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特表2024-5245312-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/12 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C07D231/12 C CSP
A61K31/415
A61P1/18
A61P13/10
A61P13/12
A61P13/08
A61P29/00
A61P25/04
A61P15/00
A61P31/22
A61P25/00
A61P19/00
A61P19/02
A61P1/02
A61P35/00
A61P11/04
A61P17/02
A61P21/00
A61P29/00 101
A61P19/04
A61P19/06
A61P5/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P11/00
A61P11/14
A61P11/02
A61P17/06
A61P19/10
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/02
A61P25/08
A61P25/06
A61P9/10
A61P31/18
A61P31/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P7/10
A61P27/02
A61P9/04
A61P3/06
A61P31/04
A61P1/00
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500122
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022068421
(87)【国際公開番号】W WO2023280765
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21183771.1
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516245885
【氏名又は名称】バイエル、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYER AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、ボイルレ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ゲオルク、レルヒェン
(72)【発明者】
【氏名】ブリッタ、オレニク
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム、レビラン
(72)【発明者】
【氏名】ビルギット、カイル
(72)【発明者】
【氏名】シルビア、ドホラツェク
(72)【発明者】
【氏名】アンチェ、ロットマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア、ロートゲリ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、クレイグ、メリング
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC36
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA23
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA83
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC03
4C086ZC31
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC55
(57)【要約】
本発明は、2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩(コリン塩)に関する。特に、本発明は、式(II)による化合物
【化1】
またはその互変異性体、溶媒和物もしくは水和物、および本発明によるコリン塩の医学的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩。
【請求項2】
式(II)による、請求項1に記載のコリン塩
【化1】
またはその溶媒和物、水和物もしくは互変異性体。
【請求項3】
結晶形態である、請求項1または2に記載のコリン塩。
【請求項4】
多形形態Aである、請求項3に記載の結晶性コリン塩。
【請求項5】
図1と実質的に同じX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする、請求項3または4に記載の結晶性コリン塩。
【請求項6】
25℃でCu-Kα1を放射線源として用いて測定したX線粉末回折図が、2θ値±0.2°で示して、少なくとも次の反射:12.99°、20.42°、および20.64°を示すことを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の結晶性コリン塩。
【請求項7】
25℃でCu-Kα1を放射線源として用いて測定したX線粉末回折図が、2θ値±0.2°で示して、少なくとも次の反射:12.99°、20.42°、20.64°、18.84°、および22.32°を示すことを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の結晶性コリン塩。
【請求項8】
25℃でCu-Kα1を放射線源として用いて測定したX線粉末回折図が、2θ値で示して、少なくとも次の反射:12.99°、20.42°、20.64°、18.84°、22.32°、15.74°、および20.75°を示すことを特徴とする、請求項3~7のいずれか一項に記載の結晶性コリン塩。
【請求項9】
図2と実質的に同じIRパターンを特徴とする、請求項3または4に記載の結晶性コリン塩。
【請求項10】
IRパターンが、単位cm-1のピーク最大値で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309、1083を示すことを特徴とする、請求項3、4、または9のいずれか一項に記載の結晶性コリン塩。
【請求項11】
IRパターンが、単位cm-1のピーク最大値で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309、1083、1324、および808を示すことを特徴とする、請求項3、4、9、または10のいずれか一項に記載の結晶性コリン塩。
【請求項12】
IRパターンが、単位cm-1のピーク最大値で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309、1083、1324、808、1091、および874を示すことを特徴とする、請求項3、4、または9~11のいずれか一項に記載の結晶性コリン塩。
【請求項13】
IRパターンが、単位cm-1のピーク最大値で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309、1083、1324、808、1091、874、1530、954、および835を示すことを特徴とする、請求項3、4、または9~12のいずれか一項に記載の結晶性コリン塩。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の前記コリン塩を調製する方法であって、式(I)の化合物に、
【化2】
式(III)の化合物を加え、
【化3】
それにより式(II)の前記コリン塩を形成させるステップ
【化4】
を含んでなる、方法。
【請求項15】
以下のステップ:
-前記得られたコリン塩を乾燥させて固体を形成させ、任意選択で、得られた固体を洗浄すること;
-前記得られた固体を、例えば、アセトニトリル、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ブタノール、アセトン、水およびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒などの溶媒に溶かすこと;
-前記溶液を、攪拌しながら、48℃(+/-2℃)など塩結晶の析出を可能にする温度に冷やすこと;ならびに
-任意選択で、4℃(+/-1℃)の温度に、一定時間、例えば1時間さらに冷やすこと;
-任意選択で、結果として生じたコリン塩を濾別し、任意選択で、アセトニトリル、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ブタノール、アセトン、または水、またはそれらの混合物で洗浄すること、
-任意選択で、得られた固体を乾燥させること
をさらに含んでなり、
そのようにして式(II)による結晶性コリン塩を得る
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物の使用であって、
【化5】
式(II)によるコリン塩の調製
【化6】
のための使用。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載のコリン塩および薬学的に許容される希釈剤または担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項18】
医薬品の調製のための、請求項1~13のいずれか一項に記載のコリン塩または請求項17に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
疾患もしくは疾患症候群、病態、または症状の治療または予防に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載のコリン塩または請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記疾患もしくは疾患症候群、病態、または症状が、疼痛および/または炎症に関連する、請求項19に記載の使用のためのコリン塩。
【請求項21】
前記疾患もしくは疾患症候群、病態、または症状が、
・例えば、膵炎、間質性膀胱炎、膀胱痛症候群、腎仙痛、または前立腺炎、慢性骨盤痛、または浸潤子宮内膜症痛に関連した内臓痛;
・帯状疱疹後神経痛、急性帯状疱疹痛、神経損傷に関連した疼痛、外陰部痛を含む痛み、幻肢痛、神経根引き抜きに関連した疼痛、神経根症に関連した疼痛、有痛性外傷性単神経障害、有痛性絞扼性神経障害、手根管症候群に関連した疼痛、尺骨神経障害、足根管症候群に関連した疼痛、有痛性糖尿病性神経障害、有痛性多発神経障害、三叉神経痛、または家族性アミロイド多発神経障害に関連した疼痛などの神経障害性疼痛;
・限定されないが、脳卒中、多発性硬化症、および脊髄損傷に関連した痛みを含む、神経系のどのレベルにおいても実質的にどんな病変によっても引き起こされる可能性がある中枢性疼痛症候群;
・術後疼痛症候群(乳房切除後疼痛症候群、開胸後疼痛症候群、断端痛を含む)、骨および関節の疼痛(変形性関節症)、脊椎痛(急性および慢性の腰痛、頸部痛、脊柱管狭窄症に関連した疼痛を含む)、肩痛、反復運動痛、歯痛、咽頭炎に関連した疼痛、がん性疼痛、日焼けによる疼痛を含む熱傷による疼痛、筋筋膜痛(筋損傷に関連する疼痛、線維筋痛症)、術後および周術期疼痛(一般外科、整形外科、および婦人科手術を含むがそれらに限定されない);ならびに
・急性および慢性疼痛、慢性骨盤痛、子宮内膜症関連痛、月経困難症関連痛(原発性および続発性)、子宮筋腫に関連した疼痛、外陰部痛関連痛、および狭心症に関連した疼痛、または様々な原因による炎症性疼痛(変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性疾患、腱鞘炎、痛風、強直性脊椎炎、および滑液包炎に関連した疼痛を含むがそれらに限定されない)
からなる群より選択される疼痛に関連する、請求項19または20に記載の使用のためのコリン塩。
【請求項22】
前記疾患もしくは疾患症候群、病態、または症状が、
・子宮内膜症、子宮筋腫、子癇前症、ホルモン欠乏症、子宮の痙攣、または過多月経出血を含む女性の健康に悪い影響を与える婦人科の障害および/または疾患または影響および/または症状;
・炎症性過敏気道、炎慢性閉塞性肺疾患のような気道疾患に伴う炎症性事象、アレルギー性喘息(アトピー性または非アトピー性)を含む喘息および運動誘発性気管支収縮、職業性喘息、喘息のウイルス性または細菌性増悪、他の非アレルギー性喘息および喘鳴乳児症候群、肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺炎、咳、肺損傷、肺線維症、アレルギー性鼻炎(季節性および通年性)、血管運動性鼻炎、血管性浮腫(遺伝性血管浮腫およびオマパトリラトのようなアンジオテンシン変換酵素(ACE)またはACE/中性エンドペプチダーゼ阻害薬によって引き起こされるものを含む薬剤性血管浮腫を含む)、アルミニウム肺症、炭粉症、石綿肺症、石粉肺症、睫毛脱落症、鉄肺症、珪肺症、タバコ中毒症および綿肺症を含む塵肺症、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む腸疾患、過敏性腸症候群、膵炎、腎炎、膀胱炎、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群、腎線維症、腎不全、高活動膀胱、および過活動膀胱のいずれかを含む呼吸器系または排泄系;
・そう痒症、かゆみ、乾癬、湿疹、およびアトピー性皮膚炎を含む炎症性皮膚疾患を含む皮膚科学;
・関節リウマチ、痛風、骨粗鬆症、変形性関節症、および強直性脊椎炎を含む関節または骨の疾患;
・パーキンソン病およびアルツハイマー病を含む神経変性疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、認知症、群発頭痛を含む頭痛、予防的および急性使用を含む片頭痛、脳卒中、閉鎖性頭部外傷、および多発性硬化症を含む中枢神経系および末梢神経系の疾患;
・HIV感染症および結核を含む感染症;
・脳浮腫、熱傷、日焼け、および捻挫または骨折を含む浮腫を伴う外傷;
・アルミニウム肺症、炭粉症、石綿肺症、石粉肺症、睫毛脱落症、鉄肺症、珪肺症、タバコ中毒症、および綿肺症ぶどう膜炎を含む中毒;
・1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性血管障害、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、後毛細血管抵抗または膵島炎に伴う糖尿病症状(例えば、高血糖、利尿、タンパク尿および亜硝酸塩およびカリクレインの尿中排泄の増加)、糖尿病黄斑浮腫、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、肥満、または脂肪もしくは筋肉代謝のような糖尿病クラスターまたは代謝;
・がん、AIDS、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイド多発神経障害、水銀中毒(先端疼痛症)、およびホルモン欠乏症のいずれかに関連する、または誘発される悪液質;
・うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化、うっ血性心不全、心筋梗塞、および心臓線維症を含む心血管系;ならびに
・原発性腹膜炎、続発性腹膜炎、敗血症性ショック、敗血症、筋萎縮、消化管の痙攣、良性前立腺肥大、および非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性およびアルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、または肝硬変を含む肝疾患を含む他の病態
からなる群のいずれか1つから選択される、またはそれに関連する、請求項19~21のいずれか一項に記載の使用のためのコリン塩。
【請求項23】
前記疾患もしくは疾患症候群、病態、または症状が、糖尿病性神経障害性疼痛、間質性(intesticial)膀胱炎/膀胱痛症候群、子宮内膜症または子宮内膜症関連痛に関連する、請求項19~22のいずれか一項に記載の使用のためのコリン塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩(コリン塩)に関する。2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸は、式(I)の化合物である。
【0002】
【化1】
【0003】
特に、本発明は、式(I)のコリン塩の化合物、またはその溶媒和物もしくは水和物に関する。
【0004】
本発明は、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム-2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート(以下、「本発明のコリン塩(cholinate)」、または「本発明のコリン塩(choline salt)」とも呼ばれる)に関する。本発明のコリン塩は、式(II)による化合物
【0005】
【化2】
【0006】
またはその互変異性体、溶媒和物もしくは水和物である。
【0007】
さらに、本発明は、
-2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸(本発明によるコリン塩)の結晶性コリン塩、好ましくは形態Aの結晶性コリン塩;
-前記本発明によるコリン塩を調製する方法;
-疾患の治療および/または予防のための前記本発明によるコリン塩;
-疾患の治療および/または予防のための医薬品(medicament)の調製のための前記本発明によるコリン塩の使用;
-前記本発明によるコリン塩を含んでなる医薬組成物;ならびに
-前記本発明によるコリン塩および1つまたは複数の更なる医薬品(pharmaceutical agents)を含んでなる薬学的な組み合わせ
に関する。
【背景技術】
【0008】
2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸は、式(I)の化合物であり、
【0009】
【化3】
【0010】
(以下、「式(I)の化合物」または「遊離酸」と呼ばれる)、ヒトブラジキニンB1受容体(遺伝子名BDKRB1、遺伝子ID623;2017年12月18日に出願された国際特許出願の国際公開第2018/114786(A1)号の実施例3を参照)の専有のアンタゴニストである。ブラジキニンB1受容体は膜結合型Gタンパク質共役型受容体であり、細胞内カルシウム濃度の増加を引き起こすセカンドメッセンジャー系に連結している。主なシグナル伝達経路は、Gqタンパク質およびホスホリパーゼCに関連している(Leeb-Lundberg, L. M. et al. (2005), Pharmacol Rev 57(1): 27-77)。式(I)の化合物は、子宮内膜症、神経障害性疼痛、過活動膀胱などブラジキニンB1受容体関連障害および疾患に対して、インビトロおよび生体内の両方で活性の幅広いスペクトルを示す。
【0011】
式(I)の前記化合物は、2017年12月18日に出願された国際特許出願の国際公開第2018/114786(A1)号(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、例えば113頁以降に示されている方法、特に国際公開第2018/114786(A1)号の実施例3について開示の方法に従って合成することができる。
【0012】
医薬開発に必要な実験には毒性試験が含まれる。それに向けて、生体内で信頼性の高い毒性試験を行うための十分な曝露量が得られるように、広い投与量範囲にわたって良好な薬物動態特性、すなわちバイオアベイラビリティを有することが望ましい。しかし、驚くべきことに、遊離酸は、毒性に関して化合物をさらに試験できると思われる高い投与量では十分なバイオアベイラビリティを示さないことが判明した。さらに、医薬用途に向けた化合物を開発する期間を通して、治療対象の患者において十分な曝露量に得るために、良好な薬物動態特性、すなわちバイオアベイラビリティを備えていることが望ましい。そのような十分な曝露、すなわち疾患を寛解させる、または治癒するのに十分な曝露量は、それぞれの試験の前には不明であるので、広い投与量範囲にわたって前記の良好な薬物動態特性を示す形態で化合物を提供することが望ましい。
【0013】
塩を生成することによって化合物のバイオアベイラビリティを高めようとしたところ、試験した塩の大部分が少なくとも部分的に非晶質であることが明らかになった。塩が医薬開発に適するためには、結晶形態であることが望ましい。非晶質塩は通常、製薬プロセス条件下で自由に流れないので、取り扱いが難しい。
【0014】
したがって、広い投与量範囲にわたって十分なバイオアベイラビリティを備え、製薬プロセスおよび医薬組成物において有利に使用できる結晶形態を有し、吸湿性がない2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸の形態が必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩が、広い投与量範囲にわたって、すなわち高投与量でも、化合物の良好なバイオアベイラビリティと結晶性の両方を可能にすることを見出した。
【0016】
さらに、本発明の発明者らは、意外にも、本発明によるコリン塩が、合理的な努力で完全に結晶化した形態を示す唯一の塩であることを発見した。本明細書の実施例の項に示されるように、本発明によるコリン塩以外の塩は、非晶質で出現する、もしくは部分的にしか結晶化しない、または収率が一切の合理的な予測をはるかに下回る。
【0017】
驚くべきことに、コリン塩は非晶質塩または部分結晶塩よりも高い溶解度を示した。
【0018】
さらに、本発明によるコリン塩は、他の塩よりも吸湿性が低く、特に通常の大気相対湿度の範囲においても吸湿性が低く、それにより、例えば保存安定性が向上する。さらに、結晶性コリン塩は、遊離酸よりも速く溶解するだけでなく、部分結晶性または非晶質の形態で得られた化合物の他の塩よりも速く溶解する。
【0019】
したがって、本発明は、上で概説した利点を有する塩を提供するという課題を解決するだけでなく、時間および収率において産業用途に適した方法で、その塩を得るための方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
したがって、本発明は、2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩に関する。
【0021】
「コリン塩」、「コリン塩」および「2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム塩」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。それらは、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムを対イオンとして有する塩に関する。
【0022】
したがって、本発明に関連して、「2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸の」「コリン塩」、「コリン塩」および「2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム塩」、または「式(I)の化合物の」「コリン塩」、「コリン塩」および「2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム塩」、ならびに「本発明によるコリン塩」、「本発明によるコリン塩」および「本発明による2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム塩」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、「2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート」を指すことを意味する。
【0023】
したがって、本発明は特に、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートに関する。
【0024】
本発明の特定の実施形態では、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートは、式(II)
【0025】
【化4】
【0026】
またはその互変異性体、溶媒和物もしくは水和物にあたる。
【0027】
本発明によるコリン塩は、式(I)の化合物の他の塩とは違って、十分な時間、労力および収率で、結晶形態で得ることができ、多形/擬多形を示すことが見出された。
【0028】
形態Aは、医薬用途での使用によく適した最も安定した形態であることがわかっている。したがって、同じく本発明は、本発明によるコリン塩の結晶形態、好ましくは2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートの結晶形態に関する。好ましくは、本発明は、本発明によるコリン塩の多形形態A、その調製のための方法、それを含んでなる医薬組成物、および障害を抑えるにあたってのその使用に関する。
【0029】
多形である、本発明によるコリン塩の以下の結晶形態が明らかにされている:形態Aおよび無水形態C、およびモノ2-プロパノール溶媒和物(形態B)およびヘキサフルオロ-2-プロパノール溶媒和物(形態D)。この文脈では、変態、多形形態および多形体は同じ意味を有する。くわえて非晶質形態も存在する。多形形態、擬多形形態および非晶質形態はすべて、本発明によるコリン塩の相異なる固体形態である。
【0030】
本発明による結晶性コリン塩の多形形態Aは、室温および少なくとも35℃まで熱力学的に安定である。
【0031】
したがって、多形形態Aは、本発明によるコリン塩の他の固体形態または結晶形態よりも、医薬分野での使用に好適で好ましく、特に医薬組成物に適している。
【0032】
特に、本発明によるコリン塩の多形形態Aは、本発明のコリン塩の他の形態への望ましくない変換および上記の特性における関連した変化を確実に防止する。これにより、本発明のコリン塩を含んでなる調製物および製剤の安全性および品質が向上し、患者に対するリスクが低減する。
【0033】
本発明によるコリン塩の相異なる結晶形態は、X線粉末回折、示差走査熱量測定(DSC)、およびIR分光法で識別することができる。
【0034】
本発明によるコリン塩の多形形態Aは、X線粉末回折図(25℃で、放射線源としてCu-Kα1を用いる)が、それぞれ2θ値±0.2で示して、少なくとも次の反射:12.99°、20.42°、および20.64°、好ましくは少なくとも次の反射:12.99°、20.42°、20.64°、18.84°、および22.32°、より好ましくは少なくとも次の反射:12.99°、20.42°、20.64°、18.84°、22.32°、15.74°、および20.75°、最も好ましくは少なくとも次の反射:12.99°、20.42°、20.64°、18.84°、22.32°、15.74°、20.75°、24.42°、17.62°、および18.41°を示すことによって明確に特徴づけることができる。本発明によるコリン塩の多形形態Aはまた、図1に示されるX線粉末回折図(25℃で、放射線源としてCu-Kα1を用いる)によっても明確に特徴づけることができる。
【0035】
本発明によるコリン塩の多形形態Aは、IRパターン(室温で、Bruker社製Tensor37装置を用いたFT-IR分光光度計を用いて2cm-1の分解能で記録)、単位cm-1のピーク最大値(maxima)で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309および1083を示すこと;好ましくは、単位cm-1のピーク最大値で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309、1083、1324、および808を示すこと;より好ましくは、単位cm-1のピーク最大値で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309、1083、1324、808、1091、および874を示すこと;最も好ましくは、単位cm-1のピーク最大値で示して、少なくとも次のバンド:1123、1309、1083、1324、808、1091、874、1530、954、および835を示すことによって明確に特徴づけられる。多形形態Aの本発明によるコリン塩は、図2に示されるIRパターン(室温で、Bruker社製Tensor37装置を用いたFT-IR分光光度計を用いて2cm-1の分解能で記録)によっても明確に特徴づけることができる。
【0036】
本発明によるコリン塩を調製するための方法
さらに、本発明は、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート(本発明によるコリン塩とも呼ばれる)を調製する方法に関し、前記方法は、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムヒドロキシドを、好適な溶媒、好ましくは、トルエン、エタノール、アセトニトリルまたはそれらの混合物、好ましくはエタノールとアセトニトリルの混合物、好ましくはエタノールとアセトニトリルの(7:100)混合物中で、2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸に加えることを含んでなり、それにより、式(I)の化合物の前記コリン塩を形成させる。本発明によるコリン塩は、濾過することおよび/または乾燥させることによって、この段階で固体として分離することができる。
【0037】
本発明はさらに、本発明によるコリン塩を、結晶形態、好ましくは結晶形態Aで調製する方法であって、得られた固体を、好適な溶媒、例えば、アセトニトリル、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ブタノール、アセトン、水およびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒に、好適な温度で溶かし、続いて溶液を、塩結晶の析出を可能にする温度にまで冷やすこと、好ましくは4℃(+/-2℃)にまで冷やすことを含んでなる方法に関する。
【0038】
特定の実施形態では、本発明によるコリン塩を調製する方法は、式(I)の化合物を
【0039】
【化5】
【0040】
式(III)の化合物に加え
【0041】
【化6】
【0042】
それにより、式(II)による2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートを形成させること
【0043】
【化7】
を含んでなる。
【0044】
好ましい実施形態では、前記方法は、式(I)の化合物の懸濁液を
【0045】
【化8】
【0046】
式(III)の化合物に
【0047】
【化9】
加え、
【0048】
それにより、式(II)による前記コリン塩を形成させること
【0049】
【化10】
を含んでなる。
【0050】
式(I)および(III)の化合物の混合は、適した媒体中で行うことができる。適した媒体は当業者によって選択されうるが、好ましくはアルコール、好ましくはC-Cアルコ-ル、最も好ましくはtert-ブタノールまたはイソブタノール(2-メチルプロパン-1-オール)である。
【0051】
好ましくは、添加ステップは、式(I)と(III)の化合物を混合して本発明によるコリン塩を得ることを含んでなる。
【0052】
さらに、当業者は、添加および/または混合に適した条件を、例えば温度に関して選択することができる。好ましくは、前記化合物の添加温度は、混合物の凝固点と混合物の沸点との間であり、より好ましくは室温、例えば22℃(+/-2℃)である。
【0053】
好ましい実施形態では、得られた混合物は、混合物の凝固点と混合物の沸点との間の温度、好ましくは室温、例えば22℃(+/-2℃)で、1~48時間、好ましくは12~36時間、より好ましくは14~20時間、例えば18時間などの時間撹拌される。
【0054】
さらに好ましい実施形態では、得られた本発明によるコリン塩を乾燥させることができる。好ましくは、溶媒を蒸発させることによる。必要と判断された場合、得られた本発明によるコリン塩は1回または2回洗浄することができる。洗浄溶媒は当業者によって選択可能で、好ましくは水非混和性である。好ましくは、得られたコリン塩はトルエンで1回または2回洗浄される。
【0055】
得られた本発明による固体コリン塩を(再)結晶化させることが、特に形態Aを得るために望ましいことがある。したがって、好ましい実施形態では、本発明によるコリン塩を、好ましくは結晶形態で、より好ましくは形態Aで調製する方法は、以下のステップ:
-得られた固体を、例えば、アセトニトリル、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ブタノール、アセトン、水およびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒などの溶媒に、固体が溶けるのに十分な温度で一定時間にわたって撹拌することによって溶かすこと、
-溶液を攪拌しながら、4℃(±2℃)など、塩の結晶の析出を可能にする温度にまで冷やすこと;ならびに、任意選択で、
-4℃(+/-2℃)の温度で一定時間、例えば1時間さらに攪拌し、任意選択で、結果として生じた2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸のコリン塩を濾別し、任意選択で、アセトニトリル、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ブタノール、アセトン、または水またはそれらの混合物で洗浄し;好ましくは最初の固体を溶かすのに使用した溶媒で洗浄し、任意選択で、例えば減圧下(例えば200mbar)で、例えば20℃~60℃の温度で乾燥させること;
を含んでなり、結果として、形態Aの結晶性2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートが得られる。
【0056】
当業者は、式(I)の化合物を提供する方法を知っている。特に、2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸の合成のための方法は、国際公開第2018/114786(A1)号(参照により本明細書に組み込まれる)の実施例3に開示されている。
【0057】
当業者はらに、国際公開第2018/114786(A1)号の実施例3に開示の2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸を合成するための方法を適合させることができる。例えば、国際公開第2018/114786(A1)号に「中間体29A」について開示されているのと比較して、一方の付加体のボロン酸エステル基を臭化物基に変え、他方の付加体の臭化物基をボロン酸エステル基に変えることによって、鈴木クロスカップリング反応における求核剤および求電子剤の反応性を交換することを選択することができる。それぞれの代替方法は、本明細書の実施例の項に開示されている。
【0058】
医薬組成物
本発明はまた、本発明によるコリン塩を含んでなる医薬組成物に関する。特に本発明は、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート、好ましくはその結晶形態(より好ましくは形態A)、および任意選択で1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物に関する。
【0059】
本発明による好ましい医薬組成物は、式(II)によるコリン塩および任意選択で1つまたは複数の更なる薬学的に許容される賦形剤を含んでなる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態は、式(II)によるコリン塩の多形形態Aを含んでなる医薬組成物であり、さらに好ましいのは、形態Aの式(II)によるコリン塩を主として含んでなり、他の形態の式(II)によるコリン塩の有意な分画を含まず、任意選択で1つまたは複数の更なる薬学的に許容される賦形剤を含んでなる組成物である。より好ましくは、医薬組成物は、組成物中に存在する式(II)によるコリン塩のすべての形態の合計量に対して、85重量%超、より好ましくは90重量%超、最も好ましくは95重量%超の多形形態Aの式(II)によるコリン塩を含有する。
【0061】
本発明によるコリン塩は全身活性および/または局所活性を有することが可能である。この目的のために、例えば、経口、非経口、肺、鼻、舌下、舌、頬、直腸、膣、皮膚、経皮、結膜、耳経路、またはインプラントもしくはステントとしてなど、好適な方法で投与することができる。
【0062】
これらの投与経路のために、本発明によるコリン塩を好適な投与形態で投与することが可能である。
【0063】
経口投与が好ましく、その経口投与のためには、本発明によるコリン塩を、例えば、錠剤(コーティングされていない錠剤、もしくは例えば遅延溶解もしくは不溶性の腸溶性コーティングもしくは放出制御コーティングが施されコーティングされた錠剤)、口腔内崩壊錠、フィルム/ウエハー、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル(例えばハードカプセルもしくはソフトゼラチンカプセル)、糖衣錠、顆粒、ペレット、粉末、乳剤、懸濁液、エアロゾルまたは溶液など、本発明の化合物を迅速かつ/または改変された方法で送達する当該技術分野で公知の剤形に製剤化することが可能である。本発明によるコリン塩を結晶形態および/または非晶質化形態および/または溶解形態で、好ましくは結晶形態で前記剤形に組み込むことが可能である。
【0064】
非経口投与は、吸収ステップを回避して(例えば、静脈内、動脈内、心腔内、脊髄内もしくは臍内)、または吸収を含んで(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)行うことができる。非経口投与に適した投与形態は、とりわけ、溶液、懸濁液、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末の形態の注射用および注入用の製剤である。
【0065】
他の投与経路に適した例は、吸入用医薬形態[とりわけ粉末吸入器、ネブライザー]、点鼻薬、点鼻溶液、点鼻スプレー;舌投与、舌下投与もしくは頬投与用の錠剤/フィルム/ウエハー/カプセル;坐剤;点眼薬、眼軟膏、眼浴、眼挿入剤、点耳薬、耳用スプレー、点耳粉剤、耳洗浄剤、耳用タンポン(ear tampon);膣カプセル、水性懸濁液(ローション、混合アギタンデ(mixturae agitandae)、親油性懸濁剤、エマルション、軟膏剤、クリーム剤、経皮治療システム(例えばパッチなど)、乳剤、ペースト剤、フォーム、散布薬、インプラントまたはステントである。
【0066】
本発明のコリン塩は、記載の投与形態に組み込むことができる。これは、薬学的に好適な賦形剤と混合することによって、それ自体既知の方法で行うことができる。薬学的に好適な賦形剤としては、とりわけ以下が挙げられる。
・充填剤および担体(例えば、セルロース、微結晶セルロース(例えばAvicel(登録商標)など)、ラクトース、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム(例えばDi-Cafos(登録商標)など)、
・軟膏基剤(例えば、ワセリン、パラフィン、トリグリセリド、ワックス、ウールワックス、ウールワックスアルコール、ラノリン、親水性軟膏、ポリエチレングリコール)、
・座薬用基剤(例えば、ポリエチレングリコール、カカオバター、ハードファット)、
・溶媒(例えば、水、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコール、中鎖長トリグリセリド脂肪油、液体ポリエチレングリコール、パラフィン)、
・界面活性剤、乳化剤、分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、レシチン、リン脂質、脂肪アルコール(例えばLanette(登録商標)など)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばSpan(登録商標)など)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばTween(登録商標)など)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド(例えばCremophor(登録商標)など)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル、グリセロール脂肪酸エステル、ポロキサマー(例えばPluronic(登録商標)など)、
・緩衝剤、酸および塩基(例えば、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム溶液、炭酸アンモニウム、トロメタモール、トリエタノールアミン)
・等張剤(例えば、グルコース、塩化ナトリウム)、
・吸着剤(例えば、高分散シリカ)、
・粘度増加剤、ゲル形成剤、増粘剤および/または結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、カルボマー、ポリアクリル酸(例えば、Carbopol(登録商標)など);アルギン酸、ゼラチン)、
・崩壊剤(例えば、変性デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えばExplotab(登録商標)など)、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロースナトリウム(例えば、AcDiSol(登録商標)など)、
・流量調整剤、潤滑剤、滑空機および離型剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、高分散シリカ(例えば、Aerosil(登録商標)など))、
・急速に溶解するまたは溶解方法が改変されたフィルムまたは拡散膜用のコーティング材料(例えば砂糖、シェラック)およびフィルムフォーマ(例えば、ポリビニルピロリドン(例えば、Kollidon(登録商標)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステル、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタル酸エステル、ポリアクリレート、例えば、Eudragit(登録商標)などのポリメタクリレート)、
・カプセル材料(例えばゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)
・合成ポリマー(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標)など)、ポリビニルピロリドン(例えば、Kollidon(登録商標)など)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールおよびそれらの共重合体およびブロック共重合体)、
・可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリアセチル、フタル酸ジブチル)、
・浸透促進剤、
・安定剤(例えば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどの酸化防止剤)、
・保存料(例えば、パラベン、ソルビン酸、チオメルサル、塩化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジン、安息香酸ナトリウム)、
・着色剤(例えば、酸化鉄、二酸化チタンなどの無機顔料)、
・香料、甘味料、矯味剤および/または矯臭剤。
【0067】
本発明はさらに、本発明によるコリン塩を、従来、1つまたは複数の薬学的に好適な賦形剤(複数可)と一緒に含んでなる医薬組成物、および本発明に従ったそれらの使用に関する。
【0068】
治療の方法
本発明は、ブラジキニンB1受容体を阻害するための、本発明によるコリン塩およびその組成物の使用方法に関する。本発明は、限定されないが、以下の哺乳動物の障害および疾患を治療するための、本発明によるコリン塩およびその組成物の使用方法に関する。
【0069】
特に以下からなる群より選択される疼痛および/または炎症に関連する疾患
・例えば、膵炎、間質性膀胱炎、膀胱痛症候群、腎仙痛、または前立腺炎、慢性骨盤痛、または浸潤子宮内膜症痛に関連した内臓痛;
・帯状疱疹後神経痛、急性帯状疱疹痛、神経損傷に関連した疼痛、外陰部痛を含む痛み、幻肢痛、神経根引き抜きに関連した疼痛、神経根症に関連した疼痛、有痛性外傷性単神経障害、有痛性絞扼性神経障害、手根管症候群に関連した疼痛、尺骨神経障害、足根管症候群に関連した疼痛、有痛性糖尿病性神経障害、糖尿病性神経障害性疼痛、有痛性多発神経障害、三叉神経痛、または家族性アミロイド多発神経障害に関連した疼痛などの神経障害性疼痛;
・限定されないが、脳卒中、多発性硬化症、および脊髄損傷に関連した疼痛を含む、神経系のどのレベルにおいても実質的にどんな病変によっても引き起こされる可能性がある中枢性疼痛症候群;
・術後疼痛症候群(乳房切除後疼痛症候群、開胸後疼痛症候群、断端痛を含む)、骨および関節の疼痛(変形性関節症)、脊椎痛(急性および慢性の腰痛、頸部痛、脊柱管狭窄症に関連する疼痛を含む)、肩痛、反復運動痛、歯痛、咽頭炎に関連した疼痛、がん性疼痛、日焼けを含む熱傷による疼痛、筋筋膜痛(筋損傷に関連する疼痛、線維筋痛症)、術後および周術期疼痛(一般外科、整形外科、および婦人科手術を含むがそれらに限定されない);ならびに
・急性および慢性疼痛、慢性骨盤痛、子宮内膜症関連痛痛、月経困難症関連痛(原発性および続発性)、子宮筋腫に関連する疼痛、外陰部痛関連痛、および狭心症に関連する疼痛、膀胱痛症候群、または様々な原因による炎症性疼痛(変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性疾患、腱鞘炎、痛風、強直性脊椎炎、および滑液包炎に関連した疼痛を含むがそれらに限定されない);ならびに
以下からなる群より選択される、またはそれに関連する疾患に類似または関連する疾患:
・子宮内膜症、子宮筋腫、子癇前症、ホルモン欠乏症、子宮の痙攣、または過多月経出血を含む女性の健康の悪い影響を与える婦人科の障害および/または疾患または影響および/または症状;
・炎症性過敏気道、炎慢性閉塞性肺疾患のような気道疾患に伴う炎症性事象、アレルギー性喘息(アトピー性またはアトピー性)を含む喘息および運動誘発性気管支収縮、職業性喘息、喘息のウイルス性または細菌性増悪、他の非アレルギー性喘息および喘鳴乳児症候群、肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺炎、咳、肺損傷、肺線維症、アレルギー性鼻炎(季節性および通年性)、血管運動性鼻炎、血管性浮腫(遺伝性血管浮腫およびオマパトリラト(omepatrilat)のようなアンジオテンシン変換酵素(ACE)またはACE/中性エンドペプチダーゼ阻害薬によって引き起こされるものを含む薬剤性血管浮腫を含む)、アルミニウム肺症、炭粉症、石綿肺症、石粉肺症、睫毛脱落症(ptilosis)、鉄肺症、珪肺症、タバコ中毒症および綿肺症を含む塵肺症、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む腸疾患、過敏性腸症候群、膵炎、腎炎、膀胱炎、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群、腎線維症、腎不全、高活動膀胱(hyperactive bladder)、および過活動膀胱のいずれかを含む呼吸器系または排泄系;
・そう痒症、かゆみ、乾癬、湿疹、およびアトピー性皮膚炎を含む炎症性皮膚疾患を含む皮膚科学;
・関節リウマチ、痛風、骨粗鬆症、変形性関節症、および強直性脊椎炎を含む関節または骨の疾患;
・パーキンソン病およびアルツハイマー病を含む神経変性疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、認知症、群発頭痛を含む頭痛、予防的および急性使用を含む片頭痛(migraine including prophylactic and acute use)、脳卒中、閉鎖性頭部外傷、および多発性硬化症を含む中枢神経系および末梢神経系の疾患;
・HIV感染症および結核を含む感染症;
・脳浮腫、熱傷、日焼け、および捻挫または骨折を含む浮腫を伴う外傷;
・アルミニウム肺症、炭粉症、石綿肺症、石粉肺症、睫毛脱落症、鉄肺症、珪肺症、タバコ中毒症、および綿肺症ぶどう膜炎(byssinosis uveitis)を含む中毒;
・1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性血管障害、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、後毛細血管抵抗または膵島炎に伴う糖尿病症状(例えば、高血糖、利尿、タンパク尿および亜硝酸塩およびカリクレインの尿中排泄の増加)、糖尿病黄斑浮腫、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、肥満、または脂肪もしくは筋肉代謝のような糖尿病クラスターまたは代謝;
・がん、AIDS、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイド多発神経障害、水銀中毒(先端疼痛症)、およびホルモン欠乏症のいずれかに関連する、または誘発される悪液質;
・うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化、うっ血性心不全、心筋梗塞、および心臓線維症を含む心血管系;ならびに
・敗血症性ショック、敗血症、筋萎縮、消化管の痙攣、良性前立腺肥大、および非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性およびアルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、または肝硬変などの肝疾患を含む他の病態。
【0070】
本発明の好ましい実施形態は、婦人科疾患、好ましくは子宮内膜症、子宮内膜症関連疼痛、または他の子宮内膜症関連症状;糖尿病性神経障害性疼痛、間質性膀胱炎および膀胱痛症候群(間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)とも呼ばれる)、ならびに子宮内膜症を治療するための、本発明によるコリン塩またはその組成物の使用方法に関する。
【0071】
さらに好ましいのは、糖尿病性神経障害性疼痛、間質性膀胱炎、膀胱痛症候群、および子宮内膜症からなる群より選択される疾患の治療のための、本発明によるコリン塩またはその組成物の使用方法である。特定の好ましい実施形態では、本発明は、糖尿病性神経障害性疼痛、間質性膀胱炎、膀胱痛症候群、および子宮内膜症からなる群より選択される疾患の治療のための、本発明によるコリン塩を含んでなる本発明によるコリン塩または組成物の使用方法に関する。
【0072】
さらに、本発明は、変形性関節症、関節リウマチ、痛風、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛、喘息、咳嗽、肺損傷、肺線維症、肺炎、腎線維症、腎不全そう痒症、過敏性腸疾患、過活動膀胱、1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、メタボリックシンドローム、肥満、心臓線維症、悪液質、筋萎縮、アルツハイマー病、膀胱痛症候群、および間質性膀胱炎を治療するための、本発明の化合物およびその組成物の使用方法に関する。
【0073】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、疾患、好ましくは、痛みおよび/または炎症に関連する疾患の治療のための、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートまたはそれを含んでなる組成物の使用方法に関する。したがって、本発明はまた、疾患、好ましくは、痛みおよび/または炎症に関連する疾患の治療のために使用するための2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートまたはそれを含んでなる組成物に関する。
【0074】
これらの疾患はヒトにおいてよく特徴づけられているが、他の哺乳動物においても同様の病因で存在し、本発明のコリン塩または医薬組成物を投与することによって治療することができる。本明細書全体を通して述べられている「治療する」または「治療」という用語は、慣用的に使用され、例えば、婦人科疾患などの疾患または障害の状態との闘い、その状態の緩和、軽減、緩和、改善などを目的とした対象の管理またはケアである。
【0075】
投与量および投与
ブラジキニンB1受容体によって媒介される障害および/または疾患の治療に有用な化合物を評価するために知られている標準的な実験室技術に基づき、哺乳類における上記で特定された状態の治療を決定するための標準的な毒性試験および標準的な薬理学的アッセイによって、かつ、それらの結果を、これらの状態を治療するために使用されている既知の医薬品の結果と比較することによって、本発明によるコリン塩の有効投与量は、各所望の適応症の治療のために容易に決定することができる。それらの病態の1つの治療において投与される有効成分の量は、使用される投与単位、投与方法、治療期間、治療される患者の年齢および性別、ならびに治療される病態の性質および程度などの考慮事項によって多様でありうる。
【0076】
当業者であれば、投与量に関して、薬学的に活性のある化合物の投与量が重要であることを認識するであろう。本発明によるコリン塩は、薬学的に活性のある化合物、すなわち2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸の塩である。2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸(「有効成分」とも呼ばれる)。したがって、投与量は、好ましくは、投与されるこの遊離酸の量を意味する。投与される有効成分の総量は、一般に、遊離酸の約0.001mg/kg~約100mg/kg体重、好ましくは1日あたり約0.01mg/kg~約20mg/kg体重を送達するような範囲であることになる。本発明の化合物の好ましい投与量としては、1日あたり0.1mg/kg~約10mg/kg体重が挙げられるが、これに限定されない。臨床的に有用な投与スケジュールは、1日1~3回の投与から4週間毎に1回の投与まで多岐にわたることになる。
【0077】
さらに、ある一定期間、患者が薬物の投与を受けない「薬物休薬(drug holidays)」は、薬理効果と忍容性の間の全体的なバランスにとって有益なことがある。
【0078】
1日の総投与量は、有効成分の約0.5mgから約2000mgの範囲とすることができ、1日あたり1回もしくは複数回または1日1回未満で投与することができる。
【0079】
本発明によるコリン塩は、特に経口投与された場合に、有効成分の驚くべき良好なバイオアベイラビリティをもたらした。したがって、剤形は好ましくは経口剤形である。
【0080】
有効成分の好ましい1日投与量は、0.5mg~2000mg、好ましくは100mg~1600mgの範囲であり、例えば100mgや、150mg、200mg、400mg、450mg、600mg、800mg、1600mgなどである。
【0081】
当業者であれば、有効成分のそのような投与量を達成するために、コリン塩が添加する質量を考慮した本発明によるコリン塩の投与量が使用されるべきであることを認識するであろう。有効成分の例えば1mgの投与量を提供するために、本発明のコリン塩の約1.2mg(例えば、1.20mg~1.25mg、または1.21mgまたは1.24mg)の投与量、すなわち、それぞれの量の約1.2倍(1.20~1.25倍、または1.209倍、または1.24倍など)が使用されるべきである。
【0082】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるコリン塩の1日投与量は、約0.6mg~約2480mg、好ましくは、約124mg~約1984mg、例えば、本発明によるコリン塩の約124mgや、約186mg、約248mg、約496mg、約558mg、約744mg、約992mg、約1984mgなどの1日投与量である。「約」という用語は、医薬用途として許容される量を意味し、好ましくは、それぞれの所与の量/投与量の+/-10%または+/-5%の範囲内、好ましくは-10%と+5%の範囲内である。
【0083】
所望の1日投与量は、所望の1日投与量の量を含んでなる1日単回投与単位を投与すること、または所望の1日投与量の一部を含んでなる単回投与単位を、合計して所望の1日投与量になる回数で投与することによって達成することができる。例えば、1日投与量150mgを投与するために、150mgの有効成分を含んでなる単回投与単位を投与することも、各50mgの有効成分を含んでなる単回投与単位を3回投与することもできる。
【0084】
単回投与単位内の有効成分の量は、所望の1日投与量によって様々でありうる。好ましくは、単回投与単位は、10mg~1600mgの有効成分(または約12.4mg~約1984mgの本発明によるコリン塩)、好ましくは50mg~450mgの有効成分、より好ましくは50mg~150mgの有効成分(約62mg~約186mgの本発明によるコリン塩)を含んでなる。特定の好ましい実施形態では、単回投与単位は、50mgまたは150mgの有効成分(約62mgまたは約(abit)186mgの本発明によるコリン塩)を含んでなる。
【0085】
もちろん、各患者に対する具体的な初回および継続投与レジメンは、担当診断医によって決定される病態の性質および重症度、使用される特定の化合物の活性、患者の年齢および全身状態、投与の時間、投与の経路、薬物の排泄の速度、薬物の組み合わせなどによって様々であることになる。本発明またはその組成物のコリン塩の所望の治療様式および投与回数は、従来の治療試験を用いて当業者によって確認されうる。
【0086】
組み合わせ療法
本発明における「組み合わせ」という用語は、当業者に公知のように使用され、固定組み合わせ(fixed combination)、非固定組み合わせ(non fixed combination)、または部品のキットとして存在しうる。
【0087】
本発明における「固定組み合わせ」は、当業者に公知のように使用され、前記第1の有効成分および前記第2の有効成分が、1つの単位投与量中または単一の実体で一緒に存在する組み合わせとして定義される。「固定組み合わせ」の一例は、前記第1の有効成分および前記第2の有効成分が、製剤などの同時投与のための混合物中に存在する医薬組成物である。「固定組み合わせ」の別の例は、前記第1の有効成分および前記第2の有効成分が、混合物中に存在せずに1つの単位で存在する医薬の組み合わせである。
【0088】
本発明における非固定の組み合わせまたは「部品のキット」は、当業者に公知のように使用され、前記第1の有効成分および前記第2の有効成分が2つ以上の単位で存在する組み合わせとして定義される。非固定組み合わせまたは部品のキットの一例は、前記第1の活性成分および前記第2の活性成分が別々に存在する組み合わせである。非固定組み合わせまたは部品のキットの構成要素は、別々に、連続的に、同時に、同時並行で、または時系列的にずらして投与することができる。
【0089】
本発明によるコリン塩は、単独の医薬品として、または組み合わせが許容できない有害作用を引き起こさない1つまたは複数の他の医薬品と組み合わせて投与することができる。本発明は、そのような組み合わせにも関する。
【0090】
本発明によるコリン塩は、ブラジキニンB1受容体に関連する、またはブラジキニンB1受容体によって媒介される疾患の治療および/または予防のために、既に承認されている、または現在も開発中の治療薬または有効成分と組み合わせることができる。
【0091】
尿路疾患の治療および/または予防のために、本発明によるコリン塩は、以下の適応症の治療薬として適用できる任意の物質との組み合わせまた併用療法として投与することができる。膀胱出口部閉塞に関連する尿路疾患状態;膀胱容量減少などの尿失禁状態、排尿回数の増加、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、または膀胱過敏症;良性前立腺肥大;前立腺肥大症;前立腺炎;排尿筋反射亢進;過活動膀胱および過活動膀胱に関連する症状であって、前記症状が特に頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感または切迫性尿失禁であるもの;骨盤過敏症;尿道炎;前立腺炎;前立腺痛;膀胱炎、特に間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS);特発性膀胱過敏症。
【0092】
過活動膀胱および過活動膀胱に関連する症状の治療および/または予防のために、本発明の化合物は、食事、生活様式または膀胱訓練といった行動療法にくわえて、オキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トロスピウム、フェソテルジンのような抗コリン薬;ミラベグロンなどのβ3作動薬;オナボツリナムトキシン(onabutolinumtoxin)Aなどの神経毒;またはイミプラミン、デュロキセチンのような抗うつ薬と組み合わせてまた併用療法として投与することができる。
【0093】
間質性膀胱炎の治療および/または予防のために、本発明の化合物は、食事、生活様式または膀胱訓練といった行動療法にくわえて、エルミロンのようなペントサン;アミトリプチリン、イミプラミンのような抗うつ薬;またはロラタジンのような抗ヒスタミン薬と組み合わせてまた併用療法として投与することができる。
【0094】
婦人科疾患の治療および/または予防のために、本発明の化合物は、以下の適応症の治療薬として適用できる任意の物質との組み合わせまた併用療法として投与することができる。月経困難症(原発性および続発性を含む);性交疼痛症;子宮内膜症;子宮内膜症関連痛;子宮内膜症関連症状、特に月経困難症、性交疼痛症、排尿障害、または排便障害など。
【0095】
月経困難症(原発性および続発性を含む);性交疼痛症;子宮内膜症および子宮内膜症関連痛の治療および/または予防のために、本発明の化合物は、排卵抑制治療、特に上記のCOCや、オルソ・エヴラもしくはApleek(Lisvy)のような避妊用パッチ;またはジエノゲスト(Visanne)のような黄体ホルモン遺伝子;またはGnRH類似体、特にGnRHアゴニストおよびアンタゴニスト、例えば、リュープロレリン、ナファレリン、ゴセレリン、セトロレリックス、アバレリックス、ガニレリックス、デガレリックス;またはアンドロゲン:ダナゾールと組み合わせて投与することができる。
【0096】
疼痛または疼痛症候群に関連する疾患の治療および/または予防のために、本発明によるコリン塩は、以下の適応症の治療剤として適用できる任意の物質との組み合わせまたは併用療法として投与することができる。痛覚過敏、異痛症、機能性腸障害(過敏性腸症候群など)および関節炎(変形性関節症や、関節リウマチ、強直性脊椎炎など)、口腔灼熱症候群、熱傷、片頭痛または群発性頭痛、神経損傷、外傷性神経損傷、外傷後損傷(骨折およびスポーツ外傷を含む)、神経炎、神経痛、中毒、虚血性損傷、間質性膀胱炎、ウイルス性三叉神経痛、小線維神経障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性神経障害性疼痛、慢性関節炎および関連する神経痛、HIVおよびHIV治療誘発性神経障害などの疼痛関連疾患または障害。
【0097】
本発明によるコリン塩は、炎症性疾患、炎症性疼痛または一般的な疼痛の病態を治療することを意図した他の薬理学的薬剤および化合物と組み合わせることができる。
【0098】
すでに承認され市場にある周知の医薬品にくわえて、本発明によるコリン塩は、P2Xプリン受容体ファミリー(P2X3、P2X4)の阻害剤、IRAK4の阻害剤、およびプロスタノイドEP4受容体のアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0099】
特に、本発明によるコリン塩は、炎症性疾患、炎症性疼痛または一般的な疼痛の状態を治療すること、および/または子宮内膜増殖および子宮内膜症に関連する症状を抑制することを意図した薬理学的子宮内膜症治療剤、つまり具体的には、アルド-ケト-還元酵素1C3(AKR1C3)の阻害剤およびプロラクチン受容体の機能的遮断抗体と組み合わせて投与することができる。
【0100】
本発明によるコリン塩は、がんの治療、予防または管理を目的とする他の薬理学的薬剤および化合物と組み合わせることができる。
【0101】
特に、本発明によるコリン塩は、131I-chTNT、アバレリックス、アビラテロン、アクラルビシン、アドトラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アフリベルセプト、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アレンドロン酸、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸ヘキシル、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アンセスチム、アネトールジチオールチオン、アンジオテンシンII、アンチトロンビンIII、アプレピタント、アルキツモマブ、アルグラビン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、アザシチジン、バシリキシマブ、ベロテカン、ベンダムスチン、ベリノスタット、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ビサントレン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、ホリナートカルシウム、レボホリナートカルシウム、カペシタビン、カプロマブ、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルモフール、カルムスチン、セツマキソマブ、セレコキシブ、セルモロイキン、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロルマジノン、クロルメチン、シドフォビル、シナカルセット、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸、クロファラビン、コパンリシブ、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デクレオチド、デスロレリン、デクスラゾキサン、塩化ジブロスピジウム、ジアンヒドロガラクチトール、ジクロフェナク、ドセタキセル、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン+エストロン、ドロナビノール、エクリズマブ、エトレコロマブ、酢酸エリプチニウム、エルトロンボパグ、エンドスタチン、エノシタビン、エンザルタミド、エピルビシン、エピチオスタノール、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンゼータ、エプタプラチン、エリブリン、エルロチニブ、エソメプラゾール、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、ファドロゾール、フェンタニル、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ホルメスタン、ホスアプレピタント、フォテムスチン、フルベストラント、ガドブトロール、ガドテリドール、ガドテル酸メグルミン、ガドベルセタミド、ガドキセチン酸、硝酸ガリウム、ガニレリクス、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、グルカルピダーゼ、グルトキシム、GM-CSF、ゴセレリン、グラニセトロン、顆粒球コロニー刺激因子、ヒスタミン二塩酸塩、ヒストレリン、ヒドロキシカルバミド、I-125シード、ランソプラゾール、イバンドロン酸、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イミキモド、インプロスルファン、インジセトロン、インカドロン酸、インゲノールメブタート、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、イオビトリドール、イオベングアン(123I)、イオメプロール、イピリムマブ、イリノテカン、イトラコナゾール、イキサベピロン、ランレオチド、ラパチニブ、イアソコリン、レナリドミド、レノグラスチム、レンチナン、レトロゾール、リュープロレリン、レバミゾール、レボノルゲストレル、レボチロキシンナトリウム、リスリド、ロバプラチン、ロムスチン、ロニダミン、マソプロコール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メラルソプロール、メルファラン、メプチオスタン、メルカプトプリン、メスナ、メタドン、メトトレキサート、メトキサレン、アミノレブリン酸メチル、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メチロシン、ミファムルチド、ミルテフォシン、ミリプラチン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モガムリズマブ、モルグラモスチム、モピダモール、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、ナビロン、ナビキシモル、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトレキソン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネララビン、ネリドロン酸、ニボルマブペンテトレオチド、ニロチニブ、ニルタミド、ニモラゾール、ニモツズマブ、ニムスチン、ニトラクリン、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オクトレオチド、オクタムマブ、オメセタキシンメペスクシネート、オメプラゾール、オンダンセトロン、オプレルベキン、オルゴテイン、オリロチモド、オキサリプラチン、オキシコドン、オキシメトロン、オゾガマイシン、p53遺伝子治療、パクリタキセル、パリフェルミン、パラジウム103シード、パロノセトロン、パミドロン酸、パニツムマブ、パントプラゾール、パゾパニブ、ペグアスパラガーゼ、PEG-エポエチンベータ(メトキシPEG-エポエチンベータ)、ペムブロリズマブ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ2b、ペメトレキセド、ペンタゾシン、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルフルブタン、ペルホスファミド、ペルツズマブ、ピシバニル、ピロカルピン、ピラルビシン、ピクサントロン、プレリキサホル、プリカマイシン、ポリグルサム、リン酸ポリエストラジオール、ポリビニルピロリドン+ヒアルロン酸ナトリウム、ポリサッカライドK、ポマリドミド、ポナチニブ、ポルフィマーナトリウム、プララトレキサート、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロカルバジン、プロコダゾール、プロプラノロール、キナゴリド、ラベプラゾール、ラコツモマブ、塩化ラジウム223、ラドチニブ、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラモセトロン、ラムシルマブ、ラニムスチン、ラスブリカーゼ、ラゾキサン、レファメチニブ、レゴラフェニブ、リセドロン酸、レニウム186エチドロネート、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、ロムルチド、ロニシクリブ、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、サツモマブ、セクレチン、シプルセルT、シゾフィラン、ソブゾキサン、グリシジダゾールナトリウム、ソラフェニブ、スタノゾロール、ストレプトゾシン、スニチニブ、タラポルフィン、タミバロテン、タモキシフェン、タペンタドール、タソネルミン、テセロイキン、テクネチウム(99mTc)ノフェツモマブメルペンタン、99mTc-HYNIC-[Tyr3]-オクトレオチド、テガフール、テガフール+ギメラシル+オテラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、テトロホスミン、サリドマイド、チオテパ、チマルファシン、チロトロピンアルファ、チオグアニン、トシリズマブ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラベクテジン、トラマドール、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トレオスルファン、トレチノイン、トリフルリジン+チピラシル、トリロスタン、トリプトレリン、トラメチニブ、トロホスファミド、トロンボポエチン、トリプトファン、ウベニメクス、バラチニブ、バルルビシン、バンデタニブ、バプレオチド、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ビスモデギブ、ボリノスタット、ボロゾール、イットリウム90ガラスガラスミクロスフェア、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ゾレドロン酸、またはゾルビシンと組み合わせて投与することができる。
【0102】
さらに、本発明によるコリン塩は、がん関連痛および慢性疼痛の治療に周知の有効成分と組み合わせることができる。そのような組み合わせとしては、コデインリン酸、デキストロプロポキシフェン、ジヒドロコデイン、トラマドールなどのステップIIオピオイド、モルヒネ、フェンタニル、ブプレノルフィン、オキシモルフォン、オキシコドンおよびヒドロモルフォンのようなステップIIIのオピオイド;デキサメタゾンやメチルプレドニゾロンなどのステロイドのようながんの痛みの治療に使用される他の薬;エチドロネート、クロドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、およびゾレドロネートのようなビスホスホネート;アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、イミプラミンおよびドキセピンのような三環系抗うつ薬;メキシレチンやリドカインなどのクラスI抗不整脈薬;カルバマゼピン、ガバペンチン、オキサカルバゼピン、フェニトイン、プレガバリン、トピラマート、アルプラゾラム、ジアゼパム、フルラゼパム、ペントバルビタールおよびフェノバルビタールのような抗痙攣薬が挙げられるが、それらに限定されない。
【0103】
上記のものにくわえて、本発明による本発明のコリン塩は、以下の有効成分のいずれかと組み合わせることもできる。アルツハイマー治療法のための有効成分、例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン)、NMDA(N-メチル-D-アスパルテート)受容体アンタゴニスト(例えばメマンチン);パーキンソン病の治療のためのL-DOPA/カルビドパ(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)、COMT(カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ)阻害剤(例えばエンタカポン)、ドーパミンアゴニスト(例えばロピノール、プラミペキソール、ブロモクリプチン)、MAO-B(モノアミノオキシダーゼ-B)阻害剤(例えばセレギリン)、抗コリン薬(例えばトリヘキシフェニジル)およびNMDA拮抗薬(例えばアマンタジン);多発性硬化症の治療のためのベータ-インターフェロン(IFNベータ)(例えばIFNベータ-1b、IFNベータ-1aアボネックス(登録商標)およびベタフェロン(登録商標))、酢酸グラチラマー、免疫グロブリン、ナタリズマブ、フィンゴリモドおよびミトキサントロンや、アザチオプリン、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤;肺障害の治療のための物質、例えば、β2交感神経刺激薬(例えばサルブタモール)、抗コリン薬(例えばグリコピロニウム)、メチルキサンチン(例えばテオフィリン)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(例えばモンテルカスト)、PDE-4(ホスホジエステラーゼ4型)阻害剤(例えばロフルミラスト)、メトトレキサート、IgE抗体、アザチオプリンおよびシクロホスファミド、コルチゾール含有製剤;非ステロイド性抗炎症物質(NSAID)などの変形性関節症の治療のための物質。関節リウマチや若年性特発性関節炎などのリウマチ性障害に対しては、前述の2つの治療法にくわえて、メトトレキサートならびにB細胞およびT細胞に対する生物学的製剤(例えば、リツキシマブ、アバタセプト)についても言及されるべきである。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えばドネペジル)や、MAO(モノアミノオキシダーゼ)阻害薬(例えばセレギリン)、インターフェロン、抗痙攣薬(例えばガバペンチン)などの神経栄養物質;β遮断薬(例えばメトプロロール)、ACE阻害薬(例えばベナゼプリル)、利尿薬(例えばヒドロクロロチアジド)、カルシウムチャネル遮断剤(例えばニフェジピン)、スタチン(例えばシンバスタチン)などの心血管障害の治療のための有効成分;抗糖尿病薬、例えばメトホルミンおよびグリベンクラミド、スルホニル尿素薬(例えばトルブタミド)、ならびに糖尿病およびメタボリックシンドロームの治療のためのインスリン療法。メサラジン、スルファサラジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリンまたはメトトレキサート、プロバイオティクス細菌(ムタフロール、VSL#3(登録商標)、ラクトバシラス(Lactobacillus)GG、ラクトバシラス・プランタルム(plantarum)、L.アシドフィルス(acidophilus)、L.カゼイ(casei)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)35624、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus fecium)SF68、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)ニッスル(Nissle)1917)、抗生物質、例えばシプロフロキサシンおよびメトロニダゾール、下痢止め薬、例えばロペラミド、または慢性炎症性腸疾患の治療のための下剤(ビサコジル)などの有効成分。グルココルチコイドおよび非ステロイド性抗炎症物質(NSAID)などの免疫抑制薬、コルチゾン、クロロキン、シクロスポリン、アザチオプリン、ベリムマブ、リツキシマブ、エリテマトーデスの治療のためのシクロホスファミド。例として、限定されないが、カルシニューリン阻害薬(例えば、タクロリムスおよびシクロスポリン)、細胞分裂阻害薬(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、エベロリムスまたはシロリムス)、ラパマイシン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、抗CD3抗体、臓器移植のための抗Tリンパ球グロブリン/抗リンパ球グロブリン、ビタミンD3類似体、例えばカルシポトリオール、タカルシトールまたはカルシトリオール、サリチル酸、尿素、シクロスポリン、メトトレキサート、皮膚障害のためのエファリズマブ。
【0104】
本発明は、以下の図および実施例によってさらに説明されるが、これらの図および実施例は本発明を限定するとみなされるものではなく、例示的な性質のものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1図1:本発明によるコリン塩の多形形態AのXRPDパターン
図2図2:本発明によるコリン塩の多形形態AのFT-IRスペクトル
図3図3:非晶質2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウムのXRPDパターン
図4図4:部分結晶性2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウムのXRPDパターン
図5図5:結晶性2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウムのXRPDパターン
図6図6:2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートモノ2-プロパノール溶媒和物(形態B)のXRPDパターン
図7図7:2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート(形態C)のXRPDパターン
図8図8:2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート(形態D)のXRPDパターン
図9図9:ラットに異なる投与量で胃内投与した後のラットにおける遊離酸(丸)およびコリン塩(四角)の曝露量(AUC)
図10図10:ラットに異なる投与量の遊離酸(丸)またはコリン塩(四角)のいずれかを胃内投与した後の、ラットにおける遊離酸の血漿中曝露量(AUC、投与量で正規化したkgL/時)
図11A図11A:DVS測定の等温線プロット:コリン塩
図11B図11B:DVS測定の等温線プロット:ナトリウム塩
図11C図11C:DVS測定の等温線プロット:カリウム塩
図11D図11D:DVS測定の等温線プロット:アルギニン塩
図11E図11E:DVS測定の等温線プロット:遊離酸
図12A図12A:FeSSIFおよびFaSSIF溶液中で測定した溶解曲線:遊離酸
図12B図12B:FeSSIFおよびFaSSIF溶液中で測定した溶解曲線:コリン塩
図12C図12C:FeSSIFおよびFaSSIF溶液中で測定した溶解曲線:ナトリウム塩
図12D図12D:FeSSIFおよびFaSSIF溶液中で測定した溶解曲線:カリウム塩
図12E図12E:FeSSIFおよびFaSSIF溶液中で測定した溶解曲線:アルギニン塩
図13A図13A:遊離酸および様々な塩形態の溶解曲線の重ね合わせ:FeSSIF溶液中
図13B図13B:遊離酸および様々な塩形態の溶解曲線の重ね合わせ:FassiF溶液中
【実施例
【0106】
一般的な方法:
DSC/TG
パーキンエルマー製の示差走査熱量計(モデルDSC7、Pyris-1またはDiamond)を使用してDSCサーモグラムを記録した。非気密アルミニウムパンを使用して、20K分-1の加熱速度で測定を行った。フローガスは窒素であった。試料の調製はなかった。
【0107】
パーキンエルマー製の熱天秤(モデルTGA7およびPyris1)を使用してTGAサーモグラムを記録した。開口白金パンを使用して、10K分-1の加熱速度で測定を行った。フローガスは窒素であった。試料の調製はなかった。
【0108】
XRPD
XRD回折計X`Pert PRO(PANalytical社)を使用して室温でX線回折パターンを記録した(放射線Cu Kα1、波長1.5406Å)。試料の調製はなかった。X線反射はすべて、±0.2°の分解能で°2θ(シータ)値(ピーク最大値)で示す。
【0109】
分析LCMS法
方法1:計器:ウォーターズAcquity Platform ZQ4000;カラム:ウォーターズBEHC18、50mm×2.1mm、1.7μm;溶離液A:水/0.05%ギ酸、溶離液B:アセトニトリル/0.05%ギ酸;勾配:0.0分98%A→0.2分:98%A→1.7分:10%A→1.9分:10%A→2分:98%A→2.5分:98%A;流速:1.3ml/分;カラム温度:60℃;UV検出200~400nm
【0110】
方法2:計器:アジレント1200HPLCシステム;カラム:Nucleodur C18 HTECシリカ/C18、50mm×2mm、2.0μm;溶離液A:リン酸バッファー pH2.4、溶離液B:アセトニトリル;勾配:0.0分95%A→3分:60%A→3.5分:55%A→4.0分:50%A→4.5分:45%A→5.0分:20%A→6.0分:20%A→6.01分:95%A→7.0分:95%A;流速:1.0ml/分;カラム温度:40℃;UV検出:220nm
【0111】
溶解度の測定は方法2で行った。他の測定はすべて、方法1で行った。
【0112】
メチル-5-アミノ-2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)ベンゾアートを生成するための鈴木クロスカップリングの代替法:
スキーム
【0113】
【化11】
【0114】
反応容器Aに、メチル-5-アミノ-2-ブロモベンゾアート(1.00wt、1.0当量;CAS番号:6942-37-6)を入れ、続いてメタノール(8.0vol)を15℃~25℃の温度で入れた。得られた溶液を窒素でパージした。反応容器Bに、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.4wt、1.3当量;CAS番号:73183-34-3)、および[Pd(シンナミル)Cl]2二量体(0.02wt;CAS12131-44-1)、およびmeCgPPh(0.05wt、0.04当量)を入れた。反応容器Bも窒素でパージした。次いで、反応容器Aの溶液を反応容器Bに混合し、続いてライン/容器リンスとしてメタノール(2.0vol、1.6wt)を加えた。N,N-ジイソプロピルエチルアミンを加え(2.3vol、3.0当量)、窒素でプレパージし、15℃~45℃の温度に維持した。溶液を40℃~45℃の温度に加熱し、1H NMR分析で確認して、反応が完了するまで2~4時間撹拌した。
【0115】
次いで、この溶液を55℃~65℃の温度で10分間加熱して保持し、メタノール(2.0vol)に溶解した4-ブロモ-1-シクロブチルピラゾール(1.14wt、1.3当量;CAS番号:1002309-50-3)の予め窒素でスパージした溶液を入れた。次いで、予め窒素でスパージした5.2M KHPO(水)溶液(5.0vol、6.0当量)と、55~65℃を維持しながら30分間混合する。
【0116】
反応混合物を70℃~75℃に加熱し、16~20時間撹拌した。その後、反応混合物を15℃~25℃に冷却し、15℃~25℃の温度を維持しながら精製水(3.7vol)を入れた。2相を分離し、1μmフィルターを使用して有機相を清澄化し、容器/フィルターをメタノール(1.0vol)で洗浄した。
【0117】
清澄化した有機層を50℃~60℃の温度で蒸発させることによって、12.0volにまで濃縮した。酢酸イソプロピル(12.0vol)を加え、次いで混合物を50~60℃で12volにまで濃縮した。これを連続4回、またはH NMR分析で(5-アミノ-2-(1-シクロブチルピラゾール-4-イル)安息香酸メチル)と比較して残留メタノールが≦3.0%(重量/重量)になるまで繰り返した。
【0118】
反応混合物を15℃~25℃に冷却し、15℃~25℃を維持しながら精製水(10.0vol)および酢酸イソプロピル(10.0vol)を入れた。反応容器内の混合物を10~20分間撹拌した。その後、2つの相が分離した。有機層を40℃~45℃に加熱し、SiliaMetS(0.2wt;Silicycle;R1030B)を入れた。反応混合物を40℃~45℃で少なくとも1時間撹拌した。次いで、反応混合物を濾過してシリカを除去し、40℃~45℃で酢酸イソプロピル(2.0vol)を用いて連続して2回洗浄した。濾液を合わせ、次いで50℃~60℃に加熱し、蒸発によって3.0volにまで濃縮した。
【0119】
n-ヘプタン(6.0vol)を、濃縮した清澄濾液に、50℃~60℃に保ちながら少なくとも30分かけて加えた。その後、混合物を少なくとも90分かけて0℃~5℃に冷やし、次いで4時間超攪拌した。次いで、混合物を0℃~5℃で20μmのクロスで濾過し、フィルターケーキを0℃~5℃で、予め混合した酢酸イソプロピル(0.66vol)とn-ヘプタン(1.34vol)で洗浄した。フィルターケーキを精製水(2.0vol)で15℃~25℃にて少なくとも20分間スラリー洗浄し、続いてフィルターケーキをn-ヘプタン(2.0vol)で15℃~25℃にて少なくとも20分間スラリー洗浄した。次いで、フィルターケーキをn-ヘプタン(2.0vol、1.4wt)で再度洗浄した。生成物(5-アミノ-2-(1-シクロブチルピラゾール-4-イル)安息香酸メチル)と比較して、真空下で窒素流のもと、50℃で少なくとも6時間、または含水量が≦1.5%重量/重量、酢酸イソプロピルが≦1.0%重量/重量、n-ヘプタンが≦1.0%重量/重量になるまで物質を試した。5-アミノ-2-(1-シクロブチルピラゾール-4-イル)安息香酸メチルを、固体として50%~70%の収率で得た。
H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.73 (d, J = 0.7 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 0.7 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 8.4 Hz, 1H), 5.32 (bs, 2H), 4.79 (quint, 1H), 3.69 (s, 3H), 2-48-2.42 (m, 1H), 2.41-2.32 (m, 2H), 1.81-1.72 (m, 2H)
【0120】
実施例1:
実施例1a)およびb)として記載されている2つの代替的なアプローチによって、本発明によるコリン塩を形態Aで得た。
a)2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート形態A
【0121】
【化12】
【0122】
2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸を、国際公開第2018/114786(A1)号、実施例3に開示のように調製した。
【0123】
2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸(10.0g、20.5mmol)を98mLのイソブタノールに懸濁し、水酸化コリン溶液(CAS123-41-1、水中46重量%、5.45g、20.5mmol)を加え、22℃で10分間撹拌した後、混合物は透明になった。透明な溶液を22℃で18時間攪拌し、その後2×50mLのトルエンの共蒸留によって溶媒を蒸発させた。得られた固体を170mLの還流アセトニトリルに3時間かけて溶解した。穏やかに攪拌しながら溶液を冷やし、48℃で析出を観察した。次いで、混合物を5℃に冷やし、1時間撹拌した。形成した結晶を濾過によって単離し、同じ温度で2×10mLのアセトニトリルで洗浄し、乾燥キャビネット(40℃、200mBar)で一晩乾燥して、11.2g(収率91.9%)の2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-yl)5-[({1-[2-フルオロ-4(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートを無色結晶固体として得て、形態Aとして結晶化した。
H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm] 1.15 - 1.17 (m, 2H), 1.59 - 1.60 (m, 2H), 1.72 - 1.80 (m, 2H), 2.33 - 2.40 (m, 2H), 2.41 - 2.52 (m, 2H), 3.09 (s, 9H), 3.38 - 3.39 (m, 2H), 3.82 (s, br, 2H), 4.75 (quint, 1H), 5.66 (s, br, 1H), 7.09 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.30 (dd, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.65 - 7.70 (m, 2H), 7.72 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), 8.78 (s, 1H)
【0124】
b)2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート形態A
2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸を、国際公開第2018/114786(A1)号、実施例3に開示のように調製した。
【0125】
実施例1b)に対する代替として、塩形成の更なるプロセスを用いた。したがって、487mgの2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸を200mLのアセトニトリルに70℃で溶解した。清澄化した後、242mgの水酸化コリン水溶液(CAS123-41-1、約50%)を加え、清澄溶液を室温で1時間撹拌した。次いで、溶媒を室温でゆっくりと蒸発させ、乾燥固体を得た。その固体は、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートの形態Aに相当した。
【0126】
実施例2:2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートモノ2-プロパノール溶媒和物(形態B)の結晶化
実施例1に従って得られた2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートの25.27mgを、40倍量の2-プロパノールに室温で懸濁した。80℃に加熱すると、その固体は50℃で完全に溶解した(透明点)。-15℃まで冷却すると、25℃で結晶化が認められた。懸濁液を濾過し、17.74mgの固体を得た。XRPDパターンは2-プロパノール溶媒和物にあたる。この溶媒和物は「形態B」とも呼ばれる。
【0127】
実施例3:2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート形態C
実施例1に従って得られた2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートの150mgを、5mLの2-プロパノール/水混合物(9:1体積:体積)に溶解した。溶液を2μm PTFEシリンジフィルターを通した濾過によって清澄化し、次いで溶媒が完全に蒸発するまで、2回穴を開けたアルミニウムのキャップで密閉したシンチレーションバイアルに20℃で静置した。得られた固体は形態Cにあたる。
【0128】
実施例4:2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート
実施例1に従って得られた2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートの125.48mgを、小型容器内で0.5mLのヘキサフルオロプロパン-2-オールに溶かした。小さい方の容器を、ジエチルエーテルが入った大きい方の容器内に、開いた状態で入れた。容器のセットアップを室温で乱すことなく静置して、溶媒を小さい容器全体に拡散させ、125.48mgの2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートの結晶化を促進した。数日後、92.18mgの固体を濾過によって単離し、減圧下で40℃にて約20時間乾燥させた。この固体は形態Dとも名付けた。しかし、これはヘキサフルオロプロパン-2-オール溶媒和物であることが判明した。
【0129】
実施例5:非晶質2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウム
487mgの2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸を、300mLのアセトニトリルに70℃で溶かした。次いで、1mLの水酸化ナトリウムのモル水溶液を加えた。次いで、溶媒を室温で蒸発させ、固体を得た。その固体は、非晶質2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウムに相当する。
【0130】
実施例6:部分結晶性2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウム
【0131】
【化13】
【0132】
2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸(540mg、1.12mmol)およびと水酸化ナトリウム(44.3mg、1.12mmol)を11mLの水中で80℃にて透明な溶液が形成されるまで撹拌した。混合物を蒸発乾固した。トルエン(20mL)を用いた共沸蒸留の反復によって残留水を除去した。得られた固体はXRPD測定で証明されたように非晶質であった(データは示さず)。その固体をアセトン(5mL)に溶かし、フリーザー(-18℃)で6週間保存した。形成した非晶質固体を濾取し、乾燥キャビネット(40℃)で乾燥して、140mg(収率25%)の2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウムを固体として得た。それは部分的にしか結晶化していないことが判明した。図5を参照。
H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ [ppm] 1.15 - 1.18 (m, 2H), 1.58 - 1.60 (m, 2H), 1.72 - 1.81 (m, 2H), 2.32 - 2.48 (m, 4H), 4.75 (quint, 1H), 7.11 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.29 (dd, 1H), 7.56 - 7.58 (m, 1H), 7.64 - 7.70 (m, 2H), 7.72 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), 8.78 (s, 1H)
LCMS: Rt = 1.24 min; MS (ESIPos) m/z = 488 (M+H 酸(acid))
【0133】
実施例7:結晶性2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸ナトリウム
0.1165gの実施例6で得られた固体を、0.669gのアセトンに懸濁し、薄い懸濁液を得た。次いで、溶媒を室温で1週間超かけて、固体が得られるまでゆっくりと蒸発させた。試料の結晶性はXPRDで評価した;実施例10参照。
【0134】
実施例8:非晶質2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸カリウム
国際公開第2018/114786(A1)号、実施例3に開示のように調製した2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸487mgを、300mLのアセトニトリルに70℃で溶かした。清澄化した後、1mLの水酸化カリウムのモル水溶液を加えた。次いで、乾燥固体が得られるまで溶媒を室温でゆっくりと蒸発させた。得られた固体のXPRD分析は、非晶質物質に特徴的であった。
【0135】
実施例9:2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアートの非晶質アルギニン塩
国際公開第2018/114786(A1)号、実施例3に開示のように調製した2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸の487mgを、200mLのアセトニトリルに70℃で溶かした。清澄化した後、174mgのアルギニンを加えた。次いで、乾燥固体を得られるまで溶媒を室温でゆっくりと蒸発させた。得られた固体のXPRD分析は、非晶質物質に特徴的であった。
【0136】
実施例10:2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸の多形および擬多形の塩のXRPDによる特徴付け
XRD回折計X`Pert PRO(PANalytical社)を使用して室温で、コリン塩の多形形態Aおよび実施例5~7で得られた固体、すなわちナトリウム塩のX線回折パターンを記録した(放射線Cu Kα1、波長1.5406Å)。試料の更なる調製はなかった。X線反射はすべて、±0.2°の分解能で°2θ(シータ)値(ピーク最大値)で示す。
【0137】
LynxEye検出器を備えたBruker D2 Phaser粉末回折計を使用して、コリン塩の形態B、形態Cおよび形態DのX線粉末回折(XRPD)分析を行った。試料は最小限の調製を受けたが、必要であれば、取得(acquisition)前に乳棒および乳鉢で軽く粉砕した。5mmのポケット内シリコン製試料ホルダーの中心に試料を置いた(約5~10mg)。
【0138】
【表1】
【0139】
実施例11:形態Aの本発明によるコリン塩のIRデータ
IR
実施例1に概説した通りに調製した形態Aの本発明によるコリン塩のIR-ATR-スペクトルを、Bruker製のTensor37装置を用いたFT-IR-分光光度計を使用して、室温で記録した。分解能は2cm-1であった。
【0140】
【表2】
【表2-2】
【0141】
実施例12:溶解度 遊離酸対塩
国際公開第2018/114786(A1)号の実施例3に記載のように調製した結晶性2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸(遊離酸)、およびコリン塩形態Aの溶解度を、25℃でシェイクフラスコ法(1mLスケール、一晩撹拌)に従って測定した。
【0142】
【表3】
【0143】
実施例13:胃内投与後のラットにおける曝露量の測定
方法
体重が0.2kg(最小)~0.25kg(最大)の雌覚醒ラットで試験化合物の胃内投与後の曝露量を測定した。試験化合物をビヒクルエタノール/溶媒/水(体積/体積/体積10/40/50)中の溶液または懸濁液で、非給餌雌ラットに胃内プローブを介してボーラスとして適用した。
【0144】
投与後8分~24時間の指定された時点で、頸静脈からカテーテルを介して150μlの血液を採取した。試料を抗凝固剤としてK-EDTAで処理し、さらにプロセスするまで冷却して保存した(冷蔵庫、4℃)。試料を遠心分離し(15分、3000rpm)、次いで上清(血漿)から100μLのアリコートを採取し、400μLの冷アセトニトリルまたはメタノール(abs.)を加えることによって沈殿させ、を-20℃で一晩凍結させた。試料を遠心分離し(15分、3000rpm)、次いで透明上清150μLを分析試験のために取った。分析は、LCMS/MS検出を備えたAgilent1200 HPLCシステムを使用して行った。
【0145】
PKパラメータの計算(PK計算ソフトウェア、例えばWinNonLin(登録商標)による):
AUC(0-tlast):時点ゼロから最終時点24時間までの血漿中濃度-時間プロファイル下面積(単位kgL/時);
AUC(0-tlast)norm:体重で正規化した投与量で割った、時点ゼロから最終時点24時間までの血漿中濃度-時間プロファイルの積分面積(単位kgL/h);
max:血漿中の試験化合物の最大濃度(単位μg/L);
maxnorm:体重で正規化した投与量で割った、血漿中の試験化合物の最大濃度(単位kg/L)
【0146】
結果
2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)-フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸(遊離酸)のラット血漿中曝露量を、遊離酸自体または2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]ベンゾアート(コリン塩)のいずれかを様々な投与量で適用した後に測定した。本発明によるコリン塩の適用投与量は、遊離酸と比較して分子量の差に応じて調整した。結果として得られた同等の投与量を比較に使用した。
【0147】
それぞれ得られたAUCまたはAUCnormを投与量の関数として比較した。
【0148】
【表4】
【0149】
図4に示されるように、本発明による遊離酸自体またはコリン塩をラットに投与した後のラット血漿中の遊離酸の曝露量は、30mg/kgまでの低投与量で同様であることが観察された。高投与量の遊離酸を投与した後、曝露量の増加は投与量に比例した増加よりもはるかに小さいことが観察された。対照的に、驚くべきことに、コリン塩の適用後、活性医薬成分としての遊離酸の血漿曝露量は、約100mg/kgの投与量まで投与量に比例した曝露量の増加を示した。また、高投与量(249および495mg/kg)でも、投与量に比例しない暴露量の増加がコリン塩の投与後に観察された。しかし、100mg/kgの遊離酸の投与後の曝露量と比較して、曝露量は絶対値および投与量で正規化したAUCの点で、依然として有意に高かった(表4ならびに図9および図10を参照)。したがって、コリン塩用では、驚くべきことに、ラットにおいて毒性試験に十分な高濃度の暴露を達成することができたが、遊離酸の投与では毒性試験に適さないレベルで血漿暴露量がプラトーに達した。
【0150】
実施例14:遊離酸および他の塩と対比したコリン塩の溶解度(単位mg遊離酸/L)
方法
以下のように進めて、それぞれの塩の溶解度を調べた。
国際公開第2018/114786(A1)号の実施例3に記載のように調製した結晶性2-(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-[({1-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]シクロプロピル}カルボニル)アミノ]安息香酸(遊離酸)、本明細書の実施例1bに従って調製したコリン塩形態A、本明細書の実施例6に記載のように得た部分結晶性ナトリウム塩、本明細書の実施例8による非晶質カリウム塩および本明細書の実施例9による非晶質アルギニン塩の溶解度を、別段の言及がない限り、シェイクフラスコ法(欧州薬局方に準拠、1mLスケールで、一晩攪拌)に従って25℃で測定した。
【0151】
FaSSIF(絶食時模擬腸液)ブランク溶液の調製:4.2gのNaOH、44.7gのNaHPO 2 HO、および61.86gのNaClを約9.5Lの脱塩水に溶かした。次いで、この溶液のpHをそれぞれHClまたはNaOHを使用して6.50+/-0.05に調整した。最後のステップでは、脱塩水を加えて最終量を10.0Lに調整した。
【0152】
最終FaSSIF溶液の調製:4.48gのSIF(模擬腸液)粉末(供給元:biorelevant.com、製品コード:FFF01(2022年5月))を約500mLのFaSSIFブランク溶液に溶かし、次いでFaSSIFブランク溶液を加えて最終量を2.0Lに調整した。2時間後、溶液は使用可能と判断され、48時間以内に使用した。
【0153】
FeSSIF(摂食時模擬腸液)ブランク溶液の調製:40.4gのNaOH、118.74gのNaCl、および82.4mLの氷酢酸を、約9.5Lの脱塩水に溶かした。次いで、この溶液のpHをそれぞれHClまたはNaOHを使用して5.00+/-0.05に調整した。最後のステップでは、脱塩水を加えて最終量を10.0Lに調整した。
【0154】
最終FeSSIF溶液の調製:22.4gのSIF粉末(供給元:biorelevant.com、製品コード:FFF01(2022年5月))を約500mLのFeSSIFブランク溶液に溶かし、次いでFeSSIFブランク溶液を加えて最終量を2.0Lに調整した。その溶液は、製造後すぐに使用可能と判断され、48時間以内に使用した。
【0155】
結果
【0156】
【表5】
【0157】
pH4.5以上での測定および生体関連媒体(FeSSIFおよびFaSSIF)での測定を含め、塩の水溶解度は遊離酸の溶解度よりも有意に高いことが観察された。
【0158】
驚くべきことに、唯一完全に結晶化した塩であるコリン塩は、試験したほとんどの水性媒体、特にFaSSIFにおいて、非晶質塩や部分結晶性塩よりも高い溶解度を示した。
【0159】
結晶形態の塩が非晶質の塩よりも溶解度が高いというのは意外であった。
【0160】
実施例15 遊離酸および他の塩と対比したコリン塩の吸湿性
方法
水の収着等温線は、DVS Resolution重量収着分析器(ロンドン、英国)またはDVS Intrinsic計器(Surface measurement Systems)を使用して測定した。試料を相対湿度(R.H.)0%で1000分間乾燥させた。その後、乾燥重量を記録した。湿度を10%のステップで90%にまで増加させ、次いで95%にまで増加させ、最後に同じステップに従って再び0%R.H.にまで減少させた。各相対湿度設定点の平衡基準は、時間の関数として毎分0.002%の相対質量変化であった。動的蒸気収着等温線を図11a~11eに示す。
【0161】
【表6】
【0162】
【表7】
【0163】
結果
DVS測定の等温線プロットを図11a~eに示す。これらの塩を比較すると、コリン塩は他の塩よりも吸湿性が低く、特に通常の大気相対湿度範囲(30~50%)では吸湿性が低かった。コリン塩はまた、他の塩に比べて、高相対湿度(>80%)での顕著な増加が少なかった。
【0164】
実施例16:遊離酸および他の塩と対比したコリン塩の溶解プロファイル
方法
測定の前に、窒素雰囲気下、ジェットミル(MC DECJET30)を使用して、インジェクターの圧力4.5Bar、粉砕圧力4.0Barで試料を微粒子化した。
【0165】
次いで、Sotax社製のフロースルーセル(FTC)を使用して薬物の溶解速度を測定した。実験はすべて3連で行った。
【0166】
実験では、1mgの遊離酸に相当する量の固体(遊離酸に関して+/-2%)をセルに充填した。次いで、それぞれの媒体(FaSSIFまたはFeSSIF)を、セルを通して2mL/分のポンプ速度で合計14分間送液し、その結果、総量は28mLとなった。この量を2分の時間増分で集め、各4mLの7つの分画を得た。各分画の医薬品原薬濃度をHPLC(外部標準)で測定した。集めたデータから、時間依存性の濃度プロファイルが得られ、塩を比較するために使用した。
【0167】
結果
FeSSIFおよびFaSSIFにおいて測定した溶解曲線を図12a~eに示す。
【0168】
図13aは、FeSSIFにおける遊離酸と様々な塩形態の溶解曲線を重ね合わせたものである。遊離酸の溶解は有意によりゆっくりと溶解し、14分後の累積溶解量も塩形態と比較して少なかった。カリウム塩を除いて、塩形態はFeSSIFにおいて類似した溶解プロファイルを示した。
【0169】
図13bは、FaSSIFにおける遊離酸と様々な塩形態の溶解曲線を重ね合わせたものである。やはり、遊離酸の溶解は有意によりゆっくりと溶解し、14分後の累積溶解量も塩形態と比較して少なかった。驚くべきことに、結晶性であるにもかかわらず、コリン塩は他の塩よりも良好な溶解プロフィールを示した。
【0170】
部分結晶性であるナトリウム塩の溶解プロファイルと、非晶質であるカリウム塩およびアルギニン塩との間に違いはなかった。
【0171】
意外にも、結晶性コリン塩は遊離酸よりも溶解が速かっただけでなく、部分結晶性形態または非晶質形態しか得られなかった他の塩の化合物よりも溶解が速かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
【国際調査報告】