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特表2024-524433白内障および老眼眼疾患を予防および治療するための薬理学的薬剤
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  • 特表-白内障および老眼眼疾患を予防および治療するための薬理学的薬剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】白内障および老眼眼疾患を予防および治療するための薬理学的薬剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/38 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/24 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C07F9/38 D CSP
A61K31/662
A61K31/24
A61K31/661
A61P27/10
A61P27/12
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580804
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2022035336
(87)【国際公開番号】W WO2023278464
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/215,818
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520061480
【氏名又は名称】プレックス ファーマスーティカルズ,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,サントシュ・シー
(72)【発明者】
【氏名】プラサド,スリドハー・ゴビンダ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA33
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB03
4C206DB58
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA33
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AC40
(57)【要約】
それを必要とする対象における老眼または白内障を治療する方法が提供される。該方法は、ヒトα-A-クリスタリンの高分子量凝集体の形成を阻害するまたはそれを溶解する化合物を含む有効量の組成物を対象に投与することを必要とする。ある特定の化合物を含有する組成物は、トランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシス、プリオン病、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、および眼瞼癒着-外胚葉形成不全-口唇/口蓋裂症候群の治療にも有効であると考えられる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
(式中、
およびRは、同じであるかまたは異なっており、RおよびRの各々は独立に、水素、RC=O、
【化2】
からなる群から選択され;
- R3a、R3b、R3c、およびR3dは各々、同じであるかまたは異なっており、各々独立に、水素、分枝または線形(C~C)アルキル、ハロ(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、ハロ(C~C)シクロアルキル、およびヒドロキシルからなる群から選択され;
- Rは、分枝または線形(C~C)アルキル;ハロ(C~C)アルキル;(C~C)シクロアルキル;ハロ(C~C)シクロアルキル;アリール;ハロアリールからなる群から選択され;
- R5aおよびR5bは各々、同じであるかまたは異なっており、独立に、分枝または線形(C~C)アルキルであり、
- Rは、分枝もしくは線形(C~C)アルキル、アリール、またはポリエチレングリコール基、あるいは
【化3】
(式中、qは、1~10であり;
- pは、0~10の数であり、
- nは、0~10の数であり、
- Xは、CまたはOである)である)である化合物、またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項2】
およびRの少なくとも一方が、
【化4】
(式中、R5aは(C~C)アルキルであり、Rは、(C~C)アルキル、アリール、または
【化5】
(式中、qは1~10である)である)からなる群から選択される、
請求項1に記載の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項3】
式(Ia):
【化6】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項4】
式(Ib):
【化7】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項5】
式(Ic):
【化8】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項6】
式(Id):
【化9】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項6】
式(Ie):
【化10】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項7】
式(If):
【化11】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項8】
【化12】
からなる群から選択される化合物、またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の化合物と、1種以上の医薬的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項10】
老眼、白内障、トランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシス、または眼に関連する他の状態もしくは障害に関連する症状を治療する、予防する、その発生率を低減する、もしくは低減する、改善する、または軽減する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1から8のいずれかに記載の化合物、または請求項9に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願への相互参照
本出願は、2021年6月28日に出願された米国仮出願第63/215,818号の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
[0002]本明細書に開示されるのは、4-ホスホノ-酪酸2-ヒドロキシ-5-(4-メチル-ベンゾイル)-3-ニトロ-フェニルエステルナトリウム塩、ならびに老眼または白内障眼疾患を治療するのに有用な他の化合物である。
【背景技術】
【0003】
[0003]世界保健機関(WHO)によれば、白内障は、世界的に、特に低所得および中間所得国において失明の主要原因(51%)である。この千年紀の始めまで遡るデータから、アフリカでの失明の30~60%および東南アジアでの60~80%が白内障に起因することが示された。米国では、白内障を有する者の現在の数は2570万を超えると推定されている。失明防止協会(Prevent Blindness)の調査からの予測では、その数は2032年までには3850万、2050年までには4560万に増加すると推定されている。白内障は、眼の水晶体の混濁であり、それによって眼への光の通過が妨げられたり変化したりする。白内障は、通常両眼に形成されるが、同じ速度で形成されるわけではない。それらは、緩徐に進展することもあれば急速に進展することもあり、またはあるところまで進行し、その後何も悪くならないこともある。加齢以外に、他の要因が白内障の形成を引き起こすことがある。眼の感染症、ある医薬品(ステロイドなど)、喫煙、傷害、外傷、または強い熱もしくは放射線への曝露が白内障を引き起こすことがある。不可視の太陽光(UVまたは紫外光と呼ばれる)への過剰な曝露、および糖尿病または代謝障害などの様々な疾患も白内障の形成に寄与することがある。
【0004】
[0004]現在利用可能な唯一の治療は、公衆衛生上の高い負担を伴う水晶体の外科的摘出および眼内レンズ(interocular lens)での置き換えである。白内障手術は一般に安全と考えられているが、顕著な合併症が存在する:(i)米国において白内障手術を行った患者の30~50%が2年以内に水晶体後嚢の混濁化を発症し、レーザー治療を必要とする;(ii)0.8%が網膜剥離を有する;(iii)0.6~1.3%が角膜浮腫で入院するか、または角膜移植を必要とする;そして(iv)約1%が眼内炎を呈する。加えて、世界の発展途上地域および低開発地域の多くの辺鄙な貧困地帯では、主に眼の医療へのアクセスの欠如のために、人々は依然として白内障によって失明している。
【0005】
[0005]老眼は、眼の遠近調節能力が喪失し、それによって近くの物体に焦点を合わせることができなくなることである。老眼は、45歳を超えるすべての人に影響を与え、生活の質に顕著な悪影響を与える。老眼の現在の治療には、(i)非侵襲的な手法であって、近方および遠方視力を向上させる助けになるような器具を利用するが、遠近調節の自然な過程を回復させることは何もせず、器具を常に使用することを必要とする手法、ならびに(ii)侵襲的な外科的処置であって、視力の質の低下、後退作用、不同視、角膜拡張、および濁りを含む主要合併症を伴う処置が含まれる。最も重要なのは、これらの方法はいずれも老眼を逆戻りさせることはできないことである。さらにまた、老眼の発症を予防したり遅延させたりする治療選択肢は存在しない。
【0006】
[0006]眼水晶体の硬化、ならびに水晶体嚢の弾力、眼水晶体の寸法、毛様小帯付着部(zonular attachment)の寸法、および毛様体筋(CM)の収縮の変化が、すべて老眼の寄与因子として提案されている。しかし、ヒトおよび非ヒト霊長類の研究から、CMの機能は老眼の発症をはるかに過ぎても正常であることが示唆されている。対照的に、ヒト水晶体は、遠近調節力の喪失と直接相関するように加齢と共に硬さが増大する。遠近調節力の喪失は、可撓性ポリマーから作製された眼内レンズを移植することによって回復することができることから、水晶体の柔軟性の回復が、遠近調節を回復するのに十分であることが示唆される。したがって、水晶体の硬化を防止または逆戻りさせることができる薬理学的薬剤があれば、老眼の新規な非侵襲的治療の有望な手段となるであろう。
【0007】
[0007]分子レベルでは、クリスタリンとして知られるタンパク質が、眼水晶体の硬化に主要な役割を果たしている。水晶体のクリスタリンは、α、β、およびγの3つのアイソフォームを含み、眼水晶体のタンパク質含有量の90%を占める。ATP非依存性シャペロンであり、低分子熱ショックタンパク質(sHsp)ファミリーのメンバーであるαクリスタリン(AC)は、クリスタリンタンパク質含有量の40%を構成する。それは、2つのサブユニット、αA-クリスタリン(AAC)およびαB-クリスタリン(ABC)のヘテロオリゴマーとして存在し、その発現は主に眼水晶体に限定されている。それは、部分的に折り畳まれていない水晶体タンパク質中に露出された立体配置的特徴を認識し、それらを互いに隔離することによって、そうしなければ加齢に関連する様々な視力障害につながる凝集しやすい種の集団を低減する。
【0008】
[0008]複数の研究から、ヒト水晶体の硬化とAC機能の間の関連性があることが確立されてきた。動的機械分析測定から、加齢と共に水晶体の硬さが有意に増大することが示されており、特に水晶体核では弾力が500~1000分の一に減少することが観察されている。この水晶体の硬さの増大は、ほとんどのACが40~50歳までに高分子量(HMW)凝集体に取り込まれるようになるために、加齢に関連する遊離ACシャペロン濃度の低下と相関する。この可溶性ACのHMW凝集体への変換は水晶体の硬さの大きな増大を伴う。これはおそらく、存在する低レベルの可溶性ACでは変性されたタンパク質にシャペロンとして付き添うのに不十分であるからである。加齢に関連する遊離ACシャペロンの減少が水晶体の硬さの原因であることは、加齢に関連する可溶性ACからHMW凝集体への変換を模倣するためにヒト水晶体を加熱に供し、水晶体の硬さの増大が観察された実験によって支持される。同様に、精製された可溶性ACは、UV放射線に曝露されると、HMW凝集体を形成し、シャペロン様活性を喪失する。HMW凝集体は、システインのスルフヒドリル基(-SH)の酸化に起因する分子間架橋、特にS-S結合によって形成される。このジスルフィド架橋HMW凝集体の形成が、水晶体の硬さの増大および遠近調節幅の喪失の主要寄与因子であると思われる。
【0009】
[0009]老眼は、世界における失明の主因である加齢性核(ARN)白内障の最も早い観察可能な症状であることが示唆されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010]老眼で喪失する眼の遠近調節能力を保護し、回復させることができる非侵襲的治療に対する必要性が存在すること、およびHMW AC凝集体の形成が老眼の根底にある主要な原因因子であることを考慮すると、HMW AC凝集体の形成を選択的に遅延および/または逆戻りさせることができる薬理学的薬剤の開発に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011]本明細書では、ヒトACC(hAAC)のHMW凝集体の形成の阻害および/またはそれを溶解することができる低分子脱凝集酵素(SMD)を特定するための合理的な構造活性相関に基づく手法が提供される。この手法に基づいて幾つかのSMDが特定された。これらのSMDは、老眼の治療および管理、ならびに白内障の進行の治療および/または減速に有用であると考えられる。白内障は、加齢性(核硬化性、皮質、および後嚢下)、先天性、家族性、続発性、外傷性、喫煙関連、および放射線白内障であり得る。
【0012】
[0012]一態様では、本明細書では、老眼の治療もしくは管理、または白内障の進行の減速および/または治療を、それを必要とする対象において行うための化合物が提供される。該化合物は、式(I)
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、
- RおよびRは、同じであるかまたは異なっており、RおよびRの各々は独立に、
水素、RC=O、
【0015】
【化2】
【0016】
からなる群から選択され;
- R3a、R3b、R3c、およびR3dは各々、同じであるかまたは異なっており、各々独立に、水素、分枝または線形(C~C)アルキル、ハロ(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、ハロ(C~C)シクロアルキル、およびヒドロキシルからなる群から選択され;
- Rは、分枝または線形(C~C)アルキル;ハロ(C~C)アルキル;(C~C)シクロアルキル;ハロ(C~C)シクロアルキル;アリール;ハロアリールからなる群から選択され;
- R5aおよびR5bは各々、同じであるかまたは異なっており、独立に、分枝または線形(C~C)アルキルであり、
- Rは、分枝もしくは線形(C~C)アルキル、アリール、またはポリエチレングリコール基、あるいは
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、qは、1~10であり;
- pは、0~10の数であり、
- nは、0~10の数であり、
- Xは、CまたはOである)である)を有する化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩を含む有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0019】
[0013]いくつかの態様では、RおよびRは同じである。いくつかの態様では、RおよびRの少なくとも一方は水素である。いくつかの態様では、R3a、R3b、R3c、およびR3dの少なくとも1つは水素である。いくつかの態様では、R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。
【0020】
[0014]一態様では、式(1)の化合物が提供され、RおよびRの少なくとも一方は、
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、R5aは(C~C)アルキルであり、Rは、(C~C)アルキル、アリール、または
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、qは1~10である)である)からなる群から選択される、
化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩である。
[0015]一態様では、式(I)の化合物が提供され、
- RおよびRの一方は、
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、XはCであり、pは1または2であり、
- RおよびRの他方は水素であり、
- R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である)
である。
【0027】
[0016]一態様では、式(I)の化合物が提供され、
- RおよびRの一方はRC=O(式中、R4は分枝(C~C)アルキル、例えばイソプロピルである)であり、
- RおよびRの他方は水素であり;
- R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。一態様では、RはRC=O(式中、Rはイソプロピルである)であり、R、R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。
【0028】
[0017]一態様では、式(I)の化合物が提供され、
- RおよびRは、同じであるかまたは異なっており、各々独立にRC=O(式中、Rは分枝(C~C)アルキル、例えばイソプロピルである)であり、
- R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。一態様では、RおよびRは各々RC=O(式中、Rはイソプロピルである)であり、R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。
【0029】
[0018]一態様では、式(I)の化合物が提供され、
- RおよびRは、同じであるかまたは異なっており、各々独立に、
【0030】
【化7】
【0031】
(式中、Rは、分枝(C~C)アルキル、例えばイソプロピルである)であり、
- R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。
[0019]一態様では、式(I)の化合物が提供され、
- RおよびRの一方は、
【0032】
【化8】
【0033】
(式中、Rは、分枝(C~C)アルキル、例えばイソプロピルである)であり、
- RおよびRの他方は水素であり;
- R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。いくつかの態様では、Rは、
【0034】
【化9】
【0035】
(式中、Rはイソプロピルである)であり、R、R3a、R3b、R3c、およびR3dの各々は水素である。
[0020]別の態様では、本明細書では、以下の式(Ia):
【0036】
【化10】
【0037】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩が提供される。
[0021]別の態様では、本明細書では、式(Ib):
【0038】
【化11】
【0039】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩が提供される。
[0022]別の態様では、本明細書では、式(Ic):
【0040】
【化12】
【0041】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩が提供される。
[0023]別の態様では、本明細書では、式(Id):
【0042】
【化13】
【0043】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩が提供される。
[0024]別の態様では、本明細書では、式(Ie):
【0044】
【化14】
【0045】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩が提供される。
[0025]別の態様では、本明細書では、式(If):
【0046】
【化15】
【0047】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩が提供される。
[0026]別の態様では、以下:
【0048】
【化16】
【0049】
の化合物またはその溶媒和物もしくは医薬的に許容される塩が提供される。
[0027]一態様では、式(I)の化合物は、以下の一般的な反応によって生成される:
[0028]プロドラッグを作製するための一般スキーム:
【0050】
【化17】
【0051】
[0029]一態様では、老眼、白内障、トランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシス、または眼に関連する他の状態もしくは障害に関連する症状を治療する、予防する、その発生率を低減する、もしくは低減する、改善する、または軽減する方法であって、それを必要とする対象に、開示される化合物の各々ならびに式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、および(If)の化合物を含む式(I)の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの態様では、開示される化合物の各々ならびに式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、および(If)の化合物を含む式(I)の化合物と、1種以上の医薬的賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。いくつかの態様では、開示される化合物の各々ならびに式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、および(If)の化合物を含む式(I)の化合物は、ヒトα-A-クリスタリンの高分子量凝集体の形成を低減するもしくは阻害する、またはそれを溶解する、あるいはヒトα-A-クリスタリンに関係する状態に関連する症状を治療する、予防する、またはその発生率を低減する、もしくは低減する、改善する、または軽減するのに有効な量で、それを必要とする対象に投与されてもよい。いくつかの態様では、この状態として、限定するものではないが、トランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシス、プリオン、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、および眼瞼癒着-外胚葉形成不全-口唇/口蓋裂症候群が挙げられる。
【0052】
[0030]いくつかの態様では、開示される化合物の各々ならびに式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、および(If)の化合物を含む式(I)の化合物は、限定するものではないが経口、経鼻、鼻腔内、筋肉内、静脈内、皮下、直腸、舌下、髄腔内、経皮、眼内、吸入、または他の局所を含む、任意の投与経路を通して投与されてもよい。いくつかの態様では、開示される化合物の各々ならびに式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、および(If)の化合物を含む式(I)の化合物は、眼内に、または眼に局所的に投与される。いくつかの態様では、本医薬的組成物は、式(I)の化合物と、眼への投与に適した1種以上の医薬的に許容される賦形剤とを含む眼科用液剤または懸濁剤である。
【0053】
[0031]本明細書に開示される任意の構造に関して、化合物の範囲は、形成され得る任意の互変異性体も含む。特に指示がない限り、化合物への言及は、図示される構造または化学名の化学的実体の医薬的に許容される塩、プロドラッグ、互変異性体、代替固体形態、非共有結合複合体、およびそれらの組み合わせを含むと広く解釈されるものとする。
【0054】
[0032]医薬的に許容される塩は、動物またはヒトへの投与に適した、親化合物の任意の塩である。医薬的に許容される塩は、酸、別の塩、または酸もしくは塩に変換されるプロドラッグの投与の結果としてin vivoで形成し得る任意の塩も指す。塩は、1種以上の対応する対イオンと結合した、化合物の1種以上のイオン形態、例えば、共役酸または塩基を含む。塩は、1種以上の脱プロトン化された酸性基(例えば、カルボン酸)、1種以上のプロトン化された塩基性基(例えば、アミン)、または両方(例えば、両性イオン)から形成することができるか、またはそれらを組み込むことができる。
【0055】
[0033]プロドラッグは、投与後に治療的に活性な化合物に変換される化合物である。例えば、変換は、生物学的に不安定な基の除去によって生じ得る。プロドラッグの調製は、当技術分野で周知である。例えば、Richard B.Silverman、Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action、第2版、Elsevier Academic Press:アムステルダム、2004、496~557頁の「Prodrugs and Drug Delivery Systems」という章には、主題についてのさらなる詳細が示される。
【0056】
[0034]互変異性体は、互いに速い平衡状態にある異性体である。例えば、互変異性体は、プロトン、水素原子、または水素化物イオンの移動によって関係付けることができる。
[0035]特に立体化学が明示的に図示されない限り、構造は、純粋なまたは任意の可能な混合物の両方での、あらゆる可能な立体異性体を含むことが意図される。
代替固体形態は、本明細書に記載の手順の実践から得ることができるものとは異なる固体形態である。例えば、代替固体形態は、多形、異なる種類の非晶質固体形態、ガラス質などであり得る。
【0057】
[0036]非共有結合複合体は、化合物と1種以上の追加の化学種との間で形成し得る複合体であって、化合物と追加の化学種との間に共有結合相互作用が関与しないものである。該複合体は、化合物と追加の化学種との間に特定の比率を有しても有さなくてもよい。例として、溶媒和物、水和物、電荷移動錯体などを挙げることができるであろう。
【0058】
[0037]値の範囲が開示されるとき、および「n1~n2」(from n1...to n2)または「n1~n2(n1...to n2)(ここで、n1およびn2は数である)という表記が使用されるとき、特に指定されない限り、この表記は、その数自体とそれらの間の範囲とを含むことが意図される。この範囲は、その端の値を含めてその間の整数であっても連続していてもよい。例として、「3~11員のシクロアルキル」という範囲は、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個の環原子を有するシクロアルキルを含むことが意図される。「0個の炭素原子」という文脈でnが0に設定されるとき、それは結合または無しを示すことが意図される。
【0059】
[0038]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、単結合によってのみ連結された1~20個の炭素原子を含有し、いかなる環状構造も有さない直鎖または分枝鎖炭化水素を含む官能基を指す。アルキル基は、本明細書で定義される通りに任意選択で置換されていてもよい。アルキル基の例として、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシルなどが挙げられる。
【0060】
[0039]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、2~20個の炭素原子を含有し、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、いかなる環状構造も有さない直鎖または分枝鎖炭化水素を含む官能基を指す。アルケニル基は、本明細書で定義される通りに任意選択で置換されていてもよい。アルケニル基の例として、限定するものではないが、エテニル、プロペニル、2-メチルプロペニル、ブテニル、1,4-ブタジエニル、ペンテニル、ヘキセニル、へプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニルなどが挙げられる。結合点は、二重結合の炭素上であっても、または任意の単結合の炭素上であってもよい。
【0061】
[0040]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、2~20個の炭素原子を含有し、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有し、いかなる環状構造も有さない直鎖または分枝鎖炭化水素を含む官能基を指す。アルキニル基は、本明細書で定義される通りに任意選択で置換されていてもよい。アルキニル基の例として、限定するものではないが、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチニル、ブチン-1-イル、ブチン-2-イル、3-メチルブチン-1-イル、ペンチニル、ペンチン-1-イル、ヘキシニル、ヘキシン-2-イル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル、ノナデシニル、エイコシニルなどが挙げられる。結合点は、三重結合の炭素上であっても、または任意の単結合の炭素上であってもよい。
【0062】
[0041]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル、-O-アルケニル、または-O-アルキニル(alknyl)を指し、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、上で定義される通りである。
【0063】
[0042]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「アルコキシアルキル」という用語は、上で定義される通りのアルコキシ基(一態様では1種または2種のアルコキシ基)で置換された、上で定義される通りアルキルを意味する。C2~6アルコキシアルキルは、炭素原子の総数を意味する。例として、限定するものではないが、2-メトキシエチル、1-、2-、または3-メトキシプロピル、2-エトキシエチルなどが挙げられる。
【0064】
[0043]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、合計して5~14個の環原子を有する、単環式、二環式(縮合)、および三環式(縮合またはスピロ)炭化水素環系を指す。アリールが単環式であるとき、単環式は芳香族であり、かつヘテロ原子を含有しない。アリールが二環式または三環式であるとき、二環式または三環式における環の少なくとも1つは芳香族であり、かつヘテロ原子を含有せず、そして他方の環(複数可)が芳香族であるとき、他方の環(複数可)はヘテロ原子を含有しないが、他方の環(複数可)が芳香族でないとき、その他方の環(複数可)はヘテロ原子を含有してもしなくてもよい。結合点は、任意の環原子上であり得る。アリールの例として、限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、インダン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、クロマン、イソクロマン、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、チオクロマン1,1-ジオキシド、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン、および2,3-ジヒドロベンゾフランが挙げられる。
【0065】
[0044]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「アラルキル」という用語は、C1~6アルキルの水素の代わりに置換された、本明細書で定義される通りの5~12員のヘテロアリールまたは6~12員のアリールを指す。
【0066】
[0045]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、合計して3~14個の環原子を有する、単環式、二環式(縮合、架橋、またはスピロ)、または三環式(縮合またはスピロ)炭化水素環系であって、完全に飽和しているか、または1つ以上の不飽和単位を含有するが、単環式、二環式、または三環式炭化水素における個々の環はいずれも芳香族ではなく、環原子のいずれもヘテロ原子ではない炭化水素環系を指す。結合点は、飽和炭素上でも不飽和炭素上でもよい。架橋二環式シクロアルキルは、3つ以上の炭素原子を共有する2つの炭化水素環であって、少なくとも1つの原子を含有する橋によって2つの橋頭炭素原子が分離されているものを指す。シクロアルキルの例として、限定するものではないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、スピロ[2.5]オクタン、スピロ[3.5]ノナン、スピロ[4.5]デカン、およびスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0067】
[0046]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、1個または1~5個の水素がハロゲン原子(複数可)で置き換えられた、上で定義される通りのアルキルを指し、それには異なるハロゲン原子で置換されたものが含まれる。ハロアルキルの例として、限定するものではないが、-CF、-CHCl、-CHF、および-CFCFが挙げられる。
【0068】
[0047]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「ハロアルコキシ」という用語は、1個または1~5個の水素がハロゲン原子(複数可)で置き換えられた、上で定義される通りのアルコキシを指し、それには異なるハロゲン原子で置換されたものが含まれる。ハロアルコキシの例として、限定するものではないが、-OCFおよび-OCHFが挙げられる。
【0069】
[0048]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味し、一態様では、フルオロまたはクロロを意味する。
【0070】
[0049]単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、「スピロ」という用語は、1つの共通の原子を共有する2つの環を含む部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】[0050]図1Aは、UVに曝露された様々な濃度のCAP1160を示す図である。図1Bは、UVに曝露された様々な濃度のCAP1160の600nmでの吸光度を示す図である。
【実施例
【0072】
実施例1
[0052]ウシ水晶体抽出物のUVC/H誘導凝集のCAP1160による防止
[0053]ウシ水晶体溶解物(2mg/ml、50μl)を様々な濃度のCAP1160(以下に構造を示す)またはビヒクル(0.5%DMSO)と共にインキュベートし、次いで曝露しないで放置するか(曝露無し)またはUVに曝露した(UV照射)。図1Aを参照されたい。様々な時点でウシ水晶体溶解物を含有するウェルを撮影し、対応する600nmでの吸光度(A600)を測定した。図1Aおよび1Bを参照されたい。最初のUV曝露から7分後のウェルの代表的な明視野像(図1A)および対応するA600(図1B)。
【0073】
[0054]この結果から、UV照射によって誘導されるウシ水晶体タンパク質溶解物の混濁化をCAP1160が用量依存的に遅延させることが示される。
【0074】
【化18】
【0075】
実施例2
[0055]プロドラッグを作製するための一般スキーム
本明細書に記載のプロドラッグは、以下の一般スキームによって調製される。
【0076】
【化19】
【0077】
[0056]上のスキームにおいて、出発化合物1およびOH基と反応させるために使用される試薬は単なる例であり、各々、所望の最終生成物に基づいて適宜選択することができる。
図1
【国際調査報告】