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  • 特表-脛骨の髄内釘固定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】脛骨の髄内釘固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/66 20060101AFI20240628BHJP
   A61B 17/64 20060101ALI20240628BHJP
   A61B 17/72 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
A61B17/66
A61B17/64
A61B17/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580965
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2022054316
(87)【国際公開番号】W WO2023281324
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】20215797
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524001466
【氏名又は名称】ヘミテック フィンランド オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒッティネン、ミカ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL18
4C160LL29
4C160LL43
4C160LL70
(57)【要約】
本発明は、脛骨の髄内釘固定装置であって、鉛直支持体(2)と長手方向支持体(3、4)および横方向水平支持体(5、5’、5”、6、6)からなるフレームワークのフレームと、装置の長手方向水平支持体(4)に摺動可能に結合されるガイド(21)とを備える装置に関するものである。ガイド(21)は、牽引針(20)の位置を側面方向に調整するための第1のファインダー(11)と、牽引針(20)の位置を鉛直方向に調整し、牽引針(20)を脛骨の横方向に脛骨に通すための第2のファインダー(13)と、フレームに取り付けられる取り付けアーム(22、24)であって、ガイド(21)を使用して脛骨の外側で牽引針(20)の端部に取り付けられる取り付けアーム(22、24)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脛骨の髄内釘固定装置であって、
鉛直支持体(2)、長手方向水平支持体(3、4)、および横方向水平支持体(5、5’、5”、6、6’)からなるフレームワークのフレームと、
前記脛骨に通される牽引針(20)と、
前記装置の前記長手方向水平支持体(4)に摺動可能に結合されたガイドと
を備え、前記ガイド(21)は、
前記脛骨の上部の関節面に対する前記牽引針(20)の位置を側面方向に調整するための第1のファインダー(11)と、
前記牽引針(20)の位置を鉛直方向に調整し、前記牽引針(20)を前記脛骨の横方向に前記脛骨に通すための第2のファインダー(13)と
を備え、
取り付けアーム(22、24)が、前記フレームと、前記ガイド(21)を使用して前記脛骨を横方向に通された前記牽引針(20)の端部とに取り付けられるように構成されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記脛骨の下部の前記牽引針(20)用の第1の取り付けアーム(22)を備え、前記第1の取り付けアーム(22)は、前記フレーム内の前記長手方向支持体のうちのいくつかの間に摺動可能に取り付けられた横方向支持体(6’)に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記長手方向支持体間に摺動可能に取り付けられた前記横方向支持体(6’)は、ガイドキャリッジ(8)によって前記長手方向支持体に沿って摺動する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記長手方向水平支持体は、上部支持体(4)と下部支持体(3)とからなり、前記下部支持体(3)は、前記ガイドキャリッジ(8)用の摺動レールとして機能する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記脛骨の上部の前記牽引針(20)用の第2の取り付けアーム(24)を備え、前記第2の取り付けアーム(24)は、2つの鉛直支持体(2)間に固定された方法で取り付けられている横方向支持体(6)に前記フレーム内で取り付けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記横方向支持体(6’、6)は、前方および後方に回転するように構成され、これは、前記横方向支持体(6’、6)に取り付けられた前記取り付けアーム(それぞれ22および24)が、前方および後方の位置まで回転できることを意味する、請求項2かつ5に記載の装置。
【請求項7】
前記ガイド(21)は、前記脛骨の下部および上部にそれぞれ前記牽引針を通すための、取り付け手段(25)が取り付けられた第1のファインダー(11)と、取り付け手段(10)が取り付けられた第2のファインダー(13)とを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
鉛直高さ調整部(12)が前記ガイド(21)に接続されており、前記鉛直高さ調整部(12)は、その上部で前記同じ取り付け手段(25)または前記ガイド(21)内の別個の取り付け要素(9)に取り付けられ、その下部で取り付け手段(10)に取り付けられ、前記第1のファインダー(11)と前記第2のファインダー(13)は、同じ前記ガイド(21)内にあり、異なる高さで調整可能である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記取り付けアーム(22、24)は、前記取り付けアーム(22、24)を取り囲むリング(27、27’)によって前記横方向支持体(それぞれ6’および6)に取り付けられ、前記リング(27、27’)は、ネジ穴であって、前記取り付けアーム(22、24)を所定の位置に維持するために、前記ネジ穴を通してネジ(32)を溝の底部に締め付けることができるネジ穴を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脛骨の髄内釘固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脛骨骨折は、特に若年者と中年の成人の間でよく見られる損傷である。骨折は、転倒、事故、または脚への強い打撲によって引き起こされる可能性がある。脛骨骨折の治療には通常、再配置、つまり骨折部位の骨の端部を所定の位置に配置することが含まれる。
【0003】
髄内釘固定は、脛骨骨折の治療に最も一般的に使用される方法であり、これは、脛骨の髄腔に金属釘を挿入することを意味する。釘は、膝蓋骨の下の腱を通って髄腔内に配置される。釘が所定の位置に配置されると、その両端にネジを挿入して骨を所望の位置に保つ。
【0004】
脛骨の髄内釘の役割は、脛骨の骨折部位の骨の端部が一直線上に揃うように、骨折によって分離された骨の部分を整列させた状態で維持し、こうして脛骨が正しい位置に骨化するようにすることである。
【0005】
このように伝統的に、髄内釘は、脛骨の上部から骨内に挿入されるため、研究によれば、かなりの数の患者に施術後の膝前部の痛み、いわゆる「前膝痛」の症状を引き起こす。
【0006】
さらに、現在でも一般的に使用されている手術方法では、手術対象の患者の脚を丸い支持体に対して90度を超える角度で配置する。また、損傷した脛骨の端部を揃えるために、前方および下方に向かって脚を斜めに牽引する。この処置により膝裏の神経が圧迫される可能性があり、神経損傷のリスクが高まる。ウェッジ枕を使用する場合、脚を所定の位置に保つために助手、つまり別の外科医が必要である。この処置における助手の仕事は、骨の端部が整列し、骨に髄内釘用のスペースが穿設されたときに脚を動かすことができないように、脚に必要な牽引力を維持することである。
【0007】
脛骨の髄内釘固定には、2つの既知のバージョンがある。第1の方法では、その処置用に設計された牽引台が使用されるが、これには多くの問題が含まれる。例えば、手術の準備には時間がかかり、画像処理は困難である。患者の姿勢が正しくないと神経損傷を受ける可能性があり、この方法では外科医は、人間工学的に厳しい作業姿勢で作業する必要がある。第2の方法では、脛骨の髄内釘固定用に設計されたウェッジ枕を使用して、標準的な手術台で髄内釘固定が行われる。この処置の問題点は、脚が継続的に動くため、処置中に脚を支持するために別の整形外科医または外傷専門医が必要になることである。また、脚を大きく動かすこのウェッジ枕による処置は、ふくらはぎの筋肉に組織損傷および血管損傷を引き起こしやすい。
【0008】
一般的に使用される外科的方法では、かかとの骨にも針が穿設され、牽引装置に取り付けられる。かかとの骨領域には重要な神経構造と軟組織があり、これらは損傷を受けやすい。
【0009】
特許文献1が従来技術として引用されており、これは、骨に通した針によって骨の長さを調整できる、脛骨の髄内釘固定のための装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願公開第110537964号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、より安全で患者に優しい脛骨髄内釘固定手術を可能にする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る脛骨の髄内釘固定装置は、鉛直支持体、長手方向水平支持体、および横方向水平支持体からなるフレームワークのフレームを備える。この装置は、装置の長手方向水平支持体に摺動可能に結合されたガイドも備える。ガイドは、牽引針(20)の位置を側面方向に調整するための第1のファインダーと、牽引針の位置を鉛直方向に調整し、牽引針を脛骨の横方向に脛骨に通すための第2のファインダーとを備える。この装置はまた、フレームに取り付けられた取り付けアームを備え、取り付けアームに脛骨の外側の牽引針の端部が取り付けられる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に開示される以下で説明される特徴を有する。
【0014】
この装置は、脛骨の下部の牽引針用の第1の取り付けアームを備える。第1の取り付けアームは、フレーム内の長手方向支持体のうちのいくつかの間に摺動可能に取り付けられた横方向支持体に取り付けられる。長手方向支持体間に滑動可能に取り付けられた横方向支持体は、牽引台車などのガイドキャリッジによって長手方向支持体に沿って滑動する。
【0015】
長手方向の水平支持体は通常、上部支持体と下部支持体とからなり、この場合、下部支持体は、ガイドキャリッジ用の摺動レールとして機能することが好ましい。
【0016】
この装置は、脛骨の上部の牽引針用の第2の取り付けアームも備える。第2の取り付けアームは、2つの鉛直支持体間に固定された方法で(すなわち、移動不能に)取り付けられている横方向支持体にフレーム内で取り付けられている。
【0017】
横方向支持体は、前方および後方に回転でき、これは、横方向支持体に取り付けられた取り付けアームが、前方および後方の位置まで回転できることを意味する。
【0018】
ガイドは、脛骨の下部および上部にそれぞれ牽引針を通すための、取り付け手段が取り付けられた第1のファインダーと、取り付け手段が取り付けられた第2のファインダーとを備える。
【0019】
鉛直高さ調整部がガイドに接続されており、鉛直高さ調整部は、その上部でその同じ取り付け手段またはガイド内の別個の取り付け要素に取り付けられ、その下部で第2の取り付け手段に取り付けられる。第1のファインダーと第2のファインダーは、同じガイド内にあり、異なる高さで調整可能である。
【0020】
取り付けアームは、それらを取り囲むリングによって横方向支持体に取り付けられる。リングは、取り付けアームを所定の位置に保つために溝の底部にネジを締めることができるネジ穴を備える。
【0021】
本発明に係るこの装置は、脛骨牽引および再配置装置と呼ぶことができ、成人患者の脛骨の「膝蓋上」(すなわち、膝蓋骨の下で行われる)髄内釘固定のために開発された。既存の手術法との最大の違いは、この処置が標準的な手術台を用いて行われるため、脛骨の上部および下部から脛骨牽引および再配置装置の間に脚が固定されるため、脚がほんのわずかしか曲がらなく、装置は、手術台の上にそれ自身で支持されている。従来の方法では、目的に合わせて設計された牽引台(例えば、Ossanoの牽引台)、または標準的な手術台上で使用されるウェッジ枕を使用する。
【0022】
本発明に係る脛骨牽引および再配置装置では、膝は、約5~10度の角度で配置され、これにより、脚の後ろに圧力がかからないため、手術によって膝の後ろの「屈曲部」の患者の神経に神経損傷が生じることを防ぐ。この装置は、脛骨の上部および下部に針用の針取り付けアームを備えている。脛骨の下部にある針の取り付けアームは、摺動レール上にあるため、下部の取り付け機構を引くことによって脛骨の端部を揃えることができる。脛骨の上部にある針の取り付けアームは、装置の長手方向には移動しない。
【0023】
本発明では、脛骨は、細い針によって脛骨牽引および再配置装置に取り付けられる。骨折した脛骨の上部と下部から、脛骨の側面から骨に針を穿設する。この新しい装置の利点は、すでに損傷した骨に針が穿設されるため、無傷の骨、神経、および組織が不必要な損傷から保護されることである。本発明に係る医療技術装置は、より安全でより費用効率の高い脛骨の髄内釘固定手術を可能にする。従来の方法では、枕上で脛骨を髄内釘固定する場合、脚に十分な牽引力を与え、処置中に脚を所定の位置に保つために、処置のための追加の外科医が必要である。
【0024】
本発明は、一実施形態および関連する図、ならびにその実施形態の使用法を用いて以下にさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】脛骨の髄内釘固定のための本発明に係る牽引および再配置装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、髄内釘が脛骨に挿入される、脛骨の髄内釘固定のための脛骨の牽引および再配置のための本発明に係る装置を示す。
【0027】
外傷により患者が負った脛骨骨折は、脛骨に髄内釘を挿入し、脛骨の修復が必要な場合は、髄内釘をそのまま残すことにより治療を行う。これは、骨が2つ以上の部分に骨折していて、骨折が関節面まで及んでいない場合に当てはまる。
【0028】
患者(図示せず)は、手術中ずっと手術台(図示せず)の上に仰向けに横たわっている。この処置のために、患者には麻酔がかけられる。その後、患者は滅菌カバーで覆われ、手術対象の脚は露出したままになる。
【0029】
本発明に係る装置は、長方形のベース1を有する。ベース1は、底板であり、脚に対して上方から撮影する際に撮影領域内に金属が存在しないように撮影を可能にするために中央が開口した長方形の板である。ベース1、すなわち底板の目的は、装置を安定させ、装置が手術台の柔らかいマットに押し込まれることを防ぐことである。鉛直支持体2は、ベース1に取り付けることができる。
【0030】
2つの上部支持体4は、ベース1の各々の隅で、膝が約10度の角度まで上げられたときの略脛骨の高さで、ローレットヘッドネジ19によって、合計4つの鉛直支持体2に取り付けられる。2つの上部支持体4は、ベース1の長手方向の辺の上にわたって延びることによってベース1の両側に取り付けられる。また、ベース1の長手方向の辺の上にわたって延びる2つの下部支持体3が、略足首の高さに結合されている。
【0031】
例えばネジ15によって、略足首の高さに鉛直支持体2に取り付けられている横方向支持体5、5’、5”、および6は、その短辺の上にわたって延びることによって、ベース1の他の2つの辺の上で結合される。この装置は、下部支持体3間に横方向支持体6’をさらに備え、牽引台車などのガイドキャリッジ8上を下部支持体3に沿って移動する。したがって、下部支持体3は、ガイドキャリッジ8用の摺動レールとして機能し、装置を支持するように構成されている。
【0032】
鉛直支持体2、上部支持体4、下部支持体3、および横方向支持体5、5’、5”、6、および6’は、例えば、ガイド、パイプもしくはロッド、または対応する支持体もしくはシャフトとすることができる。
【0033】
図1では、最も低い横方向支持体5’および5”は、下部支持体3よりも若干低い高さにあり、横方向支持体5および横方向支持体6は、下部支持体3よりも若干高い高さにある。横方向支持体6は、取り付けアーム24がどのようにそれに取り付けられるかを理解しやすくするための例示の目的のために、図1では不連続に描かれているが、これについては本文中で後述する。横方向支持体6は、制御シャフトであり、その機能については以下に説明する。図1では、横方向支持体5、5’、5”、および6は、締結ネジ15または別の取り付け方法によって鉛直支持体2に取り付けられている。鉛直支持体2内の穴(符号なし)の目的は、鉛直支持体2が重いため、軽量化することである。横方向支持体5、5’、5”、6は、固定位置にあり、横方向支持体6’は、上述したように下部支持体3に沿って移動する。
【0034】
本発明に係る装置は、患者が仰向けになり、装置上で手術対象の脚がシャフト5の方を向くように、手術対象の脚の下に配置される。
【0035】
この後も依然として、骨折のある骨を安定させるために、手術対象の脚を装置上の所定の位置に正確に、またはより正確に配置する必要がある。
【0036】
安定化のために、いわゆる牽引針が、脛骨に側面方向に、かつ脛骨の上部で、膝蓋骨付近で、膝蓋骨の下の点と、脛骨の下部の足首との両方に穿設される。脛骨への牽引針の穿設は、上部支持体4に取り付けられたガイドを使用して行われる。ガイド21は、別の上部支持体4に沿って移動する。
【0037】
手術後、手術創が閉じる前に牽引針が抜かれる。しかしながら、牽引針を穿設する前に、牽引針を穿設するためのガイド21が骨に対して鉛直方向と側面方向の両方で正しい位置にあることを確認する必要がある。ガイド21の位置は、X線装置でチェックされ、必要に応じて調整される。
【0038】
ガイド21は、足首から膝まで上部支持体4内を妨げられることなく移動し、牽引針を位置決めするためのファインダーとして機能する、異なる高さの別個の横方向アーム11、13を備える。これらの横方向アーム11、13は、方向制御され、回転するように意図されていないため、その形状は、好ましくは円形以外、例えば正方形であり、したがって回転を防止するために側面方向にスリーブに対してより良好にロックされる。
【0039】
第1の牽引針の位置決め
ガイド21は、第1のスリーブ25を備え、それを通して第1の横方向アーム11が上部支持体4まで横方向に通っており、その横方向アーム11の端部には、位置Aに牽引針20が示されており、そこでその側面方向位置が調整される。牽引針20は、横方向アーム11の端部のスリーブ30内の位置Aにあるとき、20Aとマークされる。横方向アーム11は、次に行う牽引針20の取り付けのための上部ファインダーとして機能する。横方向アーム11、すなわち上部ファインダーの目的は、上方からX線を照射することによって行われるガイド21の側面方向位置を調整することである。脛骨を通る牽引針20の実際の穿設は、位置Aではまだ行われていない。
【0040】
ガイド21は、高さ調整部12を通る第2のスリーブ9を備え、スリーブ9は、高さ調整部12の上部にある。高さ調整部12としては、棒等を用いることができる。高さ調整部12の下部には、ガイド21の高さ調整部12が通る第3スリーブ10がある。こうして、高さ調整部12は、下部ファインダーと上部ファインダー(すなわち、横方向アーム11と13)を結合する。
【0041】
第2の横方向アーム13は、スリーブ10を貫通して上部支持体4を横方向に通過し、第2の横方向アーム13には、ここでスリーブ23を備える接続部品31によって牽引針20が取り付けられる。換言すれば、牽引針は、横方向アーム11から横方向アーム13に移される。横方向アーム13は、脛骨の上部の関節面に対して牽引針20がどの位置にあるかを確認するために以前に使用されたものと同じ牽引針20用の下部ファインダーとして機能する、すなわち側面方向におけるその位置が確認され、その後、横方向アーム13のスリーブ23に移される。
【0042】
したがって、ガイド21の側面方向の調整後、側面方向からのX線撮影によって牽引針20が正しい高さにあることがX線によって確認されると、この同じ牽引針20が、下部ファインダーのスリーブ23を貫通し、さらに脛骨の上部または下部のいずれかを貫通して穿設される。
【0043】
さらに、脚が最初に上方からX線撮影され、牽引針20が関節を貫通せず、関節面の下に留まることが確認された後、この牽引針20は、上部ファインダーから下部ファインダーに移されることをさらに強調する。上部ファインダーと下部ファインダーとは、上方から見ると重なって位置決めされており、装置を側面方向から見るとそれらのファインダーが重なるように整列されている。
【0044】
ガイド21の位置が確保され、正確に配置されると、骨への牽引針20の穿設が行われる。これは通常、脚の両側でその同じ部分が露出するように行われる。
【0045】
骨に穿孔するために、牽引針20は、スリーブ23を通して脛骨に穿孔する前に、すなわち、一旦、ガイド21ひいてはスリーブ23が高さ調節部12を使用して脛骨に対して正しい高さに設定された後に、別のハンドドリル(図示せず)に取り付けられる。上方からのX線撮影により、針が関節表面にどれだけ近づいているかが示される。
【0046】
牽引針20が骨に穿設される位置Bにあるとき、牽引針20は、20Bとしてマークされる。したがって、位置Bは、骨の内部に穿設された位置Bにある牽引針20Bを表す。針20を位置決めする順序は関係ないが、最初に脛骨の上部の牽引針を位置決めすることがより一般的である。したがって、この実施形態では、牽引針20が最初に脛骨の上部に穿設されることが想定された。
【0047】
上腿の牽引針20は、その両端で、例えば、翼付きネジ16’およびクランプ14’を用いて、脚が約10度の小さな角度となる状態で、それらのために意図された第1の取り付けアーム24に取り付けられる。次いで、取り付けアーム24は、リング27によって固定された横方向支持体6に取り付けられ、したがって固定された横方向支持体6は、リング27を通過する。
【0048】
取り付けアーム24は、リング27によって横方向支持体6に取り付けられており、前方および後方に回転できるようになっている。取り付けアーム24は、ネジ18が緩んでいると、横方向支持体6とともに回転する。したがって、取り付けアーム24は、患者に牽引針が取り付けられているときに、邪魔にならない後方位置に回転させることができる。
【0049】
取り付けアーム24はまた、ローレットヘッドネジ32が緩んでいるとき、横方向支持体6に沿ってわずかに側面方向に移動する。
【0050】
横方向支持体6の外面の膝端部、すなわち上腿の端部には、装置の内部に残る溝7がある。
【0051】
溝7の目的は、牽引針を取り付けアーム24に取り付けるために、取り付けアーム24が皮膚に十分に近い位置に、ローレットヘッドネジ32などの締め付けネジで取り付けアーム24をロックできるようにすることである。換言すれば、取り付けアーム24は、最初に皮膚の近くに配置され、次に横方向支持体6の外面上の横方向溝7にローレットヘッドネジ32でロックされる。溝7は、締め付けネジの一部が溝7の底部にあるため、取り付けアーム24の回転を防止する。溝7がなかった場合、取り付けアーム24を横方向支持体6の丸い表面に対して締め付けると、アーム24が回転する可能性をもたらし得る。
【0052】
第2の牽引針の位置決め
この実施形態では、第2の牽引針を脛骨の下部に位置決めすることは、第1の牽引針20を脛骨の上部に位置決めしたのと同じガイド21を用いて実行される。
【0053】
第2の牽引針の長手方向の位置が、第1の牽引針で行われたのと同様に上部ファインダー11で調整されると、第2の牽引針は、接続片31とその中のスリーブ23によって、下部ファインダーとして機能する横方向アーム13の端部に位置決めされる。
【0054】
足首で脛骨の下部に第2の牽引針を穿設することは、脛骨の上部に第1の牽引針20を穿設するのと同じ方法で行われる。
【0055】
この図は、脛骨の上部に穿設される第1の牽引針20を示していると想定されているため、第2の牽引針にはそれ自体の符号が与えられていないが、第1の牽引針20が第2の牽引針に置き換えられることを除いて、第2の牽引針の位置決めに関する問題であれば、図1は正確に均等である。
【0056】
下腿の牽引針は、その両端で、例えば翼ネジ16およびクランプ14によって、脚が約10度の小さな角度となる状態で、移動する横方向支持体6’に取り付けられる、それらのために意図された第2の取り付けアーム22に取り付けられる。
【0057】
取り付けアーム22は、リング27によって横方向支持体6’に取り付けられており、前方および後方に回転できるようになっている。取り付けアーム22は、ネジ28が緩んでいる場合、横方向支持体6’とともに回転する。したがって、患者に牽引針が取り付けられているときに、取り付けアーム22を邪魔にならない後方位置に回転させることができる。したがって、取り付けアーム22の前後の動きはネジ17で調整することができ、それによって横方向支持体6’を回転させることができる。
【0058】
取り付けアーム22はまた、ローレットヘッドネジ32が緩んでいるとき、横方向支持体6’に沿っていくらか横方向に移動する。
【0059】
牽引針、すなわち下腿の牽引針を位置決めするには、まず取り付けアーム22を皮膚の近くに位置決めし、次に図1には示されていないが、横方向支持体6に示されているものと類似の横方向支持体6’の外面上の溝内を下部支持体3に沿って移動する横方向支持体6’に、ローレットヘッドネジ32でロックする。足首の端部、つまり下腿の端部では、溝は、装置の外側に残る。
【0060】
牽引針を位置決めしたら、ネジ17を前方の位置に回し、ローレットヘッドネジ28でロックする。
【0061】
いくつかの追加の強調点を以下に開示する。
【0062】
一般的に言えば、ネジ32が緩んでいる場合、牽引針20がすでに取り付けアーム22または24に取り付けられているのと同時に、取り付けアーム22または24をシャフト6または6’上で側面方向に移動させることができる。ロッド6、6’および取り付けアーム22、24は、牽引針20が取り付けられた後は、いかなる状況下でも前方または後方に移動してはいけない。ネジ32が緩みすぎてネジが溝7内には無くなった場合、取り付けアーム22、24は、シャフト6、6’の周りを自由に回転することができるが、これは起こってはならない。
【0063】
装置の長手方向における最上部の長い上部支持体4の目的は、装置を安定させることである。また、上部支持体4は、実際の髄内釘固定処置中に、または処置の最初に牽引針を位置決めする際に、例えば、X線ドレープを使用することによって、脚を支持するために使用することもできる。X線ドレープによる支持とは、例えばドレープ鉗子を用いて、ドレープの両端を上部支持体4に取り付けるようにドレープを配置することを意味する。ドレープの一端は、一方の上部支持体4内にあり、他端は、他方の上部支持体内にある。このようにして、例えば牽引針を所定の位置に配置するときに、脚を1つまたは複数のドレープ上に置くことができるため、脚を支持する必要がなくなる。
【0064】
上部支持体4は、通常、牽引針が前方位置にあるときに、牽引針の取り付けアームよりも意図的にわずかに高い位置にある。これは、脚に対して側面方向から撮影する際に、上部支持体4がX線撮影の邪魔にならないようにするためである。
【0065】
処置の最初に使用されるガイド21も、上部支持体4に取り付けられる。ガイド21は、膝から足首まで上部支持体4上を妨げられることなく摺動する。ガイド21は、手術対象の脚に対して最も外側の長い上部支持体4に常に取り付けられている。牽引針は、ガイド21のスリーブを通して脛骨に穿設されるため、牽引針は常に最も外側の上部支持体4に配置される。ガイド21は、上部ファインダー11と下部ファインダー13の2つの機能を有する。上部ファインダー11は、横方向ロッド30を備え、横方向ロッド30は、ロッドの端部が中空であり、ロッドの端部に牽引針を配置できるようになっている。上部ファインダー11は、牽引針の助けを借りて、X線装置を用いて、牽引針が関節表面からどのくらい離れているかを示す、すなわち、脚に対して上方からX線撮影される。下部ファインダー13は、脚に対して側面方向からX線装置を用いて牽引針の正確な高さを観察するために使用される。下部ファインダー13はまた、ガイドスリーブ23を備え、ガイドスリーブ23を通して、上部ファインダーで最初に使用されたのと同じ牽引針が骨に穿設される。下部ファインダーはまた、高さ調整部分12、例えば鉛直ロッドを備え、それによって骨に対するスリーブの高さを調整することができる。これら2つの機能において、上部ファインダーおよび下部ファインダーは、エンティティを上方から見たときに明らかに相互に位置合わせされている。
【0066】
上部支持体4は、髄内釘が脛骨内に位置決めされたときに装置から取り外すことができるが、これは必須ではない。この装置は、固定ネジを釘に配置するときに上部支持体4が邪魔にならないように構成することができる。
【0067】
装置を安定させることに加えて、長い下部支持体3は、足首端ではガイドキャリッジ8または牽引台車用の摺動レールとしても機能する。キャリッジは、骨の端部を整列させるために脚に適切な量の牽引力を及ぼすことを可能にし、ガイドキャリッジ8が単独で移動できないように下部支持体3にガイドキャリッジ8をロックすることを可能にする。
【0068】
下部の横方向支持体5’および5”は、いわゆる固定横方向支持体であり、必要に応じて取り外すことができるが、その目的は、装置を安定させることである。牽引針の合計2つの取り付けアーム24が、上部の横方向支持体6に取り付けられる。また、取り付けアーム24の横方向支持体6の両端にはフライス加工された溝があり、これは、ファインダー13を用いて牽引針が患者の体内に位置決めされているときに、横方向支持体6を後方位置に回転させることができることを意味する。牽引針が位置決めされると、横方向支持体6は、前方位置に回転され、ローレットヘッドネジ18で前方位置にロックされて、取り付けアーム24が揺れることを防止する。
【0069】
ガイドキャリッジ8(すなわち、牽引台車)は、足首端部から膝端部まで下部支持体3上を障害なく移動する。ガイドキャリッジ8は、下部支持体3の各々のためのブッシング/スリーブ(参照番号なし)を備え、これを下部支持体3が通過し、スリーブは、ある種の固定ネジ(符号なし)を有し、それを用いてガイドキャリッジ8は、下部支持体3上の所望の位置にロックされ得る。下部支持体3が通過する下部スリーブの上部には、下部スリーブに取り付けられている、牽引針の取り付けアームの横方向支持体用の別個の取り付け機構がある。足首の牽引針の取り付けアーム24は、膝を取り付ける場合と同じように機能する。すなわち、取り付けアーム24は、前方位置にロックすることができ、横方向支持体6は、溝7を有し、したがって牽引針の取り付けアーム24は、側面方向に移動でき、ローレットヘッドネジ32で溝7内の所望の位置にロックすることができる。
【0070】
脛骨を通して穿設され、牽引針用に意図された取り付けアーム22、24に取り付けられる牽引針よりも、上部支持体4は通常、約5~7cm高い高さにある。したがって、人間の脛骨の厚さは、成人患者では比較的一定であり、針は通常、骨の中心に穿設されるため、脚のサイズは無関係である。したがって、上部支持体4が画像化の邪魔になることは決してない。足首の高さは、取り付けアーム22と同じ高さである。
【0071】
横方向支持体6’は、脚を牽引して配置できるように下部支持体3に沿って移動するように作られており、脚が正しく牽引される下部支持体3上の位置に配置される。この目的のために、脛骨の下部にある牽引針の取り付けアーム22は、横方向支持体6’によって摺動レール上にあり、したがって、下部の取り付け機構を引くことによって、脛骨の端部を揃えることができる。
【0072】
脚は、長手方向に牽引して配置され、例えばX線包帯を使用することによって、骨折部位の骨の端部を揃えることによって側面方向に再配置される。X線包帯は、糸くずの出ない布地の中に小さな金属糸が入ったものである。布地内の金属糸の目的は、(これらの布地が人の体内に布地を配置する手術に使用される場合)、金属糸のおかげでX線画像による布地の発見を可能にすることであり、もしもそうしなければ、血まみれの布を見つけることは、実際には不可能であるからである。布地の長さは、約40cmであり、折りたたむと幅は、約30cmになる。布地はまた、布地を上部支持体4上に横方向に置き、脚が布地上に支持されるようにすることにより、牽引針の取り付けを補助するために使用することもできる。これにより、針を位置決めするときに脚を支持する必要がなくなり、脚が所定の位置に保持されやすくなる。
【0073】
横方向支持体6’のリング27の穴にはネジ山があり、ローレットヘッドネジ32を溝の底部に締め付けると、ローレットヘッドネジ32によって取り付けアーム22、24を所定の位置に保持することができ、ローレットヘッドネジ32を緩めると、取り付けアーム22、24を再び同時に動かすことができる。また、ネジが溝内にあり、丸い表面に当たっていないため、脚の重みによって取り付けアーム22、24が下向きに回転することも防止される。同様に、横方向支持体6内のリング27は、図1には示されていないローレットヘッドネジを備え、これは同様の方法で締め付けるために使用される。
【0074】
牽引針20が所定の位置に配置されると、実際の髄内釘固定が行われる。
【0075】
次に、外科医は、膝蓋骨の上方に切開を行い、そこから切開に使用した器具を膝蓋骨の下から脛骨の内側に挿入する。最初に組織プロテクターを膝蓋骨の下に配置する。この組織プロテクターは、器具が組織や手術自体に関係のない他の重要な領域を損傷することを防ぐ。髄内釘を除くこの処置に必要なすべての器具は、組織プロテクターを通して脛骨に挿入される。
【0076】
次に、やや大きめのドリルビットを使用して、骨の長手方向に約4cmの深さまで骨に侵入開口部を穿設する。
【0077】
その後、足首まで届くガイドワイヤーを骨に挿入する。ガイドワイヤーの太さは、2mm~3mm程度である。ガイドワイヤーは、釘の邪魔にならないように骨髄に穿孔するために使用されるドリルが中空であり、ガイドワイヤーがドリルビットの内側を通っているため、ビットが骨折部位の組織を貫通して組織に損傷を与えることを防ぐために使用される。
【0078】
この後、髄内釘を入れるのに十分なスペースができるまで、各穿孔後にドリルビットを1.5mm大きいドリルビットに交換することにより、骨髄を徐々に骨の内側から「リーミング」して穿孔する。
【0079】
次に、ガイドワイヤーの助けを借りて髄内釘を骨に挿入する。
【0080】
髄内釘が骨の内部に入ると、ガイドワイヤーが取り外され、上部水平支持体4が任意選択で装置の側面から取り外される。
【0081】
ここで、髄内釘がネジで患者の体内に固定される。次いで、上部支持体4が任意選択で取り外され、その後、牽引針の取り付けアーム22、24から脚を取り外すことができ、針が皮膚に近い片側から切断され、平ペンチで患者から引き抜かれる。
【0082】
これらの処置の後、切開した傷は閉じられ、創傷包帯で覆われる。
図1
【国際調査報告】