(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ノード欠陥を有する金属‐有機フレームワークおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20240628BHJP
C07C 63/28 20060101ALI20240628BHJP
C07C 63/30 20060101ALI20240628BHJP
C07C 229/76 20060101ALI20240628BHJP
C07F 7/00 20060101ALI20240628BHJP
C07F 7/22 20060101ALI20240628BHJP
C07F 1/08 20060101ALI20240628BHJP
C07F 15/06 20060101ALI20240628BHJP
C07F 3/06 20060101ALI20240628BHJP
C07F 7/28 20060101ALN20240628BHJP
C07F 5/00 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
C01G25/00
C07C63/28 CSP
C07C63/30
C07C229/76
C07F7/00 A
C07F7/00 Z
C07F7/22 V
C07F1/08 B
C07F15/06
C07F3/06
C07F7/28 G
C07F5/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580405
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022034730
(87)【国際公開番号】W WO2023278246
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルカリム,メアリー エス
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ワイゲル,スコット ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファム,トロン ディ
【テーマコード(参考)】
4G048
4H006
4H048
4H049
4H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AD03
4G048AE05
4H006AA01
4H006AB20
4H006AB40
4H006AB80
4H006BS30
4H006BU46
4H048AA01
4H048AB20
4H048AB40
4H048AB80
4H048VA12
4H048VA13
4H048VA20
4H048VB10
4H049VN03
4H049VN05
4H049VN06
4H049VN07
4H049VP10
4H049VQ31
4H049VQ85
4H049VR44
4H049VS12
4H049VU06
4H049VU31
4H049VU33
4H050AA01
4H050AB20
4H050AB40
4H050AB80
4H050WB13
4H050WB23
(57)【要約】
溶液中で4価の金属カチオンを生成することができる第1の金属源、直鎖状ジカルボン酸、溶液中で2価のカチオンを生成することができる第2の金属源、および1つ以上のモノカルボン酸調整剤を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程を含むプロセスによって製造された金属‐有機フレームワークが提供される。反応溶液を加熱して、約0重量%~10重量%の2価のカチオン、約1100m2/g~2700m2/gの表面積、約0.45cc/g~1.1cc/gの空隙率、0.35以上の相対強度および3.0未満のピーク幅比を有する金属‐有機フレームワークを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に含む金属‐有機フレームワークであって、前記金属‐有機フレームワークが、約1100m
2/g~2700m
2/gの表面積、約0.45cc/g~1.1cc/gの空隙率、および0.35以上の相対強度を有する、金属‐有機フレームワーク。
【請求項2】
前記4価のカチオンが、Zr、Ti、Hf、および/またはCeから選択される、請求項1に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項3】
前記テレフタレートリンカーが、1,4‐ベンゼンジカルボキシレート(BDC)またはその誘導体、2‐アミノ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート、1,2,4‐ベンゼントリカルボキシレート、1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボキシレート、2‐ニトロ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート、2‐クロロ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート、2‐ブロモ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート、およびこれらの混合物から選択される。
【請求項4】
約0.0重量%~約10.0重量%の2価のカチオンを更に含み、特に2価のカチオンがZn、Co、Snおよび/またはCuから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項5】
金属‐有機フレームワークが3.0未満のピーク幅比を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項6】
複数のジルコニウムカチオンおよび複数のBDCリンカーを含む、請求項1、4または5のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項7】
複数のジルコニウムカチオンおよびBDCリンカーを単純立方格子に含み、約5.0重量%未満である2価のカチオンを含む金属‐有機フレームワークであって、ジルコニウム系金属‐有機フレームワークが0.35以上の相対強度および3.0未満であるピーク幅比を有する、金属‐有機フレームワーク。
【請求項8】
最初の5つの回折ピークのd間隔が20.4130Å、14.4691Å、11.8446Å、10.2594ű5%であり、単純立方格子単位を含む、金属‐有機フレームワーク材料。
【請求項9】
溶液中で4価の金属カチオンを生成し得る第1の金属源、直鎖状ジカルボン酸、溶液中で2価のカチオンを生成し得る第2の金属源、および1つ以上のモノカルボン酸調整剤を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程、並びに反応溶液を加熱して、金属‐有機フレームワークを含む反応混合物を提供する工程を含む方法によって製造される、請求項1~8のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項10】
(110)反射の(111)反射に対する半値比のピーク幅が3未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク材料。
【請求項11】
金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態の第1の金属源、ポリトピック型有機カルボン酸、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態の第2の金属源、および1つ以上のモノカルボン酸を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程、
反応溶液を少なくとも75℃の反応温度に加熱して、金属‐有機フレームワーク材料を含む反応混合物を提供する工程、並びに
反応混合物から金属‐有機フレームワーク材料を分離する工程
を含む金属‐有機フレームワークの製造方法。
【請求項12】
第1の金属源は溶液中で4価の金属カチオンを生成することができ、第2の金属源は溶液中で2価の金属カチオンを生成することができ、ポリトピック型有機カルボン酸はテレフタレートリンカーを生成することができる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
金属‐有機フレームワーク材料が複数の金属‐有機フレームワークを含み、複数の金属‐有機フレームワークの各々が、複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に有し、2価のカチオンが約5.0重量%未満であり、相対強度が0.35以上である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
モノカルボン酸濃度が、溶媒の総体積の約30体積%~70体積%である、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
4価のカチオン:リンカーのモル比が約1.75:1~約1:1.75の間である、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
2価のカチオン:4価のカチオンのモル比が約0~約5:1である、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
反応溶液が、1リットル当たり約0モル~5モルの濃度の水を更に含む、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
第1の金属がジルコニウム、ハフニウム、チタン、セリウムまたはそれらの混合物から選択され、第2の金属がZn、Co、Sn、Cuまたはそれらの混合物から選択される、請求項11~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ポリトピック型有機カルボン酸が芳香族ジ、トリまたはテトラカルボン酸から選択される、請求項11~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ポリトピック型有機カルボン酸がテレフタル酸またはトリメシン酸から選択される、請求項11~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ポリトピック型有機カルボン酸が、アルキル基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、スルホニル基、チオ基、イソシアノ基、アルコキシ基、エーテル基、エステル基、またはカルボキシレート基により官能基化されている、請求項11~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
反応溶液が、F、Cl、BrまたはIイオンの1つ以上を更に含む、請求項11~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
2次金属または2次金属カチオンの存在下で金属‐有機フレームワークを合成する工程を含む、金属‐有機フレームワークの欠陥構造または形態を調整する方法。
【請求項24】
金属‐有機フレームワークが、2次金属または2次金属カチオンとは異なる原子価を有する第1の金属を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
金属または第1の金属が4価の金属または4価の金属カチオンであり、2次金属または2次金属カチオンが2価の金属または2価の金属カチオンである、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
金属または第1の金属が、Zr、Ti、Hf、Ce、またはそれらの混合物から選択され、2次金属または2次金属カチオンが、Zn、Co、Sn、Cu、またはそれらの混合物から選択される、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
金属‐有機フレームワークが、複数の4価のカチオン、特に複数のジルコニウムカチオン、および結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に含む、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年6月28日に出願された米国仮出願第63/202856号の優先権およびその利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は、表面積および微孔容積を増大させるために金属‐有機フレームワークに欠陥を組み込むことに関し、具体的には、4価のカチオンおよびテレフタレートリンカーを有する新規な金属‐有機フレームワークの合成、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属‐有機フレームワークは、配位結合を介して金属ノードを橋渡しし、配位ネットワークを形成する有機リンカーを有する。金属‐有機フレームワークのトポロジーは、有機リンカーと金属ノード(または節点;node)の等軸拡張または官能基化によって調整することができる。これらの調整可能なトポロジーにより、金属‐有機フレームワークは、触媒変換から吸着・分離、生物医学的応用に至るまで、様々な用途にカスタマイズ可能となる。しかし、金属‐有機フレームワーク(「MOF」)は、従来の多孔性シリカやアルミナと比べると比較的不安定である。
【0004】
MOFの不安定性は、アルミニウム、クロム、鉄のような3価の金属や、ジルコニウム、ハフニウム、チタンなどの4価の金属を組み込むことによって緩和することができる。更に、結果として生じる金属クラスターとリンカー間の高度な連結性は、構造全体を崩壊させることなく、高濃度での欠陥形成を可能にする。配位不足の金属イオンは、触媒活性部位や他の活性元素の固定部位として機能することができる。
【0005】
欠陥形成の制御は、金属‐有機フレームワークを十分に定義し、調整可能な状態に保ちながら、所望の特性を達成するために不可欠である。現在までのところ、クラスター欠落欠陥(ノード欠陥)を生成する制御メカニズムは、リンカー欠落欠陥(missing linker defect)のような洗練されたレベルにはない。ある種の調整剤はリンカー欠落欠陥の調整に有効であることが示されているが、ノード欠陥を促進する調整剤は、過剰な濃度で使用しない限り限界がある。更に、フッ素化カルボン酸のようなある種の有効な調整剤は、環境的に望ましくない。
【発明の概要】
【0006】
本明細書中において提供されるのは、約1100m2/gから2700m2/gの間の表面積、約0.45cc/gから1.1cc/gの間の空隙率、および0.35に等しいかまたはそれを超える相対強度を有する、複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に含む金属‐有機フレームワークである。
【0007】
本明細書中で提供されるのは、溶液中で4価の金属カチオンを生成することができる第1の金属源、直鎖状ジカルボン酸、溶液中で2価のカチオンを生成することができる第2の金属源、および1つ以上のモノカルボン酸調整剤を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程と、反応溶液を加熱して反応混合物を提供する工程とを含むプロセスによって製造される金属‐有機フレームワークであり、金属‐有機フレームワークは、約0重量%~10重量%の2価のカチオン、約1100m2/g~2700m2/gの表面積、約0.45cc/g~1.1cc/gの空隙率、および0.35以上の相対強度および/または3.0未満のピーク幅比を含む。
【0008】
また、本明細書中では、複数のジルコニウムカチオンと複数のBDC(ベンゼンジカルボキシレート)リンカーとを単純立方格子中に含み、約0.0重量%から10.0重量%の間の2価のカチオンを含む金属‐有機フレームワークも提供される。金属‐有機フレームワークは、窒素BET法で測定した表面積が約1100m2/gから2700m2/gの間であり、空隙率が約0.45cc/gから1.1cc/gの間であり、相対強度が0.35以上である。
【0009】
本明細書中で更に提供されるのは、複数のジルコニウムカチオンおよびBDCリンカーを単純立方格子に含み、約2価のカチオンが約7.0重量%未満である金属‐有機フレームワークである。1つの態様では、洗浄を行い、1つ以上の付加的なカチオンを含浸させることなく、蛍光X線によって測定される2価のカチオンが5.3重量%以下、または5.0重量%以下である。ジルコニウム系金属‐有機フレームワークは、0.35以上の相対強度、および/または3.0未満のピーク幅比を有する。
【0010】
前駆体金属、金属錯体または金属酸化物(即ち、第1の金属源);ポリトピック型(polytopic)有機カルボン酸;第2の金属前駆体金属、第2の金属錯体または第2の金属酸化物(即ち、第2の金属源);および1つ以上のモノカルボン酸を溶媒中で反応させて、反応溶液を提供する工程;反応溶液を少なくとも75℃の反応温度に加熱して、金属‐有機フレームワーク材料を含む反応混合物を提供する工程;および反応混合物から金属‐有機フレームワーク材料を分離する工程を含む金属‐有機フレームワークの製造方法。反応混合物は金属‐有機フレームワーク材料を含み、金属‐有機フレームワーク材料は複数の金属‐有機フレームワークを含む。複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に有する、複数の金属‐有機フレームワークの各々は、約3.0重量%~約5.0重量%の2価のカチオンおよび0.35以上の相対強度を有する。
【0011】
更に、本明細書中において提供されるのは、2次金属または2次金属カチオンで金属‐有機フレームワークを合成する工程を含む、金属‐有機フレームワークの欠陥構造または形態を調整する(modulate)方法である。
【0012】
本開示の特定の実施形態において、金属‐有機フレームワークは、主にREOトポロジー、特にFCU欠陥を有するREOトポロジーを有し得る。例えば、金属‐有機フレームワークは、(欠陥の程度を反映する相対強度によって測定される)高度に欠陥のある、あるいは完全に欠陥のあるUiO‐66に対応し得、これは、REO‐UiO‐66ファミリー材料と呼ばれ得る。本開示の金属‐有機フレームワークまたは本開示のプロセスによって作製された金属‐有機フレームワークは、EMM‐71とも呼ばれ得る。
【0013】
開示される方法およびシステムのこれらおよび他の特徴および属性、ならびにそれらの有利な用途および/または使用は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書中の対象を製造および使用する際に関連技術分野における通常の技術者の助けとなるように、添付図面を参照する。
【
図1A】従来の合成および4つの異なるモノカルボキシレート調整剤の異なる調整剤:BDCの比を用いて作製されたUiO‐66試料の粉末X線回折パターンである(
図1A1、
図1A2、
図1A3、
図1A4)。
【
図1B】従来の合成および4つの異なるモノカルボキシレート調整剤の異なる調整剤:BDCの比を用いて作製されたUiO‐66試料の粉末X線回折パターンである。
【
図1C】従来の合成および4つの異なるモノカルボキシレート調整剤の異なる調整剤:BDCの比を用いて作製されたUiO‐66試料の粉末X線回折パターンである。
【
図2A1】テレフタル酸、メチルテレフタル酸、およびアミノテレフタル酸のいずれかで合成したUiO‐66試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図2A2】テレフタル酸、メチルテレフタル酸、およびアミノテレフタル酸のいずれかで合成したUiO‐66試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図2A3】テレフタル酸、メチルテレフタル酸、およびアミノテレフタル酸のいずれかで合成したUiO‐66試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図3】実施例1に記載の試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図4】実施例1に記載の試料の熱重量分析の結果を示す。
【
図5A】実施例1に記載の試料1および2の窒素吸着等温線である。
【
図5B】実施例1に記載の試料1および2の窒素吸着等温線である。
【
図6】いくつかの金属カチオンの存在下で合成されたZr‐BDCのX線回折パターンである。
【
図7A】酢酸の溶液濃度を減少させ、反応物濃度を増加させて合成したZr‐MOF試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図7B】酢酸の溶液濃度を減少させ、反応物濃度を増加させて合成したZr‐MOF試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図8】硝酸塩から合成した試料の粉末X線回折パターンを示し、塩化物イオンの存在なしに、コバルトカチオンまたは亜鉛カチオンのいずれにも大きな欠陥ドメインが形成されないことを強調している。
【
図9】Zn
2+カチオンで作製したEMM‐71試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図10】ZnOの存在下で作製され、合成後にギ酸ナトリウムで処理されたZn‐BDC試料の窒素ガス吸着を示す。
【
図11A】残留BDC配位子の程度が異なるノード欠落ドメインの粉末X線回折パターンのシミュレーションである。
【
図11B】残留BDC配位子の程度が異なるノード欠落ドメインの粉末X線回折パターンのシミュレーションである。
【
図11C】残留BDC配位子の程度が異なるノード欠落ドメインの粉末X線回折パターンのシミュレーションである。
【
図12A】金属‐有機フレームワークを、異なる温度条件下でpH9のホウ酸ナトリウム(0.25M)で洗浄した、Zn介在EMM‐71金属‐有機フレームワークの窒素吸着等温線である。
【
図12B】異なる時間および温度条件下で、金属‐有機フレームワークをギ酸ナトリウム(0.5M)で洗浄した、Zn介在EMM‐71金属‐有機フレームワークの窒素吸着等温線である。
【
図13A】亜鉛(Zn)の存在下で合成されたEMM‐71金属‐有機フレームワークの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図13B】亜鉛(Zn)の存在下で合成されたEMM‐71金属‐有機フレームワークの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図13C】コバルト(Co)の存在下で合成されたZr‐BDC金属‐有機フレームワークの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図13D】コバルト(Co)の存在下で合成されたZr‐BDC金属‐有機フレームワークの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図14】実施例2の金属‐有機フレームワークEMM‐71の粉末X線回折パターンである。
【
図15】実施例3の金属‐有機フレームワークEMM‐71の粉末X線回折パターンである。
【
図16】実施例3の全Hf-Zr含有量に対するHfのモル%を変えて作製した金属‐有機フレームワークHf-Zr EMM‐71の粉末X線回折パターンである。
【
図17】実施例4に記載の45分、80分、120分、195分、および255分に採取した金属‐有機フレームワークEMM‐71アリコートの粉末X線回折パターンである。
【
図18】実施例7の金属‐有機フレームワークEMM‐71の粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本化合物、成分、組成物、および/または方法が開示され、記載される前に、特に明記されない限り、本開示は、特定の化合物、成分、組成物、反応物、反応条件、配位子、触媒構造、MOF構造などに限定されないことを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないと解されるべきである。
【0016】
金属‐有機フレームワーク(「MOF」)は、金属イオン/金属クラスターおよび有機配位子の三次元集合体で構築される。高い細孔容積、秩序構造、調整可能性を有する金属‐有機フレームワークは、光触媒、触媒作用、分離および精製、ガス/エネルギー貯蔵、センシングなど多くの用途に適している。高表面積と高濃度の孤立金属イオンは、ガス貯蔵能力と物質輸送を向上させる。
【0017】
金属‐有機フレームワークは、配位結合を介して金属ノード(「2次構築単位」または「SBU」と呼ばれる)を橋渡しする有機リンカー(「配位子」とも呼ばれる)から構成され、自己集合して配位ネットワークを形成することができる。有機リンカー/金属ノードの等立体拡張または官能基化により、調整可能なトポロジーを有する金属‐有機フレームワークは、触媒変換から吸着および分離、生物医学用途まで、様々な異なる用途にカスタマイズ可能である。金属‐有機フレームワークは、ガス吸着、ガス分離、触媒作用、加熱/冷却、電池、ガス貯蔵、センシング、環境浄化などの産業用途に有用な特性を有する。
【0018】
金属‐有機フレームワーク(「MOF」)の安定性は、カルボン酸塩や3価金属のような分極率の低いイオン間の強い相互作用に起因する。安定な金属‐有機フレームワークは当初、3価のカチオン、即ちAl3+、Fe3+、Cr3+に由来するフタル酸系のMOFに限られていた。その後、Zr4+、Hf4+、Ti4+などの他の多価のカチオンが利用され、更に強固なフレームワークが提供されるようになった。金属‐有機フレームワークUiO‐66は、ジルコニウム塩を直鎖状ジカルボン酸と反応させることによって初めて発見された。Cavka, J. H. et al., A New Zirconium Inorganic Building Brick Forming Metal Organic Frameworks with Exceptional Stability, J. Am. Chem. Soc., 130, 42, 13850-13851, 2008.
【0019】
発見当時、UiO‐66は既知の金属‐有機フレームワークの中で最も高い接続性を有していた。
【0020】
金属‐有機フレームワークの吸着特性や触媒特性を向上させるために、MOFに欠陥を組み込むことが最近注目されている。UiO‐66のような高原子価の金属を有する金属‐有機フレームワークは、高い連結性を有するため、欠陥を高度に生成させることができる。リンカーの選択による機能性の柔軟性に加え、金属クラスターとリンカー間の高度な連結性は、全体の構造を崩壊させることなく、高濃度での欠陥の形成を可能にする。これらの欠陥は、有機リンカー欠陥、または金属クラスター全体の脱落であるノード欠落欠陥(missing node defect)のいずれかの形態である。本明細書中で述べるように、配位不足の金属イオンは、触媒活性部位または他の活性元素のアンカー部位として機能する。
【0021】
リンカー欠落欠陥は、リンカーが除去され、点欠陥が生じることに起因する。ノード欠落欠陥またはノード欠陥は、金属クラスターと金属クラスターに接続されたリンカーの結合除去によって生じる。金属クラスターとリンカーが集中的に除去されると、REOトポロジーのナノドメインが形成される。どちらの欠陥タイプも金属‐有機フレームワークの機械的・物理的特性に影響を与えるが、クラスターを除去するとメソスケールの空洞が残り、物質やプロトンの輸送に有利な、より開放的な階層的細孔構造が得られる。
【0022】
欠陥形成の制御は、金属‐有機フレームワークの所望の特性を達成すると同時に、十分に定義された調整可能な構造を維持するために不可欠である。現在までのところ、ノード欠落欠陥の制御メカニズムは、リンカー欠落欠陥の高度化のレベルにはない。調整剤はリンカー欠落欠陥の制御には有用であることが示されているが、過剰な濃度を使用しない限り、クラスター欠落欠陥の形成を促進することが可能である調整剤は限られている。更に、フッ素化カルボン酸のような既知の調整剤は、環境的に望ましくない。更に、欠陥ドメインから生じるピークの広さからも明らかなように、欠陥ドメインは比較的小さい。相対的に言えば、現在までのところ、モノカルボン酸塩を用いず、代わりに水(多くの場合、塩酸を追加)の存在下で調整した系では、クラスター欠落欠陥がより顕著である。Chammingkwan, P. et al., Modulator-free Approach Towards Missing-cluster Defect Formation in Zr-based UiO-66, RSC Adv., Vol. 10, 28180-28185, 2020.
【0023】
本明細書中で提供されるのは、2価の金属カチオンを取り込むことにより、制御可能なドメインサイズのクラスター欠落欠陥(本明細書中では「ノード欠陥」と呼ぶ)を含むFCUトポロジーのジルコニウムテレフタレート金属‐有機フレームワーク(クラスター型MOFの立方八面体端転移ネット)を合成する方法であり、主にFCU欠陥を有するREOトポロジーを有する金属‐有機フレームワークである。本方法は、ノード欠陥を有する新規な金属‐有機フレームワークを作製する。ノード欠陥の有用性は、吸着と触媒の両用途において非常に大きい。例えば、グラフト化された触媒サイトでは、追加的な機能性を提供する触媒部位で欠陥をキャップすることができる。分離用途に関しては、特に大きな欠陥で多環ナフテンの選択的結合が起こり、多環ナフテン分離の選択性を向上させることができる(拡散特性の向上に加えて)。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「REOトポロジー」という用語は、Chenら、Reticular Chemistry in the Rational Synthesis of Functional Zirconium Cluster-base MOFs、Coordination Chemistry Reviews、400、2019;例えば、Chenら、前掲書、
図1および
図4を参照されたい、によって記載されるようなZr‐MOFの立方体推移ネットまたはトポロジカルネットを指す。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「2価」という用語は、2価のカチオンの酸化状態を指し、それが全体的な荷電分子の一部であるかどうかではない(例えば、解離せず溶解したZnCl2)。
【0026】
本明細書中に記載されるように、本発明の金属‐有機フレームワークは、約1100m2/gと2700m2/gとの間の表面積、約0.45cc/gと1.1cc/gとの間の空隙率、および0.35に等しいかまたはそれ以上の相対強度を有する。1つの態様では、これらの金属‐有機フレームワークは、3未満の半値幅のピーク幅の相対比を有する。ピークの半値幅の相対比は、(110)ピークの高さの半分の幅を(111)ピークの高さの半分の幅で割った値に等しい。更に、本明細書中に記載されるように、欠陥のある金属‐有機フレームワークを製造する本発明の方法は、5.0重量%以下、例えば、約3.0重量%~約5.0重量%の量の2価のカチオンを有する金属‐有機フレームワークを製造する。
【0027】
FCUトポロジーのジルコニウムMOFを製造する伝統的な合成法では、直鎖二座配位子を、ジルコニウム源(即ち、塩化ジルコニルまたは四塩化ジルコニウム)および調整剤とともに、極性非プロトン性溶媒、典型的にはジメチルホルムアミドに溶解する。調整剤は、ギ酸、酢酸、安息香酸、またはトリフルオロ酢酸のようなモノカルボン酸であり得るが、水または塩酸でもあり得る。例えば、
図1A1、
図1A2、
図1A3、
図1A4、
図1Bおよび
図1C(まとめて
図1と呼ぶ)に示すように、UiO‐66試料の粉末X線回折パターンは、従来の合成で、4つの異なるモノカルボン酸調整剤について異なる調整剤:BDC(ベンゼンジカルボン酸)比を用いて調製された。See, Shearer, G.C. et al., Defect Engineering: 変調合成による金属有機フレームワークUiO‐66の空隙率と組成の調整、Chem. Mater., 28, 11, 3749-3761, 2016. 5°2θを中心とする特徴は、ノード欠落欠陥(本明細書中では「REO欠陥」とも呼ぶ)のナノスコピックドメインを表す。
図1Bに示すように、この特徴の相対強度((5°2θを中心とする)特徴の積分強度を(111)、(200)、(600)ピークの強度の平均で割ったもの)を、使用した調整剤のモル当量に対してプロットしたものである。
図1Cに示すように、調整剤濃度対得られた材料の測定表面積のプロットが提供される。
図1Cに示すように、表面積の測定値に対して調整剤濃度をプロットしたものである。これは、欠陥ドメインに起因する対称禁制ピークの結果である。ここで、ノード欠陥は、完全単結晶が面中心の立方晶ドメインであるのに対して、系統的な欠落のない単純立方格子を形成しており、すべての加算ドメインまたはすべての偶数ドメインの反射のみを示している。その後の報告で、Lillerudは、HCl調整(カルボン酸調整剤の代わり)がノード欠陥に関連する回折ピークをより顕著にすることを実証した。Shearer, et al., Functionalizing the Defects: Postsynthetic Ligand Exchange in the Metal-Organic Framework UiO-66,Chem. Mater., 28, 20, 7190-7193, 2016を参照。
【0028】
これらの先行報告を基に、Chammingkwanらは、非常に低い含水量を使用して、ノード欠陥のあるUiO‐66やメチルおよびアミノ官能基化類似体を合成した場合に、水がこれらの欠陥を効果的に生成できることを実証した。水の添加量が0.5ML未満であるすべての場合において、H
2O:Zrの比が14に相当し、ノード欠落欠陥の適度なドメインが観察された。すべての場合において、欠陥の程度は、広い欠陥領域(この場合は(110)ピーク)の積分強度を比較し、この積分値を(111)、(200)、(600)反射の強度の平均値で割ることによって特徴付けられる。
図2A1、
図2A2、および
図2A3は、官能基化されていないUiO‐66および官能基化されたUiO‐66のXRDパターンを示し、
図2Bは、Chammingkwanらの方法(これは前掲のShearerらを指す)を用いて(110)REOピークの「相対強度」をプロットしたものである。最も極端なケースでも、(111)、(200)、(600)ピークの平均に対する(110)ピークの強度は、官能基化されていないUiO‐66の場合、約0.18に過ぎない。
【0029】
上述したノード欠落欠陥を生成する以前の方法とは異なり、我々は、従来知られているよりも効果的に生成されたクラスター/ノード欠落欠陥を開示する。本明細書中で述べるように、選択した2価の金属を含有させることで、ノード欠陥が誘発されるだけでなく、選択した2価の金属が先行技術の方法論よりもはるかに高い程度でクラスター欠落の発生を誘発できることを示す。
【0030】
我々の調査では、Snのピーク幅の比率は3:1であった。これは、本明細書中で使用する場合、(110)ピーク(REO欠陥に由来する)のピーク幅の比率が、(111)ピークに比べて半値幅で3倍であることを意味する。ジルコニウムおよびコバルトは、より小さい比、即ち1.7:1.2を生じさせることができる。したがって、本発明の金属‐有機フレームワークは、(110)ピークと(111)ピークの半値幅の比が3未満、2.5未満、2未満、1.75未満、1.50未満、あるいは1.25未満であってもよい。
【0031】
上記例において記載のように、まず、in situでの酸化後に2価イオンが金属‐有機フレームワーク構造に取り込まれるかどうかを調べた。2価イオンの取り込みはそれほど大きくは観察されなかったが、REOトポロジーの(100)面と(110)面に対応する回折反射が誇張されていることが観察された。同様に、マグネシウム、カルシウム、ニッケルなどの他の2価イオンも、このような反射を生じなかったことから、ノード欠落欠陥がないことが示された。リチウムのような一価の金属も、望ましい反射を生じなかった。更に、得られた微細孔の体積は、ピークの強度から予想されるよりも少なかった。
【0032】
本明細書中に記載したのと同じ合成条件下で、塩化銅(II)は塩化第二銅から生成した金属‐有機フレームワークと同程度のREOドメインを示した。一方、塩化コバルトと塩化亜鉛では、REOドメインの(100)と(110)のピーク、および(210)と(211)のピークで強い反射が観察された。マグネシウム、リチウム、ニッケル(2+)は、4~6°2θの間の回折強度が限られているか、存在しなかった。
【0033】
ノード欠落欠陥形成における選択的な2価のカチオンの予期せぬ役割にとどまらず、カチオンの有効性は溶液中のハロゲン化物カチオンの存在に依存しうることが更に観察された。例えば、硝酸塩(硝酸ジルコニル、硝酸コバルト/硝酸亜鉛)のみを用いた場合には欠陥形成は起こらず、このプロセスはHClまたはNH4Clの添加により可逆的であった。NH4Brは有効であるが、臭化物アニオンが元素状臭素に酸化されると、このプロセスが妨害される可能性がある。フッ化物は逆に、代替相の形成を引き起こし、金属‐有機フレームワークはフッ化アンモニウムの添加では形成されない。
【0034】
加えて、REO生成機構を作動させたり、FCUトポロジーからREOトポロジーに移行させたりするには、わずかな量の塩化物しか必要ないかもしれない。酸化亜鉛のような非ハライド金属調整剤(2価の亜鉛源としての亜鉛金属も同様)は、FCUトポロジーからREOトポロジー、そしてREOドメインへの移行を効果的に発生させる。酸化亜鉛の場合、酸化物は酢酸と反応して酢酸亜鉛と水を生成するようだ。しかし、金属亜鉛は可燃性ガスを発生させ、酸化亜鉛は溶液の酸/塩基特性に影響を与える可能性がある。
【0035】
欠陥生成カチオンは、M:Zr(またはより一般的には2価のカチオン:4価のカチオン)として測定され、約37重量%が最適と思われる。これより低い、約25重量%の2価のカチオン比は、特に粉末X線回折(「PXRD」)で測定した場合、REO欠陥(REOトポロジーにおける欠落クラスターまたはノード欠陥と呼ばれる)の生成に効果的である。更に、空隙率は、わずかに高い値の方が最大化しやすいようである。ジルコニウム(またはより一般的には4価のカチオン)に対して2価のカチオンの含有量が約10 重量%まで低下すると、減衰したピークが観察される。CoCl2を調整剤として使用した場合、上限有効コバルト濃度は観察されなかった。しかし、ZnOは上限を示した。これは、REOトポロジーのドメイン形成を妨害する水等価物または酢酸等価物の生成によるものと考えられる。過剰な酢酸塩と高いpHは、ノード欠落欠陥をもたらす溶解法に影響を与える可能性がある。
【0036】
核生成と成長の前に複雑な溶液状態プロセスが起こり、これらの選択的な2価のカチオンの存在がこれらのプロセスの速度論を乱し、ノード欠陥を生じさせる。このことは、無機成分をあらかじめ添加すると欠陥が消失することからもわかる。無機試薬を反応混合物に加えた直後に配位子を加えると、欠陥が現れる。滞留時間が長くなると、REOトポロジーと関連するREOドメインの反射が減衰する。例えば、4時間後には欠陥が形成されないことから、添加剤は溶液中で金属‐有機フレームワークのFCUドメインを生成する特定の化学種の形成を遅らせることができることが示唆される。更に、ハロゲン化物濃度だけでなく、(1)酢酸濃度、(2)水分量、(3)反応温度、(4)金属/配位子比、(5)2価のドーパント量など、他の変数も、得られる金属‐有機フレームワーク材料の欠陥の程度に影響を与える可能性がある。
【0037】
更に、反応媒体中の酢酸の量は、PXRDにおけるREOトポロジーのREOドメインの反射強度に影響を与える可能性がある。例えば、HOAc:BDCを低下させ、酢酸の全体濃度を維持すると、反応物濃度が臨界レベルに達するまで、ノード欠落欠陥を維持することができる。これは、反応における水の濃度が高くなったためと考えられ、これらの分子種の分子比だけでなく、これらの反応種の溶液濃度の重要性を示している。水はジルコニウム2次構成単位を形成するが、濃度が高すぎると欠陥密度が低下するため緊張が生じ、反応濃度の上限が必要となる。更に、水和塩を使用する場合、ある反応濃度を超えると、水の濃度に関係なく、高い収率と高い欠陥濃度が得られない。これは、ZrCl4のような無水塩を使用するか、反応媒体にジルコニウムをゆっくり添加することで改善できる。ナノスケール材料の特性評価には、粉末X線回折が米国化学会発行の論説、Holder, C.F. et al., Tutorial on Powder X-ray Diffraction for Characterizing Nanoscale Materials, ACS Nano, 13, 7, 7359-7365, 2019に記載されている。
【0038】
酢酸と水に加え、温度もまた、ノード欠陥金属‐有機フレームワークの合成における強力な変数であることが観察された。2014年に発表されたLillerudの観察と同様に、高温の反応条件は低欠陥含有物質を生成する傾向がある。参照:Shearerら、Tuned to Perfection: Ironing Out the Defects in Metal-Organic Framework UiO-66, Chem. Mater., 26, 14, 4068-4071, 2014を参照。その研究では、反応条件を100℃から220℃の間でスクリーニングし、220℃で合成された材料にはほとんど欠陥がなかった。REOトポロジーを有する金属‐有機フレームワークの場合、温度依存性が強調される。80℃から130℃の間で反応を行ったところ、90℃から100℃の間で反応を行った場合にのみ、高レベルの欠陥がPXRDを支配することが観察された。この温度以下では、未反応のBDCが大量に存在し、この温度以上では、REOドメインの減衰した反射が生じた。
【0039】
このようなREOドメインの強い反射を利用して、非欠陥FCUドメインと比較して、欠陥ドメインの全体的な寄与を測定することに努めた。この目的のため、欠陥部位を挟む有機配位子の量を変えて、ノードを欠落させたマテリアル・スタジオ・モデルを作成した。次に、(100)、(110)、(111)、(200)反射の相対強度をこれらのモデルで比較した。
図11Aおよび
図11Bに示すように、各欠陥が水酸基または水部分でキャップされた完全欠陥材料では、(100)反射ピークが回折パターンの主な特徴であるパターンになる。これは、(100)、(110)、(111)の反射ピークの比率が1:1.56:2.7である実験材料とは対照的である。実験回折パターンとモデル由来のパターンを比較すると、相対強度はペンダントBDCを含む材料と同様である。これは、Zr
6O
4(OH)
4BDC
4の金属‐有機フレームワークEMM‐71の実験式から予想されるよりも多くの有機含量を示した試料の熱分析と一致する。
【0040】
2次有機配位子の存在は、製造されたままの材料の熱分析を評価することで裏付けられた。600℃での残留重量が純粋なZrO2であると仮定すると、化学式Zr6O4(OH)8(H2O)4(BDC)4で表される完全加水分解構造(BDCリンカーに配位していない場合、すべてのZrサイトが水とヒドロキシルでキャップされている)の予測重量を見積もることができる。これらの材料は過剰な有機重量損失を示し、ペンダント有機配位子の存在と一致する。窒素ガス吸着は、このような高度のノード欠陥を有する材料に期待されるよりも、比較的低い微孔容積を示した。
【0041】
ペンダント配位子を除去し、欠陥のある構造を示す細孔容積を実現するには、欠陥のあるMOFをわずかに塩基性の溶液で洗浄すればよい。例えば、(リン酸塩や炭酸塩とは対照的に)相互作用の弱いアニオンであるホウ酸ナトリウムや、pHが9と控えめな緩衝液をMOFの洗浄に用いると、ピーク強度の著しい低下が観察されることがある。ホウ酸塩溶液の有害な影響を和らげるため、より低い温度と低いホウ酸塩濃度で洗浄を試みた。いずれの場合も、ペンダント配位子の消失を示す(111)反射に対する(100)反射の増加が観察された。試料の熱分析では、有機物の重量減少があまり観察されない。ガス吸着測定では、0.25M‐NaBOx溶液をそれぞれ100℃、60℃、80℃の温度で使用した場合、吸着容量が適度に増加することが示された。
図12Aより高濃度の溶液では、おそらくフレームワークの劣化に起因すると思われる表面積の減少が見られる。
【0042】
ホウ酸塩のような相互作用の弱いアニオンに加えて、これらのペンダント配位子を除去するギ酸塩溶液の有効性をテストした。ホウ酸塩溶液では水酸化されたジルコニウムが生成すると予想されたが、ギ酸塩はペンダント状のダングリング配位子と交換し、ギ酸塩で覆われた欠陥サイトを残すことができる。この目的のため、ホウ酸塩で洗浄した試料とやや類似した条件を用いてギ酸ナトリウムで洗浄した試料は、ギ酸塩のキャッピング基が主成分である試料と一致する熱分析を行うことができる。
図10。粉末X線回折では、(111)に対して(100)と(110)の反射強度が特徴的に増加するはずである。
図11Aは、BDC配位子を過剰に含まないREOドメインを示す。
図11Bは、利用可能なREOドメインの3分の1が過剰なBDC配位子でキャップされていることを示している。
図11Cは、過剰のBDC配位子でキャップされたすべての利用可能な部位を示す。
【0043】
ギ酸塩で洗浄した材料で行った吸着研究では、測定された微細孔の容積と表面積の増加が示された。しかし、これらの結果は、最適化されていない洗浄手順を表している。ペンダント配位子の除去は、高温、高pH条件から生じる構造劣化と同時に起こる。0.5Mのギ酸ナトリウムを用い、60℃、80℃、100℃、30分または180分で洗浄を行い、洗浄温度と時間の影響を調べた。最適な洗浄条件は、100℃でのギ酸ナトリウムの接触時間が短いことである。
図12Bに示すように、最小の洗浄条件から最適な洗浄条件まで、微孔容積の10~20%の増加が観察される。すべての場合において、0.2~0.95P/P
0からの比較的平坦なプラトー領域は、テクスチャーの空隙率が低く、結晶サイズが大きいことを示している。実際、この合成から得られた材料のSEM顕微鏡写真は、初期の非媒介性MOF材料を連想させる大きな多結晶凝集体を示している。
図13A、
図13B、
図13C、
図13D。これは、2価の変性剤が存在しない対照反応でも同じ粒子形態を示すことから、必ずしも2価の変性剤の存在によるものではないようである。合成の濃度が比較的高いためである可能性が高い。
【0044】
本明細書中で提供されるのは、複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に含み、約1100m2/g~2700m2/gの表面積、約0.45cc/g~1.1cc/gの空隙率、および0.35以上の相対強度を有する、金属‐有機フレームワークである。1つの態様において、4価のカチオンは4価の金属カチオンであり、Zr、Ti、Hfおよび/またはCe、例えばZrまたはZrとHfとの混合物から選択される。1つの態様において、テレフタレートリンカーは、1,4‐ベンゼンジカルボキシレート(BDC)またはその誘導体、例えば、2‐アミノ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸(2‐アミノ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート)、1,2,4‐ベンゼントリカルボン酸(1,2,4‐ベンゼントリカルボキシレート)、1,3,5‐ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸;1,3,5‐ベンゼントリカルボキシレート)、1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボン酸(1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボキシレート)、2‐ニトロ‐1,4,‐ベンゼンジカルボン酸(2‐ニトロ‐1,4,‐ベンゼンジカルボキシレート)、2‐クロロ‐1、ベンゼンジカルボン酸(2‐クロロ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート)、2‐ブロモ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸(2‐ブロモ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート)、およびそれらの混合物から選択される。1つの態様において、金属‐有機フレームワークは、約0.0重量%から約10.0重量%の間の2価のカチオン、例えば、Zn、Co、Snおよび/またはCuなどの2価金属カチオンを更に含む。
【0045】
より具体的には、金属‐有機フレームワークは、複数のジルコニウムカチオンおよび複数のBDCリンカーを単純立方格子に含み、約0.0重量%~10.0重量%の2価のカチオンで構成され得る。金属‐有機フレームワークは、窒素BET法で測定した表面積が約1100m2/g~2700m2/gの間であり、空隙率が約0.45cc/g~1.1cc/gの間であり、相対強度が0.35以上、および/またはピーク幅比が3.0未満である。
【0046】
1つの態様では、金属‐有機フレームワークは、20.4130、14.4691、11.8446、および10.2594ű5%のd間隔を有する最初の5つの回折ピークによって特徴付けられ、単純立方晶セル単位を構成することができる。1つの態様では、金属‐有機フレームワークは、ピーク幅比((110)反射と(111)反射との間の半値幅)が3未満である。
【0047】
本発明の1つの実施形態によれば、金属‐有機フレームワークは、
溶液中で4価の金属カチオンを生成することができる第1の金属源、ポリトピック型有機カルボン酸(即ち、2つの部位に結合することができる分子、例えば、1,4‐ベンゼンジカルボン酸またはその誘導体のような直鎖状ジカルボン酸)、溶液中で2価のカチオンを生成することができる第2の金属源、および1つ以上のモノカルボン酸調整剤を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程、
反応溶液を加熱して、金属‐有機フレームワーク、即ち、微量(0重量%)から約10重量%の2価のカチオンを含み、約1100m2/g~2700m2/gの間の表面積、約0.45cc/g~1.1cc/gの間の空隙率、および0.35以上の相対強度および/または3未満の(110)/(111)幅のピーク比を有する金属‐有機フレームワークを含む反応混合物を提供する工程を含む方法によって、作製される。
【0048】
更なる実施形態において、本発明は、
溶液中で4価の金属カチオンを生成し得る第1の金属源(例えば、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態で)、テレフタレートリンカーを生成し得るポリトピック型有機カルボン酸、溶液中で2価のカチオンを生成し得る第2の金属源(例えば、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態で)、および1つ以上のモノカルボン酸を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程;
反応溶液を少なくとも75℃の反応温度に加熱して反応混合物を提供する工程;および
反応混合物から金属‐有機フレームワーク材料を分離する工程
を含む金属‐有機フレームワークの製造方法に関する。
【0049】
1つの態様において、第1の金属は、Zr、Ti、Hfおよび/またはCeから選択され、例えば、ZrまたはZrとHfの組み合わせである。第1の金属源は、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物、例えば金属塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩または酸化物の形態など、任意の適切な形態であってよい。
【0050】
1つの態様において、第2の金属は、Zn、Co、Sn、Cu、およびそれらの混合物から選択される。第2の金属源は、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物、例えば金属塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩または酸化物の形態など、任意の適切な形態であってよい。
【0051】
1つの態様において、ポリトピック型有機カルボン酸は、テレフタレートリンカーを生成し得る芳香族ジ、トリまたはテトラカルボン酸から選択される。1つの態様において、ポリトピック型有機カルボン酸は、例えば、アルキル基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、スルホニル基、チオ基、イソシアノ基、アルコキシ基、エーテル基、エステル基、またはカルボキシレート基によって官能基化される。ポリトピック型有機カルボン酸の好適な例としては、1,4‐ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸)またはその誘導体、2‐アミノ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸、1,2,4‐ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5‐ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボン酸、2‐ニトロ‐1,4,‐ベンゼンジカルボン酸、2‐クロロ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸、2‐ブロモ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸、およびそれらの混合物であり、特に好適な例は、テレフタル酸またはトリメシン酸である。
【0052】
1つの態様において、モノカルボン酸は、MOF、特にFCUトポロジーのジルコニウムMOFの合成において調整剤として伝統的に使用されている任意のモノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、安息香酸、ジフルオロ酢酸またはトリフルオロ酢酸から選択される。更なる態様において、モノカルボン酸濃度は、溶媒の総量(溶媒の総量は、反応溶液中に存在するモノカルボン酸(単数または複数)、有機溶媒(単数または複数)および任意の水の総量として計算される)の約30体積%~70体積%の間である。
【0053】
1つの態様において、溶媒は、MOF、特にFCUトポロジーのジルコニウムMOFの合成において溶媒として伝統的に使用されている任意の有機溶媒から選択され、典型的には極性アプロトン溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)である。理論に束縛されることを望むものではないが、溶媒、特にDMFは、第2の金属(または2価のカチオン)に、本発明による金属‐有機フレームワークを提供する際の有効性に役割を果たす可能性のある独特の配位環境を持たせる可能性があると考えられる。
【0054】
1つの態様において、4価のカチオン:リンカー(特にテレフタレートリンカー)のモル比は約1.75:1から約1:1.75の間である。
【0055】
1つの態様において、2価のカチオン:4価のカチオンのモル比は約0~約5、例えば最大2または最大1、例えば最大0.5、および/または少なくとも0.05、または少なくとも0.1、例えば少なくとも0.15である。
【0056】
1つの態様において、反応溶液は、全反応体積1リットル当たり約0モルから5モルの間の濃度の水を更に含む。
【0057】
1つの態様において、反応溶液は、F、Cl、BrまたはIイオンの1種以上、特にClを更に含む。このようなハロゲン化物は、第1および/または第2の金属源を介して導入することができる。このようなハロゲン化物イオンの好適な供給源には、対応するアンモニウムのハロゲン化物、HCl、HF、HBrおよびHIも含まれる。1つの態様において、ハロゲン化物は任意の適切な量で存在してもよく、例えば、M源がMCl2であり、Zr源がZrCl4である35モル%のM:Zrを使用する場合、4.7:1のCl:Zrのモル比および13:1のCl:M2+のモル比まで存在してもよい。
【0058】
1つの態様において、反応溶液は、200℃未満、特に160℃未満または150℃未満、より特に140℃未満、例えば80℃と130℃の間、例えば90℃と100℃の間の反応温度に加熱される。反応混合物から金属‐有機フレームワーク材料を分離することは、標準的な手段、例えば遠心分離または濾過を介して実施することができる。
【0059】
本方法は、反応混合物から分離された金属‐有機フレームワーク材料を任意の標準的な手段によって洗浄することを更に含んでもよい。例えば、過剰の有機配位子を除去するために、金属‐有機フレームワーク材料をDMF、メタノール、エタノール、アセトンおよび/または水などの溶媒によって洗浄してもよい。金属‐有機フレームワーク材料はまた、ペンダント配位子を除去するために、わずかに塩基性の溶液、例えばホウ酸塩またはギ酸塩溶液、例えばホウ酸ホウ素またはギ酸ホウ素で洗浄してもよい。
【0060】
反応混合物は金属‐有機フレームワーク材料を含み、金属‐有機フレームワーク材料は複数の金属‐有機フレームワークを含む。具体的な態様において、複数の金属‐有機フレームワークの各々は、複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に有し、2価のカチオンは約5.0重量%未満であり、例えば、製造されたままの材料において約3.0重量%~約5.0重量%であり、相対強度は0.35以上である。
【0061】
具体的な態様では、本明細書中に記載の方法によって製造される金属‐有機フレームワークは、したがって、複数のジルコニウムカチオンおよびBDCリンカーを単純立方格子に含み、約2価のカチオンを約5.0重量%未満、例えば、製造時の材料中に約3.0重量%~約5.0重量%含むことができる。ジルコニウム系金属‐有機フレームワークは、0.35以上の相対強度を有する。
【0062】
更に、本明細書中において提供されるのは、金属‐有機フレームワーク、特にFCUトポロジーのMOF(例えば、UiO‐66のようなFCUトポロジーのジルコニウムMOF)などの単純立方格子で結晶化されたMOFの欠陥構造または形態を調整する方法であって、2次金属または2次金属カチオンの存在下で金属‐有機フレームワークを合成する工程を含む方法である。1つの態様において、金属‐有機フレームワークは、2次金属または2次金属カチオンとは異なる原子価を有する第1の金属を含み、特に、金属または第1の金属は、4価の金属または4価の金属カチオン(例えば、Zr、Ti、Hfおよび/または、Ce)であり、2次金属または2次金属カチオンは、2価の金属または2価の金属カチオン(例えば、Zn、Co、Snおよび/または、Cu)である。この方法は、例えば、複数の4価のカチオン、特に複数のジルコニウムカチオンと、結晶化されたテレフタレートリンカーとを単純立方格子に含む金属‐有機フレームワークに適用することができる。
【0063】
本発明の様々な態様の1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは主にREOトポロジー、特にFCU欠陥を有するREOトポロジーを有する。例えば、金属‐有機フレームワークは、(欠陥の程度を反映する相対強度によって測定される)高度に欠陥のある、あるいは完全に欠陥のあるUiO‐66に対応することができ、これはREO‐UiO‐66ファミリー材料と呼ばれる。本出願に開示される、または本出願の方法によって製造される、前記高欠陥/完全欠陥フレームワークは、EMM‐71と称され得る。
【0064】
本発明の様々な態様の更に具体的な実施形態において、金属‐有機フレームワークは、少なくとも約1400または少なくとも約1600m2/g、および/または多くとも約2400または多くとも約2200m2/gの表面積;少なくとも約0.55cc/gおよび/または多くとも約0.75cc/gの空隙率;少なくとも0.45または少なくとも0.55または少なくとも0.65、例えば少なくとも0.75または更には少なくとも1.0の相対強度;および/または2.9未満、または2.8未満、または2.7未満、例えば2.5未満、2.0未満、1.75未満、または更に1.5未満、または1.25未満、例えば1.2または更に低いピーク幅比の少なくとも1つを有する。
【0065】
本発明の様々な態様において、立方晶構造または立方晶格子型は、立方晶Bravais構造または立方晶Bravais格子型を指す。
【0066】
本開示の態様を、具体例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示を目的として提供されるものであり、いかなる方法においても本開示を限定することを意図するものではない。関連技術分野の当業者であれば、様々なパラメータを変更または修正して本質的に同じ結果を得ることができることを容易に認識する。以下の非限定的な実施例は、本開示を説明するために提供される。
【実施例】
【0067】
これらの例では、材料のX線回折(XRD)パターンを、X線粉末回折装置(Bruker D8 Envdevor装置)を用いて、銅Kα線、Bragg-Bentanoジオメトリー、Lynxeye検出器を用いて、2~60°の2θの範囲において連続モードで記録した。面間スペーシング、d‐スペーシングはオングストローム単位で計算した。強度はローレンツ効果と偏光効果を補正していない。2θにおける回折ピークの位置、および線の相対ピーク面積強度I/I(o)(Ioはバックグラウンドより強い線の強度)は、3次多項式バックグラウンドフィットを用いたMDI Jadeピークフィッティングアルゴリズムで決定した。単一の線として記載された回折データは、結晶学的変化の違いなど特定の条件下では、分解または部分的に分解された線として現れる複数の重なり合った線から構成される場合があることを理解すべきである。典型的には、結晶学的変化には、単位胞パラメータの軽微な変化及び/又は結晶対称性の変化が含まれ、フレームワークの連結性は変化しない。相対強度の変化を含むこれらの軽微な影響は、カチオン含有量、フレームワーク組成、細孔充填の性質および程度、結晶サイズおよび形状、好ましい配向、ならびに熱および/または水熱履歴の相違の結果として生じることもある。
【0068】
相対強度は、Shearer, G.C. et al., Defect Engineering: Tuning the Porosity and Composition of the Metal-Organic Framework UiO-66 via modulated Synthesis, Chem. Mater., 28, 11, 3749-3761, 2016。相対強度は、フレームワーク内の欠陥、特にノード欠陥の程度を特徴付ける。Shearerらに詳述されているように、ブロードピーク(即ち、3~7°2θの間)の相対強度は、例えばUiO‐66フレームワークにおける、フレームワーク中のクラスター欠落欠陥の濃度に関する定量的記述子である。相対強度は、ブロードピーク(5°2θ付近、例えば2~7°2θの間、即ち本発明における(100)ピークと(110)ピークの積算強度に対応する)の積算強度を、約7.4、8.5および25.8°の2θのピークにそれぞれ対応する(111)、(200)および(600)ピークの強度の平均で割ったものとして計算される。
【0069】
ピーク幅比は、~6および7.4°の2θで発生する(110)ピークおよび(111)ピークの半値比のピーク幅の計算値(MDI Jade peak fitting algorithmによって計算される)の比である。
【0070】
合成後の材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、Hitachi 4800 Scanning Electron Microscopeで得られた。
【0071】
材料の表面積(SBET)は、S. Brunauer, P.H. Emmett and E. Teller, J. Am. Chem. Chem. Soc. Soc., 1938, 60, 309に記載されており、参照により本明細書中に援用される。
【0072】
材料の空隙率(または微孔容積)は、関連技術分野で公知の方法を用いて決定することができる。例えば、材料の空隙率は、窒素物理吸着で測定することができ、そのデータは、Lippens, B.C.ら、"Studies on pore system in catalysts: V. t法", J. Catal., 4, 319 (1965) に記載されているt‐プロット法で解析することができる。
【0073】
熱重量分析(TGA)は、室温から850℃まで空気中で加熱することにより材料に対して行った。
【0074】
実施例1:EMM‐71の構造にREO欠陥を誘導するためのSnCl
2
の使用
テレフタル酸、塩化ジルコニル八水和物、二塩化スズ脱水物、ジメチルホルムアミド、および酢酸(表1による)を20立方センチメートル(「cc」)バイアル瓶に装入し、磁気撹拌しながら16~20時間加熱した。8つの試料に使用した反応物は以下の通りである。
【0075】
反応後、試料を遠心分離または濾過して単離し、過剰のジメチルホルムアミドを用いてバルクから過剰の有機配位子を洗浄し、高沸点溶媒をアセトンに交換した。その後、試料を空気下130℃から150℃で乾燥させた。試料のX線回折パターンを測定した。SnCl2を高い酢酸比(HOAc:BDC=25以上)で結合させると、ノード欠落欠陥に関連するピークが観察されることがわかった。
【0076】
図3は、表1の試料(塩化スズ存在下で作製)の粉末X線回折結果である。スズの効果は、調整剤としてHClや水を使用するなどの他の方法で発生する欠陥の程度に比べるとやや控えめであるが、この手法により大きな細孔容積を実現することができる。
【0077】
図4は、表1の試料(SnCl
2の存在下で合成)の熱重量分析(「TGA」)を示している。TGAは、試料2、3および6、即ち最大のノード欠落欠陥を示す試料からの初期溶媒損失が、このシリーズの他の試料よりも大きいことを示した。
図4に示すように、0℃から120℃の間の温度は、細孔構造中の閉塞溶媒を表し、損失が大きいほど細孔容積が大きいことに対応する。150℃から200℃の間の第2の重量損失は、構造ノードの脱水と関連している。
【0078】
より詳細には、2つの異なる信号値における各試料の温度℃における試料の重量%を
図4に示し、具体的には以下の表2に示す。例えば、試料1は、
図4に示すように、信号値1aと信号値1bを有する。
【0079】
溶媒の重量損失の増加をもたらす高い細孔容積は、試料1および2の窒素吸着等温線でも観察された。
図5Aと
図5Bは、それぞれ表1に記載した試料1と試料2の窒素吸着等温線である。示されるように、両試料とも窒素の初期吸着量は同程度であった(10
-5から10
-3のP/P
0まで)。これは表向きには非破壊領域の充填に対応している。しかし、これらの圧力を超えると、試料2には欠陥領域の充填に関連する第2の上昇特徴が見られ、その結果、Sn試料ではREO欠陥の量がわずかであるにもかかわらず、1グラムあたり約400立方センチメートルという比較的高い窒素吸着容量が得られた。これは、1415m
2/gの表面積と0.494cc/gの微孔容積(t‐プロットによる測定)に相当する。
【0080】
実施例2:EMM‐71の構造にREO欠陥を誘発するためのCo
2+
またはZn
2+
の使用
この効果が他の2価の金属にも適用できるかどうかを評価するために、Mg、Ca、Li、Ni、Cu、Zn、およびCoを用いて、反応2および3と類似の反応を行った。
図6に、いくつかの金属カチオンの存在下で合成したZr‐BDCのX線回折パターンを示す。各金属の場合、試行2または試行3で見られたように、塩化スズの等モル置換を行った。
図6。マグネシウム、リチウム、ニッケルについては、効果は観察されなかった。塩化銅は、この条件下で中程度の量のノード欠陥を生成したが、驚くべきことに、亜鉛とコバルトは、高濃度でREO欠陥を生成するのに非常に効果的であり、主結晶子サイズと同程度の大きなドメインサイズを有していた(剪断ブロードニングによって決定)。
【0081】
この方法による欠陥の形成は、溶液中の酢酸濃度にやや敏感である。コバルトカチオンを用いたいくつかの実験では、DMF:酢酸の比率を上げると、他の条件がすべて同じであっても、欠陥が減少し始めることが実証されている。
【0082】
図7Aは、表3に示す反応1、2、3で合成したZr‐MOFの粉末X線回折パターンを示す。更に、
図7Bは、表4に示す反応1、2、3で合成したZr‐MOFの粉末X線回折パターンを示す。示されるように、酢酸の溶液濃度を低下させると、高秩序欠陥が失われるが、これは、溶媒組成(本実施例では、HOAc/DMF組成)を一定に維持することで欠陥が維持されるため、HOAc:試薬比とは関係ない。このことは、溶媒組成の重要性を浮き彫りにしている。
【0083】
溶媒組成に敏感であることに加え、塩化物アニオンの存在による影響も、硝酸塩を出発物質とする試験を通じて確立された。表5に反応物を示す。
【0084】
図8に示すように、硝酸塩から合成した表5の試料の粉末X線回折パターンは、Cl
-イオンの存在なしでは、コバルトカチオンまたは亜鉛カチオンのいずれでも大きな欠陥ドメインが形成されないことを強調している。反応5と6は、これらのイオンの供給源としてHClを導入すると、欠陥構造が戻ることを示している(
図8の2つ下の曲線を参照)。これは、相対強度がそれぞれ2.3および1.7、ピーク比がそれぞれ1.27および1.73に相当する。
【0085】
塩化コバルトを用いたEMM‐71の大規模調製は、実施例2の方法に従って行った。その条件と、得られた相対強度およびピーク比を表7に示す。表面積および細孔容積は、ギ酸ナトリウムで試料を洗浄した後に測定した。未処理のMOFを0.25~0.5Mギ酸ナトリウム水溶液に懸濁し、10重量%スラリー(10部のMOF対90部のギ酸ナトリウム溶液)を作製した。その後、溶液を80~100℃に30~120分間加熱した。その後、MOFを単離し、水またはギ酸溶液で洗浄した。試料をアセトンで交換し、動的真空下で80~150℃で10~12時間活性化した。
【0086】
実施例3:CuCl
2
を用いたEMM‐71の合成
テレフタル酸0.449g、ZrCl
4が512mg、塩化第二銅130mgを20mLバイアルに加え、ジメチルホルムアミド5mL、氷酢酸5mLを水315μLとともに加えた。反応物を90℃に12時間から24時間加熱し、濾過し、ジメチルホルムアミドおよびアセトンで洗浄した。
図14は、本実施例で製造したEMM‐71の粉末X線回折パターンである。
図14に示す粉末XRDパターンは、相対強度3.47、ピーク比1.17である。
【0087】
実施例4:ZnOを用いたEMM‐71の合成
78.98グラムのBDCと90グラムのZrCl4を1Lの丸底フラスコに加えた。16グラムの酸化亜鉛を加えた。439mLの酢酸を加え、続いて439mLのDMFを加えた。最後に22.5mLの水を加えた。その後、反応を80℃で12~24時間撹拌した。MOF生成物を濾過し、DMF、続いてアセトンで洗浄し、90~130℃で乾燥させた。その後、実施例2の材料と同様の方法で、任意にギ酸ナトリウムで洗浄した。この試料の相対強度は2.0、ピーク比は1.3であった。ギ酸ナトリウムで洗浄した試料は、2003m2/gのt‐プロットのBET比表面積を示し、細孔容積は0.723cc/gであった。
【0088】
実施例5:混合Zr/Hf‐EMM‐71の合成
テレフタル酸441mgとジルコニウムオキシ塩化物水和物393.6mgにハフニウムオキシ塩化物水和物125mgを加えた。ジメチルホルムアミド5mLと酢酸5mLを加え、反応を90℃で12時間から24時間撹拌した。固体を単離し、追加のジメチルホルムアミド、次いでアセトンで洗浄した。
図15は、本実施例で製造したEMM‐71の粉末X線回折パターンである。
図16は、全Hf+Zr含有量の異なるHfのモル%を用いて製造したHf-Zr‐EMM‐71の粉末X線回折パターンである。表8は、
図16の材料を合成するために使用した条件と、計算された相対強度およびピーク比を示している。
【0089】
実施例6:EMM‐71生成のタイムトライアル
3.59gのテレフタル酸、5.59gのオキシ塩化ジルコニウム水和物、852mgの塩化コバルト(無水)を50mLのジメチルホルムアミドと50mLの酢酸に加え、90℃に加熱した。試料を45分、80分、120分、195分、255分に採取した。試料を濾過し、アセトンで洗浄した。
図17は、(下から上へ)45分、80分、120分、195分、および255分に採取したEMM‐71アリコートの粉末X線回折パターンである。これらの試料では、相対強度は初期の1.55から255分の終わりに1.23まで低下し、ピーク比は4時間の実行中に1.08から1.26の間で変化した。
【0090】
実施例7:CoCl
2
とクロロ-BDCを用いたEMM‐71の合成
10mLのバイアル瓶に、0.25gの2-クロロ-ベンゼンジカルボン酸、0.203gのZrCl
4、0.035gのCoCl
2、2mLのジメチルホルムアミド(DMF)、3mLの酢酸、および125μLの脱イオン(DI)水を入れて混合した。得られた混合物を撹拌しながら90℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、得られた固体を濾過し、DMFで洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。
図18は、本実施例で製造したEMM‐71の粉末X線回折パターンである(相対強度0.81)。
【0091】
実施例8:CoCl
2
とクロロ-BDCを用いたEMM‐71の合成
10mLバイアルに、2‐クロロ‐ベンゼンジカルボン酸0.25g、ZrCl4を0.203g、CoCl2を0.035g、ジメチルホルムアミド(DMF)2mL、酢酸3mL、濃塩酸20μL、および純水63μLを入れ、混合した。得られた混合物を撹拌しながら90℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、得られた固体を濾過し、DMFで洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。粉末X線回折パターンはEMM‐71に特徴的であり、相対強度は0.87であった。
【0092】
実施例9:ZnOとクロロ-BDCを用いたEMM‐71の合成
20mLのバイアル瓶に、0.75gの2-クロロ-ベンゼンジカルボン酸、0.609gのZrCl4、0.075gのZnO、6mLのジメチルホルムアミド(DMF)、9mLの酢酸、および93μLの純水を入れ、混合した。得られた混合物を撹拌しながら90℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、得られた固体を濾過し、DMFで洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。粉末X線回折パターンはEMM‐71に特徴的であり、相対強度は0.95であった。
【0093】
実施例10:CoCl
2
とブロモ-BDCを用いたEMM‐71の合成
10mLバイアル瓶に、0.3gの2-ブロモ‐ベンゼンジカルボン酸、0.208gのZrOCl2・H2O、0.035gのCoCl2、2mLのジメチルホルムアミド(DMF)、および3mLの酢酸を入れ、混合した。得られた混合物を撹拌しながら90℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、得られた固体を濾過し、DMFで洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。粉末X線回折パターンはEMM‐71に特徴的であり、相対強度は1.01であった。
【0094】
更に、または代替的に、本発明は以下に関する:
実施形態1
複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に含む金属‐有機フレームワークであって、前記金属‐有機フレームワークが、約1100m2/g~2700m2/gの表面積、約0.45cc/g~1.1cc/gの空隙率、および0.35以上の相対強度を有する、金属‐有機フレームワーク。
【0095】
実施形態2
最初の5つの回折ピークのd間隔が20.4130Å、14.4691Å、11.8446Å、10.2594ű5%であり、単純立方格子単位を含む、任意に実施形態1に記載の金属‐有機フレームワーク材料。
【0096】
実施形態3
4価のカチオンが、Zr、Ti、Hf、および/またはCeから選択され、特にZrおよび/またはHfから選択される、実施形態1または2に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0097】
実施形態4
テレフタレートリンカーが、1,4‐ベンゼンジカルボキシレート(BDC)、2‐アミノ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート、1,2,4‐ベンゼントリカルボキシレート、1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボキシレート、2‐ニトロ‐1,4,‐ベンゼンジカルボキシレート、2‐クロロ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート、2‐ブロモ‐1,4‐ベンゼンジカルボキシレート、およびこれらの混合物から選択される、実施形態1~3のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0098】
実施形態5
約0.0重量%~約10.0重量%の2価のカチオンを更に含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0099】
実施形態6
2価のカチオンがZn、Co、Snおよび/またはCuから選択される、実施形態4に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0100】
実施形態7
約1400m2/g~約2400m2/g、好ましくは約1600m2/g~約2200m2/gの間の表面積;約0.55cc/g~約0.75cc/gの間の空隙率;および/または約0.45~約2.9、好ましくは約0.55または0.65~約2.5または2.0の間の相対強度のうちの少なくとも1つを有する、実施形態1~6のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0101】
実施形態8
金属‐有機フレームワークが、3.0未満、好ましくは2.5未満、より好ましくは2未満、例えば1.50未満のピーク幅比を有する、実施形態1~7のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0102】
実施形態9
複数のジルコニウムカチオンおよび複数のBDCリンカーを含む、実施形態1~8のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0103】
実施形態10
複数のジルコニウムカチオンおよびBDCリンカーを単純立方格子に含み、約5.0重量%未満の2価のカチオンを含む金属‐有機フレームワークであって、ジルコニウム系金属‐有機フレームワークが、0.35以上の相対強度および3.0未満のピーク幅比を有する、金属‐有機フレームワーク。
【0104】
実施形態11
溶液中で4価の金属カチオンを生成し得る第1の金属源、直鎖状ジカルボン酸、溶液中で2価のカチオンを生成し得る第2の金属源、および1つ以上のモノカルボン酸調整剤を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程、並びに反応溶液を加熱して、金属‐有機フレームワークを含む反応混合物を提供する工程を含む方法によって製造される、実施形態1~10のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0105】
実施形態12
(110)反射の(111)反射に対する半値比のピーク幅が3未満である、実施形態1~11のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク材料。
【0106】
実施形態13
(a)金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態の第1の金属源、ポリトピック型有機カルボン酸、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態の第2の金属源、および1つ以上のモノカルボン酸を溶媒中で反応させて反応溶液を提供する工程;(b)反応溶液を少なくとも75℃の反応温度に加熱して、金属‐有機フレームワーク材料を含む反応混合物を提供する工程;並びに(c)反応混合物から金属‐有機フレームワーク材料を分離する工程を含む、金属‐有機フレームワーク、特に、実施形態1~12のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワークを製造する方法。
【0107】
実施形態14
第1の金属源が、溶液中で4価の金属カチオンを生成することができ、特に、第1の金属が、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、セリウム、またはそれらの混合物、例えばZrまたはZrとHfとの混合物から選択される、実施形態13に記載の方法。
【0108】
実施形態15
第2の金属源が、溶液中で2価金属カチオンを生成することができ、特に、第2の金属が、Zn、Co、Sn、Cu、またはそれらの混合物から選択される、実施形態13または14に記載の方法。
【0109】
実施形態16
ポリトピック型有機カルボン酸がテレフタレートリンカーを生成することができる、実施形態13~15のいずれか1項に記載の方法。
【0110】
実施形態17
ポリトピック型有機カルボン酸が、芳香族ジ、トリまたはテトラカルボン酸から選択される、実施形態13~16のいずれか1項に記載の方法。
【0111】
実施形態18
ポリトピック型有機カルボン酸が、アルキル基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、スルホニル基、チオ基、イソシアノ基、アルコキシ基、エーテル基、エステル基、またはカルボキシレート基によって官能基化されている、実施形態13~17のいずれか1項に記載の方法。
【0112】
実施形態19
ポリトピック型有機カルボン酸が、
1,4‐ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸)、2‐アミノ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸、1,2,4‐ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5‐ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボン酸、2‐ニトロ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸、2‐クロロ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸、2‐ブロモ‐1,4‐ベンゼンジカルボン酸、およびこれらの混合物;特に、テレフタル酸およびトリメシン酸から成る群から選択される、実施形態13~18のいずれか1項に記載の方法。
【0113】
実施形態20
モノカルボン酸が、ギ酸、酢酸、安息香酸、ジフルオロ酢酸、またはトリフルオロ酢酸から選択される、実施形態13~19のいずれか1項に記載の方法。
【0114】
実施形態21
溶媒が、極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)である、実施形態13~20のいずれか1項に記載の方法。
【0115】
実施形態22
モノカルボン酸濃度が、溶媒の総体積(反応溶液中に存在するモノカルボン酸、溶媒および任意の水の総体積として計算される)の約30体積%~約70体積%である、実施形態13~21のいずれか1項に記載の方法。
【0116】
実施形態23
4価のカチオン:リンカー、特にテレフタレートリンカーのモル比が、約1.75:1から約1:1.75の間である、実施形態13~22のいずれか1項に記載の方法。
【0117】
実施形態24
2価のカチオン:4価のカチオンのモル比が、約0~約5、特に、0または少なくとも0.1または少なくとも0.15~2または1以下または0.5以下である、実施形態13~23のいずれか1項に記載の方法。
【0118】
実施形態25
反応溶液が、全反応体積1リットル当たり約0モル~5モルの間の濃度の水を更に含む、実施形態13~24のいずれか1項に記載の方法。
【0119】
実施形態26
反応溶液が、F、Cl、BrまたはIイオンのうちの1つ以上、特にClを更に含む、実施形態13~25のいずれか1項に記載の方法。
【0120】
実施形態27
金属‐有機フレームワーク材料が、複数の金属‐有機フレームワークを含み、複数の金属‐有機フレームワークの各々が、複数の4価のカチオンおよび結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に有し、2価のカチオンが約5.0重量%未満であり、相対強度が0.35以上である、実施形態13~26のいずれか1項に記載の方法。
【0121】
実施形態28
2次金属または2次金属カチオンの存在下で金属‐有機フレームワークを合成する工程を含む、金属‐有機フレームワークの欠陥構造または形態を調整する方法。
【0122】
実施形態29
金属‐有機フレームワークが、2次金属または2次金属カチオンとは異なる原子価を有する第1の金属を含む、実施形態28に記載の方法。
【0123】
実施形態30
金属または第1の金属が、4価の金属または4価の金属カチオンであり、特にZr、Ti、Hf、Ce、またはそれらの混合物から選択され、より特にZrまたはZrとHfの混合物から選択される、実施形態28または29に記載の方法。
【0124】
実施形態31
2次金属または2次金属カチオンが、2価の金属または2価の金属カチオンであり、特にZn、Co、Sn、Cu、またはそれらの混合物から選択される、実施形態28~30のいずれか1項に記載の方法。
【0125】
実施形態32
金属‐有機フレームワークが、複数の4価のカチオン、特に複数のジルコニウムカチオン、および結晶化されたテレフタレートリンカーを単純立方格子に含む、実施形態1~31のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワークまたは方法。
【0126】
実施形態33
金属‐有機フレームワークが主にREOトポロジー、特にFCU欠陥を有するREOトポロジーを有する、実施形態1~32のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワークまたは方法。
【0127】
実施形態34
金属‐有機フレームワークがREO‐UiO‐66またはEMM‐71である、実施形態1~33のいずれか1つの金属‐有機フレームワークまたは方法。
【0128】
詳細な説明および特許請求の範囲内のすべての数値は、実験誤差およびばらつきを考慮して、示された値を「約(about)」または「約(approximately)」で修正することができる。
【0129】
多くの変更、修正および変形は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、前述の説明に照らして当業者には明らかであり、本明細書中において数値下限値および数値上限値が記載される場合、任意の下限値から任意の上限値までの範囲が企図される。
【0130】
本明細書中において数値下限値および数値上限値が記載されている場合、任意の下限値から任意の上限値までの範囲が想定される。本開示は、特定の態様の観点から記載されているが、それほど限定されるものではない。特定の条件下での操作のための適切な変更/修正は、当業者には明らかであるはずである。従って、以下の特許請求の範囲は、本開示の真の精神/範囲に入るような全ての変更/改変をカバーするものとして解釈されることが意図される。
【国際調査報告】