(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】生物致死性を有する凍結乾燥担持エアロゲル粒子
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240628BHJP
A01N 25/28 20060101ALI20240628BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240628BHJP
A01N 55/02 20060101ALI20240628BHJP
A01N 43/36 20060101ALI20240628BHJP
A01N 43/80 20060101ALI20240628BHJP
A01N 47/14 20060101ALI20240628BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20240628BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20240628BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20240628BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240628BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C09K3/00 112F
A01N25/28
A01P3/00
A01N55/02 150
A01N43/36 A
A01N43/80 102
A01N47/14 C
A01N59/16 Z
C09D5/14
C09D5/16
C09D183/04
C09K3/10 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023580554
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022068179
(87)【国際公開番号】W WO2023275312
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523487690
【氏名又は名称】エアロゲル・エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】AEROGEL APS
【住所又は居所原語表記】Lerso Park Alle 38,2100 Kobenhavn O,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルストレーム、エバ
【テーマコード(参考)】
4H011
4H017
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB13
4H011BB16
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA14
4H011DC06
4H011DH07
4H017AA26
4H017AC20
4J038DL051
4J038JA19
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA06
4J038NA05
4J038NA27
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
本発明は、湿気条件、及び/又は海水を含む水に自然に曝され、したがって汚損を受けやすい、陸上及び海上の両方のコーティング(海上塗料、コーティング、シーラント、ラッカー、木材保護、又は同様の制御された浸出系)に特に好適である、封入された生物致死性及び/又は生物忌避性化合物の高い~非常に高い担持量(55~90%w/w)、高い多孔度、並びに低い熱伝導率を有する、シリカエアロゲル、並びに前記エアロゲルを作製する方法、及び前記エアロゲルを防汚組成物中で使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含む防汚添加剤であって、
a.シリカ含有無機エアロゲル:
b.以下の特性を有する多孔質ゲル格子:
i.少なくとも40%の総多孔度、及び
ii.少なくとも10nmのメソ細孔径、
c.任意に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシド、並びに
d.前記エアロゲルに封入された、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、エチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)、2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチル-チオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、ジンクピリチオン、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、重炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、及びその混合物から選択される、少なくとも55重量%の1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物
を含み、
前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物の前記封入が前記ゲルのゾル-ゲル形成中に行われ、ゾル-ゲル前駆体が、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、及びアルキルトリアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランである、防汚添加剤。
【請求項2】
少なくとも60重量%、例えば少なくとも75重量%、例えば少なくとも80重量%、又は例えば少なくとも85重量%の前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物を含む、請求項1に記載の防汚添加剤。
【請求項3】
少なくとも11nm、例えば少なくとも12nm又は少なくとも13nmのメソ細孔径を有する、請求項1~2の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項4】
少なくとも50%の総多孔度を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項5】
100mW/m*K未満の熱伝導率(ラムダ値)を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項6】
30~75mW/m*Kの熱伝導率(ラムダ値)を有する、請求項5に記載の防汚添加剤。
【請求項7】
前記アルキルトリアルコキシシランがMTMS(メチルトリメトキシシラン)及びMTES(メチルトリエトキシシラン)から選択される、請求項1~6に記載の防汚添加剤。
【請求項8】
前記生物致死性又は生物忌避性化合物がジンクピリチオン、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、及びエチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)から選択される、請求項1~7の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の防汚添加剤を含む、防汚コーティング組成物。
【請求項10】
定期的又は定常的に水没する海上表面、例えば船体及び海上建築物、港湾、石油リグ、養殖網、橋脚などでの使用のための、請求項9に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1~8の何れか1項に記載の防汚添加剤を含む、陸上使用、例えば木材系建築材料又は室内湿気環境用の保護コーティングなどのための防汚コーティング組成物。
【請求項12】
請求項1~8の何れか1項に記載の防汚添加剤を含む、防汚シーラント組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、湿気条件、及び/又は海水を含む水に自然に曝され、したがって汚損を受けやすい、陸上及び海上の両方のコーティング(海上塗料、コーティング、シーラント、ラッカー、木材保護、又は同様の制御された浸出系)に特に好適である、封入された生物致死性及び/又は生物忌避性化合物の高い~非常に高い担持量(55~90%w/w)、高い多孔度、並びに低い熱伝導率を有する、シリカエアロゲル、並びに前記エアロゲルを作製する方法、及び前記エアロゲルを防汚組成物中で使用する方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
生物致死剤及び生物忌避剤は、建物、施設、又は他の区域からの生物学的生命体の望ましくない増殖を防止するために使用される物質である。生物致死剤及び生物忌避剤は、通常、このような望ましくない増殖が生じやすい区域に塗布してもよい製品、例えば塗料及びラッカーを含む保護コーティングに加えられており、弾性シーラント、例えばシリコーンシーラントに加えられてもよい。
【0003】
通常、外面又は内面用途のために塗布される保護コーティングは、保護及び装飾という2つの基本的機能を有する。通常、弾性シーラントは、非弾性面、例えばセラミックタイル間の接合部及び亀裂を閉鎖するために使用され、シーラントの機能は、接合部又は亀裂を隠し、非弾性面の沈下を吸収し、水分の流入を防ぐことである。
【0004】
湿潤状態での、又は塗装面における、生物学的生命体、例えば真菌及び藻類の攻撃によって、塗料膜が与える保護効果及びその装飾効果の両方が損なわれるおそれがある。この生物学的過程は汚損と呼ばれる。カビ及び白カビは、しばしば湿気を帯びる屋内及び屋外の両方の表面を攻撃しうる一般的な真菌の種類である。カビ胞子は深刻なアレルギー問題となることがあり、また、経時的にカビ及び他の真菌は特に木材系建築材料を破壊し、したがってカビ及び他の種類の汚損を効率的に予防することが重要である。
【0005】
海水に曝される船舶表面は、微生物、植物、藻類、及び動物が定着する傾向にあり、それにより船舶の推進抵抗が増加し、したがって速度が減少するか又は燃料消費が増加するという特殊な問題がある。この生物学的過程は汚損と呼ばれており、2つの広範な群:「スライム」としばしば呼ばれる単細胞の藻類及び細菌のコロニーを含む微生物汚損、並びに植物(雑草)及び動物の両方の汚損を含む生物汚損に分類されうる。特に、生物汚損は推進抵抗に関して問題となる。
【0006】
一般的に、上記の種類の汚損には、表面で活性を示す生物致死性化合物を放出する塗料、コーティング、及びシーラントを使用して対抗する。生物致死剤は、微生物細胞に毒性を示し、それにより望ましくない微生物及び肉眼的生物(すなわち汚損生物)の増殖を予防する、化学物質であり、一方、それほど頻繁には使用されない生物忌避剤は、通常、比較的低い毒性を有しており、それを使わなければ汚損生物を引き寄せるであろう区域から望ましくない生物学的生命体を忌避又は抑止することで働く。
【0007】
大部分の防汚化合物はすべての種類の汚損生物に対して効率的であるとは限らず、このため有効化合物の組合せが使用される。伝統的な防汚コーティング及びシーラントでは、有効化合物の浸出が同じ減衰曲線を辿ることは稀である。したがって、コーティング又はシーラントは、供用寿命の終了までに、汚損を防止することに部分的にしか成功できなくなることがある。
【0008】
防汚コーティングからの生物致死剤及び/又は生物忌避剤の放出は、これら有効化合物を封入することで制御することができ、この封入によって、それらが浸出及び望ましくない分解反応から保護されて、ゆっくりと放出されることで、異なるマトリックス中でのそれらの有効寿命が延長される。したがって、理想的には、封入方法は、封入材料中の生物致死剤/生物忌避剤の高い担持量を、コーティングの供用寿命全体を通じた封入材料からの有効化合物の定常的な放出と共に可能にするものとすべきである。この特徴の組合せによって、コーティングの防汚効果の持続性が確保され、添加される有効化合物が最大限に活用され、これにより商品原価(CoG)及び環境への負の影響の両方が減少する。
【0009】
本発明の発明者らは、シリカエアロゲル粒子に固体有効化合物を封入するための方法を既に開発しており、これは国際特許出願WO2009/062975に記載されている。初期湿潤ゲルを乾燥させるために超臨界CO2抽出を使用することを包含する上記の手順によれば、約50%w/wの封入固体有効化合物の含有量を有するこれらの「担持」エアロゲルを小規模で実現することができた。この封入プロトコルは後に本発明者らによって国際特許出願WO2020/002659において練り上げられており、この特許出願では、60~90%の封入固体有効化合物の含有量を有するエアロゲルが記載されている。
【0010】
シリカエアロゲル中の固体有効化合物の限界担持量は、コーティング又はシーラント組成物中の防汚成分としてのそれらの最終的使用に関して非常に重要である。シリカエアロゲルに封入された生物致死剤を防汚組成物に加える場合、特定のエアロゲルの担持量パーセンテージにより確定される比でシリカも同様に必ず加えられる。本発明者らは、防汚組成物は原則として約1.5%w/wを超えるSiO2(シリカ)を含有するべきではなく、そうしなければ組成物は濃厚/粘稠になりすぎ、均一に塗布することが困難になることを発見した。したがって、単にコーティング組成物に加える担持エアロゲルの量を多くすることで防汚コーティング又はシーラント組成物中の生物致死剤の量を増加させることは、1.5%のシリカ限界量が理由で不可能である。例えば:
・40%の生物致死剤含有量を有するエアロゲルは60%のシリカを含有する。したがって、1.5%のシリカ限界量未満を維持するには、このエアロゲルをコーティング組成物の2.5%w/w以下で加えればよい。したがって、このエアロゲルを用いて作製されるコーティング又はシーラント組成物は1.25%w/wの生物致死剤を含有する。1.5%のシリカ限界量を超えずに、この経路によってさらに多くの生物致死剤を加えることはできない。
【0011】
・50%の生物致死剤含有量を有するエアロゲルは50%のシリカを含有する。したがって、1.5%のシリカ限界量未満を維持するには、このエアロゲルを組成物の3%w/w以下で加えればよい。このことは、最終組成物が1.5%w/wの生物致死剤を含有することを意味する。1.5%のシリカ限界量を超えずに、この経路によってさらに多くの生物致死剤を加えることはできない。
【0012】
・80%w/wの生物致死剤を有するエアロゲルは20%のシリカを含有し、したがって最大7.5%w/wのこのエアロゲルを組成物に加えることができる。このエアロゲルを用いて作製される最終組成物は、80%×7.5%=6%w/wの生物致死剤、及び、なお1.5%以下であるシリカを含有する。
【0013】
・90%の生物致死剤担持量を有するエアロゲルを使用する場合、15%w/wのエアロゲルを加えることができ、これにより、1.5%の「シリカ限界量」を超えずに13.5%w/wという組成物中の生物致死剤のレベルが実現される。
【0014】
図2は、1.5%以下のシリカを組成物に加えてもよい場合の、エアロゲル中の生物致死剤担持量の関数としてのコーティング組成物中の生物致死剤の含有量(重量%単位)を示す。
【0015】
WO2009/062975及びWO2020/002659の両方の担持エアロゲル粒子は、生物致死性化合物をシリカ含有湿潤ゲルにゾル-ゲル封入し、次にゲルを超臨界(SC)CO2抽出によって乾燥させることで製造される。この製造方法は、用途が広く、R&D目的で多くの異なる種類の担持ゲルを得るために非常に適していることがわかっている。しかし、過程において大量の溶媒が消費され、溶媒交換に著しい量の時間が必要になり、したがって総コストが増加するため、より大規模の製造という目的では超臨界抽出工程は理想的でないと考えられる。
【0016】
さらに、必要な製造設備は高価であり、かつ、高圧が必要であることが理由で操作が多少危険である(Muhammad 2021)。
【0017】
さらに、溶解性の問題が理由で、超臨界乾燥法を使用して特定種類の生物致死剤をエアロゲルに封入することは容易ではない。最後に、WO2009/062975又はWO2020/002659に従って調製することで得られるSC乾燥エアロゲル粒子は、多くの場合、他の塗料成分と直接混合するには硬すぎるが、防汚塗料として調合する前に別個の磨砕工程を必要とする。
【0018】
本発明者らは、同時係属中の国際出願PCT/EP2020/087730においてゾル-ゲル過程にさらに改善を加えたが、初期湿潤ゲルを乾燥させることに関する問題をスケーラブルで工業的に適用可能でかつ経済的に健全な形で克服することはできなかった。したがって、超臨界(SC)CO2抽出の代わりに凍結乾燥を使用する初期の試みでは、比較的低い総多孔度及び高い嵩密度を有するゲルしか得られなかった。
【0019】
したがって、以下の特性を有する封入形態の生物致死剤及び生物忌避剤の選択の幅を広くすることができる、スケーラブルな封入方法が依然として求められている:
・有効化合物の高い担持量、
・封入生物致死剤を包含することで得られるコーティング又はシーラントにおいて十分な吸水性を確保するために十分な細孔構造、及び
・防汚組成物の表面上でその寿命全体にわたって生物致死剤の濃度が一定であること、及び
・競合力のあるCoG。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】コーティング又はシーラントが経時的に例えば水、多湿、及び/又は温度変化に曝されることで分解される際に膜表面において恒常的に到達可能になる、固体生物致死剤粒子を含む(
図1、黒色円)を含む、防汚コーティング又はシーラント組成物の表面を示す。しばらくして、部分的に摩滅した粒子はコーティングから洗い落とされる(
図1、白色半円)。
【
図2】最大1.5%のシリカをコーティングに加えてもよい場合の、エアロゲル中の生物致死剤担持量の関数としての、シリカエアロゲル粒子に封入された生物致死剤を含む塗料組成物中の生物致死剤の含有量(重量%単位)を示す。
【
図3】層内で均一に分布しているエアロゲル粒子を含有する防汚組成物層の断面図を示す。この場合、塗料層は厚さ約300μmである。各エアロゲル粒子は有効化合物の何個かの別々の粒子を含有してもよく、各エアロゲル粒子は磨砕度に応じて約10μmの寸法を有する。
【
図4】
図3に示すエアロゲル粒子を含有する防汚組成物層の近接図を示す。組成物は、湿気に曝される際に、水を吸収し始め、それにより浸出層と呼ばれる上層を作り出す。浸出層に埋め込まれたエアロゾル粒子はシリカ系エアロゲルの多孔性及び吸湿性によって水を吸収し、しばらくしてエアロゲル粒子の内側に有効化合物(例えば生物致死剤)の飽和溶液が作り出される。浸出層を通じた拡散によって、防汚組成物層の表面に活性生物致死剤の膜が作り出される。
【0021】
浸出層は、例えば、層の上部を侵食させ、無侵食の防汚組成物層のさらに深部に存在する区域に水を浸透させることによって再生させてもよい。侵食がわずかであるか又はゆっくりとしている場合、浸出層は経時的に増加し、生物致死効果は純粋に拡散によるものである。
【
図5】同時係属中の国際出願PCT/EP2020/087730に当初開示された凍結乾燥エアロゲルFD1~FD4に関するポロシメトリーの結果を示す表(表1)である。表1では、2つの異なる温度-18℃及び-80℃で凍結した2つの空のゲルと2つの担持ゲルとを比較している。表1のすべてのゲルは予備縮合TEOS+MTMSを用いて調製した。表からわかるように、すべてのゲルは40%未満の総多孔度及び1gr/cm
3に近い嵩密度を有していた。総多孔度は担持生物致死剤の存在によって著しく影響され(FD1/FD2とFD3/FD4とを比較されたい)、一方、凍結温度は総多孔度にも密度にも大きな影響を与えないようである(FD1/FD3対FD2/FD4)。
【
図6】本発明に従って調製される6つの凍結乾燥担持エアロゲルFD5~FD10に関するポロシメトリーの結果を示す表(表2)である。参照番号FD5は66%のEconeaを含有し、FD6は56%のDCOITを含有し、FD7は75%のジネブを含有し、FD8は75%のCuピリチオン(CuPt、標準試料)を含有し、FD9は75%のZnピリチオン(ZnPt)を含有し、FD10は75%のEconeaを含有する。MTMSなしで調製したFD5を除くすべてのゲルはTEOS及びMTMSを用いて調製した。すべての試料において、総多孔度は少なくとも50%であり、メソ細孔径(すなわち粒子内径)は少なくとも10nmであった。表2は、75%のEconeaを含有する超臨界乾燥(CO2)ゲルであり、他の点では試料FD10と同様に製造された、試料FD11に関するポロシメトリーの結果も含む。
【
図7】凍結乾燥条件下で、又は比較を目的に超臨界条件下で調製された様々な担持エアロゲルの熱伝導率を示す表(表3)である。参照番号SC7及びFD7は、75%のジネブを含有する、それぞれ超臨界条件又は凍結乾燥条件下で乾燥した、担持ゲルである。同様に、参照番号SC8及びFD8は、75%のCuPtを含有する、それぞれ超臨界条件又は凍結乾燥条件下で乾燥した、担持ゲルである。FD5は、66%のEconeaを含有し、凍結乾燥した、担持ゲルである。参照番号TC1及びTC2は、それぞれ75%のCuPt及び75%のZnPtを含有する2つの凍結乾燥担持ゲルであり、その熱伝導率は同時係属中の国際出願PCT/EP2020/087730に当初開示されたものである。
【
図8】本発明に係る担持エアロゲルを製造するために使用される数種の生物致死剤の化学構造、並びにまたそれらの密度及び水溶性を示す、表である。表からわかるように、生物致死性化合物の間には化学構造、密度、及び溶解性のいずれに関しても相当に著しい相違がある。
【発明の概要】
【0022】
今般、本発明の発明者らは、封入された生物致死性及び/又は生物忌避性化合物の高い~非常に高い担持量(55~90%w/w)を有するエアロゲル(以下「担持エアロゲル」と呼ぶ)を、超臨界(SC)抽出工程の代わりに凍結乾燥が行われるWO2020/002659の製造方法の修正形態によって調製することができることを発見した。
【0023】
さらに、凍結乾燥担持エアロゲルは、水銀ポロシメトリーによって、少なくとも50%の総多孔度及び少なくとも10nmの粒子内孔径(又は「メソ細孔」径)を有することがわかった。本発明者らは、メソ細孔径が少なくとも10nmである限り、最終防汚組成物において十分な水の取り込みを実現するには少なくとも40%の総多孔度で十分であると考える。
【0024】
最後に、凍結乾燥担持エアロゲルは低い熱伝導率(30~75mW/m*K)を有することがわかった。このことは、約200~300mW/m*Kの熱伝導率を有する化合物の担持量が高いことを考えれば驚くべきことである。
【0025】
したがって、第1の側面では、本発明は、防汚添加剤であって、
a.以下のものを含むシリカ含有無機エアロゲル:
b.以下の特性を有する多孔質ゲル格子:
i.少なくとも40%の総多孔度、及び
ii.少なくとも10nmのメソ細孔径、
c.任意に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシド、並びに
d.前記エアロゲルに封入された、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、エチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)、2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチル-チオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、ジンクピリチオン、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、重炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、及びその混合物から選択される、少なくとも55重量%の1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物
を含み、
前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物の封入がゲルのゾル-ゲル形成中に行われ、ゾル-ゲル前駆体が、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、及びアルキルトリアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランである、防汚添加剤を提供する。
【0026】
上記の第1の側面の防汚添加剤は、PCT出願WO2020/002659に記載の方法をさらに発展させたものである新たに開発された製造手順によって得ることができる。
【0027】
したがって、第2の側面では、本発明は、第1の側面の防汚添加剤を提供するための方法であって、以下の工程を含む方法をさらに提供する:
a.ゾル-ゲル前駆体溶液1を調製する:
i.100~450部の1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物を100~500部の低級アルコール、例えばエタノールに溶解させる。任意に、分散剤を加えてもよい。任意に、HCl(又は別の無機酸水溶液)を加えてもよい。この時点で、任意に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシドを加えてもよい。
【0028】
ii.100部のテトラアルコキシシランと0~50部のアルキルトリアルコキシシランとを混合する。
【0029】
iii.アルコキシシラン混合物と1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物の溶液とを混合する。
【0030】
b.触媒溶液2を調製する:
100部の低級アルコール、例えばエタノールと、約50部の水と、0.25~15部のゲル化触媒とを混合する。
【0031】
c.激しく撹拌しながら溶液2を溶液1に徐々に加える。ゲル化の兆候が観察されるまで撹拌を低速で続ける。得られた溶液をゲル化のために1個以上の別の容器に移してもよい。
【0032】
d.ゲルを好適な容器中で2~5日間熟成した後、使用される溶媒に応じて通常は-18℃以下の温度、例えば-80℃で凍結させる。湿潤ゲルを凍結させる前に、溶媒をより高い融点及び好ましくは低い膨張係数を有する別の溶媒、例えばtert-ブタノールに交換してもよい。
【0033】
e.次に、凍結溶媒が昇華により除去されるまで、ゲルの崩壊温度TC未満の棚温度を維持しながら、凍結ゲルを好適な真空下で凍結乾燥させる。次に凍結乾燥固体は高温での二次乾燥期を経てもよく、
ここで前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物はゲルのゾル-ゲル形成中にゲルに封入される。
【0034】
溶液1及び2の調製では、エタノール又は別のC1~C4アルコールを好都合に使用することができる。ゲル化触媒は、特定の生物致死剤に応じて塩基性又は酸性であってもよい。
【0035】
崩壊温度TCは、材料がそれ自体の構造を支持できない点まで軟化する温度として規定される。多くの場合、TCは、凍結材料が脆性構造から可撓性構造に変化する温度として規定されるガラス転移温度Tg’に近い。特定の凍結ゲルにおいて目に見える変化が生じる温度を同定するために凍結乾燥顕微鏡観察(FDM)を使用することができる(方法の節を参照)。
【0036】
第3の側面では、第2の側面に係る方法によって得ることができる防汚添加剤が提供される。
【0037】
第4の側面では、海上コーティング、あるいは木材保護、ファサード、パティオ、若しくはフロント、及び他の湿気環境向けの、又は室内湿気環境向けのコーティングにおける、第1又は第3の側面に係る防汚添加剤の使用が提供される。
【0038】
第5の側面では、本発明の第1又は第3の側面に係る防汚添加剤を含む、防汚塗装又はシーラント組成物が提供される。
【詳細な説明】
【0039】
発明の概要において説明したように、今般、本発明者らは、封入された生物致死剤及び/又は生物忌避剤を含むエアロゲル粒子の商業的/工業的製造に非常に適した新規の製造手順を開発した。これは、エアロゲル粒子に封入された生物致死性及び/又は生物忌避性の有効化合物を含む防汚コーティング及びシーラントの防汚効果が組成物の吸水性を正確に管理することに大きく依存するということを、本発明の発明者らが認識してからの目標であった。具体的には、吸水性が低すぎる(1重量%未満)と汚損が生じることがあり(乾燥しすぎた条件下では生物致死剤がその効果を発揮できないため)、一方、吸水性が高すぎると速やかに溶解しすぎ、最終的に生物致死剤がなくなることがあるということがわかった。
【0040】
したがって、コーティング又はシーラント組成物の表面層中に有効化合物の飽和溶液を維持するために十分な水を、防汚組成物が吸収できることが重要であるということがわかった。約1.5~6%の範囲の吸水性の値が最適と見なされる。
【0041】
さらに、本発明者らは、防汚コーティング及びシーラント組成物の性能を調節するには、埋め込まれたエアロゲル粒子自体の吸水性を制御しなければならないことを発見した。この目的に関する2つの最も重要で影響力のあるパラメータは1)封入用エアロゲル粒子中の有効化合物の担持量、及び2)前記エアロゲル粒子の多孔度である。エアロゲル粒子に封入された生物致死剤又は生物忌避剤の高い含有量均一性、すなわち高度に均質な分布も、防汚コーティング及びシーラント組成物の性能には重要である。
【0042】
したがって、本発明の目的は、防汚コーティングとして調合される際に例えば1.5~6%w/wの範囲である乾燥コーティングの十分な吸水性をもたらす、均質に分布した生物致死剤及び/又は生物忌避剤の高い~非常に高い担持量(55~95%w/w)を有するシリカエアロゲル粒子、すなわち「担持エアロゲル粒子」を得ることであった。陸上木材建築物向けのコーティングは、より高い範囲、例えば最大11%w/wを有しうる。さらなる目的は、前記担持エアロゲル粒子の製造手順をスケーラブルで工業的に実施しやすいものにすることであった。なおさらなる目的は、担持エアロゲル粒子を防汚コーティング、シーラントなどとして調合しやすくすることであった。
【0043】
本発明者らは、超臨界乾燥期の溶解性の問題(例えばDCOIT及び他の生物致死剤がエタノール中で高い溶解性を示すこと)又は選択されるゲル化触媒若しくは条件との不適合性のためにこれまで限界があった生物致死剤及び生物忌避剤の選択の幅をいっそう広げることを目的として、WO2020/002659に開示された封入手順の開発を続けてきた。
【0044】
今般、これらの目的は広範な異なる生物致死剤及び/又は生物忌避剤について達成された。
【0045】
WO2020/002659において使用される方法と同様に、本発明の製造方法は、ゲル化触媒の存在下での1種以上のゾル-ゲル前駆体の混合物のゲル化によって開始する。使用されるゾル-ゲル前駆体は、テトラアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシシランから選択されるアルコキシシランである。
【0046】
アルコキシシラン(通常はアルコキシ基がメトキシ及びエトキシであり、R=Me又はEtである)が通常は触媒の存在下で水と反応するときに、3つの反応が生じ、これらが共同してシリカナノ粒子を形成させる(最終的には相互接続してゲルを形成する)。これらの反応のうち最初の反応は加水分解であり、ここでアルコキシシランは水と反応してシラノール(Si-OH)基を形成する。次に、これらのシラノール基は互いに反応するか又はアルコキシド基(Si-OR)と反応してシロキサン架橋(Si-O-Si)を形成することができ、これにより2個の分子が接合されて1個のより大きな分子になる。各ケイ素原子は最大4個のシロキサン架橋を形成することができ(ケイ素が四価であるため)、これにより多くの小さな分子が接続されて、数千個のケイ素-酸素架橋を含有する巨大な分子になることが可能になる。しかし、シリカナノ粒子の形成中に、すべてのケイ素原子が最終的に4個のシロキサン架橋を形成するということはなく、そのヒドロキシル(-OH)基又は元々のアルコキシ(-OR)基のうち1個以上から離れない。これらは「末端基」と呼ばれており、ナノ粒子の表面を覆う。
【0047】
何らかの時点で、シリカナノ粒子は、成長を停止して代わりに他のナノ粒子と凝集する臨界粒径に到達する。ナノ粒子の表面の末端ヒドロキシル基及びアルコキシ基は、ナノ粒子が、原子のベルクロボールかのように互いに接続することを可能にする。十分な数のこれらのナノ粒子が一緒に接合されたとき、連続的な網目構造が液体溶液を覆い、「アルコゲル」が形成される。
【0048】
「通常の」(すなわち非担持の)エアロゲルを調製するための方法と例えばWO2020/002659及び/又はここで記載の担持エアロゲルを調製するための方法との相違は、ゲル化が開始される前に、すなわち「アルコゲル」が形成される前に、1種以上のアルコキシシランの溶液に生物致死剤(又は生物忌避剤)を加えるということである。これにより、生物致死剤(又は生物忌避剤)が最終的にゲルに封入されることが確実になる。
【0049】
ゾルがゲル点に到達するとき、ゲルのシリカ骨格はなお著しい数の未反応アルコキシド基を含有しており、したがって、一般的に「熟成」と呼ばれるシリカ網目構造の強化のために十分な時間が与えられなければならない。ゲルは最大48時間そのまま放置されることが最も望ましい。
【0050】
合成条件(例えば前駆体、触媒、及び界面活性剤の種類;水と前駆体との比;濃度;媒体pH;溶媒;乾燥方法)を変化させることでエアロゲルの構造及び特性が改変されることは周知である(K Sinco 2010を参照)。合成パラメータは加水分解及び縮合の両方の速度に影響し、それによりゾル-ゲル過程の速度論及び機構を制御する。
【0051】
前駆体の影響に関するいくつかの研究が報告されている。最も一般的なケイ素前駆体はアルコキシシランSi(OR)4である。これらの化合物の反応速度は以下の順序で減少する:
Si(OMe)4>Si(OEt)4>Si(OnPr)4>Si(OiPr)4
反応速度に対するこの「アルコキシ効果」は最終製品の特性に影響することがある。したがって、様々なSiアルコキシドから得られたエアロゲルを比較したところ、テトラメトキシシラン[Si(OMe)4]がテトラエトキシシラン[Si(OEt)4]よりも狭く、均一な細孔及び広い表面積を生じさせることがわかった。Zhang (2011)も同様に、「通常の」(すなわち非担持の)エアロゲルを調製するためにこれらのゲル前駆体を使用する場合、得られるゲルが異なる物理特性を有することを発見した。そこでZhang (2011)は40ページで「前駆体TEOS、TMOS、及びPEDS(ポリエトキシジシロキサン)が物理特性、例えばシリカエアロゲルの嵩密度、多孔度パーセンテージ、孔径分布、光透過性、表面積、熱伝導率、及び微小構造に強力に影響することがわかった」ことに言及している。
【0052】
Liら(2020)による別の研究では、前駆体が異なることによって、エアロゲルの密度、多孔度などの相違が生じることがあるというだけでなく、製造されるエアロゲル粒子の表面に配置される末端基の分子的な相違も生じるであろうということが示されている。したがって、エアロゲルの表面が明確に修飾/誘導体化されていない限り(例えば塩化トリメチルシリルMe3SiClとの化学反応を通じて)、「…シリカエアロゲルは内面にシリカ前駆体(水ガラス、ケイ素アルコキシド)並びにゲル化、熟成、及び洗浄液(アルコール、水)に起因するシラノール基及び/又はアルコキシ基を有しており…非修飾エアロゲルはシラノール基及びアルコキシ基で表面が覆われており、親水性である」(Li 2020)。
【0053】
3種の異なる前駆体TMOS、TEOS、及びTPOSを用いて製造される化学修飾されていないゲル粒子はそれぞれシラノール基及びメトキシ基、シラノール基及びエトキシ基、並びにシラノール基及びプロポキシ基で表面が覆われているということになる。
【0054】
シリカエアロゲルを作製する上での最終のそして最も重要な過程は、ゲル内の液体を除去し、連結されたシリカ網目構造のみを残す工程である。
【0055】
毛管力が多孔質シリカ構造の部分的な崩壊を引き起こす状況下で湿潤ゲルを乾燥させる場合、乾燥し、その後に通常はしわが寄ったゲルはキセロゲル又はクリオゲルと呼ばれる。したがって、ゲルの多孔質構造を保存するために、毛管力が現れない超臨界乾燥アプローチに従ってゲルを乾燥させることがある。最初に、細孔液とCO2との混合物の混合物臨界点を超えた操作条件で圧縮CO2を使用して、有機溶媒をゲルから抽出する。これにより、液体-気体界面が現れる可能性がなく、したがって毛管力が現れる可能性がない、単一期の混合過程における抽出が確実に行われる。CO2による有機溶媒の置換の完了後、CO2をやはり単一期の過程において、その臨界温度を超える操作条件でゆっくりと減圧している間に、放出することができる。残留しているものは乾燥ゲルであり、その細孔は乾燥過程後に直接CO2で満たされる。乾燥ゲルが空気に曝されるとき、CO2は空気と交換され、ゲルはエアロゲルと呼ばれる。この方法は、これまでのところエアロゲルを製造する最も一般的なやり方であり、例えばWO2020/002659に開示されているように、担持エアロゲルを製造するために本出願人も広範に使用している。
【0056】
テトラアルコキシシランから調製され、超臨界CO2により乾燥した化学修飾されていないエアロゲル粒子の表面はヒドロキシル(Si-OH)末端基のみを含有することがわかった(例えばDorcheh 2008)。元々のアルコキシ(Si-OR)基は処理条件(流体相系中、約40℃及び110バールで数時間)下で加水分解される。これは、非常に低い温度(-80℃)及び/又は固相系によって末端基の反応が実質的に防止される凍結乾燥過程とは異なっている。したがって、超臨界条件下でCO2により乾燥した化学修飾されていないエアロゲルと、凍結乾燥エアロゲルとは、上記で説明した嵩密度、多孔度などが異なるというだけでなく、これら2種のエアロゲルの表面の末端基が同一ではないという点でも異なる。超臨界条件下でCO2により乾燥したエアロゲルは、通常、シラノール(Si-OH)末端基で覆われた表面を有し、一方、凍結乾燥により調製されたエアロゲルは、通常、シラノール(Si-OH)官能基とアルコキシシラン(Si-OR)官能基との混合物を有する。
【0057】
本発明とWO2020/002659の開示との間の最も特筆すべき相違は、超臨界二酸化炭素抽出よりもむしろ凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))を使用することによる初期形成アルコゲル(「湿潤ゲル」)の乾燥に関する。
【0058】
担持エアロゲルの調製のための凍結乾燥の使用は、本発明者らが同時係属中の国際出願PCT/EP2020/087730において開始したものであり、この出願は、主に湿潤ゲルのゾル-ゲル形成における、WO2020/002659の方法に対する様々な過程改良(ゲル化混合物中の水の量の増加+反応物の逆方向の添加)に関する。この含水量の増加に着想を得て、本発明者らは、PCT/EP2020/087730の担持湿潤ゲルを凍結乾燥させるいくつかの初期の試みを行い、これにより、比較的低い多孔度(40%未満)及び1gr/cm
3に近い嵩密度を有するゲル(表1(
図5)の参照番号FD1~FD4)が得られた。表1では、2つの異なる温度-18℃及び-80℃で凍結した2つの空のゲルと2つの担持ゲルとを比較している。表1のすべてのゲルは予備縮合TEOS+MTMSを用いて調製した。
【0059】
表からわかるように、多孔度は担持生物致死剤の存在によって著しく影響され(FD1/FD2とFD3/FD4とを比較されたい)、一方、凍結温度は総多孔度又は密度に大きな影響を与えないようである(FD1/FD3対FD2/FD4)。
【0060】
WO2020/002659の方法との別の相違は、ゲル前駆体の使用、特にテトラアルコキシシランの使用に関する。テトラメトキシシラン(TMOS)は、ゲル化時間が短いことから、WO2020/002659及びWO2009/062975に例えば開示されている本出願人の初期の研究において、ゲル前駆体として好ましく、さらには独占的に使用されている。したがって、WO2020/002659に至る本出願人の研究に関連して、TMOSはすべての開示された実例においてゲル前駆体として使用された。WO2020/002659では、TEOSを用いて製造された1種の超臨界乾燥ゲルが言及されているが、さらなる実験上の詳細は示されていない。
【0061】
本出願人は、本出願の出願後、安全性を考慮して、TMOSが、毒性が高いことから、関連性のあるゲル前駆体と見なされるべきではないということを理解した。したがって、TMOSは、潜在的な前駆体としてここで含まれていない。テトラエトキシシラン(TEOS)及びテトラプロポキシシラン(TPOS)はより安全な代替物質である(例えばNIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards (Pocket Guide to Chemical Hazards | NIOSH | CDCを参照)。したがって、最も好ましいテトラアルコキシシランはテトラエトキシシラン(TEOS)及びテトラプロポキシシラン(TPOS)である。
【0062】
本発明の凍結乾燥担持ゲルを用いる本出願人の研究に基づけば、WO2020/002659に開示されるようにTMOS及び超臨界CO2抽出を使用して以前に調製された担持ゲルとの間で、挙動の相違は特に観察されなかった。
【0063】
したがって、ゲル前駆体としてのTEOSを乾燥方法としての凍結乾燥と共に使用することで、ゲル前駆体としてのTMOSを超臨界乾燥との組合せで使用して得られる担持エアロゲルと同様の技術的特性(嵩密度、多孔度など)を有する担持エアロゲルが得られるようである。TEOS及びTMOSが、物理特性、例えば嵩密度、多孔度パーセンテージの異なったゲルを生じさせることが例えばSinco (2010)及びZhang (2011)からわかることから、この類似性は驚くべきことであると見なされるに違いない。
【0064】
上記で説明したように、コーティング又はシーラント組成物の表面層中に有効化合物の飽和溶液を維持するために十分な水を、防汚組成物が吸収できることが重要であり、これには、水をシリカゲル格子に浸透させ、封入された生物致死性又は生物忌避性化合物を溶解させるために十分な、防汚添加剤の多孔度が必要である。
【0065】
総多孔度は、固形物に占有されていない担持エアロゲルの嵩容積の割合として規定される。担持エアロゲルの多孔度を分析する別のやり方は、材料の粒子間細孔構造と粒子内細孔構造とを分析することによる。これは水銀圧入分析により行われる(ここでの方法の節を参照)。粒子間多孔度測定は、比較的低い圧力(LP)で行われ、エアロゲル粒子間の中間距離をμm単位で示す。粒子内多孔度は、はるかに高い圧力(HP)で行われ、エアロゲル粒子内の細孔の中間距離をnm単位で示す。粒子内孔径は、担持ゲルの吸水性に最も関連性が高い。粒子内細孔は、直径が2mm未満の場合はミクロ細孔と呼ばれ、直径が2nm超の場合はメソ細孔と呼ばれる。
【0066】
対応する湿潤ゲルが凍結乾燥中に部分的に崩壊することを示唆する、同時係属中の国際出願PCT/EP2020/087730に開示されている、初期の凍結乾燥エアロゲル試料(FD1~FD4、表1
図5)の嵩密度が高いことから、凍結乾燥方法の開発が続けられており、これにより本発明が得られている。上記で言及した凍結温度が多孔度に大きく影響することはなかったが、他方で、凍結乾燥工程中の温度を、凍結液体を昇華させながら凍結ゲルの崩壊温度T
C未満に維持することが決定的に重要であることがわかった。
【0067】
したがって、昇華期に温度をT
C未満に維持することで、はるかに良好な多孔度の結果を実現することができた。表2(
図6)は、-80℃で最初に凍結した6つの凍結乾燥担持ゲル(参照番号FD5~FD10)の分析を示す。すべてのゲルをやはり予備縮合TEOS+MTMSを用いて調製し(純粋なTEOSから調製したFD5(Econea)を除く)、凍結乾燥させた。表2には、75%のEconeaを含有する超臨界乾燥ゲル(FD11)も列挙されており、これを凍結乾燥ゲルFD10と比較することができる。
【0068】
図6(表2)からわかるように、ゲルFD5~FD10の総多孔度の値は一貫して50%超であり、平均嵩密度は0.5gr/mlであり、すなわち、初期の凍結乾燥試料FD1~FD4で観察された値の約半分であり、このことは、本発明の条件下でゲルの崩壊が実質的に回避されたことを示している。FD10及びFD11はいずれも75%w/wのEconea含有量を有するゲルであるが、比較目的でそれぞれ凍結乾燥条件及び超臨界条件下で乾燥させた。表2からわかるように、2つの試料の総多孔度は非常に類似しており(58.7%対54.6%)、一方、特に粒子間(メソ細孔)径は相当に異なっている。
【0069】
さらに、凍結乾燥ゲルの嵩密度が相当に異なっていて(FD5~FD10)、純粋な(未封入の)生物致死剤の担持パーセンテージ及び密度の両方に依存するということが観察される。
【0070】
また、
図6(表2)からは、(FD5~FD10)の粒子間細孔(メソ細孔)径が総多孔度に比べて相当に異なっている(範囲:10.0~62.70nm対範囲:52.9~70.7%)ことがわかり、このことは、両方の特徴が本発明の凍結乾燥担持エアロゲルの特性評価に必須であることを強く示している。また、この変動範囲の差は、本発明に係る凍結乾燥担持エアロゲルのメソ細孔径をその総多孔度の所与の値から確実に予測することができないことを示している。
【0071】
さらに、
図5(表1)の初期の凍結乾燥試料で観察された値に比べて、粒子間(メソ細孔)孔径及び総多孔度値がいずれも有意に高く、嵩密度値が低いことが観察される。
【0072】
したがって、第1の側面では、本発明は、防汚添加剤であって、
a.以下のものを含むシリカ含有無機エアロゲル:
b.以下の特性を有する多孔質ゲル格子:
i.少なくとも40%の総多孔度、及び
ii.少なくとも10nmのメソ細孔径、
c.任意に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシド、並びに
d.前記エアロゲルに封入された、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、エチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)、2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチル-チオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、ジンクピリチオン、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、重炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、及びその混合物から選択される、少なくとも55重量%の1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物
を含み、
前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物の封入がゲルのゾル-ゲル形成中に行われ、ゾル-ゲル前駆体が、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、及びアルキルトリアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランである、防汚添加剤を提供する。
【0073】
上記で言及したように、本発明者らは、メソ細孔径が少なくとも10nmである限り、最終防汚組成物において所望の水の取り込みを実現するには少なくとも40%の総多孔度で十分であると考える。にもかかわらず、本発明の方法は、特定の態様において、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%の総多孔度を有する、第1の側面に係る防汚添加剤も提供する。本発明の他の態様では、第1の側面に係る防汚添加剤は、少なくとも11nm、例えば少なくとも12nm、又は例えば少なくとも13nmのメソ細孔(すなわち粒子間)径を有する。
【0074】
さらに、凍結乾燥担持エアロゲルは相当に低い熱伝導率(ラムダ値30~75mW/m*K)を有することがわかった。本明細書の例(参照番号FD7~FD8)については表3を参照。純粋な形態(すなわち封入されていない形態)では約200~300mW/m*Kの熱伝導率を有することが知られている化合物の高い担持量をそれらが示すことを考えれば、このことは驚くべきことである(例えばKim 2018、Holberg 2017を参照)。
【0075】
本発明者らはまた、これに関して、乾燥方法(超臨界又は凍結乾燥)が担持エアロゲルの熱伝導率に影響を示すか否かを分析した。超臨界条件又は凍結乾燥条件に従って乾燥した担持湿潤ゲルの実質的に同じように調製された試料が有意に異なるラムダ値を有することがわかったことから(SC7とFD7とを、そしてSC8とFD8とを比較されたい)、影響はあるようである。このことは、凍結乾燥エアロゲルの熱伝導率が対応する超臨界乾燥エアロゲルよりもわずかに高かっただけであったことを報告したCzlonkaらの発見とは対照的である。
【0076】
表3(
図7)は、超臨界抽出によって調製された担持エアロゲルの2つの試料(TC1及びTC2)のラムダ値も含み、これらの値は、同時係属中の国際出願PCT/EP2020/087730に当初開示されたものである。これら2つの試料のラムダ値は30~40mW/m*Kであることがわかった。これはSC7及びSC8について測定されたラムダ値とよく一致している。
【0077】
表3(
図7)においては、凍結乾燥Econeaゲル(FD5)のラムダ値(36.6mW/m*K)が2つの他の凍結乾燥担持ゲル(約70mW/m*K)に比べてかなり低いこと、及びまた、FD5ゲルの多孔度が相当に高い(70%超である)ことが、興味深く注目される。この特定のゲルは純粋なTEOSを使用して、すなわちMTMSの添加なしに調製されたものであり、このことは明らかにゲル構造に影響がある(MTMSの添加によって疎水性がより高いゲルが得られる)。また、このゲルの添加率(66%)は2つの他の試料(75%)に比べて低い。これらの要因はいずれもまず間違いなく最終担持ゲルの熱伝導度に影響するが、この用途に関してさらに調査されたわけではない。
【0078】
熱伝導率は通常、本来の(「空の」)エアロゲルで15~20mW/m*K、20重量%未満のポリマー含有量を有する「ハイブリッド」(すなわちポリマー架橋)エアロゲルで約30mW/m*K、50重量%超のポリマー含有量を有するハイブリッドエアロゲルで約50mW/m*Kであることが報告された(Bertino 2019)。また、これらのハイブリッドエアロゲル材料に関して、熱伝導率が、本発明の担持エアロゲルに関する発見と著しく類似した38~66mW/m*Kの範囲であった(White 2016)ことが報告された。
【0079】
担持エアロゲルの多孔質構造は、なお生物致死剤を周囲環境から効果的に隔離し、したがって担持エアロゲルは純粋な封入生物致死剤の熱伝導率の15~40%、通常は30%以下しか示さない。
【0080】
本発明の好ましい態様では、第1の側面に係る防汚添加剤は、100mW/m*K未満、例えば90mW/m*K未満、例えば80mW/m*K未満、例えば75mW/m*K未満、例えば30~75mW/m*Kである熱伝導率を有する。
【0081】
好ましい態様では、第1の側面に係る防汚添加剤は、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、重炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、エチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)、ジンクピリチオン、チオシアン酸銅、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、又はその混合物から選択される、1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物を含む。実施例の節を参照。
【0082】
好ましい態様では、第1の側面の防汚添加剤は、少なくとも55重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも65重量%、例えば少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、又は約95重量%の封入された生物致死剤及び/又は生物忌避剤(「有効化合物」)を含む、エアロゲル粒子を含む。
【0083】
本発明者らの知る限り、以下の必須の特徴の組合せを有するシリカ含有担持エアロゲル:
・少なくとも40%の総多孔度、
・少なくとも10nmのメソ細孔径、及び
・少なくとも55重量%の封入材料
はこれまで開示されておらず、特に凍結乾燥固体として開示されていない。
【0084】
ポロシメトリー測定値(ここでの
図5~
図7)に基づけば、2つの乾燥方法(超臨界乾燥及び凍結乾燥)によって異なったエアロゲル粒子の形態が得られ、このことは上記で説明した文献、例えばLi 2020、Zhang 2011、及びDorcheh 2008によっても裏付けられているが、技術的な観点からは、いずれの種類の乾燥も、防汚コーティング及びシーラントに取り込まれる上で適切な特徴の組合せを有する担持エアロゲルを製造するために好適である。しかし、凍結乾燥は、防汚コーティングとして調合される際に乾燥コーティングの十分な吸水性を実現する担持エアロゲル粒子を得るという当初の目的をなお維持しながら、商業的にいっそう魅力的な規模拡大を可能にすることができ、生物致死剤/生物忌避剤の範囲をいっそう広げることができる。
【0085】
したがって、本発明の担持ゲル粒子は、シリカの混入添加量を上記で説明した1.5%w/wという限界未満に維持しながら、大量の生物致死剤及び/又は生物忌避剤(「有効化合物」)を防汚コーティング及びシーラントに加えることを可能にする。
【0086】
本発明はまた、第1の側面に係る担持エアロゲルの製造のための方法を提供する。
【0087】
したがって、第2の側面では、本発明は、第1の側面の防汚添加剤を提供するための方法であって、以下の工程を含む方法をさらに提供する:
a.ゾル-ゲル前駆体溶液1を調製する:
i.100~450部の1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物を100~500部の低級アルコール、例えばエタノールに溶解させる。任意に、分散剤を加えてもよい。任意に、HCl(又は別の無機酸水溶液)を加えてもよい。この時点で、任意に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシドを加えてもよい。
【0088】
ii.100部のテトラアルコキシシランと0~50部のアルキルトリアルコキシシランとを混合する。
【0089】
iii.アルコキシシラン混合物と1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物の溶液とを混合する。
【0090】
b.触媒溶液2を調製する:
100部の低級アルコール、例えばエタノールと、約50部の水と、0.25~15部のゲル化触媒とを混合する。
【0091】
c.激しく撹拌しながら溶液2を溶液1に徐々に加える。ゲル化の兆候が観察されるまで撹拌を低速で続ける。得られた溶液をゲル化のために1個以上の別の容器に移してもよい。
【0092】
d.ゲルを好適な容器中で2~5日間熟成した後、使用される溶媒に応じて通常は-18℃以下の温度、例えば-80℃で凍結させる。湿潤ゲルを凍結させる前に、溶媒をより高い融点及び好ましくは低い膨張係数を有する別の溶媒、例えばtert-ブタノールに交換してもよい。
【0093】
e.次に、凍結溶媒が昇華により除去されるまで、棚温度をゲルの崩壊温度TC未満に維持しながら、凍結ゲルを好適な真空下で凍結乾燥させる。次に凍結乾燥固体は高温での二次乾燥期を経てもよく、
ここで前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物はゲルのゾル-ゲル形成中にゲルに封入され、ゾル-ゲル前駆体は、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、及びアルキルトリアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランである。
【0094】
溶液1及び2の調製では、エタノール又は別のC1~C4アルコールを好都合に使用することができる。ゲル化触媒は、特定の生物致死剤に応じて塩基性又は酸性であってもよい。
【0095】
崩壊温度TCは、材料がそれ自体の構造を支持できない点まで軟化する温度として規定される。多くの場合、TCは、凍結材料が脆性構造から可撓性構造に変化する温度として規定されるガラス転移温度Tg’に近い。特定の凍結ゲルにおいて目に見える変化が生じる温度を同定するために凍結乾燥顕微鏡観察(FDM)を使用することができる。したがって、妥当な安全域と共に同定された最低臨界温度未満に製品温度が維持されるように特定の凍結乾燥サイクルを最適化するために、FDM測定値を使用することができる。TC測定値の非存在下では、使用溶媒の凍結点を目標温度として使用してもよい。
【0096】
したがって、本発明の態様は、40%超の総多孔度、少なくとも10nmのメソ細孔径、及び少なくとも55重量%の生物致死性又は生物忌避性化合物の担持量を有する、凍結乾燥担持エアロゲルの製造のための方法を提供する。
【0097】
本発明の方法の態様によれば、ゾル-ゲルゲル化過程の完了後、湿潤ゲル中の溶媒を、任意に、低い膨張係数及び高い昇華圧を有する別の溶媒で湿潤ゲルの溶媒を置き換える好適な溶媒交換の後に、凍結させる。次に凍結ゲルを凍結乾燥器内の真空室に入れ、そこで溶媒を崩壊温度TC未満の温度で昇華により除去する。これら2つの工程を市販の凍結乾燥器に取り込むことができる。
【0098】
昇華期の温度は、凍結溶媒の融解を回避するために十分に低く維持され、好ましくは、例えば凍結乾燥顕微鏡観察(FDM)により評価される凍結した湿潤ゲルの崩壊温度TC未満に維持される。本発明の第1の側面に記載の総多孔度と、メソ細孔径と、実現可能な高い担持量との望ましい組合せを有する担持エアロゲルを得るためには、崩壊温度TC未満で昇華を行うことが重要であることがわかった。崩壊温度TCは、当業者に周知の標準的方法、例えば凍結乾燥顕微鏡観察を使用して個々のゲルについて評価する必要があるパラメータである。利用不可能であれば、TCの代わりに使用溶媒の凍結点を目標温度として使用してもよい。
【0099】
上記手順は、超臨界条件での乾燥により引き起こされるハザードリスクの減少、及びリスクを取り込むことなく商業目的で過程の規模を大きくする能力を含む、超臨界乾燥に対するいくつかの利点を有する。本発明の第2の利点は、資本支出の実質的減少である。超臨界乾燥に使用されるオートクレーブは、高圧(約70気圧)が超臨界乾燥に使用されることから、厚い壁面を必要とし、負債問題を発生させる。凍結乾燥では、代わりに、製造がはるかに低費用で、負債問題の発生が最小限である、真空室が使用される。通常、超臨界乾燥用オートクレーブは、同容量の凍結乾燥用真空室の10倍を超えるコストがかかる。
【0100】
最後に、凍結乾燥は、超臨界乾燥条件下では超臨界CO2との溶媒交換中に封入生物致死剤の浸出によって湿潤ゲルから部分的又は実質的に除去されるであろう生物致死性及び/又は生物忌避性化合物を含有する、担持エアロゲルの調製を可能にする。したがって、凍結乾燥は、いくつかの生物致死剤について、担持エアロゲルの収率増加を可能にすることができる。
【0101】
したがって、本発明の製造方法は、担持エアロゲルの製造のための先行技術において知られている限界に十分に対処するものである。
【0102】
本製造手順の1つの態様では、溶液1は20~50部のアルキルトリアルコキシシランを含有する。別の態様では、特に、親水性担持エアロゲルが想定される場合、又は非常に高い生物致死剤担持量が必要である場合、溶液1は20部未満、例えば15部、又は例えば10部、又は例えば5部以下のアルキルトリアルコキシシランを含有する。別の態様では、溶液1はアルキルトリアルコキシシランを含有しない。
【0103】
本出願では、出願時にテトラメトキシシラン(TMOS)が任意のテトラアルコキシシランゲル前駆体として含まれたが、TMOSを使用する実例は含まれなかった。本出願人はその後、安全性を考慮して、TMOSが、毒性が高いことから、関連性のあるゲル前駆体と見なされるべきではないということを理解した。テトラエトキシシラン(TEOS)及びテトラプロポキシシラン(TPOS)はより安全な代替物質である(例えばNIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards (Pocket Guide to Chemical Hazards | NIOSH | CDCを参照)。したがって、最も好ましいテトラアルコキシシランはテトラエトキシシラン(TEOS)及びテトラプロポキシシラン(TPOS)である。
【0104】
別の好ましい態様では、予備加水分解/予備縮合テトラアルコキシシランは予備加水分解オルトケイ酸テトラエチル(例えばDynasylan(登録商標)A)又は予備加水分解オルトケイ酸テトラn-プロピル(例えばDynasylan(登録商標)P)から選択される。
【0105】
好ましい態様では、アルキルトリアルコキシシランはMTMS(メチルトリメトキシシラン)及びMTES(メチルトリエトキシシラン)から選択されるが、他の低級アルキルトリアルコキシシラン、例えばTMES(トリメチルエトキシシラン)及びETES(エチルトリエトキシシラン)を使用してもよい。
【0106】
ゲル化触媒は、エアロゲル形成に好都合に使用される任意の触媒、例えばアンモニア水(好都合には濃NH3水又は25%水溶液)でありうる。他の適用可能なゲル化触媒としてはフッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、及び炭酸ナトリウムが挙げられる。これらの代替触媒は、生物致死剤がアンモニアと反応することがある場合に好ましい。特に、封入される生物致死剤が一般にアンモニア又はアルカリ条件に感受性である場合、例えば塩酸などの酸性触媒を使用してもよい。
【0107】
一般的方法の様々な変形を使用することの例は実験の節に見ることができる。
【0108】
テトラアルコキシシランから調製されて超臨界CO2により乾燥した化学修飾されていないエアロゲル粒子の表面がヒドロキシル(Si-OH)末端基のみを含有することが知られている(例えばDorcheh 2008から)。元々のアルコキシ(Si-OR)基は処理条件(超臨界流体相系中、約40℃及び110バールで数時間)下で明らかに加水分解される。これは、非常に低い温度(-80℃)及び固相(凍結ゲル)系によって末端基の任意の反応が有効に防止される凍結乾燥過程とは異なっている。したがって、超臨界条件下でCO2により乾燥した化学修飾されていないエアロゲルと、凍結乾燥エアロゲルとは、上記で説明した嵩密度、多孔度などが異なるというだけでなく、これら2種のエアロゲルの表面の末端基が同一ではないという点でも異なる。超臨界条件下でCO2により乾燥したエアロゲルは、通常、シラノール(Si-OH)末端基で主に覆われた表面を有し、一方、凍結乾燥により調製されたエアロゲルは、通常、シラノール(Si-OH)官能基とアルコキシシラン(Si-OR)官能基との混合物を示す。
【0109】
したがって、ゲル前駆体及び乾燥工程の両方を考えたときに、製造過程は最終製品の重要な製品パラメータ、例えば多孔度、嵩密度、及び表面構造に直接影響する。したがって、製造過程に関連して本発明の製品を規定することは正当化される。
【0110】
したがって、第3の側面では、第2の側面に係る方法によって得ることができる防汚添加剤が提供される。
【0111】
好ましい態様では、本発明は、ピリチオン化合物、塩基性炭酸銅、イソチアゾリノン化合物、置換トリアジン、カルバミン酸エステル、塩素化芳香族尿素、トリアゾール、及びその組合せからなる群から選択される、1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物を含む、本発明の第1又は第3の側面に係る防汚添加剤を提供する。ピリチオン化合物の例としては、金属ピリチオン化合物、例えばジンクピリチオン、ジルコニウムピリチオン、ナトリウムピリチオンなどが挙げられる。イソチアゾリノン化合物の例としては、例えば4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、n-ブチルイソチアゾリノン(BBIT)、n-オクチルイソチアゾリノン(OIT)、及びその混合物が挙げられる。置換トリアジンとしては例えばテルブトリン(2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。カルバミン酸エステルとしては例えばブチルカルバミン酸ヨードプロピニル(IPBC)が挙げられる。塩素化芳香族尿素としては例えばジウロン(ジクロロフェニルジメチル尿素)が挙げられる。ピリチオン化合物のうち、コスト及び有効性の観点から、一般にジンクピリチオンが使用される。封入される生物致死性又は生物忌避性化合物の所期の用途に応じて、当業者は、どの有効成分を本発明において使用することができるかを確定することができるであろう。
【0112】
ここで使用される「生物致死性又は生物忌避性化合物」という用語は、抗菌性、殺胞子性、殺真菌性などである有効成分を含むがそれに限定されない、生物致死性又は生物忌避性を有する成分を意味するように意図されている。
【0113】
本発明の防汚添加剤の所期の用途は、木材保護(フェンス、建物など)、海上用途(ボート、プレジャーヨット、商船、水没する固定建築物、例えば石油リグ及び他の海上建築物、など)、並びに湿気条件及び/又は水に自然に/定期的に曝される室内湿気環境、例えば浴室、トイレ、サウナ、ジム、室内水泳プール区域などのために塗布される防汚コーティング又はシーラント組成物に加えられることである。
【0114】
調製されたエアロゲル粒子が防汚コーティング又はシーラントに含まれるとき、得られる層に封入有効化合物が均一に分布する。各エアロゲル粒子は有効化合物の何個かの別々の粒子を含んでもよい(
図3)。
【0115】
さらに、ここで非限定的な例に示されるように、凍結乾燥担持エアロゲルを製造するための本開示の手順は、多種多様な構造的に相当に異なる生物致死性及び/又は生物忌避性について十分に機能することがわかった。
【0116】
本発明の製造手順を使用することで、本発明者らは、多様な生物致死剤、例えば4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、エチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)、2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、ジンクピリチオン、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、重炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、及びその混合物を有する担持エアロゲルを製造した。実施例の節を参照。
【0117】
好ましい態様では、第1の側面の防汚添加剤は、少なくとも55重量%、例えば少なくとも65重量%、例えば少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、又は約95重量%の封入された生物致死剤及び/又は生物忌避剤(「有効化合物」)を含む、エアロゲル粒子を含む。
【0118】
防汚コーティング及びシーラントとして調合されるとき、本発明の担持エアロゲル粒子は十分な吸水性を実現する。したがって、これらの粒子は、海上及び陸上の両方の目的で防汚コーティング中で使用される防汚添加剤として有益であることがわかった。
【0119】
したがって、第4の側面では、海上コーティング、又は木材保護向けの若しくは湿気環境向けのコーティングにおける、第1又は第3の側面に係る防汚添加剤の使用が提供される。
【0120】
したがって、本発明の防汚添加剤は、定期的又は定常的に水没する海上表面に塗布されるコーティングとしての調合に非常に適している。定期的又は定常的に水没する表面の例としては、商用タンカー、プレジャーボート、及びヨットのいずれも含むボート、船舶、及び他の船艇の船体が挙げられるだけでなく、定常的に水没する建設部材を含む固定建築物、例えば水泳プール、雨水桝、港湾建築物、石油リグ、及び養魚用建築物、例えば養殖網も挙げられる。養殖網の生物汚損は深刻なメンテナンス及び操作上の問題を引き起こす。例えばSwain 2014を参照。生物汚損を制御する上で養殖業界が負担する直接的な経済コストは製造コストの5%~10%であると推定されている。わずか数か月の浸漬後に、生物汚損によって網の重量が大きく200倍に、抗力が5倍に増加しうることが報告されている。歴史的に、この重量及び抗力の追加によって、いくつかの大きな商業用の海上養殖構造物の崩壊及び破損が生じている。汚損はメッシュ開口部の減少、及びケージを通じた水循環の減少も引き起こす。これにより、環境収容力が著しく減少し、また、魚の致死率が増加することがある。生物汚損は寄生虫及び疾患の貯蔵庫として働くこともあり、特定の汚損種、例えばヒドロポリプ及びイソギンチャクは、皮膚を刺して刺激する刺細胞を通じて害を負わせることが可能である。現在、網の汚損は通常、網を取り替えて洗浄することで、又は生物致死剤、例えば亜酸化銅、イソチオシアン酸銅、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、酸化亜鉛、Econeaなどを含有する化学防汚剤を使用することで制御される。未処理の網の使用は環境に安全であるが、網を頻繁に洗浄し、取り替えることで、動物にストレスが生じ、網は損傷を受け、維持コストは増加し、利益幅は減少する。本発明の防汚添加剤は、コーティングとして調合される場合、養殖網への塗布に非常に適しており、これにより、本発明の担持エアロゲル粒子から生物致死剤が制御放出されることから、生物致死剤による網の長期にわたる保護が確実になり、生物致死剤の必要性が最小化される。
【0121】
定期的にのみ水没する表面の例としては、固定海上建築物、例えば海上風車パイロン及び他の海上構造物の下部や、高潮中の又は波による浸水を通じた水没を定期的に経る橋脚及び港湾建築物が挙げられる。
【0122】
また、本発明の防汚添加剤は、多湿空気及び降雨に定期的に曝される海上表面に塗布されるコーティング及びシーラントに有用であることがわかった。通常、これらの表面は、熱帯地域又は海洋近傍の地域、及び頻繁な降雨又は濃霧を経験する地域に位置する、家屋及び他の建物に見られる。他の例としては、多湿空気に定期的に曝される空間の、例えば浴室、シャワー室、サウナ、及び室内水泳プールの室内表面が挙げられる。これらの室内湿気環境に関して、カビ及び白カビによってしばしば攻撃されるタイル間の亀裂などを充填するために例えば使用されるシーラントにおける、本発明の防汚添加剤の特定の用途が見出された。
【0123】
第5の側面では、本発明の第1又は第3の側面に係る防汚添加剤を含む、防汚コーティング又はシーラント組成物が提供される。
【0124】
通常、船体又は他の「海上表面」上の防汚コーティング層は約100μmの厚さを有し、一方、シーラントははるかに大きい厚さで塗布される。しかし、いずれの場合でも、上記で説明した湿気条件に防汚組成物が曝されるとき、厚さ約20~40μmの層が徐々に発達する。この層は周囲からの水を吸収し、(Bressy C.ら "Tin-free self-polishing marine antifouling coatings" Woodshead Publishing, 2009)、コーティング中の酸化銅粒子の溶解によって多孔質になったものである。この層の厚さは防汚コーティング又はシーラント組成物の種類に依存する。原則として、溶媒系組成物は水性組成物よりも水を吸収することが容易ではない。この「湿潤」層は、生物致死性有効化合物が硬化組成物のこの層に溶解し、この層から拡散によって表面に輸送されることから、浸出層と呼ばれる。
【0125】
コーティング又はシーラントの浸出層に埋め込まれたエアロゲル粒子は、シリカ系エアロゲルの多孔性及び吸湿性によって水を吸収し始める。これにより、封入された有効化合物粒子の周りの露出したエアロゲル粒子の内側に局所的な水性環境が作り出され、有効化合物粒子はゆっくりと溶解し始める。しばらくして、有効化合物の飽和溶液がエアロゲルの内側に作り出される(
図4)。
【0126】
次に、この飽和溶液は有効化合物の貯蔵庫の役割を果たし、有効化合物がエアロゲル粒子の多孔質構造を浸透して防汚コーティング又はシーラントの表面上に出るとき、それが防汚コーティング又はシーラントの表面に放出される。浸出層は、コーティング面が水を通過することで、又は(固定室内用途において)雨、日光、及び温度変動に曝されることで、層の上部の侵食によって定常的に再生される。室内用途では、侵食は、シャワー室などにおいて水に定期的に曝すこと、及び防汚組成物が塗布された表面を清浄剤で物理的に洗浄することでも引き起こされる。したがって、浸出層の厚さは上部からの侵食によって減少するが、同時に浸出層は防汚組成物層のより深部に存在する区域を含めることによって再生される。
【0127】
海上コーティングでは、上記「浸出層」と同様の多孔質層がやはり徐々に発達する。この層を発達させるための機構は、海上表面のコーティングとは異なっており、周囲の湿気、温度変化、及び日中の入射日光の変動の関数として生じる水の吸着/脱着時に膨張及び収縮するシリカの周知の能力に特に依存する。この動的挙動によって、陸上防汚コーティングの表面層(本発明のエアロゲル粒子を含む)が当初は顕微鏡レベルで侵食され、これにより周囲の湿気、露、降雨、溶雪などがコーティングを浸透してエアロゲル粒子に到達する。これにより、経時的に生物致死剤の飽和溶液が生成され、この飽和溶液はエアロゲル粒子から出、コーティングの表面に拡散する(海上表面のコーティングと同様に)。
【0128】
したがって、以下においては、「浸出層」という概念及び用語は「海上状況」及び陸上コーティングの両方に使用される。
【0129】
浸出層の侵食及び再生によって、乾燥防汚組成物の供用寿命全体にわたって、乾燥防汚組成物の表面に対する所望の防汚効果を維持するために十分な量の生物致死剤が常に存在することが確実になる。
【0130】
浸出層が侵食されるとき、埋め込まれたエアロゲル粒子は徐々に環境に曝される。
【0131】
しかし、部分的に曝されている場合であっても、エアロゲル粒子は、上記で説明したコーティング又はシーラントの侵食によって最終的に除去されるまで、防汚組成物から離れないままである(含まれる残留生物致死剤と共に)。
【0132】
これは、封入されていない生物致死剤粒子が防汚効果を発揮するように十分に使用されるよりもかなり前にコーティングから失われることを示す、
図1に示される状況との重要な相違である。未溶解有効化合物がエアロゲル粒子内に存在するままであり、それにより溶解有効化合物の飽和貯蔵庫が確保される限り、表面への放出は実質的にゼロ次の速度論で行われる。言い換えれば、経時的な放出プロファイルは実質的に線形である。
【0133】
したがって、防汚コーティングの表面の生物致死剤/生物忌避剤の濃度は、該表面が定期的に湿気、例えば多湿空気、特に65%超の相対湿度を有する空気、雨、又は水域との接触に曝される限り、コーティング又はシーラントの予想供用寿命中に実質的に一定に維持される。
【0134】
2種以上の生物致死剤/生物忌避剤が必要である場合、各有効化合物を個々に防汚組成物に正確な比で封入し、含めることができ、これにより、個々の有効化合物が保管中に互いに反応しないこと、及び、最終コーティング又はシーラントから放出される化合物間の一定の比がその予想供用寿命中に維持されることが確実になる。
【0135】
好ましい態様では、本発明は、少なくとも0.1%、例えば少なくとも0.5%、例えば少なくとも1%w/w、例えば少なくとも1.25%w/w、例えば少なくとも1.5%w/w、例えば少なくとも2%w/wの生物致死剤、例えば少なくとも3%w/wの生物致死剤、例えば少なくとも4%w/wの生物致死剤、例えば少なくとも5%w/wの生物致死剤、例えば少なくとも6%w/wの生物致死剤、例えば少なくとも7%w/wの生物致死剤に対応する量の本発明に係る防汚添加剤を含む、防汚コーティング組成物を提供する。
【0136】
本発明のさらなる態様では、個々に異なるエアロゲルに封入された後、所要の比で防汚組成物に加えられる、2種以上の異なる生物致死剤及び/又は生物忌避剤を含む、防汚コーティングが提供される。
【0137】
ここで記載の手順は、多くの明確に異なる化学構造、例えばピリチオン、イソチアゾール及びイソチアゾロン、トリアゾール、イミダゾール及びベンゾイミダゾール、ハロゲン化ピロール、尿素、カルバミン酸エステル、スルファミド、並びに亜鉛塩及び銅塩、例えばチオカルバミン酸亜鉛、チオシアン酸銅、水酸化銅(II)、及び炭酸銅(II)-水酸化銅(II)(1:1)、並びに金属銅について十分に機能することがわかった。
【0138】
1つの態様では、封入された生物致死性又は生物忌避性化合物は下記式のピリチオンから選択される:
【0139】
【0140】
式中、Metは銅、亜鉛、ジルコニウム、又はナトリウムから選択される金属である。
【0141】
好ましい態様では、封入された生物致死性又は生物忌避性化合物はジンクピリチオン又はナトリウムピリチオンから選択される。
【0142】
別の態様では、封入された生物致死性又は生物忌避性化合物は下記式のイソチアゾールから選択される:
【0143】
【0144】
式中、R1及びR2はハロゲン若しくは水素であってもよく、又は、R1及びR2は縮合して、任意にさらに置換されていてもよい芳香環を形成してもよく、R3=C3~C12アルキルである。
【0145】
特定の態様では、生物致死性又は生物忌避性化合物は2-ブチル-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-オン(BBIT)、2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オン(OIT)、又は4,5-ジクロロ-2-オクチルイソチアゾール-3(2H)-オン(DCOIT)から選択される。
【0146】
別の態様では、封入された生物致死性又は生物忌避性化合物は下記式のトリアゾールから選択される:
【0147】
【0148】
式中、R4=水素、C1~C6アルキルであり、R5=C1~6アルキル、C1~C6アルキルオキシであり、R6=アリール、C1~C6アリールアルキルであり、R4及びR5は縮合して、少なくとも1個の酸素を含む5~6員環を形成してもよい。
【0149】
特定の態様では、生物致死性又は生物忌避性化合物は1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1,2,4-トリアゾール-1-イル-メチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール(プロピコナゾール)、又は(2RS,3RS;2RS,3SR)-2-(4-クロロフェニル)-3-シクロプロピル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-2-オール(シプロコナゾール)から選択される。
【0150】
別の態様では、封入される生物致死性又は生物忌避性化合物は下記一般式のトリアジンから選択される:
【0151】
【0152】
式中、R7=C1~C6アルキルチオであり、R8=C1~C6アルキルアミノであり、R9=C1~C6アルキルアミノである。
【0153】
好ましい態様では、生物致死性又は生物忌避性化合物は2-エチルアミノ-6-メチルチオ-4-tert-ブチルアミノ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)である。
【0154】
別の態様では、封入される生物致死性又は生物忌避性化合物は下記一般式のイミダゾールから選択される:
【0155】
【0156】
式中、R10及びR11は水素、C1~C6アルキル、若しくはC1~C3アリールアルキルであってもよく、又は、縮合してベンゾイミダゾール環を形成してもよく、R12=水素、ヘテロアリール、又はカルバモイルである。
【0157】
特定の態様では、生物致死性又は生物忌避性化合物は2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、(RS)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、及び1H-ベンゾイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(カルベンダジム)から選択される。
【0158】
別の態様では、封入される生物致死性又は生物忌避性化合物は下記一般式のハロゲン化ピロールから選択される:
【0159】
【0160】
式中、R13=アリールであり、R14=ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルスルホニルであり、R15=ハロゲン、トリフルオロメチルチオであり、R16=シアノ、トリフルオロメチル、ハロゲンであり、R17=水素、C2~C6アルキルオキシメチルであり、
R14、R15、及びR16のうち少なくとも1つはハロゲンである。
【0161】
特定の態様では、生物致死性又は生物忌避性化合物は4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(トラロピリル(Tralopyril))及び4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-1-エトキシメチル-5-トリフルオロメチルピロール-3-カルボニトリル(クロルフェナピル)から選択される。
【0162】
別の態様では、封入される生物致死性又は生物忌避性化合物は下記一般式のカルバミン酸エステル、尿素、又はスルファミドから選択される:
【0163】
【0164】
式中、Q=カルボニル(C=O)又はスルホニル(O=S=O)であり、R18=アリール、C1~C8アルキル、水素であり、R19=C1~C6アルキル、水素であり、G=O-R20又はN(R21R22)であり、ここでR20=C3~C6アルキニル、C1~6アルキルであり、R21=C1~C8アルキル、トリハロメチルチオ、水素であり、R22=C1~C8アルキル、アリール、水素である。
【0165】
さらなる態様では、生物致死性又は生物忌避性化合物はそれぞれ下記3つの一般式のカルバミン酸エステル、尿素、又はスルファミドから選択される:
【0166】
【0167】
式中、R18=アリール、C1~C8アルキル、水素であり、R19=C1~C6アルキル、水素であり、R20=C3~C6アルキニル、C1~6アルキルであり、R21=C1~C8アルキル、トリハロメチルチオ、水素であり、R22=C1~C8アルキル、アリール、水素である。
【0168】
特定の態様では、生物致死性又は生物忌避性化合物は3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、ジクロロ-N-[(ジメチルアミノ)-スルホニル]-フルオロ-N-(p-トリル)-メタンスルフェンアミド(トリルフルアニド)、N-(ジクロロフルオロメチルチオ)-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド(ジクロフルアニド)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(ヨードカルブ(Iodocarb))から選択される。
【0169】
さらに別の態様では、封入される生物致死性又は生物忌避性化合物は亜鉛塩及び銅塩、例えばチオカルバミン酸亜鉛、チオシアン酸銅、水酸化銅(II)、及び炭酸銅(II)-水酸化銅(II)(1:1)、並びに金属銅から選択される。
【0170】
特に好ましい態様では、封入される生物致死性又は生物忌避性化合物はトリルフルアニド、炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、重炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、ジンクピリチオン、ジウロン、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(=Econea若しくはトラロピリル)、又はその混合物から選択される。
【0171】
実験
エアロゲル合成に使用される材料
ゲル形成材料は、Si、Ti、Fe、及びAlをベースとする金属酸化物、例えばオルトケイ酸テトラエチル(TEOS、テトラエトキシシラン)又はオルトケイ酸テトラ-n-プロピル(TPOS、テトラプロポキシシラン)から選択される。さらに疎水性の高い材料を作製するために、メチルトリメトキシシラン(MTMS又は同様のもの)を含めてもよい。予備重合(予備加水分解、予備縮合)テトラアルコキシシランは、市販されているか、又は、関連性のあるテトラアルコキシシランを弱酸性条件下で加水分解した後、低温で終夜重合することによって製造可能である。
【0172】
封入された生物致死剤/生物忌避剤を有するエアロゲルを調製するために使用される一般的方法
様々な溶解性、及び酸性条件又はアルカリ性条件に対する許容性を有する生物致死剤/生物忌避剤の選択の幅を広くするために、かつテトラアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシシランの様々な組合せの使用を可能にするために、本発明の封入される生物致死剤/生物忌避剤の製造のための以下の方法が開発された。
【0173】
・当初の配合(WO2020/002659)Dynasylan M/TMOSゲル(エタノール/アルコール中で低い溶解性を示す化合物、例えばCPT、ZPT、ジネブ、ジウロンを封入するために使用)
1.Dynasylan M、MTMS(有り又は無し)、及びEtOHをマグネチックスターラー上で10分間混合する。生物致死剤を加え、約5分間又は均質混合物が得られるまで激しく撹拌する。
【0174】
3.NH4OHをEtOH+水と混合し、生物致死剤混合物に撹拌下で加える。
【0175】
4.反応混合物がプディングのように嵩高くなる(約15~25分を要する)まで撹拌速度を減少させる。
【0176】
5.容器を閉鎖し、少量のエタノールをゲルの上に加えて乾燥を回避する。材料を約3日間放置して熟成させる(冷蔵庫中で行ってもよい)。
【0177】
6.通常、この処方は超臨界抽出に関して使用した。凍結乾燥を可能にするには、湿潤ゲル中のエタノールの代わりに、より高い融点を有するアルコール、例えばtert-ブタノールを使用する。
【0178】
6.続いて湿潤ゲルをここでの一般的手順に従って凍結及び凍結乾燥させる。
【0179】
・ゲルの調製-フッ化アンモニウム-TEOS/Dynasylan Aを有するゲル(例えばCPT、ZPT、ジネブ、ジウロン、Econea)
ストック溶液の調製
NH4F 1.852gを秤量し、それを水100mLに加える。水酸化アンモニウム溶液20.50g(22.78mL)を加える。これを「フッ化アンモニウム/水酸化アンモニウムストック溶液」「触媒塩基」と呼ぶ)。
ゲルの調製
1.ジャーの中でDynasylan A/TEOSとエタノールとを混合する。それを10分間混合する。これを「アルコキシド溶液」と呼ぶ。
【0180】
2.生物致死剤をアルコキシド溶液に加える。5~15分間又は均質になるまで撹拌する。
【0181】
3.別の容器中で水とエタノールとを混合する。フッ化アンモニウム/水酸化アンモニウムストック溶液を加える。これを「触媒溶液」と呼ぶ。
【0182】
4.触媒溶液をアルコキシド溶液に注ぎ、撹拌する。これを「ゾル」と呼ぶ。
【0183】
5.ゲル化が起こり始めるまで激しく撹拌する。ゾル-ゲルが濃厚になったとき、混合速度を減少させる。ゲル化時間は約8~40分である。ゲル化時間はアルコール/水の比及び(DynA+MTMS)対(水+エタノール)の比に依存する。保管及び熟成のために湿潤ゲルを金型又は容器に移す。
【0184】
6.容器を閉鎖し、材料を約3日間放置して熟成させる(冷蔵庫中で行ってもよい)。
【0185】
・ゲルの調製-高い水分比の逆順序(例えばヨードカルブ、テルブトリン、トリルフルアニド向け。エタノール溶解性/混和性が理由)
1.ジャーの中で水、エタノール、分散剤、(及び消泡剤)を混合する。それをマグネチックスターラー上で10分間混合する。
【0186】
2.生物致死剤を加える。10分間撹拌する。
【0187】
3.別の容器中でTMOSとMTMSとを混合する。
【0188】
4.TMOS/MTMS混合物を生物致死剤のEtOH/水溶液に注ぎ、5~15分間又は均質になるまで撹拌する。
【0189】
5.NH4OH-塩基触媒を加える。
【0190】
6.ゲル化が起こり始めるまで激しく撹拌する。ゾル-ゲルが粘稠になったとき、混合速度を減少させる。保管のために湿潤ゲルを金型又は容器に移す。
【0191】
7.容器を閉鎖し、材料を約3日間放置して熟成させる(冷蔵庫中で行ってもよい)。
【0192】
8.続いて湿潤ゲルを本明細書の一般的手順に従って凍結及び凍結乾燥させる。
【0193】
・ゲルの調製-酸性触媒作用(例えばアルカリ性条件に感受性であるDCOITに必要)
1.ジャーの中で水、エタノール、分散剤を機械的撹拌下で約10分間混合する。
【0194】
2.HCLを加え、10分間混合する。
【0195】
3.生物致死剤を加える。10分間撹拌する。
【0196】
4.別の容器中でDynasylan AとMTMSとを混合する。
【0197】
5.DynA/MTMSをEtOH/水溶液/生物致死剤に注ぎ、5~15分間又は均質になるまで撹拌する。
【0198】
6.NH4OH-塩基触媒を加える。
【0199】
7.ゲル化が起こり始めるまで激しく撹拌する。ゾル-ゲルが濃厚になったとき、混合速度を減少させる。保管のために湿潤ゲルを金型又は容器に移す。
【0200】
8.容器を閉鎖し、材料を約3日間放置して熟成させる(冷蔵庫中で行ってもよい)。
【0201】
9.続いて湿潤ゲルをここでの一般的手順に従って凍結及び凍結乾燥させる。
【0202】
溶媒交換を含む一般的乾燥方法
SOL相の組成に応じて、凍結乾燥前に湿潤ゲル中の溶媒をtert-ブタノール(4×ゲルの容積、4時間毎に3回)に交換してもよい。高比率の水を含有する湿潤ゲルでは、凍結前に溶媒交換は必要ではない。高比率のエタノールを含有する湿潤ゲルでは、凍結前のtert-ブタノールとの溶媒交換によって、その後の凍結乾燥を高温で行うことが可能になり、このことは大規模運転に好ましい。
【0203】
凍結乾燥は、以下のように市販の凍結乾燥器(例えばVirTis)中で行うことができる:
湿潤ゲルを市販の冷蔵庫中で例えば-18℃又は-80℃で凍結させ、特定の凍結ゲルの崩壊温度TCよりも約5℃低い棚温度(TCは例えば凍結乾燥顕微鏡観察FDMにより評価可能である。方法の節を参照)、及び3Torr未満の圧力で凍結乾燥させる。TCを知ることで費用対効果が最も高い凍結乾燥過程を開発することが可能になるため、本発明の凍結した湿潤ゲルの凍結乾燥を開始する前にゲルの崩壊温度TCを確立することが有利である。しかし、特定のゲルについてTCが不明である場合、試料の収容室の一部を、確立が比較的容易であってもよい湿潤ゲル中の溶媒/溶媒混合物の凍結点よりも約5℃低い温度に維持すべきである。次に、崩壊温度TC未満の温度、又は使用溶媒の凍結点未満の温度を維持しながら、凍結ゲルを凍結乾燥させる。乾燥過程中、温度をゆっくりと上昇させることができる。
【0204】
非限定的な例
以下では、本発明の担持エアロゲルをどのようにして製造するかに関するいくつかの非限定的な例を示す。
【0205】
ゲル化例1(参考例)。予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)から約75%の封入CuPTを有するエアロゲルを調製する。
【0206】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)28.16g、MTMS 13.35g、及びエタノール(96.6%)115.2gをメカニカルスターラーによって約15分間撹拌した。銅ピリチオン48.64gを混合しながら加えた。溶液をさらに15分間混合した。
【0207】
工程2。溶液2:エタノール(96.6%)1.28g、水(脱塩)76.8g、及び触媒塩基3.71g(NH4F 1.852gを秤量し、それを水100mLに加える。水酸化アンモニウム溶液20.50g(22.78mL)を加える。これを「触媒塩基」と呼ぶ)。
【0208】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。約30分の混合後にゲル化が起こった。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0209】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:約63グラム。
【0210】
ポロシメトリー比較の目的で、同じ湿潤ゲルを調製し、超臨界条件下で乾燥させた。そこで、工程3)からの湿潤ゲルを小片に切り分け、0.5L加圧容器(加熱ジャケット及び両端の金属フリットを備えた0.5L流通反応器)にエタノール下で移した。加熱ジャケット中の温度を37~40℃に上昇させ、圧力を速度3バール/分で100バールに上昇させた。40℃及び100バールで約4時間にかけて、CO2 2.5kgが約6mL/分の速度で容器を流通した。流通後、圧力を2時間にわたってゆっくりと放出した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は約50gであった。
【0211】
ゲル化例2。予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)から約75%の封入ジネブを有するエアロゲルを調製する。
【0212】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)28.16g、MTMS 13.35g、及びエタノール(96.6%)115.20gをメカニカルスターラーによって約15分間撹拌した。ジネブ48.64gを混合しながら加えた。溶液をさらに15分間混合した。
【0213】
工程2。溶液2:エタノール(96.6%)1.28g、水(脱塩)76.8g、及び触媒塩基(参考例1を参照)3.71g。
【0214】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。さらに30分混合した後、ゲル化が起こった。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0215】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:約70グラム。
【0216】
ポロシメトリー比較の目的で、同じ湿潤ゲルを調製し、超臨界条件下で乾燥させた。そこで、工程3)からの湿潤ゲルを小片に切り分け、0.5L加圧容器(加熱ジャケット及び両端の金属フリットを備えた0.5L流通反応器)にエタノール下で移した。加熱ジャケット中の温度を37~40℃に上昇させ、圧力を速度3バール/分で100バールに上昇させた。40℃及び100バールで約4時間にかけて、CO2 2.5kgが約6mL/分の速度で容器を流通した。流通後、圧力を2時間にわたってゆっくりと放出した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は約65gであった。
【0217】
ゲル化例3。予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)から約66%の封入トラロピリル(Econea)を有するエアロゲルを調製する。
【0218】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)31.24g及びエタノール(95%)56.9gをメカニカルスターラーによって約10分間撹拌した。Econea 24gを混合しながら加えた。溶液をさらに10分間混合した。
【0219】
工程2。溶液2:エタノール(95%)20g、水(脱塩)45.98g、及び触媒塩基(参考例1を参照)1.2g。
【0220】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。さらに20分混合した後、ゲル化が起こった。湿潤ゲルを蓋付きの容器に移した。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0221】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:33.4グラム
ポロシメトリー比較の目的で、同じ湿潤ゲルを調製し、超臨界条件下で乾燥させた。そこで、工程3)からの湿潤ゲルを小片に切り分け、0.5L加圧容器(加熱ジャケット及び両端の金属フリットを備えた0.5L流通反応器)にエタノール下で移した。加熱ジャケット中の温度を37~40℃に上昇させ、圧力を速度3バール/分で100バールに上昇させた。40℃及び100バールで約4時間にかけて、CO2 2.5kgが約6mL/分の速度で容器を流通した。流通後、圧力を2時間にわたってゆっくりと放出した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は約36gであった。
【0222】
ゲル化例4。約56%の封入DCOITを有するエアロゲルを調製する
工程1。ジャーの中で112g水(脱塩)、6.5gエタノール(96.6%)、分散剤(例えばTego Dispers 740W)1.1gを機械的撹拌下で混合した。0.2M HCl 3.26gを加え、約10分間撹拌した。
【0223】
工程2。DCOIT 22.74gを加えた。撹拌を10分間続けた。これをDCOIT溶液とする。
【0224】
工程3。別の容器中でDynasylan A(又はTEOS)28gとMTMS 10.25gとを混合し、DCOIT溶液に注いだ。反応混合物を5~15分間又は均質になるまで撹拌した。
【0225】
工程4。NH4OH-塩基触媒(上記参照)0.2gを反応混合物に加えた。30分後、さらに0.25gをジャーに注いだ(pHをモニタリングすれば8.5を超えないはずである)。
【0226】
工程5。ゲル化が始まるまで反応混合物を撹拌した。ゾル-ゲルが濃厚になったとき、混合速度を減少させ、次に熟成のために湿潤ゲルを金型又は容器に移した。
【0227】
工程6。容器を閉鎖し、材料を約3日間放置して熟成させた(冷蔵庫中で行ってもよい)。
【0228】
工程7。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:40.4g。
【0229】
ゲル化例5。予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)から約75%の封入Econeaを有するエアロゲルを調製する。
【0230】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)22.0g、MTMS 10.43g、及びエタノール(96.6%)90.0gをメカニカルスターラーによって約10分間撹拌した。Econea 38.0gを混合しながら加えた。溶液をさらに10分間混合した。
【0231】
工程2。溶液2:エタノール(96.6%)1.0g、水(脱塩)60.0g、及び触媒塩基(参考例1を参照)6.0g。
【0232】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。さらに50分混合した後、ゲル化が起こった。湿潤ゲルを蓋付きの容器に移した。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0233】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:約50g。
【0234】
ポロシメトリー比較の目的で、同じ最終Econea濃度を有する同様の湿潤ゲルを調製し、超臨界条件下で乾燥させた。工程3)からの湿潤ゲルを小片に切り分け、0.5L加圧容器(加熱ジャケット及び両端の金属フリットを備えた0.5L流通反応器)に移した。加熱ジャケット中の温度を37~40℃に上昇させ、圧力を速度3バール/分で100バールに上昇させた。40℃及び100バールで約4時間にかけて、CO2 2.5kgが約6mL/分の速度で容器を流通した。流通後、圧力を2時間にわたってゆっくりと放出した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は約50gであった。
【0235】
ゲル化例6。予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)から約75%の封入ZnPTを有するエアロゲルを調製する。
【0236】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)28.16g、MTMS 13.35g、及びエタノール(96.6%)115.2gをメカニカルスターラーによって約15分間撹拌した。ジンクピリチオン48.64gを混合しながら加えた。溶液をさらに15分間混合した。
【0237】
工程2。溶液2:エタノール(96.6%)1.28g、水(脱塩)76.8g、及び触媒塩基(参考例1を参照)3.71g。
【0238】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。約48分の混合後にゲル化が起こった。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0239】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:約65グラム。
【0240】
ゲル化例7。予備縮合TEOSから約66.4%の封入メデトミジンを有するエアロゲルを調製する。
【0241】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)4.4g、MTMS 2.09g、及びエタノール(96.6%)18.0gをメカニカルスターラーによって約15分間撹拌した。メデトミジン5.0gを撹拌下で加えた。溶液をさらに15分間混合した。
【0242】
工程2。溶液2:エタノール(96.6%)0.2g、水(脱塩)12.0g、及び触媒塩基(参考例1を参照)1.2g。
【0243】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。約57分の混合後にゲル化が起こった。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0244】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:約7.5g。
【0245】
ゲル化例8。予備縮合TEOSから約75%の封入2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾールを有するエアロゲルを調製する。
【0246】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)11.0g、MTMS 5.22g、及びエタノール(96.6%)45.0gをメカニカルスターラーによって約15分間撹拌した。チアベンダゾール19.0gを混合しながら加えた。溶液をさらに15分間混合した。
【0247】
工程2。溶液2:エタノール(96.6%)0.5g、水(脱塩)30.0g、及び触媒塩基(参考例1を参照)3.0g。
【0248】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。約22分の混合後にゲル化が起こった。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0249】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:約25g。
【0250】
ゲル化例9。予備縮合TEOSから約75%の封入テブコナゾールを有するエアロゲルを調製する。
【0251】
工程1。溶液1:ガラス容器中で予備縮合TEOS(又は純粋なTEOS)11.0g、MTMS 5.22g、及びエタノール(96.6%)45.0gをメカニカルスターラーによって約15分間撹拌した。テブコナゾール19.0gを混合しながら加えた。溶液をさらに15分間混合した。
【0252】
工程2。溶液2:エタノール(96.6%)0.5g、水(脱塩)30.0g、及び触媒塩基(参考例1を参照)3.0g。
【0253】
工程3。溶液2を溶液1に加え、その間、メカニカルスターラー上で全速力で混合した。約22分の混合後にゲル化が起こった。得られたゲルを乾燥前に約3~5日間熟成させた。
【0254】
工程4。熟成したゲルを工業用冷凍庫中、-80℃で終夜凍結させた後、圧力10mbar未満及び冷却器温度-110℃で凍結乾燥させた。収量:約25g。
【0255】
エアロゲルの特性評価方法
水銀圧入分析
高圧水銀(Hg)圧入分析をMicromeriticsからのAutopore V機器(初期測定:Autopore IVモデル9520又は同様の機器)中で行った。試料を338μm~6.6nmの孔径スキャンと同等の0.5psia~30000psiaの圧力範囲で測定した。
【0256】
1.すべての試料を、粉末試料を分析するように特に設計された針入度計(すなわち容積5ml、毛管ステム容積1.13ml)に充填した。針入度計に注入された試料の量は、データの分解の向上を確実にするステム容積使用率20%を得るために十分であった。
【0257】
2.分析前に、試料を備えた針入度計を設定限界値50μm Hg未満までの減圧下の脱気処理に供した。次に試料を2つの異なる操作モード、すなわち低圧(40psiaまで、17個の地点)及び高圧(30000psiaまで、32個の地点)で分析した。
【0258】
3.低圧分析を行った後、Hg及び充填床を含む針入度計を再度秤量し、この値を嵩密度(すなわち粒子間多孔度)を確定するためのソフトウェア入力値として使用する。
【0259】
4.次に、針入度計を高圧ポートに入れ、圧力を高くしながら粒子内多孔度を確定し、これを見かけの密度と関連づける。
【0260】
5.孔径を、接触角(θ)130°及び水銀表面張力値(γ)0.48J/m2を前提とするWashburn式を使用して計算する。最後に、データの概要を機器のソフトウェアによって表示する。
【0261】
吸水性
約0.2グラムの小さな試料を小さなペトリ皿に秤量し、青いシリカゲルが底部にあるデシケーターに入れ、これを気候室に入れる。
【0262】
1.試料の重量減少を、安定な重量が得られるまで、通常は4~6日後に記録し、乾燥重量を記録する。
【0263】
2.乾燥試料を水道水が底部にあるデシケーターに入れる(約86%RH)。試料の重量増加を、安定な重量が得られるまで、通常は4~6日後に記録する。
【0264】
重量増加を計算する。これは細孔容積=(飽和試料の重量-乾燥試料の重量)/水の密度として表すことができる。
【0265】
試験を23±2℃で二つ組で行う。
【0266】
BET分析
BET(Brunauer-Emmett-Teller)分析によって、孔径分布を含む試料の比表面積を測定する。粉末の比表面積を、固体の表面にガスを物理的に吸着させること、及び表面上の単分子層に対応する吸着ガスの量を計算することによって確定する。物理的吸着は、吸着ガス分子と試験粉末の吸着表面区域との間の比較的弱い力(ファンデルワールス力)によって生じる。通常、この確定は液体窒素の温度で行われる。吸着ガスの量は容積式又は連続流通式の手順によって測定可能である。この方法が、ガスが細孔と周囲のボリュームとの間を連通することを前提とすることに留意されたい。実際には、これは、細孔が閉じた空洞であってはならないことを意味する。本試験に使用したBET機器:Micromeritics VacPrep又は同等の乾燥用ステーションを備えたMicromeritics Geminiシリーズ。4×10-6cm3/gを超える細孔容積が測定可能である。
【0267】
熱重量分析(TGA)測定
試料はMettler Toledo TGA 40中で分析されている。通常は10~25mgである試料をるつぼに入れて秤量する。温度を10℃/分で室温から800℃に上昇させる。重量減少を登録する。溶媒は通常は250℃よりも前に、通常は150℃よりも前のゲル生成に伴って消失する。ポリマーを含む他の有機材料は450℃よりも前に消失する。通常は800℃で無機材料のみが残留する。温度プロファイルが機器の較正の範囲内であることを確実にするために、インジウムによって機器の機能制御を行う。ソフトウェアプログラムSTAReバージョン7.01を使用して重量減少を評価する。
【0268】
FDMによる凍結した湿潤ゲルの崩壊温度T
C
の測定
凍結乾燥を意図する前に、凍結乾燥顕微鏡観察(FDM)を使用して本発明の凍結した湿潤ゲルの崩壊温度TCを評価してもよい。これにより、試料の崩壊を回避するために必要な最小温度を確立することによる最適な凍結乾燥条件の確定が可能になる。FDMでは、液体窒素を使用して小さな顕微鏡室の内側で試料を凍結させる。真空を加えながら、温度を徐々に増加させ、試料を乾燥させる。この温度上昇中に、昇華フロントが観察され、顕微鏡を通じて記録される。乾燥層の変化を使用して系の状態(非晶質又は結晶性)及び試料の崩壊温度を確定することができる。
【0269】
熱伝導率測定
試験法
ISO 22007-1(2008):一般的原理-線熱源法による
ASTM D 5930-0:非定常線熱源法によるプラスチックの熱伝導率に関する試験法による。測定は、試験試料に埋め込まれた線熱源からの公知の距離での温度変化を測定する非定常技術である熱線法(熱針法)の変形に基づく。
【0270】
機器
熱針(0.015~0.050[W/m K])を備えたISOMET 2114熱伝達解析器。
【0271】
ISOMET 2114は、気泡絶縁材料、プラスチック、液体、粉状材料、及び土壌を含む広範な等方性材料の熱伝達性の直接測定のための可搬携帯式測定機器である。
【0272】
試験条件
平均測定温度は約25℃。
【0273】
測定は、各測定間に10分の間隔を置く一連の6回の測定として行った。試験結果を
図7に示す。
【0274】
防汚塗料組成物
塗料膜の吸水性は、浸出層、有効化合物の浸出、侵食速度、したがって防汚性に関連する決定的に重要なパラメータである。吸水性は顔料着色の選択、選択されるゲル、及びゲルの量に影響される。エアロゲルは非常に多孔性であり、確実な測定を行う前に、異なる成分間の平衡を達成しなければならない。塗料組成物において、バインダー系がエアロゲルに浸透することが示された。これにより、成分間の平衡が達成されるまで吸水性が減少する。また、エアロゲル粒子が乾燥塗料層に堅く固定され、水に曝されることで経時的に洗い落とされないことが確実になる。シーラント組成物でも同様の機構がおそらく実施可能である。高い圧入容積値(水銀ポロシメトリーにより測定)を有するゲルにバインダー系が比較的容易に浸透することができると考えられる。
【0275】
参考文献
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12. Dorcheh et al. Silica aerogel; synthesis, properties and characterization. Journal of Materials Processing Technology Volume 199, Issues 1-3, 1 April 2008, Pages 10-26
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚添加剤であって、
a.以下のものを含むシリカ含有無機エアロゲル:
b.以下の特性を有する多孔質ゲル格子:
i.少なくとも40%の総多孔度、及び
ii.少なくとも10nmのメソ細孔径、
c.任意に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシド、並びに
d.前記エアロゲルに封入された、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、エチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル(IPBC)、2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチル-チオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、ジンクピリチオン、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、重炭酸N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、及びその混合物から選択される、少なくとも55重量%の1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物を含み、
前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物の前記封入が前記ゲルのゾル-ゲル形成中に行われ、ゾル-ゲル前駆体が、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、及びアルキルトリアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランであり、
また、シリカ含有無機エアロゲルが、エトキシシラン(Si-OEt)またはn-プロポキシシラン(Si-OPr)基から選択されるアルコキシシラン(Si-OR)末端基を含む、混防汚添加剤。
【請求項2】
ゾル-ゲルアルコキシシラン前駆体が、テトラエトキシシランであり、シリカ含有無機エアロゲルが、エトキシシラン(Si-OEt)末端基を含む、請求項1に記載の防汚添加剤。
【請求項3】
少なくとも60重量%、例えば少なくとも75重量%、例えば少なくとも80重量%、又は例えば少なくとも85重量%の前記1種以上の生物致死性又は生物忌避性化合物を含む、請求項1
または2に記載の防汚添加剤。
【請求項4】
少なくとも11nm、例えば少なくとも12nm又は少なくとも13nmのメソ細孔径を有する、請求項1~
3の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項5】
少なくとも50%の総多孔度を有する、請求項1~
4の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項6】
100mW/m*K未満の熱伝導率(ラムダ値)を有する、請求項1~5の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項7】
30~75mW/m*Kの熱伝導率(ラムダ値)を有する、請求項
6に記載の防汚添加剤。
【請求項8】
前記アルキルトリアルコキシシランがMTMS(メチルトリメトキシシラン)及びMTES(メチルトリエトキシシラン)から選択される、請求項1~
7に記載の防汚添加剤。
【請求項9】
前記生物致死性又は生物忌避性化合物がジンクピリチオン、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(Econea)、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、及びエチレンビスチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)から選択される、請求項1~
8の何れか1項に記載の防汚添加剤。
【請求項10】
定期的又は定常的に水没する海上表面、例えば船体及び海上建築物、港湾、石油リグ、養殖網、橋脚などでの使用のための、請求項
1~9の何れか1項に記載の防汚添加剤を含む防汚コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1~
9の何れか1項に記載の防汚添加剤を含む、陸上使用、例えば木材系建築材料又は室内湿気環境用の保護コーティングなどのための防汚コーティング組成物。
【請求項12】
請求項1~
9の何れか1項に記載の防汚添加剤を含む、防汚シーラント組成物。
【国際調査報告】