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特表2024-524564繊維状物質ウェブを製造するための方法および機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】繊維状物質ウェブを製造するための方法および機械
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/736 20120101AFI20240628BHJP
【FI】
D04H1/736
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500317
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2022068508
(87)【国際公開番号】W WO2023280806
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021117647.6
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー グローニング
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン ブリュック
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス ベルクストレーム
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヘースル
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047CA12
4L047CB01
4L047EA08
(57)【要約】
本発明は、乾式処理法により形成される繊維状物質ウェブ(1)、特に薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブを製造するための方法であって、繊維状物質ウェブ(1)は、プレス工程中、プレスニップ(9)において、繊維状物質ウェブ(1)に臨むそれぞれ1つの接触面(2.1,3.1)を有する第1の支持要素(2)と第2の支持要素(3)との間で水平にプレスされて固められる、方法に関する。少なくとも第1の支持要素(2)の接触面(2.1)は、繊維状物質ウェブ(1)に少なくとも1つの低圧ゾーン(4)と少なくとも1つの高圧ゾーン(5)とが形成されるように構成されており、この少なくとも1つの高圧ゾーン(5)では、繊維状物質ウェブ(1)に10MPa超、特に15MPa超、好ましくは25MPa超のプレス圧が加えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式処理法により形成される繊維状物質ウェブ(1)、特に薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブを製造するための方法であって、前記繊維状物質ウェブ(1)は、プレス工程中、プレスニップ(9)において、前記繊維状物質ウェブ(1)に臨むそれぞれ1つの接触面(2.1,3.1)を有する第1の支持要素(2)と第2の支持要素(3)との間で水平にプレスされて固められ、少なくとも前記第1の支持要素(2)の前記接触面(2.1)は、前記繊維状物質ウェブ(1)に少なくとも1つの低圧ゾーン(4)と少なくとも1つの高圧ゾーン(5)とが形成されるように構成されており、該少なくとも1つの高圧ゾーン(5)では、前記繊維状物質ウェブ(1)に10MPa超、特に15MPa超、好ましくは25MPa超のプレス圧が加えられる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの高圧ゾーン(5)は、9mmよりは小さくて、特に4mmよりは小さくて、好ましくは0.5mmよりは大きい面積を有して形成されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の高圧ゾーン(5)が形成されており、互いに隣り合った高圧ゾーン(5)の間には、前記繊維状物質ウェブ(1)の繊維の平均の繊維長よりも小さい間隔が形成されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの高圧ゾーン(5)は、隣り合った高圧ゾーン(5)のうちの1つに1つの別の高圧ゾーン(5)によって結合されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの高圧ゾーン(5)は、プレス済みの面(7)に5%~60%、特に5%~30%、好ましくは30%~60%の面積割合を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの低圧ゾーン(4)では、前記繊維状物質ウェブ(1)に10MPa未満、特に8MPa未満、好ましくは0MPa超のプレス圧または0MPa超~3MPaの範囲内のプレス圧が加えられることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
複数の高圧ゾーン(5)は、少なくとも前記第1の支持要素(2)の前記接触面(2.1)に設けられた突起(8)によって形成されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記突起(8)は、0.05mm~1mm、特に0.05mm~0.5mmの高さを有して形成されることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記第1の支持要素(2)は、パーフォレーション孔を有するダイヤフラムとして形成され、前記少なくとも1つの高圧ゾーン(5)は、前記ダイヤフラムの前記接触面(2.1)によって形成され、前記低圧ゾーン(4)は、少なくとも前記第1の支持要素(2)の前記パーフォレーション孔の面積によって形成されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも前記第1の支持要素(2)の前記接触面(2.1)は、複数の高圧ゾーン(5)が形成されるように構成されており、前記高圧ゾーン(5)をパターンで配置することが、審美的な効果を得ることに寄与していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも前記第1の支持要素(2)に向かい合って位置する前記第2の支持要素(3)は、前記繊維状物質ウェブ(1)の、前記第2の支持要素(3)に接触する面を構造化するために、可撓性に形成されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記第1の支持要素(2)および/または前記第2の支持要素(3)はロール(10,11)として形成され、好ましくは、前記第1の支持要素(2)および/または前記第2の支持要素(3)は、前記繊維状物質ウェブ(1)を構造化するために、突起(8)を備えて形成されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記プレス工程前に前記繊維状物質ウェブ(1)に湿潤強度増強剤または別の強度増強剤が添加されることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載の、繊維状物質ウェブ(1)、特に薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブを製造するための方法を実現するための機械であって、乾式処理セクションとプレスニップ(9)とを備え、該プレスニップ(9)において、前記繊維状物質ウェブ(1)は、該繊維状物質ウェブ(1)に臨むそれぞれ1つの接触面(2.1,3.1)を有する第1の支持要素(2)と第2の支持要素(3)との間で水平にプレスされて固められ、少なくとも前記第1の支持要素(2)の前記接触面(2.1)は、前記繊維状物質ウェブ(1)に少なくとも1つの低圧ゾーン(4)と少なくとも1つの高圧ゾーン(5)とが形成されているように構成されており、該少なくとも1つの高圧ゾーン(5)では、前記繊維状物質ウェブ(1)に10MPa超、特に15MPa超、好ましくは25MPa超のプレス圧が加えられている、機械。
【請求項15】
請求項1記載の方法により乾式処理法で形成される繊維状物質ウェブ、例えば薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブであって、少なくとも1つの低圧ゾーン(4)と少なくとも1つの高圧ゾーン(5)とを備え、該少なくとも1つの高圧ゾーン(5)では、前記繊維状物質ウェブ(1)に10MPa超、特に15MPa超、好ましくは25MPa超のプレス圧が加えられている、繊維状物質ウェブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式処理法により形成される繊維状物質ウェブ、特に薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブを製造するための方法に関する。
【0002】
本発明は、また、この方法を実施するための機械ならびに強度が改善された繊維状物質ウェブに関する。
【0003】
湿式処理法で繊維状物質ウェブ、特に薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブを製造する際には、強度増強剤が使用されることが多い。
【0004】
湿式処理法は、繊維状物質ウェブ、特に薄葉紙ウェブおよび不織布ウェブを製造するために最も頻繁に使用される方法である。こういった繊維状物質ウェブの固形物は、製造プロセスの開始時に水中に懸濁され、抄紙機においてフォーミングセクションのヘッドボックスを介して供給され、そこで、下流側に配置されたプレスセクションにおいて機械的に脱水され、次いで、ドライパートにおいて熱により乾燥させられる。水が存在していることによって、いわゆる水素結合が形成され、この水素結合が繊維状物質ウェブの基本強度を生じさせる。この基本強度をさらに高めるために、繊維状物質ウェブに強度増強剤が添加される。
【0005】
繊維状物質ウェブのための製造プロセスをエネルギー消費およびCO2エミッションの削減に関して最適化するという努力を進めるなかで、乾式処理法の使用がますます多くなっている。繊維状物質ウェブを製造するための繊維を準備する際に水を不要にすることによって、湿式処理された紙と比較して、熱による乾燥工程の省略によって、著しいエネルギー量とCO2エミッションとを節減することができる。しかしながら、この方法では、繊維状物質ウェブの強度を水素結合の形成によってもはや十分に達成することができない。なぜならば、水が全く使用されないかまたはほんの僅かしか使用されず、したがって、ウェブを形成するために繊維がほぼ乾式処理されるからである。ここで、薄葉紙ウェブおよび不織布の製造時には、ラテックスポリマーが紙表面に噴霧されるかまたは合成溶融繊維が乾式処理前に繊維に混加される。次いで、溶融繊維を含んだ繊維状物質ウェブが加熱される。溶融繊維が溶融し、繊維状物質ウェブのセルロース繊維に結合される。これによって、繊維状物質ウェブの強度が高められるかまたは生み出される。また、こういった強度増強剤は高価でもあり、こういった紙の製造コストの大きな部分を占めている。さらに、ラテックスポリマーと溶融繊維とは、好ましくない生分解性を有しているかまたは生分解性を有してすらいない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、繊維状物質ウェブ、例えば薄葉紙ウェブおよび不織布ウェブの製造時に廉価なかつ環境に配慮した強度増強を得ると共に公知の方法の欠点を減じるかまたは完全に回避すらするための方法および機械を提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。乾式処理法により形成される繊維状物質ウェブ、特に薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブを製造するための方法であって、繊維状物質ウェブは、プレス工程中、プレスニップにおいて、繊維状物質ウェブに臨むそれぞれ1つの接触面を有する第1の支持要素と第2の支持要素との間で水平にプレスされて固められ、少なくとも第1の支持要素の接触面は、繊維状物質ウェブに少なくとも1つの低圧ゾーンと少なくとも1つの高圧ゾーンとが形成されるように構成されており、この少なくとも1つの高圧ゾーンでは、繊維状物質ウェブに10MPa超、特に15MPa超、特に25MPa超のプレス圧が加えられる、方法が提案される。
【0008】
プレスニップでは、第1の支持要素の接触面によって繊維状物質ウェブに3次元の構造が圧刻される。本発明によって、繊維状物質ウェブの所要の特性、例えば厚さ、吸水能、柔軟性、比体積を損なうことなく、強度、例えば引張り強度が高められる。
【0009】
繊維状物質ウェブを少なくとも1つの高圧ゾーンで局所的に強くプレスすることによって、そこで繊維状物質ウェブが緻密化され、これによって、少なくとも1つの低圧ゾーンと区別される。繊維状物質ウェブのテスト面積のうちの全ての低圧ゾーンと少なくとも1つの高圧ゾーンとの面積合計は、総面積ひいてはテスト面積に相当している。したがって、少なくとも1つの高圧ゾーンの面積割合を簡単に求めることができる。
【0010】
複数のプレスニップまたは複数回のプレス工程、好ましくは2つのプレスニップ、特に3つのプレスニップが相前後して配置されていると、さらに有利な結果になることがある。これによって、有利には、僅かに高い投資コストでパラメータの更なる改善を達成することができる。この場合、各々のプレスニップの間もしくは各々のプレスニップの上流側または下流側に別の構成要素、例えば、強度をさらに高めるために添加される湿潤強度増強剤または別の強度増強剤用の供給装置が配置されていてもよい。さらに、図面の説明に記載したプレスニップの択一的な実施形態は、互いに種々異なる形で組み合わされてもよく、例えば、第1のプレスニップでは、図2または図3に示した構成が可能であり、第2もしくは第3のプレスニップでは、図5に示した構成が可能である。
【0011】
繊維状物質ウェブに対する製造プロセスの新規な開発は、エネルギー消費およびCO2エミッションの削減に関して乾式処理法に向かって進んでいる。この方法では、繊維が、ほぼ乾燥した状態、たいてい空気により乾燥した状態で個別化され、乾式処理装置に供給されて、繊維状物質ウェブが形成される。このように製造された繊維状物質ウェブの必要な強度は、水素結合の形成によってもはや十分に達成することができない。なぜならば、水が全く使用されないかまたはほんの僅かしか使用されず、したがって、ウェブを形成するための繊維が、ほぼ乾燥した状態で処理されるからである。ここで、本発明は、特にプラスの結果になり、まさに薄葉紙ウェブおよび不織布ウェブの製造時にもプラスの結果になる。この種の紙の場合、1つには、まさに乾式処理法で十分な強度が得られなければならず、もう1つには、使用に関する要件、例えば比体積、吸水量、保水能、手触りとも呼ばれる柔らかさが満たされなければならない。したがって、本発明に相応して、強度のほかに、繊維状物質ウェブの使用に関する要件も達成するために、高圧ゾーンで繊維状物質ウェブに10MPa超、特に15MPa超のプレス圧が加えられる。
【0012】
こういった理由から、本発明は、衛生紙の場合にも特に有利に適用することができる。衛生紙には、薄葉紙ウェブおよび不織布ウェブが含まれていてもよい。衛生紙には、十分ではない例示的な以下の群の列挙に基づく製品、つまり、ワイピングクロス、ハンドクロス、ナプキン、テーブルクロス等が含まれていてもよい。
【0013】
本発明は、まさに不織布の製造時にも有利な結果になることがある。なぜならば、不織布が、水素結合を形成しないプラスチック繊維を少なくとも部分的に含んでいることがあるからである。
【0014】
したがって、製造すべき薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブが、10g/m~50g/m、好ましくは12g/m~45g/mの坪量を有して形成されても有利である。
【0015】
したがって、少なくとも1つの高圧ゾーンが、9mmよりは小さくて、特に4mmよりは小さくて、好ましくは0.5mmよりは大きい面積を有して形成されても有利である。これによって、1つには、十分な強度が生じ、もう1つには、使用に関する要件、例えば比体積、吸水量、保水能、「手触り」とも呼ばれる柔らかさが満たされる。
【0016】
有利な構成では、少なくとも1つの高圧ゾーンが、0.5mm~2mmの範囲内の面積を有して形成されることが可能である。
【0017】
少なくとも1つの高圧ゾーンが、プレス済みの面に5%~60%、特に5%~20%、特に5%~30%、好ましくは30%~60%、好ましくは好適には35%~50%の面積割合を有しても有利である。
【0018】
1つの可能な構成では、複数の高圧ゾーンが形成されていてもよい。この事例には、高圧ゾーンの面積の合計が、プレス済みの面に5%~60%、特に5%~30%、好ましくは30%~60%、好ましくは好適には35%~50%の面積割合を有する。
【0019】
実際の事例では、複数の高圧ゾーンが形成されていてもよく、互いに隣り合った高圧ゾーンの間には、繊維状物質ウェブの繊維の平均の繊維長よりも小さい間隔が形成されてもよい。
【0020】
さらに、少なくとも1つの高圧ゾーンを、隣り合った高圧ゾーンにそれぞれ1つの別の高圧ゾーンによって結合することも可能である。これらの別の高圧ゾーンは線形に延在していてもよい。1つの高圧ゾーンから出発して、別の高圧ゾーンは放射状に延在している。これによって、繊維状物質ウェブの強度が高められると同時に比体積が良好となる。
【0021】
複数の高圧ゾーンが形成されている可能な事例では、各々の高圧ゾーンにおいて、繊維状物質ウェブに10MPa超、特に15MPa超、好ましくは25MPa超のプレス圧が加えられる。
【0022】
高圧ゾーンにおけるプレス圧は、特に高い強度のためにまたは薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブが特定の繊維種を含んでいる場合、最大70MPa、好ましくは最大50MPaであってもよい。
【0023】
少なくとも1つの低圧ゾーンでは、繊維状物質ウェブに10MPa未満、特に8MPa未満、好ましくは0MPa超のプレス圧または0MPa超~3MPaの範囲内のプレス圧が加えられてもよい。好ましくは、少なくとも1つの低圧ゾーンはほんの僅かしかプレスされないため、プレス圧は0MPaを多少上回っていて、特に0.1MPa超、好ましくは1MPa超である。有利には、面状の繊維ウェブは、低圧ゾーンでも、特に乾式処理法に基づく繊維状物質ウェブの当初の比体積の50%未満、好ましくは80%未満の値に予め圧縮されるかもしくはプレスされる。あるいは、言い換えると、圧縮もしくはプレスは、処理された繊維状物質ウェブの厚さが、少なくとも1回のプレス工程の直後に、このプレス工程前に乾式処理法で処理された繊維状物質ウェブの厚さの最大50%、好ましくは最大80%となるように実施される。これによって、処理された繊維状物質ウェブの安定性が改善される。このことは、特に繊維状物質ウェブの連続的な製造時に有効である。これによって、繊維状物質ウェブが、発生した空気流れに対して不感となる。
【0024】
乾式処理される繊維状物質ウェブは、通常、この繊維状物質ウェブが、12cm/g超、特に20cm/g超、好ましくは25cm/g超の比体積を有して処理される点で優れている。このことは、1つには、繊維状物質ウェブの体積内での個別繊維および/または繊維束の均一な分配に好適な影響を与え、もう1つには、供給された水の分配の作用および均一性に好適な影響を与える。これによって、最少量の水を使用して均一な強度分布を有する繊維状物質ウェブを得ることができる。あるいは、言い換えると、繊維状物質ウェブの厚さは、プレス工程前には2mm超、特に5mm超、好ましくは10mm超である。
【0025】
有利な構成では、乾式処理法は、少なくとも1回のプレス工程に先だって、繊維状物質ウェブが少なくとも1回のプレス工程前に50%超、特に70%超、好ましくは80%超、特に好ましくは90%超の絶乾率を有するように実施される。通常、乾式処理された繊維状物質ウェブは、極めて高い絶乾率を有している。なぜならば、紙料調成のための水が全く添加されないかまたはほんの僅かしか添加されないからである。代替的な実施形態において、プレス工程前に湿潤強度増強剤または別の強度増強剤、例えば水が添加される場合には、例えばプレス工程での繊維状物質ウェブの加熱によって絶乾率に影響を与えることができる。
【0026】
第1の支持要素および/または第2の支持要素は、少なくとも1つの高圧ゾーンを形成するための突起を備えたまたは備えていない接触面を有するロールとして形成されていてもよい。このロールは、選択的に、好ましくは金属製のまたはコーティングされた表面を有するロールとして形成されていてもよいし、シューロールとして形成されていてもよいしプラスチック製のロールカバーを備えたロールとして形成されていてもよい。好ましくは金属製のまたはコーティングされた表面を有するロールでは、ロール表面がじかに接触面を形成している。好ましくは金属製のまたはコーティングされた表面を有するロールは、プラスチック製のロールカバーを備えたロールと比較して硬質である。シューロールでは、プレススリーブが接触面を形成している。プラスチック製のロールカバーを備えたロールでは、ロールカバーが接触面を形成している。
【0027】
接触面は、突起を備えて形成されていてもよい。
【0028】
例えば、じかに接触面を形成する表面を有するロールとして形成された第1の支持要素と、軟質の表面のプラスチック製のロールカバーを備えたロールとして形成された第2の支持要素との組合せが可能である。この場合、いわゆる「ソフトニップ」のプレスニップが形成される。
【0029】
例えば、第1の支持要素の接触面、好ましくはロールの金属製のまたはコーティングされた表面が、突起を備えて形成されていてもよい。
【0030】
別の代替形態として、プラスチックを含んだロールカバーが、突起を備えて形成されてもよい。この場合、突起を備えたロールカバーが、支持要素の接触面を形成している。
【0031】
ロール表面がじかに接触面を形成するロールでは、加工法、例えば放電加工またはフライス削り加工によって、表面が突起を備えて形成されてもよい。
【0032】
別の代替的な実施形態では、第2の支持要素が、好ましくは金属製のまたはコーティングされた表面と、平滑な表面とを備えたロール、つまり、突起を備えていないロールとして形成されている。
【0033】
別の可能な組合せでは、第1の支持要素が、好ましくは金属製のまたはコーティングされた表面と、突起とを備えたロールとして形成されていて、第2の支持要素が、好ましくは金属製のまたはコーティングされた表面と、平滑な表面とを備えたロールとして形成されている。接触面がじかに第1の支持要素としてのロールの表面により形成されているプレスロールと、接触面がじかに第2の支持要素としてのロールの表面により形成されている対応ロールとのこのような組合せは、「ハードニップ」のプレスニップである。
【0034】
代替的な実施形態では、第1の支持要素および/または第2の支持要素は、ロールとして形成されており、好ましくは、第1の支持要素および/または第2の支持要素は、繊維状物質ウェブを構造化するために、突起を備えて形成されている。
【0035】
第1の支持要素および/または第2の支持要素は、複数の高圧ゾーンを形成するための突起を備えた循環するベルトとして形成されていてもよい。
【0036】
循環するベルトは、接触面に被着された突起を備えたダイヤフラムまたは織成されたベルト、例えばスクリーンとして形成されていてもよい。突起はプラスチックを含んでいてもよく、印刷されていてもよい。
【0037】
循環するベルトは、織成されたベルトとして形成されていてもよい。この場合、突起は織り糸から形成されていてもよい。
【0038】
第1の支持要素および/または第2の支持要素は、透過性に形成されていてもよいし、非透過性に形成されていてもよい。
【0039】
ベルトとして形成された第1の支持要素および/またはベルトとして形成された第2の支持要素によりそれぞれ形成されたループ内には、プレスニップを形成するためのそれぞれ1つのロールが配置されていてもよい。プレスニップは、プレスロールと対応ロールとによって形成されていてもよい。プレスロールは、シュープレスロールとして、延長されたプレスニップを有して形成されていてもよい。プレスニップはカレンダロールによって形成されてもよい。
【0040】
1つの可能な構成では、少なくとも1つの高圧ゾーンが、少なくとも第1の支持要素の接触面に設けられた突起によって形成されてもよい。この突起の横断面形状は、円形、三角形、四角形、縦長であってもよく、これによって、高圧ゾーンの形状が相応に円形、三角形、四角形、縦長であってもよい。高圧ゾーンの形状はそれぞれ異なっていてもよい。
【0041】
好ましくは、突起は、0.05mm~1mm、特に0.05mm~0.5mmの高さを有して形成されていてもよい。これによって、少なくとも1つの高圧ゾーンでのプレスと少なくとも1つの低圧ゾーンでのプレスとを互いに相対的に調整することができる。
【0042】
1つの可能な改良形態では、少なくとも第1の支持要素が、パーフォレーション孔を有するダイヤフラムとして形成されてもよく、少なくとも1つの高圧ゾーンが、ダイヤフラムの接触面によって形成されてもよく、低圧ゾーンが、少なくとも第1の支持要素のパーフォレーション孔の面積によって形成されてもよい。つまり、この実施形態は、各々の開口がそれぞれ1つの低圧ゾーンを形成し、これらの低圧ゾーンの間にただ1つの高圧ゾーンが形成される点で異なっている。
【0043】
強度増強を改善するためには、少なくとも1つの高圧ゾーンが、支持要素を介して50℃~250℃、特に好適には110℃~160℃の温度、好ましくはロールの表面温度に加熱されてもよい。
【0044】
1つの可能な改良形態では、少なくとも第1の支持要素の接触面は、複数の高圧ゾーンが形成されるように構成されていてもよく、高圧ゾーンをパターンで配置することが、審美的な効果を得ることに寄与している。
【0045】
別の可能な構成では、少なくとも第1の支持要素の接触面は、複数の高圧ゾーンが形成されるように構成されていてもよく、高圧ゾーンの配置は、繊維状物質ウェブの平面内での引張り強度が方向依存性であるように選択されている。例えば、引張り強度は特定の方向において、この方向に単位長さあたり別の方向よりも多くの高圧ゾーンを設けることによって高めることができる。つまり、特定の方向において、より高い高圧ゾーン密度が存在している。
【0046】
高圧ゾーン密度および/または高圧ゾーン形状を適合させることによって、紙特性、例えば強度特性を方向配向して形成することも可能となる。
【0047】
1つの可能な構成では、少なくとも第1の支持要素に向かい合って位置する第2の支持要素が、繊維状物質ウェブの、第2の支持要素に接触する面を構造化するために、可撓性に形成されてもよい。これによって、繊維状物質ウェブの裏面も同じく構造化され、これによって、使用に関する要件、例えば比体積、吸水量、保水能、手触りとも呼ばれる柔らかさを満たすことがアシストされて強化される。
【0048】
多くの場合、強度をさらに高めるために、プレス工程前かつ/またはプレス工程後に繊維状物質ウェブに湿潤強度増強剤または別の強度増強剤が添加されると有利であることがある。
【0049】
さらに、繊維状物質ウェブがプレス工程後にしわ付けされることが可能である。
【0050】
乾燥処理された繊維状物質ウェブでは、処理されたまだ緩い繊維マットが空気流れに対して抵抗性を有するようにするために、繊維状物質ウェブが、プレスニップ内への進入前に僅かに面状にプリプレスされても有利である。
【0051】
また、課題は、請求項1記載の、繊維状物質ウェブ、特に薄葉紙ウェブまたは不織布ウェブを製造するための方法を実現するための機械によっても解決される。この機械は、乾式処理セクションとプレスニップとを備え、このプレスニップにおいて、繊維状物質ウェブは、この繊維状物質ウェブに臨むそれぞれ1つの接触面を有する第1の支持要素と第2の支持要素との間で水平にプレスされて固められ、少なくとも第1の支持要素の接触面は、繊維状物質ウェブに少なくとも1つの低圧ゾーンと少なくとも1つの高圧ゾーンとが形成されているように構成されており、この少なくとも1つの高圧ゾーンでは、繊維状物質ウェブに10MPa超、特に15MPa超、好ましくは25MPa超のプレス圧が加えられている。
【0052】
また、本発明は、請求項1記載の方法により乾式処理法で形成される繊維状物質ウェブであって、少なくとも1つの低圧ゾーンと少なくとも1つの高圧ゾーンとを備え、この少なくとも1つの高圧ゾーンでは、繊維状物質ウェブに10MPa超、特に15MPa超、好ましくは25MPa超のプレス圧が加えられている、繊維状物質ウェブにも関する。
【0053】
本発明は、請求項の明示的な引用に基づく特徴の組合せによって提供されていないような実施形態にも明確に及んでいる。したがって、本発明の開示した特徴は、技術的に有意である限り、互いに任意に組み合わされていてもよい。
【0054】
本発明の更なる特徴および利点は、図面に関連した以下の好適な実施例の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明に係る繊維状物質ウェブの可能な実施形態を簡略化して概略的に示す図である。
図2】本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップの可能な実施形態の縮尺通りでない簡略図であり、両方の支持要素が、ベルトとしてまたはロールカバーを備えたロールとして形成されている。
図3】本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップの可能な実施形態の縮尺通りでない簡略図であり、一方の支持要素が、じかに接触面を形成する表面を有するロールとして平滑に形成されている。
図4】本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップの可能な実施形態の縮尺通りでない簡略図であり、一方の支持要素が、じかに接触面を形成する表面を有するロールとして突起を備えて形成されている。
図5】本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップの可能な実施形態の縮尺通りでない簡略図であり、両方の支持要素が、じかに接触面を形成する表面を有するロールとして形成されている。
【0056】
図1には、本発明に係る繊維状物質ウェブの可能な実施形態が、切抜きとして簡略化して概略的に平面図で示してある。この例では、繊維状物質ウェブ1は多数の高圧ゾーン5を有している。これらの高圧ゾーン5は、より高い強度を生じさせるために、製造プロセス中に強くプレスされている。高圧ゾーン5における局所的なプレス圧は10MPa超であった。高圧ゾーン5同士の間の領域はほんの僅かしかプレスされておらず、単一の低圧ゾーン4を形成している。この低圧ゾーン4でのプレスは0MPa超~1MPaの範囲内にあった。高圧ゾーン5は台形に形成されている。しかしながら、高圧ゾーン5は任意の形状を有していてもよく、例えば円形、三角形、四角形等であってもよい。プレス済みの面7内の高圧ゾーン5は均一に分配されて配置されている。しかしながら、高圧ゾーン5は、繊維状物質ウェブ1の外観の見栄えをより良くするために、パターンとして配置されていてもよい。このことは、薄葉紙ウェブおよび不織布ウェブの場合に有利である。互いに隣り合った高圧ゾーン5の間隔6は、好ましくは、繊維状物質ウェブ1の平均的な繊維長よりも小さい。個々の高圧ゾーン5の寸法は、それぞれ9mmよりも小さく、プレス済みの面において5%~50%の面積割合を有している。個々の高圧ゾーン5の寸法は、それぞれ同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0057】
図2には、本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップ9の可能な実施形態が、縮尺通りでない簡略図で示してある。繊維状物質ウェブ1は、第1の支持要素2と第2の支持要素3との間で水平にプレスニップ9を通って走行方向12に案内される。第1の支持要素2と第2の支持要素3とは、循環するベルトによって形成される。プレスニップ9には、第1の支持要素のループ内に配置されたプレスロール10と、第2の支持要素のループ内に配置された対応ロール11とが含まれている。第1の支持要素2は、繊維状物質ウェブ1に臨む接触面に、高圧ゾーン5を形成するための突起8を有している。繊維状物質ウェブ1は、プレスニップ9を通走する際に突起8によって局所的に強くプレスされ、ひいては、固められる。プレスニップ9の下流側では、突起が再び繊維状物質ウェブ1から離される。これによって、高圧ゾーン5と、この例では単一の低圧ゾーン4とを備えた構造化された3次元の表面構造が形成される。
【0058】
図3には、本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップ9の代替的な可能な実施形態が、縮尺通りでない簡略図で示してある。繊維状物質ウェブ1は、第1の支持要素2と第2の支持要素3との間で水平にプレスニップ9を通って走行方向12に案内される。プレスニップ9には、プレスロール10と対応ロール11とが含まれている。プレスロール10は第1の支持要素のループ内に配置されていてもよい。第1の支持要素2は、循環するベルトまたはプレスロール10のロールカバーによって形成される。対応ロール11は、好ましくは、金属製のまたはコーティングされた平滑な表面によって第2の支持要素3と第2の接触面3.1とを形成している。第1の支持要素2は、繊維状物質ウェブ1に臨む接触面に、高圧ゾーン5を形成するための突起8を有している。繊維状物質ウェブ1は、プレスニップ9を通走する際に突起8によって局所的に強くプレスされ、ひいては、固められる。プレスニップ9の下流側では、突起8が再び繊維状物質ウェブ1から離される。これによって、高圧ゾーン5と、この例では単一の低圧ゾーン4とを備えた構造化された3次元の表面構造が形成される。
【0059】
図4には、本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップ9の代替的な可能な実施形態が、縮尺通りでない簡略図で示してある。繊維状物質ウェブ1は、第1の支持要素2と第2の支持要素3との間で水平にプレスニップ9を通って走行方向12に案内される。プレスニップ9には、プレスロール10と対応ロール11とが含まれている。この対応ロール11は第2の支持要素のループ内に配置されていてもよい。第2の支持要素3は、循環するベルトまたは対応ロール11のロールカバーによって形成される。プレスロール10は、好ましくは、突起を備えた金属製のまたはコーティングされた表面によって第1の支持要素2と第1の接触面2.1とを形成している。第1の支持要素2またはプレスロール10は、繊維状物質ウェブ1に臨む接触面2.1に、高圧ゾーン5を形成するための突起8を有している。繊維状物質ウェブ1は、プレスニップ9を通走する際に突起8によって局所的に強くプレスされ、ひいては、固められる。プレスニップ9の下流側では、突起8が再び繊維状物質ウェブ1から離される。これによって、高圧ゾーン5と、この例では単一の低圧ゾーン4とを備えた構造化された3次元の表面構造が形成される。
【0060】
図5には、本発明に係る機械のプレスセクションのプレスニップ9の代替的な可能な実施形態が、縮尺通りでない簡略図で示してある。繊維状物質ウェブ1は、第1の支持要素2と第2の支持要素3との間で水平にプレスニップ9を通って走行方向12に案内される。プレスニップ9には、プレスロール10と対応ロール11とが含まれている。この対応ロール11は、好ましくは、金属製のまたはコーティングされた平滑な表面によって第2の支持要素3と第1の接触面3.1とを形成している。プレスロール10は、好ましくは、突起を備えた金属製のまたはコーティングされた表面によって第1の支持要素2と第1の接触面2.1とを形成している。第1の支持要素2またはプレスロール10は、繊維状物質ウェブ1に臨む接触面2.1に、高圧ゾーン5を形成するための突起8を有している。繊維状物質ウェブ1は、プレスニップ9を通走する際に突起8によって局所的に強くプレスされ、ひいては、固められる。プレスニップ9の下流側では、突起8が再び繊維状物質ウェブ1から離される。これによって、高圧ゾーン5と、この例では単独の低圧ゾーン4とを備えた構造化された3次元の表面構造が形成される。
【0061】
図中の実施例のそれぞれ対応する要素には、同じ符号が付してある。個々の図中のこのような要素の機能は、別段記載がない限り、互いに対応していて、矛盾を生じさせない。したがって、繰返しの説明については省略することにする。
【符号の説明】
【0062】
1 繊維状物質ウェブ、薄葉紙ウェブ、不織布ウェブ
2 第1の支持要素
2.1 接触面
3 第2の支持要素
3.1 接触面
4 低圧ゾーン
5 高圧ゾーン
6 高圧ゾーン同士の間隔
7 プレス済みの面
8 突起
9 プレスニップ
10 プレスロール
11 対応ロール
12 走行方向
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】