(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240628BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240628BHJP
C12N 1/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12N5/10
C12N15/86 Z
C12N15/63 Z
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580953
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022035883
(87)【国際公開番号】W WO2023278810
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513167522
【氏名又は名称】ブルーバード バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シェストパロフ, イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】サイア, グレゴリー ローレンス
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ13
4B063QQ79
4B063QS40
4B063QX01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、ヘモグロビンA(HbA)形成を測定するための改良された方法を提供する。より具体的には、本開示は、β-グロビンをコードするウイルスベクターの効力を評価するための方法を提供する。一態様では、細胞におけるヘモグロビンA(HbA)形成を評価するための方法が提供され、この方法は、細胞の集団を改変してグロビン(例えば、β-グロビン)を発現させることと;非変性条件下で細胞を溶解し、したがって、細胞溶解物を形成することと;細胞溶解物をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーで分析してHbA発現を計算することと、を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞におけるヘモグロビンA(HbA)形成を評価する方法であって、
a)細胞の集団を改変してβ-グロビンを発現させることと;
b)非変性条件下で前記細胞を溶解し、それにより細胞溶解物を形成することと;
c)前記細胞溶解物をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーで分析することであって、
i)前記細胞溶解物をIEXクロマトグラフィーカラムに通すことと;
ii)HbF及び/またはHbAヘモグロビン多量体に結合するヘム基を418nmで検出することと、を含む、前記分析することと、
d)HbA発現を計算することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記改変することが、β-グロビン遺伝子をコードするベクターを前記細胞の集団に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベクターが、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベクターが、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記改変することが、
a)エンドヌクレアーゼ、またはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、
b)β-グロビンをコードするドナー修復テンプレートと、
を前記細胞の集団に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記エンドヌクレアーゼが、
a)ホーミングエンドヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;
b)megaTALまたはその機能的バリアント;
c)CRISPR-関連ヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;
d)ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;及び
e)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはその機能的バリアント、
からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ドナー修復テンプレートが、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、改変後約24~約96時間、前記細胞を培養することをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
β-グロビン遺伝子をコードするウイルスベクターの効力を評価するための方法であって、
a)ヘモグロビンA(HbA)を発現しない細胞の集団に、β-グロビン遺伝子をコードするベクターを形質導入することと;
b)非変性条件下で前記細胞を溶解し、それにより細胞溶解物を形成することと;
c)前記細胞溶解物をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーで分析することであって、
i)前記細胞溶解物をIEXクロマトグラフィーカラムに通すことと;
ii)HbF及び/またはHbAヘモグロビン多量体に結合するヘム基を418nmで検出することと、を含む、前記分析することと、
d)参照標準ベクターを導入した細胞におけるHbA発現と比較してHbA発現を計算することと、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記効力が相対効力である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
形質導入後24~96時間、前記細胞の集団を培養することをさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞の集団がHbAを内在的に発現しない、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞の集団が、HbAを発現しないように遺伝的に編集されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞の集団が胎児性ヘモグロビン(HbF)を発現する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞の集団が、骨髄性白血病細胞株である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞の集団がK562細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.5×10
6細胞/ml、約1.0×10
6細胞/ml、約1.5×10
6細胞/ml、約2.0×10
6細胞/ml、約2.5×10
6細胞/ml、または約3.0×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.5×10
6細胞/ml~約3.0×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.5×10
6細胞/ml~約2.5×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.5×10
6細胞/ml~約2.0×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.5×10
6細胞/ml~約1.5×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.6×10
6細胞/ml~約1.4×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.7×10
6細胞/ml~約1.3×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.8×10
6細胞/ml~約1.2×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約0.9×10
6細胞/ml~約1.1×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、改変または形質導入の前に、約1.0×10
6細胞/mlの細胞密度で播種される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が組織培養フラスコに播種される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が12ウェルプレートに播種される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が24ウェルプレートに播種される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が約1mlの総体積で播種される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞が約2mlの総体積で播種される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞がポリブレンの存在下で形質導入される、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が、約2μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が、改変または形質導入の後に約48~約96時間培養される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が、改変または形質導入の後に約60~約84時間培養される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、改変または形質導入の後に約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、または約96時間培養される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が、改変または形質導入の後に約72±2時間培養される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、改変または形質導入の後に約72時間培養される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、溶解後、イオン交換(IEX)クロマトグラフィーを用いて前記細胞溶解物を分析する前に凍結される、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記HbAがαグロビン及びβグロビン鎖の二量体または四量体を含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記HbFがαグロビン及びγグロビン鎖の二量体または四量体を含む、請求項7~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記β-グロビンがヒトβ-グロビンである、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記β-グロビンが、β
A-T87Qグロビン、β
A-G16D/E22A/T87Q-グロビン、またはβ
A-T87Q/K95E/K120E-グロビンである、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ベクターが、AnkT9Wベクター、T9Ank2Wベクター、TNS9ベクター、レンチグロビンHPV569ベクター、レンチグロビンBB305ベクター、BG-1ベクター、BGM-1ベクター、d432βAγベクター、mLARβΔγV5ベクター、GLOBEベクター、G-GLOBEベクター、βAS3-FBベクター、V5ベクター、V5m3ベクター、V5m3-400ベクター、及びG9ベクター、またはそれらの誘導体である、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ベクターがbb305である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記形質導入することが、約5~約40、約5~約30、約10~約40、または約10~約30の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記形質導入することが、5~40、5~30、10~40、または10~30の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記形質導入することが、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、及び/または約40の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記形質導入することが、約20の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記形質導入することが、異なるウェルまたはプレートにおける、1つ以上のMOIでのベクターの形質導入を含む、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記形質導入することが、異なるウェルまたはプレートにおける、二重での1つ以上のMOIでのベクターの形質導入を含む、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記形質導入することが、異なるウェルまたはプレートにおける、三重での1つ以上のMOIでのベクターの形質導入を含む、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記形質導入することが、10、15、20、25、及び30のMOIでのベクターの形質導入を含む、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記IEXクロマトグラフィーがIEX HPLCである、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記IEXクロマトグラフィーがIEX UPLCである、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記IEXクロマトグラフィーがIEX UHLPCである、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記IEXクロマトグラフィーが、液体ベースの第1の移動相及び第2の移動相を含む、請求項1~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記カラムが、基材に共有結合したアスパラギン酸鎖を含む固相を含む、請求項1~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記カラムが、基材に共有結合したスルホン酸リガンドを含む固相を含む、請求項1~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記基材が、シリカ基材である、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記基材がポリマーである、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記クロマトグラフィーが波長可変紫外線(TUV)検出器を含む、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記クロマトグラフィーがフォトダイオードアレイ紫外線(PDA UV)検出器を含む、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記クロマトグラフィーが、HbF多量体をHbA多量体から分離する、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
HbA及びHbFのクロマトグラフィーによる同定が、ヘモグロビン標準と比較した前記分析物ピークの一致した保持時間に基づいて行われる、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記標準がAFSCである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記計算することが、HbAピークを決定することと、曲線下面積(AUC)を測定することとを含む、請求項1~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記計算することが、HbFピークを決定することと、曲線下面積(AUC)を測定することとを含む、請求項1~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記計算することが、HbA発現を、HbAとHbFとの合計に対するHbAのパーセンテージとして決定することを含む、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記計算することが、対数用量反応曲線を前記計算されたHbA発現にフィッティングすることをさらに含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記計算することが、線形対数用量反応曲線を参照標準及び前記ベクターにフィッティングすることをさらに含む、請求項1~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記対数用量がlog
10用量である、請求項73または請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記フィッティングすることが、相対効力を決定するための平行線アプローチを含む、請求項73~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記相対効力が、次式によって決定される、請求項76に記載の方法:
【数4】
【請求項78】
前記フィッティングすることが補間アプローチを含む、請求項73~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記補間アプローチが、前記参照標準対数用量反応に適用される線形フィッティングを含み、前記ベクターのHbA%応答が、前記基準曲線フィッティングからMOIを補間するために使用される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記方法が、インビトロの方法である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記方法が、エクスビボの方法である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年7月1日に出願された同時係属中の米国仮出願第63/217,576号に対する優先権及びその権益を主張する。前記仮出願の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、ヘモグロビンA形成を測定するための改良された方法に関する。より具体的には、本開示は、β-グロビンをコードするベクター(例えば、ウイルスベクター)の効力を評価するための改良された方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
1960年代及び1970年代の初期に遺伝子治療の概念が出現し、遺伝子治療が臨床現場に登場したのはつい最近のことであり、FDAによって承認されている遺伝子治療はほんの一握りである。遺伝子治療技術は、核酸を標的細胞に導入するためのウイルスベクター法と非ウイルスベクター法の両方を含む。
【0004】
現在、サラセミア及び鎌状赤血球症を含む様々なヘモグロビン症の治療のための開発におけるいくつかの遺伝子治療がある。これらの疾患に共通するのは、機能性ヘモグロビンA(HbA)の欠如である。追求される遺伝子治療技術は、その作用機序において異なるが、最終結果は同じであり、機能的HbAまたはHbF(胎児ヘモグロビン)の発現を増加させる。
【0005】
したがって、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターがヘモグロビン症を治療するための遺伝子治療に使用されるかどうかに関わらず、研究者と規制当局の両方は、所望の核酸(例えば、治療用β-グロビンをコードする核酸)を導入して機能的HbA及び/またはHbF発現を増加させるためのベクターの有効性/効力を評価する方法を必要とする。現在の方法は、異なる結果、限定された正確度、不十分な特異性、及び/または実験間及び/またはベクターのバッチ間で比較できないことに苦しむ。したがって、機能的HbAを検出し、ベクター効力を評価するための改良された方法の必要性が残存する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、概して、機能的ヘモグロビンA(HbA)形成を評価するための方法に部分的に関する。いくつかの実施形態では、グロビン遺伝子(例えば、β-グロビン)をコードするウイルスベクターの効力を評価するための方法が提供される。
【0007】
一態様では、細胞におけるヘモグロビンA(HbA)形成を評価するための方法が提供され、この方法は、細胞の集団を改変してグロビン(例えば、β-グロビン)を発現させることと;非変性条件下で細胞を溶解し、したがって、細胞溶解物を形成することと;細胞溶解物をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーで分析してHbA発現を計算することと、を含む。特定の実施形態では、分析することは、細胞溶解物をIEXクロマトグラフィーカラムに通し、418nmでHbF及び/またはHbAのヘモグロビンの多量体に関連するヘム基を検出することを含む。いくつかの実施形態では、HbA発現は、参照標準と比較して計算される。
【0008】
種々の実施形態では、改変することは、グロビン(例えば、β-グロビン)遺伝子をコードするベクターを細胞の集団に導入することを含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される。
【0009】
種々の実施形態では、改変することは、細胞の集団に、エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド;及びグロビン(例えば、β-グロビン)をコードするドナー修復テンプレートを導入することを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;megaTALまたはその機能的バリアント;CRISPR関連ヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはその機能的バリアントからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される。いくつかの実施形態では、ドナー修復テンプレートは、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される。
【0010】
種々の実施形態では、本方法は、改変後約24~約96時間、細胞を培養することをさらに含む。
【0011】
別の態様では、グロビン遺伝子(例えば、β-グロビン)をコードするウイルスベクターの効力を評価するための方法が提供され、この方法は、ヘモグロビンA(HbA)を発現しない細胞の集団に、グロビン遺伝子(例えば、β-グロビン)をコードするベクターを形質導入することと;非変性条件下で細胞を溶解し、したがって細胞溶解物を形成することと;イオン交換(IEX)クロマトグラフィーを用いて細胞溶解物を分析することと;参照標準ベクターを導入された細胞におけるHbA発現と比較してHbA発現を計算することと、を含む。特定の実施形態では、分析することは、細胞溶解物をIEXクロマトグラフィーカラムに通し、418nmでHbF及び/またはHbAのヘモグロビンの多量体に関連するヘム基を検出することを含む。
【0012】
種々の実施形態では、効力は、相対効力である。いくつかの実施形態では、効力は、参照標準と比較したものである。
【0013】
種々の実施形態では、本方法は、形質導入後24~96時間、細胞の集団を培養することをさらに含む。
【0014】
種々の実施形態では、細胞の集団は、HbAを内在的に発現しない。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、HbAを発現しないように遺伝的に編集されている。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、胎児性ヘモグロビン(HbF)を発現する。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、骨髄性白血病細胞株である。特定の実施形態では、細胞の集団は、K562細胞である。
【0015】
種々の実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.5×106細胞/ml、約1.0×106細胞/ml、約1.5×106細胞/ml、約2.0×106細胞/ml、約2.5×106細胞/ml、または約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.5×106細胞/ml~約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.5×106細胞/ml~約2.5×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.5×106細胞/ml~約2.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.5×106細胞/ml~約1.5×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.6×106細胞/ml~約1.4×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.7×106細胞/ml~約1.3×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.8×106細胞/ml~約1.2×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.9×106細胞/ml~約1.1×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約1.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。
【0016】
種々の実施形態では、細胞は、組織培養フラスコ内に播種される。種々の実施形態では、細胞は、12ウェルプレートに播種される。種々の実施形態では、細胞は、24ウェルプレートに播種される。
【0017】
種々の実施形態では、細胞は、約1mlの総体積で播種される。種々の実施形態では、細胞は、約2mlの総体積で播種される。
【0018】
種々の実施形態では、細胞は、ポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約2μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。
【0019】
種々の実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約48~約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約60~約84時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約48、約60、約72、約84、または約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約72時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約72±2時間培養される。
【0020】
種々の実施形態では、細胞は、溶解後、イオン交換(IEX)クロマトグラフィーを用いて細胞溶解物を分析する前に凍結される。
【0021】
種々の実施形態では、HbFは、α及びγグロビン鎖二量体または四量体を含む。
【0022】
種々の実施形態では、HbAは、α及びβグロビン鎖二量体または四量体を含む。いくつかの実施形態では、β-グロビンは、ヒトβ-グロビンである。いくつかの実施形態では、β-グロビンは、βA-T87Qグロビン、βA-G16D/E22A/T87Q-グロビン、またはβA-T87Q/K95E/K120E-グロビンである。
【0023】
種々の実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、AnkT9Wベクター、T9Ank2Wベクター、TNS9ベクター、レンチグロビンHPV569ベクター、レンチグロビンBB305ベクター、BG-1ベクター、BGM-1ベクター、d432βAγベクター、mLARβΔγV5ベクター、GLOBEベクター、G-GLOBEベクター、βAS3-FBベクター、V5ベクター、V5m3ベクター、V5m3-400ベクター、及びG9ベクター、またはそれらの誘導体である。特定の実施形態では、ベクターはbb305である。
【0024】
種々の実施形態では、形質導入することは、約5~約40、約5~約30、約10~約40、または約10~約30の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、5~40、5~30、10~40、または10~30の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、及び/または約40の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、約20の感染多重度(MOI)でのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、異なるウェルまたはプレートにおける、1つ以上のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、異なるウェルまたはプレートにおける、二重での1つ以上のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、異なるウェルまたはプレートにおける、三重での1つ以上のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、10、15、20、25、及び30のMOIでのベクターによる形質導入を含む。
【0025】
種々の実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX HPLCである。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX UPLC(商標)である。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX UHLPCである。
【0026】
種々の実施形態では、IEXクロマトグラフィーは、液体ベースの第1の移動相及び第2の移動相を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、基材に共有結合したアスパラギン酸鎖を含む固相を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、基材に共有結合したスルホン酸リガンドを含む固相を含む。いくつかの実施形態では、基材はシリカ基材である。いくつかの実施形態では、基材はポリマーである。
【0027】
種々の実施形態では、クロマトグラフィーは、波長可変紫外線(TUV)検出器を含む。
【0028】
種々の実施形態では、クロマトグラフィーは、フォトダイオードアレイ紫外線(PDA UV)検出器を含む。
【0029】
種々の実施形態では、クロマトグラフィーは、HbF多量体をHbA多量体から分離する。いくつかの実施形態では、HbA及びHbFのクロマトグラフィーによる同定は、ヘモグロビン標準と比較した分析物ピークの一致した保持時間に基づいて行われる。いくつかの実施形態では、標準はAFSCである。
【0030】
種々の実施形態では、計算することは、HbAピークを決定することと、曲線下面積(AUC)を測定することとを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、HbFピークを決定することと、曲線下面積(AUC)を測定することとを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、HbA発現を、HbAとHbFとの合計に対するHbAのパーセンテージとして決定することを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、対数用量反応曲線を計算されたHbA発現にフィッティングすることをさらに含む。
【0031】
種々の実施形態では、計算することは、線形対数用量反応曲線を参照標準及びベクターにフィッティングすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、対数用量はlog10用量である。
【0032】
種々の実施形態では、フィッティングすることは、相対効力を決定するための平行線法を含む。いくつかの実施形態では、相対効力は、次の式によって決定される:
【数1】
【0033】
種々の実施形態では、フィッティングすることは、補間アプローチを含む。いくつかの実施形態では、補間アプローチは、参照標準対数用量反応に適用される線形フィッティングを含み、ベクターのHbA%応答は、基準曲線フィッティングからMOIを補間するために使用される。
【0034】
種々の実施形態では、本方法は、インビトロの方法である。
【0035】
種々の実施形態では、本方法は、エクスビボの方法である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】レンチウイルスベクター由来のヘモグロビンA(HbA)のピークとヘモグロビンF(HbF)のピークを示す代表的なクロマトグラムを示す。
【
図1B】ポリブレンを含む場合と含まない場合の、異なる感染多重度(MOI)におけるHbAピーク面積とHbFピーク面積との合計に対するHbAピーク面積に基づくHbAパーセント(HbA%)を示す。
【
図1C】出発細胞密度の関数としての経時的なHbA%を示す。
【
図2A】レンチウイルスベクターロット2に関する種々の採取時間で、log
10 MOIに対してプロットされたHbA%を示す。
【
図2B】レンチウイルスベクターロット3に関する種々の採取時間で、log
10 MOIに対してプロットされたHbA%を示す。
【
図3-1】
図3は、レンチウイルスベクター(レンチグロビンBB305 LVV)、GFP、及びモックをトランスフェクトされた細胞に由来する細胞溶解物の代表的なクロマトグラムを示す。
【
図3-2】
図3は、レンチウイルスベクター(レンチグロビンBB305 LVV)、GFP、及びモックをトランスフェクトされた細胞に由来する細胞溶解物の代表的なクロマトグラムを示す。
【
図4A】異なるMOI及び種々の培養条件下でのHbA%を示す。
【
図4B】異なるMOI及び種々の培養条件下でのHbAの曲線下面積(AUC)を示す。
【
図4C】異なるMOI及び種々の培養条件下でのHbFの曲線下面積(AUC)を示す。
【
図5A】β-グロビンをコードするレンチウイルスベクターを形質導入した細胞からのHbA%計算を示す。
【
図5B】β-グロビンをコードするレンチウイルスベクターを形質導入した細胞からのHbAとHbFのAUCを示す。
【
図5C】モック形質導入された試料のHbFのAUCを示す。
【
図6A】接着(参照ロット19)及び懸濁(ロット003)産生細胞株からのレンチウイルスベクターを形質導入した細胞からのHbA%計算を示す。
【
図6B】接着(参照ロット19)及び懸濁(ロット004)産生細胞株からのレンチウイルスベクターを形質導入した細胞からのHbA%計算を示す。
【
図7A】HbAピーク及びHbFピークに関する予想されたピークAUC対観察されたピークAUCを示す。
【
図7B】予想されたHbA%対観察されたHbA%を示す
【
図8A】
図8は、ブランク及びAFSCヘモグロビン標準条件と比較した、レンチウイルスベクター(レンチグロビンBB305 LVV)及びモックトランスフェクト細胞に由来する細胞溶解物からの代表的なクロマトグラムを示す。
【
図8B】
図8は、ブランク及びAFSCヘモグロビン標準条件と比較した、レンチウイルスベクター(レンチグロビンBB305 LVV)及びモックトランスフェクト細胞に由来する細胞溶解物からの代表的なクロマトグラムを示す。
【
図8C】
図8は、ブランク及びAFSCヘモグロビン標準条件と比較した、レンチウイルスベクター(レンチグロビンBB305 LVV)及びモックトランスフェクト細胞に由来する細胞溶解物からの代表的なクロマトグラムを示す。
【
図8D】
図8は、ブランク及びAFSCヘモグロビン標準条件と比較した、レンチウイルスベクター(レンチグロビンBB305 LVV)及びモックトランスフェクト細胞に由来する細胞溶解物からの代表的なクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
A. 概要
本開示は、概して、ヘモグロビンAの発現/形成を検出する改良された方法に部分的に関する。より具体的には、本開示は、β-グロビンをコードするベクター(例えば、ウイルスベクター)の効力を評価するための改良された方法に関する。具体的には、本発明者らは、HbA及びHbFの検出に対して高度に正確かつ特異的である一方で、実験及び異なるバッチ/ロットのベクターにわたって結果を比較する能力も有する、改善されたヘモグロビン検出及びベクター効力アッセイを発見した。さらに、アッセイは、比較的短い時間枠で完了することができ、例えば、7日以下で細胞調製、1日でクロマトグラフィーが行われる。したがって、限定された正確度、不十分な特異性、速度、及び/または比較性の欠如の問題は、本明細書にさらに記載されるように、改良された方法によって解決される。
【0038】
一態様では、ヘモグロビンA発現を評価するための方法が提供され、この方法は、細胞の集団を改変してβ-グロビン遺伝子を発現させることと;非変性条件下で細胞を溶解し、したがって、細胞溶解物を形成することと;細胞溶解物をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーで分析してHbA発現を計算することと、を含む。種々の実施形態では、改変することは、(i)細胞の集団にβ-グロビン遺伝子をコードするベクターを細胞の集団に導入すること、または(ii)細胞の集団に、エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ、megaTAL、CRISPR関連ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALEN)と、β-グロビン遺伝子をコードするドナー修復テンプレートと、を導入することを含む。
【0039】
別の態様では、β-グロビン遺伝子をコードするウイルスベクターの効力を評価するための方法が提供され、この方法は、HbAを発現しない細胞の集団に、β-グロビン遺伝子をコードするベクターを形質導入することと;非変性条件下で細胞を溶解し、したがって細胞溶解物を形成することと;イオン交換(IEX)クロマトグラフィーを用いて細胞溶解物を分析して参照標準ベクターを導入された細胞におけるHbA発現と比較してHbA発現を計算することと、を含む。
【0040】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、改変または形質導入の後に約24~96時間細胞を培養することをさらに含む。
【0041】
種々の実施形態では、IEXクロマトグラフィーは、細胞溶解物をIEXクロマトグラフィーカラムに通し、418nmでHbF及び/またはHbAのヘモグロビンの多量体に関連するヘム基を検出することを含む。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーは、HPLC、UPLC、またはUHPLCである。
【0042】
種々の実施形態では、細胞の集団は、HbAを内在的に発現しないか、またはHbAを発現しないように遺伝的に編集されている。種々の実施形態では、細胞は、胎児性ヘモグロビン(HbF)を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、骨髄性白血病細胞株(例えば、K562細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の前に、約0.5×106細胞/ml~約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。
【0043】
種々の実施形態では、形質導入することは、約5~約40、約5~約30、約10~約40、または約10~約30の感染多重度(MOI)でのベクターの形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、異なるウェルまたはプレートにおける、1つ以上のMOIでのベクターによる形質導入を含む。
【0044】
種々の実施形態では、効力は、相対効力である。いくつかの実施形態では、計算することは、HbAピーク及び/またはHbFを決定することと、曲線下面積(AUC)を測定することとを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、HbA発現を、HbAとHbFとの合計に対するHbAのパーセンテージとして決定することを含む。
【0045】
種々の実施形態では、計算することは、対数用量(例えば、log10)反応曲線を計算されたHbA発現にフィッティングすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、フィッティングすることは線形フィッティングである。いくつかの実施形態では、フィッティングすることは、平行線アプローチまたは補間アプローチを含む。いくつかの実施形態では、補間アプローチは、参照標準対数用量反応に適用される線形フィッティングを含み、ベクターのHbA%応答は、基準曲線フィッティングからMOIを補間するために使用される。
【0046】
特定の実施形態では、HbA及びHbFのクロマトグラフィーによる同定は、ヘモグロビン標準(例えば、AFSC)と比較して分析物ピークの一致した保持時間に基づいて行われる。
【0047】
組換え(すなわち、操作された)DNA、ペプチド及びオリゴヌクレオチド合成、イムノアッセイ、組織培養、形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、精製及び関連する技術及び手順のための技術は、一般に、本明細書を通して引用及び考察されるような、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学、及び免疫学における種々の一般的及び特定の参考文献に記載されるように実施され得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NY);Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK;Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984);Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH);PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and CC Blackwell,eds.,1986);Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;及び、Advances in Immunologyなどの雑誌におけるモノグラフを参照されたい。
【0048】
B. 定義
本開示をより詳細に説明する前に、本明細書で使用される特定の用語の定義を提供することは、その理解に役立ち得る。
【0049】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の所属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において記載されているものと類似または同等の方法及び物質を特定の実施形態の実施または試験において使用することができるが、好ましい実施形態の組成物、方法、及び材料を本明細書に記載する。本開示の目的のために、以下の用語が以下に定義される。
【0050】
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つまたは1つ以上)を指すように使用している。例として、「要素」は、1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0051】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢のうちの1つ、両方、またはその任意の組合せのいずれかを意味するものと理解されたい。
【0052】
「及び/または」という用語は、選択肢の一方または両方のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以下の量で変動する、数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さについて、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さの範囲を指す。
【0054】
一実施形態では、範囲、例えば1~5、約1~5、または約1~約5は、範囲によって包含されるそれぞれの数値を指す。例えば、1つの非限定的かつ単に例示的な実施形態では、「1~5」の範囲は、1、2、3、4、5;または1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または5.0;または1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0という表現に等しい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さとおよそ同一である効果、例えば生理学的効果を生み出す、数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。
【0056】
本明細書全体を通して、文脈がそうでないことを必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと」は、述べられたステップ、もしくは要素、またはステップもしくは要素の群を含むことを意味するが、任意の他のステップ、もしくは要素、またはステップもしくは要素の群を排除することを意味しないことが理解されるだろう。「~からなる」とは、「~からなる」という語句に先行するものを含み、かつこれらに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という語句は、挙げられる要素が必要または必須であり、かつ他の要素は存在し得ないことを示す。「~から本質的になる」とは、語句の前に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素について本開示で指定された活性または作用を妨害しないか、またはそれらに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「~から本質的になる」という語句は、挙げられる要素は必要または必須であるが、挙げられた要素の活性または作用に重大な影響を及ぼす他の要素が存在しないことを示す。
【0057】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」またはそれらの組み合わせへの言及は、その実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同一の実施形態を参照しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。一実施形態におけるある特徴の肯定的な記載は、特定の実施形態におけるその特徴を除外するための根拠となることも理解される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」という用語は、非ウイルス法によって、例えば、液体ナノ粒子の使用によって、ネイキッドDNAを細胞に導入するプロセスを指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「感染」という用語は、ウイルスベクターを使用して細胞に外来DNAを導入するプロセスを指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「形質導入」という用語は、ウイルスベクターを使用する細胞ゲノムへの外来DNAの導入を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「グロビン」という用語は、ヘム部分に共有的または非共有的に結合することができ、したがって酸素を輸送または貯蔵することができるタンパク質またはタンパク質サブユニットを指す。脊椎動物及び無脊椎動物ヘモグロビン、脊椎動物及び無脊椎動物ミオグロブリン、またはそれらの変異体のサブユニットは、グロビンという用語に含まれる。この用語は、ヘモシアニンを除外する。グロビンの例としては、α-グロビンまたはそのバリアント、β-グロビンまたはそのバリアント、γ-グロビンまたはそのバリアント、及びδ-グロビンまたはそのバリアントが挙げられる。
【0062】
「ヘモグロビン」という用語は、赤血球(赤血球)中の多量体、鉄含有、酸素輸送金属タンパク質を指す。ヘモグロビンは、典型的には四次構造、すなわち、4つのタンパク質サブユニット(グロビン分子)を含み、それぞれのサブユニット/鎖は、非タンパク質ヘム基と堅固に結合する。例えば、ヘモグロビンA(HbA)「多量体」は、α-グロビン及びβ-グロビン鎖の二量体または四量体を含む。ヘモグロビンF(HbF)「多量体」は、α-グロビン及びγ-グロビン鎖の二量体または四量体を含む。
【0063】
「外来性」分子は、通常細胞中に存在しないが、1つ以上の遺伝子学的方法、生化学的方法、または他の方法によって細胞に導入される分子である。外来性分子としては、小有機分子、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、上述の分子の任意の修飾された誘導体、または上述の分子のうちの1つ以上を含む任意の複合体が挙げられるがこれらに限定されない。細胞に外来性分子を導入するための方法が当業者に知られており、脂質媒介導入(すなわち、中性及びカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、生体高分子ナノ粒子、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介導入、及びウイルスベクター媒介導入を含むが、これらに限定されない。
【0064】
「内在性」分子は、特定の環境条件下で特定の発達段階にある特定の細胞に通常存在する分子である。例えば、内在性核酸は、染色体、ミトコンドリア、もしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含み得る。さらなる内在性分子は、タンパク質、例えば、内在性β-グロビンまたはγ-グロビンを含み得る。
【0065】
「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を制御するすべてのDNA領域(そのような制御配列がコード配列及び/または転写配列に隣接するか否かにかかわらず)を含む。遺伝子としては、プロモーター配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、ターミネーター、ポリアデニル化配列、転写後応答エレメント、翻訳制御配列(例えば、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位)、複製起点、マトリックス付着部位、及び遺伝子座制御領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、もしくは任意の他の種類のRNA)であり得る。遺伝子産物は、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集などのプロセスによって修飾されるRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチリル化、及びグリコシル化によって修飾されるタンパク質も含む。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ゲノム編集」、「遺伝子編集」、または「遺伝的な編集」という用語は、遺伝子の発現を回復、修正、及び/または改変する、細胞ゲノム中の標的部位における遺伝物質の置換、欠失、及び/または導入を指す。特定の実施形態において企図されるゲノム編集は、1つ以上のエンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入して、細胞のゲノム中の標的部位にDNA損傷を生成し、グロビンまたはグロビン多量体(例えば、β-グロビン及び/またはHbA)の発現を破壊、低減、または排除することを含む。さらに他の実施形態において企図されるゲノム編集は、1つ以上のエンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、グロビン(β-グロビン)をコードするドナー修復テンプレートと、を細胞に導入することを含む。
【0068】
さらなる定義は、本開示全体を通して記載されている。
【0069】
C. HbA発現を測定する方法
ヘモグロビンの多くの型及びバリアントがあり、これには、ヘモグロビンA(HbA)、胎児ヘモグロビン(HbF)、ヘモグロビンS(HbS)、及びヘモグロビンC(HbC)が含まれるが、これらに限定されない。成体ヘモグロビンとしても知られるHbAは、α-グロビン及びβ-グロビン鎖の二量体または四量体からなり、成体ヒトにおける主要な酸素結合タンパク質である。HbFは、α-グロビン及びγ-グロビン鎖の二量体及び四量体からなり、ヒト胎児における主要な酸素結合タンパク質である。HbS及びHbCは、それぞれ鎌状赤血球症及び鎌状赤血球形質に関連する異常なヘモグロビンバリアントである。
【0070】
本開示全体を通して考察されるように、本発明者らは驚くべきことに、細胞ペレット試料中のHbA%の測定に適した範囲にわたって特異性、頑健性、精密度、及び直線性を実証する、HbA発現及びベクター効力を評価するための方法を発見した。本開示はまた、グロビン(例えば、β-グロビン)をコードするベクター(例えば、ウイルスベクター)の効力を評価するための改良された方法に関する。
【0071】
一態様では、細胞におけるヘモグロビンA(HbA)形成を評価するための方法が提供され、この方法は、細胞の集団を改変してβ-グロビンを発現させることと;非変性条件下で細胞を溶解し、したがって、細胞溶解物を形成することと;細胞溶解物をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーで分析してHbA発現を計算することと、を含む。
【0072】
別の態様では、β-グロビン遺伝子をコードするウイルスベクターの効力を評価するための方法が提供され、この方法は、HbAを発現しない細胞の集団に、β-グロビン遺伝子をコードするベクターを形質導入することと;非変性条件下で細胞を溶解し、したがって細胞溶解物を形成することと;イオン交換(IEX)クロマトグラフィーを用いて細胞溶解物を分析して参照標準ベクターと比較してHbA発現を計算することと、を含む。特定の実施形態では、効力は、相対効力である。
【0073】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、細胞にベクターを導入するステップを含む。種々の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである。ベクターを細胞に導入するためのベクター型及び方法(例えば、形質導入、トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションによる)は、当該技術分野で公知であり、以下でさらに論じられる。簡潔に述べると、特定の実施形態では、ベクターは、グロビンをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、グロビンは、ヒトβ-グロビン、ヒトδ-グロビン、抗シックリンググロビン、ヒトγ-グロビン、ヒトβA-T87Q-グロビン、ヒトβA-G16D/E22A/T87Q-グロビン、またはヒトβA-T87Q/K95E/K120E-グロビンタンパク質である。特定の実施形態では、グロビンはヒトβ-グロビンタンパク質である。特定の実施形態では、グロビンは、抗シックリンググロビンタンパク質である。特定の実施形態では、グロビンはヒトγ-グロビンタンパク質である。特定の実施形態では、グロビンはヒトβA-T87Q-グロビンタンパク質である。特定の態様では、グロビンはヒトβA-G16D/E22A/T87Q-グロビンタンパク質である。特定の態様では、グロビンはヒトβA-T87Q/K95E/K120E-グロビンタンパク質である。特定の実施形態では、β-グロビンは、ヒトβ-グロビンである。特定の実施形態では、β-グロビンはβA-T87Qグロビンである。
【0074】
種々の実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、AnkT9Wベクター、T9Ank2Wベクター、TNS9ベクター、TNS9.3ベクター、TNS9.3.55ベクター、レンチグロビンHPV569ベクター、レンチグロビンBB305ベクター、BG-1ベクター、BGM-1ベクター、mLARβΔγV5ベクター、GLOBEベクター、G-GLOBEベクター、βAS3-FBベクター、V5ベクター、V5m3ベクター、V5m3-400ベクター、G9ベクター、またはそれらの誘導体である。
【0075】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、AnkT9Wベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、T9Ank2Wベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、TNS9ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、TNS9.3ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、TNS9.3.55ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、レンチグロビンHPV569ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、レンチグロビンBB305ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、BG-1ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、BGM-1ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、mLARβΔγV5ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、GLOBEベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、G-GLOBEベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、βAS3-FBベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターはV5ベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、V5m3ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、V5m3-400ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、G9ベクターまたはその誘導体である。
【0076】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターはbb305である。
【0077】
種々の実施形態では、改変することは、細胞の集団に、エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド;及びグロビン遺伝子(例えば、β-グロビン)をコードするドナー修復テンプレートまたはベクターを導入することを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼとしても知られるホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)またはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、megaTAL、またはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、CRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼまたはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはその機能的バリアントである。
【0078】
種々の実施形態では、エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される。
【0079】
種々の実施形態では、ドナー修復テンプレートは、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される。
【0080】
本明細書に記載の方法に有用な細胞は、HbAを発現しない、または低レベルのHbAを発現する(例えば、HbF発現と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍少ない発現)、任意の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、骨髄性白血病細胞株である。特定の実施形態では、骨髄性白血病細胞株は、HbAを内在的に発現しないか、または低レベルのHbAを発現する(例えば、HbF発現と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍少ない発現)。
【0081】
HbAは、α-グロビン及びβ-グロビン鎖の二量体または四量体を含む。したがって、特定の実施形態では、細胞はβ-グロビンを発現しない。いくつかの実施形態では、細胞はα-グロビンを発現する。特定の実施形態では、細胞はα-グロビンを発現し、β-グロビンを発現しない。
【0082】
HbFは、α-グロビン及びγ-グロビン鎖の二量体または四量体を含む。したがって、種々の実施形態では、細胞はHbFを発現する。いくつかの実施形態では、細胞はHbFを内在的に発現する。いくつかの実施形態では、細胞はHbFを外来的に発現する。したがって、特定の実施形態では、細胞は内在的または外来的にγ-グロビンを発現する。特定の実施形態では、細胞は、α-グロビン及びγ-グロビンを内在的または外来的に発現する。さらにより特定の実施形態では、細胞は、α-グロビン及びγ-グロビン鎖の二量体または四量体を内在的または外来的に発現する。好ましい実施形態では、細胞はK562細胞である。
【0083】
種々の実施形態では、細胞は、ベクターの導入(例えば、形質導入による)または改変の前に、約0.5×106細胞/ml~約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.0×106細胞/ml~約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.5×106細胞/ml~約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.0×106細胞/ml~約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.5×106細胞/ml~約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.5×106細胞/ml~約2.5×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.5×106細胞/ml~約2.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.5×106細胞/ml~約1.5×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.5×106細胞/ml~約1.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。
【0084】
種々の実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.6×106細胞/ml~約1.4×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.7×106細胞/ml~約1.3×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.8×106細胞/ml~約1.2×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.9×106細胞/ml~約1.1×106細胞/mlの細胞密度で播種される。
【0085】
いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.5×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.6×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.7×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.8×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約0.9×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.1×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.2×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.3×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.4×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.5×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.6×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.7×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.8×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約1.9×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.1×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.2×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.3×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.4×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.5×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.6×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.7×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.8×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約2.9×106細胞/mlの細胞密度で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターの導入または改変の前に、約3.0×106細胞/mlの細胞密度で播種される。
【0086】
種々の実施形態では、細胞は、12ウェルプレート、24ウェルプレート、または組織培養フラスコに播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、12ウェルプレートに播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、24ウェルプレートに播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、組織培養フラスコ内に播種される。
【0087】
いくつかの実施形態では、細胞は、約1mlの総体積で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、1mlの総体積で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、約2mlの総体積で播種される。いくつかの実施形態では、細胞は、2mlの総体積で播種される。
【0088】
種々の実施形態では、細胞は、ポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約2μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約3μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約4μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約5μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約6μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約7μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。
【0089】
いくつかの実施形態では、細胞は、約2μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約3μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約4μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約5μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約6μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約7μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。
【0090】
種々の実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約5~約40、約5~約30、約10~約40、または約10~約30の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約5~約40の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約5~約30の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約10~約40の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約10~約30の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、5~40の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、5~30の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、10~40の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、10~30の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。
【0092】
種々の実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、及び/または約40の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約5の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約10の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約15の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約20の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約25の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約30の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約35の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、約40の感染多重度(MOI)でウイルスベクターを形質導入することを含む。
【0093】
種々の実施形態では、細胞へのベクターの導入は、異なるウェルまたはプレートにおける、1種以上のMOIでウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、異なるウェルまたはプレートにおける、二重での1種以上のMOIでウイルスベクターを形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞へのベクターの導入は、異なるウェルまたはプレートにおける、三重での1種以上のMOIでウイルスベクターを形質導入することを含む。
【0094】
種々の実施形態では、形質導入することは、約10、約15、約20、約25、及び約30のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、10、15、20、25、及び30のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、約5、約10、約20、及び約30のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、5、10、20、及び30のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、約10、約20、約30、及び約40のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、10、20、30、及び40のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、約5、約10、約20、約30、及び約40のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、5、10、20、30、及び40のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、約5、約10、約20、及び約40のMOIでのベクターによる形質導入を含む。いくつかの実施形態では、形質導入することは、5、10、20、及び40のMOIでのベクターによる形質導入を含む。
【0095】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、改変または形質導入の後に細胞を培養するステップを含む。種々の実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約24~約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約36~約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約48~約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約60~約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約72~約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約84~約96時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約60~約84時間培養される。
【0096】
いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約24時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約36時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約48時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約60時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約72時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約84時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約96時間培養される。
【0097】
種々の実施形態では、細胞は、改変または形質導入の後に約72±2時間培養される。
【0098】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、培養することの後に細胞を溶解するステップを含む。いくつかの実施形態では、溶解することは、非変性条件下で行われる。いくつかの実施形態では、非変性条件は、細胞を凍結させることを含む。いくつかの実施形態では、溶解することは、細胞を凍結させることと、凍結した細胞溶解物を水に再懸濁することと、溶解物を遠心分離することと、分析のために溶解物を回収することと、を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、溶解後、クロマトグラフィーを用いて細胞溶解物を分析する前に凍結される。
【0099】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、細胞溶解物を分析するステップを含む。特定の実施形態では、分析することは、細胞溶解物をクロマトグラフィーカラムに通すステップを含む。
【0100】
特定の実施形態では、クロマトグラフィーは、イオン交換(IEX)クロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーは、HPLC、UHPLC、またはUPLC(商標)である。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーはHPLCである。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーはUHPLCである。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーはUPLCである。種々の実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX HPLCである。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX UHPLCである。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX ULPCである。HPLC、UHPLC、及び/またはUPLCを行うための方法及びシステムは当該技術分野で公知であり、以下でさらに論じる。
【0101】
種々の実施形態では、クロマトグラフィー(例えば、IEXクロマトグラフィー)は、液体ベースの第1の移動相及び第2の移動相を含む。種々の実施形態では、クロマトグラフィー(例えば、IEXクロマトグラフィー)は、固相を含む。いくつかの実施形態では、固相は、基材に共有結合したアスパラギン酸鎖を含む。いくつかの実施形態では、固相は、基材に共有結合したスルホン酸リガンドを含む。いくつかの実施形態では、基材はシリカ基材である。いくつかの実施形態では、基材はポリマーである。
【0102】
特定の実施形態では、分析することは、HbF及び/またはHbAヘモグロビン多量体に結合するヘム基を検出することを含む。種々の実施形態では、分析すること/クロマトグラフィーシステムは、検出器を含む。いくつかの実施形態では、分析すること/クロマトグラフィーシステムは、検出器を含み、HbF及びHbA多量体は、418nmで吸光度を測定することによって検出される。いくつかの実施形態では、分析すること/クロマトグラフィーシステムは、紫外線(UV)検出器を含む。いくつかの実施形態では、分析すること/クロマトグラフィーシステムは、波長可変紫外線(TUV)検出器を含む。いくつかの実施形態では、分析すること/クロマトグラフィーシステムは、フォトダイオードアレイ紫外線(PDA UV)検出器を含む。種々の実施形態では、クロマトグラフィーは、検出器によって測定されるHbF多量体/ピークをHbA多量体/ピークから分離する。
【0103】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、計算するステップを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、HbAピークを決定することと、曲線下面積(AUC)を測定することとを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、HbFピークを決定することと、曲線下面積(AUC)を測定することとを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、HbA発現を、HbAとHbFとの合計に対するHbAのパーセンテージとして決定することを含む。
【0104】
種々の実施形態では、計算することは、対数用量反応曲線を参照標準及びベクターにフィッティングすることをさらに含む。種々の実施形態では、計算することは、線形対数用量反応曲線を参照標準及びベクターにフィッティングすることをさらに含む。特定の実施形態では、対数用量反応曲線は、log10用量反応曲線である。
【0105】
種々の実施形態では、フィッティングすることは、相対効力を決定するための平行線法を含む。いくつかの実施形態では、相対効力は、次の式によって決定される:
【数2】
【0106】
種々の実施形態では、フィッティングすることは、補間アプローチを含む。いくつかの実施形態では、補間アプローチは、参照標準対数用量反応に適用される線形フィッティングを含み、ベクターのHbA%応答は、基準曲線フィッティングからMOIを補間するために使用される。
【0107】
いくつかの実施形態では、HbA及びHbFのクロマトグラフィーによる同定は、ヘモグロビン標準と比較した分析物ピークの一致した保持時間に基づいて行われる。いくつかの実施形態では、標準はAFSCである。
【0108】
D. ベクター及び形質導入
特定の実施形態では、グロビン遺伝子(例えば、治療用β-グロビン)をコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、ウイルスまたは非ウイルスベクター/方法によって細胞に導入される。いくつかの実施形態では、グロビン遺伝子及び/またはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、ウイルスまたは非ウイルスベクター/方法によって細胞に導入され得る。特定の実施形態では、グロビン遺伝子及び/またはエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドの送達は、同じ方法または異なる方法によって、及び/または同じベクターまたは異なるベクターによってもたらされ得る。特定の実施形態では、細胞は、HbAを発現しない(例えば、K562細胞)、またはHbAを発現しないように遺伝的に編集された細胞である。
【0109】
「ベクター」という用語は、別の核酸分子を導入または輸送することができる核酸分子を指すために本明細書で使用される。輸送される核酸は、一般的に、ベクター核酸分子に連結される(例えば、挿入される)。ベクターは、細胞内で自律複製を誘導する配列を含み得るか、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含み得る。特定の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである。
【0110】
当業者に明らかなように、「ウイルスベクター」という用語は、典型的には核酸分子の導入もしくは細胞のゲノムへの組み込みを促進するウイルス由来核酸エレメントを含む核酸分子(例えば、導入プラスミド)、または核酸導入を媒介するウイルス粒子のいずれかを指すために広く使用される。ウイルス粒子は、典型的には、種々のウイルス成分を含み、場合によっては、核酸(複数可)に加えて宿主細胞成分も含む。「ウイルスベクター」という用語は、細胞に核酸を導入することができるウイルスまたはウイルス粒子または導入された核酸自体を指し得る。ウイルスベクター及び導入プラスミドは、主にウイルスに由来する構造的遺伝要素及び/または機能的遺伝要素を含む。
【0111】
特定の実施形態では、非ウイルスベクターを使用して、本明細書で企図される1つ以上のポリヌクレオチドを、HbAを内在的に発現しない細胞に送達する。一実施形態では、ベクターはインビトロで合成されるかまたは合成的に調製される、グロビン遺伝子及び/またはエンドヌクレアーゼをコードするmRNAまたはcDNAである。
【0112】
いくつかの実施形態では、細胞に導入されるポリヌクレオチドまたはベクターは、グロビンをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、グロビンは、ヒトβ-グロビン、ヒトδ-グロビン、抗シックリンググロビン、ヒトγ-グロビン、ヒトβA-T87Q-グロビン、ヒトβA-G16D/E22A/T87Q-グロビン、またはヒトβA-T87Q/K95E/K120E-グロビンタンパク質である。いくつかの実施形態では、グロビンはヒトβ-グロビンタンパク質である。いくつかの実施形態では、グロビンはヒトδ-グロビンタンパク質である。いくつかの実施形態では、グロビンは、抗シックリンググロビンタンパク質である。いくつかの実施形態では、グロビンはヒトγ-グロビンタンパク質である。いくつかの実施形態では、グロビンはヒトβA-T87Q-グロビンタンパク質である。いくつかの実施形態では、グロビンはヒトβA-G16D/E22A/T87Q-グロビンタンパク質である。いくつかの実施形態では、グロビンはヒトβA-T87Q/K95E/K120E-グロビンタンパク質である。
【0113】
非ウイルスベクターの例示的な例としては、mRNA、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、及び細菌人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドまたはベクターの非ウイルス送達の例示的な方法としては、限定されないが、エレクトロポレーション、ソノポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、リン酸カルシウム、免疫リポソーム、ナノ粒子、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、DEAE-デキストラン媒介導入、遺伝子銃、及び熱ショックが挙げられる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはベクターは、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される。
【0115】
特定の実施形態において企図される特定の実施形態における使用に適したポリヌクレオチド及び/またはベクター送達系の例示的な例としては、Amaxa Biosystems、Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、及びCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるものが挙げられるが、これらに限定されない。リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性及び中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liu et al.(2003)Gene Therapy.10:180-187;及びBalazs et al.(2011)Journal of Drug Delivery.2011:1-12を参照されたい。抗体標的化、細菌由来、非生存ナノ細胞ベースの送達もまた、特定の実施形態において企図される。
【0116】
本明細書で企図される特定の実施形態における使用に好適なウイルスベクター系の例示的な例としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、及びワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
種々の実施形態では、β-グロビンをコードする1つ以上のポリヌクレオチドまたはベクターは、1つ以上のポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を細胞に形質導入することによって、細胞、例えば、K562細胞に導入される。
【0118】
AAVは、小さな(約26nm)、複製能欠損の、主にエピソームである、非エンベロープウイルスである。AAVは、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染し得、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込み得る。組換えAAV(rAAV)は、典型的には、最低でも、導入遺伝子及びその調節配列、ならびに5’及び3’のAAV末端逆位配列(ITR)から構成される。ITR配列は約145bpの長さである。特定の実施形態では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10から単離されたITR及びカプシド配列を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、キメラrAAVを使用し、ITR配列を1つのAAV血清型から単離し、カプシド配列を異なるAAV血清型から単離する。例えば、AAV2由来のITR配列及びAAV6由来のカプシド配列を有するrAAVは、AAV2/AAV6と称される。特定の実施形態では、rAAVベクターは、AAV2由来のITR、及びAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10のいずれか1つ由来のカプシドタンパク質を含み得る。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列及びAAV6由来のカプシド配列を含む。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列及びAAV2由来のカプシド配列を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドに操作方法及び選択方法を適用して、それらを目的の細胞に形質導入する可能性をより高めることができる。
【0121】
rAAVベクターの構築、その生成及び精製は、例えば、米国特許第9,169,494号;同第9,169,492号;同第9,012,224号;同第8,889,641号;同第8,809,058号;及び同第8,784,799号に開示されており、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
種々の実施形態では、β-グロビンをコードする1つ以上のポリヌクレオチドまたはベクターは、1つ以上のポリヌクレオチドを含むレトロウイルス、例えば、レンチウイルスを細胞に形質導入することによって、細胞(例えば、K562細胞)に導入される。
【0123】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを直鎖二本鎖DNAコピーに逆転写し、その後、そのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有結合的に組み込むRNAウイルスを指す。特定の実施形態における使用に好適な例示的なレトロウイルスとしては、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)、ならびにレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
「レンチウイルスベクター」という用語は、主にレンチウイルスに由来するLTRを含む、構造的遺伝要素及び機能的遺伝要素またはその一部を含むレトロウイルスベクターまたはプラスミドを指す。「レンチウイルスベクター」及び「レンチウイルス発現ベクター」という用語は、特定の実施形態では、レンチウイルス導入プラスミド及び/または感染性レンチウイルス粒子を指すために使用され得る。クローニング部位、プロモーター、調節エレメント、異種核酸などのエレメントを本明細書で参照する場合、これらのエレメントの配列は、本明細書で企図されるレンチウイルス粒子中にRNA形態で存在し、本明細書で企図されるDNAプラスミド中にDNA形態で存在することを理解されたい。
【0125】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複雑なレトロウイルスの群(または属)を指す。例示的なレンチウイルスとしては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;1型HIV及びHIV2を含む);ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV);ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、HIVベースのベクター骨格(すなわち、HIVシス作用性配列要素)が好ましい。
【0126】
種々の実施形態では、本明細書で企図されるレンチウイルスベクターは、本明細書の他の箇所で論じられるように、1つ以上のLTRと、以下のアクセサリーエレメントの1つ以上または全部とを含む:cPPT/FLAP、Psi(Ψ)パッケージングシグナル、搬出エレメント、ポリ(A)配列、及び任意選択でWPREまたはHPRE、インスレーターエレメント、選択マーカー、及び細胞自殺遺伝子を含み得る。
【0127】
特定の実施形態では、本明細書で企図されるレンチウイルスベクターは、組込み型または非組込み型または組込み欠損レンチウイルスであり得る。本明細書で使用される場合、「組込み欠損レンチウイルス」または「IDLV」という用語は、ウイルスゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込む能力を欠くインテグラーゼを有するレンチウイルスを指す。組み込み不能ウイルスベクターは、特許出願WO2006/010834に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
インテグラーゼ活性を低下させるのに適したHIV-1 pol遺伝子の例示的な変異としては、H12N、H12C、H16C、H16V、S81R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263A、及びK264Hが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
一実施形態では、HIV-1インテグラーゼ欠損pol遺伝子は、D64V、D116I、D116A、E152G、またはE152A変異;D64V、D116I、及びE152G変異;またはD64V、D116A、及びE152A変異を含む。
【0130】
一実施形態では、HIV-1インテグラーゼ欠損pol遺伝子は、D64V変異を含む。
【0131】
「長い末端反復(LTR)」という用語は、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指し、これは、それらの天然の配列の文脈において、直接反復であり、そしてU3、R及びU5領域を含む。
【0132】
本明細書で使用される場合、「FLAP要素」または「cPPT/FLAP」という用語は、その配列がレトロウイルス(例えば、HIV-1またはHIV-2)の中央ポリプリン配列及び中央終結配列(cPPT及びCTS)を含む、核酸を指す。適切なFLAP要素は、米国特許第6,682,907号及びZennou,et al.,2000,Cell,101:173に記載されている。別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPT及び/またはCTSエレメントに1つ以上の変異を有するFLAPエレメントを含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPTまたはCTSエレメントのいずれかを含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPTとCTSエレメントのいずれも含まない。
【0133】
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」という用語は、ウイルスRNAのウイルスカプシドまたは粒子への挿入に必要とされる、レトロウイルスゲノム内に位置するpsi[Ψ]配列を指す(例えば、Clever et al.,1995.J.of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照)。
【0134】
「搬出エレメント」という用語は、細胞の核から細胞質へのRNA転写産物の輸送を調節するcis作用性転写後調節エレメントを指す。RNA搬出エレメントの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)rev応答エレメント(RRE)(例えば、Cullen et al.,1991.J.Virol.65:1053;及びCullen et al.,1991.Cell 58:423を参照されたい)、及びB型肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(HPRE)が挙げられるが、これらに限定されない
【0135】
特定の実施形態では、ウイルスベクターにおける異種配列の発現は、転写後調節エレメント、効率的なポリアデニル化部位、及び任意選択で転写終結シグナルをベクターに組み込むことによって増加される。種々の転写後調節エレメントは、タンパク質における異種核酸の発現を増加させ得る(例えば、ウッドチャック型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WRRE;Zufferey et al.,1999,J.Virol.,73:2886);B型肝炎ウイルスに存在する転写後調節エレメント(HPRE)(Huang et al.,Mol.Cell.Biol,5:3864)など(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766))。
【0136】
レンチウイルスベクターは、好ましくは、LTRを改変する結果として、いくつかの安全性増強を含む。「自己不活性化」(SIN)ベクターは、複製欠損ベクターを指し、例えば、U3領域として知られる右(3’)LTRエンハンサー-プロモーター領域が、ウイルス複製の最初のラウンドを超えるウイルス転写を防止するように改変されている(例えば、欠失または置換によって)。追加の安全性増強は、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を駆動するために、5’LTRのU3領域を異種プロモーターで置き換えることによって提供される。使用することができる異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルス性のシミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、前最初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。
【0137】
本明細書で使用される場合、「偽型(pseudotype)」または「偽型化(pseudotyping)」という用語は、好ましい特徴を有する別のウイルスのタンパク質で置換されたウイルスエンベロープタンパク質を有するウイルスを指す。例えば、HIVは、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質を用いて偽型化され得、これは、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子によってコードされる)が通常、ウイルスをCD4+提示細胞に標的化するので、HIVがより広い範囲の細胞に感染することを可能にする。
【0138】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、公知の方法に従って生成される。例えば、Kutner et al.,BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10;Kutner et al.Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照されたい。
【0139】
本明細書で企図される特定の具体的な実施形態によれば、ウイルスベクター骨格配列の大部分または全部は、レンチウイルス(例えば、HIV-1)に由来する。しかしながら、レトロウイルス及び/またはレンチウイルス配列の多くの異なる供給源が使用され得るか、または組み合わされ、特定のレンチウイルス配列における多くの置換及び変更が、本明細書に記載される機能を実行する導入ベクターの能力を損なうことなく適応され得ることを理解されたい。さらに、様々なレンチウイルスベクターが当該技術分野で知られており、Naldini et al.,(1996a,1996b,and 1998);Zufferey et al.,(1997);Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号;及び同第5,994,136号を参照でき、その多くが、本明細書で企図されるウイルスベクターまたは導入プラスミドを生成するように適合され得る。
【0140】
種々の実施形態では、レンチウイルスベクターは、AnkT9Wベクター、T9Ank2Wベクター、TNS9ベクター、TNS9.3ベクター、TNS9.3.55ベクター、レンチグロビンHPV569ベクター、レンチグロビンBB305ベクター、BG-1ベクター、BGM-1ベクター、mLARβΔγV5ベクター、GLOBEベクター、G-GLOBEベクター、βAS3-FBベクター、V5ベクター、V5m3ベクター、V5m3-400ベクター、G9ベクター、またはそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、AnkT9Wベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、T9Ank2Wベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、TNS9ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、TNS9.3ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、TNS9.3.55ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、レンチグロビンHPV569ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、レンチグロビンBB305ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、BG-1ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、BGM-1ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、mLARβΔγV5ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、GLOBEベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、G-GLOBEベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、βAS3-FBベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターはV5ベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、V5m3ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、V5m3-400ベクターまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、G9ベクターまたはその誘導体である。
【0141】
種々の実施形態では、β-グロビンをコードする1つ以上のポリヌクレオチドまたはベクターは、1つ以上のポリヌクレオチドを含むアデノウイルスを細胞に形質導入することによって、細胞(例えば、K562細胞)に導入される。
【0142】
アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いることで、高い力価及び高いレベルの発現が得られてきている。このベクターは、比較的単純なシステムにおいて大量に産生することができる。多くのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子が、Ad E1a、E1b、及び/またはE3遺伝子を置き換えるように操作され、その後、複製欠損ベクターが、トランスで欠損遺伝子機能を補充するヒト293細胞において増殖する。Adベクターは、インビボにおいて、肝臓、腎臓、及び筋肉において見出されるもののような、非分裂の分化細胞を含む、複数の型の組織を形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな担持能を有する。
【0143】
複製欠損である現在のアデノウイルスベクターの生成及び増殖は、Ad5 DNA断片によってヒト胚性腎細胞から形質転換され、E1タンパク質を構成的に発現する、293と称される固有のヘルパー細胞株を利用し得る(Graham et al.,1977)。E3領域はアデノウイルスゲノムに必須ではない(Jones & Shenk,1978)ので、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の助けを借りて、E1、D3のいずれかまたは両方の領域に外来DNAを有する(Graham & Prevec,1991)。アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levrero et al.,1991;Gomez-Foix et al.,1992)及びワクチン開発(Grunhaus & Horwitz,1992;Graham & Prevec,1992)において使用されている。組換えアデノウイルスを異なる組織に投与する研究は、気管点滴注入(Rosenfeld et al.,1991;Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注入(Ragot et al.,1993)、末梢静脈注入(Herz & Gerard,1993)及び脳への定位性接種(Le Gal La Salle et al.,1993)を含む。臨床試験におけるAdベクターの使用の例には、筋肉内注入での抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド治療を含まれている(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。
【0144】
種々の実施形態では、β-グロビンをコードする1つ以上のポリヌクレオチドまたはベクターは、1つ以上のポリヌクレオチドを含む単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1、HSV-2)によって細胞(例えば、K562細胞)を形質導入することによって細胞に導入される。
【0145】
成熟HSVビリオンは、152kbの直鎖二本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを有するエンベロープ型二十面体カプシドからなる。一実施形態では、HSVベースのウイルスベクターは、1つ以上の必須または非必須のHSV遺伝子を欠損している。一実施形態では、HSVに基づくウイルスベクターは、複製欠損である。大部分の複製欠損HSVベクターは、複製を防止するために、1つ以上の中間初期、初期、または後期HSV遺伝子を除去するための欠失を含む。例えば、HSVベクターは、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される最初期遺伝子を欠損し得る。HSVベクターの利点は、長期DNA発現を生じ得る潜伏期に入る能力、及び25kbまでの外来性DNA挿入物を収容し得るその大きなウイルスDNAゲノムである。HSVベースのベクターは、例えば、米国特許第5,837,532号、同第5,846,782号、及び同第5,804,413号、ならびに国際特許出願第WO91/02788号、第WO96/04394号、第WO98/15637号、及び第WO99/06583号に記載されており、そのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0146】
特定の実施形態では、細胞は、ポリカチオン性ポリマーの存在下で、本明細書に記載のベクターを用いて形質導入される。いくつかの実施形態では、ポリカチオン性ポリマーは、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン、またはポリエチレングリコール/ポリ-L-リジンブロックコポリマーである。いくつかの実施形態では、細胞は、ポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約2μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約3μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約4μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約5μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約6μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約7μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約2μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約3μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約4μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約5μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約6μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、約7μg/ml~約8μg/mlのポリブレンの存在下で形質導入される。
【0147】
エンドヌクレアーゼを使用して、標的配列にDSBを導入することができ;DSBは、1つ以上のドナー修復テンプレートの存在下で、相同組換え修復(HDR)機構を介して修復することができる。いくつかの実施形態では、ドナー修復テンプレートを用いて、配列をゲノムに挿入する。特に好ましい実施形態では、ドナー修復テンプレートを用いて、グロビン遺伝子/タンパク質(例えば、治療用β-グロビン)をコードするポリヌクレオチド配列を挿入する。
【0148】
本明細書の他の箇所で企図されるように、エンドヌクレアーゼは、ウイルス法または非ウイルス法によって導入され得る。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼポリペプチドが細胞に導入される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが細胞に導入される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、本明細書で企図されるウイルス法または非ウイルス法、例えば、トランスフェクション、形質導入、もしくはエレクトロポレーションによって細胞に導入される。
【0149】
種々の実施形態では、細胞は、グロビン遺伝子を発現するように改変され、改変は、(a)エンドヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、及び(b)β-グロビンをコードするドナー修復テンプレートを細胞に導入することを含む。
【0150】
特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;megaTALまたはその機能的バリアント;CRISPR関連ヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはその機能的バリアント;及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはその機能的バリアントからなる群から選択される。
【0151】
本明細書の他の箇所で企図されるように、ドナー修復テンプレートは、ウイルス法または非ウイルス法によって細胞に導入され得る。いくつかの実施形態では、ドナー修復テンプレートは、細胞を、ドナー修復テンプレートを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス、IDLVなど)、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、またはワクシニアウイルスベクターで形質導入することによって導入される。
【0152】
特定の実施形態では、ドナー修復テンプレートは、エンドヌクレアーゼの二本鎖切断部位に隣接する1つ以上のホモロジーアームを含む。本明細書で使用される場合、「ホモロジーアーム」という用語は、標的部位でヌクレアーゼによって導入されるDNA切断に隣接するDNA配列と同一であるか、またはほぼ同一である、ドナー修復テンプレート中の核酸配列を指す。一実施形態では、ドナー修復テンプレートは、DNA切断部位の5’のDNA配列と同一またはほぼ同一である核酸配列を含む5’ホモロジーアームを含む。一実施形態では、ドナー修復テンプレートは、DNA切断部位の3’のDNA配列3´と同一またはほぼ同一である核酸配列を含む3’ホモロジーアームを含む。好ましい実施形態では、ドナー修復テンプレートは、5’ホモロジーアーム及び3’ホモロジーアームを含む。ドナー修復テンプレートは、DSB部位に直接隣接するゲノム配列に対する相同性、またはDSB部位からの任意の数の塩基対内のゲノム配列に対する相同性を含み得る。一実施形態では、ドナー修復テンプレートは、ゲノム配列に対して約5bp、約10bp、約25bp、約50bp、約100bp、約250bp、約500bp、約1000bp、約2500bp、約5000bp、約10000bp、またはそれ以上の相同性を有する核酸配列(任意の介在する長さの相同配列を含む)を含む。
【0153】
特定の実施形態において企図されるホモロジーアームの適切な長さの例示的な例は、すべての介在する長さのホモロジーアームを含む、約100bp、約200bp、約300bp、約400bp、約500bp、約600bp、約700bp、約800bp、約900bp、約1000bp、約1100bp、約1200bp、約1300bp、約1400bp、約1500bp、約1600bp、約1700bp、約1800bp、約1900bp、約2000bp、約2100bp、約2200bp、約2300bp、約2400bp、約2500bp、約2600bp、約2700bp、約2800bp、約2900bp、もしくは約3000bp、またはそれ以上のホモロジーアームから独立して選択することができ、これらを含むがこれらに限定されない。
【0154】
適切なホモロジーアームの長さの追加の例示的な例としては、約100bp~約3000bp、約200bp~約3000bp、約300bp~約3000bp、約400bp~約3000bp、約500bp~約3000bp、約500bp~約2500bp、約500bp~約2000bp、約750bp~約2000bp、約750bp~約1500bp、または約1000bp~約1500bp(すべての介在する長さのホモロジーアームを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
特定の実施形態では、5’ホモロジーアーム及び3’ホモロジーアームの長さは、独立して、約500bp~約1500bpから選択される。一実施形態では、5’ホモロジーアームは約1500bpであり、3’ホモロジーアームは約1000bpである。一実施形態では、5’ホモロジーアームは約200bp~約600bpであり、3’ホモロジーアームは約200bp~約600bpである。一実施形態では、5’ホモロジーアームは約200bpであり、3’ホモロジーアームは約200bpである。一実施形態では、5’ホモロジーアームは約300bpであり、3’ホモロジーアームは約300bpである。一実施形態では、5’ホモロジーアームは約400bpであり、3’ホモロジーアームは約400bpである。一実施形態では、5’ホモロジーアームは約500bpであり、3’ホモロジーアームは約500bpである。一実施形態では、5’ホモロジーアームは約600bpであり、3’ホモロジーアームは約600bpである。
【0156】
種々の実施形態では、ドナー修復テンプレートは、トランスフェクション、形質導入、またはエレクトロポレーションによって導入される。
【0157】
E. クロマトグラフィー
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法/プロセスは、液体クロマトグラフィーを使用して、異なる形態のヘモグロビン、例えばHbF及びHbA、を分離する。本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィー」、「LC」という用語は、試料の成分が、移動相(すなわち、液体移動相)及び固定相との試料の相互作用に基づいて分離されるプロセスを指す。液体移動相は、固体固定相(分離された成分と共に)を通って、適切な検出及び/または定量のための検出ユニットに渡された。液体クロマトグラフィープロセスの非限定的な例としては、HPLC及びUPLCが挙げられる。
【0158】
「高速液体クロマトグラフィー」、「高圧液体クロマトグラフィー」、及び「HPLC」という用語は、ポンプを使用して、試料混合物を含む加圧液体溶媒を、固体/固定吸着性物質または基材で満たされたカラムに通す液体クロマトグラフィー技術を指す。典型的には、HPLCシステムは約500~6000psiの圧力で動作する。
【0159】
「超高速液体クロマトグラフィー」、「UHPLC」、「超高性能液体クロマトグラフィー」、及び「UPLC」という用語は、ポンプを使用して、試料混合物を含む高加圧液体溶媒を、固体/固定吸着性物質または基材で満たされたカラムに通す液体クロマトグラフィー技術を指す。しかしながら、HPLCシステムとは対照的に、UPLCシステムは6000psiより高い圧力(例えば、約15000psi)で動作する。一般的に、HPLCシステム(例えば、約5ミクロンの粒径)と比較して、固相基材/材料としてより小さい粒子(例えば、2ミクロン未満の粒径)を使用するため、UHPLC及びUPLCシステムは、より高い圧力で動作する。さらに、UHPLCカラムの内径は、一般に、HPLCシステムよりも小さい。例えば、HPLCカラムでは約2.5mm~約5mm、UPLCカラムでは約2.1mm以下(例えば、1mm)である。
【0160】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、クロマトグラフィーカラムに細胞溶解物を通すことを含む、液体クロマトグラフィーシステムで細胞溶解物を分析するステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法はHPLCを含む。いくつかの実施形態では、本方法はUHPLCまたはUPLCを含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは、イオン交換液体クロマトグラフィーである。特定の実施形態では、HPLC、UHPLC、またはUPLCは、イオン交換HPLC、UHPLC、またはUPLCである。
【0161】
HPLC、UPLC、またはUHPLCのいずれであれ、目的の分子を含む試料は、分子の存在量を検出し、経過時間(保持時間)に関連してクロマトグラフィーカラム上でのそれらの保持を示す検出器を用いて分析される。保持時間は、固定相、分析される分子、希釈剤、及び使用される移動相溶媒(複数可)の間の相互作用に依存して変化する。代謝産物を含む試料は、手動で、または自動オートサンプラーによって移動相に注入される。代謝産物の極性、使用したカラム(複数可)の固定相、及び移動相(複数可)は、代謝産物の保持時間、ならびに干渉からのその分離、及び定量性の程度を決定する。
【0162】
したがって、本明細書に開示される種々の実施形態では、クロマトグラフィー分離後、ヘモグロビンタンパク質/複合体は、418nmでの紫外線(UV)光吸収を測定することによって、結合するヘム分子/基を検出することによって検出され得る。種々の実施形態では、クロマトグラフィーは、UV検出器を含む。いくつかの実施形態では、UV検出器は、波長可変紫外線(TUV)検出器である。いくつかの実施形態では、UV検出器は、フォトダイオードアレイ紫外線(PDA UV)検出器である。
【0163】
「イオンクロマトグラフィー」、「イオン交換クロマトグラフィー」、「イオン交換液体クロマトグラフィー」、及び「IEX」という用語は、固体/固定相(例えば、イオン交換体)に結合した荷電部位に対するそれらの親和性に基づいてイオン及び極性分子を分離するクロマトグラフィー方法を指す。例示的なイオン交換体は、ポリスチレン樹脂、セルロース及びデキストランイオン交換体(ゲル)、ならびに制御細孔ガラスまたは多孔質シリカを含むが、これらに限定されない。
【0164】
一般に、2種類のIEX、すなわち陰イオン交換及び陽イオン交換がある。陽イオン交換クロマトグラフィーにおいて、固定相は負に帯電し、分離される分子は正に帯電する(すなわち、クロマトグラフィーのpHは、分子pIより低い)。陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて、固定相は正に帯電し、分離される分子は負に帯電する(すなわち、クロマトグラフィーのpHは、分子pIより高い)。いずれの場合も、分離される電荷分子(例えば、タンパク質、アミノ酸、及びペプチド)は、不溶性固体/固定相に対してイオン結合を形成することによって逆電荷である部位に結合する。次いで、結合した分子を、カラムを通して、またはカラムのpHを変化させることによって、より高い濃度のイオン(陰イオンまたは陽イオン)を有する溶出剤を使用して溶出し、収集する。例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーでは、正に帯電したナトリウムイオンの添加により、正に帯電した分子を固体/固定相から移動させることができる。
【0165】
種々の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヘモグロビンタンパク質(例えば、HbF及びHbA)を分離するIEXクロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX HPLCである。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX UPLCである。いくつかの実施形態では、IEXクロマトグラフィーはIEX UHLPCである。
【0166】
クロマトグラフィーカラム(例えば、IEX液体クロマトグラフィーカラム)は、典型的には、2つのポートを含み、1つの入口ポートは、試料を受け取り、1つの出口ポートは、試料を含んでも含まなくてもよい溶出液を排出する。液体クロマトグラフィーに適したカラムは、充填材料/基材を含む固相を含み、該充填材料/基材は、3~50ミクロンの直径及び約60~1500オングストロームの孔径を有する、非常に小さく通常は球形の粒子、例えば、シリカ粒子を含む。他の適切な充填材料/基材としては、ポリスチレン樹脂、セルロース及びデキストランイオン交換体(ゲル)、ならびに制御細孔ガラスまたは多孔質シリカが挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、固相は、イオンの変化またはイオンの対合を可能にする分子(例えば、アミノ酸)(例えば、アスパラギン酸鎖またはスルホン酸リガンド)も含み得る。
【0167】
したがって、種々の実施形態では、カラムは、基材に共有結合したアスパラギン酸鎖を含む固相を含む。特定の実施形態では、カラムは、基材に共有結合したスルホン酸リガンドを含む固相を含む。いくつかの実施形態では、基材はポリマー基材である。特定の実施形態では、基材はシリカ基材である。いくつかの実施形態では、基材は、約5μmの粒径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約4μmの粒径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約3μmの粒径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約2μmの粒径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約1μmの粒径を有する。
【0168】
いくつかの実施形態では、基材は、約60オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約100オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約200オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約300オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約400オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約500オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約600オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約700オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約800オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約900オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約1000オングストロームの孔径を有する。いくつかの実施形態では、基材は、約1500オングストロームの孔径を有する。
【0169】
液体クロマトグラフィーカラムの内径は、使用される用途または方法(例えば、HPLCまたはUPLC)に応じて、変化し得る。HPLCカラムの内径は、典型的には、UHPLC/UPLCカラムの内径よりも大きい。例えば、HPLCカラムの内径は、約2.5mm~約5mmで変化し得るが、UHPLCカラムの内径は、典型的には、2.5mm未満(例えば、約2.1mm以下)である。したがって、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、カラムは、約5mm以下の内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約4mm以下の内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約3mm以下の内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.5mm以下の内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約2.1mm以下の内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約2mm以下の内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約1mm以下の内径を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、カラムは、約1mm~約5mmの内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約1mm~約4mmの内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約1mm~約3mmの内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約1mm~約2.5mmの内径を含む。いくつかの実施形態では、カラムは、約1mm~約2.1mmの内径を含む。
【0171】
特定の実施形態では、カラムは、約3μmの粒径を有するポリマー基材に結合されたスルホン酸リガンドを含み、約2.1mmの内径を含む。特定の実施形態では、カラムは、約5μmの粒径及び約1000オングストロームの孔径を有するシリカ基材に共有結合したアスパラギン酸鎖を含み、ここで、カラムは、約2.1mmの内径を有する。特定の実施形態では、カラムは、約5μmの粒径及び約1000オングストロームの孔径を有するシリカ基材に共有結合したアスパラギン酸鎖を含み、ここで、カラムは、約1mmの内径を有する。いくつかの実施形態では、カラム長は150mmである。いくつかの実施形態では、カラム長は100mmである。
【0172】
いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは、液体ベースの移動相を含む。本明細書に記載されるように、移動相は、ヘモグロビンタンパク質/複合体を溶出するための異なる溶媒または溶媒混合物を含み得る。例えば、液体クロマトグラフィーは、混合物中に異なる量の溶媒を有する勾配モード、混合物中に連続的に固定された量の溶媒を有するアイソクラティックモード、または部分的にアイソクラティックで部分的に勾配の混合モードを用いて行うことができる。適切な溶媒及び溶媒混合物は、ナトリウムまたはリチウム緩衝液(陽イオン交換HPLCの場合)またはアセトニトリル(逆相HPLCの場合)を含む。他の例示的な移動相は、Tris緩衝液、KCN、及び/またはNaClを含む。いくつかの実施形態では、移動相はトリエチルアミン(TEA)を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは、液体ベースの第1の移動相及び第2の移動相を含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相は、分離される試料を含み、固相への結合を促進するように配合される。いくつかの実施形態では、成分(ヘモグロビンタンパク質/複合体)が溶出される場合に、第2の移動相は、試料分離を駆動するように配合される。
【0174】
いくつかの実施形態では、第1の移動相は、Tris緩衝液及びKCNを含む。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、Tris緩衝液、KCN、及びNaClを含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約38mM~約42mMのTris緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約38mMのTris緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約40mMのTris緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約42mMのTris緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約2.9mM~約3.1のKCNを含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約2.9mMのKCNを含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約3.0mMのKCNを含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約3.1mMのKCNを含む。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、約0.1M~約0.3MのNaClを含む。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、約0.1MのNaClを含む。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、約0.19MのNaClを含む。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、約0.20MのNaClを含む。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、約0.21MのNaClを含む。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、約0.3MのNaClを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは、表1及び表2に示すような移動相の勾配を含む。
【表1】
【表2】
【0176】
種々の実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.0~約7.0のpHを有する。種々の実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.4~約6.6のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.2のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.3のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.4のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.6のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.8のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.9のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約7.0のpHを有する。
【0177】
いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、6.0±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.1±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.2±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.3±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.4±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.5±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.6±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.7±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.8±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約6.9±0.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の移動相及び/または第2の移動相は、約7.0±0.1のpHを有する。
【0178】
いくつかの実施形態では、カラムの温度は、約25℃~約30℃である。いくつかの実施形態では、カラムの温度は、約25℃である。いくつかの実施形態では、カラムの温度は、約26℃である。いくつかの実施形態では、カラムの温度は、約27℃である。いくつかの実施形態では、カラムの温度は、約28℃である。いくつかの実施形態では、カラムの温度は、約29℃である。いくつかの実施形態では、カラムの温度は、約30℃である。
【0179】
本明細書に記載の液体クロマトグラフィー(LC)を用いるヘモグロビン分離は、自動または手動の試料注入及び調整可能で一貫した再現可能な溶媒流量を用いて、任意の市販のLC装置/システムを用いて行うことができる。当該技術分野で公知の例示的なシステムは、Shimadzu LC(HPLCまたはUHPLC)、Waters Acquity(商標)、Agilent(例えば、Infinity II system)、及びAKTA(商標)(例えば、AKTA Pure system)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0180】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許出願、及び発行された特許は、個々の刊行物、特許出願、または発行された特許が、参照により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0181】
上述の実施形態を理解の明瞭化ために図示及び実施例を用いてある程度詳しく記載しているが、本明細書に企図される教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、特定の変化及び改変をそれに対してなし得ることが、当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、単に例として提供されるものであり、限定として提供されるものではない。当業者であれば、本質的に同様な結果をもたらすために変更または修正ができるであろう種々の重要性の低いパラメータがあることを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0182】
実施例1
培養密度及び形質導入条件
レンチウイルス形質導入細胞におけるHbAの測定、及びK562細胞を用いたβ-グロビンをコードするレンチウイルス粒子(例えば、βA-T87QグロビンをコードするLentiGlobin BB305)の機能的効力の測定のための方法を開発するために、重要な培養及び形質導入のパラメータを定義するための実験を行った。K562マスター細胞バンク由来の細胞を、0.5×106、1.0×106、及び3.0x106細胞/mL(1mL総体積)の濃度で12ウェルプレートに播種した。播種の後、細胞に、ヘモグロビンAT87Qをコードする接着性レンチウイルスベクター(LVV)を、5、10、及び20のMOIで、8μg/mLポリブレンを用いて、及び用いずに形質導入した。試料を形質導入後48時間及び72時間で採取し、PolyLC PolyCAT A 200×2.1mm、5μm、1000Aカラムを用いてShimadzu HPLCにより分析した。
【0183】
実験の結果を
図1A及び
図1Bに示す。試料の代表的なクロマトグラムを
図1Aに示し、LVV由来ヘモグロビンA(HbA)のピーク及び内在的に発現したヘモグロビンF(HbF)のピークを示す。結果を、HbAピーク面積とHbFピーク面積の合計と比較したHbAピーク面積に基づくHbAパーセント(HbA%)として計算する。MOIに依存するHbA%の増加は、形質導入された細胞において観察され、ポリブレンの使用は、形質導入効率を改善し、そしてHbA%の改善をもたらす(
図1B)。
図1Cは、出発細胞密度の関数として可変HbA%を示し、約1×10
6細胞/mLは、HbA%のより高い、より一貫した時間依存性増加を示す。
【0184】
実施例2
MOI分析
収穫時間及びMOIを評価するために、1×106のK562細胞を、2つの異なるLVVベクターロットを用いて、MOI5、10、20、40、及び100で三重で形質導入し、形質導入後9日まで分析した。経時分析に必要な繰り返しサンプリングを容易にするために、T25フラスコ中で形質導入を行い、PolyLC PolyCAT A 200×2.1mm、5μm、1000Aカラムを用いたHPLCによって試料を分析した。
【0185】
データは、R
2値を比較して、用量反応データを最もよく予測した線形フィッティングモデルを同定することによって評価した。曲線下のHbA面積とHbA%読み出し値の両方を用い、MOI範囲5~100及び5~40にわたり、MOI及びlog
10変換MOIを用いて線形フィッティングを評価した。結果を表3に示し、MOIのlog
10変換は、用量反応の改善されたフィッティングをもたらし、一方、用量をMOI40のlog
10の最大値に制限することは、フィッティングをさらに改善したことを示す。さらに他の実験では、10~30のMOIの範囲もフィッティングを改善するのに十分であり、場合によっては好ましい。HbA%の使用は、生のHbAの曲線下面積値に対するフィッティングの平均を有意に改善しなかったが、HbA%は、観察された最小R
2値及び三重の形質導入にわたる読み出しの精密度を著しく改善した(表3、表4)。HbAパーセントを、それぞれの採取時間についてlog
10MOIに対してプロットし、曲線を
図2A及び
図2Bに示す。
【表3】
【表4】
【0186】
実施例3
収穫時間分析
図2のフィッティングに基づいて(及び、表3及び4の事後分析によって裏付けられて)、48、72、及び96時間の収穫時間で10、20、及び40のMOIを調べるためのさらなる実験を行った。LVVを検出するための方法の特異性も、この実験で評価した。1ロットのLVV試験物(ロット3、1.82×10
8TU/mL)を、オフターゲットGFP LVVベクター(3.42×10
8TU/mL)と混合することによって、100%、50%、及び0%の相対活性で調製した。10、20、及び40のMOIを、総形質導入単位数(すなわち、LentiGlobin BB305 LVV+GFP LVV)に基づいてT-25フラスコで対象とした。100%Lenti-GFPからなる試験物は、アッセイにおいて分析物シグナルを示さず(
図3)、形質導入依存性HbAを検出するための方法の特異性を実証した。
【0187】
100%のLVV試料応答をMOIの対数(log
10)に対してプロットし、線形回帰をフィッティングすることによって、正確度の予備評価を行った。50%のLentiGlobin BB305 LVV/50% Lenti-GFP試料からの応答を用いて、曲線フィッティングに基づいてMOIを逆計算した。逆計算MOIを公称MOIと比較して正確度を決定した(表5)。50%のLentiGlobin BB305 LVV/50% Lenti-GFP試料は、良好な正確度を示し、それぞれの収集時点で44~54%の範囲であった(MOI10、48時間の67%を除く)。
【表5】
【0188】
実施例4
HbF発現に対する血清ロット及び細胞継代数の影響
血清ロット及び細胞継代数のHbA%読み取り値に対する影響を評価するために実験を設計した。ここで、標準的な細胞培養条件を、異なる/第2のロットのFBSに対して、及び高い継代の細胞に対して試験した(融解後4日間を使用する典型的な実施に対して)。細胞を解凍し、2つの異なるロットのFBS中で別々に培養し、4日後、1×10
6細胞を24ウェルプレートに播種し、3分の1の活性細胞培養を維持し、合計7回継代した。細胞を10~40の範囲のMOIで接着性LVVで形質導入した。培地を約24時間後に交換し、細胞を形質導入の約72時間後にShimadzu HPLC分析のために回収した。結果を
図4A及び
図4Bに示す。
【0189】
この実験において、血清の第2ロット及びより後の継代の細胞は、対照条件よりも著しく高い絶対HbA%値を示した(
図4A)。HbAとHbFのピーク面積を分離する場合、ピーク面積の差は、HbAの増加とHbFの減少の両方によって決定される(
図4B及び
図4C)。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの結果は、K562細胞におけるHbFの制御された発現が細胞培養条件によって影響を受け、これは絶対HbA%の結果に大きな影響を及ぼすことを示唆する。
【0190】
変動性を評価するために別の実験を行い、この実施例において上記に記載したのと同じ方法を用いた(
図5A~
図5Cを参照されたい)。HbA%の変動性を
図5Aに示す(
図5Aは、試験過程にわたるMOI20での対照LVV(ロット4)のHbA%の結果を示す)。これらのデータは、絶対HbA%読み出しに影響を及ぼす未同定因子を示すさらなる変動性を実証する。
【0191】
さらに、
図5Bは、HbA及びHbFのピーク面積の相対変動性を示し、これは、試験したアッセイプレートにわたって、それぞれ、36%及び72%のCV値を実証した。HbAピーク面積の変動性は、アッセイ特異的な変動を捕捉し、これは、HbFピーク面積のより大きな変動性が、本方法の技術的側面に関連するものを超える要因に起因し、生物学的な性質のもの(例えば、K562細胞における内在性HbFレベルの制御された発現、または所与のペレットにおける細胞の変動)である可能性が高いことを示す。
【0192】
最後に、
図5Cは、LVV形質導入の影響から切り離されるピーク面積変動を示すために、それぞれのアッセイプレートにおけるモック形質導入試料のHbFピーク面積を示す。同様のパターン及びピーク面積の変動性が観察された(CV78%)。
【0193】
実施例5
相対効力計算
K562細胞におけるHbF発現の生物学的変動性を考慮して、相対効力の報告可能な結果フォーマットを、レンチウイルスベクターの所定のロットの効力を測定する方法として評価した。この点に関して、平行線アプローチと補間アプローチの両方を、参照標準に基づいて効力を正確かつ精密に計算するように、評価及び決定した。
【0194】
平行線アプローチは、用量反応曲線を参照標準及び試験物にフィッティングさせ、フィッティングパラメータを使用して相対効力を決定することに依存する。このアプローチでは、F-test、等価性試験、または平行用量応答を確認する他の手段を使用することができ、その後、参照物及び試験物を共通の傾きにフィッティングさせる。計算は、対数用量反応曲線の線形フィッティングパラメータを用いて、次の式に従って相対効力を決定する:
【数3】
【0195】
補間アプローチでは、線形フィッティングが参照標準対数用量反応に適用され、試験物のHbA%応答は、基準曲線フィッティングからMOIを補間するために使用される。公称MOIに対する補間されたMOIは、相対効力(RP)である。
【0196】
これらのアプローチを試験するために、参照ベクター及び第2のベクターロットの既知の希釈物を複数のアッセイにわたって試験することによって、正確度及び室内再現精度を評価することができるように、十分なデータ体を生成した(表6を参照されたい)。具体的には、ポリブレンの存在下で、参照標準、100%レベル、及び試験物に対して10、15、20、25、及び30のMOI、50%レベルに対して5、7.5、10、12.5、及び15のMOI、150%レベルに対して15、22.5、30、37.5、及び45のMOIで、1×10
6細胞/mLの密度のK562細胞を形質導入した。相対効力パーセントを補間アプローチ及びPLAアプローチによって計算し、相対バイアスを式:100×((測定された効力/目標効力)-1)を用いて決定した。試験物を複数の独立したアッセイにわたって評価し、平均相対効力、標準偏差、及び変動係数パーセントを、補間アプローチ及びPLA計算アプローチを使用して決定した。両方の例において、方法は、21%以下のCV%で良好な精密度を示した。
【表6】
【0197】
実施例6
LVVの強制分解に対する方法の感受性
ストレスを受けたLVV材料の評価を、方法開発プロセスの異なる点で行い、その結果を表7に示す。凍結融解サイクル条件に曝露することによって、LVVにストレスを加えた。ベクターを冷凍庫から取り出し、周囲温度に3~6時間曝露し、-65℃以下に最低12時間戻した。合計3回及び5回の凍結融解サイクルを、2つのベクターロットについて行った。このベクターを、24ウェルプレートに1×106細胞/mLで播種したK562細胞に、10~40(プレストレス力価に基づく)の範囲の目標MOIで適用した。溶解物を、TUV検出器及びPoly LC PolyCAT A 150×1.0mm、5um、1000Aカラムを備えたWaters UHPLCを用いて分析した。ストレスを受けていない材料に対する効力を、補間アプローチに基づいて計算した。
【0198】
ロット4の2つの調製及びロット1の1つの調製において、3回の繰り返し凍結融解によるストレスは、ストレスを受けていないロットと比較して37~62%の相対効力(RP)をもたらし、5回の繰り返し凍結融解によるストレスは、ストレスを受けていないロットと比較して25%~49%未満の効力をもたらした。患者由来のCD34+細胞も、このストレスを受けた材料で形質導入し、ベクターコピー数(VCN)について試験し、細胞除核及び応答の同等の減少を測定する機能アッセイを観察し、この方法のLVV機能活性の減少を検出する能力が裏付けられた(データ示さず)。
【0199】
さらに、ストレスによって誘導される活性の低下の推定される第2のメカニズムにおいて、2日間ベンチトップ上に残されたロット6は、ストレスを受けていないロットと比較して25%未満の効力を示した。
【表7】
【0200】
実施例7
方法の併行精度
UPLCアッセイの併行精度を、AFSC(HbA、HbF、HbS、及びHbCの混合物を含むヘモグロビン対照標準)、LVV形質導入されたK562、及びモック形質導入されたK562の3つの技術的反復の3つの群を、52回を超える注射の連続にわたって注入することによって評価した。細胞ペレットを100μLのMilli-Q水に再懸濁し、15秒間ボルテックスすることによって溶解物を調製した。溶解物を遠心沈殿させ、上清をUPLC分析のために注入して、試料の連続の経過に対する保持時間及びピーク面積の一貫性を決定した。
【0201】
表8は、HbA及びHbFのピークの保持時間及びピーク面積に対するすべての反復にわたるCVが2%以下であり、良好な併行精度を示すことを示す。さらに、それぞれの群系列内の最初と最後の注入の間の保持時間及びピーク面積の変化は、平均から±5%未満の差であり、これは、50回を超える注入の間にわたる実行の一貫性内であることを示唆する。
【表8】
【0202】
実施例8
レンチウイルスロット試験
効力アッセイの室間再現精度を調べるために、同じアッセイ条件下でいくつかのレンチウイルスロットを試験した。簡潔に述べると、1×10
6のK562細胞を24ウェルプレートのそれぞれのウェルに播種し、MOI0、10、15、20、25、及び30でLVVを二連で形質導入した。細胞形質導入を、8μgポリブレンの存在下で行った。形質導入後、細胞を3日間(約72時間)、維持した。次いで、細胞を回収し、カラムをK562溶解物でコンディショニングし、TUV検出器を使用したことを除いて、実施例10に従ってUHPLCによって分析した。相対効力パーセントを、補間アプローチを用いて計算した。ロット試験結果の概要を表9に示し、試験プレートのそれぞれは内部許容基準を満たす。
【表9】
【0203】
データは、本方法の再現可能な性能、及び選択されたLVV参照ロットの上下の相対効力応答の範囲を示す。同じロットの繰り返し可能な試験は、許容可能な方法の精密度を示し、参照ロットの目標希釈は、許容可能な方法の正確度を示す。
【0204】
懸濁LVVロット003及び004は、接着性LVV参照ロット19と同様の用量反応曲線を示した(
図6A及び
図6B)。これは、この方法が、最小の順応を伴うかまたは順応を伴わずに、懸濁LVV産物との使用に適し得ることを示唆する。
【0205】
実施例9
方法の直線性
直線性は、形質導入されたK562溶解物をモック形質導入されたK562溶解物に希釈することによって評価した。モック形質導入された溶解物は、HbFを含むが、HbAを含まず、したがって、成分比が変化するにつれて、HbAパーセントの変化の評価を可能にする。
【0206】
簡潔に述べると、希釈した溶解物を、TUV検出器を備えたwaters UHPLCを介して、100%形質導入~0%形質導入した溶解物の範囲のレベルで分析した。それぞれのレベルについてピーク面積を決定し、全体として、これらの結果を用いて線形曲線を作成した。この曲線から、それぞれのレベルのバイアスを決定した。
【0207】
データは、表10に提示される。ピークAUCにおける直線関係は、形質導入された溶解物が純粋濃度の15%まで希釈された場合に観察され、これは、それぞれの希釈レベルにおける相対バイアスのパーセントが±10%以内に入ることによって証明される。加えて、予想されたピークAUC対観察されたピークAUCのプロットは、HbF及びHbAのピークに対する全体的な直線性をそれぞれ示す1.00及び1.03の傾きを示す(
図7A)。保持時間は、それぞれの分析物について変化せず、希釈系列にわたるピーク保持時間の最大差は、0.02分より短かった(データ示さず)。形質導入された溶解物がHbFを発現するモック形質導入された溶解物で希釈されるので、HbA分析物が希釈されるにつれて総HbA%は減少すると予想されるが、HbF分析物は比較的一定のままである。予想されたHbA%を計算し、観察されたHbA%に対してプロットすると、1.02の傾きが観察され(
図7B)、それぞれの点における相対バイアスの割合は±10%以内である(データ示さず)。
【0208】
まとめると、本方法は、形質導入された溶解物の直線性を、約10%のHbAに対応する無希釈の形質導入レベルのHbA%の5%まで示す。この直線性のより低い範囲は、ストレスを受けたLVV試料において観察された最低HbA%レベルより低く、効力の50%を超える損失を示す。
【表10】
【0209】
実施例10
例示的なイオン交換UPLC法
1×10
6細胞/mLの密度で播種したK562細胞を、ポリブレンの存在下、MOI20でLVVにより形質導入した。培地を培養24時間後に交換し、形質導入72時間後に細胞を回収し、細胞ペレットとして凍結させた。形質導入されたK562細胞ペレットを、100μLのMilli-Q水中で溶解することによって調製し、ボルテックスし、遠心分離によって清澄化し、トリエチルアミン(TEA)で調整したPolyLC PolyCAT A 150×1.0mm、5μΜ、1000オングストロームのカラムを有するWaters ACQUITY Iクラス系に注入し、PDA検出器を用いて測定した。第1の移動相及び第2の移動相は、それぞれ0.2MのNaClを含む及び含まないpH6.5のトリス緩衝KCNであった。結果を
図8に示し、これは、十分なピーク分離及び同定を示す。まとめると、本発明者らは、驚くべきことに、ヘモグロビン形成バイオアッセイから生成された細胞ペレット試料におけるHbA%(成分HbA及びHbF分析物ピークから計算される)の測定に適した範囲にわたって特異性、頑健性、精密度、及び直線性を示す、HbA発現及びベクター効力を評価するための方法を発見した。
【0210】
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書及び特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、すべての可能な実施形態を、そのような特許請求の範囲に付与される均等物の全範囲と共に含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【国際調査報告】