(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】進行性および/または転移性TROP-2過剰発現ガンを有する治療困難患者における併用治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240628BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 15/14 20060101ALI20240628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240628BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240628BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240628BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P15/14
A61P43/00 111
A61K47/68
A61K39/395 L
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K45/00
A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580922
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022035995
(87)【国際公開番号】W WO2023278860
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513102268
【氏名又は名称】ジー1、セラピューティクス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】G1 THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、ビーレン
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ、クマール、マリク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、スン-フン、イ
(72)【発明者】
【氏名】カート、ダグラス、ウルフギャング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA22
4C084MA02
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4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZC20
4C084ZC75
4C085AA14
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4C085BB31
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA07
4C086NA13
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、例えば、進行性/転移性トリプルネガティブ乳ガン(TNBC)、再発性もしくは転移性尿路上皮ガン(mUC)、または非小細胞肺ガン(NSCLC)などのTrop-2過剰発現ガンを有する患者を含む治療困難なガン患者の選択された群に対する改善された併用治療の分野にあり、この改善された併用治療はトリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンの使用を含み、全生存期間の延長および/または毒性の低減を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行性または転移性トリプルネガティブ乳ガンを有する患者を治療する方法であって、
i.前記患者に有効量の、構造:
【化1】
を有するCDK4/6阻害剤、またはその薬学上許容可能な塩、組成物、同位体、もしくはプロドラッグを投与すること;および
ii.前記患者に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与すること
を含んでなり、
トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与開始前約4時間以内に投与される、
方法。
【請求項2】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前に前記患者に完全に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前約1時間以内に投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前約30分以内に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
トリラシクリブが患者に静脈投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
トリラシクリブが約190~280mg/m
2の用量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
トリラシクリブが約240mg/m
2で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
サシツズマブ・ゴビテカンが約5mg/kg~15mg/kgの用量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ゲムシタビンが約10mg/kgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンが各21日サイクルの1日目と8日目に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記21日サイクルが2~35回実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記21日サイクルが最大35回実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記患者のTNBCがCDK4/6ステータス陽性である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者のTNBCがCDK4/6ステータス陰性である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者のTNBCがCDK4/6ステータス不定である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者のTNBCがPD-L1陽性である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者のTNBCがPD-L1陰性である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者が、トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンを受ける前に少なくとも2ラインの化学療法治療を以前に受けていた、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
以前に受けた化学療法ラインの治療のうち少なくとも1つが転移療法に属す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
以前に受けた化学療法ラインの治療のうち少なくとも1つがタキサンによるものであった、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
以前に受けた化学療法ラインの治療のうち少なくとも1つが白金化合物によるものであった、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
以前に受けた化学療法ラインの治療のうち少なくとも1つがアントラサイクリンによるものであった、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記TNBCが切除不能の局所進行性TNBCである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記TNBCが転移性TNBCである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
進行性または転移性尿路上皮ガンを有する患者を治療する方法であって、
i.前記患者に有効量の、構造:
【化2】
を有するCDK4/6阻害剤、またはその薬学上許容可能な塩、組成物、同位体、もしくはプロドラッグを投与すること;および
ii.前記患者に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与すること
を含んでなり、
トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与開始前約4時間以内に投与される、
方法。
【請求項26】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前に前記患者に完全に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前約1時間以内に投与される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前約30分以内に投与される、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
トリラシクリブが患者に静脈投与される、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
トリラシクリブが約190~280mg/m
2の用量で投与される、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
トリラシクリブが約240mg/m
2で投与される、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
サシツズマブ・ゴビテカンが約5mg/kg~15mg/kgの用量で投与される、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
サシツズマブ・ゴビテカンが約10mg/kgの用量で投与される、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンが各21日サイクルの1日目と8日目に投与される、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記21日サイクルが2~35回実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記21日サイクルが最大35回実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記患者の尿路上皮ガンがCDK4/6ステータス陽性である、請求項25~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者の尿路上皮ガンがCDK4/6ステータス陰性である、請求項25~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記患者の尿路上皮ガンがCDK4/6ステータス不定である、請求項25~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者の尿路上皮ガンがPD-L1陽性である、請求項25~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記患者の尿路上皮ガンがPD-L1陰性である、請求項25~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンを受ける前に少なくとも1つラインの化学療法治療を以前に受けていた、請求項25~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
以前に受けた化学療法ラインの治療のうち少なくとも1つが白金化合物によるものであった、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンを受ける前に免疫チェックポイント阻害剤を以前に受けていた、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤であった、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1阻害剤であった、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記尿路上皮ガンが切除不能の局所進行性尿路上皮ガンである、請求項25~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記尿路上皮ガンが転移性尿路上皮ガンである、請求項25~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
進行性または転移性のTrop-2過剰発現ガンを有する患者を治療する方法であって、
i.前記患者に有効量の、構造:
【化3】
を有するCDK4/6阻害剤、またはその薬学上許容可能な塩、組成物、同位体、もしくはプロドラッグを投与すること;および
ii.前記患者に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与すること
を含んでなり、
トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与開始前約4時間以内に投与される、
方法。
【請求項50】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前に前記患者に完全に投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前約1時間以内に投与される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前約30分以内に投与される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
トリラシクリブが患者に静脈投与される、請求項49~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
トリラシクリブが約190~280mg/m
2の用量で投与される、請求項49~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
トリラシクリブが約240mg/m
2で投与される、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
サシツズマブ・ゴビテカンが約5mg/kg~15mg/kgの用量で投与される、請求項49~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
サシツズマブ・ゴビテカンが約10mg/kgの用量で投与される、請求項49~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンが各21日サイクルの1日目と8日目に投与される、請求項49~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記21日サイクルが2~35回実施される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記21日サイクルが最大35回実施される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記患者のTrop-2過剰発現ガンがCDK4/6ステータス陽性である、請求項49~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記患者のTrop-2過剰発現ガンがCDK4/6ステータス陰性である、請求項49~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記患者のTrop-2過剰発現ガンがCDK4/6ステータス不定である、請求項49~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記患者のTrop-2過剰発現ガンがPD-L1陽性である、請求項49~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記患者のTrop-2過剰発現ガンがPD-L1陰性である、請求項49~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
患者が、トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンを受ける前に少なくとも2ラインの化学療法治療を以前に受けていた、請求項49~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
以前に受けた化学療法ラインの治療のうち少なくとも1つが転移療法に属す、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記Trop-2過剰発現ガンが切除不能の局所進行性である、請求項49~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記Trop-2過剰発現ガンが転移性である、請求項49~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記Trop-2過剰発現ガンが乳ガン、子宮頸ガン、結腸または結腸直腸ガン、類内膜子宮内膜ガン、食道ガン、胃ガン、神経膠腫、肝門部胆管ガン、口腔扁平上皮ガン、消化管ガン、慢性リンパ球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、Rajiバーキットリンパ腫、小型肺腺ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、胃ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、および肺ガンからなる群から選択される、請求項49~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記Trop-2ガンが非小細胞肺ガンである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
各21日化学療法サイクルの15日目にトリラシクリブを投与することをさらに含んでなる、請求項10、34、および58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記治療が免疫チェックポイント阻害剤の投与を含まない、請求項1~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記治療が免疫チェックポイント阻害剤を投与することをさらに含んでなる、請求項1~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤から選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記治療が1以上のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法誘発性骨髄抑制(CIM)の低減および/または予防をもたらす、請求項1~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記治療が、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法の投与に基づく予測PFSに比べて、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらす、請求項1~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記治療が、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法の投与に基づく予測OSに比べて、全生存期間(OS)の改善をもたらす、請求項1~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記治療が造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)の骨髄保存をもたらす、請求項1~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記治療が免疫エフェクター細胞の保護をもたらす、請求項1~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記治療が、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカン化学療法を受けている患者に比べて、患者の抗腫瘍有効性の増強をもたらす、請求項1~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記治療が、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカン化学療法を受けている患者に比べて、患者の好中球系統の骨髄保存をもたらす、請求項1~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記治療が、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカン化学療法を受けている患者に比べて、患者の重度(グレード4)好中球減少症期間の低減をもたらす、請求項1~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記治療が、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカン化学療法を受けている患者に比べて、患者の化学療法誘発性疲労(CIF)の低減をもたらす、請求項1~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
CIFの低減をもたらす前記治療が、ガン療法の機能的評価-疲労用(FACIT-F)によって測定されるような最初に確認された疲労の悪化までの時間(TTCD-疲労)の低減である、請求項1~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記治療が、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカン化学療法を受けている患者に比べて、患者の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)の改善をもたらす、請求項1~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
PFSの改善をもたらす前記治療が、固形ガン治療効果判定基準1.1(RECIST 1.1)に基づく、請求項1~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記治療が重度好中球減少症事象の低減、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)治療の低減、または発熱性好中球減少症(FN)有害事象(AE)の低減をもたらす、請求項1~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記治療がグレード3もしくは4のヘモグロビン検査値低下、赤血球(RBC)輸血、または赤血球生成促進剤(ESA)投与の低減をもたらす、請求項1~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記治療がグレード3もしくは4の血小板数検査値低下および/または血小板輸血の回数の低減をもたらす、請求項1~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記治療がグレード3または4の血液検査値の低減をもたらす、請求項1~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記治療が、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン治療に比べて、サシツズマブ・ゴビテカン化学療法に関するあらゆる原因の減量またはサイクル遅延および相対的用量強度の低減を提供する、請求項1~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記治療が、i)限定するものではないが、あらゆる原因の発熱性好中球減少症/好中球減少症、貧血/RBC輸血、血小板減少症/出血および感染によるものを含む入院、またはii)限定するものではないが、静脈内(IV)、経口、ならびに経口およびIV投与される抗生物質を含む抗生物質使用の低減をもたらす、請求項1~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記治療が、ガン療法の機能的評価-一般用(FACT-G)領域スコア(身体面、社会/家族面、心理面および機能面の良好度);ガン療法の機能的評価-貧血用(FACT-An):貧血;ガン療法の機能的評価(FACT-C);5水準EQ-5D(EQ-5D-5L);変化に対する患者の全般的印象(PGIC)疲労項目;または重症度に対する患者の全般的印象(PGIS)疲労項目のうち1以上に改善をもたらす、請求項1~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記患者が、各トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン化学療法治療の開始(1日目)前に測定した際に、1.5×10
9/Lを超える絶対好中球数(ANC)を維持する、請求項1~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記患者が、各トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン化学療法治療の8日目の開始の前に測定した際に、1.0×10
9/Lを超える絶対好中球数(ANC)を維持する、請求項1~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記患者が、各トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン化学療法治療の開始(1日目)前に測定した際に、50×10
9/Lを超える血小板数を維持する、請求項1~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与がシンプソンクローナリティーのベースラインからの減少をもたらし、前記ベースラインは、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンの開始時に測定される、請求項1~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度好中球減少症エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度下痢エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度粘膜炎エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度口内炎エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する脱毛症の発生または重症度の低減をもたらす、請求項1~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度消化管有害事象(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度貧血エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度好中球減少症エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与が、トリラシクリブを用いずに本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する発熱性好中球減少症エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす、請求項1~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
投与されるサシツズマブ・ゴビテカンがサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーである、請求項1~107のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年7月1日に出願された米国仮出願第63/217,716号の利益を主張するものである。この出願の全体は、目的を問わず、参照により本明細書の一部とされる。
【0002】
発明の分野
本発明は、例えば、進行性/転移性トリプルネガティブ乳ガン(TNBC)、再発性もしくは転移性尿路上皮ガン(mUC)、または限定するものではないが非小細胞肺ガン(NSCLC)を含むTrop-2過剰発現ガンを有する患者を含む治療困難なガン患者の選択された群に対する改善された併用治療の分野にあり、この改善された併用治療はトリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンの使用を含み、全生存期間の延長および/または毒性の低減を提供する。
【背景技術】
【0003】
トリプルネガティブ乳ガン
トリプルネガティブ乳ガン(TNBC)は、若年での発症、大きく高悪性度の腫瘍、内臓転移の傾向など、いくつかの侵襲的な臨床病理学的特徴を特徴とする(Cheang et al. Basal-like breast cancer defined by five biomarkers has superior prognostic value than triple-negative phenotype. Clin Cancer Res. 2008;14(5):1368-76; Foulkes et al., Triple-negative breast cancer. N Engl J Med. 2010 Nov 11;363(20):1938-48)。診断時からの推定生存期間中央値は約13~18か月であり、診断時年齢中央値は約50歳である(Kassam et al. Survival outcomes for patients with metastatic triple-negative breast cancer: implications for clinical practice and trial design. Clin Breast Cancer. 2009;9(1):29-33; Yardley et al. nab-Paclitaxel plus carboplatin or gemcitabine versus gemcitabine plus carboplatin as first-line treatment of patients with triple-negative metastatic breast cancer: results from the tnAcity trial. Ann Oncol. 2018;29(8):1763-70)。ホルモン受容体陽性乳ガンおよびヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陽性乳ガンに有効な治療、例えば内分泌療法またはHER2標的療法(例えば、トラスツズマブ)は、これらのマーカーの発現を欠くTNBCには無効であり、そのため、TNBCの治療は依然として化学療法が中心である。特に、デオキシリボ核酸(DNA)修復を標的とする化学療法(例えば、白金化合物)および細胞増殖を標的とする化学療法(例えば、タキサン類およびドキソルビシンなどのアントラサイクリン類)がTNBCに最も有効であることがわかっているが、これらの治療は毒性によって制限され、最終的には総ての患者が薬剤耐性となる。
【0004】
上記の制限に加えて、化学療法誘発性の免疫抑制は、宿主の免疫系がガンに対して効果的に応答を惹起できないために、抗腫瘍効果にも影響を及ぼしうる。2019年、プログラム死リガンド1(PD-L1)遮断抗体(免疫チェックポイント阻害剤[ICI])であるアテゾリズマブの、ナブパクリタキセルとの併用療法が、PD-L1陽性の局所進行切除不能/転移性TNBC患者に対して、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)から早期承認された(テセントリク(登録商標)添付文書、2020)。このFDAの早期承認は、PD-L1陽性(腫瘍面積の1%以上を占めるあらゆる強度のPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞[IC])を有する患者の無増悪生存期間(PFS)が改善したことを示す臨床試験結果に基づいている(中央値7.4か月と4.8か月;ハザード比[HR]:0.60[0.48,0.77];p<0.0001)。さらに、PD-L1陽性のサブセットは、アテゾリズマブとnab-パクリタキセルを併用した場合、平均25か月生存したのに対し、プラセボとnab-パクリタキセルを併用した場合は18か月の生存であった。nab-パクリタキセルにアテゾリズマブを追加することで見られた有効性の改善は、比較的低い頻度で発生する免疫関連の有害事象と関連しており、重大な罹患率および死亡率を引き起こす可能性があった。
【0005】
残念なことに、確認試験の後、アテゾリズマブのTNBC患者のPD-L1陽性サブセットへの使用に関する承認は、その後撤回された。2021年にAnnal of Oncology誌に発表された結果では、試験でPD-L1陽性患者のフロントライン治療におけるPFS優越性という主要評価項目を満たせなかったことが示された(HR、0.82;95%CI、0.60~1.12;P=0.20)(Miles et al. Primary results from IMpassion131, a double-blind, placebo-controlled, randomised phase III trial of first-line paclitaxel with or without atezolizumab for unresectable locally advanced/metastatic triple-negative breast cancer. Ann Oncol. 2021;32(8):994-1004. doi:10.1016/j.annonc.2021.05.801)。さらに、PD-L1陽性集団(HR 1.11、95%CI 0.76~1.64)でも治療企図集団でも生存優位性に差はなかった。
【0006】
また、FDAが承認したコンパニオン診断検査により判定した場合に、腫瘍がPD-L1を発現する局所再発性の切除不能または転移性TNBC(CPS≧10、CPS=combined positive score)を有する患者の治療のためのペムブロリズマブと化学療法との併用について早期承認が認められた(キイトルーダ(登録商標)添付文書、2020年)。承認は、CPS≧10の患者のサブグループにおけるPFSの主要有効性転帰尺度(PFS中央値:ペムブロリズマブ+化学療法群9.7か月(95%信頼区間(CI):7.6、11.3)およびプラセボ群5.6カ月(95%CI:5.3、7.5)(HR0.65、95%CI:0.49、0.86、片側p値=0.0012)に基づいた。
【0007】
ある種のICIと化学療法の併用は、PD-L1陽性の局所進行性切除不能/転移性TNBC患者の治療にとって有意義な一歩であることを示しているが、ICIに伴う潜在的な治療毒性のために、PD-L1陽性TNBC患者の総てがICI治療の適切な候補となるわけではなく、予想されるように、PD-L1陰性のTNBC患者集団は利益を得られない可能性があることに留意すべきである。
【0008】
FDAにより最近承認されたその他の利用可能な標的療法は、以前に化学療法を受けていた生殖細胞系列BRCA陽性、HER2陰性の転移性乳ガン(MBC)患者の治療のためのオラパリブ(2018年1月承認)および有害なまたは有害の疑いがある生殖細胞系列BRCA変異があり、HER2陰性の局所進行性または転移性乳ガン(MBC)患者に対するタラゾパリブ(2018年10月承認)などのPARP阻害剤である。これら2つの標的療法はTNBC患者に利益をもたらすが、生殖細胞系列BRCA変異を有する患者に限定される(約9~18%、Hahnen et al., Germline Mutations in Triple-Negative Breast Cancer. Breast Care (Basel). 2017;12(1):15-19)。
【0009】
全体として、TNBC患者には標準化学療法以外に承認された治療選択肢がほとんどない。現在、TNBCに対して利用可能な標的療法があるとはいえ、これらの療法はPD-L1陽性疾患(ICI)を発現する適格患者および/または生殖細胞系列のBRCA変異(PARP阻害剤)を有する適格患者に限定されており、ICIの場合はさらなる毒性を伴う。PD-L1またはBRCAのステータスに関係なく、総てのTNBC患者に対して、関連する潜在的な高悪性度の毒性を伴わずに、同等または改善された抗腫瘍効果を提供できる新しい併用治療が必要であることは明らかである。
【0010】
転移性尿路上皮ガン
白金ベースの化学療法と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の併用後に病勢進行した転移性尿路上皮ガン(mUC)患者にも、限られた治療選択肢しかない(National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Bladder Cancer Version 5.2020. https://www.nccn.org/ professionals/physician_gls/)。進行後、NCCNとESMOのガイドラインで適応とされている広く利用可能な薬剤は、タキサン系薬剤とビンフルニン(欧州連合で承認)のみである。これらの薬剤の奏効率は約10%で、全生存期間(OS)中央値は7~8か月である(Petrylak et al: Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel in patients with locally advanced or metastatic urothelial carcinoma after platinum-based therapy (RANGE): A randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet 390:2266-2277, 2017; Raggi et al: Second-line single-agent versus doublet chemotherapy as salvage therapy for metastatic urothelial cancer: A systematic review and meta-analysis. Ann Oncol 27:49-61, 2016; Niegisch et al: A real-world data study to evaluate treatment patterns, clinical characteristics and survival outcomes for first- and second-line treatment in locally advanced and metastatic urothelial cancer patients in Germany. J Cancer 9:1337-1348, 2018; Fradet et al: Randomized phase III KEYNOTE-045 trial of pembrolizumab versus paclitaxel, docetaxel, or vinflunine in recurrent advanced urothelial cancer: Results of 2 years of follow-up. Ann Oncol 30:970-976, 2019; Di Lorenzo et al: Third-line chemotherapy for metastatic urothelial cancer: A retrospective observational study. Medicine (Baltimore) 94: e2297, 2015; Vlachostergios et al: Antibody-drug conjugates in bladder cancer. Bladder Cancer 4:247-259, 2018)。
【0011】
米国では、FGFR2またはFGFR3活性化変異または融合を有する腫瘍(白金ベースの化学療法後)を有する患者に対する汎線維芽細胞増殖因子受容体阻害剤であるエルダフィチニブと白金ベースの化学療法とICI(パドセブ[添付文書]. Northbrook, IL, Astellas Pharma US, 2019; FDA Grants Accelerated Approval to Enfortumab Vedotin-ejfv for Metastatic Urothelial Cancer [Press Release]. Silver Spring, MD: US Food and Drug Administration, December 19, 2019; Loriot et al: Erdafitinib in locally advanced or metastatic urothelial carcinoma. N Engl J Med 381:338-348, 2019))後のネクチン-4指向性抗体薬物複合体(ADC)であるエンフォルツマブ・ベドチン(EV)の米国食品医薬品局(FDA)の早期承認により、mUCの治療展望が拡大した。EVもエルダフィチニブも客観的奏効率(ORR)は約40%であるが、ほとんどの患者はこれらの治療で進行する。さらに、エルダフィチニブは、FGFR2/3変異または融合を有する患者(ガン種により患者の15%~20%)に限定されている(de Almeida Carvalho et al: Estimation of percentage of patients with fibroblast growth factor receptor alterations eligible for off-label use of erdafitinib. JAMA Netw Open 2:e1916091, 2019)。
【0012】
全体として、mUC患者には現在、白金を含む化学療法レジメン以外の治療選択肢はほとんどない。現在、mUCに対して利用可能な標的療法があるにもかかわらず、これらの療法は、さらなる潜在的毒性を伴うPD-L1陽性疾患(ICI)を発現する適格患者に限定されている。PD-L1のステータスに関係なく、総てのmUC患者に対して、関連する高悪性度の毒性を伴わずに、同等または改善された抗腫瘍効果を提供できる新しい併用治療が必要であることは明らかである。
【0013】
非小細胞肺ガン
2018年には200万人以上の肺ガン患者と175万人の肺ガン関連死が報告された(WHO, 2020)。米国ガン学会は、2020年には米国だけで約135,000人が肺ガンにより死亡すると推定している(American Cancer Society, 2020)。これらの患者の約84%が非小細胞肺ガン(NSCLC)と診断され、約70%が局所進行性または転移性疾患を呈する(ASCO,2020;Little, 2007)。歴史的に、転移性NSCLCの治療はほとんど全身化学療法の使用によってのみ行われてきた。しかし、ここ10年から20年で、腫瘍の応答を規定する経路の理解が深まり、複数の標的療法が登場したことで、治療選択肢の状況は大きく変化した。肺腫瘍は日常的に特定のドライバー変異(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、BRAF、ガン原遺伝子の転座の際の再配列(RET)、AKT1、ERBB2、MEK1、MET、NRAS、PIK3CA、RET、TRK1、およびc ROSガン遺伝子1(ROS1)、神経栄養型チロシン受容体キナーゼ(NTRK))の有無を検査され、これにより、標的チロシンキナーゼ阻害剤に対する良好な応答を予測する(Kalemkerian,2018)。50%から64%もの患者が標的化可能な遺伝子変化を有すると同定されており、治療を受けた患者は転帰が良好である(Kris,2014;Barlesi,2016)。
【0014】
標的遺伝子変異のない患者にとっては、治療選択肢もかなり変わってくる。これに関して全身療法は依然として重要な治療要素であるが、免疫療法の登場はこの患者集団の転帰を著しく改善した。扁平上皮ガンと非扁平上皮ガンの両方の組織型における複数の無作為化試験により、プログラム死タンパク質1(PD-1)/プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の追加により全生存期間(OS)が改善することが立証されている(Spigel, 2019; Reck, 2016 ;Gandhi, 2018; Paz-Ares, 2018)。PD-L1発現レベルの高い患者は、一般に、治療応答を最大化し毒性を最小化するために、ペムブロリズマブまたはアテゾリズマブ単剤療法を第一選択で受け、その後、白金ベースの化学療法を受ける。より積極的な初期治療を必要とする罹患負荷の高い患者またはPD-L1発現レベルの低い患者は、一般に、免疫療法と白金ベースの化学療法との二剤併用療法を受ける。
【0015】
転移性NSCLCに対する療法におけるこのように改善にもかかわらず、患者の大部分は免疫療法と白金ベースの化学療法による治療中または治療後に最終的に進行する。このような前治療患者集団の管理は困難であり、治療選択肢はドセタキセル、ペメトレキセド(非扁平上皮組織型の場合)、およびゲムシタビンなどの単剤化学療法に限定される(Shepherd, 2000 ;Fossella, 2010; Gridelli, 2004; Hanna, 2004; Anderson, 2000)。
【0016】
免疫チェックポイント阻害薬で進行したNSCLC患者に使用可能な治療は限定されるため、現在臨床で使用可能な治療で病勢が進行した後には、新規療法が必要となる。
【0017】
サシツズマブ・ゴビテカン
最近、サシツズマブ・ゴビテカン・ヒジー(sacituzumab govitecan-hziy)は、治療が非常に困難な2集団:1)切除不能な局所進行性または転移性のトリプルネガティブ乳ガン(mTNBC)で、2種類以上の全身療法歴があり、そのうち少なくとも1種類は転移性疾患に対するものである患者、および2)局所進行性または転移性の尿路上皮ガン(mUC)で、白金含有化学療法とプログラム死受容体1(PD-1)またはプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の投与歴がある患者における治療薬として米国FDAの承認を得た。サシツズマブ・ゴビテカンはTrop-2指向性ヒト化モノクローナル抗体hRS7 IgG1κ(サシツズマブとも呼ばれる)であり、Trop-2(絨毛細胞表面抗原-2)に結合し、加水分解可能なリンカー(CL2Aと呼ばれる)を介してトポイソメラーゼ阻害剤である薬剤SN-38に結合する。Trop-2は、乳ガン、結腸ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、尿路上皮ガン、および肺ガンを含む上皮ガンの大部分で過剰発現していることが示されている。Trop-2は足場非依存性細胞増殖と腫瘍形成に重要な役割を果たしている。薬理学的データから、サシツズマブ・ゴビテカンはTrop-2を発現しているガン細胞に結合し、リンカーの加水分解によるSN-38の放出が続いて起こることで内在化されることが示唆される。イリノテカンの活性代謝物であるSN-38は、トポイソメラーゼIと相互作用し、トポイソメラーゼIにより誘導される一本鎖切断の再結合を阻害する。その結果生じるDNA損傷はアポトーシスと細胞死につながる。
【0018】
切除不能な局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳ガン(mTNBC)で、乳ガンに対する事前化学療法を少なくとも2回受けた後に再発した患者における初期臨床試験(そのうち1回はネオアジュバント療法またはアジュバント療法で、12か月以内に進行が認められた場合でありうる)では、無増悪生存期間中央値が4.8か月(単剤化学療法での1.7か月と比較)、全生存期間中央値が11.8か月(単剤化学療法では6.9か月)であった。白金含有化学療法、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチンとPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による治療歴がある局所進行またはmUCの患者における初期臨床試験では、全奏効率は27.7%、奏効期間中央値は7.1か月であった。
【0019】
これらの有望な結果にもかかわらず、サシツズマブ・ゴビテカンの投与は重大かつ有害な副作用が伴い、その米国FDA承認ラベルには、重篤な、生命を脅かす、または致死的な好中球減少症および重篤な下痢の発生に関する「黒枠警告」が含まれている。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ(登録商標))の米国FDA承認ラベルに報告されているように、好中球減少症はサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーによる治療を受けた患者の61%に生じた。グレード3~4の好中球減少症は患者の47%に生じた。発熱性好中球減少症は患者の7%に生じた。下痢はトロデルヴィ(登録商標)で治療された全患者の65%に生じた。グレード3~4の下痢はトロデルヴィ(登録商標)で治療された全患者の12%に生じた。1名の患者は、下痢の後に腸穿孔を起こした。好中球減少性大腸炎は患者の0.5%に生じた。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの使用に関連するその他の副作用には、疲労、脱毛症、急性腎障害、感染症、貧血、および血小板減少症が含まれる。
【0020】
重要なこととして、これらの副作用は生命を脅かしたり致死的であったりすることに加え、用量制限または治療中止に至ることもある。例えば、サシツズマブ・ゴビテカンは、ASCENT試験に登録されたmTNBC患者において、5%の患者で有害反応のために永久に中止された。ASCENT試験の患者の45%が治療中止に至る有害反応を経験し、22%が減量に至る有害反応を経験した。サシツズマブ・ゴビテカンの中止または減量は、有効性の低下をもたらし、疾患抵抗性の発生および進展の一因となる可能性がある。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、ASCENT試験で患者の44%に救済療法として使用された。
【0021】
標準治療および新たに承認された療法にもかかわらず進行したTNBCおよびmUC患者が使用できる治療法はすでに限られているため、サシツズマブ・ゴビテカンの毒性は、治療法として一貫して長期的に使用する上で大きな障害となる。
【発明の概要】
【0022】
発明の概要
本発明は、進行性および/もしくは転移性トリプルネガティブ乳ガン(TNBC)または再発性もしくは転移性尿路上皮ガン(mUC)、あるいはまたさらにNSCLCなどのTrop-2過剰発現ガンを有するヒト患者を、特定の選択された患者のサブグループにおいて、短時間作用型、選択的かつ可逆的サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤トリラシクリブ、またはその薬学上許容可能な塩を、特定の時限治療プロトコールで、サシツズマブ・ゴビテカン(サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー;トロデルヴィ(登録商標)としても知られる)、またはそのバイオシミラーとともに投与することにより治療するための改良された方法であって、トリラシクリブがサシツズマブ・ゴビテカンの投与前24時間以内に、例えば、約4時間以内に投与される方法を提供する。サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンに選択されたCDK4/6阻害剤トリラシクリブ(コセラ(登録商標)としても知られる)を含めると、全生存期間(OS)および/または無増悪生存期間(PFS)を含む改善された生存転帰が提供されうる。重要なこととして、サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンにトリラシクリブを含めると、サシツズマブ・ゴビテカンの単剤投与に比べ、化学療法誘発性骨髄抑制(CIM)の低減もしくは予防、化学療法誘発性好中球減少症の低減もしくは予防、化学療法誘発性貧血の低減もしくは予防、化学療法誘発性粘膜炎の低減もしくは予防、化学療法誘発性下痢の低減もしくは予防、化学療法誘発性口内炎の低減もしくは予防、化学療法誘発性消化管障害の低減もしくは予防、および/または脱毛症の低減もしくは予防を含む、これらの治療が困難な患者に対する毒性が有意に低減される。
【0023】
何らかの単一の理論に縛られることを望むものではないが、サシツズマブ・ゴビテカンの前に投与されたトリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの細胞傷害作用から骨髄を保護すると同時に、CD8+T細胞とTregサブセットを差次的に停止させることによって抗腫瘍免疫増強作用を誘導し、次いで腫瘍微小環境においてTregよりもCD8+T細胞の回復を早めると考えられている。これらのメカニズムにより、副作用の大幅な低減による安全性の向上と抗腫瘍活性の両方がもたらされる。さらに、サシツズマブ・ゴビテカンの前に投与されたトリラシクリブは、他のCDK4/6複製依存性健康(heathy)細胞、例えば消化管の上皮細胞を保護すると考えられている。これらの細胞をサシツズマブ・ゴビテカンの重大な副作用から保護することにより、この治療困難な集団における投与遅延の減少、減量の減少、および治療中止の減少を実現し、サシツズマブ・ゴビテカンの使用を拡大することができる。さらに、トリラシクリブをサシツズマブ・ゴビテカンと併用することにより、救済療法、例えば顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、または赤血球造血刺激剤の使用を低減すことができる。従って、サシツズマブ・ゴビテカンの前にトリラシクリブを投与することで、Trop-2発現腫瘍患者の骨髄毒性を最小限に抑えながら、抗腫瘍効果を改善することができる。
【0024】
初期のヒト臨床試験(例えば、NCT05113966参照)の初期の結果から、重度(グレード3/4)の好中球減少症の発生率の減少(例えば、実施例1、
図2A参照)を含む、サシツズマブ・ゴビテカン投与に伴う副作用を劇的に低減するトリラシクリブの能力が示されている。最初の試験では、8人の女性患者(年齢中央値55.0歳)が登録され、中央値3(範囲1~6)回の21日間サイクルを完了し、サシツズマブ・ゴビテカンが各21日サイクルの1日目と8日目に投与され、トリラシクリブが各21日間サイクルの1日目と8日目にサシツズマブ・ゴビテカン投与前4時間以内に30分の静脈内投与で投与された(例えば、
図1参照)。全患者にタキサン投与歴があり、7人が免疫チェックポイント阻害剤の投与歴があった(アテゾリズマブ5例、ペムブロリズマブ2例;アジュバント療法4例、転移療法3例)。重度(グレード3/4)の好中球減少は1例のみであった(ASCENT試験では52%であったのに対し、トリラシクリブでは12.5%)。グレード3/4の貧血または血小板減少を起こした患者はなく、発熱性好中球減少症または重度の感染症を起こした患者はいなかった。顆粒球コロニー刺激因子は2例(25%)に投与され、1例は抗生物質の静脈内投与が必要であった。赤血球/血小板輸血または赤血球造血刺激剤を必要とした患者はいなかった。有害事象のために離脱した患者はなく、重度の有害事象は現在までに報告されていない。治療に関連した有害事象は下痢の1件のみであった。このように、初期試験から、トリラシクリブの併用はサシツズマブ・ゴビテカンに伴う副作用を劇的に低減することを示す。
【0025】
転移性/局所進行性トリプルネガティブ乳ガン
1つの側面において、本明細書では、転移性および/または進行性トリプルネガティブ乳ガンを治療する改善された方法であって、転移性または局所進行性トリプルネガティブ乳ガンを有するヒト患者にトリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩をサシツズマブ・ゴビテカンと併用投与することを含んでなり、トリラシクリブはサシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、例えば、サシツズマブ・ゴビテカン投与の約24時間、18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも2回の化学療法治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す。
【0026】
いくつかの実施形態では、この方法は、TNBC患者に21日化学療法治療サイクルの1日目と8日目に有効量のトリラシクリブを投与すること、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与することを含んでなり、トリラシクリブはサシツズマブ・ゴビテカンの投与前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では、21日治療は、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、病勢進行まで反復される、または連続している。
【0027】
いくつかの実施形態では、この方法は、TNBC患者に、21日化学療法治療サイクルの1日目と8日目と15日目に有効量のトリラシクリブを投与すること、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与することを含んでなり、トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカン投与前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では、21日治療は、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、病勢進行まで反復される、または連続している。
【0028】
いくつかの実施形態では、この方法は、進行性/転移性TNBC患者に、第三選択療法として、21日化学療法治療サイクルの1日目と8日目に有効量のトリラシクリブを投与すること、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与することを含んでなり、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では、21日治療は、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、病勢進行まで反復される、または連続している。
【0029】
いくつかの実施形態では、この方法は、進行性/転移性TNBC患者に、第三選択療法として、21日化学療法治療サイクルの1日目と8日目と15日目に有効量のトリラシクリブを投与すること、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与することを含んでなり、トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカンの投与前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では、21日治療は、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、病勢進行まで反復される、または連続している。
【0030】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応ならびに化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のための前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応の予防のための解熱剤、ヒスタミン受容体1(H1)およびヒスタミン受容体2(H2)遮断薬、ならびにコルチコステロイドの前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のためにデキサメタゾンとセロトニン5-HT3受容体アンタゴニストまたはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストの併用による前投与が行われる。
【0031】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカン/トリラシクリブ投与プロトコールで治療される患者は、CDK4/6陽性のTNBCを有する。いくつかの実施形態では、治療されるTNBCは、CDK4/6陰性である。いくつかの実施形態では、治療されるTNBCは、以下の特徴:
a.CCNE1増幅;
b.CCNE2増幅;または
c.i)同型接合欠失、ii)フレームシフト変異、またはiii)ストップゲイン変異(すなわち、未成熟終止コドンが生じる(終止コドンが獲得される)突然変異)として定義される、網膜芽細胞腫タンパク質1(Rb1)欠損
のうち少なくとも1つを有する。さらに他の別の実施形態では、TNBCは、CDK4/6不定である。いくつかの実施形態では、治療される患者は、第三選択療法として治療される。
【0032】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンプロトコールで治療される患者に、PD-L1ステータス陽性TNBCの記録がある。いくつかの実施形態では、治療される患者に、in vitro診断(IVD)アッセイ、例えば、Ventana SP-142アッセイまたはI IHC 22C3 pharmDx PDL1アッセイまたは他の承認済みのアッセイにより確認されたPD-L1ステータス陽性PD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞の記録がある。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにおいて治療される患者に、NBCに対する2ラインの全身治療中または治療後に病勢進行した記録がある。いくつかの実施形態では、ネオアジュバント、アジュバント、または進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴がタキサン療法によるものである。いくつかの実施形態では、タキサン療法は、パクリタキセルである。いくつかの実施形態では、タキサン療法は、ドセタキセルである。いくつかの実施形態では、ネオアジュバント、アジュバント、または進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴がアントラサイクリン療法によるものである。いくつかの実施形態では、アントラサイクリン療法は、ドキソルビシンである。いくつかの実施形態では、アントラサイクリン療法は、ダウノルビシンである。いくつかの実施形態では、アントラサイクリン療法は、イダルビシンである。いくつかの実施形態では、アントラサイクリン療法は、エピルビシンである。いくつかの実施形態では、アントラサイクリン療法は、ミトキサントロンである。
【0034】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に受けるネオアジュバント、アジュバントまたは進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴は、限定するものではないが、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン、白金、およびロバプラチンを含む白金ベースの化学療法によるものである。いくつかの実施形態では、白金ベースの化学療法は、カルボプラチンである。いくつかの実施形態では、白金ベースの化学療法は、シスプラチンである。いくつかの実施形態では、ネオアジュバント、アジュバント、または進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴は、代謝拮抗物質化学療法によるものである。いくつかの実施形態では、代謝拮抗物質化学療法は、ゲムシタビンである。いくつかの実施形態では、代謝拮抗物質化学療法は、カペシタビンである。いくつかの実施形態では、ネオアジュバント、アジュバントまたは進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴は、微小管阻害剤によるものである。いくつかの実施形態では、微小管阻害剤は、エリブリンである。いくつかの実施形態では、微小管阻害剤は、ビノレルビンである。いくつかの実施形態では、微小管阻害剤は、イキサベピロンである。いくつかの実施形態では、ネオアジュバント、アジュバントまたは進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴は、アルキル化剤によるものである。いくつかの実施形態では、アルキル化剤は、シクロホスファミドである。いくつかの実施形態では、生殖細胞系BRCA1/BRCA2変異の記録がある患者に対するネオアジュバント、アジュバントまたは進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴は、ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、オラパリブである。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、タラゾパリブである。
【0035】
いくつかの実施形態では、陽性PD1またはPDL1ステータスを有する患者に対するネオアジュバント、アジュバントまたは進行/転移療法のいずれかにおける1ラインの治療歴は、PD-1またはPDL1阻害剤である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ペンブロリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、CS1003である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、チスレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ドスタルリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、JTX-4014である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、スパルタリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、カムレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、シンチリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、トリパリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、レチファンリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-224である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-514である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ピディリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ササンリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ジンベレリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アベルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、デュルバルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、スゲマリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、エンバフォリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、コシベリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、AUNP12である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、CA-170である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BMS-986189である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BMS-936559である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、ロダポリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アデブレリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、CBT-502である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BGB-A33である。
【0036】
転移性尿路上皮ガン(mUC)
別の側面において、改良された方法は、mUCトリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩をサシツズマブ・ゴビテカンと併用して患者に投与することを含んでなり、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前、例えば、サシツズマブ・ゴビテカン投与の約24時間、18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン(sancituzumab govitecan)の組合せは、1)再発または転移療法としての白金含有化学療法、および2)第一選択療法での単剤療法としてのまたは第一選択化学療法レジメンと併用した免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1またはPD-L1阻害剤に曝露されたことがあり、かつ、病勢進行を生じた進行性/転移性尿路上皮ガンに対する第二選択または第三選択療法として患者に投与される。
【0037】
特定の実施形態では、この方法は、患者に、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルの1日目と8日目に有効量のトリラシクリブ、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーを投与することを含んでなり、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、連続的に反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、病勢進行まで反復される。
【0038】
別の実施形態では、この方法は、患者に、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルの1日目と8日目と15日目に有効量のトリラシクリブ、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーを投与することを含んでなり、トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、連続的に反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、病勢進行までに反復される。
【0039】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応ならびに化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のための前投与が行われる。いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応の予防のための解熱剤、ヒスタミン受容体1(H1)およびヒスタミン受容体2(H2)遮断薬、ならびにコルチコステロイドの前投与が行われる。いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に、化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防ために、デキサメタゾンとセロトニン5-HT3受容体アンタゴニストまたはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストのいずれかとの併用による前投与が行われる。
【0040】
いくつかの実施形態では、患者は、CDK4/6陽性のmUCを有する。別の実施形態では、治療されるmUCは、CDK4/6陰性である。いくつかの実施形態では、治療されるmUCは、以下の特徴:
a.CCNE1増幅;
b.CCNE2増幅;または
c.i)同型接合欠失、ii)フレームシフト変異、またはiii)ストップゲイン変異(すなわち、未成熟終止コドンが生じる(終止コドンが獲得される)突然変異)として定義される、網膜芽細胞腫タンパク質1(Rb1)欠損
のうち少なくとも1つを有する。他の別の実施形態では、治療されるmUCは、CDK4/6陽性である。さらに他の別の実施形態では、mUCは、CDK4/6不定である。
【0041】
いくつかの実施形態では、第二選択または第三選択トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンプロトコールで治療されるmUC患者に、PD-L1ステータス陽性mUCの記録がある。いくつかの実施形態では、第二選択または第三選択トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンプロトコールで治療される患者に、in vitro診断(IVD)アッセイ、例えば、Ventana SP-142アッセイまたはI IHC 22C3 pharmDx PDL1アッセイまたは他の承認済みのアッセイにより確認されたPD-L1ステータス陽性mUCがPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞の10%を超える、または腫瘍細胞の50%を超えるという記録がある。いくつかの実施形態では、第二選択または第三選択トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン投与プロトコールで治療される患者に、in vitro診断(IVD)アッセイ、例えば、Ventana SP-142アッセイまたはI IHC 22C3 pharmDx PDL1アッセイにより確認された腫瘍細胞の20%を超えるPD-L1染色というPD-L1ステータス陽性mUCの記録がある。別の実施形態では、第二選択または第三選択トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールで治療される患者に、FDA承認検査で決定された腫瘍細胞の1%以上のPD-L1染色というPD-L1ステータス陽性の記録がある。別の実施形態では、第二選択または第三選択抗体薬物複合体化学療法プロトコールで治療される患者に、PD-L1ステータス陰性mUCの記録がある。別の実施形態では、第二選択または第三選択抗体薬物複合体化学療法プロトコールで治療される患者に、FDA承認検査で決定された腫瘍細胞の1%以下のPD-L1染色というPD-L1ステータス陰性mUCの記録がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、第二選択または第三選択トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン投与プロトコールで治療されるmUC患者は、白金含有化学療法プロトコールおよびICI阻害剤による治療歴がある。いくつかの実施形態では、白金含有化学療法は、シスプラチンおよびゲムシタビンである。いくつかの実施形態では、白金含有化学療法は、シスプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチンおよびドキソルビシンである。いくつかの実施形態では、白金含有化学療法は、シスプラチン、ゲムシタビンおよびパクリタキセルである。いくつかの実施形態では、白金含有化学療法は、カルボプラチンおよびゲムシタビンである。いくつかの実施形態では、白金含有化学療法は、カルボプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチンおよびドキソルビシンである。いくつかの実施形態では、ICIは、PD-1阻害剤である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、CS1003である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、チスレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ドスタルリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、JTX-4014である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、スパルタリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、カムレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、シンチリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、トリパリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、レチファンリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-224である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-514である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ピディリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ササンリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ジンベレリマブである。
【0043】
いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アベルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、デュルバルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、スゲマリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、エンバフォリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、コシベリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、AUNP12である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、CA-170である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BMS-986189である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BMS-936559である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、ロダポリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アデブレリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、CBT-502である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BGB-A33である。
【0044】
さらなるTrop-2を過剰発現する標的ガン
別の側面において、本明細書は、トリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩をサシツズマブ・ゴビテカンと併用投与することを含んでなり、トリラシクリブは、Trop-2を過剰発現する進行性/転移性ガンを有する患者に、サシツズマブ・ゴビテカンの投与の、例えば、サシツズマブ・ゴビテカン投与の約24時間、18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与され、Trop-2過剰発現ガンは、乳ガン、子宮頸ガン、結腸または結腸直腸ガン、類内膜子宮内膜ガン、食道ガン、胃ガン、神経膠腫、肝門部胆管ガン、口腔扁平上皮ガン、消化管ガン、慢性リンパ球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、Rajiバーキットリンパ腫、小型肺腺ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、胃ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、ならびに小細胞肺ガンおよび非小細胞肺ガンを含む肺ガンからなる群から選択される方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者は、子宮内膜ガンを有する。いくつかの実施形態では、患者は、膀胱ガンを有する。いくつかの実施形態では、患者は、前立腺ガンを有する。いくつかの実施形態では、患者は、HR+/HER2-転移性乳ガンを有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、非小細胞肺ガン(NSCLC)である。特定の実施形態では、NSCLCは、転移性または進行性NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは、白金ベースの化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤療法を併用してまたは順次受けている際にまたは受けたのちに進行した。
【0046】
いくつかの実施形態では、この方法は、Trop-2を過剰発現するガンを有する患者に、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルの1日目と8日目に有効量のトリラシクリブ、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与することを含んでなり、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では、21日治療は、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、連続的に反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、病勢進行まで反復される。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、非小細胞肺ガン(NSCLC)である。特定の実施形態では、NSCLCは、転移性または進行性NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは、白金ベースの化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤療法を併用してまたは順次受けている際にまたは受けたのちに進行した。
【0047】
別の実施形態では、この方法は、Trop-2を過剰発現するガンを有する患者に、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルの1日目と8日目と15日目に有効量のトリラシクリブ、および1日目と8日目に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与することを含んでなり、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の18時間、16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前の約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、21日治療薬治療サイクルは、少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、少なくとも20回、少なくとも22回、少なくとも24回、少なくとも26回、少なくとも28回、少なくとも30回、少なくとも32回、少なくとも34回、または34回を超えて反復される。いくつかの実施形態では21日治療は、最大34回反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、連続的に反復される。いくつかの実施形態では、21日トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療サイクルは、病勢進行まで反復される。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、非小細胞肺ガン(NSCLC)である。特定の実施形態では、NSCLCは、転移性または進行性NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは、白金ベースの化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤療法を併用してまたは順次受けている際にまたは受けたのちに進行した。
【0048】
いくつかの実施形態では、患者は、CDK4/6陽性であるTrop-2過剰発現ガンを有する。別の実施形態では、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、CDK4/6陰性である。いくつかの実施形態では、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、以下の特徴:
a.CCNE1増幅;
b.CCNE2増幅;または
c.i)同型接合欠失、ii)フレームシフト変異、またはiii)ストップゲイン変異(すなわち、未成熟終止コドンが生じる(終止コドンが獲得される)突然変異)として定義される、網膜芽細胞腫タンパク質1(Rb1)欠損
のうち少なくとも1つを有する。別の実施形態では、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、CDK4/6陽性である。さらに他の別の実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、CDK4/6不定である。
【0049】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンプロトコールで治療されるTrop-2過剰発現ガン患者に、PD-L1ステータス陽性のTrop-2過剰発現ガンの記録がある。いくつかの実施形態では、治療される患者に、in vitro診断(IVD)アッセイ、例えば、Ventana SP-142アッセイまたはI IHC 22C3 pharmDx PDL1アッセイまたは他の承認済みのアッセイにより確認されたPD-L1ステータス陽性のPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞の記録がある。
【0050】
いくつかの実施形態では、TNBC、mUC、および/またはTrop-2発現ガンの治療のための上記の方法は、免疫チェックポイント阻害剤の投与をさらに含んでなる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM3阻害剤、TIGIT阻害剤、LAG3阻害剤、VISTA阻害剤、またはSIGLEC7阻害剤から選択される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、CS1003である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、チスレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ドスタルリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、JTX-4014である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、スパルタリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、カムレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、シンチリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、トリパリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、レチファンリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-224である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-514である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ピディリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ササンリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ジンベレリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アベルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、デュルバルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、スゲマリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、エンバフォリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、コシベリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、AUNP12である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、CA-170である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BMS-986189である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BMS-936559である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、ロダポリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アデブレリマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、CBT-502である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、BGB-A33である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、21日サイクルの1日目に投与される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、2週間毎に投与される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、4週間毎に投与される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、6週間毎に投与される。
【0051】
いくつかの実施形態では、TNBC、mUC、またはTrop-2発現腫瘍の治療のための本明細書に記載の方法は、免疫チェックポイント阻害剤のさらなる投与を含まない。
【0052】
患者の転帰の改善
本明細書に記載されるようにトリラシクリブをサシツズマブ・ゴビテカンと併用投与することにより、耐性および病勢進行に至る1以上の機序は克服され、抗原提示(主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI)の増強、T細胞クローン性および腫瘍浸潤の促進、制御性T細胞増殖の阻害、T細胞疲弊マーカー、例えば、限定するものではないが、PD-1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、またはT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(TIM3)の発現の低下、腫瘍細胞上のPD-L1の発現の安定化、樹状細胞遊走の増進、または高いインターフェロン-γ(IFN-γ)産生を介したTエフェクター細胞機能の増強がもたらされ、まとめると堅牢な抗腫瘍T細胞応答が生じる。さらに、本明細書に記載されるようにトリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンの併用投与は、サシツズマブ・ゴビテカンに起因する副作用の低減をもたらし、治療の中止を少なくすることができる。これらの治療困難な患者のサブグループにトリラシクリブを投与することにより、治療の中止および患者の腫瘍内の免疫抑制的な腫瘍微小環境-投与歴のある化学療法および/またはICIが無効または効果的でなくなり、腫瘍の進行を可能にする-を大幅に克服することができ、腫瘍量を低減または制御する患者の免疫系の能力を改善し、生活の質を改善し、これらの治療困難な患者サブセットの全生存期間を改善することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の患者のサブグループへの本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、TNBC、mUC、または他のTrop-2過剰発現ガン患者に抗腫瘍有効性の増強を提供する。いくつかの実施形態では、上記の特定の患者のサブグループにおける本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカンを受けている患者に比べて、患者に無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)の改善を提供する。いくつかの実施形態では、PFSの改善は、固形ガン治療効果判定基準1.1(RECIST 1.1)に基づく。いくつかの実施形態では、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンの併用投与は、サシツズマブ・ゴビテカン単剤を受けている患者集団に比べて、レシピエント患者集団において全奏効率(ORR、RECIST v1.1に従い完全奏功(CR)または部分奏功(PR)の最良の全奏功(BOR)を示す患者のパーセンテージと定義)を改善する。いくつかの実施形態では、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンの併用投与は、サシツズマブ・ゴビテカン単剤を受けている患者集団に比べて、レシピエント患者集団において、RECIST v1.1に従い、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン投与の最初の日以来24週間以上持続するCR、PR、または安定(SD)のBORを示す患者のパーセンテージとして定義される臨床的有用率(CBR)を改善する。いくつかの実施形態では、トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカンの併用投与は、サシツズマブ・ゴビテカン単剤を受けている患者集団に比べて、レシピエント集団において、ORRについて記載されるような各治療期間に適切な、CRまたはPR(確定)の最初の客観的奏効から病勢進行が記録された最初の日または死亡のいずれか早い方までの時間として定義される奏効期間(DOR)を改善する。
【0054】
いくつかの実施形態では、上記の患者のサブグループへの本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)および免疫エフェクター細胞、例えば、Tリンパ球を含むリンパ球の骨髄保存を提供する。いくつかの実施形態では、上記の患者のサブグループへの本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、化学療法誘発性骨髄抑制(CIM)の低減を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカンを受けている患者に比べて、患者に好中球系統の骨髄保存を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカンを受けている患者に比べて、患者に重度(グレード4)の好中球減少症の持続期間の低減を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカンを受けている患者に比べて、患者に下痢の低減を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、上記の患者のサブグループへの本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカンを受けている患者集団に比べて、レシピエント患者集団に、以下:下痢、重度好中球減少症(SN)の発生;発熱性好中球減少症の発生;G-CSF投与の発生;グレード3/4のヘモグロビン低下の発生;5週目以降の赤血球(RBC)輸血;赤血球新生刺激剤(ESA)投与の発生;グレード3/4の血小板低下の発生;血小板輸血(輸血の発生および回数);脱毛症;重度の感染症の発生;IV抗生物質の使用のうち1以上の低減または改善を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態では、上記の患者のサブグループへの本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、トリラシクリブを用いずにサシツズマブ・ゴビテカンを受けている患者集団に比べて、レシピエント患者集団に、以下:米国国立ガン研究所(NCI)有害事象共通用語基準(CTCAE)v5.0による有害事象(AE)の発生および重症度;血清化学検査パラメーターにおけるグレード3または4の異常の発生;およびサシツズマブ・ゴビテカン注入中止のうち1以上の低減または改善を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、抗体薬物複合体化学療法に関するあらゆる原因の減量またはサイクル遅延および相対的用量強度の低減を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、i)限定するものではないが、あらゆる原因の発熱性好中球減少症/好中球減少症、貧血/RBC輸血、血小板減少症/出血および感染症によるものを含む入院、またはii)限定するものではないが、静脈内(IV)、経口、および経口およびIV投与される抗生物質を含む抗生物質の使用の低減を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、トリラシクリブを用いずに抗体薬物複合体化学療法を受けている患者に比べて、患者に化学療法誘発性疲労(CIF)の低減を提供する。いくつかの実施形態では、CIFの低減は、ガン療法の機能的評価-疲労用(FACIT-F)によって測定されるような最初に疲労の悪化が確認されるまでの時間(TTCD-疲労)の低減である。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカン治療レジメンの投与は、ガン療法の機能的評価-一般用(FACT-G)領域スコア(身体面、社会/家族面、心理面および機能面);ガン療法の機能的評価-貧血用(FACT-An);5水準EQ-5D(EQ-5D-5L);変化に対する患者の全般的印象(PGIC)疲労項目;または重症度に対する患者の全般的印象(PGIS)疲労項目のうち1以上の改善を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、少なくとも2回の化学療法治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す。局所進行性または転移性TNBC患者における、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ(登録商標))と併用投与されたトリラシクリブの安全性および有効性を評価するヒト臨床試験の概略図である。試験は、3つの試験相:スクリーニング相、治療相、および生存追跡調査相を含む。治療相は21日サイクルからなる:トリラシクリブをサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー注入の前にIV投与する。トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー投与の前に240mg/m
2でIV投与する。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーは、10mg/kgでIV投与する。試験は、3つの試験相:スクリーニング相、治療相、および生存期間追跡調査相を含む。治療相は、試験治療の最初の投与の日に始まり、安全性追跡調査来所時に完了する。最初の生存期間追跡調査評価は、治療来所の終了からおよそ3か月後に実施しなければならない。DC=中止、PD=病勢進行、PI=主席治療責任医師、WD=撤回。
【
図2A】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Aは、女性参加者の特徴を示す表である。
【
図2B】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Bは、試験参加者が受けた治療サイクルの曝露期間および回数を示す表である。
【
図2C】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Cは、参加者に投与された全身抗ガン療法歴の概要を示す表である。投薬は、WHO DDバージョンMar2021を用いてコード化されている。同じATC(PT)に複数の抗ガン剤療法が登録されている患者は、特定のATC(PT)内では1回のみカウントされる。治療薬は、頻度の高い順にATC、PTの順でソートされている。ATC=解剖治療化学分類法(anatomical therapeutic classification);PT=基本語;WHO DD=WHO医薬品辞書(world health organization drug dictionary)。
【
図2D】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Dは、トリラシクリブまたはサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー投与に関連した試験集団における有害事象(AE)の概要およびAEのパーセンテージを示す表である。関連とは、治験責任医師による評価で、関連する可能性がある、おそらく関連する、または確実に関連する事象を指す。AEは、MedDRAバージョン24.0を用いてコード化されている。関連性、重症度、または考えられる作用に関する情報が欠落しているAEは、それらのパラメーターに関連する特定の解析からは除外されるが、該当する場合には全体的な概要には含まれる。有害事象=AE;MedDRA=国際医薬用語集(medical dictionary for regulatory activities)。
【
図2E】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Eは、試験集団における3つの血液系統(白血球、赤血球、および血小板)に関連する骨髄抑制評価項目の発生をまとめた表である。G-CSF=顆粒球コロニー刺激因子;ESA=エリスロポエチン刺激因子。
【
図2F】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Fは、試験集団における器官別大分類および基本語によるAEおよび試験薬トリラシクリブまたはサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーに関連するAEをまとめた表である。AEは、試験薬初回投与日以降、安全性追跡調査来所までに始まったAEと定義される。発症日が不明または報告されていないAEも含める。AEはMedDRAバージョン24.0を用いてコード化されている。同じPTに複数のTEAEが登録されている患者は、CTCAEグレードが最も高い特定の基本語内で1回のみカウントされる。特に断りのない限り、パーセンテージは、いずれかの試験薬を少なくとも1回投与された登録患者の数(すなわち、N)に基づく。有害事象=AE;MedDRA=国際医薬用語集;CTCAE=有害事象共通用語規準(common terminology criteria for adverse events)。
【
図2G】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Gは、試験集団の脱毛症、好中球減少症、および好中球数減少をまとめた表である。有害事象=AE。
【
図2H】
図2A~2Hは、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、局所進行性または転移性TNBCを有する女性患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ)と併用投与されたトリラシクリブの安全性データを示すまとめの表である。特に断りのない限り、パーセンテージは、少なくとも1用量の試験薬を受けた登録患者の数(すなわち、N)に基づく。
図2Hは、試験集団における派生評価(確認された)に基づく最良の全奏効率をまとめた表である。[a]割合の95%CIは、正確なClopper-Pearson法を用いて算出した。[b]RECIST v1.1に従って、試験薬の初回投与日から24週間以上持続するSD。全奏効はRECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)v1.1に基づいて得られたものである。CI=信頼区間。
【発明の具体的説明】
【0061】
発明の詳細な説明
定義
特に断りのない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、本願が属する技術分野の熟練者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において、単数形は、文脈上明らかに別段のことを示さない限り、複数形も含む。本願の実施および試験では、本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及される総ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、参照により本明細書の一部とされる。本明細書で引用される参照文献は、特許請求される出願の先行技術であるとは認められない。矛盾がある場合には、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0062】
化合物は標準的な命名法を用いて記載される。特に断りのない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0063】
本明細書に記載の各化合物のいくつかの実施形態では、化合物は、文脈によって特に除外されない限り、それぞれが具体的に記載されているかのように、ラセミ化合物、鏡像異性体、鏡像異性体混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、互変異性体、N-オキシド、または回転異性体などの異性体の形態でありうる。
【0064】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、量の限定を示すものではなく、参照される項目の少なくとも1つの存在を示す。「または」という用語は、「および/または」を意味する。値の範囲の列挙は、本明細書において特に断りのない限り、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための省略法としての役割を果たすことを意図しているにすぎず、各個別の値は、本明細書において個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。総ての範囲の端点は範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。本明細書において記載される総ての方法は、本明細書において特に断りのない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、適切な順序で実施されうる。実施例、または例示的な表現(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、特に断りのない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
本明細書に記載の各化合物のいくつかの実施形態では、化合物は、文脈によって特に除外されない限り、それぞれが具体的に記載されているかのように、互変異性体、N-オキシド、または回転異性体などの異性体の形態でありうる。
【0066】
「有効量」は、本明細書で使用する場合、治療的または予防的利益を提供する量を意味する。
【0067】
「約」という用語は、本明細書で使用する場合、±10%を意味する。
【0068】
疾患を「治療する」とは、この用語が本明細書で使用される場合、患者が経験する疾患、障害、または副作用の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低減すること(すなわち、待機療法)、または治療薬の投与の結果として患者が経験する疾患、障害(すなわち、疾患修飾治療)、または副作用の原因または作用を低減することを意味する。
【0069】
本開示を通じて、本発明の様々な態様は範囲形式で示すことができる。範囲形式での記載は単に便宜上のものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。範囲の記述は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を具体的に開示したとみなされるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0070】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、少なくとも1つの有効薬剤と少なくとも1つの担体などの他の物質を含んでなる組成物である。「医薬組合せ」とは、少なくとも2つの有効薬剤の組合せであり、単一の剤形に組み合わせてもよいし、または有効薬剤が本明細書に記載される任意の障害を治療するために一緒に使用されるという指示とともに別々の剤形で一緒に提供してもよい。
【0071】
本明細書で使用する場合、「薬学上許容可能な塩」は、開示されている化合物の誘導体であり、その無機および有機、非毒性の酸付加塩または塩基付加塩を作製することにより親化合物が修飾されている。本化合物の塩は、従来の化学法により、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、適当な塩基(例えば、水酸化、炭酸、重炭酸Na、Ca、Mg、またはKなど)と反応させるか、またはこれらの化合物の遊離塩基形態を適当な酸と反応させることによって作製することができる。このような反応は一般に、水中、または有機溶媒中、または両方の混合物中で行われる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が、実用であれば典型的である。本化合物の塩にはさらに化合物および化合物塩の溶媒和物が含まれる。
【0072】
薬学上許容可能な塩の例としては、限定するものではないが、アミンなどの塩基性残基の無機酸または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩が含まれる。薬学上許容可能な塩としては、例えば非毒性無機または有機酸から形成される、親化合物の従来の非毒性塩および第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、従来の非毒性酸性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されるもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH2)n-COOH(ここで、nは0~4である)などの有機酸から、または同じ対イオンを生じる異なる酸を用いて作製される塩が含まれる。さらなる好適な塩のリストは、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa., p. 1418 (1985)に見出すことができる。本明細書に記載される方法が特定の化合物の投与を特定する場合、該当する場合には、化合物の薬学上許容可能な塩の投与が実施形態として包含されるものと理解される。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「プロドラッグ」は、宿主に投与された際にin vivoで親薬物に変換される化合物を意味する。本明細書で使用する場合、「親薬物」という用語は、本明細書に記載される障害のいずれかを治療するため、または宿主、一般にヒトにおいて本明細書に記載される任意の生理学的もしくは病理学的障害に関連する基礎にある原因もしくは症状を制御もしくは改善するために有用な、本明細書に記載される化学化合物のいずれをも意味する。プロドラッグは、親薬物の特性を増強するため、または親薬物の薬学的もしくは薬物動態学的特性を改善するためなど、任意の所望の効果を達成するために使用することができる。プロドラッグ戦略は、親薬物のin vivo生成条件を調節する選択肢を提供するものであり、その総てが本明細書に含まれるものとみなされる。プロドラッグ戦略の非限定的な例としては、除去可能な基、または基の除去可能な部分の共有結合、例えば、限定するものではないが、とりわけ、アシル化、ホスホリル化、ホスホニル化、ホスホルアミデート誘導体、アミド化、還元、酸化、エステル化、アルキル化、他のカルボキシ誘導体、スルホキシまたはスルホン誘導体、カルボニル化または無水物が挙げられる。
【0074】
本発明の医薬組成物/組合せに適用される「担体」という用語は、有効化合物が一緒に提供される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0075】
「薬学上許容可能な賦形剤」とは、宿主、一般に、ヒトに投与するために生物学的も他の点でも不適当でない医薬組成物/組合せを調製するために有用な賦形剤を意味する。
【0076】
非限定的な実施形態では、トリラシクリブは、原子の少なくとも1つの所望の同位体置換を、その同位体の天然存在量を上回る量で、すなわち濃縮された形態で使用することができる。同位体とは、原子番号は同じであるが質量数が異なる原子、すなわち陽子の数は同じであるが中性子の数が異なる原子である。
【0077】
本発明で使用するためのトリラシクリブに組み込み可能な同位体の例としては、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36CI、および125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体が挙げられる。1つの非限定的な実施形態では、同位体標識化合物は、代謝研究(14Cを使用)、反応動態研究(例えば、2Hまたは3Hを使用)、検出または画像技術、例えば、ポジトロン放射断層撮影法(PET)または単光子放射コンピューター断層撮影法(SPECT)、例えば、薬物または基質組織分布アッセイ、または患者の放射性治療に使用することができる。特に、18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究に特に望ましいものでありうる。本発明の同位体標識化合物およびそれらのプロドラッグは、一般に、スキームまたは実施例に開示されている手順および以下に記載の調製法を、非同位体標識試薬を容易に入手可能な同位体標識試薬に置き換えて実施することにより調製することができる。
【0078】
一般的な例としては、限定するものではないが、水素の同位体、例えば、重水素(2H)およびトリチウム(3H)が、記載の構造の、所望の結果が得られるようないずれの場所にも使用可能である。代わりに、または加えて、炭素の同位体、例えば、13Cおよび14Cも使用可能である。
【0079】
同位体置換、例えば、重水素置換は部分的であっても、完全であってもよい。部分的重水素置換とは、少なくとも1つの水素が重水素で置換されることを意味する。特定の実施形態では、同位体は、対象とするいずれの場所でも90、95もしくは99%またはそれを超える濃度に濃縮される。1つの非限定的な実施形態では、重水素は、所望の場所に90、95または99%に濃縮される。
【0080】
治療される「患者」、「宿主」、または「対象」は一般にヒト患者であるが、本明細書に記載の方法は哺乳動物などの他の動物に関しても有効であると理解されるべきである。より詳しくは、患者という用語は、限定するものではないが、マウス、ラット、サル、イヌ、ブタおよびウサギ;ならびに飼育ブタ(ブタおよび食用ブタ)、反芻動物、ウマ、家禽、ネコ、ウシ、ネズミ、イヌなどを含む、前臨床試験に使用するものなどの、アッセイで使用する動物を含みうる。特定の実施形態では、患者、宿主、または対象は、ヒト患者である。
【0081】
本明細書で一般に企図されるように、「造血幹細胞・前駆細胞」(HSPC)としては、限定するものではないが、長期造血幹細胞(LT-HSCs)、短期造血幹細胞(ST-HSC)、造血前駆細胞(HPC)、多能性前駆細胞(MPP)、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPP)、単球前駆細胞、顆粒球前駆細胞、骨髄系共通前駆細胞(CMP)、リンパ系共通前駆細胞(CLP)、顆粒球-単球前駆細胞(GMP)、顆粒球前駆細胞、単球前駆細胞、および赤芽球系前駆細胞(MEP)、巨核細胞前駆細胞、赤血球前駆細胞、HSC/MPP(CD45dim/CD34+/CD38-)、OPP(CD45dim/CD34+/CD38+)、単球前駆細胞(CD45+/CD14+/CD11b+)、顆粒球前駆細胞(CD45+/CD14-/CD11b+)、赤血球前駆細胞(CD45-/CD71+)、および巨核細胞前駆細胞(CD45+/CD61+)が挙げられる。
【0082】
「免疫エフェクター細胞」という用語は一般に、1以上の特定の機能を遂行する免疫細胞を指す。免疫エフェクター細胞は当技術分野で公知であり、例えば、限定するものではないが、ナイーブT細胞、記憶T細胞、活性化T細胞(Tヘルパー(CD4+)および細胞傷害性T細胞(CD8+))、TH1活性化T細胞、TH2活性化T細胞、TH17活性化T細胞を含むT細胞、ナイーブB細胞、記憶B細胞、血漿芽細胞、樹状細胞、単球、およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
【0083】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイント阻害剤(ICI)」という用語は、発現すると免疫刺激に対する免疫応答を弱めることができる免疫系の重要なレギュレーターである免疫チェックポイントタンパク質を標的とする療法を指す。いくつかのガンは、チェックポイント阻害剤に対するリガンドを発現し、免疫チェックポイント標的と結合することにより攻撃からそれらを保護することができる。ICIは、阻害性チェックポイントを遮断して、免疫系機能を回復させる。ICIは、PD-1、PD-1リガンド-1(PD-L1)、PD-1リガンド-2(PD-L2)、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、およびT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(V-domain Ig suppressor of T-cell activation)(VISTA)、B7-H3/CD276、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、ガン胎児性抗原細胞接着分子(CEACAM)(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、およびCEACAM-5)、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン15(Siglec-15)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(V-domain Ig suppressor of T-cell activation)(TIGIT)、およびBおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)タンパク質などの免疫チェックポイントタンパク質を標的とするものが挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤が当技術分野で公知である。
【0084】
Trop-2発現ガン
栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)は、上皮膜表面を覆う糖タンパク質であり、細胞の自己再生、増殖、および形質転換に役割を果たす(Zaman et al., Targeting Trop-2 in solid tumors: future prospects. Onco Targets Ther. 2019;12:1781-1790)。生理的条件下では、Trop-2は胚発生、胎盤組織形成、胚着床、幹細胞増殖、および臓器発生において不可欠な役割を果たしている(Shvartsur et al., Trop2 and its overexpression in cancers: regulation and clinical/therapeutic implications. Genes Cancer. 2015;6(3-4):84-105)。皮膚や口腔粘膜を含む複数の正常な上皮組織の表面には、Trop-2の低い基礎発現レベルが見られる(Strop P, Tran TT, Dorywalska M, et al. RN927C, a site-specific Trop-2 antibody-drug conjugate (ADC) with enhanced stability, is highly efficacious in preclinical solid tumor models. Mol Cancer Ther. 2016;15(11):2698-2708)。Trop-2は腫瘍の増殖を促進することができ、その過剰発現は多くの種類の悪性上皮性腫瘍で一般的である(Goldenberg DM, Stein R, Sharkey RM. The emergence of trophoblast cell-surface antigen 2 (TROP-2) as a novel cancer target. Oncotarget. 2018;9(48):28989-29006)。Trop-2の過剰発現は、ガン細胞周期を加速し、ガン増殖を促進する。Trop2の過剰発現は、多くのガンにおいて、患者の生存率の低下、ならびに腫瘍の攻撃性および転移の増加と関連する。いくつかの実施形態では、Trop-2を過剰発現する進行/転移性ガンを有する患者に、トリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩を、本明細書に記載される特定の時限投与プロトコールで抗体薬物複合体サシツズマブ・ゴビテカンと併用投与する。いくつかの実施形態において、Trop-2を過剰発現する進行性/転移性ガンは、乳ガン、子宮頸ガン、結腸または結腸直腸ガン、類内膜子宮内膜ガン、食道ガン、胃ガン、神経膠腫、肝門部胆管ガン、口腔扁平上皮ガン、消化管ガン、慢性リンパ球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、Rajiバーキットリンパ腫、小型肺腺ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、胃ガン、甲状腺ガン、膀胱ガン、子宮ガン、ならびに小細胞肺ガンおよび非小細胞肺ガンを含む肺ガンからなる群から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、治療されるTrop-2発現腫瘍は、非小細胞肺ガン(NSCLC)である。NSCLCは、診断された総ての肺ガンの85%近くを占める。一般的なNSCLCのタイプには、一般に腺分化を示す腺ガン、一般に扁平上皮分化(角化)を示す扁平上皮ガン、一般に大きく低分化を示す大細胞ガンが含まれる。
【0086】
トリプルネガティブ乳ガン
トリプルネガティブ乳ガン(TNBC)は、極めて急速進行性の乳ガンサブタイプであり、年間乳ガン症例の15~20%、乳ガンによる全死亡の25%を占める。TNBCは、若年での発症、大きく高悪性度の腫瘍、および内臓転移の傾向を含むいくつかの急速進行性の臨床病理学的特徴によって特徴付けられる(Cheang et al., Basal-like breast cancer defined by five biomarkers has superior prognostic value than triple-negative phenotype. Clin Cancer Res. 2008;14(5):1368-76.; Foulkes et al., Triple-negative breast cancer. N Engl J Med. 2010 Nov 11;363(20):1938-48)。
【0087】
乳ガンは一般に、局所ER陰性、プロゲステロン受容体(PR)陰性、HER2陰性ステータスに基づいてTNBCに分類され、これは、エストロゲンとプロゲステロンについては組織学的または細胞学的ホルモン受容体免疫組織化学(IHC)評価(核染色1%未満と定義)により、また、HER2陰性、非過剰発現についてはIHC[0または1+]またはin situハイブリダイゼーション[比<2.0]または平均遺伝子コピー数<4シグナル/核)(2018年米国臨床腫瘍学会および米国病理学会(ASCO CAP)基準による)により判定することができる。
【0088】
転移性尿路上皮ガン
転移性尿路上皮(移行細胞)ガン(mUC)は、欧米では膀胱ガンの主な組織型であり、全膀胱ガンの90%を占める。膀胱ガンは、世界的に男性で6番目、女性で17番目に多く発生するガンである。膀胱ガンは泌尿器系に関わる悪性腫瘍の中で最も多い。膀胱ガンは非筋浸潤性、筋浸潤性、または転移性に分類することができる。患者の約25%は筋浸潤性疾患で、転移を伴うか、後に転移を起こす。全身化学療法は手術不能な局所進行性または転移性尿路上皮悪性腫瘍患者の初期治療の標準的アプローチである。初期奏効率は高いが、多剤化学療法による生存期間中央値は約15か月である。
【0089】
PD-L1ステータス
いくつかの側面において、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、PD-L1陽性である。別の側面において、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、PD-L1陰性である。
【0090】
PD-L1は、その2つの阻害性受容体、プログラム死-1(PD-1)およびB7.1との結合を介して免疫応答を下方調節する膜貫通タンパク質である。PD-1は、T細胞の活性化の後にT細胞上に発現する阻害性受容体であり、慢性感染症またはガンなどの慢性刺激状態において持続する(Blank, C and Mackensen, A, Contribution of the PD-L1/PD-1 pathway to T-cell exhaustion: an update on implications for chronic infections and tumor evasion. Cancer Immunol Immunother, 2007. 56(5): p. 739-745)。PD-L1とPD-1の結合は、T細胞増殖、サイトカイン産生および細胞溶解活性を阻害し、T細胞の機能的不活性化または疲弊をもたらす。B7.1は、抗原提示細胞および活性化されたT細胞上に発現する分子である。PD-L1のT細胞および抗原提示細胞上のB7.1への結合は、T細胞の活性化およびサイトカイン産生の阻害を含む、免疫応答の下方調節を媒介しうる(Butte MJ, Keir ME, Phamduy TB, et al. Programmed death-1 ligand 1 interacts specifically with the B7-1 costimulatory molecule to inhibit T cell responses. Immunity. 2007;27(1):111-122参照)。PD-L1の発現は、免疫細胞および腫瘍細胞で見出されている。Dong H, Zhu G, Tamada K, Chen L. B7-H1, a third member of the B7 family, co-stimulates T-cell proliferation and interleukin-10 secretion. Nat Med. 1999;5(12):1365-1369; Herbst RS, Soria JC, Kowanetz M, et al. Predictive correlates of response to the anti-PD-L1 antibody MPDL3280A in cancer patients. Nature. 2014;515(7528):563-567参照。腫瘍細胞におけるPD-L1の異常発現は、抗腫瘍免疫を阻害し、免疫回避をもたらすことが報告されている。
【0091】
PD-L1の発現は、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。例えば、PD-L1の発現は、ペンブロリズマブ治療のための付随検査としてDakoおよびBristol-Meyers Squibbによって開発されたFDA承認のin vitro診断免疫組織化学(IHC)検査であるPD-L1 IHC 22C3 pharmDxを用いて検出することができる。これは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒトガン組織においてPD-L1を検出するための、Autostainer Lin 48にてモノクローナルマウス抗PD-L1クローン22C3 PD-L1とEnVision FLEX可視化システムを使用する定性アッセイである。発現レベルは、部分的または完全な膜染色を示す生存腫瘍細胞のパーセンテージを測定する腫瘍割合スコア(TPS)を用いて測定することができる。染色は、1%~100%のPD-L1発現を示す。
【0092】
PD-L1発現はまた、ニボルマブ治療のための付随検査としてDakoおよびMerckにより開発されたFDA承認のin vitro診断免疫組織化学(IHC)検査であるPD-L1 IHC 28-8 pharmDx用いて検出することもできる。この定性アッセイは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト転移性尿路上皮ガン組織においてPD-L1を検出するために、Autostainer Lin 48にてモノクローナルウサギ抗PD-L1クローン28-8とEnVision FLEX可視化システムを使用する。
【0093】
PD-L1検出のための他の市販検査法には、モノクローナルウサギ抗PD-L1クローンSP263を使用するVentana SP263アッセイ(VentanaがAstraZenecaと共同開発)、およびウサギモノクローナル抗PD-L1クローンSP142を使用するVentana SP142アッセイ(VentanaがGenentech/Rocheと共同開発)がある。PD-L1ステータスの判定は適応症特異的であり、あらゆる強度のPD-L1発現腫瘍浸潤免疫細胞が占める腫瘍面積の割合(%IC)またはあらゆる強度のPD-L1発現腫瘍細胞の割合(%TC)に基づく評価である。例えば、TNBCではPD-L1陽性ステータスはIC1%以上とみなされ、mUCではTC50%以上またはIC10%以上とみなされる。
【0094】
いくつかの実施形態では、TNBCは、PD-L1陽性ステータスがIC1%以上である。
【0095】
いくつかの実施形態では、第二選択または第三選択抗体薬物複合体化学療法薬プロトコールで治療されるmUC患者に、PD-L1ステータス陽性mUCが記録されている。いくつかの実施形態では、第二選択または第三選択抗体薬物複合体化学療法薬プロトコールで治療される患者に、in vitro診断(IVD)アッセイ、例えば、Ventana SP-142アッセイまたは他の好適なアッセイにより確認された10%を超えるPD-L1染色腫瘍浸潤免疫細胞または50%を超える腫瘍細胞というPD-L1ステータス陽性mUCが記録されている。いくつかの実施形態では、第二選択または第三選択抗体薬物複合体化学療法薬プロトコールで治療される患者に、in vitro診断(IVD)アッセイ、例えば、Ventana SP-142アッセイまたは他の好適なアッセイにより確認された20%を超える腫瘍細胞のPD-L1染色というPD-L1ステータスmUCが記録されている。別の実施形態では、第二選択または第三選択抗体薬物複合体化学療法薬プロトコールで治療される患者に、FDA承認検査で決定された1%以上の腫瘍細胞のPD-L1染色というPD-L1ステータスmUCが記録されている。別の実施形態では、第二選択または第三選択抗体薬物複合体化学療法薬プロトコールで治療される患者に、PD-L1ステータス陰性mUCが記録されている。
【0096】
CDK4/6ステータス
本明細書で提供されるように、いくつかの実施形態では、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、CDK4/6陰性またはCDK4/6複製依存性である。別の実施形態では、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、CDK4/6陽性またはCDK4/6複製依存性である。さらに他の別の実施形態では、治療されるTrop-2過剰発現ガンは、CDK4/6不定である。
【0097】
CDK4/6複製依存性ガンは一般に、網膜芽細胞腫遺伝子(Rb1)異常を有する。Rb1-Rbタンパク質の遺伝子産物は、CDK4/6の下流標的である。RB1は、RB発現の欠損をもたらす欠失、変異またはエピジェネティック修飾を介して、ならびに過剰なリン酸化およびRB機能の不活性化をもたらす異常なCDKキナーゼ活性によって、ガン細胞で一般的に調節不全となる(Chen et al. Novel RB1-Loss Transcriptomic Signature Is Associated with Poor Clinical Outcomes across Cancer Types. Clin Cancer Res. 2019;25(14); Sherr, C.J., and McCormick, F. The RB and p53 pathways in cancer. Cancer Cell, 2002;2:103 12)。CCNE1/2(サイクリンE)は、CDK4/6と機能的な冗長性を提供し、細胞をG1期からS期に移行させるのに役立つ並行経路の一部である。過剰発現は、CDK4/6経路への依存性を低下させ、CDK4/6非依存性へと導く(Turner et al., Cyclin E1 Expression and Palbociclib Efficacy in Previously Treated Hormone Receptor-Positive Metastatic Breast Cancer. J Clin Oncol. 2019;37(14):1169-78)。従って、CCNE1/2増幅またはRB欠損のいずれかを有する腫瘍は、一般に「CDK4/6非依存性」とみなされる。
【0098】
CDK4/6複製依存性のガンは、複製または増殖にCDK4/6の活性を必要とする。CDK4/6複製依存性TNBCは一般に、無傷で機能的なRb経路、CDK4/6アクチベーター(サイクリンD)、および/またはCCND1転座、CCND1-3 3’UTR欠損、およびCCND2またはCCND3の増幅を含むd型サイクリン活性化特徴(DCAF)の発現増加を有する(Gong et al. Genomic aberrations that activate D-type cyclins are associated with enhanced sensitivity to the CDK4 and CDK5 inhibitor abemaciclib. Cancer Cell. 2017;32(6):761-76参照)。RBおよびCCNE1/2が野生型であり、かつ上記のDCAFの1つを有する腫瘍は、一般に「CDK4/6依存性」に分類される。
【0099】
CDK4/6複製依存性またはCDK4/6複製非依存性のいずれにも分類できない腫瘍は一般に、CDK4/6依存性とも非依存性とも確認できないので「CDK4/6不定」に分類される。
【0100】
いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、CDK4/6複製依存性に分類される。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、CDK4/6複製非依存性に分類される。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、CDK4/6不定に分類される。
【0101】
CDK4/6遺伝子シグネチャー分析を決定する方法は当技術分野で公知であり、患者の生検(例えば、TNBCまたはmUC原発部位または転移部位)から採取した腫瘍組織の利用を含み、Shapiro GI. Genomic biomarkers predicting response to selective CDK4/6 inhibition: Progress in an elusive search. Cancer Cell. 2017; 32(6):721-3およびGong et al. Genomic aberrations that activate D-type cyclins are associated with enhanced sensitivity to the CDK4 and CDK5 inhibitor abemaciclib. Cancer Cell. 2017; 32(6):761-76に記載されている。
【0102】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブをサシツズマブ・ゴビテカンと併用して受けている患者は、以下:
a.CCNE1増幅;
b.CCNE2増幅;または
c.i)同型接合欠失、ii)フレームシフト変異、またはiii)ストップゲイン変異(すなわち、未成熟終止コドンが生じる(終止コドンが獲得される)突然変異)として定義される、網膜芽細胞腫タンパク質1(Rb1)欠損
のうち少なくとも1つを有するCDK4/6非依存性TNBCを有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブをサシツズマブ・ゴビテカンと併用して受けている患者は、
1)以下:
a.CCNE1増幅;
b.CCNE2増幅;または
c.i)同型接合欠失、ii)フレームシフト変異、またはiii)ストップゲイン変異(すなわち、未成熟終止コドンが生じる(終止コドンが獲得される)突然変異)として定義される、網膜芽細胞腫タンパク質1(Rb1)欠損
のうち少なくとも1つを有さず、
2)野生型:i)CCNE1;ii)CCNE2;およびiii)RB1を有さず;かつ
3)以下のD-サイクリン活性化特徴:i)CCND2増幅;ii)CCND3増幅;およびiii)CCD1-3 3’UTR欠損(これらのUTRのいずれかの同型接合性または異型接合性の欠失と定義される)のうち少なくとも1つを有する
CDK4/6依存性TNBCを有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブをサシツズマブ・ゴビテカンと併用して受けている患者は、以下:
d.CCNE1増幅;
e.CCNE2増幅;または
f.i)同型接合欠失、ii)フレームシフト変異、またはiii)ストップゲイン変異(すなわち、未成熟終止コドンが生じる(終止コドンが獲得される)突然変異)として定義される、網膜芽細胞腫タンパク質1(Rb1)欠損
のうち少なくとも1つを有するCDK4/6非依存性mUCを有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブをサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーと併用して受けている患者は、
1)以下:
a.CCNE1増幅;
b.CCNE2増幅;または
c.i)同型接合欠失、ii)フレームシフト変異、またはiii)ストップゲイン変異(すなわち、未成熟終止コドンが生じる(終止コドンが獲得される)突然変異)として定義される、網膜芽細胞腫タンパク質1(Rb1)欠損
のうち少なくとも1つを有さず、
2)野生型:i)CCNE1;ii)CCNE2;およびiii)RB1を有さず;かつ
3)以下のD-サイクリン活性化特徴:i)CCND2増幅;ii)CCND3増幅;およびiii)CCD1-3 3’UTR欠損(これらのUTRのいずれかの同型接合性または異型接合性の欠失と定義される)のうち少なくとも1つを有する
CDK4/6依存性mUCを有する。
【0106】
改善された抗体薬物複合体化学療法薬プロトコール
トリラシクリブ
トリラシクリブ(2’-((5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-7’,8’-ジヒドロ-6’H-スピロ(シクロヘキサン-1,9’-ピラジノ(1’,2’:1,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン)-6’-オン)は、構造:
【化1】
を有する選択性の高いCDK4/6阻害剤である。
【0107】
本明細書で提供されるように、トリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩、組成物、同位性類似体、またはそのプロドラッグは、好適な担体中で投与される。トリラシクリブは、参照によりその全体が本明細書の一部とされる米国特許出願公開第2013/0237544号明細書に記載されている。トリラシクリブは、参照によりその全体が本明細書の一部とされる米国特許出願公開第2019/0135820号明細書に記載されるように合成することができる。トリラシクリブは、全身、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、または皮内を含む、所望の転帰を達成するいずれの方法で投与してもよい。注射の場合、トリラシクリブは、いくつかの実施形態では、例えば、300mgのトリラシクリブ(349mgのトリラシクリブ二塩酸塩二水和物に相当)を与える無菌の凍結乾燥黄色塊として300mg/バイアルで提供されうる。この製品は、例えば、保存剤を含まない単回使用の20mL透明ガラスバイアルで供給されうる。例えば、投与前に、注射用トリラシクリブ300mg/バイアルは、19.5mlの0.9%塩化ナトリウム注射液または5%デキストロース注射液で再構成されうる。この再構成溶液は、トリラシクリブ濃度が15mg/mLであり、一般に、その後、静脈内投与前に希釈される。トリラシクリブは、本明細書に記載されるように静脈内に投与することができる。
【0108】
本発明において使用するためのトリラシクリブは、塩、例えば、二塩酸塩の形態でありうる。本発明の特定の側面において、トリラシクリブは結晶性二塩酸塩であり、静脈内送達のために再構成することができる。特定の実施形態では、トリラシクリブは結晶性二塩酸塩二水和物であり、静脈内送達のために再構成することができる。
【0109】
特定の実施形態では、トリラシクリブは、溶媒(水など)を伴う溶媒和物の形態である。「溶媒和物」という用語は、トリラシクリブ(その塩を含む)と1以上の溶媒分子との分子複合体を指す。溶媒の限定されない例は、水、エタノール、ジメチルスルホキシド、アセトンおよび他の一般的な有機溶媒である。「水和物」という用語は、本発明の化合物と水を含んでなる分子複合体を指す。本発明による薬学上許容可能な溶媒和物としては、溶媒が同位体置換されているもの、例えば、D2O、d6-アセトン、d6-DMSOが含まれる。溶媒和物は、液体形態または固体形態でありうる。
【0110】
特定の実施形態では、トリラシクリブは、場合により水和物としての二塩酸塩形態である。例えば、トリラシクリブは、本発明において、二塩酸塩二水和物としてまたはトリラシクリブ二塩酸塩二水和物から形成された医薬組成物として使用することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、約180mg/m2~300mg/m2で投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、約180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、または約280mg/m2で投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、少なくとも180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、または240mg/m2で投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、例えば、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前、例えば、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約4時間以内、例えば、約4時間以内、3時間以内、2時間以内、約1時間以内、または約30分前に、約240mg/m2で投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、約30分にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に完全に投与される。
【0112】
本明細書で提供されるように、進行性/転移性TNBCの治療のために、トリラシクリブは、各21日サイクルの1日目と8日目に、または本明細書で別途提供されるように投与される。トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に、一般に静脈内注射/注入に約30分にわたって、当該プロトコールにおいてサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前約4時間以内、例えば、約3時間以内、2時間以内、1時間以内、または約30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前4時間以内に完全に投与される。
【0113】
別の実施形態では、進行性/転移性TNBCの治療のために、トリラシクリブは、各21日サイクルの1日目と8日目と15日目に、または本明細書で別途提供されるように投与される。トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に、一般に、当該プロトコールのサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前約4時間以内、例えば、約3時間以内、2時間以内、1時間以内、または約30分前に、約30分にわたって静脈内注射/注入により投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始4時間以内に完全に投与される。
【0114】
別の実施形態では、本明細書で提供されるように、進行性/転移性尿路上皮ガンの治療のために、トリラシクリブは、各21日サイクルの1日目と8日目に、または本明細書で別途提供されるように投与される。トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に、一般に、当該プロトコールのサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前約4時間以内、例えば、約3時間以内、2時間以内、1時間以内、または約30分前に、約30分にわたって静脈内注射/注入により投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前4時間以内に完全に投与される。
【0115】
別の実施形態では、本明細書で提供されるように、進行性/転移性尿路上皮ガンの治療のために、トリラシクリブは、各21日サイクルの1日目と8日目と15日目、または本明細書で別途提供されるように投与される。トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に、一般に、当該プロトコールのサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前約4時間以内、例えば、約3時間以内、2時間以内、1時間以内、または約30分前に、約30分にわたって静脈内注射/注入により投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前4時間以内に完全に投与される。
【0116】
別の実施形態では、本明細書で提供されるように、Trop-2過剰発現ガンのために、トリラシクリブは、各21日サイクルの1日目と8日目に、または本明細書で別途提供されるように投与される。トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に、一般に、当該プロトコールのサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前約4時間以内、例えば、約3時間以内、2時間以内、1時間以内、または約30分前に、約30分にわたって静脈内注射/注入により投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前4時間以内に完全に投与される。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、非小細胞肺ガン(NSCLC)である。特定の実施形態では、NSCLCは、転移性または進行性NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは、白金ベースの化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤療法を併用してまたは順次受けている際にまたは受けたのちに進行した。
【0117】
別の実施形態では、本明細書で提供されるように、Trop-2過剰発現ガンの治療のために、トリラシクリブは、各21日サイクルの1日目と8日目に、または本明細書で別途提供されるように投与される。トリラシクリブは、1日目と8日目にサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に、一般に、当該プロトコールのサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前約4時間以内、例えば、約3時間以内、2時間以内、1時間以内、または約30分前に、約30分にわたって静脈内注射/注入により投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、1日目と8日目に、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前4時間以内に完全に投与される。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、非小細胞肺ガン(NSCLC)である。特定の実施形態では、NSCLCは、転移性または進行性NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは、白金ベースの化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤療法を併用してまたは順次受けている際にまたは受けたのちに進行した。
【0118】
別の実施形態では、異なるCDK4/6阻害剤が投与される。例えば、別の実施形態では、本明細書に記載のプロトコールでトリラシクリブの代わりに使用されるCDK4/6阻害剤は、リボシクリブ(Novartis)、パルボシクリブ(Pfizer)、またはアベマシクリブ(Eli Lily)、またはその薬学上許容可能な塩である。さらなる別の実施形態では、CDK4/6阻害剤は、構造:
【化2】
を有するレロシクリブ、またはその薬学上許容可能な組成物、塩、同位性類似体、またはプロドラッグであり、参照により全体が本明細書の一部とされる米国特許出願公開第2013/0237544号明細書に記載され、参照により全体が本明細書の一部とされる米国特許出願公開第2019/0135820号明細書に記載されるように合成することができる。いくつかの実施形態では、レロシクリブは、薬学上許容可能な塩、例えば、二塩酸塩として投与される。
【0119】
さらなる別の実施形態では、CDK4/6阻害剤は、構造:
【化3】
を有し、またはその薬学上許容可能な組成物、塩、同位性類似体、またはプロドラッグであり、参照により全体が本明細書の一部とされるUS2013-0237544に記載され、参照により全体が本明細書の一部とされるUS2019-0135820に記載されるように合成することができる。
【0120】
サシツズマブ・ゴビテカン
サシツズマブ・ゴビテカン(トロデルヴィ(登録商標))は、トポイソメラーゼI阻害剤イリノテカンの活性代謝物である細胞傷害性ペイロードSN-38に結合されたヒト化RS7(hRS7)抗Trop-2モノクローナル抗体と切断可能なCL2Aリンカーから構成される抗体薬物複合体(ADC)である。FDAは、それをバイオシミラー分子と区別するためにトロデルヴィ サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーと呼称した。本明細書に記載の方法は、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーおよびその総てのバイオシミラーを含む、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーという用語の使用は、そのバイオシミラーに関して非限定的であることを意図することが理解されるべきである。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーは、およそ160キロダルトンの分子量を有する。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーは、以下の化学構造:
【化4】
を有する。
【0121】
Trop-2は、乳房および尿路上皮ガンを含む多くの上皮ガンで過剰発現し、細胞の増殖、生存、および浸潤の増進に関与するカルシウムシグナル伝達因子である。高レベルのTrop-2発現が、これらの適応症の生存率の悪化に関連している。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーは、薬物動態を変化させることなく、または結合抗体の治療指数を低下させることなく、モノクローナル抗体あたり7.6分子のSN-38を部位特異的に結合している。これにより、腫瘍組織に局部的高濃度のSN-38を局所的に送達することができる。Trop-2への結合後、ADCは内在化し、リソソームに運ばれる。SN-38は、リソソーム内ならびに腫瘍微小環境の細胞外に見出すことができる低pHにおける抗体の分解とその後のリンカーの加水分解の過程で放出される。
【0122】
2020年に、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ(登録商標))は、FDAから、転移性疾患に対して少なくとも2種類の療法歴がある転移性TNBC成人患者の治療薬として早期承認を受けた。この早期承認は、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーで処置された患者(N=108)のORRが33.3%、奏効期間(DOR)中央値が7.7か月(95%CI=4.9~10.8か月)、DORが6か月以上と12か月以上の患者がそれぞれ55.5%と16.7%であった第2相IMMU-132-01試験の結果に基づくものであった(Bardia,2019)。2021年に、第3相ASCENT試験の結果に基づき、FDAから完全承認を得た(Bardia,2021)。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーを受けている患者のPFS中央値は4.8か月(95%CI=4.1~5.8か月)であったのに対し、医師が選択した単剤化学療法を受けている患者では1.7か月(95%CI=1.5~2.5か月)であった(HR=0.43、95%CI=0.35~0.54、P<0.0001)、全生存期間(OS)中央値はそれぞれ11.8か月(95%CI=10.5~13.8か月)と6.9か月(95%CI=5.9~7.6か月)であった(HR=0.51、95% CI=0.41~0.62、P<0.0001)(トロデルヴィ添付文書、2021)。
【0123】
2021年4月、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ(登録商標))は、FDAから、白金含有化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤のいずれかを受けたことがある局所進行性または転移性尿路上皮ガン(mUC)患者の治療薬として早期承認を受けた。有効性および安全性は、白金含有化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤による処置を受けたことがある局所進行性またはmUC患者112人を登録した単群多施設試験であるTROPHY(IMMU-132-06;NCT03547973)で評価された。患者は21日治療サイクルの1日目と8日目にサシツズマブ・ゴビテカン10mg/kgを静脈内投与された。主な有効性評価項目は、客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)で、RECIST 1.1基準を用いて独立審査により評価された。ORRは27.7%(95%CI:19.6、36.9)で、完全奏効5.4%、部分奏効22.3%であった。DOR中央値は7.2か月(n=31、95%CI:4.7、8.6、範囲1.4+、13.7)であった。
【0124】
サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの処方情報(トロデルヴィ(登録商標)添付文書、2021)の「警告と注意」によると、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの使用に関連する重要なリスクは以下のとおりである:
・重度または生命を脅かす好中球減少症(枠付き警告);
・重度の下痢(枠付き警告);
・重度のアナフィラキシー反応を含む過敏症および輸液関連反応;
・悪心および嘔吐;
・UGT1A1活性が低下している患者:ウリジン二リン酸グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(UGT1A1)*28対立遺伝子がホモ接合体である患者は、好中球減少症、発熱性好中球減少症、および貧血のリスクが高い、
・胚・胎児毒性。
【0125】
化学療法誘発性骨髄抑制(CIM)の発生は、総ての化学療法において問題となる可能性があるが、サシツズマブ・ゴビテカン治療中は、この治療が一般に以前の治療コースによって血液細胞集団に重大な損傷が生じた後に投与されるため、特に問題となる。CIMを発症した患者は、感染症、敗血症、出血、および疲労を経験する可能性が高く、しばしば入院、造血成長因子支持、輸血(赤血球[RBC]および/または血小板)の必要、さらには死亡に至る(例えば、Gustinetti et al., Bloodstream infections in neutropenic cancer patients: A practical update. Virulence. 2016; 7(3): 280-97; Li et al., Relationship between severity and duration of chemotherapy-induced neutropenia and risk of infection among patients with non-myeloid malignancies. Support Care Cancer 2016; 24(10): 4377-83; Caggiano et al., Incidence, cost, and mortality of neutropenia hospitalization associated with chemotherapy. Cancer. 2005; 103(9): 1916-24参照)。さらに、CIMは一般に減量および遅滞につながり、治療用量の強度が制限され、化学療法の抗腫瘍効果の利点が損なわれる可能性がある。場合によっては、治療は中止される。例えば、グレード4の好中球減少症≧7日、グレード3の発熱性好中球減少症(ANC<1000/mm3および発熱≧38.5℃)、または予定された治療のいかなる時でも、グレード1以下に回復するために投与が2週間もしくは3週間遅延するグレード3~4の好中球減少症のいずれかの初回の事例では、投与量の25%減量が推奨され、2回目の事例では50%減量が推奨され、3回目の事例では投与中止が推奨される。グレード1以下に回復するために3週間を超えて投与が遅延するグレード3~4の好中球減少症の初回事例の際には、治療の中止が推奨される。
【0126】
治療中に好中球減少症および/または血小板減少症を有する患者における化学療法の減量および治療遅延を誘導するための臨床アルゴリズムを開発し、実施する試みが検討されている(例えば、Clinical Trial of a Novel Dose Adjustment Algorithm for Preventing Cytopenia-Related Delays During FOLFOX Chemotherapy, ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04526886参照)。それにもかかわらず、化学療法誘発性の免疫系の細胞障害は、宿主免疫系がガンに対する応答を効果的に惹起できないために、抗腫瘍効果を制限する可能性もある。骨髄抑制剤に長期間暴露されると、骨髄毒性と骨髄抑制が累積に至る可能性があり、標準治療の用量とスケジュールで以降の療法ラインを送達する能力が制限される場合がある。現在のところ、サシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールの骨髄抑制作用を、それが起こる前に予防または緩和する単一の治療法はない。既存の治療法は一般に、急性細胞減少を治療するために反応的に使用され、系統特異的であり、これらのそれぞれは、一連の固有の関連リスクを有する(例えば、Blumberg et al., (2010) Platelet transfusions: trigger, dose, benefits, and risks. F1000 Med Rep 2:5. https://doi.org/10.3410/m2-5; Bohlius et al., (2019) Management of cancer-associated anemia with erythropoiesis-stimulating agents: ASCO/ASH Clinical Practice Guideline Update. J Clin Oncol 37 (15):1336-1351. https://doi.org/10.1200/jco.18.02142; Xu et al., (2016) Risk factors for bone pain among patients with cancer receiving myelosuppressive chemotherapy and pegfilgrastim. Support Care Cancer 24 (2):723-730. https://doi.org/10.1007/s00520-015-2834-2; Corey-Lisle et al., (2014) Transfusions and patient burden in chemotherapy-induced anaemia in France. Ther Adv Med Oncol 6 (4):146-153. https://doi.org/10.1177/1758834014534515参照)。
【0127】
化学療法誘発性下痢(CID)の発生は、衰弱させ、場合によっては生命を脅かす。このような患者における所見には、体液量減少、腎不全、ならびに代謝性アシドーシスおよび水分摂取量に依存する低ナトリウム血症(抗利尿ホルモンの放出に対する血液量減少刺激のために排泄できない水分摂取量の増加)または高ナトリウム血症(損失分を補う水分摂取量の不足)などの電解質障害が含まれる(Maroun et al., (2007) Prevention and management of chemotherapy-induced diarrhea in patients with colorectal cancer: a consensus statement by the Canadian working group on chemotherapy-induced diarrhea. Curr Oncol 14: 13-20)。CIDは、生存率に影響を及ぼしうる投与遅延または減量を引き起こすことにより、ガン治療を妨害し、不利益をもたらしうる。例えば、制吐剤および下痢止めで管理できないグレード3~4の下痢の初回の事例では25%の減量が推奨され、2回目の事例では50%の減量が推奨され、3回目の事例では中止が推奨される。
【0128】
口内炎/粘膜炎は、消化管(口から肛門に至る)を覆う分裂の速い上皮細胞に対する化学療法薬の毒性作用の結果であり、粘膜組織は潰瘍形成および感染に曝されている。口内炎/粘膜炎は一般に化学療法開始後5~10日で始まり、1週間~6週間以上続く。口内炎/粘膜炎の患者の多くは、関連する疼痛のために食事がとれず、血液量減少症、電解質異常、栄養不良、さらには死に至るため、栄養面で重大な問題を起こす。重度の口内炎/粘膜炎では、治療プロトコールの減量または中断がしばしば生じる。例えば、グレード4の粘膜炎もしくは口内炎、または最適な医学的管理にもかかわらず48時間を超えて持続するグレード3~4の粘膜炎もしくは口内炎、または予定された治療のある時点で、グレード1以下に回復するために投与が2週間もしくは3週間遅延するグレード3~4の粘膜炎もしくは口内炎の初回の事例では25%の減量が推奨され、2回目の事例では50%の減量が推奨され、3回目の事例では中止が推奨される。3週間以内にグレード1以下に回復しないグレード3~4の粘膜炎または口内炎の初回の事例では、投与の中止が推奨される。
【0129】
サシツズマブ・ゴビテカンは一般に、トリラシクリブの投与後、各21日サイクルの1日目と8日目に静脈内注入により投与される。本明細書で提供されるように、サシツズマブ・ゴビテカンの投与は、3時間より長くてはならない。いくつかの実施形態では、注入は3時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、注入は、2時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、注入は1時間にわたって投与される。本明細書に提供される方法では、サシツズマブ・ゴビテカンは、施設のガイドラインに従って投与することができる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、その標準治療用量10mg/kgで投与することができる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kg~15mg/kgの用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約6mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約7mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約8mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約9mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約10mg/kgの用量で投与される。
【0130】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応ならびに化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のための前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの投与前に、患者に輸液反応の予防のための解熱剤、ヒスタミン受容体1(H1)およびヒスタミン受容体2(H2)遮断薬、およびコルチコステロイドの前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの投与前に、患者に、化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のために、デキサメタゾンとセロトニン5-HT3受容体アンタゴニストまたはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストのいずれかを併用する前投与が行われる。
【0131】
トリラシクリブ+サシツズマブ・ゴビテカンを用いた進行性/転移性TNBCの治療
本明細書で提供されるように、本明細書に記載されるような進行性/転移性TNBC患者の定義されたサブ集団に、トリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩を、特定の時限投与プロトコールで抗体薬物複合体サシツズマブ・ゴビテカンと併用投与する。従って、本明細書では、進行性/転移性TNBCヒト患者を治療する方法であって、
i)上記患者に有効量の、構造:
【化5】
を有するCDK4/6阻害剤、またはその薬学上許容可能な塩、組成物、同位体、もしくはプロドラッグを投与すること;および
ii)上記患者に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与すること
を含んでなり、
トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与の開始前に投与され、上記患者は、少なくとも2回の治療歴があり、少なくとも1回は転移療法に属す、方法が提供される。
【0132】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約2時間以内、例えば、約2時間、約1時間30分、約1時間、約45分、約40分、約35分、または約30分前に投与される。
【0133】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、患者に約190~280mg/m2で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、約240mg/m2で投与される。
【0134】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kg~15mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約6mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約7mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約8mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約9mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約10mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約1時間~3時間の時間にわたる持続的注入(CI)として投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの初回の注入は3時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンのその後の注入は2時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンのその後の注入は1時間にわたって投与される。
【0135】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンは、1サイクル以上、2サイクル以上、3サイクル以上、4サイクル以上、5サイクル以上、6サイクル以上、7サイクル以上、8サイクル以上、9サイクル以上、10サイクル以上、11サイクル以上、12サイクル以上、13サイクル以上、14サイクル以上、15サイクル以上、16サイクル以上、17サイクル以上、18サイクル以上、19サイクル以上、20サイクル以上、21サイクル以上、22サイクル以上、23サイクル以上、24サイクル以上、25サイクル以上、26サイクル以上、27サイクル以上、28サイクル以上、29サイクル以上、30サイクル以上、31サイクル以上、32サイクル以上、33サイクル以上、または34サイクル以上投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンは、最大35回実施される。
【0136】
いくつかの実施形態では、プロトコールは、1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンは、各21日サイクル1日目と8日目に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に完全に投与される。
【0137】
いくつかの実施形態では、プロトコールは、1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンは、各21日サイクルの1日目と8日目に投与され、サシツズマブ・ゴビテカンを用いずにトリラシクリブが各21日サイクルの15日目に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与され、トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に完全に投与される。
【0138】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応ならびに化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のための前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応の予防のための解熱剤、ヒスタミン受容体1(H1)およびヒスタミン受容体2(H2)遮断薬、およびコルチコステロイドの前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に、化学療法誘発性嘔吐および悪心(CINV)の予防のために、デキサメタゾンとセロトニン5-HT3受容体アンタゴニストまたはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストのいずれかを併用する前投与が行われる。
【0139】
トリラシクリブ+サシツズマブ・ゴビテカンを使用する進行性/転移性尿路上皮ガンの治療
本明細書で提供されるように、本明細書に記載されるような進行性/転移性尿路上皮ガン患者の定義されたサブ集団に、トリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩を、特定の時限投与プロトコールで抗体薬物複合体サシツズマブ・ゴビテカンと併用投与する。従って、本明細書では、進行性/転移性尿路上皮ガンヒト患者を治療する方法であって、
i)上記患者に有効量の、構造:
【化6】
を有するCDK4/6阻害剤、またはその薬学上許容可能な塩、組成物、同位体、もしくはプロドラッグを投与すること;および
ii)上記患者に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与すること
を含んでなり、
トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与の開始前に投与され、上記患者は、白金含有化学療法とプログラム死受容体-1(PD-1)またはプログラム死リガンド-1(PD-L1)阻害剤のいずれかを受けたことがある、方法が提供される。
【0140】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約2時間以内、例えば、約2時間、約1時間30分、約1時間、約45分、約40分、約35分、または約30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、患者に約190~280mg/m2で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、約240mg/m2で投与される。
【0141】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kg~15mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約6mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約7mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約8mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約9mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約10mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約1時間~3時間の時間にわたる持続的注入(CI)として投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの初回の注入は3時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンのその後の注入は2時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンのその後の注入は1時間にわたって投与される。
【0142】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンは、1サイクル以上、2サイクル以上、3サイクル以上、4サイクル以上、5サイクル以上、6サイクル以上、7サイクル以上、8サイクル以上、9サイクル以上、10サイクル以上、11サイクル以上、12サイクル以上、13サイクル以上、14サイクル以上、15サイクル以上、16サイクル以上、17サイクル以上、18サイクル以上、19サイクル以上、20サイクル以上、21サイクル以上、22サイクル以上、23サイクル以上、24サイクル以上、25サイクル以上、26サイクル以上、27サイクル以上、28サイクル以上、29サイクル以上、30サイクル以上、31サイクル以上、32サイクル以上、33サイクル以上、または34サイクル以上投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンは、最大35回実施される。
【0143】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応ならびに化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のための前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応の予防のための解熱剤、ヒスタミン受容体1(H1)およびヒスタミン受容体2(H2)遮断薬、およびコルチコステロイドの前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に、化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のために、デキサメタゾンとセロトニン5-HT3受容体アンタゴニストまたはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストのいずれかを併用する前投与が行われる。
【0144】
いくつかの実施形態では、プロトコールは、1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンは、各21日サイクル1日目と8日目に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に完全に投与される。
【0145】
いくつかの実施形態では、プロトコールは、1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンは、各21日サイクルの1日目と8日目に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンを用いずに各21日サイクルの15日目に投与され、トリラシクリブは、1日目と8日目のサシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に完全に投与される。
【0146】
トリラシクリブ+サシツズマブ・ゴビテカンによるTrop-2過剰発現ガンの治療
本明細書に記載されるようなTrop-2過剰発現ガン患者の定義されたサブ集団に、トリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩を、特定の時限投与プロトコールで抗体薬物複合体サシツズマブ・ゴビテカンと併用投与する。従って、本明細書では、Trop-2過剰発現ガンヒト患者を治療する方法であって、
i)上記患者に有効量の、構造:
【化7】
を有するCDK4/6阻害剤、またはその薬学上許容可能な塩、組成物、同位体、もしくはプロドラッグを投与すること;および
ii)上記患者に有効量のサシツズマブ・ゴビテカンを投与すること
を含んでなり、
トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与の開始前に投与される、方法が提供される。
【0147】
いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、非小細胞肺ガン(NSCLC)である。特定の実施形態では、NSCLCは、転移性または進行性NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは、白金ベースの化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤療法を併用してまたは順次受けている際にまたは受けたのちに進行した。
【0148】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前約2時間以内、例えば、約2時間、約1時間30分、約1時間、約45分、約40分、約35分、または約30分前に投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、患者に約190~280mg/m2で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブは、約240mg/m2で投与される。
【0149】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kg~15mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約6mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約7mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約8mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約9mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約10mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンは、約1時間~3時間の時間にわたる持続的注入(CI)として投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの初回の注入は3時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンのその後の注入は2時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンのその後の注入は1時間にわたって投与される。
【0150】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンは、1サイクル以上、2サイクル以上、3サイクル以上、4サイクル以上、5サイクル以上、6サイクル以上、7サイクル以上、8サイクル以上、9サイクル以上、10サイクル以上、11サイクル以上、12サイクル以上、13サイクル以上、14サイクル以上、15サイクル以上、16サイクル以上、17サイクル以上、18サイクル以上、19サイクル以上、20サイクル以上、21サイクル以上、22サイクル以上、23サイクル以上、24サイクル以上、25サイクル以上、26サイクル以上、27サイクル以上、28サイクル以上、29サイクル以上、30サイクル以上、31サイクル以上、32サイクル以上、33サイクル以上、または34サイクル以上投与される。いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンは、最大35回実施される。
【0151】
いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応ならびに化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のための前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に輸液反応の予防のための解熱剤、ヒスタミン受容体1(H1)およびヒスタミン受容体2(H2)遮断薬、およびコルチコステロイドの前投与が行われる。いくつかの実施形態では、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前に、患者に、化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のために、デキサメタゾンとセロトニン5-HT3受容体アンタゴニストまたはニューロキニ
ン1(NK1)受容体アンタゴニストのいずれかを併用する前投与が行われる。
【0152】
いくつかの実施形態では、プロトコールは、1回以上の21日治療サイクルを含んでなり、トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカンは、各21日サイクル1日目と8日目に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカンの投与前4時間以内に投与され、トリラシクリブは、サシツズマブ・ゴビテカン投与の開始前に完全に投与される。
【0153】
本明細書に記載の方法で治療するためのTrop-2過剰発現ガンには、TNBCを含む乳ガン、子宮頸ガン、結腸または結腸直腸ガン、類内膜子宮内膜ガン、食道ガン、胃ガン、神経膠腫、肝門部胆管ガン、口腔扁平上皮ガン、消化管ガン、慢性リンパ球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、Rajiバーキットリンパ腫、小型肺腺ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、胃ガン、甲状腺ガン、尿路上皮ガン、子宮ガン、ならびに小細胞肺ガンおよび非小細胞肺ガンを含む肺ガンからなる群から選択される進行性/転移性ガンが含まれる。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、乳ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、トリプルネガティブ乳ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、尿路上皮ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、結腸または結腸直腸ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、前立腺ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、膵臓ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、肺ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現肺ガンは、非小細胞肺ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現肺ガンは、小細胞肺ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、子宮頸ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、類内膜子宮内膜ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、食道ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、胃ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、神経膠腫である。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、肝門部胆管ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、口腔扁平上皮ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、消化管ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、慢性リンパ球性リンパ腫である。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、節外性NK/T細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、Rajiバーキットリンパ腫である。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、小型肺腺ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、卵巣ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、膵臓ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、前立腺ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、胃ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、甲状腺ガンである。いくつかの実施形態では、Trop-2過剰発現ガンは、子宮ガンである。
【0154】
栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)は、上皮膜表面を覆う糖タンパク質であり、細胞の自己再生、増殖、および形質転換に役割を果たす(Zaman et al., Targeting Trop-2 in solid tumors: future prospects. Onco Targets Ther. 2019;12:1781-1790)。生理的条件下では、Trop-2は胚発生、胎盤組織形成、胚着床、幹細胞増殖、および臓器発生において不可欠な役割を果たしている(Shvartsur et al., Trop2 and its overexpression in cancers: regulation and clinical/therapeutic implications. Genes Cancer. 2015;6(3-4):84-105)。皮膚や口腔粘膜を含む複数の正常な上皮組織の表面には、Trop-2の低い基礎発現レベルが見られる(Strop P, Tran TT, Dorywalska M, et al. RN927C, a site-specific Trop-2 antibody-drug conjugate (ADC) with enhanced stability, is highly efficacious in preclinical solid tumor models. Mol Cancer Ther. 2016;15(11):2698-2708)。Trop-2は腫瘍の増殖を促進することができ、その過剰発現は多くの種類の悪性上皮性腫瘍で一般的である(Goldenberg DM, Stein R, Sharkey RM. The emergence of trophoblast cell-surface antigen 2 (TROP-2) as a novel cancer target. Oncotarget. 2018;9(48):28989-29006)。Trop-2の過剰発現は、ガン細胞周期を加速し、ガン増殖を促進する。Trop2の過剰発現は、多くのガンにおいて、患者の生存率の低下、ならびに腫瘍の攻撃性および転移の増加と関連する。いくつかの実施形態では、Trop-2を過剰発現する進行/転移性ガンを有する患者に、トリラシクリブまたはその薬学上許容可能な塩を、本明細書に記載される特定の時限投与プロトコールで抗体薬物複合体サシツズマブ・ゴビテカンと併用投与する。いくつかの実施形態において、Trop-2を過剰発現する進行性/転移性ガンは、乳ガン、子宮頸ガン、結腸および結腸直腸ガン、類内膜子宮内膜ガン、食道ガン、胃ガン、神経膠腫、肝門部胆管ガン、口腔扁平上皮ガン、消化管ガン、慢性リンパ球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、Rajiバーキットリンパ腫、小型肺腺ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、胃ガン、甲状腺ガン、膀胱ガン、ならびに子宮ガンからなる群から選択される。
【0155】
Trop-2発現を測定する方法は、当技術分野で公知である。1つの方法は、発現配列タグ(EST)分析、SAGE法(Serial Analysis of Gene Expression)、DNAマイクロアレイ分析および/または定量的RT-PCRを用いて腫瘍サンプルmRNAからならびに免疫組織化学法を用いて直接的に腫瘍サンプルからTROP2遺伝子の存在を測定することである。これらの方法は、Trerotola, M., Cantanelli, P., Guerra, E. et al. Upregulation of Trop-2 quantitatively stimulates human cancer growth. Oncogene 32, 222-233 (2013)に記載されている。Trop-2の発現はまた、Zeybek B, Manzano A, Bianchi A, et al. Cervical carcinomas that overexpress human trophoblast cell-surface marker (Trop-2) are highly sensitive to the antibody-drug conjugate sacituzumab govitecan. Sci Rep. 2020; 10(1): 973. Published 2020 Jan 22に記載されている。免疫蛍光技術もまた、Strop et al., N927C, a Site-Specific Trop-2 Antibody-Drug Conjugate (ADC) with Enhanced Stability, Is Highly Efficacious in Preclinical Solid Tumor Models; Mol Cancer Ther November 1 2016 (15) (11) 2698-2708に記載さているようにTrop-2発現を測定するために使用できる。
【0156】
抗腫瘍有効性評価
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBCもしくは転移性尿路上皮ガン、またはNSCLCなどのTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて抗腫瘍有効性の増強が提供される。腫瘍応答を評価する方法は当技術分野で周知であり、例えば、RECIST v1.1(Eisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009; 45: 228-247)が挙げられる。
【0157】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として進行性もしくは転移性Trop-2過剰発現ガン、例えば、限定するものではないが、非小細胞肺ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを受けていない患者に比べて無増悪生存期間(PFS)の増進または延長が提供される。PFSは一般に、本明細書で提供されるようなトリラシクリブ+サシツズマブ・ゴビテカンの初回投与日から、RECIST v1.1に従って放射線学的病勢進行(PD)が記録された日または何らかの原因による死亡のいずれか早い方までの時間(月数)として定義される。PFSの増加にアクセスする方法は当技術分野で周知であり、例えばRECIST v1.1が含まれる(Eisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009; 45: 228-247)。
【0158】
いくつかの実施形態では、進行性または転移性TNBC、または別法として進行性または転移性尿路上皮ガン、または限定するものではないがNSCLCを含む他のTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを受けていない患者に比べて全生存期間(OS)の増進または延長が提供される。OSは一般に、トリラシクリブを受けていない患者に比べて、本明細書で提供されるようなトリラシクリブ+サシツズマブ・ゴビテカンの初回投与日から何らかの原因で死亡した患者では死亡日までの時間(か月)として計算される。
【0159】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを受けていない患者に比べて客観的奏功率(ORR)の改善が提供される。ORRは一般に、RECIST v1.1に従う完全奏功(CR)または部分奏功(PR)のいずれかの、最良の全奏功(BOR)を有する患者の割合として定義される。客観的奏功(OR)の例としては、治療に奏功した腫瘍の全徴候の消失である完全奏功(CR)および治療に奏功した腫瘍の大きさの低減である部分奏功(PR)が挙げられる。いくつかの実施形態では、客観的奏功(OR)は、完全奏功(CR)である。いくつかの実施形態では、客観的奏功(OR)は、部分奏功(PR)である。ORRは、治療の有効性を示す重要なパラメーターであり、臨床試験において主要評価項目または副次評価項目として役立つ。ORRを評価する方法は当技術分野で周知であり、例えば、RECIST v1.1(Eisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009; 45: 228-247)および世界保健機関(WHO)(World Health Organization. WHO Handbook for Reporting Results of Cancer Treatment. World Health Organization Offset Publication No. 48; Geneva (Switzerland), 1979)が挙げられる。客観的奏功率を測定する統計学的方法は当技術分野で周知であり、例えば、Clopper-Pearson法(Clopper, C.; Pearson, E. S. (1934). "The use of confidence or fiducial limits illustrated in the case of the binomial". Biometrika. 26 (4): 404-413. doi:10.1093/biomet/26.4.404)が挙げられる。
【0160】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを受けていない患者に比べて臨床的有用率(CBR)の改善が提供される。CBRは一般に、試験投与の最初の日から24週間以上持続する完全奏功(CR)、部分奏功(PR)または安定(SD)の最良の全奏功を示す患者の割合として定義される。CBRの改善を評価する方法は当技術分野で周知であり、例えば、RECIST v1.1(Eisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009; 45: 228-247)が挙げられる。
【0161】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを受けていない患者に比べて客観的奏功期間(DOR)の改善が提供される。DORは一般に、次の腫瘍スキャン時に確認された最初の客観的奏功(CRまたはPR)に達した日からRECIST v1.1に従って病勢進行が記録された日または死亡のいずれか早い方までの時間(月)として定義される。DORの改善を評価する方法は当技術分野で周知であり、例えば、RECIST v1.1(Eisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009; 45: 228-247)が挙げられる。
【0162】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、腫瘍に対するT細胞免疫活性化が提供される。いくつかの実施形態では、T細胞免疫活性化は、T細胞受容体(TCR)調整をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞の活性化は、インターフェロンγ(IFNγ)発現の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞の活性化は、活性化により誘導されるCD137の発現の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞の活性化は、TCR多様性の増大をもたらす。
【0163】
1つの側面において、閾値シンプソンクローナリティースコアを示す進行性/転移性TNBC、または別法として進行性/転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンを有する患者のサブグループを選択するために、改善された治療方法が投与される。シンプソンクローナリティーは、サンプルのレパートリーの特徴的な形状を記述するT細胞クローン多様度の単一数値指標である。シンプソンクローナリティーはレパートリーの均等性、すなわち1つまたは少数のクローンがサンプルのレパートリーを支配している程度を測定する。シンプソンクローナリティーは、次のように計算される。
【0164】
【数1】
式中、R=再配列の総数;i=各再配列;Pi=再配列の産生頻度。シンプソンクローナリティーは、シンプソン指数の平方根である。シンプソン指数は、シンプソンの多様度指数である。シンプソンクローナリティーは、例えば、Wong, et al. J Immunol. 2016; 197(5): 1642-9; Schneider-Hohendorf, et al. Nat Commun. 2016; 7: 11153; Weir, et al. J Immunother Cancer. 2016; 4: 68; Nunes-Alves, et al. PLoS Pathog. 2015; 11(5): e1004849; Suessmuth, et al. Blood. 2015; 125(25): 3835-50; Mahalingam, et al. Clin Can Res. 2020; 26(1): 71-81; Morris, et al. Sci Transl Med. 2015; 7(272): 272ra10; Roh, et al. Sci Transl Med. 2017; 9(379); Zhu, et al. OncoImmunology. 2015; 4(12): e1051922; Tumeh, et al. Nature. 2014;515(7528):568-71; Keane, et al. Clin Cancer Res. 2017;23(7):1820-1828; Kirsch, et al. Sci Transl Med. 2015; 7(308): 308ra158; Hershberg, et al. Phil. Trans. R. Soc. B. 2015; 370(1676)20140239; Wu, et al. Sci Transl Med. 2012; 4(134) L 134ra63; Carey, et al. J Immunol. 2016; 196(6):2602-13; Seay, et al. JCI Insight. 2016; 1(20): e88242; Emerson, et al. Nat Genet. 2017; 49(5): 659-665; Lindau et al. J Immunol. 2018; ji1800217にさらに記載され、これらはそれぞれ参照により本明細書の一部とされる。0は完全に均一なサンプルを表し、1は単クローン性サンプルを表す。
【0165】
いくつかの実施形態では、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンレジメンの投与は、ベースラインのシンプソンクローナリティーからの低下をもたらし、ベースラインは、トリラシクリブ/サシツズマブ・ゴビテカンの開始時に測定される。
【0166】
毒性の低減
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者において造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)および/またはTリンパ球を含むリンパ球などの免疫エフェクター細胞の骨髄保存の改善ならびに抗腫瘍有効性の増進がもたらされる。造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)および免Tリンパ球を含むリンパ球などの疫エフェクター細胞の骨髄保存の改善は、血液学的評価(全血球数(CBC)、赤血球数(RBC)、血小板数、白血球数(WBC)および絶対好中球数(ANC))の増加、重度有害事象(AE)の低減、支持療法(輸血およびG-CSF投与を含む)介入の低減、用量変更の低減、および患者の記録転帰の改善によって評価される(PRO)。
【0167】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、化学療法薬誘発性骨髄抑制(CIM)の罹患率の低減がもたらされる。サシツズマブ・ゴビテカンなどの化学療法薬を受けている間に骨髄抑制を生じた患者は、感染、敗血症、出血、および疲労を経験し、しばしば入院、造血増殖因子指示、輸血(赤血球[RBC]および/または血小板)、およびさらには死に至る可能性が高い(例えば、Gustinetti et al., Bloodstream infections in neutropenic cancer patients: A practical update. Virulence. 2016; 7(3): 280-97; Li et al., Relationship between severity and duration of chemotherapy-induced neutropenia and risk of infection among patients with nonmyeloid malignancies. Support Care Cancer 2016; 24(10): 4377-83; Caggiano et al., Incidence, cost, and mortality of neutropenia hospitalization associated with chemotherapy. Cancer. 2005; 103(9): 1916-24参照)。さらに、CIMは一般に減量および遅延につながり、治療的用量強度を制限し、化学療法の抗腫瘍効果の利益を損なう可能性がある。治療中に好中球減少症および/または血小板減少症を示す患者において、化学療法の減量および治療遅延を誘導する臨床アルゴリズムを開発および実施する試みが検討されている(例えば、Clinical Trial of a Novel Dose Adjustment Algorithm for Preventing Cytopenia-Related Delays During FOLFOX Chemotherapy、ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04526886参照)。それにもかかわらず、化学療法誘発性の免疫系への細胞障害は、宿主免疫系がガンに対して効果的な応答を惹起することができないために、抗腫瘍有効性を制限する可能性もある。骨髄抑制剤に長期間暴露されると、累積的な骨髄毒性および骨髄抑制が生じ、標準治療の用量およびスケジュールで後続の治療ラインを行う能力が制限される可能性がある。
【0168】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者において好中球系統の骨髄保存がもたらされる。好中球系統の骨髄保存を測定するための評価項目としては、例えばサイクル1の後の重度好中球減少症の持続期間の低減、および重度好中球減少症の発生の低減が含まれる。好中球減少症は一般に、感染に対抗する重要な白血球である好中球が身体に十分にない場合に見られる状態として定義される。好中球減少症は一般に、絶対好中球数(ANC)が1マイクロリットル当たり1500(1500/μL)未満であるとして定量化される。重度好中球減少症は一般に、絶対好中球数(ANC)が1マイクロリットル当たり500(500/μL)未満として定量化される。絶対好中球数(ANC)を計算する方法は当技術分野で周知であり、WBC数に微分WBC数における好中球のパーセンテージを掛けることを含む。好中球のパーセンテージは、分葉核(完全成熟)好中球)+桿状核好中球(ほぼ成熟した好中球)からなる。
【0169】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者において重度(グレード4)好中球減少症(DSN)の発生の低減がもたらされる。重度好中球減少症は、米国国立ガン研究所有害事象共通用語基準(NCI CTCAE)v5.0基準でグレード4以上の毒性(すなわち、SI単位でANC<0.5×109/L)を満たす絶対好中球数(ANC)検査値として定義される。重度好中球減少症は一般に、1マイクロリットル当たり500(500/μL)未満の絶対好中球数(ANC)として定量化される。絶対好中球数(ANC)を計算する方法は当技術分野で周知であり、WBC数に微分WBC数における好中球のパーセンテージを掛けることを含む。好中球のパーセンテージは、分葉核(完全成熟)好中球)+桿状核好中球(ほぼ成熟した好中球)からなる。
【0170】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者において重度(グレード4)好中球減少症(DSN)の持続期間の低減がもたらされる。DSNの持続期間は一般に、最初にANC値が0.5×109/L未満になった日から最初にANC値が0.5×109/L以上になった日までの日数(ただし、そのサイクルの残りの期間に0.5×109/L未満のANC値はない)として定義される。重度好中球減少症は一般に、1マイクロリットル当たり500(500/μL)未満の絶対好中球数(ANC)として定量化される。絶対好中球数(ANC)を計算する方法は当技術分野で周知であり、WBC数に微分WBC数における好中球のパーセンテージを掛けることを含む。好中球のパーセンテージは、分葉核(完全成熟)好中球)+桿状核好中球(ほぼ成熟した好中球)からなる。
【0171】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者において化学療法誘発性疲労(CIF)の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、CIFの低減は、ガン療法の機能的評価-疲労用(FACIT-F)によって測定されるような最初に疲労の悪化が確認されるまでの時間(TTCD-疲労用)の低減である。FACIT-Fは、疲労の重症度および機能に対する疲労の影響を測定する13項目のサブスケールであり、Yellen et al., Measuring fatigue and other anemia-related symptoms with the Functional Assessment of Cancer Therapy (FACT) measurement system. J Pain Symptom Manage. 1997; 13: 63-74に記載されている。
【0172】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いないサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者において重度好中球減少症事象の低減、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)治療の低減、または発熱性好中球減少症(FN)有害事象(AE)の低減がもたらされる。G-CSF治療は、Aapro et al. 2010 update of EORTC guidelines for the use of granulocyte-colony stimulating factor to reduce the incidence of chemotherapy-induced febrile neutropenia in adult patients with lymphoproliferative disorders and solid tumours. Eur J Cancer. 2011; 47:8-32に概説されている治療ガイドラインに従って利用される。
【0173】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBCまたは別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、グレード3もしくは4の低ヘモグロビン検査値、赤血球(RBC)輸血、または赤血球生成促進剤(ESA)投与の低減がもたらされる。
【0174】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、グレード3または4の低血小板数検査値および/または血小板輸血回数の低減がもたらされる。(Kaufman, 2015; Schiffer, 2017)に記載されるように、血小板は一般に、閾値10,000/μL以上で輸血される。血小板はまた一般に、血小板数50,000/μL未満(中枢神経系または眼出血の場合は100,000/μL)の出血患者に輸血される。
【0175】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBCまたは別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、グレード3または4の血液検査値の低減がもたらされる。いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法としてTrop-2過剰発現ガンの治療のためのサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにおける本明細書に記載のトリラシクリブの使用は、本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールのあらゆる原因の減量またはサイクル遅延および相対的用量強度の低減をもたらす。
【0176】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、i)限定するものではないが、あらゆる原因の発熱性好中球減少症/好中球減少症、貧血/RBC輸血、血小板減少症/出血および感染によるものを含む入院、またはii)限定するものではないが、静脈内(IV)、経口、および経口・IV投与される抗生物質を含む抗生物質の使用の低減がもたらされる。
【0177】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、ガン療法の機能的評価-一般用(FACT-G)領域スコア(身体面、社会/家族面、心理面および機能面);ガン療法の機能的評価-貧血用(FACT-An):5水準EQ-5D(EQ-5D-5L);変化に対する患者の全般的印象(PGIC)疲労項目;または重症度に対する患者の全般的印象(PGIS)疲労項目のうち1以上の改善がもたらされる。
【0178】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度下痢エピソード(グレード3以上)の回数の低減がもたらされる。
【0179】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する粘膜炎の発生、重症度、またはエピソードの低減がもたらされる。
【0180】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する口内炎の発生、重症度、またはエピソードの低減がもたらされる。
【0181】
いくつかの実施形態では進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する脱毛症の発生、重症度の低減がもたらされる。
【0182】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて患者が経験する消化管有害事象の発生、重症度の低減がもたらされる。
【0183】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度貧血エピソード(グレード3以上)の回数の低減をもたらす。
【0184】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するも本明細書に記載のではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のためのサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する重度好中球減少症エピソード(グレード3以上)の回数の低減がもたらされる。
【0185】
いくつかの実施形態では、進行性もしくは転移性TNBC、または別法として進行性もしくは転移性尿路上皮ガン、またはさらに別法として限定するものではないがNSCLCを含むTrop-2過剰発現ガンの治療のための本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールにトリラシクリブを含めると、トリラシクリブを用いない本明細書に記載のサシツズマブ・ゴビテカン化学療法プロトコールを受けている患者に比べて、患者が経験する発熱性好中球減少症エピソード(グレード3以上)の回数の低減がもたらされる。
【0186】
医薬組成物
本明細書に記載のプロトコールの選択された化合物またはそれらの薬学上許容可能な塩は、無希釈の化学物質として投与することができるが、より一般には、薬学上許容可能な担体中に、そのような治療を必要とする患者、一般にはヒトに対する有効量を含む医薬組成物として投与される。医薬組成物は、化合物またはその塩を唯一の有効薬剤として含有してもよいし、または別の実施形態では、化合物またはその塩および治療する竹簡に対する少なくとも1つの付加的有効薬剤を含有してもよい。
【0187】
医薬組成物は、治療上有効な量で任意の所望の投与様式によって投与されうるが、一般に、静脈内注射または注入として投与される。別の実施形態では、化合物または薬学上許容可能な塩は、有効量で、経口送達のための薬学上許容可能な担体とともに送達される。より一般的な限定されない例として、医薬組成物は、従来の薬学上許容可能な担体を含有する経口(口腔および舌下を含む)、直腸、鼻腔、局所的、経皮、肺、膣または非経口(筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、皮下および静脈内を含む)、注射、吸入または噴霧、大動脈内、頭蓋内、真皮下、腹腔内、皮下、または他の投与手段に好適なものである。
【0188】
適切な投与量の範囲は、治療される疾患の重症度、患者の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効力、投与経路および投与形態、ならびに関与する開業医の好みおよび経験などの多数の要因に依存する。このような疾患を治療する技術分野における通常の熟練者であれば、過度の実験を行うことなく、個人の知識および本願の開示に頼って、所定の疾患に対する本開示の組成物の治療上有効な量を確認することができる。
【0189】
特定の実施形態では、医薬組成物は、約0.01mg~約1000mg、約0.1mg~約750mg、約1mg~約500mg、または約5、10、15、または20mg~約250mgの有効化合物またはその薬学上許容可能な塩を含有する剤形にある。例として、少なくとも0.01、0.05、0.1、1、5、10、25、50、100、200、250、300、400、500、600、700、または750mgの有効化合物、またはその塩を送達する剤形がある。本明細書で重量を用いる場合、化合物単独または化合物と薬学上許容可能な塩の組合せのいずれかを指しうる。
【0190】
有効量の開示化合物またはその塩は、患者の体重、大きさまたは年齢に基づいて投与することができる。例えば、治療量は、例えば、少なくとも1用量で約0.01mg/kg~約250mg/kg体重、または約0.1mg/kg~約10mg/kgでありうる。患者は、対象とする障害を軽減するおよび/または緩和するおよび/または治癒させるのに必要な場合、多用量として投与を受けることができる。所望により、処方物は、有効成分の持続的放出または制御放出投与に適合した腸溶コーティングを施すことができる。
【0191】
特定の実施形態では、用量は、約0.01~100mg/kg患者体重、例えば、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約4.5mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または約100mg/kgの範囲である。
【0192】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、製剤は、適当な量の有効成分を含有する単位用量に細割される。単位剤形は、包装された製剤とすることができ、包装は、包装された錠剤、カプセル剤、およびバイアル中またはアンプル中の粉末のような離散量の製剤を含有する。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ剤そのものであってもよいし、またはこれらのいずれかを適当な数だけ包装した形態であってもよい。
【0193】
特定の実施形態では、化合物は、薬学上許容可能な塩として投与される。薬学上許容可能な塩の限定されない例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、および吉草酸塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウム、ならびに非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミン陽イオン、例えば、限定するものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびエチルアミンが挙げられる。
【0194】
意図する投与様式によって、医薬組成物は、固体、半固体または液体剤形、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、シロップ、懸濁液、クリーム、軟膏、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、フォーム、またはオイル、注射剤または輸液、経皮パッチ、皮下パッチ、吸入製剤、医療装置内、坐剤、口腔、または舌下製剤、非経口製剤、または眼科用液剤などの形態、好ましくは、正確な用量の単回投与に好適な単位剤形でありうる。
【0195】
錠剤およびカプセル剤などのいくつかの剤形は、適切な量の有効成分、例えば所望の目的を達成するのに有効な量を含有する適切な大きさの単位用量に細分化される。組成物は、選択された薬物の有効量を薬学上許容可能な担体と組み合わせて含み、さらに、他の薬学的薬剤、アジュバント、希釈剤、緩衝剤などを含むことができる。
【0196】
担体には賦形剤と希釈剤が含まれ、治療される患者への投与に適したものとするために十分に純度が高く、十分に低毒性であるものでなければならない。担体は不活性であってもよいし、それ自体が薬学的利点を有していてもよい。化合物と併用する担体の量は、化合物の単位用量当たりの投与に実用的な量の材料を提供するのに十分なものである。
【0197】
担体の種類には、限定するものではないが、アジュバント、結合剤、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、賦形剤、乳化剤、香味剤、ゲル、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、可溶化剤、打錠剤、湿潤剤または固化剤が挙げられる。
【0198】
いくつかの担体は複数の種類に挙げられる場合があり、例えば、植物油は、製剤によっては滑沢剤として使用されたり、希釈剤として使用されたりする。
【0199】
例示的な薬学上許容可能な担体としては、糖類、デンプン、セルロース、粉末トラガカントガム、麦芽、ゼラチン;タルク、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮吸収促進剤および植物油が含まれる。本発明の化合物の活性を実質的に妨げない任意選択の有効薬剤が医薬組成物に含まれてよい。
【0200】
いくつかの賦形剤としては、限定するものではないが、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどの液体が挙げられる。化合物は、療法の目的に従って望まれるような、例えば、固体、液体、噴霧乾燥材料、微粒子、ナノ粒子、放出制御系などの形態で提供することができる。非液体製剤に好適な賦形剤も当業者に知られている。薬学上許容可能な賦形剤および塩の詳細な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版 (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990)で利用できる。
【0201】
さらに、湿潤剤または乳化剤、生物学的緩衝物質、界面活性剤などの補助物質が、このようなビヒクル中に存在してもよい。生物学的緩衝剤は、薬理学上許容され、製剤に所望のpH、すなわち生理学上許容可能な範囲のpHを提供する任意の溶液でありうる。緩衝液の例としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、ハンク緩衝生理食塩水などが挙げられる。
【0202】
固体組成物の場合、従来の非毒性固体担体としては、例えば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。液体の薬学上投与可能な組成物は、例えば、本明細書に記載されるような有効化合物および任意選択の製薬アジュバントを、例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどの賦形剤二溶解させ、それにより、溶液または懸濁液を形成することによって調整することができる。所望により、投与される医薬組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなどの微量の非毒性補助物質も含んでよい。このような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者には明らかである;例えば、上記に挙げたRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0203】
さらに別の実施形態では、ポリ陽イオン(キトサンおよびその第四級アンモニウム誘導体、ポリ-L-アルギニン、アミノ化ゼラチン);ポリ陰イオン(N-カルボキシメチルキトサン、ポリアクリル酸);ならびにチオール化ポリマー(カルボキシメチルセルロース-システイン、ポリカルボフィル-システイン、キトサン-チオブチルアミジン、キトサン-チオグリコール酸、キトサン-グルタチオン複合体)などのポリマーを含む浸透促進賦形剤の使用が提供される。
【0204】
特定の実施形態では、賦形剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(第二)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微晶質セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファー化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールから選択される。
【0205】
有効薬剤を含有する医薬組成物は、経口投与用に調剤することができる。経口投与では、組成物は、錠剤、カプセル剤、ソフトゲルカプセル剤の形態をとってもよいし、または水性または非水性の溶液、懸濁液またはシロップであってもよい。錠剤およびカプセル剤は、典型的な経口投与形態である。経口使用のための錠剤およびカプセル剤としては、ラクトースおよびコーンスターチなどの1以上の慣用担体を含みうる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も一般に添加される。一般に、本開示の組成物は、経口、非毒性の薬学上許容可能な不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどと合わせることができる。さらに、所望によりまたは必要であれば、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤をこの混合物に配合することもできる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖類(グルコースまたはβ-ラクトースなど)、トウモロコシ甘味剤、天然および合成(アラビアガム、トラガカントガム、またはアルギン酸ナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形に使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0206】
液体懸濁液が使用される場合、有効薬剤は、任意の経口、非毒性の薬学上許容可能な不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと、また乳化剤および沈殿防止剤と合わせることができる。所望により、香味剤、着色剤および/または甘味剤も添加することができる。経口製剤に配合するための他の任意選択の成分としては、限定するものではないが、保存剤、沈殿防止剤、増粘剤などが挙げられる。
【0207】
非経口製剤は、液体の溶液もしくは懸濁液、注射前に液体に可溶化もしくは懸濁させるのに好適な固体形態、またはエマルションのいずれかとしての従来の形態で調製することができる。一般に、無菌注射懸濁液は、当技術分野で公知の技術に従って、好適な担体、分散剤または湿潤剤および沈殿防止剤を用いて調製される。無菌注射製剤はまた、許容可能な非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液または懸濁液であってもよい。使用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の硬化油、脂肪エステルまたはポリオールが溶媒または懸濁媒として従来から使用されている。さらに、非経口投与は、一定の用量レベルが維持されるように緩徐放出または持続放出系の使用を含みうる。
【0208】
非経口投与には、関節内、静脈内、筋肉内、皮内の、腹腔内、および皮下経路が含まれ、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張とする溶質を含みうる水性および非水性の等張性無菌注射溶液、ならびに沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含みうる水性および非水性無菌懸濁液が含まれる。特定の非経口経路による投与は、開示の製剤を、無菌シリンジまたは持続的注入システムなどの他のいくつかの機械的装置によって推進される無菌針またはカテーテルを介して患者の身体に導入することを含みうる。本開示によって提供される製剤は、シリンジ、インジェクター、ポンプ、または非経口投与のために当技術分野で認識されている他の任意の装置を用いて投与することができる。
【0209】
特許請求される本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。本発明のさらなる側面および実施形態は、上記の開示および限定ではなく例示として含められる以下の実験的例示を、添付の図面を参照しながら考慮すれば、当業者には明らかになるであろう。
【実施例】
【0210】
実施例1.少なくとも2つの治療歴があり、少なくとも1つは転移療法であった切除不能局所進行性もしくは転移性トリプルネガティブ乳ガン患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー前に投与されるトリラシクリブの第2相単一試験区非盲検試験
概論
少なくとも2つの治療歴があり、少なくとも1つは転移療法である切除不能進行性もしくは転移性TNBC患者におけるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーと併用投与されるトリラシクリブの安全性および有効性を評価する探索的第2相多施設共同非盲検試験が本明細書に提供される。
【0211】
臨床試験を説明する一般スキームを
図1に示す。およそ45名の患者がこの試験に登録される。
【0212】
トリラシクリブとサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーは、次のように21日サイクルで静脈内(IV)投与される。
・各21日治療サイクルの1日目と8日目にサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの開始前4時間以内に完了する30分のIV注入として投与されるトリラシクリブ240mg/m2
・各21日治療サイクルの1日目と8日目にIV投与されるサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー10mg/kg
【0213】
サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの初回注入は3時間かけて行われ、患者を注入中および初回投与後少なくとも30分間、注入関連反応の徴候または症状に関して観察する。前注入に忍容性があれば、後続のサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの注入は1~2時間にわたって行われ、注入中および注入後少なくとも30分間患者を観察しなければならない。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの各注入前に、輸液反応および化学療法誘発性悪心および嘔吐(CINV)の予防のための前投与が推奨される。
・輸液反応の既往歴があった患者には、注入前の解熱剤、ヒスタミン受容体1(H1)およびヒスタミン受容体2(H2)遮断薬、ならびにコルチコステロイドの前投与を使用することができる。
・2剤または3剤の薬物併用レジメン(例えば、5-HT3受容体アンタゴニストまたはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストのいずれかとデキサメタゾン、ならびに示されているような他の薬物)の前投与。
【0214】
試験は、スクリーニング相、治療相、および生存追跡調査相の3つの試験相を含む(
図1参照)。治療相は試験治療の初回投与日に始まり、安全性追跡調査来所時に完了する。生存追跡調査評価は、治療終了来所後およそ3か月毎に行わなければならない。
【0215】
本試験に登録された患者は、病勢進行、許容できない毒性、同意の撤回、治験責任医師の判断、または本試験の終了のいずれか早い時点まで治療を受けることができる。治療サイクルは、毒性管理が必要な場合または管理上の理由を除き、中断することなく連続して行われる。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの予定投与から3週間の遅延が許容される。例として、サイクルXの1日目の予定来所時(例えば、サイクル2の1日目)に投与遅延が必要な場合、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーのサイクルXの1日目からの最大3週間の遅延が許容され、サイクルXの8日目の予定来所時(サイクル1の8日目)に投与遅延が必要な場合、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーのサイクルXの1日目からの最大3週間の遅延が許容される。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの予定投与から3週間を超える投与遅延は、治験責任医師およびメディカルモニターの承認があれば、個々のケースに応じて許容される。
【0216】
治療終了来所は、患者の試験治療最終投与からおよそ14日後に行われる。安全性追跡調査来所(電話であってもよい)は、試験治療の最終投与から30日後に行われる。治療終了来所後、およそ3か月毎に患者の生存が追跡される。生存追跡調査来所は、電話、電子メール、または診療所訪問により行ってよい。スポンサーが別途決定しない限り、本試験は本試験に登録された患者の少なくとも70%が死亡するまで継続される。
【0217】
診断および主要適格基準
測定可能な局所進行性、切除不能または転移性TNBC(免疫組織化学[IHC]でエストロゲン受容体[ER]およびプロゲステロン受容体が1%未満、IHCまたはin situハイブリダイゼーション[ISH]でヒト上皮成長因子受容体2[HER2]陰性と定義される)で、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが0または1である、インフォームド・コンセント署名時に18歳以上の患者。RECIST v1.1により定義されるような測定可能な疾患を有し、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー治療を受ける資格があると考えられる患者であること。登録時に脳転移が確認されている患者は適格でない。切除不能、局所進行性または転移性乳ガンに対する少なくとも2つの標準治療化学療法を受けた後に難治性または再発した患者であること(これらのレジメンは投与時のTNBCステータスに関係なく適格とされる)。局所進行性または転移性疾患に対する前治療の回数に上限はない。より限定的な疾患に対するアジュバント治療またはネオアジュバント治療は、切除不能な局所進行性または転移性疾患の発生が化学療法の完了後12か月以内に起こった場合、必要なレジメン歴の1つとして認められる。生殖細胞系列のBRCA1/BRCA2遺伝子変異が記録され、承認されたPARP阻害剤を投与された患者については、PARP阻害剤を用いて2つの標準治療化学療法歴のうち1つという基準を満たすことができる。総ての患者は、ネオアジュバント、アジュバント、または進行/転移療法のいずれかの治療において、タキサン治療歴があること。照射されていない測定可能な病変が少なくとも1つある限り、再発疾患に対する放射線治療歴は許容される。また、患者は検査値で示されるような適切な臓器機能を有していること。
【0218】
トリラシクリブの用量、投与計画、および経路
注射用トリラシクリブ300mg/バイアル(「トリラシクリブ静注溶液用濃縮無菌粉末300mg/バイアル」とも呼ばれる)は、無菌、保存剤非含有、黄色の凍結乾燥ケーキとして、1回用量バイアル(300mg/20mL)で供給される。
【0219】
トリラシクリブは、IV注入前に再構成し、さらに希釈しなければならない。再構成時、溶液は、次に、患者の体表面積(BSA)に基づいて計算された用量(240mg/m2)に希釈しなければならない。用量計算には実際の体重(理想体重ではない)を使用しなければならない。
【0220】
希釈したトリラシクリブ溶液は、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの投与前4時間以内に30分のIV注入として投与する。トリラシクリブはボーラスとして投与しないこと。トリラシクリブは、常に先に投与する。トリラシクリブの投与前には血液検査の結果を再検証しなければならない。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー療法の投与が省略または中断された場合には、トリラシクリブも省略または中断される。
【0221】
サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー(トロデルヴィ(登録商標))
市販のサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの製剤の説明は、それぞれの現行の処方情報に見出すことができる。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーのプロトコール指定用量は、施設ガイドラインに従い、試験施設の標準的実施に従ってIV投与される。
【0222】
用量計算には、実際の体重(理想体重ではない)を使用しなければならない。最低でも、最後の用量計算時の体重に対して10%を超える体重の変化がある場合は、用量を再計算すべきである。現地施設のガイドラインに従って、より頻繁に用量を再計算することは許容される。体重の変化を調整するための用量の再計算は、減量とはみなされない。
【0223】
サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの各注入の前に、輸液反応およびCINVの予防のための前投与が推奨される。
・輸液反応の既往歴があった患者には、注入前の解熱剤、H1およびH2遮断薬、ならびにコルチコステロイドの前投与を使用することができる。
・2剤または3剤の薬物併用レジメン(例えば、5-HT3受容体アンタゴニストまたはNK1受容体アンタゴニストのいずれかとデキサメタゾン、ならびに示されているような他の薬物)の前投与。
【0224】
初回注入は3時間かけて行い、患者を注入中および初回投与後少なくとも30分間、注入関連反応の徴候または症状に関して観察する。前注入に忍容性があれば、後続の注入は1~2時間にわたって行ってよく、注入中および注入後少なくとも30分間患者を観察しなければならない。点滴バッグは遮光する。IV投与またはボーラス投与として投与しないこと。
【0225】
トリラシクリブは、常に先に投与し、その後にサシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーを投与する。希釈したトリラシクリブを、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの開始前4時間以内に完了するように30分のIV注入として投与する。トリラシクリブの投与が遅延または中断された場合には、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジー療法も遅延または中断される。同様に、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーが遅延または中断された場合には、トリラシクリブも遅延または中断される。
【0226】
サイクル1および各後続サイクルの開始基準
治療を開始するためには、患者はサイクル1の1日目に試験治療を受けるための以下の基準を総て満たさなければならない。
・ANC≧1.5×109/L;
・血小板数≧100×109/L;
・総ビリルビン≦1.5×ULN;および
・肝臓転移が存在する場合、AST/ALT≦3×ULNまたは≦5×ULN
・他の非血液学的薬剤関連毒性はグレード1以下でなければならない(ただし、脱毛症または末梢神経障害はグレード2以下であってもよい)
【0227】
また、患者は、試験治療のいずれの後続サイクルでも1日目の投与を受けるためにはANC≧1.5×109/L、および試験治療のいずれのサイクルでも8日目の投与を受けるためには、ANC≧1.0×109/Lでなければならない。
【0228】
毒性による投与遅延の場合、治療基準を満たすまで、または患者が治療を中止するまで(例えば、最後の治療投与から3週間以上経過した場合)、毒性を監視するために、AEが血液学的である場合はCBCを含め、患者を(少なくとも)毎週経過観察すべきである。
【0229】
毒性および/または管理上の理由により、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの予定投与から3週間の遅延が許容される。例として、Xサイクル1日目の予定来所時(例えば、サイクル2の1日目)に毒性上の理由で投与遅延が必要な場合、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーのサイクルXの1日目からの最大3週間の遅延が許容され;サイクルXの8日目の予定来所時(例えば、サイクル1の8日目)に毒性上の理由で投与遅延が必要な場合、サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーのサイクルXの1日目からの最大3週間の投与遅延が許容される。サシツズマブ・ゴビテカン-ヒジーの予定投与から3週間を超える投与遅延は、治験責任医師およびメディカルモニターの文書による承認があれば、個々のケースに応じて許容される。
【0230】
試験薬の投与は、RECIST v1.1による病勢進行、または治験責任医師が判断する臨床的進行、許容できない毒性、同意の撤回、治験責任医師の判断、患者が最大34サイクルの治療を受ける、または試験終了のいずれか早い時点まで継続する。
【0231】
評価基準
有効性: 抗腫瘍有効性評価には、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏功率(ORR)、臨床的有用率(CBR)、奏効期間(DOR)および全生存期間(OS)を含む。腫瘍奏功基準は、RECIST v1.1に基づく。
【0232】
骨髄抑制の評価項目は、報告された血液学的評価、骨髄抑制関連有害事象(AE)の詳細、減量/遅延、および支持療法介入(輸血を含む)に基づく。
【0233】
安全性: 安全性は、AE、臨床検査結果(血液学、臨床化学)、バイタルサイン測定(血圧、心拍数、および口腔体温)、12誘導安全心電図(ECG)結果、用量変更、および身体検査所見のモニタリングにより評価する。
【0234】
結果:
2022年6月3日現在、8人の女性患者(年齢中央値55.0歳)(
図2A)が登録され、中央値で3回(範囲1~6)の21日サイクルを完了した(
図2B)。全患者にタキサン歴があり、7例が免疫チェックポイント阻害剤歴(アテゾリズマブ5例、ペムブロリズマブ2例;アジュバント療法4例および転移療法3例)があった(
図2C)。全体として、トリラシクリブ関連AE2例およびサシツズマブ・ゴビテカン関連AE5例を含む5例が1以上の治療関連有害事象(TRAE)を示した(
図2D)。AEによる撤回例はなく、これまでに重度のAEは報告されていない。重症(グレード3/4)の好中球減少症が1例に生じた(
図2E)。グレード3/4の貧血または血小板減少症を示した患者はなく、発熱性好中球減少症または重度の感染症を示した患者はいなかった。顆粒球コロニー刺激因子は2人の患者に投与され、1人の患者は静脈内抗生物質を必要とした。赤血球/血小板輸血または赤血球造血刺激剤を必要とした患者はいなかった。最も多いTRAEは、悪心(n=3)、疲労(n=3)、および頭痛(n=2)であった(
図2F)。下痢のTRAEは1例あった(トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカン関連)。2人の患者にグレード3以上のTRAEが認められ、グレード3の脱毛症とグレード3の好中球減少症(いずれもサシツズマブ・ゴビテカン関連)、およびグレード4の好中球数減少(トリラシクリブおよびサシツズマブ・ゴビテカン関連)を含んでいた(
図2G)。現在、1人の患者が部分奏効を示し、3人の患者は病勢安定を示している(
図2H)。
【0235】
予備データは有望であり、サシツズマブ・ゴビテカンの前にトリラシクリブを投与することは、2種類以上の全身療法歴があるmTNBC患者において十分な忍容性があり、臨床的利益を提供しうることを示している。
【国際調査報告】