(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】幹細胞由来細胞外小胞体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20240628BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240628BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240628BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240628BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240628BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240628BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240628BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240628BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240628BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C12N5/0775 ZNA
A61K35/28
A61P29/00
A61P37/02
A61P13/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P3/10
A61P17/02
A61P25/00
A61P11/00
A61P21/00
A61P17/00
A61P1/04
A61P1/16
A61P37/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580967
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2022001339
(87)【国際公開番号】W WO2023282424
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088370
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011023
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会による発表 集会名:KSSCR 2021 Winter Conference 開催日:2021年1月25日 開催場所:WEB開催 主催者(Korean Society for Stem Cell Research)
(71)【出願人】
【識別番号】518056140
【氏名又は名称】コングク ユニバーシティ インダストリアル コーオペレーション コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】524001112
【氏名又は名称】ステメクスワン.,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516286604
【氏名又は名称】コングク ユニバーシティ グローカル インダストリー-アカデミック コラボレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サン-グ
(72)【発明者】
【氏名】イム,キョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】アブダル デイエム,アーメド
(72)【発明者】
【氏名】イ,ス ビン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユジン
(72)【発明者】
【氏名】カン,グン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,アラム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC14
4B065BA10
4B065BB19
4B065BB34
4B065BC03
4B065BC09
4B065BC26
4B065BD15
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB64
4C087DA31
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA59
4C087ZA68
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、幹細胞由来細胞外小胞体及びその用途に関する。本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2から選ばれる1種以上のタンパク質を高発現させることによってTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの量を顕著に減少させるので、様々な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的である。特に、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)動物モデルに投与する場合に、IC/BPS誘導過程で荒れた膀胱内壁が回復し、炎症程度が緩和され、膀胱内圧が回復し、対照群と類似の排尿周期を示すので、間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群に対して優れた治療効能がある。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、細胞の移動(migration)を顕著に増加させ、傷治癒効果に優れるので、傷治癒用に有用に利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2から選ばれる1種以上のタンパク質を高発現させる幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項2】
前記幹細胞由来細胞外小胞体は、
2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体又は培養液にTGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体に比べて前記タンパク質を高発現させることを特徴とする、請求項1に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項3】
前記幹細胞由来細胞外小胞体は、
TGF-β1を高発現させることを特徴とする、請求項1に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項4】
前記幹細胞由来細胞外小胞体は、
TGF-β1を50~1,000pg/1×10
9粒子の量で発現させることを特徴とする、請求項3に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項5】
前記幹細胞由来細胞外小胞体は、
COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2タンパク質を高発現させることを特徴とする、請求項1に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項6】
前記幹細胞由来細胞外小胞体は、
(a)対象体から分離された幹細胞を培養して細胞凝集体(cell aggregate)を形成する段階;及び
(b)前記細胞凝集体を、TGF-β(Transforming growth factor beta)を含む培養液で3次元培養する段階;を含む方法で製造されたことを特徴とする、請求項1に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項7】
前記幹細胞は、中間葉幹細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項8】
前記段階(a)は、多重ウェル(multi-well)培養容器で幹細胞を浮遊培養(suspension culture)することによって行われることを特徴とする、請求項6に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項9】
前記TGF-βは、TGF-β3であることを特徴とする、請求項6に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項10】
前記段階(b)は、前記細胞凝集体を浮遊状態で回転振盪培養(orbital shaking culture)することによって行われることを特徴とする、請求項6に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項11】
前記回転振盪培養は、50~70rpmの回転速度で行われることを特徴とする、請求項10に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項12】
前記幹細胞由来細胞外小胞体は、30~150nmの平均直径を有することを特徴とする、請求項6に記載の幹細胞由来細胞外小胞体。
【請求項13】
請求項1の幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む、炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項14】
前記炎症疾患又は自己免疫疾患は、膀胱炎、リウマチ関節炎、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身皮膚硬化症、大膓炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、ベーチェット病(Bechet’s disease)、川崎病(Kawasaki’s disease)、原発性胆汁性硬化症(primary biliary sclerosis)、原発生硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative olitis)、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease,GVHD)、又はクローン病(Crohn’s disease)であることを特徴とする、請求項13に記載の薬学組成物。
【請求項15】
前記膀胱炎は、間質性膀胱炎(Interstitial Cystitis)、慢性膀胱炎、及びケタミン誘発膀胱炎から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項16】
請求項1の幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む傷治癒用薬学組成物。
【請求項17】
請求項1の幹細胞由来細胞外小胞体の炎症疾患又は自己免疫疾患治療用途。
【請求項18】
請求項1の幹細胞由来細胞外小胞体をそれを必要とする対象体(subject)に投与する段階を含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、幹細胞由来細胞外小胞体及びその用途に関する。
【0002】
〔背景技術〕
一般に、炎症反応は、生体の細胞や組織に基質的変化をもたらす侵襲による損傷を修復及び再生するための生体防御反応過程であり、この反応過程には、局所の血管、体液の各種組織細胞及び免疫細胞などが作用する。正常に外部侵入菌によって誘導される炎症反応は生体を保護するための防御システムであるのに対し、異常に過度な炎症反応が誘導されると様々な疾患につながるが、このような疾患を炎症疾患と総称する。前記炎症疾患は、外部刺激によって活性化された標的細胞から分泌される様々な炎症媒介物質が炎症を増幅及び持続させて人体の生命を脅かす疾患であり、急性炎症、膀胱炎のような膀胱内での疾患、リウマチ関節炎のような関節内での疾患、乾癬などの形態で現れる皮膚疾患、及び気管支喘息などのアレルギー性炎症疾患などを含む。
【0003】
特に、間質性膀胱炎(IC)は疼痛、例えば骨盤痛の症候、及び下部尿路症候群(LUTS)、例えば増加した頻尿/切迫尿を特徴とする、原因が突き止められていない慢性膀胱疾患である。近年、この用語は、この複合症候を集合的に開示するために、ICと共に疼痛性膀胱症候群(PBS)([MacDiarmid SA et al.Rev Urol 2007;9(1):9-16])又は膀胱疼痛症候群(BPS)([(van der Merve et al.European Urology 53(2008)60-67])を含むもの、すなわち、IC/BPS、又はIC/PBS/BPSへと変化している。
【0004】
IC/PBS/BPSの有病率は、臨床的に確認された疾病を有する100,000名の女性当たりに67~230名と多様であり、しばしば子宮内膜炎、再発性尿路感染、過敏性膀胱又は外陰部疼痛と誤診断又は低診断されるため、この数値は恐らくより一層高いだろう(Forrest J B et al.Clinical Courier 2006;24(3):1-8)。ICは生活の質に相当な影響を及ぼし、旅行、家族関係及び活動に影響を及ぼし(Slade D et al.Urol 1997;49(5A Suppl):10-3)、また憂鬱性症候群と関連している(Rothrock N E et al.J Urol 2002;167:1763-1767)。
【0005】
前記IC/PBS/BPSは、単一の病因は未だ確認されておらず、主に、痛覚過敏、慢性膀胱疼痛及び排尿障害を起こす(Forrest J B et al.Clinical Courier 2006;24(3):1-8)。
【0006】
細胞外小胞体は、人間と動物の他にも、昆虫、植物、微生物などの様々な真核細胞から分泌される様々なサイズの脂質二重膜構造の小胞体で、中でも、ナノレベルの粒径を有する微細小胞体をエクソソーム(exosome)という。エクソソームは、細胞が含有するタンパク質、核酸、脂質、炭水化物などの特定分子を含みながら、脂質二重層でそれらの分子を安定に保護し、分泌後に他の細胞にそれらを伝達する情報伝達の役目を担う。
【0007】
エクソソームは、細胞膜の構造と同じ二重リン脂質膜からなる数十~数百ナノミリメートルサイズの細胞外小胞体で、内部にはエクソソームカーゴ(cargo)と呼ばれるタンパク質、核酸(mRNA、miRNAなど)などが含まれている。エクソソームカーゴには広範囲な信号伝達要素(signaling factors)が含まれ、これらの信号伝達要素は、細胞タイプに特異的であり、分泌細胞の環境によって異なるように調節されることが知られている。エクソソームは、細胞が分泌する細胞間信号伝達媒介体であり、これを通じて伝達された様々な細胞信号は、標的細胞の活性化、成長、移動、分化、脱分化、死滅(apoptosis)、壊死(necrosis)を含む細胞行動を調節するものと知られている。エクソソームは、起源細胞の性質及び状態によって特異的な遺伝物質と生体活性因子が含まれている。増殖する幹細胞由来エクソソームは、細胞の移動、増殖及び分化のような細胞行動を調節し、組織再生に関連した幹細胞の特性が反映されている(Nature Review Immunology 2002(2) 569-579)。
【0008】
しかしながら、エクソソームを用いた一部疾患の治療に対する可能性提示などの様々な研究がなされているにもかかわらず、より綿密な臨床及び非臨床研究が必要であり、特に、エクソソームが作用する様々な標的を科学的に究明し、エクソソームを様々な疾患治療に応用できる技術の開発が必要な実情である。
【0009】
そこで、本発明者らは、幹細胞から由来したエクソソームの新しい用途に対して鋭意研究を重ねる中で、幹細胞培養液から分離されたエクソソームがCOL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2から選ばれる1種以上のタンパク質を高発現させることで幹細胞自体や幹細胞培養液の安全性問題を解決することができ、間質性膀胱炎を含む様々な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、間質性膀胱炎を含む様々な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的な幹細胞由来細胞外小胞体(extracellular vesicle)を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む傷治癒用組成物を提供することにある。
【0013】
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的を達成するために、本発明は、COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2から選ばれる1種以上のタンパク質を高発現させる幹細胞由来細胞外小胞体を提供する。
【0014】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記幹細胞由来細胞外小胞体は、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体又は培養液にTGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体に比べて前記タンパク質を高発現させることができる。
【0015】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記幹細胞由来細胞外小胞体は、TGF-β1を高発現させることができる。
【0016】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記幹細胞由来細胞外小胞体は、TGF-β1を50~1,000pg/1×109粒子の量で発現させることができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記幹細胞由来細胞外小胞体は、COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2タンパク質を高発現させることができる。
【0018】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記幹細胞由来細胞外小胞体は、(a)対象体から分離された幹細胞を培養して細胞凝集体(cell aggregate)を形成する段階;及び、(b)前記細胞凝集体を、TGF-β(Transforming growth factor beta)を含む培養液で3次元培養する段階;を含む方法で製造されたものであってよい。
【0019】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記幹細胞は、中間葉幹細胞であってよい。
【0020】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記段階(a)は、多重ウェル(multi-well)培養容器で幹細胞を浮遊培養(suspension culture)することによって行われてよい。
【0021】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記TGF-βは、TGF-β3であってよい。
【0022】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記段階(b)は、前記細胞凝集体を浮遊状態で回転振盪培養(orbital shaking culture)することによって行われてよい。
【0023】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記回転振盪培養は、50~70rpmの回転速度で行われてよい。
【0024】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記幹細胞由来細胞外小胞体は、30~150nmの平均直径を有してよい。
【0025】
また、本発明の他の目的を達成するために、本発明は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0026】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記炎症疾患又は自己免疫疾患は、膀胱炎、リウマチ関節炎、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身皮膚硬化症、大膓炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、ベーチェット病(Bechet’s disease)、川崎病(Kawasaki’s disease)、原発性胆汁性硬化症(primary biliary sclerosis)、原発生硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative olitis)、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease,GVHD)、又はクローン病(Crohn’s disease)であってよい。
【0027】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記膀胱炎は、間質性膀胱炎(Interstitial Cystitis)、慢性膀胱炎、及びケタミン誘発膀胱炎から選ばれる1種以上であってよい。
【0028】
また、本発明のさらに他の目的を達成するために、本発明は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む傷治癒用薬学組成物を提供する。
【0029】
〔発明の効果〕
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2から選ばれる1種以上のタンパク質を高発現させることによってTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの量を顕著に減少させるので、様々な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的である。
【0030】
特に、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)動物モデルに投与する場合に、IC/BPS誘導過程で荒れた膀胱内壁が回復し、炎症程度が緩和し、膀胱内圧が回復し、対照群と類似する排尿周期を示すので、間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群に対して優れた治療効能がある。
【0031】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、細胞の移動(migration)を顕著に増加させ、傷治癒効果に優れので、傷治癒用に有用に利用可能である。
【0032】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕本発明の方法による中間葉幹細胞3次元培養過程を示す図であり、細胞凝集体形成(
図1A)及び回転撹拌器を用いた3D培養(
図1B)過程をそれぞれ示す。
【0033】
〔
図2〕各培養条件によるエクソソームの収率を示す図である。
【0034】
〔
図3〕TGF-β処理によるPDI値の変化を示す図であり、TGF-βを処理した3D振盪培養条件では単一ピーク(one peak)が見られることを示す。
【0035】
〔
図4〕TGF-βがT細胞増殖に及ぼす影響を示す図である。それぞれPHAを用いてPBMCの増殖を誘発した後、陰性対照群(無処理群)、陽性対照群(MSC処理群)、3D振盪培養条件のみを適用したエクソソーム(3D-EV)、3D振盪培養条件下でTGF-β3を培養液に添加して得られたエクソソーム(T-3D-EV)のT細胞抑制効果を確認した(
図4A)。その結果、TGF-βを処理した3D振盪培養条件で得たエクソソーム(T-3D-EV)が最も顕著なT細胞抑制効果を有することが確認され(
図4B及び
図4C)、本発明の方法によって得られたエクソソームは、収率の他に機能も強化していることが見られた。
【0036】
〔
図5〕
図5Aは、動的光散乱(dynamic light scattering,DLS)分析によってエクソソームのサイズを調べた結果を示す図である。
図5Bは、エクソソームの形態及び構造を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果である。
図5Cは、CD9、CD63、Flotillin-1及びAlixの発現を確認するためのウェスタンブロッティング分析結果を示す。
図5Dは、流細胞分析によってエクソソーム表面の免疫表現型分析を行った結果を示す。
図5Eは、生産されたエクソソームのTGF-β1含有量を酵素結合免疫吸着検査(ELISA)によって確認した結果を示す。
【0037】
〔
図6〕トランスウェル移動分析によってヒト線維芽細胞(NHDF)においてエクソソーム投与による細胞移動能力増加を確認した結果を示す写真であり(左側)、右側は、Image Jを用いて相対的な染色程度を数値化して表現したグラフである。
【0038】
〔
図7〕生検パンチで傷を生成した動物モデルにエクソソームを投与して傷治癒能の経時変化を確認した結果を示す図である。
図7Aは、生検パンチで傷を生成した動物モデルにエクソソームを投与した後、一定時間ごとに傷部位を撮影した写真である。
図7Bは、
図7Aの傷部位のサイズを示すグラフである。
【0039】
〔
図8〕生検パンチで傷を生成した動物モデルにエクソソームを投与して時間経過による傷治癒能を確認しながら、傷誘発9日後に傷誘発部位の組織学的分析を行った結果である。
【0040】
〔
図9〕Raw264.7細胞においてLPSで誘導された炎症反応がエクソソームの投与によって有意に減少したことを確認した結果である。
【0041】
〔
図10〕LPS及びエクソソームを共に投与して培養したRaw264.7細胞の培養液の上澄液内で炎症性サイトカインであるTNF-α及びIL-6の濃度が顕著に減少したことを確認した結果である。
【0042】
〔
図11〕LPS毒素による内毒素血症マウスモデルにおいてエクソソーム投与によるTNF-α及びIL-6減少効果を確認した結果を示す図である。
【0043】
〔
図12〕SV-HUC-1(ヒト尿路上皮細胞)にエクソソームを濃度別に処理して細胞増殖を確認した結果を示す図である。
図12Aは、SV-HUC-1にエクソソームを濃度別に処理した後、細胞増殖率を示すグラフであり、
図12Bは、細胞増殖に関連したP-AKTとP-ERKの発現量を確認した結果である。
【0044】
〔
図13〕トランスウェル移動分析を用いて、ヒト尿路上皮細胞(SV-HUC-1)においてエクソソーム投与による細胞移動能力増加を確認した結果を示す図である。
図13Aは、クリスタルバイオレット(Crystal violet)染色を用いて、トランスウェルの反対側に移動した細胞を視覚的に確認した写真である。
図13Bは、
図13AのImage Jを用いて示した相対的な細胞コンフルエンシーを示すグラフである。
【0045】
〔
図14〕間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルを製造し、エクソソーム投与による治療効果を評価するための試験デザイン概要図である。
【0046】
〔
図15〕間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいてエクソソーム投与後に膀胱組織の形態及び炎症程度を確認した図である。
図15Aは、IC/BPSマウスモデルの膀胱組織をH&E染色した結果であり、
図15Bは、マッソントリクローム(masson’s trichrome)染色した結果であり、
図15Cは、トルイジンブルー(toluidine blue)染色した結果であり、
図15Dは、前記染色によって線維化(Fibrosis)程度と肥満細胞(Mast cell)の浸透を確認した結果を示すグラフである。
【0047】
〔
図16〕間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいてエクソソーム投与後に抽出された膀胱組織からmRNAを抽出し、炎症関連サイトカイン(TNFα、IL6)の発現量(
図16A)、尿路上皮マーカー(UPK1A、UPK1B、UPK2)の発現量(
図16B)、及びIC/BPSにおいて発現する遺伝子(KLRB1、PSMB9、ITGAL)の発現量(
図16C)を確認した結果である。
【0048】
〔
図17及び
図18〕間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいてエクソソーム投与による膀胱内圧及び排尿周期の回復効果を確認した結果を示す図である。
【0049】
〔
図19〕各エクソソームに含まれているタンパク質体分析結果を示す図である。
図19Aは、各エクソソームに含まれているタンパク質を定量分析した結果である。
図19Bは、各エクソソームに含まれている総タンパク質の存在量(abundance)分布を示すグラフである。
図19Cは、各エクソソームに対して遺伝子オントロジー(GO)分析を行った結果である。
図19Dは、Vesiclepediaに報告されたデータセットと本研究から発見されたEVタンパク質体とを比較した結果である。
【0050】
〔
図20〕
図20Aは、クラスタリング分析によって導出された4個のクラスターのうち、本発明のエクソソームであるT-a3D-EV試料において特異的に変化するタンパク質を示す図である。
図20Bは、主成分分析(Principal component analysis)によって各エクソソームグループ間の分離程度を識別指数(Discrimination index)で示した結果を示す図である。
図20Cは、二元比較方式によって培養条件(2D及び3D)及びTGF-β3処理の有無によるDEP(Differentially expressed protein)数を確認した結果を示す図である。
【0051】
〔
図21〕
図21Aは、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)によって本発明のエクソソームT-a3D-EVのPI3K-AKT信号伝達経路及びintegrin1経路での濃縮された遺伝子セット、標準化された濃縮点数(NES)及びp値をそれぞれ示す。
図21Bは、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)によって、濃縮された遺伝子グループをPI3K-AKT信号伝達経路及びintegrin1経路に分けて示す図である。
図21Cは、二元比較分析(T-a3D-EV/2D-EV、a3D-EV/2D-EV、及びT-a3D-EV/a3D-EV)によって、各エクソソーム間の差別化したり共通するタンパク質の数を示すベンダイアグラムを生成し、このうち、T-a3D-EV/2D-EV及びT-a3D-EV/a3D-EVs間に共通する領域のDEP28の遺伝子オントロジー(GO)分析結果である。
図21Dは、本発明のエクソソームT-a3D-EVにおいて特異的な特徴を有するタンパク質である28個のDEPのうち5個のタンパク質(S100A10、SDDCP、ACTG1、GIPC1及びEIF4E)がHuriデータベースの113個の相互作用体(interactors)と高い信頼点数でマップされた結果を示す図である。
図21Eは、本発明のエクソソームT-a3D-EVの生物学的機能及びそのサイクリン依存性タンパク質キナーゼ活性調節関連特徴を示す図である。
【0052】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明を詳細に説明する。
【0053】
本発明の一側面は、COL6A1(Collagen alpha-1(VI) chain)、COL6A3(Collagen alpha-3(VI) chain)、TNC(Tenascin)、EIF4E(Eukaryotic translation initiation factor 4E)、HSP90AB1(Heat shock protein HSP90-beta)、HSP90B1(Endoplasmin)、RAC1(Ras-related C3 botulinum toxin substrate1)、TGF-β1(Transforming growth factor-beta-induced protein ig-h3)、及びTGM2(Protein-glutamine gamma-glutamyltransferase 2)から選ばれる1種以上のタンパク質を高発現させる幹細胞由来細胞外小胞体に関する。
【0054】
本発明における用語「高発現」は、従来の中間葉幹細胞由来細胞外小胞体、具体的には2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体又は培養液にTGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体と比較して、細胞外小胞体内特定タンパク質などの含有量、分泌量又は発現量が測定可能な程度に有意に増加したことを意味し、具体的には、含有量、分泌量又は発現量が40%以上増加したことを意味し、より具体的には、50%以上増加したことを意味し、さらに具体的には60%以上増加したことを意味し、特に具体的には80%以上増加したことを意味し、最も具体的には100%以上増加したことを意味する。
【0055】
本発明における用語「細胞外小胞体(extracellular vesicle)」は、様々な細胞において多嚢体と原形質膜の融合によって細胞外環境に分泌される30~1,000nmの範囲の直径の脂質二重膜構造の小嚢を意味する。
【0056】
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、特に、TGF-β1を高発現させる。本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、TGF-β1を、50~1,000pg/1×109粒子、好ましくは100~800pg/1×109粒子、より好ましくは250~400pg/1×109粒子の量で発現させることができる。言い換えると、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のTGF-β1発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のTGF-β1発現レベルに比べて少なくとも5倍以上、好ましくは5~15倍、より好ましくは6~12倍、さらに好ましくは7~10倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のTGF-β1発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のTGF-β1発現レベルに比べて少なくとも2倍以上、具体的には3倍以上、より具体的には3~10倍、さらに具体的には3~6倍、特に具体的には3~5倍であってよい。
【0057】
前記TGF-β1は、組織の損傷が起きる場合に、当該組織を復旧するための抗炎及び組織再生に非常に重要な役割を担う。特に、間質性膀胱炎疾患において膀胱組織での抗炎、尿路上皮細胞の再生、血管生成、及び小便電解質の透過を防ぐための基質(Matrix)の生成などの重要な役割を果たすことができる(Ju,Cynthia,and Pranoti Mandrekar.“Macrophages and alcohol-related liver inflammation.” Alcohol research:current reviews 37.2(2015):251.)。
【0058】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A1発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A1発現レベルに比べて少なくとも10倍以上、好ましくは10~30倍、さらに好ましくは15~25倍、特に好ましくは18~22倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A1発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A1発現レベルに比べて少なくとも5倍以上、具体的には5~10倍、より具体的には6~8倍であってよい。
【0059】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A3発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A3発現レベルに比べて少なくとも1.4倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.5~2.5倍、さらに好ましくは1.5~2倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A1発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のCOL6A3発現レベルに比べて少なくとも1.5倍以上、具体的には1.5~3倍、より具体的には1.5~2.5倍であってよい。
【0060】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のTNC発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のTNC発現レベルに比べて少なくとも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは2~4倍、さらに好ましくは2.5~3.5倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のTNC発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のTNC発現レベルに比べて少なくとも5倍以上、具体的には5~10倍、より具体的には7~9倍であってよい。
【0061】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のEIF4E発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体又はTGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のEIF4E発現レベルに比べて少なくとも2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは3~6倍、さらに好ましくは3.5~5倍であってよい。
【0062】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90AB1発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90AB1発現レベルに比べて少なくとも2倍以上、好ましくは2~4倍、より好ましくは3~4倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90AB1発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90AB1発現レベルに比べて少なくとも1.5倍以上、具体的には1.5~3倍、より具体的には1.5~2倍であってよい。
【0063】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90B1発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90B1発現レベルに比べて少なくとも20倍以上、好ましくは20~40倍、より好ましくは20~30倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90B1発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のHSP90B1発現レベルに比べて少なくとも5倍以上、具体的には5~10倍、より具体的には6~8倍であってよい。
【0064】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のRAC1発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のRAC1発現レベルに比べて少なくとも2倍以上、好ましくは2~5倍、より好ましくは3~4.5倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のRAC1発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のRAC1発現レベルに比べて少なくとも1.5倍以上、具体的には1.5~3倍、より具体的には1.5~2倍であってよい。
【0065】
また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のTGM2発現レベルは、2次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のTGM2発現レベルに比べて少なくとも5倍以上、好ましくは5~15倍、より好ましくは10~15倍であってよい。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体内のTGM2発現レベルは、TGF-βを添加せずに3次元培養した幹細胞由来細胞外小胞体内のTGM2発現レベルに比べて少なくとも2倍以上、具体的には2~5倍、より具体的には3~5倍であってよい。
【0066】
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、前記COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2から選ばれる1種以上のタンパク質を高発現させることによって、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの量を顕著に減少させ、様々な炎症疾患、好ましくは膀胱炎、特に間質性膀胱炎を予防、緩和、改善又は治療することができる。また、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、細胞の移動(migration)を顕著に増加させ、傷治癒効果に非常に優れている。
【0067】
一具現例において、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1、及びTGM2タンパク質を高発現させるものであってよい。
【0068】
一具現例において、本発明の細胞外小胞体は、(a)対象体から分離された幹細胞を培養して細胞凝集体(cell aggregate)を形成する段階;及び、(b)前記細胞凝集体を、TGF-β(Transforming growth factor beta)を含む培養液で3次元培養する段階;を含む方法で製造されたものであってよい。
【0069】
本発明における用語「幹細胞(stem cell)」は、組織を構成する各細胞に分化(differentiation)される前段階の未分化細胞で、特定分化刺激(環境)下で特定細胞に分化し得る能力を有する細胞を総称する。幹細胞は、細胞分裂が停止した分化された細胞とは違い、細胞分裂によって自身と同じ細胞を生産(self-renewal)でき、分化刺激が加えられると刺激の性格に応じて様々な細胞に分化し得る、分化の柔軟性(plasticity)を有することが特徴である。
【0070】
本発明で用いられる幹細胞は、幹細胞の特性、すなわち、未分化、無限増殖及び特定細胞への分化能を有し、再生しようとする組織に分化誘導が可能な細胞であればいずれも使用可能である。
【0071】
一具現例において、本発明で用いられる幹細胞は、中間葉幹細胞であってよい。
【0072】
本発明における用語「中間葉幹細胞」とは、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、神経細胞、心筋細胞への分化が可能な多分化能(multipotency)を有する幹細胞を意味する。中間葉幹細胞は、螺旋状の形態と基本的な細胞表面標識子CD73(+)、CD105(+)、CD34(-)、CD45(-)の発現程度によって識別されてよく、多分化能に加えて、免疫反応を調節する機能も有する。
【0073】
一具現例において、前記段階(a)は、多重ウェル(multi-well)培養容器で幹細胞を浮遊培養(suspension culture)することによって行われてよい。
【0074】
本発明における用語「浮遊培養(suspension culture)」は、培養対象細胞を基質(substrate)などに固定させずに、培養液内で浮遊(floating)する状態で培養することを指す。そこで、用語「浮遊培養」は、「3次元培養(3-dimensional culture)」と同じ意味で使われる。付着(adhesion)依存性である幹細胞は、浮遊培養時に細胞凝集を起こし、このような凝集に含まれらずに単独で浮遊する細胞は細胞死(apoptosis)を誘発して死滅するので、細胞はその付着特性に合う環境が作られる必要がある。本発明によれば、複数のウェルを有する多重ウェルで幹細胞を浮遊培養することによって、ウェルサイズによるサイズの細胞凝集体が形成される。そこで、本発明は、同じサイズの規格化された幹細胞凝集体を大量で得ることができる。
【0075】
本発明における用語「細胞凝集体(aggregate)」は、単一層(monolayer)ではなく3次元的な成長が許容された浮遊培養などの環境で培養された細胞が自己凝集(self aggregation)しながら形成された3次元構造の細胞凝集の塊を意味する。3次元培養の結果として作られた細胞凝集体は、幹細胞が由来した生体内組織と類似な環境を提供し、サイズ及び自己凝集した細胞の数によって球形(sphere)であってもよく、球形以外の形態であってもよい。球形の細胞凝集体はスフェロイド(spheroid)と呼ばれるが、スフェロイドは幾何学的に完全な球形である必要はない。
【0076】
本発明における用語「細胞培養液」は、糖、アミノ酸、各種栄養物質、無機質などのように細胞の成長及び増殖に必須の要素を含む、インビトロで細胞成長及び増殖のための混合物を意味する。
【0077】
前記細胞培養用培地にさらに含み得る成分は、例えば、グリセリン、L-アラニン、L-アルギニンヒドロクロリド、L-システインヒドロクロリド-モノハイドレート、L-グルタミン、L-ヒスチジンヒドロクロリド-モノハイドレート、L-リシンヒドロクロリド、L-メチオニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-バリン、L-アスパラギン-モノハイドレート、L-アスパラギン酸、L-シスチン2HCl、L-グルタミン酸、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-チロシンジナトリウム塩ジハイドレート、i-イノシトール、チアミンヒドロクロリド、ナイアシンアミド、ピリドキシンヒドロクロリド、ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、葉酸、リボフラビン、ビタミンB12、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、リン酸水素ナトリウムモノハイドレート(NaH2PO4-H2O)、硫酸銅ペンタハイドレート(CuSO4-5H2O)、硫酸第二鉄ヘプタハイドレート(FeSO4-7H2O)、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、硫酸亜鉛ヘプタハイドレート(ZnSO4-7H2O)、D-グルコース(デキストロース)、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチンNa、リノレン酸、リポ酸、プトレシン2HCl、及びチミジンを含むが、これに限定されるものではない。
【0078】
本発明に係る細胞培養用培地は、人為的に製造して使用したり、或いは商業的に市販されるものを購入して使用することができる。商業的に市販されている培養用培地の例は、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、α-MEM(Alpha Modification of Eagle’s Medium)、F12(Nutrient Mixture F-12)、及びDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12)を含むが、これに限定されるものではない。
【0079】
一具現例において、前記多重ウェル(multi-well)培養容器は、ウェル当たり300~500μmのサイズを有してよい。より好ましくは、350~450μmのサイズを有し、最も好ましくは約380~420μmのサイズを有してよい。
【0080】
一具現例において、前記浮遊培養は、前記多重ウェル(multi-well)培養容器内のウェル当たりに300~500個、好ましくは350~450個、より好ましくは約380~420個の細胞を分注することによってなされてよい。
【0081】
一具現例において、前記TGF-βは、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3から選ばれる1種以上であってよく、好ましくはTGF-β3であってよい。
【0082】
一具現例において、前記段階(b)は、前記細胞凝集体を浮遊状態で回転振盪培養(orbital shaking culture)することによって行われてよい。
【0083】
細胞培養時に回転を加える振盪培養は、3次元細胞凝集体に栄養分と酸素などをより円滑に供給できるという利点がある。このとき、3次元細胞凝集体を振盪培養する時の回転速度が非常に重要である。前記細胞凝集体を40rpm以下の速度で回転させる場合には、不均質な細胞凝集体が現れながら細胞自滅死を誘発するなど、細胞外小胞体の質と収率が非常に悪化することがあり、細胞凝集体を40rpm以上の速度で回転させる場合に、細胞に加えられるストレスが増加してしまう。ただし、細胞凝集体にTGF-βを適用すると、回転速度が増加することによって、細胞に加えられるストレスを抑制させることができる効果がある。
【0084】
本発明の回転振盪培養は、50~70rpm、好ましくは53~67rpm、より好ましくは55~65rpm、さらに好ましくは57~63rpmの回転速度で行われてよい。
【0085】
一具現例において、本発明の細胞外小胞体は、前記段階(b)で得た培養液から複数回の遠心分離によって細胞外小胞体を分離する段階をさらに含む方法によって得られたものであってよい。
【0086】
従来の方法で培養された幹細胞から遠心分離によって細胞外小胞体を得る場合に、遠心分離の容量限界によって十分な量の細胞外小胞体を確保することが困難であったが、本発明の方法で培養された幹細胞は、細胞当たりの細胞外小胞体の分泌量が顕著に増加することにより、遠心分離だけでも治療的有効量の細胞外小胞体を容易に得ることができる。
【0087】
一具現例において、本発明の細胞外小胞体は、100~250nmの平均直径を有し、具体的には150~220nm、より具体的には180~200nm、さらに具体的には185~195nmの平均直径を有する。このような範囲の微細直径を有する細胞外小胞体をエクソソーム(exosome)という(
図5A)。
【0088】
本発明の具体的な一実施例によれば、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体、例えばエクソソームは、従来の方法で得たエクソソームと比較して、タンパク質発現プロファイルにおいて明確な相違を示す。下記実施例に見られるように、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体が高発現させるタンパク質(COL6A1、COL6A3、TNC、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1及びTGM2)は、2次元培養又はTGF-β3処理無しで3次元培養のみを適用して得た幹細胞由来エクソソームに比べて有意に高発現するタンパク質であり(
図21B)、本発明のエクソソームの組成自体も従来にはない新規な組性を有することが分かる。
【0089】
また、本発明の具体的な一実施例によれば、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、脂肪細胞原形質膜関連タンパク質、prolyl 3-hydroxylase 1及びprostaglandin G/H synthase 2から選ばれる1種以上のタンパク質に対して陽性である。下記実施例に見られるように、前記3つのタンパク質は、2次元培養のみを適用して得た幹細胞由来エクソソームからは検出されないタンパク質である。また、前記3つのタンパク質のうち「prostaglandin G/H synthase 2」は、2次元培養又はTGF-β3処理無しで3次元培養のみを適用して得た幹細胞由来エクソソームから検出されないタンパク質であり、本発明のエクソソームは全く新しいタンパク質発現プロファイルを有することが分かる(
図19D)。
【0090】
また、本発明の他の側面は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用薬学組成物に関する。
【0091】
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体については既に詳述したので、過度な重複を避けるためにその記載を省略する。
【0092】
本発明における用語「予防」は、疾患又は疾病を保有していると診断されたことはないが、このような疾患又は疾病にかかる可能性のある対象体において疾患又は疾病の発生を抑制することを意味する。
【0093】
本発明における用語「治療」とは、(a)疾患、疾病又は症状の発展の抑制;(b)疾患、疾病又は症状の軽減;又は、(c)疾患、疾病又は症状を除去することを意味する。本発明の組成物は、T細胞媒介免疫活性を効率的に抑制することによって、過度な又は不所望の免疫反応を原因とする様々な炎症又は自己免疫疾患の症状の発展を抑制するか、これを除去又は軽減させる役割を担う。したがって、本発明の組成物は、それ自体として前記疾患治療の組成物になってもよく、或いは炎症又は自己免疫疾患に対する治療効果を有する他の薬理成分と併せて投与されて前記疾患に対する治療補助剤として適用されてもよい。そこで、本明細書における用語「治療」又は「治療剤」は、「治療補助」又は「治療補助剤」の意味を含む。
【0094】
本発明における用語「投与」とは、本発明の組成物の治療的有効量を対象体に直接投与することによって対象体の体内で同一量が形成されるようにすることをいい、「移植」又は「注入」と同じ意味を有する。
【0095】
本発明における用語「治療的有効量」は、本発明の組成物を投与しようとする個体に治療的又は予防的効果を提供するのに十分な程度で含まれた組成物の含有量を意味し、よって、「予防的有効量」を含む意味である。
【0096】
本発明における用語「対象体」は、これに限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ギニアピッグ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ又はアカゲザルを含む。具体的には、本発明の対象体はヒトである。
【0097】
一具現例において、本発明の組成物は、様々な炎症疾患に対して予防又は治療効果がある。本発明の薬学組成物を適用できる炎症疾患は、当業界に炎症疾患として公知されたものであればよく、特に限定されない。本発明の組成物で予防又は治療される自己免疫疾患又は炎症性疾患は、例えば、リウマチ関節炎、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身皮膚硬化症、大膓炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、ベーチェット病(Bechet’s disease)、川崎病(Kawasaki’s disease)、原発性胆汁性硬化症(primary biliary sclerosis)、原発生硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative olitis)、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease,GVHD)、及びクローン病(Crohn’s disease)を含むが、これに限定されるものではない。好ましくは、膀胱炎であってよい。
【0098】
一具現例において、本発明の組成物で予防又は治療される膀胱炎は、間質性膀胱炎(Interstitial Cystitis)、慢性膀胱炎、及びケタミン誘発膀胱炎から選ばれる1種以上であってよく、好ましくは間質性膀胱炎であってよい。
【0099】
本発明の一実施例では、in vivo内毒素血症動物モデルに本発明の幹細胞由来細胞外小胞体を投与する場合に、TNF-α、IL-6の濃度が顕著に減少することから、LPS毒素による内毒素血症治療効果に優れることを具体的に確認した。
【0100】
また、本発明の一実施例では、in vivo間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)動物モデルに本発明の幹細胞由来細胞外小胞体を投与する場合に、IC/BPS誘導過程で荒れた膀胱内壁が回復し、炎症程度が緩和され、膀胱内圧が回復し、対照群と類似の排尿周期を示すなど、間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群に対して優れた治療効能を示すことを具体的に確認した。
【0101】
一具現例において、本発明の薬学組成物は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を単独で含んでもよく、又は1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含んでもよい。
【0102】
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体をさらに含んでよい。経口投与用担体は、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含んでよい。また、非経口投与用担体は、水、適切なオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含んでよく、安定化剤及び保存剤をさらに含んでよい。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適切な保存剤としては、ベンズアルコニウムクロリド、メチル-又はプロピル-パラベン、及びクロロブタノールがある。本発明の薬学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤などをさらに含んでよい。その他に薬学的に許容される担体としては、次の文献に記載されているものを参考できる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0103】
本発明の組成物は、ヒトをはじめとする哺乳動物にいかなる方法で投与されてもよい。例えば、経口又は非経口で投与されてよい。非経口の投与方法としては、これに限定されないが、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、骨髄内投与、硬膜内投与、脈絡膜上腔注入(suprachoroidal injection)、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、腸管投与、局所投与、舌下投与又は直腸内投与であってよく、好ましくは静脈内投与であってよい。
【0104】
本発明の薬学的組成物は、上述したような投与経路によって、経口投与用又は非経口投与用製剤として剤形化されてよい。
【0105】
経口投与用製剤としては、本発明の組成物は粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液などの形態で当業界に公知の方法によって剤形化されてよい。例えば、経口用製剤は、活性成分を固体賦形剤と配合した後にそれを粉砕し、適切な補助剤を添加して顆粒混合物として加工することによって、錠剤又は糖衣錠剤を得ることができる。適切な賦形剤の例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトールなどを含む糖類、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉及びジャガイモ澱粉などを含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチル-セルロースなどを含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどのような充填剤が含まれてよい。また、場合によって、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はナトリウムアルジネートなどを崩壊剤として添加できる。なお、本発明の薬学的組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでよい。
【0106】
非経口投与用製剤は、注射剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、オイル剤、ゲル剤、エアゾール及び鼻腔吸込剤の形態で当業界に公知の方法によって剤形化されてよい。これらの剤形は、全ての製薬化学に一般的に公知された処方書である文献(Remington’s Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0107】
好ましくは、本発明の前記薬学組成物は、経口剤、注射剤及び軟膏剤からなる群から選ばれるいずれか一つの形態で製造されるものであってよく、より好ましくは注射剤であってよい。
【0108】
本発明の薬学組成物は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を有効量で含むとき、好ましい炎症疾患の予防、改善又は治療効果を提供することができる。本明細書において、「有効量」は、陰性対照群に比べてそれ以上の反応を示す量のことを指し、好ましくは、炎症疾患、特に間質性膀胱炎を改善又は治療するのに十分な量をいう。前記幹細胞由来細胞外小胞体は、薬学組成物全量に対して5x108~5x1010粒子/ml、好ましくは5×109~5x1010粒子/ml、より好ましくは1x1010~2x1010粒子/mlで含まれてよい。このとき、前記幹細胞由来細胞外小胞体の含有量が前記下限値未満であれば、細胞生存率には優れるが、炎症疾患改善又は治療効果が所望の程度に及ばないことがある。逆に、前記上限値を超える場合に、濃度が増加することに比例して炎症疾患の改善又は治療効果が増加しないか、毒性を示すことがある。一方、インビトロ実験の結果、本発明の幹細胞由来細胞外小胞体の濃度が前記範囲である場合には、炎症疾患の改善又は治療に対して有意な効果を示す上で、細胞毒性などの副作用は示さなかった。本発明の薬学組成物に含まれる幹細胞由来細胞外小胞体の有効量は、組成物が製剤化される形態などによって異なるであろう。
【0109】
本発明の薬学的組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、多回投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されてもよい。本発明の薬学組成物は、疾患の程度によって有効成分の含有量が異なってよい。
【0110】
本発明の薬学組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって様々に処方されてよい。本発明の薬学組成物の好ましい投与量は、成人基準で0.001~100mg/kgの範囲であってよい。
【0111】
また、本発明のさらに他の側面は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を有効成分として含む傷治癒用薬学組成物に関する。
【0112】
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体、薬学組成物及び有効量については既に詳述したので、過度な重複を避けるためにその記載を省略する。
【0113】
本発明の一実施例では、in vivo傷を生成した動物モデルに本発明の幹細胞由来細胞外小胞体を投与する場合に、傷部位の面積が有意に減少することを具体的に確認した(
図7)。
【0114】
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体は、細胞の移動(migration)を顕著に増加させ、優れた傷治癒効果を示すので、傷治癒に有用に利用可能である。
【0115】
また、本発明のさらに他の側面は、前記幹細胞由来細胞外小胞体の治療用途(for use in therapy)に関する。
【0116】
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体については既に詳述したので、過度な重複を避けるためにその記載を省略する。
【0117】
前記治療用途は、炎症疾患又は自己免疫疾患、好ましくは炎症疾患の治療用途であってよい。
【0118】
前記炎症疾患又は自己免疫疾患は、膀胱炎、リウマチ関節炎、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身皮膚硬化症、大膓炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、ベーチェット病(Bechet’s disease)、川崎病(Kawasaki’s disease)、原発性胆汁性硬化症(primary biliary sclerosis)、原発生硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative olitis)、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease,GVHD)、又はクローン病(Crohn’s disease)であってよい。
【0119】
前記膀胱炎は、間質性膀胱炎(Interstitial Cystitis)、慢性膀胱炎、及びケタミン誘発膀胱炎から選ばれる1種以上であってよい。
【0120】
また、本発明のさらに他の側面は、前記幹細胞由来細胞外小胞体を必要とする対象体(subject)に投与する段階を含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防、改善又は治療方法に関する。
【0121】
本発明の幹細胞由来細胞外小胞体については既に詳述したので、過度な重複を避けるためにその記載を省略する。
【0122】
前記「対象体(subject)」は、予防、改善、治療、観察又は実験の対象である哺乳動物のことを指し、好ましくは、炎症疾患又は自己免疫疾患の予防、改善及び/又は治療を必要とするヒト又は哺乳動物であってよい。
【0123】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、次の実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0124】
<実施例>
実施例1:中間葉幹細胞の3次元細胞培養
幹細胞の3次元細胞培養のために、ウェル当たりに400μmサイズのマイクロウェル約5900個を含むAggreWellTM400(STEMCELL Technologies;#34425)にF127溶液を処理し、ウェル当たりに約400個の臍帯由来の中間葉幹細胞(コングク大学校生命倫理委員会承認番号:7001355-202010-BR-407)をシードして120~200μm直径の範囲の均一なスフェロイド(spheroid)を生産した。非吸着培養皿にTGF-β3が含まれた培養液にスフェロイドをシードした後、3日間回転振盪器(orbital shaker,INFORS HT Celtron;#69455)で60rpm、37℃で振盪培養(shaking culture)した。3日後、得られた培養液からエクソソームを分離した。
【0125】
実施例2:エクソソーム分離及び定量
培養液300gを10分間遠心分離して細胞残渣を除去し、2000gで10分間遠心分離した後に上澄液を新しいチューブに移し、再び10,000gで30分間遠心分離して上澄液を187,000gで2時間さらに遠心分離し、ペレットをPBS 200μlに懸濁した。前記懸濁液からエクソソームを精製するためにoptiprep(BioVision;M1248)を用いて濃度勾配遠心分離(50%、30%、10%)を行った。分離するためのエクソソームサンプル(懸濁液)を50% optiprep溶液に混ぜてロードし、120,000gで2時間遠心分離して10%~30%の間のエクソソームを得た。得られたエクソソームは187,000gでもう一度遠心分離してPBS 100μlに懸濁した。
【0126】
前記培養液からエクソソームを分離した後、NTA装備(NS300,NANOSIGHT System)を用いてメーカーの指示に従ってNTA(nanoparticle tracking analysis)を行うことによってエクソソームの数及びピーク(peak)を確認した。その結果、振盪(shaking,60rpm)無しで3D培養のみを適用した場合に、一般的な2D培養環境における収率と大差がなく、3次元培養自体による効果は有意でないことを示した。なお、振盪(60rpm)無しで3D培養においてTGF-β3のみを添加するか、TGF-β3無しで3D振盪培養条件のみを適用した場合に比べて、3D、振盪(60rpm)及びTGF-β3を全て適用した群において顕著な収率増加が確認できた(
図2)。なお、TGF-βを処理した3D振盪培養条件では単一ピーク(one peak)が現れ、均質のエクソソームが生産されることが確認された(
図3)。
【0127】
実施例3:PBMC増殖アッセイ
実施例2の方法で得たエクソソームに対して、従来に報告された方法によって(Hsu,P.J.,et al.J.Vis.Exp.(106),e53265,doi:10.3791/53265(2015))PBMC増殖アッセイを行うことで、TGF-βを処理した培養液から得られたエクソソームが対照群(一般細胞培養液)に比べてT細胞抑制効果があるか否かを確認した。血液(コングク大学校病院、コングク大学校生命倫理委員会承認番号:7001355-201705-BR-181)からフィコール(ficoll)を用いてPBMCを分離した後、培養5日後にCFSE(Carboxyfluorescein succinimidyl ester,Invitrogen;#C34554)でPBMCを染色し、流細胞分析でPBMCの増殖を確認した。PHA(Phytohaemaglutinin,Sigma;#L1668)を処理してT細胞の増殖を伴う炎症環境を誘導した後、中間葉幹細胞自体のPBMC抑制効果を陽性対照群として設定した後、一般細胞培養液から得られたエクソソーム(EV)、3D振盪培養条件のみを適用したエクソソーム(3D-EV)、及び3D振盪培養条件下でTGF-β3を培養液に添加して得られたエクソソーム(T-3D-EV)のPBMC抑制効果を確認した(
図4A)。
【0128】
その結果、TGF-βを処理した3D振盪培養条件で得た本発明のエクソソーム(T-3aD-EV)が、43.1%にも達していたMSC処理群の増殖性T細胞を9.6%まで減少させ、陽性対照群に比べても80%に近い顕著な減少率を示す上、最も優れたT細胞抑制効果を示した(
図4B及び
図4C)。
【0129】
そこで、本発明の方法によって得られたエクソソームは、収率の他に機能も大きく強化されていることが分かった。
【0130】
実施例4:各エクソソームの特性分析
4-1:エクソソームのサイズ及び形態分析
エクソソームのサイズは、Nano Zetasizer(Malvern Instruments,Malvern,UK)を用いた動的光散乱(dynamic light scattering,DLS)分析によって調べ、EVの数は、ナノ粒子追跡分析機NS300(Nanosight,Amesbery,UK)を用いて測定した(
図5A)。エクソソームの形態及び構造は、80kVで透過電子顕微鏡(TEM,JEM-1010,Nippon Denshi,Tokyo,Japan)を用いて分析し、観察の結果、エクソソームの形態はカップ形又は球形であった(
図5B)。
【0131】
4-2:エクソソーム関連マーカー発現確認
Grid(Formvar/Carbon 300Mesh,Copper_FCF300-CU50/pk)上にエクソソームを付着させ、1%ホスホタングステン酸水和物(sigma,P4006)を用いて陰性染色を行った。エクソソーム関連陽性マーカーを確認するために、免疫ブロッティングでCD9(ab263023,abcam)、CD63(ab134045,abcam)、Flotillin-1(#18634,CST)、Alix(#2171,CST)タンパク質の発現を調べた。ウェスタンブロッティングの結果、エクソソームの陽性マーカーは発現したし、エクソソーム陰性マーカーであるGM130(#12480,CST)タンパク質発現は観察されなかった(
図5C)。
【0132】
4-3:エクソソーム表面の免疫表現型分析
流細胞分析によってエクソソーム表面の免疫表現型分析を行った。まず、エクソソームのサイズは、流細胞分析機を用いて分析できないサイズであるため、エクソソームの陽性マーカーであるCD9抗体が結合している2.7um Dynabead(10620D,invitrogen,Exosome-Human CD9 Flow Detection Reagent(from cell culture))をエクソソームに付けてサイズを大きくした後、CD9-BV421(BD Bioscience,743047)、CD63-PE(BD Bioscience,556020)、CD81-APC(macs miltenyi biotec,M130-119-787)抗体で標識した。後に、流細胞分析機(Beckman Coulter,CytoFlex Flow Cytometry Analyzer)を用いて、標識された抗体で生成される蛍光強度を測定した。その結果、エクソソームにおいてCD9、CD63、CD81の蛍光発現量が96%以上であることを確認した(
図5D)。分離されたエクソソームが、エクソソーム陽性マーカーが96~98%発現することからして、均質なエクソソームが分離されたことが確認できる。
【0133】
4-4:エクソソームに内在されたTGF-β1含有量測定
エクソソームに内在されたTGF-β1含有量分析のために、Human TGF-β1 DuoSet(R&D system,DY-240-05) Capture Ab製品をAncillary Reagent Kit 1(R&D system,DY007)にコートして使用した。TGF-β1が酸化されつつ活性化される性質を用いて、TGF-β1の非活性型(inactive form)と活性型(active form)の精密な測定を目標に、標本酸性化(sample acidification)をするためにSample Activation Kit 1(R&D system,DY010)を使用した。
【0134】
以降の実験過程を簡略に説明すると、Capture Abを2μg/mlの濃度で100μlロードして室温で一晩コートした後、サンプル(活性(active)/潜在(latent)型)を100μlロードして2時間反応させ、Detection Ab(50ng/ml)を100μl追加して再び2時間反応させた後、ストレプトアビジン-HRP Bを付着させた。最後に、100μlの基質(substrate)を追加して反応させた後、50μlの停止液で反応を終了させ、吸光度を測定した。吸光度は、マイクロプレートリーダーを用いて450nm波長で測定した。
【0135】
2D培養条件のみを適用したエクソソーム(2D-EV)、3D振盪培養条件のみを適用したエクソソーム(a3D-EV)、及び3D振盪培養条件下でTGF-β3を培養液に添加して得られたエクソソーム(T-a3D-EV)中に内在されたTGF-β1の量をELISAで測定した結果、Optiprep勾配精製(Optiprep-gradient purification)過程を経る前には、それぞれ、86.34pg/1×10
9、306.95pg/1×10
9、352.91pg/1×10
9の濃度で測定された。精製(purification)過程を経た後には、2D-EVではTGF-β1が検出されなかったし、a3D-EVでは86.3pg/1×10
9、T-a3D-EVでは310.6pg/1×10
9の濃度で測定され、T-a3D-EVのTGF-β1発現量がa3D-EVに比べて約3.5倍以上増加したことが確認できた。精製(purification)過程を経た各EVを用いて酸性化(acidification)を用いたTGF-β1の活性型及び非活性型の含有量を測定したときも、T-a3D-EVでのTGF-β1含有量が他の群に比べて顕著に高く測定された(
図5E)。具体的には、TGF-β1活性型は、a3D-EVにおいて3.8pg/1×10
9、T-a3D-EVにおいて36.9pg/1×10
9の濃度で測定され、T-a3D-EVのTGF-β1活性型の含有量がa3D-EVに比べて約10倍以上と示された。また、TGF-β1非活性型は、a3D-EVにおいて82.4pg/1×10
9、T-a3D-EVにおいて273.6pg/1×10
9の濃度で測定され、T-a3D-EVのTGF-β1活性型含有量が、a3D-EVに比べて約3.3倍以上と示された。
【0136】
要するに、前記T-a3D-EVは、精製過程を経た後には、活性型であれ、非活性型であれ、活性型及び非活性型の総和であれ、TGF-β1含有量が、TGF-β3添加無しで3D振盪培養条件のみを適用して得られたa3D-EVに比べて少なくとも2倍以上、具体的には3倍以上、より具体的には3~10倍、さらに具体的には3~6倍、特に具体的には3~5倍であることが見られた。一方、2D培養のみで得られた2D-EVではTGF-β1が検出されなかった。
【0137】
したがって、本発明の方法で得られたT-a3D-EVにおいててのみタンパク質TGF-β1が高発現することが分かる。
【0138】
実施例5:各エクソソームの傷治癒能分析(Wound healing Assay)
5-1:トランスウェル移動分析(Transwell migration assay)
それぞれのエクソソームが正常ヒト線維芽細胞(NHDF,Normal human dermal fibroblast)(Promocell,Cat No.C-12302)の移動性に及ぼす影響を評価しようとした。
【0139】
まず、NHDFを24ウェル8.0μmポリカーボネートメンブレントランスウェル(3422,costar)の上側ウェルに5×104細胞をシードし、DMEM高グルコース(D6429,sigma)に10% FBSと1%ペニシリンストレプトマイシン(Cat no.1514-163,gibco)を入れた培地(media)で培養した。24時間後に、上側ウェルに、1%ペニシリンストレプトマイシンを入れたDMEM高グルコースSFM(Serum free medium)を入れ、下側ウェルにSFM(Serum free medium)にそれぞれの細胞外小胞体を1×109粒子/ウェルの濃度に希釈して処理した。24時間後に、DPBS(Gibco,10010-031)で1回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド(biosesang,P2031)を入れて常温で20分間インキュベーションした。その後、GibcoTM DPBSで1回洗浄した後、1%クリスタルバイオレット(sigma,V5265)を入れて常温で15~20分間染色した。その後、DPBSで2~3回洗浄した後、写真を撮った。全ての過程において溶液は上側ウェルに100μl、下側ウェルに500μlを入れて行った。Image Jを用いて相対的な細胞のコンフルエンシー(confluency)をグラフで示した。
【0140】
Image Jを用いて相対的な染色程度を確認した結果、対照群(Control)に比べて2D-EV、a3D-EV、T-a3D-EVグループにおいて細胞の移動(migration)がそれぞれ、約4.35倍、7.85倍、10.4倍増加することを確認した(
図6)。
【0141】
5-2:インビボ傷治癒能確認
6週齢雌BALB/cヌードマウスを1週間適応させた後、実験に使用した。麻酔後に、背部に8mmの生検パンチ(Kai,BP-80F)を用いて全層傷を生成した後、エクソソーム(1×109粒子)を傷の周囲に3回に分けて注射し、対照群にはPBSを注射した。傷部位を保護するために、8mm生検パンチを用いて穴を開けたシリコン(0.5mmT)とテガダーム(Tegaderm tape,1622W)を用いたし、一定時間ごとに傷部位写真撮影時に、8mmの穴が開いたシリコンを用いて比較写真を撮った。
【0142】
それぞれ6匹のマウスに生検パンチで形成させた傷部位のサイズを比較した結果、T-a3D-EV処理グループにおいて傷部位の面積が有意に減少したことを確認した(
図7)。0日基準で相対的な傷面積を表1に示した。
【0143】
【0144】
上記の表1及び
図7から、T-a3D-EV処理グループにおいて傷部位の面積が顕著に減少する効果を示すことが確認できる。
【0145】
5-3:組織学的分析
5-2の実験において、傷誘発9日後に、円形傷全体が含まれた組織を採取し、4%パラホルムアルデヒド溶液に24時間固定した後、傷中央を通過する切片を取って脱水させた後、パラフィンブロックに包埋した。組織切片器で組織を切断した後、ポリリシンでコートされたスライドに付けてパラフィン除去及び含水過程を行った後、H&E(Hematoxylin-Eosin)染色を行った。一方、マッソントリクローム染色のためにスライドをWeigert’s鉄ヘマトキシリン(Iron Hematoxylin)溶液に10分、Biebrich緋酸フクシン(Biebrich Scarlet-Acid Fuchsin)とアニリンブル(Aniline Blue)にそれぞれ5分間置いた。
【0146】
H&E染色及びマッソントリクローム染色を用いて傷誘発部位の組織学的分析を行った結果、H&E染色によって傷部位の面積が、T-a3D-EVを処理した組織において非常に減少することを確認した。また、マッソントリクローム染色によってT-a3D-EVを処理した組織において傷治癒の最後の段階であるECMリモデリングが多く進行されたことを確認した(
図8)。
【0147】
実施例6:各エクソソームの抗炎症効能分析
6-1:LPS誘導炎症サイトカインの濃度分析
Raw264.7細胞を48ウェルプレートに1.5×105細胞をシードし、12時間後に、LPS 10ng/ml(L4391-1MG,Sigma)とデキサメタゾン10uM(50002220,biogems)、それぞれのエクソソーム(1×109粒子)を500μlの10%エクソソーム除去(exosome depleted)DMEM-高グルコースに処理した。培養液に処理して24時間後に、培養液からGriess試薬(5%リン酸中の0.1% N-(1-ナフチル)エチレンジアミドジヒドロクロリド及び1%スルファニルアミド)と反応させた後に540nmで吸光度を測定し、一酸化窒素(Nitric oxide)を測定した。Raw264.7をLabozol試薬(LaboPass,CMRZ001)で溶解させ、メーカーの説明書に従って総RNAを分離した。NanoDrop分光光度計(ND-ONE)を用いて、精製されたRNAの定量化した。cDNA合成は、M-MuLV逆転写キット(Labopass,CMRT010)及びオリゴdTプライマーを用いて行った。実時間PCR(Amersham Phamacia Biotech 7500)は、HiPi Real-Time PCR 2x Master Mix(SYBR Green,ROX,500rxn)(ELPISBIOTECH,EBT-1802)を使用した。使用されたプライマー配列を下記の表2に記載した。
【0148】
【0149】
各エクソソームの抗炎症効果を確認するために、Raw264.7をLPSで刺激し、デキサメタゾン、2D-EV、a3D-EV、T-a3D-EVをそれぞれ処理した後、培養液から酸化窒素の濃度を確認し、細胞からそれぞれの炎症反応因子のmRNA発現レベルを確認した結果、Raw264.7細胞においてLPSで誘導された炎症反応がT-a3D-EVによって有意に減少し得ることを確認した(
図9)。
【0150】
また、前記培養液上澄液からmTNF-alpha(BGK06804,peprotech)、mIL-6(BGK08505,peprotech)、mIL-10(BGK18893,peprotech)ELISAキットを用いて各サイトカインの濃度を測定した結果、T-a3D-EVグループにおいて顕著な減少が確認できた(
図10)。
【0151】
このような結果から、本発明のT-a3D-EVが炎症性サイトカインの発現及び生成を抑制し、LPS毒素による内毒素血症マウスモデルの治療効果を呈し、炎症性疾患の予防又は治療用途に有用に利用可能であることが分かる。
【0152】
6-2:内毒素血症マウスモデル
8週齢雌C57BL/6マウスを1週間適応させた後、実験に使用した。LPS 2.5mg/kg単独投与、又はそれぞれのエクソソーム(5×109粒子)と共に総200μlを28Gニードルを用いて尾静脈(tail-vein)に注射した。2時間後にマウスを犠牲させ、脾臓を剥がしてPBSで洗浄し、使用するまで-80℃に保管した。前記脾臓はプロテアーゼ阻害剤カクテル(Protease inhibitor cocktail)(87786,Invitrogen)含有のRIPAバッファー(CBR002,LPS溶液)を用いてタンパク質を抽出したし、mTNF-alpha(BGK06804,peprotech)、mIL-6(BGK08505,peprotech)、mIL-10(BGK18893,peprotech)ELISAキットを用いて各サイトカイン濃度を測定した。
【0153】
その結果、T-a3D-EVを処理したグループにおいてTNF-α、IL-6の濃度が顕著に減少することを確認した(
図11)。
【0154】
実施例7:各エクソソームの間質性膀胱炎治療効能分析
7-1:細胞増殖及びシグナル確認
ヒトの尿路上皮(urothelium)細胞であるSV-HUC-1(ATCC,CRL-9520)にエクソソームを濃度別に処理した後、細胞の増殖を確認した。
【0155】
各エクソソームの濃度別効果を確認するために96ウェルプレート(30096,SPL)に1.5×104細胞をシードし、12時間後にエクソソーム(2D-EV、a3D-EV、T-a3D EV)を濃度別(1×107、1×108粒子/ウェル)で処理した。24時間後にez-cytox(EZ-3000,DOGEN)を処理し、1時間後にBio-RAD x-Mark TM分光光度計(Bio-Rad Laboratories,USA)を用いて吸光度(450nm)を測定した。
【0156】
また、前記各エクソソームを処理したSV-HUC-1細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテール(87786,Invitrogen)含有のRIPAバッファー(CBR002,LPS溶液)を用いて溶解させ、WCL(Whole cell lysate)を分離した。得られたタンパク質は、BCA analysis(23227,Thermo)を用いて定量した後、4~12% Bis-Tris Flus Gels(NW04125BOX,Invitrogen/NW04122BOX,Invitrogen)で電気泳動し、NCメンブレン(IB23001,Invitrogen)に転移させた。1次抗体(1:1000)を4℃で一晩反応させ、1x TBST(TLP-118.1,TrnasLab)を用いて3回洗浄した。2次抗体を常温で2時間反応させ、1x TBSTで洗浄した。全ての抗体は1xブロッキングバッファー(TLP-115.1G,Translab)に希釈して使用したし、InvitrogenTM iBrightTM Imagers(CL-1000)を用いて確認した。前記1次及び2次抗体は、次のような製品を使用した:P-AKT(sc-293125,santa cruz)、T-AKT(CSB-PA000855,cusabio)、P-ERK(CSB-PA000749,cusabio)、T-ERK(B7074,Tebu-bio)、β-actin(sc-47778,santa cruz)、HRP linked anti-rabbit IgG(7074,CST)、及びHRP linked anti-mouse IgG(7076,CST)。
【0157】
前記SV-HUC-1に各エクソソームを濃度別に処理して増殖を確認した結果、濃度別に細胞増殖が増加したし、2D-EVやa3D-EVに比べてT-a3D-EVにおいて細胞増殖程度が高いことを確認した(
図12A)。また、細胞増殖に関連したAKT、ERKシグナルを確認した時にも、T-a3D-EVを処理したグループにおいてP-AKTとP-ERKの発現量が増加したことを確認した(
図12B)。
【0158】
7-2:トランスウェル移動分析(Transwell migration assay)
SV-HUC-1細胞をF-12K栄養混合物(Nutrient Mixture)(21127-022,Gibco)に10% FBSと1%ペニシリンストレプトマイシン(15140-163,GIbco)を入れた培地培養した。各エクソソームの濃度による細胞の移動程度を確認するために、24ウェル8.0μmポリカーボネートメンブレントランスウェル(3422,costar)の上側ウェルに1.5×105細胞をシードし、12時間後にエクソソームを下側ウェルに処理した。24時間後に、DPBS(10010-031,GIbco)で洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド(P2031,Biosesang)を処理し、室温で20分固定した。固定された細胞をDPBSで洗浄した後、100%メタノールで常温で20分間インキュベーション過程を経て1%クリスタルバイオレット(V5265,sigma)で常温15~20分染色した。染色液をDPBSで2~3回洗浄した後、メンブレンの上側に残っている細胞を綿棒で拭い取った。DPBS洗浄で拭い取った細胞破片を除去した後、観察した。細胞の移動程度を確認するために、image Jの平均(mean)値で細胞のコンフルエンシー(confluency)を比較してグラフで示した。
【0159】
SV-HUC-1に各エクソソームを濃度別に処理した結果、トランスウエル(Transwell)での移動程度が増加したことを確認した(
図13A)。また、各エクソソームの中でも2D-EV<a3D-EV<T-a3D-EVの順に細胞の移動程度が増加したことを確認した(
図13B)。
【0160】
7-3:間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデル
8週齢のBALB/cAnNCrlOri雌マウスを受けて2週間適応期間を置いた。アルファキサン(Alfaxan)とラムプン(rumpun)を4:1の比率に混ぜ、マウス当たりに90ulを腹腔注射して麻酔させた。尿道にカテーテル(382412,BD)を挿入して膀胱内部の尿を除去し、PBS 50μlを入れて洗浄した。5mg/mlのプロタミン硫酸塩(P3369,Sigma)を注入し、30分後にPBSで洗浄した。LPS 30μg/ml(L4391,Sigma)を注入した後、PBSで洗浄した。ホットプレートでマウスの回復を確認し、1週間飼育した。この過程を4回反復してマウスIC/BPSモデルを誘導した。実験5週目にはマウスを同じ方法で麻酔した後、マウスの下腹部を切開して膀胱の表面に各エクソソームを5×10
8粒子/30μlずつ注入した。下腹部を縫合して麻酔から回復することを確認した後、飼育した。1週後にマウスを麻酔させた後、膀胱を摘出して実験に使用した(
図14)。一部の膀胱は均質化(homogenization)後にRNAを抽出し、一部は組織セレクション及び染色によって膀胱の形態及び炎症程度を確認した。
【0161】
また、マウスの膀胱組織をセレクション(section)してH&E染色をした結果、IC/BPS誘導マウスでは膀胱内壁が荒れていることを確認したし、各エクソソームを処理したグループでは内壁が回復していることを確認した(
図15A)。さらにマッソントリクローム染色とトルイジンブルー染色によって線維化(Fibrosis)程度と肥満細胞(Mast cell)の浸透を確認し、T-a3D-EVを処理したグループにおいて炎症程度が緩和されたことを確認した(
図15B、
図15C、及び
図15D)。
【0162】
7-4:qPCR
抽出された膀胱を均質化した後、Labozol試薬(CMRZ001,コスモジンテック)に再懸濁した。クロロホルム(C2432,Sigma)をLabozolと5:1の比率に混ぜてボルテックスした。13,000rpm、15分遠心分離してRNAが溶けている上澄液を2-プロパノール(64605-0380,junsei)と1:1に混ぜ、13,000rpm、15分遠心分離した。RNAペレットを75%エタノールで洗浄した後、13,000rpm、10分遠心分離し、DEPCにRNAを再懸濁した。RNAは、rTaq Plus 5x PCR master mix(EBT-1319,ELPISBIO)を用いてcDNAを合成したし、HiPi Real-Time PCR 2x Master Mix(SYBR green,ROX)(EBT-1802,ELPISBIO)を用いて遺伝子の発現量を確認した(7500,Amersham Phamacia Biotech)。
【0163】
膀胱組織からmRNAを抽出して炎症関連サイトカイン(TNF-alpha、IL6)の発現を確認した結果、T-a3D-EVを処理した群において発現度が有意に低くなったことを確認した(
図16A)。また、尿路上皮(Urothelial)マーカー(UPK1A、UPK1B、UPK2)の発現を確認した結果、T-a3D-EVを処理した群において発現度が有意に高くなったことを確認した(
図16B)。さらに、バイオインフォマティクス(bio informatics)によってIC/BPSで発現するものと分類した遺伝子(KLRB1、PSMB9、ITGAL)の発現が有意に低くなったことを確認した(
図16C)(韓国公開特許公報第10-2331138号参照)。
【0164】
7-5:アウェイク膀胱内圧測定法(awake cystometry)
IC/BPSを誘導したマウスの膀胱にカテーテルを挿入するために、膀胱測定3日前に麻酔を誘導し、カフ付きポリエチレンカテーテル(polyethylene catheter with a cuff)(PE-50;Becton-Dickinson,Parsippany,NJ,USA)を腹部切開後に膀胱に挿入した。その後、このカテーテルを、皮下空間を通して動物の背を開けて外部に固定した。アウェイク膀胱内圧測定のために、膀胱に対する留置カテーテルを、T-チューブを通じて圧力変換器(Research Grade Blood Pressure Transducer;Harvard Apparatus,Holliston,MA,USA)に連結された両方向バルブと微細注入ポンプ(PHD ULTRATM Syringe;Harvard Apparatus)を使用した。排尿量は、滅菌食塩水を0.4mL/minの速度で膀胱に注入する状態で、変換器(Research Grade Isometric Transducer;Harvard Apparatus)に連結された流体収集器によって8分間連続して記録した。IVP(膀胱内圧)及び排尿量は、LabScribe 3.637ソフトウェア(iworks,62 Littleworth Road Dover,NH 03820,USA)を有するiWork IX-RA-834データ収集システムを用いて持続して記録した。
【0165】
IC/BPSが誘導されたマウスは、膀胱の疼痛及び機能の低下によって頻尿を示すが、T-a3D-EVを処理した群では膀胱内圧が回復し、対照群と類似の排尿周期を示す程度に回復することが見られた(
図17及び
図18)。
【0166】
上記の実験結果から、本発明の細胞外小胞体(T-a3D-EV)が間質性膀胱炎(IC)などの膀胱疼痛症候群(BPS)の治療に有用に利用可能であることが判断される。
【0167】
実施例8:エクソソーム発現タンパク質の分析
実験方法
タンパク質体(proteome)同定/定量のためのサンプル準備
WJ-MSC由来エクソソームから分離したタンパク質(20μg)を、遠心真空濃縮器(LABCONCO,CentriVap,Missouri,USA)を用いて凍結乾燥させた。前記ペレットを5%ドデシル硫酸ナトリウム及び50mMトリエチルアンモニウム重炭酸塩(pH 7.55,ThermoFisher Scientific)で構成された100mL溶解緩衝液で溶解させた。サンプルは、トリプシン/LysC混合物(Promega,Madison,WI,USA)を除いてメーカーのプロトコルに従ってS-TrapTMマイクロスピンカラム消化プロトコル(Micro Spin Column Digestion Protocol)で処理された。前記凍結乾燥したペプチドを0.1%ギ酸で溶解させた。前記溶液内のタンパク質及びペプチドの量を確認するために、溶解(lysis)後にBCA protein assay kit(Pierce)でタンパク質の量を測定したし、ペプチド濃度は、NanoDrop One分光光度計(ThermoFisher Scientific)を用いて205nmで吸光度を測定した。
【0168】
ヒトWJ-MSCの細胞ペレットをプロテアーゼ及びフォスファターゼ抑制剤カクテル(Thermo Scientific Halt)と共に5%ドデシル硫酸ナトリウム、50mMトリエチルアンモニウム重炭酸塩(pH 7.55、ThermoFisher Scientific)に溶解させた。前記サンプルをCovaris microTUBE-130 AFA(Adaptive Focused Acoustics) Fiber Screw-Caps(520216)に移し、Screw-Cap microTUBE-130ホルダー(500339)のCovaris S220 AFAで超音波処理した。前記AFA機器の媒介変数は、次の通りである:冷却器設定点-5℃、最大入射電力175W、デューティーファクター10%、バースト当たりのサイクル数200、持続時間360秒。消化(digestion)段階は、トリプシン/LysC混合物(Promega,Madison,WI,USA)を除いて、メーカーのプロトコルに従ってS-TrapTMミニスピンカラム消化プロトコル(Mini Spin Column Digestion Protocol)で行われた。溶出緩衝液(0.2%ギ酸含有物及び50%アセトニトリル含有物)に含まれているペプチドを遠心真空濃縮器で凍結乾燥させた。凍結乾燥したペプチドを50mMトリエチルアンモニウム重炭酸塩に再懸濁し、280nm波長でNanoDrop One分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を用いて「1Abs=1mg/mL」に設定されたサンプル類型オプションを用いてペプチド濃度を決定した。その後、メーカー(Thermo Scientific)の指針に従ってそれぞれのサンプルをTMT10-130N、TMT10-130C、及びTMT10-131を除いた10-plex TMT試薬(Lot number:UH284251)100μgで標識した。前記標識及び処理後に、TMT-標識されたサンプルは、C18カートリッジを用いた固体相抽出(Sep-Pak,Waters,Milford,MA,USA)で脱塩する前に1:1:1:1:1:1の比率にプーリングされた。
【0169】
ヒトWJ-MSCから分離された標識されたペプチドサンプルのサンプル複雑性を減らすために、結合しているサンプルを、XBridge C18カラム(4.6mm id×250mm長、気孔サイズ130Å、及び粒子サイズ5μm、Waters Corporation、USA)が装着されたShimadzu Prominence HPLC機器(Shimadzu,Japan)を用いて、流速0.5mL/minで分画した。その後、移動相Aとして10mMトリメチルアミン重炭酸塩(TEAB,pH 8.5)を使用し、移動相Bとして90%アセトニトリル(pH 10)に溶かした10mM TEABを使用した。前記サンプルを200μL移動相Aに溶かした後、2,100μLサンプルループに注入した。溶液Bを5~5%で15分、さらに5~45%で62.5分、45~60%で5分、60~60%で12.5分、60~5%で7.5分、及び5~5%で20分間流し、前記カラムを100%及び50%移動相Bでそれぞれ30分間洗浄した。前記分画により、Shimadzu Prominence(Shimadzu,Tokyo,Japan)のFRC-10A分画収集器を用いて30秒ごとに溶離液を収集した。生成された168個の分画を連結方式で混合することによって24個の分画を得た。各分画を凍結乾燥させ、使用するまで-20℃で保管した。
【0170】
質量分析機(Mass spectrometry)分析
Q Exactive HF-X質量分析機(Thermo Scientific)に連結されたUltiMate 3000 RSLCナノLCシステム(Thermo Scientific)でサンプルを分析した。分析のために、前記ペプチドをAcclaim PepMap 100トラップカラム(100mm×2cm、nanoViper、C18、5mm、100Å、Thermo Scientific)にロードし、EASY-SprayTM C18LC分析カラム(Analytical Column)(PepMap RSLC、75mm×50cm、C18、2mm、100Å、Thermo Scientific)を用いて分離した。各ペプチドの液体クロマトグラフィータンデム質量分析機分析のために、溶離液Aは0.1%ギ酸含有5%ジメチルスルホキシド、及び溶離液Bは0.1%ギ酸含有80%アセトニトリル及び5%ジメチルスルホキシドを使用し、50℃(溶離液Bを5~40%に150分以上;40~95%に2分以上;95%に23分維持;95~5%に10分以上;5%に15分維持)で250nL/minの流速で150分勾配で溶離した。
【0171】
質量スペクトルは、全体スキャン(MS1,m/z 350-1800)と20個のデータ従属MS/MS(MS2)スキャンとの間に自動転換されるデータ従属モードで獲得した。
【0172】
全体スキャン質量スペクトルの目標値は、最大注入時間100ms及び解像度60,000(m/z 400)で3,000,000であった。MS/MSのイオン目標値は、正規化された衝突エネルギー(27%)及び単離ウィンドウ(isolation window:1.7m/z)を適用して最大注入時間50ms及び解像度15,000(m/z 400)で100,000に設定された。反復するペプチドの動的排除を20秒間適用した。各生物学的サンプルに対して3回反復して行われた。TMT標識されたサンプルは、LC媒介変数がエクソソームサンプルと同じ方式で行われたし、MS媒介変数は次の通りである:MS1においてスキャン範囲(m/z)350-1500;MS1において解像度120,000、MS2において解像度45,000;MS1のAGCターゲット3e6、MS2のAGCターゲット1e5;MS1において最大IT(ms)は50、MS2において最大IT(ms)は96であった。データ従属モードの周期は、単離ウィンドウ(isolation window:0.7m/z)、110m/zの固定された一番目の質量及び32%のHCD衝突エネルギーにおいて各周期当たりに最も豊富な前駆体20個までMS/MSをトリガーするように設定された。
【0173】
データベース検索及び無標識定量
MaxQuant 1.6.17.0を用いて、ペプチド及びタンパク質同定及び定量化を行った。MaxQuantに含まれたAndromeda検索エンジンを用いたSwissProtヒトデータベース(2020年5月に発売、http://www.uniprot.org)から質量分析原始(raw)ファイルを検索した。MaxQuantの汚染物データベースを使用した。次のMaxQuant検索媒介変数が使用された:トリプシンを特異的酵素として選択し、システインのカルバミドメチル化を固定変形として設定し、N末端タンパク質のアセチル化及び酸化(M)を可変変形として設定した。タンパク質定量値LFQ強度が、MaxQuantで使用する前駆体強度ベース無標識定量化アルゴリズムによって生成され、「実行間一致」機能を可能にした。LFQ強度は、エクソソームサンプルに対するMax-LFQアルゴリズムの出力である。レポーターイオンは、WJ-MSCタンパク質体定量化のために、10フレックス媒介変数で修正された7フレックスTMTに設定された。FDRは、タンパク質及びペプチドスペクトル一致レベルの全てにおいて0.01に設定された。少なくとも一つの独特のペプチドによって確認されたタンパク質が使用された。他の設定は基本値に維持された。
【0174】
タンパク質体及び実験データの統計分析
サンプル間のタンパク質体データの差分分析のためにソフトウェアPerseus(バージョン1.6.14.0)が使用された。まず、様々な汚染物と逆データベースから同定されるデータを全て除去した。データセットの品質を評価するために、PerseusソフトウェアがPCAに使用された。エクソソームEVサンプル及びTMT標識サンプル(中央値排除による正規化)に対する正規化されたタンパク質存在量(abundance)値をlog2スケールに変換した。各サンプルの3回反復試験物がグループ化されたし、少なくとも3個の有効な値が1つ以上のグループ化に必要だった。欠落した値は、基本媒介変数(幅:0.3、下方移動:1.8)を用いて正規分布から取り込んだ乱数で代替された。標本間の統計的に有意な差異を探すために、Benjamini-Hochberg FDR(0.05 cut-off)を使用してt検定を行った。濃縮Z点数値の階層的クラスタリングは、InstantClueソフトウェアを用いて行われた。ユークリッド距離をメトリックとして使用し、平均連結媒介変数を用いて階層的クラスタリングを行った。各クラスターに属するタンパク質存在量値(Log2値)は、InstantClueによって決定されたy軸と共に、上位及び下位四分位数、中央値、最小値及び最大値、全ての個別データポイントがある箱プロットで表示される。データは、FunRich v3.1.3及びShinyGO v0.61を用いて処理され、遺伝子オントロジー(GO)を行った。豊富な署名遺伝子の評価は、1,000個の順列と基本媒介変数を使用するGSEAアルゴリズムで行われた。
【0175】
エクソソームEV収率に対して得たデータに対して、NTA結果(平均±標準偏差、n=6)は、GraphPad Prism 5.0(GraphPad Software,CA,USA)を用いて、対を成していない両側スチューデントt検定で分析された。傷掻き分析のために実験を少なくとも3回反復した(n=3又は6)。PBMCを健康な寄贈者から分離し、実験を4回反復した。グラフィックデータの誤差棒は、平均±平均の標準誤差(SEM)を示す。統計的有意性は、p<0.05に設定された。
【0176】
試験結果
8-1:各エクソソームから差別的に発現したタンパク質(DEP)のタンパク質体分析
各エクソソームに含まれたタンパク質の定量分析
受容細胞に対するT-a3D-EVの強力な効能を理解するために、2D-EV、a3D-EV、及びT-a3D-EVのタンパク質含有量を、LC-MSベースLFQ(label-free quantification)を用いて分析した。タンパク質は、各エクソソームEVサンプルから得た同一量のEV(20mg)から抽出されたし、総394個のタンパク質グループが3回反復して同定された。このうち、2D-EVは138±1個のタンパク質グループ、a3D-EVは304±5個のタンパク質グループ、T-a3D-EVは320±14個のタンパク質グループがそれぞれ定量化された。興味深く、2D-EV、a3D-EV、及びT-a3D-EVにおいて、BCA分析によって溶解後に分析されたEVタンパク質の量はそれぞれ、33μg、26μg、及び29μgであったし(
図19A)、タンパク質体(proteome)の存在量分布は、前記タンパク質の量と同じパターンを示した。対照的に、本研究の全てのEVサンプルにおいて以前に知られたTop 100EVマーカータンパク質のうち44個のEVマーカータンパク質(http://exocarta.org/exosome_markers_new)が同定されたし、前記EVマーカータンパク質の定量的分布がサンプル間に非常に類似することが見られた(
図19B)。このような結果は、2D-EV、a3D-EV及びT-a3D-EVがそれぞれ類似量のタンパク質を含有しているが、a3D-EV及びT-a3D-EVに含まれたタンパク質体の複雑性が2D-EVに比べてより多く増加していることを意味する。
【0177】
遺伝子オントロジー分析
2D-EV、a3D-EV、及びT-a3D-EVのそれぞれのサンプルセットに対する遺伝子オントロジー(GO)分析を行った。
【0178】
その結果、タンパク質が細胞質、核小体、リボソーム、細胞外基質及びエクソソームのうち、エクソソームに最も多く含まれていることが分かった。特に、2D-EVにおいて、他のEVサンプルセットに比べて、エクソソーム内にタンパク質がより大きい割合で含まれていることが見られた。一方、a3D-EV及びT-a3D-EVは、2D-EVとは違い、細胞質、核小体、リボソーム及び細胞外基質に、より多いタンパク質が含まれていたことが見られた(
図19C)。
【0179】
また、Vesiclepediaに報告されたデータセットと本研究で発見されたEVタンパク質体とを比較した結果、大部分のタンパク質が既存EVタンパク質体と共通していたが、本発明の方法で得られたT-a3D-EVのタンパク質のうち3種のタンパク質(脂肪細胞原形質膜関連タンパク質、prolyl 3-hydroxylase 1、prostaglandin G/H synthase 2)は、既存に知られたEVタンパク質体でないものが見られた(
図19D)。前記3種のタンパク質は2D-EVでは検出されず、a3d-EV及びT-a3d-EVでのみ検出されるタンパク質であり、前記3種のタンパク質の中でも「prostaglandin G/H synthase2」は、2D-EV又はa3d-EVでは検出されず、本発明の方法で得られたT-a3d-EVでのみ現れるタンパク質であるので、前記T-a3d-EVは新しいタンパク質発現プロファイルを有することが分かる。
【0180】
クラスタリング分析
Benjamini-Hochberg FDR(false discovery rate)が0.05以下である存在量を正規化するZ点数を使用した階層的クラスタリング分析を行い、4個のクラスター(cluster)に分類した(
図20A)。
図20Aに示すように、各サンプルセットでのみ増加するクラスターを見出すことができる(クラスター2:T-a3D-EVの47個タンパク質グループ、クラスター3:a3D-EVの11個タンパク質グループ、クラスター4:2D-EVのそれぞれ63個タンパク質グループ)。82個のタンパク質グループがあるクラスター1は、a3D-EVとT-a3D-EVの両方で増加したタンパク質を示し、このようなタンパク質が3D培養の特徴であることが分かる。
【0181】
タンパク質の生物学的特徴比較分析
遺伝子オントロジーツールを用いて各クラスターに対する生物学的過程範ちゅうの機能的特性を調べた結果、クラスター2に属するタンパク質(T-a3D-EVグループでのみ増加したタンパク質)が免疫反応と関連があることを具体的に確認した。
【0182】
主成分分析
また、3個のEVサンプルセット間の固有な傾向を識別するための主成分分析(PCA;principal component analysis)は、このようなタンパク質グループが培養条件(2D対3D培養)によってかなり異なることを示している(成分1:61.6%)(
図20B)。TGF-β3処理の有無の差も、前記主成分分析(PCA)結果(成分2:27.1%)に明確に反映されたが、培養方法と違い、有意な差はなかった。このPCA結果は、3D培養条件(a3D及びT-a3D)によるタンパク質体特性が、2D培養条件によるタンパク質体特性とかなり異なり、3D培養においてTGF-β3によるタンパク質体特性変化がそれほど大きくないことを示す。
【0183】
二元比較
また、二元比較方式を用いてDEP(Differentially expressed protein)(FDR 5%、log2(ratio)
3l又は£-1)を探そうとした(
図20C)。DEPは、有意に発現が高い又は低いタンパク質を分析したものである。a3D-EV/2D-EV及びT-a3D-EV/2D-EVの火山プロットは、培養条件(2D及び3D)によって誘発されたDEPの数が、3DにおいてTGF-β3処理によって誘発されたものに比べてより大きいことが見られた。また、T-a3D-EV/a3D-EVの火山プロットは、TGF-β3処理後にT-a3D-EVグループにおいて53個のタンパク質が上方調節されたが、14個のタンパク質は下方調節されたことが見られた。
【0184】
8-2:各エクソソームから差別的に発現するタンパク質(DEP)の機能的特性化
遺伝子セット濃縮分析
EVタンパク質体データを用いてEVの機能的特徴を調べるために、まず、遺伝子セット濃縮分析(Gene Set Enrichment Analysis,GSEA)を行った。これは、経路又は遺伝子オントロジーのような生物学的特性を共有する一部タンパク質グループが統計的意味で表現され得るか否かを明らかにすることができる。2つの生物学的状態を把握し、発現特性の類似性を評価した。統計的に有意な発現パターンを有するタンパク質はクラスタリングされてよく、他のタンパク質はGSEAによって分離されてよい。この研究においてGSEAは代表的な経路又は遺伝子オントロジーを説明できる最先端のタンパク質下位集合を提示した。
【0185】
T-a3D-EVと他のサンプル間のGSEA結果は、PI3K-AKT信号伝達経路(24個タンパク質)とintegrin1経路(17個タンパク質)において差異を示した(
図21A)。
図21Aは、本分析における遺伝子セット濃縮分析結果であり、濃縮された遺伝子セット、標準化された濃縮点数(NES)、及びp値が提示されており、NESが高くてp値が低いほど、有意な発見である可能性が大きい。この分析で濃縮された遺伝子グループを
図21Bに示した。
【0186】
これらの経路から確認された30個のタンパク質のうち11個のタンパク質が共通に参加するタンパク質として確認された。特に、COL6A1、COL6A3及びTNCタンパク質は、T-a3D-EVセットでのみ発現が増加した。また、PI3AKT信号伝達経路又はintergrin1経路でのみ発見されるタンパク質のうち、EIF4E、HSP90AB1、HSP90B1、RAC1、TGF-β1及びTGM2は、T-a3D-EVでのみ発現が増加した(
図21B、
図5E)。
【0187】
前記各エクソソームにおいて発現するるタンパク質の発現量を相対的濃度比で数値化し、下記の表3に示した。
【0188】
【0189】
上記の表3に示すように、前記タンパク質はいずれも、2D-EV及びa3D-EVに比べて本発明のT-a3D-EVにおいて顕著に高発現することが確認できる。
【0190】
このような結果から、本発明の方法で得たエクソソームが比較群のエクソソームと差別化した効能を有することが、上記のタンパク質発現の差異によるものであることが類推できる。
【0191】
T-a3D-EV特異的タンパク質の同定
また、EVタンパク質が受容細胞に伝達されたとき、各培養条件のEVにおいてDEPの予想役目を分析しようと試みた。各培養条件で有意に変化するタンパク質グループを探すために、試料間の二元比較分析(T-a3D-EV/2D-EV、a3D-EV/2D-EV、及びT-a3D-EV/a3D-EV)を行い、ベンダイアグラムを生成した(
図21C)。この分析から、68個のDEP(T-a3D-EV/2D-EVのDEP40個、及びT-a3D-EV/2D-EVとT-a3D-EV/a3D-EVs間に共通する領域のDEP28個)が、T-a3D-EVs/2D-EVs比較においてTGF-β3処理と関連したDEPとして選択可能であったし、TGF-β3処理に特異的な53個のDEPが、T-a3D-EVs/a3D-EVs(T-a3D-EVs/a3D-EVsのDEP25個、及びT-a3D-EVs/2D-EVsとT-a3D-EVs/a3D-EVs間に共通する領域のDEP 28個)から確認できる(
図21B)。したがって、28個のタンパク質が細胞培養方法の影響を受けず、TGF-β3と強く関連していると推測して遺伝子オントロジー(GO)分析をすることにより、このタンパク質が小胞媒介輸送、細胞外流出及び免疫反応と関連があることを具体的に確認した。興味深く、この28個のタンパク質のうちCAPZA1タンパク質を除く全てのタンパク質の発現がT-a3D-EVセットにおいて増加した。EVのタンパク質は受容体細胞に内在化した後、試験管内及び生体内で様々な経路を活性化することが知られている。
【0192】
HuRi(ヒト基準タンパク質相互作用マッピングプロジェクト)データベース分析
我らの重要なタンパク質と相互作用するタンパク質を同定し、受容細胞での役目と経路を予測するために、前記同定されたT-a3D-EVにおいて特異的な特徴を有するタンパク質であるDEP28ケに対して、HuRi(Human Reference Protein Interactome Mapping Project)データベースを用いて、DEP間の相互作用を説明するネットワークモデル分析を行った。
【0193】
その結果、前記28個のDEPのうち5個のタンパク質(S100A10、SDDCP、ACTG1、GIPC1、及びEIF4E)が信頼点数
30.9で、Huriデータベースの113個の相互作用体(interactors)とマップされた(
図21D)。相互作用体がある前記5個のDEPに対する注釈データベース(annotation database)(ShinyGO v0.61)検索結果から、受恵者細胞で活性化され得る様々な信号経路を具体的に確認した(
図21D)。前記信号経路のうち一つは、T-a3D-EVの強力な機能を支援するサイクリン依存性タンパク質キナーゼ活性の調節であった(
図21E)。また、本発明のT-a3D-EVから観察されるDEPのうちSDCBPは、主に様々なタンパク質と相互作用するタンパク質であり、このタンパク質は、免疫調節、エクソソーム生合成、及び腫瘍形成に関与することが知られている。結論的に、前記T-a3D-EVから発見された特定タンパク質は、動物及び細胞実験から確認された結果を裏付ける。
【0194】
以上に述べた好ましい実施例を挙げて本発明を説明してきたが、発明の要旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正や変形を行うことが可能である。また、添付する特許請求の範囲は、本発明の要旨に属する上記の修正や変形も含む。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【
図1】本発明の方法による中間葉幹細胞3次元培養過程を示す図であり、細胞凝集体形成(
図1A)及び回転撹拌器を用いた3D培養(
図1B)過程をそれぞれ示す。
【
図2】各培養条件によるエクソソームの収率を示す図である。
【
図3】TGF-β処理によるPDI値の変化を示す図であり、TGF-βを処理した3D振盪培養条件では単一ピーク(one peak)が見られることを示す。
【
図4】TGF-βがT細胞増殖に及ぼす影響を示す図である。それぞれPHAを用いてPBMCの増殖を誘発した後、陰性対照群(無処理群)、陽性対照群(MSC処理群)、3D振盪培養条件のみを適用したエクソソーム(3D-EV)、3D振盪培養条件下でTGF-β3を培養液に添加して得られたエクソソーム(T-3D-EV)のT細胞抑制効果を確認した(
図4A)。その結果、TGF-βを処理した3D振盪培養条件で得たエクソソーム(T-3D-EV)が最も顕著なT細胞抑制効果を有することが確認され(
図4B及び
図4C)、本発明の方法によって得られたエクソソームは、収率の他に機能も強化していることが見られた。
【
図5】
図5Aは、動的光散乱(dynamic light scattering,DLS)分析によってエクソソームのサイズを調べた結果を示す図である。
図5Bは、エクソソームの形態及び構造を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果である。
図5Cは、CD9、CD63、Flotillin-1及びAlixの発現を確認するためのウェスタンブロッティング分析結果を示す。
図5Dは、流細胞分析によってエクソソーム表面の免疫表現型分析を行った結果を示す。
図5Eは、生産されたエクソソームのTGF-β1含有量を酵素結合免疫吸着検査(ELISA)によって確認した結果を示す。
【
図6】トランスウェル移動分析によってヒト線維芽細胞(NHDF)においてエクソソーム投与による細胞移動能力増加を確認した結果を示す写真であり(左側)、右側は、Image Jを用いて相対的な染色程度を数値化して表現したグラフである。
【
図7】生検パンチで傷を生成した動物モデルにエクソソームを投与して傷治癒能の経時変化を確認した結果を示す図である。
図7Aは、生検パンチで傷を生成した動物モデルにエクソソームを投与した後、一定時間ごとに傷部位を撮影した写真である。
図7Bは、
図7Aの傷部位のサイズを示すグラフである。
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図8】生検パンチで傷を生成した動物モデルにエクソソームを投与して時間経過による傷治癒能を確認しながら、傷誘発9日後に傷誘発部位の組織学的分析を行った結果である。
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図9】Raw264.7細胞においてLPSで誘導された炎症反応がエクソソームの投与によって有意に減少したことを確認した結果である。
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図10】LPS及びエクソソームを共に投与して培養したRaw264.7細胞の培養液の上澄液内で炎症性サイトカインであるTNF-α及びIL-6の濃度が顕著に減少したことを確認した結果である。
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図11】LPS毒素による内毒素血症マウスモデルにおいてエクソソーム投与によるTNF-α及びIL-6減少効果を確認した結果を示す図である。
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図12】SV-HUC-1(ヒト尿路上皮細胞)にエクソソームを濃度別に処理して細胞増殖を確認した結果を示す図である。
図12Aは、SV-HUC-1にエクソソームを濃度別に処理した後、細胞増殖率を示すグラフであり、
図12Bは、細胞増殖に関連したP-AKTとP-ERKの発現量を確認した結果である。
【
図13】トランスウェル移動分析を用いて、ヒト尿路上皮細胞(SV-HUC-1)においてエクソソーム投与による細胞移動能力増加を確認した結果を示す図である。
図13Aは、クリスタルバイオレット(Crystal violet)染色を用いて、トランスウェルの反対側に移動した細胞を視覚的に確認した写真である。
図13Bは、
図13AのImage Jを用いて示した相対的な細胞コンフルエンシーを示すグラフである。
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図14】間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルを製造し、エクソソーム投与による治療効果を評価するための試験デザイン概要図である。
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図15】間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいてエクソソーム投与後に膀胱組織の形態及び炎症程度を確認した図である。
図15Aは、IC/BPSマウスモデルの膀胱組織をH&E染色した結果であり、
図15Bは、マッソントリクローム(masson’s trichrome)染色した結果であり、
図15Cは、トルイジンブルー(toluidine blue)染色した結果であり、
図15Dは、前記染色によって線維化(Fibrosis)程度と肥満細胞(Mast cell)の浸透を確認した結果を示すグラフである。
【
図16】間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいてエクソソーム投与後に抽出された膀胱組織からmRNAを抽出し、炎症関連サイトカイン(TNFα、IL6)の発現量(
図16A)、尿路上皮マーカー(UPK1A、UPK1B、UPK2)の発現量(
図16B)、及びIC/BPSにおいて発現する遺伝子(KLRB1、PSMB9、ITGAL)の発現量(
図16C)を確認した結果である。
【
図17】間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいてエクソソーム投与による膀胱内圧及び排尿周期の回復効果を確認した結果を示す図である。
【
図18】間質性膀胱炎/膀胱疼痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいてエクソソーム投与による膀胱内圧及び排尿周期の回復効果を確認した結果を示す図である。
【
図19】各エクソソームに含まれているタンパク質体分析結果を示す図である。
図19Aは、各エクソソームに含まれているタンパク質を定量分析した結果である。
図19Bは、各エクソソームに含まれている総タンパク質の存在量(abundance)分布を示すグラフである。
図19Cは、各エクソソームに対して遺伝子オントロジー(GO)分析を行った結果である。
図19Dは、Vesiclepediaに報告されたデータセットと本研究から発見されたEVタンパク質体とを比較した結果である。
【
図20】
図20Aは、クラスタリング分析によって導出された4個のクラスターのうち、本発明のエクソソームであるT-a3D-EV試料において特異的に変化するタンパク質を示す図である。
図20Bは、主成分分析(Principal component analysis)によって各エクソソームグループ間の分離程度を識別指数(Discrimination index)で示した結果を示す図である。
図20Cは、二元比較方式によって培養条件(2D及び3D)及びTGF-β3処理の有無によるDEP(Differentially expressed protein)数を確認した結果を示す図である。
【
図21】
図21Aは、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)によって本発明のエクソソームT-a3D-EVのPI3K-AKT信号伝達経路及びintegrin1経路での濃縮された遺伝子セット、標準化された濃縮点数(NES)及びp値をそれぞれ示す。
図21Bは、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)によって、濃縮された遺伝子グループをPI3K-AKT信号伝達経路及びintegrin1経路に分けて示す図である。
図21Cは、二元比較分析(T-a3D-EV/2D-EV、a3D-EV/2D-EV、及びT-a3D-EV/a3D-EV)によって、各エクソソーム間の差別化したり共通するタンパク質の数を示すベンダイアグラムを生成し、このうち、T-a3D-EV/2D-EV及びT-a3D-EV/a3D-EVs間に共通する領域のDEP28の遺伝子オントロジー(GO)分析結果である。
図21Dは、本発明のエクソソームT-a3D-EVにおいて特異的な特徴を有するタンパク質である28個のDEPのうち5個のタンパク質(S100A10、SDDCP、ACTG1、GIPC1及びEIF4E)がHuriデータベースの113個の相互作用体(interactors)と高い信頼点数でマップされた結果を示す図である。
図21Eは、本発明のエクソソームT-a3D-EVの生物学的機能及びそのサイクリン依存性タンパク質キナーゼ活性調節関連特徴を示す図である。
【配列表】
【国際調査報告】