(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】解重合を改善するためのポリオレフィン廃棄物の前処理
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20240628BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C08J11/12
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500012
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2022069030
(87)【国際公開番号】W WO2023281041
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ナギー,サンドール
(72)【発明者】
【氏名】ブリタ,ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,クリストファー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒープス,ディビッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ダニエル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ラマージ,ディビッド エル.
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401BA06
4F401CA03
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA70
4F401CB01
4F401CB14
4F401DA12
4F401EA04
4F401EA07
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4F401EA10
4F401EA11
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
【解決手段】 解重合前のポリオレフィン系供給物流の前処理方法を説明する。水溶液中の密度差を利用してポリオレフィンをポリオレフィン系供給物流中の他の材料から分離することにより、解重合触媒に影響を与えない前処理方法を可能にする。供給物流から非ポリオレフィン材料を除去することにより、ポリオレフィン材料の解重合を比較的低い温度でより長いサイクルで行うことができる。これにより、二酸化炭素排出量が削減され、より効率的なプロセスが実現される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを解重合する方法であって、
a)水溶液で満たされた第1容器にポリオレフィン系供給物流を加えるステップと、
b)前記水溶液及び前記ポリオレフィン系供給物流を少なくとも0.5時間撹拌するステップと、
c)前記水溶液の表面を掬い取って、その中に懸濁している少なくとも1種のポリオレフィン材料を除去するステップと、
d)5%未満の残留水分が得られるまで前記ポリオレフィン材料を乾燥するステップと、
e)前記乾燥ポリオレフィン材料及び解重合触媒を、約200℃~約600℃に加熱された反応器に加えるステップと、
a)前記乾燥ポリオレフィン材料を前記解重合触媒と反応させて、前記乾燥ポリオレフィン材料を解重合するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記水溶液は強アルカリを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強アルカリは、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、又は水酸化ストロンチウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記強アルカリは水溶液の約5%~約40%である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記撹拌ステップは、約0.1MPa~約0.2MPaの圧力下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記撹拌ステップは、前記水溶液及び前記ポリオレフィン系供給物流を、撹拌しながら25℃超~約150℃の温度に加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系供給物流は、ポストコンシューマ廃棄物、ポストインダストリアル廃棄物、又はその両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記解重合触媒は、少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の固体無機共触媒とを含み、前記ゼオライトは、βゼオライト、ゼオライトソコニーモービル-5(ZSM-5)、ゼオライトY、又は超安定ゼオライトY、又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記少なくとも1種の固体無機共触媒は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、珪酸塩、粘土、又は4価金属リン酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の固体無機共触媒は、ベントナイト、Ca(OH)
2、Mg(OH)
2、Ba(OH)
2、Sr(OH)
2、CaO、Al
2O
3、及びZr(HPO
4)
2からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
解重合前にポリオレフィン系供給物流を前処理する方法であって、
a)水溶液で満たされた第1容器にポリオレフィン系供給物流を加えるステップと、
b)前記水溶液及び前記ポリオレフィン系供給物流を少なくとも0.5時間撹拌するステップと、
c)前記水溶液の表面を掬い取って、その中に懸濁している少なくとも1種のポリオレフィン材料を除去するステップと、
d)5%未満の残留水分が得られるまで前記ポリオレフィン材料を乾燥するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
前記水溶液は強アルカリを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記強アルカリは、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、又は水酸化ストロンチウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記強アルカリは、水溶液の約5%~約40%である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記撹拌ステップは、約0.1MPa~約0.2MPaの圧力下で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液は、前記添加ステップの前に、25℃超~約150℃の温度に加熱し、前記撹拌ステップは、撹拌しながら加熱された水溶液の温度を維持することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記撹拌ステップは、前記水溶液及び前記ポリオレフィン系供給物流を、撹拌しながら少なくとも80℃に加熱することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記乾燥ステップは、少なくとも50℃の温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記乾燥ステップは、前記ポリオレフィン材料の残留水分が3%未満になるまで行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリオレフィン系供給物流は、ポストコンシューマ廃棄物、ポストインダストリアル廃棄物、又はその両方である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
解重合前にポリオレフィン系供給物流を前処理する方法であって、
a)9を超えるpHを有する水溶液で満たされた第1容器にポリオレフィン系供給物流を加えるステップと、
b)前記水溶液の熱を少なくとも70℃の温度に維持しながら、前記水溶液及び前記ポリオレフィン系供給物流を少なくとも2時間撹拌するステップと、
c)前記水溶液の表面を掬い取って、その中に懸濁している少なくとも1種のポリオレフィン材料を除去するステップと、
d)5%未満の残留水分が得られるまで、前記ポリオレフィン材料を少なくとも50℃の温度で乾燥するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年7月8日に出願された米国仮特許出願第63/219,616号の優先権を主張する特許協力条約に基づいてなされており、当該出願は全体として引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦政府の資金提供を受けた研究に関する声明
該当なし。
【0003】
マイクロフィッシュ付録への参照
該当なし。
【0004】
本開示は、ポリオレフィン系プラスチック廃棄物材料を解重合して有用な石油化学製品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
生活水準の向上及び都市化の進展により、ポリマー製品、特にポリオレフィンプラスチックに対する需要が高まっている。ポリオレフィンは、その際立った性能及びコスト特性で、商業的プラスチック用途においてよく使用されている。例えば、ポリエチレン(PE)は、強度が高く、非常に強靭で、耐久性に優れているため、最も広く使用され、認知されているポリオレフィンの1つとなっている。これは、様々な用途のために高度に設計されることを可能にする。同様に、ポリプロピレン(PP)は、機械的に強いが可撓性であり、耐熱性があるとともに、塩基や酸などの多くの化学溶媒に対して耐性がある。そのため、包装やラベル、繊維製品、プラスチック部品、さまざまなタイプの再利用可能な容器など、さまざまな最終用途産業に好適である。
【0006】
ポリオレフィンプラスチックに対する需要の不利な面は、廃棄物の増加である。ポストコンシューマのプラスチック廃棄物は、通常、埋め立てで終わり、約12%が焼却され、約9%がリサイクルに回される。埋立地では、ほとんどのプラスチックは急速に分解せず、埋立地の過度な負担の主な廃棄物源となっている。また、焼却は、二酸化炭素の形成及び他の温室効果ガスの排出を引き起こすため、プラスチック廃棄物を処理する理想的な解決策ではない。そのため、環境に配慮しつつ、埋立地の負担を軽減するためのプラスチック廃棄物のリサイクル方法の開発に関心が集まっている。
【0007】
プラスチック廃棄物のリサイクルの欠点は、商業的に使用可能な製品又は所望の製品をうまく製造することが難しいことである。現在、プラスチック廃棄物のリサイクルには、材料の洗浄や機械的な再加工が含まれている。しかし、得られたペレットは食品残留物や染料、香料で汚染されたままであった。これらの汚染物質は、性能と外観の両方に基づいて、ほとんどの用途に適していない。さらに、特定のポリマーの純粋な流れを得ることが困難であるため、混合プラスチック廃棄物流れは、リサイクル後に所望の特性を有しない可能性がある。
【0008】
最近の進歩は、ポリオレフィンプラスチック廃棄物を燃料源や商業的に重要な原材料などの利用可能な製品に変換することに焦点を当てている。プラスチック廃棄物ストリームの熱分解とそれに続く触媒解重合を実行して、ガス、ガソリン留分、灯油留分、ディーゼル留分、ワックスなどのさまざまな生成物を生成する方法が開発されている。残念なことに、触媒自体はポリオレフィン供給物中の他の化学物質によって容易に汚染される傾向があり、ポリオレフィン廃棄物を有用な種類の製品に完全に分解するには多くのエネルギーを必要とするため、プロセスにはコストや時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポリオレフィンのリサイクルが進歩したにも関わらず、ポリオレフィン系廃棄物供給物を有用な石油化学製品に転換するための信頼性の高いプロセスの開発が引き続き必要とされている。
【0010】
本開示は、ポリオレフィン系供給物流を熱分解するための改良された方法を提供する。改良された方法は、解重合前に非ポリオレフィン材料をポリオレフィン材料から分離するためにポリオレフィン系供給物流を前処理することに依存する。具体的には、ポリオレフィン系供給物流を水溶液に入れると、密度の低いポリオレフィン材料が浮き、非ポリオレフィン材料が沈む。これにより、水溶液の表面からポリオレフィン材料を掬い取ることができる。いくつかの実施形態では、水溶液に強アルカリを加えて、ポリオレフィン系供給物流中の非ポリオレフィンポリマーを分解することができる。分離されたポリオレフィン材料は、解重合触媒の存在下で熱的に解重合される前に乾燥される。
【0011】
いくつかの実施形態では、前処理方法は、ゼオライト又は粘土などのアルミノケイ酸塩を有する解重合触媒を利用する解重合反応と組み合わされる。いくつかの実施形態では、解重合触媒は、ゼオライト触媒及び任意の無機共触媒を有する。ゼオライトはポリオレフィン廃棄物の接触分解に使用される。ゼオライトは、ゼオライトなしで進行する解重合反応よりも速い速度(解重合の半減時間は短い)で、多くの場合低温で進行するポリオレフィンのカチオン解離を開始する。ただし、ゼオライトの触媒能は、廃棄物供給物流中に存在する可能性のある非ポリオレフィン材料、又は解重合プロセス中に生成される非ポリオレフィン材料の分解生成物によって抑制される可能性がある。特に、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース及びリグニンを含む窒素又は高酸素含有ポリマーのような非ポリオレフィン材料は、分解生成物を形成し、それによってゼオライトの触媒能力を「毒する」ことが知られている。ここれらの生成物は、解重合のメカニズムを妨害し、したがって速度を遅くするほど、触媒を不活性化させない可能性がある。ゼオライト及び非ポリオレフィン成分の種類及び濃度に応じて、解重合速度は、最大85%、望ましくない成分のレベルに応じてそれ以上低下させてもよい。したがって、非ポリオレフィン成分の存在は、ゼオライトを用いたポリオレフィン材料の解重合のためのエネルギー及び時間を増大させる。非ポリオレフィン材料の存在下では、ベントナイトなどの粘土でも同様の触媒活性阻害が観察された。
【0012】
本開示の方法は、ポリオレフィン系供給物流中の非ポリオレフィン成分の量を迅速に減少させ、その後の触媒解重合をより低い温度及びより長いサイクルで行うことを可能にする。その後、液状解重合生成物は、そのまま使用してもよいし、代替原料として例えばオレフィン分解炉内でさらに処理してもよい。
【0013】
本明細書に記載された方法は、ポストインダストリアル廃棄物及びポストコンシューマ廃棄物を含む任意のポリオレフィン系供給物流を処理するために使用することができる。ポストコンシューマポリオレフィン廃棄物の処理は、埋め立て地の過剰な負担と廃棄物から原材料が生成される可能性があるため、特に重要である。本明細書に記載された方法は、埋立地の処理センター又は他のリサイクルセンターで分別された後のポストコンシューマ廃棄物の処理に関するもので、ポリオレフィン系材料をガラス、セルロース(紙)、ポリビニルポリマーなどのリサイクル可能な材料から分離するものである。しかしながら、セルロース(紙)、ポリビニルポリマー、ナイロンなどの非ポリオレフィンポリマー、及び砂やワイヤーなどの無機物を完全に除去することは必ずしも可能ではないため、これらの非ポリオレフィン材料を完全に分離するには、現在説明されている前処理方法が使用される。しかしながら、前処理プロセスは、仕分けを受ける前の供給物流に適用できる。
【0014】
本方法は、以下の実施形態のいずれかを、その1つ以上の任意の組み合わせで含む。
【0015】
ポリマーを解重合する方法であって、まず、ポリオレフィン系供給物流を第1容器内の水溶液に加え、混合物を撹拌することによって、ポリオレフィン系供給物流を前処理してポリオレフィン材料を分離するステップと、水溶液に浮遊している材料を掬い取るステップであって、前記浮遊材料はポリオレフィン材料である、ステップと、ポリオレフィン材料を乾燥するステップと、を含む。次いで、乾燥ポリオレフィン材料及び解重合触媒を、約200~約600℃の温度に加熱された反応器に加える。ポリオレフィン材料を解重合触媒と反応させて、ポリオレフィン材料を解重合する。いくつかの実施形態では、解重合触媒は、少なくとも1種のゼオライトと、必要に応じて固体無機材料などの共触媒とを含む複合触媒である。
【0016】
ポリマーを解重合する方法であって、まず、ポリオレフィン系供給物流を第1容器内の水溶液に加え、混合物を少なくとも0.5時間撹拌することによって、ポリオレフィン系供給物流を前処理して、ポリオレフィン材料を分離するステップと、水溶液に浮遊している材料を掬い取るステップであって、前記浮遊材料はポリオレフィン材料である、ステップと、5%未満の残留水分が得られるまでポリオレフィン材料を乾燥するステップと、を含む。次いで、乾燥ポリオレフィン材料及び解重合触媒を約200~約600℃の温度に加熱された反応器に加える。ポリオレフィン材料を解重合触媒と反応させて、ポリオレフィン材料を解重合する。
【0017】
解重合前にポリオレフィン系供給物流を前処理する方法であって、水溶液で満たされた第1容器にポリオレフィン系供給物流を加えるステップと、水溶液及びポリオレフィン系供給物流を少なくとも0.5時間撹拌するステップと、水溶液の表面を掬い取って、その中に懸濁している少なくとも1種のポリオレフィン材料を除去するステップと、5%未満の残留水分が得られるまで、ポリオレフィン材料を乾燥するステップと、を含む。その後、乾燥ポリオレフィン材料を解重合することができる。
【0018】
解重合前にポリオレフィン系供給物流を前処理する方法であって、9を超えるpHを有する加熱水溶液で満たされた第1容器にポリオレフィン系供給物流を加えるステップと、水溶液の熱を少なくとも70℃に維持しながら、水溶液及びポリオレフィン系供給物流を少なくとも2時間撹拌するステップと、水溶液の表面を掬い取って、その中に懸濁している少なくとも1種のポリオレフィン材料を除去するステップと、5%未満の残留水分が得られるまでポリオレフィン材料を50℃の温度で乾燥するステップと、を含む。その後、乾燥ポリオレフィン材料を解重合することができる。
【0019】
本明細書に記載のいずれかの方法は、水溶液及びポリオレフィン系供給物流を撹拌しながら、25℃超~約150℃、又は少なくとも70℃に加熱するステップをさらに含む。
【0020】
本明細書に記載のいずれかの方法において、水溶液及びポリオレフィン系供給物流は約0.1MPa~約0.2MPaの圧力下で撹拌される。
【0021】
本明細書に記載のいずれかの方法において、水溶液は強アルカリを含む。本明細書に記載のいずれかの方法において、強アルカリは、水溶液の約5~約40%、又は約10~約25%、又は約18~約32%、又は約27~約40%の量で存在する。強アルカリは、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、又は水酸化ストロンチウムであってもよいが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書に記載のいずれかの方法において、水溶液のpHは少なくとも9である。
【0023】
本明細書に記載のいずれかの方法において、ポリオレフィン材料の残留水分が5%未満、3%未満、又は1%未満になるまで、ポリオレフィン材料を乾燥する。
【0024】
本明細書に記載のいずれかの方法において、ポリオレフィン材料を少なくとも50℃の温度で乾燥する。
【0025】
本明細書に記載のいずれかの方法又は複合触媒組成物において、少なくとも1種のゼオライトは、βゼオライト、ゼオライトソコニーモービル-5(ZSM-5)、超安定ゼオライトY、ゼオライトY、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、H超安定ゼオライトYが使用される。
【0026】
本明細書に記載のいずれかの方法又は複合触媒組成物において、任意の固体無機共触媒は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、ケイ酸塩、又は4価金属リン酸塩である。
【0027】
本明細書に記載のいずれかの方法又は複合触媒組成物において、任意の固体無機共触媒は、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Ba(OH)2、Sr(OH)2、CaO、Al2O3、及びZr(HPO4)2からなる群から選択される。
【0028】
本明細書に記載のいずれかの方法又は複合触媒組成物において、任意の固体無機共触媒は、複合触媒総量%に対して、約20~約90重量%の組み合わせ触媒中に存在する。
【0029】
本明細書に記載のいずれかの方法又は複合触媒組成物において、複合触媒は、ポリオレフィン材料供給物の0重量%超~約20重量%の量で存在する。
【0030】
本明細書に記載のいずれかの方法において、ポリオレフィン系供給物流は49%までの非ポリオレフィン成分を有する。
【0031】
本明細書に記載のいずれかの方法において、前記少なくとも1種の非ポリオレフィン成分は、高酸素含有量、窒素含有部分、又はその両方を有するポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ナイロンポリマー、セルロース、ポリアリールアミド、ポリウレタン、及びポリエチレンポリマーからなる群から選択される。
【0032】
本明細書に記載のいずれかの方法において、少なくとも1種の非ポリオレフィン成分は無機材料である。いくつかの実施形態では、無機質材料は砂又はワイヤーである。
【0033】
本明細書に記載のいずれかの方法において、ポリオレフィン系供給物流はポストコンシューマ廃棄物又はポストインダストリアル廃棄物である。
【0034】
本明細書に記載のいずれかの方法において、ポリオレフィン系供給物流は、ポストインダストリアル廃棄物及びポストコンシューマ廃棄物を含む。
【0035】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の選択を紹介するために提供されている。この概要は、請求項の主題の主要な特徴や本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、請求項の主題の範囲を限定するための補助として使用することを意図したものでもない。
定義
【0036】
本明細書で使用されるように、「滞留時間」は、解重合ユニットにおいて、1バッチ分のポリマー廃棄物を解重合するのに必要な時間を指す。
【0037】
本明細書で使用されるように、用語「解重合半減期」(depolymerization half time)又は「解重合の半減期」(half time of depolymerization)は、TGA熱分解反応中に特定の温度でサンプルの50%質量損失を達成するのに必要な時間を指す。解重合半減期は、大規模な産業用解重合反応器に必要な滞留時間に関係している。
【0038】
本明細書で使用するとき、「熱分解」とは、酸素の非存在下で起こる熱解重合反応を指す。
【0039】
「ポリオレフィン系」及び「ポリオレフィンリッチ」という用語は、材料、供給物流又は廃棄物流に関して、少なくとも51%のポリオレフィン含有量を有する混合物を指すために交換的に使用される。
【0040】
本明細書で使用するとき、「非ポリオレフィン成分」とは、ポリオレフィン系供給物又は廃棄物の流れに存在するポリオレフィンではない材料を指す。いくつかの実施形態では、これらの材料は、流れ中に存在するポリオレフィンを解重合する解重合触媒の能力を低下させる可能性がある。非ポリオレフィン成分の例としては、酸素及び/又は窒素含有量が高い非ポリオレフィンポリマー、及び砂やワイヤーなどの無機材料が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用するとき、「ポストコンシューマ廃棄物」とは、材料の流れの最終消費者によって生成される廃棄物のことである。
【0042】
本明細書で使用するとき、「ポストインダストリアル廃棄物」とは、製品の製造プロセスで生成される廃棄物のことである。
【0043】
本明細書で使用するとき、「供給物流」とは、解重合のための材料の供給を指す。解重合ユニットに応じて、供給物流は材料の連続供給又は材料のバッチの場合がある。供給物流は、純粋なポリオレフィンであってもよいし、処理されたポリオレフィンであってもよいし、ポリオレフィンと非ポリオレフィン成分との混合物であってもよい。
【0044】
「廃棄物流」とは、ポストコンシューマ及びポストインダストリアルの廃棄物を含むがこれらに限定されない、不要として廃棄された材料を含む供給物流のことである。
【0045】
「処理された」ポリオレフィン材料又はポリオレフィン供給物は、本明細書に記載された前処理方法を受けた供給物流を指すが、純粋なポリオレフィン供給物ではない。処理されたポリオレフィン供給物は、ポリオレフィン%の少なくとも75重量%である。
【0046】
本明細書で使用するとき、「解重合触媒」という用語は、熱分解重合反応の反応速度を向上させたり、反応温度を低下させたりすることができる複数の材料を指す。
【0047】
本明細書で使用するとき、「被毒」及び「触媒被毒」という用語は、解重合された供給物流中の少なくとも1種の非ポリオレフィン成分がゼオライト触媒の一部又は全部を不活性化することを指す。
【0048】
本明細書で使用するとき、「ゼオライト」又は「ゼオライト触媒」という用語は、共有酸素原子を介して互いに四面体配位したケイ素原子とアルミニウム原子のネットワークを含む硬い構造を持つ、天然及び合成のさまざまなアルミノケイ酸塩結晶性固体を指す。このようなリジッドフレームは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、水素、マグネシウム、カルシウム及び水分子のような、カチオンによって占有され得るチャネル又は相互に接続された空隙を含有する。本明細書で使用したゼオライトはシリカ含有率が高く(Si/Al比が5を超える)、ゼオライトの構造骨格が分解時に使用される高温に耐えられるだけでなく、ゼオライト全体の酸性度を高めることができる。本開示におけるゼオライトの多くは、強酸性部位の存在を確実にするためにH型で使用される。
【0049】
本明細書で使用するとき、「解重合サイクル」という用語は、洗浄が必要になるまでの、及び/又は解重合触媒の再生又は交換が必要になるまでの、解重合ユニットの動作時間を指す。
【0050】
本明細書におけるすべての濃度は、特に指定しない限り、重量パーセント(「重量%」)による。
【0051】
特許請求の範囲又は明細書において、用語「含む」と組み合わせて使用される場合、「1つ(a)」又は「1つ(an)」の用語の使用は、文脈に別段の規定がない限り、1つ又は複数の語を意味する。
【0052】
「約」という用語は、表示値に測定の誤差限界加えた値又は引いた値、又は、10%を加えた値又は引いた値を指す。
【0053】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、「及び/又は」を意味する。ただし、代替案のみを意味することが明示的に示されている場合、又は代替案が相互に排他的である場合は、この限りでない。
【0054】
「備える」、「有する」、「含む」及び「含有する」という用語(並びにそれらの変形)は、オープン連結動詞であり、請求項で使用される場合、他の要素の追加を可能にする。
【0055】
「で構成される」というフレーズは閉じ型であり、追加要素はすべて除外される。
【0056】
「本質的に……から構成される」というフレーズは、追加の材料要素を除外するが、本発明の本質を実質的に変更しない非材料要素を含むことを可能にする。
【0057】
【発明を実施するための形態】
【0058】
プラスチック、ポリオレフィン系供給物流、特に廃棄物源からの供給物流は、熱分解重合プロセス、特にゼオライト触媒に依存する熱分解重合プロセスに有害な非ポリオレフィン材料を多く含む可能性がある。非ポリオレフィン材料を加熱する必要があるため、熱分解重合中に大きな熱損失を経験することがある。さらに、非ポリオレフィン材料の多くは、典型的な解重合温度ではコークスが多く生成され、触媒性能やサイクルタイムの低下に繋がる可能性がある。また、ゼオライト触媒による熱解重合プロセスでは、ナイロンなどの非ポリオレフィンポリマーでは触媒能力が抑制され、解重合効率が低下することがある。液体解重合生成物とともに解重合ユニットから出た無機材料も、下流のオレフィン分解装置やその他のユニットに悪影響を与える可能性がある。
【0059】
本開示は、ポリオレフィン系供給物流中の非ポリオレフィン材料からポリオレフィン材料を分離するための解重合前処理方法を提供することにより、これらの問題を解決する。より詳しくは、前処理方法は、前処理溶液とも呼ばれる水溶液中の密度によってポリオレフィン系供給物流中の材料を分離する。非ポリオレフィン成分(NPC)は通常、密度が高く、水溶液中に沈む。ポリオレフィン材料は、密度が低く、水溶液中に浮遊しているので、水溶液から掬い取ることができる。その後、掬い取ったポリオレフィン材料は、5%未満の残留水分レベルが得られるまで乾燥され、解重合触媒と共に解重合ユニットに供給される。非ポリオレフィン材料の削減は、熱損失の減少、コークス生成の減少、及び触媒作用の改善を意味する。これにより、解重合温度が低下し、解重合サイクルが増加する。
【0060】
いくつかの実施形態では、水溶液は強アルカリを含み、pHは7よりも高い。強アルカリは、表面に浮遊する可能性のある非ポリオレフィンポリマーを分解し、非ポリオレフィン材料の除去をさらに改善する。前述したように、浮遊材料は水溶液から除去され、解重合ユニットに供給される前に乾燥されてもよい。ポリオレフィン材料の表面から残留アルカリを除去する洗浄ステップが不要である。水溶液には、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ストロンチウムを含むがこれらに限定されない強アルカリを用いることができる。
【0061】
他の実施形態では、強アルカリは、水溶液の約5~40%である。又は、強アルカリは、水溶液の約10~25%である。あるいは、強アルカリは水溶液の約18~32%である。あるいは、強アルカリは水溶液の約27~40%である。あるいは、強アルカリは水溶液の約20%である。いくつかの実施形態では、水溶液は、pHを少なくとも9、少なくとも11、又は少なくとも12に上昇させるのに十分な強アルカリを有する。
【0062】
ここで開示される前処理方法は、強アルカリを有するか又は含まない水溶液にポリオレフィン系供給物流を加え、約0.5時間~約5時間撹拌して、供給物流中の成分を密度に基づいて分離することを可能にする。あるいは、前処理方法は、ポリオレフィン系供給物流と水溶液との混合物を約1時間~約3時間又は約2時間撹拌する。
【0063】
ポリオレフィン系供給物流と水溶液との混合物は、撹拌されている間、約25℃~約150℃の温度、約0.1MPaから約0.2MPaの間の圧力であってもよい。いくつかの実施形態では、混合物は、周囲温度(~25℃)で撹拌され、混合物は撹拌中に約150℃まで加熱されてもよい。他の実施形態では、水溶液は、ポリオレフィン系供給物流がそれに加えられる前に、25℃超~約150℃の温度に予熱され、その温度を維持しながら撹拌される。
【0064】
いくつかの実施形態では、まず、ポリオレフィン系供給物流を水溶液に加え、次いで、約25℃~約150℃の温度及び約0.1MPa~約0.2MPaの環境圧力下で撹拌しながら、強アルカリをゆっくりと加える。他の実施形態では、ポリオレフィン系供給物流を、まず約70℃~約80℃の温度に予熱した水溶液に加え、続いて撹拌しながら強アルカリをゆっくりと加える。
【0065】
少なくとも2時間撹拌した後、懸濁材料を掬い取って水溶液から除去し、残留水分量が5%未満、3%未満、又は1%未満になるまで、周囲温度又は高温(25℃以上又は50℃以上)で乾燥することができる。掬い取った材料は、解重合プロセスのための「処理された」ポリオレフィン供給物流である。いくつかの実施形態では、処理されたポリオレフィン供給物流は少なくともポリオレフィン%の75重量%である。他の実施形態では、処理されたポリオレフィン供給物流は少なくともポリオレフィン%の95重量%である。
【0066】
処理されたポリオレフィン供給物流は、熱分解重合を行う前に乾燥しなければならないが、洗浄ステップを必要としない。いくつかの実施形態では、処理されたポリオレフィン供給物流は、残留水分量が5%未満になるまで周囲温度で風乾される。あるいは、処理されたポリオレフィン供給物流は、残留水分量が5%未満、3%未満、又は1%未満になるまで、少なくとも50℃の温度で乾燥される。他の実施形態では、処理された材料は、残留水分量が5%未満、3%未満、又は1%未満になるまで、60℃で乾燥される。
【0067】
乾燥後、処理されたポリオレフィン流は、解重合触媒の存在下で解重合される。いくつかの実施形態では、解重合触媒はアルミノケイ酸塩ベースであり、アルミノケイ酸塩はゼオライト又はベントナイトなどの粘土である。しかしながら、他の解重合触媒を使用することもできる。本明細書に記載の前処理方法のいくつかは、ゼオライトと、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、ケイ酸塩、又は4価金属リン酸塩のような固体無機共触媒との複合体である解重合触媒と組み合わされる。
【0068】
いくつかの実施形態では、複合触媒は、βゼオライト(β)、ゼオライトソコニーモービル-5(ZSM-5)、ゼオライトY(Y)、超安定ゼオライトY(USY)、Siral(商標)40のような非晶質酸性AlSiOx、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない市販ゼオライトを有する。ゼオライトの組み合わせは、特定のポリオレフィン系供給物含有量を解決するために使用することができ、又は複合物中に高価なゼオライトのみを使用することに伴うコストを相殺するために使用することができる。固体無機共触媒の具体例としては、粘土、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Ba(OH)2、Sr(OH)2、CaO、Al2O3、及びZr(HPO4)2が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、複合触媒はゼオライト及びベントナイト粘土共触媒である。固体無機共触媒の総量は複合触媒%の0重量%~90重量%である。
【0069】
解重合触媒は、バッチ処理された供給物流の重量の20%以下の量で存在する。あるいは、解重合触媒の量は、バッチ処理された供給物流の重量の0重量%超~5重量%である。別の代替例では、解重合触媒は、バッチ処理された供給物流の2重量%又は2.5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、解重合触媒の量は、バッチ処理された供給物流の10~15重量%にある。
【0070】
処理されたポリオレフィン流及び解重合触媒は、約200℃~約600℃の温度の解重合ユニットに供給される。あるいは、解重合ユニットの温度は、約225℃~約500℃である。さらに別の代替例では、解重合ユニットの温度は、約250℃~約450℃、又は約400℃である。処理されたポリオレフィン流は、流れを完全に解重合するのに必要な滞留時間のため、解重合ユニット内でバッチ処理することができる。各バッチの推定滞留時間は、解重合ユニットの熱伝達性に依存して約30分~約180分となる。あるいは、推定滞留時間は約60分である。
【0071】
この前処理方法は、水溶液に強アルカリを加えても解重合触媒に影響を与えない。しかし、解重合触媒の能力を抑制する可能性がある非ポリオレフィン材料の存在を減らすことで、より低い反応温度を使用できるようになり、その結果、二酸化炭素の生成が少なくなり、プロセス全体がより効率的になる。したがって、本発明の方法で使用される解重合触媒の量は、前処理方法に限定されることなく、触媒の種類や活性、解重合ユニットの要求によって制限される。
【0072】
これまでに記載された前処理方法は、単一のポリオレフィン成分又は任意の量のポリオレフィン成分混合物を含む材料を含む供給物流を処理するために使用することができる。供給物流中には、ポリエチレン(高密度及び低密度の両方)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリブテン-1、ポリイソブテン、及びそれらのコポリマーを含むがこれらに限定されない任意のポリオレフィンが存在し得る。さらに、供給物流は特定の形態に限定されないので、フィルム、発泡体、テキスタイル、又は他の形状の材料を本願の方法で処理することができる。ポリオレフィンは、ポストコンシューマ廃棄物流、ポストインダストリアル廃棄物流、又はこれらの組合せを含む廃棄物流から得ることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、供給物流は、解重合触媒中のゼオライト又は粘土の触媒活性を低下させる1つ又は複数の非ポリオレフィン成分をさらに含む。あるいは、供給物流は、ゼオライト又は粘土の触媒活性を低下させる分解生成物を生成する1種又は複数種の非ポリオレフィン成分をさらに含んでもよい。多くの化学物質がこのカテゴリーに属するが、非ポリオレフィンポリマーはポリオレフィン系供給物流、特に供給物流が廃棄物流である場合に最も存在する可能性が高い。特に、ポリアラミド、アクリレート、ナイロン、ポリウレタン、セルロース及びポリビニルポリマーなどの窒素又は高酸素含有量の非ポリオレフィン系ポリマーが供給物流中に存在していてもよい。これらのポリマーは通常廃棄物の現場で発見され、ポリオレフィンから完全に分離することは困難である。これらのポリマーの多くは、フルフラール、カプロラクタム、種々のアミン、フェノール及びエステルのようなゼオライト又は粘土の触媒能力を低下させる問題のある生成物に分解される。あるいは、窒素含有顔料などの非ポリオレフィン成分は、ポリオレフィン系廃棄物流中に存在し、ゼオライト又は粘土の触媒活性を低下させる可能性がある。
【0074】
他の実施形態では、供給物流は、本明細書に記載の方法で処理される前に、非ポリオレフィン成分の最大49重量%を有する。本明細書に記載の前処理方法の後、処理されたポリオレフィン供給物は少なくとも75重量%のポリオレフィンであり、いくつかの実施形態では、少なくとも95重量%のポリオレフィンである。
【0075】
本明細書で開示される前処理方法は、以下の例に基づいて例示されている。これらの例は、添付の特許請求の範囲の実施形態を示すために含まれる。しかしながら、これらは例示的なものに過ぎず、本開示は、非ポリオレフィン成分を有するポリオレフィン系供給物と、有しないポリオレフィン系供給物との任意の組み合わせに広く適用することができる。当業者は、本明細書の開示の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態に多くの変更を加えても同様の結果を得ることができることを理解するはずである。以下の実施例は、決して、添付の特許請求の範囲を限定したり、定義したりするために読まれるべきではない。
実施例
【0076】
種々のポリオレフィン系供給材料を、記載された方法に従って前処理、解重合、及び分析し、解重合温度を低下させる前処理方法の能力を評価した。
【0077】
特に明記されていない限り、解重合ユニットは熱重量分析(TGA)装置である。TGA熱分解反応では、均一サンプルをMettler Toledo TGA/DSC 3+(Mettler Toledo、オハイオ州コロンバス)で、窒素下、10K/minで解重合温度400℃まで加熱し、1時間保持した。特定温度における解重合半減期は、質量損失50%を達成するのに必要な時間として定義され、その値が60分未満であれば直接記録されるか、又は一次分解速度論の仮定の下でt1/2=0.693/kと決定される。ここでkは、Ln(C0/C)を用いてタイムチャートに対してグラフ化された1次速度定数である。
【0078】
解重合半減期は、大規模な解重合ユニットに必要な滞留時間と関係がある。半減期が短いほど、解重合ユニットにおけるポリマー供給バッチの滞留時間が短くなり、解重合速度kが速くなる。
実施例1
【0079】
ポストコンシューマポリオレフィン廃棄物の解重合は、ポリオレフィンのみを含む供給物流を得ることができず、複雑になっていた。廃棄物が埋立地やリサイクルセンターで複数の分離ステップを経ても、廃棄物供給物中に非ポリオレフィン材料の一部が残存する可能性がある。特に非ポリオレフィンポリマーは、ゼオライトなどのポリオレフィンの解重合に一般的に使用される触媒を妨げる可能性がある。アラミド、アクリレート、ポリウレタン、セルロース、ポリビニルポリマーなど、窒素や酸素を多く含むポリマーは、ゼオライトの触媒能力を「毒」することが知られている。
【0080】
ここまで述べた前処理プロセスは、評価のために廃棄物供給物1を使用している。廃棄物供給物1は、82重量%のポリオレフィンと、18重量の非ポリオレフィン材料を有するポストコンシューマ混合物である。前処理プロセスは、ゼオライト系複合触媒の選択を使用した熱解重合の前に廃棄物供給物1に適用され、非ポリオレフィン成分を除去する能力を評価するその他のテストが行われた。
【0081】
本実施例では、中性pHとアルカリ性pHの2種類の異なる前処理液を使用した。中性pHの前処理液を用いた前処理プロセスでは、水で満たされた容器内に廃棄物供給物1のバッチを懸濁して撹拌した。3時間後、「処理された」材料を溶液の表面から除去し、追加の洗浄ステップを行わずに60℃で一晩乾燥された。
【0082】
アルカリ性pH前処理液による前処理プロセスでは、1リットルの水で満たされた容器に廃棄物供給物1(213.5g)を懸濁した。撹拌スラリー(pH~12)に、周囲温度で水酸化カルシウム(Ca(OH)2)(30g)をゆっくりと加えた後、80℃で3時間加熱した。3時間後、「処理された」材料を溶液の表面から除去し、追加の洗浄ステップを行わずに60℃で一晩乾燥させた。乾燥後、処理された供給物5gを分析し、以下のように解重合した。
【0083】
処理された供給物を、複合触媒の存在下、TGA中で解重合した。表1に、両方のプロセスからの処理済み供給物と未処理の廃棄物供給物1の熱分解重合結果を示す。
【表2】
【0084】
表1の結果から、前処理溶液にかかわらず、未処理の廃棄物供給物1に比べて、廃棄物供給物1の前処理が解重合半減期を短縮することができることが示された。この改善は、廃棄物供給物1からのより重い非ポリオレフィン材料の除去によるものであり、これはβアルカリ複合触媒の存在下で解重合された組成物で顕著に示される。
【0085】
複合触媒なしの未処理廃棄物供給物1の解重合半減期は約108分であった(比較例1)。未処理廃棄物供給物1にβ-アルカリ複合触媒を加えることにより、解重合半減期を約3分短縮することができる。しかし廃棄物供給物1をアルカリ性溶液で前処理すると、比較例1で約108分であった解重合半減期が、組成物1で約1.3分と98%以上短縮された。
【0086】
ZSM-5系触媒を用いた場合も、同様に解重合半減期の減少が見られた。ZSM-5ゼオライトのみを有する複合触媒を添加すると、解重合半減期を最大54%(比較例5)減少させた。しかし、廃棄物供給物1を前処理すると、解重合半減期がさらに短縮された。表1に示すように、中性pH又はアルカリ性pHの前処理溶液とZSM-5系触媒を使用すると、解重合半減期は約63%短縮され、組成物2では、108.3分から40.1分に、組成物3では40.8分に短縮された。複合触媒に無機共触媒を添加した組成物では、解重合半減期の更なる改善が観察された。
【0087】
したがって、中性pH及びアルカリ性pHの両方を使用して、供給物流中の重い非ポリオレフィン材料の量を減少させることにより、解重合反応を改善することができた。さらに、たとえ洗浄工程が利用されなかったとしても、どちらの前処理溶液も複合触媒を抑制しなかった。
【0088】
未処理と処理済み廃棄物供給物1の違いをさらに評価するために、固形残留物の量を測定した。熱解重合中、ポリオレフィンはほとんどが液体生成物に変換され、無機材料は固体として残った。したがって、固体残留物の量は、供給物中の非ポリオレフィン材料の量の推定値を提供する。
【0089】
この分析では、5gの廃棄物供給物1(処理済み又は未処理)を石英製の熱分解管に入れ、炉内で炉設定値700℃まで10℃/分で加熱した。N
2又は5%O
2/N
2ガスを用いて、石英製熱分解管内の内容物を15sccmの流速で底部からパージした。凝縮性生成物を、乾燥CO
2で冷却されたヒックマントラップに回収した。液体の収集の最初の兆候が観察されたときの反応混合物の温度を、石英熱分解管の底に配置された熱電対で測定した。この固体残留物分析の結果を表2に示す。
【表3】
【0090】
表2の結果は、前処理プロセスにより非ポリオレフィン材料が効果的に除去されたことを示している。固体残留物の量は75%減少し、液体収率は42%増加した。さらに、液体製品中の窒素量は前処理プロセス後に大幅に減少し、非ポリオレフィン材料の削減を意味する。
【0091】
固形残留物に加えて、コークスの生成及び灰分の生成も測定された。解重合反応中に存在する無機材料によって灰が生成されるため、蓄積した灰を除去するために解重合ユニットをオフラインにする必要がある。結果を表3に示す。
【表4】
【0092】
廃棄物供給物1を前処理すると、比較例2と組成物1との間でコークスと灰の合計生成量が約81%減少した。灰の形成自体は83%以上減少した。現在記載されている前処理方法は、灰(反応器内に存在する無機材料から形成される)を減少させるだけでなく、コークスの形成も減少させた。
実施例2
【0093】
前処理方法は、廃棄物供給物2にも適用された。この実施例では、20%NaOH水溶液である前処理液と、実施例1に記載のCa(OH)2前処理液とを比較した。
【0094】
NaOH前処理液を用いた前処理プロセスでは、廃棄物供給物2のバッチを、20%NaOH溶液(pH>14)を充填した容器に懸濁し、80℃で3時間撹拌した。3時間後、「処理された」材料を溶液の表面から除去され、追加の洗浄ステップを行わずに60℃で一晩乾燥した。
【0095】
次いで、複合触媒の存在下、TGA中で処理済み供給物と未処理の廃供給物2とを解重合した。廃棄物供給物2の結果を表4に示す。
【表5】
【0096】
実施例1の結果と同様に、前処理プロセスにより、解重合半減期が50%以上短縮された。また、前処理液に使用されるアルカリを変更しても、解重合プロセスに悪影響を及ぼすことはない。
【0097】
上記の実施例は、ここで説明されている前処理プロセスが、より省エネルギー(したがって、より費用対効果の高い)解重合プロセスを促進することを示している。中性pHとアルカリ性pHの前処理溶液の両方を使用して、供給物流中のより重い非ポリオレフィン材料の量を減らすことで解重合反応を改善できた。さらに、たとえ洗浄工程が利用されなかったとしても、どちらの前処理溶液も複合触媒を抑制しなかった。前処理プロセスにより、解重合中の固体残留物の形成、コークスの形成、及び灰の生成も減少した。これらの結果から、前処理プロセスは、プロセス収率を向上させるだけでなく、解重合サイクルを延長することを示した。
【国際調査報告】