(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】融合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240628BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240628BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240628BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240628BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240628BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240628BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20240628BHJP
C07K 14/605 20060101ALI20240628BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240628BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240628BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20240628BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20240628BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C07K16/00
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N15/16
C07K14/605
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K38/26
A61P3/10
A61K47/66
A61K48/00
A61P3/00
A61K39/395 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500121
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2022103777
(87)【国際公開番号】W WO2023280133
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110764902.2
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210721402.5
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518034610
【氏名又は名称】スジョウ・アルファマブ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU ALPHAMAB CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building C23 BioBay,Xinghu Street,No.218 Suzhou,Jiangsu 215125,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ティン
(72)【発明者】
【氏名】チン、ユイハオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シアオシアオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ピーリン
(72)【発明者】
【氏名】クオ、カンピン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065CA24
4C076AA94
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE59M
4C076FF31
4C076FF65
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084DB35
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZC21
4C084ZC35
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA30
4H045FA74
(57)【要約】
本願は、ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質並びにその使用に関し、そのうち、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、W31、K26、及びY19からなる群から選ばれるアミノ酸位置における少なくとも2つのアミノ酸変異を含む。本願は、疾患又は病状の治療における上記融合タンパク質の使用を更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質であって、
そのうち、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、W31、K26、及びY19からなる群から選ばれるアミノ酸位置における少なくとも2つのアミノ酸変異を含む、
融合タンパク質。
【請求項2】
前記免疫グロブリンFc領域は、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のC末端に位置する、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgGに由来するFc領域である、
請求項1~2の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来するFc領域である、
請求項1~3の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域である、
請求項1~4の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記免疫グロブリンFc領域は、配列番号32~35の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~5の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記免疫グロブリンFc領域は、前記アミノ酸変異を有しない免疫グロブリンFc領域と比べて、前記免疫グロブリンFc領域のFc受容体に対する結合親和性の選択的な増強を可能にするアミノ酸変異を含む、
請求項1~6の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記免疫グロブリンFc領域は、EUコードに従うM252、S254及びT256位置においてアミノ酸変異を含む、
請求項1~7の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc領域は、M252Y、S254T及び/又はT256Eのアミノ酸変異を含む、
請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc領域のアミノ酸変異は、M252Y、S254T及びT256Eである、
請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFc領域は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項7~10の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体と前記免疫グロブリンFc領域の間に位置するヒンジ領域を含む、
請求項1~11の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記ヒンジ領域はIgGに由来する、
請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記ヒンジ領域は、IgG1又はIgG4に由来する、
請求項12~13の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記ヒンジ領域は、配列番号30~31の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項12~14の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記ヒンジ領域はIgG1に由来する、
請求項12~15の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記ヒンジ領域は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体と前記ヒンジ領域の間に位置するリンカーを更に含む、
請求項1~17の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
前記リンカーはペプチドリンカーである、
請求項18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記リンカーは、5~20アミノ酸の長さを有する、
請求項18~19の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記リンカーは、15アミノ酸の長さを有する、
請求項18~20の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記リンカーは、配列番号27~29の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項18~21の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記リンカーは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項18~22の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性を有する、
請求項1~23の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びK26アミノ酸位置における変異を含む、
請求項1~24の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びY19アミノ酸位置における変異を含む、
請求項1~25の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、K26及びY19アミノ酸位置における変異を含む、
請求項1~26の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31、K26及びY19アミノ酸位置における変異を含む、
請求項1~27の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記W31においてW31Y、W31R、W31K又はW31Aであるアミノ酸置換を含む、
請求項1~28の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記W31においてW31Yであるアミノ酸置換を含む、
請求項29に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記Y19においてY19A、Y19L、Y19T、Y19F、Y19I、Y19V及びY19Sからなる群から選ばれる何れか1つのアミノ酸置換であるアミノ酸置換を含む、
請求項1~30の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記Y19においてY19Aからなる群から選ばれる何れか1つのアミノ酸置換であるアミノ酸置換を含む、
請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記K26においてK26Rであるアミノ酸置換を含む、
請求項1~32の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~33の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4~25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~34の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸変異は、W31Y、K26R及びY19Aである、
請求項1~35の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項36に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸変異は、W31Y及びK26Rである、
請求項1~35の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項38に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び前記免疫グロブリンFc領域を含む、
請求項1~39の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び前記ヒンジ領域を含む、
請求項12~40の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体、前記免疫グロブリンFc領域及び前記ヒンジ領域を含む、
請求項12~41の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
N末端からC末端へ、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体、前記リンカー、前記ヒンジ領域、及び前記免疫グロブリンFc領域を順に含む、
請求項18~42の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
配列番号37~45の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~43の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
配列番号43~44の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~44の何れか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
請求項1~45の何れか1項に記載の融合タンパク質をコードする、
単離された核酸分子。
【請求項47】
請求項46に記載の単離された核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項48】
請求項1~45の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項46に記載の単離された核酸分子、又は請求項47に記載のベクターを含むか、又は発現する、
細胞。
【請求項49】
請求項1~45に記載の融合タンパク質、請求項46に記載の単離された核酸分子、請求項47に記載のベクター及び/又は請求項48に記載の細胞、並びに任意選択的に薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項50】
請求項1~45の何れか1項に記載の融合タンパク質を含む、
免疫複合体。
【請求項51】
代謝性疾患又は病状を予防及び/又は治療するための医薬の製造における、請求項1~45の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項46に記載の単離された核酸分子、請求項47に記載のベクター、請求項48に記載の細胞、請求項49に記載の医薬組成物及び/又は請求項50に記載の免疫複合体の使用。
【請求項52】
前記代謝性疾患又は病状は、GLP-1に関連する代謝性病状を含む、
請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記代謝性疾患又は病状は、糖尿病を含む、
請求項51~52の何れか1項に記載の使用。
【請求項54】
代謝性疾患又は病状を予防及び/又は治療する方法であって、請求項1~45の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項46に記載の単離された核酸分子、請求項47に記載のベクター、請求項48に記載の細胞、請求項49に記載の医薬組成物、及び/又は請求項50に記載の免疫複合体を、それを必要とする被験者に投与することを含む、
方法。
【請求項55】
前記代謝性疾患又は病状は、GLP-1に関連する代謝性病状を含む、
請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記代謝性疾患又は病状は、糖尿病を含む、
請求項54~55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
代謝性疾患又は病状を予防及び/又は治療するための、請求項1~45の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項46に記載の単離された核酸分子、請求項47に記載のベクター、請求項48に記載の細胞、請求項49に記載の医薬組成物及び/又は請求項50に記載の免疫複合体。
【請求項58】
前記代謝性疾患又は病状は、GLP-1に関連する代謝性病状を含む、
請求項57に記載の融合タンパク質、単離された核酸分子、ベクター、細胞及び/又は医薬組成物。
【請求項59】
前記代謝性疾患又は病状は、糖尿病を含む、
請求項57~58の何れか1項に記載の融合タンパク質、単離された核酸分子、ベクター、細胞及び/又は医薬組成物。
【請求項60】
それを必要とする被験者においてインスリンの発現を増加させるか又は促進する方法であって、有効量の、請求項1~45の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項46に記載の単離された核酸分子、請求項47に記載のベクター、請求項48に記載の細胞、請求項49に記載の医薬組成物及び/又は請求項50に記載の免疫複合体を前記被験者に投与することを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品分野に関し、具体的にはGLP-1ポリペプチド変異体と免疫グロブリンFc領域との融合タンパク質及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド(glucagon-like peptide-1、GLP-1)は、小腸上皮L-細胞によって分泌されるインクレチンであり、健康な個体において、GLP-1は体の栄養物質の摂取に応答し、インスリン放出を促進し、グルカゴン分泌を阻害することができる。2型糖尿病に罹患した患者に、超生理学的用量のGLP-1を注入すると、内因性インスリン分泌を回復し、血糖を低下させることができる。
【0003】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)の酵素性分解と腎クリアランスにより、天然GLP-1の血漿半減期が短くなる。2型糖尿病を治療するために、半減期が延長されるように修飾されたGLP-1Rアゴニスト(例えば、デュラグルチド(Dulaglutide))が幾つか開発されたにも関わらず、効果的な長期治療を行うと共に副作用を最小限に抑える計画を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質を提供する。上記融合タンパク質は、より長い半減期(t1/2)又はより高い曝露量などの優れた薬物動態特性を有する。本願の融合タンパク質は容易に除去されず、天然GLP-1の半減期を著しく向上させ、GLP-1ポリペプチド変異体がインビボで機能するのに有利であり、薬効を高め、使用量を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は、ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質を提供し、そのうち、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、W31、K26、及びY19からなる群から選ばれるアミノ酸位置における少なくとも2つのアミノ酸変異を含む。
【0006】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のC末端に位置する。
【0007】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、IgGに由来するFc領域である。
【0008】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来するFc領域である。
【0009】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域である。
【0010】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、配列番号32~35の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、上記アミノ酸変異を有しない免疫グロブリンFc領域と比べて、上記免疫グロブリンFc領域のFc受容体に対する結合親和性の選択的な増強を可能にするアミノ酸変異を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、EUコードに従うM252、S254及びT256位置においてアミノ酸変異を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、M252Y、S254T及び/又はT256Eのアミノ酸変異を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域のアミノ酸変異は、M252Y、S254T及びT256Eである。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体と上記免疫グロブリンFc領域の間に位置するヒンジ領域を含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域はIgGに由来する。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域はIgG1又はIgG4に由来する。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域は、配列番号30~31の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域はIgG1に由来する。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体と上記ヒンジ領域の間に位置するリンカーを更に含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、上記リンカーはペプチドリンカーである。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記リンカーは、5~20アミノ酸の長さを有する。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記リンカーは、15アミノ酸の長さを有する。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記リンカーは、配列番号27~29の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記リンカーは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性を有する。
【0029】
幾つかの実施形態において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31、K26及びY19からなる群から選ばれるアミノ酸位置における少なくとも2つの変異を含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びK26アミノ酸位置における変異を含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びY19アミノ酸位置における変異を含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、K26及びY19アミノ酸位置における変異を含む。
【0033】
幾つかの実施形態において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31、K26及びY19アミノ酸位置における変異を含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、上記W31においてW31Y、W31R、W31K又はW31Aであるアミノ酸置換を含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、上記W31においてW31Yであるアミノ酸置換を含む。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、上記Y19においてY19A、Y19L、Y19T、Y19F、Y19I、Y19V及びY19Sからなる群から選ばれる何れか1つのアミノ酸置換を含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、上記Y19においてY19Aからなる群から選ばれる何れか1つのアミノ酸置換を含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、上記K26においてK26Rであるアミノ酸置換を含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4~25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸変異は、W31Y、K26R及びY19Aである。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸変異は、W31Y及びK26Rである。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び上記免疫グロブリンFc領域を含む。幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4又は25に示されるアミノ酸配列を含み、幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンのFc領域は、IgG4に由来するFc領域である。幾つかの実施形態において、上記Fc領域は、EUコードに従うM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含む。幾つかの実施形態において、上記Fc領域は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含む。
【0046】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び上記ヒンジ領域を含む。幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4又は25に示されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域はIgG1に由来する。幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体、上記免疫グロブリンFc領域及び上記ヒンジ領域を含む。幾つかの実施形態において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4又は25に示されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域である。幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域はIgG1に由来する。幾つかの実施形態において、上記Fc領域は、EUコードに従うM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含む。幾つかの実施形態において、上記Fc領域は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記ヒンジ領域は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、N末端からC末端へ、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体、上記リンカー、上記ヒンジ領域、及び上記免疫グロブリンFc領域を順に含む。
【0049】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、配列番号37~45の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、配列番号43~44の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0051】
別の態様において、本願は、上記融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0052】
別の態様において、本願は、上記単離された核酸分子を含むベクターを提供する。
【0053】
別の態様において、本願は、上記融合タンパク質、上記単離された核酸分子、又は上記ベクターを含むか、又は発現する細胞を提供する。
【0054】
別の態様において、本願は、上記融合タンパク質、上記単離された核酸分子、上記ベクター及び/又は上記細胞、並びに任意選択的に薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0055】
別の態様において、本願は、上記融合タンパク質を含む免疫複合体を提供する。
【0056】
別の態様において、本願は、代謝性疾患又は病状を予防及び/又は治療するための医薬の製造における、上記融合タンパク質、上記単離された核酸分子、上記ベクター、上記細胞、上記医薬組成物及び/又は上記免疫複合体の使用を提供する。
【0057】
幾つかの実施形態において、上記代謝性疾患又は病状は、GLP-1に関連する代謝性病状を含む。
【0058】
幾つかの実施形態において、上記代謝性疾患又は病状は、糖尿病を含む。
【0059】
別の態様において、本発明は、代謝性疾患又は病状を予防及び/又は治療する方法であって、上記融合タンパク質、上記単離された核酸分子、上記ベクター、上記細胞、上記医薬組成物及び/又は上記免疫複合体を、それを必要とする被験者に投与することを含む方法を提供する。
【0060】
幾つかの実施形態において、上記代謝性疾患又は病状は、GLP-1に関連する代謝性病状を含む。
【0061】
幾つかの実施形態において、上記代謝性疾患又は病状は、糖尿病を含む。
【0062】
別の態様において、本発明は、代謝性疾患又は病状を予防及び/又は治療するための、上記融合タンパク質、上記単離された核酸分子、上記ベクター、上記細胞、上記医薬組成物及び/又は免疫複合体を提供する。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記代謝性疾患又は病状は、GLP-1に関連する代謝性病状を含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記代謝性疾患又は病状は、糖尿病を含む。
【0065】
別の態様において、本願は、それを必要とする被験者におけるインスリン発現を増加又は促進する方法を提供し、上記方法は、有効量の、上記融合タンパク質、上記単離された核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物を上記被験者に投与することを含む。
【0066】
当業者は、以下の詳細な説明から本願の他の態様及び利点を容易に洞察することができる。以下の詳細な説明には、本願の例示的な実施形態のみを示して説明する。当業者に明らかなように、本願の内容により、当業者は、本願にかかる発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態を変更することができる。それに応じて、本願の図面及び明細書における説明は、限定的なものではなく、単に例示的なものである。
【0067】
本願にかかる発明の具体的な特徴は、添付される特許請求の範囲に記載される通りである。以下に詳細に説明する例示的な実施形態及び図面を参照することで、本願にかかる発明の特徴及び利点をよりよく理解することができる。図面の簡単な説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】異なるリンカーの本願に記載の融合タンパク質GM-RY-L1H2-Fc4、GM-RY-L2H2-Fc4及びGM-RY-L3H2-Fc4の薬物動態学的検出の結果を示す。
【
図2】異なるヒンジ領域における本願に記載の融合タンパク質GM-ARY-L2H2-Fc4及びGM-ARY-L2H1-Fc4の薬物動態学的検出の結果を示す。
【
図3】Fc領域がYTE変異を含む本願に記載の融合タンパク質GM-RY-L2H1-Fc4mの薬物動態学的検出の結果を示す。
【
図4】Fc領域がYTE変異を含む本願に記載の融合タンパク質GM-ARY-L2H1-Fc4m及びGM-RY-L2H1-Fc4mの薬物動態学的検出の結果を示す。
【
図5】異なるヒンジ領域における且つYTE変異を含む本願に記載の融合タンパク質GM-ARY-L2H2-Fc4m、GM-RY-L2H2-Fc4m、GM-ARY-L2H1-Fc4m及びGM-RY-L2H1-Fc4mの薬物動態学的検出の結果を示す。
【
図6】本願の融合タンパク質におけるヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列の番号付け例を示す。
【
図7】本願の融合タンパク質がデュラグルチドと同等のレベルのGLP-1受容体活性化能力を有する検出結果を示す。
【
図8】[
図8A]K26R-W31Y、K26R-Q23T、K26R-Q23S、K26R-Q23N、K26R-Y19L、K26R-Y19T及びK26R-Y19F二重変異の融合タンパク質のGLP-1受容体との結合活性を示す。[
図8B]K26R-W31Y、K26R-Q23E、K26R-Y19I、K26R-Y19V、K26R-Y19A及びK26R-Y19S二重変異の融合タンパク質のGLP-1受容体との結合活性を示す。[
図8C]K26R-W31Y、K26R-Q23N、K26R-Q23S及びK26R-Q23T二重変異の融合タンパク質のGLP-1受容体との結合活性を示す。[
図8D]W31Y及びY19においてアミノ酸変異した二重変異の融合タンパク質のGLP-1受容体との結合活性を示す。[
図8E]W31Y-Y19A及びW31Y-Q23Eのアミノ酸二重変異の融合タンパク質のGLP-1受容体との結合活性を示す。[
図8F]GM-WY及びGM-WYFLのGLP-1受容体との結合活性を示す。
【
図9】[
図9A]K26R-W31Y二重変異及びK26R-W31Y-Q23においてアミノ酸変異した三重変異の融合タンパク質が何れもGLP-1受容体を活性化することができることを示す。[
図9B]及び[
図9C]K26R-W31Y-Y19においてアミノ酸変異した三重変異の融合タンパク質が何れもGLP-1受容体を活性化することができることを示す。[
図9D]及び[
図9F]K26R-W31Y-Q23においてアミノ酸変異した三重変異の融合タンパク質及びK26R-W31Y-Y19においてアミノ酸変異した三重変異の融合タンパク質が何れもGLP-1受容体を活性化することができることを示す。[
図9E]K26R-W31Y-Q23においてアミノ酸変異した三重変異の融合タンパク質がGLP-1受容体を活性化することができることを示す。
【
図10】[
図10A]本願の融合タンパク質GM-KRWYの薬物動態効果を示す。[
図10B]本願の融合タンパク質GM-KRWYYL、GM-KRWYYA及びGM-KRWYYIの薬物動態効果を示す。[
図10C]本願の融合タンパク質GM-KRWYQN、GM-KRWYQE及びGM-KRWYYAの薬物動態効果を示す。
【
図11】[
図11A~11B]経口糖負荷試験における本願の融合タンパク質GM-KRWYの血糖降下活性を示す。[
図11C~11D]経口糖負荷試験における本願の融合タンパク質GM-KRWYYA及びGM-KRWYQEの血糖降下活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、特定の具体的な実施例により、本願の発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容から本願の発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0070】
用語の定義
本願において、「GLP-1」という用語は、一般的に、グルカゴン様ペプチド-1(glucagon like peptide 1)を指す。天然GLP-1分子はインビボで加工されて、最初の6個のアミノ酸が切断されたので、当該分野では、GLP-1のアミノ酸配列のN末端の最初のアミノ酸を7位と定義し、C末端の最後のアミノ酸を37位と定義することが通例である。加工されたペプチドは、C末端のグリシン残基を除去してアミド基で置換するように、インビボで更に修飾されることができる。GLP-1は、一般的に、それぞれGLP-1(7-37)OH及びGLP-1(7-36)NH2という2つの生物活性形態がある。本願に記載の「GLP-1」には、天然、人工合成又は修飾されたGLP-1タンパク質が含まれ、更に、完全なGLP-1タンパク質又はその機能的断片、及び異なる生物活性形態のGLP-1タンパク質が含まれる。例えば、野生型のヒトGLP-1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、そのN末端のアミノ酸残基Hは7位と記される。従って、本願における「K26」という用語は、一般的に、GLP-1タンパク質のN末端の7位のHから数え、26位のアミノ酸の位置を指し、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、26位のアミノ酸はKであり、「W31」という用語は、一般的に、GLP-1タンパク質のN末端の7位のHから数え、31位のアミノ酸の位置を指し、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、31位のアミノ酸はWである。本願において、アミノ酸変異及び/又は置換が記載される場合、GLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸残基の番号付けに対する記載は、EUコードに従うFc領域のアミノ酸残基の番号付けに対する記載と異なる。
【0071】
上記ヒトGLP-1は改変されることができ、改変されたGLP-1の変異体は、改変前のヒトGLP-1の少なくとも一部の活性を有することができる。例えば、例示的な野生型ヒトGLP-1の改変されたアミノ酸配列は、配列番号2で示すことができる。
【0072】
本願において、「ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性」という用語は、一般的に、ヒトGLP-1タンパク質の1種又は複数種の活性を有し、或いはヒトGLP-1タンパク質の少なくとも20%(例えば、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、又は50%、又はそれ以上)の活性を有することを指す。上記「ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性」のヒトGLP-1は、野生型のもの、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列であってもよい。上記「ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性」におけるヒトGLP-1は、野生型ヒトGLP-1を改変した後のGLP-1変異体、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列であってもよい。例えば、本願のヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、アミノ酸配列が配列番号1に示されるヒトGLP-1の少なくとも一部の活性を有してもよい。他の場合には、本願のヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、アミノ酸配列が配列番号2に示されるヒトGLP-1の少なくとも一部の活性を有してもよい。
【0073】
上記活性は、ヒトGLP-1タンパク質と同じレベルの活性を必要とせず、ヒトGLP-1タンパク質の活性と比べて高くても、類似しても、又は低くてもよい。場合によっては、「ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性」は、GLP-1受容体に結合する活性、GLP-1受容体を活性化する活性、アデニル酸シクラーゼを活性化し、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)レベルの向上を促進する活性、細胞内Ca2+レベルを正に調節する活性、インスリン分泌を刺激する活性、肝臓グリコーゲン貯蔵量を増加させる活性、胃内容排出を遅延する活性、胃運動を抑制する活性、食欲を低下させる活性、β細胞アポトーシスを抑制する活性、食後グルカゴンの分泌を抑制する活性、低血糖を緩和する活性及び体重を減少させる活性からなる群から選ばれる1種又は複数種であってもよい。例えば、GLP-1受容体への結合能、cAMPの発現レベルを検出することにより、検出することができる。例えば、cAMP/PKAシグナル伝達経路の活性化レベルを検出するルシフェラーゼ法により検出されることができる。上記「ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性」は、ヒトGLP-1を含む融合タンパク質(例えば、Fc領域との融合タンパク質)の少なくとも一部の活性であってもよい。
【0074】
本願において、「ポリペプチド」という用語は、一般的に、アミド結合(ペプチド結合とも呼ばれる)によって線形に連結されたモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、特定の長さの生成物ではなく、2つ又はそれ以上のアミノ酸を有する任意の鎖であってもよい。本願に記載のポリペプチドは、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アミノ酸鎖、或いは2つ又はそれ以上のアミノ酸を有する任意の他の鎖を含み、且つ「ポリペプチド」という用語は、これらの用語の何れか1つを代えて、又はそれと交換して使用することができる。「ポリペプチド」という用語はまた、ポリペプチドを発現して修飾した生成物を指してもよく、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アシル化、既知の保護性/閉鎖性基による誘導体化、タンパク質の加水分解、又は天然に存在しないアミノ酸による修飾を含むが、これらに限定されない。ポリペプチドは、天然の生物源に由来するか、又は組換え技術によって生成することができる。
【0075】
本願において、「変異体」という用語は、一般的に、天然の生物学的活性タンパク質と配列相同性を有するタンパク質分子を指す。本願に記載のポリペプチド変異体は、1つ又は複数のアミノ酸残基の付加(挿入を含む)、欠失、修飾及び/又は置換によって、改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、親配列(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列)の少なくとも1つの治療及び/又は生物活性を同時に保持しているが、親配列とは異なっている。例えば、変異体は、親タンパク質と少なくとも0%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有してもよい。変異体は、天然に存在してもよいし、しなくてもよい。当該分野で知られている技術により、天然に存在しない変異体を生成することができる。本願のポリペプチド変異体は、保存的又は非保存的なアミノ酸置換、欠失又は付加を含んでもよい。
【0076】
本願において、「変異」という用語は、一般的に、配列(核酸又はアミノ酸配列)に対する任意のタイプの改変又は修飾を含み、アミノ酸又はヌクレオチドの欠失、切断、不活性化、破壊、置換又は転座を含む。本願において、アミノ酸変異はアミノ酸置換であってもよく、「置換」という用語は、一般的に、異なる「置換」アミノ酸残基で、予め決定された親アミノ酸配列における少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することを指す。当該1つ又は複数の置換されたアミノ酸残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」(即ち、遺伝暗号によってコードされる)であってもよい。
【0077】
「アミノ酸置換」という用語は、親配列中に存在する1つのアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することを指す。親配列中のアミノ酸は、例えば、化学ペプチド合成を介して、又は当該分野で公知の組換え方法によって置換されてもよい。
【0078】
本願において、「Fc領域」という用語は、一般的に、免疫グロブリン重鎖のC末端領域に由来するドメインを指し、上記C末端領域は、パパインによる完全な抗体の消化によって産生することができる。Fc領域は、天然配列のFc領域又は変異体のFc領域であってもよく、そのうち、「上記アミノ酸変異を有しない免疫グロブリンFc領域」は、それぞれヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFc配列に対応する、配列番号32~35の何れか1つに示されるアミノ酸配列を指す。本願に記載の免疫グロブリンのFc領域は、一般的に、2つの定常ドメイン(CH2ドメイン及びCH3ドメイン)を含み、特に明記しない限り、ヒンジ領域を含まず、且つ任意選択的にCH4ドメインを含んでもよい。
【0079】
本願において、「YTE変異」という用語は、IgGのFc領域における変異のセットを指す。YTE変異は、ヒトFcRnへのFc領域の結合の増加をもたらすことができ、且つ当該YTE変異を含むFc領域の融合タンパク質の血清半減期を変化させる可能性がある。YTE変異を含むFc領域は、KabatにおけるEUインデックスに従って番号付けられるM252Y、S254T及びT256Eという3つのアミノ酸変異の組み合わせを含む。
【0080】
本願において、「ヒンジ領域」という用語は、一般的に、N末端又はC末端のポリペプチド部分の独立した移動を可能にする、長さが15~30アミノ酸の間の可撓性アミノ酸配列を指す。ヒンジ領域は、一般的に、免疫グロブリンの重鎖CH1及びCH2機能性領域の間の領域に由来する。ヒンジ領域は、一般的に、IgGに由来し、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来してもよい。本願のヒンジ領域のN末端又はC末端は、天然のIgGに由来するヒンジ領域に対して、ヒンジ領域の機能が維持されている限り、1つ又は複数のアミノ酸残基を付加してもよく、1つ又は複数のアミノ酸残基を欠失してもよく、更に1つ又は複数のアミノ酸残基を置換してもよい。
【0081】
本願において、「免疫グロブリン」という用語は、一般的に、基本的に免疫グロブリン遺伝子によってコードされる1つ又は複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。広く認められたヒト免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α(IgA1及びIgA2)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、εとμ定常領域遺伝子、及び多くの免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。一般的に、免疫グロブリンは、2つの同じ軽鎖(L)及び2つの同じ重鎖(H)からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であってもよい。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25 KD及び214個のアミノ酸)のNH2-末端(約110個のアミノ酸)は可変領域遺伝子によってコードされ、COOH-末端はκ又はλ定常領域遺伝子によってコードされる。天然の免疫グロブリンは、基本的に、免疫グロブリンのヒンジ領域によって連結された2つのFab分子及びFc領域で構成される。
【0082】
本願において、「リンカー」という用語は、一般的に、2つの異種ポリペプチド又はその断片を連結するアミノ酸配列を指す。本願において、リンカーは、ポリペプチドを共有結合して融合ポリペプチドを形成するアミノ酸配列であってもよい。リンカーの長さは、10~20アミノ酸の長さであってもよい。リンカーは、可撓性又は剛性であってもよい。
【0083】
本願において、上記「選択的増強」は、一般的に、特定の条件下で増強することを指し、上記特定の条件は、特定のpH範囲、特定の温度範囲、特定の連結形態、特定の試料源又は特定の反応時間などであってもよい。例えば、Fc領域のアミノ酸変異により、Fc領域のFc受容体に対する結合能を特定のpH範囲内で増強させるが、Fc領域のFc受容体に対する結合能を当該特定のpH範囲外で有意に変化させないことを、「選択的増強」と呼ぶことができる。
【0084】
本願において、「融合タンパク質」という用語は、一般的に、そのアミノ酸配列が直接的又は間接的に(リンカーペプチドなどのリンカーを介して)異種ポリペプチド(例えば、前のポリペプチド又はそのドメイン非関連ポリペプチド)のアミノ酸配列に融合できるポリペプチドを含むか、又はそのポリペプチドからなるより長いポリペプチドを含むものを指す。
【0085】
本願において、「免疫複合体」という用語は、一般的に、ポリペプチド又はタンパク質が興味のある活性物質(例えば、タンパク質、核酸、医薬又はマーカー分子など)と直接的又は間接的に連結(例えば、リンカーを介して共有結合)して形成した複合体を指す。
【0086】
本願において、「核酸分子」という用語は、一般的に、天然環境から単離され、又は人工的に合成された、任意の長さの単離形態のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド又はそれらの類似体を指す。
【0087】
本願において、「ベクター」という用語は、一般的に、適切な宿主細胞内で自己複製可能な核酸分子を指し、挿入した核酸分子を宿主細胞内及び/又は宿主細胞間に移転するものである。上記ベクターは、主にDNA又はRNAを細胞内に挿入するためのベクター、主にDNA又はRNAを複製するためのベクター、及び主にDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳を発現するためのベクターを含んでもよい。上記ベクターは、更に、複数種の上記機能を有するベクターを含んでもよい。上記ベクターは、適切な宿主細胞に導入された場合に、ポリペプチドに転写と翻訳できるポリヌクレオチドであってもよい。一般的に、上記ベクターを含む適切な宿主細胞を培養することにより、上記ベクターは所望の発現生成物を産生することができる。
【0088】
本願において、「細胞」という用語は、一般的に、本願に記載の核酸分子のプラスミド又はベクターを含めるか又は含んだ、或いは、本願に記載の抗体又はその抗原結合断片を発現可能な個別細胞、細胞株又は細胞培養物を指す。上記宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含んでもよい。天然、予想外の又は意図的な変異により、子孫細胞は、元の親細胞と形態又はゲノムにおいて必ずしも完全に同じであるとは限らないが、本願に記載の抗体又はその抗原結合断片を発現することができればよい。上記宿主細胞は、本願に記載のベクターを利用してインビトロで細胞をトランスフェクトすることにより得ることができる。上記宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌)であってもよく、真核細胞(例えば酵母細胞、例えばCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞、NS0細胞又は骨髄腫細胞)であってもよい。上記組換え宿主細胞は、ある特定の細胞を含むだけでなく、これらの細胞の子孫も含む。
【0089】
本願において、「代謝性疾患又は病状」という用語は、一般的に、インビボの正常な代謝プロセスを破壊することにより、体がエネルギーを正常に使用及び/又は貯蔵することができないようにする疾患又は病状を指す。上記代謝性疾患又は病状は、糖質代謝障害の疾患、脂肪類代謝障害の疾患及び/又は細胞ミトコンドリア障害の疾患を指してもよい。上記代謝性疾患又は病状は、食事、毒素や感染症に関連するものであってもよく、遺伝性疾患であってもよい。上記代謝性疾患又は病状は、代謝関連酵素の欠乏、又は代謝関連酵素機能の異常による疾患又は病状を含んでもよい。本願に記載の代謝性疾患又は病状は、糖尿病、他のGLP-1に関連する代謝性病状から選ばれてもよい。
【0090】
本願において、「デュラグルチド(dulaglutide)」は、一般的に、GLP-1類似体を含む異種融合タンパク質を指し、GLP-1類似体(アミノ酸配列は配列番号2に示される)とヒトIgG4由来のFc領域とが小分子ペプチドを介して共有結合して形成される。デュラグルチドは、トルリシティと呼ばれてもよく、商品名がTRULICITY(R)又はトルリシティ(R)である。デュラグルチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む(PCT特許WO2009009562及び米国特許US7452966を参照)。
【0091】
本願において、「含む」という用語は、一般的に、明確に指定された特徴を含むが、他の要素を排除しないことを意味する。
【0092】
本願において、「約」という用語は、一般的に、指定値の0.5%~10%の以上又は以下の範囲内の変化、例えば、指定値の0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%の以上又は以下の範囲内の変化を指す。
【0093】
[発明の詳細な説明]
GLP-1ポリペプチド変異体
一態様において、本願は、ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性を有するヒトGLP-1ポリペプチド変異体を含む融合タンパク質を提供する。場合によっては、ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、GLP-1受容体に結合する活性、GLP-1受容体を活性化する活性、アデニル酸シクラーゼを活性化し、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)レベルの向上を促進する活性、細胞内Ca2+レベルを正に調節する活性、インスリン分泌を刺激する活性、肝臓グリコーゲン貯蔵量を増加させる活性、胃内容排出を遅延する活性、胃運動を抑制する活性、食欲を低下させる活性、β細胞アポトーシスを抑制する活性、食後グルカゴンの分泌を抑制する活性、低血糖を緩和する活性及び体重を減少させる活性からなる群から選ばれる1種又は複数種の活性を有することができる。例えば、GLP-1受容体への結合能、cAMPの発現レベルを検出することにより、検出することができる。上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体の活性は、ヒトGLP-1活性の少なくとも20%(例えば、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、又は50%、又はそれ以上)であってもよい。
【0094】
配列番号2に示されるアミノ酸配列、即ち、HGEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGGG(配列番号2)と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、少なくとも2つのアミノ酸変異、例えば、2個、3個又はそれ以上のアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、2~4個(例えば、2~3個、3個又は2個)のアミノ酸置換を含んでもよい。上記少なくとも2つのアミノ酸変異は、K26、W31及びY19からなる群から選ばれるアミノ酸位置にあってもよい。
【0095】
本願において、上記アミノ酸位置「Xn」は、配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列中のn位に対応する残基Xで発生されたアミノ酸置換を指し、そのうち、nは正整数(GLP-1の場合、nは7から始まる)であり、Xは任意のアミノ酸残基の略語である。例えば、アミノ酸位置「W31」は、配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列の31位のアミノ酸に対応する位置を示す。配列番号2に示されるアミノ酸配列の場合、アミノ酸残基Xと位置nとの対応関係は
図6に示される通りである。
【0096】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31、K26及びY19からなる群から選ばれるアミノ酸位置における少なくとも2つの変異を含んでもよい。
【0097】
例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びK26アミノ酸位置における2つのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、2つのアミノ酸変異を有し、W31及びK26アミノ酸位置にあってもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0098】
例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びY19アミノ酸位置における2つのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、2つのアミノ酸変異を有し、W31及びY19アミノ酸位置にあってもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号12~18の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0099】
例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、K26及びY19アミノ酸位置における2つのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、2つのアミノ酸変異を有し、K26及びY19アミノ酸位置にあってもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号5~11の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0100】
例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31、K26及びY19アミノ酸位置における3つのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、3つのアミノ酸変異を有し、W31、K26及びY19アミノ酸位置にあってもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号19~25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0101】
本願において、上記アミノ酸変異は、アミノ酸置換を含んでもよい。上記アミノ酸変異により、上記GLP-1ポリペプチド変異体は、ヒトGLP-1(例えば、アミノ酸配列が配列番号1又は2の何れか1つに示されるヒトGLP-1タンパク質)の少なくとも一部の活性を依然として有する。上記アミノ酸変異により、上記GLP-1ポリペプチド変異体の融合タンパク質は、ヒトGLP-1(例えば、アミノ酸配列が配列番号1又は2の何れか1つに示されるヒトGLP-1タンパク質)の融合タンパク質の少なくとも一部の活性を依然として有することができる。上記アミノ酸変異により、上記GLP-1ポリペプチド変異体及びFc領域の融合タンパク質は、ヒトGLP-1(例えば、アミノ酸配列が配列番号1又は2の何れか1つに示されるヒトGLP-1タンパク質)及びFc領域の融合タンパク質の少なくとも一部の活性を依然として有することができる。
【0102】
本願において、上記K26では、アミノ酸置換を含んでもよく、上記アミノ酸置換はK26Rであってもよい。
【0103】
本願において、上記W31では、アミノ酸置換を含んでもよく、上記アミノ酸置換はW31Y、W31A、W31R又はW31Kであってもよい。本願において、上記W31では、アミノ酸置換を含んでもよく、上記アミノ酸置換はW31Y、W31K又はW31Rであってもよい。例えば、上記W31では、アミノ酸置換を含んでもよく、上記アミノ酸置換はW31Yであってもよい。
【0104】
本願において、上記Y19では、アミノ酸置換を含んでもよく、上記アミノ酸置換はY19A、Y19L、Y19T、Y19F、Y19I、Y19V又はY19Sであってもよい。例えば、上記Y19では、アミノ酸置換を含んでもよく、上記アミノ酸置換はY19Aであってもよい。
【0105】
本願において、アミノ酸置換「XnY」は、配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列中のn位に対応する残基Xがアミノ酸残基Yで置換されたことを意味し、そのうち、nは正整数(GLP-1の場合、nは7から始まる)であり、X及びYはそれぞれ独立的に任意のアミノ酸残基の略語であり、且つXはYと異なっている。例えば、アミノ酸置換「W31Y」は、配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列中の31位に対応するアミノ酸残基Wがアミノ酸残基Yで置換されたことを意味する。
【0106】
本願において、配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、少なくとも2つのアミノ酸置換を含んでもよく、上記アミノ酸置換は、1)K26Rと、2)W31Y、W31R、W31K及びW31Aから選ばれる何れか1つと、3)Y19A、Y19L、Y19T、Y19F、Y19I、Y19V及びY19Sから選ばれる何れか1つとからなる群から選ばれてもよい。
【0107】
例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、1)K26Rと、2)W31Y、W31R、W31K及びW31Aから選ばれる何れか1つと、3)Y19A、Y19L、Y19T、Y19F、Y19I、Y19V及びY19Sから選ばれる何れか1つとからなる群から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸変異を含んでもよい。
【0108】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びK26アミノ酸位置における2つのアミノ酸置換を含んでもよく、上記K26におけるアミノ酸置換はK26Rであってもよく、且つ上記W31におけるアミノ酸置換はW31Y、W31R、W31K及びW31Aであってもよい。例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31Y及びK26Rのアミノ酸置換を含んでもよい。
【0109】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、アミノ酸置換W31Yを含んでもよい。
【0110】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、アミノ酸置換K26Rを含んでもよい。
【0111】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、アミノ酸置換Y19Aを含んでもよい。
【0112】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、アミノ酸置換W31Y及びY19Aを含んでもよい。
【0113】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、アミノ酸置換W31Y及びK26Rを含んでもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4及び19~25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0114】
例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列のアミノ酸置換は、W31Y及びK26Rであってもよく、例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0115】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、アミノ酸置換K26R、アミノ酸置換W31Y及びY19におけるアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、上記GLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号19~25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0116】
本願において、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、アミノ酸置換K26R、アミノ酸置換W31Y及びアミノ酸置換Y19Aを含んでもよい。例えば、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0117】
本願において、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号26に示されるアミノ酸配列、即ち、HGEGTFTSDVSSX19LEEQAAREFIAX31LVKGGGを含んでもよく、そのうち、X19=Y、A、L、T、F、I、V又はS、X31=W、A、R、K又はYである。
【0118】
出願番号がPCT/CN2021/141606及びPCT/CN2021/141608のPCT国際特許出願は、それぞれヒトGLP-1ポリペプチド変異体及びその融合タンパク質に関し、それらは、ここでその全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
Fc領域
本願において、上記融合タンパク質は、免疫グロブリンFc領域を含む。本願において、免疫グロブリンFc領域は、IgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来してもよい。上記IgG1のFc領域は、配列番号32に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。上記IgG2のFc領域は、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。上記IgG3のFc領域は、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。上記IgG4のFc領域は、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0120】
本願において、上記Fc領域は、上記アミノ酸変異を有しない免疫グロブリンのFc領域(例えば、配列番号32~35の何れか1つに示されるアミノ酸配列)と比べて、上記免疫グロブリンFc領域のFc受容体に対する結合親和性の選択的な増強を可能にするアミノ酸変異を含んでもよい。
【0121】
本願において、上記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来するFc領域であってもよく、且つM252、S254及び/又はT256位に1種又は複数種のアミノ酸変異(例えば、上記アミノ酸位置はKabatのEUコードに従う)を含む。例えば、上記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来するFc領域であってもよく、且つM252、S254、及びT256位にアミノ酸変異(例えば、上記アミノ酸位置はKabatのEUコードに従う)を含む。
【0122】
例えば、上記M252におけるアミノ酸変異は、M252Yであってもよい。例えば、上記S254Tにおけるアミノ酸変異は、S254Tであってもよい。例えば、上記T256におけるアミノ酸変異は、T256Eであってもよい。
【0123】
本願において、上記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来するFc領域であってもよく、且つM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含んでもよい。
【0124】
例えば、上記Fc領域は、IgG1に由来するFc領域であってもよく、且つM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記Fc領域は、IgG2に由来するFc領域であってもよく、且つM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記Fc領域は、IgG3に由来するFc領域であってもよく、M252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記Fc領域は、IgG4に由来するFc領域であってもよく、且つ配列番号36に示されるアミノ酸配列を含んでよい。
【0125】
ヒンジ領域
本願において、上記融合タンパク質は、ヒンジ領域を含んでもよい。本願において、上記ヒンジ領域は、IgGに由来してもよい。
【0126】
本願において、上記ヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来してもよい。本願において、上記ヒンジ領域は、IgG1に由来してもよい。本願において、上記ヒンジ領域は、IgG4に由来してもよい。
【0127】
本願において、天然に存在するIgG1ヒンジ領域と比べて、上記融合タンパク質中のヒンジ領域は、鎖間ジスルフィド結合を除去するために、1つ又は複数のアミノ酸変異を含んでもよい。そのようなアミノ酸変異は、当該分野で公知の技術である。
【0128】
本願において、上記融合タンパク質中のヒンジ領域は、天然に存在するIgGヒンジ領域と比べて、N末端において1つ又は複数のアミノ酸を付加してもよい。本願において、上記融合タンパク質中のヒンジ領域は、天然に存在するIgGヒンジ領域と比べて、C末端において1つ又は複数のアミノ酸を付加してもよい。本願において、上記融合タンパク質中のヒンジ領域は、天然に存在するIgGヒンジ領域と比べて、N末端において1つ又は複数のアミノ酸を欠失してもよい。本願において、上記融合タンパク質中のヒンジ領域は、天然に存在するIgGヒンジ領域と比べて、C末端において1つ又は複数のアミノ酸を欠失してもよい。
【0129】
本願において、上記融合タンパク質中のヒンジ領域は、天然に存在するIgG4ヒンジ領域と比べて、N末端において1つ又は複数のアミノ酸、例えばAlaを付加してもよい。本願において、上記融合タンパク質中のヒンジ領域は、天然に存在するIgG4ヒンジ領域と比べて、望ましくないタンパク質の形成を回避するために、1つ又は複数のアミノ酸変異を含んでもよい。そのようなアミノ酸変異は、当該分野で公知の技術である。
【0130】
本願において、上記ヒンジ領域は、配列番号30又は31に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0131】
リンカー
本願において、上記融合タンパク質は、リンカーを含んでもよい。上記リンカーは、上記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体と上記免疫グロブリンFc領域とを連結する。本願において、上記リンカーは、ペプチドリンカーであってもよい。本願において、上記ペプチドリンカーは、剛性又は可撓性であってもよい。例示的なリンカーとしては、配列番号27~29又は47~70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0132】
本願において、上記リンカーは、12~15アミノ酸の長さを有することができる。本願において、上記リンカーは、15アミノ酸の長さを有することができ、上記列挙した15未満のアミノ酸の長さのリンカーに対して、その長さが15アミノ酸に達するように、アミノ酸、例えばGlyを付加することができる。
【0133】
例えば、本願に記載のリンカーは、配列番号27~29の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0134】
融合タンパク質
本願において、上記融合タンパク質は、上記ヒトGLPポリペプチド変異体、上記リンカー、上記ヒンジ領域、及び上記免疫グロブリンFc領域を含んでもよい。
【0135】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号4又は25に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgGに由来するFc領域であってもよい。例えば、上記免疫グロブリンFc領域は、M252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含むIgGのFc領域であってもよい。
【0136】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号4又は25に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、IgG1又はIgG4のヒンジ領域に由来してもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgGに由来するFc領域であってもよい。例えば、上記免疫グロブリンFc領域は、M252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含むIgGのFc領域であってもよい。
【0137】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号4又は25に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記リンカーは、配列番号27~29の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、IgG1又はIgG4のヒンジ領域に由来してもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgGに由来するFc領域であってもよい。例えば、上記免疫グロブリンFc領域は、M252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含むIgGのFc領域であってもよい。
【0138】
本願において、上記融合タンパク質は、N末端からC末端へ、上記ヒトGLPポリペプチド変異体、上記リンカー、上記ヒンジ領域、及び上記免疫グロブリンFc領域を順に含んでもよい。
【0139】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記リンカーは、配列番号27~29の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、IgG1又はIgG4のヒンジ領域に由来してもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域であってもよい。例えば、上記融合タンパク質は、配列番号37~39の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0140】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記リンカーは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、IgG1又はIgG4のヒンジ領域に由来してもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域であってもよく、且つ任意選択的にM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、上記融合タンパク質は、配列番号40~42及び44の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0141】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記リンカーは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、IgG1又はIgG4のヒンジ領域に由来してもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域であってもよく、且つM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含む。例えば、上記融合タンパク質は、配列番号43及び45の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0142】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記リンカーは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、IgG1のヒンジ領域に由来してもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域であってもよく、且つM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含む。例えば、上記融合タンパク質は、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0143】
本願において、上記融合タンパク質中の上記ヒトGLPポリペプチド変異体は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記リンカーは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、IgG1のヒンジ領域に由来してもよく、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域であってもよく、且つM252Y、S254T及びT256Eのアミノ酸変異を含む。例えば、上記融合タンパク質は、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0144】
核酸分子、ベクター、細胞及び製造方法
別の態様において、本願は、本願に記載の融合タンパク質をコードすることができる、単離された1種又は複数種の核酸分子を更に提供する。例えば、上記1種又は複数種の核酸分子の各々は、完全な融合タンパク質をコードしてもよく、そのうちの一部をコードしてもよい。
【0145】
本願に記載の核酸分子は、単離されたものであってもよい。例えば、(i)インビトロで増幅し、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅して産生すること、(ii)クローニングして組換えて産生すること、(iii)精製し、例えば、酵素切断及びゲル電気泳動分画により単離すること、或いは(iv)合成し、例えば、化学的に合成することといった方法により産生又は合成することができる。ある実施形態において、上記単離された核酸は、組換えDNA技術によって製造された核酸分子である。組換えDNA及び分子クローニング技術は、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.とManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,(1989)(Maniatis)及びT.J.Silhavy,M.L.BennanとL.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1984)及びAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,pub.by Greene Publishing Assoc.and Wiley-Interscience(1987)に記載された技術を含む。簡単に言えば、ゲノムDNA断片、cDNA及びRNAによって上記核酸を製造することができ、これらの核酸の全ては、細胞から直接抽出するか、又は様々な増幅方法(PCR及びRT-PCRを含むが、これらに限定されない)によって組換え産生することができる。
【0146】
別の態様において、本願は、上記核酸分子を含む1種又は複数種のベクターを提供する。例えば、上記ベクターは、1種又は複数種の上記核酸分子を含んでもよい。また、上記ベクターは、適切な宿主細胞内及び適切な条件下での当該ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などの他の遺伝子を更に含んでもよい。また、上記ベクターは、適切な宿主におけるコード領域の正確な発現を可能にする発現制御要素を更に含んでもよい。このような制御要素は当業者に良く知られているものであり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、及び遺伝子転写又はmRNA翻訳を調節する他の制御要素などを含んでもよい。本願に記載の1種又は複数種の核酸分子は、上記発現制御要素と操作可能に連結することができる。
【0147】
上記ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ又は例えば遺伝子工学で一般的に使用される他のベクターを含んでもよい。例えば、上記ベクターは発現ベクターである。
【0148】
別の態様において、本願は、本願に記載の1種又は複数種の核酸分子及び/又は本願に記載の1種又は複数種のベクターを含むことができる細胞を提供する。ある実施形態において、各種又は各宿主細胞は、1つ又は1種の本願に記載の核酸分子又はベクターを含んでもよい。ある実施形態において、各種又は各宿主細胞は、複数(例えば、2つ又はそれ以上)又は複数種(例えば、2種又はそれ以上)の本願に記載の核酸分子又はベクターを含んでもよい。例えば、本願に記載のベクターを上記細胞、例えば原核細胞(例えば、細菌細胞)、CHO細胞、NS0細胞、HEK293T細胞又はHEK293A細胞、或いは、植物由来の細胞、真菌や酵母細胞など他の真核細胞に導入することができる。エレクトロポレーション、リポフェクションなどの当該分野で知られている方法により、本願に記載のベクターを上記細胞に導入することができる。
【0149】
別の態様において、本願は、本願に記載の融合タンパク質を製造する方法を提供する。上記方法は、上記融合タンパク質の発現を可能にする条件下で、本願に記載の細胞を培養することを含んでもよい。例えば、適当な培地、適当な温度、培養時間などを用いることができる。
【0150】
場合によっては、上記方法は、本願に記載の融合タンパク質を収集(例えば、単離及び/又は精製)するステップを更に含んでもよい。例えば、プロテインG-アガロース又はプロテインA-アガロースを使用してアフィニティークロマトグラフィーを行ってもよく、ゲル電気泳動及び/又は高速液体クロマトグラフィーなどにより本願に記載の融合タンパク質を精製・単離してもよい。
【0151】
医薬組成物及び使用
別の態様において、本願は、上記融合タンパク質、上記核酸分子、上記ベクター、又は上記細胞、及び任意選択的に薬学的に許容されるアジュバントを含む医薬組成物を提供する。
【0152】
例えば、上記薬学的に許容されるアジュバントは、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、糖、キレート剤、対イオン、金属錯体及び/又は非イオン性界面活性剤などを含んでもよい。
【0153】
本願において、上記医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位でのインサイチュ投与、吸入、直腸内投与、膣内投与、経皮投与又は経皮下デポー投与のために調製されることができる。
【0154】
本願に記載の医薬組成物は、代謝性疾患又は病状を治療するために使用することができる。例えば、上記代謝性疾患又は病状は、糖尿病及び他のGLP-1に関連する代謝性疾患から選ばれてもよい。
【0155】
上記医薬組成物の投与頻度及び投与量は、治療される疾患の種類、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度並びに活性成分となる薬物の種類を含む、多くの関連要因によって決定することができる。上記医薬組成物は、優れたインビボ効果及び濃度持続性を有するため、上記薬物の投与頻度及び投与量を大幅に減らすことができる。
【0156】
別の態様において、本願は、それを必要とする被験者におけるインスリン発現を増加又は促進する方法を提供し、上記方法は、有効量の、上記融合タンパク質、上記単離された核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物を上記被験者に投与することを含む。
【0157】
いかなる理論によっても限定されることを意図するものではなく、以下の実施例は、本願の発明の各技術案を例示するためのものに過ぎず、本願の発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0158】
実施例1 融合タンパク質の製造
N末端からC末端へ、GLP-1ポリペプチド変異体(アミノ酸配列が配列番号4~25の何れか1つに示される)、リンカーペプチド(アミノ酸配列が配列番号27~29の何れか1つに示される)、ヒンジ領域(アミノ酸配列が配列番号30~31の何れか1つに示される)、及びIgGに由来するFc領域(アミノ酸配列が配列番号32~36の何れか1つに示される)を順に含む、ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及びFcの融合タンパク質を製造した。融合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターを細胞に移転し、発現し、精製して融合タンパク質が得られた。例示的な融合タンパク質の全長配列及び各部分配列を以下の表1に示した。
【0159】
【0160】
実施例2 異なるリンカーを使用した融合タンパク質の薬物動態学的検出
本願の融合タンパク質GM-RY-L1H2-Fc4、GM-RY-L2H2-Fc4、及びGM-RY-L3H2-Fc4のインビボ薬物動態を考察した。実験は、環境温度23±2℃、相対湿度40~70%、12 h明暗サイクルであるSPF動物室で行われた。実験動物を自由に飲食させ、実験前に少なくとも3日適応させた。体重が180~220 gのSPFグレードのSDラットをランダムに群分けした。各群のラットに、対応する被験品を1 mg/kgの用量で皮下注射し(SC)、デュラグルチド(DULA)を対照とした。投与前、投与後の6 h、24 h、48 h、72 h、96 h及び120 hに頸静脈から約100 μL採血した。採取した血液を遠心分離管に加え、室温で30~60 min静置した。その後、4℃で2 h以内に4000 rpmで10 min遠心分離し、血清を迅速に分離した。-80℃で保存した。試料をELISAにより検出した。DAS(3.2.8)ソフトウェアにより薬物動態パラメータを計算した。
【0161】
結果を
図1及び表2に示すように、GM-RY-L1H2-Fc4、GM-RY-L2H2-Fc4、及びGM-RY-L3H2-Fc4のインビボ代謝特性は、対照のデュラグルチドと顕著な差がなく、そのうち、L2リンカー(配列番号28)を使用したGM-RY-L2H2-Fc4は、最も良好な半減期を有し、曝露量が対照と同等である。
【0162】
【0163】
実施例3 異なるヒンジ領域を使用した融合タンパク質の薬物動態学的検出
実施例2の方法に従って、本願の融合タンパク質GM-ARY-L2H2-Fc4及びGM-ARY-L2H1-Fc4のインビボ薬物動態を検出した。試料をELISAにより検出した。DAS(3.2.8)ソフトウェアにより薬物動態パラメータを計算した。
【0164】
結果を
図2及び表3に示すように、GM-ARY-L2H2-Fc4及びGM-ARY-L2H1-Fc4のインビボ半減期は同等であり、そのうち、IgG1のヒンジ領域(配列番号30)を用いたGM-ARY-L2H1-Fc4の暴露量は比較的良好である。
【0165】
【0166】
実施例4 YTE変異を含むFc領域を使用した融合タンパク質の薬物動態学的検出
本願の融合タンパク質GM-RY-L2H1-Fc4m及びGM-ARY-L2H1-Fc4mのインビボ薬物動態をカニクイザルを用いて検出した。実験において、群当たり2匹のカニクイザルであり、雌雄半分であり、対照として、各群にそれぞれ対応する被験品(1 mg/kg)、DULA (IgG4のFc領域がYTE変異を受けないデュラペプチド)及びDULA-Fc4m(IgG4のFc領域がYTE変異を受けたデュラペプチド)を皮下注射で単回投与した。血液試料を、それぞれ投与前及び投与後の4 h、8 h、24 h、48 h、72 h、120 h、168 h、264 h、336 h、504 h、672 h、840 h及び1008 hに採取した。血清を単離し、ELISA法により、被験物の投与後のカニクイザル血清中の被験物の濃度を測定した。DAS(3.2.8)ソフトウェアにより薬物動態パラメータを計算した。
【0167】
結果を
図3、
図4、表4及び表5に示すように、そのうち、表4のデータは、
図3のグラフからであり、表5のデータは、
図4のグラフからである。本願のGM-RY-L2H1-Fc4m(
図3及び
図4)及びGM-ARY-L2H1-Fc4m(
図4)は、YTE変異を同様に含むデュラグルチドと比べて、より良好なインビボ半減期及び曝露量を有し、一方、デュラグルチドのFc領域は、YTE変異を行う効果が比較的弱く、未変異のデュラグルチドと比べて、Fc領域のYTE変異は、デュラグルチドのインビボ半減期及び曝露量を増加させることはない(
図4)。
【0168】
図1のデータと合わせて、Fc領域にYTE変異を行っていない本願の融合タンパク質の半減期又は曝露量は、デュラグルチドに相当するが、Fc領域にYTE変異を行った本願の融合タンパク質の半減期及び曝露量は、いずれもデュラグルチドよりも顕著に高い。これは、Fc領域のYTE変異が本願の融合タンパク質の薬物動態特性を有意に向上させ、且つ融合タンパク質のヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸変異及びFc領域のYTE変異が薬物動態特性の向上に対して相乗効果を有することを示した。
【0169】
【0170】
【0171】
実施例5 異なるヒンジ領域のFc領域YTE変異を使用した融合タンパク質の薬物動態学的検出
実施例4の方法に従って、Fc領域YTE変異を含む本願の融合タンパク質GM-ARY-L2H2-Fc4m、GM-RY-L2H2-Fc4m、GM-ARY-L2H1-Fc4m、及びGM-RY-L2H1-Fc4mのインビボ薬物動態を検出した。試料をELISAにより検出した。DAS(3.2.8)ソフトウェアにより薬物動態パラメータを計算した。
【0172】
結果を
図5及び表6に示すように、4つの融合タンパク質のインビボ半減期又は曝露量がいずれも良好であり、そのうち、IgG1のヒンジ領域(配列番号30)を使用した融合タンパク質の総合効果が比較的良好である。
【0173】
【0174】
実施例6 ルシフェラーゼ法による本願の融合タンパク質のcAMP/PKAシグナル伝達経路に対する活性化作用の検出
GLP-1ポリペプチド変異体の融合タンパク質がGLP-1受容体に結合し、アデニル酸シクラーゼを活性化し、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)レベルの向上を促進するという原理により、CREB(cAMP応答配列結合タンパク質)レポーター遺伝子に基づいて、本願に係る融合タンパク質のcAMP/PKAシグナル伝達経路に対する活性化作用を検出した。ヒトGLP-1Rプラスミド及びCREBにより駆動されたルシフェラーゼレポータープラスミドを使用してHER293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした後、HER293-GLP1R-CREB-D4細胞を消化して収集し、カウントし、10%のFBSを含むDMEM培地で細胞数を4×105細胞/mLに調整し、1ウェルあたり50 μLで96ウェルプレートに接種した。10%のFBSを含むDMEM培地で検出待ち試料を1000 ng/mLから9つの濃度に希釈し、デュラグルチドを陽性対照とした。上記96ウェルプレートの各ウェルに、更に一連の濃度の検出待ち試料を50 μL加え、37℃で数時間インキュベートした。上清を捨て、各ウェルにルシフェラーゼ基質を加えた。室温で5 min放置した後、50 μL取り出し、ルシフェラーゼアッセイシステムBio-GloTMLuciferase Assay System(Promega、G7940)によりルシフェラーゼの活性を検出し、且つマイクロプレートリーダー(Molecular Devices、SpectraMax M3)で数値を読み取った。蛍光強度はcAMPのレベルを反映するもので、GLP-1受容体の活性化の程度を反映した。
【0175】
結果を
図7に示すように、本願の融合タンパク質は、デュラグルチドと同レベルのGLP-1受容体活性化能を有する。
【0176】
実施例7 異なる突然変異形態のGLP-1ポリペプチド変異体の検出
本願の実施例に使用される陽性対照デュラグルチド(Dulaglutide)は、当該分野で公知の糖尿病薬であり、コード名がLY-2189265であり、デュラグルチドは、本願においてGLP-1-Fc又はDULA又はKN042と呼ばれる。
【0177】
ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のFc融合タンパク質を製造するために、当該ヒトGLP-1ポリペプチド変異体をコードするFc融合タンパク質の核酸配列を含むベクターを細胞内に導入し、発現して精製して融合タンパク質が得られた。融合タンパク質は、N末端からC末端へ、GLP-1ポリペプチド変異体(アミノ酸配列は以下の表に示される)、リンカーペプチド(G4S)3、並びにIgG4に由来するFc領域及びヒンジ領域を順に含む。例示的なヒトGLP-1ポリペプチド変異体配列を以下の表に示した。
【0178】
【0179】
(1)融合タンパク質のGLP-1受容体への結合親和性の検出
ELISAにより実施例1における融合タンパク質のGLP-1受容体との結合親和性を検出した。GLP1R-muFc(配列番号3)と呼ばれるGLP-1受容体及びマウスFcの融合タンパク質を発現し、GLP1R-muFcを5μg/mLに希釈し、96ウェルプレートをコーティングし、室温で30 min固定した。PBSで1回洗浄した後、1%のBSAで37℃で、30 minブロッキングし、0.05%のPBST20で3回洗浄した。各ウェルに10μg/mLで4倍濃度勾配により希釈された検出待ち試料を50 μL加え、KN042を陽性対照とした。37℃で1 hインキュベートし、PBSTで5回洗浄した。各ウェルに、1%のBSAを含む0.05%のPBST20により2000倍希釈されたマウスモノクローナルHP6023抗ヒトIgG4Fc-HRP(abcam、ab99817)を50 μL加え、37℃で1 hインキュベートし、PBSTで5回洗浄した。各ウェルに50 μLのTMBを加えて3 min発色させ、50 μL/ウェルで1MのH2SO4を加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、SpectraMax M3)を使用してOD値を検出した。KN042を陽性対照とした。
【0180】
結果を
図8に示した。二重変異を含む一部の融合タンパク質は、GLP-1受容体との良好な結合活性を示した。
【0181】
(2)ルシフェラーゼ法による融合タンパク質のcAMP/PKAシグナル伝達経路に対する活性化作用の検出
本願の実施例6のルシフェラーゼ法による融合タンパク質のcAMP/PKAシグナル伝達経路に対する活性化作用の検出方法を参照し、結果を
図9に示した。
【0182】
その結果、本願に保護される融合タンパク質は、いずれもGLP-1受容体を活性化することにより、cAMP/PKAシグナル伝達経路を活性化することができることを示した。
【0183】
(3)融合タンパク質の薬物動態学的検出
融合タンパク質の薬物動態学的検出のための本願の実施例2の方法を参照して、結果を
図10に示した。
図10Aは、本願に係る融合タンパク質GM-KRWYの半減期がデュラグルチドよりも長く、16.199 hであり、且つ薬物曝露量がデュラグルチドよりも高く、且つ血中薬物濃度が近いことを示した。
図10Bは、本願に係る融合タンパク質GM-KRWYYL、GM-KRWYYA及びGM-KRWYYIの半減期がデュラグルチドよりも長く、約13~16.5 hであり、且つ薬物曝露量及び血中薬物濃度がデュラグルチドよりも高いことを示した。
図10Cは、本願に係る融合タンパク質GM-KRWYQN、GM-KRWYQE及びGM-KRWYYAの半減期がデュラグルチドよりも長く、約22~25 hであり、且つ薬物曝露量及び血中薬物濃度がデュラグルチドよりも高いことを示した。
【0184】
(4)融合タンパク質の経口糖負荷検出
GLP-1-Fc融合タンパク質のインビボ血糖降下活性を調べた。マウスを一晩絶食させ、実験前に血糖及び体重を測定した後、ランダムに群分けした。各群のマウスに、対応する被験品を腹腔内注射し、デュラグルチドを対照とした。投与後の0.5 hに、各マウスに1.5 g/kgのグルコースを経口負荷した。マウスに対して、グルコース負荷前、負荷後の10、20、30、60及び120 minに、ハンドヘルドロシュ血糖値測定器(Roche、Accu-chek)でマウスの尾の先端の血糖値を測定した。マウスの尾の先端を約1 mm切除し、尾を根部から先端へ押して静脈血液を採取して血糖値を測定した。結果を
図11に示した。
【0185】
その結果、対照と比べて、本願に係る融合タンパク質GM-KRWY、GM-KRWYYA及びGM-KRWYQEは、同じレベルのインビボ血糖降下活性を有することを示した。
【0186】
上記の詳細な説明は、説明及び例示のために提供され、添付される特許請求の範囲を限定するものではない。現在、本願の例示的な実施形態に対する様々な変更は、当業者にとって明らかであり、添付される特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に保持される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトGLP-1ポリペプチド変異体及び免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質であって、
そのうち、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、W31、K26、及びY19からなる群から選ばれるアミノ酸位置における少なくとも2つのアミノ酸変異を含む、
融合タンパク質。
【請求項2】
前記免疫グロブリンFc領域は、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のC末端に位置し
、又は、
前記免疫グロブリンFc領域は、IgGに由来するFc領域であり、又は、
前記免疫グロブリンFc領域は、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のC末端に位置し、前記免疫グロブリンFc領域は、IgGに由来するFc領域である、
請求項1に記載の融合タンパク質であって、ここで
好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来するFc領域であり、
より好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4に由来するFc領域であり、
さらに好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域は、配列番号32~35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記免疫グロブリンFc領域は、前記アミノ酸変異を有しない免疫グロブリンFc領域と比べて、前記免疫グロブリンFc領域のFc受容体に対する結合親和性の選択的な増強を可能にするアミノ酸変異を含む、請求項
1に記載の融合タンパク質であって、ここで
前記免疫グロブリンFc領域は、EUコードに従うM252、S254及びT256位置においてアミノ酸変異を含んでもよく、
好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域は、M252Y、S254T及び/又はT256Eのアミノ酸変異を含み、
より好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域のアミノ酸変異は、M252Y、S254T及びT256Eであり、
さらに好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体と前記免疫グロブリンFc領域の間に位置するヒンジ領域を含む、請求項
1に記載の融合タンパク質であって、ここで
例えば、前記ヒンジ領域は、IgG1又はIgG4などのIgGに由来し、
好ましくは、前記ヒンジ領域は、配列番号30~31の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含み、
より好ましくは、前記ヒンジ領域はIgG1に由来し、
さらに好ましくは、前記ヒンジ領域は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体と前記ヒンジ領域の間に位置するリンカーを更に含む、請求項
4に記載の融合タンパク質であって、ここで
例えば、前記リンカーは、5~20アミノ酸の長さを有するペプチドリンカーであり、
好ましくは、前記リンカーは、15アミノ酸の長さを有し、
より好ましくは、前記リンカーは、配列番号27~29の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含み、
より好ましくは、前記リンカーは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項
4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、ヒトGLP-1の少なくとも一部の活性を有する、請求項
1に記載の融合タンパク質であって、ここで
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びK26アミノ酸位置における変異を含んでもよいか、又は、
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31及びY19アミノ酸位置における変異を含んでもよいか、又は、
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、K26及びY19アミノ酸位置における変異を含んでもよいか、又は、
配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体のアミノ酸配列は、W31、K26及びY19アミノ酸位置における変異を含んでもよく、
好ましくは、
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記W31においてW31Y、W31R、W31K又はW31Aであるアミノ酸置換を含み、より好ましくは、前記アミノ酸置換はW31Yであるか、又は、
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記Y19においてY19A、Y19L、Y19T、Y19F、Y19I、Y19V及びY19Sからなる群から選ばれる何れか1つのアミノ酸置換を含み、より好ましくは、前記アミノ酸置換はY19Aであるか、又は、
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、前記K26においてK26Rであるアミノ酸置換を含む、
請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか、
又は、
前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号4~25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の融合タンパク質であって、ここで
好ましくは、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、W31Y、K26R及びY19Aのアミノ酸変異を含むか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比べて、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、アミノ酸変異W31Y及びK26Rを含み、
より好ましくは、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体は、配列番号25又は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
N末端からC末端へ、前記ヒトGLP-1ポリペプチド変異体、前記リンカー、前記ヒンジ領域、及び前記免疫グロブリンFc領域を順に含む、
請求項
5に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号37~45の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、
又は、
配列番号43~44の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1項に記載の融合タンパク質をコードする、
単離された核酸分子。
【請求項11】
請求項
10に記載の単離された核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項12】
請求項1~
9の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項
10に記載の単離された核酸分子、又は請求項
11に記載のベクターを含むか、又は発現する、
細胞。
【請求項13】
請求項1~
9の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項
10に記載の単離された核酸分子、請求項
11に記載のベクター及び/又は請求項
12に記載の細胞、並びに任意選択的に薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~
9の何れか1項に記載の融合タンパク質を含む、
免疫複合体。
【請求項15】
代謝性疾患又は病状を予防及び/又は治療するための、
又は、それを必要とする被験者においてインスリンの発現を増加又は促進するための、請求項1~
9の何れか1項に記載の融合タンパク質、請求項
10に記載の単離された核酸分子、請求項11に記載のベクター、請求項
12に記載の細胞、請求項
13に記載の医薬組成物及び/又は請求項
14に記載の免疫複合体
であって、ここで
好ましくは、前記代謝性疾患又は病状は、GLP-1に関連する代謝性病状を含み、
より好ましくは、前記代謝性疾患又は病状は、糖尿病を含む、
前記融合タンパク質、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記医薬組成物及び/又は前記免疫複合体。
【国際調査報告】