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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】マイクロロボットのための光推進力
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240628BHJP
【FI】
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500066
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022068110
(87)【国際公開番号】W WO2023275272
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21305902.5
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440482
【氏名又は名称】ロビューテ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドゥプラート,バートランド
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ,クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ウルマス,アリ
(57)【要約】
本発明は、主軸に沿って伸長/収縮して変形可能な推進構造を有する推進システム(10)と、推進構造の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させるように構成されたアクチュエータまたは作動ゾーンと、アクティブ化されるときに、少なくとも1つの所定の光信号を放出することを目的とした光源(14)と、遠隔制御ユニット(16)とを備えるマイクロロボットに関する。光源(14)は、光ファイバ(24)を備え、遠隔制御ユニット(16)によってアクティブ化されるように構成され、アクチュエータまたは作動ゾーンは、光源(14)から放出された光信号によってアクティブ化されるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性または粘弾性ナビゲーション材料内、特に被験者の体内を移動するように構成されたマイクロロボットであって、前記マイクロロボット(12)は、
頭部(18A)および後部(18B)と、
推進システムと、
を備え、
前記推進システムは、
前記頭部(18A)および前記後部(18B)を接続する変形可能部(20)を備える推進構造(18)であって、前記変形可能部(20)は、前記頭部(18A)および前記後部(18B)を接続する主軸(X)に沿って伸長/収縮して変形可能である、推進構造(18)と、
前記変形可能部(20)の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させるように構成されたアクチュエータまたは作動ゾーン(22)と、
アクティブ化されるときに、少なくとも1つの所定の光信号を放出することを目的とした光源(14)と、
遠隔制御ユニット(16)と、
を備え、
前記光源(14)は、光ファイバ(24)を備え、
前記光源(14)は、前記遠隔制御ユニット(16)によって、特に前記被験者の体外からアクティブ化されるように構成され、
前記アクチュエータまたは作動ゾーン(22)は、前記光源(14)から放出された光信号によってアクティブ化されるように構成され、前記光信号は、前記変形可能部(20)の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させ、それによって前記マイクロロボット(12)は光推進力によって駆動される、
マイクロロボット(12)
【請求項2】
前記変形可能部(20)は、3D次元に延びる容積構造であり、前記変形可能部(20)は、少なくとも前記変形可能部(20)が伸長状態にあるときに、任意の光信号が任意の方向に通過して拡散することを可能にするように設計される、請求項1に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項3】
前記アクチュエータまたは作動ゾーン(22)によってアクティブ化されるときの前記変形可能部(20)の収縮は、前記光源(14)から放出された光信号が前記アクチュエータまたは作動ゾーン(22)に到達することを阻止し、それによって、前記アクチュエータまたは作動ゾーン(22)を非アクティブ化し、前記変形可能部(20)を伸長させる、先行する請求項のいずれか1項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項4】
前記光源(14)は、前記マイクロロボット(12)に直接接続される、先行する請求項のいずれか1項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項5】
前記マイクロロボット(12)と前記光源(14)との間の接続は、気密接続である、先行する請求項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項6】
前記光ファイバ(24)は、前記光ファイバ(24)に沿って走る光信号を感知するための少なくとも1つのセンサを備える、先行する請求項のいずれか1項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサは、各アクチュエータまたは作動ゾーン(22)によって受信された光信号の関数として、前記放出された光信号を変調するために、前記遠隔制御ユニット(16)と通信する、先行する請求項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項8】
前記アクチュエータまたは作動ゾーン(22)は、前記放出された光信号を集束するために集光素子(28)を備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項9】
前記推進システム(18)は、操舵システム(30)をさらに備え、前記推進構造(18)は、前記頭部(18A)および前記後部(18B)に接続された少なくとも1つの操舵要素(32)を備え、前記少なくとも1つの操舵要素(32)は、前記光源(14)によって放出された光信号によってアクティブ化可能である、先行する請求項のいずれか1項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの操舵要素(32)は、前記変形可能部(20)に沿って延びる、先行する請求項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの操舵要素(32)は、前記変形可能部(20)の一部である、請求項9に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項12】
前記システム(10)は、光送出デバイス(34)をさらに備え、前記光送出デバイス(34)は、前記アクチュエータまたは作動ゾーン(22)と、前記少なくとも1つの操舵要素(32)と、任意のさらなる光アクティブ化可能要素との間で、前記光源(14)によって放出された光を送出するために前記遠隔制御ユニット(16)によって制御される、先行する請求項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項13】
前記アクチュエータまたは作動ゾーン(22)をアクティブ化することが可能な光信号の電磁特性と、前記少なくとも1つの操舵要素(32)をアクティブ化することが可能な光信号の電磁特性とは互いに異なっている、請求項11に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項14】
前記推進構造(18)は、いくつかの操舵要素(32)を備え、各操舵要素(32)は、電磁特性の特定のセットを有する光信号によってアクティブ化可能であり、電磁特性の各セットは互いに異なっている、先行する請求項に記載のマイクロロボット(12)。
【請求項15】
前記システム(10)は、外部係止要素(38)をさらに備え、前記外部係止要素(38)は、前記被験者の身体の外面に固定されることを目的とし、前記光源(14)および前記マイクロロボット(12)は、前記外部係止要素(38)に接続される、先行する請求項のいずれか1項に記載のマイクロロボット(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進システムを有するマイクロロボットに関し、特に、人間の体内を動き回るための光誘起推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲手術、特に脳神経外科において、損傷を与えることなく深部の機能的構造に到達することは重要な課題である。マイクロテクノロジにより、たとえば脳などの被験者の器官の内部に、完全自律型マイクロロボットを送り込むことが可能になる。しかし、脳のようにレイノルズ数の低い環境におけるマイクロロボットの推進は、マイクロロボットの小さなサイズに起因する慣性力の欠如および比較的大きなけん引力の存在によって困難である。別の重要な要件として、マイクロロボットは、それが通過することにより器官に与える生理学的損傷を可能な限り抑えながら器官内を移動することができなくてはならない。
【0003】
この状況において、本発明は、配置された環境の完全性を可能な限り維持しながら、レイノルズ数の低い流体環境または粘弾性固体内で高効率の推進機構を有するマイクロロボットを提案することが意図されている。
【0004】
このために、最小限の数の要素および部品、および非常に単純な機構をもたらす、可能な限り軽量かつ小型のマイクロロボットにすることが必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、この問題を解決することを目的とし、よって、粘性または粘弾性ナビゲーション材料内、特に被験者の体内を移動するように構成されたマイクロロボットに関し、そのマイクロロボットは、
頭部および後部と、
推進システムと、
を備え、
推進システムは、
頭部および後部を接続する変形可能部を備える推進構造であって、変形可能部は、頭部および後部を接続する主軸に沿って伸長/収縮して変形可能な変形可能部である、推進構造と、
変形可能部の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させるように構成されたアクチュエータまたは作動ゾーンと、
アクティブ化されるときに、少なくとも1つの所定の光信号を放出することを目的とした光源と、
遠隔制御ユニットと、
を備え、
光源は、光ファイバを備え、
光源は、遠隔制御ユニットによって、特に被験者の体外からアクティブ化されるように構成され、
アクチュエータまたは作動ゾーンは、光源から放出された光信号によってアクティブ化されるように構成され、光信号は、変形可能部の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させ、それによってマイクロロボットは光推進力によって駆動される。
【0006】
このように、この解決策は、上記目的を達成する。特に、光活性材料の物理特性および機械特性が、そのサイズにおいて、現行技術(たとえば磁石およびコイルを使用する電磁モータなど)によって提供される解決策よりも著しく良好であるため、非常に大きな体積出力(構造の出力を構造の体積で割った値)を示す推進力を有する非常に小型のマイクロロボットを得ることができる。本発明はさらに、たとえばコイルおよび磁石を使用する電磁デバイスのための電力などの他のエネルギ源を用いる必要なく、推進力のため、ならびに場合によっては操舵のための単一のエネルギ源として光を用いて改善された堅牢性を示す、使用および操作が非常に簡単なマイクロロボットを得ることができる。
【0007】
本発明に係るデバイスは、互いに独立して、または互いに組み合わせて取り入れられる、以下の特性のうち1つ以上を含んでよい。
変形可能部は、3D次元に延びる容積構造であってよく、上記変形可能部は、少なくとも変形可能部が伸長状態にあるときに、任意の光信号が任意の方向に通過して拡散することを可能にするように設計され、
アクチュエータまたは作動ゾーンによってアクティブ化されるときの変形可能部の収縮は、光源から放出された光信号がアクチュエータまたは作動ゾーンに到達することを阻止してよく、それによって、アクチュエータまたは作動ゾーンを非アクティブ化し、変形可能部を伸長させ、
光源は、マイクロロボットに直接接続され、
マイクロロボットと光源との間の接続は、気密接続であってよく、
光ファイバは、上記光ファイバに沿って走る光信号を感知するための少なくとも1つのセンサを備えてよく、
少なくとも1つのセンサは、各アクチュエータまたは作動ゾーンによって受信された光信号の関数として、放出された光信号を変調するために、遠隔制御ユニットと通信してよく、
アクチュエータまたは作動ゾーンは、放出された光信号を集束するために集光素子を備えてよく、
推進システムは、操舵システムをさらに備えてよく、推進構造は、頭部および後部に接続された少なくとも1つの操舵要素を備え、上記少なくとも1つの操舵要素は、光源によって放出された光信号によってアクティブ化可能であり、
少なくとも1つの操舵要素は、変形可能部に沿って延びてよく、
少なくとも1つの操舵要素は、変形可能部の一部であってよく、
光送出デバイスをさらに備えてよく、上記光送出デバイスは、アクチュエータまたは作動ゾーンと、少なくとも1つの操舵要素と、任意のさらなる光アクティブ化可能要素との間で、光源によって放出された光を送出するために遠隔制御ユニットによって制御され、
アクチュエータまたは作動ゾーンをアクティブ化することが可能な光信号の電磁特性と、少なくとも1つの操舵要素をアクティブ化することが可能な光信号の電磁特性とは互いに異なってよく、
推進構造は、いくつかの操舵要素を備えてよく、各操舵要素は、電磁特性の特定のセットを有する光信号によってアクティブ化可能であり、電磁特性の各セットは互いに異なっており、
システムは、外部係止要素をさらに備えてよく、上記外部係止要素は、被験者の身体の外面に固定されることを目的とし、光源およびマイクロロボットは、外部係止要素に接続される。
【0008】
本発明は、添付図面を参照して、以下に続く単に例示的かつ非限定的な例として付与された本発明の実施形態の説明的記述を読む際に、より適切に理解されることになり、他の目的、詳細、特徴、および利点がより明確に浮かび上がることになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る推進システムの概略全体図である。
図2】本発明に係るマイクロロボットの概略図である。
図3】第1の実施形態に係る推進構造および操舵システムの斜視図である。
図4】第2の実施形態に係る推進構造の斜視図である。
図5a】第3の実施形態に係る推進構造および操舵システムの上面図である。
図5b】第3の実施形態に係る推進構造および操舵システムの斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る推進システムの概略全体図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る推進システムの概略全体図である。
図8a】本発明の第4の実施形態に係る推進システムの概略全体図である。
図8b】本発明の第5の実施形態に係る推進システムの概略全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1で見ることができるように、本発明に係るマイクロロボット12は、
光源14と、
遠隔制御ユニット16と、
を含む推進システム10を備える。
【0011】
より詳細には、マイクロロボット12は、粘性または粘弾性材料内、特に被験者の体内を移動するように構成される。
【0012】
材料科学および連続体力学において、粘弾性とは、変形を受けるときに粘性特性および弾性特性の両方を示す材料の特性である。粘性材料は、水のように、応力が印加されるときに、せん断流動に抵抗し、時間とともに直線的に歪む。弾性材料は、引き伸ばされるときに歪み、応力が取り除かれると直ちに元の状態に戻る。たとえば高分子溶液および高分子溶融物のように元来粘度が高い場合、流れは通常、層流である。
【0013】
粘弾性材料は、これら両方の特性の要素を有するため、時間依存性の歪みを示す。弾性は通常、規則的固体における結晶面に沿った結合伸縮の結果であるのに対し、粘性は、非晶質材料内部の原子または分子の拡散の結果である。
【0014】
図2で見ることができるように、マイクロロボット12は、
たとえば図4に詳しく示される、頭部18A、後部18B、および頭部18Aと後部18Bとを接続する変形可能部20を備える推進構造18と、
光作動によって変形する光作動材料を備えるアクチュエータまたは作動ゾーン22と、
を備える。
【0015】
推進構造18の変形可能部20は、頭部18Aと後部18Bとを接続する主軸Xに沿って伸長/収縮状態に変形可能である。
【0016】
好適には、推進構造18の変形可能部20は、3D次元に延びる容積構造である(図4および図5bを参照)。具体的には、変形可能部20は、3D次元に延びる容積穴あき構造である。図4および図5bに示す特定の実施形態において、変形可能部20は、互いに嵌合した一連の3つのばね状構造であり、第1のばね状構造は、第2のばね状構造を取り囲み、第2のばね状構造は第3のばね状構造を取り囲む。変形可能部20の構造は、少なくとも変形可能部20が伸長状態であるときに、任意の光信号が任意の方向に通過して拡散することが可能であるように設計される。容積穴あき構造は、非常に重要な数の交差表面で作られ、光信号は、この種の容積に当たるときに、平坦な容積構造または単一の2D表面構造に比べて著しく多い、非常に多数の表面(単数または複数)に当たる。また、この構造の変形可能部は、その特性を失うことなく非常に多数の収縮/伸長サイクルに耐えることができる。
【0017】
図5aおよび図5bに示す実施形態において、変形可能部20は、各々が他から独立して収縮および/または伸長することが可能な3つの独立部品を備える。したがって、1つの部品の作動は、他の部品の作動から独立し得る。
【0018】
したがって、推進構造18に関して、本発明の目的は、第1に、光が材料によって吸収されること、および第2に、表面から特定の距離離れると、光ビームがその出力の大半を失うことを知った上で、光信号に直接晒される構造の表面および容積を最大化することである。
【0019】
光作動材料の機械的作動の出力(容積出力)は、センチメートル単位以上の寸法では非常に弱い。これらの寸法において、たとえば(磁石および/またはコイルで作られた)電磁エンジンに匹敵することは不可能である。しかし、ナノメートル、マイクロメートル、およびサブミリメートル単位の寸法を含む小さな寸法では、この種のエンジンは、優れた容積出力比によって関心が高まる。この容積出力比は、図4および図5bに示す変形可能部20の容積穴あき構造の特定の形状によって提供される。
【0020】
さらに、図4および図5bに示すような種類の構造は、単一のばね状構造よりも大幅に大きな収縮力を示し得る。推進構造18の各副部品の機械出力は、構造全体の推進運動を発生させるシステム全体の最適化された出力に寄与する。出力を最大化するそのような構造の例(および任意の種類の光信号への応答性)として、ハニカム、多容積らせん(図4および図5bを参照)、およびフラクタル枝/葉などがある。
【0021】
変形可能部20の一部であるアクチュエータまたは作動ゾーン22は、光励起を、変形可能部20全体の連続的な伸長/収縮サイクルに変換するように構成される。
【0022】
アクチュエータまたは作動ゾーン22は、光励起によってアクティブ化されると、変形可能部20全体の主軸Xに沿った収縮/伸長において、主軸Xを中心とする対称な反復変形を誘発するように、主軸Xを中心として規則的に分布してよい。これらの変形は、直接または間接的に、マイクロロボットを粘性または粘弾性材料内である方向に沿って移動させる。
【0023】
アクチュエータまたは作動ゾーン22は、たとえば、液晶ネットワーク(LCN)を備えてよい。典型的には、液晶ネットワークは、化学的および空間的に適切に構成されるときに、光によって誘発された直接的な光効果および間接的な熱効果のうち少なくとも1つにより、光の影響下である方向に収縮し、光および/または光誘発熱が特定の閾値を下回るときに再び伸長する。分子レベルでは、これは、ポリマに含まれる各モノマが、光および/または光誘発熱の下で形状を変えて収縮し、その後、伸長形状に戻る能力に起因する。ポリマストリングの適切な配列は、(場合によっては巨視的な)構造全体のスケールでこの効果を活用する。
【0024】
代替または補足として、アクチュエータまたは作動ゾーン22は、
LCE(液晶エラストマ)、
アゾポリ尿素ポリマ(アゾPU)、
を備えてよく、
アゾベンゼン発色団を含むLDLCF(光駆動液晶フィルム)は、紫外光によって湾曲し、白色光によって復元することができる。
【0025】
場合によっては、推進構造18の変形可能部20は、全体が上述した感光性材料で作られ、アクチュエータまたは作動ゾーン22は、変形可能部20全体にわたり延びている。
【0026】
アクチュエータまたは作動ゾーン22は、光源14から放出される光によって、直接、および/または光によって発生する熱を介して間接的にアクティブ化されるように構成される。このように、光源14によって放出される光信号は、推進ユニット18の変形可能部20の伸長/収縮サイクルを連続的に作動させている。これにより、マイクロロボット12は光推進力によって駆動され、以下の説明から明らかであるように、場合によっては操舵も光によって駆動される。
【0027】
1つの実施形態において、推進構造18の頭部18Aは、その表面に、マイクロロボット12が動き回る粘性材料と相互作用するように構成された複数の推進繊毛(不図示)を備える。いくつかの実施形態において、後部18Bもまた、頭部18Aの推進繊毛と同一の複数の推進繊毛(不図示)を表面に備える。これらの実施形態において、アクチュエータまたは作動ゾーン22によって作動する変形可能部20の連続的な伸長/収縮サイクルは、粘性材料における推進繊毛の変位をもたらすことによって推進力を生み出し、その結果、マイクロロボット12が移動する。
【0028】
本発明は、変形可能部20の軸方向の変形が繊毛の移動をもたらし、それによってマイクロロボットを移動させる、マイクロエンジンとして機能する推進構造に関して開示されるが、そのような実施形態に限定されるものではない。たとえば、推進構造は、文献WO2022/008729に開示される種類の回転マイクロエンジンとして機能してもよい。光の影響下での変形可能部の主軸に沿った伸長/収縮における変形は、マイクロロボットが粘性材料内で移動するように、たとえばプロペラなどの任意の適切な種類の推進装置が取り付けられたプラットフォームの回転をもたらす。
【0029】
図3に示す実施形態は、3つのアクチュエータ23によって取り囲まれた変形可能部20を表示する。各アクチュエータ23は、推進ユニット18の頭部18Aと後部18Bとの間の主伸長軸Xに沿って軸方向に延びる。アクチュエータ23は、アクティブ化されるときに、収縮して長さが低減し、頭部18Aと後部18Bとが互いに近付いて推進ユニット18を収縮させる。
【0030】
図4に示す実施形態において、変形可能構造20は、光励起下で収縮し、上記変形可能構造20のストリングに沿って分布する一連の作動ゾーン22を備える。それら全ての作動ゾーン22のアクティブ化により、変形可能部22の全体的な収縮が誘発される。光源が停止されるときに、作動ゾーン22は(たとえばLCN材料の場合)再び拡張して休止形状になる。
【0031】
図5bに示す実施形態において、変形可能構造20およびアクチュエータ/作動ゾーン22は同じ要素であり、変形可能構造20は、作動ゾーン22内に全体が含まれる。
【0032】
最後の2つの実施形態に関して、変形可能部20の構造により、放出された光信号が作動ゾーン22の可能な表面全てに到達することが可能であることが特に重要である。したがって、光信号が到達することができる可能な限り多くの利用可能な表面を有することが非常に重要であり、変形可能構造20の強力、均一、かつコヒーレントなアクティブ化を可能にし、図4および図5bに示すような一連の嵌合ばね状構造の適合性の根拠を成す。
【0033】
光源14は、アクティブ化されるときに、少なくとも1つの所定の光信号を放出することを目的とする。この所定の光信号は、所与の波長、所与の偏光、所与の出力、所与の周波数などによって定められる。光源14は、推進ユニット18のアクチュエータまたは作動ゾーン22に所定の光信号を送信するために、特に被験者の体外から、遠隔制御ユニット16によってアクティブ化されるように構成される。したがって、マイクロロボットの速度は、光信号変調によって制御される。この変調は、遠隔制御ユニット16によって可能であり、上記遠隔制御ユニット16を用いてユーザによって制御され得る。上記変調は、たとえば振幅変調であってよく、正弦波信号変調、方形波信号変調、鋸歯信号変調、または他の任意の同様の信号であってよい。
【0034】
図1図2図6図7図8aおよび図8bで見ることができるように、光源14は、光ファイバ24を備える。光は体内および脳組織内を効率的に通過しないので、システム10は、各アクチュエータまたは作動ゾーン22の光作動材料に光信号を送り込むために光ファイバ24を備える。光ファイバ24は、第1の端部24Aおよび第2の端部24Bを有する。
【0035】
光ファイバは可撓性であり、ガラス(シリカ)またはプラスティックを人間の髪よりもわずかに太い径まで引き伸ばすことによって作られた透明ファイバである。光ファイバは、ファイバの両端の間で光を伝送する手段として使用される場合が多く、光ファイバ通信における幅広い有用性があり、電気ケーブルよりも長い距離および高い帯域幅(データ転送速度)での伝送を可能にする。
【0036】
本発明に関する光ファイバ24は、アクチュエータ(単数または複数)作動ゾーン(単数または複数)22へ(その結果、光アクティブ化可能な推進構造18へ)十分な出力を伝送するために十分な太さの径、かつマイクロロボット12の自己推進運動を妨げない程度に軽量かつ可撓性であるために十分な細さの径でなくてはならない。
【0037】
したがって、本発明に関して、光ファイバ24は、被験者の体外、たとえば遠隔制御ユニット16内に位置する一次光源26に、各アクチュエータまたは作動ゾーン22を直接または間接的に結合する。上記一次光源26は、たとえばレーザ光またはUV光またはLedである。
【0038】
したがって、光ファイバ24の第1の先端24Aは、上記一次光源26に接続、好適には固定され、光ファイバ24の第2の先端24Bは、被験者の体内の光信号を各アクチュエータまたは作動ゾーン22に送り込む。いくつかの実施形態において、光ファイバ24の第2の先端24Bは、マイクロロボット12の所与の距離からアクチュエータ(単数または複数)または作動ゾーン(単数または複数)をアクティブ化し(図7図8a、図8bを参照)、これは、光ファイバ24の第2の先端24Bが、ナビゲーション材料内を自由に移動する自由端であることを意味する。これらの実施形態において、光信号は、各アクチュエータまたは作動ゾーン22に到達する前にナビゲーション材料の一部を横断する必要がある。
【0039】
他のいくつかの実施形態において、光ファイバ24の第2の先端24Bは、マイクロロボット12、好適にはマイクロロボット12の後端に直接接続または固定される(図1図2および図6を参照)。これは、マイクロロボット12が吸光度の高い非常に暗い流体または非常に粘度の高い流体中を動き回る必要があるときに必要であり得るだろう。一例として、この接続は、マイクロロボットに搭載された光導波路によって実現され得る。典型的には、そのような導波路は、ガラスファイバ製である場合が多く、十分の数マイクロメートル、場合によっては10マイクロメートル未満の径を有し得る。
【0040】
任意の実施形態において、特に光ファイバ24がマイクロロボット12に直接接続または固定されるときに、マイクロロボット12と光源14との間の接続は、気密接続であってよい。これにより、ナビゲーション材料内での光拡散が回避される。
【0041】
いくつかの実施形態において、特に、光ファイバ24の第2の先端24Bが自由端である実施形態において、マイクロロボットは、放出された光信号をアクチュエータ(単数または複数)または作動ゾーン22に当たる前に集束または再集束するために、集光素子28(図7を参照)を備える。この光ファイバ24は、たとえばレンズを備えてよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、推進システム10は、操舵システム30および/またはツール軌道システム(不図示)をさらに備える。いくつかの実施形態において、マイクロロボット12は、放出された光信号によってアクティブ化可能であってもよいいくつかのツールまたは要素(たとえば線毛、繊毛、鞭毛、ひれ、尾、脚、ねじなど)を備えてよい。
【0043】
上述した(推進繊毛のような)他の推進部品と異なる(または大きく異なる)推進構造18を有する利点は、より多くの電力を小さな体積に詰め込むことである。他の構造とは異なる推進構造18自体に直接制御を行う次の利点は、システム10全体が非常に小さな体積を示す場合でも、推進システム18に詰め込まれた電力が十分維持されることである。
【0044】
操舵システム30は、少なくとも1つの操舵要素32を備え、図3図5aおよび図5bに示す実施形態において、3つの操舵要素32が示される。これらの図で見ることができるように、これらの実施形態において、推進構造18は、頭部18Aおよび後部18Bに接続された少なくとも1つの操舵要素32を備える。図3に示す実施形態において、操舵要素32は、変形可能部20に沿って主軸Xの方向に延びる。図5a、図5bの実施形態において、各操舵要素は、変形可能部20の変形可能部品である。両方の実施形態において、アクチュエータ(単数または複数)または作動ゾーン(単数または複数)22は、操舵要素32を備える。詳細には、操舵要素32のセットがアクチュエータ(単数または複数)または作動ゾーン(単数または複数)22を形成する。
【0045】
実施形態にかかわらず、光源14によって放出される光信号は、推進力をアクティブ化し、各操舵要素32もアクティブ化する。ただし、各アクチュエータまたは作動ゾーン22をアクティブ化することができる光信号の電磁特性と、少なくとも1つの操舵要素32をアクティブ化することができる光信号の電磁特性とは、互いに異なっている。具体的には、推進構造18は、いくつかの操舵要素32を備え、各操舵要素32は、光電磁特性の特定のセットを有する光信号によってアクティブ化可能であり、光電磁特性の特定のセットの各々は互いに異なっている。
【0046】
操舵要素32の目的は、光ファイバによってマイクロロボットに送り込まれる同じ光ビームに基づいてナビゲーション材料でのマイクロロボット12の操舵を可能にすることである。具体的には、単一の光信号変調を用いてナビゲーション材料内でマイクロロボット12を推進させ操舵することを可能にすることである。この変調は、遠隔制御ユニット16によって可能であり、上記遠隔制御ユニット16を用いてユーザによって制御され得る。上記変調は、たとえば、速度制御、振幅または周波数の変調などであってよく、正弦波信号変調や方形波信号変調、または鋸歯信号変調、ならびに同様の発振信号であってよい。
【0047】
操舵が行われることを可能にするために、各操舵要素32は、他の操舵要素32から独立してアクティブ化可能でなくてはならない。この点に関して、推進システム10は、光送出デバイス34をさらに備えてよい。この光送出デバイス34は、遠隔制御ユニット16によって制御される。いくつかの実施形態(図1図7図8a、および図8bを参照)において、この光送出デバイス34は、一次光源26に位置するか、または光信号の経路上のマイクロロボットに位置する。他のいくつかの実施形態(図6を参照)において、光送出デバイス34は、2つの部品を備え、第1の部品は一次光源26に位置し、第2の部品は光信号の経路上のマイクロロボットに位置する。この光送出デバイス34は、推進システム10、操舵システム30、およびツールアクティブ化システムのアクチュエータ(単数または複数)または作動ゾーン(単数または複数)22、少なくとも1つの操舵要素32、および任意のさらなる光アクティブ化可能要素の間に、光源14によって放出された光信号を送出することが可能である。
【0048】
そのために、光送出デバイス34は、上述した光信号変調の可能性に加えて、放出された光信号に対する物理的効果を有し、必要に応じて光電磁特性を変更することができる。
【0049】
たとえば、図6で見ることができるように、光送出デバイス34は、選択された1つの操舵要素32のみに当たることにより、変形可能部の非対称的な収縮を誘発し、ナビゲーション材料内でのマイクロロボット12の回転を誘発するために、ミラーシステムを用いて光信号の方向を変える。この種の送出は、図5aおよび図5bに示すような操舵デバイスに関して特に効率的であり、各操舵要素32が異なる時間または異なる強度で収縮することにより、マイクロロボット12の動きの非常に正確な制御を可能にすることができる。他のいくつかの実施形態において、光送出デバイス34は、特定のアクティブ化可能な要素をアクティブ化するために、上記放出された光信号の波長、周波数、または偏光を変更することができる。
【0050】
このように、マイクロロボット12の操舵および速度は、光信号変調、主に振幅変調を用いて制御される。たとえば、これによってシステムは、それぞれ操舵装置および推進力を駆動するために正弦波と定数との加算を使用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、信号変調制御に加えて、変形可能部20の収縮は、アクチュエータまたは作動ゾーン22によってアクティブ化されるときに、光源14から放出された任意の光信号がアクチュエータまたは作動ゾーン22に到達することを阻止する。これにより、アクチュエータまたは作動ゾーン22が非アクティブ化され、変形可能部20が伸長する。この伸長状態において、アクチュエータ(単数または複数)または作動ゾーン(単数または複数)22は、放出された光信号に対し再び再び利用可能であり、上記変形可能部が収縮する。この収縮が伸長をもたらし、その逆も同様であり、次のサイクルに続く。
【0052】
いくつかの実施形態において、光ファイバ24は、第1の先端24Aから第2の先端24Bまで光ファイバ24に沿って走る光信号、および/または光ファイバ全体の全体3D形状のいずれかを感知するための少なくとも1つのセンサ36(図2を参照)を備える。
【0053】
ナビゲーション材料内をマイクロロボット12が動き回った後、光ファイバ24が不都合な角度を形成し、推進システム10のアクチュエータ(単数または複数)または作動ゾーン(単数または複数)または操舵要素32に到達する光信号が弱くなることが起こり得る。したがって、不良な信号伝達を回避するために、各アクチュエータまたは作動ゾーン22によって受信された光信号の関数として、放出された光信号を変調するために、少なくとも1つのセンサ36は、リアルタイムで遠隔制御ユニット16と通信する。このように、受信された光信号によって誘発された効果が、(信号変化によって誘発すると思われた効果を誘発しないことを意味する)放出された光信号によって誘発されるべき効果に対応しないときに、(アルゴリズムを含む)オペレータは、所望の効果を得、マイクロロボット12の不所望の動きを回避するために、放出光信号の(たとえば)出力または明瞭度を増加させ得る。これは、24Bにおける光特性の測定、または、センサまたは画像(スキャナ、MRI、エコーグラフ)のいずれかによって知られる光ファイバのリアルタイム形状変形の使用によって変調することができ、光学シミュレーションは、推進システムによって受信される信号を計算し、予想される結果に従って初期光信号を変調することができる。
【0054】
少なくとも1つのセンサ36は、ナビゲーション材料内の光ファイバ24の動きをリアルタイムで追跡するために、医療用画像と組み合わせて使用されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、図8aおよび図8bで見ることができるように、推進システム10は、外部係止要素38を備える。この外部係止要素38は、被験者の身体の外面に固定されることを目的とする。光源14(特に一次光源26)および遠隔制御ユニット16は、この外部係止要素38に接続され得る。
【0056】
これらの実施形態において、マイクロロボット12は、システム10の安全性の向上を目的として、回収可能ケーブル40によって外部係止要素38に固定される。光ファイバ24は、このケーブル40に固定され得る(図8aを参照)。他の実施形態において、光源14は、カテーテルによって外部係止要素38および回収可能ケーブル40に接続される。
【0057】
マイクロロボット12は、推進および操舵の両方について光以外のエネルギ源を用いる必要なく、前方/後方への自由度のための推進力および3D配向のための操舵という、2つの光アクティブ化マイクロシステムを通して単一の光源によってナビゲーション材料を3Dに移動することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
【国際調査報告】