(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】多層壁を有するボトル形成プリフォーム、及びそのようなプリフォームを用いて得られるガス入り飲料ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240628BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580827
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022069374
(87)【国際公開番号】W WO2023285413
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100168734
【氏名又は名称】石塚 淳一
(72)【発明者】
【氏名】チメット, ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ベガール, マチュー
【テーマコード(参考)】
3E033
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA15
3E033BA18
3E033BA21
3E033BA30
3E033BB01
3E033BB08
3E033CA16
3E033DA03
3E033DB01
3E033GA02
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AK54B
4F100AL01B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100GB23
4F100JD02B
(57)【要約】
本発明は、ガス入り飲料用のボトルを形成するためのプリフォーム(10)に関し、プリフォームは、プリフォームの中央下端に位置する射出点(22)から金型内での射出によって得られる多層壁を備え、多層壁は、内層(24)と、外層(26)と、内層と外層との間に挟まれたガスバリア層(28)と、を含む。ガスバリア層(26)は、有利には、下端部(30)を除いてプリフォームの多層壁の全体に沿って延びており、バリア層のないこの下端部(30)は、5度~80度の立体角(α)によって境界画定されるベース形成部(20)の中心部であり、この立体角の頂点(C)は、ベース形成部(20)の半球下側セグメントの中心である。そのようなプリフォームをブロー成形することによって得られるボトルは、5度~50度の立体角内にバリア層のない下端部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス入り飲料用のボトル(100)を形成するためのプリフォーム(10)であって、前記プリフォームは、前記プリフォームの下端に位置する射出点(22)から金型内での射出によって得られるプリフォームの多層壁(8)を備え、前記多層壁(8)は、前記プリフォームの主軸(X)に沿って前記プリフォームの開放上端(12)から閉鎖下端(22)まで、
ネックフィニッシュ部(14)と、
前記ボトルの本体部(118)を形成するように構成された本体形成部(18)と、
前記ボトルのベース部(120)を形成するように構成されたベース形成部(20)であって、全体的に半球状の下側セグメントを有する、ベース形成部と、を画定しており、
前記プリフォームの前記多層壁(8)は、
前記ボトル(100)の前記ガス入り飲料の側を形成するように意図された内面(80)を有する内層(24)と、
前記ボトル(100)の外側を形成するように意図された外面(81)を有する外層(26)と、
前記内層と前記外層との間に挟まれたガスバリア層(28)と、を含む、プリフォームにおいて、
前記ガスバリア層(26)が、バリア層のない下端部(30)を除いて前記プリフォームの前記多層壁(8)の全体に沿って延びており、前記バリア層のない下端部(30)が、5度~80度の立体角(α)内で前記射出点(22)を中心に延びる前記ベース形成部(20)の中心部であり、前記立体角の頂点(C)が、前記ベース形成部の前記全体的に半球状の下側セグメントの中心である、ことを特徴とする、
プリフォーム。
【請求項2】
前記内層(24)が、PETベースのポリマー及びコポリマーの群から選択される材料で作製されており、PETは、ポリエチレンテレフタレートを意味し、前記外層(26)が、PETベースのポリマー及びコポリマーの群から選択される材料で作製されており、前記ガスバリア層(28)が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)を含む2,5-フランジカーボネートポリエステル、ポリ(トリメチレンフラン-2,5-ジカルボキシレート)(PTF)、ポリ(ネオペンチルグリコール2,5-フラノエート)(PNF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PEN/PETコポリマー、ポリトリメチレンナフタレート(PTN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)をベースとするポリマー又はコポリマー;ポリアクリロニトリル(PAN)、ナノクレイ、MXD6(ナイロン);ナノナイロン-MXD6及びポリブタジエンの混合物、の群から選択される材料で作製されている、ことを特徴とする、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項3】
前記プリフォーム(10)は、50cl未満の容積を有するガス入り飲料ボトル(100)を形成するように構成されており、前記バリア層のない下端部(30)を境界画定する前記立体角(α)は、5度~80度である、請求項1又は2に記載のプリフォーム。
【請求項4】
前記プリフォーム(10)は、50cl~100clの容積を有するガス入り飲料ボトル(100)を形成するように構成されており、前記バリア層のない下端部(30)を境界画定する前記立体角(α)は、5度~70度である、請求項1又は2に記載のプリフォーム。
【請求項5】
前記プリフォーム(10)は、100cl超の容積を有するガス入り飲料ボトル(100)を形成するように構成されており、前記バリア層のない下端部(30)を境界画定する前記立体角(α)は、5度~60度である、請求項1又は2に記載のプリフォーム。
【請求項6】
前記バリア層のない下端部(30)の任意の点における前記内層(24)及び前記外層(26)の累積厚さは、前記ベース形成部(20)の前記下側半球セグメントと前記ベース形成部(20)の上側円筒セグメントとの間の接合部(34)の任意の点における前記内層(24)及び前記外層(26)の累積厚さよりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載のプリフォーム。
【請求項7】
ガス入り飲料ボトル(100)であって、前記ボトルは、前記ボトルの主軸(X)に沿って前記ボトルの開放上端(112)から閉鎖下端(122)まで、
ネック部(114)と、
本体部(118)と、
ベース部(120)と、を画定する多層壁を備え、
前記ボトルの前記多層壁は、
前記ガス入り飲料と接触するように意図された内面を有する内層(24)と、
前記ボトルの外側を形成する外面を有する外層(26)と、
前記内層と前記外層との間のガスバリア層(28)と、を含む、ガス入り飲料ボトルにおいて、
前記ガスバリア層(28)が、バリア層のない下端部(130)を除いて前記ボトルの前記多層壁の全体に沿って延びており、前記バリア層のない下端部(130)は、5度~50度の立体角(β)によって境界画定される前記ベース部(120)の中心部であり、前記立体角の頂点が、前記軸に沿った前記内面から前記本体部(118)の最大半径(R)に等しい距離で前記ボトルの前記主軸上にある、ことを特徴とする、ガス入り飲料ボトル。
【請求項8】
前記バリア層のない下端部(130)は、基準厚さの10%超の厚さを有し、前記ベース部(120)における前記多層壁の残部は、前記基準厚さの10%以下の厚さを有し、前記基準厚さは、前記ボトルの前記主軸(X)から3mmにある前記ベース部の任意の点における厚さである、請求項8に記載のガス入り飲料ボトル。
【請求項9】
前記ボトルの前記バリア層のない下端部(130)の任意の点における前記ボトルの前記多層壁の厚さは、前記ボトルの前記ベース部(120)と前記本体部(118)との間の接合部の任意の点における前記ボトルの前記多層壁の厚さよりも大きい、請求項8又は9に記載のガス入り飲料ボトル。
【請求項10】
前記内層(24)が、PETベースのポリマー及びコポリマーの群から選択される材料で作製されており、PETは、ポリエチレンテレフタレートを意味し、前記外層(26)が、PETベースのポリマー及びコポリマーの群から選択される材料で作製されており、前記ガスバリア層(28)が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)を含む2,5-フランジカーボネートポリエステル、ポリ(トリメチレンフラン-2,5-ジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマー、ポリ(ネオペンチルグリコール2,5-フラノエート)(PNF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PEN/PETコポリマー、をベースとするポリマー又はコポリマー;ポリトリメチレンナフタレート(PTN)、ポリブチレンナフタレート(PBN);ポリアクリロニトリル(PAN)、ナノクレイ、MXD6(ナイロン);ナノナイロン-MXD6、MXD6(ナイロン)及びポリブタジエンの混合物、の群から選択される材料で作製されている、ことを特徴とする、請求項9又は10に記載のガス入り飲料ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス入り飲料容器、特に炭酸水ボトルなどの炭酸飲料ボトルを形成するために使用されるポリマーベースのプリフォームに関する。より詳細には、本発明は、ガスバリア層を含む多層壁を有するガス入り飲料ボトル形成プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)容器は、透明特性と良好な機械的特性との組み合わせに起因して、ガス入り清涼飲料、ジュース、水、及び他の飲料を包装するために広く使用されている。
【0003】
しかしながら、酸素及び二酸化炭素の透過に対するPETの相対的感受性は、小さいサイズのパッケージ及び酸素感受性製品の包装に関する用途を制限する。より一般的には、CO2に対するPETの不十分な不透過性は、ガス入り製品の保存可能期間を短縮させる。
【0004】
小さなガス分子の透過に対するPETのバリアを強化するために、様々な技術が開発されてきた。
【0005】
これらの技術のうちの1つは、2つ以上のPET層の間に高ガスバリア材料が挟まれている多層容器を提供することにある。
【0006】
ガスバリア材料としてナイロン(MXD6)を使用することが知られている。この材料は、2つの主要な問題を提起する。ナイロンを含有するPET多層容器は、リサイクルされると、黄色み及び曇りを引き起こす可能性がある。更に、このような多層容器はリサイクルすることが困難であり、不可能でさえある。更に、ナイロンは、国によっては飲料容器において制限され、禁止さえされつつある。
【0007】
これらの問題を克服するために、ナイロンバリアをPEFベースのバリアで置き換えることが提案されており、ここでPEFはポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートを意味する。このような方法は、国際公開第2016130748号に開示されている。
【0008】
この方法は、PETを劣化させることも、PET延伸比に実質的に影響を与えることもなく、つまり、プリフォームをブロー成形することによって容器を製造する際に既存の装置及び方法を利用することができることを意味する。容器設計及び方法は、PETボトル又は容器の透明度に悪影響を及ぼさないことも見出された。
【0009】
実際に、本質的にPETで作製された多層プリフォーム又は飲料容器においてPEFを使用する主な利点は、両方ともポリエステルである(一方、ナイロンはポリアミドである)ためにPEFがPETと混和性であることである。
【0010】
しかし、PEFの使用は、他の問題を引き起こす。具体的には、ガス入り飲料用の多層ボトル又はプリフォームにおいてPEFを使用する際の最も重要な欠点は、この材料がまだ工業規模で利用可能でないことであり、それにより、この材料は依然として非常に高価であるだけでなく、供給問題も生じ得る。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、既知の多層PET容器及びプリフォームと少なくとも同じレベルのバリア性能及び保存可能期間を提供しながら、低減された製造コストで、既知の工業的方法によって得ることができる新規なガス入り飲料ボトル形成多層プリフォームを提供することである。本発明の別の目的は、供給問題を理由に製造が制限される可能性が低い多層プリフォームを提供することである。
【0012】
この目的のために、本発明は、ガス入り飲料用のボトルを形成するためのプリフォームを提案し、プリフォームは、プリフォームの下端に位置する射出点から金型内での射出によって得られる多層壁を備え、多層壁は、プリフォームの主軸に沿ってプリフォームの開放上端から閉鎖下端まで、
ネックフィニッシュ部と、
ボトルの本体部を形成するように構成された本体形成部と、
ボトルのベース部を形成するように構成されたベース形成部であって、全体的に半球状の下側セグメントを有するベース形成部と、を画定しており、
多層壁は、
ボトルのガス入り飲料の側を形成するように意図された内面を有する内層と、
ボトルの外側を形成するように意図された外面を有する外層と、
内層と外層との間に挟まれたガスバリア層と、を含む。
【0013】
本発明によるプリフォームは、ガスバリア層が、ガスバリア層のない下端部を除いてプリフォームの多層壁の全体に沿って延びており、ガスバリア層のないこの下端部が、5度~80度の立体角(solid angle)内で射出点を中心に延びるベース形成部の中心部であり、この立体角の頂点が、ベース形成部の全体的に半球形の下部セグメントの中心である、ことを特徴とする。
【0014】
後に示すように、本発明は、本発明によるプリフォームをブロー成形することによって得られるボトルにも及ぶ。本発明によるプリフォームは、従来の方法で、すなわち、金型内での射出によって製造される。通常のように、プリフォームの様々な層を構成する材料が(液体形態又は粘性形態で)連続的に射出される射出点は、プリフォームの下端の中心でプリフォームの主軸上に位置する。そして、ガスバリア層のない下端部は、射出点を含み、射出点を取り囲んでいる。
【0015】
次に、プリフォームを金型内でブローしてプリフォームを膨張させることにより、従来の方法でボトルを製造する。このブロー段階の間、射出点に近接する材料は延伸することが困難であり、したがってほとんど引き伸ばされない。したがって、射出点に近接する領域は、ボトルの残部よりも厚いままである。本発明は、この特徴を利用する。実際に、本発明に基づく思想は、射出点における及び射出点に近接するボトル壁の厚さがより大きいことにより、この射出点におけるガスバリア層及びこの射出点にしかるべく画定された区域におけるガスバリア層の欠如を補償できることである。
【0016】
上で定義したように、この区域(すなわち、バリア層のない下端部)は、5度~80度の立体角によって境界画定される。
【0017】
より正確には、プリフォームが(厳密に)50cl未満の容積を有するガス入り飲料ボトルを形成するように構成されている場合、ガスバリア層のない下端部を境界画定する立体角は、好ましくは5度~80度である。
【0018】
プリフォームが、50cl~100cl(これらの2つの値を含む)の容積を有するガス入り飲料ボトルを形成するように構成されている場合、ガスバリア層のない下端部を境界画定する立体角は、好ましくは5度~70度である。
【0019】
プリフォームが、(厳密に)100clを超える容積を有するガス入り飲料ボトルを形成するように構成されている場合、ガスバリア層のない下端部を境界画定する立体角は、好ましくは5度~60度である。
【0020】
本発明の可能な特徴によれば、内層は、PETベースのポリマー及びコポリマーの群から選択される材料で作製されている。同様に、外層は、PETベースのポリマー及びコポリマーの群から選択される材料で作製されている。
【0021】
更に、ガスバリア層は、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)を含む2,5-フランジカーボネートポリエステル、ポリ(トリメチレンフラン-2,5-ジカルボキシレート)(PTF)、ポリ(ネオペンチルグリコール2,5-フラノエート)(PNF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PEN/PETコポリマーをベースとするポリマー又はコポリマー;ポリトリメチレンナフタレート(PTN)、ポリブチレンナフタレート(PBN);ポリアクリロニトリル(PAN)、ナノクレイ、MXD6(ナイロン);ナノナイロン-MXD6及びポリブタジエンの混合物、の群から選択される材料で作製されている。
【0022】
それにもかかわらず、外層及び内層がPETで作製されている場合には、PETとの混和性がより高いことので、PEFベースの又は2,5-フランジカーボネートポリエステルベースのポリマー及びコポリマーがガスバリア層として好ましい。
【0023】
ガスバリア層のために選択された材料が何であっても、ガスバリア層のない下端部を提供することによって、ガスバリア層のために使用される材料の量は、本発明のおかげで低減される。これにより、ガスバリア層の材料としてPEFを選択することが可能になり、余分なコスト、及び供給問題に遭遇するリスクが制限される。
【0024】
PEFの選択は、リサイクルがより容易なボトルをもたらし、これは地球にとって有用である。それにもかかわらず、ガスバリア層のために別の材料が選択される場合であっても、本発明のおかげで、多層壁全体に存在するガスバリア層を有するプリフォームと比較してコスト削減が達成され得る。
【0025】
本発明の可能な特徴によれば、ガスバリア層のない下端部の任意の点における内層及び外層の累積厚さは、ベース形成部の下側半球セグメントとベース形成部の上側円筒セグメントとの間の接合部の任意の点における内層及び外層の累積厚さよりも大きい。
【0026】
より正確には、ガスバリア層のない下端部の任意の点における内層及び外層の累積厚さは、ベース形成部の下側半球セグメントと上側円筒セグメントとの間の接合部における内層及び外層の累積厚さよりも少なくとも300μm又は120%大きいことがある。
【0027】
本発明の可能な特徴によれば、ガスバリア層のない下端部の任意の点におけるプリフォームの多層壁の厚さ(内層及び外層の累積厚さ)は、ベース形成部の下側半球セグメントと上側円筒セグメントとの間の接合部におけるプリフォームの多層壁の厚さ(すなわち、ここでは、内層と、外層と、更にガスバリア層との累積厚さ)よりも大きい。
【0028】
本発明は、通常のブロー成形プロセスを使用して、本発明によるプリフォームから得られるボトルに及ぶ。
【0029】
換言すれば、本発明は、ガス入り飲料ボトルであって、ボトルは、ボトルの主軸に沿ってボトルの開放上端から閉鎖下端まで、
ネック部と、
本体部と、
ベース部と、を画定する多層壁を備え、
ボトルの多層壁は、
ガス入り飲料と接触するように意図された内面を有する内層と、
ボトルの外側を形成する外面を有する外層と、
内層と外層との間に挟まれたガスバリア層と、を含む、ガス入り飲料ボトルに及ぶ。
【0030】
本発明によるボトルは、ガスバリア層が、ガスバリア層のない下端部を除いてボトルの多層壁全体に沿って延びており、ガスバリア層のないこの下端部が、5度~50度の立体角によって境界画定されるベースの中心部であり、この立体角の頂点が、主軸に沿った内面から本体部の最大半径に等しい距離でボトルの主軸上にある、ことを特徴とする。
【0031】
本発明の可能な特徴によれば、ボトル内のガスバリア層のない下端部は、基準厚さの10%超の厚さを有し、ベース部におけるボトルの多層壁の残部は、基準厚さの10%以下の厚さを有し、基準厚さは、ボトルの主軸から3mmにあるベース部の任意の点における厚さである。換言すれば、ボトルの主軸から遠心(外向き)方向に従って、ガスバリア層のない下端部は、ボトルの多層壁の厚さが基準厚さの10%未満になるところで終端する。別の言い方をすれば、求心(内向き)方向に従って、ガスバリア層のない下端部は、ボトルの多層壁の厚さが基準厚さの10%超になるところから始まる。ボトルの主軸からのこの距離において、外層及び内層の累積厚さは、ガスバリア層の欠如を補償するのに十分である。
【0032】
本発明の特徴によれば、ボトルのガスバリア層のない下端部の任意の点におけるボトルの多層壁の厚さは、ボトルのベース部と本体部との間の接合部の任意の点におけるボトルの多層壁の厚さよりも大きい。
【0033】
ブロー成形によってボトルを得るために使用される金型は、通常、3つの部分、すなわち、ボトルのベース部が形成される下部成形部分と、本体部が形成される2つの対称な側方成形部分(シェルとも呼ばれる)と、から構成されている。ボトルがブローアップされると、ボトルを離型するために、2つの側方成形部分が対向する径方向に取り外され、下部成形部分が軸方向に(下方に)取り外される。ボトルの本体部とベース部との間の接合部は、ボトルがブローアップされた金型の側方成形部分と下部成形部分との間の接合部に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の追加の特徴及び利点は、図面を参照して以下に記載の現在好ましい実施形態の説明において記載されており、この説明から明らかになる。
【
図1】本発明によるプリフォームの概略長手方向断面を表す。
【
図2】
図1のプリフォームの下部の概略長手方向断面を表す。
【
図3】本発明によるボトルの概略断面であり、図の左部分はボトルの足部を示し、図の右部分は谷部を示す。
【
図4】本発明によるプリフォームの下部のプロファイルを表す。
【
図5】
図4のプリフォームから得られたボトルの下部の非常に概略的な断面を表し、図の左側はボトルの谷部を示し、図の右部分はボトルの足部を示す。
【
図6】
図5のボトルのボトルの多層壁の様々な層の厚さを列挙した表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1及び
図2は、本発明によるガス入り飲料ボトルを形成するためのプリフォームの実施形態を示す。
【0036】
通常の方法では、このプリフォーム10は、ボトルの飲料側を形成するように意図された内面80と、ボトルの外側を形成するように意図された外面81と、を有する多層壁8から本質的に構成されている。プリフォーム10は、主軸Xを中心に回転対称であり、上から下に、
・開放端12と、
・ねじ付き外周面を有するネックフィニッシュ部14と、
・フランジ16と、
・本体形成部18であって、多層壁8の内面80が円筒形である、本体形成部18と、
・内面80が依然として円筒形である上側セグメントと、内面80が半球形である下側セグメントと、を含むベース形成部20と、
・プリフォームを得るために多層壁8の様々な層が金型(図示せず)に射出される射出点に対応する下端22と、
を含む。
【0037】
プリフォームの多層壁8(
図2参照)は、遠心方向に沿って、好ましくはPET製の内層24と、好ましくはPEF製のガスバリア層28と、好ましくはPET製の外層26と、を含む。
【0038】
本発明によれば、ガスバリア層28は、ガスバリア層のない下端部30を除いて多層壁8全体に沿って存在する(具体的には、ガスバリア層28は、本体形成部18全体に沿って延びている)。ガスバリア層のないこの下端部30は、円錐(又は立体角)32の内側に延びるベース形成部20の中心部であり、円錐の頂点Cは、ベース形成部20の下側半球セグメントの中心である。この円錐32は、形成されるボトルの容積に応じて、5度~80度の角度αを有する。50cl未満の、例えば、33cl又は25clに等しい容積を有するボトルの場合、角度αは、好ましくは5度~80度である。50cl~100clの、例えば、50cl又は75cl又は100clに等しい容積を有するボトルの場合、角度αは、好ましくは5度~70度である。100cl超の、例えば、1.5l又は2lに等しい容積を有するボトルの場合、角度αは、好ましくは5度~60度である。
【0039】
図2により良好に示されるように、プリフォームの多層壁8の射出点22は、プリフォームの中心軸上のプリフォームの底部に位置する。
図1及び
図2のプリフォームは、プリフォームをブロー成形することによって、すなわち、プリフォームを適切な金型内でブローすることによってプリフォームを軸方向及びフープ方向に膨張させることによって、
図3及び
図5に示されるボトルのようなボトルを形成するために使用される。
【0040】
通常の方法では、
図3及び
図5に示されたこのボトルは、主軸Xに沿って上から下に、
・開放端112と、
・ねじ付きキャップを受け入れるように意図されたネック部114であって、ねじ付きキャップに対応するねじ付き外周面を有する、ネック部と、
・ねじ付きキャップの開放下端に当接し、閉鎖するように意図されたフランジ116と(ボトル100の開放端112、ネック部114及びフランジ116は、ブロー成型中に膨張することが予想されないので、プリフォームの開放端12、ネックフィニッシュ部14及びフランジ16と同じ形状及び寸法を有することに留意されたい)、
・プリフォーム10の本体形成部18の膨張から導きされる本体部118と、を含み、図示される実施形態では、本体部118は、円錐形肩部117と、
・プリフォーム10のベース形成部20の膨張から導き出されるベース部120と、を含み、図示される実施形態では、ベース部120は、主軸Xを中心に谷部140及び足部142を交互に含み、
・ボトルの下端の中心点122は、プリフォームの射出点22に対応する。
【0041】
ボトルの多層壁は、少なくとも3つの層(図示せず)、すなわち、プリフォームの内層24、外層26及びガスバリア層28に対応する、内層、外層及びガスバリア層から構成されている。内層は、ガス入り飲料と接触するように意図された内面を有し、外層は、ボトルの外側を形成する外面を有し、ガスバリア層は、内層と外層との間に挟まれている。
【0042】
本発明によれば、ベース部120は、バリア層のない下端部130を含み、この下端部は、ボトルの容積に応じて5度~50度の立体角β内で延びている。50cl未満の、例えば、33clに等しい容積を有するボトルの場合、角度βは、好ましくは5度~50度である。50cl~100clの、例えば、50cl又は75cl又は100clに等しい容積を有するボトルの場合、角度βは、好ましくは5度~40度である。100cl超の、例えば、1.5l又は2lに等しい容積を有するボトルの場合、角度βは、好ましくは5度~30度である。
【0043】
図4及び
図5は、プリフォーム10の下部及びボトル100の対応する下部をそれぞれ示す(考慮されるボトルが50clの容積を有すると特定される)。当然ながら、これらの2つの図は一定の縮尺で示されておらず、プリフォームは、ボトルを形成するためにブローされる。
【0044】
これら2つの図は、プリフォーム10上の様々な点201~205と、ボトル100の足部142上のそれらの対応する点201~205と、を示す。例として、ボトルの多層壁の様々な層の厚さ(μm)を
図6の表に報告する。点201~205は、全般的な理解のために概略的に示されているが、それらの位置は、プリフォームからボトルを形成するために行われる延伸及びブローに起因して(特にボトル内で)変動し得る。
【0045】
図4及び5、並びに
図6の表から、プリフォームの多層壁は、点122と202との間の区域よりも点203と205との間の区域におけるブロー成形によってより延伸され、それによって、ボトルの多層壁は、区域122~202よりも区域203~205においてより薄くなることが容易に理解及び観察され得る。
【0046】
本発明によれば、点122と点202との間の任意の点は、ガスバリアのない下端部130にある。この部分において、外層及び内層の厚さは、点202における外層及び内層の厚さよりも大きい(すなわち、それぞれ281μm及び61μmよりも大きい)。換言すれば、外層及び内層の厚さは、ガスバリア層が存在しないこの区域において、点202から点122まで増加し続ける。
【0047】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明に従って得られたボトルにおいて、ガスバリアのない下端部130において著しいガス漏れが生じないことを観察した。その部分にガスバリアが存在しないにもかかわらず、本発明によるボトルの保存可能期間は、内層及び外層の厚さ及び組成に関して同じ仕様を有するが、プリフォームの多層壁全体に延びるガスバリア層を有するプリフォームを用いて得られるボトルと比較して劣化しない。
【0048】
ガスバリアのない下端部30又は130にガスバリアが存在しないことにより、PEF又はナイロン(又はそのようなガスバリアを作製するために使用される他の材料)の量が節減され、この節減量は単一のボトルのレベルでは少ないように思われるが、毎年生産されるボトルの数を考慮するとかなり重要である。
【0049】
ボトルのガスバリアのない下端部130の任意の点における外層及び内層の累積厚さは、点202における外層及び内層の累積厚さよりも大きい(すなわち、281+61=342μmよりも大きい)。ボトルの本体部とベース部との間の接合部は、点204と205との間にある。この接合部の任意の点において、ボトルの多層壁の厚さは、点204における厚さ(195+19+46=260μm)と点205における厚さ(219+21+58=298μm)との間である。したがって、バリア層のない下端部130の任意の点におけるボトルの多層壁の厚さは、ボトルのベース部120と本体部118との間の接合部の任意の点におけるボトルの多層壁の厚さよりもはるかに大きい。したがって、図示の例では、バリア層のない下端部におけるボトルの多層壁の厚さと、ボトルのベース部と本体部との間の接合部におけるボトルの多層壁の厚さとの差は、44μm(=342-298)よりも大きい。
【0050】
本発明者らは、ガスバリアのない下端部130におけるボトルの多層壁のより大きな厚さが、ガスバリアのない下端部におけるガスバリアの欠如を補償するのに十分であることを実証した。
【0051】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。このような変更及び修正は、本発明の範囲から逸脱することなく、及び本発明の付随する利点を減らすことなく、なされてもよい。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】