(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】うつ状態を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4174 20060101AFI20240628BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240628BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240628BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/15 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61P25/24
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K9/70
A61K9/12
A61K9/06
A61P25/22
A61K31/135
A61K31/138
A61K31/15
A61K31/343
A61K31/137
A61K31/16
A61K31/381
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580813
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 US2022035919
(87)【国際公開番号】W WO2023278824
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518014933
【氏名又は名称】バイオエクセル セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デ ビボ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヨッカ,フランク ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リシンガー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ビーズリー,チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA24
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4C076AA71
4C076CC01
4C084AA19
4C084MA17
4C084MA21
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4C084MA23
4C084MA28
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4C084MA59
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4C084NA14
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4C084ZC75
4C086AA01
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4C086MA17
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4C206KA04
4C206MA02
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4C206MA54
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4C206MA56
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4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA05
4C206ZA12
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、大うつ病性障害または大うつ病エピソードを有するヒト対象のうつ病を処置または予防する方法であって、当該方法が、(a)約1日間~約28日間、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を、治療量の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)/セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)と組み合わせて当該対象に投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法に関する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大うつ病性障害または大うつ病エピソードを処置する必要があるヒト対象の大うつ病性障害または大うつ病エピソードを処置する方法であって、
(i)デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の少なくとも1回の1日量を前記対象に少なくとも14日間投与することと、
(ii)抗うつ薬を前記対象に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が前記対象に1日2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の初回用量が朝(または日中)に投与され、2回目用量が夕方(または夜間)に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の初回用量が、前記デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の2回目用量より低い、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
デクスメデトミジンの1日総量が、約30マイクログラム~約200マイクログラムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記デクスメデトミジンの初回用量が約30マイクログラムであり、前記デクスメデトミジンの2回目用量が約60マイクログラムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記デクスメデトミジンの初回用量が約40マイクログラムであり、前記デクスメデトミジンの2回目用量が約80マイクログラムである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内)、局所(経皮が挙げられる)、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルによるもの)、または口腔粘膜(例えば、口腔内、舌下、歯肉)から選択される経路により投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、錠剤、ウエハー、パッチ、液体スプレー、ゲル、フィルム、またはスプレーの形態で口腔粘膜投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、フィルムの形態で口腔粘膜投与される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が投与時点で激越状態ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が不安による苦痛も有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗うつ薬が、基礎疾患が消退するまで、少なくとも1ヵ月間、少なくとも2ヵ月間、少なくとも3ヵ月間、少なくとも4ヵ月間、少なくとも5ヵ月間、またはそれ以上の長期間経口投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗うつ薬がSSRIまたはSNRIである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、
(i)約1日間~約28日間、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量の前記SSRI/SNRIと組み合わせて前記対象に投与することを含む導入期と、それに続く
(ii)治療量の前記SSRI/SNRIを前記対象に投与することを含む維持期と、を含む、前記方法。
【請求項16】
ヒト対象におけるSSRI/SNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する方法であって、
(i)約1日間~約28日間、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて前記対象に投与することを含む導入期と、それに続く
(ii)治療量の前記SSRI/SNRIを前記対象に投与することを含む維持期と、を含む、前記方法。
【請求項17】
前記SSRIが、セルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、ダポキセチン、パロキセチン、フェモキセチン、ボルチオキセチン、アラプロクラート、及びビラゾドン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択され、好ましくは、セルトラリンまたはエスシタロプラムである、請求項14~16に記載の方法。
【請求項18】
前記SSRIがセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記SSRIがエスシタロプラムもしくはシタロプラムまたはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記SNRIが、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、デュロキセチン、アトモキセチン、シブトラミン、レボキセチン、トラマドール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される、請求項14~16に記載の方法。
【請求項21】
前記SNRIがデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び前記SSRI/SNRIが、別個の単位剤形で投与される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
両方の単位剤形が、口腔粘膜(例えば、舌下または口腔内)、経口、局所、経皮、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下)経路などからなる群から選択される同じまたは異なる経路により別々に前記対象に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
両方の単位剤形が前記口腔粘膜経路により投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記SSRI/SNRIが、錠剤、口腔内崩壊錠(ODT)、発泡錠剤、カプセル、ペレット、丸剤、ロゼジンまたはトローチ、粉末、分散性顆粒、カシェ剤、水溶液、シロップ剤、エマルション、懸濁液、溶液、軟質ゲル、分散体などを含む群から選択される剤形で投与される、請求項12~16に記載の方法。
【請求項26】
前記SSRI/SNRIが錠剤またはカプセルとして経口投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)を含む口腔粘膜剤形が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップの形態、好ましくはフィルムの形態である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記剤形が約28日間共投与される、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記剤形が約21日間共投与される、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記剤形が約14日間共投与される、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記剤形が約7日間共投与される、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び前記SSRI/SNRIが、単一の単位剤形として一緒に投与される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記単位剤形が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップの形態で前記口腔粘膜経路により前記対象に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記剤形がフィルムであり、前記フィルムが薄いフィルムである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記剤形が約28日間投与される、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記剤形が約21日間投与される、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記剤形が約14日間投与される、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記剤形が約7日間投与される、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記剤形が1日1回または1日に複数回投与される、請求項32~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、約0.5マイクログラム~約240マイクログラムの範囲の投与量で投与される、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する単回用量として投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、約120マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する単回用量として投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩がデクスメデトミジン塩酸塩である、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記SSRIが約5mg~約250mgの範囲の投与量で投与される、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記SNRIが約10mg~約500mgの範囲の投与量で投与される、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記維持期が、基礎疾患(例えば、大うつ病性障害)が消退するまで、または前記対象が不安による苦痛の再発を経験するまで継続される、請求項15及び16に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、躁病相、うつ病相、またはその両方にある、請求項15及び16に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、前記導入期の前にSSRIによる前治療を少なくとも1週間受けている、請求項15に記載の方法。
【請求項49】
不安による苦痛を処置または予防する必要があるヒト対象の不安による苦痛の処置または予防のための医薬組成物であって、
(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療量のSSRI/SNRIと、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含み、
前記組成物が、処置サイクルの導入期中に約1日~約28日間投与される、前記医薬組成物。
【請求項50】
SSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する必要があるヒト対象におけるSSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛の処置または予防のための医薬組成物であって、
(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療量のSSRI/SNRIと、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含み、
前記組成物が、処置サイクルの導入期中に約1日~約28日間投与される、前記医薬組成物。
【請求項51】
前記組成物の投与後に、治療量のSSRI/SNRIの投与を含む維持期が、基礎疾患(例えば、大うつ病性障害)が消退するまで、または前記対象が不安による苦痛の再発を経験するまで続く、請求項49または50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩がデクスメデトミジン塩酸塩である、請求項49または50に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記SSRIが、セルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、ダポキセチン、パロキセチン、フェモキセチン、ボルチオキセチン、アラプロクラート、及びビラゾドン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択され、好ましくは、セルトラリンまたはエスシタロプラムである、請求項49~52のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
SNRIが、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、デュロキセチン、アトモキセチン、シブトラミン、レボキセチン、トラマドール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択され、好ましくはデュロキセチンである、請求項49~52のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び前記SSRI/SNRIが、別個の単位剤形として存在する、請求項49または50に記載の医薬組成物。
【請求項56】
両方の単位剤形が、口腔粘膜(舌下または口腔内)、経口、局所、経皮、鼻腔内、または非経口(静脈内、筋肉内、皮下)経路から選択される同じまたは異なる経路により前記対象に投与される、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記単位剤形が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップの形態で前記対象に口腔粘膜投与される、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記剤形がフィルムであり、前記フィルムが薄いフィルムである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記SSRI/SNRIが、錠剤、口腔内崩壊錠(ODT)、発泡錠剤、カプセル、ペレット、丸剤、ロゼジン、トローチ、粉末、分散性顆粒、カシェ剤、水溶液、シロップ剤、エマルション、懸濁液、溶液、軟質ゲル、分散体などを含む群から選択される剤形で投与される、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記SSRI/SNRIが錠剤として経口投与される、請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、フィルム、ウエハー、パッチ、ロゼジン、ゲル、スプレー、錠剤、及び液滴からなる群から選択される剤形で口腔粘膜投与される、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項62】
デクスメデトミジンまたは薬学的に許容される塩がフィルムの形態で口腔粘膜投与される、請求項61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記剤形が前記対象に約28日間共投与される、請求項55~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記剤形が前記対象に約21日間共投与される、請求項55~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記剤形が前記対象に約14日間共投与される、請求項55~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記剤形が前記対象に約7日間共投与される、請求項55~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項67】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び前記SSRI/SNRIが、単一の単位剤形として一緒に存在する、請求項49及び50に記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記単位剤形が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップの形態で前記口腔粘膜経路により前記対象に投与される、請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記単位剤形はフィルムであり、前記フィルムが薄いフィルムである、請求項68に記載の医薬組成物。
【請求項70】
前記剤形が前記対象に約28日間投与される、請求項67~69のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項71】
前記剤形が前記対象に約21日間投与される、請求項67~69のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項72】
前記剤形が前記対象に約14日間投与される、請求項67~69のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項73】
前記剤形が前記対象に約7日間投与される、請求項67~69のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項74】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の治療量が、約0.5マイクログラム~約240マイクログラムの範囲、好ましくは、約180マイクログラム、約120マイクログラムである、請求項49及び50に記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記SSRIの治療量が約5mg~約250mgの範囲である、請求項49及び50に記載の医薬組成物。
【請求項76】
前記SNRIの治療量が約10mg~約500mgの範囲である、請求項49及び50に記載の医薬組成物。
【請求項77】
前記剤形(複数可)が1日1回または1日に複数回投与される、請求項49~76のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項78】
デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩がデクスメデトミジン塩酸塩である、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2021年7月2日の米国仮特許出願第63/218,031号、2021年9月22日の米国仮特許出願第63/247,122号の優先権の利益を主張し、これらの各々の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、うつ病を処置または予防する必要があるヒト対象のうつ病を処置または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大うつ病性障害は、情動、認知、及び自律神経機能の明確な変化を伴う少なくとも2週間の持続期間の個々のエピソード(しかしながら、ほとんどのエピソードが著しくより長期間持続する)、ならびにエピソード間の寛解を特徴とする。これには、軽躁症状または躁症状(すなわち、躁病または軽躁病に要求されるより少数の症状またはより短い持続期間)も併発し得る。精神疾患診断・統計マニュアル第5版(DSM-5))によれば、個体は、(1)抑うつ気分または(2)興味もしくは喜びの喪失の症状のうちの少なくとも1つを示す必要がある。大うつ病性障害(MDD)を有する患者の40%~60%が不安症状も有し、医療現場でそれらを区別するのを困難にする不安に関連する特徴を共有することが研究により示唆される。具体的には、両方の群が、不安の兆候に寄与する精神的激越及び内的緊張を特徴とする。不安障害を有する患者は、大きな身体的及び感情的苦痛を経験し、高い物質乱用率及び医学的疾患率を有する。他の精神障害、例えば、大うつ病性障害(MDD)または双極性障害における不安障害の併発は、より慢性かつ治療抵抗性の経過と関連しており、これらの患者では自殺のリスクが上昇する。
【0004】
大うつ病性障害の病因は、生物学的、遺伝的、環境的、及び心理社会的因子を含む多因子であると考えられている。MDDは、以前は神経伝達物質、特にセロトニン、ノルエピネフリン、及びドーパミンの異常に主に起因するとみなされていた。自殺念慮のある人々は、低レベルのセロトニン代謝産物を示すことが確認されている。これは、うつ病の処置のために異なる抗うつ薬、例えば、選択的セロトニン受容体阻害剤、セロトニン・ノルエピネフリン受容体阻害剤、ドーパミン・ノルエピネフリン受容体阻害剤を使用することによって証明された。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)及びセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)による処置は、脳内のセロトニン及びノルアドレナリンレベルを増加させることにより緩和をもたらす。加えて、SSRI及びSNRIのような抗うつ薬は、通常、約4~6週間の投薬を必要とし、有益な治療効果が現れる前に、自殺リスクの上昇が含まれる臨床転帰の悪化または有益な治療効果が現れる前の処置の中止をもたらし得る副作用が起こる。
【0005】
加えて、十分な用量のSSRIまたはSNRIで十分な時間処置された全ての患者が、臨床的に意義のある効果を達成するわけではない。
【0006】
従って、患者がSSRIまたはSNRIで処置される場合に、反応までの時間を加速させ、一次抗うつ薬(SSRIまたはSNRI)により引き起こされ得る不安症状及び/または激越症状の負担を低減する必要性が存在する。
【0007】
また、適切な治療の試みにもかかわらず、抑うつ症状における臨床的に意義のある改善を達成することができない患者のSSRIまたはSNRIに対する治療反応を増大させる/増強する必要性も存在する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、大うつ病性障害もしくは双極性障害のいずれかと診断されている状況において、大うつ病エピソードの対象における治療に有益な転帰を早めるため、またはSSRIもしくはSNRIによる適切な一連の治療に対して十分な治療反応を示すことができなかった患者の反応を増強する(すなわち、改善する)ために、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を、単独でまたは1種以上のSSRI/SNRIと組み合わせて投与するための方法を提供する。
【0009】
本開示は、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として当該対象に投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法も提供する。実施形態では、大うつ病性障害は、不安による苦痛を伴う。実施形態では、大うつ病性障害は、医学的状態に関連するか、または関連しない。実施形態では、対象は、別の併存症または障害、例えば、強迫性障害、不安障害、社会恐怖症、PTSD、恐慌性障害、または全般性不安障害を有する。実施形態では、大うつ病性障害は、軽度または中等度である。実施形態では、大うつ病性障害は、重度である。
【0010】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、約10マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜(口腔内、舌下、歯肉が含まれる)投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、約30マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0011】
本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として当該対象に投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法も提供する。
【0012】
実施形態では、大うつ病エピソードは、不安による苦痛を伴う。実施形態では、大うつ病エピソードは、医学的状態に関連するか、または関連しない。実施形態では、対象は、別の併存症または障害、例えば、強迫性障害、不安障害、社会恐怖症、PTSD、恐慌性障害、または全般性不安障害を有する。実施形態では、対象は、双極性障害を有する。実施形態では、対象は、大うつ病性障害を有する。実施形態では、対象は、双極性障害を有さない。実施形態では、大うつ病エピソードは、軽度または中等度である。実施形態では、大うつ病エピソードは、重度である。
【0013】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、約10マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜(口腔内、舌下、歯肉が含まれる)投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、約30マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0014】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、錠剤、ウエハー、パッチ、フィルム、ゲル、またはスプレーもしくは液滴として口腔粘膜投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、フィルムとして口腔粘膜投与される。
【0015】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、長期間または慢性的に、例えば、数週間または数ヶ月の期間にわたって投与される。
【0016】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0017】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0018】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0019】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0020】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を有する対象における1種以上の従来の抗うつ薬の補助療法としてのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0021】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を有する対象における1種以上の従来の抗うつ薬の補助療法としてのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0022】
実施形態では、本開示は、不安による苦痛を有する対象における1種以上の従来の抗うつ薬の補助療法としてのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0023】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を1種以上の従来の抗うつ薬(例えば、SSRI/SNRI)と組み合わせて当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0024】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を1種以上の従来の抗うつ薬(例えば、SSRI/SNRI)と組み合わせて当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0025】
本開示は、大うつ病エピソードを処置する方法であって、大うつ病性障害または双極性障害のいずれかと診断されている状況において、大うつ病エピソードを処置する必要がある患者のSSRIまたはSNRIに対する治療反応を増強する(すなわち、改善する)ために、当該患者が処置の開始時に不安及び/または激越に関連する症状を経験しているか否かにかかわらず、継続中のかつ継続的なSSRIまたはSNRIによる処置と共に併用療法としてデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該患者に投与することを含む、当該方法も提供する。
【0026】
本開示は、大うつ病エピソードを処置する方法であって、大うつ病性障害または双極性障害のいずれかと診断されている状況において、大うつ病エピソードを処置する必要がある患者のSSRIに対する治療反応を加速させるために、当該患者が大うつ病エピソードを処置する必要がある患者の処置の開始時に不安及び/または激越に関連する症状を経験しているか否かにかかわらず、SSRIまたはSNRIと共に併用療法としてデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該患者に投与することを含む、当該方法も提供する。
【0027】
実施形態では、従来の抗うつ薬は、限定されるものではないが、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI);選択的セロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI);より初期の三環系抗うつ薬(TCA);モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAO阻害剤)、モノアミンオキシダーゼの可逆的阻害剤(RIMA)、非定型抗うつ薬;三級アミン三環系及び二級アミン三環系抗うつ薬からなる群から選択される。実施形態では、従来の抗うつ薬は、SSRIまたはSNRIである。実施形態では、対象は、現行の抗うつ薬治療が無効であったか、または現行の抗うつ薬治療に対する反応が不十分である。実施形態では、対象は、なんらの従来の抗うつ薬治療も以前に投与されていない。
【0028】
実施形態では、対象は、不安による苦痛も有する。
【0029】
実施形態では、抗うつ反応の加速をもたらし、従来の抗うつ薬の効果が現れ、副作用が鎮静化する間の約1~4週間の臨時の処置を提供するために、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が投与され、直ちに対象に対して従来の抗うつ薬治療が開始される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、従来の抗うつ薬治療中にもかかわらず、依然として大うつ病性障害の症状のエピソード(例えば、抑うつ気分のエピソード)に罹患し得る対象において、必要に応じてそのエピソードの症状を軽減及び緩和するための「レスキュー」薬として投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、抗うつ薬レジメン全体の一部として従来の抗うつ薬治療と共に予定された方式で投与される。
【0030】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、治療量のSSRI/SNRIの経口投与と組み合わせて治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0031】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、治療量のSSRI/SNRIの経口投与と組み合わせて治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0032】
患者は、通常、異なるベースラインHAM-Dスコアを示し、より高いスコアはより重度のうつ病に関連する。7未満のHAM-Dスコアは、うつ病ではないことを示す。軽度のうつ病は7~17ポイントの範囲であり、中等度うつ病は18~24ポイントの範囲であり、重度のうつ病は25ポイント超である。
【0033】
実施形態では、対象は、処置の開始(またはベースライン)時に18以上のHAM-D-17合計スコアを有する。実施形態では、対象は、処置の開始時に14以上のHAM-D-17合計スコアを有する。
【0034】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、HAM-Dスコアを、処置前に観察されるベースラインスコアと比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、またはそれ以上低減する。
【0035】
態様では、HAM-Dスコアは、5、6、7、8、または9ポイントに減少され得、好ましくは、HAM-Dスコアは、7未満または7に減少され得る。有利には、デクスメデトミジン及び本明細書において開示される抗うつ薬の投与により、抗うつ薬を単独で使用するより早くHAM-Dスコアの低減が達成され、これにより、治療法の導入の大きな改善がもたらされ、治療中止が減らされる。HAM-Dスコアの低下は、治療開始の4週間以内、好ましくは、1~2週間以内に達成され得る。これは、通常、5~9の範囲のHAM-Dスコアを達成するか、またはHAM-Dスコアの50%の減少が認められるまでにはるかにより長くかかる抗うつ薬単独の患者とは対照的である。中等度または重度のうつ病に罹患している患者は、処置後にかかる低いスコアを達成しなくてもよいが、それらのうつ病の顕著な緩和をもたらすポイントの低下を達成し得る。例えば、低下は、約4ポイント~約8ポイントであり得る。実施形態では、対象は、処置の開始時に20以上のMADRSスコア(またはベースラインスコア)を有する。実施形態では、対象は、処置の開始時に10以上のMADRSスコアを有する。
【0036】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、治療量のSSRI/SNRIの経口投与と組み合わせて治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、治療量のSSRI/SNRIの経口投与と組み合わせて治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0037】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、処置前に観察されるベースラインスコアと比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、またはそれ以上のMADRSスコアの減少をもたらす。
【0038】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、当該方法が、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて当該対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0039】
実施形態では、導入期は、少なくとも約1~4週間の処置期間を含む。
【0040】
実施形態では、本開示は、ヒト対象におけるSSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて当該対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0041】
実施形態では、維持期においてSSRI/SNRIは、単独療法として投与される。実施形態では、維持期においてSSRI/SNRIは、追加のSSRI/SNRIと共に投与される。実施形態では、維持期は、基礎疾患(例えば、大うつ病性障害)が消退するまで継続される。実施形態では、維持期は、(臨床医または医師による判断で)更なる処置が必要とされなくなるまで継続される。実施形態では、維持期は、対象が不安による苦痛の再発を経験するまで継続される。実施形態では、対象は、躁病相、うつ病相、またはその両方にある。実施形態では、対象は、導入期の前にSSRI/SNRIによる前治療を(例えば、少なくとも1週間)受けている。実施形態では、対象は、導入期の前にSSRI/SNRIによる前治療を(例えば、少なくとも2または3週間)受けている。
【0042】
実施形態では、対象が不安による苦痛の再発を経験する場合、それらに対して、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて投与することを含む、約1日間~約28日間の第2の導入期、続いて、治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を開始し得る。実施形態では、維持期は、少なくとも4週間継続される。実施形態では、維持期は、少なくとも6週間継続される。実施形態では、維持期は、少なくとも8週間継続される。実施形態では、維持期は、処置に必要とされる限り継続される。
【0043】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及びSSRI/SNRIは、別個の単位剤形で投与される。実施形態では、単位剤形は、約28日間、約27日間、約26日間、約25日間、約24日、約23日間、約22日間、約21日間、約20日間、約19日間、約18日間、約17日間、約16日、約15日間、約14日間、約13日間、約12日間、約11日間、約10日間、約9日間、約8日間、約7日、約6日間、約5日間、約4日間、約3日間、約2日間、または約1日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約28日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約21日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約14日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約7日間同時投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及びSSRI/SNRIは、逐次的または同時に投与される。
【0044】
実施形態では、両方の単位剤形は、口腔粘膜(例えば、舌下または口腔内または歯肉)、経口、局所、経皮、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下)経路などからなる群から選択される同じまたは異なる経路により別々に投与される。実施形態では、デクスメデトミジンもしくはその薬学的に許容される塩及び/またはSS/SNRIは、錠剤、口腔内崩壊錠(ODT)、発泡錠剤、カプセル、ペレット、丸剤、ロゼジンまたはトローチ、フィルム、粉末、分散性顆粒、ウエハー、水溶液、シロップ剤、エマルション、懸濁液、溶液、軟質ゲル、分散体などを含む群から選択される剤形で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップから選択される剤形で口腔粘膜投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形は、フィルムである。実施形態では、SSRI/SNRIは、錠剤として経口投与される。実施形態では、SSRI/SNRIは、カプセルとして経口投与される。実施形態では、SSRI/SNRIは、遅延放出カプセルとして経口投与される。
【0045】
実施形態では、SSRI/SNRI及びデクスメデトミジンまたは薬学的に許容される塩は、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップから選択される剤形で、好ましくは、フィルムとして口腔粘膜投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及びSSRI/SNRIは、単一の単位剤形(例えば、フィルム)で一緒に投与される。実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIは、単一の経口剤形に一緒に存在する。かかる単位剤形は、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIを均質混合物として、または単位剤形の別個の区画に含有し得る。
【0046】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形は、1日2回、例えば、朝の1回及び夕方にもう1回、好ましくは、同じ時間に投与される。夕投与は、対象が就寝する1~2時間以内、任意により1時間以内に行われ得る。
【0047】
実施形態では、対象は、処置の開始(またはベースライン)時にハミルトン不安評価尺度(HAM-A)で14以上の合計スコアを有する。
【0048】
実施形態では、本開示は、容器内の本明細書に記載される組成物を、投与を必要とする対象への投与のための使用説明書と共にまたはそれなしで含むキットとして提供される個々の単位剤形に関する。実施形態では、本開示は、1つ以上の容器内の本明細書に記載される組成物を、投与を必要とする対象への同時投与、逐次投与、または個別投与のための使用説明書と共にまたはそれなしで含むキットとして提供される2つの単位剤形に関する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1a】実施例1に記載のラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)との組み合わせの投与の、高架式十字迷路のオープンアームで費やした時間に対する効果を示す(データは平均値±SEMを示す;一元配置分散分析に続くテューキー多重比較検定、
****:p<0.0001(ビヒクルに対して);N=10匹のラット;CLZ:クロバザム;DEX:デクスメデトミジン;FLX:フルオキセチン;i.p.:腹腔内投与)。
【
図1b】実施例1に記載のラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)との組み合わせの投与の、高架式十字迷路のオープンアームへの侵入率(%)に対する効果を示す(データは平均値±SEMを示す;一元配置分散分析に続くテューキー多重比較検定、
***:p<0.001(ビヒクルに対して);N=10匹のラット;CLZ:クロバザム;DEX:デクスメデトミジン;FLX:フルオキセチン;i.p.:腹腔内投与)。
【
図2】実施例1に記載のラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)との組み合わせの投与の、高架式十字迷路のオープンアームで費やした時間に対する効果を示す(データは平均値±SEMを示す;一元配置分散分析に続くテューキー多重比較検定、
****:p<0.0001(ビヒクルに対して);N=10匹のラット;CLZ:クロバザム;DEX:デクスメデトミジン;FLX:フルオキセチン;i.p.:腹腔内投与)。
【
図3】実施例1に記載のラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)との組み合わせの投与の、高架式十字迷路の4つのアームへの総侵入回数に対する効果を示す(データは平均値±SEMを示す;一元配置分散分析に続くテューキー多重比較検定、
*:p<0.05(ビヒクルに対して);N=10匹のラット;CLZ:クロバザム;DEX:デクスメデトミジン;FLX:フルオキセチン;i.p.:腹腔内投与)。
【
図4】実施例1に記載のラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルオキセチン(32mg/kg;腹腔内)との組み合わせの投与の、高架式十字迷路の4つのアームでの総移動距離に対する効果を示す(データは平均値±SEMを示す;一元配置分散分析に続くテューキー多重比較検定、
*:p<0.05(ビヒクルに対して)、
**:p<0.01(ビヒクルに対して);N=10匹のラット;CLZ:クロバザム;DEX:デクスメデトミジン;FLX:フルオキセチン;i.p.:腹腔内投与)。
【
図5】実施例2に記載のヨヒンビンにより不安が誘発されたラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルボキサミン(3及び10mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルボキサミン(3及び10mg/kg;腹腔内)との組み合わせの投与の、高架式十字迷路のオープンアームへの侵入回数に対する効果を示す(データは平均値±SEMを示す;一元配置分散分析に続くテューキー多重比較検定、
$$$$:p<0.0001(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)に対して)、
*:p<0.05(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)+デクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)に対して)、
**:p<0.01(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)+デクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)に対して)、^^:p<0.01(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)+フルボキサミン(3mg/kg;腹腔内)に対して);N=12匹のラット;DEX:デクスメデトミジン;FLUVO:フルボキサミン;i.p.:腹腔内;YOH:ヨヒンビン)。
【
図6】実施例2に記載のヨヒンビンにより不安が誘発されたラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルボキサミン(3及び10mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルボキサミン(3及び10mg/kg;腹腔内)との組み合わせの投与の、高架式十字迷路のオープンアームで費やした時間に対する効果を示す(データは平均値±SEMを示す;一元配置分散分析に続くテューキー多重比較検定、
$$$$:p<0.0001(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)に対して)、
$$:p<0.01(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)に対して)、
**:p<0.01(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)+デクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)に対して)、
***:p<0.001(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)+デクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)に対して)、^^^^:p<0.0001(ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)+フルボキサミン(3mg/kg;腹腔内)に対して);N=12匹のラット;DEX:デクスメデトミジン;FLUVO:フルボキサミン;i.p.:腹腔内;YOH:ヨヒンビン)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の節において、本開示の異なる態様がより詳細に記載される。そのように記載される各態様は、明確に反対の規定がない限り、任意の他の態様または複数の態様と組み合わされ得る。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示されている任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わされ得る。
【0051】
略語:
本明細書で使用する場合、以下の略語は、以下の意味を有する。
【0052】
AE:有害事象
【0053】
ACES:精神運動激越及び鎮静の評価尺度
【0054】
ADS:不安による苦痛の特定用語
【0055】
BOLD:血中酸素濃度依存性
【0056】
CGI:臨床全般印象尺度
【0057】
CGI-I:改善の臨床全般印象尺度
【0058】
CGI-S:重症度の臨床全般印象尺度
【0059】
DSM-5:精神疾患診断・統計マニュアル第5版
【0060】
DEX:デクスメデトミジン
【0061】
CMAI:コーエン・マンスフィールド焦燥評価票
【0062】
C-SSRS:コロンビア自殺重症度評価尺度
【0063】
DASS:うつ病不安ストレス尺度
【0064】
ECG:心電図記録法
【0065】
HAM-A:ハミルトン不安評価尺度
【0066】
HDRSまたは(HAM-D):ハミルトンうつ病評価尺度
【0067】
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース
【0068】
ICF:インフォームドコンセント用紙
【0069】
I.P.:腹腔内
【0070】
MAO:モノアミンオキシダーゼ
【0071】
MADRS:モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度
【0072】
MED DRA:医薬品規制用語集
【0073】
MDD:大うつ病性障害
【0074】
MDE:大うつ病エピソード
【0075】
MINI:精神疾患簡易構造化面接法
【0076】
mg:ミリグラム
【0077】
NPI-C:精神症状評価尺度臨床医版
【0078】
NS:有意でない
【0079】
PANSSまたはPEC:陽性・陰性症状評価尺度
【0080】
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
【0081】
PK:薬物動態
【0082】
QIDS-SR:簡易抑うつ症状尺度
【0083】
SL:舌下
【0084】
SNRI:セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤
【0085】
SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬
【0086】
STAI:状態・特性不安尺度の状態不安尺度
【0087】
TEAE:治療下で発現した有害作用
【0088】
UDS:尿中薬物スクリーニング
【0089】
UTI:尿路感染症
【0090】
μg:マイクログラム
【0091】
定義
本明細書において使用される用語は、実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないことが理解されよう。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに別様に指示しない限り、複数形の指示物を含む。
【0092】
本明細書で使用する場合、用語「約」または「ほぼ」は、数値変数と共に使用される場合、通常、変数の値、及び示される数値の実験誤差(例えば、平均の95%信頼区間内)または示される数値の±10パーセントのうちのいずれか大きい方の範囲内にある変数の全ての値を指す。
【0093】
用語「製剤」及び「組成物」は、特に異なる意味を有することが明らかに意図される場合を除き、互換的に使用される。
【0094】
本明細書の全体を通して、数値の範囲がある特定の量について提供される。これらの範囲は、全ての部分範囲をその中に包含することを理解されたい。従って、範囲「50~80」は、全ての可能な範囲(例えば、51~79、52~78、53~77、54~76、55~75、60~70など)をその中に包含する。更に、所与の範囲内の全ての値は、これにより包含される範囲の端点であり得る(例えば、50~80の範囲は、端点を有する範囲、例えば、55~80、50~75などを包含する)。
【0095】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」は、「を含むが、これに限定されない(including but not limited to)」を意味する。
【0096】
本明細書で使用する場合、用語「患者」または「対象」は、本明細書において提供される医薬組成物の投与により処置され得る状態に罹患しているか、またはそれを発症する傾向がある生物を指す。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳動物及び、他の非哺乳動物が挙げられる。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「治療量」または「有効量」は、「治療上有効用量」または「治療上有効量」と互換的であり、所望の効果をもたらすか、または対象の臨床的に問題となる状態の改善を引き起こすのに十分な量を指す。
【0098】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、非毒性であることが公知であり、薬学文献において一般的に使用される塩を指す。かかる塩を形成させるために使用される典型的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸などが挙げられる。有機酸から誘導される塩、例えば、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカノン酸、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシルアルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸も使用され得る。
【0099】
特定の疾患または障害に関して、用語「処置する」、「処置すること」、または「処置」は、当該疾患または障害の症状及び/または病理を軽減すること、改善すること、緩和すること、または抑制することを含む。処置は、少なくとも10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、更により好ましくは60%の低減レベルとして測定され得る。
【0100】
用語「予防」は、疾患、状態、もしくは随伴症状の発生を予防すること、または例えば、改善期間後のそれらの再発を予防することを意味する。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「補助療法」は、従来の抗うつ薬の有効性を増強するため、及び/またはより低用量の従来の抗うつ薬を可能にし、これにより、大うつ病性障害もしくは大うつ病エピソードもしくは不安による苦痛を処置するか、もしくはそれらの再発を予防する際の副作用を低減するためのデクスメデトミジンの追加または1種以上の従来の抗うつ薬との組み合わせを意味する。
【0102】
用語「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」または「SSRI」は、ドーパミン及びノルアドレナリン輸送体と比べてセロトニン輸送体により強い阻害効果を及ぼすモノアミン輸送体の阻害剤を意味する。
【0103】
用語「選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤」または「SNRI」は、セロトニン及びノルアドレナリン(両方の神経伝達物質が気分調節において重要な役割を果たすと考えられている)の再取り込みを阻害するモノアミン再取り込み阻害剤を意味する。
【0104】
DSM-5によれば、用語「大うつ病エピソード」または「MDE」は、人間が日常生活で抑うつ気分または興味もしくは喜びの喪失を経験し、多数の指定される症状、例えば、睡眠障害、摂食障害、活力の低下、集中力の低下、または自尊心の低下を有していた少なくとも2週間の期間を指す。これらのエピソードの間、患者の機能レベルが低下するか、または症状が患者にかなりの苦痛をもたらしている必要がある。エピソードは、単発性または反復性であり得る。大うつ病エピソードを診断するために、保健医療提供者は、以下を確認しなければならない:
・症状が混合性エピソードの基準を満たさない。
・エピソードに該当するために、症状がかなりの苦痛をもたらしているか、または職場、社会的環境、または他の重要な領域における機能を障害している必要がある。
・症状が物質の直接的な生理作用(例えば、薬物または薬剤の乱用)または一般身体疾患(例えば、甲状腺機能低下症)に起因しない。
【0105】
用語「MDD」または「大うつ病性障害」は、抑うつ気分、及び活動における興味/喜びの喪失(快感消失)の2つの主な抑うつ症状、ならびに(以下に列挙される)9つのより具体的な症状のうちの5つの存在を指し、診断されるには、患者にかなりの苦痛をもたらしているか、または患者の機能レベルの顕著な低下をもたらしている必要があり、(それが機能を障害する程度まで)2週間超の間、頻繁に発生している必要がある。1)主観的報告(例えば、悲しく感じる、虚無感を抱く、絶望する)または他人によりなされる観察(例えば、涙ぐんで見える)のいずれかにより示される、ほぼ毎日、1日の大半における抑うつ気分。2)ほぼ毎日、1日の大半における、全てまたはほぼ全ての活動における興味または喜びの顕著な減退。3)ダイエットをしていない場合の顕著な体重減少もしくは体重増加(例えば、1ヵ月に5%を超える体重の変化)、またはほぼ毎日の食欲の減少もしくは増加。4)ほぼ毎日の不眠または過剰睡眠。5)ほぼ毎日の精神運動性激越または精神運動遅滞。6)ほぼ毎日の疲労感または気力の喪失。7)ほぼ毎日の無価値感または過剰もしくは不適切な罪悪感。8)ほぼ毎日の思考力もしくは集中力の減退または決断困難。9)死についての反復思考(単なる死への恐れではない)、具体的な計画のない反復的な自殺念慮、または自殺企図もしくは自殺の具体的な計画。大うつ病エピソードは、大うつ病性障害及び双極性障害の両方の診断において発生する特徴がある。診断基準は、2つの診断を区別するための特徴、当然、すなわち躁病エピソードまたは軽躁病エピソードの存在または不存在に基づく。しかしながら、場合によっては、気分高揚の病歴が患者により過少に報告され、他の例では、うつ病エピソードにあるように見える患者が単に躁病エピソードをまだ経験していない。
【0106】
用語「双極性障害」は、個体に気分、活力、活動レベル、及び日々の作業を実行する能力の異常な変化を経験させる状態を指す。双極性障害としては、双極I型障害、双極II型障害、及び循環病が挙げられる。双極I型障害は、少なくとも7日間持続する躁病エピソードまたは入院を必要とする重度の躁症状と定義される。双極I型障害を有する対象は、通常少なくとも2週間持続するうつ病エピソードも経験し得る。混合性の特徴を有するうつ病のエピソード、すなわち、抑うつ症状及び躁症状の同時発生も起こり得る。双極II型障害は、うつ病エピソード及び軽躁病エピソードのパターンを特徴とするが、双極I型障害に特有の重度の躁病エピソードが双極I型障害にはない。気分循環性障害(気分循環症とも称される)は、少なくとも2年の期間にわたって持続する軽躁症状(気分高揚及び多幸感)及び抑うつ症状の期間を特徴とする。
【0107】
用語「不安」は、恐怖、懸念、及び心配を含む感情の複雑な組み合わせを伴う不快な状態を指す。これには、心臓の動悸、悪心、胸痛、息切れ、または緊張性頭痛などの身体的感覚が伴うことが多い。
【0108】
用語「不安による苦痛」または「ADS」は、大うつ病性障害、大うつ病エピソード、または双極性障害を有する対象における高レベルの不安または不安障害の併存/合併を意味する。DSM-5における不安による苦痛の特定用語の基準を満たすためには、対象は、以下の症状のうちの2つ以上を示す必要がある:(1)張りつめたまたは緊張した感覚;(2)異常に落ち着かないという感覚;(3)心配のための集中困難;(4)何か恐ろしいことが起こるかもしれないという恐怖;及び(5)自分自身をコントロールできなくなるかもしれないという感覚。
【0109】
本明細書で使用する場合、用語「激越」は、前頭葉などの特定の脳領域の機能障害またはノルアドレナリン系などの神経伝達物質系の機能障害のいずれかに起因して発生し得る、易怒性、感情の激発、思考障害、または過度の運動活動及び言語活動の症状を特徴とする障害を意味する。実施形態では、激越は、ノルアドレナリン作動性過覚醒により引き起こされ得る。本開示において、激越状態の対象は、攻撃性も示し得る。激越は急性または慢性であり得る。激越は重度であり得る。
【0110】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される賦形剤」及び「薬学的に許容される担体」は、活性薬剤の対象への投与及び対象による吸収を補助する物質を指す。この用語は、本開示の組成物または製剤に含まれ得、患者に対して顕著な有害な毒物学的効果を引き起こさない賦形剤も指す。
【0111】
用語「単位剤形」は、ヒト対象及び他の哺乳動物(例えば、イヌ)用の単位投与量として好適な物理的に分離した単位を指し、各単位が、好適な医薬賦形剤と共同して所望の発現、忍容性、及び/または治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質を含有する(例えば、アンプル)。
【0112】
用語「口腔粘膜」は、口腔粘膜、特に口腔及び/または咽頭への投与を意味する。口腔粘膜投与としては、舌下、口腔内、または歯肉経路が挙げられる。
【0113】
用語「舌下」は、「舌の下」を意味し、消化管ではなく舌の下の血管を介して物質を投与する方法を指す。舌下吸収は、血管が多く分布している舌下粘膜を通して起こり、このことは、物質が血液循環に直接到達するのを可能にし、これにより、胃腸管系の影響を受けない直接的な全身投与を可能にし、望ましくない肝初回通過代謝が回避される。
【0114】
用語「口腔内」は、歯茎及び内唇または頬部に対する剤形の投与を意味する。
【0115】
用語「歯肉」は、歯の一部を囲んでいる、ヒトの口腔に見出される歯肉(歯茎)への剤形の投与を意味する。
【0116】
本明細書における用語「フィルム」は、長方形、正方形、または他の所望の形状が含まれる、任意の形状のポリマーを含むフィルムを包含する。フィルムは、患者の口腔粘膜に簡便に配置され得るように、任意の所望の厚さ及びサイズのものであり得る。例えば、フィルムは、約20マイクロメートル~約200マイクロメートルの厚さを有する薄いフィルムであり得るか、または約201マイクロメートル~約1000マイクロメートルの厚さを有する厚いフィルムであり得る。実施形態では、フィルムは、約30マイクロメートル超の厚さを有し得る。実施形態では、フィルムは自己支持性である。用語「自己支持性」は、本明細書におけるフィルムが、取り扱う際に支持体層を必要とすることなく構造的完全性を維持することを意味する。フィルムのいくらかの柔軟性が意図され、望ましくてもよい。
【0117】
用語「粘膜付着」は、口腔内粘膜などの粘膜への付着を指すために本明細書において使用される。
【0118】
用語「粘膜付着性」は、インビボで粘膜組織表面に付着する特性を指す。かかる付着は、付着力により剤形を粘膜上に局在化させ、粘膜付着性材料を粘膜から引離すためには力を加えることを必要とする。
【0119】
本明細書で使用する場合、「治療」は、文脈に応じて処置及び/または予防を意味し得る。
【0120】
用語「鼻腔内投与」は、鼻腔経路による投与を意味する。送達された薬物は、局所作用または全身作用を及ぼし得る。
【0121】
用語「非経口」は、1つ以上の皮膚または粘膜層の下への注射による薬物の投与を指し、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、または筋肉内注射を包含し得る。
【0122】
本開示における意味の範囲内で、用語「共投与」は、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及びSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーを同時または逐次的に投与することを指すために使用される。
【0123】
本明細書で使用する場合、「逐次投与」は、対象に投与される2つの組成物が、各組成物がその効果を発揮する場合に得られる有益な効果が得られるのを可能にするのに十分な時間間隔で分けて投与されることを意味する。
【0124】
用語「逐次投与」は、組成物が、約60分超の時間間隔で、例えば、2時間あけて、3時間あけて、4時間あけて、5時間あけて、6時間あけて、7時間あけて、8時間あけて、9時間あけて、10時間あけて、11時間あけて、または12時間あけて投与されることを意味する。実施形態では、組成物は、約1時間~約24時間あけて投与され得る。
【0125】
本明細書で使用する場合、「同時投与」は、同時または短時間以内、例えば、1時間未満、30分未満、15分未満、または5分未満であることを意味する。
【0126】
活性薬剤:
デクスメデトミジン:
【0127】
デクスメデトミジンは、(+)4-(S)-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾールのIUPAC名を有する。一塩酸塩としてのデクスメデトミジンは、集中治療環境での処置における患者の鎮静のための薬物として、または外科的処置及び他の処置前に及び/またはその間、患者を鎮静させるために、主に使用される。かかる薬物は、現在「PRECEDEX(登録商標)」の登録商標名で販売されている。
【0128】
本明細書において使用され得るデクスメデトミジンの薬学的に許容される塩としては、一般に、米国FDAまたは他の適切な外国もしくは国内の機関によりヒトへの投与が承認されているか、または承認され得る任意の好適な塩が挙げられる。好適な薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrocarbonic acid)、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、硫化水素酸、及びヨウ化水素酸の塩が挙げられる。他の例としては、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、及びメタンスルホン酸、またはこれらの酸性塩の組み合わせが含まれる、非毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。例示的な塩としては、デクスメデトミジン塩酸塩、デクスメデトミジン臭化水素酸塩、デクスメデトミジン硫酸塩、デクスメデトミジンスルホン酸塩、デクスメデトミジンリン酸塩、デクスメデトミジン硝酸塩、デクスメデトミジンギ酸塩、デクスメデトミジンクエン酸塩、デクスメデトミジン酒石酸塩、デクスメデトミジンリンゴ酸塩、デクスメデトミジン安息香酸塩、デクスメデトミジンサリチル酸塩、デクスメデトミジンアスコルビン酸塩などが挙げられる。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の重水素化形態が含まれ得る。
【0129】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI):
【0130】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、セロトニンレベルを増強する薬物のクラスであり、通常、大うつ病性障害、不安障害、及び他の精神状態の処置において抗うつ薬として使用される。これらの薬物は、効果的であり、忍容性が良好であり、他のモノアミン輸送体に対する異なる程度の選択性を有し、ノルアドレナリン及びドーパミン輸送体に対する結合親和性をほとんど有さないことにより、好ましい安全性プロファイルを有する。例示的な選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)としては、限定されるものではないが、セルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、ダポキセチン、パロキセチン、フェモキセチン、ボルチオキセチン、アラプロクラート、及びビラゾドン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーが挙げられる。実施形態では、本開示のSSRIは、ノルアドレナリンレベルに対する効果を有さない。
【0131】
実施形態では、SSRIは、セルトラリンである。セルトラリンは、(1S,4S)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラハイドロナフタレン-1-アミンのIUPAC名を有する。セルトラリンは、米国特許第4,536,518号、特にその特許の実施例2に記載される通りに調製され得る。実施形態では、セルトラリンは、薬学的に許容される塩として存在する。例えば、実施形態では、セルトラリンは、様々な鉱酸及び有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、及びグルコン酸などの酸付加塩として存在する。実施形態では、セルトラリンの薬学的に許容される塩は、塩酸塩である。
【0132】
実施形態では、SSRIは、シタロプラムである。シタロプラムは、米国特許第4,136,193号において最初に記載された(RS)-1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-1-(p-フルオロフェニル)-5-フタランカルボニトリルである。この特許公報は、1つの方法によるシタロプラムの調製を記載しており、シタロプラムを調製するための更なる方法を概説している。シタロプラムは、認知症及び脳血管障害の処置において効果を示すことが欧州特許出願公開第EP1169314B2号に開示されている。実施形態では、シタロプラムは、シタロプラム臭化水素酸塩として存在する。
【0133】
実施形態では、SSRIは、エスシタロプラムである。エスシタロプラムは、シタロプラムのS-エナンチオマーであり、選択的中枢作用性セロトニン再取り込み阻害剤である。その調製方法は、米国特許第4,943,590号に開示されている。エスシタロプラムは、神経症性障害のモデルにおいて抗不安作用などの強い効果を示し、不安発作及び強迫性障害の処置において顕著な効果を示す。立体選択性を考慮すると、エスシタロプラムは、うつ病の処置においてラセミ化合物の2倍強力であると予想され、動物モデルにおいてシタロプラムのラセミ化合物より早く反応が得られることが分かっている(Willner P.,Psychopharmachology 1997,134,319-329)。エスシタロプラムの塩を調製するために使用され得る薬学的に許容される酸としては、限定されるものではないが、例えば、塩酸、臭化水素酸などの無機酸、及び例えば、酢酸、硝酸、硫酸、酒石酸、シュウ酸、メタンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。実施形態では、エスシタロプラムの薬学的に許容される塩は、シュウ酸塩である。
【0134】
実施形態では、SSRIは、フルオキセチンである。N-メチル-3-(p-トリフルオロメチルフェノキシ)-3-フェニルプロピルアミンであるフルオキセチンは、塩酸塩形態で、かつ2つのエナンチオマーのラセミ混合物として市販されている。米国特許第4,314,081号がこの化合物に関する初期文献である。Robertson et al.,J.Med.Chem,31,1412(1988)において、フルオキセチンのR及びSエナンチオマーの分離が教示され、セロトニン取り込み阻害剤としてのそれらの活性が互いに同程度であることが示された。本開示において、用語「フルオキセチン」は、任意の酸付加塩または遊離塩基を意味するように、及びラセミ混合物またはR及びSエナンチオマーのいずれかを含むことを意味するように使用される。
【0135】
実施形態では、SSRIは、フルボキサミンである。5-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1-ペンタノンO-(2-アミノエチル)オキシムであるフルボキサミンは、米国特許第4,085,225号により教示される。この薬物に関する科学論文は、Claassen et al.,Brit.J.Pharmacol.60,505(1977)、及びDe Wilde et al.,J.Affective Disord.4,249(1982)、及びBenfield et al.,Drugs 32,313(1986)に公開されている。
【0136】
実施形態では、SSRIは、パロキセチンである。trans-(-)-3-[(1,3-ベンゾジオキソール-5-イルオキシ)メチル]-4-(4-フルオロフェニル)ピペリジンであるパロキセチンは、米国特許第3,912,743号及び同第4,007,196号に見出される。この薬物の活性は、Lassen,Eur.J.Pharmacol.47,351(1978)、Hassan et al.,Brit J.Clin.Pharmacol.19,705(1985)、Laursen et al.,Acta Psychiat.Scand.71,249(1985)、及びBattegay et al.,Neuropsychobiology 13,31(1985)において報告されている。
【0137】
「選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤」または「SNRI」:
【0138】
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)は、大うつ病性障害(MDD)、不安障害、強迫性障害(OCD)、社会恐怖症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、慢性神経障害性疼痛、線維筋痛症候群(FMS)、及び更年期症状を治療する抗うつ薬のクラスである。SNRIは、モノアミン再取り込み阻害剤であり、具体的には、それらはセロトニン及びノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、その両方が気分を調節する神経伝達物質である。ほとんどの抗うつ薬のように、SNRIは、最終的に脳内の化学成分、及び気分を調節することが公知の脳の神経細胞回路における情報伝達の変化をもたらすことにより作用して、うつ病の緩和を促進する。例示的な選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SSRI)としては、限定されるものではないが、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、デュロキセチン、アトモキセチン、シブトラミン、レボキセチン、トラマドール、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーが挙げられる。
【0139】
実施形態では、SNRIは、デスベンラファキシンまたはベンラファキシンである。ベンラファキシンは文献で知られており、米国特許第4,761,501号は、その合成方法ならびにセロトニン及びノルエピネフリンの取り込み阻害剤としてのその活性を教示している。ベンラファキシンは、その特許において化合物Aと称されている。
【0140】
実施形態では、SNRIは、ミルナシプランである。(N,N-ジエチル-2-アミノメチル-1-フェニルシクロプロパンカルボキサミド)であるミルナシプランは、実施例4としてミルナシプランが調製された米国特許第4,478,836号により教示される。この特許は、その化合物を抗うつ薬として記載している。Moret et al.,Neuropharmacology 24,1211-19(1985)は、セロトニン及びノルエピネフリンの再取り込み阻害剤としてのその薬理活性を記載している。
【0141】
実施形態では、SNRIは、デュロキセチンまたはその塩である。実施形態では、SNRIは、デュロキセチン塩酸塩である。N-メチル-3-(1-ナフタレニルオキシ)-3-(2-チエニル)プロパンアミンであるデュロキセチンは、通常、塩酸塩かつ(+)エナンチオマーとして投与される。デュロキセチンは、その高い効力を示す米国特許第4,956,388号により最初に教示された。
【0142】
本開示の活性薬剤は、遊離塩基、またはその薬学的に許容される酸付加塩、エステル、もしくはエナンチオマーの形態で使用され得る。
【0143】
投与量:
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約0.5マイクログラム~約300マイクログラムの範囲である。好適な投与量の例としては、以下が挙げられる:約0.5マイクログラム~約280マイクログラム、約1マイクログラム~約270マイクログラム、約1マイクログラム~約260マイクログラム、約1マイクログラム~約250マイクログラム、約1マイクログラム~約240マイクログラム、約1マイクログラム~約230マイクログラム、約1マイクログラム~約220マイクログラム、約1マイクログラム~約210マイクログラム、約1マイクログラム~約200マイクログラム、約1マイクログラム~約190マイクログラム、約1マイクログラム~約180マイクログラム、約1マイクログラム~約170マイクログラム、約1マイクログラム~約160マイクログラム、約1マイクログラム~約150マイクログラム、約1マイクログラム~約140マイクログラム、約1マイクログラム~約130マイクログラム、約1マイクログラム~約120マイクログラム、約1マイクログラム~約110マイクログラム、約1マイクログラム~約100マイクログラム、約3マイクログラム~約90マイクログラム、約3マイクログラム~約80マイクログラム、約3マイクログラム~70マイクログラム、約3マイクログラム~約60マイクログラム、約3マイクログラム~50マイクログラム、約3マイクログラム~約40マイクログラム、約3マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約10マイクログラム~約50マイクログラム、約10マイクログラム~約40マイクログラム、約10マイクログラム~約35マイクログラム、または約15マイクログラム~35マイクログラム。投与は、1日に1回以上(1日当たり2回、3回、4回、5回、または6回が含まれる)行われ得る。
【0144】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の単位用量は、約10マイクログラム、約15マイクログラム、約20マイクログラム、約25マイクログラム、約30マイクログラム、約35マイクログラム、約40マイクログラム、約45マイクログラム、約50マイクログラム、約55マイクログラム、約60マイクログラム、約65マイクログラム、約70マイクログラム、約75マイクログラム、約80マイクログラム、約85マイクログラム、約90マイクログラム、約95マイクログラム、約100マイクログラム、約110マイクログラム、約120マイクログラム、約130マイクログラム、約140マイクログラム、約150マイクログラム、約160マイクログラム、約170マイクログラム、約180マイクログラム、約190マイクログラム、約200マイクログラム、約210マイクログラム、約220マイクログラム、約230マイクログラム、約240マイクログラム、約250マイクログラム、約260マイクログラム、約270マイクログラム、約280マイクログラム、約290マイクログラム、または約300マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、約120マイクログラムの量で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、約180マイクログラムの量で投与される。
【0145】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の投与は、1日2回行われ得る。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の投与は、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラム(例えば、30マイクログラム、45マイクログラム、60マイクログラム、または90マイクログラム)及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラム(例えば、120マイクログラムまたは180マイクログラム)の用量で行われる。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の投与は、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラム及び夜間に30マイクログラム~約90マイクログラムの用量で行われる。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の投与は、日中に約90マイクログラム~約180マイクログラム及び夜間に30マイクログラム~約90マイクログラムの用量で1日2回行われる。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、日中に約30マイクログラム及び夜間に90マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、日中に約40マイクログラム及び夜間に80マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、日中に約60マイクログラム及び夜間に120マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、日中に約80マイクログラム及び夜間に180マイクログラムである。
【0146】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、約180マイクログラムの量で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、約30マイクログラムの量で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、約40マイクログラムの量で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、約60マイクログラムの量で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)は、約90マイクログラムの量で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、120マイクログラムの総用量となるように1単位用量当たり60マイクログラムとして1日2回投与される。例えば、60マイクログラムの単位用量が朝に服用され、更に60マイクログラムの単位用量が夕方または夜間に服用される。
【0147】
本開示において使用されるSSRI/SNRIまたは他の従来の抗うつ薬の投与量は、それらの分子量及び活性の両方が異なるため、当該SSRI/SNRIまたは他の抗うつ薬の性質に依存する。実施形態では、SSRI/SNRIは、通常必要とされるよりも低い用量で投与される。実施形態では、SSRI/SNRIは、通常用量で投与される。実施形態では、投与されるSSRI/SNRIの投与量は、約1mg~約500mgの範囲である。好適な投与量の例としては、以下が挙げられる:1日当たり約1mg~約300mg、約5mg~約250mg、約5mg~約200mg、約1mg~約190mg、約1mg~約180mg、約1mg~約170mg、約1mg~約160mg、約1mg~約150mg、約1mg~約140mg、約1mg~約130mg、約1mg~約120mg、約1mg~約110mg、約1mg~約100mg、約1mg~約90mg、約1mg~約80mg、約1mg~約70mg、約1mg~約60mg、約1mg~約50mg、約1mg~約40mg、約1mg~約30mg、約1mg~約20mg、約1mg~約10mg。実施形態では、単位用量は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、または約200mgのSSRI/SNRIである。
【0148】
実施形態では、投与されるセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約1mg~約500mgの範囲であるが、処置される対象の状態及び選択される特定の投与経路に応じて変動し得る。セルトラリンの好適な投与量の例としては、以下が挙げられる:約10mg~約500mg、約20mg~約500mg、約20mg~約450mg、約25mg~約400mg、約30mg~約350mg、約35mg~約300mg、約40mg~約250mg、約45mg~約200mg、約50mg~約180mg、約55mg~約150mg、約60mg~約100mg。実施形態では、セルトラリンまたはその薬学的に許容される塩の1日量は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg、約300mg、約305mg、約310mg、約315mg、約320mg、約325mg、約330mg、約335mg、約340mg、約345mg、約350mg、約355mg、約360mg、約370mg、約375mg、約380mg、約385mg、約390mg、約395mg、約405mg、約410mg、約415mg、約420mg、約425mg、約430mg、約435mg、約440mg、約445mg、約450mg、約455mg、約460mg、約465mg、約470mg、約475mg、約480mg、約485mg、約490mg、約495mg、または約500mgである。
【0149】
実施形態では、投与されるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約1mg~約100mgの範囲である。好適な投与量の例としては、以下が挙げられる:約5mg~約100mg、約5mg~約95mg、約10mg~約90mg、約15mg~約85mg、約20mg~約80mg、約25mg~約75mg、約30mg~約70mg、約35mg~約65mg、約40mg~約60mg。実施形態では、エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の1日量は、約2mg、約5mg、約7.5mg、約9.5mg、約10mg、約12mg、約15mg、約18mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mgである。実施形態では、投与されるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約10mg~約20mgの範囲である。
【0150】
実施形態では、投与されるシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約1mg~約100mgの範囲である。好適な投与量の例としては、以下が挙げられる:約5mg~約100mg、約5mg~約95mg、約10mg~約90mg、約15mg~約85mg、約20mg~約80mg、約25mg~約75mg、約30mg~約70mg、約35mg~約65mg、約40mg~約60mg。実施形態では、シタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の1日量は、約2mg、約5mg、約7.5mg、約9.5mg、約10mg、約12mg、約15mg、約18mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mgである。実施形態では、投与されるシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約20mg~約40mgの範囲である。
【0151】
実施形態では、投与されるフルオキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約1~約80mgの範囲である。好適な1日投与量の例としては、以下が挙げられる:約5mg~約80mg、約5mg~約75mg、約10mg~約65mg、約10mg~約60mg、約10mg~約50mg、約10mg~約40mg、約20mg~約60mg、約25mg~約65mg、約30mg~約60mg、約35mg~約65mg、約40mg~約60mg。実施形態では、投与されるフルオキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約10mg~約80mgの範囲である。
【0152】
実施形態では、投与されるノルフルオキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約0.01~約20mg/kgの範囲で1日1回、好ましくは、約0.05~10mg/kgの範囲で1日1回、最も好ましくは、約0.1~5mg/kgの範囲で1日1回である。実施形態では、投与されるパロキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約10mg~約80mgの範囲(例えば、1日当たり10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg)で1日1回、好ましくは、約20~約30mgの範囲で1日1回である。実施形態では、投与されるフルボキサミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約25mg~約150mgの範囲(例えば、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg)で1日2回である。
【0153】
実施形態では、投与されるデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約10mg~約200mgの範囲である。好適な投与量の例としては、以下が挙げられる:約10mg~約180mg、約10mg~約170mg、約10mg~約160mg、約15mg~約200mg、約15mg~約180mg、約15mg~約160mg、約15mg~約150mg、約20mg~約120mg、約20mg~約110mg、約30mg~約110mg、約30mg~約100mg、約30mg~約90mg、約40mg~約80mg、約40mg~約70mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mg。実施形態では、投与されるデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約60mg~約120mgの範囲である。
【0154】
実施形態では、SNRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約5mg/日~約200mg/日、約10mg~約190mg、約20mg~約180mg、約30mg~約170mg、約40mg~約160mg、約50mg~約150mgの範囲で、好ましくは、約60mg~約150mg/日、より好ましくは、約60mg~約130mg/日、なおより好ましくは、約60mg~約120mg/日の範囲で投与される。
【0155】
実施形態では、投与されるベンラファキシンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約30mg~約300mgの範囲(例えば、37.5mg、75mg 150mg)である。実施形態では、投与されるベンラファキシンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約75mg~約225mgの範囲である。投与は、1日2回または3回行われ得る。実施形態では、投与されるデスベンラファキシンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約25mg~約100mgの範囲である。
【0156】
実施形態では、投与されるレボミルナシプランまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約20mg~約200mgの範囲(例えば、20mg、40mg、80mg、120mg)である。実施形態では、投与されるレボミルナシプランまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約20mg~約120mgの範囲である。実施形態では、投与されるアミトリプチリンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約50mg~約150mgの範囲である。実施形態では、投与されるアミトリプチリンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約150mg~約300mgの範囲である。実施形態では、投与されるドキセピンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約10mg~約300mgの範囲(例えば、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg/日)である。
【0157】
実施形態では、投与されるトリミプラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約25mg~約150mgの範囲(例えば、25mg、50mg、100mg/日)である。実施形態では、投与されるトリミプラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約100mg~約200mgの範囲である。実施形態では、投与されるイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約10mg~約300mgの範囲(例えば、10mg、20mg、25mg、30mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg/日)である。実施形態では、投与されるデシプラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約100mg~約300mgの範囲である。実施形態では、投与されるデシプラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、単位当たり約10mg~約300mgの範囲(例えば、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg)である。
【0158】
実施形態では、投与されるプロトリプチリンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約5mg~約10mgの範囲で1日3回または4回であり、1日当たり最高60mgまでである。実施形態では、投与されるノルトリプチリンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、50mg~約150mg/日の範囲である。実施形態では、投与されるノルトリプチリンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、単位当たり10mg~約150mgの範囲(例えば、約10mg、約25mg、約50mg、約75mg)である。
【0159】
実施形態では、投与されるアモキサピンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約200mg~約400mgの範囲である。
【0160】
実施形態では、投与されるトラニルシプロミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約10mg~約20mgの範囲で1日3回である。実施形態では、投与されるトラニルシプロミンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約10mg~約60mgの範囲である。実施形態では、投与されるフェネルジンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約30mg~約90mgの範囲である。実施形態では、投与されるフェネルジンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、単位当たり約15mg~約90mgの範囲(例えば、単位当たり15mg、30mg、45mg、60mg、75mg、90mg)である。実施形態では、投与されるイソカルボキサジドまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約10mg~約60mgの範囲である。実施形態では、投与されるイソカルボキサジドまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、単位当たり約10mg~約60mgの範囲(例えば、単位当たり10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg)である。
【0161】
実施形態では、投与されるトラゾドンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約50mg~約600mgの範囲である。実施形態では、投与されるトラゾドンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、単位当たり約50mg~約600mgの範囲(例えば、単位当たり50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg)である。実施形態では、投与されるネファゾドンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約150mg~約300mgの範囲で1日2回である。実施形態では、投与されるネファゾドンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約150mg~約300mgの範囲(例えば、単位当たり50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg)で単位当たり2回である。
【0162】
実施形態では、投与されるアンフェブタモンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、約100mg~約450mgの範囲で1日2回または3回である。実施形態では、投与されるアンフェブタモンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、単位当たり約50mg~約300mgの範囲(例えば、単位当たり約50mg、約75mg、約100mg、約200mg、約300mg)である。
【0163】
各単位は、対象に1日当たり複数回(1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、または6回が含まれる)投与され得る。実施形態では、各単位は、適切な投与間隔(例えば、約1時間の投与間隔)で投与され得るか、または同時に投与され得る。
【0164】
特定の患者に投与されるデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、塩酸塩)、ならびにSSRIまたはその薬学的に許容される塩、エステル、もしくはエナンチオマー(例えば、エスシタロプラムまたはセルトラリンなど)、SNRI、及び他の従来の抗うつ薬の投与量は、種々の因子、例えば、状態の種類及び程度、特定の患者の健康状態全般、投与されるデクスメデトミジン及びSSRI/SNRI/他の抗うつ薬の特定の形態、ならびに患者を処置するために使用される特定の製剤に依存し得る。
【0165】
方法及び投与:
実施形態では、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として当該対象に投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法が提供される。実施形態では、大うつ病性障害は、不安による苦痛を伴う。
【0166】
実施形態では、大うつ病性障害は、医学的状態に関連するか、または関連しない。実施形態では、対象は、別の併存症または障害、例えば、強迫性障害、不安障害、社会恐怖症、PTSD、恐慌性障害、または全般性不安障害を有する。実施形態では、対象は、双極性障害を有さない。実施形態では、大うつ病性障害は、軽度または中等度である。実施形態では、大うつ病性障害は、重度である。
【0167】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、約10マイクログラム~約300マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜(口腔内、舌下、歯肉が含まれる)投与することを含む、当該方法を提供する。
【0168】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、約20マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0169】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、約30マイクログラム~約120マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0170】
実施形態では、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として当該対象に投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法が提供される。実施形態では、大うつ病エピソードは、不安による苦痛を伴う。
【0171】
実施形態では、大うつ病エピソードは、医学的状態に関連するか、または関連しない。実施形態では、対象は、別の併存症または障害、例えば、強迫性障害、不安障害、社会恐怖症、PTSD、恐慌性障害、または全般性不安障害を有する。
【0172】
実施形態では、対象は、双極性障害を有する。実施形態では、対象は、双極性障害を有さない。対象が双極性障害を有する場合、本明細書において開示される方法の利点は、特に有用である。抗うつ薬は、双極性患者集団における躁病または軽躁病を誘発する傾向があるため、双極性対象に禁忌である。この現象は、「交代」と称され、不良な転帰と関連する。
【0173】
有利には、導入期におけるデクスメデトミジンとの併用投与は、抗うつ薬の躁病及び軽躁病誘発効果を低減または除去し得る。根底にあるうつ病の交代を回避することにより、少なくとも部分的に対象による治療レジメンの遵守が向上する傾向があるため、より効果的に処置される。従って、実施形態では、本開示は、双極性障害(例えば、双極I型または双極II型)を有する対象における交代を、当該対象にデクスメデトミジンを投与することにより低減する方法を提供する。デクスメデトミジンは、抗うつ薬治療が開始された後に投与されてもよいが、好ましくは、デクスメデトミジン及び抗うつ薬は、同時投与される。任意により、デクスメデトミジンは、導入期後に中止されてもよい。
【0174】
実施形態では、対象は、不安による苦痛の特定用語(DSM-5)を伴う双極性障害と診断されている。実施形態では、対象は、躁病相にある。実施形態では、対象は、うつ病相にある。実施形態では、対象は、躁病相及びうつ病相の両方にある。実施形態では、大うつ病エピソードは、軽度または中等度である。実施形態では、大うつ病エピソードは、重度である。
【0175】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、約10マイクログラム~約300マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜(口腔内、舌下、歯肉が含まれる)投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、約20マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、約30マイクログラム~約150マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、約30マイクログラム~約120マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、当該方法を提供する。
【0176】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内)、局所(経皮が挙げられる)、吸入(例えば、エアロゾルによるもの)、直腸(例えば、坐剤によるもの)、口腔粘膜(例えば、口腔内、舌下、歯肉)、鼻腔内、膣、クモ膜下腔内、眼内が挙げられる経路により投与される。
【0177】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその塩は、経口投与される。
【0178】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその塩は、口腔粘膜経路(舌下、口腔内、または歯肉が挙げられる)により投与される。
【0179】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、錠剤として口腔粘膜投与される。実施形態では、錠剤は、凍結乾燥されている。
【0180】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、ウエハーとして口腔粘膜投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、パッチとして口腔粘膜投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、ゲルまたはスプレーもしくは液滴として口腔粘膜投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、フィルムとして口腔粘膜投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、対象により自己投与される。
【0181】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、長期間または慢性的に、例えば、数週間または数ヶ月の期間にわたって投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも7日間、少なくとも15日間、少なくとも30日間、少なくとも60日間、少なくとも90日間、少なくとも180日間、少なくとも365日間、またはより長期間投与される。
【0182】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約60マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0183】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0184】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約40マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約80マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0185】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約60マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約120マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0186】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約80マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約180マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0187】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約60マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0188】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0189】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約40マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約80マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0190】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約60マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約120マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0191】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約80マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約180マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0192】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約60マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0193】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0194】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約40マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約80マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0195】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約60マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約120マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0196】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約80マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約180マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0197】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約60マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0198】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0199】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約40マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約80マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0200】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約60マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約120マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0201】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約80マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約180マイクログラムを口腔粘膜投与することを含み、当該対象が激越状態ではない、当該方法を提供する。
【0202】
実施形態では、本開示は、ヒト対象におけるセロトニン及びノルエピネフリン再取り込みを阻害し、ノルアドレナリン作動性シグナル伝達を低減するための方法であって、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を、治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIは、約1日間~約28日間、組み合わせて投与される。実施形態では、本方法は、(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を、治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(ii)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む。
【0203】
実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIの組み合わせは、より低用量のSSRI/SNRIが患者に投与され得、これにより、より高用量のSSRI/SNRIに付随する副作用のリスクが最小限にされるように、相乗効果をもたらし得る。
【0204】
ある特定の対象は、抗うつ薬に全く反応しないか、または最初の処置後に反応性が低い。従って、態様では、以前に抗うつ薬のみで処置され、反応しないか、または低反応性であることが分かった患者に関してデクスメデトミジンによる導入療法が使用され得る。
【0205】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を処置する必要がある対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、当該方法が、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を、治療量の抗うつ薬と組み合わせて当該対象に少なくとも1~28日間(例えば、7日間)投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の当該抗うつ薬を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0206】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを処置する必要がある対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、当該方法が、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を、治療量の抗うつ薬と組み合わせて当該対象に少なくとも1~28日間(例えば、7日間)投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の当該抗うつ薬を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0207】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を処置する必要がある対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、当該方法が、(a)治療量の抗うつ薬の経口投与と組み合わせて、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に少なくとも14日間口腔粘膜投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の当該抗うつ薬を当該対象に経口投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0208】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを処置する必要がある対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、当該方法が、(a)治療量の抗うつ薬の経口投与と組み合わせて、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に少なくとも14日間口腔粘膜投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の当該抗うつ薬を当該対象に経口投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0209】
実施形態では、導入期は、少なくとも約1週間の処置期間を含む。実施形態では、導入期は、約2週間の処置期間を含む。実施形態では、導入期は、約3週間の処置期間を含む。実施形態では、導入期は、約4週間以上の処置期間を含む。
【0210】
導入期は、1週間、2週間、3週間、または4週間で中止され得るが、ある特定の患者は、デクスメデトミジンの継続的な投与による恩恵を受け得る。従って、導入期は、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、または6ヵ月であり得る。
【0211】
実施形態では、抗うつ薬としては、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬、またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤が挙げられる。実施形態では、抗うつ薬は、SSRIである。実施形態では、抗うつ薬は、SNRIである。実施形態では、対象は、現行の抗うつ薬治療に対する反応が不十分であるか、または現行の抗うつ薬治療が無効であった。実施形態では、対象は、激越状態ではない。実施形態では、対象は、激越状態である。実施形態では、対象は、不安による苦痛も有する。
【0212】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、1日2回投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の1日総量は、初回用量及び2回目用量に分割される。実施形態では、デクスメデトミジンの初回用量は朝に投与され、2回目用量は夜に投与される。実施形態では、初回用量は、デクスメデトミジンの2回目用量より低い。
【0213】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の初回用量は、約30マイクログラムであり、デクスメデトミジンの2回目用量は、約60マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の初回用量は、約30マイクログラムであり、デクスメデトミジンの2回目用量は、約90マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の初回用量は、約40マイクログラムであり、デクスメデトミジンの2回目用量は、約80マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の初回用量は、約60マイクログラムであり、デクスメデトミジンの2回目用量は、約120マイクログラムである。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の初回用量は、約80マイクログラムであり、デクスメデトミジンの2回目用量は、約180マイクログラムである。
【0214】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び約5mg~約250mgのSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0215】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、セルトラリン塩酸塩)を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0216】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約5mg~約50mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(エスシタロプラムシュウ酸塩)を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0217】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0218】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて当該対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0219】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0220】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約10mg~80mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約10mg~80mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0221】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約5mg~約60mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約5mg~約60mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む当該方法を提供する。
【0222】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約20mg~約120mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0223】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び約5mg~約250mgのSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0224】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、セルトラリン塩酸塩)を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0225】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約5mg~約50mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(エスシタロプラムシュウ酸塩)を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0226】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。
【0227】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて当該対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0228】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0229】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約10mg~80mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約10mg~80mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0230】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約5mg~約60mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約5mg~約60mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0231】
実施形態では、本開示は、大うつ病エピソードを処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約20mg~約120mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0232】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、大うつ病性障害(MDD)の少なくとも1つの徴候または症状を低減する。実施形態では、本明細書に記載される方法は、投与後の24時間、1週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、または12ヵ月以内に大うつ病性障害の低減をもたらす。
【0233】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、大うつ病エピソード(MDE)の少なくとも1つの徴候または症状を低減する。実施形態では、本明細書に記載される方法は、投与後の24時間、1週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、または12ヵ月以内に大うつ病エピソードの低減をもたらす。
【0234】
実施形態では、徴候または症状は、抑うつ気分、活動における興味の減退、体重減少または増加、食欲の減少または増加、不眠または過剰睡眠、精神運動性激越または精神運動遅滞、疲労感もしくは気力の喪失、無価値感または過剰もしくは不適切な罪悪感、集中力の減退または決断困難、あるいは自殺念慮または自殺行動である。
【0235】
実施形態では、対象における改善は、日誌評価、臨床医または介護者による評価、臨床評価尺度、または機能的MRIにより測定される。実施形態では、機能的MRIにより、対象における扁桃体の血中酸素濃度依存性(BOLD)反応が測定される。
【0236】
実施形態では、対象における改善は、臨床的うつ病評価尺度を使用して測定され、ここで、当該臨床的うつ病評価尺度は、簡易抑うつ症状尺度(QIDS)-16スケール、QIDS-16日常スケール、ハミルトンうつ病評価尺度(HDRSまたはHAM-D)、ベックうつ病特性尺度、モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、臨床全般印象尺度、ツァン自己評価式抑うつ尺度、ラスキンうつ病評価尺度、及び/またはヤング躁病評価尺度である。
【0237】
実施形態では、対象における大うつ病性障害の徴候または症状は、ベックうつ病特性尺度(BDI)を使用して測定される。実施形態では、対象における大うつ病エピソードの徴候または症状は、ベックうつ病特性尺度(BDI)を使用して測定される。BDIは、うつ病に特徴的な態度及び症状を測定する21項目の自己報告式評価尺度である。項目は、0~3の連続体で評価され、0=異常なしであり、3=重度の異常である。17~20のスコアは境界型臨床的うつ病を示し、21~30のスコアは中等度うつ病を示し、31~40のスコアは重度のうつ病を示し、40超は極度のうつ病を示す。実施形態では、本明細書における方法による処置後、対象のBDIスコアは、処置前と比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約100%、またはそれ以上減少する。
【0238】
実施形態では、対象における大うつ病性障害の徴候または症状は、ツァン自己評価式抑うつ尺度を使用して測定される。実施形態では、対象における大うつ病エピソードの徴候または症状は、ツァン自己評価式抑うつ尺度を使用して測定される。ツァン自己評価式抑うつ尺度は、うつ病に関連する精神的症状及び身体症状を測定する20項目の自己報告式質問表である。質問表は記入するのに約10分かかり、項目はポジティブな陳述及びネガティブな陳述の観点から構成される。各項目は、1~4の範囲のリッカート尺度でスコア化される。合計スコアは、個々の項目スコアを合計することにより導出され、20~80の範囲である。うつ病を有するほとんどの人々のスコアは50~69であるが、70以上のスコアは重度のうつ病を示す。実施形態では、本明細書における方法による処置後、対象のツァン自己評価式抑うつスコアは、処置前と比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約100%、またはそれ以上減少する。
【0239】
実施形態では、対象における大うつ病性障害の徴候または症状は、ラスキンうつ病評価尺度を使用して測定される。実施形態では、対象における大うつ病エピソードの徴候または症状は、ラスキンうつ病評価尺度を使用して測定される。ラスキンうつ病評価尺度は、うつ病のベースラインレベル及び経時的なうつ病重症度の変化を測定する。各項目は、1~5の範囲のスケール(1=全くない、及び5=非常に)でスコア化される。合計スコアは、個々の項目スコアを合計することにより導出され、9以上のスコアは中等度うつ病を示す。実施形態では、本明細書における方法による処置後、対象のラスキンうつ病評価尺度スコアは、処置前と比較して約5%~約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約100%、またはそれ以上減少する。
【0240】
実施形態では、対象における大うつ病性障害の徴候または症状は、抑うつ症状尺度(IDS)を使用して測定される。実施形態では、対象における大うつ病エピソードの徴候または症状は、抑うつ症状尺度(IDS)を使用して測定される。IDSは、抑うつ徴候及び症状を測定する30項目の尺度である。各項目は、0~3のスケールでスコア化され、0=病態なしであり、3=重度の病態である。合計スコアは、個々の項目スコアを合計することにより導出され、26~38のスコアは軽度のうつ病を示し、39~48のスコアは中等度のうつ病を示し、49以上のスコアは重度のうつ病を示す。実施形態では、本明細書に記載される方法による処置後、対象のIDSスコアは、処置前と比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約100%、またはそれ以上減少する。
【0241】
実施形態では、対象における大うつ病性障害の徴候または症状は、簡易抑うつ症状尺度(QIDS)を使用して測定される。実施形態では、対象における大うつ病エピソードの徴候または症状は、簡易抑うつ症状尺度(QIDS)を使用して測定される。QIDSは、抑うつ徴候及び症状を測定する16項目の尺度である。各項目は、0~3のスケールでスコア化され、0=病態なしであり、3=重度の病態である。合計スコアは、個々の項目スコアを合計することにより導出され、11~15のスコアは中等度のうつ病を示し、16~20のスコアは重度のうつ病を示し、21以上のスコアは非常に重度のうつ病を示す。実施形態では、本明細書における方法による処置後、対象のQIDSスコアは、処置前と比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約100%、またはそれ以上減少する。
【0242】
実施形態では、デクスメデトミジンは、うつ病の対象に投与される場合、PECの項目により測定される緊張を低減し、不安を低減し、回復性睡眠を促進する。注目すべきことに、回復性睡眠の促進は、睡眠または鎮静を誘発することと同じでない。むしろ、本明細書における方法は、根底にあるうつ病に起因する睡眠阻害の緩和をもたらす。
【0243】
実施形態では、本開示は、不安による苦痛の迅速な緩和をもたらす口腔粘膜剤形のデクスメデトミジンまたは薬学的に許容される塩を対象に投与し、次いで、SSRI/SNRIまたは薬学的に許容される塩による処置を効果が出る期間継続することを含む、処置方法を提供する。
【0244】
実施形態では、少なくとも約1~28日間の導入期に、デクスメデトミジンをSSRI/SNRIと共に最初に投与することにより、患者の不安による苦痛が処置され、このことが、SSRI/SNRIの長期投与を促進して、臨床転帰を改善する。実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIの組み合わせが、SSRI/SNRI単独による処置と比較して、大うつ病性障害の1つ以上の症状の改善ならびに不安及び激越症状の迅速な安定化をもたらした。実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIの組み合わせが、SSRI/SNRI単独による処置と比較して、大うつ病エピソードの1つ以上の症状の改善をもたらした。デクスメデトミジンの投与は、躁病相及びうつ病相の両方における激越及び不安を処置するのに効果的である。有利には、デクスメデトミジンのSSRI/SNRIとの組み合わせは、SSRI/SNRIの投与量の減量、及びこれにより、より高用量のSSRI/SNRIに関連する副作用のリスクの低減を促進する。
【0245】
実施形態では、本開示は、大うつ病性障害(MDD)における不安による苦痛(不安による苦痛の特定用語またはADSと称される)を処置するための組成物及び方法を提供する。実施形態では、本開示は、大うつ病エピソード(MDE)における不安による苦痛(不安による苦痛の特定用語またはADSと称される)を処置するための組成物及び方法を提供する。実施形態では、本開示は、双極性障害における不安による苦痛を処置するための組成物及び方法を提供する。実施形態では、対象は、激越状態ではない。実施形態では、対象における不安による苦痛は、DSM-5基準に従って測定される。
【0246】
精神疾患診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)は、米国精神医学会(APA)により公開された分類及び診断ツールである精神疾患診断・統計マニュアルの2013年改訂版である。これは、米国において臨床医及び精神科医により精神病を診断するために広く使用されているハンドブックであり、成人及び小児の両方の全てのカテゴリのメンタルヘルス障害を網羅する。不安による苦痛の特定用語(ADS)は、以下の5つの構成概念からなる:1.張りつめたまたは緊張した感覚、2.異常に落ち着かないという感覚、3.心配のための集中困難、4.何か恐ろしいことが起こるかもしれないという恐怖、5.自分自身をコントロールできなくなるかもしれないという感覚。重症度は、症状の数及び種類により示される:a)軽度:2つの症状;b)中等度:3つの症状;c)中等度-重度:4つまたは5つの症状;d)重度:運動性激越を伴う4つまたは5つの症状。これは、単一の大うつ病エピソードにおける不安症状及び抑うつ症状の併発を調べるのに役立つ。不安性の特徴を有する大うつ病性障害(MDD)患者は、一般に以下を有する:より早い発症年齢;より持続性の経過;より重篤な大うつ病エピソード(MDE);増加した自殺念慮及び自殺行動リスク;より不良な生活の質、より大きな障害;より大きな個人的及び社会経済的コスト;ならびにより高い治療失敗率。
【0247】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、当該方法が、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて当該対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0248】
実施形態では、導入期は、少なくとも約1~4週間の処置期間を含む。
【0249】
実施形態では、SSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩、エステル、もしくはエナンチオマーは、導入期の最初の2週間、推奨用量の半分とされる開始用量で投与され、忍容性に応じてその後の数週間で用量が全量に増量される。実施形態では、SSRI/SNRIによる処置の抗うつ効果は、本開示によるデクスメデトミジンとの共投与により早められる。
【0250】
実施形態では、対象は、大うつ病性障害(MDD)を有する。実施形態では、対象は、双極I型障害を有する。実施形態では、対象は、双極II型障害を有する。実施形態では、対象は、双極性障害を有さない。実施形態では、対象は、以前にSSRI/SNRIを投与されている。実施形態では、対象は、以前にSSRI/SNRIを投与されていない。実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIの投与後に、他のいかなる処置も対象に実施されない。実施形態では、対象は、別の併存症または障害を有する。
【0251】
実施形態では、本開示は、ヒト対象におけるSSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて当該対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0252】
実施形態では、本開示は、ヒト対象におけるSSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(a)治療量のSSRI/SNRIの経口投与と組み合わせて治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に口腔粘膜投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを当該対象に経口投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0253】
実施形態では、不安による苦痛は、投与の約1週間以内に顕著に低減される。実施形態では、不安による苦痛は、投与の約2週間以内に顕著に低減される。実施形態では、維持期においてSSRI/SNRIは、単独療法として投与される。
【0254】
実施形態では、維持期においてSSRI/SNRIは、追加のSSRI/SNRIと共に投与される。実施形態では、維持期におけるSSRI/SNRIは、別の治療薬と組み合わせて投与される。実施形態では、維持期におけるSSRI/SNRIは、無効であるか、もしくは不忍容性を示す場合、または転帰の改善を達成するために、約2週間の投与後に異なるSSRI/SNRIに切り替えられ得る。実施形態では、維持期は、基礎疾患(例えば、大うつ病性障害)が消退するまで継続される。実施形態では、維持期は、基礎疾患(例えば、大うつ病エピソード)が消退するまで継続される。実施形態では、維持期は、(臨床医または医師による判断で)更なる処置が必要とされなくなるまで継続される。実施形態では、維持期は、対象が不安による苦痛の再発を経験するまで継続される。実施形態では、対象は、躁病相、うつ病相、またはその両方にある。実施形態では、対象は、導入期の前にSSRI/SNRIによる前治療を(例えば、少なくとも1週間)受けている。例えば、患者は、導入期の前に1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日間、前治療を受けている。実施形態では、対象は、導入期の前に14日間を超える期間、SSRI/SNRIによる前治療を受けている。実施形態では、対象は、導入期の前にSSRI/SNRIによる前治療を(例えば、少なくとも2または3週間)受けている。実施形態では、対象は、導入期の前に14日間を超える期間、SSRI/SNRIによる前治療を受けている。実施形態では、対象は、SSRI/SNRIによるなんらの前治療も受けていない(すなわち、治療未経験である)。実施形態では、対象は、なんらの他の抗うつ薬投与による治療も同時に受けていない。実施形態では、対象は、18歳以上の成人である。
【0255】
実施形態では、SSRIは、セルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、ダポキセチン、パロキセチン、フェモキセチン、ボルチオキセチン、アラプロクラート、及びビラゾドン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される。実施形態では、SSRIは、セルトラリンである。実施形態では、SSRIは、エスシタロプラムである。
【0256】
実施形態では、SNRIは、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、デュロキセチン、アトモキセチン、シブトラミン、レボキセチン、トラマドール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される。実施形態では、SNRIは、デスベンラファキシンまたはベンラファキシンである。実施形態では、SNRIは、デュロキセチンまたはその塩である。実施形態では、SNRIは、デュロキセチン塩酸塩である。実施形態では、SNRIは、アトモキセチンである。
【0257】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及びSSRI/SNRIは、別個の単位剤形で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及びSSRI/SNRIは、逐次的または同時に投与される。
【0258】
実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIは、時間を隔てて2つの別個の剤形により逐次投与される。特定の時間という用語は、他方の薬剤の投与の24時間以内のどこか、例えば、互いに12時間、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、または1時間を意味する。
【0259】
実施形態では、単位剤形は、約28日間、約27日間、約26日間、約25日間、約24日、約23日間、約22日間、約21日間、約20日間、約19日間、約18日間、約17日間、約16日、約15日間、約14日間、約13日間、約12日間、約11日間、約10日間、約9日間、約8日間、約7日、約6日間、約5日間、約4日間、約3日間、約2日間、または約1日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約28日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約21日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約14日間同時投与される。実施形態では、単位剤形は、約7日間同時投与される。
【0260】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、約0.5マイクログラム~約300マイクログラムの用量範囲で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、約0.5マイクログラム~約240マイクログラムの用量範囲で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、約120マイクログラムの用量で投与される。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、約180マイクログラムの用量で投与される。
【0261】
実施形態では、SSRIは、約5mg~約250mgの用量範囲で経口投与される。実施形態では、SNRIは、約10mg~約500mgの用量範囲で経口投与される。実施形態では、SSRI/SNRIは、1日1回、1日2回、1日3回、またはそれ以上、好ましくは、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、または大うつ病性障害が消退するまでより長期間の間、1日1回、2回、または3回投与される。
【0262】
実施形態では、両方の単位剤形は、口腔粘膜(例えば、舌下または口腔内または歯肉)、経口、局所、経皮、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下)経路などからなる群から選択される同じまたは異なる経路により別々に投与される。
【0263】
実施形態では、本開示は、対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び約5mg~約250mgのSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。実施形態では、本開示は、対象における不安による苦痛を処置する方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び約10mg~約500mgのSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0264】
実施形態では、本開示は、対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、約30マイクログラム~180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、セルトラリン塩酸塩)を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0265】
実施形態では、本開示は、対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約5mg~約50mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(例えば、エスシタロプラムシュウ酸塩)を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0266】
実施形態では、本開示は、対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約10mg~約500mgのSNRIを含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0267】
実施形態では、本開示は、対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を当該対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0268】
実施形態では、不安による苦痛は、約3日以内に顕著に低減される。実施形態では、不安による苦痛は、約1週間以内に顕著に低減される。実施形態では、不安による苦痛は、約2週間以内に顕著に低減される。
【0269】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の口腔粘膜剤形は、舌下または口腔内または歯肉フィルムである。実施形態では、セルトラリンまたはその薬学的に許容される塩の経口剤形は、錠剤である。
【0270】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約10mg~約80mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約10mg~約80mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0271】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約10mg~約40mg(例えば、10mg、20mg、30mg、及び40mg)のシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約5mg~約40mg(例えば、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg)のシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の口腔粘膜剤形は、舌下または口腔内または歯肉フィルムである。実施形態では、シタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の経口剤形は、錠剤である。
【0272】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約5mg~約60mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約5mg~約60mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0273】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約10mg~約20mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約10mg~約20mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の口腔粘膜剤形は、舌下または口腔内または歯肉フィルムである。実施形態では、エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の経口剤形は、錠剤である。
【0274】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約20mg~約150mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。
【0275】
実施形態では、本開示は、ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約20mg~約120mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、当該方法を提供する。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の口腔粘膜剤形は、舌下または口腔内または歯肉フィルムである。実施形態では、デュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩の経口剤形は、錠剤である。実施形態では、デュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩の経口剤形は、カプセルである。実施形態では、デュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩の経口剤形は、遅延放出カプセルである。
【0276】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、投与後の1週間以内に不安による苦痛の改善または低減をもたらす。実施形態では、本明細書に記載される方法は、投与後の1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、または12ヵ月以内に不安による苦痛の改善または低減をもたらす。実施形態では、不安による苦痛は、大うつ病性障害に付随する。実施形態では、不安による苦痛は、大うつ病エピソードに付随する。
【0277】
実施形態では、本開示の方法は、不安による苦痛に罹患しているヒト対象におけるHAM-Aスコアの低減をもたらす。HAM-A尺度は、不安症状の重症度を測定し、臨床及び研究の場の両方で広く使用されている。この尺度は、各々が一連の症状により定義される14項目からなり(以下に記載される)、精神的不安(精神的激越及び精神的苦痛)及び身体的不安(不安に関連する身体愁訴)の両方を測定する。実施形態では、対象は、処置の開始時に14以上のHAM-A合計スコアを有する。実施形態では、対象は、HAM-A尺度により測定されるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、または56点の減少を経験する。実施形態では、減少は、1日未満で経験される。実施形態では、減少は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日で経験される。実施形態では、減少は、28日後に経験される。
1.不安気分:心配、最も悪い事が起こるのではないかという危惧、恐ろしい事の予想、焦燥感。
2.緊張:緊張感、易疲労性、驚愕反応、涙もろい、体がふるえる、落ち着けない感じ、リラックスできない。
3.恐怖:暗闇が怖い、見知らぬ人が怖い、独りにされるのが怖い、動物が怖い、交通が怖い、人混みが怖い。
4.不眠:就眠困難、途中で目が覚める、起床時の寝不足感及び倦怠感、多夢、悪夢、夜驚。
5.知的障害:集中困難、悪い記憶力。
6.抑うつ気分:興味の喪失、趣味の喜びの欠如、気分の落ち込み、早期覚醒、日内変動。
7.身体症状(筋肉):痛み及び疼き、痙攣、硬直、ミオクロニー発作、歯ぎしり、動揺した声、筋緊張亢進。
8.身体症状(感覚):耳鳴り、視野のぼやけ、ホットフラッシュ及びコールドフラッシュ、脱力感、チクチクする感覚。
9.循環器症状:頻脈、動悸、胸が痛む、血管の拍動感、気が遠くなる感覚、調律欠落。
10.呼吸器症状:胸の圧迫感または胸を締め付けられる感じ、息苦しい感じ、溜息、呼吸困難。
11.胃腸症状:嚥下困難、放屁、腹痛、灼熱感、腹部膨満、悪心、嘔吐、腹鳴、下痢傾向、体重減少、便秘。
12.尿生殖器症状:尿意頻数、尿意切迫、無月経、月経過多、冷感症の発症、早漏、性無欲症、インポテンス。
13.自律神経症状:口渇、紅潮、蒼白、発汗傾向、眩暈、緊張性頭痛、立毛。
14.面接時の行動:もじもじする、不穏状態、または歩き回る、手の振戦、しかめっ面、張り詰めた顔、溜息性呼吸または多呼吸、顔面蒼白、嚥下など。
【0278】
各項目は、0=なし~4=重度の範囲の5段階尺度でスコア化される。0の評点は、患者においてその感覚がないことを示す。1の評点は、患者において軽度にその感覚が現れることを示す。2の評点は、患者において中等度にその感覚が現れることを示す。3の評点は、患者において重度にその感覚が現れることを示す。4の評点は、患者において非常に重度にその感覚が現れることを示す。
【0279】
実施形態では、本開示の方法は、不安による苦痛に罹患しているヒト対象におけるHAM-Dスコアの低減をもたらす。HAM-D(またはHDRS)は、うつ病の症状を評価するための手段として使用される(Hamilton M.A rating scale for depression.J Neurol Neurosurg Psychiatry 1960 23:56-62)。この手段は、患者の症状を確認するためのそれらの構造化または非構造化面接後に臨床医により実施される。合計スコアは、各質問から得た個々のスコアを合計することにより算出される。7未満のスコアは、一般に、うつ病が存在しないことまたはその寛解を示す。7~17のスコアは、軽度のうつ病を示す。18~24のスコアは、中等度のうつ病を示す。25以上のスコアは、重度のうつ病を示す。ほとんどのうつ病の研究は、スコアが50%を超えて減少した場合、患者が処置に対する「反応」を示したとみなしている。「寛解」は、7未満のスコアになることと一般に理解される。実施形態では、対象は、HAM-D尺度により測定されるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ポイントの減少を経験する。実施形態では、対象は、それらのHAM-Dスコアの50%超の減少を経験する。実施形態では、減少は、1日未満で経験される。実施形態では、減少は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日で経験される。実施形態では、減少は、28日後に経験される。実施形態では、HAM-D-17うつ病サブスケールにより測定されるように、大うつ病性障害の症状の改善が観察される。実施形態では、HAM-D-17うつ病合計スコア及び不安サブスケールにより測定されるように、不安及び不穏状態の改善が観察される。実施形態では、睡眠の改善は、HAM-D-17睡眠サブスケールにより評価される。実施形態では、対象は、処置の開始時に18以上のHAM-D-17合計スコアを有する。
【0280】
実施形態では、本開示の方法は、不安による苦痛に罹患しているヒト対象におけるモンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)スコアの減少をもたらす。MADRSは、精神科医が気分障害患者の大うつ病エピソードの重症度を測定するために使用する10項目の診断質問表である。MADRSスコアが高いほどうつ病が重度であることを示し、各項目が0~6のスコアをもたらす。総スコアは0~60の範囲である。質問表は、以下の症状に関する質問を含む:1.外見に表示される悲しみ、2.言葉で表現された悲しみ、3.内的緊張、4.睡眠減少、5.食欲減退、6.集中困難、7.制止、8.感情をもてないこと、9.悲観的思考、10.自殺思考。実施形態では、対象は、MADRSスケールにより測定されるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60点の減少を経験する。実施形態では、減少は、1日未満で経験される。実施形態では、減少は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日で経験される。実施形態では、減少は、28日後に経験される。実施形態では、対象は、処置の開始時に20以上のMADRSスコア(またはベースラインスコア)を有する。
【0281】
実施形態では、本開示の方法は、不安による苦痛に罹患しているヒト対象における精神運動激越及び鎮静の評価尺度(ACES)の低減をもたらす。ACESは、激越及び鎮静を総合的に評価する単1項目の尺度であり、ここで、1は高度の激越を示し、2は中等度の激越を示し、3は軽度の激越を示し、4は正常な行動を示し、5は軽度の鎮静を示し、6は中等度の鎮静を示し、7は高度の鎮静を示し、8は深睡眠を示し、9は覚醒不能を示す。実施形態では、本開示は、精神運動激越及び鎮静の評価尺度(ACES)により測定されるように、うつ病に付随する激越を3(軽度の激越)または4(正常な行動)のスコアに低減する方法を提供する。実施形態では、減少は、1日未満で経験される。実施形態では、減少は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日で経験される。実施形態では、減少は、28日後に経験される。
【0282】
実施形態では、本開示の方法は、臨床全般印象(CGI)評価尺度の減少をもたらす。CGIスケールは、精神障害患者の治療試験において一般的に使用される、症状重症度、治療反応、及び治療の有効性の尺度である。
【0283】
実施形態では、本開示の方法は、不安による苦痛に罹患しているヒト対象におけるCGI重症度(CGI-S)の減少をもたらす。CGI-Sは、同じ診断をされた患者に関する臨床医の過去の経験と比較して、評価時点での患者の疾病重症度を評価するための臨床医により使用される7段階尺度である。実施形態では、本開示の方法は、不安による苦痛に罹患しているヒト対象におけるCGI改善度(CGI-I)の減少をもたらす。CGI-Iは、処置に応じた激越の変化を測定する。CGI-Iスコアは1~7の範囲である:0=評価されていない(欠測)、1=非常に改善した、2=かなり改善した、3=わずかに改善した、4=変化なし、5=わずかに悪化した、6=かなり悪化した、7=非常に悪化した。実施形態では、対象は、処置の開始時に4以上の臨床全般印象・重症度(CGI-S)スコアを有する。実施形態では、対象は、CGI-SまたはCGI-I尺度により測定されるように、1、2、3、4、5、6、または7点の減少を経験する。実施形態では、減少は、1日未満で経験される。実施形態では、減少は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日で経験される。実施形態では、減少は、28日後に経験される。実施形態では、CGI-Iスコアは、約1(非常に改善した)または約2(かなり改善した)まで改善される。
【0284】
医薬組成物:
実施形態では、本開示は、
(i)約0.5マイクログラム~約300マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)約5mg~約250mgのSSRIと、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0285】
実施形態では、本開示は、
(i)約0.5マイクログラム~約300マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)約10mg~約500mgのSNRIと、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0286】
実施形態では、SSRIは、限定されるものではないが、セルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、パロキセチン、フェモキセチン、及びエスシタロプラム、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される。
【0287】
実施形態では、SNRIは、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、デュロキセチン、アトモキセチン、シブトラミン、レボキセチン、トラマドール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される。
【0288】
実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、デクスメデトミジン塩酸塩である。
【0289】
実施形態では、組成物は、錠剤、口腔内崩壊錠(ODT)、発泡錠剤、カプセル、ペレット、丸剤、ロゼジンまたはトローチ、フィルム、粉末、分散性顆粒、サッシェ、水溶液、シロップ剤、エマルション、懸濁液、溶液、軟質ゲル、分散体などを含む群から選択される剤形として製剤化される。実施形態では、組成物は、口腔粘膜組成物として製剤化される。本開示の口腔粘膜組成物としては、当該技術分野における標準的な方法に従って製剤化され得る錠剤、カプセル、パッチもしくはフィルム、サッシェ、ウエハー、粉末、小型錠剤、ペレット、ペースト、ゲル、軟膏、クリーム、ドロップ、液体(溶液、懸濁液、またはエマルション)、スプレー、マイクロスフェア、またはナノスフェアが挙げられ得る。実施形態では、口腔粘膜組成物は、フィルム(例えば、薄いフィルム)である。実施形態では、フィルムは、舌下用である。実施形態では、フィルムは、口腔内用である。実施形態では、フィルムは、歯肉用である。
【0290】
フィルム/パッチ:
実施形態では、口腔粘膜剤形は、パッチまたはフィルム(例えば、薄いフィルム)の形態である。パッチまたはフィルムは、パッチまたはフィルムの移動または嚥下を防止するために付着特性を有し得る。デクスメデトミジンを含む好適なフィルム組成物は、米国特許第10,792,246号、同第9,441,142号、同第9,662,297、9,585,961号、同第9,937,123号、同第9,814,674号、同第9,248,146号、同第9,545,376号、及び同第9,662,301号;米国特許出願公開第2020/0000708号、同第2020/0172768号、及び同第2021/0077388号;ならびにWIPO特許出願公開第2021/016112A2号(これらの各々の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0291】
実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩は、単一のフィルム製品として一緒に製剤化される。実施形態では、フィルム剤形は、(i)ポリマーマトリックス内に配置されたか、または(ii)ポリマーマトリックスの表面、例えば、「プラセボ」フィルムの表面に堆積されたSSRI/SNRI及びデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む。更に、SSRI/SNRI及びデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩は、フィルム剤形の一部として味がマスクされた形態で組み込まれ得る。実施形態において、薬物の粒子は、味覚マスキング剤、例えば、ポリマー、油、または蝋でコーティングされ得るか、またはそれらと共に造粒され得る。本開示のフィルム剤形は、十分なフィルム強度(すなわち、自己支持性)及び急速崩壊プロファイルのフィルムをもたらす少なくとも1種の水溶性ポリマーを含み得る。
【0292】
SSRI/SNRI及びデクスメデトミジンは、ポリマー基材の表面上の1つ以上の液滴中に存在し得る。ポリマー成分(複数可)は、例えば、水溶性ポリマーであるヒドロキシプロピルセルロースからなってもよいが、異なる水溶性ポリマーも意図される。1種以上の水溶性ポリマーの例は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、及び異なる分子量を有する同じポリマーの混合物が含まれる、それらの混合物からなる群から選択される。ポリエチレンオキシド(PEO)もフィルム医薬組成物中の水溶性ポリマーとして、薬学的に許容される担体の例として、またはより具体的には、粘膜付着剤としてこの中に存在してもよい。
【0293】
実施形態では、ポリマー成分は、単一の水溶性ポリマーからなる。幾つかの実施形態では、ポリマー成分は、異なる分子量を有する2種以上の同じ水溶性ポリマーが含まれる、2種以上の水溶性ポリマーからなる。
【0294】
実施形態では、水溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロースを含む。実施形態では、ポリマー成分は、異なる分子量を有する1種、2種、または3種のヒドロキシプロピルセルロースからなってもよい。好都合には、異なるヒドロキシプロピルセルロースの分子量は、(i)約60,000ダルトン未満(例えば、約5,000ダルトン~約49,000ダルトン)、(ii)約90,000ダルトン~約200,000ダルトン、及び(iii)約200,000ダルトン~約500,000ダルトンの範囲であり得る。
【0295】
実施形態では、本開示は、(i)デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩;(ii)約60,000ダルトン未満(例えば、約5,000ダルトン~約49,000ダルトン)の分子量を有する第1の水溶性ポリマー、及び約60,000ダルトン超の分子量を有する1種以上の第2の水溶性ポリマーからなるポリマー成分;ならびに任意に、(iii)1種以上の薬学的に許容される担体を含むフィルム医薬組成物を提供する。
【0296】
実施形態では、上記第1の水溶性ポリマー対上記第2の水溶性ポリマー(複数可)(フィルム中に存在する場合、PEOが含まれる)の重量比は、フィルム組成物全体で約2:1~約1:50、例えば、約1:1~約1:40、例えば、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:11、約1:12、約1:13、約1:14、約1:15、約1:16、約1:17、約1:18、約1:19、約1:20、約1:21、約1:22、約1:23、約1:24、約1:25、約1:26、約1:27、約1:28、約1:29、約1:30、約1:31、約1:32、約1:33、約1:34、約1:35、約1:36、約1:37、約1:38、約1:39、または約1:40である。
【0297】
実施形態では、上記第1の水溶性ポリマー対上記第2の水溶性ポリマー(複数可)(フィルム中に存在する場合、PEOが含まれる)の重量比は、フィルム組成物全体で約1:10~約1:30、約1:15~約1:25、または約1:15~約1:20である。幾つかの実施形態では、約1:15~約1:20の比率が有益な機能効果をもたらす。
【0298】
第1の水溶性ポリマー/第2の水溶性ポリマーと共にフィルムに含まれ得るか、またはかかるポリマー(複数可)の代わりとなる他の水溶性ポリマーの例としては、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、コポビドン(N-ビニル-2-ピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、メタアクリル酸メチルコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、ポリデキストロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キトサン、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、デンプン、カラゲナン、ゼラチン、及びそれらの混合物が挙げられる。水溶性ポリマー担体が含まれる、水溶性ポリマー成分は、存在する場合、好都合には、乾燥重量基準でのフィルムの重量を基準にしてフィルム組成物の約40%~約99.8%、約50%~約99.7%、約60%~約99.6%を構成し得る。
【0299】
実施形態では、ポリエチレンオキシドがフィルム総重量の約50%~約60%w/wでフィルム中に存在し得る。
【0300】
実施形態では、本開示は、
(i)治療上有効量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)1種以上の水溶性ポリマーからなるポリマー成分と、
(iii)1つ以上の薬学的に許容される担体と、を含む(例えば、本質的にそれらからなる)フィルム組成物を提供する。
【0301】
堆積溶液/懸濁液の粘性は、少量サンプルアダプターを備えたブルックフィールド粘度計を使用して25℃で測定される場合、約6cps~約3700cpsの範囲であり得る。一例として、粘性は、約5cps~約500cps、約6cps~約200cps、約6cps~約100cps、または約6cps~約50cpsの範囲であり得る。本開示の一態様では、デクスメデトミジン組成物の粘性は、25℃及び約7(1/s)の剪断速度で約6cps~約20cpsである。堆積組成物は、溶液、エマルション、懸濁液、または分散体が含まれる、任意の形態であり得る。本明細書において開示される薄い口腔粘膜フィルム剤形は、薬物効果の迅速な発生を促進するための幾つかの機能的利点を有する。実施形態では、本開示の薄いフィルム剤形は、舌下に適用される場合、約15秒~約180秒の崩壊時間(DT)を有する。この時間枠の崩壊時間は、薬物効果の最適な発生をもたらす。
【0302】
実施形態では、薄いフィルム剤形は、フィルムを舌下(または口腔内または歯肉)位置に局在化させ、溶解前の効果の除去を低減または防止する実用的な利点を提供する粘膜付着特性を有する。
【0303】
薬学的に許容される担体:
フィルム組成物は、限定されるものではないが、液体担体、香料、甘味剤、清涼剤、抗酸化剤、pH調整剤、浸透促進剤、粘膜付着剤、可塑剤、増量剤、界面活性剤/非イオン性可溶化剤、安定剤、消泡剤、着色剤などが挙げられる1種以上の薬学的に許容される担体を更に含み得る。ある特定の実施形態では、フィルム組成物は、酸性緩衝剤または他の酸性薬剤を実質的に含まない。
【0304】
一態様によれば、フィルム剤形中の薬学的に許容される担体としては、液体担体が挙げられる。液体担体は、フィルム組成物中のポリマーマトリックス(薬物を含有するか、またはプラセボ)及び堆積組成物の調製に有用な1種以上の溶媒を含む。
【0305】
実施形態では、溶媒は水であり得る。実施形態では、溶媒は、限定されるものではないが、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノール、ベンジルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる、極性有機溶媒であり得る。実施形態では、溶媒は、非極性有機溶媒、例えば、塩化メチレン、トルエン、酢酸エチル、及びそれらの混合物であり得る。ある特定の溶媒は、アルコール、特にエタノール、水、及びそれらの混合物である。
【0306】
実施形態では、剤形は、口腔粘膜ウエハーである。実施形態では、ウエハーは、凍結乾燥されている。実施形態では、ウエハーは、口腔粘膜と接触されると約1分未満で崩壊する。実施形態では、ウエハーは、口腔粘膜と接触されると約1分以上で崩壊する。実施形態では、ウエハーは、賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ラクトース、マンニトール、グリシンなどを含む。
【0307】
他の口腔粘膜製剤に含有されるのに好適な担体としては、限定されるものではないが、糖、デンプン、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝液、乳化剤、等張食塩水、発熱物質を含まない水、及びそれらの組み合わせが挙げられる。唾液中に直ちに溶解する担体が好ましくてもよい。
【0308】
口腔粘膜製剤は、他の薬学的に許容される担体及び/または賦形剤、例えば、結合剤、滑沢剤、希釈剤、コーティング、崩壊剤、バリヤー層成分、グリダント、着色剤、溶解性増強剤、ゲル化剤、充填剤、タンパク質、補助因子、乳化剤、可溶化剤、懸濁剤、及びそれらの混合物も含み得る。本開示に従って使用され得る具体的な賦形剤は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients,第5版,2005 Rowe et al.編,Mcgraw Hillに記載されているように、当技術分野において公知である。
【0309】
スプレー、ドロップ、またはゲル:
実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩は、舌下または口腔内または歯肉投与に好適なスプレー組成物またはドロップ組成物として製剤化され、(重量に対して約1%~約99.995%の)1種以上の薬学的に許容される液体を含む。かかる液体は、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の溶媒、共溶媒、または非溶剤であり得る。薬学的に許容される液体の例としては、水、エタノール、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、グリセリン、N-メチルピロリドン、薬学的に許容される油(例えば、大豆、ヒマワリ、落花生など)などが挙げられる。これらの成分に加えて、スプレーまたはドロップ製剤は、1種以上の賦形剤、例えば、粘度調節材料(例えば、ポリマー、糖、糖アルコール、ガム、クレイ、シリカなど、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP));防腐剤(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、及びメチルパラベン);香味剤(例えば、ペパーミント油)、甘味剤(例えば、糖、例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、マルトース、フルクトースなど)、人工甘味剤(例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファム、スクラロース)、または糖アルコール(例えば、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトールシロップ);緩衝剤及びpH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム、クエン酸塩、及びクエン酸);着色剤;香料、キレート剤(例えば、EDTA);紫外線吸収剤、ならびに消泡剤(例えば、低分子量アルコール、ジメチコン)を含み得る。舌下または口腔内スプレーまたはドロップに好適な上述の成分のうちの1つ以上に加えて、ゲル製剤は、粘度調節材料(例えば、水溶性または水膨潤性ポリマー、例えば、カーボポール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)などの1種以上の賦形剤を含み得る。
【0310】
口腔粘膜投与用の本開示のスプレー剤形は、(例えば、組成物の重量に対して約30%~約99.99%の量で存在する)1種以上の薬学的に許容される液体を含み得る。かかる液体は、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩の溶媒、共溶媒、または非溶剤であり得る。薬学的に許容される液体の例としては、水、エタノール、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、薬学的に許容される油(例えば、大豆、ヒマワリ、落花生、ペパーミントなど)などが挙げられる。薬学的に許容される液体は、活性医薬成分を溶解させるか、それの安定な均一懸濁液を生じるか、または懸濁液もしくは溶液の任意の組み合わせを形成させるように選択される。
【0311】
スプレー、ドロップ、及びゲルは、標準的な医薬品優良製造規則に従って適切量の前述の成分を混合することにより製造され得る。かかる賦形剤は、患者もしくは対象による受け入れまたは味を改善するため、生物学的利用能を改善するため、貯蔵寿命を増加させるため、製造費用及び包装費用を低減するため、政府規制機関の要件を満たすため、及び他の目的のために製剤に含まれ得る。各成分の相対量は、得られる製剤の望ましい薬理学的特性及び薬物動態特性を損なうものであるべきではない。
【0312】
実施形態では、口腔粘膜剤形は、ペースト、ゲル、または軟膏形態である。ペースト、ゲル、または軟膏の粘性は、舌下または歯肉付近または頬部付近または上唇付近での保持を可能にするように調整され得る。
【0313】
錠剤/小型錠剤:
実施形態では、本開示は、治療量のデクスメデトミジン、SSRI/SNRIまたはその薬学的に許容される塩、及び(重量に対して約1%~約99.995%の)1種以上の薬学的に許容される担体を含むか、または本質的にそれらからなる、口腔粘膜投与(例えば、舌下または口腔内または歯肉投与)に好適な錠剤製剤を提供する。かかる担体は、味覚マスキング剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、グリダント、着香剤、または液体溶媒であり得る。
【0314】
薬学的に許容される液体の例としては、水、エタノール、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、グリセリン、N-メチルピロリドン、薬学的に許容される油(例えば、大豆、ヒマワリ、落花生など)などが挙げられる。味覚マスキング剤としては、例えば、アンバーライト、Opadry(登録商標) AMB TAN、ポリメタクリレート(特にEudragit(登録商標)L100)、デンプングリコール酸ナトリウム(Primojel)、カーボポールポリマー、PEG-5M、酢酸ナトリウム、エチルセルロース、βシクロデキストリンが挙げられる。着香剤は、例えば、ミント粉末、メントール、バニリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリンであり得る。崩壊剤としては、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、二酸化炭素、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、グアーガム、メチルセルロース、ポラクリリンカリウム、ポロキサマー、アルギン酸ナトリウムが挙げられる。希釈剤は、例えば、微結晶性セルロース、デキストレート、デキストロース、フルクトース、マンニトール、スクラロース、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、キシリトール、マルトース、マルトデキストリン、マルチトールであり得る。結合剤は、例えば、アルギン酸、カルボマー、エチルセルロース、ゼラチン、液状グルコース、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウムであり得る。
【0315】
好都合には、圧縮工程の間、粉末が打錠杵に付着するのを防止するために、少なくとも1種の滑沢剤が製剤に組み込まれ得る。滑沢剤は、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウムであり得る。グリダントは、粒子間の摩擦及び凝集を低減することにより粉末の流動を促進するために使用される。グリダントは、それがダイ壁摩擦を低減する機能を有さないため、滑沢剤と組み合わせて使用される。グリダントは、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、リン酸三カルシウムであり得る。
【0316】
実施形態では、口腔粘膜剤形は、錠剤またはディスクまたは圧縮粉末の形態である。
【0317】
実施形態では、剤形は、感覚刺激的に好ましい口あたりのために低粒度の成分を有する、硬質または圧縮粉末舌下錠またはバッカル錠である。錠剤(または錠剤を形成させるために圧縮され得る、活性薬剤を含有するその粒子)は、外側の保護コーティング、例えば、従来から微小粒子及びマイクロカプセルの形成に使用されている任意のポリマーを含み得る。
【0318】
実施形態では、剤形は、発泡剤を含有する舌下錠(またはバッカル錠または歯肉錠)である。発泡剤を含む舌下組成物は、米国特許第6,200,604号(その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0319】
実施形態では、口腔粘膜錠剤剤形は、凍結乾燥(またはフリーズドライ)により調製される。活性薬剤(複数可)を含む懸濁液が適切な賦形剤を用いて調製され得、活性薬剤(SSRI/SNRI/デクスメデトミジン)の懸濁液がブリスターパックに分配され、凍結乾燥され得る。SSRI/SNRI及び/またはデクスメデトミジンの口腔内崩壊錠(ODT)に使用され得る例示的な凍結乾燥調製物プラットフォームは、ZYDIS(登録商標)(Catalent、Somerset、NJ、USA)製剤である。
【0320】
実施形態では、剤形は、口腔粘膜小型錠剤である。実施形態では、小型錠剤は、口腔粘膜と接触されると約1分未満で崩壊する。実施形態では、小型錠剤は、口腔粘膜と接触されると約1分以上で崩壊する。実施形態では、小型錠剤は、コプロセスマンニトールを主成分とした賦形剤を含む。実施形態では、小型錠剤は、直接打錠用賦形剤を含有する。
【0321】
液体:
実施形態では、口腔粘膜剤形は、液体形態(例えば、溶液、懸濁液、またはエマルション)であり、例えば、スプレーまたはドロップとして提供され得る。本開示の実施形態では、SSRI/SNRI及び/またはデクスメデトミジンもしくはその薬学的に許容される塩は、液体形態、例えば、風味付けされたか、または風味付けされていない生理的食塩水として口腔粘膜投与される。液体剤形は、舌下または歯肉付近または頬部付近または上唇付近にドロップまたはスプレーとして簡便に投与され得る。溶液は、活性成分を希釈剤、例えば、水、生理食塩水、塩化ナトリウム溶液、または任意の他の適切な溶媒、例えば、プロピレングリコール、グリセロール、エチルアルコールなどと共に含む。溶液用の希釈剤は、特に生理的食塩水または水であり得る。
【0322】
本開示の非固体剤形は、舌下または歯肉付近または頬部付近または上唇付近に組成物を噴霧するか、滴下するか、塗布するか、または浴びせることにより簡便に投与され得る。
【0323】
鼻腔内製剤:
本開示の組成物は、任意の好適な形態で鼻腔に投与され得る。例えば、組成物は、スプレーエマルション、懸濁液、または溶液形態で、ドロップまたは粉末として鼻腔に投与され得る。
【0324】
実施形態では、本開示の鼻腔内組成物は、活性成分に加えて材料、例えば、好適な分散剤及び/または湿潤剤、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、可溶化剤、ビヒクルなどを含有する水性懸濁液、溶液、またはエマルションを含む。
【0325】
医薬組成物は、1種以上の好適な薬学的に許容される担体と共にリポソーム、マイクロカプセル、またはセントロソームとして製剤化され得る。
【0326】
鼻腔内投与に好適な任意のデバイスが使用され得る。実施形態では、デバイスは、定量投与デバイスである。定量投与デバイスは、特定の投与量の組成物を送達することができる。定量投与デバイスは、単回投与、2回投与、または反復投与デバイスであり得る。定量投与デバイスを使用して投与され得る治療量は、単回投与デバイスであり得る。定量投与デバイスは、鼻腔内に医薬組成物を送達することができるデバイスであり得る。
【0327】
非経口製剤:
非経口投与用の液体医薬組成物は、注射または持続注入による投与用に製剤化され得る。注射または注入による投与経路としては、限定されるものではないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、クモ膜下腔内、皮下経路が挙げられ得る。実施形態では、非経口製剤としては、プレフィルド型シリンジ、バイアル、注入時に再構成させる粉末、送達前に希釈される注入用濃縮物(すぐ希釈できる)、または溶液(すぐ使用できる)が挙げられ得る。
【0328】
注射用医薬組成物は、水性等張液または懸濁液であり得、坐剤は、脂肪エマルションまたは懸濁液から調製され得る。
【0329】
医薬組成物は、滅菌されていてもよく、及び/または補助剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/または緩衝剤を含有し得る。加えて、それらは、他の治療上価値のある物質も含有し得る。
【0330】
筋肉内、腹腔内、皮下、及び静脈内投与では、活性成分(複数可)の無菌溶液が通常用いられ、好適には、溶液のpHは調整及び緩衝されていなければならない。静脈内投与では、調製物を等張にするために、溶質(複数可)の全濃度が調節されていなければならない。
【0331】
本開示の非経口製剤は、滅菌されていてもよい。滅菌技術の非限定的な例としては、細菌捕集フィルターを通した濾過、最終滅菌、滅菌剤の組み込み、放射線照射、及び加熱が挙げられる。
【0332】
経口製剤:
本開示は、デクスメデトミジン及び/またはSSRI/SNRI、またはそれらの薬学的に許容される塩、エステル、もしくはエナンチオマーを送達するために使用され得る経口製剤を含む。例示的な経口製剤としては、錠剤、口腔内崩壊錠、口腔内溶解錠、ウエハー、溶液、懸濁液、エマルション、及びカプセルが挙げられる。
【0333】
実施形態では、本開示は、治療量のSSRI/SNRIもしくはデクスメデトミジンまたはその両方、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む、例えば、錠剤の形態の、経口固体医薬組成物に関する。錠剤製剤に一般的に使用される成形助剤が使用され得、この主題に関して広範囲の文献が参照される。特に、参照により本明細書に組み込まれる、Fiedler’s “Lexikon der Hilfsstoffe”,第4版,ECV Aulendorf,1996を参照のこと。これらとしては、限定されるものではないが、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、グリダント、安定化剤、充填剤または希釈剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0334】
本開示の組成物に好適な崩壊剤としては、限定されるものではないが、架橋PVP、クロスポビドン、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、架橋CMC、及びAc-Di-Sol(登録商標)が挙げられる。実施形態では、崩壊剤は、クロスポビドンである。
【0335】
本開示の組成物に好適な結合剤としては、限定されるものではないが、デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、セルロース、例えば、微結晶性セルロース、例えば、Avicel(登録商標)、Filtrak(登録商標)、Heweten(登録商標)、またはPharmacel(登録商標)の登録商標で公知の製品、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えば、重量に対して5~16%のヒドロキシプロピル含有量及び80,000~1,150,000、より具体的には140,000~850,000の分子量を有するヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0336】
本開示の組成物に好適なグリダントとしては、限定されるものではないが、コロイド状シリカ、例えば、Aerosil(登録商標)、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルク、及び第三リン酸カルシウムが挙げられる。
【0337】
本開示の組成物に好適な充填剤または希釈剤としては、限定されるものではないが、粉砂糖、圧縮糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、特に約0.45g/cm3の密度を有する微結晶性セルロース、例えば、Avicel(登録商標)、または粉末セルロース、及びタルクが挙げられる。実施形態では、充填剤はAvicel(登録商標)である。
【0338】
本開示の組成物に好適な滑沢剤としては、限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、またはステアリン酸カルシウム、4,000~8,000の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びタルクが挙げられる。
【0339】
これらの添加剤のうちの1つ以上は、固体経口剤形の特定の望ましい特性を考慮して、定型的実験により、かついかなる過度の負担なしに、当業者によって使用及び選択され得る。用いられる各種類の添加剤、例えば、グリダント、結合剤、崩壊剤、充填材または希釈剤、及び滑沢剤の量は、当該技術分野における通常の範囲内で異なり得る。例えば、グリダントの量は、重量に対して0.1~10%、特に重量に対して0.1~5%、例えば、重量に対して0.1~0.5%の範囲内で異なり得、結合剤の量は、重量に対して約10~65.3%、例えば、10~45%、例えば、重量に対して20~30%の範囲内で異なり得、崩壊剤の量は、重量に対して5~60%、例えば、13~50%、例えば、15~40%、例えば、20~30%、例えば、25%の範囲内で異なり得、充填剤または希釈剤の量は、重量に対して15~65%、例えば、20~50%、例えば、25~40%、例えば、30%の範囲内で異なり得、一方で、滑沢剤の量は、重量に対して0.1~5.0%の範囲内で異なり得る。
【0340】
錠剤は、当該技術分野において周知の方法によりコーティングされ得る。また本発明の組成物は、例えば、ポリグリコール酸/乳酸(PGLA)から作製された、マイクロスフェア内に導入されてもよい。
【0341】
経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液、シロップ剤、エマルション、または懸濁液の形態をとり得るか、またはそれらは、使用前に水または他の好適なビヒクルで再構成させる乾燥製品(例えば、粉末)として提供され得る。経口投与用の調製物は、好適には、活性化合物の徐放または遅延放出を提供するように製剤化され得る。徐放または遅延放出は、組成物中のAPIのうちの1つ以上に適用されてもよく、組成物中のAPIのうちの1つ以上の一部に適用されてもよい。
【0342】
APIは、リポソーム送達系の形態で投与され得る。リポソームは、周知のように、種々の脂質及びリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから形成され得る。
【0343】
経皮製剤:
本開示は、デクスメデトミジン及び/またはSSRI/SNRI、またはそれらの薬学的に許容される塩を送達するために使用され得る経皮製剤を含む。製剤は、血流への全身性吸収のために皮膚を介して送達され得る。
【0344】
好適な経皮形態の例としては、限定されるものではないが、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、及びローションが挙げられる。クリーム及び軟膏は、粘性液体または水中油型もしくは油中水型のいずれかの半固体エマルションであり得る。活性成分を含有する石油または親水性石油中に分散した吸収性粉末を含むペーストも好適であり得る。医薬組成物は、1種以上の好適な薬学的に許容される担体と共にリポソーム、マイクロカプセル、またはセントロソームとして製剤化され得る。
【0345】
医療キット:
実施形態では、本開示は、容器内の本明細書に記載される組成物を、投与を必要とする対象への投与のための使用説明書と共にまたはそれなしで含むキットとして提供される個々の単位剤形を提供する。実施形態では、本開示は、1つ以上の容器内の本明細書に記載される組成物を、投与を必要とする対象への同時投与、逐次投与、または個別投与のための使用説明書と共にまたはそれなしで含むキットとして提供される2つの単位剤形を提供する。実施形態では、キットは、対象の不安による苦痛を処置するために本明細書に記載される組成物を使用するための使用説明書を含む添付文書を含む。
【0346】
実施形態では、キットは、対象の大うつ病性障害を処置するために本明細書に記載される組成物を使用するための使用説明書を含む添付文書を含む。実施形態では、キットは、対象の大うつ病エピソードを処置するために本明細書に記載される組成物を使用するための使用説明書を含む添付文書を含む。実施形態では、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及びSSRI/SNRIは、それぞれ、他方と共に投与するのに好適な形態で提供される。実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIまたはそれらの薬学的に許容される塩は、同じ剤形または単一剤形の一部として提供される。
【0347】
実施形態では、デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIまたはそれらの薬学的に許容される塩は、一方の剤形の投与の前、その後、及び/またはそれと同時に他方の剤形を投与するための2つの別個の剤形として提供される。逐次投与される場合、逐次投与は、時間的に近くてもよく、または時間的に遠くてもよい。
【0348】
これは、重要な状態の処置期間中に2つの組成物のいずれかが単独で(任意により繰り返して)投与される場合よりもより高い有益な効果を同じ処置期間中に患者にもたらすのに十分に時間的に近接して2つの剤形が(任意により繰り返して)投与される状況を含み得る。
【0349】
デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIまたはそれらの薬学的に許容される塩が別個の剤形として提供される場合、各剤形は、併用療法において他方と共に使用するために個別に包装され得る。あるいは、2つの剤形は、併用療法において互いに同時に使用するために「組み合わせ包装」の別個の構成要素として一緒に包装及び提供され得る。
【0350】
実施形態では、キットは、限定されるものではないが、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(例えば、シングルまたはデュアルチャンバーシリンジ)、及び試験管が挙げられる容器を含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成されていてもよい。実施形態では、キットは、(例えば、容器上のまたは容器に付随する)ラベルまたは添付文書を含み得る。ラベルまたは添付文書は、中に含有される化合物が大うつ病性障害を処置するのに有用であり得るか、または大うつ病性障害を処置することを意図し得ることを示し得る。ラベルまたは添付文書は、中に含有される化合物が大うつ病エピソードを処置するのに有用であり得るか、または大うつ病エピソードを処置することを意図し得ることを示し得る。ラベルまたは添付文書は、中に含有される化合物が不安による苦痛を処置もしくは予防するのに有用であり得るか、または不安による苦痛を処置もしくは予防することを意図し得ることを示し得る。
【0351】
キットは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジが含まれる、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。
【0352】
本開示の特定の実施形態
実施形態1.大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0353】
実施形態2.大うつ病性障害(MDD)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病性障害(MDD)を処置する方法であって、約10マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として前記対象に口腔粘膜投与することを含む、前記方法。
【0354】
実施形態3.大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0355】
実施形態4.大うつ病エピソード(MDE)を処置する必要がある激越状態ではない対象の大うつ病エピソード(MDE)を処置する方法であって、約10マイクログラム~約200マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を単独療法として前記対象に口腔粘膜投与することを含む、前記方法。
【0356】
実施形態5.前記大うつ病性障害が不安による苦痛を伴う、実施形態1または2に記載の方法。
【0357】
実施形態6.前記大うつ病エピソードが不安による苦痛を伴う、実施形態3または4に記載の方法。
【0358】
実施形態7.前記対象がデクスメデトミジンの投与時点で激越状態ではない、実施形態1~6のいずれか1項に記載の方法。
【0359】
実施形態8.前記対象が双極性障害を有さない、実施形態1または2に記載の方法。
【0360】
実施形態9.前記対象が双極性障害を有する、実施形態3または4に記載の方法。
【0361】
実施形態10.前記対象が、別の併存症または障害、例えば、強迫性障害、不安障害、社会恐怖症、PTSD、恐慌性障害、または全般性不安障害を有する、実施形態1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0362】
実施形態11.デクスメデトミジンが、約30マイクログラム~約180マイクログラムの量で投与される、実施形態2または4に記載の方法。
【0363】
実施形態12.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、約10マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約40マイクログラム、約60マイクログラム、約80マイクログラム、約90マイクログラム、約100マイクログラム、約120マイクログラム、約180マイクログラム、または約200マイクログラムの量で投与される、実施形態2または4に記載の方法。
【0364】
実施形態13.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、1つ以上の分割用量で1日2回投与される、実施形態2、4、11、または12のいずれか1項に記載の方法。
【0365】
実施形態14.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の1日総量が、初回用量及び2回目用量に分割される、実施形態2、4、11、または12のいずれか1項に記載の方法。
【0366】
実施形態15.前記初回用量が朝または日中に投与され、前記2回目用量が夕方または夜間に投与される、実施形態14に記載の方法。
【0367】
実施形態16.前記初回用量がデクスメデトミジンの前記2回目用量より低い、実施形態14または15に記載の方法。
【0368】
実施形態17.デクスメデトミジンの前記初回用量が約30マイクログラムであり、前記2回目用量が約90マイクログラムである、実施形態14~16のいずれか1項に記載の方法。
【0369】
実施形態18.デクスメデトミジンの前記初回用量が約40マイクログラムであり、前記2回目用量が約80マイクログラムである、実施形態14~16のいずれか1項に記載の方法。
【0370】
実施形態19.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内)、局所(経皮投与が挙げられる)、吸入(例えば、エアロゾルによるもの)、直腸(例えば、坐剤によるもの)、口腔粘膜、鼻腔内、(口腔内、舌下、歯肉)、膣、クモ膜下腔内、または眼内が挙げられる経路により投与される、実施形態1~18のいずれか1項に記載の方法。
【0371】
実施形態20.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が口腔粘膜投与(舌下投与、口腔内投与、または歯肉投与が挙げられる)される、実施形態19に記載の方法。
【0372】
実施形態21.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が錠剤として口腔粘膜投与される、実施形態20に記載の方法。
【0373】
実施形態22.前記錠剤が凍結乾燥されている、実施形態21に記載の方法。
【0374】
実施形態23.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩がウエハーとして口腔粘膜投与される、実施形態20に記載の方法。
【0375】
実施形態24.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、パッチ、ゲル、液滴、またはスプレーとして口腔粘膜投与される、実施形態20に記載の方法。
【0376】
実施形態25.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩がフィルムとして口腔粘膜投与される、実施形態20に記載の方法。
【0377】
実施形態26.デクスメデトミジンが自己投与される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
【0378】
実施形態27.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が長期間投与される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
【0379】
実施形態28.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも7日間、少なくとも15日間、少なくとも30日間、少なくとも60日間、少なくとも90日間、少なくとも180日間、少なくとも365日間、またはより長期間投与される、実施形態27に記載の方法。
【0380】
実施形態29.大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、前記対象が激越状態ではない、前記方法。
【0381】
実施形態30.大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、前記対象が激越状態ではない、前記方法。
【0382】
実施形態31.大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、前記対象が激越状態ではない、前記方法。
【0383】
実施形態32.大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、日中に約30マイクログラム~約90マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩、及び夜間に約90マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を口腔粘膜投与することを含み、前記対象が激越状態ではない、前記方法。
【0384】
実施形態33.大うつ病性障害(MDD)を有する対象における1種以上の従来の抗うつ薬の補助療法としてのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【0385】
実施形態34.大うつ病エピソード(MDE)を有する対象における1種以上の従来の抗うつ薬の補助療法としてのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【0386】
実施形態35.不安による苦痛を有する対象における1種以上の従来の抗うつ薬の補助療法としてのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【0387】
実施形態36.大うつ病性障害(MDD)を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を1種以上の従来の抗うつ薬と組み合わせて前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0388】
実施形態37.大うつ病エピソード(MDE)を有する対象における抗うつ反応を早める方法であって、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を1種以上の従来の抗うつ薬と組み合わせて前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0389】
実施形態38.前記対象が、従来の抗うつ薬治療が無効であった、実施形態36または37に記載の方法。
【0390】
実施形態39.前記対象が、従来の抗うつ薬治療に対する反応が不十分である、実施形態36または37に記載の方法。
【0391】
実施形態40.前記対象が、なんらの従来の抗うつ薬治療も以前に投与されていない、実施形態36または37に記載の方法。
【0392】
実施形態41.前記対象が不安による苦痛を有する、実施形態36または37に記載の方法。
【0393】
実施形態42.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が投与され、直ちに前記対象に対して従来の抗うつ薬治療が約1~4週間、開始される、実施形態33~41に記載の使用または方法。
【0394】
実施形態43.前記従来の抗うつ薬が、限定されるものではないが、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI);選択的セロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI);より初期の三環系抗うつ薬(TCA);モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAO阻害剤)、モノアミンオキシダーゼの可逆的阻害剤(RIMA)、非定型抗うつ薬;三級アミン三環系及び二級アミン三環系抗うつ薬からなる群から選択される、実施形態33~41に記載の使用または方法。
【0395】
実施形態44.大うつ病性障害を処置する必要がある対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、前記方法が、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量の抗うつ薬と組み合わせて前記対象に少なくとも7日間投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の前記抗うつ薬を前記対象に投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0396】
実施形態45.大うつ病エピソードを処置する必要がある対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、前記方法が、(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量の抗うつ薬と組み合わせて前記対象に少なくとも7日間投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の前記抗うつ薬を前記対象に投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0397】
実施形態46.大うつ病性障害を処置する必要がある対象の大うつ病性障害を処置する方法であって、前記方法が、(a)治療量の抗うつ薬の経口投与と組み合わせて、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に少なくとも14日間口腔粘膜投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の前記抗うつ薬を前記対象に経口投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0398】
実施形態47.大うつ病エピソードを処置する必要がある対象の大うつ病エピソードを処置する方法であって、前記方法が、(a)治療量の抗うつ薬の経口投与と組み合わせて、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に少なくとも14日間口腔粘膜投与することを含む導入期、それに続く(b)治療量の前記抗うつ薬を前記対象に経口投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0399】
実施形態48.前記抗うつ薬として、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬、またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤が挙げられる、実施形態44~47に記載の方法。
【0400】
実施形態49.前記対象が、現行の抗うつ薬治療に対する反応が不十分であるか、または現行の抗うつ薬治療が無効であった、実施形態44~48のいずれか1項に記載の方法。
【0401】
実施形態50.前記対象が激越状態ではない、実施形態44~49のいずれか1項に記載の方法。
【0402】
実施形態51.前記対象が激越状態である、実施形態44~49のいずれか1項に記載の方法。
【0403】
実施形態52.前記対象が不安による苦痛も有する、実施形態44~51のいずれか1項に記載の方法。
【0404】
実施形態53.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が1日2回投与される、実施形態44~52のいずれか1項に記載の方法。
【0405】
実施形態54.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の1日総量が、初回用量及び2回目用量で送達される、実施形態44~53のいずれか1項に記載の方法。
【0406】
実施形態55.デクスメデトミジンの初回用量が朝/日中に投与され、2回目用量が夕方/夜間に投与される、実施形態54に記載の方法。
【0407】
実施形態56.前記初回用量がデクスメデトミジンの前記2回目用量より低い、実施形態54または55に記載の方法。
【0408】
実施形態57.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記初回用量が約30マイクログラムであり、デクスメデトミジンの前記2回目用量が約60マイクログラムである、実施形態54~56のいずれか1項に記載の方法。
【0409】
実施形態58.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記初回用量が約30マイクログラムであり、前記2回目用量が約90マイクログラムである、実施形態54~56のいずれか1項に記載の方法。
【0410】
実施形態59.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記初回用量が約40マイクログラムであり、前記2回目用量が約80マイクログラムである、実施形態54~56のいずれか1項に記載の方法。
【0411】
実施形態60.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記初回用量が約60マイクログラムであり、前記2回目用量が約120マイクログラムである、実施形態54~56のいずれか1項に記載の方法。
【0412】
実施形態61.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記初回用量が約60マイクログラムであり、前記2回目用量が約180マイクログラムである、実施形態54~56のいずれか1項に記載の方法。
【0413】
実施形態62.前記導入期が少なくとも約1または2週間の処置期間を含む、実施形態44~47のいずれか1項に記載の方法。
【0414】
実施形態63.前記導入期が少なくとも約3週間の処置期間を含む、実施形態44~47のいずれか1項に記載の方法。
【0415】
実施形態64.前記導入期が少なくとも約4週間の処置期間を含む、実施形態44~47のいずれか1項に記載の方法。
【0416】
実施形態65.大うつ病性障害の少なくとも1つの徴候または症状を低減する、実施形態44、46、48~64のいずれか1項に記載の方法。
【0417】
実施形態66.大うつ病エピソードの少なくとも1つの徴候または症状を低減する、実施形態45及び47~64のいずれか1項に記載の方法。
【0418】
実施形態67.前記方法が、投与後の24時間、1週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、または12ヵ月以内に大うつ病性障害の低減をもたらす、実施形態65に記載の方法。
【0419】
実施形態68.前記方法が、投与後の24時間、1週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、または12ヵ月以内に大うつ病エピソードの低減をもたらす、実施形態66に記載の方法。
【0420】
実施形態69.前記徴候または症状が、抑うつ気分、活動における興味の減退、体重減少または増加、食欲の減少または増加、不眠または過剰睡眠、精神運動性激越または精神運動遅滞、疲労感もしくは気力の喪失、無価値感または過剰もしくは不適切な罪悪感、集中力の減退または決断困難、あるいは自殺念慮または自殺行動である、実施形態65または66に記載の方法。
【0421】
実施形態70.前記対象における改善が、日誌評価、臨床医または介護者による評価、臨床評価尺度、または機能的MRIにより測定される、実施形態44~69のいずれか1項に記載の方法。
【0422】
実施形態71.前記対象における改善が、臨床的うつ病評価尺度を使用して測定され、前記臨床的うつ病評価尺度が、簡易抑うつ症状尺度(QIDS)-16スケール、QIDS-16日常スケール、ハミルトンうつ病評価尺度(HDRSまたはHAM-D)、ベックうつ病特性尺度、モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、臨床全般印象尺度、ツァン自己評価式抑うつ尺度、ラスキンうつ病評価尺度、及び/またはヤング躁病評価尺度である、実施形態44~69のいずれか1項に記載の方法。
【0423】
実施形態72.大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、有効量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を経口有効量のSSRI/SNRIと組み合わせて口腔粘膜投与することを含む、前記方法。
【0424】
実施形態73.大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるHAM-D尺度でのスコアを低減する方法であって、有効量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を経口有効量のSSRI/SNRIと組み合わせて口腔粘膜投与することを含む、前記方法。
【0425】
実施形態74.前記対象が、処置の開始(またはベースライン)時に18以上のHAM-D-17合計スコアを有する、実施形態72または73に記載の方法。
【0426】
実施形態75.対象が、処置の開始(またはベースライン)時にハミルトン不安評価尺度(HAM-A)で14以上の合計スコアを有する、実施形態72または73に記載の方法。
【0427】
実施形態76.処置前に観察されるベースラインスコアと比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、またはそれ以上のHAM-Dスコアの減少をもたらす、実施形態72または73に記載の方法。
【0428】
実施形態77.大うつ病性障害に罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、有効量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を経口有効量のSSRI/SNRIと組み合わせて口腔粘膜投与することを含む、前記方法。
【0429】
実施形態78.大うつ病エピソードに罹患しているヒト対象におけるMADRS尺度でのスコアを低減する方法であって、有効量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を経口有効量のSSRI/SNRIと組み合わせて口腔粘膜投与することを含む、前記方法。
【0430】
実施形態79.処置前に観察される約20以上のベースラインスコアと比較して約5%及び約100%、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、またはそれ以上のMADRSスコアの減少をもたらす、実施形態77または78に記載の方法。
【0431】
実施形態80.原因疾患に起因する睡眠阻害の緩和をもたらす、実施形態72~79のいずれか1項に記載の方法。
【0432】
実施形態81.不安による苦痛の迅速な緩和をもたらす口腔粘膜剤形のデクスメデトミジンまたは薬学的に許容される塩を対象に投与し、次いで、SSRI/SNRIまたは薬学的に許容される塩による処置を効果が出る期間継続することを含む、処置方法。
【0433】
実施形態82.ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、
(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて前記対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期と、それに続く
(ii)治療量のSSRI/SNRIを前記対象に投与することを含む維持期と、を含む、前記方法。
【0434】
実施形態83.前記対象が大うつ病性障害を有する、実施形態82に記載の方法。
【0435】
実施形態84.前記対象が双極性障害を有する、実施形態82に記載の方法。
【0436】
実施形態85.前記対象が激越状態ではない、実施形態82に記載の方法。
【0437】
実施形態86.前記対象が激越状態である、実施形態82に記載の方法。
【0438】
実施形態87.前記導入期が、少なくとも約1~4週間の処置期間を含む、実施形態82に記載の方法。
【0439】
実施形態88.前記対象が、以前にSSRI/SNRIを投与されている、実施形態82に記載の方法。
【0440】
実施形態89.前記対象が、以前にSSRI/SNRIを投与されていない、実施形態82に記載の方法。
【0441】
実施形態90.デクスメデトミジン及びSSRI/SNRIの投与後に、他のいかなる処置も前記対象に実施されない、実施形態82に記載の方法。
【0442】
実施形態91.前記対象が、別の併存症または障害を有する、実施形態82に記載の方法。
【0443】
実施形態92.ヒト対象におけるSSRI/SNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する方法であって、当該方法が、
【0444】
(a)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を治療量のSSRI/SNRIと組み合わせて前記対象に投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期と、それに続く
【0445】
(b)治療量のSSRI/SNRIを前記対象に投与することを含む維持期と、を含む、当該方法。
【0446】
実施形態93.ヒト対象におけるSSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(a)治療量のSSRI/SNRIの経口投与と組み合わせて、治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に口腔粘膜投与することを含む、約1日間~約28日間の導入期、それに続く(b)治療量のSSRI/SNRIを前記対象に経口投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0447】
実施形態94.前記不安による苦痛が、投与の約1週間以内に顕著に低減される、実施形態92または93に記載の方法。
【0448】
実施形態95.前記不安による苦痛が、投与の約2週間以内に顕著に低減される、実施形態92または93に記載の方法。
【0449】
実施形態96.前記維持期において前記SSRI/SNRIが単独療法として投与される、実施形態92または93に記載の方法。
【0450】
実施形態97.前記維持期において前記SSRI/SNRIが、追加のSSRI/SNRIと共に投与される、実施形態92または93に記載の方法。
【0451】
実施形態98.前記維持期が、基礎疾患(例えば、大うつ病性障害)が消退するまで継続される、実施形態92または93に記載の方法。
【0452】
実施形態99.前記維持期が、前記対象が不安による苦痛の再発を経験するまで継続される、実施形態92または93に記載の方法。
【0453】
実施形態100.前記対象が、躁病相、うつ病相、またはその両方にある、実施形態92または93に記載の方法。
【0454】
実施形態101.前記対象が、前記導入期の前にSSRI/SNRIによる前治療を(例えば、少なくとも1週間)受けている、実施形態92または93に記載の方法。
【0455】
実施形態102.前記SSRIが、セルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、ダポキセチン、パロキセチン、フェモキセチン、ボルチオキセチン、アラプロクラート、及びビラゾドン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される、実施形態92または93に記載の方法。
【0456】
実施形態103.前記SSRIが、セルトラリンまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態102に記載の方法。
【0457】
実施形態104.前記SSRIが、エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態102に記載の方法。
【0458】
実施形態105.前記SSRIがシタロプラムである、実施形態102に記載の方法。
【0459】
実施形態106.前記SNRIが、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、デュロキセチン、アトモキセチン、シブトラミン、レボキセチン、トラマドール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される、実施形態92または93に記載の方法。
【0460】
実施形態107.前記SNRIが、デスベンラファキシンもしくはベンラファキシンまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態106に記載の方法。
【0461】
実施形態108.前記SNRIが、デュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デュロキセチン塩酸塩)である、実施形態107に記載の方法。
【0462】
実施形態109.前記SNRIが、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態107に記載の方法。
【0463】
実施形態110.ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)25mg~約200mgのセルトラリンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を前記対象に投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0464】
実施形態111.ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約20mg~約40mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約20mg~約40mgのシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を当該対象に投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0465】
実施形態112.ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約10mg~約20mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約10mg~約20mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を前記対象に投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0466】
実施形態113.シタロプラムもしくはエスシタロプラムまたはそれらの薬学的に許容される塩の前記経口剤形が錠剤である、実施形態111または112に記載の方法。
【0467】
実施形態114.ヒト対象における不安による苦痛を処置または予防する方法であって、(i)約30マイクログラム~約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む口腔粘膜剤形、及び約20mg~約160mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形の約1日間~約28日間の共投与を含む導入期、それに続く(ii)約20mg~約120mgのデュロキセチンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形を前記対象に投与することを含む維持期を含む、前記方法。
【0468】
実施形態115.デュロキセチンの前記経口剤形が、錠剤またはカプセル(例えば、遅延放出カプセル)である、実施形態114に記載の方法。
【0469】
実施形態116.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記口腔粘膜剤形が、舌下または口腔内または歯肉フィルムである、実施形態110~115に記載の方法。
【0470】
実施形態117.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及び前記SSRI/SNRIが、別個の単位剤形で投与される、実施形態33~116のいずれか1項に記載の方法。
【0471】
実施形態118.両方の単位剤形が、口腔粘膜(例えば、舌下または口腔内または歯肉)、経口、局所、経皮、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下)経路などからなる群から選択される同じまたは異なる経路により別々に前記対象に投与される、実施形態117に記載の方法。
【0472】
実施形態119.両方の単位剤形が前記口腔粘膜経路により投与される、実施形態118に記載の方法。
【0473】
実施形態120.前記SSRI/SNRIが、錠剤、口腔内崩壊錠(ODT)、発泡錠剤、カプセル、ペレット、丸剤、ロゼジンまたはトローチ、フィルム、粉末、分散性顆粒、カシェ剤、水溶液、シロップ剤、エマルション、懸濁液、溶液、軟質ゲル、分散体などを含む群から選択される剤形で投与される、実施形態117に記載の方法。
【0474】
実施形態121.前記SSRI/SNRIが経口投与される、実施形態120に記載の方法。
【0475】
実施形態122.前記SSRI/SNRIが経口錠剤として投与される、実施形態120または121に記載の方法。
【0476】
実施形態123.前記デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップから選択される剤形で、好ましくは、フィルムとして口腔粘膜投与される、実施形態117に記載の方法。
【0477】
実施形態124.前記剤形が約28日間共投与される、実施形態117~123のいずれか1項に記載の方法。
【0478】
実施形態125.前記剤形が約21日間共投与される、実施形態117~123のいずれか1項に記載の方法。
【0479】
実施形態127.前記剤形が約14日間共投与される、実施形態117~123のいずれか1項に記載の方法。
【0480】
実施形態128.前記剤形が約7日間共投与される、実施形態117~123のいずれか1項に記載の方法。
【0481】
実施形態129.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩)及びSSRI/SNRIが、単一の単位剤形として一緒に投与される、実施形態33~116に記載の方法。
【0482】
実施形態130.前記単位剤形が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップの形態で前記口腔粘膜経路により前記対象に投与される、実施形態129に記載の方法。
【0483】
実施形態131.前記剤形がフィルムであり、前記フィルムが薄いフィルムである、実施形態130に記載の方法。
【0484】
実施形態132.前記剤形が約28日間投与される、実施形態129~131のいずれか1項に記載の方法。
【0485】
実施形態133.前記剤形が約21日間投与される、実施形態129~131のいずれか1項に記載の方法。
【0486】
実施形態134.前記剤形が約14日間投与される、実施形態129~131のいずれか1項に記載の方法。
【0487】
実施形態135.前記剤形が約7日間投与される、実施形態129~131のいずれか1項に記載の方法。
【0488】
実施形態136.前記剤形が1日1回または1日に複数回投与される、実施形態33~135のいずれか1項に記載の方法。
【0489】
実施形態137.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、約0.5マイクログラム~約300マイクログラム(例えば、10マイクログラム~240マイクログラム)の範囲の投与量で投与される、実施形態1~136のいずれか1項に記載の方法。
【0490】
実施形態138.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、約180マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する単回用量として投与される、実施形態137に記載の方法。
【0491】
実施形態139.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、約120マイクログラムのデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する単回用量として投与される、実施形態137に記載の方法。
【0492】
実施形態140.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩がデクスメデトミジン塩酸塩である、実施形態1~139のいずれか1項に記載の方法。
【0493】
実施形態141.前記SSRIが約5mg~約250mgの範囲の投与量で投与される、実施形態1~136のいずれか1項に記載の方法。
【0494】
実施形態142.前記SNRIが約10mg~約500mgの範囲の投与量で投与される、実施形態1~136のいずれか1項に記載の方法。
【0495】
実施形態143.前記維持期が、基礎疾患(例えば、大うつ病性障害)が消退するまで、または前記対象が不安による苦痛の再発を経験するまで継続される、実施形態44~114のいずれか1項に記載の方法。
【0496】
実施形態144.前記対象が躁病相、うつ病相、またはその両方にある、実施形態44~143のいずれか1項に記載の方法。
【0497】
実施形態145.前記対象が、前記導入期の前にSSRI/SNRIによる前治療を少なくとも1週間受けている、実施形態44~144のいずれか1項に記載の方法。
【0498】
実施形態146.前記対象が双極性障害に罹患していない、実施形態44~145のいずれか1項に記載の方法。
【0499】
実施形態147.大うつ病性障害を処置する必要があるヒト対象の大うつ病性障害の処置のための医薬組成物であって、
(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療量の抗うつ薬と、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含み、
前記組成物が、処置サイクルの導入期中に約1日~約28日間投与される、前記医薬組成物。
【0500】
実施形態148.大うつ病エピソードを処置する必要があるヒト対象の大うつ病エピソードの処置のための医薬組成物であって、
(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療量の抗うつ薬と、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含み、
前記組成物が、処置サイクルの導入期中に約1日~約28日間投与される、前記医薬組成物。
【0501】
実施形態149.不安による苦痛を処置または予防する必要があるヒト対象の不安による苦痛の処置または予防のための医薬組成物であって、
(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療量のSSRI/SNRIと、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含み、
前記組成物が、処置サイクルの導入期中に約1日~約28日間投与される、前記医薬組成物。
【0502】
実施形態150.SSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛を処置または予防する必要があるヒト対象におけるSSRIまたはSNRIによる処置を開始することにより引き起こされる不安による苦痛の処置または予防のための医薬組成物であって、
(i)治療量のデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療量のSSRI/SNRIと、
(iii)1種以上の薬学的に許容される担体/賦形剤と、を含み、
前記組成物が、処置サイクルの導入期中に約1日~約28日間投与される、前記医薬組成物。
【0503】
実施形態151.前記組成物の投与後に、治療量のSSRI/SNRIの投与を含む維持期が、基礎疾患(例えば、大うつ病性障害)が消退するまで、または前記対象が不安による苦痛の再発を経験するまで続く、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0504】
実施形態152.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩がデクスメデトミジン塩酸塩である、実施形態150に記載の医薬組成物。
【0505】
実施形態153.前記SSRIが、セルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、ダポキセチン、パロキセチン、フェモキセチン、ボルチオキセチン、アラプロクラート、及びビラゾドン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択され、好ましくは、セルトラリンまたはエスシタロプラムである、実施形態149または150のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0506】
実施形態154.前記SNRIが、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、デュロキセチン、アトモキセチン、シブトラミン、レボキセチン、トラマドール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくはエナンチオマーからなる群から選択される、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0507】
実施形態155.前記抗うつ薬が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI);選択的セロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI);より初期の三環系抗うつ薬(TCA);モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAO阻害剤)、モノアミンオキシダーゼの可逆的阻害剤(RIMA)、非定型抗うつ薬;三級アミン三環系及び二級アミン三環系抗うつ薬からなる群から選択される、実施形態147または148に記載の医薬組成物。
【0508】
実施形態156.前記対象が激越状態である、実施形態147~155に記載の医薬組成物。
【0509】
実施形態157.前記対象が激越状態ではない、実施形態147~155に記載の医薬組成物。
【0510】
実施形態158.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及びSSRI/SNRIが、別個の単位剤形として存在する、実施形態149~157に記載の医薬組成物。
【0511】
実施形態159.両方の単位剤形が、口腔粘膜(舌下または口腔内または歯肉)、経口、局所、経皮、鼻腔内、または非経口(静脈内、筋肉内、皮下)経路から選択される同じまたは異なる経路により別々に前記対象に投与される、実施形態158に記載の医薬組成物。
【0512】
実施形態160.前記単位剤形が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップの形態で前記対象に口腔粘膜投与される、実施形態159に記載の医薬組成物。
【0513】
実施形態161.前記剤形がフィルムであり、前記フィルムが薄いフィルムである、実施形態160に記載の医薬組成物。
【0514】
実施形態162.前記SSRI/SNRIが、錠剤、口腔内崩壊錠(ODT)、発泡錠剤、カプセル、ペレット、丸剤、ロゼジン、トローチ、フィルム、粉末、分散性顆粒、カシェ剤、水溶液、シロップ剤、エマルション、懸濁液、溶液、軟質ゲル、分散体などを含む群から選択される剤形で投与される、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0515】
実施形態163.前記SSRI/SNRIが錠剤として経口投与される、実施形態162に記載の医薬組成物。
【0516】
実施形態164.前記SSRI/SNRIがカプセルとして経口投与される、実施形態162に記載の医薬組成物。
【0517】
実施形態165.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩が、フィルム、ウエハー、パッチ、ロゼジン、ゲル、スプレー、錠剤、及び液滴からなる群から選択される剤形で口腔粘膜投与される、実施形態158に記載の医薬組成物。
【0518】
実施形態166.デクスメデトミジンまたは薬学的に許容される塩がフィルムの形態で口腔粘膜投与される、実施形態165に記載の医薬組成物。
【0519】
実施形態167.前記剤形が前記対象に約28日間共投与される、実施形態160~166のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0520】
実施形態168.前記剤形が前記対象に約21日間共投与される、実施形態160~166のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0521】
実施形態169.前記剤形が前記対象に約14日間共投与される、実施形態160~166のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0522】
実施形態170.前記剤形が前記対象に約7日間共投与される、実施形態160~166のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0523】
実施形態171.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩及びSSRI/SNRIが、単一の単位剤形として一緒に存在する、実施形態149~157に記載の医薬組成物。
【0524】
実施形態172.前記単位剤形が、錠剤、フィルム、スプレー、ゲル、またはドロップの形態で前記口腔粘膜経路により前記対象に投与される、実施形態171に記載の医薬組成物。
【0525】
実施形態173.前記単位剤形はフィルムであり、前記フィルムが薄いフィルムである、実施形態172に記載の医薬組成物。
【0526】
実施形態174.前記剤形が前記対象に約28日間投与される、実施形態170~173のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0527】
実施形態175.前記剤形が前記対象に約21日間投与される、実施形態170~173のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0528】
実施形態176.前記剤形が前記対象に約14日間投与される、実施形態170~173のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0529】
実施形態177.前記剤形が前記対象に約7日間投与される、実施形態170~173のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0530】
実施形態178.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記治療量が、約0.5マイクログラム~約240マイクログラムの範囲である、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0531】
実施形態179.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記治療量が約120マイクログラムである、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0532】
実施形態180.デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容される塩の前記治療量が約180マイクログラムである、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0533】
実施形態181.前記SSRIの前記治療量が約5mg~約250mgの範囲である、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0534】
実施形態182.前記SNRIの前記治療量が約10mg~約500mgの範囲である、実施形態149または150に記載の医薬組成物。
【0535】
実施形態183.前記剤形(複数可)が1日1回または1日に複数回投与される、実施形態147~182のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0536】
実施形態184.前記対象のHAM-Aスコアが、処置の開始時に観察されるスコアと比較して改善または低減される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0537】
実施形態185.前記対象のHAM-Dスコアが、処置の開始時に観察されるスコアと比較して改善または低減される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0538】
実施形態186.前記対象のMADRSスコアが改善される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0539】
実施形態187.前記対象のACESスコアが改善または低減される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0540】
実施形態188.スコアの低減が、処置前に観察されるベースラインスコアと比較して約5%及び約100%(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、または以上)である、実施形態184~187のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0541】
実施形態189.前記対象のCGI-Iスコアが改善される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0542】
実施形態190.前記不安による苦痛が1週間以内(1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日以内が含まれる)に顕著に低減される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0543】
実施形態191.うつ病または前記不安による苦痛が1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、または12ヵ月以内に顕著に低減される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
【0544】
実施形態192.容器内の本明細書に記載される組成物を、投与を必要とする対象への投与のための使用説明書と共にまたはそれなしで含むキットとして提供される個々の単位剤形。
【0545】
実施形態193.1つ以上の容器内の本明細書に記載される組成物を、投与を必要とする対象への同時投与、逐次投与、または個別投与のための使用説明書と共にまたはそれなしで含むキットとして提供される2つの単位剤形。
【0546】
実施形態194.対象の大うつ病性障害を処置するために本明細書に記載される組成物を使用するための使用説明書を含む添付文書を含む、実施形態192または193に記載のキット。
【0547】
実施形態195.対象の大うつ病エピソードを処置するために本明細書に記載される組成物を使用するための使用説明書を含む添付文書を含む、実施形態192または193に記載のキット。
【0548】
実施形態196.対象の不安による苦痛を処置または予防するために本明細書に記載される組成物を使用するための使用説明書を含む添付文書を含む、実施形態192または193に記載のキット。
【実施例】
【0549】
実施例1.高架式十字迷路試験を使用したラットにおけるデクスメデトミジン塩酸塩、フルオキセチン塩酸塩、及びそれらの組み合わせの急性腹腔内(i.p.)投与後の効果の評価。
【0550】
試験物質、比較物質、参照物質、及び対照物質
【0551】
試験物質I
【0552】
名称及びビヒクル:リン酸緩衝生理的食塩水中のデクスメデトミジン塩酸塩。
【0553】
試験物質II
【0554】
名称及びビヒクル:生理的食塩水中0.2%のHPMC中に分散されたフルオキセチン塩酸塩(Carbosynth、製品番号:BF163653)。
【0555】
参照物質
【0556】
名称及びビヒクル:生理的食塩水中0.2%のHPMC中に分散されたクロバザム(Carbosynth、製品番号:C-2991)
【0557】
対照物質:試験物質のビヒクル
【0558】
名称:リン酸緩衝食塩水(PBS)。
【0559】
剤形の調製
【0560】
クロバザム及びフルオキセチン塩酸塩は、乳鉢及び乳棒を使用して生理的食塩水中0.2%のHPMC中に分散させた。
【0561】
デクスメデトミジンは、磁気撹拌下でPBS中に溶解した。用量は、重量対容量(保存液)、次いで、容量対容量(系列希釈物)で実験日毎に新たに調製した。
【0562】
試験系
【0563】
使用した種:雄性Wistar(Han)ラット、実験開始時で180~280g(実験毎の最大範囲=500g)。
【0564】
数:52匹の雄(2匹の予備を含む)。必要に応じて追加の予備動物を注文した。
【0565】
種の選択理由:使用された動物の特徴(日齢、系統、及び種)は、科学文献に記載されるものと同等であった。
【0566】
加えて、これらの標準的な試験法及び動物における陽性及び陰性対照群の経時的な生物学的反応を追跡するための歴史的データがPorsoltにより維持されていた。
【0567】
ブリーダー:Janvier Labs、53940 Le Genest-Saint-Isle、France。
【0568】
受領及び順化期間:動物は、実験の少なくとも7日前に実験室に配達され、この期間にそれらを実験室条件に順応させた。
【0569】
識別:退色しないマーカーを尾に使用。
【0570】
飼育及び環境条件:グループ分けしたラットを木製の敷料(SAFE、89290 Augy、France)を敷いたMacrolonケージ(ケージ当たり5匹以下の動物)で飼育した。環境エンリッチメント(例えば、トンネル、かじり材、及び巣作り材)を導入した。実験動物舎は、7:00~19:00の人工照明(12時間)、22±2℃の管理された周囲温度、及び30~70%の相対湿度下に維持した。
【0571】
あらゆる臨床徴候及び死亡に関連する情報を研究材料と共に記録保存した。
【0572】
食餌及び水:全ての動物が食餌(コードA04、SAFE、89290 Augy、France)及び水を自由に摂取できた。
【0573】
汚染物質分析:飼料及び木製の敷料のバッチは、組成及び汚染物質レベルについて供給元により分析された。水の細菌及び化学的分析は、外部の研究所により定期的に実行された。これらの分析には、考え得る汚染物質(殺虫剤、重金属、及び硝酸塩副生成物)の検出が含まれた。
【0574】
試験の結果に干渉し得るか、または影響を与え得る汚染物質は、飼料、飲料水、または木製の敷料に発見されなかったと考えられた。
【0575】
実験計画
【0576】
処置
【0577】
投与の経路及び期間
【0578】
試験、参照、比較、またはビヒクル製剤を単回腹腔内(i.p.)投与として投与した。
【0579】
投与スケジュール
【0580】
デクスメデトミジン、フルオキセチン、及びクロバザムを1-1投与(1-1 dose)で個別に評価した。表1に記載されるように、同じ用量のデクスメデトミジンを同じ用量のフルオキセチンと組み合わせて評価した。
【表1】
【0581】
実験手順
【0582】
ラットでの高架式十字迷路試験
【0583】
抗不安活性を検出する方法は、Handley及びMithaniにより記載された方法に従った(Naunyn.Schmied.Arch.Pharmacol.,327,1-5,1984)。
【0584】
標準的な人工照明(約200ルクス)下で、迷路のクローズドアーム(暗く、安全である)とオープンアーム(明るく照らされており、不安を惹起する)との間にコントラストが生じた。この条件において、対照ラットはオープンアームを回避するが、抗不安薬はオープンアームでの探索行動を増加させる。
【0585】
実験前日、ラットをそれらの体重に基づいて無作為化した。
【0586】
迷路は、プラス記号(+)の形に配置された同じ長さ及び幅(50×10cm)の4つのアームから構成された。向かい合わせ2つのアームは、高さ40cmの壁で囲まれていた(クローズドアーム)。他の2つのアームには壁がなかった(オープンアーム)。迷路は床上約65cmに引き上げられた。ラットを十字迷路の中央に配置し、5分間探索させた。
【0587】
試験をビデオに録画し、ビデオ追跡システム(EthoVision、Noldus)を使用してオープンアーム及びクローズドアームへの侵入回数ならびにオープンアームで費やした時間を自動的に測定した。オープンアーム侵入率(%)(オープンアーム侵入回数/総アーム侵入回数×100)を算出した。総移動距離も記録した。
【0588】
群当たり10匹のラットを試験した。1日毎に各群の半分の動物を用いて2日にわたって盲検試験を実行した。
【0589】
デクスメデトミジンを10μg/kgの用量で評価し、試験の30分前に腹腔内投与し、ビヒクル対照群と比較した。
【0590】
試験の30分前に投与されたフルオキセチン(32mg/kgの腹腔内投与)を比較物質として使用した。
【0591】
試験の30分前に投与されたクロバザム(16mg/kgの腹腔内投与)を参照物質として使用した。
【0592】
全ての動物が試験の30分前に2回の連続投与を受けた。薬物が予定されていない場合、下記の表2に記載されるように、動物はビヒクルの投与を受けた。
【表2】
【0593】
試験物質でのデータ(測定された各パラメータのデータ)を、一元配置分散分析に続いて事後ダネット検定を使用して処置された群をビヒクル対照と比較することにより解析した。
【0594】
比較参照物質(クロバザム)によるデータを、対応のないスチューデントt検定を使用して各処置群をビヒクル対照と比較することにより個別に解析した。
【0595】
結果及び考察:この試験の結果を下記の通り表3~6に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0596】
考察:10μg/kgのデクスメデトミジンの腹腔内投与(群2)では、オープンアームへの侵入回数(
図1a及び表3a)、侵入率(%)(
図1b及び表3b)、または高架式十字迷路のオープンアームで費やした時間(
図2、表4)が増加したが、結果はビヒクル対照(群1)と比較して有意ではなかった。
【0597】
32mg/kgのフルオキセチンの腹腔内投与群(群3)では、ビヒクル対照(群1)と比較して侵入回数(
図1a及び表3a)、侵入率(%)(
図1b及び表3b)、及び高架式十字迷路のオープンアームで費やした時間(
図2;表4)が減少したが、結果は有意ではなかった。加えて、この群では、迷路の4つのアームでの総侵入回数及び総移動距離がビヒクル対照(群1)と比較して有意に減少した(-57%、p<0.05、
図3;及び-65%、p<0.01、
図4)。
【0598】
フルオキセチン(32mg/kg)が10μg/kgのデクスメデトミジンと共投与される場合(群4)、相乗効果により、高架式十字迷路のオープンアームへの侵入回数(
図1a)、侵入率(%)(
図1b)、及びオープンアームで費やした時間(
図2、表4)が32mg/kgのフルオキセチン単独(群3)と比較して増加する(それぞれ+150%、+431%、及び+102% NS)。フルオキセチン単独と比較して、総侵入回数に対する有意な効果はなかった(+28%、NS、
図3、表5)。しかしながら、ビヒクル対照と比較して総移動距離が有意に減少した(-55%、p<0.05、
図4、表6)が、フルオキセチン単独と比較して有意ではなかった(+29%、NS、
図4、表6)。
【0599】
これらの結果は、ラットでの高架式十字迷路試験におけるデクスメデトミジンの10μg/kgでの腹腔内投与の抗不安様活性の欠如を示唆した。一方で、フルオキセチンの32mg/kgでの腹腔内投与は、不安惹起様作用を示す傾向があった。10μg/kgのデクスメデトミジンは、フルオキセチン(32mg/kgの腹腔内投与)の不安惹起様作用を逆転させる傾向があった。
【0600】
実施例2.高架式十字迷路試験を使用した、ヨヒンビンに曝露されたラットにおけるデクスメデトミジン塩酸塩、フルボキサミンマレイン酸塩、及びそれらの組み合わせの急性腹腔内(i.p.)投与後の効果の評価。
【0601】
実験群:
【0602】
108匹の雄性Wistarラットを使用した。それらを表7に示すような8つの異なる実験群にランダムに割り当てた(群当たり12匹の動物)。
【表8】
【0603】
試験化合物による処置:
【0604】
- 表で概説される通りである。
【0605】
- ビヒクルは生理食塩水である。
【0606】
高架式十字迷路:
【0607】
化合物投与後、ラットをクローズドアームと向かい合わせてプラットフォームに配置した。5分間の間の侵入回数及び各アームで費やした時間を記録した(成果物)。4本の足がアームに入った場合に動物がアームに侵入したとみなされた。
【0608】
シリーズ及びデータ:
【0609】
1日当たりの処理されたラット数は、このモデルで約20匹であった。従って、この実験を幾つかのシリーズに分割した。
【0610】
統計解析:
【0611】
分散分析(ANOVA)を結果データに対して実行した。FisherのPLSD法を対比較に使用し、0.05以下のp値を有意とみなした。
【0612】
結果及び考察:この試験の結果を以下の表8及び表9に示す。
【0613】
ヨヒンビン(2.5mg/kg;腹腔内)を投与されたビヒクル群(群2)は、ビヒクル(生理食塩水)投与群(群1)と比較してオープンアームへの侵入回数(表8、
図5、-63%、p<0.0001)及びオープンアームで費やした時間(表9、
図6、-81%、p<0.0001)の有意な減少を示した。このことは、EPM法で評価されるようなヨヒンビンにより誘発される不安様行動の発生を示唆した。
【0614】
1mg/kgのジアゼパムを腹腔内投与された群(群3)では、ヨヒンビンを投与されたビヒクル群(群2)と比較したオープンアーム侵入回数(表8、
図5、+262%、p<0.0001)及びオープンアームで費やした時間(表9、
図6、+620%、p<0.0001)の有意な増加により示されるように、ヨヒンビンにより誘発された不安が回復した。
【0615】
デクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)を投与された群(群4)は、オープンアーム侵入回数(+48%、NS)及び高架式十字迷路のオープンアームで費やした時間(+146%、NS)の増加を示したが、この結果はヨヒンビンを投与されたビヒクル群(群2)と比較して有意ではないことが確認された。
【0616】
更に、ヨヒンビンを投与されたビヒクル群(群2)と比較された場合のオープンアームへの侵入回数の点での有意でない改善(
図5)が、それぞれ3mg/kgのフルボキサミン及び10mg/kgのフルボキサミンを腹腔内投与された群5及び6で観察された。更に、フルボキサミン(3mg/kg;腹腔内)を投与された群(群5)では、ヨヒンビンを投与されたビヒクル群と比較してオープンアームで費やした時間が有意に増加しなかった(
図6)(+105%、NS)。しかしながら、フルボキサミン(10mg/kg;腹腔内)を投与された群(群6)では、群2のヨヒンビンを投与されたビヒクル群と比較してオープンアームで費やした時間が有意に増加した(
図6)(+232%、p<0.01)。
【0617】
デクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)のフルボキサミン(3mg/kg;腹腔内)との共投与、及びフルボキサミン(10mg/kg;腹腔内)との共投与(群7及び8)は、ヨヒンビンを投与されたビヒクル群(群2)と比較して、それぞれ、オープンアームへの侵入回数(
図5、それぞれ+152%、p<0.0001及び+133%、p<0.0001)及びオープンアームで費やした時間(
図6、それぞれ+406%、p<0.0001及び+382%、p<0.0001)を有意に増加させた。更に、デクスメデトミジン(10μg/kg)のフルボキサミン(3mg/kg)との組み合わせを投与された群7では、個別の投与、すなわち、デクスメデトミジン;10μg/kg(群4)(
図5、+71%、p<0.01)及びフルボキサミン;3mg/kg(群5)(+66%、p<0.01)と比較した場合に、侵入回数が有意に増加した。
【0618】
群7(デクスメデトミジン 10μg/kg+フルボキサミン 3mg/kg)では、個別に投与されたデクスメデトミジン;10μg/kg(群4)(
図6、+105%、p<0.001)及びフルボキサミン;3mg/kg(群5)(+146%、p<0.0001)と比較した場合に、迷路のオープンアームで費やした時間も有意に増加した。デクスメデトミジン;10μg/kgのフルボキサミン;10mg/kgとの共投与(群8)は、個別に投与されたデクスメデトミジン;10μg/kg(群4)と比較した場合に、侵入回数を有意に増加させた(
図5、+58%、p<0.05)が、フルボキサミン単独(10mg/kg)(群6)と比較した場合、結果は有意ではなかった(に対して+32%、NS)。オープンアームで費やした時間において同様の傾向が観察され、併用群8(デクスメデトミジン(10μg/kg)とフルボキサミン(10mg/kg))は、個別のデクスメデトミジンのみ(10μg/kg)(群4)と比較して有意な結果を示した(
図6、+96%、p<0.01)が、群6のフルボキサミン 10mg/kg単独(+45%、NS)に対しては有意ではなかった。
【0619】
上記の結果は、ヨヒンビンを投与されたラットにおいて、単独でのデクスメデトミジン(10μg/kgの腹腔内投与)及び単独でのフルボキサミン(3mg/kgの腹腔内投与)は、抗不安様作用を示すが、観察された作用は統計的に有意ではなかったことを示唆した(群2に対する群4及び群5を参照のこと)。一方で、10mg/kgでのフルボキサミンの腹腔内投与は、オープンアームで費やした時間に関して有意な抗不安様作用を示した。10μg/kgのデクスメデトミジン及び3mg/kgのフルボキサミンの組み合わせ(群7)は、高架式十字迷路試験におけるヨヒンビンを投与されたラットにおいて、ヨヒンビンを投与された群だけでなく、個々の薬物を投与した群と比較しても有意な抗不安様作用を示した。
【0620】
デクスメデトミジン(10μg/kg)及びフルボキサミン(3mg/kg)の個別の抗不安様作用(群4及び群5)が、侵入回数及びオープンアームで費やした時間に関して有意でないことを考慮すると、この組み合わせにより示される非常に高度な統計的有意差(表10)は、この用量の組み合わせ(群7)でのこれらの2つの薬物による相乗効果を示す。この組み合わせの抗不安様作用(群7)は、デクスメデトミジン(10μg/kg;群4)及びフルボキサミン(3mg/kg、群5)の個々の作用を加算した合計より非常に高かった(侵入回数について+152%、及びオープンアームで費やした時間について+406%、表10)。
【表9】
【表10】
【0621】
表10は、ヨヒンビンにより不安が誘発されたラットにおけるデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)、フルボキサミン(3及び10mg/kg;腹腔内)、及びデクスメデトミジン(10μg/kg;腹腔内)とフルボキサミン(3及び10mg/kg;腹腔内)との組み合わせによる処置の、高架式十字迷路における侵入回数及びオープンアームで費やした時間に対する、ヨヒンビンを投与された群と比較した効果の変化百分率を示す。
【表11】
【0622】
結論:高架式十字迷路で測定された両方のパラメータに関して、デクスメデトミジン(10μg/kg)及びフルボキサミン(3mg/kg)の組み合わせの抗不安様作用は、それらの個々の作用を加算した合計よりも高いことが確認された。
【0623】
実施例3:健常ボランティアにおける抗うつ薬との併用投与でのデクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルムの最大耐量設定試験の第1相試験。
【0624】
第1の目的:
【0625】
第1の目的は、最初に健常ボランティアにおけるプラセボのみと比較したデクスメデトミジン舌下フィルムの最大耐量(MTD)を確認すること、次に、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)の両方の急性薬理作用が組み込まれた有効用量のセロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI;デュロキセチン)と共に投与される場合に、デクスメデトミジン舌下フィルムのこのMTDの忍容性が十分であるかどうかを確認することである。
【0626】
第2の目的:
【0627】
重要な第2の目的は、試験される各用量の安全性及び忍容性を評価することである。関心対象の特定の安全性事項は以下の通りである:鎮静、安静時の血行動態的バイタルサイン値または安静時及び起立負荷時に得られた血行動態的バイタルサイン値のいずれかにおける臨床的に問題となる可能性のある変化のあらゆる発生。
【0628】
他の第2の目的:
【0629】
単回投与及び反復投与後の健常ボランティアにおけるデクスメデトミジン舌下フィルム及びその代謝産物の薬物動態(PK)を特徴付けること。
【0630】
主要エンドポイント
・バイタルサイン、試験治療(1日目、4日目、及び7日目)の朝の投与後に過剰な鎮静作用について適用される精神運動激越及び鎮静の評価尺度(ACES)、血圧及び心拍数における(安静時及び起立負荷時の両方の)血行動態的変化、ならびに鎮静の有害事象(AE)、血行動態の変化、及び他の事象の報告により評価して、デクスメデトミジン舌下フィルムの安全性プロファイルを確認する。
・AE報告及び経口フィルムの局所(経口/舌下)忍容性の観点から全体的な忍容性を記述する。
【0631】
副次エンドポイント
【0632】
薬物動態:血漿濃度の経時的データを標準的なノンコンパートメント法により解析して、最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxが観察される時間(Tmax)、曲線下面積(AUC;部分及び無限大)、半減期、見かけのクリアランス、及び見かけの分布容積が含まれる薬物動態(PK)パラメータを推定する。
【0633】
試験デザイン:
【0634】
全体的な試験デザイン及び計画
【0635】
この試験は、合計6つのコホート群で健常ボランティアにおけるデクスメデトミジン舌下フィルムのMTD、その後にMTDがSNRIの抗うつ薬と同時に投与される場合を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照MAD試験である。
【0636】
合計102人の対象(すなわち、健常ボランティア)が、米国の1つの試験施設で登録される計画である。これらの対象は6つのコホートのうちの1つに登録され、最初の5つのコホートはそれぞれ18人の対象から構成され、最後のコホートは12人の対象から構成される。
【0637】
この入院患者試験では、対象を7日間のデクスメデトミジン舌下フィルムまたは釣り合う用量のプラセボの投与に2:1で無作為化する。投与されるデクスメデトミジン舌下フィルムの用量は、所与の対象が割り当てられる以下の通りのコホートに依存する。
・コホート1:毎朝(qAM)投与される30μgまたはプラセボ(12例の実薬;6例のプラセボ)。
・コホート2:qAMで投与される60μgまたはプラセボ(12例の実薬;6例のプラセボ)。
・コホート3:qAMで投与される80μg(12例の実薬;6例のプラセボ)。
・コホート4:qAMで投与される30μg及び毎夕(qPM)投与される60μg、またはプラセボ(12例の実薬;6例のプラセボ)。
・コホート5:qAMで投与される40μg及びqPMで投与される80μg、またはプラセボ(12例の実薬;6例のプラセボ)。
【0638】
コホート6:30ミリグラム(mg)のデュロキセチンを1日2回(BID)に加えてデュロキセチンなしで確認されたMTDのデクスメデトミジン舌下フィルム、またはプラセボ(8例の実薬;4例のプラセボ)。デクスメデトミジン舌下フィルムのこの用量は、30μg qAM;60μg qAM;80μg qAM;30μg qAM及び60μg qPM;または40μg qAM及び80μg qPMであり得る。MTDは、全てのデクスメデトミジン舌下フィルムまたはプラセボコホート候補が処置され、安全性データが検討された後に決定する。このコホートの対象は7日間処置され、同等の評価が上記の最初の3つのコホートと同様に実施される。
【0639】
各コホートの完了後、後続のコホートの開始前に何らかの安全性シグナルがあるか否かを確認するために、安全性データの検討が治験依頼者及び治験担当医師により実施される。何らかのかかるシグナルが検討の間に認められる場合、用量漸増を中止し、直前のコホートで投与された用量をMTDとみなし、試験を直ちにコホート6に移行する。何らかのかかるシグナルがコホート1の検討の間に認められる場合、試験は終了となる。
【0640】
適格性の確認後、対象は、投与を受ける初日の前の午後に入院施設に入院する。対象は、試験治療の最終投与後に更に3日間、入院施設で観察及び評価され、この観察期間の主要な目的は、起こり得る退薬による影響/リバウンド効果の評価である。早期に試験を中止する対象には、治験薬投与後の3日間の観察及び評価のために、その対象に入院施設に滞在するように依頼する。
【0641】
適格性の確認後、対象をデクスメデトミジン舌下フィルムまたは釣り合う用量のプラセボの投与に2:1で無作為化し、コホート1(30μg)から開始して、全ての参加者が直前のコホートでデクスメデトミジン舌下フィルムによる7日間の処置を終了し、その7日間の全ての安全性データ(試験治療の最終投与後の3日間の評価からのデータを含む)が十分に検討された場合に、安全性の審査後に後続の投与コホートに移行する。コホート毎の処置期間は7日間である。この試験の間、対象を入院患者臨床研究環境/入院施設に入院させる(対象が試験治療の初回投与を受ける前日の午後に入院する)。対象は、試験治療(及びコホート6の対象ではデュロキセチン)の最終投与を受けた後の3日目に、最後の安全性評価後に施設を退院する。
【0642】
上記の通りの試験治療の投与時に、対象には、治験薬を舌下服用する方法を指示し、溶解するまで治験薬を舌下腔に保持するように指示する。対象はデクスメデトミジン舌下フィルムを自己投与した。対象が自己投与できない場合、事象を記録し、対象の試験参加を終了する。
【0643】
フィルムが配置された領域周辺の局所刺激についても参加者を評価する。安全性評価は、想定される各コホートのスケジュール(表11及び表12を参照のこと)に従って投与前及び後に定期的に実施する。プロトコールに従って全ての評価が完了するように最大限の努力を払う。
【0644】
表11のスケジュールに記載されるように、処置期間全体を通して様々な時点で安全性及び忍容性を測定する。
【0645】
デクスメデトミジン舌下フィルム及びその代謝産物の血漿濃度の高い頻度でのサンプリングを各コホートで実施する。血液試料は、投与前、ならびに1日目、2日目、及び7日目の投与の0.25、0.50、1.00、2.00、3.00、4.00、6.00、8.00、10.00、12.00、及び24.00時間後に採取する。BID投与を受けるコホートでは、朝の投与後の上記のスケジュールと同じスケジュールで分析用の血液試料を採取する。加えて、1回1日及び1日2回の投与の両方について、血液試料を3~6日目の投与前に採取する。これらの血液試料は、デクスメデトミジン舌下フィルム及びその代謝産物の血漿濃度を分析するために採取する。
【0646】
対象集団
【0647】
試験集団の選択
【0648】
最大102人の対象(すなわち、健常ボランティア)が、米国の1つの試験施設で登録される計画である。7日間の処置及び3日間の経過観察を完全に完了しない対象は交換される。
【0649】
組み入れ基準
【0650】
対象は、当該対象が以下の基準の全てを見当たす場合、試験への組み入れに適格である。
1.対象は18歳以上の健常ボランティアである。
2.対象はインフォームドコンセントを提出する意思がある。
3.体格指数(BMI)が18.5~29.9である。
4.詳細な病歴、身体検査、10秒の12誘導心電図(ECG)の3回反復セット、血液化学プロファイル、血液学的検査、検尿、及び治験責任医師または被指名者の判断により確認されるように、試験参加前に良好な健康状態である対象。
5.対象が女性である場合、対象は妊娠中または授乳中であってはならない。対象が妊娠可能な女性である場合、対象は臨床的に許容される避妊法を使用すること、または試験中及び試験終了後の1ヵ月間禁欲することに合意しなければならない。
【0651】
除外基準
【0652】
対象は、当該対象が以下の基準のいずれかを満たす場合、試験から除外される。
1.試験中のベンゾジアゼピンまたは他の鎮静催眠薬の使用。
2.試験開始の1週間(デポ型抗精神病薬では6週間)以内のあらゆる抗精神病薬の使用または試験中の抗精神病薬の使用。
3.処置を必要とすると臨床的に考えられるアルコールまたは物質使用障害を有する対象。
4.α-1ノルアドレナリン作動性遮断薬(テラゾシン、ドキサゾシン、タムスロシン、アルフゾシン、またはプラゾシン)または他の禁止された薬物の投与を受けた場合。
5.コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)で異常なスコアを有する対象は除外されなければならない(C-SSRS≧4)。
6.スクリーニング時もしくはベースライン時(0日目)に妊娠検査が陽性であるか、または授乳中である女性の対象。
7.水頭症、発作性疾患、または重大な頭部外傷、脳卒中、一過性脳虚血発作、クモ膜下出血、脳腫瘍、脳症、髄膜炎、パーキンソン病の病歴、または局所的な神経学的所見を有する対象。
8.失神もしくは他の失神発作の病歴、血液量減少の現病歴、スクリーニング時もしくはベースライン時の起立性低血圧(立位後3分以内の少なくとも20mmHgの収縮期血圧(SBP)の低下または少なくとも10mmHgの拡張期血圧(DBP)の低下)、スクリーニング時及びベースライン時の60拍/分未満の心拍数、またはスクリーニング時及びベースライン時の100mmHg未満の収縮期血圧(SBP)もしくは55mmHg未満の拡張期血圧(DBP)。
9.治験担当医師または有資格の被指名者により臨床的に問題となると判断される、対象の試験参加に臨床的影響を及ぼすであろう臨床検査値異常または心電図異常[高度心ブロック(ペースメーカーなしで2度以上の房室ブロック)、洞不全症候群の診断]を示す対象。
10.遺伝性QT延長症候群の個人的な病歴または既知の家族歴を有する対象(既知の家族歴があるが、対象に家族性遺伝子異常がないことが遺伝学的に確認された場合、当該対象は登録されてもよい)。スクリーニング時の3回のQTcF値の平均が女性対象で470ミリ秒(msec)超及び男性対象で450msec超。
11.重度の医学的疾患または不安定な医学的疾患を有する対象。これらとしては、罹患中の肝疾患(中等度~重度の肝障害)、腎疾患、消化器疾患、呼吸器疾患、心血管疾患(虚血性心疾患、うっ血性心不全が含まれる)、内分泌疾患、または血液疾患が挙げられる。
12.治験薬の初回投与前30日以内に治験薬を投与された対象。
13.何らかの理由のため、治験担当医師によりデクスメデトミジン(デクスメデトミジン舌下フィルム)の投与に不適当な候補と判断される対象、例えば、デクスメデトミジンに対するアレルギー反応の病歴を有する対象。
14.ウリジン二リン酸-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)酵素及びチトクロームP450 2A6(CYP2A6)の活性に干渉し得るあらゆる薬物の試験完了までの試験開始の2週間以内の使用。
15.スクリーニング時またはベースライン時(0日目)に薬物スクリーニングが陽性の対象。
【0653】
適格性の確認後、対象を、デクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルム(コホート毎に指定される用量)または釣り合う用量のプラセボの投与に2:1で無作為化する。試験中止となった対象に割付番号がすでに与えられている場合、その割付番号は維持される。
【0654】
治療の投与
上記の通りの試験治療の投与時に、対象には、治験薬を舌下服用する方法を指示し、溶解するまで治験薬を舌下腔に保持するように指示する。対象は、デクスメデトミジン塩酸塩の舌下フィルムを自己投与した。対象が自己投与できない場合、事象を記録し、対象の試験参加を終了する。投与後の15分間、対象の食物摂取または水分摂取を制限することとする。
【0655】
試験の処置期間及び経過観察期間の両方の間、参加者をフィルムが配置された領域周辺の局所刺激についても毎日評価する。
【0656】
コホート6の対象には、施設スタッフがデュロキセチンを服用する方法も指示する。
【0657】
試験の評価
薬物動態
スケジュールに従って(表11及び表12)血液試料(4ミリリットル(mL))を採取する。
【0658】
各対象について、試験の間に80個までの血液試料(320mLまでの血液)をPK分析のために採取する。コホート1~3の対象では、40個の試料を採取する。コホート4及び5の対象では、80個の試料を採取した。コホート6の対象では、40または80個の試料を採取する。総数は、そのコホートにおいて対象がデクスメデトミジン舌下フィルムのqAM投与のみを受けるか、またはBID投与を受けるかに依存する。
【0659】
統計手法
一般的な考慮事項
【0660】
実施される解析の詳細を記載する統計解析計画書(SAP)はデータベース固定前に確定する。
【0661】
統計解析
【0662】
連続変数のデータを記述統計(対象の数、平均値、中央値、標準偏差、最小値、及び最大値)を使用して投与群別に集計し、分類変数のデータを頻度及び百分率を使用して投与群別に集計する。ベースラインは、試験投薬開始前の利用可能な直近の観測値と定義する。
【0663】
安全性解析
【0664】
全ての安全性解析を安全性解析対象集団を使用して実行する。少なくとも1回の治験薬の投与を受けた全ての対象を安全性解析対象集団に含める。
【0665】
有害事象を種類、重症度、重篤性、及び処置との因果関係により特徴付ける。有害事象を最新版のMedDRAを使用して基本語及び器官別大分類によりコーディングする。AEの発生率を全ての処置毎、重症度毎、及び治験薬との因果関係毎にまとめる。重篤な有害事象及び治験薬の中止に至ったAEも示す。AE、重篤なAE、及び/または死亡による投与中止を経験した対象のリストを示す。
【0666】
臨床検査パラメータを記述統計及び臨床的に問題となる異常のデータ一覧表を使用して処置毎にまとめる。バイタルサイン、パルスオキシメトリー、及びECGデータを記述統計を使用してベースライン値からの変化毎にまとめる。
【0667】
安全性評価は、処置下で発現した有害事象(TEAE)の発生率、中止に至ったAEの発生率、バイタルサイン測定値、パルスオキシメトリー、身体検査、体重、臨床検査の結果、ECG所見、ACES、C-SSRSの結果、経口投与部位の所見、及び併用薬に基づく。
【表12-1】
【表12-2】
【表12-3】
【表13-1】
【表13-2】
【0668】
実施例4:デクスメデトミジン舌下フィルムの大うつ病エピソードに対する効果の評価の第2相試験。
【0669】
第1の目的:デクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルムの単回投与が、1週間の処置の終了時にプラセボと比較して、ハミルトンうつ病評価尺度17項目版(HAM-D-17)を使用して評価されるMDEに関連する症状を効果的に低減するかどうかを確認すること。
【0670】
重要な第2の目的:デクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルムの単回投与が、4週間の処置の終了時にプラセボと比較して、ハミルトンうつ病評価尺度17項目版(HAM-D-17)を使用して評価される不安による苦痛を伴うMDDに関連する症状を効果的に低減するかどうかを確認すること。
【0671】
他の探索的目的:以下を含む、MDDと診断された患者におけるデクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルムの有効性、安全性、忍容性、及びPKを更に確認すること。
・改善の臨床全般印象尺度(CGI-I)により測定される、投薬後の全般的な臨床的改善を確認すること。
・HAM-D-17睡眠サブスケールにより測定される、デクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルムの睡眠障害に対する影響を確認すること。
・HAM-D-17うつ病サブスケールにより測定される、デクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルムのうつ病の主たる症状に対する影響を確認すること。
・有害事象の報告及びバイタルサインにより評価される、デクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルムの安全性プロファイルを確認すること。
・処置下で発現した有害事象の報告及び経口フィルムの局所(経口/舌下)忍容性の観点から全体的な忍容性を記述すること。
【0672】
試験デザイン:本試験は、DSM-5基準により定義されるMDEを有する成人男性及び女性(18~75歳)におけるデクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルム投与の有効性、安全性、及び忍容性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間第2相試験である。
【0673】
本試験は、4種のSSRI(すなわち、セルトラリン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム)のうちの1つに加えてデクスメデトミジン塩酸塩舌下フィルム(120μg用量のデクスメデトミジン)または釣り合う用量のプラセボフィルムの投与に1:1で無作為化される対象による外来での試験である。無作為化に際しては年齢により層別化する;65歳未満及び65歳以上。
【0674】
適格対象(不安による苦痛を伴うMDDと診断された対象)は、外来診療所、または医学的/精神医学的観察室を備えた精神衛生科、精神科、もしくは救急医療科で特定される。対象は外来でスクリーニングを受ける。
【0675】
適格性の確認後、対象を120μgのデクスメデトミジン舌下フィルムまたは釣り合う用量のプラセボの投与に無作為化する。以下のSSRIのうちの1つの用量設定と同時に、対象に120μg用量のデクスメデトミジン舌下フィルムまたは釣り合う用量のプラセボを4週間毎夜投与する:セルトラリン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム。
【0676】
投与群は、120μgのデクスメデトミジン舌下フィルム+SSRIまたはプラセボ+SSRIを投与される好適な数の対象から構成される。SSRIの投与は、1週目及び2週目に推奨用量の半分で開始し、3週目及び4週目に推奨用量に増量する。
【0677】
本試験は以下の2つのフェーズを含む:主にデクスメデトミジン舌下フィルム及びSSRIの投与開始時に安全性を確認するための最長1週間の入院/診療所内でのフェーズ、ならびに舌下デクスメデトミジンの安全性、有効性、及び忍容性を外来で評価するための外来でのフェーズ。
【0678】
不安及び不穏状態が持続するか、または再発する場合、治験担当医師は半分の濃度での反復投与を選択してもよい。患者の血行動態が安定しており、低血圧でなく(収縮期血圧/拡張期血圧が90/60を超えること)、かつ徐脈が認められない(60bpmを超えること)場合にのみ、患者に再投与する。また患者が起立性(20mmHg超の収縮期血圧の低下または10mmHg超の拡張期血圧の低下)である場合、または患者がPIの評価において再投与を妨げるAEを示す場合、患者に再投与しない。対象当たりの反復投与の最大回数は、初回投与後の12時間の間で1回である。投与は前回の投与後から2時間経過する前に行わない。
【0679】
フィルムが配置された領域周辺の局所刺激性についても参加者を評価する。安全性及び有効性評価は、投与前及び後に定期的に実施する。プロトコールに従って患者に全ての評価を遂行させるように最大限の努力を払う。
【0680】
有効性、安全性、忍容性、及び薬物動態(PK)を処置期間全体を通して様々な時点で評価する。
【0681】
対象の数(計画時):約80人の対象。本試験は米国の最大3施設で実施される。
【0682】
対象:
【0683】
適格例には、あらゆる試験関連作業が実行される前に同意書(ICF)に署名した、不安による苦痛を伴うMDEと診断された患者が含まれる。適格性の確認後、対象を1:1の無作為化で120μgのデクスメデトミジン舌下フィルムまたは釣り合う用量のプラセボのいずれかに無作為化する。
【0684】
試験製品、用量、及び投与様式:デクスメデトミジン塩酸塩は、舌下(SL)投与用のデクスメデトミジンの薄いフィルム製剤として提供される。投薬により60μgまたは120μgのデクスメデトミジンが舌下送達される。この製品は、舌下腔で1~3分以内に完全に溶解するように設計された、面積約193.6mm2及び厚さ0.7mmの小さな固形投与フィルム製剤である。
【0685】
対照治療、投与量、及び投与様式:フィルムを上記のように舌下服用または口内服用する。
【0686】
処置期間:4週間
【0687】
上記の実施例及び特定の実施形態の説明は、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではなく、むしろ例示するものとして解されるべきである。容易に理解されるように、上記の記載の特徴の多数の変形形態及び組み合わせが特許請求の範囲に記載の本発明を逸脱しない範囲で利用され得る。全てのかかる変形形態は本発明の範囲内に含まれることを意図する。引用された全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】