(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】燃料電池システムを燃料電池モードで動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0612 20160101AFI20240628BHJP
H01M 8/0668 20160101ALI20240628BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240628BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240628BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240628BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M8/0612
H01M8/0668
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/0432
H01M8/04007
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500463
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022056965
(87)【国際公開番号】W WO2023280447
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504150162
【氏名又は名称】テクニシェ ユニバーシタット ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】シュプリートフ,ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】ハウク,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインリッヒ,イェレミーアス
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AA05
5H127AC15
5H127BA04
5H127BA05
5H127BA06
5H127BA13
5H127BA28
5H127BA32
5H127BA33
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB45
5H127DB47
(57)【要約】
本発明は、燃料電池システム(1)を燃料電池モードで動作させる方法に関する。燃料電池システム(1)は、アノード(2a)、カソード(2b)、およびアノード(2a)とカソード(2b)の間に設けられた電解質(2c)を備える少なくとも1つの燃料電池(2)であって、アノード(2a)内で炭化水素化合物を内部改質するように配置された燃料電池(2)、アノード出口(2d)と燃料導管(6)を接続し、メタン化ユニット(3a)、水性ガスシフト反応器(3b)、および、水蒸気凝縮器または水除去ユニット(12)を備えるアノード排気導管(4)を備え、前記アノード排気導管(4)または前記燃料導管(6)は二酸化炭素分離ユニット(11)を備え、前記燃料導管(6)は燃料電池システム入口(7)とアノード入口(2e)を接続する。前記方法は、a)炭化水素化合物を含む供給ガスを燃料電池システム入口(7)を介して燃料導管(6)に供給するステップ、b)アノード入口(2e)に供給される供給ガス混合物において、燃料電池(2)の選択された動作温度における水素と炭素のモル比が固体炭素の形成を防止しするように、アノード入口に供給される供給ガス混合物中の炭素に対する酸素のモル比が1より小さく、好ましくは0.1より小さくなるように、メタン化ユニット(3a)を制御してメタンを生成するステップ、および、水性ガスシフト反応器(3b)を制御して水素を生成するステップを含み、c)二酸化炭素は、二酸化炭素分離ユニット(11)においてアノード排気または供給ガス混合物から分離され、アノード入口(2e)に供給される供給ガスまたは供給ガス混合物に水が添加されず、アノード排気に含まれる水蒸気が、水蒸気凝縮器または水分除去ユニット(12)で分離される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(1)を燃料電池モードで動作させる方法であって、前記燃料電池システム(1)は、
アノード(2a)、カソード(2b)、およびアノード(2a)とカソード(2b)の間に設けられた電解質(2c)を備える少なくとも1つの燃料電池(2)であって、アノード(2a)内で炭化水素化合物を内部改質するように配置された燃料電池(2)、
アノード出口(2d)と燃料導管(6)を接続し、メタン化ユニット(3a)、水性ガスシフト反応器(3b)、および、水蒸気凝縮器または水除去ユニット(12)を備えるアノード排気導管(4)、を備え、
前記アノード排気導管(4)または前記燃料導管(6)は二酸化炭素分離ユニット(11)を備え、
前記燃料導管(6)は燃料電池システム入口(7)とアノード入口(2e)を接続し、
前記方法は、
a) 炭化水素化合物を含む供給ガスを燃料電池システム入口(7)を介して燃料導管(6)に供給するステップ、
b) アノード入口(2e)に供給される供給ガス混合物において、燃料電池(2)の選択された動作温度における水素と炭素のモル比が固体炭素の形成を防止しするように、アノード入口に供給される供給ガス混合物中の炭素に対する酸素のモル比が1より小さく、好ましくは0.1より小さくなるように、メタン化ユニット(3a)を制御してメタンを生成するステップ、および、水性ガスシフト反応器(3b)を制御して水素を生成するステップを含み、
c) 二酸化炭素は、二酸化炭素分離ユニット(11)においてアノード排気または供給ガス混合物から分離され、
アノード入口(2e)に供給される供給ガスまたは供給ガス混合物に水が添加されず、
アノード排気に含まれる水蒸気が、水蒸気凝縮器または水分除去ユニット(12)で分離される、方法。
【請求項2】
前記アノード内で前記供給ガス混合物に含まれる炭化水素化合物を改質するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタン化装置(3a)におけるメタン化反応により生成するメタンと、前記水性ガスシフト反応器(3b)における水性ガスシフト反応により生成する水素の合計量を100モル%としたとき、水性ガスシフト反応では65~95モル%の水素が生成され、メタン化反応では100モル%から生成された水素の量(モル%)を引いた量のメタンが生成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって、
特に燃料電池に供給される供給ガス混合物に水を添加することなく、供給ガス混合物中に水蒸気が存在しなくても、特に燃料電池に供給される供給ガス混合物に水を添加することなく、炭素の堆積が熱力学的に防止されるように、反応器の温度および/またはメタン化ユニット(3a)に供給されるアノード排気ガスの割合を調整することによって、燃料電池の動作温度および圧力に応じて、燃料電池のアノードに供給される供給ガス混合物中の水素対炭素原子のモル比を制御するステップをさらに含み、
手段は、以下の値と、前記値の間の線形補間による中間値に従って比率を調整することができる、方法:
・ 大気圧、550℃、モル比H:C>7.4;または
・ 絶対圧2バール、550℃、モル比H:C>6;または
・ 絶対圧5バール、550℃、モル比H:C>5.3;または
・ 大気圧、600℃、モル比H:C>9;または
・ 絶対圧2バール、600℃、モル比H:C>8;または
・ 絶対圧5バール、600℃、モル比H:C>7;または
・ 大気圧、650℃、モル比H:C>15;または
・ 絶対圧2バール、650℃、モル比H:C>10;または
・ 絶対圧5バール、650℃、モル比H:C>7;または
・ 大気圧、700℃、モル比H:C>24;または
・ 絶対圧2バール、700℃、モル比H:C>14;または
・ 絶対圧力5バール、700℃、モル比H:C>8.8。
【請求項5】
水性ガスシフト反応器(3a)および/またはメタン化ユニット(3b)の下流に設けられた第1の熱伝達手段(9)を使用して、アノード排気導管(4)内のアノード排出物から供給ガス混合物に熱を伝達するステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
メタン化ユニット(3a)および水性ガスシフト反応器(3b)の上流に設けられた第2の熱伝達手段(10)を使用して、アノード排気導管(4)内のアノード排気から供給ガス混合物に熱を伝達するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記燃料電池システム(1)は蒸気回路(5)をさらに備え、前記方法は水蒸気を使用して電力を生成するステップを備え、
第3の熱伝達手段(5a)を使用してメタン化ユニット(3a)から蒸気回路(5)に熱が伝達され、および/または、
第4の熱伝達手段(5e)を使用して、水性ガスシフト反応器(3a)から蒸気回路(5)に熱が伝達される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
メタン化反応および/または水性ガスシフト反応で生成される熱の少なくとも一部は、アミン溶液の再生、温度スイング吸着ユニットでの脱着などのCO
2分離に使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アノード入口(2e)に供給される供給ガス混合物に含まれる水蒸気の総含有量は、供給ガス混合物の総体積に対して20体積%未満、好ましくは10体積%未満、より好ましくは3体積%未満に制御される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アノード入口(2e)に供給される供給ガス混合物に含まれる二酸化炭素の総含有量は、供給ガス混合物の総体積に対して20体積%未満、好ましくは10体積%未満、より好ましくは3体積%未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
メタン化を受け、処理済み排ガスを添加した後に供給ガス中に追加のメタンをもたらすアノード排ガスの新しい炭化水素燃料供給原料に対する割合は、燃料電池反応の熱の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%が改質反応によって消費され、その後、メタン化ユニット(3a)におけるメタン化反応によって再び放出されるように制御される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆的または非可逆的燃料電池システムを燃料電池モードで全体効率を高めて動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素化合物ベースの燃料を使用する燃料電池システムは、主に天然ガスやバイオガスなどのメタンからなることが多いが、場合によってはプロパンなどの他の炭化水素も使用し、従来技術で広く使用されている。
【0003】
固体炭素形成の副反応(炭素の堆積/腐食)を防ぐために、従来技術では、燃料電池に供給される燃料は、炭化水素燃料の改質反応を行うために、空気、水蒸気、または二酸化炭素のいずれかで希釈される。ここで、空気または二酸化炭素の添加は乾式改質を促進し、水蒸気の添加は水蒸気改質を促進する。
【0004】
しかし、空気を添加すると、燃料電池に入る前に燃料が部分的に酸化されてしまう。これにより、燃料の損失により燃料電池システムの全体的な効率が大幅に低下する。
【0005】
二酸化炭素または水のいずれかを追加すると、燃料電池の性能と燃料電池システムの効率も低下する。二酸化炭素と水は燃料電池反応の生成物であるため、燃料電池反応の反応平衡は遊離体側にシフトし、それにより燃料電池の効率が低下する。
【0006】
さらに、従来技術で知られている炭化水素燃料で動作する燃料電池システムは、燃料利用率がわずか約70~80%であり、これらの燃料電池システムは総効率が低く、最大35~60%の低温廃熱および熱損失を発生する。
【0007】
燃料電池のアノード側で熱が発生するため、効率的な冷却を行う必要があり、この目的でカソードに供給される空気を使用する最新技術のように冷却を行った場合でも、多くのエネルギーを消費する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の根底にある目的は、熱と燃料の利用率が最大化され、燃料利用率が増加し全体効率が増加する燃料電池モードで(可逆)燃料電池システムを動作させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は独立請求項により達成される。従属請求項には、本発明の有利な実施形態が含まれている。
【0010】
燃料電池システムは、本発明による燃料電池システムの燃料電池モード運転方法が適用される、可逆燃料電池システムであってもよく、アノード、カソード、およびアノードとカソードの間に設けられる電解質を含む少なくとも1つの燃料電池を備える。燃料電池はさらに、燃料電池内部、好ましくはアノード内で炭化水素化合物の内部改質を行うように構成されている。
【0011】
ここでの「内部」とは、「燃料電池の内部」を意味する。 言い換えれば、改質セクションは燃料電池の一部を形成し、したがって燃料電池内に設けられ、特に燃料電池の電気化学反応ゾーンの近くに位置し、したがって燃料電池反応ゾーンと直接熱接触する。
【0012】
アノード出口と燃料導管を接続するアノード排気導管が設けられている。アノード排気導管は、アノード排気からメタンを生成するメタン化ユニット;アノード排気に含まれる一酸化炭素と水から水素と二酸化炭素を生成する水性ガスシフト反応器;およびアノード排気中の水分含有量を減らすための水蒸気凝縮器または水除去ユニットを含む。
【0013】
アノード排気導管または燃料導管は、アノード排気から、または、燃料導管を介して燃料電池のアノードのアノード入口に供給される供給ガス混合物から、二酸化炭素を分離するための二酸化炭素分離ユニットを備える。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態では、システムは、メタン化ユニットに向けられるアノード排気の割合と、メタン化ユニットの下流でメタン化ガス流と混合されるメタン化ユニットを通過しない別の割合とを制御する手段をさらに備える。適切な制御手段は、例えば制御弁であってもよい。
【0015】
燃料導管は、燃料電池システムの入口とアノード入口とを接続する。 燃料導管内では、燃料電池システム入口を介して供給される供給ガスと、リサイクルおよび/または処理されたアノード排気とがアノード入口に入る前に混合され、それによってアノード入口に供給される供給ガス混合物が得られる。
【0016】
完全を期すために、カソードがカソード入口およびカソード出口を備えることを概説する。酸化剤ガス、例えば純粋な酸素または空気は、酸化剤導管を介してカソード入口に供給できる。酸化剤導管は、圧縮機および熱交換器を備えていてもよい。熱交換器は、燃料電池のカソード側の熱エネルギーが効果的に使用されるように、カソード排気導管を介して供給されるカソード排気からの熱を使用して酸化剤導管内の酸化剤を予熱することができる。
【0017】
この方法は次のステップから構成される。
ステップa)では、燃料電池システム入口を介して燃料導管に供給ガスが供給され、供給ガスは炭化水素化合物を含む。好ましい炭化水素化合物としては、メタン、天然ガス、ガス化液化ガス、プロパンガス、バイオガス、家庭用ガス、並びにガス化ディーゼル、ベンゼン、天然ガソリンが挙げられる。好ましい実施形態によれば、供給ガスは少なくとも95体積%のメタンを含み、総量で2体積%未満、好ましくは1体積%未満の二酸化炭素、窒素および不活性ガスを含むことができる。
【0018】
ステップb)では、メタン化ユニットが制御されてメタンが生成され、水性ガスシフト反応器は水素を生成するように制御される。ここで、燃料電池システム入口を介して供給される炭化水素供給ガスと、アノード排気導管を介して燃料導管に供給される再利用および/または処理されたアノード排気とを含み、燃料導管を介してアノード入口に供給される供給ガス混合物中で、燃料電池の選択された動作温度における水素と炭素のモル比が固体炭素の形成を防止するように制御される。ここで、アノード入口に供給される供給ガス混合物中の炭素に対する酸素のモル比は、1よりもはるかに小さく、好ましくは0.1未満である。
【0019】
ステップc)では、二酸化炭素分離ユニットにおいてアノード排気または供給ガス混合物から二酸化炭素が分離される。これは、換言すれば、リサイクルおよび/または処理されたアノード排気が燃料導管に供給され、その中で供給ガスからの炭化水素化合物と混合される前に二酸化炭素が除去または削除され、得られた供給ガス混合物が燃料電池に供給されることを意味する。あるいは、リサイクルおよび/または処理されたアノード排気が燃料導管に供給され、その中で供給ガスからの炭化水素化合物と混合された後、二酸化炭素が、燃料電池に供給される燃料ガス混合物から低減または除去されてもよい。特に、ステップc)は、供給ガスが5体積%を超える割合の二酸化炭素を含む場合、例えばバイオガスの場合に適合され得る。この場合、供給ガスは二酸化炭素分離の直前にアノード排気ガスと混合されるものとする。
【0020】
さらに、好ましくは、ステップb)の後、ステップc)の前または後に、水蒸気凝縮器または水分除去ユニットを使用して、ガスを露点未満の温度に冷却して水蒸気の一部を凝縮させることによって、アノード排気ガスの水蒸気含有量が低減される。冷却は、例えば冷却水流との直接的または間接的な熱交換によって行うことができる。ガスの水蒸気含有量を10体積%未満に低減することが特に好ましく、3体積%未満に低減することがさらに好ましい。
【0021】
本発明の方法によれば、アノード入口に供給される供給ガスまたは供給ガス混合物に水を添加しないことが重要である。さらに好ましくは、アノード排気物および/または炭化水素化合物に既に含まれている量の二酸化炭素を除き、燃料またはガス混合物に二酸化炭素を添加しない。
【0022】
アノード入口に供給される供給ガス混合物に含まれる二酸化炭素の総含有量が、アノード入口に供給される供給ガス混合物の総体積に対して20体積%未満、好ましくは10体積%未満、より好ましくは3体積%未満である場合、固体炭素の形成をより完全に防止することができる。
【0023】
本発明の方法を燃料電池システムに適用すると、燃料電池の性能が向上し、アノード入口に供給される燃料の利用率が高くなるので、燃料電池システムの全体効率が向上する。
【0024】
好ましい実施形態によれば、通常の運転中(始動または停止ではない)、凝縮水および二酸化炭素分離中に除去される二酸化炭素に富むガスを除いて、他のガスはシステムの燃料導管から除去されない。
【0025】
より具体的には、燃料導管を介して燃料電池アノードに供給されるメタンおよび水素の量は、メタン化反応および水性ガスシフト反応によって生成されるメタンおよび水素の量に、アノード排気と混合された炭化水素供給ガスを加えた量に相当する。したがって、アノード排気への追加のメタンおよび/または水素の供給は行われず、二酸化炭素の分離中に潜在的に発生する技術的に避けられない損失を除いて、メタンまたは水素はアノード排気から除去されない。さらに好ましくは、全体的なバランスにおいて、水素は燃料電池システムを通して循環され、水素は全体としては消費されない。
【0026】
好ましい実施形態によれば、この方法は、アノード内で供給ガス混合物に含まれる炭化水素化合物を改質するステップをさらに含む。改質反応は吸熱反応であるため、燃料電池反応(アノード側での炭化水素燃料の消費)によって生成される熱は吸収され、改質反応をサポートするために使用される。すなわち、燃料電池反応により燃料電池内で発生する熱は、燃料電池内部で改質反応を行うことにより有効に消費することができる。これにより、カソードに供給される空気による燃料電池の冷却の必要性が減り、すなわち、空気がもはや主に燃料電池の冷却に使用されなくなるため、カソードに空気を供給するために使用されるファンなどを駆動するための電力が少なくて済む。したがって、燃料電池の冷却にかかる電力を節約することができる。
【0027】
さらに好ましくは、システムは例えばメタン化反応器の温度を調整する手段、および/またはメタン化ユニットに供給されるアノード排ガスの割合を制御する手段によって、アノード排気ガス中の残留燃料分子の5~35%のみがメタン化反応を受け、残留量がシフト反応を受け、そのような処理後のガスの一酸化炭素含有量が1%未満になるように制御される。
【0028】
さらに好ましい実施形態によれば、前記メタン化装置におけるメタン化反応により生成されるメタンと、前記水性ガスシフト反応器における水性ガスシフト反応により生成される水素との合計量を100モル%としたとき、水性ガスシフト反応では65~95モル%の水素が生成され、メタン化反応では100モル%から生成された水素の量(モル%)を引いた量のメタンが生成される。
【0029】
燃料電池システムを動作させるための上述の方法は、特に燃料電池に供給される供給ガス混合物に水を添加することなく、供給ガス混合物中に水蒸気が存在しなくても、炭素の堆積が熱力学的に防止されるように、燃料電池の動作温度および圧力に応じて、反応器の温度および/またはメタン化ユニットに供給されるアノード排気ガスの割合を調整することによって、燃料電池のアノードに供給される供給ガス混合物中の水素対炭素原子のモル比を制御するステップをさらに含むことが好ましい。
ここで、この手段は、以下の値および与えられた値の間の線形補間による中間値に従って比率を調整することができる。
【0030】
1.大気圧、550℃、モル比H:C>7.4;または
2.絶対圧2バール、550℃、モル比H:C>6;または
3.絶対圧5バール、550℃、モル比H:C>5.3;または
4.大気圧、600℃、モル比H:C>9;または
5.絶対圧2バール、600℃、モル比H:C>8;または
6.絶対圧5バール、600℃、モル比H:C>7;または
7.大気圧、650℃、モル比H:C>15;または
8.絶対圧2バール、650℃、モル比H:C>10;または
9.絶対圧5バール、650℃、モル比H:C>7;または
10.大気圧、700℃、モル比H:C>24;または
11.絶対圧2バール、700℃、モル比H:C>14;または
12.絶対圧5バール、700℃、モル比H:C>8.8。
【0031】
燃料電池システムの熱利用度をさらに向上させるために、さらに好ましい態様として、本方法は、水性ガスシフト反応器および/またはメタン化ユニットの下流に設けられた第1の熱伝達手段を使用して、アノード排気導管内のアノード排気から供給ガス混合物に熱を伝達するステップを含む。より好ましくは、第1の熱伝達手段は、水蒸気除去および二酸化炭素分離ユニットの上流に設けられ得る。
【0032】
熱利用を改善するために、本方法は、メタン化ユニットおよび/または水性ガスシフト反応器の上流に設けられた第2の熱伝達手段を使用して、アノード排気導管内のアノード排気から供給ガス混合物に熱を伝達するステップをさらに含むことが好ましい。アノード排気から供給ガス混合物へのこの熱伝達は、次の2つの意味で好ましい。第1に、メタン化反応と水性ガスシフト反応は両方とも発熱反応であるため、温度が低いほどこれら2つの反応の効率が高まる。第2に、高温燃料電池は高温での動作を必要とするため、供給ガス混合物の温度が高くなると、燃料電池の動作が容易になる。本発明の意味における熱伝達手段は、熱交換器などであってもよい。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、燃料電池システムは蒸気回路をさらに備えることができ、方法は水蒸気を使用して電力を生成するステップを備えてもよく、第3の熱伝達手段を使用して熱がメタン化ユニットから蒸気回路に伝達され、および/または第4の熱伝達手段を使用して水性ガスシフト反応器から蒸気回路に熱が伝達されてもよい。これにより、燃料電池システムによる発電量をさらに増大させることができる。蒸気回路を介した電力生成の効率を高めるために、蒸気回路は、少なくとも1つのタービンを備えることがさらに好ましい。
【0034】
熱エネルギーの無駄をさらに防ぎ、熱利用率を高めるために、さらに好ましい実施形態では、メタン化反応および/または水性ガスシフト反応で生成される熱の少なくとも一部は、アミン溶液の再生、温度スイング吸着ユニットでの脱着などのCO2分離に使用されてもよい。これは、例えば、反応器から熱を直接抽出するか、または、ストリームタービンの前、ストリームタービンから、または蒸気タービンの下流で蒸気を抽出することによって生成される蒸気の一部を使用することによって間接的に行われてもよい。
【0035】
熱利用度に優れる点でさらに好ましくは、メタン化を受けて、処理済み排ガスを新鮮な炭化水素燃料供給原料に添加した後、供給ガス中に追加のメタンをもたらすアノード排ガスの割合は、燃料電池反応の熱の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%が改質反応によって消費され、その後、メタン化ユニットにおけるメタン化反応によって再び放出されるように制御される。
【0036】
別の好ましい実施形態では、炭化水素燃料の組成に応じて、燃料入口導管は、硫黄化合物のような微量物質を除去するための、洗浄器、活性炭または同様のものを充填した吸着器などの適切なガス洗浄手段を備える。これらのガス浄化手段は、供給ガスをアノード排気と混合する前に設置するものとする。これにより、ガス洗浄による質量流量が減少し、それによってガス洗浄の効果が増大する。
【0037】
本発明のさらなる詳細、利点および特徴は、添付の図面に照らして以下の実施形態の説明に関して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】第1の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図2】第2の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図3】第3の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図4】第4の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図5】第5の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図6】第6の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図7】第7の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図8】第8の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図9】第9の実施形態による燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システムの概略図である。
【
図10】1バールの動作圧力における炭素堆積の温度依存境界線を示すC-H-O三角図である。
【
図11】2バールの動作圧力における炭素析出の温度依存境界線を示すC-H-O三角図である。
【
図12】5バールの動作圧力における炭素堆積の温度依存境界線を示すC-H-O三角図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、以下の図を参照して説明される。ここでは、本発明の方法が適用される燃料電池システムのすべての必須要素および構成要素が示されている。本発明の理解を助けるために、他のすべての要素および構成要素は省略されている。
【0040】
詳細には、
図1は、燃料電池モードで動作する潜在的に可逆的な燃料電池システムである燃料電池システム1を示す。燃料電池システム1は、アノード2aと、カソード2bと、アノード2aとカソード2bとの間に設けられた電解質2cとを備える1つの燃料電池セル2を備えている。アノード2aは、炭化水素化合物の内部改質のために配置される。「内部改質」とは、炭化水素化合物の変換を意味し、炭化水素化合物の改質反応は、燃料電池2内で、すなわち燃料電池2の反応ゾーンと直接熱接触して行われる。
【0041】
燃料電池システム1は、アノード排気導管4をさらに備える。アノード排気導管4は、アノード出口2dと燃料管6とを接続する。アノード排出導管4は、少なくともメタン化ユニット3a、水性ガスシフト反応器3b、水除去ユニット12および二酸化炭素分離器11を備える。
【0042】
メタン化ユニット3aは、アノード排気からメタンを生成するように構成され、水性ガスシフト反応器3bは、アノード排気から水素を生成するように構成されている。本実施形態では、メタン化装置3aの上流に第4熱交換器5eを備えた水性ガス変性反応器3bが配置されており、水性ガス変成器3bとメタン化装置3aとが直列に配置されている。水性ガスシフト反応器3bとメタン化ユニット3aとの間で、アノード排気導管4が分割されており、水除去ユニット12および二酸化炭素分離器11と組み合わせて、メタン化ユニット3aを通過するガス流の割合とメタン化ユニット3aを通過しないガスの割合とを制御することにより、アノード排気の水素と炭素の比率を適切に制御して、燃料電池アノードでの炭素の堆積を防ぐことができる。
【0043】
メタン化ユニット3aおよび水性ガスシフト反応器は蒸気サイクル5に熱的に結合されており、したがって、第3の熱交換器5aはメタン化ユニット3aの一部を形成している。蒸気サイクル5は、水蒸気によって駆動される発電用のタービン5bを備えている。蒸気サイクル5にはさらに、水蒸気凝縮器5cおよびポンプ5dが設けられている。
【0044】
燃料導管6は、燃料電池システム入口7とアノード入口2eとを接続する。燃料導管6内には圧縮機8が設けられ、その下流には第1熱交換器9および第2熱交換器10が設けられている。
【0045】
アノード排気導管4におけるメタン化ユニット3aの下流では、水蒸気凝縮器または水分離器12が二酸化炭素分離ユニット11の上流に配置され、アノード排気から水を分離する。
【0046】
本発明の方法の一実施形態に従って燃料電池システム1を作動させるとき、炭化水素化合物を含む供給ガスが燃料電池システム入口7を介して燃料導管6に供給される。供給ガスは、天然ガス、プロパンガス、バイオガス、家庭用ガス、ガス化ディーゼル、ベンゼンなどの任意の炭化水素化合物であってよい。最も好ましくは、炭化水素供給ガスはメタンを含み、ここでは一例として毎秒1モルのメタンが燃料電池システム入口7を介して燃料導管6に供給され得る。
【0047】
メタン化ユニット3aは、アノード排気からメタンを生成するように制御され、水性ガスシフト反応器3bは、アノード排気から水素を生成するように制御され、燃料電池システム入口を介して供給される炭化水素供給ガスと、アノード入口2eに供給される再利用/処理されたアノード排気とを含む供給ガス混合物中で、燃料電池2の選択された動作温度における水素と炭素のモル比は、固体炭素の形成を防止する。ここで、アノード入口に供給される供給ガス混合物中の酸素対炭素のモル比は、1よりもはるかに小さく、好ましくは0.1より小さい。このため、燃料電池システム1内での固体炭素の形成が防止される。固体炭素の形成は燃料電池システム1内での、副反応を引き起こし、燃料電池の炭素腐食を引き起こす可能性がある。炭素腐食は燃料電池2の性能を破壊しその効率を低下させる。
【0048】
固体炭素の形成をさらに防ぐために、二酸化炭素分離ユニット11においてアノード排気から二酸化炭素が分離されることにより、燃料電池システム全体の効率を高めることができる。アノード入口2eに供給される供給ガスまたは供給ガス混合物に水が添加されず、アノード排気に含まれる水蒸気が水蒸気凝縮器または水除去ユニット12においてそこから低減または除去されるため、この効率の程度はさらに改善される。したがって、燃料電池の電気化学的性能が向上する。アノード入口2eに供給される供給ガス混合物の総体積に対して、好ましくは3体積%未満の少量の水および/または二酸化炭素が供給ガス混合物に含まれていてもよいが、二酸化炭素も水も燃料導管6の特定の箇所に添加されない。
【0049】
燃料導管6内で、炭化水素化合物(またはその混合物)は、メタン化反応および水性ガスシフト反応を受けたアノード排気物と混合される。さらに、水は前記アノード排気から凝縮され、二酸化炭素分離ユニットにおいて二酸化炭素がそこから分離されている。
【0050】
一例として、燃料導管6に供給されるアノード排気は、毎秒0.25モルのメタンに対して毎秒5モルの水素を含むことができる。毎秒1モルのメタンを燃料電池システム入口7を介して燃料導管6に供給することができ、ガスは燃料導管6内で混合される。次いで、得られた供給ガス混合物は、圧縮機8で圧縮され、第1の熱交換器9に到達する。熱交換器9は、メタン化ユニット3aおよび水性ガスシフト反応器3b後のアノード排ガスから供給ガス混合物に熱を伝達し、そのため、混合物は初めて予熱され、温度はほぼ室温(20℃)から例えば300℃まで上昇する。
【0051】
次いで、供給ガス混合物は、第2の熱交換器10に入る。ここで、熱はアノード排気から供給ガス混合物に伝達され、アノード入口2eにおける供給ガス混合物の温度は例えば約580℃となる。
【0052】
このような高温は、この実施形態の供給ガス混合物に含まれる主にメタン含有炭化水素化合物の改質反応を促進する。この改質反応は、燃料電池2の内部改質反応としてアノード内部で行われ、燃料電池反応と並行して進行し、燃料電池反応中に発生する熱が改質反応によって有効に消費される。初期には、アノード入口には水蒸気および二酸化炭素が存在しないか、またはほとんど存在しないため、燃料電池反応中に生成される水および二酸化炭素のみが内部改質に提供される。これにより、最先端のシステムと比較して、有効な改質ゾーンがセルに沿ってさらに拡張される。これにより、熱勾配/応力が減少し、燃料電池の寿命が長くなる。さらに、セルに沿った燃料流を希釈する生成物分子が改質反応によって大幅に消費され、はるかに少なくなるため、効率が大幅に向上する。
【0053】
アノード排気は、例えば約630℃の高温でアノード出口2dから出る。この熱は、第2熱交換器10のアノード入口2eに供給される混合物をさらに予熱するために使用される。その後、部分的に冷却されたアノード排気は、水性ガスシフト反応器3bに入り、水性ガスシフト反応器3bから出た流れの一部がメタン化ユニット3aに供給される前に発熱反応で水素が生成され、発熱メタン化反応によってメタンが生成される。水性ガスシフト反応器3bおよびメタン化ユニット3aに流入するアノード排気は低温であるため、発熱を伴う水性ガスシフト反応およびメタン化反応がさらに促進される。メタン化ユニット3aを通過するガスの割合は、例えば、流れを再混合する前に、両方の反応器の下流に配置されたアノード排出導管内の1つまたは複数のバルブ(図示せず)によって適切に制御される。これにより、メタン化ユニット3aを通過するアノード排気の割合を、アノード排気ガス体積流量全体の20%に調整することにより、燃料導管6に供給されるアノード排気のガス組成は、水および二酸化炭素を除去した後、例えば秒0.25モルのメタンに対して毎秒5モルの水素を含むように制御される。
【0054】
メタン化反応と水性ガスシフト反応はいずれも、これらの発熱反応の副作用として熱を生成し、その熱は蒸気サイクル5に伝達されることが好ましい。この熱を利用して水から水蒸気を生成することができ、その水蒸気によってタービン5bを駆動することができるため、余剰の電力を生成することができ、反応熱をより有効に利用することができる。
【0055】
熱交換器9は、メタン化ユニット3aおよび水性ガスシフト反応器3b後のアノード排ガスから供給ガス混合物に熱を伝達し、混合物を最初に予熱し、温度をほぼ室温(20℃)から例えば300℃まで上昇させる。メタン化ユニット3aおよび水性ガスシフト反応器3bを通過した後のアノード排気の温度は、例えば80℃まで低下する可能性があり、水蒸気は水蒸気凝縮器または水分離器12で凝縮および分離される。これにより、アノード排気の温度がさらに低下し、そこからさらに下流で二酸化炭素が二酸化炭素分離ユニット11で分離される。得られた処理済みアノード排気は、炭化水素化合物(本実施形態では主にメタン)と再び混合され、燃料電池システム入口7を介して燃料導管6に入る。
【0056】
完全を期すために、カソード2bがカソード入口2fおよびカソード出口2gを備えることを概説する。酸化剤ガス、例えば純粋な酸素または空気が酸化剤導管13を介してカソード入口2fに供給される。酸化剤導管13内には、圧縮機14および熱交換器15が配置されている。熱交換器は、カソード排気管16を介して供給されるカソード排気からの熱を利用して酸化剤管13内の酸化剤を予熱し、燃料電池2のカソード側の熱エネルギーを有効に利用する。
【0057】
燃料電池システム1は高効率である。温度、圧力、動作電圧などの動作条件に応じて、燃料電池の電気効率は約80%になる場合がある。これは、入口7から供給される炭化水素燃料の発熱量の80%が燃料電池2で電気エネルギーとして得られることを意味する。さらに、蒸気サイクル5によって約7%の電力を生成できる。一方、主に二酸化炭素の分離に起因する補助消費には、約5~7%の電力が必要となる場合があるため、システム全体の電気効率は通常、炭化水素供給ガスの低位発熱量の約80%以上になる。
【0058】
図2は、第2の実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。第1の実施形態との主な違いは、第2の熱交換器10と水性ガスシフト反応器3bが組み合わされていることである。これにより、熱、すなわちアノード排気からの熱と発熱性の水性ガスシフト反応からの熱をより効果的に伝達できるため、熱交換器の効率を大幅に高めることができる。これは、熱交換器10の高温側(アノード排気側)に水性ガスシフト触媒を充填またはコーティングすることによって実現することができる。したがって、別の熱交換器17が、同じく蒸気サイクルに接続されたメタン化ユニット3aと並列に配置され、発熱メタン化反応に供給されなかったガスからの熱を、蒸気サイクル5で使用する蒸気の生成に効果的に利用することができる。
【0059】
図3は、第3の実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。第1の実施形態との主な違いは、メタン化ユニット3aと水性ガスシフト反応器3bが並列に配置され、アノード排気が水性ガスシフト反応器3bとメタン化ユニット3aを同時に通過することである。しかしながら、アノード排気は2つの別個の流れに分割され、一方はメタン化ユニット3aに供給され、もう一方は水性ガスシフト反応器3aに供給される。2つの流れへの分割は、例えば反応器の上流または下流に配置されたバルブによって制御することができる。これにより、メタンの生成に対する水素の生成の制御が容易になる。
【0060】
図4は、第4の実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。第1の実施形態との主な違いは、水性ガスシフト反応器3bが蒸気サイクル5に結合され、メタン化ユニット3aがアノード排出導管4内の二酸化炭素分離器11の下流に配置されることである。図には明示されていないが、発熱反応からの熱をより効率的に使用できるように、メタン化ユニットを蒸気サイクルに接続することもできる。さらに、メタン化ユニット3aの後、メタン化排気を新鮮な供給ガスと混合する前に、二次水除去ユニット12a(例えば、凝縮器)が配置されてもよい。二酸化炭素分離装置11は、アノード排気から二酸化炭素を分離するとともに、二酸化炭素分離装置11を通過した後のアノード排気に残留する二酸化炭素もメタン化反応により消費するので、アノード排気からの二酸化炭素の除去が大幅に改善され、炭素の形成が大幅に防止される。この構成では、残留二酸化炭素はその後メタン化によって除去されるので、二酸化炭素分離ユニット11は高い分離効率を提供する必要がない。したがって、二酸化炭素分離装置11による電力および/または熱の自己消費を低減することができ、燃料電池システム全体の効率を向上させることができる。
【0061】
図5は、第5の実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。第1の実施形態との主な違いは、水性ガスシフト反応器3bのみが蒸気サイクル5に結合され、メタン化ユニット3aが水性ガスシフト反応器3bの上流に配置され、メタン化反応が断熱的に行われ、メタン化ユニット3aには熱交換器は接続されていないことである。したがって、断熱反応器の設計によるメタン化出口の高温により、メタン化は部分的にのみ発生し、理想的には必要なガス組成を達成するためにガス流を分割する必要はない。ただし、システムをこのように簡素化するには、炭化水素供給ガスの量と燃料電池の動作条件(温度、圧力、電流/電圧)を調整するというより複雑な相互作用によって、リサイクルされたアノード排ガスの組成を制御する必要がある。
【0062】
図6は、本発明の第6実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。第2の実施形態との主な違いは、メタン化ユニット3aが第2の熱交換器10の高温側に組み込まれ、水性ガスシフト反応器3bのみが下流に配置され、蒸気サイクル5に接続されていることである。メタン化ユニット3aを第2の熱交換器10に組み込むことにより、熱交換器の効率が向上し、より多くの熱を供給ガス混合物に伝達することができる。
図5と同様に、このシステムレイアウトでは、水素と炭素の比率を調整するために、より複雑な制御が必要になる。
【0063】
図7は、第7の実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。第1の実施形態との主な違いは、水性ガスシフト反応器3bのみが蒸気サイクル5の蒸発器に接続され、メタン化ユニット3aが第2の熱交換器10の上流に配置されることである。この実施形態では、図には示されていないが、メタン化反応器は、蒸気サイクルで生成された蒸気を蒸気タービンに入る前に過熱することによってわずかに冷却され得る。したがって、蒸気サイクル5においてより高い温度レベルで熱を取り出すことができ、蒸気タービンの効率を向上させることができる。したがって、過熱蒸気を容易に生成することができ、蒸気サイクル5の出力を向上させることができる。
【0064】
図8は、本発明の第8実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。第1の実施形態との主な違いは、メタン化ユニット3aと水性ガスシフト反応器3bが直列に配置されていることである。メタン化ユニット3aのみが蒸気サイクルに熱的に接続されている。水性ガスシフト反応器3bは冷却されない。メタン化反応の熱によって生成される蒸気の一部は、メタン化ユニットに入るガスに供給されるため、熱力学的平衡を調整することにより、メタン化反応で変換されるガスの割合を希望どおりに制御できる。同時に、ガス中に追加の水蒸気が含まれるため、水性ガスシフト反応の効率が向上する。
【0065】
図9は、第9の実施形態に係る燃料電池モードで運転される潜在可逆型燃料電池システムである燃料電池システムの運転方法を示す燃料電池システム1の概略図である。このシステムはバイオガスの利用に適している。第1の実施形態との主な違いは、バイオガス中に多量の二酸化炭素が含まれるため、供給ガス(バイオガス)が燃料導管6を介して燃料導管6内に配置された二酸化炭素分離器11に直接供給されることである。あるいは、両方のガス流は、CO
2分離器11に入る前に混合することができる。したがって、アノード入口におけるCO
2の高い割合による固体炭素の形成を防止することができる。
【0066】
すべての実施形態において、電力は大量に生成される。さらに、熱利用が増加するため、いずれかの実施形態に従って運転される燃料電池システムの全体効率が非常に高くなる。
【0067】
図10~12は、燃料電池システムの異なる動作温度における1バール、2バール、および5バールの動作圧力における炭素堆積(固体炭素)の温度依存境界線を示すC-H-O三角図を示す。そこから、固体炭素の堆積を防止するための理想的な燃料電池動作条件を決定することができる。
【0068】
本発明の実施形態を図示し説明してきたが、これらの実施形態が本発明のすべての可能な形態を図示し説明することを意図したものではない。本明細書で使用される用語は、限定ではなく説明のための用語であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解される。
【符号の説明】
【0069】
1 燃料電池システム
2 燃料電池
2a アノード
2b カソード
2c 電解質
2d アノード出口
2e アノード入口
2f カソード入口
2g カソード出口
3a メタン化ユニット
3b 水性ガスシフト反応器
4 アノード排気管
5 蒸気サイクル
5a 第3熱交換器
5b タービン
5c 水蒸気凝縮器
5d ポンプ
5e 第四熱交換器
6 燃料導管
7 燃料電池システム入口
8 コンプレッサー
9 第一熱交換器
10 第二熱交換器
11 二酸化炭素分離器
12 水蒸気凝縮器または水分離器
12a 二次水分除去装置
13 酸化剤導管
14 コンプレッサー
15 熱交換器
16 カソード排気管
17 熱交換器
【国際調査報告】