(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫の治療に使用するためのメルフルフェン
(51)【国際特許分類】
A61K 38/05 20060101AFI20240628BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K38/05
A61K45/00
A61K31/573
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500258
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022068974
(87)【国際公開番号】W WO2023281007
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513267523
【氏名又は名称】オンコペプティデス エービー
【氏名又は名称原語表記】Oncopeptides AB
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドバリ、ヤーコブ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA14
4C084BA31
4C084CA59
4C084MA02
4C084MA55
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4C084NA05
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4C084ZB261
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4C084ZC751
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4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
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4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、75歳以上の、幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は、幹細胞移植を受け、前記移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療における、メルフルフェン(メルファランフルフェナミド、L-メルファラニル-4-フルオロ-L-フェニルアラニンエチルエステル)又はその塩の特に有益で新規な治療的使用に関する。メルフルフェン、特に、デキサメタゾンと組み合わせたメルフルフェンが、驚くべきことに、これらの患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に有効であることが見いだされた。より具体的には、これらの患者集団において、メルフルフェンは、多発性骨髄腫の他の治療と比較して優れた抗新生物活性を示すことが見いだされた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、前記移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩。
【請求項2】
前記メルフルフェンが、用量約1~150mg(対イオンの質量は除く)で投与される、請求項1に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩。
【請求項3】
前記メルフルフェンが、用量1~50mg(対イオンの質量は除く)(例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50mg)で投与される、請求項2に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩。
【請求項4】
メルフルフェンの用量が、1~42日(例えば21~35日、特に21、28、29、30又は35日)のサイクルの1日目に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩。
【請求項5】
メルフルフェンの用量(塩の質量は除く)が、非経口投薬として注入速度0.3~1.8mg/分で(例えば、非経口投薬として注入速度1.1~1.8mg/分で)投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩。
【請求項6】
前記メルフルフェン又はその塩が、1種以上の別の治療剤と、同時に、逐次的に、又は別々に、投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩。
【請求項7】
前記1種以上の別の治療剤が、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)から選択され、好ましくは、前記1種以上の別の治療剤が、デキサメタゾン、ダラツムマブ及びボルテゾミブから選択されるか、又はB細胞成熟抗原に対する抗体(例.ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(例.セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(例.シルタカブタゲン)から選択され、より好ましくは、前記別の治療剤がデキサメタゾンである、請求項6に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩を含む、医薬製剤。
【請求項9】
多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、前記移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項10】
前記患者に、メルフルフェン又はその塩と、同時に、逐次的に、又は別々に、1種以上の別の治療剤を投与し、前記1種以上の別の治療剤が、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)から選択され、好ましくは、1種以上の別の治療剤が、デキサメタゾン、ダラツムマブ及びボルテゾミブから選択されるか、又はB細胞成熟抗原に対する抗体(例.ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(例.セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(例.シルタカブタゲン)から選択され、より好ましくは、前記別の治療剤がデキサメタゾンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを判定し、前記患者が幹細胞移植を受けていない場合に、前記患者にメルフルフェン若しくはその塩を投与すること、
前記患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを判定し、前記患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた場合に、前記患者にメルフルフェン若しくはその塩を投与すること、
前記患者が75歳以上であるかどうかを判定し、前記患者が75歳以上の場合に、前記患者にメルフルフェン若しくはその塩を投与すること、及び/又は、
前記患者が幹細胞移植を受け、前記移植から少なくとも36か月後に疾患が進行したかどうかを判定し、前記患者が幹細胞移植を受け、前記移植から少なくとも36か月後に疾患が進行した場合に、前記患者にメルフルフェン若しくはその塩を投与すること
を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、前記患者が幹細胞移植に適していない場合に、前記患者にメルフルフェン又はその塩を投与することを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、前記移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療のための医薬品の製造における、メルフルフェン又はその塩の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン及び1種以上の別の治療剤を含むキットであって、前記1種以上の別の治療剤が、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)から選択されるか、又はB細胞成熟抗原に対する抗体(ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(シルタカブタゲン)から選択され、好ましくは、前記1種以上の別の治療剤が、デキサメタゾン、ダラツムマブ及びボルテゾミブから選択され、より好ましくは、前記別の治療剤がデキサメタゾンである、キット。
【請求項15】
前記多発性骨髄腫患者が、
多発性骨髄腫について少なくとも2種の先行治療ライン、例えば、レナリドミド及びプロテアーゼ阻害剤を含む少なくとも2種の先行治療ラインを、逐次的に、若しくは組合せレジメンの一部として、受けたことがある、
直近の治療ライン及び/若しくは治療前18か月以内に投与されたレナリドミドに不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である、
少なくともアルキル化剤に不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である、
少なくとも抗CD38抗体に不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である、
少なくとも免疫調節薬(IMiD)に不応性(例えば、再発型及び不応性、若しくは不応性)である、
レナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、特に、多発性骨髄腫に関して前記患者が受けた最後の治療のレナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、
プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される薬物の2以上のクラスの1種以上(例えば、1、2、3、4又は5種以上)の薬物に不応性である、
少なくともレナリドミド、及び、1、2、3若しくは4種の他の薬物、例えば、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される少なくとも1種の薬物(例えば、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤(PI)及び免疫調節薬(IMiD)を含む、2、3又は4種の他の薬物)に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、
少なくともポマリドミド及び/若しくはダラツムマブに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、並びに/又は
RRMMである、
請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、請求項8に記載の医薬製剤、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法、請求項13に記載の使用又は請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記多発性骨髄腫患者が、
少なくとも65、70、75若しくは80歳である、
心臓血管疾患にり患している、及び/又は
肺疾患にり患している、
請求項1~7若しくは15のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、請求項8若しくは15に記載の医薬製剤、請求項9~12若しくは15のいずれか一項に記載の方法、請求項13若しくは15に記載の使用又は請求項14若しくは15に記載のキット。
【請求項17】
前記多発性骨髄腫患者が、幹細胞移植に適していない、請求項1~7若しくは15~16のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、請求項8若しくは15~16のいずれか一項に記載の医薬製剤、請求項9~12若しくは15~16のいずれか一項に記載の方法、請求項13若しくは15~16のいずれか一項に記載の使用又は請求項14~16のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
前記多発性骨髄腫患者が、
体表面積(BSA)の中央値が1.855m
2以下、
多発性骨髄腫の改定国際病期分類(R-ISS)のISS分類がI若しくはII、
患者の細胞遺伝学の観点で、高リスク患者である、及び/又は
腎機能障害(例えば、クレアチンクリアランスが、60mL/分未満又は60~90mL/分)を有する、特に、クレアチンクリアランスが60mL/分未満である、
請求項1~7若しくは15~17のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、請求項8若しくは15~17のいずれか一項に記載の医薬製剤、請求項9~12若しくは15~17のいずれか一項に記載の方法、請求項13若しくは15~17のいずれか一項に記載の使用又は請求項14~17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
前記多発性骨髄腫患者が、
RRMMである、
レナリドミドに不応性(例えば、治療前18か月以内に(例えば10mg以上)投与されたレナリドミドに不応性)である、及び/又は(好ましくは及び)
以前に少なくとも2種の治療ライン(例えば、2、3又は4種の以前の治療ライン)を受けている、
請求項1~7若しくは15~18のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、請求項8若しくは15~18のいずれか一項に記載の医薬製剤、請求項9~12若しくは15~18のいずれか一項に記載の方法、請求項13若しくは15~18のいずれか一項に記載の使用又は請求項14~18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
前記多発性骨髄腫患者が、幹細胞移植を受けていない、請求項1~7若しくは15~19のいずれか一項に記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、請求項8若しくは15~19のいずれか一項に記載の医薬製剤、請求項9~12若しくは15~19のいずれか一項に記載の方法、請求項13若しくは15~19のいずれか一項に記載の使用又は請求項14~19のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
-幹細胞移植を受けていない、
-少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
-75歳以上の、
-幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
-幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン(メルファランフルフェナミド、L-メルファラニル-4-フルオロ-L-フェニルアラニンエチルエステル)又はその塩の特に有益で新規な治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(MM)は、分化した形質細胞の悪性がんである。これは、骨髄における形質細胞のクローン増殖及び過剰量のモノクローナル免疫グロブリン(通常、IgG若しくはIgA型又は尿中遊離軽鎖[パラタンパク質、M-タンパク質、若しくはM-成分])の産生を特徴とする。再発型不応性多発性骨髄腫(RRMM)は、多発性骨髄腫の特定のサブタイプで、当初は治療に応答するが再発後は治療に応答しない、多発性骨髄腫として定義できる。
【0003】
MMは、2番目に一般的な造血系悪性腫瘍で、米国では毎年約24,000人が骨髄腫患者と診断されている。MMの患者は、骨痛、骨折、疲労、貧血、感染症、高カルシウム血症、過粘稠度及び腎機能の問題(腎不全を含む)を含む、生活の質の大幅な低下を経験する可能性がある。MMの疾患プロセスは、診断時の疾患ステージ、細胞遺伝学プロファイル、年齢及び患者の併存疾患により変動する。この疾患は、最終的には致命的となり、生存期間の中央値はおよそ3~5年で、5年生存率は44.9%と推定される("Surveillance, Epidemiology, and End Results Program Cancer statistics Stat Fact Sheets: Myeloma." National Cancer Institute; http://www.seer.cancer.gov/statfacts/html/mulmy.html)。しかし、一部の患者は10年以上生存できる。
【0004】
多くの国々において、多発性骨髄腫患者の標準治療は、(導入療法後の)自家幹細胞レスキューと高用量化学療法(HDT)の併用である。自家幹細胞レスキューは、自家幹細胞移植(ASCT)と呼ばれることも多い。自家幹細胞移植は、長期間の深くて著しい寛解をもたらし、生存期間を延長する。
【0005】
自家幹細胞移植を受けることができない患者の選択肢は限られている。特に再発型/不応性の状況において、第III相ランダム化試験の結果は、必ずしも移植不適格集団に適用できるとは限らない可能性があり、疾患生物学及び毒性プロファイルが異なる可能性のある、主として若齢の/移植適格集団から得られたデータを外挿することを必要とする。2021年の移植不適格多発性骨髄腫患者の治療選択肢に関する考察(Elnair and Holstein, Oncology, Vol 35, Issue 4,Pages: 170-182)は、これらの患者にとっての最適解が、臨床試験への参加並びにMM専門医及び老人医学腫瘍学医との面談であると結論付けている。すなわち、この患者群には確実で有益な承認された治療は存在しない。
【0006】
2019年に公開されたCochrane Review("Multiple drug combinations of bortezomib, lenalidomide, and thalidomide for first-line treatment in adults with transplant-ineligible multiple myeloma: a network meta-analysis". Piechotta V, et al, Cochrane Database of Systematic Reviews 2019, Issue 11. Art. No.: CD013487. DOI: 10.1002/14651858.CD013487.)は、VRDc(ボルテゾミブ、レナリドミド及びデキサメタゾンを用いた継続療法)が、MP(メルファラン及びプレドニゾン)と比較して、生存期間が最も長かったと結論付けている。RD(レナリドミド及びデキサメタゾン)及びTMP(サリドマイド、メルファラン及びプレドニゾン)も、MPと比較して、全生存期間を向上させた。しかし、薬物のこれらの組合せは、MPと比較して、多くの有害事象ももたらし、多くの者が治療停止に至った。したがって、著者らは、有害事象と生活の質の両者を注意深く観察する多くの試験が必要であると結論付けている。
【0007】
メルフルフェン(メルファランフルフェナミド及びL-メルファラニル-4-フルオロ-L-フェニルアラニンエチルエステルとしても知られている)は、多発性骨髄腫の治療において有用な抗腫瘍剤である。メルフルフェンは、国際公開第01/96367号及び国際公開第2014/065751号に記載されている。メルフルフェンの塩酸塩の構造を以下に示す。
【0008】
【0009】
メルフルフェンは、強力で高度に親油性のアルキル化剤であり、アルキル化代謝産物の腫瘍細胞への標的化送達を達成する。その高い親油性に起因して、メルフルフェンは、腫瘍細胞に急速に進入し、そこで、ペプチダーゼによって即座に切断されて、アルキル化ペイロードの封じ込め及び濃縮をもたらす(Stiller CA, et al. Cancer Epidemiol. 2018;56:146-153)。ペプチダーゼの過剰発現は、腫瘍細胞で見られることが多く、これは、メルフルフェン感受性が高いことによる可能性がある(Stiller CA, et al. Cancer Epidemiol. 2018;56:146-153)。エステラーゼも、この観察された効果において役割を果たす可能性がある。ヒトMMの患者におけるメルフルフェンの試験結果が公開されており、3剤不応及び髄外疾患を有する患者を含め、高度に事前治療を受けたRRMMの患者において、臨床的に有意義な効能及び管理可能な安全性プロファイルが示されている(Richardson, P. G., et al, Journal of Clinical Oncology 2021 39:7, 757-767)。移植に適していない患者におけるメルフルフェンの有効性は、研究も報告もされていない。
【0010】
したがって、MMの治療法における近年の改善は、自家幹細胞移植に適した患者の生存期間を有意に延長したとはいえ、自家幹細胞移植を受けることができない患者における、特に、再発型又は不応性患者における、同じ治療のアウトカムは、不確実性が高く、望ましさが大幅に低い。したがって、自家幹細胞移植を受けることができないMM患者において、更なる治療選択肢に対する強力な必要性が依然として存在している。また、過去に(例えば、少なくとも過去5年間に)自家幹細胞移植を受けたが、再度の自家幹細胞移植が適していないMM患者、特に、再発型又は不応性患者における、更なる治療選択肢に対する強力な必要性が依然として存在している。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩を提供する。
【0012】
本発明は、多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与する工程を含む、方法を更に提供する。
【0013】
本発明は、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防に使用するための、メルフルフェン又はその塩を含む医薬製剤を更に提供する。
【0014】
本発明はまた、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療のための医薬品の製造における、メルフルフェン又はその塩の使用を提供する。
【0015】
本発明はまた、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者、又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防のための医薬品の製造における、メルフルフェン又はその塩の使用を提供する。本発明はまた、75歳以上の(幹細胞移植を受けていない、又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた)多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防のための医薬品の製造における、メルフルフェン又はその塩の使用を提供する。
【0016】
本発明はまた、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防に使用するための、メルフルフェン及び1種以上の別の治療剤(例えば、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、及びダラツムマブから選択され、好ましくは、デキサメタゾンである)を含む、キットを提供する。
【0017】
本発明は、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上である、又は
- 幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防に使用するための、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを提供する。
【0018】
本発明はまた、多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、及び/又は幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与する工程を含む、方法を提供する。本発明はまた、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、及び/又は幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防に使用するための、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを含む医薬製剤を提供する。本発明はまた、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、及び/又は幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防のための医薬品の製造における、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンの使用を提供する。
【0019】
本発明は、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上である、
多発性骨髄腫患者において、特に適用可能である。
【0020】
特定の態様において、患者は、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫の患者である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、幹細胞移植を受けていない、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、実施例1における患者のデモグラフィック群ごとの、無増悪生存期間(PFS)の非層別化ハザード比のフォレストプロットを示す。
【
図2】
図2は、幹細胞移植を受けていない、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、実施例1における患者の疾患特徴群ごとの、PFSの非層別化ハザード比のフォレストプロットを示す(BSA中央値=1.855m
2)。
図1における最後の行のPFSの数字はまた、疾患特徴にも関連する。
【
図3】
図3は、幹細胞移植を受けていない、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、実施例1における患者のデモグラフィック群ごとの、全生存期間(OS)の非層別化ハザード比のフォレストプロットを示す。
【
図4】
図4は、幹細胞移植を受けていない、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、実施例1における患者の疾患特徴群ごとの、OSの非層別化ハザード比のフォレストプロットを示す(BSA中央値=1.855m
2)。
図3における最後の行のOSの数字はまた、疾患特徴にも関連する。
【
図5】
図5は、幹細胞移植を受けたことがなく、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)若しくはポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療したか、又は幹細胞移植を受けたことがあり、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=125)若しくはポマリドミド+デキサメタゾン(n=120)で治療した、実施例1における患者の経時的なPFS(%)のグラフを示す(
aは非層別化HRを示し;
bはログランクP値を示す)。
【
図6】
図6は、幹細胞移植を受けていない、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、実施例1における患者の経時的なOS(%)のグラフを示す(
aは非層別化HRを示し;
bはログランクP値を示す)。
【
図7】
図7は、幹細胞移植を受けていない、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、実施例1における患者のPFSのハザード比及び事象の表を示す。これはまた、メルフルフェン+デキサメタゾンで治療した、2.5年以内(n=43)、2.5~5年(n=48)、若しくは5年超(n=34)に幹細胞移植を受けたことがあるか、又はポマリドミド+デキサメタゾンで治療した、2.5年以内(n=35)、2.5~5年(n=51)、若しくは5年超(n=34)に幹細胞移植を受けたことがある、実施例1における患者のPFSのハザード比及び事象も示す(
aは非層別化HRを示し;
bはログランクP値を示す)。
【
図8】
図8は、幹細胞移植を受けていない、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、実施例1における患者のOSのハザード比及び事象の表を示す。これはまた、メルフルフェン+デキサメタゾンで治療した、2.5年以内(n=43)、2.5~5年(n=48)、若しくは5年超(n=34)に幹細胞移植を受けたことがあるか、又は2.5年以内(n=35)、2.5~5年(n=51)、若しくは5年超(n=34)にポマリドミド+デキサメタゾンで治療した、実施例1における患者のOSのハザード比及び事象も示す(
aは非層別化HRを示し;
bはログランクP値を示す)。
【
図9】
図9は、幹細胞移植を受けたことがあるが、36か月以内に進行した患者を除外した場合の、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=145)又はポマリドミド+デキサメタゾン(n=148)で治療した、実施例1における患者のデモグラフィック及び疾患特徴ごとの全生存期間(OS)の非層別化ハザード比のフォレストプロットを示す。
【
図10】
図10は、幹細胞移植を受けたことがあるが、36か月以内に進行した患者を除外した場合の、メルフルフェン+デキサメタゾン(n=145)またポマリドミド+デキサメタゾン(n=148)で治療した、実施例1における患者の経時的なOS(%)のグラフを示す(HRはハザード比であり;
aは非層別化HRを示し;
bはログランクP値を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
発明者らは、メルフルフェン、特に、デキサメタゾンと組み合わせたメルフルフェンが、驚くべきことに、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者、又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者における、多発性骨髄腫の予防又は治療に有効であることを見いだした。さらに、メルフルフェン、特に、デキサメタゾンと組み合わせたメルフルフェンが、驚くべきことに、75歳以上の患者、特に、75歳以上で幹細胞移植を受けていない、75歳以上で少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者における、多発性骨髄腫の予防又は治療に有効であることが見いだされた。メルフルフェン、特に、デキサメタゾンと組み合わせたメルフルフェンが、驚くべきことに、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に有効であることも見いだされた。
【0023】
より具体的には、メルフルフェンが、これらの患者集団における多発性骨髄腫の他の治療と比較して、特に、これらの患者集団における多発性骨髄腫のポマリドミドでの治療と比較して、優れた抗新生物活性を示すことが見いだされた。例えば、発明者らは、2~4種の先行治療ラインの後に多発性骨髄腫が再発し、レナリドミドの最後の投薬から60日以内の疾患進行によって示される直近の治療ラインでレナリドミドに不応性であった患者を対象とした、ランダム化比較オープンラベル第III相多施設試験を行い、この試験では、患者に、実施例1に記載されるように、メルフルフェン及びデキサメタゾン、又はポマリドミド及びデキサメタゾンを投与した。この試験において、驚くべきことに、過去に幹細胞移植を受けていない、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者の無増悪生存期間(PFS)の中央値が9.3か月間であり、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者のPFSの中央値が4.6か月間であることが見いだされた。加えて、この試験における、過去に幹細胞移植を受けていない、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者の全生存期間(OS)の中央値が21.6か月間であり、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者のOSの中央値が16.5か月間であることも見いだされた。
【0024】
この有意な改善は、デモグラフィック及び疾患群で存在する。例えば、これは、65歳未満の患者(メルフルフェン群のPFS:10.8、ポマリドミド群のPFS:4.7、メルフルフェン群のOS:27.5、ポマリドミド群のOS:NA)、64~74歳の患者(メルフルフェン群のPFS:9.3、ポマリドミド群のPFS:3.9、メルフルフェン群のOS:22.2、ポマリドミド群のOS:15.0)、75歳未満の患者(メルフルフェン群のPFS:9.4、ポマリドミド群のPFS:4.3、メルフルフェン群のOS:22.2、ポマリドミド群のOS:18.2)、及び75歳以上の患者(メルフルフェン群のPFS:9.3、ポマリドミド群のPFS:4.9、メルフルフェン群のOS:14.8、ポマリドミド群のOS:8.1)に存在する。
【0025】
さらに、実施例1では、過去に幹細胞移植を受けていない患者、又は過去に幹細胞移植を受け、その後に移植からわずか36か月以降に疾患が進行した患者が、メルフルフェン(及びデキサメタゾン)に対して、これらの患者集団における多発性骨髄腫の他の治療と比較して、特に、ポマリドミド(及びデキサメタゾン)での治療と比較して、良好な応答率を有したことも、確認される。発明者らは、過去に幹細胞移植を受けて36か月以内に進行した患者を除き、この試験における多発性骨髄腫患者を、メルフルフェンで治療した場合の全生存期間(OS)の中央値が23.6か月間であり、ポマリドミドを投与した患者のOSの中央値が19.8か月間であることを見いだした。同じ所見が
図10でも確認される。
【0026】
幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫を治療するためのメルフルフェンの使用は、発明者らが知る限り、この患者集団において特に有益な効果を示す公知の多発性骨髄腫治療が存在しないため、特に驚くべきことである。同様に、発明者らが知る限り、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した患者において、特に有益な効果を示す公知の多発性骨髄腫治療は存在しない。上述のように、幹細胞移植を受けることができない多発性骨髄腫患者において、更なる治療選択肢に対する強力な必要性が残っている。本出願の実施例1に報告されている結果は、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者集団について、PFS及びOSの中央値の極めて有意な改善を示す。多発性骨髄腫は、依然として治癒不能で致命的であるため、これらの驚くべき結果は、この患者集団内の患者に、代替的な治療選択肢と比較して貴重な数か月の時間を提供できる新規な治療を提供する。
【0027】
さらに、患者が幹細胞移植を受けることができていない理由は複数あるため、この患者集団内並びにこの患者集団内の複数のデモグラフィック及び疾患群で一貫した有益な効果が存在することは、なおも更に驚くべきことである。デモグラフィック群(それぞれ
図1及び3)並びに疾患特徴群(それぞれ
図2及び4)ごとのPFS及びOSの非層別化ハザード比を示す
図1~4から確認できるように、この治療の効能は、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫集団で持続する。
【0028】
実施例1の結果において、ハザード比は、ポマリドミドと対比した、メルフルフェン投与の場合のフォローアップ期間中のそれぞれの時点における事象の相対的リスクの尺度である。1を下回る値は、メルフルフェンについて良好な治療効果を示し、1を上回る値は、ポマリドミドについて良好な治療効果を示す。実施例1の試験では、驚くべきことに、この試験における少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者が、ポマリドミド治療と比較してメルフルフェンが優位な0.76のPFSハザード比、及びポマリドミド治療と比較してメルフルフェンが優位な0.87のOSハザード比を有していたことが見いだされた。加えて、この試験における2.5年~5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者は、ポマリドミド治療と比較してメルフルフェンが優位な0.83のハザード比を有していた。したがって、これらの結果は、メルフルフェンが、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも2.5年前、特に、少なくとも5年前であった多発性骨髄腫患者を治療するのに特に有益であることを示す。メルフルフェンが、幹細胞移植を受け、移植から少なくとも36か月後まで疾患が進行しなかった多発性骨髄腫患者を治療するのに特に有益であることもまた、確認される。
【0029】
幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも2.5年前、特に、少なくとも5年前であった多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫を治療するためのメルフルフェンの使用は、発明者らが知る限り、これらの患者集団において特に有益な効果を示す公知の多発性骨髄腫治療が存在しないため、特に驚くべきことである。上述のように、以前に幹細胞移植を受けたことがあるが、再度、幹細胞移植を受けることができない多発性骨髄腫患者における更なる治療選択肢に対する強力な必要性が残っており、これらの結果は、この患者集団内の患者に、代替的な治療選択肢と比較して貴重な数か月間の時間を提供できる新しい治療を提供する。同様に、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した患者について、これらの結果は、この患者集団内の患者に、代替的な治療選択肢と比較して貴重な数か月間の時間を提供できる新しい治療を提供する。
【0030】
最後に、驚くべきことに、メルフルフェン治療が、PFSとOSの両者の点で、75歳以上の患者において特に有益な効果であったことが見いだされた。
【0031】
例えば、この試験における、75歳以上であり、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者のPFSの中央値は9.4か月間であり、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者のPFSの中央値は4.6か月間であった。加えて、この試験では、75歳以上であり、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者の全生存期間(OS)の中央値が21.6か月間であり、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者のOSの中央値が8.3か月間であることが見いだされた。
【0032】
メルフルフェン及びその塩
メルフルフェン(メルファランフルフェナミド及びL-メルファラニル-4-フルオロ-L-フェニルアラニンエチルエステルとしても知られている)は、がんの治療、特に、多発性骨髄腫の治療において有用な抗腫瘍剤である。メルフルフェン及びその塩、特に、その塩酸塩は、国際公開第01/96367号及び国際公開第2014/065751号(その内容は参照によりこの明細書に組み込まれる)から知られている。メルフルフェン塩酸塩の構造を、以下に示す。
【0033】
【0034】
疑いを回避するために、本文書において、「メルフルフェン」という用語が使用される場合、これには、別途示されない限り、メルフルフェンの塩、並びにメルフルフェンの同位体誘導体が含まれる。メルフルフェンの同位体誘導体は、国際公開第2020/079165号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0035】
また疑いを回避するために、本文書において言及される場合、メルフルフェンの質量は、別途明示的に示されない限り、対イオンの質量を除いたメルフルフェン分子の質量である。
【0036】
本発明における使用に好適であるメルフルフェンの塩は、対イオンが薬学的に許容されるものである。好適な塩には、有機又は無機酸と共に形成されるものが含まれる。特に、本発明による酸と共に形成される好適な塩には、鉱酸、強有機カルボン酸、例えば、無置換若しくは例えばハロゲンで置換された1~4個の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば、飽和若しくは不飽和ジカルボン酸、例えば、ヒドロキシカルボン酸、例えば、アミノ酸又は有機スルホン酸、例えば、無置換若しくは例えばハロゲンで置換された(C1~C4)アルキル若しくはアリールスルホン酸と共に形成されるものが含まれる。薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フタル酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸、リジン、並びにアルギニンから形成されるものが含まれる。
【0037】
メルフルフェンの好ましい塩には、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、硫酸、コハク酸、リン酸、シュウ酸、硝酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、マレイン酸及びクエン酸から形成されるものが含まれる。より好ましくは、本発明による使用のためのメルフルフェンの塩は、塩酸塩(すなわち、塩酸から形成される付加塩)である。
【0038】
有機化学の当業者であれば、多数の有機化合物が、化合物が反応する溶媒又は化合物がそこから沈殿若しくは結晶化する溶媒と複合体を形成できることを理解する。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は、「水和物」として知られている。複合体は、化学量論量又は非化学量論量で溶媒を組み込むことができる。Solvates are described in Water-Insoluble Drug Formulation, 2nd ed R. Lui CRC Press, page 553 and Byrn et al Pharm Res 12(7), 1995, 945-954。本発明に使用するためのメルフルフェン又はその塩は、溶液となる前に、溶媒和物の形態であってもよい。本発明による使用に好適であるメルフルフェンの溶媒和物は、関連する溶媒が薬学的に許容されるものである。例えば、水和物は、薬学的に許容される溶媒和物である。
【0039】
製剤
メルフルフェン及びその塩を単独で投与しようとすることは可能であるが、それが、製剤、特に、医薬製剤中に存在することが、好ましい。医薬製剤には、経口、非経口(皮下、皮内、骨内注入、筋肉内、血管内(ボーラス又は注入)、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、並びに局所(真皮、頬側、舌下、及び眼内を含む)投与に好適なものが含まれるが、最も好適な経路は、例えば、治療下にある対象の状態及び障害に依存する可能性がある。
【0040】
本発明の一態様において、メルフルフェンは、経口又は非経口(皮下、皮内、骨内注入、筋肉内、血管内(ボーラス若しくは注入)、及び髄内を含む)投与に好適な医薬製剤として投与される。
【0041】
経口投与に好適なメルフルフェンの医薬製剤は、別々の投与単位、例えば、それぞれが所定の量の活性成分を含むカプセル、カシェ、若しくは錠剤として;粉末若しくは顆粒として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型液体エマルション若しくは油中水型液体エマルションとして、提示されてもよい。メルフルフェンはまた、ボーラス、甜剤又はペースト剤として提示されてもよい。さまざまな薬学的に許容される担体及びそれらの製剤が、標準的な製剤に関する論文、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences by E. W. Martin. See also Wang, Y. J. and Hanson, M. A., Journal of Parenteral Science and Technology, Technical Report No. 10, Supp. 42:2S, 1988に記載されている。
【0042】
非経口投与用の製剤には、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤、及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有してもよい水性及び非水性の滅菌注射用溶液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。好ましくは、製剤は、単位投薬量又は分割投薬量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提示されてもよい。製剤は、使用の直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水、生理学的に許容される溶液、又は注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管されてもよい。製剤はまた、使用の直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水、生理学的に許容される溶液、又は注射用水の添加のみを必要とする液体医薬製剤として保管されてもよい。
【0043】
即時注射及び注入溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒又は他の乾燥組成物から調製されてもよい。非経口投与のための代表的な組成物には、例えば、好適な非毒性の非経口的に許容される希釈剤若しくは溶媒、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液又は合成モノ-若しくはジグリセリド、オレイン酸を含む脂肪酸、若しくはクレモフォール(Cremaphor)を含む他の好適な分散剤若しくは湿潤剤及び懸濁化剤を含有してもよい、注射用溶液又は懸濁液が含まれる。
【0044】
本発明の好ましい態様において、本発明に使用するためのメルフルフェンは、メルフルフェン又はその塩の凍結乾燥された医薬調製物を含む。「メルフルフェン又はその塩の凍結乾燥された医薬調製物」という用語は、メルフルフェン又はその塩が、フリーズドライされていることを意味すると理解される(「凍結乾燥」、「凍結乾燥された」などは、本文脈において、「フリーズドライ」、「フリーズドライされた」などと互換可能に使用されてもよい)。この明細書に記載したメルフルフェン又はその塩の凍結乾燥された医薬調製物は、通常、高密度でわずかに黄色味を帯びた粉末である凍結乾燥されていないメルフルフェン又はその薬学的に許容される塩とは対照的に、白色のふわふわした粉末の可能性がある。
【0045】
本発明に使用するためのメルフルフェン又はその塩の凍結乾燥された医薬調製物は、スクロースを含んでもよい。スクロースを含めることより、それ自体が安定しており、有機溶媒の存在なしに、分解速度と比較して十分な速度で水に溶け、それによって、治療において有用であり、有機溶媒によってもたらされる毒性を有さない、凍結乾燥された調製物が得られる。スクロースの存在下における凍結乾燥後のメルフルフェン又はその塩の可溶性及び/又は溶解速度の増加に起因して、溶解したメルフルフェン又はその塩の溶液、例えば、有用なほどにメルフルフェンの濃度が高く、有機溶媒を実質的に含まない、メルフルフェン又はその塩を含む医薬組成物を調製することが可能となる。メルフルフェン又はその塩の凍結乾燥された医薬調製物の調製、凍結乾燥された医薬組成物、及びそのような組成物を作製するためのキットは、国際公開第2012/146625号及び国際公開第2014/065751号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に詳述されている。
【0046】
本発明に使用するためのメルフルフェン又はその塩の医薬製剤は、メルフルフェン又はその塩を含む凍結乾燥された医薬調製物を含んでもよい。好ましくは、製剤は、スクロースを含む。より好ましくは、製剤は、約1:25~1:75、例えば、1:50のメルフルフェンとスクロースとの間の重量比(w/w)で、スクロースを含む。
【0047】
製剤が、医薬溶液である場合、これは、メルフルフェン又はその塩を含む凍結乾燥された医薬調製物から調製されてもよく、生理学的に許容される溶媒、例えば、グルコース溶液及び/又は生理食塩水を更に含んでもよい。
【0048】
本発明の別の好ましい態様において、本発明に使用するためのメルフルフェンは、メルフルフェン又はその塩の液体医薬調製物を含む。好ましくは、液体医薬調製物は、以下の成分:i)メルフルフェン若しくはその塩;ii)プロピレングリコール;iii)任意に、1種以上の生理学的に許容される水性溶媒;及びiv)任意に、1種以上の追加の治療剤から本質的になるか;又は液体医薬調製物は、以下の成分:i)メルフルフェン若しくはその塩;ii)ポリエチレングリコール;iii)任意に、1種以上の生理学的に許容される水性溶媒;及びiv)任意に、1種以上の追加の治療剤から本質的になる。メルフルフェン又はその塩の液体医薬製剤の調製、液体医薬製剤、及びそのような液体医薬製剤を作製するためのキットは、国際公開第2020/212594号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に詳述されている。
【0049】
特に上述した成分に加えて、本発明に使用するための製剤は、問題の製剤タイプに関係する当該技術分野において従来の他の薬剤を含んでもよいことを理解されたい。
【0050】
投薬レジメン
メルフルフェン又はその塩、及びメルフルフェンを含む医薬製剤は、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防において、使用を見いだす。
【0051】
メルフルフェン又はその塩、及びメルフルフェンを含む医薬製剤はまた、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防において、使用を見いだす。
【0052】
メルフルフェン又はその塩、及びメルフルフェンを含む医薬製剤はまた、75歳以上で、幹細胞移植を受けていない又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防において、使用を見いだす。
【0053】
メルフルフェン又はその塩、及びメルフルフェンを含む医薬製剤はまた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療及び/又は予防において、使用を見いだす。
【0054】
疑いを回避するために、患者が、「幹細胞移植を受けていない、又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の」多発性骨髄腫患者として、又は同様の文言でこの明細書で定義する場合、その患者は、(i)幹細胞移植を受けていない、(ii)少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、(iii)75歳以上、(iv)幹細胞移植を受けていない75歳以上、又は(v)少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上、の可能性がある。
【0055】
疑いを回避するために、患者が、「幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した」多発性骨髄腫患者として、又は類似の文言でこの明細書で定義する場合、その患者はまた、(i)少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、(ii)75歳以上である、又は(iii)少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上であるという群のうちの1つ以上に含まれてもよい。
【0056】
治療的効果を達成するために必要とされるメルフルフェンの量は、特定の投与経路、並びに治療下にある対象の特徴、例えば、種、年齢、体重、性別、医学的状態、特定の疾患及びその重症度、並びに他の関連する医学的及び身体的因子に応じて変動する。熟練した医師であれば、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、多発性骨髄腫患者における、多発性骨髄腫の予防又は治療に必要とされるメルフルフェンの有効量を、容易に判定し、投与できる。
【0057】
メルフルフェンは、治療しようとする対象及び多発性骨髄腫の重症度に応じて、毎日、2日若しくは3日ごと、1週間ごと、2週間ごと、3週間若しくは4週間ごと、又は更には単回高用量として、投与されてもよい。
【0058】
本発明の一態様において、メルフルフェン又はその塩は、約1~150mg(対イオンの質量は除く)の量で投与されてもよい。例えば、1、5、10、15、20、25、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140又は150mg(対イオンの質量は除く)。好ましくは、投与1回当たりのメルフルフェン又はその塩の量は、1~50mg(対イオンの質量は除く)、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50mgである。より好ましくは、投与1回当たりのメルフルフェン又はその塩の量は、1~40mg(対イオンの質量は除く)、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35又は40mgである。例えば、投与1回当たりのメルフルフェン又はその塩の量は、10~40mg(対イオンの質量は除く)、例えば、10、15、20、25、30、35又は40mgである。ある特定の態様において、投与1回当たりのメルフルフェン又はその塩の量は、10~20mg、20~30mg又は30~40mgであってもよい。
【0059】
本発明の一態様において、メルフルフェン又はその塩は、約35.0~45.0mg、好ましくは36.0~44.0mg、好ましくは37.0~43.0mg、好ましくは37.5~42.5mg(例えば、37.5、38.0、38.5、39.0、39.5、40.0、40.5、41.0、41.5、42.0又は42.5mg)、より好ましくは38.0~42.0mg、最も好ましくは39.0~41.0mg(例えば、39.0、39.5、40.0、40.5又は41.0mg、より好ましくは39.5、40.0又は40.5mg、最も好ましくは40.0mg)の量で投与してもよい。メルフルフェン又はその塩は、例えば、非経口投薬として25~35分間かけて投与してもよい。
【0060】
メルフルフェンがその塩酸(HCl)塩の形態である態様において、約37.6~48.3mg、好ましくは39.0~47.0mg、より好ましくは41.0~45.0mg、より好ましくは42.5~43.5mg、最も好ましくは42.9mgの量のメルフルフェン塩酸塩(塩成分の質量を含む)を、投与する。メルフルフェン塩酸塩は、例えば、非経口投薬として25~35分間かけて投与してもよい。
【0061】
好ましくは、本発明のメルフルフェン又はその塩は、26~34分間、より好ましくは27~33分間、更により好ましくは28~32分間、更により好ましくは29~31分間、最も好ましくは30分間かけて、投与する。
【0062】
メルフルフェン又はその塩は、非経口又は経口投薬として投与されてもよい。本発明の好ましい態様において、メルフルフェン又はその塩は、非経口投薬として投与される。そのため、本発明による有用な医薬製剤は、非経口投与に好適なものである。
【0063】
非経口投与には、静脈内(静脈、例えば、中心静脈又は末梢静脈への)(ボーラス又は注入)、動脈内(動脈、例えば、中心動脈又は末梢動脈への)、骨内注入(骨髄への)、筋肉内(筋肉への)、皮内(真皮への)、及び皮下(皮膚下への)投与が含まれる。好ましくは、本発明の用量は、静脈内又は動脈内投与され、より好ましくは、静脈内注入(例えば、中心静脈内注入又は末梢静脈内注入)によって投与される。そのため、本発明に特に有用な医薬製剤は、静脈内投与に、より特には静脈内注入に好適なものである。
【0064】
本発明の一態様において、メルフルフェンの投薬量(対イオンの質量は除く)は、非経口投薬として、およそ0.3~1.8mg/分、例えば0.5~1.8mg/分、例えば0.8~1.8mg/分、例えば1.0~1.8mg/分、例えば1.1~1.8mg/分、例えば1.1~1.7mg/分、例えば1.1~1.6mg/分、例えば1.2~1.6mg/分、又は例えば注入速度1.2~1.5mg/分で投与される。一態様において、メルフルフェンの投薬量(対イオンの質量は除く)は、非経口投薬として、注入速度およそ1.2~1.4mg/分(例えば、1.2、1.3又は1.4mg/分)で投与される。
【0065】
本発明のある態様において、およそ1~50mg(対イオンの質量は除く)のメルフルフェン(例えば、1~45mg)は、非経口投薬としておよそ5~35分間かけて投与される。例えば、40mg(対イオンの質量は除く)のメルフルフェンを、非経口投薬としておよそ30分間かけて、20mg(対イオンの質量は除く)のメルフルフェンを、非経口投薬としておよそ15分間かけて、又は、10mg(対イオンの質量は除く)のメルフルフェンを、非経口投薬としておよそ7.5分間かけて。
【0066】
本発明に使用するためのメルフルフェンの投薬量に関して、メルフルフェン又はその塩の質量について言及する場合、それは、対イオンをメルフルフェンの投薬質量の計算に含めない場合の質量である。対イオンを含まないメルフルフェンの分子量は、498.42g/molである。メルフルフェンの塩の投薬量については、患者に投与する実際の投薬質量は、対イオンの質量を考慮しなければならない。これは、当業者には慣例的である。
【0067】
例えば、メルフルフェンが、その塩酸(HCl)塩(分子量534.88g/mol)の形態である場合、メルフルフェン塩酸塩(対イオンの質量を含む)について、1.1~1.8mg/分と同等の投薬速度は、1.2~1.9mg/分となる。1~50mgのメルフルフェンの投薬量については、メルフルフェン塩酸塩の同等の投与量は、およそ1.1~53.8mgとなる。10~45mgのメルフルフェンの投薬量については、メルフルフェン塩酸塩の同等の投与量は、およそ10.7~48.3mgとなる。
【0068】
メルフルフェン又はその塩を非経口投薬として投与する場合、メルフルフェンの投薬は、メルフルフェンを含む液体、例えば、溶液又は懸濁液の形態でなければならない。
【0069】
好ましくは、本発明のメルフルフェン又はその塩は、治療サイクルの一部として投与される。サイクルにおいて、メルフルフェンは、X日のサイクルの1日目に投与されてもよく、次のX-1日間は、メルフルフェンは更に投与されない。Xは、例えば、1~42、5~42、7~42、10~42又は14~42であってもよい。好ましくは、Xは、14~35、より好ましくは21~35、より好ましくは21~30;例えば、21、28、29、30又は35であってもよい。ある特定の態様において、Xは、例えば、21~30、21~28、28~30又は28~29であってもよい。疑いを回避するために、治療サイクルにおいて投与されるメルフルフェンの用量は、本出願の他の箇所に記載される用量、例えば、1~50mgのメルフルフェンの用量であってもよい。
【0070】
本発明の好ましい態様において、メルフルフェン又はその塩は、21日サイクルの1日目に投与され、その後に20日間の休薬期間が続き、その期間中メルフルフェンは更に投与されない;28日サイクルの1日目に投与され、その後に27日間の休薬期間が続き、その期間中メルフルフェンは更に投与されない;29日サイクルの1日目に投与され、その後に28日間の休薬期間が続き、その期間中メルフルフェンは更に投与されない;30日サイクルの1日目に投与され、その後に29日間の休薬期間が続き、その期間中メルフルフェンは更に投与されない;又は、35日サイクルの1日目に投与され、その後に34日間の休薬期間が続き、その期間中メルフルフェンは更に投与されない。ある特定の態様において、治療サイクルは、28日であるか;又は42日サイクルの1日目に投与され、その後に41日間の休薬期間が続き、その期間中メルフルフェンは更に投与されない。ある特定の態様において、治療サイクルは、28日である。
【0071】
サイクルは、多発性骨髄腫のカテゴリー(例えば、高悪性度若しくは低悪性度)、クラス(例えば、再発型、不応性など)、又はステージに応じて、1回又は複数回、反復されてもよい。例えば、サイクルは、1~15回、例えば2~12回、例えば2~7回、例えば、2、3、4、5、6回又はそれ以上、反復されてもよい。サイクルは、3、4又は5回反復されてもよい。
【0072】
熟練した医師又は臨床医であれば、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫を治療する、予防する、それに対抗する、又はその進行を停止させるために必要とされる、メルフルフェン又はその塩のサイクル数を容易に判定できる。熟練した医師又は臨床医であれば、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫を治療する、予防する、それに対抗する、又はその進行を停止させるために必要とされる、メルフルフェン又はその塩のサイクル数を容易に判定できる。
【0073】
本発明の投薬レジメンは、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、多発性骨髄腫を有するか又は多発性骨髄腫を発症するリスクにある患者における、多発性骨髄腫の治療及び予防に、特に安全で有効である。同様に、本発明の投薬レジメンは、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、多発性骨髄腫を有するか又は多発性骨髄腫を発症するリスクにある患者における、多発性骨髄腫の治療及び予防に、特に安全で有効である。
【0074】
メルフルフェン又はその塩は、本発明において、単独の活性成分として使用されてもよいが、それを、1種以上の別の治療剤と組み合わせて使用することも可能であり、そのような組合せの使用は、本発明の1つの好ましい態様を提供する。
【0075】
そのような別の治療剤は、多発性骨髄腫の治療若しくは予防に有用な薬剤、又は他の薬学的に活性な材料であってもよい。そのような薬剤は、当該技術分野において公知である。本発明に使用するための別の治療剤の例には、ステロイド(プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(パノビノスタット)、従来の化学療法薬(アルキル化剤(例.メルファラン、シクロホスファミド、ベンダムスチン)、ドキソルビシン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、及び抗SLAMF7抗体(エロツズマブ);例えば、ステロイド(プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(パノビノスタット)、並びに従来の化学療法薬(アルキル化剤(例.メルファラン、シクロホスファミド)、及びドキソルビシン)が含まれる。本発明に使用するための別の治療剤の例には、B細胞成熟抗原に対する抗体(ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(シルタカブタゲン)も含まれる。本発明に使用するための好ましい別の治療剤には、デキサメタゾン、ポマリドミド、及びボルテゾミブが含まれる。例えば、本発明に使用するための別の治療剤には、デキサメタゾン;又はデキサメタゾン及びポマリドミド又はデキサメタゾン及びボルテゾミブが含まれる。
【0076】
したがって、本発明はまた、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩を1種以上の別の治療剤と一緒に提供し、ここで、メルフルフェンは速度1.0~1.8mg/分で投与される。例えば、35~45mg(好ましくは37.5~42.5mg、より好ましくは39~41mg、最も好ましくは40mg)の投与量は、非経口投薬として25~35分間かけて(好ましくは30分間かけて)投与される。好ましくは、別の治療剤は、デキサメタゾンである。別の態様において、1種以上の別の治療剤は、デキサメタゾン、ポマリドミド、及びボルテゾミブからなる群から選択される。例えば、デキサメタゾン;又はデキサメタゾン及びポマリドミド又はデキサメタゾン及びボルテゾミブ。
【0077】
本発明は、幹細胞移植を受けていない又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン塩酸塩を1種以上の別の治療剤と一緒に更に提供し、ここで、メルフルフェン塩酸塩(塩の質量を含む)は、速度1.1~1.9mg/分で投与される。例えば、37.6~48.3mg(好ましくは40~45mg、より好ましくは42.9mg)の投薬量のメルフルフェン塩酸塩(塩の質量を含む)は、非経口投薬として25~35分間かけて(好ましくは30分間かけて)投与される。好ましくは、別の治療剤は、デキサメタゾンである。別の態様において、1種以上の別の治療剤は、デキサメタゾン、ポマリドミド、及びボルテゾミブからなる群から選択される。例えば、デキサメタゾン;又はデキサメタゾン及びポマリドミド;又はデキサメタゾン及びボルテゾミブ。
【0078】
1つの非常に好ましい態様において、本発明は、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを提供し、ここで、メルフルフェンは、速度1.0~1.8mg/分で投与される。例えば、35~45mg(好ましくは37.5~42.5mg、より好ましくは39~41mg、最も好ましくは40mg)の投与量は、非経口投薬として25~35分間かけて(好ましくは30分間かけて)投与される。例えば、本発明は、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン塩酸塩及びデキサメタゾンを提供し、ここで、メルフルフェン塩酸塩(塩の質量を含む)は、速度1.1~1.9mg/分で投与される。例えば、37.6~48.3mg(好ましくは40~45mg、より好ましくは42.9mg)の投与量のメルフルフェン塩酸塩(塩の質量を含む)は、非経口投薬として25~35分間かけて(好ましくは30分間かけて)投与される。
【0079】
組み合わせて使用される場合、他の薬学的に活性な材料の正確な投与量は、投薬スケジュール、選択される特定の薬剤の効力、対象(通常は哺乳動物、例えばヒト)の年齢、サイズ、性別、及び状態、黒色腫の性質及び重症度、並びに他の関連する医薬及び身体的因子に応じて変動してもよい。
【0080】
上記の治療剤は、メルフルフェン又はその塩と組み合わせて利用される場合、例えば、Physicians' Desk Reference(PDR)に示されるか又はそれ以外では当業者によって判定される量で、使用されてもよい。
【0081】
別の治療剤がデキサメタゾンである場合、好ましくは、投与量は1mg~200mg、好ましくは5mg~100mg、より好ましくは10mg~80mg、最も好ましくは20mg~60mg、例えば、40mg又は20mgである。
【0082】
1つの好ましい態様において、多発性骨髄腫患者は、幹細胞移植を受けていない、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、別の治療剤は、デキサメタゾンで、その投与量は40mg又は20mgである。任意に、患者は、75歳以上であってもよい。
【0083】
1つの好ましい態様において、多発性骨髄腫患者は、75歳以上であり、任意に、幹細胞移植を受けていない、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、別の治療剤は、デキサメタゾンであり、その投与量は20mgである。
【0084】
1種以上の別の治療剤(例えば、デキサメタゾン)は、メルフルフェン又はその塩の投薬量の投与と、同時に、逐次的に、又は別々に、使用されてもよい。そのような組合せの個々の成分は、治療過程中の異なる時点で別々に投与されてもよく、又は分割若しくは単一の組合せ形態で同時に投与されてもよい。
【0085】
別の治療剤がデキサメタゾンである場合、好ましくは、デキサメタゾンは、同日に、メルフルフェン又はその塩の投与と、同時に、逐次的に、又は別々に投与される。より好ましくは、それは、同日に、メルフルフェン又はその塩とは別々に投与される。
【0086】
例えば、本発明に使用するためのメルフルフェン又はその塩は、治療サイクルの一部として投与され(例えば、メルフルフェン又はその塩は、X日のサイクルの1日目に投与され、次のX-1日間はメルフルフェンを投与しない)、デキサメタゾンは、メルフルフェンが投与されるのと同日(すなわち、1日目)に、同時に、逐次的に、又は別々に投与されてもよい。Xは、例えば、14~42、好ましくは14~35、より好ましくは21~28;例えば21又は28であってもよい。
【0087】
本発明の1つの好ましい態様において、デキサメタゾンは、治療サイクルの1日目に投与される。より好ましくは、デキサメタゾンはまた、そのような治療サイクルの間、1週間ごとに投与され、例えば、21日サイクルの1、8、及び15日目;又は28日サイクルの1、8、15、及び22日目に投与される。
【0088】
別の好ましい態様において、メルフルフェン又はその塩は、本発明に従って、21日サイクルの1日目に投与され、デキサメタゾンは、サイクルの1日目に、同時に、逐次的に、若しくは別々に投与され、その後に20日間の休薬期間が続き、その期間中はメルフルフェンは更に投与されない;又は、本発明に従って、28日サイクルの1日目に投与され、デキサメタゾンは、サイクルの1日目に、同時に、逐次的に、若しくは別々に投与され、その後に27日間の休薬期間が続き、その期間中はメルフルフェンは更に投与されない。好ましくは、サイクルは、28日である。好ましくは、デキサメタゾンは、1日目に、メルフルフェン又はその塩とは別々に投与される。好ましくは、デキサメタゾンは、経口又は静脈内投与される。好ましくは、デキサメタゾンの用量は、20mg又は40mgである。
【0089】
別の好ましい態様において、本発明に使用するためのメルフルフェン又はその塩がサイクルの一部として投与される(例.メルフルフェンが、X日のサイクルの1日目に投与され、次のX-1日間はメルフルフェンの投与はない)場合、デキサメタゾンは、メルフルフェンが投与されるのと同日(すなわち、1日目)に、同時に、逐次的に、又は別々に投与され、サイクル期間中、それ以降は週ごとに投与される。例えば、デキサメタゾンは、サイクルの長さに応じて、1、8、15、22、29日目などに投与される。Xは、例えば、14~42、好ましくは14~35、より好ましくは21~28;例えば21又は28であってもよい。
【0090】
そのような態様において、メルフルフェン若しくはその塩は、本発明に従って、21日サイクルの1日目に投与され、その後に20日間の休薬期間が続き、その期間中はメルフルフェンは更に投与されず、デキサメタゾンは、サイクルの1日目並びに21日サイクルの8日目及び15日目に、同時に、逐次的に、若しくは別々に投与されるか;又はメルフルフェン若しくはその塩は、本発明に従って、28日サイクルの1日目に投与され、その後に27日間の休薬期間が続き、その期間中はメルフルフェンは更に投与されず、デキサメタゾンは、サイクルの1日目並びに28日サイクルの8日目、15日目、及び22日目に、同時に、逐次的に、又は別々に投与される。好ましくは、デキサメタゾンは、1日目に、経口投薬又は静脈内投薬(好ましくは、経口投薬)として、メルフルフェン又はその塩とは別々に投与される。デキサメタゾンのその後の投薬は、経口投薬であってもよく、又は静脈内投薬であってもよい(好ましくは、その後の投薬は、経口投薬である)。
【0091】
本発明の化合物及びその使用に関して言及された本発明の好ましい側面は、本発明の治療の方法及び本発明の製造の方法に等しく適用可能であることに留意されたい。
【0092】
キット
本発明は、メルフルフェン又はその塩と、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に有用である1種以上の別の治療剤とを含む、キットを提供する。
【0093】
本発明はまた、メルフルフェン又はその塩と、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に有用である1種以上の別の治療剤とを含む、キットを提供する。
【0094】
本発明は、メルフルフェン又はその塩と、75歳以上であり、任意に、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に有用である1種以上の別の治療剤とを含む、キットを提供する。
【0095】
本発明に使用するための別の治療剤の例には、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)が含まれる。本発明に使用するための別の治療剤の例には、B細胞成熟抗原に対する抗体(ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(シルタカブタゲン)も含まれる。
【0096】
本発明の好ましい態様において、本発明のキットに含まれる1種以上の別の治療剤の少なくとも1つは、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、又は抗CD38抗体(ダラツムマブ)である。本発明の好ましい態様において、本発明のキットに含まれる1種以上の別の治療剤の少なくとも1つは、デキサメタゾン、ボルテゾミブ又はダラツムマブである。
【0097】
一態様において、キットは、メルフルフェン又はその塩、デキサメタゾンを含んでもよく、任意に、ボルテゾミブ及び/又はダラツムマブを更に含んでもよい。一態様において、キットは、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを含んでもよい。
【0098】
本発明のキットは、明細書で説明するように、本発明の治療及び/又は予防の使用及び方法における使用を見いだす。
【0099】
疑いを回避するために、メルフルフェン又はその塩は、本発明による使用に好適な形態及び量で、本発明によるキットに存在する。好適な医薬製剤は、この明細書に記載されている。当業者であれば、メルフルフェン又はその塩の量、及び本発明による使用に好適な1種以上の別の治療剤を容易に判定できる。
【0100】
多発性骨髄腫
本発明の治療は、幹細胞移植を受けていない患者における多発性骨髄腫の治療に有用である。本発明の治療はまた、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者における多発性骨髄腫の治療にも有用である。本発明の治療はまた、75歳以上であり、任意に、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者における多発性骨髄腫の治療にも有用である。本発明の治療はまた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した患者における多発性骨髄腫の治療にも有用である。
【0101】
多発性骨髄腫には、意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)、無症候性骨髄腫(くすぶり型骨髄腫又は無痛性骨髄腫に更に分割される)、及び症候性骨髄腫を含む、複数のカテゴリーが存在する。多発性骨髄腫は、原発性、不応性、再発型、及び再発型不応性として分類されてもよい。
【0102】
再発型多発性骨髄腫(再発性骨髄腫(recurrent myeloma)としても知られている)は、治療の最後の投薬から60日以内に再発する多発性骨髄腫として定義できる。再発型MMは、一般に、以前に治療に応答した後の疾患の再発と見なされる。
【0103】
不応性多発性骨髄腫は、特定の治療に応答しない多発性骨髄腫として定義できる。不応性骨髄腫は、治療から応答が一度も見られない患者において生じる可能性があるか、又は最初は確かに治療に応答するが、再発後は同じ治療に応答しない患者において生じる可能性がある。
【0104】
再発型不応性多発性骨髄腫(RRMM)は、不応性多発性骨髄腫の特定のサブタイプであり、最初は治療に応答するが、再発後は治療に応答しない、多発性骨髄腫として定義できる。例えば、RRMMは、最後の投薬から60日以内に再発し、最初は治療に応答するが再発後は同じ治療に応答しない多発性骨髄腫として定義できる。再発型不応性多発性骨髄腫は、不応性再発型多発性骨髄腫と呼ばれる場合がある。
【0105】
現在、MMの治療に利用可能な承認済みの薬物には7つのクラス、すなわち、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)がある。更に承認されているものは、B細胞成熟抗原に対する抗体(ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(シルタカブタゲン)である。
【0106】
症候性活動性MMを呈する患者は、一次導入療法を受ける。また、およそ65歳未満でそれ以外には健康状態が良好な患者は、寛解の持続期間を増強するために、幹細胞移植(特に、自家幹細胞移植)でのコンソリデーション療法が考慮される(Moreau, P., et al, J Clin Oncol (2011), Vol 29, pages 1898-1906;Rosinol, L., et al, Expert Rev Hematol (2014) Vol 7, pages 43-53)。導入療法のタイプは、年齢、疾患ステータス、及び他の併存疾患の存在に応じて、大きく変動する。NCCN Guidelines for Multiple Myeloma(NCCN (2019). "NCCN Guidelines for Patients." National Comprehensive Cancer Network; https://www.nccn.org/patients/guidelines/content/PDF/myeloma-patient.pdf)は、移植適格患者及び非移植適格患者のための一次療法として推奨されるレジメンの一覧を提供している。ボルテゾミブ及びレナリドミドを含むレジメンが、一次療法として最も多く使用されており;これらの薬剤は、非移植候補についてはアルキル化剤と組み合わされることが多い。International Myeloma Working Group 2014(Palumbo, A., et al, J Clin Oncol (2014) Vol 32, pages 587-600)によるコンセンサス表明において、標準的な幹細胞移植に不適格である患者に推奨される複数のレジメンが存在する。例外なく、これらの薬剤のそれぞれの後には再発が生じ、サルベージ療法が必要となる。
【0107】
不応性多発性骨髄腫(及び/又はRRMM)は、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、又は抗CD38抗体から選択される薬物のクラスに由来する少なくとも1種の薬物に不応性の可能性がある。一部の不応性多発性骨髄腫(及び/又はRRMM)は、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、又は抗CD38抗体から選択される薬物の2以上のクラスの1種以上(例えば、1、2、3、4又は5種以上)の薬物に不応性である。不応性多発性骨髄腫(及び/又はRRMM)は、更には、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、又は抗CD38抗体から選択される薬物の2つ以上のクラスに由来する2種以上の薬物に不応性の可能性がある。
【0108】
疾患が再発した個体に関する治療の選択肢は、初回化学療法に対する応答及び期間、併存疾患、骨髄予備能、並びに患者が無痛性又は侵攻性再発を経験するかどうかを含む、いくつかの変数に依存する。RRMMにおける治療の選択は、特に困難である。複数の治療法、及び上述の承認薬のいくつかの組合せが、RRMMの治療に利用可能である。一般に、骨髄腫患者は、生涯の間、平均4~8の異なるレジメンを受ける。しかし、有効な治療法の利用可能性にもかかわらず、これらの薬剤と他の治療法及び互いとの最適な組合せ及び順序は、依然として不明である。最終的に、患者は、全ての現在利用可能な選択肢から再発する。
【0109】
多くの事例において、最終治療が終了して6~12か月よりも後に疾患が再発した場合、再発した疾患には、導入療法として使用したものと同じ薬剤を再開してもよい。しかし、より短期間で再発した場合、患者が初期療法に不応性である場合、又は疾患が重度の症状、例えば腎不全若しくは高カルシウム血症を伴う場合には、異なる作用機序(クラススイッチ)を有するレジメンが選択されることが多い。
【0110】
本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩は、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の、又は幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、患者における多発性骨髄腫の前述のカテゴリー又はクラスに適用可能である。それは、幹細胞移植を受けていない患者に、特に有用である。
【0111】
本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩は、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、及び/又は75歳以上の患者(特に、幹細胞移植を受けていない患者)における不応性、再発型、及び再発型不応性多発性骨髄腫の治療において、非常に有効である。
【0112】
例えば、本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩は、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、及び/又は75歳以上であり(特に、幹細胞移植を受けていない患者)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、又は抗CD38抗体に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、患者に有用である。
【0113】
本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩は、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、及び/又は75歳以上であり(特に、幹細胞移植を受けていない患者)、アルキル化剤、例えば、低用量メルファラン、高用量メルファラン、及びシクロホスファミドの1種以上に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、患者に特に有用である。それは、幹細胞移植を受けていないは少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、及び/又は75歳以上であり(特に、幹細胞移植を受けていない患者)、抗CD38抗体に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、患者に特に有用である。それは、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、及び/又は75歳以上であり(特に、幹細胞移植を受けていない患者)、レナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、特に、多発性骨髄腫に関して患者が受けた最後の治療のレナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、患者に非常に特に有用である。それはまた、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、及び/又は75歳以上であり(特に、幹細胞移植を受けていない患者)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、又は抗CD38抗体から選択される薬物の2以上のクラスの1種以上(例.1、2、3、4又は5種以上)の薬物に不応性である、患者にも有用である。
【0114】
それはまた、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、及び/又は75歳以上であり(より特には幹細胞移植を受けていない患者)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、又は抗CD38抗体から選択される薬物の2以上のクラスの1種以上(例.1、2、3、4又は5種以上)の薬物に不応性である、患者に特に有用である。
【0115】
本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩はまた、少なくとも1種の免疫調節薬(IMiD)に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である患者において、より特には少なくとも免疫調節薬レナリドミド、より特には少なくともレナリドミド、並びに、1、2、3又は4種の他の薬物、例えば、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される少なくとも1種の薬物に不応性(例えば、不応性又は再発型不応性)である患者において、特に有用である。例えば、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤(PI)及び免疫調節薬(IMiD)を含む、2、3又は4種の他の薬物。例えば、多発性骨髄腫患者は、少なくとも3種の先行治療ラインを受けていてもよく、少なくとも1種のプロテアソーム阻害剤、1種の免疫調節薬、及び1種の抗CD38モノクローナル抗体に不応性である疾患を有し、最後の治療後に疾患進行を示している。患者が、以前に自家幹細胞移植(ASCT)を受けている場合、進行までの時間は、移植から少なくとも3年間であるべきである。
【0116】
本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩はまた、体表面積(BSA)の中央値が1.855m2以下の患者において、特に有用である。
【0117】
1つの特に好ましい態様において、本発明は、幹細胞移植を受けたことがなく、RRMMで、免疫調節薬レナリドミドに不応性であり、以前に、2、3又は4種の治療ライン(例えば、3種の以前の治療ライン)を受けている患者における多発性骨髄腫の治療に有用である。
【0118】
別の態様において、本発明は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、RRMMで、免疫調節薬レナリドミドに不応性であり、以前に、2、3又は4種の治療ライン(例えば、3種の以前の治療ライン)を受けている患者における多発性骨髄腫の治療に有用である。
【0119】
別の態様において、本発明は、少なくとも75歳以上であり(例えば、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた又は幹細胞移植を受けていない)、RRMMで、免疫調節薬レナリドミドに不応性であり、以前に、2、3又は4種の治療ライン(例えば、3種の以前の治療ライン)を受けている患者における多発性骨髄腫の治療に有用である。
【0120】
別の態様において、本発明は、幹細胞移植を受け、移植から少なくとも36か月後に疾患が進行し、RRMMで、免疫調節薬レナリドミドに不応性であり、以前に、2、3又は4種の治療ライン(例えば、3種の以前の治療ライン)を受けている患者における多発性骨髄腫の治療に有用である。
【0121】
3種の以前の治療ラインは、例えば、1種のプロテアソーム阻害剤(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ又はイキサゾミブ)、1種の免疫調節薬(レナリドミド、ポマリドミド又はサリドマイド)、及び1種の抗CD38モノクローナル抗体(例.ダラツムマブ)であってもよい。
【0122】
本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩はまた、少なくともポマリドミド及び/又はダラツムマブに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である患者において有用である。
【0123】
本発明は、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、又は、幹細胞移植を受け移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した(特に、幹細胞移植を受けていない患者)、かつ、
多発性骨髄腫について少なくとも2種の先行治療ライン、例えば、レナリドミド及びプロテアーゼ阻害剤を含む少なくとも2種の先行治療ラインを、逐次的に、若しくは組合せレジメンの一部として、受けている;
直近の治療ライン及び/若しくは治療前18か月以内に投与されたレナリドミドに不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である;
少なくともアルキル化剤に不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である;
少なくとも抗CD38抗体に不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である;
少なくとも免疫調節薬(IMiD)に不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である;
レナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)であり、特に、多発性骨髄腫に関して患者が受けた最後の治療のレナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である;
プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される薬物の2以上のクラスの1種以上(例えば、1、2、3、4又は5種以上)の薬物に不応性である;並びに/又は
少なくともレナリドミド、並びに、1、2、3若しくは4種の他の薬物、例えば、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される少なくとも1種の薬物(例えば、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤(PI)及び免疫調節薬(IMiD)を含む、2、3又は4種の他の薬物に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、
多発性骨髄腫患者に特に有益である。
【0124】
そのような態様において、患者は、RRMMであってもよく、及び/又は患者は、75歳以上であってもよい。
【0125】
本発明はまた、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、又は、幹細胞移植を受け移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、及び/又は75歳以上の(特に、幹細胞移植を受けていない患者)、かつ、
2種の先行治療ラインを受けている;
アルキル化剤不応性(不応性若しくは再発型不応性)である;
抗CD38抗体不応性(不応性若しくは再発型不応性)である;
患者が多発性骨髄腫に関して受けた最後の治療が、免疫調節薬(IMiD)、特に、レナリドミドであった;並びに/又は
直近の治療ライン及び治療前18か月以内に投与されたレナリドミド(10mg以上)の両者に不応性(再発し不応性、又は不応性)である、
多発性骨髄腫患者に特に有用である。
【0126】
そのような態様において、患者は、RRMMであってもよく、及び/又は患者は、75歳以上であってもよい。
【0127】
本発明による使用のためのメルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンの組合せは、不応性、再発型、及び再発型不応性多発性骨髄腫の治療において、特に、再発型不応性多発性骨髄腫の治療において、非常に有用である。例えば、メルフルフェン及びデキサメタゾンを投与することを含む本発明の方法及び使用は、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、又は抗CD38抗体に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である患者に有用である。それは、アルキル化剤、例えば、低用量メルファラン、高用量メルファラン及びシクロホスファミドの1種以上に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である患者において、特に有用である。それはまた、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される薬物の2以上のクラスの1種以上(例えば、1、2、3、4又は5種以上)の薬物に不応性である患者にも有用である。メルフルフェン及びデキサメタゾンを投与することを含む本発明の方法及び使用はまた、少なくとも1種の免疫調節薬(IMiD)に不応性(例.不応性又は再発型不応性)患者において、より特には、少なくとも免疫調節薬レナリドミド;より特には少なくともレナリドミド、並びに、1、2、3又は4種の他の薬物、例えば、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される少なくとも1種の薬物に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である患者において、非常に特に有用である。例えば、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤(PI)及び免疫調節薬(IMiD)を含む、2、3又は4種の他の薬物。メルフルフェン及びデキサメタゾンを投与することを含む本発明の方法及び使用はまた、少なくともポマリドミド及び/又はダラツムマブに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である患者においても、特に有用である。
【0128】
上述のように、本発明は、多発性骨髄腫患者の部分集団の治療を提供する。1つの部分集団は、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者である。疑いを回避するために、「幹細胞移植を受けていない患者」は、生涯で幹細胞移植を一度も受けていない患者である。したがって、本発明の治療の前(又は間)に、患者は、幹細胞移植を一度も受けていない。幹細胞移植の例には、自家幹細胞移植、タンデム幹細胞移植、同種幹細胞移植、ドナーリンパ球注入又はミニ移植が含まれる。本発明の代表的な態様において、幹細胞移植を受けていない患者は、自家幹細胞移植を受けていない患者である。
【0129】
幹細胞移植を受けていない患者は、その治療を受けないことが選択されていてもよく、又は健康状態の個別評価の後にこのタイプの治療の好適な候補ではなかったことが医療従事者によって勧告されていてもよい。例えば、幹細胞移植は、通常、身体の健康状態が優れていない限り、65歳又は70歳を上回る患者には推奨されない。幹細胞移植はまた、通常、基礎疾患、例えば心疾患及び/又は肺疾患、を有する患者には推奨されない。幹細胞移植はまた、他の因子、例えば、多発性骨髄腫のタイプ及びステージ、その侵攻性、並びに治療に対する応答性に応じて、推奨されない場合がある。多発性骨髄腫患者が、選択又は疾患特徴に基づいて幹細胞移植を受けたことがなくてもよい理由は多数存在するため、これが、特定の治療の利益を得ることができる患者集団であることは、非常に驚くべきことである。
図1~4に示されるように、幹細胞移植を受けていない患者集団に利益がある。
【0130】
本発明のある特定の好ましい態様において、多発性骨髄腫患者は、幹細胞移植を受けたことがなく、かつ
少なくとも65、70、75若しくは80歳である(好ましくは、少なくとも75又は80歳である);
心臓血管疾患にり患している;及び/又は
肺疾患にり患している。
【0131】
発明者らは、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者のための本発明の治療がまた、幹細胞移植を受けたことがなく、かつ、
体表面積(BSA)の中央値が1.855m2以下;
多発性骨髄腫の改定国際病期分類(R-ISS:Revised Multiple Myeloma International Staging System)のISS分類がI若しくはIIである;
患者の細胞遺伝学の観点で、高リスク患者である;及び/又は
腎機能障害(例えば、クレアチンクリアランスが、60mL/分未満又は60~90mL/分)を有する;特に、クレアチンクリアランスが60mL/分未満である、
患者において特に有益であることも見いだした。
【0132】
発明者らは、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者のための本発明の治療が、幹細胞移植を受けたことがなく、かつ、
RRMMである;及び/又は
レナリドミドに不応性(例えば、治療前18か月以内に(例えば10mg以上)投与されたレナリドミドに不応性)である;及び/又は
以前に少なくとも2種の治療ライン(例えば、2、3又は4種の以前の治療ライン)を受けている、
患者において特に非常に有益であることも見いだした。
【0133】
発明者らは、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者のための本発明の治療が、幹細胞移植を受けたことがなく、かつ、
RRMMであり;
レナリドミドに不応性(例えば、治療前18か月以内に(例えば10mg以上)投与されたレナリドミドに不応性)であり;
以前に少なくとも2種の治療ライン(例えば、2、3又は4種の以前の治療ライン)を受けている、
患者において特に非常に有益であることも見いだした。
【0134】
本発明の治療は幹細胞移植を受けていない患者のためのものであるため、本発明の方法及び使用は、患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けていない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与する工程を更に含んでいてもよい。
【0135】
熟練した医師であれば、多発性骨髄腫患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを、例えば、患者に質問すること及び/又は医療記録を調べることによって、容易に判定できる。
【0136】
例えば、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けていない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0137】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けていない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を更に提供する。発明者らは、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者の本発明の治療がまた、幹細胞移植を受けたことがなく、幹細胞移植に適格ではない患者において特に有益であることも見いだした。
【0138】
熟練した医師であれば、多発性骨髄腫患者の健康状態の個別評価の後に、例えば、年齢、身体的適合性、基礎疾患(例えば、心疾患及び/又は肺疾患)、並びに他の因子、例えば、多発性骨髄腫のタイプ及びステージ、その侵攻性、並びに治療に対する応答性を考慮して、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを容易に判定できる。
【0139】
そのため、本発明は、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを更に含んでもよい。
【0140】
例えば、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0141】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を更に提供する。
【0142】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けたことがなく、幹細胞移植に適していない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0143】
ある特定の態様において、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうか及び患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けたことがなく、幹細胞移植に適していない場合に、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を提供する。
【0144】
本発明は、幹細胞移植を受けたことがなく、幹細胞移植に適していない、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩を更に提供する。本発明は、幹細胞移植を受けたことがなく、幹細胞移植に適していない、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを更に提供する。
【0145】
本発明は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも2.5年前、好ましくは少なくとも5年前であった、多発性骨髄腫患者の部分集団のための治療を更に提供する。疑いを回避するために、「幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくともX年前であった患者」とは、過去に幹細胞移植を受けたことがあるが、本発明による治療を受ける前の少なくともX年間、幹細胞移植を受けていない患者である。(例えば、「少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者」は、過去に幹細胞治療を受けたことがあるが、本発明による治療を受ける前の少なくとも5年間、幹細胞移植を受けていない患者である)。したがって、本発明の治療の前の少なくともX年間(例えば、5年間)、患者は、幹細胞移植を受けていないが、過去X年(例えば、5年)よりも前に、幹細胞移植を確かに受けている。そのため、そのような患者は、「少なくともX年間幹細胞移植を受けていない」患者と表現することもできる。例えば、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者は、少なくとも5年間幹細胞移植を受けていない患者と表現することもできる。幹細胞移植の例には、自家幹細胞移植、タンデム幹細胞移植、同種幹細胞移植、ドナーリンパ球注入、又はミニ移植が含まれる。本発明の代表的な態様において、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくともX年前(例えば、少なくとも5年前)であった患者は、自家幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくともX年前(例えば、少なくとも5年前)であった患者である。
【0146】
ある特定の態様において、本発明は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも2.5年前、少なくとも5年前、少なくとも6年前、少なくとも7年前、少なくとも8年前、少なくとも9年前、少なくとも10年前、少なくとも12年前、又は少なくとも15年前であった、多発性骨髄腫患者の部分集団のための治療を提供する。好ましい態様において、本発明は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前、少なくとも6年前、少なくとも7年前、少なくとも8年前、少なくとも9年前、少なくとも10年前、少なくとも12年前、又は少なくとも15年前であった、多発性骨髄腫患者の部分集団のための治療を提供する。
【0147】
少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者は、その期間中に再度の幹細胞移植治療を受けないことが選択されていてもよく、又は健康状態の個別評価の後にこのタイプの治療の好適な候補ではなかったことが医療従事者によって勧告されていてもよい。例えば、年齢、基礎疾患(例えば、心疾患及び/若しくは肺疾患)、又は他の因子、例えば、多発性骨髄腫のタイプ及びステージ、その侵攻性、並びに治療に対する応答性に起因する。
図7及び8に示されるように、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも2.5年前、特に、少なくとも5年前であった患者集団に、特に、過去2.5年間に幹細胞移植を受けた患者と比較して、利益がある。
【0148】
本発明のある特定の態様において、多発性骨髄腫患者は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、かつ、
少なくとも65、70、75若しくは80歳である(好ましくは、少なくとも75若しくは80歳である);
心臓血管疾患にり患している;及び/又は
肺疾患にり患している。
【0149】
本発明のある特定の態様において、多発性骨髄腫患者は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、かつ、
体表面積(BSA)の中央値が1.855m2以下である;
多発性骨髄腫の改定国際病期分類(R-ISS)のISS分類がI若しくはIIである;
患者の細胞遺伝学の観点で、高リスク患者である;及び/又は
腎機能障害(例えば、クレアチンクリアランスが、60mL/分未満又は60~90mL/分)を有する;特に、クレアチンクリアランスが60mL/分未満である。
【0150】
本発明のある特定の態様において、多発性骨髄腫患者は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、かつ、
RRMMである;
レナリドミドに不応性(例えば、治療前18か月以内に(例えば10mg以上)投与されたレナリドミドに不応性)である;及び/又は(好ましくは及び)
以前に少なくとも2種の治療ライン(例えば、2、3又は4種の以前の治療ライン)を受けている。
【0151】
本発明の治療は、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者のためのものであるため、本発明の方法及び使用は、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを判定し、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた場合に、患者にメルフルフェン又はその塩を投与する工程を更に含んでいてもよい。
【0152】
熟練した医師であれば、多発性骨髄腫患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを、例えば、患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうか、受けたことがある場合には5年以内に幹細胞移植を受けているかどうかについて患者に質問すること及び/又は医療記録を調べることによって、容易に判定できる。
【0153】
例えば、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを判定し、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた場合に、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0154】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを判定し、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた場合に、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を更に提供する。
【0155】
発明者らは、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者のための本発明の治療がまた、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、(再度)幹細胞移植を行うことに適していない患者においても特に有益であることを見いだした。
【0156】
本発明の治療は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者のためのものであるため、本発明の方法及び使用は、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与する工程を更に含んでいてもよい。
【0157】
例えば、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0158】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を更に提供する。
【0159】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、幹細胞移植に適していない場合に、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0160】
ある特定の態様において、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうか及び患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、幹細胞移植に適していない場合に、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を提供する。
【0161】
本発明は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、幹細胞移植に適していない、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩を更に提供する。本発明は、幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であり、幹細胞移植に適していない、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを更に提供する。
【0162】
本発明はまた、75歳以上の多発性骨髄腫患者の部分集団のための治療も提供する。そのような患者はまた、幹細胞治療を受けていなくてもよく、又は幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前であってもよい。実施例1の結果の項で考察し、同様に
図1及び3に示されるように、75歳以上の患者集団に本発明の治療の利益が存在する。
【0163】
ある特定の態様において、本発明は、78歳以上、80歳以上又は85歳以上である多発性骨髄腫患者の部分集団のための治療を提供する。
【0164】
本発明のある特定の態様において、多発性骨髄腫患者は、75歳以上であり、かつ、
幹細胞移植を受けていない、若しくは幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前(例えば、少なくとも6年前、少なくとも7年前、少なくとも8年前、少なくとも9年前、少なくとも10年前、少なくとも12年前又は少なくとも15年前)であった;
心臓血管疾患にり患している;及び/又は
肺疾患にり患している。
【0165】
本発明のある特定の態様において、多発性骨髄腫患者は、75歳以上であり、かつ、
幹細胞移植を受けていない、若しくは幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前(例えば、少なくとも6年前、少なくとも7年前、少なくとも8年前、少なくとも9年前、少なくとも10年前、少なくとも12年前又は少なくとも15年前)であった;
体表面積(BSA)の中央値が1.855m2以下;
多発性骨髄腫の改定国際病期分類(R-ISS)のISS分類がI若しくはIIである;
患者の細胞遺伝学の観点で、高リスク患者である;及び/又は
腎機能障害(例えば、クレアチンクリアランスが60mL/分未満又は60~90mL/分)を有する;特に、クレアチンクリアランスが60mL/分未満である。
【0166】
本発明のある特定の態様において、多発性骨髄腫患者は、75歳以上であり、かつ、
RRMMである;
レナリドミドに不応性(例えば、治療前18か月以内に(例えば10mg以上)投与されたレナリドミドに不応性)である;及び/又は(好ましくは及び)
以前に少なくとも2種の治療ライン(例えば、2、3又は4種の以前の治療ライン)を受けている。
【0167】
そのような態様において、患者は、任意に、幹細胞移植を受けていなくてもよく、又は幹細胞移植を受けたことがありそれが少なくとも5年前(例えば、少なくとも6年前、少なくとも7年前、少なくとも8年前、少なくとも9年前、少なくとも10年前、少なくとも12年前、若しくは少なくとも15年前)であってもよい。
【0168】
本発明の治療は、75歳以上の患者のためのものであるため、本発明の方法及び使用は、患者が75歳以上であるかどうかを判定し、患者が75歳以上の場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与する工程を更に含んでもよい。
【0169】
熟練した医師であれば、多発性骨髄腫患者が75歳以上であるかどうかを、例えば、患者に質問すること及び/又はそれらの医療記録を調べることによって、容易に判定できる。
【0170】
例えば、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が75歳以上であるかどうかを判定し、患者が75歳以上の場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0171】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が75歳以上であるかどうかを判定し、患者が75歳以上の場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を更に提供する。
【0172】
発明者らは、75歳以上の多発性骨髄腫患者のための本発明の治療がまた、75歳以上で、幹細胞移植に適していない(更により特には、幹細胞移植を受けていない、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた)患者においても特に有用であることを見いだした。
【0173】
本発明の治療は、75歳以上の患者のためのものであるため、本発明の方法及び使用は、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与する工程を更に含んでもよい。例えば、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を提供する。本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適していない場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を更に提供する。
【0174】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が75歳以上であるかどうかを判定し、患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が75歳以上であり、幹細胞移植に適していない場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0175】
ある特定の態様において、本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が75歳以上であるかどうか及び患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、患者が75歳以上であり、幹細胞移植に適していない場合に、75歳以上の多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を提供する。
【0176】
本発明は、75歳以上であり、幹細胞移植に適していない、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩を更に提供する。本発明は、75歳以上であり、幹細胞移植に適していない、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを更に提供する。
【0177】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行したかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した場合、患者にメルフルフェン又はその塩を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0178】
本発明は、多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、患者が幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行したかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受け、移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した場合、患者にメルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与することを含む、方法を更に提供する。
【0179】
75歳以上の多発性骨髄腫患者のための治療のそのような使用及び方法において、患者はまた、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者であってもよく、又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者であってもよい。そのため、75歳以上であり、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者のための治療の使用及び方法において、本発明の方法及び使用は、患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを判定し、患者が幹細胞移植を受けていない場合に、75歳以上であり、幹細胞移植を受けていない多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩(及び任意にデキサメタゾン)を投与する工程を更に含んでいてもよい。75歳以上であり、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者の治療の使用及び方法において、本発明の方法及び使用は、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを判定し、患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた場合に、75歳以上であり、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩(及び任意にデキサメタゾン)を投与する工程を更に含んでいてもよい。
【0180】
以下の付記は、本発明の態様を更に定義する。
態様1 - 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、前記移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾン。
態様2 前記メルフルフェンが、用量約1~150mg(対イオンの質量は除く)、例えば、用量1~50mg(対イオンの質量は除く)(例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50mg)で投与される、態様12に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾン。
態様3 前記デキサメタゾンが、用量約5mg~100mg、より好ましくは10mg~80mg、最も好ましくは20mg~60mg(例えば、40mg又は20mg)で投与される、態様1又は2に記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾン。
態様4 メルフルフェンの用量が、1~42日(例えば21~35日、特に21、28、29、30又は35日)のサイクルの1日目に投与される、態様1~3のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩。
態様5 メルフルフェンの用量(塩の質量は除く)が、非経口投薬として注入速度0.3~1.8mg/分で(例えば、非経口投薬として注入速度1.1~1.8mg/分で)投与される
態様6 前記メルフルフェン又はその塩が、前記デキサメタゾン(例えば、用量20mgまたは40mgのデキサメタゾン)と、同時に、逐次的に、又は別々に、投与される、態様1~4のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾン。
態様7 前記メルフルフェン又はその塩が、前記1種以上の別の治療剤と、同時に、逐次的に、又は別々に、投与され、例えば、1種以上の別の治療剤が、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)から選択され、好ましくは、前記1種以上の別の治療剤が、ダラツムマブ及びボルテゾミブから選択される、態様1~5のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾン。
態様8 態様1~7のいずれかに記載の使用のための、メルフルフェン又はその塩を含む医薬製剤、及び、デキサメタゾンを含む医薬製剤。
態様9 多発性骨髄腫の予防又は治療方法であって、
- 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、
多発性骨髄腫患者に、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンを投与する工程を含む、方法。
態様10 前記患者に、メルフルフェン又はその塩と、同時に、逐次的に、又は別々に、1種以上の別の治療剤を投与し、前記1種以上の別の治療剤が、ステロイド(例.プレドニゾン及びデキサメタゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)から選択されるか、又はB細胞成熟抗原に対する抗体(ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(シルタカブタゲン)から選択され、好ましくは、前記1種以上の別の治療剤が、ダラツムマブ及びボルテゾミブから選択される、態様9に記載の方法。
態様11 前記方法が、前記患者が幹細胞移植を受けたことがあるかどうかを判定し、前記患者が幹細胞移植を受けていない場合に、前記患者にメルフルフェン若しくはその塩を投与すること、又は、
前記患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けたかどうかを判定し、前記患者が少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた場合に、前記患者にメルフルフェン若しくはその塩を投与すること、及び/又は、
前記患者が75歳以上であるかどうかを判定し、前記患者が75歳以上の場合に、前記患者にメルフルフェン若しくはその塩を投与すること、である態様9又は10に記載の方法。
態様12 前記方法が、前記患者が幹細胞移植に適しているかどうかを判定し、前記患者が幹細胞移植に適していない場合に、前記患者にメルフルフェン又はその塩を投与することを含む、態様9~11のいずれかに記載の方法。
態様13 - 幹細胞移植を受けていない、
- 少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた、
- 75歳以上の、
- 幹細胞移植を受けていない75歳以上の、若しくは、少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた75歳以上の、又は
- 幹細胞移植を受け、前記移植後少なくとも36か月後に疾患が進行した、
多発性骨髄腫患者における多発性骨髄腫の治療のための医薬品の製造における、メルフルフェン又はその塩及びデキサメタゾンの使用。
態様14 態様1~7のいずれかに記載の患者における多発性骨髄腫の予防又は治療に使用するための、メルフルフェン、デキサメタゾン及び1種以上の別の治療剤を含むキットであって、前記1種以上の別の治療剤が、ステロイド(例.プレドニゾン)、IMiD(例.サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(例.ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例.パノビノスタット)、従来の化学療法薬(例.メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ベンダムスチン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、並びに抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)から選択されるか、又はB細胞成熟抗原に対する抗体(ベランタマブ)、核外輸送の阻害剤(セリネクソル)、及びB細胞成熟抗原に対する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬(シルタカブタゲン)から選択され、好ましくは、前記1種以上の別の治療剤が、ダラツムマブ及びボルテゾミブから選択される、キット。
態様15 前記多発性骨髄腫患者が、
多発性骨髄腫について少なくとも2種の先行治療ライン、例えば、レナリドミド及びプロテアーゼ阻害剤を含む少なくとも2種の先行治療ラインを、逐次的に、若しくは組合せレジメンの一部として、受けたことがある、
直近の治療ライン及び/若しくは治療前18か月以内に投与されたレナリドミドに不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である、
少なくともアルキル化剤に不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である、
少なくとも抗CD38抗体に不応性(例えば、再発し不応性、又は不応性)である、
少なくとも免疫調節薬(IMiD)に不応性(例えば、再発型及び不応性、若しくは不応性)である、
レナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、特に、多発性骨髄腫に関して前記患者が受けた最後の治療のレナリドミドに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、
プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される薬物の2以上のクラスの1種以上(例えば、1、2、3、4又は5種以上)の薬物に不応性である、
少なくともレナリドミド、及び、1、2、3若しくは4種の他の薬物、例えば、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤及び抗CD38抗体から選択される少なくとも1種の薬物(例えば、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤(PI)及び免疫調節薬(IMiD)を含む、2、3又は4種の他の薬物)に不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、
少なくともポマリドミド及び/若しくはダラツムマブに不応性(例.不応性又は再発型不応性)である、並びに/又は
RRMMである、
態様1~7のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、態様8に記載の医薬製剤、態様9~12のいずれかに記載の方法、態様13に記載の使用又は態様14に記載のキット。
態様16 前記多発性骨髄腫患者が、
少なくとも65、70、75若しくは80歳である、
心臓血管疾患にり患している、及び/又は
肺疾患にり患している、
態様1~7若しくは15のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、態様8若しくは15に記載の医薬製剤、態様9~12若しくは15のいずれかに記載の方法、態様13若しくは15に記載の使用又は態様14若しくは15に記載のキット。
態様17 前記多発性骨髄腫患者が、幹細胞移植に適していない、態様1~7若しくは15~16のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、態様8若しくは15~16のいずれかに記載の医薬製剤、態様9~12若しくは15~16のいずれかに記載の方法、態様13若しくは15~16のいずれかに記載の使用又は態様14~16のいずれかに記載のキット。
態様18 前記多発性骨髄腫患者が、
体表面積(BSA)の中央値が1.855m2以下、
多発性骨髄腫の改定国際病期分類(R-ISS)のISS分類がI若しくはII、
患者の細胞遺伝学の観点で、高リスク患者である、及び/又は
腎機能障害(例えば、クレアチンクリアランスが、60mL/分未満又は60~90mL/分)を有する、特に、クレアチンクリアランスが60mL/分未満である、
態様1~7若しくは15~17のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、態様8若しくは15~17のいずれかに記載の医薬製剤、態様9~12若しくは15~17のいずれかに記載の方法、態様13若しくは15~17のいずれかに記載の使用又は態様14~17のいずれかに記載のキット。
態様19 前記多発性骨髄腫患者が、
RRMMである、
レナリドミドに不応性(例えば、治療前18か月以内に(例えば10mg以上)投与されたレナリドミドに不応性)である、及び/又は(好ましくは及び)
以前に少なくとも2種の治療ライン(例えば、2、3又は4種の以前の治療ライン)を受けている、
態様1~7若しくは15~18のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、態様8若しくは15~18のいずれかに記載の医薬製剤、態様9~12若しくは15~18のいずれかに記載の方法、態様13若しくは15~18のいずれかに記載の使用又は態様14~18のいずれかに記載のキット。
態様20 前記多発性骨髄腫患者が、幹細胞移植を受けていない、態様1~7若しくは15~19のいずれかに記載の使用のためのメルフルフェン若しくはその塩、態様8若しくは15~19のいずれかに記載の医薬製剤、態様9~12若しくは15~19のいずれかに記載の方法、態様13若しくは15~19のいずれかに記載の使用又は態様14~19のいずれかに記載のキット。
【実施例】
【0181】
以下の実施例は、本発明を例示する。
実施例1
試験の説明
概要:2~4種の先行治療ラインの後にRRMMとなり、直近の治療ライン、及び、レナリドミドの最後の投与から60日以内の疾患進行によって示される、ランダム化前18か月以内のレナリドミド(10mg以上)投与の両者に対して、不応性の患者を対象とした、ランダム化比較オープンラベル第III相多施設試験。患者には、メルフルフェン+デキサメタゾン又はポマリドミド+デキサメタゾンを投与した。
【0182】
詳細な説明:
2~4種の先行治療ラインの後にRRMMとなり、直近の治療ライン、及びレナリドミドの最後の投与の完了から60日以内の疾患進行によって示されるレナリドミドの両者に対して、不応性である患者を対象とした、ランダム化比較オープンラベル第III相多施設試験。患者を、2つのアームのいずれかにランダム化した(表1を参照):
アームA:28日サイクルの1日目に40mgのメルファランフルフェナミド(メルフルフェン)、並びに1日目、8日目、15日目及び22日目に40mgのデキサメタゾン。
アームB:28日サイクルの1日目~21日目に毎日4mgのポマリドミド、並びに1日目、8日目、15日目及び22日目に40mgのデキサメタゾン。
【0183】
75歳以上の患者は、アームA、アームBとも、1日目、8日目、15日目及び22日目に、デキサメタゾンの用量を20mgに減らした。患者は、疾患進行が記録される、許容できない毒性が現れる、又は継続することが患者にとって最良ではないと患者/処置医師が判断するまで、治療を受けた。治療における用量の修正及び遅延は、プロトコールで詳述すうように、患者の忍容性に基づいて行った。デキサメタゾンの毒性とは無関係に、サイクル遅延が生じた場合、毎週デキサメタゾンを継続することが推奨された。
【0184】
試験デザイン
試験のタイプ: 治療介入(臨床試験)
実際の参加者: 495名
割り付け: ランダム化
介入モデル: 並行群間比較
盲検化: 単盲検(評価者による)
一次目的: 治療
正式タイトル: レナリドマイドに不応性の再発型不応性多発性骨髄腫の患者についての、メルフルフェン/デキサメタゾンをポマリドマイド/デキサメタゾンと比較するランダム化比較オープンラベル第III相試験
【0185】
【0186】
一次効果指標:
1. 無増悪生存期間(PFS)[時間フレーム:ランダム化から進行までの時間、又は進行がない場合には治療の終了から24か月後まで]:独立審査委員会(IRC:Independent Review Committee)により国際骨髄腫作業部会統一効果判定規準(IMWG-URC:International Myeloma Working Group Uniform Response Criteria)に従って評価される、メルフルフェンとデキサメタゾンとの併用(アームA)及びポマリドミドとデキサメタゾンとの併用(アームB)でPFSを比較するため
【0187】
二次効果指標:
1. 全奏効率(ORR)[時間フレーム:ランダム化から、進行が確認される前の最良の応答が達成されるまで、又は進行がない場合には、治療の終了から24か月後まで]:ORRを評価し、それをアームAとアームBとで比較するため
2. 奏効期間(DOR)[時間フレーム:最初の応答の根拠から、進行が確認されるまで、又は進行がない場合には、治療の終了の24か月後まで]:DORを評価し、それをアームAとアームBとで比較するため
3. 全生存期間(OS)[時間フレーム:ランダム化から試験の終了時まで(進行が確認されてから2年間)]:OSを評価し、それをアームAとアームBとで比較するため
4. 安全性及び忍容性:CTCAE v4.0によって評価される、臨床検査及びバイタルサインの異常を含む、治療により有害事象が発生した患者の数[時間フレーム:投薬開始から最終投薬の30日後まで]:安全性及び忍容性を評価し、それをアームAとアームBとで比較するため。CTCAE v4.0によって評価される、臨床検査及びバイタルサインの異常を含む治療により有害事象が発生した患者の数が、提示される。正式な統計学的分析は、安全性エンドポイントについては行われない。
【0188】
適格性基準
試験に適格な年齢:18歳以上(成年、高齢者)
試験に適格な性別:全て
健常志願者の参加:なし
包含基準:
1.18歳以上である男性又は女性
2.以前に多発性骨髄腫と診断され、スクリーニング時点で治療が更に必要である疾患進行が記録されている
3.以下のいずれかとして定義される測定可能な疾患:
・血清モノクローナルタンパク質が、タンパク質電気泳動により0.5g/dL以上である。
・24時間電気泳動での尿中のモノクローナルタンパク質が200mg/24時間以上である
・血清遊離軽鎖が10mg/dL以上であり、血清κ対λ遊離軽鎖比に異常がある
4.逐次的又は同一ラインで、レナリドミド及びPIを含む、2~4種の先行治療ラインを受けており、直近の治療ライン及びランダム化前18か月以内のレナリドミド(10mg以上)の両者に不応性(再発型及び不応性又は不応性)である。レナリドミドに対する不応性は、1サイクル当たり少なくとも14用量のレナリドミドで少なくとも2サイクルのレナリドミドの後の、レナリドミド療法中又は直近の投薬から60日以内の進行として定義される。
5.余命が6か月以上である
6.米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG:Eastern Cooperative Oncology Group)のパフォーマンスステータスが2以下である
7.妊娠可能な女性(FCBP:Females of child bearing potential)は、治療の開始前に血清又は尿による妊娠検査で陰性でなければならない。参加者は、進行中の妊娠検査に同意しなければならない。全ての患者は、米国ポマリドミドリスク評価及び軽減戦略(REMS:Risk Evaluation and Mitigation Strategy)プログラム又はポマリドミド妊娠予防計画(PPP:Pregnancy Prevention Plan)の全ての要件を遵守する意思がなければならない。
8.試験の目的及びリスクを理解し、署名し日付を記入した告知に基づく同意書を提供する能力がある
9.12リード心電図(ECG)で、フリデリシアの式によって計算したQT間隔(QTcF)が470ミリ秒以下のフリデリシア式の間隔である
10.スクリーニング中及びサイクル1の1日目の試験薬投与の直前にも、以下の臨床検査の結果を満たさなければならない:
・1,000細胞/mm3(1.0×109/L)以上の絶対値好中球数(ANC)
・75,000細胞/mm3(75×109/L)以上の血小板数
・8.0g/dl以上のヘモグロビン
・総ビリルビンが正常値上限(ULN)の1.5倍以下であるか、又はジルベール症候群と診断されている患者は、メディカルモニターによって確認及び承認されていること
・アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT/SGPT)がULNの3.0倍以下であること
・腎機能:コッククロフト・ゴールトの式によるクレアチニンクリアランス推定値が45mL/分以上であること
11.抗血栓予防薬を服用できなければならない
12.許容可能な中心静脈カテーテルを有するか、又は有する意思があること(ポートアキャス(Port a cath)、末梢挿入式中心静脈カテーテル[PICC-ライン]、又は中心静脈カテーテル)(アームAにランダム化された場合のみ挿入が必要)
【0189】
除外基準:
1.原発性不応性疾患(すなわち、いずれの先行治療に対しても応答したことがない(MR以上))
2.粘膜出血若しくは内出血又は血小板輸注不応性の根拠がある
3.治験責任医師の判断で、患者に過剰なリスクをもたらす、又はこの試験への患者の参加に有害な影響を及ぼす医学的状態がある
4.以前のポマリドミドへの曝露
5.IMiDに対する不耐性が判明している
6.ランダム化の14日以内に非経口又は経口抗感染症薬治療を必要とする活動性感染が判明している
7.適切に治療された基底細胞癌、扁平上皮細胞皮膚がん、子宮頸若しくは乳房の上皮内癌、又は能動的監視下の非常に低リスク及び低リスクの前立腺がんを除く、過去3年以内の診断済み又は治療を必要とする他の悪性腫瘍
8.妊娠中又は授乳中の女性
9.コンプライアンス又はフォローアップ評価を妨害又は混乱させる可能性がある重篤な精神病、活動性アルコール依存症又は薬物中毒
10.ヒト免疫不全ウイルス又は活動性C型肝炎ウイルス感染症が判明している
11.活動性B型肝炎ウイルス感染症(HBsAg+として定義される)
・以前にB型肝炎ワクチンを受けた患者は、認められる(HBsAg-、抗HBs+、抗HBc-として定義される)
・非活動性B型肝炎(HBsAg-、抗HBs+、抗HBc+)は、再活性化のリスクを考慮した後に治験責任医師の判断で対象としてもよい
12.症候性アミロイドーシス又は形質細胞性白血病を併発している
13.POEMS症候群
14.ランダム化前の3週間以内(ニトロソ尿素については6週間以内)の、細胞傷害性被験剤を含む、多発性骨髄腫のための以前の細胞傷害性治療薬。ランダム化前の2週間以内のIMiD、PI、及び/又はコルチコステロイド。ランダム化前の4週間以内の他の被験治療薬及びモノクローナル抗体。併存する状態の症状管理のための1日1回で最大10mg以下の経口プレドニゾン又はその同等物は認められるが、用量が、ランダム化前の少なくとも7日間、安定しているものとする。
15.ランダム化前の悪性度1を上回る以前の治療法に対する残存副作用(任意の悪性度の脱毛症及び/又は疼痛を伴わない悪性度2のニューロパチーは認められる)
16.ランダム化の12週間以内の末梢幹細胞移植
17.活動性の移植片対宿主病を伴う同種幹細胞移植
18.ランダム化の4週間以内の大きな外科手術又は放射線療法
19.ステロイド治療に対する不耐性が判明している
【0190】
結果
表2に、実施例1の試験に含まれる患者の特徴のいくつかを要約する。
【表2】
【0191】
幹細胞移植を受けていない患者群(メルフルフェン+デキサメタゾン群についてはn=121;ポマリドミド+デキサメタゾン群についてはn=129)のハザード比を示すPFS及びOSのフォレストプロットを、
図1~4に示す。ハザード比は、ポマリドミドと対比した、メルフルフェンを投与した場合のフォローアップ期間中のそれぞれの時点における事象の相対的リスクの尺度である。1を下回る値は、メルフルフェンについて良好な治療効果を示し、1を上回る値は、ポマリドミドについて良好な治療効果を示す。
【0192】
図5は、幹細胞移植を受けていない患者(メルフルフェン+デキサメタゾン群についてはn=121;ポマリドミド+デキサメタゾン群についてはn=129)、及び幹細胞移植を受けたことがある患者(メルフルフェン+デキサメタゾン群についてはn=125;ポマリドミド+デキサメタゾン群についてはn=120)の経時的なPFS(%)のグラフである。グラフのデータは、グラフの下に数値としても示している。グラフの線は、幹細胞移植を受けていないメルフルフェン+デキサメタゾン群の結果を示す。
図6は、幹細胞移植を受けていない患者(メルフルフェン+デキサメタゾン群についてはn=121;ポマリドミド+デキサメタゾン群についてはn=129)の経時的なOS(%)のグラフを示す。ここでも、グラフのデータは、グラフの下に数値としても示している。グラフの線は、幹細胞移植を受けていないメルフルフェン+デキサメタゾン群の結果を示す。
【0193】
図1~6から確認できるように、メルフルフェン+デキサメタゾンは、PFS及びOSに関して、以前に幹細胞移植を受けていない患者について、ポマリドミド+デキサメタゾンと比較して有意に良好な治療効果を提供した。この試験における、過去に幹細胞移植を受けていない、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者(n=121)のPFSの中央値は9.3か月間で、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者(n=129)のPFSの中央値は4.6か月間であった。加えて、この試験における、過去に幹細胞移植を受けていない、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者(n=121)のOSの中央値は21.6か月間で、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者(n=129)のOSの中央値は16.5か月間であった。
図1~4に示されるように、ポマリドミド+デキサメタゾンと比較したメルフルフェン+デキサメタゾンのこれらの改善された治療効果は、過去に幹細胞移植を受けていない患者群のデモグラフィック及び疾患特徴群について、一貫して存在していた。
【0194】
図7及び8は、幹細胞移植を受けていないメルフルフェン+デキサメタゾン(n=121)若しくはポマリドミド+デキサメタゾン(n=129)で治療した、メルフルフェン+デキサメタゾンで治療した、幹細胞移植を受け、それが2.5年以内(n=43)、2.5~5年(n=48)、若しくは5年超(n=34)であった、又はポマリドミド+デキサメタゾンで治療した、幹細胞移植を受け、それが2.5年以内(n=35)、2.5~5年(n=51)、若しくは5年超(n=34)であった、実施例1における患者について、PFSのハザード比及び事象の表(
図7)、OSのハザード比及び事象の表(
図8)を示す。
【0195】
図7及び8から確認できるように、メルフルフェン+デキサメタゾンは、PFS及びOSに関して、幹細胞移植を受けていない患者(PFSのハザード比=0.59;OSのハザード比=0.78)、又は少なくとも5年前に幹細胞移植を受けた患者(PFSのハザード比=0.73;OSのハザード比=0.87)について、ポマリドミド+デキサメタゾンよりも有意に良好な治療効果を提供した。メルフルフェン+デキサメタゾンは、PFSに関して、2.5~5年前に幹細胞移植を受けたことがある患者について、ポマリドミド+デキサメタゾンと比較して、良好な治療効果も提供した(ハザード比=0.83)。
【0196】
図9及び10に示すデータにおいて、以前に幹細胞移植を受け、その後36か月以内に進行した患者は、分析から除外する。すなわち、図は、以前に幹細胞移植を受けていない、又は以前に幹細胞移植を受け、その後36か月よりも後に疾患が進行した患者を表す。
図9及び10から確認できるように、メルフルフェン+デキサメタゾンは、OS(23.6か月間)に関して、幹細胞移植を受け、36か月以内に進行した患者群には含まれない患者について、ポマリドミド+デキサメタゾン(19.8か月間)と比較して、有意に良好な治療効果を提供した(ハザード比=0.83)。
【0197】
最後に、驚くべきことに、この試験では、75歳以上であり、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者のPFSの中央値が9.4か月間であり、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者のPFSの中央値が4.6か月間であることが見いだされた。加えて、この試験では、75歳以上であり、メルフルフェンが投与された多発性骨髄腫患者の全生存期間(OS)の中央値が21.6か月間であり、一方で、過去に幹細胞移植を受けていない、ポマリドミドが投与された多発性骨髄腫患者のOSの中央値が8.3か月間であることが見いだされた。実施例1の試験の一部であった年齢範囲内の患者の一部は、以前に幹細胞移植を受けていない。実施例1の試験の一部であった年齢範囲内の患者の一部には、以前に幹細胞移植を受け、その後36か月よりも後に疾患が進行した者もいた。それらのサブセットのいずれにおいても、改善効果は、非常に顕著であった。したがって、実施例の結果は、メルフルフェン治療が、75歳以上の患者、特に、以前に幹細胞移植を受けていないその年齢の患者、及び以前に幹細胞移植を受け、その後36か月よりも後に疾患が進行したその年齢の患者においても、特に有益な効果であったことを示す。
【国際調査報告】