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特表2024-524505サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー
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  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図1
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図2
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図3
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  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図6
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図7
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図7a
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図8
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図9
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図10
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図11
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図12
  • 特表-サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置、及び環境制御条件下でサンプルを輸送するコンテナー
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
G01N1/00 101C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500011
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2021068404
(87)【国際公開番号】W WO2023274562
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521251154
【氏名又は名称】フェロヴァク アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイス,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ウルス
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AD32
2G052AD52
2G052EC18
2G052GA33
(57)【要約】
本発明は、サンプル移送装置200を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置100,300であって、装置100,300は、装填チャンバー101を備え、装填チャンバーは、装置を分析装置又はサンプル調製装置に取り付ける第1のポート105と、サンプル移送装置を取り付ける第2のポート106とを備え、装置100,300は、雰囲気条件下に保たれたサンプルを装填チャンバー101に挿入するための挿入開口104と、挿入開口から取外し可能な閉鎖要素102とを備え、挿入開口は、挿入開口を閉鎖要素によってシールさせることができる迅速係止機構103を呈し、装置は、第1のポート105に取り付けられるゲートバルブ108を備え、ゲートバルブは、装填チャンバー101を真空引きする排気ポート108aと、装填チャンバー101を通気する通気ポート108bとを備える、装置に関する。本発明は、真空下又は不活性ガス雰囲気下でサンプルを輸送するコンテナー400,500,600,700にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル移送装置(200)を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置(100、300)であって、前記装置(100、300)は、装填チャンバー(101)を備え、前記装填チャンバーは、前記装置を前記分析装置又は前記サンプル調製装置に取り付ける第1のポート(105)と、サンプル移送装置を取り付ける第2のポート(106)とを備え、前記装置(100、300)は、雰囲気条件下に保たれたサンプルを前記装填チャンバー(101)に挿入するための挿入開口(104)と、前記挿入開口から取外し可能な閉鎖要素(102)とを備え、前記挿入開口は、前記挿入開口を前記閉鎖要素によってシールさせることができる迅速係止機構(103)を呈し、
前記装置は、前記第1のポート(105)に取り付けられるゲートバルブ(108)を備え、前記ゲートバルブは、前記装填チャンバー(101)を真空引きする排気ポート(108a)と、前記装填チャンバー(101)を通気する通気ポート(108b)とを備えたことを特徴とする、前記装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100、300)であって、前記迅速係止機構(103)は、前記閉鎖要素を前記挿入開口(104)のガスケット(104a)に押し付けることができるバルクヘッド回転クランプを備えた、前記装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(100、300)であって、前記装填チャンバー(101)は、EN AW-7075、EN AW-2007、EN AW-2017等の、360N/mmを超える引張強度を有する高強度アルミニウム合金の固体ブロックから削り出された、前記装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、移送ロッド又は真空サンプル移送装置(200)、特に超高真空移送装置が、前記第2のポート(106)に取り付けられた、前記装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記装填チャンバーの第3のポートに取り付けられる真空ゲージを備えた、前記装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記装填チャンバーの第4のポートに取り付けられるサンプル収納装置を備えた、前記装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記ゲートバルブの前記排気ポート(108a)及び/又は前記通気ポート(108b)は、ソレノイドバルブによって制御される、前記装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記装填チャンバー(101)は、箱形であり、前記第1のポート(105)及び前記第2のポート(106)は、前記装填チャンバーの2つの最大面に配置され、前記挿入開口(104)は、前記装填チャンバーの別の面のサイズである、前記装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記第1のポート(105)、前記第2のポート(106)、前記第3のポート、及び/又は及び第4のポートは、前記装填チャンバー(101)の外面に直接機械加工されたシール面を有する嵌め込みの形態である、前記装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記第1のポート(105)及び/又は前記第2のポート(105)は、バルクヘッドクランプ(107)を備え、前記バルクヘッドヘッドクランプは、第1の半部分(107a)及び第2の半部分(107b)を備え、前記第1の半部分及び前記第2の半部分は、前記装填チャンバーに回転可能に取り付けられた、前記装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置(100、300)であって、前記第1のポート(105)及び/又は前記第2のポート(106)は、閉鎖時に前記バルクヘッドクランプによって生成される径方向力を、対応する前記ポートの前記シール面に向かって軸方向に向け直す、T字形ボルトをさらに備えた、前記装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記挿入開口(104)は、前記ガスケット(104a)、特にエラストマーガスケットを収容するV字形溝を備えた、前記装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記閉鎖要素(102)は、透明な蓋、有利にはガラス蓋である、前記装置。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記挿入開口は、請求項18~29のいずれか1項に記載のコンテナーによって閉鎖される、前記装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の装置(100、300)であって、前記第2のポート(106)に取り付けられる移送装置の前記装填チャンバー(101)に対する相対位置を調整する位置決め機構(350)を備えた、前記装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置(100、300)であって、前記位置決め機構(350)は、前記装填チャンバーに対して2つ、有利には3つの別個の方向に沿って移送装置を位置決めすることを可能にする、前記装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の装置(100、300)であって、前記位置決め機構(350)は、前記装填チャンバー(101)に向かって並進方向に沿って前記移送装置を並進させる2つのレール(353)と、前記並進方向に対して垂直な1つ、有利には2つの方向に沿って前記移送装置を移動させる移送装置昇降プラットフォーム(351)とを備えた、前記装置。
【請求項18】
真空下又は不活性ガス雰囲気下でサンプルを輸送するコンテナー(400、500、600、700)であって、前記コンテナー(400、500、600、700)は、輸送チャンバー(402、502)を備え、前記輸送チャンバーは、前記輸送チャンバーから取外し可能なコンテナー閉鎖要素(404、504)と、サンプルホルダー昇降プラットフォーム(405、503)とを備え、前記閉鎖要素(404、504)及び前記昇降プラットフォーム(405、503)は、前記輸送チャンバー(402、502)を気密にシールすることを可能にし、前記コンテナーは、前記昇降プラットフォーム(405、503)及びサンプルホルダー(406、506)を前記輸送チャンバー(402、502)に対して移動させるとともに前記サンプルホルダー上に載置されたサンプルにアクセスすることを可能にする、昇降機構(407、505)を備えた、前記コンテナー。
【請求項19】
請求項18に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の相互接続装置(100、300)の前記装填チャンバー(101)の前記挿入開口(104)をシールする閉鎖フランジ(401、501)を備えた、前記コンテナー。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記輸送チャンバーを真空引きする一方向バルブを備えた、前記コンテナー。
【請求項21】
請求項20に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記一方向バルブは、前記コンテナーが請求項1~16のいずれか1項に記載の相互接続装置(100、300)の前記挿入開口(104)をシールするのに使用される場合、前記相互接続装置の前記装填チャンバー(101)を通して前記輸送チャンバー(402、502)を排気することができるように配置された、前記コンテナー。
【請求項22】
請求項18~21のいずれか1項に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記輸送チャンバーに取り付けられる非蒸発型ゲッターポンプ、及び/又は前記輸送チャンバー(402、502)内の非蒸発型ゲッター要素(408、509)を備えた、前記コンテナー。
【請求項23】
請求項18~22のいずれか1項に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、真空ゲージを備えた、前記コンテナー。
【請求項24】
請求項18~23のいずれか1項に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記コンテナー閉鎖要素(404、504)は、透明な蓋である、前記コンテナー。
【請求項25】
請求項18~24のいずれか1項に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記コンテナー閉鎖要素(404、504)及び前記昇降プラットフォーム(405、503)は、少なくとも1つの超高真空対応溶接ベローズ(607)によって接続された、前記コンテナー。
【請求項26】
請求項25に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、冷却ダクト(714)によって前記サンプルホルダー(506)に熱的に接続される冷却手段(712)を備え、前記冷却ダクト(714)は、前記溶接ベローズ(607)内に少なくとも部分的に配置された、前記コンテナー。
【請求項27】
請求項26に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記冷却手段(712)は、液体窒素デュワー(713)、又はスターリング冷却器若しくはギフォード-マクマホン冷却器等の機械式冷却器である、前記コンテナー。
【請求項28】
請求項26又は27に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記冷却ダクト(714)と前記サンプルホルダー(506)との間に配置されるとともに前記冷却ダクト(714)及び前記サンプルホルダー(506)と熱接触するコールドブロック(715)と、前記冷却ダクト(714)と熱接触する熱シールドとをさらに備え、前記熱シールドは、前記サンプルホルダー(506)を取り囲み、前記コールドブロックと前記サンプルホルダーとの間の前記熱接触は、前記コールドブロックが室温未満の温度である場合に、前記サンプルホルダーが前記熱シールドの温度よりも高い温度に保たれるように構成された、前記コンテナー。
【請求項29】
請求項26~28のいずれか1項に記載のコンテナー(400、500、600、700)であって、前記サンプルホルダーに取り付けられた温度センサーを備えた、前記コンテナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを分析装置又はサンプル調製装置に移送する装置の技術分野に関する。より正確には、本発明は、環境制御条件下、特に不活性ガス雰囲気又は真空条件下でのサンプルの移送を可能にする、サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置に関する。本発明はまた、本発明の相互接続装置と組み合わせて又は別の相互接続装置と組み合わせて使用される、不活性ガス雰囲気下又は真空下でサンプルを輸送するコンテナーに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎研究、材料科学、及び生物学において、同じサンプルに補完的な分析方法を適用することがますます重要になっているため、サンプルの環境を、計画された実験のワークフロー全体において、雰囲気及び温度に関して究極的に制御することが非常に重要である。これらの前提により、超高真空低温移送モジュール(UHVCTM:Ultrahigh Vacuum Cryo Transfer Module)が、そのような環境制御されたワークフローを確立するにあたり、重要な構成要素となっている。そのようなUHVCTMは、例えば、特許文献1に提示されており、サンプルを10-11mbarの真空レベル及び130K未満の温度に保ち、このサンプルを、例えば、走査型トンネル顕微鏡又は電子顕微鏡等の分析チャンバーに移送することが可能である。
【0003】
しかしながら、実験ワークフローに伴う独立したそれぞれの機器は、UHVCTM等の移送装置を容易に取り付けることができるとともに、移送装置からサンプルの環境制御が損なわれずに分析が行われる機器内の位置にサンプルを移送することを可能にする装置を必要としている。
【0004】
移送装置を分析チャンバーに相互接続することが可能な相互接続モジュールが当該技術分野において知られているが、そのようなモジュールは、真空に保たれたサンプルを移送装置から分析チャンバーに移送すること、及び、雰囲気からも分析チャンバー内にサンプルを導入することができるように、相互接続装置にサンプルを直接挿入することが可能でない。
【0005】
そのようなモジュールは、分析チャンバーのポートに取り付けたままで、真空条件下に保たれたサンプル又は雰囲気から直接のサンプルをこのチャンバー内に導入することを可能にし得るという利点を有する。
【0006】
したがって、本発明の目標は、上述した問題を解決することが可能な相互接続装置を提案することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/119956号
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、サンプル移送装置を分析チャンバー又はサンプル調製チャンバーに相互接続する新規の装置を提案し、これにより、既知のシステムの上述した欠点を完全に克服する又は少なくとも大幅に軽減することである。
【0009】
本発明の目的は、特に、雰囲気条件又は真空条件に保たれたサンプルを分析チャンバー又はサンプル調製チャンバーに挿入することが可能な相互接続装置を提案することである。
【0010】
本発明の目的はまた、不活性ガス雰囲気中又は真空条件下に保たれたサンプルの輸送を可能にする新規のコンテナーを提案することである。
【0011】
本発明によれば、これらの目的は、特に、2つの独立請求項の要素によって達成される。また、さらなる有利な実施形態は、従属請求項及び本明細書から得られる。
【0012】
特に、本発明の目的は、サンプル移送装置を分析装置又はサンプル調製装置に相互接続する装置であって、装置は、装填チャンバーを備え、装填チャンバーは、装置を分析装置又はサンプル調製装置に取り付ける第1のポートと、サンプル移送装置を取り付ける第2のポートとを備え、装置は、雰囲気条件から装填チャンバーにサンプルを挿入するための挿入開口と、挿入開口から取外し可能な閉鎖要素とを備え、挿入開口は、挿入開口を閉鎖要素によってシールさせることができる迅速係止機構を呈し、装置は、第1のポートに取り付けられるゲートバルブを備え、ゲートバルブは、装填チャンバーを真空引きする排気ポートと、装填チャンバーを通気する通気ポートとを備える、装置によって達成される。
【0013】
そのような相互接続装置により、例えば、大気中若しくは不活性ガス雰囲気中における雰囲気圧に保たれたサンプルを、装填チャンバーの挿入開口を通して移送する、又は、装填チャンバーに取り付けられた超高真空移送装置等の真空移送装置内の真空条件下に保たれたサンプルを移送することが可能になる。
【0014】
排気ポート及び通気ポートを備えるゲートバルブにより、装填チャンバーの体積を最小限にし、したがって、装填チャンバー内の圧力を、分析チャンバー又は真空移送装置にサンプルを移送するのに許容可能なレベルにするのに必要な排気時間を最小限にすることが可能である。サンプルは劣化を回避するために可能な限り迅速に移送しなければならないため、排気時間を含む移送時間は多数の実験において重要であることから、本発明に係る相互接続装置は、現行の技術水準から既知の装置と比較して大きな改善を呈する。
【0015】
相互接続装置は、サンプルを分析チャンバーに移送するのに有利なだけでなく、真空移送装置に移送するのにも有利であることに留意することが重要である。実際、例えば雰囲気条件において調製されたサンプルは、装填チャンバーに挿入することができ、その後、装填チャンバーは、サンプルを真空移送装置内に移送することを可能にするように真空引きされる。
【0016】
したがって、本発明に係る相互接続装置は、雰囲気圧又は真空条件からサンプルを移送することを可能にするため、分析チャンバー又は調製チャンバー、例えば、デュアルビーム機器、すなわち、集束イオンビームと組み合わされた走査型電子顕微鏡に恒久的に取り付けることができる。したがって、相互接続装置は、サンプルの保たれる条件に応じて取り替える必要がなくなる。
【0017】
挿入開口及び迅速係止機構は、挿入開口を一方のみでシールさせることができるように構成されることが有利である。
【0018】
本発明の第1の好ましい実施形態において、迅速係止機構は、バルクヘッド回転クランプを備え、これにより、閉鎖要素を挿入開口のガスケットに押し付けることができる。そのような迅速係止機構は、挿入開口を特に素早く開閉することを可能にし、したがって、サンプル移送時間を低減することを可能にする。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態において、装填チャンバーは、EN AW-7075、EN AW-2007、EN AW-2017等の、360N/mmを超える引張強度を有する高強度アルミニウム合金の固体ブロックから削り出される。
【0020】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、移送ロッド又は真空サンプル移送装置、特に超高真空移送装置が、第2のポートに取り付けられる。移送ロッドにより、挿入開口から装填チャンバーに挿入されたサンプルを、装填チャンバーの第1のポートに取り付けられた分析チャンバー又は調製チャンバーに容易に移送することができる。第2のポートに取り付けられた真空サンプル移送装置により、サンプルを真空又は大気から移送することができる。実際、特許文献1から既知の超高真空移送装置等の真空移送装置は、それ自体に移送ロッドを備える。したがって、移送ロッドを使用して、相互接続装置の装填チャンバーに挿入されたサンプルを、挿入開口を通して分析チャンバー内に又は真空装置から移送することができる。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態において、相互接続装置は、装填チャンバーの第3のポートに取り付けられる真空ゲージを備える。真空ゲージにより、装填チャンバー内の真空レベルを監視し、真空レベルが分析チャンバー又は真空移送装置にサンプルを移送するのに十分になる時点を判断することが可能である。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態において、相互接続装置は、装填チャンバーの第4のポートに取り付けられるサンプル収納装置を備える。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態において、異なるサンプル間での切替えのために、サンプル収納装置が直線状フィードスルーに取り付けられる。これにより、装填チャンバーを毎回通気する必要なく、分析装置又は調製装置に対するサンプルの装填/取出しが可能になる。本発明のさらに別の好ましい実施形態において、ゲートバルブの排気ポート及び/又は通気ポートは、ソレノイドバルブによって制御される。これにより、バルブの開放を自動的に制御するとともに、サンプルの移送を自動化することが可能である。
【0024】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、装填チャンバーは、箱形であり、第1のポート及び第2のポートは、装填チャンバーの2つの最大面に配置され、挿入開口は、装填チャンバーの別の面のサイズである。これにより、装填チャンバーの体積を最小限にする、したがって、排気時間及び移送時間を最小限にすることが可能になるとともに、サンプルを受け部に都合よく載置するために、装填チャンバーの内部への十分なアクセスが可能になる。移送時間を低減するためには、載置時間も可能な限り短くすべきであるため、これは有利である。
【0025】
本発明のまたさらなる好ましい実施形態において、箱形のチャンバーは、第1のポート及び第2のポートに加えて、装填チャンバーの2つの最小面に第3のポート及び第4のポートを備える。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態において、第1のポート、第2のポート、第3のポート、及び/又は第4のポートは、装填チャンバーの外面に直接機械加工されたシール面を有する嵌め込みの形態である。これにより、装填チャンバーの体積、及び装填チャンバーを真空レベルにするのに必要な真空引き時間をさらに低減することが可能になる。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態において、第1のポート及び/又は第2のポートは、バルクヘッドクランプを備え、バルクヘッドヘッドクランプは、第1の半部分及び第2の半部分を備え、第1の半部分及び第2の半部分は、装填チャンバーに回転可能に取り付けられる。これにより、相互接続装置の分析チャンバーへの及び/又は移送装置の第2のポートへの迅速かつシンプルな取付けが可能になり、したがって、例えば、真空移送装置から分析チャンバーへの又は雰囲気圧から真空移送装置への移送の場合、移送時間全体の低減が可能になる。
【0028】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、第1のポート及び/又は第2のポートは、閉鎖時にバルクヘッドクランプによって生成される径方向力を、対応するポートのシール面に向かって軸方向に向け直す、T字形ボルトをさらに備える。これにより、Oリングガスケットを変形させるのに十分な押圧力が保証される。
【0029】
本発明のまたさらなる好ましい実施形態において、挿入開口は、ガスケット、特にエラストマーガスケットを収容するV字形溝を備える。V字形溝により、ガスケットは、しっかりと配置され、挿入開口を開放するときに溝から脱落することがない。したがって、サンプルを装填チャンバーに挿入した後にガスケットを溝内に嵌め直す必要があることから、移送時間全体が低減される。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態において、閉鎖要素は、透明な蓋、有利にはガラス蓋である。これにより、装填チャンバー内に配置されたサンプルへの最適な光学的アクセスが可能になり、したがって、サンプルの容易かつ迅速な移送が可能になる。
【0031】
本発明のまた別の好ましい実施形態において、挿入開口は、本発明に係るコンテナーによって閉鎖される。これにより、不活性ガス雰囲気中又は真空条件下に保たれたサンプルを、分析チャンバー及び/又は真空移送装置に迅速かつ確実に移送することが可能である。
【0032】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、相互接続装置は、第2のポートに取り付けられる移送装置の装填チャンバーに対する相対位置を調整する位置決め機構を備える。これにより、単に正確なだけでなく迅速に、移送装置を装填チャンバーと位置合わせすることが可能になる。したがって、移送装置を装填チャンバーに対して位置合わせするのに必要な時間を低減することができ、これに伴い、移送時間全体を低減することができる。
【0033】
本発明のまたさらなる好ましい実施形態において、位置決め機構は、装填チャンバーに対して2つ、有利には3つの別個の方向に沿って移送装置を位置決めすることを可能にする。これにより、位置合わせをより精密かつより迅速に行うことができ、したがって、移送時間及びサンプル汚染のリスクが低減される。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態において、位置決め機構は、装填チャンバーに向かって並進方向に沿って移送装置を並進させる2つのレールと、並進方向に対して垂直な1つ、有利には2つの方向に沿って移送装置を移動させる移送装置昇降プラットフォームとを備える。これにより、移送装置を相互接続装置の装填チャンバーに迅速かつ確実に取り付けることが可能になる。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、本発明の目標は、真空下又は不活性ガス雰囲気下でサンプルを輸送するコンテナーであって、コンテナーは、輸送チャンバーを備え、輸送チャンバーは、輸送チャンバーから取外し可能なコンテナー閉鎖要素と、サンプルホルダー昇降プラットフォームとを備え、閉鎖要素及び昇降プラットフォームは、輸送チャンバーを気密にシールすることを可能にし、コンテナーは、昇降プラットフォーム及びサンプルホルダーを輸送チャンバーに対して移動させるとともにサンプルホルダー上に載置されたサンプルにアクセスすることを可能にする、昇降機構を備える、コンテナーによって達成される。そのようなコンテナーにより、不活性ガス雰囲気中又は真空下でサンプルを輸送し、したがって、酸素のような腐食性ガスとの接触による劣化からサンプルを保護することが可能である。本発明のコンテナーの構成により、輸送チャンバー内のサンプルの迅速かつ単純な挿入が可能になる。さらに、昇降プラットフォーム及び昇降機構により、サンプルを分析チャンバーに挿入するために、コンテナーから、本発明に係る相互接続装置等の相互接続装置に移送することが可能である。さらに、閉鎖要素を必要な用途に応じて選択することができるため、閉鎖要素は、有利にはねじによって、輸送チャンバーに取外し可能に取り付けられることが好都合である。閉鎖要素は、適度な真空下若しくは適度な不活性ガスの純度でサンプルを輸送するように選択することができ、又は高真空若しくは高純度の不活性ガス雰囲気に達するように選択することができる。さらに、閉鎖要素は、サンプルを低温に冷却することを可能にするように選択することができ、これは、ガラス化された生体サンプルを、サンプル調製ステーションから透過型電子顕微鏡等の分析装置に輸送するために重要である。
【0036】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態において、コンテナーは、本発明に係る相互接続装置の装填チャンバーの挿入開口をシールする閉鎖フランジを備える。これにより、コンテナーを本発明に係る相互接続装置の装填チャンバーに取り付けることが可能になり、したがって、コンテナー内の不活性ガス雰囲気中に保たれたサンプルを分析チャンバー及び/又は真空移送装置に迅速かつ確実に移送することが可能になる。
【0037】
別の好ましい実施形態において、コンテナーは、輸送チャンバーを真空引きする一方向バルブを備える。輸送チャンバーは、サンプル移送のために取り付けられた相互接続装置を通して真空引きすることができるため、これは特に有利である。
【0038】
さらなる好ましい実施形態において、一方向バルブは、コンテナーが本発明に係る相互接続装置の挿入開口をシールするのに使用される場合、本発明に係る相互接続装置の輸送チャンバー及び装填チャンバーを同じ排気システムによって真空引きすることができるように配置される。
【0039】
別の好ましい実施形態において、コンテナーは、輸送チャンバーに取り付けられる非蒸発型ゲッターポンプ、及び/又は輸送チャンバー内の非蒸発型ゲッター要素を備える。これにより、輸送チャンバー内の汚染のレベルを可能な限り低くすることを確実にすることが可能になる。
【0040】
別の好ましい実施形態において、コンテナーは、真空ゲージを備える。真空ゲージにより、輸送チャンバー内の真空レベルを監視することができる。
【0041】
さらなる好ましい実施形態において、コンテナー閉鎖要素は、透明な蓋である。これにより、輸送チャンバーの内部への、ひいては輸送チャンバー内に保たれたサンプルへの最適な光学的アクセスが可能になる。
【0042】
また別の好ましい実施形態において、コンテナー閉鎖要素及び昇降プラットフォームは、少なくとも1つの超高真空対応溶接ベローズによって接続される。これにより、高真空条件、すなわち10-9mbar、及び1ppm未満程度の高純度の不活性ガス雰囲気に達することが可能になる。
【0043】
別の好ましい実施形態において、コンテナーは、冷却ダクトによってサンプルホルダーに熱的に接続される冷却手段をさらに備え、冷却ダクトは、溶接ベローズ内に少なくとも部分的に配置される。これにより、輸送チャンバー内の汚染のレベルを1ppm未満程度に保つことができることを確実にしながら、サンプルを低温に保つことができる。
【0044】
別の好ましい実施形態において、冷却手段は、液体窒素デュワー、又はスターリング冷却器若しくはギフォード-マクマホン冷却器等の機械式冷却器である。液体窒素デュワーは、動作がシンプルであるという利点を有するが、液体窒素源を必要とし、サンプルを大きな距離にわたって輸送する場合に液体窒素源を手元に用意することは難しい。したがって、機械式冷却器であれば、低温流体源に頼らず、バッテリによって動作するため、有利であり得る。さらに、機械式冷却器は、自動車の12V接続によって給電されるように構成することができる。
【0045】
さらなる好ましい実施形態において、コンテナーは、冷却ダクトとサンプルホルダーとの間に配置されるとともに冷却ダクト及びサンプルホルダーと熱接触するコールドブロックと、冷却ダクトと熱接触する熱シールドとをさらに備え、熱シールドは、サンプルホルダーを取り囲み、コールドブロックとサンプルホルダーとの間の熱接触は、コールドブロックが室温未満の温度である場合に、サンプルホルダーが熱シールドの温度よりも高い温度に保たれるように構成される。
【0046】
また別の好ましい実施形態において、コンテナーは、サンプルホルダーに取り付けられる温度センサーを備える。これにより、サンプルホルダーの温度、ひいてはサンプルホルダー上に載置されたサンプルの温度を監視することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る相互接続装置の第1の斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る相互接続装置の第2の斜視図である。
図3図3は、サンプル移送装置の位置決め機構を伴う、図1及び図2の相互接続装置を示す図である。
図4図4は、超高真空移送装置が取り付けられた、本発明の第2の実施形態に係る相互接続装置の斜視図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係る輸送コンテナーの斜視図である。
図6図6は、図5の装置の断面図である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係る輸送コンテナーの斜視図である。
図7a図7aは、閉鎖要素を伴わない、図7の装置を示す図である。
図8図8は、閉鎖位置における、図7の装置の断面図である。
図9図9は、開放位置における、図7の装置の断面図である。
図10図10は、閉鎖位置における、本発明の第3の実施形態に係る輸送コンテナーの断面図である。
図11図11は、閉鎖位置における、本発明の第3の実施形態に係る輸送コンテナーの断面図である。
図12図12は、閉鎖位置における、本発明の第4の実施形態に係る輸送コンテナーの断面図である。
図13図13は、閉鎖位置における、本発明の第4の実施形態に係る輸送コンテナーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1及び図2は、本発明の第1の態様の好ましい実施形態に係る、サンプル移送装置を分析チャンバー又はサンプル調製チャンバーに相互接続する装置100を示している。装置100は、箱形の装填チャンバー101を備え、この実施形態では装填チャンバーの閉鎖要素として作用する透明なカバー蓋102(図3を参照)を備える。迅速係止機構103により、カバー蓋102は、装填チャンバー101の内部へのアクセスを可能にするために、装填チャンバー101の挿入開口104から解放して取り外すことができる。迅速係止機構は、装填チャンバーをシールするために、カバー蓋をガスケット104aに対して付勢することも可能にする。
【0049】
装置100はまた、装置を分析チャンバー又は調製チャンバーに取り付ける第1のポート105と、移送装置を取り付ける第2のポート106とを備える。移送装置は、例えば、移送ロッド、ウォブルスティック、又は図2に示されている低温超高真空移送装置200等の真空移送装置とすることができる。
【0050】
移送装置200を相互接続装置100に容易かつ迅速に取り付けるために、第2のポート106は、バルクヘッドクランプ107を備え、バルクヘッドクランプは、装填チャンバー101に回転可能に取り付けられる第1の半部分107a及び第2の半部分107bを搭載している。さらに、バルクヘッドクランプは、クランプが閉鎖しているときにバルクヘッドクランプを装填チャンバー101に向かって固定するT字形ボルト(図示せず)を備える。ばね負荷式レバー107cは、移送装置を取り付けるためにバルクヘッドクランプを閉めることを可能にする。
【0051】
第2のポート106に対して装填チャンバーの反対側において、ゲートバルブ108が第1のポート105に取り付けられる。ゲートバルブ108は、図1に示されているように、排気ポート108a及び通気ポート108bを備える。通気ポート及び排気ポートをゲートバルブ自体に統合することで、装填チャンバー101の体積を可能な限り小さく抑えることができ、このことは、排気ポート108aに取り付けられた排気システムによって、又は装置100に取り付けられた分析チャンバー若しくはサンプル調製チャンバーの真空システムによって、装填チャンバーを可能な限り迅速に真空引きするために好都合である。迅速な真空引きは、サンプルの移送を伴う実験のワークフローの時間全体を低減するために有利なだけでなく、サンプルが容易に劣化し得る条件にさらされる時間を低減するためにも好都合である。
【0052】
取外し可能なカバー蓋102により、装填チャンバー101の内部にアクセスすること、及び、サンプルを、第1のポート105に取り付けられた分析装置又は調製装置内への移送のために、サンプルホルダー上、又は直接、移送装置、例えば移送ロッドに載置することを可能にする。図1及び図2に見ることができるように、挿入開口104、したがってカバー蓋102は、本実施形態において、箱形の装填チャンバー101の一面全体と同じ大きさである。これにより、装填チャンバーの内部への最適な光学的アクセスが可能になるだけでなく、最適な機械的アクセスも可能になる。
【0053】
図1及び図2に示されているように、第1のポート105及び第2のポート106は、装填チャンバー101の外面に直接機械加工されたシール面を有する嵌め込みの形態である。これにより、装置100の体積、ひいては真空引きに必要な時間を低減することが可能になる。
【0054】
上記で説明したように、カバー蓋102を取り外すことにより、専用のサンプルホルダー上にサンプルを載置し、分析チャンバー若しくは調製チャンバーに移送する、又は第2のポートに取り付けられた真空移送装置に移送することが可能である。換言すれば、相互接続装置100により、サンプルを、雰囲気条件から、すなわち挿入開口104を通して、又は、真空から、第2のポート106に取り付けられた真空移送装置、例えば装置200を用いて、分析チャンバー内に移送することが可能である。したがって、相互接続装置100は、まだあまり繊細ではないサンプルを調製チャンバーに挿入し、その後、超高真空条件下で分析チャンバーに移送しなければならない実験ワークフローにおいて特に有利である。そのような実験ワークフローには、例えば、アトムプローブトモグラフィー(APT:atom probe tomography)があり、これは、分子レベルにおける三次元化学組成についての情報を得る方法である。有意なAPT実験は、サンプルを鋭利な針に成形するデュアルビーム集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM:Focused Ion Beam - Scanning Electron Microscope)と、分析用のAPT機器との間での、環境制御されたサンプルの移送に大きく依存する。
【0055】
針状のサンプルを生成するために、FIB-SEMにおける標準的なリフトアウト手順を使用して、サンプルのバルク材料から対象の領域におけるバーを切り出し、それを針ホルダーの上に置き、その後、イオンビームミリングによって鋭利な先端部へと成形する。イオンミリングプロセスが終了した後、サンプルはすぐに劣化してしまうため、サンプルを雰囲気条件にさらすことを回避することが最も重要である。したがって、真空移送装置、又はさらには超高真空移送装置を使用して、針状のサンプルをAPT装置内に移送する。
【0056】
本発明に係る相互接続装置により、雰囲気条件に保たれたサンプルを装填チャンバー101内に導入し、調製チャンバー内に迅速に移送し、分析装置による後の分析のために、真空移送装置内に再び移送することが可能である。本発明に係る装置の最も重要な利点のうちの1つは、サンプルを大気から導入する必要があるか又は真空から導入する必要があるかに応じて、2つの異なる相互接続装置を必要とすることなく、そのような実験ワークフローを可能にすることである。
【0057】
本発明の第1の態様に係る第2の実施形態の相互接続装置300が、図4に提示されている。装置300は、装置100と同一であるが、透明な蓋102の代わりに、不活性ガス雰囲気中又は真空中でサンプルを輸送するコンテナー400の形態である閉鎖要素302を備える。コンテナー400は、内部に配置されたサンプルを輸送するために、又はサンプルを装置300の装填チャンバー301に直接挿入するために、装置300の挿入開口から取外し可能である。装置300は、コンテナー400を透明な蓋102に置き換えるだけで、装置100に変えることができることに留意することが重要である。
【0058】
装置300の第2のポートに移送装置を取り付けることを容易にするために、装置300は、図3に示されているように、装填チャンバーに対する移送装置の相対位置を調整する位置決め機構350を備える。位置決め機構350は、装填チャンバーに対して2つ、有利には3つの別個の方向に沿って、移送装置を位置決めすることを可能にすることが有利である。そのために、位置決め機構350は、昇降ノブ352によって移動させることができる昇降プレート351を備える。ノブ352により、昇降プレート351、ひいては昇降プレート351に取り付けられた移送装置は、軸Aに沿って並進することができるだけでなく、装填チャンバー101に対して傾斜させることもできる。さらに、昇降プレート351は、方向Bに沿って並進するようにレール上に取り付けられる。
【0059】
図5及び図6は、本発明の第2の態様に係る、不活性ガス雰囲気中又は真空中にサンプルを輸送する第1の実施形態のコンテナー400を示している。この図に見ることができるように、コンテナー400は、装置300のコンテナー400及び迅速係止機構103によって、相互接続装置100、300の挿入開口をシールすることができるような寸法の閉鎖フランジ401を備える。コンテナー400は、グローブボックスの標準的なロードロックを介して不活性ガスグローブボックスに導入する/不活性ガスグローブボックスから取り出すことができ、その後、相互接続装置100、300が装着された任意の分析機器に搬送することができ、そこで、装置の装填チャンバーの挿入開口内に単に差し込まれる、非常にコンパクトなサンプル輸送モジュールである。
【0060】
超高真空移送装置と比較して、コンテナー400は、制御された環境下でサンプル輸送を行う補完的な方法である。超高真空サンプル移送装置200(図1を参照)等のサンプル移送装置よりもはるかにコンパクトかつ軽量であるために、コンテナー400のハンドリングは非常に単純であり、1つの機器から別の機器への移送時間を大幅に低減することができる。さらに、コンテナー400は、超高真空移送装置よりもはるかにコスト効果的である。これは、腐食しやすいが反応性はそれほど高くない場合があるサンプル、又は、サンプルが依然として「生(raw)」状態にある、例えば、グローブボックス内のサンプルホルダー上に既に載置され、既にガラス化されているものの、FIBによってまだ切断及びスライスされていない、若しくはアトムプローブ針へと成形されていない場合があるワークフローステップに、その使用を限定することができるという点で、補完的である。それにもかかわらず、これらの「生」サンプルも、サンプル輸送中、制御された条件下に保つ必要がある。
【0061】
コンテナー400のさらなる利点は、相互接続装置100、300を介してサンプルを超高真空移送装置に移送することができ、またその逆も行うことができることである。これにより、使用者は、カスタマイズを行うことなく、標準的なグローブボックス内のサンプルホルダーにサンプルを載置することが可能になる。その後、使用者は、ロードロックを介してグローブボックスからコンテナー400を取り出し、利用可能な任意の相互接続装置100、300を介してサンプルを超高真空移送装置に移送することができる。
【0062】
現実的には、コンテナー400内の真空レベルは、数時間にわたって能動的に排気することなく10-3mbar~10-4mbarの範囲に維持することができる。しかしながら、例えば追加の側部ポート(ここでは図示せず)を介して、小型の非蒸発型ゲッター(NEG:Non-Evaporable Getter)ポンプを追加してもよい。NEGによって能動的に排気される場合、アルカリ金属等の非常に反応性の高いサンプルの輸送を可能にする、10-6mbarの範囲又はそれよりも良好な真空レベルを達成することができる。NEGポンプを輸送チャンバー402のポートに取り付ける代わりに、NEG要素408を輸送402内に設けることができる。NEG要素の加熱サイクルによって起動する電気フィードスルーを、チャンバー402の追加のポートに設けてもよい。さらに、真空センサーを追加するために補助的な真空ポート(ここでは図示せず)を設けてもよい。
【0063】
分析機器又は調製機器へのサンプル移送にコンテナー400を使用する場合、相互接続装置100、300等のホスト機器上に、互換性があるドッキングシステムを設置しなければならない。コンテナー400が相互接続装置の挿入開口に設置され、装填チャンバーが真空引きされると、コンテナー400の輸送チャンバー401は、昇降機構403によって開放することができる。昇降機構403により、昇降プラットフォーム405と、それに伴ってサンプルホルダー406とを移動させることができ、サンプルホルダーへのアクセスが与えられる。昇降機構は、サンプルホルダーを、例えば、超高真空移送装置200の移送ロッド201(図4を参照)のような、相互接続装置100、300の第1のポートに取り付けられた移送装置の並進軸上に置くことができるように構成される。昇降機構は、回転ハンドル407によって手動で又は専用のモーター(図示せず)によって作動させることができる。
【0064】
図7図9は、本発明の第2の態様の第2の実施形態に係る、真空又は不活性ガス雰囲気下でサンプルを輸送するコンテナー500を示している。
【0065】
コンテナー500は、ベースモジュール500aを備え、ベースモジュール500aは、装置300のコンテナー500及び迅速係止機構103によって、相互接続装置100、300の挿入開口をシールすることができるような寸法の閉鎖フランジ501を備える。コンテナー500は、輸送チャンバー502内への光学的アクセスのために、窓502aをさらに備える。輸送チャンバーは、片側を昇降プラットフォーム503によって、もう片側を閉鎖要素504によってシールすることができる。
【0066】
図8及び図9に最もよく見られるように、コンテナー500は、昇降機構505を備え、昇降機構505によって、昇降プラットフォーム503をサンプルホルダー506とともに、輸送チャンバー502に対して移動させることができる。ハンドル505a、したがってねじ505bを時計回りに回転させることにより、プレート505cが輸送チャンバー502に向かって移動する。昇降機構505の頂部プレート505dがポール507によって昇降プラットフォーム503に接続されていることから、昇降プラットフォーム503は、輸送チャンバー502から離れるように移動する。ハンドル505aを反時計回りに回転させることにより、昇降プラットフォーム503及びサンプルホルダー506は、輸送チャンバー502に向かって移動する。昇降機構は、サンプルホルダー506を、相互接続装置100、300に取り付けられた移送装置の並進軸上にもたらすことができ、したがって、サンプルホルダー506上へのサンプルの載置又はこのサンプルホルダーからのサンプルの撤去を可能にするように構成される。
【0067】
輸送チャンバー502内に或る特定の真空度又は或る特定の不活性ガス雰囲気の純度を維持するために、ポール507周りにシール軸受508が配置される。さらに、NEG要素509がチャンバー502内に設けられる。非蒸発型要素の動作に必要な電気フィードスルー510も設けられる。
【0068】
図7図9に提示されている輸送コンテナーの実施形態は、1ppm未満の純度の不活性ガス雰囲気中又は10-9mbar程度の真空中でサンプルを輸送することを可能にする。
【0069】
非常に繊細なサンプルを輸送するために、少なくとも48時間にわたって10-9mbar程度の真空及び/又は1ppm未満の不活性ガス雰囲気の純度を維持することが可能な輸送コンテナーを提供することが有利である。そのようなコンテナー600は、図10及び図11に提示されている。コンテナー600は、コンテナー500と非常に類似しているが、ポール507が溶接ベローズに置き換わり、軸受509が存在しない点が異なる。ベローズにより、包囲要素504との気密接続を確実にしながら、輸送チャンバー52に対する昇降プラットフォーム503の移動が可能になる。昇降プラットフォーム503がチャンバー502に対する並進移動を行うことを確実にするために、溶接ベローズは、並進ダクト611周りに配置される。
【0070】
図12及び図13は、真空下又は不活性ガス雰囲気下及び低温においてサンプルを輸送する、輸送コンテナー700のさらなる実施形態を示している。これは、急速凍結された生体サンプルを輸送する場合に特に有利である。コンテナー700は、図10及び図11のコンテナー600と非常に類似しているが、液体窒素デュワー713の形態の冷却手段712が設けられる点が異なる。デュワー713は、有利には並進ダクト611内に配置された冷却ダクト714によって、サンプルホルダー506と熱接触し、したがって、サンプルホルダー506上に載置されたサンプルの冷却を可能にする。
【0071】
冷却ダクト714とサンプルホルダー506との間の熱接触は、ダクトに取り付けられた冷却ブロック715によってもたらされることが有利である。このブロックは、銅又はベリリウム銅等の熱伝導性が高い材料から作製されることが好ましい。
【0072】
サンプルホルダー506は、冷却ダクト714と熱接触する熱シールド(図示せず)によって取り囲むことができることが有利である。熱ブロックとサンプルホルダーとの間の熱接触は、サンプルホルダーの温度が室温未満である場合に、熱シールドの温度がサンプルホルダーの温度よりも低くなるように設けられることが好都合である。これにより、サンプルが輸送チャンバー内で最も低温の要素ではないことが保証され、したがって、サンプルが低温ポンプとして作用しないことが確実になり得る。デュワー713は、スターリング冷却器又はギフォード-マクマホン冷却器等の機械式冷却器、及び冷却ロッドを用いた冷却ダクトに置き換えることができることに留意することが重要である。
【0073】
全ての実施形態400、500、600、及び700において、NEG要素を設けることに加えて、チャンバー502内の高純度を維持するために、輸送チャンバーと閉鎖要素との間に金属製ガスケット412、512が設けられ、ばねを挟む2つの金属製リングから構成される金属製ガスケット等の弾性金属製ガスケット413、513が、昇降プラットフォームと輸送チャンバーとの間に設けられる。
【0074】
最後に、本発明に係る輸送コンテナーの全ての実施形態において、輸送チャンバーの排気を可能にする一方向バルブが設けられることが有利である。一方向バルブは、コンテナーが本発明に係る相互接続装置の挿入開口に配置されると、コンテナーの輸送チャンバーを、相互接続装置の装填チャンバーのようなサンプル排気システムによって真空引きすることができるように構成されることが好都合である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7a
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】