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特表2024-524544HIF-1αレベル増加により体内酸素化調節を可能にする乳酸菌の属種、株、および組成物
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  • 特表-HIF-1αレベル増加により体内酸素化調節を可能にする乳酸菌の属種、株、および組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】HIF-1αレベル増加により体内酸素化調節を可能にする乳酸菌の属種、株、および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240628BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20240628BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20240628BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20240628BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240628BHJP
   C12R 1/23 20060101ALN20240628BHJP
   C12R 1/46 20060101ALN20240628BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20240628BHJP
   C12R 1/24 20060101ALN20240628BHJP
   C12R 1/25 20060101ALN20240628BHJP
   C12R 1/225 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61P3/02
A61P3/00
A61P39/06
A61P27/02
A61P25/28
A61P11/00
A61P9/10
A61P9/00
A61P13/12
A61P15/00
A61P43/00 105
A61P21/00
A61P25/00
A61K35/747
A61K35/744
A61K35/745
A61P43/00 121
C12N1/20 Z
C12Q1/02
C12R1:23
C12R1:46
C12R1:01
C12R1:24
C12R1:25
C12R1:225
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024500214
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2022055644
(87)【国際公開番号】W WO2023281335
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021000018152
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522404085
【氏名又は名称】デ シモーネ,クラウディオ
【氏名又は名称原語表記】DE SIMONE, Claudio
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】デ シモーネ,クラウディオ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA08
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ96
4B063QR58
4B063QR77
4B063QS03
4B063QS28
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA21X
4B065AA30X
4B065AA49X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087BC58
4C087BC59
4C087BC61
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA13
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA44
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA15
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA81
4C087ZA94
4C087ZB21
4C087ZC21
4C087ZC51
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、例えば、身体的労作、倦怠感、慢性疲労、酸素欠乏、地球大気の限界を超えた旅行、眼球の酸化ストレス、およびスキューバダイビングなどの低酸素誘導状態における酸素正常状態の維持または増強のための、または神経変性疾患、呼吸不全に伴う肺の影響、新生児低酸素虚血、心筋虚血、代謝障害、慢性心疾患および腎疾患、子癇前症や子宮内膜症などの生殖障害、姿勢振戦および運動性振戦の増悪、脳低酸素症などの低酸素誘導状態における低酸素症の処置のための、低酸素誘導因子HIF-1αの細胞レベルを増加可能な乳酸菌の特定の属種、株、および組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体的労作、倦怠感、慢性疲労、酸素欠乏、地球大気の限界を超えた移動、眼球の酸化ストレス、およびスキューバダイビングなどの低酸素誘導状態の処置における使用のための、または、神経変性疾患、呼吸不全に伴う肺の影響、新生児低酸素虚血、心筋虚血、代謝障害、慢性心疾患および腎疾患、子癇前症や子宮内膜症などの生殖障害、姿勢振戦および運動性振戦の増悪、脳低酸素症などの低酸素誘導状態における低酸素症の処置における使用のための、細胞の酸素消費の減少に関連する低酸素誘導因子HIF-1αの細胞レベルを正に調節可能なラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)。
【請求項2】
ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5567であるラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)株である、請求項1に記載のラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)と、場合により、1つ以上の医薬上許容される賦形剤とを含む組成物。
【請求項4】
ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)および/またはビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)をさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)が、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5570であるストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株であり、
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)が、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5571であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)株であり、および/または
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)が、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号CNCM I-5572であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)株である、
請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の重量に対して、
30%から50%のラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、
25%から35%のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、および
25%から35%のビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)、
を含む、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
レビラクトバチルス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)(従前ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)として知られる)、ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum) (従前ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)として知られる)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei)(従前ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)として知られる)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)をさらに含む、請求項3から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
レビラクトバチルス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)が、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5566であるレビラクトバチルス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)株であり、
ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum)が、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5569であるラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum)株であり、
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei)が、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5568であるラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei)株であり、および
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)が、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5573であるラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)株である、
請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物の重量に対して、
30%から50%のラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、
1%から10%のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、
1%から20%のビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)、
1%から10%のレビラクトバチルス・ブレビス(Levilactobacillus brevis) (従前ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)として知られる)、
1%から10%のラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum (従前ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)として知られる)、
1%から10%のラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei) (従前ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)として知られる)、および
1%から10%のラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、
を含む、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
経口投与に適し、例えばパウダー、カプセル、または顆粒、またはスプレーの形態である、請求項3から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
成人では少なくとも100億個、乳児では少なくとも1億個の、高濃度の細菌を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
酸素欠乏条件下で飼育および/または維持される動物への投与に適する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
使用する細菌が、生存している、生存していない、超音波処理されている、間欠滅菌されている、または凍結乾燥されている、請求項1から12のいずれかに記載のプロバイオティック細菌または組成物。
【請求項14】
細胞の酸素消費の減少に関連する低酸素誘導因子HIF-1αの細胞レベルを正に調節可能なラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を同定するための方法であって、
ウェスタンブロット技術による、標的組織の適切な生理学的表現に適したインビトロ細胞モデルにおける、評価するラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)株に特異的な細菌溶菌液による少なくとも24時間の前処理の存在下および非存在下の、HIF-1αの細胞レベルの評価工程、および
同じ細胞モデルにおける、Seahorse XFe96アナライザー(Agilent)を製造者の説明書にしたがい用いた、または同等の技術を用いた、評価するラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)株に特異的な細菌溶菌液による24時間の処理の存在下および非存在下の、細胞外酸性化速度(ECAR)、酸素消費速度(OCR)、および相対解糖速度(ECAR/OCR比)の評価工程、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、身体的労作、倦怠感(lethargy)、慢性疲労、酸素欠乏、地球大気の限界を超えた移動、眼球の酸化ストレス、スキューバダイビングなどの低酸素誘導状態における正常酸素状態の維持または増強のための、または、神経変性疾患、呼吸不全に関連する肺の影響、新生児低酸素虚血、心筋虚血、代謝障害、慢性心疾患および腎疾患、子癇前症や子宮内膜症などの生殖障害、姿勢振戦および運動性振戦の増悪、脳低酸素症などの低酸素誘導状態における低酸素症の処置のための、低酸素誘導因子HIF-1αの細胞レベルを増加可能な乳酸菌の特定の属種、株、および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素(O2)は、好気性生物による細胞代謝およびエネルギー産生において重要な基質として機能する必須栄養素である。様々な生理学的および病理学的状態において、生物は酸素の可用性(disponibility)の制限/不足を経験することがあり、これは低酸素状態と呼ばれる状態である
【0003】
酸素欠乏は生きている細胞に大きなストレスをもたらす。この状態は、フリーラジカルの不適切な蓄積に関連しており、細胞のタンパク質成分や遺伝物質にさらなるストレスを引き起こす。低酸素ストレス状態に対処するため、細胞はO2供給と代謝、生体エネルギー、および酸化還元要求とを一致させる一連の適応反応を活性化する。特に、細胞周期を一時的に停止し、エネルギー消費を減らし、生存因子および血管新生促進因子を分泌する。腸粘膜は全心拍出量の10%から35%を受け、消化管の推定表面積は正常状態で約250-300 m2である(Lundquistら, 2016)。腸は、食物摂取による血液灌流の大幅な変動を含む、さまざまな要因の組み合わせから生じる特有の酸素化プロファイルを特徴とする(Mathesonら, 2000)。腸に到達する血液量の変化は、残りの体内区分に利用可能な酸素量に大きく影響する。それゆえ、腸は、生物が利用できる総O2の分布を決定する上で重要な役割を果たしている。
【0004】
小腸では、酸素利用能の増大により、消化・分泌・吸収プロセスによるエネルギー需要の高い、高い増殖性を有する幹細胞や分化した有糸分裂後の細胞による激しいエネルギー消費が維持される(Rangel-Huertaraら, 2017; Van Der Schoorra, 2002)。小腸における酸素化と酸素消費の特性から、それらの調節が、包括的に利用可能な酸素の体内への再分配に大きな影響を及ぼす可能性があるという仮説を立てることができる。基礎的な生理学的条件下では、腸粘膜上皮細胞は比較的低い酸素レベルにさらされ、従前は「生理的低酸素(physiological hypoxia)」と表現されていた(Karhausenら, 2005)。この状態に対して、腸管上皮細胞は持続的に適応している(Shepherd、1982; Albenbergら、2014)。
【0005】
低酸素誘導因子(HIF)は、酸素の乏しい微小環境に対する腸管上皮適応の重要なメディエータを構成している(Ramakrishnanra、2016)。これらのメディエータは、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換の阻害、ミトコンドリアの生合成の抑制、ミトコンドリアのオートファジーの活性化を介して、ミトコンドリアにおける酸素消費の減少に関与している(GodaおよびKanai, 2012)。HIFに関連した細胞の酸素消費の減少と、それに続く細胞周囲の微小環境における酸素の再分配は、PHD阻害薬を使用して得られた証拠によって支持されている(Susserら, 2020年)。HIFは、それぞれαとβと呼ばれる2つのサブユニットから構成されるヘテロ二量体で、真核細胞では2番目のサブユニットが恒常的に発現している。HIF-αサブユニットは、塩基性転写因子のヘリックスループヘリックスPer-Arnt-Sim(bHLH-PAS)ファミリーに属する(Schitoら, 2016)。脊椎動物は3つのサブユニットαであるHIF-1α、HIF-2αおよびHIF-3αを持つ。これらのサブユニットのN末端領域には、DNA結合とヘテロ二量体化に必要なドメインが含まれている(Wuら, 2015)。HIF-αサブユニットは、高度に保存された酸素依存的分解(ODD)ドメインを持つ。ODDドメインは、HIF-1αとHIF-2αの両方において、2つのヒドロキシル化プロリンを含んでいる(Chanら, 2005)。HIF-αの水酸化はプロテアソーム分解につながる。HIF-αサブユニットは、細胞内の主要な酸素センサーであるプロリルヒドロキシラーゼドメイン(PHD)酵素群に属する特定の酵素PHD1(EGLN2)、PHD2(EGLN1)、およびPHD3(EGLN3)によってヒドロキシル化される。正常酸素状態下では、PHDは酸素を使ってODDに存在するプロリンレベルでHIF-αサブユニットを水酸化する。水酸化によって、E3ユビキチンリガーゼとして働くフォン・ヒッペル・リンドウ(Von Hippel-Lindau)腫瘍抑制タンパク質(VHL)が結合し、HIF-αの分解が可能になる(Ivanら, 2001)。酸素の可用性が低い条件下では、PHD酵素はHIF-αのヒドロキシル化を行うことができず、HIF-βサブユニットとのヘテロ二量体化によって安定化される(Wangら, 1995)。生成されたヘテロ二量体は、標的遺伝子のプロモーター内に存在するHIF応答エレメント(HRE)と呼ばれる遺伝的エレメントと結合することができる。このような結合の結果、標的遺伝子が発現し、細胞は低酸素状態に対する適応反応を起こすことができる(Toescuら, 2004; Wienerら, 1996)。HIF-1αとHIF-2αは密接に関連しており、HRE依存性発現を活性化することができるが、両サブユニットはその転写ドメインが異なっており、異なる遺伝子標的を持っていることを示唆している。特に、HIF-1αは解糖系経路を優先的に誘導し、酸素欠乏時のエネルギー産生に適応するという科学的な証拠が示されている(Huら, 2003)。HIF活性に伴う低酸素への適応には、細胞代謝における多くの変化が関与する。その中でも重要なものが、エネルギー産生をミトコンドリアの酸化的リン酸化から嫌気的解糖へと移行させることによる酸素消費の減少である。腸内環境では、HIFの調節は細胞代謝と微生物作用の両方に関連する複数の因子の影響を受ける(Singhalら, 2020)。
【0006】
低酸素状態は、急性および慢性の様々な病態の存在下で頻繁に観察される。低酸素症に関連する病態には、新生児低酸素虚血、心筋虚血、代謝障害、慢性心疾患および腎疾患、子癇前症や子宮内膜症などの生殖障害、姿勢振戦および運動性振戦の増悪、脳低酸素症、神経変性疾患などがある(Chenら, 2020; Legrosら, 2010; Nalivaevaら, 2019; Merelliら, 2020)。低酸素は、肺表面の呼吸機能の喪失に起因する病的状態において重要であるとされる。この文脈では、新型パンデミックコロナウイルスSars-CoV-2の感染によって引き起こされる急性呼吸窮迫状態に注目すべきである(Gibsonら, 2020; Ramirezら, 2020)。加えて、低酸素状態は、酸素の利用性が低い状態での長期滞在に伴う生理学的状態の変化や病理学的症状の発現と密接に関係している。これに関して、高地での活動に伴う肺、神経、筋肉の障害を強調する必要がある。プロバイオティック微生物に関する科学文献(Esfandiaryら, 2016; Deepakら, 2015; Chenら, 2020; Hanら, 2020)の報告とは対照的に、出願人は驚くべきことに、ラクトバチルス・アシドフィルス (Lactobacillus acidophilus)、またはラクトバチルス・アシドフィルスおよびストレプトコッカス・サーモフィルス (Streptococcus thermophilus)および/またはビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス (Bifidobacterium animalis subsp. lactis)、好ましくは、レビラクトバチルス・ブレビス (Levilactobacillus brevis)(従前ラクトバチルス・ブレビス (Lactobacillus brevis)として知られる)、ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム (Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum)(従前ラクトバチルス・プランタルム (Lactobacillus plantarum)として知られる)、ラクトバチルス・ヘルベティカス (Lactobacillus helveticus)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ (Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei)(従前ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ (Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)として知られる)の経口投与は、HIF-1αの発現/安定性を増加させることが可能であり、それゆえ、乳酸菌の特定の属種、株、および組成物は、例えば、身体的労作、倦怠感、慢性疲労、酸素欠乏、地球大気の限界を超えた移動、眼球の酸化ストレスおよびスキューバダイビング、または神経変性疾患などの低酸素症を伴う状態における低酸素症の治療のために、呼吸不全に伴う肺への影響、新生児低酸素虚血、心筋虚血、代謝障害、慢性心疾患および腎疾患、子癇前症や子宮内膜症などの生殖障害、姿勢振戦および運動性振戦の増悪、脳低酸素症などの低酸素誘導条件下で、正常酸素状態を維持または増強することが可能であることを発見した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの目的は、身体的労作、倦怠感、慢性疲労、酸素欠乏、地球大気の限界を超えた移動、眼球の酸化ストレス、およびスキューバダイビングなどの低酸素誘導状態の処置における使用のための、または、神経変性疾患、呼吸不全に伴う肺の影響、新生児低酸素虚血、心筋虚血、代謝障害、慢性心疾患および腎疾患、子癇前症や子宮内膜症などの生殖障害、姿勢振戦および運動性振戦の増悪、脳低酸素症などの低酸素に関する状態における低酸素症の処置における使用のための、細胞の酸素消費の減少に関連する低酸素誘導因子HIF-1αの細胞レベルを正に調節可能なラクトバチルス・アシドフィルスである。
【0008】
本発明の一態様によれば、上記で示すラクトバチルス・アシドフィルスは、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、パスツール研究所、75724 パリ・セデックス15、ルエドゥドクトゥールルー25、国立微生物カルチャーコレクション(以下CNCM)に寄託され、受託番号がCNCM I-5567である、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0009】
本発明のさらなる目的は、上述のラクトバチルス・アシドフィルスと、場合により、1つ以上の医薬上許容される賦形剤とを含む組成物である。
【0010】
本発明の一態様によれば、組成物は、さらにストレプトコッカス・サーモフィルスおよび/またはビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス含む。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、ストレプトコッカス・サーモフィルスは、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5570であるストレプトコッカス・サーモフィルス株であり、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチスは、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5571であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス株である、および/またはブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号CNCM I-5572であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス株である。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、組成物は、組成物の重量に対して、30%から50%のラクトバチルス・アシドフィルス、25%から35%のストレプトコッカス・サーモフィルス、および25%から35%のビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチスを含む。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、組成物は、レビラクトバチルス・ブレビス(従前ラクトバチルス・ブレビスとして知られる)、ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム(従前ラクトバチルス・プランタルムとして知られる)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(従前ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイとして知られる)、およびラクトバチルス・ヘルベティカスをさらに含み得る。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、レビラクトバチルス・ブレビス株は、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5566であるレビラクトバチルス・ブレビス株であり、ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルムは、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5569であるラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム株であり、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイは、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5568であるラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ株であり、およびラクトバチルス・ヘルベティカスは、ブダペスト条約の下、2020年9月1日に出願人により、CNCMに寄託され、受託番号がCNCM I-5573であるラクトバチルス・ヘルベティカス株である。
【0015】
本発明のさらなる態様によれば、組成物は、組成物の重量に対して、30%から50%のラクトバチルス・アシドフィルス、1%から10%のストレプトコッカス・サーモフィルス、1%から20%のビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス、1%から10%のレビラクトバチルス・ブレビス(従前ラクトバチルス・ブレビスとして知られる)、1%から10%のラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム(従前ラクトバチルス・プランタルムとして知られる)、1%から10%のラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(従前ラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイとして知られる)、および1%から10%のラクトバチルス・ヘルベティカスを含む。
【0016】
さらなる態様によれば、本発明による組成物は、経口投与に適し、例えば粉末、カプセルまたは顆粒の形態である。組成物は、好ましくは、成人では少なくとも100億個、乳児では少なくとも1億個の、高濃度の細菌を有する。
【0017】
さらなる態様によれば、本発明による組成物は、酸素欠乏条件下で飼育および/または維持される動物、例えば、海抜から非常に高くに位置する農場で飼育および/または維持される動物への経口投与に適し、例えば粉末、カプセル、顆粒またはスプレーなどの形態である。
【0018】
使用するプロバイオティック細菌は、生存していてもよく、生存していなくててもよく、超音波処理されていてもよく、間欠滅菌されていてもよく、または凍結乾燥されていてもよい。
【0019】
最後に、本発明は、細胞の酸素消費の減少に関連する低酸素誘導因子HIF-1αの細胞レベルを正に調節可能なラクトバチルス・アシドフィルスを同定するための方法であって、ウェスタンブロット技術による、標的組織の適切な生理学的表現に適したインビトロ細胞内モデルにおける、評価するラクトバチルス・アシドフィルス株に特異的な細菌溶菌液による少なくとも24時間の前処理の存在下および非存在下の、HIF-1αの細胞レベルの評価工程、および同じ細胞モデルにおける、Seahorse XFe96アナライザー(Agilent)を製造者の説明書にしたがい用いた、または同等の技術を用いた、評価するラクトバチルス・アシドフィルス株に特異的な細菌溶菌液による24時間の処理の存在下および非存在下の、細胞外酸性化速度(ECAR)、酸素消費速度(OCR)、および相対解糖速度(ECAR/OCR比)の評価工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、正常酸素条件下および低酸素条件下でのHIF-1αレベルに対するプロバイオティック株による処理の効果を示している。正常酸素条件下および低酸素条件下で24時間インキュベートを6日間行い分化したCaco-2細胞におけるHIF-1αのウェスタンブロッティング: a)、b) レビラクトバチルス・ブレビス CNCM I-5566株、ラクトバチルス・アシドフィルス CNCM I-5567株、ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム CNCM I-5569、ラクトバチルス・ヘルベティカス CNCM I-5573、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ CNCM I-5568、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス CNCM I-5571、およびストレプトコッカス・サーモフィルス CNCM I-5570株の細菌溶菌液の可溶性分画の存在下(100μg/ml)、非存在下; (c)、(d) 上記にリストされるものに加えて、細菌株ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス CNCM I-5572を含む、プロバイオティック株の特定の組み合わせの存在下または非存在下。デンシトメトリー分析後、得られた値をβ-アクチンで標準化した。データは2回実験の平均値±SDで示した。データは一元配置分散分析(ANOVA)とダネット検定によって比較した。* p < 0.05、** p < 0.01、*** p < 0.001。HIF-1α、β-アクチンの定量を示す代表的なイムノブロットも図に示した。
【0021】
図2図2は、(a)L-乳酸レベル、(b)細胞外酸性化速度(ECAR)、(c)酸素消費速度(OCR)、(d)ECAR/OCR比に対する、Caco-2細胞をプロバイオティック株混合物の細菌溶菌液で処理した効果を示している。Caco-2細胞を、細菌溶菌液(100 μg/ml)を添加して、または添加せずに、24時間処理した。乳酸レベルは比色アッセイで分析した。ECARおよびOCR値は、Seahorse XF細胞外フローアナライザーで得た。値は3つの独立した実験の3回実験の平均値±SEMで表した。2つの平均値間の比較には、対になっていないデータに対するスチューデントのt検定を用いた。(*p<0.05; **p<0.01)。
【0022】
図3図3は、野生型(wt)マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスとして用いた3xTg-ADマウスの脳ホモジネート中のHIF-1αレベルに対する、上記のプロバイオティック株の混合物による処理の効果を示している。解析は、8週齢で殺したモルモット、および処理開始後16週齢および48週齢のモルモットの脳抽出物について行った。デンシトメトリー解析後、得られた値をグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPD)で標準化した。データは3つの実験の3回実験の平均値±SDで示した。データはボンフェローニ検定による一元配置分散分析(ANOVA)で比較した。* p <0,05. HIF-1αおよびGAPDの定量化を示す代表的な免疫ブロットも図に示す。
【0023】
図4図4は、持久的スポーツを行っている対象において、特定のプロバイオティック製剤の摂取が、(a)酸素消費、(b)運動の最後の5分間の平均心拍数、および(c)血中乳酸レベルに及ぼす影響を示している。データは3回実験の平均値±SDで示した。プロバイオティックの摂取がない場合に実施された実験グループと、特定の経口細菌療法を受けた後に実施された実験グループとの間の統計的有意性は、対データに対するスチューデントのt検定によって決定された。*: p≦0.05。
【0024】
図5図5は、一般的なラボ分析から得られた、考慮された血液パラメータの値の分布を示す箱ひげグラフである。存在する場合、各時点のMTD群とMTD+BO群の間の、ならびに各群経時的な統計的有意差を示した。*:p≦0.05、**:p≦0.001、***:p≦0.0001。
【発明の詳細な説明】
【0025】
インビトロ実験
HIF-1αは、酸素恒常性と解糖系の優先的誘導の調節における重要なメディエータであり、その結果、酸素欠乏時のエネルギー産生に適応し、エネルギー代謝をその経路に移行させることで酸素消費を減少させる(Huら, 2003)。
【0026】
本発明者は、細胞の酸素消費の減少に伴うHIF-1αの蓄積を調節する特定の細菌株の単独または組み合わせの能力を評価するために、腸由来の細胞モデルを用いてインビトロアッセイを行った。得られた結果は、正常酸素条件下における、Caco-2細胞のL. ブレビス CNCM I-5566、L. アシドフィルス CNCM I-5567、L. プランタルム CNCM I-5569、L. ヘルベティカス CNCM I-5573、L. パラカゼイ CNCM I-5568、B. ラクチス CNCM I-5571、およびS. サーモフィルス CNCM I-5570の細菌溶菌液への曝露が、未処理のコントロールと比較した細胞内HIF-1αレベルの有意な増加と関連することを示す(図1a)。S. サーモフィルス CNCM I-5570、B. ラクチス CNCM I-5571、およびL. アシドフィルス CNCM I-5567が最も効果的であった(L. アシドフィルス CNCM I-5567は約2.2倍上昇、S. サーモフィルス CNCM I-5570およびB. ラクチス CNCM I-5571は約2倍上昇)。低酸素条件下では、L. アシドフィルス CNCM I-5567の添加によりHIF-1αレベルがコントロールと比較して有意に増加した以外は、各菌株は未処理の細胞と比較して有意な変化を誘導しなかった(図1b)。50および100 μg/mlの濃度の複合細菌抽出物へのCaco-2細胞の曝露は、正常酸素条件下および低酸素条件下の両方で、HIF-1αの細胞内蓄積の有意な増加に関連した(図2aおよびb)。正常酸素条件下で、100 μg/mlの濃度で複合細菌溶菌液について記録されたHIF-1α蓄積レベルが、L. アシドフィルス CNCM I-5567株単独に関する溶菌液について同じ濃度で測定されたものと同等であったことは注目に値する。低酸素条件下では、すでに50 μg/mlの濃度で、プロバイオティック株の組み合わせに関する細菌溶菌液は、L. アシドフィルス CNCM I-5567株単独で記録されたものと同様のHIF-1αの細胞蓄積を、より高い濃度で誘導した。L. アシドフィルス株CNCM I-5567は、プロバイオティック株の組み合わせに含まれる細菌の中では量的に少数派であることを考慮すると、観察された結果は、試験した特定のプロバイオティック株の組み合わせ使用が、HIF-1αの細胞蓄積誘導に関して相乗効果を特徴とすることを示唆している。
【0027】
細胞のエネルギー代謝および細胞の酸素消費に与える溶解細菌株の影響を調べた。この目的のために、解糖系の主要代謝産物であるL-乳酸のレベル、解糖を反映するパラメータである培地の細胞外酸性化速度(ECAR)、および酸化的リン酸化を決定するために使用される酸素消費速度(OCR)を培地内で評価した。Caco-2細胞株を全細菌溶菌液に24時間曝露した結果、未処理のコントロールと比較して、細胞の酸素消費の減少を証明するOCR値の有意な低下があった(図2c)。対照的に、細胞株の細菌溶菌液への曝露は、解糖の増加を証明する乳酸レベル、ECAR値、およびECAR/OCR比の有意な増加に関連していた(図2a、2b、2d)。
【0028】
結論
腸管レベルで回収される酸素化血液の量は、脳、心臓、腎臓、および肝臓などの重要な臓器を含む腸管外の体内区画での酸素の利用可能性を調整する。
【0029】
腸管内では、酸素恒常性はHIFに大きく依存している。プロバイオティック微生物は、HIFを調節し、HIFによって制御されるプロセスに影響を及ぼす可能性がある。細菌属種L. パラカゼイ、L. アシドフィルス、L. クリスパタス、L. ラムノサス、およびB. ロンガムに属する株は、インビトロで、様々な細胞モデルにおけるHIF-1αの発現を阻害することができる(Hanら, 2020; Esfandiaryら, 2016; Deepakら, 2015; Chenら, 2020)。文献での報告に反して、本発明者の結果は、驚くべきことに、試験したプロバイオティック微生物がHIF-1αの蓄積を正に調節できることを示した。この対照的な効果は、HIF-1αの調節が異なる分子機構の関与を反映しているという事実に説明づけられる。さらに、プロバイオティクス(probiotics)がもたらす有益な効果は、宿主細胞の特定の生理学的状態に依存する(McFarlandら, 2018)。試験した細菌属種によって誘導されるHIF-1αの蓄積の増加は、腸内細胞における酸素消費の有意な減少と嫌気性代謝の誘導に関連しており、これにより酸素が乏しい条件下での生存が可能になる。試験した細菌によって誘導された酸素の節約は、腸における酸素の消費を調節する可能性がある。その体内区画で消費されなかった酸素の量は、他の重要な器官や組織で利用できるようになる可能性がある。
【0030】
材料と方法
細胞培養および処理
ヒト結腸腺癌細胞株(Caco-2)を、10%(v/v)ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸、1 mMピルビン酸ナトリウム、2 mMグルタミン、100 U/mlペニシリン、および100 μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)培地、37℃、5%CO2の加湿雰囲気で培養した。80%コンフルエントに達した後、細胞を剥離し、6ウェルのマルチウェルプレートに6x104 cells/cm2の濃度でプレーティングした。細胞増殖は光学顕微鏡でモニタした。細胞外酸性化速度および酸素消費速度の細胞HIF-1αレベルを評価するために、コンフルエント後14日目に分化した細胞を、指示濃度のプロバイオティックで30分間前処理するか、またはプロバイオティックを添加せずに、標準培養条件下で正常酸素濃度(約21% O2)、または「低酸素インキュベーションチャンバ」(1% O2)を用いて低酸素状態で24時間インキュベートした。
【0031】
細菌溶菌液の可溶性分画の調製
細菌溶菌液の可溶性分画は以下のように調製した。各サンプルを3回洗浄し(8,600×g、20分間、4℃)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した。この菌懸濁液を、10秒の超音波処理と10秒の休止を交互に繰り返しながら30分間超音波処理し、17.949×g、4℃で20分間遠心分離した。上清を0.22 μmフィルタを介してろ過し、残存する無傷の細菌を除去し、タンパク質濃度を測定した。個々の細菌株に関する試験では、細菌溶菌液の可溶性分画の濃度を100 μg/mlとした。プロバイオティック株の組み合わせに関するアッセイは、全細菌溶菌液可溶性分画の濃度をそれぞれ10、50、100 μg/mlと増加させて行った。株の組み合わせの作用を評価するために実施したアッセイは、複合物中の全細菌細胞に対する各個別菌株の細菌細胞の割合が以下の通りであるプロバイオティック製剤に対して行われた: 35.46% L. ブレビス CNCM I-5566、1.42% L. アシドフィルス CNCM I-5567、5.32% L. プランタルム CNCM I-5569、0.71% L. ヘルベティカス CNCM I-5573、2.13% L. paracasei CNCM I-5568、17.73% B. lactis CNCM I-5571、1.77% B.ラクチス CNCM I-5572、35.46% S. サーモフィルス CNCM I-5570。こうして調製したサンプルは、使用するまで-80℃で凍結した。未処理の細胞をコントロールとした。
【0032】
ウェスタンブロット
HIF-1α発現はウェスタンブロッティングで評価した。プロテアーゼ阻害剤を含むRIPA緩衝液を用い、細胞を氷上で30分間溶解した。細胞溶解後、サンプルを17,949×g、温度4℃で20分間遠心した。上清を回収し、総タンパク質アッセイを実施した。サンプルバッファとメルカプトエタノールをタンパク質25gに相当する上清体積に加え、サンプルを5分間煮沸し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミド10%ゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離した。ニトロセルロースメンブレン(0.45 μm)へのサンプルの転写は、70ボルト一定で4℃、1時間行い、ニトロセルロースフィルタは、非特異的部位ブロッキング溶液と室温で1時間インキュベートした後、モノクローナル抗HIF-1α抗体または抗β-アクチン抗体と4℃で一晩インキュベートした。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を結合させた二次抗体とインキュベートした後、免疫反応性バンドを化学発光で可視化した。その後、HIF-1αに対応するバンドのデンシトメトリー分析を行い、得られた値をβ-アクチンの値で標準化した。
【0033】
L-乳酸産生アッセイ
細胞培養上清中のL-乳酸濃度は、L-乳酸アッセイキット(Abcam, Cambridge, UK)を用い、メーカー説明書に従って測定した。上清は10-kDaのNMWCOの遠心濾過ユニット(Amicon, Millipore)で脱タンパクし、ろ液を反応ウェルに加えた。吸光度を、分光光度計により、570 nmで測定した。
【0034】
代謝試験
Seahorse XFe96 アナライザー(Agilent)を用いて、製造者の説明書に従って、上記のように処理した細胞について、細胞外酸性化速度(ECAR)と酸素消費速度(OCR)を評価し、解糖速度(ECAR/OCR)を算出した。簡単に説明すると、試験当日、培地をグルコース(10 mmol/L)、ピルビン酸(1 mmol/L)、グルタミン(2 mmol/L)を添加したSeahorse XF DMEM培地pH7.4(Agilent)に交換し、細胞を非CO2インキュベーター内で1時間平衡化させた後、OCRとECARを測定した。ミトコンドリア機能の検査にはXFp Mito Stress Test Kitを用いた。オリゴマイシン(1 μM)、カルボニルシアニド-4(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP、1 μM)、およびロテノンとアンチマイシンAの混合物(1 μM)の注入により、主要な生体エネルギーパラメータである、基礎呼吸、ATP産生関連呼吸(ATP産生)、最大呼吸、予備呼吸容量、非ミトコンドリア呼吸、プロトン漏出、およびカップリング効率を決定することができた。
【0035】
統計分析
ANOVAに続いてダネット検定またはトゥーキー事後検定を、試験した異なる条件間の統計的有意差をチェックするために使用し、2つの群の場合、平均値間の比較は対応のないスチューデントのt検定で行った。p値≦0.05を統計的に有意とみなした。解析はR 4.0.3統計ソフトを使用して実施した。
【0036】
インビボ実験
脳への酸素供給の低下は、加齢プロセスにおける神経変性に重要な役割を果たしている(OgunsholaとAntoniou, 2009)。酸化ストレス、酸素またはグルコースの供給障害、鉄の恒常性の崩壊などの病理学的プロセスは、神経変性疾患において一般的である(CorreiaとMoreira, 2010; Gironiら, 2011; Benarroch, 2009)。HIF-1αの脳内レベルの低下は、グルコース取り込みを担うGLUT1およびGLUT2受容体の発現低下と関連しており、アルツハイマー病(AD)モデルにおいてこれまでに実証されている。本発明者は、3xTg-ADマウスの脳組織におけるHIF-1α蓄積を調節する特定の細菌の組み合わせの能力を評価するために、インビボアッセイを実施した。ヒトADのこの信頼できるモデルは、プラークともつれ(tangle)の病理の両方を示し、細胞内Aβ免疫反応性は生後3ヵ月で検出可能であり、タウタンパク質の過剰リン酸化は生後12ヵ月から15ヵ月の間に起こる(Oddoら, 2003)。実験デザインの特徴、ならびに、脳抽出物の調製は、以前Bonfiliらによって2018年に報告されたものと一致させた(Bonfiliら, 2018)。48匹の8週齢の3xTg-ADモルモットを2群に分けた。第1群(n=24)には、ストレプトコッカス・サーモフィルス CNCM I-5570、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス CNCM I-5571、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス CNCM I-5572、ラクトバチルス・アシドフィルス CNCM I-5567、ラクトバチルス・ヘルベティカスCNCM I-5573、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ CNCM I-5568、ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム CNCM I-5569およびラクトバチルス・ブレビス CNCM I-5566を含む特定のプロバイオティック製剤を処置したのに対し、他方(n=24)は無処置でコントロールとした。同時に、同年齢の野生型マウス48匹を同数の2群に分け、一方にのみ同じプロバイオティック製剤を処置した。投与量(2,000億個/kg/日)は、文献(Crawfordら, 1950)で以前報告されているように、体表面積正規化を用いて決定した。マウスを24週齢と56週齢(処置開始から16週齢と48週齢)で生化学分析のために殺し、脳は脳ホモジネートを作るまで-80℃で保存した。HIF-1α発現レベルの統計的有意差の検定には、ANOVAに続いてボンフェローニの検定を用いた。p値≦0.05を統計的に有意とした。脳ホモジネート中のHIF-1αサブユニットレベルを、以前に記載されたようにウェスタンブロッティングアッセイで分析した(Bonfiliら, 2018)。得られた結果から、無処置の3xTg-ADマウスは、同年齢のwtマウスよりもHIF-1αの脳内レベルが有意に低いことが示された。驚くべきことに、3xTg-ADマウスにプロバイオティック製剤を投与すると、HIF-1αの脳内レベルが有意に上昇した。予期せぬことに、プロバイオティックでの処置は、HIF-1αの発現を、同じ年齢のwtマウスで記録されたレベルまで回復させた(図3)。観察されたHIF-1αの脳内レベルの増加は、試験した特定のプロバイオティック製剤を投与することで、脳内の酸素恒常性とグルコース代謝が改善され、神経変性疾患の実行可能な治療的アプローチになることを示唆している。
【0037】
ヒトに対して実施した試験
ヒトに対する最初の試験
この試験では、特定のプロバイオティック製剤の摂取が、持久的スポーツを行っている対象の呼吸、心臓、および代謝のパラメータに及ぼす影響を評価した。この目的のために、4人の男性トライアスロン競技者対象(年齢: 平均±DS、37±5歳、体重:平均±DS 70±3kg)を募集した。2セットの試験が実施され、1セット目は「プレ」と呼ばれ、特定のプロバイオティック製剤を摂取しない状態でプロトコルを実施した。「ポスト」と呼ばれる2セット目の試験では、ストレプトコッカス・サーモフィルス CNCM I-5570、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス CNCM I-5571、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス CNCM I-5572、ラクトバチルス・アシドフィルス CNCM I-5567、ラクトバチルス・ヘルベティカス CNCM I-5573、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイ CNCM I-5568、ラクチプランチバチルス・プランタルム亜種プランタルム CNCM I-5569、ラクトバチルス・ブレビス CNCM I-5566からなる細菌組み合わせの摂取をした後、同じ対象を試験した。プロバイオティクスの摂取量は、1回の投与で約4000億個の細菌細胞数であった。対象は、試験前日の夕食時に最後の食事を摂り、指定された時間で絶食するようにし、摂取は水のみとするよう求められた。「ポスト」試験セットでは、プロバイオティック製剤を最後の食事から5時間以内、少なくとも試験時間の5時間前までに摂取するよう求められた。週末の身体的活動の影響を最小化するため、テストは週の半ばに実施された。各対象は、同じ日、同じ時間に2セットのテストを繰り返した。試験はPanatta Treadmill model T-190 (Panatta, イタリア)を使用し、ベルトの傾斜は1%で固定した。対象にメタボリメーターマスク(metabolimeter mask)を装着させた後、5分間のウォームアップを試験よりも低い強度の自由強度で行った。その後、中断することなく強度を閾値まで上げ、さらに10分間行った。この値は、対象個人の無酸素性閾値強度に関するデータを用いて選択され、総距離20kmを走るのに適切な運動強度に相当する。運動の最後の5分間の平均心拍数、および筋肉収縮の単位時間あたりに身体が取り出して使用できる酸素量(VO2)の測定は、心拍数モニタバンド(POLAR、イタリア)と連動したFitmate PRO装置(COSMED, イタリア)を使用して取得した。血中乳酸濃度は、閾値強度ステップの終了時に行った耳たぶからのキャピラリーサンプリングにより決定した。検討したパラメータに関して、プレ試験群とポスト試験群間の有意差の存在は、対応のあるスチューデントのt検定により評価した。p値≦0.05を統計的に有意とした。乳酸は解糖系が酸素欠乏状態で行われた場合の最終産物であるため、その濃度は嫌気性代謝のレベルを反映する。心拍数とVO2は、好気性代謝のレベルを示す付加的なパラメータであり、これらのパラメータが低下するほど好気性代謝が改善し、酸素利用率が高まることを示す。一般的に、心拍数、VO2、および血中乳酸濃度の低下は、プロバイオティック製剤の摂取に関連する好気性代謝の効率改善を示唆する(図4)。
【0038】
これらの結果は、腸内の特定のプロバイオティック株の作用によって誘導されるHIF-1αの正の調節が、その部位におけるO2消費の減少を可能にするという仮説と一致している。プロバイオティクスの摂取によって誘導される酸素の節約は、この気体を血液循環でより利用しやすくし、結果的に他の身体部位に再分配することになる。
【0039】
ヒトを対象とした2次実験
低酸素症は多くの疾患状態に共通する状態であり、急性肺損傷に関連する状態では特に関連性がある(Leeら, 2019)。本実験の目的は、Sars-CoV-2感染に関連した肺に影響を及ぼす対象の呼吸器状態を緩和する際に細菌株が行うベースライン作用を調査することであった。加えて、この有益な作用が顕在化する早さも評価した。この目的のために、2つの患者グループの反応を試験した。1つのグループは、現状で利用可能な最良の治療(BAT)で治療し、もう1つのグループは経口細菌療法を付加的に追加した(BAT+OB)。プロバイオティクス摂取の効果は、処置開始時と24時間後の2群の血液酸素化パラメータである酸素分圧(pO2)、吸入酸素濃度(FiO2)、酸素化ヘモグロビン(O2Hb)、pO2/FiO2比、および酸素飽和ヘモグロビン(SaO2)を比較することで評価した。酸素供給量(l/min)も付加的に測定した。さらに酸素投与量(l/min)も測定した。両群の患者の主な特徴を表1にまとめている。
【0040】
【表1】
【0041】
性別を除き、プロバイオティック製剤の投与によって決定された2群は、SARS-CoV-2感染症処置のための薬物療法、血液酸素化パラメータ、および酸素投与量を含む臨床的に考慮されたすべての変数において同質であった(中央値; IQR BAT 4; 1-6 l/min; BAT+OB 1.5; 1-6 l/min、p = 0.31)。最初のプロバイオティクス投与から24時間後、BAT+OB群はBAT群よりもpO2/FiO2比とpO2が有意に高い値を示したが、FiO2値については逆の状況が観察された(図5a-c)。O2HbとSaO2レベルの分析では、pO2とpO2/FiO2比について先に述べた結果と一致する結果が得られた(図5eと5f)。全体的な結果は、処置開始から24時間後、プロバイオティック製剤を投与した群は、標準治療のみを受けた群よりも血液酸素化レベルが良好であったが、BAT群は経時的に送達される酸素量が顕著に増加した(図5d)ことを示した。
【0042】
BAT+OB群で観察された血液酸素化パラメータの改善は、腸管レベルでは、特定のプロバイオティック株の作用によって誘導されるHIF-1αの正の調節が、血流レベルでより利用可能になることによって再分配される酸素消費の減少を可能にするという仮説と一致している。
【0043】
患者および方法
実験デザイン、対象集団、データ収集、および処置
本実験は、SARS-CoV-2感染成人患者(18歳超)に対して、自発呼吸療法下でベンチュリーマスクにより供給する酸素療法で実施した。SARS-CoV-2感染の診断は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によるSARS-CoV-2 EおよびS遺伝子の口腔咽頭スワブおよび鼻咽頭スワブの二重陽性であることで定義した。実験に含まれる患者は、COVID-19対応専用の2つの異なる病棟に収容された: 第1の病棟では、Societ Italiana di Malattie Infettive e Tropicali(SIMIT)(イタリア感染症・熱帯病学会)およびイタリア医薬品局(AIFA)の中間ガイドラインに提案されているように、BATのみ投与され、、デキサメタゾン(1日6mg、10日間)+低分子量ヘパリン(予防的投与)+/-アジスロマイシン(1日500mg); (AIFAガイドラインによりレムデシビルを含む。第2の病棟では、BATと、S. サーモフィルス CNCM I-5570、B. ラクチス CNCM I-5571、B. ラクチス CNCM I-5572、L. アシドフィルス CNCM I-5567、L. ヘルベティカス CNCM I-5573、L. パラカゼイ CNCM I-5568、L. プランタルム CNCM I-5569、およびL. ブレビス CNCM I-5566株を含む1日あたり合計4,000億個の細菌を含む経口細菌療法の投与を組み合わせた。検討された変数は、1)病歴データ、2)過去の病歴(合併症)、3)現在の病歴、治療歴、検査データを含む。動脈血ガス分析(Arterial blood gas analysis (ABG試験))を処置開始から24時後に橈骨動脈から採取した血液を用いて実施した。
【0044】
統計分析
性別、抗ウイルス薬治療、および抗生物質投与を含むカテゴリー変数は、限られたサンプルサイズを考慮し、イェーツの連続性補正を用いたカイ二乗検定を用いて比較し、絶対度数およびパーセンテージで示した。両側検定であるマン・ホイットニーのU検定を、呼吸器変数(pO2、FiO2、pO2/FiO2 処置開始時と比較した供給酸素量の変化、O2Hb、SaO2)、生化学変数(血糖、乳酸塩、ヘマトクリット)、人口統計を含むすべての連続的変数および臨床的変数(年齢、BMI、ALT、AST、チャールソン指数)に用い、各時点における群間の統計学的有意差を決定した。一方、各群について、連続する時点間の有意差を評価するにはウィルコクソン検定を用いた。すべての場合において、p値≦0.05を統計的に有意とみなした。
【0045】
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図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】