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特表2024-524436車両冷房制御方法、装置、機器、媒体及びプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】車両冷房制御方法、装置、機器、媒体及びプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240628BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240628BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240628BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/32 624J
F25B1/00 304L
B60K11/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580821
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 CN2021127730
(87)【国際公開番号】W WO2023070607
(87)【国際公開日】2023-05-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang310000, China
(71)【出願人】
【識別番号】523218452
【氏名又は名称】吉利汽車研究院(寧波)有限公司
【氏名又は名称原語表記】GEELY AUTOMOBILE RESEARCH INSTITUTE (NINGBO) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 双岐
【テーマコード(参考)】
3D038
3L211
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC20
3D038AC22
3L211BA01
3L211EA16
3L211FB05
3L211GA23
(57)【要約】
車両冷房制御方法、装置、機器、媒体及びプログラム製品であって、目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定し、そして温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定し、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定し、この後、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定し、当該冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するシングルモードステージ、及び乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するデュアルモードステージを有し、かつシングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。新エネルギー自動車の冷房能力をどのように配分及び制御するかという技術的問題は解決され、乗員室の快適性を優先して確保しつつ、車両の総冷房性能を柔軟に配分することによってバッテリーの冷房需要を満たすという技術的効果は達成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両冷房制御方法であって、
目標車両のバッテリーの温度及び前記温度の変化速度をリアルタイムで測定するステップと、
前記温度及び前記変化速度に応じて前記バッテリーの冷房需要レベルを決定するステップと、
目標車両の乗員室と前記バッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップと、を含み、
前記冷房モードは、前記乗員室又は前記バッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、前記乗員室と前記バッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、前記シングルモードステージは、前記デュアルモードステージの前に配置される、ことを特徴とする車両冷房制御方法。
【請求項2】
前記シングルモードステージは、乗員室冷房モードを有し、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップは、
前記冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、前記乗員室冷房モードに入り、内部熱交換器が配置された位置の吹出温度を含む第1の吹出温度をリアルタイムで測定するステップと、
前記第1の吹出温度と第1の目標温度との間の第1の温度差が第1の温度差しきい値以下である場合、または前記乗員室冷房モードの第1の動作時間が第1の所定時間以上である場合に、前記デュアルモードステージに入るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の車両冷房制御方法。
【請求項3】
前記乗員室冷房モードに入った後、マルチシステム熱交換器の冷媒送入端に取り付けられた第1の電子膨張弁に閉鎖命令を送信し、前記マルチシステム熱交換器は、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間の熱交換を可能にするために用いられ、
これに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップの後、前記冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
前記第1の吹出温度及び第1の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第1の閉ループ制御命令を決定するステップと、
外部熱交換器の送入端を含む第1の所定位置の過冷却度及び第2の閉ループ制御モデルに基づき、内部熱交換器の送入端に取り付けられた第2の電子膨張弁の第2の閉ループ制御命令を決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の車両冷房制御方法。
【請求項4】
前記デュアルモードステージに入るステップの後、
前記冷房需要レベル、前記第1の吹出温度、及び前記目標温度に応じて、前記第1の電子膨張弁の開度制御命令を決定するステップと、
前記第1の吹出温度及び第3の閉ループ制御モデルに基づき、前記圧縮機の第3の閉ループ制御命令を決定するステップと、
前記第1の所定位置の過冷却度及び第4の閉ループ制御モデルに基づき、前記第2の電子膨張弁の第4の閉ループ制御命令を決定するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項3に記載の車両冷房制御方法。
【請求項5】
前記開度制御命令は開弁速度及び閉弁速度を含み、前記冷房需要レベルは、前記開弁速度と正の相関関係にあり、前記閉弁速度と負の相関関係にある、ことを特徴とする請求項4に記載の車両冷房制御方法。
【請求項6】
前記開度制御命令は開度上限値を含み、前記冷房需要レベルは前記開度上限値と正の相関関係にある、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の車両冷房制御方法。
【請求項7】
前記シングルモードステージはバッテリー冷房モードを有し、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップは、
前記冷房需要レベルが緊急状態である場合に、前記バッテリー冷房モードに入り、クーラント液循環システムに含まれるバッテリー冷却回路内の前記バッテリー冷却配管の入口を含む第1の位置のクーラント液温度をリアルタイムで測定するステップと、
前記クーラント液温度と第2の目標温度との間の第2の温度差が第2の温度差しきい値以下である場合、または前記バッテリー冷房モードの第2の動作時間が第2の所定時間以上である場合に、前記デュアルモードステージに入るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の車両冷房制御方法。
【請求項8】
前記バッテリー冷房モードに入るステップの後、前記冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップをさらに含み、前記目標制御対象は、第1の電子膨張弁、第2の電子膨張弁、及び圧縮機を含み、
これに応じて、前記冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
前記クーラント液温度及び第5の閉ループ制御モデルに基づき、前記圧縮機の第5の閉ループ制御命令を決定するステップと、
冷媒送入端を含む第2の所定位置の過冷却度及び第6の閉ループ制御モデルに基づき、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間の熱交換を可能にするために用いられるマルチシステム熱交換器の前記冷媒送入端に取り付けられた前記第1の電子膨張弁の第6の閉ループ制御命令を決定するステップと、
送風機風量、送風温度、及び目標吹出温度に応じて、前記第2の電子膨張弁の予め設定された開度命令を決定するステップと、を含み、
前記予め設定された開度命令は、前記第2の電子膨張弁の開度を所定開度に固定設定するために用いられ、前記送風温度は、内部熱交換器が配置された位置の送風側の温度を含み、前記目標吹出温度は、前記内部熱交換器が配置された位置の吹出側の所定温度であり、前記第2の電子膨張弁は内部熱交換器の送入端に取り付けられている、ことを特徴とする請求項7に記載の車両冷房制御方法。
【請求項9】
前記デュアルモードステージに入った後、前記冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
前記第5の閉ループ制御命令、前記第6の閉ループ制御命令、及び前記予め設定された開度命令に基づき、同時に、前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の車両冷房制御方法。
【請求項10】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値を上回り、かつ前記第2の温度差が所定温度差上限以下であり、さらに、前記変化速度が第1の速度しきい値を下回る場合に、前記第2の電子膨張弁の開度を第1の所定方式で減少させるステップを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の車両冷房制御方法。
【請求項11】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記変化速度が第1の速度しきい値以上であり、かつ前記変化速度が第2の速度しきい値を下回り、さらに、前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値を上回る場合に、前記第2の電子膨張弁の開度をそのままに維持するステップを含み、前記第2の速度しきい値は前記第1の速度しきい値を上回る、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の車両冷房制御方法。
【請求項12】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値を上回り、かつ前記変化速度が第2の速度しきい値以上である場合に、前記第2の電子膨張弁の開度を第2の所定方式で増大させるステップを含む、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項13】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が所定温度差上限を上回る場合に、前記第2の電子膨張弁の開度を第3の所定方式で減少させるステップを含む、ことを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項14】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値以下である場合に、前記第2の温度差及び第7の閉ループ制御モデルに基づき、前記第2の電子膨張弁の第7の閉ループ制御命令を決定するステップを含む、ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項15】
前記バッテリーの温度が第1の温度しきい値以上であることが検知された場合に、前記第2の電子膨張弁を閉鎖し、前記バッテリーの温度が第2の温度しきい値以下になった後、前記クーラント液温度と前記第2の目標温度との間の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度に対するリアルタイム測定を再開し、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項16】
測定モジュール及び処理モジュールを含む車両冷房制御装置であって、
測定モジュールは、目標車両のバッテリーの温度及び前記温度の変化速度をリアルタイムで測定するために用いられ、
処理モジュールは、前記温度及び前記変化速度に応じて前記バッテリーの冷房需要レベルを決定するために用いられ、
前記測定モジュールは、前記目標車両の乗員室と前記バッテリーの冷房需要を測定するためにさらに用いられ、
前記処理モジュールは、目標車両の乗員室と前記バッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するためにさらに用いられ、
前記冷房モードは、前記乗員室又は前記バッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、前記乗員室と前記バッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、前記シングルモードステージは、前記デュアルモードステージの前に配置される、ことを特徴とする車両冷房制御装置。
【請求項17】
プロセッサ及び前記プロセッサと通信可能に接続されたメモリを備える電子機器であって、
前記メモリはコンピュータ実行命令を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶されたコンピュータ実行命令を実行することで、請求項1~15のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法を実現する、電子機器。
【請求項18】
コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体にはコンピュータ実行命令が記憶されており、前記コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実施するために用いられる、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、当該コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されるとき、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法は実施される、コンピュータプログラム製品。
【請求項20】
プログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、コンピュータで前記コンピュータプログラムを動作させるとき、前記プログラムコードは請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実行する、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、新エネルギー自動車技術の分野に関し、より具体的に、車両冷房制御方法、装置、機器、媒体及びプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両技術の発展に伴い、新エネルギー自動車はすでに将来の自動車発展の主要な趨勢となっている。従来の自動車分野では、車内環境制御に関するソリューションが多くあるが、新エネルギー自動車では、既存の車両の熱管理に新たな影響を与える高出力の駆動モーターや大容量のバッテリーが導入されているため、新たな課題に直面している。
【0003】
新エネルギー自動車のバッテリーと乗員室に冷房需要が存在する場合に、システムの冷房性能でもって、両者の冷房需要を同時かつ適時に満たすことができない可能性があり、両者に対して冷房性能の配分と制御をどのように実現するかは、新エネルギー自動車において早急に解決しなければならない技術的問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、車両冷房制御方法を提供し、新エネルギー自動車の冷房性能をどのように配分及び制御するかという技術的問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本願は、車両冷房制御方法を開示し、当該方法は、
目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定するステップと、
温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定するステップと、
目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップと、
冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップと、を含み、
冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、シングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。
【0006】
上記の技術的内容に基づき、乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要がある場合に、バッテリーの冷房需要レベルに応じて、先に乗員室を冷房するか、またはシングルモードでバッテリーを先に冷房してからデュアルモード冷房するかを決定する。このようにすると、冷房過程は2つのステージに分割され、第1のステージでは、バッテリーに緊急な冷房需要がない場合に乗員室の快適性の冷房需要を優先させることを判断基準として、まず、現在最も需要が切迫する方の解決のために冷房性能を集中させる。第1のステージを経過した後、総冷房需要が目標車両の冷房能力の上限範囲内にある程度まで低下すると、デュアルモード冷房を開始して、両者の冷房需要を同時に満たすことができる。乗員室の快適性の確保の上、システム安全の確保もできるという技術的効果は達成される。冷房性能の配分及び制御の問題はよく解決される。
【0007】
1つの実施形態では、シングルモードステージは、乗員室冷房モードを有し、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップは、
バッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、乗員室冷房モードに入り、内部熱交換器が配置された位置の吹出温度を含む第1の吹出温度をリアルタイムで測定するステップと、
第1の吹出温度と第1の目標温度との間の第1の温度差が第1の温度差しきい値以下である場合、または乗員室冷房モードの第1の動作時間が第1の所定時間以上である場合に、デュアルモードステージに入るステップと、を含む。
【0008】
バッテリーの冷房需要レベルが高くない場合には、乗員室の快適性の確保を優先させることを原則として、乗員室に重点を置いて冷房能力を配分し、乗員室の温度を迅速に下げることができる。しかし、バッテリーの冷房需要も両立させる必要があり、そうでなければ、バッテリーの冷房需要レベルは継続的に上昇し、システムの安全上の危険が引き起こされるため、乗員室の個別の冷房時間を制御する必要があり、同時に、乗員室の個別の冷房時間を制御することで、何らかの予期できない要因によって乗員室の温度が永遠に所定の目標に達しない場合に、制御が行き詰まった結果、バッテリーに対して適時に冷房を行うことができず、不可逆的な損傷が与えられるという安全上の問題を避けることもできる。
【0009】
1つの実施形態では、バッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、乗員室冷房モードに入った後、第1の電子膨張弁に閉鎖命令を送信し、第1の電子膨張弁は、マルチシステム熱交換器の冷媒送入端に取り付けられており、マルチシステム熱交換器は、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間の熱交換を可能にするために用いられ、
冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
第1の吹出温度及び第1の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第1の閉ループ制御命令を決定するステップと、
第1の所定位置の過冷却度及び第2の閉ループ制御モデルに基づき、第2の電子膨張弁の第2の閉ループ制御命令を決定するステップと、を含み、第1の所定位置は外部熱交換器の送入端を含み、第2の電子膨張弁は内部熱交換器の送入端に取り付けられている。
【0010】
1つの実施形態では、バッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、デュアルモードステージに入った後、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
冷房需要レベル、第1の吹出温度及び目標温度に応じて、第1の電子膨張弁の開度制御命令を決定するステップと、
第1の吹出温度及び第3の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第3の閉ループ制御命令を決定するステップと、
所定位置の過冷却度及び第4の閉ループ制御モデルに基づき、第2の電子膨張弁の第4の閉ループ制御命令を決定するステップと、を含む。
【0011】
1つの実施形態では、開度制御命令は開弁速度及び閉弁速度を含み、冷房需要レベルは、開弁速度と正の相関関係にあり、閉弁速度と負の相関関係にある。
【0012】
選択的に、開度制御命令は開度上限値を含み、冷房需要レベルは開度上限値と正の相関関係にある。
【0013】
バッテリーの冷房需要レベルが低く、すなわち非緊急状態となる場合に、乗員室の快適性を優先させるという原則を基にする制御方法により、乗員室を個別に冷房するステージでは、圧縮機を使用して蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器である、内部熱交換器の前にある電子膨張弁すなわち第1の電子膨張弁を使用して外部凝縮器すなわち外部熱交換器の過冷却度を制御することで、システム全体の安定性及び安全性を向上させる。同時に、ヒートポンプシステムに冷房性能を集中させるために、マルチシステム熱交換器である、Chiller冷凍機の冷媒送入端にある電子膨張弁すなわち第2の電子膨張弁を閉鎖する。乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するステージに入った後、圧縮機により蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により外部凝縮器の過冷却度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端にある電子膨張弁により蒸発器吹出温度と目標蒸発器吹出温度との差を測定し、ゆっくりと開弁したり、ゆっくりと閉弁したり、開度をそのままに維持したりする。このように、圧縮機と第2の電子膨張弁とを協働させることで、乗員室冷房への優先配分を完成させ、ユーザの快適な体験を確保する。
【0014】
1つの実施形態では、シングルモードステージはバッテリー冷房モードを有し、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップは、
冷房需要レベルが緊急状態となる場合に、バッテリー冷房モードに入り、クーラント液循環システムに含まれるバッテリー冷却回路内のバッテリー冷却配管の入口を含む、第1の位置のクーラント液温度をリアルタイムで測定するステップと、
クーラント液温度と第2の目標温度との間の第2の温度差が第2の温度差しきい値以下である場合、またはバッテリー冷房モードの第2の動作時間が第2の所定時間以上である場合に、デュアルモードステージに入るステップと、を含む。
【0015】
1つの実施形態では、冷房需要レベルが緊急状態となる場合に、バッテリー冷房モードに入った後、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
クーラント液温度及び第5の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第5の閉ループ制御命令を決定するステップと、
マルチシステム熱交換器の冷媒送入端を含む第2の所定位置の過冷却度及び第6の閉ループ制御モデルに基づき、第1の電子膨張弁の第6の閉ループ制御命令を決定するステップと、
送風機風量、送風温度及び目標吹出温度に応じて、第2の電子膨張弁の予め設定された開度命令を決定するステップと、を含み、予め設定された開度命令は、第2の電子膨張弁の開度を所定開度に固定設定するために用いられ、送風温度は、内部熱交換器が配置された位置の送風側の温度を含み、目標吹出温度は、内部熱交換器が配置された位置の吹出側の所定温度である。
【0016】
1つの実施形態では、冷房需要レベルが緊急状態となる場合に、デュアルモードステージに入った後、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
第5の閉ループ制御命令、第6の閉ループ制御命令、及び予め設定された開度命令に基づき、同時に、第2の温度差及びクーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップを含む。
【0017】
1つの実施形態では、第2の温度差及びクーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回り、かつ第2の温度差が所定温度差上限以下であり、さらに、変化速度が第1の速度しきい値を下回る場合に、第1の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を減少させるステップを含む。
【0018】
選択的に、変化速度が第1の速度しきい値以上であり、かつ変化速度が第2の速度しきい値を下回り、さらに、第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回る場合に、第2の電子膨張弁の開度をそのままに維持し、第2の速度しきい値は第1の速度しきい値を上回る。
【0019】
選択的に、第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回り、かつ変化速度が第2の速度しきい値以上である場合に、第2の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を増大させる。
【0020】
選択的に、第2の温度差が所定温度差上限を上回る場合に、第3の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を減少させる。
【0021】
選択的に、第2の温度差が第2の温度差しきい値以下である場合に、第2の温度差及び第7の閉ループ制御モデルに基づき、第2の電子膨張弁の第7の閉ループ制御命令を決定する。
【0022】
冷房需要レベルが高く、すなわち緊急状態となる場合に、車両すなわちシステムの安全を確保するために、バッテリーを個別に冷房するステージに入ることを優先させ、この場合に、圧縮機により冷房液回路におけるバッテリー入口の位置でのクーラント液温度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁を比較的小さい開度に固定することで、乗員室の冷房を両立させ、小部分の冷房性能を乗員室に配分する。つまり、バッテリーの安全を確保しつつ、依然としてユーザの快適性需要を考慮すると、ユーザの使用体験を向上させることができる。乗員室とバッテリーとの両方を同時に冷房するステージに入った後、圧縮機により冷房液回路におけるバッテリー入口の位置でのクーラント液温度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により蒸発器吹出温度を制御すると同時に、バッテリー入水口水温と目標入水口水温との差及びバッテリー入水口水温の変化速度を測定し、最終的に、蒸発器の前にある電子膨張弁の開度すなわち第2の電子膨張弁の開度を決定する。このようにすると、冷房能力をリアルタイムで且つ柔軟にスケジューリングし、乗員室とバッテリーへの冷房性能の配分の均衡性を達成し、システムの安全を維持するとともに、ユーザの乗車快適性を確保する。
【0023】
1つの実施形態では、当該車両冷房制御方法は、
バッテリーの温度が第1の温度しきい値以上であることが検知された場合に、第2の電子膨張弁を閉鎖し、バッテリーの温度が第2の温度しきい値以下になった後、クーラント液温度と第2の目標温度との間の温度差、及びクーラント液温度の変化速度に対するリアルタイム測定を再開し、第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップをさらに含む。
【0024】
バッテリーの温度は動力出力とも関係があり、電気使用量が増加すると、バッテリー温度も迅速に上昇するため、このとき、バッテリーの安全を確保するために、バッテリー温度が高すぎることが測定された場合に、バッテリー冷房に冷房性能を集中させて配分することで、バッテリー温度を迅速に通常範囲に回復させる。
【0025】
第2の態様では、本願は、車両冷房制御装置を開示し、当該装置は、測定モジュール及び処理モジュールを含み、
測定モジュールは、目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定するために用いられ、
処理モジュールは、温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定するために用いられ、
測定モジュールは、目標車両の乗員室とバッテリーの冷房需要を測定するためにさらに用いられ、
処理モジュールは、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定することと、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定することと、にさらに用いられ、
冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、シングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。
【0026】
第3の態様では、本願は、プロセッサ及びプロセッサと通信可能に接続されたメモリを備える電子機器を開示し、
メモリはコンピュータ実行命令を記憶し、
プロセッサはメモリに記憶されたコンピュータ実行命令を実行することにより、第1の態様におけるいずれか1つの可能な車両冷房制御方法は実施される。
【0027】
第4の態様では、本願は、コンピュータ可読記憶媒体を開示し、当該コンピュータ可読記憶媒体にはコンピュータ実行命令が記憶されており、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様におけるいずれか1つの可能な方法を実施するために用いられる。
【0028】
第5の態様では、本願は、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を開示し、当該コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されるとき、第1の態様におけるいずれか1つの可能な方法は実施される。
【0029】
第6の態様では、本願は、プログラムコードを含むコンピュータプログラムを開示し、コンピュータでコンピュータプログラムを動作させるとき、プログラムコードは第1の態様におけるいずれか1つの可能な方法を実行する。
【発明の効果】
【0030】
上記の技術的解決手段によれば、本願は、車両冷房制御方法、装置、機器、媒体及びプログラム製品を提供し、目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定し、そして温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定し、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定し、この後、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定し、冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、シングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。新エネルギー自動車の冷房能力をどのように配分及び制御するかという技術的問題は解決され、乗員室の快適性を優先して確保しつつ、車両の総冷房性能を柔軟に配分することによって、バッテリーへの冷房を効果的に確保できるという技術的効果は達成される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本願により提供される車載のヒートポンプシステム及びクーラント液循環システムの構造概略図である。
図2】本願の実施例により提供される1つの車両冷房制御方法のフローチャートである。
図3】本願の実施例により提供される他の車両冷房制御方法のフローチャートである。
図4】本願の実施例により提供される別の車両冷房制御方法のフローチャートである。
図5】本願の実施例により提供される車両冷房制御装置の構造概略図である。
図6】本願の実施例により提供される電子機器の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明瞭にするために、以下、本願の実施例に係る図面を参照しながら、その技術的解決手段について明瞭、且つ完全に説明し、当然のことながら、記載される実施例は本願の実施例の一部にすぎず、そのすべての実施例ではない。当業者は、本願における実施例に基づいて創造的な労働をすることなく、獲得されたその他のすべての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0033】
本願の明細書と特許請求の範囲、及び上記の図面における用語「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など(存在する場合)は、類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序又はシーケンスを説明するためのものである必要はない。本明細書に説明する本発明の実施例を、例えば、本明細書に図示又は説明したもの以外の順序で実施できるように、そのように使用されるデータを適宜交換できると理解すべきである。また、「含む」と「有する」という用語、及びそれらの全てのバリエーションは、いずれも非排他的含有を網羅することを意図し、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品、又はデバイスは、明示的にリストされているステップ又はユニットに限定される必要はなく、明示的にリストされていないか、又は、これらのプロセス、方法、製品又はデバイスに固有の他のステップ又はユニットを含んでもよい。
【0034】
まず、本願に係る用語について説明する。
【0035】
ヒートポンプシステムとは、車両に取り付けられた熱交換システムを指し、従来のエアコンの内部構造メカニズムに類似し、圧縮機、内部熱交換器、外部熱交換器、複数の電子膨張弁、複数の電磁弁、及び冷房管路内の冷媒を含む。冷房と加熱の異なるプロセスに応じて、内部熱交換器と外部熱交換器は、蒸発器として機能してもよいし、凝縮器として機能してもよい。
【0036】
クーラント液循環システムとは、モーター、バッテリー、エンジンなどの車両における動力機器を冷却又は加熱するシステムを指し、クーラント液循環システムとヒートポンプシステムとは並列かつ独立した2つの熱管理システムであり、クーラント液循環システムは、バッテリー回路、ウォーターポンプ、及び管路を循環して流れるクーラント液を含む。クーラント液循環システムは、ヒートポンプシステムとは異なり、クーラント液による蒸発及び凝縮の作用が伴われておらず、熱放射もしくは空気又はその他の気体(気化した冷媒など)による空冷作用によって熱を伝達する。
【0037】
本願の発明構想は次の通りである。
【0038】
本願の発明者は、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房する際、制御待ちの目標温度が1つだけあるため、冷房量配分の問題が生じず、制御方法は比較的簡単である。しかし、乗員室とバッテリーとの両方に同時に冷房需要がある場合に、理想的には、乗員室とバッテリーの両方の目標冷房需要を同時かつ迅速に満たすことが望ましい。しかし、実際には、システムの冷房能力には限界があるため、乗員室とバッテリーの両方を同時かつ迅速に冷房すると、冷房電力出力が高くなり、車両の総冷房電力を増大させることは従来のやり方であるが、このようにすると、高価なシステム製造コストにつながり、さらに、異なる車種に対して、設計を共通化することができない。デュアル冷房需要を同時に満たすことができない場合に、冷房エネルギーをどのように合理的に配分するかは重要な課題となっている。また、システムの冷房能力で十分であったとしても、システム安全を確保しつつ乗員室の快適性を損なうことのないよう、各実行デバイスをどのように制御するかということも難しい課題となっている。
【0039】
本願は、上記の問題を解決するために、乗員室とバッテリーとの両方に同時に冷房需要があるが、両者の同時冷房のための電力需要を冷房システムの冷房電力でもって満たすことができない場合に、システムの安全を確保しつつ乗員室の快適性を最大限に損なわない、車両冷房制御方法を次の通りに提案している。
【0040】
(1)バッテリー本体の温度及びバッテリーの昇温速度に応じて、バッテリーの冷房レベル(低、中、高、緊急など)を決定する。バッテリー冷房レベルが異なれば、バッテリー入口の目標水温も異なり、冷房レベルが高いほど、目標水温は低くなる。本願は、安全の確保、バッテリー状態に対する正確な判断、ならびに、バッテリー冷房需要の優先度及び冷房量の配分比率に対する判断を目的としている。
【0041】
(2)乗員室とバッテリーとの両方に同時に冷房需要があるとき、バッテリーの冷房レベルが非緊急(低、中、高)である場合、まず乗員室冷房モードに入り、蒸発器温度が目標蒸発器温度付近に達しもしくは乗員室冷房が一定の時間動作してから、乗員室とバッテリーのデュアル冷房モードに入り、バッテリーの冷房レベルが緊急である場合、まずバッテリー冷房モードに入り、バッテリー入水口水温が目標水温付近に達しもしくはバッテリー冷房モードが一定の時間動作してから、乗員室とバッテリーのデュアル冷房モードに入る。本願は、安全を確保しつつ乗員室の快適性を可能な限り損なわないことを目的としている。
【0042】
(3)乗員室とバッテリーとの両方に同時に冷房需要があり、かつバッテリーの冷房レベルが非緊急状態である場合の制御方式は、まず乗員室冷房モードステージに入り、圧縮機により蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、Chiller冷凍機の前にある電子膨張弁を閉鎖することとなる。乗員室とバッテリーのデュアル冷房モードステージに入ると、圧縮機により蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、Chiller冷凍機の前にある電子膨張弁により蒸発器吹出温度と目標蒸発器吹出温度との差を測定し、ゆっくりと開弁し/閉弁し/開度をそのままに維持する。本願は、乗員室の冷房を優先させて乗員室の快適性を確保することを目的としている。
【0043】
(4)乗員室とバッテリーとの両方に同時に冷房需要があり、かつバッテリーの冷房レベルが緊急状態である場合の制御方式は、まずバッテリー冷房モードステージに入り、圧縮機によりバッテリー入水口水温を制御し、Chiller冷凍機の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁を比較的小さい開度に固定する。乗員室とバッテリーのデュアル冷房モードステージに入ると、圧縮機によりバッテリー入水口水温を制御し、Chiller冷凍機の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により蒸発器温度を制御すると同時に、バッテリー入水口水温と目標入水口水温との差を測定し、最終的に電子膨張弁の開度を决定する。本願は、バッテリー冷房を優先させて、安全を確保しつつ、乗員室の快適性を可能な限り達成することを目的としている。
【0044】
本願の具体的な応用シーンは以下に説明される。
【0045】
図1は、本願により提供される車載のヒートポンプシステム及びクーラント液循環システムの構造概略図である。図1に示すように、ヒートポンプシステムは、圧縮機101、蒸発器102、凝縮器103、空調ボックス120、及び送風機121などを備える。クーラント液循環システムは、バッテリー107及びバッテリー回路ポンプ108などを含む。また、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間にはChiller冷凍機104があり、ヒートポンプシステム内の冷媒とクーラント液循環システム内のクーラント液との間の熱伝達によって、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間で熱の交換が実現される。
【0046】
以下、本願の技術的解決手段及び本願の技術的解決手段によって上記の技術的問題をどのように解決するかについて、具体的な実施例を用いて詳細に説明する。以下のいくつかの具体的な実施例は、互いに組み合わされてもよく、同様な又は類似する概念又はプロセスについて、いくつかの実施例では繰り返して説明しない場合がある。以下、本願の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0047】
図2は、本願の実施例により提供される1つの車両冷房制御方法のフローチャートである。図2に示すように、当該車両冷房制御方法の具体的なステップは、S201~S204を含む。
【0048】
S201では、目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定する。
【0049】
本ステップでは、バッテリーの温度は、バッテリーに取り付けられた温度センサーによって検知された温度値から直接に読み取られてもよいし、または熱管理システムの中央コントローラーからデータリクエストをバッテリー管理システムに送信し、バッテリー管理システムがデータリクエストに応答し、バッテリーの温度データをバスを通じて中央コントローラーに送信してもよい。
【0050】
1つの可能な設計では、当該車両冷房制御方法の担体はクラウドサーバであり、クラウドサーバは、客載せ車両、冷凍・生鮮貨物輸送車両、偵察車両、物流コールドチェーン車両などを含む大量の新エネルギー自動車を管理している。各目標車両のバッテリーのリアルタイム温度及び温度の変化速度は、モノのインターネットを通じて取得される。
【0051】
S202では、バッテリーの温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定する。
【0052】
本ステップでは、冷房需要レベルは、緊急状態及び非緊急状態に少なくとも分けられることができ、バッテリーの温度が所定状態しきい値以下である場合には、冷房需要レベルは非緊急状態とし、そうでない場合には緊急状態とする。
【0053】
1つの可能な設計では、冷房性能の配分をより細分化するために、非緊急状態を低レベル、中レベル、及び高レベルという3つのレベルに少なくとも分けるように、さらに細分化する。
【0054】
具体的に、本実施例では、バッテリーの冷房需要レベルは、低レベル、中レベル、高レベル、及び緊急状態に分けられる。
【0055】
T1≦バッテリーの温度<T2、かつ変化速度≦V1の場合、バッテリーの冷房需要レベルは低レベル、
T2≦バッテリーの温度<T3、かつ変化速度≦V1の場合、バッテリーの冷房需要レベルは中レベル、
T3≦バッテリーの温度<T4、かつ変化速度≦V1の場合、バッテリーの冷房需要レベルは高レベル、もしくは、T1≦バッテリーの温度<T3、かつバッテリー温度上昇速度>V1の場合、バッテリーの冷房需要レベルは高レベル、
バッテリーの温度≧T4の場合、バッテリーの冷房需要レベルは緊急状態、もしくは、T3≦バッテリー本体温度<T4、かつバッテリー温度上昇速度>V1の場合、バッテリーの冷房需要レベルは緊急状態とする。
【0056】
これに応じて、バッテリー冷房レベルは低レベルである場合に、バッテリー冷却回路のバッテリー入口における目標クーラント液温度はT5、バッテリー冷房レベルは中レベルである場合に、冷房回路のバッテリー入口における目標クーラント液温度はT6、バッテリー冷房レベルは高レベルである場合に、冷房回路のバッテリー入口における目標クーラント液温度はT7、バッテリー冷房レベルは緊急状態である場合に、冷房回路のバッテリー入口における目標クーラント液温度はT8とする。
【0057】
ここで、T1<T2<T3<T4とし、T5<T6<T7<T8とする。
【0058】
S203では、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定する。
【0059】
本ステップでは、冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、シングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。
【0060】
具体的に、シングルモードステージは、乗員室冷房モード及びバッテリー冷房モードを有する。
【0061】
バッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、乗員室冷房モードに入り、第1の吹出温度をリアルタイムで測定し、第1の吹出温度は内部熱交換器が配置された位置の吹出温度を含み、第1の吹出温度と第1の目標温度との間の第1の温度差が第1の温度差しきい値以下である場合、または乗員室冷房モードの第1の動作時間が第1の所定時間以上である場合に、デュアルモードステージに入る。
【0062】
冷房需要レベルが緊急状態となる場合に、バッテリー冷房モードに入り、第1の位置のクーラント液温度をリアルタイムで測定し、第1の位置は、クーラント液循環システムに含まれるバッテリー冷却回路内のバッテリー冷却配管の入口を含み、クーラント液温度と第2の目標温度との間の第2の温度差が第2の温度差しきい値以下である場合、またはバッテリー冷房モードの第2の動作時間が第2の所定時間以上である場合に、デュアルモードステージに入る。
【0063】
なお、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要がある場合に、理想的には、車載のヒートポンプシステムとクーラント液循環システムのそれぞれの定格電力が十分に大きければ、車載のヒートポンプシステムは従来の冷房方式(すなわち空調の冷房原理)に従って乗員室を個別に冷房することができ、クーラント液循環システムは従来の方式(すなわちバッテリーのクーラント液が循環し熱伝達によってバッテリーの熱を奪う)に従ってバッテリーを個別に冷房することができ、この2つの冷房過程は、独立した冷房過程であり、結合される必要がない。
【0064】
しかし、現実的には、コストの制約により、車載のヒートポンプシステムとクーラント液循環システムのそれぞれの定格電力は制限されており、すなわち目標車両の総冷房電力は制限されており、乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要がある場合の総冷房電力需求を満たすことができず、つまり、この場合、目標車両の総冷房需要電力は総冷房電力を上回りなっている。つまり、本願の実施例により提供される車両冷房制御方法は、乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があり、目標車両の総冷房需要電力が総冷房電力を上回る場合に実行される方法である。
【0065】
しかし、この場合、車載のヒートポンプシステムとクーラント液循環システムの総冷房電力が乗員室の第1の冷房需要電力又はバッテリーの第2の冷房需要電力のいずれか以上であるため、本願の実施例により提供される車両冷房制御方法は、車載のヒートポンプシステムとクーラント液循環システムを組み合わせ、総冷房電力を第1の冷房需要電力と第2の冷房需要電力に順次配分して、乗員室の冷房需要を優先させることで、配分方式の技術案を最適化し、冷房需要と総冷房供給との間の矛盾を克服する。
【0066】
S204では、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定する。
【0067】
本ステップでは、バッテリーの冷房レベルが低く、すなわち非緊急状態となる場合に、乗員室の快適性を優先させるという原則を基にする制御方法により、乗員室を個別に冷房するステージでは、圧縮機を使用して蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器である、内部熱交換器の前にある電子膨張弁すなわち第1の電子膨張弁を使用して外部凝縮器すなわち外部熱交換器の過冷却度を制御することで、システム全体の安定性及び安全性を向上させる。同時に、ヒートポンプシステムに冷房性能を集中させるために、マルチシステム熱交換器である、Chiller冷凍機の冷媒送入端にある電子膨張弁すなわち第2の電子膨張弁を閉鎖する。乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するステージに入った後、圧縮機により蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により外部凝縮器の過冷却度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端にある電子膨張弁により蒸発器吹出温度と目標蒸発器吹出温度との差を測定し、ゆっくりと開弁したり、ゆっくりと閉弁したり、開度をそのままに維持したりする。このように、圧縮機と第2の電子膨張弁とを協働させることで、乗員室冷房への優先配分を完成させ、ユーザの快適な体験を確保する。
【0068】
具体的に、乗員室とバッテリーとの両方に同時に冷房需要があり、かつバッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、乗員室冷房モードでは、図1に示すように、圧縮機101により蒸発器102の吹出温度、すなわち蒸発器102の空調ボックス120の取付位置の吹出側における空気温度を制御し、蒸発器102の前にある電子膨張弁106により外部の凝縮器103の過冷却度を制御し、Chiller冷凍機104の前にある電子膨張弁105を閉鎖する。
【0069】
乗員室とバッテリーのデュアル冷房モードステージに入ると、ゆっくりと開弁したり、ゆっくりと閉弁したり、開度をそのままに維持したりするために、圧縮機101により蒸発器102の吹出温度を制御し、蒸発器102の前にある電子膨張弁106により外部の凝縮器103の過冷却度を制御し、Chiller冷凍機104の前にある電子膨張弁105により蒸発器102の吹出温度と目標吹出温度との差を測定する。
【0070】
本ステップでは、冷房需要レベルが高く、すなわち緊急状態となる場合に、車両すなわちシステムの安全を確保するために、バッテリーを個別に冷房するステージに入ることを優先させ、この場合に、圧縮機により冷房液回路におけるバッテリー入口の位置でのクーラント液温度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁を比較的小さい開度に固定することで、乗員室の冷房を両立させ、小部分の冷房性能を乗員室に配分する。つまり、バッテリーの安全を確保しつつ、依然としてユーザの快適性需要を考慮すると、ユーザの使用体験を向上させることができる。乗員室とバッテリーとの両方を同時に冷房するステージに入った後、圧縮機により冷房液回路におけるバッテリー入口の位置でのクーラント液温度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により蒸発器吹出温度を制御すると同時に、バッテリー入水口水温と目標入水口水温との差及びバッテリー入水口水温の変化速度を測定し、最終的に、蒸発器の前にある電子膨張弁の開度すなわち第2の電子膨張弁の開度を決定する。このようにすると、冷房能力をリアルタイムで且つ柔軟にスケジューリングして、乗員室とバッテリーへの冷房性能の配分の均衡性を達成し、システムの安全を維持するとともに、ユーザの乗車快適性を確保することができる。
【0071】
具体的に、図1に示すように、乗員室とバッテリーとの両方に同時に冷房需要があり、かつバッテリーの冷房レベルは緊急状態である場合に、まずバッテリー冷房モードに入り、圧縮機101によりバッテリー入水口水温を制御し、Chiller冷凍機104の前にある電子膨張弁105により過冷却度を制御し、蒸発器102の前にある電子膨張弁106を比較的小さい開度に固定する。乗員室とバッテリーのデュアル冷房モードステージに入ると、圧縮機101によりバッテリー入水口水温を制御し、Chiller冷凍機104の前にある電子膨張弁105により過冷却度を制御し、蒸発器102の前にある電子膨張弁106により蒸発器の吹出温度を制御すると同時に、バッテリー入水口水温と目標入水口水温との差及びバッテリー入水口水温の変化速度を測定し、最終的に電子膨張弁106の開度を决定する。
【0072】
なお、上記した制御はいずれも、閉ループ制御を採用しているが、当業者であれば、実際の状況に応じて所望の閉ループ制御モデルを選択することができ、例えば、PID(Proportion Integral Differential)比例積分微分制御、ニューラルネットワーク制御モデルなどが挙げられ、本願はそれを限定しない。
【0073】
本願の実施例は、車両冷房制御方法を提供し、目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定し、そして温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定し、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定し、この後、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定し、冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、シングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。新エネルギー自動車の冷房能力をどのように配分及び制御するかという技術的問題は解決され、乗員室の快適性を優先して確保しつつ、車両の総冷房性能を柔軟に配分することによって、バッテリーへの冷房を効果的に確保できるという技術的効果は達成される。
【0074】
S203及びS204における、バッテリーの冷房需要が非緊急状態である場面及びバッテリーの冷房需要が緊急状態である場面という2つの場面での異なる制御方式について、より詳細に説明するために、以下、具体的な実施例を例にして説明する。
【0075】
まず、バッテリーの冷房需要が非緊急状態である場合の制御方法について説明する。
【0076】
図3は、本願の実施例により提供される他の車両冷房制御方法のフローチャートである。図3に示すように、当該車両冷房制御方法の具体的なステップは、S301~307を含む。
【0077】
S301では、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があり、かつバッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態であることが検知された場合に、乗員室冷房モードに入り、第1の電子膨張弁に閉鎖命令を送信する。
【0078】
本ステップでは、第1の電子膨張弁は、マルチシステム熱交換器の冷媒送入端に取り付けられており、マルチシステム熱交換器は、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間の熱交換を可能にするために用いられる。
【0079】
具体的に、図1に示すように、第1の電子膨張弁は電子膨張弁105、マルチシステム熱交換器はChiller冷凍機104である。電子膨張弁105に閉鎖命令を送信すると、ヒートポンプシステムの冷房性能をすべて乗員室の冷房に使用し、乗員室の気温を所定温度に迅速に達させることができる。
【0080】
S302では、第1の吹出温度及び第1の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第1の閉ループ制御命令を決定する。
【0081】
本ステップでは、第1の吹出温度は内部熱交換器が配置された位置の吹出温度を含む。
【0082】
本実施例では、図1に示すように、第1の吹出温度は蒸発器102の空調ボックス120の吹出側における気温で、送風機121は乗員室内の空気を蒸発器102に送風して冷却し、第1の閉ループ制御モデルにより圧縮機の動作状態を制御することで、乗員室の気温を目標温度まで迅速に低下させる。
【0083】
S303では、第1の所定位置の過冷却度及び第2の閉ループ制御モデルに基づき、第2の電子膨張弁の第2の閉ループ制御命令を決定する。
【0084】
本ステップでは、第1の所定位置は外部熱交換器の送入端を含み、第2の電子膨張弁は内部熱交換器の送入端に取り付けられている。
【0085】
本実施例では、図1に示すように、外部熱交換器は凝縮器103、第1の所定位置は凝縮器103の送入端で、凝縮器103の送入端にある電子膨張弁を直接に制御する従来の技術とは異なり、本願は、内部熱交換器すなわち蒸発器102の送入端にある電子膨張弁106を制御することで凝縮器103の送入端の過冷却度を間接的に制御するため、蒸発器102と凝縮器103をより安定的かつ安全的に協働させる。
【0086】
S304では、第1の吹出温度と第1の目標温度との間の第1の温度差が第1の温度差しきい値以下であること、または乗員室冷房モードの第1の動作時間が第1の所定時間以上であることが検知された場合に、デュアルモードステージに入る。
【0087】
本ステップでは、デュアルモードステージは、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するために用いられる。乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するために、マルチシステム熱交換器を使用し、クーラント液循環システム内のクーラント液をヒートポンプシステム内のガス状冷媒による空冷で冷却する必要がある。つまり、マルチシステム熱交換器がヒートポンプシステムの冷房性能をクーラント液循環システムに配分することは、目標車両の総冷房性能をスケジューリングする機能を達成している。
【0088】
具体的に、図1に示すように、マルチシステム熱交換器はChiller冷凍機104であり、第1の電子膨張弁すなわち電子膨張弁105を開けば、デュアルモードステージに入ることができる。
【0089】
S305では、冷房需要レベル、第1の吹出温度及び目標温度に応じて、第1の電子膨張弁の開度制御命令を決定する。
【0090】
本ステップでは、開度制御命令は開弁速度及び閉弁速度を含み、冷房需要レベルは開弁速度と正の相関関係にあり、閉弁速度と負の相関関係にある。
【0091】
選択的に、開度制御命令は開度上限値をさらに含み、冷房需要レベルは開度上限値と正の相関関係にある。
【0092】
具体的に、Chiller冷凍機104の前にある電子膨張弁105の開弁と閉弁速度は、バッテリーの冷房需要レベルに応じて調整される。冷房レベルが高いほど、電子膨張弁105の開弁は速くなり、閉弁は遅くなるが、冷房レベルが低いほど、電子膨張弁105の開弁は遅くなり、閉弁は速くなる。
【0093】
Chiller冷凍機104の前にある電子膨張弁105の開度は上限値が設定されており、冷房レベルが高いほど、上限値は大きくなるが、冷房レベルが低いほど、上限値は小さくなる。
【0094】
すると、異なる冷房需要レベルに応じて目標車両の総冷房性能を柔軟に配分することができる。
【0095】
S306では、第1の吹出温度及び第3の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第3の閉ループ制御命令を決定する。
【0096】
本ステップでは、圧縮機を使用して蒸発器吹出側の吹出温度を閉ループ制御している。
【0097】
S307では、第1の所定位置の過冷却度及び第4の閉ループ制御モデルに基づき、第2の電子膨張弁の第4の閉ループ制御命令を決定する。
【0098】
ステップS306及びS307は、ステップS302及びS303と閉ループ制御モデルが同じであるようにすることができる。すると、コントローラー又は処理モジュール又はクラウドサーバの計算量を削減することができる。
【0099】
1つの可能な設計では、閉ループ制御モデルはいずれも異なり、これは、シングルモードステージでは、デュアルモードステージに比べてその安定性要件が低いためであり、したがって、シングルモードステージでは、閉ループ制御モデルは、調整の迅速さを重要視する傾向がある一方、デュアルモードステージは、オーバシュート量及び安定性の制御を重要視する傾向がある。
【0100】
本願の実施例は、車両冷房制御方法を提供し、バッテリーの冷房レベルが低く、すなわち非緊急状態となる場合に、乗員室の快適性を優先させるという原則を基にする制御方法により、乗員室を個別に冷房するステージでは、圧縮機を使用して蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器である、内部熱交換器の前にある電子膨張弁すなわち第1の電子膨張弁を使用して外部凝縮器すなわち外部熱交換器の過冷却度を制御することで、システム全体の安定性及び安全性を向上させる。同時に、ヒートポンプシステムに冷房性能を集中させるために、マルチシステム熱交換器である、Chiller冷凍機の冷媒送入端にある電子膨張弁すなわち第2の電子膨張弁を閉鎖する。乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するステージに入った後、圧縮機により蒸発器吹出温度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により外部凝縮器の過冷却度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端にある電子膨張弁により蒸発器吹出温度と目標蒸発器吹出温度との差を測定し、ゆっくりと開弁したり、ゆっくりと閉弁したり、開度をそのままに維持したりする。このように、圧縮機と第2の電子膨張弁とを協働させることで、乗員室冷房への優先配分を完成させ、ユーザの快適な体験を確保する。
【0101】
次に、バッテリーの冷房需要が緊急状態である場合の制御方法について説明する。
【0102】
図4は、本願の実施例により提供される別の車両冷房制御方法のフローチャートである。図4に示すように、当該車両冷房制御方法の具体的なステップは、S401~S406を含む。
【0103】
S401では、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があり、かつバッテリーの冷房需要レベルが緊急状態であることが検知された場合に、バッテリー冷房モードに入り、第1の位置のクーラント液温度をリアルタイムで測定する。
【0104】
本ステップでは、第1の位置は、クーラント液循環システムに含まれるバッテリー冷却回路内のバッテリー冷却配管の入口を含む。
【0105】
S402では、クーラント液温度及び第5の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第5の閉ループ制御命令を決定する。
【0106】
本ステップでは、圧縮機主要制御温度はバッテリークーラント液の温度とすることで、ヒートポンプシステムの冷房性能をバッテリーの冷房に集中させ、バッテリーの温度を迅速に低下させることができる。
【0107】
S403では、第2の所定位置の過冷却度及び第6の閉ループ制御モデルに基づき、第1の電子膨張弁の第6の閉ループ制御命令を決定する。
【0108】
本ステップでは、第2の所定位置はマルチシステム熱交換器の冷媒送入端を含む。冷媒がマルチシステム熱交換器において高効率的な動作状態にあるようにするために、第1の電子膨張弁を制御して過冷却度を調整する必要がある。
【0109】
具体的に、図1に示すように、マルチシステム熱交換器はChiller冷凍機104、第1の電子膨張弁は電子膨張弁105であり、電子膨張弁105の異なる開度値に応じてChiller冷凍機104の冷媒送入端の過冷却度を制御する。
【0110】
S404では、送風機風量、送風温度及び目標吹出温度に応じて、第2の電子膨張弁の予め設定された開度命令を決定する。
【0111】
本ステップでは、予め設定された開度命令は、第2の電子膨張弁の開度を所定開度に固定設定するために用いられ、送風温度は、内部熱交換器が配置された位置の送風側の温度を含み、目標吹出温度は、内部熱交換器が配置された位置の吹出側の所定温度である。
【0112】
具体的に、まず、冷房負荷を算出し、その1つの可能な実現形態は、次のように示される。
冷房負荷=(送風温度-目標吹出温度)*送風機風量*空気比熱値
【0113】
そして、冷房負荷と第2の電子膨張弁の開度との間の対応関係に従って、予め設定された開度命令を決定する。
【0114】
本実施例では、予め設定された開度命令に対応する所定開度は開度しきい値以下、例えば、5%~10%以下とする。つまり、比較的小さい開度に維持することで、バッテリーの冷房に大きな影響を及ぼすこともなければ、吹出口が依然として冷房していることをユーザに感じさせることもでき、これによって、ユーザはヒートポンプシステムが動作していない誤解を生成することなく、ユーザの使用体験感は向上する。
【0115】
S405では、クーラント液温度と第2の目標温度との間の第2の温度差が第2の温度差しきい値以下であること、またはバッテリー冷房モードの第2の動作時間が第2の所定時間以上であることが検知された場合に、デュアルモードステージに入る。
【0116】
S406では、第5の閉ループ制御命令、第6の閉ループ制御命令、及び予め設定された開度命令に基づき、同時に、第2の温度差及びクーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定する。
【0117】
本ステップでは、圧縮機及び第1の電子膨張弁への閉ループ制御を続行すると同時に、この後第2の電子膨張弁の開度を適当に調整するために、クーラント液温度と第2の目標温度との間の第2の温度差、及びクーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定する。
【0118】
具体的に、(1)第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回り、かつ第2の温度差が所定温度差上限以下であり、さらに、変化速度が第1の速度しきい値を下回る場合に、第1の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を減少させる。
【0119】
本ステップでは、第1の所定方式は、第2の電子膨張弁の開度を線形的に減少させる方式にしてもよく、その減少する線形的傾きがバッテリーの冷房需要レベルに対応し、冷房需要レベルが高いほど、その傾きの絶対値は大きくなる。
【0120】
選択的に、第1の所定方式は、双曲線関数や反比例関数を基にした方式などの非線形的方式にしてもよい。冷房需要レベルが高いほどその開度の減少速度が速くなることに変わりがない。
【0121】
例えば、TDwater<バッテリー入水口水温-目標入水口水温≦TDwaterUp、かつバッテリー入水口水温の変化速度<VTwater1の場合、蒸発器の前にある電子膨張弁の開度を減少させる。この場合、バッテリーの冷房需要は低レベルである。
【0122】
(2)変化速度が第1の速度しきい値以上であり、かつ変化速度が第2の速度しきい値を下回り、さらに、第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回る場合に、第2の電子膨張弁の開度をそのままに維持し、第2の速度しきい値は第1の速度しきい値を上回る。
【0123】
例えば、バッテリー入水口水温-目標入水口水温>TDwater、かつVTwater1≦バッテリー入水口水温の変化速度<VTwater2の場合、蒸発器の前にある電子膨張弁の開度をそのままに維持する。この場合、バッテリーの冷房需要に変わりがないと見なされてもよい。
【0124】
(3)第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回り、かつ変化速度が第2の速度しきい値以上である場合に、第2の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を増大させる。
【0125】
本ステップでは、第2の所定方式は第2の電子膨張弁の開度を線形的に増大させる方式とすることができ、増大する線形的傾きはバッテリーの冷房需要レベルに対応し、冷房需要レベルが高いほど、その傾きの絶対値は小さくなる。
【0126】
選択的に、第2の所定方式は、双曲線関数や反比例関数を基にした方式などの非線形的方式にしてもよい。冷房需要レベルが高いほどその開度の増大速度は遅くなることに変わりがない。
【0127】
例えば、バッテリー入水口水温-目標入水口水温>TDwater、かつバッテリー入水口水温の変化速度≧VTwater2の場合、ヒートポンプシステムの冷房性能をChiller冷凍機104に配分してバッテリークーラント液の温度を下げるために、蒸発器の前にある電子膨張弁の開度を増大させる。この場合、バッテリーの冷房需要は高レベルである。
【0128】
(4)第2の温度差が所定温度差上限を上回る場合に、第3の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を減少させる。
【0129】
本ステップでは、第3の所定方式は、第2の電子膨張弁の開度を線形的に減少させる方式とすることができ、その減少する線形的傾きがバッテリーの冷房需要レベルに対応し、冷房需要レベルが高いほど、その傾きの絶対値は大きくなる。
【0130】
選択的に、第3の所定方式は、双曲線関数や反比例関数を基にした方式などの非線形的方式にしてもよい。冷房需要レベルが高いほどその開度の減少速度が速くなることに変わりがない。
【0131】
例えば、バッテリー入水口水温-目標入水口水>TDwaterUpの場合、蒸発器の前にある電子膨張弁の開度を減少させる。この場合、バッテリーの冷房需要は最も高レベルである。
【0132】
(5)第2の温度差が第2の温度差しきい値以下である場合に、第2の温度差及び第7の閉ループ制御モデルに基づき、第2の電子膨張弁の第7の閉ループ制御命令を決定する。
【0133】
例えば、バッテリー入水口水温-目標入水口水温≦TDwaterの場合、蒸発器の前にある電子膨張弁により蒸発器温度を閉ループで制御する。
【0134】
さらに、バッテリーの温度は動力出力とも関係があり、電気使用量が増加すると、バッテリー温度も迅速に上昇するため、このとき、バッテリーの安全を確保するために、バッテリー温度が高すぎることが測定された場合に、バッテリー冷房に冷房性能を集中させて配分することで、バッテリー温度を迅速に通常範囲に回復させる。
【0135】
つまり、乗員室とバッテリーのデュアル冷房モードステージに入ると、本願により提供される車両冷房制御方法は、
バッテリーの温度が第1の温度しきい値以上であることが検知された場合に、第2の電子膨張弁を閉鎖し、バッテリーの温度が第2の温度しきい値以下になった後、クーラント液温度と第2の目標温度との間の温度差、及びクーラント液温度の変化速度に対するリアルタイム測定を再開し、第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップをさらに含む。
【0136】
具体的に、バッテリー本体温度≧TBettry1の場合、蒸発器の前にある電子膨張弁を閉鎖し、バッテリー本体温度≦TBettry2となった後、上記した制御を再開する。
【0137】
本願の実施例は、車両冷房制御方法を提供し、冷房需要レベルが高く、すなわち緊急状態となる場合に、車両すなわちシステムの安全を確保するために、バッテリーを個別に冷房するステージに入ることを優先し、この場合に、圧縮機により冷房液回路におけるバッテリー入口の位置でのクーラント液温度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁を比較的小さい開度に固定することで、乗員室の冷房を両立させ、小部分の冷房性能を乗員室に配分する。つまりバッテリーの安全を確保しつつ、依然としてユーザの快適性需要を考慮すると、ユーザの使用体験を向上させることができる。乗員室とバッテリーとの両方を同時に冷房するステージに入った後、圧縮機により冷房液回路におけるバッテリー入口の位置でのクーラント液温度を制御し、Chiller冷凍機の冷媒送入端の前にある電子膨張弁により過冷却度を制御し、蒸発器の前にある電子膨張弁により蒸発器吹出温度を制御すると同時に、バッテリー入水口水温と目標入水口水温との差及びバッテリー入水口水温の変化速度を測定し、最終的に、蒸発器の前にある電子膨張弁の開度すなわち第2の電子膨張弁の開度を決定する。このようにすると、冷房能力をリアルタイムで且つ柔軟にスケジューリングして、乗員室とバッテリーへの冷房性能の配分の均衡性を達成し、システムの安全を維持するとともに、ユーザの乗車快適性を確保する。
【0138】
図5は、本願の実施例により提供される車両冷房制御装置の構造概略図である。当該画像処理装置500は、ソフトウェア、ハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって実装され得る。
【0139】
図5に示すように、当該画像処理装置500は、測定モジュール501及び処理モジュール502を含み、
測定モジュール501は、目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定するために用いられ、
処理モジュール502は、温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定するために用いられ、
測定モジュール501は、目標車両の乗員室とバッテリーの冷房需要を測定するためにさらに用いられ、
処理モジュール502は、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定することと、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定することと、にさらに用いられ、
冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、シングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。
【0140】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
バッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、乗員室冷房モードに入り、内部熱交換器が配置された位置の吹出温度を含む第1の吹出温度をリアルタイムで測定することと、
第1の吹出温度と第1の目標温度との間の第1の温度差が第1の温度差しきい値以下である場合、または乗員室冷房モードの第1の動作時間が第1の所定時間以上である場合に、デュアルモードステージに入ることと、に用いられる。
【0141】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
バッテリーの冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、乗員室冷房モードに入った後、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間の熱交換を可能にするために用いられるマルチシステム熱交換器の冷媒送入端に取り付けられた第1の電子膨張弁に閉鎖命令を送信することと、
第1の吹出温度及び第1の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第1の閉ループ制御命令を決定することと、
外部熱交換器の送入端を含む第1の所定位置の過冷却度及び第2の閉ループ制御モデルに基づき、内部熱交換器の送入端に取り付けられている第2の電子膨張弁の第2の閉ループ制御命令を決定することと、に用いられる。
【0142】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
バッテリー冷房モードに入った後、クーラント液温度及び第5の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第5の閉ループ制御命令を決定することと、
マルチシステム熱交換器の冷媒送入端を含む第2の所定位置の過冷却度及び第6の閉ループ制御モデルに基づき、第1の電子膨張弁の第6の閉ループ制御命令を決定することと、
送風機風量、送風温度及び目標吹出温度に応じて、第2の電子膨張弁の予め設定された開度命令を決定することと、に用いられ、
予め設定された開度命令は、第2の電子膨張弁の開度を所定開度に固定設定するために用いられ、送風温度は、内部熱交換器が配置された位置の送風側の温度を含み、目標吹出温度は、内部熱交換器が配置された位置の吹出側の所定温度である。
【0143】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
デュアルモードステージに入った後、第5の閉ループ制御命令、第6の閉ループ制御命令、及び予め設定された開度命令に基づき、同時に、第2の温度差及びクーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するために用いられる。
【0144】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回り、かつ第2の温度差が所定温度差上限以下であり、さらに、変化速度が第1の速度しきい値を下回る場合に、第1の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を減少させるために用いられる。
【0145】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
変化速度が第1の速度しきい値以上であり、かつ変化速度が第2の速度しきい値を下回り、さらに、第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回る場合に、第2の電子膨張弁の開度をそのままに維持するために用いられ、第2の速度しきい値は第1の速度しきい値を上回る。
【0146】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
第2の温度差が第2の温度差しきい値を上回り、かつ変化速度が第2の速度しきい値以上である場合に、第2の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を増大させるために用いられる。
【0147】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
第2の温度差が所定温度差上限を上回る場合に、第3の所定方式で第2の電子膨張弁の開度を減少させるために用いられる。
【0148】
1つの可能な設計では、処理モジュール502は、
第2の温度差が第2の温度差しきい値以下である場合に、第2の温度差及び第7の閉ループ制御モデルに基づき、第2の電子膨張弁の第7の閉ループ制御命令を決定するために用いられる。
【0149】
1つの可能な設計では、測定モジュール501は、バッテリーの温度を検知するためにさらに用いられ、
処理モジュール502は、
バッテリーの温度が第1の温度しきい値以上であることが検知された場合に、第2の電子膨張弁を閉鎖し、バッテリーの温度が第2の温度しきい値以下になった後、クーラント液温度と第2の目標温度との間の温度差、及びクーラント液温度の変化速度に対するリアルタイム測定を再開し、第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するためにさらに用いられる。
【0150】
なお、図5に係る実施例により提供される装置は、上記のいずれかの方法の実施例により提供される方法を実行することができ、その具体的な実現原理、技術的特徴、専門用語の説明、及び技術的効果が類似するため、ここで繰り返して説明しない。
【0151】
図6は、本願の実施例により提供される電子機器の構造概略図である。図6に示すように、当該電子機器600は、少なくとも1つのプロセッサ601及びメモリ602を備えることができる。図6は、プロセッサが1つある場合を例にした電子機器を示している。
【0152】
メモリ602は、プログラムを格納するために用いられる。具体的に、プログラムは、コンピュータ操作命令を含むプログラムコードを含むことができる。
【0153】
メモリ602は、高速RAMメモリを含むことができ、少なくとも1つの磁気ディスクメモリなどの不揮発性メモリ(non-volatile memory)をさらに含むこともできる。
【0154】
プロセッサ601は、メモリ602に記憶されたコンピュータ実行命令を実行して、以上の各方法の実施例に記載されている方法を実現するために用いられる。
【0155】
プロセッサ601は、中央処理装置(central processing unit、CPUとして略称)又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASICとして略称)とされてもよいし、あるいは、本願の実施例を実施する1つ又は複数の集積回路として構成されてもよい。
【0156】
選択的に、メモリ602は独立して配置されていてもよいし、プロセッサ601と集積されていてもよい。前記メモリ602は、プロセッサ601から独立しているデバイスである場合に、前記電子機器600は、
前記プロセッサ601と前記メモリ602とを接続するためのバス603をさらに備えることができる。バスは、業界規格アーキテクチャ(industry standard architecture、ISAとして略称)バス、外部デバイス相互接続(peripheral component、PCI)バス、または拡張業界規格アーキテクチャ(extended industry standard architecture、EISA)バスなどであってもよい。バスは、アドレスバス、データバス、制御バスなどに分類され得るが、バスは1本又は1種のみあることを意味するものではない。
【0157】
選択的に、実際に実装する際、メモリ602とプロセッサ601は、1つのチップに集積されて実装される場合、メモリ602とプロセッサ601は、内部インタフェースを通じて通信を完成させることができる。
【0158】
本願の実施例は、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、当該コンピュータ可読記憶媒体は、USBディスク、リムーバブルハードディスク、読み取り専用メモリ(read-only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、磁気ディスクまたは光ディスクなどプログラムコードを記憶可能な様々な媒体を含むことができ、具体的に、当該コンピュータ可読記憶媒体には、上記の各方法の実施例における方法で使用されるプログラム命令が記憶されている。
【0159】
本願の実施例は、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品をさらに提供し、当該コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されるとき、上記の各方法の実施例における方法は実施される。
【0160】
本願の実施例は、コンピュータプログラムをさらに提供し、当該コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されるとき、上記の各方法の実施例における方法は実施される。
【0161】
以上の説明は、本願の具体的な実施形態のみであるが、本願の保護範囲はこれらに限定されるものではなく、当業者が本願に記載された技術的範囲内で容易に思いつく変更又は置換は、本願の保護範囲内に含まれるものとする。そのため、本願の保護範囲は特許請求の範囲に準じるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
(1)バッテリー本体の温度及びバッテリーの昇温速度に応じて、バッテリーの冷房レベル(低、中、高、緊急など)を決定する。バッテリー冷房レベルが異なれば、バッテリー入水口の目標水温も異なり、冷房レベルが高いほど、目標水温は低くなる。本願は、安全の確保、バッテリー状態に対する正確な判断、ならびに、バッテリー冷房需要の優先度及び冷房量の配分比率に対する判断を目的としている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0138
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0138】
図5は、本願の実施例により提供される車両冷房制御装置の構造概略図である。当該車両冷房制御装置500は、ソフトウェア、ハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって実装され得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0139
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0139】
図5に示すように、当該車両冷房制御装置500は、測定モジュール501及び処理モジュール502を含み、
測定モジュール501は、目標車両のバッテリーの温度及び温度の変化速度をリアルタイムで測定するために用いられ、
処理モジュール502は、温度及び変化速度に応じてバッテリーの冷房需要レベルを決定するために用いられ、
測定モジュール501は、目標車両の乗員室とバッテリーの冷房需要を測定するためにさらに用いられ、
処理モジュール502は、目標車両の乗員室とバッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、バッテリーの現在の冷房需要レベルに応じて、目標車両が入る必要のある冷房モードを決定することと、冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定することと、にさらに用いられ、
冷房モードは、乗員室又はバッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、乗員室とバッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、シングルモードステージは、デュアルモードステージの前に配置される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両冷房制御方法であって、
目標車両のバッテリーの温度及び前記温度の変化速度をリアルタイムで測定するステップと、
前記温度及び前記変化速度に応じて前記バッテリーの冷房需要レベルを決定するステップと、
目標車両の乗員室と前記バッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップと、を含み、
前記冷房モードは、前記乗員室又は前記バッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、前記乗員室と前記バッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、前記シングルモードステージは、前記デュアルモードステージの前に配置される、ことを特徴とする車両冷房制御方法。
【請求項2】
前記シングルモードステージは、乗員室冷房モードを有し、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップは、
前記冷房需要レベルが非緊急状態である場合に、前記乗員室冷房モードに入り、内部熱交換器が配置された位置の吹出温度を含む第1の吹出温度をリアルタイムで測定するステップと、
前記第1の吹出温度と第1の目標温度との間の第1の温度差が第1の温度差しきい値以下である場合、または前記乗員室冷房モードの第1の動作時間が第1の所定時間以上である場合に、前記デュアルモードステージに入るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の車両冷房制御方法。
【請求項3】
前記乗員室冷房モードに入った後、マルチシステム熱交換器の冷媒送入端に取り付けられた第1の電子膨張弁に閉鎖命令を送信し、前記マルチシステム熱交換器は、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間の熱交換を可能にするために用いられ、
記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップの後、前記車両冷房制御方法は、
前記第1の吹出温度及び第1の閉ループ制御モデルに基づき、圧縮機の第1の閉ループ制御命令を決定するステップと、
外部熱交換器の送入端を含む第1の所定位置の過冷却度及び第2の閉ループ制御モデルに基づき、内部熱交換器の送入端に取り付けられた第2の電子膨張弁の第2の閉ループ制御命令を決定するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載の車両冷房制御方法。
【請求項4】
前記デュアルモードステージに入るステップの後、
前記冷房需要レベル、前記第1の吹出温度、及び前記目標温度に応じて、前記第1の電子膨張弁の開度制御命令を決定するステップと、
前記第1の吹出温度及び第3の閉ループ制御モデルに基づき、前記圧縮機の第3の閉ループ制御命令を決定するステップと、
前記第1の所定位置の過冷却度及び第4の閉ループ制御モデルに基づき、前記第2の電子膨張弁の第4の閉ループ制御命令を決定するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項3に記載の車両冷房制御方法。
【請求項5】
前記開度制御命令は開弁速度及び閉弁速度を含み、前記冷房需要レベルは、前記開弁速度と正の相関関係にあり、前記閉弁速度と負の相関関係にある、ことを特徴とする請求項4に記載の車両冷房制御方法。
【請求項6】
前記開度制御命令は開度上限値を含み、前記冷房需要レベルは前記開度上限値と正の相関関係にある、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の車両冷房制御方法。
【請求項7】
前記シングルモードステージはバッテリー冷房モードを有し、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するステップは、
前記冷房需要レベルが緊急状態である場合に、前記バッテリー冷房モードに入り、クーラント液循環システムに含まれるバッテリー冷却回路内の前記バッテリー冷却配管の入口を含む第1の位置のクーラント液温度をリアルタイムで測定するステップと、
前記クーラント液温度と第2の目標温度との間の第2の温度差が第2の温度差しきい値以下である場合、または前記バッテリー冷房モードの第2の動作時間が第2の所定時間以上である場合に、前記デュアルモードステージに入るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の車両冷房制御方法。
【請求項8】
前記バッテリー冷房モードに入るステップの後、前記冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップをさらに含み、前記目標制御対象は、第1の電子膨張弁、第2の電子膨張弁、及び圧縮機を含み、
これに応じて、前記冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
前記クーラント液温度及び第5の閉ループ制御モデルに基づき、前記圧縮機の第5の閉ループ制御命令を決定するステップと、
冷媒送入端を含む第2の所定位置の過冷却度及び第6の閉ループ制御モデルに基づき、ヒートポンプシステムとクーラント液循環システムとの間の熱交換を可能にするために用いられるマルチシステム熱交換器の前記冷媒送入端に取り付けられた前記第1の電子膨張弁の第6の閉ループ制御命令を決定するステップと、
送風機風量、送風温度、及び目標吹出温度に応じて、前記第2の電子膨張弁の予め設定された開度命令を決定するステップと、を含み、
前記予め設定された開度命令は、前記第2の電子膨張弁の開度を所定開度に固定設定するために用いられ、前記送風温度は、内部熱交換器が配置された位置の送風側の温度を含み、前記目標吹出温度は、前記内部熱交換器が配置された位置の吹出側の所定温度であり、前記第2の電子膨張弁は内部熱交換器の送入端に取り付けられている、ことを特徴とする請求項7に記載の車両冷房制御方法。
【請求項9】
前記デュアルモードステージに入った後、前記冷房モードに応じて、各目標制御対象の制御命令を決定するステップは、
前記第5の閉ループ制御命令、前記第6の閉ループ制御命令、及び前記予め設定された開度命令に基づき、同時に、前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の車両冷房制御方法。
【請求項10】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値を上回り、かつ前記第2の温度差が所定温度差上限以下であり、さらに、前記変化速度が第1の速度しきい値を下回る場合に、前記第2の電子膨張弁の開度を第1の所定方式で減少させるステップを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の車両冷房制御方法。
【請求項11】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記変化速度が第1の速度しきい値以上であり、かつ前記変化速度が第2の速度しきい値を下回り、さらに、前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値を上回る場合に、前記第2の電子膨張弁の開度をそのままに維持するステップを含み、前記第2の速度しきい値は前記第1の速度しきい値を上回る、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の車両冷房制御方法。
【請求項12】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値を上回り、かつ前記変化速度が第2の速度しきい値以上である場合に、前記第2の電子膨張弁の開度を第2の所定方式で増大させるステップを含む、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項13】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が所定温度差上限を上回る場合に、前記第2の電子膨張弁の開度を第3の所定方式で減少させるステップを含む、ことを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項14】
前記第2の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度をリアルタイムで測定して、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップは、
前記第2の温度差が前記第2の温度差しきい値以下である場合に、前記第2の温度差及び第7の閉ループ制御モデルに基づき、前記第2の電子膨張弁の第7の閉ループ制御命令を決定するステップを含む、ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項15】
前記バッテリーの温度が第1の温度しきい値以上であることが検知された場合に、前記第2の電子膨張弁を閉鎖し、前記バッテリーの温度が第2の温度しきい値以下になった後、前記クーラント液温度と前記第2の目標温度との間の温度差及び前記クーラント液温度の変化速度に対するリアルタイム測定を再開し、前記第2の電子膨張弁の開度調整命令を決定するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法。
【請求項16】
測定モジュール及び処理モジュールを含む車両冷房制御装置であって、
測定モジュールは、目標車両のバッテリーの温度及び前記温度の変化速度をリアルタイムで測定するために用いられ、
処理モジュールは、前記温度及び前記変化速度に応じて前記バッテリーの冷房需要レベルを決定するために用いられ、
前記測定モジュールは、前記目標車両の乗員室と前記バッテリーの冷房需要を測定するためにさらに用いられ、
前記処理モジュールは、目標車両の乗員室と前記バッテリーの両方に同時に冷房需要があることが検知された場合に、前記バッテリーの現在の前記冷房需要レベルに応じて、前記目標車両が入る必要のある冷房モードを決定するためにさらに用いられ、
前記冷房モードは、前記乗員室又は前記バッテリーのいずれかを個別に冷房するためのシングルモードステージと、前記乗員室と前記バッテリーの両方を同時に冷房するためのデュアルモードステージと、を含み、前記シングルモードステージは、前記デュアルモードステージの前に配置される、ことを特徴とする車両冷房制御装置。
【請求項17】
プロセッサ及び前記プロセッサと通信可能に接続されたメモリを備える電子機器であって、
前記メモリはコンピュータ実行命令を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶されたコンピュータ実行命令を実行することで、請求項1~15のいずれか1項に記載の車両冷房制御方法を実現する、電子機器。
【請求項18】
コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体にはコンピュータ実行命令が記憶されており、前記コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実施するために用いられる、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
プログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、コンピュータで前記コンピュータプログラムを動作させるとき、前記コンピュータが前記プログラムコード基づいて、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実行する、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【国際調査報告】