(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】金属切削用のねじ切り工具
(51)【国際特許分類】
B23G 5/06 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
B23G5/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500040
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022067573
(87)【国際公開番号】W WO2023274964
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビーラー, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ, フリードリヒ
(57)【要約】
細長い本体を備える金属切削用のねじ切り穿孔工具であって、細長い本体が、前端(1)から軸方向後方に延在する切削セクション(4)を備える、ねじ切り穿孔工具。切削セクション(4)は、軸方向に延在するチップフルート(5)と、軸方向に延在するランド(6)と、複数の軸方向に離間した歯(8)と、を備え、複数の歯の各歯(8)は、チップフルート(5)からランド(6)にわたって延在する。複数の歯の各歯は、軸方向前方に面する前面フランク(10)および軸方向後方に面する背面フランク(11)のうちの少なくとも一方と、半径方向外側に面する山頂(12)であって、山頂(12)が、前面フランク(10)および背面フランク(11)のうちの少なくとも一方の各々に接続する、半径方向外側に面する山頂(12)と、少なくとも1つの切れ刃(14、15、16)と、を備える。複数の歯の切れ刃は、山頂切れ刃(14)のセットを含み、各山頂切れ刃(14)は、複数の歯のそれぞれの1つの歯(8)の山頂(12)とチップフルート(5)との交差部によって形成されている。複数の歯の切れ刃は、前面仕上げ刃(15)のセットを含み、各前面仕上げ刃(15)は、複数の歯のそれぞれの1つの歯(8)の前面フランク(10)とチップフルート(5)との交差部によって形成されている。複数の歯の切れ刃は、背面仕上げ刃(16)のセットを含み、各背面仕上げ刃(16)は、複数の歯のそれぞれの1つの歯(8)の背面フランク(11)とチップフルート(5)との交差部によって形成されている。複数の歯のうちの最も前方の歯(9)は、第1の単一の切れ刃を備え、第1の単一の切れ刃は、山頂切れ刃のセットの山頂切れ刃(14)のうちの1つである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い本体を備える金属切削用のねじ切り穿孔工具であって、前記細長い本体が、
前端(1)と、後端(2)と、前記前端(1)から前記後端(2)まで延在する中心長手方向軸線(3)と、を有し、
前記中心長手方向軸線(3)を中心として回転方向(7)に回転可能に構成されており、かつ
前記前端(1)から軸方向後方に延在する切削セクション(4)を備え、
前記切削セクション(4)が、
軸方向に延在するチップフルート(5)、
回転の方向(7)において前記チップフルート(5)に接続し、前記チップフルート(5)に後続する、軸方向に延在するランド(6)、
複数の軸方向に離間した歯(8)、
を備え、前記複数の歯の各歯(8)が、前記チップフルート(5)から前記ランド(6)にわたって延在し、かつ
軸方向前方に面する前面フランク(10)および軸方向後方に面する背面フランク(11)のうちの少なくとも一方と、
半径方向外側に面する山頂(12)であって、前記山頂(12)が、前記前面フランク(10)および前記背面フランク(11)のうちの前記少なくとも一方の各々に接続する、半径方向外側に面する山頂(12)と、
少なくとも1つの切れ刃(14、15、16)と、
を備え、
前記複数の歯の前記切れ刃が、山頂切れ刃(14)のセットを含み、各山頂切れ刃(14)が、前記複数の歯のそれぞれの1つの歯(8)の前記山頂(12)と前記チップフルート(5)との交差部によって形成されている、
ねじ切り穿孔工具において、
前記複数の歯の前記切れ刃が、前面仕上げ刃(15)のセットを含み、各前面仕上げ刃(15)が、前記複数の歯のそれぞれの1つの歯(8)の前記前面フランク(10)と前記チップフルート(5)との交差部によって形成されており、
前記複数の歯の前記切れ刃が、背面仕上げ刃(16)のセットを含み、各背面仕上げ刃(16)が、前記複数の歯のそれぞれの1つの歯(8)の前記背面フランク(11)と前記チップフルート(5)との交差部によって形成されており、
前記複数の歯のうちの最も前方の歯(9)が、第1の単一の切れ刃を備え、前記第1の単一の切れ刃が、前記山頂切れ刃のセットの前記山頂切れ刃(14)のうちの1つであることを特徴とする、
ねじ切り穿孔工具。
【請求項2】
前記ねじ切り穿孔工具が、半径方向切込み深さに合わせて構成されており、前記各山頂切れ刃(14)の半径方向内側延在部が、最大でも前記半径方向切込み深さである、請求項1に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項3】
前記各山頂切れ刃(14)は、前記山頂切れ刃(14)から回転中心軸線(3)までの半径方向距離が前記各山頂切れ刃(14)に沿って軸方向後方に増加するように傾斜している、請求項1または2に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項4】
前記複数の歯のうちの次の2番目の前方の歯(17)が、第2の単一の切れ刃を備え、前記第2の単一の切れ刃が、前記山頂切れ刃のセットの前記山頂切れ刃(14)のうちの別の1つである、請求項1から3のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項5】
前記山頂切れ刃のセットが、最大で5つ、好ましくは最大で3つの山頂切れ刃を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項6】
前記各前面仕上げ刃(15)および前記各背面仕上げ刃(16)が、最大半径方向切込み深さの15~70%、好ましくは30~35%の最大仕上げ切込み深さに合わせて構成されている、請求項2から5のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項7】
前記前面仕上げ刃(15)のセットおよび前記背面仕上げ刃(16)のセットが、前記山頂切れ刃(14)のセットの軸方向後方に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項8】
前記複数の歯の各2つの軸方向に連続する歯間で軸方向に、谷底面が、前記各2つの軸方向に連続する歯のうちの軸方向前方の歯の前記背面フランク(11)を、前記各2つの軸方向に連続する歯のうちの軸方向後方の歯の前記前面フランク(19)に接続し、
第1の谷底面(22)によって接続された前記背面フランク(11)および前記前面フランク(10)のうちの少なくとも一方が、前記背面仕上げ刃のセットのうちの1つの背面仕上げ刃(16)または前記前面仕上げ刃のセットのうちの1つの前面仕上げ刃(15)を備え、
第2の谷底面(23)によって接続された前記背面フランク(11)および前記前面フランク(10)の両方が、前記背面仕上げ刃のセットのうちの1つの背面仕上げ刃(16)および前面仕上げ刃のセットのうちの1つの前面仕上げ刃(15)を欠いており、
各第1の谷底面(22)の谷底半径方向距離(24)が、各第2の谷底面(23)の谷底半径方向距離(25)よりも大きい、
請求項1から7のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項9】
前記複数の歯が、第1の歯および第2の歯を含み、前記第2の歯が、前記第1の歯のすぐ軸方向後方に位置し、
前記第1の歯が、前記背面仕上げ刃のセットのうちの1つの背面仕上げ刃(16)を備え、
前記第2の歯が、前記前面仕上げ刃のセットのうちの1つの前面仕上げ刃(15)を備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項10】
前記前面仕上げ刃のセットが、単一の前面仕上げ刃(15)を含み、前記背面仕上げ刃のセットが、単一の背面仕上げ刃(16)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項11】
前記複数の歯のうちの少なくとも1つの歯が、2つの切れ刃を備え、前記2つの切れ刃が、前記山頂切れ刃のセットのうちの1つの山頂切れ刃(14)および前記背面仕上げ刃のセットのうちの1つの背面仕上げ刃(16)からなる、請求項1から10のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項12】
各山頂切れ刃(14)に隣接して、前記チップフルート(5)が、山頂すくい面(26)を備え、少なくとも各山頂すくい面(26)が、12°未満、好ましくは2~4°の山頂すくい角αを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項13】
前記チップフルート(5)が、前記中心長手方向軸線と平行に配置されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項14】
前記チップフルート(5)の一部、前記ランド(6)の一部、および前記複数の歯のうちの少なくとも2つの歯(8)の一部が、交換可能な切削インサート(30)上に位置し、前記少なくとも2つの歯の前記一部が、セットされた山頂切れ刃のうちの少なくとも1つの山頂切れ刃(14)と、前記背面仕上げ刃のセットのうちの少なくとも1つの背面仕上げ刃(16)と、前記前面仕上げ刃のセットのうちの少なくとも1つの前面仕上げ刃(15)と、を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【請求項15】
前記ねじ切り工具が、前記チップフルート(5)のうちの少なくとも2つと、前記ランド(6)のうちの少なくとも2つと、を備え、すべての前記少なくとも2つのランド(6)の前記複数の歯(8)が、前記回転方向(7)に整列して、前記チップフルート(5)によって中断された螺旋を形成する、請求項1から14のいずれか一項に記載のねじ切り穿孔工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削用のねじ切り穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばねじ接続など、雌ねじを有する1つの要素および雄ねじを有する1つの要素の形態の協働要素を備える金属部品が、多くの様々な分野で使用されている。その結果として、金属ワークピースに雌ねじを設けるための様々な異なる切削工具、特に、ねじ切りタップが開発されている。そのようなタップには、従来、細長体の回転軸線に沿って螺旋を形成するねじ山が設けられている。ねじ山は、螺旋ねじ山が各チップフルートとの各交差部にいくつかの切れ刃を提示するように、軸方向に延在するチップフルートによって中断されている。中断された螺旋ねじ山に沿った連続する切れ刃は、典型的には、軸方向後方に位置するほど、さらに半径方向外側に延在する。
【0003】
雌ねじを有する金属ワークピースを提供するための既知のプロセスは、最初に従来の穿孔工具を用いてワークピースに穴を予め穿孔することである。その後、ねじ切りタップが予め穿孔された穴に挿入される。次いで、ねじ切りタップが回転させられ、軸方向前方に押され、切れ刃が予め穿孔された穴の内面から材料を除去する。その結果、中断された螺旋ねじ山に沿った連続する歯が内面にさらに先へ先へと切り込み、それによって雌ねじが徐々に切削される。
【0004】
先行技術のねじ切りタップの問題は、いくつかの用途では、製造された雌ねじのフランクの表面仕上げが不十分であり得ることである。例えば、粗い表面は、ねじ山が動的な力を受けたときに亀裂の形成を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、先行技術の欠点を軽減し、それを用いることによって切削されたねじ山フランクの表面仕上げを改善する金属切削用のねじ切り穿孔工具を提供することである。この目的は、本発明によれば、請求項1に記載のねじ切り穿孔工具によって達成される。
【0006】
本発明は、細長い本体を備える金属切削用のねじ切り穿孔工具であって、細長い本体が、
前端と、後端と、前端から後端まで延在する中心長手方向軸線と、を有し、
中心長手方向軸線を中心として回転方向に回転可能に構成されており、かつ
前端から軸方向後方に延在する切削セクションを備え、
切削セクションが、
軸方向に延在するチップフルート、
回転の方向においてチップフルートに接続し、チップフルートに後続する、軸方向に延在するランド、
複数の軸方向に離間した歯、
を備え、複数の歯の各歯が、チップフルートからランドにわたって延在し、かつ
軸方向前方に面する前面フランクおよび軸方向後方に面する背面フランクのうちの少なくとも一方と、
半径方向外側に面する山頂であって、山頂が、前面フランクおよび背面フランクのうちの少なくとも一方の各々に接続する、半径方向外側に面する山頂と、
少なくとも1つの切れ刃と、
を備え、
複数の歯の切れ刃が、山頂切れ刃のセットを含み、各山頂切れ刃が、複数の歯のそれぞれの1つの歯の山頂とチップフルートとの交差部によって形成されており、
複数の歯の切れ刃が、前面仕上げ刃のセットを含み、各前面仕上げ刃が、複数の歯のそれぞれの1つの歯の前面フランクとチップフルートとの交差部によって形成されており、
複数の歯の切れ刃が、背面仕上げ刃のセットを含み、各背面仕上げ刃が、複数の歯のそれぞれの1つの歯の背面フランクとチップフルートとの交差部によって形成されており、
複数の歯のうちの最も前方の歯が、第1の単一の切れ刃を備え、第1の単一の切れ刃が、山頂切れ刃のセットの山頂切れ刃のうちの1つである、
ねじ切り穿孔工具に関する。
【0007】
したがって、本発明の発明に関するねじ切り穿孔工具は、1セットの切れ刃および2セットの仕上げ刃を含む、少なくとも1つのランドを備える。切れ刃のセットは、動作中にワークピース内の材料を半径方向内側に切削する山頂切れ刃を含む。これにより、ねじ溝、例えば螺旋ねじ溝がワークピース内に形成され、螺旋ねじ溝のターン間に残された材料が雌ねじを形成する。ねじ溝は、切削されているねじ山のそれぞれの1つの連続するターンの1つのねじ山フランクによって各軸方向側で区切られている。
【0008】
複数の歯のうちの最も前方の歯は、山頂切れ刃のうちの1つである単一の切れ刃を備える。
【0009】
2セットの仕上げ刃は、1セットの前面仕上げ刃および1セットの背面仕上げ刃を含む。動作中、各前面仕上げ刃は、切削されているねじ山の軸方向後方に面するねじ山フランク上で動作し、各背面仕上げ刃は、切削されているねじ山の軸方向前方に面するねじ山フランク上で動作する。最も前方の歯は1つの山頂切れ刃を備えるが、前面および背面仕上げ刃の両方を欠いているため、前面および背面仕上げ刃の各々は、最も前方の歯上の少なくとも山頂切れ刃の軸方向後方に位置する。したがって、動作中、前面および背面仕上げ刃は、少なくとも1つの山頂切れ刃の回転方向後方に続く。これにより、前面および背面仕上げ刃は、少なくとも1つの山頂切れ刃によってねじ山フランク上に残された任意の粗い表面を滑らかにする。その結果、ワークピース内に製造される雌ねじのねじ山フランクの表面仕上げが改善される。
【0010】
本発明によるねじ切り穿孔工具は、ワークピース内の内側面から材料を除去することによって金属ワークピース内に雌ねじを切削するのに適しており、例えば雌ねじ切りタップを構成する。さらに、本ねじ切り穿孔工具は、ワークピース内に予め穿孔された穴内で動作させられるのに適しており、ねじ切り穿孔工具は、予め穿孔された穴の内径よりも大きい外径を有する。
【0011】
ねじ切り穿孔工具は、前端と、後端と、前端から後端まで延在する中心長手方向軸線と、を有する細長い本体を備える。ねじ切り穿孔工具は、中心長手方向軸線を中心として回転方向に回転可能に構成されている。使用中、回転軸線は、好ましくは、ワークピース内に予め穿孔された穴の中心軸線である。動作させられたとき、ねじ切り穿孔工具は、好ましくは、同じ中心長手方向軸線を中心として回転させられ、同じ中心長手方向軸線に沿って前方に前進させられる。好ましくは、ワークピースは、ISO P材料などの金属である。ワークピースは、例えば、ワークピースのねじ穴にねじ込まれる、例えばねじとしての雄ねじを有する締結具によって別の構成要素に取り付けられる構成要素であり得る。
【0012】
ねじ切り穿孔工具は、前端に切削セクションを有する。好ましくは、切削セクションは、細長体の軸方向長さ部分である。一実施形態によれば、ねじ切り穿孔工具は、取付け接触面を提供するための後端の結合セクションなどのさらなるセクションを備える。任意選択的に、取付け接触面は、回転可能な機械スピンドルまたは回転可能な機械スピンドル用のアダプタに結合されるように設計される。好ましくは、結合セクションは、本体と一体のシャフトである。
【0013】
切削セクションは、軸方向に延在するチップフルートと、軸方向に延在するランドと、を備える。ランドは、チップフルートに回転方向に後続する。ランドおよびチップフルートの両方は、回転方向先行縁および回転方向後続縁を有し、好ましくはチップフルートの後続縁はランドの先行縁である。
【0014】
任意選択的に、チップフルートは、本体の切削セクションの周囲の半径方向に面する表面において、中心長手方向軸線と平行に配置されるか、回転中心軸線に対して傾斜して配置されるか、または曲線、例えば螺旋に沿って配置される。軸方向に真っ直ぐなチップフルートとも呼ばれる、中心長手方向軸線と平行なチップフルートは、チップをより小さな断片に粉砕するのに有利である。傾斜したまたは螺旋チップフルートは、チップを工具に沿って後方に搬送するのに有利である。
【0015】
切削セクションは、複数の歯をさらに備える。複数の歯の各歯は、チップフルートからランドにわたって延在する。したがって、好ましくは、各歯は、チップフルートに回転方向に後続し、チップフルートの後続縁/ランドの先行縁に、任意選択的にランドの後続端までずっと回転方向後方に延在する。
【0016】
一実施形態によれば、ねじ切り工具は、チップフルートのうちの少なくとも2つ、およびランドのうちの少なくとも2つ、例えば2つ、3つ、4つ、または5つを備える。少なくとも2つのランドの各々は、回転方向に先行するチップフルートおよび回転方向に後続するチップフルートによって画定されている。好ましくは、複数の歯の各々は、先行するチップフルートの後続縁から後続するチップフルートの先行縁まで延在する。好ましくは、すべての少なくとも2つのランドの複数の歯は、回転方向に整列して、チップフルートによって中断された螺旋を形成する。あるいは、複数の歯は、チップフルートによって各々中断された2つまたは3つの平行な螺旋などの少数の平行な螺旋を形成する。各ターン内にいくつかの歯が存在することによって、各切れ刃はより小さな切込み深さで切削し得る。別の利点は、切削負荷がねじ切り穿孔工具の周りにより均一に分散され、その結果、工具のバランスがより良好になることである。
【0017】
好ましくは、複数の歯は、軸方向において、ランドにわたって歯と平行に延在する溝、言い換えれば谷によって分離される。各歯は、山頂と、軸方向前方に面する前面フランクおよび軸方向後方に面する背面フランクのうちの少なくとも一方と、を備える。任意選択的に、すべての歯は、前面フランクおよび背面フランクの両方を有する。あるいは、最も前方の歯は、前端に延び出る山頂を有し、それにより前面フランクを欠いており、かつ/または最後方の歯は、後端に延び出る山頂を有し、それにより背面フランクを欠いている。
【0018】
さらに、各歯は少なくとも1つの切れ刃を含む。複数の歯のうちの少なくとも1つの歯は、山頂切れ刃の形態の切れ刃を有する。各山頂切れ刃は、それぞれの歯の山頂とチップフルートとの交差部によって形成されている。複数の歯のうちの少なくとも1つの歯は、前面仕上げ刃の形態の切れ刃を有する。各前面仕上げ刃は、それぞれの歯の前面フランクとチップフルートとの交差部によって形成されている。複数の歯のうちの少なくとも1つの歯は、背面仕上げ刃の形態の切れ刃を有する。各背面仕上げ刃は、それぞれの歯の背面フランクとチップフルートとの交差部によって形成されている。
【0019】
各切れ刃は、動作中にねじ切り穿孔工具が回転させられ軸方向に前進させられたときに、ワークピースに接触しワークピースから材料を除去するように配置されている。任意選択的に、ねじ切り穿孔工具は、フランクまたは山頂とチップフルートとの交差部によって形成された、切れ刃を構成しない他の縁を備える。そのような縁は、例えば、回転方向の前方にある切れ刃に対して後ろに設定され得る。
【0020】
好ましくは、切れ刃から回転中心軸線までの半径方向距離は、1つの歯から次の歯まで軸方向後方に増加する。少なくとも2つのランドを有し、すべてのランドの複数の歯が回転方向に整列して螺旋を形成する実施形態では、好ましくは、切れ刃から回転中心軸線までの半径方向距離は、複数の歯によって形成された螺旋に沿って軸方向後方に1つの歯から次の歯まで増加し、次の歯は、回転方向後方に続くランド上に位置する。
【0021】
一実施形態によれば、ねじ切り穿孔工具は、半径方向切込み深さに合わせて構成されている。実施形態によれば、各山頂切れ刃の半径方向内側延在部は、最大でも半径方向切込み深さである。切込み深さは、切削されるチップの厚さに対応する。したがって、山頂切れ刃は、好ましくは、角領域/縁領域、およびフランクに沿った内側への半径方向切込み深さに対応する小さな距離にわたって延在する。
【0022】
任意選択的に、各山頂切れ刃は、山頂切れ刃から回転中心軸線までの半径方向距離が各山頂切れ刃に沿って軸方向後方に増加するように傾斜している。一実施形態によれば、切削セクションは、前端に面取り部を備え、面取り部は、複数の歯のテーパ歯を備える。好ましくは、面取り部の各歯は、面取り部のすべての他の歯と同じ主要プロファイル、言い換えれば同じ主要長手方向断面に基づいて設計される。主要プロファイルの半径方向外側部分が切り取られて、面取り部の各歯の特定の個体プロファイルが作成される。これにより、前方に面して傾斜した山頂が実現される。このような傾斜した山頂とチップフルートとの交差部によって形成された山頂切れ刃は、傾斜した山頂切れ刃を形成し得る。傾斜した山頂切れ刃は、ねじ切り穿孔工具がワークピースに入るときの切削負荷を有利に低減する。別の利点は、切削力が切れ刃にわたってより均一に分散されることである。
【0023】
好ましくは、山頂切れ刃のセットは、最大で5つ、好ましくは最大で3つの山頂切れ刃を備える。この実施形態は、短い穴、特に止まり穴内にねじ山を切削するのに有利である。
【0024】
一実施形態によれば、ねじ切り穿孔工具の切削セクションは、複数の歯のうちの2~5つの歯を備え、各歯は最大5つの山頂切れ刃のうちの1つを有する。好ましくは、最大5つの山頂切れ刃の各々は、面取り部内に構成され、最大5つの山頂切れ刃の各々は、上述のように傾斜した山頂切れ刃である。好ましくは、最大5つの山頂切れ刃の各々の傾斜した山頂切れ刃は、同じ傾斜を有する。好ましくは、面取り部の各山頂切れ刃は、中心長手方向軸線に対して傾斜した共通軸線に沿って延在する。これにより、各山頂切れ刃は、等しい厚さでチップを切削するように設計されており、その結果、切削力が山頂切れ刃の間で均等に分散される。
【0025】
一実施形態によれば、前面仕上げ刃のセットおよび背面仕上げ刃のセットは、山頂切れ刃のセットの軸方向後方に位置する。これにより、仕上げ刃は、すべての山頂切れ刃の後に続く。これによる利点は、背面仕上げ刃および前面仕上げ刃によってそれぞれ平滑化された、切削されるべきねじ山のねじ山前面フランクおよびねじ背面フランクが、半径方向に切削する山頂切れ刃の後続の通過による悪影響を受けないことである。代わりに、背面フランクおよび前面フランクの最終仕上げは、仕上げ刃によって提供される。一実施形態によれば、最前方の背面仕上げ刃は、最後方の山頂切れ刃と同じ歯上に位置する。あるいは、各山頂切れ刃は単一の切れ刃である。あるいは、仕上げ刃のうちの最前方の仕上げ刃は、面取り部の歯のセットのすぐ軸方向後方に続く歯上に位置する前面仕上げ刃である。
【0026】
任意選択的に、前面仕上げ刃のセットは、単一の前面仕上げ刃を含み、背面仕上げ刃のセットは、単一の背面仕上げ刃を含む。チップフルートのうちの少なくとも2つおよびランドのうちの少なくとも2つを含む実施形態では、任意選択的に、ランドのうちの1つの複数の歯のみが、単一の前面仕上げ刃を有する1つの歯と、単一の背面仕上げ刃を有する1つの歯と、を有し、他のランドのすべての歯は、前面仕上げ刃および背面仕上げ刃を欠いている。チップフルートのうちの少なくとも2つおよびランドのうちの少なくとも2つを備える他の実施形態では、任意選択的に、すべてのランド内の複数の歯は、単一の前面仕上げ刃を有する1つの歯と、単一の背面仕上げ刃を有する1つの歯と、を含む。
【0027】
一般に、セットのうちのいずれかの単一の切れ刃を有するすべての歯は、他のセットのうちのいずれかの切れ刃を欠いている。例えば、単一の前面切れ刃を有する歯は、背面および前面仕上げ刃の両方を欠いている。
【0028】
好ましくは、各前面仕上げ刃および各背面仕上げ刃は、最大半径方向切込み深さの15~70%、好ましくは15~50%、より好ましくは30~35%の最大仕上げ切込み深さに合わせて構成されている。これにより、仕上げ刃が十分に深く切削して、それらの前方の山頂切れ刃によって切削された表面を滑らかにする一方で、過度の追加トルクを導入しないことが保証される。仕上げ刃は、小さな薄いチップを切削し、研削面と同様の表面仕上げを生成し得る。
【0029】
一実施形態によれば、複数の歯の各2つの軸方向に連続する歯間で軸方向に、谷底面が、各2つの軸方向に連続する歯のうちの軸方向前方の歯の背面フランクを、各2つの軸方向に連続する歯のうちの軸方向後方の歯の前面フランクに接続する。第1の谷底面によって接続された背面フランクおよび前面フランクのうちの少なくとも一方は、背面仕上げ刃のセットのうちの1つの背面仕上げ刃または前面仕上げ刃のセットのうちの1つの前面仕上げ刃を備える。したがって、第1の谷底面は、チップフルートとの交差部において、1つの背面仕上げ刃もしくは1つの前面仕上げ刃またはその両方によって画定されている。第2の谷底面に関して、背面フランクは、背面仕上げ刃のセットのうちの1つの背面仕上げ刃を欠いており、前面フランクは、前面仕上げ刃のセットのうちの1つの前面仕上げ刃を欠いている。したがって、第2の谷底面は、仕上げ刃なしのフランク間に位置する。
【0030】
一実施形態によれば、各第1の谷底面の谷底半径方向距離は、各第2の谷底面の谷底半径方向距離よりも大きい。この実施形態は、ねじ切り穿孔工具の製造に有利な設計を提供する。前面仕上げ刃および背面仕上げ刃は、2つの連続する歯間の溝の谷底面の両側上に位置するため、両方の仕上げ刃を同じ砥石車によって研削することができる。さらに、第1の谷底面および仕上げ刃を有する溝は、第2の谷底面を有する溝よりも軸方向にわずかに狭く、言い換えれば、幅方向により小さい。それにより、動作中、仕上げ刃を有するフランクのみが切削し、一方、他のフランクは、山頂切れ刃の後方またはフランク仕上げ刃の後方のいずれかで動いて一掃する。したがって、第1の谷底面を有する溝および第2の谷底面を有する溝の両方を、同じ砥石車で有利に製造することができる。第1の谷底面を研削するとき、砥石車は、第2の谷底面を研削するときよりも短い半径方向距離だけランド内に前進させられる。
【0031】
好ましくは、各山頂切れ刃に隣接して、チップフルートは、山頂すくい面を備え、少なくとも各山頂すくい面は、12°未満、好ましくは6°未満、より好ましくは2~4°の山頂すくい角を有する。山頂すくい角は正であるが、いくつかの実施形態では負であってもよい。一般に、小さなすくい角を有する切れ刃は、正のすくい角が大きい切れ刃よりも高い切込み深さおよび速度で切削が可能な強力な切れ刃を構成する。切込み深さおよび速度が大きいことは、生産性に関して有利である。小さなすくい角を有する切れ刃の別の利点は、すくい角が大きい切れ刃で切削されたチップよりも切削されたチップが短いことである。短いチップは、チップフルートを通して排出するのがより容易であるため、止まり穴内に雌ねじを切削する場合に好ましい。しかしながら、小さなすくい角を有する切れ刃は、すくい角が大きい切れ刃よりも粗い表面を残す傾向がある。したがって、本発明の発明に関する仕上げ刃は、山頂切れ刃に小さなすくい角を有するねじ切り穿孔工具に特に有利である。
【0032】
一実施形態によれば、チップフルートの一部、ランドの一部、および複数の歯の少なくとも2つの歯の一部が、交換可能な切削インサート上に位置する。少なくとも2つの歯の一部は、セットされた山頂切れ刃のうちの少なくとも1つの山頂切れ刃と、背面仕上げ刃のセットのうちの少なくとも1つの背面仕上げ刃と、前面仕上げ刃のセットのうちの少なくとも1つの前面仕上げ刃と、を備える。好ましくは、山頂切れ刃のセットの各山頂切れ刃は、複製可能な切削インサートの歯上に位置する。これにより、切れ刃および仕上げ刃を交換することができ、それによって、刃が摩耗したときにねじ切り穿孔工具全体を廃棄する必要がない。
【0033】
任意選択的に、ねじ切り穿孔工具には、内部冷却剤、例えば、歯の出口まで延在する半径方向分岐部を有するかまたは有さない軸方向に延在する中央冷却剤チャネルなどが設けられる。
【0034】
以下、添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明によるねじ切り穿孔工具の第1の実施形態の斜視図である。
【
図2】第1の実施形態の概略的な長手方向側面図である。
【
図4a】動作中のある位置にある
図2に対応する概略図である。
【
図4b】動作中の別の位置にある
図2に対応する概略図である。
【
図4c】動作中のさらに別の位置にある
図2に対応する概略図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態のすべてのランドの切れ刃を示す図である。
【
図6a】トレッド切削穿孔工具の代替的な実施形態の
図2に対応する長手方向側面図である。
【
図6b】トレッド切削穿孔工具の代替的な実施形態の
図2に対応する長手方向側面図である。
【
図6c】トレッド切削穿孔工具の代替的な実施形態の
図2に対応する長手方向側面図である。
【
図7】ホルダに取り付けられた切削インサートであって、ホルダおよび切削インサートが一緒にねじ切り穿孔工具の別の実施形態を形成する、切削インサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
すべての図は概略図であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、それぞれの実施形態を明らかにするために必要な部分のみを示しており、一方、他の部分は省略されているかまたは単に示唆されている場合がある。別途指示がない限り、同様の参照符号は、異なる図中の同様の部分を指す。
【0037】
図1~
図4を参照して、本発明によるねじ切り穿孔工具の第1の例示的な実施形態を説明する。ねじ切り穿孔工具の実施形態は、雌ねじ切りタップの形態である。タップは、前端1と、後端2と、前端1から後端2まで延在する中心長手方向軸線3と、を有する細長い本体を備える。タップは、軸線3を中心として回転方向7に回転可能に構成されている。
【0038】
後端2において、タップは、一体型シャフト27の形態の結合セクションを有する。
【0039】
切削セクション4は、前端1から軸方向後方に延在する。切削セクション4は、3つの軸方向に延在するチップフルート5および3つの軸方向に延在するランド6を傷つける。各チップフルート5は、中心長手方向軸線3に対して平行に延在する。各ランド6は、チップフルート5のそれぞれに関連付けられて接続されている。回転方向7において、各ランド6は、関連付けられたチップフルート5の後に後続している。複数の軸方向に離間した歯8が、関連付けられたチップフルート5からランドの各々にわたって延在する。ランド6の歯8は、回転方向7に整列して、フルート5によって中断された螺旋を形成する。さらに、切削セクション4は、複数の切れ刃14、15、16を備える。切れ刃14、15、16から中心長手方向軸線3までの半径方向距離は、複数の歯8によって形成された螺旋に沿って軸方向後方に向かうにつれて1つの歯8から次の歯にかけて増加し、ここで、次の歯8は、回転方向後方に続くランド6上に位置する。
【0040】
すべてのランド6およびチップフルート5は対応する特徴を有するため、以下では、ランド6のうちの1つ、その上に位置する歯、およびそれに関連付けられたチップフルート5のみを、
図2および
図3を参照して説明する。
【0041】
例示的な実施形態では、最も前方の歯9を除く歯8の各々は、軸方向前方に面する前面フランク10と、軸方向後方に面する背面フランク11と、を備える。
【0042】
半径方向外側に面する山頂12は、歯8の前面フランク10と背面フランク11とを接続する。最も前方の歯9は、前面フランク10を欠いている。代わりに、その山頂12は、前面1の前端面13内に延び出る。前端面13は、軸線3に対して垂直である軸方向平面を形成し、前方に面する。
【0043】
上述した第1の実施形態のタップは、前端面13内に切れ刃が配置されていない。他の実施形態では、前端面は、半径方向に延在する穿孔切れ刃を有する穿孔先端を構成してもよく、またはガイドピンもしくは他の好適な前面が設けられてもよい。それにより、第1の機能を有する前端と、雌ねじを提供するための発明に関するねじ切り穿孔工具の一実施形態を含む後部と、を備える組合せ工具が提供される。
【0044】
複数の歯8は、山頂切れ刃14のセットを備える。各山頂切れ刃14は、山頂12とチップフルート5との交差部によって形成されている。さらに、複数の歯8は、前面仕上げ刃15のセットおよび背面仕上げ刃16のセットを備える。各前面仕上げ刃15は、前面フランク10とチップフルート5との交差部によって形成されている。各背面仕上げ刃16は、背面フランク11とチップフルート5との交差部によって形成されている。
【0045】
軸方向において、各山頂切れ刃14は、山頂にわたって延在する。さらに、各山頂切れ刃14は、山頂の各側面に短い距離だけ延在する。したがって、山頂切れ刃14は、山頂の2つの角/縁にわたって延在し、さらにフランクに沿って軸線3に向かって半径方向内側に短い距離だけ延在する。半径方向内側への短い距離は、タップの半径方向の切込み深さに対応する。例えば、M12の雌ねじの切削に適したサイズのタップは、0,1mmの切込み深さを有し、M24の雌ねじの切削に適したタップは、0,15mmの切込み深さを有する。しかしながら、M12の雌ねじの切削に適したサイズのタップは、最大0,5mmの切込み深さを有し得、M24の雌ねじの切削に適したタップは、最大0,86mmの切込み深さを有し得る。
【0046】
前面および背面仕上げ刃15、16は、いずれも、山頂切れ刃14の切込み深さの33%の深さで切削するように構成されている。
【0047】
最も前方の歯9は、単一の切れ刃、または言い換えれば、セットのうちの1つのみからの、ただ1つの切れ刃を備える。具体的には、最も前方の歯9の単一の切れ刃は、第1の山頂切れ刃14である。また、2番目に前方の歯17は、第2の山頂切れ刃14の形態の単一の切れ刃を備える。
【0048】
切削セクションは、面取り部18を備え、ここでは、最も前方の歯9を含む歯8のうちの3つがテーパ状になっている。テーパ歯8の山頂12は前方に向かって傾斜しており、それによって、チップフルート5との交差部に傾斜した山頂切れ刃14が形成されている。回転中心軸線3から傾斜した山頂切削部14の前端までの半径方向距離20は、回転中心軸線3から山頂切れ刃14の後端までの半径方向距離21よりも小さい。3つの傾斜した山頂切れ刃14は、
図4の側面図に見られるように、同じ傾斜を有し、共通の傾斜軸線19に沿って延在する。
【0049】
2つの軸方向に連続する歯8は、ランド6にわたって歯8間に平行に延在する溝/谷によって分離されている。溝において、谷底面は、2つの連続する歯8のフランク10、11を接続する。具体的には、谷底面は、各2つの軸方向に連続する歯の軸方向前方の歯の背面フランク11と軸方向後方の歯の前面フランク10とを接続する。第1の谷底面22は、背面仕上げ刃16を備える背面フランク11と、前面仕上げ刃15を備える前面フランク10とを接続する。第2の谷底面23は、いずれも仕上げ刃15、16を有さない前面および背面フランク10、11を接続する。中心長手方向軸線3から第1の谷底面22の底部までの谷底半径方向距離24は、中心長手方向軸線3から第2の谷底面23の底部までの谷底半径方向距離25よりも大きい。
【0050】
背面仕上げ刃16は、最も後方の山頂切れ刃14と同じ歯上に位置する。前面仕上げ刃15は、軸方向後方の次に続く歯8上に位置する。したがって、背面仕上げ刃16および前面仕上げ刃15は、第2の谷底面22のそれぞれ一方の側面上に位置する。
【0051】
前面仕上げ刃のセットは、単一の前面仕上げ刃15からなり、背面仕上げ刃16のセットは、単一の背面仕上げ刃16からなり、これらは両方とも、すべての山頂切れ刃14の軸方向後方に位置する。
【0052】
山頂切れ刃のセットは、3つの傾斜した山頂切れ刃14からなる。
【0053】
各山頂切れ刃14は、チップフルート5の表面の半径方向外側領域によって形成された山頂すくい面26を有する。
図3の横断面に見られるように、山頂すくい面26は、山頂切れ刃14および中心長手方向軸線3に対して接線方向の直線が3°である山頂すくい角αを形成する。例示的な実施形態では、3つの山頂切れ刃すべての山頂すくい角αは同じである。
【0054】
切れ刃14、15、16を保持する歯8の軸方向後方には、切れ刃のない歯8が存在する。
【0055】
記載された実施形態では、すべての歯8は、簡単な製造のために同じプロファイルに基づいている。砥石車を使用してタップを製造するとき、溝/谷は、歯8の所望のピッチを有する螺旋隆起部が形成されるように円筒状ブランクに研削される。面取り部18を製造するとき、隆起部の半径方向外側部分は、傾斜した山頂12を形成するために研削され除去される。仕上げ刃15、16のためのフランクを作成するために、砥石車は円筒状ブランク内の半径方向にあまり深く押し込まれず、その結果、より大きな谷底半径方向距離24を有する第1の谷底面22が形成される。谷は、同じ形状を有するが、面取り部における2つの傾斜した山頂12間の谷よりも幅が狭い。したがって、すべての谷/溝は、同じ砥石車を使用して形成される。最後に、チップフルートが研削され、ここでは、山頂切れ刃14、前面および背面仕上げ刃15、16、ならびに山頂すくい面26を含むすくい面が形成される。後方および前面仕上げ刃15、16の切込み深さは、第2の谷底面22の谷底半径方向距離の増加によって決定される。
【0056】
図5に、ねじ切り穿孔工具の第2の実施形態の切れ刃を表す図を示す。第2の実施形態は、ただ1つのランド6が、単一の前面仕上げ刃15からなる前面仕上げ刃15のセットと、単一の背面仕上げ刃16からなる背面仕上げ刃16と、を備え、これらは両方ともランド6のすべての山頂切れ刃14の軸方向後方に位置するという点でのみ、第1の実施形態と異なる。
【0057】
図4a~
図4cおよび
図5の図を参照して、タップの形態の第1の実施形態によるねじ切り穿孔工具を動作させる方法の一例について説明する。この例では、タップは、別の工具によって金属ワークピース28内に予め穿孔された穴内に雌ねじを形成するように動作させられる。
【0058】
タップは、中心長手方向が穴の中心長手方向軸線と位置合わせされた状態で、穴の開口部に挿入される。タップは、切削のための回転方向である回転方向7に回転させられると同時に、タップは軸方向前方に前進させられる。各ランド6の最前方の歯9の各々が、最初に穴の内側面と係合する。工具が回転させられ、軸方向に前進させられると、最前方の歯9の山頂切れ刃14が、穴の内側面に浅い螺旋ねじ溝の第1のターンを切削する。
【0059】
タップがさらに前進させられると、ランド6の2番目に前方の歯17が穴に入り、最も前方の歯9によって切削された浅いねじ溝内に入る。同時に、最も前方の歯9は、ねじ溝の第2のターンの切削を続ける。2番目に前方の歯17は、後に続き、浅いねじ溝の底部からさらなる材料を切削し、ここでは、ねじ溝はより深くなる。このプロセスは、面取り部18のすべての歯8について繰り返され、螺旋溝のさらなるターンが切削される。面取り部18の歯8は、それらの山頂切れ刃によって、それらの指定された最大半径方向切込み深さでタップの半径方向に切削する。これにより、山頂切れ刃14は、それらが穴内で切削する螺旋溝の底部よりもフランクにおいてより粗い表面を残す。しかしながら、小さな山頂すくい角αのために、短いチップが切削される。さらに、真っ直ぐなチップフルート5は、タップが回転するときにチップがチップフルートの内側壁に押し付けられるため、チップを破壊する。
【0060】
図4cでは、タップは軸方向前方によりさらに前進させられている。見て分かるように、
図4cでは、タップは、面取り部18の最も後方の山頂切れ刃14が穴内の螺旋溝の第2のターン内にある穴内の位置に到達している。同じ歯8上に位置する背面仕上げ刃16もまた、ねじ溝の第2のターン内にある。前面仕上げ刃15は、第1のターンのねじ溝内にある。タップが回転させられ、前進させられると、前面および背面仕上げ刃15、16は、軸方向に、切削されたねじ溝内ですべての山頂切れ刃14の後に続き、切削されたねじ溝のフランクの粗い表面を滑らかにする。
【0061】
単一の前面仕上げ刃15を有する歯の軸方向後方に続く歯8は、切れ刃を欠いている。これらの歯は、ねじ溝内で切削歯8の後に続き、動作中にタップを誘導し中心に置く安定歯である。
【0062】
止まり穴の場合、最終的に、タップの前端1は穴の底部に到達する。その後、雌ねじが完成し、3つの底部ターンを除くそのフランクが滑らかにされる。
【0063】
貫通穴の場合、最終的に、タップは、前面仕上げ刃15が、タップが挿入された穴の開口部とは反対側の穴から出るまで、穴を通って前進させられる。その後、雌ねじが完成し、そのすべてのフランクが滑らかにされる。
【0064】
最後に、タップは逆方向に回転させられ、ワークピースから取り外される。
【0065】
本発明によるねじ切り穿孔工具の代替の例示的な実施形態を、
図6a~
図6cを参照して説明する。
【0066】
図6aおよび
図6bに示す実施形態は、単一の前面仕上げ刃15および単一の背面仕上げ刃16の位置のみが第1の実施形態と異なる。
【0067】
図6aの実施形態では、前面および背面仕上げ刃15、16は、面取り部18の軸方向後方の溝/谷のすぐ軸方向後方に続く溝/谷のそれぞれ一方の側面上に位置する。面取り部18のすべての歯8は、山頂切れ刃14の形態のそれぞれの単一の切れ刃を有する。前面仕上げ刃15は、軸方向後方の次に続く歯8上に位置し、背面仕上げ刃16は、軸方向のその次に続く歯8上に位置する。
【0068】
また、
図6bの実施形態では、面取り部18のすべての歯8は、山頂切れ刃14の形態のそれぞれの単一の切れ刃を有する。前面および背面仕上げ刃15、16は、軸方向後方の次に続く歯8のそれぞれの側面上に位置する。
【0069】
図6cは、すべての谷底面が同じ半径方向谷底距離29を有する一実施形態を示している。さらに、前面仕上げ刃のセットおよび背面仕上げ刃のセットは両方とも、2つの仕上げ刃15、16を含む。この実施形態では、第1の対の前面および背面仕上げ刃15、16は、面取り部18内の最も後方の溝/谷のそれぞれ一方の側面上に位置する。第2の対の前面および背面仕上げ刃15、16は、そのすぐ軸方向後方に続く溝/谷のそれぞれ一方の側面上に位置する。最も前方の歯9は、1つの山頂切れ刃14の形態の単一の切れ刃を備える。次の2番目の前方の歯17は、1つの山頂切れ刃14および1つの背面仕上げ刃16の形態の2つの切れ刃を備える。面取り部の最も後方の歯8は、1つの山頂切れ刃、1つの前面仕上げ刃15、および1つの背面仕上げ刃16の形態の3つの切れ刃を備える。面取り部の軸方向後方の第1の歯は、前面仕上げ刃15の形態の単一の切れ刃を備える。
【0070】
図7では、チップフルート5の一部、ランド6の一部、および5つの歯8の一部を備える、切削インサート30。歯の部分は、3つの山頂切れ刃14と、1つの背面仕上げ刃16と、1つの前面仕上げ刃15と、を備える。切削インサート30はホルダ31に取り付けられており、切削インサート30およびホルダ31はともにねじ切り穿孔工具の一実施形態を形成する。
【国際調査報告】