(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤を含む癌の予防または治療のための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240628BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240628BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/506
A61K31/519
A61K31/55
A61K31/137
A61P11/00
A61P15/00
A61P1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500343
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 KR2022009462
(87)【国際公開番号】W WO2023282544
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088445
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514039912
【氏名又は名称】ナショナル キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ヨン ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ゴウ,スン ホ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
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4C084ZA662
4C084ZA811
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4C084ZC75
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4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA81
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明の目的は、CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤(tricyclic antidepressants)を有効成分として含む癌の改善、予防、または治療のための組成物を提供することである。
本発明によるCDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤を含む組成物を併用投与する場合、抗がん相乗効果を示し、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少する。また、本発明による組成物投与によりCDK4/6阻害剤の副作用を緩和する効果も示すので、CDK4/6阻害剤及び三環系抗うつ剤を有効成分として含む組成物は、癌の予防または治療剤として有用に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤(tricyclic antidepressants)を有効成分として含む癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項2】
前記CDK4/6阻害剤は、アベマシクリブ(abemaciclib)、リボシクリブ(ribociclib)、またはパルボシクリブ(palbociclib)である、
請求項1に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記三環系抗うつ剤は、7-OH-アモキサピン(7-OH-Amoxapine)、アメゼピン(Amezepine)、アミネプチン(Amineptine)、アミトリプチリン(Amitriptyline)、アミトリプチリンオキシド(Amitriptylinoxide)、アモキサピン(Amoxapine)、アプタザピン(Aptazapine)、アゼピンドール(Azepindole)、アジプラミン(Azipramine)、バテラピン(Batelapine)、ブトリプチリン(Butriptyline)、シアノプラミン(Cianopramine)、シクラジンドール(Ciclazindol)、シクロプラミン(Ciclopramine)、シドキセピン(Cidoxepin)、クロミプラミン(Clomipramine)、コトリプチリン(Cotriptyline)、シアノドチエピン(Cyanodothiepin)、デメキシプチリン(Demexiptiline)、デプラミン(Depramine(バリプラミン(balipramine)))、デシプラミン(Desipramine(デスメチルイミプラミン(desmethylimipramine)))、デスメチルクロミプラミン(Desmethylclomipramine)、デスメチルトリミプラミン(Desmethyltrimipramine)、ジベンゼピン(Dibenzepin)、ジメタクリン(Dimetacrine)、ドスレピン(Dosulepin(ドチエピン(dothiepin)))、ドキセピン(Doxepin)、エンプラゼピン(Enprazepine)、エスミルタザピン(Esmirtazapine)、ファントリドン(Fantridone)、フルオトラセン(Fluotracen)、ヘプジジン(Hepzidine)、ホモピプラモール(Homopipramol)、イミプラミン(Imipramine)、イミプラミンオキシド(Imipraminoxide)、イントリプチリン(Intriptyline)、イプリンドール(Iprindole)、ケチプラミン(Ketipramine)、リトラセン(Litracen)、ロフェプラミン(Lofepramine)、ロシンドール(Losindole)、ロキサピン(Loxapine)、マプロチリン(Maprotiline)、マリプチリン(Mariptiline)、マジンドール(Mazindol)、メリトラセン(Melitracen)、メタプラミン(Metapramine)、メゼピン(Mezepine)、ミアンセリン(Mianserin)、ミルタザピン(Mirtazapine)、モノメタリン(Monometarine)、ナラノール(Naranol)、ニトロキサゼピン(Nitroxazepine)、ノルブトリプチリン(Norbutriptyline)、ノルドキセピン(Nordoxepin)、ノルチアデン(Northiaden(ノルドスレピン(nordosulepin)))、ノルトリプチリン(Nortriptyline(ノルアミトリプチリン(noramitriptiline) ))、ノキシプチリン(Noxiptiline)、オクトリプチリン(Octriptyline)、オピプラモール(Opipramol)、オキサプロチリン(Oxaprotiline)、ピポフェジン(Pipofezine)、ピランダミン(Pirandamine)、プロメタジン(Promethazine)、プロピゼピン(Propizepine)、プロトリプチリン(Protriptyline)、キヌプラミン(Quinupramine)、セチプチリン(Setiptiline(テキプチリン(teciptiline)))、スピロキセピン(Spiroxepin)、タンダミン(Tandamine)、タンプラミン(Tampramine)、チアネプチン(Tianeptine)、チエノプラミン(Tienopramine)、トリミプラミン(Trimipramine)、またはイミプラミン・ブルー(imipramine blue)である、
請求項1に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物は、CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤の併用投与用である、
請求項1に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記薬学的組成物は、CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤が混合された混合剤形態であるか、またはCDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤がそれぞれ製剤化され、同時的または逐次的に投与されるものである、
請求項4に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記癌は、肺がん、膵臓がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肝がん、甲状腺がん、腎臓がん、子宮がん、脳腫瘍、皮膚がん、 黒色腫、悪性骨腫瘍、膀胱がん、または血液がんである、
請求項1に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記癌は、肺がん、大腸がん、または乳がんである、
請求項6に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を追加で含むものである、
請求項1に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤(tricyclic antidepressants)を有効成分として含む癌の改善、予防、または治療のための組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイクリン依存性タンパク質リン酸化酵素(Cyclin-dependent kinase;以下、CDK)は細胞分裂および増殖を調節する酵素であり、細胞周期の進行はサイクリンおよびそれに関連するCDKによって制御される。ほとんどの癌細胞は、CDKが調節されない特性を示し、CDK阻害が様々な癌に対する潜在的な治療法として浮上している。CDK4/6は、サイクリンタンパク質D1をリン酸化して活性を高めることによって、細胞周期中のG1期からS期へと進行する過程を決定する調節を担当する。
【0003】
CDK4/6阻害剤は、CDK4/6-サイクリンD1複合体形成を遮断し、細胞分裂を止める薬物で、パルボシクリブ(palbociclib)、リボシクリブ(ribociclib)、およびアベマシクリブ(abemaciclib)の3種の阻害剤が、HR(+)、HER2(-)、進行性または転移性乳がんでの治療薬として承認された(U.S. Pharm. 2020; 45(5)(Specialty&Oncology suppl):3-8.)。さらに、CDK4/6阻害剤は、乳がんの治療に使用される薬物であるレトロゾール(letrozole)またはフルベストラント(fulvestrant)と共に併用療法として使用する臨床試験が行われている。
【0004】
しかし、CDK4/6阻害剤を使用する際に様々な副作用が発生するが、ほとんどの副作用は1段階または2段階の低リスクの副作用であり、3-4段階の胃腸障害、好中球減少症、白血球減少症などの副作用も頻繁に発生すると報告されている。副作用が発生する場合、CDK4/6阻害剤の使用を中止したり、使用量を減らしたりして副作用を減らす方法をとる。
【0005】
一方、がん患者の場合、治療過程で現れる苦痛によってうつ病の発生頻度が高く現れ、これを解決するために抗うつ剤の処方が頻繁に行われており、処方は様々な濃度範囲で施行されている。抗うつ剤の処方で現れる副作用は、不眠症、体重減少、口腔乾燥症、胸痛などがあるが、CDK4/6阻害剤の副作用とは異なり、血液細胞減少などの危険な副作用は現れないことが知られている(Oncology(Williston Park).33(2):62-8.)。
【0006】
また、がん患者の抗うつ剤使用による生存率を調べた研究によると、抗うつ剤の使用によるがん患者の生存率は悪化しない様相を示しており、特に三環系抗うつ剤(tri-cyclic antidepressant)の場合、肺がん患者グループで生存率が有意に増加する結果を示した(参考文献 Cancer Treat Res Commun. 2017;10:33-39.)。
【発明の詳細な説明】
【0007】
このような背景の下で、本発明者らは、副作用を最小限に抑えながら抗がん効果を最大化できる方策を開発するために鋭意研究努力をした結果、CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤を併用投与する場合、優れた抗がん効果が現れることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【技術的課題】
【0008】
本発明の目的は、CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤(tri-cyclic antidepressant)を有効成分として含む癌の予防または治療のための薬学的組成物を提供することである。
【0009】
本明細書に開示されている発明の技術的思想によって成し遂げようとする技術的課題は、以上で言及した問題点を解決するための課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるだろう。
【技術的解決方法】
【0010】
これを具体的に説明すると以下の通りである。一方、本出願で開示された各々の説明および実施形態は、各々の他の説明および実施形態にも適用することができる。すなわち、本出願で開示された様々な要素のすべての組み合わせが、本出願の範疇に属する。さらに、以下に記載される具体的な叙述によって本出願の範疇が制限されると見られない。
【0011】
前記目的を達成するための一態様として、本発明は、CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤(tri-cyclic antidepressant)を有効成分として含む癌の予防または治療のための薬学的組成物を提供する。
【0012】
本発明の用語「CDK(Cyclin-dependent kinase)」は、サイクリン依存性タンパク質リン酸化酵素を指し、細胞周期(cell cycle)を調節する機能を有するリン酸化酵素で、サイクリンとの結合が活性発現に必須である。CDKファミリーのうち、CDK4およびCDK6は、サイクリンタンパク質D1をリン酸化して活性を高めることによって、細胞周期中にG1期からS期へと進行する過程を決定する調節を担当する。
【0013】
本発明の用語「CDK4/6阻害剤」は、CDK4およびCDK6の両方を阻害する薬物を意味し、CDK4/6は、CDK4およびCDK6の両方を指すように本文書の全般にわたって使用される。CDK4/6阻害剤は、CDK4/6-サイクリンD複合体の形成を遮断し、細胞分裂を止める薬物であれば制限なく使用することができ、具体的には、アベマシクリブ(abemaciclib)、リボシクリブ(ribociclib)、パルボシクリブ(palbociclib)、またはそれらの薬学的に許容可能な塩であり得る。
【0014】
本発明の用語「三環系抗うつ剤」は、精神病治療薬として長い間使用されてきた抗うつ剤の1つであり、抗うつ剤の化学構造上3つの環(ring)がある薬物を指す。神経末端から分泌されるアミン系神経伝達物質の再吸収を妨げ、多くの物質が神経連接部にそのまま残るようにする。具体的には、前記三環系抗うつ剤は、7-OH-アモキサピン(7-OH-Amoxapine)、アメゼピン(Amezepine)、アミネプチン(Amineptine)、アミトリプチリン(Amitriptyline)、アミトリプチリンオキシド(Amitriptylinoxide)、アモキサピン(Amoxapine)、アプタザピン(Aptazapine)、アゼピンドール(Azepindole)、アジプラミン(Azipramine)、バテラピン(Batelapine)、ブトリプチリン(Butriptyline)、シアノプラミン(Cianopramine)、シクラジンドール(Ciclazindol)、シクロプラミン(Ciclopramine)、シドキセピン(Cidoxepin)、クロミプラミン(Clomipramine)、コトリプチリン(Cotriptyline)、シアノドチエピン(Cyanodothiepin)、デメキシプチリン(Demexiptiline)、デプラミン(Depramine(バリプラミン(balipramine)))、デシプラミン(Desipramine(デスメチルイミプラミン(desmethylimipramine)))、デスメチルクロミプラミン(Desmethylclomipramine)、デスメチルトリミプラミン(Desmethyltrimipramine)、ジベンゼピン(Dibenzepin)、ジメタクリン(Dimetacrine)、ドスレピン(Dosulepin(ドチエピン(dothiepin)))、ドキセピン(Doxepin)、エンプラゼピン(Enprazepine)、エスミルタザピン(Esmirtazapine)、ファントリドン(Fantridone)、フルオトラセン(Fluotracen)、ヘプジジン(Hepzidine)、ホモピプラモール(Homopipramol)、イミプラミン(Imipramine)、イミプラミンオキシド(Imipraminoxide)、イントリプチリン(Intriptyline)、イプリンドール(Iprindole)、ケチプラミン(Ketipramine)、リトラセン(Litracen)、ロフェプラミン(Lofepramine)、ロシンドール(Losindole)、ロキサピン(Loxapine)、マプロチリン(Maprotiline)、マリプチリン(Mariptiline)、マジンドール(Mazindol)、メリトラセン(Melitracen)、メタプラミン(Metapramine)、メゼピン(Mezepine)、ミアンセリン(Mianserin)、ミルタザピン(Mirtazapine)、モノメタリン(Monometarine)、ナラノール(Naranol)、ニトロキサゼピン(Nitroxazepine)、ノルブトリプチリン(Norbutriptyline)、ノルドキセピン(Nordoxepin)、ノルチアデン(Northiaden(ノルドスレピン(nordosulepin)))、ノルトリプチリン(Nortriptyline(ノルアミトリプチリン(noramitriptiline)))、ノキシプチリン(Noxiptiline)、オクトリプチリン(Octriptyline)、オピプラモール(Opipramol)、オキサプロチリン(Oxaprotiline)、ピポフェジン(Pipofezine)、ピランダミン(Pirandamine)、プロメタジン(Promethazine)、プロピゼピン(Propizepine)、プロトリプチリン(Protriptyline)、キヌプラミン(Quinupramine)、セチプチリン(Setiptiline(テキプチリン(teciptiline)))、スピロキセピン(Spiroxepin)、タンダミン(Tandamine)、タンプラミン(Tampramine)、チアネプチン(Tianeptine)、チエノプラミン(Tienopramine)、トリミプラミン(Trimipramine)、イミプラミン・ブルー(imipramine blue)、またはそれらの薬学的に許容される塩であり得るが、これらに制限されない。より具体的には、前記三環系抗うつ剤は、アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、イミプラミン、プロメタジン、またはイミプラミン・ブルーであり得る。
【0015】
本発明の用語「有効成分」は、単独で目的である活性を表すか、またはそれ自体は活性のない担体と共に活性を表すことができる成分を意味する。
【0016】
本発明の用語「癌(または腫瘍)」は、原発癌または転移癌を区別せず、すべてを含む。本発明において、前記癌は、固形癌または血液癌であり得る。具体的には、前記癌は、肺がん、膵臓がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肝がん、甲状腺がん、腎臓がん、子宮がん、脳腫瘍、皮膚癌、黒色腫、悪性骨腫瘍、膀胱癌、または血液癌であり得るが、これらに制限されない。より具体的には、前記癌は、肺がん、大腸がん、または乳がんであり得る。
【0017】
本発明の用語「予防」は、本発明の前記薬学的組成物を個体に投与して、癌の発生を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0018】
本発明の用語「治療」は、本発明の前記薬学的組成物を個体に投与して、癌が好転、緩和、または改善されるなど有益になるようにする全ての行為を意味する。
【0019】
本発明の薬学的組成物は、CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤の併用投与用であり得る。具体的には、前記薬学的組成物は、CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤が混合された混合剤形態であるか、またはCDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤がそれぞれ製剤化され、同時的または逐次的に投与されるものであり得るが、これらに制限されない。
【0020】
CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤を併用投与する場合、CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤の投与濃度比率は、1:0.001乃至1:1000であり得、具体的には、1:0.003乃至1:500、1:0.01乃至1:500、1:0.1乃至1:500、または1:0.7乃至1:500であり得、より具体的には、1:0.003、1:0.01、1:0.02、1:0.03、1:0.05、1:0.08、 1:0.1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:7、1:8、1:10、1:11、1:12、1:20、1:25、1:100、1:125、1:200、または1:500であり得るが、これらに制限されない。
【0021】
本発明の薬学的組成物は、通常の方法による薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含むことができる。薬学的に許容される担体は投与経路または製剤によって当業界に周知されており、具体的には「大韓民国薬典」を含む各国の薬局方を参照することができる。本発明の組成物に含まれ得る担体、賦形剤、および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱物油が挙げられるが、これらに制限されない。さらに、本発明の組成物に含まれ得る担体、賦形剤、および希釈剤は、非天然担体であり得るが、これらに制限されない。
【0022】
本発明の薬学的組成物は、通常の方法に従って、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口製剤、外用剤、坐剤、または滅菌注射用溶液の形態で製剤化して使用することができる。具体的には、製剤化する際に通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、前記化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して調製することができる。さらに、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般的に使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外にも様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、および坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどを用いることができる。坐剤の基剤としては、ウイテプソール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを用いることができる。薬学的組成物の具体的な製剤化に関しては、当業界で公知されてあり、例えば、文献の[Remington's Pharmaceutical Sciences(19th ed.、1995)]などを参照することができる。前記の文献は本明細書の一部と見なされる。
【0023】
本発明の薬学的組成物は、CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤を有効成分として含むいかなる製剤にも適用可能であり、経口用または非経口用製剤に製造することができる。具体的には、投与方式には制限はないが、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所的(topical;頬および舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)、または非経口(parenteral;筋肉内、皮下、および静脈内を含む)投与に適した形態、または吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与に適した形態を含む。
【0024】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。前記薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能で合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分であり、副作用を引き起こさない程度の量を意味し、有効用量水準は、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与方法、投与時間、投与経路、および排出率、治療期間、配合または同時使用される薬物を含む要素、および他の医学分野で周知の要素に応じて決定することができる。投与量および回数は、いかなる面でも本発明の範囲を制限するものではない。
【0025】
本発明の薬学的組成物は、マウス、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路を介して投与することができる。
本発明の投与は、1日に1回の投与することができ、数回に分けて投与することもできる。
【0026】
本発明の薬学的組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学療法、および生物学的反応調節剤など、通常技術分野で使用される様々な抗癌療法と共に併用して使用することができる。この意味で、本発明の薬学的組成物は、他の抗癌剤の抗癌効果を増大させるか、または副作用を抑制または改善させる抗癌補助剤形態を含むことができる。
【0027】
前記目的を達成するための本発明の他の態様として、前記薬学的組成物を薬剤学的に有効な量で個体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法を提供する。
【0028】
本発明の用語「個体」は、癌が発症する可能性があるか、または発症したマウス、家畜、ヒトなどを含む哺乳動物などの動物を制限なく含む。
【0029】
本発明の癌の予防または治療方法において、前記薬学的組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、いかなる一般的な経路を介しても投与することができる。本発明の薬学的組成物は、特にこれに制限されないが、経口投与、静脈投与、直腸内投与などの様々な経路を介して投与することができ、場合によっては、目的に応じて他の経路で投与することもできる。
【0030】
前記目的を達成するための本発明の他の態様として、癌の予防または治療のためのCDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤の組み合わせの使用;または、CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤を有効成分として含む組成物の使用を提供する。他の態様として、癌の治療、または予防用薬剤の製造のための、CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤の組み合わせ;または、CDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤を含む組成物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によるCDK4/6阻害剤および三環系抗うつ剤を含む組成物を併用投与する場合には、抗がん相乗効果を示し、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少する。また、本発明による組成物投与により、高い抗がん効果を得ながらもCDK4/6阻害剤の副作用は緩和する効果を得ることができるので、CDK4/6阻害剤及び三環系抗うつ剤を有効成分として含む組成物は、がんの予防または治療剤として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】
図1aは、デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれ投与するか、または併用(combination)投与した場合の期間別腫瘍の大きさ変化を測定した結果である。
【
図1b】
図1bは、デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれ投与するか、または併用(combination)投与した14日後、単独投与または併用投与群の腫瘍の大きさを比較した結果である。
【
図2a】
図2aは、デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれ投与するか、または併用(combination)投与した14日後に、単独投与または併用投与群の心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓に対するヘマトキシリン・エオシン染色の結果である。
【
図2b】
図2bは、デシプラミンとアベマシクリブの単独投与または併用投与群の期間別マウスの体重変化を測定した結果である。
【
図3a】
図3aは、デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれ投与するか、または併用(combination)投与14日後、マウスから採取した血液に対して生化学分析を行った結果である。
【
図3b】
図3bは、デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれ投与するか、または併用(combination)投与14日後、マウスから採取した血液に対して生化学分析を行った結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例を通じて本発明の構成及び効果をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、専ら本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれによって限定されるものではない。
【0034】
実施例1:CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤の併用投与によるがん細胞死滅効果の確認
細胞培養
本実験は、肺がん細胞株H460、大腸がん細胞株HCT116、乳がん細胞株MCF7で行った。各細胞株の遺伝的特徴としては、肺がん細胞株H460はKRAS突然変異[p.Q61H]、大腸がん細胞株HCT116はKRAS突然変異[p.G13D]を有し、乳がん細胞株MCF7はエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体とに対しては陽性であるが、HER2に対しては陰性である特徴を有している。H460およびMCF7細胞株は、10%FBSと1%ペニシリン-ストレプトマイシンで組成されたRPMI1640培地を用いて培養し、HCT116細胞株は、10%FBSと1%ペニシリン-ストレプトマイシンで組成されたMcCoy's 5A培地を用いて細胞を培養した。
【0035】
1.2.がん細胞死滅効果の確認
CDK4/6阻害剤と三環系抗うつ剤の様々な組み合わせを用いて、がん細胞死滅効果を確認した。
【0036】
具体的には、CDK4/6阻害剤としてアベマシクリブ、リボシクリブ、およびパルボシクリブを使用し、薬物のストック(stock)を作るための溶媒としてDMSOを使用した。三環系抗うつ剤としてイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、およびイミプラミン・ブルーを使用し、薬物のストックを作るための溶媒として蒸留水(DW)を使用し、イミプラミン・ブルーのみにDMSOを使用した。各薬物は、下記表1(抗うつ剤使用濃度(μM))および表2(CDK4/6阻害剤使用濃度(μM))に示した濃度に希釈して使用した。
【0037】
H460、HCT116、MCF7細胞株を96ウェルプレートに3×103cells/wellで培養した。翌日、各薬物を表1および表2の濃度で準備して培地に混合した後、各ウェルに入れて48時間置いた。48時間後、WST-1試薬を10ul/wellずつ加え、1時間の間、反応させた。WST-1反応させたサンプルをELISA 450nMで分析し、同じ条件を3回繰り返して平均値と標準誤差を計算した。
【0038】
【0039】
【0040】
各細胞株別の実験結果を以下のように観察した。
(1)肺がん(細胞株H460)での抗がん効能試験
アベシクリプト4μM単独処理時の肺がん細胞生存率は71%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【0041】
【0042】
表3に示すように、CDK4/6阻害剤であるアベマシクリブと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。リボシクリプ50μM単独処理時の肺がん細胞生存率は72%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は、以下のように示された。
【0043】
【0044】
表4に示すように、CDK4/6阻害剤であるリボシクリプと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。パルボシクリブ15μM単独処理時の肺がん細胞生存率は67%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【0045】
【0046】
表5に示すように、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。
【0047】
(2)大腸がん(細胞株HCT116)での抗がん効能試験
アベシクリプト0.2μM単独処理時の大腸がん細胞生存率は87%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【0048】
【0049】
表6に示すように、CDK4/6阻害剤であるアベマシクリブと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。リボシクリブ20μM単独処理時の大腸がん細胞生存率は73%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【表7】
【0050】
表7に示すように、CDK4/6阻害剤であるリボシクリプと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。パルボシクリブ5μM単独処理時の肺がん細胞生存率は79%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【0051】
【0052】
表8に示すように、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。
【0053】
(3)乳がん(細胞株MCF7)での抗がん効能試験
アベシクリプト10μM単独処理時の乳がん細胞生存率は59%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【0054】
【0055】
表9に示すように、CDK4/6阻害剤であるアベマシクリブと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。リボシクリプト30μM単独処理時の乳がん細胞生存率は80%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【0056】
【0057】
表10に示すように、CDK4/6阻害剤であるリボシクリブと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びイミプラミン・ブルーのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6抑制剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。パルボシクリブ20μM単独処理時の乳がん細胞生存率は75%であり、抗うつ剤単独処理群及び併用処理群の生存率は以下のように示された。
【0058】
【0059】
表11に示すように、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブと抗うつ剤であるイミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、及びアミトリプチリンのいずれかを一緒に処理した場合、CDK4/6阻害剤または抗うつ剤を単独処理した群に比べてがん細胞生存率が著しく減少し、抗がん相乗効果が現れたことを確認した。
【0060】
実施例2:デシプラミンとアベマシクリブの併用投与による腫瘍成長抑制効果の分析
2.1.腫瘍モデルの構築
デシプラミンとアベマシクリブの併用処理による治療効果の向上を評価するために、大腸がん細胞株HCT116を用いて皮下腫瘍モデルを構築した。
【0061】
具体的には、ヒト大腸がん細胞株HCT116は、American Type Culture Collection(ATCC、米国)から購入し、ウシ胎児血清(FBS)10%およびペニシリン-ストレプトマイシンで組成されたMcCoy's 5A培地で37℃、5%二酸化炭素および標準湿度条件下で培養した。HCT116癌細胞5×106 Cells/100μLだけヌードマウス(Balb/c nude)の皮下に注射し、約7~10日後に腫瘍が生成したことを確認した。腫瘍の大きさが60~70mm3になったとき、マウスを4グループ(陰性対照群、デシプラミン単独治療群、アベマシクリブ単独治療群、そしてデシプラミンとアベマシクリブの併用治療群)に分けて実験を行った。デシプラミンは、20mg/kgの用量で腹腔内に注射し、アベマシクリブは、30mg/kgで経口投与を通して進行した。デシプラミンとアベマシクリブは、実験終了時まで毎日1回投与し、対照群はVehicleを投与した。
【0062】
2.2.腫瘍成長抑制効果の分析
抗腫瘍効果の評価は、治療後14日目まで毎日腫瘍の大きさを測定し、各グループ間の差を分析した。腫瘍の大きさは、V(mm
3)=1/2×長軸(mm)×短軸(mm)×高さ(mm)で計算した。14日目までに腫瘍の大きさを測定して腫瘍増殖グラフを作成し、各グループ間の腫瘍の大きさを比較分析した。
図1aおよび
図1bの結果から分かるように、デシプラミンとアベマシクリブの併用治療群での抗腫瘍効果が最も優れたことが確認でき、14日目にデシプラミン単独治療群、アベマシクリブ単独治療群、またはデシプラミンとアベマシクリブの併用治療群の腫瘍の大きさは、それぞれ陰性対照群の75.2%(**P<0.01)、54.6%(***P<0.001)、または25.9%(***P<0.001)として測定され、単独治療群に比べて併用治療により抗がん相乗効果があることが確認された(
図1)。
【0063】
実施例3:薬物投与による毒性評価
デシプラミンとアベマシクリブの投与による生体毒性効果を評価するために、14日目に主要正常臓器である心臓、肺、肝臓、脾臓、および腎臓を採取し、これに対する切片を作製した後、ヘマトキシリンおよびエオシン染色(Hematoxylin&Eosin)を介して組織学的変化の有無を確認した。
【0064】
デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれまたは併用投与したグループに対して主要臓器の組織検査の結果、対照群に比べて組織学的変化が観察されなかった(
図2a)。また、デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれまたは併用投与したグループに対して14日間体重を測定した結果、各グループ間に有意な体重の差は観察されなかった(
図2b)。
【0065】
デシプラミンとアベマシクリブをそれぞれまたは併用投与したグループに対して、治療14日目に、マウスの血液を採取して血液生化学分析を行った際に、血液中の様々な毒性関連因子が各グループ間で有意な差を見せなかった(
図3)。これらの結果を総合してみると、デシプラミンとアベマシクリブを併用投与した用量に対して、相乗癌治療効果を得ながらも、正常組織に対する毒性は現れないことを確認した。
【国際調査報告】