(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】研磨物品のための付加製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B24D 3/00 20060101AFI20240628BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240628BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240628BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240628BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240628BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240628BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240628BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240628BHJP
B24D 18/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B24D3/00 340
B29C64/106
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/268
B33Y80/00
B24D18/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500022
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022068616
(87)【国際公開番号】W WO2023280872
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518015365
【氏名又は名称】アドマテック ヨーロッパ ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】サウルウォルト, ジェイコブ ジャン
【テーマコード(参考)】
3C063
4F213
【Fターム(参考)】
3C063AA10
3C063CC23
3C063FF30
4F213AA44
4F213AR09
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL45
4F213WL77
4F213WL80
4F213WL85
(57)【要約】
研磨物品(1)を層毎に製造するための付加製造の方法。本方法は、スラリー(4)の層を堆積させることであって、スラリー(4)は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、堆積させることと、スラリー(4)の新たな層を堆積させる前に、スラリー(4)の層を硬化させるために、スラリー(4)の層に放射源(6)を適用することとを含み、放射源(6)は、回転露光を含む。更なる態様では、研磨物品(1)を層毎に製造するための付加製造装置も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨物品(1)を層毎に製造するための付加製造の方法であって、
スラリー(4)の層を堆積させることであって、前記スラリー(4)は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、堆積させることと、
スラリー(4)の新たな層を堆積させる前に、前記スラリー(4)の層を硬化させるために、前記スラリー(4)の層に放射源(6)を適用することと
を含み、前記放射源(6)は、プロファイルスポット(61)を有する回転ビームであって、前記プロファイルスポットを前記スラリー(4)の層の中央点の周りで円運動において移動させるように構成される回転ビームを含む、方法。
【請求項2】
前記ビームは、回転プロファイルスポットを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビームは、実質的に非円形のスポットを有し、前記スポットは、1つの層の露光中に所定の位置にあり、且つ前記1つの層から次の層まで、前記スラリー(4)の層の中央点(64)の周りで所定の角度にわたって回転されるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記放射源(6)は、複数のアドレス指定可能な光ビーム源(72)を有する光源マトリックス(70)を含み、前記複数のアドレス指定可能な光ビーム源(72)は、露光中に光スポットの所定のパターン(74)を発生させ、且つ前記パターンを前記スラリー(4)の層の中央点の周りで所定の角度(α)にわたって回転させるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記放射源(6)は、溶融又は焼結プロセスを使用して前記スラリー(4)の層を硬化させるためのレーザを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前の硬化されたスラリー(4)の層の断面積(4a)は、後の硬化されたスラリー(4)の層の断面積(4b)と異なる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記断面積(4a、4b)は、円形断面積を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化されたスラリー4の層の解像度は、5μm未満、例えば1μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記研磨粒子は、ダイヤモンド粒子、立方晶窒化ホウ素粒子、ボラゾン粒子、金属粒子、セラミック粒子、ガラス粒子、粉体粒子及び/若しくは前駆体又は焼結助剤粒子の1つ以上を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリー(4)は、前記スラリー(4)の新たな層のための異なる組成物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スラリー(4)は、結合剤、任意選択の充填剤及び/又は添加剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
基板(2)上に堆積された前記スラリー(4)の層を、前記基板(2)を移動させることによって搬送することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スラリー(4)の新たな層を堆積させるために、前記硬化されたスラリー(4)の層を引き離すことを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
研磨物品(1)を層毎に製造するための付加製造装置であって、
基板(2)と、
前記基板(2)上にスラリー(4)の層を堆積させるように配置されたスラリー堆積機(7)であって、前記スラリー(4)は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、スラリー堆積機(7)と、
スラリー(4)の新たな層を堆積させる前に、前記スラリー(4)の層を硬化させるために、前記スラリー(4)の層に放射源(6)を適用するように配置された放射ユニット(8)と
を含み、前記放射源(6)は、前記スラリー(4)の層の中央点の周りで円運動において移動するように構成された回転可能なプロファイルスポット(61)を有する回転ビームを含む、付加製造装置。
【請求項15】
前記ビームは、回転スポットを有する、請求項14に記載の付加製造装置。
【請求項16】
前記ビームは、実質的に非円形のスポットを有し、前記実質的に非円形のスポットは、1つの層の露光中に所定の位置にあり、且つ前記1つの層から次の層まで、前記スラリー(4)の層の中央点の周りで所定の角度にわたって回転されるように構成される、請求項14に記載の付加製造装置。
【請求項17】
前記放射源(6)は、複数のアドレス指定可能な光ビーム源を有する光源マトリックスを含み、前記複数のアドレス指定可能な光ビーム源は、露光中に光スポットの所定のパターンを発生させ、且つ前記パターンを前記スラリー(4)の層の中央点の周りで所定の角度にわたって回転させるように構成される、請求項14に記載の付加製造装置。
【請求項18】
前記放射ユニット(8)は、レーザデバイスを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨物品を層毎に製造するための付加製造の方法に関し、更なる態様では、研磨物品を層毎に製造するための付加製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2018/104793号明細書は、ガラス結合研磨物品の製造方法を開示している。一実施形態では、この方法は、密閉領域内で遊離粉体粒子層を堆積させる工程と、遊離粉体粒子層の所定の領域内に液体結合剤前駆材料を噴射する工程と、液体結合剤前駆材料を、所定の領域内の遊離粉体粒子の粒子を互いに結合して結合粉体粒子層を形成する一時結合剤材料に変換する工程とを含む。これらの工程を複数回行い、研磨物品プリフォームを生成し、その後、これを加熱してガラス結合研磨物品を提供する。
【0003】
国際公開第2006/091519号パンフレットは、研磨物品を製造するためのシステム、方法を開示している。一実施形態では、容器は、研磨粒子と粉末結合剤との混合物を含み、研磨物品の層毎の形成を可能にするためにプラットフォームが下げられる。プラットフォームが数分のインチだけ下げられると、ローラが容器内の研磨物品及び材料上に積層材料を堆積させる。エネルギー源は、パターン化されたエネルギーを材料の表面に向け、研磨物品の後続層を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、研磨物品を層毎の方式で製造する改良された付加製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記で定義した前文に記載の方法が提供され、方法は、スラリーの層を堆積させることであって、スラリーは、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、堆積させることと、スラリーの新たな層を堆積させる前に、スラリーの層を硬化させるために、スラリーの層に放射源を適用することとを含み、放射源は、回転露光を含む。
【0006】
これにより、研磨物品のための研磨材を信頼性の高い層毎の方式で製造するために付加製造法を用い、出発材料が、例えば、粉体ではなく、スラリーである高精度のフォームを有し、対称性が高い研磨製品を提供することができる。
【0007】
以下では、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法の概略図を示す。
【
図2A】[
図2A-2D]本発明の4つの更なる実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法の頂面図をそれぞれ示す。
【
図2B】[
図2A-2D]本発明の4つの更なる実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法の頂面図をそれぞれ示す。
【
図2C】[
図2A-2D]本発明の4つの更なる実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法の頂面図をそれぞれ示す。
【
図2D】[
図2A-2D]本発明の4つの更なる実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法の頂面図をそれぞれ示す。
【
図3】本発明の一実施形態による、硬化されたスラリーの層の斜視図を示す。
【
図4】本発明の例示的実施形態による、研磨材を含む研磨工具の斜視図を示す。
【
図5】本発明の更なる例示的実施形態による、研磨材を含む研磨工具の斜視図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態による、研磨物品を層毎に製造するための付加製造装置の概略図を示す。
【
図7】本発明の一実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法によって作成された硬化層のスタックの概略頂面図を示す。
【
図8】本発明の一実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法で使用される露光ビームのスポットを生成するためのソースの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概して、例えば、砥石ホイール上の研磨材は、結合された砥粒からなる。様々な研削加工及び研磨加工において、砥石の回転は、不規則な切削挙動及びびびりを回避するために、強固且つ良好な精度のものとすべきである。更に、工作物の良好な最終プロファイルを得るために、砥石ホイールの正確なフォーム(すなわち形状)も望まれる。砥石ホイールの正確なフォームを形作ることは、プロファイリング又はドレッシングとしてより一般的に知られるプロセスである。ほとんどの研削プロセスでは、砥石ホイールのフォーム(及び振れ)の精度は、μmのオーダーであるべきである。
【0010】
しかしながら、砥石ホイールの耐摩耗性により、砥石ホイールの正確なプロファイリング又はドレッシングは、依然として困難であることが判明している。この困難さのために、高研磨砥石ホイールの生産には比較的時間及び費用がかかる。
【0011】
そのため、この欠点を克服し、砥石ホイール及び同様の研磨物品を、高精度のフォームを有するものの、簡単且つあまり時間のかからない方式で製造する手法を提供する必要がある。
【0012】
更に、ほとんどの製造プロセスの出発製品は、通常、(研磨)粒子の粉体であるため、製造プロセスにより柔軟性を与えるために、他の出発製品を利用することが望ましい。
【0013】
本発明の実施形態は、研磨物品を層毎の方式で製造するための付加製造の方法を提供し、この付加製造法を用いて、高精度のフォームを有するものの、生産が容易であり、配送時間及び費用が削減される研磨物品をプロファイリング又はドレッシングする。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による、研磨物品1を層毎に製造するための付加製造の方法の概略図を示す。図示の実施形態では、本方法は、スラリー4の層を堆積させることを含み、スラリー4は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む。スラリー4の層は、例えば、プラットフォーム又は基板2上に堆積させることができる。液体と研磨粒子とを含む混合物は、研磨物品1の(印刷された)研磨材を最終的に形成する。
【0015】
例えば、粉体を使用する代わりに、スラリー4が研磨材1を層毎に製造するための出発製品であり、混合物中の液体に応じてペースト、樹脂、分散体、懸濁体などとして実装され得る。非限定的な例として、スラリー4は、光重合性材料を含む樹脂、例えば研磨粒子を有するポリマーを含み得る。
【0016】
例示的な範囲として、混合物は、(概して)10~70体積%の粒子含有量を有し得る。この粒子含有量は、非常に均質なスラリー4の層を加工すること及び混合物中の粒子の安定した分散を可能にする。研磨粒子に加えて、一般的な粒子含有量は、例えば、砥粒又は充填剤を支持する他の粒子を含み得ることが指摘される。
【0017】
混合物中の研磨粒子含有量の範囲は、製造される研磨物品1によって異なり得る。研磨粒子のみを含む研磨物品1について、混合物は、例えば、12.5~50体積%の研磨粒子含有量又は一次研削若しくは磨き砥粒を有する研磨物品1の場合には更に10%未満の研磨粒子含有量を有し得る。
【0018】
(混合物中の)研磨粒子の直径も研磨物品1及び硬化されるスラリー4の層の大きさに応じて異なり得る。例示的な範囲として、直径は、1000μm~0.1μm又はより具体的な範囲では更に例えば200μm~4μmであり得る。
図1に示される実施形態では、本方法は、スラリー4の新たな層を堆積させる前に、スラリー4の層を硬化させるために、スラリー4の層上に放射源6を適用することを更に含む。すなわち、スラリー4は、放射源6の露光によって硬化及び固化され、硬化されたスラリー4の層は、(未硬化の)スラリー4の縞模様部分として
図1に概略的に示されている。
【0019】
このスラリー4の層上に放射源6を適用する工程と、そこからスラリー4の層を硬化させる工程とは、単一工程プロセスを含み得ることに留意されたい。
【0020】
放射源6は、スラリー4(の層)を硬化させることが可能な任意の適切なタイプの放射、例えば可視光線、紫外線(UV)又は赤外線(IR)を含み得る。ある実施形態では、放射源6は、スラリー4の層の特定部分に局所化され得、且つ/又は高エネルギー放射源6を含み得る。
【0021】
非限定的な例として、放射源は、それぞれ任意選択でデジタル光プロセッサと組み合わされる、発光ダイオード(又はLEDのアレイ)、レーザビーム又はランプなど、要求される波長範囲で動作する任意の放射源から選択され得る。高エネルギー放射源として電子ビーム源も使用され得る。
【0022】
更に、この実施形態では、
図1に放射源6の回転方向を示す丸い矢印によって示すように、放射源6は、回転露光を含む。別の言い方をすれば、放射源6は、スラリー4の層を硬化させるためにスラリー4の層に適用される間、回転する。
【0023】
更に、回転露光は、スラリー4の層上を(
図1の基板2の左右の矢印によって示されるように)移動して、スラリー4の層上で回転露光の中心から外れた(すなわち横方向の)移動も提供し、硬化されるスラリー4の層のフォームをプロファイリングする(すなわち描画する)ことができる。更に又は代わりに、放射源6も、示される方向に横方向に(基板2の平面に平行に)移動することができる。
【0024】
放射源6の回転露光により、高精度のフォームを有し、対称性が高い硬化されたスラリー4の層が提供される。硬化されたスラリー4の層は、少なくとも部分的に研磨物品1であるため、最終的な研磨物品1も高精度のフォームを有し、対称性が高く製造され、優れた品質のものとなる。より一般的な表現では、本明細書に記載する本発明の実施形態は、研磨物品1を層毎に製造するための付加製造の方法であって、スラリー4の層を堆積させることであって、スラリー4は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、堆積させることと、スラリー4の新たな層を堆積させる前に、スラリー4の層を硬化させるために、スラリー4の層に放射源6を適用することとを含み、放射源6は、回転露光を含む、方法に関する。これにより、(例えば、粉体の代わりに)スラリー4を出発材料として使用して、高精度のフォームを有し、対称性が高い研磨物品1を製造する改良された方法が提供され得る。これにより、信頼性の高い付加製造(印刷)プロセスによって適切に層毎に製造される優れた品質の研磨物品1が提供され得、それにより生産が容易になり、生産時間及び関連コストが減少する。
【0025】
本明細書中に記載される本発明の実施形態に関連する方法の有利な特性を詳述するために、以下の非限定的な例を提供する。スラリー4の層は、例えば、プラットフォーム又は基板2上に堆積される。例示的な例として、研磨粒子サイズに対して調整されたスラリー4の層の適切な厚さは、300μm未満、例えば5μmであり得る(直径1μmの研磨粒子)。スラリー4の層は、最終的な研磨物品1の最初の層又は後続層(すなわち研磨物品1の層が既に印刷されている)であり得る。回転露光を含む放射源6がスラリー4の層上に適用され、スラリー4の層を、高精度のフォームを有し、対称性が高くなるように硬化及び固化し、それにより研磨物品1の層が印刷される。その後、スラリー4の新たな層がプラットフォーム又は基板2上に堆積される。
【0026】
上記の非限定的な例で説明したような工程のサイクルは、その後、研磨物品1を適切に層毎に印刷し、積層するために繰り返され、各硬化されたスラリー4の層は、高精度のフォームのもの且つ対称性が高いものである。
【0027】
放射源6の適用はまた、研磨物品1の硬化材料の特定のパターンを提供するために、例えばオンオフ変調を用いて時間制御され得ることに留意されたい。一例として、本発明の実施形態によって提供される研磨物品1は、半径方向に延びる溝によって分離された、半径方向に間隔を開けて配置された研削面を有する砥石ホイールを含み得る。
【0028】
図1に示される実施形態では、本方法は、基板2上に堆積されたスラリー4の層を、基板2を移動させることによって搬送することを更に含む。詳細に述べると、スラリー4の層は、基板2上に堆積され、基板2自体の動き(
図1に基板2上の矢印により示される方向)により、放射源6による硬化のための位置に搬送される。その後、残った未硬化のスラリー4は、基板2によって運び去られ、これと連携して新規のスラリー4の層が基板2上に堆積され、放射源6による硬化のための位置に向けて搬送される。
【0029】
すなわち、本発明の実施形態では、スラリー4の層を堆積させて搬送するためのコンベヤベルト状の配置が記述され、研磨物品1の効率的且つ生産的な製造がもたらされる。基板2は、透明基板2及び/又は箔基板2を含み得る。
【0030】
更なる実施形態では、本方法は、スラリー4の新たな層を堆積させるために、硬化されたスラリー4の層を引き離すことを更に含む。更に詳細に説明すると、固化すると、硬化されたスラリー4の層は、例えば、ステージによって例えばプラットフォーム又は基板2から引き離される。これにより、最近硬化されたスラリー4の層と基板2との間に隙間を残し、この隙間に新規のスラリー4の新たな層を充填し、これを硬化させて、研磨物品1を効率的な層毎の方式で積層し、印刷することができる。
【0031】
スラリー4を搬送すること及び硬化されたスラリー4の層を引くことに関する他の実施形態についての更なる情報は、国際公開第2015/107066号パンフレットに記載され得る。
【0032】
一実施形態では、回転露光は、回転ビームを含む。回転ビームを使用することにより、研磨物品1の形状は、更により正確なフォームに描画及びプロファイリングされ得る。例えば、円形フォームに関して、回転ビームは、円の丸みを適切な方式で自然にプロファイリングし、円周及び直径は、回転ビームの大きさ、例えば回転ビームの長さによって決定され得る。
【0033】
そのために、
図2A~
図2Cは、本発明の方法の3つの例示的実施形態による、スラリー4(の層)を硬化させるための回転ビームの頂面図を示す。
【0034】
図2Aに示される実施形態では、回転ビームは、回転スポット61を含む。回転スポット61は、焦点61a(回転スポット61の中心に位置する)を含み、それにより、回転スポット61は、スラリー4の層に適用され、焦点61aの周りで回転し得る。
【0035】
回転スポット61は、所定の位置で静止したままであり得、回転スポット61の大きさは、例えば、研磨物品1の円形フォームをプロファイリングするために変化され得る。その焦点61aの周りで回転するにつれて大きくなる(円形の)回転スポット61は、次第に大きくなる円の丸みを自然にプロファイリングする。特に、回転スポット61の変化する大きさは、スラリー4の層上の異なる位置に小さい円形フォーム(例えば、小さいホイール)を印刷するのに適している場合がある。
【0036】
代わりに、
図2Bに示される実施形態では、回転スポット61は、スラリー4の層上で動き回って研磨物品1の形状を形成し得る。すなわち、フォームは、回転スポット61によって描画される。例えば、回転スポット61は、スラリー4の層の中央点(
図2Bに「十字線」として示される)の周りで円運動において移動し、円形フォームをプロファイリングし得る。
【0037】
そのため、単一の回転スポット61(
図2A~
図2Bに記載及び図示)は例示的な実装形態であり、回転ビームは、2つ以上の回転スポット61を含み得ることに留意されたい。例えば、2つの回転スポット61は、例えば、ホイールの内径及び外径を製造するために、円形フォームを有する研磨物品1の内径及び外径をプロファイリングし得る。
【0038】
更なる例示的実施形態では、回転スポット61は、スラリー4の層上に適用され、追加的に焦点61aの周りで回転し得る。
【0039】
図2Cに示される実施形態では、回転ビームは、回転線62の端点62aの周りで回転する回転線62を含む。このようにして、例えば円形フォームをプロファイリングするために、この実施形態では、回転線62をその端点62aの周りで回転させると円の丸みを自然に描画することができるように、回転線62は、円の「半径」であり得る。
【0040】
代わりに、
図2Dに示される実施形態では、回転ビームは、回転線62の中心点62bの周りで回転する回転線62を含む。この場合にも、例えば円形フォームをプロファイリングするために、この
図2cの実施形態では、回転線62をその中心点62bの周りで回転させると円の丸みを自然に描画するように、回転線62は、円の「直径」であり得る。
【0041】
ある実施形態では、
図2C~
図2Dに示すように、回転線62は、各端点62a及び中心点62bの周りで回転する部分回転線62cを含み得る。部分回転線62cは、(
図2C~
図2Dに全回転線62上の点線間に示されるように)回転する全回転線62の一部であり、全回転線62の残りは、所定の位置で静止したままであり得るか又は更に存在しなくてもよい。これは、印刷プロセス中、スラリー4の層の一部が未硬化のままとなるように、例えば研磨物品1の一部に中空部分又は穴を設けるのに有利な場合がある。
【0042】
(
図2A~
図2Dに示すような)回転ビームに関して説明した実施形態は、例示的実施形態であり、回転ビームの別の実装形態も可能であることに留意されたい。例えば、異なるフォーム(正方形、楕円形、三角形など)がプロファイリングされ得、回転スポット61又は回転ビーム62の大きさ、長さ及び厚さ等も、スラリー4(の層)を硬化させるためにスラリー4(の層)に適用される間、現場で変化され得ることが想定される。更に、
図2B及び
図2Cの実施形態では、端点62aと中心点62bとは、それぞれ回転線62の異なる位置にあり得る。
【0043】
更なる例示的実施形態では、放射源6は、溶融又は焼結プロセスを使用してスラリー4の層を硬化させるためのレーザを含む。すなわち、硬化プロセス中にスラリー4の層中の研磨粒子を共に(完全に)溶融又は焼結し、その後、硬化されたスラリー4の層を形成する選択的レーザ溶融法又は選択的レーザ焼結法が使用され得る。
【0044】
図3は、本発明の有利な実施形態によるスラリー4の層の概略図を示す。この有利な実施形態では、前の硬化されたスラリー4の層の断面積4aは、後の硬化されたスラリー4の層の断面積4bと異なる。別の言い方をすれば、最終的な研磨物品1が層毎に積層及び印刷されるだけでなく、回転露光の大きさを変化させることにより、回転露光によって露光及び硬化されるスラリー4の層の断面積4a、4bが次第に大きくなるか又は小さくなる。したがって、研磨物品1の層は、最終フォームの所望の断面積が得られるまで次第に大きくなる断面積4a、4bを有して印刷される。更に、前層よりも小さい又は大きい後続層を有することが可能であり、半径プロファイル、凹状プロファイル又は任意の他の自由形状を有する研磨物品1を得ることを可能にする。
【0045】
このようにして、研磨物品1は、更により効率的な層毎の方式で印刷及び積層され得、それにより、その断面積は、スラリー4の各(堆積された)層に関して高い精度で調整され得る。
【0046】
したがって、
図3に示される更に別の実施形態では、断面積4a、4bは、円形断面積を含む。
図3を参照すると、(実質的に)円形フォームを含む研磨物品1に関して、例えば回転露光の半径を変えることにより、後続のスラリー4の層の断面積4bは、先行する(硬化された)スラリー4の層の断面積4aと異なる。これは、それぞれの堆積されたスラリー4の層に対して実施され得、研磨物品1は、異なる半径で積層される。
【0047】
例示的実施形態では、硬化されたスラリー4の層の解像度は、5μm未満、例えば1μmである。本明細書中に既に記載したように、最終フォームの精度は、μmのオーダーであるべきである。従来技術の方法では、その精度は、研磨物品の層に向けられる照明又はエネルギー源のピクセルサイズによって限定され、数十ミクロンのオーダー、例えば50μmである。スラリー4の層に回転露光を適用することにより、フォームは、露光の回転によって描画され、精度は、ピクセルサイズによってもはや限定されず、例えばミクロン精度の非常に高解像度の硬化されたスラリー4の層がもたらされる。
【0048】
スラリー4の層は、例えば、直径100μmを有するより大きいサイズの研磨粒子を含む混合物を含み得るものの、この実施形態では、硬化されたスラリー4の層に回転露光を適用することにより、解像度は、依然として5μm未満、例えば1μmであり、フォームは、依然として高精度で正確であるが、当然のことながら、より大きいサイズの研磨粒子のために、硬化されたスラリー4の層により「表面粗さ」が生じる可能性があることに言及することに注目すべきである。
【0049】
更なる例示的実施形態では、研磨粒子は、ダイヤモンド粒子、立方晶窒化ホウ素粒子、ボラゾン粒子、金属粒子、セラミック粒子、ガラス粒子、粉体粒子及び/若しくは前駆体又は焼結助剤粒子の1つ以上を含み、研磨物品1を層毎に製造するための多様な材料の使用を可能にする。この実施形態で説明されるように、研磨粒子は、適切な研磨特性を有し、スラリー4中の研磨粒子として、粒子の任意の複合体又は組み合わせ、例えばダイヤモンド及び金属粒子の複合体が使用され得ることに留意されたい。例示的な例として、金属粒子は、黄銅/又は鋼結合粒子を含み得る。
【0050】
更に別の例示的実施形態では、スラリー4は、スラリー4の新たな層のための異なる組成物を含む。すなわち、異なるスラリー組成物が研磨物品1の新たな層に対して使用され、それにより異なる組成物の層を含む研磨物品1がもたらされる。これは、研磨物品1の異なる層に粒度の異なる構造体又は研削砥粒を提供する、特に予備研削工具と磨き工具とを組み合わせたものを製造するのに有利である。
【0051】
更に別の実施形態では、スラリー4は、結合剤、任意選択の充填剤及び/又は添加剤を更に含む。結合剤は、スラリー4の硬化前及び/又は硬化中、スラリー4中の研磨粒子間の凝集力を向上させて、研磨粒子の配列を強化することができる。任意選択の充填剤及び添加剤により、スラリー4の特定の特性を向上させて、その硬化を強化し、それにより更に良好な品質の最終研磨物品1を提供することができる。結合剤、任意選択の充填剤及び/又は添加剤(例えば、焼結助剤)は、当業者に周知の任意の適切な材料を、これらの材料が含まれる場合、本明細書中に記載される方法実施形態の工程が実行され得ると仮定して含み得、使用され得る。例示的な例として、任意選択の充填剤は、炭酸カルシウム、ガラス、コランド及び/又はシリコンカーバイドを含み得る。更なる例示的実施形態として、印刷プロセス後に焼結工程を追加して、最終製品にガラス化した材料又は金属結合材料を提供し得る。更なる態様によれば、本発明は、本明細書中に記載される実施形態のいずれか1つによる研磨物品1を含む研磨作業工具11を製造するための付加製造方法にも関する。研磨作業工具11は、固定研磨プロセス(研削、ホーニング、サンディングなど)及び遊離研磨プロセス(磨き、ラッピングなど)を含む研磨物品1を使用した任意の砥粒加工プロセスで使用するように構成される。更に、研磨作業工具11は、砥粒加工プロセスのための任意の適切な作業工具を含み得、例示的な例としては、サンディングペーパー、研磨ディスク、研削ニードル及び研削パッドが挙げられる。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態による研磨工具11の概略図を示す。(
図4に示される)実施形態では、研磨工具11は、本体13と、研磨物品1を含む研磨リム14とを含む砥石ホイール12を含む。砥石ホイール12の円形形状は、正確なフォームで製造され得、本体13及び研磨リム14の両方は、本明細書中に記載される方法実施形態のいずれか1つによって適切な層毎の方式で製造及び印刷され得る。
【0053】
研磨物品1を含む研磨リム14は、研削のための任意の適切な研磨粒子を含み得、すなわち能動的な研削のための研磨工具11の研磨部分である。更に、
図3に示すように、研磨リム14は、本体13の周縁部に設けられる。
【0054】
研磨リム14を含む砥石ホイール12は、砥石ホイールの周縁部(すなわち研磨リム14)が被加工物に接触して、例えば平坦な表面を生成する周辺研削プロセスに適している場合がある。
【0055】
これを念頭に置いて、
図4に示される特定の実施形態では、研磨リム14は、研磨物品1の少なくとも1つの層の厚さtを有する。例えば、研磨物品1の1つの層の厚さが5μmである場合、研磨リム14は、5μmの厚さtを有する。例示的な範囲として、厚さtは、3~10mmであり得る。ある実施形態では、
図4に示すように、砥石ホイール12は、少なくとも1mm、例えば250mmの半径rを有する。本明細書中に記載される方法実施形態を使用すると、1000mmを超える半径rを有する砥石ホイール12を製造することが可能である。
【0056】
研磨工具11に関する更なる特定の実施形態では、本方法は、(
図4に示すように)研磨工具11にボア15を形成することを更に含む。当業者に周知のように、ボア15は、研磨工具11を例えば研削盤のスピンドルに取り付けることを可能にし得る。付加製造プロセス中にボア15を形成することにより、これにより例えば研磨工具11が既に印刷及び製造された後にボア15を形成するための別個の外部工程を有することなく、そのような研磨工具11の製造を更に一層簡略化することができる。
【0057】
研磨工具11に関連する他の実施形態では、本方法は、例えば、研削盤の研削リングシャフトとのアライメントのための支持リング要素16を研磨工具11上に形成することを更に含む。
【0058】
研磨リム14を含む砥石ホイール12に関連する実施形態は、例示的実施形態であり、砥石ホイール12上の(能動)研磨部分の他の可能な実装形態も想定され得ることを重ねて述べる。例えば、
図5に示される更に別の例示的実施形態では、砥石ホイール12は、研磨物品1を含む研磨面リム17を含み得る。研磨面リム17は、砥石ホイール12の表面、例えば外面に設けられ得る。そのような研磨面リム17は、砥石ホイールの面(すなわち研磨面リム17)が被加工物の平坦面又は曲面に接触した状態で使用される、例えば砥石ホイールの面が凹又は凸(光学)面に対して角度を成す正面研削プロセス(例えば、光学用途及び磨き用途)に適している場合がある。
図4に関して本明細書中で記載した実施形態と同様に、研磨面リム17は、研磨物品1の1つの層の厚さt(例えば、5μm)及び少なくとも1mm(更に1000mを超える)半径も有し得る。
【0059】
他の可能な実装形態は、全体研磨面(すなわち砥石ホイール12の全面が研磨物品1を含む)を含む砥石ホイール12又は更に全体が研磨物品1を含む(すなわち本体13及び研磨リム14(又は研磨面リム17)の両方が研磨物品1を含む)砥石ホイール12を含む。
【0060】
更に、本明細書中に記載される方法実施形態に関して、研磨物品1は、気孔及び冷却構造を含み得る。これらは、例えば、より大きいサイズの研磨粒子を含むスラリー4の層を堆積させることによって製造され得る。
【0061】
更に、本明細書中に記載される方法実施形態に関して、新規のスラリー4の新たな層を堆積させるためにスラリー4の未硬化部分を除去する更なる工程が実施され得る。未硬化のスラリー4は、例えば、運び去られること又はスクレーパにより掻き取られることによって除去され得、未硬化のスラリー4は、再利用され得、効率的な付加製造のための廃棄スラリー4の減少及びそのより良好な再利用につながる。
【0062】
研磨物品1が印刷された後に追加の(熱)処理を適用するために、(本明細書中に記載される方法実施形態に対する)追加の工程が実施され得る。追加の(熱)処理の種類は、最終的な結合の種類に依存し、一例として、金属の樹脂結合剤の潜在的な熱硬化並びにセラミック/ガラス質結合剤の脱バインダ処理及び焼結が適用されて、最終的な結合系に至る場合がある。スラリー4の層上の放射源6を少なくとも部分的に遮断するために、スラリー4の層に実質的に平行に、且つ放射源6とスラリー4の層との間に配置されるマスキングスクリーンを提供するために更に別の方法工程が実施され得る。マスキングスクリーンは、高解像度及び高精度の硬化されたスラリー4の層を提供するために、例えばμmのオーダーのスリットも含み得る。
【0063】
上記の方法実施形態は、研磨物品1を層毎に製造するための付加製造装置を使用して実施され得る。
図6の本発明の装置の実施形態の概略図に示すように、装置は、基板2と、基板2上にスラリー4の層を堆積させるように配置されたスラリー堆積機7であって、スラリー4は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、スラリー堆積機7と、スラリー4の新たな層を堆積させる前に、スラリー4の層を硬化させるために、スラリー4の層に放射源6を適用するように配置された放射ユニット8とを含み、放射源6は、回転露光を含む。
【0064】
上記の方法実施形態と同様に、基板2は、透明基板及び/又は箔基板2を含み得、スラリー4は、ペースト、樹脂、分散体、懸濁体などとして実装され得、混合物は、液体と、(印刷された)研磨物品1を最終的に形成する研磨パーティーとを含む。放射源6によって硬化されるスラリー4の層(の一部)は、(未硬化のスラリー4の)縞模様部分として
図6に示される。
【0065】
更なる実施形態(
図6に示される)では、放射ユニット8は、レーザデバイスを含み、レーザデバイスは、スラリー4の層を硬化させるための任意の適切なレーザを含み得る。例示的な例として、レーザデバイスは、パルス又は連続波レーザ出力を有する固体レーザ若しくは半導体レーザ又は更に放射源6を(パターン化された)線量で適用するためのコンピュータ数値制御(CNC)レーザを含み得る。
【0066】
図6に示される更に別の実施形態では、本発明の装置は、研磨物品1を少なくとも部分的に表す1つ以上の硬化されたスラリー4の層を保持するように構成されたステージ3を更に含む。
図1に示すように、ステージ3は、基板2に対して移動可能に配置され、1つ以上の硬化されたスラリー4の層のX-Y-Z位置を制御することができ、Z位置は、基板2に垂直なステージ3の高さ位置(すなわち、ステージ3は、基板2から上昇し、基板2に向けて下降する)であり、X-Y位置は、基板2に対して平行である。
【0067】
Z位置を制御することにより、ステージ3は、放射源6が適用されるそれぞれ前及び後に、1つ以上の硬化されたスラリー4の層を基板2上の(新規の)スラリー4の層と接触させること及び接触させないようにすることができる。このサイクルを繰り返して、研磨物品1を適切な層毎の方式で積層することができる。ステージ3のX-Y位置を制御することにより、ステージ3上の1つ以上の硬化されたスラリー4の層は、新規の堆積されたスラリー4の層と接触する前(又は更にその間/後)に基板2に対して平行に正確に配置され得る。
【0068】
図6に示される例示的実施形態では、本発明の装置は、基板2を供給し、移動させ、受け取るための基板ハンドリングシステム20、21を更に含む。基板ハンドリングシステム20、21は、基板制御ユニット20及び基板ローラ21を含む。基板ローラ21は、
図6の基板ローラ21上の方向矢印によって示されるように、基板2を移動させるために回転可能に配置された基板供給ロール及び基板受け取りロールを含む。基板制御ユニット20は、基板ローラ21の回転を、そのパラメータ、例えば速度及び開始/停止コマンドを含めて制御することができる。
【0069】
本明細書に記載されるように、スラリー4の層は、それを硬化させるために基板2上に堆積される。したがって、基板ハンドリングシステム20、21を有することにより、スラリー4の効率的な搬送(及びその可能な除去)が提供される。基板ハンドリングシステム20、21に関する他の実施形態についての更なる情報は、国際公開第2015/107066号パンフレットに記載され得る。
【0070】
図6に示される本発明の装置の更に別の例示的実施形態では、装置は、スラリー堆積機7と放射ユニット8とに接続された制御ユニット9を更に含み、制御ユニット9は、本明細書中に記載される本発明の方法実施形態のいずれかの工程を実行するように構成される。これにより、研磨物品1の付加製造のプロセスを自動的に制御することを可能にし得る。例示的な例として、制御ユニット9は、予め決定された(層)量のスラリー4を基板2上に堆積させるようにスラリー堆積機7を制御することができ、且つ/又はスラリー4の層上に放射源6を予め決定された時間(すなわち特定の長さの露光時間)にわたって適用するように放射ユニット8を制御することができる。図示の実施形態では、放射源6は、研磨物品1上のスポットが、明確に定義された半径によって研磨物品の部品を「書き込む」ための移動円パターンとして提供されることを示すために、中心から外れた状態で示されている。
【0071】
他の可能な例として、制御ユニット9の実施形態を、ステージ3に関して本明細書中に記載される実施形態と組み合わせることができる場合、1つ以上の硬化されたスラリー4の層のX-Y-Z位置を制御することができる。例えば、制御ユニット9は、ステージ3に接続され得(
図1を参照されたい)、ステージ3のZ位置を、新規の堆積されたスラリー4の層と接触するように下降させ、硬化後にスラリー4の層から上昇させるように制御することができる。
【0072】
同様に、更に別の可能な例では、制御ユニット9の実施形態を、本明細書中に記載される基板ハンドリングシステム20、21の実施形態と組み合わせることができる場合、基板2上に堆積されたスラリー4の層を搬送するように基板2の供給を制御することができる。例えば、制御ユニット9は、
図1に示すように、基板制御ユニット20に接続され得、基板2上のスラリー4の層の搬送を制御し得る。
【0073】
更に別の実施形態では、装置は、例えば、基板2の表面と相互作用するワイパの形態のスラリーハンドリングアセンブリを備え得る。スラリーハンドリングアセンブリは、各堆積層から未使用のスラリーを(再)回収し、例えばスラリー材料を再調整するようにも配置される。特に、スラリー組成物が高価な材料(例えば、ダイヤモンド又は他の超砥粉)を含む場合、スラリーハンドリングアセンブリによるスラリー材料の再利用により、高いコストメリットがもたらされる。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法によって作成された硬化層のスタックの概略頂面図を示す。
【0075】
この実施形態では、放射源6は、少なくとも放射に曝露されるスラリー4の層のレベルにおいて、実質的に非円形の断面を有するビームを発生させるように構成される。
【0076】
一例として、ビームの矩形スポットを使用して硬化層を作成するが、スポットは、例えば、正方形、楕円形、菱形、三角形などとして概説した異なる形状も有し得る。
【0077】
本方法は、スラリー4の層が、スポットが固定されるが、所定の向きにある間にスポットからの放射に曝露されることを含む。このようにして、形成される研磨物品1の第1の硬化層63は、放射スポットと実質的に同じ形状で印刷される。次の工程において、このプロセスは、研磨物品の第1の硬化層63の上に次のスラリーの層を提供し、このスラリーの層をスポット63内の放射に曝露させることによって繰り返される。この実施形態によれば、この次の工程において、スポットは、スポットの中心64の周りで所定の角度αにわたって回転される。その結果、研磨物品の次の硬化層63aは、研磨物品の第1の硬化層と同じ形状を有するが、所定の角度αにわたって回転する。
【0078】
複数の硬化層に関して1つの層から次の層へと繰り返すことにより、所定の角度の大きさ及び研磨物品の層数に応じて層間のオーバラップ部が円形形状を有するか又は円形形状に近い、相互に回転した研磨物品の硬化層のスタックが形成される。
図7は、第1の層63(実線)、第2の層63a(一点鎖線)及び第3の層63b(破線)に関する層(又はスポット位置)のスタックの構造を概略的に示す。円形のオーバラップ部に近づけるために、任意の数の硬化層並びにスポットの形状及び対称性に応じて適切に選択された1つの層から次の層への回転角度に関して、層毎の露光を繰り返すことができることが理解されるであろう。
【0079】
図8は、本発明の一実施形態による、研磨物品を層毎に製造する方法で使用される露光ビームのスポットを生成するためのソースの概略図を示す。
【0080】
この実施形態によれば、放射源6は、LED又はレーザデバイスを含み得る複数のアドレス指定可能な光ビーム源72、すなわちピクセルを有する光源マトリックス70を含む。
【0081】
放射源は、形状に対応するパターン74に従って光ビーム源72を作動させることによって提供され得る任意の形状のスポットを生成するように構成される。
【0082】
パターンは、マトリックス70内で光ビーム源を選択することによって作成される。パターンは、スポットを画定する開いた輪郭又は塗りつぶされた輪郭のいずれかであり得る。マトリックスの解像度が十分である(すなわちマトリックス内に比較的多数のピクセルを有する)場合、パターンは、円形ドット、円環、楕円、円弧、矩形ブロック又は輪郭線等になり得る。
【0083】
一例として、
図8は、8×8のアドレス指定可能なピクセルを有する光源マトリックス70を示す。しかしながら、マトリックスの他のピクセルサイも実現可能である。特に、ピクセル数が大きくなるほど、生成されるスポット及びパターンの解像度が高くなる。更に、光源マトリックス内のピクセルは、正方形、矩形、ドット形状などであり得る。
【0084】
図8では、活性化されたピクセル72は、「×」で示され、この例ではパターン74として菱形の開いた輪郭を形成する。
【0085】
光源マトリックス上のパターンを回転させることにより、
図2A~
図2Dで説明した回転スポットと同様の効果を達成することができる。更に又は代わりに、
図7を参照して説明したように、層毎に成長させた研磨物品の回転層を重ね合わせることにより、円形研磨物品を作成するのと同様の効果を達成することができる。
【0086】
光源マトリックス上のパターンを回転させる代わりに、露光中、光源マトリックス上の固定パターンに対するステージ(ここでは図示せず)の回転を使用して研磨物品を作成することができる。
【0087】
上記では、本発明を、図面に示すいくつかの例示的実施形態を参照して説明した。いくつかの部分又は要素の修正形態及び代替実装形態が可能であり、添付の特許請求の範囲に定義される保護の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨物品(1)を層毎に製造するための付加製造の方法であって、
スラリー(4)の層を堆積させることであって、前記スラリー(4)は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、堆積させることと、
スラリー(4)の新たな層を堆積させる前に、前記スラリー(4)の層を硬化させるために、前記スラリー(4)の層に放射源(6)を適用することと
を含み、前記放射源(6)は、プロファイルスポット(61)を有する回転ビームであって、前記プロファイルスポットを前記スラリー(4)の層の中央点の周りで円運動において移動させるように構成される回転ビームを含む、方法。
【請求項2】
前記ビームは、回転プロファイルスポットを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射源(6)は、溶融又は焼結プロセスを使用して前記スラリー(4)の層を硬化させるためのレーザを含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前の硬化されたスラリー(4)の層の断面積(4a)は、後の硬化されたスラリー(4)の
新たな層の断面積(4b)と異なる、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記断面積(4a、4b)は、円形断面積を含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記硬化されたスラリー4の層の解像度は、5μm未満、例えば1μmである、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記研磨粒子は、ダイヤモンド粒子、立方晶窒化ホウ素粒子、ボラゾン粒子、金属粒子、セラミック粒子、ガラス粒子、粉体粒子及び/若しくは前駆体又は焼結助剤粒子の1つ以上を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリー(4)は、前記スラリー(4)の新たな層のための異なる組成物を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリー(4)は、結合剤、任意選択の充填剤及び/又は添加剤を更に含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項10】
基板(2)上に堆積された前記スラリー(4)の層を、前記基板(2)を移動させることによって搬送することを更に含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記スラリー(4)の新たな層を堆積させるために、前記硬化されたスラリー(4)の層を引き離すことを更に含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項12】
研磨物品(1)を層毎に製造するための付加製造装置であって、
基板(2)と、
前記基板(2)上にスラリー(4)の層を堆積させるように配置されたスラリー堆積機(7)であって、前記スラリー(4)は、液体と研磨粒子とを含む混合物を含む、スラリー堆積機(7)と、
スラリー(4)の新たな層を堆積させる前に、前記スラリー(4)の層を硬化させるために、前記スラリー(4)の層に放射源(6)を適用するように配置された放射ユニット(8)と
を含み、前記放射源(6)は、前記スラリー(4)の層の中央点の周りで円運動において移動するように構成された回転可能なプロファイルスポット(61)を有する回転ビームを含む、付加製造装置。
【請求項13】
前記ビームは、回転スポットを有する、請求項
12に記載の付加製造装置。
【請求項14】
前記放射ユニット(8)は、レーザデバイスを含む、請求項
12又は13に記載の付加製造装置。
【国際調査報告】