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特表2024-524385ビニルピロリドンポリマーを含む低電気導電率を有する伝熱流体、その調製方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ビニルピロリドンポリマーを含む低電気導電率を有する伝熱流体、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
C09K5/10 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580515
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022067672
(87)【国際公開番号】W WO2023275016
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182326.5
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517207808
【氏名又は名称】アルテコ エヌ.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】ARTECO N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレリック サンダー
(72)【発明者】
【氏名】リーヴェンス セルジュ
(57)【要約】
本発明は、基礎流体とN-ビニルピロリドンポリマーとを含む、濃縮されすぐ使用できる冷却液組成物に関し、組成物は、100μS/cm未満の25℃における電気導電率を有し、基礎流体が水及びアルコールからなり、アルコールが基礎流体の重量に基づいて10~99.5重量%の範囲の量で存在しており、組成物が、組成物の全重量に基づいて75重量%超の基礎流体を含み、無機化合物の量が組成物の全重量に基づいて100ppm未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎流体とN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンとを含む冷却液組成物であって、前記組成物が100μS/cm未満の25℃における電気導電率を有し、
前記基礎流体が水及びアルコールからなり、
前記アルコールが前記基礎流体の重量に基づいて10~99.5重量%の範囲の量で存在しており、
前記組成物が、前記組成物の全重量に基づいて75重量%超の基礎流体を含み、及び
無機化合物の量が前記組成物の全重量に基づいて100ppm未満である、冷却液組成物。
【請求項2】
50μS/cm未満、好ましくは25μS/cm未満、より好ましくは10μS/cm未満、更により好ましくは5μS/cm未満の25℃における電気導電率を有する、請求項1に記載の冷却液組成物。
【請求項3】
前記アルコールが、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフルフリル、エトキシ化フルフリル、グリセロールのジメチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、メトキシエタノール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の冷却液組成物。
【請求項4】
前記アルコールが前記基礎流体の重量に基づいて30~70重量%の範囲の量で存在している、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却液組成物。
【請求項5】
前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくは前記ポリビニルピロリドンが500~2,500,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却液組成物。
【請求項6】
前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくは前記ポリビニルピロリドンが、500~50,000g/モルの範囲、より好ましくは1,000~15,000g/モルの範囲、更により好ましくは1,500~10,000g/モルの範囲、例えば約2000g/モル、約2500g/モル、約5000g/モル又は約8000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項5に記載の冷却液組成物。
【請求項7】
チアゾール、トリアゾール、ポリオレフィン、ポリアルキレンオキシド、シリコン油、鉱油、ケイ酸塩エステル、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族トリカルボン酸からなる群から選択される1つ以上の追加の添加剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷却液組成物。
【請求項8】
無機化合物の量が50ppm未満、好ましくは25ppm未満、より好ましくは10ppm未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の冷却液組成物。
【請求項9】
伝熱流体であるすぐ使用できる組成物の形態で提供される請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却液組成物であって、
・ 前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくは前記ポリビニルピロリドンの濃度が、前記組成物の全重量に基づいて0.0001~10重量%の範囲内、好ましくは0.00015~5重量%の範囲内、より好ましくは0.0002~2重量%の範囲内であり、及び
・ 前記組成物が、前記組成物の全重量に基づいて90重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは98重量%超、好ましくは99重量%超の基礎流体を含む、冷却液組成物。
【請求項10】
3~8の間、より好ましくは3.5~7.5の間、最も好ましくは4~7の間のpHを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の冷却液組成物。
【請求項11】
前記基礎流体が水とモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択されるアルコールとからなり、前記アルコールが前記基礎流体の重量に基づいて30~70重量%の範囲の量で存在している、請求項9又は10に記載の冷却液組成物。
【請求項12】
20℃においてASTM標準試験法D445-19aに従って測定される20℃における動粘度が、0.1~100mm/sの範囲、好ましくは0.5~50mm/sの範囲、より好ましくは1~10mm/sの範囲である、請求項9~11のいずれか一項に記載の冷却液組成物。
【請求項13】
水及び/又はアルコールの添加だけで、好ましくは、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール及び/又はグリセロールの添加だけで、最も好ましくは水の添加だけで請求項10~12のいずれか一項に記載のすぐ使用できる組成物を調製するために適した濃縮物の形態で提供される、請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却液組成物。
【請求項14】
電気導電率の発現抑制剤及び/又は酸化防止剤として、水とアルコールとを含む低電気導電率の冷却液組成物におけるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンの使用。
【請求項15】
・ アルコール及び水ベースの冷却液、好ましくはモノエチレングリコールベースの冷却液中のグリコレート又はホルメートイオンの形成を抑制するための、又は
・ アルコール及び水ベースの冷却液中の低い電気導電率を維持するための、
N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-ビニルピロリドンポリマーを含むと共に例えば燃料電池における多様な用途に有用である低電気導電率を有する伝熱流体に関する。本発明は更に、前記伝熱流体の調製方法、並びに前記伝熱流体を使用する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
伝熱流体は、内燃機関、ソーラー・システム、燃料電池、電気モーター、発電機、電子装置、バッテリー装置等を伴う熱交換システムにおいて広範囲に使用されている。伝熱流体は一般的に、基礎流体と1つ以上の添加剤とから構成される。
【0003】
従来より、水は、伝熱特性に関して好ましい基礎流体であった。多くの用途において、不凍特性が必要とされ、このような場合、アルコール、グリコール又は塩のような凍結点降下剤と混合された水からなる基礎流体が使用される。伝熱流体中に存在している添加剤を使用して、凍結点の(さらなる)低下、熱交換特性の改良、腐蝕の抑制などの様々な機能性を得ることができる。伝熱流体は金属部品(アルミニウム合金、鋳鉄、鋼、銅、黄銅、はんだなど)と連続的に接触しているので、それらは、1つ以上の腐蝕抑制剤をほとんど常に含有する。
【0004】
燃料電池は、貯えられた化学エネルギーを燃料の制御された酸化によって電気エネルギーに変換する電気化学電池である。燃焼エンジンと比較して汚染物質の比較的低い排出量によって、自動車及びパワー・プラントなどの用途において燃料電池は魅力的な選択肢となる。大抵の用途において、いくつかの電気化学電池をいわゆる燃料電池積層体として直列に一緒に積み重ねて、より高い電圧を生じさせることを可能にする。燃料電池積層体によって発生された熱は、バイポーラ板によって形成される溝に冷却液を流すことによって除去することができる。
【0005】
燃料電池積層体の正極端と負極端の間の電位差が分巻電流を冷却液に流れさせることができ、したがって燃料電池の電圧を低下させる。電圧の有害な低下に加えて、分巻電流は、燃料電池積層体の正極端の近くのセパレータープレートの腐蝕などのさらなる問題を引き起こす。したがって、燃料電池などの電気用途において使用するための冷却液は、低い電気導電率(すなわち高い電気抵抗)を有すると共に冷却液の寿命にわたってこれを維持できる必要がある。
【0006】
最も知られた伝熱流体(例えば冷却液)は内燃機関用に特別に設計されており、それらは(i)高い電気導電率を有するか、又は(ii)特に高温において、老化した時に著しく電気導電性になるので、燃料電池、バッテリー又はパワーエレクトロニクスなどの電気用途において使用するために適していない。老化時の電気導電率の増加は一般的に、しばしば基礎流体として使用されるアルコール、特にグリコールの分解による、添加剤の分解による、金属腐蝕による及び/又は冷却回路中の不純物によるイオン化合物の形成に帰せられる。
【0007】
したがって、近年、燃料電池などの電気用途において使用するために適している伝熱流体を開発することに関心が高まっている。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0109979A1号明細書には、ベース剤とベース剤の酸化を抑えるか又はイオンが冷却システム内に溶出するのを阻止し、冷却液の電気導電率の増加を防ぐ、アミド化合物、イミド化合物又はアゾール化合物である錆止添加剤とを含む電気車のための伝熱流体が記載されている。
【0009】
欧州特許第1739775B1号明細書には、ベース剤と、糖アルコールであり且つベース剤の酸化を抑えると共に電気導電率の増加を防ぐ錆止添加剤とを含む伝熱流体が記載されている。
【0010】
低い電気導電率を維持することができる公知の伝熱流体は、いくつかの不利な点を有する。それらは、例えば、費用がかかり、毒性であり得るか又は他の望ましくない特性を有し得る添加剤の存在に依拠する。更に、低い電気導電率を維持するために当該技術分野において使用される添加剤はしばしばプロセスにおいて消費されるので、多量の添加剤が実用のために必要とされ、それはまた、伝熱流体の他の特性に望ましくない仕方で影響を与えることもあり得る。
【0011】
アルコールベースの、例えばグリコールベースの伝熱流体はいくつかの利点を有する。例えば、それらは低い粘度及び高い引火点と組み合わせられた低い凍結点を有し、異なったグリコールの安全プロフィールは広範囲にわたって検討されている。
【0012】
アルミニウムの存在下で老化時に低い電気導電率を維持することができるアルコールベースの、特にグリコールベースの伝熱流体を提供することが特に望ましいことを本発明者は見出した。それらの軽量のために、アルミニウム系材料はしばしば、冷却板及び熱交換器などの部品のために好ましい。
【0013】
好ましくはアルコールベースの改良された伝熱流体を提供することが本発明の目的であり、これらは、燃料電池、バッテリー又はパワーエレクトロニクスなどの電気システムにおいて冷却液として用いるために適している。
【0014】
したがって、好ましくはアルコールベースの伝熱流体を提供することが本発明の目的であり、これらは、上昇した温度で老化した時など、老化時に低い電気導電率を維持することができる低電気導電率を有する。
【0015】
好ましくはアルコールベースの伝熱流体を提供することが本発明のさらなる目的であり、これらは、公知の伝熱流体ほど添加剤を必要としないままで、上昇した温度で老化した時など老化時に同等の低い電気導電率を維持することができる。
【0016】
公知の伝熱流体と比べて長時間にわたる有効寿命を有するグリコールベースの伝熱流体を提供することが本発明のさらなる目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
基礎流体とN-ビニルピロリドンポリマーとを含む冷却液組成物を使用することによってこれらの目的の1つ以上を果たすことができることを本発明者は見出し、ここで、N-ビニルピロリドンポリマーはポリビニルピロリドンホモポリマー及びポリビニルピロリドンコポリマーから選択され、組成物は、100μS/cm未満の25℃における電気導電率を有する。
【0018】
添付した実施例に示されるように、N-ビニルピロリドンポリマーは、上昇した温度で老化した時に低い電気導電率を維持することが驚くべきことに見出された。更に、本明細書による冷却液組成物は、実験の項において記載される試験手順を用いてアルミニウム基材の存在下で上昇した温度で老化した時にこの低い電気導電率を維持することができることが驚くべきことに見出された。
【0019】
本明細書による冷却液組成物は、より少ない添加剤(特に酸化防止剤)を必要とし及び/又は当該技術分野に公知の同等の冷却液組成物よりも長い時間の間老化時に低い電気導電率を維持することができる電気用途において使用するために適した伝熱流体又は冷却液の提供を有効に可能にすることを本開示に基づいて当業者は理解するであろう。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、実験結果から見ることができるように、老化された試料の電気導電率は、混合物中に存在しているアルコールに関連した、特にグリコールに関連した酸化生成物、グリコレート及びホルメートの量に相関し得ると本発明者は考えている。N-ビニルピロリドンポリマーが金属表面と相互作用して、伝熱流体及び金属基材から金属イオンを分離するのにいずれかの仕方で有効である(弱く結合した)フィルムを形成すると考えられる。
【0020】
ポリビニルピロリドンは、内燃機関のための不凍剤濃縮物中の硬水安定剤として公知である(例えば米国特許出願公開第2008/0001118A1号明細書を参照のこと)。しかしながら、冷却液組成物における低い電気導電率を維持するためのN-ビニルピロリドンポリマーの使用は当該技術分野にまだ公知ではなかった。
【0021】
したがって、第1の態様において本発明は、基礎流体とN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンとを含む冷却液組成物を提供し、ここで、組成物は100μS/cm未満の25℃における電気導電率を有し、基礎流体は水及びアルコールからなり、アルコールは基礎流体の重量に基づいて10~99.5重量%の範囲の量で存在しており、組成物は、組成物の全重量に基づいて75重量%超の基礎流体を含み、及び無機化合物の量は組成物の全重量に基づいて100ppm未満である。本明細書において示されるように、これらの冷却液組成物は、実験の項において記載される試験手順を用いてアルミニウム基材(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で、上昇した温度で老化した時などに、低い電気導電率を維持することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明の冷却液組成物は、本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物の形態で提供される。
【0023】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される組成物を調製するための方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、濃縮物から本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物を調製するための方法を提供する。
【0025】
別の態様では本発明は、N-ビニルピロリドンポリマーの相当する使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の態様は、基礎流体と、ポリビニルピロリドンホモポリマー及びポリビニルピロリドンコポリマーから選択される、N-ビニルピロリドンポリマーとを含む冷却液組成物に関し、ここで、組成物は100μS/cm未満の25℃における電気導電率を有し、基礎流体は水及びアルコールからなり、ここで、アルコールは基礎流体の重量に基づいて10~99.5重量%の範囲の量で存在しており、組成物は、組成物の全重量に基づいて75重量%超の基礎流体を含み、及び無機化合物の量は組成物の全重量に基づいて100ppm未満である。
【0027】
冷却液組成物は好ましくは、50μS/cm未満、より好ましくは25μS/cm未満、更により好ましくは10μS/cm未満、よりいっそう好ましくは5μS/cm未満の25℃における電気導電率を有する。
【0028】
基礎流体
本発明に従って基礎流体は水及びアルコールからなる。好ましい実施形態ではアルコールは、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフルフリル、エトキシ化フルフリル、グリセロールのジメチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、メトキシエタノール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「モノエチレングリコール」は「エタン-1,2-ジオール」を意味すると解釈されるべきであり、互いに交換可能に「MEG」と称される。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「モノプロピレングリコール」は「プロパン-1,2-ジオール」を意味すると解釈されるべきであり、互いに交換可能に「MPG」と称される。
【0031】
本明細書で用いられる場合、用語「グリセロール」は「プロパン-1,2,3-トリオール」を意味し、グリセリンと同義語である。好ましい本発明の実施形態では基礎流体は水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール又はそれらの混合物からなる。
【0032】
基礎流体は水及びアルコールからなり、ここで、アルコールは、(基礎流体の重量に基づいて)10~99.5重量%、好ましくは10~80重量%、より好ましくは30~70重量%の量で存在している。特定の実施形態ではアルコールは(基礎流体の重量に基づいて)33~60重量%の範囲の量で存在している。
【0033】
本発明の実施形態では、基礎流体は、(基礎流体の重量に基づいて)50重量%超の水、好ましくは70重量%超、より好ましくは85重量%超を含む。
【0034】
本発明の実施形態では、基礎流体は(基礎流体の重量に基づいて)50重量%超のモノエチレングリコール、好ましくは70重量%超、より好ましくは85重量%超、最も好ましくは95重量%超のモノエチレングリコールを含む。
【0035】
本発明の実施形態では、基礎流体は(基礎流体の重量に基づいて)50重量%超のモノプロピレングリコール、好ましくは70重量%超、より好ましくは85重量%超、最も好ましくは95重量%超のモノプロピレングリコールを含む。
【0036】
本発明の実施形態では、基礎流体は(基礎流体の重量に基づいて)50重量%超の1,3-プロパンジオール、好ましくは70重量%超、より好ましくは85重量%超、最も好ましくは95重量%超の1,3-プロパンジオールを含む。
【0037】
本発明の実施形態では、基礎流体は(基礎流体の重量に基づいて)50重量%超のグリセロール、好ましくは70重量%超、より好ましくは85重量%超、最も好ましくは95重量%超のグリセロールを含む。
【0038】
好ましい本発明の実施形態では、(組成物の全重量に基づいて)78重量%超の基礎流体、より好ましくは85重量%超、更により好ましくは90重量%超、よりいっそう好ましくは95重量%超又は98重量%超の基礎流体を含む、本明細書に記載される組成物が提供される。
【0039】
当業者によって理解されるように、基礎流体は通常、「適量」で組成物に加えられる。本発明の実施形態では、組成物は、(組成物の全重量に基づいて)99.9重量%未満の基礎流体、例えば99.8重量%未満、99.5重量%未満又は99重量%未満、98重量%未満、97重量%未満、96重量%未満、95重量%未満、94重量%未満、93重量%未満、92重量%未満、91重量%未満、90重量%未満、89重量%未満、88重量%未満、87重量%未満、86重量%未満、85重量%未満、84重量%未満、83重量%未満、82重量%未満、又は81重量%未満の基礎流体を含む。
【0040】
好ましい本発明の実施形態では、(組成物の全重量に基づいて)99.9重量%未満の基礎流体、又は99.5重量%未満、又は99重量%未満を含む、本明細書に記載される組成物が提供される。
【0041】
N-ビニルピロリドンポリマー
本発明に従って、本明細書に記載される組成物は、ポリビニルピロリドンホモポリマー及びポリビニルピロリドンコポリマーから選択されるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンホモポリマーを含む。したがって、本明細書で用いられる場合用語N-ビニルピロリドンポリマーは、N-ビニル-2-ピロリドンとしても公知の、N-ビニルピロリドンを含むか又はからなるモノマーに由来するポリマーに関する。この文献において用語「ポリビニルピロリドン」が付加物(例えばホモポリマー又はコポリマー)又は追加の規定なしに使用される時はいつでも、ポリビニルピロリドンホモポリマーは、PVPと略されるポリビニルピロリドン(すなわちホモポリマー)と称され、モノマーN-ビニルピロリドンから重合によって合成される水溶性ポリマーであり、ここで、nはポリマーの重合度を規定する(下記の図式を参照)。また、ポリビニルピロリドンは、ポリビドン、ポビドン、ポリ[1-(2-オキソ-1-ピロリジニル)エチレン]、1-エテニル-2-ピロリドンホモポリマー又は1-ビニル-2-ピロリジノン-ポリマーとも一般に呼ばれる。化学式は(CNO)であり、及びCAS番号は9003-39-8である。
【化1】
【0042】
特定の好ましい実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマーはポリビニルピロリドンホモポリマーであり、これは、ポリビニルピロリドンが、N-ビニルピロリドンであるモノマーの1つの種に由来することを意味する。他の好ましい実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマーはポリビニルピロリドンコポリマーであり、これは、ポリビニルピロリドンが、モノマーの2つ以上の種、とりわけN-ビニルピロリドンを少なくとも1つの他のモノマーと組み合わせたものに由来することを意味する。このような他のモノマーの非限定的な例はスチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレン、メチルメタクリレート、塩化ビニル及びエチレンオキシドである。
【0043】
好ましい実施形態では、ポリビニルピロリドンコポリマーはN-ビニルピロリドンと少なくとも1つの他のモノマーに由来し、ここで、N-ビニルピロリドンモノマーの百分率は、ポリビニルピロリドンコポリマー中のモノマーの総数に基づいて少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。当業者によって理解されるように、ポリビニルピロリドンコポリマー中のモノマーの総数に基づくN-ビニルピロリドンモノマーの最小百分率はとりわけ、組成物中へのポリビニルピロリドンコポリマーの溶解度、より詳しくは基礎流体中への溶解度によって決定される。
【0044】
本発明による組成物において適用され得る好ましいポリビニルピロリドンコポリマーには、N-ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー(ここで、N-ビニルピロリドンモノマーの百分率は、ポリビニルピロリドンコポリマー中のモノマーの総数に基づいて少なくとも25%である)、N-ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマーの加水分解形(ここで、N-ビニルピロリドンモノマーの百分率はポリビニルピロリドンコポリマー中のモノマーの総数に基づいて少なくとも10%である)、及びN-ビニルピロリドンとN-ビニルカプロラクタムとのコポリマー(ここで、N-ビニルピロリドンモノマーの百分率は、ポリビニルピロリドンコポリマー中のモノマーの総数に基づいて少なくとも40%である)が含まれる。
【0045】
本発明に従ってN-ビニルピロリドンポリマーはポリビニルピロリドンホモポリマーであることが特に好ましい。
【0046】
本発明に従って、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、500~2,500,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mを有する。当業者によって理解されるように、重量平均分子量はポリマー試料中の分子の重量分率であり、ポリマー試料中の単一巨大分子の分子質量の平均を与える。本明細書で定義される重量平均分子量は、式M=(ΣN )/(ΣN)を用いて決定される。当業者は、様々な鎖長のポリマーの重量平均分子量を決定する異なった技術を知っている。重量平均分子量及び相当する測定法は典型的に、考察されるポリマーの製品データシート上に示される。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは3,000~2,500,000g/モルの範囲、好ましくは5,000~2,250,000g/モルの範囲、より好ましくは7,500~2,00,000g/モルの範囲、更により好ましくは8,000~1,800,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは3,000~700,000g/モルの範囲、好ましくは5,000~500,000g/モルの範囲、より好ましくは7,500~250,000g/モルの範囲、更により好ましくは8,000~100,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。これらの重量平均分子量範囲を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、より低い動粘度を有し、それによって組成物の得られた電荷移動を改良し、これは低電気導電率の冷却液の特性のために有益であるので、好ましい。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは700,000~2,500,000g/モルの範囲、好ましくは750,000~2,250,000g/モルの範囲、より好ましくは850,000~2,000,000g/モルの範囲、更により好ましくは1,000,000~1,800,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。
【0050】
好ましい実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは500~50,000g/モルの範囲、より好ましくは1,000~15,000g/モルの範囲、更により好ましくは1,500~10,000g/モルの範囲、例えば約2000g/モル、約2500g/モル、約5000g/モル又は約8000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0051】
添加剤として好適に使用できるN-ビニルピロリドンポリマーは、BASF、Sigma-Aldrich又は日本触媒などの商業供給元から購入することができる。市販のポリビニルピロリドンの例は、Luvitec K17(M=9,000g/モル)、Luvitec K30(M=50,000g/モル)、Luvitec K90(M=1,400,000g/モル)及びPVP K30である。
【0052】
本発明の実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、水中30~60重量%のMEGからなる基礎流体中の0.0001~1重量%の範囲内のN-ビニルピロリドンポリマー;好ましくは0.00015~0.5重量%の範囲内のN-ビニルピロリドンポリマー;最も好ましくは0.0002~0.5重量%の範囲内のN-ビニルピロリドンポリマーの濃度で唯一の添加剤として使用される場合50μS/cm未満、好ましくは25μS/cm未満、好ましくは10μS/cm未満、より好ましくは5μS/cm未満、最も好ましくは2μS/cm未満の25℃における電気導電率を維持することができ、ここで、電気導電率は、実験の項において記載される試験手順を用いて例えばアルミニウム基材(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で伝熱流体を90℃で14日間老化させた後に測定される。
【0053】
特定の好ましい実施形態では、500~12,000g/モルの重量平均分子量を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、水中30~60重量%のMEGからなる基礎流体中の0.002~0.5重量%のN-ビニルピロリドンポリマーの濃度で唯一の添加剤として使用される場合、50μS/cm未満、好ましくは25μS/cm未満、好ましくは10μS/cm未満、より好ましくは5μS/cm未満、最も好ましくは2μS/cm未満の25℃における電気導電率を維持することができ、ここで、電気導電率は、実験の項において記載される試験手順を用いて例えばアルミニウム基材(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で伝熱流体を90℃で14日間老化させた後に測定される。
【0054】
特定の好ましい実施形態では、20,000~50,000g/モルの重量平均分子量を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、水中30~60重量%のMEGからなる基礎流体中の0.002~0.5重量%のN-ビニルピロリドンポリマーの濃度で唯一の添加剤として使用される場合50μS/cm未満、好ましくは25μS/cm未満、好ましくは10μS/cm未満、より好ましくは5μS/cm未満、最も好ましくは2μS/cm未満の25℃における電気導電率を維持することができ、ここで、電気導電率は、実験の項において記載される試験手順を用いて例えばアルミニウム基材(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で伝熱流体を90℃で14日間老化させた後に測定される。
【0055】
実施形態では、40,000~80,000g/モルの重量平均分子量を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、水中30~60重量%のMEGからなる基礎流体中の0.0002~0.5重量%のN-ビニルピロリドンポリマーの濃度で唯一の添加剤として使用される場合50μS/cm未満、好ましくは25μS/cm未満、好ましくは10μS/cm未満、より好ましくは5μS/cm未満、最も好ましくは2μS/cm未満の25℃における電気導電率を維持することができ、ここで、電気導電率は、実験の項において記載される試験手順を用いて例えばアルミニウム基材(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で伝熱流体を90℃で14日間老化させた後に測定される。
【0056】
好ましい実施形態では、500~50,000g/モル、より好ましくは1,000~15,000g/モル、更により好ましくは1,500~10,000g/モルの重量平均分子量を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、水中30~60重量%のMEGからなる基礎流体中の0.0002~0.5重量%のN-ビニルピロリドンポリマーの濃度で唯一の添加剤として使用される場合50μS/cm未満、好ましくは25μS/cm未満、好ましくは10μS/cm未満、より好ましくは5μS/cm未満、最も好ましくは2μS/cm未満の25℃における電気導電率を維持することができ、ここで、電気導電率は、実験の項において記載される試験手順を用いて例えばアルミニウム基材(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で伝熱流体を90℃で14日間老化させた後に測定される。
【0057】
電気導電率
本発明の実施形態では、Radiometer CopenhagenCDC745-導電率セル及びRadiometer Copenhagen温度センサーT201を使用してRadiometer CopenhagenCDM210電気導電率計によってASTMD1125に従って測定されるとき、本明細書に他の箇所で記載される電気導電率を有する本明細書に記載される冷却液組成物が提供される。
【0058】
本発明の実施形態では、実験の項において記載される試験手順を用いて任意選択的にアルミニウム(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で90℃で14日間老化させた後に、50μS/cm未満、好ましくは25μS/cm未満、好ましくは10μS/cm未満、より好ましくは5μS/cm未満、更により好ましくは2μS/cm未満の25℃における電気導電率を有する本明細書に記載される冷却液組成物が提供される。
【0059】
本発明の実施形態では、実験の項において記載される試験手順を用いて任意選択的にアルミニウム(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で90℃で14日間老化させた後に、グリコレートの濃度及び/又はホルメートの濃度が30ppm未満、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満である本明細書に記載される冷却液組成物が提供され、ここで、グリコレートの濃度及びホルメートの濃度はイオンクロマトグラフィーによって測定される。
【0060】
腐蝕の抑制
この文献全体にわたって説明されるように、本明細書による冷却液組成物は、アルミニウムをあまり腐食しないで本明細書に記載される電気導電率特性を示す。したがって、本発明の実施形態では、組成物に浸されるアルミニウムクーポン(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)が、実験の項に記載される手順を使用して試験される時に20mg未満、好ましくは10mg未満、好ましくは2mg未満の減量を示す本明細書に記載される組成物が提供される。
【0061】
無機化合物
本発明に従って本明細書に記載される組成物は無機化合物を含むことができる。存在している場合、無機化合物の(総合)量は、冷却液組成物の全重量に基づいて100ppm未満である。当業者によって理解されるように、無機化合物は炭素-水素結合を含まない。対照的に本発明による組成物において使用することができる有機錆止剤などの有機化合物は、炭素-水素結合を含まない。
【0062】
当業者によって理解されるように、高濃度の無機化合物、特に塩の形の無機化合物は、冷却液組成物の電気導電率を増加させ得、それは、燃料電池の電圧の低下及びセパレータープレートの腐蝕をもたらすので、それらは燃料電池において使用するためには不適当である。したがって、本明細書に記載される冷却液組成物は典型的に、無機化合物の量が組成物の全重量に基づいて100ppm未満、好ましくは75ppm未満、より好ましくは50ppm未満、更により好ましくは25ppm未満、最も好ましくは10ppm未満である時に電気導電率の低下がある。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物は、25℃における組成物の電気導電率が100μS/cm未満であるならば、或る無機錆止剤を組成物の全重量に基づいて例えば1ppm超、3ppm超、又は5ppm超の量で含むことができる。
【0064】
本発明の実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物は、ケイ酸塩、モリブデン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、タングステン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、ホスホン酸塩、セレン酸塩及びリン酸塩からなる群から選択される無機錆止剤を含む。
【0065】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物はホウ砂、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム及び安息香酸ナトリウムを含まない。
【0066】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物はカーボンブラックを含まない。
【0067】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物はホウ酸塩及び硝酸セリウムを含まない。
【0068】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物は水可溶性モリブデン酸塩、亜硝酸塩及び硝酸塩を含まない。
【0069】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物は水酸化カリウムを含まない。
【0070】
追加の添加剤
当業者によって理解されるように、本明細書に示される教示に基づいて、本明細書による冷却液組成物は、当該技術分野に慣例的である、1つ以上の追加の添加剤を含むことができる。得られた組成物の電気導電率が本発明に従うように特定の添加剤のどれだけを添加することができるのかを決定することは、当業者の日常的能力の範囲内である。当業者によって理解されるように、非イオン性の追加の添加剤が好ましい。冷却液組成物は、明確に規定された量の水、アルコール、N-ビニルピロリドンポリマー及び無機化合物を含む。したがって、1つ以上の追加の添加剤は、水、アルコール及びN-ビニルピロリドンポリマー並びに無機化合物と異なっている。
【0071】
本発明の特定の実施形態では本明細書で提供される組成物は、1つ以上の追加の添加剤、好ましくは、腐蝕抑制剤、液体誘電体、酸化防止剤、耐摩耗性剤、洗剤及び消泡剤からなる群から選択される1つ以上の追加の添加剤を含む。好ましい実施形態では本発明の組成物は、(組成物の全重量に基づいて)0.001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.02~3重量%の範囲内の量で前記追加の添加剤の1つ以上を更に含む。
【0072】
好ましい実施形態では本発明の冷却液組成物は、チアゾール、トリアゾール、ポリオレフィン、ポリアルキレンオキシド、シリコン油、ケイ酸塩エステル(例えばSi(OR)(RはC~Cアルキル基である))、鉱油、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸からなる群から選択される1つ以上の追加の添加剤を更に含む。好ましい実施形態では本発明の冷却液組成物は、(組成物の全重量に基づいて)0.001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.02~3重量%の範囲内の量で前記添加剤の1つ以上を更に含む。
【0073】
好ましい本発明の実施形態では、追加の添加剤としてチアゾール又はトリアゾール、好ましくは芳香族トリアゾール又はチアゾールである腐蝕抑制剤を含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。好ましい本発明の実施形態では、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のトリアゾールを追加の添加剤として含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0074】
本発明の実施形態では、追加の添加剤としてトリアゾール又はチアゾール、好ましくはトリルトリアゾール又はベンゾトリアゾールを(組成物の全重量に基づいて)0.001重量%超、好ましくは0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0075】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として脱泡剤を含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、脱泡剤は、ポリアルキレンオキシド、シリコンポリマー(例えば3Dシリコンポリマー)又はシリコンオイルからなる群から選択される。
【0076】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として脱泡剤を(組成物の全重量に基づいて)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0077】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として芳香族カルボン酸塩、脂肪族モノカルボン酸塩、脂肪族ジカルボン酸塩、脂肪族トリカルボン酸塩及びポリマーの腐蝕抑制剤からなる群から選択される腐蝕抑制剤を含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0078】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として脂肪族モノカルボン酸塩、好ましくはC~C12脂肪族モノカルボン酸塩からなる群から選択される脂肪族モノカルボン酸塩を(組成物の全重量に基づいて)50ppm超、好ましくは100ppm超、好ましくは500ppm超及び/又は5000ppm未満、好ましくは2500ppm未満、好ましくは1000ppm未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0079】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として脂肪族ジカルボキシレート、好ましくはC~C16脂肪族ジカルボン酸塩からなる群から選択される脂肪族ジカルボキシレートを(組成物の全重量に基づいて)50ppm超、好ましくは100ppm超、好ましくは500ppm超及び/又は5000ppm未満、好ましくは2500ppm未満、好ましくは1000ppm未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0080】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として脂肪族トリカルボキシレート、好ましくはC~C18脂肪族トリカルボン酸塩からなる群から選択される脂肪族トリカルボキシレートを(組成物の全重量に基づいて)50ppm超、好ましくは100ppm超、好ましくは500ppm超及び/又は5000ppm未満、好ましくは2500ppm未満、好ましくは1000ppm未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0081】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として芳香族カルボキシレート、好ましくはベンゾエート、ベンゼン-1,2-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,2,3-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,2,4-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族カルボキシレートを(組成物の全重量に基づいて)50ppm超、好ましくは100ppm超、好ましくは500ppm超及び/又は5000ppm未満、好ましくは2500ppm未満、好ましくは1000ppm未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0082】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として酸化防止剤を含む本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。好ましくは、酸化防止剤は、2,6ジ-t-ブチルメチルフェノール及び4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)などのフェノール;p,p-ジオクチルフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、フェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン、アルキルフェニル-1-ナフタタルアミン及びアルキル-フェニル-2-ナフタル-アミンなどの芳香族アミン、並びに硫黄含有化合物からなる群から選択される。
【0083】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として酸化防止剤を(組成物の全重量に基づいて)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0084】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として耐摩耗剤を含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0085】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として耐摩耗剤を(組成物の全重量に基づいて)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0086】
本発明の実施形態では、追加の添加剤として1つ以上の界面活性剤を含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。好ましい実施形態では、1つ以上の界面活性剤は、例えば:
・ ソルビタン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル;
・ ポリアルキレンアミドグリコール;
・ ポリアルキレンアミドグリコールエステル;
・ エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー及びブロックコポリマー;
・ ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン誘導体;及び
・ アルコキシル化アルコールエーテル
からなる群から選択される1つ以上の非イオン性界面活性剤など、非イオン性界面活性剤からなる群から選択される。
【0087】
本発明の実施形態では、前記1つ以上の界面活性剤を(組成物の全重量に基づいて)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0088】
本発明の特定の実施形態では、追加の添加剤として誘電性液体を含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。好ましい誘電性液体は鉱油、シリコン油及びそれらの混合物である。
【0089】
本発明の特定の実施形態では本明細書で提供される冷却液組成物は、(組成物の全重量に基づいて)0.0001重量%超の誘電性液体、好ましくは0.001重量%超、好ましくは0.01重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満を含む。
【0090】
本発明の特定の実施形態では本明細書で提供される冷却液組成物は、(組成物の全重量に基づいて)0.0001~10重量%の誘電性液体、好ましくは0.001~5重量%、好ましくは0.01~1重量%を含む。
【0091】
本発明の特定の実施形態では、追加の添加剤として欧州特許第1809718B1号明細書及び韓国特許第102108349B1号明細書に開示される非イオン性染料などの1つ以上の非イオン性染料を好ましくは(組成物の全重量に基づいて)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0092】
本発明の特定の実施形態では、安全上の理由のために、追加の添加剤として1つ以上の苦味剤を好ましくは(組成物の全重量に基づいて)100ppm未満、好ましくは80ppm未満、60ppm未満、40ppm未満、又は20ppm未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0093】
本発明の特定の実施形態では、追加の添加剤としてエチレンオキシドのホモポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムコポリマー、80%加水分解したポリビニルアルコール、ポリアルコキシグラフト化ポリビニルアルコール及びポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)などの1つ以上のポリマー粘度調整剤を好ましくは(組成物の全重量に基づいて)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量で含む、本明細書で定義される冷却液組成物が提供される。
【0094】
伝熱流体としての組成物
非常に好ましい実施形態では、本明細書に記載される冷却液組成物、好ましくはすぐ使用できる冷却液組成物は、好ましくはソーラー・システム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、バッテリー電気車、パワーエレクトロニクス又は電子装置において使用するために適した伝熱流体であり、最も好ましくは燃料電池又はパワーエレクトロニクスにおいて使用するために適した伝熱流体である。
【0095】
当業者によって理解されるように、(例えば)所期の用途に応じて、本発明による組成物を様々な濃度で配合及び使用することができる。したがって、冷却液組成物は、本明細書に記載されるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドン又は他の添加剤の濃度によって特に限定されない。したがって、予想される用途に応じて、本明細書に記載される組成物は、そのまま使用するのに適し得るか、又は使用する前に基礎流体による稀釈を必要とし得る。しかしながら、燃料電池冷却液として使用するために適し得るすぐ使用できる組成物の形態で、又は前記すぐ使用できる組成物を調製するために適している濃縮物の形態で本発明の組成物を提供することが特に有利であることを本発明者は見出した。
【0096】
すぐ使用できる組成物
本発明の非常に好ましい実施形態では、伝熱流体であるすぐ使用できる組成物の形態で本明細書に記載される冷却液組成物が提供され、ここで:
・ N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンの濃度は組成物の全重量に基づいて0.0001~10重量%の範囲内、好ましくは0.00015~5重量%の範囲内、より好ましくは0.0002~2重量%の範囲内であり、及び
・ 組成物は、組成物の全重量に基づいて90重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは98重量%超、好ましくは99重量%超の基礎流体を含む。
【0097】
本発明の実施形態では、本明細書において提供されるすぐ使用できる組成物は、500~2,500,000g/モルの範囲、好ましくは3,000~2,500,000g/モルの範囲、より好ましくは5,000~2,250,000g/モルの範囲、更により好ましくは7,500~2,00,000g/モルの範囲、最も好ましくは8,000~1,800,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンを含み;ここで、N-ビニルピロリドンポリマーは組成物の全重量に基づいて0.0001~10重量%の範囲内、好ましくは0.00015~5重量%の範囲内、より好ましくは0.0002~3重量%の範囲内の濃度を有する。特定の好ましい実施形態では、前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、0.0002重量%超、0.0003重量%超、0.0005重量%超、0.001重量%超、0.002重量%超、0.003重量%超、0.005重量%超、0.01重量%超、0.02重量%超、0.03重量%超、0.05重量%超0.1wt%超、0.2重量%超及び/又は10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満の濃度を有する。非常に好ましい実施形態では、前記ポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、好ましくは0.00015重量%超、より好ましくは0.0002重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の濃度を有する。
【0098】
本発明の特定の実施形態では、本明細書において提供されるすぐ使用できる組成物は、3,000~700,000g/モルの範囲、好ましくは5,000~500,000g/モルの範囲、より好ましくは7,500~250,000g/モルの範囲、更により好ましくは8,000~100,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンを含み;ここで、N-ビニルピロリドンポリマーは、組成物の全重量に基づいて0.0001~10重量%の範囲内、好ましくは0.00015~5重量%の範囲内、より好ましくは0.0002~3重量%の範囲内の濃度を有する。特定の好ましい実施形態では、前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、0.0002重量%超、0.0003重量%超、0.0005重量%超、0.001重量%超、0.002重量%超、0.003重量%超、0.005重量%超、0.01重量%超、0.02重量%超、0.03重量%超、0.05重量%超0.1重量%超、0.2重量%超及び/又は10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満の濃度を有する。非常に好ましい実施形態では、前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、好ましくは0.00015重量%超、より好ましくは0.0002重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の濃度を有する。
【0099】
本発明の特定の実施形態では、本明細書において提供されるすぐ使用できる組成物は、700,000~2,500,000g/モルの範囲、好ましくは750,000~2,250,000g/モルの範囲、より好ましくは850,000~2,000,000g/モルの範囲、更により好ましくは1,000,000~1,800,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンを含み;ここで、N-ビニルピロリドンポリマーは、組成物の全重量に基づいて0.0001~10重量%の範囲内、好ましくは0.00015~5重量%の範囲内、より好ましくは0.0002~3重量%の範囲内の濃度を有する。特定の好ましい実施形態では、前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、0.0002重量%超、0.0003重量%超、0.0005重量%超、0.001重量%超、0.002重量%超、0.003重量%超、0.005重量%超、0.01重量%超、0.02重量%超、0.03重量%超、0.05重量%超0.1wt%超、0.2重量%超及び/又は10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満の濃度を有する。非常に好ましい実施形態では前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、好ましくは0.00015重量%超、より好ましくは0.0002w超の濃度を有する。
【0100】
本発明の特定の実施形態では、本明細書において提供されるすぐ使用できる組成物は、500~50,000g/モル、より好ましくは1,000~15,000g/モル、更により好ましくは1,500~10,000g/モルの重量平均分子量を有するN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンを含み;ここで、N-ビニルピロリドンポリマーは、組成物の全重量に基づいて0.0001~10重量%の範囲内、好ましくは0.00015~5重量%の範囲内、より好ましくは0.0002~3重量%の範囲内の濃度を有する。特定の好ましい実施形態では、前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、0.0002重量%超、0.0003重量%超、0.0005重量%超、0.001重量%超、0.002重量%超、0.003重量%超、0.005重量%超、0.01重量%超、0.02重量%超、0.03重量%超、0.05重量%超0.1wt%超、0.2重量%超及び/又は10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満の濃度を有する。非常に好ましい実施形態では前記N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンは、すぐ使用できる組成物中に0.0001重量%超、好ましくは0.00015重量%超、より好ましくは0.0002重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の濃度を有する。
【0101】
好ましい実施形態では、基礎流体が水と、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフルフリル、エトキシ化フルフリル、グリセロールのジメチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、メトキシエタノールグリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択されるアルコールとからなり;且つアルコールの量が(組成物の全重量に基づいて)10~80重量%、好ましくは30~70重量%の範囲である、本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物が提供される。特定の実施形態ではアルコールの量は、(組成物の全重量に基づいて)10~45重量%の範囲である。
【0102】
非常に好ましい実施形態では、すぐ使用できる組成物は、100μS/cm未満、好ましくは50μS/cm未満、より好ましくは25μS/cm未満、更により好ましくは10μS/cm未満、よりいっそう好ましくは5μS/cm未満、最も好ましくは2μS/cm未満の25℃における電気導電率を有し、ここで、電気導電率は、実験の項において記載される試験手順を用いて任意選択的にアルミニウム基材(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)の存在下で伝熱流体を90℃で14日間老化させた後に測定される。
【0103】
好ましい実施形態ではすぐ使用できる組成物の、20℃でASTM標準試験法D445-19aに従って測定される動粘度は0.1~100mm/sの範囲、好ましくは0.5~50mm/sの範囲、より好ましくは1~10mm/sの範囲である。
【0104】
濃縮物
好ましい本発明の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物を調製するために適した濃縮物の形態で提供される。
【0105】
好ましい実施形態では、濃縮物は、水及び/又はアルコールの添加によって;好ましくは水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール及び/又はグリセロールの添加によって;最も好ましくは水の添加によって本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物を調製するために適している。非常に好ましい実施形態では、濃縮物は、水及び/又はアルコールの添加だけで、好ましくは、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール及び/又はグリセロールの添加だけで、最も好ましくは水の添加だけですぐ使用できる組成物を調製するために適している(すなわち本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物を濃縮物から調製するために他の成分が加えられる必要はない)。
【0106】
本発明の実施形態では本明細書に定義される濃縮物が提供され、ここで、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンの濃度は、(組成物の全重量に基づいて)0.01重量%超、好ましくは0.05重量%超、より好ましくは0.5重量%超及び/又は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0107】
好ましい実施形態では、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンの濃度は、(組成物の全重量に基づいて)0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.1~2重量%の範囲内である本明細書に定義される濃縮物が提供される。
【0108】
好ましい実施形態では、濃縮物は、本明細書で定義される基礎流体と本明細書で定義されるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンとを含み、ここで、N-ビニルピロリドンポリマーの濃度は(組成物の全重量に基づいて)0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超、より好ましくは0.5重量%超であり、且つ濃縮物の80重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは90重量%超がアルコールであり、好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール及びグリセロール、最も好ましくはモノエチレングリコールからなる群から選択されるアルコールである。
【0109】
好ましい実施形態では、濃縮物は、本明細書で定義される基礎流体と本明細書で定義されるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンとを含み、ここで、N-ビニルピロリドンポリマーの濃度は、(組成物の全重量に基づいて)0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超、より好ましくは0.5重量%超であり、且つ濃縮物の80重量%超、好ましくは85重量%超が水である。
【0110】
調製方法
本発明の別の態様では:
(i)本明細書で定義される基礎流体を提供する工程と、
(ii)本明細書で定義されるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンを提供する工程と、
(iii)本明細書で定義される1つ以上の追加の添加剤を任意選択的に提供する工程と、
(iv)工程(i)の基礎流体を工程(ii)のN-ビニルピロリドンポリマー及び工程(iii)の任意選択の1つ以上の追加の添加剤と組み合わせて組成物を得る工程とを含む、本明細書で定義される冷却液組成物を調製するための方法が提供される。
【0111】
本発明に従って化合物の添加の順序は特に限定されない。
【0112】
本発明の別の態様では、
(i)本明細書で定義される濃縮物を提供する工程と、
(ii)水、アルコール又はそれらの混合物を提供する工程と、
(iii)本明細書で定義される1つ以上の追加の添加剤を任意選択的に提供する工程と、
(iv)工程(i)の濃縮物を工程(ii)の水、アルコール又はそれらの混合物及び工程(iv)の任意選択の1つ以上の追加の添加剤と組み合わせてすぐ使用できる組成物を得る工程とを含む、本明細書で定義されるすぐ使用できる組成物を調製する方法が提供される。好ましい実施形態では、工程(iv)は、20重量%超の水(濃縮物の重量に基づく)、アルコール又はそれらの混合物、好ましくは30重量%超、又は50重量%超の水、アルコール又はそれらの混合物を組み合わせることを含む。
【0113】
好ましい実施形態では、下記の工程:
(i)本明細書で定義される濃縮物を提供する工程と、
(ii)水、アルコール又はそれらの混合物を提供する工程と、
(iii)工程(i)の濃縮物を工程(ii)の水、アルコール又はそれらの混合物と組み合わせてすぐ使用できる組成物を得る工程とを含む、本明細書で定義されるすぐ使用できる組成物を調製する方法が提供される。好ましい実施形態では工程(iii)は、50重量%超(濃縮物の重量に基づく)の水、アルコール又はそれらの混合物、好ましくは100重量%超、150重量%超200重量%超又は500重量%超の水、アルコール又はそれらの混合物を組み合わせることを含む。
【0114】
本発明に従って工程(ii)のアルコールは好ましくは、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフルフリル、エトキシ化フルフリル、グリセロールのジメチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、メトキシエタノール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0115】
その他
本発明の実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物、好ましくはすぐ使用できる組成物は、3~8の間、好ましくは3.5~7.5の間、より好ましくは4~7の間のpHを有する。
【0116】
本発明の実施形態では、本明細書で定義される冷却液組成物、好ましくはすぐ使用できる組成物は、N-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンの、基礎流体に含まれるアルコールに対する重量比が0.01未満、好ましくは0.001未満、最も好ましくは0.0001未満である。
【0117】
使用/方法
本発明の別の態様では、電気システム、好ましくは、ソーラー・システム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、電話伝送局、ラジオ及びテレビ放送局、中継局、電気加熱又は冷却装置、充電スタンド及び強力レーザー/ビーマーからなる群から、より好ましくは燃料電池から選択される電気システムが提供され、ここで、電気システムは、本明細書で定義される冷却液組成物、好ましくは本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物を更に含む。電気システムは好ましくは、本明細書で定義される冷却液組成物と接触しているアルミニウムを含む。別の態様では、本発明は、電気導電率の発現抑制剤及び/又は酸化防止剤として、水とアルコールとを含む低電気導電率の冷却液組成物における本明細書で定義されるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリジオンの使用を提供する。
【0118】
別の態様では、本発明は、
・ アルコール及び水ベースの冷却液、好ましくは、アルミニウムを含む電気システムと直接接触しているアルコール及び水ベースの冷却液中の、好ましくはモノエチレングリコール及び水ベースの冷却液中のグリコレート又はホルメートイオンの形成を抑制するための、又は
・ アルコール及び水ベースの冷却液、好ましくは、アルミニウムを含む電気システムと直接接触しているアルコール及び水ベースの冷却液の低い電気導電率を維持するための、
本明細書で定義されるN-ビニルピロリドンポリマー、好ましくはポリビニルピロリジオンの使用を提供する。
【0119】
本発明の別の態様では本明細書に記載される冷却液組成物、好ましくはすぐ使用できる組成物を伝熱流体又は冷却液として、好ましくは電気システムにおける伝熱流体又は冷却液として、より好ましくはソーラー・システム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、電話伝送局、パワーエレクトロニクス、ラジオ及びテレビ放送局、中継局、電気加熱又は冷却装置からなる群から選択される電気システムにおける、好ましくは燃料電池又はパワーエレクトロニクスにおける伝熱流体又は冷却液としての使用が提供される。
【0120】
本発明の別の態様では、
a.アルミニウムを含む電気システム、好ましくはソーラー・システム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、電話伝送局、パワーエレクトロニクス、ラジオ及びテレビ放送局、中継局、電気加熱又は冷却装置からなる群から選択される電気システム、好ましくは燃料電池又はパワーエレクトロニクスなどの電気システムにおいて熱を発生する工程と、
b.本明細書に記載される冷却液組成物、好ましくは本明細書に記載されるすぐ使用できる組成物を工程aのシステムと接触させる工程と、
c.熱をシステムから冷却液組成物に移動させる工程と、
d.熱交換器に組成物を通過させる工程と、
e.冷却液組成物から熱を移動させる工程とを含む、熱交換する方法が提供される。
【実施例
【0121】
アルミニウムの存在下でも、本発明による冷却液組成物の驚くべき挙動、具体的には老化時の電気導電率は、以下に説明されるように本発明による様々な組成物又は比較用組成物中にアルミニウム試験片を浸漬することと、組成物を14日間90℃で老化させることとによって実証された。
【0122】
様々な量のポリビニルピロリドン(Luvitec K17:M=9,000g/モル、Luvitec K30a:M=40,000g/モル、Luvitec K30b:M=50,000g/モル及びLuvitec K90:M=1,400,000g/モル)をUPW(超純水)中33体積%のMEGの組成物に加えることによって14の組成物(実施例2~15)を調製した。
【0123】
実施例1は、UPW中33体積%のMEGからなるブランク組成物であり、すなわちポリビニルピロリドンを有さない。
【0124】
実施例1~15の調製された組成物は、DOWEX Marathon MR3(現在はAmberlite MB20 HOH)、すなわち混合床イオン交換樹脂で処理され、調製された組成物中の全ての残留イオン化合物を除去した。この目的のために、室温で0.5w%のDOWEX Marathon MR3(現在はAmberlite MB20 HOH)を使用して組成物を3時間の間撹拌した。イオン交換体は、3時間後に濾過によって除去された。
【0125】
このように処理された組成物のpH及び電気導電率(eConduc)を測定し(「老化前」の測定)、下記の表に列挙する。その後、100mLのガラス壜をUPWですすぎ、及び一晩90℃で乾燥させた。P240サンディング紙を使用してアルミニウム(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN 1706)クーポンを磨き、UPW及びアセトンですすぎ、1時間の間100℃で乾燥させ、秤量した(新クーポン)。クーポンを壜に入れ、壜に、実施例1~15の組成物100mLを加えた。その後、壜を90℃の炉内に置いた。14日後に、壜を炉から取り出し、及び老化された組成物の電気導電率及びpHを測定した。老化された組成物中のグリコレート及びホルメート濃度はイオンクロマトグラフィーによって決定された。全てのクーポンを水及び軟毛ブラシでそっと清浄化し、乾燥させ、秤量した(クーポンAT)。最後に、全てのクーポンをHNO:UPWの4:1混合物中に10分間置くことによってそれらを化学的に清浄化した。クーポンを水及び軟毛ブラシで更に清浄化し、100℃で1時間乾燥させ5、秤量した(クーポンCC)。次式:Δm(mg)=新クーポンの質量(mg)-クーポンCCの質量(mg)-を用いて老化によるアルミニウムクーポンの重量変化を求めた。実験結果を表1に提供する。
【0126】
【表1】
【0127】
上記の結果から分かるように、ポリビニルピロリジオンを使用する本発明による組成物(実施例2~15)は、驚くべきことに且つ予想外に、アルミニウムの存在下で老化時に低い電気導電率及び非常に限られたグリコール分解を示す。
【国際調査報告】