(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】エラーを伴って挿入された緯糸を除去する方法ならびにエアジェット織機
(51)【国際特許分類】
D03D 51/08 20060101AFI20240628BHJP
D03D 45/62 20060101ALI20240628BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
D03D51/08
D03D45/62
D03D47/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500291
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022065894
(87)【国際公開番号】W WO2023280510
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021207297.6
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591021578
【氏名又は名称】リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、ヤンケ
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA15
4L050AB02
4L050CB17
4L050CB21
4L050CB22
4L050CC02
4L050EA03
4L050EB11
4L050ED12
4L050EE10
(57)【要約】
エアジェット織機においてエラーを伴って挿入された緯糸を除去する方法ならびに対応するエアジェット織機が提案される。第1の駆動装置は、杼口形成装置を駆動し、かつ第2の駆動装置は、スレー(36)を筬(32)と一緒に駆動する。制御装置は、第1の駆動装置と第2の駆動装置とが通常の製織運転において互いに同期されて運転されるように第1の駆動装置と第2の駆動装置を駆動制御する。本発明による方法は、以下のステップ、すなわち:少なくとも1つの糸監視装置により杼口にエラーを伴って挿入された緯糸を検出するステップ、制御装置によって第1の駆動装置と第2の駆動装置との間の同期を解消するステップ、筬(32)が結合点(66)から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置をとるように、制御装置によって第2の駆動装置を駆動制御するステップ、杼口形成装置が、比較的小さな開口角(α)を有する第1の開口位置へと杼口を移行するように制御装置によって第1の駆動装置を駆動制御するステップ、緯糸の挿入側または排出側でエラーを伴って挿入された緯糸を取り除くステップ、エラーを伴って挿入された緯糸を挿入側で切断するステップ、およびエラーを伴って挿入された、切断された緯糸を除去するステップを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアジェット織機(1)においてエラーを伴って挿入された緯糸(3)を除去する方法であって、前記エアジェット織機(1)が緯方向(SR)において、少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)と、それぞれ1つまたは複数の噴出開口(42)を有しかつスレー(36)に沿って配置された複数の継ぎノズル(40)と、を有し、第1の駆動装置(20)が、経糸(2)により画定される杼口(60)を開閉する杼口形成装置(22)を駆動し、前記杼口(60)が下杼口(62)および上杼口(64)により形成され、前記少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)および前記継ぎノズル(40)が前記杼口(60)を通して各緯糸(3)を搬送し、かつ第2の駆動装置(30)が、前記スレー(36)を、該スレー(36)に配置された筬(32)と一緒に駆動し、これにより前記筬(32)を周期的に製品(67)の結合点(66)に打ち付け、前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とが通常の製織運転において互いに同期されて運転されるように、制御装置(50)が、前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)を駆動制御し、
前記方法が、
エラーを伴って前記杼口(60)に挿入された緯糸(3)を少なくとも1つの糸監視装置(48)により検出し、該糸監視装置(48)が、対応するエラー信号を生成し、該エラー信号を前記制御装置(50)に伝送する、ステップと、
前記エラー信号の受信後に前記制御装置(50)によって前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)との間の同期を解消する、ステップと、
前記筬(32)が、前記結合点(66)から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置をとるように、前記制御装置(50)によって前記第2の駆動装置(30)を駆動制御する、ステップと、
前記杼口形成装置(22)が前記杼口(60)を第1の開口位置へと移行させるように、前記制御装置(50)によって前記第1の駆動装置(20)を駆動制御する、ステップであって、前記第1の開口位置の、前記結合点(66)を起点として前記下杼口(62)および前記上杼口(64)により形成される開口角(α)が、前記杼口(60)の、連続的な前記製織運転中に達成される最大の開口位置の開口角(α’)よりも小さい、ステップと、
前記杼口(60)がその都度前記第1の開口位置にある場合に、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を、前記緯糸(3)の挿入側(8)または排出側(9)で吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を前記杼口(60)から機械的に取り除く、ステップと、
前記挿入側(8)で、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断する、ステップと、
前記エラーを伴って挿入された、切断された緯糸(3)を除去する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記杼口(60)が、前記第1の開口位置への移行後に、前記吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除くステップ中に前記第1の開口位置に留まるだけではなく、以下のステップのうちの少なくとも1つのステップ中前記第1の開口位置に留まるように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項1記載の方法。
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップ中、
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップおよび除去するステップ中、
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップ中および除去するステップ中ならびに好適には前記糸監視装置(48)により実施される、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去が成功したかを検査する検査ステップ中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップおよび除去するステップ中、任意の検査ステップ中ならびに前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始に至るまで
【請求項3】
前記制御装置(50)は、前記筬(32)を、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断のために前記結合点(66)の近傍にある第2の旋回位置へともたらし、かつ/または前記筬(32)を、前記杼口(60)からの前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去のために、かつ/または前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始のために、前記第1の旋回位置と、第2の旋回位置と、の間に位置する第3の旋回位置へともたらすように、前記第2の駆動装置(30)を駆動制御することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸と前記上杼口(64)の前記経糸とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において30°未満、好適には15°未満、特に好適には12°未満の開口角を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸と前記上杼口(64)の前記経糸とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において4°より大きく、好適には6°より大きく、特に好適には7°より大きい開口角を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記継ぎノズル(40)が、該継ぎノズル(40)の噴出領域の下縁部から測定して、前記杼口(60)の前記第1の開口位置において、前記下杼口(62)の前記経糸の平面を通って6mm以下だけ前記杼口(60)内に突出するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
エラーを伴って挿入された緯糸(3)を除去する装置を備えたエアジェット織機(1)であって、
少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)、およびそれぞれ1つまたは複数の噴出開口(42)を有しかつスレー(36)に沿って配置された複数の継ぎノズル(40)であって、少なくとも前記少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)と前記継ぎノズル(40)とが、経糸(2)により画定された杼口(60)を通して各緯糸(3)を搬送し、前記杼口(60)が、下杼口(62)および上杼口(64)により形成される、メイン噴出ノズル(6)および継ぎノズル(40)と、
前記杼口(60)を開閉する杼口形成装置(22)を駆動する第1の駆動装置(20)と、
前記スレー(36)に配置された筬(32)を結合点(66)に周期的に打ち付ける第2の駆動装置(30)と、
エラーを伴って前記杼口(60)内に挿入された緯糸(3)を検出し、対応するエラー信号を生成する少なくとも1つの糸監視装置(48)と、
前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とが通常の製織運転において互いに同期して運転されるように前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とを駆動制御し、かつ前記少なくとも1つの糸監視装置(48)からの1つの前記エラー信号を受信するように構成されている制御装置(50)であって、少なくとも前記少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)および前記継ぎノズル(40)および/または吸込装置(45)および/または機械的な取除き装置が、前記杼口(60)内の前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を伸ばし、または前記緯糸(3)の挿入側(8)で前記杼口(60)から搬出する、制御装置(50)と、
前記挿入側(8)で、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断する切断装置(68)と、
前記挿入エラーを伴って挿入された、切断された緯糸(3)を除去する装置と、
を備えた、エアジェット織機(1)において、
前記制御装置(50)は、前記糸監視装置(48)の1つの前記エラー信号の受信時に前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)との間の同期を解消し、前記筬(32)が、前記結合点(66)から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置をとるように前記第2の駆動装置(30)をさらに駆動制御し、かつ前記第1の駆動装置(20)が、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の吹き出しおよび吸い込みのために、前記杼口(60)を第1の開口位置に移行させるように前記第1の駆動装置(20)をさらに駆動制御するように構成されており、前記第1の開口位置の、前記結合点(66)を起点として前記下杼口(62)および前記上杼口(64)により形成される開口角(α)が、前記杼口(60)の、連続的な前記製織運転中に達成される最大の開口位置の開口角(α’)よりも小さいことを特徴とする、エアジェット織機(1)。
【請求項8】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記杼口(60)が、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の前記吹き出しおよび/または吸い込みおよび/または機械的な取除き中に前記第1の開口位置に留まっているだけではなく、
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断および除去中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断および除去中ならびに好適には前記糸監視装置(48)により実施される、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去が成功したかを調べる検査ステップ中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断および除去中、任意の検査ステップ中ならびに前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始に至るまで、
前記第1の開口位置に留まるように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項7記載のエアジェット織機(1)。
【請求項9】
前記制御装置(50)は、前記筬(32)が、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断のために前記結合点(66)の近傍にある第2の旋回位置へともたらされ、かつ/または前記筬(32)が、前記杼口(60)からの前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去のために、かつ/または前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始のために、前記第1の旋回位置と、第2の旋回位置と、の間に位置する第3の旋回位置へともたらされるように、前記第2の駆動装置(30)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項7または8記載のエアジェット織機(1)。
【請求項10】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸(2)と前記上杼口(64)の前記経糸(2)とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において30°未満、好適には15°未満、特に好適には12°未満の角度(α)を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載のエアジェット織機(1)。
【請求項11】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸(2)と前記上杼口(64)の前記経糸(2)とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において4°より大きく、好適には6°より大きく、特に好適には7°より大きい角度を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項記載のエアジェット織機(1)。
【請求項12】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記継ぎノズル(40)が、該継ぎノズル(40)の最も下側の噴出開口(42)の下縁部から測定して、前記杼口(60)の前記第1の開口位置において、前記下杼口(62)の前記経糸の平面を通って6mm以下だけ前記杼口(60)内に突出するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項記載のエアジェット織機(1)。
【請求項13】
前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とが、個別駆動装置であることを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項記載のエアジェット織機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機においてエラーを伴って挿入された緯糸を除去する方法およびこのようなエアジェット織機に関する。
【0002】
欧州特許第0310804号明細書に基づいて、このような方法およびこのようなエアジェット織機が公知であり、この公知の方法もしくはこの公知のエアジェット織機では、複数の緯糸が、緯糸の挿入側に配置されたメイン噴出ノズルと、経糸によって形成された杼口に沿って配置された複数の継ぎノズルとを用いて、この杼口内に挿入される。その際に、対応して変位される経糸から成る下杼口と上杼口とによって画定される杼口が、第1の駆動装置によって駆動される杼口形成装置によって形成される。杼口形成装置の綜絖は、各緯糸挿入後に周期的に下杼口の経糸を上杼口へと移動させ、上杼口の経糸を下杼口へと移動させる。緯糸の挿入後に、杼口は閉鎖位置へと移行させられ、第2の駆動装置により駆動される筬が緯糸を結合点に打ち付け、次いで、挿入された緯糸は、挿入側に設けられた分離装置、特に切断装置によって、用意された緯糸貯蔵部から分離される。第1の駆動装置と第2の駆動装置とは、両駆動装置が常に互いに同期されて作動するように働く制御装置により駆動制御される。
【0003】
以下では排出側と呼ばれる、挿入側とは反対の側で、糸監視装置が、緯糸のエラーを伴わない挿入を検査する。緯糸が糸監視装置を通過する、エラーを伴わない緯糸挿入は、エラー信号を発生させない。しかし、緯糸がエラーを伴って挿入された場合(このシナリオは、緯切れとも称される)、糸監視装置がエラー信号を出力する。エラー信号は、制御装置に織機を停止させる。停止は即座に行うことができないので、エラーを伴って挿入された緯糸はそのまま筬によって結合点に打ち付けられ、したがって除去され得るように、後に結合点から解離されなければならない。
【0004】
エラーを伴って挿入された緯糸を除去するために、制御装置は、公知の方法では、一方では杼口形成装置が杼口を開口位置へと移行させ、かつ同期の結果としてかつ完全に意図的に、他方では筬が結合点から離れる方向に旋回させられるように、第1の駆動装置および第2の駆動装置を駆動制御する。筬を離れる方向に旋回させることよって、エラーを伴って挿入された、いまだメイン噴出ノズルから突出している緯糸は、少なくとも挿入側において結合点から持ち上げられる。なぜならば、メイン噴出ノズルが、場合によっては存在する予備ノズルならびに継ぎノズルと同様に、筬と一緒にスレー上に配置されており、したがってこのスレーと一緒に結合点から離れる方向に旋回させられるからである。次いで、メイン噴出ノズルならびに継ぎノズル(ならびに場合によっては設けられている予備ノズル)を作動させることにより、エラーを伴って挿入された緯糸はその全長にわたって、結合点から解離され、挿入側で準備された緯糸の解放されている部分と一緒に、排出側へと搬送され得る。この排出側で、緯糸端部は、サクションノズルにより伸ばされて、保持される。この工程を、本明細書の範囲内では「吹き出し」と呼ぶ。
【0005】
エラーを伴って挿入された緯糸を、杼口を通して伸ばすことに対して代替的に、エラーを伴って挿入された緯糸を、挿入側において機械的な装置を用いて杼口から引き出す構成が公知である。
【0006】
杼口の閉鎖後、かつ大抵は結合点の方向に筬が旋回させられている場合に、エラーを伴って挿入された、サクションノズルにより伸ばされかつ保持された緯糸は、挿入側において切断装置により分離される。次いで、分離された緯糸は、杼口が再び開放され、かつ筬が結合点から離れる方向に旋回させられると、サクションノズルによって排出側で吸い出される。上掲の欧州特許第0310804号明細書には記載されていない、緯糸が挿入側において杼口から機械的に取り除かれる変化形では、この緯糸は、同様に挿入側において切断され、有利にはこの挿入側において除去される。
【0007】
続いて、緯糸が実際に吸い出されたか否かを調べる検査ステップが行われる。このためには、杼口は閉鎖され、筬が結合点に打ち付けられる。次いで、糸監視装置が緯糸の存在を記録した場合、このことは、以前にエラーを伴って挿入された緯糸が杼口から完全に除去されていないことを意味する。この場合、この緯糸は、杼口が開放されたときに手動で除去される。
【0008】
欧州特許第0310804号明細書に記載されたエアジェット織機における欠点は、自動的に緯切れを解消する場合に、連続するステップ中に杼口が繰り返し開閉することによって、経糸が繰り返し、かつ(通常の製織運転と比べて)長時間にわたって延伸され、これに基づいて完成した織布において、いわゆる厚段(Anlaufstelle)が生じてしまうことにある。
【0009】
本発明の課題は、織布における厚段が回避されるか、もしくは少なくとも減じられる、エアジェット織機においてエラーを伴って挿入された緯糸を除去するための自動化された方法ならびに自動的に緯切れを解消するためのこのようなエアジェット織機を提供することである。
【0010】
この課題は、独立請求項に記載されたそれぞれの特徴を有する方法および装置によって解決される。
【0011】
本発明によれば、エアジェット織機の制御装置は、糸監視装置の、緯切れを突き止めたエラー信号の受信時に、第1の駆動装置と第2の駆動装置との間の同期を解消し、次いで、両駆動装置を互いに独立させて駆動制御する。このためには、両駆動装置は、機械的に互いに分離されて構成されており、つまり、機械的にあらゆる時点で互いに連結されているのではなく、通常運転時には電子的に互いに同期されている。代替的には、両駆動装置は、通常運転中は機械的に互いに連結されており、これによって通常運転時には互いに同期されているが、例えば対応して構成された、制御装置により対応して駆動制御可能なクラッチにより互いに分離可能である。
【0012】
エラーを伴って挿入された緯糸を結合点から解離することができるようにするために、自動的に緯切れを解消するための公知の方法に比べて、筬は、第2の駆動装置を駆動制御することにより、結合点から離れる方向に旋回させられる。このためには、従来技術とは異なり、制御装置は、第2の駆動装置を第1の駆動装置から独立させて駆動制御し、これにより筬を、結合点から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置にもたらすことができる。筬を離れる方向に旋回させることにより、有利には、まだメイン噴出ノズルに結合されている緯糸を、挿入側において結合点から持ち上げ、次いで、同様に従来技術から公知のように、少なくとも1つのメイン噴出ノズルおよび継ぎノズルを用いて、杼口におけるその全長にわたって結合点から解離させることが可能である。
【0013】
さらに本発明によれば、第1の駆動装置を、制御装置の側で第2の駆動装置から独立させて駆動制御し、これにより、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除くために、杼口を第1の開口位置へと移行させる。この第1の開口位置は、通常の、つまり、連続的な製織運転中に達成される最大の開口角に比べて小さな開口角を有している。開口角は、結合点を起点とした、下杼口と上杼口との間に形成される角度として定義されている。杼口形成装置は、構造に起因して、杼口を縮小する場合には常に下杼口を持ち上げ、上杼口を降下させるので、本発明による構成により、筬と一緒にスレーに配置されている継ぎノズルは、今やより小さな程度しか下側から下杼口を通って杼口内に進入しないので、これにより継ぎノズルは、ほとんど取り除くべき緯糸を妨害せず、この緯糸は、継ぎノズルにほとんど、またはもはや全く捕捉され得ない。これにより、エラーを伴って挿入された緯糸を著しく高い成功率で杼口から除去できることが可能である。この利点は、杼口内にエラーを伴って挿入された緯糸を(吹出しおよび/または吸い込みによって)伸ばす場合にも、挿入側においてこのような緯糸を機械的に取り除く場合にも得られる。
【0014】
上記で示唆したように、比較的小さな開口角を有する本発明による第1の開口位置は、第1の駆動装置と第2の駆動装置とが機械的に互いに連結されていないか、もしくは少なくともエラーを伴って挿入された緯糸を除去するプロセス中に分離される場合にのみ、実現され得る。したがって本発明によれば、杼口の開きも、杼口に関する筬の位置も、それぞれ自由に、すなわち、互いに独立して調節可能である。2つの駆動装置がそれぞれ個別駆動装置として形成されており、これら両方の個別駆動装置が常に分離されているが、連続的な製織運転中には制御装置によって互いに同期されていると好適である。次いで、緯切れが突き止められた場合に、筬は、従来技術のように結合点から離れた第1の旋回位置へと旋回させられる一方で、第1の駆動装置によって駆動される杼口形成装置は、杼口を上述の第1の開口位置へと移行させる。
【0015】
第1の開口位置が、杼口の、両駆動装置の同期の解消の直後に接近される開口位置であると好適であるが、必ずしもそうである必要はない。杼口は、まず、前置された中間位置へと走行され得るが、このことは、大抵の場合に利点をもたらさないだろう。
【0016】
杼口を本発明により第1の開口位置へと移行させた後に続く、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除く基本的なステップと、この緯糸の切断と、切断された緯糸の最終的な除去とは、有利には従来技術に対応して実施されるが、特に好適には両駆動装置の同期は引き続き解消されている。第1の駆動装置と第2の駆動装置とは、好適には、通常の製織運転の再開によりようやく、制御装置側での対応する駆動制御によって互いに同期される。
【0017】
特に好適には、制御装置は、少なくとも1つの糸監視装置の上述のエラー信号が生じた場合に、杼口が、第1の開口位置への移行後に、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に除去するステップ中に第1の開口位置に留まるだけではなく、エラーを伴って挿入された緯糸の切断中も、この第1の開口位置に留まるように、第1の駆動装置を駆動制御する。さらに、杼口が、切断された、エラーを伴って挿入された緯糸の除去中にも、付加的にこの第1の開口位置に留まっていると有利である。さらに、杼口が、好適には糸監視装置によって実施される、エラーを伴って挿入された緯糸の除去が成功したかを検査するための検査ステップ中にも、付加的に第1の開口位置に留まっていると有利である。
【0018】
特に好適な実施形態では、杼口が、再び互いに同期された第1の駆動装置および第2の駆動装置による織機の新たな始動が準備されかつ実施されるまで、第1の開口位置に留まる。つまり、この最後に挙げた変化形では、同期の解消後に、杼口は、第1の開口位置へと走行させられ、この第1の開口位置に、場合によっては検査ステップを含む、緯切れを解消するための全工程中、製織運転を開始するための織機の開始工程が開始されるまで、留まる。
【0019】
好適には、制御装置は、少なくとも1つの糸監視装置の上述のエラー信号が生じた場合に、筬が、第1の旋回位置への旋回後に、吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除くステップ中に、この第1の旋回位置に留まるように第2の駆動装置を駆動制御する。第1の旋回位置は、エラーを伴って挿入された緯糸を、スレーに配置されたメインノズルと継ぎノズルとにより結合点から解離させかつ伸ばすことができるようにするために、好適にはできるだけ結合点から離れている。
【0020】
次いで、エラーを伴って挿入された緯糸を切断するために、筬は、第2の駆動装置によるスレーの駆動制御によって、好適には第2の旋回位置へと移行させられ、この第2の旋回位置において筬は、杼口内に伸びる、エラーを伴って挿入された緯糸を制御して切断することができるようにするために、結合点の近傍にある。この第2の旋回位置への旋回により、エラーを伴って挿入された緯糸は、好適には緯糸剪断部内に導入される。
【0021】
エラーを伴って挿入された、切断された緯糸の除去中に、かつ/または次いで、第1の駆動装置および第2の駆動装置の再び同期された運転における製織工程の新たな開始のために、筬を第1の旋回位置にもたらすことができ、または好適には第3の旋回位置に走行させることができる。この第3の旋回位置では、筬は好適には第1の旋回位置におけるよりも結合点の近傍にあり、かつ第2の旋回位置におけるよりも結合点から離れている。筬を備えたスレーを、第1の旋回位置よりも結合点の近傍にあるこのような第3の旋回位置へと旋回させることは、筬がこの第3の旋回位置において、第2の旋回位置を起点として、より小さな旋回距離を進んでおり、したがってエラーを伴って挿入された緯糸を除去するための自動化された方法の期間が短縮されるという利点を有しており、このことはまた、緯切れ後の織機の停止時間を減少させる。さらに、エラーを伴って挿入された、切断された緯糸が吸出し時に引っかかる恐れはさらに最小限にされる。なぜならば、継ぎノズルは第3の旋回位置においては、筬の第1の旋回位置におけるよりも僅かにしか杼口内にしか突出していないからである。
【0022】
特に好適には、第1の駆動装置は、少なくとも1つの糸監視装置のエラー信号が生じた場合に、制御装置によって、上杼口の経糸と下杼口の経糸とが、杼口の第1の開口位置において、30°未満の、好適には15°未満の、特に好適には12°未満の開口角を形成するように、駆動制御される。これらの角度位置は、著しく僅かにしか発生しない緯切れ解消のために、かつ緯切れ解消中に引張される経糸をいたわるために有利であることが判った。
【0023】
制御装置は、特に好適には、少なくとも1つの糸監視装置のエラー信号が生じた場合にも、上杼口の経糸と下杼口の経糸とが、杼口の第1の開口位置において4°より大きく、好適には6°より大きく、特に好適には7°より大きい開口角を形成するように、第1の駆動装置を駆動制御する。
【0024】
第1の開口位置における比較的小さな開口角により、経糸の過大な延伸が回避され、これにより、完成した織布における厚段の個数を減じることができる。同時に、スレーを介して筬に結合されている継ぎノズルが、下杼口を通してあまり深く杼口内に進入しないことが可能にされる。
【0025】
杼口の比較的小さな開口角の別の利点は、左右の幅保持領域における小さな歪みである。幅保持器は、織布を経方向に延びるその2つの縁部領域においてしっかりと保持するために働き、これによって、機械的な応力に基づいて織布が織布中心に向かって収縮することを回避することができる。杼口の杼口開口または開口角が小さければ小さいほど、織布の縁部に内方に向かって作用する機械的な応力は小さくなる。なぜならば、糸張力は杼口が小さな場合にほとんど高められず、このことは、最終的に、織布幅にわたってより均一な結合点ラインをもたらすからである。
【0026】
好適な実施形態では、開口角が7°~12°であると、有利であることが判った。
【0027】
好適には、制御装置は、少なくとも1つの糸監視装置のエラー信号が生じた場合に、継ぎノズルが、継ぎノズルの最も下側の噴出開口の下縁部から測定して、杼口の第1の開口位置において、下杼口の経糸の平面を通って6mm以下だけ杼口内に突出するように、第1の駆動装置を駆動制御する。各継ぎノズルの、上記「最も下側の噴出開口」という用語は、1つまたは複数の継ぎノズルが唯1つの噴出開口しか有していない場合にも理解されるべきである。上述の構成は、噴出開口(もしくは唯1つの噴出開口)が小さな高さだけしか杼口内に突出しておらず、これにより継ぎノズルが、挿入側から接近する緯糸をほとんど邪魔しないという利点を有している。
【0028】
同様に、本発明は、装置に関する独立請求項に記載の装置に関し、この装置は、上記から直接に明らかである対応する装置特徴を有している。このことは、装置に関する従属装置請求項にも当てはまる。
【0029】
本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載の特徴から明らかである。
【0030】
本発明を、図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】エアジェット織機を示す概略的な側面図である。
【
図2】エアジェット織機の筬およびニューマチック式の装置を示す正面図である。
【
図3】第1の旋回位置において杼口内にある筬を示す側面図であり、杼口は、一方では第1の開口角αで、かつ他方では先行技術による開口角α’で示されている。
【
図4】第2の旋回位置における、
図3に示した筬を示す側面図である。
【
図5】第3の旋回位置における、
図3および
図4に示した筬を示す側面図である。
【0032】
図1には、極めて概略的な側面図で、エアジェット織機1の主要な要素が図示されている。杼口形成装置22の、相前後して配置された2つの綜絖23は、公知の形式で経糸2を収容し、両綜絖23は、第1の駆動装置20によって互いに逆のタイミングで上下運動させられる。これにより、経糸2は、下杼口62と上杼口64とを形成し、これらの下杼口62と上杼口64とは、一緒に1つの杼口60を形成し、この杼口60は、常に下杼口62から上杼口64へ、かつ上杼口64から下杼口62へと交替する経糸2によって開閉する。杼口60が開かれると、緯糸3が経方向KRに対して直交して延びる緯方向SRで杼口60を通って飛走され(
図2参照)、次いで、杼口60が、杼口形成装置22により閉じられ、筬32が製品67の結合点66に打ち付けられる。筬32は、ここではスレー36上に配置されており、このスレー36は、通常の製織運転中に第2の駆動装置30により周期的に結合点66に向かって、かつ結合点66から離れる方向に旋回させられる。
【0033】
第1の駆動装置20および第2の駆動装置30は両方、対応する信号線路51,52を介して制御装置50によって駆動制御される。特に好適には、両駆動装置20,30は、制御装置50が互いに別個に駆動制御することができる個別駆動装置として構成されている。通常の製織運転では、両駆動装置20,30は、互いに同期して運転するように駆動制御され、これによって、1回の製織サイクルに必要とされる、杼口形成と筬打ちとの繰り返される正確な運動シーケンスを保証することができる。
【0034】
図2の正面図からは、杼口60への緯糸挿入の工程が明らかである。挿入側8には、少なくとも1つのメイン噴出ノズル6が配置されており、このメイン噴出ノズル6には、対応する緯糸貯蔵部(図示せず)から緯糸材料が供給される。ここで、1つまたは複数のメイン噴出ノズル6の種々異なる配置構成および配置が存在することに言及しておく。したがって、1つまたは複数のメイン噴出ノズル6がスレー36上に配置されていて、このスレー36と一緒に旋回させられることが可能である。また、1つまたは2つ(以上)のメイン噴出ノズルがスレー上に配置されている変化形が存在する一方で、1つまたは2つ(以上)の定置のメイン噴出ノズルが設けられていて、これらのメイン噴出ノズルがスレーと一緒に旋回させられない変化形も存在する。本実施形態では、少なくとも1つの、ここではスレー36上に配置され、かつこのスレー36と一緒に旋回させられるメイン噴出ノズル6を起点とし、このメイン噴出ノズル6は、
図2によれば結合部材7を介してスレー36に結合されている。
【0035】
第2の駆動装置30によって駆動されるスレー36上には、筬32が配置されており、ここでは単に外側で、筬32の幾つかの筬羽33がそれぞれ図示されている。さらに、スレー36上には、緯方向SRで離間された複数の継ぎノズル40がそれぞれ1つのホルダ38上に配置されており、継ぎノズル40の1つまたは複数の噴出開口42は、緯方向SRに延びる通路34内に向けられており、この通路34は、筬羽33に設けられた湾入部によって形成されている(これに関しては、
図3~
図5を参照)。少なくとも1つのメイン噴出ノズル6は、緯糸3を挿入側8で杼口60内に挿入し、次いで、緯糸3は、継ぎノズル40により通路34内で杼口60を通って搬送され、排出側9に配置された吸込装置45によって吸い込まれる。次いで、杼口60が、杼口形成装置22により閉じられ、挿入された緯糸3は筬32により結合点66に打ち付けられ、次いで、挿入側8に設けられた切断装置68により切断される。
【0036】
排出側9において、本実施形態では光送信機と光受信機とから成る糸監視装置48が、各緯糸3のエラーのない挿入を検査する。糸監視装置48は、緯糸3がエラーを伴って挿入され、かつ糸監視装置48に達していない場合に、単に1つのエラー信号を出力する。このシナリオは緯切れとも呼ばれる。本発明は、自動的に緯切れを解消するための改善された方法および改善された装置に関する。糸監視装置48の1つの上述のエラー信号は、糸監視装置48に接続された制御装置50に、まず、エアジェット織機1の通常の製織運転を停止させる。次いで、本発明によれば、第1の駆動装置20と第2の駆動装置30との間の同期が、制御装置50によって解消される。制御装置50は、今、筬32が結合点66から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置をとるように、第2の駆動装置30を駆動制御する(
図3を参照)。しかし、その前に筬32は、機械停止後に運動している部材を即座に停止させることが不可能であることに基づいて、エラーを伴って挿入された緯糸3を依然として結合点66の方向に押している。少なくとも1つのメイン噴出ノズル6が、慣用のように、スレー36上に配置されていて、スレー36と一緒に旋回させられた場合、第1の旋回位置への筬32の旋回により、エラーを伴って挿入された緯糸3を、少なくともメイン噴出ノズル6の領域において、結合点66から解離させることができる。
【0037】
さらに、本発明によれば、制御装置50は、杼口形成装置22が杼口60を第1の開口位置に移行させるように、第1の駆動装置20を駆動制御し、ここで、この第1の開口位置の開口角αは、結合点66を起点として下杼口62と上杼口64との間で測定した場合に、連続的な製織運転中に達成される開口位置の最大開口角α’よりも小さい(同様に
図3を参照)。しかし、いずれの場合も、杼口形成装置22によって第1の開口位置にもたらされた杼口60と協働して、筬32を第1の旋回位置へ移行させることによって、エラーを伴って挿入された緯糸3を最終的に杼口60から除去することができる可能性が開かれる。次いで、第1の開口角αを有する杼口のこの第1の開口位置において、図面に示されたエアジェット織機1では、原則として公知の、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出すステップが実施される。「吹き出す」という用語は、挿入側8の緯糸貯蔵部にまだ結合している緯糸3が、少なくとも1つのメイン噴出ノズル6および継ぎノズル40(かつ場合によっては1つまたは複数の予備ノズル)の作動によって、排出側9の方向に搬送され、かつ排出側で吸込装置45によって伸ばされることであると理解される。緯糸端部が吸込装置45に到達し得るようにするために、緯糸の一部が緯糸貯蔵部から解放される。上述の伸ばされた位置では、エラーを伴って挿入された緯糸3が、挿入側8の切断装置68により切断され、最終的に除去され得る。このことは、有利には、排出側9の吸込装置45を用いた吸い込みにより行われる。
【0038】
しかし、上述の吹き出しとは別の変化形も考えられ、例えば、エラーを伴って挿入された緯糸3を、挿入側8の引張装置を用いて杼口60から機械的に取り除くことも考えられる(この変化形は図示されていない)。
【0039】
全ての変化形において、エラーを伴って挿入された緯糸3は、最終的に切断装置68により切断され、最後に除去される。
【0040】
図3に戻ると、
図3から判るように、下杼口62と上杼口64とにより形成された杼口60は、その第1の開口位置において、ここでは、約10°の開口角αをとっており、ここで、好適には、開口角αは7°~12°である。これに対して、下杼口62’と上杼口64’との間の開口角α’(
図3を参照)は、通常の製織運転中の杼口60の最大の開口位置において30°超である。
【0041】
小さな開口角αは、特に、綜絖23により変位された経糸2が、少なくともエラーを伴って挿入された緯糸3を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に除去する段階中に、極僅かにしか延伸されないという利点を提供する。さらに
図3から判るように、継ぎノズル40は、杼口60の第1の開口位置では、下杼口62を通って杼口60内に僅かにしか突出していない。これにより、エラーを伴って挿入された緯糸3は、この緯糸3が排出側9に向かって伸ばされるかまたは挿入側8において引き出されるかに拘わらず、継ぎノズル40においてほとんど捕捉されず、これにより、自動的な緯切れの解消時により大きな成功率を達成することができる。
【0042】
図3には、各継ぎノズル40の自由端に配置されている、ここでは個別に存在しているものとして図示されている噴出開口42の下縁部が、下杼口62を通って僅かに、好適には6mm以下しか突出していないことも示唆されている。これにより、エラーを伴って挿入された緯糸3を吹き出すための機能性は、依然として与えられているが、しかし排出側9または挿入側8への経路における緯糸3の運動自由度は最小限しか阻止されていない。
【0043】
図4では、筬32が、制御装置50による第2の駆動装置30の駆動制御により、結合点66の近傍にある第2の旋回位置に旋回させられており、これにより、次いで、エラーを伴って挿入された緯糸3の切断を行うことができる。両駆動装置20,30間の同期が解消されていることに基づいて、杼口は上述の第1の開口位置に留まることができ、これにより経糸2は引き続き、極僅かにしか延伸されない。
【0044】
最後に
図5では、筬32が、第3の旋回位置に移行させられており、この第3の旋回位置では、筬32は、第1の旋回位置と第2の旋回位置との間に位置しており、これによって筬32は、第2の旋回位置を起点として、比較的小さな旋回距離だけ進められればよい。これに対して杼口60は引き続き開口角αを有する上述の有利な第1の開口位置に留まることができる。筬32および杼口60のこれらの位置では、好適にはエラーを伴って挿入された、そのうちに切断された緯糸3が、好適には吸込装置45を用いた吸出しにより除去される。吸い込み時の切断された緯糸3が引っかかるリスクは、この第3の旋回位置によってさらに最小限にされる。なぜならば、この第3の旋回位置では継ぎノズル40は、第1の旋回位置に比べてさらに僅かしか下杼口62内に進入していないからである。さらに、上述の第3の旋回位置への筬32の移行は、緯切れ解消の自動的なフローにおける時間の節約と、織機の短い停止時間とにつながる。
【0045】
エラーを伴って挿入された、切断された緯糸3のこの除去の開始後に、検査ステップが続いてよく、この検査ステップでは、上述の緯糸3が実際に最終的に除去されたか否かが検査される。このためには、杼口60が、比較的小さな開口角を有する、前もって接近させられた開口位置に留まる一方で、筬32は、結合点66の近傍に運動させられる(
図4による杼口60および筬32の位置と比較可能)。したがって、糸監視装置48が依然として緯糸3の存在を記録し、対応する信号を出力すると(つまり、ここでは緯糸の存在が報知される)、このことは、以前にエラーを伴って挿入された緯糸3が杼口60から完全に除去されていないことを意味している。この場合、この緯糸3は、次いで、杼口60が開かれた場合に、好適には手動で除去される。
【0046】
第1の駆動装置20および第2の駆動装置30が再び制御装置50側での駆動制御によって、同期された運転において作動する、エアジェット織機1の新たな始動が準備されるまでの間、杼口60は、好適にはまだ開口角αを有する第1の開口位置にある。これに対して筬32は、制御装置50によって駆動制御される第2の駆動装置30を用いて、有利には、
図5に記載された第3の旋回位置に類似の位置へと走行させられるか、もしくはエラーを伴って挿入された緯糸3の除去後にこの第3の旋回位置に留まる。このことは、既に上述した、自動的な緯切れ解消時の時間節約の効果、これに関連する停止時間の短縮を伴う。したがって、杼口60に関して、制御装置50は、好適には、少なくとも1つの糸監視装置48のエラー信号の発生時に第1の駆動装置20を駆動制御して、杼口60が、第1の開口位置への移行後に、連続的な製織運転の新たな開始に至るまでのこの第1の開口位置に留まることができるように構成されている。次いで、ようやく好適には筬32および/または杼口形成装置22の綜絖23が、連続的な製織運転およびこの製織運転に伴う杼口形成装置22と筬32との同期にとって必要な位置にもたらされ、次いで、製織運転が進行され得る。
【0047】
減じられた開口角を有する第1の開口位置における前述した長期の滞在は、経糸2が緯糸3の除去の工程全体にわたって極僅かにしか伸長されないという利点を有している。杼口の比較的小さく、好適には同様の開口角に基づく本発明の別の利点は、幅保持領域における小さな歪みと、均一な結合点とである。一方では杼口の開口角と、他方では開かれた杼口に関する筬の位置との、互いに独立した自由な調節可能性により、自動的な欠陥解消時の比較的高い成功率を達成することができる。
【0048】
本発明は、図示されかつ記載された実施例に制限されるものではない。
【0049】
したがって杼口60の第1の開口位置が、機械停止直後に接近される必要はなく、つまり、予備的に1つまたは複数の中間位置も可能である。また、エラーを伴って挿入された緯糸3を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除いた後に、杼口60を、1つの、または-この場合には相前後して-複数の別の開口位置に走行させることも可能であり、この複数の開口位置は、好適には同様に30°未満の比較的小さな開口角を有している。別の糸監視装置が、杼口60に関して別の位置に配置可能でもある。さらに、糸監視装置48および/または別の糸監視装置は、光学式の検出とは異なる機能原理に基づいていてよい。
【符号の説明】
【0050】
1 エアジェット織機
2 経糸
3 緯糸
6 メイン噴出ノズル
7 結合部材
8 挿入側
9 排出側
20 第1の駆動装置
22 杼口形成装置
23 綜絖
30 第2の駆動装置
32 筬
33 筬羽
34 通路
36 スレー
38 ホルダ
40 継ぎノズル
42 噴出開口
45 吸込装置
48 糸監視装置
50 制御装置
51 信号線路
52 信号線路
60 杼口
62,62’ 下杼口
64,64’ 上杼口
66 結合点
67 製品
68 切断装置
SR 緯方向
KR 経方向
α 開口角
α’ 開口角(従来技術)
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機においてエラーを伴って挿入された緯糸を除去する方法およびこのようなエアジェット織機に関する。
【0002】
欧州特許第0310804号明細書に基づいて、このような方法およびこのようなエアジェット織機が公知であり、この公知の方法もしくはこの公知のエアジェット織機では、複数の緯糸が、緯糸の挿入側に配置されたメイン噴出ノズルと、経糸によって形成された杼口に沿って配置された複数の継ぎノズルとを用いて、この杼口内に挿入される。その際に、対応して変位される経糸から成る下杼口と上杼口とによって画定される杼口が、第1の駆動装置によって駆動される杼口形成装置によって形成される。杼口形成装置の綜絖は、各緯糸挿入後に周期的に下杼口の経糸を上杼口へと移動させ、上杼口の経糸を下杼口へと移動させる。緯糸の挿入後に、杼口は閉鎖位置へと移行させられ、第2の駆動装置により駆動される筬が緯糸を結合点に打ち付け、次いで、挿入された緯糸は、挿入側に設けられた分離装置、特に切断装置によって、用意された緯糸貯蔵部から分離される。第1の駆動装置と第2の駆動装置とは、両駆動装置が常に互いに同期されて作動するように働く制御装置により駆動制御される。
【0003】
以下では排出側と呼ばれる、挿入側とは反対の側で、糸監視装置が、緯糸のエラーを伴わない挿入を検査する。緯糸が糸監視装置を通過する、エラーを伴わない緯糸挿入は、エラー信号を発生させない。しかし、緯糸がエラーを伴って挿入された場合(このシナリオは、緯切れとも称される)、糸監視装置がエラー信号を出力する。エラー信号は、制御装置に織機を停止させる。停止は即座に行うことができないので、エラーを伴って挿入された緯糸はそのまま筬によって結合点に打ち付けられ、したがって除去され得るように、後に結合点から解離されなければならない。
【0004】
エラーを伴って挿入された緯糸を除去するために、制御装置は、公知の方法では、一方では杼口形成装置が杼口を開口位置へと移行させ、かつ同期の結果としてかつ完全に意図的に、他方では筬が結合点から離れる方向に旋回させられるように、第1の駆動装置および第2の駆動装置を駆動制御する。筬を離れる方向に旋回させることよって、エラーを伴って挿入された、いまだメイン噴出ノズルから突出している緯糸は、少なくとも挿入側において結合点から持ち上げられる。なぜならば、メイン噴出ノズルが、場合によっては存在する予備ノズルならびに継ぎノズルと同様に、筬と一緒にスレー上に配置されており、したがってこのスレーと一緒に結合点から離れる方向に旋回させられるからである。次いで、メイン噴出ノズルならびに継ぎノズル(ならびに場合によっては設けられている予備ノズル)を作動させることにより、エラーを伴って挿入された緯糸はその全長にわたって、結合点から解離され、挿入側で準備された緯糸の解放されている部分と一緒に、排出側へと搬送され得る。この排出側で、緯糸端部は、サクションノズルにより伸ばされて、保持される。この工程を、本明細書の範囲内では「吹き出し」と呼ぶ。
【0005】
エラーを伴って挿入された緯糸を、杼口を通して伸ばすことに対して代替的に、エラーを伴って挿入された緯糸を、挿入側において機械的な装置を用いて杼口から引き出す構成が公知である。
【0006】
杼口の閉鎖後、かつ大抵は結合点の方向に筬が旋回させられている場合に、エラーを伴って挿入された、サクションノズルにより伸ばされかつ保持された緯糸は、挿入側において切断装置により分離される。次いで、分離された緯糸は、杼口が再び開放され、かつ筬が結合点から離れる方向に旋回させられると、サクションノズルによって排出側で吸い出される。上掲の欧州特許第0310804号明細書には記載されていない、緯糸が挿入側において杼口から機械的に取り除かれる変化形では、この緯糸は、同様に挿入側において切断され、有利にはこの挿入側において除去される。
【0007】
続いて、緯糸が実際に吸い出されたか否かを調べる検査ステップが行われる。このためには、杼口は閉鎖され、筬が結合点に打ち付けられる。次いで、糸監視装置が緯糸の存在を記録した場合、このことは、以前にエラーを伴って挿入された緯糸が杼口から完全に除去されていないことを意味する。この場合、この緯糸は、杼口が開放されたときに手動で除去される。
【0008】
欧州特許第0310804号明細書に記載されたエアジェット織機における欠点は、自動的に緯切れを解消する場合に、連続するステップ中に杼口が繰り返し開閉することによって、経糸が繰り返し、かつ(通常の製織運転と比べて)長時間にわたって延伸され、これに基づいて完成した織布において、いわゆる厚段(Anlaufstelle)が生じてしまうことにある。
【0009】
中国特許第105401311号明細書は、エラーを伴って挿入された緯糸を除去する方法を開示しており、この場合、織機は、エラーを伴って挿入された緯糸の検出後に停止され、緯糸が切断される。次いで、下杼口および上杼口の経糸ならびに織布を後方に向かってワープビームの方向に移動させ、次いで、下杼口および上杼口を一緒に降下させ、これにより、次いで、筬を継ぎノズルと一緒に後方に向かって旋回させることができる。このようにして、エラーを伴って挿入された、切断された緯糸が、継ぎノズルを用いて耳から押し出される。次いで、下杼口と上杼口とが上昇させられ、これにより継ぎノズルの開口が、排出されるべき緯糸に最適に作用して、この緯糸を除去することができる。
【0010】
独国特許出願公開第102007043142号明細書は、停止信号に基づいて製織運転から停止状態に至るまで織機をシャットダウンする方法を開示しており、杼口形成手段を、杼口形成機を用いて補助モータにより駆動する一方で、筬の駆動は織機のメインモータにより行い、シャットダウンするために杼口形成手段と筬との同期された駆動を解消し、筬をその駆動装置により杼口形成機から独立して制動する。この方法は、a)杼口形成機のシャットダウンの工程において、杼口形成機の停止状態において目指される杼口位置の調節が含まれていること、b)緯切れによる製織運転の中断時に杼口形成機が、特有の停止信号に基づいて、破断した緯糸を有する杼口が解放されるようにシャットダウンされること、c)杼口形成機が停止状態に至る前に緯切れの除去が既に開始されることである。
【0011】
本発明の課題は、織布における厚段が回避されるか、もしくは少なくとも減じられる、エアジェット織機においてエラーを伴って挿入された緯糸を除去するための自動化された方法ならびに自動的に緯切れを解消するためのこのようなエアジェット織機を提供することである。
【0012】
この課題は、独立請求項に記載されたそれぞれの特徴を有する方法および装置によって解決される。
【0013】
本発明によれば、エアジェット織機の制御装置は、糸監視装置の、緯切れを突き止めたエラー信号の受信時に、第1の駆動装置と第2の駆動装置との間の同期を解消し、次いで、両駆動装置を互いに独立させて駆動制御する。このためには、両駆動装置は、機械的に互いに分離されて構成されており、つまり、機械的にあらゆる時点で互いに連結されているのではなく、通常運転時には電子的に互いに同期されている。代替的には、両駆動装置は、通常運転中は機械的に互いに連結されており、これによって通常運転時には互いに同期されているが、例えば対応して構成された、制御装置により対応して駆動制御可能なクラッチにより互いに分離可能である。
【0014】
エラーを伴って挿入された緯糸を結合点から解離することができるようにするために、自動的に緯切れを解消するための公知の方法に比べて、筬は、第2の駆動装置を駆動制御することにより、結合点から離れる方向に旋回させられる。このためには、従来技術とは異なり、制御装置は、第2の駆動装置を第1の駆動装置から独立させて駆動制御し、これにより筬を、結合点から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置にもたらすことができる。筬を離れる方向に旋回させることにより、有利には、まだメイン噴出ノズルに結合されている緯糸を、挿入側において結合点から持ち上げ、次いで、同様に従来技術から公知のように、少なくとも1つのメイン噴出ノズルおよび継ぎノズルを用いて、杼口におけるその全長にわたって結合点から解離させることが可能である。
【0015】
さらに本発明によれば、第1の駆動装置を、制御装置の側で第2の駆動装置から独立させて駆動制御し、これにより、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除くために、杼口を第1の開口位置へと移行させる。この第1の開口位置は、通常の、つまり、連続的な製織運転中に達成される最大の開口角に比べて小さな開口角を有している。開口角は、結合点を起点とした、下杼口と上杼口との間に形成される角度として定義されている。杼口形成装置は、構造に起因して、杼口を縮小する場合には常に下杼口を持ち上げ、上杼口を降下させるので、本発明による構成により、筬と一緒にスレーに配置されている継ぎノズルは、今やより小さな程度しか下側から下杼口を通って杼口内に進入しないので、これにより継ぎノズルは、ほとんど取り除くべき緯糸を妨害せず、この緯糸は、継ぎノズルにほとんど、またはもはや全く捕捉され得ない。これにより、エラーを伴って挿入された緯糸を著しく高い成功率で杼口から除去できることが可能である。この利点は、杼口内にエラーを伴って挿入された緯糸を(吹出しおよび/または吸い込みによって)伸ばす場合にも、挿入側においてこのような緯糸を機械的に取り除く場合にも得られる。
【0016】
上記で示唆したように、比較的小さな開口角を有する本発明による第1の開口位置は、第1の駆動装置と第2の駆動装置とが機械的に互いに連結されていないか、もしくは少なくともエラーを伴って挿入された緯糸を除去するプロセス中に分離される場合にのみ、実現され得る。したがって本発明によれば、杼口の開きも、杼口に関する筬の位置も、それぞれ自由に、すなわち、互いに独立して調節可能である。2つの駆動装置がそれぞれ個別駆動装置として形成されており、これら両方の個別駆動装置が常に分離されているが、連続的な製織運転中には制御装置によって互いに同期されていると好適である。次いで、緯切れが突き止められた場合に、筬は、従来技術のように結合点から離れた第1の旋回位置へと旋回させられる一方で、第1の駆動装置によって駆動される杼口形成装置は、杼口を上述の第1の開口位置へと移行させる。
【0017】
第1の開口位置が、杼口の、両駆動装置の同期の解消の直後に接近される開口位置であると好適であるが、必ずしもそうである必要はない。杼口は、まず、前置された中間位置へと走行され得るが、このことは、大抵の場合に利点をもたらさないだろう。
【0018】
杼口を本発明により第1の開口位置へと移行させた後に続く、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除く基本的なステップと、この緯糸の切断と、切断された緯糸の最終的な除去とは、有利には従来技術に対応して実施されるが、特に好適には両駆動装置の同期は引き続き解消されている。第1の駆動装置と第2の駆動装置とは、好適には、通常の製織運転の再開によりようやく、制御装置側での対応する駆動制御によって互いに同期される。
【0019】
特に好適には、制御装置は、少なくとも1つの糸監視装置の上述のエラー信号が生じた場合に、杼口が、第1の開口位置への移行後に、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に除去するステップ中に第1の開口位置に留まるだけではなく、エラーを伴って挿入された緯糸の切断中も、この第1の開口位置に留まるように、第1の駆動装置を駆動制御する。さらに、杼口が、切断された、エラーを伴って挿入された緯糸の除去中にも、付加的にこの第1の開口位置に留まっていると有利である。さらに、杼口が、好適には糸監視装置によって実施される、エラーを伴って挿入された緯糸の除去が成功したかを検査するための検査ステップ中にも、付加的に第1の開口位置に留まっていると有利である。
【0020】
特に好適な実施形態では、杼口が、再び互いに同期された第1の駆動装置および第2の駆動装置による織機の新たな始動が準備されかつ実施されるまで、第1の開口位置に留まる。つまり、この最後に挙げた変化形では、同期の解消後に、杼口は、第1の開口位置へと走行させられ、この第1の開口位置に、場合によっては検査ステップを含む、緯切れを解消するための全工程中、製織運転を開始するための織機の開始工程が開始されるまで、留まる。
【0021】
好適には、制御装置は、少なくとも1つの糸監視装置の上述のエラー信号が生じた場合に、筬が、第1の旋回位置への旋回後に、吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除くステップ中に、この第1の旋回位置に留まるように第2の駆動装置を駆動制御する。第1の旋回位置は、エラーを伴って挿入された緯糸を、スレーに配置されたメインノズルと継ぎノズルとにより結合点から解離させかつ伸ばすことができるようにするために、好適にはできるだけ結合点から離れている。
【0022】
次いで、エラーを伴って挿入された緯糸を切断するために、筬は、第2の駆動装置によるスレーの駆動制御によって、好適には第2の旋回位置へと移行させられ、この第2の旋回位置において筬は、杼口内に伸びる、エラーを伴って挿入された緯糸を制御して切断することができるようにするために、結合点の近傍にある。この第2の旋回位置への旋回により、エラーを伴って挿入された緯糸は、好適には緯糸剪断部内に導入される。
【0023】
エラーを伴って挿入された、切断された緯糸の除去中に、かつ/または次いで、第1の駆動装置および第2の駆動装置の再び同期された運転における製織工程の新たな開始のために、筬を第1の旋回位置にもたらすことができ、または好適には第3の旋回位置に走行させることができる。この第3の旋回位置では、筬は好適には第1の旋回位置におけるよりも結合点の近傍にあり、かつ第2の旋回位置におけるよりも結合点から離れている。筬を備えたスレーを、第1の旋回位置よりも結合点の近傍にあるこのような第3の旋回位置へと旋回させることは、筬がこの第3の旋回位置において、第2の旋回位置を起点として、より小さな旋回距離を進んでおり、したがってエラーを伴って挿入された緯糸を除去するための自動化された方法の期間が短縮されるという利点を有しており、このことはまた、緯切れ後の織機の停止時間を減少させる。さらに、エラーを伴って挿入された、切断された緯糸が吸出し時に引っかかる恐れはさらに最小限にされる。なぜならば、継ぎノズルは第3の旋回位置においては、筬の第1の旋回位置におけるよりも僅かにしか杼口内にしか突出していないからである。
【0024】
特に好適には、第1の駆動装置は、少なくとも1つの糸監視装置のエラー信号が生じた場合に、制御装置によって、上杼口の経糸と下杼口の経糸とが、杼口の第1の開口位置において、30°未満の、好適には15°未満の、特に好適には12°未満の開口角を形成するように、駆動制御される。これらの角度位置は、著しく僅かにしか発生しない緯切れ解消のために、かつ緯切れ解消中に引張される経糸をいたわるために有利であることが判った。
【0025】
制御装置は、特に好適には、少なくとも1つの糸監視装置のエラー信号が生じた場合にも、上杼口の経糸と下杼口の経糸とが、杼口の第1の開口位置において4°より大きく、好適には6°より大きく、特に好適には7°より大きい開口角を形成するように、第1の駆動装置を駆動制御する。
【0026】
第1の開口位置における比較的小さな開口角により、経糸の過大な延伸が回避され、これにより、完成した織布における厚段の個数を減じることができる。同時に、スレーを介して筬に結合されている継ぎノズルが、下杼口を通してあまり深く杼口内に進入しないことが可能にされる。
【0027】
杼口の比較的小さな開口角の別の利点は、左右の幅保持領域における小さな歪みである。幅保持器は、織布を経方向に延びるその2つの縁部領域においてしっかりと保持するために働き、これによって、機械的な応力に基づいて織布が織布中心に向かって収縮することを回避することができる。杼口の杼口開口または開口角が小さければ小さいほど、織布の縁部に内方に向かって作用する機械的な応力は小さくなる。なぜならば、糸張力は杼口が小さな場合にほとんど高められず、このことは、最終的に、織布幅にわたってより均一な結合点ラインをもたらすからである。
【0028】
好適な実施形態では、開口角が7°~12°であると、有利であることが判った。
【0029】
好適には、制御装置は、少なくとも1つの糸監視装置のエラー信号が生じた場合に、継ぎノズルが、継ぎノズルの最も下側の噴出開口の下縁部から測定して、杼口の第1の開口位置において、下杼口の経糸の平面を通って6mm以下だけ杼口内に突出するように、第1の駆動装置を駆動制御する。各継ぎノズルの、上記「最も下側の噴出開口」という用語は、1つまたは複数の継ぎノズルが唯1つの噴出開口しか有していない場合にも理解されるべきである。上述の構成は、噴出開口(もしくは唯1つの噴出開口)が小さな高さだけしか杼口内に突出しておらず、これにより継ぎノズルが、挿入側から接近する緯糸をほとんど邪魔しないという利点を有している。
【0030】
同様に、本発明は、装置に関する独立請求項に記載の装置に関し、この装置は、上記から直接に明らかである対応する装置特徴を有している。このことは、装置に関する従属装置請求項にも当てはまる。
【0031】
本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載の特徴から明らかである。
【0032】
本発明を、図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】エアジェット織機を示す概略的な側面図である。
【
図2】エアジェット織機の筬およびニューマチック式の装置を示す正面図である。
【
図3】第1の旋回位置において杼口内にある筬を示す側面図であり、杼口は、一方では第1の開口角αで、かつ他方では先行技術による開口角α’で示されている。
【
図4】第2の旋回位置における、
図3に示した筬を示す側面図である。
【
図5】第3の旋回位置における、
図3および
図4に示した筬を示す側面図である。
【0034】
図1には、極めて概略的な側面図で、エアジェット織機1の主要な要素が図示されている。杼口形成装置22の、相前後して配置された2つの綜絖23は、公知の形式で経糸2を収容し、両綜絖23は、第1の駆動装置20によって互いに逆のタイミングで上下運動させられる。これにより、経糸2は、下杼口62と上杼口64とを形成し、これらの下杼口62と上杼口64とは、一緒に1つの杼口60を形成し、この杼口60は、常に下杼口62から上杼口64へ、かつ上杼口64から下杼口62へと交替する経糸2によって開閉する。杼口60が開かれると、緯糸3が経方向KRに対して直交して延びる緯方向SRで杼口60を通って飛走され(
図2参照)、次いで、杼口60が、杼口形成装置22により閉じられ、筬32が製品67の結合点66に打ち付けられる。筬32は、ここではスレー36上に配置されており、このスレー36は、通常の製織運転中に第2の駆動装置30により周期的に結合点66に向かって、かつ結合点66から離れる方向に旋回させられる。
【0035】
第1の駆動装置20および第2の駆動装置30は両方、対応する信号線路51,52を介して制御装置50によって駆動制御される。特に好適には、両駆動装置20,30は、制御装置50が互いに別個に駆動制御することができる個別駆動装置として構成されている。通常の製織運転では、両駆動装置20,30は、互いに同期して運転するように駆動制御され、これによって、1回の製織サイクルに必要とされる、杼口形成と筬打ちとの繰り返される正確な運動シーケンスを保証することができる。
【0036】
図2の正面図からは、杼口60への緯糸挿入の工程が明らかである。挿入側8には、少なくとも1つのメイン噴出ノズル6が配置されており、このメイン噴出ノズル6には、対応する緯糸貯蔵部(図示せず)から緯糸材料が供給される。ここで、1つまたは複数のメイン噴出ノズル6の種々異なる配置構成および配置が存在することに言及しておく。したがって、1つまたは複数のメイン噴出ノズル6がスレー36上に配置されていて、このスレー36と一緒に旋回させられることが可能である。また、1つまたは2つ(以上)のメイン噴出ノズルがスレー上に配置されている変化形が存在する一方で、1つまたは2つ(以上)の定置のメイン噴出ノズルが設けられていて、これらのメイン噴出ノズルがスレーと一緒に旋回させられない変化形も存在する。本実施形態では、少なくとも1つの、ここではスレー36上に配置され、かつこのスレー36と一緒に旋回させられるメイン噴出ノズル6を起点とし、このメイン噴出ノズル6は、
図2によれば結合部材7を介してスレー36に結合されている。
【0037】
第2の駆動装置30によって駆動されるスレー36上には、筬32が配置されており、ここでは単に外側で、筬32の幾つかの筬羽33がそれぞれ図示されている。さらに、スレー36上には、緯方向SRで離間された複数の継ぎノズル40がそれぞれ1つのホルダ38上に配置されており、継ぎノズル40の1つまたは複数の噴出開口42は、緯方向SRに延びる通路34内に向けられており、この通路34は、筬羽33に設けられた湾入部によって形成されている(これに関しては、
図3~
図5を参照)。少なくとも1つのメイン噴出ノズル6は、緯糸3を挿入側8で杼口60内に挿入し、次いで、緯糸3は、継ぎノズル40により通路34内で杼口60を通って搬送され、排出側9に配置された吸込装置45によって吸い込まれる。次いで、杼口60が、杼口形成装置22により閉じられ、挿入された緯糸3は筬32により結合点66に打ち付けられ、次いで、挿入側8に設けられた切断装置68により切断される。
【0038】
排出側9において、本実施形態では光送信機と光受信機とから成る糸監視装置48が、各緯糸3のエラーのない挿入を検査する。糸監視装置48は、緯糸3がエラーを伴って挿入され、かつ糸監視装置48に達していない場合に、単に1つのエラー信号を出力する。このシナリオは緯切れとも呼ばれる。本発明は、自動的に緯切れを解消するための改善された方法および改善された装置に関する。糸監視装置48の1つの上述のエラー信号は、糸監視装置48に接続された制御装置50に、まず、エアジェット織機1の通常の製織運転を停止させる。次いで、本発明によれば、第1の駆動装置20と第2の駆動装置30との間の同期が、制御装置50によって解消される。制御装置50は、今、筬32が結合点66から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置をとるように、第2の駆動装置30を駆動制御する(
図3を参照)。しかし、その前に筬32は、機械停止後に運動している部材を即座に停止させることが不可能であることに基づいて、エラーを伴って挿入された緯糸3を依然として結合点66の方向に押している。少なくとも1つのメイン噴出ノズル6が、慣用のように、スレー36上に配置されていて、スレー36と一緒に旋回させられた場合、第1の旋回位置への筬32の旋回により、エラーを伴って挿入された緯糸3を、少なくともメイン噴出ノズル6の領域において、結合点66から解離させることができる。
【0039】
さらに、本発明によれば、制御装置50は、杼口形成装置22が杼口60を第1の開口位置に移行させるように、第1の駆動装置20を駆動制御し、ここで、この第1の開口位置の開口角αは、結合点66を起点として下杼口62と上杼口64との間で測定した場合に、連続的な製織運転中に達成される開口位置の最大開口角α’よりも小さい(同様に
図3を参照)。しかし、いずれの場合も、杼口形成装置22によって第1の開口位置にもたらされた杼口60と協働して、筬32を第1の旋回位置へ移行させることによって、エラーを伴って挿入された緯糸3を最終的に杼口60から除去することができる可能性が開かれる。次いで、第1の開口角αを有する杼口のこの第1の開口位置において、図面に示されたエアジェット織機1では、原則として公知の、エラーを伴って挿入された緯糸を吹き出すステップが実施される。「吹き出す」という用語は、挿入側8の緯糸貯蔵部にまだ結合している緯糸3が、少なくとも1つのメイン噴出ノズル6および継ぎノズル40(かつ場合によっては1つまたは複数の予備ノズル)の作動によって、排出側9の方向に搬送され、かつ排出側で吸込装置45によって伸ばされることであると理解される。緯糸端部が吸込装置45に到達し得るようにするために、緯糸の一部が緯糸貯蔵部から解放される。上述の伸ばされた位置では、エラーを伴って挿入された緯糸3が、挿入側8の切断装置68により切断され、最終的に除去され得る。このことは、有利には、排出側9の吸込装置45を用いた吸い込みにより行われる。
【0040】
しかし、上述の吹き出しとは別の変化形も考えられ、例えば、エラーを伴って挿入された緯糸3を、挿入側8の引張装置を用いて杼口60から機械的に取り除くことも考えられる(この変化形は図示されていない)。
【0041】
全ての変化形において、エラーを伴って挿入された緯糸3は、最終的に切断装置68により切断され、最後に除去される。
【0042】
図3に戻ると、
図3から判るように、下杼口62と上杼口64とにより形成された杼口60は、その第1の開口位置において、ここでは、約10°の開口角αをとっており、ここで、好適には、開口角αは7°~12°である。これに対して、下杼口62’と上杼口64’との間の開口角α’(
図3を参照)は、通常の製織運転中の杼口60の最大の開口位置において30°超である。
【0043】
小さな開口角αは、特に、綜絖23により変位された経糸2が、少なくともエラーを伴って挿入された緯糸3を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に除去する段階中に、極僅かにしか延伸されないという利点を提供する。さらに
図3から判るように、継ぎノズル40は、杼口60の第1の開口位置では、下杼口62を通って杼口60内に僅かにしか突出していない。これにより、エラーを伴って挿入された緯糸3は、この緯糸3が排出側9に向かって伸ばされるかまたは挿入側8において引き出されるかに拘わらず、継ぎノズル40においてほとんど捕捉されず、これにより、自動的な緯切れの解消時により大きな成功率を達成することができる。
【0044】
図3には、各継ぎノズル40の自由端に配置されている、ここでは個別に存在しているものとして図示されている噴出開口42の下縁部が、下杼口62を通って僅かに、好適には6mm以下しか突出していないことも示唆されている。これにより、エラーを伴って挿入された緯糸3を吹き出すための機能性は、依然として与えられているが、しかし排出側9または挿入側8への経路における緯糸3の運動自由度は最小限しか阻止されていない。
【0045】
図4では、筬32が、制御装置50による第2の駆動装置30の駆動制御により、結合点66の近傍にある第2の旋回位置に旋回させられており、これにより、次いで、エラーを伴って挿入された緯糸3の切断を行うことができる。両駆動装置20,30間の同期が解消されていることに基づいて、杼口は上述の第1の開口位置に留まることができ、これにより経糸2は引き続き、極僅かにしか延伸されない。
【0046】
最後に
図5では、筬32が、第3の旋回位置に移行させられており、この第3の旋回位置では、筬32は、第1の旋回位置と第2の旋回位置との間に位置しており、これによって筬32は、第2の旋回位置を起点として、比較的小さな旋回距離だけ進められればよい。これに対して杼口60は引き続き開口角αを有する上述の有利な第1の開口位置に留まることができる。筬32および杼口60のこれらの位置では、好適にはエラーを伴って挿入された、そのうちに切断された緯糸3が、好適には吸込装置45を用いた吸出しにより除去される。吸い込み時の切断された緯糸3が引っかかるリスクは、この第3の旋回位置によってさらに最小限にされる。なぜならば、この第3の旋回位置では継ぎノズル40は、第1の旋回位置に比べてさらに僅かしか下杼口62内に進入していないからである。さらに、上述の第3の旋回位置への筬32の移行は、緯切れ解消の自動的なフローにおける時間の節約と、織機の短い停止時間とにつながる。
【0047】
エラーを伴って挿入された、切断された緯糸3のこの除去の開始後に、検査ステップが続いてよく、この検査ステップでは、上述の緯糸3が実際に最終的に除去されたか否かが検査される。このためには、杼口60が、比較的小さな開口角を有する、前もって接近させられた開口位置に留まる一方で、筬32は、結合点66の近傍に運動させられる(
図4による杼口60および筬32の位置と比較可能)。したがって、糸監視装置48が依然として緯糸3の存在を記録し、対応する信号を出力すると(つまり、ここでは緯糸の存在が報知される)、このことは、以前にエラーを伴って挿入された緯糸3が杼口60から完全に除去されていないことを意味している。この場合、この緯糸3は、次いで、杼口60が開かれた場合に、好適には手動で除去される。
【0048】
第1の駆動装置20および第2の駆動装置30が再び制御装置50側での駆動制御によって、同期された運転において作動する、エアジェット織機1の新たな始動が準備されるまでの間、杼口60は、好適にはまだ開口角αを有する第1の開口位置にある。これに対して筬32は、制御装置50によって駆動制御される第2の駆動装置30を用いて、有利には、
図5に記載された第3の旋回位置に類似の位置へと走行させられるか、もしくはエラーを伴って挿入された緯糸3の除去後にこの第3の旋回位置に留まる。このことは、既に上述した、自動的な緯切れ解消時の時間節約の効果、これに関連する停止時間の短縮を伴う。したがって、杼口60に関して、制御装置50は、好適には、少なくとも1つの糸監視装置48のエラー信号の発生時に第1の駆動装置20を駆動制御して、杼口60が、第1の開口位置への移行後に、連続的な製織運転の新たな開始に至るまでのこの第1の開口位置に留まることができるように構成されている。次いで、ようやく好適には筬32および/または杼口形成装置22の綜絖23が、連続的な製織運転およびこの製織運転に伴う杼口形成装置22と筬32との同期にとって必要な位置にもたらされ、次いで、製織運転が進行され得る。
【0049】
減じられた開口角を有する第1の開口位置における前述した長期の滞在は、経糸2が緯糸3の除去の工程全体にわたって極僅かにしか伸長されないという利点を有している。杼口の比較的小さく、好適には同様の開口角に基づく本発明の別の利点は、幅保持領域における小さな歪みと、均一な結合点とである。一方では杼口の開口角と、他方では開かれた杼口に関する筬の位置との、互いに独立した自由な調節可能性により、自動的な欠陥解消時の比較的高い成功率を達成することができる。
【0050】
本発明は、図示されかつ記載された実施例に制限されるものではない。
【0051】
したがって杼口60の第1の開口位置が、機械停止直後に接近される必要はなく、つまり、予備的に1つまたは複数の中間位置も可能である。また、エラーを伴って挿入された緯糸3を吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除いた後に、杼口60を、1つの、または-この場合には相前後して-複数の別の開口位置に走行させることも可能であり、この複数の開口位置は、好適には同様に30°未満の比較的小さな開口角を有している。別の糸監視装置が、杼口60に関して別の位置に配置可能でもある。さらに、糸監視装置48および/または別の糸監視装置は、光学式の検出とは異なる機能原理に基づいていてよい。
【符号の説明】
【0052】
1 エアジェット織機
2 経糸
3 緯糸
6 メイン噴出ノズル
7 結合部材
8 挿入側
9 排出側
20 第1の駆動装置
22 杼口形成装置
23 綜絖
30 第2の駆動装置
32 筬
33 筬羽
34 通路
36 スレー
38 ホルダ
40 継ぎノズル
42 噴出開口
45 吸込装置
48 糸監視装置
50 制御装置
51 信号線路
52 信号線路
60 杼口
62,62’ 下杼口
64,64’ 上杼口
66 結合点
67 製品
68 切断装置
SR 緯方向
KR 経方向
α 開口角
α’ 開口角(従来技術)
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアジェット織機(1)においてエラーを伴って挿入された緯糸(3)を除去する方法であって、前記エアジェット織機(1)が緯方向(SR)において、少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)と、それぞれ1つまたは複数の噴出開口(42)を有しかつスレー(36)に沿って配置された複数の継ぎノズル(40)と、を有し、第1の駆動装置(20)が、経糸(2)により画定される杼口(60)を開閉する杼口形成装置(22)を駆動し、前記杼口(60)が下杼口(62)および上杼口(64)により形成され、前記少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)および前記継ぎノズル(40)が前記杼口(60)を通して各緯糸(3)を搬送し、かつ第2の駆動装置(30)が、前記スレー(36)を、該スレー(36)に配置された筬(32)と一緒に駆動し、これにより前記筬(32)を周期的に製品(67)の結合点(66)に打ち付け、前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とが通常の製織運転において互いに同期されて運転されるように、制御装置(50)が、前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)を駆動制御し、
前記方法が、
エラーを伴って前記杼口(60)に挿入された緯糸(3)を少なくとも1つの糸監視装置(48)により検出し、該糸監視装置(48)が、対応するエラー信号を生成し、該エラー信号を前記制御装置(50)に伝送する、ステップと、
次いで、前記エラー信号の受信後に前記制御装置(50)によって前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)との間の同期を解消する、ステップと、
次いで、前記筬(32)が、前記結合点(66)から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置をとるように、前記制御装置(50)によって前記第2の駆動装置(30)を駆動制御する、ステップと、
ならびに、
前記杼口形成装置(22)が
前記下杼口を上昇させかつ前記上杼口を降下させることによって前記杼口(60)を第1の開口位置へと移行させるように、前記制御装置(50)によって前記第1の駆動装置(20)を駆動制御する、ステップであって、前記第1の開口位置の、前記結合点(66)を起点として前記下杼口(62)および前記上杼口(64)により形成される開口角(α)が、前記杼口(60)の、連続的な前記製織運転中に達成される最大の開口位置の開口角(α’)よりも小さい、ステップと、
次いで、前記杼口(60)がその都度前記第1の開口位置にある場合に、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を、前記緯糸(3)の挿入側(8)または排出側(9)で吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を前記杼口(60)から機械的に取り除く、ステップと、
次いで、前記挿入側(8)で、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断する、ステップと、
次いで、前記エラーを伴って挿入された、切断された緯糸(3)を除去する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記杼口(60)が、前記第1の開口位置への移行後に、前記吹き出し、かつ/または吸い込み、かつ/または機械的に取り除くステップ中に前記第1の開口位置に留まるだけではなく、以下のステップのうちの少なくとも1つのステップ中前記第1の開口位置に留まるように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項1記載の方法。
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップ中、
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップおよび除去するステップ中、
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップ中および除去するステップ中ならびに好適には前記糸監視装置(48)により実施される、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去が成功したかを検査する検査ステップ中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断するステップおよび除去するステップ中、任意の検査ステップ中ならびに前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始に至るまで
【請求項3】
前記制御装置(50)は、前記筬(32)を、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断のために前記結合点(66)の近傍にある第2の旋回位置へともたらし、かつ/または前記筬(32)を、前記杼口(60)からの前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去のために、かつ/または前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始のために、前記第1の旋回位置と、
前記結合点(66)の近傍にある1つの第2の旋回位置と、の間に位置する第3の旋回位置へともたらすように、前記第2の駆動装置(30)を駆動制御することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸と前記上杼口(64)の前記経糸とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において30°未満、好適には15°未満、特に好適には12°未満の開口角を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸と前記上杼口(64)の前記経糸とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において4°より大きく、好適には6°より大きく、特に好適には7°より大きい開口角を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記継ぎノズル(40)が、該継ぎノズル(40)の噴出領域の下縁部から測定して、前記杼口(60)の前記第1の開口位置において、前記下杼口(62)の前記経糸の平面を通って6mm以下だけ前記杼口(60)内に突出するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御することを特徴とする、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
エラーを伴って挿入された緯糸(3)を除去する装置を備えたエアジェット織機(1)であって、
少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)、およびそれぞれ1つまたは複数の噴出開口(42)を有しかつスレー(36)に沿って配置された複数の継ぎノズル(40)であって、少なくとも前記少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)と前記継ぎノズル(40)とが、経糸(2)により画定された杼口(60)を通して各緯糸(3)を搬送し、前記杼口(60)が、下杼口(62)および上杼口(64)により形成される、メイン噴出ノズル(6)および継ぎノズル(40)と、
前記杼口(60)を開閉する杼口形成装置(22)を駆動する第1の駆動装置(20)と、
前記スレー(36)に配置された筬(32)を結合点(66)に周期的に打ち付ける第2の駆動装置(30)と、
エラーを伴って前記杼口(60)内に挿入された緯糸(3)を検出し、対応するエラー信号を生成する少なくとも1つの糸監視装置(48)と、
前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とが通常の製織運転において互いに同期して運転されるように前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とを駆動制御し、かつ前記少なくとも1つの糸監視装置(48)からの1つの前記エラー信号を受信するように構成されている制御装置(50)であって、少なくとも前記少なくとも1つのメイン噴出ノズル(6)および前記継ぎノズル(40)および/または吸込装置(45)および/または機械的な取除き装置が、前記杼口(60)内の前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を伸ばし、または前記緯糸(3)の挿入側(8)で前記杼口(60)から搬出する、制御装置(50)と、
前記挿入側(8)で、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)を切断する切断装置(68)と、
前記エラーを伴って挿入された、切断された緯糸(3)を除去する装置と、
を備えた、エアジェット織機(1)において、
前記制御装置(50)は、前記糸監視装置(48)の1つの前記エラー信号の受信時に、
まず、前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)との間の同期を解消し、
次いで、前記筬(32)が、前記結合点(66)から離れる方向に旋回させられた第1の旋回位置をとるように前記第2の駆動装置(30)をさらに駆動制御し、かつ前記第1の駆動装置(20)が、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の吹き出しおよび吸い込みのために、
前記下杼口の上昇および前記上杼口の降下によって前記杼口(60)を第1の開口位置に移行させるように前記第1の駆動装置(20)をさらに駆動制御するように構成されており、前記第1の開口位置の、前記結合点(66)を起点として前記下杼口(62)および前記上杼口(64)により形成される開口角(α)が、前記杼口(60)の、連続的な前記製織運転中に達成される最大の開口位置の開口角(α’)よりも小さいことを特徴とする、エアジェット織機(1)。
【請求項8】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記杼口(60)が、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の前記吹き出しおよび/または吸い込みおよび/または機械的な取除き中に前記第1の開口位置に留まっているだけではなく、
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断および除去中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断および除去中ならびに好適には前記糸監視装置(48)により実施される、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去が成功したかを調べる検査ステップ中、または
-前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断および除去中、任意の検査ステップ中ならびに前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始に至るまで、
前記第1の開口位置に留まるように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項7記載のエアジェット織機(1)。
【請求項9】
前記制御装置(50)は、前記筬(32)が、前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の切断のために前記結合点(66)の近傍にある第2の旋回位置へともたらされ、かつ/または前記筬(32)が、前記杼口(60)からの前記エラーを伴って挿入された緯糸(3)の除去のために、かつ/または前記第1の駆動装置(20)および前記第2の駆動装置(30)の同期された運転における前記製織工程の新たな開始のために、前記第1の旋回位置と、
前記結合点(66)の近傍にある1つの第2の旋回位置と、の間に位置する第3の旋回位置へともたらされるように、前記第2の駆動装置(30)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項7または8記載のエアジェット織機(1)。
【請求項10】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸(2)と前記上杼口(64)の前記経糸(2)とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において30°未満、好適には15°未満、特に好適には12°未満の角度(α)を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項
7記載のエアジェット織機(1)。
【請求項11】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記下杼口(62)の前記経糸(2)と前記上杼口(64)の前記経糸(2)とが前記杼口(60)の前記第1の開口位置において4°より大きく、好適には6°より大きく、特に好適には7°より大きい角度を形成するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項
7記載のエアジェット織機(1)。
【請求項12】
前記制御装置(50)は、前記少なくとも1つの糸監視装置(48)の前記エラー信号が生じた場合に、前記継ぎノズル(40)が、該継ぎノズル(40)の最も下側の噴出開口(42)の下縁部から測定して、前記杼口(60)の前記第1の開口位置において、前記下杼口(62)の前記経糸の平面を通って6mm以下だけ前記杼口(60)内に突出するように、前記第1の駆動装置(20)を駆動制御するように構成されていることを特徴とする、請求項
7記載のエアジェット織機(1)。
【請求項13】
前記第1の駆動装置(20)と前記第2の駆動装置(30)とが、個別駆動装置であることを特徴とする、請求項
7記載のエアジェット織機(1)。
【国際調査報告】