(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】コンベヤチェーンリンク及びそのようなチェーンリンクを備えるコンベヤチェーン及びコンベヤシステム
(51)【国際特許分類】
B65G 17/08 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
B65G17/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580723
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022069226
(87)【国際公開番号】W WO2023285335
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517199190
【氏名又は名称】フレックスリンク アーベー
【氏名又は名称原語表記】FlexLink AB
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フェルリーニ,ジャンルカ
【テーマコード(参考)】
3F034
【Fターム(参考)】
3F034AA12
3F034CA01
3F034CA07
3F034CB01
(57)【要約】
上部本体と下部本体とを備えるコンベヤチェーンリンクであって、チェーンリンクは、上部支え面と前端部と後端部とを備え、後端部は、前端部の幅に対応する距離をおいて互いに離間して配置された第1の脚部と第2の脚部とを備え、チェーンリンクは、隣接するチェーンリンクにピボット部材を通じて連結されるように適合され、上部本体の前端部は、複数の前歯及び前ノッチを備え、上部本体の後端部は、複数の後歯及び後ノッチを備え、歯の長さは、チェーンリンクの幅にわたって異なり、チェーンリンクの幅と後端部の歯の数との比は、10mm/歯未満である。本発明の利点は、小さな物体がコンベヤチェーン上で搬送されることを可能にするコンベヤチェーンリンクが提供されることである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部本体(2)と下部本体(3)とを備えるコンベヤチェーンリンク(1)であって、
前記チェーンリンク(1)は、上部支え面(17)と前端部(4)と後端部(5)とを備え、
前記後端部(5)は、前記前端部(4)の前記幅に対応する距離をおいて互いに離間して配置された第1の脚部(6)と第2の脚部(7)とを備え、
前記第1の脚部(6)は、前記第1の脚部(6)から外向きに面する第1の突出部(8)を有し、
前記第2の脚部(7)は、前記第1の突出部(8)に対向して配置され前記第2の脚部(7)から外向きに面する第2の突出部(9)を有し、
前記第1の突出部(8)は、第1の貫通孔(10)を備え、
前記第2の突出部(9)は、前記第1の貫通孔(10)と同軸の第2の貫通孔(11)を備え、
前記下部本体は、ピボット部材(12)を保持するように適合された開口(13)を備え、
前記第1及び前記第2の貫通孔(10,11)は、連結ピン(16)を保持するように適合され、
前記上部本体(2)の前記前端部(4)は、複数の前歯(18)及び前ノッチ(19)を備え、
前記上部本体(2)の前記後端部(5)は、複数の後歯(20)及び後ノッチ(21)を備え、
前記歯(18,20)の前記長さは、前記チェーンリンク(1)の前記幅にわたって異なり、
前記チェーンリンク(1)の前記幅と前記後端部(5)の前記歯(20)の数との前記比は、10mm/歯未満であることを特徴とする、コンベヤチェーンリンク。
【請求項2】
前記前端部(4)には、8本の歯(18)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項3】
最も外側の後歯(36)の前記長さは、外側から2番目の後歯(35)よりも短いことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項4】
前記チェーンリンク(1)は、中心面(22)に対して対称であり、
前記チェーンリンク(1)は、左区画(43)及び右区画(44)を備え、
前記右区画(44)は、第1の前歯(26)、第2の前歯(27)、第3の前歯(28)、及び第4の前歯(29)を備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項5】
前記第4の前歯(29)の前記外側前側縁部(41)は、前記第4の前歯(29)の前記先端(45)から前記チェーンリンク(1)の前記側縁部(42)まで連続的に傾斜していることを特徴とする、請求項4に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項6】
前記第2の前歯(27)、前記第3の前歯(28)、又は前記第4の前歯(29)のうち少なくとも1本は、異なるセグメント(46,47;48,49;50,51;52,53)で屈曲した又は湾曲した側縁部を備えることを特徴とする、請求項4又は5に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項7】
前記チェーンリンク(1)は、83mm幅であることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項8】
前記チェーンリンク(1)の前記ピッチは、33.5mmであることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項9】
前記チェーンリンク(1)の前記ピッチと前記後端部(5)の前記歯(20)の数との前記比は、3.5mm/歯未満であることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項10】
前記上部支え面(17)は、前記本体(2,3)の前記材料とは異なる材料を備えることを特徴とする、請求項1から9の何れか一項に記載のコンベヤチェーンリンク。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載のコンベヤチェーンリンク(1)を複数備え、
各コンベヤチェーンリンク(1)は、前記下部本体(3)の前記ピボット開口(13)に配置されたピボット部材(12)と、前記第1の貫通孔(10)、前記第2の貫通孔(11)、前記ピボット部材(12)の横貫通孔、及び前記下部本体(3)の横ピボット開口(14)を通して配置された連結ピン(16)と、によって、隣接するコンベヤチェーンリンク(1)に連結されることを特徴とする、
コンベヤチェーン(60)。
【請求項12】
前記コンベヤチェーン(60)は、300mm未満の水平回転半径を有することを特徴とする、請求項11に記載のコンベヤチェーン(60)。
【請求項13】
前記コンベヤチェーン(60)は、前記支え面(17)が前記曲率の前記中心に向かって内向きに面している状態で200mm未満の垂直回転半径を有することを特徴とする、請求項11又は12に記載のコンベヤチェーン(50)。
【請求項14】
前記コンベヤチェーン(60)は、前記コンベヤチェーンが任意の方向に屈曲するとき、6mm以上の直径を有する円形の物体が2つの隣接するチェーンリンク(1)間に進入するのを防止することを特徴とする、請求項11から13の何れか一項に記載のコンベヤチェーン(60)。
【請求項15】
請求項11から14の何れか一項に記載の少なくとも1つのコンベヤチェーン(60)と、
前記コンベヤチェーン(60)を保持するコンベヤビームと、
前記コンベヤチェーン(60)を駆動するように配置された駆動ユニットと、
を備えることを特徴とする、コンベヤシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端チェーンを備えるコンベヤシステムのためのコンベヤチェーンリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
工場内の異なるステーション間で物体を移動させるために使用されるもののような搬送デバイスは、通常、ベルト又はチェーンの形態の搬送軌道を備える。搬送軌道は、垂直な側面を有する溝内に凹設され得る。あるいは、搬送軌道は、溝の水平上面に位置していてもよいし、又は何らかの他の手法で配置されてもよい。搬送される物体は、直接的に、又はパレットとしても知られる運搬手段を介して、搬送軌道に対して摺動可能に配置される。パレットのある特定のタイプがパックであり、これは、より小さくより軽量の物体に適合された丸いキャリヤである。
【0003】
コンベヤチェーンは、モータを備える駆動ユニットによって前方に送られる。コンベヤチェーンは、コンベヤビーム内を通り、コンベヤビームに取り付けられたスライドレール上を滑動する。電力消費を低減し、摩耗を低減し、振動によって生じる騒音を低減するために、コンベヤチェーン及びスライドレールはいずれも低摩擦材料から作製され得る。送り方向では、すなわちチェーンが物体を輸送するときには、上部本体の下面がコンベヤビームの上部スライドレールに当接する。戻り方向では、すなわちチェーンが上下逆さまになって戻り経路内を進むときには、コンベヤチェーンの上面が支え面によって支持され得、コンベヤチェーンはその上を滑動する。コンベヤチェーンにはタブ又は突出部も設けられていてもよく、チェーンはそれによってコンベヤビームの内側スライドレールに当接し得る。
【0004】
製品を一直線に搬送するときには、コンベヤベルトが使用され得る。多くの場合、製品は、屈曲部や湾曲部を回って、及び時には上方又は下方にも、搬送する必要がある。そのような場合には、複数の相互連結されたチェーンリンクを備えるコンベヤが使用されなければならない。湾曲部を通って個別の製品を搬送するときの1つの課題は、2つのチェーンリンク間の距離がチェーンの一方の側で拡大するときに、製品が、湾曲部の2つのチェーンリンク間に捕らわれ得るということである。チェーンが再び真っ直ぐになると、捕らわれた製品は、損傷を受け得るか、又はチェーンを詰まらせるおそれがある。これは、より小さな製品又は変形可能な製品にとって、特に問題である。そのような例の1つが、ブリスタパッケージに包装された丸剤などのより小さな物体である。突出する各丸剤の包囲部が潜在的な課題となる。
【0005】
より小さい部品がコンベヤチェーンに詰まるのを防止する1つの手法は、各コンベヤチェーンリンクに、間にノッチを有する延在する歯を設けることである。この例では、歯が隣接するチェーンリンクのノッチと相互作用するように適合されており、これは、コンベヤチェーンの有用な支え面を拡大すると共に、コンベヤチェーンが湾曲部で屈曲することを可能にする。歯及びノッチは、チェーンリンク間の開口を最小限にするが、ある程度までである。湾曲部の半径によっては、チェーンリンク間には依然として開口が存在するであろう。より小さい半径に適合されたコンベヤチェーンの場合には、湾曲部の外側におけるチェーンリンク間の距離が、より大きい半径の場合よりも大きくなる。400~500mmの半径が一般的である。
【0006】
より小さい半径に関する更なる課題は、2つのチェーンリンク間のピボット機構が湾曲部をうまく通り抜けることができなければならないということである。いくつかのチェーンリンクでは、チェーンリンクは、ピンによって互いに直接的に相互連結される。他のチェーンリンクは、追加のピボット部材の使用によって相互連結され、これは、より小さい半径で屈曲することができるチェーンリンクを可能にする。コンベヤチェーンのピッチ、すなわちチェーンリンクのピボット点間の距離も、コンベヤチェーンを使用することができる可能な半径に影響を及ぼす。湾曲部では、チェーンの外側におけるチェーンリンク間の距離が増大する。チェーンの外側におけるチェーンリンク間の距離は、チェーンの半径と、チェーンのピッチと、チェーンの幅とに応じて決まる。
【0007】
いくつかのチェーンリンクは重なり合う表面を備え、1つのチェーンリンクの上面が、隣接するチェーンリンクの下面の上に延在する。これらのチェーンリンクは、水平湾曲部では使用することができるが、垂直方向に上方に屈曲して、支え面を内向きに、半径の中心に向けることはできない。非対称チェーンが提案されているが、これらは、真っ直ぐなコンベヤ及び一方向に屈曲するコンベヤにおいてしか使用できない。これは柔軟な解決策ではない。
【0008】
これらの解決策は、いくつかのシステムではうまく機能するが、いずれにしても上述の課題にさらされる。よって、依然として改善の余地が存在する。
【発明の概要】
【0009】
発明の開示
したがって、本発明の目的は、コンベヤシステム用の改良されたコンベヤチェーンリンクを提供することである。本発明の更なる目的は、コンベヤシステム用の改良されたコンベヤチェーンを提供することである。本発明の別の目的は、改良されたコンベヤチェーンを備えるコンベヤシステムを提供することである。
【0010】
本発明による課題の解決策は、請求項1の特徴部分に記載されている。請求項11は有利なコンベヤチェーンを含み、請求項15は有利なコンベヤシステムを含む。その他の請求項は、コンベヤチェーンリンク及びコンベヤチェーンの有利な実施形態及び更なる発展形態を含む。
【0011】
上部本体と下部本体とを備えるコンベヤチェーンリンクにおいて、チェーンリンクは上部支え面と前端部と後端部とを備え、後端部は前端部の幅に対応する距離をおいて互いに離間して配置された第1の脚部と第2の脚部とを備え、第1の脚部は第1の脚部から外向きに面する第1の突出部を有し、第2の脚部は第1の突出部に対向して配置され第2の脚部から外向きに面する第2の突出部を有し、第1の突出部は第1の貫通孔を備え、第2の突出部は第1の貫通孔と同軸の第2の貫通孔を備え、下部本体はピボット部材を保持するように適合された開口を備え、第1及び第2の貫通孔は連結ピンを保持するように適合され、上部本体の前端部は複数の前歯及び前ノッチを備え、上部本体の後端部は複数の後歯及び後ノッチを備え、歯の長さはチェーンリンクの幅にわたって異なり、本発明の目的は、チェーンリンクの幅と後端部の歯の数との比が10mm/歯未満であることによって達成される。
【0012】
換言すれば、本出願人は、複数の後歯の密度を高めることが、直線経路及び/又は湾曲部の両方において、チェーンリンクの最も外側の後歯と長手方向で隣接するチェーンリンクの対応する最も外側の前歯との間の間隙を減少させ、ひいては輸送される製品を偶発的に挟んでしまうリスクを減少させることを見出した。この効果は、例えば
図5に見られる。
【0013】
チェーンリンクの幅と歯の数との10mm/歯未満という比を達成するために、本出願人は、チェーンリンクの後側の中央部分が更なる歯を設置するために有利に使用され得ることを理解しており、そのため、例えば、チェーンリンクの後側に中央歯が設けられ得ると同時にチェーンリンクの前側に中央ノッチが設けられ得ることを理解した。
【0014】
したがって、従来技術において一般に知られているのとは異なり、本出願人は、搬送方向について中央歯の位置(従来技術とは異なり後側に位置決めされる)と中央ノッチの位置(従来技術とは異なり前側に位置決めされる)とを逆にすることを考えた。
【0015】
その結果、チェーンリンクは、後側に奇数本の歯を備え(チェーンリンクの幅と歯の数との比は10mm/歯未満である)、前側に偶数本の歯を備える。
【0016】
このようにすると、複数のコンベヤチェーンリンクを備えるコンベヤチェーンは、コンベヤチェーンが任意の方向に屈曲するときに、6mm以上の直径を有する円形の物体が2つの隣接するチェーンリンク間に進入するのを防止する。
【0017】
本発明の別の一態様において、本出願人は、最も外側の後歯の長さの低減が、コンベヤチェーンがより急な湾曲部を通って屈曲するのを可能にすることを理解した(
図5における、屈曲しているコンベヤチェーンの内側湾曲部に対する効果を参照)。その一方で、最も外側の後歯が短くなるということは、湾曲部の外側において2つの隣接するチェーンリンク間の間隙を増大させるだけでなく、最も外側の歯をフックとして作用させるおそれもあり、するとオペレータを安全上の問題にさらすことになり得る。これらの理由から、本出願人は、最も外側の前歯の長さを増大させると共にその歯の外側縁部を連続的に傾斜させることが、チェーンリンク間に隙間を生じることを回避し(小さな物体が搬送され得る)且つ安全上の問題を回避しながら(
図5における、屈曲しているコンベヤチェーンの外側に対する効果を参照)、急な湾曲部を通ってチェーンを屈曲させることを有利に可能にし得ることに気付いた。
【0018】
本発明の更なる好適な態様が以下に開示される。
【0019】
好ましくは、上部本体は、チェーンリンクの幅に沿って8本の前歯と9本の後歯とを備える。
【0020】
好ましくは、チェーンリンクの幅は、チェーンリンクの後部の2つの平行な外側縁部間の距離によって定義される。
【0021】
好ましくは、複数の後歯のうち2本の最も外側の後歯は、チェーンリンクの後部の2つの平行な外側縁部にある。
【0022】
好ましくは、複数の前歯のうち2本の最も外側の前歯は、チェーンリンクの前部の2つの平行な外側縁部にある。
【0023】
好ましくは、最も外側の各歯は外側縁部を備える。
【0024】
好ましくは、最も外側の前歯の外側の前側縁部は、最も外側の前歯の先端からチェーンリンクの側縁部まで、好ましくは後側縁部まで、連続的に傾斜している。
【0025】
好ましくは、最も外側の後歯の長さは、外側から2番目の後歯よりも短い。
【0026】
換言すれば、好ましくは、最も外側の後歯の長さは、外側から2番目の後歯の長さよりも短い。
【0027】
好ましくは、最も外側の前歯の長さは、外側から2番目の前歯よりも長い。
【0028】
換言すれば、好ましくは、最も外側の前歯の長さは、外側から2番目の前歯の長さよりも長い。
【0029】
好ましくは、チェーンリンクは中心面に対して対称であり、チェーンリンクは左区画及び右区画を備え、右区画は第1の前歯、第2の前歯、第3の前歯、及び第4の前歯を備える。
【0030】
好ましくは、チェーンリンクはコンベヤチェーンの進行方向に平行な中心面に対して対称であり、チェーンリンクは左区画及び右区画を備え、右区画は第1の前歯、第2の前歯、第3の前歯、及び第4の前歯を備える。
【0031】
好ましくは、第4の前歯は最も外側の前歯である。
【0032】
好ましくは、第1の前歯は中心面に最も近接した歯である。
【0033】
本発明によるコンベヤチェーンリンクのこの第1の実施形態によって、小さな物体が湾曲部を通って搬送されることを可能にするコンベヤチェーンリンクが提供される。このようなコンベヤチェーンリンクを用いると、急な屈曲部を通過することができつつも小さな物体が2つのチェーンリンクの間に挟まれることを防止することができるコンベヤチェーンが得られる。より急な屈曲部によって、よりコンパクトなコンベヤシステムを設計することができる。コンベヤチェーンは、水平面内の急な屈曲部と垂直な屈曲部との両方に適合される。このため、コンベヤチェーンは、チェーンリンクの幅とチェーンリンクの後端部の歯の数との比が10mm/歯未満となるように、複数の歯を備える。この歯数比によれば、2つの隣接するチェーンリンク間の面積が最小化され得、隣接するチェーンリンクの2つの側面間の任意の方向の距離は、6mmの直径の円形物体がチェーンリンク間に進入することができないような距離となる。これは、小さな物体が屈曲部で2つのチェーンリンクの間に進入すること及びチェーンが直線方向に戻るときにチェーンリンクの間で押し潰されることを防止する。2つのチェーンリンク間に固体物体が挟まれると、コンベヤチェーン又は物体が損傷するおそれがある。ブリスタパックのように変形可能な材料の物体が2つのチェーンリンクの間に進入すれば、その物体は、チェーンリンク間に挟まれると変形する。
【0034】
図示する例においては、チェーンリンクの後端部には9本の歯が設けられており、前端部には8本の歯が設けられている。チェーンは、図示する例においては83mm幅である。この歯密度によれば、比較的密なコンベヤチェーンが得られ、コンベヤチェーンの幅と後端部の歯の数との比は10mm/歯未満である。チェーンリンクの後端部は10本の歯を備えていてもよく、前端部は9本の歯を備えていてもよい。チェーンリンクのピッチは33.5mmである。
【0035】
83mmの幅を有し11本の歯を備える典型的な従来技術のコンベヤチェーンでは、2つの隣接するチェーンリンク間の空き面積(free area)は、通常、650mm2より大きく、チェーンリンクの支え面は2130mm2である。より大きな空き面積は、輸送される物体を押し潰すリスクを増大させる。
【0036】
本発明によるコンベヤチェーンは、2つのチェーンリンク間に約400mm2の空き面積を有し、各チェーンリンクの平坦な支え面は約2370mm2であって、各チェーンリンクには、前部に8本及び後部に9本の17本の歯が設けられている。
【0037】
同じ幅の従来のコンベヤチェーンよりも多い数の歯を有する本発明のコンベヤチェーンによれば、支え面が増大し、2つの隣接するチェーンリンク間の空き面積が減少する。一例においては、少なくともいくつかの歯は、複数のセグメントを備える混合線から構成される短手方向プロファイルを有する。複数のセグメントに加えて、歯のプロファイルは、曲線を成す部分で構成されてもよい。
【0038】
2つの隣接するチェーンリンク間の距離を更に減少させるために、チェーンリンクの1本以上の歯に、2つ以上の直線セグメントを有する又は湾曲した側面を有する凸凹の側面を設けることが可能である。これは、コンベヤチェーンが屈曲するときに、2つのチェーンリンクの表面間の距離の減少を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、添付の図面に示される実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。
【0040】
【
図2】本発明によるチェーンリンクの上面図を示す。
【
図3】本発明によるチェーンリンクの下面図を示す。
【
図4】本発明による真っ直ぐなコンベヤチェーンの上面図を示す。
【
図5】本発明によるコンベヤチェーンの水平屈曲部における上面図を示す。
【
図6】本発明によるコンベヤチェーンの垂直屈曲部における側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に説明される更なる発展形態を有する本発明の実施形態は、単なる例とみなされるべきものであって、決して特許請求の範囲によって提供される保護の範囲を限定するものではない。長手方向、水平、垂直、右、左などの参照は、水平面内で物体を搬送する通常使用時のコンベヤの方向を基準とする。
【0042】
図1から
図3は本発明によるコンベヤチェーンリンクの一例を示し、
図4から
図6は本発明によるコンベヤチェーンの一例を示す。コンベヤチェーンリンクは、無端コンベヤチェーンにおいて、チェーンコンベヤ上の物体を搬送するために使用されることが意図されている。チェーンリンクの設計によって、急な屈曲部を通って小さな物体を運搬することができるコンベヤチェーンが得られる。これは、小さな物体の輸送を簡単にすると共に、コンパクトなコンベヤシステムを可能にする。本願において、小さな物体とは、6mmの直径を有する物体である。より大きな直径を有する物体も、当然ながら、そのようなコンベヤチェーンによって搬送されることができる。
【0043】
図1から
図3には、コンベヤチェーンの一部を形成することができるコンベヤチェーンリンク1が示されている。チェーンリンクは、搬送されるべき物体を担持するように適合された上部支え面17を備える上部本体2を有する。上部支え面は、好ましくは、物体を支持するための実質的に平坦な表面のように成形される。上部支え面は、チェーンリンクの本体と同じ材料で作製されてもよく、又は、ゴムもしくは軟質プラスチックのようなより高い摩擦値を有する異なる材料を備えていてもよい。上部支え面は、前側と後側とを備える。前側には、前側に隣接して配置された複数の前歯18及び前ノッチ19が設けられており、後側には、後側に隣接して配置された複数の後歯20及び後ノッチ21が設けられている。ノッチ及び歯は、隣接するチェーンリンクの対応する前及び後の歯及びノッチと噛み合うように配置されている。チェーンリンク1は、コンベヤチェーンの進行方向に平行な中心面22と、中心面22及びコンベヤチェーンの進行方向に垂直な横断面23と、を備える。中心面はコンベヤチェーンリンク1を左区画43と右区画44とに分割し、左及び右は、コンベヤチェーンリンクの前端部4が進行方向に向けられた状態でのコンベヤチェーンの通常の進行方向を基準とする。
【0044】
コンベヤチェーンリンクは、前端部4及び後端部5を有する下部本体3を更に備えている。前端部4には、横貫通孔を備えたピボット部材12を保持するように配置された円形開口13が設けられている。ピボット部材の貫通孔は、連結ピン16を保持するように適合されている。前端部の側部には更に、連結ピンが中を通って延在する横ピボット開口14が設けられている。後端部5は、互いから一定の距離をおいて配置された第1の脚部6及び第2の脚部7を有しており、これらの脚部は前端部4から出て二股に分岐している。第1の脚部と第2の脚部との間の距離は、コンベヤチェーンに取り付けられたときに、チェーンリンクの前端部が、隣接するチェーンリンクの第1の脚部と第2の脚部との間に嵌まるような距離である。
【0045】
第1の脚部6は、中心面22に対して実質的に垂直に配置され第1の脚部から外向きに面する第1の突出部8を有する。突出部は、有利なことには輸送促進手段として利用され、すなわち駆動輪などと協働するための係合手段として使用され、例えばコンベヤ駆動ユニットのはめ歯歯車と相互作用する。突出部は、更に有利なことには、コンベヤチェーンの戻り経路においてスライドレールに当接する摺動面として機能するように適合される。第1の突出部8は第1の貫通孔10を有しており、これは円形又は非円形の断面、例えば実質的に三角形の形状を有し得るが、他の形状もまた妥当である。第2の脚部7は、第1の突出部8に対向して配置され第2の脚部から外向きに面する第2の突出部9を有する。第2の突出部9は、第1の突出部8の第1の貫通孔10と実質的に同軸で且つ同じ断面の、第2の貫通孔11を有している。突出部は、突出部が管状の突出部に似るように、均一に延在する。2つの隣接するチェーンリンクを連結するように適合された連結ピン16が、第1及び第2の貫通孔、前端部の横ピボット開口、並びにピボット部材の横貫通孔を通って延在する。連結ピンは、横貫通孔によって固定されてもよいし、又は第1及び第2の貫通孔10,11によって固定されてもよい。
【0046】
上部本体2は、複数の歯及びノッチ、図示する例においては前側に隣接して配置された8本の前歯18と7つの前ノッチ19とを備えている。上部本体は更に、後側に隣接して配置された9本の後歯20と8つの後ノッチ21とを備えている。チェーンリンクの幅と後側の歯の数との比は10mm/歯未満、より好ましくは9.5mm/歯未満である。チェーンリンクの幅は、チェーンリンクの後部の2つの平行な外側縁部42間の距離によって定義される。この比であれば、チェーンリンクによって十分に密なコンベヤチェーンが得られることを確実にすることができる。図示する例においては、チェーンリンクの幅は83mmである。より幅広のチェーンリンクは、同じ歯密度を得るために、より多くの歯を必要とする。上部本体に9本の前歯と10本の後歯とを設けることも可能である。同じ幅に対して歯がより多いということは、各歯がより細くなければならないことを意味し、これは、チェーンリンクが射出成形されるときに問題を引き起こす。コンベヤチェーンリンクは、好ましくは、アセタールプラスチック及び/又はポリアミドなどの低摩擦係数を有する材料から作製される。
【0047】
チェーンリンクのピッチ、すなわちチェーンリンクの前ピボット点と後ピボット点との間の距離は、33.5mmである。チェーンリンクのピッチと後側の歯の数との比は3.5mm/歯未満である。これは、急な湾曲部を通って進むことができつつも屈曲部において比較的密なチェーンを提供するコンベヤチェーンを提供する。チェーンリンクの目的は、チェーンが最大限に屈曲するときに、6mmよりも小さい直径を有する物体が湾曲部で2つのコンベヤチェーン間に進入しないようにするコンベヤチェーンを提供することである。
【0048】
コンベヤチェーンリンクは対称であるので、右区画44のみを詳細に説明する。後側には、中央後歯25、第1の後歯33、第2の後歯34、第3の(又は外側から2番目の)後歯35、及び第4の最も外側の後歯36が設けられている。中央後歯25と第1の後歯33との間には、第1の後ノッチ37が設けられている。第1の後歯33と第2の後歯34との間には、第2の後ノッチ38が設けられている。第2の後歯34と第3の後歯35との間には第3の後ノッチ39が設けられており、第3の後歯35と第4の又は最も外側の後歯36との間には第4の後ノッチ40が設けられている。第4の又は最も外側の後歯を除く後歯の延在部分、すなわち横断面23から歯の先端までの距離は実質的に同じであり、第4の又は最も外側の歯の延在部分はより短い。ノッチの中心から横断面23までの距離は第1の後ノッチ37から外向きに減少し、すなわち、各ノッチの深さは中心面から外向きに増大する。
【0049】
前側には、第1の前歯26、第2の前歯27、第3の(又は外側から2番目の)前歯28、及び第4の又は最も外側の前歯29が設けられている。2本の第1の前歯26の間には、中央ノッチ24が設けられている。第1の前歯26と第2の前歯27との間には、第1の前ノッチ30が設けられている。第2の前歯27と第3の前歯28との間には第2の前ノッチ31が設けられており、第3の前歯28と第4の又は最も外側の前歯29との間には第3の前ノッチ32が設けられている。前歯の延在部分、すなわち横断面23から歯の先端までの距離は第1の歯26から外向きに増大し、第1の前歯26が最も短く、第4の又は最も外側の歯29が最も長い。ノッチの中心から横断面23までの距離は、中心面から外向きにわずかに減少する。
【0050】
急な湾曲部を通って進むことができるコンベヤチェーンを可能にするために、歯又はノッチの形状は対称であってはならない。特に、外側の歯のうち1本以上には、湾曲した又は凸凹の側縁部が設けられてもよい。図示する例においては、第2の前歯27の外側縁部は、中心面22に対して異なる傾斜を有する外側の第1の縁部セグメント46及び内側の第2の縁部セグメント47を備えている。第3の前歯28の内側縁部は、中心面22に対して異なる傾斜を有する外側の第3の縁部セグメント48及び内側の第4の縁部セグメント49を備えている。第3の前歯28の外側縁部は、中心面22に対して異なる傾斜を有する外側の第5の縁部セグメント50及び内側の第6の縁部セグメント51を備えている。
【0051】
第2の後歯34及び第3の後歯35の側縁部も同様に、異なる傾斜の縁部セグメントを備えている。これにより、コンベヤチェーンが屈曲するときに、2つの隣接するチェーンリンクの歯とノッチとが互いにより近接することが可能になり、これは、より小さな物体が2つのチェーンリンクの間に進入することを防止するのに更に役立つ。上部本体2の外側は、中心面22に平行な後側縁部42と、後側縁部から第4の又は最も外側の前歯29の先端まで連続的に傾斜した前側縁部41と、を備えている。第4の又は最も外側の後歯36及び第4の又は最も外側の前歯29の形状も、コンベヤチェーンが屈曲するときに、物体が2つのチェーンリンクの間に進入することを防止するのに役立つ。
【0052】
複数のコンベヤチェーンリンク1が
図4から
図6に図示するように互いに取り付けられて、コンベヤチェーン60を作り出す。このようなコンベヤチェーンは、スライドレールを備えたコンベヤビーム内を進むように適合される。1つ以上のコンベヤチェーンはコンベヤビームと共にコンベヤシステムを構成し、これは、湾曲部も備え、ダイバータ、止め部(stops)、駆動ユニット、取り扱いステーションなどの他の機能要素を備え得る。コンベヤシステムは、例えば工場内で、異なるステーション間で物体を移動させるために使用される。そのようなコンベヤシステムは当該技術分野において周知である。
【0053】
図4は、直線移動方向61に進むように配置されたコンベヤチェーン60を示す。2つのチェーンリンク間の空き面積は、図示する例においては、83mm幅のチェーンではおよそ400mm
2であり、上側本体の支え面はおよそ2370mm
2である。支え面と空き面積との比は、好ましくは5よりも大きい。2つの隣接するチェーンリンクの歯とノッチとの間の長手方向の距離は、コンベヤチェーンが上向きに湾曲して、すなわち垂直方向に進めることを確実にする。より短い距離では、垂直湾曲部の半径が限定される。
【0054】
図5は、水平に湾曲して進むように配置された、屈曲したコンベヤチェーンを示す。コンベヤチェーンは、最小250mmの水平回転半径を有するように設計される。チェーンリンクは対称であるので、湾曲部は右及び左の両方に屈曲し得る。コンベヤチェーンが屈曲すると、2つのチェーンリンク間の空き面積は真っ直ぐなコンベヤチェーンの場合と同じままであるが、湾曲部の内側及び外側における歯とノッチとの間の距離は変化する。内側では、歯とノッチとの間の距離は減少し、歯の先端がノッチの底部に当接することさえある。外側では、歯の先端とノッチの底部との間の距離は増大する。しかし、歯とノッチとの間隔により、小さな物体が2つのチェーンリンク間の空間内に延びる(extend into)ことは依然として防止される。したがって、6mmの直径の物体を、確実に湾曲部を通過させて搬送することが可能となる。
【0055】
図6は、垂直に湾曲して進むように配置されたコンベヤチェーンの側面図を示し、支え面17は内向きに、垂直湾曲部の中心に向かって面している。コンベヤチェーンは、200mm未満の垂直回転半径を有するように設計される。このようにすると、急な上向きの屈曲部がコンベヤシステムにおいて使用され得る。上向きの湾曲部では、小さな物体が2つの隣接するチェーンリンク間に進入することが防止されるように歯とノッチとが噛み合う。上向きの湾曲部は常に真っ直ぐである。
【0056】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものとみなされるべきではなく、多数の追加の変形及び修正が、以下の特許請求の範囲内で可能である。チェーンリンクは、任意のサイズを有していてもよく、任意の適当な材料から作製されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:コンベヤチェーンリンク
2:上部本体
3:下部本体
4:前端部
5:後端部
6:第1の脚部
7:第2の脚部
8:第1の突出部
9:第2の突出部
10:第1の貫通孔
11:第2の貫通孔
12:ピボット部材
13:開口
14:横ピボット開口
16:連結ピン
17:上部支え面
18:前歯
19:前ノッチ
20:後歯
21:後ノッチ
22:中心面
23:横断面
24:中央前ノッチ
25:中央後歯
26:第1の前歯
27:第2の前歯
28:第3の前歯
29:第4の前歯
30:第1の前ノッチ
31:第2の前ノッチ
32:第3の前ノッチ
33:第1の後歯
34:第2の後歯
35:第3の後歯
36:第4の後歯
37:第1の後ノッチ
38:第2の後ノッチ
39:第3の後ノッチ
40:第4の後歯
41:前側縁部
42:後側縁部
43:左区画
44:右区画
45:先端
46:第1の縁部セグメント
47:第2の縁部セグメント
48:第3の縁部セグメント
49:第4の縁部セグメント
50:第5の縁部セグメント
51:第6の縁部セグメント
52:第7の縁部セグメント
53:第8の縁部セグメント
60:コンベヤチェーン
61:移動方向
【国際調査報告】