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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】脛骨トライアルインサートシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20240628BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580733
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022068385
(87)【国際公開番号】W WO2023280749
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21183675.4
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホセイン ゾウアギ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC12
4C097CC18
4C097SC07
(57)【要約】
脛骨トライアルインサートシステムは、大腿骨遠位部表面と関節嵌合するための上側関節嵌合面を有するベアリング部と、脛骨近位部に固定するための下側固定面を有するプレート部と、前記ベアリング部と前記プレート部との間の近位/遠位間隔を調整するための調整機構と、を備え、前記調整機構は、前記ベアリング部の下側表面と係合するように構成された上側コネクタ要素と、前記プレート部の上側表面上に少なくとも間接的に配置されるように適合された下側ベース要素と、前記コネクタ要素および前記ベース要素に動作可能に結合された伸縮機構と、を有する調整装置であって、前記伸縮機構は、前記調整装置の厚さを調整するためにユーザが操作可能である、前記調整装置と、前記プレート部に対する前記調整装置の高さレベルを調整するために、前記プレート部の前記上側表面と前記ベース要素の下側表面との間に挿入されるように構成された少なくとも一つのシムと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨遠位部表面と関節嵌合するための上側関節嵌合面(101)を有するベアリング部(100)と、
脛骨近位部に固定するための下側固定面(202)を有するプレート部(200)と、
前記ベアリング部(100)と前記プレート部(200)との間の近位/遠位間隔を調整するための調整機構(A)と、
を備え、
前記調整機構(A)は、
前記ベアリング部(100)の下側表面(102)と係合するように構成された上側コネクタ要素(301)と、前記プレート部(200)の上側表面(201)上に少なくとも間接的に配置されるように適合された下側ベース要素(302)と、前記コネクタ要素(301)および前記ベース要素(302)に動作可能に結合された伸縮機構(T)と、を有する調整装置(300)であって、前記伸縮機構(T)は、前記調整装置(300)の厚さを調整するためにユーザが操作可能である、前記調整装置(300)と、
前記プレート部(200)に対する前記調整装置(300)の高さレベルを調整するために、前記プレート部(200)の前記上側表面(201)と前記ベース要素(302)の下側表面(303)との間に挿入されるように構成された少なくとも一つのシム(400)と、
を備える、脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項2】
前記ベース要素(302)は下側締結部(304)を備えており、前記少なくとも一つのシム(400)は相補的な上側締結部(401)を備えており、前記下側締結部(304)および前記上側締結部(401)は、前/後方向に摺動可能に係合し、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合可能に係合するように構成される、請求項1に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項3】
前記プレート部(200)は、近位方向に開口し、前記ベース要素(302)を受容するように構成された受け凹部(208)を備えており、前記プレート部(200)は、前/後方向に開口し、前記受け凹部(208)内部へと通じる挿入開口部(210)を備えており、前記挿入開口部(210)は、前記少なくとも一つのシム(400)を前記受け凹部(208)内へと前/後方向にスライドさせることを可能にする、請求項1または2に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項4】
前記調整機構(A)は、前記プレート部(200)の前記上側表面(201)と前記ベース要素(302)の前記下側表面(303)との間および/または前記シム(400)の下側表面との間に挿入されるように構成された少なくとも一つの更なるシム(410、420、430、440)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項5】
前記伸縮機構(T)は、少なくとも第1並進ねじ(320、340)と第2並進ねじ(360、380)とを備えており、各並進ねじは、ナット部材(320、340)と螺合するねじ部材(340、380)を有しており、ユーザ操作によって生じる前記第1並進ねじ(320、340)と前記第2並進ねじ(360、380)の運動により、前記調整装置(300)の厚さが調整される、請求項1から4のいずれか一項に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項6】
前記第1並進ねじ(320、340)の前記ナット部材(320)および前記第2並進ねじ(360、380)の前記ナット部材(360)のそれぞれは、外歯(321、361)を備えており、前記ナット部材(320、360)の前記外歯(321、361)は、前記第1並進ねじ(320、340)および前記第2並進ねじ(360、380)を同期させて動かすために少なくとも間接的にかみ合う、請求項5に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項7】
前記伸縮機構(T)は、両方の前記ナット部材(320、360)の前記外歯(321、361)とかみ合う制御ギアホイール(385)を備えており、前記制御ギアホイール(385)の回転が前記ナット部材(320、360)を同期回転させる、請求項6に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項8】
前記制御ギアホイール(385)は、前記伸縮機構(T)の第3並進ねじ(385、390)のナット部材を構成する、請求項7に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項9】
前記調整装置(300)に着脱自在に取り付けられたハンドル(500)を備え、前記ハンドル(500)は、前記伸縮機構(T)に操作可能に結合された操作機構(M)を有し、前記操作機構(M)をユーザが操作することによって前記伸縮機構(T)が動き、それによって前記調整装置(300)の厚さが調整されるように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項10】
前記ハンドル(500)は近位端(501)と遠位端(502)との間を延びており、前記ハンドル(500)は、前記遠位端(502)に配置され、前記調整装置(300)の相補的なスナップフィット要素(305、306)とのスナップフィット接続を確立するように構成された少なくとも一つのスナップフィット要素(503、504)を備える、請求項9に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項11】
前記操作機構(M)は、手動で回転されるように構成された操作ギアホイール(505)を備えており、前記操作ギアホイール(505)は、前記伸縮機構(T)のギアホイール、特に前記制御ギアホイール(385)と少なくとも間接的にかみ合う、請求項9または10に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【請求項12】
前記操作機構(M)は、前記操作ギアホイール(505)および前記伸縮機構(T)の前記ギアホイールとかみ合う少なくとも一つの伝達ギアホイール(506)を備える、請求項11に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脛骨トライアルインサートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
脛骨トライアルインサートシステムは、概して、人工膝関節置換術において、膝関節の一部を置換するように設計された永久的補綴物のサイズ、形状またはその他の構成に関する外科医の決定を支援するために使用される。特に、脛骨トライアルインサートシステムは、永久的補綴物の大腿骨部と脛骨部との間の相対的な間隔を決定するために使用される。
【0003】
米国特許出願公開公報US 2015/0359642 A1は、ベアリング部と、プレート部と、調整機構と、を備えた脛骨トライアルインサートシステムを開示している。ベアリング部は、大腿骨遠位部表面と関節嵌合するための上側関節嵌合面を有する。プレート部品は、脛骨近位部に固定するための下側固定面を有する。調整機構は、ベアリング部とプレート部との間の近位/遠位間隔を調整するように構成されている。調整機構は、複数のシムを備えている。各シムは、相対的な近位/遠位間隔を変更するために、ベアリング部とプレート部との間で摺動可能に構成される。
【0004】
国際公開公報WO 2019/115744 A1は、調整機構によって第2プレートに結合された第1プレートを含む脛骨トライアルインサートシステムを開示している。この調整機構は、複数のアジャスタを含む。アジャスタは、第1プレートと第2プレートとの間の近位/遠位間隔を調整するために作動可能である。複数のアジャスタは、三角形状に配置された3つのアジャスタからなり、各アジャスタはシザーリフト機構を備えている。3つのシザーリフト機構はそれぞれ、個別のアクチュエータボルトによって別々に作動可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ベアリング部とプレート部との間の相対的な間隔を、簡単で汎用性が高く、かつ安定的に調整できる脛骨トライアルインサートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、脛骨トライアルインサートシステムが提供され、脛骨トライアルインサートシステムは、大腿骨遠位部表面と関節嵌合するための上側関節嵌合面を有するベアリング部と、脛骨近位部に固定するための下側固定面を有するプレート部と、前記ベアリング部と前記プレート部との間の近位/遠位間隔を調整するための調整機構と、を備え、前記調整機構は、前記ベアリング部の下側表面と係合するように構成された上側コネクタ要素と、前記プレート部の上側表面上に少なくとも間接的に配置されるように適合された下側ベース要素と、前記コネクタ要素および前記ベース要素に動作可能に結合された伸縮機構と、を有する調整装置であって、前記伸縮機構は、前記調整装置の厚さを調整するためにユーザが操作可能である、前記調整装置と、前記プレート部に対する前記調整装置の高さレベルを調整するために、前記プレート部の前記上側表面と前記ベース要素の下側表面との間に挿入されるように構成された少なくとも一つのシムと、を備える。本発明は、特に簡単で、汎用性が高く、かつ安定した近位/遠位間隔の調整を可能にするものである。この調整は調整装置、ならびに少なくとも一つのシムによって行われる。このために、調整装置の近位/遠位方向の厚さは、伸縮機構によって可変である。伸縮機構は、コネクタ要素とベース要素との間の近位/遠位間隔、ひいては調整装置の厚さを変更するために、ユーザによって作動可能である。さらに、調整装置の近位/遠位高さレベルをプレート部に対して変化させることができる。このために、少なくとも一つのシムが設けられる。少なくとも一つのシムは、調整装置とプレート部の間に摺動可能に挿入することができる。少なくとも一つのシムを挿入することで、調整装置はプレート部に対して近位方向(すなわちベアリング部に向かう方向)に持ち上げられ、それによって高さレベルが上昇される。高さレベルを下げる際には、少なくとも一つのシムをベース要素の下側表面とプレート部の上側表面との間から取り除けばよい。これにより、調整装置がプレート部に対して遠位方向に低くなる。調整装置の厚みと高さレベルは独立して調整可能であり、これにより、ベアリング部とプレート部との間の近位/遠位間隔を多用に調整することができる。「調整装置の厚さ」とは、近位/遠位方向における調整装置の全高を指す。「高さレベル」とは、近位/遠位方向における、ベース要素の下側表面とプレート部の上側表面との間の距離を指す。好ましくは、コネクタ要素は、ベアリング部の下側表面と脱着可能に係合するように構成される。少なくとも一つのシムがプレート部の上側表面とベース要素の下側表面との間に挿入されていない場合には、ベース要素をプレート部の上側表面に直接配置することができる。あるいは、少なくとも一つのシムが挿入されている場合、ベース要素は少なくとも一つのシム上に配置され、これにより、プレート部の上側表面に間接的に配置される。調整装置の厚さを変えるために、伸縮機構は、近位/遠位方向に伸縮可能である。好ましくは、伸縮機構は、少なくとも一つのシザーリフト機構、リンク、並進ねじ等から構成される。本明細書において、「上側」、「下側」、「前側」、「後側」、「内側」、「外側」、「近位側」および「遠位側」という用語は、標準的な解剖学的定義に従って使用される。本明細書では、「近位/遠位間隔」という語句は、近位方向および/または遠位方向に延びる間隔を示す。同様に、「前方/後方」という語句は前方および/または後方を意味し、「内側/外側」という語句は内側および/または外側を意味する。プレート部は「脛骨プラトー部」とも呼ぶことができる。
【0007】
一実施形態では、前記ベース要素は下側締結部を備えており、前記少なくとも一つのシムは相補的な上側締結部を備えており、前記下側締結部および前記上側締結部は、前/後方向に摺動可能に係合し、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合可能に係合するように構成される。ベース要素の下側締結部および少なくとも一つのシムの上側締結部によって、少なくとも一つのシムとベース要素、ひいては調整装置を互いに脱着可能に締結することができる。これにより、脛骨トライアルインサートシステムが機械的に安定する。下側締結部および上側締結部は、互いに相補的となるように設計および/または形成されている。一実施形態では、上側締結部は少なくとも一つの凹部を有しており、下側締結部は少なくとも一つの相補的な突出部を有しているか、またはそれぞれが上記とは逆の構成を有している。少なくともシムがベース要素とプレート部との間に摺動可能に挿入されると、上側締結部は下側締結部と前/後方向に摺動可能に係合する。少なくとも一つのシムが完全に挿入されると、上側締結部と下側締結部とは、近位/遠位方向および内側/外側方向において形状嵌合的に係合する。
【0008】
一実施形態では、前記プレート部は、近位方向に開口し、前記ベース要素を受容するように構成された受け凹部を備えており、前記プレート部は、前/後方向に開口し、前記受け凹部内部へと通じる挿入開口部を備えており、前記挿入開口部は、前記少なくとも一つのシムを前記受け凹部内へと前/後方向にスライドさせることを可能にする。これにより、さらなる機械的安定性が得られる。同時に、少なくとも一つのシムを挿入することにより、近位/遠位間隔の調整がさらに単純化される。受け凹部は、プレート部に遠位方向に皿穴加工されている。一旦受け凹部内に受け入れられると、ベース要素は遠位方向に拘束される。好ましくは、ベース要素は前/後方向および内側/外側方向にも拘束される。挿入開口部は、少なくとも一つのシムの挿入を容易にする。これにより、ベース要素が既に受け凹部内に受容されている状態で、少なくとも一つのシムを受け凹部内および調整装置の下方にスライドさせることができる。挿入後、少なくとも一つのシムは、近位/遠位方向ではプレート部とベース要素との間に、内側/外側方向では受け凹部内に拘束される。少なくとも一つのシムは、後方向に挿入するとともに反対側の前方向に取り外すことができ、または上記とは逆の構成を有していてもよい。
【0009】
一実施形態では、前記調整機構は、前記プレート部の前記上側表面と前記ベース要素の前記下側表面との間および/または前記シムの下側表面との間に挿入されるように構成された少なくとも一つの更なるシムを備える。少なくとも一つの更なるシムは、調整装置の高さレベルのさらなる調整を可能にする。少なくとも一つの更なるシムは、少なくとも一つのシムの代わりに、および/または少なくとも一つのシムに加えて挿入することができる。一実施形態では、シム及び更なるシムは、特にそれらの近位/遠位厚さに関して同一の寸法を有する。他の実施形態では、シムおよび更なるシムは、それらの設計、形状、および/または少なくとも一つの寸法、特にそれらの近位/遠位厚さに関して異なる。好ましい実施形態では、シムは、下側締結部を備え、更なるシムは、相補的な上側締結部を備え、シムの下側締結部および更なるシムの上側締結部は、前/後方向に摺動可能に係合し、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合可能に係合するように構成される。さらに、ベース要素が下側締結部を備えている場合、更なるシムの上側締結部は、好ましくは、ベース要素の下側締結部と前/後方向に摺動可能に係合するとともに、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合的に係合するように構成される。
【0010】
一実施形態では、前記伸縮機構は、少なくとも第1並進ねじと第2並進ねじとを備えており、各並進ねじは、ナット部材と螺合するねじ部材を有しており、ユーザ操作によって生じる前記第1並進ねじと前記第2並進ねじの運動により、前記調整装置の厚さが調整される。並進ねじは、ユーザによって操作され(すなわち手動であり)、それぞれのナット部材の回転運動を対応するねじ部材の直線運動に変換する。直線運動は、近位/遠位方向に沿っている。好ましい実施形態では、両方のねじ部材は、コネクタ要素の下側表面に固定的に取り付けられている。あるいは、ねじ部材はコネクタ要素と一体である。各ねじ部材は、外ねじおよび/または雄ねじを備えている。好ましい実施形態では、ナット部材は、ベース要素に回転可能に取り付けられている。好ましくは、各ナット部材は、内ねじおよび/または雌ねじを備えている。好ましくは、第1並進ねじおよび第2並進ねじは、内側/外側方向に間隔を置いて配置される。一実施形態では、第1並進ねじおよび第2並進ねじは、別個の手動作動およびこれによる移動を行うように適合される。あるいは、伸縮機構は、両方の並進ねじの同期された手動による作動およびこれによる移動を行うように適合され得る。第1並進ねじのねじ部材およびナット部材は、それぞれ、第1ねじ部材および第1ナット部材と表記することもできる。第2並進ねじのねじ部材およびナット部材は、それぞれ、第2ねじ部材および第2ナット部材と表記することもできる。
【0011】
一実施形態では、前記第1並進ねじの前記ナット部材および前記第2並進ねじの前記ナット部材のそれぞれは、外歯を備えており、前記ナット部材の前記外歯は、前記第1並進ねじおよび前記第2並進ねじを同期させて動かすために少なくとも間接的にかみ合う。両方の並進ねじの同期した動きにより、近位/遠位間隔の調節が改善され、さらに簡略化される。さらに、本発明者らは、並進ねじの別個の移動が、ベアリング部ひいては関節嵌合面の意図しない変形を引き起こす可能性があることを見出した。両方の並進ねじの同期した動きは、ナット部材の外歯の噛み合い係合によって実現される。外歯により、ナット部材はそれぞれ一種の歯車を形成する。一実施形態では、第1ナット部材の外歯と第2ナット部材の外歯とは、互いに直接かみ合う。好ましい実施形態では、外歯は、外歯を有する少なくとも一つの歯車によって間接的にかみ合わされ、少なくとも一つの歯車の外歯は、第1ナット部材の外歯と第2ナット部材の外歯の両方にかみ合わされる。
【0012】
一実施形態では、前記伸縮機構は、両方の前記ナット部材の前記外歯とかみ合う制御ギアホイールを備えており、前記制御ギアホイールの回転が前記ナット部材を同期回転させる。好ましくは、制御ギアホイールは、ベース要素に回転可能に取り付けられている。一実施形態では、制御ギアホイールは、直接手動回転、すなわち、ユーザが直接操作する作動に適合される。更なる実施形態では、制御ギアホイールは、例えば、更なる歯車ホイール、工具等との相互作用によって、間接的なユーザ操作による作動に適合される。
【0013】
一実施形態では、前記制御ギアホイールは、前記伸縮機構の第3並進ねじのナット部材を構成する。第3並進ねじは、ナット部材と、当該ナット部材とねじ係合するねじ部材とを備えている。第3並進ねじのナット部材およびねじ部材は、それぞれ、第3ナット部材および第3ねじ部材と表記することもできる。本実施形態において、制御ギアホイールは複数の機能を有する。その1つは、第1ナット部材と第2ナット部材の回転を同期させる機能、ひいては第1並進ねじと第2並進ねじの調整運動を同期させる機能である。さらに、第3並進ねじのナット部材としても機能する。第3並進ねじの設計および機能は、第1および第2並進ねじの設計および機能と本質的に同一である。繰り返しを避けるため、第1および第2並進ねじに関して既に述べたことは、第3並進ねじにも準用される。
【0014】
一実施形態では、前記脛骨トライアルインサートシステムは、調整装置に着脱自在に取り付けられたハンドルを備え、前記ハンドルは、前記伸縮機構に操作可能に結合された操作機構を有し、前記操作機構をユーザが操作することによって前記伸縮機構が動き、それによって前記調整装置の厚さが調整されるように構成されている。ハンドルは、調整装置のエルゴノミックかつ安全な取り扱いを可能にする。このため、ハンドルを調整装置に取り付けることができる。ハンドルによって調整装置を操作した後、ハンドルを調整装置から取り外すことができる。ハンドルと調整装置との間には、プラグイン接続、ラッチ接続、および/またはスナップイン接続を設けることができ、この接続は、ハンドルに設けられた少なくとも一つの接続要素と、調整装置に設けられた相補的な接続要素との間に形成される。ハンドルが調整装置に取り付けられているとき、操作機構は伸縮機構に作動可能に結合される。ハンドルが調整装置から取り外されると、操作機構は伸縮機構から切り離される。好ましくは、操作機構は、ハンドルに移動可能に取り付けられた操作要素を備え、操作要素は、ユーザにより行われる回転運動および/または並進運動に適合され、操作要素の回転運動および/または並進運動は、操作機構の運動、ひいては伸縮機構の運動を生じさせる。
【0015】
一実施形態では、前記ハンドルは近位端と遠位端との間を延びており、前記ハンドルは、前記遠位端に配置され、前記調整装置の相補的なスナップフィット要素とのスナップフィット接続を確立するように構成された少なくとも一つのスナップフィット要素を備える。この実施形態は、ハンドルの簡単かつ堅牢な着脱を可能にする。好ましくは、少なくとも一つのスナップフィット要素は、ハンドル、特にその遠位端と一体である。好ましくは、相補的なスナップフィット要素は、調整装置、特にそのベース要素と一体である。スナップフィット接続を確立するために、スナップフィット要素および/または相補的スナップフィット要素は弾性的に変形される。好ましい実施形態では、スナップフィット要素は雄型要素であり、相補的スナップフィット要素は雌型要素である。好ましくは、スナップフィット要素および相補的スナップフィット要素は、前/後方向に相互作用する。すなわち、ハンドルおよび調整装置は、着脱のために前/後方向に相対的に移動する。
【0016】
一実施形態では、前記操作機構は、手動で回転されるように構成された操作ギアホイールを備えており、前記操作ギアホイールは、前記伸縮機構のギアホイール、特に前記制御ギアホイールと少なくとも間接的にかみ合う。これにより、驚くほどシンプルで堅牢な設計が可能になる。操作ギアホイールはハンドルに回転可能に取り付けられている。好ましくは、操作機構、特に操作ギアホイールは、ハンドルの遠位端に配置される。操作ギアホイールは、好ましくは、ユーザの親指によって回転されるように適合されている。この場合、操作ギアホイールは、サムホイールと表記することもできる。操作ギアホイールは、伸縮機構のギアホイールの外歯と噛み合う外歯を備えている。ハンドルが調整装置に取り付けられている間は、歯車は噛み合っている。ハンドルが調整装置から取り外されると、操作ギアホイールとギアホイールは連動しなくなる。
【0017】
一実施形態では、前記操作機構は、前記操作ギアホイールおよび前記伸縮機構の前記ギアホイールとかみ合う少なくとも一つの伝達ギアホイールを備える。伝達ギアホイールは、ユーザによって引き起こされた操作ギアホイールの運動を伸縮機構のギアホイールに伝達する。伝達ギアホイールは、操作ギアホイールのエルゴノミックな配置を可能にする。また、伝達ギアホイールの仕様を変更することにより、操作ギアホイールの動きと伸縮機構との伝達比を簡単に変更することができる。
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図面を通して、同じ要素は同じ参照番号で示される。
【0019】
図面は、以下の内容を概略的に示す:
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ベアリング部と、プレート部と、調整機構と、を有する本発明による脛骨トライアルインサートシステムの一実施形態を示す分解斜視図であり、調整機構は、調整装置および少なくとも一つのシムを備えている。
図2】少なくとも一つのシムを除いた図1の脛骨トライアルインサートシステムの斜視図であり、調整装置は第1厚さ(図2)を有するように調整されている。
図3】少なくとも一つのシムを除いた図1の脛骨トライアルインサートシステムの斜視図であり、調整装置は第2厚さ(図3)を有するように調整されている。
図4図1図3の脛骨トライアルインサートシステムのさらなる斜視図であり、調整装置が第2厚さに調整され、プレート部に対する調整装置の高さレベルが、プレート部と調整装置との間に挿入された複数のシムによって調整されている図である。
図5】調整装置のコネクタ要素とともにベアリング部を示す詳細斜視図である。
図6】コネクタ要素を除いたベアリング部のさらなる詳細斜視図である。
図7】コネクタ要素を除いた調整装置の詳細斜視図である。
図8図7の調整装置のさらなる一部分解斜視図である。
図9図7および図8の調整装置のさらなる斜視図であり、注視線が調整装置の下側に向けられている。
図10】注視線が上側に向けられた少なくとも一つのシムの詳細斜視図である。
図11図10のシムのさらに詳細な斜視図であり、注視線は下側に向けられている。
図12】調整装置に取り付けて手動で調整するように構成された脛骨トライアルインサートシステムのハンドルの斜視図である。
図13図12によるハンドルの遠位端の詳細斜視図である。
図14】ハンドルが調整装置に脱着可能に取り付けられている脛骨トライアルインサートシステムの異なる構成を示す斜視図である。
図15】ハンドルが調整装置に脱着可能に取り付けられている脛骨トライアルインサートシステムの異なる構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~4、14および図15によれば、人工膝関節置換術に使用する脛骨トライアルインサートシステム1が示される。脛骨トライアルインサートシステム1は、ベアリング部100と、プレート部200と、調整機構Aとを備え、調整機構Aは、調整装置300と、少なくとも一つのシム400とを備える。図示の実施形態では、脛骨トライアルインサートシステム1は、ハンドル500をさらに備える。
【0022】
ベアリング部100は、上側関節嵌合面101と、対向する下側表面102と、下側表面102から上側関節嵌合面101まで延びる周壁103とを有する。ベアリング部100はさらに、前側面104と、後側面105と、外側面106と、内側面107とを含む。上側関節嵌合面101は、大腿骨遠位部の天然顆または人工顆と関節嵌合するように構成されている。上側関節嵌合面101は、外側関節嵌合面部分108および内側関節嵌合面部分109を含む。
【0023】
プレート部200は、上側表面201と、対向する下側固定面202と、周壁203とを有する。プレート部200はさらに、前側面204と、後側面205と、外側面206と、内側面207とを含む。下側固定面202は、脛骨の近位端に直接または間接的に固定するように構成されている。
【0024】
調整機構Aは、ベアリング部100とプレート部200との間の近位/遠位間隔の調整を可能にする。換言すれば、調整機構Aの機能は、プレート部200に対する上側関節嵌合面101の近位/遠位位置、特に下側固定面202に対する近位/遠位位置を調整および/または変化させることである。このような間隔または高さの調節は、人工膝関節置換術における試行的な再ポジショニングのために必要とされる。この試行的な再ポジショニングは実際の人工膝関節置換に先立つ操作工程であり、膝関節の機能的置換に必要な脛骨および大腿骨インプラント構成要素のサイズ、寸法および/または形状が決定される。脛骨トライアルインサートシステム1のこの用途に関連するバックグラウンドは、当業者には周知のことである。従って、この点に関してこれ以上の説明はおこなわない。
【0025】
調整装置300と調整機構Aの少なくとも一つのシム400の両方は、ベアリング部100とプレート部200との間の近位/遠位間隔を調整する役割を果たす。
【0026】
調整装置300は、上側コネクタ要素301と、下側ベース要素302と、伸縮機構Tとから構成される。
【0027】
上側コネクタ要素301は、ベアリング部100の下側表面102と脱着可能に係合するように構成されている。ベアリング部100は、係合部110(図6参照)を備えている。係合部110は、下側表面102対して近位方向に沿って皿穴加工されている。係合部110およびコネクタ要素301は、前/後方向に摺動可能に係合し、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合可能に係合するように構成されている。このため、係合部110は、前方向に開口したあり溝ガイドの形態に設計されている。さらなる実施形態では、コネクタ要素は、ベアリング部の下側表面と固定的に取り付けられ、および/または一体となっている。
【0028】
下側のベース要素302は、遠位方向に沿ってプレート部200上に少なくとも間接的に配置されるように適合されている。少なくとも一つのシム400を利用する脛骨トライアルインサートシステム1の構成(図1、4、14、15を参照)では、ベース要素302は、少なくとも一つのシム(および/または更なるシム)上に直接配置されており、これにより、プレート部200上に間接的に配置されている。少なくとも一つのシム400(および更なるシム)を使用しない脛骨トライアルインサートシステム1の構成(図2、3を参照)では、ベース要素200は、プレート部200上に直接配置される。図示の実施形態では、ベース要素302は、上部の第1ベース要素部3021と、下部の第2ベース要素部3022と、を備える2部品設計を有する。さらなる実施形態では、ベース要素は単一部品としての設計を有する。
【0029】
伸縮機構Tは、コネクタ要素301およびベース要素302に作動可能に結合されている。伸縮機構Tは、調整装置300の近位/遠位方向の厚さを調整するために、ユーザによって作動可能である。伸縮機構Tによって調整装置300の近位/遠位厚さを変化させると、ベアリング部100とプレート部200との間の近位/遠位間隔が調整される。本発明の観点からは、図に示されるような伸縮機構Tの設計は有利であるが、必ずしも必須ではない。他の実施形態では、伸縮機構の設計が異なる。したがって、伸縮機構の設計および機能の詳細については、以下でさらに詳しく説明する。
【0030】
少なくとも一つのシム400は、プレート部200に対する調整装置300の近位/遠位高さレベルを調整するために、プレート部200とベース要素302との間に挿入されるように構成されている。特に、少なくとも一つのシム400は、プレート部200の上側表面201とベース要素302の下側表面303との間に挿入されるように構成されている。図示の実施形態では、下側表面303は、第2ベース要素部3022上に位置する。
【0031】
図2、3、および4はそれぞれ、ベアリング部100とプレート部200との間の近位/遠位間隔の調整が異なっている、脛骨トライアルインサートシステム1の異なる構成を示す。前記異なる構成は、第1構成(図2)、第2構成(図3)、および第3構成(図4)として示すことができる。
【0032】
第1構成および第2構成では、脛骨トライアルインサートシステム1は、少なくとも一つのシム400を使用しない。したがって、調整装置300は、プレート部200と直接係合する。そのために、プレート部200は、近位方向に開口し、ベース要素302を受容するように構成された受け凹部208を備える。受け凹部208は、プレート部200に遠位方向に皿穴加工され、周壁203によって取り囲まれている。受け凹部208は底面209を有する。本実施形態では、底面209と上側表面201とは面一である。底面209は、受け凹部208の遠位側境界を画定する。受け凹部208内に受容されると、ベース要素302、特にその下側表面303は、底面209上に載る。さらに、ベース要素302は、受け凹部内および/または周壁203によって、前/後方向および内側/外側方向に、形状適合的に拘束される。
【0033】
第1構成(図2)では、調整装置300は第1厚さに調整され、第1厚さは調整装置300の最小の厚さである。第2構成(図3)では、調整装置300は第2厚さに調整され、第2厚さは調整装置300の最大厚さである。
【0034】
ベアリング部100とプレート部200との間の間隔をさらに広げるために、少なくとも一つのシム400を挿入することができる。第3構成(図4)では、少なくとも一つのシム400は、プレート部200に対して近位方向に調整装置300を持ち上げるために挿入される。調整装置300を持ち上げることによって、その高さレベルが増加し、したがって、ベアリング部100とプレート部200との間の近位/遠位間隔がさらに調整および/または増加される。
【0035】
図4に描かれているような第3構成では、少なくとも一つのシム400は、更なるシム410、420、430、440とともに挿入される。前記シム400、410、420、430、440は、第1シム400、第2シム410、第3シム420、第4シム430、第5シム440と表すことができる。シム400~440は、互いに重ねられる。シムを追加すると調整装置は上昇し、シムを取り除くと調整装置は下降する。
【0036】
少なくとも一つのシム400(または更なるシム410~440のいずれか)を使用しない構成では、調整装置300は、その最小高さレベルに配置されており、これはゼロ高さレベルと表すことができる。
【0037】
シム400~440の挿入を容易にするために、プレート部200は挿入開口部210を備えている。挿入開口部210は前/後方向に開口しており、受け凹部208に連通する。挿入開口部210は、シムをベース要素302の下にスライドさせ、受け凹部208に入れることを可能にする。図示の実施形態では、挿入開口部210は周壁203内に前方開口部を画定する。
【0038】
ゼロ高さレベル(図2、3参照)を始点として、調整装置300の異なる高さレベルは、以下のように実現することができる。第1高さレベルは、第5シム440を、挿入開口部210を通して受け凹部208にスライドさせることによって実現される。これにより、第5シム440は、底面209と下側表面303との間に配置される。さらに、第4シム430を挿入することにより、調整装置300が第2高さレベルまで持ち上げられる。この構成では、第4シム430は、底面209と第5シム440の下側表面との間に配置される。調整装置300のさらなる高さレベルは、第3、第2および第1シム420、410、400を用いることで調整することができ、第1シム400は、挿入される最後かつ最下位のシムである。
【0039】
上述の各高さレベルにおいて、伸縮機構Tは、調整装置300の厚さを調整するためにユーザが操作可能であり、または近位方向に伸長するとともに遠位方向に収縮する。
【0040】
脛骨トライアルインサート1の第3構成(図4)または少なくとも一つのシムを伴う他の構成における安定性を向上させるために、ベース要素302は、下側締結部304(図9)を備えており、シム400~440の各々は、相補的な上側締結部401(図10)を備えている。下側締結部304と相補的な上側締結部401は、前/後方向に摺動可能に係合し、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合的に係合するように構成されている。図示の実施形態では、ベース要素302の下側締結部304は、下側表面303から遠位方向に突出する突出部である。シム400~440の上側締結部の設計は、第1シム400(図10)に関して図示されており、同様のことが更なるシム410~440に関しても当てはまる。上側締結部401は、第1シム400の上側表面402に遠位方向に皿穴加工された相補的な凹部を形成している。下側締結部304は、上側締結部401の内方輪郭C'と相補的な外方輪郭Cを有する。外方輪郭Cおよび内方輪郭C'の内側面および外側面は、それぞれアンダーカットを備えている。これらのアンダーカットは、ベース要素302を近位方向において第1シム400上に固定する。
【0041】
第1シム400は、上側表面402に対向する下側表面403をさらに備えている。第1シム400は、その下側に下側締結部404を備える。下側締結部404は、下側表面403から遠位方向に突出する突出部を構成する。下側締結部404は、更なるシム410~440の上側締結部と摺動可能かつ形状嵌合可能に係合するように構成されている。残りのシム410~440もそれぞれ、このような下側締結部を備えている。下側締結部404は、内方輪郭C'と少なくとも部分的に相補的な外方輪郭C''を備えている。
【0042】
第3構成(図4)では、ベース要素302の下側締結部304は、第5シム440の上側締結部と摺動自在かつ形状嵌合可能に係合する。第5シム440の下側締結部は、第4シム430の上側締結部に摺動自在にかつ形状嵌合可能に係合する。第4シム430の下側締結部は第3シム420の上側締結部と摺動可能にかつ形状嵌合可能に係合する。第3シム420の下側締結部は、第2シム410の上側締結部と摺動可能にかつ形状嵌合可能に係合する。第2シム410の下側締結部は、第1シム400の上側締結部に摺動自在かつ形状嵌合自在に係合する。第1シム400は、受け凹部208(図4)内に拘束される。
【0043】
図示の実施形態では、伸縮機構Tは、少なくとも第1並進ねじ320、340と第2並進ねじ360、380とから構成されている(図1参照)。第1並進ねじ320、340は、互いに螺合する第1ナット部材320と第1ねじ部材340とを備えている。第2並進ねじ360、380は、互いに螺合する第2ナット部材360と第2ねじ部材380とを備えている。調整装置300の厚さは、第1並進ねじ320、340および第2並進ねじ360、380の移動によって調整可能である。
【0044】
ナット部材320、360はいずれも、内ねじまたは雌ねじを備えている。ねじ部材340、380はいずれも、外ねじまたは雄ねじを備えている。
【0045】
ナット部材320、360はいずれも、それぞれ近位/遠位方向に平行な回転軸の周りを回転できるように、ベース要素302に回転可能に取り付けられている。図示の実施形態では、ナット部材320、360はそれぞれ、第1ベース要素部3021と第2ベース要素部3022との間に取り付けられている。両ねじ部材340、380は、コネクタ要素301と一体である。さらなる実施形態では、ねじ部材は、コネクタ要素に固定的に取り付けられる別個の部品として形成される。両方のねじ部材340、380は、コネクタ要素301の下側表面から遠位方向に延びている。第1ねじ部材340は、第1ナット部材320の回転軸と同軸に延びている。第2ねじ部材380は、第2ナット部材360の回転軸と同軸に延びている。
【0046】
一実施形態では、第1並進ねじおよび第2並進ねじは、それぞれ別個の作動および/または移動に適合される。しかしながら、図示の実施形態では、第1並進ねじ320、340の移動と第2並進ねじ360、380の移動とは、制御ギアホイール385によって同期される。制御ギアホイール385は、第1ナット部材320の外歯321および第2ナット部材360の外歯361とかみ合う外歯386を備えている。制御ギアホイール385は、ベース要素302、特に第1ベース要素部3021と第2ベース要素部3022との間に回転可能に取り付けられている。制御ギアホイール385は、第1ナット部材320および第2ナット部材360のそれぞれの回転軸に平行な回転軸を中心に回転する。制御ギアホイール385の回転は、第1ナット部材320および第2ナット部材360を同期回転させ、これによって第1並進ねじ320、340および第2並進ねじ360、380を同期並進させる。
【0047】
さらに、図示のような実施形態では、制御ギアホイール385は、伸縮機構Tの第3並進ねじ385,390のナット部材を構成している。第3並進ねじ385,390は、ナット部材としての制御ギアホイール385と、第3ねじ部材と表すことができるねじ部材390と、から構成されている。
【0048】
図示の実施形態では、調整装置300は、ラッチホイール391を有するラッチ機構をさらに備える。このラッチ機構は、特定の近位/遠位間隔に達したことを触覚および音声でユーザにフィードバックする。インジケータ機構は、ドライバホイール393によってナット部材320、360に断続的に作動可能に連結されたインジケータホイール392を備えている。インジケータ機構は、到達した近位/遠位間隔の段階的な表示を可能にする。しかしながら、ラッチ機構もインジケータ機構も、本発明に関しては主要な重要事項ではない。したがって、さらなる説明は省略する。
【0049】
一実施形態では、制御ギアホイール385は、ユーザによる直接的な手動操作に適合している。しかしながら、図示の実施形態では、脛骨トライアルインサートシステム1は、伸縮機構T、特にその制御ギアホイール385の間接的なユーザ操作による作動を可能にする前記ハンドル500を備えている。
【0050】
図14、15に示す構成では、ハンドル500は調整装置300に脱着可能に取り付けられている。図1、2、3、4、12、13に示す構成では、ハンドル500は調整装置300から取り外されている。ハンドル500は、近位端501と遠位端502との間に伸びている。その遠位端502において、ハンドル500は、少なくとも一つのスナップフィット要素503を備える。図示の実施形態では、ハンドル500は、2つのスナップフィット要素、すなわち、第1スナップフィット要素503および第2スナップフィット要素504を備えている。第1スナップフィット要素503は、調整装置300の相補的な第1スナップフィット要素305との解放可能なスナップフィット接続を確立するように構成される。第2スナップフィット要素504は、調整装置300の相補的な第2スナップフィット要素306との解放可能なスナップフィット接続を確立するように構成される。図示の実施形態では、ハンドル500のスナップフィット要素503、504は、両方とも雄型要素である。調整装置300の相補的なスナップフィット要素305、306は、両方とも雌型要素として設計されており、スナップフィット要素305、306を前/後方向に受け入れるように構成されている。第1スナップフィット要素503および第2スナップフィット要素504は、内側/外側方向に間隔をあけて配置され、第1スナップフィット要素503は外側に配置され、第2スナップフィット要素は内側に配置される。相補的なスナップフィット要素305、306の位置に関しても同様である。図示の実施形態では、第1スナップフィット要素305および第2スナップフィット要素306は、ベース要素302、特に第1ベース要素部3021に配置されている。
【0051】
第1スナップフィット要素503は、外方部分5031と内方部分5032とを備えている(図13参照)。これらの部分5031、5032は、スナップフィット接続が確立および/または解除されるとき、互いに対して弾性変形する。第2スナップフィット要素504およびその部分5042、5041に関しても同様である。
【0052】
ハンドル500はさらに、伸縮機構Tの間接的なユーザ操作による作動を可能にする操作機構Mを含んでいる。操作機構Mは、ハンドル500が調整装置300に取り付けられているとき、伸縮機構Tに作動的に結合されている(図14、15参照)。言い換えれば、ハンドル500を調整装置300に取り付けると、操作機構Mも伸縮機構Tに結合される。ハンドル500を取り外すと、操作機構Mは切り離される。
【0053】
操作機構Mは、操作ギアホイール505と伝達ギアホイール506とから構成される。操作ギアホイール505は、手動で回転するように構成され、伝達ギアホイール506の外歯508と相互作用する外歯507を備えている。操作ギアホイール505と伝達ギアホイール506はいずれも、ハンドル500の遠位端502に回転可能に取り付けられている。操作ギアホイール505は、近位/遠位方向に平行な軸の周りに回転可能である。伝達ギアホイール506に関しても同様である。
【0054】
伝達ギアホイール506は、伸縮機構Tの制御ギアホイール385と相互作用するように構成されている。ハンドル500が調整装置300に取り付けられていると、伝達ギアホイール506の外歯508は、制御ギアホイール385の外歯386とかみ合う。ハンドル500を調整装置300から取り外すと、伝達ギアホイール506が制御ギアホイール385から切り離される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨遠位部表面と関節嵌合するための上側関節嵌合面を有するベアリング部と
脛骨近位部に固定するための下側固定面を有するプレート部と
前記ベアリング部と前記プレート部との間の近位/遠位間隔を調整するための調整機構と
を備え、
前記調整機構は
前記ベアリング部の下側表面と係合するように構成された上側コネクタ要素と、前記プレート部の上側表面上に少なくとも間接的に配置されるように適合された下側ベース要素と、前記コネクタ要素および前記ベース要素に動作可能に結合された伸縮機構と、を有する調整装置であって、前記伸縮機構は、前記調整装置の厚さを調整するためにユーザが操作可能である、前記調整装置と
前記プレート部に対する前記調整装置の高さレベルを調整するために、前記プレート部の前記上側表面と前記ベース要素の下側表面との間に挿入されるように構成された少なくとも一つのシムと
を備える、脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項2】
前記ベース要素は下側締結部を備えており、前記少なくとも一つのシムは相補的な上側締結部を備えており、前記下側締結部および前記上側締結部は、前/後方向に摺動可能に係合し、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合可能に係合するように構成される、請求項1に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項3】
前記プレート部は、近位方向に開口し、前記ベース要素を受容するように構成された受け凹部を備えており、前記プレート部は、前/後方向に開口し、前記受け凹部内部へと通じる挿入開口部を備えており、前記挿入開口部は、前記少なくとも一つのシムを前記受け凹部内へと前/後方向にスライドさせることを可能にする、請求項1または2に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項4】
前記調整機構は、前記プレート部の前記上側表面と前記ベース要素の前記下側表面との間および/または前記シムの下側表面との間に挿入されるように構成された少なくとも一つの更なるシムを備える、請求項1に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項5】
前記伸縮機構は、少なくとも第1並進ねじと第2並進ねじとを備えており、各並進ねじは、ナット部材と螺合するねじ部材を有しており、ユーザ操作によって生じる前記第1並進ねじと前記第2並進ねじの運動により、前記調整装置の厚さが調整される、請求項1に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項6】
前記第1並進ねじの前記ナット部材および前記第2並進ねじの前記ナット部材のそれぞれは、外歯を備えており、前記ナット部材の前記外歯は、前記第1並進ねじおよび前記第2並進ねじを同期させて動かすために少なくとも間接的にかみ合う、請求項5に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項7】
前記伸縮機構は、両方の前記ナット部材の前記外歯とかみ合う制御ギアホイールを備えており、前記制御ギアホイールの回転が前記ナット部材を同期回転させる、請求項6に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項8】
前記制御ギアホイールは、前記伸縮機構の第3並進ねじのナット部材を構成する、請求項7に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項9】
前記調整装置に着脱自在に取り付けられたハンドルを備え、前記ハンドルは、前記伸縮機構に操作可能に結合された操作機構を有し、前記操作機構をユーザが操作することによって前記伸縮機構が動き、それによって前記調整装置の厚さが調整されるように構成されている、請求項1に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項10】
前記ハンドルは近位端と遠位端との間を延びており、前記ハンドルは、前記遠位端に配置され、前記調整装置の相補的なスナップフィット要素とのスナップフィット接続を確立するように構成された少なくとも一つのスナップフィット要素を備える、請求項9に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項11】
前記操作機構は、手動で回転されるように構成された操作ギアホイールを備えており、前記操作ギアホイールは、前記伸縮機構のギアホイール、特に制御ギアホイールと少なくとも間接的にかみ合う、請求項9または10に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【請求項12】
前記操作機構は、前記操作ギアホイールおよび前記伸縮機構の前記ギアホイールとかみ合う少なくとも一つの伝達ギアホイールを備える、請求項11に記載の脛骨トライアルインサートシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
伝達ギアホイール506は、伸縮機構Tの制御ギアホイール385と相互作用するように構成されている。ハンドル500が調整装置300に取り付けられていると、伝達ギアホイール506の外歯508は、制御ギアホイール385の外歯386とかみ合う。ハンドル500を調整装置300から取り外すと、伝達ギアホイール506が制御ギアホイール385から切り離される。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
大腿骨遠位部表面と関節嵌合するための上側関節嵌合面(101)を有するベアリング部(100)と、
脛骨近位部に固定するための下側固定面(202)を有するプレート部(200)と、
前記ベアリング部(100)と前記プレート部(200)との間の近位/遠位間隔を調整するための調整機構(A)と、
を備え、
前記調整機構(A)は、
前記ベアリング部(100)の下側表面(102)と係合するように構成された上側コネクタ要素(301)と、前記プレート部(200)の上側表面(201)上に少なくとも間接的に配置されるように適合された下側ベース要素(302)と、前記コネクタ要素(301)および前記ベース要素(302)に動作可能に結合された伸縮機構(T)と、を有する調整装置(300)であって、前記伸縮機構(T)は、前記調整装置(300)の厚さを調整するためにユーザが操作可能である、前記調整装置(300)と、
前記プレート部(200)に対する前記調整装置(300)の高さレベルを調整するために、前記プレート部(200)の前記上側表面(201)と前記ベース要素(302)の下側表面(303)との間に挿入されるように構成された少なくとも一つのシム(400)と、
を備える、脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目2)
前記ベース要素(302)は下側締結部(304)を備えており、前記少なくとも一つのシム(400)は相補的な上側締結部(401)を備えており、前記下側締結部(304)および前記上側締結部(401)は、前/後方向に摺動可能に係合し、近位/遠位方向および内側/外側方向に形状嵌合可能に係合するように構成される、項目1に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目3)
前記プレート部(200)は、近位方向に開口し、前記ベース要素(302)を受容するように構成された受け凹部(208)を備えており、前記プレート部(200)は、前/後方向に開口し、前記受け凹部(208)内部へと通じる挿入開口部(210)を備えており、前記挿入開口部(210)は、前記少なくとも一つのシム(400)を前記受け凹部(208)内へと前/後方向にスライドさせることを可能にする、項目1または2に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目4)
前記調整機構(A)は、前記プレート部(200)の前記上側表面(201)と前記ベース要素(302)の前記下側表面(303)との間および/または前記シム(400)の下側表面との間に挿入されるように構成された少なくとも一つの更なるシム(410、420、430、440)を備える、項目1から3のいずれか一項に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目5)
前記伸縮機構(T)は、少なくとも第1並進ねじ(320、340)と第2並進ねじ(360、380)とを備えており、各並進ねじは、ナット部材(320、340)と螺合するねじ部材(340、380)を有しており、ユーザ操作によって生じる前記第1並進ねじ(320、340)と前記第2並進ねじ(360、380)の運動により、前記調整装置(300)の厚さが調整される、項目1から4のいずれか一項に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目6)
前記第1並進ねじ(320、340)の前記ナット部材(320)および前記第2並進ねじ(360、380)の前記ナット部材(360)のそれぞれは、外歯(321、361)を備えており、前記ナット部材(320、360)の前記外歯(321、361)は、前記第1並進ねじ(320、340)および前記第2並進ねじ(360、380)を同期させて動かすために少なくとも間接的にかみ合う、項目5に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目7)
前記伸縮機構(T)は、両方の前記ナット部材(320、360)の前記外歯(321、361)とかみ合う制御ギアホイール(385)を備えており、前記制御ギアホイール(385)の回転が前記ナット部材(320、360)を同期回転させる、項目6に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目8)
前記制御ギアホイール(385)は、前記伸縮機構(T)の第3並進ねじ(385、390)のナット部材を構成する、項目7に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目9)
前記調整装置(300)に着脱自在に取り付けられたハンドル(500)を備え、前記ハンドル(500)は、前記伸縮機構(T)に操作可能に結合された操作機構(M)を有し、前記操作機構(M)をユーザが操作することによって前記伸縮機構(T)が動き、それによって前記調整装置(300)の厚さが調整されるように構成されている、項目1から8のいずれか一項に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目10)
前記ハンドル(500)は近位端(501)と遠位端(502)との間を延びており、前記ハンドル(500)は、前記遠位端(502)に配置され、前記調整装置(300)の相補的なスナップフィット要素(305、306)とのスナップフィット接続を確立するように構成された少なくとも一つのスナップフィット要素(503、504)を備える、項目9に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目11)
前記操作機構(M)は、手動で回転されるように構成された操作ギアホイール(505)を備えており、前記操作ギアホイール(505)は、前記伸縮機構(T)のギアホイール、特に前記制御ギアホイール(385)と少なくとも間接的にかみ合う、項目9または10に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
(項目12)
前記操作機構(M)は、前記操作ギアホイール(505)および前記伸縮機構(T)の前記ギアホイールとかみ合う少なくとも一つの伝達ギアホイール(506)を備える、項目11に記載の脛骨トライアルインサートシステム(1)。
【国際調査報告】