IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュランの特許一覧

特表2024-524540ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ
<>
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図1
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図2
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図3
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図4
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図5
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図6-7
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図8-9
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図10
  • 特表-ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ハイブリッド横方向切込みを備えるタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20240628BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240628BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240628BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/03 100C
B60C11/13 C
B60C11/03 100B
B60C11/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500187
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 FR2022051351
(87)【国際公開番号】W WO2023281214
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107347
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】デュラン-ガセリン ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス ミゲル
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC33
3D131EA10X
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB32X
3D131EB33X
3D131EB42X
3D131EB43X
3D131EB46X
3D131EB47X
3D131EB48X
3D131EB91X
3D131EB99X
(57)【要約】
タイヤ(10)は、第1及び第2の軸方向側部(P1)に設けられたハイブリッド横方向切込みとして知られるものを備え、切込み底面(94)に、0.2mmから0.6mmまでの範囲にある幅を有する幅狭軸方向内側部分(80)と;切込み底面(94)に、0.7mmから5.0mmまでの範囲にある幅を有する幅広軸方向外側部分(82)と;を備える。各ハイブリッド横方向切込みは底面(94)を有し、その全てがトレッド層(110)と支持層(112)との界面(114)の半径方向外側に配置される。幅狭軸方向内側部分(80)の底面(94)は、幅広軸方向外側部分(82)の底面(94)が配置される、界面(114)からの半径方向距離(de)よりも、厳密に大きい半径方向距離(di)に配置される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時にトレッド面(38)を介して地面と接触するように意図されたトレッド(14)を備える乗用車用タイヤ(10)であって、前記トレッド(14)は、
トレッドパターン高さ(Hs)の50%以上の深さ(Ha1、Ha2)を有し、前記タイヤ(10)の中央面(M)の軸方向両側に配置された第1及び第2の軸方向外側主周方向切込み(52、54)を備える主周方向切込み(52、54、56、58)であって、前記第1及び第2の軸方向外側主周方向切込み(52、54)が前記トレッド(14)の軸方向最外主周方向切込みである主周方向切込み(52、54、56、58)と、
前記第1の軸方向外側主周方向切込み(52)の軸方向外側に配置され、前記トレッド面(38)の第1の軸方向縁(41)から前記第1の軸方向外側主周方向切込み(52)まで軸方向に延びる第1の軸方向側部(P1)と、
前記第2の軸方向外側主周方向切込み(54)の軸方向外側に配置され、前記トレッド面(38)の第2の軸方向縁(42)から前記第2の軸方向外側主周方向切込み(54)まで軸方向に延びる第2の軸方向側部(P2)と、
を備え、前記タイヤ(10)は、前記トレッド層(110)と前記トレッド層(110)の支持層(112)とを備え、前記支持層(112)が前記トレッド層(110)の半径方向内側に配置されており、
前記トレッド(14)は、前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の少なくとも一方に少なくとも部分的に作られた、いわゆるハイブリッド横方向切込み(77、78)を備え、前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の各々が、
前記切込みの底面(94)において0.2mmから0.6mmまでの範囲にある幅(Lai)を有する、いわゆる幅狭軸方向内側部分(80)であって、前記幅狭軸方向内側部分(80)が前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の少なくとも一方における前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の軸方向最内部分である、幅狭軸方向内側部分(80)と、
前記切込みの底面(94)において0.7mmから5.0mmまでの範囲にある幅(Lae)を有し、前記幅狭軸方向内側部分(80)と連通し、前記幅狭軸方向内側部分(80)の軸方向外側に配置された、いわゆる幅広軸方向外側部分(82)であって、前記幅広軸方向外側部分(82)が前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の少なくとも一方における前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の軸方向最外部分である、幅広軸方向外側部分(82)と、
を備え、
前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の各々は、ハイブリッド横方向切込み底面(94)を有し、前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の各々の前記底面(94)全体が前記トレッド層(10)と前記支持層(112)との界面(114)の半径方向外側に配置され、
前記幅狭軸方向内側部分(80)の前記底面(94)の少なくとも一部(126)は、前記幅広軸方向外側部分(82)の前記底面(94)の少なくとも一部(128)が配置される、前記界面(114)からの半径方向距離(de)よりも、厳密に大きい半径方向距離(di)に配置される、
ことを特徴とするタイヤ(10)。
【請求項2】
前記幅狭軸方向内側部分(80)の曲線長(Loi)の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%は、前記幅広軸方向外側部分(82)の前記底面(94)が配置される、前記界面(114)からの平均半径方向距離(dem)よりも、厳密に大きい半径方向距離(di)に配置される、請求項1に記載のタイヤ(10)。
【請求項3】
前記幅狭軸方向内側部分(80)の前記底面(94)は、前記幅広軸方向外側部分(82)の前記底面(94)が配置される、前記界面(114)からの前記平均半径方向距離(dem)よりも、厳密に大きい平均半径方向距離(dim)に配置される、請求項1又は2に記載のタイヤ(10)。
【請求項4】
前記幅狭軸方向内側部分(80)と半径方向に並んで配置された前記界面(114)の部分の少なくとも一部(122)は、前記幅広軸方向内側部分(82)と半径方向に並んで配置された前記界面(114)の部分の少なくとも一部(124)の半径方向外側に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項5】
前記トレッド(14)は、前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の各々に部分的に作られたハイブリッド横方向切込み(77、78)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項6】
前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の少なくとも一方に少なくとも部分的に作られた、前記横方向切込みの少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%は、ハイブリッド横方向切込み(77、78)である、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項7】
前記幅狭軸方向内側部分(80)は、前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の前記少なくとも一方に作られた前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の各々の部分の曲線長(Lot)の少なくとも20%に等しく、最大で75%に等しい曲線長(Loi)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項8】
前記切込みの前記底面(94)における前記幅狭軸方向内側部分(80)の幅(Lai)は、0.2mmから0.5mmまでの範囲にある、請求項1から7のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項9】
前記切込みの前記底面(94)における前記幅広軸方向外側部分(82)の幅(Lae)は、1.0mmから5.0mmまで、好ましくは2.0mmから4.5mmまでの範囲にある請求項1から8のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項10】
前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の各々は、
前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の少なくとも一方に作られ、軸方向(Y)と15°以上、好ましくは20°以上の平均角を成す、いわゆる傾斜軸方向内側部分(100)であって、前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の前記少なくとも一方における前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の軸方向最内部分である傾斜軸方向内側部分(100)と、
前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の少なくとも一方に作られ、前記軸方向(Y)とは前記傾斜軸方向内側部分(100)の平均角(A)よりも厳密に小さい平均角(B)を成し、前記傾斜軸方向内側部分(100)の軸方向外側に配置された、いわゆる直線状軸方向外側部分(102)であって、前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の前記少なくとも一方における前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の軸方向最外部分である直線状軸方向外側部分(102)と、
を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項11】
前記直線状軸方向外側部分の前記平均角(B)は、厳密に25°未満、好ましくは20°以下、より好ましくは15°以下である、請求項10に記載のタイヤ(10)。
【請求項12】
前記幅狭軸方向内側部分(80)は、前記傾斜軸方向内側部分(100)の少なくとも一部を含み、
前記幅広軸方向外側部分(82)は、前記直線状軸方向外側部分(102)の少なくとも一部を含む、請求項10又は11に記載のタイヤ(10)。
【請求項13】
前記幅狭軸方向内側部分(80)は、に隣接する前記第1及び第2の軸方向外側主周方向切込み(52、54)の一方に現れる、請求項1から12のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【請求項14】
前記ハイブリッド横方向切込み(77、78)の各々は、前記第1及び第2の軸方向側部(P1、P2)の前記少なくとも一方の軸方向外側に作られ、前記幅広軸方向外側部分(82)と連通する軸方向終端部分(83)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のタイヤ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車用タイヤに関する。タイヤとは、例えばリムなどの支持要素と協働して空洞を形成し、この空洞が大気圧を超える圧力まで加圧できるように意図されたケーシングを意味する。本発明によるタイヤは、タイヤの主軸に関して回転対称性を示す実質的に円環体形状の構造を有する。
【背景技術】
【0002】
MICHELIN(登録商標)の商品名でPRIMACY4(登録商標)シリーズとして販売される乗用車用タイヤが先行技術から公知である。このようなタイヤは、走行時にトレッド層で支えられたトレッド面を介して地面と接触するように意図されたトレッドを備える。このタイヤはまた、トレッド層の半径方向内側に配置された、副層とも呼ばれるトレッド層の支持層を備える。
【0003】
トレッドは、トレッドパターン高さの50%以上の深さを有して、タイヤの中央面の両側に第1及び第2の軸方向外側主周方向切込みを含む、主周方向切込みを備える。第1及び第2の軸方向外側主周方向切込みは、トレッドの軸方向最外主周方向切込みである。
【0004】
トレッドは、2つの隣接する主周方向切込みの軸方向間にそれぞれ配置されて、2つの隣接する主周方向切込みによって軸方向に区切られたリブを備える。リブは、特に、第1の軸方向外側主周方向切込み及び第2の軸方向外側主周方向切込みの軸方向外側にそれぞれ配置された、第1の軸方向側部と第2の軸方向側部とを備える。
【0005】
各第1及び第2の軸方向側部は横方向切込みを備え、この横方向切込みは、その底面に各サイプの曲線長さ全体に亘って幅が0.4mmに等しいサイプを備える。
【0006】
このタイヤは、場合により、第1及び第2の軸方向側部において、トレッドの一部にチャンキングを呈することが指摘されている。
【0007】
タイヤは、米国特許第9085201号、米国特許第10864775号、米国特許第2013/112325号及び米国特許第10449807号からも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9085201号明細書
【特許文献2】米国特許第10864775号明細書
【特許文献3】米国特許第2013/112325号明細書
【特許文献4】米国特許第10449807号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、濡れた地面での転がり抵抗性能及びグリップ性能を過度に損なうことなく、このチャンキングの存在を低減する、又は排除することさえも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、走行時にトレッド面を介して地面と接触するように意図されたトレッドを備える乗用車用タイヤに関し、このトレッドは、
-トレッドパターン高さの50%以上の深さを有し、タイヤの中央面の軸方向両側に配置された第1及び第2の軸方向外側主周方向切込みを備える主周方向切込みであって、第1及び第2の軸方向外側主周方向切込みがトレッドの軸方向最外主周方向切込みである主周方向切込みと、
-第1の軸方向外側主周方向切込みの軸方向外側に配置され、トレッド面の第1の軸方向縁から第1の軸方向外側主周方向切込みまで軸方向に延びる第1の軸方向側部と、
-第2の軸方向外側主周方向切込みの軸方向外側に配置され、トレッド面の第2の軸方向縁から第2の軸方向外側主周方向切込みまで軸方向に延びる第2の軸方向側部と、
を備え、タイヤは、トレッド層とトレッド層の支持層とを備え、支持層がトレッド層の半径方向内側に配置されており、
トレッドは、第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方に少なくとも部分的に作られた、いわゆるハイブリッド横方向切込みを備え、各ハイブリッド横方向切込みは、
-切込みの底面において0.2mmから0.6mmまでの範囲にある幅を有する、いわゆる幅狭軸方向内側部分であって、幅狭軸方向内側部分が第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方におけるハイブリッド横方向切込みの軸方向最内部分である、幅狭軸方向内側部分と、
-切込みの底面において0.7mmから5.0mmまでの範囲にある幅を有し、幅狭軸方向内側部分と連通し、幅狭軸方向内側部分の軸方向外側に配置された、いわゆる幅広軸方向外側部分であって、幅広軸方向外側部分が第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方におけるハイブリッド横方向切込みの軸方向最外部分である、幅広軸方向外側部分と、
を備え、
各ハイブリッド横方向切込みは、ハイブリッド横方向切込み底面を有し、各ハイブリッド横方向切込みの底面全体がトレッド層と支持層との界面の半径方向外側に配置され、
幅狭軸方向内側部分の底面の少なくとも一部は、幅広軸方向外側部分の底面の少なくとも一部が配置される、界面からの半径方向距離よりも、厳密に大きい半径方向距離に配置される。
【0011】
本発明の発明者らは、軸方向側部にサイプを作ることを可能にするタイヤの成型中に、当該又は各軸方向側部の未硬化エラストマ組成物が、各サイプを成型するための成型要素、この場合はサイプブレードによる貫入を受けるために、チャンキングが生じることを理解している。この貫入は、サイプ底面の幅が狭いほど、又はサイプが深いほど大きくなることを本発明者らは理解している。サイプブレードは細ければ細いほど、当該又は各軸方向側部のエラストマ組成物に切り込むことができる。さらに、このサイプブレードがエラストマ組成物に深く貫入すると、トレッド層と支持層との界面に貫入する可能性があり、これは支持層を半径方向外方に移動させるという影響を与える。支持層、特に軸方向側部の軸方向外側部分にある支持層のこのような半径方向外方移動は、タイヤが著しく摩耗した時にトレッド面に界面が現れる原因となる。このような界面は、タイヤが走行する地面と接触するようには設計されていないため、急速に劣化し、上述のチャンキングをもたらす。
【0012】
このような問題に直面して、本発明の発明者らは、ハイブリッド横方向切込みがこの界面を貫通しないように、トレッド層と支持層との界面の半径方向外側に底面を配置したハイブリッド横方向切込みを設計した。言い換えれば、各ハイブリッド横方向切込みの底面はこの界面に干渉しない。
【0013】
まず第1に、本発明では、最もチャンキングを呈しやすいトレッドの部分は、ハイブリッド横方向切込みの幅広軸方向外側部分を含む。本発明の発明者らは、サイプの成型とは異なり、0.7mm以上の幅を有する横方向切込みの成型は、その貫入による界面の半径方向外方移動をもたらすのではなく、成型圧力による半径方向内方移動をもたらし、これにより、タイヤ表面への界面の現れが低減され、ひいてはチャンキングが低減されるということに着目した。
【0014】
第2に、幅狭軸方向内側部分の底面の一部を幅広軸方向外側部分の底面の一部よりも界面から半径方向に離れて配置することで、幅狭軸方向内側部分と並んで配置された界面の部分は、幅狭軸方向内側部分を成型するための成型要素に貫通される可能性が低減する。従って、チャンキングのリスクが低減される。
【0015】
当該部分の底面と界面との半径方向距離とは、半径方向に測定された距離である。所定の部分からの距離は、その部分の各点について測定された距離である。従って、幅狭軸方向内側部分の底面の部分の全点が、幅広軸方向外側部分の底面の当該部分の全点が配置される距離よりも厳密に大きい半径方向距離に配置される場合に、幅狭軸方向内側部分の底面の当該部分は、幅広軸方向外側部分の底面の当該部分よりも界面から半径方向に離れて配置される。
【0016】
さらに、本発明によるタイヤのハイブリッド横方向切込みにより、転がり抵抗性能と濡れた地面でのグリップ性能とを維持することが可能になる。この横方向切込みは、一方は幅が狭く、他方は幅の広い、2つの部分が存在するため、ハイブリッドであると言われている。
【0017】
各ハイブリッド横方向切込みの幅狭部分は、軸方向側部におけるハイブリッド横方向切込みの軸方向最内部分であるため、トレッドの高さが相対的に大きいトレッド部分に位置する。トレッドの高さが大きければ大きいほど、ポアソン効果が大きくなり、切込みの存在によって転がり抵抗が悪化する。幅狭軸方向内側部分の幅が相対的に小さいため、タイヤが接地面を通過する時に幅狭軸方向内側部分の2つの主側面が互いに接触可能となることでポアソン効果が制限され、転がり抵抗が低下する。幅広軸方向外側部分は、軸方向側部におけるハイブリッド横方向切込みの軸方向最外部分であるため、タイヤの湾曲によりトレッドの高さが必然的に小さくなるトレッド部分に位置する。従って、ポアソン効果はここで小さくなり、幅広軸方向外側部分の幅は、転がり抵抗にほとんど悪影響を与えない。
【0018】
さらに、各ハイブリッド横方向切込みの幅広軸方向外側部分により、効果的な排水が可能となり、切込みの底面の幅が相対的に大きいため、いずれの場合でも先行技術のタイヤに比べて排水性が改善される。
【0019】
幅狭軸方向内側部分はサイプに例えることができ、幅広軸方向外側部分は、それが十分に幅広である限り、溝に例えることができる。サイプは、特にタイヤが新品であって、とりわけタイヤが公称荷重の下で公称圧力であることを含め、通常の走行状態にある場合に、その主側面間の距離が、接地面でサイプを画定する主側面を少なくとも部分的に接触させるのに適するようになっている。溝は、とりわけタイヤが公称荷重の下で公称圧力であることを含めて通常の走行状態の下で、その主側面間の距離がこれら主側面を互いに接触させないようになっている。
【0020】
慣例的に、トレッド面は第1及び第2の軸方向縁で軸方向に区切られている。トレッド面の第1及び第2の軸方向縁は、公称リムに装着され、欧州タイヤ及びリム技術機構(European Tyre and Rim Technical Organisation)、又は”ETRTO”規格(2019)に準拠して公称圧力まで膨らませたタイヤで決定される。トレッド面の第1及び第2の軸方向縁は、タイヤの中央面の両側に配置され、タイヤの周方向と実質的に平行な線によって形成される。トレッド面とタイヤの残部との間に明らかな境界がある場合、トレッド面の第1及び第2の軸方向縁は簡単に決定される。トレッド面がタイヤのサイドウォールの外面と連続している場合、各第1及び第2の軸方向縁は、子午断面において或る点を通り、この点では、この点を通るトレッド面の接線と、軸方向に平行な直線との成す角が30°に等しい。子午断面において、当該角度が絶対値で30°に等しい点が複数存在する場合には、半径方向最外点が使用される。
【0021】
本発明によるタイヤの支持層は、タイヤの摩耗が規制摩耗閾値に対応する摩耗よりも小さい場合、走行時に地面と接触するようには意図されておらず、この摩耗閾値は、例えば規制摩耗インジケータによってタイヤ上に示される。言い換えれば、トレッド層と支持層との界面は、その曲線長の少なくとも90%、好ましくは100%に亘って、新品時のタイヤのトレッド面と平行な面の半径方向内側に配置され、規制摩耗インジケータの半径方向最外点を通る。このような支持層はトレッド層と直接接触している。支持層は、トレッド層の半径方向内側に、支持層の軸方向幅全体に亘って配置される。支持層は、半径方向外側トレッド層の半径方向内側にあるトレッド層ではない。
【0022】
トレッド層は、タイヤの他の性能基準を最適化するように配置された、特に国際公開第2015/032601号、国際公開第2012/175444号、欧州特許第3508354号、欧州特許第2594413号及び国際公開第2009/124816号に記載されるように半径方向及び軸方向の分布を最適化した、単一のエラストマ組成物又は複数のエラストマ組成物を備えることができる。
【0023】
トレッドの当該又は各第1及び第2の軸方向側部は、もちろん、ハイブリッド横方向切込みの特徴を持たない他の横方向切込みと共に、トレッドパターン高さの厳密に50%未満の深さを持つ周方向切込みを備えることができる。
【0024】
新品タイヤについて、切込み又は切込み部分の深さとは、走行時における切込み又は切込み部分の底面とその地面への投影との最大半径方向距離である。切込み深さの最大値は、トレッドパターン高さと呼ばれる。
【0025】
切込み又は切込み部分は、トレッド面に2つの主要な特徴的寸法、幅と曲線長とを有し、曲線長が少なくとも幅の2倍に等しいようになっている。従って、切込み又は切込み部分は、その曲線長を決定し底面で繋がる少なくとも2つの主側面によって画定されており、この2つの主側面は、切込み又は切込み部分の幅と呼ばれる非ゼロの距離だけ互いに離れている。
【0026】
新品のタイヤについて、切込み又は切込み部分の幅は、デフォルトで切込み又は切込み部分が面取りされていない場合にトレッド面と一致する半径方向点で、デフォルトで切込み又は切込み部分が面取りされている場合には面取り部の半径方向内側において切込み又は切込み部分の半径方向最外点で測定された、2つの主側面間の最大距離である。この幅は、主側面に対して実質的に垂直に測定される。デフォルトの幅以外の幅が指定された場合、例えば特定点での幅が指定された場合、その幅は、切込み又は切込み部分の底面の特定点における2つの主側面間の距離に等しい。本発明の場合、ハイブリッド横方向切込みに面取りを設けるか否かに関わらず、切込みの底面における幅は、切込みの対応する部分の底面で測定された2つの主側面の距離に等しい。
【0027】
切込み又は切込み部分は、横方向又は周方向とすることができる。
【0028】
横方向切込みは、その切込みが、タイヤの周方向と30°より厳密に大きい、好ましくは45°以上の角度を成す、すなわちタイヤの軸方向と60°以下、好ましくは厳密に45°以下の角度を成す平均方向に延びるようになっている。平均方向とは、切込みの両端を結ぶ最短曲線であり、トレッド面に平行である。横方向切込み又は切込み部分は、連続的とすることができ、つまり、トレッドパターンブロック又は別の切込みで中断されないので、その長さを決定する2つの主側面が横方向切込み又は切込み部分の長さに亘って途切れない。横方向切込みは同様に、不連続とすることができ、つまり、1又は2以上のトレッドパターンブロック及び/又は1又は2以上の切込みで中断されるので、その長さを決定する2つの主側面が1又は2以上のトレッドパターンブロック及び/又は1又は2以上の切込みで途切れる。
【0029】
周方向切込みは、切込み又はその一部分が、タイヤの周方向と30°以下、好ましくは10°以下の角度を成す、すなわちタイヤの軸方向と厳密に60°以上、好ましくは厳密に80°以上の角度を成す平均方向に延びるようになっている。平均方向とは、切込みの両端を結ぶ最短曲線であり、トレッド面に平行である。連続的な周方向切込みの場合、その両端は互いに一致し、タイヤの周りを一周する曲線で結ばれる。周方向切込みは、連続的とすることができ、つまり、トレッドパターンブロック又は別の切込みで中断されないので、その長さを決定する2つの主側面がタイヤの全周に亘って途切れない。周方向切込みは同様に、不連続とすることができ、つまり、1又は2以上のトレッドパターンブロック及び/又は1又は2以上の切込みで中断されるので、その長さを決定する2つの主側面が、タイヤの全周に亘って1又は2以上のトレッドパターンブロック及び/又は1又は2以上の切込みで途切れる。
【0030】
横方向切込み又は横方向切込み部分の場合、その側面は前面及び後面と呼ばれ、それぞれ前縁及び後縁を備え、前縁とは、所与の周方向線に対して、後縁よりも先に接地面に進入する縁である。
【0031】
随意的に乾いた地面での制動を改善できるようにする実施形態では、当該又は各ハイブリッド横方向切込みは面取りを備える。ハイブリッド横方向切込みの面取りは、角面取り又は丸面取りとすることができる。角面取りは、前面及び後面に対して傾斜している平坦面が、ハイブリッド横方向切込みを周方向に区切る前縁又は後縁まで延びることで形成される。丸面取りは、前面又は後面の中へ接線的に合流する湾曲面が延びることで形成される。ハイブリッド横方向切込みの面取りは、面取りで延びた前面又は後面と、ハイブリッド横方向切込みを周方向に区切る前縁又は後縁とに共通する点間の、半径方向距離と、前面又は後面に垂直な方向の距離とにそれぞれ等しい高さと幅とによって特徴付けられる。
【0032】
随意的に濡れた地面での制動を改善できるようにする一部の実施形態では、主周方向切込みの少なくとも1つに面取りが設けられる。周方向切込みの面取りは、角面取り又は丸面取りとすることができる。角面取りは、軸方向前面及び後面に対して傾斜している平坦面が、周方向切込みを軸方向に区切る軸方向前縁又は後縁まで延びることで形成される。丸面取りは、軸方向前面又は後面の中へ接線的に合流する湾曲面が延びることで形成される。周方向切込みの面取りは、面取りで延びた軸方向内面又は外面と、周方向切込みを軸方向に区切る軸方向前縁又は後縁とに共通する点間の半径方向距離と軸方向距離とにそれぞれ等しい高さと幅とによって特徴付けられる。
【0033】
本発明によるタイヤは、タイヤの回転軸と実質的に一致する回転対称軸を中心とする実質的に円環の形状を有する。この回転対称軸は、当業者が従来から使用している3つの方向、軸方向、周方向及び半径方向を規定する。
【0034】
軸方向とは、タイヤの回転対称軸、すなわちタイヤの回転軸と実質的に平行な方向を意味する。
【0035】
周方向とは、タイヤの軸方向に対しても半径に対しても実質的に垂直な(言い換えれば、タイヤの回転軸を中心とする円に接する)方向を意味する。
【0036】
半径方向とは、タイヤの半径に沿う方向、つまり、タイヤの回転軸と交差してその軸に対して実質的に垂直なあらゆる方向を意味する。
【0037】
タイヤの中央面(Mで示す)とは、2つのビードの軸方向中間に位置してクラウン補強体の軸方向中央を通る、タイヤの回転軸に対して垂直な平面を意味する。
【0038】
タイヤの赤道周面(Eと表記)とは、子午断面において、中央面と半径方向とに垂直な、タイヤの赤道を通る平面を意味する。タイヤの赤道は、子午断面(周方向に垂直で半径方向及び軸方向に平行な平面)において、タイヤの回転軸に平行であり、地面と接触するように意図されたトレッドの半径方向最外点と、支持体、例えばリムと接触するように意図されたタイヤの半径方向最内点との間で等距離に位置する軸であり、これら2点間の距離はHに等しい。
【0039】
子午面とは、タイヤの回転軸に平行でそれを含み、周方向に垂直な平面を意味する。
【0040】
「半径方向内側に」及び「半径方向外側に」は、それぞれ、「タイヤの回転軸に近い」及び「タイヤの回転軸から遠い」を意味する。「軸方向内側に」及び「軸方向外側に」は、それぞれ、「タイヤの中央面に近い」及び「タイヤの中央面から遠い」を意味する。
【0041】
ビードとは、タイヤを取付け支持体に、例えばリムを備えたホイールに取り付けることができるように意図されたタイヤの部分を意味する。従って、詳細には、各ビードは、タイヤの取付けを可能にするリムのフランジと接触するように意図される。
【0042】
表現「aとbの間」で示す値の範囲は、aより大からbより小に広がる(つまり、端点a及びbを除外する)値の範囲を表すのに対して、表現「aからbまで」で示す値の範囲は、aからbまで広がる(つまり、厳密な端点a及びbを含む)値の範囲を意味する。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、本タイヤは、欧州タイヤ及びリム技術機構、又は「ETRTO」規格(2019)に準拠して規定された乗用車を対象とする。このようなタイヤは、欧州タイヤ及びリム技術機構又は「ETRTO」規格(2019)に準拠して、断面高さH及び公称断面幅Sによって特徴付けられる子午面に断面を有し、その場合、パーセンテージで表される比率H/Sは、最大で90に等しい、好ましくは最大で80に等しい、より好ましくは最大で70に等しい、少なくとも30に等しい、好ましくは少なくとも40に等しいようになっており、公称断面幅Sは、少なくとも115mmに等しい、好ましくは少なくとも155mmに等しい、より好ましくは少なくとも175mmに等しい、最大で285mmに等しい、好ましくは最大で315mmに等しい、より好ましくは最大で285mmに等しい、さらに好ましくは最大で255mmに等しいようになっている。さらに、タイヤの取付けリムの直径を規定するリムフランジにおける直径Dは、少なくとも12インチに等しく、好ましくは少なくとも16インチに等しく、最大で24インチに等しく、好ましくは最大で20インチに等しい。
【0044】
随意的に及び好ましくは、各主周方向切込みは、トレッドパターン高さの75%以上、より好ましくは90%以上の深さを有する。
【0045】
主周方向切込みが相対的に深くて乗用車用タイヤに適している実施形態では、各主周方向切込みは、4.0mmからトレッドパターン高さまでの範囲、好ましくは5.0mmからトレッドパターン高さまでの範囲、より好ましくは5.5mmからトレッドパターン高さまでの範囲にある深さを有する。
【0046】
主周方向切込みが相対的に幅広の主周方向溝であって乗用車用タイヤに適している実施形態では、各主周方向切込みは、1.0mm以上、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは5.0mmから20.0mmmまでの範囲にある軸方向幅を有する。
【0047】
随意的な実施形態では、第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方が、トレッドパターン高さの厳密に50%未満、好ましくはトレッドパターン高さの30%以下、より好ましくはトレッドパターン高さの10%から30%までの範囲にある深さを有する少なくとも1つの付加的な周方向切込みを備えることも想定できる。
【0048】
一部の実施形態では、幅狭軸方向内側部分と幅広軸方向外側部分は隣接している。隣接とは、幅狭軸方向内側部分と幅広軸方向外側部分の間に他の部分が軸方向に介在しないことを意味する。
【0049】
有利な随意的な実施形態では、ハイブリッド横方向切込みの各主側面は、フィレットでハイブリッド横方向切込みの底面に繋がる。フィレットの存在により、チャンキングの前兆である亀裂の形成が低減される。結果として、チャンキングの発生が低減される。この亀裂形成の低減は、各フィレットの曲率半径が大きいほど効果的である。
【0050】
チャンキングの発生をさらに低減することを可能にする有利だが随意的な実施形態では、幅狭軸方向内側部分の曲線長の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%は、幅広軸方向外側部分の底面が配置される、界面からの平均半径方向距離よりも、厳密に大きい半径方向距離に配置される。
【0051】
界面から十分な半径方向距離に配置された幅狭軸方向内側部分の曲線長が長ければ長いほど、チャンキングのリスクは低減される。しかしながら、幅狭軸方向内側部分の底面は、依然としてチャンキングのリスクを低減したままで、界面に対して局所的に非常に近接することができる。
【0052】
ハイブリッドであろうとなかろうと、横方向切込み又はその一部分の曲線長とは、横方向切込み又はその一部分の両端間で前縁及び後縁から等距離を通る曲線に沿って測定された長さである。
【0053】
チャンキングの発生を可能な限り低減することを可能にする有利であるが随意的な実施形態では、幅狭軸方向内側部分の底面は、幅広軸方向外側部分の底面が配置される、界面からの平均半径方向距離よりも、厳密に大きい平均半径方向距離に配置される。
【0054】
平均半径方向距離とは、界面と所定の部分の底面との間で当該部分に沿って測定された半径方向距離の平均である。
【0055】
従って、幅狭軸方向内側部分の底面が局所的に幅広軸方向外側部分よりも界面に近接する一部の実施形態では、チャンキングのリスクが依然として低減される。
【0056】
随意的であるが好ましい実施形態では、幅狭軸方向内側部分の底面と界面との平均半径方向距離は、0.3mmから1.0mmまで、好ましくは0.4mmから0.9mmまでの範囲にある。
【0057】
随意的であるが好ましい実施形態では、幅広軸方向外側部分の底面と界面との平均半径方向距離は、0.5mmから1.5mmまで、好ましくは0.6mmから1.2mmまでの範囲にある。
【0058】
随意的な実施形態では、幅狭軸方向内側部分と半径方向に並んで配置された界面の部分の少なくとも一部は、幅広軸方向内側部分と半径方向に並んで配置された界面の部分の少なくとも一部の半径方向外側に配置される。
【0059】
さらにより好ましくは、幅狭軸方向内側部分と半径方向に並んで配置された界面の部分は、幅広軸方向内側部分と半径方向に並んで配置された界面の部分の半径方向外側に配置される。
【0060】
従って、チャンキング発生のリスクを増大させる懸念なく、当該又は各第1及び第2の主周方向切込みの近傍で半径方向により高く盛り上がる支持層を有利に使用することができる。このような支持層により、タイヤの性能、例えば国際出願PCT/FR2021/050698号の下で提出された出願に記載されるような濡れた地面での制動性能、又は転がり抵抗性能を最適化することが可能になる。
【0061】
幅狭軸方向内側部分と並んで半径方向に配置された界面の部分は、タイヤの回転軸に垂直でそれぞれに幅狭軸方向内側部分の軸方向端を通る2つの周方向平面で規定される、軸方向端によって区切られた界面の部分である。同様に、幅広軸方向外側部分と並んで半径方向に配置された界面の部分は、タイヤの回転軸に垂直でそれぞれに幅広軸方向外側部分の軸方向端を通る2つの周方向平面で規定される、軸方向端によって区切られた界面の部分である。
【0062】
最適にしかし随意的に、トレッドは、各第1及び第2の軸方向側部に部分的に作られたハイブリッド横方向切込みを備える。
【0063】
随意的に及び有利には、第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方に少なくとも部分的に作られた横方向切込みの少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%が、ハイブリッド横方向切込みである。
【0064】
従って、ハイブリッド横方向切込み以外の横方向切込みの数を減らすことで、特にハイブリッド横方向切込み以外の横方向切込みがサイプである場合に、チャンキング発生のリスクが低減される。ハイブリッド横方向切込み以外の横方向切込みが溝である場合、タイヤの転がり抵抗も低減される。
【0065】
好ましいが随意的な実施形態では、幅狭軸方向内側部分は、第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方に作られた各ハイブリッド横方向切込みの部分の曲線長の少なくとも20%に等しく、最大で75%に等しい曲線長を有する。
【0066】
幅狭軸方向内側部分の曲線長が大きいほど、転がり抵抗はより低減される。幅狭軸方向内側部分の曲線長が大きすぎると、幅広軸方向外側部分の長さが不足して最適な排水ができなくなる。
【0067】
トレッドは、タイヤの走行時にトレッド面を介して地面と接触するように意図されているため、この曲線長は結果としてトレッドの関連部分で決定され、従ってトレッド面に、従って第1及び第2の軸方向側部に限定される。
【0068】
随意的に、転がり抵抗を最適化するために、切込みの底面における幅狭軸方向内側部分の幅は、0.2mmから0.5mmまでの範囲にある。
【0069】
乗用車用タイヤに適した有利な実施形態では、幅狭軸方向内側部分は、2.0mmから5.5mmまでの範囲、好ましくは3.0mmから5.0mmまでの範囲にある深さを有する。
【0070】
随意的に、排水を最適化するために、切込みの底面における幅広軸方向外側部分の幅は、1.0mmから5.0mmまで、好ましくは2.0mmから4.5mmまでの範囲にある。
【0071】
乗用車用タイヤに適した有利な実施形態では、幅広軸方向外側部分は、2.0mmから5.5mmまでの範囲、好ましくは3.0mmから5.0mmまでの範囲にある深さを有する。
【0072】
タイヤのトレッドパターンから発生する騒音を低減できるようにする随意的な実施形態では、各ハイブリッド横方向切込みは、
-第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方に作られ、軸方向と15°以上、好ましくは20°以上の平均角を成す、いわゆる傾斜軸方向内側部分であって、第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方におけるハイブリッド横方向切込みの軸方向最内部分である傾斜軸方向内側部分と、
-第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方に作られ、軸方向とは傾斜軸方向内側部分の平均角よりも厳密に小さい平均角を成し、傾斜軸方向内側部分の軸方向外側に配置された、いわゆる直線状軸方向外側部分であって、第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方におけるハイブリッド横方向切込みの軸方向最外部分である直線状軸方向外側部分と、
を備える。
【0073】
ハイブリッド横方向切込みの軸方向内側部分に対応するトレッド面の部分において、接地面は真っ直ぐである。逆に、ハイブリッド横方向切込みの軸方向外側部分に対応するトレッド面の部分では、タイヤの湾曲のために接地面は丸みを帯びている。このように、傾斜軸方向内側部分の前縁は、傾斜軸方向内側部分における比較的大きな角度と接地面の真直性により、地面と徐々に、すなわち比較的長い時間間隔に亘って接触し、これにより、軸方向と実質的にゼロの平均角を成し、その前縁全体が地面と同時に接触する切込みに比べて、騒音が制限される。同様に、直線状軸方向外側部分における小さな角度と接地面の丸みのため、前縁も徐々に地面と接触するようになり、これも騒音の抑制に寄与する。
【0074】
特定の部分の平均角は、当該部分の2つの端点間を延びる直線を用いて決定され、2つの端点は、各部分の両端に位置し、当該部分の各端の前縁及び後縁から等距離にある。
【0075】
一部の実施形態では、傾斜軸方向内側部分と直線状軸方向外側部分は隣接している。隣接とは、傾斜軸方向内側部分と直線状軸方向外側部分の間に他の部分が軸方向に介在しないことを意味する。
【0076】
一部の随意的な実施形態では、直線状軸方向外側部分の平均角は、厳密に25°未満、好ましくは20°以下、より好ましくは15°以下である。
【0077】
随意的、幅狭軸方向内側部分は、傾斜軸方向内側部分の少なくとも一部を含み、幅広軸方向外側部分は、直線状軸方向外側部分の少なくとも一部を含む。
【0078】
傾斜軸方向内側部分及び直線状軸方向外側部分の第1の構成では、幅狭軸方向内側部分は、
-傾斜軸方向内側部分の全体と、
-直線状軸方向外側部分の第1部分と、
を含み、幅広軸方向外側部分は、
-直線状軸方向外側部分の第2部分、
を含む。
【0079】
傾斜軸方向内側部分及び直線状軸方向外側部分の第2の構成では、幅狭軸方向内側部分は、
-傾斜軸方向内側部分の第1部分
を含み、幅広軸方向外側部分は、
-傾斜軸方向内側部分の第2部分と、
-直線状軸方向外側部分の全体と、
を含む。
【0080】
傾斜軸方向内側部分及び直線状軸方向外側部分の第3の構成では、幅狭軸方向内側部分は傾斜軸方向内側部分で構成され、幅広軸方向外側部分は直線状軸方向外側部分で構成される。
【0081】
随意的な実施形態では、幅狭軸方向内側部分は、それに隣接する第1及び第2の軸方向外側主周方向切込みの一方に現れないことを想定することができる。これらの実施形態では、ハイブリッド横方向切込みはブラインドであると言われる。
【0082】
他の随意的な好ましい実施形態では、幅狭軸方向内側部分は、それに隣接する第1及び第2の軸方向外側主周方向切込みの一方に現れる。従って、トレッドパターンの動きやすさが、ブラインド型ハイブリッド横方向切込みを備えたタイヤと比較して促進され、タイヤの平坦化、ひいては転がり抵抗が改善される。
【0083】
好ましい随意的な実施形態では、各ハイブリッド横方向切込みは、第1及び第2の軸方向側部の少なくとも一方の軸方向外側に作られ、幅広軸方向外側部分と連通する軸方向終端部分を備える。
【0084】
これにより、地面と接触するタイヤのトレッドの表面を表すトレッド面からの排水が促進される。
【0085】
タイヤの空力特性を有利に改善できるようにする随意的な実施形態では、
-ハイブリッド横方向切込みの軸方向終端部分の底面と、その軸方向外側にあるタイヤの外面との接続線の第1の点に対する第1の接線と、
-接続線の第1の点から軸方向内方へ2.5mmの距離に位置する、ハイブリッド横方向切込みの軸方向終端部分の底面の第2の点に対する第2の接線と、
の成す角度は、接続線で繋がれたハイブリッド横方向切込みの前縁及び後縁から等距離に位置する子午断面において、20°以下、好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下である。
【0086】
タイヤの使用と関係するエネルギ消費は、タイヤが発生させる転がり抵抗だけでなく、タイヤの空力抵抗にも起因する。上記で説明した、チャンキングと関係する本発明の態様に加えて、空力抵抗を低減できる特徴の中で軸方向終端部分の配置が関連するということも、本発明者らは理解している。本発明者らは、随意的に、これら横方向切込みに関する軸方向終端部分の底面の勾配が、横方向切込みの軸方向外側に配置されたタイヤ外面の勾配と大きく異なるほど、横方向切込みがタイヤ表面の空気の流れを大きく乱し、空力抵抗が大きくなることを見出した。勾配が大きく異なると、各横方向切込みは、周方向への空気の流れに対して突然の急激な凹みを形成する。逆に、これら横方向切込みの軸方向終端部分の底面の勾配が、横方向切込みの軸方向外側に配置されたタイヤ外面の勾配と類似しているほど、横方向切込みはタイヤ表面の空気の流れを乱すことが少なくなり、空力抵抗が小さくなる。比較的類似した勾配では、各横方向切込みは、外面からの滑らかで緩やかな移行部を有する凹みを形成し、周方向の空気の流れをそれほど乱さない。
【0087】
従って、接続線上に位置する第1の点に対する第1の接線は、上記に規定した子午面におけるタイヤの外面の勾配を特徴付ける。切込みの軸方向終端部分の底面に位置する第2の点に対する第2の接線は、上記に規定した子午面における横方向切込みの軸方向終端部分の底面の勾配を特徴付ける。
【0088】
第1の点から軸方向2.5mmに位置する第2の点を考慮すると、勾配は、接続線から比較的に大きな距離で、すなわち、横方向切込みの深さが有意になり始める位置で、従って空気の流れの乱れが空力抵抗に最も大きな影響を及ぼす位置で、比較的類似していることが保証される。
【0089】
さらに、第1の点から軸方向2.5mmに位置する第2の点を考慮することで、横方向切込みの軸方向終端部分の底面が接続線の近傍で湾曲の変化を有する実施形態と同様に、タイヤの外面と同じ方向に向いた湾曲を有する実施形態を検討することが可能になる。このような実施形態は、特に、横方向切込みの底面とタイヤの外面との接続が、フィレット又は丸みを帯びた区画で形成される場合に想定することができる。
【0090】
軸方向終端部分により、地面と接触するタイヤのトレッドの表面を表すトレッド面からの排水が可能となる。従って、軸方向終端部分は、濡れた地面で良好なグリップ性能を得るために不可欠である。
【0091】
排水を促進できるようにする随意的な有利な実施形態では、接続線に沿って測定した前縁と後縁との距離は、0.7mm以上であり、好ましくは0.7mmから6.0mmまでの範囲にあり、より好ましくは3.0mmから5.0mmまでの範囲にある。
【0092】
従来の方法では、タイヤは、クラウンと、2つのサイドウォールと、2つのビードとを備え、各サイドウォールが各ビードをクラウンに繋いでいる。また従来の方法では、クラウンは、トレッドと、トレッドの半径方向内側に配置されたクラウン補強体とを備える。タイヤはまた、各ビードに固定され、各サイドウォール内を半径方向に、並びにクラウン内でクラウン補強体の半径方向内側を軸方向に延びるカーカス補強体を備える。
【0093】
従来の方法では、クラウン補強体は、補強要素を含む少なくとも1つのクラウン層を備える。これらの補強要素は、布地又は金属の繊維状要素であることが好ましい。
【0094】
ETRTOで規定されるラジアルタイヤとして知られるタイヤの性能態様を獲得できるようにする実施形態では、カーカス補強体は、少なくとも1つのカーカス層を備え、当該又は各カーカス層はカーカス繊維状補強要素を備え、各カーカス繊維状補強要素は、タイヤの周方向と絶対値で80°から90°までの範囲にある角度を成す主方向に実質的に沿って延びる。
【0095】
本発明は、単に非限定的な例として図面に関連して与えられる、以下の説明を読めばより良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】本発明によるタイヤのトレッドの上面図である。
図2図1のタイヤに関する、タイヤの回転軸に平行な子午断面図である。
図3】クラウン内及び下の繊維状補強要素の配置を示す、図1のタイヤの破断図である。
図4図1のタイヤに関するハイブリッド横方向切込みの上面図である。
図5図4のハイブリッド横方向切込みの側面図である。
図6図4及び5のハイブリッド横方向切込みに関する、断面VI-VI’の図である。
図7図4及び5のハイブリッド横方向切込みに関する、断面VII-VIの図である。
図8図4及び5のハイブリッド横方向切込みに関する、断面VIII-VIII’の図である。
図9図4及び5のハイブリッド横方向切込みに関する、断面IX-IX’の図である。
図10図1のタイヤの別のハイブリッド横方向切込みに関する図4と同様の図である。
図11】タイヤの回転軸に平行な子午断面における、図1のタイヤのハイブリッド横方向切込みがタイヤの外面と繋がる点の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
タイヤに関する図にはタイヤの通常の軸方向(Y)、半径方向(Z)及び周方向(X)にそれぞれ対応する基準系X、Y、Zが示されている。
【0098】
以下及び上記の説明において、特に明記しない限り、無負荷で非膨張のタイヤに関する、又は子午面内のタイヤのセクションに関する測定値が採用される。
【0099】
図1~3は、本発明による、全体が符号10で表記されるタイヤを示す。タイヤ10は、軸方向Yと実質的に平行な回転対称軸の周りに実質的に円環形状を有する。タイヤ10は、乗用車向けであり、寸法235/55R19を有する。様々な図において、タイヤ10は新品として、つまりまだ走行していないものとして描いてある。
【0100】
図2を参照すると、タイヤ10はクラウン12を備え、クラウン12は、走行時に地面と接触するように意図されたトレッド14と、クラウン12内を周方向Xに延びるクラウン補強体16とを備える。タイヤ10はまた、膨張ガスに対して気密な層18を備え、この気密層は、ひとたびタイヤ10が取付け支持体、例えばリムに取り付けられると、タイヤ10の取付け支持体で閉じられた内部空洞を区切るように意図されている。
【0101】
クラウン補強体16は、ワーキング補強体20とフープ補強体22とを備える。ワーキング補強体20は、少なくとも1つのワーキング層を備え、この場合、2つのワーキング層を備え、半径方向外側ワーキング層26と、その半径方向内側に配置された半径方向内側ワーキング層24とを備える。
【0102】
フープ補強体22は、少なくとも1つのフーピング層を備え、この場合、1つのフーピング層28を備える。
【0103】
クラウン補強体16は、トレッド14で半径方向に覆い被されている。この場合、フープ補強体22、この事例ではフーピング層28は、ワーキング補強体20の半径方向外側に配置され、従ってワーキング補強体20とトレッド14との半径方向間に挿入される。
【0104】
タイヤ10は、クラウン12を半径方向内方へ延長する2つのサイドウォール30を備える。タイヤ10はまた、サイドウォール30の半径方向内側に2つのビード32を有する。各サイドウォール30は、各ビード32をクラウン12に連結させる。
【0105】
タイヤ10は、各ビード32に固定された、この事例ではビードワイヤ33の周りに巻かれたカーカス補強体34を備える。カーカス補強体34は、各サイドウォール30において半径方向に、クラウン12において軸方向に、クラウン補強体16の半径方向内側に延びる。クラウン補強体16は、トレッド14とカーカス補強体34との半径方向間に配置される。カーカス補強体34は、少なくとも1つのカーカス層36を備える。
【0106】
図3を参照すると、各ワーキング層24、26、フーピング層28及びカーカス層36は、対応する層の1又は2以上の繊維状補強要素が埋め込まれたエラストマ母材を含む。
【0107】
フープ補強体22、この事例ではフーピング層28は、1又は2以上のフーピング繊維状補強要素280を備え、フーピング繊維状補強要素280は、タイヤ10の周方向Xと、絶対値で10°以下、好ましくは7°以下、より好ましくは5°以下である角度AFを成す主方向D0へ、周方向に螺旋状に巻き付けられる。この場合、AF=-5°である。
【0108】
半径方向内側ワーキング層24と半径方向外側ワーキング層26は各々、それぞれに反対向きの角度AT1及びAT2を成す主方向に延びるワーキング繊維状補強要素240、260を備え、それらの角度は、タイヤ10の周方向Xと、絶対値で、厳密には10°より大きい、好ましくは15°から50°までの範囲、より好ましくは15°から39°までの範囲にある。この場合、AT1=-26°であり、AT2=+26°である。
【0109】
カーカス層36は、タイヤ10の周方向Xと、絶対値で60°以上、好ましくは80°から90°までの範囲にあり、この場合、AC=+90°である角度ACを成す主方向D3に延びるカーカス繊維状補強要素360を備える。
【0110】
各フーピング繊維状補強要素は従来、2本の多繊維撚糸を備え、各多繊維撚糸は、脂肪族ポリアミド、この事例ではナイロンの単繊維の紡績糸で構成され、番手は140texに等しく、これら2つの多繊維撚糸は、1メートル当たり250巻きで螺旋状に個々に撚られ、次いで反対方向に1メートル当たり250巻きで螺旋状に撚り合わされる。これら2つの多繊維撚糸は、互いに螺旋状に巻き付けられる。変形形態として、脂肪族ポリアミド、この事例ではナイロンの単繊維の紡績糸で構成されて番手が140texに等しい1つの多繊維撚糸と、芳香族ポリアミド、この事例ではアラミドの単繊維の紡績糸で構成されて番手が167texに等しい1つの多繊維撚糸と、を備えるフーピング繊維状補強要素を利用することも可能であり、これら2つの多繊維撚糸は、一方向に1メートル当たり290巻きで螺旋状に個々に撚られ、次いで反対方向に1メートル当たり290巻きで螺旋状に撚り合わされる。これら2つの多繊維撚糸は、互いに螺旋状に巻き付けられる。この変形形態は、AT1=-29°とAT2=+29°を与えることになる。
【0111】
各ワーキング繊維状補強要素240、260は、2本の鋼製単繊維を14mmのピッチで螺旋状に巻いた集合体であり、各鋼製単繊維が0.30mmに等しい直径を有する。変形形態として、0.23mmに等しい直径を有し、第1方向、例えばZ方向に12.5mmのピッチで螺旋状に互いに巻かれた2本の単繊維の内層と、第1方向とは反対の第2方向、例えばS方向に12.5mmのピッチで内層の周りに螺旋状に巻き付けられた4本の単繊維の外層とを備えた、6本の鋼製単繊維の集合体を利用することも可能である。別の変形形態では、各ワーキング繊維状補強要素は、0.30mmに等しい直径を有する1本の鋼製単繊維で構成される。より一般的には、鋼製単繊維は、0.25mmから0.32mmまでの範囲にある直径を有する。
【0112】
各カーカス繊維状補強要素360は従来、2本の多繊維撚糸を備えており、各多繊維撚糸がポリエステルの、ここではPETの単繊維の紡績糸で構成され、これら2本の多繊維撚糸は、個々に一方向に1m当たり240巻きで螺旋状に撚られた後で、反対方向に1m当たり240巻きで螺旋状に撚り合わされる。これら多繊維撚糸の各々は、220texに等しい番手を有する。他の変形形態では、144texに等しい番手と1m当たり420巻きに等しい撚糸、或いは334texに等しい番手と1m当たり270巻きに等しい撚糸を利用することができる。
【0113】
図1及び2を参照すると、トレッド14はトレッド面38を備え、それによってトレッド14が地面と接触する。トレッド面38は、タイヤ10が走行する時に地面と接触するように意図される。トレッド面は、中央面Mの両側に配置された各点Nを通る第1及び第2の軸方向縁41、42によって軸方向に区切られ、その場合、この点を通るトレッド面38に対する接線Tと、軸方向Yに平行な直線Rとの角度が30°に等しい。
【0114】
トレッド14は、軸方向中央部P0と、タイヤ10の中央面Mに関して軸方向中央部P0の軸方向両側で軸方向中央部P0の軸方向外側に配置された第1及び第2の軸方向側部P1、P2とを備える。
【0115】
図示の実施形態に特有のものではないが、軸方向中央部P0は、新品時のタイヤ10に関するトレッド面38の軸方向幅Lの50%以上、好ましくは60%以上であり、80%以下、好ましくは70%以下である軸方向幅L0を有する。各第1及び第2の軸方向側部P1、P2は、新品時のタイヤ10に関するトレッド面38の軸方向幅Lの25%以下、好ましくは20%以下であり、5%以上、好ましくは10%以上である軸方向幅L1、L2を有する。中央部P0の軸方向幅L0と、各第1及び第2の軸方向側部P1、P2の軸方向幅L1、L2との比は、3.0以上、好ましくは3.0から5.0までの範囲、より好ましくは4.0から4.5までの範囲にある。
【0116】
トレッド14は、N>1の主周方向切込み、この事例ではN個の主周方向溝を備え、それぞれ符号52、54、56、58で表記される第1、第2、第3及び第4の主周方向切込みを備えている。第1及び第2の主周方向切込み52、54は、タイヤ10の中央面Mの軸方向両側に配置され、トレッド14の軸方向最外主周方向切込みである。
【0117】
第1の軸方向側部P1と第2の軸方向側部P2はそれぞれ、第1の軸方向外側主周方向切込み及び第2の軸方向外側主周方向切込みの軸方向外側に配置される。第1の軸方向側部P1は、トレッド面38の第1の軸方向縁41から、第1の主周方向切込み52まで軸方向に延びる。第2の軸方向側部P1は、トレッド面38の第2の軸方向縁42から、第2の主周方向切込み54まで軸方向に延びる。
【0118】
各主周方向切込み52から58には、丸みを帯びた面取りが設けられる。各主周方向切込み52から58は、4.0mmからトレッドパターン高さHsまでの範囲、好ましくは5.0mmからトレッドパターン高さHsまでの範囲、より好ましくは5.5mmからトレッドパターン高さHsまでの範囲にある深さHa1、Ha2を有する。各深さHa1、Ha2は、トレッドパターン高さHsの50%以上である。この事例では、軸方向中央部P0の各主周方向切込み52、54については、Ha2=6.5mm、各主周方向切込み56、58については、Ha2=6.5mmである。従って、各主周方向切込み52、54、56、58は、有利には、Ha1/Hs≧75%、Ha2/Hs≧75%、より好ましくはHa1/Hs≧90%、Ha2/Hs≧90%となるような深さを有する。
【0119】
各主周方向切込み52から58はそれぞれ、1.0mm以上、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは5.0mmから20.0mmまでの範囲にある軸方向幅La1、La2、La3、La4を有する。この事例では、La1=15.0mm、La2=13.0mm、La3=10.30mm、及びLa4=7.0mmである。
【0120】
軸方向中央部P0は中央リブを備え、この事例では、それぞれ符号62、64、66で表記される第1、第2及び第3の中央リブを備える。各中央リブ62、64、66は、隣接する2つの主周方向切込み52から58の軸方向間に配置され、2つの隣接する主周方向切込み52から58によって軸方向に区切られる。
【0121】
各中央リブ62、64、66は、1.0mm以下、より好ましくは厳密に0.6mm以下、この事例では0.4mmに等しい幅を有する横方向切込み74、75、76を備える。各横方向切込み74、75、76は、3.5mmに等しい深さHbを有する。
【0122】
各第1及び第2の軸方向側部P1、P2は、それぞれ符号68、70で表記される第1及び第2の側方リブを備え、この事例では、それぞれ各第1及び第2の側方リブ68、70で構成されている。
【0123】
トレッド14は、第1及び第2の軸方向側部P1、P2の少なくとも一方に少なくとも部分的に作られた、この事例では各第1及び第2の軸方向側部P1、P2に少なくとも部分的に作られた横方向切込み77、78を備える。これらの横方向切込み77、78は、上述の理由からハイブリッドと呼ばれる。第1及び第2の軸方向側部P1、P2の少なくとも一方に少なくとも部分的に作られた、この事例では各第1及び第2の軸方向側部P1、P2に少なくとも部分的に作られた横方向切込みの少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、この事例では100%が、ハイブリッド横方向切込み77、78である。
【0124】
ここで、図4から9を参照しながらハイブリッド横方向切込み78について説明する。タイヤをホイールに取り付けた場合、これらはホイールの外側、従って車両の外側に位置するハイブリッド横方向切込みである。
【0125】
各ハイブリッド横方向切込み78は面取り79を備え、前縁85と後縁87によって周方向に区切られる。各ハイブリッド横方向切込み78は、いわゆる幅狭軸方向内側部分80と、いわゆる幅広軸方向外側部分82と、第2の軸方向側部P2の軸方向外側に作られ、幅広軸方向外側部82と連通する軸方向終端部分83とを備える。各ハイブリッド横方向切込み78は、第2の軸方向側部P2に作られた各ハイブリッド横方向切込みの曲線長Lotの部分を有する。この事例では、Lot=45mmである。部分80、82及び83は隣接している。
【0126】
幅狭軸方向内側部分80は、第2の軸方向側部P2におけるハイブリッド横方向切込み78の軸方向最内部分である。幅狭軸方向内側部分80は、軸方向内端84から軸方向外端86まで延びる。幅狭軸方向内側部分80は、それに隣接する主周方向切込み54の中に現れる。幅狭軸方向内側部分は、曲線長さLotの少なくとも20%に等しく、最大で75%に等しい曲線長Loiを有する。この事例では、Loi=23mm、すなわち曲線長Lotの51%である。
【0127】
幅広軸方向外側部分82は、幅狭軸方向内側部分80と連通し、幅狭軸方向内側部分80の軸方向外側に配置される。幅広軸方向外側部分82は、第2の軸方向側部P2におけるハイブリッド横方向切込み78の軸方向最外部分である。幅広軸方向外側部分82は、軸方向内端88(この事例では、軸方向外端86と一致する)から軸方向外端90まで延びる。幅広軸方向外側部分は、曲線長Loeを有する。この事例では、Loe=22mmである。
【0128】
軸方向終端部分83は、軸方向内端91(この事例では、軸方向外端90と一致する)から、軸方向外端まで延びる。この軸方向外側93は、空力的横方向切込み78の軸方向終端部分83の底面94と、その軸方向外側にあるタイヤ10の外面96との接続線92によって具現化される。
【0129】
図4では、明瞭にするため、ハイブリッド横方向切込み78の両端又は各部分80、82の間で前縁85及び後縁87から等距離を通る曲線に沿って測定された長さとして曲線長を示していないことに留意されたい。しかしながら、上述したように、それらは、ハイブリッド横方向切込み78の両端又は各部分80、82の間で前縁85及び後縁87から等距離を通る曲線に沿って測定する必要がある。
【0130】
図6から9に示すように、幅狭軸方向内側部分80は、ハイブリッド横方向切込みの底面94を有し、切込みの底面94において幅Laiが0.2mmから0.6mmまでの範囲、好ましくは0.2mmから0.5mmまでの範囲にあり、この事例ではLai=0.4mmである。幅狭軸方向内側部分80は、2.0mmから5.5mmまでの範囲、好ましくは3.0mmから5.0mmの範囲にある深さを有し、この事例では4.4mmに等しい深さを有する。
【0131】
幅広軸方向外側部分は、切込みの底面94において、0.7mmから5.0mmまでの範囲、好ましくは1.0mmから5.0mmまでの範囲、より好ましくは2.0mmから4.5mmまでの範囲にある幅Laeを有する。上記で規定したように、幅Laeは、切込みの底面94において、幅広軸方向外側部分82の2つの主側面97、98間の最大距離であり、従ってこの事例では端部90で測定される。図1に見られるように、幅広軸方向外側部分82は、うなり音(whining noise)を抑えるために、ランダムに分布させた異なる幅Laeを有する。この事例では、使用された異なる幅Laeは、3.1mm、3.7mm、及び4.1mmに等しい。幅広軸方向外側部分82は、2.0mmから5.5mmまでの範囲、好ましくは3.0mmから5.0mmまでの範囲にある深さを有し、この例では4.6mmに等しい深さを有する。
【0132】
図4、5、8及び9に示すように、幅広軸方向外側部分は、フィレット99でハイブリッド横方向切込み78の底面94に繋がる2つの主要な側面、前面97及び後面98を有する。
【0133】
軸方向終端部分83内では、接続線92に沿って測定した前縁85と後縁87との距離drは、0.7mm以上であり、好ましくは0.7mmから6.0mmまでの範囲にあり、より好ましくは3.0mmから5.0mmまでの範囲にある。この事例では、drの異なる値は3.4mm、3.6mm及び4.7mmに等しい。
【0134】
図4及び5に戻ると、各ハイブリッド横方向切込み78は、第2の軸方向側部P2に作られたいわゆる傾斜軸方向内側部分100と、傾斜軸方向内側部分100の軸方向外側に配置され、同じく第2の軸方向側部P2に作られたいわゆる直線状軸方向外側部分102とを備える。部分100と102は隣接している。
【0135】
傾斜軸方向内側部分100は、軸方向Yと15°以上、好ましくは20°以上の平均角Aを成し、この事例ではA=23°である。傾斜軸方向内側部分100は、第2の軸方向側部P2におけるハイブリッド横方向切込み78の軸方向最内部分である。
【0136】
直線状軸方向外側部分102は、軸方向Yと、傾斜軸方向内側部分100の平均角よりも厳密に小さい平均角Bを成す。直線状軸方向外側部分102の平均角は、厳密に25°以下、好ましくは20°以下、より好ましくは15°以下であり、この事例では8°に等しい。直線状軸方向外側部分102は、第2の軸方向側部P2におけるハイブリッド横方向切込み78の軸方向最外部分である。
【0137】
この場合、幅狭軸方向内側部分80は、傾斜軸方向内側部分100の少なくとも一部を含み、この事例では、部分80、82の共通端86、88までの直線状軸方向外側部分102の第1部分と共に、傾斜軸方向内側部分100全体を含む。幅広軸方向外側部分82は、端部86、88からトレッド面38の第2の軸方向縁42までの直線状軸方向外側部分の第2部分を含む。
【0138】
図10は、ハイブリッド横方向切込み77の1つを示す。簡潔にするために、図10は、ハイブリッド横方向切込み78を説明する図4に示したものと同様の要素に対して同一の符号を使用している。
【0139】
ハイブリッド横方向切込み78とは異なり、各ハイブリッド横方向切込み77は、Lot=38mm、Loi=14mm、Loe=24mmとなっている。さらに、角度A及びBは、A=25°、B=8°となっている。
【0140】
図2に戻ると、タイヤ10は、トレッド層110と、トレッド層110の支持層112とを備える。支持層112はトレッド層110の半径方向内側に配置される。トレッド層110と支持層112は、界面114で隣接している。支持層112は、温度23°、周波数10HzでASTM D-5992-96に準拠して測定した場合に、動的損失tanDMAX23が0.095に等しいことを特徴とする非常に低い転がり抵抗を有する。
【0141】
さらに図2の子午断面において、タイヤ10のトレッド面38に平行で、規制摩耗インジケータ120の半径方向外面118を通過する規制摩耗軌跡116が規定される。図示の実施形態では、幅狭軸方向内側部分80と半径方向に並んで配置された界面114の部分の少なくとも一部122は、幅広軸方向内側部分82と半径方向に並んで配置された界面114の部分の少なくとも一部124の半径方向外側に配置されている。
【0142】
ハイブリッド横方向切込み77の底面94も示してある。各ハイブリッド横方向切込み77、78の底面94全体は、トレッド層110と支持層112との界面114の半径方向外側に配置される。さらに、幅狭軸方向内側部分80の底面94の少なくとも一部126は、幅広軸方向外側部分82の底面94の少なくとも一部128が配置される、界面114からの半径方向距離deよりも、厳密に大きい半径方向距離diに配置される。
【0143】
図示の実施形態では、幅狭軸方向内側部分80の曲線長Loiの少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、この事例では100%が、幅広軸方向外側部分82の底面94が配置される、界面114からの平均半径方向距離demよりも、厳密に大きい半径方向距離diに配置される。
【0144】
より具体的には、幅狭軸方向内側部分80の底面94は、幅広軸方向外側部分82の底面94が配置される、界面114からの平均半径方向距離demよりも、厳密に大きい平均半径方向距離dimに配置される。幅狭軸方向内側部分80の底面と界面114との平均半径方向距離dimは、0.3mmから1.0mmまで、好ましくは0.4mmから0.9mmまでの範囲にある。幅広軸方向外側部分82の底面94と界面114との平均半径方向距離demは、0.5mmから1.5mmまで、好ましくは0.6mmから1.2mmまでの範囲にある。この事例では、dim=0.5mm、dem=1.0mmである。
【0145】
図11は、接続線92で結ばれた前縁85及び後縁87から等距離に位置する図10の子午断面XII-XII’における図を示す。軸方向終端部分83の底面94は、底面94と接続線92との合流点を形成するフィレット130を備える。図11は、第1の点P3に対する第1の接線T3と、第2の点P4に対する第2の接線T4とを示す。第1の点P3は平面XII-XII’内の点であり、接続線92の点である。第2の点P4は、接続線92の第1の点P3から軸方向内方へ2.5mmの距離に位置する、ハイブリッド横方向切込み77の軸方向終端部分83の底面94の点である。図11では、この2.5mmの距離は、直径5.0mmの破線円で示してあり、その中心が第1の点P3である。第1の接線T3と第2の接線T4との成す角度Kは20°以下であり、好ましくは15°以下であり、この事例では11°に等しい。他のさらに有利な実施形態では、角度Kは10°以下とすることができる。
【0146】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0147】
10 タイヤ
12 クラウン
14 トレッド
16 クラウン補強体
18 気密層
20 ワーキング補強体
22 フープ補強体
24 半径方向内側ワーキング層
26 半径方向外側ワーキング層
28 フーピング層
30 サイドウォール
32 ビード
33 ビードワイヤ
34 カーカス補強体
36 カーカス層
38 トレッド面
41 第1の軸方向縁
52 第1の主周方向切込み
56 第3に主周方向切込み
62 第1の中央リブ
64 第2の中央リブ
68 第1の側方リブ
80 幅狭軸方向内側部分
82 幅広軸方向外側部分
94 底面
110 トレッド層
112 支持層
114 界面
116 規制摩耗軌跡
118 規制摩耗インジケータの半径方向外面
120 規制摩耗インジケータ
122 界面部分の少なくとも一部
124 界面部分の少なくとも一部
126 幅狭軸方向内側部分の底面の少なくとも一部
128 幅広軸方向外側部分の底面の少なくとも一部
de 界面からの半径方向距離
di 界面からの半径方向距離
H タイヤの断面高さ
Ha1 主周方向切込みの深さ
Ha2 主周方向切込みの深さ
Hs トレッドパターン高さ
L トレッド面の軸方向幅
L0 軸方向中央部の軸方向幅
L1 第1の軸方向側部の軸方向幅
L2 第2の軸方向側部の軸方向幅
La1 主周方向切込みの軸方向幅
La2 主周方向切込みの軸方向幅
M タイヤの中央面
N トレッド面の軸方向縁を規定する点
P1 第1の軸方向側部
R 点Nを通る軸方向に平行な直線
T 点Nを通るトレッド面に対する接線
X タイヤの周方向
Y タイヤの軸方向
Z タイヤの半径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6-7】
図8-9】
図10
図11
【国際調査報告】