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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】セフチブテンの結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 501/20 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C07D501/20
A61K31/546
A61P31/04
A61P11/00
A61P11/04
A61P27/16
A61P13/02 105
A61P1/00
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580449
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022073019
(87)【国際公開番号】W WO2023278945
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/217,710
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518438335
【氏名又は名称】キューペックス バイオファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘッカー, スコット ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョナイティス, デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA34
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZB11
4C084ZB32
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB29
4C086GA10
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZB32
(57)【要約】
セフチブテンの結晶形態、そのような結晶形態を作製する方法、およびそのような結晶形態を使用する方法が、本明細書において開示される。セフチブテンの結晶形態は、細菌感染症の処置のためにβ-ラクタマーゼインヒビターと組み合わせて使用され得る。本明細書において提供されるさらなる実施形態は、治療有効量の式(I)の化合物の結晶形態と、1種または複数種の薬学的に受容可能な添加剤とを含む、薬学的組成物を含む。一部の実施形態において、その薬学的組成物はβ-ラクタマーゼインヒビターをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化13】
の化合物の結晶形態またはその溶媒和物。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶形態であって、該結晶形態は少なくとも1個の特性ピークを含むX線粉末回折パターンを示し、該特性ピークはおよそ6.4° 2θ、およそ8.0° 2θ、およそ10.0° 2θ、およそ12.8° 2θ、およそ13.1° 2θ、およそ15.5° 2θ、およそ16.1° 2θ、およそ17.0° 2θ、およそ19.1° 2θ、およそ19.3° 2θ、およそ20.5° 2θ、およそ22.1° 2θ、およそ22.5° 2θ、およそ23.5° 2θ、およそ25.0° 2θ、およびおよそ26.4° 2θからなる群より選択される、結晶形態。
【請求項3】
請求項2に記載の結晶形態であって、該結晶形態は少なくとも3個の特性ピークを含むX線回折粉末回折パターンを示し、該特性ピークは6.4° 2θ、8.0° 2θ、10.0° 2θ、12.8° 2θ、13.1° 2θ、15.5° 2θ、16.1° 2θ、17.0° 2θ、19.1° 2θ、19.3° 2θ、20.5° 2θ、22.1° 2θ、22.5° 2θ、23.5° 2θ、25.0° 2θ、および26.4° 2θからなる群より選択される、結晶形態。
【請求項4】
請求項1~2のいずれか一項に記載の結晶形態を含む組成物であって、該組成物中の式(I)の化合物の総重量は50重量%よりも多い該結晶形態を含む、組成物。
【請求項5】
請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物であって、該組成物中の式(I)の化合物の総重量は85重量%よりも多い該結晶形態を含む、組成物。
【請求項6】
請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物であって、該組成物中の式(I)の化合物の総重量は90重量%よりも多い該結晶形態を含む、組成物。
【請求項7】
前記結晶形態が水和物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
細菌感染症を処置する方法であって、該細菌感染症を処置することを必要とする対象に、治療有効量の請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項9】
疾患または障害を処置する方法であって、該疾患または障害を処置することを必要とする対象に、治療有効量の請求項1~2のいずれか一項に記載の結晶形態を投与する工程を含み、該疾患または障害は、慢性気管支炎の急性細菌性憎悪;急性細菌性中耳炎;咽頭炎;扁桃炎;肺炎;尿路感染症;腸炎;および胃腸炎からなる群より選択される、方法。
【請求項10】
前記疾患または障害が慢性気管支炎の急性細菌性憎悪;急性細菌性中耳炎;咽頭炎;および扁桃炎からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、該処置の方法はβ-ラクタマーゼインヒビターを投与する工程をさらに含む、方法。
【請求項12】
治療有効量の請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形態と、1種または複数種の薬学的に受容可能な添加剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
β-ラクタマーゼインヒビターをさらに含む、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
真空下および窒素気流下で式(I)の化合物を乾燥する工程を含む、請求項2または3に記載の結晶形態を調製する方法。
【請求項15】
前記乾燥する工程が少なくとも8時間において行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記乾燥する工程が、3%未満のカール・フィッシャー含水量が達成されるまで行われる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
乾燥された化合物を空気への曝露によって再水和する工程を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記空気への曝露が少なくとも4時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記空気への曝露が、7%と9%との間のカール・フィッシャー含水量が達成されるまでである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
式(I):
【化14】
の化合物の結晶形態またはその溶媒和物を調製する方法であって、該結晶形態は少なくとも3個の特性ピークを含むX線回折粉末回折パターンを示し、該特性ピークは6.3° 2θ、9.9° 2θ、10.6° 2θ、12.5° 2θ、15.2° 2θ、18.8° 2θ、20.3° 2θ、21.0° 2θ、21.3° 2θ、21.4° 2θ、26.1° 2θ、26.3° 2θ、および30.0° 2θからなる群より選択され、該方法は、真空下で該式(I)の化合物を乾燥する工程を含む、方法。
【請求項21】
前記乾燥する工程が前記化合物に窒素を流すことを含まない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥する工程が、6%と12%との間のカール・フィッシャー含水量が達成されるまで行われる、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記乾燥する工程が、8%と12%との間のカール・フィッシャー含水量が達成されるまで行われる、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記乾燥する工程が3時間と8時間との間において行われる、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(あらゆる優先権出願の参照による援用)
本出願とともに提出された出願データシートにおいて外国優先権主張または国内優先権主張が示されているあらゆるすべての出願は、米国特許法施行規則の下で参照によって本明細書により援用される。
本出願は、2021年7月1日に出願された米国仮出願第63/217,710号(これは、その全体が援用される)の利益を主張する。
【0002】
(米国政府により支援された研究開発に関する陳述)
本発明は、保健福祉省契約番号HHSO100201600026Cの下で米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(発明の分野)
本出願は、製薬化学、生化学、および医薬の分野に関する。本出願は、特に、セフチブテンの結晶形態ならびにその作製方法および使用方法に関する。
(関連分野の説明)
セフチブテンは、第三世代セファロスポリン系抗生物質であり、種々の感染症(例えば、咽頭炎、扁桃炎、および肺炎)を処置するために使用される。特にβ-ラクタマーゼインヒビターとともに使用するための、セフチブテンの改善された調合物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(概要)
一部の実施形態は、式(I):
【化1】
の化合物の結晶形態またはその溶媒和物を提供する。
【0005】
一部の実施形態において、式(I)の化合物の結晶形態は、およそ6.3° 2θ、およそ9.9° 2θ、およそ10.6° 2θ、およそ12.5° 2θ、およそ15.2° 2θ、およそ18.8° 2θ、およそ20.3° 2θ、およそ21.0° 2θ、およそ21.3° 2θ、およそ21.4° 2θ、およそ26.1° 2θ、およそ26.3° 2θ、およびおよそ30.0° 2θからなる群より選択される少なくとも1個の特性ピークを含むX線粉末回折パターンを示し得る。一部の実施形態において、式(I)の化合物の結晶形態は少なくとも3個の特性ピークを含むX線粉末回折パターンを示し得、その特性ピークは6.3° 2θ、9.9° 2θ、10.6° 2θ、12.5° 2θ、15.2° 2θ、18.8° 2θ、20.3° 2θ、21.0° 2θ、21.3° 2θ、21.4° 2θ、26.1° 2θ、26.3° 2θ、および30.0° 2θからなる群より選択される。
【0006】
一部の実施形態において、式(I)の化合物の結晶形態は、およそ6.4° 2θ、およそ8.0° 2θ、およそ10.0° 2θ、およそ12.8° 2θ、およそ13.1° 2θ、およそ15.5° 2θ、およそ16.1° 2θ、およそ17.0° 2θ、およそ19.1° 2θ、およそ19.3° 2θ、およそ20.5° 2θ、およそ22.1° 2θ、およそ22.5° 2θ、およそ23.5° 2θ、およそ25.0° 2θ、およびおよそ26.4° 2θからなる群より選択される少なくとも1個の特性ピークを含むX線粉末回折パターンを示し得る。一部の実施形態において、式(I)の化合物の結晶形態は、およそ6.4° 2θ、およそ8.0° 2θ、およそ10.0° 2θ、およそ12.8° 2θ、およそ13.1° 2θ、およそ15.5° 2θ、およそ16.1° 2θ、およそ17.0° 2θ、およそ19.1° 2θ、およそ19.3° 2θ、およそ20.5° 2θ、およそ22.1° 2θ、およそ22.5° 2θ、およそ23.5° 2θ、およそ25.0° 2θ、およびおよそ26.4° 2θからなる群より選択される少なくとも3個の特性ピークを含むX線粉末回折パターンを示し得る。
【0007】
本明細書において提供される追加の実施形態は、式(I)の化合物の結晶形態を含む組成物を含む。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総重量は、50重量%よりも多いその結晶形態を含み得る。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総重量は、85重量%よりも多いその結晶形態を含み得る。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総重量は、90重量%よりも多いその結晶形態を含み得る。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総重量は、その結晶形態を本質的に含み得る。
【0008】
本明細書において提供される追加の実施形態は、細菌感染症を処置する方法を含み、その方法は、対象に、治療有効量の式(I)の化合物の結晶形態を投与する工程を含む。一部の実施形態において、その疾患または障害は、慢性気管支炎の急性細菌性憎悪;急性細菌性中耳炎;咽頭炎;扁桃炎;肺炎;尿路感染症;腸炎;および胃腸炎からなる群より選択され得る。一部の実施形態において、その処置の方法は、β-ラクタマーゼインヒビターを投与する工程をさらに含み得る。
【0009】
本明細書において提供されるさらなる実施形態は、治療有効量の式(I)の化合物の結晶形態と、1種または複数種の薬学的に受容可能な添加剤とを含む、薬学的組成物を含む。一部の実施形態において、その薬学的組成物はβ-ラクタマーゼインヒビターをさらに含む。
【0010】
本明細書において提供されるさらなる実施形態は、式(I)の化合物の結晶形態を作製する方法を含む。一部の実施形態において、その方法は、真空下および窒素気流下でその化合物を乾燥する工程を含む。一部の実施形態において、その方法は、その化合物に窒素を流すことなく、真空下でその化合物を乾燥する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、式(I)の化合物の結晶形態のX線粉末回折パターンである。
【0012】
図2図2は、図1のX線粉末回折パターンのピークデータの表である。
【0013】
図3図3は、図1の結晶形態の赤外スペクトルである。
【0014】
図4図4は、図3のスペクトルのピークデータの表である。
【0015】
図5図5は、図1の結晶形態のラマンスペクトルである。
【0016】
図6図6は、図4のスペクトルのピークデータの表である。
【0017】
図7図7は、図1の結晶形態の低周波数ラマンスペクトルである。
【0018】
図8図8は、図7のスペクトルのピークデータの表である。
【0019】
図9図9は、図1の結晶形態の固体NMRスペクトルである。
【0020】
図10図10は、図9のスペクトルのピークデータの表である。
【0021】
図11図11は、式(I)の化合物の結晶形態のX線粉末回折パターンである。
【0022】
図12図12は、図11のX線粉末回折パターンのピークデータの表である。
【0023】
図13図13は、図11の結晶形態の赤外スペクトルである。
【0024】
図14図14は、図13のスペクトルのピークデータの表である。
【0025】
図15図15は、図11の結晶形態のラマンスペクトルである。
【0026】
図16図16は、図14のスペクトルのピークデータの表である。
【0027】
図17図17は、図11の結晶形態の低周波数ラマンスペクトルである。
【0028】
図18図18は、図17のスペクトルのピークデータの表である。
【0029】
図19図19は、図11の結晶形態の固体NMRスペクトルである。
【0030】
図20図20は、図19のスペクトルのピークデータの表である。
【0031】
図21図21は、式(I)の化合物の結晶形態のX線粉末回折パターンである。
【0032】
図22図22は、式(I)の化合物の結晶形態のX線粉末回折パターンである。
【0033】
図23図23は、相対湿度実験における式(I)の化合物の結晶形態のX線粉末回折パターンを示す。
【0034】
図24図24は、図1の結晶形態の水分収着・脱着プロットである。
【0035】
図25図25は、図11の結晶形態の水分収着・脱着プロットである。
【0036】
図26図26は、図1の結晶形態の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【0037】
図27図27は、図11の結晶形態の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(詳細な説明)
セフチブテンの結晶形態またはその溶媒和物、セフチブテンの結晶形態を結晶化する方法、ならびにセフチブテンの投与を介する処置の方法が、本明細書において開示される。セフチブテンは、以下に示される式(I):
【化2】
の構造を有する。
【0039】
本明細書において記載される結晶形態は、細菌感染症を処置するための調合物において使用され得る。一部の実施形態において、その結晶形態は、同じ調合物または別個の調合物のいずれか中でβ-ラクタマーゼインヒビターと併用投与される。
【0040】
(定義)
本明細書において使用される場合、「a」および「b」が整数である「C~C」または「Ca~b」とは、指定された基における炭素原子の数を指す。すなわち、その基は、「a」個~「b」個(両端の数値を含む)の炭素原子を含み得る。したがって、例えば、「C~Cアルキル」基または「C1~4アルキル」基とは、1個~4個の炭素を有するすべてのアルキル基、すなわち、CH-、CHCH-、CHCHCH-、(CHCH-、CHCHCHCH-、CHCHCH(CH)-および(CHC-を指す。
【0041】
用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、本明細書において使用される場合、元素の周期表の7列目の放射安定性(radio-stable)原子のいずれか1つ、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0042】
本明細書において使用される場合、「アルキル」とは、完全に飽和した(すなわち、二重結合も三重結合も全く含まない)直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。アルキル基は1個~20個の炭素原子を有し得る(アルキル基が本明細書において出現する場合はいつでも、「1~20」などの数値範囲は所定の範囲にある各整数を指し、例えば、「1個~20個の炭素原子」とは、そのアルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個まで(20個を含む)の炭素原子からなり得ることを意味するが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アルキル」の存在も含む)。アルキル基はまた、1個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキルであり得る。アルキル基はまた、1個~4個の炭素原子を有する低級アルキルであり得る。アルキル基は、「C1~4アルキル」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C1~4アルキル」は、そのアルキル鎖に1個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる群より選択されることを、示す。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、それらには決して限定されない。
【0043】
本明細書において使用される場合、「アルコキシ」とは、Rが上記で定義されているアルキルである式-OR(例えば「C1~9アルコキシ」)を指し、これには、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、およびtert-ブトキシなどが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0044】
本明細書において使用される場合、「アルキルチオ」とは、Rが上記で定義されているアルキルである式-SR(例えば「C1~9アルキルチオ」など)を指し、それには、メチルメルカプト、エチルメルカプト、n-プロピルメルカプト、1-メチルエチルメルカプト(イソプロピルメルカプト)、n-ブチルメルカプト、イソブチルメルカプト、sec-ブチルメルカプト、tert-ブチルメルカプトなどが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0045】
本明細書において使用される場合、「アルケニル」とは、1個または複数個の二重結合を含む、直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アルケニル」の存在も含む。アルケニル基はまた、2個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルケニルであり得る。アルケニル基はまた、2個~4個の炭素原子を有する低級アルケニルであり得る。アルケニル基は、「C2~4アルケニル」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C2~4アルケニル」は、そのアルケニル鎖に2個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルケニル鎖がエテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2-ジエニル、およびブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群より選択されることを、示す。代表的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルなどが挙げられるが、それらには決して限定されない。
【0046】
本明細書において使用される場合、「アルキニル」とは、1個もしくは複数個の三重結合を含む、直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アルキニル」の存在も含む。アルキニル基はまた、2個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキニルであり得る。アルキニル基はまた、2個~4個の炭素原子を有する低級アルキニルであり得る。アルキニル基は、「C2~4アルキニル」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C2~4アルキニル」とは、そのアルキニル鎖に2個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルキニル鎖がエチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブチン-3-イル、ブチン-4-イル、および2-ブチニルからなる群より選択されることを、示す。代表的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルなどが挙げられるが、それらには決して限定されない。
【0047】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアルキル」とは、1個または複数個のヘテロ原子(すなわち、炭素以外の元素であり、これには、窒素、酸素および硫黄が挙げられるが、それらに限定はされない)をその鎖骨格に含む、直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。ヘテロアルキル基は1個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「ヘテロアルキル」の存在も含む。ヘテロアルキル基はまた、1個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのヘテロアルキルであり得る。ヘテロアルキル基はまた、1個~4個の炭素原子を有する低級ヘテロアルキルであり得る。ヘテロアルキル基は、「C1~4ヘテロアルキル」または類似の名称で呼ばれ得る。ヘテロアルキル基は1個または複数個のヘテロ原子を含み得る。単に例示を目的として、「C1~4ヘテロアルキル」とは、そのヘテロアルキル鎖に1個~4個の炭素原子が存在し、その鎖の骨格に1個または複数個のヘテロ原子がさらに存在することを、示す。
【0048】
本明細書において使用される場合、「アルキレン」とは、2つの結合点によってその分子の残りと結合された、炭素および水素だけを含む、分枝または直鎖の完全に飽和したジラジカル化学基(すなわち、アルカンジイル)を意味する。アルキレン基は1個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていないアルキレンという用語の存在も含む。アルキレン基はまた、1個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキレンであり得る。アルキレン基はまた、1個~4個の炭素原子を有する低級アルキレンであり得る。アルキレン基は、「C1~4アルキレン」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C1~4アルキレン」とは、そのアルキレン鎖に1個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルキレン鎖が、メチレン、エチレン、エタン-1,1-ジイル、プロピレン、プロパン-1,1-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、1-メチル-エチレン、ブチレン、ブタン-1,1-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,1-ジイル、1-メチル-プロピレン、2-メチル-プロピレン、1,1-ジメチル-エチレン、1,2-ジメチル-エチレン、および1-エチル-エチレンからなる群より選択されることを、示す。
【0049】
本明細書において使用される場合、「アルケニレン」とは、2つの結合点によってその分子の残りと結合された、炭素および水素だけを含み少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む、直鎖または分枝鎖のジラジカル化学基を意味する。アルケニレン基は2個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていないアルケニレンという用語の存在も含む。アルケニレン基はまた、2個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルケニレンであり得る。アルケニレン基はまた、2個~4個の炭素原子を有する低級アルケニレンであり得る。アルケニレン基は、「C2~4アルケニレン」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C2~4アルケニレン」とは、そのアルケニレン鎖に2個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルケニレン鎖が、エテニレン、エテン-1,1-ジイル、プロペニレン、プロペン-1,1-ジイル、プロパ-2-エン-1,1-ジイル、1-メチル-エテニレン、ブタ-1-エニレン、ブタ-2-エニレン、ブタ-1,3-ジエニレン、ブテン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,1-ジイル、ブタ-2-エン-1,1-ジイル、ブタ-3-エン-1,1-ジイル、1-メチル-プロパ-2-エン-1,1-ジイル、2-メチル-プロパ-2-エン-1,1-ジイル、1-エチル-エテニレン、1,2-ジメチル-エテニレン、1-メチル-プロペニレン、2-メチル-プロペニレン、3-メチル-プロペニレン、2-メチル-プロペン-1,1-ジイル、および2,2-ジメチル-エテン-1,1-ジイルからなる群より選択されることを、示す。
【0050】
用語「芳香族」とは、共役π電子系を有する環または環系を指し、それは、炭素環式芳香族基(例えば、フェニル)および複素環式芳香族基(例えば、ピリジン)の両方を含む。この用語は、環系全体が芳香族である場合に限り、単環基または縮合多環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を含む。
【0051】
本明細書において使用される場合、「アリール」とは、その環骨格に炭素だけを含む、芳香環または芳香環系(すなわち、隣接する2個の炭素原子を共有する2個またはそれより多くの縮合した環)を指す。アリールが環系である場合、その系にあるどの環も芳香族である。アリール基は6個~18個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アリール」の存在も含む。一部の実施形態において、アリール基は6個~10個の炭素原子を有する。アリール基は、「C6~10アリール」、「CもしくはC10アリール」、または類似の名称で呼ばれ得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、およびアントラセニルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0052】
本明細書において使用される場合、「アリールオキシ」および「アリールチオ」とは、Rが上記で定義されているアリールである、RO-およびRS-(例えば「C6~10アリールオキシ」または「C6~10アリールチオ」など)を指し、それらにはフェニルオキシが挙げられるが、それに限定はされない。
【0053】
「アラルキル」または「アリールアルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたアリール基(例えば「C7~14アラルキル」など)であり、それにはベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、およびナフチルアルキルが挙げられるが、それらに限定はされない。一部の場合において、そのアルキレン基は低級アルキレン基(すなわち、C1~4アルキレン基)である。
【0054】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアリール」とは、その環骨格に1個もしくは複数個のヘテロ原子(すなわち、炭素以外の元素であり、これには、窒素、酸素および硫黄が挙げられるが、それらに限定はされない)を含む、芳香環または芳香環系(すなわち、隣接する2個の原子を共有する2個またはそれより多くの縮合した環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、その系にあるどの環も芳香族である。ヘテロアリール基は5個~18個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、その環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「ヘテロアリール」の存在も含む。一部の実施形態において、ヘテロアリール基は5個~10個の環員または5個~7個の環員を有する。ヘテロアリール基は、「5~7員ヘテロアリール」、「5~10員ヘテロアリール」、または類似の名称で呼ばれ得る。ヘテロアリール環の例としては、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル(isoquinlinyl)、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、およびベンゾチエニルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0055】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたヘテロアリール基である。例としては、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリルアルキル(isoxazollylalkyl)、およびイミダゾリルアルキルが挙げられるが、それらに限定はされない。一部の場合において、そのアルキレン基は低級アルキレン基(すなわち、C1~4アルキレン基)である。
【0056】
本明細書において使用される場合、「カルボシクリル」とは、その環系骨格に炭素原子だけを含む、非芳香環式環または非芳香環式環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2個またはそれより多くの環が縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で一緒に結合され得る。カルボシクリルは、環系の少なくとも1個の環が芳香族ではないことを条件として、いくらかの飽和度を有し得る。したがって、カルボシクリルとしては、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルが挙げられる。カルボシクリル基は3個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「カルボシクリル」の存在も含む。カルボシクリル基はまた、3個~10個の炭素原子を有する中程度の大きさのカルボシクリルであり得る。カルボシクリル基はまた、3個~6個の炭素原子を有するカルボシクリルであり得る。カルボシクリル基は、「C3~6カルボシクリル」または類似の名称で呼ばれ得る。カルボシクリル環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(bicycle[2.2.2]octanyl)、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0057】
「(カルボシクリル)アルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたカルボシクリル基(例えば「C4~10(カルボシクリル)アルキル」など)であり、それには、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルブチル、シクロブチルエチル、シクロプロピルイソプロピル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチルなどが挙げられるが、それらに限定はされない。一部の場合において、そのアルキレン基は低級アルキレン基である。
【0058】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」とは、完全に飽和したカルボシクリル環またはカルボシクリル環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0059】
本明細書において使用される場合、「シクロアルケニル」とは、その環系のどの環も芳香族ではない、少なくとも1個の二重結合を有するカルボシクリル環またはカルボシクリル環系を意味する。例はシクロヘキセニルである。
【0060】
本明細書において使用される場合、「ヘテロシクリル」とは、その環骨格に少なくとも1個のヘテロ原子を含む、非芳香環式環または非芳香環式環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で一緒に結合され得る。ヘテロシクリルは、その環系の少なくとも1個の環が芳香族ではないことを条件として、いくらかの飽和度を有し得る。そのヘテロ原子(複数可)は、その環系の非芳香環または芳香環のいずれかに存在してもよい。ヘテロシクリル基は3個~20個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、その環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「ヘテロシクリル」の存在も含む。ヘテロシクリル基はまた、3個~10個の環員を有する中程度の大きさのヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基はまた、3個~6個の環員を有するヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基は、「3~6員ヘテロシクリル」または類似の名称で呼ばれ得る。好ましい6員単環式ヘテロシクリルにおいて、そのヘテロ原子(複数可)はO、NまたはSのうちの1個~3個までから選択され、好ましい5員単環式ヘテロシクリルにおいて、そのヘテロ原子(複数可)は、O、N、またはSから選択される1個または2個のヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例としては、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、キシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリジオニル(pyrrolidionyl)、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オキサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリジニル、およびテトラヒドロキノリンが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0061】
「(ヘテロシクリル)アルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたヘテロシクリル基である。例としては、イミダゾリニルメチルおよびインドリニルエチルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0062】
本明細書において使用される場合、「アシル」とは-C(=O)Rを指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイル、およびアクリルが挙げられる。
【0063】
「O-カルボキシ」基とは「-OC(=O)R」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0064】
「C-カルボキシ」基とは「-C(=O)OR」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。非限定的な例としては、カルボキシル(すなわち、-C(=O)OH)が挙げられる。
【0065】
「シアノ」基とは「-CN」基を指す。
【0066】
「シアナト」基とは「-OCN」基を指す。
【0067】
「イソシアナト」基とは「-NCO」基を指す。
【0068】
「チオシアナト」基とは「-SCN」基を指す。
【0069】
「イソチオシアナト」基とは「-NCS」基を指す。
【0070】
「スルフィニル」基とは「-S(=O)R」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0071】
「スルホニル」基とは「-SOR」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0072】
「S-スルホンアミド」基とは「-SONR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC1~6アルコキシ、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0073】
「N-スルホンアミド」基とは「-N(R)SO」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0074】
「C-アミド」基とは「-C(=O)NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC1~6アルコキシ、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0075】
「N-アミド」基とは「-N(R)C(=O)R」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC1~6アルコキシ、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0076】
「O-カルバミル」基とは「-OC(=O)NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0077】
「N-カルバミル」基とは「-N(R)OC(=O)R」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0078】
「O-チオカルバミル」基とは「-OC(=S)NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0079】
「N-チオカルバミル」基とは「-N(R)OC(=S)R」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0080】
「アミノ」基とは「-NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。非限定的な例としては、遊離アミノ(すなわち、-NH)が挙げられる。
【0081】
「アミノアルキル」基とは、アルキレン基によって結合されたアミノ基を指す。
【0082】
「アルコキシアルキル」基とは、アルキレン基によって結合されたアルコキシ基(例えば、「C2~8アルコキシアルキル」など)を指す。
【0083】
本明細書において使用される場合、置換された基は、1個または複数個の水素原子を別の原子または基にする交換が行われた、非置換親基に由来する。そうではないと示されない限りは、ある基が「置換された(置換されている)」とみなされる場合、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cヘテロアルキル、C~Cカルボシクリル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、C~Cカルボシクリル-C~Cアルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、3~10員ヘテロシクリル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、3~10員ヘテロシクリル-C~Cアルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、アリール(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、アリール(C~C)アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、5~10員ヘテロアリール(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、5~10員ヘテロアリール(C~C)アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C~Cアルコキシ、C~Cアルコキシ(C~C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C~C)アルキル(例えば、-CF)、ハロ(C~C)アルコキシ(例えば、-OCF)、C~Cアルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C~C)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、ならびにオキソ(=O)から独立的に選択される1個または複数個の置換基で、その基が置換されていることが、意味される。ある基が「必要に応じて置換された」と記載される場合はいつでも、その基は上記の置換基で置換されたものであり得る。
【0084】
特定のラジカル命名規則は、文脈に依存してモノラジカルまたはジラジカルのいずれかを含み得ることが、理解されるべきである。例えば、置換基がその分子の残りへの2個の結合点を必要とする場合、その置換基がジラジカルであることが、理解される。例えば、2個の結合点を必要とする、アルキルとして同定された置換基としては、-CH-、-CHCH-、-CHCH(CH)CH-などのジラジカルが挙げられる。他のラジカル命名規則は、そのラジカルが「アルキレン」または「アルケニレン」などのジラジカルであることを明示する。
【0085】
2個のR基が「それらが結合されている原子と一緒に」環(例えば、カルボシクリル環、ヘテロシクリル環、アリール環、またはヘテロアリール環)を形成すると言われる場合、その原子とその2個のR基との集合的単位がその記載された環であることが、意味される。その環は、個別にみた場合に各R基の定義によって他の方法で限定はされない。例えば、以下の部分構造:
【化3】
が存在し、RおよびRが水素およびアルキルからなる群より選択されると定義されるか、またはRおよびRがそれらが結合されている窒素と一緒にヘテロシクリルを形成する場合、RおよびRが水素またはアルキルから選択され得ること、あるいは、その部分構造が構造:
【化4】
を有し、この構造において環Aは、示された窒素を含むヘテロアリール環であることが、意味される。
【0086】
同様に、「隣接する」2個のR基が「それらが結合されている原子と一緒に」環を形成すると言われる場合、その原子と、介在する結合と、その2個のR基との集合的単位がその記載された環であることが、意味される。例えば、以下の部分構造:
【化5】
が存在し、RおよびRが水素およびアルキルからなる群より選択されると定義されるか、またはRおよびRがそれらが結合されている原子と一緒にアリールもしくはカルボシクリル(carbocylyl)を形成する場合、RおよびRが水素またはアルキルから選択され得ること、あるいは、その部分構造が構造:
【化6】
を有し、この構造においてAは、示された二重結合を含むアリール環またはカルボシクリル(carbocylyl)であることが、意味される。
【0087】
置換基がジラジカル(すなわち、その分子の残りへの2個の結合点を有する)として示される場合はいつでも、そうではないと示されない限りはその置換基は任意の方向配置で結合され得ることが、理解されるべきである。したがって、例えば、-AE-または
【化7】
として示される置換基は、このAがこの分子の最も左の結合点で結合されるように方向付けられている置換基、ならびにAがこの分子の最も右の結合点で結合される事例を含む。
【0088】
本明細書において開示される化合物が少なくとも1個のキラル中心を有する場合、それらは個別のエナンチオマーおよびジアステレオマーとして、またはそのような異性体の混合物(ラセミ体が挙げられる)として、存在し得る。それらの個別の異性体の分離またはそれらの個別の異性体の選択的合成は、当業者にとって周知である種々の方法の適用によって達成される。そうではないと示されない限りは、すべてのそのような異性体およびそれらの混合物は、本明細書において開示される化合物の範囲に含まれる。さらに、本明細書において開示される化合物は、1種もしくは複数種の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。そうではないと示されない限りは、すべてのそのような形態は、あらゆる多形形態を含めた、本明細書において開示される化合物の範囲に含まれる。さらに、本明細書において開示される化合物の一部は、水(すなわち、水和物)または一般的有機溶媒で溶媒和物を形成し得る。そうではないと示されない限りは、そのような溶媒和物は、本明細書において開示される化合物の範囲に含まれる。
【0089】
当業者は、本明細書において記載される一部の構造が、動力学によるものさえ含めた他の化学構造によって正しく示され得る化合物の共鳴形態または互変異性体であり得ることを認識し、当業者は、そのような構造がそのような化合物(複数可)のサンプルのごく一部を示し得るに過ぎないことを認識する。そのような共鳴形態も互変異性体も本明細書において示されていないが、そのような化合物は、示された構造の範囲内にあると考えられる。
【0090】
同位体が、記載された化合物に存在し得る。化合物構造において示される各化学元素は、その元素のあらゆる同位体を含み得る。例えば、化合物構造において、水素原子は、明示的に開示され得るか、またはその化合物に存在すると理解され得る。水素原子が存在し得る化合物のあらゆる位置で、その水素原子は水素の任意の同位体(水素1(プロチウム)および水素2(重水素)が挙げられるが、それらに限定はされない)であり得る。したがって、本明細書における化合物への言及は、そうではないと文脈が明示しない限りは、可能性があるすべての同位体形態を包含する。
【0091】
「溶媒和物」とは、溶媒と本明細書において記載される化合物(代謝産物、またはその塩)との相互作用によって形成される化合物を指す。適切な溶媒和物は、薬学的に受容可能な溶媒和物(水和物が挙げられる)である。
【0092】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、医薬における使用のために生物学的に望ましくないものでも他の点で望ましくないものでもない、化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩を指す。多くの場合において、本明細書における化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシ基またはそれらに類似する基の存在によって、酸塩および/または塩基塩を形成可能である。薬学的に受容可能な酸付加塩が、無機酸および有機酸と形成され得る。塩が由来し得る無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。塩が由来し得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に受容可能な塩基付加塩が、無機塩基および有機塩基と形成され得る。塩が由来し得る無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられ、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が特に好ましい。塩が由来し得る有機塩基としては、例えば、一級アミン、二級アミン、および三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンが挙げられる)、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、具体的には、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンが挙げられる。多くのそのような塩が、1987年9月11日に公開されたJohnstonらのWO87/05297(その全体が本明細書中に参照によって援用される)において記載されるとおり、当該分野において公知である。
【0093】
(式(I)の化合物の結晶形態)
式(I)の化合物の結晶形態が、本明細書において開示される。別途記載されない限りは、本明細書において提供されるX線粉末回折データは、Cu Kα放射線源を使用して決定された。
【0094】
一部の実施形態において、式(I)の化合物の結晶形態は、棒または細長い板の形状を呈し得る。一部の実施形態において、式(I)の化合物の結晶形態は、1モル当量と3モル当量との間の範囲の可変量の水をふくむ、水和した結晶物質であり得る。
【0095】
(形態A)
式(I)の化合物の結晶形態Aが、種々の技術を使用して特徴付けられた。これらの種々の技術は、実験方法の節においてさらに詳細に記載される。図1は形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを示し、図2図1についてのピークデータを示す。形態A(これは、本明細書において開示される方法によって取得され得る)は、およそ6.3° 2θ、およそ9.9° 2θ、およそ10.6° 2θ、およそ12.5° 2θ、およそ15.2° 2θ、およそ18.8° 2θ、およそ20.3° 2θ、およそ21.0° 2θ、およそ21.3° 2θ、およそ21.4° 2θ、およそ26.1° 2θ、およそ26.3° 2θ、およびおよそ30.0° 2θにおいて顕著なピークを示す。形態Aは、6.3° 2θ、9.9° 2θ、10.6° 2θ、および12.5° 2θにおいて独特なピークを含む。一部の実施形態において、形態Aは、およそ6.3° 2θ、およそ9.9° 2θ、およそ10.6° 2θ、およそ12.5° 2θ、およそ15.2° 2θ、およそ18.8° 2θ、およそ20.3° 2θ、およそ21.0° 2θ、およそ21.3° 2θ、およそ21.4° 2θ、およそ26.1° 2θ、およそ26.3° 2θ、およびおよそ30.0° 2θから選択される少なくとも1個の特性ピーク(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または11個の特性ピーク)を有することによって特徴付けられる。一部の実施形態において、形態Aは、およそ6.3° 2θ、およそ9.9° 2θ、およそ10.6° 2θ、およそ12.5° 2θ、およそ15.2° 2θ、およそ18.8° 2θ、およそ20.3° 2θ、およそ21.0° 2θ、およそ21.3° 2θ、およそ21.4° 2θ、およそ26.1° 2θ、およそ26.3° 2θ、およびおよそ30.0° 2θから選択される少なくとも3個の特性ピークを有することによって特徴付けられる。
【0096】
当該分野において十分に理解されるとおり、種々の機器においてX線回折パターンが測定される場合の実験上の変動が原因で、その2シータ(2θ)値が特定の変動度内に一致する場合は、それらのピーク位置は等しいと想定される。例えば、米国薬局方(United States Pharmacopeia)は、最も強い10個の回折ピークの角度設定が参照物質の角度設定の±0.2°以内に一致し、それらのピークの相対強度が20%を超えて変化しない場合は、その同一性が確認されると記載している。したがって、一部の実施形態において、本明細書において記載されるピーク位置は、±0.5° 2θ以内の変動を含む。他の実施形態において、本明細書において記載されるピーク位置は、±0.2° 2θ以内の変動を含む。本明細書において開示される場合、用語「およそ」とは、2θの値に言及する場合は、±0.5° 2θとして定義される。
【0097】
図3は形態Aの赤外スペクトルを示し、図4図3についてのピークデータを示す。形態Aは、3574cm-1、1765cm-1、1694cm-1、1647cm-1、1618cm-1、1574cm-1、1539cm-1、1412cm-1、1358cm-1、1254cm-1、1233cm-1、1211cm-1、1169cm-1、767cm-1、740cm-1、712cm-1、684cm-1、および654cm-1において顕著なピークを示す。形態Aは、3574cm-1、1765cm-1、1694cm-1、1647cm-1、1574cm-1、1539cm-1、および1169cm-1において独特なピークを含む。
【0098】
図5は形態Aについてのラマンスペクトルを示し、図6図5についてのピークデータを示す。形態Aは、1649cm-1、1548cm-1、1419cm-1、1359cm-1、1337cm-1、1321cm-1、1287cm-1、1180cm-1、1170cm-1、1144cm-1、823cm-1、722cm-1、685cm-1、566cm-1、545cm-1、442cm-1、423cm-1、326cm-1、295cm-1、241cm-1、207cm-1、175cm-1、および134cm-1において顕著なピークを示す。形態Aは、1649cm-1、1419cm-1、722cm-1、および134cm-1において独特なピークを含む。
【0099】
図7は形態Aについての低周波数ラマンスペクトルを示し、図8図7についてのピークデータを示す。形態Aは、36.6cm-1、41.2cm-1、55.7cm-1、73.7cm-1、104.1cm-1、113.1cm-1、および134.4cm-1において顕著なピークを示す。形態Aは、36.6cm-1、41.2cm-1、55.7cm-1、および134.4cm-1において独特なピークを有する。
【0100】
図9は形態Aについての固体核磁気共鳴スペクトルを示し、図10図9についてのピークデータを示す。形態Aは、178.18ppm、172.58ppm、167.95ppm、137.86ppm、133.27ppm、127.93ppm、116.69ppm、105.54ppm、58.81ppm、57.83ppm、35.06ppm、および23.97ppmにおいて顕著なピークを示す。形態Aは、178.18ppm、167.95ppm、137.86ppm、127.93ppm、および116.69ppmにおいて独特なピークを有する。
【0101】
(形態B)
式(I)の化合物の結晶形態Bが、種々の技術を使用して特徴付けられた。これらの種々の技術は、実験方法の節においてさらに詳細に記載される。図11は、形態BのX線粉末回折(XRPD)パターンを示し、図12図11についてのピークデータを示す。形態B(これは、本明細書において開示される方法によって取得され得る)は、およそ6.4° 2θ、およそ8.0° 2θ、およそ10.0° 2θ、およそ12.8° 2θ、およそ13.1° 2θ、およそ15.5° 2θ、およそ16.1° 2θ、およそ17.0° 2θ、およそ19.1° 2θ、およそ19.3° 2θ、およそ20.5° 2θ、およそ22.1° 2θ、およそ22.5° 2θ、およそ23.5° 2θ、およそ25.0° 2θ、およびおよそ26.4° 2θにおいて顕著なピークを示す。形態Bは、8.4° 2θ、12.8° 2θ、13.1° 2θ、および17.0° 2θにおいて独特なピークを含む。一部の実施形態において、形態Bは、およそ6.4° 2θ、およそ8.0° 2θ、およそ10.0° 2θ、およそ12.8° 2θ、およそ13.1° 2θ、およそ15.5° 2θ、およそ16.1° 2θ、およそ17.0° 2θ、およそ19.1° 2θ、およそ19.3° 2θ、およそ20.5° 2θ、およそ22.1° 2θ、およそ22.5° 2θ、およそ23.5° 2θ、およそ25.0° 2θ、およびおよそ26.4° 2θから選択される少なくとも1個の特性ピーク(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または11個の特性ピーク)を有することによって特徴付けられる。一部の実施形態において、形態Bは、およそ6.4° 2θ、およそ8.0° 2θ、およそ10.0° 2θ、およそ12.8° 2θ、およそ13.1° 2θ、およそ15.5° 2θ、およそ16.1° 2θ、およそ17.0° 2θ、およそ19.1° 2θ、およそ19.3° 2θ、およそ20.5° 2θ、およそ22.1° 2θ、およそ22.5° 2θ、およそ23.5° 2θ、およそ25.0° 2θ、およびおよそ26.4° 2θから選択される少なくとも3個の特性ピークを有することによって特徴付けられる。一部の実施形態において、長期間の周囲温度条件下および周囲湿度条件下で、形態Bは、増加した安定性を示す。
【0102】
図13は形態Bの赤外スペクトルを示し、図14図13についてのピークデータを示す。形態Bは、3245cm-1、1761cm-1、1749cm-1、1698cm-1、1659cm-1、1633cm-1、1630cm-1、1584cm-1、1534cm-1、1436cm-1、1408cm-1、1359cm-1、1318cm-1、1287cm-1、1267cm-1、1253cm-1、1236cm-1、1212cm-1、1177cm-1、1160cm-1、1150cm-1、1126cm-1、1116cm-1、1058cm-1、996cm-1、957cm-1、921cm-1、856cm-1、823cm-1、799cm-1、782cm-1、765cm-1、749cm-1、703cm-1、685cm-1、654cm-1、および630cm-1において顕著なピークを示す。形態Bは、1749cm-1、1698cm-1、1659cm-1、1633cm-1、1584cm-1、1532cm-1、および1177cm-1において独特なピークを含む。
【0103】
図15は形態Bについてのラマンスペクトルを示し、図16図15についてのピークデータを示す。形態Bは、1661cm-1、1629cm-1、1542cm-1、1408cm-1、1358cm-1、1320cm-1、1290cm-1、1272cm-1、1180cm-1、1151cm-1、1129cm-1、997cm-1、933cm-1、822cm-1、732cm-1、687cm-1、636cm-1、587cm-1、543cm-1、435cm-1、410cm-1、317cm-1、291cm-1、254cm-1、234cm-1、146cm-1、および119cm-1において顕著なピークを示す。形態Bは、1661cm-1、1629cm-1、および1408cm-1において独特なピークを含む。
【0104】
図17は形態Bについての低周波数ラマンスペクトルを示し、図18図17についてのピークデータを示す。形態Bは、17.3cm-1、22.0cm-1、59.1cm-1、81.6cm-1、および146.8cm-1において顕著なピークを示す。形態Aは、17.3cm-1、22.0cm-1、および146.8cm-1において独特なピークを含む。
【0105】
図19は形態Bについての固体核磁気共鳴スペクトルを示し、図20図19についてのピークデータを示す。形態Bは、180.21ppm、171.76ppm、168.11ppm、165.87ppm、163.09ppm、136.03ppm、133.73ppm、128.69ppm、125.64ppm、119.24ppm、104.29ppm、59.72ppm、35.51ppm、および24.00ppmにおいて顕著なピークを示す。形態Bは、171.76ppm、168.11ppm、165.87ppm、163.09ppm、136.03ppm、133.73ppm、125.64ppm、および119.24ppmにおいて独特なピークを有する。
【0106】
(式(I)の化合物を結晶化する方法)
一部の実施形態は、式(I)の化合物を結晶化する方法を含む。式(I)の化合物の結晶形態は、制御された条件下で式(I)の化合物を結晶化することによって、一般的には取得または生成され得る。一部の実施形態において、その方法は、単一の結晶形態を生成し得る。一部の実施形態において、その方法は、2種の結晶形態の混合物を生成し得る。
【0107】
一部の実施形態において、その方法は、式(I)の化合物の粗製形態を脱塩水およびアセトン中に溶解する工程を含み得る。一部の実施形態において、その混合物は、20℃と25℃との間の温度に冷却され得る。一部の実施形態において、その混合物が撹拌している間に、炭酸水素ナトリウムおよび水がその混合物に添加され得る。一部の実施形態において、そのpHは6.5と6.9との間で平衡にされ得る。一部の実施形態において、硫酸水溶液がその溶液に添加され得る。一部の実施形態において、その硫酸は15%水溶液であり得る。一部の実施形態において、そのpHは6.5と6.7との間で平衡にされ得る。一部の実施形態において、酸化アルミニウム、Norit炭、亜ジチオン酸ナトリウム、およびEDTA二ナトリウムが添加され得る。一部の実施形態において、その溶液は、硫酸水溶液を使用してpHを6.5と6.7との間で維持しながら、20分間と25分間との間の時間、撹拌され得る。一部の実施形態において、その混合物が撹拌した後、その混合物は、濾過され脱塩水で洗浄され得る。一部の実施形態において、その濾過され溶液は、水とリンゴ酸と硫酸水溶液とを含む容器に経時的に添加され得る。一部の実施形態において、その濾過された溶液は、20分間~30分間にわたって添加され得る。一部の実施形態において、その混合物の温度は、20℃と25℃との間で維持され得る。一部の実施形態において、その溶液が50分間~70分間の範囲の時間、撹拌された後、その溶液のpHは、炭酸カリウムおよび脱塩水を添加することによって経時的に調節され得る。一部の実施形態において、その溶液は、20分間と25分間との間の時間、撹拌され得る。一部の実施形態において、炭酸カリウムおよび脱塩水を用いるそのpH調節は、2.9と3.1との間のpHであり得る。一部の実施形態において、そのpH調節は、20℃と25℃との間の温度で維持され得る。一部の実施形態において、その溶液は2時間と2.5時間との間の範囲の時間、撹拌され得、その後、その溶液は濾過され脱塩水で洗浄され得る。一部の実施形態において、濾過後の残渣は真空オーブン中で乾燥され得る。特定の実施形態において、そのオーブンは、25℃、30℃、35℃、または40℃に設定され得る。
【0108】
一部の実施形態において、式(I)の望ましい形態は、制御された乾燥によって調製され得る。乾燥方法に依存して、式(I)の化合物の種々の形態が優先され得る。
【0109】
(形態Aの調製方法)
結晶形態Aは、HPLCグレードの水を含む容器中に式(I)の化合物を配置すること、および12時間~24時間の範囲の時間、撹拌することによって、作製され得る。一部の実施形態において、その後、その混合物は真空濾過され得、60分間~120分間の範囲の時間、周囲条件中で撹拌され得る。
【0110】
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、HPLCグレードの水を含む容器中に配置され得、1日間~3日間の範囲の時間、低下させた温度にて撹拌され得る。特定の実施形態において、その低下させた温度は、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、もしくは5℃、またはこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲であり得る。一部の実施形態において、その混合物は遠心分離され得、その液体層がデカントされ得る。一部の実施形態において、その後、その残渣は風乾され得る。
【0111】
一部の実施形態において、結晶形態Aは、真空下で式(I)の化合物を乾燥することによって、取得され得る。一部の実施形態において、その乾燥する工程は、その化合物に気体(例えば、窒素)を流すことを含まない。一部の実施形態において、真空下で乾燥する工程は、望ましいカール・フィッシャー(KF)含水量が達成されるまで、行われる。種々の実施形態において、標的KF含水量は、約6%~約14%、約6%~約12%、約8%~約12%、約11%~約12%、6%~約10%、約7.5%~約9.5%、約8%~約9%、約6.5%~約7.5%、約8.6%、約11.6%、または約7%である。種々の実施形態において、真空下で乾燥する工程は、約2時間~約18時間、約4時間~約12時間、約3時間~約10時間、約4時間~約8時間、約4時間~約6時間、約6時間~約10時間、または約6時間~約8時間、行われる。
【0112】
(形態Bの調製方法)
結晶形態Bは、メタノールを含む容器中に式(I)の化合物を配置すること、および5日間~15日間の範囲の時間、撹拌されることによって、作製され得る。一部の実施形態において、その後、その混合物は真空濾過され得、その残渣が回収され得る。
【0113】
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、3日間~5日間の範囲の時間、五酸化リンを含む容器に添加され得、その最後に、結晶生成物が回収され得る。
【0114】
一部の実施形態において、結晶形態Bは、気体(例えば、窒素)の気流の存在下で真空下で式(I)の化合物を乾燥することによって、取得され得る。種々の実施形態において、その乾燥する工程は、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、約8時間~約24時間、約8時間~約18時間、約8時間~約16時間、または約8時間~約12時間、行われる。一部の実施形態において、真空下で乾燥する工程は、望ましいカール・フィッシャー(KF)含水量が達成されるまで、行われる。種々の実施形態において、標的KF含水量は、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約1%~約5%、約1%~約3%、または約2%である。一部の実施形態において、当初標的KF含水量を達成した後、その後、その化合物は再水和される。一部の実施形態において、再水和は、その化合物を空気に曝露することによって行われる。種々の実施形態において、その化合物は、約2時間~約10時間、約4時間~約8時間、または約6時間、再水和される。種々の実施形態において、その化合物は、約6%~約10%、約7.5%~約9.5%、約8%~約9%、約6.5%~約7.5%、または約8%のKF含水量が達成されるまで、再水和される。
【0115】
(β-ラクタマーゼインヒビター)
一部の実施形態において、本明細書において記載される使用のためのβ-ラクタマーゼインヒビターは、式(II)~(X):
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、これらの式において、
各Rは独立的にC1~6アルキルであるか、または各Rはそれらが結合されているジェミナル炭素原子と一緒に、必要に応じて置換されたC3~6シクロアルキル環もしくは必要に応じて置換された4~6員ヘテロシクロアルキル環を形成し;
は、単結合、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換された2~6員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~6シクロアルキル、必要に応じて置換された5~6員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、および必要に応じて置換された5~6員ヘテロアリールから選択され;
は、C1~6アルキル、-O-C(O)-R、-S-C(O)-R、-NH-C(O)-R、-O-C(O)-O-R、-S(O)-O-R、-NH-C(O)-O-R、-(O)-O-R、-C(O)-S-R、-C(O)-NH-R、-O-(O)-O-R、-O-C(O)-S-R、-O-C(O)-NH-R、-S-S-R、-S-R、-NH-R、および-CH(-NH)-R)から選択され;
は、水素、必要に応じて置換されたC1~8アルキル、必要に応じて置換された2~8員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~8シクロアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたC5~10シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル-C1~3アルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール、必要に応じて置換されたC7~10アリールアルキル、および必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール-C1~3アルキルから選択され;
は、C1~6アルキル、-NR、-CHC(O)NH、および
【化9】
からなる群より選択され;
およびRは、H、C1~6アルキル、および-CHC(O)NHからなる群より独立的に選択される。
【0116】
式(II)~(X)の化合物は、米国特許第10,085,999号(これは、その全体が参照によって本明細書において援用される)において記載される手順にしたがって作製され得る。
【0117】
他の実施形態において、本明細書において記載される使用のためのβ-ラクタマーゼインヒビターは、式(XI)~(XVIII):
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、これらの式において、
は、C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)C2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)OC1~9アルキル、-CR1011OC(O)OC3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)O(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)OC2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)C6~10アリール、-CR1011OC(O)OC6~10アリール、-CR1011C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH2~3OC(O)C1~4アルキル、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)OC1~4アルキル、-CR1011OC(O)(CH1~3OC(O)C1~4アルキル、および
【化11】
からなる群より選択され;
各R10およびR11は、H、必要に応じて置換されたC1~4アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
各R13およびR14は、H、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
15は、必要に応じて置換されたC1~6アルキルである。
【0118】
式(XI)~(XVIII)の化合物は、PCT公開番号WO2019/093450もしくは同WO2018/005662(これらの両方は、それらの全体が参照によって本明細書において援用される)において記載される手順、または当該分野において公知である他の任意のエステル形成手順を使用して作製され得る。
【0119】
一部の実施形態において、本明細書において記載される使用のためのβ-ラクタマーゼインヒビターは、
【化12】
、またはそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される。これらの化合物およびそれらの合成は、米国特許第10,085,999号、米国出願公開番号2019/0202832、PCT公開番号WO2019/093450、PCT公開番号WO2018/005662、およびPCT出願番号PCT/US2021/022799(これらのすべては、それらの全体が参照によって本明細書において援用される)において記載されている。
【0120】
(投与および薬学的組成物)
式(I)の化合物の結晶形態は、薬学的組成物中で提供され得る。本明細書において提供される薬学的組成物は、治療有効量の式(I)の化合物を含む。一部の実施形態において、薬学的組成物は、薬学的に受容可能な添加剤を含み得る。一部の実施形態において、薬学的組成物はβ-ラクタマーゼインヒビターを含み得る。本明細書において提供される薬学的組成物は、細菌感染症または細菌に関連する疾患もしくは障害の処置において有用であり得る。
【0121】
一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総量は、少なくとも約50重量%の式(I)の化合物の結晶形態を含み得る。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総量は、少なくとも約85重量%の式(I)の化合物の結晶形態を含み得る。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総量は、少なくとも約90重量%の式(I)の化合物の結晶形態を含み得る。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総量は、完全に式(I)の化合物の結晶形態で本質的に構成され得る。一部の実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の総量は、完全に式(I)の化合物の結晶形態から本質的になり得る。これらの実施形態において、その組成物中の式(I)の化合物の残りのいくらかの部分は、別の結晶形態であってもよいし、非晶質形態であってもよい。
【0122】
本明細書において開示される化合物の投与は、認容される投与様式のいずれかにより得、その投与様式としては、経口的、皮下的、静脈内、鼻腔内、局所的、経皮的、腹腔内、筋肉内、肺内、経膣的、経直腸的、または眼内が挙げられるが、それらに限定はされない。経口投与および非経口投与が、好ましい実施形態の対象である適応症を処置することにおいて慣例である。
【0123】
開示される化合物は、個別にかまたは一緒にかのいずれかで、薬学的組成物へと調合され得る。標準的な薬学的調合技術、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams and Wilkins(2005)(その全体が参照によって援用される)において開示されている技術が、使用される。したがって、一部の実施形態は、(a)1種または複数種の本明細書において開示される化合物と、(b)薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、添加剤またはそれらの組合せとを含む、薬学的組成物を含む。
【0124】
上記のとおり有用な選択された化合物に加えて、一部の実施形態は、薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を含む。用語「薬学的に受容可能なキャリア」または「薬学的に受容可能な添加剤」は、あらゆるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。なんらかの従来の媒体または薬剤がその活性成分と不適合性である範囲を除いて、治療組成物におけるその使用が企図される。さらに、当該分野において一般的に使用されるものなどの種々のアジュバントが、含まれ得る。薬学的組成物に種々の成分を含めることに関する考慮事項は、例えば、Gilmanら(編)(1990);Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Basis of Therapeutics、第8版、Pergamon Press(これは、その全体が参照によって本明細書において援用される)において記載されている。
【0125】
薬学的に受容可能なキャリアまたはその成分として役立ち得る物質の一部の例は、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム,エチルセルロース、およびメチルセルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;固体滑沢剤(例えば、ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウム);硫酸カルシウム;植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ植物(theobroma)の油);ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール);アルギン酸;乳化剤(例えば、TWEEN(登録商標));湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);着色料;矯味矯臭剤(flavoring agent);錠剤化剤(tableting agent)、安定剤;抗酸化剤;保存剤;パイロジェンフリー水;等張食塩水;ならびにリン酸緩衝溶液である。
【0126】
本主題の化合物と組み合わせて使用するための薬学的に受容可能なキャリアの選択は、基本的には、その化合物が投与される様式によって決定される。
【0127】
上記のとおり有用な組成物は、種々の投与経路のために(例えば、経口投与経路、経鼻投与経路、直腸投与経路、局所投与経路(経皮投与経路が挙げられる)、点眼投与経路、脳内投与経路、頭蓋内投与経路、髄腔内投与経路、動脈内投与経路、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、または他の非経口投与経路のために)適切な種々の形態のいずれかであり得る。経口組成物および経鼻組成物が、吸入によって投与される組成物を含み、利用可能な方法論を使用して作製されることを、当業者は理解する。望まれる特定の投与経路に依存して、当該分野において周知である種々の薬学的に受容可能なキャリアが使用され得る。薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、固体または液体の充填剤、希釈剤、ハイドロトロープ剤(hydrotropies)、表面活性剤、およびカプセル化物質が挙げられる。必要に応じた薬学的に活性な物質が含まれ得、それらは、本化合物の阻害的活性を実質的に妨害しない。本化合物と組み合わせて使用されるキャリアの量は、その化合物の単位投与量につき、投与のために実用的な量の物質を提供するために十分である。本明細書において記載される方法において有用な剤形を作製するための技術および組成物は、以下の参考文献(すべてが本明細書中に参照によって援用される):Modern Pharmaceutics、第4版、第9章および第10章(BankerおよびRhodes編、2002);Liebermanら、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(1989);ならびにAnsel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第8版(2004)において記載されている。
【0128】
種々の経口剤形が使用され得、それには、錠剤、カプセル剤、顆粒剤および原末などの固体形態が挙げられる。錠剤は、圧縮錠剤、粉薬錠剤(tablet triturate)、腸溶錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠、または多重圧縮錠剤(multiple-compressed)にされ得、適切な結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、矯味矯臭剤、流動誘導剤(flow-inducing agent)、および融解剤(melting agent)を含み得る。液体経口剤形としては、水溶液、乳濁物、懸濁物、非発泡性顆粒剤から再構成された溶液および/または懸濁物、ならびに発泡性顆粒剤から再構成された発泡性調製物が挙げられ、適切な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、融解剤(melting agent)、着色料および矯味矯臭剤を含む。液体経口溶液において、本明細書において記載される式(I)の結晶形態は、適切な溶媒中に溶解され得る。
【0129】
経口投与のための単位剤形の調製のために適切な薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野において周知である。錠剤は、代表的には、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトースおよびセルロース);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチンおよびスクロース);崩壊剤(例えば、デンプン、アルギン酸およびクロスカルメロース);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルク)などの従来の薬学的に適合性のアジュバントを含む。滑剤(例えば、二酸化ケイ素)が、粉末混合物の流動特徴を改善するために使用され得る。着色料(例えば、FD&C色素)が、外観のために添加され得る。甘味料および矯味矯臭剤(例えば、アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、および果実フレーバー)が、咀嚼錠のために有用なアジュバントである。カプセル剤は、代表的には、1種または複数種の上記に開示された固体希釈剤を含む。キャリア成分の選択は、味、費用および貯蔵安定性などの副次的考慮事項(それらは決定的ではない)に依存し、当業者によって容易に行われ得る。
【0130】
経口組成物はまた、液体の溶液、乳濁物、懸濁物などを含む。そのような組成物の調製のために適切な薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野において周知である。シロップ、エリキシル剤、乳濁物、および懸濁物のためのキャリアの代表的な成分としては、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトールおよび水が挙げられる。懸濁物について、代表的な懸濁化剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC-591、トラガカントおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられ、代表的な湿潤剤としては、レシチンおよびポリソルベート80が挙げられ、代表的な保存剤としては、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口液体組成物はまた、上記で開示された甘味料、矯味矯臭剤および着色剤などの1種または複数種の成分を含み得る。液体溶液において、本明細書において記載される式(I)の結晶形態は、適切な溶媒中に溶解され得る。
【0131】
そのような組成物はまた、従来の方法によって、代表的にはpH依存的コーティングまたは時間依存的コーティングでコーティングされ得、本主題の化合物が、消化管において望ましい局所適用の付近で、または望ましい作用を延長するように種々の時点で、放出されるようになる。そのような剤形としては、代表的には、1種または複数種の酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、Eudragitコーティング、蝋およびシェラックが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0132】
本明細書において記載される組成物は、他の薬物活性剤(drug active)を必要に応じて含み得る。
【0133】
本主題の化合物の全身送達を達成するために有用な他の組成物としては、舌下剤形、頬側(buccal)剤形および経鼻剤形が挙げられる。そのような組成物は、代表的には、1種または複数種の可溶性充填剤物質(例えば、スクロース、ソルビトールおよびマンニトール);ならびに結合剤(例えば、アラビアゴム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)を含む。上記で開示された滑剤、滑沢剤、甘味料、着色剤、抗酸化剤および矯味矯臭剤もまた、含まれ得る。
【0134】
局所的眼科用途のために調合される液体組成物は、それが眼に局所的に投与され得るように調合される。その快適さは可能な限り最大化されるべきであるが、時には、調合物の考慮事項(例えば、薬物安定性)が、最適には達しない快適さを余儀なくし得る。快適さが最大化され得ない場合、その液体が局所的眼科用途のために患者に許容可能であるように、その液体は調合されるべきである。さらに、眼科的に受容可能な液体は単回使用のために包装されるか、または複数回使用にわたって混入を防ぐために保存剤を含むかのいずれかであるべきである。液体眼科用溶液において、本明細書において記載される式(I)の結晶形態は、適切な溶媒中に溶解され得る。
【0135】
眼科的適用のために、溶液または医薬が、しばしば、生理食塩水溶液を主要媒体(vehicle)として使用して調製される。眼科用溶液は、好ましくは、適切な緩衝系で快適なpHにて維持されるべきである。その調合物はまた、従来の薬学的に受容可能な保存剤、安定剤および界面活性剤を含み得る。
【0136】
本明細書において開示される薬学的組成物において使用され得る保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、PHMB、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀が挙げられるが、それらに限定はされない。有用な界面活性剤は、例えば、Tween(登録商標) 80である。同様に、種々の有用な媒体(vehicle)が、本明細書において開示される眼科用調製物において使用され得る。これらの媒体(vehicle)としては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび精製水が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0137】
張度調整剤が、必要な場合または便利な場合に添加され得る。それらとしては、塩、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリン、または他の任意の適切な眼科的に受容可能な張度調整剤が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0138】
pHを調整するための種々の緩衝液および手段が、生じる調製物が眼科的に受容可能な範囲で使用され得る。多くの組成物について、そのpHは4と9との間である。したがって、緩衝液としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液が挙げられる。酸または塩基が、必要な場合に、これらの調合物のpHを調整するために使用され得る。
【0139】
同様に、眼科的に受容可能な抗酸化剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチルヒドロキシアニソールおよびブチルヒドロキシトルエンが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0140】
眼科用調製物に含まれ得る他の添加剤成分は、キレート剤である。有用なキレート剤はエデト酸二ナトリウムであるが、他のキレート剤もまた、その代わりにかまたはそれと組み合わせて使用され得る。
【0141】
局所的用途のために、本明細書において開示される化合物を含むクリーム、軟膏、ゲル、溶液または懸濁物などが、使用される。局所用調合物は、一般的には、薬学的キャリア、共溶媒、乳化剤、透過促進剤、保存システム(preservative system)、および軟化剤を含み得る。
【0142】
静脈内投与のために、本明細書において記載される化合物および組成物は、薬学的に受容可能な希釈剤、例えば(生理食塩水またはデキストロース溶液)に溶解または分散され得る。適切な添加剤が、望ましいpHを達成するために含まれ得、それには、NaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HCl、およびクエン酸が挙げられるが、それらに限定はされない。種々の実施形態において、最終組成物のpHは、2~8の範囲または好ましくは4~7の範囲である。抗酸化物添加剤としては、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム(acetone sodium bisulfite)、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム(sodium formaldehyde,sulfoxylate)、チオ尿素、およびEDTAが挙げられ得る。最終静脈内組成物において見出される適切な添加剤の他の非限定的な例としては、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、ならびに糖質(例えば、デキストロース、マンニトール、およびデキストラン)が挙げられ得る。さらなる受容可能な添加剤が、Powellら、Compendium of Excipients for Parenteral Formulations、PDA J Pharm Sci and Tech、1998、52、238~311、およびNemaら、Excipients and Their Role in Approved Injectable Products:Current Usage and Future Directions、PDA J Pharm Sci and Tech、2011、65、287~332(これらの両方は、それらの全体が参照によって本明細書において援用される)において記載されている。抗微生物剤もまた、静菌性溶液または静真菌性溶液を達成するために含まれ得、その抗微生物剤としては、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、およびクロロブタノールが挙げられるが、それらに限定はされない。液体静脈内溶液において、本明細書において記載される式(I)の結晶形態は、適切な溶媒中に溶解され得る。
【0143】
静脈内投与のための組成物は、投与の直前に適切な希釈剤(例えば、滅菌水、水中の生理食塩水またはデキストロース)で再構成される1種または複数種の固体の形態で、介護従事者に提供され得る。例えば、本明細書において記載される式(I)の結晶形態は、再構成のために容器中で提供され得る。他の実施形態において、その組成物は、非経口的に投与する用意ができている溶液で提供される。例えば、式(I)の結晶形態は、介護従事者に調合物を提供する前に、溶媒中に溶解され得る。さらに他の実施形態において、その組成物は、投与前にさらに希釈される溶液で提供される。本明細書において記載される化合物と別の薬剤との組合せ物を投与することを含む実施形態において、その組合せ物が介護従事者に混合物として提供され得るか、または介護従事者がその2種の薬剤を投与前に混合し得るか、またはその2種の薬剤が別個に投与され得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物とβ-ラクタマーゼインヒビターとは、併用投与され得る。「併用投与される」によって、それらの2種の薬剤が、それらが実際にいつまたはどのように投与されるかに関わらず、同時に生物学的効果を有するように投与されることが、意味される。一部の実施形態において、それらの2種の薬剤は同時に患者の血流において見出され得る。一実施形態において、それらの薬剤は同時に投与される。そのような一実施形態において、併用投与が、それらの薬剤を単一剤形に組み合わせることによって達成される。別の実施形態において、それらの薬剤は連続的に投与される。一実施形態において、それらの薬剤は同じ経路を通じて(例えば、経口的に)投与される。別の実施形態において、それらの薬剤は異なる経路を通じて投与され、例えば、一方の薬剤は経口投与され、別の薬剤は静脈内(i.v.)投与される。
【0145】
本明細書において提供される化合物に有効量は当業者によって決定され得、その有効量としては、哺乳動物のための例示的な投与量である1日につき約0.05mg/体重kg~約100mg/体重kgの活性化合物が挙げられ、これは単回投与で、または個別の分割投与(例えば、1日につき1回~4回)の形態で、投与され得る。任意の特定の対象のための具体的な投与レベルおよび投与頻度は変動し得、種々の要因(使用される具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性およびその化合物の作用の長さ、その対象の種、その対象の年齢、その対象の体重、その対象の全体的健康感、その対象の性別、およびその対象の食事、投与様式および投与回数、排泄速度、薬物の組合せならびに特定の状態の重篤度が挙げられる)に依存することが、理解される。一部の実施形態において、本明細書において提供される化合物の1日投与量は、1日につきヒト成人1人当たり約0.01mg~約1000mgという広い範囲にわたって変動し得る。例えば、投与量は、約0.1mg/日~約800mg/日の範囲であり得る。一部の実施形態において、その投与量は、1日につき0.2mg~200mgの範囲であり得る。一部の実施形態において、その投与量は、1日につき0.5mg~100mgの範囲であり得る。一部の実施形態において、その1日投与量は、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、2mg、3mg、5mg、7.5mg、10mg、50mg、100mg、200mg、400mg、600mg、もしくは800mg、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。経口投与のために、その組成物は、処置されるべき対象への投与量の対症的調節のために、約0.01mg~約1000mg、例えば、0.01ミリグラム、0.05ミリグラム、0.075ミリグラム、0.1ミリグラム、0.25ミリグラム、0.5ミリグラム、0.75ミリグラム、1ミリグラム、2ミリグラム、2.5ミリグラム、3ミリグラム、4ミリグラム、5ミリグラム、6ミリグラム、7ミリグラム、8ミリグラム、9ミリグラム、10ミリグラム、15ミリグラム、20ミリグラム、25ミリグラム、50ミリグラム、75ミリグラム、100ミリグラム、125ミリグラム、150ミリグラム、175ミリグラム、180ミリグラム、190ミリグラム、200ミリグラム、225ミリグラム、250ミリグラム、300ミリグラム、400ミリグラム、500ミリグラム、750ミリグラム、800ミリグラム、850ミリグラム、900ミリグラム、950ミリグラムおよび1000ミリグラム、もしくはこれらの値の任意の2つの間の範囲などの活性成分を含む、錠剤またはカプセル剤または液剤などの単位投与量の形態で、提供され得る。一部の実施形態において、その組成物は、処置されるべき対象への投与量の対症的調節のために、約0.01μg~約1000μg、例えば、0.01マイクログラム、0.05マイクログラム、0.075マイクログラム、0.1マイクログラム、0.25マイクログラム、0.5マイクログラム、0.75マイクログラム、1マイクログラム、2.5マイクログラム、3マイクログラム、4マイクログラム、5マイクログラム、6マイクログラム、7マイクログラム、8マイクログラム、9マイクログラム、10マイクログラム、15マイクログラム、20マイクログラム、25マイクログラム、50マイクログラム、75マイクログラム、100マイクログラム、125マイクログラム、150マイクログラム、175マイクログラム、180マイクログラム、190マイクログラム、200マイクログラム、225マイクログラム、250マイクログラム、300マイクログラム、350マイクログラム、400マイクログラム、450マイクログラム、500マイクログラム、550マイクログラム、600マイクログラム、650マイクログラム、700マイクログラム、750マイクログラム、800マイクログラム、850マイクログラム、900マイクログラム、950マイクログラムおよび1000マイクログラム、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲を含む、錠剤またはカプセル剤または液剤などの単位投与量の形態で、提供され得る。
【0146】
(処置方法)
本明細書において提供される化合物および組成物の使用方法もまた、提供する。その方法は、細菌活性を除去するため、および細菌活性の除去を通じて軽減されるかまたは細菌活性が関係する、疾患または障害の1種もしくは複数種の症状の処置、予防、もしくは軽減のための、上記化合物および組成物のインビトロでの使用およびインビボでの使用を含む。特定の実施形態において、本明細書において提供される化合物を投与することによって対象を処置する方法が、本明細書において提供される。特定の実施形態において、そのような対象は、細菌媒介性状態の症状または徴候を示す。特定の実施形態において、対象は、状態の発生を減少または防止するために予防的に処置される。一部の実施形態は、細菌感染症を処置することを必要とする対象に式(I)の化合物を投与することによって細菌感染症を処置する方法を含む。一部の実施形態は、慢性気管支炎の急性細菌性憎悪;急性細菌性中耳炎;咽頭炎;扁桃炎;肺炎;尿路感染症;腸炎;または胃腸炎が挙げられるが、それらに限定はされない状態を処置するために、対象に式(I)の化合物を投与する工程を含む。
【0147】
本明細書において使用される「対象」とは、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類)または鳥類(例えば、ニワトリ)、ならびに他の任意の脊椎動物または無脊椎動物を意味する。
【0148】
用語「哺乳動物」は、その通常の生物学的意味で使用される。したがって、その哺乳動物としては、詳細には、霊長類(サル(simian)(チンパンジー、類人猿、サル(monkey))およびヒトを含む)、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、齧歯類、ラット、マウス、モルモットなどが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0149】
本明細書において使用される「処置する」、「処置」、または「処置すること」とは、予防目的および/または治療目的のために化合物もしくは薬学的組成物を対象に投与することを指す。用語「予防的処置」とは、疾患もしくは状態の症状を未だ示していないが特定の疾患もしくは状態に感受性であるかまたはその他何であろうとその特定の疾患もしくは状態のリスクがある対象を処置し、それにより、その患者がその疾患もしくは状態を発症する可能性をその処置が減少することを指す。用語「治療的処置」とは、ある疾患もしくは状態に既に罹患している対象に処置を施すことを指す。
【0150】
本明細書において記載される化合物、組成物および方法で処置され得る細菌感染症は、広範囲の細菌を含み得る。生物の例としては、グラム陽性菌、グラム陰性菌、好気性菌および嫌気性菌、例えば、Staphylococcus、Lactobacillus、Streptococcus、Sarcina、Escherichia、Enterobacter、Klebsiella、Pseudomonas、Acinetobacter、Mycobacterium、Proteus、Campylobacter、Citrobacter、Nisseria、Baccillus、Bacteroides、Peptococcus、Clostridium、Salmonella、Shigella、Serratia、Haemophilus、Brucellaおよび他の生物が挙げられる。
【0151】
細菌感染症のさらなる例としては、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas acidovorans、Pseudomonas alcaligenes、Pseudomonas putida、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepacia、Aeromonas hydrophilia、Escherichia coli、Citrobacter freundii、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Salmonella enteritidis、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Shigella sonnei、Enterobacter cloacae、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Serratia marcescens、Francisella tularensis、Morganella morganii、Proteus mirabilis、Proteus vulgaris、Providencia alcalifaciens、Providencia rettgeri、Providencia stuartii、Acinetobacter baumannii、Acinetobacter calcoaceticus、Acinetobacter haemolyticus、Yersinia enterocolitica、Yersinia pestis、Yersinia pseudotuberculosis、Yersinia intermedia、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus haemolyticus、Haemophilus parahaemolyticus、Haemophilus ducreyi、Pasteurella multocida、Pasteurella haemolytica、Branhamella catarrhalis、Helicobacter pylori、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter coli、Borrelia burgdorferi、Vibrio cholerae、Vibrio parahaemolyticus、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Kingella、Moraxella、Gardnerella vaginalis、Bacteroides fragilis、Bacteroides distasonis、Bacteroides 3452A相同性群、Bacteroides vulgatus、Bacteroides ovalus、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides eggerthii、Bacteroides splanchnicus、Clostridium difficile、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium leprae、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium ulcerans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pyogenes、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus intermedius、Staphylococcus hyicus subsp. hyicus、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、またはStaphylococcus saccharolyticusが挙げられる。
【実施例
【0152】
(実施例)
追加の実施形態が以下の実施例においてさらに詳細に開示され、これらは、特許請求の範囲を限定することは決して意図されない。
【0153】
(実施例1:粗製式(I)からのセフチブテン水和物の調製)
反応容器に、20℃~25℃にて400mLの脱塩水、37.0gの粗製セフチブテンおよび190mLアセトンを満たす。この混合物に、22.1gのNaHCOの溶液および252.2mLの脱塩水を撹拌しながら添加し、そのpHを6.5~6.9で維持する。その後、15%のHSO水溶液を使用して、そのpHを6.5~6.7に調節する。生じた溶液に、13.8gの酸化アルミニウム、5gのNorit炭、1.5gのNaおよび0.25gのEDTA二ナトリウムを満たす。その混合物を20分間~25分間撹拌して、15%のHSO水溶液でpHを6.5~6.7で維持し、その後、濾過し、200mLの脱塩水で洗浄する。630mLの水と81gのリンゴ酸と175gの15%のHSO水溶液とを含む第2の容器に、その濾液を20分間~30分間かけて添加し、その温度は20℃~25℃で維持する。50分間~70分間撹拌した後、30gのKCOと70gの脱塩水とによって構成された溶液で、20℃~25℃にて20分間~25分間かけてそのpHを2.9~3.1に調節する。この混合物を2時間~2.5時間撹拌し、その後、それを濾過し、脱塩水(各250mL)で5回洗浄する。その湿った生成物を真空オーブン中で30℃にて乾燥する。乾燥の程度に依存して、生じる生成物は、形態A、形態B、または形態Aと形態Bとの混合物であり得る。この手順によって調製した3つのバッチを以下の表1に示す。周囲温度および周囲湿度にて保管/輸送した場合、バッチ1は混合物からすべて形態Bへと変換した。これは、形態Bの増加した安定性を示す。
【表1】
【0154】
(実施例2:形態Aの調製)
(方法1):形態Aは、形態Aと形態Bとの混合物から調製され得る。この混合形態を、以下のとおりに純粋な形態Aへと変換した:192mgのセフチブテン形態A/Bをガラスバイアル中に配置し、5mLのHPLCグレードの水を添加した。形成したスラリーを周囲温度にて16時間、磁気的撹拌し、真空濾過した。その湿ったケーキを、周囲条件にて90分間、濾紙上で乾燥させて、156mgのセフチブテン形態Aを得た。
【0155】
(方法2):40mgのセフチブテン形態A/Bをガラスバイアル中に配置し、0.5mLのHPLCグレードの水を添加した。形成したスラリーを0℃にて2日間、磁気的撹拌した。そのスラリーを含むバイアルを遠心分離し、その水をデカントして、セフチブテン形態Aを湿ったケーキとして得、それを風乾した。
【0156】
(方法3):推定上のセフチブテン形態Aを回転式乾燥機中で8.6%のKFまで乾燥して、セフチブテン形態Aを得た。7%のKFまでのさらなる乾燥は、形態Aの持続を示した。図21は、この手順後のX線粉末回折パターンを含み、これは形態Aを示す。
【0157】
(実施例3:形態Bの調製)
(方法1):約20mgのセフチブテン形態Aをガラスバイアル中に配置し、1mLのメタノールを添加した。形成したスラリーを周囲温度にて11日間撹拌し、真空濾過して、オフホワイト色の固体のセフチブテン形態Bを得た。
【0158】
(方法2):開口したバイアル中にある約20mgのセフチブテン形態Aを、五酸化リンを含む密封したジャー中に4日間配置して、セフチブテン形態Bを得た。
【0159】
(方法3):開口したバイアル中にある約20mgのセフチブテン形態Aを、五酸化リンを含む密封したジャー中に4日間配置して、セフチブテン形態Bを得た。
【0160】
(方法4):セフチブテン形態Aのサンプルを真空下および30℃のN気流下で2%のKFまで一晩乾燥し、その後、空気への曝露(6時間)によって8%のKFまで再水和して、セフチブテン形態Bを得た。図22は、この手順後のX線粉末回折パターンを含み、これは形態Bを示す。
【0161】
(実施例4:物理的安定性)
式(I)の化合物の形態Aは、中程度に吸湿性であり得、一定範囲の湿度条件下で安定であり得る。一部の実施形態において、式(I)の化合物の形態Aは、2モル当量~3モル当量の間の水を含み得る。式(I)の化合物の形態Aのサンプルを、15%相対湿度~100%相対湿度の範囲のいくつかの相対湿度条件に14日間曝露し、その後、X線粉末回折を行った。
【0162】
一実施形態において、式(I)の化合物の形態Aのサンプルを、いくつかの相対湿度条件(15%相対湿度、30%相対湿度、45%相対湿度、60%相対湿度、75%相対湿度、および100%相対湿度を含む)に14日間曝露し、その後、X線粉末回折を行った。図23(相対湿度実験後に行ったX線粉末回折)は、式(I)の化合物の形態Aと一致するピークを示す。
【0163】
式(I)の化合物の形態Bは、中程度に吸湿性であり得る。一部の実施形態において、式(I)の化合物の形態Bは、2モル当量~3モル当量の間の水を含み得る。一部の実施形態において、極度の乾燥条件(例えば、0%相対湿度)下で、式(I)の化合物の形態Aは、式(I)の化合物の形態Bへと変換し得る。
【0164】
一実施形態において、水分収着・脱着実験を行った後に、水分収着・脱着分析を行った。図24において示される式(I)の化合物の形態Aについての水分収着・脱着分析において、式(I)の化合物の形態Aは、式(I)の化合物の形態Bに変換することが示されている。図25において示される式(I)の化合物の形態Bについての水分収着・脱着分析において、式(I)の化合物の形態Bは、安定で不変の状態を維持することが示されている。
【0165】
(実施例5:示差走査熱量測定(DSC))
DSC分析を、TA Instruments Q2500 Discovery Seriesの機器を使用して実行した。この機器の温度の較正は、インジウムを使用して実施した。そのDSCセルを、この分析中は約50mL/分の窒素パージ下で維持した。サンプルを標準的な圧着型アルミニウムパン中に配置し、10℃/分の速度でおよそ25℃から350℃に加熱した。
【0166】
式(I)の化合物の形態Aは、およそ100℃での加熱中に脱水し、220℃と270℃との間で、融解事象を示すことなく分解する。図26(式(I)の化合物の形態Aの示差走査熱量測定サーモグラム)は、その脱水および分解を示す。
【0167】
式(I)の化合物の形態Bは、およそ100℃での加熱中に脱水し、220℃と270℃との間で、融解事象を示すことなく分解する。図27(式(I)の化合物の形態Bの示差走査熱量測定サーモグラム)は、形態Bの脱水および分解を示す。
【0168】
(実施例6:X線粉末回折)
X線回折を使用して、式(I)の化合物を特徴付けた。Rigaku Smart-Lab X線回折システムを、線状線源X線ビームを使用して、ブラッグ・ブレンターノ反射配置のための構成にした。そのX線源は、40kVおよび44mAで作動され得るCu Long Fine Focus管であった。そのX線源は、高角度での狭い線から低角度での広い長方形へと変化する入射ビームプロファイルをそのサンプルで提供する。ビーム調整スリットを線状X線源上で使用して、その線に沿った方向およびその線と垂直の方向の両方で最大ビームサイズが10mm未満であることを確実にし得る。ブラッグ・ブレンターノ配置は、受動発散および受光スリットによって制御される平行集中型(para-focusing)配置であり、サンプル自体が光学素子(optics)のための集中部品として作用した。ブラッグ・ブレンターノ配置の固有の分解能は、回折計の半径および使用する受光スリットの幅によって部分的には支配される。典型的には、Rigaku Smart-Labは、ピーク幅0.1° 2θまたはそれ未満を生じるように作動させる。X線ビームの軸発散は、入射ビーム経路および回折ビーム経路の両方において5.0度ソーラースリットによって制御する。
【0169】
式(I)の化合物の粉末サンプルを、軽い手の圧力を使用して低バックグラウンドSiホルダー中に調製して、そのサンプル表面が平坦でサンプルホルダーの基準面と同じ高さにあることを維持した。各サンプルを、有効ステップサイズ0.02° 2θで6° 2θ/分の連続スキャンを使用して、2° 2θから40° 2θまで分析した。
【0170】
形態AのXRPDディフラクトグラムを図1に示し、生じるピーク特性を図2に提供する。形態BのXRPDディフラクトグラムを図3に示し、生じるピーク特性を図4に提供する。
【0171】
(実施例7:動的蒸気収着(Dynamic Vapor Sorption)(DVS)分析)
DVS分析を、TA Instruments Q5000 Dynamic Vapor Sorption分析器で実施した。この機器を、標準重量および臭化ナトリウム標準で湿度について較正した。5% RHから95% RH(吸着サイクル)へ、および95% RHから5% RH(脱着サイクル)への10%相対湿度(RH)ステップで、最大平衡時間60分間で、サンプルを25℃にて分析した。
【0172】
形態AのDVS分析を図24に示し、形態BのDVS分析を図25に示す。
【0173】
(実施例8:赤外(IR)分光法)
重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器を備えたNicolet SMART iTR全反射測定(attenuated total reflectance)デバイスを使用して、赤外スペクトルをNicolet 6700 FT-IRシステムで得た。スペクトル分解能2cm-1、および累積(accumulation)128/スペクトルでスペクトル範囲4000cm-1~400cm-1を使用して、分析を実施した。
【0174】
図3は形態Aについての赤外スペクトルを示し、ピークを図4に列挙しており、図13は形態Bについての赤外スペクトルを示し、ピークを図14に列挙している。
【0175】
(実施例9:ラマン分光法)
ラマン分光法分析を、Renishaw inVia(商標)Qontor(商標)共焦点顕微鏡を使用して実施した。このシステムは、Leica DM2700M顕微鏡を分散型ラマン分光計にインターフェースで接続する。試験物質を、この顕微鏡の20×対物レンズの下にあるモーター駆動型XYZステージに配置した。この顕微鏡を通る785nm偏光ダイオードレーザーによって各サンプルを励起し、180°後方散乱配置を使用して、入射レーザーと同じ光路に沿って散乱光を収集した。そのサンプルからの散乱光は、それが電荷結合素子(CCD)に分散される、ノッチフィルターおよび1200ライン/mmのグレーティングを通過した。スペクトル分解能およそ3cm-1でスペクトル範囲3200cm-1~100cm-1(ラマンシフト)にわたって10秒の露光時間を使用して、各サンプルを分析した。8回の累積を収集した。
【0176】
形態Aについてのラマンスペクトルを図5に示し、ピークを図6に列挙する。形態Bについてのラマンスペクトルを図15に示し、ピークを図16に列挙する。
【0177】
(実施例10:低周波数(LF)ラマン分光法)
低周波数ラマンスペクトルを、Ondax THz-Ramanシステム(TR-PROBE;励起レーザー 853.1nm、ノッチフィルター)を備えたRenishaw inVia Raman顕微鏡を使用して得た。プローブチップアタッチメントを使用して、サンプル粉末を開放空気で分析した。100%出力、露光時間1秒、および累積32でスペクトル範囲-575cm-1~575cm-1にわたって収集する36cm-1を中心とする静的スキャンを使用して、スペクトルを取得した。波長較正は、硫黄標準品を使用して確認した。データ取得は、WiRE 3.4ソフトウェアを使用して実施した。
【0178】
形態Aについての低周波数ラマンスペクトルを図7に示し、ピークを図8に列挙する。形態Bについての低周波数ラマンスペクトルを図17に示し、ピークを図18に列挙する。
【0179】
(実施例11:カール・フィッシャー(KF)分析)
Mettler-Toledo C20 Coulometric KF滴定装置を使用して、カール・フィッシャー分析を実行した。その機器は、1%の水を含むHydranal水標準品を使用して較正した。その滴定剤はHydranalメタノール溶液であった。
【0180】
(実施例12:13C固体核磁気共鳴(NMR)分光法)
固体NMR(ssNMR)スペクトルを、13Cラーモア周波数100.6MHzで作動するBruker Avance II 400MHz(9.4 T)分光計で測定した。すべての実験は、4mm SiローターとともにDotyプローブを使用して実施した。TopSpin v3.2を使用して各スペクトルを処理し、13C化学シフトを、TMSスケールで38.48ppmにおけるアダマンタンのメチレンシグナルに外部参照した。
【0181】
種々の磁場(例えば、9.4テスラ(13Cについて100MHz、Hについて400MHz)またはそれより高い)を用いてNMR分光計で13C CPMAS分析を実施することが、可能である。取得時間、画素滞在時間(dwell time)、待ち時間(recycle delay)、スピン速度、およびスキャンの数などのパラメータの数は、そのNMR分光計に依存して改変および最適化し得る。
【0182】
形態AについてのssNMRスペクトルを図9に示し、ピークを図10に列挙する。形態BについてのssNMRスペクトルを図19に示し、ピークを図20に列挙する。
【0183】
(実施例13:調合物のスペクトル分析)
式(I)の化合物を含む固形製剤(solid dosage drug)生成物について、調合された生成物をXRPDによって分析して、その生成物中の結晶形態を同定し得る。これは、その調合された生成物から得られたXRPDデータをデコンボリューション(deconvolute)し、その調合された生成物のXRPDデータから既知の添加剤シグナルを減算することによって、達成し得る。さらに、種々の計量化学技術(例えば、主成分分析)を使用して、その生成物中の化合物を同定し得る。
図1
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【国際調査報告】