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  • 特表-多相流体流を連続的に調製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】多相流体流を連続的に調製する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240628BHJP
   B01D 45/14 20060101ALI20240628BHJP
   B04B 5/12 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
B01D45/14
B04B5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023580791
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022066888
(87)【国際公開番号】W WO2023274787
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021116943.7
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523344474
【氏名又は名称】ヘンクスト エス・イー
【氏名又は名称原語表記】HENGST SE
【住所又は居所原語表記】NIENKAMP 55-85, 48147 MUENSTER, GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】ハッセル、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ディークヤコブス、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】スティッテリッヒ、アイケ
(72)【発明者】
【氏名】ロエルバー、マルティン
【テーマコード(参考)】
4D031
4D057
5H127
【Fターム(参考)】
4D031AC06
4D031BB01
4D031EA01
4D057AA00
4D057AB07
4D057AC01
4D057AC06
4D057AD01
4D057AE18
4D057BA00
4D057CB00
5H127AA05
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA03
5H127BA05
5H127BA28
5H127BA33
5H127BB02
5H127EE23
(57)【要約】
本発明は、具体的には燃料電池の運転時に、多相流体流を連続的に調製する方法に関する。当該方法は、a)キャリア物質及びプロセス物質を含む気相と、プロセス物質を含む液相とを含む多相流体流を用意するステップと、b)前記多相流体流を、連続運転可能な回転分離機の中に投入するステップと、c)前記回転分離機によって、前記液相を、前記多相流体流から少なくとも部分的に分離して、調製済の気相を含む調製済の流体流を生成するステップと、を含む。前記調製済の気相は、前記キャリア物質及びプロセス物質を含み、前記調製済の気相中の前記プロセス物質の物質量分率は、前記多相流体流の気相中のプロセス物質の物質量分率の50%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
具体的には燃料電池の運転時に、多相流体流を連続的に調製する方法であって、
a)キャリア物質及びプロセス物質を含む気相と、プロセス物質を含む液相とを含む多相流体流を用意するステップと、
b)前記多相流体流を、連続運転可能な回転分離機(10)の中に投入するステップと、
c)前記回転分離機(10)によって、前記液相を、前記多相流体流から少なくとも部分的に分離して、調製済の気相を含む調製済の流体流を生成するステップと、を含む方法において、
前記調製済の気相は、前記キャリア物質及びプロセス物質を含み、前記調製済の気相中の前記プロセス物質の物質量分率は、前記多相流体流の気相中のプロセス物質の物質量分率の50%以上である、方法。
【請求項2】
前記ステップc)における分離は、前記調製済の流体流が、前記液相を、前記調製済の流体流の質量に対して、0.05~2%、好ましくは0.1~1%、特に好ましくは0.2~0.5%の質量分率で含むように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
作業チャンバ(16)の内壁に配された前記回転分離機(10)の温度が、60℃以上、好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記回転分離機(10)は、ターボ機械、回転フィルタ、回転導管分離機、又は、ディスクセパレータであり、前記回転分離機(10)は、好ましくはディスクセパレータである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記回転分離機(10)は、ディスクセパレータであり、ディスク(12)の平均表面粗さRzが、25μm以下、好ましくは10μm以下、特に好ましくは6.3μm以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記回転分離機(10)は、ディスクセパレータであり、ディスク(12)の間の間隔が、0.6mm未満、好ましくは0.3mm未満、特に好ましくは0.2mm未満である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記回転分離機(10)は、ディスクセパレータであり、ディスク(12)のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てのディスク(12)、特に好ましくは、前記流体流と接触する前記ディスクセパレータの全ての構成部材が、前記プロセス物質をはじく材料から成る、又は、前記プロセス物質をはじく材料で被覆されており、前記プロセス物質をはじく材料上の前記プロセス物質は、70°以上、好ましくは80°以上、特に好ましくは90°以上、最も好ましくは100°以上の範囲の接触角を有する、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記回転分離機(10)は、電気モータ(14)によって駆動され、前記電気モータ(14)は、好ましくは前記キャリア物質及び/又は前記プロセス物質に対して耐浸透性のカプセルの中に取り付けられており、前記回転分離機(10)の搬送性能及び/又は分離性能は、好ましくは前記電気モータ(14)の出力によって制御可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において使用するための回転分離機(10)であって、
前記回転分離機(10)は、連続運転可能であり、前記回転分離機(10)は、多相流体流の、プロセス物質を含む液相を、キャリア物質及びプロセス物質を含む気相から少なくとも部分的に分離するように構成されており、得られる調製済の気相は、前記キャリア物質及び前記プロセス物質を含み、前記調製済の気相中の前記プロセス物質の物質量分率は、前記多相流体流の気相中のプロセス物質の物質量分率の50%以上である、回転分離機(10)。
【請求項10】
燃料電池システム、具体的には、高分子電解質燃料電池システムであって、
燃料電池の少なくとも1つの電極、具体的にはアノード、に流体を供給するための流体導管システムを含み、
少なくとも1つの流体導管において、請求項9に記載の、多相流体流を連続的に調製するための回転分離機が設けられている燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相流体流を連続的に調製する方法、対応する方法で使用するための回転分離機、及び、対応する方法を実施するための燃料電池システムに関する。また、多相流体流の連続的な調製における、対応する回転分離機の使用も開示されている。
【0002】
本発明の主題は、添付の特許請求の範囲に定義される。
【背景技術】
【0003】
車両技術の分野における燃料電池の使用は、数年前から、原油などの化石原料への依存を低減する有望な方法と見なされている。この場合、燃料電池は、リチウムイオン電池のような電池の使用に代わる最も重要な代替案の一つである。バッテリー技術と比較して、燃料電池技術は、具体的には燃料の実用的な取り扱い、貯蔵可能性、補充時間、及び、既存の導管や貯蔵インフラストラクチャを利用できる潜在的な可能性について、特別な利点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池では、制御された反応条件下で、酸素と例えば、水素、メタン、又はメタノールといった燃料とを反応させて、水、及び場合によっては別の反応生成物を得ることが行われ、この場合、酸化還元反応の反応ステップが、空間的に分離された状態で進行する。燃料電池は、これに加えて、アノードとカソードとから成り、これらは電解質、例えば電解質膜によって互いに分離されている。
【0005】
運転中、反応物は連続的に燃料電池に供給され、燃料の大部分は、過剰空気の条件下で使用される。このため、燃料電池の円滑な運転には、流体伝達用の高度なシステムが必要となる。ここで、燃料電池の最も効率的な運転を確保すると共に使用される材料の高い利用率を確保するためには、燃料電池から排出される流体流、特に過剰空気の条件下で使用された燃料を、少なくとも部分的に燃料電池に再循環させることが特に必要となる。しかしながら、実際には、燃料電池から排出される流体流は、通常、化学変換の反応生成物、多くの場合は水を含み、水は、少なくとも部分的に凝縮した形で存在するため、極めて大きな問題を伴う。排出される動作ガスを再循環させる場合、通常、燃料電池内で生成される大部分が凝縮した水が、燃料電池の中に戻されることを避けることが重要である。そうしない場合、例えば、望ましくない燃料電池積層の浸水が生じ得る。
【0006】
このため、再循環のために使用される流体導管システム、又は、少なくともアノードが設けられた流体導管システムにおいて、水分離機が使用されることが多い。
【0007】
従来技術では、このために、受動的な水分離機が使用されている。しかしながら、本発明者らの評価では、これらのシステムは大きな欠点につながり得る。例えば、これらのシステムは、流体導管システムにおいて望ましくない動圧又は圧力低下を生じさせる可能性がある。特に、燃料電池が低負荷で運転され、したがって、燃料電池積層から排出される流体流が比較的弱い場合、このようなシステムは、凝縮水に対する分離レベルも低い。基本的に、従来技術から公知の受動的なシステムの分離効率は、通常、不十分であると認識されている。
【0008】
そして、本発明の発明者らは、この先行技術から公知の問題は、回転分離機を使用することによって解決可能であること、具体的にはこの回転分離機が、例えば別個の電気モータによって駆動され、したがって、優れた分離効率で流体流から凝縮副生成物を除去するだけでなく、いわばタービンのように、その回転によって流体導管システム内に十分な流れを能動的に確保する場合に、解決可能であることが分かった。
【0009】
しかしながら、多相流体流を連続的に調製するための回転分離機の使用は基本的には有利であるが、本発明者らの見解によれば、特定の用途では、具体的には燃料電池の流体導管システムにおいて使用される場合には、不利であると見なされ得るという欠点にもつながり得る。つまり本発明者自らの経験では、それ自体が極めて有利な構造であっても、時折、予期せぬ驚くべき効果が発生し、これにより、燃料電池の性能に望ましくない損失がもたらされた。
【0010】
この理論に束縛されるものではないが、本発明の発明者らは、燃料電池の性能におけるこれらの損失は、回転分離機の特定の性能の結果生じたものである可能性が高く、これは具体的には、回転分離機が特に高い回転数又は分離性能で運転される場合に生じ得ると考えている。この場合、高性能な回転分離機による水の分離は、回転分離機から出る気相中の水の物質量分率も大きく低下させるように良好に機能する。同時に、これにより非常に乾燥した燃料電池のキャリアガスは、回転分離機によって低負荷時でも十分な圧力が与えられ、燃料電池中を循環する。しかしながら、燃料電池の円滑な運転のためには、電極を分離するために使用される電解質膜は湿った状態で維持して、十分なイオン輸送を可能にすることが求められる場合が多い。この理論に束縛されるものではないが、本発明の発明者らは、回転分離機を燃料電池、具体的にはアノードに接続された流体導管システムにおいて使用すること自体は有利であるが、電解質膜が十分な膜水分を有さないというリスクは、従来の分離機よりも高いと想定する。
【0011】
本発明の課題は、上述した問題を解決し、回転分離機の燃料電池システムにおける使用の極めて有利かつ新規の構成のために、具体的には燃料電池の運転時に多相流体流を連続的に調製する特に適した方法を提供することにあり、当該方法によって、上述した欠点を回避し、燃料電池の効率的な運転を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここに提供される、具体的には燃料電池の運転時に多相流体流を連続的に調製する方法によって、回転分離機を使用する場合であっても、電解質膜の意図しない乾燥を阻止可能な、調製された流体流を得ることが可能となろう。
【0013】
そして本発明の発明者らは、上述の課題を解決するには、多相流体流を連続的に調製する方法の構成を、回転分離機の使用自体は有利である場合に、調製された気相中のプロセス物質の物質量分率が、元の気相に対して50%よりも少なくならないようにする必要があることが分かった。
【0014】
上述の課題は、特許請求の範囲に定義されるような多相流体流を連続的に調製する方法によって、又は、以下に開示されるような回転分離機及び使用によって、対応して解決される。本発明に係る好ましい構成は、従属請求項及び以下に記載する実施形態から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
このような本発明の対象の特徴は、以下において好ましいものとして記載され、特に好ましい実施形態では、別の好ましいと記載される特徴と組み合わされる。したがって、以下に特に好ましいと記載される実施形態の2つ以上の組み合わせが特に好ましい。また、ある程度の範囲において好ましいと指定される特徴を、ある程度の範囲において好ましいと指定される1つ以上の更なる特徴と組み合わせた実施形態も好ましい。好ましい回転分離機及び使用の特徴は、好ましい方法の特徴から明らかとなる。
【0016】
本発明は、具体的には燃料電池の運転時に、多相流体流を連続的に調製する方法に関し、この方法は、
a)キャリア物質及びプロセス物質を含む気相と、プロセス物質を含む液相とを含む多相流体流を用意するステップと、
b)前記多相流体流を、連続運転可能な回転分離機の中に投入するステップであって、ここで前記回転分離機は、好ましくは連続的又は断続的に、特に好ましくは連続的に運転されるステップと、
c)前記回転分離機によって、前記液相を、前記多相流体流から少なくとも部分的に分離して、調製済の気相を含む調製済の流体流を生成するステップと、を含む方法において、
前記調製済の気相は、前記キャリア物質及びプロセス物質を含み、前記調製済の気相中の前記プロセス物質の物質量分率は、前記多相流体流の気相中のプロセス物質の物質量分率の50%以上である。
【0017】
本発明に係る方法は、燃料電池、具体的には高分子電解質燃料電池、すなわち、電解質として高分子膜を使用する燃料電池、の運転時の使用に特に適している。この場合、燃料電池のアノード側の流体導管システムにおいて、本発明に係る方法を使用することが好ましい。
【0018】
しかしながら、本発明の発明者らは、燃料電池を最適化する際に収集された、回転分離機を使用して多相流体流を連続的に調製するための知識は、基本的に、例えば下流に配置された装置及び要素が所定の最小量のプロセス物質を必要とするという理由により気相中のプロセス物質濃度を慎重に制御することが求められる、他の利用分野にも関係があるということに想到した。
【0019】
本発明に係る方法のステップa)では、気相及び液相を含む多相流体流が用意される。対応する多相流体流が、例えば、酸化還元反応によって水が形成される燃料電池において形成され得る。この水は、凝縮された形で、過剰な燃料と共に燃料電池から排出される。
【0020】
本発明者らの観点からは、多相流体流は、所定の用途では、固相、例えば粒子状の不純物を含むことも基本的には可能であるが、これはほとんどの用途ではあまり好ましくなく、特に燃料電池の運転時には、基本的にはむしろ避けるべきである。いずれにせよ、流体流中に場合によっては存在する粒子状の不純物は、回転分離機の使用によって、自動的かつ徹底的に分離可能であることが、本発明に係る方法の利点とみなすことができる。
【0021】
本発明に従って用意される多相流体流は、液相においてプロセス物質を含む。本発明の範囲において、このプロセス物質は、本発明に係る方法において濃度を慎重に制御しなければならない化合物である。ほとんどの関連用途において、具体的には、本発明に係る方法の高分子電解質燃料電池における好ましい使用では、プロセス物質は水である。
【0022】
プロセス物質は、液相に加え、気相でも存在するので、通常、温度と一般的な圧力とに依存して、プロセス物質の気相と液相との間に相平衡が確立されるか、又は、この多相系はこの状態を少なくとも目指す。
【0023】
気相には、気体状のプロセス物質に加えて、キャリア物質も含まれる。つまりここで、キャリア物質という表現は、プロセス物質ではない全ての気体状成分を指す。本発明に係る方法において、キャリア物質は、主に、十分な量の気体を提供し、プロセス物質を液状及び気体状の形態で流体導管システムを通して輸送可能とするものとして機能する。実際に、キャリア物質は通常、具体的には燃料電池において使用される場合、過剰空気の条件下で供給される燃料、又は、当該燃料を含む混合物、例えば窒素との組み合わせである。
【0024】
上述の説明によれば、用意された多相流体流は、本発明による方法のステップb)において、連続運転可能な回転分離機の中に投入される。連続運転可能な回転分離機は、一般に、他の利用分野の当業者に公知であり、連続運転が不可能な他の回転分離機、例えば遠心分離機とは区別される。当業者であれば、回転分離機とは、その回転が分離効果を生じさせる又は助長する1つ又は複数の要素を有する分離機を意味するであろう。
【0025】
この回転分離機によって、液相、すなわち、液状のプロセス物質を含む相は、ステップc)において多相流体流から少なくとも部分的に分離される。ここで、好ましくは液相の98重量%以上、特に好ましくは液相の99重量%以上の、十分な分離が基本的には好ましい。
【0026】
この作業ステップc)により、少なくとも1つの調製済の気相を含む調製済の流体流が得られる。上述の説明を考慮すれば、この調製済の流体流は、潜在的に、液相及び気相を含むことが可能であるので、調製済の流体流は、多相系であり得る。このことは、場合によっては、特に好ましいものであり得る。これについては、以下に開示する通りである。
【0027】
ここで、本発明に係る方法にとって重要な点は、調製済の気相が、キャリア物質だけでなく、プロセス物質、すなわち気体状のプロセス物質も含む点である。本発明者らの見解によれば、ここで、調製済の気相のプロセス物質の物質量分率、すなわち、連続運転可能な回転分離機から排出されたような、調製済の流体流の気相中のプロセス物質の物質量分率が、回転分離機の性能にもかかわらず、それほど大きく減少しないことが重要であり、この場合は、気相中のプロセス物質の物質量分率を、多相流体流の気相中の同じプロセス物質の物質量分率の半分とすることが、妥当な限界値として特定され得る。これにより、具体的には、高分子電解質燃料電池をより広いパラメータ範囲にわたると共に様々な運転条件下で運転する際に、優れた性能が実現され得る。
【0028】
本発明に係る方法を、多相流体流の気相に対する、調製済の気相の相対的な組成における差が可能な限り小さく設定されるように実施することが、特に有利であることが証明された。ここで、具体的には、低負荷で運転され、比較的少量の水が生成される燃料電池は、長期にわたっても信頼性を有して運転可能である。この場合、流体導管システム内の流体流には、必要な圧力を回転分離機によって供給可能である。したがって、調製済の気相中のプロセス物質の物質量分率が、多相流体流の気相中のプロセス物質の物質量分率の80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは95~105%である、本発明に係る方法が好ましい。
【0029】
この回転分離機の上流と下流との間の気相の組成の関係は、当業者の理解に合わせて、キャリア物質とプロセス物質との間の分圧の比率によって表すこともできる。したがって、代替的な本発明に係る方法は、プロセス物質の分圧のキャリア物質の分圧に対する比率が、多相流体流の気相から調製済の気相まで50%以下だけ減少するものである。同様に、プロセス物質の分圧のキャリア物質の分圧に対する比率が、多相流体流の気相から調製済の気相まで20%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下だけ減少し、最も好ましくはほとんど減少しない、本発明に係る方法が好ましい。
【0030】
回転分離機の上流及び下流の気相中のプロセス物質の物質量の変化を測定するために、当業者は、従来の測定方法を用いることができ、その従来の方法から、方法パラメータに応じて、具体的にはプロセス物質に応じて、適切な決定方法が選択される。有機プロセス物質の場合、当業者は、例えばサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーで分析することが可能である。通常、プロセス物質としての水に特に関連する場合では、測定は、例えば従来の湿度計を使用して行なうことが可能であり、この場合、好ましい構成では、回転分離機の上流及び下流にそれぞれ1つの湿度計を配置してもよい。選択される測定方法によっては、例えば、プロセス物質の分圧を算出するために、気相の全圧を求めることも有効である。
【0031】
当業者の理解に合わせて、物質量分率又は分圧の判定は、方法条件の下で、すなわち本発明に係る方法を実施する際に一般的な温度及び圧力の下で、行われる。
【0032】
物質量分率又は分圧は、常に、明確に規定され、それ自体は、測定の精度だけに影響を与える測定方法には依存しない。したがって当業者は、具体的には、測定した変化が規定の限界値から大きく離れ、測定誤差を考慮してもその限界値に達しない場合に、使用する測定方法を自由に選択できる。通常、規定の限界値までの距離が測定不確実性の範囲内にある場合にのみ、当業者はより正確な測定方法を用いる必要があるだろう。
【0033】
本発明の発明者らは、本発明に係る方法において設定される、気相中のプロセス物質の物質量分率の最大変化量やこの変化量の好ましい値を実現可能な様々な選択肢を特定した。本発明の発明者らの見解によれば、回転分離機において、気相中に含まれるプロセス物質の凝縮は気相中の当該プロセス物質の物質量を減少させるので、適切な設計及び方法技術的手段によって阻止するか、又は、少なくともその規模を減少させることが、特に重要である。このことは、特に大きな問題となる。なぜなら、回転分離機は、多相流体流の液相を少なくとも部分的に平衡状態から除去するものであり、それによって凝縮が助長されるからである。
【0034】
回転分離機を使用して運転される燃料電池以外の従来技術から公知の方法では、この問題はほとんど関連しない。なぜなら、これらの用途では通常、凝縮したプロセス物質は、他の除去される部分と共にできるだけ完全に分離され得ることが、いずれにしても望ましいからである。
【0035】
以下に示す、本発明の発明者らによって特定された分圧変化を制御するための選択肢は、本発明の発明者らの見解によれば、当業者であれば、当業者が設定する構成と両立できる方法が得られるように、好適に選択及び組み合わせ可能である。本発明者らの観点からは、以下に記載する選択肢の2つ以上、好ましくは3つ以上、特に好ましくは4つ以上を組み合わせることが特に有利であることが分かっており、この場合、以下に記載する選択肢の全てを使用することが最も好ましい。
【0036】
気体流をできるだけ完全に洗浄するように構成された、従来技術において使用される回転分離機の多くは、水の物理化学結合に寄与する成分、例えば、乾燥剤又は冷却乾燥剤を有する。しかしながら、本発明者らの見解では、本発明に係る方法で使用される回転分離機は、これらの成分のいずれも含む必要はない。したがって、回転分離機が、気体状のプロセス物質を、具体的にはプロセス物質の化学結合及び/又は吸着によって気相から除去するための手段を含まない、本発明に係る方法が好ましい。この構成はまた、対応する回転分離機のメンテナンスが少なく、乾燥剤を時々交換する必要がないという利点も有している。
【0037】
本発明の発明者らは、気相を乾燥させるために特別の装置を設ける必要がないことに加えて、物質量の変化に影響する特に効率的な方法を特定した。基本的に、多相流体流中の液相をできるだけ十分に分離して、調製済の流体流中の液相の質量分率を、1%以下、好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.1%以下の可能な限り低い割合に設定することが直感的に望ましいであろう。このことは、特定の用途でも好ましいことであり得る。
【0038】
しかしながら、本発明の発明者らは、回転分離機が潜在的に高い効率を有しているにもかかわらず、液相が流体流から完全に除去されず、調製済の流体流が気相と平衡状態にある液相の残留物も依然として含む場合に、気相からの気体状のプロセス物質の望ましくない凝縮が、特に効率良く回避できることが分かった。この方法ガイドは、有利にも、特に容易に設定可能であり、すなわち回転分離機の性能又は水に対する固有の分離有効性を、狙いを定めて制御することによって設定可能である。ここで、液相中の凝縮したプロセス物質の残留物が、平均液滴粒度が1μm以下の小粒子の形で存在する場合に、特に有効であることが証明された。
【0039】
本発明の発明者らは、分離をできるだけ十分に行うことと、プロセス物質の物質量分率の変化をできるだけ小さくすることを確保するために液相を維持することとの間で妥協するために、本発明に係る方法を具体的には高分子電解質燃料電池の運転において特に有利に行うことができる、特に好適な領域を特定した。すなわち、ステップc)における分離を、調製済の流体流が、液相を、調製済の流体流の質量を基準として0.05~2%、好ましくは0.1~1%、特に好ましくは0.2~0.5%の質量分率で含むように実施する、本発明に係る方法が好ましい。
【0040】
プロセス物質の気相からの望ましくない分離をどのように阻止できるかを検討する過程で、本発明の発明者らは、回転分離機における望ましくない凝縮の規模を低減するために、回転分離機の温度を有利に調整できることを認識した。当業者の理解に合わせて、この温度は、作業チャンバ、すなわち多相流体流が導かれる部屋の内壁に関連する。特に、液相の残留含有量を調整することに狙いを定めた出力制御を組み合わせることで、この手順は、例えば高分子電解質膜を備えた燃料電池において、長期にわたって故障せずに運転可能とする調製済の流体流を提供するための優れた解決策であることが証明された。ここで、取り扱いを容易にする観点から、回転分離機の外側を断熱材で被覆することが可能であり、これは多くの用途において好ましいことである。特に好ましくは、回転分離機に加熱装置を装備することによって、方法を実施する間に回転分離機の温度を制御可能とすることである。したがって、作業チャンバの内壁に配される回転分離機の温度が、60℃以上、好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である、本発明に係る方法が好ましい。
【0041】
具体的には、調温された回転分離機との組み合わせにおいて、及び/又は、加熱された流体流を使用する際に、回転分離機内に、液状のプロセス物質の貯蔵容器を設けることも有効であることが証明されている。この貯蔵容器の空間は、作業チャンバと流体連通している。これにより、貯蔵容器内の好適に調温された液体を介して、プロセス物質の気相をさらに飽和させることが可能になり、この飽和は望ましくない凝縮に対して反作用する。この貯蔵容器には分離された液相から直接供給できることが、都合が良い。この実施形態はまた、プロセス物質の気相の最小規模の飽和を可能とするので、特に有利であることが証明された。
【0042】
本発明者らの見解によれば、気相中のプロセス物質の物質量分率の変化を制御するためのさらなる選択肢は、回転分離機の種類を適切に選択することである。なぜなら、回転分離機を特別に選択することにより、その一般的な機能原理に基づき、プロセス物質の物質量分率が過度に大きく変化することを容易に回避可能となるか、又は、過度に大きな変化に対抗するように方法パラメータを特に容易に適合可能となるからである。したがって、回転分離機が、ターボ機械、回転フィルタ、回転導管分離機、又は、ディスクセパレータであり、回転分離機は好ましくはディスクセパレータである、本発明に係る方法が好ましい。ディスクセパレータは、通常、特にエネルギー効率良く運転可能であり、本発明に係る方法が従来技術と比べて省エネルギーである点からも好ましい。
【0043】
本発明の発明者らの見解では、上述した回転分離機のうち、ディスクセパレータを使用することが特に好ましい。特に、ディスクセパレータを、高分子電解質膜を有する燃料電池の流体導管システムにおいて使用する場合、ディスクセパレータが連続的な流体流の確保に好適であるため、本発明に係る方法を特に有利に運転することができる。
【0044】
本発明の発明者らの見解によれば、ディスクセパレータの使用は、気相からのプロセス物質の望ましくない凝縮の規模を構造上の対策によって特に良好に制御できる点でも有利である。ここで本発明者らは、ディスクセパレータのディスク間の間隔をあまり大きく選択しないことが特に有利であることが分かった。すなわち、回転分離機がディスクセパレータであり、ディスク間の間隔が0.6mm未満、好ましくは0.3mm未満、特に好ましくは0.2mm未満である、本発明に係る方法が好ましい。
【0045】
さらに、本発明者らは、望ましくない凝縮を低減するために、特に平滑な表面を有するディスクを使用することを提案する。これは例えば、製造方法における適切な表面処理によって実現可能である。この理論に束縛されるものではないが、本発明の発明者らは、特に平滑な表面は、程度の差はあれ、凝縮核として作用し、それによって凝縮の規模が減少すると仮定している。したがって、回転分離機がディスクセパレータであり、DIN EN ISO 1302:2002によるディスクの平均表面粗さRzが、25μm以下、好ましくは10μm以下、特に好ましくは6.3μm以下である、本発明に係る方法が好ましい。
【0046】
本発明の発明者らの見解では、従来技術における一般的な構造とは異なり、ディスクを、プロセス物質をはじく材料から形成するか、又は、対応する材料で表面を被覆することが特に有利であることが分かった。この材料は、プロセス物質が水の場合、例えば疎水性材料、例えばポリテトラフルオロエチレン又は他のパーフルオロカーボン化合物であり得る。この理論に束縛されるものではないが、本発明の発明者らは、対応するはじく表面には、わずかな規模のプロセス物質の凝縮しか許容されないと想定している。したがって、回転分離機がディスクセパレータであり、ディスクのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てのディスク、特に好ましくは、流体流と接触するディスクセパレータの全ての構成部材が、プロセス物質をはじく材料から成る、又は、プロセス物質をはじく材料で被覆されており、プロセス物質をはじく材料上のプロセス物質は、70°以上、好ましくは80°以上、特に好ましくは90°以上、最も好ましくは100°以上の範囲の接触角を有する、本発明に係る方法が好ましい。
【0047】
さらに、本発明者らの見解では、膨張による気体の冷却を回避することが合理的である。気体の冷却により、プロセス物質の気相からの凝縮が引き起こされ得るからである。これに応じて、本発明の発明者らは、ジュール・トムソン効果により冷却を引き起こす等エンタルピー減圧が生じないように、回転分離機を構成する又は運転させることを提案する。したがって、回転分離機の上流の多相流体流の気相と回転分離機の下流の調製済の流体流の調製済の気相との間の全圧における差が、1%未満、好ましくは0.5%未満、特に好ましくは0.1%未満である、本発明に係る方法が好ましい。
【0048】
本発明に係る方法は、方法からの分離後の液相及び/又は調製済の気相が、多相流体流を提供する機能を有する作業装置に戻されることが可能なように構成されていることが有利である。したがって、対応する本発明に係る方法は、ループで、具体的には閉ループで運転されることが可能である。
【0049】
この場合、例えば分離された液相を、ステップa)において用意される多相流体流を生成する作業装置に供給可能である。この作業装置は、例えば、蒸気機関又は類似の装置であり得る。この点において、ステップc)において分離された液相が、少なくとも部分的に、ステップa)において用意される多相流体流を生成する作業装置に供給される、本発明に係る方法が好ましい。
【0050】
しかしながら、上述の手順は、一般に、燃料電池を運転する際の使用には望ましくない。つまり、燃料電池では、分離された液相は、燃料電池の望ましくない浸水を阻止するために、分離された液相を燃料電池システムから除去する排出システムに供給される必要がある。しかしながら、上述のように、燃料電池における使用時には、ステップc)で生成される調製済の流体流を燃料電池に戻すことが特に有利かつ合理的である。したがって、ステップc)において生成された調製済の流体流が、少なくとも部分的に、ステップa)において用意される多相流体流を生成する作業装置に供給される、本発明に係る方法が好ましい。上述の説明に鑑みて、作業装置が燃料電池、具体的には高分子電解質燃料電池である、本発明に係る方法が好ましいことは明らかである。
【0051】
本発明の発明者らは、極めて低い温度及び極めて高い温度では、本発明に係る方法を、具体的には燃料電池と組み合わせて実施することは非常に困難であり得ることを認識している。ここで特に困難な点は、極端な温度範囲において、気体状の成分中のプロセス物質の物質量分率の変化を、本発明に従って制御することである。対応して、本発明の発明者らは、本発明に係る方法を特に効果的に実施可能な特定の温度範囲を提案する。これを背景として、多相流体流及び/又は調製済の流体流の温度が、-40~120℃の範囲、好ましくは0~110℃の範囲である、本発明に係る方法が好ましい。
【0052】
上述のように、気相中のプロセス物質の物質量分率の変化が、回転分離機の性能によって、すなわち、回転分離機が意図的に所定の割合の液相を通過させることによって制御される場合が、本発明の特に有利な態様であると見なされる。このため、回転分離機に電気モータが装備されており、電気モータの出力によって制御可能となっている場合が特に有利であることが分かる。したがって、回転分離機が電気モータによって駆動され、電気モータが、好ましくは、キャリア物質及び/又はプロセス物質に対して耐浸透性のカプセルの中に取り付けられており、回転分離機の搬送性能及び/又は分離性能が、好ましくは電気モータの出力によって制御可能である、本発明に係る方法が好ましい。
【0053】
上述のように、液相のごく一部が調製済の流体流に残るように、回転分離機を運転させることが有利な設計である。しかしながら、このことは、流体流をさらに利用する際に、問題を生じさせる可能性がある。例えば、プロセス物質の凝縮が既に回転分離機の上流で起こり、これが流体導管システムの壁に堆積することが起こり得る。このような堆積物は、流体流によって運ばれる可能性があり、その結果、回転分離機への液体投入において予期しない変動を生じさせる可能性があり、その後、調製済の流体流における液相の割合が意図せずに上昇する可能性がある。これを阻止するために、そのような凝縮物が回転分離機の中へ入ることを阻止する、より単純な回転しない前置分離機を設けてもよい。これに対応して、多相流体流を連続運転可能な回転分離機の中に投入する前に、好ましくは回転しない前置分離機を通過させる、本発明に係る方法が好ましい。
【0054】
流体導管システムの構成によっては、回転分離機の後方でさらに凝縮が起こる可能性もある。同様に、液相の含有量が、回転分離機を通過した後も、用途によってはまだ高すぎる可能性も否定できない。この場合は、後置分離機を使用することが提案される。この後置分離機は、有利にも、作業装置の入口の上流に直接配置することができ、疑わしい場合に液相の含有量を所望のレベルまで低下させることが可能である。したがって、調製済の流体流を、好ましくは回転しない後置分離機に通す、本発明に係る方法が好ましい。
【0055】
本発明の発明者らは、得られた知識及び基本的な発明の原理に基づいて、本発明に係る方法を特に有利に実施可能な特定の運転パラメータを特定することができた。
【0056】
すなわち、直径1μm未満の液体粒子に関する回転分離機の分離効率が、70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である、本発明に係る方法が好ましい。
【0057】
また、多相流体流がエアロゾルであり、多相流体流中の液相が、有利には、10μm未満、好ましくは5μm未満、特に好ましくは2μm未満の直径d50を有する液体粒子として存在する、本発明に係る方法が好ましい。
【0058】
本発明者らの観点からは、このような本発明に係る方法は、気相がキャリア物質として多成分系を含むことが特に有利であり、方法管理を効率良く行うことが目的である場合、使用されるキャリア物質が多相流体流の液相中にできるだけ溶解しないようにすれば、特に有利である。すなわち、気相がキャリア物質として2つ以上の異なる物質を含む、本発明に係る方法が好ましい。同様に、多相流体流の液相中の全てのキャリア物質の合計質量分率が、多相流体流の液相の質量に対して、5%未満、好ましくは3%未満、特に好ましくは1%未満である、本発明に係る方法が好ましい。
【0059】
そして、本発明の発明者らは、特に適したキャリア物質を特定することが出来た。つまり、キャリア物質が、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、酸素、水素及びこれらの物質の混合物からなる群から選択され、好ましくは、キャリア物質が、窒素、水素及びこれらの物質の混合物からなる群から選択される、本発明に係る方法が好ましい。
【0060】
また、本発明に係る方法を燃料電池の運転時に使用するために、本発明者らは、キャリア物質に特に適した混合物を特定することができた。この場合、多相流体流の気相中のキャリア物質が、気相の質量を基準として、30~100%の質量分率、好ましくは50~95%の質量分率の水素と、0~70%の質量分率、好ましくは5~50%の質量分率の窒素とを含む、本発明に係る方法が好ましい。
【0061】
以上の説明に鑑み、当業者であれば、本発明に係る方法が、燃料電池、具体的には高分子電解質燃料電池における使用、特にそのアノード側の流体導管システム又は流体管理システムにおける使用に特に適していることは明らかであろう。この用途目的の場合、濃度を特に制御すべき関連するプロセス物質とは、水である。したがって、プロセス物質が水である本発明に係る方法が好ましい。これに関連して、同様に、ステップa)における多相流体流が作動装置によって生成され、作動装置は、好ましくは燃料電池、具体的には高分子電解質燃料電池である、本発明に係る方法が特に好ましい。
【0062】
プロセス物質である水と高分子電解質燃料電池の運転とについて、本発明者らは、調製済の気体流における物質量分率の絶対値について、特に好適な範囲を特定することができた。すなわち、調製済の気相中のプロセス物質の物質量分率が10~40%、好ましくは13~35%、特に好ましくは16~30%の範囲にある、本発明に係る方法が好ましい。
【0063】
以上の説明に鑑みて、当業者であれば、本発明が回転分離機にも関することが分かるであろう。したがって、本発明は、本発明に係る方法において使用するための回転分離機にも関する。ここで、回転分離機は連続運転可能であり、回転分離機は、プロセス物質を含む多相流体流の液相を、キャリア物質及びプロセス物質を含む気相から少なくとも部分的に分離するように構成され、得られる調製済の気相がキャリア物質及びプロセス物質を含み、調製済の気相中のプロセス物質の物質量分率が多相流体流の気相中のプロセス物質の物質量分率の50%以上である。
【0064】
本発明に係る回転分離機は、本発明に係る方法を特に効率良く実施可能であるため、特に好ましい。以下に、本発明に係る回転分離機の好ましい構成を説明するが、これらは、本発明に係る好ましい方法の実現に寄与することが可能であり、これらの理由から特に有利であるとみなすことが可能である。
【0065】
すなわち、好ましくは、本発明に係る回転分離機は、ターボ機械、回転フィルタ、回転導管分離機、又は、ディスクセパレータであり、回転分離機は、好ましくはディスクセパレータである。
【0066】
作業チャンバの内壁を調温するための加熱装置を備えている、本発明に係る回転分離機が好ましい。
【0067】
また、回転分離機がディスクセパレータであり、ディスク間の間隔が0.6mm未満、好ましくは0.3mm未満、特に好ましくは0.2mm未満である、本発明に係る回転分離機が好ましい。
【0068】
さらに、回転分離機がディスクセパレータであり、ディスクの平均表面粗さRzが、25μm以下、好ましくは10μm以下、特に好ましくは6.3μm以下である、本発明に係る回転分離機が好ましい。
【0069】
さらに、回転分離機がディスクセパレータであり、ディスクのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てのディスク、特に好ましくは、流体流に接触するディスクセパレータの全ての構成部材が、プロセス物質をはじく材料から成るか、又は、プロセス物質をはじく材料で被覆されており、プロセス物質をはじく材料上のプロセス物質が、70°以上、好ましくは80°以上、特に好ましくは90°以上、最も好ましくは100°以上の範囲の接触角を有している、本発明に係る回転分離機が好ましい。
【0070】
同様に、回転しない前置分離機及び/又は回転しない後置分離機を備える、本発明に係る回転分離機が好ましい。
【0071】
さらに、直径1μm未満の液体粒子に関する回転分離機の分離効率が、70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である、本発明に係る回転分離機が好ましい。
【0072】
また、本発明に関連して開示されるのは、このような回転分離機の、燃料電池、具体的には高分子電解質燃料電池の運転時に多相流体流を連続的に調製するための使用であって、燃料電池を最大出力の20%未満、好ましくは10%未満の出力で運転する際に燃料電池の耐用年数を延ばすための使用である。
【0073】
そして、本発明は、燃料電池システム、具体的には高分子電解質燃料電池システムであって、燃料電池の少なくとも1つの電極、具体的にはアノードに流体を供給するための流体導管システムを含み、少なくとも1つの流体導管に、このような多相流体流を連続的に調製するための回転分離機が設けられた、燃料電池システムにも関する。
【0074】
本発明に係る対応する燃料電池システムは、当該システムにおいて本発明に係る方法を実施可能であり、燃料電池を低負荷で長時間運転することも可能であり、これによって電解質膜の乾燥が阻止されるため有利である。さらに、有利には、回転分離機によって、低負荷及びそれに対応して低出力の場合であっても、燃料電池に再循環した燃料を十分に供給可能である。これによって、高い運転信頼性及び長い耐用年数が実現される。
【0075】
以下に、本発明及び本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら、より詳細に説明及び記載する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明に係る回転分離機を、特に好ましい一実施形態において示す概略図であり、当該回転分離機によって、本発明に係る方法を好ましい構成において実施することが可能である。
【0077】
図1は、特に好ましい一実施形態における、本発明に係る回転分離機を示す概略図である。
【0078】
図示される回転分離機10は、本発明に係る方法における使用に適していると共にそのように設計されている。回転分離機10は、連続運転可能なディスクセパレータである。
【0079】
図1に示される回転分離機10は、高分子電解質燃料電池システムのアノード側の流体導管システムに配置されており(図示せず)、この場合、具体的には水素と水とからなる多相流体流を連続的に調製するように機能する。
【0080】
図1に示される例では、回転分離機10は、多相流体流の、主に水を含む液相を、水素、水、及び場合によっては窒素を含む気相から少なくとも部分的に分離するように構成されている。これは、本発明に係る回転分離機10を用いて、有利には、得られる調製済の気相が水素及び水を含み、調製済の気相中の水の物質量分率が、多相流体流の気相中の水の物質量分率、すなわち調製前の水の物質量分率の50%以上となるように実施可能である。
【0081】
多相流体流は、下方から回転分離機10に入る。これは、黒塗りの矢印によって示されている。ここで、作業チャンバ16の下方に配置された搬送装置が、回転分離機10による流体搬送を行う。回転分離機10は、複数のディスク12から成るディスクパッケージを含み、ディスクパッケージは電気モータ14によって回転駆動される。電気モータ14により、分離性能を設定することができる。分離は、ディスクパッケージによって行われ、分離された液相は、図示の例では右端から排出される。これは、白抜きの矢印で示されている。
【0082】
調製済の気相は、キャリア物質である水素に加えて気体状の水も含み、概略図では、反対に左側に排出されて燃料電池に再循環される。
【0083】
図1に示される回転分離機10は、作業チャンバ16の内壁を調温するための加熱装置(図示せず)を含み、ディスク12間の間隔は0.25mmである。ディスク12の表面の平均表面粗さは6.3μmである。回転分離機10のディスク12はポリテトラフルオロエチレンから成り、作業チャンバ16の内壁はポリテトラフルオロエチレンで被覆されている。
【0084】
図1に係る例示的な回転分離機10は、直径1μm未満の液体粒子に関して70%以上の分離効率を有する。
【符号の説明】
【0085】
10 回転分離機
12 ディスク
14 電気モータ
16 作業チャンバ
図1
【国際調査報告】