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特表2024-524381マルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置、マルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法、及びコンピュータ可読記憶媒体
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  • 特表-マルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置、マルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法、及びコンピュータ可読記憶媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】マルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置、マルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法、及びコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04S 3/00 20060101AFI20240628BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H04S3/00 200
B60R11/02 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580504
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022067189
(87)【国際公開番号】W WO2023274840
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】17/360,251
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597038301
【氏名又は名称】ゼンハイザー・エレクトロニック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Sennheiser electronic GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】カレス,ヨハネス ハインリヒ
【テーマコード(参考)】
3D020
5D162
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BB01
3D020BC02
5D162AA08
5D162BA07
5D162CA27
5D162CC04
5D162CC13
(57)【要約】
少なくとも左チャンネル、右チャンネル、及びセンターチャンネルを含むマルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置が提供される。装置は、左チャンネルと右チャンネルからセンター信号を抽出し、左残余信号と右残余信号が残るように適合されたセンター抽出ユニットと、抽出されたセンター信号をマルチチャンネルオーディオ信号のセンターチャンネルに加えて強化センターチャンネルを取得するように適合された第1加算ユニットと、強化センターチャンネルを右残余信号に加えて強化右チャンネルを取得するように適合された第2加算ユニットと、強化センターチャンネルを左残余信号に加えて強化左チャンネルを取得するように適合された第3加算ユニットと、強化左チャンネル、強化右チャンネル、及び強化センターチャンネルを供給するための出力部と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左チャンネル、右チャンネル、およびセンターチャンネルを含むマルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置であって、
前記左チャンネルおよび前記右チャンネルからセンター信号を抽出するように適合され、左残余信号及び右残余信号が残るセンター抽出ユニットと、
抽出された前記センター信号を前記マルチチャンネルオーディオ信号の前記センターチャンネルに加えて強化センターチャンネルを取得するように適合された第1加算ユニットと、
前記強化センターチャンネルを前記右残余信号に加えて強化右チャンネルを取得するように適合された第2加算ユニットと、
前記強化センターチャンネルを前記左残余信号に加えて強化左チャンネルを取得するように適合された第3加算ユニットと、
前記強化左チャンネル、前記強化右チャンネル、及び前記強化センターチャンネルを供給するための出力部と、を備える装置。
【請求項2】
前記センター抽出ユニットは、前記マルチチャンネルオーディオ信号の前記左チャンネルと前記右チャンネルとの間の相関をとり、その相関部分を供給するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記センター抽出ユニットはデジタル処理ユニットであり、
前記第1加算ユニット、前記第2加算ユニット、および前記第3加算ユニットはデジタル加算を実行する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記センター抽出ユニットはデジタル処理ユニットであり、
前記センター抽出ユニットによって供給される信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバーターをさらに備え、
前記第1加算ユニット、前記第2加算ユニット、および前記第3加算ユニットはアナログ加算を実行する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マルチチャンネルオーディオ信号は、1つまたは複数の追加オーディオチャンネルを含み、
前記1つまたは複数の追加オーディオチャンネルは、リスニングポジションの側方または後方にある1つまたは複数の追加スピーカーに供給される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
マルチチャンネルオーディオ信号を処理する請求項1に記載の装置と、
2つのリスニングポジションの左前方に配置された第1スピーカー、前記2つのリスニングポジションの右前方に配置された第2スピーカー、および前記2つのリスニングポジションの実質的に中央かつ前方に配置された第3スピーカーを有する、少なくとも3つのスピーカーと、を備えるシステム。
【請求項7】
少なくとも左チャンネル、右チャンネル、およびセンターチャンネルを含むマルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法であって、
前記左チャンネルおよび前記右チャンネルに対してセンター抽出を行って抽出されたセンター信号を取得し、左残余信号及び右残余信号が残り、
抽出された前記センター信号を前記マルチチャンネルオーディオ信号の前記センターチャンネルに加えて強化センターチャンネルを取得し、
前記強化センターチャンネルを前記左残余信号に加えて強化左チャンネルを取得し、
前記強化センターチャンネルを前記右残余信号に加えて強化右チャンネルを取得し、
それぞれのスピーカーに出力するために、前記強化左チャンネル、前記強化右チャンネル、および前記強化センターチャンネルを供給することを含む方法。
【請求項8】
前記強化左チャンネルは、2つのリスニングポジションの左前方に配置された第1スピーカーに供給され、
前記強化右チャンネルは、前記2つのリスニングポジションの右前方に配置された第2スピーカーに供給され、
前記強化センターチャンネルは、前記2つのリスニングポジションの実質的に中央かつ前方に配置された第3スピーカーに供給される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記2つのリスニングポジションは、車の隣り合う2つの座席である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記隣り合う2つの座席は、運転席と助手席である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータ上で実行されると請求項7に記載の方法を前記コンピュータに実行させる命令を記憶した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置に関する。本発明はまた、マルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法、及びコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0002】
オーディオ信号は通常、標準化された環境での再生に最適化されている。特に、マルチチャンネルオーディオ信号は、意図された特定の空間イメージを得るために、一人のリスナーに対して定められた位置にラウドスピーカーを必要とする。リスナーの理想的な位置はスイートスポットとして知られている。しかし、場合によっては、車の中など、オーディオ再生が2人のリスナーに向けられている場合もある。この場合、リスナーのポジションは決まっているが、通常はスイートスポットにはいない。したがって、このような環境での再生のためにオーディオ信号を最適化することが望ましい場合がある。
【0003】
車の中で適切な空間イメージを作るのは難しい。レコーディングスタジオなどの標準化された環境では、リスナーとスピーカーの間の距離および角度が規定通りになるような、例えば左右対称になるようなスイートスポットにリスナーを配置することができる。しかし、通常、フロントに2席以上ある車では、これは不可能である。ほとんどの車には左右のスピーカーが付いているが、シンプルで効果的なアプローチは、センタースピーカーを追加することで、イメージングをより左右対称にすることである。最も単純な形式では、図1に示すように、センタースピーカーLSには、S1で左右チャンネルL、Rを加算した信号が入力される。このアプローチには重大な欠点がある。センタースピーカーLSがアウタースピーカーLS、LSと同じ信号を再生するため、ステレオイメージの幅が大幅に減少する。これを改善するために、図2に示す既知の解決策は、入力オーディオ信号L、Rから相関情報を抽出するセンター抽出アルゴリズムCEXを使用することである。抽出された情報CSは、センタースピーカーLSとアウタースピーカーLS、LSの両方で再生され、左右対称のイメージを持つ2つの仮想センターが作られる。この配置でも、イメージの中央における情報が各同乗者P1、P2の前に現れる。これには、例えば曲のメインボーカルなど、相関情報が同乗者達の前で知覚されるという利点がある。対照的に、非相関情報は利用可能なステージの幅全体を使用する。
【0004】
イマーシブオーディオフォーマットが車内に導入されると、新たな課題が生じる。5.1サラウンドサウンド、7.1サラウンドサウンド、ドルビーサラウンド、ドルビーアトモス、Auro-3D、MPEG-Hなど、最も一般的に使われているイマーシブオーディオフォーマットは、3つのフロントチャンネル(フロントレフト、フロントセンター、フロントライト)を持っている。イマーシブオーディオ形式には通常、追加のチャンネルがあるが、ここでは考慮しない。簡単なアプローチは、左右のスピーカーで左右のチャンネルを再生し、センターチャンネルを使って2つのバーチャルセンターまたはファントムセンターを作ることである。これは、図3に示すように、左右のチャンネルにそれぞれセンターチャンネルを加算する2つの加算ブロックS21、S22を配置することで実現できる。その結果、各バーチャルセンターは同乗者の1人の前に位置し、センターチャンネルの信号は各同乗者によって正面から知覚される。
【0005】
しかし、このアプローチはあるシナリオには有効だが、他のシナリオには通用しない。特に、音楽は様々な方法でミックスされ得る。通常、メインボーカルなど、リスナーの前で知覚されるべき情報は、センターチャンネルにミックスされる。しかし、別のよく使われるミキシングスタイルでは、そのような情報は左右のチャンネルにミックスされる。スタジオ環境では、リスナーの知覚にファントムセンターを作り出すので、これはうまく機能する。さらに、楽器が声によりよく混じり合うという効果も得られるため、多くのサウンドエンジニアがミキシングプロセスでこのアプローチを選択する。しかし、車の中など、リスナーがスイートスポットにいない環境では、この場合、音声のイメージは真正面の中央ではなく、左(左側の運転手/同乗者)か右(右側の同乗者/運転手)のどちらかに移動する。さらに、音楽には通常、どのミキシングスタイルが適用されたかを示すタグは付けられていない。したがって、どちらのスタイルも正確に再現することは困難である。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記の問題に対する解決策を提供することである。
【0007】
以下に説明するように、本発明は、問題を解決し、各リスニングポジションの前に1つずつ、2つのファントムセンターを作るのに適している。有利なことに、この解決策はミキシングスタイルに関係なく機能する。入力マルチチャンネルオーディオ信号は、例えば5.1サラウンド、7.1サラウンド、ドルビーサラウンド、ドルビーアトモス、オーロ3D、MPEG-Hなどの従来のフォーマットを有することができる。
【0008】
一実施形態において、少なくとも左チャンネル、右チャンネル、およびセンターチャンネルを含むマルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法は、左チャンネル及び右チャンネルに対してセンター抽出を実行し、左残余信号及び右残余信号が残り、抽出されたセンター信号をセンターチャンネルに加えて強化センターチャンネルを取得し、強化センターチャンネルを左残余信号及び右残余信号の両方に加えることを含む。再生のために、強化センターチャンネルがそれぞれ加えられた左残余信号および右残余信号が次に左および右のスピーカーに供給され、強化センターチャンネルがセンタースピーカーに供給される。
【0009】
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも左チャンネル、右チャンネル、およびセンターチャンネルを含むマルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置に関する。本装置は、左チャンネルおよび右チャンネルからセンター信号を抽出するように適合され、左残余信号と右残余信号が残るセンター抽出ユニットを備える。本装置はさらに、抽出されたセンター信号をセンターチャンネルに加えて強化センターチャンネルを取得するための第1加算ユニットと、強化センターチャンネルを左残余信号および右残余信号にそれぞれ加えるための2つのさらなる加算ユニットとを備える。本装置は、強化センターチャンネルと、強化センターチャンネルに対する左右の残余信号のそれぞれの加算結果とを、それぞれの出力部に供給する。
【0010】
さらに別の実施形態において、本発明は、コンピュータ上で実行されると上述の方法をコンピュータに実行させる命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体に関する。さらなる有利な実施形態は、以下の詳細な説明に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の詳細および更なる有利な実施形態は、添付の図を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
図1】第1の従来のオーディオ信号処理。
図2】第2の従来のオーディオ信号処理。
図3】第3の従来のオーディオ信号処理。
図4】オーディオ処理ユニットのブロック図。
図5】オーディオ処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図4は、本発明の一実施形態によるオーディオ処理ユニット400のブロック図を示す。オーディオ処理ユニット400は、少なくとも左チャンネルL、右チャンネルR、センターチャンネルCを含むマルチチャンネルオーディオ入力信号を処理するための装置である。この装置は、マルチチャンネル信号の左チャンネルL及び右チャンネルRの組み合わせからセンター信号410Cを抽出するように適合されたセンター抽出ユニット410を備える。センター抽出ユニット410は、左チャンネルL及び右チャンネルRとの相関をとってもよく、その相関部分410Cを後続の処理段階に供給してもよい。センター抽出ユニット410はまた、それぞれの残余410L、410Rを後続の処理段階に供給する。この装置はさらに、少なくとも3つの加算ユニットS42~S44を備える。第1加算ユニットS42は、抽出されたセンター信号410Cをマルチチャンネルオーディオ入力信号のセンターチャンネルCに加算して、強化センターチャンネル420Cを取得するように適合されている。第2加算ユニットS43は、強化センターチャンネル420Cを右チャンネルRのセンター抽出の残余410Rに加算して、強化右チャンネル430Rを取得するように適合されている。第3加算ユニットS44は、強化センターチャンネル420Cを左チャンネルLのセンター抽出の残余410Lに加算して、強化左チャンネル440Lを取得するように適合されている。
【0013】
センター抽出ユニット410および加算ユニットS42、S43、S44の各々は、1つまたは複数のプロセッサおよび/または加算器などの1つまたは複数のハードウェア要素によって実装されてもよく、ソフトウェアによって構成可能であってもよいが、そうである必要はない。
【0014】
強化左チャンネル440L、強化右チャンネル430R、および強化センターチャンネル420Cは、装置のそれぞれの出力部に供給される。これらは、以下のように、2つのリスニングポジションP1、P2の近くに配置されたそれぞれのラウドスピーカーLS、LS、LSに供給されてもよい。第1スピーカーLSは、リスニングポジションP1、P2の左前方に配置されている。第2スピーカーLSは、2つのリスニングポジションP1、P2の右前方に配置されている。最後に、第3スピーカーLSは、2つのリスニングポジションP1、P2の中央かつ前方に配置されている。したがって、リスニングポジションP1、P2は、車の隣り合う2つの座席、特に運転席と助手席であってもよい。しかし、リスニングポジションは他の似たような環境にも配置できる。有利なことに、この配置は、各リスニングポジションの前に1つずつ、各リスナーの前で知覚されるべき全てのオーディオ情報に対して、2つのファントムセンターを提供する。
【0015】
マルチチャンネルオーディオ信号は、アナログまたはデジタルオーディオ信号を含んでいてもよい。さらに、それはまた、1つまたは複数の追加のオーディオチャンネルを含んでいてもよく、このオーディオチャンネルは、リスニングポジションP1、P2の側方または後方など、1つまたは複数の追加スピーカーに供給されてもよい。これらはここでは考慮しない。センター抽出を除く上記のすべての処理は、アナログ領域で実行されてもよい。特に、加算ユニットは信号のアナログ加算または単純な重ね合わせを実行してもよい。アナログオーディオ入力信号の場合、少なくとも左右のオーディオチャンネルL、Rをデジタル化するための追加のアナログデジタルコンバーター(ADC、図示せず)が含まれる。加算ユニットS42~S44がアナログ加算を行う場合にはまた、センター抽出ユニット410の出力信号をアナログ信号に変換するために、追加のデジタルアナログコンバーター(DAC、図示せず)が設けられる。ADCおよび/またはDACはまた、センター抽出ユニット410の一部であってもよい。あるいは、処理を完全にデジタル領域で実行してもよい。この場合、入力オーディオ信号がデジタル信号であってもよいし、装置が全てのアナログ入力信号をデジタル化するためのデジタル化ステージ(ADC)を有していてもよい。デジタル処理の場合、装置は、オプションでアナログ出力信号を取得するためのDACを備えていてもよい。
【0016】
一実施形態において、本発明は、上記のようなマルチチャンネルオーディオ信号を処理するための装置と、上記のような2つのリスニングポジションに相対して配置された少なくとも3つのスピーカーとを有するシステムに関する。
【0017】
一実施形態において、本発明はオーディオ処理方法に関し、特に、少なくとも左チャンネルL、右チャンネルR、およびセンターチャンネルCを有するマルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法に関する。図5は、一実施形態による方法500のフローチャートを示す。方法500は、抽出されたセンター信号410Cを取得するために、左チャンネルLおよび右チャンネルRに対するセンター抽出を実行すること510を含み、左残余信号410Lおよび右残余信号410Rが残る。本方法はさらに、強化センターチャンネル420Cを取得するために、抽出されたセンター信号410Cをマルチチャンネルオーディオ信号のセンターチャンネルCに加えること520、強化左チャンネル440Lを取得するために、強化センターチャンネル420Cを左残余信号410Lに加えること530、および強化右チャンネル430Rを取得するために、強化センターチャンネル420Cを右残余信号410Rに加えること540を含む。強化左チャンネル440L、強化右チャンネル430R、および強化センターチャンネル420Cは、必要に応じてアナログ信号に変換されることができ、その後、それぞれのスピーカーに出力するために供給されること550ができる。
【0018】
特に、強化左チャンネル440Lは、2つのリスニングポジションP1、P2の左前方に配置された第1スピーカーLSに供給することができる。同様に、強化右チャンネル430Rは、2つのリスニングポジションP1、P2の右前方に配置された第2スピーカーLSに供給することができる。最後に、強化センターチャンネル420Cは、2つのリスニングポジションP1、P2の実質的に中央かつ前方に配置された第3スピーカーLSに供給することができる。オプションとして、強化チャンネル信号440L、430R、420Cは、対応する物理スピーカーに供給される前に、例えばスピーカー管理および遅延調整などの追加の処理ユニットに供給することができる。
【0019】
本発明は、マルチチャンネルオーディオ信号を、それらがどのようにミックスされているかに関係なく、また、2人のリスナーのどちらも従来のスイートスポットに位置することができない場合に、正しく処理するのに特に有利である。つまり、リスナーの前方で知覚されるはずの音は、センターの情報がセンターチャンネルにミックスされようが、左右のチャンネルに分配されようが、2人のリスナーそれぞれのために意図された方法で知覚されるであろう。センター情報の一部がセンターチャンネルにミックスされ、一部が分配されるような中間的な解決策であっても、意図したとおりに再生することができる。それぞれの場合、リスナーごとに1つずつ、2つのファントムセンターが作られる。これは、例えば車内において改善された音響再生が可能であることを意味する。しかし、本発明は、ホームシアター、電車、公共スペースなど、他の環境でも使用できる。また、前方に3つ以上のスピーカーがあるオーディオフォーマットにも適合されてもよい。
【0020】
様々な実施形態について説明してきたが、本明細書に明示的に記載されていなくても、異なる実施形態の特徴の組み合わせが可能であることは明らかである。したがって、そのような組み合わせは本発明の範囲内であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左チャンネル、右チャンネル、およびセンターチャンネルを含むマルチチャンネルオーディオ信号を処理する装置であって、
前記左チャンネルおよび前記右チャンネルからセンター信号を抽出するように適合され、左残余信号及び右残余信号が残るセンター抽出ユニットと、
抽出された前記センター信号を前記マルチチャンネルオーディオ信号の前記センターチャンネルに加えて強化センターチャンネルを取得するように適合された第1加算ユニットと、
前記強化センターチャンネルを前記右残余信号に加えて強化右チャンネルを取得するように適合された第2加算ユニットと、
前記強化センターチャンネルを前記左残余信号に加えて強化左チャンネルを取得するように適合された第3加算ユニットと、
前記強化左チャンネル、前記強化右チャンネル、及び前記強化センターチャンネルを供給するための出力部と、を備える装置と、
少なくとも第1および第2リスニングポジションと、
前記2つのリスニングポジションの左前方に配置された第1スピーカー、前記2つのリスニングポジションの右前方に配置された第2スピーカー、および前記2つのリスニングポジションの実質的に中央かつ前方に配置された第3スピーカーを有する、少なくとも3つのスピーカーと、を備え、
前記強化左チャンネルは前記第1スピーカーに、前記強化右チャンネルは前記第2スピーカーに、前記強化センターチャンネルは前記第3スピーカーに、それぞれ設けられているシステム。
【請求項2】
前記センター抽出ユニットは、前記マルチチャンネルオーディオ信号の前記左チャンネルと前記右チャンネルとの間の相関をとり、その相関部分を供給するように適合されている、請求項1に記載のシステム
【請求項3】
前記センター抽出ユニットはデジタル処理ユニットであり、
前記第1加算ユニット、前記第2加算ユニット、および前記第3加算ユニットはデジタル加算を実行する、請求項1に記載のシステム
【請求項4】
前記センター抽出ユニットはデジタル処理ユニットであり、
前記センター抽出ユニットによって供給される信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバーターをさらに備え、
前記第1加算ユニット、前記第2加算ユニット、および前記第3加算ユニットはアナログ加算を実行する、請求項1に記載のシステム
【請求項5】
前記マルチチャンネルオーディオ信号は、1つまたは複数の追加オーディオチャンネルを含み、
前記1つまたは複数の追加オーディオチャンネルは、リスニングポジションの側方または後方にある1つまたは複数の追加スピーカーに供給される、請求項1に記載のシステム
【請求項6】
前記2つのリスニングポジションは、車の隣り合う2つの座席である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも左チャンネル、右チャンネル、およびセンターチャンネルを含むマルチチャンネルオーディオ信号を処理する方法であって、
前記左チャンネルおよび前記右チャンネルに対してセンター抽出を行って抽出されたセンター信号を取得し、左残余信号及び右残余信号が残り、
抽出された前記センター信号を前記マルチチャンネルオーディオ信号の前記センターチャンネルに加えて強化センターチャンネルを取得し、
前記強化センターチャンネルを前記左残余信号に加えて強化左チャンネルを取得し、
前記強化センターチャンネルを前記右残余信号に加えて強化右チャンネルを取得し、
それぞれのスピーカーに出力するために、前記強化左チャンネル、前記強化右チャンネル、および前記強化センターチャンネルを供給することを含み、
前記強化左チャンネルは、2つのリスニングポジションの左前方に配置された第1スピーカーに供給され、
前記強化右チャンネルは、前記2つのリスニングポジションの右前方に配置された第2スピーカーに供給され、
前記強化センターチャンネルは、前記2つのリスニングポジションの実質的に中央かつ前方に配置された第3スピーカーに供給される方法。
【請求項8】
前記2つのリスニングポジションは、車の隣り合う2つの座席である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記隣り合う2つの座席は、運転席と助手席である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ上で実行されると請求項7に記載の方法を前記コンピュータに実行させる命令を記憶した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】