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特表2024-524555ヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストで皮膚癌を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストで皮膚癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 38/51 20060101ALI20240628BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240628BHJP
   C12N 9/88 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P17/00
A61K38/51
G01N33/53 M
C12N9/88 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500282
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2022073438
(87)【国際公開番号】W WO2023283558
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,460
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ、マヌエル アレン レベズ
(72)【発明者】
【氏名】バックマン、ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】リー、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジョルゲンソン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】バラス、アリス
(72)【発明者】
【氏名】アベカシス、ゴンサロ
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA44
4C084DB30
4C084DC26
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC061
4C084ZC062
4C084ZC191
4C084ZC192
(57)【要約】
本開示は、皮膚癌を有するか、または皮膚癌を発症するリスクのある対象を治療する方法、及び皮膚癌を発症するリスクが高い対象を特定する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚癌または皮膚癌を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
非黒色腫皮膚癌または非黒色腫皮膚癌を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
基底細胞癌または基底細胞癌を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
扁平上皮癌または扁平上皮癌を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
黒色腫または黒色腫を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
メルケル細胞癌またはメルケル細胞癌を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
隆起性皮膚線維肉腫または隆起性皮膚線維肉腫を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
脂腺癌または脂腺癌を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記方法がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項9】
前記HALアゴニストが、HALタンパク質または甲状腺ホルモン(T)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象から得られる生体試料にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の存在または非存在を検出することをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
皮膚癌を治療または予防する治療剤を標準的な投与量で対象に投与することをさらに含み、前記HAL変異体核酸分子が前記生体試料に存在しない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
皮膚癌を治療または予防する治療剤を、前記HAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で投与することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記HAL変異体核酸分子が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むヌクレオチド配列を有するゲノム核酸分子である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記検出工程が試験管内で実施される、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記検出工程が前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含み、前記配列決定された部分が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体を含み;
その際、前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子の前記配列決定された部分が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む場合、前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子である、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記検出工程が:
a)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に近接する、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に近接する、前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の一部とハイブリダイズするプライマーに前記生体試料を接触させることと;
b)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に対応する、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に対応する、前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の位置を少なくとも介して前記プライマーを伸長させることと;
c)前記プライマーの前記伸長産物が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体を含むかどうか、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むかどうかを決定することとを含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記検出工程が前記核酸分子全体を配列決定することを含む、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出工程が:
a)前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の少なくとも一部を増幅することであって、前記一部が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む、前記増幅することと;
b)前記増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識することと;
c)前記標識した核酸分子を、変異特異的プローブを含む支持体に接触させることであって、前記変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む前記増幅した核酸分子の前記ヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、前記接触させることと;
d)前記検出可能な標識を検出することとを含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記検出工程が:
前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体を、検出可能な標識を含む変異特異的プローブに接触させることであって、前記変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、前記接触させることと;
前記検出可能な標識を検出することとを含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤で対象を治療する方法であって、前記対象が、皮膚癌を有するか、または皮膚癌を発症するリスクがあり、前記方法が、
前記対象がヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)で予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有するかどうかを、
前記対象から生体試料を得ることまたは得たことと、
前記対象が前記HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードする前記HAL変異体核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために前記生体試料にて配列分析を実施する、または実施したこととによって決定することと;
皮膚癌を治療するまたは予防する前記治療剤を、HAL基準である対象に標準的な投与量で投与すること、もしくは投与し続けること、及び/または前記対象にHALアゴニストを投与することと;
皮膚癌を治療するまたは予防する前記治療剤を、前記HAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象に標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で投与すること、もしくは投与し続けること、及び/または前記対象にHALアゴニストを投与することとを含み;
その際、前記HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードする前記HAL変異体核酸分子を有する遺伝子型の存在は前記対象が皮膚癌を発症する低いリスクを有することを示す、前記方法。
【請求項21】
前記対象がHAL基準であり、前記対象が、皮膚癌を治療するまたは予防する前記治療剤を標準的な投与量で投与される、または投与され続ける、且つHALアゴニストを投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象がHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型であり、前記対象が、皮膚癌を治療するまたは予防する前記治療剤を標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で投与される、または投与され続ける、且つHALアゴニストを投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記HAL変異体核酸分子が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンまたは配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンを含むヌクレオチド配列を有するゲノム核酸分子である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記配列分析が前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含み、前記配列決定された部分が配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体を含み;
その際、前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記配列決定された部分が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む場合、前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子である、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記配列分析が:
a)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に近接する、前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の一部とハイブリダイズするプライマーに前記生体試料を接触させることと;
b)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に対応する、前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の位置を少なくとも介して前記プライマーを伸長させることと;
c)前記プライマーの前記伸長産物が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むかどうかを決定することとを含む、
請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記配列分析が前記核酸分子全体を配列決定することを含む、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記配列分析が:
a)前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の少なくとも一部を増幅することであって、前記一部が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む、前記増幅することと;
b)前記増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識することと;
c)前記標識した核酸分子を、変異特異的プローブを含む支持体に接触させることであって、前記変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む前記増幅した核酸分子の前記ヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、前記接触させることと;
d)前記検出可能な標識を検出することとを含む、
請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記配列分析が:
前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体を、検出可能な標識を含む変異特異的プローブに接触させることであって、前記変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、前記接触させることと;
前記検出可能な標識を検出することとを含む、
請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸分子が、前記対象から得られる細胞内に存在する、請求項20~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記HALアゴニストが、HALタンパク質または甲状腺ホルモン(T)を含む、請求項20~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
皮膚癌を発症する高いリスクを有する対象を特定する方法であって、前記方法が、
前記対象から得られる生体試料にてヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)で予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含み;
その際、
前記対象がHAL基準である場合、前記対象は皮膚癌を発症する高いリスクを有し;且つ
前記対象が前記HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である、またはホモ接合型である場合、前記対象は皮膚癌を発症する低いリスクを有する、前記方法。
【請求項32】
前記HAL変異体核酸分子が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンまたは配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンを含むヌクレオチド配列を有するゲノム核酸分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記決定工程が試験管内で実施される、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記決定工程が前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含み、前記配列決定された部分が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体を含み;
その際、前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子の前記配列決定された部分が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む場合、前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子である、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記決定工程が:
a)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に近接する、前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の一部とハイブリダイズするプライマーに前記生体試料を接触させることと;
b)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に対応する、前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列の位置を少なくとも介して前記プライマーを伸長させることと;
c)前記プライマーの前記伸長産物が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むかどうかを決定することとを含む、
請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記決定工程が前記核酸分子全体を配列決定することを含む、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記決定工程が:
a)前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の少なくとも一部を増幅することであって、前記一部が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む、前記増幅することと;
b)前記増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識することと;
c)前記標識した核酸分子を、変異特異的プローブを含む支持体に接触させることであって、前記変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む前記増幅した核酸分子の前記ヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、前記接触させることと;
d)前記検出可能な標識を検出することとを含む、
請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記決定工程が:
前記生体試料における前記HALゲノム核酸分子またはその相補体を、検出可能な標識を含む変異特異的プローブに接触させることであって、前記変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む前記HALゲノム核酸分子またはその相補体の前記ヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、前記接触させることと;
前記検出可能な標識を検出することとを含む、
請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象がHAL基準であり、前記方法が、前記対象に皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を標準的な投与量で投与し、且つ前記対象にHALアゴニストを投与することをさらに含む、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象がHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型であり、前記方法が、前記対象に皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で投与し、且つ前記対象にHALアゴニストを投与することをさらに含む、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
ヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)で予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体を有すると特定された対象にて皮膚癌の治療または予防に使用するための、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤であって、前記ゲノム核酸分子が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、前記治療剤。
【請求項42】
対象にて皮膚癌の治療または予防に使用するためのヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストであって、前記対象が、
a)HALゲノム核酸分子について基準であるか、または
b)
i)HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体についてヘテロ接合型であり、その際、前記ゲノム核酸分子が、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、
前記ヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニスト。
【請求項43】
HALタンパク質または甲状腺ホルモン(T)である、請求項42に記載のHALアゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表への参照
本出願は、2022年7月2日に作成された18923808302SEQという名称で197キロバイトのサイズのテキストファイルとして電子提出された配列表を含む。この配列表は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、ヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)アゴニストによる、皮膚癌を有するか、または皮膚癌を発症するリスクのある対象の治療、及び皮膚癌を発症するリスクが高い対象を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚癌は、皮膚において起こるすべてのがんを指す。これらの比較的高頻度のがんは、患者に非悪性の皮膚異常だと誤解されることが多く、そのため検出が遅れ、疾患の治療が困難になり、致死性の結果につながり得る。最も高頻度の皮膚癌は基底細胞癌(BCC)であり、すべての皮膚癌の約80%を占める。他の種類の皮膚癌には、すべての皮膚癌のおよそ16%を占める扁平上皮癌(SCC)、及び約4%を占める黒色腫がある。BCC及びSCCは集合的に非黒色腫皮膚癌(NMSC)と呼ばれている。黒色腫は表皮のメラノサイトから発生し、その多くが死に至る転移性癌または癌腫である。2000年には、47,000人が新たな黒色腫を有するものと特定され、そのうち7,700人は死亡したことが報告された(非特許文献1)。紫外線によって引き起こされる黒色腫は、紫外線への慢性曝露ではなく、激しい日焼けなどの断続的曝露によって引き起こされると推定されている(非特許文献2)。別の稀な形態の侵襲性皮膚癌はメルケル細胞癌(MCC)であり、黒色腫に類似している。
【0004】
HAL遺伝子は、ヒスチジン(数ある機能の中でもとりわけ、フィラグリンに組み込まれる必須アミノ酸)を、角質層に蓄積する主要な紫外線(UV)吸収発色団であるトランスウロカニン酸に変換する酵素である、ヒスチジンアンモニアリアーゼ(またはヒスチダーゼ)をコードする(非特許文献3)。ヒスチダーゼの不活性化は、UV光を遮断する表皮の最外層の能力を減少させると予想されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Greenlee et al.,Cancer J.Clin.,2000,50,7-33
【非特許文献2】Gilchrest et al.,New Engl.J.Med.,1999,340,1341-1348
【非特許文献3】Barresi et al.,J.Invest.Dermatol.,2011,131,188-194
【発明の概要】
【0006】
本開示は、皮膚癌を有するか、または皮膚癌を発症するリスクのある対象を治療する方法を提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
本開示はまた、非黒色腫皮膚癌を有する対象を治療する、または対象が非黒色腫皮膚癌を発症することを予防する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0007】
本開示はまた、基底細胞癌を有する対象を治療する、または対象が基底細胞癌を発症することを予防する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0008】
本開示はまた、扁平上皮癌を有する対象を治療する、または対象が扁平上皮癌を発症することを予防する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0009】
本開示はまた、黒色腫を有する対象を治療する、または対象が黒色腫を発症することを予防する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
本開示はまた、メルケル細胞癌を有する対象を治療する、または対象がメルケル細胞癌を発症することを予防する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0010】
本開示はまた、隆起性皮膚線維肉腫を有する対象を治療する、または対象が隆起性皮膚線維肉腫を発症することを予防する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0011】
本開示はまた、脂腺癌を有する対象を治療する、または対象が脂腺癌を発症することを予防する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
本開示はまた、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤で対象を治療する方法も提供し、その際、該対象は、皮膚癌を有するか、または皮膚癌を発症するリスクがあり、該方法は、該対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有するかどうかを、該対象から生体試料を得ることまたは得たことと、該対象が該HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードする該HAL変異体核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために該生体試料にて配列分析を実施する、または実施したこととによって決定することと;皮膚癌を治療するまたは予防する該治療剤を、HAL基準である対象に標準的な投与量で投与すること、もしくは投与し続けること、及び/または該対象にHALアゴニストを投与することと;皮膚癌を治療するまたは予防する該治療剤を、該HAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象に標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で投与すること、もしくは投与し続けること、及び/または該対象にHALアゴニストを投与することとを含み;その際、該HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードする該HAL変異体核酸分子を有する遺伝子型の存在は該対象が皮膚癌を発症する低いリスクを有することを示す。
【0012】
本開示はまた、皮膚癌を発症する高いリスクを有する対象を特定する方法も提供し、該方法は、該対象から得られる生体試料にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含み;その際、該対象がHAL基準である場合、該対象は皮膚癌を発症する高いリスクを有し;且つ該対象が該HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である、またはホモ接合型である場合、該対象は皮膚癌を発症する低いリスクを有する。
【0013】
本開示はまた、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体を有すると特定された対象にて皮膚癌の治療または予防に使用するための、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤であって、該ゲノム核酸分子が、i)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体、またはii)配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、該治療剤も提供する。
【0014】
本開示はまた、対象にて皮膚癌の治療または予防に使用するためのHALアゴニストであって、該対象が、a)HALゲノム核酸分子、HAL mRNA分子、もしくはHAL cDNA分子について基準であるか、またはb)HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体についてヘテロ接合型であり、その際、該ゲノム核酸分子が、i)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体、またはii)配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、該HALアゴニストも提供する。
【0015】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本開示のいくつかの特徴を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】GTExからの、HALのノンコーディング変異体と皮膚組織(日光露出部-下腿)における遺伝子発現との間の関連性を示す。
図2】HALのノンコーディング変異体と、ビタミンDレベル及び皮膚癌関連形質との間の関連性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の態様に関する種々の用語が本明細書及びクレームの全体を通して使用されている。特に指示されない限り、そのような用語には当該技術分野における通常の意味を付与するものとする。具体的に定義されている他の用語は、本明細書に示されている定義と一致する形で解釈されるものとする。
【0018】
別段に明示的な定めのない限り、本明細書に示されているいずれの方法または態様も、その工程を特定の順序で行う必要があるものとして解釈するようには意図されていない。したがって、方法クレームが、工程を特定の順序に限定すべきことをクレームまたは説明にて具体的に定めていない場合には、いかなる点においても、順序を定めるようには意図されていない。このことは、工程もしくは作業フローの手筈に関する論理事項、文法構成もしくは句読法に由来する一般的意味、または本明細書に記載されている態様の数もしくは種類を含め、あらゆる考え得る非明示的な解釈基準についても同様である。
【0019】
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「a」、「an」及び「the」という単数形には、複数の参照対象が含まれる。
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、引用された数値が概算であり、小さな変動が開示された実施形態の実践に有意に影響を及ぼさないことを意味する。数値が使用される場合、文脈によって別段の指示がない限り、「約」という用語は、数値が±10%変動し、開示された実施形態の範囲内に留まることができることを意味する。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「comprising(含む)」という用語は、特定の実施形態では、所望に応じて、「consisting(成る)」または「consisting essentially of(から本質的に成る)」と置き換えてもよい。
【0021】
本明細書で使用されるとき、核酸分子またはポリペプチドに関して、「単離された」という用語は、核酸分子またはポリペプチドが、例えば、血液及び/または他の組織から離れて、その本来の環境以外の状態にあることを意味する。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子またはポリペプチドは、他の核酸分子または他のポリペプチド、特に動物起源の他の核酸分子またはポリペプチドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、核酸分子またはポリペプチドは、高度に精製された形態、すなわち、95%を超えて純粋または99%を超えて純粋であることができる。この文脈で使用される場合、「単離された」という用語は、二量体または代わりにリン酸化もしくは誘導体化された形態のような代わりの物理的形態における同じ核酸分子またはポリペプチドの存在を排除しない。
【0022】
本明細書で使用するとき、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含むことができ、DNA及び/またはRNAを含むことができ、且つ一本鎖、二本鎖または多重鎖であることができる。核酸の一方の鎖はその相補体も指す。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、哺乳動物を含む任意の動物を含む。哺乳動物には、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ)、ペット動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ)、及び非ヒト霊長類(例えば類人猿及びサル)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、医師のケア下にある患者である。
【0024】
ヒトにおける皮膚癌を発症するリスクの低下に関連するHAL遺伝子における高頻度の推定機能獲得(GOF)の負荷が本開示に従って特定されている。例えば、HAL基準ゲノム核酸分子(配列番号1を参照のこと)の11,352位のグアニンをアデニンに変化させる、またはHAL基準ゲノム核酸分子の14,441位のアデニンをグアニンに変化させる遺伝子変異は、そのような変異を有する対象が皮膚癌を発症する低いリスクを有し得ることを示すことが観察されている。要するに、本明細書に記載されている遺伝子分析は驚くべきことに、HAL遺伝子及び、特にHAL遺伝子のpGOFが、皮膚癌を発症するリスクの低下と関連していることを示している。したがって、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、または脂腺癌などの皮膚癌を発症するリスクが高いHAL基準である対象は、皮膚癌が予防され、その症状が軽減され、及び/または症状の発症が抑制されるように治療され得る。したがって、本開示は、対象におけるそのような変異体の特定を活用して、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、もしくは脂腺癌のような皮膚癌を発症するそのような対象におけるリスクを特定もしくは層別化し、または非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、もしくは脂腺癌のような皮膚癌を発症する高いリスクを有すると対象を診断し、その結果リスクのある対象または活動性疾患のある対象がそれに応じて治療され得る方法を提供する。
【0025】
本開示に従って、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子(これらの変異が特定の対象においてホモ接合型であるかヘテロ接合型であるかにかかわらず)は、皮膚癌を発症する低下したリスクと関連することがさらに観察されている。さらに、本開示による追加の変異体と遺伝子負荷マスクとの関連性の特定は、HALが皮膚癌における保護効果の原因であり得ることを示す。
【0026】
本開示の目的のために、任意の特定の対象は、3つのHAL遺伝子型:i)HAL基準;ii)HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型;またはiii)HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてホモ接合型のうちの1つを有するものとして分類することができる。対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子のコピーを有さない場合、対象はHAL基準である。対象がHAL変異体核酸分子の単一コピーを有する場合、対象はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。本明細書で使用されるとき、HAL変異体核酸分子は、部分的な機能獲得、完全な機能獲得、予測される部分的な機能獲得、または予測される完全な機能獲得を有するHALポリペプチドをコードする任意のHAL核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)である。部分的な機能獲得(または予測される部分的な機能獲得)を有するHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有する対象は、HALについて低形質性である。対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の2つのコピーを有する場合、対象はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてホモ接合型である。
【0027】
HAL基準であると遺伝子型決定されている、または決定されている対象については、そのような対象は、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、及び/または脂腺癌のような皮膚癌を発症するリスクが高い。HAL基準であるまたはHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型であると遺伝子型決定されている、または決定されている対象については、そのような対象はHALアゴニストで治療することができる。
【0028】
本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、HAL変異体核酸分子は、部分的な機能獲得、完全な機能獲得、予測される部分的な機能獲得、または予測される完全な機能獲得を有するHALポリペプチドをコードする任意のHAL核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)であることができる。
【0029】
本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドは、部分的な機能獲得、完全な機能獲得、予測される部分的な機能獲得、または予測される完全な機能獲得を有する任意のHALポリペプチドであることができる。
【0030】
HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の任意の1つ以上(すなわち、任意の組み合わせ)を、本明細書に記載されている方法のいずれかで使用して、対象が皮膚癌を発症する高いリスクを有するかどうかを決定することができる。特定の変異体の組み合わせは、HALと皮膚癌を発症するリスクの低下との特定の相関を統計的に分析するために使用されるマスクを形成することができる。
【0031】
本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、または脂腺癌である。本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、非黒色腫皮膚癌である。本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、基底細胞癌である。本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、扁平上皮癌である。本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、黒色腫である。本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、メルケル細胞癌である。本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、隆起性皮膚線維肉腫である。本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、皮膚癌は、脂腺癌である。
【0032】
基底細胞癌の症状は、個体の頭部、頸部、または肩の日光に露出した皮膚における、隆起した、滑らかな、真珠状の丘疹を含むが、これに限定されない。しばしば、小血管を腫瘍内に見ることができる。腫瘍の痂皮化のみならず、出血も発生し得る。人は基底細胞癌を治癒しない潰瘍と誤解することもある。基底細胞癌は、最も致死性の低い形態の皮膚癌であり、多くの場合、適切に治療すれば完全に消失させることができる。
【0033】
扁平上皮癌の症状は、個体の日光に露出した皮膚における、鱗屑性の肥厚した紅斑を含むが、これに限定されない。いくつかの形態の扁平上皮癌は、堅く硬質な腫瘤及びドーム形状として現れる。腫瘤の破裂及び出血が発生し得る。治療しなければ、扁平上皮癌は大きな腫塊へと発達し得る。扁平上皮癌は、2番目に頻度の高い形態の皮膚癌である。
【0034】
黒色腫の症状は、暗色または褐色から黒色の病変を含むが、これに限定されない。黒色腫には、ピンク、赤、または肌色に見えるものもあり、これらは無色素性黒色腫と呼ばれている。無色素性黒色腫は、より高悪性度の形態の黒色腫である。悪性黒色腫の前兆の一部には、ほくろのサイズ、形状、色、高さの変化、春機発動期から成人期への移行期間における新しいほくろの発生、そう痒、潰瘍形成または出血が含まれ得る。黒色腫は、最も致死性の高い形態の皮膚癌である。
【0035】
メルケル細胞癌の症状は、通常は痛みも痒みもない、急速に成長する、非圧痛性の肌色から赤/紫色の丘疹を含むが、これに限定されない。これらの丘疹は、高度に日光に露出した頭部、頸部、及び腕の皮膚に現れる。人はメルケル細胞癌を嚢胞または他の種類のがんと誤解することが多い。
【0036】
隆起性皮膚線維肉腫の症状は、幅1~5センチメートルの小さくわずかに隆起した皮膚の紅斑または紫斑を含むが、これに限定されず、これは、隆起した腫瘤になることがあり、場合によっては発赤、破裂または出血を引き起こし得る。
【0037】
脂腺癌の症状は、眼瞼における、成長が遅く、時に黄色で無痛のしこりを含むが、これに限定されない。丘疹は、眼瞼が睫毛に触れるところで出血または漏出する場合があり、肥厚または黄色もしくは赤みがかった痂皮が生じる場合もある。
【0038】
本開示は、皮膚癌を有するか、または皮膚癌を発症するリスクのある対象を治療する方法を提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
本開示はまた、非黒色腫皮膚癌を有するか、または非黒色腫皮膚癌を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0039】
本開示はまた、基底細胞癌を有するか、または基底細胞癌を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
本開示はまた、扁平上皮癌を有するか、または扁平上皮癌を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0040】
本開示はまた、黒色腫を有するか、または黒色腫を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
本開示はまた、メルケル細胞癌を有するか、またはメルケル細胞癌を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0041】
本開示はまた、隆起性皮膚線維肉腫を有するか、または隆起性皮膚線維肉腫を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
【0042】
本開示はまた、脂腺癌を有するか、または脂腺癌を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にHALアゴニストを投与することを含む。
いくつかの実施形態では、HALアゴニストは、HALタンパク質、もしくはその機能的に活性のある断片、または甲状腺ホルモン(T)である。
【0043】
いくつかの実施形態では、治療方法はさらに、対象から得られた生体試料におけるHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の存在または非存在を検出することを含む。本開示全体を通して使用されるとき、「HAL変異体核酸分子」は、部分的な機能獲得、完全な機能獲得、予測される部分的な機能獲得、または予測される完全な機能獲得を有するHALポリペプチドをコードする任意のHAL核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)である。
【0044】
本開示はまた、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤で対象を治療する方法も提供する。いくつかの実施形態では、対象は皮膚癌を有する。いくつかの実施形態では、対象は皮膚癌を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、方法は、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有するかどうかを、対象から得られる生体試料を得ることまたは得たことと、対象がHAL変異体核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために生体試料にて配列分析を実施することまたは実施したこととによって決定することを含む。対象がHAL基準である場合、皮膚癌を治療または予防する治療剤が標準的な投与量で対象に投与される、もしくは投与され続ける、及び/またはHALアゴニストが対象に投与される。対象がHAL変異体についてヘテロ接合型である場合、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤が、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で対象に投与される、もしくは投与され続ける、及び/またはHALアゴニストが対象に投与される。HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有する遺伝子型の存在は、対象が皮膚癌を発症するリスクは低いことを示している。いくつかの実施形態では、対象はHAL基準である。いくつかの実施形態では、対象はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。
【0045】
HAL基準であるまたはHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型であると遺伝子型決定されている、または決定されている対象については、そのような対象は、本明細書に記載されているように、HALアゴニストで治療することができる。
【0046】
対象から得られた生体試料にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の存在または非存在を検出すること、及び/または対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有するかどうかを決定することは、本明細書に記載されている方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は試験管内で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は原位置で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は生体内で実施することができる。これらの実施形態のいずれかでは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子は対象から得られる細胞内に存在することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、対象がHAL基準である場合、対象はまた、標準的な投与量で皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される。
【0048】
いくつかの実施形態では、治療方法はさらに、対象から得られた生体試料にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドの存在または非存在を検出することを含む。いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有さない場合、対象は、標準的な投与量で皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有する場合、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される。
【0049】
本開示はまた、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤で対象を治療する方法も提供する。いくつかの実施形態では、対象は皮膚癌を有する。いくつかの実施形態では、対象は皮膚癌を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、方法は、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有するかどうかを、対象から生体試料を得ることまたは得たことと、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有するかどうかを決定するために生体試料にてアッセイを行うことまたは行ったこととによって決定することを含む。対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有さない場合、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤が標準的な投与量で対象に投与される、もしくは投与され続ける、及び/またはHALアゴニストが対象に投与される。対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有する場合、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤が、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で対象に投与される、もしくは投与され続ける、及び/またはHALアゴニストが対象に投与される。HALで予測される機能獲得型ポリペプチドの存在は、対象が皮膚癌を発症するリスクは低いことを示している。いくつかの実施形態では、対象はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態では、対象はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有さない。
【0050】
対象から得られた生体試料にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドの存在または非存在を検出すること、及び/または対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有するかどうかを決定することは、本明細書に記載されている方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は試験管内で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は原位置で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は生体内で実施することができる。これらの実施形態のいずれかでは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドは対象から得られる細胞内に存在することができる。
【0051】
皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤の例には、チアジド利尿薬(例えば、クロルタリドン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、またはメトラゾン);カリウム保持性利尿薬(例えば、アミロライド、スピロノラクトン、またはトリアムテレン);ループ利尿薬(例えば、ブメタニド、フロセミド、またはトルセミド);ベータ遮断薬(例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ビソプロロール/ヒドロクロロチアジド、酒石酸メトプロロール、コハク酸メトプロロール、ナドロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソロトール、またはチモロール);アンギオテンシン変換酵素(ACE)アゴニスト(例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、またはトランドラプリル);アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)(例えば、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、またはバルサルタン);カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、またはベラパミル);アルファ遮断薬(例えば、ドキサゾシン、プラゾシン、またはテラゾシン);αβ遮断薬(例えば、カルベジロールまたはラベタロール);中枢性アゴニスト(例えば、メチルドパ、クロニジン、またはグアンファシン);血管拡張薬(例えば、ヒドララジンまたはミノキシジル);アルドステロン受容体アンタゴニスト(例えば、エプレレノンまたはスピロノラクトン)、及びレニンアゴニスト(例えば、アリスキレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤は、チアジド利尿薬、カリウム保持性利尿薬、ループ利尿薬、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、ARB、カルシウムチャネル遮断薬、アルファ遮断薬、αβ遮断薬、中枢性アゴニスト、血管拡張薬、アルドステロン受容体アンタゴニスト、またはレニン阻害剤である。いくつかの実施形態では、チアジド利尿薬は、クロルタリドン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、またはメトラゾンである。いくつかの実施形態では、カリウム保持性利尿薬は、アミロライド、スピロノラクトン、またはトリアムテレンである。いくつかの実施形態では、ループ利尿薬は、ブメタニド、フロセミド、またはトルセミドである。いくつかの実施形態では、ベータ遮断薬は、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ビソプロロール/ヒドロクロロチアジド、酒石酸メトプロロール、コハク酸メトプロロール、ナドロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソロトール、またはチモロールである)。いくつかの実施形態では、ACE阻害剤は、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、またはトランドラプリルである。いくつかの実施形態では、ARBは、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、またはバルサルタンである。いくつかの実施形態では、カルシウムチャネル遮断薬は、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、またはベラパミルである。いくつかの実施形態では、アルファ遮断薬は、ドキサゾシン、プラゾシン、またはテラゾシンである。いくつかの実施形態では、αβ遮断薬は、カルベジロールまたはラベタロールである。いくつかの実施形態では、中枢性アゴニストは、メチルドパ、クロニジン、またはグアンファシンである。いくつかの実施形態では、血管拡張薬は、ヒドララジンまたはミノキシジルである。いくつかの実施形態では、アルドステロン受容体アンタゴニストは、エプレレノンまたはスピロノラクトンである。いくつかの実施形態では、レニン阻害剤は、アリスキレンである。
【0053】
いくつかの実施形態では、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤の用量は、HAL基準である(標準的な投与量を受け入れてもよい)対象と比べてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である(すなわち、標準的な投与量よりも少ない)対象については、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らすことができる。いくつかの実施形態では、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤の用量は約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%減らすことができる。加えて、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象における皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤の用量は、HAL基準である対象と比べてさらに少ない頻度で投与することができる。
【0054】
皮膚癌を治療するもしくは予防する治療剤及び/またはHALアゴニストの投与は、例えば、1日後、2日後、3日後、5日後、1週後、2週後、3週後、1ヵ月後、5週後、6週後、7週後、8週後、2ヵ月後、または3ヵ月後に繰り返すことができる。反復投与は同じ用量または異なる用量であることができる。投与は1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上繰り返すことができる。例えば、特定の投薬計画によれば、対象は、例えば、6ヵ月、1年、またはそれ以上のような長期間にわたって治療を受けることができる。さらに、皮膚癌を治療するもしくは予防する治療剤及び/またはHALアゴニストは、逐次投与しても、同時に投与してもよい。さらに、皮膚癌を治療するもしくは予防する治療剤及び/またはHALアゴニストは、別々の組成物で投与してもよく、または同じ組成物で一緒に投与してもよい。
【0055】
皮膚癌を治療するもしくは予防する治療剤及び/またはHALアゴニストの投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、くも膜下腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内を含むが、これらに限定されない任意の好適な経路によって発生することができる。投与用の医薬組成物は、望ましくは無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与の用量)で提供することができる。医薬組成物は、1以上の生理学的及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を使用して製剤化することができる。製剤は選択した投与経路に依存する。「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤が製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって実質的に有害ではないことを意味する。
【0056】
本明細書で使用されるとき「治療する」、「治療すること」、及び「治療」ならびに「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、それぞれ、治療効果及び予防効果のような所望の生物学的応答を引き出すことを指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、薬剤または薬剤を含む組成物の投与後の、皮膚癌の減少/軽減、皮膚癌の重症度の減少/軽減(例えば、皮膚癌の発症の減少または抑制)、症状及び皮膚癌関連の影響の減少/軽減、症状の発症及び皮膚癌関連の影響の遅延、皮膚癌関連の影響の症状の重症度の軽減、急性エピソードの重症度の軽減、症状及び皮膚癌関連の影響の数の軽減、症状及び皮膚癌関連の影響の潜伏期間の短縮、症状及び皮膚癌関連の影響の改善、二次症状の軽減、二次感染の軽減、皮膚癌の再発の防止、再発エピソードの数または頻度の減少、症候性エピソード間の潜伏期間の増加、持続的な進行までの時間の増加、寛解の促進、寛解の誘導、寛解の増強、回復の加速、または代替治療剤の有効性の増加もしくは耐性の減少、及び/または罹患した宿主動物の生存期間の増加のうちの1以上を含む。予防効果は、治療プロトコールの投与に続く皮膚癌の発症/進行の完全なまたは部分的な回避/抑制または遅延(例えば、完全なまたは部分的な回避/抑制または遅延)、及び罹患した宿主動物の生存時間の増加を含んでもよい。皮膚癌の治療には、臨床段階または臨床症状のいずれかで何らかの形態の皮膚癌を有するとすでに診断された対象の治療、皮膚癌の症状または徴候の発症または進展または増悪または悪化の遅延、及び/または皮膚癌の重症度の予防及び/または軽減が包含される。
【0057】
本開示はまた、皮膚癌を発症するリスクが高い対象を特定する方法も提供する。いくつかの実施形態では、方法は対象から得られた生体試料にて、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子及び/またはcDNA分子)の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含む。対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を欠いている(すなわち、対象が遺伝子型決定でHAL基準として分類される)場合、対象は皮膚癌を発症する高いリスクを有する。対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有する(すなわち、対象が、HAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である)場合、HAL基準である対象と比較して、対象は皮膚癌を発症する低いリスクを有する。
【0058】
HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の単一のコピーを有することは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子のコピーを有さないことよりも、皮膚癌を発症することから対象をさらに保護する。特定の理論または作用機序に限定されることを意図するものではないが、HAL変異体核酸分子の単一コピー(すなわち、HAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型)は皮膚癌を発症することから対象を保護すると考えられており、且つ、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の2コピー(すなわち、HAL変異体核酸分子についてホモ接合型)を有することは、単一のコピーを持つ対象と比べて皮膚癌を発症することから対象をさらに保護し得るとも考えられている。したがって、いくつかの実施形態では、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の単一コピーは皮膚癌を発症することから対象を完全に保護しなくてもよいが、代わりに、部分的または不完全に保護し得る。特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の単一コピーを有する対象に依然として存在する皮膚癌の発症に関与する追加の因子または分子が存在し得、それにより皮膚癌の発症からの完全ではない保護が生じ得る。
【0059】
対象から得られた生体試料にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の存在または非存在を検出すること、及び/または対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有するかどうかを決定することは、本明細書に記載されている方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は試験管内で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は原位置で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は生体内で実施することができる。これらの実施形態のいずれかでは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子は対象から得られる細胞内に存在することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、対象が皮膚癌を発症する高いリスクを有すると特定されると、対象はさらに、本明細書に記載されているように、皮膚癌を治療するもしくは予防する治療剤及び/またはHALアゴニストで治療される。例えば、対象がHAL基準であり、したがって皮膚癌を発症するリスクが高い場合、対象はHALアゴニストを投与される。いくつかの実施形態では、そのような対象はまた、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象は標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される、及び/またはHALアゴニストを投与される。いくつかの実施形態では、対象はHAL基準である。いくつかの実施形態では、対象はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子、及び/または皮膚癌を発症するリスクの低下に関連するHALで予測される機能獲得型変異体ポリペプチドを有する対象の総負荷を決定することをさらに含み得る。総負荷は、HAL遺伝子内のすべての変異体の合計であり、これは、皮膚癌との関連分析で実施され得る。いくつかの実施形態では、対象は、皮膚癌を発症するリスクの低下に関連するHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の1つ以上についてホモ接合型である。いくつかの実施形態では、対象は、皮膚癌を発症するリスクの低下に関連するHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子の1つ以上についてヘテロ接合型である。関連分析の結果は、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子が、皮膚癌を発症するリスクの低下に関連することを示唆する。対象がより低い総負荷を有する場合、対象は皮膚癌を発症するリスクがより高く、対象は、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を標準的な投与量で、及び/またはHALアゴニストを投与される、または投与され続ける。対象がより高い総負荷を有する場合、対象は皮膚癌を発症するリスクがより低く、対象は、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で投与される、または投与され続ける。総負荷が大きいほど、皮膚癌を発症するリスクは低くなる。
【0062】
総負荷分析において使用することができるHAL変異体は、以下の表1の任意の1つ以上または任意の組み合わせを含む。
【0063】
【表1】
【0064】
いくつかの実施形態では、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするいずれか1つ以上のHAL変異体核酸分子を有する対象の総負荷は、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子のいずれかの複数の加重合計を表す。いくつかの実施形態では、該総負荷は、HAL遺伝子内またはその周辺(最大10Mb)に存在する、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約1,000、少なくとも約10,000、少なくとも約100,000、または少なくとも約1,000,000もしくはそれを超える遺伝子変異体を使用して計算され、ここで、遺伝子負荷は、対立遺伝子の数に、各対立遺伝子についての皮膚癌または関連するアウトカムとの関連推定値を掛けたもの(例えば、加重多遺伝子負荷スコア)である。これには、ゲノムアノテーションに関係なく、遺伝子関連分析において皮膚癌関連形質とゼロでない関連性を示すHAL遺伝子に近接する(遺伝子の周囲に最大10Mb)、任意の遺伝子変異体を含めることができる。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコアよりも高い総負荷を有する場合、対象は、皮膚癌を発症する低いリスクを有する。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコアよりも低い総負荷を有する場合、対象は、皮膚癌を発症する高いリスクを有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、該総負荷は、例えば、上位五分位、中間五分位、及び下位五分位の五分位に分けることができ、総負荷の上位五分位は最低リスク群に対応し、総負荷の下位五分位は最高リスク群に対応する。いくつかの実施形態では、より大きな総負荷を有する対象は、対象集団からの上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%の総負荷を含むがこれらに限定されない、最高加重総負荷を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子変異体は、皮膚癌との関連性を、関連性についてのp値範囲の上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%に有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、特定された遺伝子変異体のそれぞれは、約10-2、約10-3、約10-4、約10-5、約10-6、約10-7、約10-8、約10-9、約10-10、約10-11、約10-12、約10-13、約10-14、または約10-15以下のp値で皮膚癌と関連性を有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、特定された遺伝子変異体は5×10-8未満のp値で皮膚癌と関連性を有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、特定された遺伝子変異体は、オッズ比(OR)が分布の上位20%について、約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、もしくは約2.25以上;または約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、約2.25以上、約2.5以上、もしくは約2.75以上である参照集団の残りと比較して高リスクである対象において、皮膚癌と関連性を有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、オッズ比(OR)は、約1.0~約1.5、約1.5~約2.0、約2.0~約2.5、約2.5~約3.0、約3.0~約3.5、約3.5~約4.0、約4.0~約4.5、約4.5~約5.0、約5.0~約5.5、約5.5~約6.0、約6.0~約6.5、約6.5~約7.0の範囲、または7.0を超えていてもよい。いくつかの実施形態では、高リスクの対象は、参照集団における下位十分位、五分位、または三分位の総負荷を有する対象を含む。総負荷の閾値は、意図される実際の用途の性質と、その実際の用途にとって意味があると考えられるリスク差に基づいて決定される。
【0066】
いくつかの実施形態では、対象が皮膚癌を発症する高いリスクを有すると特定されると、対象はさらに、本明細書に記載されているように、皮膚癌を治療するもしくは予防する治療剤及び/またはHALアゴニストを投与される。例えば、対象がHAL基準であり、したがって皮膚癌を発症するリスクが高い場合、対象はHALアゴニストを投与される。いくつかの実施形態では、そのような対象はまた、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象は標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される、及び/またはHALアゴニストを投与される。いくつかの実施形態では、対象はHAL基準である。いくつかの実施形態では、対象はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。さらに、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有することについてより低い総負荷を有し、したがって皮膚癌を発症する高いリスクを有する場合、対象は皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有することについてより低い総負荷を有する場合、対象は、皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤を、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子を有することについてより大きい総負荷を有する対象に投与される標準的な投与量と同じまたはそれより多い投与量で投与される。
【0067】
本開示はまた、対象から得られた生体試料にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子の存在または非存在を検出する方法も提供する。集団内の遺伝子配列、及びそのような遺伝子によってコードされるmRNA分子は、一塩基多型(SNP)のような多型に起因して異なり得ることが理解される。HAL変異体ゲノム核酸分子について本明細書で提供される配列は例示的な配列にすぎない。HAL変異体ゲノム核酸分子について他の配列も可能である。
【0068】
生体試料は、対象の任意の細胞、組織、または生体液に由来することができる。この生体試料は、例えば、骨髄試料、腫瘍生検、細針吸引物、または例えば、血液、歯肉溝滲出液、血漿、血清、リンパ、腹水、嚢胞液もしくは尿のような体液の試料のような任意の臨床的に関連する組織を含んでもよい。いくつかの実施形態では、生体試料は口腔スワブを含む。本明細書で開示されている方法において使用する生体試料は、アッセイ形式、検出方法の性質、及び試料として使用する組織、細胞、または抽出物に基づいて異なり得る。生体試料は採用されるアッセイに応じて異なる処理を行うことができる。例えば、HAL変異体核酸分子を検出する場合、HAL変異体核酸分子について生体試料を単離するまたは濃縮するように設計した予備処理を採用することができる。この目的では、種々の技術を使用してもよい。HAL変異体mRNA分子のレベルを検出する場合、さまざまな技術を使用してmRNA分子を含む生体試料を濃縮することができる。mRNA分子の存在もしくはレベル、または特定の変異体ゲノムDNA遺伝子座の存在を検出するために種々の方法を使用することができる。
【0069】
本開示はまた、対象にてHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子またはその相補体を検出する方法を提供する。方法は、生体試料における核酸分子が、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子であるかどうかを決定するために対象から得られる生体試料をアッセイすることを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子またはその相補体は、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体;または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むヌクレオチド配列を有するゲノム核酸分子である。いくつかの実施形態では、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子またはその相補体は、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンまたはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子またはその相補体は、配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンまたはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、生体試料には細胞または細胞溶解物が含まれる。そのような方法はさらに、例えば、HALゲノム核酸分子を含む生体試料を対象から取得することを含むことができる。そのようなアッセイは、例えば、特定のHAL核酸分子のこれらの位置の同一性を決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は試験管内の方法である。
【0072】
いくつかの実施形態では、アッセイは、生体試料にてHAL核酸分子またはその相補体のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、生体試料にてHALゲノム核酸分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含み、その際、配列決定された部分は:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体を含む。生体試料におけるHAL核酸分子の配列決定された部分が配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む場合、生体試料におけるHAL核酸分子はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子である。
【0073】
いくつかの実施形態では、アッセイは、a)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に近接する、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に近接する、HALゲノム核酸分子またはその相補体のヌクレオチド配列の一部とハイブリダイズするプライマーに生体試料を接触させることと;b)配列番号2に記載の11,352位に対応する位置もしくはその相補体に対応する、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置もしくはその相補体に対応する、HALゲノム核酸分子またはその相補体のヌクレオチド配列の位置を少なくとも介してプライマーを伸長させることと;c)プライマーの伸長産物が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体、または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むかどうかを決定することとを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、アッセイは核酸分子全体を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、HALゲノム核酸分子のみが分析される。
いくつかの実施形態では、アッセイは、a)生体試料におけるHAL核酸分子またはその相補体の少なくとも一部を増幅することであって、増幅される一部が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む、増幅することと;b)増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識することと;c)標識した核酸分子を、変異特異的プローブを含む支持体に接触させることであって、変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む増幅した核酸分子のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、接触させることと;d)検出可能な標識を検出することとを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、アッセイは、a)生体試料におけるHALゲノム核酸分子またはその相補体の少なくとも一部を増幅することであって、該一部が:配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含む、増幅することと;b)検出可能な標識を検出することとを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、アッセイは、生体試料におけるHAL核酸分子またはその相補体を、検出可能な標識を含む変異特異的プローブに接触させることであって、変異特異的プローブが、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンもしくはその相補体または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンもしくはその相補体を含むHAL核酸分子またはその相補体のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、接触させることと;検出可能な標識を検出することとを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、HAL核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在する。
変異特異的ポリメラーゼ連鎖反応技術を使用してヌクレオチド配列におけるSNPのような突然変異を検出することができる。変異特異的プライマーが使用され得るのは、鋳型とのミスマッチが存在するとDNAポリメラーゼが伸長しないからである。
【0078】
いくつかの実施形態では、アッセイはRNAの配列決定(RNA-Seq)を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってmRNAをcDNAに逆転写することも含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、方法は、標的ヌクレオチド配列に結合し、HAL変異体ゲノム核酸分子を含むポリヌクレオチドを特異的に検出する及び/または特定するのに十分なヌクレオチド長のプローブ及びプライマーを利用する。ハイブリダイズの条件または反応条件は、この結果を達成するように作業者が決定することができる。ヌクレオチド長は、本明細書に記載されているまたは例示されている任意のアッセイを含む、最適な検出方法にて使用するのに十分である任意の長さであってもよい。そのようなプローブ及びプライマーは、高ストリンジェントなハイブリダイズ条件下で標的ヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズすることができる。標的ヌクレオチド配列とは異なり、且つ標的ヌクレオチド配列を特異的に検出する及び/または特定する能力を保持するプローブが従来の方法によって設計されてもよいが、プローブ及びプライマーは標的ヌクレオチド配列内の連続ヌクレオチドの完全なヌクレオチド配列同一性を有してもよい。プローブ及びプライマーは、標的核酸分子のヌクレオチド配列と約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性または相補性を有することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、生体試料内のHAL核酸分子(例えばゲノム核酸分子)またはその相補体が配列番号2に記載の11,352位に対応する位置にアデニンを含むヌクレオチド配列またはその相補体を含むかどうかを決定するために、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンに隣接する5’隣接配列に由来する第1のプライマーと配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンに隣接する3’隣接配列に由来する第2のプライマーとを含むプライマー対を用いる増幅法に生体試料を供し、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置におけるアデニンをコードする位置にてSNPの存在を示すアンプリコンを作り出すことができる。いくつかの実施形態では、アンプリコンの長さは、プライマー対に1ヌクレオチド塩基対を加えた長さの組み合わせからDNA増幅プロトコールによって作り出すことが可能なアンプリコンの任意の長さまでに及び得る。この距離は、1ヌクレオチド塩基対から増幅反応の限界、または約2万ヌクレオチド塩基対までに及ぶことができる。任意で、プライマー対は、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置のアデニンを含む位置と、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置のアデニンを含む位置の各側での少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のヌクレオチドとを含む領域に隣接する。
【0081】
いくつかの実施形態では、生体試料内のHAL核酸分子(例えばゲノム核酸分子)またはその相補体が配列番号3に記載の14,441位に対応する位置にグアニンを含むヌクレオチド配列またはその相補体を含むかどうかを決定するために、配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンに隣接する5’隣接配列に由来する第1のプライマーと配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンに隣接する3’隣接配列に由来する第2のプライマーとを含むプライマー対を用いる増幅法に生体試料を供し、配列番号3に記載の14,441位に対応する位置におけるグアニンをコードする位置にてSNPの存在を示すアンプリコンを作り出すことができる。いくつかの実施形態では、アンプリコンの長さは、プライマー対に1ヌクレオチド塩基対を加えた長さの組み合わせからDNA増幅プロトコールによって作り出すことが可能なアンプリコンの任意の長さまでに及び得る。この距離は、1ヌクレオチド塩基対から増幅反応の限界、または約2万ヌクレオチド塩基対までに及ぶことができる。任意で、プライマー対は、配列番号3に記載の14,431位に対応する位置のグアニンを含む位置と、配列番号3に記載の14,441位に対応する位置のグアニンを含む位置の各側での少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のヌクレオチドとを含む領域に隣接する。
【0082】
同様のアンプリコンを、mRNA配列及び/またはcDNA配列から生成することができる。PCRプライマー対は、既知の配列から導出することができ、これは、例えば、Vector NTIバージョン10(Informax Inc.,Bethesda Md.)、PrimerSelect(DNASTAR Inc.,Madison,Wis.)、及びPrimer3(Version 0.4.0.COPYRGT.,1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,Mass.)におけるPCRプライマー分析ツールのようなその目的のために意図されたコンピュータープログラムを使用して導出することができる。さらに、既知のガイドラインを用いて、配列を目視で精査し、プライマーを手動で特定することができる。
【0083】
核酸配列決定技術の説明に役立つ実例には、連鎖停止剤(Sanger)配列決定及びダイターミネーター配列決定が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法には、精製DNA、増幅DNA及び固定細胞標本に対する標識プライマーまたは標識プローブの使用を含めて、配列決定以外の核酸ハイブリダイズ法(蛍光原位置ハイブリダイズ(FISH))が含まれる。いくつかの方法では、検出の前にまたは検出と同時に標的核酸分子を増幅してもよい。核酸増幅技術の説明に役立つ実例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換型増幅法(SDA)、及び核酸配列に基づく増幅法(NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法には、リガーゼ連鎖反応、鎖置換型増幅法、及び好熱SDA(tSDA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
ハイブリダイズ技術では、プローブまたはプライマーがその標的と特異的にハイブリダイズするように、ストリンジェントな条件を採用することができる。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他の非標的配列よりも検出可能に高い程度で、例えば、バックグラウンドの10倍を超えてを含めてバックグラウンドの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍またはそれ以上高い程度でその標的配列とハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列と少なくとも2倍ハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列と少なくとも3倍ハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列と少なくとも4倍ハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列とバックグラウンドの10倍を超えてハイブリダイズするであろう。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる状況では異なるであろう。
【0085】
DNAのハイブリダイズを促進する適当なストリンジェントな条件、例えば、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、その後の50℃での2×SSCの洗浄は公知である、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見いだすことができる。通常、ハイブリダイズ及び検出のためのストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3において約1.5M未満のNaイオン、通常、約0.01~1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば10~50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、それよりも長いプローブ(例えば50ヌクレオチド超)では少なくとも約60℃である条件であろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加により達成されてもよい。任意で、洗浄緩衝液は約0.1%~約1%のSDSを含んでもよい。ハイブリダイズの持続期間は一般に約24時間未満、ふつう約4~約12時間である。洗浄の持続期間は少なくとも平衡に達するのに十分な長さの時間であろう。
【0086】
本開示はまた、生体試料におけるHALポリペプチドが、ポリペプチドに機能獲得(部分的なまたは完全な)または予測される機能獲得(部分的なまたは完全な)を持たせる1以上の変異を含有するかどうかを決定するために対象から得られる生体試料にてアッセイを実施することを含む、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドの存在を検出する方法も提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有さない場合、対象は、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、または脂腺癌などの皮膚癌を発症する高いリスクを有する。いくつかの実施形態では、対象がHALで予測される機能獲得型ポリペプチドを有する場合、対象は、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、または脂腺癌などの皮膚癌を発症する低いリスクを有する。
【0088】
本開示はまた、HAL変異体ゲノム核酸分子とハイブリダイズする単離された核酸分子も提供する。いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、ストリンジェントな条件下でHAL変異体核酸分子とハイブリダイズする。そのような核酸分子は、例えば、本明細書に記載されているまたは例示されているようなプローブ、プライマー、変異特異的プローブ、または変異特異的プライマーとして使用することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号2に記載の11,352位または配列番号3に記載の14,441位に対応する位置を含むHAL変異体核酸分子の一部とハイブリダイズする。
【0090】
いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約3000、少なくとも約4000、または少なくとも約5000のヌクレオチドを含むか、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、または少なくとも約25のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は少なくとも約18のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は少なくとも約15のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約10~約35、約10~約30、約10~約25、約12~約30、約12~約28、約12~約24、約15~約30、約15~約25、約18~約30、約18~約25、約18~約24、または約18~約22のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約18~約30のヌクレオチドから成る、またはそれ含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は少なくとも約15のヌクレオチド~少なくとも約35のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。
【0091】
いくつかの実施形態では、単離された変異特異的プローブまたは変異特異的プライマーは少なくとも約15ヌクレオチドを含み、その際、変異特異的プローブまたは変異特異的プライマーは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子またはその相補体の一部のヌクレオチド配列と相補性であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該一部は、配列番号2に記載の11,352位もしくはその相補体、または配列番号3に記載の14,441位もしくはその相補体に対応する位置を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、HAL変異体ゲノム核酸分子と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一である核酸分子の少なくとも約15の連続ヌクレオチドとハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約15~約100のヌクレオチド、または約15~約35のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約15~約100のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、約15~約35のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、単離された変異特異的プローブまたは変異特異的プライマーは少なくとも約15ヌクレオチドを含み、その際、変異特異的プローブまたは変異特異的プライマーは、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体核酸分子のヌクレオチド配列の一部と相補性であるヌクレオチド配列を含み、該一部は配列番号2に記載の11,352位もしくはその相補体、または配列番号3に記載の14,441位もしくはその相補体に対応する位置を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーはDNAを含む。いくつかの実施形態では、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーはRNAを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプローブ及びプライマー(変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーを含む)は、本明細書で開示されている核酸分子のいずれかまたはその相補体と特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、プローブ及びプライマーはストリンジェントな条件下にて本明細書で開示されている核酸分子のいずれかと特異的にハイブリダイズする。
【0096】
いくつかの実施形態では、プライマーは変異特異的プライマーを含めて、第2世代配列決定またはハイスループット配列決定において使用することができる。時には、プライマーは変異特異的プライマーを含めて、修飾することができる。特に、プライマーは、例えば、大規模並行シグネチャー配列決定(Massive Parallel Signature Sequencing)(MPSS)、Polony配列決定、及び454パイロ配列決定のさまざまな工程において使用される種々の修飾を含むことができる。修飾されたプライマーは、クローニング工程におけるビオチン化プライマー、ならびにビーズ負荷工程及び検出工程にて使用される蛍光標識プライマーを含めて、プロセスのうちのいくつかの工程で使用することができる。Polony配列決定は一般的に、DNA鋳型の各分子が長さ約135bpであるペアエンドタグライブラリを使用して行われる。ビオチン化プライマーはビーズ負荷工程及びエマルジョンPCRにおいて使用される。蛍光標識された縮重ノナマーオリゴヌクレオチドは検出工程で使用される。アダプターは、ストレプトアビジン被覆ビーズにDNAライブラリを不動化するための5’-ビオチンタグを含有することができる。
【0097】
本明細書に記載されているプローブ及びプライマーを使用して、本明細書で開示されているHAL変異体ゲノム核酸分子のいずれかにおけるヌクレオチド変異を検出することができる。本明細書に記載されているプライマーを使用して、HAL変異体ゲノム核酸分子またはそれらの断片を増幅することができる。
【0098】
本開示はまた、上述のプライマーのいずれかを含むプライマーの対も提供する。例えば、プライマーの3’末端の1つが、特定のHAL核酸分子にて配列番号1に記載の11,352位に対応する位置でグアニン(アデニンではなく)とハイブリダイズする場合、増幅された断片の存在はHAL基準ゲノム核酸分子の存在を示す。逆に、プライマーの3’末端の1つが、特定のHAL核酸分子にて配列番号2に記載の11,352位に対応する位置でアデニン(グアニンではなく)とハイブリダイズする場合、増幅された断片の存在はHAL変異体ゲノム核酸分子の存在を示す。いくつかの実施形態では、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置でのアデニンに相補性のプライマーのヌクレオチドはプライマーの3’末端にあることができる。
【0099】
本開示はまた、上述のプライマーのいずれかを含むプライマーの対も提供する。例えば、プライマーの3’末端の1つが、特定のHAL核酸分子にて配列番号1に記載の14,441位に対応する位置でアデニン(グアニンではなく)とハイブリダイズする場合、増幅された断片の存在はHAL基準ゲノム核酸分子の存在を示す。逆に、プライマーの3’末端の1つが、特定のHAL核酸分子にて配列番号3に記載の14,441位に対応する位置でグアニン(アデニンではなく)とハイブリダイズする場合、増幅された断片の存在はHAL変異体ゲノム核酸分子の存在を示す。いくつかの実施形態では、配列番号3に記載の14,441位に対応する位置でのグアニンに相補性のプライマーのヌクレオチドはプライマーの3’末端にあることができる。
【0100】
本開示の文脈において、「特異的にハイブリダイズする」とは、プローブまたはプライマー(例えば、変異特異的プローブまたは変異特異的プライマー)が、HAL基準のゲノム核酸分子をコードするヌクレオチド配列とハイブリダイズしないことを意味する。
【0101】
本開示全体を通して記載されている実施形態のいずれかでは、プローブ(例えば、変異特異的プローブ)は標識を含むことができる。いくつかの実施形態では、標識は蛍光標識、放射性標識、またはビオチンである。
【0102】
本開示はまた、本明細書で開示されているプローブのいずれか1以上が結合している基材を含む支持体も提供する。固体支持体は、本明細書で開示されているプローブのいずれかのような分子が会合することができる固体状態の基材または支持体である。固体支持体の形態はアレイである。固体支持体の別の形態はアレイ検出器である。アレイ検出器は、複数の異なるプローブがアレイ状、グリッド状または他の組織化されたパターンで結合している固体支持体である。固体状態の基材の形態は標準的な96ウェル型のようなマイクロタイターディッシュである。いくつかの実施形態では、ふつう1ウェル当たりに1つのアレイを含有するマルチウェルスライドグラスを用いることができる。いくつかの実施形態では、支持体はマイクロアレイである。
【0103】
本開示はまた、本明細書に記載されているHAL変異体ゲノム核酸分子のいずれか、またはその相補体と、本明細書に記載されている変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブのいずれかとを含む、またはそれらから成る分子複合体も提供する。いくつかの実施形態では、分子複合体におけるHAL変異体ゲノム核酸分子、またはそれらの相補体は一本鎖である。いくつかの実施形態では、分子複合体は、本明細書に記載されているHAL変異体ゲノム核酸分子のいずれか、またはその相補体と、本明細書に記載されている変異特異的プライマーのいずれかとを含む、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、分子複合体は、本明細書に記載されているHAL変異体ゲノム核酸分子のいずれか、またはその相補体と、本明細書に記載されている変異特異的プローブのいずれかとを含む、またはそれらから成る。
【0104】
いくつかの実施形態では、分子複合体は、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHALゲノム核酸分子とハイブリダイズした変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブを含み、その際、変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブは、配列番号2に記載の11,352位またはその相補体に対応する位置にてHALゲノム核酸分子とハイブリダイズする。
【0105】
いくつかの実施形態では、分子複合体は、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHALゲノム核酸分子とハイブリダイズした変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブを含み、その際、変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブは、配列番号3に記載の14,441位またはその相補体に対応する位置にてHALゲノム核酸分子とハイブリダイズする。
【0106】
いくつかの実施形態では、分子複合体のゲノム核酸分子は配列番号2を含む。いくつかの実施形態では、分子複合体のゲノム核酸分子は配列番号3を含む。
いくつかの実施形態では、分子複合体は標識を含む変異特異的プローブまたは変異特異的プライマーを含む。いくつかの実施形態では、標識は蛍光標識、放射性標識、またはビオチンである。いくつかの実施形態では、分子複合体はさらに非ヒトポリメラーゼを含む。
【0107】
HAL基準ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号1に記述されている(GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリ中のchr12:95,972,662-95,996,344を包含するENSG00000084110.11)。配列番号1を参照して、11,352位はグアニンである。配列番号1を参照して、14,441位はアデニンである。
【0108】
11,352位のグアニンがアデニンで置換されているHAL変異体ゲノム核酸分子が存在する。このHAL変異体ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号2(rs3819817)に記述されている。
【0109】
14,41位のアデニンがグアニンで置換されている別のHAL変異体ゲノム核酸分子が存在する。このHAL変異体ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号3(rs10859995)に記述されている。
【0110】
HAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号4に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号5に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号6に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号7に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号8に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号9に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号10に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号11に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号12に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号13に記述されている。別のHAL基準mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号14に記述されている。
【0111】
HAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号15に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号16に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号17に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号18に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号19に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号20に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号21に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号22に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号23に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号24に記述されている。別のHAL基準cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号25に記述されている。
【0112】
ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、任意の生物に由来することができる。例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、ヒト、または別の生物(例えば、非ヒト哺乳動物、げっ歯類、マウス、もしくはラット)からのオーソログであり得る。集団内の遺伝子配列は、一塩基多型のような多型に起因して異なり得ることが理解される。本明細書で提供される例は、例示的な配列にすぎない。他の配列もまた可能である。
【0113】
本明細書で提供されるのはまた、開示されている核酸分子と相互作用することができる機能性ポリヌクレオチドである。機能性ポリヌクレオチドの例には、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、及び外部ガイド配列が挙げられるが、これらに限定されない。機能性ポリヌクレオチドは標的分子が持つ特定の活性のエフェクター、アゴニスト、モジュレーター、及び刺激剤として作用することができ、または機能性ポリヌクレオチドはいかなる他の分子とも無関係なデノボ活性を持つことができる。
【0114】
本明細書で開示されている単離された核酸分子は、RNA、DNA、またはRNAとDNAの双方を含むことができる。単離された核酸分子を、例えばベクターにおける異種核酸配列、または異種標識に連結させる、または融合させることもできる。例えば、本明細書で開示されている単離された核酸分子は、単離された核酸分子と異種核酸配列とを含むベクター内に、またはそれらを含む外来性ドナー配列として存在してもよい。単離された核酸分子を異種標識に連結させる、または融合させることもできる。標識は、直接検出可能(例えば、蛍光色素分子)であることができる、または間接的に検出可能(例えば、ハプテン、酵素、または蛍光色素分子消光剤)であることができる。そのような標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的な手段によって検出可能であることができる。そのような標識には、例えば、放射性標識、顔料、染料、色原体、スピン標識、及び蛍光標識が挙げられる。標識はまた、例えば、化学発光物質;金属含有物質;または酵素であることもでき、その際、シグナルの酵素依存性の二次生成が発生する。「標識」という用語はまた、結合分子が、続いて基質とともに添加されると、検出可能なシグナルを生成するために使用されるように結合分子に選択的に結合することができる「タグ」またはハプテンを指すこともできる。例えば、ビオチンは、タグに結合するための西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアビジン結合体またはストレプトアビジン結合体と一緒にタグとして使用し、比色測定基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB))または蛍光発生基質を使用して調べてHRPの存在を検出することができる。精製を促進するためのタグとして使用することができる例示的な標識には、myc、HA、FLAGまたは3×FLAG、6×Hisまたはポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、エピトープタグ、または免疫グロブリンのFc部分が挙げられるが、これらに限定されない。多数の標識には、例えば、粒子、蛍光色素分子、ハプテン、酵素ならびにそれらの比色性、蛍光性及び化学発光性の基質、ならびに他の標識が挙げられる。
【0115】
単離された核酸分子またはその相補体は、宿主細胞内に存在することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載されている核酸分子のいずれかまたはその相補体を含むベクターを含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、宿主細胞内で活性なプロモーターに操作可能に連結する。いくつかの実施形態では、プロモーターは外因性プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。
【0116】
開示されている核酸分子は、例えば、ヌクレオチド、または、例えば、ヌクレオチド類似体もしくはヌクレオチド置換体のような非天然ヌクレオチドもしくは修飾ヌクレオチドを含むことができる。そのようなヌクレオチドには、修飾された塩基、糖、もしくはリン酸基を含有するヌクレオチド、またはその構造内に非天然部分を組み込んでいるヌクレオチドが含まれる。非天然ヌクレオチドの例には、ジデオキシヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド、アミノ化ヌクレオチド、脱アミノ化ヌクレオチド、アルキル化ヌクレオチド、ベンジル化ヌクレオチド、及び蛍光色素分子標識ヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書で開示されている核酸分子は、1以上のヌクレオチド類似体またはヌクレオチド置換体を含むこともできる。ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、またはリン酸の部分のいずれかに対する修飾を含有するヌクレオチドである。塩基部分に対する修飾には、A、C、G、及びT/Uの天然修飾及び合成修飾、ならびに、例えばシュードウリジン、ウラシル-5-イル、ヒポキサンチン-9-イル(I)、及び2-アミノアデニン-9-イルのようなさまざまなプリン塩基またはピリミジン塩基が挙げられるが、これらに限定されない。修飾された塩基には、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル誘導体及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル誘導体及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換のアデニン及びグアニン、5-ハロ(例えば、5-ブロモ)、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換のウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
ヌクレオチド類似体は糖部分の修飾を含むこともできる。糖部分に対する修飾には、リボース及びデオキシリボースの天然修飾、ならびに合成修飾が挙げられるが、これらに限定されない。糖修飾には、2’位における次の修飾:OH;F;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルが挙げられるが、これらに限定されず、その際、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは置換または非置換のC1~10アルキルまたはC2~10アルケニル、及びC2~10アルキニルであってもよい。例示的な2’糖修飾には、-O[(CHO]CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CHCH、-O(CH-ONH、及び-O(CHON[(CHCH)](式中、n及びmは独立して1~約10である)も挙げられるが、これらに限定されない。2’位における他の修飾には、C1~10アルキル、置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、及び同様の特性を有する他の置換基が挙げられるが、これらに限定されない。同様の修飾を、糖における他の位置で、特に3’末端ヌクレオチドまたは2’-5’結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位で行ってもよい。修飾された糖は、CH及びSのような架橋環酸素での修飾を含有するものも含むことができる。ヌクレオチド糖類似体はペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模放体を有することもできる。
【0119】
ヌクレオチド類似体はリン酸部分にて修飾することもできる。修飾されたリン酸部分には、2つのヌクレオチド間の結合が、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホネートならびに3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにボラノホスフェートを含有するように修飾することができるものが挙げられるが、これらに限定されない。2つのヌクレオチド間のこうしたリン酸結合または修飾リン酸結合は、3’-5’結合または2’-5’結合を介することができ、結合は3’-5’から5’-3’または2’-5’から5’-2’のような逆極性を含有することができる。種々の塩、混合塩、及び遊離酸の形態も含まれる。ヌクレオチド置換体にはペプチド核酸(PNA)も含まれる。
【0120】
本開示は、本明細書で開示されている核酸分子のいずれか1以上を含むベクターも提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、本明細書で開示されている核酸分子のいずれか1以上と異種核酸とを含む。ベクターは、核酸分子を輸送することが可能なウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドまたはコスミド(例えば追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAなど)である。いくつかの実施形態では、ベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る、ウイルスベクターである。発現ベクターとしては、プラスミド、コスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えば、カリフラワーモザイクウイルス及びタバコモザイクウイルス、酵母人工染色体(YAC)、エプスタイン・バー(EBV)由来エピソーム、ならびに当該技術分野で既知の他の発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
哺乳動物宿主細胞発現のために所望される調節配列としては、例えば哺乳動物細胞における高レベルのポリペプチド発現を指令するウイルスエレメント、例えばレトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)など)、ポリオーマに由来するプロモーター及び/またはエンハンサー、ならびに強力な哺乳動物プロモーター、例えば、ネイティブ免疫グロブリンプロモーター及びアクチンプロモーターが挙げられ得る。細菌細胞または真菌細胞(例えば酵母細胞など)中でポリペプチドを発現させる方法も周知である。プロモーターは、例えば構成的活性化プロモーター、コンディショナルプロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば発生的に調節されたプロモーターなど)、または空間的に制限されたプロモーター(例えば細胞特異的または組織特異的プロモーターなど)であり得る。
【0122】
核酸分子内のヌクレオチド配列またはポリペプチド内のアミノ酸配列の特定の区間の間での同一性パーセント(%)(または相補性パーセント)は、BLASTプログラム(基本配列比較検索ツール)とPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)を用いて、または、SmithとWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)を使用するデフォルト設定を用いたGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park, Madison Wis.)を用いて日常的に決定することができる。本明細書において、配列同一性パーセントに言及している場合、配列同一性パーセントは低いよりも高い方が好ましい。
【0123】
本開示はまた、本明細書で開示されている単離された核酸分子、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはcDNA分子のうちの1以上を含む組成物、またはそれを含むベクターも提供する。いくつかの実施形態では、組成物は医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は担体及び/または賦形剤を含む。担体の例には、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コクリエート、及び脂質微小管が挙げられるが、これらに限定されない。担体は、PBS、HBSSなどのような緩衝化塩溶液を含んでもよい。
【0124】
本明細書で使用されるとき、「に対応する」という表現またはその文法的変形は、特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列もしくは位置の番号付けの文脈で使用される場合、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列を参照配列(例えば、配列番号1、配列番号2または配列番号3)と比べたときの指定された参照配列の番号付けを指す。言い換えれば、特定のポリマーの残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の番号または残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の位置は、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列の範囲内でのその残基の実際の位置番号によってではなく、参照配列を基準として指定される。例えば、特定のヌクレオチド配列は、ギャップを導入して、2つの配列間の残基の一致を最適化することによって参照配列に対して並べることができる。これらの場合では、ギャップは存在するが、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列における残基の番号付けはそれが並べられている参照配列を基準にして行われる。
【0125】
例えば、ヌクレオチド配列が配列番号2に記載の11,352位に対応する位置にてアデニンを含む、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むHAL変異体ゲノム核酸分子は、HALゲノム核酸分子のヌクレオチド配列が配列番号2の配列に対して並べられれば、HALの配列が配列番号2の11,352位に対応する位置にてアデニン残基を有することを意味する。これらの表現はHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子を指し、その際、ゲノム核酸分子は配列番号2の11,352位でのアデニン残基に相同であるアデニン残基を含むヌクレオチド配列を有する。
【0126】
本明細書に記載されているように、配列番号2に記載の11,352位に対応するHAL変異体ゲノム核酸分子内の位置は、例えば、特定のHALゲノム核酸分子のヌクレオチド配列と配列番号2のヌクレオチド配列との間で配列比較を行うことによって特定することができる。例えば、配列番号2の11,352位に対応するヌクレオチドの位置を特定するために配列比較を行うのに使用することができる種々のコンピューターアルゴリズムが存在する。例えば、NCBI BLASTアルゴリズム(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,1997,25,3389-3402)またはCLUSTALWソフトウェア(Sievers and Higgins,Methods Mol.Biol.,2014,1079,105-116)を使用することによって配列比較を実施してもよい。しかしながら、配列を手動で並べることもできる。
【0127】
HAL基準ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号26に記述されている。配列番号26を参照して、HAL基準ポリペプチドは657アミノ酸長である。
別のHAL基準ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号27に記述されている。配列番号27を参照して、HAL基準ポリペプチドは449アミノ酸長である。
【0128】
別のHAL基準ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号28に記述されている。配列番号28を参照して、HAL基準ポリペプチドは591アミノ酸長である。
別のHAL基準ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号29に記述されている。配列番号29を参照して、HAL基準ポリペプチドは219アミノ酸長である。
【0129】
別のHAL基準ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号30に記述されている。配列番号30を参照して、HAL基準ポリペプチドは167アミノ酸長である。
本明細書に記載されるHAL変異体核酸分子はHALのノンコーディング領域内に変異を含むため、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドは、本明細書に記載されるHAL変異体核酸分子のいずれかによってコードされる前述のHALポリペプチドのいずれかであり得る。
【0130】
添付の配列表に列挙されているヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基の標準的な略記及びアミノ酸の3文字表記を用いて示されている。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端での開始から3’末端の方に(すなわち、各配列において左から右に)進む標準的な慣例に従う。各ヌクレオチド配列の片方の鎖のみが示されているが、示されている鎖の参照によって相補鎖が含まれるものと理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端での開始からカルボキシ末端の方に(すなわち、各配列において左から右に)進む標準的な慣例に従う。
【0131】
本開示はまた、対象にて皮膚癌の治療または予防に使用するための(または皮膚癌を治療または予防するための薬物の調製における使用のための)皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤も提供し、その際、対象は本明細書に記載されているHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子のいずれかを有する。皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤は、本明細書に記載されている皮膚癌を治療するまたは予防する治療剤のいずれかであることができる。皮膚癌は、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、及び脂腺癌のいずれでもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、対象は、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置にてアデニンまたはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体を有すると特定される。
【0133】
いくつかの実施形態では、対象は、配列番号3に記載の14,441位に対応する位置にてグアニンまたはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体を有すると特定される。
【0134】
本開示はまた、対象にて皮膚癌の治療または予防に使用するための(または皮膚癌を治療または予防するための薬物の調製における使用のための)HALアゴニストも提供し、その際、対象は本明細書に記載されているHALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするHAL変異体ゲノム核酸分子のいずれかについてヘテロ接合型である、または対象はHALゲノム核酸分子について基準である。HALアゴニストは、本明細書に記載されているHALアゴニストのいずれかであることができる。皮膚癌は、非黒色腫皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、メルケル細胞癌、隆起性皮膚線維肉腫、及び脂腺癌のいずれでもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、対象は、HALゲノム核酸分子について基準である。
いくつかの実施形態では、対象は、配列番号2に記載の11,352位に対応する位置にてアデニンまたはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体についてヘテロ接合型である。
【0136】
いくつかの実施形態では、対象は、配列番号3に記載の14,441位に対応する位置にてグアニンまたはその相補体を含むヌクレオチド配列を有する、HALで予測される機能獲得型ポリペプチドをコードするゲノム核酸分子またはその相補体についてヘテロ接合型である。
【0137】
上記または下記で引用されている特許文書、ウェブサイト、他の刊行物、受入番号などはすべて、個々の文献が具体的且つ個別に参照によってそのように組み込まれることが指示されている場合と同じ程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照によって組み込まれる。配列のさまざまなバージョンが異なる時点での受入番号に関連付けられている場合、本出願の有効出願日での受入番号に関連付けられているバージョンを意味する。有効出願日とは、該当する場合、その受入番号について言及している実際の出願日または優先権主張出願の出願日のうちの早い方を意味する。同様に、異なるバージョンの刊行物、ウェブサイトなどが異なる時点で公開されている場合、特に指示されない限り、出願の有効出願日において最後に公開されたバージョンを意味するものとする。本開示のいずれの特徴、工程、要素、実施形態、または態様も、特に指示されない限り、任意の他の特徴、工程、要素、実施形態、または態様と組み合わせて使用することができる。明瞭性及び理解を目的として本開示を説明及び実例として多少詳細に説明してきたが、特定の変更及び改変が添付のクレームの範囲内で実施されてもよいことは明らかであろう。
【0138】
以下の実施例は、実施形態をさらに詳細に説明するために提供されている。これらは、特許請求する実施形態を例示することを意図しており、限定することを意図していない。以下の実施例は、本明細書に記載されている化合物、組成物、物品、装置及び/または方法がどのように作製され、且つ評価されるかについての開示及び説明を当業者に提供し、単に例示的なものであるように意図されており、いかなるクレームの範囲も限定するようには意図されていない。数(例えば、量、温度など)については、精度を確保するように努めてきたが、ある程度の誤差及び偏差が考慮され得る。特に指示されない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【実施例
【0139】
実施例1:皮膚癌とHAL GOF変異体の関連性
454,787のUKB試験参加者のエクソームが配列決定され、すでに記載されている通り標的塩基の95.8%が20倍以上の深さでカバーされた(Szustakowski,Advancing Human Genetics Research and Drug Discovery through Exome Sequencing of the UK Biobank.bioRxiv,2021;及びVan Hout et al.,Nature,2020)。18,659遺伝子のコード領域にわたって3900万の塩基対において1200万個の変異体が特定された(データは示されていない)。特定された変異体の中には、3,375,252(個体あたりの中央値は10,260)の同義変異体、7,689,495(個体あたり9,284)のミスセンス変異体、及び889,957(個体あたり212)の推定機能獲得型(pLOF)変異体(データは示されていない)があり、これらのうち約半分は、このデータセットで1回しか観察されなかった(シングルトン変異体;データは示されていない)。
【0140】
HALにおける稀なpLOF及び有害なミスセンス変異体の負荷が、より高いビタミンDレベルのみならず、皮膚の日焼けし易さの増大、ならびに光線性角化症及び非黒色腫皮膚癌のリスク上昇にも関連することが発見された(図2参照)。これらの所見は、独立して、皮膚組織におけるHAL発現を増加させる発現定量形質遺伝子座(rs3819817:T)と共局在する(r=0.97)高頻度変異体(rs10859995:C、58%頻度)との形質低下関連性によって裏付けられた(G. T. Consortium, Science, 2020, 369, 1318-1330;図1参照)。まとめると、これらの結果は、HALをビタミンDレベルと皮膚癌の両方に関係付け、高頻度の機能獲得型ノンコーディング変異体(形質低下)を含む対立遺伝子系統を明らかにしている。
【0141】
本明細書に記載されているものに加えて、記載されている主題の種々の修正は前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。そのような修正は添付のクレームの範囲内に入るようにも意図されている。本出願で引用されている各参考文献(雑誌記事、米国及び米国以外の特許、特許出願刊行物、国際特許出願刊行物、遺伝子バンク受入番号などを含むが、これらに限定されない)は、その全体が且つすべての目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
【配列表】
2024524555000001.xml
【国際調査報告】