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特表2024-5244145-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を有効成分として含む動物用薬学的組成物
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  • 特表-5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を有効成分として含む動物用薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を有効成分として含む動物用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4166 20060101AFI20240628BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61P13/12
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580700
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2022009222
(87)【国際公開番号】W WO2023277521
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0087121
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0072906
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510243687
【氏名又は名称】キョンボ ファーム カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523488929
【氏名又は名称】エヌディック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨンギュ
(72)【発明者】
【氏名】バン,ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ハリム
(72)【発明者】
【氏名】キム,イェリン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スキョン
(72)【発明者】
【氏名】イム,テクジュ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC61
(57)【要約】
本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を有効成分として含む動物用薬学的組成物に関するものであり、具体的に、本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物、前記化合物を用いた動物の腎臓疾患治療方法および前記化合物を有効成分として含む動物用腎臓疾患の予防または改善用機能性飼料に関するものである。本発明による5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物は、腎臓疾患を発病したイヌまたはネコのような伴侶動物に投与する場合、腎臓疾患の症状を効果的に改善および治療することができる特徴がある。よって、本発明は、伴侶動物の高い死亡率の原因である腎臓疾患を効果的に治療することができる新たな動物用腎臓疾患治療剤および腎臓疾患の治療方法を提供する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記腎臓疾患は、動物に発病する腎炎、腎盂炎、腎炎症候群、腎臓がん、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、腎結核、尿路感染症、尿路結石、尿管結石、急性腎不全、慢性腎不全、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、急性進行性腎炎、ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症および膜性増殖性糸球体腎炎からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物。
【請求項3】
請求項1において、
前記動物は、イヌまたはネコであることを特徴とする、動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物。
【請求項4】
請求項1において、
1日当たり体重1kg当たり25乃至200mgの用量の5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオンが、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の慢性腎臓病動物に対して経口投与されるように使用されることを特徴とする5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分とする動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物。
【請求項5】
請求項4において、
前記投与される用量が体重1kg当たり25mg乃至100mgである動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物。
【請求項6】
5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む組成物を腎臓疾患が誘発された動物に投与する段階を含む、動物の腎臓疾患を治療する方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記腎臓疾患が誘発された動物は、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の慢性腎臓病動物であることを特徴とする、動物の腎臓疾患を治療する方法。
【請求項8】
請求項6において、
前記腎臓疾患は、動物に発病する腎炎、腎盂炎、腎炎症候群、腎臓がん、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、腎結核、尿路感染症、尿路結石、尿管結石、急性腎不全、慢性腎不全、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、急性進行性腎炎、ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症および膜性増殖性糸球体腎炎からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、動物の腎臓疾患を治療する方法。
【請求項9】
請求項6において、
前記動物は、イヌまたはネコであることを特徴とする、動物の腎臓疾患を治療する方法。
【請求項10】
請求項6において、
前記投与は経口投与であることを特徴とする、動物の腎臓疾患を治療する方法。
【請求項11】
5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または改善用機能性飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を有効成分として含む動物用薬学的組成物に関するものであり、具体的に、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を有効成分として含む動物の腎臓疾患予防または治療のための薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伴侶動物を飼う人口が急増するにつれて動物医療市場の規模も持続的に大きくなり、国内外の製薬およびバイオ企業が伴侶動物用医薬品、飼料または栄養剤などの製品開発研究を活発に進めている。
【0003】
世界動物用医薬品市場規模は2018年基準で37兆ウォンを超え、最近5年間の市場成長推移を見ると年平均5%以上の増加傾向を見せており、米国市場調査業社のトレンスペアレンシーマーケットリサーチ(TMR)によれば全体動物用医薬品市場は2024年に502億ドル(約55兆ウォン)まで成長することと見込まれている。
【0004】
一方、腎臓は動物の血液を作り管理する役割を果たす重要な器官であり、腎臓に問題が生じると深刻な状況につながるだけでなく、一度損傷した腎臓は正常への回復が困難である。特に、腎臓は、体内の老廃物および塩分を濾過し取り除いて必要なものは再吸収し、尿を作って体内水分を調節する役割を果たす。しかし、腎臓のこのような機能に異常が生じると、体内に老廃物が蓄積されて尿毒症および高カリウム血症のような多様な症状が発生することになる。
【0005】
伴侶動物の腎臓損傷はなかなか表に現れず症状の容易な確認が難しいため、症状が出たときには伴侶動物の死につながる場合がかなり多い。腎臓疾患が伴侶動物の死亡原因の上位3位に入る理由もここにある。
【0006】
そればかりか、ヒトと異なりイヌやネコのような伴侶動物は、腎臓疾患の予防のために水を積極的に摂取させることが難しく、大部分の伴侶動物用飼料はドライフード形態で食事を通して必要な水分を十分に取ることもできないと言える。
【0007】
よって、伴侶動物の高い死亡原因となる腎臓疾患を効果的に予防または治療することができる伴侶動物用腎臓疾患治療剤の開発が必要なのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明者等は、伴侶動物に発病する腎臓疾患を効果的に治療することができる新たな治療剤および治療方法を研究していたところ、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物が伴侶動物の腎臓疾患を効果的に改善および治療することができることを確認し、最適の治療方法を開発することにより本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を用いた動物の腎臓疾患治療方法を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または改善用機能性飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような目的を達成するために、本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0013】
本発明の一実施例において、前記腎臓疾患は、動物に発病する腎炎、腎盂炎、腎炎症候群、腎臓がん、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、腎結核、尿路感染症、尿路結石、尿管結石、急性腎不全、慢性腎不全、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、急性進行性腎炎、ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症および膜性増殖性糸球体腎炎からなる群から選択されるいずれか一つであり得る。
【0014】
本発明の一実施例において、前記動物はイヌまたはネコであり得る。
【0015】
本発明の一実施例において、1日当たり体重1kg当たり25乃至200mg用量の5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオンが、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の慢性腎臓病動物に対して経口投与されるように使用されるものであり得る。
【0016】
本発明の一実施例において、前記投与される用量が体重1kg当たり25mg乃至100mgであり得る。
【0017】
また、本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む組成物を腎臓疾患が誘発された動物に投与する段階を含む、動物の腎臓疾患を治療する方法を提供する。
【0018】
本発明の一実施例において、前記腎臓疾患が誘発された動物は、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の慢性腎臓病動物であり得る。
【0019】
本発明の一実施例において、前記腎臓疾患は、動物に発病する腎炎、腎盂炎、腎炎症候群、腎臓がん、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、腎結核、尿路感染症、尿路結石、尿管結石、急性腎不全、慢性腎不全、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、急性進行性腎炎、ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症および膜性増殖性糸球体腎炎からなる群から選択されるいずれか一つであり得る。
【0020】
本発明の一実施例において、前記動物はイヌまたはネコであり得る。
【0021】
本発明の一実施例において、前記投与は経口投与であり得る。
【0022】
さらに、本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または改善用機能性飼料を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明による5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物は、腎臓疾患を発病したイヌまたはネコのような伴侶動物に投与する場合、腎臓疾患の症状を効果的に改善および治療することができる特徴がある。よって、本発明は、伴侶動物の高い死亡率の原因である腎臓疾患を効果的に治療することができる新たな動物用腎臓疾患治療剤および腎臓疾患の治療方法を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】慢性腎不全患犬で5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の投与前と投与後の血中クレアチニンの変化を分析した結果を示したものである。
図2】慢性腎不全患犬の血漿で5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物に対するcalibration curveを示したものである(濃度範囲50~100,000ng/nL)。
図3】慢性腎不全患犬に5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を経口投与した後、前記化合物の時間による血漿内平均濃度を分析した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、動物の腎臓疾患を効果的に予防または治療することができる組成物であり、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物を提供することに特徴がある。
【0026】
韓国を含む全世界的に伴侶動物と共に生活する人口数が増加しており、機能性飼料の開発などにより伴侶動物の寿命も伸びている。
【0027】
一方、伴侶動物の寿命が伸びるにつれて伴侶動物の疾病発生も増加しているが、特に、腎臓疾患は伴侶動物の主要死亡原因として知られている。しかし、伴侶動物の腎臓疾患を効果的に治療することができる動物用医薬品が開発できていないのが実情である。
【0028】
腎臓は、動物の血液生成および管理をする器官であり、老廃物排泄、血圧調節、尿濃縮、代謝産物排泄、赤血球生成ホルモン分泌まで多様な機能を担っているが、このような腎臓の機能が喪失したり障害が生じると腎臓疾患が発生し、腎臓疾患の代表的な疾患として急性腎不全と慢性腎不全が含まれる。急性腎不全は、毒性物質による腎臓損傷、尿管や尿道の閉塞などで短期間に腎臓が機能を失い、ひどければ数日内に死亡に至ることもある。慢性腎不全は、先天的奇形、腎臓嚢腫、腎結石、免疫異常、感染、腫瘍などの多様な原因により数ヶ月から数年にかけて腎臓が徐々に損傷して機能を失うことになる。
【0029】
特に、慢性腎不全は、年をとったイヌまたはネコの主要死亡原因として知られており、老化により腎臓機能が大きく落ちると毒素数値が急激に上昇して、様々な全身症状が現われる。代表的な症状としては、嘔吐、食欲不振、皮膚角質増加、毛並みの悪化、飲水および尿量増加などがある。
【0030】
しかし、保護者が伴侶動物のこのような症状を発見する程度ならば、既に腎臓の75%以上が損傷した確率が高い。
【0031】
また、急性腎不全の場合、症状の急激な悪化により伴侶動物が短時間内に死亡する可能性がある。
【0032】
一方、現在まで伴侶動物の腎臓疾患を効果的に予防または治療することができる治療剤および治療方法は存在しないのが実情である。
【0033】
よって、本発明は、動物の腎臓疾患を効果的に予防、改善および治療することができる動物用腎臓疾患医薬品として、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を用いることができることを究明し、伴侶動物を対象として前記化合物の最適投与条件を確立した。
【0034】
本発明の一実施例では、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の慢性腎不全症を発病したビーグル犬を対象として5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を投与用量を異にして投与した結果、前記化合物の投与によって慢性腎不全症の症状が緩和され改善されることが確認できた。
【0035】
また、前記化合物の投与用量は、ビーグル犬対象として1日当たり体重1kg当たり25乃至200mgの用量で投与するのが適切であることを確認することができ、望ましくは50mgの用量で投与したとき最も効果的にビーグル犬の慢性腎不全症を予防、改善および治療することができることを確認した。
【0036】
一方、これまで5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を伴侶動物に投与して腎臓疾患の治療効果を究明した例がないが、本発明では伴侶動物の腎臓疾患を迅速且つ効果的に治療することができる5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の投与条件を確立したことに特徴がある。
【0037】
特に、特定薬物に対しそれぞれ異なる個体を対象として薬理学的効果を導出するための薬物の投与量を決定することは、実際実験を通してのみ確認することができる。
【0038】
本特許の発明者等は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物について、ビーグル犬の生体内薬物の動きを予測するために1-コンパートメントモデル分析を行い、その結果、予想有効用量は約31.06mg/kgと計算された。
【0039】
このような結果を基に、本発明者等は、実際に慢性腎不全が誘発されたビーグル犬を対象として5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を濃度別に経口投与した後、症状の改善および治療効果を確認することができる指標として血中クレアチニンの数値を分析し、その結果、50mg/kgの投与量で投与した場合が他の用量で投与した場合に比べて最も効果が優れていることが分かった。
【0040】
このような点から、特定薬物の最適の薬理効果導出のための適正投与量は、当業界で公知となった予測方法で導出できるものではなく、ただ実際実験を通した結果でのみ決定することができることが分かった。
【0041】
そればかりか、投与個体が互いに異なる場合、個体別表面積と生体利用率などの薬物動態が相異なることから、特定個体に対する薬物の効能最適化は該当個体を対象として実際実験による結果値のみで確認されることができる。
【0042】
このような点から、本発明は、腎臓疾患が誘発された伴侶犬を対象として5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の治療効能最適化のための最適の投与用量を最初に確立した。
【0043】
よって、本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物を提供することができる。
【0044】
本発明で前記腎臓疾患は、動物に発病する腎炎、腎盂炎、腎炎症候群、腎臓がん、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、腎結核、尿路感染症、尿路結石、尿管結石、急性腎不全、慢性腎不全、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、急性進行性腎炎、ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症および膜性増殖性糸球体腎炎からなる群から選択されるいずれか一つであり得る。
【0045】
また、本発明の組成物は、動物、望ましくは伴侶動物に発生する腎臓疾患の予防または治療のためのものであり、前記伴侶動物としては、これに制限されないが、イヌまたはネコであり得、より望ましくはイヌであり得る。
【0046】
本発明の組成物が治療しようとする腎臓疾患を発病した動物は、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の慢性腎不全症の病期がII期~IV期の動物であり得る。
【0047】
伴侶犬に対する慢性腎不全症の病期は、I期~IV期に区分されるが、窒素血症がなく、クレアチニンが1.4mg/dL未満の場合、またはSDMA(ug/dL)数値が18未満の場合、またはUPC ratioが0.2未満の場合、または収縮期血圧(mmHg)が140未満の場合のうちいずれか一つ以上に該当する場合はI期と診断する。
【0048】
また、軽微な窒素血症があり、クレアチニンが1.4~2.8mg/dLの場合、またはSDMA(ug/dL)数値が18~35の場合、またはUPC ratioが0.2~0.5の場合、または収縮期血圧(mmHg)が前高血圧140~159の場合のうちいずれか一つ以上に該当する場合はII期と診断する。
【0049】
また、中等度窒素血症があり、クレアチニンが2.9~5.0mg/dLの場合、またはSDMA(ug/dL)数値が36~54ug/dLの場合、またはUPC ratioが0.2~0.5の場合、または収縮期血圧(mmHg)が高血圧160~179の場合のうちいずれか一つ以上に該当する場合はIII期と診断する。
【0050】
また、ひどい窒素血症があり、クレアチニンが5.0mg/dL超の場合、またはSDMA(ug/dL)数値が54超の場合、またはUPC ratioが0.5超の場合、または収縮期血圧(mmHg)がひどい高血圧である180以上の場合のうちいずれか一つ以上に該当する場合はIV期と診断する。
【0051】
本発明で、前記5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の投与は、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の腎臓疾患が誘発された動物に対して1日当たり体重1kg当たり25mg乃至200mgの用量で経口投与することができ、望ましくは1日当たり体重1kg当たり25乃至100mgの用量で経口投与することができ、最も望ましくは1日当たり体重1kg当たり50mgの用量で経口投与することができる。
【0052】
本発明で、前記動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物は、薬剤学的に許容される酸または塩基付加塩を含むことができ、例えば、酸付加塩はこれに制限されないが、塩酸、硝酸、リン酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、スズ酸および硫酸などから製造された無機酸塩、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、炭素酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸などから製造された有機酸塩、メタンスルホン酸
、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などから製造されたスルホン酸塩などであってもよく、塩基付加塩はこれに限定されないが、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウム
、マグネシウム、カルシウム塩などを含むことができる。また、列挙されたこれら塩により本発明で意味する塩の種類が限定されるものではない。
【0053】
また、本発明の組成物は、本発明の効果を害しない範囲内で薬学的に許容可能な希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、pH調整剤、酸化防止剤、溶解補助剤などの薬学的に許容可能な添加剤を含むことができる。
【0054】
希釈剤は、シュガー、デンプン、微結晶セルロース、乳糖(乳糖水和物)、グルコース、D-マンニトール、アルジネート、アルカリ土類金属類塩、クレイ、ポリエチレングリコール、無水リン酸水素カルシウム、またはこれらの混合物などを用いることができ;結合剤は、デンプン、微結晶セルロース、高分散性シリカ、マンニトール、D-マンニトール、スクロース、乳糖水和物、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリビニルピロリドン共重合体(コポビドン)、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、天然ガム、合成ガム、コポビドン、ゼラチン、またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0055】
崩壊剤は、デンプングルコン酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、またはプレゼラチン化デンプンなどのデンプンまたは変性デンプン;ベントナイト、モンモリロナイト、またはビーガム(veegum)などのクレイ;微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどのセルロース類;アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸などのアルギン類;クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウムなどの架橋セルロース類;グアーガム、キサンタンガムなどのガム類;
架橋ポリビニルピロリドン(crospovidone)などの架橋ポリマー;重炭酸ナトリウム、クエン酸などの沸騰性製剤、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0056】
潤滑剤は、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物性オイル、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセリルベヘネート、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、グリセリルパルミトステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0057】
pH調整剤は、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エーテル酸ナトリウム、リンゴ酸、コハク酸、スズ酸、フマル酸、クエン酸のような酸性化剤と沈降炭酸カルシウム、アンモニア水、メグルミン、炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、三塩基性カルシウムりん酸塩のような塩基性化剤などを用いることができる。
【0058】
酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどを用いることができる。本発明の先放出性区画において、溶解補助剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ドキュセートナトリウム 、ポロキサマー(poloxamer)などを用いることができる。
【0059】
また、本発明による薬剤学的組成物は、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射用液の形態に剤形化して用いられることができ、望ましくは経口型剤形に剤形化して用いられることができる。
【0060】
さらに、本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む組成物を腎臓疾患が誘発された動物に投与する段階を含む、動物の腎臓疾患を治療する方法を提供することができる。
【0061】
本発明で、用語「投与」は、何らかの適切な方法で伴侶動物に本発明の動物用腎臓疾患の予防または治療用組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到逹することができる限り、何らかの一般的な経路を介して投与されることができる。経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、内皮投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、腔内投与、腹腔内投与、硬膜内投与されることができ、望ましくは経口投与であり得る。
【0062】
本発明による組成物は、1日1回または一定の時間間隔を置いて一日2回以上投与されてもよい。
【0063】
前記腎臓疾患が誘発された動物は、血清クレアチニン(sCr)値が1.4mg/dL以上の慢性腎臓病動物であり得、前記動物はイヌまたはネコであり得る。
【0064】
さらに、本発明は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの塩を有効成分として含む、動物用腎臓疾患の予防または改善用機能性飼料組成物を提供することができる。
【0065】
このとき、前記5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物またはこれの塩は、前記組成物全体重量に対して0.000001~50重量%含まれることができ、前記組成物の摂取は動物の腎臓疾患を効果的に予防または改善することができる。
【0066】
また、前記本発明の機能性飼料組成物は、一般的な伴侶動物用飼料に添加して伴侶動物に摂取させることができ、前記伴侶動物はこれに制限されないが、イヌまたはネコであり得る。
【0067】
下記実施例を通して本発明をより詳しく説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
<実施例1>
慢性腎不全患犬を対象として5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物処理による治療効果および最適投与量確立
5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物投与による動物腎臓疾患の治療効果および最適の投与量の究明のための実験を行った。慢性腎不全と診断され、血中クレアチニンが濃度1.4mg/dL以上の患犬を対象として0、12.5、25、50および100mg/kgの4通りの用量で1群当たり5匹ずつ5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物(KBP-001)を2ヶ月間処方し、血中クレアチニン濃度変化を投与前と投与後との差(ΔsCr)で比較観察した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】

分析の結果、無処置群(対照群)の場合は、投与前に比べて血中クレアチニンの数値が0.88±0.33mg/dL増加し、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物12.5mg/kg投与群でも投与前に比べて血中クレアチニンの数値が0.58±0.49mg/dL増加した。一方、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物25mg/kg投与群、50mg/kg投与群および100mg/kg投与群では投与前に比べて血中クレアチニンの数値がそれぞれ0.10±0.34mg/dL、-0.02±0.22mg/dLおよび0.07±0.20mg/dLであり、無処置群に比べて有意水準で血中クレアチニンの増加が抑制されることが示された。このような結果を通して、本発明の5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物は、伴侶動物の慢性腎不全疾患を治療可能な動物用腎不全治療剤として使用可能であることが分かり、慢性腎不全動物において腎不全の進行を抑制または改善するために25mg/kg以上の用量で投与するのが効果的であり、特に50mg/kg用量で投与するのが最も効果的に慢性腎不全を治療および予防できることが分かった。
【実施例2】
【0071】
<実施例2>
ビーグル犬を対象として5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の薬物動態分析
本発明者等は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物について、ビーグル犬を対象として薬物動態学分析を行った。薬物動態学は、薬物が生体に及ぼす薬理学的影響を分析することであり、特定薬物が投与された後に生体がその薬物にどんな影響をどのように及ぼすのか、吸収と分布のメカニズム、体内での物質の化学的変化、薬物メタボロームの影響と排泄経路を分析することであり、本発明者等は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物が実際にビーグル犬でどんな薬物動態を見せるかを分析した。
【0072】
このために、投与当日測定された絶食体重を基に各実験群別の経口投与用量である10、50、100、200mg/kgに合うように電子秤で5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物を秤量した後、500mlガラス容器に入れ、賦形剤としてDW(distilled
water)を加えた後、ボルテキシングおよび攪拌過程を通して溶解させた薬物を準備した。その後、実験に用いるビーグル犬として試験前の約1週間順化および環境適応期間を経た後、下記表に記載の用量で各ビーグル犬に前記化合物を経口投与した。また、本実験に用いたビーグル犬はNDIC機関内の飼育維持中のビーグル犬を用いた。
【0073】
【表3】

前記化合物を経口投与し、各時間別(0(投与前)、0.25、0.5、1、1.5、2、4、8、12、24時間)に実験ビーグル犬の頸静脈から注射器を用いて3ml体積採血し、採集した血液は4,000rpm/10分で4℃において遠心分離した後、分離した2個の1.5mlチューブ上に500ul
1setに分注し、残余血漿は他の1setに分注して分析前まで即時-70℃のディープフリーザーで保管した。前記採集して収得した血漿内で5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の濃度測定は、次のような方法で行った。
【0074】
先ず、検量線作成のための標準試料溶液を製造し、標準品の5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物1.2mgを0.12mlのDMSOに溶解して最終濃度10mg/mlになるようにストック溶液を製造し、その後、これを70%アセトニトリル溶媒で希釈して、最終的に500、1000、2000、5000、10000、30000、100000、300000、1000000ng/mlの濃度になるように溶液を製造した。その後、内部標準試料溶液として4-methylumbelliferone化合物5.0mgをアセトニトリルに溶解して最終的に5mg/mlのストック溶液を製造し、これを再びアセトニトリルで希釈して最終濃度200ng/mlになるように製造した。
【0075】
前記製造された各溶液を用いた検量線作成のために、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物標準品をDMSOに溶かして10mg/mlの標準原液を調製した後、-20℃に冷凍保管し、調製された標準原液を70%アセトニトリルでともに希釈してワーキング溶液を製造した。-20℃以下に冷凍保管したブランク血漿で希釈(working
standard solution 10%、ブランク血漿90%)して血漿中の分析物質の濃度がそれぞれ50、100、200、500、1,000、3,000、10,000、30,000、100,0000ng/mlになるように標準血漿を作った。それぞれの標準血漿20ulを1.5mlマイクロチューブ(micro-tube)に入れた後、内部標準物質溶液(200ng/ml in ACN)180ulを添加した。5分間ボルテキシングした後、5分間、4℃、17,600×gで遠心分離した。上澄み液150ulを300ulスクリューバイアル(screw
vial)に移して上澄み液のうち5ulをHPLCMS/MSシステムに注入し、ここから得た内部標準物質のピーク面積に対する分析物質のピーク面積比から検量線を作成した。
【0076】
次に、前記ビーグル犬から採取した血漿試料は、分析のために次のような前処理過程を遂行した。血漿試料20ulに内部標準液180ulを添加してタンパク質の沈澱を誘導し、その後、ボルテックスミキサー(vortex mixer)を用いて混合試料を5分間懸濁し、17,600×gで5分間遠心分離し、上澄み液150ulを取って分析容器に移し、このうち5μlをHPLC/MS/MSシステムに注入して分析を行った。分析に使われた機器は、HPLCシステム(Agilent
1100 Series with on-line degasser、binary pump、thermostatted well-plate autosampler
and column compartment)及びMS/MSシステム(SCIEX 4000 QTRAP System)を用いた。
【0077】
血漿内の試料のうち、分析物質(5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物)の濃度は、得られたクロマトグラムから内部標準物質のピーク面積に対する分析物質のピーク面積比を求め、あらかじめ作成した検量線から血漿中の各分析物質の濃度を算出した。また、PKパラメータは、時間による薬物の血漿濃度変化データを通してnon-compartment modelを用いて算出した(WinNonLin software ver.5.0.1.)。
【0078】
【表4】

分析の結果、試験ビーグル犬に前記化合物を投与した後、試験終了まで異常反応は観察されず、体重分析の結果は前記表4に記載の通りであり、ビーグル犬の血漿中、前記化合物の定量分析のための検量線の定量範囲50ng/ml~100,000ng/mlにおいて検量線の相関係数(r)は0.9972で判定基準(相関係数0.9900以上)を満たしていることが確認できた(図2)。
【0079】
本発明の5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物に対するPKプロファイル分析の結果、前記化合物を10、50、100、200mg/kg用量で経口投与した場合、血漿においてそれぞれ0.60、0.35、0.80、0.45時間にそれぞれ平均値として血中最高濃度15,040.00ng/ml、2,004.49ng/ml、101,540.00ng/ml及び233,400.00ng/mlであることが示され、時間経過によって徐々に減少することが示された(図3及び表5)。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】

また、薬物動態学的パラメータ分析の結果、前記表6に示されているように、前記化合物を10mg/kg用量で経口投与した場合、前記化合物は平均値として血中半減期は2.89hrと確認され、AUClastおよびAUCinfはそれぞれ65,366.29(±12,063.82)ng・hr/mlおよび66,202.54(±11,827.00)ng・hr/mlと確認された。
【0082】
また、前記化合物を50mg/kg用量で経口投与した場合、前記化合物は平均値として血中半減期は2.80hrと確認され、AUClastおよびAUCinfはそれぞれ287,825.80ng・hr/mlおよび288,894.75ng・hr/mlと確認された。
【0083】
また、前記化合物を100mg/kg用量で経口投与した場合、前記化合物は平均値として血中半減期は2.97hrと確認され、AUClastおよびAUCinfはそれぞれ466,065.50ng・hr/mlおよび468,009.48ng・hr/mlと確認された。
【0084】
また、前記化合物を200mg/kgの用量で経口投与した場合、前記化合物は平均値として血中半減期は2.90(±0.63)hrと確認され、AUClastおよびAUCinfはそれぞれ1,109,590.20(±308,894.10)ng・hr/mlおよび1,115,762.58(±316,101.95)ng・hr/mlと確認された。
【実施例3】
【0085】
<実施例3>
ビーグル犬を対象とした5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の毒性分析
さらに、本発明者等は、ビーグル犬を対象として5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物の毒性試験を行った。毒性試験は、単回経口投与および13週反復経口投与による分析を行った。分析項目は、投与期間中の臨床症状観察、体重、飼料摂取量、血液検査、尿および眼検査評価を通して前記化合物の安定性評価を分析した。
【0086】
5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物は、500、1000、2000mg/kgの用量でビーグル犬を対象として単回経口投与後2週間下記項目を観察し、反復投与の場合、1日1回の頻度で13週間反復経口投与した後、次のような方法で毒性分析を行った。
【0087】
一方、単回経口投与後、2週間下記項目を観察した結果、すべての項目で特別な異常症状が発見されなかった。したがって、本発明の化合物は、ビーグル犬に対して前記処理用量範囲で毒性を誘発しないことが確認できた。
【0088】
さらに、下記実施例の内容は、13週間反復経口投与による毒性分析を行った実験方法および結果を示している。
【0089】
一般症状観察
投与前日をはじめとして13週試験期間の間1日1回の頻度で一般症状(嘔吐、流涎、下痢、行動異常など)および死亡有無を観察し、異常があるときは臨床症状に記録した。
【0090】
体重測定
投与前日をはじめとして13週試験期間の間、投与前(pre)、投与当日投与前、初投与後13週間毎週1回ずつ計15回にわたって測定し、試験物質投与前の飼料残量測定時期(試験期間中毎週火曜日)に合わせて一定時間に体重を測定した。
【0091】
飼料摂取量
投与前日をはじめとして13週試験期間の間、投与前(pre)、初投与後13週間毎週1回ずつ計14回にわたって体重測定日に併行して飼料摂取量を測定した。体重測定日前日の一定時間に飼料容器に固形飼料約200g/day/headを給餌し、自由摂取させ、24時間経過後翌日に飼料残量を測定した。
【0092】
絶食
絶食は、血液検査日である投与前(pre)、投与後4週次(day29)、8週次(day57)、13週次(day92)前日に実施し、絶食当日飼料給餌後3時間後に飼料容器に飼料残量があるとき空にした。
【0093】
血液学的検査
全個体を対象として16時間絶食の下、pre(投与前)、投与後4週次(day29)、8週次(day57)、13週次(day92)に測定した。各個体別に頸静脈から採取した血液2~3mlはEDTAが含有されたCBC bottleに注入した後、3時間以内に自動血球測定器を用いてRBC、HGB、HCT、RBC indices(MCV、MCH、MCHC)、platelet count、WBC
differential countingを測定した。
【0094】
血液生化学検査
採取した血液5mlは、SST(serum separation tube)に入れて4,000rpm、10分間、4℃で遠心分離した後、血清を採取して生化学分析に用いた。血液生化学分析機(AU480 Chemistry Analyzer BECKMAN COULTER inc.)を用いてblood
urea nitrogen(BUN)、albumin(ALB)、creatinine(CREA)、total bilirubin(T-BIL)、Direct bilirubin(D-BIL)、glucose(GLU)、triglyceride(TG)、total
cholesterol(CHO)、AST(GOT、Glutamate Oxaloacetate Transaminase)、ALT(GPT、Glutamate
Pyruvate Transaminase)、alkaline phosphatase(ALP)、Lactate(LAC)、creatine kinase(CPK)、lactate
dehydrogenase(LDH)、calcium(CA)、phosphorus(PHOS)、total protein(TP)を分析(計17項目)した。
【0095】
血液凝固検査(PT、aPTT、Fibrinogen)
採取した血液2mlは3.2% Sodium citrate tubeに入れて4,000rpm、10分間、4℃で遠心分離した後、血漿を採取して、血液凝固分析に用いた。血液凝固測定機器(Werfen
ACL ELITE Pro)を用いてprothrombin time(PT)、activated partial thromboplastin time(aPTT)、fibrinogen(FIB)を分析した。
【0096】
電解質検査
前記血液生化学検査で得られた血漿中0.5mlを取って電解質測定機器(i-Smart(登録商標)30 Electrolyte
Analyzer、korea)を用いてNa+、Cl-、K+を分析した。
【0097】
尿採取および尿検査
尿検査は、約16時間絶食の下、pre(投与前)、投与後4週次(day29)、8週次(day57)、13週次(day92)の血液提供日午前(該当週水曜日)に採集された尿を対象として実施した。尿採集は絶食過程中の全個体を対象としてケージ下端部に尿プレートを設置し、16時間装着してダクトに連結されたシリコンチューブを通して採集した。採集された尿は1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を得てから、尿ストリップ(thinka
Urine Test Strip、ARKRAY,Inc.、Japan)に浸漬した後、ストリップ周りの残量を取り除き、尿分析機(thinka RT-4010、ARKRAY,Inc.、Japan)で分析し、尿比重計(Master-URC.NM,ATAGO
CO.,LTD、Japan)で個体別に尿比重を測定した。
【0098】
眼検査
眼検査は、pre(投与前)、投与後4週次(day29)、8週次(day57)、13週次(day92)の血液検査日と血液提供日午後に実施した。全個体を対象として左右眼球外観を観察した後、散瞳剤(Mydrin(登録商標)-P点眼剤、成分:tropicamide/phenylephrine
hydrochloride TAEJOON製薬)で左眼と右眼を両方散瞳させた後、検眼鏡(Vantage Plus LED Convertible Wired、Keeler Instruments
Inc.USA)を用いて硝子体と網膜を検査した。
【0099】
分析の結果、試験期間の間、各群別に計15回体重を測定し、すべての群で投与前と比較して順調な体重維持あるいは一部個体で増加傾向を示した。オスとメス両方の個体で試験期間の間体重の急激な減少は確認されず、対照群と比較して意味のある差は確認されなかった。飼料摂取量の結果でも各群別で有意差は確認されず、全個体で飼料残量が確認された場合はなかった(表7)。また、試験期間の間、特異症状(嘔吐、流涎、下痢、行動異常など)および死亡個体は発生しなかった。
【0100】
【表7】
【0101】
【表8】
【0102】
【表9】
【0103】
【表10】
【0104】
【表11】
【0105】
【表12】

また、血液生化学および電解質検査の結果、すべての試験群で肝数値(GOT、GPT、ALP)と腎臓数値(BUN、ALB)を含むすべての評価指標とNa+、K-、Cl-評価項目の結果が投与前と投与後で全般的に正常生理範疇内と確認され、対照群と比較して化合物(薬物)処理による影響と判断される変化は確認されなかった(表13~表16)。
【0106】
【表13】
【0107】
【表14】
【0108】
【表15】
【0109】
【表16】

また、尿検査の結果、尿比重を含むすべての評価項目で化合物の投与前と投与後の数値結果は正常生理範疇内にあることが確認され、本発明の化合物投与による変化は確認されなかった。眼検査の結果、化合物投与前と投与後で特異所見は観察されなかった(表17~表18)。
【0110】
【表17】
【0111】
【表18】

以上の結果を通して、本特許の発明者等は、5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオン化合物が動物に対する毒性および副作用を誘発しないことが分かり、動物(イヌおよびネコのような伴侶動物)の腎臓疾患を効果的に予防または治療することができる動物用医薬品に使用できることが分かった。
【0112】
これまで本発明に関してその望ましい実施例を中心に考察した。本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で具現可能であることを理解できるはずである。よって、開示された実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点において考慮されなければならない。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にあるすべての差異点は本発明に含まれることと解釈されなければならないと言える。
図1
図2
図3
【国際調査報告】