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特表2024-5245182つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム
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  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図1a
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図1b
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図2a
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図2b
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図3a
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図3b
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図4
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図5a
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図5b
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図6
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図7
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図8
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図9
  • 特表-2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】2つの電気モータを有する1つまたは2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240628BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20240628BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240628BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240628BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60K1/02
B60L9/18 L
B60L15/20 S
H02P5/46 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500050
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 AT2022060241
(87)【国際公開番号】W WO2023279130
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】A50560/2021
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(31)【優先権主張番号】A50907/2021
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518151386
【氏名又は名称】エーヴィエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フバー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー、フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ドムニ、ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ラングタラー、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ピラト、ガンター
(72)【発明者】
【氏名】トチテルマン、ジュルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ステイネク、レネ
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
5H572
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB25
3D235CC12
3D235DD12
3D235DD13
3D235FF32
3D235FF35
3D235HH32
5H125AA01
5H125BA04
5H125CA02
5H125CD05
5H125EE08
5H125EE09
5H572AA03
5H572BB07
5H572EE03
5H572HC01
5H572LL01
5H572LL29
5H572LL34
5H572LL45
5H572MM09
5H572PP01
(57)【要約】
本発明は、それぞれ出力伝達経路(3、4)を介して従動部(2、2a、2b)とそれぞれ接続された電気モータ(EM1、EM2)を有する、車両の1つまたは複数の電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御する方法(100)に関し、次の作業ステップを有する。出力伝達経路(3、4)および/または電気モータ(EM1、EM2)の少なくとも1つの機械コンポーネント(5)で発生している回転数とトルクの値が決定(101a)され、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの機械コンポーネント(5)の損傷状態の値が判定され、少なくとも1つの機械コンポーネント(5)の損傷状態を考慮したうえで電気駆動式のアクスル(1a、1b)が制御(107)される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ1つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、車両の2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するための方法(100)において、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して第1の従動部(2a)と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して第2の従動部(2b)と接続され、または、共同で従動部を駆動する2つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、1つの電気駆動式のアクスル(1)を制御するための方法において、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して従動部と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して従動部と接続され、
次の作業ステップを有し、
前記出力伝達経路(3、4)および/または前記電気モータ(EM1、EM2)の少なくとも1つの機械コンポーネント(5)で発生している回転数とトルクの値が決定(101a)され、
発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)に関する損傷記録の値が判定(102a)され、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態の値が判定され、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態または相対的な損傷状態を考慮したうえで、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)が、制御(107)される、方法。
【請求項2】
損傷状態が、または異なる前記出力伝達経路(3、4)の相互の相対的な損傷状態が、考慮されるように、特に、損傷状態が、または異なる前記出力伝達経路(3、4)の相互の相対的な損傷状態が、できる限り平衡化されるように、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が制御され、または
1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)が制御される、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するために、または、
1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)を制御するために、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)が負荷を受けないように、両方の前記出力伝達経路(3、4)のうちの少なくとも一方における伝達比が適合化され、または、両方の前記電気モータ(EM1、EM2)の間での出力分割が適合化される、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項4】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態または相対的な損傷状態の現在の値が第1の限界値を上回っているかどうかチェック(105a)され、および、
前記第1の限界値を上回っている場合、前記第1の電気モータ(EM1)により提供されるトルクおよび/または前記第2の電気モータ(EM2)により提供されるトルクについての閾値が、特に提供されるトルクによって引き起こされる損傷記録に依存して規定(106a))され、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が制御され、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこの電気駆動式のアクスル(1)が制御される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項5】
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するために、または、
1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)を制御するために、
両方の前記出力伝達経路(3、4)のうちの少なくとも一方における伝達比が、閾値が規定されている前記電気モータ(EM1;EM2)を別の、特にさらに高い、回転数を有する別の動作モードで作動させることができるように適合化され、または、両方の前記電気モータ(EM1、EM2)の間での出力分割が、閾値が規定されている前記電気モータ(EM1、EM2)がいっそう低いトルクを提供または消費すればよいように適合化される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
損傷状態は次のように判定され、
【数6】
または
【数7】
ここでnは回転数、Tはトルク、Δtは時間ステップ幅、pは少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)についての損傷記録の強度を表すパラメータであり、前記パラメータpは各々の前記機械コンポーネント(5)について設定される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項7】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの電気コンポーネント(7)の温度の値が決定(101b)され、
温度の値に依存する少なくとも1つの前記電気コンポーネント(7)に関する損傷記録の値と、事前定義された時間帯にわたる損傷記録から得られる損傷状態の値とが判定(102b)され、
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)が、少なくとも1つの前記電気コンポーネント(7)の損傷状態を追加的に考慮したうえで制御される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項8】
次の作業ステップをさらに有し、
前記電気コンポーネント(7)の損傷状態または相対的な損傷状態の現在の値が第2の限界値を上回っているかどうかチェック(105b)され、
前記第2の限界値を上回っている場合、前記第1の電気モータ(EM1)および/または前記第2の電気モータ(EM2)により提供される出力についての閾値が、特に温度によって引き起こされる損傷記録に依存して規定(106b)され、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動アクスル(1)が、提供される出力についての閾値を考慮したうえで制御される、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの電気コンポーネント(7)が温度の値に依存して冷却(108)される、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)および/または少なくとも1つの電気コンポーネント(7)について割合ごとの最大の損傷状態(Dmax(t))が提供(103a、103b)され、および、
判定された損傷状態(D(t))と割合ごとの最大の損傷状態(Dmax(t))とに基づいて相対的な損傷状態(R(t))が判定(103a、103b)され、相対的な損傷状態に関わる第1の限界値および/または第2の限界値が定義される、請求項8または9に記載の方法(100)。
【請求項11】
両方の前記電気モータの制御にあたって、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の効率が、または、1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)の効率が、さらに考慮され、前記第1および前記第2の電気モータ(EM1、EM2)の動作点の組合せは、両方の前記電気モータ(EM1、EM2)のうちの少なくとも1つにおけるトルクについての閾値および/または出力についての閾値を順守したうえで効率の観点から最善の動作が生じるように選択される、請求項9または10に記載の方法(100)。
【請求項12】
それぞれ1つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、車両の2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するためのシステム(20)において、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して第1の従動部(2a)と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して第2の従動部(2b)と接続され、または、
共同で従動部を駆動する2つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、1つの電気駆動式のアクスル(1)を制御するためのシステムにおいて、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して従動部と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して従動部と接続され、
前記出力伝達経路(3、4)および/または前記電気モータ(EM1、EM2)の少なくとも1つの機械コンポーネント(5)で発生している回転数とトルクの値を決定するための手段(21)と、
発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)に関わる損傷記録の値を判定するための、および、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態の値を判定するための、手段(22)と、
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を、または、1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)を、少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態を考慮したうえで制御する手段(23)と、
を有する、システム(20)。
【請求項13】
請求項12に記載のシステム(20)を有している車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ1つの電気モータを有する、車両の2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステムに関し、第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して第1の従動部と接続され、第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して第2の従動部と接続され、または、共同で従動部を駆動する2つの電気モータを有する、1つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステムに関し、第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して従動部と接続され、第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して従動部と接続される。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、2つの電気モータにより駆動されるドライブトレーンやEアクスルが多く知られている。
【0003】
たとえば特許文献1は、車両のための2つの駆動機械を有するドライブトレーンを開示しており、それぞれ1つの駆動機械が部分トランスミッションと機械的に連結されて、これに作用する。これらの駆動機械は電気式の駆動機械として構成され、それぞれ1つの部分トランスミッションと直接的に機械的に連結されて、別々に、または共同で、作動可能である。
【0004】
特許文献2は、2つのモータを有する電動車両で適用される、電気式のドライブトレーンのための制御装置および方法を開示している。この制御装置および方法の目的は、出力中断なしにギヤシフトを実現することにある。
【0005】
このようなドライブトレーンの制御は効率ベースで行うことができる(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102011121819号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2450597号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"Shifting strategy and optimization for multi-mode E-axles", F. Bayer, cti Symposium,ベルリン,2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、2つの電気モータを有する電気駆動式のアクスルの長期的な信頼度を向上させ、または予測可能にすることにある。特に本発明の課題は、電気駆動式のアクスルの重要なコンポーネントの耐用期間を伸ばすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、独立請求項に記載の方法およびシステムによって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明は、それぞれ1つの電気モータを有する、車両の2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステムに関し、第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して第1の従動部と接続され、第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して第2の従動部と接続され、または、共同で従動部を駆動する2つの電気モータを有する、1つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法およびシステムに関し、第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して従動部と接続され、第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して従動部と接続され、次の作業ステップを有する。
●出力伝達経路および/または電気モータの少なくとも1つの機械コンポーネントで発生している回転数とトルクの値が決定され、
●発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの機械コンポーネントに関する損傷記録の値が判定され、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの機械コンポーネントの損傷状態の値が判定され、および、
●少なくとも1つの機械コンポーネントの損傷状態または相対的な損傷状態を考慮したうえで、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルが、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルが、制御される。
【0011】
電気モータとは、基本的に、モータおよび発電機として作動させることができる電気機械であると理解される。本発明の意味における機械コンポーネントは、歯車または軸受であるのが好ましい。
【0012】
本発明の意味における損傷記録の値は、コンポーネントの現在の動作によってコンポーネントが損傷する度合である。機械コンポーネントでは、損傷記録は特定の時点において、当該時点で機械コンポーネントに発生しているトルクおよび機械コンポーネントの回転数によって決定されるのが好ましい。電気コンポーネントでは、損傷記録の値を決定するために電気コンポーネントの温度が援用されるのが好ましい。
【0013】
本発明の意味における損傷状態の値は、コンポーネントの使用開始から現在までに生じた損傷記録の合計である。このとき、それぞれのコンポーネントが作動した時間割合が相応に考慮される。
【0014】
1つのコンポーネントが、当該コンポーネントについて最大限推奨される損傷状態に達したとき、超えるべきでない故障確率に達する。コンポーネントは、期待される耐用期間に達したときに、最大限推奨される損傷状態を超えるべきでない。期待される耐用期間にわたって最大限推奨される損傷状態に着目し、時間を通じて均等な損傷を想定すれば、各々の時点について、割合ごとの最大の損傷状態が得られる。
【0015】
本発明の意味における相対的な損傷状態の値は、当該時点における割合ごとの最大の損傷状態に対する現在の損傷状態の比率、特に商である。
【0016】
本発明によると、出力伝達経路によって形成される電気モータと従動部との接続部にたとえばクラッチなどの分離部材を設けることができ、それにより接続を一時的に分離可能である。
【0017】
2つの電気モータは、それぞれ1つの多段変速機を介して、それぞれ1つの第1の従動部または第2の従動部と接続されるのが好ましい。各々の従動部で、それぞれ個々の出力伝達経路の出力とトルクとが記録される。それぞれの出力伝達経路の間での出力分割またはトルク分割は、このような構造においては、最大出力が要求されるのでない限り、特定の限度内で自由に選択、変更することができる。
【0018】
本発明の根底にある思想は、電気駆動式のアクスルの制御にあたって機械コンポーネントの損傷状態を考慮することにある。
【0019】
従動回転数と従動トルクとによって定義される、電気駆動式のアクスルの特定の動作点が要求されたとき、動作ストラテジーにとって、その動作点を具体化するためのさまざまな選択肢や自由度がある。
【0020】
一方では、出力伝達経路が多段変速機を有している場合、各々のトランスミッションでギヤ段を選択することができる。ただしその際には、2つの電気モータのいずれもが最大の回転数を超えないようなギヤ段の組合せだけが許容されるように、留意すべきである。たとえばトランスミッションのニュートラルの位置が設定されることによって、一方の出力経路がトランスミッションにより遮断されたときには、他方の出力伝達経路が全出力を提供ことができなければならず、すなわち第2の電気モータは、要求される全トルクを印加することができなければならない。考えられる各々のギヤ段組合せについて、2つの電気モータまたは出力伝達経路の間のトルク分割は、動作ストラテジーで規定されるべき第2の自由度となる。
【0021】
このとき2つの電気モータのトルクの合計が重みづけされて、かつそれぞれの伝達比をもって、要求される従動トルクに相当していなければならない。それが意味するのは、他方の電気モータで結果として生じるトルクが許容される最大トルクを上回らない範囲内で、一方の電気モータでのトルクを自由に選択できるということである。したがって、電気駆動式のアクスルで要求される従動トルクが低いほど、電気モータでのトルクを選択する余地は広くなる。
【0022】
本発明により、関連する各々の機械コンポーネントについてそのつど現在の時点で、それまでに生じた損傷状態を監視することができる。損傷状態は、使用開始から現在までに生じた損傷記録から時間割合を考慮したうえで、すなわち損傷記録を積算することによって、決定される。特定の時点での損傷記録そのものは、当該時点で発生しているトルクならびに回転数から算出される。それが意味するのは、現在の損傷状態は以前の時点での損傷状態から、その間の期間中に生じた損傷記録を加算することによって決定できるということである。損傷記録は、そのつどの時点で生じるコンポーネント回転数ならびに機械コンポーネントで生じるトルクから、そのつど算出される。損傷状態の判定された値は、動作ストラテジーの適合化のために重要なだけではない。損傷状態の監視は、コンポーネントを交換しなければならないか、交換しなくてもよいかの決定にあたっても役立つ。そのつどの損傷状態に関する情報を基礎としたうえで、保守整備インターバルを車両固有に適合化することができ、工場訪問期限や、エンドユーザーのもとでの車両の使い方などの必要な記録を提供することができる。それによりコスト削減に加えて、ドライブトレーンの故障確率も低減される。
【0023】
このような種類の定期点検を、制御装置、車両メーカーのクラウドサービス、またはサードパーティーベンダーを通じて提供することができる。このような方策は、予知保全というキーワードでまとめることができる。
【0024】
全保有車両の管理にあたっても、機械コンポーネントのそのつどの損傷状態に関する知見が有益であり得る。たとえば運転者は、または全保有車両の運営者は、コンポーネントを保護するための方策を具体化するか、それとも引き続き稼働効率に焦点を合わせるかを決断することができる。全保有車両の運営者は、コンポーネントの損傷状態に関する情報をベースとして、損傷が多い走行と損傷が少ない走行に合わせて的確に車両を利用することもできる。
【0025】
本発明では、方法において、損傷状態が、または異なる出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、考慮されるように、特に、損傷状態が、または異なる出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、できる限り平衡化されるように、2つの電気駆動式のアクスルの場合の方法においてはこれらの電気駆動式のアクスルが制御され、または、1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルが制御されることが意図される。
【0026】
電気駆動式のアクスルのシステム設計から、最大限許容される、または最大限推奨される、損傷状態が、各々のコンポーネントと期待される耐用期間について定義されるのが好ましい。このときコンポーネントジオメトリー(たとえば歯車の幅や平歯車の半径)が考慮されるのが好ましい。最大限推奨されるこの損傷状態を超過することは、該当する機械コンポーネントのいっそう高い故障確率につながる。本発明により、着目する機械コンポーネント残りの耐用期間、または最大限推奨される損傷状態に達するまでの時間、および/または故障確率がそのつど相対的に平衡化されるように、1つの電気駆動式のアクスルまたは複数の電気駆動式のアクスルを制御できるようになる。このことは、一方では、システム全体の耐用期間の延長につながり、他方では、故障確率や、機械コンポーネントの補修または交換のための工場訪問の回数が減るという利点がある。
【0027】
これに加えて本方法の別の好ましい実施形態では、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルを制御するために、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルを制御するために、両方の出力伝達経路のうちの少なくとも一方における伝達比が、または、両方の電気モータの間での出力分割が、少なくとも1つの機械コンポーネントが負荷を受けないように、または定義された仕方でのみ負荷を受けるように、適合化される。それによっても、機械コンポーネントの均等な摩減を実現することができる。
【0028】
少なくとも1つの機械コンポーネントに関わる損傷記録が監視される。このとき事前に定義された定期的な間隔で、現在の損傷状態が、当該時点における最大限の割合ごとの損傷状態と全耐用期間にわたって照合され、すなわち、相対的な損傷状態が決定されるのが好ましい。このような間隔の定義は、時間ベースあるいは距離ベースで行うことができる。
【0029】
少なくとも1つの機械コンポーネントの損傷状態または相対的な損傷状態が臨界値を上回ったとき、この実施形態では2つの方策の間で選択をすることができる。両方の方策を適用することもできるのが好ましい。
【0030】
第1の方策は、該当するコンポーネントの出力経路のトランスミッションについてのストラテジーの適合化に相当する。当該機械コンポーネントがいくつかのギヤ段でのみ関わっている場合、それらのギヤ段を回避し、そのようにして、当該機械コンポーネントが作動する時間割合を減らすことが試みられる。当該機械コンポーネントが多段変速機のすべてのギヤ段に関わっていて、ドライブトレーンにおいてシフト部材の駆動側に配置されている場合には、最大の伝達比に切り換えられるのがよい。高い伝達比は、相応の電気モータでの負荷点を高い回転数かつ低いトルクのほうへシフトさせ、このことは一般にいっそう低い損傷記録につながる。当然ながらギヤの切換は、期待される負荷点を新たなギヤ段で出力損失なしにカバーできる場合にのみ、すなわち、電気モータでの回転数またはトルク制限によって制約されない場合にのみ、可能である。2つの出力伝達経路の間での出力分割およびトルク分割は、この場合には変わらずに保たれる。
【0031】
第2の方策は、出力伝達経路の間での出力分割またはトルク分割の適合化である。該当する少なくとも1つの機械コンポーネントが配置されている出力伝達経路で、他方の出力伝達経路に負担をかけたうえで、出力またはトルクが低減される。すなわち他方の出力伝達経路は、相応に引き上げられた出力または相応に引き上げられたトルクを提供しなければならない。この方策により、そのつど該当する出力伝達経路のすべての機械コンポーネントの損傷記録が低減される。すなわちこの方策は、出力伝達経路の複数のコンポーネントが該当するときにも可能である。両方の出力伝達経路の間でのトルク分割の適合化は、たとえば、該当する出力伝達経路のそれぞれの電気モータでの最大限可能なトルクまたは最大限可能な出力を引き下げることによって、間接的に行うことができる。この方法は、損傷が激しいほうの出力伝達経路でトルクが低減されるようなトルク配分を優先的に調整する。そして、トルク配分に関わる周辺条件を考慮したうえでの理想的な出力配分を、効率ベースで行うことができる。トルクを引き下げることで、両方の出力伝達経路の残存耐用期間を平衡化することができる。
【0032】
それに応じてこの方法は、別の好ましい実施形態において次の作業ステップを有する。
●少なくとも1つの機械コンポーネントの損傷状態または相対的な損傷状態の現在の値が第1の限界値を上回っているかどうかチェックされ、および、
●第1の限界値を上回っている場合、第1の電気モータにより提供されるトルクおよび/または第2の電気モータにより提供されるトルクについての閾値が、特に提供されるトルクによって引き起こされる損傷記録に依存して規定され、2つの電気駆動式のアクスルの場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこれらの電気駆動式のアクスルが制御され、または1つの電気駆動式のアクスルの場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこの電気駆動式のアクスルが制御される。
【0033】
電気モータにより提供されるトルクについての閾値は、当該電気モータを作動させることが許される最大のトルクを表すのが好ましい。閾値を低くすれば、従動部で要求される出力が、損傷が激しいほうの出力伝達経路を通じてカバーされる時間割合が低減される。このことは、損傷状態が第1の限界値を上回っている少なくとも1つの機械コンポーネントの保全につながる。
【0034】
閾値の順守も、少なくとも1つの機械コンポーネントに関して上で説明した方策を通じて実現されるのが好ましい。
【0035】
したがって本方法の別の好ましい実施形態では、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルを制御するために、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルを制御するために、両方の出力伝達経路のうちの少なくとも一方における伝達比が、閾値が規定されている電気モータを別の回転数を有する別の動作モードで作動させることができるように適合化され、または、両方の電気モータの間での出力分割が、閾値が規定されている電気モータがいっそう低いトルクを提供または消費すればよいように適合化される。
【0036】
機械コンポーネントの損傷について基準となるのは、これに発生しているトルクである。したがって、同じ出力のもとで回転数を引き上げることで、または、同じ回転数のもとでトルクを減らすことによって出力を引き下げることで、損傷記録を少なくすることができる。
【0037】
上述したどちらの方策を講じるのが好ましいかは、そのつどの効率を考慮したうえで規定されるのが好ましい。
【0038】
本方法の別の好ましい実施形態では、損傷状態は次のようにして判定される。
【数1】
または
【数2】
ここでnは回転数、Tはトルク、Δtは時間ステップ幅、pは少なくとも1つの機械コンポーネントについての損傷記録の強度を表すパラメータであり、パラメータpは各々の機械コンポーネントについて設定される。
【0039】
したがって損傷状態は、この実施形態では、ある程度の時間帯にわたる時間離散的な損傷記録の積算である。損傷記録は車両の個々のコンポーネントについて、車両の使用開始の日からライフサイクル全体にわたって記録されるのが好ましい。このようにして、個々のコンポーネントの損傷状態の正確な予測が可能となる。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本方法は次の作業ステップをさらに有する。
少なくとも1つの電気コンポーネントの温度の値が決定され、
温度の値に依存する少なくとも1つの電気コンポーネントに関する損傷記録の値と、事前定義された時間帯にわたる損傷記録から得られる損傷状態の値とが判定され、
2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルが、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルが、少なくとも1つの電気コンポーネントの損傷状態を追加的に考慮したうえで制御される。
【0041】
たとえば電気モータやインバータなどの電気コンポーネントでは、コンポーネント温度を通じて耐用期間が強く影響を受ける。電気コンポーネントの過熱は耐用期間短縮につながり、できる限り防止されるのがよい。制御ストラテジーのアダプティブな適合化によって、電気モータやインバータの過熱の確率が低減されてコンポーネント耐用期間が長くなる。そのためには、それぞれのコンポーネントの観察することが必要であり、たとえば電気モータやインバータに温度センサを装備することが必要である。電気モータやインバータの温度が事前に規定された最高温度を上回ると、制御器は次の方策によって当該コンポーネントの熱負荷を軽減する。
【0042】
電気駆動式のアクスルに要求される出力が、まず第1に、該当しない出力経路を通じて印加される。高温または過熱したコンポーネントを有する出力経路は、まだ不足している出力を提供することによって、まだ補助的にのみアクティブである。そうすれば出力分割が、低温のコンポーネントが優遇されるようにシフトする。過熱したコンポーネントで発生する損失出力が減り、このことはそれ以上の加熱を防止し、または冷却へとつながる。
【0043】
電気駆動式のアクスルに要求される出力を、1つの出力伝達経路だけを通じて印加することができるときは、該当するコンポーネントが据え付けられている出力伝達経路を、場合により前置されているトランスミッションを通じて遮断することができる。
【0044】
これら両方の方策が講じられ、該当するコンポーネントが再び容認可能な温度範囲に達した後、これらの方策を再び停止することができる。
【0045】
それに応じて、別の好ましい実施形態の方法は次の作業ステップをさらに有する。
電気コンポーネントの損傷状態または相対的な損傷状態の値が第2の限界値を上回っているかどうかチェックされ、
第2の限界値を上回っている場合、第1の電気モータおよび/または第2の電気モータにより提供される出力についての閾値が、特に温度によって引き起こされる損傷記録に依存して規定され、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルが、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動アクスルが、提供される出力についての閾値を考慮したうえで制御される。
【0046】
提供される出力について閾値が規定されることで、温度に関わる損傷記録を制限することができる。それにより、それぞれの動作時間について正当化される値に達するまで、損傷状態の増大を抑えることができる。
【0047】
別の好ましい実施形態では、電気コンポーネントが温度の値に依存して冷却される。それによって損傷記録を低減することができる。
【0048】
別の好ましい実施形態では、本方法は次の作業ステップを有する。
●少なくとも1つの機械コンポーネントおよび/または電気コンポーネントについて基準損傷状態が提供され、および、
●判定された損傷状態と基準損傷状態とに基づいて相対的な損傷状態が判定され、相対的な損傷状態に関わる第1の限界値および/または第2の限界値が定義される。
【0049】
車両のコンポーネントの設計から、一般に、各々のコンポーネントについて耐用期間を通じて許容される損傷記録が既知であり、およびこれに伴って、その期待される耐用期間の経過後に最大限許容される損傷状態が既知である。すべてが合わさって損傷状態をもたらす、特定の時点まで生じた損傷記録を、それまでの最大限の割合ごとの損傷記録と、すなわち許容される損傷状態と、関係づけることができ、そのようにして相対的な損傷状態Rを決定することができる。そして、このような相対的な損傷状態Rに関して、損傷記録を適合化するための方策を講じることができる。
【0050】
このとき、相対的な損傷状態Rの値は次のように解釈できるのが好ましい。
●R>1:
コンポーネントがそれ以前と同じように引き続き負荷を受けると、期待される耐用期間に到達しない蓋然性が高い。期待される稼働期間が経過する前にコンポーネントが故障する可能性があり、または蓋然性が高くなる。
●R=1:
コンポーネントがそれ以前と同じように引き続き負荷を受けると、当該コンポーネントについての期待される耐用期間に到達する蓋然性が高い。
●R<1:
コンポーネントがそれ以前と同じように引き続き負荷を受けると、同じままの利用が続けば期待される耐用期間を超える蓋然性が高い。期待される稼働期間が経過する前にコンポーネントが故障する蓋然性は低い。
【0051】
本方法の別の好ましい実施形態では、さらに両方の電気モータの制御にあたって、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルの効率が、または、1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルの効率が、考慮され、第1および第2の電気モータの動作点の組合せは、両方の電気モータのうちの少なくとも1つにおけるトルクについての閾値および/または出力についての閾値を順守したうえで効率の観点から最善の動作が生じるように選択される。
【0052】
本方法の別の好ましい実施形態では、トルクピークおよび/または出力ピークの緩衝のために、第1および/または第2の電気モータによって1つの閾値または複数の閾値を上回ることができる。
【0053】
閾値がフレキシブルに適用されることで、いっそう高い出力またはトルクを提供することができ、そのような出力を恒常的に呼び出さなければならないようにコンポーネントを設計しなくてよい。それにより、印加される出力と、システムの性能と、システムの重量との間で良好な妥協が図られる。
【0054】
その他の構成要件や利点は、図面と関連する以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図面は少なくとも部分的に次のものを模式的に示す。
図1a】車両の1つの電気駆動式のアクスルの実施例である。
図1b】車両の2つの電気駆動式のアクスルの実施例である。
図2a】1つの電気駆動式のアクスルの第1の実施例の機械コンポーネントを示す詳細図である。
図2b】2つの電気駆動式のアクスルの第1の実施例の機械コンポーネントを示す詳細図である。
図3a】1つの電気駆動式のアクスルの第2の実施例の機械コンポーネントを示す詳細図である。
図3b】2つの電気駆動式のアクスルの第2の実施例の機械コンポーネントを示す詳細図である。
図4】1つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法の実施例のブロック図である。
図5a】割合ごとの最大の損傷状態の時間的推移との比率で、損傷状態の時間的推移を表すグラフである。
図5b】相対的な損傷状態の時間的推移である。
図6】電気駆動式のアクスルのそれぞれの電気モータの間でのさまざまなトルク分割を含むグラフである。
図7】電気モータのうちの1つにより提供されるトルクについての閾値を規定するためのプロセスの実施例である。
図8】1つの電気駆動式のアクスルの2つの電気モータの間でのトルク分割を規定するためのプロセスのブロック図である。
図9】1つの電気駆動式のアクスルについての制御ストラテジーの例に関わるさまざまなグラフである。
図10】2つの電気モータを有する電気駆動式のアクスルを制御するためのシステムの実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1aは、電気駆動式のアクスル1の実施例を示している。これは2つの電気モータEM1およびEM2によって駆動される。これらの電気モータEM1、EM2の各々は、それぞれトランスミッション3、4を介して本来のアクスル2とトルク伝達式に接続されており、または、クラッチが設けられる場合には接続可能である。
【0057】
この機械的な構造体は、両方の電気モータEM1、EM2がアクスル2へ同時に駆動介入できるように構成されている。
【0058】
このときアクスルへの駆動介入は、トランスミッション3、4の2つの出力トルクがアクスル2で加算されるように構成されるのが好ましい。このことは、たとえば平歯車段や共通のディファレンシャルギヤを介して具体化することができる。
【0059】
ここでは両方のトランスミッション3、4は単純な平歯車段として、すなわち入力トランスミッションとして、あるいはクラッチを有する、もしくは有さない、多段変速機として、製作されていてよい。
【0060】
このように第1の電気モータEM1により、第1のトランスミッション3を介して、アクスル2への第1の出力経路が形成される。第2の電気モータEM2により、第2のトランスミッション4を介して、アクスル2への第2の出力経路が形成される。
【0061】
両方のトランスミッション3、4の各々は、それぞれの出力伝達経路をたとえば分離クラッチによって、またはニュートラル位置によって、遮断するための手段を有しているのが好ましい。
【0062】
このことは、両方の電気モータEM1、EM2のうちの一方のみを通じてアクスル2を駆動することを可能にする。2つの電気モータEM1、EM2の各々は、それぞれ逆変換器またはインバータ12、13を介して、電気出力の供給を受けるのが好ましい。逆変換器12、13は、いわゆるEアクスルコントロール14(英語:E-Axe-Control Unit;EACU)から各々の電気モータEM1、EM2についての目標トルクを受ける制御ユニットをそれぞれ含むのが好ましい。電気モータEM1、EM2の現在発生しているトルク、ならびに現在発生している回転数が、Eアクスルコントロール14に提供される。
【0063】
電気モータEM1、EM2の回転がそれぞれ回転数センサ15、16を通じて測定されて、Eアクスルコントロール14に提供されるのも好ましい。
【0064】
機械的な損傷記録を考慮したうえでの制御ストラテジーのために、電気モータEM1、EM2実際の回転数、およびそれぞれの出力伝達経路で発生するトルク、またはそれぞれ該当するコンポーネントで発生するトルクが、Eアクスルコントロール14に正確に既知であればあるほど好ましい。
【0065】
本来のアクスル2が、さらに車両のホイール17、18を駆動する。
【0066】
図1bは、車両の2つの電気駆動式のアクスル1a、1bの実施例を示している。これらは2つの電気モータEM1およびEM2によって駆動される。これらの電気モータEM1、EM2の各々は、それぞれトランスミッション3、4を介して本来のアクスル2a、2bとトルク伝達式に接続されており、または、クラッチが設けられる場合には接続可能である。
【0067】
この機械的な構造体は、両方の電気モータEM1、EM2がそれぞれ接続されているアクスル2a、2bへ同時に駆動介入できるように構成されている。
【0068】
ここでは両方のトランスミッション3、4は単純な平歯車段として、すなわち入力トランスミッションとして、あるいはクラッチを有する、もしくは有さない、多段変速機として、製作されていてよい。
【0069】
このように第1の電気モータEM1により、第1のトランスミッション3を介して、アクスル2aへの第1の出力経路が形成される。第2の電気モータEM2により、第2のトランスミッション4を介して、アクスル2bへの第2の出力経路が形成される。
【0070】
両方のトランスミッション3、4の各々は、それぞれの出力伝達経路をたとえば分離クラッチによって、またはニュートラル位置によって、遮断するための手段を有しているのが好ましい。
【0071】
2つの電気モータEM1、EM2の各々は、それぞれ逆変換器またはインバータ12a、12bを介して、電気出力の供給を受けるのが好ましい。逆変換器12a、12bは、いわゆるEアクスルコントロール14(英語:E-Axe-Control Unit;EACU)から、各々の電気モータEM1、EM2についての目標トルクの設定を受けとる制御ユニットをそれぞれ含むのが好ましい。電気モータEM1、EM2の現在発生しているトルク、ならびに現在発生している回転数が、Eアクスルコントロール14に提供される。
【0072】
電気モータEM1、EM2の回転数がそれぞれ回転数センサ15a、15bを通じて測定されて、Eアクスルコントロール14に提供されるのも好ましい。
【0073】
機械的な損傷記録を考慮したうえでの制御ストラテジーのために、電気モータEM1、EM2実際の回転数、およびそれぞれの出力伝達経路で発生するトルク、またはそれぞれ該当するコンポーネントで発生するトルクが、Eアクスルコントロール14に正確に既知であればあるほど好ましい。
【0074】
本来のアクスル2a、2bが、さらに車両のホイール17a、17b、18a、18bを駆動する。
【0075】
図2aは、1つの電気駆動式のアクスル1の第1の実施例の詳細図を示している。この詳細図では、出力伝達経路の個々の歯車および軸受が図示されている。これらは、電気駆動式のアクスル1の作動時に最大の機械的な損傷を受けるコンポーネントでもある。第1の出力伝達経路を実質的に形成する第1のトランスミッション3は、第1の平歯車段8と第2の平歯車段9、10とを有するのが好ましい。ここでは第2の平歯車段9、10は切換可能に構成されており、両方のギヤ段の間で、または第1の伝達比9および第2の伝達比10としての伝達比の間で、選択をすることができる。
【0076】
第2の出力伝達経路を実質的に形成する第2のトランスミッション4も、同じく2つの平歯車段9、10を有しているが、伝達比を変更する可能性はない。両方のトランスミッション3、4がディファレンシャルギヤ11に駆動介入し、これがさらに本来のアクスル2を駆動するのが好ましい。
【0077】
図2bは、車両の第1の電気駆動式のアクスル1aと第2の電気駆動式のアクスル1bの第1の実施例の機械コンポーネントを示す詳細図を示している。この詳細図では、出力伝達経路の個々の歯車および軸受が図示されている。これらは、電気駆動式のアクスル1a、1bの作動時に最大の機械的な損傷を受けるコンポーネントでもある。第1の出力伝達経路を実質的に形成する第1のトランスミッション3は、第1の平歯車段8aと第2の平歯車段9a、10aとを有するのが好ましい。ここでは第2の平歯車段9a、10aは切換可能に構成されており、両方のギヤ段の間で、または第1の伝達比9aおよび第2の伝達比10aとしての伝達比の間で、選択をすることができる。
【0078】
第2の出力伝達経路を実質的に形成する第2のトランスミッション4も、同じく2つの平歯車段9b、10bを有しているが、伝達比を変更する可能性はない。両方のトランスミッション3、4がディファレンシャルギヤ11a、11bに駆動介入し、これがさらに本来のアクスル2a、2bを駆動するのが好ましい。
【0079】
図3aは、電気駆動式のアクスル1の第2の実施例の機械コンポーネントの詳細図を示している。この実施例は、図2aに示す第1の実施例と実質的に同一である。しかしこれとは異なり、第2のトランスミッション4も、2つの伝達比の間で切換可能な第2の伝達段を有するように構成されている。これ以外に、クラッチ機構によって第1のトランスミッション3と第2のトランスミッション4のニュートラル位置を具体化することもできる。
【0080】
図3bは、2つの電気駆動式のアクスル1a、1bの第2の実施例の機械コンポーネントの詳細図を示している。この実施例は、図2bに示す2つの電気駆動式のアクスル1a、1bを有する第1の実施例と実質的に同一である。しかしこれとは異なり、第2のトランスミッション4も、2つの伝達比の間で切換可能な第2の伝達段を有するように構成されている。これ以外に、クラッチ機構によって第1のトランスミッション3と第2のトランスミッション4のニュートラル位置を具体化することもできる。
【0081】
図4は、共通の従動部2を駆動する2つの電気モータEM1、EM2を有する電気駆動式のアクスル1を制御するための方法100の実施例のブロック図を示している。
【0082】
この方法により、ギヤ選択のもとで、および2つの出力伝達経路の間でのトルク分割のもとで、機械コンポーネントの損傷と相関関係にある耐用期間を監視し、動作ストラテジーでアダプティブに考慮することができる。
【0083】
第1のステップで、機械的な作用による損傷が考慮される。これに加えて、特に電気コンポーネントでの熱負荷による損傷記録も、動作ストラテジーで考慮することができる。
【0084】
したがって第1の作業ステップ101a)で、出力伝達経路の伝達経路および電気モータの少なくとも1つの機械コンポーネント5で発生している回転数とトルクの値が判定される。特に、この値は直接的または間接的にセンサによって測定される。このような機械コンポーネント5は、特に、トルクが発生する軸受や歯車である。
【0085】
第2の作業ステップ102a)で、少なくとも1つの機械コンポーネント5に関わる損傷記録の値が、発生している回転数の値と発生しているトルクの値に依存して判定され、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じる、少なくとも1つの機械コンポーネント5の損傷状態の値が判定される。
【0086】
第3の作業ステップ103a)で、少なくとも1つの機械コンポーネントおよび/または少なくとも1つの電気コンポーネントについての、割合ごとの最大の損傷状態Dmax(t)が提供される。
【0087】
第4の作業ステップ104a)で、判定された損傷状態D(t)と、割合ごとの最大の損傷状態Dmax(t)とに基づいて相対的な損傷状態R(t)が判定され、相対的な損傷状態に関して第1の限界値および/または第2の限界値が定義される。
【0088】
さらに第5の作業ステップ105a)で、損傷状態の値が第1の限界値を上回っているかどうかがチェックされるのが好ましい。
【0089】
第6の作業ステップ106a)で、第1の限界値を上回っている場合、特に提供されるトルクによって引き起こされる損傷記録および/または損傷状態に依存して、第1の電気モータEM1および/または第2の電気モータEM2により提供されるトルクについての閾値が規定され、提供される出力についての閾値を考慮したうえで電気駆動式のアクスルが制御される。
【0090】
最後に、第7の作業ステップ107で電気駆動式のアクスル1が、少なくとも1つの機械コンポーネント5の損傷状態を考慮したうえで制御される。
【0091】
このとき電気駆動式のアクスル1は、それぞれ異なる出力伝達経路3、4の相互の相対的な損傷状態および/または目下の損傷記録が考慮されるように制御されるのが好ましい。それぞれ異なる出力伝達経路の相対的な損傷状態ができる限り平衡化されるように、制御が行われるのがさらに好ましい。
【0092】
このとき電気駆動式のアクスル1を制御するために、実質的に2つの選択肢がある。その1つでは、少なくとも1つの機械コンポーネント5が負荷を受けないように、または定義されたとおりに負荷を受けるように、両方の出力伝達経路3、4のうちの少なくとも一方における伝達比が適合化される。もう1つでは、同じく機械コンポーネントが負荷を受けないように、または定義されたとおりに負荷を受けるように、両方の電気モータEM1、EM2の間での出力分割が適合化される。
【0093】
電気駆動式のアクスルを制御するために、閾値が規定されている電気モータEM1、EM2を、別の、特にさらに高い、回転数を有する別の動作点で作動させることができるように、両方の出力伝達経路のうちの少なくとも1つにおける伝達比が適合化されるか、または、閾値が規定されている電気モータEM1、EM2がいっそう低いトルクを提供または消費すればよいように、両方の電気モータの間の出力分割が適合化されるのが、さらに好ましい。
【0094】
第2の作業ステップ102a)で、損傷状態が次式によって判定されるのが好ましい。
【数3】
または
【数4】
【0095】
ここでnは回転数、Tはトルク、Δtは時間ステップ幅、およびpは、少なくとも1つの機械コンポーネント5についての損傷記録の強度を表すパラメータである。パラメータpは、各々の機械コンポーネント5について設定されなければならない。
【0096】
図4に示すように(右側の分岐)、電気式のアクスルを制御するための方法100は、電気コンポーネント(詳しくは図示せず)についても並行して実施することができる。このような電気コンポーネントは、たとえば電気モータEM1、EM2や逆変換器12a、12bの構成要素である。
【0097】
このとき基本的に作業ステップは、少なくとも1つの機械コンポーネント5に関しての、特に軸受または歯車に関しての、損傷記録の値の決定についての作業ステップに類似する。
【0098】
この場合にも第1の作業ステップ101b)で、少なくとも1つの電気コンポーネントの温度が決定される。
【0099】
第2の作業ステップ102b)で、温度の値に依存する少なくとも1つの電気コンポーネントに関わる損傷記録の値が、および、事前定義された時間帯にわたる損傷記録から得られる損傷状態の値が、さらに判定される。
【0100】
第3の作業ステップ103b)で温度についても、少なくとも1つの電気コンポーネントについての基準損傷状態が提供される。
【0101】
第4の作業ステップ104b)で、判定された損傷状態と基準損傷状態とに基づいて電気コンポーネント7の相対的な損傷状態が判定され、相対的な損傷状態に関わる第2の限界値が定義される。
【0102】
第5の作業ステップ105b)で、損傷状態の値が第2の限界値を上回っているかどうかチェックされるのが好ましい。
【0103】
第6の作業ステップ106b)で、第2の限界値を上回っている場合、特に温度によって引き起こされる損傷記録および/または損傷状態に依存して、第1の電気モータEM1および/または第2の電気モータEM2により提供される出力についての閾値が規定され、提供される出力についての閾値を考慮したうえで電気駆動式のアクスルが制御される。
【0104】
熱による損傷記録が考慮されるとき、第7の作業ステップ107で、少なくとも1つの電気コンポーネントの損傷状態を追加的に考慮したうえで電気駆動式のアクスル1が制御される。
【0105】
第7の作業ステップ107の代替または追加として、この場合には第8の作業ステップ108で、温度の値に依存して少なくとも1つの電気コンポーネントが冷却されることが意図されていてよい。すなわち電気コンポーネントに関しても、その負荷を軽減するために同じく2つの選択肢がある。1つ目は、電気コンポーネントが付属している電気モータについて出力を下げることにある。2つ目は、電気コンポーネントを冷却することにある。
【0106】
さらに、出力に応じて可能である限りにおいて、該当する電気コンポーネントが据え付けられている出力伝達経路のうちの1つを、これに前置されたトランスミッションを通じて、それが切換可能である限りにおいて遮断することができる。
【0107】
図5aは、損傷状態Dのグラフを時間に依存して示している。破線Dmax(t)は、時間にわたっての割合ごとの最大の損傷状態を示しており、コンポーネントの期待される耐用期間の最後に、水平方向の線として表されている最大限推奨される損傷状態に正確に到達する(破線;線形の上昇)。最大限推奨される損傷状態を超過することは、いっそう高い故障確率につながる。それに対してD(t)は、時点tにおける実際のコンポーネント5の積算された損傷記録すなわち損傷状態を表し、すなわち、トルクと回転数によるコンポーネントへの実際の負荷から決定される損傷状態を表す。この曲線D(t)は単調増加している。このグラフが示すとおり、この実際の損傷状態D(t)は時点t以降、当該時点で意図される割合ごとの最大の損傷状態Dmax(t)を上回っている。時点t以降の損傷記録を減らすための方策の実施が、曲線D(t)の平坦化につながっている。こうして曲線D(t)を再びDmax(t)よりも下にすることができる。そして時点tで、実際の損傷状態の曲線が、割合ごとの最大の損傷状態Dmax(t)よりも再び降下する。仮にtとtの間の時間帯に方策が講じられなければ、曲線D(t)が平坦化することはなく、期待される耐用期間(たとえば本例では20年)が経過する前に、最大限推奨される損傷状態に達してしまうことになる。期待される耐用期間が経過する前のコンポーネント5の故障確率がいっそう高くなる。
【0108】
図5aでは、期待される耐用期間はたとえば20年である。
【0109】
図5bには、図5aのタイムラインに準ずるグラフに相対的な損傷状態R(t)が示されている。
【0110】
相対的な損傷状態R(t)は、特定の時点tで実際の損傷状態D(t)を、そのつどの割合ごとの最大の損傷状態で除算することによって得られる。
【0111】
とtの間の時間帯は、相対的な損傷状態Rが1よりも上昇していることによって特徴づけられる。このことは、コンポーネントの早期の故障を予防するために避けるべきである。それに応じて、図5bに破線で示すように限界値RincおよびRdecが定義されるのが好ましく、これを超えたときに、その後の損傷記録を低減するための方策が講じられ、もしくは取り消される。最大限期待される相対的な損傷状態を表すRincを超えると、損傷記録を低減するための方策を講じなければならず、もしくは強化しなければならない。それに対してRdecは、損傷記録を低減する方策のもとで低減することができる相対的な損傷状態の値を表す。両方の限界値RincおよびRdecはR=1よりも下に位置するのが好ましい。
【0112】
相対的な損傷状態R(t)の値が1よりも上昇したとき、たとえば警告ランプがアクティブになることが意図されていてよい。警告ランプは、現在の時点までコンポーネントが平均以上の負荷を受けてきたことを表示する。
【0113】
このように損傷状態Dmax(t)は、損傷状態についての時間に依存する限界値である。この値は各々のコンポーネント(j)について相違する。
【0114】
図5bでは、値R=1がこの限界値に相当する。
【0115】
図6は、電気モータにより提供されるトルクについての閾値あるいは提供される出力についての閾値を、損傷状態についての限界値に依存して規定するためのプロセスを示している。
【0116】
ここではjは、それぞれ着目されるコンポーネントを表す。
【0117】
図6は、第1の電気モータEM1により、または第2の電気モータEM2により、提供されるべきトルクについての閾値を規定するためのプロセスを示している。この方策は、電気駆動式のアクスルの機械コンポーネント5および/または電気コンポーネントの過負荷に対処するためのものである。上記で説明したとおり、この方策は、第1の電気モータEM1または第2の電気モータEM2により提供されるべきトルクについての閾値であってよく、あるいは、第1の電気モータEM1または第2の電気モータEM2の動作点を高い回転数のほうへシフトさせる切換プロセスであってもよく、または、それぞれの電気モータを完全に遮断することであってよく、または、機械コンポーネント5および/または電気コンポーネントの冷却であってよい。
【0118】
このプロセスについてトルク制限を取りあげて説明する。しかしながら当業者には明らかなように、このプロセスをそれ以外の方策に転用することもできる。
【0119】
以下のプロセスでTmaxは、着目する出力経路の電気モータEM1またはEM2における最大限可能なトルクを表す。コンポーネントjは、着目する出力経路で関心の対象となるコンポーネントのうちの1つであるとし、Tは、当該コンポーネントjの現在の相対的な損傷状態に基づくトルク制限の提案を表す。電気モータで最終的にトルク制限Tlimが具体化される。これは、関心の対象となるすべてのコンポーネントjの制限提案Tをベースとして選択される。すなわち一方では、TlimはTよりも小さいか、またはこれに等しく、他方では、TlimはTmaxよりも小さいか、またはこれに等しい。T=0でのプロセスの開始時には、何らかのコンポーネントjに関わるトルク制限提案Tは存在しない。したがってこの時点では、すべてのコンポーネントについてT=Tlim=Tmaxが成り立つ。すなわち、何らかのコンポーネントjのトルク制限提案に基づく能動的なトルク制限は行われておらず、両方の電気モータEM1およびEM2は、必要である限りにおいて、それぞれ最大のトルクTmaxで作動することができる。
【0120】
第1のプロセスステップで、現在の相対的な損傷状態Rがすべてのコンポーネントに関して照会される。この時点ではまだトルク制限のための方策が講じられていないので、ブロック図の右側の分岐で手順が進む。そして、現在の相対的な損傷状態Rが、方策を開始または強化しなければならない、最大限期待される相対的な損傷状態Rincよりも大きいかどうかがチェックされる。それが該当する場合、コンポーネントに関して新たな方策が規定され、本例ではトルク制限提案Tが規定される。それに対して、相対的な損傷状態Rが限界値Rincよりも低いとき、方策は講じられない。それに伴ってコンポーネントTに関わるトルク制限提案は引き続き、それぞれの出力伝達経路3、4を駆動するそれぞれの電気モータEM1、EM2で最大限可能なトルクTmaxに等しい。
【0121】
このチェックは、出力伝達経路3、4のすべてのコンポーネントについて実行される。そして当該出力伝達経路についての能動的なトルク制限Tlimが、コンポーネントの最小限規定されるトルク制限提案Tに合わせて調整される。その後にプロセスがまた最初に戻って開始される。今度は方策すなわち能動的なトルク制限Tlimが行われており、したがってプロセス左側の分岐でさらに進行する。そして現在の相対的な損傷状態Rが、3つの異なる限界値と比較されるのが好ましい。ここでRincは、すでに説明したように、方策が開始または強化されなければならない、最大限期待される相対的な損傷状態である。
【0122】
decは、方策を緩和することができる相対的な損傷状態である。
【0123】
minは、方策が必要ではない相対的な損傷状態である。
【0124】
このとき次の関係が成り立つ。
【数5】
【0125】
現在の相対的な損傷状態RがRincよりも大きいとき、方策を講じなければならず、このことはトルクの場合、トルク制限Tについての閾値が引き下げられなくてはならないことを意味する。
【0126】
現在の相対的な損傷状態RがRminより小さいとき、当該コンポーネントに関わる方策を解除することができる。この場合には当該コンポーネントに関して、それぞれの電気モータEM1、EM2の最大のトルクTmaxを再び提供することができる。
【0127】
現在の相対的な損傷状態RがRdecよりも小さいがRincよりも大きい場合には、そのつどの方策を緩和することができる。このことはトルク制限の場合、閾値を引き上げることができることを意味する。
【0128】
現在の相対的な損傷状態RがRincよりも小さいがRdecよりも大きい場合、コンポーネントjに関わる方策を変えないままにしておくことができる。
【0129】
この部分プロセスも、すべてのコンポーネントjについて反復される。そして能動的なトルク制限Tlimは、各々の出力伝達経路3、4について、それぞれの出力伝達経路3、4のコンポーネントjについてもっとも強力な方策のそのつどの閾値に相当するように調整される。このことはトルクに関しては、能動的なトルク制限Tlimが、すべてのコンポーネントjを通じてトルク制限提案Tの最小値に相当することを意味する。
【0130】
図7は、第1の電気モータEM1および第2の電気モータEM2のモータ特性曲線がそれぞれ図示された2つのグラフを示している。ここではモータ回転数に対してトルクがそれぞれプロットされている。
【0131】
両方のグラフを参照して、両方の電気モータEM1、EM2における所定の出力と所定の回転数n、nのもとでの、第1の電気モータEM1と第2の電気モータEM2の間のトルク分割を判定することができる。ここでは第1の電気モータEM1またはこれを操作する第1の出力伝達経路3について、能動的なトルク制限Tlimが存在している。
【0132】
それに応じて、第1の電気モータEM1により提供されるトルクがTlimを下回るようなトルク分割の組合せだけを選択することができる。それ以外の点ではトルク分割は、電気駆動式のアクスル1の効率に関して最善の動作が生じるように選択されるのが好ましい。
【0133】
図8は、システムの全体効率を考慮したうえでそのようなトルク分割が選択されるプロセスを示している。
【0134】
このプロセスについての設定は、従動部2a、2bで要求される負荷点の全体であり、および、出力伝達経路3、4の一方または両方における考えられる能動的なトルク制限Tlimである。トルク制限Tlimが存在するとき、トルク分割は、能動的なトルク制限 Tlimを考慮したうえで、効率性に焦点を定めて決定される。これに対して、そのための解決法がないときには、トルク分割は、トルク制限を考慮せずに効率性に焦点を定めて決定される。
【0135】
同様のことは、それ以前から能動的なトルク制限Tlimが存在していないときにも当てはまる。
【0136】
図9は、時間に対してトルクを表す4つのグラフ(a)、(b)、(c)、(d)を用いて、図8に示す制御ストラテジーが適用される具体的な例を示している。このとき図9の(a)および図9の(b)は、第1の電気モータEM1により提供される、時間離散的に提供されるトルクをそれぞれ表す。
【0137】
それに対して図9の(c)および図9の(d)は、第2の電気モータEM2によって提供されるトルクの値を表す。このとき図9の(a)および図9の(c)では、能動的なトルク制限Tlimは存在しない。それに対して図9の(b)および図9の(d)では、第1の電気モータEM1についてトルク制限Tlimが存在する。
【0138】
第1の電気モータEM1で要求されるトルクが、当該第1の電気モータEM1または第1の出力伝達経路3に関する能動的なトルク制限Tlimを上回ると、この過剰に要求されるトルクは、図9の(b)および図9の(d)に示すように、第2の電気モータEM2に割り当てられる。第2の電気モータは図示している時点t、t、tの間、第1の電気モータEM1が提供するトルクTを低減できるようにするために、いっそう高いトルクTを供給しなければならない。その後の時点t、t、tでは、それが可能でなくなっている。第2の電気モータEM2も同じくすでに出力限界またはトルク限界Tmaxで供給を行っているからである。この場合には、要求されるトルクを提供できるようにするために、トルク分配が度外視されて、能動的なトルク制限Tlimが無視されるのが好ましい。
【0139】
図10は、2つの電気モータEM1、EM2を有する電気駆動式のアクスル1を制御するためのシステム20を示している。
【0140】
このようなシステム20は、出力伝達経路3、4および/または電気モータEM1、EM2の少なくとも1つの機械コンポーネント5で発生している回転数とトルクの値を決定するための手段21、特にセンサを有するのが好ましい。さらにこのようなシステム20は、発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの機械コンポーネント5での損傷記録の値を判定するための、および、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの機械コンポーネント5の損傷状態の値を判定するための、手段22を有するのが好ましい。最後にこのようなシステム20は、少なくとも1つの機械コンポーネント5の損傷状態を考慮したうえで、電気駆動式のアクスル1を制御するための手段23を有するのが好ましい。
【0141】
本発明の意味における手段とは、ハードウェア工学および/またはソフトウェア工学で構成されていてよく、特に、好ましくは記憶システムおよび/またはバスシステムとデータ接続または信号接続された、特にデジタル式の処理ユニット、特にマイクロプロセッサユニット(CPU)を有することができ、および/または1つまたは複数のプログラムもしくはプログラムモジュールを有することができる。CPUは、記憶システムに格納されたプログラムとしてインプリメントされるコマンドを処理するため、データバスからの入力信号を検出するため、および/またはデータバスに出力信号を出すために構成されていてよい。記憶システムは、1つまたは複数の、特にそれぞれ異なるメモリ媒体、特に光学式、磁気式、固体、および/またはその他の不揮発性の媒体を有することができる。プログラムは、ここで説明している方法を具体化または実行することができる性質を有していてよく、それにより、CPUがこのような方法の各ステップを実行することができる。
【0142】
システム20は、方法100のさらに別の作業ステップを実行するために、さらに別の手段を有するのが好ましい。これらの手段のうちの少なくともいくつかが、特にシステム20全体が、Eアクスルコントール14に統合されているのがさらに好ましい。
【0143】
付言しておくと、これらの実施例は例であるにすぎず、権利保護範囲、用途、および構造をいかなる意味においても限定しようとするものではない。むしろ当業者は、上記の説明によって少なくとも1つの実施例を具体化するためのガイダンスを与えられるのであって、特許請求の範囲およびこれと等価な構成要件の記載から生じる権利保護範囲から逸脱することなく、特に上述した構成要素の機能や配置の観点から種々の改変を行うことができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気モータおよび第2の電気モータそれぞれ有する、車両の2つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法において、前記第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して第1の従動部と接続され、前記第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して第2の従動部と接続され、または、共同で従動部を駆動する第1の電気モータおよび第2の電気モータを有する、1つの電気駆動式のアクスルを制御するための方法において、前記第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して従動部と接続され、前記第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して従動部と接続され、
次の作業ステップを有し、
前記第1の出力伝達経路および前記第2の出力伝達経路および/または前記第1の電気モータおよび前記第2の電気モータの少なくとも1つの機械コンポーネントで発生している回転数とトルクの値が決定され、
発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの前記機械コンポーネントに関する損傷記録の値が判定され、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの前記機械コンポーネントの損傷状態の値が判定され、
少なくとも1つの前記機械コンポーネントの損傷状態または相対的な損傷状態を考慮したうえで、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルが、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルが、制御さ
損傷状態が、または前記第1の出力伝達経路および前記第2の出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、考慮されるように、特に、損傷状態が、または前記第1の出力伝達経路および前記第2の出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、できる限り平衡化されるように、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルが制御され、または
1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルが制御される、方法
【請求項2】
2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルを制御するために、または、
1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルを制御するために、
少なくとも1つの前記機械コンポーネントが負荷を受けないように、前第1の出力伝達経路および前記第2の出力伝達経路の両方のうちの少なくとも一方における伝達比が適合化され、または、前記第1の電気モータおよび前記第2の電気モータの両方の間での出力分割が適合化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの前記機械コンポーネントの損傷状態または相対的な損傷状態の現在の値が第1の限界値を上回っているかどうかチェックされ、および、
前記第1の限界値を上回っている場合、前記第1の電気モータにより提供されるトルクおよび/または前記第2の電気モータにより提供されるトルクについての閾値が、特に提供されるトルクによって引き起こされる損傷記録に依存して規定され、2つの電気駆動式のアクスルの場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこれらの電気駆動式のアクスルが制御され、または1つの電気駆動式のアクスルの場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこの電気駆動式のアクスルが制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2つの電気駆動式のアクスの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルを制御するために、または、
1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルを制御するために、
第1の出力伝達経路および前記第2の出力伝達経路の両方のうちの少なくとも一方における伝達比が、閾値が規定されている前記第1の電気モータおよび前記第2の電気モータを別の、特にさらに高い、回転数を有する別の動作モードで作動させることができるように適合化され、または、前第1の電気モータおよび前記第2の電気モータの両方の間での出力分割が、閾値が規定されている前記第1の電気モータおよび前記第2の電気モータがいっそう低いトルクを提供または消費すればよいように適合化される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
損傷状態は次のように判定され、
【数1】
または
【数2】
ここでnは回転数、Tはトルク、Δtは時間ステップ幅、pは少なくとも1つの前記機械コンポーネントについての損傷記録の強度を表すパラメータであり、前記パラメータpは各々の前記機械コンポーネントについて設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの電気コンポーネントの温度の値が決定され、
温度の値に依存する少なくとも1つの前記電気コンポーネントに関する損傷記録の値と、事前定義された時間帯にわたる損傷記録から得られる損傷状態の値とが判定され、
2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルが、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルが、少なくとも1つの前記電気コンポーネントの損傷状態を追加的に考慮したうえで制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
次の作業ステップをさらに有し、
前記電気コンポーネントの損傷状態または相対的な損傷状態の現在の値が第2の限界値を上回っているかどうかチェックされ、
前記第2の限界値を上回っている場合、前記第1の電気モータおよび/または前記第2の電気モータにより提供される出力についての閾値が、特に温度によって引き起こされる損傷記録に依存して規定され、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルが、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動アクスルが、提供される出力についての閾値を考慮したうえで制御される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの電気コンポーネントが温度の値に依存して冷却される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの前記機械コンポーネントおよび/または少なくとも1つの電気コンポーネントについて割合ごとの最大の損傷状態が供され、および、
判定された損傷状態と割合ごとの最大の損傷状態とに基づいて相対的な損傷状態が定され、相対的な損傷状態に関わる第1の限界値および/または第2の限界値が定義される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第1の電気モータおよび前記第2の電気モータの両方の制御にあたって、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルの効率が、または、1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルの効率が、さらに考慮され、前記第1の電気モータおよび前記第2の電気モータの動作点の組合せは、前第1の電気モータおよび前記第2の電気モータの両方のうちの少なくとも1つにおけるトルクについての閾値および/または出力についての閾値を順守したうえで効率の観点から最善の動作が生じるように選択される、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
第1の電気モータおよび第2の電気モータそれぞれ有する、車両の2つの電気駆動式のアクスルを制御するためのシステムにおいて、前記第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して第1の従動部と接続され、前記第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して第2の従動部と接続され、または、
共同で従動部を駆動する第1の電気モータおよび第2の電気モータを有する、1つの電気駆動式のアクスルを制御するためのシステムにおいて、前記第1の電気モータは少なくとも1つの第1の出力伝達経路を介して従動部と接続され、前記第2の電気モータは少なくとも1つの第2の出力伝達経路を介して従動部と接続され、
前記第1の出力伝達経路および第2の出力伝達経路および/または前記第1の電気モータおよび前記第2の電気モータの少なくとも1つの機械コンポーネントで発生している回転数とトルクの値を決定するための手段と
発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの前記機械コンポーネントに関わる損傷記録の値を判定するための、および、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの前記機械コンポーネントの損傷状態の値を判定するための、手段と
2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルを、または、1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルを、少なくとも1つの前記機械コンポーネントの損傷状態を考慮したうえで制御する手段と
2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルを、または、1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルを、損傷状態が、または前記第1の出力伝達経路および前記第2の出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、考慮されるように、特に、損傷状態が、または前記第1の出力伝達経路および前記第2の出力伝達経路の相対的な損傷状態が、できる限り平衡化されるように、制御するための手段とを有する、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムを有している車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
本発明では、損傷状態が、または異なる出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、考慮されるように、特に、損傷状態が、または異なる出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、できる限り平衡化されるように、2つの電気駆動式のアクスルの場合の方法においてはこれらの電気駆動式のアクスルが制御され、または、1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルが制御されることが意図される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
このようなシステム20は、出力伝達経路3、4および/または電気モータEM1、EM2の少なくとも1つの機械コンポーネント5で発生している回転数とトルクの値を決定するための手段21、特にセンサを有するのが好ましい。さらにこのようなシステム20は、発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの機械コンポーネント5での損傷記録の値を判定するための、および、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの機械コンポーネント5の損傷状態の値を判定するための、手段22を有するのが好ましい。さらにこのようなシステム20は、少なくとも1つの機械コンポーネント5の損傷状態を考慮したうえで、電気駆動式のアクスル1を制御するための手段23を有するのが好ましい。最後にこのシステムは、2つの電気駆動式のアクスルの場合にはこれらの電気駆動式のアクスルを、または1つの電気駆動式のアクスルの場合にはこの電気駆動式のアクスルを、損傷状態を、または異なる出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態を、考慮したうえで、特に損傷状態が、または異なる出力伝達経路の相互の相対的な損傷状態が、できる限り平衡化されるように制御するための手段を有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0143
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0143】
付言しておくと、これらの実施例は例であるにすぎず、権利保護範囲、用途、および構造をいかなる意味においても限定しようとするものではない。むしろ当業者は、上記の説明によって少なくとも1つの実施例を具体化するためのガイダンスを与えられるのであって、特許請求の範囲およびこれと等価な構成要件の記載から生じる権利保護範囲から逸脱することなく、特に上述した構成要素の機能や配置の観点から種々の改変を行うことができる。
(他の可能な項目)
(項目1)
それぞれ1つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、車両の2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するための方法(100)において、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して第1の従動部(2a)と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して第2の従動部(2b)と接続され、または、共同で従動部を駆動する2つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、1つの電気駆動式のアクスル(1)を制御するための方法において、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して従動部と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して従動部と接続され、
次の作業ステップを有し、
前記出力伝達経路(3、4)および/または前記電気モータ(EM1、EM2)の少なくとも1つの機械コンポーネント(5)で発生している回転数とトルクの値が決定(101a)され、
発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)に関する損傷記録の値が判定(102a)され、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態の値が判定され、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態または相対的な損傷状態を考慮したうえで、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)が、制御(107)される、方法。
(項目2)
損傷状態が、または異なる前記出力伝達経路(3、4)の相互の相対的な損傷状態が、考慮されるように、特に、損傷状態が、または異なる前記出力伝達経路(3、4)の相互の相対的な損傷状態が、できる限り平衡化されるように、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が制御され、または
1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)が制御される、項目1に記載の方法(100)。
(項目3)
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するために、または、
1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)を制御するために、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)が負荷を受けないように、両方の前記出力伝達経路(3、4)のうちの少なくとも一方における伝達比が適合化され、または、両方の前記電気モータ(EM1、EM2)の間での出力分割が適合化される、項目1に記載の方法(100)。
(項目4)
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態または相対的な損傷状態の現在の値が第1の限界値を上回っているかどうかチェック(105a)され、および、
前記第1の限界値を上回っている場合、前記第1の電気モータ(EM1)により提供されるトルクおよび/または前記第2の電気モータ(EM2)により提供されるトルクについての閾値が、特に提供されるトルクによって引き起こされる損傷記録に依存して規定(106a))され、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が制御され、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合には、トルクについての閾値を考慮したうえでこの電気駆動式のアクスル(1)が制御される、項目1から3のいずれか1項に記載の方法(100)。
(項目5)
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するために、または、
1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)を制御するために、
両方の前記出力伝達経路(3、4)のうちの少なくとも一方における伝達比が、閾値が規定されている前記電気モータ(EM1;EM2)を別の、特にさらに高い、回転数を有する別の動作モードで作動させることができるように適合化され、または、両方の前記電気モータ(EM1、EM2)の間での出力分割が、閾値が規定されている前記電気モータ(EM1、EM2)がいっそう低いトルクを提供または消費すればよいように適合化される、項目4に記載の方法(100)。
(項目6)
損傷状態は次のように判定され、
【数3】
または
【数4】
ここでnは回転数、Tはトルク、Δtは時間ステップ幅、pは少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)についての損傷記録の強度を表すパラメータであり、前記パラメータpは各々の前記機械コンポーネント(5)について設定される、項目1から5のいずれか1項に記載の方法(100)。
(項目7)
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの電気コンポーネント(7)の温度の値が決定(101b)され、
温度の値に依存する少なくとも1つの前記電気コンポーネント(7)に関する損傷記録の値と、事前定義された時間帯にわたる損傷記録から得られる損傷状態の値とが判定(102b)され、
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)が、少なくとも1つの前記電気コンポーネント(7)の損傷状態を追加的に考慮したうえで制御される、項目1から6のいずれか1項に記載の方法(100)。
(項目8)
次の作業ステップをさらに有し、
前記電気コンポーネント(7)の損傷状態または相対的な損傷状態の現在の値が第2の限界値を上回っているかどうかチェック(105b)され、
前記第2の限界値を上回っている場合、前記第1の電気モータ(EM1)および/または前記第2の電気モータ(EM2)により提供される出力についての閾値が、特に温度によって引き起こされる損傷記録に依存して規定(106b)され、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)が、または1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動アクスル(1)が、提供される出力についての閾値を考慮したうえで制御される、項目7に記載の方法(100)。
(項目9)
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの電気コンポーネント(7)が温度の値に依存して冷却(108)される、項目8に記載の方法(100)。
(項目10)
次の作業ステップをさらに有し、
少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)および/または少なくとも1つの電気コンポーネント(7)について割合ごとの最大の損傷状態(D max (t))が提供(103a、103b)され、および、
判定された損傷状態(D (t))と割合ごとの最大の損傷状態(D max (t))とに基づいて相対的な損傷状態(R (t))が判定(103a、103b)され、相対的な損傷状態に関わる第1の限界値および/または第2の限界値が定義される、項目8または9に記載の方法(100)。
(項目11)
両方の前記電気モータの制御にあたって、2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の効率が、または、1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)の効率が、さらに考慮され、前記第1および前記第2の電気モータ(EM1、EM2)の動作点の組合せは、両方の前記電気モータ(EM1、EM2)のうちの少なくとも1つにおけるトルクについての閾値および/または出力についての閾値を順守したうえで効率の観点から最善の動作が生じるように選択される、項目9または10に記載の方法(100)。
(項目12)
それぞれ1つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、車両の2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を制御するためのシステム(20)において、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して第1の従動部(2a)と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して第2の従動部(2b)と接続され、または、
共同で従動部を駆動する2つの電気モータ(EM1、EM2)を有する、1つの電気駆動式のアクスル(1)を制御するためのシステムにおいて、前記第1の電気モータ(EM1)は少なくとも1つの第1の出力伝達経路(3)を介して従動部と接続され、前記第2の電気モータ(EM2)は少なくとも1つの第2の出力伝達経路(4)を介して従動部と接続され、
前記出力伝達経路(3、4)および/または前記電気モータ(EM1、EM2)の少なくとも1つの機械コンポーネント(5)で発生している回転数とトルクの値を決定するための手段(21)と、
発生している回転数の値および発生しているトルクの値に依存して少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)に関わる損傷記録の値を判定するための、および、事前定義された時間帯にわたる損傷記録によって生じた少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態の値を判定するための、手段(22)と、
2つの電気駆動式のアクスル(1a、1b)の場合にはこれらの電気駆動式のアクスル(1a、1b)を、または、1つの電気駆動式のアクスル(1)の場合にはこの電気駆動式のアクスル(1)を、少なくとも1つの前記機械コンポーネント(5)の損傷状態を考慮したうえで制御する手段(23)と、
を有する、システム(20)。
(項目13)
項目12に記載のシステム(20)を有している車両。
【国際調査報告】