(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】導光体及びこれを用いた表示画面
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240628BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20240628BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
F21S2/00 435
F21V9/40 400
G02F1/13357
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580540
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021068206
(87)【国際公開番号】W WO2023274541
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516243364
【氏名又は名称】ジオプティカ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SIOPTICA GMBH
【住所又は居所原語表記】Moritz-von-Rohr-Strasse 1a, 07745 Jena, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】508146570
【氏名又は名称】ナノコンプ オイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】オラヴァ,ジョニ
(72)【発明者】
【氏名】ヘーバー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】クリップシュタイン,マルクス
【テーマコード(参考)】
2H391
3K244
【Fターム(参考)】
2H391AA15
2H391AD35
2H391AD37
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA48
3K244CA03
3K244EA02
3K244EA12
3K244EA23
3K244ED03
3K244ED12
3K244ED13
(57)【要約】
本発明は、2つの主面を有する導光体(1)に関する。各主面は、該主面を取り囲む少なくとも1つのエッジ(3)を有し、前記主面は、前記エッジ(3)において横方向面(8)によって接続されている。該導光体は、前記主面の少なくとも一方及び/又は前記主面及び前記横方向面(8)によって囲まれた容積内に、複数の3次元形状の光出力素子(4、5)を備える。前記光出力素子(4、5)は、予め決められた分布パターンに従って分布している。該導光体(1)に結合された光は、出力素子(4、5)に入射されない限り、全反射によって伝播され、且つ出力結合に関しては、該2つの主面の一方が他方よりも好ましい。本発明によれば、該複数の出力素子(4、5)は、いくつかの出力素子(4、5)グループに分けられ、各グループは、他のグループのそれぞれと相補的である。各グループのメンバーは、共通の特徴的なブレーズ角(11)及び共通の特徴的な出力結合特性を有し、該共通の特徴的なブレーズ角及び該共通の特徴的な出力結合特性は、前記他のグループの前記メンバーの前記特徴的な出力結合特性及びブレーズ角(11)と異なり、これにより、光が異なる角度分布で出力結合される。これにより、導光体(1)をディスプレイに用いるときに視覚体験に悪影響を及ぼす可能性のある可視アーチファクトの数を低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主面を有する導光体(1)であって、
各主面は、該主面を取り囲む少なくとも1つのエッジ(3)を有し、前記主面は、前記エッジ(3)において横方向面によって接続され、該導光体(1)は、前記主面の少なくとも一方及び/又は前記主面及び前記横方向面(8)によって囲まれた容積内に、複数の3次元形状の光出力素子(4、5)を備え、前記光出力素子(4、5)は、予め決められた分布パターンに従って分布し、
該導光体(1)は、該2つの主面を介して該導光体を通過する光に対して少なくとも70%の透明度を有し、
該分布パターンは、前記横方向面(8)の少なくとも一方において該導光体(1)に結合され、且つ前記光出力素子(4、5)に入射される前に全反射により該導光体(1)内を伝播する光に対して、該2つの主面のうちのいずれか一方が該2つの主面のうちの他方よりも高い光量の光を優先的に結合して出力するように予め決められ、
前記出力素子(4、5)は、前記主面の少なくとも一方に垂直な平面において、縦断面を備え、該縦断面は、少なくとも3つの角部と、前記角部を接続する少なくとも3本の接続線(9、12、13)とを有する略多角形に形成され、該少なくとも3本の接続線(9、12、13)のうちの1つは、少なくとも1本の直線セグメント(10)の選定線を含み、
該少なくとも1つの主面の平面に対する該直線セグメント(10)の向きは、屈折及び/又は反射により全反射が干渉され、且つ第1出力結合角度範囲を規定するように、ブレーズ角(11)を規定し、これにより特徴的な出力結合特性を規定し、
ここで、ほとんどの前記出力素子(4、5)について、任意の出力素子は、任意の他の出力素子から少なくとも1μm離れており、
該複数の出力素子(4、5)は、いくつかの出力素子(4、5)グループに分けられ、各グループは、他のグループのそれぞれと相補的であり、且つ各グループのメンバーは、共通の特徴的なブレーズ角(11)を有し、したがって、共通の特徴的な出力結合特性を有し、ここで、該共通の特徴的なブレーズ角(11)及び該共通の特徴的な出力結合特性は、前記他のグループの前記メンバーの前記特徴的なブレーズ角(11)及び出力結合特性と異なり、これにより、異なる出力素子(4、5)グループに対し、光が異なる角度分布で出力結合されることを特徴とする、導光体(1)。
【請求項2】
出力結合角度分布は、該縦断面の該平面への投影によって規定される第1角度範囲と、該主面への投影によって規定される第2角度範囲とからなる、請求項1に記載の導光体(1)。
【請求項3】
該縦断面は、3本の接続線(9、12、13)によって接続された3つの角部を有する多角形に形成され、第1接続線は、前記主面のうちの一方に平行な平面内に位置する直線セグメントのベースライン(9)を有し、第2接続線(12)は、該第1接続線に対して85°と90°との間の角度で配置され、第3接続線(13)は該第1接続線と該第2接続線(12)の遠位端を接続し、該第3接続線(13)は、該選定線であり、且つ該第1接続線と共にブレーズ角(11)を囲むことによって特徴的な出力結合特性を規定する、請求項1又は2に記載の導光体(1)。
【請求項4】
前記出力素子(4、5)のそれぞれの3次元形状は、該縦断面に垂直な平面において、該縦断面に平行であり該縦断面の外部の中心軸線を中心として、部分回転が0°と異なり、好ましくは5°~25°の間の該縦断面の部分回転角度によって規定される、請求項3に記載の導光体(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの出力素子グループについて、少なくとも前記出力素子(4、5)グループのうちの1つの前記出力素子(4、5)について、該ブレーズ角(11)は、該部分回転の2つの端部位置の間で連続的又は離散的に変化する、請求項4に記載の導光体(1)。
【請求項6】
前記出力素子(4、5)は、各空間方向における最大寸法が100μmであり、好ましくは1μm~30μmの間にある、請求項1~5のいずれか1項に記載の導光体(1)。
【請求項7】
該少なくとも1つの主面及び/又は該導光体(1)の該容積内における前記出力素子(4、5)の該分布パターンは、前記出力素子(4、5)によって該2つの主面の少なくとも一方において少なくとも60%の照度均一性で光が結合して出力されるように予め決められ、該照度均一性は9点プログラムによって計測される、請求項1~6のいずれか1項に記載の導光体(1)。
【請求項8】
前記出力素子(4、5)のそれぞれは、該導光体(1)の全体的なヘイズに寄与するものであり、且つ(i)該少なくとも1つの主面及び/又は該導光体(1)の該容積内における前記出力素子(4、5)の該分布パターン、(ii)出力素子(4、5)の数及び(iii)そのサイズは予め決められ、これにより、前記主面の一方の少なくとも50%において30%以下の平均ヘイズを発生し、該ヘイズがASTMD1003-13に従って計測される、請求項1~7のいずれか1項に記載の導光体(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの出力素子(4、5)グループの前記出力素子(4、5)は、前記主面の少なくとも一方から突出し又は内部へ延在し、及び/又はマイクロプリズムとして成形される、請求項1~8のいずれか1項に記載の導光体(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの出力素子(4、5)グループの前記出力素子(4、5)は、該導光体内部のキャビティとして形成され、前記キャビティは、真空引かれか又は、材料で充填され、該材料は、該導光体(1)の材料の屈折率又はヘイズ値とそれぞれ異なる屈折率及び/又はヘイズ値を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の導光体(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記導光体(1)と、
少なくとも前記横方向面(8)の一方において該導光体(1)に結合される光を出射する1つ以上の光源(6)と、
観察者の視点から見て該導光体(1)の前方に位置している透過型表示パネル(14)と、
を備える、表示画面。
【請求項12】
該透過型表示パネル(14)は、画素を含み、且つ該導光体(1)は、出力素子(4、5)を含み、前記出力素子(4、5)の空間的な延長は、デカルト空間における各次元の画素の空間的な延長よりも小さい、請求項11に記載の表示画面。
【請求項13】
該透過型表示パネル(14)は、サブ画素からなる画素を含み、且つ該導光体(1)は、出力素子(4、5)を含み、前記出力素子(4、5)の空間的な延長は、デカルト空間における各次元のサブ画素の空間的な延長よりも小さい、請求項12に記載の表示画面。
【請求項14】
該透過型表示パネル(14)と該導光体(1)とは、空気層(15)のみで分離されているか又は光学的に接合されている、請求項11~13のいずれか1項に記載の表示画面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの主面を有する導光体に関し、各主面は、当該主面を取り囲む少なくとも1つのエッジを有し、前記主面は、前記エッジにおいて横方向面によって接続されている。該導光体は、前記主面の少なくとも一方及び/又は前記主面及び前記横方向面によって囲まれた容積内に複数の3次元形状の光出力素子を備える。前記光出力素子は、予め決められた分布パターンに従って分布する。前記導光体は、更に、該2つの主面を介して該導光体を通過する光に対して少なくとも70%の透明度を有する。
【背景技術】
【0002】
分布パターンは、横方向面の少なくとも一方において導光体に結合され、且つ出力素子に入射される前に全反射により導光体内を伝播する光に対して、2つの主面のうちのいずれか一方が2つの主面のうちの他方よりも高い光量の光を優先的に結合して出力するように予め決められる。導光体の所定の材料及び波長範囲、並びに出力素子の所定の構造について、市販の光学設計プログラム(例えば、シノプシス(Synopsys)社の光モデリングツール(Light Tools)「バックライトパターン最適化」)を用いて分布パターンが直接的に予め決められる。
【0003】
出力素子は、主面の少なくとも一方に垂直な平面において縦断面を備える。縦断面は、少なくとも3つの角部と、前記角部を接続する少なくとも3本の接続線とを有する略多角形に形成される。「略多角形」という用語は、製造欠陥を考慮したものである。多角形は数学的にいくつかの直線で構成され、前記直線は等しい数の角部で接続され、且つ閉じた多角形回路を形成するが、出力素子の縦断面は多角形にしか似ていない。製造工程によって、接続線の形状は、特に、2つの接続線が交差する角部領域において理想的な直線からずれ、わずかな曲率を有する。すなわち、接続線が直線ではなく、わずかに曲がった線であり得る。前記角部は尖っておらず、丸みを帯びている。少なくとも3本の接続線のうちの1つは、少なくとも1本の直線セグメントの選定線を含む。少なくとも1つの主面の平面に対する直線セグメントの向きは、屈折及び/又は反射により全反射が干渉され、且つ第1出力結合角度範囲を規定するように、ブレーズ角を規定し、これにより特徴的な出力結合特性を規定する。したがって、ブレーズ角は、第1出力結合角度範囲を特徴的な出力結合特性と判定する。ほとんどの出力素子について、任意の出力素子は、任意の他の出力素子から少なくとも1μm離れている。真の直線及び鋭角を有する出力素子は、フォトリソグラフィ又は他の任意のプロセスによって製造することがほとんど不可能であるため、少なくとも角部が丸みを帯びている。少なくとも角部において直線が理想的な形状からずれて曲率を示している。このような曲率は、出力素子のサイズに依存して、出力素子のサイズが極めて小さい場合には最大で20%の線路長を構成することができる。製造工程に起因するこのような欠陥は、「直線」という用語に含まれる公差として理解されるが、角部が丸い場合であっても、具体的には、ブレーズ角を規定するための線は、少なくとも1本の直線セグメントを含む。そして、この直線セグメントの少なくとも1つの主面の平面に対する向きによってブレーズ角を規定する。
【0004】
このタイプの出力素子は、従来から知られており、他の平坦面における凹部として実現されることが多い。例えば、US2018/0088270A1、特に
図5Aにおいて、典型的な実施例を示している。しかしながら、現在の技術の応用において、上記又は類似の出力素子を使用する導光体は、出力素子の分布が均一な照度を補正しても、均一な方式で光を出射しない。照明源からの光は、通常、横方向面において導光体に結合される。このような横方向面の近傍では、導光体を目視で確認するときに、ホットスポット(小さな暗い領域によって分離された明るいスポット)が視認可能であり、ホットスポットは、それぞれ横方向面又はエッジに沿って連結されている。また、導光体は、多色照明の場合に虹状模様を形成する明るいストライプと暗いストライプとが、横方向面のエッジに平行な主面に延在し、且つエッジに垂直な主面に一方向に沿って交互に配列された分散を示す。このような導光体がディスプレイに用いられると、観察者の視覚的な印象が妨げられる。しかしながら、従来の技術では、ホットスポット及び分散アーチファクトを除去することによって視覚的な印象を改善するためのいかなる措置も開示されていない。
【0005】
EP2474846A1には、このような複数の出力結合ユニットを含む指向性光出力結合システムの一部を形成するための回折光出力結合ユニットが開示されている。前記回折光出力結合ユニットは、回折面レリーフパターンを収容し且つ光を輸送するキャリア素子を含む。この回折面レリーフパターンは、キャリア素子の所定の表面に規定された複数の連続した回折面レリーフ形態を含む。前記回折面レリーフパターンは、該複数の連続した回折面レリーフ形態のうちの少なくとも2つの表面レリーフ形態に関する相互作用を介して、入射した光を結合することで、コリメートを透過して結合した光を出力する指向性を強化するように構成され、ここで回折した入射光のいくつかの光線は、前記相互作用の間に少なくとも第1表面レリーフ形態を透過する。前記アーチファクトを回避するための何らの対策も施されていない。
【0006】
EP1016817A1は、少なくとも1つの光源によってフラットパネルディスプレイのバックライトを提供して、特定のパターンを含むスポンサー面を有する導光管を開示している。このようなパターンは、ディスプレイの方向に光を伝導する回折特性を有し、且つ導光管の表面において特定の分布を有する均一で互いに異なる領域を含む。導光管の局所出力結合効率は、光源からの距離や波長に依存するパターンの特性に依存する。前述したホットスポットや虹状特徴などのアーチファクトの可能性については議論されていない。
【0007】
US6,773,126B1は、光源と、該光源に動作可能に接続されたパネル素子とを含む光パネルを開示している。前記パネル素子は、実質的に透明な透光材料を含み、且つ導波路パネルとして動作し、前記光源から受信された光ビームは、前記導波路パネルの内部において全反射で伝播される。回折出力結合システムは、該パネル素子の光表面の上方に配置され、該パネル素子の内部から光ビームを結合して出力するように動作する。該回折出力結合システムは、複数の局所格子素子を含む。前記局所格子素子は、複数の形態を有し、且つ回折効率が位置によって変化するように最適化される。前述のようなアーチファクト及び前記アーチファクトの可能性の低減又は回避については議論されていない。
【0008】
US9,261,639B1には、光源と、画素化表示パネルと、前記光源から光を収集し、全反射により光を輸送するための導光体と、を備える光学表示装置が開示されている。該導光体の第1主面は、光を該導光体から該画素化表示パネルに反射するために、円形の輪郭(例えば、4分の1の円の輪郭)を有する凹部領域を含む。該導光体の第1面の少なくとも一部を覆う第1光学層は、該導光体の第1面に含まれる前記凹部領域を充填する。該導光体の第2面の少なくとも一部を覆う第2光学層は、該反射光を該画素化表示パネルに透過する。なお、前述したようなアーチファクトは、議論のテーマではない。
【0009】
最後に、WO2019/087118A1は、導光体などの光分布構造及び関連部品を開示している。該構造は、断面輪郭、サイズ、周期性、向き及び特徴パターン内の配置のうちの少なくとも1つのパラメータに応じて可変である複数の3次元光学特徴によって光透過性キャリアに構築された少なくとも1つの特徴パターンの光学機能層を含むことが好ましい。例えば、光学的特徴は、その水平面及び略垂直面において全反射機能を確立できる内部光学室として具現化される。上記したホットスポットや虹状特徴などのアーチファクトの可能性についてもここでは議論されていない。
【0010】
現在の技術において、出力結合構造に関連するアーチファクト(例えば、ホットスポット及び虹状特徴)は注目されておらず(観察される場合)、このアーチファクトを低減又は回避するために適用可能な何らの対策も述べられていない。
【0011】
もちろん、拡散層やプリズムシートなどの追加の光学層に導光体を結合することも可能である。しかしながら、このような対策は、ディスプレイに組み込まれた層アセンブリの厚さを増加させるだけでなく、輝度及び/又は角度照度分布を低下させる可能性がある。特に、層アセンブリの厚さは、現在の応用においてますます重要な特徴となるため、追加の層を使用することは欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、先に説明したように、追加の光学層を必要とせずに、特に表示画面において導光体を用いる場合に、ホットスポットや虹状特徴などのアーチファクトを回避又は少なくとも低減するように導光体の改良を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、複数の出力素子を少なくとも2つの出力素子グループに分けることによって達成される。各グループが他のグループのそれぞれと相補的であることは、ランダムに選択された出力素子が出力素子グループのうちの1つのみに属することを意味する。先に説明したように、各出力素子グループのメンバーは、共通の特徴的なブレーズ角を有し、したがって、共通の特徴的な出力結合特性を有する。共通の特徴的なブレーズ角及び共通の特徴的な出力結合特性は、他のグループのメンバーの特徴的な出力結合特性及びブレーズ角と異なり、即ち、各出力素子グループは、それ自体の唯一のブレーズ角及び結果としての出力結合特性を有する。これにより、異なる出力素子グループに対して異なる角度分布で光が出力結合される。したがって、各出力素子グループは、特定の角度分布(具体的には、第1角度範囲)で光を出力結合する役割を担う。このような光の異なる角度分布を少なくとも部分的に混在させることにより、出力結合の光特性における視覚的なアーチファクト(具体的には、虹状特徴やホットスポット)を最小限に抑え、又は従来技術に比べて少なくとも低減することができる。
【0014】
異なる出力素子を含むグループは同じサイズを有してもよく、各グループは同じ数の出力素子を含むが、これは必要条件ではなく、且つ前記グループは異なる数の出力素子を含んでもよい。実際には、この数は非常に大きく異なる可能性がある。結果を改善するために、2つの出力素子グループのみを定義すればよく、ここで、前記グループの一方は、すべての出力素子(すなわち、該複数の出力素子)の99%を含み、他方のグループは、すべての出力素子の1%のみを含む。しかしながら、出力素子のうちのより多くの出力素子を他方のグループに割り当てることによって、視覚的なアーチファクトを回避する結果を更に改善することができる。これは、最適化プログラムにおいてグループサイズの関係を予め定義しておくと、ほぼ同じ数の素子を有するグループから始まる。
【0015】
出力結合角度分布は、少なくとも縦断面の平面への投影により規定される第1角度範囲からなるが、好ましくは、主面への投影により規定される第2角度範囲からなる。2つの角度範囲が何れも特徴的な出力結合特性である。しかしながら、以下で更に説明するように、第2角度範囲はブレーズ角に依存しない。第1角度範囲の大きさは、主に入射光の角度スペクトルに依存する。全ての出力素子グループは、少なくとも第1角度範囲において異なるが、好ましくは、出力素子グループは、第1角度範囲及び第2角度範囲のいずれにおいても異なり、第1角度範囲又は第2角度範囲のいずれか一方のみにおいて異なるよりも、アーチファクトをより良好に低減することができる。
【0016】
先に説明したように、縦断面は、少なくとも3つの角部及び同じ数の接続線を有する略多角形に形成される。1つの好ましい具体例において、略多角形は、3本の接続線で接続されたちょうど3つの角部を有する。また、「略多角形に形成される」という用語は、製造不良による公差を含む理想的な形状を意味する。ミクロスケールでは、5nmから10nmの間の表面粗さが可能である。第1接続線は、主面の一方に平行な平面内に位置する直線セグメントのベースラインである。第2接続線は、第1接続線に対して75°と90°の間の角度、好ましくは85°と89°の間の角度、特に88°の角度で配置される。最後に、選定線の第3接続線は、第1接続線と第2接続線の遠位端を接続している。該第3接続線は、第1接続線と共にブレーズ角を囲むことにより、特徴的な出力結合特性を規定する。第1接続線及び第3接続線のそれぞれ及び好ましくは更に第2接続線は、通常該線の全長の少なくとも60%の長さを有する少なくとも1本の直線セグメントを含み、該直線セグメントは各線の中心の両側まで延在している。しかしながら、実際には、製造上の理由から、第2接続線は、線の大部分に沿って非常に僅かな曲率を有する「S」縁石となるように形成される可能性があることで、直線セグメントを規定することは困難である。この場合、第2接続線及び特に第1接続線とのなす角度を適切に規定するために、第2接続線の中心で切った接線に対応する近似直線で近似して得る。このような形状の出力素子を有する導光体は、湾曲した接続線を有する導光体に比べて、製造がより容易である。しかしながら、上記のような製造上の欠陥を考慮すると、最適化プログラムでは、最大5次の指数関数や多項式関数によって接続線を近似して得ることができる。いずれの場合であっても、所定の公差範囲内での製造上の欠陥による直線からのずれが存在し、且つ含まれる可能性がある。
【0017】
各グループの出力素子のそれぞれの3次元形状は、縦断面に垂直な平面において、縦断面に平行であり縦断面の外部の中心軸線を中心として、部分回転が0°と異なり、好ましくは5°~25°の間の該縦断面の部分回転角度によって規定される。仮に縦断面が直角三角形の形状を有する場合、中心軸線は特に第2接続線に平行である。
【0018】
部分回転角度は、第2角度範囲の大きさを実質的に規定し、ブレーズ角は、第3接続線によって規定される面に入射する光の角度に更に依存する第1角度範囲を実質的に決定する。具体的には、ブレーズ角は、異なる出力素子グループに対して異なる。例えば、第1グループでは、ブレーズ角が53°であるが、第2グループでは、ブレーズ角が57°であってもよい。2つのグループは、何れもほぼ同じ数の出力素子を含み得る。別の実施例では、第1グループは、標準ブレーズ角55°を有する出力素子を含み、これは、自動車業界で使用される導光体における最適な角度分布に特に有用である。他のグループは、標準ブレーズ角55°を中心に、好ましくは対称に分布するブレーズ角(例えば、第2グループ及び第3グループにおいてそれぞれ54°と56°、又は53°と57°)を有する出力素子を含む。より多くの出力素子グループは、例えば、標準ブレーズ角(必ずしも55°である必要はない)を中心に-3°、-2°、0°、2°及び3°の偏差を有する合計5つのグループに規定されてもよい。各グループは、全ての出力素子の約20%を含み得る。
【0019】
出力素子の少なくとも1つのグループ内に出力素子が提供されてもよく、したがって、少なくとも前記出力素子グループのうちの1つの出力素子に関して、ブレーズ角は、部分回転の2つの端部位置の間で連続的又は離散的に変化する。この特定の具体例は、アーチファクトの低減をより向上させるのに寄与することに加えて、変動するブレーズ角を有する出力素子を用いることにより、より製造しやすい1つの出力素子グループのみを用いることができるため、製造者の観点からも有用である。これは、本発明の特別な状況であり、2つの出力素子グループのみが実現されるが、第2グループは空のグループであるため、第2グループはメンバーを有しない。実際には、1つのグループのみが存在する。しかしながら、この特定の具体例は、1つ以上の出力素子グループに適用される場合にも、アーチファクトを効果的に低減することができる。
【0020】
導光体は、通常、透明な熱可塑性プラスチック材料、熱弾性プラスチック材料、又はガラスからなる。出力素子は、各空間方向における最大寸法が通常100μmであり、好ましくは1μm~30μmの間にある。これにより、導光体の使用時に出力素子自体が観察者に視認されることを回避できる。また、各出力素子のサイズがLCパネルのサブ画素よりも小さい場合、複数の出力素子はサブ画素を覆うことができる。これは、いわゆる色フリッカの低減又は回避に有利である。
【0021】
少なくとも1つの出力素子グループの出力素子は、主面の少なくとも一方から突出し、又は該少なくとも一方まで延在する。代替的に又は組み合わせて、出力素子は、マイクロプリズムとして成形されてもよい。また、少なくとも1つの出力素子グループの出力素子は、導光体の内部のキャビティとして形成されてもよい。この場合、前記キャビティは、真空引かれか又は、材料で充填され、該材料は、導光体の材料の屈折率又はヘイズ値とそれぞれ異なる屈折率及び/又はヘイズ値を有する。屈折率の場合、キャビティ内部の屈折率が導光体におけるキャビティ外部の屈折率よりも低く、ヘイズ値の場合、キャビティ内部のヘイズ値が導光体におけるキャビティ外部のヘイズ値よりも高いことが好ましい。もちろん、各出力素子グループは、異なる形態で実現され得る。例を挙げると、第1出力素子グループは、主面のうちの一方まで延在し、第2グループは、主面のうちの一方から突出するマイクロプリズムに成形され、且つ第3グループは、キャビティとして形成される出力素子を含む。導光体が他の光学層のスタック内の一つの素子である場合、当然のことながら、当該スタックにおける導光体の高さをできるだけ小さく保持することに有利であり、且つ、出力素子が導光体を作製した後に適用できるため、導光体内のキャビティよりも製造しやすい出力素子を主面に延在させることが好ましい。
【0022】
少なくとも1つの主面及び/又は導光体の容積内における出力素子の分布パターンは、出力素子によって2つの主面のうちの少なくとも一方において少なくとも60%、好ましく70%以上の照度均一性で光が結合して出力されるように予め決められることが好ましい。このような白色の均一性の場合、このような導光体を有する装置を備えたユーザにとっては、アーチファクトが干渉的に見えなくなる。分布パターンは、市販の光学シミュレーションプログラム(例えば、シノプシス社の光モデリングツール「バックライトパターン最適化」)モジュール)によって予め決定することができ、前記光学シミュレーションプログラムは、最適化プログラムの入力のための条件を含むことができる。照度均一性は、90cmの距離で主面の上方に垂直に位置するカメラを用いて9点プログラムで計測される。参考資料として、国際表示計測委員会により発行された情報表示装置計測基準第8章(2021年6月1日の第1.03版)を参照する。
【0023】
例えば、導光体に光学的に結合される横方向面の近くで(仮に2つの出力素子グループを使用した場合)、2つのグループの素子が約50%と50%の関係で均等に提供され、当該横方向面からの距離が増加するにつれて、グループのうちの一方の素子が他方のグループよりも優勢になり、100%と0%の関係まで連続的に成長するように分布パターンを選択することができる。これにより、このような導光体に組み込まれたディスプレイの所定の視野角領域の全体的な照度が増加する。このように分布パターンを選択することにより、入力光が結合される横方向面と、当該横方向面に対向する横方向面との間で、導光体に結合される光の角度スペクトルが変化することも考えられる。
【0024】
また、出力素子のそれぞれは、導光体の全体的なヘイズに多かれ少なかれ寄与するものである。一つの好ましい具体例において、(i)該少なくとも1つの主面及び/又は導光体の容積内における出力素子の分布パターン、(ii)出力素子の数及び(iii)そのサイズは予め決められ、これにより、主面のうちの一方の少なくとも50%において30%以下の平均ヘイズを発生する。ここで、ヘイズ値がASTMD1003-13のプログラムAに従って計測される。
【0025】
また、本発明は、更に、上記の導光体を備えた表示画面に関する。表示画面は、導光体に加えて、少なくとも横方向面の一方において導光体に結合される光を出射する1つ以上の光源を含む。該表示画面は、観察者の視点から見て導光体の前方に位置する透過型表示パネルを更に含む。透過型表示パネルと導光体とは、通常、空気層のみによって分離されているか又は互いに光学的に接合されており、多くの場合、表示パネルと導光体との間に他の光学層は配置されていない。
【0026】
導光体は、出力素子を含み、通常、透過型表示パネルは、画素を含む。この場合、出力素子の空間的な延長は、デカルト空間における各次元の画素の空間的な延長よりも小さくなることで、より均一性を向上させ、コントラストや色フリッカを低減又は防止することができる。透過型表示パネルがサブ画素からなる画素を含む場合、出力素子の空間的な延長は、デカルト空間における各次元のサブ画素の空間的な延長よりも小さいことが好ましい。
【0027】
前述の特徴及び以下に説明する特徴は、本明細書に記載された本発明の枠組みから逸脱することなく、記載された組み合わせだけでなく、異なる組み合わせまたは別個の組み合わせにも適用可能であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下、本発明について、図面を参照しながらより詳細に説明し、前記図面も、本発明に必要な特徴とその他の特徴を示す。図面に示される具体例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を前記図面に限定するものではない。例えば、複数の素子又はアセンブリを有する具体例の説明は、本発明を実施するために全ての前記素子又はアセンブリが必須であるという意味ではない。実際には、異なる具体例は代替素子又はアセンブリ、より少ない素子又はアセンブリ又は追加素子又はアセンブリを含んでもよい。異なる具体例の素子又はアセンブリは、反対のことが明示されていない限り、互いに組み合わせることができる。上記具体例の一つについて述べた修正及び変形は、他の具体例にも適用可能である。重複する説明を避けるため、同一の素子又は異なる図面における互いに関連する素子には同一の符号を付し、重複する説明が省略する。
【0029】
【
図3】A)~C)は理想的な形状を有する出力素子を示す。
【
図4】A)~C)はフォトリソグラフィによって製造された出力素子を示す。
【
図5】A)、B)は異なる第1角度範囲を有する2つの出力素子を示す。
【
図6】A)、B)は
図6における異なる第2角度範囲を有する出力素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、2つの主面、すなわち、底部主面及び頂部主面を有する導光体1が示されている。ここでは、底部主面2を示しているが、他の態様においては、頂部主面であってもよい。各主面は、当該主面を取り囲む少なくとも1つのエッジを有する。
図1の実施例では、底部主面2及び頂部主面は、前記主面を取り囲む4つのエッジ3を有する。導光体1を取り囲むエッジ3の形状は、主に導光体1の使用目的に依存する。例えば、ATMやノートパソコンでは、形状は
図1に示される形状に類似しているように見えることが多い。しかしながら、自動車においては、形状が、丸みを帯びたエッジ又は異なる形状のエッジを有するデザインに多かれ少なかれ従わなければならない。図示の実施例において、導光体1は板状であり、2つの主面は平面であり、互いに平行である。他の具体例において、主面は、曲率を有し且つ/又は楔形を形成し得る。エッジ3において、主面は、
図1に示す実施例では紙面に垂直に配置された横方向面で接続されている。導光体1は、2つの主面を介して該導光体を通過する光に対し少なくとも70%の透明度を有している。
【0031】
導光体1は、主面の少なくとも一方に、複数の3次元形状の光出力素子4、5を備える。
図1の実施例では、光出力素子4、5は、底部主面2のみに位置している。導光体の他の具体例は、追加的に、又は代替的に頂部主面に光出力素子4、5を備える。追加的に又は代替的に、複数の光出力素子4、5は、主面及び横方向面によって囲まれた容積内に提供されてもよい。ほとんどの出力素子4、5について、任意の出力素子4、5は、任意の他の出力素子4、5から少なくとも1μm離れている。出力素子4、5は、底部主面2に垂直な平面において縦断面を備える。縦断面は、3つの角部と、前記角部を接続する3本の接続線とを有する略多角形に形成されている。3本の接続線のうちの1つは、選定線であり、該選定線が全長にわたって直線でない場合、少なくとも1つの直線セグメントを含む。以下で更に説明するように、底部主面2に対する直線セグメントの向きは、屈折及び/又は反射によって全反射が干渉され、第1出力結合角度範囲を規定するように、ブレーズ角を規定し、これにより、特徴的な出力結合特性を規定する。
【0032】
該複数の出力素子4、5は、いくつかの出力素子4、5のグループに分けられる。各グループは、他のグループのそれぞれと相補的であり、各グループのメンバーは、共通の特徴的なブレーズ角を有し、したがって、少なくとも1つの共通の特徴的な出力結合特性を有し、該共通の特徴的なブレーズ角及び該少なくとも1つの共通の特徴的な出力結合特性は、他のグループのメンバーの特徴的な出力結合特性及びブレーズ角とは異なる。その結果、各出力素子が属するグループによって、光が異なる角度分布で出力結合される。
図1の具体例では、第1出力素子4を有する第1グループと、第2出力素子5を有する第2グループとの2つの出力素子グループが存在する。しかしながら、導光体1において2つ以上の出力素子グループが実現されてもよい。
【0033】
光出力素子4、5(あるいは簡単に言えば、出力素子4、5)は、例えば、上記したような市販の光学設計プログラムによって予め決められた分布パターンに従って分布されることで、横方向面の少なくとも一方において導光体1に結合され、且つ出力素子4、5に入射される前に全反射により導光体1内を伝播する光に対して、2つの主面のうちのいずれか一方が2つの主面のうちの他方よりも高い光量の光を優先的に結合して出力する。全反射のためには、導光体に限られた角度範囲のみで光が結合されなければならない。
【0034】
光出力素子4、5が底部主面2に位置する
図1に示す具体例において、頂部主面は、底部主面2よりも高い光量の光を結合して出力することが好ましい。この状況を、
図1と同様な導光体1を通過する断面を示す
図2で詳細に示す。しかしながら、
図2において、単に理解を深めるために、出力素子4、5は、互いに等間隔に配置されているが、現実にはそうではない。
図1に関連して、該断面は、紙面に垂直で且つ底部から頂部まで至り、
図2における左から右まで至ることに対応する。
図2の左側には、光ビーム7に沿って光を出射する光源6が配置されており、前記光ビームは、横方向面8を通過して導光体1に進入する。
図1に関して、この横方向面8は、底部主面2の下エッジ3に位置している。なお、光源6は、単一の光ビームを出射するものではなく、該光源は横方向面の主要部に沿って光を出射するものである。これは、
図2において、紙面に垂直な異なる深さに対応する複数の光ビーム7(実線光ビーム、破線光ビーム及び一点鎖線光ビーム)で符号化されている。更に、角度スペクトルが平面主面における光の全反射を可能にする角度に制限されているため、光ビーム7は、出力素子4、5が存在しない場合、光が結合して出力されずに導光体1を通過して伝播することを可能にする小さな角度範囲で出射する。光源6に対向する横方向面に、通常、光損失を最小限に抑えるための反射コーティングが設けられてもよい。
【0035】
しかしながら、第1出力素子4及び第2出力素子5が存在するため、光が導光体1から結合して出力される。実線の光ビーム7は、横方向面8において導光体1に進入する。この実線の光ビームは、最も左側の出力素子4で全反射され、実線によって描かれる。光が、ある角度で反射されることで、該光が導光体1の頂部主面を通過し、該導光体から所定の角度で離れる。これは、同様に、別の第1出力素子4で反射された破線ビーム7に適用可能であり、該第1出力素子は、紙平面から見て導光体1のより深い位置にある。最後に、一点鎖線で示されるビーム7は、第2出力素子5で反射され、該第2出力素子は、導光体1の深さ寸法に関して、導光体1における他の2つの光出力素子4の間に位置している。ただし、第2出力素子5は、第1出力素子4と形状が少し異なる。このため、第1出力素子4で反射された光に比べると、反射角度が異なり、且つ一点鎖線光ビーム7が異なる角度で導光体から離れる。これは、出力素子の所定の分布とともに、ホットスポットや虹状特徴などのアーチファクトを減少させることに有利である。
【0036】
光出力素子4、5は、各空間方向において通常100μmの最大寸法を有するが、好ましくは、その最大寸法は1μm~30μmである。
図1及び
図2に示した具体例では、前記光出力素子は、凹部として形成されているため、底部主面2まで延在しているが、前記光出力素子は、2つの主面に形成されていてもよいし、導光体内部のキャビティとして形成されていてもよい。前記光出力素子は、突出部として形成され、及び/又はマイクロプリズムとして成形されてもよい。仮に、出力素子がキャビティとして形成される場合、このようなキャビティは、真空引かれるか又は、材料で充填され、該材料は、導光体1の材料の屈折率又はヘイズ値とそれぞれ異なる屈折率及び/又はヘイズ値を有する。導光体1は、熱可塑性材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート、PMMI)で形成されてもよいし、ガラスで形成されてもよい。少なくとも2つの出力素子グループが異なるタイプの出力素子を含むことも可能である。例えば、第1出力素子グループは、主面の少なくとも一方から突出部として形成された出力素子を含み、第2グループの出力素子は、導光体1の内部におけるキャビティとして形成され、第3グループの出力素子は、2つの主面の少なくとも一方における凹部として形成されてもよい。
【0037】
図1に示される具体例では、底部主面2において、2つの主面のうちの少なくとも一方及び/又は導光体1の容積内における出力素子4、5の分布パターンは、出力素子4、5によって、2つの主面のうちの少なくとも一方(ここでは頂部主面)に、少なくとも60%の照度均一性で光が結合して出力されるように、予め決められることが好ましい。
【0038】
好ましくは、出力素子4、5のそれぞれは、導光体1の全体的なヘイズに寄与するものであり、且つ底部主面2における出力素子4、5の分布パターン、出力素子4、5の数及びそのサイズは予め決められ、これにより、頂部主面(出力素子4、5が位置する面と対向する面)の少なくとも50%において30%以下の平均ヘイズを発生するようにする。このように、出力素子のそれぞれは、導光体1の全体的なヘイズに寄与する。例えば、ヘイズは、ASTMD1003-13に従って計測することができる。
【0039】
以下、出力素子4、5についてより詳細に説明する。
図3は、理想的な形状を有する出力素子4又は5を示す。
図3A)は出力素子の斜視図、
図3B)は頂部又は底部からの投影図、
図3C)は
図3B)に示す一点鎖線に沿った結合素子4、5の縦断面図を示す。
【0040】
縦断面とは、常に、断面の面積が最小となるように、
図3B)に示すような平面に沿って(すなわち、進入点と退出点との最短距離に一致する方向に沿って、
図3B)における一点鎖線に沿って)、出力素子を通過する断面を意味している。
図3B)において投影された出力素子の曲線は、共通の中心点を有する円弧の形状を有するため、断面平面は、その接線に垂直に2つの円弧を切断する。
【0041】
しかしながら、製造工程(例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて光学ツールを形成し、且つナノインプリント及び/又は射出成形工程を用いて導光体を製造する)の制約から、
図3A)~
図3C)に示すような理想的な構造を作製することは非常に困難である。したがって、出力素子4、5の実際の構造は、この理想的な形状から多かれ少なかれずれており、且つ
図4A)~
図4C)に示すような形状に見えやすくなっている。具体的には、
図4C)に示す縦断面に見られるように、角部は丸みを帯びている。
【0042】
一般に、各出力素子4、5は、主面の少なくとも一方に垂直な平面において、例えば
図3C)又は
図4C)に示されるような縦断面を備え、該縦断面は、少なくとも3つの角部と、前記角部を接続する少なくとも3本の接続線とを有する略多角形に形成され、前記接続線は、曲線又は直線である。
図3C)の縦断面は、直線で接続された3つの角部を有する。一方、
図4C)に示すより実際の縦断面は丸い角部を有する。基本多角形は、光学効果と同等の2つの方法で定義することができるが、この効果は、以下で更に説明するように、角部の実際の形状に依存しない。第1可能性は、直線又は直線セグメントを互いに交差するまで更に延在し、
図3Cに示すような形状を形成することである。第2可能性は、多数の短い直線によって丸い角部を近似して得ることである。無限に短い線の限度において、関数により(例えば多項式関数により)丸い角部を近似して得ることができる。
図4C)に示される縦断面において、出力素子4、5は、導光体1における凹部として形成され、ここで、底部主面2の平面が紙面に垂直であり且つ出力素子4、5の水平ベースライン9(紙面に対する)を含む。主面から突出する出力素子は、同じ形状を有する。出力素子が導光体1の容積内にある場合、
図4C)において出力素子の内部から見て凸面形状を有する2つの下部角部が、逆に凹面形状を有する。
【0043】
図3及び
図4における出力素子4、5は、縦断面を有し、この縦断面は、
図4において3つの角部を有する多角形に単に近似的に形成される。前記角部は接続線で接続されている。第1接続線は、主面のうちの一方(ここでは底部主面2)に平行な面内に位置するベースライン9である。出力素子が凹部として形成される場合、第1接続線は直線であり、他の具体例において、該第1接続線は少なくとも直線セグメントを含む。
【0044】
第2接続線12は、ベースライン9に対して75°と90°の間の角度に配置されている。
図3及び
図4に示す実施例では、この角度は90°である。しかしながら、実際には、90°未満、具体的には85°~89°の範囲(例えば、88°)の角度を選択することが好ましいことが判明した。いずれにしても、第2接続線12の回転によって規定される面に光が照射されないように該角度を選択すればよい。現実的には、第2接続線は、わずかな曲率を示し、且つ表面粗さとみなされる直線形状からのずれが5nm~10nmの範囲にある「S」の形状を有する場合がある。そして、上記で説明したように、その角度を判定する。
【0045】
第3接続線13は、ベースライン9と第2接続線12の遠位端を接続する。第3接続線13は選定線であり、且つベースライン9と共にブレーズ角11を囲むことで特徴的な出力結合特性を規定する。第3接続線13が湾曲している場合、該第3接続線に含まれる直線セグメント10は、第3接続線13の全長の少なくとも60%の長さを有することが好ましい。60%未満の長さも有効であるが、効率が少し低下する。出力結合は、
図1及び
図2に示すような、導光体1における凹部として形成された出力素子4、5の場合、光が直線13又は直線セグメント10でそれぞれ反射された後、対向側における主面を通過して導光体1から離れることにより実現される。
【0046】
直線セグメント10又は直線の少なくとも1つの主面(ここでは底部主面2)の平面に対する向きは、直線セグメント10を含む各表面に照射された光の反射及び/又は屈折により全反射が干渉され、且つ第1出力結合角度範囲を特徴的な出力結合特性として規定するようにブレーズ角11を規定し、これにより特徴的な出力結合特性を規定する。換言すれば、出力結合角度範囲は、主面の平面に対する直線又は直線セグメント10のそれぞれの向きに直接的に関連し且つ依存する。
【0047】
この具体例では、出力素子4、5のそれぞれの3次元形状は、縦断面に垂直な平面において、縦断面に平行であり縦断面の外部の中心軸線を中心とする縦断面の部分的な回転によって規定される。もう1つの可能性は、縦断面の平行移動によって3次元形状を規定することである。第3接続線13の回転により、
図2の光ビーム7がここで反射される平面又は、他の具体例において屈折される平面が規定される。部分回転角度は、0°と異なり、このような角度を含む5°と25°との間の範囲内であることが好ましい。これは、
図3A)及び
図4A)に示すように、出力素子4、5の斜視図を示し、
図5は、異なる部分角度を有する出力素子の2つの実施例を示す。
図5A)は、底部主面2から導光体1の内部に進入する観察方向に沿った第1出力素子4の底面図である。
図5B)は、第2出力素子5の底面図である。中心軸線は、十字によってマークされ、紙面に垂直に方向づけられる。第1出力素子4の部分回転角度は25°であり、且つ第2出力素子5の部分回転角度よりも大きく、該第2出力素子の部分回転角度は15°である。また、第2出力素子5の反射面の円弧は、第2出力素子5の半径(すなわち、中心軸線からの距離)が短いため、第1出力素子4の円弧よりも強い曲率を有する。
【0048】
図3及び
図4に示す実施例では、縦断面の形状は、断面の位置によらず、常に同じ形状である。したがって、ブレーズ角11は、各出力素子全体にわたって一定である。しかしながら、部分回転とブレーズ角11の回転角度に応じて変化する離散的又は連続的な変化を組み合わせることも可能であり、これは、縦断面の形状が回転に対する位置に依存することを意味する。ブレーズ角11は、部分回転の両端位置の間(例えば、53°~57°の間)で連続的又は離散的に変化してもよい。1つの好ましい具体例において、ブレーズ角は、少なくとも1つの出力素子グループに対して変化する。これにより、アーチファクトをより低減することが可能であり、基本的には、作製がより容易な1つの出力素子グループのみを用いることができる。
【0049】
前述のように、導光体は、少なくとも2つの相補的な出力素子グループに分けられた複数の出力素子を含む。図面に関連する具体例において、該複数の出力素子は、2つのグループに分けられ、各グループのメンバーは、共通の特徴的なブレーズ角11を有し、従って共通の特徴的な出力結合特性を有し、該共通の特徴的なブレーズ角及び該共通の特徴的な出力結合特性は、他のグループのメンバーの特徴的な出力結合特性及びブレーズ角と異なる。これにより、異なる出力素子グループに対して異なる角度分布で光が出力結合される。上記した具体例では、出力結合角度分布は、第1角度範囲及び第2角度範囲を含む。後者は、主面への投影によって規定される。これは、
図5A)では第1出力素子4について示し、
図5B)では第2出力素子5について示す。第2角度範囲は、ドーナツ形状を発生する360°全回転に対する各セグメントの寸法に対応する部分回転角度によって規定される。部分回転角度は、第2角度範囲に直接的に関係し、ブレーズ角11に関連しない第2特徴的な出力結合特性を規定する。ブレーズ角11は、出力素子4、5の異なるグループに対して異なる必要があるが、部分回転角度、ひいては第2特徴的な出力結合特性は全てのグループに対して何れも同じである可能性がある。
【0050】
出力結合角度分布は、縦断面の平面への投影によって規定される第1角度範囲を更に含む。これは、
図6A)では第1出力素子4について示し、
図6B)では第2出力素子5について示す。
図2に関して説明したように、導光体1には限られた角度スペクトル内で異なる角度で光が進入する。この角度スペクトル内の光ビームは、
図3及び
図4に関して説明したように、最終的に第3接続線13の回転によって規定される平面で反射される。各第1角度範囲は、影付き円錐として示され、ベースライン9に対して計測する時に異なる。第3接続線13の水平方向(紙面に対して)に沿った回転によって規定される面に照射された光は、影付き円錐を等分する方向において反射される。
図6A)及び
図6B)から分かるように、第1角度範囲はブレーズ角11に直接的に関連し、該ブレーズ角は、第3接続線13又はその直線セグメント10の傾きを規定し、従って反射光ビームの平面の傾きを規定する。第1角度範囲は、同一の出力素子グループのメンバーに対して同じであるが、異なる出力素子グループのメンバーに対して異なる第1特徴的な出力結合特性を規定する。
【0051】
図7は、上記した導光体1を含む表示画面を示している。表示画面は、少なくとも横方向面8の一方(ここでは左側の横方向面8)において導光体1に結合される光を出射する1つ以上の光源6を更に含む。透過型表示パネル14は、観察者から見て導光体1の前方に位置している。
図7に示す具体例では、透過型表示パネル14と導光体1とは空気層15のみによって分離されており、透過型表示パネル14と導光体1との間に配置される他の光学素子が存在しない。代替的に、導光体1の屈折率に適した屈折率を有する高透明な接着剤を介して透過型表示パネル14を導光体1に光学的に接合して反射を最小限に抑えることも可能であり、これにより、導光体1内での全反射を可能にするためには、接合材料の屈折率を導光体1を構成する材料の屈折率よりも低くしなければならない。追加の光学層の使用を回避することで、ディスプレイの輝度の潜在的な損失を最小限に抑えることは明るい環境において重要である。
【0052】
導光体1が、画素又はそれ自体がサブ画素からなる画素を含む透過型表示パネル14と共に用いられる場合、出力素子4、5の空間的な延長は、デカルト空間における各次元(即ち、3つの空間方向のそれぞれ)の画素又はサブ画素の空間的な延長よりも小さいことが好ましい。
【0053】
上記した導光体1は、透過型表示パネル14と共に用いられる場合、従来公知の導光体を有する透過型表示パネルと比較して、ホットスポットや虹状特徴などのアーチファクトが大幅に低減されるため、観察者の観察体験が向上する。
【符号の説明】
【0054】
1:導光体
2:底部主面
3:エッジ
4:光出力素子/出力素子/第1出力素子/結合素子
5:光出力素子/出力素子/第2出力素子/結合素子
6:光源
7:光ビーム
8:横方向面
9:水平ベースライン/ベースライン/接続線
10:直線セグメント
11:ブレーズ角/共通の特徴的なブレーズ角/特徴的なブレーズ角
12:第2接続線/接続線
13:第3接続線/直線/接続線
14:透過型表示パネル
15:空気層
【国際調査報告】