(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】溶液から物質、細菌及びウイルスを機械的濾過及び化学的結合するための複合材料
(51)【国際特許分類】
B01D 69/12 20060101AFI20240628BHJP
B01D 71/06 20060101ALI20240628BHJP
B01D 71/82 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240628BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20240628BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D71/06
B01D71/82
B01D69/00
B01D71/02
B01D69/04
B01D69/06
B01D69/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580487
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022067097
(87)【国際公開番号】W WO2023274819
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021116595.4
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521075206
【氏名又は名称】インストラクション・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】instrAction GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl-Friedrich-Gauss-Ring 5,69124 Heidelberg(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルンクフィール,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006HA77
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA22
4D006MA25
4D006MB14
4D006MC03
4D006MC09X
4D006MC63
4D006NA41
4D006NA49
4D006NA54
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB08
4D006PB24
4D006PB27
4D006PB55
(57)【要約】
【要約】
本発明は、溶液から物質を機械的濾過すること、及び、化学的/選択的結合/除外/排除することの両方に適した複合材料に関する。本発明はさらに、該複合材料の濾過膜としての使用に関する。したがって、本発明はまた、液体を浄化するための、及び/又は、液体から物質を分離するための、及び/又は、液体から細菌又はウイルスを除去するための濾過膜の使用等の、本発明に係る複合材料を含む濾過膜を対象とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーと、開気孔を備えた気孔系を有する層状材料(1)とを含む複合材料であって、前記開気孔は、前記層状材料を通って連続的に延びており、前記層状材料の第1側(2)における前記気孔は、前記第1側の反対側の第2側(3)における前記気孔より平均気孔径が小さく、
前記有機ポリマーが、開放気孔内に位置しており、前記有機ポリマーが、均一溶液から前記気孔系内へと導入され、続いて固定化されることを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
前記有機ポリマーが、吸収性ポリマーである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記有機ポリマーが、ハイドロゲルである、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記有機ポリマーが、側鎖にさらなる有機残基を含有し得るヒドロキシ基又はアミノ基含有ポリマーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記有機ポリマーが、前記複合材料に、架橋結合及び/又は共有結合、吸着結合及び/又はイオン結合によって結合している、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記第1側の前記気孔の前記平均気孔径が、6nm~20000nmの範囲内である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第1側の前記平均気孔径が、前記第2側の前記平均気孔径よりも少なくとも3%小さい、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記層状材料が、独立して有機ポリマー又は無機材料であり得る1つ又は複数の層から構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記層状材料が、有機又は無機モノリスの形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
濾過膜としての、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材料の使用。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材料を含む濾過膜。
【請求項12】
平膜、管状膜又は中空糸膜(4)の形状を有する、請求項11に記載の濾過膜。
【請求項13】
液体を浄化するための、及び/又は、液体から物質を分離するための、請求項9~12のいずれか1項に記載の濾過膜の使用。
【請求項14】
液体から金属/金属化合物、及び/又は、有機物質を分離するための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
液体から細菌又はウイルスを除去するための、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体/溶液から物質を機械的濾過すること、及び、化学的/選択的に結合/除外/排除することの両方に適した複合材料に関する。本発明はさらに、該複合材料の濾過膜としての使用に関する。したがって、本発明はまた、液体を浄化するための、及び/又は、液体から物質を分離するための、及び/又は、液体から細菌又はウイルスを除去するための濾過膜の使用等の、本発明に係る複合材料を含む濾過膜を対象とする。
【背景技術】
【0002】
金属、特に重金属、又は、ステロイドや抗生物質等の有機物質を、例えば電解操作からの工業廃水等の液体から、石油化学又は製薬産業からの触媒残留物から、例えば鉱山からの鉱山水から除去、抽出又は回収することや、重金属で汚染された土壌を再生すること等は、ますます重要な課題となっている。
【0003】
その理由は、これらの物質が環境に与える悪影響にある。しかしながら、特に金属の回収には、経済的利益という意味もある。このことは、一方では、環境的側面が最前線にあるが、他方では、その入手可能性が次第に疑わしくなっており、すなわち価格が高騰している価値の高い金属の供給にも大きな関心が集まっていることを意味する。金属又は重金属の除去、抽出又は回収のための材料の用途についての別の重要な分野は、飲料水の処理、及び、海水の淡水化における、金属又は重金属の分離である。
【0004】
塩素アルカリ電解や同様のプロセスで使用されるような、濃塩溶液からの重金属の分離もまた、非常に注目されている。
【0005】
水溶液から金属を得るために、現在、様々な方法が様々な目的で使用されている。最も一般的な方法は、pH値を金属が溶解しなくなる範囲へと変化させることによって、金属を析出させる方法である。この方法では、析出剤及び凝集剤の添加が必要となり、金属含有量の非常に低い非晶質の析出物が生成され、この析出物は不定で揺らぎの激しい混合物中に含まれている。原則として、これらの汚泥は最終処分に送られ、以降の使用にはもはや適さない。
【0006】
いくつかの場合では、一種の古典的な分離プロセスが工業規模で実行されており、このプロセスでは析出物が生成され、この析出物を何度も分解してさらなる浄化ステップにかける必要がある。
【0007】
低濃度でのみ含まれる金属の除去は、この方法(平衡定数、溶解度)では不可能又は非経済的である。現在使用されているプロセスでは、個々の金属元素を分離することは不可能である。
【0008】
代替プロセスでは、イオン交換体又は他の吸収樹脂が使用されるが、それらには、容量が小さい、安定性及び耐用期間が不十分であるといった特徴がある。これらには選択性がほとんどないため、低濃度の溶液から金属を回収するには適していない。同時に、最も価値の高い金属との結合は、塩化ナトリウム等の問題のない塩によって著しく破壊される。前述の相における結合メカニズムは、単純なイオン交換に基づいており、有機成分による干渉がある、容量が小さい、他のイオン混合物に対する感受性がある、耐用期間が短い、劣化する、低選択性又は選択性が不足している、衛生性又は復元可能性が不足している等といった全ての重大な欠点を伴うものである。
【0009】
結合の挙動が複雑な形成に基づくいくつかの相の供給源が存在している。これまでに知られているそれらの相は、塩素アルカリ電解において事前に浄化された溶液の前処理に使用されるが、その複雑な製造方法及び繊細な構造のため、意図された用途の分野には適していない。また、容量も比較的少ない。同時に、この方法では、少量の流れしか処理できない。低濃度であっても金属を検出することができないことに加えて、現在、スループットの不足が、そのような方法の導入を妨げる主な障害となっている。
【0010】
他には、例えば電気化学膜プロセス等は、非常にエネルギー集約的であるため、既に非常にクリーンな供給源から二次原料を抽出することにのみ適している。したがって、それらのプロセスは、汚染された廃水の処理には適さない。
【0011】
前述の重金属に加えて、飲料水からの細菌及びウイルスの除去もまた、重要性を増している課題である。この場合、気孔構造により水から細菌を機械的に除去する膜が使用されている。ウイルスはサイズが小さいため、通常は除去できない。純粋に機械的に細菌を除去すると、その後にバイオフィルムが形成され、このバイオフィルム内で細菌が増殖し続けて水を汚染する可能性がある。通常、細菌は短時間で膜を通過して増殖するため、逆洗を頻繁に行っても永続的に使用することは不可能である。
【0012】
細菌を殺傷する別の方法としては、塩素処理や抗生物質添加等の有毒化学物質の添加、オゾンによる処理、又は、UV光による照射が挙げられる。それらの方法の欠点は、有毒化学物質が添加されることであり、そのような有毒化学物質は、水の風味を損なうと共に多大な労力をかけて除去する必要があり、又は、抗生物質耐性を促進する等の望ましくない副作用を引き起こす。さらに、それらの方法のいくつかは、非常にエネルギー集約的であるか、全体的にあまり効果的ではない。
【0013】
したがって、本発明は、溶液から細菌及びウイルスを除去又は殺傷し、それによって生じた断片を少なくとも部分的に結合させるという課題に基づくものである。
【0014】
重金属、細菌及びウイルスに加えて、過フッ素化界面活性剤等の微量汚染物質も、重要性を増している課題である。過フッ素化界面活性剤は、屋外衣類の浄化液や工業プロセスから放出されて環境中に入るが、環境中ではほとんど分解されない。その結果、それらは環境中に蓄積し、時間の経過につれて、食物を介して人間や動物の食物循環に入り、相応の損害を引き起こす可能性がある。
【0015】
したがって、本発明は、過フッ素化界面活性剤等の微量汚染物質を、水又は他の溶媒から迅速かつ効果的に除去するという課題をさらに設定する。
【0016】
確立された手順における欠点について、以下に要約する。
-容量が小さい
-選択性がない又は不十分である
-高濃度の付随物質に対する耐性がない
-安定性が低く、耐用期間が短い
-エネルギー消費量が多い
-スループットが低い
-低濃度溶液には適用できない
-再利用が難しい
-複雑な前浄化手順が必要である
-析出段階及び蒸解段階を繰り返す多段階分離プロセスである
【0017】
汚染物質としての金属又は他の物質の化学的又は選択的な結合、排除又は除外に併せて、この浄化モードに加え、浄化される液体を同時に純粋に機械的に濾過することが可能であれば有利であろう。このようにして、粒子状汚染物質又は凝集体を純粋に機械的な濾過によって液体から分離することができ、加えて、浄化される液体の濾過によって分離されなかったより小さな成分を、化学的又は選択的な吸収、排除又は除外によって液体から除去することができる。現在までのところ、この目的のために、事前に製造されたポリマーミクロゲル粒子が導入された多孔質膜材料が知られている。ポリマーミクロゲルを事前に製造することによって、特定の粒子サイズのゲルが得られる。対応する粒子サイズによって、それらのゲルは、ミクロゲル粒子を収容するのに十分な大きさの膜材料又はその支持構造の気孔にのみ導入され得る。これには、対応するシステムでは気孔容積の大部分がミクロゲルで満たされていないため、そのようなシステムの化学吸収性能が満足のいくものではないという欠点がある。さらに、支持構造の気孔内にミクロゲル粒子を備えた既知の膜材料は、通常、分離特性又は吸収特性が温度に大きく依存したり、容量が温度に大きく依存したりする材料である。これもまた、望ましくないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、物質を機械的濾過すること、及び、化学的又は選択的に結合/除外/排除することの利点を効果的に組み合わせて同時に実現可能にすることができ、それによって、金属又は物質を、低濃度及び高濃度である水性及び非水性の酸性、塩基性又は中性溶液からも除去することが可能な複合材料を提供することにある。さらに、本発明の目的は、溶液から金属又は重金属を、同時に高いアルカリ金属のロードと併せて除去することにもある。
【0019】
加えて、細菌及びウイルスを殺傷すること、並びに、過フッ素化界面活性剤等の所定の微量汚染物質を除去することも、解決すべき課題の一部である。
【0020】
好ましくは、本発明に従って提供される複合材料は、衛生化可能であり、すなわち、該複合材料によって、金属又は有機物質を簡易な方法により回収することができるように、並びに、対応する厳しい条件下にて複合材料を効果的に浄化することができるようになる。
【0021】
さらに、本発明は、中程度の重金属汚染を伴う大量の流れを短時間で処理することができ、消毒/濾過が望まれる複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の目的は、本発明に係る複合材料を提供することによって達成され、該複合材料は、有機ポリマーと、開気孔を備えた気孔系を有する層状材料とを含み、開気孔は、層状材料を通って連続的に延びており、層状材料の第1側における開気孔は、第2側における気孔より平均気孔径が小さく、第1側と第2側とは、層状材料の対向する両側にあり、有機ポリマーが、開放気孔内に位置しており、有機ポリマーが、均一溶液から気孔系内へと導入され、続いて固定化されることを特徴とする。
【0023】
層状材料の第1側及び第2側は、層状材料の対向する外側、すなわち、層状材料の対向する両面である。層状材料の第1側及び第2側の延在ベクトルは、層状材料の延在方向にあり、層状材料の厚みのベクトルに対して直角に配置される。したがって、層状材料のこの配置によって、平坦な膜、及び、円筒状の膜も可能になり、本発明では円筒状の膜が好ましい。
【0024】
層状材料は、層状材料の第2側より第1側において平均気孔径が小さいため、この第1側は濾過膜の機能を果たすことができ、純粋に機械的な濾過及びサイズ排除によって、層状材料を通って流れる液体から物質又は粒子状汚染物質が濾過される。層状材料の第2側における平均気孔径が大きいため、気孔系の気孔に有機ポリマーを導入することができ、この第2側が、物質を化学的/選択的に結合/除外/排除するために機能する。
【0025】
層状材料の第1側(膜側)の気孔径を決定するには、デキストラン標準を使用した特性評価(逆サイズ排除クロマトグラフィーと同様)が使用される。規定の増加する分子量のデキストランの種々異なる溶液が、層状材料の第1側から第2側へと流し込まれる。層状材料のサイズカットオフは、気孔の幅によって決定される。すなわち、デキストラン標準のサイズが増加し続けると、ある時点にて層状材料が通過できなくなるサイズ(MWCO:分子量カットオフ)に達する。このようにして、層状材料の第1側の気孔径が決定され得る。ここで、残りの気孔のサイズ(特に、層状材料の第2側の気孔径)は、SEM画像(SEM:走査型電子顕微鏡)を使用することによって比較により決定され得る。あるいは、第1側及び第2側の平均気孔径はまた、層状材料の両面のSEM画像を撮影して評価することにより、SEMのみを使用して絶対的にも決定され得る。層状材料の第1側から第2側への材料の気孔径の増加は、断面のSEM画像によって示され得る。
【0026】
層状材料の気孔系に導入される有機ポリマーは、好ましくは、化学的/選択的吸収又は反発が可能なポリマーである、すなわち、吸収ポリマーであるという特性を有する。有機ポリマーとしては、親水性ポリマーが好ましい。複合材料が液体の浄化に使用される場合、液体の流れの方向は、層状材料の第1側から第2側であることが好ましい。有機ポリマーが親水性ポリマーの場合、比較的親水性の高い層状材料の表面が、膜のサイズ排除により保持された親油性残留物の溶出を簡易にして、膜の防汚特性の向上に寄与する。これにより、使用される逆洗サイクル数及び逆洗容量が減少するため、膜の生産性が向上する。
【0027】
有機ポリマー、好ましくは線形ポリマーを、ポリマーが溶解された均一溶液から気孔系内へと導入することによって、ポリマーが導入前にハイドロゲル/ミクロゲル粒子の形態で既に存在している場合よりも小さな気孔が、有機ポリマーによってコーティング又は充填され得る。このようにして、気孔又は気孔の表面のより均一なコーティング又は充填が達成され、その結果、容量が増加する。
【0028】
気孔系内へと導入されたポリマーのその後の固定化は、有機ポリマーを層状材料に結合させることを目的としている。固定化は、気孔系内へと導入された有機ポリマーを架橋することによって達成され得る。しかしながら、ポリマーの固定化(Immobilisierung)又は固定(Fixierung)は、有機ポリマーを層状担体材料に共有結合させることによっても行われ得る。本発明による別の可能性は、吸着相互作用及び/又はイオン相互作用による層状担体材料への有機ポリマーの固定化/固定である。
【0029】
有機ポリマーが架橋によって固定化/固定される場合、この固定化/固定は、架橋剤を使用して行うことができ、該架橋剤は、有機ポリマーが気孔系内へと導入された後に塗布されるか、有機ポリマーと併せて導入されるか、又は、事前に気孔系内に存在するものである。後者の場合、架橋剤は、乾燥によって層状材料に塗布されることが好ましく、この乾燥では、溶媒中に溶解された架橋剤を層状材料の気孔構造内へと導入し、続いて溶媒を蒸発によって除去して、その結果、架橋剤が気孔の表面上に存在するようになる。続いて、架橋される有機ポリマーは、本明細書に記載の方法をによって気孔構造内へと導入され、架橋剤と反応することによって、架橋ポリマーを形成することができる。
【0030】
有機ポリマーが架橋によって固定化/固定される場合、有機ポリマー中の架橋性基の総数に基づいて、少なくとも2%の架橋度を有することが好ましい。より好ましくは、架橋度は、いずれの場合も有機ポリマー中の架橋性基の総数に基づいて、2.5~60%の範囲、より好ましくは5~50%の範囲、最も好ましくは10~40%の範囲である。架橋度は、対応する所望の架橋剤の量によって調整され得る。架橋剤100mol%が反応して架橋を形成すると仮定する。これは、MAS-NMR分光法や、使用されたポリマーの量に対する架橋剤の量の定量決定等の分析方法によって検証され得る。本発明によれば、この方法が好ましい。架橋度は、検量線を使用して、例えばC-O-C又はOH振動に関するIR分光法によっても決定され得る。いずれの方法も、当業者にとって標準的な分析手順である。架橋度が指定の上限値を超えると、有機ポリマーのポリマーコーティング又は充填が十分に柔軟でなくなり、その結果、結合能力が低下する。架橋度が指定の下限値を下回ると、ポリマーコーティングが層状材料の表面又は気孔内において十分に安定しない。
【0031】
架橋剤は、2つ又は3つ以上の官能基を有しており、それらの官能基と有機ポリマーとの結合によって架橋が生じる。有機ポリマーを架橋するために使用される架橋剤は、好ましくは、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アルデヒド、尿素、ビスエポキシド又はトリスエポキシド、ジイソシアネート又はトリイソシアネートからなる群より選択され、ジハロアルキル、トリハロアルキル又は混合官能性分子(例えば、エピクロロヒドリン)、ジカルボン酸及びビスエポキシドが好ましい官能基である。架橋剤は、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、エチレングリコールジグリシジルエーテル及び1,12-ビス-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)-デカンジカルボン酸等のジカルボン酸及びビスエポキシドが好ましく、後者の2つはより好ましい。本発明の一実施形態において、架橋剤は、好ましくは、3~20原子の間の長さを有する線形の立体構造的に柔軟な分子である。
【0032】
有機ポリマーの好ましい分子量は、5,000~5,000,000g/molの範囲にあることが好ましい。
【0033】
有機ポリマーが共有結合によって層状材料に固定化/固定される場合、ポリマーの官能性側鎖基は、層状材料の官能性表面基と反応するか、有機ポリマーが層状材料の気孔系に導入された後に反応物と反応することが好ましい。層状材料の官能性表面基は、例えば臭素化によって活性化される脂肪族炭素原子又はベンジル炭素原子であり得る。有機ポリマーの官能側基は、例えば、-OH又はアミノ基等の求核基であり得、これらの求核基は後に、層状材料の官能表面基に結合され得る。
【0034】
有機ポリマーが吸着又はイオン相互作用により層状材料に固定化/固定される場合、有機ポリマーは、層状材料の気孔内の表面のイオン性基と相補的な電荷を有するイオン性基を側鎖に有することが好ましい。そのような相補的なイオン基は、例えば、-SO3-及び-NH3
+であり得る。
【0035】
有機ポリマーは、同じ繰り返し単位からなるポリマー(重合モノマー)であり得るが、コポリマーでもあり得、該コポリマーは、コモノマーとして単純なアルケンモノマー又はビニルピロリドン等の極性不活性モノマーを有することが好ましい。
【0036】
均一な溶液から気孔系に導入される有機ポリマーの例としては、ポリアルコール、任意のポリアルキルアミン(例えば、ポリビニルアミン及びポリアリルアミン)等のポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリリシン、商品名ルパミン等のアミノ基含有ポリマーが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基又はアミノ基を有するポリアルキルアミン及びポリアルキルアルコールが好ましく、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びルパミンがさらに好ましく、ポリビニルアミン及びルパミンが特に好ましい。
【0037】
有機ポリマーが層状担体材料の気孔系に導入され、続いてポリマーを固定化した後に、該ポリマーは、いわゆるハイドロゲルの形態であることが好ましい。この場合、ハイドロゲルは、溶媒(好ましくは、水)を含むが溶媒に可溶なポリマーを意味すると理解され、それらのポリマーの分子は、例えば共有結合又はイオン結合によって化学的に結合されるか、例えばポリマー鎖が絡み合って物理的に結合し、それによって三次元ネットワークを形成する。極性(好ましくは、親水性)ポリマー成分が組み込まれているため、それらのポリマーは、溶媒(好ましくは、水)中で膨潤し、(架橋に応じて)体積が大幅に増加するが、材料の凝集力は失われない。層状材料の気孔系内へと導入された有機ポリマーは、特に溶媒中で膨潤した際、すなわち、特に後述の複合材料を使用している間に、本発明に係る複合材料中にハイドロゲルとして存在する。
【0038】
ヒドロキシ基又はアミノ基を含むポリマーを有機ポリマーとして使用すると、ヒドロキシ基又はアミノ基の酸素又は窒素上にて有機残基がポリマーの側鎖へと導入され得るという利点もあり、それらの有機残基は、浄化される物質又は重金属と特定の相互作用を形成し得る。そのような有機残基は、ルイス塩基特性を有する残基であることが好ましい。このようにして、有機ポリマーの官能化が行われ得るが、この官能化は、有機ポリマーが層状材料の気孔構造内において固定化された後にのみ起こることが好ましい。
【0039】
アミノ基含有ポリマーはまた、抗菌効果を有するといった利点もあり(DE102017007273A1)、サイズ排除によって細菌及びウイルスを除去するだけでなく、それらを直接殺傷することも可能である。
【0040】
有機ポリマーは、有機ポリマーの均一溶液を生成することによって気孔系内へと導入され、その後、それが気孔系内へと導入される。これは、既知の湿式化学含浸プロセスを使用して行われ得るが、有機ポリマーを含有する溶液が複合材料を通してポンプ搬送される、いわゆるフロースループロセスによっても実現され得る。
【0041】
湿式化学含浸プロセスとしては、いわゆるディップコーティング及び気孔充填法が知られている。ディップコーティングでは、層状材料を有機ポリマーの均一溶液中に一定時間浸漬し、毛細管力によって気孔空間がこの溶液で満たされる。純水又は水性媒体と、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒との両方が、溶媒として使用され得る。
【0042】
層状材料は、単一の層又は複数の層により構成することができる。層状材料の「単一の層」とは、第1側及び第2側につながる構成要素が、気孔径を除いて同じ材料により構成される層状材料を意味する。この場合、平均気孔径は、層状材料の第1側から層状材料の反対側の第2側まで、連続的に増加し得るが、急激にも増加し得る。後者の場合、そのような急激な増加は、平均気孔径の異なる同じ材料の2つの層を接合することによって生じる。層状材料の「2つ以上の層」とは、異なる材料で作られた2つの異なる層を示し、そのうちの第1側の材料は、反対側の第2側の材料よりも平均気孔径が小さい。ここでも、気孔径は急激に又は連続的に増加し得る。
【0043】
平均気孔径の小さい第1側に位置する層状材料の構成要素は、膜材料とも称される。なぜなら、この材料は、その比較的小さい気孔径によって、複合材料の用途において機械的濾過を担うことが好ましいためである。換言すれば、層状材料の第1側の構成要素は、膜を構成する。したがって、この第1側は、膜面とも称される。
【0044】
第2側の比較的大きい平均気孔径の元となる層状材料の構成要素は、層状材料の第1側(膜材料)の構成要素のためのいわゆる支持構造とも称され得る。好ましくは、層状材料の第2側の気孔の平均気孔径は6nm~20,000nmの範囲であり、より好ましくは10nm~12,000nmの範囲であり、さらに好ましくは20nm~5,000nmの範囲である。
【0045】
層状材料は、好ましくは500μm~10cmの範囲、より好ましくは600μm~5cmの範囲、最も好ましくは700μm~2cmの厚さを有する。
【0046】
第1側の平均気孔径は、第2側の平均気孔径より少なくとも3%小さいことがさらに好ましく、さらに好ましくは少なくとも7%小さく、さらに好ましくは少なくとも12%小さい。第2側の平均気孔径が小さすぎると、気孔系を有機ポリマーで充填することが困難になる。さらなる欠点としては、濾過膜の背圧が高くなること、透過性が低くなること、逆洗頻度が多くなること、及び、再生可能性が限定されることが挙げられる。
【0047】
層状材料が1つ又は複数の層により構成されるかどうかに関わらず、これらの層のそれぞれは、独立して、架橋有機ポリマー、無機材料又はそれらの混合物であってもよい。
【0048】
ここで使用されるような適切な無機材料は、モノリス、セラミック膜又はセラミックモノリスとしても知られており、とりわけ、平坦な又は中空の円筒として設計され得る。
【0049】
架橋有機ポリマーは、ポリアルキル、好ましくは側鎖に芳香族部分を有する(すなわち、ポリアルキル鎖に結合した)ポリアルキル、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、多糖類(例えば、デンプン、セルロース、セルロースエステル、アミロース、アガロース、セファロース、マンナン、キサンタンガム及びデキストラン)及びそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。最も好ましくは、架橋有機ポリマーは、ポリスチレンもしくはポリエーテルスルホン又はそれらの誘導体、例えば、ポリスチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー等である。架橋有機ポリマーが芳香族単位を備えている場合、架橋有機ポリマーは、スルホン化されていることが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、架橋有機ポリマーは、ポリエーテルスルホンである。
【0050】
さらに好ましい実施形態では、過フッ素化ポリマー(例えば、PTFE、TPE、PVF、PVDF、PCTFE又はPFAコポリマー、並びに、関連するポリマー、及び、例えばリグニン又はセルロースで作製されたバイオポリマー)で作製された多孔質及び非多孔質のポリマーモノリスが使用される。
【0051】
層状材料の層が無機材料である場合、該無機材料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、上記酸化物の窒化物又は炭化物、フルオロシル、マグネタイト、ゼオライト、ケイ酸塩(例えば、珪藻土)、マイカ、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、有機金属基本構造体、セラミックス、ガラス、多孔質ガラス(例えば、Trisoperl)、金属(例えば、アルミニウム、シリコン、鉄、チタン、銅、銀及び金)、グラファイト及びアモルファスカーボンからなる群より選択される無機鉱物酸化物であることが好ましい。特に好ましくは、無機材料としては、上述の鉱物酸化物の1つである、酸化アルミニウム及び酸化チタンが好ましい。
【0052】
層状材料の個々の層又は1つの層は、(それぞれ互いに独立して)均一又は不均一な組成であり得るため、特に、1つ又は複数の上記材料から構成される材料もまた含んでいる。
【0053】
層状材料は、DE102005032286A1、EP2008704A1、WO2006/012920A1、DE60016753T2及びDE69935893T2に記載のプロセスによって取得され得る。
【0054】
さらなる実施形態では、本発明はまた、本発明に係る複合材料を含む濾過膜、又は、本発明に係る複合材料により構成される濾過膜に関する。この濾過膜は、平膜、管状膜又は中空糸膜の形状を有し得るが、中空糸膜は、より単純な濾過装置を可能すると共に平坦な膜に比べて糸の破損が少ないため、本発明によれば、スループットが比較的高いことから、中空糸膜がより好ましい。中空糸膜の場合、本発明に係る複合材料は管の形状に配置され、層状材料の第1側が管の内側に位置し、反対側の第2側が管の外表面を表す。このような管は複数並べて配置することもできるため、使用中にさらに高いスループットが達成され得る。対応する中空糸膜は従来技術において知られており、前述の刊行物において確認される。
【0055】
さらなる実施形態では、本発明はまた、本発明に係る複合材料を製造する方法にも関し、該方法では、層状材料を貫通して連続的に延びる開気孔を有する気孔系を有する層状材料を、有機ポリマーの均一溶液によって処理する。したがって、本発明に係る複合材料を製造するための上述のプロセスの全ての特徴もまた、本発明によるプロセスの一部である。同様のことが、本発明に係る複合材料に関連して言及された構成要素についても該当する。
【0056】
本発明は、特に、本発明に係る複合材料の、濾過膜としての使用にも関する。
【0057】
さらに、本発明は、液体を浄化するための、及び/又は、液体から物質を、好ましくは懸濁物質、溶解物質又はコロイド物質を分離するための、本発明に係る濾過膜の使用にも関する。特に好ましい濾過膜の使用としては、液体から金属/金属化合物、及び/又は、有機物質を分離するための、本発明に係る濾過膜の使用が挙げられ、ここで、有機物質は、例えばステロイド、抗生物質等であり、特に、それらは地下水中へと入り込むべきではなく、又は、それらの地下水中の濃度は所定の制限値を超えるべきではない。
【0058】
本発明によれば、液体から金属/金属化合物、及び/又は、有機物質が結合されることとなる該液体は、低濃度及び高濃度である水性及び非水性の酸性、塩基性又は中性の液体又は溶液であり得る。
【0059】
本発明に係る使用において分離される金属/金属化合物は、上述の溶液中においてイオン形態で存在する金属であるか、イオン形態の金属配位子配位化合物としても存在する金属であることが好ましい。該金属は、錯体形成金属、すなわち、金属配位子配位結合を形成し得る金属であることが好ましい。より好ましくは、該金属は遷移金属又は希土類金属であり、さらにより好ましくは、貴金属又は希土類である。特に好ましくは、金属銅、ニッケル、鉛及びクロムである。
【0060】
本発明に係る使用のさらなる実施形態では、液体から金属が結合されることとなる該液体は、飲料水及び地表水等の、大量の流れで浄化される液体である。
【0061】
さらに、液体から金属が結合されることとなる該液体は、好ましくは3~10、より好ましくは5~9、さらにより好ましくは6~8の範囲のpHを有する水溶液である。
【0062】
液体から金属を結合させるために、金属含有液体は濾過膜を通して、好ましくは層状材料の第1側から第2側へとポンプ搬送される。本発明の複合材料又は本発明の濾過膜を設けることにより、キレート金属を液体から除去できるだけでなく、溶出によって回収することも可能である。本発明に係る濾過膜を使用することにより、官能化された膜上にて浄化される物質又は金属について顕著な濃度が生じるため、さらなる経済的な処理のために使用され得る管理可能な量が得られる。このことは、低濃度の貴重な重金属を含む非常に大量の流れに対しても、循環経済の可能性が及ぶことを意味する。
【0063】
さらに、本発明は、不純物の濾過と、吸収/錯体形成による有機物又は金属の化学的除去とを同時に行うことを可能にする。大量の流量は、本発明に係る複合材料を濾過膜として使用することによって維持される。
【発明の効果】
【0064】
本発明の主な利点は、低重金属で汚染された廃水を同時に限外濾過及び消毒しつつ放流すること、並びに、特別に官能化されたポリマーの使用を通じて微量汚染物質を標的除去することである。したがって、本発明は、微粒子キレートゲルでは対処され得ない技術的ギャップを埋めるものである。微粒子システム(カラム、カートリッジ)では、顕著な圧力降下があり、単位時間当たりの溶液量のスループットが顕著に制限される。このように、粒子吸収剤を使用する場合には、非常に大規模なシステムが必要となる。この制限は、濾過膜としての本発明に係る複合材料では解消され、微粒子システムで設計されることが必要なシステムよりも遥かに小さなシステムによって、非常に短時間内に大量の流れが達成され得る。
【0065】
したがって、本発明は、以下の利点を提供する。
-水の流れの機械的浄化、重金属/望ましくない物質の除去、及び、消毒が組み合わせられる
-単位時間及びシステムのサイズあたりの汚染溶液の体積スループットが高い
-膜システムは、非常に大規模に世界中で技術的に確立されている
-耐用期間が長い
-機械的化学的堅牢性に優れる
-金属の再生及び抽出が容易である
【図面の簡単な説明】
【0066】
次に、以下の図面及び実施例を使用して本発明を説明するが、これらは単なる例示としてみなされるべきである。
【
図1】
図1は、第1側(2)と、第1側の反対側の第2側(3)と備えた層状材料(1)の断面を示す。
【
図2】
図2は、本発明に係る複合材料から構成されている、中空糸膜(4)として設計された本発明に係る濾過膜を示す。符号(1)、(2)及び(3)から見られるように、複合材料の平均気孔径が小さい側が中空糸膜の内側に位置し、平均気孔径が大きい側が外表面に位置する。
【
図3】
図3は、コーティングされていない中空糸膜と比較した、実施例1に従う本発明に係る複合材料により構成されている中空糸膜における流出物の検出を示す。
【
図4】
図4は、実施例2に従う本発明に係る複合材料により構成されている中空糸膜を試験した際に記録された等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0067】
実施例1:いわゆるフロースループロセスによる、中空糸の形態の本発明に係る複合材料の製造:
PES中空糸(PES:ポリエーテルスルホン)であって、該中空糸の内側の平均気孔径が20nm、外側の平均気孔径が1μmであり、外径が4mm、内部にそれぞれ直径900μmである7本の内部チャネルを有し、25cm長のチューブに埋め込まれたPES中空糸を、100mlの脱イオン水、メタノール、そして再び脱イオン水でリンスすることによって、コーティングの準備を行う。次に、50mLの脱イオン水中2.0gの加水分解ルパミン4500(10%m/m)の溶液を、中空糸を通してポンプ搬送する。次いで、水溶液を中空糸及び管から吸引により除去して、100mLのイソプロパノール中100mgのエチレングリコールジグリシジルエーテルの溶液を、中空糸を通してポンプ搬送する。この溶液を循環方式でポンプ搬送して、総ポンプ搬送量は500mLである。完了後、過剰な溶液を吸引除去し、各50mLのイソプロパノール、メタノール、脱イオン水、1mol/L HCl(水溶液)、脱イオン水、1mol/L NaOH(水溶液)、1mol/L NaOH(水溶液)及び脱イオン水を用いて、この順で中空糸をリンスする。
【0068】
実施例2:いわゆる湿式化学コーティングによる、中空糸の形態の本発明に係る複合材料の製造:
長さが5cmである実施例1と同様のPES中空糸片7本を、100mLの脱イオン水中で3回洗浄した後、150mLの脱イオン水中6gの加水分解ルパミン4500(10%m/m)の溶液中において、オーバーヘッドシェーカー上で24時間処理する。次に、上清溶液をデカントして除去し、中空糸片をそれぞれ50mLのイソプロパノールで2回洗浄し、それによって上清溶液もデカントして除去する。ここで、中空糸片を、100mLのイソプロパノール中300mgのエチレングリコールジグリシジルエーテルの溶液中において、オーバーヘッドシェーカー上で24時間処理する。完了後、上清を廃棄し、各50mLのイソプロパノール、メタノール、脱イオン水、1mol/L HCl(水溶液)、脱イオン水、1mol/L NaOH(水溶液)及び脱イオン水を用いて、この順で洗浄することによって後処理を行う。
【0069】
実施例3:実施例1による複合材料の試験:
1g/LのCuSO4*5H2O水溶液を1mLの流量でバイパスしてポンプ搬送させ、それによってベースラインを取得する。10分後、バルブを切り替えることによって、流れを実施例1に係る中空糸膜の方へと切り替え、この流れを単一モジュールへとキャストする。流出液は、790nmのUVで検出される(吸収銅-水錯体)。モジュールが銅で飽和すると、即座に金属の漏出が発生し、この漏出は、該金属の吸収によって検出される。膜に吸収された銅の量は、対応する参照表面と比較することによって決定される。
【0070】
実施例1に係るポリマーでコーティングされていない、実施例1と同様の中空糸膜を用いて、同じことを行う。
【0071】
コーティングされた膜の1%の漏出は、コーティングされていない膜よりも10分遅くなる。これは、約40mg/m膜の銅の取り込みに相当する。緩やかな増加も観察される。これらの結果はいずれも、溶液からコーティングされた相への銅の結合を示している。モジュールのデッドボリュームが満たされた際(約5分後)、コーティングされていない相の漏出が生じる。廃液の検出について、
図3に示す。
【0072】
実施例4:実施例2による複合材料の試験:
同じ吸収プロセス(実施例2)を使用して調製された7つの膜片を、硫酸銅濃度を増加させた7つの異なる溶液と共に24時間インキュベートする。上清を分離し、溶液中において結合されていない銅の濃度を、波長790nmで測光的に測定する。吸収された銅の量を計算して、等温線を決定する(
図4)。これは、コーティングされた膜が、試験された最高濃度にて20mg/m膜で結合することを示している。等温線の推移は、最大のロードにまだ達していないことを示している。
【0073】
実施例5:無機モノリスのコーティング
平均気孔直径が5μm未満の多孔質セラミックで作製された壁厚1cmの10インチの中空の円筒を、10Lの脱イオン水中で両流れ方向に洗浄した後、800mLの脱イオン水中200gの加水分解ルパミン4500(10%m/m)の溶液中において、オーバーヘッドシェーカー上で24時間インキュベートする。次に、上清溶液をデカントし、中空の円筒をそれぞれ2Lのイソプロパノールで2回リンスする。続いて、中空の円筒を、990mLのイソプロパノール中8gのエチレングリコールジグリシジルエーテルの溶液中において、オーバーヘッドシェーカー上で24時間処理する。完了後、上清を廃棄し、各5Lのイソプロパノール、メタノール、脱イオン水、1mol/L HCl(水溶液)、脱イオン水、1mol/L NaOH(水溶液)及び脱イオン水を用いて、この順で洗浄することによって後処理を行う。
【国際調査報告】