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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】涙点への灌注方法および灌注装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240628BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20240628BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
A61F9/007 130D
A61M5/28
A61M5/32 520
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580699
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2021039677
(87)【国際公開番号】W WO2023277887
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523488918
【氏名又は名称】ビサント・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Visant Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100224627
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 稔
(72)【発明者】
【氏名】ライク,キャリー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA01
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066KK02
4C066KK04
(57)【要約】
涙点カニューレは、吐出端と、装填端と、装填端から吐出端へ延びた注入内腔とを有する中空管状体を有する。吐出端は、涙小管の水平部分へ進入が抑制されつつ、患者の目の涙点穴に対して係合し、シールするように構成された遠位先端において終端している。遠位先端は、涙小管の垂直部分の上側領域への限定された進入を可能にするように選択された外径を有する。遠位先端の近位の中空管状体の領域は、遠位先端が涙小管の垂直部分に短い距離を越えて前進することを妨げるのに十分な大きさであり、典型的には2mm未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
涙点カニューレであって、
吐出端と、装填端と、それらの間の注入内腔とを有する中空管状体を備え、
前記吐出端は、涙小管の水平部分へ進入が抑制されつつ、涙点穴に対して係合し、シールするように構成された遠位先端において終端している、涙点カニューレ。
【請求項2】
前記遠位先端は、最遠位端において、0.3mmから0.7mmまでの範囲の外径を有する、請求項1に記載の涙点カニューレ。
【請求項3】
前記遠位先端は、遠位方向において前記最遠位端に向かって径方向内側にテーパしている、請求項2に記載の涙点カニューレ。
【請求項4】
前記遠位先端は、前記遠位先端から1mmから3mmまでの範囲の第1距離において、0.7mmから2mmまでの範囲の外径を有する、請求項3に記載の涙点カニューレ。
【請求項5】
前記遠位先端は、前記第1距離にわたって10°から20°までの範囲の第1角度で径方向内側にテーパしている、請求項4に記載の涙点カニューレ。
【請求項6】
前記遠位先端は、前記最遠位端から2mmから5mmまでの範囲の第2距離にわたって、25°から60°までの範囲の第2角度で径方向外側にテーパしている、請求項5に記載の涙点カニューレ。
【請求項7】
前記注入内腔は、遠位方向において前記装填端から前記吐出端に向かって径方向内側にテーパしている、請求項6に記載の涙点カニューレ。
【請求項8】
前記中空管状体の前記吐出端の前記遠位先端の前記最遠位端は、外表面と前記注入内腔の内壁との間の壁厚が0.03mmと0.2mmとの間の範囲にある、請求項7に記載の涙点カニューレ。
【請求項9】
前記中空管状体の前記装填端は、シリンジに取り外し可能に固定されるように構成されている、請求項8に記載の涙点カニューレ。
【請求項10】
前記中空管状体は、最遠位セクション、中間セクション、および近位セクションを有し、最遠位セクションは、1.5mmから3mmまでの範囲の長さと、長さに沿って0.3mmから0.7mmまでの範囲の外径とを有する略円筒状である、請求項2に記載の涙点カニューレ。
【請求項11】
前記中間セクションは、3mmから10mmまでの範囲の長さと、長さに沿って3mmから10mmまでの範囲の外径を有する略円筒状である、請求項10に記載の涙点カニューレ。
【請求項12】
前記最遠位セクションは、直線状であり、前記中空管状体の軸と位置合わせされている、請求項10に記載の涙点カニューレ。
【請求項13】
前記最遠位セクションは、直線状であり、前記中空管状体の軸に対して10°から45°までの範囲の角度で撓む、請求項10に記載の涙点カニューレ。
【請求項14】
前記最遠位セクションは、湾曲している、請求項10に記載の涙点カニューレ。
【請求項15】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の涙点カニューレと、
シリンジと
を備える、シリンジアセンブリ。
【請求項16】
前記シリンジは、患者の涙小管に送達される物質が予め装填されている、請求項15に記載のシリンジアセンブリ。
【請求項17】
患者の涙小管または涙嚢に物質を送達する方法であって、
患者の涙点穴に対して中空管状体の遠位先端を係合させ、ここで、前記遠位先端は、前記涙点穴に対してシールするが、患者の水平涙小管に進入せず、
前記中空管状体の注入内腔を通して、前記遠位先端から、患者の涙嚢および/または涙小管内に前記物質を注入する
ことを備える、方法。
【請求項18】
前記遠位先端に設けられた最遠位端は、前記涙点穴内に嵌まることができる直径を有している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記遠位先端は、遠位方向において前記最遠位端に向かって径方向内側にテーパしており、前記最遠位端の近位位置で前記遠位先端の直径が大きくなることで、前記遠位先端が患者の垂直小管内に前進することを妨げる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記遠位先端の前記最遠位端は、3mmの距離を超えて患者の垂直小管に進入することが妨げられている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記遠位先端の前記最遠位端は、1mmの距離を超えて患者の垂直小管内に進入することが妨げられている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記物質は、ゲルを備える、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野 本発明は、概して医療装置および方法に関し、特に、材料を涙点を通って涙小管および涙嚢に挿入するための装置に関する。
【0002】
涙点カニューレは、目の涙点を通って涙小管(涙管)にアクセスするために知られており、使用されている。流体がカニューレから涙小管に送達され、閉塞した管をきれいにし、涙の排出を促し、場合によっては涙嚢を洗い流す。涙点カニューレは、一般的に、静脈注射針およびカテーテルと同様に構成されることがあり、初期の例が米国特許第950822号および米国特許第3388703号にそれぞれ説明されている。
【0003】
過去において、涙点カニューレは、典型的には、例えば27ゲージから21ゲージまでの範囲の均一な外径、または米国特許第5593393号に記載されているように、テーパ状の外部表面を有していた。そのような単一の直径のカニューレは、典型的には、目の涙点への挿入を困難にする大きな直径(より小さなゲージ番号)を有している。そのような大きな単一の直径のカニューレを導入する前に、涙点は、典型的には、涙点拡張器具による広範な拡張を必要とし、涙点アクセスをツーステッププロセスにする。いくつかの例では、涙管プロービングが必要となる場合があり、涙管アクセスをスリーステッププロセスにする。より小さな直径(より大きなゲージ番号)のカニューレは、より容易に挿入されるが、シール性が劣るため、灌注が始まると流体が逆流する可能性がある。
【0004】
先の涙点挿入装置は、ユーザが(全体で僅か10mmの)涙小管への進出深さを推定することを可能にする機能が欠如している。そのようなフィードバックの欠如は、小管の端部において内部組織を潜在的に傷つけるカニューレの「過剰挿入」(必要以上の深さまで、また有効な涙点長さを超えて挿入すること)を引き起こすことがある。
【0005】
図1は、涙腺12、下側涙点穴14a、上側涙点穴14b、涙嚢16、および下側涙小管18を含むヒトの目10の涙器系の解剖学的構造を図示している。涙小管18は、涙点穴14aから降下した約2mmの垂直セクションまたは部分と、涙嚢16へ延びた8mmの水平セクションまたは部分とを含む。涙22は、目の上の涙腺12から下瞼の上面28上を流れて、下側涙点穴14aに流れ、涙小管18を通って、涙嚢16に流れる。
【0006】
図2Aおよび図2Bは、典型的には0.3mmから1mmの外径を有する涙点カニューレ42の挿入を可能にするように下側涙点穴14aを拡張するために使用される拡張器41を含み、涙点カニューレ42は、フィンガーグリップ47を有し、下側涙点穴14aを通じて涙小管18内に挿入されるゲルまたは他の材料44を格納するシリンジに取り付けられる、典型的な先行技術の涙点注入器システムを図示している。
【0007】
図3Aおよび図3Bは、先行技術の涙点カニューレ42を使用した涙小管18内へのゲル44の配置を示している。涙点カニューレ42の遠位先端は、位置P1まで涙小管18内に深く挿入され(図3A)、涙点カニューレ42の遠位先端が位置P2に引き戻されながら、ゲルと係合するプッシャーを有するプランジャ48を初期位置D1から位置D2に押し込むことで、ゲル44が遠位先端から押し出される(図3B)。ゲルの注入速度がカニューレの引き抜き速度と完全に一致している場合、図4Aから図4Dに示すように、涙小管は過剰になることなく完全に満たされる。
【0008】
対照的に、図5Aおよび図5Bは、先行技術の涙点カニューレ42が非常に遅く引き抜かれた場合の結果を示している。ゲル44は、密封が維持されず、涙小管へ送達されるゲルの量が制御できないため、ゲル44が涙点14aを通って押し戻される。図5Cは、先行技術の涙点カニューレ42が非常に速く引き抜かれた場合の結果を示している。涙小管18は部分的にしか満たされていない。
【0009】
これらの理由から、患者の涙小管にアクセスし、満たすための改良された涙点カニューレおよび方法を提供することが望ましい。そのようなカニューレおよび方法は、(1)カニューレを通して涙小管に物質を送達している間のシール性を改良し、(2)過剰挿入および涙組織への潜在的な損傷の危険性を低減する必要がある。これらの目的の少なくともいくつかは、以下および特許請求の範囲に記載された発明により満たされる。
【背景技術】
【0010】
2.背景技術の説明 米国特許第5593393号には、複数の直径を有する涙点カニューレが記載されている。米国特許第5593393号に記載されたカニューレは、小径チューブがまず涙点に配置され、カニューレが進出すると、カニューレの大径チューブが涙点に入り込み、涙小管内に入り、システムをシールするように設計されている。米国特許第3540447号は、尖った遠位端が近位端より小径である脊髄針を開示している。しかし、先端が鋭利であり、涙点には有用ではないことがわかる。涙点灌注に使用した場合、涙組織の出血または炎症を引き起こすことがある。この装置は、脊髄注射用に特別に設計されたものであり、非常に特殊なシリンジに取り付けられる。さらに、この装置は、涙点挿入に使用するために大幅な改変(端点を傾斜したものに対して均等な点に変更すること、鋭利な先端を丸く滑らかにすること、シャフトの長さを短くすること、直径をいくつか変更すること)を必要とする。
【0011】
米国特許第3216616号は、針の直径を小さくすることを開示している。この特許には、ほとんどシリンジの設計の改良のみが記載されており、針の設計の具体的な内容は記載されていない。記載されている装置は、涙点灌注をより複雑にしており、上記特許で説明した改変を必要とするであろう。米国特許第4335718号には、皮膚貫通用の針カニューレが記載されている。この装置は、涙点挿入に使用するためには、上記の大幅な改変を必要とするであろう。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、涙小管への最小の進入で、涙点開口に対して係合し、シールする大きさおよび形状を有する遠位先端を有する涙点カニューレを提供することにより、これらの目的の少なくともいくつかを達成する。涙点拡張および灌注は、先行技術のツーステッププロセスではなく、ワンステッププロセスで実行することができる。本発明は、カニューレが涙小管に過剰進入することを防止し、典型的には、カニューレの最遠位端の涙小管への挿入を制限して、涙小管の水平領域に進入しないようにし、典型的には、涙小管の垂直領域への挿入距離を2mm以下に制限する。涙点灌注およびゲルの送達が依然として可能である一方で、本発明は、カニューレの最遠位端が涙小管へ深く進入してプロービングすることを防止する。
【0013】
涙管カニューレの遠位先端は、典型的には、小径で、丸みを帯びた端部として形成され、涙小管の垂直領域への更なる移動を最小にしつつ涙点への制御された進入を可能にする。小径で丸みを帯びた端部は、涙点の外周に対してシールする大径領域に移行し、涙点に導入されたゲルまたは他の材料の逆流を防止または抑制し、必要に応じて涙嚢を含む涙小管システムの完全な充填を可能にする。短い長さ、典型的には1mmから2mmのカニューレの小径遠位部分を設け、小径部分の近位で直径を急速に増加させることで、涙点に対するカニューレの遠位先端の効果的なドッキングおよびシールが達成される。効果的なドッキングにより、遠位先端が所定の位置に固定され、効果的なシールにより、送達されるゲルまたは他の材料の逆流が防止される。
【0014】
第1の態様では、本発明は、中空管状体を備える涙点カニューレを提供する。中空管状体は、吐出端と、装填端と、それらの間の注入内腔とを有する。中空管状体の吐出端は、患者の涙小管の水平部分への進入が抑制されつつ、患者の涙点穴に対して係合しシールするように構成された遠位先端で終端している。
【0015】
具体例では、涙点カニューレの遠位先端は、最遠位端において、0.3mmから0.7mmまでの範囲、通常0.4mmから0.6mmまでの範囲の外径を有してもよい。多くの場合、遠位先端は、遠位方向において最遠位端に向かって径方向内側にテーパして、涙点穴への進入を容易にする。遠位先端がテーパしているそのような例では、先端は、遠位先端から近位方向において1mmから3mmまでの範囲の第1距離において、0.7mmから2mmまでの範囲、典型的には0.7mmから1mmまでの範囲の外径を有することが多い。したがって、遠位先端は、最遠位端において尖ったまたは最も狭い直径を有し、近位端またはその近傍において大きな直径を有する略円錐形状を有してもよい。多くの場合、円錐面は、遠位先端が涙点穴を通って涙小管の垂直部分に導入されるときに涙点穴の外周に対して係合しシールする。
【0016】
具体例では、遠位先端は、第1距離にわたって10°から20°までの範囲の第1角度で径方向内側にテーパ(すなわち、収束)してもよい。そのような例では、遠位先端は、第1距離の近位の方向において第1角度より大きい第2角度で径方向外側にテーパすることが多い。例えば、第2角度は、25°から60°までの範囲であってもよく、遠位先端は、第1距離を越えて0.5mmから3mmまでの範囲の第2距離にわたって径方向外側に発散してもよい。
【0017】
注入内腔は、様々な形状を有してもよい。例えば、遠位方向において装填端から吐出端に向かって径方向内側にテーパしてもよい。通常、注入内腔の直径は、注入抵抗を低減するために、中空管状体の少なくとも遠位部分内で可能な限り大きくされる。例えば、中空管状体のこの吐出端の遠位先端の最遠位端は、典型的には、薄い壁を有しており、多くの場合、本体の外表面と注入内腔の内壁との間の壁厚は、0.03mmと2mmとの間の範囲にある。
【0018】
他の例では、本発明に係る涙点カニューレの中空管状体は、最遠位セクションと、中間セクションと、近位セクションとを備え、最遠位セクションは、1.5mmから3mmまでの範囲の長さと、長さに沿って0.3mmから0.7mmまでの範囲の外径とを有する略円筒状である。中間セクションは、典型的には、3mmから10mmまでの範囲の長さと、長さに沿って3mmから10mmまでの範囲の外径を有する略円筒状であり、最遠位セクションは、直線状で中空管状体の軸と位置合わせされてもよく、直線状で中空管状体の軸に対して10°から45°までの範囲で撓んでもよく、湾曲してもよい。
【0019】
中空管状体の装填端は、典型的には、シリンジに取り外し可能に固定されるように構成されており、多くの場合、シリンジの遠位端に結合するように選択される種類のルーラー取り付け部を有する。シリンジは、典型的には、涙小管に送達されるゲルまたは他の材料により予め装填されており、本発明は、予め装填されたシリンジと組み合わされる涙点カニューレを含むシリンジアセンブリをさらに備えてもよい。
【0020】
第2の態様では、本発明は、患者の涙小管に物質を送達する方法を提供する。本方法は、遠位先端が涙点穴に対してシールするが患者の水平涙小管に進入しない方法で、中空管状体の遠位先端を患者の涙点穴に対して係合させることを備える。遠位先端が涙点穴に対して係合し、シールした後、物質は、中空管状体内の注入内腔を通して、遠位先端から、患者の涙小管内に注入される。涙点穴または涙点穴を僅かに通過した位置から注入することで、ゲルまたは他の物質を、過剰な送達がないか最小限な状態で、涙小管を完全に満たすように、送達することができる。
【0021】
本発明の方法の特定の態様では、遠位先端の最遠位端は、その最遠位端において、涙点穴を通過することができる直径を有する。そのような例では、遠位先端は、通常、近位方向において径方向外側にテーパしており、遠位先端の更なる前進を妨げるために、遠位先端が垂直涙小管内に更に前進したときに、遠位先端の増大した直径が涙点穴の外周に係合する。このようにして、遠位先端は、患者の垂直涙小管内に部分的に延びてもよく、したがって、患者の水平涙小管に進入することが防止されている。更に特定の実施形態では、遠位先端の最遠位端は、3mmの距離を越えて、多くの場合1mmの距離を越えて患者の垂直小管に進入することが妨げられている。
【0022】
本発明の更なる目的および利点は、図面およびその後の説明を考慮することにより明らかになるであろう。
【0023】
(参照による援用)
本明細書において言及した全ての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度まで本明細書に参照により組み込まれる。
【0024】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲において具体的に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用され例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより得られるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、ヒトの目の涙器系の解剖学的構造を図示している。
図2A図2Aは、拡張器および涙点カニューレを含む典型的な先行技術の涙点注入器システムを図示している。
図2B図2Bは、拡張器および涙点カニューレを含む典型的な先行技術の涙点注入器システムを図示している。
図3A図3Aは、図2Aおよび図2Bの涙点カニューレを使用した涙小管へのゲルの配置を図示している。
図3B図3Bは、図2Aおよび図2Bの涙点カニューレを使用した涙小管へのゲルの配置を図示している。
図4A図4Aは、図2Aおよび図2Bのカニューレを使用した涙小管へのゲルの成功した配置の詳細図を提供する。
図4B図4Bは、図2Aおよび図2Bのカニューレを使用した涙小管へのゲルの成功した配置の詳細図を提供する。
図4C図4Cは、図2Aおよび図2Bのカニューレを使用した涙小管へのゲルの成功した配置の詳細図を提供する。
図4D図4Dは、図2Aおよび図2Bのカニューレを使用した涙小管へのゲルの成功した配置の詳細図を提供する。
図5A図5Aは、図2Aおよび図2Bの先行技術のカニューレが非常に遅く引き抜かれた場合の結果を示す。
図5B図5Bは、図2Aおよび図2Bの先行技術のカニューレが非常に遅く引き抜かれた場合の結果を示す。
図5C図5Cは、図2Aおよび図2Bのカニューレが非常に素早く引き抜かれた場合の結果を示す。
図6図6は、本発明の涙点注入器の断面図である。
図6A図6Aは、図6の6A-6A線に沿った詳細断面図である。
図7図7は、ゲルで満たされたシリンジに取り付けられた図6および図6Aの涙点カニューレを図示している。
図8図8は、涙小管および必要に応じてる涙嚢を満たすために図6および図6Aの涙点カニューレを使用した結果を示す。
図9A図9Aは、ゲルで満たされた送達球状部分に取り付けられた図6および図6Aの涙点カニューレを示している。
図9B図9Bは、ゲルで満たされた送達球状部分に取り付けられた図6および図6Aの涙点カニューレを示している。
図10A図10Aは、ゲルで満たされた気体駆動装置に取り付けられた図6および図6Aの涙点カニューレを示している。
図10B図10Bは、ゲルで満たされた気体駆動装置に取り付けられた図6および図6Aの涙点カニューレを示している。
図11A図11Aは、軸方向に位置合わせされた直線状の段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図11B図11Bは、軸方向に位置合わせされた直線状の段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図11C図11Cは、軸方向に位置合わせされた直線状の段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図11D図11Dは、ゲルを涙小管に送達している、軸方向に位置合わせされた直線状の段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図12A図12Aは、軸方向に撓んだ直線状の段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図12B図12Bは、ゲルを涙小管に送達している、軸方向に撓んだ直線状の段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図13A図13Aは、湾曲した段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図13B図13Bは、ゲルを涙小管に送達している、湾曲した段付き送達先端を有する涙点カニューレを示している。
図14A図14Aは、図11Aおよび図11Bの涙点カニューレを従来のシリンジとともに使用して、患者の目の涙小管内にゲルを送達するステップを図示している。
図14B図14Bは、図11Aおよび図11Bの涙点カニューレを従来のシリンジとともに使用して、患者の目の涙小管内にゲルを送達するステップを図示している。
図14C図14Cは、図11Aおよび図11Bの涙点カニューレを従来のシリンジとともに使用して、患者の目の涙小管内にゲルを送達するステップを図示している。
図14D図14Dは、図11Aおよび図11Bの涙点カニューレを従来のシリンジとともに使用して、患者の目の涙小管内にゲルを送達するステップを図示している。
図14E図14Eは、図11Aおよび図11Bの涙点カニューレを従来のシリンジとともに使用して、患者の目の涙小管内にゲルを送達するステップを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、涙小管および涙嚢内への材料の(涙点の拡張が必要ない)容易なワンステップ挿入を可能にする。カニューレの遠位部分の直径が大きいため、涙点の閉鎖が可能になり、挿入手順中の材料の逆流を回避し、その結果、涙小管および必要に応じて涙嚢が完全に材料で満たされることが保証される。この設計により、装置が涙小管に約2mm以上入ることが防止され、その結果、涙小管からの材料の排出を防止することができる。
【0027】
図6および図6Aを参照すると、本発明の原理に従って構築された涙点カニューレ50は、遠位端または吐出端52と、近位端または装填端54とを有する管状体を備える。注入内腔74は、近位端54から遠位端52まで延びており、(以下に記載する)シリンジからカニューレの遠位先端58から患者の涙点穴内へゲルまたは他の物質を送達することを可能にする。
【0028】
涙点カニューレ50の遠位先端58は、最遠位端において外径dを有する。最遠位端において内径dを有する開口が形成されている。遠位先端58は、通常、第1長さlにわたって、近位方向において近位端または装填端54に向かって径方向外側にフレアまたはテーパしている。
【0029】
遠位先端58のすぐ近位側において、長さlを有するテーパ状停止領域64がある。テーパ状停止領域は、近位方向において近位端または装填端54に向かって径方向外側にテーパしている。遠位先端58は、通常角度αで広がる一方で、テーパ状停止領域64は、角度βで径方向外側に広がっている。角度βは角度αよりも大きく、遠位先端58の前進が起こらなかった場合、テーパ状停止領域は、涙点カニューレ50の涙点穴内への遠位側への前進を直ちに停止させる。
【0030】
テーパ状停止領域64の近位側に、移行領域66が設けられてもよく、移行領域の近位側に円筒状シャンク領域68が形成されてもよい。円筒状シャンク領域68の近位端には、以下により詳細に記載するように、シリンジへの取り付けを可能にするためにルアーまたは他の取り付け特徴部70が設けられる。
【0031】
本発明の涙点カニューレ50の例示的かつ好適な寸法を以下の表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
図7を参照すると、本発明の涙点カニューレ50は、従来技術に関連して先に記載されたシリンジと同様のシリンジ47に取り付けられることができる。シリンジ47は、遠位端において、涙点カニューレに設けられたルアーまたは他の取り付け部70に取り外し可能に取り付けることが可能なルアーまたは他の取り付け領域43を有する。シリンジは、送達されるゲル44、プッシャー45、フィンガーグリップ47、およびプランジャ48を更に含み、これらは全て、上述された従来技術のシリンジと同様に構成されてもよい。
【0034】
図8を参照して、ゲル44を涙小管18内に吐出するためのシリンジ40と涙点カニューレ50との組み合わせの使用が説明される。涙点カニューレ50の遠位先端58は、涙点穴14に対して挿入され、涙点穴14内に挿入される。遠位先端58のテーパ状停止領域64は、涙点穴14内に「押し込まれ」、涙点穴の外周の周り、およびテーパ状停止領域64の周縁面に対してシールが形成される。シールが達成された後、プランジャ48は、ゲル44を、遠位先端58を通って、涙小管の垂直領域および水平領域の両方を含む涙小管18内に押し出すように押し下げられてもよい。カニューレの任意の部分を引き戻すこと、および/またはカニューレが涙小管を通って引き抜かれる速度を制御することの必要性を回避することで、涙小管の表面端を通って失われる余分なゲルを最小またはゼロしつつ、涙小管内腔の完全な充填が達成される。
【0035】
図9Aおよび図9Bを参照すると、ゲルまたは他の材料の涙点カニューレを通る注入に用いられる具体的な吐出ツールは異なってもよい。例えば、図9Aおよび図9Bに示すように、球状部分80をゲルで満たし、涙点カニューレ50の内腔74と通してゲル材料を前進するために絞ることでゲルを吐出することができる。
【0036】
代替的には、図10Aおよび図10Bに示すように、加圧「気体駆動」ユニット88が、ゲルを吐出するために、涙点カニューレ50の近位端に取り付けられてもよい。例えば、気体駆動装置86は、解法機構90を有する加圧セルまたは加圧体88を含んでもよく、ゲルの吐出が望まれるときに、気体シリンダ88から加圧ガスを解放し、ピストン94が前進して、カニューレを通してゲルを前進させるためにユーザがアクチュエータ90を押すことができてもよい。
【0037】
図11Aから図11Dを参照すると、材料を涙小管内に送達するための使い捨てカニューレ110は、長さXを有する最遠位セクション112を備えており、最遠位セクション112は、最遠位セクション112の長さXに等しい正確な深さXまで、患者の涙小管に入り込むように構成されている。最遠位セクション112は、最遠位セクション112の長さXを超えて涙点穴へ入り込むことを停止するように構成されている。好ましい態様では、カニューレ110の最遠位セクション112は、従来技術のように予め配置されたチューブを使用することなく、所定の適切な深さまで入り込むように構成されている。特に好ましい態様では、最遠位セクション112は、拡張する必要なく、全てではないにしてもほとんどヒトの涙点に入り込む大きさを有する小径の金属または他のチューブ114を備えてもよく、長さYを有する大径中間セクション116の先端が涙点の開口部に到達すると、進入が停止する。長さZを有するカニューレの近位セクション116は、シリンジ(図14Aから図14E)または他の送達装置の端部に設けられた標準的なオスのルーラーロックに取り外し可能に取り付けられるように構成されており、この機能と合致する寸法を有する。
【0038】
最遠位セクション112は、中間セクション116の遠位端を越えて延びたチューブの遠位部分がヒト涙点内に容易に挿入され、涙小管の水平部分内に入り込むことなく所定の位置に維持されることを可能にするように選択された寸法を有する小径チューブ114を備える。中間セクション116は、中間セクションの遠位先端縁または肩部が涙点に係合すると、カニューレ先端110の進入を停止するように選択された寸法を有するより大きな直径を有しており、同時に、その後の涙小管内への材料の送達の可視性を不明瞭にしない。カニューレ先端110の例示的かつ好適な寸法を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
いくつかの実施形態では、使い捨てカニューレ110の全ての部分が、材料の単一のブロックから一体に形成、例えば成型または機械加工されてもよい一方で、小径チューブ114を中間セクション116とは別個に形成することが好ましいことがある。小径チューブ114をステンレススチールまたは他の医療用金属から形成する一方で、中間セクション116と近位セクション118を成形ポリマーから形成することが特に好ましい。いくつかの例では、小径チューブが中間セクション116の長さより長い長さを有しており、これにより、製造者または使用者は、製造時または使用時のいずれかにおいて可変長さXを提供するために、中間セクションにおいて小径チューブ114を調整可能に配置することができる。
【0041】
図11Dを参照すると、カニューレ先端110の最遠位セクション112の遠位先端は、涙点Pを通って、最遠位セクション112の露出した長さXと等しい予め選択された深さdまで挿入され、最遠位セクションを涙小管C内で適切な位置に配置する。
【0042】
図12Aおよび図12Bに示すように、カニューレ先端120は、最遠位セクション112がカニューレ先端の軸に対して角度付けられていることを除いて、図11Aから図11Dまでのカニューレ先端110と同様に構成されている。軸方向と最遠位セクションの方向との間の角度αは、典型的には10°から45°までの範囲にあり、通常15°から35°までの範囲にある。
【0043】
図13Aおよび図13Bに示すように、カニューレ先端130は、最遠位セクション132がカニューレ先端の軸から離れるように湾曲していることを除いて図11Aから図11Dのカニューレ先端110と同様に構成されている。
【0044】
図14Aから図14Eを参照すると、カニューレ先端110,120,130などの本発明のカニューレ先端のいずれも、一端に設けられたプランジャ202と、他端に設けられたコネクタ204とを有する従来のシリンジ200に取り付けられることができる。シリンジは、ゲル、ヒドロゲル、または患者の涙小管に挿入されることが意図される他の材料で満たされる。カニューレ先端110,120,130は、図14Aにおいて矢印で示されるように、単純にねじ込まれることで適切な位置に取り付けられる。カニューレ先端110を適切な位置に固定した後、図14Bに示すように、ユーザは、プランジャ202を前方に押して、少量、一般的には約0.1mlのゲルを、涙点カニューレ110,123,130を通じて押し出す。シリンジに残っているゲルの量は、少なくとも0.5mlであるべきである。図14Dに示すように、涙点カニューレ110,120,130の最遠位セクション112,122,132の遠位先端が、第1瞼の下側涙点P内に前進し、0.2mlのゲルが押し出される。本発明のカニューレ先端を用いることで、患者の涙点Pを事前に拡張する必要がほとんどなくなる。
【0045】
上記の説明には、多くの特異性が含まれているが、これらは本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。例えば、以下に示す多くの他の変形が可能である。
【0046】
1.カニューレは、金属、プラスチック、天然材料、または合成材料から作られてもよい。構成材料は、射出成形が可能な材料、好ましくはポリオレフィン、より好ましくはポリプロピレンであることが好ましい。
【0047】
2.カニューレの先端の外径は、一般に約0.6mm以下であるが、異なってもよい。先端の内径は、一般に0.2mm以上であるが、送達される材料の特性に応じて異なってもよい。
【0048】
3.カニューレシャフトの小径部分の長さは、一般に2mm未満であり、大径部分の長さは異なってもよい。
【0049】
4.テーパ長さ、テーパ角度、テーパ位置は、異なってもよく、涙点の拡張、ドッキング(涙点に対するシール)、水平涙小管へのカニューレの進入の防止、涙小管および必要に応じて涙嚢への材料の送達を必要とせずに、挿入という同じ目標を達成する。
【0050】
5.ハブ接続は、通常ルーラーロックであるが、取り付けが意図される装置に応じて、異なってもよい。
【0051】
6.側壁の厚さは、カニューレの構成材料に応じて、カニューレの補強を可能にするように異なってもよい。
【0052】
7.カニューレは、一般的に1つの接続された部品として製造されるが、一体的に、または別個に、またはモジュールセクションとして製造されてもよい。
【0053】
本出願は、鼻涙排液システムへインプラントを挿入するための方法にも関連しており、実施形態は、治療薬送達機能を有するかまたは有しない涙点インプラントおよび管状インプラント、並びに涙嚢インプラントを提供する。
【0054】
本発明は、涙点を通って患者の涙小管内に挿入するための改良された小管閉塞装置、システム、および方法を提供する。多くの実施形態において、小管閉塞装置は、眼内に確実に保持されることができる。
【0055】
第1の態様では、本発明の実施形態は、上述の送達カニューレを用いて涙点を通って患者の涙小管内に挿入されることができる小管閉塞装置を提供する。本発明のカニューレがゲルの逆流を防止し、ゲルが涙小管および必要に応じて涙嚢内にのみ前進することができるので、特定かつ既知の量のゲルを送達することができる。小管閉塞装置は、治療薬を含んでも含まなくてもよいゲルを備えてもよい。
【0056】
多くの実施形態において、ゲルは、ヒドロゲルである。ゲルは、本発明のカニューレを通して、涙点、涙小管、および所望の場合には涙嚢に容易に注入されることができるように、粒子化されてもよい。ゲルは、ヒアルロン酸を含んでもよい。ヒアルロン酸は架橋されてもよい。
【0057】
好ましい実施形態では、小管閉塞装置は、涙小管内腔および所望の場合には涙嚢を通る涙液の流れを妨げてもよい。
【0058】
多くの実施形態では、患者の涙点を通って、涙小管および所望の場合には涙嚢に挿入するための小管閉塞装置が提供される。
【0059】
多くの実施形態では、目を治療するための小管閉塞装置が提供される。目は、涙液、涙点、涙小管、および涙嚢を有する。
【0060】
特定の実施形態では、小管閉塞装置は、目の涙小管を完全に閉塞するために弾性的に拡張することができる。
【0061】
本発明は、開示された特定の構成および配置に限定されるものではなく、変形形態の全てを包含することを理解されたい。その範囲は、与えられた例によってではなく、添付のクレームにより決定される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図6A
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
【国際調査報告】