求項15に記載の動力車両。
【国際調査報告】