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特表2024-524545ミクロトームを使用してサンプルブロックから切片リボンを作製する方法、電子顕微鏡における検査用に顕微鏡サンプルを準備する方法、ミクロトームおよびそれに使用するための包埋型
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ミクロトームを使用してサンプルブロックから切片リボンを作製する方法、電子顕微鏡における検査用に顕微鏡サンプルを準備する方法、ミクロトームおよびそれに使用するための包埋型
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/06 20060101AFI20240628BHJP
   G01N 1/36 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01N1/06 Z
G01N1/06 C
G01N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500222
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022063250
(87)【国際公開番号】W WO2023280458
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21183967.5
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501129941
【氏名又は名称】ライカ ミクロジュステーメ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ランナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ツィマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ペーア オリヴァー ケラーマン
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA15
2G052EC03
2G052FA02
2G052GA33
2G052JA08
(57)【要約】
ブレード(304)を有するミクロトーム(100)を使用してサンプルブロック(700)から切片リボン(800)を作製する方法(1000)が開示されており、サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第1切片(802)を備えた第1部分リボンと、サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第2切片(804)を備えた第2部分リボンとを有するように切片リボン(800)を作製し、サンプルブロック(700)の第1表面領域(703)から第1部分リボンを作製し、サンプルブロック(700)の第2表面領域(705)から第2部分リボンを作製し、第2表面領域(705)は、第1表面領域(703)とは異なり、第1部分リボンと第2部分リボンとを作製する間に、ブレード(304)からサンプルブロック(700)を後退させる。電子顕微鏡における検査用に顕微鏡サンプル(600)を準備する方法(900)、ミクロトーム(100)および包埋型(500)も同様に開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード(304)を有するミクロトーム(100)を使用してサンプルブロック(700)から切片リボン(800)を作製する方法(1000)であって、
前記サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第1切片(802)を備えた第1部分リボンと、前記サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第2切片(804)を備えた第2部分リボンとを有するように前記切片リボン(800)を作製し、
前記サンプルブロック(700)の第1表面領域(703)から前記第1部分リボンを作製し、前記サンプルブロック(700)の第2表面領域(705)から前記第2部分リボンを作製し、前記第2表面領域(705)は、前記第1表面領域(703)とは異なり、
前記第1部分リボンと前記第2部分リボンとを作製する間に、前記ブレード(304)から前記サンプルブロック(700)を後退させる、
方法(1000)。
【請求項2】
前記方法は、前記サンプルブロック(700)を作製することをさらに有し、前記第1表面領域(703)および前記第2表面領域(705)は、前記サンプルブロック(700)の不連続表面領域として形成される、
請求項1記載の方法(1000)。
【請求項3】
前記サンプルブロック(700)を作製することは、前記第1表面領域(703)および前記第2表面領域(705)の連続前駆体領域を有する前駆体サンプルブロックを形成することを有し、
前記サンプルブロック(700)を作製することは、前記前駆体サンプルブロックをトリミングして、前記前駆体領域から前記第1表面領域(703)および前記第2表面領域(705)を形成することを有する、
請求項2記載の方法(1000)。
【請求項4】
前記サンプルブロック(700)を作製することは、前記第1表面領域(703)および前記第2表面領域(705)、または、前記第1表面領域(703)および前記第2表面領域(705)の前駆体領域を前記不連続表面領域として形成するように構成された包埋型(500)を使用して、前記サンプルブロック(700)を形成することを有する、
請求項2記載の方法(1000)。
【請求項5】
前記サンプルブロック(700)を作製することは、前記包埋型(500)における包埋媒体(512)に顕微鏡サンプル(600)を包埋すること(902)を有する、
請求項4記載の方法(1000)。
【請求項6】
前記包埋型(500)は、分かれていない内部空間(506)と、第1区画(508)と、第2区画(510)と、を有し、前記第1区画(508)および前記第2区画(510)は、分かれていない前記内部空間(506)から延びておりかつ分かれていない前記内部空間(506)とつながっており、前記包埋するステップ(902)は、前記サンプル(600)を前記第1区画(508)に配置するが、前記第2区画(510)に配置しないことと、前記第1区画(508)、前記第2区画(510)および分かれていない前記内部空間(506)に少なくとも部分的に前記包埋媒体(512)を充填することと、前記包埋媒体(512)を硬化させることと、を有し、前記第1表面領域(703)は、前記第1区画(508)において硬化させた、前記サンプルブロック(700)の部分(702)の表面領域であり、前記第2表面領域(705)は、前記第2区画(510)において硬化させた、前記サンプルブロック(700)の部分(704)である、
請求項4または5記載の方法(1000)。
【請求項7】
1つまたは複数の前記第1切片(802)のそれぞれには、前記サンプル(600)の部分(602)が含まれており、
1つまたは複数の前記第2切片(804)のそれぞれには、前記サンプル(600)の部分(604)が含まれていない、
請求項5または6記載の方法(1000)。
【請求項8】
前記方法は、前記サンプルブロック(700)を作製することをさらに有し、前記サンプルブロック(700)の連続表面領域として前記第1表面領域(703)および前記第2表面領域(705)を形成する、
請求項1記載の方法(1000)。
【請求項9】
前記第1部分リボンと前記第2部分リボンとを作製する間に、前記ブレード(304)に対して1つまたは複数の方向に前記サンプルブロック(700)を再位置決めする、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法(1000)。
【請求項10】
前記ミクロトーム(100)としてウルトラミクロトームを使用し、超極薄切片として1つまたは複数の前記第1切片(802)および1つまたは複数の前記第2切片(804)を作製する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法(1000)。
【請求項11】
電子顕微鏡における検査用に顕微鏡サンプル(600)を準備する方法(900)であって、前記方法(900)は、
サンプルブロック(700)を作製する包埋媒体(512)において前記サンプル(600)を包埋するステップ(902)と、
切片リボン(800)を作製するミクロトーム(100)を使用して前記サンプルブロック(700)を連続して切片化するステップ(906)と、
を有し、
前記サンプル(600)の部分(602)を含む、前記サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第1切片(802)と、前記サンプル(600)の部分(602)を含まない、前記サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第2切片(804)と、を有するように前記切片リボン(800)を作製し、
包埋型(500)を使用して前記包埋するステップ(902)を行い、前記包埋型(500)は、分かれていない内部空間(506)と、第1区画(508)と、第2区画(510)と、を有し、前記第1区画(508)および前記第2区画(510)は、分かれていない前記内部空間(506)から延びておりかつ分かれていない前記内部空間(506)とつながっており、
前記包埋するステップ(902)は、前記サンプル(600)を前記第1区画(508)に配置するが、前記第2区画(510)に配置しないことと、前記第1区画(508)と、前記第2区画(510)と、分かれていない前記内部空間(506)と、に少なくとも部分的に前記包埋媒体(512)を充填することと、前記包埋媒体(512)を硬化させることと、を有し、
前記連続して切片化するステップ(906)は、前記第1区画(508)において硬化させた、前記サンプルブロック(700)の部分(702)から1つまたは複数の前記第1切片(802)を形成することと、前記第2区画(510)において硬化させた、前記サンプルブロック(700)の部分(704)から1つまたは複数の前記第2切片(804)を形成することと、を含む、
方法(900)。
【請求項12】
形成する間、前記切片リボンを液体面(306)において浮遊させ、前記液体面(306)における目標位置に移送距離だけ、1つまたは複数の前記第1切片(802)を前記液体面(306)において前方に押し出し、前記前方への押し出しは、前記第1部分リボンに1つまたは複数の前記第1切片(802)を形成した後、前記移送距離に対応する累積的な長さで、前記第2部分リボンに複数の前記第2切片(804)を形成することを有する、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法(900,1000)。
【請求項13】
前記サンプルブロックは、前記第1区画(508)に形成された、前記サンプルブロック(700)の前記部分(702)が、前記第2区画(510)に形成された、前記サンプルブロック(700)の前記部分(704)の垂直方向下方に、かつ前記部分(704)との共通垂直平面に配置されるように前記ミクロトーム(100)に取り付けられている、
請求項6または11記載の方法(900,1000)。
【請求項14】
前記第2区画(510)に形成される、前記サンプルブロック(700)の前記部分(704)を切断することにより、前記第1区画(508)に形成される、前記サンプルブロック(700)の前記部分(702)の切断と比較して、少なくとも切断方向において異なる寸法を有する切片が形成される、
請求項6または11記載の方法(900,1000)。
【請求項15】
少なくとも切断方向における前記異なる寸法は、より大きな寸法である、
請求項14記載の方法(900,1000)。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されたミクロトーム(100)。
【請求項17】
ミクロトーム(100)であって、
前記ミクロトーム(100)は、ブレード(304)およびサンプルホルダ(108)を有し、前記サンプルホルダ(108)に収容されたサンプルブロック(700)から切片リボン(800)を作製するように構成されており、
前記ミクロトーム(100)は、前記切片リボン(800)が、前記サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第1切片(802)を備えた第1部分リボンと、前記サンプルブロック(700)の1つまたは複数の第2切片(804)を備えた第2部分リボンと、を有するように前記切片リボン(800)を作製するように構成されており、
前記ミクロトーム(100)は、前記サンプルブロック(700)の第1表面領域(703)から前記第1部分リボンが作製され、前記サンプルブロック(700)の第2表面領域(705)から前記第2部分リボンが作製されるように構成されており、前記第2表面領域(705)は、前記第1表面領域(703)とは異なり、
前記ミクロトーム(100)は、前記第1部分リボンと前記第2部分リボンとを作製する間に、前記ブレード(304)から前記サンプルブロック(700)を後退させるように構成されている、
ミクロトーム(100)。
【請求項18】
前記ミクロトーム(100)は、前記切片リボンを作製する前に設けられたプロセス定義に基づいて、制御コマンドを供給するように構成された制御ユニット(150)を有し、前記プロセス定義は、シーケンスを含み、前記シーケンスでは、1つまたは複数の前記第1切片(802)および1つまたは複数の前記第2切片(804)を作製して前記第1部分リボンおよび前記第2部分リボンを形成する、
請求項17記載のミクロトーム(100)。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法(900,1000)に使用されるように適合された包埋型(500)であって、
前記包埋型(500)は、分かれていない内部空間(506)と、第1区画(508)と、第2区画(510)と、を有し、前記第1区画(508)および前記第2区画(510)は、分かれていない前記内部空間(506)から延びておりかつ分かれていない前記内部空間(506)とつながっている、
包埋型(500)。
【請求項20】
分かれていない前記内部空間(506)の少なくとも一部分は、円筒形であり、2~15mmの内径を有する、
請求項19記載の包埋型(500)。
【請求項21】
少なくとも前記内部空間(506)は、プラスチック材料から成る壁(502)よって取り囲まれており、前記壁(502)は、0.1~0.5mmの厚さを有する、
請求項19または20記載の包埋型(500)。
【請求項22】
前記包埋型(500)は、前記包埋型(500)に形成されたサンプルブロック(700)を開放するために、引剥がしタブおよび引剥がしトラックを有する、
請求項19から21までのいずれか1項記載の包埋型(500)。
【請求項23】
前記包埋型(500)は、平坦な底部を有し、前記第1区画(508)および前記第2区画(510)は、少なくとも部分的に、前記平坦な底部における凹みの形態で形成されている、
請求項19から22までのいずれか1項記載の包埋型(500)。
【請求項24】
前記凹みは、円錐形またはピラミッド形切頭体として形成されている、
請求項23記載の包埋型(500)。
【請求項25】
前記第1区画(508)および前記第2区画(510)は、前記包埋型(500)に形成された分割構造体(509)によって分割される部分を有する、
請求項19から24までのいずれか1項記載の包埋型(500)。
【請求項26】
前記第1区画(508)および前記第2区画(510)は、異なる寸法で形成されているか、または共通平面において異なる断面を有する、
請求項19から25までのいずれか1項記載の包埋型(500)。
【請求項27】
前記共通平面は、前記内部空間(506)の長手方向軸に対して垂直であり、前記共通平面内の線は、前記第1区画(508)および前記第2区画(510)を横断し、前記第1区画(508)との前記横断の長さは、前記第2区画(510)との前記横断の長さよりも短い、
請求項26記載の包埋型(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロトームを使用してサンプルブロックから切片リボンを作製する方法、電子顕微鏡における検査用に顕微鏡サンプルを準備する方法、ミクロトームおよび包埋型に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、神経科学の分野だけでなく、生物学および医学の他の分野においても、特に、電子顕微鏡法を用いた、組織の連続的な切片の検査と、組織のこのような連続的な切片からの3次元サンプル情報の再構成とは極めて重要である。
【0003】
対応する方法には、いわゆる「連続切片SEM法(ssSEM、S3EM:Serial Section Scanning Electron Microscopy)」およびいわゆる「連続切片TEM法」(ssTEM:Serial Section Transmission Electron Microscopy)が含まれていてよいが、これらに限定されることはなく、本発明は特にssSEMに関連して使用可能である。しかしながら、以下で説明する実施形態が、同等の性質の任意の他の方法にも適用可能であることはいうまでもない。特に、本発明は基本的に、電子顕微鏡法の代わりに光学顕微鏡法に関連して使用可能であるが、以下の説明は電子顕微鏡法に向けられている。
【0004】
このような方法では、以下でさらに説明するように、分析または検査対象のサンプルの部分を含む切片(本明細書において「サンプル切片」と称される)に加え、いわゆる「プッシャ」切片、「リリース」切片、「ダミー」切片または「ブランク」切片(これらの用語は本明細書において同義的に使用される)を含む切片リボンを形成することが有利であることがあり、これらは、切片リボンを延長または伸長し、ひいてはサンプル切片を前方へ押し出すという唯一の、または本質的な目的を有し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特に液体面において、また特により良好な信頼性および使い勝手の点で、このようなタイプのサンプルリボンの準備を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施形態に従って提供される、ブレードを有するミクロトームを使用して、サンプルブロックから切片リボンを作製する方法には、切片リボンが、1つまたは複数の、サンプルブロックの第1切片を備えた第1部分リボンと、1つまたは複数の、サンプルブロックの第2切片を備えた第2部分リボンとを有するように作製されることが含まれ、サンプルブロックの第1表面領域から第1部分リボンを作製し、サンプルブロックの第2表面領域から第2部分リボンを作製し、第2表面領域は、第1表面領域とは異なり、第1部分リボンと第2部分リボンとを作製する間にブレードからサンプルブロックを後退させる。このような方法により、単一のサンプルブロックから、またサンプルブロック用の単一のクランプまたはホルダを有するミクロトームを使用して、上述のような「プッシャ」切片およびサンプル切片を簡便な仕方で作製することができる。
【0007】
本発明の1つの実施形態によると、本方法はさらにサンプルブロックを作製することを有し、第1表面領域および第2表面領域は、サンプルブロックの不連続表面領域として形成される。したがって、サンプルブロックは特に、有利な方法において使用されるように準備されてもよい。
【0008】
これに関連して、サンプルブロックの作製は、第1表面領域および第2表面領域の連続前駆体領域を有する前駆体サンプルブロックを準備することを有していてよく、この場合にサンプルブロックの作製は、前駆体サンプルブロックをトリミングして、前駆体領域から第1表面領域および第2表面領域を形成することを有する。トリミングは一般に、顕微鏡法の分野において、サンプルブロックを形成するために有効になり得るため、このような実施形態は、いずれにせよ行われる上記のトリミング中に第1表面領域および第2表面領域が単一ステップで形成され得るため、特に有利であり得る。
【0009】
本発明の択一的な1つの実施形態では、サンプルブロックの作製は、第1表面領域および第2表面領域またはそれらの前駆体領域を不連続表面領域として形成するように構成された包埋型を使用して、サンプルブロックを形成することを有していてよい。このような実施形態は、手動のトリミングを必要とすることなく、またはこれをあまり必要とすることなく、表面領域を(事前に)形成することができるため、特に有利であり得る。
【0010】
本発明の実施形態では、サンプルブロックの作製は、包埋型における包埋媒体に顕微鏡サンプルを包埋することを有し、これにより、有利なサンプル準備に必要な、相互に調整された全てのステップを含む包括的なプロセスが提供される。
【0011】
本発明の1つの実施形態によると、上記の包埋型は、分かれていない内部空間と、第1区画と、第2区画とを有し、第1区画および第2区画は、分かれていない内部空間から延びておりかつ分かれていない内部空間とつながっており、包埋するステップは、上記のサンプルを上記の第1区画に配置するが、上記の第2区画に配置しないことと、第1区画、第2区画および分かれていない内部空間に少なくとも部分的に包埋媒体を充填することと、包埋媒体を硬化させることと、を有し、第1表面領域は、上記の第1区画において硬化させたサンプルブロックの部分の表面領域であり、第2表面領域は、上記の第2区画において硬化させたサンプルブロックの部分である。「硬化」という用語は、本明細書で使用される文脈において、固化、架橋、重合および結晶化を含むがこれらに限定されない任意のタイプの硬化プロセスを指すものとする。このような実施形態では、サンプルは、例えば、硬化媒体を型に充填する間に、望ましくない変位のリスクなしに、特に確実に位置決め可能である。
【0012】
このような実施形態では、1つまたは複数の第1切片のそれぞれには特に、サンプルの一部(上述のような「サンプル切片」)が含まれていてよく、1つまたは複数の第2切片のそれぞれには特に、サンプルの一部が含まれていなくてよい(「ダミー切片」)。ここでも、このような実施形態において特に、「ダミー」切片およびサンプル切片の確実な形成または作製が、サンプルの転位のリスクが低減されて可能である。
【0013】
本発明の択一的な実施形態では、本発明はまた、サンプルブロックを作製することを有することができるが、第1表面領域および第2表面領域は、このような実施形態では、サンプルブロックの、連続表面領域として形成可能である。これにより、トリミングまたは特別に適合された包埋型を使用する必要がなくなる。
【0014】
本発明の実施形態では、第1部分リボンと第2部分リボンとを作製する間に、ブレードに対して1つまたは複数の方向にサンプルブロックを再位置決めすることができる。すなわち、本発明の実施形態によると、第1部分リボンおよび第2部分リボン(およびそれらのそれぞれの切片)は、サンプルブロックからつながって切断されず、したがって、あらゆる任意の順序および個数の切片または部分リボンが可能になる。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、ミクロトームとしてウルトラミクロトームを使用し、一般に当業者に公知の寸法を有する超極薄切片として、1つまたは複数の第1切片および1つまたは複数の第2切片を作製する。対応する1つの実施形態は特に、冒頭に述べた、また以下にさらに説明する透過または走査電子顕微鏡法の方法に有利である。
【0016】
本発明の1つの実施形態に従い、電子顕微鏡における検査用に顕微鏡サンプルを準備する方法も提供される。本方法は、サンプルブロックを作製する包埋媒体において上記のサンプルを包埋するステップと、特に前述のようにまたは同様に、切片リボンを作製するミクロトームを使用して上記のサンプルブロックを連続して切片化するステップとを有する。このような実施形態では、サンプルの一部を含む、サンプルブロックの1つまたは複数の第1切片と、サンプルの一部を含まない、サンプルブロックの1つまたは複数の第2切片とを有するように上記の切片リボンを作製する。対応する1つの実施形態によると、分かれていない内部空間と、第1区画と、第2区画とを有する包埋型を使用して上記の包埋するステップを行い、上記の第1区画および上記の第2区画は、分かれていない上記の内部空間から延びており、分かれていない上記の内部空間とつながっている。上記の包埋するステップは、上記のサンプルを上記の第1区画に配置するが、上記の第2区画に配置しないことと、上記の第1区画と、上記の第2区画と、分かれていない上記の内部空間とに少なくとも部分的に上記の包埋媒体を充填することと、上記の包埋媒体を硬化させることと、を有する。この実施形態によると、連続的な切片化には、上記の第1区画において硬化させた、サンプルブロックの部分から1つまたは複数の上記の第1切片を形成することと、上記の第2区画において硬化させた、サンプルブロックの部分から1つまたは複数の上記の第2切片を形成することとが含まれる。このような実施形態の特定の利点については、上に示した説明を参照されたい。これらの利点には、上述したように、望ましくない転位のリスクなしに、型にサンプルを確実に位置決めすることが含まれる。
【0017】
本発明の1つの実施形態によると、上記の連続的な切片化によって形成される間、上記の切片リボンを液体面において浮遊させ、液体面における目標位置に移送距離だけ、1つまたは複数の上記の第1切片(または第1部分切片)を液体面において前方に押し出す。上記の前方への押し出しは、1つまたは複数の上記の第1切片を形成した後、上記の移送距離に対応する累積的な長さで、上記の切片リボンに複数の上記の第2切片(したがって第2部分切片)を形成することを有する。本方法はまた、部分的にまたは完全に自動的に、またはウルトラミクロトームにおけるユーザ設定に基づいて実施可能である。本方法では特に、同等の仕方で複数の平行な切片リボンを形成した後、目標位置においてサンプルキャリアを使用して、液体面から1つまたは複数の上記の第1切片を釣り上げる。したがって、本押し出しししこのような実施形態による方法は、対応するステップを含む公知のワークフローに組込み可能である。
【0018】
特に、また本発明の1つの実施形態では、上記のサンプルブロックは、上記の第1区画に形成された、サンプルブロックの上記の部分が最初に、上記の第2区画に形成された、サンプルブロックの上記の部分の垂直方向下方に、かつ上記の部分との共通垂直平面に配置されるように、上記のミクロトームに取付け可能である。このような実施形態では、サンプルブロックは有利には、異なる切片を形成する間に、横方向に再位置決めされる必要がない。
【0019】
以下でより詳細に示し、本発明の1つの実施形態に従って構想されるように、包埋型の第1区画および第2区画を異なる寸法で形成することにより、上記の第1区画において形成された、サンプルブロックの上記の部分を切断することと比較して、上記の第2区画において形成された、サンプルブロックの上記の部分を切片化することにより、切断方向において異なる寸法を有する切片を形成することができる。第2区画に対応する、サンプルブロックの部分(またはサンプルを含まない、サンプルブロックの部分)から、切断方向により大きな寸法を有する区画が形成される場合、これにより、より大きな「ダミー」切片を作製することができるため、比較的量の少ない切断動作により、第1切片を迅速に前進させることができる。
【0020】
本発明の実施形態によると、先行する請求項のいずれかに記載の方法を実施するように構成されたミクロトームが提供される。ブレードおよびサンプルホルダを有し、かつサンプルホルダに収容されたサンプルブロックから切片リボンを作製するように構成されたミクロトームも提供され、ミクロトームは、切片リボンが、サンプルブロックの1つまたは複数の第1切片を備えた第1部分リボンと、サンプルブロックの1つまたは複数の第2切片を備えた第2部分リボンとを有するように切片リボンを作製するように構成されており、ミクロトームは、サンプルブロックの第1表面領域から第1部分リボンが作製され、サンプルブロックの第2表面領域から第2部分リボンが作製されるように構成されており、第2表面領域は、第1表面領域とは異なり、ミクロトームは、第1部分リボンと第2部分リボンとを作製する間に、ブレードからサンプルブロックを後退させるように構成されている。本発明の実施形態に従って形成されるミクロトームの別の特徴および利点については、本方法およびその実施形態に関連する上の説明を参照されたい。
【0021】
1つの実施形態では、ミクロトームのサンプルホルダは、正確に1つのサンプルブロックを収容するように構成されている。したがって、ミクロトームの別の構成により、ミクロトームを特に簡単に構築することができる。
【0022】
1つの実施形態では、ミクロトームは制御ユニットを有し、制御ユニットは、1つまたは複数の第1切片および1つまたは複数の第2切片を作製する前に設けられたプロセス定義に基づいて、制御コマンドを供給するように構成されており、プロセス定義にはシーケンスが含まれており、このシーケンスでは、1つまたは複数の第1切片および1つまたは複数の前記第2切片(したがって第1部分リボンおよび第2部分リボン)が作製される。これにより、特に、切片リボンが浮遊させられる水槽の既知の寸法に基づき、あらかじめ定められたプロセスに従って、第1部分リボンおよび第2部分リボンの大幅に自動化された作製が可能になる。
【0023】
上の異なる実施形態において上述した方法、すなわち、電子顕微鏡における検査用の顕微鏡サンプルを準備する方法で使用されるように適合された包埋型も本発明において提供される。この包埋型は、分かれていない内部空間と、第1区画と、第2区画とを有し、上記の第1区画および上記の第2区画は、分かれていない上記の内部空間から延びており、分かれていない上記の内部空間とつながっている。このような包埋型に関連した別の利点および実施形態については、上の説明を参照されたい。
【0024】
本発明の1つの実施形態によると、包埋型では、分かれていない上記の内部空間の少なくとも一部は、円筒形であってよく、2~15mm、例えば5~10mm、特に約8mmの内径を有していてよい。少なくとも円筒形の空間は、また型の全ての別の部分も、適切なプラスチック材料から形成された壁によって取り囲まれていてよく、この壁は特に、0.1~0.5mmの厚さを有する。この包埋型は、サンプルブロックを硬化させた後、この包埋型に形成されるサンプルブロックを開放するために、引剥がしタブおよび引剥がしトラックを有していてよい。これにより、特に経済的かつ取扱いが容易な仕方で包埋型を作製して取り扱うことができる。
【0025】
この包埋型は、1つの実施形態では、特に平坦な底部を有していてよく、上記の第1区画および上記の第2区画は、少なくとも部分的に、上記の平坦な底部における凹みの形態で形成されていてよい。上記の凹みは特に、最大の安定性および切断性のために、円錐形またはピラミッド形の切頭体として形成されていてよい。本発明の実施形態による包埋型では、上記の第1区画および上記の第2区画は、上記の包埋型に形成された分割構造体によって分割される部分を有していてよい。
【0026】
本発明の実施形態によると、第1区画および第2区画は、異なるサイズで形成されていてよいか、または共通平面において異なる断面を有し、この共通平面は特に、分かれていない内部空間の長手方向軸線に対して垂直である。特に、このような共通平面における線は、第1区画および第2区画を横断し、この線と第1区画との間の上記の横断の長さは、この線と第2区画との間の上記の横断の長さよりも短い。上記の線は特に、上述したステップにおける切断の上記の垂直方向に対応する。したがって、このような構成では(面積の意味において)より大きな、または少なくともより長い第2切片または「ダミー」切片が形成可能であり、より少ない切断動作で、切片リボンにおける同じ累積長さに到達可能である。
【0027】
第1区画および第2区画を異なる寸法で形成するか、または異なる断面を有することの別の利点は、ブランク切片と、サンプルを有する切片とが、サンプルブロックを取り扱う際に裸眼で容易に識別可能なことである。より小さい区画にサンプルが配置される場合、ユーザは、光学的な支援がなくても、ブランク区画とサンプル区画とを後で区別することができる。
【0028】
本発明の実施形態を説明する添付の図面を参照して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の1つの実施形態に従って使用可能なミクロトームを略示する図である。
図2】本発明の1つの実施形態による包埋型を略示する図である。
図3】本発明の別の1つの実施形態による包埋型を略示する図である。
図4】本発明の1つの実施形態による方法のステップを略示する図である。
図5】本発明の別の実施形態による方法における切断動作を略示する図である。
図6】本発明の1つの実施形態による方法を手順計画で略示する図である。
図7】本発明の1つの実施形態による方法を手順計画で略示する別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面において、同一の機能または技術的実現の要素は、同一の参照番号で示されており、簡潔さのためだけに繰り返しの説明を省略する。装置要素に関する説明は、対応するステップに適用可能であり、逆もまた同様である。
【0031】
図1には、本発明の1つの実施形態によるミクロトーム100が簡略化された側面図で示されている。
【0032】
ミクロトーム100は特に、図示した実施例の場合のウルトラミクロトームとして設計可能であり、ミクロトーム100の動作は、当技術分野において公知のあらゆるタイプの制御ユニット150を使用して制御可能である。制御ユニット150は特に、双方向の矢印によって示したように有線または無線通信リンクを介してウルトラミクロトーム100に接続された計算および評価ユニットとして形成されていてよい。明示的に示したものとは異なり、制御ユニット150はまた、ミクロトーム100もしくはそのハウジングに、またはパーソナルコンピュータシステムもしくはワークステーションに収容可能である。
【0033】
ウルトラミクロトーム100は、サンプルアーム104に取り付けられたサンプルホルダ108を有し、このサンプルホルダ108により、矢印10a~10dで示したように、サンプルアーム104に取り付けられたサンプルブロック700を移動させることができ、これにより、「切断窓」10eにおいてサンプルを切断することができる。ウルトラミクロトーム100における切断は特に、ウルトラミクロトーム100のブレード304に向かって、図示した水平方向10aにサンプルブロック700を前進させることと、上記のブレード304のブレードエッジに対して直角な方向10bにおいて、垂直方向下方にサンプルブロックを移動させることと、次いで水平方向10cにサンプルブロックを後退させることと、方向10dにサンプルブロックを上方に移動させてこのプロセスを再スタートできるようにすることと、を有していてよい。これらの移動動作が一緒になって、「揺動」移動と前進および後退とが、複数のステップで形成され、特に、衝突を回避する量で行われ、10aによる前進は付加的に、所望の切片厚さに対応する量の前進を有する。
【0034】
上で説明したように、また以下でさらに説明するように、第1部分リボンおよび第2部分リボンを作製することを含む本発明の実施形態によると、サンプルブロック700は、第1部分リボンと第2部分リボンとを作製する間、ならびに選択的にはこれらのそれぞれの切片を作製する間に後退させられ、これにより、任意の順序および個数の第1切片および第2切片、または任意の長さおよび順序の部分リボンが作製可能である。これは、例えば米国特許出願公開第2015/0135917号明細書に開示されているような従来技術による方法に対する本発明の実施形態の本質的な利点であり、「サンプル」切片および「ダミー」切片は、同じサンプルブロックから、例えば米国特許出願公開第2015/0135917号明細書のサンプルブロック904等から作製される場合、後退することなく常に単一の切断動作で切断され、したがってつながっており、これにより、「サンプル」切片と「ダミー」切片との固定の順序が必須である。
【0035】
10Bによる下方移動は、以下にさらに説明するように、好ましくは異なる速度で行われ、サンプルブロック700は、下方移動の第1フェーズにおいて、比較的速くブレード304に接近し、その後、サンプルブロック700は第2フェーズにおいて、所望のより遅い切断速度で切断され、その後、再び第3フェーズにおいて再び切断速度よりも高い速度でブレード304から離れる。
【0036】
サンプルアーム104は、それ自体公知であってよく、したがって詳細には説明しない、ハウジング102に組み込まれた移動ユニットに接続されている。ウルトラミクロトーム100の手動による調整または操作は、ハンドル110および個々にラベル付けされていない別のハンドルを使用して行うことができる。ウルトラミクロトーム100の動作、すなわち切片の形成は、観察顕微鏡106を使用して観察可能である。
【0037】
ブレードユニット300は、大きく拡大されて示されており、横断面図で図解されている。ブレードユニット300のブレード304を使用し矢印10a~10dによって示したそれぞれサイクルにおいて超極薄切片が作製される。以下の図面を参照してさらに詳細に説明するように、相応に作製される切片は互いに付着し、切片リボンを形成し、この切片リボンは、ブレード304も保持する液体槽302に形成される液体面306上に浮遊させられる。移送要素400は、液体に沈められ、また持ち上げられて、液体槽302から切片リボンを「釣り上げ」、これらを電子顕微鏡に移送することができる。
【0038】
ウルトラミクロトーム100は、従来技術から一般に公知であるように、図1に点線で示された冷却チャンバ、ならびに任意の別の装置、例えば、照明装置、温度制御装置およびこれに類するもの等を有していてよい。
【0039】
ウルトラミクロトーム100は特に、冒頭で述べたように、また例えば、Horstmann, H.等によるSerial Section Scanning Electron Microscopy (S3EM) on Silicon Wafers for Ultra-Structural Volume Imaging of Cells and Tissuesにさらに詳細に記載されているように、ssSEMにおいて使用するための切片リボンを作製するために使用可能である。PLoS ONE 7(4), 2012, e35172、すなわち、組織微細構造の高解像度の3次元(3D)イメージングは、切片に基づいて行うことが可能である。限定された細胞以下のボリュームの検査を可能にするが、大きなボリューム、全体細胞または全体組織の完全な微細構造の再構成がめったに行われない、以下に説明するssTEMとは対照的に、これは、ssSEMを使用して可能である。しかしながら、本発明の実施形態は、既に冒頭で述べたように、ssTEMまたはssSEMのいずれにも限定されない。
【0040】
ssSEMでは、名称が示すように、組織の連続的な切片化が、特に導電性ウェハを支持体として使用し、走査電子顕微鏡法(SEM)と組み合わせられる。ssSEMでは、例えば、厚さ35nmの数百個までの切片を有する切片リボンは、図示したようなウルトラミクロトーム100を使用して生成可能であり、その後、図1に示した移送要素400等の移送要素によって移送されるウェハにおいて、例えば3.7nmの横方向のピクセル分解能でイメージング可能である。ssSEMでは、切片から後方散乱される電子は一般に、SEMの対物レンズにおける検出器(「レンズ内検出器」)によって記録される。このような方法から結果的に得られる画像は、従来のTEMの画像のそれに質的に匹敵する。ssSEMの主な利点は、上述したように、例えば2~3桁の立方マイクロメートル範囲で、比較的大きな構造体を再構成するために使用できることである。
【0041】
ssTEMの方法は、例えば、Harris, K.M.等によるUniform Serial Sectioning for Transmission Electron Microscopy, J. Neurosci, 26(47), 2006, 12101-12103に記載されている。より慣用の方法を代表しているにもかかわらず、ssTEMは、特にその分解能が高いため、共焦点顕微鏡法等の、3次元サンプル情報を再構成する別の方法よりも優れている可能性がある。
【0042】
サンプルは、ssSEMおよびssTEM等の方法用に、処理のための既知の仕方で準備され、例えば、アガロースまたは適切なプラスチックに包埋されてサンプルブロック700を形成する。包埋されたサンプルから、適切なフィード速度を調整することにより、図1に示したように、ウルトラミクロトーム100等のウルトラミクロトームを使用して切片リボンが作製され、このようなリボンでは個々の切片が互いに付着しており、「付着する」とは、切片のエッジにおける比較的弱い結合を指すが、つながった材料結合を意味しない。このようにして生成される切片リボンは、最初のうちはなおブレードにくっついたままであるが、液槽において浮遊可能であり、図1の移送要素400によって略示したように、後続の検査のために、適切な移送装置(いわゆるスロットグリッド、またはssSEMの場合はウェハ)によってそこから除去される(「釣り上げられる」)。生成した切片リボンを液槽において浮遊させないようにし、その代わりに適切な支持体または移送要素、例えばウェハにこれらを直接に移送することも可能である。
【0043】
検査対象体における単一の切片の位置は、生成した切片リボンにおけるその位置に対応し、逆も同様である。したがって、対応する手順において極めて重要であるのは、このようにして、全体的なサンプルにおける個々の切片の位置を示すことができるようにするために、中断されておらずかつ可能な限り長い切片リボンを生成すること、またはこの切片リボンにおいて好ましくは、何らか理由によっていくつかが失われることなく、全ての切片がイメージング可能であることである。しかしながら、例えば、特定の包埋材料によってはこれが常に証されるとは限らない。長い切片リボンに対しては、対応して長い液槽または移送装置が必要であり、切断の取扱いはより困難になる。さらに、切片リボンの目標を定めた生成は一般に、実践において簡単ではないことが証明されており、熟練および長期のトレーニングが必要である。
【0044】
液槽を使用する場合、複数の切片リボンを作製する1つの仕方は、操作ツール(古典的には睫毛)を使用して、それぞれ所望の個数の切片の後、ミクロトームブレードから現在付着している切片リボンを分離し、後続のリボンの切断を妨げない、液槽の領域に送り出すことである。このようにして十分な個数の切片リボンが作製されると、移送装置はゆっくりと上方に液体から出るように持ち上げられる。液体は流れ出てよく、この結果、移送装置に付着した切片リボンが得られる。一般に、約200個までの切片がこのようにして作製可能である。液槽を使用しない場合、この説明は相応に適用される。
【0045】
対応するプロセスの欠点は、特にオペレータよって操作される場合、切片リボンの切片が互いに確実に付着しないことが多いということである。したがって、例えば、リボン部分は、液体面上で離れ離れになることがあり、これにより、これらのリボン部分は、その後、切断シーケンスにもはや割り当てられなってしまう。さらに、対応する切片リボンの曲がりが観察され得ることが多く、これにより、切片リボンは、エッジ構造または他のリボンに接触してしまう。結果として、得られた断片は、裂けて、離れ離れになってしまうことがある。液槽が使用される場合、切片リボンまたはそれらの断片が液体境界に接触すると、これらは、移送装置に確実には、または全く沈着されないが、優先的に液体境界に付着し続ける。したがって、切片が失われてしまうことがある。別の欠点は、説明した仕方では、移送装置の低い充填率だけしか達成できないことである。これは一般に最大で10%であるため、対応するプロセスでは頻繁な移送が必要である。さらに、リボンを損傷してしまう可能性があるため、操作ツールによる操作はリスクを伴う。特に、裂け目および/または孔または皺が生じてしまうことがある。
【0046】
例えば米国特許出願公開第2015/0135917号明細書に記載された択一的な方法は、1つまたは複数の切片リボンを形成することであり、この切片リボンのうち、作製した最後の切片は、ミクロトームのブレードに引き続いて付着するのに対し、前に作製した複数の切片は、切片リボンの一部として液体面上で浮遊し、また新しい切片がつながってリボンに加えられ、したがって伸長するにつれて、徐々に前方へ押し出されてブレードから離れる。
【0047】
このようにして、複数の平行な切片リボンが形成される場合、300個までの切片が作製可能である。これに関連して、米国特許出願公開第2015/0135917号明細書にも記載されているように、切片リボンは、適切な移送装置を使用して液体からすくい出される。しかしながら、このような移送装置は、後の観察には使用できない周辺領域を有しているため、周辺領域に配置された切片は、後続の検査には失われてしまい、中央の近くに位置決めされた切片分のみが使用できる。換言すると、後のステップにおいて関心対象の切片を分析できるようにするために、ブレードから特定の間隔で、これらを位置決めする必要がある。これは一般に、冒頭でも既に述べたように、いわゆる「プッシャ」切片、「リリース」切片、「ダミー」切片または「ブランク」切片(これらの用語は、本明細書では同義的に使用される)を使用することによって実現され、これらは、切片リボンを延長させ、したがって移送装置の中央領域に関心対象の切片を押し込むという目的だけを有する。
【0048】
このようなリリース切片は、状況によっては、貴重なサンプル材料を消費してしまうことになるため、これらは一般に、サンプルまたはその貴重な部分を有しないサンプルブロックの一部から形成される。相応に使用されるブランク切片は、移送装置もしくウェハ、またはそれらの観察可能な領域外にあるため、実際の検査には失われる。リリース切片が、サンプルを含む領域から取得されることになれば、リリース切片の生成は、より大きなサンプル領域にわたる連続的な切片生成は可能にはならない。なぜならば、一連の関心対象の切片は、後続の試験において欠落されることになる、位置決めに必要なリリース切片によって繰り返して中断されるからである。本発明の1つの実施形態により、従来技術による方法よりも利点が得られる。というのは、本発明により、少なくとも1つのサンプル切片またはプッシャ切片を含む第1部分リボンおよび第2部分リボンをそれぞれ形成する、同じサンプルブロックから、サンプル切片および「プッシャ」切片を作製することが提案されるだけでなく、上述のように、サンプルが合間にブレードから後退させられるため、任意の所望の順序でかつ互いに無関係に、第1切片および第2切片または部分リボンの作製が可能になるためである。
【0049】
前に使用したようなより一般的な言い回しにおいて、切片リボンは、本発明の実施形態では、サンプルブロックの1つまたは複数の第1切片を備えた第1部分リボンと、サンプルブロックの1つまたは複数の第2切片を備えた第2部分リボンとを有するように作製可能であり、第1切片または第2切片は、サンプルを有しなくてもよいため、したがって特に「プッシャ」切片として使用されてもよい。本発明の実施形態では、サンプルブロックの第1表面領域から第1部分リボンを作製し、サンプルブロックの第2表面領域から第2部分リボンを作製し、第2表面領域は、第1表面領域とは異なる。以下で説明するように、第1表面領域および第2表面領域は、包埋型の異なる区画に形成される、サンプルブロックの部分の表面領域であってよいが、これらは、トリミングによって共通前駆体表面領域から形成されてもよい。第1表面領域と第2表面領域とが、(対応して適合された型においてこれらを作製することによるか、またはトリミングによるかのいずれかで)不連続であるこのような実施形態とは対照的に、本発明のさらに別の実施形態では、表面領域は、ミクロトームのブレードに対して再位置決めされる連続領域であってもよい。以下では、前の択一的な形態、すなわち、第1表面領域と第2表面領域とが、適切な型において作製されるため、不連続である方法の説明に取り掛かる。
【0050】
図2Aおよび図2Bならびに図3A図3Cでは、本発明の特定の実施形態による包埋型500が、長手方向図(図2Aおよび図3A)および下面図(図2B図3Bおよび図3C)で示されている。いずれの場合も、包埋型500は、壁502によって取り囲まれかつ選択的に蓋504によって覆われる実質的に円筒形の共通内部空間506を有する。内部空間506からは区画508および510が延びており、これらは内部空間506とつながっている。内部空間506および区画508,510は、包埋型500において硬化可能な包埋媒体512で満たされていてよい。区画508,510はさらに、分割要素509によって分割可能であるが、これは、本発明の実施形態、特に図3A図3Cに示した実施形態において必須ではない。
【0051】
前述した方法において一般に使用可能な市販の包埋型は多数あるが、これらの従来の包埋型は、本発明の実施形態による包埋型500と比較すると、特定の欠点を有する。従来技術による包埋型は一般に、円筒形であり、後続の準備作業を少なくするために、すなわち切り落とされる材料の量を少なくするために、テーパ状の先端部を有することがある。しかしながら、この種の包埋型における顕微鏡サンプルの包埋は実質的に、本発明の実施形態のように、包埋型の内部空間にサンプルの配置することと、適切なタイプの包埋媒体であって、本発明が関係する分野において、ポリエステルワックスまたはエポキシ材料等の「リボニング」包埋媒体と称される包埋材料を上記の内部空間に充填することと、型において上記の包埋媒体を硬化させて、図1に示したサンプルブロック700等の「サンプルブロック」を形成することと、を有する。本発明の実施形態によると、このようなサンプルブロックには、サンプルブロック700のそれぞれの表面領域において独立して任意の順序および任意の個数で、独立した切断動作を可能にするために、不連続表面領域が設けられていてよい。
【0052】
型からサンプルブロック700を取り出した後(このプロセスステップに対し、型が、所定の破断点または切り離しストリップを有し得る)、従来技術による方法および本発明の実施形態による方法では、形成されたサンプルブロック700に「トリミング」ステップを行うことができ、この「トリミング」ステップでは、ウルトラミクロトームブレードの寸法に切断領域を適合させるために、余分な包埋媒体を除去することができる。トリミング作業は、テーパ状の包埋型、すなわち、サンプルが配置可能な「先端部」を有する包埋型を使用することによって少なくすることが可能であり、この「先端部」は次いで、切り取られる比較的に少量の包埋媒体によって包囲されてよい。部分的にマルチウェルサンプルプレートに類似しているマルチウェル包埋型も公知である。マルチウェル包埋型は、本明細書で前述した複数の個別の包埋型を共通の支持体に有し、この共通の支持体により、マルチウェル包埋型が組み合わされて形成可能であるか、またはこの共通の支持体にマルチウェル包埋型が挿入可能である。
【0053】
しかしながら、従来技術による包埋型のいずれも、位置決めのためにブランク切片を作製することができる領域から局所的に明確に標本を分離することはできない。実質的に、現在利用可能な型は、包埋型の内部空間の中央または周囲であり得る、ほとんど定められていない位置にサンプル材料が位置決めされるように設計されている。換言すると、従来技術によると、サンプルは、サンプル型における特定の領域に限定されておらず、オペレータは、一方においてサンプル切片を、また他方においてブランク切片を形成できる領域をあらかじめ定める可能性を有しない。このことは、位置決めのためのブランク切片の形成を著しく複雑にしてしまうことがある。
【0054】
既に上述した米国特許出願公開第2015/0135917号明細書には、サンプルを有しない包埋材料からのブランク切片の形成が開示されている。第1実施形態では、異なるサンプルブロックが使用され、一方はサンプルを含み、他方はサンプルを全く有しない。また第2実施形態では、単一のサンプルブロックの領域は、サンプルを有しないままに維持されて、このような領域により、切片化されたときにはブランク切片が作製される。しかしながら、第1実施形態では、ウルトラミクロトームが複数のサンプルブロックを保持できることが必要とされ、また第2実施形態では、異なる領域の構造的な分離部が存在せず、所望の位置からなお材料が出てしまい得るため、サンプル材料の位置決めは扱いにくいことが多い。さらに、このような従来の方法によると、「サンプル」切片と「ダミー」切片との順序は、これらが単一のブロックから作製される場合、交互になるように強く制限される。いずれの問題も、本発明の実施形態に従って設けられる包埋型と、これらが使用される、本発明の実施形態による方法とを使用することによって克服可能である。
【0055】
図2Aおよび図2Bに示すように、区画508,510は、包埋型500の分割された先端部の2つの半部として形成可能であるのに対し、図3A図3Bおよび図3Cに示すように、これらはまた、包埋型500の底部から延びる切頭ピラミッド(ピラミッド形切頭体)として形成されてもよい。サンプル600は、区画508,510の第1区画508に配置されるのに対し、区画508,510の第2区画510は空のままであり、すなわち、これには包埋媒体512だけが充填されている。上記の切頭体によって形成される第1表面領域および第2表面領域は、(構造的特徴ではない)点線によって取り囲まれており、703および705と示されている。
【0056】
図3Cに示したように、区画508,510は、紙面に対応する共通平面において、異なる寸法で形成されてもよいし、異なる断面を有してもよい。この図において一点鎖線として示されている、上記の共通平面内における、または紙面に対して平行な線は、第1区画508における横断の長さが、第2区画510における横断の長さよりも短くなるように第1区画508および第2区画510を横断している。以下に示すように、包埋型500に形成されるサンプルブロックが、上記の線に対応する方向に切断される場合、サンプル600の部分を有しないより大きな切片と、サンプル600の部分を含むより小さな切片とが形成可能である。ここでも、異なる寸法の切頭体によって形成される第1表面領域および第2表面領域は、(構造的特徴ではない)点線で取り囲まれており、703および705で示されている。これらは同様に、図示した実施例において異なる寸法で形成されている。
【0057】
したがって、本発明の対応する実施形態では、サンプル材料とブランク材料とが技術的手段、すなわち、別個の区画もしくはレセプタクル間の材料バリアによって別々に保たれるか、または個別の突出部が形成される包埋型500が使用される。したがって、サンプルおよびブランクのあらかじめ定めた位置が存在し、自動切片リボン作製に、特に3D TEM検査に、すなわち別個のサンプル切片およびブランク切片に必要な基本条件が満たされる。本発明に従って使用される包埋型により、3D TEM再構成のために自動的に連続的な切片を作製するために使用できない、すなわち位置決めだけに使用される切片のためサンプル材料の損失が大幅に低減される。
【0058】
本発明のこのような実施形態に従って、包埋型500を使用する基本的な着想は、第2試料用または単に空の包埋材料用のレセプタクルから局所的に分離されている別のまたは定められたレセプタクルにおいてサンプルを位置決めすることである。したがって、一般に、「1つの」第1区画または「1つの」第2区画に言及する場合、第1区画に類似しかつ第1区画の目的を有する少なくとも1つの別の区画と、第2区画に類似しかつ第2区画の目的を有する少なくとも1つの別の区画とが存在していてよい。
【0059】
従来技術の場合、例えば、米国特許出願公開第2015/0135917号明細書の対応する実施形態の場合のように、複数の異なるサンプルブロックを形成することと比較すると、説明したように型500を使用することの重要な利点は、ただ1つのサンプルブロック700を作製して使用することにより、準備および取付け時間が短縮され、これに対応して、使い勝手、信頼性および再現性が改善されることである。上述したように、従来技術とは対照的に、区画の間の機械的バリアが包埋型500内に存在するため、本発明の実施形態に従うと、サンプルはより確実に位置決め可能である。
【0060】
しかしながら、本発明の別の実施形態には、異なるタイプの、特に従来のタイプの包埋型を使用することが含まれていてよく、この際に上述したように、異なる区画は設けられないことに注意されたい。このような実施形態では、サンプル領域とブランク領域とがまだ物理的に分離されていない「前駆体」サンプルブロックが形成されていてよく、すなわち、異なる切片が最終的に作製される表面領域が、連続前駆体領域である。このような場合、サンプルブロックの作製は、前駆体サンプルブロックをトリミングして、切片が採取される表面領域を形成することを有していてよい。上記のトリミングの結果として得られるサンプルブロックの形状は、区画に分けられた型によって形成されるサンプルブロックの形状に対応していてよい。本発明のさらに別の実施形態において、切片が作製される表面領域が、サンプルブロックの連続表面領域として設けられている場合、これらの表面領域は、互いに並んで、特にブレードのエッジと平行に位置決めされてよく、また切片は、ブレードを横方向に再位置決めすることによってそこから形成可能である。
【0061】
本発明の実施形態に従って形成されるような、区画を備えた包埋型500に戻ると、包埋型500において包埋媒体512を硬化させることにより、図4A図4Dに示すようにサンプルブロック700が形成され、サンプルブロック700は特に、図3Aおよび図3Bに示すような包埋型を使用して作製可能である。図4A~4Dにはさらに、本発明の1つの実施形態による方法のステップが示されており、図4Aおよび図4Bには、図1の側面図に対応する側面図が示されており、また図4Cおよび図4Dには、図1に示したウルトラミクロトーム100の上方の位置からの、ウルトラミクロトーム100の長手方向に沿いかつ90°だけ回転した鳥瞰図が示されている。図も、そこに示した要素も共に縮尺通りには描かれていない。これは特に、わかりやすくするためにその厚さが大きく誇張されている切片に関する。図1に関連して既に示しかつ説明した移動は、ここにも示されており、図4Aおよび図4Bにおける矢印10a~10dと切断窓10eとによって示されている。
【0062】
図4Aに示したように、上述のように、また矢印10a~10dで示したようにサンプルホルダ108を移動させることにより、サンプル600を含む第1区画508に対応する、サンプルブロック700の部分702から切片802を形成することができる。したがって、前に「第1」切片と称したこれらの切片802のそれぞれにはサンプル600の一部が含まれる。図4Aに従って最初に「第1」切片802、すなわち、サンプル600の一部を有する切片802だけを有する、相応に形成される切片リボンは、800で示されており、また前には「第1部分切片」として称されていた。切片化の間に、サンプルブロック700とブレード304との間で相対的に横方向に移動させることにより、複数の切片リボン800が形成可能であり、これらの切片は、ブレード304に平行に付着しかつ上述のようにそれぞれ形成される。
【0063】
複数の第1切片を形成した後、サンプル600を含む第1区画508に対応する、サンプルブロック700の部分702は、図4Bにおいて誇張して示したように実質的に短くなる。結果として、サンプルが存在しない第2区画510に対応する、サンプルの部分704は、ブレードにアクセス可能である。すなわち、部分702と部分704とは、この実施例において、最初は同じ寸法であり、部分702は、切片を作製することによって短くなる。しかしながら、この実施形態はまた、例えば、図3Cに示すような異なる寸法のサンプルブロック部分に関連して使用可能である。したがって、図4Bに示したように、サンプルホルダ108を上述のように、また矢印10a~10dで示したように移動させることによって、サンプル600を含まない第2区画510に対応する、サンプルブロック700の部分704から切片804を形成することができる。したがって、前に「第2」切片と称されかつ「第2部分切片」を形成するこれらの切片804のそれぞれは、サンプルの部分を含む切片802の位置決めに使用可能である。ゆえに切片リボン800は、ブレード304の側方から第2切片804によって伸長され、ゆえに切片802は、移送要素400において位置決め可能である。ここでも切片化の間に、サンプルブロック700とブレード304との間で相対的に横方向に移動させることにより、複数の切片リボン800が相応に伸長可能であり、これらはブレード304に平行に付着する。
【0064】
第1切片802および第2切片804を含む2つの切片リボン800を形成して、第1切片802がサンプル600の部分602を含むことは、図4Cおよび図4Dにおいてここでも鳥瞰図で示されており、サンプルブロックの部分702および部分704は、単純化の理由で、それぞれの他の部分704,702が存在しないかのように示されている。同一の要素の全てに参照番号が付されているわけではない。図示したように、第2切片804によって切片リボン800を伸長することにより、すなわち、第2部分切片を形成することにより、第1部分切片における第1切片802は、移送要素400の窓402に対応するように位置決め可能である。
【0065】
第1区画508および第2区画510を有する包埋型500が使用される本発明の実施形態では、1つまたは複数の第1切片802または対応する第1部分リボンの形成には特に、第1区画508に形成される、サンプルブロック700の部分702の位置決めが先行し、これにより、部分702は、使用されるミクロトーム100のブレード304によって切断可能であり、1つまたは複数の第2切片804または対応する第2部分リボンの形成には特に、第2区画510に形成される、サンプルブロック700の部分704の位置決めが先行し、これにより、部分704は、ミクロトーム100のブレード304によって切断可能である。いずれの場合にも、切片の形成は、特に図4A図4Dに示したように、ミクロトーム100のブレード304に向かって水平方向にサンプルブロック700を前進させることと、上記のブレード304のブレードエッジと直角な方向において垂直方向下方にサンプルブロック700を移動させることと、その後、上記の水平方向にサンプルブロック700を後退させることと、このプロセスをステップで再スタートさせることができるようにサンプルブロック700を上方に移動することと有し、これらのステップが一緒になって「揺動」移動が形成される。後退は特に、それぞれ任意の個数の第1切片802および第2切片804を有する、第1部分リボンおよび第2部分リボンを形成する間に行われる。不連続表面領域703,705を作製するためにトリミングが行われる場合、実質的に同じことが適用される。
【0066】
矢印10aおよび10cで示した前進および後退は特に、サンプルキャリア108またはサンプルブロック700の部分と、ブレード304およびミクロトーム100の他の部分との衝突を回避する量で、また大きな間隔にわたって行われ、前進10aは付加的に、所望の切片厚さに対応する量での前進を有する。矢印10eで示した下方移動は好ましくは、移動中に異なる速度で行われ、これにより、サンプルブロックは、下方移動の第1フェーズにおいて、比較的高速にブレード304に接近し、その後、ブロック700は、第2フェーズにおいて、1mm/s等のより遅い所望の切断速度で切断され、それぞれの実際の切断の後、サンプルブロック700は、移動の第3フェーズにおいて、再び切断速度よりも高い速度でブレードから離れる。
【0067】
本発明の実施形態では、矢印10a~10cで示したような移動にはそれぞれ、特定の移動範囲が含まれていてよく、矢印10bおよび10dで示した移動には、0.1mm~5mm、好ましくは0.2~2mmの範囲が、また矢印10aおよび10cで示した移動には、0.1mm~0.5mm、好ましくは0.2~0.3mmの範囲が含まれていてよい。
【0068】
サンプルブロックの2つの部分702,704は、この点について、これらがサンプル型500の区画508,510において、またはトリミングによって形成されるかとは無関係に、ミクロトーム100を使用して、最初に共通の長さに切断可能である。その後、1つまたは複数の切片リボン800の第1切片802、したがって第1部分リボンが形成可能である。すなわち、サンプルブロック700に対するブレード304の第1横方向位置において、第1リボン800の第1切片802が形成可能であり、次いで、サンプルブロック700に対するブレード304の横方向位置は、第2切片リボン800の第1切片802が、したがって別の第1部分リボンが形成可能であるように変更可能である。第1切片リボンおよび第2切片リボン800の第1切片802は両方とも、ブレード304のエッジに付着し、そこから平行に延びる。第1切片802を含む付加的な切片リボン800、したがって第1部分リボンはこのようにして形成可能である。ブレード304とサンプルブロック700との間の相対位置の変更には、ブレード304のエッジに実質的に平行な方向に、またこれに対応して、ブレード304、またはブレード、サンプルブロック700もしくはその両方を支持する構造体を移動することが含まれていてよい。
【0069】
本開示の任意の箇所において使用される絶対的および/または相対的な空間表示、例えば「上」、「下」および「そばに」等の表示は特に、対応して指定される要素、例えば、サンプルブロック700の部分702,704または表面領域703,705の空間配置を指す。1つの要素が「他の要素の下方に」配置されている、2つの要素の配置によって特に理解されるのは、これらの2つの要素の下側の要素の上端部が、2つの要素の上側の要素の下端部よりも低い測地高さにあるかまたは同じ測地高さにあり、かつ水平面における2つの要素の投影が重なることである。
【0070】
それぞれが第1の切片802だけを含む1つまたは複数の切片リボン800またはリボン部分が形成された後、上記の第1区画508に形成されるかまたは相応にトリミングされかつサンプルを含む、サンプルブロックの部分702は、上記の水平方向における、第1切片802の累積厚さに対応する量だけ短縮され、また選択的にはさらに短縮可能である。したがって、上記の第2区画510に形成されたサンプルブロック700の部分704は、ブレード304にアクセス可能であり、切断位置に移動させることができる。したがって、これらの切片リボン800、またはこれらの切片のリボン800のそれぞれは、第2切片804、すなわち第2部分リボンを形成することにより、または換言すれば、第1切片802だけを前に有していた、切片リボン800の開始部に第2切片804をくっつけることによって伸長可能である。
【0071】
したがって、本発明に従って使用可能なウルトラミクロトームでは、第1区画および第2区画に形成されるサンプルブロックの複数の部分は、互いに垂直方向上方に配置可能である。換言すると、上記のサンプルブロックは、上記の第1区画に形成された、サンプルブロックの上記の部分が最初に、上記の第2区画に形成された、サンプルブロックの上記の部分の垂直方向下方に、かつ上記の部分との共通垂直平面に配置されるように、上記のミクロトームに取り付けられる。
【0072】
しかしながら、今しがた述べた本方法は、サンプルブロックの部分の、互いの上への特定の配置を含め、本発明のいくつかの実施形態の1つだけを表しているにすぎないことに注意されたい。別の1つの実施形態では、例えば、サンプルブロックおよびその部分とリザーバとの間に特定の距離を形成するために、液体リザーバに対して所定の間隔を置いて、または液体リザーバに対して所定の角度で取り付けられたウルトラミクロトームブレードが使用可能である。
【0073】
図5A図5Cには、本発明の実施形態に従い、サンプルブロック700によって行われる切断動作が示されており、個々の切断は矢印1および2で示されており、図2B図3Bおよび図3Dのように、ブレード304の方向からサンプルブロック700を見ている。したがって、図5A図5Cで使用される参照符号については、図2B図3Bおよび図3Dを参照されたい。
【0074】
図5A図5Cに示した実施例では、3つの切断動作1が、サンプルブロック700の第1表面領域703において行われ、1つの切断動作2は、サンプルブロック700の第2表面領域705において行われるが、これらの個数は、「サンプル」切片および「ダミー」切片(第1切片および第2切片ならびに第1部分リボンおよび第2部分リボン)を形成するのに有用であると考えられる仕方において任意に変更可能である。例えば、表面領域703には、サンプル600の一部が含まれていてよく、表面領域705には、サンプルの一部を含まなくてもよく、またはこの逆でもよく、これにより、本発明の実施形態では、表面領域703,705のいずれかを切断して、任意の個数および順序で、部分リボンに「サンプル」切片および「ダミー」切片を作製してもよく、このことは本発明の特別な利点である。
【0075】
すなわち、「第1」切片または「サンプル」切片802を含む第1部分リボンは、サンプルブロック700の表面領域703,705のいずれか(この場合、これを「第1」表面領域と称することができる)から作製可能であり、「第2」切片または「ダミー」切片804を含む第2部分リボンは、別の表面領域703,705(この場合、これを「第2」表面領域と称することができる)から作製可能である。
【0076】
基本的に図5Aに類似している図4A図4Dに既に示したように、不連続表面領域703,705は、ミクロトーム100のブレード304によって切断されて、第1切片802および第2切片804を形成し、これらの表面領域703,705は、互いに垂直方向上方に、すなわち、図5A図5Cの図において水平である、ブレード304のエッジの方向に対して横断的な線に沿って配置されている。図5Aに示したように、最初の3つの切片は、切断動作1を使用して表面領域703から作製され、その後、1つの切片が、切断動作2を使用して表面領域705から作製される。少なくとも切断動作1と2との間、すなわち、表面領域からそれぞれの切片または部分リボンを作製する間、サンプルブロック700はブレード304から後退させられる。したがって、第1切片および第2切片を形成する順序ならびにそれらの個数は、本発明の実施形態によれば自由に選択可能である。
【0077】
図5Bには、本発明の択一的な1つの実施形態による切断が略示されている。ここでも、不連続表面領域703,705が、ミクロトーム100のブレード304によって切断されて、第1切片802および第2切片804が形成されるが、図5Bによると、これらの表面領域703,705は、互いに並んで、すなわち、図5A図5Cの図において水平である、ブレード304のエッジの方向に平行な線に沿って配置されている。この実施形態では、サンプルブロック700は、切断動作1と2との間で、ブレード304から後退させられ、付加的に横方向に再位置決めされる。また、このような実施形態では、従来技術による方法とは対照的に、第1切片および第2切片を形成する順序ならびにその個数は自由に選択可能である。
【0078】
図5Aおよび図5Bに略示した実施形態では、第1表面領域703および第2表面領域705は、適切な包埋型を使用するか、または上で説明した対応するトリミングのいずれかによって、サンプルブロック700の不連続表面領域として形成されているのに対し、図5Cには、第1表面領域703および第2表面領域705が、サンプルブロック700の連続表面領域として形成されている1つの実施形態が示されている。切断動作1および2は実質的に、図5Bについて前に説明したように、すなわち、切断動作1および2の間にブレード304からサンプルブロック700を後退させ、付加的に横方向に再配置することによって行うことができる。
【0079】
図6には、本発明の1つの実施形態による方法900が手順計画で略示されている。
【0080】
前に繰り返し説明したように、電子顕微鏡における検査用に顕微鏡サンプル600を準備するために提供される方法900は、サンプルブロック700を作製する包埋媒体512において上記のサンプル600を包埋するステップ902と、説明したように、切片リボン800を作製するミクロトーム100を使用して上記のサンプルブロック700を連続して切片化するステップ906とを有する。方法900では、同様に説明したように、包埋型500を使用して上記の包埋するステップ902を行う。この方法は、ステップ904によって一般に示したように、上記のサンプル600を型500の第1区画508に配置するが、第2区画510には配置しないことと、上記の第1区画508と、上記の第2区画510と、型500の分かれていない内部空間506とに少なくとも部分的に包埋媒体512を充填することと、上記の包埋媒体512で硬化させることと、を有する。上記の連続して切片化するステップ906には、上記の第1区画508において硬化させた、サンプルブロック700の部分702から上記の第1切片802を形成することと、上記の第2区画510において硬化させた、サンプルブロック700の部分704から1つまたは複数の上記の第2切片804を形成することと、が含まれている。ステップ908では、相応に形成した切片リボン800を液体面306から釣り上げることができる。
【0081】
図7には、本発明の別の1つの実施形態による方法1000が手順計画で略示されている。
【0082】
方法1000では、実質的に上で説明したように、ブレード304を有するミクロトーム100を使用して、サンプルブロック700から切片リボン800を作製する。前述したように、サンプルブロック700の1つまたは複数の第1切片802を備えた第1部分リボンと、サンプルブロック700の1つまたは複数の第2切片804を備えた第2部分リボンとを有するように切片リボン800を作製し、サンプルブロック700の第1表面領域703から第1部分リボンを作製し、サンプルブロック700の第2表面領域705から第2部分リボンを作製し、第2表面領域705は、第1表面領域703とは異なる。
【0083】
方法1000には、サンプルブロック700を作製するステップ1002が含まれていてよく、第1表面領域703と第2表面領域705とは、サンプルブロック700の、連続表面領域または不連続表面領域として形成されていてよい。第1表面領域703と第2表面領域705とが、不連続表面領域として形成される場合、サンプルブロック700を作製するステップ1002には、方法900または上で説明したような任意の別の同等の実施形態について、実質的に上で説明したようなステップ、すなわち、上で説明したような区画508,510を備えた包埋型500を使用することによるステップが含まれていてよい。択一的な1つの実施形態では、サンプルブロック700を作製するステップ1002には、前駆体ブロック700を形成することと、前駆体ブロック700をトリミングして不連続表面領域703,705を形成することと、が含まれていてよい。さらに別の択一的な1つの実施形態には、連続の第1表面領域703および第2表面領域705を備えたサンプルブロックを形成することが含まれる。
【0084】
次いで、方法1000は、サンプルブロック700から切片リボン800の第1(「サンプル」)切片802を形成するステップ1004によって続く。ステップ1006では、目標または所望の個数の第1切片802が形成されていることが特定され、したがって第1部分リボンの形成が完了する。そうでない場合、本方法は、ステップ1004に戻り、別の第1切片802を形成し、したがって第1部分リボンを伸長する。目標または所望の個数の第1切片802が形成されている場合、方法1000は、ミクロトーム100のブレード304からサンプルブロック700後退させるステップ1008に進み、ステップ1004のそれぞれのインスタンス間には1つのステップを付加的に行ってよい。
【0085】
後続のステップ1010では、切片リボン800の第2(「ブランク」)切片804をサンプルブロック700から形成する。上のステップ1006と同様に、ステップ1012では、目標または所望の個数の第2切片804が形成されていることが特定され、したがって第2部分リボンの形成が完了する。そうでない場合、本方法は、ステップ1010に戻り、別の第2切片804を形成し、したがって第2部分リボンを伸長する。目標または所望の個数の第2切片804が形成されている場合、方法1000は、ステップ1014に進み、このステップ1014では、方法1000が完了したか、または別の切片リボン800を形成するために繰り返すべきであるかを決定することができる。
【符号の説明】
【0086】
1,2 切断動作
10a~10b ミクロトーム移動
10e 切断窓
100 ウルトラミクロトーム
102 ハウジング
104サンプルアーム
106 観察顕微鏡
108 サンプルホルダ
110 ハンドル
150 制御ユニット
300 ブレードユニット
302 液体槽
304 ブレード
306 液体面
400 移送要素
500 包埋型
502 壁
504 蓋
506 共通内部空間
508 第1区画
510 第2区画
509 分割要素
600 サンプル
602 サンプル部分
700 サンプルブロック
702 サンプルブロックの第1部分
703 第1表面領域
704 サンプルブロックの第2部分
705 第2表面領域
800 切片リボン
802 第1切片
802 第2切片
900 方法
902 包埋するステップ
904 サンプル配置、硬化ステップ
906 連続して切片化するステップ
908 釣り上げステップ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【国際調査報告】