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特表2024-524484新規な単一ドメイン抗原結合分子およびそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】新規な単一ドメイン抗原結合分子およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240628BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240628BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240628BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
G01N33/531 A
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581018
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022067773
(87)【国際公開番号】W WO2023275075
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182579.9
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524003208
【氏名又は名称】プロバイレクス・ジェノーム・エディティング・セラピーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PROVIREX Genome Editing Therapies GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】トレンクル,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ロートバウアー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソナニーニ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】クナイリング,マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ベショルナー,ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ハマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ハウバー,ヨアヒム
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA70
4H045BA71
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ヒトCD4に対する新規な単一ドメイン抗体/ナノボディ、ならびにそれらの診断的/予防的、もしくは治療的使用または器具に関する。本発明のナノボディは、例えば、検出可能な標識、ウイルス粒子、または治療部分と合わせることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD4に結合するナノボディであって、
a)(i)CDR1としてSGFTFSKL(配列番号1)、(ii)CDR2としてIDSSGDTTDYLA(配列番号2)、および(iii)CDR3としてREDPPG(配列番号3)のアミノ酸配列;もしくは
b)(i)CDR1としてSGFDVDYY(配列番号4)、(ii)CDR2としてアミノ酸配列IASSDGSTYYAD(配列番号5)、および(iii)CDR3としてDATCPYYCSGSVCYLETGMD(配列番号6)のアミノ酸配列;もしくは
c)(i)CDR1としてのSGFALEYY(配列番号7)、(ii)CDR2としてのMSASGGVINYSE(配列番号8)、および(iii)CDR3としてのEKAYYGSSWAECYLMMD(配列番号9)のアミノ酸配列;もしくは
d)a)、b)、またはc)において定義されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列
またはそれぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3;もしくは配列番号4、配列番号5、および配列番号6;もしくは配列番号7、配列番号8、および配列番号9のうちの1つ、2つまたは3つの配列における1つまたは2つのアミノ酸の保存的置換を含む、a)、b)またはc)のいずれかにおいて定義されるナノボディの機能保存的変異体
を含むナノボディ。
【請求項2】
ナノボディが、ヒトCD4のドメインD1またはドメインD3に結合する、請求項1に記載のナノボディ。
【請求項3】
4つのフレームワーク領域(FR1~FR4)および3つの相補性決定領域(CDR1~CDR3)を含み、3つの相補性決定領域は、
(i)アミノ酸配列a)~c)のうちの1つ、または
(ii)アミノ酸配列a)~c)のうちの1つと少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列、または
(iii)それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3;もしくは配列番号4、配列番号5、および配列番号6;もしくは配列番号7、配列番号8、および配列番号9のうちの1つ、2つまたは3つの配列における1つまたは2つのアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列
からなり、好ましくは、ナノボディは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号156、配列番号157のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号156もしくは配列番号157のアミノ酸配列のうちの1つと少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のナノボディ。
【請求項4】
ナノボディが、検出可能な標識、ウイルス粒子、および/または治療的もしくは薬理学的活性剤のうちの少なくとも1つと関連する、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノボディ。
【請求項5】
検出可能な標識が、免疫組織化学、光学的イメージング、近赤外イメージング(NIR)、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴イメージング(MRI)のための検出可能な部分およびトレーサーから選択され、好ましくは、検出可能な標識が、フルオロフォア、放射性核種または磁性粒子から選択される、請求項4に記載のナノボディ。
【請求項6】
ウイルス粒子が、アデノウイルス関連ウイルス(AAV)粒子、アデノウイルス粒子、またはレンチウイルス粒子であり、好ましくは、AAV粒子が、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、またはAAV9粒子から選択される、請求項4に記載のナノボディ。
【請求項7】
治療的活性剤が活性遺伝子導入剤である、請求項4に記載のナノボディ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディをコードする核酸配列を含み、またはそれからなる核酸であって、別の核酸配列に連結されていてもよい核酸。
【請求項9】
診断方法もしくは予後方法において使用するため、または医薬として使用するため、好ましくはCD4T細胞機能および/または細胞枯渇を調節するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のナノボディまたは請求項8に記載の核酸。
【請求項10】
インビボでの非侵襲的医学的イメージングにおける造影剤としての使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディ。
【請求項11】
試料中のCD4のインビトロ検出のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディ。
【請求項12】
AAV、アデノウイルスもしくはレンチウイルスベクターの再標的化に使用するための、または遺伝子導入ベクターを再標的化するための、あるいはウイルス様粒子(VLP)または脂質ナノ粒子(LNP)の標的化に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディまたは請求項8に記載の核酸。
【請求項13】
ナノボディまたはナノボディをコードする核酸が、AAVカプシドタンパク質の遺伝子標識、好ましくはAACカプシドタンパク質VP1および/またはVP2の遺伝子標識に使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディまたは請求項8に記載の核酸。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのナノボディまたはその組み合わせを含む、バイパラトピックな二価または三価のコンストラクト。
【請求項15】
CD4細胞、好ましくはCD4T細胞を含むことが疑われる生物学的試料中のCD4細胞の存在および/または量および/または活性もしくは分化状態を決定および/または画像化および/またはモニタリングするための方法であって、
a)前記試料を、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディのうちの少なくとも1つと、または請求項14に記載の少なくとも1つのコンストラクトと、および適宜、検出可能な標識とコンジュゲートした少なくとも1つの第2の化合物と組み合わせる工程であって、第2の化合物が、CD4細胞、好ましくはCD4T細胞の別のマーカーに結合する工程と、
b)検出可能な標識を介して、前記試料中のCD4細胞、好ましくはCD4T細胞に結合した前記ナノボディからのイメージングシグナル、および、第2の化合物が工程a)において追加的に使用された場合には、別のマーカーに結合した前記第2の化合物からのイメージングシグナルを測定する工程と、
c)イメージングシグナルを介して、前記試料中のCD4細胞、好ましくはCD4T細胞の存在および/または量および/または活性をイメージングし、決定しおよび/またはモニタリングする工程と
を含み、決定および/またはモニタリングおよび/またはイメージングは、好ましくは、患者を層別化するため、および個別化された免疫療法中の個々の免疫応答をモニタリングするためである方法。
【請求項16】
診断剤としての、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディのうちの少なくとも1つ、または請求項14に記載の少なくとも1つのコンストラクトの使用であって、好ましくは、診断剤が、患者の疾患関連免疫状態の診断分類、および患者の免疫療法に対する感受性から選択される診断に使用される、使用。
【請求項17】
患者の免疫状態および/または免疫療法に対する感受性を診断および/またはモニタリングするための方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのナノボディ、または請求項14に記載の少なくとも1つのコンストラクトが、患者の生物学的試料中のCD4T細胞を評価および/またはモニタリングするために使用され、ナノボディが、単独でまたはT細胞特異的マーカーに結合する第2の化合物と組み合わせて使用され、T細胞特異的マーカーが、CD2、CD3、CD7、CD8、CD27、CD28、CD127、HLA-DR、CD38、CD69、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CTLA-4、LAG3、TIM-3、OX40、ICOS、CXCR4、PD-1、PD-L1、PD-L2、CD40L(同義語CD154)、CD122、CD137、GITR、CD25、CD278、SIGLEC-7、SIGLEC-9、BTLA(同義語:CD272)、TIGIT、VISTA、B7-H4(同義語:VTCN1)、CD276(同義語:B7-H3)、A2AR、CEACAM1、LAIR-3、HVEM、CD160、CD200、CD200Rのうちの少なくとも1つから選択される、方法。
【請求項18】
薬学的に許容される担体または賦形剤と関連して、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノボディのうちの少なくとも1つ、および/または請求項14に記載の少なくとも1つのコンストラクトを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCD4に結合する、ナノボディとしても公知である、新規な単一ドメイン抗体(sdAb)、ならびにこのようなナノボディの使用、特に予防、治療、診断または細胞標的化目的に関する。
【0002】
本発明はまた、1つ以上のこのようなナノボディを含むかまたはそれから本質的になるポリペプチドに関する。本発明はまた、このようなナノボディおよびポリペプチドをコードする核酸、このようなナノボディまたはポリペプチドを含む組成物、ならびにこのようなポリペプチド、核酸および組成物の使用、特に予防、治療、診断または細胞標的化目的に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、感染症、免疫介在性炎症性疾患(IMID)、自己免疫疾患およびがんの処置のための免疫療法の重要性が増加しており、したがって、異なる免疫細胞集団の分布および浸潤を検出し、モニタリングするための新規で信頼できるプローブが緊急に必要とされている。
【0004】
精密医療では、疾患に関連した免疫状態の診断分類が適切な治療法の選択の指針となるべきである。患者の特異的な免疫細胞組成、活性化状態、および罹患組織の浸潤の包括的分析は、患者の層別化に非常に有益であることが示されている。免疫療法を行う場合、反応者と非反応者の予測、および治療効果のモニタリング、症状発現前でも重篤な有害事象の検出が可能となる。
【0005】
CD4+T細胞は、自己免疫疾患、炎症、がん、および慢性ウイルス感染におけるT細胞媒介遅延型過敏反応における免疫応答を調整する上で重要な役割を果たすため、免疫状態の重要な決定因子である。
【0006】
CD4(表面抗原分類4)は、ヘルパーT細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞などの免疫細胞の表面にみられる糖タンパク質である。CD4+Tヘルパー細胞は、ヒトの免疫系に不可欠な白血球である。それらはしばしばCD4+細胞、ヘルパーT細胞、またはT4細胞と呼ばれ;それらの主な役割は、CD8+キラー細胞を含む他のタイプの免疫細胞にシグナルを送ることであり、次にこの免疫細胞が感染性粒子を破壊する。
【0007】
CD4は、4つのN末端N-免疫グロブリン(Ig)様細胞外ドメインからなる単量体I型膜貫通糖タンパク質であり、短い柄によってC末端膜貫通ドメインおよび細胞質尾部ドメインに接続されている。ドメインD1およびD3はIg可変ドメインに似ており、ドメインD2およびD4はIg定常ドメインに似ている。ドメインD1は、クラスII MHC分子と相互作用する。CD4は、T細胞受容体(TCR)が抗原提示細胞と相互作用するのを助ける。CD4の細胞質C末端尾部は、シグナル伝達経路の分子成分を活性化するチロシンキナーゼLckと相互作用する。
【0008】
CD4はMHCクラスIIに結合するが、これまでに特徴付けられた他のすべての白血球細胞-細胞認識分子と比較して、非常に低い親和性を示す。
【0009】
したがって、CD4+T細胞の動的分布の詳細なモニタリングは、コンパニオン診断に大いに関係する。現在、CD4+T細胞の存在、活性化および分化状態は、患者の末梢血中で評価およびモニタリングすることができる。腫瘍または免疫介在性炎症性疾患(IMID)の生検からのより包括的な診断手段は、細胞質内フローサイトメトリー分析(IC-FACS)、飛行時間によるサイトメトリー(CyTOF)、免疫組織化学およびエクスビボサイトカインアッセイ、またはRT-PCR分析を含む一連の方法によって可能となる。がんの不均一性およびIMIDにおけるCD4+T細胞浸潤の不均一性のために、生検は非常に小さな領域に関する非常に変動性が高い情報を提供し、したがって、総CD4+T細胞浸潤を推定するのに不適格である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
浸潤リンパ球の新たな役割および免疫療法の転帰に対するCD4+T細胞の影響を考慮すると、全腫瘍、全転移、またはIMIDの罹患組織にわたって、CD4+T細胞、および他のCD4発現細胞を評価するための新規の包括的アプローチが必要である。
【0011】
上述の観点から、本発明の目的は、CD4+細胞を同定するかまたは標的化するための新規ツールを提供すること、ならびにCD4+細胞を同定するかまたは標的化するツールの治療的、診断的または予防的使用を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ヒトCD4に結合するナノボディ(または単一ドメイン-抗体)を提供し、ナノボディは、
a)(i)CDR1としてSGFTFSKL(配列番号1)、(ii)CDR2としてIDSSGDTTDYLA(配列番号2)、および(iii)CDR3としてREDPPG(配列番号3)のアミノ酸配列;もしくは
b)(i)CDR1としてSGFDVDYY(配列番号4)、(ii)CDR2としてアミノ酸配列IASSDGSTYYAD(配列番号5)、および(iii)CDR3としてDATCPYYCSGSVCYLETGMD(配列番号6)のアミノ酸配列;もしくは
c)(i)CDR1としてのSGFALEYY(配列番号7)、(ii)CDR2としてのMSASGGVINYSE(配列番号8)、および(iii)CDR3としてのEKAYYGSSWAECYLMMD(配列番号9)のアミノ酸配列;もしくは
d)a)、b)、またはc)において定義されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列
またはそれぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3;もしくは配列番号4、配列番号5、および配列番号6;もしくは配列番号7、配列番号8、および配列番号9のうちの1つ、2つまたは3つの配列における1つまたは2つのアミノ酸の保存的置換を含む、a)、b)またはc)のいずれかにおいて定義されるナノボディの機能保存的変異体
を含む。
【0013】
本発明の新規な単一ドメイン抗体(またはナノボディ)は、種々のCD4+細胞上のその天然状態でヒトCD4受容体を特異的に認識する。本明細書に開示される新規なナノボディを用いて、CD4+T細胞などのCD4+細胞を選択的に同定するかまたは標的化することが可能であり、それらは、単独で、または追加の物質/分子もしくは方法との組み合わせ/関連(combination/association)において、診断、予防および治療において貴重なツールとなる。
【0014】
単一ドメイン抗体(sdAb)は、特異的抗原に選択的に結合することができる単一のモノマー可変抗体ドメインからなる抗体断片である。単一ドメイン抗体として、本発明のナノボディは、従来の抗体(IgG)に対する優れた代替物を表す:ラマなどのラクダ由来の抗体は、軽鎖を欠く重鎖ホモ二量体からなる免疫グロブリンの固有のサブセットを含む。それらの可変領域(VH)は抗体界で見られる最小の抗原結合断片であり、単一ポリペプチド鎖としてタンパク質工学に特に適している。単一ドメイン抗体、または「ナノボディ」は、これらの重鎖抗体のVH領域に由来する組換え最小サイズの無傷抗原結合ドメインである。モノクローナル抗体とは異なり、単純な細菌発現系で容易に大量に産生される。さらに、ナノボディは、通常、非常に安定であり、ナノモル範囲で親和性を有する抗原と結合することができ、より小さいサイズ(およそ15kDa)であり、それにより、従来のIgGの重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む一本鎖可変断片(ScFvs)などの抗体断片と比較して、遺伝的に操作しやすい。
【0015】
また、小さなサイズおよびコンパクトな折り畳みナノボディのために、高い化学的安定性、溶解性および速い組織浸透を示す。さらに、ナノボディは、バイパラトピック、二価、三価、四価または他の多特異的コンストラクトなどの多価フォーマットに容易に変換することができ、例えば、同一抗原上の異なるエピトープに対処することができ、本明細書に提示されるナノボディはまた本発明に従って使用することができる。また、ナノボディは、同等の抗原特異性および親和性を有し、ヒト抗体(VH)断片とのそれらの高い相同性のため、非常に低い免疫原性しか示さない。
【0016】
一実施形態によれば、本発明のナノボディは、ヒトCD4のドメインD1またはドメインD3に結合する。
【0017】
また、好ましい実施形態では、本発明のナノボディは、ヒトCD4のドメインD1に特異的に結合するナノボディから選択され、好ましくは、ナノボディは、CDR1としてSGFTFSKL(配列番号1)、(ii)CDR2としてIDSSGDTTDYLA(配列番号2)、および(iii)CDR3としてREDPPG(配列番号3)のアミノ酸配列;もしくは(i)CDR1としてのSGFALEYY(配列番号7)、(ii)CDR2としてのMSASGGVINYSE(配列番号8)、および(iii)CDR3としてのEKAYYGSSWAECYLMMD(配列番号9)のアミノ酸配列;または配列、それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3;もしくは配列番号7、配列番号8、および配列番号9のうちの1つ、2つまたは3つの配列における1つまたは2つのアミノ酸の保存的置換を含むこれらのナノボディの機能保存的変異体;あるいは上記のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列;または配列、それぞれ、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6のうちの1つ、2つまたは3つの配列における1つまたは2つのアミノ酸の保存的置換を含む、上記で定義されるナノボディの機能保存的変異体を含む。
【0018】
上記のナノボディは、CD4の同じドメイン、すなわちドメインD1に結合するが、CD4のドメイン1の異なるエピトープに結合する。
【0019】
一実施形態では、ナノボディは、CD4のドメインD3に結合し、(i)CDR1としてSGFDVDYY(配列番号4)、(ii)CDR2としてアミノ酸配列IASSDGSTYYAD(配列番号5)、および(iii)CDR3としてDATCPYYCSGSVCYLETGMD(配列番号6)のアミノ酸配列;または上記のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列、または配列、それぞれ配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6のうちの1つ、2つ、もしくは3つの配列における1つもしくは2つのアミノ酸の保存的置換を含む上記で定義されるナノボディの機能保存的変異体を含む。
【0020】
CD4のドメインD1は、長さが100アミノ酸であり、アミノ酸位置26~125を含むように指定され、一方、ドメインD3は長さが114アミノ酸であり、アミノ酸位置204~317を含むように指定される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、本発明のナノボディは、アミノ酸Thr 17とLys 75の間のヒトCD4のドメインD1、またはアミノ酸Thr 17とGlu 91の間のヒトCD4のドメイン1に結合し、したがって、本発明のナノボディはまた、それぞれの領域において結合し、本明細書において定義されるアミノ酸構造を含むナノボディである。
【0022】
さらに、好ましい実施形態によれば、本発明のナノボディは、4つのフレームワーク領域(FR1~FR4)および3つの相補性決定領域(CDR1~CDR3)を含み、3つの相補性決定領域は、
(i)アミノ酸配列a)~c)のうちの1つ、または
(ii)アミノ酸配列a)~c)のうちの1つと少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列、または
(iii)それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3;もしくは配列番号4、配列番号5、および配列番号6;もしくは配列番号7、配列番号8、および配列番号9のうちの1つ、2つまたは3つの配列における1つまたは2つのアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列
からなり、好ましくは、ナノボディは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号156、配列番号157のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号156もしくは配列番号157のアミノ酸配列のうちの1つと少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、ナノボディは、本発明のナノボディのヒト化変異体である。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態において、ナノボディは、リジン残基がアルギニンと交換されている本発明のナノボディのヒト化変異体である。
【0025】
好ましい実施形態によれば、ナノボディは、配列番号10を有するナノボディのヒト化変異体であり、すべてのリジン残基がアルギニンと交換されており;好ましくは、このナノボディは配列番号157を有する。
【0026】
本発明において、本発明のナノボディは、インビトロ(in vitro)でのT細胞増殖またはサイトカイン発現に影響しないことが示されている。
【0027】
また、本発明のナノボディを標識することにより、インビボ(in vivo)において、例えば、マウス異種移植片またはノックインモデルにおいて、CD4+細胞の存在および位置を追跡することが可能であった/可能である。
【0028】
本発明のナノボディを用いて、マウスの光学的または分子的イメージングにおいて高いシグナル対ノイズ比を実証することも可能であった。
【0029】
本明細書で使用される場合、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、物品の文法的対象物の1つまたは1を超える(例えば、少なくとも1つ)を指す。
【0030】
用語「または」とは、本明細書において、文脈上別の意味が明確に示されない限り、用語「および/または」を意味するために使用され、それと互換的に使用される。
【0031】
用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書において互換的に使用され、ならびに用語「ナノボディ」および「単一ドメイン抗体」も同様である。
【0032】
「約」および「およそ」とは、一般に、測定の性質または精度を与えられて測定された量についての許容可能な誤差の程度を意味するものとする。誤差の例示的な程度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内であり、典型的には、10%以内であり、より典型的には5%以内である。
【0033】
本発明の方法および組成物は、特定された配列を有するポリペプチドおよび核酸、またはそれらと実質的に同一もしくは類似の配列、例えば、特定された配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%同一またはそれより高い配列を有するポリペプチドおよび核酸を包含する。アミノ酸配列との関連において、用語「実質的に同一の」は、本明細書において、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能活性を有することができるように、第2のアミノ酸配列における整列されたアミノ酸残基とi)同一であるか、またii)その保存的置換である、十分な数または最小数のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸を指すために使用される。例えば、参照配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する共通の構造ドメインを含有するアミノ酸配列。他の実施形態では、アミノ酸配列は、参照配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性パーセンテージを達成するために、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(例えば、保存的置換)を含有することができる。ヌクレオチド配列との関連において、用語「実質的に同一の」は、本明細書において、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列が共通の機能的活性を有するポリペプチドをコードするか、または共通の構造的ポリペプチドドメインもしくは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするように、第2の核酸配列において整列したヌクレオチドと同一である、十分な数または最小数のヌクレオチドを含有する第1の核酸配列を指すために使用される。例えば、参照配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列。
【0034】
本明細書で使用される本発明のナノボディの「機能保存的変異体」とは、抗原親和性および/または抗原特異性などの所望の特性を変化させることなく、1つ以上のアミノ酸残基が修飾されているナノボディまたは断片を意味する。このような変異体には、限定されないが、類似の特性を有するアミノ酸で置換された特定のアミノ酸が含まれる。例えば、「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。このような保存的置換は、好ましくは、以下のグループ(a)~(e)の別のアミノ酸残基によって置換される:(a)小さな脂肪族、非極性または弱極性残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly)、(b)極性、負に荷電した残基、およびそれらの(荷電していない)アミド(Asp、Asn、Glu、Gln)、(c)極性、正に荷電した残基(His、Arg、Lys)、(D)大きな脂肪族、非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys)、および(e)芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0035】
特に好ましい保存的置換は、AlaからGlyもしくはSer、ArgからLys、AsnからGlnもしくはHis、AspからGlu、CysからSer、GlnからAsn、GluからAsp、GlyからAlaもしくはPro、HisからAsnもしくはGln、IleからLeuもしくはVal、LeuからIleもしくはVal、LysからArgもしくはGlnもしくはGlu、MetからLeuもしくはTyrもしくはIle、PheからMetもしくはLeuもしくはTyr、SerからThr、ThrからSer、TrpからTyr、TyrからTrp、および/またはPheからValもしくはIleもしくはLeuであり、特に好ましい置換はLysからArgである。
【0036】
好ましい実施形態は、配列番号10におけるすべてのLys(リジン)残基のArg(アルギニン)への置換であり、以下の配列:EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS RLAMSWHREP PGRGREWLAD IDSSGDTTDY LASVRGRFTI SRDNARNTLY LQMDSLRSED TGVYYCASRE DPPGYWGQGT QVTVSS(配列番号156)をもたらす。
【0037】
好ましい実施形態では、ナノボディは、配列番号10を有するナノボディのヒト化変異体であり、すべてのリジン残基がアルギニンと交換されており、好ましくは、このナノボディは、配列EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SLAMSWHRQP PGRGREWLAD IDSSGSTTDY LASVRGRFTI SRDNSRNTLY LQMNSLRTED TGVYYCASRE DPPGYWGQGT TVTVSS(配列番号157)を有する。
【0038】
ナノボディのアミノ酸配列および構造は、3つの相補性決定領域または「CDR」によって中断される4つのフレームワーク領域または「FR」を含むと考えられ得るが、これらに限定されない。
ナノボディ内のアミノ酸残基の総数は、110~130の範囲であり得る。
【0039】
したがって、本発明の一態様によれば、CD4特異的ナノボディは、CD4+細胞、好ましくはCD4+T細胞の検出およびインビボイメージングのために使用され、例えば、患者の層別化のための免疫-PETのため、および個別化された免疫療法中の個人の免疫応答のモニタリングのための汎用性のあるプローブのみならず、例えば、遺伝子治療における細胞標的化のための治療的または医薬的使用のための貴重なツールとなる。
【0040】
本発明の1つの態様によれば、本発明のナノボディは、検出可能な標識、ウイルス粒子、および/または治療的もしくは薬理学的に活性な薬剤のうちの少なくとも1つと合わされている。
【0041】
本発明のナノボディに関連して使用される場合、用語「と合わされる」とは、診断部分/薬剤として、または治療的もしくは薬理学的に活性な部分もしくは薬剤として使用される/使用され得る別の部分によるナノボディの任意の修飾を指す。修飾により、薬剤または部分(ナノボディがそれと合わされる)は、間接的または直接的にナノボディに結合しているか、またはナノボディに組み込まれている。
【0042】
例えば、このような修飾は、検出可能な標識、ウイルス粒子、および/または治療的もしくは薬理学的に活性な薬剤であり得、および/または、例えば、ナノボディの半減期、溶解性および/または吸収を変更し/増加させ、ナノボディの免疫原性および/または毒性を減少させ、ナノボディの任意の望ましくない副作用を除去または減弱させ、および/またはナノボディに他の有利な特性を付与し、および/またはナノボディの望ましくない特性を減少させる、1つ以上の官能基または薬剤もしくは部分;あるいは前述の2つの組み合わせの(例えば、コンジュゲーション、生物学的もしくは化学的結合、共有結合による、または任意の他の適切な方法での)導入を含み得る。このような官能基の例、およびそれらを導入するための技術の例は、当業者には明らかであり、一般に、上記で引用した一般的背景技術に記載されたすべての官能基および技術、ならびに医薬タンパク質の修飾、特に抗体または抗体断片の修飾のための、それ自体が公知である官能基および技術を含むことができる。このような官能基は、また当業者に明らかであるように、例えば、本発明において使用されるナノボディに直接的(例えば、共有結合的)に、または適宜、適切なリンカーもしくはスペーサーを介して連結され得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、ナノボディ/コンストラクトとの関連において使用される場合の用語「標識」、「マーカー」およびそれらの変異体とは、化合物の検出を容易にするために、本明細書に開示されるナノボディまたはコンストラクトに直接的もしくは間接的に連結され、合わされまたはコンジュゲートされる検出可能な化合物、組成物または分子を指す。当該技術分野において公知である標識の非限定的な例としては、蛍光タグ、酵素リンケージ、および放射性同位体が挙げられる。1つの例において、「標識されたナノボディ」とは、検出可能な化合物、組成物または分子のナノボディへの直接的または間接的なコンジュゲーションを指す。さらにまたは代替として、検出可能な化合物、組成物または分子は、直接的または間接的なコンジュゲーション以外の手段によってナノボディ構造内に組み込むことができる。このような組み込みの例示的な方法は、ナノボディのアミノ酸残基を、それが検出可能になるように(例えば、放射性標識により)修飾されたアミノ酸残基で置換することである。標識は、直接的に検出可能であり得るか、またはさらなる化合物、組成物もしくは分子との接触後にのみ検出可能であり得る。1つの非限定的な例では、標識は、当該技術分野において公知である方法に従って直接的に検出可能な放射性標識されたアミノ酸の組み込みであり得る。さらなるまたは代替の非限定的な例では、標識は、印を付けられたアビジン(例えば、当該技術分野において公知である光学的方法または比色法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)との接触後に検出可能である、ビオチニル部分のナノボディへの付着であり得る。タンパク質を標識する種々の方法が当該技術分野において公知であり、使用することができる。ポリペプチドのための標識の例としては、限定されないが、以下:放射性同位体もしくは放射性核種(例えば、35S、11C、13N、15O、18F、19F、99TC、131I、H、14C、15N、90Y、99Tc、111Inおよび125I)、蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、ランタニドリン蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、または磁性剤(例えば、ガドリニウムキレート)が挙げられる。一部の実施形態では、標識は、本明細書に開示されるナノボディまたはコンストラクトの結合のための潜在的立体障害を減少させるために、様々な長さのスペーサーアームによって付着される。
【0044】
本発明のナノボディを標識するために、この分野において公知である任意の方法を適用することができる。一般に、例えば陽電子放出断層撮影(PET)用に本発明のナノボディを標識するために、PETトレーサーは、ナノボディ内に位置する、反応性ユニット(例えば、第一級アミノ基、DBCOと組み合わせたアジド基、C末端システイン、His6-タグ)を介してキレート剤(例えば、NODAGA)またはクリック試薬にカップリングされ、次に、それを介して放射性核種が導入される。
【0045】
「治療的または薬理学的に活性な薬剤」は、治療的処置を必要とする患者において治療効果、すなわち有益な治療効果をもたらす任意の治療的に活性な薬剤を含み得る。薬剤の非限定的な例としては、例えば、サイトカイン阻害剤、増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞増殖抑制剤が挙げられる。
【0046】
本発明の一態様によれば、検出可能な標識は、免疫組織化学、光学的イメージング、近赤外線イメージング(NIR)、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)または磁気共鳴イメージング(MRI)のための検出可能な部分およびトレーサーから選択され、好ましくは、検出可能な標識は、フルオロフォア、放射性核種または磁性粒子から選択される。
【0047】
検出可能な標識または「造影剤」で修飾された本発明のナノボディを用いて、細胞を画像化するための異なるアプローチを行うことができる。
【0048】
非侵襲的イメージングアプローチは、現在の診断基準と比較して大きな利益を提供する。今日まで、放射性標識された抗体は、前臨床モデルにおけるCD4+T細胞を画像化するために適用されている。新生児Fc受容体によって仲介されるリサイクル効果のために、全長抗体は、高コントラスト画像が獲得され得る前に長いクリアランス時間(数日間)を必要とする、長い血清半減期(約1~3週間)を有する。さらに、Fc領域を介したエフェクター機能は、増殖またはサイトカイン放出の誘導を含むCD4+細胞の枯渇または機能的変化を誘導することが示された。本明細書に提示されるCD4-ナノボディを用いて、これらの欠点および不利益をすべて克服することができる。
【0049】
本発明の別の態様によれば、ナノボディは、ウイルス粒子と合わされており、ウイルス粒子は、アデノウイルス関連ウイルス(AAV)粒子、アデノウイルス粒子、またはレンチウイルス粒子であり、好ましくは、AAV粒子は、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、またはAAV9粒子から選択される。
【0050】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明のナノボディは、治療活性剤と合わされており、治療活性剤は活性遺伝子導入剤である。
【0051】
本発明において、上記で指示されるウイルス粒子と合わされている本発明のナノボディは、ヒトCD4+T細胞を標的化するために効率的に使用することができ、例えば、遺伝子治療、好ましくは疾患関連末梢血CD4+白血球の遺伝子治療に使用することができることが示されている。
【0052】
遺伝子導入剤は、臨床医が、目的とする治療に関連する核酸配列(すなわち、DNAまたはRNA)を、直接患者(インビボ遺伝子治療)に、または患者もしくはドナーから単離された細胞(エクスビボ遺伝子治療)に導入することを可能にする。遺伝子治療後に形質導入細胞によって産生される治療導入遺伝子(ナノボディを含むポリペプチドをコードする)は、直接投与されるタンパク質と比較して、対象において比較的一定のレベルに維持され得る。発現は、使用される特定のコンストラクトおよび標的組織または細胞型に依存して、一過性(数時間から数週間のオーダーで)であり得るか、または持続性(数週間から数か月またはそれ以上)であり得る。これらの導入遺伝子は、インテグレーティングまたは非インテグレーティングの線状コンストラクト、環状プラスミド、ウイルスベクターとして導入することができる。さらに、これらの導入遺伝子は、ウイルス様粒子(VLP)または化学的ナノ粒子担体(例えば、脂質ナノ粒子;LNP)によって導入することができる。
【0053】
本発明はまた、本発明のナノボディをコードする核酸配列を含むかまたはそれからなり、別の核酸配列に連結されていてもよい核酸に関する。
【0054】
本発明はまた、本明細書に記載されるナノボディのフレームワーク領域1、CDR1、フレームワーク領域2、CDR2、フレームワーク領域3、CDR3およびフレームワーク領域4を含むアミノ酸配列をコードする核酸、ならびに本明細書に記載される少なくとも1つのナノボディを含むポリペプチドに関する。
【0055】
本明細書に記載される態様のいくつかにおいて、本発明のナノボディをコードする核酸配列、またはそれらの任意のモジュールは、ベクターに作動可能に連結される。一般に、本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなど、適切な制御因子が付随する場合に複製が可能であり、遺伝子配列を細胞に伝達することができる任意の遺伝因子を指す。したがって、この用語は、クローニングおよび発現媒体、ならびにウイルスベクターを含む。「組換えベクター」とは、インビボで発現することができる異種核酸配列、または「導入遺伝子」を含むベクターを意味する。本発明のナノボディをコードする配列またはその成分のデリバリーに有用なベクターは、所望の標的細胞または組織におけるナノボディまたはその成分の発現に十分な1つ以上の調節因子(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)を含むことができる。
【0056】
一実施形態では、本発明のナノボディは、診断方法もしくは予後方法における使用のため、または医薬としての使用のため、好ましくはCD4+T細胞機能および/もしくは細胞枯渇の調節のため、またはインビボでの非侵襲的医学的イメージングにおける造影剤としての使用のためである。
【0057】
「診断方法」または「診断」とは、ここでは、個人が病理学または特定の状態、例えば、処置状態、または疾患状態に苦しんでいるかどうかを決定する可能性を与える方法を意味する。
【0058】
「予後方法」または「予後」とは、ここでは、個人が病理を発症するリスクがあるかどうかを決定する可能性を与える方法を意味する。
【0059】
好ましくは、本発明の一実施形態では、上述のナノボディは、異なる生物組織または体液中のCD4+T細胞の浸潤の診断に使用される。
【0060】
「医薬としての使用」または薬剤とは、ナノボディの医薬または薬剤としての一般的な使用、すなわち、疾患を治療するためのものを意味する。使用は、本発明の治療有効量のナノボディまたはコンストラクトを、それを必要とする患者に投与することを含む処置方法を含むことができる。
【0061】
本発明のナノボディを用いて治療的に処置および/またはモニタリングすることができる疾患または状態は、がん、ウイルス感染、自己免疫疾患、関節リウマチ、大腸炎、同種幹細胞移植、臓器移植拒絶反応、後天性免疫不全疾患から選択される。
【0062】
例えば、本発明のナノボディまたはコンストラクトは、CD4機能、または、例えば、自己免疫疾患またはがんの処置に使用することができるMHCIIへのその結合をブロックするために使用することができる。
【0063】
以下により詳細に記載するように、本発明のナノボディは、例えば、経口的に、吸入により、適切な形態で非経口経路を介して投与することができる。非経口経路が意図される場合、ナノボディは、注射可能な溶質およびアンプルまたはフラスコにパッケージされた懸濁液の形態であり得る。非経口投与のための形態は、通常、ナノボディを緩衝剤、安定剤、保存剤、可溶化剤、等張剤および懸濁剤と混合することによって得られる。公知の技術によれば、これらの混合物は、次に、滅菌され、その後、静脈注射の形態でパッケージされる。投与されるナノボディまたはコンストラクトの量は、投与方法、患者の大きさおよび/または体重、およびそれに関連し得る治療活性剤の性質に自然に依存する。
【0064】
本発明の一実施形態では、ナノボディは、試料中のCD4のインビトロ検出に使用される。
【0065】
一実施形態では、本発明のナノボディ、または本発明の核酸は、AAV、アデノウイルスまたはレンチウイルスベクターの再標的化に使用するため、または遺伝子導入ベクターを再標的化するため、またはウイルス様粒子もしくは脂質ナノ粒子の標的化に使用するためのものである。
【0066】
本発明のナノボディを用いて、AAV、アデノウイルスまたはレンチウイルスベクターをCD4+細胞、特にCD4+T細胞に対して再方向付けすることができる。アデノ随伴ウイルス(AAV)では、ウイルスカプシド、とりわけウイルス指向性が定義される。現在、霊長類では、13のAAV血清型が同定されており、それらが感染する組織および細胞が異なるが、血清型は通常、かなり広範な組織特異性を示す。例えば、遺伝子導入のために最もよく研究されている血清型であるAAV2は、多数の細胞型および組織に感染する広範な指向性によって特徴付けされる。また、末梢血単核細胞(PBMC)を特異的であり、効率的に形質導入するためのすべてのAAV血清型の欠損は、特にヒト血液リンパ球細胞への直接なインビボ遺伝子導入が必要な場合、かなりの技術的障害を表す。この欠点はここで対処され、CD4を発現するこれらの細胞を直接標的化することができる本発明のナノボディによって克服することができる。
【0067】
一実施形態では、本発明のナノボディ、またはナノボディをコードする核酸は、AAVカプシドタンパク質の遺伝的標識、好ましくはAAVカプシドタンパク質VP1および/またはVP2の遺伝的標識に使用される。
【0068】
本発明のナノボディを用いると、例えば、ヒトCD4+細胞のAAVベクター形質導入は、例えば、組換え酵素またはヌクレアーゼを導入することができる手段として、初代ヒトTリンパ球を含めて改善することができる。
【0069】
別の態様によれば、本発明はまた、本発明の少なくとも1つのナノボディを含む、マルチパラトピック、好ましくはバイパラトピック、多価、好ましくは二価もしくは三価のコンストラクト、またはそれらの組み合わせに関する。
【0070】
本明細書で使用され、一般に理解される「マルチパラトピックコンストラクト」とは、1つの抗原上の2つ以上の異なるエピトープ、例えば、2つ(=バイパラトピック)または3つ(=トリパラトピック)に結合するポリペプチドコンストラクトを指す。したがって、本発明はまた、本発明のナノボディの少なくとも2つの結合配列を含むコンストラクトを含む。
【0071】
一方、「多価コンストラクト」は、少なくとも2つの抗原結合部位/結合単位を有するコンストラクトである。一部の実施形態では、多価コンストラクトは、二価コンストラクト、三価コンストラクトまたは四価コンストラクトである。
【0072】
本発明はまた、CD4+細胞、好ましくはCD4+T細胞を含むことが疑われる生物学的試料中のCD4+細胞の存在および/または量および/または活性もしくは分化状態を決定および/または画像化および/またはモニタリングする方法に関し、該方法は、
a)上記試料を、本発明の少なくとも1つのナノボディ、または本発明の少なくとも1つのコンストラクトと、適宜、検出可能な標識とコンジュゲートした少なくとも1つの第2の化合物と組み合わせる工程であって、第2の化合物が、CD4+細胞、好ましくはCD4+T細胞の別のマーカーに結合する工程と、
b)検出可能な標識を介して、前記試料中のCD4+細胞、好ましくはCD4+T細胞に結合した前記ナノボディからのイメージングシグナル、および、第2の化合物が工程a)において追加的に使用された場合には、別のマーカーに結合した前記第2の化合物からのイメージングシグナルを測定する工程と、
c)イメージングシグナルを介して、上記試料中のCD4+細胞、好ましくはCD4+T細胞の存在および/または量および/または活性を画像化し、決定しおよび/またはモニタリングする工程と
を含み、決定および/またはモニタリングおよび/または画像化は、好ましくは、患者を層別化するため、および個別化された免疫療法中の個々の免疫応答をモニタリングするためである。
【0073】
本明細書中で使用される「生物学的試料」とは、より大きな生物学的因子の一部であることを意味する。好ましくは、試料は生物学的起源の物質である。生体試料の例としては、限定されないが、臓器または組織の一部、例えば、腎臓、肝臓、心臓、肺など、動脈、静脈など、血液、例えば全血、およびその化合物、例えば血漿、血清、血小板、血液細胞の部分集団など、ならびに唾液、痰、または口および咽頭領域から採取された任意の試料、さらには、例えば、唾液または痰試料を含有する口内洗浄液またはリンスを使用することによって得られたるものが例示される。生物学的試料は、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒト由来である。また、好ましくは、生物学的試料は、哺乳動物、好ましくはヒト、例えば初代細胞または(確立された)細胞株に由来する細胞を含む細胞培養物であり得、「初代細胞培養物」は、目的とする組織から直接単離され、その起源組織の形態学的および機能的特徴を保持する細胞の培養物である。一方、細胞株は、長期間にわたって継続的に継代され、均一な遺伝子型および表現型特性を獲得した細胞であり;それらは有限または連続的であり得る。
【0074】
本発明のナノボディは、CD4+T細胞だけでなく、他のCD4発現細胞、例えば、単球、マクロファージ、および樹状細胞などの免疫細胞上または中でも使用することができる。したがって、本発明の一実施形態では、CD4を発現する細胞は、T細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞から選択される。
【0075】
本発明はまた、診断剤としての、本発明のナノボディの少なくとも1つ、または本発明の少なくとも1つのコンストラクトの使用に関し、好ましくは、診断剤は、患者の疾患関連免疫状態の診断分類、および患者の免疫療法に対する感受性から選択される診断に使用される。
【0076】
本発明はまた、患者の免疫状態および/または免疫療法に対する感受性を診断および/またはモニタリングする方法に関し、本発明の少なくとも1つのナノボディ、または本発明の少なくとも1つのコンストラクトは、患者の生物学的試料中のCD4+T細胞を評価および/またはモニタリングするために使用され、ナノボディが、単独でまたはT細胞特異的マーカーに結合する第2の化合物と組み合わせて使用され、T細胞特異的マーカーが、CD2、CD3、CD7、CD8、CD27、CD28、CD127、HLA-DR、CD38、CD69、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CTLA-4、LAG3、TIM-3、OX40、ICOS、CXCR4、PD-1、PD-L1、PD-L2、CD40L(同義語CD154)、CD122、CD137、GITR、CD25、CD278、SIGLEC-7、SIGLEC-9、BTLA(同義語:CD272)、TIGIT、VISTA、B7-H4(同義語:VTCN1)、CD276(同義語:B7-H3)、A2AR、CEACAM1、LAIR-3、HVEM、CD160、CD200、CD200Rのうちの少なくとも1つから選択される。
【0077】
本発明はまた、薬学的に許容される担体または賦形剤と合わせて、本発明のナノボディの少なくとも1つ、および/または本発明の少なくとも1つのコンストラクトを含む医薬組成物に関する。
【0078】
本発明の組成物は、本発明の組成物/ナノボディによる処置を必要とする患者に投与/使用するために製剤化された、本発明の少なくとも1つのナノボディを含む。
【0079】
用語「薬学的に」または「薬学的に許容される」とは、哺乳動物、特にヒトに投与された場合に、二次的、アレルギー的または他の不幸な反応を生じない分子実体および組成物を指す。したがって、「薬学的に許容される担体」とは、疾患の処置の分野において典型的に使用され、生体、好ましくはヒトへの本発明の生成物の投与を単純化もしくは可能にし、および/またはその安定性および/もしくは活性を改善する任意の賦形剤、添加剤、または媒体を意味することが理解される。医薬組成物にはまた、結合剤、希釈剤または潤滑剤を組み込むことができる。薬学的な担体または他の添加物の選択は、意図された投与経路および標準的な薬学的実践に基づいて行うことができる。薬学的に許容される担体使用は、分散剤もしくは懸濁剤、界面活性剤、等張剤、散布剤もしくは乳化剤、保存剤、カプセル化剤、固体結合媒体、凍結乾燥保護剤、膨張剤、安定剤などの1つ以上の溶媒、増量剤、または他の液体結合媒体で構成または含むことができ、これは、何がそれぞれの用量計画に最も適しており、同様に本発明による化合物と適合するかに依存する。このような追加成分の概要は、例えば、Rowe (Ed.) et al.: Handbook of Pharmaceutical Excipients, 7th edition, 2012, Pharmaceutical Pressに見出すことができる。
【0080】
医薬組成物は、例えば、生理学的に許容されるpH(例えば、pH7~8.5)の水性緩衝液、ポリマーベースのナノ粒子媒体、リポソームなどを含むことができる。医薬組成物は、液体、ゲル、固体、クリーム、またはペースト剤形などの任意の適切な剤形でデリバリーすることができる。
【0081】
当業者に公知である任意の投与方法を、本発明によるナノボディまたは医薬組成物を患者に投与するために使用することができる。特に、ナノボディ/医薬組成物は、例えば、経口、吸入または非経口経路、特に注射、例えば、皮下、血管内、筋肉内または腹腔内により投与することができる。非経口経路が選択される場合、ナノボディ/医薬組成物は、注射可能な溶液および懸濁液の形態であり得、アンプルまたはフラスコにパッケージされ得る。非経口投与形態は、本発明によるナノボディを緩衝剤、安定剤、保存剤、可溶化剤、等張剤および懸濁剤と混合することによって通常得られる。公知の技術によれば、これらの混合物は、滅菌され得るか、または静脈注射としてパッケージされ得る。当業者は、例えば、緩衝液としてリン酸塩に基づく緩衝液を使用することができる。
【0082】
「凍結乾燥保護剤」とは、目的とするタンパク質と組み合わされた場合、凍結乾燥およびその後の保存の際にタンパク質の化学的および/または物理的な不安定性を有意に防止または減少する分子である。例示的な凍結乾燥保護剤には、糖、例えばスクロース、ソルビトール、またはトレハロース;アミノ酸、例えばグルタミン酸一ナトリウムまたはヒスチジン;メチルアミン、例えばベタイン;リオトロピック塩、例えば硫酸マグネシウム;ポリオール、例えば三価またはより多価の糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトールが含まれる。
【0083】
「安定剤」とは、目的とするタンパク質(例えば、ナノボディ/単一ドメイン抗体分子)と組み合わされた場合、凍結乾燥、復元、液体または保存形態における目的とするタンパク質の化学的および/または物理的な不安定性を実質的に防止または減少する分子を指す。例示的な安定剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニン、および塩酸アルギニンが含まれる。
【0084】
本明細書中の目的とする「希釈剤」は、薬学的に許容されるもの(ヒトへの投与に関して安全であり、非毒性)であり、復元された製剤の調製に有用であるものである。例示的な希釈剤は、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル溶液またはデキストロース溶液を含む。
【0085】
「保存剤」とは、例えば、多用途復元製剤の製造を容易にするように、復元製剤中の細菌作用を本質的に減少させるために希釈剤に加えることができる化合物である。潜在的な保存剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、およびベンゼトニウムクロリドが挙げられる。他のタイプの保存剤には、芳香族アルコール、例えば、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールが含まれる。本明細書において最も好ましい保存剤は、ベンジルアルコールである。
【0086】
「膨張剤(bulking agent)」とは、凍結乾燥混合物に重量を加え、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開口孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの製造を容易にする)化合物である。膨張剤の例としては、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが挙げられる。
【0087】
ナノボディ/医薬組成物の投与量は、投与経路/方法、患者の大きさおよび/または体重、使用される検出技術、およびそれに関連し得るアクセサリー部分の性質に自然に依存する。
【0088】
本発明の医薬組成物は、界面活性剤、膨張剤、安定剤、保存剤、および緩衝液、例えば組成物のpHを調節するための緩衝液を含み得る。一部の実施形態では、製剤は、液体製剤、凍結乾燥製剤、復元凍結乾燥製剤、エーロゾル製剤、またはバルク保存製剤(例えば、凍結バルク保存製剤)である。
【0089】
患者は、好ましくはヒトである。
【0090】
本明細書で使用される「生物学的試料」は、好ましくは、組織試料、体液試料、好ましくは痰試料および唾液試料、血液試料、好ましくは全血試料、血漿試料または血清試料からなる群から選択される。生物学的試料は、好ましくは、上述のように、哺乳動物、好ましくはヒト由来である。また、好ましくは、生物学的試料は、哺乳動物、好ましくはヒト、例えば初代細胞または(確立された)細胞系に由来する細胞を含む細胞培養物であり得、「初代細胞培養物」は、目的とする組織から直接単離され、それらの起源組織の形態学的および機能的特徴を保持する細胞の培養物である。一方、細胞株は、長期間にわたって継続的に継代され、均一な遺伝子型および表現型特性を獲得した細胞であり;それらは有限または連続的であり得る。
【0091】
本発明のナノボディのアミノ酸配列を提供することにより、当業者は、ポリペプチドを製造するための従来技術により、本発明および本明細書に記載されるナノボディを製造することができる。例えば、それらは、固相中で周知の合成方法を使用することによって合成することができる。
【0092】
あるいは、本発明によるナノボディは、当業者に周知の組換えDNA技術(Maniatis et al. (1982) Molecular Cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, NY, 51-54 and 412-430)を用いて合成することができる。例えば、それらは、目的とするポリペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、これらのベクターを目的とするポリペプチドを発現する適切な原核生物または真核生物宿主に導入した後、DNA発現産物として得ることができ、次に、当業者に周知の技術を用いてそこから単離することができる。したがって、本発明はまた、本明細書に開示されるポリペプチドおよびナノボディをコードする核酸を含むベクター、ならびにこのような核酸またはベクターをトランスフェクト、感染または形質転換された細胞に関する。
【0093】
さらなる利点は、実施形態の説明および添付の図面から続く。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の特徴および以下で説明する特徴を、各々特定された組み合わせにおいて用いることができるだけでなく、他の組み合わせにおいても、また、それら自体においても用いることができることは言うまでもない。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を図面に例示し、以下の説明においてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1-1】図1は、本発明のヒトCD4に対するナノボディの同定および特徴付けのための実験の結果を示す;(A)2ラウンドのバイオパニング後に選択された固有のCD4-Nbからの相補性決定領域(CDR)3のアミノ酸配列。(B)固定化された金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いたCD4-Nbの組換え発現および精製。2μgの精製したNbのクーマシー染色を示す。(C)4℃(上段の行)で30分間、または37℃(下段の行)で60分間、CD4-Nbで染色した生CHO-hCD4細胞の代表的な画像、スケールバー:50μm。(D)バイオレイヤー干渉法に基づく親和性測定について、ビオチン化hCD4をストレプトアビジンバイオセンサー上に固定化した。15.6nM~1000nMの範囲の4つの濃度の精製したNbを用いて速度論的測定を行った。一例として、指示された濃度でのCD4-Nb1のセンソグラムを示す。(E)フローサイトメトリーによるEC50の決定。CD4-Nb1について例示的に示された、陽性染色されたCHO-hCD4のパーセンテージ(親の頻度)は、指示された濃度のCD4-Nbに対してプロットされた。表1 BLI(左側)およびフローサイトメトリーのEC50値(右側)により決定された親和性(K)、会合(Kon)および解離定数(Koff)の要約。(F)配列番号16、17および18の配列アラインメント。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
【0097】
図2-1】図2は、CD4-ナノボディ結合エピトープの局在化の実験の結果を示す;(A)蛍光標識したCD4-Nb(CF568)で染色されたhCD4の完全長またはドメイン欠失突然変異体を発現する生CHO細胞の代表的な画像。(B)hCD4(PDBe 1wiq)の表面構造モデルとCD4-Nb1-3のHDX-MSエピトープマッピング結果を示す。異なる色は、CD4-Nb1(青色)、CD4-Nb2(赤色)またはCD4-Nb3(黄色)によって保護されたアミノ酸残基を強調する。Nb1とNb3の両方で保護されている重なり合った残基は緑色で示した。これらの特異的領域のより詳細な表面マップ(%ΔD)は、対応するCD4アミノ酸配列を有するC(CD4-Nb1)、D(CD4-Nb3)およびE(CD4-Nb2)に示される。
図2-2】同上。
【0098】
図3-1】図3は、蛍光標識したCD4ナノボディで染色されたヒトPBMCのサイトメトリー分析の結果を示す;(A)ドナー由来のCD3CD4二重陽性細胞についての最終ゲーティング工程の模式図。(B)抗CD4抗体および陰性対照Nb(GFP-Nb、1μM)と比較して、CD4-Nb1もしくはCD4-Nb2(100nM)、またはCD4-Nb3もしくはCD4-Nb4(1μM)で染色した3人のドナーの二重陽性細胞のパーセンテージ。表2 指示された濃度でCD4-Nbを用いて染色された3人のドナー由来の二重陽性PBMCのパーセンテージ。
図3-2】同上。
【0099】
図4-1】図4は、T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン放出におけるCD4ナノボディの影響を分析するための実験を示す;細胞をCFSEで染色し、5μMのNbまたはw/oで1時間処理し(各々1回の反復)、洗浄し、次に5μg/mlのMHC-クラスIIペプチド、10μg/mlのPHAで刺激するかまたは刺激せず、12日間培養した。(A)細胞は、4、6、8日目に増殖(CFSE陰性画分)および活性化(CD25およびCD69)についてフローサイトメトリーにより分析された。MHCクラスIIペプチド(複数可)(左側)またはPHA(右側)による刺激後のCD4細胞の増殖。(B)CD4細胞上の活性化マーカー、上段:MHCIIペプチド(複数可)(左)またはPHA(右)で刺激した後のCD25発現;下段:MHCIIペプチド(複数可)(左)またはPHA(右)で刺激した後のCD69発現。3人のドナーの平均パーセンテージは、平線または点線で示される。(C)サイトカインおよびCD4細胞の活性化マーカー発現-TNF、IFN-y、CD154(左のy軸)またはIL-2(右のy軸)。12日目に細胞をMHC-クラスIIペプチド(複数可)またはDMSO(バックグラウンド)で、Golgi StopおよびブレフェルジンAの存在下で14時間再刺激し、フローサイトメトリーにより分析した。エラーバーはSEMを表示する。ゲーティング戦略を下記の図9に示すが、すべてのパーセンテージはCD4T細胞内で与えられる。
図4-2】同上。
【0100】
図5-1】図5は、CD4ナノボディCD4-Nb1-Cy5.5の光学的イメージング(OI)実験の結果を示す;5μgのCD4-Nb1-Cy5.5またはGFP-Nb-Cy5.5は、ヒトCD4HPB-ALLを保持するNSGマウスにi.v.またはs.c.で投与され、腫瘍生物学的分布は、24時間にわたる反復OI測定によってモニタリングされた。(A)CD4-Nb4-Cy5.5(左、CD4)またはGFP-Nb-Cy5.5(右、ctrl)のいずれかを注射された1匹のマウスの各測定時点の代表的な画像。赤い丸および白い矢印は右上腹部における腫瘍の局在を示す。(B)腫瘍からの蛍光シグナルの定量(群あたりn=4、平均放射効率±SEMの算術平均)。(C)最終イメージング時点の後、腫瘍をエクスビボのOIのために摘出し、GFP-Nb-Cy5.5と比較してCD4-Nb1-Cy5.5の蓄積が増加していることが確認された(群あたりn=2、算術平均±SEM)。
図5-2】同上。
【0101】
図6図6は、本発明のCD4-ナノボディの例の親和性の図を示す;(A)CD4-Nb2、CD4-Nb3およびCD4-Nb4のバイオレイヤー干渉法に基づく親和性測定のセンソグラムを示す。ビオチン化hCD4をストレプトアビジンバイオセンサー上に固定化し、15.6nM~1μMの範囲の4濃度の精製したNbを用いて速度論的測定を行った。(B)フローサイトメトリーによる細胞発現したhCD4に対するCD4-NbのEC50決定。陽性染色されたCHO-hCD4のパーセンテージ(親の頻度)を、指示された濃度のCD4-Nbに対してプロットした。EC50値は4つのパラメトリックシグモイドモデルから計算した。
【0102】
図7図7は、バイオレイヤー干渉法(BLI)による本発明のCD4ナノボディの例のエピトープビニング分析の図を示す;(A)CD4-Nb1(より暗い)およびCD4-Nb2(より明るい)のヒトCD4の組換え細胞外部分への組み合わせNb結合の単一測定の代表的なBLIセンソグラムであり、(A)互い、(B)CD4-Nb3、または(C)CD4-Nb4;(D)配列番号16、17および18の配列アラインメント。
【0103】
図8-1】図8は、ヒトPBMC中に存在するCD4細胞に対する本発明のCD4-ナノボディの結合研究の結果のダイアグラムを示す。上段は、CD4CD3二重陽性ヒトPBMCのフローサイトメトリー分析のためのゲーティング戦略を示す。中段および下段は、指示された濃度で抗CD4抗体(CD4 ab)、抗GFP対照Nb(GFP-Nb)、またはCD4-Nb1-CD4-Nb4で染色されたドナー1(A)、ドナー2(B)、およびドナー3(C)についての最終的なゲーティング工程およびこれらの細胞の定量化を示す。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
【0104】
図9図9は、CD4T細胞におけるCD4-ナノボディの影響の決定の結果を示す;A)刺激後のCD4細胞の増殖および活性化の分析のためのゲーティング戦略。左から右の上段の行:タイムゲート、単一細胞、生細胞、リンパ球、CD4細胞。中段および下段の行:ゲートを増殖中のCFSE陰性CD4細胞(左)、CD25CD4細胞(中)およびCD69CD4細胞(右)上に置いた。ヒストグラムオーバーレイは、CD4細胞内でのCFSE標識としての分裂の数を示す。6日目の1つの代表例(ドナー2)を示す。(B)培養12日後および再刺激14時間後の細胞内染色におけるCD4細胞の活性化マーカーおよびサイトカイン発現の分析のためのゲーティング戦略(ドナー3)。左から右の上段の行:タイムゲート、単一細胞、生細胞、リンパ球、CD4細胞、CD4/CD8染色(CD8neg細胞上でのゲーティング)。中段および下段の行は、MHCクラスIIペプチドまたは対照DMSO/水で再刺激した後のTNF、IFN-γ、CD154およびIL-2の発現を示す。
【0105】
図10-1】図10は、CD4-Nbによる処理後のドナーの全血試料から分泌されるサイトカインの決定結果を示す。3人のドナーの血液試料を5μMのCD4-Nb1、CD4-Nb4、GFP-Nb(対照)またはw/o Nbとともにインキュベートし、対照としてリポ多糖類(LPS)、フィトヘマグルチニン(PHA)または培地のみで刺激した。分泌されたサイトカイン(図20Bに列挙される)を測定し、収容された、開発されたマイクロスフェアベース(Luminex)マルチプレックスサンドイッチイムノアッセイを用いて定量した。1つの生物学的実験の結果は、1つの個体の測定されたサイトカインレベルを示すカラードットとして示される。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
【0106】
図11図11は、本発明のCy5.5で標識されたCD4-ナノボディの交差種反応性試験;CD4-Nb-Cy5.5またはGFP-Nb-Cy5.5で染色されたヒトおよびマウスCD4細胞のフローサイトメトリーの結果を示す。CD4-Nb1-3に対するヒトCD4への結合が確認された。低親和性CD4-Nb4はこの濃度(0.75μg/ml、約49nM)で染色を示さなかった。ナノボディはいずれもマウスCD4を染色しなかった。
【0107】
図12-1】図12は、低親和性結合CD4-Nb4-Cy5.5のインビボ光学的イメージング(OI)の結果を示す;5μgのCD4-Nb1-Cy5.5またはGFP-Nb-Cy5.5は、ヒトCD4+HPB-ALLを保持するNSGマウスにi.v.またはs.c.で投与され、腫瘍生物学的分布は、24時間にわたる反復OI測定によってモニタリングされた。(A)CD4-Nb4-Cy5.5(左、CD4)またはGFP-Nb-Cy5.5(右、ctrl)のいずれかを注射された4匹のマウスの各測定時点の代表的な画像。白い矢印は右上腹部における腫瘍の局在を示す。(B)腫瘍からの蛍光シグナルの定量(群あたりn=4、平均放射効率±SEMの算術平均)。(C)最終イメージング時点の後、腫瘍をエクスビボのOIのために摘出し、CD4-Nb4-Cy5.5およびGFP-Nb-Cy5.5の同様の蓄積を示した(群あたりn=2、算術平均±SEM)。
図12-2】同上。
【0108】
図13図13は、エクスビボのHPB-ALL腫瘍の免疫蛍光染色実験の結果を示す;エクスビボのHPB-ALL腫瘍由来の凍結切片は、異種移植されたマウスにおける全身注射から結合Nb(青色)についてイメージングし、CD4特異的抗体(赤色)および核DAPI染色(緑色)と同時染色した。2時間のNb注射後、CD4-Nb1(A)または対照GFP-Nb(B)とCD4抗体蛍光の画像オーバーレイ。(C、D)AおよびBからの指示された画像切片のラインスキャンによる定量化。(E、F)全身Nb注射の24時間後のAおよびBと同じ。(G、H)強染色領域(G)または弱染色領域(H)のEから指示された画像切片のラインスキャン分析。
【0109】
図14-1】図14は、本発明において使用される例示としてのナノボディ配列およびAAV2-ナノボディ設計に関するデータを示す:A)本研究において使用されるナノボディのアミノ酸アラインメント。インビボイメージングのための完全な特徴付けおよび適用を記載する、上記の研究に従ったナノボディアノテーション。Nb(ナノボディ)1aは、Nb1(アラインメント中のアミノ酸101~117)として同一の相補的決定領域3(CDR3)を共有する。B)AAV2粒子産生に使用されるプラスミドコンストラクトおよび得られるカプシドの概略図。等量のプラスミドをHEK293T細胞に共トランスフェクトした。明確にするために、すべての共トランスフェクションに含まれるGFPレポーターをコードするAAVヘルパープラスミドおよびベクターゲノムは、ここでは可視化されない。最適化されたウイルスカプシドタンパク質VP1-3に対する本質的な変化が指示される-より明るい:突然変異/黒:wtを示す。ATG-開始コドン;SA-スプライスアクセプター部位;NB-ナノボディ;R585A/R588A-それぞれ残基585および588(盲検)におけるArgからAlaへのアミノ酸置換。
図14-2】同上。
【0110】
図15図15は、ナノボディを含有するAAVカプシドの電子顕微鏡分析の結果を示す:A)精製したAAV2粒子を逆染色電子顕微鏡に供した。代表的な画像は、ベクターゲノムを含有するカプシド(黒矢印)と空カプシド(白矢印)を示す。個々のカプシドを拡大する。スケールバー50nm。B)精製したAAV2粒子の免疫金染色は、カプシド表面でアクセス可能なナノボディを示す。画像をクロップし、代表的なカプシドを示した。スケールバー100nm。
【0111】
図16-1】図16は、AAV2 CD4-ナノボディを含有する粒子を用いたCD4を発現する細胞の形質導入実験の結果を示す:A)本研究において使用された細胞株上でのCD4発現。細胞を抗CD4-Cy7抗体で染色し、未染色の模擬対照と比較した。模擬細胞中のCD4シグナルを手動で100 auに調節し、フローサイトメトリーにより染色細胞と比較した。ヒストグラムは、同等のピーク高さを可視化するために、モード様式によって正規化される。B)2つのHeLa(wtおよびTZMbl)および2つのTリンパ球(1G5およびSupT1)細胞株を、細胞あたりの指示されたウイルスゲノムコピー(gc/細胞)で形質導入した。感染3日後、フローサイトメトリーにより、GFP陽性細胞%を測定したn=2~4。エラーバーはSDを指示する。C)1G5細胞を10.000gc/細胞の濃度で指示されたAAV2粒子で形質導入した。形質導入3日後、CD4発現に対して染色し、フローサイトメトリーによりGFP発現について分析した。代表的なデータを示す。
図16-2】同上。
図16-3】同上。
【0112】
図17-1】図17は、混合培養実験におけるナノボディ特異性の結果を示す:A)混合培養実験の代表的分析。HeLa wt(CD4陰性)を、AAV2形質導入前にHeLa TZMbl(CD4陽性)と1:1の比で混合し、その後、種々のウイルス希釈で形質導入した。形質導入の3日後、細胞を回収し、CD4について染色し、フローサイトメトリーによりGFP発現について分析した。B 独立したHeLa混合培養実験からの蓄積データ。適応となるのは、CD4陽性細胞および陰性細胞のそれぞれに対するGFP陽性細胞の相対頻度である(Bの左パネル)。AAV2 CD4特異的形質導入は、個々の細胞集団(CD4陰性に対してCD4陽性の倍数)からの比として計算される。倍数変化を右側に指示する;n=2~6は平均値とSDを示す。
図17-2】同上。
【0113】
図18-1】図18は、初代CD4+TおよびPBMCにおけるAAVS VP1 CD4ナノボディ特異性を分析する実験の結果を示す;A)2人の健常ドナー由来の初代ヒトCD4+T細胞は、CD3/CD28活性化され、指示されたウイルスストック(20,000gc/細胞)で形質導入された。形質導入の3日後、細胞をCD4について染色し、フローサイトメトリーによりGFP発現について分析した。エラーバーはSDを指示する;n=4。B)初代ヒトPBMCは、CD3/CD28で刺激され、続いて示されたウイルス株(10,000gc/細胞)に感染させた。感染3日後、細胞をCD4に対して染色し、GFP発現をフローサイトメトリーを介して評価した(左パネル)。CD4陽性細胞に対する倍数特異性(右パネル)は、それぞれCD4陰性および陽性細胞における相対的GFP陽性集団から決定された。1つの代表的な実験データ。
図18-2】同上。
【0114】
図19-1】図19は、混合培養実験におけるAAV2-VP1二価-CD4ナノボディ特異性の結果を示す;A)VP1-CD4一価を二価ナノボディコンストラクトと比較する混合培養実験の代表的な分析。HeLa wt(CD4陰性)をAAV2形質導入前にHeLa TZMbl(CD4陽性)と1:1の比で混合し、その後、異なるウイルス希釈で形質導入した。形質導入後の3日目に、細胞を回収し、CD4について染色し、フローサイトメトリーによりGFP発現について分析した。B)3つの独立したHeLa混合培養実験の要約。適応となるのは、CD4陽性細胞および陰性細胞のそれぞれに対するGFP陽性細胞の相対頻度である(左パネル)。AAV2 CD4特異的形質導入は、個々の細胞集団(CD4陰性に対してCD4陽性の倍数)からの比として計算される。倍数変化を右側に指示する;n=3は平均値とSDを示す。
図19-2】同上。
【0115】
図20図20は、「ヒトCD4のインビボイメージングにおけるCD4-ナノボディの使用」という表題で本明細書中に提示された実験においてA)使用されたプライマーおよびB)分析されたサイトカインの2つの表を示す。
【0116】
図21-1】図21は、本発明のCD4特異的ナノボディを有する例示的に操作されたAAV2 VP1およびVP2タンパク質のアミノ酸配列を示し、以下の凡例を伴う:A)AAV2 VP1オリジナル配列、修飾されたアミノ酸(太字)、ナノボディ挿入により置換された配列(太字、下線およびイタリック);B)AAV VPにおけるナノボディ配列、N末端/中央リンカー配列(太字およびイタリック)、C末端リンカー配列(太字および下線);C)AAV2 VP2オリジナル配列、修飾されたアミノ酸(太字);D)AAV VP2におけるナノボディ配列、C末端リンカー配列(太字および下線)。
図21-2】同上。
【0117】
図22-1】図22は、「ナノボディ修飾されたAAV2遺伝子治療ベクターによるCD4+T細胞の標的化」という表題で本明細書中に提示された実験において使用されたオリゴヌクレオチドを列挙する表を示す。
図22-2】同上。
【0118】
図23-1】図23は、64Cu-CD4-Nb1がCD4+T細胞に富んだ臓器に特異的に蓄積することを示す:A)64Cu-CD4-Nb1の静脈内(i.v.)注射3時間後のヒトCD4ノックイン(hCD4KI)および野生型(wt)C57BL/6マウスの代表的な最大強度投影PET/MR画像;白い矢印はリンパ節の局在化を示す;B)脾臓、リンパ節および肝臓の例示的な横断的PET/MR画像(注射3時間後)、および64Cu-CD4-Nb1の24時間にわたる動的臓器取り込みの定量化[1群あたりn=3、mlあたりの注射用量%(%ID/ml)の算術平均±SEM、3時間時点の対応のないt検定、p<0.05];白い矢印は標的臓器を示す;C)hCD4KIマウス(丸グラフ)のリンパ節、脾臓、および肝臓における64Cu-CD4-Nb1蓄積を野生型同腹児と比較した模式図(四角グラフ)。
図23-2】同上。
【0119】
図24図24は、すべてのリジン残基をアルギニン残基(配列番号156を有する)で置換した後の突然変異体ナノボディのバイオレイヤー干渉法に基づく親和性測定のセンソグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0120】
本発明において、一組のヒトCD4特異的ナノボディ(「Nb」においても)を生成し、組換えおよび細胞CD4に対するそれらの結合特性を調べ、サブドメイン分解能を有するそれらのエピトープを決定した。一連の免疫学的分析を行い、単離したヒトPBMCおよび全血中のT細胞増殖および活性化およびサイトカイン産生におけるそれらの影響を評価した。さらに、部位特異的蛍光標識による光学的イメージングのためにNbをCD4免疫プローブに変換し、インビボ光学的イメージングによりマウス異種移植モデルにおいてヒトCD4陽性組織を可視化するそれらの能力を調べた。
【実施例
【0121】
1.ヒトCD4のインビボイメージングにおけるCD4-ナノボディの使用
【0122】
材料および方法
【0123】
ナノボディライブラリーの生成
【0124】
アルパカ免疫化およびNbライブラリー構築は、前述のように行われた。動物免疫化は、Upper Bavariaの政府により承認されている(許可番号:55.2-1-54-2532.0-80-14)。簡単に説明すると、アルパカ(Vicugna pacos)は、HEK293細胞(antibodies-online GmbH、Aachen、Germany)で組換え的に産生されたヒトCD4(aa26-390)の精製した細胞外ドメインを用いて免疫化された。最初に1mgでプライミングした後、2週間ごとに0.5mgのhCD4を6回ブースト注射した。初回免疫化から87日後、約100mlの血液を回収し、リンパ球分離培地(PAA Laboratories GmbH)を用いたFicoll勾配遠心分離によりリンパ球を単離した。TRIzol(Life Technologies)を用いて全RNAを抽出し、First-Strand cDNA合成キット(GE Healthcare)を用いてmRNAをcDNAに転写した。Nbレパートリーは、以下のプライマーの組み合わせ(1)CALL001およびCALL002、(2)フォワードプライマーセットFR1-1、FR1-2、FR1-3、FR1-4およびリバースプライマーCALL002、ならびに(3)SfiIおよびNotI制限部位を導入するフォワードプライマーFR1-ext1およびFR1-ext2、ならびにリバースプライマーセットFR4-1、FR4-2、FR4-3、FR4-4、FR4-5およびFR4-6を用いた3つのその後のPCR反応において単離された。NbライブラリーをpHEN4ファージミドベクターのSfiI/NotI部位にサブクローニングした。
【0125】
Nbスクリーニング
【0126】
CD4特異的Nbの選択のために、固定化された組換え抗原とCHO-hCD4細胞の両方を用いて、2つの連続したファージ富化ラウンドを行った。pHEN4中のCD4-Nb-ライブラリーを含む大腸菌TG1細胞をM13K07ヘルパーファージに感染させ、Nb提示ファージを作製した。各ラウンドについて、CD4-Nb-ライブラリーの1×1011個のファージを、hCD4(10μg/ml)で被覆した免疫チューブ上に1回ずつ塗布した。各選択ラウンドにおいて、PBS-T中の5%ミルクまたはBSAを用いて抗原およびファージの広範なブロッキングを行い、パンニングラウンドの増加に伴いPBS-T洗浄のストリンジェンシーが増加した。結合したファージを、100mMトリエチルアミン、TEA(pH10.0)中で溶出させ、続いて、1M Tris/HCl pH7.4を用いて即時中和した。細胞ベースのパンニングでは、2×10個のCHO-hCD4またはHEK293-hCD4を、解離緩衝液(Gibco)を用いて非酵素的に分離し、PBS中の5%FCSに懸濁した。抗原発現細胞は、4℃で3時間、一定の混合下で1×1011個のファージとともにインキュベートされた。細胞をPBS中の5%FCSで3回洗浄した。ファージをpH2.3の75mMクエン酸緩衝液を用いて5分間溶出させた。非CD4特異的ファージを枯渇させるために、溶出されたファージを1×10wt細胞と3回インキュベートした。指数関数的に増殖する大腸菌TG1細胞を、両方のパニング戦略からの溶出されたファージに感染させ、次のパニングラウンドのために選択プレート上に広げた。各ラウンドの抗原特異的富化は、コロニー形成単位(CFU)を計数することによりモニタリングされた。
【0127】
全細胞ファージELISA
【0128】
ポリスチレンCostar 96ウェル細胞培養プレート(Corning)をポリ-L-リジン(Sigma Aldrich)で被覆し、HOで1回洗浄した。CHO-wtおよびCHO-hCD4を100μlでウェルあたり2×10細胞でプレーティングし、一晩コンフルエントになるまで増殖させた。翌日、70μlのファージ上清を各細胞型の培地に添加し、4℃で3時間インキュベートした。細胞をPBS中の5%FCSで5回洗浄した。M13-HRPで標識された抗体(Progen)を濃度0.5ng/mlで添加して1時間おき、PBS中の5%FCSで3回洗浄した。Onestep Ultra TMB 32048 ELISA基質(Thermo Fisher Scientific)を添加し、色の変化が見えるまでインキュベートし、100μlの1M HSOを添加することにより反応を停止した。検出は、Pherastarプレートリーダーで450nmにて生じさせ、ファージELISA陽性クローンは、wt対照細胞よりも2倍高いシグナルによって定義された。
【0129】
発現コンストラクト
【0130】
ヒトCD4のcDNA(UniProtKB-P01730)は、フォワードプライマーhCD4 fwdおよびリバースプライマーhCD4 revを用いたPCRによって、hCD4-mOrangeプラスミドDNA(hCD4-mOrangeはSergi Padilla Parra;addgeneプラスミド#110192;http://n2t.net/addgene:110192;RRID:Addgene_110192)から増幅され、pcDNA3.1ベクター変異体(pcDNA3.1(+)IRES GFP、Kathleen_L Collinsからの贈与物;addgeneプラスミド#51406;http://n2t.net/addgene:51406;RRID:Addgene_51406)のBamHIおよびXhoI部位に導入された。ネオマイシン耐性遺伝子(NeoR)を、ベクターのXmaIおよびBssHII部位への組込みにより、フォワードプライマーbsd fwdおよびリバースプライマーbsd revで増幅したブラスチシジンS-デアミナーゼ(bsd)のcDNAに置換した。CD4ドメイン欠失突然変異体は、製造業者のプロトコールに従ってQ5部位特異的突然変異誘発キット(NEB)を用いて生成した。hCD4のドメインD1を欠損する突然変異体については、N末端BC2タグを導入した。プラスミドpcDNA3.1_CD4_ΔD1_IRES-eGFPの生成のために、フォワードプライマーΔD1 fwdおよびリバースプライマーΔD1 revを使用した;pcDNA3.1_CD4_ΔD1ΔD2_IRES-eGFPではフォワードプライマーΔD1ΔD2 fwdおよびリバースプライマーΔD1 ΔD2revを使用した;pcDNA3.1_CD4_ΔD3ΔD4_IRES-EGFPでは、フォワードプライマーΔD3ΔD4 fwdおよびリバースプライマーΔD3ΔD4 revを使用した。Nbの細菌発現のために、配列をpHEN6ベクター中にクローニングし、それによって、C末端ソルターゼタグLPETGを加え、続いて、前述のようにIMAC精製のために6×His-タグを加えた。Expi293細胞におけるhCD4の細胞外ドメインD1-4のタンパク質産生のために、対応するcDNAを、フォワードプライマーCD4-D1-4 fおよびリバースプライマーCD4-D1-4 rを用いて、完全長ヒトCD4 cDNA(addgeneプラスミド#110192)を含有するプラスミドDNAから増幅した。6×Hisタグをリバースプライマーによって導入した。Esp3IおよびEcoRI制限部位を用いて、cDNAを、シグナルペプチドMGWTLVFLFLSVTAGVHSを有するpcDNA3.4発現ベクターに、抗体JF5から導入した。
【0131】
細胞培養、トランスフェクション、安定した細胞株の生成
【0132】
HEK293TおよびCHO-K1細胞は、ATCC(CCL-61、LGC Standards GmbH、Wesel、Germany)から得られた。本研究には細胞株特異的分析は含まれないため、追加の認証なしで細胞を使用した。細胞を標準プロトコールに従って培養した。簡単に説明すると、10%(v/v)ウシ胎児血清、L-グルタミンおよびペニシリン-ストレプトマイシン(すべてThermo Fisher Scientific(TFS)由来)を補足したDMEM(HEK293)またはDMEM/F12(CHO)(両方とも高グルコース、ピルビン酸塩、TFS)を含有する増殖培地を培養のために使用した。細胞を0.05%トリプシン-EDTA(TSF)を用いて継代し、加湿チャンバー内で37℃および5%CO雰囲気で培養した。プラスミドDNAを、製造業者のプロトコールに従って、リポフェクタミン2000(TSF)を用いてトランスフェクトした。安定なHEK293-hCD4およびCHO-hCD4細胞株の生成のために、トランスフェクションの24時間後に、細胞を5μg/mlのブラスチシジンS(Sigma Aldrich)を用いて2週間の選択期間に供し、続いて単細胞分離した。個々のクローンを、GFPおよびCD4発現のそれらのレベルおよび均一性に関して、生細胞蛍光顕微鏡により分析された。
【0133】
タンパク質の発現および精製
【0134】
CD4特異的Nbを発現させ、以前に公開されたように精製した。ヒトCD4のドメインD1-4およびC末端His6-タグを含むヒトCD4の細胞外断片を、製造業者のプロトコール(Thermo Fisher Scientific)に従ってExpi293細胞中に発現させた。細胞上清を、トランスフェクションの4日後に遠心分離により回収し、滅菌濾過し、前述のプロトコールに従って精製した。品質管理のために、標準的な手順に従って、すべての精製したタンパク質をSDS-PAGEを介して分析した。したがって、タンパク質試料を、60mM Tris/HCl、pH6.8;2%(w/v)SDS;5%(v/v)2-メルカプトエタノール、10%(v/v)グリセロール、0.02%ブロンフェノールブルーを含有する2×SDS試料緩衝液中で変性(5分、95℃)させた。すべてのタンパク質をInstantBlue Coomassie(Expedeon)染色により可視化した。イムノブロットのために、タンパク質をニトロセルロース膜(Bio-Rad Laboratories)に移し、抗His一次抗体(Penta-His Antibody、#34660、Qiagen)を用いて検出を行い、続いてTyphoon Trio(GE-Healthcare、Freiburg、Germany;励起633nm、発光フィルター設定670nm BP30)を用いてAlexaFluor647(Invitrogen)で標識したロバ抗マウス二次抗体を用いて検出を行った。
【0135】
生細胞免疫蛍光法
【0136】
CD4ドメイン欠失突然変異体を一過性に発現するCHO-hCD4およびCHO wt細胞を、μclear 96ウェルプレート(Greiner Bio One、カタログ#655090)のウェルあたり約10,000細胞でプレーティングし、標準条件で培養した。翌日、培地を、10%FCS、2mM L-グルタミン、核染色のために2μg/ml Hoechst33258(Sigma Aldrich)、および1nM~100nM濃度の標識または非標識CD4-Nbを補足した生細胞可視化培地DMEMgfp-2(Evrogen、カタログ#MC102)に置換した。非標識CD4-Nbを2.5μg/mlの抗VH二次Cy5 AffiniPureヤギ抗アルパカIgG(Jackson Immuno Research)の添加によって可視化した。画像はMetaXpress Micro XLシステム(Molecular Devices)を用いて20×または40×で獲得した。
【0137】
バイオレイヤー干渉法(BLI)
【0138】
組換えhCD4に対する精製したNbの結合親和性を決定するために、バイオレイヤー干渉法(BLItz、ForteBio)を行った。第1に、CD4は、3倍モル過剰のビオチン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルによってビオチン化された。次に、CD4は、製造業者のプロトコールに従って、単一使用の高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(SAX)で固定化された。各Nbについて、それぞれのナノボディの親和性に適した濃度(全体で15.6nM~1μM)で4回の会合/解離実験を行った。参照ランとして、会合工程でNbの代わりにPBSを使用した。陰性対照として、GFP-Nb(500nM)を結合研究に適用した。記録されたセンソグラムをBLItzProソフトウェアを用いて分析し、解離定数(K)を大域適合に基づいて計算した。エピトープ競合分析のために、最初の会合後30秒の短い解離期間で、2つの連続した適用工程を行った。
【0139】
フローサイトメトリーによる親和性決定
【0140】
細胞ベースの親和性決定のために、HEK293-hCD4を無酵素細胞解離緩衝液(Gibco)を用いて脱着し、FACS緩衝液(5%FCSを含むPBS)に再懸濁した。各染色条件について、200,000細胞を、適切な希釈系列のCD4ナノボディとともに4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、Cy5 AffiniPureヤギ抗アルパカIgG、VHドメイン(Jackson ImmunoResearch)を15分間適用した。PBMC(Department of Immunology/ZKT Tubingen GmbH)を新たに解凍し、FACS緩衝液に再懸濁した。各試料について、200,000細胞は、抗CD3-FITC(BD Biosciences)の1:500希釈物と組み合わせて、CF568にカップリングされた適切な濃度のCD4ナノボディとともに4℃で30分間インキュベートされた。対照染色には、PE/Cy5で標識された抗ヒトCD4抗体(RPA-T4、Biolegend)を用いた。2回の洗浄工程の後、試料を200μlのFACS緩衝液に再懸濁し、BD FACSMelody Cell Sorterで分析した。最終データ分析はFloJo10(登録商標)ソフトウェアを用いて行われた。
【0141】
ナノボディのソルターゼ標識
【0142】
pET29中のソルターゼA五量体(eSrtA)は、David Liu(Addgeneプラスミド#75144;http://n2t.net/addgene:75144; RRID:Addgene_75144)からの贈与であり、以前に記載されたように発現させ、精製した。CF568をカップリングさせたペプチドH-Gly-Gly-Gly-Doa-Lys-NHOA(ソルターゼ基質)をIntavis AGによりカスタム合成した。クリック化学では、ペプチドH-Gly-Gly-Gly-プロピルアジドを合成した。簡単に説明すると、ソルターゼをカップリングする50μMナノボディについては、ソルターゼ緩衝液(50mM Tris、pH7.5、および150mM NaCl)に溶解した250μMソルターゼペプチド、および10μMソルターゼをカップリング緩衝液(10mM CaCl2を含むソルターゼ緩衝液)中で混合し、4時間、4℃でインキュベートした。カップリングしていないナノボディおよびソルターゼをIMACにより枯渇させた。未結合の過剰な未反応ソルターゼペプチドを、Zebaスピン脱塩カラム(ThermoFisher Scientific、カタログ#89890)を用いて除去した。アジドをカップリングさせたNbをSPAAC(歪促進アジド-アルキン環化付加)クリック化学反応により、2時間、25℃で2倍モル過剰のDBCO-Cy5.5(Jena Biosciences)で標識した。続いて、透析により過剰のDBCO-Cy5.5を除去した(GeBAflex-チューブ、6~8kDa、Scienova)。最後に、タグ付けされていないナノボディ(ソルターゼ反応の副生成物)を除去するために、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC、HiTrap Butyl-S FF、Cytiva)を使用した。DBCO-Cy5.5をカップリングさせたNbの結合は50mMのHNaPO、1.5Mの(NHSO、pH7.2で生じた。溶出は50mMのHNaPO、pH7.2を用いて行われた。色素で標識されたタンパク質画分をSDS-PAGEで分析し、続いてTyphoon Trio(GE-Healthcare、CF568:励起532nm、発光フィルター設定580nm BP30;Cy5.5励起633nm、発光フィルター設定670nm BP30;546)で蛍光スキャンし、その後、クーマシー染色を行った。最終生成物の同定および純度は、LC-MS(CD4-Nb-CF568、>60%;CD4-Nb1-Cy5.5、約94%;CD4-Nb4-Cy5.5、約99%;GBP-Cy5.5;約94%;CD4-Nb1-3、約99%;bivGFP-Nb、約99%)によって決定された。
【0143】
水素-重水素交換
【0144】
CD4重水素化速度およびエピトープ解明
5.1nM(CD4-Nb1)、6.5nM(CD4-Nb2)、および75.3nM(CD4-Nb3)(BLI分析により予め決定される)のアフィニティー定数に基づいて、Kochertら(Hydrogen-Deuterium Exchange Mass Spectrometry to Study Protein Complexes, Methods Mol Biol (2018) 1764:153-71)に従って、90%の複合体形成を確実にするように、抗原対Nbのモル比を計算した。CD4(5μl、65.5μM)は、10分間、25℃でCD4特異的Nb(Nb1、Nb2、およびNb3に対してそれぞれ5μl;60.3、67.4、および143.1μM)とともにプレインキュベートされた。CD4のみを含有する重水素化試料を、Nbの代わりにPBSとともにプレインキュベートした。予めインキュベートした試料のHDXは、DOで調製されたPBS(pH7.4)を用いて1:10希釈することによって開始され、最終濃度90%D2Oにした。25℃で5分間および50分間インキュベートした後、20μlのアリコートを採取し、20μlの氷冷停止溶液(100mMギ酸アンモニウム溶液pH2.2中の1.5%ギ酸および4MグアニジンHClを含有する0.2M TCEP)を添加することにより停止し、最終pHを2.5とした。停止した試料を直ちにスナップ凍結した。固定化されたペプシン(TFS)は、60μlの50%スラリー(ギ酸アンモニウム溶液pH2.5)を用いて調製され、次に遠心分離された(3分間、0℃で1,000×g)。上清を捨てた。各分析の前に、試料を解凍し、ペプシンビーズに添加した。水氷浴中で2分間消化後、0.22μmフィルター(Merck、Millipore)を用いて1,000×gで30秒間、0℃で遠心分離することによってビーズから分離し、直ちにLC-MSで分析した。各複合体およびCD4単独の非重水素化対照試料を、DOの代わりにHOを用いて同じ条件下で調製した。さらに、各Nbを、CD4を添加せずに消化し、Nb由来の消化性ペプチドのリストを作成した。CD4-Nb複合体のHDX実験を三重にして行った。14の合成ペプチドの標準ペプチド混合物を用いて決定した方法の逆交換は24%であった。
【0145】
クロマトグラフィーおよび質量分析
【0146】
HDX試料は、RSLCポンプ(UltiMate 3000 RSLCnano、Thermo Fisher Scientific、Dreieich、Germany)、クロマトグラフィー用冷却デバイス(MeCour Temperature Control、Groveland、MA、USA)および質量分析計Q Exactive(Thermo Fisher Scientific、Dreieich、Germany)で構成されるLC-MSシステムで分析された。冷却デバイスは、LCカラム(ACQUITY BEH C18、1.7μm、300Å、1mm×50mm(Waters GmbH、Eschborn、Germany))、HPLC溶媒の冷却ループ、試料ループ、およびインジェクションバルブを含有し、すべての成分を0℃に保った。試料は、50μl/分の流速で2段階20分の直線勾配を用いて分析された。溶媒Aは0.1%(v/v)ギ酸であり、溶媒Bは0.1%ギ酸(v/v)を含む80%アセトニトリル(v/v)であった。10%Bで3分間脱塩した後、10~25%Bの9分間の直線勾配を適用し、続いて25~68.8%の8分間の直線勾配を適用した。実験は、以下:シースガス流量25;auxガス流量5;SレンズRFレベル50;スプレー電圧3.5kVおよび毛細管温度300℃の70,000解像度の器具構成を有するQ Exactive(Thermo Fisher Scientific、Dreieich、Germany)を用いて行われた。
【0147】
HDXデータ分析
【0148】
予備的LC-MS/MS実験においてペプチド配列、保持時間および荷電状態を含有する消化性ペプチドリストを作成した。プロテオーム・ディスカバーv2.1.0.81(Thermo Fisher Scientific、Dreich、Germany)によるタンパク質データベース検索および実装したSEQUEST HT検索エンジンを用いて、ペプチドを正確な質量およびそれらの断片イオンスペクトルにより同定した。タンパク質データベースはCD4およびペプシン配列を含有した。前駆体および断片の質量耐性をそれぞれ6 ppmおよび0.05Daに設定した。酵素選択性は適用されなかったが、同定されたペプチドは、アルギニン、ヒスチジン、リジン、プロリンおよびプロリン後の残基の後の切断によって生じたペプチドを除外するために手動で評価された。さらに、各Nbについて別々のペプチドのリストを作成し、抗原消化物と質量、保持時間、および荷電が重複するペプチドを手動で除去した。重水素化試料をMSモードのみで記録し、生成したペプチドリストをHDExaminer v2.5.0(Sierra Analytics、Modesto、CA、USA)にインポートした。重水素取り込みは重水素化ペプチドの重心質量の増加を用いて計算された。HDXは、CD4アミノ酸配列の87%~88%について追跡可能であった。CD4-NbとCD4-のみの間の各ペプチドの重水素取り込みの計算されたパーセンテージを比較した。Nb結合時に取り込みが5%以上減少したペプチドはいずれも保護されていると考えられた。
【0149】
エンドトキシンの決定および除去
【0150】
Pierce LAL Chromogenic Endotoxin Quantitation Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて細菌エンドトキシン濃度を決定し、製造業者のプロトコールに従ってEndoTrap HD 1ml(Lionex)を用いて除去を行った。
【0151】
PBMC単離、細胞凍結、および解凍
【0152】
免疫学部またはZKT Tuebinggen gGmbHの健常ボランティアから、新鮮な血液、軟膜、または単核血球濃縮物を採取した。参加者はインフォームド・コンセントを与えられ、研究はTuebingen大学倫理審査委員会、プロジェクト156/2012B01および713/2018BO2によって承認された。血液生成物をPBS 1×(自家製、10×Lonza、Switzerland)で希釈し、末梢血単核細胞(PBMC)をBiocoll分離溶液(Biocrom、Germany)を用いた密度勾配遠心分離により単離した。PBMCをPBS 1×で2回洗浄し、NC-250細胞カウンター(Chemometec、Denmark)で計数し、10%DMSO(Merck、Germany)を含有する熱不活化(h.i.)ウシ胎児血清(Capricorn Scientific、Germany)に再懸濁した。細胞を、直ちに、冷凍容器(Mr.Frosty;Thermo Fisher Scientific、USA)中の-80℃冷凍庫に移した。少なくとも24時間後、凍結細胞を液体窒素タンクに移し、使用するまで凍結保存した。実験のために、2.5% h.i.ヒト血清(HS;PanBiotech、Germany)、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S;Sigma-Aldrich、Germany)、および50μmのβ-メルカプトエタノール(β-ME;Merck、Germany)を補足したIMDM(+L-グルタミン+25mM HEPES;Life Technologies、USA)中で細胞を解凍し、1回洗浄し、計数し、下流のアッセイに使用した。
【0153】
合成ペプチド
【0154】
刺激には、以下のHLAクラスIIペプチドを用いた:MHCクラスIIプール(HCMVA pp65 aa 109-123 MSIYVYALPLKMLNI(配列番号13)、HCMV pp65 aa 366-382 HPTFTSQYRIQGKLEYR(配列番号14)、EBVB9 EBNA2 aa 276-290 PRSPTVFYNIPPMPL(配列番号15)、EBVB9 EBNA1 aa 514-527 KTSLYNLRRGTALA(配列番号16)、EBV BXLF2 aa 126-140 LEKQLFYYIGTMLPNTRPHS(配列番号17)、EBV BRLF1 aa 119-133 DRFFIQAPSNRVMIP(配列番号18)、EBVB9 EBNA3 aa 381-395 PIFIRRLHRLLLMRA(配列番号19)、EBVB9 GP350 aa 167-181 STNITAVVRAQGLDV(配列番号20)、IABAN HEMA aa 306-318 PKYVKQNTLKLAT(配列番号21)またはCMVpp65 aa 510-524 YQEFFWDANDIYRIF(配列番号22))。すべてのペプチドを合成し、水10%DMSOに溶解した。
【0155】
PBMCの刺激および培養
【0156】
MHCクラスIIペプチドに対するエクスビボCD4T細胞反応性について事前にスクリーニングしたドナー由来のPBMCを解凍し、1μg/mLのDNase I(Sigma-Aldrich、Germany)を含有するT細胞培地(TCM;IMDM+1×P/S+50μM β-ME+10%h.i.HS)中、2~3×10細胞/mLの濃度で37℃、7.5%COで休止した。休止後、細胞を1回洗浄し、計数し、最大1×10細胞を、1.5-2μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;BioLegend、USA)を用いて1mLのPBS 1×中で20分間標識した。細胞を、CFSE標識後に10%FBSを含有する培地中で2回洗浄し、無血清IMDM培地中で5μM、0.5μM、または0.05μMのCD4-Nb1、CD4-Nb4、または対照Nbとともに1時間、37℃でインキュベートした。濃度および期間は、臨床適用中に予想されるおおよその濃度および血清保持時間を模倣するように選択された。インキュベーション後、細胞を2回洗浄し、計数し、各条件を3つの部分に分け、48ウェル細胞培養プレート(1.6~2.5×10細胞/ウェル、三重にして)に播種した。細胞を10μg/mlのPHA-L(Sigma-Aldrich)、5μg/mLのMHCクラスIIペプチド(複数可)を用いて刺激するか、または刺激せずに放置し、37℃および7.5%COで培養した。2ng/mL組換えヒトIL-2(R&D、USA)を3、5、および7日目に添加した。4日目に培養の1/3、6日目および8日目に培養の1/2、および12日目に残りの細胞を回収し、計数し、フローサイトメトリー分析のために染色した。ドナー1については、増殖/活性化状態およびサイトカイン産生を2つの異なる実験で分析したが、ドナー2および3については、3つのアッセイのために単一の実験由来の細胞を使用した。
【0157】
T細胞の増殖および活性化の評価
【0158】
4、6、および8日目からの細胞を96ウェル丸底プレートに移し、FACS緩衝液(PBS+0.02%アジ化ナトリウム(Roth、Germany)+2mM EDTA(Sigma-Aldrich、Germany)+2%h.i.FBSで2回洗浄した。細胞外染色は、CD4 APC-Cy7(RPA-T4、BD Biosciences)、CD8 BV605(RPA-T8、BioLegend)、死細胞マーカーZombie Aqua(BioLegend)、CD25 PE-Cy7(BC96、BioLegend)、CD69 PE(FN50、BD Biosciences)を用いて行い、4℃で20分間インキュベートした。すべての抗体は、事前に試験された最適濃度で使用された。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。同日、DIVAソフトウェア(バージョン6、BD Biosciences、USA)を装備したLSRFortessa(商標)SORP(BD Biosciences、USA)を用いておよそ500,000個の細胞を獲得した。増殖CD4細胞のパーセンテージは、CFSE陰性細胞の評価、CD69またはCD25のパーセンテージによる活性化によって測定された。
【0159】
細胞内サイトカイン染色によるT細胞機能の評価
【0160】
12日目に、MHCクラスIIペプチド(複数可)で刺激され、培養された細胞を96ウェル丸底プレート(0.5~1×10細胞/ウェル)に移し、10μg/mlの同ペプチド(複数可)、10μg/mlのブドウ球菌(Staphylococcus)エンテロトキシンB(SEB、Sigma-Aldrich;陽性対照)、または10%DMSO(陰性対照)を用いて再刺激した。タンパク質輸送阻害剤ブレフェルジンA(10μg/ml、Sigma-Aldrich)およびGolgi Stop(BD Biosciences)を刺激と同時に添加した。37℃および7.5%COで14時間刺激した後、細胞を蛍光標識抗体CD4 APC-Cy7、CD8 BV605、およびZombie Aquaで細胞外染色し、4℃で20分間インキュベートした。その後、細胞を1回洗浄し、次に、製造業者の指示に従ってBD Cytofix/Cytoperm溶液(BD Biosciences)を用いて固定および透過処理し、TNF Pacific Blue(Mab11)、IL-2 PE-Cy7(MQ1-17H12)、IFN-AlexaFluor 700(4S.B7)およびCD154 APC(2431)抗体(すべてBioLegend)79で細胞内染色し、2回洗浄した。同日、DIVAソフトウェア(バージョン6、BD Biosciences、USA)を装備したLSRFortessa(商標)SORP(BD Biosciences、USA)を用いておよそ500,000個の細胞を獲得した。フローサイトメトリー分析はすべて、FlowJoバージョン10.6.2を用いて行われ、ゲーティング戦略を図9に示す。統計分析は、GraphPad Prismバージョン9.0.0を用いて行われた。
【0161】
全血刺激およびサイトカイン放出アッセイ
【0162】
100μlのリチウム-ヘパリン血液を1時間、37℃および7.5%COでインキュベートした。その後、血液を、250μlの最終体積中、5μMのNb(CD4-Nb1、CD4-Nb4または対照Nb)、100ng/mLのLPS(Invivogen、USA)、または2μg/mLのPHA-L(無血清IMDM培地)で刺激するか、または37℃および7.5%COにおいて24時間刺激しなかった。2回の遠心後、赤血球を移すことなく上清を回収した。上清をサイトカイン測定するまで-80℃で凍結した。IL-1β、IL-1Ra、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、GM-CSF、IFNγ、MCP-1、MIP-1β、TNFαおよびVEGFのレベルは、市販の捕捉抗体および検出抗体ならびにキャリブレータータンパク質からなる「自家開発した」Luminexベースのサンドイッチ免疫アッセイのセットを用いて決定された。正確性、精度、平行度、頑健性、特異性および感受性に関して、すべてのアッセイを研究前に徹底的に検証した。試料を少なくとも1:4またはそれ以上に希釈した。予め希釈した試料またはキャリブレータータンパク質を捕捉被覆したマイクロスフェアとともにインキュベートした後、ビーズを洗浄し、ビオチン化した検出抗体とともにインキュベートした。ストレプトアビジン-フィコエリトリンは、視覚化のためのさらなる洗浄工程の後に添加された。対照の目的で、各マイクロタイタープレートにキャリブレーターおよび品質管理試料を含めた。すべての測定は、Luminex xPONENT(登録商標)4.2ソフトウェア(Luminex、Austin、TX、USA)を使用して、Luminex FlexMap(登録商標)3Dアナライザシステム上で行われた。データ分析には、MasterPlex QTバージョン5.0を採用した。標準曲線および品質管理試料は、適切なアッセイ性能を確実にするために、ウェストガード規則に適合した内部基準に従って評価された。
【0163】
フローサイトメトリーによるマウスCD4 細胞への交差種反応性結合の分析
【0164】
マウスCD4+細胞は、CD4磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)上での正の選択によりC57BL/6Nマウスの脾臓およびリンパ節から単離された。ヒトCD4細胞は、StraightFrom(登録商標)全血CD4マイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を用いて血液から抽出された。単一の細胞懸濁液は、1%ウシ胎児血清/PBS中の0.75μg/mlのCD4-Nb-Cy5.5(約47~60nM)またはGFP-Nb-Cy5.5(約51nM)とともに、4℃で20分間インキュベートされ、その後、LSR-IIサイトメーター(BD biosciences)で分析された。
【0165】
CD4を発現するHPB-ALL腫瘍の光学的イメージング
【0166】
ヒトT細胞白血病HPB-ALL細胞(German Collection of Microuganisms and Cell Cultures GmbH、DSMZ、Braunschweig、Germany)を、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足したRPMI-1640中で培養した。10個のHPB-ALL細胞を、7週齢のNOD SCIDガンママウス(NSG、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1WjI/SzJ、Charles River Laboratories、Sulzfeld、Germany)の右上腹部に皮下注射し、腫瘍増殖を2~3週間モニタリングした。腫瘍が直径約7mmに達した場合、5μgのCD4-Nb-Cy5.5または対照Nb(GFP-Nb-Cy5.5)を各々2匹のマウスの尾静脈に投与した。光学イメージング(OI)を、IVISスペクトルインビボイメージングシステム(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を用いて、24時間にわたって短期イソフルラン麻酔において繰り返し行った。最初のNb投与から4日後、CD4-Nb-Cy5.5群にGFP-Nb-Cy5.5(およびその逆)を投与し、24時間にわたりOIにより腫瘍の生体内分布を同一に分析した。最終イメージング時点の後、動物を屠殺し、腫瘍をエクスビボOI分析のために摘出した。データを、Living Image 4.4ソフトウェア(PerkinElmer)を用いて分析した。蛍光強度は、腫瘍境界周辺の目的とする領域を引くことによって定量化し、Nb注射前のバックグラウンド蛍光シグナルによって差し引いた平均放射効率(光子/s)/(μW/cm)で表した。すべての実験はドイツ動物保護法に従って行われ、地方自治体(Regeerungsprasidium Tuebingen)の承認を得た。
【0167】
移植された異種移植腫瘍の免疫蛍光染色
【0168】
hCD4-Nb1-Cy5.5含有マウス腫瘍の新しく凍結された5μm切片は、LSM 800レーザー走査顕微鏡(Zeiss)を用いて分析された。その後、切片をペルジョデート-リジン-パラホルムアルデヒドを用いて固定し、ロバ血清を用いてブロックし、一次ウサギ抗CD4抗体(Cell Marque、USA)を用いて染色した。結合抗体は、ロバ-抗ウサギ-Cy3二次抗体(Dianova、Germany)を用いて可視化された。YO-PRO-1(Invitrogen、USA)を核染色に使用した。同じ領域の獲得された画像を手動で重ね合わせた。
【0169】
NODAGAおよび 64 Cuによる放射性同位元素標識
【0170】
64Cuによるコンジュゲーションおよび放射性同位元素標識のためのすべての手順は、金属を含まないデバイスおよびChelex 100(Sigma-Aldrich)前処理緩衝液を用いて行われた。アジド修飾されたNb(100μg)は、250mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6)中の4μlの5mM EDTAを用いて30分間、室温で処理された。タンパク質は、250mM酢酸ナトリウムpH6中の15モル当量のBCN-NODAGA(CheMatech、Dijon、France)と30分間、室温で反応させ、続いて4℃で18時間インキュベートした。過剰のキレート剤は、同じ緩衝液を用いて限外濾過(Amicon Ultra 0.5ml、3kDa MWCO、Merck Millipore)によって除去された。[64Cu]CuCl(0.1M HCl中150MBq)を1.5体積の0.5M酢酸アンモニウム溶液(pH6)を添加することにより中和し、pH5.5とした。この溶液に、50μgのコンジュゲートを添加し、42℃で60分間インキュベートした。次に、1μlの20%ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)溶液を添加して標識反応を停止させた。放射性同位元素の完全な取り込みは、薄層クロマトグラフィー(iTLC-SA;Agilent Technologies;移動相0.1Mクエン酸pH5)および高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC;BioSep SEC-s2000、300×7.8mm、Phenomenex;0.5mM EDTAを有する移動相DPBS)による各放射合成後に確認された。インビボPETイメージングに使用されたすべての放射性標識された調製物は、≧97%(iTLC)および≧94%(HPSEC)の放射化学的純度を有した。
【0171】
インビトロラジオイムノアッセイ
【0172】
ここで、10のHPB-ALLまたはDHL細胞は、1時間、37℃で、1ng(3MBq/μg)の放射性標識された64Cu-CD4-Nb1または64Cu-GFP-Nbとともに三重にしてインキュベートされ、PBS/2%FCSで2回洗浄された。残りの細胞結合放射能は、Wizard 2480ガンマカウンター(PerkinElmer Inc.、Waltham、MA、USA)を用いて測定され、総添加活性のパーセンテージとして定量した。
【0173】
PET/MRI
【0174】
ヒトCD4ノックイン(hCD4KI、genOway、Lyon、France)およびwt C57BL/6Jマウス(Charles River)に5μg(約15MBq)の64Cu-CD4-Nb1を静脈内注射した。スキャン中、マウスを100%酸素中の1.5%イソフルランで麻酔し、水を満たした加熱マットで加温した。1.5、3、6、および24時間後に、専用の小動物Inveon microPETスキャナー(Siemens Healthineers、Knoxville、TN、USA;取得時間:600秒)を用いて10分間の静的PETスキャンを行った。解剖学的情報については、小動物7 T ClinScan磁気共鳴スキャナー(Bruker BioSpin GmbH、Rheinstetten、Germany)でPETスキャンした直後に連続T2 TurboRARE MR画像を獲得した。注射後最初の90分の動的PETデータを2匹のマウスで得て、10分フレームに分けた。コバルト57点源による減衰補正後、PET画像を規則化サブセット期待最大化(OSEM3D)アルゴリズムを用いて再構成し、Inveon Research Workplace(Siemens Preclinical Solutions)により分析した。各臓器の目的とする体積を解剖学的MRIに基づいて描出し、対応するPETトレーサー取り込みを獲得した。得られた値を減衰補正し、体積あたりの注射線量のパーセンテージ(%ID/ml)で表した。各臓器の重量および放射能を測定することにより、最終イメージング時点の後にエクスビボg-カウントを行った。定量のために、注射された放射性トレーサーの標準化されたアリコートを測定に加えた。
【0175】
分析および統計
【0176】
フローサイトメトリーデータのデータ分析は、FlowJoソフトウェアバージョン10.6.2(FlowJo LLT、Ashland、Oregan、USA)を用いて行い、グラフ調整および統計分析は、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.3.0以上)を用いて行われた。
【0177】
結果
【0178】
高親和性CD4ナノボディの生成
【0179】
ヒトCD4(hCD4)に対して方向付けされたNbを生成するために、アルパカ(Vicugna pacos)を、87日間の免疫化プロトコールに従って、hCD4の組換え細胞外部分を用いて免疫化した。その後、動物の重鎖抗体(VHまたはNb)の可変重鎖の全レパートリーを表す約4×10クローンを含むNbファージミドライブラリーを生成した。ファージディスプレイは、完全長ヒトCD4(CHO-hCD4細胞株)を安定に発現する受動吸着された精製したhCD4またはCHO細胞のいずれかを用いて行われた。各条件について2サイクルのファージディスプレイ後、合計612個の個々のクローンを全細胞ファージELISAによって分析し、21個の陽性結合体を同定した。配列分析により、相補性決定領域(CDR)3に従って、5つの異なるB細胞系統を表す13個の固有のNbが明らかになった(図1A)。CD4-Nb1-CD4-Nb5と呼ばれる各系統の1つの代表的なNbを細菌(大腸菌)中で発現させ、固定化された金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を用いて高純度で単離し、続いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った(図1B)。選択されたNbが哺乳類細胞の原形質膜に局在化する完全長hCD4に結合することができるかどうかを試験するために、CHO-hCD4細胞の生細胞染色を行った(図1C)。4℃で実施した画像は原形質膜の染色を示すが、37℃では蛍光シグナルは細胞体全体に局在化し、おそらく受容体結合したNbのエンドサイトーシスによる取り込みの結果であると考えられる。CHO wt細胞は、両方の温度で5つのCD4-Nbのいずれによっても染色されなかった(データを示さず)。CD4-Nb1およびCD4-Nb3はいずれも全細胞パンニングによって同定され、CHO-hCD4細胞の強い染色を提示した。組換えhCD4によるパンニングに由来するNbのうち、CD4-Nb2はまた強い細胞染色を示したが、CD4-Nb4による染色は弱いシグナルを示し、CD4-Nb5はこれらの条件下では染色を示さず、その結果、さらなる分析から除外された(図1C)。
【0180】
親和性を定量的に評価するために、センサーチップに固定化したhCD4のビオチン化細胞外ドメイン上でNbの連続希釈を測定するバイオレイヤー干渉法(BLI)を行った。CD4-Nb1およびCD4-Nb2について、決定されたK値は、それぞれ約5および約7nMの低いナノモル範囲にあり、一方、CD4-Nb3およびCD4-Nb4は、それぞれ、75nMおよび135nMの低い親和性を提示した(図1D、表1、図6A)。さらに、対応するEC50値は、フローサイトメトリーにより、HEK293-hCD4細胞上の完全長原形質膜に位置するhCD4を用いて決定された。細胞染色および生化学的に決定された親和性に従って、これらの値は、CD4-Nb1およびCD4-Nb2に対する強い機能的結合を示し、EC50値はナノモル以下(約0.7nM)であったが、CD4-Nb3およびCD4-Nb4は、実質的に低い細胞親和性を提示した(図1E、表1、図6A)。本明細書では、例示的に、単離され、細胞常在性hCD4に結合する4つのCD4-Nbが生成された。CD4-Nb4はより低い親和性を示したが、CD4-Nb1およびCD4-Nb2は低いナノモル範囲で高い親和性を提示した。
【0181】
ドメインマッピング
【0182】
次に、酵素的カップリングを、CD4-Nbの部位指向性官能化のためにソルターゼAを用いて適用した。それによって、単一のフルオロフォアにコンジュゲートしたペプチドをCD4-NbのC末端に連結させ、1:142の定義された標識比を得た。蛍光色素CF568にカップリングさせたCD4-Nbソルターゼを採用する生細胞免疫蛍光イメージングは、すべてのCD4-NbがCHO-hCD4細胞の細胞常在性hCD4に結合するそれらの能力を保持することを示した(データを示さず)。選択されたCD4-Nbの結合部位を局在化するために、hCD4のドメイン欠失突然変異体を生成した。これらの突然変異体の発現および表面局在化は、CD4のドメインD1に結合する抗体RPA-T4で染色することによって確認された。ドメインD1を欠損する突然変異体については、N末端BC2タグ43を導入して、蛍光標識bivBC2-Nb 42を用いた生細胞表面検出を可能にした(データを示さず)。一過性に発現されたドメイン欠失突然変異体を、生細胞免疫蛍光イメージングによりCF568で標識されたCD4-Nbの結合について試験した。対照として、非特異的に蛍光標識したGFP結合Nb(GFP-Nb)を添加した(図2A;データを示さず)。
【0183】
これらの結果に基づいて、CD4-Nb1およびCD4-Nb3の結合はドメインD1に割り当てられ、一方、CD4-Nb2およびCD4-Nb4はドメインD3および/またはhCD4のD4に結合する。GFP-Nbの結合は検出されなかった。異なるCD4-Nbの組合せ結合をさらに調べるために、BLIによりエピトープビニング分析を行った。組換え完全長hCD4をセンサーチップに固定し、CD4-Nbの組み合わせを連続的に結合させた(図7)。驚くことではないが、異なるドメインに結合するCD4-Nbは、組合せ結合を提示した。興味深いことに、CD4-Nb1とCD4-Nb3の組み合わせについて同時に結合が検出され、両方のhCD4の標的ドメインD1は、両方のCD4-NbがドメインD1内の異なるエピトープに結合することを指示した。対照的に、CD4-Nb2およびCD4-Nb4に対する同時結合は観察されず、後者のNb対のドメインD3/4における近接または重複エピトープの可能性が示唆された。これらの知見をさらに支持し、それぞれの結合部位をより正確に位置決めするために、CD4-Nb1、CD4-Nb2またはCD4-Nb3に結合したhCD4の水素-重水素交換(HDX)質量分析を行った(図2B-E)。その低い親和性のために、CD4-Nb4はHDX-MS分析に供されなかった。ドメイン欠失突然変異体の免疫蛍光染色および組合せ結合分析から得られたデータによれば、CD4-Nb1およびCD4-Nb3の結合は、HDXからドメインD1の配列を保護し、一方、CD4-Nb2は、ドメインD3およびhCD4のD4の配列を保護した(図2B)。
【0184】
CD4-Nb1の結合に関して得られた結果(図2C)は、CD4-Nb3の結果(図2D)と類似しており、いずれかのNbの結合によって、アミノ酸残基(aa)T17~N73の範囲の配列の交換が低下するが、個々の配列セクションでは保護の程度が異なる。CD4-Nb1では、HDXからの最大の保護は、ドメインD1の免疫グロブリン折り畳みのβ鎖C’およびC’’に対応するaa K35-L44、およびβ鎖DおよびEを含む残基aa K46-K75の範囲の配列で観察された。対照的に、CD4-Nb3の結合は、後者の配列内ではHDXのわずかな減少しか付与されないが、さらにβ鎖GおよびFならびにそれらの中間ループに対応する配列aa C84-E91を保護する。CD4-Nb2の結合は、配列aa W214-F229(β鎖CおよびC’)およびaa K239-L259(β鎖C’’-E)を保護し、ドメインD4のβ鎖Aの一部として、少数の配列aa R293-L296を保護する(図2E)。要約すると、CD4-Nb1およびCD4-Nb3は、hCD4のドメインD1に位置するそれらのエピトープと同時に結合することができ、一方、CD4-Nb2のエピトープは、主にドメインD3に位置する。CD4-Nb4がCD4-Nb2と同時にhCD4に結合することができないことに基づいて、後者の2つのNbは、近接または重複したエピトープを有すると評価された。
【0185】
CD4-NbのヒトPBMCへの結合
【0186】
すべての選択されたNbが組換え体および外因性に過剰発現された細胞hCD4に結合することを実証し、次に、ヒトPBMC上の内因性CD4の生理学的に関連するレベルへの結合の能力および特異性を決定した。3人のドナー由来のヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、抗CD3抗体と組み合わせてCF568(高親和性CD4-Nb1およびCD4-Nb2については100nM;低親和性CD4-Nb3およびCD4-Nb4については1000nM)にカップリングさせたCD4-Nb1-4と共染色し、フローサイトメトリーにより二重陽性細胞(CD3+CD4+)のパーセンテージを分析した(図3A図8)。陽性対照としての抗CD4抗体による染色と比較して、すべてのCD4-Nbは、試験されたすべてのドナーについて同程度の割合の細胞を染色したが、一方、非特異的GFP-Nbは、最高濃度(1000nM)においてさえ、無視できる程度の割合の二重陽性細胞を生じた(図3B、表2)。さらに分析は、従来の抗CD4抗体で観察されるように、CD4-NbはCD3-細胞のかなりの部分を染色することを明らかにし、すべての選択された候補が、より低いレベルのCD4を発現する単球、マクロファージ、または樹状細胞などの細胞を認識することができることを指示する。
【0187】
CD4-NbがCD4+T細胞および免疫細胞の活性化、増殖およびサイトカイン放出に及ぼす影響
【0188】
臨床イメージングトレーサーとしての想定される用途に向けて、CD4+T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン放出に対するそれらの影響に関する、CD4-Nbと関連する基本的な問題を評価した。第1に、CD4-Nb1-4調製物中に存在する細菌性エンドトキシンの有害作用を除外するために、デプリーションクロマトグラフィーによりエンドトキシンを除去し、CD4-Nb1、CD4-Nb4および非特異的GFP-Nbについて、0.25EU/mg未満のFDA許容エンドトキシンレベルを得た。
【0189】
結果として、これらの実験的研究は、対照としてCD4-Nb1、CD4-Nb4およびGFP-Nbを用いて継続した。簡単に説明すると、3人の予備選択された健常ドナー由来のカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識されたヒトPBMCを、37℃で1時間、0.05μM~5μM濃度のCD4-Nbまたは対照Nbで予備処理し、臨床適用中の期待される概算濃度および血清保持時間を模倣した。次に、細胞を洗浄してNbを除去し、抗原性(同族MHCIIペプチド)または非抗原性刺激(フィトヘマグルチニン、PHA-L)で刺激し、4、6および8日後に、フローサイトメトリーにより、図9Aに示されるゲーティング戦略を用いて分析した。観察された非常に類似したCFSE強度プロファイルによれば、細胞分裂の総数は、異なるNb処理によって影響されなかった(例示的に、6日目の3人のドナーのうちの1人について示された;図9A)。同じドナーおよび時点の試料について、増殖細胞のパーセンテージにおける実質的な差異は、Nb添加なしと個々のNb処理の間で観察されなかった。ドナー間では異なるが、両方の刺激について、増殖細胞の平均パーセンテージは時間とともに増加し、条件間に顕著な差はなかった(図4A)。また、細胞活性化の定量的指標として、CD4+T細胞上の非常に早期の活性化マーカー(CD69)およびIL-2受容体α鎖(CD25)の細胞表面誘導を測定した(図4B)。同じドナーの試料および刺激の中で、すべてのNb処理について非常に類似した活性化プロファイルが見出された。CD25+細胞のパーセンテージは、MHCIIペプチド刺激に対して経時的に着実に増加したが、PHA刺激条件では、陽性細胞のパーセンテージは、分析の全時点で同様に高かった。重要なことは、ドナー間の差にかかわらず、分析において、同じドナーからの個々のNb処理は、いずれの時点においても、両方の刺激についてCD4+CD25+またはCD4+CD69+細胞のパーセンテージにおいて有意差を生じさせなかったことである。
【0190】
次に、CD4+T細胞のサイトカイン発現は、同族MHCIIペプチドによる再刺激後の細胞内サイトカイン染色によって分析された。対応するゲーティング戦略を図9Bに示す。異なるNbで処理された同じドナーの試料は、刺激なしで、およびMHCIIペプチドで刺激した場合に、サイトカイン(TNF、IFN-γもしくはIL-2)または活性化マーカー(CD154)陽性細胞の割合が非常に類似していた(図4C)。全体として、CD4-Nbへの曝露は、CD4+T細胞の増殖、活性化またはサイトカイン産生に影響を及ぼさなかった。さらに、さらに3人のドナーの全血試料からのサイトカイン放出に対するCD4-Nbの潜在的効果を分析した。リポ多糖類(LPS)またはPHA Lで刺激した場合、一連の炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインを用いて血清濃度を測定した(図20B)。いくつかのサイトカインについてドナー間に有意差があったが、CD4-Nbの存在は刺激試料と非刺激試料のいずれにおいても有意差をもたらさなかった(図10)。
【0191】
CD4-Nbのインビボ光学的イメージング
【0192】
光学的インビボイメージングについて、CD4-Nbは、アジド基のソルターゼ媒介付着によりフルオロフォアCy5.5(CD4-Nb-Cy5.5)で標識し、続いて、DBCO-Cy5.5をクリック化学的に添加した。第1に、マウスCD4+リンパ球に対する4つのCy5.5で標識されたCD4-Nbの潜在的交差反応性を試験した。注目すべきことに、フローサイトメトリー分析は、選択されたCD4-NbのいずれもマウスCD4+細胞に結合することができないことを示し、ヒトCD4への排他的結合を示唆した。さらに、低親和性結合CD4-Nb4は、ここで使用した濃度(0.75μg/ml、約49nM)では、マウスおよびヒトCD4+細胞のいずれにも結合しなかった(図11)。CD4-Nb1およびCD4-Nb4は、マウス異種移植モデルを用いてインビボ標的特異性および動的分布についてさらに分析された。
【0193】
ヒトCD4+を発現する腫瘍を確立するために、NSGマウスにCD4+T細胞白血病HPB-ALL細胞44を皮下接種した。2~3週間後、HPB-ALL異種移植片を移植したマウスに5μgのCD4-Nb1-Cy5.5、CD4-Nb4-Cy5.5、または対照Nb(GFP-Nb-Cy5.5)を注射し、24時間にわたって光学的に画像化した(図5A図12A)。対照NbのCy5.5シグナル強度(SI)は10~20分以内にピークに達し、その後、それぞれ2時間および24時間で最大レベルの半分および4分の1に急速に低下した(図5B図12B)。SI低親和性CD4-Nb4-Cy5.5は、いつでも対照NbのSIを超えなかったが(図12B)、CD4-Nb1-Cy5.5は、HPB-ALL内で対照Nbの約1.8倍の最大SIに達し、30分後には最大値の約90%、4時間後には最大値の約80%まで徐々に低下した(図5B)。CD4-Nb1-Cy5.5とGFP-Nb-Cy5.5の間の実験マウスのHPB-ALL異種移植片のSIの違いに基づいて、最適標的蓄積と特異性は注射後60~120分の間で観察された(図5B)。24時間後、マウスを安楽死させ、外植した腫瘍内のフルオロフォアで標識されたCD4 Nbの存在をOIにより分析した(図5C図12C)。対照と比較して、CD4-Nb1-Cy5.5を注射されたマウス由来の腫瘍は、約4倍高いCy5.5 SIを有し、Nb由来の蛍光標識された免疫プローブに対する良好なシグナル対ノイズ比が後の時点においてさえも指示された。
【0194】
異種移植片内のCD4-Nb1のCD4特異的標的化を確認するために、注射の2時間後および24時間後にHPB-ALL腫瘍のエクスビボ免疫蛍光法を行った(図13)。インビボでのOIシグナルがピークに達した初期の時点で、CD4-Nb1は腫瘍全体に広く分布していたが、GFP-Nbを注射されたマウスではCy5.5シグナルは検出されなかった(図13A、B)。単一細胞レベルでの半定量分析では、HBP-ALL細胞の表面に強いCD4-Nb1結合が認められ、CD4抗体シグナルおよび一部の細胞におけるCD4-Nb1の内在化と相関していた(図13C)。無関係なGFP-Nbの投与では、Nb結合は観察されなかった(図13D)。強く内在化されたCD4-Nb1(図13E、G)の注射24時間後の領域が観察されたが、残存CD4-Nb1取り込みが低い領域も観察された(図13E、H)。
【0195】
異種移植片モデルからの光学的イメージングデータは、CD4-Nb4ではなく高親和性CD4-Nb1が、投与後の短時間(30~120分)内でインビボでCD4+細胞を特異的に可視化するのに適していることを明確に指示する。このモデルは、生物におけるCD4+T細胞の自然な分布を反映していないため、CD4+免疫細胞の生理学的組成を可視化することができるモデルを用いて継続した。このように、正常な免疫学的機能およびT細胞分布が回復する間に、マウスCD4抗原の細胞外画分をhCD4に置換したヒト化CD4マウスノックインモデル(hCD4KI)を用いた。
【0196】
64 Cu-CD4-Nb1はCD4+T細胞に富む臓器に特異的に蓄積する
【0197】
免疫PET適合トレーサーを生成するために、アジドをカップリングさせたNbに添加された銅キレート化BCN-NODAGA基を用いて、CD4-Nb1およびGFP-NbをPET同位体64Cuで標識した。放射性化学的純度が高く(≧95%)、CD4を発現するHBP-ALL細胞へのインビトロでの64Cu-hCD4-Nb1の特異的結合(46.5%±5.6%)が、CD4陰性DHL細胞への非特異的結合または放射性標識された64Cu-GFP-Nb対照よりも約30倍高かった(データを示さず)。その後、64Cu-CD4-Nb1をhCD4KIおよびwt C57BL/6マウスにおいて静脈内注射し、PET/MRIを24時間にわたって繰り返し行った。hCD4KI動物のうち2匹では、最初の90分間にわたるトレーサーの生体内分布に加えて、続いて動的PETを行った。小型の免疫トレーサーで予想されたように、最初の10分以内の初期の取り込みピーク後、64Cu-CD4-Nb1は腎排泄を介して血液、肺、および肝臓から速やかに除去された。野生型と比較して、T細胞上にhCD4抗原を保有するマウスは、リンパ節、胸腺、肝臓、および脾臓におけるトレーサー蓄積の増加を示した(図23Aを参照されたい)。CD4+T細胞を多数保有することが公知であるこれらの臓器では、臓器バックグラウンドからのCD4+特異的シグナルの識別は、注射後3時間で最適であった(図23Bを参照されたい)。ここで、リンパ節は、hCD4KIマウスにおいて、wt同腹仔と比較して、約3倍、脾臓で約2.5倍、および肝臓で約1.4倍高い64Cu-CD4-Nb1蓄積を生じた(図23Cを参照されたい)。対照的に、血液、筋肉、肺、および腎臓の類似した取り込みレベルが両群において観察された。トレーサー注射後24時間のエクスビボ生体分布を分析したところ、hCD4を発現するマウスのリンパ節および脾臓における64Cu-CD4-Nb1の持続的蓄積が確認されたが、1群あたりの動物数は限られていたため、統計学的分析はできなかった。
【0198】
上記のデータは、高親和性結合CD4-Nb1が、非侵襲的光学的イメージングおよびPETベースのイメージングによってインビボでCD4細胞を可視化するのに適していることを強く指示する。
【0199】
CD4-Nb1の標的化修飾/官能化
【0200】
アミン反応性架橋剤を用いて、利用可能なN末端アミノ基で特異的に標的化修飾/官能化を可能にするために、CD4-Nb1中のすべてのリジン残基をアルギニン残基に置換した。ナノボディの突然変異体バージョンは、細菌中で容易に発現され、その突然変異していない対応物と同様の産生レベルをもたらした。機能分析のために、本発明者らはバイオレイヤー干渉法を用いて突然変異体ナノボディの結合親和性を測定した。アルギニン残基に対するリジン残基の交換(配列の誘導:EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS RLAMSWHREP PGRGREWLAD IDSSGDTTDY LASVRGRFTI SRDNARNTLY LQMDSLRSED TGVYYCASRE DPPGYWGQGT QVTVSS(配列番号156))は、ヒトCD4に対する突然変異体CD4-Nb1の親和性(K)が約1nMであることによって反映されるように、結合特性には影響を及ぼさず、突然変異していないCD4-Nb1対して以前に決定された親和性(K 5.1nM)と同等であった(図24参照)。
【0201】
検討の要約
【0202】
本明細書に提示された本発明において、生物学的に不活性なナノボディとして、例えば、種々の生物医学的研究用途におけるヒトCD4+T細胞の可視化およびモニタリングのための新規な免疫プローブとして、非侵襲的なインビボイメージングに焦点を当てて使用することができるCD4 Nbを開発した。診断薬としての用途を超えて、CD4-Nbは様々な治療機会を提供する。CD4の細胞機能を考慮すると、詳細なエピトープの特徴付けは、例えば、CD4とMHCII複合体の間に生じる一過性の相互作用に影響を与えることによって、またはリガンド結合の遮断を通じて、Nbが認識されたエピトープに依存して内因性CD4を調節する可能性があるため、特に興味深い。MHC-II結合はCD4抗原のドメインD1に位置するが、TCRとCD4の共局在化がドメインを介してブロックされた場合、T細胞の活性化は停止する。
【0203】
本発明で生成されたデータから、新しく生成されたNbは生物学的に不活性であり、したがって、全長抗体または他の抗体断片と比較して有益であると結論付けることができる。また、提供されたデータは、新しく生成されたCD4-Nbがインビボイメージングに適したプローブであることを証明する。選択されたCD4 NbがヒトCD4に排他的に結合するが、マウスのホモログには結合しないことを考慮して、ヒト由来HBP-ALL細胞に基づいてCD4+T白血病腫瘍モデルを実施する異種移植マウスモデルを使用した。このモデルを用いて、HBP-ALL由来の異種移植片上の高親和性CD4-Nb1の特異的濃縮を、光学的インビボイメージングによりモニタリングすることができた。
【0204】
2.ナノボディ修飾されたAAV2遺伝子治療ベクターによるCD4+T細胞の標的化
【0205】
材料および方法
【0206】
プラスミド構築
【0207】
野生型AAV2 rep/cap遺伝子をコードするプラスミドpAAV2/2(Addine #104963)は、カプシドの最適化および盲検化の出発点として役立った。カプシド最適化のためのアミノ酸置換(Y444F、T491V、Y500FおよびY730F)、ならびに一次天然AAV2ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)結合部位(R585AおよびR588A)の破壊(盲検化)は、以前に記載されている。それぞれのヌクレオチドの遺伝的修飾は、逆並列配向のDNAオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチドoMH19-oMH19;図22)およびQ5 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いた部位特異的突然変異(SDM)PCRにより行われた;PCRプログラム:初期変性2分8℃、18サイクル変性10’’98℃、アニーリング30’’55℃、伸長6分72℃、および最終伸長3分72℃。PCRに続いて、DpnI(Thermo Fisher Scientific)消化物、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)による5’末端リン酸化、およびT4 DNAライゲーション(Thermo Fisher Scientific)を含む「ワンポット」反応を行った。E.coli(大腸菌)への形質転換およびプラスミド単離後、導入されたヌクレオチド変化をSanger配列決定により検証した。SDM反応の連続ラウンドにより、全4つの最適化を有するAAV2カプシドタンパク質をコードするコンストラクトpAAV2/2-o、ならびに全4つの最適化と2つのHSPG盲検化されたアミノ酸置換をコードするpAAV2/2-boが生成された。
【0208】
AAV2のキャップ発現は3つのカプシドタンパク質VP1-3を生成する:VP1はスプライシングされていないmRNAから翻訳されるが、V2とV3はスプライシングされたmRNAからの翻訳産物である。VP1発現のみを達成するために、主要スプライスアクセプター(SA)部位を突然変異させた。上述のように、SDM PCR(オリゴヌクレオチドoMH47およびoMH48;図22を参照されたい)とアンプリコンライゲーションおよびその後のコンストラクト検証を行い、コンストラクトpAAV2/2-bo-SAを生成した。対照的に、AAV2キャップ開始コドン(sc)の突然変異後、新生コンストラクトはVP2およびVP3発現のみを可能にする。上述のプロトコールに類似して、pAAV2/2-bo-scは、オリゴヌクレオチドoMH45およびoMH46を用いて生成された(図22を参照されたい)。
【0209】
VP1修飾されたナノボディコンストラクトの生成
【0210】
ナノボディおよびリンカー配列をVP1のGH2/GH3表面ループ領域内に遺伝的に挿入した。これを達成するために、キャップ内のそれぞれの位置でのNotI認識部位をpAAV2/2-bo-SAに導入した(oMH67およびoMH68を用いるSDM PCR)。その後のライゲーション反応と並行して、5’リンカー配列を一対のアニールされたオリゴヌクレオチド(oMH69およびoMH70;図22を参照されたい)によって導入し、pAAV2/2-bo-SA-標的-ベクターを生成した。
【0211】
続いて、ナノボディおよび3’リンカー配列は、NotI/XcmI線形化pAAV2/2-bo-SA-標的-ベクター断片、ならびに一価ナノボディ、3’リンカーおよびキャップ配列を含む単一PCR断片を用いて、製造業者(Gibson Assembly Master Mix、NEB)の指示に従って、Gibsonアセンブリーにより導入され、キャップ内部XcmI制限部位(挿入断片)にライゲートされた。この挿入断片を生成するために、2つの単一のPCRアンプリコンを重複伸長PCRにより融合させた。第1に、ナノボディ配列は、標的ベクター(フォワードオリゴ)に対する5’相同性、ならびに標的ベクター(リバースオリゴ)に対する3’リンカー配列+3’相同性を含有するPCRオリゴ(図22に列挙した各ナノボディに対するオリゴ)を用いて、上記プラスミドからPCR増幅された。キャップ内のXcmI部位への3’リンカー配列に及ぶ第2のPCR断片を、オリゴoMH85/86を用いて生成した。
【0212】
得られたVP1修飾されたナノボディコンストラクト(VP1-CD4-Nb1、-Nb1a、-Nb3、-Nb4およびPepNb)を配列決定により検証した。最終コンストラクトのアミノ酸配列を図21に示す。
【0213】
VP2修飾されたナノボディコンストラクトの生成
【0214】
第1に、最適化され、盲検化されたVP2オープンリーディングフレームは、AAV2/2-bo cDNA由来の隣接するXbaIおよびBamHI制限部位を導入するDNAオリゴヌクレオチドを用いてPCR増幅された(オリゴヌクレオチド:oMH16およびoMH18;図22を参照されたい)。XbaI/BamHIアンプリコン消化後、それぞれの断片をXbaI/BamHI線形化pBC12/CMVベクター骨格中にライゲートし、コンストラクトpBC12-CMVint-VP2を得た。次に、ナノボディ配列は、リンカー配列を介してVP2オープンリーディングフレームの5’末端に遺伝的に融合され、アミノ末端ナノボディ-リンカー-VP2融合ペプチドの発現を達成した。この目的のために、HindIII/XbaI線形化pBC12-CMVint-VP2ベクター断片、XbaI/XhoI適合末端を有するアニールされたオリゴヌクレオチドoMH33およびoMH34からなるリンカー断片、ならびにXhoI/HindIII適合末端を有するナノボディPCR挿入断片(PCR増幅に使用されるナノボディ特異的オリゴヌクレオチドを図22に列挙する)を含む3つの断片ライゲーション戦略を適用した。すべての最終コンストラクト(VP2-CD4-Nb1、-Nb1a、-Nb3、-Nb4、-Nb5およびPepNb)は、Sanger配列決定によって検証された。最終コンストラクトのアミノ酸配列を図21に提供する。
【0215】
VP1修飾された二価ナノボディコンストラクトの生成
【0216】
タンデムVP1-biCD4-Nb1および対照VP1-biPepNBコンストラクトは、NotI/XcmI制限部位、各ナノボディに隣接するリンカー配列、およびVP1配列を含有する合成DNA断片(GeneArt、Sigma-Aldrich)から、最適化され、盲検修飾を用いて生成された。GeneArt合成プラスミドとpAAV2/2-bo-SA-標的ベクターの両方をNotI/XcmIで消化し、二価ナノボディ挿入物をVP1-ベクターにライゲートし、pAAV2/-bo-SA-VP1-biCD4および-biPepNBを得た。最終コンストラクトは、DNA配列決定によって検証された。
アミノ酸配列を図21に示す。
【0217】
細胞培養
【0218】
本研究において使用したすべての細胞株は以前に記載され、37℃および5%COの加湿雰囲気下において、標準条件下で培養された。接着性細胞株HEK 293T(ATCC:CRL-3216)、HeLa(ATCC:CCL-2)およびHeLa TZMbl(NIBSC:ARP5011)を0.05%トリプシン-EDTA(Pan Biotech)を用いて継代し、10%ウシ胎児血清(Biochrom)、2mM L-グルタミンおよび50U/mlペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質(Biochrom)を補足したDMEM増殖培地(Pan Biotech)中で培養した。懸濁T細胞株SupT1(ATCC:CRL-1942)およびJurkat 1G5(NIBSC:5010)を10%ウシ胎児血清(Pan Biotec)および50U/mlペニシリン-ストレプトマイシンを補足したRPMI 1640増殖培地(Biozyme Scientific)中で培養した。
【0219】
末梢血単核細胞(PBMC)を健常ドナーの軟膜から分離した。軟膜からのCD4+T細胞の単離は、RoboSepネガティブ選択ヒトCD4+T細胞濃縮キットを使用して、製造業者の指示に従って、RoboSep自動細胞分離デバイス(Stemcell Technologies)とともに行われた。単離された細胞を、100U/mlのペニシリン-ストレプトマイシン、2mMのL-グルタミンおよび500U/mlの組換えヒトIL-2(Sigma-Aldrich)を含む、10%FCSを補足したRPMI 1640(Biozyme Scientific)中で培養した。
【0220】
AAV粒子の生成、精製および定量
【0221】
ポリエチレンイミン(PEI;Sigma-Aldrich)トランスフェクションを介したHEK293T細胞におけるAAV産生は、以前に記載されるように行われた。簡単に説明すると、トランスフェクション後の1日目に、10cmディッシュあたり4×10細胞を播種した。Opti-MEM(Life Technology)中の4:1のPEI:DNA比を用いて、ディッシュあたり合計10.5μgのプラスミドDNA(すなわち、42μgのPEI:10.5μgのDNA)でトランスフェクションを行った。PEIトランスフェクションプロトコールは、製造業者の指示に従って、ディッシュあたり6mLの最終体積で行われた。すべての共トランスフェクション反応において、ヘルパープラスミドpAdDeltaF6(Addine #112867)、および構成的CAGプロモーター下でGFP導入遺伝子をコードするAAV2ベクターpscAAV-CAG-GFP(Addine #83279)が含まれた。さらにプラスミドを必要に応じて混合物に添加した(opt:pAAV2/2-o;opt-盲検:pAAV2/2-bo;VP1-ナノボディ:pAAV2/2-bo-sc+pAAV2/2-bo-SA-VP1-NbX;VP2-ナノボディ:pAAV2/2-bo+pBC12-CMVint-VP2-NbX)。すべてのプラスミドを等モル量で共トランスフェクションした。トランスフェクションの30時間後、6mLの新鮮培地を培養物に添加した。トランスフェクションの3日後、細胞をディッシュからスクラップし、上清と合わせた。遠心分離(15分、2,800×g)後、上清を捨て、細胞ペレットを800μLの溶解緩衝液(水中150mM NaCl、50mM Tris-HCl pH8.0)に再懸濁し、1.5mL反応チューブに移した。3サイクルの凍結/解凍(-80℃で20分間、37℃で5分間)は細胞を開き、内部AAV粒子を放出した。その後のベンゾナーゼ処理(50U、37℃、1時間;Sigma-Aldrich)は、残存プラスミドDNAの汚染を減少させた。細胞残渣(20,000×g、4℃、15分)から分離した後、得られた粗AAV上清のアリコートを使用するまで-80℃で保存した。
【0222】
初代ヒト細胞を用いた実験(すなわち、CD4+T細胞およびPBMC)について、粗AAV上清のイオジキサノール勾配精製を行った。粗AAV上清(20個の10cmディッシュ、9mL溶解緩衝液、450Uベンゾナーゼ)の大規模産生後、9mLの粗AAV上清を、以前に記載されるように、イオジキサノール工程勾配上で精製した。超遠心分離(4℃、350,000×g、90分;Beckman 70Tiローター)後、AAV2粒子を含有する40%イオジキサノール画分を針および注射器で回収した。洗浄、PBS-Pluronic F68緩衝液(Gibco)交換、およびさらなる濃縮は、フィルターカラム遠心分離(Amicon Ultra-15,100kDa MWCO;Sigma-Aldrich)によって達成された。精製したAAV上清のアリコートを使用するまで-80℃で保存した。
【0223】
すべてのAAV上清について、qPCRによりウイルス力価を測定した。このために、1μLのAAV上清をDNaseIおよびその後のプロテイナーゼK処理に供し、残存プラスミドDNA汚染を除去し、カプシドからウイルスベクターゲノムを放出させた。1μLのAAV上清(1×DNaseI緩衝液中の10UのDNaseI;New England Biolabs)を含有する100μLの反応物を37℃で16時間インキュベートし、続いて75℃で30分間、DNaseIを不活性化した。次に、2μLのプロテイナーゼK(20mg/mL;QIAGEN、Hilden Germany)を添加し、55℃で2時間インキュベートした。プロテイナーゼKを95℃で30分間、不活性化した。この反応から、参照としてプラスミド標準(pscAAV-CAG-GFP)を用いて、1μLをベクターゲノムの絶対定量に供した。Platinum(登録商標)SYBR(登録商標)Green qPCR SuperMix-UDGキット(Thermo Fisher Scientific;Waltham、MA)を、製造業者の指示に従って、Applied Biosystem 7500リアルタイムPCRサイクラー(qPCRプログラム:初期変性95℃3分;変性95℃15’’およびアニーリング/伸長60℃30’’の40サイクル;その後の融解曲線;オリゴヌクレオチドoMH93およびoMH94を図22に列挙する)と組み合わせて使用した。イオジキサノール工程勾配精製したベクター調製物からのカプシド定量は、製造者の指示に従って、AAV2滴定ELISAキット(PROGEN、Heidelberg、Germany)を用いて行われた。
【0224】
免疫金電子顕微鏡
【0225】
イオジキサノール工程勾配精製したAAV2試料をグロー放電炭素被覆グリッドに10分間吸着させた。プロテインA/G金コンジュゲートのブロッキング溶液(URION、Wageningen、The Netherlands)と5分間インキュベートした後、試料を一次抗体(10μg/mL、ポリクローナルヤギ抗アルパカIgG;Jackson ImmunoResearch、WestGrove、PA)とともに30分間インキュベートし、続いて5分間洗浄した。その後、二次抗体を添加して15分間おいた(1:10、ウサギ抗ヤギIgG 10nm金コンジュゲート;Sigma-Aldrich、Hamburg、Germany)。ddHOで洗浄した後、試料を1%酢酸ウラニルで染色し、風乾した。透過型電子顕微鏡写真を、Olympus Veleta CCDカメラを装備したFEI Tecnai G20を用いて80kVで撮影した。明瞭にするために、対応するスケールバーを有する代表的な画像をクロップしだ。
【0226】
ウエスタンブロット法
【0227】
カプシド組成をウエスタンブロット法により分析した。イオジキサノール精製したウイルスベクター粒子を、製造業者の指示に従ってStrataclean Resin(Agilent Technologies、Ratingen、Germany)を用いて濃縮し、8%SDS-PAGEゲル(レーンあたり5×1010個のカプシド)上で分離し、次の一次抗体:AAV2特異的抗体A69を含有するハイブリドーマ細胞上清(VP1/VP2タンパク質を認識する;1:10希釈)(PROGEN、Heidelberg、Germany)を用いて、標準ウエスタンブロット法に供した。抗マウスIgG HRPをコンジュゲートした抗体を二次抗体(Cayman Chemical-Biomol、Hamburg、Germany;1:2,000希釈)として使用し、シグナルをFusion FX Vilber Lourmatシステム(Peqlab)と組み合わせてSuperSignal(商標)West Pico化学発光基質またはSuperSignal(商標)West Femto Maximum Sensitivity(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を用いて検出した。
【0228】
カプシド熱安定性アッセイ
【0229】
簡単に説明すると、カプシド熱安定性アッセイのために、反応あたりベクター調製物の1×1010個のウイルスカプシドをPBS中で希釈し、指定の温度で15分間インキュベートし、次にPBS中でさらに希釈した。温度勾配(65~85℃)を、LightCycler1 96システム(Roche Life Science)により、以下のプログラム:2サイクル(37℃で10秒;温度勾配で900秒;37℃で10秒)、1サイクル(37℃で30秒)を用いて生じさせた。試料を真空ブロッターを用いてニトロセルロース膜に移し、ブロック(TBS-T中の5%ミルク)し、抗AAV2特異的抗体A20(無傷のカプシドを認識する)(PROGEN、1:5希釈)を含有するハイブリドーマ細胞上清とともにインキュベートした。抗マウスIgG HRPをコンジュゲートした抗体を二次抗体(Cayman Chemical-Biomo、Hamburg、Germany;1:2,000希釈)として使用し、シグナルをFusion FX Vilber Lourmatシステム(Peqlab)と組み合わせてSuperSignal(商標)West Pico化学発光基質またはSuperSignal(商標)West Femto Maximum Sensitivity(ThermoFisher Scientific Waltham、MA)を用いて検出した。
【0230】
AAV形質導入およびフローサイトメトリー
【0231】
詳細不明の場合、細胞を、細胞あたりの指示されたゲノムコピー数(gc/細胞)で粗AAV2溶解物を形質導入した。感染の1日前に、ウェルあたり2.5×10細胞を12ウェルディッシュに播種した。混合培養実験において、HeLa野生型およびHeLa TZMbl細胞を、形質導入の24時間前に、ウェルあたり総計2.5×10細胞を約1:1の比率で播種した。初代CD4+T細胞および軟膜由来のPBMCの形質導入のために、培養物をCD3/CD28磁性ビーズ(Invitrogen)で24時間、前刺激した。前刺激後、細胞を計数し、ウェルあたり4×10細胞を有する96ウェルプレートに播種した。イオジキサノール勾配精製したAAV粒子を、500U/ml組換えヒトIL-2の存在下で、細胞あたりの指示されたゲノムコピー数で培養物に添加した。すべての細胞培養実験において、形質導入後3日目に細胞を回収し、PBSで洗浄し、PBS中のPE-Cy7をコンジュゲートした抗CD4抗体(RPA-T4;eBioscience)で4℃にて30分間、2%FCSで染色した。PBSで2ラウンド洗浄した後、細胞をCD4および/またはGFP発現について分析した。Canto II(BD Bioscience)またはLSR Fortessa(BD Bioscience)デバイスでデータを獲得した。
【0232】
AAV結合および内在化
【0233】
カプシド結合および内在化アッセイについては、簡単に説明すると、HeLa wtまたはTZMbl細胞を、感染の24時間前に12ウェルあたり2.5×10細胞の密度で播種した。形質導入の30分前に、細胞を4℃に冷却し、続いて、選択された精製したAAV2調製物を10.000gc/細胞で接種した。4℃で1時間インキュベートした後、細胞スクレーパー(AAV2結合試料)で細胞を回収する前に、細胞を氷冷PBSで4回洗浄した。AAV2内在化の分析のために、結合したAAV2粒子を有する細胞を37℃に移し、さらに1時間インキュベートした。その後、細胞をトリプシンで回収し、PBS(AAV2内在化試料)で3回洗浄した。ゲノムDNAは、製造業者の指示に従って、QIAamp DNA Bloodキット(QIAGEN)を用いて単離した。ベクターゲノムの定量PCRは、オリゴヌクレオチドoMH93およびoMH94を用いて上記のように行われた(表図22)。細胞ゲノムの定量は、製造業者の指示に従って、Platinum Quantitative PCR SuperMix-UDG(Live Technologies)と組み合わせたヒトベータ-グロビン遺伝子(HBG)に特異的なTaqman qPCRを用いて行われた。
【0234】
データ分析および統計
【0235】
すべてのフローサイトメトリーデータを、FlowJo v10.7ソフトウェア(Tree Star、Ashland、OR)で分析し、GraphPad v9(Prism、Irvine、CA)で処理した。データは、標準偏差(図の凡例に指示されている実験数)を示す誤差バーのある平均値を表す。
【0236】
結果
【0237】
ナノボディ操作されたAAVS粒子の生成
【0238】
上記ナノボディのそれぞれのNb cDNAを合成し、AAV2カプシド(cap)遺伝子の遺伝子修飾に使用した。以前、カプシド修飾の目的で、異種配列をVP1の共通領域のGH2/GH3表面ループに挿入するか、またはVP2のアミノ末端に融合させた。両方の戦略を用いて、Nbタンデムコンストラクトを含む選択されたCD4-Nbコード配列を、VP1および/またはVP2コード配列とフレーム内で融合させ、それらの表面上にヒトCD4特異的Nbを提示するAAV2カプシド粒子をもたらした(図14)。すべてのコンストラクトは、自己相補的AAV2ゲノム構成を用いて生成された。CD4-ナノボディ特異的結合を制御するために、さらに、非関連ペプチドエピトープに結合するナノボディ(PepNb)を含めた。
【0239】
さらに、ベクター形質導入効率を最適化するために、4つの表面露出したカプシド残基(Y444F、T491V、Y500F、およびY730F)を突然変異させて、それらのリン酸化、ユビキチン化に導く可能性のある翻訳後修飾、続いて標的細胞の細胞質内に入ってくるベクターのプロテアソーム分解を防止した。すべてのベクターNb修飾は、キャップR585AおよびR588Aバックグラウンドにおいて行われ、それによって、得られたベクターが一次プロテオグリカン受容体に結合するのを妨げた(盲検化)。さらに、すべてのベクターは、構成的CAGプロモーターおよびSV40のポリA部位によって駆動されるeGFPマーカーを発現した。VP2-Nb修飾されたベクターの産生戦略は、産生細胞におけるwtおよびNb修飾されたVP2タンパク質の共発現をもたらした。したがって、wtとNb修飾されたVP2の両方を含有するハイブリッドカプシドは、本VP2-Nbベクター調製物のすべてに存在する可能性が高い。
【0240】
それぞれのAAV2 CD4-Nb提示粒子は、確立されたプロトコールに従って、HEK293T細胞をAAVヘルパー、カプシドおよびトランスファーベクタープラスミドと一過性に共トランスフェクションすることによって産生された(上記の材料および方法を参照されたい)。選択された勾配精製したベクターバッチを電子顕微鏡によって分析し、ウイルス粒子がNb修飾されているかどうかに関係なく、野生型様の表現型AAV出現を明らかにした(図15A)。さらに、アルパカIgGに対する一次抗体を用いた免疫金染色により、ナノボディ修飾されたベクターバッチドのカプシド表面におけるアクセス可能なナノボディ部分が明らかになった(図15B)。ウエスタンブロット分析は、ナノボディ部分あたりおよそ15kDaだけアップシフトするVP1/VP2タンパク質バンドによって指示されるように、ナノボディの取り込みを確認した。qPCRおよびカプシドELISAを用いてゲノムおよびカプシド力価を決定したところ、パッケージング効率、すなわちカプシド/ゲノムの比率は、対照ベクター(それぞれopt:11.13および盲検:6.91)およびNb修飾されたベクター(それぞれVP1-CD4-Nb1:7.17、VP2-CD4-Nb1:7.88およびVP1-ビCD4-Nb1:8.74)で非常に類似していることが明らかになり、Nb修飾された粒子中の非影響ゲノムパッケージングを示した(S2表)。さらに、カプシド熱安定性を、ベクターカプシドを徐々に加熱し、無傷なカプシドを特異的に検出することによりアッセイした。AAV盲検およびNb修飾されたベクターカプシドは同一の熱安定性(最大70.3℃)を示し、Nb操作がカプシドの安定性に負の影響を及ぼさないことを指示する。これらのデータは、Nb修飾されたAAV2粒子がAAV2野生型様形態およびゲノムパッケージング能力を有し、それらの外側カプシド表面上にNbを提示することを示す。
【0241】
CD4発現細胞株の形質導入
【0242】
第1に、種々の細胞株を、フローサイトメトリーによりCD4表面発現に関して分析した。示されるように、CD4欠損HeLa野生型(wt)およびCD4+ HeLa TZMbl細胞は、細胞表面上のCD4分子を欠損または発現して、予想される表現型を提示した(図16A)。ヒトJurkat 1G5 T細胞はCD4を中程度に発現したが、関連するSupT1細胞は強いCD4発現によって特徴付けられた(図16A)。次に、これらの細胞株は、対照AAV2opt(Y444F、T491V、Y500F、Y730F)およびAAV2盲検(Y444F、T491V、Y500F、Y730F、プラスR585A、R588A)を含む、AAVベクター調製物、ならびに陰性Nb対照(PepNb、非特異的対照ペプチドを認識する)を含む一組のカプシド(Nb)操作されたベクターで個々に形質導入された。対照ベクターAAV2optを用いたHeLa細胞の形質導入は、細胞あたりの入力ベクターゲノムコピー数(gc/細胞)の全範囲にわたって高い形質導入率をもたらし、すべての実験において10,000~10gc/細胞の範囲であった(図16B、上段パネル)。これらの結果は、形質導入HeLa細胞が陰性(HeLa wt)であるかまたはCD4受容体陽性(HeLa TZMbl)かに関係なく観察された。
【0243】
対照ベクターAAV2盲検およびPepNbを分析した場合、10,000gc/細胞の最高濃度でのみ、同等の低い形質導入率が記録され、一次受容体結合の消失による感染能の強い減少が確認された。対照的に、種々のCD4 Nb特異的コンストラクト(CD4-Nb)の検査、特にCD4-Nb1およびCD4-Nb3の場合(図14Aに概略的に概説される)は、CD4受容体依存的に、高ベクターゲノムコピー数で最大の形質導入を示した(図16B、上段パネル)。興味深いことに、CD4-Nb1は、Nb配列挿入部位とは独立して、同様の形質導入効率を提示したが(VP1の内部ループ対VP2のアミノ末端)、一方、対照的に、CD4-Nb3は、VP1が遺伝的に修飾された場合にのみ良好に機能した。
【0244】
同様の結果が、T細胞株SupT1およびJurkat 1G5(図16B、下段パネル)において得られた。形質導入効率は、入力ベクターの全範囲(すなわち、gc/細胞)にわたって全体的に低かったが、CD4-Nb1およびCD4-Nb3は、特に、染色によりCD4が高い陽性であったSupT1細胞と同等であり、最大の形質導入率を示した(図16A)。上述のように、CD4-Nb3コンストラクトは、VP1における融合として発現された場合にのみ、CD4+細胞の形質導入に正の影響を与えた。これらのデータはまた、10,000gc/細胞を用いてCD4-Nb1またはCD4-Nb3ベクターで形質導入し、eGFPおよびCD4について二重染色し、その後、形質導入後3日目にフローサイトメトリー分析を行ったJurkat 1G5細胞を用いて確認された(図16C)。フローサイトメトリープロットの検査により、CD4を強く発現する細胞の形質導入の増強が明らかになった。上記のように、この効果はCD4-Nb1 VP1およびVP2修飾されたウイルス粒子、ならびにCD4-Nb3 VP1-修飾されたAAV2に対して観察された。
【0245】
さらに、Nb修飾されたカプシドのベクター侵入と輸送を調べた。VP1修飾されたCD4-Nb1および-Nb3ベクターを、HeLa wt(CD4陰性)およびHeLa TZMbl(CD4陽性)細胞上で、VP1-PepNB陰性対照およびAAV2optベクターと比較した。結果は、CD4-Nbベクターの両方が、CD4細胞表面発現に関係なく、AAV2optベクターと同程度にHeLa wtおよびTZMbl細胞に結合する(またはむしろ付着する)ことを示す。対照的に、PepNbベクター粒子は、AAV2optベクターと比較して、両方の細胞株に結合/付着することが有意に少ない。粒子内在化を分析した場合、異なるパターンが出現した。HeLa wt細胞において、すべてのNb修飾されたカプシドは、AAV2optベクター粒子と比較して有意に低く内在化され、突然変異したHSPG結合モチーフおよびこれらの細胞の表面でのCD4発現の欠如と一致した。HeLa TZMbl細胞のCD4-Nb1カプシドでは、これまでの実験で最も性能の良いコンストラクトが、フローサイトメトリーデータに沿って、AAV2optベクターと比較して、4倍以上効果的に取り込まれた。
【0246】
総合すると、これらの実験は、CD4-Nb1およびCD4-Nb3が、AAV2由来遺伝子ベクターを細胞、特に表面にCD4を発現する細胞に標的化するための有用な試薬であることを指示した。
【0247】
混合細胞培養物中のCD4+細胞の好ましい標的化
【0248】
次に、AAV2 CD4-Nb1およびCD4-Nb3コンストラクトによるCD4特異的細胞標的化を競合実験において分析し、2つの異なる細胞集団であるCD4陰性HeLa wt細胞およびCD4陽性HeLa TZMbl細胞を1:1の比で混合した。上記の結果と一致して、これらの混合細胞培養物にそれぞれのCD4-Nb修飾されたベクター粒子および対照ベクターを添加し、続いてフローサイトメトリーを行ったところ、それぞれの培養物におけるCD4発現サブ集団の好ましい形質導入が明らかになった(図17A)。対照的に、AAV2optベクターは、すべてのベクター入力濃度において、およびCD4表面受容体が発現されたかどうかにかかわらず、再び効率的であり、無差別に形質導入された標的細胞であった(図16Bおよび17Aを比較する)。残りのベクター対照であるAAV2盲検およびPepNbはまた、しかしながら以前に記録したように、無差別細胞形質導入を示したが(図16B)、使用したベクター粒子濃度が最高値(10,000gc/細胞)でのみであった。
【0249】
続いて、3つの完全なセットの独立した実験からのCD4+およびCD4-細胞におけるeGFP特異的シグナルの相対頻度を計算し、CD4+/CD4-比として提示した(図17B)。これらのデータは、特にNb1およびNb3をコードする配列をVP1に融合させ、中等度または低度の入力ベクター粒子(すなわち、1,000~10gc/細胞)を使用した場合、予想されるCD4-Nb依存性の形質導入効率の増加を確認した。それぞれの頻度は、CD4-組織培養細胞上のCD4+の形質導入率が20~199倍増加することを指示した(図17B)。
【0250】
特定の条件下では、相同なNbタンデムリピートが特定のNbの親和性を増加させる可能性のあることが以前に報告されている。したがって、CD4-Nb1をホモ二量体としてVP1に挿入し(図14Bに記述される)、上記のように試験した。分析の結果、二価CD4-Nb1(すなわち、タンデムNb1反復)は、一価Nb1に匹敵する特異性を示すが、特異的なCD4+細胞への感染においてはそれほど強力ではないことが明らかになった(図19)。これは、二価Nb1ベクターの構築には885ヌクレオチド(nt)の遺伝子内挿入が必要であることから、いくつかの構造的干渉によって説明することができ、このサイズは、mCherryマーカータンパク質をコードする720nt配列を含む、以前にこの部位について報告された最大の異種挿入より明らかに大きい。
【0251】
要約すると、これらのデータは、CD4-Nb修飾されたAAV2ベクターが、混合細胞培養物中のCD4受容体発現細胞の特異的標的化を可能にすることを示す。さらに、一価Nb1カプシドは、比較的低いベクター量でさえも、すでに特異性および高い形質導入効率を示すようである。
【0252】
初代ヒトCD4+細胞の形質導入の増強
【0253】
AAV由来の遺伝子治療ベクターは、主に異種性遺伝子ペイロードのインビボデリバリーに使用されるため、初代ヒトCD4+T細胞およびヒトPBMCの形質導入を次に分析した。第1に、2名の健常ドナー由来の精製したCD4+T細胞を形質導入し、上記のようにGFP陽性細胞に関してアッセイした。ここでは、模擬形質導入対照、対照AAV2optおよびPepNBをAAV6コンストラクトと同様に含めた。後者は、AAV6ベクターが複数の組織に対して指向性を示すことが報告されており、樹状細胞(DC)、CD34+造血幹細胞および前駆細胞(HSC)、ならびにCD8+およびCD4+T細胞を含む種々のヒト初代細胞を形質導入することができるという事実のために含まれた。上記で調べたヒト細胞株とは対照的に、形質導入効率は一次細胞において明らかに低かった(図18A)。それにもかかわらず、CD4+Tリンパ球の形質導入の成功が、特にAAV2 CD4-Nb1およびAAV6によって観察された。形質導入特異性を解明するために、次に、ヒトPBMC培養物を形質導入し、上記で概説したように形質導入されたCD4+/CD4-細胞の比を計算した。AAV2 CD4-Nb1およびNb3修飾されたベクター粒子は、CD4+細胞を、CD4受容体を欠損しているかまたは弱くしか発現していない細胞よりも約4~5倍効率的に形質導入した(図18B)。予想されたように、そのかなり広範な指向性のために、AAV6は、この分析において、CD4+PBMCを特異的に形質導入することができなかった。
【0254】
総合すると、これらのデータは、CD4 Nbカプシド操作されたAAV2ベクターがCD4+ヒトPBMCに対して改善された指向性を示すことを実証する。
【0255】
検討の要約
【0256】
本発明において、AAVベクター指向性は、適切にカプシド修飾されたAAV2ベクターによって増強されたCD4+細胞の標的化を達成するために、特異的カプシド操作によって成功裏に改変され、それによってその臨床的適用性が得られた。
【0257】
本研究では、AAV2カプシドを、本発明の上記ナノボディを用いて修飾した。カプシドVP1タンパク質の表面におけるこれらのNbの提示は、アミノ末端VP2融合としてより効果的であるようであった(図16および図17を比較する)。同様に、VP1へのCD4-Nb1の相同なタンデム反復の同一挿入はまた、CD4+細胞に対するこのベクターの特異性を増強したが、さらには改善しなかった(図19)。これらの知見は、VP1におけるこの部位が実際に少なくとも2つのNbをコードする配列を収容することができ、同じAAVベクターコンストラクトを用いて異なる受容体を標的化する異種Nbタンデム反復の挿入を可能にする可能性があることを確認した。
【0258】
明らかに、ここに提示されたNb媒介カプシド修飾は、初代ヒトTリンパ球を含むCD4+細胞を標的化するAAV2ベクターの能力を改善した。後者は、例えば、治療用ゲノム編集の分野において、新規な実験的治療法を開発するために特に興味深く、デザイナーヌクレアーゼまたはリコンビナーゼのCD4+リンパ球への直接的、特異的、および効率的な導入が必要とされる。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV;すなわち、プロウイルス)の染色体に組み込まれたゲノムは、CD4+T細胞内で無限に存続し、古典的な抗レトロウイルス療法によって根絶することはできない。しかしながら、CD4-Nb標的化されたAAV遺伝子ベクターを用いたこのような抗ウイルスデザイナーリコンビナーゼのインビボでの直接的デリバリーの可能性は、最終的には、HIV/AIDSに対するスケーラブルな治癒的療法の臨床開発を可能にする。
【0259】
結論として、本明細書に提示された知見は、ヒトCD4+Tリンパ球への特異的遺伝子導入のためのより強力なAAVベクターの開発に向けた重要な一歩である。
【0260】
要約すると、本発明およびそれに関連して提示されたデータは、一方で、ヒトCD4に特異的なNbの生成および詳細な特徴付け、ならびに種々の生物医学的研究アプローチにおけるそれらの適用を初めて実証する。特に、CD4-Nb1はヒトと同様にマウスにおけるCD4+T細胞の非侵襲的全身研究の有望な候補である。
【0261】
他方、ナノボディ修飾されたAAV2遺伝子治療ベクターによるヒトCD4+T細胞の改善された標的化に関連して本明細書に提示されたデータを用いて、特定の遺伝子治療、特に疾患に関連する末梢血CD4+白血球のための戦略が開示され、記載される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12-1】
図12-2】
図13
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図14-2】
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
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図19-2】
図20
図21-1】
図21-2】
図22-1】
図22-2】
図23-1】
図23-2】
図24
【配列表】
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【国際調査報告】