(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】燃料油用潤滑性改良剤組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C10L 10/08 20060101AFI20240628BHJP
C10L 1/19 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C10L10/08
C10L1/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023580940
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 CN2022102570
(87)【国際公開番号】W WO2023274335
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110740397.8
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藺建民
(72)【発明者】
【氏名】夏▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】李宝石
(72)【発明者】
【氏名】陶志平
(72)【発明者】
【氏名】李妍
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013CE03
(57)【要約】
燃料油用潤滑性改良剤組成物およびその使用が開示される。前記組成物は、成分Aとして構造式(I)を有するジカルボン酸モノエステル、および、成分BとしてC8-24長鎖脂肪酸、そのポリオールエステルまたはそれらの混合物を含み、ここで、成分Aおよび成分Bの合計量は、組成物の総重量の70~100重量%であり、成分Aと成分Bとの質量比は9:1~1:9である。燃料油用潤滑性改良剤は、少量で使用される場合に、良好な潤滑性改良効果を発揮することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aおよび成分Bを含む、燃料油用潤滑性改良剤組成物であって、
前記成分Aは、下記式(I)によって表されるジカルボン酸モノエステルであり、
【化1】
式(I)中、
R
1は、C
1-10の2価ヒドロカルビル基であり、
R
2は、C
1-20ヒドロカルビル基、または、-R
3-C(=O)-O-R
4の構造を有する部分であり、
R
3は、C
8-24の2価ヒドロカルビル基であり、
R
4は、水素またはC
1-10ヒドロカルビル基であり、
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸、そのポリオールエステル、またはそれらの混合物であり、
前記成分Aおよび前記成分Bの合計量は、前記組成物の総重量に基づいて、70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%であり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、9:1~1:9である、燃料油用潤滑性改良剤組成物。
【請求項2】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸であり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、8:2から2:8まで、好ましくは7:3から3:7まで、より好ましくは7:3から5:5までである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸のポリオールエステルであり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、8:2から1:9まで、好ましくは8:2から2:8まで、より好ましくは5:5から2:8までである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸であり、
前記組成物は、前記組成物の重量に基づいて、前記成分Aを20~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは50~70重量%含み、前記成分Bを20~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは30~50重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸のポリオールエステルであり、
前記組成物は、前記組成物の重量に基づいて、前記成分Aを10~80重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~50重量%含み、前記成分Bを20~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは50~80重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(I)中、
R
1は、C
1-10の2価アルキル基、C
2-10の2価アルケニル基、または-R
5-R
6-R
7-の構造を有する部分であり、好ましくはC
1-8の2価アルキル基、C
2-6の2価アルケニル基、または-R
5-R
6-R
7-の構造を有する部分であり、より好ましくはC
1-4の2価アルキル基、またはC
2-4の2価アルケニル基であり、
R
2は、C
3-20ヒドロカルビル基であり、好ましくはC
3-20の直鎖状もしくは分岐状のヒドロカルビル基、C
4-20脂環式ヒドロカルビル基、C
7-20アリール置換ヒドロカルビル基、またはC
7-20ヒドロカルビル置換アリール基であり、より好ましくは、C
3-18の直鎖状もしくは分岐状のヒドロカルビル基、C
4-18脂環式ヒドロカルビル基、C
7-18アリール置換ヒドロカルビル基、またはC
7-18ヒドロカルビル置換アリール基であり、
R
5およびR
7は、それぞれ独立して、単結合、または、C
1-3の2価ヒドロカルビル基であり、好ましくは、それぞれ独立して、単結合またはメチレンであり、
R
6は、C
3-10の2価脂環式ヒドロカルビル基、または、C
6-10の置換もしくは非置換の2価アリール基であり、好ましくはC
4-7の2価脂環式ヒドロカルビル基、または、C
6-10の置換もしくは非置換の2価アリール基であり、前記R
5、R
6およびR
7の基の炭素原子の合計数は10以下であり、
ここで、前記「置換」とは、C
1-4の直鎖状もしくは分岐状のヒドロカルビル基、ハロゲン、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、ニトロ基、およびアミノ基から選択される1つ以上の基で置換されていることを意味する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(I)中、
R
1は、C
2-10の2価ヒドロカルビル基であり、好ましくは、C
2-8の2価ヒドロカルビル基であり、
R
2は、-R
3-C(=O)-O-R
4の構造を有する部分であり、
R
3は、0~5つの炭素-炭素二重結合を有するC
8-24の2価ヒドロカルビル基であり、好ましくは0~3つの炭素-炭素二重結合を有するC
16-22の2価ヒドロカルビル基であり、
R
4は、水素またはC
1-10ヒドロカルビル基であり、好ましくは、水素またはC
1-4ヒドロカルビル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、下記式(I-1)を有し、
【化2】
式(I-1)中、
nは2~6の整数であり、
Rは、C
3-20ヒドロカルビル基、好ましくはC
4-18ヒドロカルビル基であり、
好ましくは、前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル、メチルフマル酸モノエステル、2,3-ジメチルマレイン酸モノエステル、グルタコン酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択され、
より好ましくは、前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノエステル、イタコン酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、下記式(I-2)を有し、
【化3】
式(I-2)中、
pは1から8までの整数であり、
Rは、C
3-20ヒドロカルビル基、好ましくはC
4-18ヒドロカルビル基であり、
好ましくは、前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、マロン酸モノエステル、コハク酸モノエステル、グルタル酸モノエステル、アジピン酸モノエステル、アゼライン酸モノエステル、セバシン酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択され、
より好ましくは、前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、マロン酸モノエステル、コハク酸モノエステル、アジピン酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、下記式(I-3)を有し、
【化4】
式(I-3)中、
mは0~1の整数であり、
Qは、C
3-8の2価脂環式ヒドロカルビル基、または、C
6-10の置換もしくは非置換の2価アリール基であり、
Rは、C
3-20ヒドロカルビル基、好ましくはC
4-18ヒドロカルビル基であり、
好ましくは、前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノエステル、テトラヒドロフタル酸モノエステル、フタル酸モノエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択され、
より好ましくは、前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、ヘキサヒドロフタル酸モノエステル、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル、フタル酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、下記式(I-4)を有し、
【化5】
式(I-4)中、
R
8はC
2-10の2価ヒドロカルビル基であり、
R
9は水素またはヒドロカルビル基であり、
R
10は2価ヒドロカルビル基であり、
R
9およびR
10の炭素原子の合計数は15~21であり、
炭素-炭素二重結合の合計数は0~3であり、
R
11は水素またはC
1-10ヒドロカルビル基であり、好ましくは水素またはC
1-4ヒドロカルビル基であり、
好ましくは、R
8は、エチレン、ビニレン、メチレンエチレン、メチルエチレン、ブチレン、メチルブチレン、ブテニレン、フェニル、シクロヘキシル、メチルヘキサヒドロフェニル、およびメチルテトラヒドロフェニルから選択され、R
11は、水素、メチル、およびエチルから選択され、
より好ましくは、前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸、コハク酸モノエステル置換リシノール酸メチル、コハク酸モノエステル置換リシノール酸、フタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1~5および7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノイソノニル、コハク酸モノイソオクチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソオクチル、イタコン酸モノイソノニル、フタル酸モノヘキシル、フタル酸モノイソオクチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノイソオクチル、シトラコン酸モノイソオクチル、マロン酸モノ-tert-ブチル、コハク酸モノエステル置換リシノール酸メチル、コハク酸モノエステル置換リシノール酸、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、またはこれらの組み合わせから選択され、より好ましくはマレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノイソノニル、コハク酸モノイソオクチル、イタコン酸モノイソオクチル、フタル酸モノヘキシル、フタル酸モノイソオクチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノイソオクチル、マロン酸モノ-tert-ブチル、コハク酸モノエステル置換リシノール酸メチル、シトラコン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチルから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記成分Bの不飽和脂肪酸は、C
12-20不飽和脂肪酸またはこれらの組み合わせから選択され、
前記ポリオールは、エチレングリコール、グリセロール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、またはこれらの組み合わせから選択され、
好ましくは、前記不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、もしくはこれらの組み合わせから選択され、または、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびリシノール酸を主成分とする脂肪酸の混合物から選択され、前記ポリオールはグリセロールである、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
低硫黄ディーゼル燃料に、請求項1~13のいずれか1項に記載の燃料油用潤滑性改良剤組成物を添加する工程を含み、
前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、前記低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、好ましくは、10~400ppm、より好ましくは50~200ppmの量で添加される、ディーゼル燃料の潤滑性を改良する方法。
【請求項15】
低硫黄ディーゼル燃料と、請求項1~13のいずれか1項に記載の燃料油用潤滑性改良剤組成物とを含むディーゼル燃料組成物であって、
前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、前記低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、前記ディーゼル燃料組成物中に、好ましくは10~400ppm、より好ましくは50~200ppmの量で存在する、ディーゼル燃料組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互援用〕
本出願は、2021年6月30日に出願された「ディーゼル燃料用潤滑性添加剤組成物、その調製およびディーゼル燃料組成物」と題する中国特許出願第202110740397.8号の優先権を主張するものであり、その内容の全文は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本出願は、燃料油の分野に関し、特に燃料油用潤滑性改良剤組成物およびその使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
世界各国の環境問題への関心が高まるにつれ、高品質のクリーンエネルギーの生産が現代石油精製業の発展方向となり、ディーゼル燃料の生産水準も徐々に向上している。クリーンディーゼル燃料は、芳香族炭化水素含量が少なく、セタン価が高く、軽質で、硫黄分が少なく、窒素分が少ないという特徴がある。硫黄は大気中の汚染物質の濃度を増加させる最も有害な元素であるため、ディーゼル燃料中の硫黄含有化合物の濃度を厳密に制御する必要がある。現在製造されているクリーンディーゼル燃料は、主に水素化プロセスを採用することによって製造されており、この方法はディーゼル燃料中の硫黄含有化合物を除去するとともに、ディーゼル燃料中の窒素含有化合物および酸素含有化合物の含量を低減する。ディーゼル燃料の潤滑性は、主にディーゼル燃料中の潤滑性改良剤不純物の濃度によって決まることが知られている。多環芳香族、酸素含有不純物および窒素含有不純物は、非常に効果的な潤滑性改良剤である。窒素化合物および酸素化合物の含量が低下すると、ディーゼル燃料自体の潤滑性能が低下し、燃料ポンプの摩耗および故障の原因となる。
【0004】
低硫黄ディーゼル燃料は潤滑性に劣るため,低硫黄ディーゼル燃料および超低硫黄ディーゼル燃料は、潤滑性改良剤(潤滑性添加剤または摩耗防止添加剤とも呼ばれる)で処理して潤滑性を向上させることが多い。この方法は、コストが低く、柔軟に生産でき、公害が少ないなどの利点があり、業界で広く注目されている。
【0005】
ディーゼル潤滑性改良剤は、脂肪酸、脂肪酸エステル、アミドまたは塩の誘導体であることが多い。EP773279は、ディーゼル潤滑性改良剤として、ダイマー酸とアルコールアミンとを反応させて調製したカルボン酸エステルを開示している。EP798364は、ディーゼル潤滑性改良剤として、脂肪酸を脂肪アミンと反応させて調製した塩またはアミドを開示している。EP1209217は、ディーゼル潤滑性改良剤として、C6-50の飽和脂肪酸およびジカルボン酸と、短鎖油溶性の第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンとの反応生成物を開示している。WO9915607は、ディーゼル潤滑性改良剤として、二量体脂肪酸とエポキシ化合物との反応生成物を開示している。これらの技術の多くは、脂肪酸または脂肪酸二量体と、アルコールアミン、アミンおよびエポキシ化合物との反応を含み、一部の反応出発物質は高価であり、普通の潤滑性改良効果を示し、ディーゼル燃料中の添加量が多い。
【0006】
従来の工業用低硫黄ディーゼル潤滑性改良剤は、主に2つの型(すなわち、酸型潤滑性改良剤およびエステル型潤滑性改良剤)を含み、酸型潤滑性改良剤の主成分は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの長鎖不飽和脂肪酸であり、代表的な生成物は精製されたトール油脂肪酸である。エステル型潤滑性改良剤は、上記脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応生成物である。WO9417160A1には、ディーゼル潤滑性改良剤としてオレイン酸モノグリセリドの使用が開示されている。
【0007】
ディーゼル燃料の潤滑性問題を解決するために脂肪酸型潤滑性改良剤を使用する場合、比較的コストが低いが、ディーゼル燃料の排出基準のグレードアップ、およびこれらの潤滑性の低下のために、使用量が多くなり、過大なディーゼル燃料の酸価、腐食の危険性の増大などの問題が引き起こされ得る。また、脂肪酸エステル型潤滑性改良剤は少量で使用され得るが、高いコスト、ならびに、水と混合する際に改良剤によって改変されたディーゼル燃料が乳化して白濁する危険性といった問題もある。
【0008】
CN109576021Aは、低硫黄ディーゼル用潤滑性改良剤およびその調製を開示しており、不飽和ジカルボン酸エステル(マレイン酸ジエステル)と重合禁止剤とを150~180℃で混合し、桐油バイオディーゼルを徐々に添加し、200~240℃の温度で一定時間反応を継続し、反応後減圧下で蒸留して改良剤生成物を得る。この生成物は、桐油バイオディーゼルを必要とし、出発物質は希少で不安定であり、反応は高温を必要とし、調製を行うことは難しく、最も重要なことは、潤滑性改良効果が極めて普通であり、600ppm超の改良剤が必要とされることである。
【0009】
CN106929112Aは、低硫黄ディーゼルの潤滑性の改良方法を開示している。この方法は、アルケニルコハク酸無水物と一価脂肪族アルコールとのエステル化反応生成物を用いてディーゼル燃料の潤滑性を改良するが、この生成物は粘度が高く、超低硫黄ディーゼル(中国国家VI排出基準に達した車両用ディーゼルなど)の潤滑性を改良する普通の効果を有する。
【0010】
トライボロジー・インターナショナル誌に掲載された論文(G. Anatopoulos, E. Lois. Influence of aceto acetic esters and di-carboxylic acid esters on diesel fuel lubricity [J]. Tribology International, 2001, 34 (11): 749-755)は、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステルを低硫黄ディーゼル燃料に添加することによって潤滑性を改良することを報告しているが、ジエステル化合物は潤滑性改良効果が乏しく、500ppmあるいは1000ppm超の添加量が必要とされる。
【0011】
〔発明の概要〕
本出願の目的は、先行技術の欠点を克服し、より少ない使用量で理想的な潤滑性改良効果を提供できる燃料油用潤滑性改良剤組成物およびその使用を提供することである。
【0012】
上記目的を達成するために、一態様において、本出願は、
成分Aおよび成分Bを含む、燃料油用潤滑性改良剤組成物であって、
前記成分Aは、下記式(I)によって表されるジカルボン酸モノエステルであり、
【0013】
【0014】
式(I)中、
R1は、C1-10の2価ヒドロカルビル基であり、
R2は、C1-20ヒドロカルビル基、または、-R3-C(=O)-O-R4の構造を有する部分であり、
R3は、C8-24の2価ヒドロカルビル基であり、
R4は、水素またはC1-10ヒドロカルビル基であり、
前記成分Bは、C8-24長鎖脂肪酸、そのポリオールエステル、またはそれらの混合物であり、
前記成分Aおよび前記成分Bの合計量は、前記組成物の総重量の70~100重量%であり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、9:1~1:9である、燃料油用潤滑性改良剤組成物を提供する。
【0015】
本出願の発明者らは、集中的な研究および多くの実験の結果、式(I)によって表されるジカルボン酸モノエステルと、C8-24長鎖脂肪酸またはそのポリオールエステルとを特定の比率で組成物に調製した場合には、組成物を少量添加するだけで、低硫黄ディーゼル燃料の潤滑性が大幅に改良され、組成物が予期せぬ相乗効果を示し、この組成物は、現在市販され使用されている脂肪酸型または脂肪酸グリセリド型潤滑性改良剤よりも著しく優れ、これにより潤滑性改良剤の量を大幅に削減することができることを予想外に見出した。
【0016】
別の態様において、本出願は、ディーゼル燃料の潤滑性を改良する方法であって、低硫黄ディーゼル燃料に、本出願の燃料油用潤滑性改良剤組成物を添加する工程を含み、前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、前記低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、好ましくは、10ppmから400ppmまでの量で添加される、方法を提供する。
【0017】
さらなる態様において、本出願は、低硫黄ディーゼル燃料と、本出願の燃料油用潤滑性改良剤組成物とを含むディーゼル燃料組成物であって、前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、前記低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、前記ディーゼル燃料組成物中に、好ましくは、10ppmから400ppmまでの量で存在する、ディーゼル燃料組成物を提供する。
【0018】
本出願において開示される燃料油潤滑性改良剤は、容易に入手できる出発物質からの生産が簡便であり、従来の脂肪酸型または脂肪酸エステル型の潤滑性改良剤よりも予想外に優れた効果を発揮し、低硫黄ディーゼル燃料の潤滑性を著しく向上できるので、添加量を大幅に低減することができ、使用コストも大幅に低減することができる。
【0019】
さらに、本出願の燃料油用潤滑性改良剤組成物は、ガソリンおよびジェット燃料の潤滑性を向上する効果も有する。
【0020】
本出願のその他の特徴および利点については、以下の詳細な説明において詳述する。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を構成する図面は、本出願の理解を助けるために提供されるものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本出願は、以下の詳細な説明と組み合わせて、図面を参照しながら説明することができる。図面において:
〔
図1〕
図1は、調製例1で得られた生成物の赤外スペクトルを示す;
〔
図2〕
図2は、実施例で使用したディーゼル燃料A(Diesel fuel A)の摩耗痕の写真を示す。
【0022】
〔
図3〕
図3は、実施例1で得られた組成物を100mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Aの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=226μmである。
【0023】
〔
図4〕
図4は、実施例1で得られた組成物を70mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Aの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=305μmである。
【0024】
〔
図5〕
図5は、実施例で使用したディーゼル燃料B(Diesel fuel B)の摩耗痕の写真を示す。
【0025】
〔
図6〕
図6は、実施例1で得られた組成物を100mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Bの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=256μmである。
【0026】
〔
図7〕
図7は、実施例1で得られた組成物を200mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Bの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=189μmである。
【0027】
〔発明の詳細な説明〕
以下、図面およびその具体的な実施形態を参照して、本出願をさらに詳細に説明する。なお、本出願の具体的な実施形態は、例示のみを目的として提供されるものであり、何ら限定を意図するものではないことに留意されたい。
【0028】
本出願の文脈中に開示されるいかなる具体的な数値(数値範囲の端点を含む)も、その正確な値に限定されず、前記正確な値に近い全ての値(例えば、前記正確な値の5%以内の全ての値)をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書で説明される任意の数値範囲については、任意の組合せが、当該範囲の端点の間、各々の端点と当該範囲内の任意の具体的な値との間、または、当該範囲内の任意の2つの具体的な値の間でなされ得、1つ以上の新たな数値範囲を提供することができる。前記新たな数値範囲も、本出願に具体的に説明されているものと見做されるべきである。
【0029】
他で言及しない限り、本明細書で使用されている用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。用語が本明細書で定義され、それらの定義が、当該技術分野における通常の理解と異なる場合は、本明細書に提供される定義が優先されるものとする。
【0030】
本出願において、用語「ヒドロカルビル基」とは、一般に、炭素原子と水素原子とからなる飽和もしくは不飽和の有機化合物(種々の脂肪族化合物、脂環式化合物、および芳香族化合物など)から1つの水素原子を除去することによって形成される種々の基を指す。ヒドロカルビル基の具体例としては、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(「アルキル基」ともいう)、直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基(「アルケニル基」ともいう)、直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルケニルシクロアルキル基、シクロアルキルアルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルシクロアルケニル基、シクロアルケニルアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本出願において、用語「2価ヒドロカルビル基(「アルキレン基」ともいう)」とは、一般に、炭素原子と水素原子とからなる飽和もしくは不飽和の有機化合物(種々の脂肪族化合物、脂環式化合物、および芳香族化合物など)から2つの水素原子を除去することによって形成される種々の基を指す。2価ヒドロカルビル基の具体例としては、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(「2価アルキル基」ともいう)、直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基(「2価アルケニル基」ともいう)、直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基、シクロアルキレン基、-アルキル-シクロアルキル-、-シクロアルキル-アルキル-、-アルケニル-シクロアルキル-、-シクロアルキル-アルケニル-、シクロアルケニレン基、-アルキル-シクロアルケニル-、-シクロアルケニル-アルキル-、アリーレン基(「2価アリール基」ともいう)、-アリール-アルキル-、-アルキル-アリール-などが挙げられるが、これらに限定されるものではない、
本出願において、特に断らない限り、「ヒドロカルビル基」および「2価ヒドロカルビル基」は置換もしくは非置換であり得、好ましくは非置換であり得る。
【0032】
本出願において、用語「アルケニル基」とは、アルケニル基の主鎖中または側鎖中にあり得る少なくとも1つ(例えば、1~5つ、好ましくは1~3つ)の炭素-炭素二重結合を有し、かつ、炭素鎖中に炭素-炭素三重結合を有さない脂肪族ヒドロカルビル基(ビニル基、プロペニル基、アリル基など)を指す。
【0033】
本出願において、用語「アルケニレン基」とは、アルケニレン基の主鎖中または側鎖中にあり得る少なくとも1つ(例えば、1~5つ、好ましくは1~3つ)の炭素-炭素二重結合を有し、かつ、炭素鎖中に炭素-炭素三重結合を有さない脂肪族ヒドロカルビレン基(ビニレン基、-(CH2=)C-CH2-、-(CH3)C=CH-、-(CH3)C=C(CH3)-など)を指す。
【0034】
本出願において、「任意に置換された」および「置換もしくは非置換」という表現は、そのような表現によって修飾された基が、非置換基、または、1つ以上の置換基で置換された基であり得ることを示すために、互換的に使用され得る。
【0035】
本出願において、特に断らない限り、用語「置換された」とは、そのような表現によって修飾された基が、C1-10の直鎖状もしくは分枝状のヒドロカルビル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、ニトロ基およびアミノ基、好ましくはC1-4の直鎖状もしくは分枝状のヒドロカルビル基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ビニル、プロペニル、およびアリル基など)から選択される1つ以上(例えば、1、2または3つ)の基によって置換されていることを意味する。
【0036】
本出願の文脈では、明確に説明した内容以外の未記載の事項または内容は、当該分野における既知のものから変更なく、同じであると考えられる。さらに、本明細書中に記載の任意の実施形態を、本出願明細書に記載した他の1つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができる。これによって得られる技術案または技術思想は、当該組み合わせが明らかに非合理的であることが当業者にとって明らかでない限り、本出願の最初の開示または最初の記載の一部と考えられ、本明細書に開示または予期されていない新規事項と見做されるべきではない。
【0037】
本明細書に引用される全ての特許文献および非特許文献は、教科書および定期刊行物を含むが、これらに限定されることなく、これによってその全文が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
第一の態様において、本出願は、
成分Aおよび成分Bを含む、燃料油用潤滑性改良剤組成物であって、
前記成分Aは、下記式(I)によって表されるジカルボン酸モノエステルであり、
【0039】
【0040】
式(I)中、
R1は、C1-10の2価ヒドロカルビル基であり、
R2は、C1-20ヒドロカルビル基、または、-R3-C(=O)-O-R4の構造を有する部分であり、
R3は、C8-24の2価ヒドロカルビル基であり、
R4は、水素またはC1-10ヒドロカルビル基であり、
前記成分Bは、C8-24長鎖脂肪酸、そのポリオールエステル、またはそれらの混合物であり、
前記成分Aおよび前記成分Bの合計量は、前記組成物の総重量の70~100重量%であり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、9:1~1:9である、燃料油用潤滑性改良剤組成物を提供する。
【0041】
状況に応じて、本出願の燃料油用潤滑性改良剤組成物には、成分Aおよび成分Bに加えて、ディーゼル燃料、有機溶剤、未反応出発物質(アルコール類、フェノール類など)、反応副生成物(ジカルボン酸ジエステル化合物など)などの少量の追加成分が存在し得る。それらの追加成分の合計量は、燃料油用潤滑性改良剤組成物の総重量の20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0042】
好ましい実施形態では、成分Aおよび成分Bの合計量は、燃料油用潤滑性改良剤組成物の総重量の80~100重量%、より好ましくは90~100重量%、例えば、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、または100重量%である。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態では、燃料油用潤滑性改良剤組成物において、成分BはC8-24長鎖脂肪酸であり、成分Aと成分Bとの質量比は、8:2から2:8まで、好ましくは7:3から3:7まで、より好ましくは7:3から5:5まで、例えば7:3から6:4までである。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態では、燃料油用潤滑性改良剤組成物において、成分Bは、C8-24長鎖脂肪酸のポリオールエステルであり、成分Aと成分Bとの質量比は、8:2から1:9まで、好ましくは8:2から2:8まで、より好ましくは5:5から2:8まで、例えば4:6から3:7までである。
【0045】
いくつかの特に好ましい実施形態では、燃料潤滑性改良剤は、実質的に成分Aと成分Bとからなり、すなわち、不可避的不純物(未反応の出発物質、および反応副生成物など)を除いて、成分Aと成分Bとのみを含み、成分BはC8-24長鎖脂肪酸であり、組成物は、組成物の重量に基づいて、成分Aを20~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは50~70重量%、例えば60~70重量%含み、成分Bを20~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは30~50重量%、例えば30~40重量%含む。
【0046】
いくつかの特に好ましい実施形態では、燃料潤滑性改良剤は、実質的に成分Aと成分Bとからなり、すなわち、不可避的不純物(未反応の出発物質、および反応副生成物など)を除いて、成分Aと成分Bとのみを含み、成分Bは、C8-24長鎖脂肪酸のポリオールエステルであり、組成物は、組成物の重量に基づいて、成分Aを10~80重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~50重量%、例えば30~40重量%含み、成分Bを20~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは50~80重量%、例えば60~70重量%含む。
【0047】
本出願の潤滑性改良剤は、必要に応じて、燃料油(ディーゼル燃料など)の潤滑性を向上させるために単独で使用することができ、あるいは、燃料油の潤滑性および1つ以上の他の特性を向上させるために、1つ以上の他の燃料添加剤(フェノール系酸化防止剤、高分子アミン系無灰分散剤、流動性向上剤、セタン価向上剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、腐食防止剤、防錆剤、脱乳化剤など)と組み合わせて使用することができる。
【0048】
本出願の組成物の成分Aおよび成分Bについて、以下にさらに詳しく説明する。
【0049】
〔成分A〕
本出願によれば、成分Aは、下記式(I)によって表されるジカルボン酸モノエステルであり、
【0050】
【0051】
式(I)中、
R1は、C1-10の2価ヒドロカルビル基であり、
R2は、C1-20ヒドロカルビル基、または、-R3-C(=O)-O-R4の構造を有する部分であり、
R3は、C8-24の2価ヒドロカルビル基であり、
R4は、水素またはC1-10ヒドロカルビル基である。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、構造式(I)中、
R1は、C1-10の2価アルキル基、C2-10の2価アルケニル基、または-R5-R6-R7-の構造を有する部分であり、好ましくはC1-8の2価アルキル基、C2-6の2価アルケニル基、または-R5-R6-R7-の構造を有する部分であり、より好ましくはC1-4の2価アルキル基、またはC2-4の2価アルケニル基であり、
R2は、C3-20ヒドロカルビル基であり、好ましくはC3-20の直鎖状もしくは分岐状のヒドロカルビル基、C4-20脂環式ヒドロカルビル基、C7-20アリール置換ヒドロカルビル基、または、C7-20ヒドロカルビル置換アリール基であり、より好ましくは、C3-18の直鎖状もしくは分岐状のヒドロカルビル基、C4-18脂環式ヒドロカルビル基、C7-18アリール置換ヒドロカルビル基、または、C7-18ヒドロカルビル置換アリール基であり、
R5およびR7は、それぞれ独立して、単結合、または、C1-3の2価ヒドロカルビル基であり、好ましくは、それぞれ独立して、単結合またはメチレンであり、
R6は、C3-10の2価脂環式ヒドロカルビル基、または、C6-10の置換もしくは非置換の2価アリール基であり、好ましくはC4-7の2価脂環式ヒドロカルビル基、または、C6-10の置換もしくは非置換の2価アリール基であり、R5、R6およびR7の基の炭素原子の合計数は10以下であり、
ここで、前記「置換された」とは、C1-4の直鎖状もしくは分枝状のヒドロカルビル基、ハロゲン、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、ニトロ基、およびアミノ基、好ましくは、C1-4の直鎖状もしくは分枝状のヒドロカルビル基から選択される1つ以上の基で置換されていることを意味する。
【0053】
いくつかの好ましい実施形態では、構造式(I)中、
R1は、C2-20の2価ヒドロカルビル基、好ましくは、C2-8の2価ヒドロカルビル基であり、
R2は、-R3-C(=O)-O-R4の構造を有する部分であり、
R3は、0~5つの炭素-炭素二重結合を有するC8-24の2価ヒドロカルビル基、好ましくは0~3つの炭素-炭素二重結合を有するC16-22の2価ヒドロカルビル基であり、
R4は、水素またはC1-10ヒドロカルビル基であり、好ましくは、水素またはC1-4ヒドロカルビル基である。
【0054】
いくつかのさらに好ましい実施形態では、成分Aのジカルボン酸モノエステルは、式(I-1)、(I-2)、または(I-3)によって表されるジカルボン酸モノエステルから選択され、
【0055】
【0056】
式(I-1)中、
nは2から6までの整数であり、
Rは、C3-20ヒドロカルビル基であり、好ましくはC4-18ヒドロカルビル基であり、
【0057】
【0058】
式(I-2)中、
pは1から8までの整数であり、
Rは、C3-20ヒドロカルビル基であり、好ましくはC4-18ヒドロカルビル基であり、
【0059】
【0060】
式(I-3)中、
mは0~1の整数であり、
Qは、C3-8の2価脂環式ヒドロカルビル基、または、C6-10の置換もしくは非置換の2価アリール基であり、
Rは、C3-20ヒドロカルビル基であり、好ましくはC4-18ヒドロカルビル基である。
【0061】
本出願によれば、構造式(I-1)、(I-2)または(I-3)中、Rは脂肪族ヒドロカルビル基、脂環式ヒドロカルビル基またはアリール基であってよい。脂肪族ヒドロカルビル基は、直鎖状または分岐状であってもよく;飽和脂肪族ヒドロカルビル基または不飽和脂肪族ヒドロカルビル基であってもよく;不飽和脂肪族ヒドロカルビル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合(エチレン結合)または少なくとも1つの炭素-炭素三重結合(アセチレン結合)を有する脂肪族ヒドロカルビル基であってもよい。脂環式ヒドロカルビル基は、飽和脂環式ヒドロカルビル基(シクロアルキル基)または不飽和脂環式ヒドロカルビル基であってよい。アリール基は、単環式アリール基であってもよく、二環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。脂環式基およびアリール基は、炭素環に種々のヒドロカルビル置換基を有していてもよい。
【0062】
さらに好ましい実施形態では、構造式(I-1)、(I-2)および(I-3)中、Rは、C3-20直鎖状もしくは分枝状の脂肪族ヒドロカルビル基、C4-20脂環式ヒドロカルビル基、C7-20アリール置換ヒドロカルビル基、またはC7-20ヒドロカルビル置換アリール基から選択され、好ましくはC4-18直鎖状もしくは分枝状のアルキル基である。
【0063】
本出願において、Rが飽和された直鎖状もしくは分岐状の脂肪族ヒドロカルビル基である場合、Rは通常のアルキル基であってもよく、異性体アルキル基であってもよい。Rがn-アルキル基である場合、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、モノ-n-ドデシル基(ラウリルエステル基)、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基などであり、より好ましくはn-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基である。Rが異性体アルキル基である場合、好ましくは、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基(特に2-エチルヘキシル基)、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソトリデシル基、イソペンタデシル基、イソヘプタデシル基などであり、より好ましくはsec-ブチル基、イソオクチル基(特に2-エチルヘキシル基)、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、およびイソトリデシル基である。
【0064】
本出願において、Rが不飽和の直鎖状もしくは分枝状の脂肪族ヒドロカルビル基である場合、好ましくは、アリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソペンテニル基、3-ヘキセニル基、2-オクテニル基、3-ノネニル基、2-デセニル基、7-ドデセニル基、1,5-ヘキサジエニル基、2,4-ノナジエニル基、2,4-デカジエニル基、9,11-ドデカジエニル基、9-オクタデセニル基、より好ましくは3-ヘキセニル基、2-オクテニル基、3-ノネニル基、イソペンテニル基、9-オクタデセニル基である。
【0065】
本出願において、Rが脂環式ヒドロカルビル基である場合、好ましくは、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基などであり、より好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-シクロヘキセニル基または2-シクロヘキセニル基である。
【0066】
本出願において、Rが非置換のアリール基である場合、好ましくは、フェニル基であり、Rがヒドロカルビル置換アリール基である場合、好ましくは、メチルフェニル、p-ノニルフェニル、p-ドデシルフェニルなどであり、Rがアリール置換ヒドロカルビル基である場合、好ましくは、ベンジル(phenmethyl)基、フェネチル基、p-ドデシルフェニル基などであり、より好ましくはベンジル(phenmethyl)基、p-ノニルフェニル基、p-ドデシルフェニル基である。
【0067】
本出願によれば、式(I-1)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、炭素-炭素不飽和二重結合を1つ有するC4-8の直鎖状もしくは分岐状のジカルボン酸の1つのカルボキシル基をエステル化して得られる不飽和ジカルボン酸モノエステルである。
【0068】
具体的には、nが2の場合、式(I-1)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノエステル(すなわち、シス-ブテン二酸のモノエステル)、フマル酸モノエステル(すなわち、トランス-ブテン二酸のモノエステル)であり;nが3の場合、式(I-1)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、イタコン酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル(すなわち、メチルマレイン酸モノエステル)、メチルフマル酸モノエステル(すなわち、メチルトランス-ブテン二酸のモノエステル)、グルタコン酸モノエステルなどであり;nが4の場合、式(I-1)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、好ましくは2,3-ジメチルマレイン酸モノエステル、エチルマレイン酸モノエステル、ヘキセンジオ酸モノエステルなどである。
【0069】
好ましくは、式(I-1)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル、メチルフマル酸モノエステル、2,3-ジメチルマレイン酸モノエステル、グルタコン酸モノエステルなどから選択され、より好ましくは、マレイン酸モノエステル、およびイタコン酸モノエステルから選択される。
【0070】
さらに好ましくは、式(I-1)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、式(I-1-1)によって表されるマレイン酸モノエステル、
【0071】
【0072】
式(I-1-2)によって表されるイタコン酸モノエステル、
【0073】
【0074】
または式(I-1-3)によって表されるイタコン酸モノエステルから選択され、
【0075】
【0076】
ここで、Rは上記で定義した通りである。
【0077】
特に好ましくは、Rがn-アルキル基である場合、式(I-1-1)のマレイン酸モノエステルは、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ-n-プロピル、マレイン酸モノ-n-ブチル、マレイン酸モノ-n-ペンチル、マレイン酸モノ-n-ヘキシル、マレイン酸モノ-n-ヘプチル、マレイン酸モノ-n-オクチル、マレイン酸モノ-n-ノニル、マレイン酸モノ-n-デシル、マレイン酸モノ-n-ウンデシル、マレイン酸モノ-n-ドデシル(ラウリルエステル)、マレイン酸モノ-n-テトラデシル、マレイン酸モノ-n-ヘキサデシル、マレイン酸モノ-n-オクタデシルなどから選択され得、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ-n-プロピル、マレイン酸モノ-n-ブチル、マレイン酸モノ-n-オクチル、マレイン酸モノ-n-ノニル、マレイン酸モノ-n-デシル、マレイン酸モノ-n-ドデシルなどから選択され得、より好ましくは、マレイン酸モノ-n-ブチル、モノ-n-ペンチル、マレイン酸モノ-n-オクチル、マレイン酸モノ-n-ノニル、マレイン酸モノ-n-デシルなどから選択され;式(I-1-2)または式(I-1-3)によって表されるイタコン酸モノエステルは、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノ-n-プロピル、イタコン酸モノ-n-ブチル、イタコン酸モノ-n-ペンチル、イタコン酸モノ-n-ヘキシル、イタコン酸モノ-n-ヘプチル、イタコン酸モノ-n-オクチル、イタコン酸モノ-n-ノニル、イタコン酸モノ-n-デシル、イタコン酸モノ-n-ウンデシル、イタコン酸モノ-n-ドデシル(イタコン酸ラウリル)、イタコン酸モノ-n-テトラデシル、イタコン酸モノ-n-ヘキサデシル、イタコン酸モノ-n-オクタデシルなどから選択され得、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノ-n-プロピル、イタコン酸モノ-n-ブチル、イタコン酸モノ-n-オクチル、イタコン酸モノ-n-デシル、イタコン酸モノ-n-ドデシル(イタコン酸ラウリル)、イタコン酸モノ-n-オクタデシル等から選択され得、より好ましくはイタコン酸モノ-n-ブチル、イタコン酸モノ-n-ペンチル、イタコン酸モノ-n-オクチル、イタコン酸モノ-n-ノニル、イタコン酸モノ-n-デシルから選択され得る。
【0078】
特に好ましくは、Rが異性体アルキル基である場合、式(I-1-1)によって表されるマレイン酸モノエステルは、マレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノ-sec-ブチル、マレイン酸モノ-tert-ブチル、マレイン酸モノイソアミル、マレイン酸モノイソヘキシル、マレイン酸モノイソオクチル(マレイン酸モノ-2-エチルヘキシル)、マレイン酸モノイソノニル、マレイン酸モノイソデシル、マレイン酸モノイソウンデシル、マレイン酸モノイソドデシル、マレイン酸モノイソトリデシル、マレイン酸モノイソテトラデシル、マレイン酸モノイソペンタデシル、マレイン酸モノイソヘプタデシルなどから選択され得、好ましくはマレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノ-sec-ブチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノイソノニル、マレイン酸モノイソデシル、マレイン酸モノイソウンデシル、マレイン酸モノイソトリデシル、マレイン酸モノイソオクタデシルなどから選択され得、より好ましくは、マレイン酸モノ-tert-ブチル、マレイン酸モノ-sec-ブチル、マレイン酸モノイソアミル、マレイン酸モノイソオクチル(マレイン酸モノ-2-エチルヘキシル)、マレイン酸モノイソノニル、マレイン酸モノイソウンデシル、マレイン酸モノイソトリデシルから選択され得;式(I-1-2)または式(I-1-3)によって表されるイタコン酸モノエステルは、イタコン酸モノイソプロピル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノ-sec-ブチル、イタコン酸モノ-tert-ブチル、イタコン酸モノイソアミル、イタコン酸モノイソヘキシル、イタコン酸モノイソオクチル(イタコン酸モノ-2-エチルヘキシル)、イタコン酸モノイソノニル、イタコン酸モノイソデシル、イタコン酸モノイソウンデシル、イタコン酸モノイソトリデシルなどから選択され得、好ましくは、イタコン酸モノイソプロピル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノイソオクチル(イタコン酸モノ-2-エチルヘキシル)、イタコン酸モノイソノニル、イタコン酸モノイソデシル、イタコン酸モノイソウンデシル、イタコン酸モノイソステアリルなどから選択され得、より好ましくは、イタコン酸モノtert-ブチル、イタコン酸モノイソアミル、イタコン酸モノイソヘキシル、イタコン酸モノイソオクチル(イタコン酸モノ-2-エチルヘキシル)、イタコン酸モノイソノニル、イタコン酸モノイソウンデシルから選択され得る。
【0079】
特に好ましくは、Rが不飽和の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族ヒドロカルビル基である場合、式(I-1-1)のマレイン酸モノエステルは、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノ-3-ブテン-1-オール、マレイン酸モノイソプロペニル、マレイン酸モノ-3-ヘキセン-1-オール、マレイン酸モノ-1-ヘプテン-3-オール、マレイン酸モノメチルヘプテニル、マレイン酸モノ-2-オクテン-1-オール、マレイン酸モノ-3-ノネン-1-オール、マレイン酸モノ-2-デセン-1-オール、マレイン酸モノ-7-ドデセン-1-オール、マレイン酸モノ-1,5-ヘキサジエノール、マレイン酸モノ-2,4-ノナジエン-1-オール、マレイン酸モノ-2,4-デカジエン-1-オール、マレイン酸モノ-9,11-ドデカジエノール、マレイン酸モノオレイルなどから選択され得、好ましくはマレイン酸モノアリル、マレイン酸モノ-3-ブテン-1-オール、マレイン酸モノイソプロペニル、マレイン酸モノ-3-ヘキセン-1-オール、マレイン酸モノ-1-ヘプテン-3-オール、マレイン酸モノメチルヘプテニル、マレイン酸モノ-3-ノネン-1-オール、マレイン酸モノ-2,4-デカジエン-1-オール、マレイン酸モノオレイルなどから選択され得、より好ましくはマレイン酸モノ-2-オクテン-1-オール、マレイン酸モノ-3-ノネン-1-オール、マレイン酸モノ-2-デセン-1-オール、マレイン酸モノオレイルなどから選択され得;式(I-1-2)または式(I-1-3)によって表されるイタコン酸モノエステルは、イタコン酸モノアリル、イタコン酸モノ-2-ブテン-1-オール、イタコン酸モノ-3-ブテン-1-オール、イタコン酸モノイソプロペニル、イタコン酸モノ-3-ヘキセン-1-オール、イタコン酸モノ-1-ヘプテン-3-オール、イタコン酸モノメチルヘプテニル、イタコン酸モノ-2-オクテン-1-オール、イタコン酸モノ-3-ノネン-1-オール、イタコン酸モノ-2-デセン-1-オール、イタコン酸モノ-7-ドデセン-1-オール、イタコン酸モノ-1,5-ヘキサジエノール、イタコン酸モノ-2,4-ノナジエン-1-オール、イタコン酸モノ-2,4-デカジエノール、イタコン酸モノ-9,11-ドデカジエノール、イタコン酸モノオレイルなどから選択され得、好ましくはイタコン酸モノアリル、イタコン酸モノ-3-ブテン-1-オール、イタコン酸モノイソプロペニル、イタコン酸モノ-3-ヘキセン-1-オール、イタコン酸モノ-3-ノネン-1-オール、イタコン酸モノオレイルなどから選択され得、より好ましくはイタコン酸モノ-2-オクテン-1-オール、イタコン酸モノ-3-ノネン-1-オール、イタコン酸モノオレイルから選択され得る。
【0080】
特に好ましくは、Rが脂環式ヒドロカルビル基である場合、式(I-1-1)のマレイン酸モノエステルは、マレイン酸モノシクロブチル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノ-3-シクロヘキセン-1-メチル、マレイン酸モノ-2-シクロヘキセニルなどから選択され得;式(I-1-2)または式(I-1-3)によって表されるイタコン酸モノエステルは、イタコン酸モノシクロヘキシルエステル、イタコン酸モノ-2-シクロヘキセニルエステルなどから選択され得る。
【0081】
特に好ましくは、Rがヒドロカルビル置換アリール基である場合、式(I-1-1)のマレイン酸モノエステルは、マレイン酸モノ-p-ノニルフェニル、マレイン酸モノ-p-ドデシルフェニルなどから選択され得;式(I-1-2)または式(I-1-3)によって表されるイタコン酸モノエステルは、イタコン酸モノ-p-ノニルフェニル、イタコン酸モノ-p-ドデシルフェニルから選択され得る。
【0082】
特に好ましくは、Rがアリール置換ヒドロカルビル基である場合、式(I-1-1)のマレイン酸モノエステルは、マレイン酸モノベンジル、マレイン酸モノフェニルエチル、マレイン酸モノフェニルプロピルから選択され得;式(I-1-2)または式(I-1-3)によって表されるイタコン酸モノエステルは、イタコン酸モノベンジル、イタコン酸モノフェニルエチル、イタコン酸モノフェニルプロピルから選択され得る。
【0083】
本出願によれば、式(I-2)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、C3-10の飽和された直鎖状もしくは分岐状のジカルボン酸の1つのカルボキシル基をエステル化して得られるジカルボン酸モノエステルである。
【0084】
さらに好ましい実施形態では、式(I-2)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、飽和直鎖状ジカルボン酸のモノエステル、すなわち、2つのカルボニル基の間の炭素鎖が飽和直鎖である式(I-2)中のジカルボン酸モノエステルである。
【0085】
特に好ましくは、式(I-2)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、マロン酸モノエステル、コハク酸モノエステル(すなわち、コハク酸モノエステル)、グルタル酸モノエステル、アジピン酸モノエステル、ピメリン酸モノエステル、スベリン酸モノエステル、アゼライン酸モノエステル、セバシン酸モノエステル、ウンデカン二酸モノエステル、ドデカン二酸モノエステル、トリデカン二酸モノエステル、テトラデカン二酸モノエステル、ヘキサデカン二酸モノエステル、オクタデカン二酸モノエステルなどから選択される。
【0086】
特に好ましくは、式(I-2)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、マロン酸モノエステル、コハク酸モノエステル、グルタル酸モノエステル、アジピン酸モノエステル、アゼライン酸モノエステルおよびセバシン酸モノエステルから選択される。
【0087】
マロン酸モノエステルの例として、マロン酸モノメチル、マロン酸モノエチル、マロン酸モノプロピル、マロン酸モノ-n-ブチル、マロン酸モノ-n-ヘキシル、マロン酸モノ-n-オクチル、マロン酸モノ-n-デシル、マロン酸モノ-n-ドデシル(ラウリルエステル)、マロン酸モノイソブチル、マロン酸モノ-t-ブチル、マロン酸モノイソオクチル、マロン酸モノイソノニル、マロン酸モノイソデシル、マロン酸モノイソウンデシル、マロン酸モノイソトリデシル、マロン酸モノオレイル(マロン酸モノ-9-オクタデセニル)、マロン酸モノシクロヘキシル、マロン酸モノ-3-シクロヘキセン-1-メチル、マロン酸モノ-p-ノニルフェニル、マロン酸モノ-ベンジルなどがより好ましい。
【0088】
コハク酸モノエステルの例として、コハク酸モノ-n-ブチル、コハク酸モノ-sec-ブチル、コハク酸モノ-n-ヘキシル、コハク酸モノ-n-オクチル、コハク酸モノ-n-デシル、コハク酸モノ-n-ドデシル(ラウリルエステル)、コハク酸モノイソブチル、コハク酸モノ-tert-ブチル、コハク酸モノイソアミル、コハク酸モノイソヘキシル、コハク酸モノイソオクチル、コハク酸モノイソノニル、コハク酸モノイソデシル、コハク酸モノイソウンデシル、コハク酸モノイソトリデシル、コハク酸モノオレイル(コハク酸モノ-9-オクタデセニル)、コハク酸モノシクロヘキシル、コハク酸モノ-3-シクロヘキセン-1-メチル、コハク酸モノ-p-ノニルフェニル、およびコハク酸モノベンジルがより好ましい。
【0089】
グルタル酸モノエステルの例としては、グルタル酸モノメチル、グルタル酸モノエチル、グルタル酸モノプロピル、グルタル酸モノ-n-ブチル、グルタル酸モノ-n-ヘキシル、グルタル酸モノ-n-オクチル、グルタル酸モノ-n-デシル、グルタル酸モノ-n-ドデシル(ラウリルエステル)、グルタル酸モノイソブチル、グルタル酸モノ-t-ブチル、グルタル酸モノイソオクチル、グルタル酸モノイソノニル、グルタル酸モノイソデシル、グルタル酸モノイソウンデシル、グルタル酸モノイソトリデシル、グルタル酸モノオレイル(グルタル酸モノ-9-オクタデセニル)、グルタル酸モノシクロヘキシル、グルタル酸モノ-3-シクロヘキセン-1-メチル、グルタル酸モノ-p-ノニルフェニル、グルタル酸モノベンジルなどがより好ましい。
【0090】
アジピン酸モノエステルの例としては、アジピン酸モノメチル、アジピン酸モノエチル、アジピン酸モノ-n-ブチル、アジピン酸モノ-n-ヘキシル、アジピン酸モノ-n-オクチル、アジピン酸モノ-n-デシル、アジピン酸モノ-n-ドデシル(ラウリルエステル)、アジピン酸モノプロピル、アジピン酸モノイソブチル、アジピン酸モノイソオクチル、アジピン酸モノイソノニル、アジピン酸モノイソデシル、アジピン酸モノイソウンデシル、アジピン酸モノイソトリデシル、アジピン酸モノオレイル(アジピン酸モノ-9-オクタデセニル)、アジピン酸モノシクロヘキシル、アジピン酸モノ-3-シクロヘキセン-1-メチル、アジピン酸モノ-p-ノニルフェニル、アジピン酸モノベンジルなどがより好ましい。
【0091】
アゼライン酸モノエステルの例としては、アゼライン酸モノメチル、アゼライン酸モノエチル、アゼライン酸モノプロピル、アゼライン酸モノ-n-ブチル、アゼライン酸モノ-n-ヘキシル、アゼライン酸モノ-n-オクチル、アゼライン酸モノ-n-デシル、アゼライン酸モノ-n-ドデシル(ラウリルエステル)、アゼライン酸モノイソブチル、アゼライン酸モノイソオクチル、アゼライン酸モノイソノニル、アゼライン酸モノイソデシル、アゼライン酸モノイソウンデシル、アゼライン酸モノイソトリデシル、アゼライン酸モノオレイル(アゼライン酸モノ-9-オクタデセニル)、アゼライン酸モノシクロヘキシル、アゼライン酸モノ-3-シクロヘキセン-1-メチル、アゼライン酸モノ-p-ノニルフェニル、アゼライン酸モノベンジルなどがより好ましい。
【0092】
セバシン酸モノエステルの例として、セバシン酸モノメチル、セバシン酸モノエチル、セバシン酸モノプロピル、セバシン酸モノ-n-ブチル、セバシン酸モノ-n-ヘキシル、セバシン酸モノ-n-オクチル、セバシン酸モノ-n-デシル、セバシン酸モノ-n-ドデシル(ラウリルエステル)、セバシン酸モノイソブチル、セバシン酸モノイソオクチル、セバシン酸モノイソノニル、セバシン酸モノイソデシル、セバシン酸モノイソウンデシル、セバシン酸モノイソトリデシル、セバシン酸モノオレイル(セバシン酸モノ-9-オクタデセニル)、セバシン酸モノシクロヘキシル、セバシン酸モノ-3-シクロヘキセン-1-メチル、セバシン酸モノ-p-ノニルフェニル、セバシン酸モノベンジルなどがより好ましい。
【0093】
本出願によれば、式(I-3)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、炭素原子3~10の任意に置換された飽和もしくは不飽和の炭素環構造を主鎖に含むC5-12ジカルボン酸の1つのカルボキシル基をエステル化して得られるジカルボン酸モノエステルである。好ましくは、mは0であり、Qは、置換もしくは非置換のC4-8の2価脂環式ヒドロカルビル基、または、置換もしくは非置換の2価C6-10アリール基であり、RはC4-12ヒドロカルビル基である。
【0094】
特に好ましくは、式(I-3)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノエステル、テトラヒドロフタル酸モノエステル(すなわち、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸モノエステル)、フタル酸モノエステル、テレフタル酸モノエステル、3-メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル(すなわち、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノエステル)、4-メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル(すなわち、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノエステル)、メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸モノエステル、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。
【0095】
さらに特に好ましくは、式(I-3)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノエステル、テトラヒドロフタル酸モノエステル、フタル酸モノエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステルおよびメチルテトラヒドロフタル酸モノエステルから選択され、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノブチルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノオクチルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノイソオクチルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸モノイソノニルエステル、テトラヒドロフタル酸モノブチルエステル、テトラヒドロフタル酸モノオクチルエステル、テトラヒドロフタル酸モノイソオクチルエステル、テトラヒドロフタル酸モノイソノニルエステル、フタル酸モノブチルエステル、フタル酸モノオクチルエステル、フタル酸モノイソオクチルエステル、フタル酸モノイソノニルエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノブチルエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノオクチルエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノイソオクチルエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノイソノニルエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノラウリルエステル、メチル-テトラヒドロフタル酸モノブチルエステル、メチル-テトラヒドロフタル酸モノオクチルエステル、メチル-テトラヒドロフタル酸モノイソオクチルエステル、メチル-テトラヒドロフタル酸モノイソノニルエステル、メチル-テトラヒドロフタル酸モノラウリルエステルなどが挙げられる。
【0096】
いくつかの特に好ましい実施形態では、式(I-1)、(I-2)、または(I-3)のジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノイソノニル、コハク酸モノイソオクチル、フタル酸モノヘキシル、フタル酸モノイソオクチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノイソオクチル、シトラコン酸モノイソオクチル、イタコン酸モノイソオクチル、マロン酸モノ-tert-ブチルから選択される。最も好ましくは、ジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノイソノニル、イタコン酸モノイソオクチル、コハク酸モノイソオクチル、フタル酸モノヘキシル、フタル酸モノイソオクチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノイソオクチル、マロン酸モノ-tert-ブチルから選択される。
【0097】
本出願によれば、式(I-1)、(I-2)または(I-3)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、環状ジカルボン酸またはベンゼンジカルボン酸またはそれらの酸無水物と、C3-20アルコールまたはフェノールとを反応させることによって得ることができる。反応条件は以下を含む:ジカルボン酸または無水物とC2-20アルコールまたはフェノールとを、1:0.5~1:1.5のモル比で、50~250℃で、0.1~10時間反応させ、反応圧力は常圧または一定圧力とする。
【0098】
いくつかのさらに好ましい実施形態では、成分Aのジカルボン酸モノエステルは、式(I-4)によって表されるジカルボン酸モノエステルから選択され:
【0099】
【0100】
式(I-4)中、R8は、C2-10の2価ヒドロカルビル基であり;R9は、水素、または、二重結合を有するか、もしくは有さないヒドロカルビル基であり、R10は、二重結合を有するか、もしくは有さない2価ヒドロカルビル基であり、R9およびR10の炭素原子の合計数は15~21であり;R11は、水素またはC1-10ヒドロカルビル基である。
【0101】
さらに好ましい実施形態では、R9およびR10の炭素原子の合計数は15~21であり、二重結合の合計数は0~3であり、例えば、R9およびR10は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、ジエニル基などから選択されてもよい。
【0102】
さらに好ましい実施形態では、R11は、水素、または、C1-4アルキル基およびC2-4アルケニル基を含むC1-4ヒドロカルビル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、プロペニル基、n-ブチル基、イソブチル基、ブテニル基など)であり、最も好ましくは水素、メチル基またはエチル基である。
【0103】
さらに好ましい実施形態では、R8は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキル置換アルキレン基、アルキル置換アルケニレン基、アルケニル置換アルキレン基、アルケニル置換アルケニレン基、シクロアルキレン基、アルキル置換シクロアルキレン基、アルケニル置換シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アルキル置換シクロアルケニレン基、アルケニル置換シクロアルケニレン基、アリーレン基、アルキル置換アリーレン基、または2~10の炭素原子を有するアルケニル置換アリーレン基であってもよく;アルキレン基は、通常のアルキレン基または異性体アルキレン基であってもよく、アルケニレン基は、通常のアルケニレン基または異性体アルケニレン基であってもよく;より好ましくは、R8は、C2-8アルキレン基、C2-8アルケニレン基、C2-8のアルキル置換アルキレン基もしくはアルケニル置換アルキレン基、C2-8のアルキル置換アルケニレン基またはアルケニル置換アルケニレン基、C3-8シクロアルキレン基、C3-8シクロアルケニレン基、C6-8のアルキル置換シクロアルキレン基もしくはアルケニル置換シクロアルキレン基、C6-8のアルキル置換シクロアルケニレン基もしくはアルケニル置換シクロアルケニレン基、C6-10アリーレン、C7-10のアルキル置換アリーレンもしくはアルケニル置換アリーレンであり、例えば、エチレン、ビニレン、メチレンエチレン、メチルエチレン、ブチレン、メチルブチレン、ブテニレン、フェニレン、シクロヘキシレン、メチルヘキサヒドロフェニレン、メチルテトラヒドロフェニレンなどである。
【0104】
いっそうさらに好ましい実施形態では、構造式(I-4)中、R8はC2-8の2価ヒドロカルビル基であり、R9は水素またはヒドロカルビル基であり、R10は2価ヒドロカルビル基であり、R9およびR10の炭素原子の合計数は15~21であり、炭素-炭素二重結合の合計数は0~3であり、R11は水素またはC1-4ヒドロカルビル基である。
【0105】
本出願によれば、式(I-4)によって表されるジカルボン酸モノエステルは、ヒドロキシ脂肪酸および/またはヒドロキシ脂肪酸エステル(略して「ヒドロキシ脂肪酸(エステル)」と称する)と、ジカルボン酸および/またはその酸無水物とをエステル化反応させることにより得ることができる。エステル化反応条件は以下を含み得る:30~300℃、好ましくは50~250℃、より好ましくは70~180℃の範囲の温度;0.5~30時間、好ましくは2~20時間、より好ましくは4~10時間の反応時間。エステル化反応は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、石油エーテル、ソルベントオイル、シクロヘキサン、n-オクタン、またはそれらの混合物であり得る溶媒の存在下で、ならびに、硫酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、ホウ酸などの酸触媒であり得る触媒の存在下で任意に行われる。
【0106】
一例として、ヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシオクタデカン酸(ヒドロキシステアリン酸)、ヒドロキシオクタデセン酸(リシノール酸)、ヒドロキシオクタデカジエン酸、ヒドロキシドコサン酸、ヒドロキシドコセン酸、ヒドロキシテトラコサン酸、ヒドロキシテトラコセン酸などから選択されてもよく、好ましくは、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、およびヒドロキシオクタデカジエン酸から選択されてもよい。
【0107】
一例として、ヒドロキシ脂肪酸エステルは、ヒドロキシオクタデカン酸メチル(ヒドロキシステアリン酸メチル)、ヒドロキシオクタデセン酸メチル(リシノール酸メチル)、リシノール酸エチル、ヒドロキシオクタデカジエン酸メチル、ヒドロキシドコサン酸メチル、ヒドロキシドコセン酸メチル、ヒドロキシテトラコサン酸メチル、ヒドロキシテトラコセン酸メチルなどから選択されてもよく、好ましくはリシノール酸メチル、トランスリシノール酸メチル、リシノール酸エチル、およびヒドロキシオクタデカジエン酸メチルから選択されてもよい。
【0108】
一例として、ジカルボン酸は、飽和ジカルボン酸であってもよく、例えば、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などから選択される1つ以上の飽和ジカルボン酸であってもよく、好ましくは、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、オクチルコハク酸から選択される1つ以上であってもよい。
【0109】
あるいは、ジカルボン酸は、不飽和ジカルボン酸であってもよく、例えば、シス-ブテン二酸(マレイン酸)、トランス-ブテン二酸(フマル酸)、シス-メチルブテン二酸(シトラコン酸)、トランス-メチルブテン二酸(メサコン酸)、ジメチルマレイン酸、イタコン酸(メチレンコハク酸、メチレンブタン二酸)、グルタコン酸、トランス-3-ヘキセン二酸、ブチン二酸、2-ブテン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサジエン二酸、ヘプテン二酸、オクテン二酸、ノネン二酸、デセン二酸、セバセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸などであってもよく;また、ペンテニルコハク酸、ヘキサジエニルコハク酸、ヘプテニルコハク酸、オクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸などから選択される1つ以上であってもよく、好ましくはシス-ブテン二酸(マレイン酸)、トランス-ブテン二酸(フマル酸)、シス-メチルブテン二酸(シトラコン酸)、トランス-メチルブテン二酸(メサコン酸)、ジメチルマレイン酸、イタコン酸(メチレンコハク酸、メチレンブタン二酸)、2-ブテン-1,4-ジカルボン酸、デセニルコハク酸などから選択される1つ以上であってもよい。
【0110】
一例として、飽和ジカルボン酸の酸無水物としては、無水ブタン二酸(無水コハク酸)、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸などから選択されてもよく;また、メチルグルタル酸無水物、メチルコハク酸無水物、ジメチルコハク酸無水物、エチルコハク酸無水物、プロピルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、ペンチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ノニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物などのうちの1つ以上であってもよく、好ましくはシス-ブテン二酸無水物(無水マレイン酸)、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、グルタコン酸無水物などから選択される1つ以上であってもよい。
【0111】
一例として、不飽和ジカルボン酸の無水物は、(2-メチル-2-プロペニル)コハク酸無水物、ビニルコハク酸無水物、プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、トリイソブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、3-メチル-ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物などから選択される1つ以上であってもよい。
【0112】
特に好ましくは、ジカルボン酸の無水物は、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルコハク酸無水物、ジメチルコハク酸無水物、ノニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物などから選択される1つ以上である。
【0113】
特に好ましい実施形態では、式(I-4)によって表されるジカルボン酸モノエステル化合物は、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸、コハク酸モノエステル置換リシノール酸メチル、コハク酸モノエステル置換リシノール酸、コハク酸モノエステル置換12-ヒドロキシステアリン酸メチル、マレイン酸モノエステル置換12-ヒドロキシステアリン酸メチル、フタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0114】
〔成分B〕
本出願によれば、成分Bは、C8-24長鎖脂肪酸、C8-24長鎖脂肪酸のポリオールエステル、またはそれらの混合物である。
【0115】
一例として、C8-24長鎖脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、オレイン酸(オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(オクタデカトリエン酸)、リシノール酸(ヒドロキシオクタデセン酸)、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(エイコサン酸)、アラキドン酸(エイコセン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、エルカ酸(ドコセン酸)など、およびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0116】
好ましい実施形態では、成分Bは、C12-20不飽和脂肪酸、C12-20不飽和脂肪酸のポリオールエステル、またはそれらの混合物から選択される。
【0117】
一例として、C12-20不飽和脂肪酸は、好ましくは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、またはそれらの組み合わせから選択されるか、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびリシノール酸を主成分として含む脂肪酸混合物から選択される。
【0118】
天然油または廃油を加水分解して様々な脂肪酸混合物を製造でき、蒸留または尿素封入、低温凍結晶析によって不飽和脂肪酸ベースの生成物を得ることができ、バイオディーゼルは、また、蒸留または尿素封入、低温凍結晶析の後に加水分解によって不飽和脂肪酸を生産することもできる。製紙業由来のトール油脂肪酸は、不飽和脂肪酸を多く含む。これらの生成物は、全て好ましい成分Bである。トール油、綿実油、綿実酸性化油、大豆油、大豆酸性化油などを出発物質として加水分解および精製することによって得られる不飽和脂肪酸混合物もまた好ましい成分Bであり、その例は、江蘇創新石化有限公司製の不飽和脂肪酸JC2006S、新疆大森化工有限公司製の不飽和脂肪酸KMJ-031、および江西西林科有限公司製の不飽和脂肪酸R90などを含む。
【0119】
本出願によれば、長鎖脂肪酸のポリオールエステルは、長鎖飽和脂肪酸または長鎖不飽和脂肪酸とポリオールとのエステル化によって得られる、モノエステル、ジエステルおよびトリエステル、ならびにそれらの混合物などの様々なエステル化生成物を指す。
【0120】
一例として、ポリオールは、エチレングリコール、グリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどを含み得るが、これらに限定されるものではなく、グリセロールが好ましい。
【0121】
好ましい実施形態では、ポリオールエステルはグリセロールエステルであり、好ましくはモノグリセリドおよびジグリセリドから選択され、より好ましくは不飽和脂肪酸のモノグリセリドであり、最も好ましくはオレイン酸モノグリセロール、リノール酸モノグリセロール、リノレン酸モノグリセロール、リシノール酸モノグリセロールから選択される。不飽和脂肪酸をグリセロールでエステル化することによって得られるグリセリド(江蘇創新石化有限公司製のJC-2017Zなど)を成分Bとして使用することが好ましい。
【0122】
第2の態様において、本出願の燃料油用潤滑性改良剤組成物を調製する方法であって、成分Aと成分Bとを、9:1から1:9まで、好ましくは7:3から3:7まで、より好ましくは6:4から4:6までの質量比で均一に混合することを含む、方法が提供される。
【0123】
第3の態様において、本出願は、ディーゼル燃料の潤滑性を改善する方法であって、低硫黄ディーゼル燃料に本出願の燃料油用潤滑性改良剤組成物を添加することを含み、前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、好ましくは10ppmから400ppmまで、より好ましくは50ppmから200ppmまでの量で添加される、方法を提供する。
【0124】
第4の態様において、本出願は、低硫黄ディーゼル燃料と、本出願の燃料油用潤滑性改良剤組成物とを含むディーゼル燃料組成物を提供し、前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、好ましくは、10ppmから400ppmまで、より好ましくは50ppmから200ppmまでの量で、ディーゼル燃料組成物中に存在する。
【0125】
本出願の潤滑性改良剤と共に使用するのに適した低硫黄ディーゼル燃料には、種々の低硫黄ディーゼル燃料が含まれる。例えば、ディーゼル燃料は、原油(石油)を、常圧蒸留、減圧蒸留、接触分解、接触改質、コークス化、水素化精製、水素化分解などの石油精製所の各種精製工程を経て、160℃~380℃の間の蒸留範囲を有する留分を製造し、次いで配合することによって調製される、自動車用ディーゼル燃料の中国国家規格GB/T19147を満たす圧縮着火式内燃機関用燃料であってもよい。
【0126】
低硫黄ディーゼルは、また、第二世代バイオディーゼルであってもよい。第二世代バイオディーゼルは、植物油および動物性脂肪などの再生可能資源に由来し、通常、製油所で一般的に使用される水素化処理を用いて、異性化長鎖炭化水素または非異性化長鎖炭化水素を生成するために植物油を水素化することによって得られる。第二世代バイオディーゼルは性質および品質上、石油ベースの燃料油と類似してもよい。
【0127】
低硫黄ディーゼルは、また、第三世代バイオディーゼルであってもよい。第三世代バイオディーゼルは、おがくず、作物のわら、固形廃棄物などの高セルロース含量の非油性バイオマスと、微生物油とを、ガス化およびフィッシャー・トロプシュ技術を用いて処理することによって調製される。
【0128】
低硫黄ディーゼルは、また、石炭液化ディーゼル(CTL)であってもよい。石炭液化ディーゼルは、石炭のフィッシャー・トロプシュ合成によって得られるディーゼル燃料、または、石炭が直接液化することによって得られるディーゼル燃料を指す。石炭液化ディーゼルは、また、石油ベースのディーゼル燃料に酸素含有ディーゼル燃料配合成分を添加することによって得られる混合ディーゼル燃料であってもよい。酸素含有ディーゼル燃料配合成分は、特定の仕様要件を満たすために様々なディーゼル燃料に配合することができる酸素含有化合物または酸素含有化合物の混合物を指し、通常は、エタノール、ポリオキシメチレンジメチルエーテル(略してPODEn、DMMnまたはOME)などのアルコール類およびエーテル類またはそれらの混合物である。
【0129】
本出願のディーゼル燃料組成物は、必要に応じて、フェノール型酸化防止剤、高分子アミン型無灰分散剤、流動性向上剤、セタン価向上剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、腐食防止剤、防錆剤、および脱乳化剤などの他の添加剤をさらに1つ以上含有することができる。
【0130】
〔実施例〕
以下、実施例を参照して、本出願をさらに説明するが、本出願はこれに限定されるように組み立てられたものではない。
【0131】
以下の実施例および比較例において、使用される試薬および出発物質は、特に断りのない限り、市販の材料の試薬純度である。
【0132】
以下の実施例および比較例において、得られた生成物の赤外スペクトルは、Thermo Fisher Scientific社のNicolet iS50 フーリエ変換赤外分光計で測定した。
【0133】
以下の実施例および比較例において、得られた生成物の組成分析は、Agilentの7890A-5975C GC-MSを用い、クロマトグラフィ条件は、初期温度が50℃、昇温速度が5℃/分、カラム温度が300℃、火炎イオン化検出器(FID)を用い、面積正規化法で定量し、クロマトグラフィーカラムがHP-5であることを含む。
【0134】
以下の実施例および比較例において、潤滑性改良剤組成物の添加前および添加後のディーゼル燃料の摩耗痕の写真は、SH/T 0765法に従って、高周波往復運動リグ(HFRR、PCS機器社、英国)で60℃における摩耗痕径(WSD)を測定することによって得られた。
【0135】
〔ジカルボン酸モノエステルの調製〕
〔調製例1 マレイン酸モノイソノニル〕
490gの無水マレイン酸(シス-ブテン二酸無水物、99.5質量%、Zibo Qixiang Tengda Chemical Co.Ltd.から入手可能)および720gの異性体ノナノール(Exxal(商標)9s、99.5質量%、Exxon-Mobil Co.Ltd.から入手可能)を、電気攪拌機および温度計を備えた2000mL反応器に添加し、無水マレイン酸と異性体ノナノールとのモル比を約1:1とし、混合物を攪拌下で85℃まで加熱し、5時間反応させた後、150℃まで昇温し、減圧蒸留によって未反応の異性体ノナノールおよび無水マレイン酸を除去し、1006gの生成物を得た。得られた生成物の赤外スペクトルを
図1に示す。GC-MSで分析した結果、マレイン酸モノイソノニルの含量は約90.5%であり、マレイン酸ジイソノニルの含量は約8.6%であった。
【0136】
〔調製例2 コハク酸モノイソオクチル〕
490gの無水コハク酸(ブタン二酸無水物、99質量%、Shanghai Shenren Fine Chemical Co.Ltd.から入手可能)および700gのイソオクタノール(2-エチルヘキサノール、99.9質量%、Sinopec Qilu Petrochemical Companyから入手可能)を、電気攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えた2000mL反応器に添加し、無水コハク酸とイソオクタノールとのモル比を約1:1.1とし、混合物を攪拌下で110℃まで加熱し、4時間反応させた後、160℃まで昇温し、減圧蒸留によって未反応のイソオクタノールを除去し、1109gの生成物を得た。GC-MSで分析した結果、コハク酸モノイソオクチルの含量は約86.7%であった。
【0137】
〔調製例3 メチルテトラヒドロフタル酸モノイソオクチル〕
166gのメチルテトラヒドロフタル酸無水物(98質量%、Shandong Yousheng Chemical Co.Ltd.から入手可能)および143gのイソオクタノール(99.5質量%、Sinopec Qilu Petrochemical Companyから入手可能)を、電気攪拌機および温度計を備えた500mL反応器に添加し、メチルテトラヒドロフタル酸無水物とイソオクタノールとのモル比を約1:1.1とし、混合物を攪拌下で110℃まで加熱し、3.5時間反応させた後、165℃まで昇温し、減圧蒸留によって未反応の出発物質を除去し、243gの生成物を得た。GC-MSで分析した結果、メチルテトラヒドロフタル酸モノイソオクチルの含量は約85%であった。
【0138】
〔調製例4 シトラコン酸モノイソオクチル〕
112gの無水マレイン酸メチル(無水シトラコン酸、分析的純度、Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.Ltd.から入手可能)および143gのイソオクタノール(2-エチルヘキサノール、99.9質量%、Sinopec Qilu Petrochemical Companyから入手可能)を、電気攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えた500mL反応器に添加し、無水マレイン酸メチルとイソオクタノールとのモル比を約1:1.1とし、混合物を攪拌下で90℃まで加熱し、4時間反応させた後、140℃まで昇温し、減圧蒸留によって未反応のイソオクタノールを除去し、シトラコン酸モノイソオクチルを主成分とする生成物245gを得た。
【0139】
〔調製例5 ドデセニルコハク酸モノイソオクチル〕
200gのドデセニルコハク酸無水物(分析的純度、Beijing Yinokai Technology Co.Ltd.から入手可能)および117gのイソオクタノール(2-エチルヘキサノール、99.9質量%、Sinopec Qilu Petrochemical Companyから入手可能)を、電気攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えた500mL反応器に添加し、ドデセニルコハク酸無水物とイソオクタノールとのモル比を約1:1.2とし、混合物を攪拌下で100℃まで加熱し、3時間反応させた後、150℃まで昇温し、減圧蒸留によって未反応のイソオクタノールを除去し、ドデセニルコハク酸モノイソオクチルを主成分とする生成物303gを得た。
【0140】
〔調製例6 マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル〕
350.5gのリシノール酸メチル(75質量%、Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.Ltd.から入手可能)および100gの無水マレイン酸(シス-ブテン二酸無水物、99質量%、Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.Ltd.から入手可能)を、電気攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えた500mL反応器に添加し、リシノール酸メチルと無水マレイン酸とのモル比を約1.1:1とし、混合物を攪拌下で100℃まで加熱し、3時間反応させた後、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチルを主成分とする生成物442.7gを得た。GC-MSで分析した結果、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチルの含量は約88%であった。
【0141】
反応機構を以下の式1に示す。
【0142】
【0143】
〔調製例7 イタコン酸モノイソオクチル〕
200gのメチレンコハク酸無水物(無水イタコン酸、分析的純度、Beijing Yinokai Technology Co.Ltd.から入手可能)および240.3gのイソオクタノール(2-エチルヘキサノール、99.9質量%、Sinopec Qilu Petrochemical Companyから入手可能)を、電気攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えた500mL反応器に添加し、メチレンコハク酸無水物とイソオクタノールとのモル比を約1:1.2とし、混合物を攪拌下で100℃まで加熱し、3時間反応させた後、140℃まで昇温し、減圧蒸留によって未反応の出発物質を除去し、イタコン酸モノイソオクチルを主成分とする生成物429.7gを得た。GC-MSで分析した結果、イタコン酸モノイソオクチルの含量は約84%であった。
【0144】
〔調製例8 マレイン酸モノベンジル〕
150gの無水マレイン酸(シス-ブテン二酸無水物、分析的純度、Beijing Yinokai Technology Co.Ltd.から入手可能)および198.5gのベンジルアルコール(99質量%、Beijing Yinokai Technology Co.Ltd.から入手可能)を、電気攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えた500mL反応器に添加し、無水マレイン酸とベンジルアルコールとのモル比を約1:1.2とし、混合物を攪拌下で80℃まで加熱し、5時間反応させた後、150℃まで昇温し、減圧蒸留によって未反応の出発物質を除去し、マレイン酸モノベンジルを主成分とする生成物343.6gを得た。GC-MSで分析した結果、マレイン酸モノベンジルの含量は約88%であった。
【0145】
〔調製例9 メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル〕
248gのリシノール酸メチル(75質量%、Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.Ltd.から入手可能)および100gのメチルテトラヒドロフタル酸無水物(99質量%、Beijing Yinokai Technology Co.Ltd.から入手可能)を、電動攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えた500mL反応器に添加し、リシノール酸メチルとメチルテトラヒドロフタル酸無水物とのモル比を約1.1とし、混合物を攪拌下で140℃まで加熱し、3時間反応させた後、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチルを主成分とする生成物329.1gを得た。GC-MSで分析した結果、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチルの含量は約77%であった。
【0146】
〔潤滑性改良剤組成物の実施例〕
実施例1~32および比較例1~5の潤滑性改良剤組成物は、表1-1~1-3に示される組成物および質量比に従って、成分Aと成分Bとを均一に混合することによって調製した。
【0147】
【0148】
表1-1において、実施例1~2および比較例1~3は、本出願以外の潤滑性改良剤組成物に比べ、本出願の潤滑性改良剤組成物の性能向上を説明し、実施例3~5は、使用される成分Bが長鎖脂肪酸のポリオールエステルである場合に、成分Aの選択が本出願の潤滑性改良剤組成物の性能に及ぼす影響を説明し、実施例5~8は、使用される成分Bが長鎖脂肪酸のポリオールエステルである場合に、成分A/Bの質量比の選択が本出願の潤滑性改良剤組成物の性能に及ぼす影響を説明する。
【0149】
【0150】
表1-2において、実施例9~14は、使用される成分Bが長鎖脂肪酸である場合に、成分Aの選択が本出願の潤滑性改良剤組成物の性能に及ぼす影響を説明し、実施例14~21および比較例4~5は、使用される成分Bが長鎖脂肪酸である場合に、成分A/Bの質量比の選択が得られる潤滑性改良剤組成物の性能に及ぼす影響を説明する。
【0151】
【0152】
表1~3において、実施例22~32は、成分Aと成分Bとを混合することによって得られる本出願の他の潤滑性改良剤組成物の性能を説明する。
【0153】
実施例1~32で使用した市販の成分Aの詳細な情報は以下の通りである:
マレイン酸モノイソオクチル:TCI上海化成工業発展有限公司から入手可能、純度95%;
マレイン酸ジイソオクチル:Beijing Yinokai Technology Co.Ltd.から入手可能、純度95%;
マロン酸モノ-tert-ブチル:Ark Pharm Corporationから入手可能、純度97%以上;
マレイン酸モノ-n-ブチル:Hubei Jusheng Technology Co.Ltd.から入手可能、純度99%;および
フタル酸モノヘキシル:Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.Ltd.から入手可能、純度98%。
【0154】
実施例1~32で用いられる成分Aのうち、式(I-1)を有する化合物としては、マレイン酸モノ-n-ブチル(例えば、実施例30)、マレイン酸モノイソノニル(例えば、実施例27)、シトラコン酸モノイソオクチル(例えば、実施例22)などが挙げられ、式(I-2)を有する化合物としては、マロン酸モノ-tert-ブチル(例えば、実施例29)などが挙げられ、式(I-3)を有する化合物としては、フタル酸モノヘキシル(例えば、実施例32)、メチルテトラヒドロフタル酸モノイソオクチル(例えば、実施例24)などが挙げられ;式(I-4)を有する化合物としては、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル(例えば、実施例13)などが挙げられる。
【0155】
実施例1~32で使用した市販の成分Bの詳細な情報は以下の通りである:
リノール酸:Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.Ltd.から入手可能、純度95%;
オレイン酸:Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.Ltd.から入手可能、分析的純度;
トール油脂肪酸2LT:トール油を精製して得られ、リノール酸およびオレイン酸などの不飽和脂肪酸を主成分とする脂肪酸混合物、米国のArizonal Corporationから入手可能;
不飽和脂肪酸KMJ-031、JC-2006SおよびR90:リノール酸およびオレイン酸を主成分とし、詳細な情報を表2に示す;
不飽和脂肪酸グリセリドJC-2017Z:リノール酸およびオレイン酸をグリセロールでエステル化することによって得られるモノグリセリドおよびジグリセリドを主成分とし、詳細な情報を表2に示す。
【0156】
【0157】
〔測定例〕
実施例1~32および比較例1~5の潤滑性改良剤組成物をそれぞれディーゼル燃料と混合し、ディーゼル燃料中での使用効果を試験した。使用した低硫黄ディーゼル燃料AはSinopec Yanshan petrochemical companyから入手可能であり、超低硫黄ディーゼル燃料BはSinopec Shanghai Gaoqiao petrochemical Co.Ltd.から入手可能であり、ディーゼル燃料Aおよびディーゼル燃料Bの物理化学的特性は表3に示される。
【0158】
【0159】
ディーゼル燃料の潤滑性は、SH/T 0765法に従って、高周波往復運動リグ(HFRR、PCS機器社、英国)で60℃における摩耗痕径(WSD)を測定することによって評価し、温度および湿度の影響を補正して摩耗痕径WS1.4の報告結果を得た。
【0160】
潤滑性改良剤組成物を添加する前後のディーゼル燃料の摩耗痕径WS1.4値を表4-1、4-2、5-1、5-2、5-3および5-4に示すが、摩耗痕径が小さいほどディーゼル燃料の潤滑性が良好である。現在、欧州規格EN 590、自動車ディーゼル燃料用中国国家規格GB 19147、および北京地方規格DB 11/239自動車ディーゼル燃料など、世界のほとんどのディーゼル燃料規格では、ディーゼル燃料の潤滑性の許容基準として摩耗痕径460μm未満(60℃)を使用している。
【0161】
【0162】
表4-1に記載された結果からわかるように、初期のディーゼル燃料Aは摩耗痕径WS1.4が564μm(摩耗痕の写真は
図2を参照)であり、自動車用ディーゼル燃料の性能に関する要件を満たしていない。ディーゼル燃料Aの摩耗痕径WS1.4は、マレイン酸モノイソオクチルを単独で100mg/kg使用することにより、564μmから324μmまで低減でき、リノール酸を単独で100mg/kg使用することにより、564μmから458μmまで低減でき、驚くべきことに、実施例1でマレイン酸モノイソオクチルとリノール酸とを質量比7:3で混合することで得られた組成物100mg/kgを使用することにより、564μmから226μmまで低減できた(摩耗痕の写真は
図3を参照)。さらに、実施例1で得られた組成物の量を70mg/kgに低減しても、ディーゼル燃料Aの摩耗痕径WS1.4を564μmから305μmまで低減することができた(摩耗痕の写真は
図4を参照)。以上の結果から、本出願の潤滑性改良剤組成物は、成分Aと成分Bとの顕著な相乗効果を示し、結果として成分Aおよび成分Bを単独で使用する場合よりも組成物の潤滑性改良効果が著しく優れ、従って潤滑性改良剤の使用量を大幅に低減できることを明らかに示している。これに対し、マレイン酸ジイソオクチルとリノール酸とを同じ質量比で混合することによって得られた比較例1の組成物は、潤滑性改良効果が乏しく、相乗効果も示されない。
【0163】
【0164】
表4-2に記載された結果からわかるように、初期ディーゼル燃料Aの摩耗痕径WS1.4は564μmを示し、マレイン酸ジイソオクチルを単独で100mg/kg添加した後の改質ディーゼル燃料は561μmのWS1.4値を示し、潤滑性改善効果を示さなかった。マレイン酸モノイソオクチルを単独で100mg/kg添加した後の改質ディーゼル燃料は324μmのWS1.4値を示す(表4-1に示される)。一方、不飽和脂肪酸グリセリドJC-2017Zを単独で100mg/kg添加した後の改質ディーゼル燃料は469μmのWS1.4値を示し、性能に関する要件を満たしていない。しかし、実施例2でマレイン酸モノイソオクチルと不飽和脂肪酸グリセリドJC-2017Zとを質量比5:5で混合することで得られた組成物は、100mg/kgの量で添加すると、改質ディーゼル燃料のWS1.4値を212μmまで低下させることができ、驚くべき潤滑性改善効果を示し、50mg/kgの量で添加すると、改質ディーゼル燃料のWS1.4値を415μmまで低下させることができ、性能に関する要件を満たすことができる。これに対し、マレイン酸ジイソオクチルを用いた比較例2で得られた組成物およびドデセニルコハク酸モノイソオクチルを用いた比較例3で得られた組成物の潤滑性改良効果は、実施例2の組成物の当該効果より著しく低い。
【0165】
【0166】
表5-1に記載された結果からわかるように、初期のディーゼル燃料Bの摩耗痕径WS1.4は651μm(摩耗痕の写真は
図5を参照)であり、自動車ディーゼル燃料の性能に関する要件を満たしていない。マレイン酸モノイソオクチルを単独で100mg/kg添加した後の改質ディーゼル燃料のWS1.4値は466μmであり、性能に関する要件を依然として満たしていない。リノール酸を単独で100mg/kg添加した後の改質ディーゼル燃料のWS1.4値は513μmである。本出願の実施例1で得られた組成物を100mg/kgの量でディーゼル燃料に添加すると、改質ディーゼル燃料のWS1.4値は256μmに減少し(摩耗痕の写真は
図6を参照)、組成物を200mg/kgの量でディーゼル燃料に添加すると、改質ディーゼル燃料のWS1.4値は189μmに減少し(摩耗痕の写真は
図7を参照)、改質ディーゼル燃料の潤滑性は明らかに改善される。この効果は驚くべきものであり、実施例1で得られた組成物において、マレイン酸モノイソオクチルとリノール酸との間に顕著な相乗効果があることを示している。これに対し、比較例1でマレイン酸ジイソオクチルとリノール酸とを同質量比で混合して得られた組成物は、潤滑性改良効果が乏しく、相乗効果が示されない。
【0167】
【0168】
表5-2の結果からわかるように:
1)ディーゼル燃料Bにマレイン酸モノイソオクチルを単独で100mg/kg添加した場合、改質ディーゼル燃料のWS1.4値は412μmであり、ディーゼル燃料Bに不飽和脂肪酸グリセリドJC-2017Zを単独で100mg/kg添加した場合、改質ディーゼル燃料のWS1.4値は459μmである。一方、ディーゼル燃料Bに実施例2の組成物100mg/kgを添加した場合、ディーゼル燃料Bの摩耗痕径WS1.4は驚くべきことに305μmに低減され、実施例2の組成物において、マレイン酸モノイソオクチルと不飽和脂肪酸グリセリドJC-2017Zとの間に顕著な相乗効果があることを示している。これに対し、マレイン酸ジイソオクチルを用いた比較例2で得られた組成物およびコハク酸モノイソオクチルドデセニルを用いた比較例3で得られた組成物は、実施例2の組成物よりも潤滑性改良効果が著しく劣り、成分B単独の場合よりも劣り、比較例2~3の組成物では成分間の相乗効果がないことがわかる;
2)本出願明細書に記載の成分A/Bの質量比の範囲内では、全ての実施例の組成物が優れた潤滑性改良効果を示す;
3)成分Bが長鎖脂肪酸のポリオールエステルである場合、同じ量、同じ成分B、および同じ成分A/Bの質量比を用いる条件下で、マレイン酸モノイソオクチルを用いた実施例5の組成物は、イタコン酸モノイソオクチルを用いた実施例3の組成物およびフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチルを用いた実施例4の組成物よりも良好な潤滑性改良効果をもたらす;および
4)同じ成分A、同じ成分B、および同じ使用量の条件下で、成分A/Bの質量比が4:6である実施例6の組成物は、成分A/Bの質量比がより大きい実施例5の組成物および実施例8の組成物、ならびに成分A/Bの質量比がより小さい実施例7の組成物よりも、顕著に良好な潤滑性改良効果をもたらす。
【0169】
【0170】
表5-3の結果からわかるように:
1)成分Bが長鎖脂肪酸である場合、同じ量、同じ成分B、および同じ成分A/Bの質量比を用いる条件下で、コハク酸モノイソオクチルを用いた実施例9の組成物は、マレイン酸モノベンジルを用いた実施例11の組成物よりも良好な潤滑性改善効果をもたらし、マレイン酸モノイソオクチルを用いた実施例17で得られた組成物は、マロン酸モノ-tert-ブチルを用いた実施例10の組成物よりも良好な潤滑性改善効果をもたらし、マレイン酸モノイソオクチルを用いた実施例14の組成物は、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチルを用いた実施例13の組成物よりも良好な潤滑性改善効果をもたらし、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチルを用いた実施例12の組成物よりもさらに良好な潤滑性改善効果をもたらす;
2)本出願明細書に記載の成分A/Bの質量比の範囲内では、全ての実施例の組成物が優れた潤滑性改良効果を示し、成分A/Bの質量比が9.5:0.5である比較例4の組成物および成分A/Bの質量比が0.5:9.5である比較例5の組成物は、実施例9~21の組成物よりも著しく潤滑性改良効果が劣り、成分A単独の場合よりも劣り、比較例4~6の組成物において成分間の相乗効果がないことが示された;
3)成分Bが長鎖脂肪酸の場合、同じ成分Aおよび同じ成分Bを用いる条件下で、成分A/Bの質量比が1:9である組成物(例えば、実施例15)を合計量120mg/kg(成分Aを12mg/kg含む)添加すると、ディーゼル燃料の摩耗痕径を398μmに減少させることができる。一方、成分Aを単独で12mg/kg添加すると、摩耗防止効果はほとんど示されず(643μm)、成分A/Bの質量比が2:8である組成物(例えば、実施例16)を合計量120mg/kg(成分Aを24mg/kg含む)添加すると、ディーゼル燃料の摩耗痕径を367μmに減少させることができる。一方、成分A24mg/kgを単独で添加すると、摩耗防止効果が乏しく(601μm)、成分Bを単独で120mg/kg添加すると、摩耗防止効果も乏しく(497μm)、成分Aと成分Bとが相乗効果を有することが示された。同じ使用量で、成分A/Bの質量比が7:3である実施例20の組成物は、成分A/Bの質量比がより大きい実施例21の組成物、ならびに、成分A/Bの質量比がより小さい実施例18および実施例14の組成物よりも良好な潤滑性改善効果をもたらす。成分A/Bの質量比が6:4である実施例19の組成物は、成分A/Bの質量比が4:6である実施例17の組成物よりも良好な潤滑性改善効果をもたらす。
【0171】
【0172】
表5-4の結果からわかるように、各種成分Aおよび成分Bを配合した本出願の潤滑性改良剤組成物は全て、成分Aおよび成分B単独の潤滑性改良剤組成物に比べて、顕著に優れた潤滑性改良効果を示し、極めて少量でディーゼル燃料の潤滑性を大幅に向上させることができる。
【0173】
結論として、試験結果は、本出願の潤滑性改良剤組成物において、成分Aと成分Bとは、特定の比率で混合した後、明らかな相乗効果を示し、ディーゼル燃料の潤滑性に関して、成分Aと成分Bとを単独で使用する場合よりも著しく良好な改善効果を示し、結果として、本出願の潤滑性改良剤の添加量を大幅に低減することができ、ディーゼル燃料の潤滑性が性能に関する要件を満たすために必要な添加剤コストを低減し、添加剤の添加によってもたらされる副作用の危険性も低減することを示す。
【0174】
本出願は、好ましい実施形態を参照して上記に詳細に説明されているが、これらの実施形態に限定されることを意図するものではない。本出願の発明概念に従って様々な変更を行うことができ、これらの変更は本出願の範囲内であるものとする。
【0175】
上記の実施形態で説明した様々な技術的特徴は、矛盾しない限り任意の適切な方法で組み合わせることができ、不必要な繰り返しを避けるために様々な可能な組み合わせは本出願では説明しないが、そのような組み合わせも本出願の範囲内であることにも留意されたい。
【0176】
さらに、本出願の様々な実施形態は、組み合わせが本出願の精神から逸脱しない限り、任意に組み合わせることができ、そのような組み合わされた実施形態は、本出願の開示としてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【
図1】
図1は、調製例1で得られた生成物の赤外スペクトルを示す;
【
図2】
図2は、実施例で使用したディーゼル燃料A(Diesel fuel A)の摩耗痕の写真を示す。
【
図3】
図3は、実施例1で得られた組成物を100mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Aの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=226μmである。
【
図4】
図4は、実施例1で得られた組成物を70mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Aの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=305μmである。
【
図5】
図5は、実施例で使用したディーゼル燃料B(Diesel fuel B)の摩耗痕の写真を示す。
【
図6】
図6は、実施例1で得られた組成物を100mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Bの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=256μmである。
【
図7】
図7は、実施例1で得られた組成物を200mg/kgの量で添加したディーゼル燃料Bの摩耗痕の写真を示し、WS1.4=189μmである。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aおよび成分Bを含む、燃料油用潤滑性改良剤組成物であって、
前記成分Aは、
下記式(I-1)によって表されるジカルボン酸モノエステル、下記式(I-2)によって表されるジカルボン酸モノエステル、下記式(I-4)によって表されるジカルボン酸モノエステルから選択されるジカルボン酸モノエステルであり、
【化1】
式(I-1)中、
nは2~6の整数であり、
Rは、C
3-20
ヒドロカルビル基、好ましくはC
4-18
ヒドロカルビル基であり、
前記式(I-1)で表されるジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル、メチルフマル酸モノエステル、2,3-ジメチルマレイン酸モノエステル、グルタコン酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択され、
【化2】
式(I-2)中、
pは1から8までの整数であり、
Rは、C
3-20
ヒドロカルビル基、好ましくはC
4-18
ヒドロカルビル基であり
前記式(I-2)で表されるジカルボン酸モノエステルは、マロン酸モノエステル、コハク酸モノエステル、グルタル酸モノエステル、アジピン酸モノエステル、アゼライン酸モノエステル、セバシン酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択され、
【化3】
式(I-4)中、
R
8
はC
2-10
の2価ヒドロカルビル基であり、
R
9
は水素またはヒドロカルビル基であり、
R
10
は2価ヒドロカルビル基であり、
R
9
およびR
10
の炭素原子の合計数は15~21であり、
炭素-炭素二重結合の合計数は0~3であり、
R
11
は水素またはC
1-10
ヒドロカルビル基であり、好ましくは水素またはC
1-4
ヒドロカルビル基であり、
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸、そのポリオールエステル、またはそれらの混合物であり、
前記成分Aおよび前記成分Bの合計量は、前記組成物の総重量に基づいて、70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%であり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、9:1~1:9である、燃料油用潤滑性改良剤組成物。
【請求項2】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸であり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、8:2から2:8まで、好ましくは7:3から3:7まで、より好ましくは7:3から5:5までである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸のポリオールエステルであり、
前記成分Aと前記成分Bとの質量比は、8:2から1:9まで、好ましくは8:2から2:8まで、より好ましくは5:5から2:8までである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸であり、
前記組成物は、前記組成物の重量に基づいて、前記成分Aを20~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは50~70重量%含み、前記成分Bを20~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは30~50重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分Bは、C
8-24長鎖脂肪酸のポリオールエステルであり、
前記組成物は、前記組成物の重量に基づいて、前記成分Aを10~80重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~50重量%含み、前記成分Bを20~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは50~80重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(I-1)を有
する前記ジカルボン酸モノエステルは
、マレイン酸モノエステル
である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(I-2)を有
する前記ジカルボン酸モノエステルは、マロン酸モノエステル、コハク酸モノエステル、アジピン酸モノエステル、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項8】
前記式(I-4)中、
R
8はC
2-10の2価ヒドロカルビル基であり、
R
9は水素またはヒドロカルビル基であり、
R
10は2価ヒドロカルビル基であり、
R
9およびR
10の炭素原子の合計数は15~21であり、
炭素-炭素二重結合の合計数は0~3であり、
R
11は水素またはC
1-10ヒドロカルビル基であり、好ましくは水素またはC
1-4ヒドロカルビル基である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項9】
前記式(I-4)中、
R
8は、エチレン、ビニレン、メチレンエチレン、メチルエチレン、ブチレン、メチルブチレン、ブテニレン、フェニル、シクロヘキシル、メチルヘキサヒドロフェニル、およびメチルテトラヒドロフェニルから選択され、R
11は、水素、メチル、およびエチルから選択され
る、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(I-4)を有する前記ジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸、コハク酸モノエステル置換リシノール酸メチル、コハク酸モノエステル置換リシノール酸、フタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、メチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記成分Aのジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノイソノニル
、シトラコン酸モノイソオクチル
、コハク酸モノエステル置換リシノール酸メチル、コハク酸モノエステル置換リシノール酸、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸メチル、マレイン酸モノエステル置換リシノール酸、メチルテトラヒドロフタル酸モノエステル置換リシノール酸メチル、またはこれらの組み合わせから選択さ
れる、請求項
1に記載の組成物。
【請求項12】
前記成分Bの不飽和脂肪酸は、C
12-20不飽和脂肪酸またはこれらの組み合わせから選択され、
前記ポリオールは、エチレングリコール、グリセロール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、またはこれらの組み合わせから選択され
る、請求項
1に記載の組成物。
【請求項13】
前記成分B中の前記不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、もしくはこれらの組み合わせから選択され、または、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびリシノール酸を主成分とする脂肪酸の混合物から選択され、前記ポリオールはグリセロールである、
請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
低硫黄ディーゼル燃料に、請求項
1に記載の燃料油用潤滑性改良剤組成物を添加する工程を含み、
前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、前記低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、好ましくは、10~400ppm、より好ましくは50~200ppmの量で添加される、ディーゼル燃料の潤滑性を改良する方法。
【請求項15】
低硫黄ディーゼル燃料と、請求項
1に記載の燃料油用潤滑性改良剤組成物とを含むディーゼル燃料組成物であって、
前記燃料油用潤滑性改良剤組成物は、前記低硫黄ディーゼル燃料の質量に基づいて、前記ディーゼル燃料組成物中に、好ましくは10~400ppm、より好ましくは50~200ppmの量で存在する、ディーゼル燃料組成物。
【国際調査報告】