(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ドライアイを治療する薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウムの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20240628BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P27/02
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500540
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 CN2022104727
(87)【国際公開番号】W WO2023280319
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110780762.8
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521556440
【氏名又は名称】コアンチョウ オキュサン オフサルミック バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】Room 402, No. 223 West Huanshi Road, Nansha District, Guangzhou, Guangdong 511400 China
(71)【出願人】
【識別番号】523236744
【氏名又は名称】オキュサン・オフサルミック・ファーマスーティカル(コアンチョウ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCUSUN OPHTHALMIC PHARMACEUTICAL(GUANGZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 1-3,Block A,Building 203,Tongfa Road 2,Wanqingsha Town,Nansha District,Guangzhou,Guangdong 511400 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梁 翅勇
(72)【発明者】
【氏名】王 延東
(72)【発明者】
【氏名】于 垂亮
(72)【発明者】
【氏名】李 亮
(72)【発明者】
【氏名】薛 亜萍
(72)【発明者】
【氏名】呉 美容
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22Z
4C076DD23
4C076DD30Z
4C076DD37R
4C076DD38
4C076DD41R
4C076DD43Z
4C076DD45R
4C076DD49
4C076DD49R
4C076DD55R
4C076DD67
4C076EE06G
4C076EE16G
4C076EE23G
4C076EE30G
4C076EE32G
4C076EE37G
4C076FF17
4C076FF39
4C076FF61
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206KA01
4C206KA12
4C206MA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA48
4C206MA78
4C206NA14
4C206ZA33
(57)【要約】
ドライアイを予防及び/又は治療する薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイを予防及び/又は治療するための薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用。
【請求項2】
前記ドライアイは、涙腺機能障害又は涙液分泌の減少、涙の膜の安定性の低下及び/又は角膜上皮細胞損傷によって引き起こされる、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬物は、涙液の分泌を促進し、涙の膜の安定性を向上させ及び/又は角膜上皮細胞損傷を緩和することによって、ドライアイの予防及び/又は治療を達成するものである、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
涙腺機能障害の治療又は涙液分泌の促進のための薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用。
【請求項5】
涙の膜の安定性を向上させるための薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用。
【請求項6】
角膜上皮細胞の損傷を予防及び/又は緩和するための薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用。
【請求項7】
前記組成物には、ロキソプロフェンナトリウムに加えて、増稠剤、金属イオン錯化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤及び抗菌剤のうちの1つ又は複数をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記増稠剤は、ヒアルロン酸ナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー、ヒプロメロース、キサンタンガムからなる群より選ばれる1つ又は複数であり、及び/又は、
前記金属イオン錯化剤は、エデト酸二ナトリウムを選択し、及び/又は、
前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、グルコース、塩化カリウムからなる群より選ばれる1つ又は複数であり、及び/又は、
前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ホウ酸、ホウ砂からなる群より選ばれる1つ又は複数であり、及び/又は、
前記抗菌剤は、チメロサール、四級アンモニウム塩類、ドミフェン、クロルヘキシジン、クロロブタノール、パラベン類、ソルビン酸からなる群より選ばれる1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、エデト酸二ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
エデト酸二ナトリウム 0.02~0.5部、
塩化ナトリウム 2~18部の成分を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~1.5部、
エデト酸二ナトリウム 0.02~0.5部、
塩化ナトリウム 2~18部の成分を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム及びエチルパラベン又は塩化ベンザルコニウムを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~1.5部、
エデト酸二ナトリウム 0.02~0.5部、
エチルパラベン又は塩化ベンザルコニウム 0.2~0.5部、
塩化ナトリウム 2~18部の成分を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、水性溶液の形態である、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記水性溶液中のロキソプロフェンナトリウムの濃度は、0.05~5mg/mLである、ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記水性溶液中のロキソプロフェンナトリウムの濃度は、0.1~2mg/mLである、ことを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記薬物は、液剤、ゲル剤又はクリーム剤である、ことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、出願日が2021年07月09日である中国特許出願202110780762.8の優先権を主張し、それらの全内容が引用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬分野に関し、具体的には、ドライアイを予防及び/又は治療する薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ドライアイは、角結膜乾燥症候群とも呼ばれる。国際涙膜と眼表協会TFOS(the Tear Film&Ocular Surface Society)は、2015年に開催された2回目のワークグループのドライアイ病会議において、ドライアイを再定義し、即ち、ドライアイ(dry eye disease、DED)が眼表の多因子疾患の1つであり、涙の膜定常状態の喪失を特徴とし、眼表症状を伴っており、主に眼部のきしみ感、異物感、熱さ感、眼部に粘稠な分泌物があることも多く、睡眠の質が悪くなり、目の酷使すぎるため、重篤な場合、視力と正常な生活に影響を与える。
【0004】
近年、ドライアイの発症率は、年々上昇する傾向にあり、最も一般的な眼科疾患の1つとなっている。世界的にみると、ドライアイの発症率は、5.5%~33.7%であり、発症率についてみれば、女性は男性よりも高く、高齢者は青年よりも高く、アジア人は他の地域の人よりも高い。国外の疫学的研究報道によると、30~40歳の人々の間において、ドライアイの罹患率が20%であり、70歳以上の人々の間において、ドライアイの罹患率が36.1%と高く、これらの人々の間における女性の罹患率が依然として男性よりも高い。
【0005】
ドライアイの病因は、涙の膜の損傷、涙腺機能障害、マイボーム腺機能障害、眼表タンパク質の発現異常、ビタミンA欠乏、性ホルモン障害、神経調整異常などの自己要素が挙げられる。多くの全身性疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、糖尿病、乾燥症候群、関節リウマチ、睡眠障害、周経期症候群、甲状腺疾患、アレルギー性結膜炎などもドライアイを引き起こし、ドライアイの発生は年齢とも関連している。また、ドライアイの発生には、多くの環境要因を含み、例えば、環境汚染又は環境の過度の乾燥、眼部手術及び眼部薬物の酷使、ビデオ端末の酷使、及びコンタクトレンズの装着などの要因によって、ドライアイ病の発生が引き起こされることも多い。一般に屋外で稼働している作業者は、ドライアイがより発生し易くなる。ドライアイの発症要因について、多くの検討がなされているが、ドライアイの発症メカニズムは完全に明らかではない。
【0006】
ロキソプロフェンナトリウムは、非ステロイド性抗炎症薬であり、臨床的には、関節リウマチ、腰痛、肩こり、頚肩腕症候群などの抗炎症鎮痛、手術、外傷後及び抜歯後の鎮痛消炎と急性上気道炎症の解熱鎮痛などに使用されており、現在、ドライアイ治療におけるロキソプロフェンナトリウムの使用に関する報告はない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来技術の欠陥を解消し、治療効果が良く、刺激性の小さいドライアイ治療薬を提供することを目的とする。
【0008】
具体的には、本発明は、ドライアイを予防及び/又は治療するための薬物の製造におけるロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用を提供する。
【0009】
ロキソプロフェンナトリウム(化学名:2-[4-(2-オキソシクロペンタン-1-イルメチル)フェニル]プロピオン酸ナトリウム二水和物)は、非ステロイド性抗炎症薬であり、その作用機序は、プロスタグランジンの合成作用を阻害することであり、作用ターゲットポイントがシクロオキシゲナーゼである。現在、当該化合物は、関節リウマチ、腰痛、肩こり、頚肩腕症候群などの抗炎症鎮痛、手術、外傷後及び抜歯後の鎮痛消炎と急性上気道炎症の解熱鎮痛などに臨床的に用いられている。
【0010】
本発明の創造的な知見によれば、ロキソプロフェンナトリウムは、涙液分泌を促進し、涙液の安定性を向上させ、角膜上皮細胞の損傷を緩和する効果があり、ドライアイ、特に涙腺機能障害又は涙液分泌の減少、涙の膜の安定性の低下及び/又は角膜上皮細胞損傷に関連するドライアイを予防及び/又は治療するために用いることができる。
【0011】
本発明は、涙腺機能障害の治療又は涙液分泌の促進のための薬物の製造における前記ロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用を同時に提供する。
【0012】
本発明は、涙の膜の安定性を向上させるための薬物の製造における前記ロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用を同時に提供する。
【0013】
本発明は、角膜上皮細胞の損傷を予防及び/又は緩和するための薬物の製造における前記ロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム含有組成物の使用を同時に提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、増稠剤、金属イオン錯化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤及び抗菌剤のうちの1つ又は複数をさらに含有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくとも増稠剤をさらに含有する。ロキソプロフェンナトリウムと前記増稠剤との質量比は、好ましくは1:(0.5~1.5)、より好ましくは1:(0.8~1)である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記増稠剤は、ヒアルロン酸ナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー、ヒプロメロース、キサンタンガムからなる群より選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヒアルロン酸ナトリウムである。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくとも金属イオン錯化剤をさらに含有する。ロキソプロフェンナトリウムと前記金属イオン錯化剤との質量比は、1:(0.02~0.5)、より好ましくは1:(0.08~0.2)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記金属イオン錯化剤は、エデト酸二ナトリウムである。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくとも浸透圧調整剤をさらに含有する。ロキソプロフェンナトリウムと前記浸透圧調整剤との質量比は、好ましくは1:(2~18)、より好ましくは1:(4.5~10)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、グルコース、塩化カリウムからなる群より選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは塩化ナトリウムである。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくともpH調整剤をさらに含有する。本発明では、pH調整剤の使用量は、実際の需要に応じて決定され、最終生成物のpHを人体の使用に適したレベルに調整すればよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ホウ酸、ホウ砂からなる群より選ばれる1つ又は複数である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくとも抗菌剤をさらに含有する。ロキソプロフェンナトリウムと前記抗菌剤との質量比は、好ましくは1:(0.2~0.5)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記抗菌剤は、チメロサール、四級アンモニウム塩類、ドミフェン、クロルヘキシジン、クロロブタノール、パラベン類、ソルビン酸からなる群より選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはエチルパラベン又は塩化ベンザルコニウムである。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、エデト酸二ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
エデト酸二ナトリウム 0.02~0.5部、
塩化ナトリウム 2~18部の成分を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
エデト酸二ナトリウム 0.08~0.2部、
塩化ナトリウム 4.5~10部の成分を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~1.5部、
エデト酸二ナトリウム 0.02~0.5部、
塩化ナトリウム 2~18部の成分を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.8~1部、
エデト酸二ナトリウム 0.08~0.2部、
塩化ナトリウム 4.5~10部の成分を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム及びエチルパラベン又は塩化ベンザルコニウムを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~1.5部、
エデト酸二ナトリウム 0.02~0.5部、
エチルパラベン又は塩化ベンザルコニウム 0.2~0.5部、
塩化ナトリウム 2~18部の成分を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.8~1部、
エデト酸二ナトリウム 0.08~0.2部、
エチルパラベン又は塩化ベンザルコニウム 0.2~0.5部、
塩化ナトリウム 4.5~10部の成分を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、水溶液である。前記水溶液中のロキソプロフェンナトリウムの濃度は、好ましくは0.05~5mg/mL、より好ましくは0.1~2mg/mLである。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の前記薬物は、液剤、例えば点眼液である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の前記薬物は、ゲル剤、例えば眼用ゲルである。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の前記薬物は、クリーム剤、例えば眼用クリームである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】アルカリ焼けウサギの眼科ウラニンのスコアに対するロキソプロフェンナトリウム含有組成物の影響である。
【
図2】アルカリ焼けウサギの眼科ローズベンガル染色のスコアに対するロキソプロフェンナトリウム含有組成物の影響である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
以下の各実施例は、ドライアイに対するロキソプロフェンナトリウムの治療効果について検証する。
【0041】
実験を容易にするために、本発明は、ロキソプロフェンナトリウム含有水溶液組成物を製造し、その組成は下記表1に示すとおりである(表1のロキソプロフェンナトリウムの質量はC15H17NaO3で計算する)。
【0042】
【0043】
本実施例は、上記組成物1の製造方法をさらに提供し、具体的には、
(1)ヒアルロン酸ナトリウムを秤量し、約1/2処方量の注射用水を取って、撹拌しながらヒアルロン酸ナトリウムを加え、3時間以上膨潤させ、ヒアルロン酸ナトリウムを完全に溶解させる。
(2)ロキソプロフェンナトリウムを秤量し、少量の水を加えて溶解させ、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウムを加えて撹拌して溶解させる。
(3)エチルパラベンを少量の注射用水で溶解し、煮沸して完全に溶解させ、さらに溶解したヒアルロン酸ナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、塩化ナトリウム及びエデト酸二ナトリウム溶液を混合し、注射用水を全量まで添加する。
【0044】
残りの組成物は、成分の違いに応じて、組成物1の製造方法を基礎として従来の調整を行って、それぞれの製造方法を得ることができる。
【0045】
上記水溶液組成物は、点眼液に直接に加工されることができ、注射用水を全量まで加えた上で、0.22μmミリポアフィルタで濾過して除菌し、さらに点眼剤ボトルで無菌環境にて分注すればよい。
【0046】
実施例1:アルカリ焼けによるニュージーランドウサギのドライアイへの影響
1、モデルの構築方法
各ニュージーランドウサギに対して1%のプロポフォール注射液を用いて静脈注射で麻酔し(1.5ml/kg)、動物が麻酔安定を維持した後、2%の塩酸リドカイン注射液100μlで眼表面に点眼麻酔した。動物は麻酔第三期に維持したまま、1枚の約10mm×5mmの大きさのろ紙で1mol/LのNaOH溶液をつけてから、ウサギの角膜縁上部から約2mmの瞼結膜に置き、90s後、直ちに約50mlの0.9%塩化ナトリウム注射液で結膜嚢を繰り返し洗浄した。
2、結膜ルシフェリン染色
ピペットを用いて、2μlの0.5%ウラニン溶液をニュージーランドウサギの右目結膜嚢内に滴下し、5s後に0.9%塩化ナトリウム注射液で余分なルシフェリンを洗い流し、スリットランプ顕微鏡下でコバルトブルー分散光で結膜の染色状況を観察した。結膜蛍光染色スコア基準:結膜を4つの象限に分け、各象限は、染色の程度及び面積に基づいて、4レベルに分けられており、0点:無染色、1点:散在点状染色、2点:密集点状染色、3点:シート状染色、合計12点であった(左目はモデリングされず、陰性対照眼とした)。
3、結膜ローズベンガル染色
ピペットを用いて、2μlの1%のローズベンガルをニュージーランドウサギの右目結膜嚢内に滴下し、5s後に0.9%塩化ナトリウム注射液で余分なローズベンガルを洗い流し、スリットランプ顕微鏡下で緑光で結膜の染色状況を観察した。結膜ローズベンガル染色スコア基準は結膜蛍光染色基準と同様である。
4、涙液分泌量(両眼)
Schirmer I実験(Schirmer I test)を用いて、ニュージーランドウサギの涙液の分泌を測定した。即ち、眼科ピンセットでフェノールレッド綿線を挟み、ニュージーランドウサギの外側眼角部に置き、60秒後に取り出し、フェノールレッド綿線の濡れ長さを測定した。
5、涙の膜の破裂時間(両眼)
調整可能なピペットを用いて、2μlの0.5%ウラニン溶液をニュージーランドウサギの眼下瞼結膜嚢内に滴下し、一定力で手動で数回瞬目させた後、一定力でウサギの眼を押し広げ、スリットランプ顕微鏡、コバルトブルーライトを用いて角膜を観察し、角膜の緑色薄膜に黒い領域が現れた場合、涙の膜が破裂したことを示す。3回連続測定し、その平均値を取って、結果を表2に示す。
注:陰性対照眼と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示し、モデル対照群と比較して、*はP<0.05、**はP<0.01を示す(陰性対照眼は左目であり、モデル対照群は等容積の0.9%塩化ナトリウム注射液を投与したものである)。
表2のデータから分かるように、投与後1日目(D1)に、涙の膜の破裂時間に組成物1において有意差は認められなかった(P>0.05)。しかし、投与後5日目(D5)、9日目(D9)には、いずれも涙の膜の破裂時間が著しく延長され、有意差があった(P<0.05又は0.01)。
注:モデル対照群と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示す(モデル対照群は等容積の0.9%塩化ナトリウム注射液を投与したものである)。
注:モデル対照群と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示す(モデル対照群は等容積の0.9%塩化ナトリウム注射液を投与したものである)。
図1及び
図2に示すように、組成物のアルカリ焼けウサギの眼科ウラニンスコア及びローズベンガル染色スコアへの影響をそれぞれ示す。
図1、
図2、表3及び表4のデータを参照して、ロキソプロフェンナトリウム含有組成物1は、モデル対照群と比較して、投与後5日目、9日目に眼科スコアに対して明らかな低減作用を有することが分かった。この点から、ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、眼の損傷を効果的に緩和することができることが分かった。
注:陰性対照眼と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示す。(陰性対照眼は左目である)
上記表2~表5のデータから分かるように、ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、アルカリ焼けによるウサギのドライアイモデルに対して明らかな改善効果を奏し、その改善効果は、主に、涙の膜の安定性を向上させること、涙液の分泌量を増加させること及び角膜上皮細胞の損傷を緩和すること(主に眼損傷局所浮腫を低減すること)と表わしている。また、病理研究報告の研究から、ロキソプロフェンナトリウム含有組成物がゴブレットセルを増やす効果もあることが分かった。
本実施例では、同様の方法で組成物2~4を検出したが、組成物2~4は、アルカリ焼けによるウサギのドライアイモデルのいずれに対しても明らかな改善効果を奏し、且つ組成物1の効果と有意差は認められなかった。
【0047】
実施例2:マウスの結膜乾燥症候群への影響
1、抗原製造方法
同種のマウスを取って、頚椎脱臼法で安楽死させ、常法で目元を消毒し、バイオクリーンテーブルで結膜を完全に取り出し、8万/500mLゲンタマイシンを含む生理食塩水で洗浄し、8万/500mLゲンタマイシンを含む生理食塩水に入れ、結膜を断片化し、ホモジナイザーでホモジネートに碾いた。4℃に保持し、超音波破砕機で1h破砕し、遠心機で遠心分離した(3000r/min、×15min)。上澄み溶液を取り出し、タンパク質含有量をクマシーブリリアントブルー法で測定した。そして、タンパク質濃度を0.14 MPBSで100μg/mLに希釈した。完全フロイントアジュバント(FCA)に等体積の結膜抗原溶液を加え、十分に油中水溶液に均一に混合した。
2、実験方法
上記油中水溶液をマウス背部皮下、四肢腋下リンパ節及び足パッドに複数点で注射し、総量を0.5mLとした。具体的には、
(1)涙の膜の破裂時間(BUT):マイクロピペットを用いてBALB/cマウスの下方結膜嚢内に1μlを滴下し、スリットランプ顕微鏡のコバルトブルーライトで角膜を観察し、角膜の緑色薄膜に黒色領域が現れたときに、涙の膜破裂が示された。3回連続測定し、その平均値を取った。正常BUTは10~15秒であり、10秒未満の場合は異常であり、3回繰り返し測定し、平均値を取った。
(2)BALB/cマウスの涙液分泌実験:Schirmer I実験(Schirmer I test)を用いてBALB/cマウス涙液の分泌量を測定した。即ち、眼科ピンセットでフェノールレッド綿線を挟み、BALB/cマウスの外側眼角部に置き、60秒後に取り出し、フェノールレッド綿線の濡れ長さを測定した。
(3)統計分析方法:全てのデータがEXCELに入力して統計分析を行い、各群の計量データに対して、いずれもxSを算出し、各実験群がクラス間比較を行う前にクラス間分散分析(F-test)を行い、クラス間分散が同様である場合、クラス間比較はStudent-T検証(非ペアリングのT検証)で統計を行い、クラス間分散が異なる場合、校正したStudent-T検証で統計分析を行った。
注:ブランク対照群と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示し、モデル対照群と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示す。
注:ブランク対照群と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示し、モデル対照群と比較して、#はP<0.05、##はP<0.01を示す。
表6、表7の実験データから分かるように、組成物1は、マウスの結膜乾燥症候群モデルに対して顕著な改善効果を奏し、その改善効果は、主にマウスの涙液の分泌量を増加させること及び涙の膜の破裂時間を延長することと表わしている。
本実施例では、同様の方法で組成物2~4を検出したが、組成物2~4は、マウスの結膜乾燥症候群モデルのいずれに対しても明らかな改善効果を奏し、且つ組成物1の効果と有意差は認められなかった。
【0048】
実施例3:刺激性実験
1、点眼液由来:
プラノプロフェン点眼液:市販のもの、メーカー:Senju Pharmaceutical Co.,Ltd.Fukusaki Plant、
ジクロフェナクナトリウム点眼液:市販のもの、メーカー:鄭州卓峰製薬有限公司、
ロキソプロフェンナトリウム点眼液:組成物1を0.22μmの精密ろ過膜で濾過して得られたもの。
2、実験操作:各群から20名のドライアイ患者をそれぞれ選択し、三種類の点眼液をランダム化二重盲に使用し、濃度がいずれも0.1%のプラノプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウムである点眼液の患者眼部に対する刺激性症状を比較した。眼部刺激の症状には、例えば焼け感、チクチク感、又は涙などの症状が含まれる。統計結果を表8に示す。
初歩的統計の結果によれば、40%のジクロフェナクナトリウム点眼液群は少なくとも1つの眼部刺激症状が現れ、20%のプラノプロフェンの点眼液群は少なくとも1つの眼部刺激症状が現れたが、ロキソプロフェンナトリウム点眼液の使用群は1名の患者のみが眼部刺激症状が現れ、そして刺激性が比較的小さい涙症状であり、他の患者は使用後、目の快適感が強くなることを一般に反映しているため、長期間の使用が可能であるとともに、小児のドライアイ患者への応用にも適している。
【0049】
本実施例では、同様の方法で組成物2~4を検出したが、組成物2~4は、いずれも点眼液による刺激性が比較的小さいことが分かった。
【0050】
以上、一般的説明、具体的な実施形態及び試験を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明を基礎として、いくつかの修正又は改良ができることは当業者にとって明らかである。したがって、本発明の精神から逸脱することなく行われるこれらの修正又は改良は、いずれも本発明の特許請求の範囲に属する。
【国際調査報告】