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特表2024-524475精密なリニアモーションガイダンス用の静圧軸受
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】精密なリニアモーションガイダンス用の静圧軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/06 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
F16C32/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580977
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 US2022035519
(87)【国際公開番号】W WO2023278573
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/217,103
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524001927
【氏名又は名称】ムーア ナノテクノロジー システムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュペル、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】モーガン、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】バドラウィ、シナン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェドラー、ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ロウ、ジェフリー・アラン
【テーマコード(参考)】
3J102
【Fターム(参考)】
3J102AA02
3J102BA07
3J102BA13
3J102CA11
3J102EA02
3J102EA06
3J102EA09
3J102EA13
3J102EA30
(57)【要約】
一例によれば、静圧軸受は、キャリッジと、キャリッジが直線運動を行うように、キャリッジと組み合わされたガイドレールとを含む。静圧軸受は、加圧された非圧縮性の流体をキャリッジ内の軸受ポケットに供給することにより、キャリッジ及びガイドレールの間に機械的接触を生じることなく、キャリッジ及びガイドレールの間に力を伝達するように構成されている。各軸受ポケットは軸受パッドの軸受ランドによって囲まれており、軸受パッドは、平行四辺形、台形、矢印、または縁部が運動方向に全体的には直交しないその他の一般的な形状を備えている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静圧軸受であって、
キャリッジと、
前記キャリッジが直線運動を行うように、前記キャリッジと組み合わされたガイドレールとを含み、
前記キャリッジ内の軸受ポケットに加圧された非圧縮性の流体を供給することによって、前記キャリッジ及び前記ガイドレールの間の機械的接触なしに前記キャリッジ及び前記レールの間で力を伝達するように構成されており、
各軸受ポケットが、軸受パッドの軸受ランドによって囲まれており、前記軸受パッドが直角を含まない略平行四辺形の形状を有する、静圧軸受。
【請求項2】
前記キャリッジが互いに対向する複数のパッドを含み、前記対向するパッドによって生じる力が等しくなるように構成されている、請求項1に記載の静圧軸受。
【請求項3】
高い剛性及びスクイズフィルムダンピングを生成するのに十分に小さい軸受ギャップをさらに含む、請求項2に記載の静圧軸受。
【請求項4】
前記軸受ギャップが8~25マイクロメートルであるように構成される、請求項3に記載の静圧軸受。
【請求項5】
1以上の前記軸受ポケット内の圧力が毛細管絞りによって補償される、請求項2に記載の静圧軸受。
【請求項6】
静圧軸受であって、
キャリッジと、
前記キャリッジが直線運動を行うように、前記キャリッジと組み合わされたガイドレールとを含み、
前記キャリッジ内の軸受ポケットに加圧された非圧縮性の流体を供給することによって、前記キャリッジ及び前記ガイドレールの間の機械的接触なしに前記キャリッジ及び前記レールの間で力を伝達するように構成されており、
各軸受ポケットが、軸受パッドの軸受ランドによって囲まれており、
前記軸受パッドが略台形の形状を有する、静圧軸受。
【請求項7】
前記キャリッジが互いに対向する複数のパッドを含み、前記対向するパッドによって生じる力が等しくなるように構成されている、請求項6に記載の静圧軸受。
【請求項8】
高い剛性及びスクイズフィルムダンピングを生成するのに十分に小さい軸受ギャップをさらに含む、請求項7に記載の静圧軸受。
【請求項9】
前記軸受ギャップが8~25マイクロメートルであるように構成される、請求項8に記載の静圧軸受。
【請求項10】
1以上の前記軸受ポケット内の圧力が毛細管絞りによって補償される、請求項7に記載の静圧軸受。
【請求項11】
静圧軸受であって、
キャリッジと、
前記キャリッジが直線運動を行うように、前記キャリッジと組み合わされたガイドレールとを含み、
前記キャリッジ内の軸受ポケットに加圧された非圧縮性の流体を供給することによって、前記キャリッジ及び前記ガイドレールの間の機械的接触なしに前記キャリッジ及び前記レールの間で力を伝達するように構成されており、
各軸受ポケットが、軸受パッドの軸受ランドによって囲まれており、
前記軸受パッドが略矢印の形状を有する、静圧軸受。
【請求項12】
前記キャリッジが互いに対向する複数のパッドを含み、前記対向するパッドによって生じる力が等しくなるように構成されている、請求項11に記載の静圧軸受。
【請求項13】
高い剛性及びスクイズフィルムダンピングを生成するのに十分に小さい軸受ギャップをさらに含む、請求項12に記載の静圧軸受。
【請求項14】
前記軸受ギャップが8~25マイクロメートルであるように構成される、請求項13に記載の静圧軸受。
【請求項15】
1以上の前記軸受ポケット内の圧力が毛細管絞りによって補償される、請求項12に記載の静圧軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に静圧軸受(hydrostatic bearing)に関し、より詳細には、精密なリニアモーションガイダンス用の静圧軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
静圧軸受は、工作機械などの機械において精密な直線運動を実現するために用いられる。静圧軸受の代表的なものは、米国特許第5,466,071号明細書、米国特許第5,871,285号明細書、SlocumによるPrecision Machine Design(Prentice Hall、1992年)、及び欧州特許第0 304 090号に開示されており、これらはここで参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。ただし、これらの代表的な静圧軸受は欠点を有することがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ある例によれば、静圧軸受は、キャリッジと、キャリッジが直線運動を行うように、キャリッジと組み合わされたガイドレールとを含む。静圧軸受は、加圧された非圧縮性の流体をキャリッジ内の軸受ポケットに供給することによって、キャリッジとガイドレールとの間に機械的接触を生じさせることなく、キャリッジとガイドレールとの間に力を伝達するように構成されている。各軸受ポケットは、軸受パッドの軸受ランドによって囲まれており、軸受パッドは、平行四辺形、台形、矢印、または縁部が運動方向に対して全体的には(generally)直交しない(例えば、運動方向が直線で画定され、軸受パッドの縁部がその直線に直交する平面上にない)他の一般的な形状を含む。いくつかの例では、軸受パッドの形状により、軸受レール表面の周期的なパターンによるキャリッジの運動誤差(error motion)が最小限に抑制される。また、いくつかの例では、この形状は本質的に圧力を分散させ、剛性を維持しながらキャリッジの運動誤差を最小限に抑制する。
【0004】
他の例によれば、静圧(加圧流体膜)リニア軸受は、軸受の高い剛性及び耐荷重が達成されるように、軸受ランド全体に流体を供給するための加圧ポケットを備える。加圧ポケット及び軸受ランドの幾何学的形状は、実施例によっては、軸受レール表面の周期的パターンの影響が低減するように、圧力を移動方向に一定距離にわたって分散させることにより、精密な機械の動作を可能にする。
【0005】
さらなる実施例によれば、静圧リニア軸受は、軸受レール表面の周期的な幾何学的パターンに起因する静圧リニア軸受の運動誤差を低減するような形状を有する静圧軸受パッドを含む。この形状により、いくつかの例では、直線軸の動作の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示、ならびにその特徴及び利点をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【0007】
図1A】6対の対向する軸受パッドを備える静圧軸受の等角図の一例である。
図1B】6対の対向する軸受パッドを備える静圧軸受の等角図の一例である。
図1C】6対の対向する軸受パッドを備える静圧軸受の等角図の一例である。
図2A図2A(上面図)及び図2B(側面図)は、キャリッジ及びレールを含むリニア静圧軸受を簡略化した図である。図2A及び2Bの軸受パッドは、従来技術で知られている矩形状である。
図2B図2A(上面図)及び図2B(側面図)は、キャリッジ及びレールを含むリニア静圧軸受を簡略化した図である。図2A及び2Bの軸受パッドは、従来技術で知られている矩形状である。
図3A】周期的なレールの真直度誤差によるキャリッジの運動誤差を低減するようなリニア静圧軸受パッド形状の例を示している。
図3B】周期的なレールの真直度誤差によるキャリッジの運動誤差を低減するようなリニア静圧軸受パッド形状の例を示している。
図3C】周期的なレールの真直度誤差によるキャリッジの運動誤差を低減するようなリニア静圧軸受パッド形状の例を示している。
図4】周期的なレールの真直度誤差によるキャリッジの誤差運動を低減するようなリニア静圧軸受パッド形状の他の例を示す。軸受パッドは、移動方向に対して垂直に配向された小さなセグメントを有する矢印の形状である。
図5A図5A(上面図)及び図5B(側面図)は、キャリッジ及びレールを含むリニア静圧軸受の一例を簡略化した図であり、軸受パッドは平行四辺形の形状となっている。
図5B図5A(上面図)及び図5B(側面図)は、キャリッジ及びレールを含むリニア静圧軸受の一例を簡略化した図であり、軸受パッドは平行四辺形の形状となっている。
図6】リニア静圧軸受の運動中に生じる力の変化をプロットしたもので、力の変化は、波長l及び振幅aの軸受レールの周期的パターンに起因する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施例は、図面の図1A~6を参照することによって最もよく理解され、同様の数字は、様々な図面の同様の部分及び対応する部分に用いられる。
【0009】
静圧軸受は、工作機械などの機械において精密な直線運動を実現するために利用される。リニア静圧軸受は、キャリッジと、キャリッジが移動またはスライドするガイドレールとを含む。通常、レールはキャリッジよりも長く、キャリッジが移動するための直線状の表面を有し、1自由度の直線運動を生成する。キャリッジは複数の軸受パッドを含み、各パッドは軸受ポケット及び軸受ランドを含む。軸受ポケットは加圧流体を含んでおり、この加圧流体は軸受ランドを横切って流れ、機械的接触を防ぐ加圧流体の薄膜によってキャリッジとレールとを互いに分離する。軸受ランドは、膜の圧力が軸受ポケット内の圧力から大気圧まで低下する幅を有する。膜は剛性を高め、キャリッジ及びレールの間の摩擦動作を軽減する。流体として、油や水、または、軸受ポケット内に圧力がかかったときにキャリッジとレールとを互いに分離するその他の非圧縮性流体を用いてもよい。
【0010】
キャリッジがレールに沿って移動するとき、キャリッジはレール表面の形状に従う。例えば、レールの表面が直線ではなく一般的な円弧の形状を有している場合、キャリッジは円弧に沿って進む。精密動作の用途では、直線的な動きが要求され、直線から外れた動きは運動誤差に分類される。運動誤差は望ましくないが、その一方で、完全に直線的なレール表面を製造することは現実的ではない。通常、レール表面は、レール表面の形状に直接影響を与える固有の運動誤差を含む機械によって製造される。機械の運動誤差は通常、ランダムではなく、本質的に周期的に発生する。例えば、上で説明した円弧は、特定の空間波長を有する正弦波パターンを示すレール表面によって説明することが可能である。波長の正弦波パターンが小さい場合、例えば波長が軸受ランドの幅よりもはるかに小さいかまたは短い場合には、流体膜の剛性の平均化効果により、キャリッジの運動誤差は少なくなる。そのため、レール表面に周期的なパターンを低振幅で維持し、パターンの波長を軸受ランドの幅よりもはるかに小さくすることで、精密な動きを達成することが可能となる例もある。表面研削のような製造工程で低振幅の周期的パターンを実現することは、必ずしも現実的ではない。また、周期的パターンの影響を低減するために軸受ランド幅を大きくすることも可能だが、軸受ランド幅を大きくすると軸受の剛性が低下するため、望ましくない。
【0011】
図1A~1Cは、6対の対向する軸受パッド18を有する静圧リニア軸受の一例を示す図であり、該軸受パッド18は長方形の形状を有する。軸受パッド18は、パッド18によってキャリッジ30に加えられる力が、運動に対して直交する平面においてキャリッジ30にゼロフォース(zero force)を生じさせるように、平行かつ対向する向きに配向される。軸受パッド18は長方形であり、すべての軸受パッド18は対向するペアによって構成されるが、ゼロフォースを達成するために、ダブテールレールやキャリッジなど、他の配置や数の軸受パッド18を利用してもよい。図1A及び1Bは、静圧軸受のキャリッジ30の等角図であり、図1Cは、静圧軸受のガイドレール31に結合されたキャリッジ30の等角図である。
【0012】
静圧軸受は、キャリッジ30及びガイドレール31を含む。キャリッジ30は、加圧流体を収容する軸受パッド18を含む。流体は、油、水、または任意の非圧縮性流体であってもよい。レール31は、キャリッジ30が平行移動するための断面を有する直線状の物体であれば任意のものであってよい。断面は、軸受パッド18によって生成される力の合計がゼロになるように軸受パッド18を配向できるような、正方形、三角形、円、または任意の形状としてもよい(その一例は欧州特許第0 304 090号に見られる)。
【0013】
加圧流体は軸受ランド21上を流れ、高い剛性及びスクイズフィルムダンピングを生じさせる。軸受ランド21及びレール31(図2に示す)の間のギャップは、通常、8~25マイクロメートル程度であるが、高い剛性及びスクイズフィルムダンピングを生じさせるために必要なだけ小さくても大きくてもよい。軸受ポケット20内の加圧流体は、毛細管絞り50、オリフィス絞り、または任意の種類の絞り機構によって絞ってもよい。毛細管絞り50によって絞った軸受パッド18の例を図5A及び5Bに示す。絞り50を、供給圧力及び軸受ポケット20の間に配置した。軸受ポケット20は、高い剛性及びスクイズフィルムダンピングが軸受ランド21全体にわたって達成されるように、任意の深さを有していてもよい。
【0014】
工作機械の直線軸などの精密動作の用途では、キャリッジ30の動作は可能な限り直線的であるべきである。レール表面が運動方向に幾何学的に直線でない場合、キャリッジ30は望ましくない動きや運動誤差を行う可能性がある。運動誤差は、互いに直交し、かつ移動方向に直交する2つのリニア運動誤差と、ロール、ピッチ、及びヨーと呼ばれる3つの角度運動誤差とが組み合わされたものである可能性がある。
【0015】
図2A及び2Bは、キャリッジ及びレールを含むリニア静圧軸受の簡略図である。図2A及び2Bの軸受パッド18の形状は長方形であり、これは従来技術として知られている。軸受レールの表面は、波長l及び振幅aの周期的なパターンを有する。軸受の公称ギャップはh、軸受ランド幅はB、軸受ランド長さはL、供給圧力はp、大気圧はpと定義される。
【0016】
レール表面の幾何学的形状が複数の周期的パターン40(その一例を図2A及び2Bに示す)の総和であると仮定すると、キャリッジ30の運動誤差は、各周期的パターン40に起因する運動誤差の総和となる。したがって、キャリッジ30の運動誤差は、周期的パターン40の振幅及び波長によって変化する。運動誤差は、キャリッジ30がレール31に沿って移動し、レール31の周期的パターン40を通過するときに発生し、その結果、スクイズフィルム効果による力(effective force)が変化する。この力の変化によりキャリッジ30の位置が変化するが、これを運動誤差と呼ぶ。
【0017】
レール31の周期的パターン40は、様々な要因から発生する。例えば、レール31は、それ自体が運動誤差を有する工作機械で製造されることがある。これらの運動誤差はレール31の表面に影響を及ぼす。また、レール31の製造に利用される工具の形状も、レール31の表面形状に影響を及ぼす恐れがある。例えば、所定の数の切れ刃を有するフライス工具は、フライス工具がレール31表面を加工するときに、レール31表面にパターンを形成することがある。他の例では、平面研削工作機械の砥石が完全に円形でない場合があり、その場合、砥石の振動によりレール31の表面に周期的構造が生じる。
【0018】
レール31に対する周期的パターン40の影響を低減する1つの手法は、真直度誤差がレール31の直線方向と直交しないように、機械上でレール31を回転またはスキュー(skew)させることである。ただし、工作機械のスペースとサイズの制約から、このアプローチは常に実用的であるわけではない。例えば、レール31がスキューしていると、機械軸の必要なトラベル長が増加し、工作機械のトラベル長を超える可能性がある。また、レール31がスキューしているとレール31の有効幅が増大するため、工作機械への取り付け面の大きさが適切でない場合もある。
【0019】
レール31表面上の周期的パターン40の影響を最小化する他のアプローチは、力の変化が相殺されるように、周期的パターン40をレール31の両側に配置することである。この技術は、レール31の長さよりも長い波長などの長波長エラーに用いられる。例えば、レール31の表面が円弧状の形状を有し、対向するレールの表面上にその円弧状の形状の鏡像を有してもよい。各々の対向するパッド18によって加えられる力は、キャリッジ30がレール31に沿って移動するにつれて変化するが、力は常に等しく逆向きであり、したがって、いくつかの例では、運動誤差は発生しない。この戦略は長い波長では採用可能であるが、より短い波長(例えば、軸受ランド21の幅より短い)では、この戦略を採用することは困難である。周期誤差の位置合わせ、つまり位相を工作機械で調整するのは難しい。
【0020】
本開示の静圧軸受は、これらの欠点の1以上に対処することが可能である。一例によれば、静圧軸受は、キャリッジ30と、キャリッジ30が直線運動を行うように、キャリッジと組み合わされたガイドレール31とを含む。静圧軸受は、キャリッジ30内の軸受ポケット20に加圧された非圧縮性の流体を供給することにより、キャリッジ30及びガイドレール31の機械的な接触なしに、キャリッジ30及びガイドレール31の間で力を伝達するように構成されている。各軸受ポケット20は、軸受パッド18の軸受ランド21によって囲まれており、軸受パッド18は、略平行形状、略台形、略矢印、または縁部が運動方向に対して全体的には直交していない他の任意の形状を含む。いくつかの例では、軸受パッド18の形状は、軸受レール表面の周期的パターン40に起因するキャリッジの運動誤差を最小限に抑制する。また、この形状は本質的に圧力を分散し、いくつかの例では剛性を維持しながらキャリッジの運動誤差を最小限に抑制する。さらに、軸受パッド18は、回転軸受ではなくリニア軸受のためのものである。
【0021】
図3A~3Cは、周期的なレール真直度誤差によるキャリッジの運動誤差を低減することができるリニア静圧軸受パッド18の形状の例を示す図である。図3Aでは、軸受パッド18は、直角のない平行四辺形の形状を有する。図3Bでは、軸受パッド18は台形の形状を有する。図3Cでは、軸受パッド18は矢印の形状を有する。
【0022】
上述したように、いくつかの例では、軸受パッド18(軸受パッド18が軸受ランド21及び軸受ポケット20を含む)の形状は、縁部が運動方向に対して全体的には直交しないように形成されている。例えば、長方形は平行四辺形の軸受パッド18を形成するために、移動方向に対してスキューを有してもよい(図3Aを参照)。軸受パッド18のスキューは、スキュー比mに軸受ランド幅Bを乗じたものとして定義される。いくつかの例では、運動方向に直行しない縁部を有する形状を実現するには、スキュー比mはゼロよりも大きくなければならない。スキュー比の一般的な値は1.0であるが、10.0などのより大きな値であってもよい。図3Aに示すように、軸受パッド18は、運動方向に対して平行な線を有するが、運動方向に直交する線を有しない。さらに、軸受ランド21及び軸受ポケット20は、軸受パッド18の形状に従ってもよく、したがって、軸受ランド21及び/または軸受ポケット20は、運動方向に直交する縁部を有していなくてもよい。
【0023】
他の例では、軸受パッド18は、図3Bに示すように運動方向に直交する線を有しない台形形状を有していてもよい。さらに他の例では、スキューmBは、軸受ランド21の長さにわたって2つの部分を有する図3Cの矢印形状のように、軸受ランド21の長さにわたって複数設けられても良い。
【0024】
運動方向に対して直交しない線を実現するものであれば、軸受パッド18は他の形状であってもよい。例えば、図4は、周期的なレール真直度誤差に起因するキャリッジの運動誤差を低減することが可能となる例示的なリニア静圧軸受パッド18の形状を示すものであり、軸受パッド18は、進行方向に対して垂直に配向された小さなセグメント42を有する矢印の形状を有している。軸受のスキューは、スキュー比mに軸受ランド幅Bを乗じたものとして定義される。図4に示すように、軸受ランド21の小さなセグメント42が進行方向に対して垂直(すなわち、直交)に向けられた矢印の形状をしていることにより、周期的パターンによるキャリッジの運動誤差が低減されるようになっている。したがって、いくつかの例では、少量の軸受パッド18を直交させても所望の効果を達成することができる。
【0025】
図5A及び5Bは、キャリッジ及びレールを含む例示的なリニア静圧軸受の簡略化された図である。軸受パッド18は、形状が平行四辺形である。軸受レールの表面には、波長l及び振幅aの周期的なパターンが形成されている。軸受の公称ギャップはh、軸受ランド幅はB、軸受ランド長はL、供給圧力はp、大気圧はpと定義する。軸受ポケット20内の圧力は、流体供給源及び軸受ポケット20の間の毛細管絞り50によって補償されている。毛細管絞り50は、軸受の剛性を高める圧力降下を生じさせる。これは一般に補償静圧軸受として知られている。
【0026】
図6は、リニア静圧軸受の運動中に結果として生じる力の変化のプロットであり、この力の変化は、軸受レール31内の波長l及び振幅aの周期的パターンに起因する。軸受の公称ギャップはh、軸受ランド幅はB、軸受ランド長はL、供給圧力はp、大気圧はpと定義する。変数mはスキュー比として定義しているが、これは、平行四辺形の形状をした軸受パッド18のスキュー距離を軸受ランド幅で割ったものに等しい。このプロットは、様々な軸受パッド18の形状を画定する3本の線を含む。最初の実線は、m=0を定義し、これは長方形のパッド(従来技術)である。2本目の長い破線では、m=0.1の場合、スキュー量は軸受ランド幅の10%である。最後の3本目の線(短い破線)では、m=1の場合、スキュー量は軸受ランド幅の100%である。軸受パッドの形状例についても、対応する線種と共にグラフに示している。プロットは、mが増加すると、力の変化が減少することを示している。軸受は線形の剛性を有すると仮定できるため、力の変化が減少するとキャリッジの運動誤差も低減される。
【0027】
本明細書は、様々な非限定的かつ非網羅的な実施例を参照して記載されている。しかしながら、開示された実施例のいずれか(またはその一部)の様々な置換、変更、または組合せが、本明細書の範囲内でなされ得ることが、当業者であれば認識できるであろう。したがって、本明細書は、本明細書に明示的に記載されていない追加の実施例をサポートすることが企図され、理解される。このような実施例は、例えば、本明細書に記載された様々な非限定的かつ非網羅的な実施例の開示されたステップ、構成要素、要素、特徴、側面、特性、制限などのいずれかを組み合わせ、変更し、または再編成することによって得ることができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】