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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】処置用パッチおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/734 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240628BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K31/167
A61K31/415
A61P1/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P17/00
A61K31/728
A61K45/00
A61K47/38
A61K31/734
A61K31/715
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500583
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022069101
(87)【国際公開番号】W WO2023281069
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2109849.6
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524007723
【氏名又は名称】オリパッチ エイエス
【氏名又は名称原語表記】ORIPATCH AS
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スクーテ, エヴァ カトリーヌ アーダル
(72)【発明者】
【氏名】スクーテ, ヨースタイン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクセン, チェーティル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076AA73
4C076BB22
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC18
4C076CC32
4C076DD25
4C076DD38
4C076EE16
4C076EE32
4C084AA17
4C084MA32
4C084MA56
4C084MA63
4C084NA20
4C084ZA08
4C084ZA67
4C084ZA89
4C084ZB11
4C084ZB35
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086EA25
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA56
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA18
4C206GA31
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA76
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、処置用パッチ、特に疼痛部位に鎮痛剤(例えば、部分的鎮痛剤)化合物(例えば、リドカイン)を送達させるための、粘膜(例えば、口腔内の)に付着する可溶性パッチに関する。特に、本発明は、薬学的に許容される可溶性フィルムと鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを含む粘膜付着性パッチを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される可溶性フィルムと、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを含む、粘膜付着性パッチ。
【請求項2】
前記鎮痛剤が、リドカインもしくはその薬学的に許容される塩および/またはベンジダミンもしくはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項3】
前記鎮痛剤が、リドカイン塩酸塩および/またはベンジダミン塩酸塩である、請求項1または2に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項4】
前記薬学的に許容される可溶性フィルムが、アルギネートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項5】
前記メソポーラス微小粒子が、約1~50μm、任意選択で約1~30μmまたは1~20μmの平均粒径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項6】
前記メソポーラス微小粒子が、約1~10μm、好ましくは約2~5μmの平均粒径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項7】
前記メソポーラス微小粒子が、メソポーラスシリカ微小粒子、メソポーラス炭酸カルシウム微小粒子もしくはメソポーラス炭酸マグネシウム微小粒子またはそれらの組み合わせである、請求項1~6のいずれか一項に記載粘膜付着性パッチ。
【請求項8】
前記メソポーラス微小粒子が、メソポーラスシリカ微小粒子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項9】
前記鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子が、約10~60重量%の鎮痛剤、任意選択で約20~45重量%の鎮痛剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項10】
前記粘膜付着性パッチは、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含有して、パッチ1cm2当たり約0.01~50mg、任意選択でパッチ1cm2当たり約0.1~10mgまたはパッチ1cm2当たり0.1~2mgの鎮痛剤用量を提供する、請求項1~9のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項11】
前記粘膜付着性パッチが、約0.02~100mg、任意選択で約0.10~20mgまたは0.10~5.0mgの鎮痛剤総用量を提供する、請求項1~10のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項12】
前記粘膜付着性パッチが、約0.5~10cm2、任意選択で約1~5cm2の粘膜と接触する表面積を提供するように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項13】
前記鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子が、前記粘膜付着性パッチの表面に付着している、請求項1~12のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項14】
前記鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子が、薬学的に許容される可溶性フィルムの層の間に挟まれている、請求項1~13のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項15】
前記鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子が、前記薬学的に許容される可溶性フィルム中に分布または分散している、請求項1~12のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項16】
前記粘膜付着性パッチが、粘膜付着性表面と反対側の非粘膜付着性表面を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項17】
前記粘膜付着性パッチが、粘膜に付着することになる表面と反対側の前記粘膜付着性パッチの表面上に、非粘膜付着性層を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項18】
前記粘膜付着性パッチが、治療薬を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項19】
前記治療薬が、アフタ性口内炎を処置するためのものである、請求項18に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項20】
前記治療薬が、抗炎症剤、殺菌剤、例えば抗生物質、および/またはヒアルロン酸である、請求項18または19に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項21】
2つの層を含む粘膜付着性パッチであって、
a)第1の層が、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含み、
b)第2の層が、非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含み、
前記第1の層を粘膜に付着させたとき、前記第2の層の表面は、粘膜に接触するために利用可能である、粘膜付着性パッチ。
【請求項22】
前記第1の層および第2の層が、互いに直接付着している、請求項21に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項23】
200mm2の表面積を有するパッチが、室温で、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水100mL中に約30~90分で完全に溶解する、請求項1~22のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項24】
前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムが、アルギネートと、任意選択でヒアルロン酸とを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項25】
前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムが、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートポリマーを含み、(a)前記アルギネートの1%w/v溶液が、約20℃で60~170mPa.s、好ましくは約20℃で約80~130mPa.sの粘度を有し、(b)前記アルギネートの2%w/v溶液が、約20℃で約100~300mPa.s、好ましくは約20℃で約120~250mPa.sの粘度を有し、または(c)前記アルギネートの1.25%w/v溶液が、約20℃で約600~900mPa.s、好ましくは約20℃で約650~850mPa.sの粘度を有する、請求項24に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項26】
前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムが、約2.0~4.0%w/wのアルギネートと、任意選択で約0.25~1.0%w/wのヒアルロン酸とを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項27】
前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムが、約3.0%w/wのアルギネートと、約0.5%w/wのヒアルロン酸とを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項28】
前記ヒアルロン酸が、約1.5~3.0×106Da、好ましくは約2.0~2.5×106Daの平均分子量を有する、請求項24~27のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項29】
前記非粘膜付着性層または前記非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と、任意選択で可塑剤(例えば、グリセロールまたはプロピレングリコール)とを含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項30】
前記非粘膜付着性層または前記非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムが、HPMCとポリビニルピロリドン(PVP)とを含む、請求項17~29のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項31】
HPMC:PVPの比が、約1:1である、請求項30に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項32】
前記非粘膜付着性層または前記非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムが、約1.0~3.0%w/wのHPMCと、任意選択で約1.0~2.0%w/wのPVPとを含み、好ましくは約1.5%w/wのHPMCと約1.5%w/wのPVPとを含む、請求項17~31のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項33】
前記HPMCが、約19~24%のメトキシ基と約4~12%のヒドロキシプロポキシ基とを含み、任意選択で、前記HPMCの2%w/v溶液が、約20℃で約3000~6000mPa.s、好ましくは約20℃で約3500~4500mPa.sの粘度を有する、請求項17~32のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項34】
前記PVPが、約7500Da~約12500Da、好ましくは約9000Da~約11000Da、任意選択で約10000Daの平均分子量を有する、請求項30~33のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項35】
前記PVPが、約250kDa~約450kDa、好ましくは約325kDa~約375kDa、任意選択で約360kDaの平均分子量を有する、請求項30~33のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項36】
鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子が、前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム中に分布または分散している、請求項21~35のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項37】
(i)前記鎮痛剤が、請求項2または3に定義される通りであり、
(ii)前記メソポーラス微小粒子が、請求項5~9のいずれか一項に定義される通りであり、
(iii)前記粘膜付着性パッチが、請求項10~12または18~20のいずれか一項に定義される通りである、請求項36に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項38】
治療で使用するための、請求項1~37のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項39】
痛みの処置および/または予防で使用するための、請求項1~37のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項40】
口腔の障害、病態または外傷の処置で使用するための、請求項1~37のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項41】
前記障害または病態が、アフタ性口内炎である、請求項40に記載の粘膜付着性パッチ。
【請求項42】
請求項1~37のいずれか一項に記載の粘膜付着性パッチを含む、包装された製品。
【請求項43】
請求項1~14または16~19のいずれか一項で定義された粘膜付着性パッチを製造するための方法であって、
(a)(i)薬学的に許容される可溶性フィルムと、(ii)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを用意することと、
(b)(i)前記鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を(a)(i)の前記フィルムの表面に付着させること、および/または(ii)前記鎮痛が装填されたメソポーラス微小粒子を(a)(i)の前記フィルムと第2の薬学的に許容される可溶性フィルムとの間に封入することと
を含む、方法。
【請求項44】
工程(b)(i)が、(a)(i)の前記薬学的に許容される可溶性フィルムを水系蒸気に曝し、前記薬学的に許容される可溶性フィルムを前記鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子と接触させることを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
粘膜付着性パッチを製造するための方法であって、
(i)(a)アルギネートおよび任意選択でヒアルロン酸と、(b)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを含む溶液を、前記メソポーラス微小粒子がフィルム中に分布または分散している粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを調製するのに好適な量で、基材もしくは支持体(例えば、キャストもしくは型)に移動させることと、
(ii)前記基材もしくは支持体を、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するための条件下でインキュベートし、それによって前記粘膜付着性パッチを製造することと、任意選択で、
(iii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と任意選択でポリビニルピロリドン(PVP)とを含む溶液を、前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムに付着したHPMCと任意選択でPVPとを含むフィルムを調製するのに好適な量で、(ii)で製造された前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に移動させることと、
(iv)(iii)の生成物を、HPMCと任意選択でPVPとを含む溶液を乾燥させるのに好適な条件下でインキュベートし、それによって前記粘膜付着性パッチを製造することと
を含む、方法。
【請求項46】
工程(ii)が、前記基材もしくは支持体を約45~60℃(例えば、約50~55℃)の温度で、少なくとも約8時間(例えば、約8~48時間または約12~24時間)インキュベートして、前記フィルムを製造することを含み、
任意選択で、工程(ii)が、(a)前記基材もしくは支持体の表面における空気乱流を最小限に抑える条件下で、および/または(b)高い相対湿度で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
粘膜付着性パッチまたは粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するための方法であって、
(i)アルギネートと任意選択でヒアルロン酸とを含む溶液を、フィルムを調製するのに好適な量で、基材もしくは支持体(例えば、キャストもしくは型)に移動させることと、
(ii)前記基材もしくは支持体を約45~60℃(例えば、約50~55℃)の温度で少なくとも約8時間(例えば、約8~48時間または約12~24時間)インキュベートして、前記フィルムまたはパッチを製造することと
を含み、
工程(ii)が、(a)前記基材もしくは支持体の前記表面における空気乱流を最小限に抑える条件下で、および/または(b)高い相対湿度で実施される、方法。
【請求項48】
工程(ii)が高い相対湿度で実施され、任意選択で、前記相対湿度が、少なくとも約40%、好ましくは、少なくとも約45%、50%、55%、60%、65%または70%である、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
アルギネートと任意選択でヒアルロン酸とを含む前記溶液が、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含有し、前記メソポーラス微小粒子がフィルム内に分布または分散されている粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを調製するのに好適な量で、基材もしくは支持体(例えば、キャストもしくは型)に移される、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、粘膜付着性パッチを製造するためのものであり、
(iii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と任意選択でポリビニルピロリドン(PVP)とを含む溶液を、前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムに付着したHPMCと任意選択でPVPとを含むフィルムを調製するのに好適な量で、前記粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に移動させることと、
(iv)(iii)の生成物を、HPMCと任意選択でPVPとを含む前記溶液を乾燥させるのに好適な条件下でインキュベートし、それによって前記粘膜付着性パッチを製造することと
を含む、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
(i)アルギネートと任意選択でヒアルロン酸とを含む前記溶液が、請求項25に定義されるアルギネートポリマーと、任意選択で請求項28に定義されるヒアルロン酸とを含み、
(ii)アルギネートと任意選択でヒアルロン酸とを含む前記溶液が、約2.0~4.0%w/vのアルギネートと、任意選択で約0.25~1.0%w/vのヒアルロン酸とを含み、好ましくは約3.0%w/vのアルギネートと約0.5%w/vのヒアルロン酸とを含み、および/または
(iii)前記メソポーラス微小粒子が、請求項5~9のいずれか一項に定義される通りである、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
(i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と任意選択でポリビニルピロリドン(PVP)とを含む前記溶液が、請求項33に定義されるHPMCと、任意選択で請求項34または35に定義されるPVPとを含み、
(ii)HPMCと任意選択でPVPとを含む前記溶液が、約1.0~2.0%w/vのHPMCと任意選択で約1.0~2.0%w/vのPVPとを含み、好ましくは約1.5%w/vのHPMCと約1.5%w/vのPVPとを含み、
(iii)HPMCとPVPとを含む前記溶液中のHPMC:PVPの比が約1:1であり、および/または
(iv)HPMCと任意選択でPVPとを含む前記溶液が、可塑剤、好ましくはグリコールまたはプロピレングリコールを含有する、請求項45、46、48、50または51のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処置用パッチに関し、特に鎮痛剤(例えば、部分的麻酔薬)化合物(例えば、リドカイン)を疼痛部位に送達させるための、粘膜(例えば、口腔内の)に付着する可溶性パッチに関する。本明細書に提供される処置パッチはまた、口腔の障害もしくは病態または口腔内の外傷を処置するための薬剤、例えば、抗炎症剤、殺菌剤、および/またはヒアルロン酸などの他の処置活性薬剤を含有してもよい。本処置用パッチは、治療、特にアフタ性口内炎などの口腔の疼痛性障害もしくは病態または口腔内の外傷を処置する上で有用性がある。処置用パッチおよびパッチを含む包装された製品を製造するための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
アフタ性口内炎(アフタ性潰瘍または口内炎としても知られる)は、人口の約20%が罹患する一般的な病態である。この病態は、良性および非伝染性口腔内潰瘍(アフタ)の繰り返される形成によって特徴付けられる。小再発性アフタ性口内炎(MiRAS)および大再発性アフタ性口内炎(MaRAS)などの再発性アフタ性口内炎(RAS)、ならびにヘルペス様潰瘍を含む、アフタ性口内炎のいくつかの型がある。各エピソードは、複数の潰瘍の形成をもたらす場合があり、したがって、多発性アフタ性口内炎として特徴付けられ得る。典型的には、潰瘍は、口腔内の非角化上皮表面上に周期的に発生する。しかしながら、病態の一部の重症形態は、角化上皮表面にも関与する。
【0003】
潰瘍形成のエピソードは、通常、年に3~6回発生し、潰瘍は、一般に、発病と発病との間に完全に治癒するが、個々の潰瘍は7~10日間続くことが多く、著しい痛みを引き起こす可能性があり、その結果、飲食、会話、口の動き、口腔での楽器演奏で問題を引き起こす可能性がある。病態の重症形態の場合、潰瘍が衰弱させ、栄養失調のために体重減少をもたらす場合がある。
【0004】
現在、アフタ性口内炎に対する処置法はなく、処置は痛みおよび炎症の管理に焦点が当てられている。しかしながら、市販の治療薬(例えば、鎮痛ゲル)は適用するのが難しい場合があり、長期的な効果を提供できず、ならびに/または成人および子供の両方に好適ではない可能性がある。アフタ性口内炎に関連する痛みを緩和するために、鎮痛剤を送達するための口腔パッチまたは粘着錠剤の使用が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2)が、これらは不溶性などの望ましくない特性を有し、したがって、対象は鎮痛作用が達成された後に、製品を取り除く必要がある。
【0005】
したがって、鎮痛剤(例えば、局所麻酔薬)を口腔に送達するための、例えば、口腔の障害の処置(例えば、痛みの緩和)のための改善された製品が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/013562号
【特許文献2】米国特許公開第2007/042027号
【発明の概要】
【0007】
本発明に至るまでの研究において、本発明者らは、潰瘍に関連する痛みを治癒および緩和するのに役立ち得る効果的な製品を見つけることができなかった問題のあるアフタ性口内炎に罹患している患者からアプローチを受けた。本発明者らは、最初に、口腔粘膜に付着することができる糖プレートの間に挟まれたリドカインゲルから構成される口腔パッチを開発し、それが最大約90分間潰瘍からの痛みを緩和することで、驚くほど効果的であることを見出した。
【0008】
この初期の成功事例に基づいて、本発明者らは、望ましくかつ有益な特性を有する製品を提供するために、初期プロトタイプを修正し、改善しようとした。特に、本発明者らは、口腔粘膜に付着し、疼痛部位に適用するのに小型で簡単かつ便利であり(したがって、ユーザーのエラーのリスクを最小化する)、作用(すなわち、痛みの緩和)の迅速な開始を提供し、適用時に痛みを引き起こさないか、または最小限の痛みで済み、可溶性であり(それによって、パッチを除去する必要性を回避する;パッチの除去は、不便である場合があり、痛みを伴うことがある)、十分に確立された処置領域を伴う持続的な局所効果を提供し、ならびに低有効量を供与する(それによって、噛み傷および喉/会話/嚥下の問題を引き起こす可能性がある他の領域の麻痺などの副作用のリスクを最小限に抑える)口腔パッチを製造しようとした。
【0009】
本発明者らは、この特性の広範なリストが、成人および子供の両方に安全かつ有効である周知の活性物質であるリドカインの粉末形状が充填された口腔可溶性フィルムを提供することによって、満たされることができると仮定した。実施例に示すように、本発明の代表的な成功した実施形態は、リドカイン塩酸塩が装填されているメソポーラスシリカ微小粒子(MSM)をアルギネートベースのフィルムに付着させて使用して開発された。本発明者らは、これらのパッチが口腔粘膜に付着することができ、有効かつ長期の局所的痛みの緩和を達成するのに好適な量で、リドカイン化合物の持続性放出をもたらすことができることを示した。さらに、パッチは可溶性であり、したがって、作用部位からそれらを積極的に除去する必要性を回避する。
【0010】
本発明の処置用パッチは、アフタ性口内炎の処置だけではなく、機械的、化学的、放射線もしくは特発性外傷によって引き起こされる病変(例えば、傷、潰瘍、創傷など)などの口腔の疼痛性障害ためのジェネリック治療として、および歯列の痛み、例えば歯牙萌出の緩和としても有用性があることが予想される。
【0011】
したがって、一態様では、本発明は、薬学的に許容される可溶性フィルムと、鎮痛剤(例えば、部分的または局所麻酔薬)が装填されたメソポーラスシリカ微小粒子とを含む粘膜付着性パッチを提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、治療で使用するための本発明の粘膜付着性パッチを提供する。
【0013】
別の視点からは、本発明は、対象において疾患、病態または外傷(例えば、口腔の疾患、障害、病態または外傷)を処置および/または予防するための方法を提供し、本方法は、本発明による粘膜付着性パッチを対象に(例えば、口腔内の粘膜の、例えば疼痛部位に)投与する工程を含む。
【0014】
別の観点からすると、本発明は、薬学的に許容される可溶性フィルムおよび鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子の、治療のための粘膜付着性パッチの製造における使用を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、痛み、例えば、口腔粘膜などの粘膜に関連するまたは近接する痛みの処置(例えば、緩和)および/または予防で使用するための本発明の粘膜付着性パッチを提供する。
【0016】
別の視点からは、本発明は、対象において痛み(例えば、口腔粘膜などの粘膜に関連するまたは近接する痛み)を処置する(例えば、緩和する)および/または予防するための方法を提供し、本方法は、本発明による粘膜付着性パッチを対象に(例えば、疼痛部位または疼痛が予想される部位、すなわち、口腔粘膜などの粘膜に、またはそれに近接して)投与する工程を含む。
【0017】
別の観点からすると、本発明は、薬学的に許容される可溶性フィルムおよび鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子の、痛み、例えば、口腔粘膜などの粘膜に関連するまたは近接する痛みを処置する(例えば、緩和する)および/または予防するための粘膜付着性パッチの製造における使用を提供する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、口腔粘膜の病変(例えば、傷、潰瘍、創傷等)などの口腔の障害、病態または外傷、例えば、アフタ性口内炎の処置で使用するための本発明の粘膜付着性パッチを提供する。
【0019】
別の視点からは、対象において口腔の障害(例えば、口腔粘膜の病変(例えば、傷、潰瘍、創傷等)、例えば、アフタ性口内炎)を処置するための方法を提供し、本方法は、本発明による粘膜付着性パッチを対象に(例えば、傷もしくは病変の部位に、またはそれに近接して)投与する工程を含む。
【0020】
別の観点からすると、本発明は、薬学的に許容される可溶性フィルムおよび鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子の、口腔粘膜の病変(例えば、傷、潰瘍、創傷等)などの口腔の障害、病態または外傷、例えば、アフタ性口内炎を処置するための粘膜付着性パッチの製造における使用を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、本発明の粘膜付着性パッチを含む包装した製品を提供する。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明の粘膜付着性パッチを製造するための方法であって、
(a)(i)薬学的に許容される可溶性フィルムと、(ii)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを用意することと、
(b)(i)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を(a)(i)のフィルムの表面に付着させること、または(ii)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を、(a)(i)のフィルムと第2の薬学的に許容される可溶性フィルムとの間に封入することとを含み、任意選択で、第2のフィルムが、(a)(i)のフィルムと同じである、方法を提供する。
【0023】
さらなる実施形態では、本発明は、粘膜付着性パッチを製造するための方法であって、
(i)(a)アルギネートおよび任意選択でヒアルロン酸と、(b)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを含む溶液を、メソポーラス微小粒子がフィルム内に分布もしくは分散している粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを調製するのに好適な量で、基材もしくは支持体(例えば、キャストもしくは型)に移動させることと、
(ii)基材もしくは支持体を、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するための条件下でインキュベートし、それによって粘膜付着性パッチを製造することと、任意選択で、
(iii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と任意選択でポリビニルピロリドン(PVP)とを含む溶液を、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムに付着したHPMCと任意選択でPVPとを含むフィルムを調製するのに好適な量で、(ii)で製造された粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に移動させることと、
(iv)(iii)の生成物を、HPMCと任意選択でPVPとを含む溶液を乾燥させるのに好適な条件下でインキュベートし、それによって粘膜付着性パッチを製造することとを含む方法を提供する。
【0024】
理論によって束縛されることを望むものではないが、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含まない本明細書に記載されるような粘膜付着性パッチもまた、機械的、化学的、放射線または特発性外傷によって引き起こされる病変(例えば、傷、潰瘍、創傷等)などの口腔の疼痛性障害に関連する痛み、および歯列の痛み、例えば歯牙萌出の緩和で有効であり得ることも企図される。
【0025】
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本明細書に実質的に記載されるような薬学的に許容される可溶性フィルムを含む粘膜付着性パッチを提供する(すなわち、粘膜付着性パッチが、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含有しない)。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に実質的に記載されるような1以上の薬学的に許容される可溶性フィルムからなるか、またはそれから本質的になる粘膜付着性パッチを提供する。粘膜付着性パッチが、本明細書に実質的に記載されるような1以上の薬学的に許容される可溶性フィルムから本質的になる限りにおいて、それは、本明細書で定義される追加の治療薬、例えばヒアルロン酸、本明細書に記載されるようなコーティング剤などを含有してもよい。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、本明細書に実質的に記載される薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルムを含む。
【0026】
したがって、粘膜付着性パッチ、薬学的に許容される可溶性フィルム(例えば、アルギネートフィルム)および追加の治療薬に関する以下の詳細な説明において記載される実施形態のすべては、鎮痛剤を装填しているメソポーラス微小粒子を含有しない粘膜付着性パッチを説明するために使用され得る。
【0027】
したがって、一態様では、本発明は、2つの層を含む粘膜付着性パッチを提供し、
a)第1の層が、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含み、
b)第2の層が、非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含み、
第1の層を粘膜に付着させたとき、第2の層の表面は、粘膜に接触するために利用可能である。
【0028】
さらに、本発明のあらゆる粘膜付着性パッチ(すなわち、鎮痛剤を装填しているメソポーラス微小粒子を含有しないパッチを含む)は、本明細書に記載の処置的有用性のいずれかにおいて、例えば口腔内で使用され得る。
【0029】
本発明はまた、粘膜付着性パッチまたは粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するための方法であって、
(i)アルギネートと任意選択でヒアルロン酸とを含む溶液を、フィルムを調製するのに好適な量で、基材もしくは支持体(例えば、キャストもしくは型)に移動させることと、
(ii)基材もしくは支持体を、約45~60℃(例えば、約50~55℃)の温度で、少なくとも約8時間(例えば、約8~48時間または約12~24時間)インキュベートして、当該フィルムまたはパッチを製造することとを含み、
工程(ii)が、(a)基材もしくは支持体の表面における空気乱流を最小限に抑える条件下で、および/または(b)高い相対湿度で実施される、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
用語「パッチ」は、特定の領域をカバーするために使用される材料片を指す。したがって、本発明の文脈において、パッチは、粘膜上の疼痛部位、例えば病変(例えば、傷、潰瘍、創傷等)の粘膜または疼痛部位に近い粘膜の、領域をカバーするのに好適である材料片(物質のフィルムまたはシート)を指す。以下にさらに論議されるように、パッチは、材料の2以上の部分(2以上のフィルムまたはシート)から構成されてもよい。特に、パッチは、材料の複数の層(例えば、2以上の層、例えば、2、3、4またはそれ以上の層)から構成されてもよい。いくつかの実施形態では、各層は、同じ材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、2以上の層は、異なる材料から構成されてもよく、例えば、パッチは、各々が異なる物質から構成される、粘膜付着性層と、非粘膜付着性層とを含んでもよい。
【0031】
用語「粘膜付着性」とは、粘膜(mucosa)、すなわち、粘膜(mucosal membrane)に付着することができる物質を指す。したがって、「粘膜付着性パッチ」は、付着が起こるのに好適な条件下での粘膜との接触時に、例えば、一定の圧力下で一定時間の粘膜との接触時に、例えば、粘膜上のパッチに少なくとも約5秒間、例えば、約6、7、8、9、10秒またはそれ以上の間、指で圧力を加えたときに、粘膜に付着するパッチを指す。
【0032】
したがって、粘膜付着性パッチは、粘膜(例えば、口腔粘膜)に一箇所で付着し、(付着の成功後に)粘膜との接触点から実質的に脱離および/または移動しない、すなわち、実質的な力、例えば、以下で定義される最小の付着剥離力を加えることなく、接触点から脱離および/または移動しないパッチを指す。例えば、粘膜付着性パッチは、それが最初に接触した粘膜の面積のうち、少なくとも50%、例えば、少なくとも60、70、80または90%を、粘膜との接触の実質的にすべての期間、すなわち、それが実質的に溶解するか取り外されるまで、カバーすることができる。パッチによってカバーされる面積が、パッチが溶解するにつれて減少し得ることが理解される。したがって、粘膜付着性パッチは、それが最初に接触し付着した粘膜の面積のうち、少なくとも50%、例えば、少なくとも60、70、80または90%を、それが実質的に溶解するまで、例えば、パッチの表面積が、粘膜との接触前のパッチの表面積に対して約30%以上、例えば約40%または50%以上低減されるまで、カバーすることができる。
【0033】
したがって、別の視点からは、粘膜付着性パッチは、その粘膜との接触の期間の実質的にすべての間、すなわち、それが実質的に溶解するまで(例えば、パッチの表面積が粘膜との接触前のパッチの表面積に対して約30%以上、例えば約40%または50%以上低減されるまで)または取り外すまで、それが最初に接触し付着した粘膜の面積から約20mmを超えて、例えば約15mmまたは10mm移動しないものであってもよい。パッチの移動は、パッチの任意の固定点、例えばパッチの中心を使用して決定され得る。
【0034】
実施例に示すようにパッチの粘膜付着特性は、テクスチャーアナライザー装置およびガラススライドを使用して、パッチの粘着性を測定することによって評価され得る。ガラススライドは、親水性表面粘膜の適切なモデル表面であることが示されている親水性基材であり、すなわち、それは口腔粘膜の適切な模倣体である。粘膜付着性測定の原理は、図1の概略図に示されている。測定されるパラメーターは、付着剥離力(N)および付着仕事量(Ns)である。
【0035】
代表的な例では、ガラス基材(例えば、10×10mmのガラススライド)を、唾液または等価な溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(約pH6~8、例えば、約pH7(約pH7.4など))などの唾液模倣溶液の例えば約10~30μL(約15μLなど))で湿らせたパッチ(ガラス基材よりも大きな表面積を有する、すなわち、重なり合う表面積を有する、例えば、ガラス基材の表面積の少なくとも110%、少なくとも約120%、130%または140%など、例えば、ガラス基材の表面積の約110%~200%を有する)と、適切な接触力、例えば、約20g~400g、約50g~380g、100g~360g、150g~340g、200g~320gなど、例えば約300gが達成されるまで接触させ、約10秒間、例えば5~20秒間維持する。次いで、ガラス基材からパッチを脱離させるのに必要な力が測定される。
【0036】
したがって、いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチ(例えば、可溶性フィルム)は、実施例により詳細に記載される上述の方法を使用して測定されるとき、少なくとも約2.0N、例えば、少なくとも約2.5N、3.0Nまたは3.5N、例えば約4.0N以上の平均付着剥離力を有する(例えば、この力は、約5回の測定の平均である)。したがって、いくつかの実施形態では、唾液模倣液、例えば15μLのPBS(pH7.4)で湿らせた粘膜付着性パッチは、1cm2の表面積を有するガラス基材を使用して測定されるとき、少なくとも約2.0Nの平均付着剥離力を有する。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、約15N未満、例えば、約12N未満または10N未満の平均付着剥離力を有し、例えば、付着剥離力は、約2.0~15N、2.5~12Nまたは3.0~10Nである。
【0037】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、実施例により詳細に記載される上述の方法を使用して測定されるとき、少なくとも約0.05Ns、例えば、少なくとも約0.10Ns、0.12Ns、0.14Ns、0.16Ns、0.18Nsまたは0.20Ns、例えば約0.25Ns以上の平均付着仕事量(Ns)を有する(例えば、この力は、約5回の測定の平均である)。したがって、いくつかの実施形態では、唾液模倣液、例えば15μLのPBS(pH7.4)で湿らせた粘膜付着性パッチは、1cm2の表面積を有するガラス基材を使用して測定されるとき、少なくとも約0.05Nsの平均付着仕事量を有する。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、約5.0Ns未満、例えば、約4.0Ns未満、3.0Ns未満または2.0Ns未満の平均付着仕事量を有し、例えば、付着仕事量は、0.05~5.0Ns、0.10~4.0Ns、0.12~3.0Ns、0.14~2.5Nsまたは0.16~2.0Nsである。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、約0.50~5.0Ns、0.55~4.0Ns、0.60~3.0Ns、0.65~2.5Nsまたは0.70~2.0Nsの平均付着仕事量を有する。
【0038】
上で述べたように、本発明の粘膜付着性パッチは、口腔の障害、病態もしくは外傷の処置において、ならびに口腔内の、すなわち口腔内の局所部位での痛みの処置および/または予防において、特定の有用性がある。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性パッチは、口腔または頬側粘膜付着性パッチであり、すなわち、それは、口腔内の粘膜、すなわち口腔粘膜に付着する。
【0039】
したがって、本明細書で定義される「粘膜付着性パッチ」は、一箇所で付着するのではなく粘膜(例えば、口腔内の)上を動き回る調製物(例えば、フィルム、錠剤、ロゼンジなど)を含まない。それは、粉末の調製物、液体、ペースト、粘性液体ゲル、または唾液中で噛まれるか唾液中に置かれると粉末もしくはペーストにばらばらに崩壊する錠剤もしくはトローチなどの、口腔内で保持される場合に1のアイテムとしてまとまらない調製物も含まない。
【0040】
用語「粘液膜(mucous membrane)」、「粘膜(mucosal membrane)」、および「粘膜(mucosa)」は、本明細書では互換的に使用され、口、目、耳、鼻、膣、尿道口、肛門を含む様々な体腔を覆う膜を指す。
【0041】
口腔粘膜は、口の内側を覆う粘膜を指し、被覆粘膜、咀嚼粘膜および特殊粘膜を含む。被覆粘膜は、非角化重層扁平上皮を含み、頬粘膜(頬ならびに口腔底部の被覆部)、口唇粘膜(唇の内側の被覆部)および歯槽粘膜(頬と頬粘膜との間の被覆部)を構成する。咀嚼粘膜は、舌背、硬口蓋、付着歯肉(歯茎)で見出される角化重層扁平上皮を含む。特殊粘膜は、舌背面上の舌乳頭の上の味覚芽の領域を含む。
【0042】
粘膜付着性パッチは、口腔粘膜のいかなる部分とも接触させ、それに付着させてよい。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、被覆粘膜(特に、口唇粘膜ならびに/または頬粘膜)および/もしくは咀嚼粘膜と接触させ、それに付着させてもよい。このパッチは、口腔内で使用するために好適な任意のサイズまたは形状で提供されてもよく、したがって、単一パッチを、口腔粘膜の一部以上と接触させ、それらに付着させてもよく、すなわち、それは、異なるタイプの口腔粘膜、例えば、頬と唇の内側被覆部または頬と歯肉の内側被覆部を含む領域をカバーしてもよいことが理解される。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性パッチは、薬学的に許容される可溶性フィルムと、鎮痛剤が装填されたメソポーラスシリカ微小粒子とを含む。これらの構成成分が、本明細書に記載されるようなパッチの所望の機能特性を達成するための(例えば、粘膜上の疼痛部位における痛みの緩和を達成するための)多数の方法で選択され配置される(すなわち、構成される)ことが、以下の本開示から明らかになる。特に、パッチの構成成分は、パッチが粘膜への鎮痛剤(例えば、局所麻酔薬)の粘膜への部分的投与に好適であり、および/または粘膜上の疼痛部位での痛みの緩和を達成するために好適であるように、選択され、配置されねばならない。したがって、パッチの構成成分は、パッチの粘膜への接触および付着の際に、鎮痛剤(例えば、局所麻酔薬)がパッチから有効量で、すなわち、痛みの緩和を達成するのに好適な量で、放出されるように、選択され、配置されねばならない。パッチの構成成分はまた、パッチが可溶性であり、例えば、パッチのフィルム構成成分が粘膜(例えば、口腔粘膜)への付着後に溶解するように、選択され、配置されねばならない。パッチがメソポーラス微小粒子を含有する実施形態において、これらは溶解せず、したがって、可溶性粘膜付着性パッチは、パッチの可溶性構成成分、すなわち、可溶性フィルムの溶解性を指すことが理解される。
【0044】
薬学的に許容される可溶性フィルムもしくはシートは、粘膜(例えば、口腔粘膜)との接触の際に溶解することができる物質または材料の薄層を指す。フィルムはまた、上で定義されたように粘膜付着性、すなわち、薬学的に許容される可溶性かつ粘膜付着性のフィルムであり得る。しかしながら、上で述べたように、本発明の粘膜付着性パッチは、複数の層(例えば、フィルム)を含んでもよく、上で定義されたように、粘膜と接触する層(フィルムもしくはシート)だけが粘膜付着特性、すなわち、パッチが粘膜に付着するのを可能にする特性を有する必要があることが、明らかである。フィルムはまた、粘膜、例えば、口腔粘膜への付着に好適であるように、不均一な、例えば曲面に適用されるのに十分可撓性でなければならない。任意の好適な材料が、本発明の粘膜付着性パッチのフィルムを提供するために使用され得る。
【0045】
用語「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」は、本明細書で互換的に使用され、パッチ内の他の成分(例えば、鎮痛剤、メソポーラス粒子、追加の治療薬)と適合する必要があり、ならびにレシピエントに対して生理学的に許容される材料または物質を指す。さらに、材料はまた無菌で、パイロジェンフリーであることが望ましい。
【0046】
「可溶性フィルムもしくはシート」は、唾液またはその等価物(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)などの水および/または水溶液中に可溶性であるフィルムもしくはシートを形成することができる任意の薬学的に許容される材料から構成され得る。実施例に示すように、フィルム(例えば、本発明のパッチ)の溶解性は、(規定されたサイズの)フィルムもしくはパッチが制御された条件下、水溶液中で完全に溶解するのに要する時間を測定することによって評価され得る。
【0047】
代表的な例では、可溶性フィルム(例えば、20×10mm)が、室温(例えば、20~25℃)で、穏やかに撹拌しながら(例えば、10~100rpm(約50rpmなど))、100mLのリン酸緩衝生理食塩水中(例えば、約pH6~8、例えば、約pH7)に、フィルムがもはや見えなくなるまで浸漬される。
【0048】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性パッチで使用される可溶性フィルムの20×10mm片または粘膜付着性パッチそれ自体は、室温(例えば、20~25℃)で、100mLのリン酸緩衝生理食塩水(例えば、約pH6~8、例えば、約pH7(約pH7.4など))中で、約2時間未満、例えば、90、75、60、45、40、35、30、25分以下(約10~90、15~75または20~60分など))で完全に溶解する。
【0049】
したがって、いくつかの実施形態では、約200mm2の表面積を有する本発明の粘膜付着性パッチは、100mLのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に、室温にて約30~90分で完全に溶解する。
【0050】
本発明の粘膜付着性パッチで使用するための可溶性フィルムもしくはシートは、本明細書に開示される要求される特性、例えば溶解性を達成するのに好適な任意の厚さのものであり得る。この態様では、フィルムの厚さが、パッチが粘膜(例えば口腔粘膜)上で溶解するのに必要な時間を調整するように変更されてもよいことが理解される。これは、パッチが病変を刺激し得る物質、例えば酸性食品に対するバリアとして機能することができるため、パッチが非常に痛みを伴う病変、例えば、潰瘍または傷を処置するために使用される場合に特に有利であり得る。代表的な実施形態では、パッチ中のフィルムもしくはシート(例えば、パッチ中の各シート)は、約50~1000μm、例えば、約75~900μm、100~800μm、125~700μmまたは150~600μmの厚さを有してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、パッチは、約50~1000μm、例えば、約100~800μm、約150~700μmまたは約200~500μmの厚さを有してもよい。
【0051】
可溶性(および膜付着性)フィルムを形成することができる薬学的に許容される材料は、アルギネート、セルロースおよびポリアクリル酸などの水溶性ポリマーを含む。したがって、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、アルギネートまたはセルロースまたはポリアクリル酸、もしくはそれらの組み合わせを含む。好ましい実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、アルギネートを含む。したがって、いくつかの実施形態では、膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムは、アルギネートを含む。
【0052】
上で定義された要求される溶解性および粘膜付着特性を有するフィルムを製造することができるあらゆるアルギネートが、薬学的に許容される可溶性フィルムで使用され得る。いくつかの実施形態では、アルギネートは、25~40%(例えば、30~40%)のグルロネートと、55~77%(例えば、60~70%)のマンヌロネートとを含む。好適な医薬品グレードのアルギネートの配合物は市販されており(例えば、Manucol(登録商標)LKX、Protanal(登録商標)CR 8133、Protanal(登録商標)CR 8233)、本発明で使用されてもよい。Protanal(登録商標)CR 8133、Manucol(登録商標)LKXおよびProtanal(登録商標)CR 8233は、それぞれ、低粘度アルギネート、中粘度アルギネートおよび高粘度アルギネートに相当し、粘度は、1~2%w/vの溶液について約20℃で決定される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムで使用されるアルギネートは、中粘度アルギネート、高粘度アルギネートまたはそれらの組み合わせである。
【0053】
同様に、上で定義された要求される溶解性および粘膜付着特性を有するフィルムを製造することができるあらゆるセルロースが、薬学的に許容される可溶性フィルムで使用され得る。いくつかの実施形態では、セルロースポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムまたはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、セルロースポリマー(例えば、HPMC)を含む薬学的に許容される可溶性フィルムは、非粘膜付着性フィルムである。
【0054】
好ましい実施形態では、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートポリマー(例えば、Manucol(登録商標)LKX、Protanal(登録商標)CR 8133、Protanal(登録商標)CR 8233)を含み、好ましくは、アルギネート(例えば、Manucol(登録商標)LKXなどの中粘度のアルギネート)の1%w/v溶液は、約60~170mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度、好ましくは約80~130mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するために使用されるアルギネートポリマー(例えば、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートなどの低粘度アルギネート、例えば、Protanal(登録商標)CR 8133)の2%w/v溶液は、約100~300mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度、好ましくは約120~250mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するために使用されるアルギネートポリマー(例えば、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートなどの高粘度アルギネート、例えば、Protanal(登録商標)CR 8233)の1.25%w/v溶液は、約600~900mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度、好ましくは約650~850mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有する。
【0055】
溶液(例えば、アルギネート溶液などのポリマー溶液)の粘度は、当該技術分野において任意の好適な手段を使用して、例えば、毛細管動粘度計または回転粘度計などの粘度計を使用して決定され得る。
【0056】
薬学的に許容される可溶性フィルムは、任意の好適な手段を使用して調製され得る。代表的な例において、また以下の実施例に記載されるように、フィルムは、基材もしくは支持体、例えばキャストもしくは型に、その後移され(当該技術分野において公知の任意の好適な方法、例えば、注入、噴霧などによって)、フィルムを調製するために固化される(例えば、硬化または乾燥される)ポリマーの溶液を調製することによって製造され得る。フィルムは、任意の好適な手段を使用して調製されてもよいことが明らかである。例えば、フィルムは、本発明の粘膜付着性パッチを直接組み立てることができるように、キャストまたは型で調製することができる。あるいは、大きなフィルムもしくはシートが調製され、その後、本発明の粘膜付着性パッチで使用するのに好適なより小さな細片に切断されてもよく、または、その後、パッチの他の構成成分、すなわち、装填されたメソポーラス微小粒子および任意選択で1以上の追加の層、コーティングなどの組み立てが行われてもよい。
【0057】
以下の実施例に示すように、フィルムを乾燥または硬化させるために使用される方法がフィルムの均一性、したがってフィルムから製造されるパッチの一貫性に影響を及ぼし得ることと判断された。特に、特定の乾燥条件は、フィルムの均一性およびそれから製造されるパッチの重量を改善するように機能し得る。
【0058】
特に、驚くべきことに、フィルムを、少なくとも45℃(例えば、約45~60℃(約50~55℃など)、例えば、約50℃)の温度で少なくとも約8時間(例えば、約8~48時間または12~24時間)インキュベートすることが、フィルムの均質性を改善するように機能することが判明した。
【0059】
さらに、フィルムを高い相対湿度でインキュベートすることもフィルムの均質性を改善する。
【0060】
用語「相対湿度」は、所定の温度での水の平衡蒸気圧に対する水蒸気の分圧の比率を指す。高相対湿度は、典型的には、相対湿度が少なくとも約40%である条件を指す。
【0061】
フィルムが乾燥される環境(例えば、乾燥キャビネット)の相対湿度を増加させるための任意の好適な手段が、本明細書に開示される方法で使用されてもよく、それは当業者の範囲内である。例えば、フィルム(すなわち、フィルムが製造されるその上に製造される支持体もしくは基材)を、塩溶液(例えば、NaCl)を含む開放容器に近接してインキュベートすることが相対湿度を増加させ、それによってフィルムの均質性を改善してもよい。
【0062】
したがって、いくつかの実施形態では、フィルムがその上で乾燥されている基材もしくは支持体をインキュベートする工程は、少なくとも約40%、好ましくは約45%、50%、55%、60%、65%または70%の相対湿度で実施される。
【0063】
フィルムの均質性は、フィルムがその上で乾燥されている基材もしくは支持体の表面における空気乱流が最小限に抑えられる条件下で、フィルムを乾燥させることによって改善され得る。
【0064】
「空気乱流」は、渦流および垂直流から生じる空気の不規則な動きを指す。本発明の文脈において、空気乱流は、一定の温度および/または湿度条件を維持するために必要とされる乾燥キャビネット内の空気の移動の結果であり得る。支持体もしくは基材の表面での空気乱流を低減または最小限に抑えるための任意の好適な手段が、本明細書に開示される方法で使用されてもよく、それは当業者の範囲内である。例えば、空気乱流は、基材を1または複数の穿孔を備える容器、例えば、穴の開いた蓋を備えた容器内に配置することによって最小化され得る。
【0065】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、粘膜付着性パッチまたは粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するための方法であって、
(i)アルギネートと任意選択でヒアルロン酸を含む溶液を、フィルムを調製するのに好適な量で、基材もしくは支持体(例えば、キャストもしくは型)に移動させることと、
(ii)基材もしくは支持体を、約45~60℃(例えば、約50~55℃)の温度で、少なくとも8時間(例えば、約8~48時間または約12~24時間)インキュベートして、当該フィルムもしくはパッチを製造することと
を含み、
工程(ii)が、(a)基材もしくは支持体の表面における空気乱流を最小限に抑える条件下で、および/または(b)高相対湿度で実施される、方法を提供する。
【0066】
ポリマー、例えばアルギネートの任意の好適な濃度を用いて、薬学的に許容される可溶性フィルムのための「フィルム溶液」を調製してもよく、それは当業者の範囲内である。いくつかの実施形態では、フィルム溶液中のポリマー、例えばアルギネートの濃度は、約0.5~5.0%w/wであり、例えば、約1.0~4.5、1.5~4.0、2.5~3.5%w/wのポリマー(約3%w/wのポリマー、例えば、アルギネートなど)である。したがって、いくつかの実施形態では、フィルム中のポリマー、例えばアルギネートの濃度は、約0.5~5.0%w/wであり、例えば、1.0~4.5、1.5~4.0、2.5~3.5%w/wのポリマー(約3%w/wのポリマー、例えば、アルギネートなど)である。
【0067】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、フィルムの可撓性を増加させるために可塑剤を含む。任意の好適な可塑剤が、当該技術分野で周知のものから選択されてもよく、フィルムを形成するために使用される他の材料に依存し得る。好適な可塑剤の代表的な例としては、グリセロール、スクロース、ソルビトール、マルトデキストリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、可塑剤は、グリセロールまたはプロピレングリコールを含む。フィルム中の可塑剤の量は、その粘膜付着特性に影響を及ぼす場合があり、フィルムを形成するために使用される材料および選択された可塑剤に依存する。
【0068】
いくつかの実施形態では、フィルムを調製するために使用されるフィルム溶液は、約0.1~5%または約0.5~5%w/wの可塑剤、例えば、約1.0~4.5、1.5~4.0、2.5~3.5%w/wの可塑剤(約3%w/wの可塑剤、例えば、グリセロールまたはプロピレングリコールなど)を含む。したがって、いくつかの実施形態では、フィルムは、約0.1~5%または約0.5~5%w/wの可塑剤、例えば、約1.0~4.5、1.5~4.0、2.5~3.5%w/wの可塑剤(約3%w/wの可塑剤、例えば、グリセロールまたはプロピレングリコールなど)を含む。
【0069】
したがって、好ましい実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルム(例えば、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム)を調製するために使用されるフィルム溶液は、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートポリマーの水溶液(例えば、Manucol(登録商標)LKX、Protanal(登録商標)CR 8133、Protanal(登録商標)CR 8233)を約2.5~3.5%w/w、およびグリセロールを約2.5~3.5%w/w含み、任意選択で、(a)アルギネートの1%w/v溶液が、60~170mPa.s、好ましくは約80~130mPa.sの粘度を有し(例えば、Manucol(登録商標)LKX)(例えば、約20℃で)、(b)アルギネートの2%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8133)が、約100~300mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約120~250mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有し、または(c)アルギネートの1.25%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8233)が、約600~900mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約650~850mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有する。したがって、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、 30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートポリマーの水溶液(例えば、Manucol(登録商標)LKX、Protanal(登録商標)CR 8133、Protanal(登録商標)CR 8233)を約2.5~3.5%w/wおよびグリセロールを約2.5~3.5%w/w含み、任意選択で、(a)アルギネートの1%w/v溶液(例えば、Manucol(登録商標)LKX)が、60~170mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約80~130mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有し、(b)アルギネートの2%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8133)が、約100~300mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約120~250mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有し、または(c)アルギネートの1.25%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8233)が、約600~900mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約650~850mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルム(例えば、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム)を調製するために使用されるフィルム溶液は、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートポリマーの水溶液(例えば、Manucol(登録商標)LKX、Protanal(登録商標)CR 8133、Protanal(登録商標)CR 8233)を約2.5~3.5%w/w、ヒアルロン酸(例えば、約1.5~3.0×106Da、好ましくは約2.0~2.5×106Daの平均分子量を有するヒアルロン酸)を約0.25~1.0%、およびグリセロールを約0.2~3.0%w/wを含み、任意選択で、(a)アルギネートの1%w/v溶液(例えば、Manucol(登録商標)LKX)が、60~170mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約80~130mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有し、(b)アルギネートの2%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8133)が、約100~300mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約120~250mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有し、または(c)アルギネートの1.25%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8233)が、約600~900mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約650~850mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有する。
【0071】
したがって、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートポリマーの水溶液(例えば、Manucol(登録商標)LKX、Protanal(登録商標)CR 8133、Protanal(登録商標)CR 8233)を約2.5~3.5%w/w、ヒアルロン酸(例えば、約1.5~3.0×106Da、好ましくは約2.0~2.5×106Daの平均分子量を有するヒアルロン酸)を約0.25~1.0%、およびグリセロールを約0.2~3.0%w/w含み、任意選択で、(a)アルギネートの1%w/v溶液(例えば、Manucol(登録商標)LKX)が、60~170mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約80~130mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有し、(b)アルギネートの2%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8133)が、約100~300mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約120~250mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有し、または(c)アルギネートの1.25%w/v溶液(例えば、Protanal(登録商標)CR 8233)が、約600~900mPa.s(例えば、約20℃で)、好ましくは約650~850mPa.s(例えば、約20℃で)の粘度を有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、例えば、本発明のパッチを消費者にとってより口当たりの良いものにするための他の構成成分、例えば、風味剤、着色剤および/もしくは甘味剤などを含んでもよく、ならびに/またはパッチの貯蔵寿命を改善するための他の構成成分、例えば、酸化防止剤および/もしくは防腐剤を含んでもよい。任意の好適な追加の構成成分が使用されてもよく、好都合には、上述のフィルム溶液に添加され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、鎮痛剤を装填しているメソポーラス微小粒子は、微小粒子が得られたフィルム中に分散および/または分布するように、フィルム溶液に添加される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、装填されたメソポーラス微小粒子によって提供される薬剤に加えて、鎮痛剤(特に、微小粒子に装填された鎮痛剤)を含有する。別の視点からは、いくつかの実施形態では、鎮痛剤(例えば、微粒子に装填された鎮痛剤)は、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するために使用されるフィルム溶液に別々に添加される。しかしながら、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムは、装填されたメソポーラス微小粒子の形態以外の鎮痛剤(特に、微小粒子に装填された鎮痛剤)を含有しない。別の視点からは、微小粒子に装填された鎮痛剤は、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するために使用されるフィルム溶液に別々には添加されない。
【0074】
上で述べたように、本発明者らは、メソポーラス微小粒子が、粘膜(例えば、口腔粘膜)への部分的投与のために、鎮痛剤(例えば、局所麻酔薬)を粘膜付着性パッチ上またはその中に提供する特に有効な手段であると判断した。
【0075】
用語「メソポーラス」は、典型的には、直径2~50nmを有する細孔を含有する材料を指す。
【0076】
用語「微小粒子」は、典型的には、約1~1000μmのサイズの粒子を指す。
【0077】
したがって、メソポーラス微小粒子は、約1~1000nmの平均(average)(平均(mean))直径を有する粒子であり、約2~50nmの細孔を有する。しかしながら、特に、本発明の粘膜付着性パッチにおいては、メソポーラス粒子が、不快な口当たりを回避するのに、すなわち、対象によって検知されることを回避するのに十分小さいことが好ましい。上で述べたように、本発明のパッチの利点は、フィルムが溶解することができ、したがって、一旦鎮痛効果が得られたら、作用部位から取り外される必要がないことである。パッチの一部を形成するメソポーラス微小粒子は溶解しないために、一旦フィルムが溶解すると、摂取の前に、それらは口腔内に分散し得る。したがって、粒子は、対象に対して不快感または刺激を引き起こさないように十分に小さいことが重要である。しかしながら、細胞によるナノ粒子の取り込みに関する懸念があり、したがって、ナノメートル範囲の粒子の使用が回避されることが好ましい。
【0078】
本発明の粘膜付着性パッチで使用するためのメソポーラス微小粒子は、約1~50μm(約1~40μm、1~30μmまたは1~20μmなど)の平均(average)(平均(mean))直径、例えば、約30μmまたは20μm未満の平均直径を有し得る。いくつかの実施形態では、メソポーラス微小粒子は、約1~10μmまたは2~5μm(約1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmなど)、例えば約3μmの平均直径を有する。
【0079】
本発明で使用するためのメソポーラス微小粒子は、典型的には、単分散粒子、例えば、0~0.1(0~0.01など)の範囲であり得る多分散指数(PDI)(標準偏差(SD)の二乗を平均で割った値として測定され、SDおよび平均値の両方が、これらが球体である場合、それぞれの粒径である)を有する分子である。PDは、理想的には0.005未満である。
【0080】
別の視点からは、単分散粒子は、10%未満、好ましくは6%未満、およびより好ましくは5%未満の変動係数を有する粒子である。変動係数(CV)は、下記の通りのパーセンテージとして決定され、
CV=100×標準偏差/平均
ここで、平均は、平均粒径であり、標準偏差は、粒度における標準偏差である。CVは、好ましくは、メインモード、すなわち検出された粒度分布に単峰性分布曲線を当てはめることによって計算される。したがって、モードサイズ未満であるか、またはそれを超える一部の粒子は、例えば、約90%、より一般的に約99%の(すなわち、検出可能な粒子の)総粒子数に基づき得る計算から割り引かれる場合がある。そのようなCVの決定は、電界効果電子銃SEM(FE-SEM/FEG-SEM)で実施される。多分散指数もまた、そのようなデバイスを使用して決定することができる。
【0081】
メソポーラス微小粒子は、シリカ、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムを含む様々な物質から構成されてもよく、そのような粒子は市販されている(例えば、Syloid(登録商標)FPおよびXDP、Parteck(登録商標)SLCならびにUpsalite(登録商標))。上で定義されたサイズ特性を有する任意の好適なメソポーラス微小粒子が、本発明の粘膜付着性パッチで使用されてもよい。
【0082】
したがって、本発明の粘膜付着性パッチで使用するためのメソポーラス微小粒子は、メソポーラスシリカ微小粒子、メソポーラス炭酸カルシウム微小粒子、メソポーラス炭酸マグネシウム微小粒子またはそれらの組み合わせから選択されてもよい。好ましい実施形態では、本発明の粘膜付着性パッチで使用するためのメソポーラス微小粒子は、メソポーラスシリカ微小粒子(例えば、Syloid(登録商標)AL-1 FPまたはSyloid(登録商標)244 FP)を含むか、またはそれらからなる。
【0083】
好適なメソポーラス微小粒子は、好適な条件下での、すなわち粘膜(例えば、口腔粘膜)との接触時に有効量の鎮痛剤の放出を可能にするのに十分な量の本明細書に定義される鎮痛剤を装填することができる粒子を含む。メソポーラス微小粒子が鎮痛剤を装填し、鎮痛剤を放出することができるかどうかを判定するための好適な方法は、実施例に記載されている。
【0084】
メソポーラス微小粒子は、当該技術分野において公知の任意の好適な手段を使用して、鎮痛剤を装填することができる。代表的な例では、鎮痛剤を溶液として用意し、(すなわち、C1~C4アルコールなどの好適な溶媒中に溶解された鎮痛剤、例えば、エタノールに溶解されたリドカイン塩酸塩)、メソポーラス微小粒子(例えば、メソポーラスシリカ微小粒子)と、液体が吸収されるのに好適な条件下で、例えば室温で少なくとも約5分間、接触させることができる。メソポーラス微小粒子が液体から分離される際に、微小粒子は、鎮痛剤を担持する溶媒の蒸発を可能にするように処理され、「装填されたメソポーラス微小粒子」、例えば、乾燥粉末を提供することができる。必要に応じて、任意の好適な方法または処理が、メソポーラス微小粒子から溶媒を除去するために使用されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、鎮痛剤を含む溶液は、1以上の薬理学的に(または薬学的に)許容される賦形剤をさらに含有してもよい。
【0086】
賦形剤は、当該技術分野において公知のあらゆる賦形剤、例えば、任意の担体もしくは希釈剤または任意の他の成分もしくは薬剤、例えば、緩衝液、酸化防止剤、キレート剤、風味剤、着色剤、防腐剤および/または甘味剤などを含んでもよい。
【0087】
痛みの緩和に有効な量を提供するのに必要とされる粒子に装填される鎮痛剤の量は、薬剤の有効性および粘膜付着性パッチ上またはその中に提供される粒子の量に依存する。いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、約10~60重量%の鎮痛剤(例えば、リドカインまたはその塩)、例えば約15~55重量%または約20~45重量%(例えば、約30~40重量%)の鎮痛剤を含む。メソポーラス微小粒子上に(すなわち、装填されたメソポーラス微小粒子において)装填される鎮痛剤の量は、当該技術分野において公知の任意の好適な手段を使用して決定されてもよい。代表的な例では、メソポーラス微小粒子上に装填される鎮痛剤の量は、熱重量分析(TGA)によって決定される。
【0088】
本発明の粘膜付着性パッチは、本明細書に記載の有用性に好適な任意のサイズおよび形状を有するように構成され得るので、パッチの上または中に含有されるメソポーラス微小粒子の絶対量は、変化する。装填されるメソポーラス微粒子中の鎮痛剤の有効性および量もまた、パッチの中または上に含有されるメソポーラス微小粒子の量に影響を与える。したがって、パッチの中または上に含有されるメソポーラス微小粒子の量は、便宜上、痛みの緩和を達成するための有効量の鎮痛剤を提供するのに要求される量として定義されてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、パッチの中または上に含有されるメソポーラス微小粒子の量は、パッチの表面積、すなわち、粘膜と接触されることになる表面積の単位当たりに提供される鎮痛剤用量に基づくことができる。したがって、いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、パッチ1cm2当たり約0.01~50mg(パッチ1cm2当たり約0.02~50mg、1cm2当たり約0.03~45mg、1cm2当たり約0.04~40mg、1cm2当たり約0.05~35mg、1cm2当たり約0.06~30mg、1cm2当たり約0.07~25mg、1cm2当たり約0.08~20mg、1cm2当たり約0.09~15mgまたは1cm2当たり約0.10~10mgなど)、例えば、パッチ1cm2当たり約0.1~2.0mgの鎮痛剤用量を提供するように、装填されたメソポーラス微小粒子を含む。
【0090】
別の視点からは、粘膜付着性パッチは、約0.01~100mg(約0.02~100mg、0.03~90mg、0.04~80mg、0.05~70mg、0.06~60mg、0.07~50mg、0.08~40mg、0.09~30mgまたは0.10~20mgなど)、例えば、約0.10~5.0mgまたは0.10~2.0mgの鎮痛剤総用量を提供する。
【0091】
装填されたメソポーラス微小粒子が好適な条件下で有効量の鎮痛剤を放出するための能力は、当該技術分野において公知の任意の好適な手段を使用して決定することができる。代表的な例では、規定量の装填されたメソポーラス微小粒子(例えば、1~5mg)が5mLのリン酸緩衝生理食塩水(例えば、約pH6~8、例えば、約pH7)に室温(例えば、20~25℃)で添加され、溶液中の鎮痛剤の量が、様々な時点、例えば、1、2、5、10および30分で採取された試料から決定され得る。溶液中の鎮痛剤の量は、実施例に記載されるような紫外可視分光法などの当該技術分野において公知の任意の好適な手段を使用して決定されてもよい。
【0092】
したがって、いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、鎮痛剤の少なくとも約80%(例えば、85%、90%以上)を、約10分以下、例えば、9、8、7、6または5分以下で、室温(例えば、20~25℃)にて、溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(約pH6~8、例えば、約pH7(約pH7.4など)))中に放出する。いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、鎮痛剤の少なくとも約90%を、約5分以下、例えば、4、3または2分以下、例えば約1分で、室温(例えば、20~25℃)にて、溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(約pH6~8、例えば、約pH7(約pH7.4など))中に放出する。
【0093】
予想外に、粘膜付着性パッチの状況下での装填されたメソポーラス微小粒子からの鎮痛剤の放出は、特に、装填されたメソポーラス微小粒子が薬学的に許容される可溶性フィルム、例えば、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム中に分布または分散している場合、溶液中の装填されたメソポーラス微小粒子からの直接的な放出よりもゆっくりであることが判明した。これは、例えば数時間にわたって効果が持続する痛みの緩和を提供するうえで特に有利であり得る。この点において、本発明の粘膜付着性パッチからの鎮痛剤の放出は、任意の好適な方法を使用して決定されてもよい。代表的な例では、規定サイズ(例えば、20×10mm)の粘膜付着性パッチを、室温(例えば、20~25℃)で、または体温(例えば、約37℃)で、例えば穏やかに撹拌しながら(例えば、10~100rpm(約50rpmなど))、20mLのリン酸緩衝生理食塩水(例えば、約pH6~8、例えば、約pH7(約pH7.4など))中に浸漬させ、試料を様々な時点、例えば、1、2、5、10および30分で採取する。溶液中の鎮痛剤の量は、実施例に記載されるような紫外可視分光法などの当該技術分野において公知の任意の好適な手段を使用して決定されてもよい。鎮痛剤のレベルを正確に測定するためには、例えばHPLCによって、試料中の溶解成分を分離する必要があり得る。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の20×10mmの粘膜付着性パッチは、(装填されたメソポーラス微小粒子から)鎮痛剤の少なくとも約30%(例えば、35%、40%以上)を、約20分以下、例えば、19、18、17、16、または15分以下(約10分など)で、体温(例えば、約37℃)にて、溶液(例えば、約20mLのリン酸緩衝生理食塩水(約pH6~8、例えば、約pH7(約pH7.4など))中に放出する。追加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態では、本発明の20×10mmの粘膜付着性パッチは、(装填されたメソポーラス微小粒子から)鎮痛剤の少なくとも約45%(例えば、50%、55%以上)を、約40分以下(約35分または30分など)で、体温(例えば、約37℃)にて、溶液(例えば、約20mLのリン酸緩衝生理食塩水(約pH6~8、例えば、約pH7(約pH7.4など))中に放出する。
【0095】
上で述べたように、粘膜付着性パッチのサイズおよび形状は、その機能にとって重要ではない。パッチが、本明細書に記載されるような体腔(例えば、口腔)内の粘膜に付着するのに十分に小さく、かつ要求される作用部位、例えば病変(例えば、傷、潰瘍、創傷など)で、またはそれの近くで、有効量の鎮痛剤を提供するのに十分大きいことが、単純に要求される。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、要求される作用部位、例えば病変を完全にカバーするのに十分大きい。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、約0.5~10cm2(約1~5cm2など)の粘膜と接触する表面積を提供するように構成される。
【0097】
粘膜付着性パッチは、本明細書に定義される有用性を達成するのに好都合な任意の形状で提供されてもよい。したがって、粘膜付着性パッチは、規則的な形状または不規則な形状であってもよい。それは、3以上の辺、例えば、3~15の辺を有してもよく、またはそれは1の辺を有してもよく、例えば、それはディスクもしくは丸くなった辺を備えた不規則な形状であってもよい。いくつかの実施形態では、パッチはストリップ(例えば、長方形)、ディスク(例えば、円形、卵型、楕円形)または楔形である。それは真直ぐな辺および/または湾曲した辺を有してもよい。それは、角形のおよび/または湾曲した角部(頂点)を有してもよい。
【0098】
用語「鎮痛剤」は、部分的な痛みの緩和に好適な薬剤を指し、したがって、部分的および局所麻酔薬、すなわち、感覚に影響を与える薬剤、例えば、意識に影響を与えることなく、身体の限られた領域において可逆的な感覚の喪失をもたらす薬剤を含む。したがって、鎮痛剤は、局所麻酔薬であり得る。そのような薬剤は当該技術分野において周知であり、任意のそのような薬剤が本発明の粘膜付着性パッチで使用されてもよい。本発明の粘膜付着性パッチで使用する(すなわち、本明細書に記載のメソポーラス微小粒子に装填される)のに好適な鎮痛剤(例えば、局所麻酔薬)の例としては、リドカイン、ベンジダミン(タンタルヴェルデ(Tantum Verde)、DifflamおよびSeptabeneとしても知られる)、ベンゾカイン、ブタムベン、ジブカイン、オキシブプロカイン、プラモキシン、プロキシメタカイン(プロパラカインとしても知られる)、テトラカイン(アメトカインとしても知られる)、アーティカイン、ブピバカイン(マルケインとしても知られる)、カルボカイン(メピバカインとしても知られる)、フェノールオーロウファリンジアル(phenol oropharyngeal)(Cepastat、UlcereaseおよびChlorasepticとしても知られる)ならびにプリロカイン(シタネスト(Citanest)としても知られる)が挙げられる。本明細書に定義されるあらゆる鎮痛剤(例えば、局所麻酔薬)への言及には、その薬学的に許容される塩が含まれる。
【0099】
したがって、鎮痛剤(例えば、局所麻酔薬)は、リドカイン、ベンジダミン、ベンゾカイン、ブタムベン、ジブカイン、オキシブプロカイン、プラモキシン、プロキシメタカイン、テトラカイン、アーティカイン、ブピバカイン、カルボカイン、フェノールオーロウファリンジアルおよびプリロカインならびにその薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1以上から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、鎮痛剤は、リドカイン、ベンジダミンもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである。
【0100】
薬学的に許容される塩には、薬学的に許容される塩基付加塩および酸付加塩が含まれ、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩などの金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、ならびにアミノ酸付加塩、およびスルホン酸塩である。酸付加塩には、塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩などの無機酸付加塩、ならびにスルホン酸アルキル、アリールスルホネート、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、および乳酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。金属塩の例は、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、ならびに亜鉛塩である。アンモニウム塩の例は、アンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩である。有機アミン付加塩の例は、モルホリンおよびピペリジンとの塩である。アミノ酸付加塩の例は、グリシン、フェニルアラニン、グルタミン酸およびリジンとの塩である。スルホン酸塩には、メシラート、トシラート、およびベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0101】
好ましい塩は、無機酸付加塩、特に塩酸塩を含む。したがって、いくつかの実施形態では、鎮痛剤は、リドカイン塩酸塩および/またはベンジダミン塩酸塩である。
【0102】
本明細書に記載の装填されたメソポーラス微小粒子(すなわち、上で定義されたような鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子)は、当該技術分野において公知の任意の好適な手段を使用して、任意の好適な構成で、粘膜付着性パッチ内に組み込まれてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に、例えば、粘膜と接触させる表面に付着される。別の視点からは、いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に付着される鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含む。
【0104】
上で述べたように、粘膜付着性パッチは、薬学的に許容される可溶性フィルムの複数の層を含んでもよい。したがって、いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、薬学的に許容される可溶性フィルムの層の間に、例えば、2以上の層の間に挟まれている。この実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、粘膜と接触させる表面に付着されない。別の視点からは、いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、薬学的に許容される可溶性フィルムの層の間にはさまれた、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含む。装填されたメソポーラス微小粒子は、薬学的に許容される可溶性フィルムの一方の層または両方の層の内表面に付着され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、薬学的に許容される可溶性フィルム中に分散している。別の視点からは、いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、薬学的に許容される可溶性フィルム中に分散した、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含む。
【0106】
誤解を避けるために、装填されたメソポーラス微小粒子は、(例えば、薬学的に許容される可溶性フィルムの2の層の間で)パッチ内の液体媒体中に、または薬学的に許容される可溶性フィルム、例えば粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムの表面上には、分散していない。
【0107】
本発明の粘膜付着性パッチが、薬学的に許容される可溶性フィルムの複数の層を含む場合、粘膜と接触させる層のみが上で定義された粘膜付着特性を有する必要があることが理解される。したがって、例えば、粘膜付着性パッチが、薬学的に許容される可溶性フィルムの層の間に挟まれた、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含む場合、薬学的に許容される可溶性フィルム(例えば、上で定義されたアルギネートフィルム)の層と反対側の層は、非粘膜付着性であっても、または粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムの層よりも少ない粘膜付着性であってもよい。
【0108】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性パッチは、2以上の層が異なる物質から構成されている、薬学的に許容される可溶性フィルムの複数の層を含む。特定の実施形態では、本発明の粘膜付着性パッチは、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含む第1の層と、第1の層よりも粘膜付着性が少ない、例えば非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含む第2の層とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、第1の層と第2の層との間に挟まれている。
【0109】
いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、粘膜と接触させる第1の層の表面に付着されるか、または粘膜と接触させる第1の層に分布もしくは分散している。したがって、いくつかの実施形態では、第2の層は、例えば、要求される作用部位に近接する他の粘膜(例えば、作用部位と反対側の粘膜)へのパッチの付着を防止または最小限に抑えるためのバッキング層と見なされてもよい。
【0110】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性パッチは、粘膜付着性表面と反対側の非粘膜付着性表面を有する。例えば、本発明の粘膜付着性表面は、非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムと、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムとの間に挟まれた、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を含んでもよい。別の視点からは、本発明の粘膜付着性パッチは、粘膜に付着することになる表面(例えば、装填されたメソポーラス微小粒子が、分布または分散している粘膜付着性の薬学的に許容されるフィルム)と反対側の粘膜付着性パッチの表面上に非粘膜付着性層(例えば、フィルム)を含んでもよい。
【0111】
「非粘膜付着性の」表面または薬学的に許容される可溶性フィルムは、粘膜との接触時に粘膜に実質的に付着しないか、または上で定義された粘膜付着性パッチ(例えば、フィルム)よりも少ない程度に付着する表面(例えば、コーティング)もしくはフィルムを指す。したがって、非粘膜接着性の表面またはフィルムは、粘膜との接着点から実質に移動する(例えば、脱離する)ことができる表面またはフィルムを指す。別の視点からは、非粘膜接着性の表面またはフィルムは、接触後に粘膜から容易に解放される表面またはフィルム、すなわち粘膜に一時的または一過性に付着する表面またはフィルムを指す。
【0112】
したがって、いくつかの実施形態では、非粘膜接着性の表面またはフィルムは、実施例でより詳細に記載される上述の方法を使用して測定されるとき、約3.0Nまたは約2.0N未満、例えば、約1.5N、1.0Nまたは0.5N未満(約0.25N以下など)の平均付着剥離力を有する(この力は、約5回の測定の平均である)。
【0113】
いくつかの実施形態では、非粘膜付着性の表面またはフィルムは、実施例により詳細に記載される上述の方法を使用して測定されるとき、約0.5Ns、0.4Ns、0.3Ns、0.2Ns、0.1Nsまたは0.05Ns未満、例えば、約0.04Ns、0.03Nsまたは0.02Ns未満(約0.01Ns以下など)の平均付着仕事量を有する(例えば、この力は、約5回の測定の平均である)。
【0114】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチの非粘膜付着性の表面(例えば、第2の層またはフィルム、例えば、バッキング層、例えば、非粘膜付着性の薬学的に許容されるフィルム)は、粘膜付着性表面(例えば、層またはフィルム)よりも大きな表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチの非粘膜付着性表面(例えば、第2の層またはフィルム、例えば、バッキング層)は、要求される作用部位以外の部位への鎮痛剤の放出を最小限に抑えるように機能することができ、例えば、それは鎮痛剤の口腔への放出を低減または妨げるためのバリア特性を有し得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、非粘膜付着性のフィルムまたは表面(例えば、コーティング)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含んでもよい。別の視点からは、粘膜付着性パッチの第2の層(例えば、バッキング層)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と、任意選択で上述されるような可塑剤(例えば、グリセロールまたはプロピレングリコール)とを含む、非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含むか、またはそれからなる。上で述べたように、用語「非粘膜付着性の」は、同じ条件下で、パッチに使用される粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムよりも粘膜付着性が少ないフィルムを含む。
【0116】
したがって、実施形態では、本発明は2つの層を含む粘膜付着性パッチを提供し、
a)第1の層が、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含み、
b)第2の層が、同じ条件下で粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムよりも粘膜付着性が少ない薬学的に許容される可溶性フィルムを含み、
第1の層を粘膜に付着したとき、第2の層の表面は、粘膜に接着するために利用可能である。
【0117】
以下の実施例に示すように、驚くべきことに、HPMCを含むフィルムの粘膜付着性が、上述されるように、ポリビニルピロリドン(PVP)および/または可塑剤を添加することによって低下され得ることが示された。
【0118】
したがって、パッチの非粘膜付着性層(例えば、バッキング層)は、HPMCおよびポリビニルピロリドン(PVP)および任意選択で可塑剤(例えば、グリセロールまたはプロピレングリコール)を含む、非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを含むか、またはそれからなることができる。いくつかの実施形態では、非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム(例えば、バッキング層)中のHPMCとPVPとの比は、約2:1~約1:2、好ましくは約1:1である。
【0119】
非粘膜付着性層(例えば、バッキング層)または非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムは、約1.0~3.0%w/wのHPMC(例えば、約1.0~2.0%w/wのHPMC)、および任意選択で約1.0~2.0%w/wのPVP、好ましくは約1.5%w/wのHPMCおよび約1.5%w/wのPVPを含んでもよい。
【0120】
非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを調製するために、任意の好適な形態のHPMCが使用されてもよい。好ましい態様では、HPMCは、約19~24%のメトキシ基と約4~12%のヒドロキシプロポキシ基とを含み、任意選択で、HPMCの2%w/v溶液は、約20℃での3000~6000mPa.s、好ましくは約20℃での約3500~4500mPa.sの粘度を有する。
【0121】
上で述べたように、溶液(例えば、アルギネート溶液などのポリマー溶液)の粘度は、当該技術分野において公知である任意の好適な手段を使用して、例えば、毛細管動粘度計または回転粘度計などの粘度計を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、HPMCの粘度は、回転粘度計を使用して決定され得る。
【0122】
任意の好適な形態のPVPが、非粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム中に含まれてもよい。PVPは、低分子量PVP、例えば、約5000Da~約15000Daの平均分子量を有するPVPであってもよく、またはそれは高分子量PVP、例えば、約50kDa~約500kDaの平均分子量を有するPVPであってもよい。
【0123】
いくつかの好ましい実施形態では、PVPは、約7500Da~約12500Da、好ましくは約9000Da~約11000Da、例えば、約10000Daの平均分子量を有してもよい。
【0124】
いくつかの他の好ましい実施形態では、PVPは、250kDa~約450kDa、好ましくは約325kDa~約375kDa、例えば、約360kDaの平均分子量を有してもよい。
【0125】
装填されたメソポーラス微小粒子は、任意の好適な手段を使用して、本発明の粘膜付着性パッチ中に組み込まれることができ、例えば、薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に付着させることができる。
【0126】
装填されたメソポーラス微小粒子は、任意の好適な構成で、薬学的に許容される可溶性フィルム中またはその上に分布され得る。いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、例えば、薬学的に許容される可溶性フィルムの表面上に実質的に均一に(均質に)分布され得る。いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、薬学的に許容される可溶性フィルム内に(例えば、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム内に)実質的に均一に(均質に)分布または分散され得る。いくつかの実施形態では、装填されたメソポーラス微小粒子は、薬学的に許容される可溶性フィルム上またはその中の1以上の領域で濃縮され得る。例えば、装填されたメソポーラス微小粒子は、薬学的に許容される可溶性フィルムの中心部分または領域に位置してもよい。
【0127】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本発明の粘膜付着性パッチを製造するための方法であって、
(a)(i)薬学的に許容される可溶性フィルムと、(ii)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを用意することと、
(b)(i)(a)(i)のフィルムの表面に鎮痛剤が装填されたメソポーラス微粒子を付着させること、および/または(ii)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子を、(a)(i)のフィルムと第2の薬学的に許容される可溶性フィルムとの間に封入すること(例えば、挟むこと)とを含む、方法を提供する。
【0128】
上で述べたように、第2の薬学的に許容される可溶性フィルムは、(a)(i)で定義されたフィルム、すなわち、第1のフィルムと同じであってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、第2の薬学的に許容される可溶性フィルムは、異なる物質から構成されてもよく、例えば、それは、上で定義されたような非粘膜接着性の薬学的に許容される可溶性フィルムであってもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムの層の間に挟まれた本明細書で定義される装填されたメソポーラス粒子を含む粘膜付着性パッチは、装填されたメソポーラス粒子を第1または第2の薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に付着させ、その後、他の薬学的に許容される可溶性フィルムを、装填されたメソポーラス粒子が付着するフィルムに付着させることによって製造され得る。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される可溶性フィルムの層の間に挟まれた本明細書で定義される装填されたメソポーラス粒子を含む粘膜付着性パッチは、装填されたメソポーラス粒子を第1および第2の薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に付着させ、その後、装填されたメソポーラス粒子でコーティングされた表面同士を一緒に付着させることによって製造されてもよい。
【0130】
好都合にかつ予想外に、本発明者らは、装填されたメソポーラス微小粒子を、水系蒸気(水蒸気)を使用して、薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に付着させることができ、それにより、粘着性化合物の使用を回避することができると判断した。
【0131】
したがって、いくつかの実施形態では、鎮痛剤が装填されたメソポーラス微量粒子を薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に接着させる工程は、表面を水系蒸気に曝すことと、曝された表面を鎮痛剤が装填されたメソポーラス粒子と接触させることとを含む。
【0132】
装填されたメソポーラス微小粒子を薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に接着させることは、上述した方法を使用して達成することができるが、パッチが大量生産される場合に、一定量の装填されたメソポーラス微小粒子を有するパッチを製造することが困難であると判断した。これは薬局方の規制により、医薬品の用量変動が15%を超えてはならない、すなわち、本発明のパッチによって提供される鎮痛剤用量における変動が、15%を超えてはならないと規定しているため、問題がある。
【0133】
したがって、本発明者らは、他の製造方法を開発しようとし、薬学的に許容される可溶性フィルムを作製するために使用されるフィルム溶液中に、装填されたメソポーラス微小粒子を組み込むことが、製造プロセスを単純化するだけではなく、改善された持続性放出特性を備えたパッチを製造するようにも機能すると判断した。
【0134】
したがって、本発明はまた、粘膜付着性パッチを製造するための方法であって、
(i)(a)アルギネートおよび任意選択でヒアルロン酸と、(b)鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子とを含む溶液を、メソポーラス微小粒子がフィルム中に分布もしくは分散している粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを調製するのに好適な量で、基材もしくは支持体(例えば、キャストもしくは型)に移動させることと、
(ii)基材もしくは支持体を、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムを製造するための条件下でインキュベートし、それによって、粘膜付着性パッチを製造することと、任意選択で、
(iii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と任意選択でポリビニルピロリドン(PVP)とを含む溶液を、粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムに付着したHPMCと任意選択でPVPとを含むフィルムを調製するのに好適な量で、(ii)で製造された粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルムの表面に移動させることと、
(iv)(iii)の生成物を、HPMCと任意選択でPVPとを含む溶液を乾燥させるのに好適な条件下でインキュベートして、それによって、粘膜付着性パッチを製造することとを含む方法を提供する。
【0135】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば上述したようなバッキング層を提供するために、1以上の追加の層を粘膜付着性パッチに付着させるさらなる工程を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、方法は、粘膜付着性パッチの一方または両方の表面(すなわち、薬学的に許容される可溶性フィルム(複数可)の露出面)をコーティングするさらなる工程を含んでもよい。例えば、露出面の一方がコーティングされて、バッキング層および/または非粘膜付着性表面を提供してもよい。いくつかの実施形態では、露出面の一方がコーティングされて、以下にさらに定義されるさらなる治療薬を提供してもよい。いくつかの実施形態では、露出面の一方または両方が、パッチを消費者にとってより口当たりの良いものにするための物質、例えば、風味剤、着色剤および/または甘味剤などでコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、露出面の一方または両方が、パッチの貯蔵寿命を改善するための物質、例えば、酸化防止剤および/または防腐剤でコーティングされてもよい。
【0137】
上で述べたように、薬学的に許容される可溶性フィルムは、大型のシートで調製されてもよく、これが、上記の方法で使用されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、上述した工程の生成物を切断または成形し、本発明の粘膜付着性パッチ、すなわち、複数のパッチを提供する工程を含み得る。
【0138】
方法はまた、上で定義された方法工程から得られた粘膜付着性パッチ(複数可)を包装する工程も含み得る。
【0139】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本発明の1または複数の粘膜付着性パッチを含む包装された製品を提供する。
【0140】
任意の好適な防湿包装材、例えば、ブリスターパック、パウチなどを本発明で利用することができる。各パッチは、防湿包装材内に別個に包装されてもよく、複数の別個に包装されたパッチが、任意の好適な包装材、例えば段ボール箱などにさらに包装されてもよい。
【0141】
代表的な実施形態では、本発明は、薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルムと、リドカインもしくはその薬学的に許容される塩および/またはベンジダミンもしくはその薬学的に許容される塩が装填されたメソポーラスシリカ微小粒子とを含む、粘膜付着性パッチを提供する。
【0142】
代表的な実施形態では、メソポーラスシリカ微小粒子は、薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルムの2つの層の間に挟まれ得る。
【0143】
代表的な実施形態では、薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルムは、30~40%のグルロネートと60~70%のマンヌロネートとを含むアルギネートを任意選択で、約0.5~5.0%w/wの濃度で含み、さらに任意選択で、アルギネートの1%w/v溶液は、60~170mPa.s、好ましくは約80~130mPa.sの粘度を有する。
【0144】
代表的な実施形態では、メソポーラスシリカ微小粒子は、約1~50nmの平均(average)(平均(mean))直径を有することができ、任意選択で、約10~60重量%の鎮痛剤、すなわちリドカインもしくはその薬学的に許容される塩および/またはベンジダミンもしくはその薬学的に許容される塩を含む。
【0145】
代表的な実施形態では、粘膜付着性パッチは、パッチの表面積1cm2当たり約0.01~50mgの鎮痛剤(すなわち、リドカインもしくはその薬学的に許容される塩および/またはベンジダミンもしくはその薬学的に許容される塩)の用量を提供するために、装填されたメソポーラスシリカ微小粒子を含有し得る。
【0146】
代表的な実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩であり得る。
【0147】
上述したように、本発明の粘膜付着性パッチは、特に口腔内の粘膜上の部分的痛みの緩和、例えば、口腔の疾患、障害、病態または外傷に関連する痛みの緩和の提供において特定の有用性がある。したがって、本発明の粘膜付着性パッチは、痛みの緩和をもたらすために、粘膜(例えば、口腔粘膜)への部分的投与のための粘膜付着性医薬組成物と見なされ得る。
【0148】
したがって、一態様では、本発明は、治療で使用するための本発明の粘膜付着性パッチを提供する。
【0149】
別の視点から、本発明は、対象において疾患もしくは病態(例えば、口腔の疾患、障害もしくは病態)を処置および/または予防するための方法を提供し、この方法は、本発明による粘膜付着性パッチを対象に投与する工程を含む。
【0150】
別の観点から、本発明は、本明細書に定義される薬学的に許容される可溶性フィルムおよび鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子(すなわち、本明細書に定義される装填されたメソポーラス微小粒子)の、治療のための粘膜付着性パッチの製造における使用を提供する。
【0151】
さらなる態様では、本発明は、痛み、例えば、口腔粘膜などの粘膜に関連するまたは近接する痛みの処置(例えば、緩和)および/または予防で使用するための粘膜付着性パッチを提供する。
【0152】
別の視点から、本発明は、対象において痛み(例えば、口腔粘膜などの粘膜に関連するまたは近接する痛み)を処置(例えば、緩和)および/または予防するための方法を提供し、この方法は、本発明による粘膜付着性パッチを対象に(例えば、痛みもしくは痛みが予想される部位において、またはそれに近接して)投与する工程を含む。
【0153】
別の観点から、本発明は、本明細書に定義される薬学的に許容される可溶性フィルムおよび鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子(すなわち、本明細書に定義される装填されたメソポーラス微小粒子)の、例えば、口腔粘膜などの粘膜に関連するまたは近接する痛みを処置(例えば、緩和)および/または予防するための粘膜付着性パッチの製造における使用を提供する。
【0154】
さらに別の態様では、本発明は、口腔粘膜の病変などの口腔の障害、病態または外傷、例えば、アフタ性口内炎の処置で使用するための、本発明の粘膜付着性パッチを提供する。
【0155】
別の視点から、本発明は、対象において口腔の障害、病態または外傷(例えば、アフタ性口内炎などの口腔粘膜の病変)を処置するための方法を提供し、この方法は、本発明による粘膜付着性パッチを対象に(例えば、病変の部位において、またはそれに近接して)投与する工程を含む。
【0156】
別の観点から、本発明は、本明細書に定義される薬学的に許容される可溶性フィルムおよび鎮痛剤が装填されたメソポーラス微小粒子(すなわち、本明細書に定義される装填されたメソポーラス微小粒子)の、口腔粘膜の病変などの口腔の障害、病態または外傷、例えば、アフタ性口内炎を処置するための粘膜付着性パッチの製造における使用を提供する。
【0157】
本明細書で定義される場合、本明細書で使用される「処置すること」または「処置」は、臨床状態または障害の管理において有益な何らかの効果またはステップ(もしくは介入)を広く指す。したがって、処置は、処置前の症状と比較して、処置されている障害の1以上の症状を低減し、軽減し、改善し、発症を遅らせるまたは排除することを指すか、あるいは、対象の臨床状態を何らかの方法で改善することを指す。処置は、処置プログラムまたはレジメンに寄与するか、またはその一部である任意の臨床ステップもしくは介入を含んでもよい。特に、当該処置は、処置される障害(例えば、アフタ性口内炎)に関連する痛みの低減を含み得る。
【0158】
処置は、障害の1以上の症状(例えば、痛み)の発症を、例えば、処置前の障害または症状と比べて、遅延させる、制限する、低減させる、または予防することを含んでもよい。したがって、処置には、障害の発生または症状の発症の絶対的な予防と、障害または症状(例えば、痛み)の発症の遅延、あるいは障害または症状(例えば、痛み)の発症または進行の減少もしくは制限、すなわち痛みの軽減の両方が明示的に含まれる。
【0159】
したがって、本発明による処置は、障害(例えば、アフタ性口内炎)に関連する痛みを低減、軽減、排除または予防することを含む。用語「処置」は、必ずしも痛みの完全な消滅または排除を意味するものではない。
【0160】
「対象」または「患者」は、動物(あらゆるヒトまたは非ヒト動物)、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0161】
好ましい実施形態では、粘膜付着性パッチは、上で定義されたように口腔粘膜への投与のためのものである。粘膜付着性パッチは、疼痛部位における有効な痛みの緩和を提供するために、疼痛部位に(例えば、病変に直接)または疼痛部位に近接して、すなわち、疼痛部位の十分近くに適用することができる。
【0162】
粘膜付着性パッチは、痛みに関連する、粘膜、特に口腔粘膜のあらゆる障害、疾患、病態または外傷の処置において有用性があり得る。そのような口腔の障害には、機械的、化学的、放射線または特発性外傷によって引き起こされる病変(例えば、潰瘍または傷)が含まれる。
【0163】
用語「病変」は、損傷または疾患を通してダメージを受けた組織の領域を指す。したがって、病変という用語は、粘膜(例えば、口腔粘膜)上のあらゆる傷、潰瘍または創傷(例えば、擦過傷、擦り傷、切り傷、裂傷、刺し傷など)、特にアフタ性潰瘍を含む。
【0164】
粘膜付着性パッチは、歯列に関連する痛みの緩和、例えば歯牙萌出に関連する痛みの緩和の提供においても有用性がある。いくつかの態様では、粘膜付着性パッチは、歯科処置の前に、すなわち、処置に関連する痛みを予防するために投与されてもよい。
【0165】
いくつかの実施形態では、障害はアフタ性口内炎であり、これは、良性および非伝染性口腔内潰瘍(アフタ)の繰り返される形成によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、口内の非角化上皮表面上の潰瘍を処置するために使用される。
【0166】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、直径10mm未満の(典型的には、2~3mmの)直径を有する潰瘍を指す、軽度アフタ性潰瘍形成(MiAU)(小再発性アフタ性口内炎(MiRAS)としても知られる)を処置するために使用される。
【0167】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、10mm以上の直径を有し、潰瘍形成がより深い潰瘍を指す、重度アフタ性潰瘍形成(MaAU)(大再発性アフタ性口内炎(MaRAS)としても知られる)を処置するために使用される。
【0168】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、単純ヘルペスウイルスによる一次感染症(原発性ヘルペス歯肉口内炎)に似た病変を含むアフタ性口内炎のサブタイプを指す、疱疹状潰瘍(疱疹状口内炎またはヘルペス様潰瘍形成としても知られる)を処置するために使用される。
【0169】
アフタ性口内炎のエピソードは、複数の病変、すなわち潰瘍を伴い得るので、粘膜付着性パッチは、多数の病変を処置するために使用されてもよい。別の視点から、粘膜付着性パッチは、多数のアフタ性口内炎を処置するために使用されてもよい。
【0170】
したがって、用語「作用部位」または「疼痛部位」は、例えば、病変を含む痛みの原因である、または痛みを引き起こすことが予想される、例えば、歯科処置もしくは歯牙萌出の部位、またはその部位に近接する、処置される粘膜の領域を指す。
【0171】
上で述べたように、本発明の粘膜付着性パッチは、痛みの低減または減少を達成するのに十分な量を指す、「処置有効量の」鎮痛剤を提供するように構成される。好適には、処置有効量の鎮痛剤は、対象において実質的な細胞傷害性作用または他の領域への麻痺などの他の有害な副作用(噛み傷、咽頭、会話および/または嚥下の問題をもたらし得る)を誘発させることなく、所望の結果を誘導するのに十分な量である。
【0172】
痛みを排除、低減、軽減および/または予防するために有用な鎮痛剤の有効量は、処置される対象、あらゆる関連する疾患、障害、病態および/または外傷のタイプおよび重症度に依存する。
【0173】
対象において痛みを「低減、緩和または軽減すること」は、痛みの強さ、重症度もしくは深刻さの低下または減少、および/あるいは、対象が痛みを、すなわち作用部位もしくは疼痛部位で経験する時間の長さを減少または短縮することを指してもよい。そのような低減、緩和または軽減することは、対象にとって有益であるために絶対的である必要はない。
【0174】
本発明の粘膜付着性パッチを「投与すること」は、粘膜への付着を達成するのに十分な力および時間で、例えば、指圧で少なくとも5秒間、パッチを作用部位もしくは疼痛部位において、またはそれらに近接して、粘膜に適用することを指す。したがって、本明細書での投与は、局所投与および部分的投与の両方を指す。
【0175】
粘膜付着性パッチは、上述した障害、疾患、病態および/または外傷を処置するうえで有用な追加の治療薬を含んでもよいことが理解される。追加の治療薬は、好適な手段を使用してパッチ内に組み込まれてもよく、例えば、パッチまたはフィルムへのコーティングとして適用されるフィルム溶液中に組み込まれ、フィルムに付着しるメソポーラス粒子中に組み込まれる。
【0176】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、アフタ性口内炎を処置するための薬剤を含む。現在のところ、アフタ性口内炎の処置法は無いが、様々な薬剤は、アフタ性潰瘍に関連する症状を低減または軽減させるために使用されてもよい。例えば、殺菌剤、例えば、抗生物質が例えば感染を予防することによって治癒を促進するために潰瘍に適用されてもよく、抗炎症剤が炎症を低減させるために適用されてもよい(これはまた、痛みも低減または緩和する)。さらに、ヒアルロン酸は、最近、アフタ性潰瘍のための有望な処置であることが示されている。
【0177】
したがって、いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、抗炎症剤、殺菌剤、例えば、抗生物質、および/またはヒアルロン酸から選択される治療薬を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性パッチは、ヒアルロン酸を、例えば、約0.25~1.0%w/w(約0.5%w/wのヒアルロン酸など)を上述した粘膜付着性の薬学的に許容される可溶性フィルム中に含み、好ましくは、ヒアルロン酸は約1.5~3.0×106Da、好ましくは、2.0~2.5×106Daの平均分子量を有する。
【0179】
いくつかの実施形態では、抗炎症剤はコルチコステロイドであり、任意選択で、ヒドロコルチゾン、ベクロメタゾン、フルオシノニド、クロベタゾール、ベタメタゾン、デキサメタゾンまたはそれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0180】
いくつかの実施形態では、殺菌剤、例えば、抗生物質は、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサンまたはそれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0181】
本発明による好ましい態様は、実施例に記載されている通りであり、ここでは実施例で使用されるパラメーターまたは成分のうちの1以上が、以降に記載される生成物、使用および方法の好ましい特徴として使用されてもよい。
【0182】
ここで、以下の図面を参照して、非限定的な実施例で、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0183】
図1図1は、実施例6に記載される粘膜付着を測定するために使用されるセットアップの概略図を示す。
図2図2は、本発明の2つのパッチ(パッチ1およびパッチ2)からのPBS中へのリドカインの放出の割合を時間の関数として表示するプロットを示す。
図3図3は、本発明のアルギネートパッチ(アルギネートパッチ)についての(A)付着剥離力および(B)付着仕事量を対象表面(参照パッチおよび非付着性ポリスチレン)と比較して表示する棒グラフを示す。
図4図4は、3つの異なる試料(試料4、12および8)からの、パッチの粘膜付着性層内に分散した装填されたメソポーラス微小粒子からPBS中へのリドカインの放出の割合を、時間の関数として表示するプロットを示す。
【実施例
【0184】
[実施例1]
リドカインのメソポーラスシリカ微量粒子(MSM)中の装填
リドカイン塩酸塩一水和物を、乾燥粉末を生成する約3μmの平均粒径を有する医薬品グレードの多孔質シリカ(Syloid(登録商標)244 FP)中に装填した。装填は、50重量%の濃度でエタノール中に溶解させたリドカインを使用して、溶液滴下含浸プロセスによって達成した。シリカ粒子中に装填されたリドカインの量は、熱重量分析(TGA)によって測定した。3つの独立した測定からの平均に基づくと、リドカインの量は、粉末の約35±1重量%を形成した。
【0185】
[実施例2]
メソポーラスシリカ微小粒子(MSM)からのリドカインの放出
MSMからPBS緩衝液(唾液を模倣する)へのリドカインの放出を、紫外可視分光法によって室温で評価した。リドカイン装填シリカ粉末(MSM)を、5mLのリン酸緩衝生理食塩水(PSB、pH7.4)に添加し、PBS中のリドカイン濃度を、リドカインが最大吸光度を有する波長263nmでの吸光度から測定した。試料を1、5、10および30分後に採取し、溶液中のリドカイン濃度を測定した。
【0186】
結果は、一分後に、装填されたリドカインのおよそ90%がMSM粉末から溶液中に放出されたことを示した。すなわち、MSMはキャリアとして十分に働き、MSMがPBSに遭遇するとき、リドカインが放出することを妨害しない。
【0187】
[実施例3]
薬学的に許容される可溶性フィルムの調製
アルギン酸ナトリウム(Manucol(登録商標)LKX:30~40/60~70のグルロネート/マンヌロネートの比率を有する中粘度の医薬品グレードアルギネート)のストック溶液(3.4%)を、磁気撹拌機を使用して撹拌しながら、アルギネートを80℃の熱水中で溶解させることによって調製した。アルギネートが溶解するまで撹拌を続けた。次いで、ストック溶液を使用して、44gのアルギネートストック溶液を1.5gのグリセロール(可塑剤として添加される)および4.5gの水を混合することによってフィルム溶液を調製した。15gの溶液をプラスチック製ペトリ皿に注ぎ、それを40℃で一晩放置して、乾燥させることによってフィルムを流延させた。得られたフィルムは可撓性であり、さらなる溶解性試験のために、一部分を2cm×1cmに切断した。
【0188】
溶解性を、PBS溶液(pH7.4)を使用して試験した。上述したフィルム片を室温で100mLのPBS中に含浸させ、穏やかに撹拌しながら(約50rpmで)放置した。
【0189】
20分後に、フィルム片は完全に溶解した。これは、口腔パッチでフィルムとして使用するために好適であることを示している。
【0190】
[実施例4]
リドカイン装填MSM粉末の薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルム上への組み込み
実施例1からのリドカイン装填MSM粉末を、実施例3の薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルム上へ組み込みことは容易ではなかった。実施例3に示すように、アルギネートフィルムは水またはPBSなどの液体中に溶解し、実施例2に示すように、リドカインはPBS中でMSMから急速に放出される。
【0191】
加湿器からの水蒸気を用いて、粉末をアルギネートフィルムの表面上に付着させることができると、予期せずして判断された。パッチを、最初にアルギネートフィルムの2つの片を水蒸気に曝して、次いで、曝されたフィルム片を装填されたMSMシリカ粒子と接触させることによって調製した。続いてフィルム片のMSMコーティングされた表面を一緒にしてプレスして、2つのフィルムの間に挟まれた(サンドイッチされた)装填されたMSMを含むパッチを形成した。
【0192】
得られたパッチは、およそ1.5mgの装填されたMSM粉末を含有し、これはパッチ当たりおよそ0.5mgのリドカイン(すなわち、1cm2当たり約0.25mgのリドカイン)に相当する。
【0193】
実施例3における溶解性試験条件を使用するパッチからのリドカインの放出は、リドカインの検出に好適な波長でのパッチ成分からの妨害があったために、紫外可視分光法によって決定することができなかった。アルギネートおよびグリセロールからの寄与は、リドカインからのシグナルから切り離すことができなかった。しかしながら、パッチは、およそ20分後に目に見えて溶解し、これは粉末を含まないアルギネートパッチを用いた実施例3における結果と一致した。
【0194】
[実施例5]
パッチからのリドカインの放出の測定
実施例4に記載されたパッチからのリドカインの放出の割合を決定するために、2つのリドカイン含有パッチおよび1つのプラセボパッチ(リドカイン装填MSMを含まない)で放出測定を行った。それぞれがおよそ2.2mgの装填されたMSM粉末(すなわち、1cm2当たりおよそ1.1mgの装填されたMSM粉末)を含む、両方のリドカイン含有パッチを、実施例4に記載されるように調製した。これは、パッチ当たりおよそ0.77mgのリドカインに相当する。
【0195】
50rpmに設定された磁気撹拌棒を容器の底部に備え、20mLのPBS(pH7.4)を37℃で含有する温度制御容器の内部のピンセットの間の定位置に、パッチを保持した。
【0196】
試料を、1、5、10および30分の時点で、分析のために容器から取り外した。パッチは、パッチ上にいくらかの溶解していない粉末を残しながら、10分後に依然として目に見えていた。30分後に、パッチは目視観察によって完全に溶解したように見えた。
【0197】
パッチ成分が紫外可視シグナルを妨害するので、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、溶解された成分およびリドカインを分離させ、後者を実施例2に記載されるようにその後測定した。
【0198】
時間の関数としてのパッチからPBS中に放出されたリドカインの割合を図2に示す。30分後に、2つのリドカイン装填パッチについて測定された量は、それぞれ50%および70%であった。これは、装填されたMSM粉末のアルギネートパッチ中への組み込みが、リドカインの放出を遅延させることを示しており、これは、このパッチがリドカインの持続性放出に好適であり、長期の痛みの緩和を提供し得ることを示唆している。
【0199】
[実施例6]
パッチの粘膜付着特性の評価
実施例4に記載されたパッチの粘膜付着性を、テクスチャーアナライザー装置でパッチの付着性を測定することによって評価した。参照パッチ、(市販のビタミン口腔パッチ、(Nutrinovate Vitamin Films)、および非粘着性材料のポリスチレンを、対照として使用した。
【0200】
ガラススライドを、口腔粘膜を模倣する親水性基材として使用した。ガラスは、親水性表面粘膜の適切なモデル表面であることが以前に判明している。粘膜付着測定の原理を、図1の概略図に示されている。測定されるパラメーターは、付着剥離力および付着仕事量である。
【0201】
ガラス基材を切断し(およそ1×1cm)、注意深く浄化および洗浄し、その後、ガラス基材を、両面テープを用いてテクスチャーアナライザープローブに取り付けた。試験パッチまたは対照の表面を、両面テープによってテクスチャーアナライザーの基部プレートに固定した。ガラススライドが取り付けられたプローブを、試験パッチまたは対照の表面の上およそ1cmの距離に手動で近づけ、15μLのPBS溶液(唾液を模倣する)を機器の基部に取り付けられたアルギネートフィルムの中央に適用した。PBSの適用直後に、テストシーケンスを開始させ、プローブが2mm/秒の速度で下向きに移動した。一旦プローブがフィルムに接触したら、300gの接触力に達するまで速度を1mm/秒に減速させた。表面を10秒間接触したまま保ち(300gの接触圧で)、その後、プローブを1mm/秒の速度で上向きに移動させた。
【0202】
5回の独立した測定(例えば、5つのパッチ)に基づく平均付着剥離力および付着仕事量ならびにそれらの間の標準偏差(SD)を、それぞれ、図3AおよびBに示す。結果は、実施例4で製造されたアルギネートベースのパッチが、4.1Nの平均付着剥離力および0.3Nsの平均付着仕事量を伴い、粘膜付着性であった。
【0203】
[実施例7]
パッチの調製
表1に示す配合処方を有するパッチを製造した。実施例4に示すように、最初に、リドカインを装填したMDMを可溶性フィルムの表面に付着させて、その後、フィルムをそれらのコーティングされた表面を介して付着させて、装填されたMSMが内層と外層との間にサンドイッチされたパッチを提供することによって、パッチを調製した。しかしながら、この製造アプローチは、商業的環境では容易に実現できないので、リドカインで装填したMSMを、次いで、実施例8に記載されたように、パッチの内(粘膜付着性)層に組み込んだ。これにより、表1に詳述されている異なるパッチにリドカインが装填されたMSMの同程度の用量が組み込まれることが確実であると判断された。このアプローチはまた、内(粘膜付着性)層および外(非粘膜付着性、バッキング)層が一緒に直接成形されることを可能にした。
【0204】
したがって、内(粘膜付着性)層の成分を含有する溶液を調製し、装填されたMSM(以下の表1には「Lidocaine」と示されている)を添加および混合し、15gの溶液を90Φのペトリ皿に注ぎ入れることによって、表1に記載されるパッチを作製した。ペトリ皿を空気循環付き乾燥オーブン/キャビネットに移し、40℃で少なくとも8時間または一晩乾燥させた。次いで、15gの外(非粘膜付着性/バッキング)層の成分を含有する溶液を、乾燥させた内層の上部に注ぎ込み、再度、40℃の乾燥オーブン/キャビネットで少なくとも8時間または一晩乾燥させた。乾燥させた二層状フィルムを、次いで2cm×1cmのパッチに切断した。
【0205】


【表1-1】
【0206】
【表1-2】
【0207】
HPMC/HPMC-A:メトローズ90SH-4000-ヒプロメロース米国薬局方2208、19~24%のメトキシ/4~12%のヒドロキシプロピル、見かけ粘度 4000mPas.;PVP L=低粘度PVP(10kDa);PVP H=高粘度PVP(360kDa);EC=エチルセルロース(10mPas、吸湿性);CMC=カルボキシメチルセルロース;低(Low)=0.1gのグリセロール;中(Medium)=0.75gのグリセロール;高(High)=1.5gのグリセロール;Proc=プロクタノール;アルギネート=Protanal(登録商標)CR 8233;高粘度医薬品グレードのアルギネート;HA=ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム、2.38×106Da)L=内層はリドカインが装填されたMSMを含有する;P=非装填MSM;MSM=多孔質シリカ(Syloid 244 FP、平均粒径約3μm)
【0208】
[実施例8]
リドカイン装填MSM粉末の薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルム中への組み込み
リドカインが装填されたMSMを薬学的に許容されるアルジネートフィルムに組み込んでパッチの内層として機能させるために、ヒアルロン酸(HA)およびリドカインが装填されたMSMのストック溶液を生成した。最初に、0.6gのHAを20mLのMilli-Q水(MQ)に添加して、3%のストック溶液を作製した。13mgのリドカインもまた、1.3mLのMQに添加して、10mg/mLのリドカインストック溶液を作製した。次いで、実施例1からの5.57mgのリドカインが装填されたMSMを0.225mlのリドカインストック溶液に添加した。13.5gの水を80℃に加熱して、0.539gのアルギネートをゆっくりと撹拌して水に入れた。溶液が完全に溶解したら、3.42gのHA、0.540gのグリセロール、リドカインが装填されたMSMおよびリドカイン溶液を、溶液を撹拌させながら添加した。15gを90Φのペトリ皿に注ぎ入れ、40℃のオーブン中で一晩乾燥させた。乾燥されたフィルムを、2cm×1cmのフィルムに切断した(合計で16個のフィルム)。
【0209】
次いで、フィルムからのリドカインの放出を、実施例5に記載されるように評価した。4つの無作為化されたフィルムの試料を選択し、液体クロマトグラフィー(LC)を使用して分析し、これらの結果を表2に示す。試料全体に対して測定されたリドカインの平均量は、0.092mg(相対SD 21.4%)であった。
【0210】
【表2】
【0211】
各フィルムで予想されたリドカインの量は、理論上、0.110mg(2cm×1cmのフィルム当たり)と計算された。用量において見られる差異は、主に、フィルムの重量が異なり、より厚いフィルムにおいてリドカインの増量をもたらした結果である。これは、アルギネートおよびHAが、適切に溶解されていないか、またはフィルムが不均一に乾燥した結果であり得る。
【0212】
これらの結果は、リドカインが装填されたMSMのパッチの内(粘膜付着性)層中への組み込みの成功およびリドカイン投薬量の大部分がMSMから放出されることを実証している。
【0213】
[実施例9]
パッチの内層からのリドカインの放出の測定
リドカインのパッチの内層からの放出の割合を決定するために、各2cm×1cmのアルギネートフィルムにおいてリドカインの総量が0.2mgに増加されたことを除いて、実施例7および8に記載されるように、また表3に概説された材料を使用して、内層を製造した。
【0214】
【表3】
【0215】
リドカインのフィルムからの溶解時間を長くするために、50%厚いフィルムを製造した。このより厚いフィルムを作製するために、22.5gの溶液を90Φのペトリ皿に注ぎ入れ、40℃で一晩乾燥させた。
【0216】
リドカインの放出を、溶解槽を使用して測定し、溶解槽は、20mLのPBSを37℃に加熱するのに使用した。次いで、フィルムの片側だけが、磁気撹拌機を使用して150rpmで維持された溶液と接触するように、フィルムをステージ上に下降させた。500μLの試料を、次の時点:1、5、15、30および60分で溶液から取り出した。各試料を回収後、500μLのPBSが槽に戻され、加熱された容器中の液体の一定の容量を確保した。
【0217】
内層からのリドカイン放出プロファイルを測定するために、試料4、8および12をアルギネートフィルムから無作為に選択し、それらの重量を表4に示す。各試料からのリドカイン放出の測定から得られた結果を表5に示す。
【0218】
【表4】
【0219】
次いで、500μLの試料を、液体クロマトグラフィーを使用して分析した(データは示さず)。2cm×1cmのパッチにおいて、理論上予想されるリドカインの濃度は0.20mgである。60分後、試料4は、図4に示すように0.173mgのリドカインを放出していた(フィルム中に組み込まれたリドカインの総用量の86.5%に等しい)。これと同時点で、試料12は0.2315mgのリドカイン(115.8%)を放出しており、この過剰量は、パッチのより大きな重量を反映している。試料12は試料4よりも22%重く、試料8と比較すると、ほぼ2倍の重量である。
【0220】
【表5】
【0221】
【表6】
【0222】
表6は、パッチの重量に対して正規化された、各時点でのパッチの各サンプルから放出されたリドカインの濃度を提示している。推定されたパッチの平均重量を考慮すると(49.6mg、14個の異なるパッチの平均値)、総用量(0.2mg)の80%、98%および83%が各試料から放出された。試料8についてのより高い放出値(98%)は、より低い重量を有するパッチの結果であり、したがって、薄ければ薄いほどリドカインをより早く放出させる。
【0223】
図4は、試料4、8、および12についての時間の関数としての内層からのリドカインの放出を示す。
【0224】
これらの結果は、リドカインが装填されたMSMがアルギネートフィルム中に成功裏に組み込まれたことを示す。表5に示すように、組み込まれたリドカインの90.5%が、溶解槽での60分後に内層から放出されるので、これはリドカインの大部分がMSMから放出されることを示している。さらに、用量のおよそ50%が30分後に放出されたため、これは持続性放出プロファイルを示唆している。したがって、リドカインが装填されたMSM粉末のパッチの内(粘膜付着性)層中への組み込みはリドカインの放出を遅延させ、パッチがリドカインの持続性放出に好適であること、および長期の痛みの緩和を提供し得ることを示唆している。さらに、実施例4に概説されるように、リドカインをアルギネートフィルム内に組み込むことは、それをフィルムの上に組み込むこととは対照的に、リドカイン投薬量をより制御可能にするために望ましい。
【0225】
[実施例10]
薬学的に許容される可溶性アルギネートフィルムの全体に対する重量均質性の評価
実施例9に見られるように、パッチの内層を形成するために使用されるアルギネートフィルム全体に対する均質な重量を達成することは容易ではなかった。これは、フィルムを1cm×2cmのパッチに不適切に分割することには起因せず、フィルムを作製するために使用されるHAを含む成分の不均質な混合の結果に起因する。
【0226】
これを克服しようとして、アルギネートとHA粉末とを別個に水に溶解し、その後、それらを合わせることの代わりに、粉末は最初に混合され、一緒に水に添加され、それが80℃に加熱された。混合物を冷却後、グリセロールを添加し、22.5gを90Φのペトリ皿に注ぎ入れた。ペトリ皿を振動テーブル上に5分間置き、皿全体の溶液の均質な分布を確実にした。その後、溶液を40℃で一晩乾燥させた。
【0227】
得られたフィルムを16個の2cm×1cmのパッチに切断し、各試料の重量を表7に示す。成分の乾燥混合後であっても、重量が最も大きいパッチと最も小さいパッチとの間で41%の違いが明らかであった。より重いパッチには、より多くのポリマーが組み込まれると仮定した。
【0228】
【表7】
【0229】
これをさらに検討するために、混合時間を次いで評価した。アルギネートゲルストック(アルギネート3%、グリセロール3%、HA0.5%)を、実施例7に概説されたように製造し、実施例7に概説されるようにペトリ皿で乾燥させる前に、1時間、24時間および96時間のいずれかで混合させた。3つの無作為化された2cm×1cmのパッチを、乾燥されたフィルムの各々から得て、秤量した。「より暗色の」試料をフィルムの各々から採取し(アルギネートの増加を示す)、秤量した。これらの結果を、表8に提示する。
【0230】
【表8】
【0231】
表8に示すように、フィルムを作製するために使用される成分の混合時間を調整することは、フィルムの重量の均質性を改善しない。
【0232】
次いで、フィルムの乾燥プロセスを評価した。典型的には、アルギネートフィルムを、空気循環付きキャビネット内で乾燥させた。これは、GMP製造における慣行である。乾燥プロセスがフィルムの均質性を改善するために調製され得るかどうかを判定するために、以下のプロトコルが試験された。
・プロトコル1:前の実施例で概説されたような標準プロトコルを使用して、オーブン内で50℃;
・プロトコル2:湿度を増加させ蒸発プロセスを遅くさせるために、飽和NaCl溶液の開放ビーカーの存在下、オーブン内で50℃;
・プロトコル3:ビーカーの開口部をカバーする穴の空いたアルミニウムホイルを備えた大型ビーカーの底部に配置されたペトリ皿を用いて、オーブン内で50℃。これは、乾燥中のフィルムの上方の空気乱流を最小限に抑えるためのものである。
【0233】
各プロトコルを使用することによって得られた各アルギネートフィルムの重量を、表9に提示する。飽和NaCl溶液のビーカーを使用して(それによってオーブン内の空気の相対湿度を増加させて)乾燥プロセスが遅くされる場合、および空気乱流が最小限に抑えられた場合に、フィルム重量の不均一性が低減された。したがって、乾燥プロセスは、フィルム重量の均質性を達成する上で、またおそらくは、リドカインが装填されたMSMの均質な用量を組み込むために重要な工程である。
【0234】
【表9】
【0235】
[実施例10]
パッチの溶解および粘膜付着性に影響を及ぼすパラメーターの評価
実施例8および9に記載されるようなパッチの溶解に影響を及ぼすパラメーターを、さらに評価した。先ず、フィルムの厚さを増加させて、溶解時間を長くさせた。3つの異なるアルギネートフィルムを、実施例8および9に以前に記載されたように(しかし、リドカインまたはHAを添加せずに)作製した。これを達成するために、15g、22.5g、および30gをペトリ皿に注ぎ入れた。次いで、フィルムを20mLのPBS中に37℃で配置することによって溶解時間を評価し、各フィルムを崩壊するまで監視した。15gのフィルムは、最初に溶解を達成した(15~20分までに)が、一方、22.3gおよび30gの重量の他の2つのフィルムは、25~30分の同様な溶解時間を達成した。
【0236】
脆性を低減させるために、0.1gまたは1gのいずれかのグリセロールを22.5gの重量のフィルムに添加したこところ、それらの後者はより可撓性のフィルムをもたらした。
【0237】
CaCl2を使用することによってアルギネートポリマーを架橋することも試験され、このことがフィルムの溶解時間に及ぼす影響を評価した。2mMまたは5mMのいずれかのCaCl2を、アルギネート、水、およびグリセロールの混合物に添加した。混合物を一晩撹拌したままにして、架橋を促進させた。次いで、混合物を90Φのペトリ皿に注ぎ入れ、40℃で一晩乾燥させた。
【0238】
パッチの外層は、内層よりも粘膜付着性が低い必要があり、これは、パッチ全体の溶解時間を約60分に短縮するのに役立つと仮定された。外層に使用されるポリマーは、外層が低い粘膜付着性を有し、経時的にゆっくりと溶解するように、水溶性である必要がある。
【0239】
外層の溶解時間に及ぼす影響を評価するために、HPMC、CMC、HPMC/PVPの外層を選択した。HPMCの外層を製造するために、水を80℃に加熱し、HPMC粉末を分散するまで撹拌した。混合物を氷浴で冷却後に、グリセロールを添加した。HPMC/ECベースの外層を製造するために、HPMC粉末を予め温めた水に撹拌しながら添加し、一方ECをエタノール中に溶解させた。HPMC混合物を冷却する前に、EC/エタノール溶液を混合物に添加した。これらの外層のすべてを、40℃で一晩乾燥させた。
【0240】
これらの製造された外層の溶解時間を評価するために、20mLのPBSを溶解槽に添加し、37℃に加熱した。フィルムの片側だけが溶液と接触するように、フィルムをステージ上に下降させ、磁気撹拌機を使用して溶液を150rpmで撹拌した。各フィルムを、溶解を達成するまで監視し、これらの実験の結果を表10に示す。
【0241】
【表10】
【0242】
HPMC/HPMC-A:メトローズ90SH-4000-ヒプロメロース米国薬局方2208、19~24%のメトキシ/4~12%のヒドロキシプロピル、見かけ粘度 4000mPas.;PVP L=低粘度PVP(10kDa);PVP H=高粘度PVP(360kDa);CMC=カルボキシメチルセルロース。
【0243】
表10は、外層におけるポリマーのより高い濃度が溶解時間の増加をもたらしたことを示している。
【0244】
次いで、実施例4に詳説され、図1に示すようなテクスチャーアナライザー装置を使用してそれらの付着性を測定することによって、フィルムの粘膜付着性を評価した。
【0245】
HPMC-A/PVP Low 1:1 3%の外層が、好適な非粘膜付着特性をパッチに提供し、HPMC-A 2%およびHPMC-A 3%がそれに続くと見なされた。以前の実験は、グリセロールの増加がフィルムの粘膜付着性を減少させることを示している。したがって、3つの異なるグリセロールの量を、HPMC 2%、HPMC 3%およびHPMC/PVP1:1 3%を含むいくつかのフィルムタイプについて試験した。これらの調製されたフィルムの組成を表11に提示する。
【0246】
【表11】
【0247】
HPMC/HPMC-A:メトローズ:90SH-4000-ヒプロメロース米国薬局方2208、19~24%のメトキシ/4~12%のヒドロキシプロピル、見かけ粘度4000mPas.;PVP L=低粘度PVP(10kDa);低(Low)G=0.1gのグリセロール;中(Medium)G=0.75gのグリセロール;高(High)G=1.5gのグリセロール;低(Low)PG =0.1gのプロピレングリコール。
【0248】
各外層の粘膜付着特性を、実施例6に記載され、図2に例示されるように測定した。外層は、粘膜粘着性の傾向を示し、それは以前に測定されたものよりも低く、パッチの内層よりも低いままであった。グリセロールと1,2-プロピレングリコールとの間で軟化剤(可塑剤)を変化させることによって、パッチを製造した。パッチはまた、3%のHPMC(K4M)および0.5%の軟化剤(グリセロールまたはプロピレングリコール)を使用しても製造され、各フィルムの重量に留意し、フィルム重量における何らかの変動がポリマーの選択に起因するかどうかを監視した。これらの結果を表12に提示する。
【0249】
【表12】
【0250】
フィルムを粘膜付着について分析し、これらの分析の結果を表13に提示し、プロピレングリコールの軟化剤としての使用が、外層の粘膜付着を減少させたことを示す。
【0251】
軟化剤および他のポリマーの添加の影響をさらに研究するために、グリセロールを含むか含まないHPMCフィルムを、PVP(ポリビニルピロリドン)を含むHPMCゲルと共に製造した。PVPフィルムは、選択された方法を用いて測定することが困難であったが、得られた結果は、高濃度のHPMCおよびグリセロールを含むフィルムが、PVPと混合したHPMCよりも低い粘膜付着性であることを示している(表13)。しかしながら、試験されたすべてのフィルムは、本発明のパッチで使用するために好適な特性を表示した。
【0252】
【表13】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】