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特表2024-524584複製性呼吸器ウイルスを検出するための方法およびキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】複製性呼吸器ウイルスを検出するための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20240628BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20240628BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240628BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240628BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500500
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 FR2022051366
(87)【国際公開番号】W WO2023281225
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107421
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(71)【出願人】
【識別番号】520248494
【氏名又は名称】オスピス・シヴィル・ドゥ・リヨン
【氏名又は名称原語表記】HOSPICES CIVILS DE LYON
(71)【出願人】
【識別番号】508019311
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】アサン, ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ブレンジェル-ペッス, カレン
(72)【発明者】
【氏名】モメール, マリン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、患者における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定する方法であって、上記患者の口または鼻から採取した検査試料において、ISGと呼ばれるインターフェロン刺激遺伝子から選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写物のレベルを決定するステップi)を含む方法に関する。本発明はまた、関連するキットに関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定する方法であって、上記対象の口または鼻からの検査試料において、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子から選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップi)を含む方法。
【請求項2】
ステップi)において、IFI44L、IFIT1、IFI27、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップi)において、IFI44L、IFIT1、IFI27、およびRSAD2から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記検査試料が中咽頭試料または鼻咽頭試料、または唾液試料であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ステップi)が、上記マーカー遺伝子のmRNAレベルを決定することからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
上記検査試料が、感染の症状を示す対象から得られたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
上記検査試料が、インターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象から得られたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
i)上記対象の上記検査試料について、ISGから選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)得られた上記少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルを参照レベルと比較するステップ
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの閾値を使用して、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを結論付けるステップiii)も含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
i)上記検査試料について、ISGから選択される単一のマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)得られた上記マーカー遺伝子の転写レベルを、閾値として使用される参照レベルと比較するステップであって、上記参照レベルが、複製性呼吸器ウイルスに感染しておらず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである、ステップ、
iii)上記マーカー遺伝子の上記参照レベルとの差がある場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けるステップ
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
上記マーカー遺伝子がIFIT1またはIFI44Lであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
i)上記検査試料について、ISGから選択される複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)上記検査試料において決定された各マーカー遺伝子の転写レベルを、閾値として使用される上記マーカー遺伝子に対応する参照レベルと比較するステップであって、上記参照レベルが、複製性呼吸器ウイルスに感染しておらず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである、ステップ、
iii)上記検査試料において上記転写レベルが決定された上記マーカー遺伝子の少なくとも1つについて、上記対応する参照レベルとの差がある場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けるステップ
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
上記差は、上記検査試料について決定された上記マーカー遺伝子の転写レベルが上記参照レベルよりも大きいことに対応することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
i)上記検査試料について、ISGから選択される複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)上記検査試料において決定された各マーカー遺伝子の転写レベルを、上記マーカー遺伝子に対応する参照レベルと比較し、上記マーカー遺伝子の上記参照レベルに対する上記転写レベルの比を算出するステップであって、好ましくは、上記参照レベルが、呼吸器ウイルスに感染していない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである、ステップ、
iibis)ステップii)で得られたすべての比の中央値を算出するステップ、および
iii)ステップiibis)で算出された上記中央値が、1.5に等しいことが好ましい閾値より大きい場合、複製性呼吸器ウイルスの感染が上記対象に存在すると結論付けるステップ
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
上記マーカー遺伝子の転写レベルの決定が、ハイブリダイゼーション、増幅、または配列決定、特にRT-qPCRによって行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
得られた上記マーカー遺伝子の転写レベルが、特にDECR1、HPRT1、およびPPIBから選択される、1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子の転写レベルに対して正規化された値であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
ステップi)の前にまたはステップi)と同時に、上記検査試料を、特にSARS-CoV-2ウイルスおよびインフルエンザウイルスから選択される、呼吸器ウイルスのDNAまたはRNAの検出、特にPCRまたはRT-PCRによる診断検査に供することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
上記検査試料を、SARS-CoV-2ウイルスおよびインフルエンザウイルスから選択される呼吸器ウイルスのDNAまたはRNAの検出、特にPCRまたはRT-PCRによる診断検査に供し、好ましくは、上記診断検査は、ステップi)の前に実施され、陽性の結果を与えることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定するためのキットであって、
オリゴヌクレオチドから選択されるISGから選択されるマーカー遺伝子の転写レベルを決定するための少なくとも1つの手段、
コンピュータ読み取り可能な媒体に格納された少なくとも1つの閾値であって、複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、または複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応する少なくとも1つの閾値
を含むキット。
【請求項20】
コンピュータ読み取り可能な媒体に格納された上記マーカー遺伝子の少なくとも1つの参照レベルも含み、好ましくは、上記参照レベルが、呼吸器ウイルスに感染していない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルであることを特徴とする、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
呼吸器ウイルスを検出するための少なくとも1つの手段も含むことを特徴とする、請求項19または20に記載の検出キット。
【請求項22】
対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定するためのキットであって、
オリゴヌクレオチドから選択されるISGから選択されるマーカー遺伝子の転写レベルを決定するための少なくとも1つの手段、
呼吸器ウイルスのDNAまたはRNAを検出および/または増幅するための少なくとも1つの手段
を含むキット。
【請求項23】
コンピュータ読み取り可能な媒体に格納された少なくとも1つの閾値も含むことを特徴とする、請求項22に記載の検出キット。
【請求項24】
上記閾値が、複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、または複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応することを特徴とする、請求項23に記載の検出キット。
【請求項25】
コンピュータ読み取り可能な媒体に格納された上記マーカー遺伝子の少なくとも1つの参照レベルも含み、好ましくは、上記参照レベルが、呼吸器ウイルスに感染していない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルであることを特徴とする、請求項23に記載の検出キット。
【請求項26】
コンタミネーションがないことを確認できる陰性対照試料、および/または複製性呼吸器ウイルスに感染した対象、または複製性呼吸器ウイルスに感染した対象の集団における転写レベルを代表する濃度の上記マーカー遺伝子のレベルに対応する陽性対照試料も含むことを特徴とする、請求項19または22に記載の検出キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断方法およびキットの技術分野に関する。特に、本発明の主題は、対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを決定するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、対象におけるウイルスのDNAまたはRNAを検出するための多くの技法が利用可能である。これは特に病原性SARS-CoV-2ウイルスの場合であり、いくつかのPCR検査が利用可能で、主に当該対象からの鼻咽頭試料または唾液試料で実施される。qRT-PCR検査について、特に、bioMerieuxのSARS-COV-2 RESPI R-GENE(R)検査、bioMerieuxのBioFire(R)COVID-19検査、Bio-RadのSARS-CoV-2 ddPCR検査、AbbottのRealTime SARS-CoV-2検査、Altona-diagnosticsのRealStar(R)RSV RT-PCR検査、AbbottのALINITY m RESP-4-PLEX ASSAY検査、Roche Diagnosticsのcobas(R)SARS-CoV-2検査などが挙げられる。
【0003】
しかし、PCRの結果は、日常臨床診療において、臨床症状がない場合、解釈が難しいことが多い(Han,M.S.ら,2021)。特に、PCR検査では、ウイルスのDNAまたはRNAゲノムの断片、したがって、活性のない、すなわち対象の体内で複製する能力を持たないウイルスの存在しか検出できない。多くのウイルス感染や細菌感染に関連し得る症状、特に軽度(または弱い)と言える症状の存在は、複製性呼吸器ウイルスの存在を示すものでもない。さらに、多くの呼吸器ウイルスが循環している秋から冬の時期には、感染を疑う発熱などの症状と、直接の原因である複製性呼吸器ウイルスの存在を関連付けることが困難な場合がある。したがって、SARS-CoV-2のような複製性呼吸器ウイルスの感染の存在を対象において決定する手段を特定することに大きな関心が寄せられている。これによって、特にウイルス伝播の危険性がある患者を迅速に特定すること、また、特にSARS-CoV-2の場合、汚染源となり得ないまたはもはやなり得ない患者の隔離措置を回避することが可能になるであろう。
【0004】
SARS-CoV-2に代表される呼吸器ウイルス感染は、まず上気道を介して起こるが、I型およびIII型インターフェロン(IFN-IおよびIII)を介する鼻粘膜の免疫については、呼吸器ウイルス感染時の特徴付けが乏しいままである。
【0005】
最近、Monel B.ら,2021では、鼻咽頭試料における様々なインターフェロンおよびインターロイキンの産生を調べ、それらの産生と複製性SARS-CoV-2ウイルスの感染の存在との相関を研究した。他の著者らは、SARS-CoV-2のPCR検査が陽性であった患者において、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子の発現レベルについても研究し、抗SARS-CoV-2粘膜免疫応答におけるインターフェロンの役割を確認した(Mick,E.ら,2020、およびNg,D.L.ら,2021)。しかし、ISG発現レベルに関する研究では、PCR検査陽性に対応するウイルスの複製性または非複製性については全く研究されておらず、また、接触伝染性を評価するために、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子の発現レベルを調査する可能性についても言及されていない。
【0006】
Gupta R.K.ら,2021による出版物は、SARS-CoV-2の鼻咽頭PCR検査の陽性を予測するためのウイルス感染のトランスクリプトームシグネチャーの診断精度の評価に関する。結果に応じて、インターフェロン-1シグナル伝達経路を反映するいくつかのシグネチャーによって、SARS-CoV-2に対する陰性対照検査と陽性PCR検査とを識別することが可能である。しかしここでも、ウイルスの複製性は陽性PCR検査では評価されず、ウイルスの接触伝染性を同定することは不可能であった。
【0007】
特許出願WO2019/236768も、対象の1つまたは複数の遺伝子(宿主遺伝子)の発現レベルに基づいて、対象における呼吸器感染を検出する方法を提案している。IFIT1、IFIT2、IFIT3、およびRSAD2のようないくつかのISGを含む宿主遺伝子の非常に長いリストが示されているが、これらは選択することが特に有利であるとは提示されていない。さらに、対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを知ることは、上記特許出願では全く扱われていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この文脈において、本発明は、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定する方法であって、上記対象の口または鼻からの検査試料において、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子から選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子(以下、分かりやすくするためにISGマーカー遺伝子、またはより簡単にマーカー遺伝子もしくはISGと称する)の転写レベルを決定するステップi)を含む方法に関する。
【0009】
有利には、ステップi)において、IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルが決定される。これらすべてのマーカー遺伝子の転写レベルが決定されてもよい。特に、IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルが決定される。有利には、すべてのマーカー遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2の転写レベルが決定される。複数のマーカー遺伝子の転写レベルが決定される場合、各マーカー遺伝子の転写レベルは独立して決定されてもよいし、使用されるすべてのマーカー遺伝子の異なる転写物が同時に決定されてもよく、そのレベルは全体的に決定される。複数のマーカー遺伝子の転写レベルが独立して決定される場合、これらすべてのマーカー遺伝子の転写レベルを表すデータ(特に、実施例で使用されるようなスコア)が算出されてもよい。
【0010】
有利には、検査試料は中咽頭試料または鼻咽頭試料または唾液試料である。
【0011】
本発明の文脈では、ステップi)が、上記マーカー遺伝子のmRNAレベルを決定することからなることも有利である。
【0012】
本発明による方法は、その実施形態が何であれ、感染の症状を示す対象からの試料、または無症状の対象からの試料に対して実施されてもよい。本発明による方法は、無症状の対象、または疲労、疼痛や痛み、筋肉痛、発熱、呼吸器症状、特に肺障害を伴わない咳、頭痛、咽喉痛、倦怠感、悪心、嘔吐、下痢、嗅覚消失、または味覚消失などの軽度と言える症状を呈する対象の場合に特に有利である。
【0013】
本発明の文脈では、検査試料はいつでも入手または採取することができる。症状のある対象の場合、検査試料は症状の発症前または発症後に入手または採取することができる。検査試料は、呼吸器ウイルスに感染していると診断されたまたは診断されていない対象、特に上記ウイルスのDNAまたはRNAを検出することにより、呼吸器ウイルスのスクリーニングまたは診断結果を待っている対象など、どのようなタイプの対象から得られたものであってもよい。
【0014】
特定の実施形態によれば、本発明による方法は、その実施形態の変形例にかかわらず、インターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象からの試料に対して実施することができる。
【0015】
特に、本発明による方法は、
i)対象の上記検査試料について、ISGから選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)得られた上記少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルを参照レベルと比較するステップ
を含むことができる。
【0016】
本発明による方法は、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを結論付けるステップiii)を含む。このような結論は、少なくとも1つの閾値を使用して到達される。「閾値」という用語は、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の有無に関する結論に到達するのに関連する所定の値を意味する。比較は、閾値と、上記対象の検査試料について決定された少なくとも1つのISGマーカー遺伝子の転写レベル、または上記対象の検査試料について決定された少なくとも1つのISGマーカー遺伝子の転写レベルから得られたデータ(特にスコア)との間で行われる。上記データ(またはスコア)は、特に、上記対象の検査試料について決定された複数のISGマーカー遺伝子の転写レベルから得ることができる。比較の結果に応じて、特に、上記対象の検査試料について決定された少なくとも1つのISGマーカー遺伝子の転写レベル、または上記対象の検査試料について決定された少なくとも1つのISGマーカー遺伝子の転写レベルから得られたデータもしくはスコアが異なる、特に閾値より大きい場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられる。
【0017】
本発明による方法の第1の実施形態によれば、ステップiii)において、ステップii)の結果、すなわち、得られた上記少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルと、上記マーカー遺伝子の参照レベル(その後、閾値となる)との比較の結果に基づいて、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを結論付けることができる。これは特に、本発明による方法において、単一のISGマーカー遺伝子の転写レベルが決定される場合である。また、これは、複数のISGマーカー遺伝子の転写レベルが全体的に決定され、この全体的なレベルが全体的な参照レベルと比較される場合でもある。
【0018】
この第1の実施形態では、一般的に、マーカー遺伝子の転写レベルが比較される閾値として使用される参照レベルは、参照対象、特に複製性呼吸器ウイルスに感染していない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応する。複製性呼吸器ウイルスに感染していない対象には、呼吸器ウイルスの存在を検出するための検査において陽性であるが、ウイルスが複製していない対象、および呼吸器ウイルスに感染していない対象(呼吸器ウイルスの存在を検出するための検査において陰性)が含まれる。特に、参照レベルは、呼吸器ウイルスを検出するための検査に対して陽性であるか否かにかかわらず、複製性呼吸器ウイルスの感染を示さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象における上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応するか、または、参照レベルは、呼吸器ウイルスを検出するための検査に陽性であるか否かにかかわらず、複製性呼吸器ウイルスの感染を示さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さないそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応する。
【0019】
第1の実施形態の第1の変形例によれば、ISGから選択される単一のマーカー遺伝子の転写レベルはステップi)において決定され、上記マーカー遺伝子の参照レベルとの差がある場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられる。したがって、本発明は、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定する方法であって、
i)上記対象の口または鼻からの検査試料において、ISGから選択される単一のマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)得られた上記マーカー遺伝子の転写レベルを、閾値として使用される参照レベルと比較するステップであって、上記参照レベルが、参照対象、特に複製性呼吸器ウイルスに感染しておらず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである、ステップ、
iii)上記マーカー遺伝子の上記参照レベルとの差がある場合、複製性呼吸器ウイルスの感染が上記対象に存在すると結論付けるステップ
を含む方法に関する。
【0020】
特に、上記差は、検査試料の上記マーカー遺伝子の転写レベルが参照レベルよりも大きいことに対応する。
【0021】
このような場合、ISGから選択される上記マーカー遺伝子は、好ましくはIFIT1またはIFI44Lである。
【0022】
第1の実施形態の第2の実施形態変形例によれば、
・ISGから選択される複数のマーカー遺伝子の転写レベルは、ステップi)において検査試料について決定することができ、
・検査試料について決定された各マーカー遺伝子の転写レベルは、上記対応するマーカー遺伝子の参照レベルと比較することができる。
【0023】
この第2の実施形態変形例では、検査試料において転写レベルが決定されたマーカー遺伝子の少なくとも1つについて、閾値として使用される対応する参照レベルとの差がある場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けることができる。
【0024】
したがって、本発明は、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定する方法であって、
i)上記対象の口または鼻からの検査試料において、ISGから選択される複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)検査試料において決定された各マーカー遺伝子の転写レベルを、考慮される各マーカー遺伝子について閾値として使用される上記マーカー遺伝子に対応する参照レベルと比較するステップであって、上記参照レベルが、参照対象、特に複製性呼吸器ウイルスに感染しておらず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである、ステップ、
iii)検査試料において転写レベルが決定されたマーカー遺伝子の少なくとも1つについて、対応する参照レベルとの差がある場合において、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けるステップ
を含む方法に関する。
【0025】
特に、上記差は、検査試料についての上記マーカー遺伝子の転写レベルが、上記マーカー遺伝子の参照レベルに対応するものよりも大きいことに対応する。
【0026】
有利には、第1の実施形態の第2の実施形態変形例では、ステップi)において、IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルが決定される。これらすべてのマーカー遺伝子の転写レベルが決定されてもよい。特に、IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルが決定される。有利には、すべてのマーカー遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2の転写レベルが決定される。
【0027】
本発明による方法の第2の実施形態によれば、ステップiii)において、検査試料について、ISGから選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルから得られるデータが得られる中間ステップiibis)を実行することにより、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを結論付けることができる。これは特に、検査試料について、複数のISGマーカー遺伝子の転写レベルがステップi)で決定される場合である。比較ステップii)は、各ISGマーカー遺伝子の転写レベルが上記マーカー遺伝子の参照レベルと比較される間に実施されてもよく、特に上記比較は、比、特に各マーカー遺伝子の上記転写レベルと上記マーカー遺伝子の参照レベルとの比を算出する形式をとる。次いで、中間ステップiibis)が実施されてもよく、このステップは、各マーカー遺伝子について実施された比較の結果を表すスコアを算出することからなってもよい。このようなスコアは、例えば、得られたすべての比(特に、検査試料についての各ISGマーカー遺伝子の転写レベル/上記マーカー遺伝子に対応する参照レベル)の中央値である。次いで、このスコアを閾値、特に1.5と比較することにより、目的の対象において複製性呼吸器ウイルスの感染があるか否かを結論付けることで結論に達することができる。検査試料について得られたスコアがこの閾値、特に1.5より大きい場合、複製性呼吸器ウイルスの感染があると結論付けられる。
【0028】
有利には、本発明による方法の第2の実施形態では、ステップi)において、IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルが決定される。これらすべてのマーカー遺伝子の転写レベルが決定されてもよい。特に、IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルが決定される。有利には、すべてのマーカー遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2の転写レベルが決定される。
【0029】
したがって、本発明による方法の第2の実施形態の例として、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定する方法であって、
i)上記対象の口または鼻からの検査試料において、ISGから選択される複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップ、
ii)上記検査試料において決定された各マーカー遺伝子の転写レベルを、上記マーカー遺伝子に対応する参照レベルと比較し、上記マーカー遺伝子の上記転写レベルと上記参照レベルとの比を算出するステップ、
iibis)ステップii)で得られたすべての比の中央値を算出するステップ、
iii)ステップiibis)で算出された上記中央値が、1.5に等しいことが好ましい閾値より大きい場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けるステップ
を含む方法を挙げることができる。
【0030】
このような方法では、したがって、1.5という値は、複製性呼吸器ウイルスの感染の有無を結論付けるために使用される閾値と考えることができる。
【0031】
有利には、本発明による方法の第2の実施形態では、ステップi)において検査試料における転写レベルが決定される各マーカー遺伝子について、比の算出に使用される参照レベルは、呼吸器ウイルスに感染していない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである。呼吸器ウイルスに感染していない対象とは、特に、呼吸器ウイルスの存在を検出するための検査に対して陰性である対象である。好ましくは、比を算出するために使用される参照レベルは、呼吸器ウイルスに感染しておらず、インターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである。
【0032】
本発明による方法は、その実施形態が何であれ、ステップi)の前にまたはステップi)と同時に実施されるステップを含むこともでき、その工程において、検査試料は、呼吸器ウイルス、特にSARS-CoV-2ウイルスのDNAまたはRNAの検出、特にPCRまたはRT-PCRによる診断検査に供される。特に、上記診断検査はステップi)の前に実施され、陽性の結果を与える。
【0033】
特定の実施形態によれば、本発明による方法では、検査試料は、SARS-CoV-2ウイルスおよびその変異体ならびにインフルエンザウイルス、特にインフルエンザA型、B型およびC型から選択される呼吸器ウイルスのDNAまたはRNAの検出、特にPCRまたはRT-PCRによる診断検査に供されるが、上記診断検査は陽性結果を与える。このような診断検査は、ステップi)の前にまたはステップi)と同時に実施することもでき、陽性または陰性の結果は、上記対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の有無を決定する前または後に得ることができる。
【0034】
本発明の文脈では、実施形態の変形例が何であれ、マーカー遺伝子の転写レベルは、特にmRNAレベルで決定される。転写レベルは、特にハイブリダイゼーション、増幅、または配列決定、特にRT-qPCRによって決定される。
【0035】
本発明によれば、得られたマーカー遺伝子の転写レベルは、特にDECR1、HPRT1、およびPPIBから選択される、1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子の転写レベルに対して正規化された値であってもよい。
【0036】
本発明はまた、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定するためのキットであって、
・特にオリゴヌクレオチドから選択される、ISGから選択されるマーカー遺伝子の転写レベルを決定するための少なくとも1つの手段、
・コンピュータ読み取り可能な媒体に格納され、および/または決定手段で決定された上記マーカー遺伝子の転写レベル、もしくは上記マーカー遺伝子の転写レベルから得られたデータを上記閾値と比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される少なくとも1つの閾値
を含むキットに関する。
【0037】
複数のISGマーカー遺伝子が使用される場合、上記キットは一般に、それらそれぞれの転写レベルを決定するための少なくとも1つの手段を含むことになる。
【0038】
複数のISGマーカー遺伝子が使用される場合、上記キットは、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納され、および/またはコンピュータ実行可能コードの形態で使用される、それらそれぞれについての閾値および/または参照レベルを含むことができる。
【0039】
複数のマーカー遺伝子が使用される場合、上記キットは、各マーカー遺伝子とその参照データとの比較から全体的な参照データを生成し、この全体的なデータを閾値と比較するための実行可能コードも含むことができる。この場合、各マーカー遺伝子のレベルとその参照レベルとの比較は、先に説明したように、比を算出する形式をとることができる。
【0040】
特定の実施形態によれば、上記閾値は、複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、または複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応する。
【0041】
特定の実施形態によれば、本発明によるこのようなキットはまた、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納され、および/または決定手段で決定されたマーカー遺伝子の転写レベルを上記参照レベルと比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される上記マーカー遺伝子の少なくとも1つの参照レベルを含み、好ましくは、上記参照レベルは、呼吸器ウイルスに感染していない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである。
【0042】
有利には、本発明によるこのようなキットは、呼吸器ウイルスを検出するための少なくとも1つの手段、特にSARS-CoV-2ウイルスを検出するための少なくとも1つの手段、および/またはインフルエンザウイルス(インフルエンザA型、B型またはC型)を検出するための少なくとも1つの手段も含む。
【0043】
本発明はまた、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定するためのキットであって、
・特にオリゴヌクレオチドから選択される、ISGから選択されるマーカー遺伝子の転写レベルを決定するための少なくとも1つの手段、
・呼吸器ウイルスを検出するための少なくとも1つの手段、特にSARS-CoV-2ウイルスを検出するための少なくとも1つの手段
を含むキットに関する。
【0044】
有利には、そのようなキットは、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納され、および/または決定手段で決定された上記マーカー遺伝子の転写レベル、もしくは上記マーカー遺伝子の転写レベルから得られたデータを上記閾値と比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される少なくとも1つの閾値を含む。
【0045】
特定の実施形態によれば、上記閾値は、複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、または複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応する。
【0046】
他の実施形態によれば、本発明によるこのようなキットはまた、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納され、および/または決定手段で決定されたマーカー遺伝子の転写レベルを上記参照レベルと比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される上記マーカー遺伝子の少なくとも1つの参照レベルを含み、好ましくは、上記参照レベルは、呼吸器ウイルスに感染していない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである。
【0047】
その実施形態が何であれ、本発明による検出キットはまた、コンタミネーションがないことを確認できる試料のような陰性対照試料、および/または複製性呼吸器ウイルスに感染した対象、または複製性呼吸器ウイルスに感染した対象の集団における転写レベルを代表する濃度の上記マーカー遺伝子の転写レベルに対応する陽性対照試料を含むことができる。
【0048】
本発明は、図面を参照しながら、以下の詳細な説明に照らしてよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】鼻咽頭スワブ(NP)から得られた鼻腔I/III型ISGスコアと、PAXgeneTM全血試料(PX、n=23人の患者から得られた75個の縦断試料)から得られた血液I/III型ISGスコアとの相関を示す図である。各種スコアは、FilmArray(R)技術を用いて測定された。Spearmanの相関係数を示す。
【0050】
図2】FilmArray(R)技術によって決定された鼻腔(鼻咽頭はNP)ISGスコアは、市販のキットを用いて1分子アレイ(SIMOA(R))によって測定された血漿中IFN-α2レベル(fg/ml)(n=23人の患者から得られた検出可能な値を有する39個の試料)と相関することを示す図である。Spearmanの相関係数を示す。
【0051】
図3】COVID-19診断後のNP(灰色の四角)および血液(黒の四角)ISGスコアの動態測定を示す図である。n=23人の患者から得られた75個の縦断試料。Loessフィット曲線は、Loess法によって決定される局所多項式回帰を表す。95%CIを示す(灰色部分)。
【0052】
図4】鼻腔SARS-CoV-2ウイルス培養が陰性または陽性の患者におけるNP ISGスコアの散布図を示す図である(n=12人の患者から得られた30個の縦断試料)。黒丸は陰性ウイルス培養試料、空丸は陽性ウイルス培養試料を表し、三角形は細胞変性効果のない陽性細胞培養試料に対応する。
【0053】
図5】SARS-CoV-2ウイルス培養の結果が陽性か陰性かを区別するROC(受信者動作曲線、Receiver Operating Curve)である。曲線下面積とYouden指数が示されており、NP I/III型ISGスコアがウイルス培養の陽性と陰性を分ける能力を表している。
【0054】
図6】NP試料(実線、FilmArray(R))の1/10段階希釈(10~10-2)後に測定した鼻腔I/III型ISGスコアと、SARS-CoV-2検出(Ct検出、破線、SARS-CoV-2 R-gene(R)キット)を示す図である。下の灰色部分は、正常な鼻腔I/III型ISGスコアの閾値(1.99)を示し、上の灰色部分は、複製性ウイルスのウイルス培養に関連するI/III型鼻腔ISGスコアの値6.75を示している。
【0055】
図7】抗IFN自己抗体(nAb)を持たない重症COVID-19患者(空丸)または中和抗IFN-α自己抗体を持つ重症COVID-19患者(黒三角)における正規化鼻腔ウイルス量およびNP I/III型ISGスコアを比較した図である。灰色部分は、鼻腔I/III型ISGスコア>6.75(複製性ウイルスのウイルス培養に関連する分離値)の軽度COVID-19患者の90%で得られたウイルス量を示す。
【0056】
図8】I/III型IFNスコアについて、ウイルスPCRの結果が陽性か陰性かを識別するROC曲線である。曲線下面積、Youden指数、およびカットオフポイントが示されており、鼻腔I/III型IFNスコアがPCR陽性試料と陰性試料を識別する能力を表す。
【0057】
図9】ウイルスPCRが陰性(n=23)またはインフルエンザウイルス(インフルエンザB型)PCRが陽性(n=42)であった人のNP試料について、ウイルスPCRの関数としてIFN I/IIIスコアを表したグラフである。比較は、Kruskal-Wallis検定と、それに続くDunn多重比較検定を用いて行った(p<0.0001****)。
【0058】
図10】(A)IFI27 mRNA発現レベル対ウイルスPCR、(B)IFI44L mRNA発現レベル対ウイルスPCR、(C)RSAD2 mRNA発現レベル対ウイルスPCR、および(D)IFIT1 mRNA発現レベル対ウイルスPCRを表すグラフを示す。mRNA発現レベルは、HV集団からの同じISGのRQ中央値に対するISG RQのlog2比として表される。RQは、BioFire(R)IFN FilmArray(R)パウチパネルで得られたCtを、ハウスキーピング遺伝子のGQの幾何平均で割ったGQ(2-CT)に変換することにより、NP NEG(n=23)およびGRB(n=42)試料について算出した。NP(鼻咽頭)、GRB(インフルエンザB型ウイルス)、HV(健康なボランティア)、RQ(相対量)、GQ(総量)。
【0059】
図11】インフルエンザウイルス(インフルエンザB型)(n=7;n=28)およびRSV(n=25;n=7)に感染した患者のNP試料について、ウイルス培養の関数としてFilmArray IFN I/IIIスコアを表すグラフである。比較は、ノンパラメトリックWilcoxon MannおよびWithney検定を用いて行った(p<0.0001***)。
【0060】
図12】鼻腔IFN I/IIIスコアについてインフルエンザウイルス培養の結果が陽性か陰性かを識別するROC曲線である。曲線下面積、Youden指数、カットオフポイントが示されており、鼻腔IFN I/IIIスコアとウイルス量が培養の陽性と陰性を識別する能力を表す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の文脈で使用される特定の用語および表現について、以下に詳述する。
【0062】
「対象」という用語は哺乳動物を示し、好ましくはヒトである。ヒトである上記対象は、医師(例えば、一般医)のような医療専門家、または医療機関もしくは保健施設(例えば、病院もしくは診療所、より詳細には、救急部、蘇生部、集中治療室もしくは継続治療室、または老人ホームタイプの高齢者のための医療機関)と接触のある患者であってもよい。
【0063】
「対象の口または鼻からの試料」としては、対象の鼻または口から採取した試料であってもよいし、対象が放出した空気の試料であってもよい。試料は鼻腔試料でも唾液試料でもよいが、好ましくは中咽頭試料または鼻咽頭試料である。中咽頭試料または鼻咽頭試料は、特に、それぞれ対象の口または鼻の奥でスワブ採取を行うことによって得られる。
【0064】
「複製性ウイルス」という用語は、上記対象内で増殖可能なウイルスを意味する。したがって、複製性ウイルスに感染した対象は、そのようなウイルスを別の対象に伝播する媒介物となる。特に、複製性ウイルスという概念は、複製能力を失ったウイルス断片を除外する。このようなウイルス断片は、DNAまたはRNAウイルス検出検査で陽性の結果を与えるものであるが、対象内で複製する能力を持たない可能性があり、したがって、対応するウイルスを伝播する媒介物にはなり得ない。複製性ウイルスが存在する場合、ウイルスを伝播するリスクは大きいが、複製する能力がない場合はそうではない。ウイルスの増殖(複製)能力、したがってその複製性は、増殖(ウイルス量の増加)という事実によって定義することができ、それは、培養したとき、またはそのような複製性ウイルスを含む可能性が高い採取検査試料の一部をVero細胞のような上皮細胞上で培養したときに、細胞変性効果が観察されることによって反映され得る。ウイルスの複製能力を検査するのに特に適したVero細胞は、特にATCC番号CCL-81(R)で寄託されたもの、またはATCC番号CRL-1586(R)で寄託されたVero E6細胞である。細胞変性効果は、特に、複製性ウイルス粒子の存在に特徴的な溶解の斑点の存在によって実体化し得る。ウイルス増殖の実証に使用できる、上皮細胞上でウイルスまたは試料を培養するためのプロトコールは、当業者に広く知られており、例えば、Leland D.S.ら,2007、より具体的には、Stelzer-Braid S.ら,2020に記載されている。しかしながら、このような方法は、ある一定の時間、特に少なくとも96時間を必要とするのに対し、本発明による方法では、複製性呼吸器ウイルスの有無に関する結論を、通常45分から6時間の時間で得ることが可能である。複製性ウイルスに感染した対象がそのようなウイルスを別の対象に伝播する媒介物であることを考慮すると、対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを決定するための方法、使用およびキットを提案することは、本発明の文脈において、特にSARS-CoV-2ウイルスのパンデミックの文脈において、特に有利である。
【0065】
「呼吸器ウイルス」という用語は、気道および/または肺に感染するウイルスを意味する。このようなウイルスは、従来、対象の鼻、のどおよび/または口から採取した試料、特に鼻腔または鼻咽頭試料(鼻のより奥から採取する必要がある)、中咽頭試料(のどの奥から採取する必要がある)、または唾液から確認される。挙げることができる呼吸器ウイルスの例としては、季節性コロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス(その変異体も含む)、インフルエンザウイルス(インフルエンザA型、B型およびC型)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどが挙げられる。現在までに知られているSARS-CoV-2ウイルスの変異体は、特に、いわゆる英国型、ブラジル型、南アフリカ型、アメリカ型およびインド型変異体である。これらの変異体とその名称に関する知識は進化しており(https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20210225_weekly_epi_update_voc-special-edition.pdf?sfvrsn=1eacfa47_7&download=true)、本発明はそれらそれぞれに適用可能である。SARS-CoV-2の「英国型変異体」は2020年9月20日にケント州(イングランド南東部)で発見された(https://www.lemonde.fr/blog/realitesbiomedicales/tag/vui-202101-01/)。12月14日に、英国は世界保健機関(WHO)にこの変異体の流布を報告した。当初はVUI 202012/01(Variant Under Investigation、2020年、12月、変異体01)と命名されたが、2020年12月18日にVOC202012/01(Variant Of Concern)とすぐに改名された。系統樹ではB.1.1.7系統の一員であり、69-70欠失(ΔH69/V70とも表記される)を含む。ブラジル型変異体P.1は、B.1.1.28系統(リオデジャネイロ州で広く流布し、おそらく2020年2月にブラジルで出現した)の子孫である。このブラジル型P.1変異体は多数の変異を含んでおり、特にE484K、K417TおよびN501Yである。ブラジルに存在する系統に由来する日本型変異体(B.1.1.28)には、非常に多くの遺伝子変化が含まれている。スパイクタンパク質に12個のアミノ酸変異、特にN501Y、E484KおよびK417T変異を含む。501Y.V2(B.1.351系統)と名付けられた南アフリカ型変異体もまた、スパイクタンパク質のRBDドメイン(受容体結合ドメイン)に位置するK417N、E484K、およびN501Yの3つを含む多くの変異を含んでいる。
【0066】
特定の実施形態によれば、呼吸器ウイルスは、SARS-CoV-2ウイルス、インフルエンザウイルス(インフルエンザA型、B型およびC型)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス、およびアデノウイルスから選択され、好ましくは、SARS-CoV-2ウイルスおよびその変異体、ならびにインフルエンザウイルス(インフルエンザA型、B型およびC型)から選択される。
【0067】
したがって、この実施形態の1つの変形例によれば、呼吸器ウイルスは、SARS-CoV-2ウイルスおよびその変異体から選択される。この実施形態の別の変形例によれば、呼吸器ウイルスは、インフルエンザA型、B型およびC型ウイルス、好ましくはインフルエンザB型ウイルスから選択される。
【0068】
インターフェロン(IFN)は、自然免疫受容体が病原体を認識した後、体内で最初に産生される分子の1つである。インターフェロンは文献に広く記載されている。例えば、Manry J.ら,2012およびHertzorg P.J.ら,2016が挙げられる。ヒトIFNは、その受容体、相同性、および染色体上の位置から3つのタイプに分類されている。I型IFNは17種類あり、13種のIFN-αサブタイプ、およびIFN-β、ε、κおよびωである。これらのIFNをコードする遺伝子は第9染色体上にあり、IFNAR1およびIFNAR2サブユニットからなる単一の受容体に結合する。唯一のII型IFNであるIFN-γは、第12染色体上に位置する遺伝子の産物であり、IFN-γR1およびIFN-γR2サブユニットからなる受容体を用いる。III型IFNはより最近報告されたものであり、サイトカインIL-28A、IL-28B、およびIL-29(IFN-λ2、IFN-λ3、およびIFN-λ1としても知られている)に対応する。これらのIFNをコードする遺伝子は第19染色体上に存在する。インターフェロンは、数百の遺伝子、いわゆるインターフェロン刺激遺伝子(ISG)の発現を制御する。分泌されたI型IFNは、インターフェロン受容体(IFNAR)に結合し、それがヤヌスキナーゼ1(JAK1)とチロシンキナーゼ2(Tyk2)を介してシグナル伝達を行い、STAT1、STAT2、およびIRF9の産生を活性化する。後者はISGF-3複合体を形成し、それが核に移行してゲノム中のインターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)に結合することで、何百ものISGの発現を誘導し、それらのほとんどが抗ウイルス活性を有する。分泌されたIII型IFNは、IFNLRとIL10RBからなる別の受容体に結合するが、依然として同じISGF-3を活性化し、大部分が重複するISGを誘導する(Lazear,H.M.ら,2019)。IFN-IおよびIIIは、ウイルス排除を促進し、組織修復を誘導し、適応免疫応答を刺激することから、感染に対する防御の第一線として関与している。
【0069】
挙げることができるISG遺伝子の例は、ADAR、BST2、CHUK、DDX58、EIF2AK2、FOS、GBP2、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、IFI35、IFI6、IFIH1、IFIT2、IFIT3、IFITM1、IFITM2、IFITM3、IFNA14/16、IFNA2、IFNA4/7/10/17/21、IFNA5、IFNA6、IFNA8、IFNAR1、IFNAR2、IFNB1、IKBKB、IKBKE、IKBKG、IRF1、IRF3、IRF4、IRF7、IRF9、JAK1、JUN、MAP3K7、MAPK14、MAPK8、MAVS、MX1、MYD88、NFKB1、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、PSMB8、PTPN6、RIPK1、RNASEL、SAMHD1、SOCS1、SOCS3、STAT1、STAT2、TBK1、TLR7、TRAF3、TRAF6、TYK2、XAF1、IFNL1、IFNL2/3、IFNL4、IFNLR1、IL10RB、IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1を含む。IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択されるISG(Picard C.ら,2018)が、本発明の文脈において好ましい。これらの配列は、ENSEMBLおよびNCBIデータベースに示されている。これらのISGは、特に、I型およびIII型インターフェロンによって刺激される。IFI27、IFI44L、RSAD2、およびIFIT1は、IFN刺激遺伝子因子3(IGF3)依存性ISREエレメントを介して制御される4つのISGであるが、本発明の文脈においてさらに好ましい。
【0070】
特に、本発明の文脈では、IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される1つまたは複数のISG型マーカー遺伝子の転写レベルが決定される(Picard Cら,2018)。
【0071】
「中和抗体」という用語は、対象とする標的の作用を中和する抗体を意味する。
【0072】
「自己抗体」という用語は、自己タンパク質に対する自己生成された抗体を意味する。このような自己抗体は、感染がなくても生じることがある。
【0073】
「症状」という用語は、あらゆる種類の症状を意味し、例えば、疲労、疼痛や痛み、発熱、肺障害を伴わない咳などの呼吸器症状、頭痛、嗅覚消失もしくは味覚消失などの軽度と言える症状、あるいは集中治療室への入院や呼吸補助が必要な重度の症状が挙げられる。SARS-CoV-2の場合、症状に基づいて無症候性から重篤SARS-CoV-2感染(PCR検査または抗原検査でSARS-CoV-2陽性と出た人について)の分類が確立されている(Trouillet-Assant,S.ら,2020、およびhttps://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/overview/clinical-spectrum/):
・無症候性または前症候性感染:ウイルス学的検査でSARS-CoV-2が陽性と出たが、COVID-19に適合する症状がない人
・軽度感染:COVID-19の様々な徴候や症状(例えば、発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪心、嘔吐、下痢、味覚および嗅覚の消失)のいずれかを有するが、息切れ、呼吸困難、または胸部画像異常のない人
・中等度感染:臨床評価または画像診断で下気道疾患の徴候があり、室内空気および海面位での酸素飽和度(SpO2)が94%以上の人
・重症感染:室内空気と海面位でのSpO2が94%未満、動脈酸素分圧と吸入酸素分率の比(PaO2/FiO2)が300mmHg未満、呼吸数が30回/分超、または肺浸潤が50%超の人
・重篤感染(敗血症):呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器不全を患う人
【0074】
特に、本発明による方法は、無症候性、前症候性、軽度または中等度のSARS-CoV-2感染を有する対象の試料に対して実施することができる。
【0075】
2つの値またはレベルの間の「差」の「比較」または検証は、あらゆる既知の技法、特にあらゆる自動化された、コンピュータ化されたまたはコンピュータ支援された技法によって行うことができる。「差」の比較または検証は、比または差の算出を伴ってもよい。
【0076】
本発明の文脈では、検査試料が採取された対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かの結論も、自動化された、コンピュータ操作されたまたはコンピュータ支援された技法によって行うことができる。
【0077】
一連の値の「中央値」とは、一連の値の中で最も低い値と最も高い値の中間の値である。
【0078】
呼吸器ウイルスを検出するための検査、呼吸器ウイルスを診断するための検査、または呼吸器ウイルスの感染の存在を検出するための検査は、そのような結論を出すことを可能にする当業者に公知のあらゆる検査、特に上記呼吸器ウイルスのDNAまたはRNAを検出するための検査、特にPCR検査または抗原検査を意味するものとする。
【0079】
本発明は、対象の口または鼻からの検査試料において決定された、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子の中から選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルを使用して、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを決定することを提案する。
【0080】
この目的のために、本発明は、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroまたはex vivoで決定する方法であって、上記対象の口または鼻からの検査試料において、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子から選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルを決定するステップi)を含む方法を提案する。本発明による方法では、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子から選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の転写レベルは、上記対象が複製性呼吸器ウイルスの感染を患っているか否かを決定するために使用される。すなわち、本発明による方法では、ISGマーカー遺伝子の転写レベル、またはさらには複数の異なるISGマーカー遺伝子の転写レベルを考慮することによって、上記対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の可能性の存在に関する結論に到達する。結論は、これのみに基づいて(すなわち、単一のISGマーカー遺伝子の転写レベルから、または複数の異なるISGマーカー遺伝子の転写レベルから)、またはISG以外の遺伝子を考慮することによって到達され得るが、これは本発明の文脈では好ましくない。
【0081】
本発明によれば、転写レベルは、目的の試料(これが検査試料であるか参照試料であるかにかかわらず)中の遺伝子の1つまたは複数の転写物、特にメッセンジャーRNA(mRNA)型の1つまたは複数の転写物の定量的検出によって決定される。したがって、ISGの転写レベルの決定には、検査試料中の上記ISGの転写物の量、特に上記ISGのmRNAの量を表す定量的測定が含まれる。
【0082】
「転写物」という用語は、遺伝子の転写によって産生されるRNA、特にメッセンジャーRNA(mRNA)を意味する。より正確には、転写物とは、遺伝子の転写と、それに続くpre-RNA形態の転写後修飾によって産生されるRNAである。本発明の文脈では、同一遺伝子の転写レベルの測定は、同一または異なる転写物のレベルを含むことができる。好ましくは、本発明の文脈では、転写レベルの決定は、上記遺伝子のmRNAのレベルの決定に関する。mRNA転写物の場合、検出は、直接的方法、試料中の上記転写物の存在を決定することができる当業者に公知のあらゆる方法、または後者のDNAへの変換後、もしくは上記転写物の増幅後、もしくは上記転写物のDNAへの変換後に得られたDNAの増幅後の転写物の間接的検出によって実施することができる。核酸を検出するために多くの方法が存在する(例えば、Krickaら,1999およびRelier G.H.ら,1993を参照)。遺伝子発現は、特に、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応またはRT-PCR、好ましくは定量的RT-PCRもしくはRT-qPCR(例えば、FilmArray(R)技術を用いる)、配列決定(高スループット配列決定を含む)、またはハイブリダイゼーション技法(例えば、ハイブリダイゼーションマイクロアレイ、またはNanoString(R)nCounter(R)のような技法を用いる)によって測定することができる。FilmArray(R)技法(Poritzら,2011)のように、RNAやDNAの抽出を伴わない技法を実施することもできる。
【0083】
遺伝子の転写レベルを決定することにより、目的の試料中に存在する上記遺伝子の1つもしくは複数の転写物の量を決定すること、または目的の試料中に存在する転写物の量を代表する導出値を与えることが可能となる。このような量を表す導出値は、例えば、濃度既知のアンプリコンの溶液の連続的希釈物から得られる検量線を用いて算出される絶対濃度であってもよい。また、導出値は、CNRQ(較正正規化相対量、Calibrated Normalized Relative Quantity)(Hellemansら,2007)のような、転写物の量の正規化および/または較正値に対応してもよく、それは、参照試料(または標準物質)と1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子(参照遺伝子とも呼ばれる)の値を統合したものである。挙げることができるハウスキーピング遺伝子の例には、DECR1、HPRT1、PPIB、RPLP0、PPIA、GLYR1、RANBP3、18S、GAPDH、ACTB、ABCF1、ALAS1、GUSB、HPRT1、MRPS7、NMT1、NRDE2、OAZ1、PGK1、SDHA、STK11IP、およびTBPが含まれる。
【0084】
一般に、本発明による方法および使用では、その実施形態が何であれ、対象の検査試料について決定された選択されたマーカー遺伝子の転写レベルは、上記マーカー遺伝子の参照レベルと比較されるが、それは、特定の実施形態では、目的の対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の有無に関する結論を引き出すための閾値としても使用される。このような比較は、当業者に公知の方法で、様々な方法で行うことができる。本発明の文脈では、比較のために、選択されたマーカー遺伝子の転写レベルと上記マーカー遺伝子の参照レベルとの比を、特に使用される閾値との比較を実行する前に、算出することも可能である。
【0085】
好ましくは、本発明による方法では、その実施形態が何であれ、選択されたマーカー遺伝子の転写レベルは、当業者に知られているように、1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子(または参照遺伝子)の転写レベルに対して正規化されるが、さらに好ましくは、以下のハウスキーピング遺伝子:DECR1(GRCh38/hg38による遺伝子の染色体上の位置:chr8:90,001,352-90,053,633)、HPRT1(GRCh38/hg38による遺伝子の染色体上の位置:chrX:134,452,842-134,520,513)、およびPPIB(GRCh38/hg38による遺伝子の染色体上の位置:chr15:64,155,812-64,163,205)のうちの1つまたは複数を使用して行われる。この場合、使用する参照レベルも同様に予め正規化される。正規化は、参照レベルであれ、検査試料における転写レベルであれ、比較の前、特に検査試料における転写レベルと参照レベルとの比を算出する前に行われる。参照レベルと異なる閾値が結論に達するために使用される場合、この正規化が、閾値を選択する際に考慮されてもよい。
【0086】
マーカー遺伝子の転写レベルが、1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子の転写レベルに対して正規化される場合、これはもちろん、本発明による方法が、正規化に使用されるハウスキーピング遺伝子の転写レベルを決定することを含むことを意味する。
【0087】
第1の実施形態の変形例によれば、ISGから選択される単一のマーカー遺伝子の転写レベルはステップi)において決定されてもよく、上記ISGマーカー遺伝子の転写レベルと所定の閾値との比較により、上記マーカー遺伝子に対応する上記所与または所定の閾値との差があることが示される場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けてもよい。特に、上記差は、閾値に対応するものよりも大きい検査試料の転写レベルに対応する。
【0088】
有利には、上記閾値は、複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、または複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである上記マーカー遺伝子の参照レベルに対応する。
【0089】
好ましくは、検査試料において決定された選択されたISGマーカー遺伝子の転写レベルと上記ISGマーカー遺伝子の参照レベル(閾値)との上記差は、検査試料において決定された上記ISGマーカー遺伝子の転写レベルが、上記ISGの参照レベルに対して増加する、または著しく増加する、特に少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%増加するという事実に対応する。結論に達するために関連すると考えられる増加は、考慮される閾値に依存し、特に閾値として使用される参照レベルに依存し、当業者によって適宜適合されることになる。特に、閾値が、複製性呼吸器ウイルスの感染を示さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、または複製性呼吸器ウイルスの感染を有さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象の集団における上記ISGマーカー遺伝子の転写レベルである上記ISGマーカー遺伝子の参照レベルに対応する場合、検査試料において決定された選択されたISGの転写レベルが、単に閾値より大きければ十分であってもよい。しかし、異なる参照レベル、特に呼吸器感染症を患っていない対象、またはより一般的には健康な対象(特に献血者のようにいかなる感染も有していない)におけるレベルが閾値とされる場合、閾値に対する差はより著しくなければならず、特に上述の%増加のいずれかに従わなければならない。Student検定やWilcoxon検定など、当業者によく知られた統計的方法を適用した後、著しい増加と見なすことができる。このような方法は、特に実施例において使用されている。
【0090】
そのような単一のマーカー遺伝子を用いて結論を出す方法の場合、ISGから選択される上記マーカー遺伝子は、本明細書で与えられる任意のISG遺伝子であってもよいが、好ましくはIFIT1またはIFI44Lである。
【0091】
本発明の文脈で複数のマーカー遺伝子が使用される場合、比較は、選択された各マーカー遺伝子の転写レベルを、考慮される各マーカー遺伝子の所与または所定の閾値と比較することによって実施されてもよい。より全体的な比較を行うことも可能である。特に、複数のマーカー遺伝子の転写レベルを取得し、これらのマーカー遺伝子の全体的な転写レベルを単一の全体的な閾値と比較することが可能である。また、選択された各マーカー遺伝子の転写レベルを各マーカー遺伝子の所与の閾値と比較することも可能である。このような場合、有利には、上記閾値は、複製性呼吸器ウイルスの感染を示さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、または複製性呼吸器ウイルスの感染を示さず、好ましくはインターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである上記マーカー遺伝子の参照レベルに対応する。
【0092】
この文脈では、本発明による方法の第2の実施形態の変形例によれば、
・ISGから選択される複数のマーカー遺伝子の転写レベルは、ステップi)において検査試料について決定することができ、
・検査試料において決定された各マーカー遺伝子の転写レベルは、上記対応するISGマーカー遺伝子の閾値と比較される。
【0093】
第2の実施形態の変形例では、検査試料において転写レベルが決定されたマーカー遺伝子の少なくとも1つについて閾値との差がある場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けることができる。
【0094】
特に、上記差は、閾値より大きいレベルに対応する。特に、転写レベルが選択されるISGマーカー遺伝子の少なくとも1つについて、検査試料において決定された上記ISGマーカー遺伝子の転写レベルが、上記ISGについて考慮される閾値に対して増加する、またはさらには著しく増加する、特に少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%増加する場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けてもよい。ここでも、結論に達するために関連すると考えられる増加は、考慮される閾値に依存し、特に閾値として使用される参照レベルに依存し、当業者によって適宜適合されることになる。そのような場合、本発明による方法は、本明細書で示されたものから選択される1~71個のマーカー遺伝子の転写レベル、好ましくは、ISGから選択され、特にIFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される1~6個のマーカー遺伝子の転写レベルを決定することを含んでもよい。特に、転写レベルが選択されるISGのうち少なくとも1個、またはさらには少なくとも2個、または3~4個について、検査試料において決定された上記ISGの転写レベルが、対応する閾値に対して、特に先に定義された増加率に従って増加する場合、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けてもよい。
【0095】
特定の実施形態では、比較は、検査試料について決定された上記選択されたマーカー遺伝子の転写レベルの、上記マーカー遺伝子の対応する参照レベルに対する比を算出することによって実施されてもよい。あるいは、このような比較は、上記選択されたマーカー遺伝子の参照レベルの、検査試料について決定された上記選択されたマーカー遺伝子の転写レベルに対する比を算出することによって実施されてもよい。次いで、上記比の中央値に対応する全体的な比を算出し、上記対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の有無に関する結論を出すために使用してもよい。
【0096】
第3の実施形態の変形例では、
・ステップi)において検査試料における転写レベルが決定される各マーカー遺伝子について、上記マーカー遺伝子の対応する参照レベルに対する上記転写レベルの比が算出されるステップ、
・次いで、得られたすべての比の中央値が算出され、上記中央値が、例えば1.5に等しく、好ましくは2、3、4、5、または6より大きくてもよい閾値より大きい場合に、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられるステップ
を実行することにより、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けることもできる。このような値は、当業者によって、完全に従来の方法で、比を算出するために使用される参照レベルおよび対象の関数として、特に前述のような統計的方法を適用することによって決定され、適合される。特に、比を算出するための上記マーカー遺伝子の参照レベルは、呼吸器ウイルスに感染していない対象、または上記マーカー遺伝子のそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルであってもよい。呼吸器ウイルスに感染していない対象とは、特に、呼吸器ウイルスの存在を検出するための検査において陰性である対象である。好ましくは、比を算出するために使用される参照レベルは、呼吸器ウイルスに感染しておらず、インターフェロンαに対する中和自己抗体および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さない対象、またはそのような対象の集団における上記マーカー遺伝子の転写レベルである。
【0097】
そのような場合、本発明による方法は、ISGから選択され、特にIFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される1~71個、好ましくは1~6個のマーカー遺伝子の転写レベルを決定することを含んでもよい。
【0098】
特に、本発明による方法は
i)検査試料について、IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択される複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定すること、
ii)ステップi)において検査試料における転写レベルが決定される各マーカー遺伝子について、上記マーカー遺伝子の参照レベルに対する上記転写レベルの比が算出されること、
iii)次いで、得られたすべての比の中央値が算出され、上記中央値が、例えば1.5に等しく、好ましくは2、3、4、5、または6より大きくてもよい閾値より大きい場合に、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられること
を含む。
【0099】
この方法の文脈では、すべてのマーカー遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2、またはさらにはすべてのマーカー遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1の転写レベルをステップi)において決定し、ステップii)およびiii)において使用することが可能である。実施例に例示される特定の実施形態によれば、遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、およびRSAD2の転写レベルのみが決定され、マーカー遺伝子として使用される。換言すれば、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の有無に関する結論は、別のマーカー遺伝子の転写レベルを考慮しない。別の特定の実施形態によれば、遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1の転写レベルのみが決定され、マーカー遺伝子として使用される。
【0100】
閾値または参照レベルは、一般に、本発明による方法が実施される場合に利用可能な上流で決定された値である。閾値は、複製性呼吸器ウイルスの感染の有無に関する結論を得るために関連すると以前に判断された値である。参照レベルは、参照対象または参照集団における考慮されるマーカー遺伝子の転写レベルに対応する。したがって、検査試料についての上記マーカー遺伝子の転写レベルと同様に、上記マーカー遺伝子の1つまたは複数の転写物の量、または上記マーカー遺伝子の転写物の量を代表する導出値に対応するが、参照対象の参照試料または(参照対象の集団についての)一連の参照試料においてのものである。検査試料について転写レベルを決定する方法と、参照レベルを事前に決定する方法は、同等または同一である。したがって、参照試料は、検査試料と同じタイプ、すなわち、対象の口または鼻からの試料であり、好ましくは中咽頭試料または鼻咽頭試料、または唾液である。
【0101】
参照対象は、複製性呼吸器ウイルスに感染していない対象、すなわち、特に呼吸器ウイルスの存在について陽性と検出されたが、ウイルスが複製可能でない対象、または呼吸器ウイルスに感染していない対象(特に呼吸器ウイルスを検出するための検査で陽性ではない);呼吸器ウイルスに感染していない対象(特に呼吸器ウイルスを検出するための検査で陽性ではない);健康な対象、すなわち、特に献血者の場合のようにいかなる感染も有していない対象であってもよい。
【0102】
マーカー遺伝子の転写レベルの閾値として使用される参照レベルを決定するための(「参照」対象からの)参照試料は、有利には、複製性呼吸器ウイルスに感染していない対象(「参照対象」と呼ばれる)、すなわち、特に呼吸器ウイルスの存在について陽性と検出されたが、ウイルスが複製可能でない対象、または呼吸器ウイルスに感染していない対象(特に、呼吸器ウイルスを検出するための検査において陽性でない)からの試料、またはそのような試料の混合物である。
【0103】
前述の比または導出値またはスコアを算出するために使用される参照レベルを決定するための(「参照」対象からの)参照試料は、有利には、呼吸器ウイルスに感染していない(特に、呼吸器ウイルスを検出するための検査に対して陽性でない)対象(「参照対象」と呼ばれる)からの試料、またはそのような試料の混合物である。
【0104】
また、参照試料が由来する参照対象が、インターフェロンαに対する中和自己抗体を有さず、および/またはインターフェロンωに対する中和自己抗体を有さないことが検証されてもよい。このような検証は、任意の公知の抗体検出技法、特にELISA技法を使用して、当該対象の血液試料、特に血清に基づいて実施されてもよい。参照試料はまた、免疫系を刺激する薬剤(LPSまたはリポ多糖など)でex vivoで処理されたそのような対象の試料であってもよい。参照試料はまた、未処理の試料と免疫系刺激剤でex vivoで処理された試料との混合物であってもよい。
【0105】
参照転写レベルに関して、参照集団の転写レベルである場合、上記集団について測定された各種の転写レベルの平均値または中央値、すなわち参照試料において測定された転写レベルの平均値または中央値であってもよい。
【0106】
本発明による方法はまた、1つまたは複数の呼吸器ウイルス、特にSARS-CoV-2またはその変異体のうちの1つのDNAまたはRNAを検出することを含んでもよい(Mommert,M.ら,2020)。このような検出技法は当業者に知られている。非定量的、定量的または半定量的な検出技法を使用することが可能である。特に、所望のウイルスのDNAまたはRNAに適合した増幅、ハイブリダイゼーションまたは配列決定技法を使用してもよい。
【0107】
本発明の主題はまた、本発明の文脈で定義される1つまたは複数のISGマーカー遺伝子の転写レベルを決定するための手段を含むキットである。このような手段により、検査試料において選択された上記遺伝子の転写レベルを定量的に決定することが可能となる。先に説明したように、決定された転写レベルは、検査試料中に存在する転写物の量と等しくなくてもよいが、検査試料中に存在する転写物の量を表す導出値であってもよい。古典的には、決定は、実際には、増幅および/または正規化および/または比の算出のステップを含んでもよい。
【0108】
「キット」という用語は、特に本発明の文脈内で定義される1つまたは複数のISGマーカー遺伝子の転写レベルの決定を得るために、一緒に使用される一連の製品および/またはツールを意味する。必要とされる製品またはツールは、同じキットまたは装置に一緒にまとめられていても、まとめられていなくてもよい。
【0109】
したがって、本発明によるキットは、先に述べたもの、特にIFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1から選択されるものなどの1つまたは複数のISGマーカー遺伝子のための増幅および/または検出手段を含んでもよい。本発明によるキットは、選択された各ISGマーカー遺伝子のための増幅および/または検出手段、特に上記マーカー遺伝子に特異的なものを含んでもよい。さらに、本発明によるキットはまた、ハウスキーピング遺伝子の転写レベルを決定することができる少なくとも1つの決定手段を含んでもよい。したがって、本発明によるキットは、1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子(好ましくは、DECR1、HPRT1、およびPPIBからなるリストから選択される)の増幅および/または検出手段を含んでもよい。ここでも、本発明によるキットは、選択された各ハウスキーピング遺伝子のための増幅および/または検出手段、特に上記ハウスキーピング遺伝子に特異的なものを含んでもよい。
【0110】
転写レベルを決定するための手段は、特に、1つまたは複数の増幅製品もしくはツール、および/または1つまたは複数の検出製品もしくはツールを含む。特に、転写レベルが決定される各マーカー遺伝子またはハウスキーピング遺伝子について、キットは、上記遺伝子の転写物を増幅および/または検出するための1つもしくは複数のオリゴヌクレオチド、特に増幅プライマーもしくはプライマー対、および/または上記遺伝子の転写物を検出するための少なくとも1つのプローブを含む。
【0111】
「プライマー」または「増幅プライマー」という用語は、5~100個のヌクレオチド、好ましくは15~30個のヌクレオチドからなってもよいオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド断片であって、例えば標的ヌクレオチド配列の酵素増幅反応において、酵素重合の開始のために決定された条件下で標的ヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションに対して特異性を有するものを意味する。一般的には、2つのプライマーからなる「プライマー対」が使用される。複数の異なる遺伝子の増幅を行いたい場合、好ましくは複数の異なるプライマー対が使用され、好ましくは、それぞれが異なる遺伝子と特異的にハイブリダイズする能力を有する。
【0112】
「プローブ」または「ハイブリダイゼーションプローブ」という用語は、標的ヌクレオチド配列とハイブリダイゼーション複合体を形成するように規定された条件下でハイブリダイゼーション特異性を有する、典型的には5~100個のヌクレオチド、好ましくは15~90個のヌクレオチド、さらに好ましくは15~35個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド断片を意味する。プローブはまた、標的ヌクレオチド配列の検出を可能にするレポーター(フルオロフォア、酵素、または任意の他の検出系など)を含む。本発明では、標的ヌクレオチド配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)に含まれるヌクレオチド配列であってもよいし、上記mRNAの逆転写によって得られる相補的DNA(cDNA)に含まれるヌクレオチド配列であってもよい。複数の異なる遺伝子を標的としたい場合、好ましくは複数の異なるプローブが使用され、好ましくは、それぞれが異なる遺伝子と特異的にハイブリダイズする能力を有する。
【0113】
遺伝子IFI27、IFI44L、IFIT1、RSAD2、ISG15、およびSIGLEC1の各々の転写レベルを決定するのに適合したプライマーおよびプローブ配列は、特にM.Bergalloら,2020に記載されている。
【0114】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、適切な条件下で、十分に相補的な配列を有する2つのオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド断片、例えばハイブリダイゼーションプローブと標的ヌクレオチド断片が、安定かつ特異的な水素結合で二本鎖を形成することができる方法を意味する。ポリヌクレオチドと「ハイブリダイズ可能な」ヌクレオチド断片は、それぞれの場合において公知の方法で決定することができるハイブリダイゼーション条件下で上記ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる断片である。ハイブリダイゼーション条件は、操作条件のストリンジェンシー、すなわち厳しさによって決定される。ストリンジェンシーが高ければ高いほど、ハイブリダイゼーションはより特異的になる。ストリンジェンシーは、特にプローブ/標的二重鎖の塩基組成の関数として定義され、また2つの核酸間のミスマッチの程度によっても定義される。ストリンジェンシーはまた、ハイブリダイゼーション溶液中に存在するイオン種の濃度や種類、変性剤の性質や濃度、および/またはハイブリダイゼーション温度などの反応パラメータの関数でもあり得る。ハイブリダイゼーション反応を行わなければならない条件のストリンジェンシーは、使用されるハイブリダイゼーションプローブに主に依存することになる。これらのデータはすべて周知であり、適切な条件は当業者によって決定することができる。一般に、使用するハイブリダイゼーションプローブの長さにもよるが、ハイブリダイゼーション反応の温度は約20から70℃の間であり、特に約0.5~1Mの濃度の生理食塩水中では35から65℃の間である。次いで、ハイブリダイゼーション反応を検出するステップが行われる。
【0115】
「酵素増幅反応」という用語は、少なくとも1つの酵素の作用によって標的ヌクレオチド断片の複数のコピーを生成する方法を指す。このような増幅反応は当業者によく知られており、特に以下の技法:PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、LCR(リガーゼ連鎖反応)、RCR(修復連鎖反応)、特許出願WO-A-90/06995による3SR(自家持続配列複製法)、NASBA(核酸配列ベース増幅)、特許US-A-5,399,491によるTMA(転写媒介増幅)、および特許US6410278によるLAMP(ループ媒介等温増幅)が挙げられる。酵素増幅反応がPCRである場合、より具体的には、増幅ステップの前にメッセンジャーRNA(mRNA)を相補的DNA(cDNA)に逆転写するステップがあるとRT-PCR(RTは「逆転写」)と呼ばれ、PCRが定量的であるとqPCRまたはRT-qPCRと呼ばれる。
【0116】
本発明によるキットは、呼吸器ウイルス、好ましくはSARS-CoV-2を検出するための手段を含んでもよい。特に、このような手段は、上記ウイルスのDNAもしくはRNAを検出および/または増幅するための製品またはツールに対応する。
【0117】
本発明によるキットはまた、RNA抽出の品質、増幅および/またはハイブリダイゼーション法の品質を認定することができる陽性対照手段、特に陽性対照試料を含んでもよい。
【0118】
特定の実施形態によれば、本発明によるキットは、その実施形態が何であれ、合計で最大100個の遺伝子、好ましくは最大90個、好ましくは最大80個、好ましくは最大70個、好ましくは最大60個、好ましくは最大50個、好ましくは最大40個、好ましくは最大30個、好ましくは最大20個、好ましくは最大10個の遺伝子、特に最大6個、最大5個、最大4個、最大3個、もしくは最大2個の遺伝子の検出および/または増幅を可能にする一連の増幅および/または検出手段を含むことを特徴とする。遺伝子には、ウイルス遺伝子、特に呼吸器ウイルスの他、「バイオマーカー」遺伝子、すなわち、正常もしくは病的な生物学的プロセス、または治療介入に対する薬理学的応答の指標を表す客観的に測定可能な生物学的特徴も含まれる。したがって、バイオマーカー遺伝子には、本発明の文脈において記載されるISGおよびハウスキーピング遺伝子から選択されるマーカー遺伝子が含まれる。バイオマーカー遺伝子は、特にmRNAレベルで検出可能であってもよい。本発明によるキット中に存在してもよいバイオマーカーの他の例としては、個体の染色体物質に見出される内因性バイオマーカーもしくは遺伝子座(遺伝子またはHERV/ヒト内在性レトロウイルスなど)、または外因性バイオマーカー(ウイルスなど)が挙げられる。特定の実施形態によれば、本発明によるキットは、遺伝子増幅および/または検出手段として、1つまたは複数のISGマーカー遺伝子を増幅および/または検出するための手段、1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子を増幅および/または検出するための手段、ならびに任意に1つまたは複数の呼吸器ウイルスを増幅および/または検出するための手段のみからなるバイオマーカー遺伝子増幅および/または検出手段のみを含む。
【0119】
上記製品または決定手段、より正確には上記増幅製品および/または検出製品は、同一の固体支持体に結合させてもよい。したがって、キットは、先に記載したように、IGSマーカー遺伝子もしくは各IGSマーカー遺伝子の転写レベルを決定するのに適した1つもしくは複数のオリゴヌクレオチド、またはさらには選択されたハウスキーピング遺伝子もしくは各ハウスキーピング遺伝子の転写レベルを決定するのに適した1つもしくは複数のオリゴヌクレオチド、またはさらにはSARS-CoV-2などの呼吸器ウイルスを検出するのに適した1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む固体支持体を含んでいてもよい。このような固体支持体は当業者に公知であり、特にWO2008/140568およびWO2017/093672の出願に記載されており、より詳細についてはそれらを参照できる。
【0120】
キットは、閾値および/または参照値との比較に関して自動化された方法で使用されることを意図している。特に、キットは、選択されたISGマーカー遺伝子の転写レベルと使用される閾値との比較に関して、または適切な場合には、参照レベルを使用して、選択されたISGマーカー遺伝子の転写レベルからデータ(またはスコア)を算出し、閾値と比較することにより、自動化された方法で使用されることを意図している。さらに、有利には、1つまたは複数の閾値に加えて、上記(または各)選択されたISGマーカー遺伝子の少なくとも1つの参照レベルを含み、この参照レベルは、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納されるか、またはコンピュータ実行可能コードの形態で使用されることが意図されており、特に、検査試料について決定されたISGマーカー遺伝子の転写レベルを上記参照レベルと比較するように構成されている。
【0121】
本発明の主題はまた、対象が複製性呼吸器ウイルスに感染しているか否かを決定するための、本発明の文脈に記載されるキットの使用である。
【0122】
特に、この使用は、複製性季節性コロナウイルス、複製性SARS-CoV-2ウイルス(当該変異体が何であれ)、インフルエンザウイルス(インフルエンザA型、B型およびC型)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス、およびアデノウイルスから選択される複製性呼吸器ウイルスの対象における有無を決定することに向けられる。実施例は、特に、本発明によるキットが、複製性SARS-CoV-2ウイルス(当該変異体が何であれ)およびインフルエンザウイルスから選択される複製性呼吸器ウイルスの対象における有無を決定するのに特に適していることを示している。
【0123】
本発明による方法に関連して記載された具体的または好ましい実施形態は、もちろん、本発明の主題であるキットおよび使用に適用される。
【0124】
本発明の文脈では、有利には、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在のin vitroまたはex vivoでの決定は、上記対象の口または鼻からの検査試料において、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子の中から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子の転写レベルを決定することのみに基づく。実施例に例示された特定の実施形態によれば、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子の中から選択される1つまたは複数のマーカー遺伝子のレベルのみが決定され、マーカー遺伝子として使用される。言い換えれば、ISG遺伝子は、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の有無に関する結論を出すために使用される唯一のマーカーである。しかしながら、好ましいものではないが、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子から選択されるマーカー遺伝子に加えて、例えばI型インターフェロン遺伝子から選択される、1つまたは複数の他のマーカー遺伝子を使用することも可能である。追加のマーカー遺伝子の例として、I型、II型および/またはIII型インターフェロンの様々なタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。
【0125】
本発明はまた、本明細書で定義されるように、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroで決定する方法に関し、この方法はまた、呼吸器ウイルスの感染の処置を含む。特に、処置は、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられた時点で開始される。処置は、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられ、存在する呼吸器ウイルスが同定された時点で開始することもできる。この場合、処置は、同定された呼吸器ウイルスに対するものとなる。存在が同定された呼吸器ウイルスと複製可能な存在する呼吸器ウイルスとが同一であるという確証がないとしても、対象が2つの異なる呼吸器ウイルスに感染している確率は特に低いため、その推定は強い。別の変形例によれば、対象が呼吸器感染の症状を呈し、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられるとすぐに、処置を開始することができる。
【0126】
処置は、適した抗ウイルス薬を投与することからなる。抗ウイルス処置としては、lopinavir(R)、Ritonavir(R)、組換えインターフェロン、特にインターフェロンβ、αおよびλが挙げられる。COVID-19に対する数多くの治療的処置が現在検討中である(Canedo-Marroquin,G.ら,2020)。
【0127】
本発明はまた、本明細書で定義されるように、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroで決定する方法に関し、この方法はまた、上記対象の隔離、拘束、および/またはマスクの着用義務を伴う措置の実施を含む。このような措置は、複製性呼吸器ウイルスへの感染の決定結果が出るまで講じることができ、複製性呼吸器ウイルスへの感染が上記対象に存在しないと結論付けられれば解除することができる。また、上記対象が複製性呼吸器ウイルスに感染していると結論付けられた場合に、このような措置を講じることも可能である。
【0128】
本発明はまた、本明細書で定義されるように、対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の存在をin vitroで決定する方法に関し、この方法は、先に記載したステップに加えて、上記対象における複製性呼吸器ウイルスの感染の有無に関して上記方法により到達された結論に応じて、上記対象に対する隔離、拘束、および/またはマスクの着用義務を伴う措置を実施するか、または実施しないか、または中止することを含む。
【0129】
特定の実施形態によれば、本発明による方法はまた、その実施形態が何であれ、その方法によって与えられる結果に応じて、対象管理ステップを含むこともできる。複製性ウイルス、特にSARS-coV-2による呼吸器感染を有すると特定された対象は、処置プロトコール、または隔離、拘束、および/またはマスクの着用義務を伴う措置に供されてもよい。
【0130】
本発明を以下の実施例により非限定的に説明する。
実施例1
呼吸器複製性ウイルスSARS-CoV-2
材料および方法
参加者
以下の表1は、COVID-19の症状が軽度である医療従事者(HCW)(軽度COVID-19)および集中治療室(ICU)に入室した重篤COVID-19患者(重篤COVID-19)という研究コホートの人口統計学的特徴と主な臨床的特徴をまとめたものである。軽度COVID-19のHCWは入院しておらず、肺炎も示していなかった。
【0131】
【表1】
【0132】
略語:BMIは肥満度指数、IQRは四分位範囲、N/Aは該当なし。
【0133】
コホートに関するさらなる情報は以下に記載される。
【0134】
良性COVID-19の参加者
University Hospital of Lyon,France(Hospices Civils de Lyon、HCL)において、SARS-CoV-2感染を示唆する症状(以下の症状の少なくとも1つ:発熱、呼吸器症状、頭痛、嗅覚消失、味覚消失 - Trouillet-Assant,S.ら,2020a)のあるHCWを含む前向き縦断コホート研究が行われた。COVID-19の診断は、qRT-PCR(cobas(R)SARS-CoV-2検査、Roche Diagnostics、スイス、バーゼル)によりすべての患者で確認した。使用した鼻咽頭(NP)スワブは、Copanユニバーサル・トランスポート・ミディアム(UTM-RT(R))またはCobas(R)PCRミディアムのチューブに入れた。本研究に組み入れられたすべてのHCWについて、臨床的データおよび微生物学的データを収集した。組み入れ時(V1)にRT-PCRの結果が陽性であった患者は、RT-PCRが陰性になるまで、血液および鼻咽頭採取のために毎週(V2、V3、およびV4)再来院した。参加者全員から書面によるインフォームドコンセントを得たが、倫理委員会の承認は、2020年4月に生物医学研究国内審査委員会(Comite de Protection des Personnes Sud Mediterranee I、フランス、マルセイユ;ID RCB 2020-A00932-37)から得て、臨床試験は、ClinicalTrials.govに登録された(NCT04341142)。
【0135】
重篤なCOVID-19患者
入院中にSARS-CoV-2 RT-PCR検出検査を実施するために使用したNP試料を採取し、様々な追加実験に使用した。ICU滞在中は、EDTAチューブに採取した血液を抗IFN抗体検査に使用した。ICUに入室した重篤患者はすべてMIR-COVID研究に組み入れられた。この研究は、番号20-097でFrench National Data Protection Agencyに登録され、番号20-41で生物医学研究倫理委員会(Comite de Protection des Personnes HCL)により承認された。一般データ保護規則(規則(EU)2016/679および指令95/46/EC)およびフランスデータ保護法(1978年1月6日の法律第78-17号、および2019年5月29日の法令第2019-536号)に従い、各患者またはその近親者のインフォームドコンセントを得た。
【0136】
ISG転写物決定用FilmArray(R)
使用したFilmArray(R)プロトタイプ(パウチの形態)は、4つのISG(インターフェロンα誘導性タンパク質27(IFI27)、インターフェロン誘導性タンパク質44様(IFI44L)、テトラトリコペプチド反復配列を有するインターフェロン誘導性タンパク質(IFIT1)、およびラジカルS-アデノシルメチオニンドメイン含有タンパク質2(RSAD2))、ならびにシグナルの正規化のための3つのハウスキーピング遺伝子(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)、ペプチジルプロピルイソメラーゼB(PPIB)、2,4-ジエノイル-CoAレダクターゼ1(DECR1))の転写レベルを決定することが可能である。100マイクロリットルのNP試料またはPAXgeneTM血液を、製造者の使用説明書に従ってIFNプロトタイプ(Tawfik,D.M.ら,2020)を用いて検査した。簡単に説明すると、パウチは、キットに付属の水和溶液で水和させた。NPまたはPAXgeneTM血液試料をキットに付属の試料バッファー800μlと混合し、パウチに直接注入し、FilmArray(R)2.0およびFilmArray(R)Torch装置(BioFire Diagnostics,LLC.、ユタ州、ソルトレイクシティ)に通した。結果は1時間未満に出た。この装置の研究用バージョンを用いて、各アッセイについてリアルタイム定量サイクル(Cq)値と増幅後の融解曲線を測定した。次いで、ハウスキーピング遺伝子を用いて、各アッセイの正規化された転写値を算出した。NP試料の場合のISGスコアは、既に記載されているように(Pescarmona,R.ら,2019)、PAXgene試料に適用したのと同じ方法で算出した。
【0137】
IFN-αおよびIFN-λのタンパク質測定
血漿の血清IFN-α2濃度(fg/ml)は、市販のIFN-α2定量用キット(QuanterixTM、マサチューセッツ州、レキシントン)を用いた超高感度アッセイ(SIMOA(R))で測定した。アッセイは、HD-1分析装置(Quanterix)を用いた3段階のプロトコールに基づいており、試料採取から結果までに必要な処理時間は3時間であった。インターフェロンλは、市販のIFN-λ定量用キット(mesoscale discovery)を用いたアッセイで測定した。
【0138】
ウイルス量の測定
SARS-CoV-2量は、SARS-CoV-2 R-gene(R)キット(bioMerieux、フランス、リヨン)を用いてNP試料から測定した。簡単に説明すると、NUCLISENS(R)easyMAG(R)で0.2mlのNP試料から核酸抽出を行い、Bio-Rad CFX96サーマルサイクラーで増幅を行った。ウイルス量は、SARS-CoV-2N遺伝子を標的とした4種類の自社開発定量対照(QS):それぞれ2.5×10、2.5×10、2.5×10、2.5×10コピー/mlのSARS-CoV-2対照DNAであるQS1~QS4を用いて定量した。これらのQSは、Nanodrop分光光度計(ThermoFisher)とApplied Biosystems QuantStudio 3DデジタルPCRを用いてモニターし、定量した。並行して、試料採取の質に応じてウイルス量を正規化するために(Log10[(SARS-CoV-2の1mlあたりのコピー数/1mlあたりの細胞数)×10細胞/ml])、それぞれ10コピー/μl(50000細胞/PCR、すなわち実施例の条件下では1.25×10細胞/ml)および10コピー/μl(5000細胞/PCR、すなわち実施例の条件下では1.25×10細胞/ml)の対照DNAである2種類の定量対照QS1およびQS2を含むCELL Control R-GENE(R)キット(ハウスキーピングHPRT1遺伝子の増幅)を用いてNP試料を検査した。
【0139】
ウイルス培養
ウイルス培養は、WHOのバイオハザード防止ガイドライン草案[WHO/WPE/GIH/2020.3]に従い、UTM-RT(R)中のNP試料を用いて実施した。RT-PCR陽性のNPを、2%ペニシリン-ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、および2%不活化ウシ胎児血清を添加したイーグル最小必須培地(EMEM)でコンフルエントVero細胞(ATCC CCL-81(R))に接種した。プレートは、33℃、5%COで96時間インキュベートした。細胞変性効果(CPE)を毎日モニターし、陽性の場合は試料を回収したが、96時間で陰性の試料は新しいプレートに継代培養した。培養上清を、接種2時間後、96時間後、再び96時間後の継代培養で採取した。上清からのRNAを、MGISP-960自動ワークステーションによってMGI Easy Magnetic Bead Viral DNA/RNA Extraction Kit(MGI Tech(C)、ラトビア、マールペ)を用いて抽出し、SARS-CoV-2の検出は、QuantStudio(tm)5 system(Applied Biosystems、Thermo Fisher Scientific、米国、ウォルサム)でTaqPath(tm)COVID-19 CE-IVD RT-PCR Kitを用いて行った。
【0140】
血清学的検査
抗SARS-CoV-2抗体の存在は、プロテインSの受容体結合ドメイン(RBD)に対する全抗体を検出するWantai Abアッセイを用いて評価した。
【0141】
抗IFN-α抗体の存在は、市販のキット(Thermo-Fisher)を用いて調べた(David,G.ら,2021)。次いで、IFN-αを中和する患者血清の能力を、既に記載されているように(Bastard,P.ら,2021)評価した。
【0142】
統計解析
ノンパラメトリックのWilcoxon-Mann-Whitney検定とSpearman相関を、特に断りのない限り、すべての比較について実施した。患者を2つのISG群に最もよく分けるウイルス量閾値を算出するために、ノンパラメトリック有意差検定(Wilcoxon順位和)の最小p値を用い、ISGスコアに反復適用し、最小検出値(0.60)から最大検出値(9.00)までの範囲の正規化鼻腔ウイルス量閾値を0.01のステップサイズで区切った。すべての統計解析は、R(R Foundation、https://www.r-project.org/foundation/version3.6.1)およびGraphPad Prism8.3.0ソフトウェアを用いて行った。p値<0.05を統計的に有意と考えた。相関は、二重検出が可能であった試料に対してのみ実施した。
【0143】
結果
感染時のIFN-Iに応答する鼻腔ISGと血液ISGの協調的制御
SARS-CoV-2感染に応答する鼻粘膜においてI型およびIII型インターフェロンシグナル伝達の制御と役割について研究した。この目的のために、SARS-CoV-2のRT-qPCR検出に使用した鼻咽頭試料を使用した。しかしながら、このタイプの試料に存在する細胞物質と転写物の量は非常に限られていたため、FilmArray(R)技術を使用した。このPCR技法はすでに文献(Mommert,M.ら,2020)に記載されているが、様々なISGの転写レベルを迅速かつ高感度に測定することが可能であり、鼻咽頭試料に適合させた。この技法の利点は、半自動化されていること、および臨床ルーチン用に設計されていることであり、IFN刺激遺伝子因子3(ISGF3)依存性ISREエレメントを介して制御される4つのISG、すなわちIFI27、IFI44L、RSAD2、およびIFIT1の定量化から得られるスコアを与える(Hernandez,N.ら,2018)。このスコアを、SARS-CoV-2に感染した23人のHCWの診断時に分析し、同じ患者の血液試料および血清IFN-α2レベルから得られた同じスコアと比較した。鼻・咽頭(NP)および血液試料から得られた各スコアの間、ならびに鼻・咽頭試料から得られたスコアおよびIFN-α2の血清中レベルの間には強い相関が認められた(両比較ともSpearman ρ>0.75、図1および2)。一方、IFN-α1の血清中レベルは、鼻・咽頭および血液試料から得られた各スコアとあまり相関しなかった(結果は示さず)。これらの結果は、鼻腔レベルと全身レベルのISG転写物に基づく各抗ウイルス応答間の時間的関連性を強調し、IFN-α2が両ケースで測定されたISG転写物の生成を刺激することを示唆している。血液試料のスコア(血液スコアと呼ぶ)と鼻・咽頭試料のスコア(鼻腔スコアまたはNPスコアと呼ぶ)の経時的変化も調べた。図3に示すように、この2つのパラメータは非常に類似した動態に従い、症状発現後最も早い時点でピークに達し、その後急速に減少してから、症状発現から14日後には実質的に陰性となった。この相関から、鼻腔と全身レベルでIFN-I/IIIによる抗ウイルス防御の協調が確認され、NP試料から直接FilmArray(R)を用いて測定された鼻腔I/III型ISGスコアが、患者の血液I/III型ISGスコアを追跡する指標であることが示されている。
【0144】
鼻咽頭試料における各種のISGの転写レベルのスコアは、SARS-CoV-2の鼻腔内量およびウイルスの複製能力と相関する。
図7は、鼻咽頭試料で得られた各種のI/III型ISGの転写レベルに関連するスコア(ISGスコアと呼ばれる)とウイルス量との間に著しい相関があることを示している。鼻咽頭試料のISGスコアと、スワブから単離されたウイルスの複製能力との間の推定される関連性を評価するために、既に記載されているように(Bal,A.ら,2021)、鼻咽頭試料に対応するスワブから直接Vero細胞での培養を行った。Vero細胞に対して細胞変性効果を示す培養物(陽性培養物と呼ばれる)は、主に高いISGスコアと関連していた一方で、Vero細胞に対して細胞変性効果を示さない培養物(陰性培養物と呼ばれる)は、ほとんど常に低いISGスコアと関連していたことが判明した(図4)。複製性SARS-CoV-2ウイルスの感染を示すマーカーとしてISGスコアを用いる価値は、ROC曲線を用いて確認された(図5)。ROC曲線下面積[95%信頼区間]は0.84[0.7~0.99]であり、分離スコア6.75によるウイルス複製能力の予測において、ISGスコアの良好な性能が示された。最後に、複製性ウイルス感染のマーカーとしてのISGスコアをさらに評価するために、陽性スワブの1:10段階希釈で模倣した限定材料条件下でISGスコアとウイルスRNA量の比較測定を実施した。図6に示した結果は、ウイルスPCRのCt値はスワブの希釈に応じて急速に増加したが、ISGスコアは比較的安定したままであり、複製可能状態のウイルスを鼻咽頭試料が含むか含まないかを区別するために以前に示された値6.75よりも一貫して大きかったことを示す。
【0145】
I/III型ISG鼻腔スコアは、中和I型抗IFN自己抗体を有する患者では低い。
重篤なCovid-19患者の一部は、I型IFNの血中レベルが低いかまたは検出されないが(Hadjadj,J.ら,2020、およびTrouillet-Assant,S.ら,2020)、これは、I型IFN免疫における先天性欠損(Zhang,Q.ら,2020)、またはIFN-αもしくはIFN-ωもしくはその両方を中和する自己抗体の血中における存在(Bastard,P.ら,2020)によるものであり得る。それゆえに、疾患の重症度、I型インターフェロンに対する自己抗体の存在、鼻咽頭試料のウイルス量(鼻腔ウイルス量と呼ばれる)、および鼻咽頭試料のISGスコア(鼻腔ISGスコアまたはNP ISGスコアと呼ばれる)の関係について研究を行った。この目的のために、重症患者のコホートを集め、ICU入室時に血液試料と鼻腔スワブの鼻咽頭試料を得た(n=19)。鼻腔ISGスコアが6.75(図5のYounden指数で定義されたカットオフ値による)を超える軽症のCOVID-19患者の90%が、4.90Log10 cp/10細胞を超える正規化鼻腔ウイルス量を有していたのに対し、鼻腔ウイルス量が同様に高い重篤なCOVID-19患者の57%(7人中4人)だけが、6.75を超える鼻腔ISGスコアを有していた。鼻腔ウイルス量と鼻腔ISGスコアとのこの不一致を説明するために、IFN-αおよび/またはIFN-ωに対する中和自己抗体の存在を、このコホートの患者の血清において、新しい高感度Elisaアッセイを用いて決定した(David,G.ら,2021)。抗IFN-αおよび/または抗IFN-ω自己抗体は、重症患者19人中6人の血清中で検出され、軽症患者では検出されなかった(図7)。さらに、抗IFN-I自己抗体を有する患者は、IFN-α2のみに対する自己抗体を有し、IFN-ωがIFN-α2の遮断を補ったと考えられる1人の患者を除き、ウイルス量に関係なく、鼻腔ISGスコアが非常に低かった。残りの5例の患者は、αおよびωIFNの両方に対する自己抗体を有していた。これらのデータは、特にIFN-α2とIFN-ωの両方に対する自己抗体が存在する場合、中和抗IFN-I自己抗体が重症患者の鼻粘膜における初期の抗ウイルス防御を損なうことを示唆している。これらのデータはまた、IFN-ωが鼻腔におけるI型IFN媒介免疫に関与していることを示唆している。
【0146】
実施例2
呼吸器複製性インフルエンザウイルス
材料および方法
参加者
Hospices Civils de Lyon(HCL)からの後向き鼻咽頭(NP)試料(2017~2018年)を、対象の症状の有無、インフルエンザウイルス(インフルエンザB型)RT-qPCRによる呼吸器ウイルス感染の確認の他、ウイルス培養状態の知見に基づいて選択した。試料を採取した患者の臨床データを以下の表2に示す。
【表2】
【0147】
健康なボランティア(HV)のNPスワブを、実施例1と同じプロトコールで募集した。RESPIFERON研究は、生物医学研究倫理委員会およびCPP個人保護委員会により承認された。試料の使用許可は、直接関係する対象、または必要に応じてその法定後見人に文書で通知し、異議がないことに基づいて認められた。対象の個人情報の匿名化は、実験室に移送される前に行われた。
【0148】
ISG転写物決定用FilmArray(R)
この節で使用した材料および方法は、実施例1で使用したものと同じである。
【0149】
ウイルス量の測定
各NP試料についてウイルス量を定量した。核酸は、NucliSens(R)easyMAGTM自動抽出器(bioMerieux、マルシーレトワール)を用いて抽出した。抽出は、溶解バッファーに沈殿させた200μLのNP試料を用いて行った。室温で10分間インキュベートした後、抽出を開始する前に50μLの磁性シリカを加えた。
【0150】
抽出の終わりに、抽出したRNAを含む50μLの溶出液を回収した。抽出したRNAを逆転写し、すぐに使えるInfluenza A/B R-gene(R)リアルタイムRT-PCRキットを用いて増幅した。反応には、溶出液10μL、PCRに必要な試薬を含む増幅プレミックス15μL、および逆転写酵素(10倍希釈)0.15μLが必要であった。
【0151】
増幅は、Bio-Rad CFX96で特定のプロトコール、すなわち、逆転写のために50℃で5分間、次いでTaqポリメラーゼを活性化するために95℃で15分間、最後に以下のサイクルを交互に45サイクル:変性のために95℃で10秒、ハイブリダイゼーションのために60℃で40秒、および伸長のために72℃で25秒、に従って行った。
【0152】
ウイルス量は、様々なr-gene標準物質(それぞれ10、10、10および10コピー/μLのプラスミドを含むQS1~QS4)を用いて定量した。並行して、CELL Control r-gene(R)キットを用いて、試料中の細胞の存在を確認し、HPRT1ハウスキーピング遺伝子を検出することで細胞を定量し、またウイルス量を正規化した。このキットには、2種類の定量用標準物質:それぞれ10および10コピー/μL DNAであるQS1およびQS2が含まれている。データはCFX Maestroソフトウェアを用いて回収、処理および解析した。ウイルス量は、ウイルスRNAコピー数/PCRを細胞数/PCRで割ることにより正規化し、10細胞あたりのコピー数のlog10として表した。
【0153】
ウイルス培養
ウイルスの培養、試料の採取、培養上清の採取、および上記上清からのRNAの抽出は、実施例1に記載されている通りである。インフルエンザウイルスの検出は、Influenza A/B R-gene(R)キット(bioMerieux、マルシーレトワール)を用いて行った。
【0154】
統計解析
この節で使用した材料および方法は、実施例1で使用したものと同じである。
【0155】
結果
インフルエンザウイルス感染は鼻腔IFN応答の増加と関連している
鼻腔IFN I/III応答とインフルエンザウイルス感染との関係を評価するために、組み入れた各NP試料について、BioFire(R)IFN FilmArray(R)パウチプロトタイプを用いてRT-qPCRで測定した鼻粘膜の4つのISGの発現に基づくIFN I/IIIスコアを算出した。
【0156】
この鼻腔IFN I/IIIスコアは、局所のIFN応答に関して有益であるが、PCR陽性、すなわちインフルエンザウイルスに感染している人の試料では、感染していない人に相当するPCR陰性試料と比較して、有意に高い(p<0.0001)ことが判明した。
【0157】
さらに、ウイルス陰性PCR試料とウイルス陽性PCR試料を識別する鼻腔IFN I/IIIスコアの能力を決定するために、ROC(受信者動作特性、Receiver Operating Characteristic)曲線を作成した。図8は、IFN I/IIIスコアがウイルス感染の存在の予測に非常に有効であることを示しており、曲線下面積は0.98、カットオフポイントは3.29であった(感度93%、特異度100%によって特徴付けられた)。
【0158】
図9に示すように、インフルエンザウイルス感染のIFN I/IIIスコアを分析しても、同様の観察が可能であった。まとめると、これらの結果から、鼻腔IFN I/III応答は感染対象と非感染対象を識別し、したがって呼吸器ウイルス感染の存在を反映する可能性があることが示唆される。
【0159】
感染におけるISGトランスクリプトームシグネチャー
log2 RQ比として表されるISG mRNA発現レベルは、先に説明したように(材料および方法を参照)、IFN FilmArray(R)BioFire(R)パウチプロトタイプで得られた結果から各NP試料について推定した。
【0160】
図10に示した結果は、IFI27、IFI44L、RSAD2、およびIFIT1転写物の発現レベルが、インフルエンザウイルスに感染した対象の試料では、感染していない対象の試料よりも有意に高いことを明らかに示しており、したがってウイルスの感染に対する宿主応答におけるインターフェロン刺激遺伝子の関与が確認された。
【0161】
鼻腔INF応答は活動性インフルエンザウイルス感染を反映する
ウイルス培養状態(陽性または陰性)が判明しているインフルエンザウイルスに感染した対象のNP試料の鼻腔IFN応答を分析した。
【0162】
図11に示すように、FilmArray(R)技術を用いて算出した鼻腔IFN I/IIIスコアをウイルス培養状態に応じて比較した場合、インフルエンザウイルス感染の場合では、陽性のウイルス培養試料のスコアが陰性のウイルス培養試料よりも有意に高いことがわかった。
【0163】
インフルエンザウイルスの感染性のバイオマーカーとして使用するためのIFN I/IIIスコアの関連性を確認するために、ROC曲線が確立された。したがって、図12は、GRBウイルスの複製能力の予測におけるIFN I/IIIスコアの良好な性能を強調しており、感度が0.93、特異度が0.86の場合、曲線下面積は0.89、カットオフポイントは16.08であった。
【0164】
先の実施例と合わせて、この実施例から、ISGとして知られるインターフェロン刺激遺伝子の転写レベルの測定によって、例えばSARS-CoV-2やインフルエンザウイルスなどの複製性呼吸器ウイルスの感染の存在が効果的かつ確実に検出されることが確認され、したがって、臨床医が、ウイルス伝播の危険性がある患者を迅速に特定するための、あるいは汚染源となり得ない、またはもはやなり得ない患者の隔離措置を回避するための新たなツールが提供される。
【0165】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】