(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】不飽和化合物を生成するための方法及び酵母細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 1/19 20060101AFI20240628BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20240628BHJP
C12P 7/6472 20220101ALI20240628BHJP
A01P 19/00 20060101ALI20240628BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20240628BHJP
A01N 35/02 20060101ALI20240628BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C12N1/19
C12N9/02
C12P7/6472
A01P19/00
A01N31/02
A01N35/02
A01N37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023580704
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022068272
(87)【国際公開番号】W WO2023275361
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523424433
【氏名又は名称】エフエムシー アグリカルチュラル ソリューションズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ホルケンブリンク,カリナ
(72)【発明者】
【氏名】ボロディナ,イリナ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B064AD67
4B064CA21
4B064CB24
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA72X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA12
4B065CA13
4B065CA60
4H011AC07
4H011BB05
4H011BB06
4H011BB08
(57)【要約】
本発明は、Δ(12)不飽和脂肪酸アシル-CoA及び任意に脂肪族アルコールを生成できる酵母細胞に関し、本酵母細胞は、少なくとも(13)個の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの(12)位に二重結合を、すなわち、(12)位の炭素と(13)位の炭素との間に二重結合を導入できる異種Δ(12)デサチュラーゼを発現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル補酵素A(脂肪酸アシル-CoA)を生成できる酵母細胞であって、前記二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
前記酵母細胞が、異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現し、前記デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である、前記酵母細胞。
【請求項2】
前記異種Δ12デサチュラーゼが、Cadra、Ephestia、Plodia、Maliarpha、Fumibotys及びAmorbiaからなる群から選択される属の生物から、例えば、Cadra cautella、Ephestia elutella、Ephestia kuehniella、Plodia interpunctella、Maliarpha separatella、及びAmorbia cuneanaからなる群から選択される種などから生じ、任意に、前記異種Δ12デサチュラーゼが、Plodiaデサチュラーゼ、例えば、Plodia interpunctellaデサチュラーゼなど、またはCadraデサチュラーゼ、例えば、Cadra cautellaデサチュラーゼなど、またはEphestiaデサチュラーゼ、例えば、Ephestia elutellaもしくはEphestia kuehniellaデサチュラーゼなどであり、さらに任意に、前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:2に記載されるようなPid12デサチュラーゼもしくは配列番号:85に記載されるようなEku_d12デサチュラーゼ、またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的ホモログである、請求項1に記載の酵母細胞。
【請求項3】
前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:80、配列番号:81及び配列番号:82に記載される前記デサチュラーゼから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【請求項4】
少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する前記飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAが、
i)少なくとも14個、例えば、少なくとも15個などの炭素長を有し、
ii)テトラデカノイル-CoAもしくはテトラデセノイル-CoAであり、
iii)1個の二重結合を有し(すなわち、n=1)、及び/または
iv)(Z9)-テトラデセノイル-CoAである、
先行請求項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【請求項5】
n’個の二重結合(複数可)を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、
i)多くとも18個、例えば、多くとも17個など、多くとも16個など、多くとも15個など、多くとも14個など、少なくとも15個など、少なくとも16個など、少なくとも17個など、少なくとも18個など、少なくとも19個など、少なくとも20個などの炭素鎖長を有し、
ii)1個の二重結合を有し(すなわち、n’=1)、
iii)2個の二重結合を有し(すなわち、n’=2)、
iv)(E12)-テトラデセノイル-CoAであり、及び/または
v)(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAである、
先行請求項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【請求項6】
前記酵母細胞が、さらなる異種デサチュラーゼを発現し、任意に、前記さらなる異種デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位ではない任意の位置に二重結合を導入でき、任意に、前記さらなる異種デサチュラーゼが、少なくとも9位に二重結合を導入でき、さらに任意に、前記さらなる異種デサチュラーゼが、Δ9デサチュラーゼ及びΔ11デサチュラーゼからなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【請求項7】
前記さらなる異種デサチュラーゼが、DrosophilaまたはChoristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Drosophila melanogaster、Drosophila virilis、Drosophila grimshawi、Drosophila yakuba、Drosophila mojavensis、Drosophila pseudoobscura、Drosophila ananassaeまたはChoristoneura parallelaデサチュラーゼなどであり、任意に、前記さらなる異種デサチュラーゼが、Desat59(配列番号:8)、Desat61(配列番号:4)、Desat56(配列番号:57)、Desat60(配列番号:59)、Desat74(配列番号:61)及びDesat24(配列番号:6)またはそれらに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それらに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントからなる群から選択される、請求項6に記載の酵母細胞。
【請求項8】
前記酵母細胞が、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを生成でき、前記酵母細胞が、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる、少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をさらに発現し、任意に、前記FARが、Agrotis、Amyelois、Bicyclus、Bombus、Chilo、Cydia、Helicoverpa、Heliothis、Lobesia、Ostrinia、Plodia、Plutella、Spodoptera、Trichoplusia、Tyta、及びYponomeutaからなる群から選択される属の生物、例えば、Agrotis ipsilon、Agrotis segetum、Amyelois transitella、Bicyclus anynana、Bombus lapidarius、Chilo Suppressalis、Cydia pomonella、Helicoverpa armigera、Helicoverpa assulta、Heliothis subflexa、Heliothis virescens、Lobesia botrana、Ostrinia furnacalis、Ostrinia nubilalis、Ostrinia zag、Ostrinia zea、Plodia interpunctella、Plutella xylostella、Spodoptera exigua、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera litura、Trichoplusia ni、Tyta alba、and Yponomeuta rorellus、especially Spodoptera exigua、Helicoverpa armigera、Spodoptera litura及びPlodia interpunctellaなどから生じ、さらに任意に、前記FARが、FAR1(配列番号:20)、FAR16(配列番号:22)、FAR17(配列番号:24)、FAR19(配列番号:26)、FAR28(配列番号:28)、FAR32(配列番号:30)、FAR44(配列番号:63)、FAR48(配列番号:65)、FAR49(配列番号:67)、FAR38(配列番号:32)、FAR4(配列番号:69)、FAR6(配列番号:71)、FAR8(配列番号:73)、FAR12(配列番号:75)、FAR11(配列番号:77)もしくはFAR5(配列番号:79)、またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントからなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【請求項9】
前記酵母細胞が、Saccharomyces、Pichia、Yarrowia、Kluyveromyces、Candida、Rhodotorula、Rhodosporidium、Cryptococcus、Trichosporon及びLipomycesから選択される属に属し、任意に前記酵母細胞が、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces boulardi、Pichia pastoris、Kluyveromyces marxianus、Candida tropicalis、Cryptococcus albidus、Lipomyces lipofera、Lipomyces starkeyi、Rhodosporidium toruloides、Rhodotorula glutinis、Trichosporon pullulan及びYarrowia lipolyticaから選択される種に属し、好ましくは前記酵母細胞が、Yarrowia lipolytica細胞またはSaccharomyces cerevisiae細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【請求項10】
前記酵母細胞が、
i)少なくとも1mg/L、例えば、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも1.7mg/Lなどの、もしくはそれを超える力価で(Z9,E12)-テトラデカジエン酸を、
ii)少なくとも20mg/L、例えば、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも60mg/Lなど、少なくとも70mg/Lなど、少なくとも80mg/Lなど、少なくとも90mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも150mg/Lなど、少なくとも200mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lなどの、もしくはそれを超える力価でE12-脂肪酸及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン酸を、及び/または
iii)少なくとも0.005mg/L、例えば、少なくとも0.01mg/Lなど、少なくとも0.02mg/Lなど、少なくとも0.03mg/Lなど、少なくとも0.05mg/Lなど、少なくとも0.06mg/Lなど、少なくとも0.075mg/Lなど、少なくとも0.1mg/Lなど、少なくとも0.2mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.6mg/Lなど、少なくとも0.7mg/Lなど、少なくとも0.8mg/Lなど、少なくとも0.9mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも2mg/Lなど、少なくとも3mg/Lなど、少なくとも4mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも6mg/Lなど、少なくとも7mg/Lなど、少なくとも8mg/Lなど、少なくとも9mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなどの、もしくはそれを超える力価でE12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを
生成できる、先行請求項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【請求項11】
n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAの生成方法であって、前記二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が、酵母細胞内の12位にあり、以下のステップ:
i)請求項1及び10のいずれか1項に記載の酵母細胞を提供するステップ、
ii)異種Δ12デサチュラーゼの発現を可能にする条件下において培地中で前記酵母細胞をインキュベートし、前記デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できるステップを含み、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4であり、
それによって、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成し、前記二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にある、前記方法。
【請求項12】
i)前記異種Δ12デサチュラーゼが、請求項2に定義される通りであり、
ii)前記さらなる異種デサチュラーゼが、請求項6及び7のいずれか1項に定義される通りであり、
iii)前記酵母細胞が、請求項1及び10のいずれか1項に定義される通りであり、
iv)n’個の二重結合(複数可)を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、請求項5に定義される通りであり、及び/または
v)少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する前記飽和もしくは不飽和脂肪酸アシル-CoAが、請求項4に定義される通りである、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酵母細胞が、(E12)-テトラデセノイル-CoA及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を、それぞれE12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる、少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をさらに発現し、任意に、前記FARが請求項8に定義される通りである、請求項11~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
i)前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを回収するステップ、
ii)前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iii)前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、及び/または
iv)E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物に製剤化するステップ
をさらに含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
フェロモン組成物であって、以下のステップ:
i)請求項11~14のいずれか1項に記載の方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/またはE12-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/またはE12-脂肪族アルコールを回収するステップ、
iii)前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iv)前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
v)前記E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化するステップ
を含む方法によって得られる、前記フェロモン組成物。
【請求項16】
フェロモン組成物であって、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールを含み、前記フェロモン組成物が、少なくとも70%のバイオベース炭素、例えば、少なくとも75%などのバイオベース炭素、少なくとも80%などのバイオベース炭素、少なくとも85%などのバイオベース炭素、少なくとも90%などのバイオベース炭素、少なくとも95%などのバイオベース炭素を含む、前記フェロモン組成物。
【請求項17】
フェロモン化合物であって、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び(Z9,E12)-テトラデカジエナールからなる群から選択され、前記フェロモン化合物が、少なくとも70%のバイオベース炭素、例えば、少なくとも75%などのバイオベース炭素、少なくとも80%などのバイオベース炭素、少なくとも85%などのバイオベース炭素、少なくとも90%などのバイオベース炭素、少なくとも95%などのバイオベース炭素を含む、前記フェロモン化合物。
【請求項18】
飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法におけるPlodia interpunctellaデサチュラーゼの使用であって、任意に、前記Plodia interpunctellaデサチュラーゼが、Pid12(配列番号:2)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、前記使用。
【請求項19】
飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法におけるEphestia kuehniellaデサチュラーゼの使用であって、任意に、前記Ephestia kuehniellaデサチュラーゼが、Eku_d12(配列番号:85)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Δ12不飽和脂肪酸アシル-CoA及び任意に不飽和脂肪族アルコールを生成できる酵母細胞に関し、本酵母細胞は、異種Δ12デサチュラーゼを発現する。本化合物は、いくつかの昆虫、例えば、Plodia interpunctella、Spodoptera exigua、Cadra cautella、Spodoptera eridaniaなどの性フェロモン成分の前駆体である。
【背景技術】
【0002】
総合的病害虫管理(IPM)は、作物収量を増加させ、環境への影響を最小限に抑えて有機食品の生産を可能にするという、両方の重要な役割を果たすことが期待されている。IPMは、代替害虫防除方法、例えば、フェロモンを使用した交配撹乱、フェロモンを使用した大量捕獲、益虫などを用いる。
【0003】
フェロモンは、昆虫が(他の生物と同様に)配偶者誘引、警報、道しるべ及び集合を含む、様々な状況で同種の個体と交信するために使用する多様な化学物質の群を構成する。長距離間での配偶者発見と関連する昆虫フェロモンは、農薬に代わる安全かつ環境に優しい代替手段として、害虫のモニタリング及び防除を目的とした農業及び林業用途ですでに使用されている。害虫防除に使用するためのフェロモンの生物学的生成は、価格、特異性、及び環境への影響という点で化学合成よりも有利である。
【0004】
目的のフェロモンは、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、(Z9,E12)-テトラデカジエナール及び(Z9,E12)-テトラデカジエニルの酢酸エステルである。これらの化合物は、多数の鱗翅目の蛾、例えば、Plodia interpunctella、Spodoptera exigua、Cadra cautella、Spodoptera eridaniaなどのフェロモン単独または混合フェロモンのいずれかである。これらの蛾は、保存及び園芸作物において経済的に非常に重要な害虫である。
【0005】
Xia et al.(2019)は、SexiDes5という名称のSpodoptera exigua由来のデサチュラーゼを発現する酵母細胞について開示している。SexiDes5デサチュラーゼの主要生成物は、(Z11)-ヘキサデカン酸であるが、他の一価及び二価不飽和脂肪酸以外に、少量の(Z9,E12)-テトラデカン酸を生成することも分かった。
【0006】
高い力価でΔ12不飽和化合物を生成し得る微生物細胞工場が依然として必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、特許請求の範囲において定義される通りである。
【0008】
本開示は、Δ12不飽和脂肪酸アシル-CoA及び任意にΔ12不飽和脂肪族アルコールを生成できる酵母細胞を提供し、本酵母細胞は、異種Δ12デサチュラーゼを発現する。特に、本開示は、フェロモン(Z9,E12)-テトラデカジエナール及び(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルの前駆体である、(Z9,E12)-テトラデカジエン酸または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを生成できる酵母細胞を提供する。(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、(Z9,E12)-テトラデカジエナール及び(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルは、Plodia interpunctellaの性フェロモン成分である。さらに、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルは、Spodoptera exigua、Cadra cautella、Spodoptera eridaniaなどのフェロモン成分である。Cadra cautellaも知られていて、Ephestia cautellaとも称される。(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルも知られていて、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-イルの酢酸エステルとも称される。
【0009】
したがって、本明細書では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル補酵素A(脂肪酸アシル-CoA)を生成できる酵母細胞が提供され、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
本酵母細胞は、異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現し、本デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である。
【0010】
また本明細書では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成する方法が提供され、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が、酵母細胞内の12位にあり、本方法は、
i)本明細書で開示されるような酵母細胞を提供するステップ、
ii)異種Δ12デサチュラーゼの発現を可能にする条件下において培地中で本酵母細胞をインキュベートし、本デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できるステップを含み、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4であり、
それによって、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成し、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にある。
【0011】
さらに本明細書では、以下のステップを含む方法によって得られるフェロモン組成物が提供される:
i)本明細書で開示されるような方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/またはE12-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/またはE12-脂肪族アルコールを回収するステップ、
iii)E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iv)E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
v)E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化するステップ。
【0012】
さらに本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールを含むフェロモン組成物が提供され、フェロモン組成物は、少なくとも20%のバイオベース炭素、例えば、少なくとも30%など、少なくとも40%など、少なくとも50%など、少なくとも60%など、少なくとも70%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%などのバイオベース炭素を含む。
【0013】
また本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び(Z9,E12)-テトラデカジエナールからなる群から選択されるフェロモン化合物が提供され、フェロモン化合物は、少なくとも20%のバイオベース炭素、例えば、少なくとも30%など、少なくとも40%など、少なくとも50%など、少なくとも60%など、少なくとも70%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%などのバイオベース炭素を含む。
【0014】
さらに本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールを含むフェロモン組成物が提供され、フェロモン組成物は、少なくとも20%、例えば、少なくとも30%など、少なくとも40%など、少なくとも50%など、少なくとも60%など、少なくとも70%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%などの放射性14Cレベルを有する。
【0015】
また本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び(Z9,E12)-テトラデカジエナールからなる群から選択されるフェロモン化合物が提供され、フェロモン化合物は、少なくとも20%、例えば、少なくとも30%など、少なくとも40%など、少なくとも50%など、少なくとも60%など、少なくとも70%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%などの放射性14Cレベルを有する。
【0016】
また本明細書では、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法においてPlodia interpunctellaデサチュラーゼの使用が提供され、任意にPlodia interpunctellaデサチュラーゼが、Pid12(配列番号:2)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0017】
また本明細書では、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法においてCadra cautellaデサチュラーゼの使用が提供され、任意にCadra cautellaデサチュラーゼが、EcauDes12(配列番号:55)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0018】
さらに本明細書では、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法においてEphestia kuehniellaデサチュラーゼの使用が提供され、任意にEphestia kuehniellaデサチュラーゼが、Eku_d12(配列番号:85)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール(Z9,E12-14:OH)の酵母における生成及び(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル(Z9,E12-14:OAc)または(Z9,E12)-テトラデカジエナール(Z9,E12-14:Ald)への酵素変換または化学変換のための経路。略語:略語:14:CoA、テトラデカノイル-CoA、Z9-14:CoA、(Z9)-テトラデセノイル-CoA、Z9,E12-14:CoA、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoA。
【
図2】(A)Z9,E12-14:OH分析標準のGCクロマトグラム、(B)対照株ST10628の抽出物のGCクロマトグラム、(C)Pid12を発現する株ST10870の抽出物のGCクロマトグラム、ならびに(D)分析標準のマススペクトル及び(E)保持時間が10.2分のST10870抽出物のマススペクトル(任意単位)。
【
図3A】実施例12の出発材料A及び生成物BのGCクロマトグラム。
【
図3B】実施例12の出発材料A及び生成物Bのマススペクトル。
【
図4A】対照株ST10748の抽出物、Eku_d12を発現する株ST12596の抽出物、及びZ9,E12-14:Me分析標準のGCクロマトグラム。
【
図4B】保持時間が10.39分のST12596抽出物のマススペクトル。
【
図4C】保持時間が10.39分のZ9,E12-14:Me分析標準のマススペクトル(任意単位)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
異種Δ12デサチュラーゼ:「異種Δ12デサチュラーゼ」という用語は、本明細書で使用される場合、「さらなる異種デサチュラーゼ」とは異なるデサチュラーゼを指す。異種デサチュラーゼは、飽和または不飽和脂肪酸アシル補酵素A(脂肪酸アシル-CoA)の12位に二重結合を導できる。
【0021】
さらなる異種デサチュラーゼ:「さらなる異種デサチュラーゼ」という用語は、本明細書で使用される場合、「異種デサチュラーゼ」とは異なるデサチュラーゼを指す。さらなる異種デサチュラーゼは、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位以外の任意の他の位置に二重結合を導入できる。さらなる異種デサチュラーゼは、異種Δ12デサチュラーゼと同じ生物から生じる場合があるか、またはさらなる異種デサチュラーゼは、異種Δ12デサチュラーゼとは異なる生物から生じる場合があり、異種Δ12デサチュラーゼとは異なる反応を触媒する。
【0022】
生物農薬:「生物農薬(biopesticide)」という用語は、「生物農薬(biological pesticide)」の短縮形であり、捕食性、寄生性、または化学的関係による、いくつかの種類の害虫管理介入を指す。EUでは、生物農薬は「微生物または天然物に基づく農薬の一種」と定義されている。米国では、それらは、EPAによって「害虫を防除する天然に存在する物質(生化学的農薬)、害虫を防除する微生物(微生物農薬)、及び追加の遺伝物質を含有する植物によって生成される殺虫性物質(植物組込み保護剤)またはPIPを含む」と定義されている。本発明は、より具体的には、天然物または天然に存在する物質を含む生物農薬に関する。これに関連して、それらは、細菌及び他の微生物、真菌、線虫、タンパク質などを含む、天然に存在する生物及び/またはそれらの代謝産物を培養及び濃縮することによって製造される。それらの化合物は、総合的病害虫管理(IPM)プログラムの重要な構成要素であると考えられ、合成化学植物保護製品(PPP)の代用品として実用的に非常に注目を集めている。Manual of Biocontrol Agents(2009:旧the Biopesticide Manual)には、利用可能な生物殺虫剤(及び他の生物学に基づく防除)製品の概説が記載されている。
【0023】
不飽和化:「不飽和化(desaturated)」という用語は、本明細書では「不飽和化(unsaturated)」という用語と交換可能に使用され、1個以上の二重または三重炭素-炭素結合、好ましくは二重炭素-炭素結合を含有する化合物を指す。以下の命名法は、本明細書全体を通して使用される:Δi不飽和化合物(ここで、iは整数である)は、炭素鎖のi位の炭素原子と炭素鎖のi+1位の炭素原子との間に二重または三重炭素-炭素結合を有する化合物を指す。したがって、炭素鎖長は、少なくともi+1に等しい。例えば、Δ12不飽和化合物は、炭素12と炭素13との間に二重または三重炭素-炭素結合を有する化合物を指し、本明細書では、12位に炭素-炭素結合を有する炭素鎖と称される。本Δ12不飽和化合物は、13個以上の炭素鎖長を有し得る。二重または三重結合は、E配置またはZ配置であり得る。したがって、本明細書では、EiまたはZi不飽和化合物は、炭素鎖の炭素iと炭素i+1との間に、それぞれE配置またはZ配置で二重炭素-炭素結合を有する化合物を指すことになり、本不飽和化合物は、少なくともi+1に等しい全長を有する。例えば、E12不飽和脂肪族アルコールは、E配置の12位に不飽和化(すなわち、炭素原子12と炭素原子13との間に二重結合)を有し、13個以上の炭素鎖長を有する。
【0024】
に由来する:生物に由来するポリペプチドまたはポリヌクレオチドに言及する場合の「に由来する」という用語は、本ポリペプチドまたはポリヌクレオチドが本生物から生じる、すなわち、本生物中で天然に見出されることを意味する。
【0025】
12位に少なくとも1個の二重結合を有するE12-脂肪酸アシル-CoA:「12位に少なくとも1個の二重結合を有するE12-脂肪酸アシル-CoA」という用語は、本明細書で使用される場合、E12-脂肪酸アシル-CoAが12位に1個の二重結合を有することを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、E12-脂肪酸アシル-CoAは、12位にのみ二重結合を有する。本発明の他の実施形態では、E12-脂肪酸アシル-CoAは、12位の二重結合に加えて追加の二重結合を有する。追加の二重結合は、12位以外の任意の位置にあり得る。その一例は、12位に二重結合を有し、9位などの任意の他の位置に追加の二重結合を有するE12-脂肪酸アシル-CoAである。
【0026】
脂肪酸:「脂肪酸」という用語は、本明細書では長い脂肪族鎖、すなわち、13~28個の炭素原子、例えば、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの脂肪族鎖を有するカルボン酸を指す。天然に存在する脂肪酸の多くは直鎖状、すなわち、分岐していない。それらは飽和、または不飽和であり得る。
【0027】
脂肪酸アシル-CoA:本用語は、本明細書では「脂肪酸アシル-CoAエステル」と交換可能に使用されることになり、一般式R-CO-SCoAの化合物を指し、式中、Rは、13~28個の炭素原子、例えば、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの炭素鎖長を有する脂肪炭素鎖である。脂肪炭素鎖は、チオエステル結合によってCoAの-SH基に連結される。脂肪酸アシル-CoAは、それが由来する脂肪酸が飽和または不飽和かどうかに応じて、飽和または不飽和であり得る。
【0028】
脂肪族アルコール:「脂肪族アルコール」という用語は、本明細書では13~28個の炭素原子、例えば、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの炭素鎖長を有する、脂肪酸アシル-CoAに由来するアルコールを指す。脂肪族アルコールは、飽和または不飽和であり得る。
【0029】
脂肪族アルコールの酢酸エステル:本用語は、脂肪炭素鎖、すなわち、13~28個の炭素原子、例えば、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの脂肪族鎖を有する酢酸エステルを指す。脂肪酸アシルの酢酸エステルは、飽和または不飽和であり得る。
【0030】
脂肪族アルデヒド:本用語は、本明細書では13~28個の炭素原子、例えば、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの炭素鎖長を有する、脂肪酸アシル-CoAに由来するアルデヒドを指す。脂肪族アルデヒドは、飽和または不飽和であり得る。
【0031】
機能的バリアント:本用語は、本明細書では親酵素の活性の少なくとも一部を保持している、酵素の機能的バリアントを指す。したがって、アシル-CoAオキシダーゼ、デサチュラーゼ、アルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒド生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ、アセチルトランスフェラーゼ、またはNAD(P)Hシトクロムb5オキシドレダクターゼ(Ncb5or)の機能的バリアントはそれぞれ、それらが由来するアシル-CoAオキシダーゼ、デサチュラーゼ、アルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒド生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ、またはアセチルトランスフェラーゼと同じ変換を触媒し得るが、反応効率は異なる場合がある、例えば、親酵素と比較して効率が低下もしくは増加するか、または基質特異性が変更される。
【0032】
異種:タンパク質もしくは酵素などのポリペプチド、またはポリヌクレオチドに言及する場合の「異種」という用語は、本明細書では野生型細胞内における天然には存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指すと解釈されるものとする。例えば、Saccharomyces cerevisiaeに適用される場合の「異種Δ9デサチュラーゼ」という用語は、野生型S.cerevisiae細胞内では天然には存在しないΔ9デサチュラーゼ、例えば、Drosophila melanogasterに由来するΔ9デサチュラーゼを指す。
【0033】
同一性/類似性:ポリヌクレオチド(またはポリペプチド)に関する同一性及び類似性という用語は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して同一性/類似性の最大パーセントを達成し、配列同一性の一部としてNCIUBルール(https://iubmb.qmul.ac.uk/misc/naseq.html、NC-IUB,Eur J Biochem(1985))に従って任意の保存的置換を考慮した後、本明細書ではそれぞれ、対応する天然核酸(またはアミノ酸)の残基に対して同一であるか、または類似している、候補配列中の核酸(またはアミノ酸)のパーセンテージとして定義される。特に、類似性のパーセンテージは、類似した物理化学的特性を持ちながら保存された残基のパーセンテージを指す。5’もしくは3’側の伸長も挿入も(核酸の場合)、またはN’もしくはC’側の伸長も挿入も(ポリペプチドの場合)、同一性または類似性の低下をもたらさない。アラインメントのための方法及びコンピュータプログラムが、当該技術分野において周知である。一般に、2つの配列間における所与の類似性は、それらの配列間の同一性が、少なくともその類似性に等しいことを示唆し、例えば、2つの配列が互いに70%類似している場合、それらは互いに同一性が70%未満であることはあり得ないが、80%の同一性を共有し得る。
【0034】
活性の増加:「活性の増加」という用語は、本明細書ではタンパク質または酵素などの所与のペプチドの活性増加を指す。活性の増加は、当該技術分野において既知の方法を使用して、例えば、酵素活性の増加を測定するための酵素アッセイなどを使用して測定され得る。いくつかの場合には、活性の増加によって、酵素が生成する化合物(複数可)、すなわち、生成物の生成量の増加がもたらされる。したがって、酵素活性の増加は、生成物の濃度などの量を測定することによって測定されてよい。酵素の活性が増加している場合、生成物の濃度は、活性が増加していない同じ酵素、例えば、親酵素または非改変酵素によって類似または同一の条件で生成される生成物の濃度と比較して高くなる。活性が増加している酵素が細胞内で発現される場合、生成物は生成物力価、すなわち、細胞が生成した生成物の量として測定され得、親酵素または非改変酵素を発現しているが、それ以外は活性が増加している酵素を発現している細胞と同一または類似の遺伝子型を有する細胞から、類似または同一の条件で得られる同じ生成物の力価または量と比較され得る。
【0035】
n個の二重結合:本明細書で使用される「n個の二重結合」という用語は、脂肪酸アシル-CoA中に存在する二重結合の数を指す。n個の二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAは、0~3個の二重結合(複数可)を有する。したがって、n個の二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAは、0個の二重結合を有する飽和脂肪酸アシル-CoAまたは1個以上の二重結合、例えば、1個、2個もしくは3個などの二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAであり得る。n個の二重結合は、12位以外の任意の位置にあってよい。
【0036】
n’個の二重結合:「n’個の二重結合」という用語は、本明細書で使用される場合、脂肪酸アシル-CoA中に存在する二重結合の数を指す。n’個の二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAは、1~4個の二重結合(複数可)を有する。したがって、n’個の二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAは、1個以上の二重結合、例えば、1個、2個、3個または4個などの二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAであり得、その二重結合のうち1個が12位にある。
【0037】
天然:タンパク質もしくは酵素などのポリペプチド、またはポリヌクレオチドに言及する場合の「天然」という用語は、本明細書では野生型細胞内で天然に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指すと解釈されるものとする。
【0038】
害虫:本明細書で使用される場合、「害虫」という用語は、特に農業または家畜生産との関連において人間または人間の関心事に有害な生物、特に昆虫などの動物を指すものとする。害虫は、植物または動物、人間または人間の関心事、家畜、人間の構造、野生の生態系のいずれかなどに対して侵食的または繁殖力のある、有害な、厄介な、有毒な、破壊的不快害虫である、あらゆる生物である。本用語は、関連する用語の害虫(vermin)、雑草、動植物の寄生生物及び病原体と多くの場合に重複する。ある生物がある環境では害虫であっても、別の環境では有益で家畜化されるか、または許容される可能性がある。
【0039】
フェロモン:フェロモンは天然に存在する化合物である。鱗翅目フェロモンは、アルコール、アルデヒドまたは酢酸エステル官能基で終わり、脂肪族主鎖に最大で3個の二重結合、例えば、1個、2個または3個などの二重結合を含有する非分岐脂肪族鎖(9~18個の炭素、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個の炭素原子など)によって指定される。したがって、不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルデヒド及び不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステルは、典型的にはフェロモンに含まれる。フェロモン組成物は、例えば、本明細書に記載されるように化学的または生化学的に生成されてよい。したがって、フェロモンは、本明細書に記載される方法及び細胞によって得られるものなどの不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルデヒド及び/または不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステルを含む。
【0040】
「PidZ11」及び「Pid12」:配列番号:2に記載されるようなΔ12デサチュラーゼが、最初に「PidZ11」という内部名が付けられてから、本酵素がΔ12活性を有することが判明した。したがって、より適切な名称は「Pid12」であるとよい。「PidZ11」及び「Pid12」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0041】
活性の低下:「活性の低下」という用語は、本明細書ではタンパク質または酵素などの所与のペプチドの完全な、または部分的な活性喪失を指してよい。いくつかの場合には、ペプチドは必須遺伝子によってコードされ、欠失され得ない。これらの場合、ペプチドの活性は、転写または翻訳の下方制御、ペプチドの阻害などの、当該技術分野において既知の方法によって低下され得る。他の場合には、ペプチドは非必須遺伝子によってコードされ、例えば、ペプチドをコードする遺伝子の欠失の結果として活性が低下する場合があるか、または活性が完全に消失する場合がある。所与のペプチドの活性を部分的または全体的であろうと低下させるために、当該技術分野において既知の方法は、ペプチドをコードする遺伝子の変異だけでなく、ペプチドをコードする遺伝子の転写または翻訳に関与する調節因子をコードする遺伝子の変異も含み、例えば、転写因子またはリプレッサーの発現が増加または低下し、それによってペプチドをコードする遺伝子からの転写レベルを低下させる転写因子遺伝子の、または転写リプレッサー遺伝子の変異、例えば、転写因子結合部位を除去するか、またはそれらを転写因子が到達できないようにするための、遺伝子の天然プロモーターの切断または変異、ペプチドをコードするコード配列の転写を低下させる、天然プロモーターとより弱いプロモーターとの置換、遺伝子の天然ターミネーターの切断もしくは変異、または遺伝子の天然ターミネーターと別のターミネーター配列との置換、Kozak配列の変異を含む。他の方法は、RNAレベルでの制御を含み、ダイサーまたはアルゴノートなどのRNA干渉システム、RNAサイレンシング方法、標的RNA分解をもたらすCRISPR/Casシステムの導入を含む。例えば、阻害剤またはタンパク質分解配列を使用することによって、タンパク質レベルでの制御も想定される。列挙される方法は誘導可能な場合がある、すなわち、それらは、当該技術分野において既知のように一過性の方法で達成されてよい。
【0042】
飽和:「飽和」という用語は、二重または三重炭素-炭素結合を欠いている化合物を指す。
【0043】
特異性:所与の基質に対する酵素の特異性は、その基質から始まる反応を触媒するために本酵素が示す優先性である。本開示において、ヘキサデカノイル-CoA(パルミトイル-CoA)に対するよりも、テトラデカノイル-CoA(ミリストイル-CoA)に対してより高い特異性を有するデサチュラーゼ及び/または脂肪酸アシル-CoAレダクターゼは、好ましくは、基質としてのヘキサデカノイル-CoAとの反応よりも、テトラデカノイル-CoAとの反応を触媒する。デサチュラーゼまたは脂肪酸アシル-CoAレダクターゼの特異性を決定する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、所与のデサチュラーゼを発現する所与の細胞内におけるそのデサチュラーゼの特異性は、ミリスチン酸メチルを含む溶液中において細胞を最長で48時間インキュベートし、続いて生成物をメタノールで抽出してエステル化することによって決定され得る。次いで、得られた脂肪酸メチルエステルのプロファイルは、GC-MSによって決定され得る。例えば、ミリストイル-CoAに対する特異性が高く、パルミトイル-CoAに対する特異性が低いデサチュラーゼは、(Z)9-C16:Meよりも(Z)9-C14:Meの濃度がより高くなる。例えば、所与の細胞内における所与のレダクターゼの特異性は、(Z)9-ミリスチン酸メチルエステルを含む溶液中においてレダクターゼを発現する細胞を最長で48時間インキュベートし、続いて得られた脂肪族アルコールを抽出してGC-MSにより分析することによって決定され得る。(Z)9-C14:CoAに対する特異性が高く、(Z)9-C16:CoAに対する特異性が低いレダクターゼは、(Z)9-C16:OHよりも(Z)9-C14:OHの濃度がより高くなる。
【0044】
力価:化合物の力価は、本明細書では生成された化合物の濃度を指す。化合物が細胞によって生成される場合、本用語は、細胞によって生成される総濃度、すなわち、化合物の総量を培養培地の体積で除したものを指す。これは、特に揮発性化合物の場合、力価は培養培地から蒸発した可能性のある化合物の部分を含み、したがって、発酵ブロスから、及び発酵槽からの潜在的なオフガスから生成された化合物を収集することによって力価が決定されることを意味する。
【0045】
E12不飽和化合物の生成
本発明者らは、酵母細胞における異種Δ12デサチュラーゼの発現によって、12位に二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAが生成されることを発見した。本明細書に開示される異種Δ12デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有する不飽和または飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を、及び任意に12位以外の位置に二重結合を導入できる。デサチュラーゼが12位に二重結合を導入する場合がある出発化合物は、飽和化合物、または12位ではない位置に二重結合をすでに含む不飽和化合物であってよい。好ましくは、出発化合物は、9位に二重結合を含む不飽和脂肪酸アシル-CoAである。Δ12デサチュラーゼは、12位の二重結合に加えて追加の二重結合を導入できる場合がある。
【0046】
したがって、本明細書では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる酵母細胞が提供され、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
本酵母細胞は、Δ12異種脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現し、本デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である。
【0047】
また本明細書では、異種Δ12デサチュラーゼを発現する酵母細胞が提供され、本デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、それによって、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成し、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である。
【0048】
好ましい実施形態では、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAは、14個の炭素鎖長を有する不飽和脂肪酸アシル-CoA、例えば、(Z9)-テトラデセノイル-CoAなどである。
【0049】
さらに本明細書では、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAを生成できる酵母細胞が提供され、本酵母細胞は、
i)テトラデカノイル-CoAの9位に第1二重結合を導入し、それによって、本テトラデカノイル-CoAを(Z9)-テトラデセノイル-CoAに変換できる少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼ、及び
ii)(Z9)-テトラデセノイル-CoAの12位に第2二重結合を導入し、それによって、(Z9)-テトラデセノイル-CoAを(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAに変換できる少なくとも1つの異種Δ12デサチュラーゼ
を発現する。
【0050】
また本明細書では、不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる酵母細胞が提供され、本酵母細胞は、脂肪酸アシル-CoAの12位にトランス二重結合を導入し、それによって、脂肪酸アシル-CoAを不飽和E12-脂肪酸アシル-CoAに変換できるPid12(配列番号:2)デサチュラーゼ、EcauDes12(配列番号:55)デサチュラーゼ、Ee_d12(配列番号:87)デサチュラーゼまたはEku_d12(配列番号:85)デサチュラーゼを発現する。EcauDes12デサチュラーゼはまた、Ecau_D4としても知られている(Ding et al.,2021)。
【0051】
デサチュラーゼ
本発明において、「脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼ」、「デサチュラーゼ」、「脂肪酸アシルデサチュラーゼ」及び「FAD」という用語は、交換可能に使用されることになる。本用語は一般に、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22個の炭素原子の鎖長を有するアシル-CoA内にE/Z確定で少なくとも1個の二重結合を導入できる酵素を指す。二重結合は、いずれの位置に導入されてもよい。例えば、12位に二重結合を導入するデサチュラーゼは、Δ12デサチュラーゼと称される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるデサチュラーゼは、例えば、12位及び9位などの脂肪酸アシル-CoAのいくつかの位置に二重結合を導入できる。
【0052】
デサチュラーゼは、以下の反応を触媒する:
脂肪酸アシル-CoA+2フェロシトクロムb5+O(2)+2H(+)<=>不飽和脂肪酸アシル-CoA+2フェロシトクロムb5+2H(2)O
【0053】
本明細書では、異種Δ12デサチュラーゼ及び任意に他の異種デサチュラーゼを発現する酵母細胞が提供される。
【0054】
Δ12デサチュラーゼ
本明細書では、13個以上の炭素鎖長を有する脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できるΔ12デサチュラーゼが開示され、酵母細胞内で発現される場合、本酵母細胞が、12位に二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成することを可能にする。異種Δ12デサチュラーゼは、不飽和または飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できる場合がある。言い換えれば、Δ12デサチュラーゼは、二重結合を有しないか、または12位以外の1つ以上の位置、例えば、8、9、10、11、13、14、15、16、17、18、19、20及び21位からなる群から選択される1つ以上の位置に1個以上の二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できる場合がある。一実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、二重結合を有しないか、または9位に少なくとも1個の二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できる。好ましい実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、9位に二重結合を有する脂肪酸アシル-CoAなどの、不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できる。
【0055】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、12位に少なくとも1個の二重結合を導入でき、また脂肪酸アシル-CoAの追加の位置、例えば、12位以外の任意の他の位置などに少なくとも1個の追加の二重結合も導入できる。言い換えれば、Δ12デサチュラーゼは、12位ならびに8、9、10、11、13、14、15、16、17、18、19、20及び21位からなる群から選択される少なくともあと1つの位置に二重結合を導入できる場合がある。一実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、脂肪酸アシル-CoAの12位及び9位に二重結合を導入できる。
【0056】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、Cadra、Plodia、Ephestia、Maliarpha、及びAmorbiaからなる群から選択される属の生物から生じる。一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、Cadra cautella、Ephestia elutella、Ephestia kuehniella、Plodia interpunctella、Maliarpha separatella、及びAmorbia cuneanaからなる群から選択される種の生物から生じる。好ましい実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、Plodiaデサチュラーゼ、例えば、Plodia interpunctellaデサチュラーゼなどである。Cadra cautellaも知られていて、Ephestia cautellaとも称される。
【0057】
一実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、PlodiaΔ12デサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:2に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(Pid12)などの、Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、PlodiaΔ12デサチュラーゼの機能的バリアント、Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼの機能的バリアント、または配列番号:2に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(Pid12)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性、例えば、配列番号:2に記載されるようなPid12Δ12デサチュラーゼに対して少なくとも61%など、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの同一性または類似性を有する。理論に束縛されるものではないが、Pid12Δ12デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有する脂肪酸アシル-CoA内に単一の二重結合を導入し、本単一の二重結合が12位にある。
【0058】
異種Δ12デサチュラーゼをコードする遺伝子は、当該技術分野において既知であるように、デサチュラーゼを発現する酵母細胞に対してコドン最適化されている場合がある。デサチュラーゼが細胞内で発現されるかどうかを決定する方法は当業者には既知であり、例えば、本明細書において上で詳述されるように、かつ以下の実施例に示されるように、所与の基質から所与の生成物を検出することを含む。
【0059】
さらに本明細書では、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に少なくとも1個の二重結合を導入する方法においてPlodia interpunctellaデサチュラーゼの使用が提供される。いくつかの実施形態では、Plodia interpunctellaデサチュラーゼは、脂肪酸アシル-CoAに単一の二重結合を導入し、それは12位にある。いくつかの実施形態では、Plodia interpunctellaデサチュラーゼは、Pid12(配列番号:2)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0060】
一実施形態では、本方法はインビトロで、例えば、上に記載されるようなデサチュラーゼ、特に配列番号:2に記載されるようなPid12デサチュラーゼ、またはそれらに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントを提供し、本デサチュラーゼを飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAと接触させることによって実施される。デサチュラーゼは、当該技術分野において既知であるように本デサチュラーゼを発現する細胞から精製されてよい。一実施形態では、本方法はインビボで、好ましくは本明細書の節「酵母細胞」で定義されるような酵母細胞内で実施される。
【0061】
一実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、CadraΔ12デサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:55に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(EcauDes12)などの、Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、CadraΔ12デサチュラーゼの機能的バリアント、Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼの機能的バリアント、または配列番号:55に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(EcauDes12)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性、例えば、配列番号:55に記載されるようなEcauDes12Δ12デサチュラーゼに対して少なくとも61%など、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの同一性または類似性を有する。理論に束縛されるものではないが、EcauDes12Δ12デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有する脂肪酸アシル-CoA内に単一の二重結合を導入し、本単一の二重結合が12位にある。
【0062】
さらに本明細書では、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に少なくとも1個の二重結合を導入する方法においてCadra cautellaデサチュラーゼの使用が提供される。いくつかの実施形態では、Cadra cautellaデサチュラーゼは、脂肪酸アシル-CoAに単一の二重結合を導入し、それは12位にある。いくつかの実施形態では、Cadra cautellaデサチュラーゼは、配列番号:55(EcauDes12)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0063】
一実施形態では、本方法はインビトロで、例えば、上に記載されるようなデサチュラーゼ、特に配列番号:55に記載されるようなEcauDes12デサチュラーゼ、またはそれらに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントを提供し、本デサチュラーゼを飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAと接触させることによって実施される。デサチュラーゼは、当該技術分野において既知であるように本デサチュラーゼを発現する細胞から精製されてよい。一実施形態では、本方法はインビボで、好ましくは本明細書の節「酵母細胞」で定義されるような酵母細胞内で実施される。
【0064】
一実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、EphestiaΔ12デサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:85に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(Eku_d12)などの、Ephestia kuehniellaΔ12デサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:87に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(Ee_d12)などの、Ephestia elutellaΔ12デサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、EphestiaΔ12デサチュラーゼの機能的バリアント、Ephestia kuehniellaΔ12デサチュラーゼの機能的バリアント、Ephestia elutellaΔ12デサチュラーゼの機能的バリアント、または配列番号:85(Eku_d12)もしくは配列番号:87(Ee_d12)に記載されるようなΔ12デサチュラーゼの機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性、例えば、配列番号:85に記載されるようなEku_d12Δ12デサチュラーゼまたは配列番号:87に記載されるようなEe_d12Δ12デサチュラーゼに対して少なくとも61%など、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの同一性または類似性を有する。理論に束縛されるものではないが、Eku_d12Δ12デサチュラーゼ及びEe_d12Δ12デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有する脂肪酸アシル-CoA内に単一の二重結合を導入し、本単一の二重結合が12位にある。
【0065】
さらに本明細書では、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に少なくとも1個の二重結合を導入する方法においてEphestia kuehniellaデサチュラーゼの使用が提供される。いくつかの実施形態では、Ephestia kuehniellaデサチュラーゼは、脂肪酸アシル-CoAに単一の二重結合を導入し、それは12位にある。いくつかの実施形態では、Ephestia kuehniellaデサチュラーゼは、Eku_d12(配列番号:85)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0066】
さらに本明細書では、飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に少なくとも1個の二重結合を導入する方法においてEphestia elutellaデサチュラーゼの使用が提供される。いくつかの実施形態では、Ephestia elutellaデサチュラーゼは、脂肪酸アシル-CoAに単一の二重結合を導入し、それは12位にある。いくつかの実施形態では、Ephestia elutellaデサチュラーゼは、Eku_d12(配列番号:87)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0067】
一実施形態では、本方法はインビトロで、例えば、上に記載されるようなデサチュラーゼ、特に配列番号:85に記載されるようなEku_d12デサチュラーゼもしくは配列番号:87に記載されるようなEe_d12デサチュラーゼ、またはそれらに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントを提供し、本デサチュラーゼを飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAと接触させることによって実施される。デサチュラーゼは、当該技術分野において既知であるように本デサチュラーゼを発現する細胞から精製されてよい。一実施形態では、本方法はインビボで、好ましくは本明細書の節「酵母細胞」で定義されるような酵母細胞内で実施される。
【0068】
本酵母細胞は、少なくとも1つの異種Δ12デサチュラーゼを発現する場合がある。いくつかの実施形態では、細胞は1つの異種Δ12デサチュラーゼを発現する。しかしながら、少なくとも2つの異種Δ12デサチュラーゼなどのいくつかの異種Δ12デサチュラーゼを発現することが望ましい場合があり、それらは同一であるか、または異なっていてもよい。あるいは、少なくとも1つの異種Δ12デサチュラーゼをコードする核酸のいくつかのコピー、例えば、少なくとも2つのコピーなど、少なくとも3つのコピーなど、またはそれを超えるコピーを発現することが望ましい場合がある。他の実施形態では、細胞は少なくとも2つの異種Δ12デサチュラーゼ、例えば、3つの異種Δ12デサチュラーゼを発現する。
【0069】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼは、少なくとも2つの異なるタンパク質、例えば、2つの異なるデサチュラーゼなど、3つの異なるデサチュラーゼなどからのアミノ酸配列を含む、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントである。そのような機能的バリアントは、例えば、Δ12デサチュラーゼの融合タンパク質、例えば、モザイクまたはキメラタンパク質などであってよい。好ましくは、Δ12デサチュラーゼのそのような機能的バリアントに含まれるアミノ酸配列のうち少なくとも1つが、Δ12デサチュラーゼに由来する。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるΔ12デサチュラーゼは、Δ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列及び少なくとも1つの他のデサチュラーゼ、例えば、Δ9デサチュラーゼなどからの少なくとも1つのアミノ酸配列、例えば、2つ以上のアミノ酸配列などを含むか、またはそれらからなるΔ12デサチュラーゼの機能的バリアントである。他の実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、Δ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列及び少なくとも1つの他のデサチュラーゼ、例えば、Δ9デサチュラーゼ、Δ11デサチュラーゼ、2つのΔ9デサチュラーゼ、2つのΔ11デサチュラーゼ、またはそれを超えるものなどからの少なくとも2つのアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。さらに他の実施形態では、本明細書に開示されるΔ12デサチュラーゼは、Δ12デサチュラーゼに由来するアミノ酸配列及び別のΔ12デサチュラーゼに由来するアミノ酸配列を含むΔ12デサチュラーゼの機能的バリアントであり、結果として、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、2つの異なるΔ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
【0070】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼならびに少なくとも1つの他のデサチュラーゼ、例えば、Δ9、Δ11及び/またはΔ12デサチュラーゼなどは、同種に由来する。言い換えれば、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、同種から生じるΔ12デサチュラーゼ及び少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列、例えば、Δ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列及びΔ11デサチュラーゼからのアミノ酸配列などを含むか、またはそれらからなり、本Δ12デサチュラーゼ及びΔ11デサチュラーゼは、両方ともPlodia interpunctellaに由来する。他の実施形態では、Δ12デサチュラーゼ及び少なくとも1つの他のデサチュラーゼは、2つの異なる種、3つの異なる種、またはそれを超える異なる種に由来する。言い換えれば、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、少なくとも2つの異なる種から生じるΔ12デサチュラーゼ及び少なくとも1つの別のデサチュラーゼからのアミノ酸配列、例えば、Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列及びCadra cautellaΔ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列などを含むか、またはそれらからなる。
【0071】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、1つのデサチュラーゼからのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、本1つのデサチュラーゼの末端のうち少なくとも1つが置換されていて、例えば、別のデサチュラーゼの末端、例えば、別のデサチュラーゼの対応する末端などと交換されているなどである。本1つのデサチュラーゼのN末端の対応する末端は、本明細書では別のデサチュラーゼのN末端を指し、同じ専門用語がC末端にも適用される。当業者は、デサチュラーゼの末端などの多くの酵素の末端が、それらの天然配列に関して変更される場合がある一方で、本酵素の機能が維持されている、すなわち、酵素がその活性を失わない状態であると理解することになる。対照的に、触媒部位を含む残基及び/または酵素の触媒活性に重要な残基の変更は、本酵素の機能及び/または触媒活性を妨害または変更することなく可能にはならない場合がある。末端に関して、当業者は、酵素の特徴及び/または機能を保持するために、末端の柔軟性、疎水性及び/または親水性を維持することが重要な場合があると理解することになる。例えば、酵素が、その末端のうち少なくとも1つを介して、例えば、膜などに固定される(埋め込まれる、及び/または挿入されるとしても知られる)場合、その末端の同じか、または類似した疎水性を維持することが重要な場合がある。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、その本来のN末端及び/またはC末端から切り離されて、別のデサチュラーゼ、例えば、別のΔ12デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼまたはΔ11デサチュラーゼなどのN末端及び/またはC末端に融合された、Δ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、Δ12デサチュラーゼのアミノ酸配列の一部を含むか、またはそれからなり、本Δ12デサチュラーゼの60個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されていて、例えば、本Δ12デサチュラーゼの50個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの40個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの35個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの30個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの25個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの20個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの15個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの10個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの5個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの1~55個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの5~45個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの10~40個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの15~35個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの20~35個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの25~35個のN末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、
及び/または
本Δ12デサチュラーゼの50個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されていて、例えば、本Δ12デサチュラーゼの40個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの35個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの30個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの25個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの20個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの15個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの10個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの1~55個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの5~45個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの10~40個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの15~35個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの20~35個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどであり、例えば、本Δ12デサチュラーゼの25~35個のC末端アミノ酸残基は、少なくとも1つの他のデサチュラーゼからのアミノ酸配列によって欠失もしくは置換されているなどである。好ましい実施形態では、本Δ12デサチュラーゼは、配列番号:2(Pid12)、配列番号:55(EcauDes12)、配列番号:85(Eku_d12)または配列番号:87(Ee_d12)に記載されるΔ12デサチュラーゼから選択される。
【0073】
好ましくは、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントでは、欠失しているC末端またはN末端残基は、他方のデサチュラーゼからの等量またはほぼ等量のアミノ酸残基で置換されていて、例えば、30個のN末端アミノ酸が欠失しているΔ12デサチュラーゼの機能的バリアントでは、本30個のアミノ酸は、別のデサチュラーゼ、例えば、別のΔ11デサチュラーゼなどからの20~40個のN末端アミノ酸残基の範囲で、例えば、別のデサチュラーゼからの25~35個のN末端アミノ酸残基などの範囲で、例えば、別のデサチュラーゼからの28~32個のN末端アミノ酸残基などの範囲で置換されているようになる。したがって、例えば、30個のC末端アミノ酸が欠失しているΔ12デサチュラーゼの機能的バリアントでは、本30個のアミノ酸は、別のデサチュラーゼ、例えば、別のΔ11デサチュラーゼなどからの20~40個のC末端アミノ酸残基の範囲で、例えば、別のデサチュラーゼからの25~35個のC末端アミノ酸残基などの範囲で、例えば、別のデサチュラーゼからの28~32個のC末端アミノ酸残基などの範囲で置換されている。
【0074】
N末端残基は、本明細書ではタンパク質のアミノ酸配列の第1残基として定義され、結果として、タンパク質のN末端のX個のアミノ酸残基を欠失または置換することは、本タンパク質のX個の第1アミノ酸を欠失または置換することを指す。言い換えれば、300個のアミノ酸のタンパク質のN末端における30個のアミノ酸残基を欠失または置換することは、本タンパク質のアミノ酸番号1~30を欠失または置換することを指す。
【0075】
C末端残基は、本明細書ではタンパク質のアミノ酸配列の最終残基として定義され、結果として、タンパク質のC末端のX個のアミノ酸残基を欠失または置換することは、本タンパク質のX個の最終アミノ酸を欠失または置換することを指す。言い換えれば、300個のアミノ酸のタンパク質のC末端における30個のアミノ酸残基を欠失または置換することは、本タンパク質のアミノ酸番号271~300を欠失または置換することを指す。
【0076】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、デサチュラーゼからのアミノ酸配列、例えば、配列番号:2(Pid12)、配列番号:55(EcauDes12)、配列番号:85(Eku_d12)または配列番号:87(Ee_d12)などを含むか、またはそれからなり、少なくとも1個のアミノ酸残基が欠失しているか、別のアミノ酸残基を挿入されているか、またはそれで置換されている。欠失、挿入、または置換は、配列のC末端またはN末端部分に見られる場合がある。
【0077】
いくつかの実施形態では、配列、例えば、配列番号:2(Pid12)、配列番号:55(EcauDes12)、配列番号:85(Eku_d12)及び配列番号:87(Ee_d12)から選択される配列などのN末端アミノ酸残基1~50、例えば、1~40など、1~30など、1~20などのうち少なくとも1個が、欠失しているか、別のアミノ酸残基を挿入されているか、またはそれで置換されている。
【0078】
いくつかの実施形態では、配列、例えば、配列番号:2(Pid12)、配列番号:55(EcauDes12)、配列番号:85(Eku_d12)及び配列番号:87(Ee_d12)から選択される配列などのC末端アミノ酸残基250~400、例えば、260~390など、270~380など、280~370など、290~350など、300~350などのうち少なくとも1個が、欠失しているか、別のアミノ酸残基を挿入されているか、またはそれで置換されている。いくつかの実施形態では、配列、例えば、配列番号:2(Pid12)、配列番号:55(EcauDes12)、配列番号:85(Eku_d12)及び配列番号:87(Ee_d12)などのアミノ酸残基290~400、例えば、290~390など、290~380など、290~370など、290~350などのうち少なくとも1個が、欠失しているか、別のアミノ酸残基を挿入されているか、またはそれで置換されている。いくつかの実施形態では、配列、例えば、配列番号:2(Pid12)、配列番号:55(EcauDes12)、配列番号:85(Eku_d12)及び配列番号:87(Ee_d12)などのアミノ酸残基302~348のうち少なくとも1個が、欠失しているか、別のアミノ酸残基を挿入されているか、またはそれで置換されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列、及び別のPlodia interpunctellaデサチュラーゼからのアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、配列番号:2に記載されるPlodia interpunctellaデサチュラーゼPid12のアミノ酸配列の一部、及び配列番号:47に記載されるPlodia interpunctellaデサチュラーゼDesat65のアミノ酸配列の一部を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、Pid12(配列番号:2)のバリアントからなり、N末端のアミノ酸残基1~30及び/またはC末端のアミノ酸残基300~335は、それぞれDesat65(配列番号:47)のC末端のアミノ酸残基1~29及びN末端のアミノ酸残基299~344で置換されている。したがって、いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、配列番号:80に記載される配列からなる。
【0080】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列、及びPlodia interpunctellaデサチュラーゼからのアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、配列番号:55に記載されるようなCadra cautellaデサチュラーゼEcauDes12のアミノ酸配列の一部、及び配列番号:47に記載されるようなPlodia interpunctellaデサチュラーゼDesat65のアミノ酸配列の一部を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、EcauDes12(配列番号:55)のバリアントからなり、N末端のアミノ酸残基1~30及びC末端のアミノ酸残基300~338は、それぞれDesat65(配列番号:47)のN末端のアミノ酸残基1~29及びC末端のアミノ酸残基299~344で置換されている。したがって、いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、配列番号:81に記載される配列からなる。
【0081】
いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼからのアミノ酸配列、及びAmyelois transitellaΔ11デサチュラーゼからのアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、配列番号:55に記載されるようなCadra cautellaデサチュラーゼEcauDes12のアミノ酸配列の一部、及び配列番号:83に記載されるようなAmyelois transitellaΔ11デサチュラーゼDesat16のアミノ酸配列の一部を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、EcauDes12(配列番号:55)のバリアントからなり、N末端のアミノ酸残基1~30及びC末端のアミノ酸残基300~338は、それぞれDesat16(配列番号:83)のN末端のアミノ酸残基1~20及びC末端のアミノ酸残基302~326で置換されている。したがって、いくつかの実施形態では、Δ12デサチュラーゼの機能的バリアントは、配列番号:82に記載される配列からなる。
【0082】
さらなるデサチュラーゼ
本明細書で提供される酵母細胞は、異種Δ12デサチュラーゼに加えて、Δ12デサチュラーゼではない少なくとも1つのさらなるデサチュラーゼを発現してよい。いくつかの実施形態では、さらなるデサチュラーゼは、同種デサチュラーゼ、例えば、同種Δ9デサチュラーゼまたは同種Δ11デサチュラーゼなどである。言い換えれば、酵母細胞は、Δ12デサチュラーゼではない少なくとも1つの天然デサチュラーゼを発現する。例えば、酵母細胞は、同種Δ9デサチュラーゼOle1を発現するYarrowia lipolytica酵母細胞であってよい。しかしながら、好ましい実施形態では、さらなるデサチュラーゼは、異種デサチュラーゼである。言い換えれば、酵母細胞は、Δ12デサチュラーゼではない少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現する。
【0083】
一実施形態では、さらなるデサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位ではない任意の位置に少なくとも1個の二重結合を導入できる異種デサチュラーゼである。言い換えれば、さらなるデサチュラーゼは、脂肪酸アシル-CoAの8、9、10、11、13、14、15、16、17、18、19、20及び21位からなる群から選択される位置に少なくとも1個の二重結合を導入できる場合がある。好ましい実施形態では、本脂肪酸アシル-CoAは、飽和脂肪酸アシル-CoA、例えば、テトラデカノイル-CoAである。別の実施形態では、本脂肪酸アシル-CoAは、12位に二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAである。さらに別の実施形態では、本脂肪酸アシル-CoAは、12位及び12位以外の位置、例えば、12位及び9位などに二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAである。
【0084】
したがって、一実施形態では、酵母細胞は、異種Δ5デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ6デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ7デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ8デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ9デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ10デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ11デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ13デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ14デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ15デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ16デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ17デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ18デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ19デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ20デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。別の実施形態では、酵母細胞は、異種Δ21デサチュラーゼである少なくとも1つのさらなる異種デサチュラーゼを発現できる。好ましい実施形態では、さらなるデサチュラーゼは、Δ9デサチュラーゼまたはΔ11デサチュラーゼである。したがって、さらなるデサチュラーゼは、それぞれ9位または11位に二重結合を導入できる場合がある。
【0085】
さらなる異種デサチュラーゼは、本方法に従ってそのデサチュラーゼが発現される酵母細胞とは異なる任意の種類の生物から生じてよい。いくつかの実施形態では、異種デサチュラーゼは植物、例えば、Ricinus communisまたはPelargonium hortorumなどから生じる。別の実施形態では、異種デサチュラーゼは昆虫、例えば、双翅目、甲虫目、または鱗翅目などの昆虫、例えば、Agrotis、Argyrotaenia、Amyelois、Chauliognathus、Choristoneura、Cydia、Dendrophilus、Drosophila、Epiphyas、Grapholita、Helicoverpa、Lampronia、Lobesia、Manducta、Ostrinia、Pectinophora、Plutella、Thalassiosira、Thaumetopoea、Tribolium、TrichoplusiaまたはSpodoptera属などの昆虫、例えば、Agrotis segetum、Argyrotaenia velutiana、Amyelois transitella、Chauliognathus lugubris、Choristoneura parallela、Choristoneura rosaceana、Cydia pomonella、Dendrophilus punctatus、Drosophila ananassae、Drosophila grimshawi、Drosophila melanogaster、Drosophila mojavensis、Drosophila pseudoobscura、Drosophila virilis、Drosophila yakuba、Epiphyas postvittana、Grapholita molesta、Helicoverpa assulta、Helicoverpa zea、Lampronia capitella、Lobesia botrana、Manducta sexta、Ostrinia furnacalis、Ostrinia nubilalis、Pectinophora gossypiella、Plutella xylostella、Spodoptera exigua、Spodoptera littoralis、Spodoptera litura、Thalassiosira pseudonana、Thaumetopoea pityocampa、Tribolium castaneumまたはTrichoplusia niなどから生じる。
【0086】
好ましい実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila melanogasterデサチュラーゼ、Drosophila virilisデサチュラーゼ、Drosophila grimshawiデサチュラーゼ、Drosophila yakubaデサチュラーゼ、Drosophila mojavensisデサチュラーゼ、Drosophila pseudoobscuraデサチュラーゼ、またはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなどである。
【0087】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、Drosophilaデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:4に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat61)などのDrosophila virilisデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:6に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat24)などのDrosophila melanogasterデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:8に記載されるデサチュラーゼ(Desat59)などのDrosophila grimshawiデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:57に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat56)などのDrosophila yakubaデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:59に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat60)などのDrosophila ananassaeデサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Drosophilaデサチュラーゼの機能的バリアント、Drosophila virilisデサチュラーゼの機能的バリアント、Drosophila melanogasterデサチュラーゼの機能的バリアント、Drosophila grimshawiデサチュラーゼの機能的バリアント、配列番号:6に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat24)の機能的バリアント、配列番号:4に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat61)の機能的バリアント、配列番号:59に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat60)の機能的バリアント、配列番号:57に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat56)の機能的バリアント、または配列番号:8に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat59)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0088】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、Amyeloisデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:10(Desat17)または配列番号:12(Desat18)に記載されるようなデサチュラーゼなどのAmyelois transitellaデサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Amyeloisデサチュラーゼの機能的バリアント、Amyelois transitellaデサチュラーゼの機能的バリアント、配列番号:10に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat17)の機能的バリアント、または配列番号:12に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat18)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0089】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、Choristoneuraデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:61に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat74)などのChoristoneura parallelaデサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Choristoneuraデサチュラーゼの機能的バリアント、Choristoneura parallelaデサチュラーゼの機能的バリアント、または配列番号:61に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat74)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0090】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、Spodopteraデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:18に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat26)などのSpodoptera lituraデサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Spodopteraデサチュラーゼの機能的バリアント、Spodoptera lituraデサチュラーゼの機能的バリアント、または配列番号:18に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat26)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0091】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、Saccharomycesデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:14に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat42)などのSaccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Saccharomycesデサチュラーゼの機能的バリアント、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼの機能的バリアント、または配列番号:14に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat42)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0092】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、Yarrowiaデサチュラーゼである。一実施形態では、デサチュラーゼは、配列番号:16に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat69)などのYarrowia lipolyticaデサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Yarrowiaデサチュラーゼの機能的バリアント、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼの機能的バリアント、または配列番号:16に記載されるようなデサチュラーゼ(Desat69)の機能的バリアントであり、それらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0093】
所与の酵素に関して「少なくとも60%の同一性または類似性を有するそのバリアント」という用語は、本酵素に対して60%以上の同一性または類似性、例えば、酵素に対して少なくとも61%など、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、またはそれを超える同一性または類似性を有するバリアントを指すと理解されるものとする。
【0094】
改変される酵母細胞は、天然デサチュラーゼを発現する場合があり、それは不飽和脂肪酸アシル-CoA及び/または不飽和脂肪族アルコールの生成に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、改変される細胞がそのような天然デサチュラーゼを発現する場合、天然デサチュラーゼの活性を低下させるか、または存在しないように生物を改変する場合がある。
【0095】
天然デサチュラーゼの活性を確実に欠如させるか、または最低限まで低下させるために、当該技術分野において既知の方法が用いられ得る。天然デサチュラーゼが確実に発現しないようにするために、天然デサチュラーゼをコードする遺伝子を欠失または部分的に欠失させてもよい。あるいは、例えば、酵素の触媒部位の変異によって天然デサチュラーゼは発現するが、活性を欠くように遺伝子を変異させてよい。あるいは、mRNAから活性タンパク質への翻訳が、RNAまたはsiRNAのサイレンシングなどの方法によって防止されてよい。あるいは、細胞は、天然デサチュラーゼの活性を阻害する阻害剤を含む培地中でインキュベートされてよい。天然デサチュラーゼをコードする遺伝子の転写を阻害する化合物もまた、化合物が存在する場合に転写が不活性化されるように提供されてよい。当該技術分野において既知の他の方法が用いられてもよい。
【0096】
したがって、天然デサチュラーゼの不活性化は永続的もしくは長期的であってよく、すなわち、改変細胞が安定した方法で天然デサチュラーゼの活性低下を示すか、もしくは活性を全く示さないか、または不活性化は一過性であってよく、すなわち、改変細胞が天然デサチュラーゼの活性をある期間で示す場合があるが、その活性は他の期間では抑制され得るか、もしくは減少し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、天然酵母デサチュラーゼは、異種デサチュラーゼで置き換えられる。異種デサチュラーゼは、例えば、同じ条件下で試験される場合に天然酵母デサチュラーゼと比較して、望ましくない副生成物を生成しないか、または望ましくない副生成物の生成がより少ないデサチュラーゼであってよい。そのような望ましくない副生成物は、例えば、(Z9)-ヘキサデセノイル-CoA(Z9-16:CoA)及び/または(Z9)-ヘキサデセノール(Z9-16:OH)であってよい。Yarrowia lipolytica OLE1デサチュラーゼをPuccinia graminisまたはArxula adeninivoransからの異種デサチュラーゼに置き換えると、副生成物のZ9-16:OHの生成が減少することが見出された(Tsakraklides et al.,2018)。
【0098】
天然酵母デサチュラーゼに代わる異種デサチュラーゼは、オクタデカノイル-CoAなどのC18化合物に特異的であってよく、オクタデセノイル-CoAを主生成物として作製する(Tsakraklides et al.,2018)。
【0099】
Δ12デサチュラーゼ及びさらなるデサチュラーゼ
上記Δ12デサチュラーゼのいずれも、上記さらなるデサチュラーゼのいずれかと共に発現され得る。
【0100】
したがって、いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:2に記載されるようなPid12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、
またはそれらに対して少なくとも60%の同一性もしくは類似性を有するその機能的バリアント。
【0101】
いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:55に記載されるようなEcauDes12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、
またはそれらに対して少なくとも60%の同一性もしくは類似性を有するその機能的バリアント。
【0102】
いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Ephestia kuehniellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:85に記載されるようなEku_d12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、
またはそれらに対して少なくとも60%の同一性もしくは類似性を有するその機能的バリアント。
【0103】
いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Ephestia elutellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:87に記載されるようなEe_d12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、
またはそれらに対して少なくとも60%の同一性もしくは類似性を有するその機能的バリアント。
【0104】
上記の所与のデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有するデサチュラーゼの機能的バリアントは、デサチュラーゼに対して少なくとも61%、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの同一性または類似性を有する場合があると理解されることになる。
【0105】
C14特異性の増加
多くの望ましいフェロモン化合物は、14個の炭素鎖長を有する。したがって、C14化合物の生成に対して反応を誘導することが必要となる場合がある。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される酵母細胞は、ヘキサデカノイル-CoAに対するよりも、テトラデカノイル-CoAに対してより高い特異性を有するデサチュラーゼ及び/または不飽和ヘキサデカノイル-CoA(すなわち、ヘキサデカノイル-CoA)に対するよりも、不飽和テトラデカノイル-CoA(すなわち、テトラデセノイル-CoA)に対してより高い特異性を有する脂肪酸アシル-CoAレダクターゼを発現する。言い換えれば、デサチュラーゼは、16個の鎖長を有する基質に対するよりも、14個の炭素鎖長を有する基質に対してより特異的である。そのようなデサチュラーゼを発現する酵母細胞の例が、WO2018/109167、特に「デサチュラーゼ」と題した節に開示されている。
【0106】
酵母細胞内でのそのようなデサチュラーゼの(及び本明細書に記載されるレダクターゼのいずれかの)発現は、特に16個の炭素鎖長を有する全不飽和脂肪族アルコールの割合と比較して、14個の炭素鎖長を有する全不飽和脂肪族アルコールの割合を増加させる。必要な特異性を有するデサチュラーゼは、特にDrosophila、Spodoptera、Choristneura種から生じるデサチュラーゼ、例えば、Drosophila melanogaster、Drosophila grimshawi、Drosophila virilis、Spodoptera litura、Choristoneura parallelaもしくはChoristoneura rosaceanaから生じるデサチュラーゼなど、またはそれらに対して少なくとも60%の同一性を有するそのバリアントである。
【0107】
いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、以下:
i)配列番号:6に記載されるようなDrosophila melanogasterのΔ9デサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性を有するΔ9デサチュラーゼ、
ii)配列番号:8に記載されるようなDrosophila grimshawiのΔ9デサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性を有するデサチュラーゼ、
iii)配列番号:4に記載されるようなDrosophila virilisのΔ9デサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性を有するデサチュラーゼ、
iv)配列番号:18に記載されるようなSpodoptera lituraのΔ9デサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性を有するΔ9デサチュラーゼ、
及びそれらに対して少なくとも60%の同一性または類似性、例えば、それらに対して少なくとも61%など、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの同一性または類似性を有するその機能的バリアント
からなる群から選択される。
【0108】
それらのデサチュラーゼは、酵母細胞で発現される場合、C14基質の不飽和化を選択的に触媒することが見出されている。
【0109】
そのような細胞では、不飽和テトラデカノイル-CoA対不飽和ヘキサデカノイル-CoAの比は、少なくとも0.1、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15など、またはそれを超えるものである。
【0110】
以下で詳細に記載されるように、異種デサチュラーゼが脂肪酸アシル-CoAレダクターゼと共に発現される場合、酵母細胞は、不飽和脂肪族アルコールを生成する。
【0111】
そのような実施形態では、不飽和テトラデカノイル-CoAに由来する不飽和脂肪族アルコールの力価は、少なくとも1mg/L、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、またはそれを超えるものである。
【0112】
いくつかの実施形態では、14個の鎖長を有する不飽和テトラデカノイル-CoAに由来する不飽和脂肪族アルコールの力価は、少なくとも1mg/L、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、またはそれを超えるものである。
【0113】
いくつかの実施形態では、不飽和脂肪族アルコールは、少なくとも1%、少なくとも1.5%など、少なくとも2%など、少なくとも2.5%など、少なくとも3%など、少なくとも3.5%など、少なくとも4%など、少なくとも4.5%など、少なくとも5%など、少なくとも7.5%など、少なくとも10%などの、またはそれを超える14個の鎖長を有する不飽和脂肪族アルコールを含んで生成される。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、14個の炭素鎖長を有する不飽和脂肪族アルコール及び16個の炭素鎖長を有する不飽和脂肪族アルコールを含む、一連の炭素鎖長を有する不飽和脂肪族アルコールを生成する。そのような実施形態では、14個の炭素鎖長を有する不飽和脂肪族アルコールと16個の炭素鎖長を有する不飽和脂肪族アルコールとの合計に対する14個の炭素鎖長を有する不飽和脂肪族アルコールの割合は、少なくとも5%、例えば、少なくとも7.5%など、少なくとも10%など、少なくとも15%など、少なくとも20%など、またはそれを超える。
【0114】
所与のデサチュラーゼが必要な特異性を有するかどうかを試験する方法は、本明細書に記載されるように行われ得る。
【0115】
脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ
さらに本明細書では、脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)を発現する酵母細胞が提供され、本酵母細胞は、(E12)-脂肪酸アシル-CoAまたは(Z9,E12)-脂肪酸アシル-CoAの少なくとも一部を、対応する脂肪族アルコールに変換できる。例えば、酵母細胞は、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できてよい。
【0116】
「脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ」及び「FAR」という用語は、本明細書では交換可能に使用されることになる。「異種FAR」という用語は、酵母細胞などの生物によって天然には発現されないFARを指す。
【0117】
FARは2段階の反応を触媒する:
アシル-CoA+2NADPH<=>CoA+アルコール+2NADP(+)
式中、第1ステップでは脂肪酸アシル-CoAが脂肪族アルデヒドに還元され、その後に第2ステップで脂肪族アルデヒドが、脂肪族アルコールにさらに還元される。脂肪酸アシル-CoAは、不飽和または飽和脂肪酸アシル-CoAであってよい。
【0118】
そのような反応を触媒できるFARは、EC番号1.2.1.84のアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼである。
【0119】
一実施形態では、FARは、Agrotis、Amyelois、Bicyclus、Bombus、Chilo、Cydia、Helicoverpa、Heliothis、Lobesia、Ostrinia、Plodia、Plutella、Spodoptera、Trichoplusia、Tyta、及びYponomeutaからなる群から選択される属の生物、例えば、Agrotis ipsilon、Agrotis segetum、Amyelois transitella、Bicyclus anynana、Bombus lapidarius、Chilo suppressalis、Cydia pomonella、Helicoverpa armigera、Helicoverpa assulta、Heliothis subflexa、Heliothis virescens、Lobesia botrana、Ostrinia furnacalis、Ostrinia nubilalis、Ostrinia zag、Ostrinia zea、Plodia interpunctella、Plutella xylostella、Spodoptera exigua、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera litura、Trichoplusia ni、Tyta alba、and Yponomeuta rorellus、especially Spodoptera exigua、Helicoverpa armigera、Spodoptera litura及びPlodia interpunctellaなどから生じる。
【0120】
一実施形態では、FARは、FAR1(配列番号:20)、FAR16(配列番号:22)、FAR17(配列番号:24)、FAR19(配列番号:26)、FAR28(配列番号:28)、FAR32(配列番号:30)、FAR38(配列番号:32)、FAR44(配列番号:63)、FAR48(配列番号:65)、FAR49(配列番号:67)、FAR38(配列番号:32)、FAR4(配列番号:69)、FAR6(配列番号:71)、FAR8(配列番号:73)、FAR12(配列番号:75)、FAR11(配列番号:77)もしくはFAR5(配列番号:79)、またはそれらに対して少なくとも60%の同一性もしくは類似性、例えば、それらに対して少なくとも61%など、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの同一性もしくは類似性を有するその機能的バリアントからなる群から選択される。
【0121】
一実施形態では、異種FARは、Agrotis FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:75に記載されるようなFAR(FAR12)などのAgrotis segetum FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Agrotis FARの機能的バリアント、またはAgrotis segetum FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:75に記載されるFAR(FAR12)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0122】
一実施形態では、異種FARは、Bicyclus FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:77に記載されるようなFAR(FAR11)などのBicyclus anynana FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Bicyclus FARの機能的バリアント、またはBicyclus anynana FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:77に記載されるFAR(FAR11)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0123】
一実施形態では、異種FARは、Helicoverpa FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:20に記載されるようなFAR(FAR1)などのHelicoverpa armigera FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Helicoverpa FARの機能的バリアント、またはHelicoverpa armigera FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:20に記載されるFAR(FAR1)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0124】
一実施形態では、異種FARは、Helicoverpa FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:71に記載されるようなFAR(FAR6)などのHelicoverpa assulta FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Helicoverpa FARの機能的バリアント、またはHelicoverpa assulta FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:71に記載されるFAR(FAR6)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0125】
一実施形態では、異種FARは、Heliothis FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:69に記載されるようなFAR(FAR4)などのHeliothis subflexa FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Heliothis FARの機能的バリアント、またはHeliothis subflexa FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:69に記載されるFAR(FAR4)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0126】
一実施形態では、異種FARは、Heliothis FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:79に記載されるようなFAR(FAR5)などのHeliothis virescens FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Heliothis FARの機能的バリアント、またはHeliothis virescens FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:79に記載されるFAR(FAR5)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0127】
一実施形態では、異種FARは、Ostrinia FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:63に記載されるようなFAR(FAR44)などのOstrinia furnacalis FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Ostrinia FARの機能的バリアント、またはOstrinia furnacalis FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:63に記載されるFAR(FAR44)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0128】
一実施形態では、異種FARは、Ostrinia FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:65に記載されるようなFAR(FAR48)などのOstrinia zag FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Ostrinia FARの機能的バリアント、またはOstrinia zag FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:65に記載されるFAR(FAR48)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0129】
一実施形態では、異種FARは、Ostrinia FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:67に記載されるようなFAR(FAR49)などのOstrinia zea FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Ostrinia FARの機能的バリアント、またはOstrinia zea FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:67に記載されるFAR(FAR49)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0130】
一実施形態では、異種FARは、Plodia FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:28(FAR28)または配列番号:30(FAR32)に記載されるようなFARなどのPlodia interpunctella FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Plodia FARの機能的バリアント、またはPlodia interpunctella FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:28(FAR28)もしくは配列番号:30(FAR32)に記載されるFARの機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0131】
一実施形態では、異種FARは、Spodoptera FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:22(FAR16)または配列番号:24(FAR17)に記載されるようなFARなどのSpodoptera exigua FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:26に記載されるようなFAR(FAR19)などのSpodoptera litura FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Spodoptera FARの機能的バリアント、Spodoptera exigua FARの機能的バリアント、Spodoptera litura FARの機能的バリアント、配列番号:22(FAR16)、配列番号:24(FAR17)に記載されるFARの機能的バリアントまたは配列番号:26に記載されるFAR(FAR19)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0132】
一実施形態では、異種FARは、Trichoplusia FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:32に記載されるようなFAR(FAR38)などのTrichoplusia ni FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Trichoplusia FARの機能的バリアント、またはTrichoplusia ni FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:32に記載されるFAR(FAR38)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0133】
一実施形態では、異種FARは、Yponomeuta FARである。一実施形態では、FARは、配列番号:73に記載されるようなFAR(FAR8)などのYponomeuta rorellus FARである。いくつかの実施形態では、FARは、Yponomeuta FARの機能的バリアント、またはYponomeuta rorellus FARの機能的バリアント、例えば、配列番号:73に記載されるFAR(FAR8)の機能的バリアントなどであり、それらのFARに対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0134】
所与の酵素に関して「少なくとも60%の同一性または類似性を有するそのバリアント」という用語は、本酵素に対して60%以上の同一性または類似性、例えば、酵素に対して少なくとも61%など、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、またはそれを超える同一性または類似性を有するバリアントを指すと理解されるものとする。
【0135】
本細胞は、少なくとも1つの異種FARを発現する場合がある。いくつかの実施形態では、細胞は1つの異種FARを発現する。しかしながら、少なくとも2つの異種FARなどのいくつかの異種FARを発現することが望ましい場合があり、それらは同一であるか、または異なっていてもよい。あるいは、少なくとも1つの異種FARをコードする核酸のいくつかのコピー、例えば、少なくとも2つのコピー、少なくとも3つのコピーまたはそれを超えるコピーなどを発現することが望ましい場合がある。他の実施形態では、細胞は少なくとも2つの異種FAR、例えば、3つの異種FARを発現する。
【0136】
例えば、細胞は、FAR1もしくはそのバリアントの2つのコピー、またはFAR1の1つのコピー及びFAR16の1つのコピー、またはFAR1の2つのコピー、FAR16の1つのコピー及びFAR19の1つのコピーを発現する場合がある。
【0137】
デサチュラーゼ及びFAR
上記FARのいずれも、任意のデサチュラーゼ、特に本明細書に記載されるデサチュラーゼのいずれかと共に発現され得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:2に記載されるようなPid12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、及び/または
-以下から選択されるFAR:Agrotis FAR、例えば、Agrotis segetum FARなど、例えば、配列番号:75に記載されるようなFAR12、Bicyclus FAR、例えば、Bicyclus anynana FARなど、例えば、配列番号:77に記載されるようなFAR11、Helicoverpa FAR、例えば、Helicoverpa armigera FARもしくはHelicoverpa assulta FARなど、例えば、配列番号:20に記載されるようなFAR1もしくは配列番号:71に記載されるようなFAR6、Heliothis FAR、例えば、Heliothis subflexa FARもしくはHeliothis virescens FARなど、例えば、配列番号:69に記載されるようなFAR4もしくは配列番号:79に記載されるようなFAR5、Ostrinia FAR、例えば、Ostrinia furnacalis FAR、Ostrinia zag FARもしくはOstrinia zea FARなど、例えば、配列番号:63に記載されるようなFAR44、配列番号:65に記載されるようなFAR48もしくは配列番号:67に記載されるようなFAR49、Plodia FAR、例えば、Plodia interpunctella FARなど、例えば、配列番号:28に記載されるようなFAR28もしくは配列番号:30に記載されるようなFAR32、Spodoptera FAR、例えば、Spodoptera exigua FARなど、例えば、配列番号:22に記載されるようなFAR16、もしくは配列番号:24に記載されるようなFAR17、もしくはSpodoptera litura FARなど、例えば、配列番号:26に記載されるようなFAR19、Trichoplusia FAR、例えば、Trichoplusia ni FARなど、例えば、配列番号:32に記載されるようなFAR38、Yponomeuta FAR、例えば、Yponomeuta rorellus FARなど、例えば、配列番号:73に記載されるようなFAR8、
あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有するその機能的バリアント。
【0139】
いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:55に記載されるようなEcauDes12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、及び/または
-以下から選択されるFAR:Agrotis FAR、例えば、Agrotis segetum FARなど、例えば、配列番号:75に記載されるようなFAR12、Bicyclus FAR、例えば、Bicyclus anynana FARなど、例えば、配列番号:77に記載されるようなFAR11、Helicoverpa FAR、例えば、Helicoverpa armigera FARもしくはHelicoverpa assulta FARなど、例えば、配列番号:20に記載されるようなFAR1もしくは配列番号:71に記載されるようなFAR6、Heliothis FAR、例えば、Heliothis subflexa FARもしくはHeliothis virescens FARなど、例えば、配列番号:69に記載されるようなFAR4もしくは配列番号:79に記載されるようなFAR5、Ostrinia FAR、例えば、Ostrinia furnacalis FAR、Ostrinia zag FARもしくはOstrinia zea FARなど、例えば、配列番号:63に記載されるようなFAR44、配列番号:65に記載されるようなFAR48もしくは配列番号:67に記載されるようなFAR49、Plodia FAR、例えば、Plodia interpunctella FARなど、例えば、配列番号:28に記載されるようなFAR28もしくは配列番号:30に記載されるようなFAR32、Spodoptera FAR、例えば、Spodoptera exigua FARなど、例えば、配列番号:22に記載されるようなFAR16、もしくは配列番号:24に記載されるようなFAR17、もしくはSpodoptera litura FARなど、例えば、配列番号:26に記載されるようなFAR19、Trichoplusia FAR、例えば、Trichoplusia ni FARなど、例えば、配列番号:32に記載されるようなFAR38、Yponomeuta FAR、例えば、Yponomeuta rorellus FARなど、例えば、配列番号:73に記載されるようなFAR8、
あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有するその機能的バリアント。
【0140】
いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Ephestia kuehniellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:85に記載されるようなEku_d12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、及び/または
-以下から選択されるFAR:Agrotis FAR、例えば、Agrotis segetum FARなど、例えば、配列番号:75に記載されるようなFAR12、Bicyclus FAR、例えば、Bicyclus anynana FARなど、例えば、配列番号:77に記載されるようなFAR11、Helicoverpa FAR、例えば、Helicoverpa armigera FARもしくはHelicoverpa assulta FARなど、例えば、配列番号:20に記載されるようなFAR1もしくは配列番号:71に記載されるようなFAR6、Heliothis FAR、例えば、Heliothis subflexa FARもしくはHeliothis virescens FARなど、例えば、配列番号:69に記載されるようなFAR4もしくは配列番号:79に記載されるようなFAR5、Ostrinia FAR、例えば、Ostrinia furnacalis FAR、Ostrinia zag FARもしくはOstrinia zea FARなど、例えば、配列番号:63に記載されるようなFAR44、配列番号:65に記載されるようなFAR48もしくは配列番号:67に記載されるようなFAR49、Plodia FAR、例えば、Plodia interpunctella FARなど、例えば、配列番号:28に記載されるようなFAR28もしくは配列番号:30に記載されるようなFAR32、Spodoptera FAR、例えば、Spodoptera exigua FARなど、例えば、配列番号:22に記載されるようなFAR16、もしくは配列番号:24に記載されるようなFAR17、もしくはSpodoptera litura FARなど、例えば、配列番号:26に記載されるようなFAR19、Trichoplusia FAR、例えば、Trichoplusia ni FARなど、例えば、配列番号:32に記載されるようなFAR38、Yponomeuta FAR、例えば、Yponomeuta rorellus FARなど、例えば、配列番号:73に記載されるようなFAR8、
あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有するその機能的バリアント。
【0141】
いくつかの実施形態では、細胞は以下を発現する:
-Ephestia elutellaΔ12デサチュラーゼ、例えば、配列番号:87に記載されるようなEe_d12、及び
-以下から選択されるさらなるデサチュラーゼ:Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、及び/または
-以下から選択されるFAR:Agrotis FAR、例えば、Agrotis segetum FARなど、例えば、配列番号:75に記載されるようなFAR12、Bicyclus FAR、例えば、Bicyclus anynana FARなど、例えば、配列番号:77に記載されるようなFAR11、Helicoverpa FAR、例えば、Helicoverpa armigera FARもしくはHelicoverpa assulta FARなど、例えば、配列番号:20に記載されるようなFAR1もしくは配列番号:71に記載されるようなFAR6、Heliothis FAR、例えば、Heliothis subflexa FARもしくはHeliothis virescens FARなど、例えば、配列番号:69に記載されるようなFAR4もしくは配列番号:79に記載されるようなFAR5、Ostrinia FAR、例えば、Ostrinia furnacalis FAR、Ostrinia zag FARもしくはOstrinia zea FARなど、例えば、配列番号:63に記載されるようなFAR44、配列番号:65に記載されるようなFAR48もしくは配列番号:67に記載されるようなFAR49、Plodia FAR、例えば、Plodia interpunctella FARなど、例えば、配列番号:28に記載されるようなFAR28もしくは配列番号:30に記載されるようなFAR32、Spodoptera FAR、例えば、Spodoptera exigua FARなど、例えば、配列番号:22に記載されるようなFAR16、もしくは配列番号:24に記載されるようなFAR17、もしくはSpodoptera litura FARなど、例えば、配列番号:26に記載されるようなFAR19、Trichoplusia FAR、例えば、Trichoplusia ni FARなど、例えば、配列番号:32に記載されるようなFAR38、Yponomeuta FAR、例えば、Yponomeuta rorellus FARなど、例えば、配列番号:73に記載されるようなFAR8、
あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有するその機能的バリアント。
【0142】
上記の所与のFARまたはデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性または類似性を有するFARまたはデサチュラーゼの機能的バリアントが、FARまたはデサチュラーゼに対して少なくとも61%、少なくとも62%など、少なくとも63%など、少なくとも64%など、少なくとも65%など、少なくとも66%など、少なくとも67%など、少なくとも68%など、少なくとも69%など、少なくとも70%など、少なくとも71%など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの同一性または類似性を有してよいと理解されることになる。
【0143】
本Δ12デサチュラーゼ、さらなるデサチュラーゼ及びFARを発現する酵母細胞は、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを生成できる。
【0144】
酵母細胞
本発明は、不飽和化合物、特に12位に少なくとも1個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoA及び不飽和脂肪族アルコールを生成するように改変または操作されている酵母細胞を提供する。それらの一部は、フェロモンの成分である。したがって、本明細書に開示される酵母細胞は、環境に優しいフェロモン生成のための改善されたプラットフォームを提供する。
【0145】
したがって、本明細書では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる酵母細胞が提供され、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
本酵母細胞は、異種Δ12デサチュラーゼを発現し、本デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である。
【0146】
好ましい実施形態では、基質として使用される飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA及びn’個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、同じ炭素鎖長を有する。
【0147】
異種Δ12デサチュラーゼは、本明細書の節「Δ12デサチュラーゼ」に開示されている通りであってよい。例えば、Δ12デサチュラーゼは、PlodiaΔ12デサチュラーゼ、例えば、Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼなど、例えば、配列番号:2に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(Pid12)など、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントであってよい。例えば、Δ12デサチュラーゼは、CadraΔ12デサチュラーゼ、例えば、Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼなど、例えば、配列番号:55に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(EcauDes12)など、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントであってよい。例えば、Δ12デサチュラーゼは、EphestiaΔ12デサチュラーゼ、例えば、Ephestia kuehniellaΔ12デサチュラーゼもしくはEphestia elutellaΔ12デサチュラーゼなど、例えば、配列番号:85(Eku_d12)もしくは配列番号:87(Ee_d12)に記載されるようなΔ12デサチュラーゼなど、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントであってよい。
【0148】
一実施形態では、本明細書に開示される酵母細胞は、本明細書の節「さらなるデサチュラーゼ」に開示される通りであってよいさらなるデサチュラーゼを発現する。例えば、さらなるデサチュラーゼは、飽和または不飽和脂肪酸の12位以外の位置に二重結合を導入できるデサチュラーゼであってよい。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0149】
異種Δ12デサチュラーゼ及びさらなるデサチュラーゼを発現する酵母細胞は、12位に二重結合を有し、他の1箇所の位置に二重結合を有する二重不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる。一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼ及びさらなる異種デサチュラーゼを発現する酵母細胞は、12位及び9位に二重結合を有する脂肪酸アシル-CoA、例えば、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAなどを生成できる。
【0150】
一実施形態では、本明細書に開示される酵母細胞は、本明細書の節「脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ」に開示される通りであってよいFARをさらに発現する。例えば、FARは、Agrotis FAR、例えば、Agrotis segetum FARなど、例えば、配列番号:75に記載されるようなFAR12、Bicyclus FAR、例えば、Bicyclus anynana FARなど、例えば、配列番号:77に記載されるようなFAR11、Helicoverpa FAR、例えば、Helicoverpa armigera FARもしくはHelicoverpa assulta FARなど、例えば、配列番号:20に記載されるようなFAR1もしくは配列番号:71に記載されるようなFAR6、Heliothis FAR、例えば、Heliothis subflexa FARもしくはHeliothis virescens FARなど、例えば、配列番号:69に記載されるようなFAR4もしくは配列番号:79に記載されるようなFAR5、Ostrinia FAR、例えば、Ostrinia furnacalis FAR、Ostrinia zag FARもしくはOstrinia zea FARなど、例えば、配列番号:63に記載されるようなFAR44、配列番号:65に記載されるようなFAR48もしくは配列番号:67に記載されるようなFAR49、Plodia FAR、例えば、Plodia interpunctella FARなど、例えば、配列番号:28に記載されるようなFAR28もしくは配列番号:30に記載されるようなFAR32、Spodoptera FAR、例えば、Spodoptera exigua FARなど、例えば、配列番号:22に記載されるようなFAR16、もしくは配列番号:24に記載されるようなFAR17、もしくはSpodoptera litura FARなど、例えば、配列番号:26に記載されるようなFAR19、Trichoplusia FAR、例えば、Trichoplusia ni FARなど、例えば、配列番号:32に記載されるようなFAR38、Yponomeuta FAR、例えば、Yponomeuta rorellus FARなど、例えば、配列番号:73に記載されるようなFAR8、またはそれらのFARに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントであってよい。
【0151】
異種Δ12デサチュラーゼ、さらなるデサチュラーゼ、及びFARを発現する酵母細胞は、二重不飽和脂肪族アルコール、例えば、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールなどを生成できる。言い換えれば、異種Δ12デサチュラーゼ、さらなるデサチュラーゼ、及びFARを発現する酵母細胞は、異種Δ12デサチュラーゼ及びさらなる異種デサチュラーゼによって生成される(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を、FARの作用によって(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる。
【0152】
いくつかの実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼ、さらなる異種デサチュラーゼまたはFARをコードする遺伝子は、本酵母細胞のためにコドン最適化されている。
【0153】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼ、さらなる異種デサチュラーゼまたはFARをコードする遺伝子のうち少なくとも1つが、酵母細胞内に高コピー数で存在する。
【0154】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼ、さらなる異種デサチュラーゼまたはFARをコードする遺伝子のうち少なくとも1つが、誘導性プロモーターの制御下にある。
【0155】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼ、さらなる異種デサチュラーゼまたはFARをコードする遺伝子のうち少なくとも1つが、各々独立して細胞のゲノム内または酵母細胞内に含まれるベクター内に含まれる。
【0156】
一実施形態では、酵母細胞は、Saccharomyces、Pichia、Yarrowia、Kluyveromyces、Candida、Rhodotorula、Rhodosporidium、Cryptococcus、Trichosporon及びLipomycesから選択される属に属し、任意に酵母細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces boulardi、Pichia pastoris、Kluyveromyces marxianus、Candida tropicalis、Cryptococcus albidus、Lipomyces lipofera、Lipomyces starkeyi、Rhodosporidium toruloides、Rhodotorula glutinis、Trichosporon pullulan及びYarrowia lipolyticaから選択される種に属し、好ましくは酵母細胞は、Yarrowia lipolytica細胞またはSaccharomyces cerevisiae細胞である。
【0157】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、節「核酸」に記載されるような、核酸または核酸の系を含む。
【0158】
本発明による酵母細胞は、発酵ブロス、発酵系、及び/または触媒系に含まれてよい。言い換えれば、発酵ブロス、発酵系、及び/または触媒系は、本発明による酵母細胞を含んでよい。
【0159】
一実施形態では、酵母細胞は、異種NAD(P)Hシトクロムb5オキシドレダクターゼ(Ncb5or)をさらに発現する。「NAD(P)Hシトクロムb5オキシドレダクターゼ」及び「Ncb5or」という用語は、本明細書では交換可能に使用されることになる。「異種Ncb5or」という用語は、細胞などの生物によって天然には発現されないNcb5orを指す。
【0160】
Ncb5orは、ヘムタンパク質をアクセプターとして用いて、NADHまたはNADPHに対して作用するオキシドレダクターゼである。Ncb5orは、シトクロムb5、シトクロムb5レダクターゼ及びCHORD-SGT1に類似した機能ドメインを含有する(Deng,et al.,2010)。Ncb5orsは、以下の反応を触媒する:
2Fe3++NAD(P)H<=>2Fe2++H++NAD(P)+
【0161】
そのような反応を触媒できるNcb5orは、EC番号1.6.2.2を有する。
【0162】
デサチュラーゼ及び/またはFARを発現する細胞内における1つ以上のNcb5orの発現は、それによって不飽和脂肪酸アシル-CoA及び/または不飽和脂肪族アルコールの力価の増加がもたらされるため、デサチュラーゼ及び/またはFARの活性に好影響を及ぼす。したがって、デサチュラーゼ及び/またはFARならびに1つ以上のNcb5orを発現する酵母細胞は、同じデサチュラーゼ及び/またはFARを発現するが、異種Ncb5orを発現しない酵母細胞と比較して、同じ条件で培養される場合により高い力価で本化合物を生成できる。
【0163】
Ncb5orは、植物、昆虫または哺乳動物、例えば、Homo sapiensなどから生じてよい。一実施形態では、Ncb5orは、昆虫、例えば、Agrotis、Amyelois、Aphantopus、Arctia、Bicyclus、Bombus、Bombyx、Chilo、Cydia、Danaus、Drosophila、Eumeta、Galleria、Helicoverpa、Heliothis、Hyposmocoma、Leptidea、Lobesia、Manduca、Operophtera、Ostrinia、Papilio、Papilio、Papilio、Pieris、Plutella、Spodoptera、Trichoplusia、及びVanessa属の昆虫などから生じる。一実施形態では、Ncb5orは、Amyelois transitella、Agrotis segetum、Aphantopus hyperantus、Arctia plantaginis、Bicyclus anynana、Bombus terrestris、Bombyx mandarina、Bombyx mori、Chilo suppressalis、Cydia pomonella、Danaus plexippus、Drosophila grimshawi、Drosophila melanogaster、Eumeta japonica、Galleria mellonella、Helicoverpa armigera、Heliothis virescens、Hyposmocoma kahamanoa、Leptidea sinapis、Lobesia botrana、Manduca sexta、Operophtera brumata、Ostrinia furnacalis、Papilio machaon、Papilio polytes、Papilio xuthus、Pieris rapae、Plutella xylostella、Spodoptera frugiperda、Spodoptera litura、Trichoplusia ni、及びVanessa tameameaから選択される昆虫から生じる。
【0164】
一実施形態では、Ncb5orは、2022年5月10日に同じ出願人によって出願された「Improved methods and cells for increasing enzyme activity and production of insect pheromones」と題した特許出願PCT/EP2022/062641における節「配列概要」内の表「Ncb5or」に記載されるNcb5orの群から選択される。
【0165】
したがって、一実施形態では、Ncb5orは、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:88、配列番号:89及び配列番号:90に記載されるNcb5orまたはそれらに対して少なくとも70%の同一性もしくは類似性、例えば、それらに対して少なくとも75%などの同一性、少なくとも80%などの同一性、少なくとも85%などの同一性、少なくとも90%などの同一性、少なくとも95%などの同一性もしくは類似性を有する機能的バリアントの群から選択される。
【0166】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、WO2018/109163に、及び欧州特許第3555268号に、特に「Reduced activity of Hfd1,Hfd4,Pex10,Fao1,GPAT or a homologue thereof」と題した節に開示されるように1つ以上のタンパク質の活性が低下している。例えば、酵母細胞は、Pex10、Hfd1、Hfd4、Fao1及び/またはGPATの活性低下(すなわち、下方制御)をもたらす変異を有する場合がある。好ましくは、酵母細胞は、少なくともFao1ならびにHfd1、Hfd4、Pex10及び/またはGPATのうち1つ以上の活性低下をもたらす少なくとも1つの変異を有する。そのような変異は、異種デサチュラーゼ及び異種脂肪酸アシル-CoAレダクターゼを発現する酵母細胞内における不飽和脂肪族アルコール及び/または不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステルの生成を増加させる可能性がある。
【0167】
したがって、一実施形態では、酵母細胞は、Hfd1、Hfd4、GPAT、Fao1、Pex10のうち1つ以上の部分的または全体的な活性喪失をもたらす変異を有し、例えば、少なくともFao1及びHfd1、Hfd4、Pex10またはGPATのうち1つ以上の部分的または全体的な活性喪失をもたらす変異などを有する。
【0168】
一実施形態では、酵母細胞は、PEX10(アクセッション番号:XP_501311.1)ならびにHFD1(アクセッション番号:XP_505802.1)、HFD4(アクセッション番号:XP_500380.1X)、FAO1(アクセッション番号:XP_500864.1)及び/またはGPAT(アクセッション番号:XP_501275.1)のうち少なくとも1つ、あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性を有するそのホモログに変異を有する。
【0169】
一実施形態では、酵母細胞は、FAO1(アクセッション番号:XP_500864.1)ならびにHFD1(アクセッション番号:XP_505802.1)、HFD4(アクセッション番号:XP_500380.1X)、PEX10(アクセッション番号:XP_501311.1)及び/またはGPAT(アクセッション番号:XP_501275.1)のうち少なくとも1つ、あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性を有するそのホモログに変異を有する。
【0170】
一実施形態では、HFD1(アクセッション番号:XP_505802.1)、HFD4(アクセッション番号:XP_500380.1X)、PEX10(アクセッション番号:XP_501311.1)及び/またはFAO1(アクセッション番号:XP_500864.1)またはそれらに対して少なくとも60%の同一性を有するそのホモログが欠失もしくは変異し、Hfd1、Hfd4、Pex10、及び/またはFao1の活性の部分的喪失もしくは全体的喪失をもたらし、及び/またはGPATもしくはそれに対して少なくとも60%の同一性を有するそのホモログが変異し、GPATの活性低下をもたらす。
【0171】
一実施形態では、酵母細胞は、少なくとも1つのPOX遺伝子、例えば、POX1(アクセッション番号:O74934.1)、POX2(アクセッション番号:XP_505264.1)、POX3(アクセッション番号:XP_503244.1)、POX4(アクセッション番号:XP_504475.1)、POX5(アクセッション番号:XP_502199.1)、及びPOX6(アクセッション番号:XP_503632.1)からなる群から選択されるPOX遺伝子などにおける変異を含む。
【0172】
一実施形態では、酵母細胞は、POX1(アクセッション番号:O74934.1)、POX2(アクセッション番号:XP_505264.1)、POX3(アクセッション番号:XP_503244.1)、POX4(アクセッション番号:XP_504475.1)、POX5(アクセッション番号:XP_502199.1)、及び/またはPOX6(アクセッション番号:XP_503632.1)あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性を有するそのホモログに欠失または変異を含み、Pox1、Pox2、Pox3、Pox4、Pox5及び/またはPox6の部分的な活性喪失または全体的な活性喪失をもたらす。
【0173】
酵母細胞は、任意の種類のタンパク質を発現するようにさらに操作されてよい。そのような他のタンパク質の発現は、本明細書に開示される化合物の生成、例えば、力価などを改善する場合がある。一実施形態では、酵母細胞は以下を発現する:
i)異種シトクロムb5、
ii)異種シトクロムb5レダクターゼ、
iii)ヘモグロビン、
iv)異種チオエステラーゼ遺伝子、及び/または
v)脂肪酸アシルシンターゼとチオエステラーゼとの融合タンパク質。
【0174】
酵母細胞の天然遺伝子も操作されてよい。一実施形態では、酵母細胞は、以下の不活性化または改変を有する:
i)全体的もしくは部分的な活性喪失をもたらす天然エロンガーゼ(複数可)、
ii)全体的もしくは部分的な活性喪失をもたらすチオエステラーゼ(複数可)、及び/または
iii)天然脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪族アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム形成因子及び/または脂肪酸アシルシンターゼ(複数可)の活性。
【0175】
いくつかの実施形態では、14個の鎖長を有する脂肪酸アシルの利用能が増加またはさらに増加するように、酵母細胞がさらに改変される。例えば、脂肪酸シンターゼ複合体は、テトラデカノイル-CoAの形成が増加するように操作されてよい。脂肪酸シンターゼ複合体(EC2.3.1.86)は、2つのサブユニット、すなわち、Fas1(ベータサブユニット)及びFas2(アルファサブユニット)からなる。アルファサブユニットは、合成脂肪酸の長さの決定に関与すると仮定されるケトアシルシンターゼドメイン(「結合ポケット」)を含む。
【0176】
したがって、代謝フラックスを、14個の炭素(C14)の鎖長を有する不飽和脂肪族アルコール、酢酸エステルまたはアルデヒドの生成に誘導するために、酵母細胞は、改変されたケトンシンターゼドメインを有する脂肪酸アシルシンターゼバリアントをさらに発現してよい。理論に束縛されるものではないが、改変されたケトンシンターゼドメインによって改変された結合ポケットがもたらされ、それゆえ、C14基質などの中間の長さの基質をより容易に収容し、それによってより高い割合のC14生成物を生成すると仮定される。
【0177】
一実施形態では、酵母細胞は、本明細書に記載されるような酵母細胞であり、本細胞は、改変された脂肪酸シンターゼ複合体をさらに発現する。一実施形態では、脂肪酸シンターゼ複合体は、複合体のアルファサブユニットをコードする遺伝子を変異させることによって改変される。いくつかの実施形態では、変異は、FAS2をコードする遺伝子内にある。一実施形態では、酵母細胞は、Yarrowia lipolytica酵母細胞であり、変異によって、Yarrowia lipolytica FAS2の残基1220(I1220)、残基1217(M1217)または残基1226(M1226)のうち1つ以上の改変がもたらされ、バリアントFAS2を生じる場合がある。当業者であれば、そのような変異を設計する方法を知っていることになる。
【0178】
好ましくは、変異によって、I1220Fバリアント、I1220Wバリアント、I1220YバリアントまたはI1220Hバリアントが生じる。特定の実施形態では、変異によってI1220Fバリアントが生じる。いくつかの実施形態では、変異によって、M1217Fバリアント、M1217Wバリアント、M1217YバリアントまたはM1217Hバリアントが生じる。他の実施形態では、変異によって、M1226Fバリアント、M1226Wバリアント、M1226YバリアントまたはM1226Hバリアントが生じる。上記変異のうち2つ以上、例えば、残基I1220、M1217またはM1226の2つの変異または3つの変異などを有する酵母細胞も企図される。
【0179】
細胞によって生成される脂肪酸アシル-CoAは、細胞によって対応する脂肪酸にさらに変換されてよい。本脂肪酸は、遊離脂肪酸またはトリアシルグリセリド(脂質)の一部であってよい。
【0180】
一実施形態では、酵母細胞は、少なくとも0.005mg/L、例えば、少なくとも0.01mg/Lなど、少なくとも0.02mg/Lなど、少なくとも0.03mg/Lなど、少なくとも0.05mg/Lなど、少なくとも0.06mg/Lなど、少なくとも0.075mg/Lなど、少なくとも0.1mg/Lなど、少なくとも0.2mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.6mg/Lなど、少なくとも0.7mg/Lなど、少なくとも0.8mg/Lなど、少なくとも0.9mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも2mg/Lなど、少なくとも3mg/Lなど、少なくとも4mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、少なくとも25mg/Lなど、少なくとも30mg/Lなど、少なくとも35mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも60mg/Lなど、少なくとも70mg/Lなど、少なくとも80mg/Lなど、少なくとも90mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも200mg/Lなど、少なくとも300mg/Lなど、少なくとも400mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも10g/Lなど、少なくとも20g/Lなど、少なくとも50g/Lなど、少なくとも100g/Lなどの、またはそれを超える力価でE12-脂肪酸及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン酸を生成できる。
【0181】
一実施形態では、酵母細胞は、少なくとも0.005mg/L、例えば、少なくとも0.01mg/Lなど、少なくとも0.02mg/Lなど、少なくとも0.03mg/Lなど、少なくとも0.05mg/Lなど、少なくとも0.06mg/Lなど、少なくとも0.075mg/Lなど、少なくとも0.1mg/Lなど、少なくとも0.2mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.6mg/Lなど、少なくとも0.7mg/Lなど、少なくとも0.8mg/Lなど、少なくとも0.9mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも2mg/Lなど、少なくとも3mg/Lなど、少なくとも4mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、少なくとも25mg/Lなど、少なくとも30mg/Lなど、少なくとも35mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも60mg/Lなど、少なくとも70mg/Lなど、少なくとも80mg/Lなど、少なくとも90mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも200mg/Lなど、少なくとも300mg/Lなど、少なくとも400mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも10g/Lなど、少なくとも20g/Lなど、少なくとも50g/Lなど、少なくとも100g/Lなどの、またはそれを超える力価でE12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを生成できる。
【0182】
異種Δ12デサチュラーゼ、任意にさらなる異種デサチュラーゼ、及びさらに任意に異種FARを発現する、本明細書に開示される酵母細胞は、12位に二重結合を有し、12位以外の位置(複数可)に任意に他の二重結合(複数可)を有する、少なくとも13個の炭素鎖長を有する不飽和脂肪酸アシル-CoA及び/または不飽和脂肪族アルコールを生成できる。
【0183】
したがって、本明細書では、本明細書に提示される方法に従って得られる不飽和脂肪酸アシル-CoA及び不飽和脂肪族アルコールが提供される。
【0184】
また本明細書では、本発明によるフェロモン化合物を生成できる酵母細胞が提供され、酵母細胞は、異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現する。
【0185】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、さらなる異種デサチュラーゼを発現する。
【0186】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をさらに発現する。
【0187】
さらに本明細書では、本明細書に提示される方法に従って得られる不飽和脂肪酸アシル-CoA及び/または不飽和脂肪族アルコールの使用が提供される。そのような化合物は、例えば、害虫の存在をモニターするために、または害虫の存在を妨害するために使用され得、例えば、それらはフェロモン組成物として製剤化され得る。
【0188】
不飽和脂肪酸アシル-CoA
一実施形態では、酵母細胞は、異種Δ12デサチュラーゼ、及び任意にさらなるデサチュラーゼを発現し、本酵母細胞は、12位に二重結合を有し、任意に12位以外の位置に二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる。
【0189】
したがって、本明細書に開示される酵母細胞は、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成でき、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
本酵母細胞は、異種Δ12デサチュラーゼを発現し、本デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-COAの12位に二重結合を導入でき、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である。
【0190】
好ましい実施形態では、基質として使用される飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA及びn’個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、同じ炭素鎖長を有する。
【0191】
一実施形態では、酵母細胞は、本明細書の節「さらなるデサチュラーゼ」に開示されるようなさらなるデサチュラーゼを発現する。
【0192】
一実施形態では、n=0である。言い換えれば、酵母細胞は、二重結合を有しない飽和脂肪酸アシル-CoAに、最大で4個の二重結合、例えば、1個、2個、3個、または4個などの二重結合を導入できる。したがって、本酵母細胞は、1個、2個、3個、または4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる。好ましい実施形態では、酵母細胞は、二重結合をテトラデカノイル-CoAに導入し、それによって、本テトラデカノイル-CoAを(E12)-テトラデセノイル-CoAに変換できる。
【0193】
一実施形態では、n=1である。言い換えれば、酵母は、12位以外の位置、例えば、8位、9位、10位、11位、13位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、20位、21位または22位などに1個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに、最大で3個の二重結合、例えば、1個、2個または3個などの二重結合を導入できる。したがって、本酵母細胞は、2個、3個または4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは2個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる。一実施形態では、酵母細胞は、9位に二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに二重結合を導入できる。好ましい実施形態では、酵母細胞は、二重結合を(Z9)-テトラデセノイル-CoAに導入し、それによって、本(Z9)-テトラデセノイル-CoAを(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAに変換できる。
【0194】
一実施形態では、n=2である。言い換えれば、酵母細胞は、12位以外の位置に2個の二重結合、例えば、8位、9位、10位、11位、13位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、20位、21位または22位のうち少なくとも2箇所に二重結合などを有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに、最大で2個の二重結合、例えば、1個または2個などの二重結合を導入できる。したがって、本酵母細胞は、3個または4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる。
【0195】
一実施形態では、n=3である。言い換えれば、酵母は、12位以外の位置に3個の二重結合、例えば、8位、9位、10位、11位、13位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、20位、21位または22位のうち少なくとも3箇所に1個の二重結合などを有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに1個の二重結合を導入できる。したがって、本酵母細胞は、4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる。
【0196】
一実施形態では、n’=1及びn=0である。言い換えれば、酵母細胞は、二重結合を有しない飽和脂肪酸アシル-CoAを、12位に1個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換できる。
【0197】
一実施形態では、n’=2及びn=0である。言い換えれば、酵母細胞は、飽和脂肪酸アシル-CoAを、2個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0198】
一実施形態では、n’=3及びn=0である。言い換えれば、酵母細胞は、飽和脂肪酸アシル-CoAを、3個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0199】
一実施形態では、n’=4及びn=0である。言い換えれば、酵母細胞は、飽和脂肪酸アシル-CoAを、4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0200】
好ましい実施形態では、n’=2及びn=1である。言い換えれば、酵母細胞は、1個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを、2個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0201】
一実施形態では、n’=3及びn=1である。言い換えれば、酵母細胞は、1個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを、3個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0202】
一実施形態では、n’=4及びn=1である。言い換えれば、酵母細胞は、1個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを、4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0203】
一実施形態では、n’=3及びn=2である。言い換えれば、酵母細胞は、2個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを、3個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0204】
一実施形態では、n’=4及びn=2である。言い換えれば、酵母細胞は、2個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを、4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0205】
一実施形態では、n’=4及びn=3である。言い換えれば、酵母細胞は、3個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを、4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAに変換でき、1個の二重結合が12位にある。
【0206】
一実施形態では、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAは、少なくとも13個、例えば、少なくとも14個など、少なくとも15個など、少なくとも16個など、少なくとも17個など、少なくとも18個など、少なくとも19個など、少なくとも20個など、少なくとも21個など、少なくとも22個などの炭素鎖長を有する。好ましい実施形態では、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAは、13、14、15、16、17または18個の炭素鎖長を有する。
【0207】
一実施形態では、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAは、14個の長さを有し、テトラデカノイル-CoAまたは(Z9)-テトラデセノイル-CoAである。好ましい実施形態では、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAは、14個の長さを有し、(Z9)-テトラデセノイル-CoAである。
【0208】
一実施形態では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、少なくとも13個、例えば、少なくとも14個など、少なくとも15個など、少なくとも16個など、少なくとも17個など、少なくとも18個など、少なくとも19個など、少なくとも20個など、少なくとも21個など、少なくとも22個などの炭素鎖長を有する。一実施形態では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、多くとも18個、例えば、多くとも17個など、多くとも16個など、多くとも15個など、多くとも14個など、多くとも13個など、多くとも12個などの炭素鎖長を有する。好ましい実施形態では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、13、14、15、16、17または18個の炭素鎖長を有する。
【0209】
一実施形態では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、1個の二重結合を有し、(E12)-テトラデセノイル-CoAである。
【0210】
一実施形態では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、2個の二重結合を有し、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAである。
【0211】
したがって、また本明細書では、本明細書に提示される方法に従って得られる(E12)-テトラデセノイル-CoA及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAも提供される。
【0212】
不飽和脂肪族アルコール
一実施形態では、Δ12デサチュラーゼ、及び任意にさらなるデサチュラーゼを発現する酵母細胞はまた、本明細書の節「脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ」に提示されるようなFARも発現する。本酵母細胞は、12位に二重結合を有し、任意に12位以外の位置、例えば、9位などに二重結合を有する不飽和脂肪族アルコールを生成できてよい。
【0213】
不飽和脂肪族アルコールを生成するために必要な本FARは、本明細書の節「脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ」に記載される任意のFARであり得、本不飽和脂肪族アルコールは、本明細書の節「不飽和脂肪酸アシル-CoA」に記載される脂肪酸アシル-CoAに対応する任意の不飽和脂肪族アルコールであり得る。
【0214】
一実施形態では、不飽和脂肪族アルコールは、(E12)-脂肪族アルコール、例えば、(E12)-テトラデセン-1-オールなどである。一実施形態では、不飽和脂肪族アルコールは、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールである。
【0215】
したがって、さらに本明細書では、本明細書に提示される方法によって得られる(E12)-脂肪族アルコール、例えば、(E12)-テトラデセン-1-オール、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールなどが提供される。
【0216】
不飽和脂肪酸アシル-CoAの生成方法
本明細書では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成する方法が提供され、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が、酵母細胞内の12位にあり、本方法は、
i)本明細書で定義されるような酵母細胞を提供するステップ、
ii)異種Δ12デサチュラーゼの発現を可能にする条件下において培地中で本酵母細胞をインキュベートし、本デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できるステップを含み、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4であり、
それによって、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成し、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にある。
【0217】
好ましい実施形態では、基質として使用される飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA及びn’個の二重結合を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、同じ炭素鎖長を有する。
【0218】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、本明細書の節「Δ12デサチュラーゼ」に定義される通りである。例えば、Δ12デサチュラーゼは、PlodiaΔ12デサチュラーゼ、例えば、Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼなど、例えば、配列番号:2に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(Pid12)など、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の同一性もしくは類似性を有するその機能的バリアントであってよい。例えば、Δ12デサチュラーゼは、CadraΔ12デサチュラーゼ、例えば、Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼなど、例えば、配列番号:55に記載されるようなΔ12デサチュラーゼ(EcauDes12)など、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントであってよい。例えば、Δ12デサチュラーゼは、EphestiaΔ12デサチュラーゼ、例えば、Ephestia kuehniellaΔ12デサチュラーゼもしくはEphestia elutellaΔ12デサチュラーゼなど、例えば、配列番号:85(Eku_d12)もしくは配列番号:87(Ee_d12)に記載されるようなΔ12デサチュラーゼなど、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントであってよい。
【0219】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、本明細書の節「さらなるデサチュラーゼ」に定義される通りである。例えば、さらなるデサチュラーゼは、飽和または不飽和脂肪酸の12位以外の位置に二重結合を導入できるデサチュラーゼであってよい。いくつかの実施形態では、さらなるデサチュラーゼは、酵母細胞から生じるデサチュラーゼ、例えば、同種デサチュラーゼなどである。いくつかの実施形態では、さらなるデサチュラーゼは、酵母細胞から生じないデサチュラーゼ、例えば、異種デサチュラーゼなどである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Drosophilaデサチュラーゼ、例えば、Drosophila virilisデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:4に記載されるようなDesat61、もしくはDrosophila melanogasterデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:6に記載されるようなDesat24、もしくはDrosophila grimshawiデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:8に記載されるようなDesat59、もしくはDrosophila yakubaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:57に記載されるようなDesat56、もしくはDrosophila ananassaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:59に記載されるようなDesat60、Amyeloisデサチュラーゼ、例えば、Amyelois transitellaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:10に記載されるようなDesat17もしくは配列番号:12に記載されるようなDesat18、Choristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Choristoneura parallelaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:61に記載されるようなDesat74、Spodopteraデサチュラーゼ、例えば、Spodoptera lituraデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:18に記載されるようなDesat26、Saccharomycesデサチュラーゼ、例えば、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:14に記載されるようなDesat42、Yarrowiaデサチュラーゼ、例えば、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼなど、例えば、配列番号:16に記載されるようなDesat69、またはそれらのデサチュラーゼに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである。
【0220】
少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAは、本明細書の節「不飽和脂肪酸アシル-CoA」で定義される通りであってよい。一実施形態では、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAは、テトラデカノイル-CoAまたは(Z9)-テトラデセノイル-CoAである。
【0221】
n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、本明細書の節「不飽和脂肪酸アシル-CoA」で定義される通りであってよい。一実施形態では、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAは、(E12)-テトラデセノイル-CoA及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAである。
【0222】
一実施形態では、本方法は、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoA、例えば、(E12)-テトラデセノイル-CoA及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAなどを、少なくとも0.005mg/L、例えば、少なくとも0.01mg/Lなど、少なくとも0.02mg/Lなど、少なくとも0.03mg/Lなど、少なくとも0.05mg/Lなど、少なくとも0.06mg/Lなど、少なくとも0.075mg/Lなど、少なくとも0.1mg/Lなど、少なくとも0.2mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.6mg/Lなど、少なくとも0.7mg/Lなど、少なくとも0.8mg/Lなど、少なくとも0.9mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも2mg/Lなど、少なくとも3mg/Lなど、少なくとも4mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、少なくとも25mg/Lなど、少なくとも30mg/Lなど、少なくとも35mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも60mg/Lなど、少なくとも70mg/Lなど、少なくとも80mg/Lなど、少なくとも90mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも200mg/Lなど、少なくとも300mg/Lなど、少なくとも400mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも10g/Lなど、少なくとも20g/Lなど、少なくとも50g/Lなど、少なくとも100g/Lなどの、またはそれを超える力価で生じる。
【0223】
一実施形態では、酵母細胞は、(E12)-テトラデセノイル-CoA及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を、それぞれ(E12)-テトラデセン-1-オール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をさらに発現する。
【0224】
FARは、本明細書の節「脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ」で定義される通りであってよい。例えば、FARは、Agrotis FAR、例えば、Agrotis segetum FARなど、例えば、配列番号:75に記載されるようなFAR12、Bicyclus FAR、例えば、Bicyclus anynana FARなど、例えば、配列番号:77に記載されるようなFAR11、Helicoverpa FAR、例えば、Helicoverpa armigera FARもしくはHelicoverpa assulta FARなど、例えば、配列番号:20に記載されるようなFAR1もしくは配列番号:71に記載されるようなFAR6、Heliothis FAR、例えば、Heliothis subflexa FARもしくはHeliothis virescens FARなど、例えば、配列番号:69に記載されるようなFAR4もしくは配列番号:79に記載されるようなFAR5、Ostrinia FAR、例えば、Ostrinia furnacalis FAR、Ostrinia zag FARもしくはOstrinia zea FARなど、例えば、配列番号:63に記載されるようなFAR44、配列番号:65に記載されるようなFAR48もしくは配列番号:67に記載されるようなFAR49、Plodia FAR、例えば、Plodia interpunctella FARなど、例えば、配列番号:28に記載されるようなFAR28もしくは配列番号:30に記載されるようなFAR32、Spodoptera FAR、例えば、Spodoptera exigua FARなど、例えば、配列番号:22に記載されるようなFAR16、もしくは配列番号:24に記載されるようなFAR17、もしくはSpodoptera litura FARなど、例えば、配列番号:26に記載されるようなFAR19、Trichoplusia FAR、例えば、Trichoplusia ni FARなど、例えば、配列番号:32に記載されるようなFAR38、Yponomeuta FAR、例えば、Yponomeuta rorellus FARなど、例えば、配列番号:73に記載されるようなFAR8、またはそれらのFARに対して少なくとも60%の類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントであってよい。
【0225】
一実施形態では、本方法は、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、少なくとも0.005mg/L、例えば、少なくとも0.01mg/Lなど、少なくとも0.02mg/Lなど、少なくとも0.03mg/Lなど、少なくとも0.05mg/Lなど、少なくとも0.06mg/Lなど、少なくとも0.075mg/Lなど、少なくとも0.1mg/Lなど、少なくとも0.2mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.6mg/Lなど、少なくとも0.7mg/Lなど、少なくとも0.8mg/Lなど、少なくとも0.9mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも2mg/Lなど、少なくとも3mg/Lなど、少なくとも4mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、少なくとも25mg/Lなど、少なくとも30mg/Lなど、少なくとも35mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも60mg/Lなど、少なくとも70mg/Lなど、少なくとも80mg/Lなど、少なくとも90mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも200mg/Lなど、少なくとも300mg/Lなど、少なくとも400mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも10g/Lなど、少なくとも20g/Lなど、少なくとも50g/Lなど、少なくとも100g/Lなどの、またはそれを超える力価で生じる。
【0226】
一実施形態では、本方法は、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを回収するステップをさらに含む。
【0227】
一実施形態では、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールは、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルにさらに改変される。
【0228】
一実施形態では、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルへの変換は、インビトロで実施される。
【0229】
一実施形態では、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルへの変換は、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換できるアセチルトランスフェラーゼを細胞内でさらに発現させることによってインビボで実施される。
【0230】
一実施形態では、本方法は、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、(E12)-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップをさらに含む。一実施形態では、アルデヒドへの変換は、化学変換または酵素変換である。
【0231】
本開示の化合物は、本明細書に記載されるように、当業者に既知の方法によって、または同じ出願人による2021年8月6日に出願の欧州特許出願第EP21190097.2号に記載されるように酸化されてよい。一実施形態では、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールは、(E12)-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに化学的に酸化される。
【0232】
本開示の化合物は、本明細書に記載されるように、または当業者に既知の方法によってアセチル化されてよい。一実施形態では、E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールは、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに化学的にアセチル化される。
【0233】
一実施形態では、本方法は、E12-脂肪族アルコール、例えば、(E12)-テトラデセン-1-オールなど、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、(E12)-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールを、本明細書の節「フェロモン組成物」で定義されるようなフェロモン組成物に製剤化するステップをさらに含む。
【0234】
したがって、本明細書では、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの生成方法が提供され、本方法は、
i)本明細書で開示されるような酵母細胞を提供するステップ、
ii)以下の発現を可能にする条件下において培地中で本酵母細胞をインキュベートするステップ:
a.さらなるデサチュラーゼであって、本デサチュラーゼが、テトラデカノイル-CoAの9位に二重結合を導入し、それによって、テトラデカノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9)-テトラデセノイル-CoAに変換できる、前記さらなるデサチュラーゼ、
b.異種Δ12デサチュラーゼであって、本デサチュラーゼが、(Z9)-テトラデセノイル-CoAの12位に二重結合を導入し、それによって、(Z9)-テトラデセノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAに変換できる、前記異種Δ12デサチュラーゼ、
c.FARであって、本FARが、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる、前記FAR、
iii)任意に、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを回収するステップ、
iv)任意に、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
v)任意に、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
vi)任意に、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物に製剤化するステップ
を含む。
【0235】
核酸
本明細書では、酵母細胞を改変するための核酸または核酸の系が提供され、本核酸または系は、異種Δ12デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、本デサチュラーゼは、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、それによって、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成し、本二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である。
【0236】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、配列番号:1に記載されるような、Plodia interpunctellaΔ12デサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性、例えば、それに対して少なくとも61%などの同一性、少なくとも62%などの同一性、少なくとも63%などの同一性、少なくとも64%などの同一性、少なくとも65%などの同一性、少なくとも66%などの同一性、少なくとも67%などの同一性、少なくとも68%などの同一性、少なくとも69%などの同一性、少なくとも70%などの同一性、少なくとも71%などの同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%などの同一性、100%などの同一性を有する核酸によってコードされる。
【0237】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、配列番号:54に記載されるような、Cadra cautellaΔ12デサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性、例えば、それに対して少なくとも61%などの同一性、少なくとも62%などの同一性、少なくとも63%などの同一性、少なくとも64%などの同一性、少なくとも65%などの同一性、少なくとも66%などの同一性、少なくとも67%などの同一性、少なくとも68%などの同一性、少なくとも69%などの同一性、少なくとも70%などの同一性、少なくとも71%などの同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%などの同一性、100%などの同一性を有する核酸によってコードされる。
【0238】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、配列番号:84に記載されるような、Ephestia kuehniellaΔ12デサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性、例えば、それに対して少なくとも61%などの同一性、少なくとも62%などの同一性、少なくとも63%などの同一性、少なくとも64%などの同一性、少なくとも65%などの同一性、少なくとも66%などの同一性、少なくとも67%などの同一性、少なくとも68%などの同一性、少なくとも69%などの同一性、少なくとも70%などの同一性、少なくとも71%などの同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%などの同一性、100%などの同一性を有する核酸によってコードされる。
【0239】
一実施形態では、異種Δ12デサチュラーゼは、配列番号:86に記載されるような、Ephestia elutellaΔ12デサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性、例えば、それに対して少なくとも61%などの同一性、少なくとも62%などの同一性、少なくとも63%などの同一性、少なくとも64%などの同一性、少なくとも65%などの同一性、少なくとも66%などの同一性、少なくとも67%などの同一性、少なくとも68%などの同一性、少なくとも69%などの同一性、少なくとも70%などの同一性、少なくとも71%などの同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%などの同一性、100%などの同一性を有する核酸によってコードされる。
【0240】
一実施形態では、核酸または核酸の系は、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位ではない任意の位置に、二重結合を導入できるさらなる異種デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:56、配列番号:58及び配列番号:60に記載されるデサチュラーゼからなる群から選択される核酸に対して少なくとも60%の同一性、例えば、それに対して少なくとも61%などの同一性、少なくとも62%などの同一性、少なくとも63%などの同一性、少なくとも64%などの同一性、少なくとも65%などの同一性、少なくとも66%などの同一性、少なくとも67%などの同一性、少なくとも68%などの同一性、少なくとも69%などの同一性、少なくとも70%などの同一性、少なくとも71%などの同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%などの同一性、100%などの同一性を有する核酸によってコードされる。
【0242】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:3に記載されるような、Drosophila virilisデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0243】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:5に記載されるような、Drosophila melanogasterデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0244】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:7に記載されるような、Drosophila grimshawiデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0245】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:9または配列番号:11に記載されるような、Amyelois transitellaデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0246】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:13に記載されるような、Saccharomyces cerevisiaeデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0247】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:15に記載されるような、Yarrowia lipolyticaデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0248】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:17に記載されるような、Spodoptera lituraデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0249】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:56に記載されるような、Drosophila yakubaデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0250】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:58に記載されるような、Drosophila ananassaeデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0251】
一実施形態では、さらなる異種デサチュラーゼは、配列番号:60に記載されるような、Choristoneura parallelaデサチュラーゼをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0252】
一実施形態では、核酸または核酸の系は、二重不飽和(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できるFARをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、FARは、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:62、配列番号:64、配列番号:66、配列番号:68、配列番号:70、配列番号:72、配列番号:74、配列番号:76及び配列番号:78に記載されるFARからなる群から選択される核酸に対して少なくとも60%の同一性、例えば、それに対して少なくとも61%などの同一性、少なくとも62%などの同一性、少なくとも63%などの同一性、少なくとも64%などの同一性、少なくとも65%などの同一性、少なくとも66%などの同一性、少なくとも67%などの同一性、少なくとも68%などの同一性、少なくとも69%などの同一性、少なくとも70%などの同一性、少なくとも71%などの同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%などの同一性、100%などの同一性を有する核酸によってコードされる。
【0254】
一実施形態では、FARは、配列番号:74に記載されるような、Agrotis segetum FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0255】
一実施形態では、FARは、配列番号:76に記載されるような、Bicyclus anynana FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0256】
一実施形態では、FARは、配列番号:19に記載されるような、Helicoverpa armigera FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0257】
一実施形態では、FARは、配列番号:70に記載されるような、Helicoverpa assulta FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0258】
一実施形態では、FARは、配列番号:68に記載されるような、Heliothis subflexa FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0259】
一実施形態では、FARは、配列番号:78に記載されるような、Heliothis virescens FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0260】
一実施形態では、FARは、配列番号:62に記載されるような、Ostrinia furnacalis FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0261】
一実施形態では、FARは、配列番号:64に記載されるような、Ostrinia zag FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0262】
一実施形態では、FARは、配列番号:66に記載されるような、Ostrinia zea FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0263】
一実施形態では、FARは、配列番号:27または配列番号:29に記載されるような、Plodia interpunctella FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0264】
一実施形態では、FARは、配列番号:21または配列番号:23に記載されるような、Spodoptera exigua FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0265】
一実施形態では、FARは、配列番号:25に記載されるような、Spodoptera litura FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0266】
一実施形態では、FARは、配列番号:31に記載されるような、Trichoplusia ni FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0267】
一実施形態では、FARは、配列番号:72に記載されるような、Yponomeuta rorellus FARをコードする核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸によってコードされる。
【0268】
本明細書では、所与の核酸に対して少なくとも60%の同一性を有する核酸は、所与の核酸に対して少なくとも61%の同一性、少なくとも62%などの同一性、少なくとも63%などの同一性、少なくとも64%などの同一性、少なくとも65%などの同一性、少なくとも66%などの同一性、少なくとも67%などの同一性、少なくとも68%などの同一性、少なくとも69%などの同一性、少なくとも70%などの同一性、少なくとも71%などの同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも76%など、少なくとも77%など、少なくとも78%など、少なくとも79%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、またはそれを超える同一性を有する場合がある。
【0269】
したがって、核酸の系は、酵母細胞内で発現される酵素をコードする複数のポリヌクレオチド、特に本明細書に記載されるような異種Δ12デサチュラーゼ、及び任意に本明細書に記載されるようなさらなる異種デサチュラーゼ、ならびにさらに任意にFAR及び/または追加の酵素、例えば、Ncb5orなどを含み得る。
【0270】
回収
本明細書に開示される方法によって得られる生成物を回収することが望ましい場合がある。したがって、本方法は、本明細書に提示される方法に従って生成される遊離形態の、または脂質としての不飽和脂肪酸、不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステル、及び/または不飽和脂肪族アルデヒドを回収するさらなるステップを含んでよい。
【0271】
いくつかの実施形態では、本方法は、不飽和脂肪族アルコールを回収するステップを含む。他の実施形態では、本方法は、不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステルを回収するステップを含む。
【0272】
本発明によって得られる生成物を回収する方法は当該技術分野において既知であり、デカン、ヘキサンまたは植物油などの疎水性溶媒による抽出を含んでよい。
【0273】
回収された生成物はさらに改変されてよく、例えば、本明細書で上に記載されるように、不飽和脂肪族アルコールが、対応する不飽和脂肪族アルデヒドまたは脂肪族の酢酸エステルに変換されてよい。不飽和脂肪族アルデヒド及び/または脂肪族の酢酸エステルが、例えば、インビボで、または細胞を関連酵素と接触させることによって培養培地中で直接生成される実施形態では、不飽和脂肪族アルデヒド及び/または脂肪族の酢酸エステルも回収されてよい。
【0274】
同じ出願人による、2020年9月22日出願の「Improved methods for production,recovery and secretion of hydrophobic compounds in a fermentation」という表題の出願WO2021/078452に記載されているように、発酵系を使用して、不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または不飽和脂肪族アルデヒドを生成できる細胞、特に酵母細胞を培養する場合、培養培地への抽出剤の添加によって力価及び細胞外分泌がさらに増加する場合がある。いくつかの実施形態では、培地は、水溶液中でその曇り濃度以上の量で抽出剤を含み、抽出剤は、消泡剤などの非イオン性界面活性剤、好ましくはポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエーテル分散液の混合物、シメチコンなどのモノステアリン酸ポリエチレングリコールを含む消泡剤ならびにエトキシル化及びプロポキシル化C16~C18アルコール系消泡剤から選択されるポリエトキシル化界面活性剤ならびにそれらの組合せである。いくつかの実施形態では、
-非イオン性界面活性剤は、エトキシル化及びプロポキシル化C16~C18アルコール系消泡剤、例えば、C16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート(CAS番号68002-96-0)などであり、培養培地は、少なくとも1vol/vol%のC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート、少なくとも1.5%など、少なくとも2%など、少なくとも2.5%など、少なくとも3%など、少なくとも3.5%など、少なくとも4%など、少なくとも5%など、少なくとも6%など、少なくとも7%など、少なくとも8%など、少なくとも9%など、少なくとも10%など、少なくとも12.5%など、少なくとも15%など、少なくとも17.5%など、少なくとも20%など、少なくとも22.5%など、少なくとも25%など、少なくとも27.5%など、少なくとも30vol/vol%などのC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート、もしくはそれを超えるものを含み、
-非イオン性界面活性剤は、ポリエチレンポリプロピレングリコール、例えば、Kollliphor(登録商標)P407(CAS番号9003-11-6)であり、培養培地は、少なくとも10vol/vol%のKolliphor(登録商標)P407などのポリエチレンポリプロピレングリコール、少なくとも11vol/vol%など、少なくとも12vol/vol%など、少なくとも13vol/vol%など、少なくとも14vol/vol%など、少なくとも15vol/vol%など、少なくとも16vol/vol%など、少なくとも17vol/vol%など、少なくとも18vol/vol%など、少なくとも19vol/vol%など、少なくとも20vol/vol%など、少なくとも25vol/vol%など、少なくとも30vol/vol%など、少なくとも35vol/vol%などのKolliphor(登録商標)P407などのポリエチレンポリプロピレングリコール、もしくはそれを超えるものを含み、
-非イオン性界面活性剤は、消泡剤204などのポリエーテル分散液の混合物であり、培養培地は、少なくとも1vol/vol%の消泡剤204などのポリエーテル分散液の混合物、少なくとも1.5%など、少なくとも2%など、少なくとも2.5%など、少なくとも3%など、少なくとも3.5%など、少なくとも4%など、少なくとも5%など、少なくとも6%など、少なくとも7%など、少なくとも8%など、少なくとも9%など、少なくとも10%など、少なくとも12.5%など、少なくとも15%など、少なくとも17.5%など、少なくとも20%など、少なくとも22.5%など、少なくとも25%など、少なくとも27.5%など、少なくとも30vol/vol%などの消泡剤204などのポリエーテル分散液の混合物、もしくはそれを超えるものを含み、及び/または
-非イオン性界面活性剤は、シメチコンなどのモノステアリン酸ポリエチレングリコールを含む非イオン性界面活性剤であり、培養培地は、少なくとも1vol/vol%のモノステアリン酸ポリエチレングリコールもしくはシメチコン、少なくとも1.5%など、少なくとも2%など、少なくとも2.5%など、少なくとも3%など、少なくとも3.5%など、少なくとも4%など、少なくとも5%など、少なくとも6%など、少なくとも7%など、少なくとも8%など、少なくとも9%など、少なくとも10%など、少なくとも12.5%など、少なくとも15%など、少なくとも17.5%など、少なくとも20%など、少なくとも22.5%など、少なくとも25%など、少なくとも27.5%など、少なくとも30vol/vol%などのモノステアリン酸ポリエチレングリコールもしくはシメチコン、またはそれを超えるものを含む。
【0275】
他の実施形態では、培養培地はその曇り濃度を、少なくとも50%、少なくとも100%など、少なくとも150%など、少なくとも200%など、少なくとも250%など、少なくとも300%など、少なくとも350%など、少なくとも400%など、少なくとも500%など、少なくとも750%など、少なくとも1000%など以上を超える量で抽出剤を含み、及び/または培養培地は、少なくとも2倍のその曇り濃度、少なくとも3倍などのその曇り濃度、少なくとも4倍などのその曇り濃度、少なくとも5倍などのその曇り濃度、少なくとも6倍などのその曇り濃度、少なくとも7倍などのその曇り濃度、少なくとも8倍などのその曇り濃度、少なくとも9倍などのその曇り濃度、少なくとも10倍などのその曇り濃度、少なくとも12.5倍などのその曇り濃度、少なくとも15倍などのその曇り濃度、少なくとも17.5倍などのその曇り濃度、少なくとも20倍などのその曇り濃度、少なくとも25倍などのその曇り濃度、少なくとも30倍などのその曇り濃度の量で抽出剤を含む。
【0276】
回収された生成物、すなわち、不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステル、及び/または不飽和脂肪族アルデヒドは、節「フェロモン組成物」に記載されるものなどのフェロモン組成物にも製剤化されてよい。一実施形態では、フェロモン組成物に製剤化される本回収された生成物は、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールである。組成物はさらに、液体または固体の担体または基材などの1つ以上の追加の化合物を含んでよい。脂肪族アルコールから得られる脂肪族アルデヒドもまた、そのような組成物中に含まれてよい。
【0277】
脂肪酸は、例えば、葉を均質化し、当該技術分野において既知の方法によって脂質を回収した後、当該技術分野において既知の方法によって回収され得る。回収した脂質を加水分解して遊離脂肪酸にし、エステル化して脂肪酸アルキルエステルにして、続いて脂肪族アルコールまたは脂肪族アルデヒドのいずれかに還元する。
【0278】
キット
本明細書では、本方法を実施するための要素のキットが提供される。要素のキットは、本明細書に記載されるような「すぐに使用できる」酵母細胞を含んでよい。一実施形態では、酵母細胞は、Yarrowia細胞、例えば、Yarrowia lipolytica細胞などである。一実施形態では、酵母細胞は、Saccharomyces細胞、例えば、Saccharomyces cerevisiae細胞などである。
【0279】
一実施形態では、要素のキットは、本明細書の節「核酸」に記載される核酸の系などの、生物内に導入される、目的の活性をコードする核酸または核酸の系を含む。核酸または核酸の系は、複数のベクターなどの複数の核酸構築物として提供されてよく、各ベクターは、1つまたはいくつかの所望の活性をコードする。
【0280】
要素のキットは、改変される酵母細胞を任意に含んでよい。
【0281】
要素のキットは、使用説明書も含んでよい。
【0282】
いくつかの実施形態では、要素のキットは、上記の全てまたは組合せを含む。
【0283】
フェロモン組成物
本発明は、化合物、特に不飽和脂肪族アルコール、及び不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステルに加えて、不飽和脂肪族アルデヒドなどのその誘導体、ならびにそれらの使用を提供する。特に、本発明の細胞及び方法を使用して得られる不飽和化合物は、フェロモン組成物の成分として有用である。そのようなフェロモン組成物は、総合的病害虫管理に有用な場合がある。それらは、当該技術分野において既知であるように、例えば、交配撹乱のために使用され得る。
【0284】
したがって、本方法によって、または本酵母細胞を使用して得られる不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルコールの酢酸エステル、及び不飽和脂肪族アルデヒドは、フェロモン組成物に製剤化されてよい。一実施形態では、(E12)-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/または対応する脂肪族アルデヒド及び/または脂肪族の酢酸エステルは、フェロモン組成物に製剤化される。
【0285】
そのようなフェロモン組成物は、総合的病害虫管理生成物として使用されてよく、それは害虫の存在をモニターする方法または害虫の交配を撹乱する方法に使用され得る。
【0286】
したがって、本明細書では害虫の存在をモニターする方法または害虫の交配を撹乱する方法が提供され、本方法は、以下のステップ:
i)本明細書に記載される方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/またはE12-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iii)E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
iv)本E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化するステップ、ならびに
v)本フェロモン組成物を総合的病害虫管理組成物として用いるステップ
を含む。
【0287】
また本明細書では、以下のステップを含む方法によって得られるフェロモン組成物が提供される:
i)本明細書に記載される方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/または(E12)-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)(E12)-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれ(E12)-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iii)(E12)-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれ(E12)-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
iv)本(E12)-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、(E12)-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化するステップ。
【0288】
また本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールを含むフェロモン組成物が提供され、フェロモン組成物は、少なくとも20%のバイオベース炭素、例えば、少なくとも30%などのバイオベース炭素、少なくとも40%などのバイオベース炭素、少なくとも50%などのバイオベース炭素、少なくとも60%などのバイオベース炭素、少なくとも70%などのバイオベース炭素、少なくとも80%などのバイオベース炭素、少なくとも85%などのバイオベース炭素、少なくとも90%などのバイオベース炭素、少なくとも95%などのバイオベース炭素、100%などのバイオベース炭素を含む。
【0289】
本フェロモン組成物中のE12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールの相対量は、作物及び/または防除される害虫の性質に応じて変動する場合があり、地理的な変動も存在する可能性がある。したがって、最適な相対量を決定するには、日常的な最適化が必要となる場合がある。
【0290】
したがって、フェロモン組成物は、1~100%のE12-脂肪族アルコール、1~100%の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、1~100%のE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、1~100%の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、1~100%のE12-脂肪族アルデヒド及び/または1~100%の(Z9,E12)-テトラデカジエナールを含んでよい。
【0291】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル対E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナール対E12-脂肪族アルデヒドの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0292】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対E12-脂肪族アルコールの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0293】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル対E12-脂肪族アルコールの酢酸エステルの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0294】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエナール対E12-脂肪族アルデヒドの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0295】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対Z9-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル対Z9-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナール対Z9-脂肪族アルデヒドの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0296】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対Z9-脂肪族アルコールの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0297】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル対Z9-脂肪族アルコールの酢酸エステルの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0298】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエナール対Z9-脂肪族アルデヒドの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0299】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対(Z9,E12)-テトラデカジエナール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0300】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対(Z9,E12)-テトラデカジエナール比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0301】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルの比は、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える。
【0302】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、少なくとも30%のバイオベース炭素、あるいは40%のバイオベース炭素、あるいは50%のバイオベース炭素、あるいは60%のバイオベース炭素、あるいは70%のバイオベース炭素、あるいは75%のバイオベース炭素、あるいは80%のバイオベース炭素、あるいは85%のバイオベース炭素、あるいは90%のバイオベース炭素、あるいは95%のバイオベース炭素を含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、少なくとも80%のバイオベース炭素、あるいは85%のバイオベース炭素、あるいは90%のバイオベース炭素、あるいは95%のバイオベース炭素、あるいは96%のバイオベース炭素、あるいは97%のバイオベース炭素、あるいは98%のバイオベース炭素、あるいは99%のバイオベース炭素を含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、30~100%のバイオベース炭素、あるいは40~100%のバイオベース炭素、あるいは50~100%のバイオベース炭素、あるいは60~100%のバイオベース炭素、あるいは70~100%のバイオベース炭素、あるいは75~100%のバイオベース炭素、あるいは80~100%のバイオベース炭素、あるいは85~100%のバイオベース炭素、あるいは90~100%のバイオベース炭素、あるいは95~100%のバイオベース炭素を含む。
【0305】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、80~100%のバイオベース炭素、あるいは85~100%のバイオベース炭素、あるいは90~100%のバイオベース炭素、あるいは95~100%のバイオベース炭素、あるいは96~100%のバイオベース炭素、あるいは97~100%のバイオベース炭素、あるいは98~100%のバイオベース炭素、あるいは99~100%のバイオベース炭素を含む。
【0306】
また本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールを含むフェロモン組成物が提供され、フェロモン組成物は、少なくとも20%の放射性14Cレベルを有する。
【0307】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、少なくとも30%、あるいは40%、あるいは50%、あるいは60%、あるいは70%、あるいは75%、あるいは80%、あるいは85%、あるいは90%、あるいは95%の放射性14Cレベルを有する。
【0308】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、少なくとも80%、あるいは85%、あるいは90%、あるいは95%、あるいは96%、あるいは97%、あるいは98%、あるいは99%の放射性14Cレベルを有する。
【0309】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、30~100%、あるいは40~100%、あるいは50~100%、あるいは60~100%、あるいは70~100%、あるいは75~100%、あるいは80~100%、あるいは85~100%、あるいは90~100%、あるいは95~100%の放射性14Cレベルを有する。
【0310】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、80~100%、あるいは85~100%、あるいは90~100%、あるいは95~100%、あるいは96~100%、あるいは97~100%、あるいは98~100%、あるいは99~100%の放射性14Cレベルを有する。
【0311】
また本明細書では、以下のステップを含む、本発明によるフェロモン組成物の生成方法が提供される:
i)本明細書で開示されるような方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/またはE12-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iii)E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
iv)E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化し、任意に液体または固体の担体または基材などの1つ以上の追加の化合物を含むステップ、
v)任意に、フェロモン組成物のバイオベース炭素含有量または放射性14Cレベルを決定するステップ。
【0312】
本明細書に開示されるようなフェロモン組成物は、生物農薬として使用されてよい。そのような組成物は、畑または果樹園の栽培物に噴霧または分配され得る。それらはまた、当該技術分野において既知であるように、例えば、ゴム隔膜上に浸漬され得るか、または他の成分と混合され得る。一実施形態では、組成物は、フェロモン組成物を拡散させるフェロモンディスペンサーなどのデバイス内に配置される。ディスペンサーは、例えば、予め調整可能な一定の速度でフェロモンを放出してよい。これにより交配撹乱を引き起こし、それによって害虫の繁殖を妨げ得るか、またはそれは害虫を捕獲するための捕獲デバイスと組み合わせて使用され得る。本フェロモン組成物が使用され得る害虫の非限定的な例は、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コナガ(Plutella xylostella)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、ケブカノメイガ(Crocidolomia binotalis)、アワノメイガ(Sesamia nonagrioides)、スグリコスカシバ(Synanthedon tipuliformis)、ヨモギトリバ(artichoke plume moth)(Platyptilia carduidactylal)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)、ビートアーミーワーム(Spodoptera exigua)、スジマダラメイガ(Cadra cautella)、サザンアーミーワーム(Spodoptera eridania)などである。したがって、本組成物を培養物に使用すると、実質的に環境に影響を与えることなく、作物収量の増加をもたらし得る。
【0313】
本フェロモン組成物中の脂肪族アルコール、脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または脂肪族アルデヒドの相対量は、作物及び/または防除される害虫の性質に応じて変動する場合があり、地理的な変動も存在する可能性がある。したがって、最適な相対量を決定するには、日常的な最適化が必要となる場合がある。
【0314】
害虫防除に使用される組成物の例は、H.armigeraについてはKehat&Dunkelblum(1993)、C.suppressalisについてはAlfaro et al.(2009)、S.nonagrioidesについてはEizaguirre et al.(2002)、P.xylostellaについてはWu et al.(2012)、P.carduidactylaについてはBari et al.(2003)、P.interpunctellaについてはZhu et al.(1999)、S.exiguaについてはWakamura(1987)、及びC.cautellaについてはBrady et al.(1971)に見出され得る。
【0315】
いくつかの実施形態では、フェロモン組成物はさらに、液体または固体の担体または基材などの1つ以上の追加の化合物を含んでよい。例えば、好適な担体または基材としては、植物油、精製鉱油またはその画分、ゴム、プラスチック、シリカ、珪藻土、ワックスマトリックス及びセルロース粉末が挙げられる。
【0316】
フェロモン組成物は、当該技術分野において既知であるように製剤化されてよい。例えば、それは溶液、ゲル、粉末の形態であってよい。フェロモン組成物は、当該技術分野において既知である通り、それが容易に分配され得るように製剤化されてよい。
【0317】
本交配撹乱方法は、トランスジェニック作物の分野で用いられてよい。
【0318】
また本明細書では、殺虫性形質に対する耐性の出現を減少または遅延させる方法も提供され、本方法は、総合的抵抗性管理方法であってよい。したがって、トランスジェニック殺虫作物に、及び/または化学殺虫剤に対する、害虫、例えば、昆虫、例えば、本明細書に列挙される昆虫のうちいずれかなどにおける耐性発現を遅延させる先制的な応答方法、すなわち、先制戦略が開示される。また、一旦耐性が発現されてしまった場合の、トランスジェニック殺虫作物及び/または化学殺虫剤に対する1つ以上の害虫の感受性を回復させる方法、すなわち、応答戦略も開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される方法によって得られるものなどのフェロモン組成物を、野外個体群を含む農業地域に適用することを含み、1つ以上の殺虫性形質、例えば、本明細書に列挙される昆虫のうち1つに対するトランスジェニック殺虫性形質活性などを含むトランスジェニック作物、及び任意に害虫の交配を撹乱し、それによって殺虫性形質に対する抵抗性の出現を遅延させるための、殺虫性形質を欠く作物を含む緩衝帯を含む。したがって、本組成物は、WO2017/112887に記載されている方法のいずれかと組み合わせて使用されてよい。
【0319】
また本明細書では、本明細書に列挙されるような昆虫などの害虫による作物被害を予防または軽減する方法も提供される。そのような方法は、本明細書に開示されるようなフェロモン組成物を適用することによって畑に交配撹乱を適用すること、及び1つ以上の害虫における1つ以上の標的遺伝子の発現を破壊し、それによって畑での作物被害を軽減または予防することを含む。1つ以上の標的遺伝子の発現の破壊は、例えば、WO2017/205751に記載されるように、RNAiを使用して達成され得る。したがって、本組成物は、WO2017/205751に記載されている方法のいずれかと組み合わせて使用されてよい。
【0320】
フェロモン化合物
また本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び(Z9,E12)-テトラデカジエナールからなる群から選択されるフェロモン化合物が提供され、フェロモン化合物は、少なくとも20%のバイオベース炭素を含む。
【0321】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、少なくとも30%のバイオベース炭素、あるいは40%のバイオベース炭素、あるいは50%のバイオベース炭素、あるいは60%のバイオベース炭素、あるいは70%のバイオベース炭素、あるいは75%のバイオベース炭素、あるいは80%のバイオベース炭素、あるいは85%のバイオベース炭素、あるいは90%のバイオベース炭素、あるいは95%のバイオベース炭素を含む。
【0322】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、少なくとも80%のバイオベース炭素、あるいは85%のバイオベース炭素、あるいは90%のバイオベース炭素、あるいは95%のバイオベース炭素、あるいは96%のバイオベース炭素、あるいは97%のバイオベース炭素、あるいは98%のバイオベース炭素、あるいは99%のバイオベース炭素を含む。
【0323】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、30~100%のバイオベース炭素、あるいは40~100%のバイオベース炭素、あるいは50~100%のバイオベース炭素、あるいは60~100%のバイオベース炭素、あるいは70~100%のバイオベース炭素、あるいは75~100%のバイオベース炭素、あるいは80~100%のバイオベース炭素、あるいは85~100%のバイオベース炭素、あるいは90~100%のバイオベース炭素、あるいは95~100%のバイオベース炭素を含む。
【0324】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、80~100%のバイオベース炭素、あるいは85~100%のバイオベース炭素、あるいは90~100%のバイオベース炭素、あるいは95~100%のバイオベース炭素、あるいは96~100%のバイオベース炭素、あるいは97~100%のバイオベース炭素、あるいは98~100%のバイオベース炭素、あるいは99~100%のバイオベース炭素を含む。
【0325】
また本明細書では、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び(Z9,E12)-テトラデカジエナールからなる群から選択されるフェロモン化合物が提供され、フェロモン化合物は、少なくとも20%の放射性14Cレベルを有する。
【0326】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、少なくとも30%、あるいは40%、あるいは50%、あるいは60%、あるいは70%、あるいは75%、あるいは80%、あるいは85%、あるいは90%、あるいは95%の放射性14Cレベルを有する。
【0327】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、少なくとも80%、あるいは85%、あるいは90%、あるいは95%、あるいは96%、あるいは97%、あるいは98%、あるいは99%の放射性14Cレベルを有する。
【0328】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、30~100%、あるいは40~100%、あるいは50~100%、あるいは60~100%、あるいは70~100%、あるいは75~100%、あるいは80~100%、あるいは85~100%、あるいは90~100%、あるいは95~100%の放射性14Cレベルを有する。
【0329】
いくつかの実施形態では、フェロモン化合物は、80~100%、あるいは85~100%、あるいは90~100%、あるいは95~100%、あるいは96~100%、あるいは97~100%、あるいは98~100%、あるいは99~100%の放射性14Cレベルを有する。
【0330】
さらに本明細書では、酵母細胞内における、本発明によるフェロモン化合物の生成方法が提供され、本方法は、以下のステップ:
i)異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現する酵母細胞を提供するステップ、
ii)異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼの発現を可能にする条件下において培地中で本酵母細胞をインキュベートするステップ
を含み、それによってフェロモン化合物を生成する。
【0331】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、さらなる異種デサチュラーゼを発現する。
【0332】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をさらに発現する。
【0333】
いくつかの実施形態では、本方法は、フェロモン化合物のバイオベース炭素含有量または放射性14Cレベルを決定するステップをさらに含む。
【0334】
バイオベース生成物
「バイオベース」生成物は、以下の生成物として定義されてよい:
1.生成物の全炭素含有量が少なくとも30%である
2.再生可能原料(バイオベース)の炭素含有量が、少なくとも20%である。
【0335】
化石原料及び再生可能原料の両方とも、主に炭素(C)からなる。炭素は、いくつかの同位体で生じる。同位体14Cは放射性であり、全ての生物(植物、動物など)において、大気中の相対的14C濃度とほぼ同一の一定の相対濃度で天然に存在する。この濃度では、14Cの放射能レベルは100%である。生物がもはや生息しなくなると、この濃度、すなわち、放射能率は、およそ5700年の半減期で減衰する。したがって、未知の物質の放射性14Cレベルは、物質中に含有される炭素がどの程度古いかを決定するのに役立ち得る。
【0336】
植物または動物などの再生可能原料に由来する「若い」炭素(0~10年)は、大気中の相対的14C濃度とほぼ同一である相対的な同位体14C濃度を有し、それゆえ、そのような若い炭素の放射性14Cレベルは、約100%である。
【0337】
合成源または化石(石油化学)源に由来する「古い」炭素(数百万年)は、そのような合成源及び化石源の経過年月が、およそ5700年である同位体14Cの半減期をはるかに超えるため、同位体14Cで大幅に枯渇している。したがって、合成源または化石源に由来する炭素は、およそ0%の相対的な同位体14C濃度を有し、それゆえ、そのような古い炭素の放射性14Cレベルは、約0%である。
【0338】
一実施形態では、「放射性14Cレベル」という用語は、上で定義されるような所与の物質、生成物または組成物の全放射性14Cレベルを指す。
【0339】
同位体14C法が、古い(化石)源の濃度と比較して若い(再生可能な)材料の濃度を決定するために使用されてよい。再生可能原料の炭素含有量は、「バイオベース炭素含有量」と称される。再生可能原料の炭素含有量または「バイオベース炭素含有量」は、以下に記載されるように決定されてよい。
【0340】
バイオベース炭素含有量を測定する場合、結果は「バイオベース炭素%」として報告されてよい。これは、「合成」または「化石」(石油化学)源に対する「天然」(植物または動物副生成物)源からの炭素のパーセンテージを示す。参考として、100%のバイオベース炭素は、材料が植物または動物副生成物から完全に供給されていることを示し、0%のバイオベース炭素は、材料が植物または動物副生成物からの炭素を一切含有していなかったことを示している。その間の値は、天然源と化石源との混合物を表している。
【0341】
例:生成物の放射性14Cレベルが80%である場合、これは、生成物が80%の再生可能炭素及び20%の化石炭素(C)からなることを意味する。言い換えれば、生成物は80%がバイオベースである。
【0342】
分析測定は、「現代炭素パーセント(pMC)」として言及される場合がある。これは、現代の参照基準(NIST 4990C)に対する試料中で測定された14Cのパーセンテージである。バイオベース炭素含有量%は、現在の空気中における二酸化炭素の14Cの小さい調整係数を適用することによってpMCから算出される。14Cを使用する全ての国際的に認められた標準は、植物またはバイオマスの供給原料が、自然環境から得られたと想定していることに留意することが重要である。
【実施例】
【0343】
実施例1-BioBrick及びプラスミドの構築
全ての異種遺伝子を、GeneArt(Life Technologies)によって、Yarrowia lipolyticaに対するコドン最適化型で合成した。全ての遺伝子を、Phusion U Hot Start DNA Polymerase(ThermoFisher)を使用してPCRによって増幅し、酵母発現ベクターにクローニングするための断片を得た。プライマーを表1に列挙し、得られたDNA断片(BioBrick)を表2に列挙する。「***BsaI」で標識したBioBrickを、製造業者の指示に従って、示した親プラスミドのBsaI制限消化によって得た。PCR産物または制限消化反応物を、Midori Green Advance(Nippon Genetics Europe GmbH)を含有する1%アガロースゲル上で分離した。正確なサイズのPCR産物/制限消化物をゲルから切り取り、Nucleospin Gel and PCR Clean-upキット(Macherey-Nagel)を使用して精製した。
【0344】
USERカセットを含む酵母ベクターを、FastDigest SfaAI(ThermoFisher)を用いて37℃で2時間線状化し、次いでNb.Bsml(New England Biolabs)を用いて65℃で1時間ニックを入れた。付着末端を含有する得られたベクターをゲル電気泳動によって分離してゲルから切り取り、Nucleospin Gel and PCR Clean-upキット(Macherey-Nagel)を使用してゲル精製した。DNA断片を、(Holkenbrink,et al.,2018、Jensen,et al.,EasyClone:method for iterative chromosomal integration of multiple genes in Saccharomyces cerevisiae,2014)に記載されるようなUSER-クローニングによってベクターにクローニングした。「ライゲーション」で印を付けたプラスミド(表3)を、製造業者の指示に従って、示したBioBrickを含むDNA T4ライゲーション反応によって得た。USER/T4リガーゼ反応物を化学的にコンピテントなE.coli DHα細胞に形質転換し、細胞を、100mg/Lのアンピシリンを含む溶原培地(LB)寒天プレート上に播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートし、得られたコロニーをコロニーPCRによってスクリーニングした。プラスミドを、E.coli液体培養物から一晩精製し、正確なクローニングをシーケンシングによって確認した。構築したベクターを表3に列挙する。
【0345】
「**」で印を付けた株を以下の通りに構築した。示した遺伝子を、フォワードプライマー内に「ACTTTTTGCAGTACUAACCGCAG」の5’オーバーハング及びリバースプライマー内に「CACGCGAU」の3’オーバーハングを含有する遺伝子特異的プライマーを用いて増幅した。標的遺伝子配列の最初の「ATG」を除去した。これらのPCR産物を、BB9454と共に(Holkenbrink,et al.,2018)に記載されるような組込みベクターまたはエピソーマルベクターのいずれかにクローニングした。
【0346】
Saccharomyces cerevisiaeに使用するためのエピソーム発現ベクターを、Jensen,2014に記載されているようにクローニングして形質転換した。デサチュラーゼDesat59及びPid12を、それぞれ遺伝子TEF1及びTDH3のS.cerevisiae天然プロモーターの制御下で発現させた。
【表1】
【表2】
【表3】
【0347】
実施例2-酵母株の構築
酵母株を、Holkenbrink et al.,2018、Jensen et al.,2014に記載されるようなDNAベクターの形質転換によって構築した。組込みベクターを、形質転換前にFastDigest NotIで線状化した。必要に応じて、特定のゲノム領域内への組込みを促進するためのヘルパーベクターを、表3に列挙した組込みプラスミドまたはDNA修復断片で共形質転換した。株を、適切な抗生物質のセレクションを用いて酵母ペプトンデキストロース(YPD)寒天上で、または特定のアミノ酸を欠いている合成ドロップアウト培地(Sigma-Adrich)上で選択した。正確な遺伝子型をコロニーPCRによって、及び必要に応じてシーケンシングによって確認した。得られた株を表4に列挙する。
【表4】
【0348】
実施例3-株の培養ならびに脂肪族アルコール及び脂肪酸メチルエステル(FAME)の分析
Yarrowia lipolytica株を、YPD寒天プレート(10g/Lの酵母抽出物、10g/Lのペプトン、20g/Lのグルコース、15g/Lの寒天)から、0.1~0.2の初期OD600まで24ウェルプレート(EnzyScreen)中の2.5mLのYPG培地(10g/Lの酵母抽出物、10g/Lのペプトン、40g/Lのグリセロール)に播種した。プレートを300rpmで振盪しながら28℃でインキュベートした。22時間後、プレートを3,000×gで5分間、4℃で遠心分離した。上清を廃棄し、細胞をウェル当たり1.25mLの生産培地(50g/Lのグリセロール、5g/Lの酵母抽出物、4g/LのKH2PO4、1.5g/LのMgSO4、0.2g/LのNaCl、0.265g/LのCaCl2.2H2O、2mL/Lの微量元素溶液:4.5g/LのCaCl2.2H2O、4.5g/LのZnSO4.7H2O、3g/LのFeSO4.7H2O、1g/LのH3BO3、1g/LのMnCl2.4H2O、0.4g/LのN Na2MoO4.2H2O、0.3g/LのCoCl2.6H2O、0.1g/LのCuSO4.5H2O、0.1g/LのKI、15g/LのEDTA)中に再懸濁した。必要に応じて、培地に抗生物質を補充した。プレートを300rpmで振盪しながら28℃で28時間インキュベートした。
【0349】
Saccharomyces cerevisiae株を、合成ドロップアウト寒天プレート(ウラシル、ロイシン及びヒスチジンを欠く)から、0.1~0.2の初期OD600まで24ウェルプレート(EnzyScreen)中の、2%グルコース、1%tergitol、オレイン酸(5.6ml/L)及びミリスチン酸メチル(2ml/L)を補充した2.5mLの合成ドロップアウト培地(ウラシル、ロイシン及びヒスチジンを欠く)に播種した。
【0350】
脂肪族アルコールの分析のために、1mlの培養ブロスを遠心分離し、上清を吸引して廃棄した。1mlの酢酸エチル:エタノール(84:15)及び内部標準物質として10μLのZ10-17:Me(2mg/mL)を、細胞ペレットに添加した。試料を20秒間ボルテックスして室温で1時間インキュベートし、続いて5分間ボルテックスした。300μLのH2Oを各試料に添加した。試料をボルテックスし、21℃及び3,000×gで5分間遠心分離した。上部の有機相をガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)によって分析した。GC-MS分析を、質量選択検出器Agilent 5977Bに連結したAgilent 7820A GC上で実施した。GCにはDB Fatwaxカラム(30m×0.25mm×0.25μm)を取り付け、キャリアガスとしてヘリウムを使用した。MSを電子衝撃モード(70eV)で動作させ、m/z30~400でスキャンし、インジェクターを220℃でスプリットモード20:1に設定した。オーブン温度を80℃まで1分間設定し、次いで20℃/分の速度で210℃まで上昇させ、続いて210℃で7分間保持し、次いで20℃/分の速度で230℃まで上昇させた。化合物を、参照化合物の保持時間及びマススペクトルの比較によって同定した。データを、Agilent Masshunterソフトウェアによって分析した。脂肪族アルコールの濃度を、参照標準を用いて準備した標準検量線に基づいて算出した。
【0351】
脂肪酸の分析のために、4℃及び3000×gで5分間、遠心分離によって1mLの各バイアルを採取した。各ペレットを1000μLの1M HClのメタノール(無水)溶液中で抽出した。試料を20秒間ボルテックスし、80℃の水浴中に2時間置いた。試料を30分ごとに10秒間ボルテックスした。試料を室温まで冷却した後、1000μLの1M NaOHのメタノール(無水)溶液、500μLのNaCl飽和H2O、990μLのヘキサン及び内部標準物質として10μLのZ10-17:Me(2mg/mL)を添加した。試料をボルテックスし、21℃及び3,000×gで5分間遠心分離した。上部の有機相を上に記載したようにGC-MSによって分析した。
【0352】
実施例4-酵母Yarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:CoAの生成
Drosophila virilisのΔZ9デサチュラーゼDesat61を、Yarrowia lipolytica株ST7982(Petkevicius et al.,2021)内において単独で(ST10628)、またはPlodia interpunctellaのPid12デサチュラーゼと組み合わせた(ST10870)いずれかで発現させ、それに対応する株ST10628及びST10870を得た。株を培養し、実施例3に記載したように脂肪酸を抽出した。
【0353】
ΔZ9デサチュラーゼDesat61を発現する株ST10628によって、Z9-14:Meが得られた(
図2B及び表4)。ΔZ9デサチュラーゼDesat61及び新たに同定したPid12デサチュラーゼの両方を発現する株ST10870によって、Z9-14:Me及び二重不飽和C14脂肪酸メチルエステルの両方が得られた。二重不飽和C14脂肪酸メチルエステルは、Z9,E12:Meの分析標準と同じ保持時間(10.2分)で溶出し(
図2A、C)、標準と同様のマススペクトルを示した(
図2D、E)。Z9-14:Me及びZ9,E12-14:Meの力価を表5に列挙する。
【表5】
【0354】
実施例5-Yarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:OHの生成
Drosophila virilisのデサチュラーゼDesat61及びPlodia interpunctellaのPid12デサチュラーゼを、単独で、または異なる昆虫種からの脂肪酸アシルレダクターゼと組み合わせたいずれかで、Y.lipolytica株ST7982(Petkevicius et al.,2021)中で発現させた。株を培養し、実施例3に記載したように脂肪族アルコールを抽出した。
【0355】
株ST10872~ST10879は、それぞれHelicoverpa armigeraの脂肪酸アシルレダクターゼFAR1、Spodoptera exiguaのFAR16、Spodoptera exiguaのFAR17、Spodoptera lituraのFAR19ならびにPlodia interpunctellaのFAR28、FAR29及びPiFAR31を発現し、Z9-14:OH及び標的化合物Z9,E12-14:OHの両方を生成した(表6)。FAR19を発現するST10875株は、0.88mg/Lの最高力価でZ9,E12-14:OHを生成した。FAR29及びFAR31を発現する株ST10877及びST10879は、少量のZ9-14:OHのみを生成し、Z9,E12-14:OHは生成しなかった。
【表6】
【0356】
実施例6-Yarrowia lipolytica内におけるP.interpunctellaデサチュラーゼの発現
株ST10629及びST11190~ST11193は、ΔZ9デサチュラーゼDesat61、脂肪酸アシルレダクターゼFAR1及びPlodia interpunctellaの様々なデサチュラーゼ遺伝子を発現する。株ST10661は、Desat61及びFAR1のみを発現する対照株として機能する。
【0357】
試験した全ての株がZ9-14:OHを生成したが、Pid12を発現する株のST10629のみが、0.6mg/lの力価でZ9,E12-14:OHを生成した。
【表7】
【0358】
実施例7-酵母Saccharomyces cerevisiae内におけるZ9,E12-14:CoA及びZ9,E12-14:OHの生成
ΔZ9デサチュラーゼDesat59もしくはDesat61または別のΔZ9デサチュラーゼ、Pid12デサチュラーゼ及び脂肪酸アシルレダクターゼを、Jensen et al.,2014に記載されているように、Saccharomyces cerevisiae遺伝子発現ベクターにクローニングし、S.cerevisiaeに形質転換し得る。実施例3と同様に、株の培養及び試料の抽出を実施できる。ΔZ9デサチュラーゼ及びPlodia interpunctellaのPid12デサチュラーゼを発現する株は、Z9,E12-14:Meを生成する一方で、脂肪酸アシルレダクターゼ遺伝子をさらに発現する株は、Z9,E12-14:OHを生成する。
【0359】
実施例8-他の脂肪酸アシル-CoAレダクターゼを使用したYarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:OHの生成
Drosophila virilisのデサチュラーゼDesat61及びPlodia interpunctellaのPid12デサチュラーゼを、単独で、またはPlodia interpunctellaの脂肪酸アシルレダクターゼFAR32と組み合わせたいずれかで、Y.lipolytica株ST7982(Petkevicius et al.,2021)中で発現させた。株を培養し、実施例3に記載したように脂肪族アルコールを抽出した。
【0360】
実施例9-バイオベース炭素含有量の測定
本発明によるフェロモン化合物のバイオベース炭素含有量を、「現代炭素パーセント(pMC)」として言及する場合がある分析測定を使用して測定する。これは、現代の参照基準(NIST 4990C)に対する試料中で測定された同位体14Cのパーセンテージである。バイオベース炭素含有量%を、現在の空気中における二酸化炭素の同位体14Cの小さい調整係数を適用することによってpMCから算出する。
【0361】
本発明によるフェロモン化合物は、80%超のバイオベース炭素含有量を有する。
【0362】
実施例10-Yarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:CoAの生成
Drosophila virilisのΔZ9デサチュラーゼDesat61を、Yarrowia lipolytica株ST7982(Petkevicius et al.,2021)内において単独で(ST10628)、またはCadra cautellaのEcauDes12デサチュラーゼと組み合わせた(ST12930)いずれかで発現させ、それに対応する株ST10628及びST12930を得る。株を培養し、実施例3に記載したように脂肪酸を抽出する。
【0363】
株ST10628の誘導体化抽出物がZ9-14:Meを含有した一方で、株ST12930の誘導体化抽出物は、Z9-14:Me及びZ9,E12-14:Meの両方を含有した。
【0364】
実施例11-酵母Saccharomyces cerevisiae内におけるZ9,E12-14:CoAの生成
ΔZ9デサチュラーゼDesat59を、Jensen et al.,2014に記載されているようにS.cerevisiae内において単独で、またはPid12と組み合わせたいずれかで発現させた。実施例3と同様に、株の培養及び試料の抽出を実施した。Desat59及びPid12を共発現する株ST12585の誘導体化抽出物が、0.05±0.00mg/LのZ9,E12-14:Meを含有した一方で、Desat59のみを発現する株ST12587の抽出物は、Z9,E12-14:Meを一切含有しなかった。
【0365】
実施例12-Z9,E12-14:OHのアセチル化によるZ9,E12-14:OAcの調製
アセチル化反応を、マグネチックスターラーを備えたガラス丸底フラスコ内で行った。反応フラスコに、2gのZ9,E12-14:OH(純度91%、9.5mmol)及び1,06gの無水酢酸(純度99%、10.5mmol、1.1当量)を充填した。反応混合物を、一定速度で混合しながら80℃に加熱した。2時間後、GC分析は完全なアルコール消費を示した。
【0366】
酢酸副生成物に加えて、未反応無水酢酸を減圧下で蒸発させて、2.28gの無色の油を得た。GC-MS分析によって、生成物の構造を92%純粋なZ9,E12-14:OAc(収率95%)として確認した(
図3A及びB)。
【0367】
実施例13-代替FARを使用したYarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:OHの生成
ΔZ9デサチュラーゼDesat61及びΔ12デサチュラーゼPid12を、様々な生物に個々に由来する様々な脂肪酸アシル-CoAレダクターゼと共発現させた。細胞をYPG培地中で22時間ではなく、47時間インキュベートしたことを除いて、株を培養し、実施例3に記載したように脂肪族アルコールを抽出した。
【0368】
株ST10872、ST12294~ST12296、ST12299、ST12271~ST12274、ST12777及びST12779の抽出物は、>0.01mg/LのZ9,E12-14:OHを含有した(以下の表において「+」で示す通り)。
【表8】
【0369】
実施例14-代替Δ9デサチュラーゼを使用したYarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:酸の生成
Δ12デサチュラーゼPid12及びEcauDes12を、様々な生物に由来する様々なΔ9デサチュラーゼと共に個々に共発現させた。細胞をYPG培地中で22時間ではなく、47時間インキュベートしたことを除いて、株を培養し、実施例3に記載したようにFAMEを抽出した。
【0370】
Z9,E12-14:Meの最低力価(以下の表において「+」で示した>0mg/L)を、Pid12のみを発現した株ST12630の抽出物で検出した。本株では、Δ12不飽和化反応のための基質であるZ9-14:CoAが、酵母天然デサチュラーゼOLE1によって副生成物として生成される。
【0371】
株ST12631、ST12632、ST12634、ST12635、ST12640、ST12256、ST12257、ST12260、ST12261及びST12266は、Δ12デサチュラーゼに加えて異種Δ9デサチュラーゼを発現した。これらの株の誘導体化抽出物は、株ST12630の抽出物よりも高いレベルのZ9,E12-14:Me(以下の表において「++」で示したような≧0.02mg/L)を含有した。
【表9】
【0372】
実施例15-代替Δ12デサチュラーゼを使用したYarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:酸の生成
Pid12とEcauDes12との融合タンパク質バリアントを設計して試験した。それらのバリアントでは、Δ12デサチュラーゼPid12及びEcauDes12のN末端及びC末端を、Plodia interpunctellaデサチュラーゼDesat65またはAmyelois transitellaデサチュラーゼDesat16のいずれかのN末端及びC末端で置き換えた。融合タンパク質の配列同一性を、以下の表に見ることができる。細胞をYPG培地中で22時間ではなく、47時間インキュベートしたことを除いて、株を培養し、実施例3に記載したようにFAMEを抽出した。
【0373】
N末端及びC末端(N末端アミノ酸1~30、C末端アミノ酸300~335)を、Desat65のそれら(N末端アミノ酸1~29、C末端アミノ酸299~344)で置き換えているPid12のバリアントを発現する株ST12368は、未改変Pid12及びEcauDes12をそれぞれ発現する株ST12366及びST12367とほぼ同量のZ9,E12-14:Me(以下の表において「+」で示したような>0.02mg/L)を生成した。株ST12374及びST12379についても同様のことを観察したが、これらの株は、N末端及びC末端(N末端アミノ酸1~30、C末端アミノ酸300~338)を、それぞれデサチュラーゼDesat65のそれら(N末端アミノ酸1~29、C末端アミノ酸299~344)及びDesat16のそれら(N末端アミノ酸1~20、C末端アミノ酸:302~326)で置き換えているEcauDes12のバリアントを発現する。
タンパク質間の配列同一性のパーセンテージを表に示す。
【表10】
【0374】
実施例16-Ephestia kuehniellaのΔ12デサチュラーゼを使用したYarrowia lipolytica内におけるZ9,E12-14:酸の生成
Ephestia kuehniellaのデサチュラーゼを、Y.lipolytica(ST12596)のΔ9デサチュラーゼDesat61と共発現させた。Desat61のみを発現する株ST10748が陰性対照として機能した。細胞をYPG培地中で22時間ではなく、47時間インキュベートしたことを除いて、株を培養し、実施例3に記載したようにFAMEを抽出した。
【0375】
株ST12596のFAME抽出物は、二重不飽和テトラデカジエン酸メチルを含有した(
図4A)。10.39分の保持時間に加えて、このピークのマススペクトルの両方とも、Z9,E12-14:Meの純粋な分析標準の1回と同一であった(
図4A、B及びC)。対照株ST10748の抽出物は、10.39分で溶出する化合物を含有していなかった(
図4A)。Ephestia kuehniellaデサチュラーゼは、Δ12二重結合を導入できるため、Eku_d12という略称を付与した。
【0376】
【0377】
参考文献
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【0378】
条項
1.n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル補酵素A(脂肪酸アシル-CoA)を生成できる酵母細胞であって、前記二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
前記酵母細胞が、異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現し、前記デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合(複数可)を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA基質、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である、前記酵母細胞。
【0379】
2.基質として使用される前記飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA及びn’個の二重結合を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、同じ炭素鎖長を有する、条項1に記載の酵母細胞。
【0380】
3.前記異種Δ12デサチュラーゼが、Cadra、Ephestia、Plodia、Maliarpha、及びAmorbiaからなる群から選択される属の生物から生じる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0381】
4.前記異種Δ12デサチュラーゼが、Cadra cautella、Ephestia elutella、Ephestia kuehniella、Plodia interpunctella、Maliarpha separatella、及びAmorbia cuneanaからなる群から選択される種の生物から生じる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0382】
5.前記異種Δ12デサチュラーゼが、Plodiaデサチュラーゼ、例えば、Plodia interpunctellaデサチュラーゼなどである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0383】
6.前記異種Δ12デサチュラーゼが、Cadraデサチュラーゼ、例えば、Cadra cautellaデサチュラーゼなどである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0384】
7.前記異種Δ12デサチュラーゼが、Ephestiaデサチュラーゼ、例えば、Ephestia elutellaデサチュラーゼまたはEphestia kuehniellaデサチュラーゼなどである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0385】
8.前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:2に記載されるようなPid12デサチュラーゼまたはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0386】
9.前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:55に記載されるようなEcauDes12デサチュラーゼまたはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0387】
10.前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:85に記載されるようなEku_d12デサチュラーゼまたはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0388】
11.前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:87に記載されるようなEe_d12デサチュラーゼまたはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0389】
12.前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:80、配列番号:81及び配列番号:82に記載される前記デサチュラーゼから選択される、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0390】
13.少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する前記飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAが、少なくとも14個の、例えば、少なくとも15個などの炭素長を有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0391】
14.少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する前記飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAが、テトラデカノイル-CoAまたは(Z9)-テトラデセノイル-CoAである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0392】
15.n=1である、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0393】
16.少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する前記飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAが、(Z9)-テトラデセノイル-CoAである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0394】
17.n’個の二重結合(複数可)を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、少なくとも13個、例えば、少なくとも14個など、少なくとも15個など、少なくとも16個など、少なくとも17個など、少なくとも18個など、少なくとも19個など、少なくとも20個などの炭素鎖長を有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0395】
18.n’個の二重結合(複数可)を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、多くとも18個、例えば、多くとも17個など、多くとも16個など、多くとも15個など、多くとも14個など、少なくとも15個など、少なくとも16個など、少なくとも17個など、少なくとも18個など、少なくとも19個など、少なくとも20個などの炭素鎖長を有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0396】
19.n’=1である、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0397】
20.n’個の二重結合(複数可)を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、(E12)-テトラデセノイル-CoAである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0398】
21.n’=2である、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0399】
22.n’個の二重結合(複数可)を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0400】
23.前記酵母細胞が、さらなる異種デサチュラーゼを発現する、先行条項のいずれか1項に記載の細胞。
【0401】
24.前記さらなる異種デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位ではない任意の位置に二重結合を導入できる、先行条項のいずれか1項に記載の細胞。
【0402】
25.前記さらなる異種デサチュラーゼが、少なくとも9位に二重結合を導入できる、先行条項のいずれか1項に記載の細胞。
【0403】
26.前記さらなる異種デサチュラーゼが、Δ9デサチュラーゼ及びΔ11デサチュラーゼからなる群から選択される、先行条項のいずれか1項に記載の細胞。
【0404】
27.前記さらなる異種デサチュラーゼが、テトラデカノイル-CoAまたはテトラデセノイル-CoAに対して、それぞれヘキサデカノイル-CoAまたはヘキサデカノイル-CoAに対するよりも、より高い特異性を有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0405】
28.前記さらなる異種デサチュラーゼが、DrosophilaまたはChoristoneuraデサチュラーゼ、例えば、Drosophila melanogaster、Drosophila virilis、Drosophila grimshawi、Drosophila yakuba、Drosophila mojavensis、Drosophila pseudoobscura、Drosophila ananassaeまたはChoristoneura parallelaデサチュラーゼなどである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0406】
29.前記さらなる異種デサチュラーゼが、Desat59(配列番号:8)、Desat61(配列番号:4)、Desat56(配列番号:57)、Desat60(配列番号:59)及びDesat24(配列番号:6)からなる群から選択されるDrosophilaデサチュラーゼまたはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0407】
30.前記さらなる異種デサチュラーゼが、Choristoneura parallelaデサチュラーゼDesat74(配列番号:61)である、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0408】
31.前記酵母細胞が、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを生成でき、前記酵母細胞が、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる、少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をさらに発現する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0409】
32.前記FARが、Agrotis、Amyelois、Bicyclus、Bombus、Chilo、Cydia、Helicoverpa、Heliothis、Lobesia、Ostrinia、Plodia、Plutella、Spodoptera、Trichoplusia、Tyta、及びYponomeutaからなる群から選択される属の生物、例えば、Agrotis ipsilon、Agrotis segetum、Amyelois transitella、Bicyclus anynana、Bombus lapidarius、Chilo Suppressalis、Cydia pomonella、Helicoverpa armigera、Helicoverpa assulta、Heliothis subflexa、Heliothis virescens、Lobesia botrana、Ostrinia furnacalis、Ostrinia nubilalis、Ostrinia zag、Ostrinia zea、Plodia interpunctella、Plutella xylostella、Spodoptera exigua、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera litura、Trichoplusia ni、Tyta alba、and Yponomeuta rorellus、especially Spodoptera exigua、Helicoverpa armigera、Spodoptera litura及びPlodia interpunctellaなどから生じる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0410】
33.前記FARが、FAR1(配列番号:20)、FAR16(配列番号:22)、FAR17(配列番号:24)、FAR19(配列番号:26)、FAR28(配列番号:28)もしくはFAR32(配列番号:30)、FAR44(配列番号:63)、FAR48(配列番号:65)、FAR49(配列番号:67)、FAR38(配列番号:32)、FAR4(配列番号:69)、FAR6(配列番号:71)、FAR8(配列番号:73)、FAR12(配列番号:75)、FAR11(配列番号:77)またはFAR5(配列番号:79)、あるいはそれに対して少なくとも70%の類似性または同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性または同一性を有するその機能的バリアントからなる群から選択される、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0411】
34.前記酵母細胞が、Saccharomyces、Pichia、Yarrowia、Kluyveromyces、Candida、Rhodotorula、Rhodosporidium、Cryptococcus、Trichosporon及びLipomycesから選択される属に属し、任意に前記酵母細胞が、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces boulardi、Pichia pastoris、Kluyveromyces marxianus、Candida tropicalis、Cryptococcus albidus、Lipomyces lipofera、Lipomyces starkeyi、Rhodosporidium toruloides、Rhodotorula glutinis、Trichosporon pullulan及びYarrowia lipolyticaから選択される種に属し、好ましくは前記酵母細胞が、Yarrowia lipolytica細胞またはSaccharomyces cerevisiae細胞である、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0412】
35.異種NAD(P)Hシトクロムb5オキシドレダクターゼ(Ncb5or)をさらに発現する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0413】
36.前記Ncb5orが、植物、昆虫または哺乳動物、例えば、Homo sapiensなどから生じる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0414】
37.前記Ncb5orが、昆虫、例えば、Agrotis、Amyelois、Aphantopus、Arctia、Bicyclus、Bombus、Bombyx、Chilo、Cydia、Danaus、Drosophila、Eumeta、Galleria、Helicoverpa、Heliothis、Hyposmocoma、Leptidea、Lobesia、Manduca、Operophtera、Ostrinia、Papilio、Papilio、Papilio、Pieris、Plutella、Spodoptera、Trichoplusia、及びVanessa属の昆虫などから生じる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0415】
38.前記Ncb5orが、Agrotis segetum、Amyelois transitella、Aphantopus hyperantus、Arctia plantaginis、Bicyclus anynana、Bombus terrestris、Bombyx mandarina、Bombyx mori、Chilo suppressalis、Cydia pomonella、Danaus plexippus、Drosophila grimshawi、Drosophila melanogaster、Eumeta japonica、Galleria mellonella、Helicoverpa armigera、Heliothis virescens、Hyposmocoma kahamanoa、Leptidea sinapis、Lobesia botrana、Manduca sexta、Operophtera brumata、Ostrinia furnacalis、Papilio machaon、Papilio polytes、Papilio xuthus、Pieris rapae、Plutella xylostella、Spodoptera frugiperda、Spodoptera litura、Trichoplusia ni、及びVanessa tameameaから選択される昆虫から生じる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0416】
39.前記Ncb5orが、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:88、配列番号:89もしくは配列番号:90に記載されるNcb5or、またはそれらに対して少なくとも70%の同一性もしくは類似性、例えば、それらに対して少なくとも75%などの同一性、少なくとも80%などの同一性、少なくとも85%などの同一性、少なくとも90%などの同一性、少なくとも95%などの同一性もしくは類似性を有する機能的バリアントの群から選択される、先行条項のいずれか1項に記載の酵母。
【0417】
40.Hfd1、Hfd4、Pex10、GPAT及び/またはFao1のうち1つ以上の部分的または全体的な活性喪失をもたらす変異を有し、例えば、少なくともFao1ならびにHfd1、Hfd4、Pex10及び/またはGPATのうち1つ以上の部分的または全体的な活性喪失をもたらす変異などを有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0418】
41.PEX10ならびにHFD1、HFD4、FAO1及び/またはGPATのうち少なくとも1つ、あるいはそれらのホモログに変異を有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0419】
42.FAO1ならびにHFD1、HFD4、PEX10及び/またはGPATのうち少なくとも1つ、あるいはそれらのホモログに変異を有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0420】
43.HFD1、HFD4、PEX10及び/またはFAO1もしくはそれらに対して少なくとも60%の同一性を有するその機能的バリアントが欠失もしくは変異し、Hfd1、Hfd4、Pex10及び/またはFao1の活性の部分的喪失もしくは全体的喪失をもたらし、及び/またはGPATもしくはそれに対して少なくとも60%の同一性を有するその機能的バリアントが変異し、GPATの活性低下をもたらす、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0421】
44.少なくとも1つのPOX遺伝子、例えば、POX1、POX2、POX3、POX4、POX5、及びPOX6からなる群から選択されるPOX遺伝子などにおける変異を含む、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0422】
45.POX1、POX2、POX3、POX4、POX5、及び/またはPOX6、あるいはそれらに対して少なくとも60%の同一性を有するその機能的バリアントが欠失または変異し、Pox1、Pox2、Pox3、Pox4、Pox5及び/またはPox6の活性の部分的喪失または全体的喪失をもたらす、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0423】
46.前記酵母細胞が、
-異種シトクロムb5、
-異種シトクロムb5レダクターゼ、
-ヘモグロビン、
-異種チオエステラーゼ遺伝子、及び/または
-脂肪酸アシルシンターゼとチオエステラーゼとの融合タンパク質
をさらに発現する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0424】
47.以下:
-全体的もしくは部分的な活性喪失をもたらす天然エロンガーゼ(複数可)、
-全体的もしくは部分的な活性喪失をもたらすチオエステラーゼ(複数可)、及び/または
-天然脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪族アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム形成因子及び/または脂肪酸アシルシンターゼ(複数可)の活性
の不活性化または改変を有する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0425】
48.前記酵母細胞が、テトラデカノイル-CoAの利用能を増加させるようにさらに改変される、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0426】
49.前記異種Δ12デサチュラーゼ、前記さらなる異種デサチュラーゼまたは前記FARをコードする遺伝子のうち少なくとも1つが、高コピー数で存在する、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0427】
50.前記異種Δ12デサチュラーゼ、前記さらなる異種デサチュラーゼまたは前記FARをコードする前記遺伝子のうち少なくとも1つが、誘導性プロモーターの制御下にある、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0428】
51.前記異種Δ12デサチュラーゼ、前記さらなる異種デサチュラーゼまたは前記FARをコードする前記遺伝子のうち少なくとも1つが、各々独立して前記細胞のゲノム内または前記酵母細胞内に含まれるベクター内に含まれる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0429】
52.前記酵母細胞が、少なくとも1mg/L、例えば、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも1.7mg/Lなどの、またはそれを超える力価で(Z9,E12)-テトラデカジエン酸を生成できる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0430】
53.前記酵母細胞が、少なくとも20mg/L、例えば、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも60mg/Lなど、少なくとも70mg/Lなど、少なくとも80mg/Lなど、少なくとも90mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも150mg/Lなど、少なくとも200mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lなどの、またはそれを超える力価でE12-脂肪酸及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン酸を生成できる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0431】
54.前記酵母細胞が、少なくとも0.005mg/L、例えば、少なくとも0.01mg/Lなど、少なくとも0.02mg/Lなど、少なくとも0.03mg/Lなど、少なくとも0.05mg/Lなど、少なくとも0.06mg/Lなど、少なくとも0.075mg/Lなど、少なくとも0.1mg/Lなど、少なくとも0.2mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.6mg/Lなど、少なくとも0.7mg/Lなど、少なくとも0.8mg/Lなど、少なくとも0.9mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも2mg/Lなど、少なくとも3mg/Lなど、少なくとも4mg/Lなど、少なくとも5mg/Lなど、少なくとも6mg/Lなど、少なくとも7mg/Lなど、少なくとも8mg/Lなど、少なくとも9mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなどの、またはそれを超える力価でE12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを生成できる、先行条項のいずれか1項に記載の酵母細胞。
【0432】
55.n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAの生成方法であって、前記二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が、酵母細胞内の12位にあり、以下のステップ:
i)条項1~54のいずれか1項に記載の酵母細胞を提供するステップ、
ii)異種Δ12デサチュラーゼの発現を可能にする条件下において培地中で前記酵母細胞をインキュベートし、前記デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoA、好ましくは不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入できるステップを含み、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4であり、
それによって、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成し、前記二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にある、前記方法。
【0433】
56.前記異種Δ12デサチュラーゼが、先行条項のいずれか1項で定義される通りである、条項55に記載の方法。
【0434】
57.前記さらなる異種デサチュラーゼが、先行条項のいずれか1項で定義される通りである、条項55~56のいずれか1項に記載の方法。
【0435】
58.n’個の二重結合(複数可)を有する前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、先行条項のいずれか1項で定義される通りである、条項55~57のいずれか1項に記載の方法。
【0436】
59.少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する前記飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAが、先行条項のいずれか1項で定義される通りである、条項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【0437】
60.前記酵母細胞が、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる、少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をさらに発現する、条項55~59のいずれか1項に記載の方法。
【0438】
61.前記FARが、先行条項のいずれか1項で定義される通りである、条項55~60のいずれか1項に記載の方法。
【0439】
62.フェロモン組成物に前記E12-脂肪族アルコール及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを製剤化するステップをさらに含む、条項55~61のいずれか1項に記載の方法。
【0440】
63.前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを回収するステップをさらに含む、条項55~62のいずれか1項に記載の方法。
【0441】
64.前記E12-脂肪族アルコール及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールが、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルにさらに変換される、条項55~63のいずれか1項に記載の方法。
【0442】
65.前記E12-脂肪族アルコール及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールが、それぞれE12-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールにさらに変換される、条項55~64のいずれか1項に記載の方法。
【0443】
66.前記E12-脂肪族アルコール及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルへの前記変換が、
a.前記E12-脂肪族アルコール及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換できるアセチルトランスフェラーゼを、前記酵母細胞内でさらに発現させることによってインビボで実施されるか、あるいは
b.例えば、化学変換によってインビトロで実施される、
条項55~65のいずれか1項に記載の方法。
【0444】
67.前記E12-脂肪族アルコール及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールが、(E12)-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに酸化され、任意に前記酸化が化学的に実施される、条項55~66のいずれか1項に記載の方法。
【0445】
68.前記E12-脂肪族アルコール及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールが、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに化学的にアセチル化される、条項55~66のいずれか1項に記載の方法。
【0446】
69.酵母細胞を改変するための核酸または核酸の系であって、前記核酸または核酸の系が、異種Δ12デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、前記デサチュラーゼが、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入でき、それによって、n’個の二重結合(複数可)を有する不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成し、前記二重結合(複数可)のうち少なくとも1個が12位にあり、
ここで、n及びn’が整数であり、
ここで、0≦n≦3であり、1≦n’≦4である、前記核酸または核酸の系。
【0447】
70.前記異種Δ12デサチュラーゼが、配列番号:1、配列番号:54、配列番号:84及び配列番号:86に記載される配列のうちいずれか1つ、またはそれらに対して少なくとも80%の同一性、例えば、それらに対して少なくとも85%などの同一性、少なくとも90%などの同一性、少なくとも91%などの同一性、少なくとも92%などの同一性、少なくとも93%などの同一性、少なくとも94%などの同一性、少なくとも95%などの同一性、少なくとも96%などの同一性、少なくとも97%などの同一性、少なくとも98%などの同一性、少なくとも99%などの同一性を有するその機能的バリアントによってコードされる、条項69に記載の核酸または核酸の系。
【0448】
71.前記核酸または核酸の系が、少なくとも13個の炭素鎖長を有し、n個の二重結合を有する飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位ではない任意の位置に、二重結合を導入できるさらなる異種デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、条項69~70のいずれか1項に記載の核酸または核酸の系。
【0449】
72.前記さらなる異種デサチュラーゼが、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:56、配列番号:58及び配列番号:60に記載される配列のうちいずれか1つ、またはそれらに対して少なくとも80%の同一性、例えば、それらに対して少なくとも85%などの同一性、少なくとも90%などの同一性、少なくとも91%などの同一性、少なくとも92%などの同一性、少なくとも93%などの同一性、少なくとも94%などの同一性、少なくとも95%などの同一性、少なくとも96%などの同一性、少なくとも97%などの同一性、少なくとも98%などの同一性、少なくとも99%などの同一性を有するその機能的バリアントによってコードされる、条項67~71のいずれか1項に記載の核酸または核酸の系。
【0450】
73.前記核酸または核酸の系が、二重不飽和(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(FAR)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、条項67~72のいずれか1項に記載の核酸または核酸の系。
【0451】
74.前記FARが、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:62、配列番号:64、配列番号:66、配列番号:68、配列番号:70、配列番号:72、配列番号:74、配列番号:76及び配列番号:78に記載される配列のうちいずれか1つ、またはそれらに対して少なくとも80%の同一性、例えば、それらに対して少なくとも85%などの同一性、少なくとも90%などの同一性、少なくとも91%などの同一性、少なくとも92%などの同一性、少なくとも93%などの同一性、少なくとも94%などの同一性、少なくとも95%などの同一性、少なくとも96%などの同一性、少なくとも97%などの同一性、少なくとも98%などの同一性、少なくとも99%などの同一性を有するその機能的バリアントによってコードされる、条項73に記載の核酸または核酸の系。
【0452】
75.害虫の存在のモニター方法または害虫の交配の撹乱方法であって、以下のステップ:
i)条項55~63のいずれか1項に記載の方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/またはE12-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iii)前記E12-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれE12-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
iv)前記E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化するステップ、ならびに
v)前記フェロモン組成物を総合的病害虫管理組成物として用いるステップ
を含む、前記方法。
【0453】
76.フェロモン組成物であって、以下のステップ:
i)条項55~63のいずれか1項に記載の方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/または(E12)-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)前記(E12)-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれ(E12)-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iii)前記(E12)-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれ(E12)-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
iv)前記(E12)-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、(E12)-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化するステップ
を含む方法によって得られる、前記フェロモン組成物。
【0454】
77.フェロモン組成物であって、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールを含み、前記フェロモン組成物が、少なくとも20%のバイオベース炭素を含む、前記フェロモン組成物。
【0455】
78.フェロモン化合物であって、E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、E12-脂肪族アルデヒド、及び(Z9,E12)-テトラデカジエナールからなる群から選択され、前記フェロモン化合物が、少なくとも20%のバイオベース炭素を含む、前記フェロモン化合物。
【0456】
79.液体担体、固体担体及び基材からなる群から選択される1つ以上の追加の化合物をさらに含む、条項77に記載のフェロモン組成物。
【0457】
80.植物油、精製鉱油またはその画分、ゴム、プラスチック、シリカ、珪藻土、ワックスマトリックス及びセルロース粉末からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、条項77または79のいずれかに記載のフェロモン組成物。
【0458】
81.前記フェロモン組成物が、溶液、ゲル、または粉末の形態である、条項77または79~80のいずれかに記載のフェロモン組成物。
【0459】
82.前記フェロモン組成物が、分注され得るように製剤化される、条項77または79~81のいずれかに記載のフェロモン組成物。
【0460】
83.前記フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対前記E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル対前記E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナール対前記E12-脂肪族アルデヒドの比が、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える、条項77または79~82のいずれかに記載のフェロモン組成物。
【0461】
84.前記フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対(Z9,E12)-テトラデカジエナール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルの比が、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える、条項77または79~83のいずれかに記載のフェロモン組成物。
【0462】
85.前記フェロモン組成物中の(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール対Z9-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル対Z9-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナール対Z9-脂肪族アルデヒドの比が、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.15など、少なくとも0.2など、少なくとも0.3など、少なくとも0.4など、少なくとも0.5など、少なくとも0.75など、少なくとも1など、少なくとも2など、少なくとも3など、少なくとも4など、少なくとも5など、少なくとも6など、少なくとも7など、少なくとも8など、少なくとも9など、少なくとも10など、少なくとも12.5など、少なくとも15などのもの、またはそれを超える、条項77または79~84のいずれかに記載のフェロモン組成物。
【0463】
86.前記フェロモン組成物または前記フェロモン化合物が、少なくとも30%のバイオベース炭素、あるいは40%のバイオベース炭素、あるいは50%のバイオベース炭素、あるいは60%のバイオベース炭素、あるいは70%のバイオベース炭素、あるいは75%のバイオベース炭素、あるいは80%のバイオベース炭素、あるいは85%のバイオベース炭素、あるいは90%のバイオベース炭素、あるいは95%のバイオベース炭素を含む、条項77~85のいずれかに記載のフェロモン組成物またはフェロモン化合物。
【0464】
87.前記フェロモン組成物または前記フェロモン化合物が、少なくとも80%のバイオベース炭素、あるいは85%のバイオベース炭素、あるいは90%のバイオベース炭素、あるいは95%のバイオベース炭素、あるいは96%のバイオベース炭素、あるいは97%のバイオベース炭素、あるいは98%のバイオベース炭素、あるいは99%のバイオベース炭素を含む、条項77~86のいずれかに記載のフェロモン組成物またはフェロモン化合物。
【0465】
88.前記フェロモン組成物または前記フェロモン化合物が、30~100%のバイオベース炭素、あるいは40~100%のバイオベース炭素、あるいは50~100%のバイオベース炭素、あるいは60~100%のバイオベース炭素、あるいは70~100%のバイオベース炭素、あるいは75~100%のバイオベース炭素、あるいは80~100%のバイオベース炭素、あるいは85~100%のバイオベース炭素、あるいは90~100%のバイオベース炭素、あるいは95~100%のバイオベース炭素を含む、条項77~87のいずれかに記載のフェロモン組成物またはフェロモン化合物。
【0466】
89.前記フェロモン組成物または前記フェロモン化合物が、80~100%のバイオベース炭素、あるいは85~100%のバイオベース炭素、あるいは90~100%のバイオベース炭素、あるいは95~100%のバイオベース炭素、あるいは96~100%のバイオベース炭素、あるいは97~100%のバイオベース炭素、あるいは98~100%のバイオベース炭素、あるいは99~100%のバイオベース炭素を含む、条項77~88のいずれかに記載のフェロモン組成物またはフェロモン化合物。
【0467】
90.条項77または79~89のいずれかに記載のフェロモン組成物の生成方法であって、以下のステップ:
i)条項55~63のいずれか1項に記載の方法によって、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール及び/または(E12)-脂肪族アルコールを生成するステップ、
ii)前記(E12)-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれ(E12)-脂肪族アルコールの酢酸エステル及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
iii)前記(E12)-脂肪族アルコール及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを、それぞれ(E12)-脂肪族アルデヒド及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
iv)前記E12-脂肪族アルコール、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、E12-脂肪族アルコールの酢酸エステル、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、(E12)-脂肪族アルデヒド、及び/または(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物として製剤化し、任意に液体または固体の担体または基材などの1つ以上の追加の化合物を含むステップ、
v)任意に、前記フェロモン組成物の前記バイオベース炭素含有量を決定するステップ
を含む、前記方法。
【0468】
91.酵母細胞内における、条項78~89のいずれかに記載のフェロモン化合物の生成方法であって、以下のステップ:
i)異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現する酵母細胞を提供するステップ、
ii)異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼの発現を可能にする条件下において培地中で前記方法酵母細胞をインキュベートするステップ
を含み、それによって前記フェロモン化合物を生成する、前記方法。
【0469】
92.条項78~89のいずれかに記載のフェロモン化合物を生成できる酵母細胞であって、前記酵母細胞が、異種Δ12脂肪酸アシル-CoAデサチュラーゼを発現する、前記酵母細胞。
【0470】
93.前記酵母細胞が、さらなる異種デサチュラーゼを発現する、条項91~92のいずれかに記載の方法または酵母細胞。
【0471】
94.前記酵母細胞が、少なくとも1つのアルコール生成脂肪酸アシル-CoAレダクターゼをさらに発現する、条項91~93のいずれかに記載の方法または酵母細胞。
【0472】
95.前記フェロモン化合物の前記バイオベース炭素含有量を決定するステップをさらに含む、条項91~94のいずれかに記載の方法。
【0473】
96.飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法における、Plodia interpunctellaデサチュラーゼの使用。
【0474】
97.前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有し、及び/または飽和脂肪酸メチルエステルが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有する、条項96に記載の使用。
【0475】
98.前記Plodia interpunctellaデサチュラーゼが、Pid12(配列番号:2)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、条項96~97のいずれか1項に記載の使用。
【0476】
99.飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法における、Cadra cautellaデサチュラーゼの使用。
【0477】
100.前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有し、及び/または飽和脂肪酸メチルエステルが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有する、条項99に記載の使用。
【0478】
101.前記Cadra cautellaデサチュラーゼが、EcauDes12(配列番号:55)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、条項99~100のいずれか1項に記載の使用。
【0479】
102.飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法における、Ephestia kuehniellaデサチュラーゼの使用。
【0480】
103.前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有し、及び/または飽和脂肪酸メチルエステルが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有する、条項102に記載の使用。
【0481】
104.前記Ephestia kuehniellaデサチュラーゼが、Eku_d12(配列番号:85)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、条項102~103のいずれか1項に記載の使用。
【0482】
105.飽和または不飽和脂肪酸アシル-CoAの12位に二重結合を導入する方法における、Ephestia elutellaデサチュラーゼの使用。
【0483】
106.前記不飽和脂肪酸アシル-CoAが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有し、及び/または飽和脂肪酸メチルエステルが、12個以上、例えば、13個など、14個など、15個以上などの炭素長を有する、条項105に記載の使用。
【0484】
107.前記Ephestia elutellaデサチュラーゼが、Ee_d12(配列番号:87)またはそれに対して少なくとも70%の類似性もしくは同一性、例えば、それに対して少なくとも80%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、100%などの類似性もしくは同一性を有するその機能的バリアントである、条項105~106のいずれか1項に記載の使用。
【0485】
108.前記方法がインビトロで実施される、条項96~101のいずれか1項に記載の使用。
【0486】
109.前記方法がインビボで実施され、好ましくは、前記方法が、条項1~54のいずれか1項に記載の酵母細胞内で実施される、条項96~108のいずれか1項に記載の使用。
【0487】
110.条項55~64のいずれか1項に記載の方法によって得られる、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoA。
【0488】
111.条項60~64のいずれか1項に記載の方法によって得られる、(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール。
【0489】
112.条項1~54のいずれか1項に記載の酵母細胞を含む、発酵ブロス。
【0490】
113.(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAを生成できる酵母細胞であって、
i)テトラデカノイル-CoAの9位に第1二重結合を導入し、それによって、前記テトラデカノイル-CoAを(Z9)-テトラデセノイル-CoAに変換できる少なくとも1つの第1異種デサチュラーゼ、及び
ii)(Z9)-テトラデセノイル-CoAの12位に第2二重結合を導入し、それによって、(Z9)-テトラデセノイル-CoAを(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAに変換できる少なくとも1つの第2異種デサチュラーゼ
を発現する、前記酵母細胞。
【0491】
114.不飽和脂肪酸アシル-CoAを生成できる酵母細胞であって、前記酵母細胞が、脂肪酸アシル-CoAの12位にトランス二重結合を導入し、それによって、前記脂肪酸アシル-CoAをE12-脂肪酸アシル-CoAに変換できるPid12(配列番号:2)デサチュラーゼ、EcauDes12(配列番号:55)デサチュラーゼ、Eku_d12(配列番号:85)またはEe_d12(配列番号:87)デサチュラーゼを発現する、前記酵母細胞。
【0492】
115.(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの生成方法であって、以下のステップ:
i)条項1~54のいずれか1項に記載の酵母細胞を提供するステップ、
ii)以下の発現を可能にする条件下において培地中で前記酵母細胞をインキュベートするステップ:
a.さらなるデサチュラーゼであって、前記デサチュラーゼが、テトラデカノイル-CoAの9位に二重結合を導入し、それによって、テトラデカノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9)-テトラデセノイル-CoAに変換できる、前記さらなるデサチュラーゼ、
b.異種Δ12デサチュラーゼであって、前記デサチュラーゼが、(Z9)-テトラデセノイル-CoAの12位に二重結合を導入し、それによって、(Z9)-テトラデセノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAに変換できる、前記異種Δ12デサチュラーゼ、
c.FARであって、前記FARが、(Z9,E12)-テトラデカジエノイル-CoAの少なくとも一部を(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールに変換できる、前記FAR、
iii)任意に、前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを回収するステップ、
iv)任意に、前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステルに変換するステップ、
v)任意に、前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールを(Z9,E12)-テトラデカジエナールに変換するステップ、
vi)任意に、前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オール、前記(Z9,E12)-テトラデカジエン-1-オールの酢酸エステル、及び/または前記(Z9,E12)-テトラデカジエナールをフェロモン組成物に製剤化するステップ
を含む、前記方法。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】