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特表2024-524508MgB2ワイヤの超伝導を回復する方法
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  • 特表-MgB2ワイヤの超伝導を回復する方法 図1
  • 特表-MgB2ワイヤの超伝導を回復する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】MgB2ワイヤの超伝導を回復する方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20240628BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01F6/06 110
D07B1/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500017
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022068372
(87)【国際公開番号】W WO2023280739
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21250004.5
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502385850
【氏名又は名称】エンベー ベカルト ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】NV Bekaert SA
(71)【出願人】
【識別番号】522018745
【氏名又は名称】イーポック ワイヤーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EPOCH WIRES LIMITED
【住所又は居所原語表記】Unit 8 - Burlington Park Foxton, Cambridge Cambridgeshire CB22 6SA Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】セルダール アタメルト
(72)【発明者】
【氏名】メメット クトゥックチュ
(72)【発明者】
【氏名】クリス ドゥフルスト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン メスダーク
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153AA01
3B153CC51
3B153CC71
3B153FF36
3B153GG40
(57)【要約】
反応済みMgBの芯を有するワイヤの超伝導を回復する方法は、前記ワイヤを2フェーズ熱処理に供することを含み、第1のフェーズは、20分間~40分間にわたって800℃~1000℃の範囲で加熱することを含み、及び第2のフェーズは、45分間~75分間にわたって550℃~750℃の範囲で加熱することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応済みMgBの芯を有するワイヤの超伝導を回復する方法であって、前記ワイヤを、20分間~40分間にわたって800℃~1000℃の範囲で加熱する第1のフェーズ及び45分間~75分間にわたって550℃~750℃の範囲で加熱する第2のフェーズの2つのフェーズの熱処理に供するステップを含む方法。
【請求項2】
前記ワイヤは、複数のMgB芯を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワイヤは、円形断面を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワイヤは、0.2mm~1.5mmの直径を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ワイヤは、輪郭付き、又は正方形、又は矩形の断面を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ワイヤは、平坦化され、且つ1.1~10、好ましくは1.1~5.0の範囲の幅対厚さの比率を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応済みMgBの芯を有する複数のワイヤを含むケーブルの超伝導を回復する方法であって、前記ケーブルを、20分間~40分間にわたって800℃~1000℃の範囲で加熱する第1のフェーズ及び45分間~75分間にわたって550℃~750℃の範囲で加熱する第2のフェーズの2つのフェーズの熱処理に供するステップを含む方法。
【請求項8】
反応済み超伝導MgBの芯を有する超伝導ワイヤの結合部における超伝導を回復する方法であって、前記結合部を、20分間~40分間にわたって800℃~1000℃の範囲で加熱する第1のフェーズ及び45分間~75分間にわたって550℃~750℃の範囲で加熱する第2のフェーズの2つのフェーズの熱処理に供するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MgB2ワイヤの超伝導を、ワイヤを2フェーズ熱処理に供することによって回復する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二ホウ化マグネシウムは、化学式MgBを有する無機化合物である。二ホウ化マグネシウムの超伝導性は、2001年に発見された。MgBは、39K(-234℃)で超伝導化され、これは、従来の超伝導体の中で最も高い動作温度である。これにより、液体ヘリウムを使用する必要なく、超伝導体として機能することが可能である。
【0003】
超伝導性を保つために、超伝導ワイヤの2つの端部が結合される結合部に存在する電気抵抗も非常に低くなければならない。超伝導材料の非常に脆い性質を考慮すると、これは、簡単な課題ではない。
【0004】
従来技術では、超伝導結合部を実現する種々の代替形態が開示されている。
【0005】
米国特許出願公開第A1-2009/0105079号明細書は、超伝導接触材料としてのMgBが挿入されるシース又はブッシングを使用する、超伝導体の2つの端部の超伝導接続部を開示している。超伝導体は、マルチワイヤ超伝導体である。接続部は、超伝導ワイヤが重なるシース又はブッシング内部の領域を示し、即ち、断面は、超伝導体の2つの端部からの超伝導ワイヤの存在を示す。
【0006】
韓国特許出願公開第A-10-2020-0103369号明細書は、単一のワイヤタイプの超伝導体の2つの端部の超伝導接続部を開示している。単一のワイヤタイプの超伝導体は、安定化層及び金属シースで囲まれたMgB超伝導芯を有する円線である。この接続部を実現するために、超伝導ワイヤの端部は、かなりの程度まで平坦化されて、結合面積を増やす。幅対厚さの比率は、3~100の範囲である。安定化層及び金属シースは、超伝導芯が一端部において開かれるように、平坦化された端部の一方の側で除去される。次いで、超伝導芯の開かれた側を互いに接触させる。接触端部は、結合コンテナに導入され、そこで、Mg及びB又はMgBの焼結粉末が導入され、加圧される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、反応済みMgBの芯を有するワイヤの超伝導を回復する方法を提供することである。本方法は、以下のステップを含む。
ワイヤを、2つのフェーズ:
1)20分間~40分間にわたって800℃~1000℃の範囲で加熱する第1のフェーズ、及び
2)45分間~75分間にわたって550℃~750℃の範囲で加熱する第2のフェーズ
の熱処理に供するステップ。
【0008】
上記の熱処理は、破損又は他の事象に起因して超伝導が失われたMgB芯を有するシングルワイヤの超伝導を回復することに適する。
【0009】
上記の熱処理は、複数のシングルワイヤ(ケーブル構造)又は複数のMgB芯を有するシングルワイヤ(マルチフィラメントワイヤ)の超伝導を回復することにも適する。
【0010】
上記の熱処理は、
- 結合プロセス、
- 取り扱いによる損傷(処理中又は巻線中のワイヤの過度の引張り/圧縮)、
- 偶発的/予想外の破損(ワイヤ又はワイヤ組立体への衝撃、熱...)
に起因してMgB2相に生じた全般的な欠陥を修復するのに有効である。
【0011】
超伝導を回復する方法は、曲げられた、平坦化された又は捻られた反応済みMgB2の芯を有するワイヤに適用することができる。
【0012】
超伝導を回復するための上記の熱処理は、超伝導ワイヤの形状から独立している。前記超伝導ワイヤは、円形又は形状付き断面を有することができる。
【0013】
この方法は、破損又は他の事象に起因して1つ又は複数のワイヤで超伝導が失われたMgB2芯を有する複数のワイヤを含むケーブルの超伝導を回復するために適用することもできる。
【0014】
この方法は、超伝導ワイヤの結合部における超伝導を回復するために適用することもできる。
【0015】
反応済みMgB2の芯を有するワイヤの超伝導を回復する方法の適用の説明として、超伝導ワイヤの結合部が提供される。後述の結合部及び方法は、本発明の一部ではない。
【0016】
結合部は、シースと、シースの内部のMgB超伝導芯とをそれぞれ有する少なくとも2つの超伝導ワイヤを含む。少なくとも1つの第1の超伝導ワイヤは、第1の平坦端部を有し、少なくとも1つの第2の超伝導ワイヤは、第2の平坦端部を有する。結合部は、管状金属コネクタを更に含む。コネクタは、マグネシウム若しくはホウ素又はMgB材料が充填された中央部を有する。第1の超伝導ワイヤの第1の平坦端部は、それがマグネシウム若しくはホウ素又はMgB材料に接触するまでコネクタの一方の側に挿入される。第2の超伝導ワイヤの第2の平坦端部は、それもマグネシウム若しくはホウ素又はMgB材料に接触するまでコネクタの他方の側に挿入される。コネクタは、両側からプレスされて、第1の超伝導ワイヤ及び第2の超伝導ワイヤを固定する。コネクタの中央部がプレスされて、マグネシウム若しくはホウ素又はMgB材料を圧縮する。
【0017】
この結合部において、超伝導ワイヤが重なる必要はない。加えて、超伝導ワイヤのシースを除去する必要もない。
【0018】
第1の平坦端部及び第2の平坦端部は、空隙をなくすため及びコネクタのプレス中にもはや変形しない安定した圧縮ワイヤを提供するための幅対厚さの比率を有する。好ましくは、これらの平坦端部は、1.1~10.0、好ましくは1.1~5.0、例えば1.25~2.5、例えば1.50~2.0の範囲の幅対厚さの比率を有する。
【0019】
第1の超伝導ワイヤ及び第2の超伝導ワイヤは、反応済み超伝導MgBの芯を有するため、隙間も有する。その理由は、反応済みMgBの体積が元のMg粉末及びB粉末よりも概ね25%小さいためである。超伝導ワイヤの端部は、隙間の数及び体積が減るような程度までプレスされる。超伝導ワイヤのこれらの既にプレスされた端部を後にプレスしても、もはや電流を妨げる大きいクラックが生じない。
【0020】
管状金属コネクタは、好ましくは、低炭素鋼を含む。
【0021】
管状金属コネクタは、チタンを含むこともできる。
【0022】
管状金属コネクタは、径方向内側にチタンバリアを有し、径方向外側に低炭素鋼を有し得る。
【0023】
管状金属コネクタは、好ましくは、低炭素鋼のみで作られ得る。
【0024】
反応済みMgBの超伝導芯を有する少なくとも2つの超伝導ワイヤを結合する方法が提供される。この方法は、
a)少なくとも1つの第1の超伝導ワイヤ及び少なくとも1つの第2の超伝導ワイヤを提供するステップであって、第1の超伝導ワイヤは、第1の端部を有し、及び第2の超伝導ワイヤは、第2の端部を有する、ステップ、
b)第1の超伝導ワイヤの第1の端部を平坦化し、且つ第2の超伝導ワイヤの第2の端部を平坦化するステップ、
c)長さLtotを有し、且つ中央部を有する管状金属コネクタを提供するステップ、
d)未反応Mg粉末及びB粉末で前記コネクタの中央部を充填するステップ、
e)コネクタが元の円形断面を有する場合、コネクタを平坦化するステップ、
f)Mg粉末及びB粉末に接触するまで、第1の超伝導体の第1の端部を長さLにわたってコネクタの一方の側に挿入するステップ、
g)Mg粉末及びB粉末に接触するまで、第2の超伝導体の第2の端部を長さLにわたってコネクタの他方の側に挿入するステップ、
h)コネクタを両側でプレスして、第1の超伝導ワイヤ及び第2の超伝導ワイヤをコネクタ内に固定するステップ、
i)長さLcenterにわたってコネクタの中央部をプレスして、Mg及びB粉末を圧縮するステップであって、長さLtot、L、L及びLcenterは、以下の式:
tot=L+L+2×Lcr+Lcenter
に合致し、式中、Lcrは、超伝導ワイヤが中央部のプレスと一緒にプレスされることを回避するために必要である、一方では第1の平坦端部及び第2の平坦端部と、他方ではコネクタの中央部のプレス長Lcenterとの間の臨界距離である、ステップ
を含む。
【0025】
好ましくは、超伝導ワイヤの端部の平坦化は、これらの端部の幅対厚さの比率が1.10~10.0、好ましくは1.10~5.0、最も好ましくは1.50~2.5、例えば1.50~2.0の範囲である程度まで行われる。
【0026】
臨界距離Lcrの好ましい値は、0.6mm~5.0mm、好ましくは0.8mm~2.0mm、例えば0.8mm~1.2mmの範囲である。
【0027】
管状金属コネクタ内に超伝導をもたらし、平坦端部において超伝導を回復するために、管状金属コネクタ及び平坦端部は、熱処理に供される。本発明の第2の目的は、超伝導ワイヤの結合部において超伝導を回復するための熱処理を提供することである。
【0028】
この熱処理は、好ましくは、2つのフェーズ:
1)20分間~40分間にわたって800℃~1000℃の範囲で加熱する第1のフェーズ、その直後に続いて、
2)45分間~75分間にわたって550℃~750℃の範囲で加熱する第2のフェーズ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による熱処理に供される結合部の準備の概略図である。
図2】本発明による熱処理に供される結合部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照して、後続ステップ、即ち第1の超伝導ワイヤ100及び第2の超伝導ワイヤ102を結合することについて説明する。数値は、非限定的な例として与えられる。
【0031】
第1の超伝導ワイヤ100は、低炭素鋼のシース104と、反応済みMgBの芯106とを有する。
【0032】
第2の超伝導ワイヤ102は、チタンのバリア層及び低炭素鋼の外層を有するシース108と、反応済みMgBの芯110とを有する。
【0033】
管状金属コネクタ112が提供され、管状金属コネクタ112は、未反応ホウ素粉末及びマグネシウム粉末を含む。ホウ素粉末は、好ましくは、ナノホウ素粉末であり、マグネシウム粉末は、好ましくは、球状マグネシウム粉末である。例として、管状金属コネクタ112の外径は、5.6mm~6.0mmであり、管状金属コネクタ112は、約22mm長である。
【0034】
管状金属コネクタ112の第1の端部116及び第2の端部118は、最初にデバリングされる。
【0035】
次いで、管状金属コネクタ112の第1の端部116及び管状金属コネクタの第2の端部118は、希釈HCl溶液中に数秒間浸漬され、その後、真空下で乾燥される。
【0036】
第1の端部及び116及び第2の端部118は、両方とも研磨され、その後、アルコール洗浄及び真空乾燥される。
【0037】
1.25mmの穴が第1及び第2の超伝導ワイヤ100及び102の寸法に合うように、第1の端部116及び第2の端部118の両方に穿孔される。穴の長さは、第1の端部116の側でLであり、第2の端部118の側でLである。L及びLは、両方とも約6.5mmであり得る。
【0038】
穿孔後、管状金属コネクタ112は、その全長Ltotにわたって平坦化される。
【0039】
第1の超伝導ワイヤ100及び第2の超伝導ワイヤは、穿孔長L及びLよりも長い長さにわたって平坦化される。
【0040】
第1及び第2の超伝導ワイヤ100及び102のそうして平坦化された端部は、表面積を増やすために傾斜した状態で研削される。この研削動作後、再びアルコール洗浄及び真空乾燥が行われる。その後、第1及び第2の超伝導ワイヤ100及び102の平坦端部は、HClの希釈溶液中に浸漬され、その後、アルコール洗浄及び真空乾燥される。
【0041】
第1及び第2の超伝導ワイヤ100及び102の平坦端部は、それが中央部におけるホウ素粉末及びマグネシウム粉末に接触するまで管状金属コネクタ112に挿入される。
【0042】
管状金属コネクタ112の両端部116及び118に圧力が掛けられて、超伝導ワイヤ100及び102を固定して端部116及び118を封止する。
【0043】
管状金属コネクタ112の中央部分は、液圧プレス120によって長さLcenterにわたってプレスされる。長さLcenterは、平坦化前、例えば6.35mmである。
【0044】
1.0mmの臨界長Lcrは、両端において、管状金属コネクタ112の平坦化された中央部分と穿孔された穴との間に残る。
【0045】
最後に、熱処理が第1及び第2の超伝導ワイヤ100、102と、Mg粉末及びB粉末114を有する管状金属コネクタ112との組立体に適用される。
【0046】
述べたように、熱処理は、2つのフェーズを含む。
【0047】
第1のフェーズ中、組立体は、30分間にわたって900℃で加熱される。この第1のフェーズにおいて、以下の反応が生じる:
2MgB→Mg+MgB
【0048】
第1のフェーズ直後の第2のフェーズ中、組立体は、650℃の温度に60分間保たれる。この第2のフェーズ中、以下の反応が生じる:
Mg+MgB→2MgB
【0049】
このダブルフェーズ加熱処理は、管状金属コネクタ112の中央部に超伝導をもたらすのみならず、第1及び第2の超伝導ワイヤ100及び102の平坦端部でも超伝導を回復する。
【0050】
図2は、実現された結合部の概略図を与える。より具体的には、図2は、管状金属コネクタ112及び平坦化された中央部分126のプレスされた端部122及び124を示す。仕上げられた結合部、即ち平坦化動作後の結合部の典型的な寸法は、全長Ltot 23.8mm、平坦化された中央部分の長さLcenter 7.25mm、第1の超伝導ワイヤの挿入長7.9mm及び第2の超伝導ワイヤの挿入長8.7mmである。
【0051】
既に述べたように、2つの超伝導ワイヤを結合する状況の他に、熱処理は、超伝導が失われたMgBワイヤの超伝導を回復するために使用することもできる。以下の2つの例は、破損したサンプルにおいて超伝導がどのように回復されたかを示す。
【実施例
【0052】
例1.圧縮
反応済みMgBの超伝導芯及び直径0.75mmを有する超伝導ワイヤの参照サンプルを提供した。MgBの芯を700℃で30分間焼結した。臨界電流Iを異なる温度で測定した。線形回帰を使用して、異なる温度で異なるサンプルで測定された臨界電流値を正規化した。25K、20K及び15Kでそれぞれ得られた結果を表1で報告する。
【0053】
【表1】
【0054】
表1中の参照1は、参照サンプルを指す。
【0055】
破損は、参照サンプルである参照1を4トンの圧力下で10分間圧縮することによって導入した。参照2は、破損したサンプルを指し、臨界電流値の低下を示しており、これは、超伝導が失われたことを示している。
【0056】
次いで、参照2を異なる熱処理に供して、超伝導を回復した。
【0057】
表1中の比較1及び比較2は、参照2と同様に破損し、次いで本発明の範囲外の持続時間を用いて2フェーズ熱処理に供した比較サンプルを指す。
【0058】
一例として、比較サンプルである比較1では、低いままであるI値によって示されるように、超伝導を回復するには時間が短すぎた。
【0059】
第2の例として、比較サンプルである比較2では、回復熱処理の第1のフェーズの持続時間が短すぎたことに起因して、超伝導は、部分的にのみ回復し、これは、I値が増大したが、それでもなお参照サンプルである参照1と比べて低すぎることによって示されている。
【0060】
サンプル本発明1及び本発明2は、参照2と同様に破損し、次いで本発明の2フェーズ熱処理、即ち900℃で30分間又は40分間の第1のフェーズ、続けて650℃で60分間の第2のフェーズを有する2フェーズ熱処理に供された。
【0061】
サンプル本発明1及び本発明2は、両方とも超伝導を回復し、これは、表1において、I値がサンプル参照1で測定された元の値に近いことによって示されている。
【0062】
例2.湾曲
参照1から開始し、それを直径19mmの直径の管で曲げてから直線に戻して、表1で報告されていない別のサンプルであるサンプル本発明3を取得した。
【0063】
参照1から開始し、それを直径19mmの管で曲げてから直線に戻し、それから一軸プレスし、2の幅/厚さ(w/t)の割合を有する平坦ワイヤを取得して、別のサンプルであるサンプル本発明4を取得した。
【0064】
サンプル本発明3及び本発明4を本発明の回復熱処理に供し、即ちサンプルを、2フェーズ:900℃で30分間加熱する第1のフェーズ及び650℃で60分間加熱する第2のフェーズの熱処理に供した。
【0065】
第1のフェーズ中、変形したワイヤを900℃で30分間加熱した。この第1のフェーズでは、以下の反応が生じる:
2MgB2→Mg+MgB4。
【0066】
第1のフェーズ直後の第2のフェーズ中、変形したワイヤを60分間にわたって650℃の温度に維持した。この第2のフェーズ中、以下の反応が生じる:
Mg+MgB4→2MgB2。
【0067】
熱処理後、臨界電流Icをサンプル本発明3及び本発明4において測定した臨界電流は、両方のサンプルで25KにおいてIc=152Aと測定された。この値は、変形前の参照サンプルである参照1で測定された値に近いことがわかった。
【0068】
更に、サンプル本発明3と同じ条件で取得されたサンプル、即ち直径19mmの直径の管で曲げてから直線に戻すことによって取得されたサンプルを900℃で4時間加熱し、続けて850℃で41時間加熱した。この熱処理後に測定された臨界電流は、Ic=0Aであり、超伝導が回復しなかったことを意味した。
【0069】
実験により、妥当な温度及び時間の範囲が決定されたが、他の機器及び他の化学組成物で実行される場合、特許請求される温度及び時間の範囲は、より広い範囲であり得る。
【0070】
少なくとも1つのワイヤが破損した、反応済みMgBの芯を有する複数のワイヤを含むケーブルは、本発明の2フェーズ熱処理に供された場合に超伝導を回復する。
【符号の説明】
【0071】
100 第1の超伝導ワイヤ
102 第2の超伝導ワイヤ
104 第1の超伝導ワイヤのシース
106 第1の超伝導ワイヤ内部の反応済みMgB
108 第2の超伝導ワイヤのシース
110 第2の超伝導ワイヤ内部の反応済みMgB
112 管状金属コネクタ
114 未反応のMg粉末及びB粉末
116 管状金属コネクタの第1の端部
118 管状金属コネクタの第2の端部
120 プレスツール
122 管状金属コネクタのプレスされた第1の端部
124 管状金属コネクタのプレスされた第2の端部
126 管状金属コネクタのプレスされた中央部分
【0072】
図中の略語のリスト
第1の超伝導ワイヤの挿入長
第2の超伝導ワイヤの挿入長
tot 管状金属コネクタの長さ
cr 臨界長
center 管状金属コネクタの中央部分の圧力ゾーン長
図1
図2
【国際調査報告】